外科醫法 巻之1

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2026-08-17T18:54:31.635Z
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book
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版心に「濟衆精舎蔵」とあり
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パブリックドメイン
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Stromeyer, Georg Friedrich Louis, ストロマイエル, Suerman, Bernardus Franciscus, シュエルマン, 佐藤, 尚中, サトウ, タカナカ
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医学
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山城屋佐兵衛
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oai:catalog.lib.kyushu-u.ac.jp:2324/4492388
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ゲカ イホウ
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九州大学
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版心に「濟衆精舎蔵」とあり
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外科医法
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2026-08-28T18:53:25.651810+00:00
ケール 外科医法 慶次 添佐藤尚中訳述 外科医法 湊衆精舎蔵 外科医法序六十七丁 所貴乎天六智能之士者以其能創法以為可 継也不然雖有過世之智絶傷之能何足以称 哉何也天下之大生民之衆無限而一人之智 能有限以有限之智能済無限之大衆其焉所 能及哉是故古聖人之於天下既竭日力焉継 之以規矩準縄既竭耳力焉継之以六律既竭 心思焉継之以不忍人之政蓋不如此則不足 歳 仲 冬 周雅楽 丑 む 元 慶 応 舜海佐藤尚中訳述 外科医法 藩衆精舎蔵 外科医法序六十三丁 所貴乎天六智能之士者以其能創法以為可 継也不然雖有過世之智絶倫之能何足以称 哉何也天下之大生民之衆無限而一人之智 能有限以有限之智能済無限之大衆其焉所 能及哉是故古聖人之於天下既竭日力焉継 之以規矩準縄既竭耳力焉継之以六律既竭 心思焉継之以不忍人之政蓋不如此則不足 以編天及後世也此豈大道独為然哉雖小 道亦不当不如此也吾聞兪附療疾不以湯沸 乃割皮解肌満腸胃滌五臓扁鵲視病亦尽知 五臓之厳結如彼二子者可謂有退世之智絶 傷之能矣然皆不能制法以使人継之故其所 済山其力之所及而不能以偏天下及後世也 此獨乙斯萬魯黙児之所以獨為可稱也斯萬 魯黙児以退世之智絶倫之能生於来西医術 方精之日不安其故而益求其精身歴遊五方 以事実験遂更有所発明以出新意焉蓋其術 不唯知五臓之疵結至夫割皮解肌満腸胃滌 王臘亦優為之然自以為施之各力之所及其 所済有限而未足以編天下及後世也不如著 之書以使人継之於是乎尽著其方剤以伝焉 而泰西之医術遂由以一変矣実彼紀元千八 百四十六年也夫斯篤魯黙児之於医能如此 矣豈非所謂既竭耳目心思之力継之以規矩 準縄六律典不忍人之政者哉此我之所以不 