自得流鳥銃 附大銃守鎭法

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清水正徳校
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ジトクリュウチョウジュウ
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東北大学
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大野武蔵 上 自得流鳥銃 自得流鳥鋭巻上 ▽荒井恭馮明会を 以テ購入セル竹蘭博士 猶野亭吉氏藩職書 石井蔵書 大野武範著 一流義骨法并鳥銃明験之事 一流蔵の法を立るはすへて足軽筒より一騎士の侍する所 のに筒に及て概して拾匁玉を用ひて其以下の小筒を必 用へからす尤小筒は益すくなきもの也予大坂に住せし事 数年御家人の同心与力五十餘人追々に来りて弟子と 成予彼梨に謂て曰各は先祖代々小筒鍛錬の者とも として今来て小筒を習はんと云事如何彼輩の曰われ〳〵 一我流をもつて手前稽古と申儀もなく唯滅法打に打 て公儀御定の八才角には百度百中不逃ものも有之とい へともいまた二人も戦場の打方を知たるもの有事なし願くは その業の伝授にあつからん事をこひ願ふと云予諾して先 一三匁五分玉をもたせ一人限りに手次殿へ坐作進退の 手をつけて素矯早合軽木をつかはせ予測に在て数を 取看板に記し日数を期し手練のほとを考へて大方二 十人もよく揃ひたるとおもふ時五人六人と巧拙を交て組 鳥鏡の を人数の あはせ先早合にて拾五間八寸の木把鳥泥のを人数の 数むかふに立てうたせたる時何とうたせても三匁五分にては 玉つまりあるひは立消して一肩十放と打出すものなし打出 しても調子くるひ其中り百発百中の者中り五分につかす 其中に於て抜挙のものをえらひわか家秘法の玉拵を をしへて見てもとかく調子おそくして二の玉を次事おかりし 千変万化工夫をこらし鍛錬して気根者を相手にし こゝを講究せし事二年の間数十度に至るといへとも兎角 欲する処に至らす素より如斯なかへき事は最初よりお もひまうけたれは扨こそ不審晴たれとてそれより十匁筒を 一列にもたせ家法の玉こしらへを用ひて打せたる時手次は 熟したり一肩に二十放とさためて初のごとく木把を設て うたせたる時三匁五分の玉を早合にて六ツ程打間に拾匁玉 は二十放を打切て中り各七分に打おほせたり拾匁玉 問つまか事なく立消する事なく筒のとりまはし仕やすく ねるひ早くのり能中り筒おさまりよく火矢よく飛又根矢 を打に至極の利あり誠に召能有て一失もなきもの也然れとも 世間の人これを知ものなく唯打過き三匁五分の中りにくき 取廻しの仕にくきからくりの違ひやすき百失有て一徳なき ものを世間一枚にこれを足軽筒と名付てかさり一通の物と なし其実用の境ひハ鉄砲頭足軽大将たるものものもこれを夢 程も覚悟せす受用の二字の実場に至りては独もこれを講 究する事を知らす練兵虚実の二字を口にとなへて其場は 夢にて打すさぬ此弊の由此編の霊に至て主意を結ひ をはんぬ然るに小筒惣身功順験の事人いまた是を知る事 なし抑小筒百五拾年前天文祭卯の歳薩州種か嶋 にわたり日本に広まる時戦国の歌中にて弓の十間の利を 神兵とせし処に小筒の六十間にても方寸をあやまらす 鎧武者をつらぬくを見てたま〳〵貧人の金を拾ひたる如く 重宝して諸国に用ひたれとももとより草昧の小筒なれ は打く懸知らす只其説利に伏し家財を敗却して 家に巨万の小筒を貯ふこゝに於て名将これを節制 して天文年中武田晴信山本勘助出て陳法を定るに に筒によりて全五段の備へといふものを制し万代不易の 兵法となるこれを時変権度といふそれ兵法は時変を知 て機を用るにありされはこそ晴信一代百二十戦川中嶋の たゝかひをもつて日本古今八陣頭尾の明験とす此時武田 の大正十人の先手一万余人寅の刻西条山にとりかけたれ とも謙信亥の刻に筑摩川をわたり信玄八千の旗本の河 中島にそなへたる正面東首五六里の処にそなへて一面に折 敷一万二千廿余手に作り各二手組にし謙信印二の手 に備へて破竹のいきほひをもつてかゝり来る朝霧深して 信言の旗本夢にもこれを知事なし物見来りて此よしを 信玄に釈る時に信玄山本勘助に命して合戦の仕かたを 尋らる勘助かいはく強敵の身をすてゝかゝるに味方惣かゝり にしては八千人皆死すといへとも其強なきもの也一万余人 の先衆とつてかへし謙信のうしろよりかゝるへき其先衆の 西条山よりかけ付る間わか旗本の此地を去らぬ仕方 の外は合戦の仕様外に無之と申す信言すいはち合戦 の始終を勘助に任せらりのよし使者を以て諸手へ告 らる勘助組子を相組にあつけ旗本の先手の手毎に乗 行各一手二々の馬前にそなへたる持筒の一組ニ々を以て胴 筋をおし出し今まて備へたる手先の銕砲の後を詰るとき 手先の鉄砲は張出し左右にわかれて斜に立放急にかゝる 時三陣の鉄砲皆折敷西面一同に打はなさは左右より 助之三陣番休をもつてこゝを防き折散たる足を立る事 なかれと下知して先衆を一面に打過る時我陣の旗色直 り信玄の折机のそなへ急にくつれす勘助下墨の如く十 人の先衆謙信のうしろよりかゝり切くつし謙信一騎に て敗軍味方戦地をさらす勝鬨をつくり首実施せられし 事ひとへに小筒鉄砲の功験かくのことし又いく程もなくて 長篠の合戦あり信長公権現様御人数十一万勝頼 一万五千人数の鉄砲の数みかたの人数よりも多し然るに 名将と云ものは格別にてむかしよりの軍法も軍たても皆 取置柵を重に結ひ二万挺に及ふ鉄砲を柵木にゆひ 付鑓長刀も刀わきさしも皆無用として鉄砲噤めにて勝頼に 勝給ふ事これまた時変権度の大成もの也また寛永 年中肥前嶋原の一揆城中の男女老若三万人取兵て はたらく者五六千人諸大名十余頭御旗本衆役人衆十 余人二年越にせめて外郭ひとつ乗とる事ならす百姓 一人打ころす事ならす剰夜討まてせられあくみ果兵粮 せめにしてほし殺にせし事ひとへに小筒の功によれり是 攻守損益のわけをもよく可知事にこそ此三ヶ条をもつて明治 としてふかくおもふへき事也けり然にこの時まては小筒その打 方おもひやられたりされとも其義は歎も同前にてたとへは朝 一鮮人参の無み辺土にて人まてに死せんとする時名医たま〳〵 行かゝり砂仁をもつて其人を活したるか如し勘助は名医 なり草味の小筒は砂仁なり若勘助に当世の大筒をもたせ たらはこの一味をもつて不戦して天下を平にせん事又 難かるへからす然るに天下の武士この兵器にうとくして 三匁五分玉を足軽筒と云名目はかりをおほえてさらに 利ほ利のわきまへなき事尤浅し扨これをめゆといふに 最初申如く天文十二年この花わたり諸国重宝として大 概日本国中におこなはるゝといへともきのふ今日の事なれ は此器の上手と称し秀たる人もなく至てその業の多端 なるものなれは其業の千のひとつも手に入たる人無之内に 慶長元和となりて天下大平にをさまり寛又慶安の比 より至治の極に至り正保承応のころより幕府に於て 大鏡の御沙汰も絶てその音をきりさる事すてに六七 一十年享保の初年当御代に及て其家に命せうれて ふたゝひ此花を講せらる事になれり誠にこれ百千年も 天下大平の祥瑞この一事にあり当今の武士多く聖 代の化に浴して宝業をわするゝ者おほしよつて此子細を しる人希なるもの也夫兵秘することに在人の知らぬことを 知れかは幸福何かはこれに還へけん也 小筒作法大意 一小筒射場手前と云は十五間にて三匁五分玉あるひは四 文三分玉等の筒とも作法をとゝのへて稽古仕法なり惣 して武芸は人をころす事を勉るものなれは其術平生を つゝしむ事第一也故に小筒の打形にかきりて当流には 的前と物前との業を混雑せすして業も意も遜譲 をもつて主として剰穀をもつて主とせす中り貫く事を 次にして手法をもつて第一とす其次第を紊り狼藉を戒 むる也次第みたれて狼籍なる時は武芸の本意に非す また礼法を主とし中りを次にする事は中りを好まさるに はあるす至て礼法をおもんすれは也故に手法礼にかなへは あたりもまたその中にあるなれは射場前の手次作由の次 一尊礼法のみを以てすといへとも必物前に便なしとはいふへからす この射場前の真草行をよく覚悟せしむる時は物前の手 一足便利もまた其中にある事也武芸多端なる中に鉄 砲は末造のものといへと母兵宛の最上たるにより中華の て鉄砲の大なるものを無歎大将軍と名つくその猛烈 神明不測にして人力の及はぬものなれは神鏡神器とも名つ けたりなほさりの人祭りにその業をえたりとすへからす師家 の掟にそむかす鍛練肝要なるへき事也 射場手前作法之事行ノ位 ○一村場も出んと狂ふ前方鉄砲の処々の金具廻り引金に 気を付て吟味して見物且かたに気をうつさす心を脩る 事第一なりさて火縄を二尺三寸迄かりにさはき火先能 とゝのへ火先二寸を外へ出し人指ゆひと中松とにはさみ 火縄の曲を小指に夾み鉄砲前目当より二寸程上を被 火なはを前に被泣帯より高く斜に筋かへて持左の 手をは袴の紐の上にをさめて場に出るなりきて可打場 所に出来りて貴人見物の方を一目見て礼の意を示し ひとへ身にて前のかたを正面となし左右の膝をつき筒を 