八條學人論
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府内洲1
八條學人論
八條学人論全
八條学人論序
苦
楽
桐
伝
天人地
八条営人論
対馬の一心一体うの毛髪筋のはづれ迠も
及ひ苦楽の二つを兼て手綱とせり古
人の語に云手綱は雲のことく霞のことく霞のことく霞のことく霞のことく
とし其体あ利ながら其形なしといへり
一誠に馬を乗人能此理をさとりなは
何をもつてか乗手と馬と別たる稲
を見る事有ぬへし馬の苦む意を
は我もともに心をくるしめ馬のたのしむ
一心をは我もともに心をたのしむへき物也
叙畢
八条学人論
一東照宮大権現天地をてらしたまゐて孤独
鰥寡の人も心にうれひなく天下遊たかなり文
道武道のまつりごとみたれす人力所遁天之
所レ覆地所レ載日月所レ照霜露所レ隊人界に
生うけたる物は万物牛馬にいたるまてかけ
まくも此時をよろこひざる物はあらぬ成面し
一乗形の文をかさり古への目録を集て書共
を作乗手の世にひろむる事其数を不知
去共皆章段の教をみたして自家の本分を
くらまし永馬の心にたかへり常に我深馬の
泰学人論
む故を悲て草戸を閉て虹此文を抄録す
然共愚か亦逆倒の心先に立は古人の得道に
至りかたく馬の心を背き亦手綱の文積不足
これを見る人なむ此嘲あるへし
一詞を荘文法をいみしく書集る事は本
より短才無能の自及処に非奇願は人目に
一ふれ手に行見て嘲笑つへきは唯此文の望
一なり世話の物語にも人の上は我身をなをす覧
となり下手は上手のかざりとも成といへ利
一昔より乗形の事集出じて梓にちりは次
世に広むる事其説も見へす史記にも事
秘密成レ語池以敗といへとも今更亦更亦身事いわしとに
もあらず皆常代に歴有手綱なれはよしなし
是葉手の見るへきにも非ず意に浮倦に
書つくる言の葉我何をかいとふ趣き
一ある軍書を見ければ偏に悪馬を直す
手綱をことわる吏によからぬ事なり次に
また目利の理を書添たるは何事ぞや軍馬
の教になし本より陳馬の作法なしとにもあ
らす恨らくは唯広軍言に事かきたる
とも人の狸はんなれ
陳馬の教は能心得た判し軍法功有
八条学人法
人に尋きく惣し
一乗方の内に有軍馬と云事は馬乗者共
の世渡物語なり是を高家に習はせらる
起き物にはあらす指ていみしき理もなし
一馬を乗に左右を隙なく見かえり目付
の悪は不可成と常の教なり方集次第にも
十五の目付有小沼といふ乗手の、云馬を責
一徒目付の足りなきそ其事曲となり軍の
凍にて悪し前後左右を見るか故に若落
武者などゝ敵の見ん事りやといゝけり
一白馬の節会とは馬を見て年中の災を
除く祭成馬を朝毎にみれば其日毎に災難を
のがれ凶事来らすとも古八条の書にみへたり
一古八條とは当流にいえる詞也内匠八朱
転倒の文を撰せられてより新八条流と号
新文おかれたるいわれに今爰に残所の八条の
書を当沈にて古八条とはいふな利
一助賢ほど楽手を憐みけるはいにしへいまに
もなかりけるとぞ
一今の乗方をみれは是も新流とつくり
かれも当流とて教を別に立たる事は初而名誉
の事を録し工夫を起せしや覧其名目附
或は唯流外悪馬の説なりとある楽手のいふ
なり亦世に新流といわされば奇特ならぬと
かなを心元なし古き詞にも道は常にある
珍しからぬ事の儘に心得たる万惑へ
からすともいへり
一八條当院に伝えける琴の書といふ物の
本は助賢の作せられける文なる物なり高仁一
一気此書を撰ひなをされける誠に志深き事
ともなり文段あやまれる迚改めたるにはあらす
一高仁今は此世もよりけるときけは此人をみ
ざれとも限りなふ心ほそけれ
一万曲有馬を乗時こわきと心に恐るれは
其馬かならすのれかたし速に此思ひを厭離し
つべし祇心頭に一物もかゝわらす其身に意を
つくゆからずとそ文の書にも記しおかれたり
一人の家より我家人の流より我流と心に
とるは常なるに大坪は小笠原に改め八条は大坪
に改むる宿拙なし小笠原には父母中道あり
大坪には善悪不思の外あり当流には至極
不伝の理あり然るを是を捨彼をとらんや
一是に迷かれを求る人は勝れて疎成と謂べし
一上手といふは心様悪からず鞍かたち證負様
義綱取積いとやすゝかにみゆるをいふ
一身不浄の時万心に懸る時馬を乗へからす
一数の手綱を覚ける馬乗己誠に上手の位
ありとも人のみなへわろきは下手成本より。
手綱を不知人の唱能は又上手といふへし
一馬は乗手の意を待といへども乗手は馬の心
をたてす是に依て乗手に二念の思あり助
賢の心をもつて此理を知るへし
一大坪流小笠原流八条流の元祖は公卿殿上
人の末葉にて乗形を学文して皆一流を
建流せり其末流附法印団をつぎて三流
悉天下にひろまり民間に習伝えたり亦当時
馬の家と云は八條を家といふなり
八条流当家一代の伝授には幡恣獣怠を
止め我知工夫もいらす他流雑説もなし附法
印蛮の時は重而起請文にて行家かな利
一世間にいゝ風俗したる事は何れの馬も
血を取事禁忌あるへし血虚すれば高痩
れ肉やせ毛枯るといせ利又血をすつきき
馬を針灸せざれは血落馬ふるくなり身を
すり彼毛を傷り万悪きはなに成驪集に
春論て血棄如レ純冬血惜如レ金明せり只
治を安闕の序に明勢利大全に鍼灸を
