落語;結婚飛行(上)

Lyricist / composer / arranger / performer
柳家 小三治
Label
ニッポノホン
Genre
落語
Publication date
1928-08
Category (AI-assigned)
家族
Keywords (AI-assigned)
母親, 娘, 結婚, 自立, 価値観
Notes
商品番号 : 16967, デジタル変換後ノイズ除去 : 無, 落語
母さん、ただいま。 こんなに遅くまでどこ行ってきたんですか? 私、代々木の練兵場へ行ってきたのよ。 今日、四季島大和城がね、飛行機に乗って中帰りしたの。 その技術が本当に鮮やかだったんでね、みんな感激してよ。 感激してや、芝居見に行くこってしょ。 どこの芝居行ったんですか? 母さん、年がたいわね。そうじゃなくてよ。 明礼の女子が飛行機に乗って中帰りしたの。 二十歳、私と同い年じゃありませんか。 女の身をもって空中高く志向して、五尺の男子をして、 元色なからしめたんですもの。 ずいぶん称賛する価値があることね。 称賛だか流賛だか知りませんよ。 そんな危ないもの大嫌いです、母さん。 お天馬のことしちゃあんたいけませんよ。 お天馬だなんて母さん、ずいぶんアナクロニズムね。 現代の婦人は何よ。どうかして運動しようと思ってんのよ。 いわゆるスポーツに心出してんじゃないの。 私も女流志向家になって世界に名を挙げたいわよ。 いけません、そんなこと。 うまくいけばいいけど、まずくいけば落っこちちまうんじゃないか。 だめですよ。そんな話はよしにしてね。 早くいい女子さんでももらって、孫の顔でも見せて安心させてちょうだい。 また母さん、そんな話ですか。 母さんの選定してくださるお婿さんに、ろくな人ひとりもないんですもの。 はしごダンゾーさんに、わるばしわたるさん、ラジオアンテナさん。 いやいや、あんな人。 母さんの前ですけれどね、私にはIGやハスバンドがあんのよ。 ああいうのハスパンですって。どんなパンです、そんなパンは。 ジャミパンですか、バタパンですか。 まあいや、ねえ母さん、ますます年寄たくなってきたわ。 そうじゃなくてよ、私には定まったお婿さんがあるってことよ。 誰が定めたんです、そのお婿さんを。 私が定めたわ。 お前さんは親がかりでしょ。 親に相談しないでお婿さん決めるなんてそんな法律はありますか。 まあ母さんの法律研究はずいぶんチンですことね。 チンても割ってもいけません。 親の許さぬ不義いたずらをして。 親の許さぬ不義いたずらってと母さん語弊があるじゃありませんか。 お前の夫人はね、親の定めてくれた愛のない結婚に盲目的復讐しないことよ。 自分の理想にかなった夫は自分で選択をするのよ。 選択も張り物もありませんよ。 だいたい自分勝手に決めたお婿さんってどんな人です。 どんな人って、それはいい方よ。 人格といい、教育といい、一点のひの内どころもないの。 それに非常に私のこと愛してくださんのよ。 この間も私の手はキュッと握って、 私はあんたと結婚ができなければ、生きていてもつまらないから死んでしまおう。 私もそれに共鳴したのよ。 あんたと一緒になれないくらいならば、生きていてもつまらないわね、ほんとに。 じゃあ一緒に死にましょう。 どうせ二人はこの世では、 バカだね、この子は。 親の前でのろかなんて言ってる方はありますか。 のろかってわけではないけれど、母さんがお吉になるからお答えをするんじゃありませんか。 日本に対する答弁でしょ。 だから今時の娘は嫌になってしまっているんですよ。 お母さんがうまいくらいの自分に、 こんなおもこさんの話なんて聞かれて決まりが悪くて、 畳のの字を書いてたもんですよ。 まあ畳のの字なんて母さんずいぶん旧式ね。 今ならアイラブユーと書くわ。