右の手はかりにて身の中央に真直に出したて左の手は 膝の上におき首はかりをめくらし木把をよく見定め 星に中へしと決断して者はかく心をしつめ他念を わすれて左の手を大縄にうつし曲を手首にかけ右の 手の上を取そひとしく右の手は火縄をきてき右の膝より 後へ引はへて火先を切火挟れかけ其火縄のうへをつた はせて右の手を台尻におろし板金のはつれの誤に人指 ゆひの下る図にして右の膝を壺尻を短にして左の手 鉄砲の際によせ左の足を蹴出し片ひさ立て折敷筒 を一文字にかまへ匂倍をかんかへ木把に向はせ火蓋に手 をうけ息込火蓋を切直に壺尻に手をうつし左の肱を 膝頭に押上さまに頬につけかる串の頭にて見揃へ一し きりしまりて摺上る調子にて引金を引へし扨中りを 見さためしはるくして跡を崩し様もはしめの如く筒の 中央に立る時左の膝筒と一度に諸漆につく也さて火 縄をぬき初のことく右の手にはさみ火蓋をおろし前目南 のうへ初の所を取火縄の曲をとり初のことく左手にて右 の小杉に夾み左の手を膝の上に惨め木把を一目見て 芝引を右の膝際によせ貴人のかたにむかひ手を付首を さけ一礼して左右何方へなりともによせをして立なり 扨玉薬つきたる鉄砲は云に及はす素筒たりといふとも貴 人はいふにおよはす一切人のかたへ筒口をむかはせ候事大なる 無礼也常々この心得肝要也 一同立放しは場に出はしめのことく諸漆をつき火縄を かけ火縄の上をつたはせ板金の鋲まて手をおろすこれを しのひと云火魂おつるや落さるやの意にて如此するなり 扨其手路まて下る時右の膝をひたりの方筒の芝引通り によせ立上り左のあしを角筋にあてゝふみ出し右のあし をうけて足の間踵と踵との間およそ一尺二三寸に踏両 膝口の番ひをしかとありせ腰をすゑ筒を一文字にかまへ 勿倍に気を付たとへ仕落しても其玉角の左右上下さ のみ違はぬやうに用心して火ふたを切直に壺尻に手を もつし頬につけは所の者まりを合せ引金を引八所の者 まりとは左右の膝にし腰のつかひ左右の手の内息迄見込 引金この八ヶ所なり肉身力身なけれは自ら八所全し さて崩しやう足を少しツゝ引て臺尻をつく此時際も 一度に諸膝につく也其外仕廻右におなし品肝要なり 真の射場前之事 一其の手前とは至極礼法を専りにする也惣て礼義は内 外を斉る事を難しとす姿形の礼服を用ひて恭しくし たりとも心持不遜にしては礼といふへからす内とは心をいさき よくし外とは衣冠を正しうする也むかしは禁中に於て 鉄砲の興行も有之砲人も丹後守に任せられし例もあれは神 前上覧尤然也必然とその手前を用ゆへし此手前には火 はさみを落して罷出る也火にはき行の手前に同然左 の手を火縄の下園入のうへに添て筒を行よりも高く 目八分にさゝけ罷出高貴のまたを一目見て折散両膝を とくと敷さて角を見さため火縄をさはき火袂をおこし 其外は行のもくにて放ち跡を仕廻芝引に左の手を添 右の膝ともによせ如何にも敬しつゝし無く是をさけ罷立 なり行の手前よりは惣てを静にすへし行はまた真よりも に速く草は行よりも速く仕るへし立放も行に准して 可知無別義尤火鋏を落して可罷出品肝要也 草の射場前の事 一草の手前は火縄つねのことく筒の前目当一寸ほと上を 持右に提たることく行よりも早く持すか〳〵と場に歩行出 少しも滞る事なく左のひさをつき右をうけ火縄をかけ 諸膝をつき筒を一文字にかまへ火ふた切中はなしにて 一発つへし調子肝要なり跡を崩すも右同断立放右同 惣て行の手前より一位早く長矯をきかふ真草行そ れ〳〵の位ありておのつから手次所作少ツゝの遅速有之 事也此手前は物前の作法にちかし我よりも下鷲の前 にて可打手前也 ねらひ三段の位之事 一ねらひにも又真草行の三つ有て草のねらひをもつて貴 しとす行は次之真は又次也至極名人の上になりては 真行草のへたては無して打時のこゝろ持に可有事な れとも右体の打手は草のねらひにて的は大にして矢坪 を大事にする時なと逃るゝ者なるにより三段のくりゐを 設けてをしへたりたとへは大事の場の大角不動して居る大 切なる敵ちかき所の猛獣の類なり大角は気は気の気は により却てはつるゝ事有不動して居る大事成歎は心 安おもひて打逃す間ちかき猛獣は気つり上りて打逃 すさるによつてねらひを真にせよとは心をおとしつけ気 を鎮めてあはてゝ発つ事なかれとの教也よつて目付も星 に星をまうけて発つさるによりて薬込をひかへ心の星 を星とし引金はゆたかにあつかふへし名人の位にては心 を真にをさめて業は草の伎なるへし扨また行とはたとへ は五寸の角にて星二寸五分の時二寸五分の内にこゝろの星 をつけて黒星を角とし四方の白みをすてゝ二寸五分角に して打ときは逃れぬもの也又草とは平生の教のねら ひ也から串の頭にて見揃左右の手の内一しまりしま りしめ上て星の下にて引おとすへし 出合算法之事付六間六拾間之事 一出合と云事小筒より大筒に至りてこれを鉄砲業の根 本とするもの也この理をあきらかに覚悟せしむるときは 達人のくらゐにも至るへきもの也鉄砲術にこの理を認さるは なけれとも夜の明たることくこれをあきらめたる人少き 故に達人なくして鉄砲術半色まても至らす実に読 砲の千変これより出ると可知然れともこの理を算盤箕 木をもつてかけわりしたる時は何のむつかしき事もなけれ とも鉄砲の妙術これより出るに過さる時は心を爰に用ひ て琉練工夫あなかちに怠るへからす道理を究め業をつ とめてみつから得るの場に至るこれを自得の場と云也 一筒におとりと云事有おとりとは本口より末口のかたは 筒も目当も末口のかた細く有みこれをおとりと云鉄が に出合といふものをこしらへて玉をおもふ所にやさ事その出 合の本此おとりに在故に出合の術を知る事先このおとり を知るか其本也これを知る術本目当の処にて筒を挟尺 にて失みそれをふたつにわり本目当の高さを加へ又末目当 の処にてもその如くして末目当の所の分をもつて本目 当の所を引みる時末口のかた本口よりいかほと劣ると見え ゆるこれをおとりとも違とも地矢倉とも云也この春のお とりを目安にして筒の片皮の厚さを割る片皮の厚さと は末口寸の真中より目南の上まての寸也さて其割たる 物に目当の間の尺をかけたる時何丈何尺の出合と知る是 を壱間の六尺にて割候へは何間と知るゝ也これを出合とは 云なり又常に六間六拾間と云事有惣て小筒の十匁 位まて大概出合を六間にする事其子細は六間にて出合 たる筒平目当の地矢倉にて壱町行き六間の見込の星 に中る故に六間の出合を定法とはしたり偖六間の出 合今間より上ハ皆こ少しつゝ越也六間より内は下る也その 詳なる事次のヶ条に申たり尤絵図にもり付て見せたる時 は小児といへとも合点の行事なれともそれはせぬ事也工夫して えされはわか物にならす 地矢倉八段の見込之事 一一六間より六拾間を地矢倉と云筒の背の背の目当にもりつけて 有之勿倍也此もり付にて少しつゝ加減して六間より六十 間の間を打に凡そ其位八段に有之此訳をかり人猟師 の輩明細にわきまへねとも滅法に打て遠近を打中る事 は礫を自然に打得たるかことし其中る処をもつて教よ と云時はその知されは人を指南するにはよしなく 星の真中 一六間星の真中 是を上弦と云 一十間有明 一十五間星五度下 一二十間星十度下 是を満月と云 星十五度下 一三十間星十五度下十五夜の月なれば 一四十間星十度下 一五十間星五度下 一六十間晦十二 晦日 ヨリ 一右を地矢倉の位と云その訳を委細に云時目当上の見揃前 一日当先目当向の時の三ツを一準に見渡時水之体に成 然るに玉は下より出て的に中る故に目の筋は直にして 玉は勿倍を取て向ふに中る此句倍を矢倉と云鉄砲の 下地にこの匂倍をもり付て置によりこれを地矢倉と云六間 にてかの目の筋と玉の道に行合に付出合と云すてに出合て より後は玉次第〳〵に越て十間二十間三十間に至る時至 越る所の峠に成四十間五十間六十間と次第〳〵にまた勢ひ 下りて六十間に至て最初の六間の見込の星に入るこの 道理さなから月の出没に似たり故にたとへを月の愚霊 に取てさとし易からしむ猶また口伝ふかし 該尺越之事 一右のことく六十間にて玉下りて六間の見込に入り六間は 上弦とてねかひ星の真中なれは星の黒み月をふせたる かことし六拾間は晦とて白の星の全体を見かくすこれに依 て悔と云口損ふかし然は六十間以上七十間百間あるひは 二町三町となる時はその目付いかゝすへきと云時八月の 晦に至て闇とはなれともふたゝひ月上絃に復して天にか かりて四時のおこなはるゝか如く鉄砲地矢倉炎くのちふた たひ新に矢倉の法を制して遠き所を打これを子活銃 人と名付て鉄砲術活動の妙用を致すの本其に在 小筒といふものは畢竟先ツ地矢倉かきりのものものと心得へし 夫を如何と云時大筒は玉目大きなるにより遠近共に その玉の法を構へし小筒は玉にきによりねらひものに 中る事を重として二丁以上はたとへ玉罪といふともその 功救也尤小筒も六匁以上なるものは二丁にしても中る時 は能く物をも貫くへしをかく地矢倉六十間まて是は 中りをも頼又かならす中らねとも玉勢よりからぬにより 地矢倉のうちにては証武者をもつらぬき列伍も崩れぬ と云事なし然るに古法に二町の外より小筒を打せたりと