絵操二面鏡

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歌川國貞畫
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場所: 江戸
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歌川國貞畫
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日本語
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西村屋與八
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エアヤツリニメンカガミ
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東北大学
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絵操二面鏡種彦 一覧料作作託の間備会を 以テ購入セル角南博士 猶釈亭吉氏並 絵あや 一兵衛 庚辰新彫 種彦作 国貞画 絵操二面鏡後編 柳亭種彦作 歌川国貞画 永寿堂梓 序 初雪やあれも人の子樽拾ひ。慈悲と情を第一に。 人を嫉ず悪くせず。不善を見るは作善の元手。掛 直を言ず正直に。段々去悪の利を設け。告を商ふ。 板元に。作者が寸善尺悪の。作下手なも上手と成て 去悪作善の仲ヶ間入。下から初筆をぬれ衣の。なか 〳〵ならずまじめでしるす 文政十一年 戊子孟春 一恋川春町述 一九一一、一一一、一一二 発端 吉田頼澄之息安松姫 大和物語に曰 離家三四月落涙百千行 昔筑前守なりける人 むかし咄の継子が哥に のむすめありけるがまゝ母 のさんけんにて海士の ぬれ衣をかりて女の ぼんさらや 一皿てふ山に 朝ゐしたりける 伏所に是を 雪ふりて ゆきを根と ぬぎ着せて さらぬようにて 置たりかねて 置たりかねて して そだつ 松かな 心を合せつる 海士人の 来りて 吉田中務 頼澄 娘子の 我衣とらせ たまひて候ぞと 花下忘歸因美景樽前 勧醉是春風 さも心なき海士衣の ひとへになき名いひ かけたりすなはち 父是をきゝ〳〵 きこえ見ぐるし とて女をやがて 殺しけり其のち 娘父が夢に 見へつゝぬぎ きするての たばかりの ぬれぎぬは なかき泪の 此上に 美人 ためしなりけりと いひすてきめ〳〵と なくとおもへばゆめ さめぬそれより無名 おいたるをぬれぎぬと云 跡へ たり 青 寿盞人 れていはれないかれなしてい 凡例 徒然草曰 人我の相ふかく 貪欲甚しく 物の理をしらず 頼澄後室 あさましゆぜんがあねむりがえ 浅間主膳姉梅 たゞ迷ひの 方に心も はやく うつり 言葉も たくみに くるしからぬ 事をもとふ時は わず用意あるかと 見れば又浅ましき にまでとわず かたりにいひ出す ふはんにばかり 後柏原院御製 かざれる事は狼集 男の智恵にも いつの間の まさりたるかと 匂ひか人を おもへば そのこと 跡より あらはるゝ をしらず すなを ならず 咲とも 告ぬ 誘ふらん 宿の 梅かえ して 頼澄家子 つたなき ものは下略 小原次郎 今和佐分 政俊 君たらば臣臣たるは あたりまへ君たらずとも 臣は臣たれ こゝす一条令出川 江南伊勢松 つとてやんこと なき人ありける がまだとし わかき心から 酒しよくに のみ日夜 おくり女と いふものなき 世なら変雄 も君も引 つくろ わず衣裳 のたきもの ちがふ人の そでのかは 心ときめく ものなれば はだへのしろ 仙女香のしろきほ ばせいとにほやかに えんなるは今いふ はやかのあだと かけ香に行 き女には粂仙 人がづうをうしなひ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 〽ハイ 只今 でき ます よきかたあらばむこ とりすゑ吉田のはんじやういのり給へ世に申 おくゆなしとなみだながらにもふされければ よりずみせちにかけ合て何がさてそなたかゝ いわれずともしよさいはあらじとこたへ ければ三ツになりける姫をまねき姫いと けなければ何わきまへもあるまじけれども われはとをき所へゆくなればおとなしくせい ちやうし此うへよさ女う人をむかへなばかならず かう〳〵しつかふまづごとさもくるしけにいきの 下より申けるかさな心のわきまへなくわれも かやわへなん いろごのみの 家にむもれ 木の人しん ず恋した わしくも おもいし ゆかんとこたへけるつき なくより外の雨ぞ そへかくのたまふはもつ のまれよといさめけるうち やは此内室は 義定のはか らびにていとけなき ころよりしもかた野の方とて 小野のみつのぶ其子光世が むすめをもらひやしなひそだ てゝよめとなしこんゐんすでに とゝのへける とゝのへける願すみは十八才かたのゝ かた十六才すゑはんゑいをことぶき しにほどなくひとりのひめをもふけ ゆつくしみてぞあいしける松ひめ三ツになりける 秋かたのゝ方はやまひのことこいろ〳〵りやうぢを されけれどそのしるしさらになく日まし ともせつにかんひやうせしがくわこのすくせのつたなくや にむなしくなりにけりかさ野の方はおつとをまねき とてとてとくわいはおぼつかなしあと〳〵の事申をくかまへて此のち 十四月むかへ給ふともひめをでかならずいつくしみふびんをくびんをくわん 名を松ひめとなづけつゝあらき風にも あてじとぞだてうそにこしもとつけおきて おとろへてほんぶくすべきよふすもなくよりずみにも このうへ御子あまたもうけ給ふべゑれどかれはそうふへければそうやや ゆかんとこたへけるづきも なくより外の雨ぞくされずみはちからを そへかくかくからを そへかくのたまふはもつともなれどもさやうに こゝろよはくせできもちたしかに薬を のまれよといさめけるうち すや〳〵とねむるが すやくとねむるが ごとくなりにけり 一おくすりはせうが いれずにせん けるだよ いつゞいつまでありなんと枕にのこる 薬をうらみ四十九日のいみはてゝさる ものは日々にうとしとかやとし月 そびしつまのおもかげいつしか 今いえさりてたゞひとりねの さびしきによきつまあらす ないくは思ひけれどもさすが またいひ出かねてひとりの姫の わすれがたみ月まし月まし 此ごろはものいひならひ よりずみはなけ〳〵ともかへらぬ事に かたことまじりおさな心に 母うへはいづくへかゆき給ふ われもゆがんとをり〳〵は あとしたわしくなき石 給ふろばこしもとは 給ふうばこしもとは つきまとひてうよ はなよとそだてける かくてそのちしたしき 人に左近之丞といひし人 四方山のはなしのついで君いつ までもひとりすみ外の目に さへひんなけれさぞかしさひしく おもいれん又ことづまをむかへ給へ おもはれん又ごとづまをむかへ給へ 姫君をもよういくさせすへの栄へを 見給へと物ごまやかにいひければ世けんの きこへもいかゞなりおこゝろいれはかた じけなしとこゝろのうちにはいほ舟の ころにかへりけり あらばたのむといひければ しばしべんじもせざりしか ござります〳〵天王寺の 門ぜんに浅間主膳と 申て候がかの人のあ手君は 世にまれなる美人にて さいつころさる方へ ゑんづかれしがゆへ ありて立かへられて おはしましいまひとり 身のおんかたなり ほの右衛門こくびをかたむけて いなにはあらず左近のぜうは。