中用祕術弓要集
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- 不明
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荷仙仙台
中用秘弓要集
弓極意秘伝参
中用秘肝弓要集弓理極意秘伝目録
一弓本末之事
以テ購入セル角園博士
一三光之事
一高山小車を押事
一水車之事
一紅葉重之事
一中り之事
一弓之助尺割之事
一引矢来不引矢束之事
一伸之事
一程を待と言事
一思無邪事
一節響之事
一陰陽之事
一五行之事
一小月之事
一弓は自満之末発之事
一玄一無敵之事
一心法行之事
間之本末之事
一予傍弓の本要を考るに徳行之二字に止れり仕とは一心を差而言
是本也行とは事をさして言是末也此一くと云物参何時は射形の
業は不調物と知れり一心は根なり業は枝也右之一心さへ能治る時は
自然とまか物也是本調ひて東へ治るの理也何子によらす我説行わな
すに一心をあしく遣ふ時は其事の行皆心につれて諸行乱るゝ物也
是を以弓は一心を根と言所を肝要と云義也是了に取て大事也
事と言物は数年の拝行にていか様にも成物なり心理之段行は中々知行
ものや射形何様に能調ひても心理と云物不調時は事理共に乱れて
一釜不中物也か様之道理を弁て心法の修行肝要ぐ守事也
古哥
何事もこゝろにつるゝ事なれは
外にからみはなきものとしれ
昔より心のくさひと云伝り業は車とひとし何程の上手のゆうへかる車にても
轄と言物しめさる時は車は不働物也此道理を以心の膳を忌むる所肝要や
兎角心法を能取行ひ心に入る事修行なけれは弓は成就不成物と心得へし
右之徳行は事理也是則車の如両輪他流には時形の業はかり専指面有
と見えたり業計執行有ては全く不被射物也
事計習請へたちはたし
古哥
思ふ様には射られさりけり
事中執行して弓不被射と云道理をく取言時ハ数年執行して成程ろく
備り了前も見るにみえて身形の事も能調たる射形に曽而は中弓有り
弓手石手貫を貫たる如くにて
古屋
あたらさるのは不思義也けり
一是徳の備りあらたる故也如此眼前の道理を不弁して射形之事の執行旨
てはたく不中物也尋常之師か様之道理不知故業はかり指南ありて法
の道理なとも又は弓理等も相伝無之とかみえたり
明暮と心を寄る甲斐もな〳
古分
らきをしらて朽や果なむ
右之様なる師は元より麁学にして広く不学弓理詳らかならさるゝ尤也
此徳の備ると云本は先弓をねる処より発ると知るへしとかく弓を能ねり
心法不行時は本末始終は不調物と心得へし何れの道にも念を通に守り
一正真正通に至る所を弁へき物也
古歌
心たに真の道をおこなはし
放つ矢先に外るゝはなし
此歌の心に直を本として心法を物に不案様に一心をたて定座に居置
か可有修行義新要也此員と言は本心に帰る所なり
古哥
あらんかと尋行ても外になし
帰り見つれは本来の心
同
習得て本の我身に帰らすは
弓を射るとはいわれさらまし
一地流にはか様之詮義もなく業計指南有と見えたり本をも不立知をも
直にしたり迚も弓の道理に不叶故全く不箭物白身本と末と物に
堕て三時は木の枝を直に作りいか様に見事に而も其根枯ると其枝は
何之用にも不立もの也如此目前の道理を能行ひ可有修行事心様折紙也
此一云之臨行と云は初に外るゝ事を不厭物に中る事を好み弓を能ねりて仲と
言所を車要に取行所是を一心の執行と言也何れの道にもはやき弓は
道理に不叶故不中物也たとへ折節中りても誠の道にて不申はたしか
ならさる事也
一梓弓矢よりも早く射放せは
其こまなこの見所もなし
吾人らの道理を不知ゆへ弓を持まると不中と思ひてやく放す也早く
射て中日かと見れは不中しかれは抱ても不中はやく射ても不中は弓
一道理にかなふ様に弓を能ねりて身る時は後慥に中る物と心得へしケ様行
所をも能考へき物也こりの道理にかなふ様に可有時行事肝要也此添と云は
勇と言所なけれは全不成物と心得へし
三光之事
勝手
一志心法欲不可恐
押手
三つの内揃ふと言は三光の光り一致に成を言也
分登ル弓の極意を尋れは只三光にしく物はなし
右之三光と云は押手と心と勝手と此三の刀を一致にして物不被業縫弱なき
所を言是以本郷定座になきときは押手勝手に強弱出来放れ不揃故不中
なり此心少にてもかたより所あるとう手馬手片思ひと成て放しかたき故
此方ゟ放すものや信之両心の梨子刻とて心を二ツに判所一大事とす義也
ケ様成義も心理にてなす事なれはとかく心理と言物大切也心を物に不案
して一心を取行ひ心法の不動所を肝要に拝行有へき事奉望く也私之心な
からも心にて心をけふ事を不弁か故也物を疑ふ心有故に心ならす迷ひ
の心となり先の目当に放れて我を行ふと云所能々可有上丈物なり
迷ましとは思へとも誘れて
引にひかるゝ心こそ甚
志は不可まと我へ弓引と心と共に了迄まて十分に成物也是溢れは欠
ると云所也弓は十分に満る事大に嫌ふ事也
誰も見た満れはやめて鏡なり
心をとめき人の年寄に
了みまると云は心両手共に力み急に勝手へ引付十分に成て弓を捨る
によりてまる也引付ちまると諌事も不成故ゆるみの下地となる也
故に昔よりおしみ付とて面を引越と成程静に此方の力を以無理に
不引弓の力に随ひ和らかに引合附に着時存分にかり引付勇に心を持
九郎引うと身と合かと思ふ程に付合へし出玉と思ふまゝに引付弓を
堅めたる時は放れ口に心わかるゝ物也
思ふまし矢来を引なあつさう
蝸牛の角の心なるへし
