朗読:ベニスの商人(法廷の場)(ニ)

AI summary (β)
要約:ヴェネス城の権力では国家の法令を改めることはできず、悪例を作ると国家に悪影響を及ぼすため、法令を守るべきだという議論が行われている。ダニエル様のように賢明な裁判官が証書に基づいて裁判を進め、シャイロに対して三倍の金額を受け取るよう提案するが、シャイロは誓言を理由に拒否する。最終的に、証書に従って商人の胸元から肉一ポンドを切り取る権利が認められるが、出血を防ぐために外科医を呼ぶことも提案される。
pid
3571948
date
1933-11
note
商品番号 : 35391, デジタル変換後ノイズ除去 : 無, 朗読
year
1933
genre
文学作品の朗読、解説
creators
坪内 逍遥
duration
196
persName
坪内 逍遥
publisher
コロムビア(戦前)
いや、それはできん。 ヴェネス城のいかなる権力をもってするも、定まったる国家の法令を改めることはできん。 ひとたび、悪例を作るとそれがもとで、 衆生の間違いが続出して、長く国家の患いとなるから、そういうことはできん。 ダニエル様の再来だ。まったくもダニエルさんだ。 若いには似合わん。恐れ入った賢明な裁判官様だ。 どうか、その証書を見せてくれ。 はいはい、これにございます。はばかりながら、これにございます。 シャイロ、この金額を三倍にして返済しようと申しておるぞ。 誓言したんだ。天に誓言をしてしまったんだ。 おのが、魂に犠牲の罪が負わされましょうかい。 いやだ。ベニス一国をもらってもいやだ。 さて、この証書は、すでに剣が切れておるから、 女王はこれによって正当に、その商人の胸元から肉一ポンドを切り取る権利がある。 が、シャイロ、慈悲をかけてやれ。 三倍の金を受け取って、この証書はわしに咲かせてくれ。 証書面通りの支払いさえ済みますればね。 あんたはお立派な裁判官さんでおあんなさるらしい。 法律をよく知っておいでなさるし、解釈の仕方もしっかりしたもんだ。 手前はあんたを立派な国家の法律の忠責だと存じますから、 その法律をたてにあなたに申します。 ずんずん御裁判をなすってくださいまし。 ぜひ、証書面通りに御裁判を願います。 手前もせずにお願い申します。どうか御裁判くださいますように。 ではぜひに御呼ぶわ。その法の旨、彼が刃物を受ける用意はせえ。 お、公明盛大な裁判官さん。若いに似合う。おぐろいお人だ。 けだし、この証書面に仕留めてある下了は、法律の意義並びに目的の上よりみて、 十分全認せらるべき性質のものである。 まったくそのとおりです。お、賢明な公平な裁判官さん。 まあまあ、お前さんは見かけるよう、さっと露すような偉いお方だ。 それいや諸者に、胸元も開け。 はい、胸でございます。 そう証書に書いてあります。 で、ございますよ。すぐ胸元よりと書いてございます。 作用、肉の重さを測る、測りはあるか。 用意しております。 斜慮、その夫を自弁で外科医者を呼び寄せておき、 傷口を止めんと、出血のために命を失おうかもしれんから。 そんなことも書いてございますか。