こゝろをさつし せけんのきこへはなにかせんとそのゝちきたりても またすゝめ御しんせつはもだしがたしさやうなら よきやうにたのみいるとのあいさつして夜ふける 左をのぜうはよきかたもあらばと心をくだき ける折ふし出入の五条やほの右衛門左近のぜうが 菊のゆの友だち四畳半の中むつましく うきよばなしのいろ〳〵によりずみがのち そへのなきよしはなしてよきかたも 〽またお客さまが むだばかり おつしやる しかるべきよたあらばと しかるべきよたあらはと つね〴〵おたのみにごさ そうろうこれ本妻 としなるまじくは まづめしつかひおめかけ とものち〳〵は御しつにもとりあげ〽さん 〽とかく おしやくは たほのこと かくがつ かまく のめ ます 〽さやう〳〵 たまふはそのうへにて とにもかくにもはからはれよ 左近のぜうさつそくに かのよりずみにつげ かのよりずみにつけ ければしかるべく とりあつかひ 〽おまげを たのみゐりとぞ もふしたる とりきわめ吉日を そうだんさつそく ゑらむにおよばづと 主膳があねを むかへける しゆぜんがあね むめがえは よりずみが こゝろにたがわず あけくれきげんを もそつと大きく いたしませう 一十二そうかへ 〽ホン二そうかへ よいやうにしてくりやれ 〽此あいだ江戸げいしやが しまばらにきておりますが 江戸はかみのふうが ちがいます とりければ いつしか おく方かた野が ことは わすれて のみあいし むめかゑを ける 梅がえゐなしむにしたがひて 吉田の家をわがものとしよりずみも こゝろをへだてず何事も此梅がえに まかせけるうちほどもなくむめがえ 一ツ子をもふけければよろこぶ事おほかた ならず下にもおなずてける ならず下にもおかずそだてける はじめのほどは松ひめをかはゆがり しが此子ができていつしかひめを わきへのけわがうこおとしたる 子ばかりあいし松ひめいまだ とし七つまことの母よとこい したひつきまとへども 梅がえが心のうちにはうる さくおもへと人めもあれば せんかたなくかはやがるほう には見せれどわが子の姫のみ あいしけるあるとき梅がえ まつひめにそちが母はいづくに ありや松ひめ何のりやうけんなく おかへりがまちどをといふをさくより大きにはら たち母とはすなはちわが事也ほかにはゝとは こゝろへず今よりしてそのほうはさやうのころね あるならばぜいちやうののち此はゝをそりやくに 〽せんはひつちやうなり申□にくのこの子やなひめが おほ見るたびくにかれが母はかくやありけんかくあらんと 母さまはとをくへお出なされておかへりなされませぬ がひくらべてたつするときはたゞ松ひめがにくゝてならぬにあらぬにあらぬに 〽ひめやたれか かはいゝおとつさんと おつかさんとでは どつちが かわいく まし ことの母とも おもはばせめては さながらふびん なれどさは なくして 今の 一こんアラはら たちやつらにくやと そばにありあふ火 ばちの火ばしやけ たるまゝを松ひめが 手を引よせてこの 火ばしにぎれ〳〵と せめければ七つになれば もの心もはやすこしは わきまへばたゞ梅がえお かほを見てものをも いはずゐたりしをこれ ほど母がいふことを きかずはサアと 手を引よせむか ゆびをりやけ火ばし いふていらば 一御ぎらせてこそくるし ませこゝちにしけに にこくとわらいてこそはゐたりけり むざんやな松ひめは五ほんのゆびは やけたゞれあつさたへかねわつと なくこゑこしもときゝつけでかけつけ 見れば大やけどこれはいかゞこと立さわぐ むめがえそしらぬかほをして今火いぢりを するゆへによしやれ〳〵 いふたもきかずそれ ゆへやけどしやりたか 一〇〇 これからかならず わるいたつらば わるいたつらそう〳〵 わるいたつらそう〳〵 こりてしやんなとすこしもとうせぬふぜいく。 つきの人〳〵それお薬なにをつけよとうろたへる よかずみは何かと思ひきたりて見ればやけど ゆへなにゆへかくはけがさせたうはこしもとは そのためにつけをくものをいかゞしてそばに ゐぬとしかりけるこしもとうばはいちごんの いひわけもなく松姫をかゝへてへやにてかいほう する松ひめはくすりをつけすこしいたみもとを のげばなみだをぬくびほんしんにたちかへりてぞ ねふりけりされども よつひめ梅がえが つかませしとはいろにも いださずわがあやまり てつかみしとばかり そぞかくしける まゝな 〽おくすりを もつと つけま せうか 〽おひめたま どふあそ ばした いよ〳〵梅がえないしんしやち 松ひめにはいよくつれなく あさ夕梅がえあたると いへども母のゆいごんたが わずしてまことの母に つかふるがごとくしふそく がましきこといはずうらむか 一けしきすこしもなく いもなく いもこのひめをかはゆがり しえはよりずみがこゝろにそむかず しんはよりすみがこゝろにそむかご まはやかにつふへければ今はしんてい 見ぬゞけたりほんさいになをさんと ひろめをなしてふいてうせり しすまじたると大いによろこび 松ひめは十一才いもとは七才また 此ごろはたゞならぬ身となれば りんげつをこそまちにけり ○をがされはてに けんこゝろのまゝに けんこゝろのまゝに せつかんしてこゝち よしとぞよろこびける ほの右衛門が帰りしあと 折ふし夏のことなれど かやをもつらず梅がえは おひめにかをおわせ 夜のあけるまていたり しがまだいとけなき 十一についいねもりなき 十一についいねむりて かをおわす打ふしてこそ ねいりしが梅がえめさまし 大にいかりおのれかをおふことを しをらいていねむるとはふとゞま なりとしかられてひつくりめを さまし又かをおふて▼ 父よりずみは梅がえが 松ひめをむごくして あけくれつれなく あたるとは父のまへ にてせぬことなれば にてせぬことなれば ゆめにもしらず すごしける あるときよりずみ ようじありてあづ よのかたへ下る事あり ほとなく屋糸といひながら たびとおもへばわかれをおしみ 門出をいわゐたびだちける よりずみはあつまい下り るすなりければ梅がえは なをさらにわがまきまゝ いつぱいにほの右衛門がなからど にて此家にきたりしゆへ ほの右衛門もこゝろやすく たびく出入なしたりけるが よりずみ留すにもたび〳〵 きたり梅がえもさびしき まゝかねてこのめる酒に日を おくりてとぜんをなぐさめける ほの右衛門もあい手となり すはいをかたむけかへりけり梅 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 米五つのまた おつとのまへの 松ひ太をいやも 松び太をいやましに にくゝおもんども はゞかりあれば ける 思ふようには まつ せつかんされず おそし おつとが留す □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ これまで こらゆる かんにんぶくろし 今は丁 のことなれば 〽おつかさん いがたべ ますほん とうに ぢしなり ませんか おとこは とつて おきました 五夏の夜は みじかき ながら 秋の夜のちよ夜をひと袖 かさぬるこゝちよがな よひとよおくしておほ ねることならぬは たび〳〵なり またある時ほの右衛門と酒のみしが はむめはいつものごとく候やをもつらせず うたゝねしたる折ぶしひめばいもとがだゝ いひてつきそふものもてあませば あねひめいもとをたましつゝとや かくするうちいつか梅がえ いつものごとく酒のうへうたゝ をこそしたりけるされども いもとをだまさんとて 母のもとへはゆかざり しが梅が元ふいと めをさましあたりを 見れども見へざり ければむつくとおきて 松ひめはいつくとたづね まはりければ松ひめは やうやくいもとをねせつけて これからゆきておとぎせんと らうかつたへをいそぐ折から ねがえまなこをいからし松ひめ もうし母うへさまこめんあそばせ今ひめがだゞいふゆへ たましてねせてまいりましたけしなりませあをぎ ますとわびことすれどもきかばこそ今ひめをだます とはこしやくなりおいてくれとむるむたいに引ずりておもての まつぱゑふしにふしふきつけくろけふり まつばゑぶしに南をきかけこれでもなくかねて そちにいふとふりさゝたべたときあをくのは いぬかなぜてぬとかたひつつかみ引ずるゆく ゑぶすかやり火はのきばたかくも立のぼる はじめのほどは松ひめも母うへさまごめん あそばせわたくしがぶてうほうおゆるを なされて下さりませといひしがのちは くろけふりのどへはいりてこゑもです かるとごろへそばのものみなく きたりてこのありさま見るより人〳〵 わびことしてやうやくなわめをゆる さるゝかゝるつれなきうきめにあへども おひめは母をうらみずわれきのつかざる ところからかくせつかんにもあふことゝさらに うらみんふぜいなくなを孝行をつくしける つきそう下部下女はしたはアラいとしの 松ひめさまとなみだをながしざんねんに おもはぬ人はなかりけりわがねをば にもはぬ人はなかりけりわが子をば てうあいし何がなきげんのよきやうきと ほしがるものをばこゝろのまゝに あたへとらせてよろこばせ松ひめには 三度のしよくさへやう〳〵にあてがい いはずとしれたに何がないひわけそのこんぜうが にくらしいサア〳〵これからたしなめとゑぶしに あるがく刀に 母に夜しよくを まいらせてまづひめ じしんにきうじして ちやつけのさゆをかけんとて につぎのゆをつぎけるがいかゞしたりけん▼ 上げの中よりくもの 一出しをしらずいまし ければ梅がえこりあげ すかし見てくものかを 見つけけれは草 なげ出しなんぢはわれに どくかいせんとはりいな くもをいれたる大夫人事の そのまへいかで そのまゝいかでお やいのちとりても あきたらず大夫 ふてきの大ざいにん としはよふかぬ子心 ながらわれを がいつんぼうけい とは図 ◑こんじやうぼねそうむまくはまいるまい …… 〽おひめさまのまた おしくじりごかん にてをねがいます ちつとわつちは ちがうぞや下そいへ うそむいてそらわらひ こゝちよしとぞせき ばらい松姫はせんかたなみだは 身にそへでちからをそいる人 なしいづくへゆぎのふり つみてたゝずむかげも なくなみだ一のきん つゝき ごんごだうだん いふもいはれぬ ふとゞきものとは いくながら父うへの なるすなればいのちは ゆるしてとらするぞ いづくへなりとも でゝうせうとつま 戸おしあけつき出す おしあげつき出す 折ふし大ゆきふりければ めはのおもてはしろ〳〵と ふりつもりたる雪中へつき ちだされて松ひめはいづくへ ゆくべきかたもなくいかゞは せんと立わづらふほんとうの 女うへがおいのちあらば今 このうきめ見まじきものを 母さまには三つのとき おわかれ申おかほさへんお ぼへすかゝるつらさにあはんより いつそ死んだがはるかまし はゝりへさまにはごくらくの じやうどゝやうのはすの うへ死なばそなたへいか りやうかおそばへゆきたふ ござんすとなみだをながし 手をあはせ母うへさまおなつ かしやともだへこかれてゆきの なかいまがんぜんの母うへに このよなことがきこべなば このうへいかなるうきめに あはんとさすがこゑにも 立られずつま戸の そとにたゝずみて おゆるしなされて下さりませと なくよりほかのことはなしつきそふ 人〳〵見るにたへかねわびことすれども ちつともきかすせらわらつてすまし 此母をどくがいしてころさんといふ むめがえ なをもはらに すへかねやかましの まつひめやと みづからにはへ とんでをりへいの ひかへにくゝりつけ 手ぬぐひにて 口をしばり だまつて くたばれ 父うへのおかへり まではまたれ ぬとうち てうちやくを したりけり こしもとうばはとんでおり 御かんにんあそばせとわび ことすれどもきかばこそ うちたゝかるゝ松ひめをへだて かこいてやう〳〵と梅がえ そんならそちたちへあづけて つかはすうへからはこうご 目とをりなりませぬこれを ことばのしほにしてそのばを こそは引とりぬ付の人〳〵松ひめの一 日なわめをほどき かいほうし雪に かいほうし雪に はだへもひゑこをり たへ入るばかりの つめたさをあたゝめ かへし人ごゝろ やう〳〵つきて おわしけり 否 く つかへける よみはしめしのちにきく此蜘をゆつぎに入 に入れは◑七夜のいわゐことなく 梅かえかのほの右衛門とこゝろをあはせ わざとほのころが入レしをしほにせつ かんをこそしたりしとぞされば付の 人〳〵は梅が元をにくみ松ひめを いとひけれども此ことかりにも きこゆれば女迄せつかんにもづかれば きこゆれば女寺せつかんにあづかれば そらおそろしくて口にもいださす ないくにはさゝやきけり松姫は 雪のこのせつかんよりのち母の 目とをりかなわねば部やにのみ おしこめられ三度のしよくさへ やうやくあたへきづまつしてぞ いたりけりされともうらみ ふそくも見せづつき ふそくも見せづつきの人〳〵 もちてあがならぬよろ〳〵ならぬよろこびにてよりずみはやうにもいちめられずといふ 〽ことりもちて梅がえにわびければ 物がえにわびければ松ひめ今ひめ二人のひめに目をしのびてはつれなく さあらば父のおかへりまではゆるし あづまではあづまではゆるしあづまみやけのにしきあたりけり をくべしさりながら父がかへりなば いち〳〵に申上てとゆるしけり松姫は こゆかしけり松姫は仙女香江戸むらさきのともにこゝろつけ なく〳〵母のまへゝ出せんひをくやみ わびけれはあが出せんびをくやみきぬちりゆんあまたもたもそなしめ わびければ梅がえはものをも いはで二日二日はすごしけり されども松ひめすこしも かはらずほね身をくたさて 林かえは十月にみちて此度も 女子をうめつう女をもむと 女子をうめりうぶやのもふけ◑ 女子をうめつうぶやのもふけ◑ すみて千代ひめとぞ 申ける松ひめはいとこま やかに女うへのかんかくなし