会者定離とて合はわかれの本合と別るゝわかるゝと合と言理也弓を
存分に引付たる時はわかるゝの也ならず大事の伴と云所毛頭不成功也
右に記通和らかに旁を専として次第に調子をかけ弓を錬して仲
かゝりしめ合せ矢坪へ引付ると十分にまて節に中ルと相別るゝ是を
節の放れと云如此小取行ときは直の角見の道理に放るゝ物也欲は不可
恣と云誠に向て吾人習請たる弓の道を忘れ心を恣にして物にあん
とのみ思ふ聞り射形乱れてしかも不中物や心を我かまゝに取行へからす
此心のまゝに成と言本は目に発ると知るへし目にて物を見ると則物目
かゝり迷ひの心と成て心法を物に奪れ我を忘るゝによりての事也
目にてみすとも心にて物なみるそと言所を能々可弁其や是を育目之
心と言なり
本来の空とは知れと一物の
有と思ふは悪ひなりけり
一物を見れは有ともおもふへし
有無を放れは本来の心
兎角我を能取行ひ物に不被業して右三光と言字を一大事に可
生事肝要也是養由伝法一大事の至極也あて気を去て物に下姿
して弓の道理に叶ふ時は物にも中日と心得へし
高山に車を押事
一高山小車を押と云ハ高上へ車を押に下より九郎と我人情力を出し
強く押物也しかれは九日ゟ上ハ心気共にたゆみて車にひかれ峠迄押たき
しや是は下分存らに力を出し勢力あらんかきりに押登に大事の
所に至り勢力弱むにゟ難押は也
遠々ととり詰たる山路を
みたらに返る心こそうき
右之通下より情力強く出す時は肝要之時勢力つきる物也故に下ゟ
和らかに勢力の不尽様に押とりて嶺へ押登らんと思ふ所に至り勢
を出し押登る物や則是を勇と言弓又此心とひとしく打起し行所下ゟ
車を押登る所也弓引付たる所は山の七八分也放にし前は山の九分目也
一此序破急の三段能瑕謀なき時は弓の道理に不叶故不中なり
足幾の山にとせるふ事の
おすにかひなき心こそ台
野分の所にて勢力ぬけると弓たゆみて則弓に負て弓に瓦をとみれ
跡へ散るし也故に始より強みを不遂なるほと和らかに附に着ても心ともに
勇と言ふを専肝に取行ひ尤次第に強み懸る所肝要也是則仲の所なり
ゆふを専に執行第一也弓の至極と云は弓を能ねりて伸と云所に常也此弓
を能ねりて仲と云所なけれは遠矢さゝす物に不尽尤不中なり此中と
言は序よりの仕匠を以て相伝なき時は中々右の道理に不叶か様之百其らの通
を能々伝授して得心なき時は毛頭不被射不叶者也
一水車と云心理と射形の道理を言涙也流るゝに随ひ水車を仕置く厚く
う引る事理兵は御処をみなり水御心や車は業なり此事は何を以自由由自の
廻るといへは是水を以なり然は事は心を以自由小成と心へへし此水と云物は
少し成とも塵浮ひて車に懸る時は滞て車は自由不快物也此道理にて
事を何腹能仕懸て御心利の水に滞りありてハ事理共に不調也了と云物
引て放るゝ内に心に悪念生してゆたぬると射形の滞りと成物也又来
一酸引詰て限ると大事の伸合不成物なり何程心に滞なきとて矢来
一一機引つめ十分に成時は弓廻るにゟつれて心とおる物也止ると云事弓の大悪病
さてゆるみの下地やかく云父はやく成物也左にあらす和かにゆふを専として
九日に仕懸気之跡へ不戻様に次第に情力の坊所是を水車の住と言也弓川
て少し成とも心滞を筋骨のたゆみとなりて難放取引のひるものなり兎角弓
を能ねりて仲合と云処肝要也此沖合と云所百人に一人も執行なく弓の通
理を不弁故弓しかみてはつます尤不中者也
一詰合のかゐなき時手ハ兎小角に外るゝ物と悪而知へし
たとへ何程上手の作りたる事を仕懸たり去流るゝ永に塵流来て車に
懸り其塵の上へまた塵重り車を押へたる時は不廻物也
水車くるり〳〵と廻り来て
同し沢辺に溜り果てけり
一此道理を以事は心につれて自然と備る物也是を以心理の水の不治所第一の
肝要と云瀧也とかく事理和合の所を能々執行可有者也
一紅葉重ねの事
一一夫弓は四季陰陽の理に止る也先春は諸木小目を出し春は葉茂り秋の
季に至り紅葉し冬に至て落葉す是を手に取て四筒の定法と云則弓
打揚る所をはとす引取を麦とす引付たる所を秋とす放れたる所は
とす此江葉重しと言は根に落て葉に帰ると言理やは我人弓引廻す内に
末う不芽して引渡不熟所にて放すにより不中なり右に記四年領
理にして自然と落葉する所を紅葉重々三色とも此心とひとしく節にあり
自分は敢時ハ無理と成て不中物也我人弓引込と秋の葉とひとし愁ひ
の内に心ひかれ筋骨共にしほりにより弓もはつおす末江葉防さる所を此
方より放す山より手前乱れて不中也此江学すると云は弓を諌ると云所ゟ
発ると知へし右記根に落て葉帰すと言は心ゟ嗜て聊も調子の跡へ戻
事なきを言也此処を能尽有執行事肝要也
中りの事
一或人問弓の中りと云は不審成物や数年執行して弓前も直に
備り見事成手前に能物之時日不中有又さのみ執行なき
間に能中日有是ハいかゝ成儀ニ被哉答田数年段行して成
程直成手前の見事にみへて能抱て不中弓首足は散るゝ節大の小か
あて気出心法を被祭はなるゝ時心撓む故也其心の馳則惣体の多
ゆみと成て肝要の散れ口に手前くつろきしかむに此方ゟ放すか
或言統て放るゝ故不中なり足皆心法の行は悪きゆへなり
中りとはいかんと人の問時は
心に問へと答ふへき也
又さのみ執行もなき弓に中か時手あり是は中テ気なく物に不笑薬
して心通成所有て放れ口小心強く此押へと成事有時は妻中か物なり
弓を押たる時ハ惣の筋骨引しまり弓も不究心不解故押手勝手共よ
事理一致にして節に当りて放るゝ故是を以中ルと知へし吾人始ゟ大事に仕舞
も十人の十人放れ口に心たゆむ物也此馳と云もあて気出心法を物に取引返