明せり先哲吏にかたよらす既て一偏に覚
へたる最六ヶ敷血を取て病を治せは針す
べし悪きは取置からす
一上六脈の針下六脈のはり亦此内に曰の
針は得道の伯楽すくなしと老き士共の伝へ
ける凡針刺には預工省禁の事あり忘日
をゑらひ庭かためには四句の文を唱六字真
言にて加持する事あり鍼灸の図にいわく
一風縁是禍害雨是絶命空晴つ曇つ
あらそわば必医治すべからず
一馬の爪をなをすに丸爪を好ぬる人は何の
馬も丸瓜に切たるよしと突ける亦角瓜を好は
何の馬もかく爪に切たるよしといへり是も
赤むつかし瓜大き成は丸瓜に廻したるよし
ひづみて小き瓜は三方一文字にかくに打
なり是秘所の事なり
百首の歌瓜の部に
つめによりいかすころすの打所
しらずはよしやうたすみもおけ
そる瓜とひらきねつるも入つめも
見所ありてなをるとぞありてありてなを
八条学人詳
よきつめも下手のてにかけ打ぬれば
祇一度にもすたりこそすれ
一甲馬の爪切やう血落馬の爪切やう
方口強馬の爪切積前かける爪切積此外
爪に伝授あり瓜の書に綿之巻唯受
一人巻口伝抄四季久巻にも魚々の習
ありとかけり
一馬の前筋尾の筋を切る事はいかなる
ゆへとも心得ず馬を覚えし人などは誰か
此理を知ざるへし偏に生を苦しめわ
ざわひを招き矢有事の相是よりまさ
れるはあるへからす
一前筋尾の筋を切事は高家より初りた
るとの其例もなし亦馬を療する者初
ける教もあらず又唐土より此事を習
伝えたるとの証文もみへず亦昔より此国
に建侍る由来もなかりけり祇近年
博郎といふものゝ釣出にけるわざにて一丈
誤て百犬ほゆると利世に流布しにけり
一足筋を切たる馬は坂を下りにも坂をの
ぼりにも大がい倒物なり本より細橋ほそ
道など乗がたし常にも少草別ぬれば
八条学人語
足ひきちからなく蹶てわろし或は乗の出
懸る馬など足筋をきれば必乗もとま
るものなり
一尾筋を切たる馬は下坂に鞭はづるら
ものなり本より細橋ほそ道なと戻に
悪し常にも隅にて小輪に廻せは廻ら
ずして毎度ころぶ事ありたとへば舟に振
のなきかごとく尾なき鳥のかへる羽ならぬが
ごとし
一匹先に灸をあて病を治する事にも
馬の体に規雑をくらべて療治する物を
尾の筋を切はなづ事はいかにあるべし
一筋にあたりたる馬にて遠路を乗深
川なと渡り山野海岸をとをる事吏に
思ひ寄かたしたとへ其内にやすらかにこゆる
馬有とゝいふなる又其馬の筋を切事なくは
なをつよきおもひあるへし
一諸流の乗手に乗方の書を尋るに
昔一沈を立たる名人此業を工夫せざる
中学安蔵医師を聞に唐土我別書積
の内に此業なき由蝶仏説儒論神道の
内に此業なきよし髪見るもの間人有知
無智心に慈愛惻悃お不知といふ事なる誓
一氏吾周腹理一分殊或は死此生彼の佛語
を知ぬなる覚こゝをたつねて悪徒を佛歌
法敵国敵と破せり衆狼悪獣の心と破せり
一天理因果を不レ知と破して学人論に出し
撰物なり聊かまづ母書には其大徳を破せり
重而此事を一書に作り自今以抔を破せり
なるべし後老これを見よ
第一前筋瓦物供笏を切一統六十余年天
下にはびこり中比副禁するに法を破り
悪徒猶奇恃名誉の名を得たるは
一、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、〇〇
馬の天災と見立疫癘早魃飢饉の妖
一災と悪徒を破せる道理を立
第二見聞覚知ともに一つにて互に因果をの
かれず悪徒終に類門亡る道理を立
第三世間に忍旋入めぐりて人たる人のうへまて
此恩行乱にける彼悪徒面を諸人にさらし
一無慚の辱を不レ思名を一天にけがす先天
神地祇の罪に責られ現に猶無量の
因果さらす成置し尤悪徒を天下の妊
一恠と破せる道理を立
第四乗科鞍下の馬は筋を切面からす
バ新辺人計
第五門出国入の時筋を切たる馬は妖怪不吉なり
乗へからす
第六足を取まどひ拍子に入ぬ馬は筋を切へからす
第七老馬の筋を切へからす
第八料体骨肉やつるべし駒の筋を切面からす
第九仏敵法敵国敵と悪徒を破せる道理を立
第十佛神は天地一体慈眼視衆生の心を示天の
一生せる質を照ざる門前に筋を切たる馬を乗へからす
第十一馬に智仁勇の徳あり質に国家治乱を
見分道理を立
一前筋尾の筋を切て足船を高く瓦を跳
させる馬に苦をかけて我心をよろこばしむる事は
偏に智仁勇の道にかけて天道の政にあらず
一筋を切るには飽て針をたつる故に悍怯骨
肉痩皮肉寸くに傷れにけるつくろひ極めて高
を起といへど足を踏立る事不叶して倒とも走
みもなく進退歩を失なへり洗る目を見る人
思ふ所なく切にける筋もかゝらぬと笑悦びけるは
情なき心にぞいと浅猿其時の馬の心に成て
みたらん唯うらめしく苦み痛歎事のせつ成
一応し其思ひ我身に当て知ば心あらん人誰か
是を喜ひ楽むへき直成質をきらひ誠に
小弁慶介誠
第五門出国入の時筋を切たる馬は妖怪不吉なり
乗へからす
第六足を取まどひ拍子に入ぬ馬は筋を切へからす
第七老馬の筋を切へからす
第八悍体骨肉やつるべし駒の筋を切へかゝす
第九佛敵法敵国敵と悪徒を破せる道理を立
第十佛神は天地一体慈眼視衆生の心を示天の
生せる質を照ざる門前に筋を切たる馬を乗へからす
第十一馬に智仁勇の徳あり質に国家治乱を