くすりをあたへしよくをすゝめ くすりをあたへしよくをすゝめ 衣のめもねふらでつかへけり 梅かえは松ひめをうるたひごとに にゝさがまさりまして此度たんせう あればじつの子二人となりけるゆへ ひめはなをさらじやまになりいかゞ せんとしあんさいぢうをつと よりずみあづまより帰たくせられ けつひさ〴〵のたいかんにことさら るすに又子をもふけひとかた ならねよろ ならぬよろこびにてよりずみはやう 松ひめ今ひめ二人のひめに あづまみやげのにしき ゑざうしさらさうちわに 仙女香江戸むらさきの きぬちりめんあまたもた せてのほりければそれ〳〵に くばられける二人のひめたち よろこべば梅がえが内心には ひめにはやりたくないものや おもへとさすがいひかねて ひとりきをもむばかり ひとりきをもむばかり なり梅が元はほどなく 五日だちければ二人の子もちと なりしよりいよ〳〵ひめが じやまとなりよりすみに るすちうのありなしごとに ことはをたふみひめがこと をぞざんけんしくもを いれたるをいつゝけかくおそろ しき心中ととかつくろひて つけければよりすみこれをきゝ いづれわけある いづれわけあることなるべし ようゐにはからいなしかだしと 〽ころの春の春の春よりずみあづきよりやうちうにおもれさやうちうに心を心を心さ さやうちうに心をおさめさはらぬ ていにあしらい月日をこそはをくり ていにあしらい月日をこそはをくり けりされとも父のまへあれば思ふ やうにもいちめられずたゞ父か 目をしのびてはつれなくばかり あたりけりしかれども松ひめは まことのはゝにつかふがごとく朝夕 ともにこゝろつかふがごとく朝夕 ともにこゝろづけ二人のいかのとをあはれは もそなし父をうやまひ母のき小 そむかずたかわすつかへけり 一月三日はすこしけりくばられける二人のひめたちひめは父があづまな ひめは父があづまのるをかきを かほらずほね身をくたさてひめにはやうたくないものやとわがわがに わが子のごとくいもこの介 おもへとたすかいひかねてつゆたがはずおなしやうにも つゆたがはずおなじやうにしなひして なにごとなげに父よろたれば父の まことみれをおもひ 同断 つゝき なに心なく すごしけりかく すこしけりかゝて 月日にせきもつ なくそのとしも くれくる春も夏の まろころにもすぐしけに 花ももみぢもうつ ろいやすく松ひめは 十七にこそなりにけり こゝろさまゆうにして 人をつかふにしひふかく いもと二人をあはれみて 二親には身をいとわず しかれども三ツのとし 思ふこと かなはねばこそ うきよとはよく あきらめた むかなこと いふも親なら ぜひがない まことの母にはうきわかれ まゝ母のこんぜうわる ねたみそねみにそだて ●もたへこがれて なきしづむ られういかんなんをせし ゆへかこゝろづかひがしやくと なり折くさしこむ むなさきへあるときは いきをとめまたある ときはむねをくるしめ 一日としてよき日もなく しやくとつかへにせめられて うきくとしたこともなし もはや十七女子の身では はやりやうけんのでるじぶん なにのいんくわでこのやうに 母上にはやわかれほんとうの しつむかほもちあげて母上のおかほ どのよなおかほつきこうでもあろか あゝでもあろかおやに似る子といふ 事があればとかゞみとりいだし むかふかゞみにわがかほのうつるを おつかさんひとめ見たいとなみだに 見れば母うへのおかほはこうかと なみだぐむ母うへにもわたしが事 おぼしめずかやおいとしとろゞみに うつるわがかほのなみだぐむのを まことの母とものいふごとくひとりご さても梅がえは はらをすへかね なにかなしてくれん ずとこゝろをくだく 折ふしにふとおもひ よるめうけいありと ある夜ひめがねやへ 人をしのばせ男の小袖を 一入れをきけり松ひめはゆめにも しらずその夜はいつもねられ ざりしがものおもひのつかれにや じゆくすいしてよくねふる梅が元は かねてのぼうけい夜あけをまちて とくひめかねやへいたりて松ひめが 病気見まいにしんじつらしく 梅がえこゑを 梅がえこゑをぞかけたりける 松姫はおこされてつむりをもてあげ あいさつなすそばにありける男の 小袖むめがえこれを見つけあやぞ 男の小袖こゝにあるべきいはれなし おぼへやありとさしつくるひめは びつくりへんじにとうわく がてんゆかねばとこうの あいさつしばしなかづし さそれをつけ こみもつて そのまく をつとの よりずみあや しき小袖と とかつくろい あの子もみてはや 十七なればいつか いもせのかたらい なしてよる〳〵しのぶ 男はひつじやうその せうこには此小袖内に せうこには此小袖内に 見なれぬそめいろもん せんぎなくてはくうごの ため不義はおいゑのきつい はつと御りやうなんあるべ しとしかつへらしく さしまより } さしがふこころ まよふみ甲のまよひ にてもしやそ こゝろつくひめはいかにとて がてんがゆかずこれは いかにと思ふばかり叶さへ わきせんかたさらに なかりける梅がえは よつずみに よつすみに 松田三三十二十二 ひめがふぎの事 なきそらごと をほん とうらし いひまはしつゝその うへに父うへをあし さまにいひなすなどゝ とりつくりきのたつやうに そゝのかすよりずみもと よりたんりよのわかげ ともかくもはからいて まつひめをうしなへや せけんのきこへもあし ければいそぎちうせと こたへけるしてやつたかと ゑみをふくみころす とはおなさけなやたゞ此 うへはおひ出してつかはす べしと申ける内心には ころすつもりいかゞは せんとくふうする 家の子に小原次郎 まさとしといふもの 次郎 ぬかるな がつてんか 四 あふせを うけさり ながらいかに もおもへば とおもへば 御いたはしく 御ようせうの おいときより 母上さまにはおわか れあそばし梅がえ さまの日ごろあなた をおふくし足をそば から見あげ御いた ましうぞんじ ます小原の さとにわたく さとにわたくし おば神吉と ありかれをちかづけ みつだんして此事しゆび よくしあふせなばのそみ よくしあふせなばのそみは こゝろによかすべしゆめ〳〵 しそんじたまはるなといひ ふくめてぞしめしける さても両親は松ひめをよび いだしいひけるはこのごろ そちはしやくきのやうす 内できづまりするゆへじや このほど花のさかりときけば ●すいりやうして そゞろになみだ おちこちのたつきも しらぬ山中にすて ればけものゝゑじきと ればけものゝゑじきと ならんアラふびんとは下心 梅がえがまへをはゞかつ つや〳〵ものものたまはず 次郎まさとしひめを ともないひがし山とは はなみがてらのきほやうに ひがし山の花ある方をけふ 一日たづぬべしばんはおそいと あんじるから日くれまへには かへられよ供には次郎政としを つけつかはせばきづかひなく ゆるつと花見てかへられよと さもしんせつに梅がえはことばを やはらげいわれたりひめは此ほど 小袖のさいなんいかなるめにかあふ べしと心がゝりの折からにさもしん せつにのたまへばひめは心もおちつかず いかゞあらんとしたくしてひがし山へぞ いそぎゆくあと見おくりてよりずみは さすが親子のいさわかれひめが心を御 いつはりごと人も かよはね原山を かよはぬ深山を さしてひめもろ ともにいそだけり あるやとたづね給ふも あはれにて山のたくにぞ さりながらあつきあふせをいなまば 次郎つく〴〵思ひけるは いのちをとれとはいかな ことしつとのふかい梅がえ給 あんまりむごいどうよくと 思へばふさがるむねいつばい まさとし花はいづくに きたりける次郎殿とし 御とも申今もふそうか〳〵と つい〳〵かゝる山の中じつは おいのちとらんため此政としが▼ ひめにむかいさてこれ迄は 治 申すものを つまにて候へば かのかたへおつれ 申さんしばらく 御身をかく されてじせつを おまちあそば さばよくは はからい 申さん と 次へつゞく つゞきなさけふかくも申けり等シニそうかへ わたしをころしはゝうへさまにはおこゝろ やすめかんなんしんくに身をくるしめ どうがなして母上のおこゝろには そむくまいとしんぼうきがねした かひなくこのごろぬしなきにそでの さいなんむしつのなんにあふことも みなさきのよのやくそくごとゝ あきらめてはゐるなれどあん まりつれないをりくは 母うへを 一よきにはからい申すべし小原のさとへまづくと いざ〳〵さらば人の見ぬまと引たてをはらのおばの かたへともないかやう〳〵の主くのひめぎみそりなくに はからい給ふべからずおん身をかくしおき給へとたのめは おばはかひ〳〵しくうけあふてこそ給へとたのめは おばはかひ〳〵しくうけあふてこそかくまいける まさとしやかたへたちかへりひめぎみをうしない奉る まかりかへりて候がいさぎ まかりかへりて候がいさぎ よきごさいごといつわり 申のべにける 梅がえ大きに おもひ よろこびて だす とても のがれぬ この身なら いきて △ これから きがゝり さわりは とれて なをわが ゐても まを ふるまい ふるまい 此うへに うきめ 見るなら死んだが 〇 けり よりずみ わが子の ましわたしを花見と しんせつらしくさては わたしをころそうとて いづもにかはるやさしい おことばいつそころして あいは き らう くだされと □□□□□□□□□□□□□□□□□□□ なむあみだ仏 すぎゆき給ひし 母うへのおそばへ ゆきたやなむあみだと ねんぶつしたまひ かくぎきはめて さしたまふ◑ 次郎 なみだを おしぬぐい 一世がよにて候はゞ あつぱれ御家の ごそうれうむこ ぎみさまをもおとりあそばし 北の方とりやまはれこのやうに 御なんぎはあそばすまいにいかなる ことやどふいたしてもわたくしがおいのち とるとはもつたいないサア〳〵おつれ申さんと 御手をとりてひきたつるひめぎみよくごを きはめ給へははやくころして下されとあふせを かうむる次郎まさとしいかゞはせんこととほうに くれしばしたゝずみゐたりしが太刀ぬきもちて ひめきみのうしろへまはり太刀ふりあげくびうち おとたんとはしたれども思へば〳〵おしうのことりう もつたいないとぬいたる太刀さやに出さめて王たくしが▼へ きら れぬ うへはなねのくわり かゝりはなくわがよく いくびかせ ひとりなふ だをこぼされ けりあがえは ひめをぼうまい にておい出し ころしてしまひ 川々ぞうちやうし そばの女をひとりに つかいわが子ばかり かはゆがつひどうつさん トロ ありとはいゝながら いのちまでとりし とはなさけなくも はからいしと こゝろにたゆる こともなくさぞ かしじつの母が 此世にあらふもの ならばさぞ つゞきひぎをぞはたらきける よりずみひめが事あけくれ こゝろにたへずつみとが それがしをうらむ らんいやこのよに あらばもとより かくはなるまい ものをひめが ひとりの 不仕合と 折にふれ ときにふれ ひめをおもはぬ ことぞなきこゝに また十才のころより つかひしこしもとたむろと いひしこしもとたむつと いひしむすめありしがことし 十八にぞなりにけりひさしく つかひなれたればよりずみが こゝろにかなひわが子もおなじ やうにおもひこゝろをきなく ほうこうせしを梅がえ そねみねたましく つれなくばかりあたりける 衣ふくの出しいれ茶のかよひ しよくのきうじもこのたむろ むめがえねたみいみ〳〵ふかく あるときようじを梅がえいろけ しがきゝまちがへやしたりけん その事なさでありけるを大きに いかりのゝしりてわびことすれどきゝ いれずそちはわれらをあるがなし ようせうよりそたてしをんそれを わすれて此ごろはとわけをいふのも めんどうなりかうごのしめしにかくご せよりアはらたちやととりてひきよせ 〽いかに むめがえ あまりと いへば こしもと たむろを なんだと おもふ あれも 人の子 かみをくる〳〵手にからみゑんより庭へこ とんでおりせんすいへつきおとすこしもと たむろはあめふりあげく水まん〳〵と たまりたるせんすいへつきおとされてういつ しづみつ見へけるをよりずみ今はこらへかね 引あげてこそたすけけるかゝるふるまひかれにも かぎらず数度におよべばせけんのきこへしかるべからずと かんげんすしれどきゝいれずよりずみもとやかくして 梅がえがこゝろざしなをらばと又もしかたもあらんとも ころす きか ◑いけんすれどう きゝいれねば ぜひなくしもと くとうり 手ぎんのはつ ことばた つかはし つかはしかいまい 梅がえはいかりと なしよりず そのまゝをく かとかけだす所を をしとゞめ丁間の うちにこもらせけり かくて家の子 まさとしは 松ひめを ころせ いつわり にて まことは 小はらの おばの おばの かた梅がえ さまをりべ つのうへは 吉田の御家 つさへ 〽つきせいひつならんは ひつぢやうの御こと なりとよりずみ公 にまさとしは松ひめ きみの御事くはしく ごんぜうしければより ずみそうかと手を 一かち給ひ忠義の ほどをかんじけり 春町作㊞ 英笑画 いそぎつれよと げぢあれば小はら ともないければ父は せんひを子ながらも なき名をたてし ほうけいのなみの はづかしや子ながらも まよふたりゆるしてたべと よろこぶことぞかぎり なし松ひめはそうりやう なればむことりむかへて ひとくをゆるをりむかへて かとくをゆずりはらがはりの 二人のひめもあね松ひめは しつのいもとのごとくいつくしみ ゆくすへめてたくさかへける のさとよりひめ君を ぬれぎぬあらはれて 〽目出たい 〽おめでとふ ぞんじ ます 〽おめで とう ござり ます さわがしみやゐのかたさわがしくみやゐのかたさわがしく〽やれ三九郎は どこに出るアレとめてくれいトよばはるこゑ 〽あれはたしかにおやだんなトびつくりおどろきたちあが すそもほら〳〵かけくるおなつ〽わしやどうあつても しぬほどにおすぎそこをはなしてたもと父の わきざしふりてでへからんでもつもとめるのも ともにかよわき女子のちから三九郎とびかゝり やう〳〵わきだしもぎとつて一こりやまア おなつさまきでもちがひはなされませぬか だんなさまアマどういふわけでござります 〽サアわけといふたらほかでもないあらまし だんかうのきまつたむこ見あひいちだんで先から