講談:暗闇の瓦松(一)

AI summary (β)
この物語は、徳川時代の終わり頃を背景にした江戸の世話話です。主人公の牛松は料理人としての腕を持ちながらも、厄座者としての生活を送っていました。彼は神田松枝町での事件後、逃亡し、深川矢倉下の芸者・古藩と関係を持ちます。古藩は牛松の子供を妊娠していましたが、牛松は江戸を離れ、中国へ旅立ちます。三年後に戻った牛松は古藩と再会し、浅草で生活を始めます。彼らは共働きで生計を立てていましたが、生活は厳しいものでした。ある日、古藩の元恋人が現れ、再会を約束しますが、古藩の母親はその訪問を警戒しています。
pid
1326069
date
1933-05
note
商品番号 : 65914, デジタル変換後ノイズ除去 : 無, 講談
year
1933
genre
講談
creators
神田 伯龍
duration
196
persName
神田 伯龍
publisher
リーガル
三百年。徳川の御時世もそろそろ終わりに近づきました頃。 果物でも少し腐り加減が一番おいしい時だそうでございます。 乱熟しきった江戸を背景としました世話五談でございます。 高知山宗親の宅へ、四十出入りをしておりました暗闇の牛松という、 料理人という立派な腕を持ちながら、厄座者の仲間入りをしていました。 神田松枝町の芋野氏オカル平治のところで幕地の最中、御用と御手入れ、 役人に手傷を負わして逃げましたが、その頃、深川矢倉下に古藩という芸者の深間がありました。 その古藩のお腹にはすでに子供を育てていました。 その古藩のお腹にはすでに子供までできておりましたのを、 江戸へ残したまんま牛松神方から中国へかけて旅へ出ました。 三年ぶりで帰ってきて、ようやく古藩と一緒になって浅草商店町へ所在を持ちました。 生まれた子供がもう三つ、古藩の女親と四人暮らし、 そのおふくろさんの贅沢のためにどうしても暮らしが苦しいございます。 牛松はもとより腕に覚えのあることで、戦時の小塚原のある料理屋へ通いで勤めております。 古藩は奥山へ茶店を揚げせんで借ります。 年よりぐっと派手な着物を着て、まみえを立って客あしらい、夫婦共稼ぎでございます。 寄ってらっしゃいます。おやすみなしてらっしゃいます。 寄ってらっしゃいます。おかけなさいます。 おい、古藩じゃないか。 ま、まあおめずらし。のまの御前。 のまの御前じゃないぞ貴様。ひどいぞ。 俺にあんなに惚れさせておきながら、黙ってどこへ行ってしまったんだ。 やっぱりあの牛松と一緒に暮らしてるのか。 あんな人、今じゃおっかさんと二人で商店長の大宮という花親の路地にいるんですの。ぜひあすみにいらっしゃいますよ。 ほんとうか。ほんとう。ほんとうに二人きりか。よし、じゃああしたはきっと行くぞ。 あしたと言わないで、きょういらっしゃいますな。 いや、きょうは友達と約束があるんで、わき行かなきゃならんのだ。 そのお友達が大方島だかなんかに行って待ってるんだろう。 え、もう浮気者め。 つめるなよ。あとがつくわな。 いや、きょうは急ぐから。ほんとうにこれはお前に。これはお袋への小遣い。 ありがとうございます。じゃあきっとあしたいらしてくださいます。お待ちもしておりますよ。 約束をして帰るさじゅうろ。 後半のお袋がこれを聞いて、きてみやがれさじゅうろ。ほんとおもらしてやるから手ぐすねひいて待っております。