見分道理を立
一前筋尾の筋を切て足船を高く瓦を蹴
させる馬に苦をかけて我心をよろこばしむる事は
偏に智仁勇の道にかけて天道の政にあらず
一筋を切るには飽て針をたつる故に悍怯骨
肉痩皮肉寸くに傷れにけるつくろひ極めて高
を起といへど足を踏立る事不叶して倒とも走は
こもなく進退歩を失なへり洗る目を見る人
思ふ所なく切にける筋もかゝらぬと笑悦びけるは
情なき心にぞいと浅猿其時の馬の心に成て
くたらん唯うらめしく苦み痛歎事のせつ成
一応し其思ひ我身に当て知ば心あらん人誰か
是を喜ひ楽むへき直成。質をきらひ浅に
足を切尾を切は騰二駕罷牛一終二竃魂一器一荷
莫邪為」能鉛刀為レ銘にことならず
一筋を切時に眼を睨み身を振びいなき癰問
一絶僻地して目の前に死にける馬もあり或は肩を
抜百禽を振切て蓋に落る馬もありまたは足事
凝き或は乱足と成或は百曲起り廃れる馬も
ありかくて膿血漬爛庭を血に染水に紅ひを流
せり雑血毒乳に混乱して何伯地神を汚し仏
一律拝を廻さる無仏世界の国土には此悪許しも
一置へし為二不善于顕明之中一者人得誅レ之為二
一不善手幽晴之中一者鬼得討之となり終には
天罸にあたり神罸に当り類をひきて滅亡すへし
涙に前代未聞の事を賞して暫〳〵に天下にはびこ
り楽馬の妖怪となり佛敵法敵国敵となれる
彼悪徒お善尽し理尽し且責たつる哀人界に
生おうけたるしるしには速に先非を改むるべし
一馬の病をなをす針灸薬は天道にかなひ深く
一馬を憐の道これよりまされるはなし
一本草に曰残衣敗草飛鹿聚垢あつめてその功
能ありといへども馬の病をじする薬には百草の
黒焼牛膝の景ほしなとにて諸病を愈すと人
皆いゝけれども馬に用る薬人を医するに毛頭
八条学人論
かわりなしと父が語りけるなり
一十二経絡七精六淫の沙汰人論と替こと
なしとぞ
一人は家職を門されす其道疎からすしてありたき
いざなり
一乗形などの一流をも学ひ覚て上手の位にいたり
人の師ともなるへきものゝ専名聞利欲にとゝまり
世に有人を近づけ誠に望といへど貧賤の人に伝
えざるは頓て其家を夫のふの道なり去ば名を
一求利を願がゆへに卑賤無学の馬乗をいやしめ
已に勝けるをば嫉常て人をおろしむるゆへに心万
人の譏を請て世のましはりもなし
一馬を乗時鞭をば左に持つけくる可なりと能
一乗手の教なり惣して鞭は相伝の深事とも有
べき事成古人の書馬には鞭手法といへり鞭を
不知して手綱を乗兼からすとなり古八条の書に
は敵に三十余の理をあかしけり
一馬を乗事別の子細あるべからす但し一つの大
事あり乗をすくすへからす
一一昔より伝ける天曇雪積夜降山野
に路を迷はゞ老馬を先にたてゝ致を知へし
是一つの軍馬なり
一は補学令論
一目利といふ人よきころの青黒の馬ありと語出
けれは有人聞て毛も水青成へしと云長二寸有々
いへば一寸といふ年立歳といへば四歳と云目利する人
いかなかゆへにと腹立にければ打うなづきて馬形は関
北えみる時はちがふ物なればかくはいふそと
一七ヶ際の心抔秘伝書の段に七ツ直成教を
立る時手紙を直に持へき事我母を高上にて
ろくに乗事馬の心を乗手よりなをす宝なかれ
一師の教をすぐにする事妄場中筋を直に乗事
剣口にて馬の頭直に砲事目付の事七ツ此心
抔は馬乗方根本成て奥書に記せり古人曰其
身直なれば景不届といふ要文にて所詮落居する也
一乗形書の門に馬の読ぬる歌とて百首の歌あり
程もなく病になりてかなしきは
一糠喰すこし頓てあら乗
わし草をかふとはいへどぬかにあふ
ちりおは能もゑらみてぞかえ
是は馬の読ける哥迚昔より神詫ありと伝
ける本より乗手手綱を要に読けるは諸流に
一浜の真殿よりも多し大坪流百首の哥の詞
書にも要に依て手綱乗様の得道をかけり
誠に悟道を余道に求す或記に曰鬼牛馬
等古畜一切屍骨悪雲呪咀神矢哥に
より普和ともいへり
一当流に学所は知徳至極の理広むる所は六十
八ヶ條の手綱皆祖師の的流なり昔助賢法
間を廻善悪の高数を乗競舸一ツの鞍手綱にて百
以上
まことにむまになしひ口
曲を直し万事に渡れり此まになしむまになしひ口
琴音
に問我心に尋て新八條流の書物を編立る也
以
此文の心は助賢国〳〵を執行有なる機変繁
核百銀千錬の心を明せり天の鞍手綱万事
に渡るの父は当流には一ツの手湛にも祖師一代がゆ
る〴〵横に万法に渉り塁に天地に徹する手潟
を明せり尋習問の三字には本分の道理を見分切
蹉琢磨の文を明せり如此祖師は八条の智徳を悟
り諸流を兼学して絶たるをつき療たるを与し
一終に八条を建立す其比諸国の馬乗集り附法
一印可を伝え当流の学文を次第伝授ぜりかして八
一條我家の祖師は功成名遂而身退き寛永年
中に卒す其時門人別れの泪に沈事誠に限なし
一万曲有馬のむつかしき上手の名を得てはのゝさるもの也
御ひかりて
一或乗手のいゝけにやうは馬を習人は必上手の真似を
せよといへり此詞おのづから徳にかなへり偽りても賢を学ば
賢といふへし狂人の真似迚天路を走は阿人と云べし
一馬を習ものは上手の乗をも見よ下手の気をも
見よ我も乗て見るへし
一馬を乗に帯を乗事あり変を乗事あり常を
乗事はやすく変を乗事は難し又心を乗と云は理
非分明にして其意を離るをいふ