へんがへそれといふもとていつかふしだらみちが わるいと世の人に与さかたてうれるゆゑじやあらうと はらのたつまゝちつとばかりいけんをすれば わしへのつらあて人なかではものざんまいとし どうしたらよからうぞい どうしたらよからうぞい〽なるほどそれでは おまへさまのおはらのたつはごもつとも コレおなつさまそもやひまへのがみなわるい なにをいふにもこゝはわうらいまア〳〵 ちやつときげんなをしてうちへおかへりなされまし だんなさまあなたはそろ〳〵かあとから 〽おいヤイずいぶんともにきをつけて 〽おきづかひなされますなそれおすぎどの おびしめなをしてあげさかしやれト ふたりはおなつをかいほうして いへぢにこそは かへりけれ ○此ところはゑ つぎの絵より のちにいるべき 絵なり そのこゝろにて よみたまへ ことみおくつて工左衛門〽三百両のしきがねを 心あてに百両のかわせがねを人でにわたし 今さらむこがまちがふて〽なんぎならば ふしやうながらわしがむこになりませう こゑかけられてふりかへり〽おもひがけない あのこなさんは〽アイかまつらやの五郎八と いふもの三九郎どのとははまで出ありて ちかづきなれどまだまちがつてあひません 〽そんならむすめがあのやうな きずいきまもとくゑんして 〽それもしようち又三百両 しきがねのいるのもしようちで こゑかけたは人のなんぎをみすてぬが うまれついたわしがくせ わづかなもとでもひようしがよく うればさがりかへばあがり米屋 なかまにはいつたもさすがはんくわの なにはのいつとくあのうつて なにはのいつとくあのうつくしい おなつどのコレはらはたゝつしやるな たゆうぐるひをしたとおもへはしんだい ありたけいれあげてもさのみはらも たちますまいもちあはせたもちやうど百両 さアうけとつておかつしやい〽そんならいよ〳〵 五郎八どの〽いやしかしねんのため しゆびよくさかづきすむ まではなにがなしに きんす百両しやくよう 申スとたつたひとふで さんごくいちをうたふとき すぐにあとがね二百両へ そのしようもんもそへてしん上 〽なるほどこれはごもつともト はながみひらいてさら〳〵と こしりやたてをかりのしようもん 手ばやにかいてさしいだせば 五郎八はうけとつて〽なかうどなしの こりきわめぜんはいそげとあさつては ゆひのふもむこいりもごたまぜに してまちがひなく あとがねの 二百両 〽三九郎はやう はものを とつてくれ ▼〽おわたし なされて くださりますか ヱヽかたじけなう ござります 〽むこは子なり なんのれいに および ましよう 〽さやうなら 五郎八どの ではない 〽まァ おまち なされ むことの 〽しこを どの ばん 廿七日 いひつゝそばに おちちつたか 〽はな たもい おなつが かんざゝ ひろひ あげ そでに かくして そしらぬ かほ 心に いちめつ 五郎八つ たち われ 同 柴井仲丁 〇〇 御番 箱 失福帳 万現白帳 水揚帳 たじま屋のだん ひめぢよりきんねんこゝへきたしまの 米あきなひもところがら人あし しげきなにはがたしにせのかれん たじまやの工左衛門が見世さきか いそがしけなる戸ざしまへこあげ かわがてんぐにつみかさねたる 米たわらたからの山ともいひつべし 三九郎はちやうあひのかた手に そろばんかた手には 米さしとつて見せまいを つく〴〵そこらうちながめ 〽ヲゝたいぎ〳〵けふの かひいれあとふねまで これでみんなそろふたか 〽ハイおくらやしきの たてかへが五十ひよう もどりますみのおはりが 四十回ひようにてこれく けふはこちの内のおなつ さまへむこいりのたいじ のいはひ日四十回のよう 一の四の一十一の四の おわりのいやもどる おわりのいやもとる のとはきてんのきかぬ ものゝいひ女わ〽おつと あやまりいりまめに はるよめのおなつ さまこちらもいはふて みづあけちやうしらべて おかふとこあけ おかふとこあけ どもみなく へおくへたつてゆく をりからもどる せい十郎なにる 心にとつおいつしあん にはつたとつまづく しきゐきをとりなを して〽ハイばんとう さまたゞ今もとり ました〽ヲイはや かつたそして 石どうさまの おはらひまいは 〽いよ〳〵明日と まうすことこよひ ちよつとだんなさまに くゝやしきまでお出なさる やうごけらいしうのごでん ごんでござります〽八テ それはこまつたものじや こなたもしつてゐる とをりおなつさまの こんれいでなにか内の ごかたかへすだんな さまはさいぜん 蔵あや一つ できむこどのゝむかひにゆかわかるゝアゝこれ しませうわしがめうだいにいてくる ほどにあとはこなたたのみます おなつさまもあのちう二かいで おすぎにかみゆはせてごさる なにもかもきをつけてどれ これはかう わゝねたましやとのびあがる二かいのしやうじ びきあけてなきがほうつすきやうだいに しんきしんくのもとゆひもいろにぞそまる しまだわげしやんとおすぎがゆひあげて おもはずふつと見かはす おもはずふつと見かはすかほ ・おもひきられぬおなつさま今ころはかねつけてか いてこうじ三九郎はをり ひつかけいそぎゆく あとにつつくりせい十郎 〽あくおしうのむすめと ねんごろをするがの ふじに一里づか およばぬことゝ しりながら どういふ いんぐわの あく ゑんか 図 十一 〽おなつさま 〽せい十郎 あひたかつたとすそほら〳〵 おりるはしごもゑんのはしなみだに まことあらはせり〽フウかつ山か丸わげる おぐしのふうもかはらうとおもひのほかの やつはりしまだ〽サアおやのかうけんぜひがなく あいとはいへどわしやほんまにこんれいを すかきはないつれてのいてたもいのトりはつな やうでもあどないむすめおすぎは二人りが 中おしわけ〽けりやうわたしなりやこそ よけれよそほかのものもきくつれてのけの よけれよそほかのものもきくつれてのけの はしらうのとだんなさまのおみへいつたら たいていではすみますまいそしてまア おなつさまさいぜんおへやでなが〳〵しい ふみをおかきなされましたがありやます どこへおやりなされますじきくより 〽はてうたがひぶかい なるよむには およばんはいな むつとせい十郎〽おなつざま人にかくして 〽ふみかいてそりやまァどこへたがところへト がんしよくかわればおなつはうちゑみ〽わたしが 心をうたがふてなんのそなたにかくさうぞト とりだすふみを手にとりあげ〽長町六丁めたばこ その小まんどのまいるうのより〽はテなかをよむには およばぬことせい十郎とふたりづれこらひにけて ゆくほどにせわしてくれといふてやるのでござんすト きいておすぎがあきれがほうじめきつてせい十郎 ふみのぶんつうわざくふみして申あげまいらせ候 うき世のならひせんかたなう二十年ちかくおんたよりも いたし申さずさりながらおんすこやかのよしはよそ ながらうけたまはりよろこびまいらせ候おなつとやら まうすむすめをおんもうけもはや十七になり候よし 此はうへもらひうけせわいたしたく候まゝまづおなつへ むこどりはおんひかへなさるべく候ちかきにのぼり 十十五 おん目にかゝりくわしきことはそのせつと申のこし ㊄ いへく がてんが 内 まいりませぬ まいらせ候めでたくかしくトよむにおなつがきようさめて 〽こりやまァどうせうなんとせうじたつてみつてみたゞうろ うろおすぎもさらにがてんゆかず〽おなつさまどういふ わけでござりますトとわれておなづはおろ〴〵なみだ 〽母さんのいもとおせきさんといふおかたが何事ないやますが あづてあふみの国にゐやしやんすお目にかくつかしことは なけれどわたしがためにはげんざいおばさま手手遣し をかへてそのおばさまのにせぶみして此こんれいをやめに しようと小まんどのへやるふみといつしよにもいておいたし れどそのふみがこゝにあれば上がきをとりちがへつぎ ◑末七丁 つゞぎもちるとさつきてう松にいひふくめあふみから ひきやくかきたと母さんへあげたのが小まんどのへ とゞけるふみ〽そんならあのそのなかには〽せい十郎と ふたりづれにげるとかいてあるわいな〽ゑ下 二人りもあきれはてしあんとほうもなんどのうち 〽むすめ〳〵おなつはとこにと母おとも あんどうさげてたちいづれはおなつは きえもいりたきこゝちおすぎもともに 手にあせにざりせい十郎は うろ〳〵とたつもたゝれぬこの ばのしぎ母はむすめのかほうち ながめ〽いひだしたことへんがへぬ むかしかたぎのあの工左衛門どの きうにむこをとらねばならぬと にも ろく〳〵よういもできぬのに こよひとさだまるそなたの しうげんたとひきにはそまずとも さかづきしてたもらねば すまぬそなたが わたしがとうもせけんへ いやといやつても おんとぎりとを しつた人が そこらあたりに ゐるならば とも〴〵すゝめて くれるはづおもふやう にはならぬがうき世 ■それともいはずおかへしなされたごおんのほど ゑんでもわすれはいたしませぬほんにかうして もつてゐて又おとすまい ものでもないヲゝそれ〳〵 あのかけすゞりのひき だしへいや〳〵金や たからのかくしどころ これはふるいそれよりは あのかもゐのうへいや〳〵 これもふるい なんぞかうあたら しい人の心のつかぬ とこがとうろ〳〵たつ ぬるのれんのうち 〽おなつさま〳〵 〽ヱヽせわし ない今そこへ ゆくわいな とうぞかう あたらしい こゝさいわい の此米さし 十ぐる〳〵 まいたる ふみおしこみ かどにつん だるたわ らにさしこみ わたしもたかたひとりのいもとおせきといふがあふみに わたしもたかたひとりのいもとおせきといふがあふみに あれどいんしんふつうにくらすのはおせきがおつとは 工左衛門どのゝわかいときつとめたごしゆじんしさい あつてそのおかたもとくにをはてなされたれど げんざいあねといもうとがしゆうとけらひの 女ばうになつたとせけんへしられてはおせきが はぢとおもふゆゑあひたいところをしんばう して二十年らいおとづれせずどういふことりその いもとおせきがとこからわざ〳〵とさいぜんぶみが とゞいたれど。はて。おどろくことはないふうじを きつたばつかりでなにかのようにとりまぎれ よんでは見ぬそのうちにつひどこへやら おこしたほどにもしもそこらで ひらふたならかへしてたもと たもとからとりおとしたる なさけのふみありがたいとも いひかねてなみだながらにおなつは とりかへ〽母さんこれでござり ませうしさしいだすを手にとつて 〽ヲゝこれ〳〵とよみくだしおなつを こちへひきとつてせわしてやらうと かいてあれど今となつてはぜひかない イヤせい十郎そちにはあのたのみたいことも ありおすきもいつしよにまア〳〵おくへとゝさんのもどり にはもうおほかたまもあるまいおなつもきりもの きかへてゐやさアふたりともおじやいのじつれてなんどへ入にけり ○おなつはあとをふしおがみ〽〽マかゝさんかんにんしてくださんせ みちならぬふきいたからばちがあたつてつひおめにかけたるふみを これはちつと あたらし そうなほんに いつもしばゐ ではねだい かたきが するやくを むすめの わたしに あてた のが つぎへ すく □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ のゞきしこれがいちばんあたらしいモシ此ほんを ちばんあたらしいモシ此所 よむおかたかならずだれへもおつしやつて くださりますな〽おなつさま〳〵 〽ゆくといふにせわしない たゝみけたてゝいりにけり ○おすぎはそこらとりかたづけ しよくだいはこんでてう松どん おへやへだしたおねどうぐあのお二ういへ あげてたもおりとこゝろへこどんすの せい十郎が手をとつてあしおとしのぶはこばしご のぼりつめてはこひぢほどせつないものはなかりけり ○かゝるをりから此家のあるじ工左衛門をさきにたて すぐにはゆかぬよこあさの上下ひつうけむこ五郎八 こものひきつれ内にいる二かいのふたりは びつくりぎやうてんしやうじいつたて びつくりぎやうてんしやうじいつたて ひやあせをかくともしらずいでむかは 母のおとわに五郎八はあいさり そこく上坐にとをり よきもひよくの鳥だすきこれでたいがい こゝはよいちやうちばもつて てう松どんつぢまで だんなをおでむかひ どれおすひもの 見てかうと うつたりまふたり 八人まへなますかく やらみそするやら いき〳〵いさむそのなかに せい十郎はむしやくしやばら 又ばたくさとたちいでゝ〽見たうも ない二ッよぎこよひはあの五郎八めと 〽ねるほどならば此やうにうきくらうは せぬわいの〽いつの間におなつさま〽さア せぬわいの〽いつの間におなつさま〽さア はなしたいこともあれどこゝではどうも いひにくい人の見ぬまにあの二かいへ 〽それではひよつとだんなさまが 〽はてだいじないまアおじやト □〽イヤユ左衛門どのふ みち〳〵も申候 とをりテモこしらへの おものずきなおわき ざしあのなかごをはい けんはどうあつてもかなひませぬか 〽八テむこどのにはしちくどいものゝいひやう しざいあつてせんぞよりでんらいの類五 此一トまいし よじんの手に わたすことは 〽あの此やうに まうしても 〽まかりならぬ 此巻へつゞく 一四ツ巻のつぎ」「ならずは見まいト工左衛門 かたさきとつてひきよするにはし おどろく母おとわよりな〳〵ト わが□さかづきはすまねどもゆひいれはこばんで百両 わたしたからはおなつは女ばうせい十郎と ふたりのくびおれがまへゝもつてこい此やうに はらひのげにおや子となつた 九郎八にすみかきばうちやう どうぜんなそのわきざしさへ あつこうされてもくちおしいとは おもはぬか少ゝがんしよくかへて にらめるははらがたつたか やらめるははらがたつゝ おつかくすこなたの心のいち きるきになかたか もつはいはすこと忘れたふる やれ〳〵しゆしようや もがり男のあるむすめをかつがせ ごきどくやサア 俊 三百両はたゞとるやまゝ山にかうた がんしよくでうか〳〵きたもこつちが 扁 しごとその手じやゆかぬでなをせ つきとばしてあざわらへは工左の ぬけ〳〵これで切れと 五左衛門がわきざしへ あしふみかけゑり ひんまくつてお家の ぐつとせきあけ〽さゝすてならぬ まんなかどつさりすはつて こなたのことばなんでむすめが じろ〳〵としりめにかくる