朗読:ベニスの商人(法廷の場)(一)

AI summary (β)
この文章は、シェイクスピアの「ベニスの商人」の一部で、法廷でのやり取りを描いています。シャイロックは契約に基づいてアントーニオの肉を要求していますが、ポーシャは慈悲の重要性を説いています。ポーシャは、慈悲は自然に降る雨のように無償で与えられるべきものであり、与える者も受ける者も幸福にするものだと述べます。彼女は、正義だけでは人は救われず、慈悲が必要だと強調します。しかし、シャイロックは契約通りの処罰を求め続けます。ポーシャは最終的に、シャイロックの要求が法に基づいているが、慈悲を考慮するように訴えます。
pid
3571947
date
1933-11
note
商品番号 : 35391, デジタル変換後ノイズ除去 : 無, 朗読
year
1933
genre
文学作品の朗読、解説
creators
坪内 逍遥
duration
197
persName
坪内 逍遥
publisher
コロムビア(戦前)
ベニスの商人、法廷の馬、シャイロックというのはその法か? シャイロックは手前でございます。 その法の今度の訴訟は、はなはだ不思議な訴えじゃ。 しかし手続には何の不都合もないから、ベニスの法律の表としては、その法を非難することはできん。 その法の聖子は厳酷に一任せねばならんように聞いたが、さようか? はい、さように申しおります。 聖書に対して異議はないか? ございません。 では十が慈悲を施さんければならん。 ならんと仰るのは、どういうよんどころない理由がございますか? 受けてまいりましょう。 慈悲はよんどころなく施すべきものではない。 慈悲は春の小雨のおのずからにして地をうるおすがごとくに下るものじゃ。 その徳たくは二重である。 慈悲は、これは後うる者にとっても幸福であれば、受ける者にとっても幸福なのじゃ。 慈悲は最も大いなる人にあって、さらに最も大いなる美徳となる。 その徳が君子の胸にあれば、その光は金の冠にも幾倍する。 かの国王が手に持たせられる借は、ほんの続戒における威力や尊厳の目印たるにすぎないが、 慈悲は目に見えぬ心のうちに宿る宝で、永生不滅の神の徳じゃ。 したがって慈悲をもって、正義を和らぐるに及んで、正道がはじめて天道に可能のである。 人間の力がその時はじめて神の力に似るのである。 だから十余、おまえはしきりに正義を主張するが、正義ばかりで裁判したならば、われわれどものうちただの一人でも救われる者はあるまい。 お互いに明け暮れ、神に慈悲を祈る。その心を押し汚して他人に慈悲を施すのが人情というものじゃ。 かように言葉を費やすは、その方の誠意一遍の申立てをなだめようがためである。 それをおまえが強いて申し上げれば、ベニスの厳格な法廷は、よんどころなくそこにいる聖人に宣告を下さければならん。 手前が主になれば、命をお取り下さい。手前は誠意を要求します。聖書通りの下了を要求いたします。 聖人は金を家へ払わんのか。いや、金はわたくしが彼に代わって支払います。ごときんの二倍にいたします。 それでも、ただのと申しますれば、誠意を要り表向きで、そこには外心悪意に沿いございません。 ようやくは政府の御原力をもちまして、大義全道のために、ひたすらか法律をまげさせられまして、この仁美人命を御聖中下されますように。