たづる
以上
一手綱の目録十四ヶ條
遠乗の事号
一口舌牙常の門の事付馬の休昌
一四本懸り乗様の事口伝
手総十の拍子に重におひ留影の誓を打事の
の比
方集次第
下博中悍三悍の三有上伴の一つに強高有事尋
一軍馬の手綱小笠原源氏別て立事口伝
一馬百首の哥古八条の目録に入事鶴
一先規より大坪流に百首の歌ある事
のりかたしよもつしよげんしうてんる一にやんおくほり
乗方書物に席分正宗分流通分あり大将流息合来
を以て撥枝とする事
大坪流小笠原流八条流の外は陰賊流外と建る事
手綱の名古三家に一名有事多し去共変地相伝
替成古人の曰是成事は是なれ共是なる事は
是ならすの要文荒て證拠とする事
一馬を撃口の事口仕
諸流の手端に対当どは無而忽有の手綱をいふ事
一金五千人卸
八千四百七十六人
手綱は形を万類に蒙る皮肉骨髄死生裸福
ある事
一諸流に今書撰の目録作文多し但上手の謀あ
るに似たれ共智は長せるに非る事
一人は深し我母は浅く思ふ哉と万故実を覚へける
乗手のいゝけるあるに跳てあがれる百曲馬も人の乗やう
みる時はもどかし自は乗なをさんと蝶そしり人をはかるは
浅知無能の輩なり大公曰欲量能久先須自賢
借人之語還是自傷又記曰戒眼莫レ視レ弛非戒レ口莫
黄化粧といへり少の曲も百度乗ざれはなをらぬものと
一能乗手のかたりけり
一昔上田といふ乗手あり馬を乗事世にかくれもなし
或時人の悪馬を乗せにけれは此馬はいとうすぐならぬ
曲物なりあやまちありぬへき迚おりてのらざりけると成無字
無能の高乗共かくいにんや誠に道に至の覚名誉の人
なり去事あり今の世迄も名のほまれたかし
一轡の大小中何にも理の有とはいへど昔より中轡よ
しと大坪の書に記し置たり小笠原流にも中はみの
くゝみのかね長よし轡口にかけてゆふ成といへり八条
当流にも中変よしと人皆定あわれけり細はみ或は
大成轡なと好事は必よからぬ乗手のわざなり
一問答の書に轡の大小は馬に寄へき事也
いづれをも捨へからすとみえたり小笠原流にはみの
長を用る事は悪とぞ大坪流にいへり
一個小笠原流に
敏妙天法の理有
一手綱は応変無窮なり人も馬と相応の理あり乗
とのらぬと相応の理あり流と乗手と相応の理あり
心に相応あり身に相応あり口に相応あり馬の口は
一無量無変なり又無景無変の相応あり
一馬は心に一物もたくわへず眼に欲をみず去は身に
錦を着せしむれとも悦す前に宝をかざれとも夫は
楽酒さる物なり師の語けるは誠に乗手となり此
心にあらずは馬の心を知へからす
一昔橋の仙人あり神力殊に新なる模発羽化の
頭に鳥か巣を作りける是を深憐て仙体暫も動かす
といへり誠に其化鳥獣に及びぬれば賢人国をとう
とみきりん其下にありとそ
一馬の手綱かたばかり火されたる馬乗共余流みな
己か家に不及と心得我学る手綱人の知さるを聞
ては勝こりと思ひ万は非家の職まて我知にたくら
べかたり出たる疎なり古人曰不レ登山不レ知二天高一也不
臨レ谿不レ知二地之厚一也誠裁嵩関牛の瓦を誤て牧童笑
疎成自は其家にありながらいまた其心をわき不知況や
化の藝ども習問すして豈計らん唯己か職にあらざる
一事をは是非いふへからず争面からす
八条尊人詳
当流を不知
むま
馬に乗て馬の背き走をも不知
一足極て後破に近をもしらず
たつなおほへのかさころしらず
一手綱を覚て乗所をも不知
のりのりて
一乗てあれとも乗手を不知
馬あれと馬をしらす
是皆侘の事に非次自己にもとつきて身の事を知
さればなり我を不レ知して外を知といふ理り不レ一有去
は己を知を乗手といふへし
一紀州に松野と云乗手あり世に誉ある乗手なり
此人少年の時より子孫なからん跡をゆゝしくねがい
年月を送程に弟子共余多あり其内に獨深き心あり
と数の大事を伝て家を続せけるとぞ誠に賢成忝手成
此父またむかし世に饗高事人皆知り自筆の目録を
或時弟子のもて来りける文言たえに面白事とも多かりし
一乗方の書に曰隅に廿七の隅あり謂る又三ツ端
あり鐙に十二の証あり又三の鐙あり此事何か故
みなれは手綱の大事を示鐙の深き理を伝て供に
是を慎むとなり去とも濁乱の乗手は血理を知
ざるおゝし
一世に馬乗の善悪を人皆はかり証とも誰を下手
誰を上手といふ成も自は不知と島田と云乗手の云
けるは心深き人なり論語に曰吾之於レ人也誰致誰
誉又老子に曰自見者不レ明自是者不レ彰といへり
誠に暗者人を見るより大に誉て大に笑えり是又
ともにあたるべからす
一曲有馬のなをるに遅きは人引て留らぬ馬目剃
にはづれて作悪或は騰り或ははね又は遅中の曲馬乗
もなく地道もなく下悍にして弱馬少の曲有とはいへと
鞍散に当りてよからぬ馬口重して軽からずにぶく粘
乱の曲あらは本より手綱もなしと大坪殿も定おかれし
となり歌に
ねば口にむちおとろかすのりもなし
馬をはなにとせめてなをさん
一吉江といふ乗手はたつ馬を乗事極て手利に
ありける其曲あらんとすまは間もなくかくをあてける
ほとにさうなくたつことなし去は此人の證の器用は
乗手の内にもならびなしとぞ
一乗りやう馬は能心得たる者の乗立たるよし先弟一
に地道を能乗付のるへし地足の一つ所にて踊り足
行高今異夜のおろし場道なといゝめる悪し唯やすら
