詩朗読:乃木坂倶楽部、火、沼澤地方
- AI summary (β)
- この文章は、12月の寒さと孤独感を描写しています。主人公はアパートの空白な洋室で寂しく過ごし、人生の疲れや飢えを感じています。昼間は酒場で酔おうとし、夜はベッドで熊のように眠ります。火の美しさに魅了されつつも、全てを焼き尽くす炎の恐ろしさを思い描きます。焦沢気候の中で孤独に歩き、悲しげな夢に溺れる日々を過ごします。最後に、別れを告げる相手との思い出が描かれ、再び会うことのない寂しさが強調されています。
- pid
- 3571577
- date
- 1940-03
- note
- 商品番号 : 33654, デジタル変換後ノイズ除去 : 無, 詩朗読
- year
- 1940
- genre
- 文学作品の朗読、解説
- creators
- 萩原 朔太郎[作詞], 萩原 朔太郎
- duration
- 181
- persName
- 萩原 朔太郎
- publisher
- コロムビア(戦前)
乃木坂クラブ
12月また来たれい
何ぞこの冬の寒気や
去年はアパートの5階に住み
空白たる洋室のうち
壁にベッドを寄せて寂しく眠れあい
我が死する者は何ぞや
せに人生の巨猛に疲れて
今もなお家畜のごとくに飢えたるかな
我は何者も喪失せず
また一切を失い尽くせり
いかなれば終わるごとく
最後の忙しき町を憂い迷いて
昼物を酒場の椅子に酔わんとするぞ
虚空を駆けゆく鳥のごとく
情緒もまた写しき過去に消え去るべし
12月また来たれい
何ぞこの冬の寒気や
遠者はドアを鳴くし
我の乱道を見て哀れみにされども
石炭もなく暖炉もなく
白和の空白たる洋室のうち
我一人ベッドにさめて
昼物を熊のごとくに眠れるなり
火
赤く燃える火を見たい
獣のごとく何時は沈黙してはざるかな
夕べの静かなる都会の空に
炎は美しく燃ええずる
たちまち流れは広がりゆき
瞬時に一切を滅ぼし尽くせ
産も工場も大建築も
希望も栄養も復帰も野心も
全ての一切を焼き尽くせ
火を
いかなれば獣のごとく
何時は沈黙してはざるかな
寂しき夕焼に打ち合わされつつ
かくも静かなる白和の空に
何時は熱情を思いつくせ
焦沢気候
蛙どもの群がっている
淋しい焦沢気候をめぐり歩いた
日は空に寒く
どこでもぬかるみが
じめじめした道に続いた
私は獣のように靴を引きずり
あるいは悲しげなるブラックを尋ねて
だらしもなく乱打の恐ろしい夢に溺れた
ああうらもう僕たちの別れを告げよ
相引きの火の木小屋の二人で
お前は恐れに縮まり
猫の子のように震えていた
あの灰色の皿の下で
いつでも時計のようになてる
うら不思議な淋しい心臓よ
うら再び咲いてまた会う時もないのに