東郷さんと地震の話
- Lyricist / composer / arranger / performer
- 小笠原 長生(海軍中将)
- Label
- ビクター
- Genre
- 教育・児童
- Publication date
- 1931-08
- Category (AI-assigned)
- 歴史
- Keywords (AI-assigned)
- 忠義, 勇気, 加藤清正, 東郷, 地震
- Notes
- 商品番号 : 51865, デジタル変換後ノイズ除去 : ノイズ除去なし, 学芸
昔、伏見に大地震があった時に、加藤清政公が第一番にご主人の大公さんのところへ駆けつけて
あっぱれ中心と褒められたことは名高い話でありますが、忠義の心の熱い方はいつでも同じで、
東郷さんもあの大地震の時、それというが早いかすぐに軍服に着替え、その折両陛下は日光においで遊ばされてお留守であったものですから、
一番にまだぐらぐらっとやってる中を東宮御所にうかがわれ、御安泰であらせられることを受けたまわってほっと安心せられました。
ところが戻ってこられた時には、御自分のお屋敷も三望から燃えてくる火に取り囲まれ、門も垣根も焼かれました。
しかし、東郷さんは落ち着き払って踏みとどまり、普段からこういう時のために用意しておられた三つの堀井戸に仕掛けてあるポンプからどんどん水を出して火を防いでおられました。
そこへ、かねて東郷さんに御恩を受けている九人の若者が駆けつけてきて、いきなりすっぱらかになると、
いずれも着ていた半天を水につけて、それをひっかついで屋根の上に飛び上がり、
やい、火事のめくらめ、気をつけろ、ここはどこだと思う、はばかりながら東郷さんのお屋敷だぞ、焼けるものなら焼いてみろ、さあ来い、
こうした勢いで飛んでくる火の粉を濡れた半天で片っ端からたたきつけましたからたまりません。
とにかくめくらと叱られては、さすがの火事も驚いたことでありましょう。
ついに海の中の島のようにそこだけ残して、他の方へやけひろがっていきました。
後になってこの時の世間の噂を聞きますと、どうも大変なことだ。
火事に取り囲まれた東郷さんは、大きな内輪を持ち出してきて、きのこの飛んでくる方へ向かって、
あおぎ、そうして火を追い払ったと不思議そうに話している人がありましたが、
なんぼ東郷さんがえらいからといってこんな不思議なことはできるはずがありませんが、
まったく東郷さんの高い徳と誠の心と重意深かったこととがもとで焼けなかったので、
結果においては内輪であおぎつけたのと同じことになったのであります。
それもこれも皆東郷さんの真心がもととなっているのでありますから、
どうぞ皆さんも心を正直にもって親御さんや先生たちのおっしゃることをお守りになり、
立派になってくださるようにお願いします。