かに踏付行馬よし第二は乗は遅しとも鞍の内和
かに轡を備て拍子のこまか成よし第三には見馴ず聞
なれぬ音にも既て驚さるよし第四には左右人廻
にも進にも心の儘に行馬よし第五には余に長の
大成馬悪し亦小長成もわつきなり本より鞍下
の馬は本気に碁のすなをなる行立揃へき事なり
一馬乗の年老ふるまて好て馬を乗事わびし今は
年もよりにけり形歩も不叶とてやみなん人はしつかに
おほえし
一天地父母の手湛いまた遠きなく其前は宮もなく
一礼もなし禍もならして終もなし苦もなく楽もなし境
一壊にも改め替らす唯天地父母の儘なり斯お父母
中道と告付不思善悪と名つけ智徳と名付たり
一是より一切の手綱それ〳〵に顕て五百六拾三の手綱と
なり根葉花実の意となりて終に極る事なし昔
周の穆王は此手綱を伝てきとうりくわを乗我国の
聖徳大子は此手綱を悟りて甲斐の黒駒を乗せけり
三家の祖師は此手従を伝て皆一流を建立せ和
誠に昔より今千歳の下に及迄改めかわらぬは
此手綱なり
一大馬にうたれける馬は生の辻の辺額くだける
ものとある乗手のいへり
一馬に九才なし牛に四才なしといへり牛医方序
に曰供」祭紀則享牛軍旅則塙牛
一世に類なき早馬又相形尋常に異なると
聞え有馬は其国必す乱世を招はし乗事なり
れと師の教ける其故は昔龍馬の出たる時代を
間に皆不吉成非レ天為レ害と教房卿も勘例ある
なり昔広嗣仲綱徒に国を領命をすつる前相
又龍馬に出たりと此事平家物語にかける是悪て
大乱の備へを設妖怪不吉なり珍とすへからす
一かろき馬の事上悍の馬おもき馬の事下かんの馬
持立乗やう有なり手綱の大事といふも此外を出さる
なるべし
一馬を乗手綱は負て勝理を知へし唯馬み力
をあらそふへからず
一手綱の大事は強々弱々大過不及
一むかし楽手のかたりけるはむまをのるかひにのかををふことなかれ
のるごとにあしをはやむれば五体そのくにおとろへてむまかならず
つかれあしとなりのちにははやきのりもとまりあしもいたみちもさ
がるものなりとて古悟曰獣窮則懼人窮則部馬窮則疏
一むまのけまきをいむことは吉凶むまにあらず人に
ありとはいへどいみたるよし
一はらにあるむまの毛万とさを忌事は近世になんすること
なりむかしの人はすべて此辻をいる歌されともけうわにおかけ
六道なといへる辻のごとくにはいまもいまさるなり
一めきゝの書にいわゝむまの口くろきは生難命なり夜目
のあらざる馬はもつひとわろしといえり二毛のむまひまひたひのせ
をりて白はのらざる物とそ軍馬にもみへし
一世の中のむまのりをみるに家をやむり身をほろぼし
子孫をうしなふ事はひとへに一生のあまだむまをくるしむる
しるしなりされともみづかゝむさぼる業にひかれて天道の罪
すでにきたることをしらず
一むまならひける用意はまづめきゝを能しるべしこのむまは
眼休わろし耳のおきところさたまらずもろおもくして
くちのつよきなどかくのことくのみたておゝかりけるこれをみ
るひとをむまのりといふ
一つよきくせあるむまをも小座にて口をわりおりまわし無下
にいためて扨浮広所に出しおさなきもののむまをもしらざるに
のらせてみれば前の曲ひとつもいださてよくあゆむもの
なりこれをみる人そゞろに神のことくほめけるはおろかなりと
師の教ける誠そのむ事をかさねてのればもとよりくせ
をするものなり
一世にいへりむまの霊魂たゝりあり皮体白骨とあしに
ふみぬれば癲疸くわひらんのやまひをうくる川にほねを
すつれば瘧をやむとそ水に入けるはみりあぐへし楽手山
野にこの体をみるときは煩文陀羅尼を治すべし
一茫すじ前なしともすじをきる一流暫くに悪徒世に
つたへむまの妖怖となる終に悪徒そ仏敵法敵回
敵の文に閉口あるなるへし天裏地天旱魁飢饉の
文に閉口なるへし作レ善降二之百祥一作二不善一降二之
百殃一と云文を不レ知因果善悪の文を不念針書に
曰針隔レ一毛則遇如レ越二大山一と云文を破るまつ安
不レ可レ忘レ危治不レ可レ凶乱といふ文をやむる悪徒は生なら
糞生残害の心となる又死ては地獄裏家餓鬼と
なる方ことに聖代の世にいでゝかゝる無慚のはぢを不思
面を法人にさらし雷を一天にのこす此業をみるときは
岐の僕僮孩枕の童も心のかぎりつくしてむもの男
をかなしめり才知ある人誰か仏歌法敵国敵となが
悪徳をゆるすべし即天にいのり神にいのりて始終
不屈不変悪徒を殺害すへし
一むまを乗時かけやむられしむらをつかせしと宗人是
をいとふは大なるあやまりなりもしそのこゝろに托するはいれと
むらをいだしわれとかけやむるとおほへてひとあしものるべ
からすたゝちに諸縁を放下して直に心持にむかつて
このねんをわするへし
一むるをのるとはすがたをのるをいふ三身の大事はい
たれるもおろかなるものりてのまもるぎき明誠なり
一十五の心持
八條新流
祖師の恩常に敬礼の心持
君正父母師弟を守る心持
家職をつとめてほかをねがわざる心持
よくと馬こととこゝろをつくる心持
利養と名聞とはなるゝ心持
よろぼをわすれて一事をまなぶつる
いんぐわの理をまもる心持
日月をおしむこゝろもち
われにこゝろをつけて守る心持
八条相伝のこゝろもち
行学の心物
むまをあわれむこゝろもち
む方をのるとき威を問もるこゝろも地