取於兪附扁鵲而独有取於斯万魯然児也吾 友佐藤泰卿嘗游長崎得此書於阿ノ蘭人百明 者蓋泰卿亦聡明絶人矣自幼従事於泰西医 術業既成名聞海内然常自以為医術不当止 於此会百朝来吾長崎伝与医術乃行而従之 果聞所未聞大喜尽受其術而帰臨帰百朝燼 以一書即斯篤魯点児之所著也従此来卿業 益進名益喧海内泰卿曰此不可以独私焉乃 訳其書将以伝之海内来乞余一言嗚呼泰西 之医術固称精於天下矣而斯薦魯黙児之此 書出而其術遂一変矣則吾東方之医術亦将 由泰卿之此訳書以一変乎果然則斯万魯黙 児之志得由以益及遠而天下之生民亦得由 以尽済矣此不可以不 以尽済矣此不可以不可以不可以不可以不可以不可以不一言也 慶応二年丙寅春三月 一佐倉文学続豊徳撰并書 同十一丁 北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北北 凡例 一此書は、独乙国の外科医学教頭、兼外科眼科両 一術の治官にて、其術をエレービルグ」ブレース カウ燃紅等、其外の病院にても専ら博く施せ ー。ロウス、ストロメール氏の著述なり。かの紀 元千八百四十五年。銅に鏤はめしを、和蘭人ブ。 フ。立エルマン、其邦の詞に訳せし者なり、其説 く所、中興医術の變章したりし議に基き。実地 了宗とし、医則を立てゝ、側らこれを積年親し く施したる。治術に當てゝ論し喩し、初学の者 に、通暁やすからしむる雙ひなき書にそあり つる。和蘭の医官。ポンペ。ハラン。メールデルホール ト氏。台命を奉りて、長崎に来り、生徒を誨しに。 外科医方をは。此書によりて伝へたり。余も亦 吾公の命に応して、彼地に至り。其講筵に待り けるに。別れに臨みて、此書を遺りていへらく。一 だよそ二十年前まては、英佛の外科醫方、萬國 に長せしを。此ストロメール。とヂフヘンバック の両際。独乙國に起りてより、外科術も復ひ萬 国に勝れたり。されは此。両書を宗となして、外 科医方を施しなんには。彼地に至らすして。其 堂に上り室に入かことし。と余其賜のゝかた しけなきを拝し、家に帰りて生徒と共に。此書 を講窮して。曰として怠ることあらさりけれ は、此書の百彌〻深く深く、且長したるを意に悟り ぬ。さて家塾にて講議せし所を。そのまし捨お かんの惜しけれは。寧ろ邦語に訳して。かたは しより板に彫りて。速かに同志の士に頒たむ には、我医術に於て微益ありなんか。されと余 か拙き筆のよくなしうへきにあらす。況や幼 一時より、医術このみ意を用ゐたれは、漢文など は露ほとも学ひ得さるをや、しかはあれと俗 語くもて訳しなん事は、さはいへど亦なしか たきにもあらす。然らは勉て原書の意に違は す。洋文を学はさる輩にも。暁りやすからんや うにと思ふて。言語のいやしきをかへりみす。 冀は此精術の世に弘まりて。保生の仁を海内 に施さん事を、 一訳し成ずにしたかひて。かたはしより彫りた一 てぬれは。訳例などにあとさるき異なる所もあ りなむか、見む人これを恕しねかし、およそ時 刻は西洋の方にそのまゝ従ひぬ。書中一時と いへるて、彼國の一時にて、吾國の晝夜平等の 時の半時に當れり。餘は准へてしるへし。其一 時を六十に分ちたるは、則ち一分にて、其一分 を更に六十に分くる者を、一秒といふ、錯ること となかるへし、又病名薬名はつとめて、先輩当 ておかれし文字を用う、全体新論西医略論な とより襲用うる所もあり、又竊かに新譯の文 字を下せし所もありぬへし。薬石の秤量。亦先 輩の定むる所に従へり。原書の自註を訳し出 す所には。本註云の三字を冒らしむ。其外文中 割りて二行に書るし、又一字下けて註しぬる は。余か管見を記して、いさしか原書の意を演 へしものなり。 慶應紀元歳次乙丑秋八月佐藤尚中識 外科医法総目次 外科病理治方総括 外科医法内編総論 血積血鬱論第一編 焮衝論第二編 解散 化膿 硬結 軟化 壊死 潰瘡 悪液質論第三編一 膿毒病 瘰歴病 腺病 黴毒病 痛風病 壊血病 一肥太病産物病論第四編 海綿腫 癌腫 豚肉腫 脂肪腫 肉腫 袋瘤 血腫 軟骨様腫 神経用病論第五編 神経機亢進病 神経痛 耽飲譫怠 外感症 痙癇 破傷風 傷風僂麻窒和 傷風 麻痺 外傷論第六編一 震撞 打傷 創傷 外科医法外編各論一 皮病蜂窩織病論第一編 水脈水核病論第二編 静脈病論第三編 動脈病論第四編 神経体病論第五編 動移器病論第六編 骨焮衝 交較焮衝 骨肥太病骨産物病 交較外傷 脱較 骨折 外科医法総目次終 外科医法巻一目次一 外科病理治方総括 一外科医法内編総論 血積血欝論第一編 外科医法巻二目次 同同一一一編一 焮衝転号 第一解散 第二化膿 膿性論 瘡論 粘膜醸膿論 創面醸膿論 焮衝産物化成論 第三硬結 第四軟化 第五壊死 第六漬瘡 外科医法巻三目次 一焮衝論第二編二 焮衝及焮衝転帰詳論 焮衝治方 焮衝病所治方 外科医法巻一 佐倉佐藤舜海尚中訳 外科病理治方総括 凡病を医する事を学ふには。まづ人身理学を基 とし、生てより死するまて。其間生〻化有する所 の理を究明して、人身平常の事を識り、其次に吾 體平常に違ひぬる事を病理學に就にて通暁す へし、此両科を修めて。初て病を治むるの方を学 ふなり、病は変なれは、其平を推して、是を察せす はあるべからすこれ人身理学と病理学と須臾 くも離るへからざるゆゑにそありける。医を学 ふの士。是等の事に據りて、其道に入る時にそ。内 科外科の間に、差別あるにはあらざるなり。只外 科の医法となすべきぞ。是を助くるに、手術を用 ゐて。全功を収むる事の。異なるのみなり。 爰に病を論するに、次第して記さむに病は諸罪 諸経に渉り、共に乱るゝ所ありて。一病をなす者 なれは、強ちに人身理学の例に倣ひて、給養経、呼 吸経。神経経の病などら、限りで論することそ しがたし故に余は。人身何もの所こもあれ。多く 發じて。単性なる病より論じ出して漸くに雑病 にして。単性なる病より論し出じて漸くに に至る。これ簡より雑に入るの理にて、初学の者 らしめんためなれはおり。 に暁り易からしめんためなれはなり。今文體何 その所二もあれ。発する単性の病より筆を起し て。説きぞめ。次第七雑病に移り、次には各罷各経 に限りて発ずる病を論すべしされば日 に限りて発する病を論すべしされば此書を別 で、内編外編となし、内編には、何れの所にもあれ 發する病を論じて総論となし。外編にて、一區一 経に限る病を論じてこれを各論となす蓋し各 論には解剖学極めて緊要にて、此助なりせば。 識れるをきをもて解剖学の次第に倣ひて記じ ぬ。およそ医法を学ふにぞ。諸の病状を診て此病 はいかなる所にありて、かゝる象ちを顕す者と いふことを解剖の学に據りて辨じ。これう吾精 神こ蔵めて忘れず。これよりして考ふる時はい かなる難病に逢こも軟く辨じ得る者なり。 外科医法総論 血積血鬱論第一編 身體何れの所にもあれ。血脈太くなりて。血を容 これを虚実の二症に別くべし。 るらこと多くて常に倍すれば、血其所に鬱積す。 実症は今略じて爰に血積といふ。身体一所の血 脈常よりは、太くれりて血を多く容るゝ者是な り。夫れ血は心臓の縮力によりて流利せられて 日夜息む時なく又全身に達せさる所なし、しか にに血を稟くる所に貧富あるは血脉の大小異 なるに由はなり。されは身体の一部、若じ常より は多く血を要することあれば、其所の血脈太り 血従てこゝに逼る者とす。血脈の質は時にはな のつから太くれ。又自ら縮まるの性ありて。其内 に容るゝ血の増減に適はしむ。大血脈よりは枝 末の細き血脈に。此性を具ふること殊に多きれ り毛脉に至りては彌〻しかり其縮まる時には 血球絶えて通すへからず。又太る時には常に二 三倍するものなり。血脈に容るゝ所の血の量は 論するに人々同じからす。一人をもて論すれば、 一区一所各々異なり。又其所の神経の感動によ りて異なり、精神の感傷血を此所には増して、彼 所には減せしむ。たとへば脳には血の増りて。経 血をは止むるかことし、又一所の血積神経の交 累によりて他所の血積を促す。