此所能々可有工夫一火事なり依去射形と言物は心法の行ひに随て善にもなり
通にもなる物也なく弓の道理を能得心有て当分不中兵うきに叶ふ様に
執行する時は後慥に中る物と心得へしか様の道理を弁へて弓の理を大切に
一守り可有修行事折悪也中りと言物はとかく心法を為要に取行ひ放るゝ時心に
た内みなき様に右に押と云処一大事に可有段行物也たとは射形在調ひても
心小悪念生し目当たる物に心法を引出さるして此押と云所は全く不成物也
故に少にてもゆりむと云事大に給ふ事也百人か百人放りし前に心奪れよ弓
弛む故本中也是皆あて爰なり散るゝ節に至り心法を物にき引心ふ軽々敷付と
不中物と心得へし故に心理の徳と言所第一執行あるへき事肝要なり是と
皆心の善悪による事也
心にて心の奥を尋ね見よ
深く尋ねは吾も知なん
何れの道にも押手と勝手強筋なく勇に引合を中に伊へ押手仲手仲舎と云所
なき時は慥に不中物と心得へし
中りとは仲手の裏に習ひ有扨は心とひち尻にあり
一右之通段々仕懸申合散るし時上弐本の指をしります引あふ内に吾不知に
弦と諜と相別れと成所是を無念無無慙の放れといふなり古来よりすへり
かけを専要とするとは此事也依去に養由伝には仲隷大事とする義也
右之沖を取と云所業にて伸ると片碑と成て両散に不敢不中也
押とてもいと友に押登れ
事をおしなは片おしとなる
右之体と云は押手と心と勝手と此三つの力を一致にして引合時は片押と不成
して弓中ゟ五ト〳〵小別かし也是を三光と言物か様に取行時は両手の力一度と成て
筋骨引しまり放るゝ故村雨の道理に叶也
村雨の十筋の糸を上るゟ
ほとく位は伸にこそあれ
昔ゟ明を挙に引進てきり〳〵と引しほりと云は此沖の事也当世之師する人を
一見ぬ所にか様之一大事之弓の要は相伝なく射形事計に拘り指留有と見たり
一業計修行しては全く不申て也
事とのみおもふは下手と心得よ
理を弁へぬへはうしめし
是を考るに弓の道理を詳に不知故と見えたり此仲と第一とするは遠異は
射貫切に中りへ切弓道に此沖と云事敢るし事なき也くり抔射るに三町歟
坪とて東へ放さんと思へは西えむかい打起し足をも踏違ひ身をひへり
しまつかの仲と言所にてなけれは矢は不籠物也是伸を取んか為也右之
仕懸けは一二三八九之位とて段々組上ケされ右之件と言道理に不叶込是は
事理の仕懸に有りか様之所も能々考へとかく沖と云所を肝要可有
修行事第一之義也
弓之曲尺割之事
一問我人弓引廻し矢通りは目ゟ五寸下に有然るに目付たる物に中る鉄炮抔は
両目当を見通し目通りに有此道理を以見れは矢も目通りにして時部
時は目付たる所へ行て矢の中るはいかゝ答田是は弓の五尺割と云事を
不知故や矢は目通りより五寸下に有て目付たる物に中江と云は弓の仁廻地なり
と云事有り我人らは鉄砲と違ひあらめ成物と覚ゆる是は細成弓の出尺
わりと言事を不知故なり弓をも鉄砲とひとしき物也此出人割とゆふは
先弓をふつして矢を懸本仕進の三かしらの所に竹を立其竹を弓に懸け
たる矢の真中に当て切扨矢をかけ引又其竹を前の如く本谷之三つかしらに
一立握の上に目当所に印を付此処にて目当也是目付の故也但弓
の強弱又ハ矢之長短によりて少しは高下ある物なりまつ大体弐寸五分之物也
扨前に記す地のりと言事握の間は短き故是に地のりあり依去矢扇を
時におし付ては越物也右之目当弐寸五分つきり其目付藤を明の下小角
たる時ハ弓の放れにて十五間之内にて目にて見へね本筈に而矢をせめあけ
のりかゝるにゟ三寸五分迄りて行是を大切三分一のかねといふなり又押手の肩と
一言物を押と云事有により是に弐寸五分の地のり有て右之弐寸五分合て五寸と
成出合と成て中る也押手の肩さす射手は矢下る物也押手のかた落り
たる時手は矢上る物也前に記す矢のりと言は是也地のりと云所有により
鉄砲にも五間五十間六間六十間の仕廻と言事あり此法制と同し事なり
扠右之目付藤下付して射欠有是は性不成事也若目付藤付る人
有とても皆将て定目付にすると見へたり是は弓の曲尺割と云事不知
故也目付藤は大き儀故にして上下に自然にひる様になる物子細は近間時
一時は右之目付藤を上ケて射る也又遠間時るゝ時ハ目付の故をくり下ケ不時時は
何を抱機に目並可放哉此道理を以定目当に付る物也扨又矢の様ためし
様には間を杖置足をもかりに踏違へ晴る物也扨も此時は右之目付故
を證拠にして不射時は存之外違物也度々人前にて射損したる時ねを
数多見たり是は右之目付の曲候へ割と言所を不知り故也射手の嗜と云
物はか様の義をも不断心懸人前にて不射様様に可被行事肝要也此咄有と
害物は様物又は時費なとに様を損さんと思ふ一両る前より登母弓杖
置或は三間五間七間にても右之走り目当故の当日所に墨を以内竹に
かへし目当を付置扨目付藤を握りの上へ押下ケ右之目付の里を右之
間に合たる目当に押付射ると初矢ゟ不外物也候様になき時は不中物と
心得へし此道理を以前に記す曲尺割と立所可心得物也射手の嗜と高
一は加様の所肝要也取行所付くなり
心理之権
一夫弓は時計を表す先惣の箱を我と取内を握と取る上の分銅のかゝり
たる所を押手勝手と取内のかけかねを鞨と言下の餅を心と取なり
此内のかけかねは何としてはなるゝといへは下のおもりかゝるに候其侭にひかれて
内之うけかねは散るゝもの也又上の分銅のかゝる所働は何を以俄といへは是又
下をおもり懸る故也此道理を以弓は心の重り一大事也此心と言物軽む時は
弓は全く不敢故十人か十人此方ゟ放すもの也しかる時ハ心と言物に能掘りを