いひ伝甚弁あること也また鉄炮者流よりいふ時壱両玉 より十匁玉くらゐ也 一壱町五反先目当半分 一二町先目当根本 一三町十五度 一四町三十度 一五町六十度 右は筒先の見出しの処に糸を当て向ふの時と前月当 の上にその糸を引て見る時前目にいか程の高さの物 を矢倉に立て其町々々に至ると云事をしるへしこれを 二所目遣の口伝と云 地薬之事 一地薬と云はその筒々に依て薬如何ほとの込と云に諸 流る不足ありてその節を知もの希なり 一三匁五分玉壱匁五分 一四匁三分玉弐匁壱分五厘 一六匁玉三匁 一八匁玉四匁 一十匁玉五匁 右の分皆五分込なり此五分と云に薬は強弱あるに付 これは弱をもつて法として云強をもつていふにはあらす諸 流には己の流義の上薬をもつて法を立るに付世之弱薬 をもつて打ときその込の盛り計りかたし戦場の薬は 敵の薬をとりて己か薬として可打物なれは変に臨て あやまらさる法にあらされは良法と云へからす爰を以て 弱薬を取て五分と定む然は則上々の薬なる時は必 五分より内心に任せて可込至極を五分と定ることこれ 流義の法也 一生作早打之事 一早打は専ら物前の打かた也射場前とは格子也鉄砲 の鍛錬此外ある事なし当流の鉄砲他流に異なる事 これのみに限らねとも別て吾流義にては行住坐臥此 業をまつて兵法受用の場とすたちおり敷は云に不及 腰ため胸だめ匍匐蹲踞左右前後進進退の中に玉 薬をつき弓のさし矢を討出す様に常々此業を打 覚えされは鉄脇以下数場の場所にて全く功を立るは よしなし然るに鉄砲と云もの治れる世にハ場所の嫌ひ有て 志の人といへともこれを難事として深くこゝろ懸されは思 ひて打すくる事有これ思索深からさる故に兵法更用 の極意を得さるなり平生座藤の上の素ための鍛錬戦 場をわすれぬと云意尤ふかしよのつねの人射場に向て うつを講ねとおもふへけれともその迄大に相違して心をま う馬所その場にあらされはたとへ十間に下釘九性星を うつといへとも兵法受用するものとは同日の談にはあらさる 也さて早打の事ハ玉の塩梅と薬込の節とこのふたつを 打おほえ手次の紊れぬ所習慣自然のことくならしむる の法也玉拵口伝薬は法を五分と究めてこの早打の 内に彼此相質して執達に至りまつ最初拾匁の子打 に託薬壱匁にて鏤錬穀場の後壱匁五分にて又然り 弐匁にてまた植り弐匁五分にて石然り尤木把を遠近に立 直し三匁四匁五匁も右の法のことく彼八段をたしかに打覚へ それより活矢倉をかけて曠野に出て遠き所を打覚へ最 初壱丈にて打たる時の意も業も五匁の薬を込て手次より 引合のあちはひおなしやうに調ふ様に打覚へ五匁の地薬 本法として六間六拾間の地矢倉も三十五丁の遠物も平 等おなしやうに打滴これを流義の小筒早打の法と云尤口 伝ふかしさて早打と云ものは手次をはやくする事とはおもふ へからす手次を随分遅くする事也鉄砲の以心伝心妙術 爰に在と知へし 玉拵之事并胴卵之事 一流義小筒早打之事専ら拾匁玉を用る事別に立か如し 十匁玉玉合の事うす美濃紙二枚ならしにして如此薬は 芥子を用玉薬をもつて二ツとせす胴卵に玉薬をつむる事 一度に可為二十五放胴卵の内隔の皮有て上に常用の 二十五放下に守りの火縄同玉薬摺火打付木を入る桐卵 の製法大法有薬かさをもつて可得心口薬入外に法なし 戦場にては手拭付の鉄に付る此讃なけれは相引のこばせ 高紐及引合にをさむるやうに心得へし堅硬なるものをき らふ自然火のうつりたる時掌を損はぬ心得なり或は張 ぬき或は桐の木等の火勢にさからはぬ程のものにて作りいか にも一放にみにて口能塞かれて薬を次に便利なる様 に巧製すへし根緒を馬の尾にする事貰のことし 火縄伝授の事同製法之事 一火縄伝授之事先当流にはよのつねの竹火縄を専ら もちふる也木綿火縄の利智す偖竹火縄を吟味する 事尤肝要なりこれをおろそかにしては大に業に害これ あり能々心得有へし火縄の製法の本にくらけれは善悪 を分つによしなし先竹火縄はなよ竹の二三寸まはり なるもの去年竹の皮かふりなるを用ひ秋切の縄になふ其 細工の法二三寸まはりなるなよ此節の一尺以上これを本 口と末口とを切て捨中壱間あるひは一間半はかりの処を 一節つゝ切て上皮をこそけ青身と白身まての間をこそ けて用る也其こそけやう己か腹に出しあて向ふの柱に 押付大小刀を両手にとり乞立にしてむかふより前に刀 を用ひこそける時かんな屑のことく薄く小刀にかゝりて手な に来るを房のことく手前の節の所にこそけためて夫を 一房ツゝきり取て段々其竹を四方六方よりこそけ白身 に至るを節として沢山に是をこそけためて諸それを能 おしもみ苧をこく如く揃へてさて三ツくりになふ也此こそけの うすくしてよくつゝきたるものをそろへてなひたるを火縄の上 品とすうすくつゝくやうにこそけら申事は小刀のよく利るゝ にあり小刀ほ利はこそけ厚くなる此厚きものをはかやりに こそけてなひたる火縄を下品とす打至毎に火ほこり目 に入あるひは衣服を焼白風の時火塵目に入て忽ち目 気と成る上品の火縄をと云時も右のこそけに念を入れて 房の次手ふしたゝぬやうに上手になはする時は上品の火縄 となる扨尋常になひあけて早稲の藁の灰汁をかいより をよくかけて随分かたく両方に引はりて腕のこすりを能 かけて仕上る也此早稲のわらの灰汁を二通とくとかふ時 はいかやうの風雨にも打消する事なし常に商人の手より あかなふものは右の灰汁をかはす房のこそけを厚くして もみやはらけたる物なれは最上のものと云とも火塵無之を ものは普通には是なし世上に雨火縄と云事当流こ れを用ひす灰けをよくかふ事を知らぬものゝいふ事なり 或時戸田城州侯より同隅州侯へ火縄を進呈せらる其色濃朽葉色なり 隅州これを以に筒打諸西中に云々この火腕をもつて自身打家人にうたせ て三郎るゝ時曽て打消せす火先よくことのひ火塵少しも立事なし隅州大に 感心有てこの大縄の製を相伝有たさよしさま〳〵懇望せられけれども城州つ ひに相伝なし帰州遺恨かきりなく家人豊田七郎集に命して自ら其 製法を修し候へしとて君臣昼夜のさかひもなく鍛錬年月を経て後竟に 其勢を創始たる隅州大に秘蔵ありて棄りに親子といへとも相伝なし 播州侯晩年大坂に於て予が門弟たりし時火縄相伝の所にいたりて 此話有豊田手自火縄を製して予に見せしむ城州侯の任として道をおも 心せらり事一箇の卒事といへともかくのことし況や本位執鞭の輩兵道 の秘する処知ら 一すんは有へからす 切火縄并火縄かせの事尤大事の相伝也 曲火縄は小筒討場前に限りて用る故に早打には切 火縄を用て手煉する事然也切火緋長さ壱尺二三寸 より五六寸その人の好次第大縄かせと云もの事予三十余 年の思索に出たり大縄の次第秘極たるによりて難載 書物に守りの火縄と云事旁尋甚保也 一火縄筒の事奥に夜打のす条に記之 白井郡平道賢 12697 狩刀 自得流鳥銃中 秘書 自得流鳥銃巻中 石井蔵書 大野武範著 其日其息其心之事 一生物を打時心得あり其目にて見るとひさしく其こゝろに 矢つほを定め其息を込この三ツの物いさゝかも紊乱する事 なく火縄を吹はらひ火はさみにかけ其手を直に台尻に うつし頬に付ると飛としく草のねらひにておもふ矢つほ を打貫く事神速を貴しとす鳥獣は言におよはす馬 武者等をうつ時の習ひ也歩武者は小典あり別て横に 馳通る獣にはなほ此こゝろえ有横にかけ通るものは間教 により出先五寸六寸壱尺もかけて打もありこれは 能打なれされは中りかたし 見上旬信遠慮之事 一村里の人のあるへきかたへむかつて立木の鳥を打時習ひ有 三角の矩と云事ありこの句倍を考へこの句倍より筒臥時 は放へからす筒竪時は放ちてあやまちなし 石地水上心得之事 一小石散たる川原あるひは大川の水面にむかひ桁に放 つへからす石にあたれは玉何方へ飛へきもはかられすまつ直に 跡へかへりて打たる人に中る事あり又水面は必とべりて大 に直にも横へも行向ふに高峰或は岳山なとをうけたちは 打へし惣て地はいの鳥を矢先を殊外に遠慮すへし 水中の物を打事 一水中の大魚なと打とき必玉水中に不入脇へ飛ものなり 玉に穴をあけ置其穴をすくに筒に込か扨は切玉とて訟 を寸口にあはせ丸く削り寸口より少長く鋸にて引切込て 打へし又右の二品用意せすして急なる時は玉を歯に てかみ歯形を入れて軽木にてつよく強く込時は玉 それすして中る事終なし 石臺之事 一大石に筒をもたせて打ときは手ぬくひを折て玉に藤か さては手を石の上にあふのけて掌の上に筒をのせて放 へし中らすと云事なし 割玉之事 一大切なる場所にて鳥などをうつ時はわり玉とて玉 を二ツ或は四ツにわりこれをおし合せて薄き美濃紙にて 上を一通はりて兼てたしなみ置此玉にしてあへし必 はつれぬもの也 一学玉之事 一つなき玉とは玉をおとり玉にして二ッ三ツ中に穴をあけて 珠数をつなきたることくして打時ハはつれぬ物也 ねらひ物両膝壺之事 一ねるひもの両膝壺とはたやすく動かぬ物の大事なるを は三尺手ぬくひにても手綱にても介副にいたし端と山端 とをむすひあはせ両是を天神足にふみ合せ両膝に介 副をかけて左右に膝をおしひらき左右の肱を膝に付候 へは至極をさまりて中りよきもの也 同両脚壺之事 一左右のあしをむかふへさしのへ一方の足を一方の足の上に