譬は懐妊すれは 乳房にも亦血を致すかことし。 神経の感動によりて、一所の血を減しぬる事は、 其所の動神経の動きて、血脈を縮むるに由る事 疑なきなり持り毛脈縮むのみならす。其所の肉 も亦縮み。終にそやゝ太き血脈に及ひぬ。熱病の 惡寒の時は、乃ち皮膚の痊縮にて。此時に脈を切 れは微弱なり是脈管の狭まる明證なり、血脈の 太りて血の積わぬる者には、神経の感動かくは 著しからす。されど動神経の動けは。血脈の縮ま るをえて見れは。覚神経の感する時は血脈の太 くれるものなるへし、今代専ら唱ふる説ありて、 覚神経の機亢ふ生は血を吸入るゝの力増し、動 神経の機進めは血今吐出すの力増すといへり。 いまた是非の弁はなしかたけれと所謂反応機 の作意より出てゝ、不の磁石の鉄を吸ふかこと、 く。神経中特に引力を具へて。血を吸ふの理もあ わなむか。姑く其明證の起るを待のみ。 一所の覚神経元ふりて、痛を起せは。痘摩を無血 の流利進みて、其所に逼りて血積を致すは。数人 の実験にてたしかに定まれる所なり。たとへは。 歯痛みは齦肉に血積を發し。眼に塵の八ぬる時 には、結膜涙検に血積を致すかことし、マーゲン ヂンの、試験説には、第五対神経を断ぬれは。眼腫 れて潰瘡を發することありと、第五対神経は覚 神経の維よりは。動神経の維の多く糺合ふて。一 神経を成せは、其説やら齟齬ふことく聞ゆれと 其潰瘡を生するは、血積に由らすして、反応機の ために起りたる、血欝に由る者とすれは。その理 の通せさることはなかるへし、又覚神経を断ぬ れは、其端尾に起る反応症の、動神経に拒まれて。 發るゝこと能はす。動神経これに力を入るゝかゆ ゑに。血脈を動しぬる機減して。乃ち血脈の太く なりぬることあり。是等は血積の病源となるこ とあれは。常に意を存して恐るへからす。其外覚 神経は亘ちに物に犯さるしよりは縮力の反応 症のために。犯されやすくして。其機の丸ふり顯 はるゝことあり。かゝる時には動覚二機の間に 繋はる平調を失ひ。血脈の縮力衰へて、血の激流 を拒みかたし。遂にて太くなりて。血を其内に積 みぬることあり、 大蛙の後足に。運りたる脊髄神経の幹を断ち。試 るに、其践こ血行の滞らさるをもて見れは。此神 経は血積を致すものにはあらす。只給養神経の 感傷。独り血積を致すに足れり、されと脳脊神経 の感動によりて、焮衝の産物を変へ、又は是を壊 死に至らしむ。若血積甚しけれは。痛を生するに よりて見れは。独り給養神経のみならす。脳脊神 経も亦此病に關ること明らけし。 血積に罹りぬる所は膨れて熱増り、病者燃るか うどく覚え、其所のやし太き血脈は力増りて、物 血の内に血 を撞くかことて。細脈の常には血水吹 水、血球の別 何のみを通せし所には、血球逼りて其所に積る。 これ大蛙の蹊に。食鹽水のことに刺戟物を触れ しめ、その感動によりて起れる。ありさまを正し く観て證する所なり、かゝる外傷より起る者は。 則組織 縮まりて、血虚しく なり 初め或は其所の肌肉。 なれることあれど。内損によりて起る血積には。 此事なし。刺戟に応して且ちに血積の起るもの なり。たゝ面上に紅色を潮はすの初めには、先つ 灰のことく白くなり。又婦人経血の来らんとき にて。まつ多くは面色の蒼白に替るは。此論の外 なるへし。 毛脈膨されて、血の走る勢ひ弱りて、血鬱をいた す、水理學にて論することく、水は同しく大小両 管をなかるゝに。大管の内を走るには其勢ひ施 く。小管の内にては。その勢ひの強きは、自然の理 なるへし、これ真の血積とは、素より異なる所な り、毛脈の性は犯さるゝ事の止めは、其所に積り ぬる血をよく駆出すなり。たとへば。眼に塵の入 りて、結膜を犯しぬれは、その所赤くなれど。是を 拂へは。立ところに。赤みの消えぬるにてしるへ し、則ち真の血積の、血欝焮衝に異なる所なり。血 鬱焮衝なれは一旦膨れし血脈の忽に縮みて痛 の太さには復りかたし。