懸心気共に聊も不浮根ふ弓を諌る内小次第〳〵小心に心に従かの懸る様に此
声を能々可有奉行物也我人弓を引付ねらいの内に心軽むもの也心軽むと故一
躰の筋下年雨内みて不放故此方ゟ引放もの也此心理の重りと云所は一
一大事弐給之所也寒花に扇を聞と云ハ此事也此おもりと云処能々鍛錬なけ
れハ弓不敢故不中也とかく心之敢乱なき様に心法の不動処を第一に
放れて跡まて心のしまり至極肝要也是は我を行ふと言を弁され思の語り
は不成物也此道理のおもりと立所は弓物一捨り一大事の処也能可有飢染者や
引矢来不引矢束之事
一引矢束ほ引矢来と云ハ長く縄短くは切れと云儀や是はたとひ
一矢葉二尺八寸有に二尺八寸五分或は九寸にても長矢来にて射る時は
其矢来一概引を引矢来と云や此矢来にて射るとても我定る墓
よりも二三分残して引と言儀也是を長は継と云不引矢来と云は我矢
一東弐尺八寸有に二尺七寸五分有て短く去是も二三分残して射念也
是を短は切れと云也右之通少宛矢束を残す所是を四分の誤り五分
之放れと云是は満れはかくると言事を怒て先生ゟ戒置事也是へ仲
をとらんか為也矢書を取と言は此事也是は放ると前に弓を押へて
詰合と言所也
強弱屋矢妻の弱き財手ならは
矢の働はよもあらはこそ
仲之事
一此仲と云は京割の大事と養由秘伝にして至極一大事要とする所也
此糸割と云は弓の矢摺に糸を付我矢束に一寸程短くして其糸の端を
一能ゆひとめて扨矢を懸て引ことく引付ると糸引張る物也然共不切物なり
是にて仲を取と右之原伸懸りて切るは也此糸割と云き弓の惣まくりにて
扇子に取ては要のことし弓至極之所能々可有修行鍛錬者也
引て行ゆく内にこそ放れ有
ひかてはいかて放るへきかは
引て行ゆく内にこそ放れ有ひかてはいかて放るへきかはと云所を物に
たとへ当前の道理を言時は我人釣をたるゝに魚懸りたる時いと手にたゆみ
有こと筆にひしき糸は不切物也かり亦此し魚は柚手也以干は勝手也此押
手勝手に少しもたゆみなく為引合時は釣の糸伸懸りて切るしやこれ
目前の理也如此道理を能考此伝と言所一大事に能々可有修行ものや
射顔の業に物に可外ための事はいか様にも成て也此伸と云所何と取らんと
思ひても中々難成物也と心得へし此段かたきと云は心法を物に引出さるゝ故也
目付たる物に放れ我をよく行ひ本心之定座に居弓をねると云所なけ
れは右之伸と云所は不成物也此仲を業付にてなす事なれは何様にもなる
事なれとも一事計にては押手勝手に強弱出来片押と成てや此押手勝手
の事計にてあしきこと云道理をいわむ大災なと釣たる時手先の業にて引合と
片思ひと成て魚はつるゝ物也心法と言物をひかへ魚と糸はり合たる時ハ心ゆた
ねさるにより心につれて押手勝手共に張り合て釣の糸ゆかまぬてや猶々魚は
つれむかとあやふむ所有之疑ふ心有と異はつるゝ物也明射るとても此心しひと
しく時にはつれんかとあやふみ疑ふ心有と不中物や右之道利を以業は
心法ゟ通して引下合時は右之伸と云所は指さる物をよく心理と事と事と伺ひ
一致に知合不成時は物に不中と心得べし是以養心伝にて三光と
言所一大事とする儀也中里の至極とは此原刻の大事に止る也吾人明時に
十人か七人不中ハ多し然ハ迚も不中事なれハ此仲と言所を肝要に取行ひ
弓の道を守る時は了理に中ル故物にも中候筈と心得て此原刻と云所能々鍛
一律有て無他念可有修行事肝要也たとへか様に仕近伸得ても節に至りて法を
物に被祭壱末程も止ると不思放し心出来金不中はや放れの出精大事を
言は此所に止るなりとかく弓をを見まゝつみ喜舛と言所なけれは慥に不
中物といへへし
弓は只はつみかゝりて仲合て
心ろの跡へ戻らぬそよき
此中と云は物の不足の所にてなけれは仲合と云所は不成物なり
故に弓は九分を専要とするなり
さのみ弓ひかんとのみ思ふなよ
附へ付なは筋骨をすゝれ
右之弁之簡勇と言所也我人十人か十人弓を存分に矢来一振引詰弓に
ゆふなき故伸合不成物也又十分に不引してたとへ矢来能比に引ても力
身て弓を取進めたる時は放れ口に面解るにゟ是又不中也何れの道にも右之
ゆふと言所なき時は沖合不成物人飢令手前襲ひ忍ひ右之沖合十分に成て節に出り
聊にても放し心するとゝ弓弛みて散るゝ物也跡へ放るゝとは中物也相別かしと
言は仲遠て調子を跡へ不戻してはつみをて弓先の散るゝ所一大事也
弓は只せんを大事と心得よ
おさへて弓のせんを取へし
是を先後先々と言先なる時八人を制す後と成時は人にも刻と言道理
にて弓の先散れたる時は弓を制すにゟ中け物也又後と云は時に老気を被
棄池みて跡を放すより不中也是は此方へ取と云て又取麻と云所を不弁
は不成物也右に記通段々仕懸と云所有て此方ゟも少しも会釈なく
心を中に備へ押手のはり合にて襪はひとり放るゝと中に物也と心得へし
吾人う引込と心充問して射形の業迄まて弓を堅メ極るにゟ皆解て戻り
放るゝ也とかく内ふと云所なけれは弓ねる事も不成仲も不成のや心思ふると
弓共定りて弓を放すものなり此心の止ると云はあて気出疑ひにとら
れ心ゆたぬる故也兎角先の目当たる物にはなれ心法の不動所を能々
かわ風行事肝要也
程を待と云事
一此程を待て言は先弓をねると言所ゟ発ると知へし我人十人か廿人ら引て
ほとを不待かりと和合せすして未来と思ひ弓を引しほり心を勝手
の方へ引肱尻をかゝへ押手を仕かけ両刀に引合内に押手の肩を張り
さのみ弓ひかんとのみ思ふなよ
附へ付なは筋骨をすゝれ
右之弁之筋勇と云所也我人十人の十人弓を存分に矢束一振引詰弓に
ゆふなき故伸合不成物也又十分に不引してたとへ矢来能比に引ても力