かさね上上なる足の踵を下なる足の親ゆひと中指にて はさみ上なり足わく鉄砲を夾み愚無邪にてうつ時よく あたる也これは高き処よりひきゝ処へ向つて放つ時は宜し 蹲踞之事 一つくはひと云は左右のあしをつくはひ左右の肱を両ひさに のせて打候時よく中るなりみなりみな〳〵静ならひものゝ事也 軽木台之事 一かるか壺とは軽木をぬき地に付立て左の手に持鉄 砲をこれに持そへて放つ時よく中る事うたかひなし地や はらかなれは軽木を地にさし込むつくりと持隠うつ時は はつれぬもの也立放しの時はかるかの気を上帯につつぱる へし 同取添打之事 一早かるかの時河中なとにて一発にて一木を薬にさし込 て不手まはしなる時やはり抜なら左に取そへて打事も ある也この時幸に軽木壺を用へし 桶台之事 一つか壺とは大小の柄をさし出し壺に用る也これはへ たりと下に箕路して遠物なとを打とき用へき也右各 臺打の事いつれも未熟のをしへの為又は時により立放し にて筒何としてもをさまらぬとおもふ時の事也中放しにて はつれぬ打手は台はたのむに益なし 匍匐ための事 一はらいひためは是も高肌なとより下なるものを打とき筒 を芝に付て猶うこかぬやうに致し其身は腹を地に付て 両足をのはし思無邪にて打時はつれす皆しつかなるね らひもの也 矢切候 一矢切と云事むかしより世に言習はし竹木の茂りを隔てゝ 鳥獣なと打たる時竹木の枝葉に玉さへられて必はつるゝ もの也と云まつ試みに的場に木把をかけ中り筒を用て 壺をはつししゑめ壺にて見込を究めさて木把の前玉 道の処に草木の枝葉を繁く地に植幽に木把の見えす くやうにして打たる時幾放打ても逃るゝ事なしさて又右の ことくに木把の前に草木をもつて矢切をこしらへ置ほの かに木把の体それと知るゝ様にして置て後に見込をして 打たる時出なし筒同し間同し見込にて三ツ打て一ツ五ツ 打て二ッ逃るゝなり然る時は実のものをうつ時は猶如つな るへし爰をもつておもふに矢切あるものは正体をたしかに 認かたく依み逃る也草木の枝葉にさへられて必中らす とむかしよりいひ伝へたるはためし試みを不致して推量を以 誤りつたへたる事とも聞えたり 鉄砲の玉水を抜けす依て水楯と云事 一共より野人の説に桶に水を入れ折に用る時は鉄砲水 桶をつらぬく事あたはすと云つたふこれ何の用そといふ時 籠城船軍なとにこれを用ると云尤其巧あさましゝ兵法を もつては論すへからす然れとも其水をつらぬくや不幸やと 云事試みすんは有人からすと云て先に一時これをこゝろむ 其次第四斗樽の鏡をぬき水を一盃ツヽ汲入れ三ツ四ツ もかさねなるへて先四匁三分玉にて打時こと〳〵く能ぬけたり 然れともこれは四斗樽ひとつより多くはぬけす依て十匁玉 をもつて打時樽三ツまて心よくぬけたり然る時はつかほとの 大箱水船を用て水をたゝへたりとも酸この大筒をもつて貫 く時は誠に破竹のことくなん鉄砲の道不致練の輩 さま〳〵鉄砲の利をねたみ作り出したる稗説也又曰鉄砲 幕をぬかす依之帷幄を四方に繁く幾重にも張る時は 銕石の楯よりも頼むにたれりと云如此の痴人は鉄砲を もつて殺すへからす鉄砲の火音をきく時は必腰ぬけて ま行する事ならさるもの也 鉄砲為張事付証文之事 一銕砲を張らする事地鉄をよく鍛ひ心鉄とて丸く長く 棒のことく打立たるに彼地鉄を能焼真鉄をつゝみ幾度 も焼わかしたゝき付扨心鉄と地鉄わき合て取付申に付 度々ぬき出し冷し申す也其張やうの位に段々有まつ 単純と云は随分麁相なるはり様也諸鉄能と云は地鉄 をよくきたひ右のことく一通り張また合せ目の方より張る これにて二重張になる能々鉄をわかしたゝき付る事なり 大体持筒等に用る也また番筒といへともかならす戦場に もたすへき筒は数百挺立るといへとも単張等の疎異なる 注文を用へからす只鉄砲は性を第一とすへし又巻張 と云は右二重張のうへを鉄を長く薄く伸へ本口より段々 そかし付巻事也これを巻張と云よく〳〵念を入たる筒也 調にて巻たるを綱巻と云也 一あら筒出来の上あら錐を通し火直しとて筒を焼大方 ゆかみを打直す也段々誰を入れ内を見てたき直し仕 上錐を入内を直す時影をす中に入て寸中を見る類窓 とて□如此によき明りの方へ板にて腰をさし前に鐘木を たて筒をもたせ胞に筒口を当て類を寸中に入れて寸中を 見る時如此人影差入る時この影の直不直にて寸中 の直不直を見る事也 小筒註文 壱匁五 一長三尺本口七分八盤目当下七分五厘腰七分四厘 末口ゟ五寸前にて五分五釐右角筒也 三匁五分玉 一長三尺本口九分四厘末口七分末口より五寸前より 脇をよせ末口勢ひ有様に 同玉目 一長三尺本口九分三厘目当下八分八壁腰七分五厘 先より五寸前六分五厘柑子筋の所六分八厘柑子長 壱寸壱分柑子指わたし九分二厘壺尻長サ壱尺 一菴り弐寸八分惣重サ五百八重目 五匁玉角筒 一長二尺六寸本口壱寸弐分末口壱寸壱寸壱寸壱寸壱寸壱寸弐分弐寸 菴り二寸六分 拾匁玉上一角 一長二尺五寸本口壱寸四分五厘末口壱寸三分五厘 但種子島柑子也柑子長サ一寸四分五厘末玉縁幅 八厘中玉縁六厘前玉縁三筋中一分左右五厘ツヽ 前目当六寸先に高サ四分五厘長サ六分恰好五匁に 一同し台尻長サ壱尺菴り二寸五分重サ壱貫二百目 右に筒の註文大概如此其くはしき事は人々の好によりて かはるへし 持筒性様を打事 一一鉄砲を張上させ成就したらは先性様しを打へし尤張 かゝり候前方鉄砲鍛冶にこのよしを申聞張上候はゝ強薬 目込にて二放し様すへし能々倉を入へしと兼々得其 意さすへし扨約束のことく五匁玉に五匁拾匁玉に拾 匁上にの薬を込むを吟味しうすきみの紙を一重衣にして 土俵をもつて地に箱をさしたるやうに四方用心して筒の 下にはやはらかなる砂土を鋪筒の上に砂一斗袋に入おもしに 置わたし火にて先一放打筒の内外火皿廻りをよく吟味 し能筒を拭ひまた一放右のことくして打扨よく筒を洗 ひよく拭ひ油を引所々を明細に吟味すへし 番筒様之事 一番筒は五十挺百挺同し注文に申付れともかならす鍛 張にすへし単張にすへからす武家の戦場に用る重道 其この外になし心を用へしさて様は八分の薬にて薄黄 諸紙一重玉衣にして打へし目込に不及その外打方右 のことし 持筒中りを打事 一持筒あたりを打は三匁五分玉に弐分五厘四匁三分玉 六匁玉拾匁玉に三分上々の薬を用ひ玉は合玉を吟 味し鋳形に念を入ひづみ無キを用ひ玉紐を能取玉衣 を不用間数は十間にして星一寸見込有明にてて打臺 は箱に砂土をふるひ入上をかたく踏てめ少ししめりをかけ て筒敷を敷筒を土にしかと押込む事こゝろにしてさし 火にて可打玉数を十ヲと定めて七ツ八ツ星に入二ツ三ツ星 を睹ても不苦もし左右にきて事あらはすの内を吟味ず へしすの内を吟味して心にかゝる事なくは目当にて直す へし鍛冶は寸の内を直す事むつかしより目当にてすり直し て星に入れんとするもの也よく〳〵心を用ゆへし 番筒中りを打事 一薬込玉合土壺右におなし間数は三四匁玉ならは六間にて 星の真中十匁玉ならは十間にて有明星は持筒に同 断星に入ることつゝけて五ツ星に入たらは好とすへし二ツ三 一ツ星に入左右に切る事あらは幾度も内外を吟味すへし 五ツ六ツつゝけて是に入之外大きに違ふ事なくは好偖其上 にて中りをもつて筒に上中下の印を付へし口伝ふかし 薬調合之事左数ヶ条 一鉄砲の薬の事諸流さま〳〵の薬方ありといへとも当流これ を用ひすとかく諸流の主意とする処は津主つるハしく して業を軽しめす重く諸事をとりなして奥の手のいかにも 深きやうにこしらへたり秘して軽くせぬは好事をわつらはし くこしらへて無きことを有とするは偽て人をまこはすなれ は然るへからさる事也諸流には薬の品数十種に及へとも 流義には小筒に只一方の外無之素より業をつとめて 一知れは自是を知る事なれとも当世城下に々に武士集居し ておもれか知行所に土着せぬにより鉄砲の業つとめかたく 薬調合等の事を手に取て知る人百人に壱人なり勢へ 薬方の事を煩さるへからすこの書に書たる如く調合すれ は外に秘する事露はかりもなく別の子細は毛頭なし 然れとも塩硝硫黄麻の灰この三物を向に入れて撞和 する時すこしも油断なく杵数を当るほと薬よく出来る 若不念にして撞やう油断するならは薬ことの外よわく 出来る也先大法朝寅の刻より煮懸り長るなれは申の刻 に撞あけかためて切てふるひにかけ箱のふたの清潔なる物 にうすくひろけ入れて翌日天日にかわかす人をして守らしめ 火をいましむか事肝要也度々かきまはして二日計干あけ 器物に入れてたゝはふへし若秋の日のみしかき時分なるは 卯の刻より撞かゝり酉の刻に撞をはり函の中に置て蓋 をしてその夜をあかし翌日堅めて切てふるひたかけて干へし 雑人をよくいましめて火を禁すへし尤奉行人ありて側を はなすへからす右調合の大概を云塩硝硫黄の目利以下 薬制法の次第灰のやきやうこの事左の条々に委し 塩硝目利之事 一塩硝と云ものは根本賤しき土民の山によりて住居しその 一平生臥床なとの下に久しく年を経たる土をほり出しその 土をせんしその境気のかたまりたる物是分塩硝也本草 一綱目三才図会等の書には玉石の部類に入れてもしくは 山よりも出るものゝ様に書たるかともおほえたり又左様心得 たる人も世におほし今日本の製法をもつて考るに 