あくばをのるとき自己つよりすゝむ心持
むまの苔楽一大事をおもふ心持
これによつてもつはら寔の心をうつし本師広大の徳そ
つねに祭るなるへし助資出世あるによりて八条の一流有
縁のたよりをえたり久かたの家のかぜをもつがせつるつゝしむ
にあまりありもとより身体髪膚受一之父母不二敢毀傷
孝之始也立レ身行レ道揚二名於後世一以顕レ父母孝之終也
兵書曰必忠臣孝子門出といへりたとへはたかき位つかき
あるひは民間に一芸をならひ伝えけるもみなどの利益
なり生を人とうくかものは先祖当然の家をつとめて
其掟をすへの世まてもつぐべしこゝに衆生の迷
なるは家職をわすれてよろつを外にむきてもとむ是
がしめしにいわば死生有命富貴有矣中庸曰素
一富貴行二乎富貴一素レ貧賤行二貧賤一夷狄患難
くる事あり去事あり国あり家あり馬あり乗手あり苦
あり楽あり他流あり当流ありなにの事業も内外縮
一隔皆天道よりそれ〳〵に定くたして世のためとなるすへ
て此理を知さる時は下として上をうらみ我と此身を
つたなくして自天道にそむくなり人ありて欲心にみゞ
まり道のむねなけれは心身必悪道に入はつべし
老子曰聖人積レ徳不レ頼レ財執レ道全レ身といへり
子游曰人為財死鳥為食亡とかけりたちかへりて
此心をみれば欲心道をけかさす各利に迷時は先快
悦懼貪欲慾情につかわれ各をもとめ身をくるし
めて。静なるいとまなし給かに私に名聞利養をおも
わむに天道これをゆるしてのそむなる所をほとこすならし
ことをまなひてものに心さすものはまつ一業をきわむへし
その業をなさんとおもはゝ他の事はやむるともいたます
人のあさけりをも不恥よろつにいへ舟ひとはの大事
におもむくへし大公。曰一行有レ失。百行俱傾みなりこれ
をもすて歩かれをもまなぶとすればその心いたつらとなり
て是おも瀉すかれをもうしのふべきみちなり人論より
とりけたものまてむしのねのかれ〳〵なる秋おなしきも死此
生彼中有四生の姿因果の二つを兼にけり歌にも
ほろ〳〵となく山どりの声きけばちゝにてやある母に
てやあるひまゆくこまのはやくすぎひつじのあゆみ
のちかつくにまかせてゆくすゑをなけき身をはかなみ
老色日上レ面額蝶日去心とも詩にかけり今の光陰
むなしく。暮る事を惜起し人は我と云物に心を
つけされはよろつものにうゞきてむつかしくこのむ所日〳〵
にさたまらず身あやふめてくたけやすしまことにこころに
ぬしなきにやあらんこのみに心のなるものならば目不
一概二非礼之色一耳不レ聴二非礼之声一口不レ遇二非礼
一之言足不レ戦二非礼之地一無益の悪をなさずして
馬のうれゐなかんことをおもふべし次に八条相伝の心は
知恵をすてほまれをすてよと血脈口伝せり名人上
手の有時は国を隔て道のみをきをもいとわす大河
小河を渡りながるゝ水に心をすまし松吹風まても心を
つけ此身をせめてひとつの手綱をもとふへし贈二人二
言一重レ如二金石珠玉一観レ人以レ言美知二詩賦文章一とあり
われむまをあわれむにはのりてにかなへりと古人のことは
なりほかにかろきのりては内をまゝる事なく権のうしなひ
はつかしめあり君子不量則不レ感学則不レ因といまし
めりその威なくてはかなはずよろつの強むまをのるときこゝろ
よわくして恐懼なかれ悪知得失の違関をやむり
散乱の心を截断して当流の教に眼をつけ自己
強くすゝむ包し初て此時手綱もなくものにまか
せてさはりなきなるむまのこゝろは天地のをこり一心の源
に住して侘念にとゝるらすされは因縁をさとりて名
聞利欲に心をつけす形は無崩顛倒の心をあら
はして粟神誠に朗かなり楽とは長たかく苦とはしつ
みて深し今学人の心は与楽抜苦の手綱にてむま
たのしむ時はかりてたのしめりむまくるしむ時はのりてに苦
ありこの二ツは手綱の大事偏に道理を得徳して
こゝろをさたむへし
一むまになわある事歴代の祖師これをのるに
ゆるしあり家の巻廿三に記す此手後は一円のかたちを
表して理は不可説なり又執すへからすのるべからす
一むまをのるにゆくもとゝまり声をかけるは故実なる
古語に曰応声即現各体不離となる此心は声
と手従と名と林とかわらぬ心をいふなり
一むまにのか事ひどつには地足ふたつには小乗三
にはだく四には中足五にはかけ此外また二りの気
様有七疋馬書にも此事あり
一くらよわなれと曲有。むまのなをるとならは違
者のむまのりていふ動し地鞍強くいなるむまとも
乗ともわろきむまのなをらぬのりてならば連志に
八条学人許
のるとはいふ趣からすこれを鞍強にのるといふなる
大坪流百首のうたにも
たつじやなるむまのりなりなとなをとるも
くちなをとすはいかていふへし
一雷神におとろくむまありなる川におとろくむま
あり火にちゝむ馬あり渓澗溝噴に背く馬あり
人をみてゆかぬありむかふむまを見てゆきれるあり
そのほかこれをなをしのる手綱はしつけなり
一法とは無念無相触とは馬と乗手と二つなし
味とは瑕錬工夫と因縁の巻にいへり飛行の道
天地をひろしとせず大身出世のたつななり馬上の
極意此文によると乗手の沙汰なり
かたものかたりのかたのわろくたづなの目録或は和漢
の古事をよみてことからあやまりあらんはやかてその人の心
も無下にきにゆるなり大方おほつかなきことは誰