身て弓を取進めたる時は放れ口に面解るにゟ是又不中也何れの道にも右之
ゆふと言所なき時は仲合不成物也假令手前愁ひ右之沖合十分に成て節に出り
体にても放し心すると弓弛みて散るゝ物也跡へ放るゝとほ中物也相別るゝと
言は仲懸て調子を跡へ不戻してはつみをて弓先の散るし所一大事也
弓は只せんを大事と心得よ
おさへてらのせんを取へし
是を先後先々と言先なる時八人を制す後と成時いへに被制と云左左左
にて弓の先顕れたる時は弓を制すにゟ中け物也又後と云は時に老気を被
案池みて跡を放すより不中也是は此方へ助と言て又藤と云所を不弁
は不成物也右に記通段々仕懸と無所有て此方ゟも少しも会釈なく
一心を中に備へ押手のはり合にて襪はひとり放るゝと中レ物也と聞へし
吾人弓引込と心充まして射形の業迄まて弓を堅メ極るにゟ皆解て戻り
放るゝ也とかくゆふと云所なけれは弓ねる事も不成伸も不成あや心止ると
弓共に怒りて弓を放すものなり此心の止ると云はあて気出忍ひにとら
れ心ゆたぬる故也兎角先の目当たる物にはなれ石法の不動所を能々
かか風行事肝要也
程を待と言事
一此程を侍と言は先弓をねると言所ゟ発ると知へし我人十人か十人か十人弓引て
ほとを不待弓と和合せすして未来と思ひ弓を引しほり心を勝手
の方へ引肱尻をかゝへ押手を仕かけ両刀に引合内に押手の肩を張り
弓に割入様に仕掛ける所是を諌ると言也如此取行ふ時は程待得て弓と
和合して相別るゝ者也
弓はたゝ引て仕懸て錬詰て
放るゝ程を待と教よ
放すとは心に位あるそかし
まつほとしらてなとか放ん
右之通取行ひ仮令程を待得たるとても放れの節に成とも放す心
有とうにとかめ出来不中物也か様之所も皆心ひとつにて成事也
ひとつ有目当をしらて皆人の
しとろもとろに放す弓前
右之ひとつ有目当をと言は目当にあらす一心の楯て云目南を廻もふ道か
らす我心を目当よと言義なり鉄砲にても弓にて吾人目付せる所を目
当と心得只一筋に其目付たる物小心を移す故手正忘とろもとろに
成と心得へし我心を目当と射る時は其善盃を知物也法行を省ると云は
此所也か様に至る所在考一心の執行肝要に可取行事第一之義也業計極行
しては中〳〵不被射物也とかく弓理を能伝更し心理と言物能心得なき
時は弓は成砲不成物と心ゆへし弓は執行の仁様にていか様之上手にも成
物と知へし
一弓の中りも鉄砲の中里もひとしき物也品こそ替れ手前の仕懸は同し
事也鉄砲の極意と言は外になし仲合て引な放すなと古来ゟ言伝りひ
出て可敢哉引ハ放すになる是にこそ大事有引時ハ心にて引と言義也鉄
炮は先目当近角の下に付心を不乱心通にし扨押手を先へ引のはす様に
勝手のゆひは引たに添て聊も引と言事なく服尻勝ねの方へ引内に心と
押手と引合鉄砲を両方へ引のはす様にする時は伸合と成り様に気ヲ
跡へ引押手と引合内小目当角にのり懸り節に至るとひとり放るゝや
是を無念無愚と言やうも此心とひとし押手と勝手は心の張合にて此度が
不殺して放るゝ所を肝要とす是うに取て至極の所也無ける断工夫有て
執行第一義也
了は只引てはなすな仲合て
放れをらにしらせはせすな
下手の目に強く時功を吉と云
去は弓をは見しらさりけり
右歌の心に弓は引て建り詰て放るし節を待て我不知両別と成所
是を放れの至極とせり
思無邪之事
一思無邪と云ハ思ふ事邪なしと云文字也此思ふ事朝なしと云は
本心定座を放れ散乱なき所を言也是は無心の心とて禅僧の座禅寺
所を云是を能語りたる時は有去な〳〵無益なく本心ひしけ心法我物と成り
是を本来無面目と云也是本心に帰る所也本に帰ると云所熊青夫
其や此幸へと言はたとへいか様之見事成物を見ても心を不移と不残る
を言や目にて見るとも心を物に不被塗引少しも不動所を語りの意と云なり
此心法と言物を物にたとへて言時は船之錠の如し錠と言物は無心なる物に而
不動にゟ何程大風にても船を動といへとも錠は不動物也是を無心の心と云
たとへ目と言物何程心法を動共本心と言物不動所是を語りの心と云也
然は主とする所の一心不動所を大事と心得へし惣して物には土台と
言事有うに取ての土台と云は心法之事也或は鉄砲を打に思無邪して
砂台に居て打とひとつも不外物也是土台不動か故也此道理を委く弁へ
心理と言物克よ可取行者也
節響之事
一此節と言所は弓に取て一大事至極之所也節と云は何に不寄物の出合所
一是を節と云らにて節と云は引合仲詰て矢坪に中りたる所是良な利
吾人節に不知所にて放すにゟ不中と心得へし此節と言は一二三八九の位とて
序ゟ仕懸有て段を組上る所を不知は節と云所に不至弓の至極と云は
伴詰て此節に至ると言所に止る也扨響と云は右之通段々節に至て少にても
敎心有と其侭かりに響手前乱れて不中也
敢なはいかて手前様ふへき
仕懸てのちの節に放れよ
我人弓を大事に取行ひ時形も能詞といへとも七人か十人放るゝ節に心得近物に
被引心得て放るゝ故不中はや一より九まて調へて今一つに至り心法を物に被
童と始の順にたる所皆無と成物と心得へし此節に至て写を言は本はこれ
あて気也たとへあて気な〳〵とも物を欺らふ心有と弓た内して不中物也是は放
れの節に至て我を忘るゝによりて如此也此うに軍と云所を物にたとへて言時は
こたまの如く打は鳴と云也弓も山彦とひとしく少にても敦心有とはやかに
ひしき立と成物也是を以心法小物のなき様にと言義也
打は鳴打ねはなしぬ山産の
音も香もなき我心かほ
昔より了なる物は山田の鹿驚にたとへける此心の心とて守にてはなけれ去心なき