山より出へきものとはおもはれさる也偖日本にては加賀より いへるものをもつて上品とす其外北国東国西国諸所 より出れともとかく加賀に及はす加賀の煮塩硝と云もの たとへは水晶のことくすきとほりかか〳〵と鳴りて掌に入れ て見るにさのみ冷からす手につかすとかく塩気少しも なくて煙然としてさらつくものこれを極上の品とさむ 第二には火打石の白きを見ることくかたより惣体まと かにして水晶手のことくならす内に塩気を含まさる物 これを上品の次とす 第三に塩手と云て塩のかたまりたることくその性堅硬な らすすき通らす手につき籠中にてかきませ抛てみるとき から〳〵と鳴らすぼと〳〵と土くれの音ある物これを最下 の物とすこの物目利ことの外難し打手互生手にをても 聢と善悪を決断しかたし扨薬を合せんとおもふとき かの加賀の煮塩硝にても又その次にても大分の薬は 一向壱貫目も合すれとも小筒の薬を至極よくせん とおもふには二三百目五百目これを能乾し前日に 塵取撰置へし 硫黄細末之事 一硫黄は山より出るもの也上にを鵜ノ目と云次を鷹目と云 一鴉の目は鵜の目の如く色黄赤にしてすき通りいかにも 見事にして玉石のことく鷹の目は鷹の目のことくその いろ黄青にして光澤すきとほり然れとも鴉の目のことく うるはしからす又その次を火口の上と云これは鷹の目に似て 黄赤つかにもましりなく見事なれとも鷹のめの如く光 沢なしその次を火口の並と云これは猶黄より青き色多 くしてうづくもり曽て光沢なくしてかゝはからすもろくして 砕けやすし鵜の日鷹の目は至極のものにて殊に塩硝 よりも其あたひ遣しよのつねには火口の上を用て世上通 用の上薬を合する也火口の上になれは諸侯の打薬といへとも くるしからす扨身ものを葉研にておろし硫黄ふるひにて これを有ふ事挽茶を挽に茄子実と云て細末至極な れは茄子の実のかたちにかたまりてをるゝその如く結よりをるゝ 様に細末する事也偖粗き物はふたゝひ薬研にかけて悉 くこれを押てふるふ少しにても粗き事を嫌ふもしこれ 硫黄をはかやりに粗くふるひたる時はいか程薬味を上品に すといへとも殊の外下品に出来るもの也能々念を入てよし猶 口伝 麻の灰焼様之事 一麻からの白く性のよき矢箆竹ほとなるを揃へて本口四四 五寸末の方壱尺五寸も切て捨中程を用ゆこれを一二 尺ほとツヽに押切ていか程もさて広き庭かもしくは広 原か麻からの多少に随ひ深さをつもり井の側をみる様 にめくりを真木に底も一文字に桶のうちを見る如く穴 を堀穴の底に古き平瓦を所々に立て扨麻から壱未計 に火を付かの瓦の上に投わたしたる燃付たる時上より麻 からな片手につかみ村々にならぬ様に火の上に一面に投け 下成火焔半は燃付たる時せん〳〵にいやかうへに投懸たる 時下より段々全体火に成て猛火ことの外熾になるさて 麻からは火焔一面に成て上下麻からの体も不残火わたり たると思ふ時上に藁を乱して重とへは薦なかけたる様に 下の火焔のすこしも見へさる様に藁を二三寸も懸たる 時藁に炎元付烟あらたに強くなりその藁一面に火と なる時兼て用意して少き竹木等をもつてある〳〵と 蜘手をゆひ置これは穴の上に投わたしてぬれ筵を四五 枚その上に着せて初穴をほりたる土をむしろの上に掻かけ けふりの出さる様にして一夜をあかし翌朝土をかきのけ 藁の灰なかきのけて小より灰を取出すへし若其夜雨ふる 事あらは土の上におほびをしてめぐりに水除を致し麻の 灰ぬれぬ様に用意すへし扨麻から生燒なるを誤て用 れは薬ことの外下品に出来る也能やけたると生やけなると の目利は鴉羽の色に光沢ありてかろき物は能やけたる也 若重くして其色埋み黒きものは生焼なり折て見る にもろく折るゝは能やんたり折にひゝき分てかたきものは生 やけ也この生焼のものを用れは悉く火ほこりと成て筒の 内強くよこれてさん〳〵の薬也よく〳〵吟味すへし猶口伝は かし 三物撞和薬仕あけ之事 薬方 一塩硝百目 一硫黄二十目 一灰二十二匁 一薬をあはせんとおもふ前日右の三物をよく吟味して調て 量目を掛分置て扨朝寅の刻に起まつ塩精を釜に 入清水を汲置水こしにてこし入釜の内に塩硝をならし 水と塩硝とおなし高さにして釜の下をそろ〳〵焼くに二 三刻も焚は塩硝そろ〳〵と解て次第〳〵に湯となるに随ひ 火をすこしつゝつよく焼時塩硝沸立てあり立巻く湯と 釜のふちに焦付やうなるを此べらをもつてかきまはし釜 のふちにやけつかぬやうにこそけて捨まはすへし偖凡七八 刻も焼は塩硝又そろ〳〵とかたまりて水気なくなり懈あ わと云もの立てばつ〳〵と煮えてかたまりたとへは白砂糖 の者もとものゝ如くなりたる時釜よりすくひ出し面に入 その上に灰を入れあら〳〵と押砕き一ツに入て杓子にて 掻迴しとくと三物を搔和たる時塩硝の温気仮気立 変を一先臼のうへにふたなして少しの内蒸してさて撞杵 は回の上にさけ杵をさけ臼の左右に腰忽を置人を二 人ツヽむかひ合せて杵の緒を付て声をそろへて少しも 休息せすして撞する也さておよそ一時はかり撞火かた 二物よく和りたるといふ時硫黄を水のうに入て臼の中にふ るひ其上下よりかきすはし扨それより少しも油断なく 一枠の間も休息せすして二人ツヽ代ル〳〵に撞せ脇より棒を もつて隙なく杵の間臼の中をかきまはして二時なり撞 時薬かわき大ぎに街唐立て血の左右にこほりにより 清水を桶に入田の側に置せらしべにて箒のことく成 物をこしらへてこれに水を付て度々回の中にそゝきほこり 立をふせく事也扨晩景になり取撞あけ也とおもふ半時 はかり前に撞手に少し酒を飲すべし勿論筆に盡したし 度々調合して薬の出来の加減を知るへし 一薬少分に合する時は薬研にて合すへし丸薬研にて卯 より酉に至りて三人計押手をかけて隙なくおさする 時は臼よりも薬よく出来るなり 一世間にて薬に強弱の方と云て様に百品も煩敷かた を立て名を付或は北斗あるひは稲妻なと云近比わらふ へし強きは灰を蓋し弱きは硫黄を増す灰と硫黄 とを加減するの外強弱の道なし塩硝は主人なれは増 減すへきやうなし蓋強弱の道純強の薬純弱の薬と 云物業に好かるへき道理なし強弱は相順つて用をなす 文盲ほと用ゆへき由のなきものはなし其弊かなしいかな 強きかたを惰弱に合すれはよりくなる情弱とは撞のた じやくなる也弱きかたを剛利に合すれは強く出来る剛利 は撞く事の尖なる也故に大筒遠町の薬なとは方を 弱くして撞事を強剛にする事鉄砲の第一の義也大古 大坂 御城 鴫野に御薬調合の場あり太鼓の拍子をもつて杵を採とりて金速間断をいま しめらるこれ即ち権現様の御法度なり鉄砲薬調合の事其厳密かくのことし 矣人夫レ忽に すへけんや 十一日 狩川町 自得流鳥銃 自得流鳥銃巻下 石井蔵書 大野武範著 戦陳 足軽に小筒を教る法 一前篇に謂早打の業は手次立折敷左右前後の早業是 は大身の武士より足軽に至て別に手次のかはるへきやう なし先足軽を取かひ仕入事これ武士の表藝たる事を知 へし戦国の時一騎の武士武功長達する時足軽を預るを いて第一の面目とす故に先武士足軽の為業をよく覚 悟してさて其上には俄に大勢の立軽を調る作法を合点 すへしこれを合点すれは戦場にて足軽をつかひ損はぬ 事也惣て合戦と云ものは大合戦小迎合みな足軽の働 合戦の八分に係れり此段を能武士たるもの得其意て家業 の本たる事を失念すへからす 一俄に足軽に小筒を仕入し事先二十五人五十人七十五人に もせよ能打もありうたぬも有つひに一族もうたぬも有へし戦 園の時さへ猟師を駆廻して足軽の不足を足事なれは いはんや当世の足軽の五人の中に打者五人七人なりては有 へからすこの者とも奉不残召出て玉二ッつゝ立折前を為打て みる時打者うたぬ者は立菱に知るゝに付まつ打者をすくりて 五人にても七人にても撰出し取てのけこの者共はかりを倒 にならへ置扨みつから切火縄をもつて早打手次の素ためを 徐にためてみせよく合点させて又壱人ツゝためさせて五人七人 能記へたるよきこれを揃へて立折前を調へみつから数を取 看板にしらし五七人の手前壱人のごとく揃ひ馬時。