落語;不精床屋(上)

Lyricist / composer / arranger / performer
林家 正蔵
Label
ニッポノホン
Genre
落語
Publication date
1930-06
Category (AI-assigned)
美容・理髪
Keywords (AI-assigned)
理髪店, 客, 店主, コミカル, 髪を切る
Notes
商品番号 : 17556, デジタル変換後ノイズ除去 : 無, 落語
おやかた、ちょっと頭やってもらいたいんですが、うちは温泉屋じゃないから、なんで頭どこにもやれないよ。 あげはしとらずに、汚ねはしとるかい。やばくたな、こりゃ。 じゃあ、まげに言い直して、ちょっと逆行き当たってね、顔を剃っていい男にしてもらいたいんですが。 まげに言い直して、逆行き当たって、顔を剃るまではやるけれど、頭いい男にしてくれってのはちょっと難しいや。 お前、鏡見たことはないのか。どうやったっていい男になる面じゃない。そりゃ、かまがおきびしたような顔だ。 口が悪いね、ずいぶん。 ひとつやってもらいたいんだが、忙しくないんですか。見たらわかりそうなもんじゃないか。 こさがい眠りしてて、おねがしに当たってんだ。やってやるやん。 じゃあ、どうかお願い申します。客なら客らしくやってくるとかなんて言いねえ。 お願い申しますなんて、なんでもない。 じゃあ、もっとへ弾いて、頭しめしなよ。 そりゃ、親方のほうでやってくれるんでしょ。 生意気なこと言うなよ。おめでやんねえ。 あ、そうか。じゃあ、頭しめすんだから、きっとお湯かなんかいただきたいんですが。 頭即熱ってこと知らねえか。 頭、冷やさなくちゃいけねえ。水でやれ、水で。水でやれって言ったって、水道もなんにもないし。 ちょいと、どこにあるんです。どこにあるって言うと、そっから七八町行くとな。 右曲がり横丁があるから、そこにある。やったところに水があるんだね。 小僧さん、ちょいと汲んできて。 冗談言っちゃいけないよ。 おめえのために使われてる小僧じゃねえんだから、こりゃ。 うちの小僧なんだから。汲んできたかったら、おめえ汲みに行けねえ。 やったね、こりゃ。 じゃあと、汲みに行くのが嫌だったら、そこに水があるから、この亀の中で減ってな。 汚い水だね、こりゃ。 よっぽど前に汲んだのか。15、6年前に。 やった、水だな、こりゃ。 ならだ汚いわ。ボウフラが湧いてやがら。いけねえねえ。 これボウフラが湧いてるけど、ボウフラのほうが怖がるよ。 ボウフラ食いつきゃいけねえから。 もし気味が悪いと思ったら、亀の口をトントン叩くとね、沈むから、その間にチュッてやっちゃえねえ。 ああ、ならだとうまいこと考えたねえ。 ああ、いや、沈んだ、沈んだ。 いけねえ、また浮いてきた。面白いね、これ。 また沈んだ。また浮いてきた。 小玉じゃねえよな、お前。盗んでちゃいけねえ。しっかり示せよ。 よろし、小玉さん。 気味が悪い。 じゃあ、親方やってもらおう。 やっこ、やっこ。犬無理してないで、てめえやる。 親方やってくんないの。小僧にやらせてやってくんねえ。 でないと、これ職人になりすぎなっちまうから。 やっこ、しっかりやれよ。 たまには生き物の頭捕まんなくちゃいけねえ。 人間だと思っちゃいけねえんだから。 かぼちゃだと思って、しっかりやれ。 ああ、ああ、ああ。 なるほどねえ。とうとうかぼちゃにされちゃったねえ、これ。 小僧さん、やってくれ。 恐ろしい。たけえ足で吐いてんねえ。 ええ? このくらいの足で吐かなくちゃ。 頭に線が届きません。 ああ、そうか。 何歳になったんだい? 十三。 ああ、なるほどねえ。 今までやったことあるのかい? 交絡をやってて。 ああ、なるほど。 こないだ、親方の六八目をやって。 二、三度切った。 危ねえなあ、でも。 しっかりやってくれよ。 頼むよ。いいかい。 しっかりやってくれ。