清書無筆(一)
- Lyricist / composer / arranger / performer
- 三升家 小勝
- Label
- ビクター
- Genre
- 落語
- Publication date
- 1928-12
- Category (AI-assigned)
- 教育
- Keywords (AI-assigned)
- 教育環境, 親子, 手習い, 学校, 重要性
- Notes
- 商品番号 : 50509, デジタル変換後ノイズ除去 : ノイズ除去なし, 落語
今では学校ができましたから、子供中もまた、うまく字や何かもおかげになるが、昔我々が手習いする自分にはそうじゃない。
親にはまるっきり何も知らないんだから、ものがおかしい。
お父さん、ただいま帰りました。
えー、おそっと早く帰るんでございますけども。
途中でもって、保育園に面会をしました。
何言ってやんねん。長いことぐずぐず言うねん。
醤油なんての面会ひねったって構わねん。
おいおいおい、バカにすんなよ、この父親め。
何だって教え表出来たのに、その柱にかけちまうねん。
お父さんに見せねえかよ。
お父さんに見せると分かるやしねえ。
何言ってやんねん。
柱にかけた柱が分かる。柱とお父さんがどっちが大事だと思うの。
それはお父さんがここの家じゃ柱の方が大事だね。
あの柱とっちまうと家が壊れんの。
お父さんがそこをどいたって家は壊れやしねえ。
何言ってやんねん。親父つっかえぼうと間違えてやんねん、バカ。
これ持ってきて見せるよ。
あれかけやがったね、この書を。
はっはっは、なあ。
なるほど、目や。
墨でもって黒く書いてやん。
墨で黒く書くのは当たり前じゃねえ。
聖書造詩と上手く書いてやんな。
聖書造詩と書いてやんじゃねえ。
それ基本は人にじっきりだよ。
学校は天下にじっきりだよ。
ねえ、なるほど。
はっはっ、おやおやおや。
何にも書いてねえじゃねえか。
それはお父さん天神が見てんの。
もう一枚はねるんで。
無駄だしねえ、親が買うんだからね。
ああ、あんま書けやがったな、これ。
これ見ろよ、これ。
黒いネズミと赤いネズミはおぶさってのは何でしょ。
黒いネズミと赤いネズミはおぶさってんじゃない。
それは私が白硝の野の字を書いたら腰が下がって
むしんめが長くなったもんだから
ネズミみたいな格好になったの。
先生がおかしい点でも高いもんで直してくれたの。
ああ、そうか。
俺も高いほうはこれペストで焼かれたんだと思ったの。
何しろこれまずいな。
これこびしゃくていじゃまずいで。
こびしゃくていじゃないよ。
それは差し上げ申し討論の申ていで。
もうこびしゃくなんてみんな申するだけで
こひれいちまうの。
字なんてものはみんなそういうもんだよ。
お父さん、字なんてものは何でも当たらねえよ。
じゃあ、こんな字を書きやがったな、これ。
何でこれハセンパコていしょ書いたら。
ハセンパコじゃないよ。
それは中元の中の字だよ。
中の字か。
むかしこれハセンパコて言うんだよ。
ハセンパコなんて殿様が勝つわけのもんじゃねえ。
みんな中元が勝ちいちまうんだよ。
驚いたなと思う。
そうかね。
そうだっても字なんてものは理でめだ。
字は理でめだってね。
時代の氷菓子のババア、七夜の番刀なんて
みんな理でせめてるんだからな。
お父さん、字は何でも知ってるの。
親父は腐るほど字を知ってんだよ。
これ、あいつは面白いな。
お父さん、じいさん、字を書いてみるから当ててごらんせ。
どんな字でも書いてみる。
木の字を書いたら何て字だか知ってるかい。
何?千に木の字。
木が二つ並ぶんだろ。
そうだよ、正真って字だよ。
正真じゃないよ。
そりゃ林って字だよ。
林に正真がついてんじゃねえか。
祭りの時にバラボンめ、林を止めるのに
手を取ってカーンカーンってやるだろ。
ほら、林に正真がくっついたら。