残り の得うたぬ五十人六十人を五人ツヽ組合て能うつ者に互 人ツヽあつけ一日に子打一千次或は二千次と定五人七人の に頭側にありて数をとり看板にしるしすてに如此する 事十日の間およそ手数十万に及ふ時は五十人七十人自 然と生付たるものゝことくなるへし扨これを廿五人を組て五 十人生二組として十五人を三組として奇正忌すりの三隊に 用ひ曠原に出て小頭を後に立三陳交易の法をもつて大 頭三陣の間に出没して下知をなす時ハ鉄砲の業と進退の 節とよくとゝのひてたとへは手のゆひをつかふか如く船の臂を つかふかとならすと云事なし此法はこれ和漢古今良将の 兵法にして就中武田家にこれを用ひてたゝかひを教へし 遺法也 一すくり按ると云事有ことの外に秘する事なれともこゝに大概 を記し置む法に番筒にかね〳〵上中下の印をつけ置て上 の筒を按て右すくりたる小頭の上手共にもたせ中の筒を中 の打手にかたせ下の筒越下の打手にもたする事也扨場に臨 むとき用法口伝に在 一爰に大事の事あり当世諸家にて足軽を組鉄砲を打 するを聞に吾法とは雲泥のちかひ也素人の気のつかぬ事 なれは尤也其子細は諸家の為所は唯尋常の足軽を伍 法にて組みてたとへは五人一度と廿五人を五挺ツヽ五度に 枝へ拍子をそろへてつるへて打ことを心得たり素人は尤の 事とおもふ青表紙の軍法者の細工これ実の時左様には ならぬ事にて書面の首理は至極にきこゆる諸越にて も戚南塘か法と云もの皆かくのことしこれを予死法と 名付たりそれ日本にて大つゝら小つゝらと云て五々廿五人 と五人ツヽ五ツに組て進退するは立軽の小つゝら也五十人 ふたつに分て二ツに進退するは中つゝら也百人をふたつに分 て二ツに進退するは足軽の大つゝら也進退と鉄砲と手と 一度一発と心得たるは人をもつて木偶にする付これを死法 と名付たり伍法は千古の兵法鉄砲の手次は今吾家々の 新法也勝手次第人の発するうちに二歳三度もすべし 此段は鉄砲の功拙に係る処なれは伍法の列にさまたけなし 巧拙は伍法の矩に従ひて遅速をもかつ所以遅速り かたねは高名不覚の品何をもつてか別つへけんや当世 の軍法者鉄砲の手法を知らすして杓子を以て定規 にせんとすわらふへきものゝ甚しき也兵法は一人よりして 十人十人よりして百人よりして千人よりして千人よりして 万二千五百人と教戦の法を立る事古今の良法なり其本 一人も足軽になしゆへき手法を知らされは平等均して伍 法は祖へけれとも肝要の手業手の為所を次にして足は かりに伍法を用ゆ立軽の調発は手足便利を第一とす 手の為所をしらすして足のはこふ所計を謂ふものは手 と立と最初より処を世にするに非すやそれ兵を謂の安か らする事かゝるに事といへと母かくのことし况んや三軍の統 るに於てをや戦場の立軽あつかひ様其数かきりなし然 れとも其本を勉めて知る時はその餘は權を以てすへし 是等の事也其本とは徳法の立怪の手次也されと母 此次に大腹の事はかり少々挙て記し侍りぬ 夜討火縄筒之事 一夜討の小筒は火をかくす事肝要なり火縄筒とて竹 の筒をむかふに節をこめて三四寸に切り前のかたる穴に 板をかたく切はめ中に火なはの通る穴をあけ竹の左右 にも小き息出しの穴をあけ火縄をさし込此の筒の前に 手をつけ大縄に持そへ左右の穴より穴の見えぬやうに 銅のうすかねの覆ひの誤の付たるものをもつて竹に語な 打込て穴をおほひ能息のぬけて火の消ぬやうにしたる 穴の覆ひ 物也如此して筒に火縄をさし 込道中を持行先へ行相図一声する時一度に火縄 筒をぬき腰にさし鉄砲を打出す也なほ口伝 同鉄砲為打様之事 一其討所の敵の本陣を兼て物見にみせ其夜の大将 及鉄砲頭も物見して能呑込小頭ともに向ふの的を能 のみこませたとへ闇夜にて分野すこしも知れすと女鬼 角その筋を鉄砲の角並に合せよと一人に々に呑こませ扨 筒の匂倍は兼て肌錬の法に立薬を込折散てはなつ に五十人百人おの〳〵身に人長の逃ぬ所を覚させおきて 夜討響中の目付とする事也吾流義真草行の手前に 一鉄砲の勿信を角に当されは火にたを切ぬ法と教る故 にあた落の時角にほ中といへと母千変万化手前のひとつに 在と可心得夜討の鉄砲むかし草味の時二放とせり今熱 達の人馴諌する時ハ四放まてハうたすへし口伝 時の虎口柵抜小筒之事 一時の乕口とは大合戦に柵を結ひ違ひ違ひ虎口にこしらへ 簀戸を立なとして一時の小口を持を云この時は甲州新 衆のことく成ものに申付てすみやかに土俵を結せ一面に 柵をもたせて土俵の左右より鉄砲をさし出し打へし長 篠の時土俵詰の事を知らざりしはまたしも武田家の 仕合也口決 伏奸鉄砲の事 一伏奸鉄砲に心得有昼夜よりきらす火魂のにほひ甚敷 もの也火を付ては難用火縄の尖を焚調へ煮紙にて つゝみ糊にて封し推実の如にし一同に火のつく様に公ん 怪すへしこの法も壱人よく調へは千百人もかたからす物頭 の覚悟一ツにあり口伝 泊物見鉄砲之事 一敵地に一宿する様に物見に行に至極の足軽をすくり 十匁玉の中り筒二挺もたせ行へしこれは火縄の尖を能 焼とゝのへて煮紙にてはり鞘をはめて持扨摺大打 の至極上をもつて火縄の頃に一様に摺付へしこれまた 平生手錬肝要なり 物見助筒之事 一物見武者敵ちかく行に最上の足軽を土民に作り十匁 二挺筒の金物をかくしみえかくれに見送りせ敵水追来る 時二挺かはる〳〵打立て物見武者を引とらする也すへて 物見の鉄砲は金物を赤銅にするなり大秘事也 同送足軽鉄砲の事 一送足軽に段々あり泊物見繋物見中物見に皆々是を 郷馬一騎二騎の物見には五人ツヽ地理をみて立早馬の足 積をして一二三と足軽を伏置て追来る武者を一の立怪 にて打とめたれは二三は必徐にして列を乱さす引とるへし 一にて打留されは二にて留んこの時打手切を争ふ時は仕 損すへし小頭のはたらき肝要也 中物見送足軽為打様之事 一中物見は様子により騎馬三四十騎も敵地へつかはし帰る 道を当置急に引取時先雑五十人も立るときは五人ツヽ 十ヶ所に立る各玉薬込設て五挺ツヽつるへ打に打払是 は敵大勢追来るにより五挺ツヽ段々につるへること也たとへ 一玉毎に打落さすとも段々にしけくつるへて打立るに付敵 の騎馬者とろに成て追青むに付味方より迎備の騎馬 乗出し敵に構はすみかたを引包引取也扨送立軽至極の 手たれの打手なれは二の玉をもつて敵の引処を打落す へし鉄砲の手練熟するに有へし立怪の立やうこれ又肝 要なるへし 一騎打鉄砲の事 一細道にて立軽珠数つなきにならへて打時五人も十人も先 より一人ツゝ打放して折散大跡の者ゑいと声を懸る時 惣括一度に立又はしめの如く先より打て折散大跡声を かくれは一度に立上りて打いつれも打て折敷薬を込みて 大跡のこゑを待事あり度も同しこれを折敷段々と云 一鎗鉄砲之事 一壱番鑓二番鑓と云ものは必鑓脇あるもの也鑓脇のなき 八すことの鑓にあらす鑓脇は刀弓鉄砲也鉄砲は其場 によりて一二間も其余も遠くして打て不苦と景憲の説 に見えたり必折敷て膝台を用へし草の手あつゝ立たる身 にても其場その時其人のはまりに可依若打逃たるは鉄砲を 捨刀をぬき飛かゝりて刀にて鑓脇を詰へし猶口伝 攻守 自二矢抜間一打二拂城外之歌事 一矢さまより城外の敵をうつには土俵を矢挟間に塀より壱尺 はかりも前に立り可身は土俵の陰に居て玉薬を次土俵の 両方あるひは土俵の上に筒を其越外を打こと也如此せされは 城外よりの鉄砲にて挟間をとちられたる時正面より正面 の歎を認る事成かたしこの仕方にてはいか程外より打といへとも 小筒の分わくは内に打込事成かたし如此しては扶間の正 面に打にくけれとも挟間毎に如此すれは此方の歯は脇より 打脇の正面を此方より打事也すへて挟間より打とても筒 を持する物やはらかにむつくりとせされは筒おとりて中らぬもの なり土俵にすり付たるか左なくは手ぬくひをたゝみて長間縁 に敷思無邪にて打へし筒長くして重きほと能中るなり 籠城の鉄砲の達人一人あれは塀の手こと〳〵く上手にする事 自由なり 自立矢倉打払城外事 一夫矢倉は塀のひとへ柱の上の横の板をせたして其板の上に 上に居て塀覆の上より外を見こして打こと也むかしは 楯を用ひたれとも利用よろしからぬに付今その沙汰なし故 に此時も土俵を小くして塀覆の上に置打者面をかくし 一土俵の左右より筒をさし出し打へし勿論やはらかなる枕 をさせて筒を安すへし走矢倉の下は矢挟間を守る 一人有て打事なれハ相たるひに声をかけ合せ毛付を設 一化失なきやうにする事也毛付の矢中る時は小頭断を立 て証人をとりて帳面に相記すへし 石落塵落より見下の歌を打事 一石落塵おとしハ横矢のためにまうけたる物なれは石垣 を上る敵見下と左右とを打はらふ事也筒劣玉なれは 心得なくしては上下の敵見下の敵は玉ぬけ出る事有是 当流の早打妙処ことにあり軽木をたしかにつかふ時は如何 一様見下ても玉ぬけいです若まゝ至大におとる時は玉に歯 形を入て初の玉ふたつ計打ときは心よし若左なけれは 立消する事もおほつかなし心得へしさて石垣を上る敵は 冑を打事習ひ也いかほとの小玉にても骨をうたれてはた すり雉 難し 誰 城木柵抜之事 一城外の四方尺の木或は柵の木に播事たとへは大阪の冬 陳鴫野の棚今福の柵なとのことしこれには小筒に心得 あり籠城はすへてその覚悟なれとも就中柵をふりて出張 する時は藁々町間をつまひらかにして一町二町に柵をふる に柵いか程ありても一二三と所々にふりて先二の柵にて 敵を防き二の柵を丈夫にして土俵を置打手を撰ひ 頭筒と云ものを置歌に一の柵をあたへて敵これをやふり 取はらふ所を二の柵より毛付してえらみ打にうつ事也 惣て今の世の合戦は相かりをきうふへし敵を待て たゝかふに利有強敵とみる時は一二の業を能して柵による 時はいかなる敵をも鉄砲にて打すくめて可也棚のふり様 問合一二の節を知ときは千人の銃卒を以て五万の 敵にも勝へし二の柵の銕砲化失なきやうに打事一二 の棚の間町間を能知れは悉く皆地矢倉の内に敵を引 付て土壺にのせて打なれは一放しといへとも化失あるへ からすこれ鉄砲然達に至て古今の変化かくのことし若 敵地矢倉の内に来らさる時は一放しも不可打と軍法を さたむへし是足軽の扱ひ節要の場也 竹東打之事 一此束打は甲州の牛楯これ也これは攻手より城にむかひ 城中の銕砲をいやかりて米倉丹後か創始せしもの也当 代の武士これをもつて思索すへしその時は小筒はかりの 代なるにより牛竹束にてもその功莫大のほまれとなれり 