故引たる弓は少も不動物也山田鹿驚の如く弓引て無心の心と成時は音も病も
なく不動所是を名人の心と云や右にも記通心動してそ実時と云所の
證據は山田之麻驚に弓引せて其膳中に何にても為生者を入置時は
さはし物也内さわくと鹿驚の体もつれて動く物也動くと弓こ動か
するにより中や是を以心法の不動所一大事と云義也吾人業か不動は三成
とて事計専死と云人数多自是は弓の道理不知人之言事也能弓
の道を弁たる時は事計執行しては不被射物と心得へし右に記段々をよく
弁て可有修行事行要や惣してしつか成物ハ動くと云ハ此道理なり不極
して後節に至て極て敢るし所を至極とせり近く取て道理を言時は
何にても手にて物を十分に力一盃しめて見よ一旦は陽之勢にて様と
言兵暫時有と其勢脱陰と成てたゆむもの也弓も此心とひとしく始ゟ
力寒強く仕進弓を十分に引て極ると期三口に心育て敢るゝ物也抑成共
解と令不中之也故に始ゟ和かに欲を専として陰ゟ次第に強く通り陽之
一宣意に至る所にて不敢は弓ハはつます不中也右記通とかく心理を能不弁
八ヶ様之道理に不叶也
陰陽の和合と云は心より
めくみて事を伴ふと云
和合と云御心理を能取行弓と我と一致に成所を言也此事理和合の所を
能々可有修行事折万也
五行之事
一弓足行をかたとり五行とは木火土金水也此五ツ之内心理の第一大事也
する義也是を火水の心と云足不中物也事を以放すと不中右郎の声第
を見る道理とひとしく不熟所を散すと不中物也是を以弓放れと言物は
心法はりの芽にておのから不敢時は矢不動尤不中にや満ては発と言は
道理也とかく弓を能諌ると言所なけれは右之茅と云道理には不叶なり
勿陰陽に無瑞と云事有是は無極大極の理也此無格大極と云は極て様なし
と云義やうに取ての道理は先弓を十分に不引付所是を無極言也十分成る
時は極ると言理有始ゟ弓を極ると陽と成て又陰に帰る依之弓は精となく
又下極ともなく合る不合の所是を陰陽に無端と言故に弓は九分を厚
として九り成時は不極は不極所有にゟ後極て散るゝ是を無給大極と定
始よりを極ると言事大きに嫌ふ事也子細は始ゟ物を極たる時は解にと
言理有によりて也右に記動動物毎に心を争ふと云所専要也己を顧て心之
善悪を糺し一心之執行無間断所肝要也
陰陽之事
一天地は人の父母也夫は陽にして日也地は陰にして月也此日月巡廻して
時至り万物生生先かりは母陰にして不動我か体は父傷にして動く静
直に其根と成て矢生す如此父母の間に而云自つ矢なれは弓と我と陰
陽和合ならさる時は矢は育つものにてなし是を陰陽二理一体と言
矢は此方の善悪によるへし扨又天地の儀は白丸にして卯の如し弓に取て
卯と云は外庸は惣の体内の黄味は心理也此印は何とて開と云は内之真味
より来て自然と開く物也然はうを此道理とひとしく心理と云物茅されは
不放物と知へし我人放りし時心法不開して却而しほんし物也此道理を
物にたとへて言時は花を水に入置としほみたる尤も開く物也水なき時は
しほるし物也是を以古来ゟ事理之和合を大事とするは此道理也
事と理と同しからさる時手は只
片輪車を引こゝろなり
古米ゟ事理の和合大事として数年修行にて吾人財形の事は
こなりし物也併業何程能調ひても心理と言物不正時は不被射物といへ
へし当世の時手を見及所に業計を以時日により一切かつの道理に不叶故に
不中也昔ゟ内外直にしてと言伝有奇なり
中りとは内を正しく外直く
陰陽二理を一体にして
右之歌を能考へし先内を正しく外を通にすると云心や何れの道にも
心法を能不治時ハ事理一致不成故全く不被射故不中物也射形と云物は
数年の臨行にていか様にも成物や心理の執行と言物は難行てや心と云物は
沢中の玉の如し不磨ハ光なし元より明らか成物なれは物のために藪は
されて不光といへとも本清潔成物なれは数度廉時ハ光出へし兎角心法と
言物は日々に磨き溜たる水を替るが如くにすへし先木は押手と取押手
とは弓の定木成故木と取也押手と云物不定時は不中物也扨火は勝手と
取火を勝手に取と言道理は勝手と云物は我人七人か十人附に着と止りて居
付弱みて胎尻軽む物也故に勝手は火の燃立様にりん〳〵と聊も間断なく
段尻軽まさる様小と言義也土は足踏に取地付弱は家に取ては基也金は惣体
一小取固時ハかりは不被射と言儀也扨水はくと恥也是は流るゝ川の如く心に少しも
無滞何所へも自由遣ふと言儀也是を名人之心と云ふは方凶の器に踊ふ如く
心を自由に不遣時は了は不被射儀人少にても心に酒有と弓前いか程直に能
調ても其心の滞りかりに綴り其侭手前乱て不中也千手観音の干の手
を以一度敢せは千の矢先と云伝侍れとも子の手有にもなく千重万化に叶
理を以其悲を以自由に遣ふと言は心法を能不治時は自由に不成此心を治る
に只心を取とめむと計心得ては餘り因り自由不成乍去先始を慎しまされは
後自由不成是を物にたとへて言時は水の如し是は上手の心と云物也其水
の舞て何所へも自由に行渡るを名人之心と云也千色を此方へ取て治めても
一く千五万化にそふも一所也たとへ了能射るへ成とも心の悪敷射手は弓は
成就不成物と心得へし
世の中に弓射る人は多けれと
心理行ふ人そまれなり
たとへ許取たる時手成共心理と事と一致不成は弓時と言かたし
事と言物は数年の修行にていか様にも成物也心理執行は難行
一しや是は師より弓矢一本〳〵に能心を付て一心を治る所第一に修行
なけれは弓は不被射てや
水目之事
一水月と言は物に映と云所也先月は時也我心かより中の月也目は水也
