落語:長屋の花見(上)
- Lyricist / composer / arranger / performer
- 三遊亭 金馬(3代)
- Label
- コロムビア(戦前)
- Genre
- 落語
- Publication date
- 1936-03
- Category (AI-assigned)
- 社会
- Keywords (AI-assigned)
- 貧乏, 長屋, 花見, お茶, 偽のご馳走
- Notes
- 商品番号 : 28791, デジタル変換後ノイズ除去 : 無, 落語
♪♪♪
おや、こんにちは
いやぁ、長屋の者か
みんな来たか、さぁこっちへ上がってくんな
えぇ、えぇ、何か御用ですか?
お前さん方呼びにやったのは他のわけじゃないがな
この長屋で花見に行こうと思うんだ
花見ですか?
うん、この長屋の事を世間じゃ貧乏長屋なんと言うそうだな
いやぁ、もうもっぱら評判です
つまらねえことが評判だな
えぇ、となし長屋なんども言いますね
何だい、となし長屋てえな
長屋の雨戸がねえんです
あれ、雨戸って建てる時にはいれたぞ
えぇ、入る時あったんですがね
つい焚き付けに困ったもんだからぶち壊しておっしゃいました
あれ、おい、雨戸を申しちゃったのか?
えぇ、雨戸はもう一件もありませんよ
今みんな天井板やってます
おいおいおい、それじゃ壊し屋だよ
雨戸がなきゃ物騒だ
もし泥棒でも入ったらどうする?
えぇ、そりゃ大丈夫
この長屋に泥棒なんざ入りっかありません
そうか?
えぇ、ちょいちょいこっちから出ます
あれ、おい、長屋から泥棒出してちゃいけないな
そんな噂を払うために花見に行くんだ
えぇ、貧乏長屋の花見ですからね
まず食わせて花見たらぐるぐるっと回って帰ってくるんですか?
そんなしみったれた花見があるかよ
何はなくともお酒だ
お前さんの脇をごらん
一生瓶が三本あるだろ
えぇ、かまぼこに卵焼きがある
それを持って行ってもらいたい
大変な御馳走ですね
えぇ、行きましょう
そうか、じゃ今月の月晩と来月の月晩が漢字だよ
えぇ、じゃこの漢字は何ですか?
長屋の物からいくらか割り前持ってお屋さんのとこ行きますか?
いやぁ、割り前なんじゃいらないよ
だってこれをみんなお屋さんに出してもらっちゃ気の毒ですね
さぁ、そう言われるとな
わしもちょいと面目ないが
えぇ、実は酒もな
本物じゃねえんだ
本物でねえ程度?
いや、色気はよく似てるだろ
飲んでみりゃ分かるよ
えぇ、バンチャーに出したやつに水増したんだ
これがお茶気ですか?
インチキだねえ、イカ沢だねえ
どうも泡が立ってて変だと思ったんだよ
じゃ、お茶かもりですか?
お茶かもりていうのがあるか
ごちそうは本物でしょ?
いや、それも本物じゃねえ
かまぼこというのは大根の甲子を月型に切ったんだ
うまく考えたな
色気に格好が似てるもの
じゃ、たまご焼きってな
ことによったらたくあんじゃないんですか?
はいはい、当たった
あれ、つまらねえな、当たっちゃったな
で、甲子をバリバリかじって茶をガブガブ飲んでおしまいですか?
バリバリガブガブじゃおもしろくない
向こう行ったら、いっこんけんじましょう
お軽くいただきます
おーとと、チリバスチリバスかなんかいいや
旗から見てて本物飲んだり食ったりしてるようだ
気力を養うんだ、行ってくんだ
やば、行きます
行くか
ええ、もうこうならやけだ
やけで行くてえなあない
月晩や土間にあるあの毛線をとっておくれ
へえ、土間に毛線ありますか?
おまえの前にあるだろ
むしろじゃありがてんか
なぜむしろてん、あたしが毛線をとりなと言ったら
毛線ですかととりな
なんだ、これまで本物じゃねえんだよ
ええ、じゃあわらの毛線
余計なことを言うな