唐の竹牌米倉か大方和漢同時の製也然るに今の 一世大筒あり工夫せすんハ決して城にむかひかたしされ とも大筒といふ物重くして場所に嫌ひあり其上小城の 陳屋城なとをせむるに取あへす小筒はかり用る事もまた 兵法の権也牛竹東ハ立軽五人ツヽ其陰に伏し扶間を 五ツあけて銕砲を差出是を持て進退自由にして身 を安し矢業をし城の狭間を閉て奇兵を城に乗する 術也然るに城よりも牛楯の扶養を閉て打事なれは 其挟間をかこふの術可有秘事に曰藁を沢山に用ひ て注連をなひ此来の表を張る時扶間の在所少しも 知へからす常に挟間のうへをわらをもつてふきたる物なれ は城より閉るに由なし此方は臥師を用ひて城を打は我 鉄砲の業に於ては少しも妨ある事無して却て業に便利有 之尤秘極とする術也猶口伝 まくり攻穴仕寄小筒之事 一まくり攻と云は城の地利に依りくつ如此手前より 一堀をほりて穴の底の土を向ふへまくり上ケてみれは穴の上 塁へとして土手となり穴一倍高くなりて穴のふかさ三尺 なれは向ふの土手また三尺と成て至極仕奇に便利なり 爰に又至極の秘事あり小筒中筒ともの壺をはなしあら かしめ城の狭間に当て筒に匂倍を付地に一面に並へ そのうへに今堀る所の土を切上て筒を土手下に落て打 手堀の中を往還し一放しきりに捻を抜薬を込打出す 時薬込む者と火をさすものと代に入かはりて矢業をする ときは至極の便利言語に尽しかたし一放切に見込と いふわつらひなく向ふにあたる事又たくひなし尤筒を仕掛 下に習ひありこれを一挺千挺の秘伝と云至て秘すへし 尤口伝染し 矢狭間開様之事 一挟間を閉る事挟間ひとつを牛竹束ひとつつゝにて 受たり鉄砲五挺にて閉るこれ城中の鉄砲を打すく めて一式挟間をあんさせぬ仕方也これに頭筒と云物有て 五挺の真中にありて左右四挺の筒を契けて業をて 致これね兵最上の法也頭筒三十目肋筒十匁は至極の 足軽也頭筒十匁二十匁助筒六匁両玉は其次の足軽也 一統て攻守の打方船軍柵場の鉄砲は此法を用る事 至極の良法也其外戦陣攻守船軍の打かた悉くあくるに 遑なし就中船軍の小筒は攻守棚援の法におなし故 に別条に不記其本伍法の手組をかくし早打の手 一練に達し地矢倉八段の裾を心に認るにありもし此三ケ 条を未熟にして合戦を致さんと企る時は韓信みつから 兵を背し子房はかり事を決すといへともいまた戦ひを 企るに由なしと知るへし 木把場作法之事 一木把場を築くの作法先玉落を其字の城都主殿 の方を背き南に主殿あらは北を玉落とし北に主殿あ らは南を玉落とすへし其外民屋往来の街道尤遠慮 すへしされとも大城郭の四方武士の居宅商賈の家を 縦横織る如くなる処は玉先を避る所なしその時はいかにも 燥を高くして帝玉の用心し梁を築て然るへし 一玉先気つかひなき所にて立派を用る時は大梁の高さ 八尺横八尺に山をまつくへし根盤壱間上の築留弐 尺朝鮮芝をふせてよしこれ大概也 一小梁はこまかなる砂をふるひ大概にかき立よりかゝらせる 也この砂の高サ大概の半分大概の八尺を三ツ折にして 高さ四尺下のさしこし四尺の砂土を築立真ゆより二ツ に割たる形なり 一木把を立る事四尺の小概を三ツ折にして二ツの高さに是 二尺六寸 一矢取塚高サ七尺横五尺ねり土にて大夫に築立へし ねまり壱尺八寸計ねり塀の仕方にすへし 一木把の寸法十五間にては五寸六寸星はその半分を用ゆ 早打には八寸の角に二寸の星を用へし三十間以上早打の 木把は八寸壱尺弐寸また四十間五十間壱町に至りては 横角にして板をもちふへからす人家の心得なれは蟻広し て其間に八寸に五尺の象を付て地より三四尺の所に ねらひの星を設くへし 狩り出す 自得流鳥銃付 大野武範若 全 大銃守鎮去し 清水止橋抜 大銃守鎮法 守職 荒井泰宿閉門副贈会ヲ 以テ購入セル竹関博士 神界亭吉田藩蔵書 石井蔵書 一武士の守職とは常におのれか役所に於て賊のこなし様 を平生心かくる事これ草一の事にて是を武藝の大目 当とも大規矩とも云士たらんものはこの所を平み二六時 中に鍛錬工夫すへし是武士の肝要志を立る道この 外に有へからす蕃鎮とて遠国のおまへ城を守る者 は常に円枕としてころ〳〵と転安からしめて此枕に 弐個肝要の教戒の古語を彫付臥度ことにその油 断をいましめわか心に示し怠りを責てしはらくも 安く寝入らせかやうにせし事有これを警枕と云これ 漢土良将の鎮を守りし善行也とかく武芸といふ ものは実の場に於て必天下の人の覚悟せぬ事を以て せされは向ふの人も相応の事をしてわれに勝人とする事 なれと輙く人に勝へき謂れなし一人立むかひの勝負こそ 高の知れたる事なれ専城数万の歌を引請たるは数万 の人のおもひようぬ趣向をくてたてされは勝を制しかたし 大鏡鉄砲は一人立向ひて手先の上に勝とはちかひ 法をもつてなけ万斤の大物を自由にし万矢倉にて 一数十町を打へしいかなる大軍巨敵鉄盾をつき並へ 来るといへとも唯玉ひとつにて微塵にし如何なる堅固の陣 営をかけつらねたりとも棒火矢をもつて一時に焼はらひ 玉薬矢根たに尽すせ可命のあり人かきりは賊を失たけ によせつけさるの術必自ら試み悟りて安堵してさて其 餘力には其外の藝をも態にして可也貴殿は職分小 筒の役なれとも比年は大銃の名 幕府迄も聞えて人是を知るなれは今は辞するに所なし 此心かけ昼夜に無之時は冥加もあらす又武士の心法にも あらす故に武の大藝を習ひし人はことの外其心かけ大 事の事也一人に敵する剣術なとさへ名を得れば夜も 安く寝られす日夜身持むつかしこと承る必心得有へき 事也華をならふに真実たにあれは其芸いかやうのむ つかしき蔭にても我持領にして空の場にて其道具に取 付討死すると覚悟する時は天下の豪傑に恥なし若然る 時は其薩伎は下手にもせよ心の上手と云ものなるへし只 恥へきは名聞を好み職分実場の決断なくして武芸を このむといへとも己か主務を外にして地伎に迷ひわか職 ならぬ事を人に教て妄りに人の師たりん事をこのむ 曽子曰我日三省吾身為人謀而不忠乎与朋友交而 不信乎伝不習乎と習はさる事を人にをしふるを高坂 霜臺もほれものと申され候これひとへに武室にむまれて兵 学の本をすこしも知らぬ罪なり武家の学問と兵法の 学文を外にして池を務むへきいはれなし故に多藝の人の 功を立たる事和漢古今に無之多伎をむさほるは心諂ふ に出つ尤小人の事にして壮士の恥る所也とかく守る所を意 却すへからす 守鎮 一鎮を護るには賊の来て己か役所の持口を押へ扉をひしと 数町のあなたより釘付にして城中何万ありとも一人も 出る事ならぬやうにする事有へし今の世この術歌に有と 平生に工夫して其乕口の縄張勝手を合点してその 地利を常々下巻玉先達而此方より賊を釘付にする分の 肝要也口伝 一賊の来るに我将の命を受て一二里も出て可打払地利益 々分別肝要なりこの時は大筒はあしく百目已下五十目 三十目二十目十匁まての也偖右の地利は兼々四方に こゝろを配りてよく町見を見空鉄砲一挺にて凡何百人はたしか にて打崩と平生の積り心かけ是を千里に勝するとは方也 一賊船より来る時要害の岸上に大筒を仕かけ歎船いか程 も容易に打摧く工夫有へし風吹の大事目付玉拵矢拵 至極相伝の旨あり口伝ふかし 一城中より打時大筒挟間切明様いからすへきと厚生工 夫すへし委細奥に記せり 一城より至極の大鏡をもつて敵をうつて列を打よりも 一営をかけさせてよく的をきはめ我土壺をかためて打崩 すやうに心得へし如何なる時は賊遺類不可有又列を打と 云は要害に待チ伏て打崩すへし 一鎮と云ものハ多く外郭に至極の大銃はそなへ置もの也 是外郭は地形も低く平にして桁を以てかけわたしを 可打払地勢なれは也此心得ハ寇のおしに下る道筋は一筋 か二筋極り居るものなれはこの筋より如何程の大軍来 ると云事を知て其筋に大説を仕懸る其土台車臺こ しらへ膳尤大事也さし矢高櫓各築法什要也口伝 一惣而至極の大銃重さ五百貫目千貫目にも及ふものを 城中塀手より打出さんなとゝおもふは尤口惜し扶早より 打と云は手詰にせりつめられて弓に筒等を以て七り合 時は格別なり至極の大説十町廿町の桁物は三十町 五十町の高櫓は不及言巻く城外に筒を運ひ出し兼々 其地理を下墨置玉筋の大事を為へき地利を考へ歌 を矢長によせ付る事不可有併城中にも宜き地理あらは その地に大物を仕かけ姿あるこに打はらふへし 一大銃桁打等の邪魔になりハ塀の手悉く取払ふへし塀 を頼む事はむかし弓小筒にて一二十間の内外まて肝要と せし時の事也大筒の桁をもつて外より巧手に打るゝ時は 塀矢倉豈一日もよくこるへんや鉄楼石鷹一時の間に激 塵となるへし然れとも塀矢倉を大事にせんより外より 巧手の大銃の面出しする事ならぬ様に此方より上手を 不為時は城を持事は当代かなはさると覚悟すへし 一百貫目以上の大銃車台なりは車の両輪の喰入らさる 一様に土壺をかたむへし口伝 一石火矢壺を築く事普請の法条々有之口伝尤多端也 一車なき石火矢は皆芝付なるへし芝付尤好し是はしい さること各の如くならす尤本室のかため肝要也この時は 魂土壺と云ものを多くこしらへ置て前後に介上大槌 をもつて強く堅むへし何も当世のよき鳶の者の人から を吟味して輪木手子巻轆轤みな此ものを用ふへし 秘事を見すへからす猶口伝ふかし 