されと血積も永く続き て、治まらさるか、又は數々反復し来ぬれは、其血 脈漸くに縮む力を失ふことあり。たとへは。甲状 狭の血積留りて治まらされは、甲状核に入る動 脈の膨れて。会合頚動脈の太さに至る事あり。 血積の一時起りぬる事は、常にある所の機にて、 病にはあらす。みな其用に応し、分泌物を多く致 して終りぬ。啼けは涙汁を生し。食物の胃に入れ は、胃汁を生するかことし、就中反復し来たる、血 積の正しき者は、経血なり、又身體の一器發育の 時に方りては。其所に血の多く逼る者なり。譬へ は、情慾發動の時には、殖器に血積を致すか如し。 かゝる血積に続きて分泌を起すは。病にも数多 きことにて、其上分泌する物の内に。成形物を含 めは、其所の肥大となる、若血の一所に逼ること 甚しけれは、血脈破れて出血す、此事粘膜に多け れと、内體にも亦なしとすへからす。凡血脈に逼 りて、血の出つるそ、血脈の破るゝに疑なけれど。 又脈壁より濾出つる血もなしとすへからす。不 の経血を顕微鏡にて観るに。血球に少しも損す る所なし、経血の時毎に血脈破れて、これを漏す といへる者あれと。うけかたし。但し子宮の内面 には、口を開きたる血脈ありて、これより経血の 漏出つるか。ばた血脈の質薄くして。氣孔のこと な者通りて、これより血球を濾出すか、いつれ両 つのうちなるへし。 血積の病源は、極めて多し。多くは平常の機尤は るこあり。譬へは。酒茶を用うることの度に過き て、神気を亢ふらせ、又胃の消化機震ふの間は、胃 中に血積を生しやすく、衆病従て是より生す、其 他は、外陽震撞を脳肺の如き、血に冨める器に突 るかことし、又内臓病にて神経の感応を支ゆる 時は血積を起す、肺結節病の宜腸に血積を致す かことし、極めて懼るへき血積の源は、四支の切 断、と脊髄の外傷に由て、四支の頭に麻痛しぬる 者これなり。共に内臓に血積を致す。此症は殊更 に神経の機。乱るしのみならす。病所へ運へる血 の、其所に入らす。却て道を転して、内臓に逼るか ゆゑに。神経の麻痺と。内臓血積の両症をもて死 するなり、又全身の多血、病源となりて生する血 積よりは、内臓に宿疾ありて、これより起る血積 の多きなり、猶血に乏しき人の、血積を患ふるこ と少からす、たとへは、勞療熱を患ひて、死期近か らん者の肺に血積を生するかことし、 血行の静脈より心臓に帰へる所を支へて、其所 に発する血積は、支へらるゝ度の強弱によりて、 病の発動にも亦軽重あり、一様には論しかたし。 下支は常に懸垂すれは。血の歸りかたく、又筋肉 腱膜なとにて被はれたる所は、反応の機にて竪 脹。劇しけれは、其所の血も亦帰りかたし、譬へて。 肛門喉頭のことし、是等の血積は。やくもすれは 焮衝に転するなり、 血積の治方を論するに、凡血積は、自然の良能に て、其所の分泌増して、自ら治まるなり、是を局所 の分離といふ。乃ち皮膚に血積しぬれは、汗の淋 り出てゝ治まるかことし。されと其所の血脈破 れて、逼りし血を漏し、奮のことくに縮みて、治にか るもの多きなり、又病源去りぬれは、従て治まる 者あり、又病源を拂ふたと能はさる時は、血積不 治なる者あり、譬へは心臓肥大。病源となりて血 積を脳に致すかことし、総て良能の跡を慕ふて、 療するを法とす。 第一病源を拂ひ得へき者は、勉て是を去るへし、 着去ること能はさる者は。これを制すへし。たと へは、実艾答利斯を用ゐて、心臓肥大の跳動を制 し、老利爾水を用ゐて。結節腫のために起りたる。 肺臓の亢進を伏するかことし。 第二、瀉血介施すへし、全身に効を普くする瀉血 を、刺絡といふ。刺絡の応する病。甚た多けれとも。 脳肺血 殊に血の要器に逼りぬる者。 積の類 と所謂多血 質とに善く応す、血積より瀉する所の血は、焮衝 皮を結はす。これ血積と焮衝の素より、異なるを 證する一兆なり、 刺絡は全身の血量を減するものなれは。血脈経 従て縮み、其効遠く病所の血脈に及ひ、其太りた る所をも縮ましめ、血積を決くの験偉ひなり。