しらずとてすぎしこそ誠に道の冥加なる又諸
一藝の一流などきわめ覚たるともからその家の印可
一目録の儀理くらからぬはこゝろふかくる夜し
一五性十毛によりて四季土用にむまの料上中下
のかわりありとひきゝの書にかけりをふやうむまは春
時正とさたむるなるべし
ほりかわのゐれひやくしゆのうた
堀川院百首歌
金八三
とりつなゝひとしなけれははるこまの
野べのふか水かけもとゝめす
春の野ゝ駒のけしきのことなるは
沢辺の草やわか葉ますん
一むまの口に左右ありたつなに父母あり口におもき
かろきありたつなにうきしづみあり強て弱々大過不
一及は中を極意さすときの乗手は強々に大過弱々に
不及
一凡生あるものはいきをもつはらす呂律のいきされ
なりつゝいきは生するいきこれを律のいきとして
甲のおといつるなり引息は死のいきこれを呂のいき
として乙の音いつるなり次に五行五色五佛五方
五季をたつるなり
一延のたつなは生縮手綱は死一寸の手綱一分のしめゆ
るしむまにありては一丈ののべちかなり苦楽その内に
あり手綱の功断先代の的伝にあらずは此旨を得
がたし理を付属せば口を切にまた何の苦かあり
思ひし生死を也なれて上下四雉にわたり苦楽
の自由に注して家の理をしるべきものなり
一よろつの道は家の掟をまもり散を聞てにそ
れずこれをおもくして年を送れは天性其覚
なけれどもすきは上手となつて人にゆるされ誉
を四海にあらはしならびなき者を得るとそ此心得
諸道かわるへからす
一転労問曰誠に人となり生をうくるといへども
はかなき業をいとなみ日夜むまを苦るしめて
あつく利をおもふ念やむとき。なくひとたひはよろび
ひとたひはなげく一生のあまだ終に静なるいとま
なく境界に身をはかなくつきには天道のあわれみ
にはづれ人の心にそむくといへり谷曰士農工
商みなもつて天より其役人と定おかれて世の
ためとなる此業なくして回おさまる。起からす先此
徳用をなして諸人の心にかなはんと我身を偏に
天道にまゝせてまことの大事を一念此心といふは他の
事にあらずかりにも身のためをおもわす唯此身を
せめてちかき所みをき国をめぐりてむまをめきゝ
していそきわか国にかえり大利をおそれてこれを
うりかわし国土のため武士の自由をなさしけんと
おもひいりて欲をはなれ此職をいとなむみきは
天道の恵不浅万事心にいなふへし亦自他
をいつはり人をぬきむまの徳用をしらす大利を思
わん人には神慮もたゝりありて天道にそむきわざはひ
を万ねき万民の悪を請てむまの咎をかふむりむ
なしく子孫をほろほす事うたはふべからす
一高仁の前にて弟子ともあつまりむまのめきゝ
ちたしけるか高仁むまにはむかし鎌倉の代に生食
摺墨人には故大炊殿此外に人もなくむまも
なしとそかたりけり
一むまをのること一たびはのりをのかひとうびは地道を
のかひとたびはのしず尤古今のたつなにかなへること
なり冬寒極夏にむまをのか事次第あり
一鞭の具は能あらためてむまに置へしいきの早
つまれることもくらのあたりわろきかゆへなり亦むら
なと出しかけやむる事も凡穀の善悪による
さそ由岐などのつよゝはりたるわろしかるかゆへに近
代の鞍は由岐をばすこしそゝするなりむかしの鞍なとは作に
も居木のはりたるおゝし
一むまのやまひとくせある根源を尋るに百病は気より
をこり百曲は気より出る事とふるに乗手のいゝけり
一ある鷹の書にはむまに乗しもの鷹居たる人に
あわばまつおるゝ事なり鷹の方には鐙をはづして
礼あるへしとみへたり古八条の書に云鷹にあわば
其方の手綱をとりさげ証に心をつる礼すへき事
なりむまよりおるゝとはかゝずされとも此事皆一論に
一定をからす其時により人によるへき事なり
一馬場は東西も勿論なりといへとも南比にかまへ
たるよしみふるき乗手のいゝけるありいかなかゆへならん
天不レ足二西比一地不レ満二東南一といふ故事の心場
はつくり初而如乗様あり
一あるとき師のかたりけるは嘉辰縁会が時と云事
あり立命罰刑徳なり馬むらを出し或はあやまし
ちあるも此内の悪時にきわまると教ける王相死
囚老も手総にあへり心得おゝへし
一小笠原流にはむまをのるとは兵法薬方手法此
三つをしれるをむまのりといへり大坪に手綱と
むまの具と薬事これを得るを剰手といへり
古八条には梵文呪縛手綱薬餘針灸を手図と云也
一むまにくわするものは人のこころをまゝりてかわさ
れはすべてくわさるものをこれを餓しておきなんことは
いとあさましかるへき謁しては水をもとむる念うへては
食をおもぶこと更に人間と尋たてあるへからず
一ある国の人持けるむまつねに食物とほしくいつや
しおきぬやせおとろへて夏の比此むま心くるしくみ
元煩つきてよりなをらすして終に死にける扨五六
日もたちて何となくむまぬしこゝろもとゝまらずあるに
くるはしくなりぬこかくふるほとにのちはかわきのやまひを
うけて脳乱極りなしくるしみ五沫をやむり湯水
をのむ事いとまなく刹那のほともこゝろをやとめさ
ればおとろき医師をかへくもりをほとうすに良医
も効験更になかりける神人轉の縄にかけみれそ
唯異にあらず偏にむまの魂魄きたると覚たり
出々法力行なわんと種〳〵の天法を修せられ供