一高櫓をもつて遠町を打はらふ時は何時も芝付也たとへは 筒長さ六尺ならは筒半分地に入るやうに土台を築て 是土俵を以雁木を畳上三方角木を柱に用ち俵 崩れさる様にし土壺に匂倍をもり付石段の如くつき かためをして綱を以て筒を仕懸る此土壺尋常の土 臺とは違ひ至極大夫に右堅時は筒を引載る時崩れ て人死あり依之三方の土俵留大丸太角柱木の大 杭を打て土俵めり込潰れさるやうにする其外志堅め あんはい筒の運用万事鳶者并金銀口伝 一城上の塀取払て見苦敷所は其まゝにして大説の勝手を 以狭間を明へし尋常の狭間よりは定る大物を打出す事 不可成とみえたり挨閲の恰好は三四五の曲名を以て本 図とし切崩すへし大小ハ筒によるへし是亦其筒の大 小によるその時に至て敵付の方に筒を引向その筒云々 の桁をはへき規矩合を考へ扶間の左右をも考へて今天 下に大筒狭間をひらき塀裏にその心を用ひたる城無れは 其法知る者なし普請の法万事口伝但し是は前の事也 一筒後座る事少といへとも扶調大きなれは筒を洗ひ軽木 をつかふ事挟間をもつて自由にすへし 一込者幾度も嚢を用ふへし高下各同然也 一さし火は幾度も大口にすへし壱貫目以上の大筒はよの常 に打事なきにより皆わたし火にする事は尤非強なる挙 動也殊にもの前火急の処にて壱挺のわたし火言事は 曽てなき事と一心得皆大口を以慥に火をさすへしさし 火道具拵やう万事口伝 一棒火矢を城中より打出す時は塀の手より十間後へす さり高さ三四尺幅一間はかりに塀の手に順ひ田のうね を立たるか如く土俵をもつて壺を築立その上を一面にな らし筒を以蓑木をならへたることくに仕懸へしこれ常々 申学の当流の妙術也筒先に塀矢倉多門等ありて都の 陣営曽てみゆる事なしといへとも少しも苦しむ事にあ らす口伝 一出先をおさへ討事尤肝要也その鎮の四方海陸寇の来 類へき道筋を平生幾重にもかんかへ置急々その土地に 至り賊かしこに屯せはこの処よりは町間いかほとあの曠原 に来るは如何程こゝに陣とらはこの地より何程と云事を かね〳〵と下墨百目已下長短中尺各筒の刀量をはかり桁 をさし可申かね合を会得してさて其調に至る時はその地 に至り土壺を築く五挺も十挺も同土台に仕懸る芝付 にして幾放にても土台の少しも損せぬやうにこしらゆる事 此拵様ねば大に苧ずさと石灰を打雑へよくかけやに 可打ため前後に杭を打しからみをかけ上並を直し その上には極上の細砂をひとへ敷筒敷を一挺にてつゝに 敷此桁打の時ハ殊更筒口に砂入事ありこれは筒敷を 濡し壺に垂るゝやうに敷へし扨角斜上下少しつゝの加 減は筒敷の下の細砂の濡たるを以て介上押直すへし 如此して打ときは百目に壱分六七厘五十日に二分五十 目に三分を以打時いかほとにても少も土屋損せす玉薬 込者ときつかけを合るものと両人にて仕る時は凡十挺計 を廻り打の早打に打出時はこの処におしむかふ敵何十 万ありといへとも一騎もこゝを過る事能はす右玉薬込 の間は十匁三十目の抱筒を以側より助之是をすけ 筒と云此打方を流行にて出先出さへ打の早打とて 妄りにつたふる事に外す紙面に載る事にあらす此前後 二ヶ条は別ての秘密にて候若疎略有之時は冥加不可 有之候 上への忠義を存して委細に相伝するもの也併かやうの 事は昼夜すこしも調断なくたとへは住吉川口の原釣 す事よせ如斯の道理を究め出きて必これを以功を天下 に立んと安心決定すへし容易の事にては功名をたて かたし 一賊の神金道嶮灘の要害にてなくはその土地を考へ あるひは大川堤大地堤曠原の要路に柵木をめゆも 大夫に二重に詰る也一の柵より二の棚の間一二町に 不可過か偖兼て二重の柵中共に一面に大筒の 土壺を可設築法前におなし扨賊おしむかふと聞かは 一の柵に張出し敵を打くつすへし若賊莫大の大軍 にて後陣より強く進み先陣を押立来る時は一の棚 を捨て彼にあたへ二の柵の内に潜る口伝扨城一の柵 に来て柵をはらふ所を一丁二町の地矢倉に引のせ 打立る時は唯玉一ツをもつて敵陣矢道を開りせる 場のあけたるか如くなれは制見や数百の玉牧慥に百目 壱挺にて人数一千人迄は小児にうたせても尤心身 き事也め此して賊軍皆敗軍に至る処を奇兵 を以斜を用ふへし時の意にて数前衆こと〳〵く敗 軍す口伝 一籠城と云ものはとかく敵に近巻をさせてはわかいまほひ 究る歎遠巻せしき遠町の術にて打はらひ火矢を もつて焼はらひ近付事を得さるやうになすへし天下の 蕃鎮とものは小冠の馬に籠城すへきものにあらす若 さる事有といへとも天下皆赦なれハ心をたしかにして いか様の抜挙なる働も大になりやすき職分也返す〳〵 守の一字を忘却すへからす 一夜窃に忍ひ出て陣営を焼には抱火矢にしくはなし 我流の抱火矢天下に有之事なし能飛よく焼る いかなる嶮岨千仭の絶壁を凌くといへともその筒の運 用しかも易しはや三十目以上の銕砲め此の土地に持 行事あたはすむかし高野山に僧徒騒動する事有聖 流行人派鬪諍におよふ此時和州郡山の主本多能州 公出馬の手当あり先師大野佐五右衛門出抜を以高野山 の訓道を審にしけるに彼僧ともの寺を図りさる地より焼 討にせんには努々五十日已上の銕砲運送する事も決して なりかたきよしを出抜申すにより各十匁筒三十挺を以て 全く焼落すへき術掌をさすか如くに先師七重の試を以 て為せし事あり是当流の諸流に出たる所以也 一鉄砲の中に拾白玉玉程重実なるものなしこれも他流の格 玉はその益大にすくなし尤用ひ様にてその塩の大に優 劣ある事は拾匁計には限らされとも尤くその泣の秀たる は十匁玉に及ふはなし玉は二三町以下の早打三十目筒 に優る泣あり棒火矢は雑木をもつて八町まてよく梅 へり百目玉といへとも大概よく用るものハ是に及ひかたし 然れとも兵法にすこしも心なき小人路に草臥たる輩 はたま〳〵其術をきくといへともその意彼にある事なし 嗚呼かなしいかな 可レ乍自二異国一来石火夫覚悟 一世にはらかんと云筒ありかの入子筒の事也大形この筒 四五百目玉なるものおほしその筒長四五尺是は大かた目く ら筒なり 市異国より来る目当なき 是等の筒みな芝付を以 筒をめくら筒となつく て勿信桁打ともに仕る事即是自得流の術なり尤 車臺の仕かた二振あれとも大体の打手はこの台を知 らぬか能なり我術の儀は諸流の源を糺して無用の 事をとりのけたる物なれは自得の場に至らぬ輩他伎 のまとひ有時は芝付の術を信用せぬは打そこなふ故に 二様の車台はかたくをしへぬ事也兎角芝付にしく事 なし世上に又車台の至極を覚悟したる打手無之事 なれは況んや芝へ付の妙を知るものなし工夫有へし右の筒 塀により打時筒の大小をはかり土壺を築く事はし めに言か如し 一右はらかんに打様あり入子の柱のしめかけん忍孝時は 一栓ぬけて飛事有然る時は大きに怪我する事なれは 栓のしめかけん大事なり一度〻々になめし皮を敷大鉄 槌にて堅くしむる事第一也 一めくる筒を打時六ヶ条の習ひあり一に地かねの目利二に 巣中三に中墨田に劣り五に同眼六に火門右六ツの 要枢を明にしてよく此筒の桁をさすへき地盤をしり さて土室を築き輪木博しにて仕懸から惣て銕砲 と云ものは小筒より石矢に至りさし矢の矢倉を打究 置事たとへは脇さしを握し根刃を付置におなし事なり 如何に手心よく打かけたりとも元来の飩刀は刀輪も入る事 なし如何ほと薬込むあんはいよくとも元来の鈍銃は遠町 桁打の大事に用ひかたし大説の根刃は園家の備力剣 のねたはは一人の備也世に一人の備は知る人あれとも国 家の備を知る人のなきてこそは口をしけれさるによりて大 事に及はされは石火矢に火を入へからすためしあたりを 不仕込置筒をもつて剰火急の時に至り下手細工に六ケ 余の吟味もなくめつた打にする時中〳〵桁なとの術可罷成 事にはあろされとも人のためはかりの忠より不得已して 心の及に程は書付たる是より上心を用ひて事に臨み 功をたてん事は皆その身の心かけ覚悟にあるへし 一入子筒には入子二ツ栓二ツ鋳槌さい框有へし火をさす 事渡し火にして三四尺ほと筒の後の方に土壺を切落し 穴を堀土俵を畳上ケ火前より穴の内に階道を付置 筒に火をわたし其穴に退くやうに拵ふへし柊の向ふ気 遣すへし条に口伝 右之簡可打出手次之次第 一六箇條の吟味を遂け土壺に引のせ挟間に向はせ入子に 少薬を入入子を込栓をさし素放をし渡し火あんはいを 試み大概上下左右のきつかけを合せ入子をぬき実の入たる 入子を込入栓をさし彼なめし皮を敷権杉持にもつやう に鉄槌にて栓をしむかわたし火を仕懸扨見込高下角斜 をよく合せて火をわたし扨退く事也尤手伝一人は込かへ とはたし火と火用心と怪木捌とこの四に気を配り油断 すへからす大用心肝要なり総て入子筒はことの外利用悪 一敷もの也大銃の奥の手を知らぬ外夷より来るものなれは 鎮を守るなとになきには似るへからす 一入子筒より外はいかやうの大筒にてもわたし火にて打事 有へからす筒数一人にて打出す時つるへて放なとには渡し 火に為されは打かたし皆この巻は大筒の業のみ略書付 たれは大体の用心にて一放も罷成ことにあらす能々鏤 練工夫有へし 此書大野翁武範所自筆記也本蔵在于黒羽侯庫 中以余推尊翁特甚侯乃恵賜之実望外之幸也為 吾子孫者宣珍襲之以勿散道 文政二年己卯秋九月清水正徳識 同三月一日 にす。