さ れと病源の去りかたき血積にて、大こ慎みて是 を行ふへし、軽卒に施すことを禁す、痛風又は内 病に體病用 十一月十一月より原つき来たる血積は、 臓の體病 病の別あり 刺緒にては制しかたし、誤りて是に行へは、却て 病臓を衰へしむ。慎さるへけむや。 病者幼童なれは。病所より血を瀉して、刺絡に代 ふへし、又體質血虚なる人の、血積には病の勢ひ 猛しといへども。病所の瀉血うもて勝れりとす。 但し病所へ。直ちに針を刺す時には。其針口の病 所を犯しつることありて。病苦を増すの患なき にしもあらさるなり。故に水蛭吸角は。病所を除 きて。其辺りに行ふへし。総て病所を避けて。貼す るを法とす。たとへは。血の頭に逼る者には。頸に 施し。痔疾には肛門の辺りに行ひ。経血閉には脚 に貼するかことし。 第三。醫方を用ゐて分泌を促すへし。たとへて發 泡膏、打膿方を行ふかことし、 第四。病所二方を用ゐて太りたる血脉を縮め、其 機の尤ふりたる所を制すへし。譬へて、氷片寒水 護鳥刺児多水を貼するかことし、 虚症の血積。今略して、爰に血欝といふ。夫れ血の 全身を環るは、心臓其源を発き、動脉より行りて、 静脉に致し。静脉乃ち是を承けて。復ひ心臓に帰 すなり。今静脈に障る所あれは。血を心臓に帰す こと能はすして。一所に是を瀦む。乃ち血欝是な、 り、かゝれは血欝は。静脈に支りありて、血の心臓 に歸ること能はさると。静脉毛脉の勢ひ衰へ太 くなる、とに原つき起るものなり。されと腫物の の出来りて、静脈の幹を圧しぬる者。又大静脉の 狭まりて、血の流利を妨くる者は、血鬱を引出す 源となる。殊に皮裏に渉る静脉は。血の滞りやす くて、則ち従て太るの性。殊更に多けれは。著しく 目撃すへき所なり。深き所にありて、腱膜筋肉了 えて覆はれし静脈も。太るの性あれは、其病やら 重りたる時にて、其所殆と太り擴かれる静脈立 して、織成せるかことき、様をなすことあり、 筋肉の繊維。弛みて血の内に、繊素の乏しき人。若 静脈を圧塞かるれは、その所より血水の滲出て。 蜂窩織の内に瀦り。或は其層間に滴りて、水腫を 生す、若其人繊維固くして、血のうちに繊素を含 むこと多けれは。蜂窩織に滲出つる汁の凝りて 吾體に賦する 則ち硬結となる。此物終には異物一 物にあらす體 外より八来たる竹木刺 のことき総称なり となりて。其所を犯し、焮 衝潰瘡を生す、又血欝其所に逼りて、これかため に静脈破れ。甚しき出血を生して。不治の症とな ること少なからす。されと静脈は。迭に口を接へ て、通し合ふものなれは、塞かれる静脉、と広かれ る静脉、と相会して患を分ち、血を導きぬれは、か かる大害を引出すことは稀なり、これ良能の巧 にて、其害を避くるの術なるへし。 壊血質の人は、血欝を病みやすし、これ血の毛脈 を感動するの力。衰ふるによりて。毛脈縮力を失 ひ。自ら太りて。其内に紫赤の血を瀦め。これて蜂 窩織内に渡出し、又は粘膜瘡面創面などに致し て、則ち毛脈出血となるなり。壊血質の人、寒風を 冒して久しく足を冷し、卑湿の所にて業を操り。 滋味の物を食はすして、困厄する時には、是に此 病を引出すことあり、又曽て焮衝しける所、若は 外傷を哭し所には、紫色或は浅籃の色顯れて。少 しく腫れ、却て熱の増さゝることあり。かく血の 欝結しつる所には、痒み出来て、動もすれは、折破 はし、外皮剥けて、潰瘡に変り蔓延るものなり、又 欝血の直ちに異物となりて、其所を犯して焮衝 を起すことあり、 治方は専ら病源に応して、処置すへし、 久しく血の欝しぬる所は、死後に至りて腫れ、動 もすれは破れやすし。これ実症の血積に異なる 所にて。血の積りぬる所は、死後に至りても硬き なり。げたし死後久しく経て。解剖しぬれは。血の 其所を軟化せしむれはなり。 積りし所も、又軟かになるなり。これ積りし血の 血積と。死後に至りて生する所の血欝。とは湿寸 へからす解剖の時に方りて、意を注めて引つへ 外科医法巻一終