養せられにけれは苦痛やみにけり
一むまのわつらひ日数煩へどもよからす速野には
なちて棄けりころは冬なる雪にうつもれ五休す
くみかたまりて終に死にけりむまなるといへどもあり
さまあわれなりと村人いゝける時長主ものにつきけり
門に出くるひはしりにけるその疑ひ唯むまのかけ
るがことし村のおとこいかずとてとりこめておきければ
あるときは虚空をみてくるひあるときはものいわす後
には狂乱つよくまなこもみへす耳ふたかりて声を
きかせ手足をあがきてちゞみかしらを地につけたび
くむまの噺るまねをしてむまやにかけ入おそろし
く浅間敷ありさまにて後には狂ひ死にけり
一冬時に遠路をのるむまは四足を酒にてあらひ
たるよし寒事をふせくがためなり旅にてまた血
のおつることあらばからむしみいふ草をやきてつけた
るよし次に草臥よわりたるむまには米を水にて
あらひそのまゝくわする事を必第一みすべし
一むかしよりたいばといふ事あり迚人皆伝へける馬
此神をみればそしをみかへり中をふるひいなゝきおそ
ときばをみ精神みたれてたちし所にあやまたす
一死ぬるなり抑此だいばといふは善神にてあるやらん
また悪神なるかさせる本説をきかず亦一祝に大
魔と安きの集にいへり此神出るに方角あり来
るに時あり文を唱心にこれを加持すればさわりなく
一また即散するなり
一此神雲に出あらはるゝ時むまをのりむかへは進足
も弱なりまたはやむれかゝりおとろきてくつわをうけ
ずたび〳〵むまそらおもみるなる常に害はなしといへとも
いづれむらありて曲なとつくものなり古人の詞にも
むまのこゝろをみて時を乗となり日用尤心得悪
きことなり
一大坪流息相の書にいわく陰の調子陽の調子
かけの調子とて女典調子に十二の沙汰ありおなしく
また一双平黄盤の調子此事みまかにはいきあいの書
にのせけりされとも疎なるこゝろにてわきまへきくこと
かたし但妙言の義理なとは能心得おゝべき事なり
一むまのよろつの曲はこゝろよりおこりて口もわろく成
ともいへりまた口よりおこりてこゝろもわろしともゐへり
いつれもみな先哲の論する所なりこゝにいたりて今時
とかゝの勝劣比判をつくへからず
一小笠原流手綱の目録にむまの口つよきよわき
たつなにつよきよわきを論するとき
一強ひけは強成強ひけば弱成
一弱ひけば弱成弱ひけば強成
一小笠原流秘伝書にいわゝむまの事みな神道にて
汗るゝなり仍て真言だらに梵文これを伝へて飛
行転変にかなへり同また異本にいわく四ツの手綱
あり此手綱尤秘所の大事とかけり
一不レ自満者受レ益不レ自是者博聞成へし自友
にましはるとき我心の拙なき下関をはじそわらひいと
わるゝともうらみ歌まなびなろふべき事は人をもわか
す尋きく時はよろつの藝古はおほゆるものなり
一せをやむれるむまはらはりにけるわづらひ悪便に
すじきらるゝむま痩馬のむちをおそれざりしむま独
休めくりてかなしめるみるもこゝろならずむま落命の
一部にはかならず南方をはるかに詠はしめてなつかしみ
本心をあらたむるとぞつねには怨念かきりなくむま
のりてにつきて人にはぢをさらし狂乱となり血
をはきあるひはむまのかたちをまね親族ほろび
にけるなりそれ除災與楽の手綱八条に智徳
流てすまた相伝あり
一過し年ある夜に霊夢をみるひとつの山に往還
八条六十八人
のみちみみへて坂ありそのさかにかたちやつれける
むまわれにいきをきけとくるしけにいふけると見て
よりみつかゝこゝろにわすれす浅身にそひこれより
苦楽のたつなをたてにけるまたはしめて苦と楽といへ
相伝なるにあらず当家地家のたづな流この的侍
苦楽のふたつなるべし
一八條新琉手網目録初巻
心持之事
取付立寄之事
三之年掛所之事
手綱取様之事
一鐙置不踏様之事
一年之納所之事
たつなをさめてみつのこと
手綱納所之事
めつけのこと
目付之事
みのかねのこと
身之兼之事
のりいだしのこと
乗出之事
廻様之事
てのうへかねのこと
一手之上兼之事
ぢみちのこと
地道之事
以上十三ヶ條
八条当流に初巻中巻極意巻あるなりそのうち
福巻はくらの作法如此なり。今論にのせけるも
代々師の他評なしといへども子細あるによりて
この書にいたすなるみてしるべし八條には文言かさらず
次第一章改これなり唯のりてに付属せり以上
乗形目録の事を集め斯に学人論と名つけて馬乗
輩に出ししめさむとのぞむ然といへとも窮家に生て
いとまなの日なく手綱の前後をはからず我心の
私に任て所存の建をあらわせばみるより外の心も
あらぬなるへし誠にゆへある哉手綱の要たる事
天地の根源にをしもとつきて林乙文呪練薬餅
針灸にいたるまて手綱となる馬乗これを不知は
一天年すでにつきぬべしもつとも手綱目録苔楽
を伝へきくならばのりて家久しかるへし
一論に曰一章の中に我と問自答の文あり諸
流極意の文あり昔今の乗手の詞あり一章
の改にて序正通の分あり
論に云文字言句にをちぬその妙を得る事
は切磋琢磨の修行にあり流々の血脈附法
一印曹は伝授其流に沙汰あり仍此書を述
の条八條の門人編
八條学人論全終
余二ケ年
寛文七暦]二月吉辰
黒川四郎兵衛開板之
既白噺
如山堂定載ス
黒付三十六葉四分四分
1993
東州電座