時は無心成物にて明鏡の如し了ふ引して時に向たる時は我りつも空の月
とはもとしく明らか成物也然共弓引て聴ひ懸申と目と言物に心法を引出され有
為之波に被隔迷ひの心と成て明ら成月之陰も雪と成也
明らけき月の光りの隠るゝは
只哥執の雲へたつらん
此目を水と云道理は清くさへ渡る水の面を動かすと水にうつろふ風の
陰迄散乱する物也此道理とひとしく我心は永中に有月の如く明らす
れとも目と言物災ひをなすにより拘えてこをねる事不成物也
さへ渡る月にも雲のそれかとも
見ゆれは曇る天か下かな
是を以昔ゟ盲目の心と言所大事とする儀也此亡目目の心と言は目にて
見す心にて物を見と云所也此心にて見ると云残心にて明を此方へ取ると云
所能々可有上夫物也是は光気を放れ我を行ふと言所を不弁は不成物也とかく
一目と言物に心を誘ひ出され重とする心法を暗みては何を以慎事不成哉是を以
心得て執行肝要也此主とする物暗みては不慥成と言道理を物にたとへて言時は
わつか成砲なれとも広き座敷をも照らす是火の主とする所也此主とする燈
火消たる時は東西闇となる然る時は何程上手の立たる見事成作事にても
不得見てや弓も此道理と置としく何程手前を通に取行ひても主とする一人暗天
ては其時形は皆無となる也若斯眼前の道理を辨へ兎も角も重とする
一心を能々可取行者也されは諺に有歌に
くこそ心まとわすこゝろなれ
こゝろに心こゝろゆるすなし
何れの道にも心法ほと大事の物はなき物と心得へし射形の事いか様によく
整ひても一つあしけれは弓は不被射物也つと言物は元ゟ明らか成物なれ共目と云
物に心法を引出され迷の心と成て我を忘るゝによりての事也水月は両鏡之如く
然共水と言物動時ハ水底に有心月迄散乱す此道理を以一心之動すものは目と
心得て盲目之心と言所をよく〳〵工夫可有者也
移るとは何を岩間の月の陰
水あらはこそ移りもやせん
一右に記通水は目也盲の心とは水無き所を云両鏡を打合たる時は一体なる
此一躰と言は一間にて射る所をさして云一間にて射る時は一鉢と成て時にも
能中る物也十五間と隔ては心のしまり切て疑ふ心出来て一間にそ時と違ひ
一押張り詰合弱き度不中也此押はりと云ハ前に記仲の書也実出之器留か
一柳の葉を一間におきき市矢放て百矢十里文三拾寄引込ても一矢も
一不外事也是一間之所三十歩にても不替故也是皆心法之行ひ也
弓は自満の末に発る事
一弓は自満の末に発すと云は薄に露と云口伝此道理を萍の葉に
一露浮て其露葉見へたら〳〵と落引て其儘は落さる物也葉老へ布何ゑ
なへ行と薄み葉はしなへてはねんとする露は譲懸て両方のはり合
にて相別と成如此葉光へ露したたりて落る所にてハ毫末もた内まぬはや
一則三路を勝手と取り薄を押手と取る也是を以弓と言物は自満て其末
にて不敢時は皆無理と成て全木中物也放口に神成共た内むとろの
勢ぬけら充満せさるにより右道理にて不敢時は此方ゟ放す物なり
少にても放心有之候不中也放口小祗成共たゆむと弓の勢なく不中なり
右道理に不叶時はたとへ詰取たる射形成去弓射るとは難言の様弓
の道理に不叶故全不被射不中物と心得へし是養由伝法中里の
至極一大事の所也二六時中心にかけ無間断可有大夫事水悪なり
習得て工夫と言は外になし
心の奥を師と頼むへし
向弓は諸芸の中にも六ヶ敷物と世人言義也何と而六歩なれは不動物に
相手と成て立向ふ故也釼術にても相手上手にして不反化時は此方猶
不動して取勝は金勝利なき物也弓も此心とひとしく心法と言物大
事也明は無心成功にて赤義不動正しき物也此分動して正き相手に
此方不正は何として可中に是を以諸芸之中には六度物と知へし
明に立向時ハ敵に向めく山可心得也敵ににを合るに敵を討んと思ふ所
有と其討んとの心是邪気也邪気虚に乗して入と言道理にて其
邪気の間則敵の太刀当る弓も此心とひとしく時に中んと思ふ心有と
是邪気にして明に先気を被奪不申者也
ねり詰て放れの節に至る時
こゝろ先立射手はあたらし
物小中んと不思とも心理を能取行ひ放るし時弓をおさへて手前を能
しめ合弓の解ぬ様に習請たる弓の道理を行要にしてたとへ不中とも
不中兵員之道を本として正心正通成処を克辞て先あて気を放れ一
心の散乱なき様に執行肝要也人の心と立物は目付たる物にひかれてしへ〳〵と
放りし物故古来ゟ残心と言所を専戒置や弓の至極大事と云は一心を能治め
弓をねりて仲と言所を肝要に詰合とて放れの節に弓のくつろかさる
様に押へると言処を第一に可有修行者也
主一無敵之事
一一明と云文字はてきのこゑ有を籠に敵するを款と計一点にあらす
何に不限相手と成ても吾り心を破る物を敵と心得よ時は則敵也此敵した
かへんと思はし先吾か心法を能随へよ真を守る時は物に当り虚なれは三中
道理にあらざれは其事不成能うの道を得心なき時は人我の情に置かれ
て心法取失ひ当前の道理に迷ひ其事過不及出来手前不揃也善悪共に
自己に有り明に向て中んと思ふ心有と我心を忘れ手前の善悪を不弁
物也弓の道を深く志一度時手にも可成と思ふ人はうの道理を射認し我を
行ふと云所を能々臨行有て心法之定座を不敢所を専務に可有事物なり
射形の事はさのみ六度物にてなし業と言物は五年か七年執行すれはいか様にも
成る物也心理之おさまりと言物は六度物にて難行はや不成迄も一度此理に
ひんと志時ハ其道の半途にも至る物也右書面之段々無地正二六時中無
間断可有修行事肝要なり
心法行ひ之事
一先弓は心法之行ひ一大事也是は敬之一字に止り敬と言字はつゝし
むとよめり吾人弓を手に取と兼て能修修行したる所作をよく
敬ひ勝手へ引付ても其守り専要に取行ふといへとも放るゝ前に至て
十人か七人目当たる物に心法を被奪我を忘れは散乱して放す也是始ヲ
慎む者はあれとも終を能慎むは少し是を以始終不弁時へ射形も不調
尤不申也故に万法之始終は心の生職小居況弓の道におゐてお也只一公
の邪正によるへし射形と言物は一心之明らか成所に有是を以明らかに成を時
形の本とす夫心を明らかにすると云は右之数と言所を能不弁は一公は明ラ
かに不成物と聞へし此数と言所は物おさむると云心有故に我心を幾度も
さひ返し百の物を十になし十の物を一つになしと云哥也是は心法之通念を
さへすてゝ正心になすと言哥也此道理を以明時日とても其矢一本〳〵小能
心を付心理をみかくと言所折紙也此心法と言物を能々不弁は全らは不
被射者也然は本心と妄心と能覚語して毫望も不迷其事をなすを最
と云時形の乱ること言ハ心理之行ひ愚敷故と心得へし我如る心を語て直
一心に帰ると云所を能か有建物也万形に不昧を則本門と云此本心明らか成時は
我か非を知る物也善心迷時は其心法之行ひに随ひ乱るゝもの也依去時形の
乱るしと云御心の晴明により也心法正き時は射形共に正し心暗時ハ勿論射形
乱るし是成時は是を尽し暗は我心を破る夫心明成時ハ身治る程は了道全ク
ヶ様に修行する時は時形悉く調ひ我不知而う之道理に叶也心法不治して
射形之事を以かり射んて心得ては中々不被射候や心と業とは衆小顔の如し善
心は善形を顕し愚心は通行顕す物也其所作計に拘る時子は未変に達し
たるとは言たし夫々の所作之上に付て了簡して心不正不治不入わと言
所を得心有て所作と心と相合するを以て其事成就する物と心得へし本公
能調ひて所作に叶ひ其所作もなく理もなく事理通達したる所則明
徳自然に至ると言也されは下手筋の師事計に拘り弓射る事を専らとして
矢を放この教にて道理を不弁故道に略し此故にいか程我弓に達し
たりと思ひても上手の上からは毛頭達人とは不言也有之道を能不弁時は
射手に成事難かるへしいかんとなれは世に上手の射子稀成を以知へし愚
若年の頃ゟ此道に至らんと思ひとも不省にして未曽而九牛か一毛にても不
至只心理の臨行祈要也との也思ふ中也此邪正の道理を能ふ弁は最時物
と心得へし追々も些心を可有可有修行事折要也只善悪ハ自己に有と知へし
此一所之執行と云は物に外るゝ事を不厭物に中るを不好只心法を能取行ひ
うをねりて伸と云所を能々鍛練有て本心を不乱得心して正道に叶ふ所
を肝要に可有執行事至極第一也右之段々を能々守りたる時はら理に叶ふ
故能中候と心得へし候様之至極の所を尋常之師者不弁故弟子秘育
其也右之心理の行ひを守しと思はく先弓を放るしと云所親切也片程
住摩臥に無間断心を磨き物に不案所を能々可有執行者也
一昔貴国の養由か弟子元趣と云者有御に不智百矢敢て百矢中に
然共養由不許趣か曰我数年修行して師に不智中るといへとも未
不被許とて深く恨む養由是を伝へ聞趣に向て其方許らど思
により吾を恨む末許所有り依之過ぬ平地しては我に不劣能中日と
いへとも末心を射ると言事をしらす勝前を試く弥我に不審時は許可
遣とて趣を誘引し高麗之石上登り片足を敢て射るに百巻は百
一矢中る趣も其所に進み同時るといへ共放失毎に二中也時に害ゆる曰弓は
心法と言物大事也射形は数年の稽古にていか様にも成物也一法之修行
誠ならり能事は訓練有て吾に不替時は許可遣と云夫ゟ趣甚成服
して三年執行して養由に不替と也依之許弓と成今に名高き趣
さへ如此蔵御心法ほと大事の物はなき物と心得へし右之条々
よく心得有て只心理之修行水委に可守事第一也
極意とは何をか人の言やらん
こゝろの外に大事あらまし
右之條々書尽紙面は心成と云ハ此理を以也とかく師ゟ三理と云
もの能々伝授し弓の道理を能侍心有て一公至極之所を能取行
無間断日々に新小心理を磨所を能々無修行時はうは成就なら
さる物と心得へし是心外無理法之所なり
予自竹馬之比志干弓道随放敵師而夜不快寝書亦
甚領多年為修行然而古来之了理所令伝受有品々我其
家之歳雖秘書多吏懸有便故削其不宜考正理編集鮑
一押之二冊而為後学之便也苦有志付芸士体認此書道理
厚加工夫猶又希有発明者や諸外於他流有極意者挟
一考上宜随介可有執行者也
一市果卒務して数年師を為取性名を是に顕すとや先幼年之
一比吉田久米之助殿に稽古し其後於備洲岡田吉田多兵衛と言師に
一修行し其後奥州白川にて市川治部門又お江府横井来折お上方へ
村上小左衛門と云矢数射手に付添肩様して千余を放し其後又江戸
にて馬場彦左衛門其上同所におゐて鈴木吉之丞同万右衛門永田孫右衛門
一伊賀藤内又上方に而鈴木浅右衛門中川甚門ケ様之名有射手へ参会し
家々の時形弓理なと古今名人の言葉慕き中に本州を言て
実理を本として如斯作意し編之者也
此書者中用の理を専として弓の哥を集るによりて則中用
秘所より要集と号け若初心之人の郡て少しの神にも一成御と
不省図随深充筆者也
一右乾坤之両巻者古今弓理諸家之伝法得伝授右并即年
一月修行実之意委書記畢勿論秘術之旨全以不可認見
他言者也
安東源五兵衛
正徳五未年十一月朔日
同源吾
井戸権九郎殿
跋中周秘所了要集
流失之顕守天象気蓮之窺人原執識厥始
天子之把田御乗教武将之裾曰より執丸生而為男者
不可有学之也中附秘肝弓要集於此芸也可謂熱
之又熱人則之功也安東老人伝子伝孫余り及男子之
有忌者其勤也窃有惑乎其老而不怠也因書其后
正徳壬辰菊月朔日
正徳壬辰菊月朔日桜井居士跋
日本
1916
○八ヤ右シ入