ふぎいたづらしようこをだせと つめよする五郎八はそらうそふき 中にかい見せじと母は たちふさがり〽かういふたら 〽をとゝい天まの水ちや屋でひろつて ばそのうへにはらたてられ おいた此かんざしきくてふはおなつがもん 又ひしづたは此やの手だいせい十郎が もんどころ〽いゝやそりやゑようこには なりますまいなアおとわ〽アヽそう おいた此かんざしきくてふはおなつがもん るかしらねごともいぜんは まづしいくらしとやら聞およんで だ五郎八どのけつこうなしん たいにならつしやるその中には とも〳〵それはあのおなつがひいきの ういめつらいめかなしいめもみに やくしやのもん〽おつとさうはぬけさせぬ おぼへのないことはあるまいわた こればかりでないアゝなんとや郎さゝそれ〳〵 しが心をすいりやうして此ばは こひといふじをきんしやでぬはせはなの どうぞなみかぜなくしうげん せ十郎にろをおさしよとひろいなにはで してくださらねばコレ工左衛門とのが うたふのがこなたのみゝへははいらぬるまだ せけんへかほがむけられませぬ〽つぎへし おなつがふみを かくしたる米さし 〽たわらにたし こみてありし かゞきとをつたおかたのやうでもない 男をもたぬものうちはないならひでも ないわいなうすぎさつたことそのやうに いひつのつてしたおやがなんぎするをきゝ ならばきのほそいあのむすめひよんな 心にならうもしれぬこゝはしぬる しつたやつが そこいらにゐやはせたら はやくゆきやとすゝむるはづ ばでないぞおやになけきを かけるといひそのみもないなん うけることおやをだいじとおもふなら かならずゑんでくれるなとまつかう いふてとめたならよもやとはおもへども わかい心の一トすぢにはづかしいと ばつかりにおもひつめまいものでも ないとしらせのことばひころをも それをきかねばふかうもの にくいとおもへばせわやかぬ 子をもつたらばおもひしらうぞ ヱヽうらめしの世の中やと こゑをあげてぞくどきける せい十郎もきゝとつて〽のちは ともあれおなつさまおやごの 心やすむかためなみだも みな両はうへかけはしや二かい のごふてさア〳〵はやう にもきゝとりてたゞ手を おがむ〳〵もみゝに口くちおし なみだひつしよなく あはせなきゐたり五左衛門 しあんをさだめ〽ゆひいれきんは はしごどん〳〵ふみ わづか百両今かへすはやすけれと ならしべつたり すわつて それではどうもせけんもすまず すわつて を〽のう母さんつぎへ 何かやうすのありさうなむこどのは このまゝにはいなされぬふたおやが このまゝにはいなされぬふた 此やうにめいわくするを 見たならばむすめも こゝへでるであらうそれを しほにきげんなをししうげんをすまして くだされたとひおなつががをたてゝこゝへは こまいといふとてもうき世のぎりを四 浅野丁 五郎八おなつと 思ひておすぎ をおくへつれ行 工左衛門おとわと おもひてわきざし をおなつにわたす でき ありも せぬこと なんのかのと いぢわるう いふ人は うつちやつて おかしやんせ わたしが こゝへかうして こゝへからして でるはマァわび ことゝいふもの それでもやつぱり そのやうにこわい かほしていやしやん すはわたしが大かた きにいらぬのでござん 〽なるほど今どきのむすめには いやはやゆだんはならねへはへ そんなら此五郎八といよ〳〵 しよトもたれかゝれはせゝらわらひ しうげんそなたはするきか 〽おやのむすんだつまさだめ なんのいなと申よせう 〽おもしろいさアきやれいつて ねようとそれとさとつて見あぐる二よい せい十郎はどをうしなひよぎひつかつぎ みをちゞめいきたこゝちはなかりけり 〽まアめでたうこゝでさかつき 快てうしもてそれさかなじ たちさわぐ工左衛門五郎八は みゝにもかけずいやがるおなづか 手をとつてすぐに二かいへのさはり あがり〽たがねてゐたか此ふとんは あがり〽たかねてゐたり此身とんは さてあたゝかできみがわるいこゝらあたりに しやつかゞむわかい男もまんざらな米やの 手だいと見えぬつらつきはまで出あめて しつてゐるたしかにたからの。イヤたから きたやらぢうだいやら見せともながるあのわきさし すじようのしれぬみのあふみねものがたりは おなつばうこよひしつほりにひまづら めつたにこゝはうごかれぬ卜ふとんのうへに大あぐらず おとわせい十郎 ひとりと思ひて おなつもともに かど廿日つき出ス 半 したにはうろ〳〵五左衛門 〽ユレお杉どうぞしてせい十郎をむこどのゝきのつかぬ やうおとしてたもトいふもふらふがおろ〳〵ごゑ 〽アイおきづかいなされますなこあげなかまを 〽アイおきづかいなされますなこあげなかまを たのんでおいたこしらへげんくわのとざくさでわざへし にがしますじこごゑでこたゆる おすぎがきてんだいところのかた さいがして さはがしくおのれぶつたな たゝいたなトくんづほぐれつ こあげの大ぜいなけだす つきらふそくをふみこかしそのくらまぎれに 此わきざしを見たかるはなにとしても がてんゆかずかれめがきのつかぬやうに こなたのへやへしまふておきやト ぶちだすむさぶりつく ありあふどうぐふみつぶし こけるしよくだいたをるゝ あんどんざしきも二かいも まつくらがり工左衛門は大こゑ あげ〽かつてをしらぬむこどのは おなつをつれてけがせぬやうに おくへ〳〵ときをせけば〽おゝがつ てんト五郎八がさぐりよつたる手 さきと手さきあたるは下女のお杉とも しらずになんどへつれている ○母のおとわもすりよつてせい十郎が 手をとればひつくりするもゆめごゝち おなつは男のうしろよりおびにとりつき いきをつめふるふひざぶしふみしめ〳〵 つきそひいづるを母おとわゆめにも しらずかどよりつきだし〽うき世の ぎりといふものはいふにいはれぬせつ ないものこれまでのゑんとあきらめ むすめがことをおもひきりひとまづこゝを おちてたもトあとはなみだにこゑくもる おなづはしぬるかくごのうへ心のうちの ○米さしを わきざしおなつが手にわたし これもおくにぞいりにける〽おなつさま おさしを〽せい十郎母さんとまちがひてとゝさんの うちつけて ぼんぼりの 火をけす おなつがふみ 米さしの なるよりおつ お手づから此わきざしをくださつさは これでしねとのやつはりしらせり 〽はておきのよわい男まさりの 小まんとのたのんで見たら又どうか よいしあんもござりませう 〽そんならばちつともはやう 〽ござりましとたちいづる うしろにやらすをうか かふ九郎八〽ふたりとも まアまてじさしだす ぼんぼりなむさんと□ いとまこひ母はそれともきもつかず 〽ほんに男のやうにもないなにを ぐし〳〵なくことぞサア〳〵はやうと いひすてゝ一ト間のうちに はしりいるせめてまいちと おこゑをしかけよる むすめにばつたりと ゆきあたつたる工左衛門 母とこゝろへ〽これ〳〵おとわ むこ五郎八が ことばのはし たわらに ▼ぱつとおちゝるふみ あかりはきえて又もとの さしたる米さしをせい十郎は とる手もはやくぼんぼりめがけ そくざのしゆりけんうちより▼ やみにまぎれて両人は あしをはやめて 〽おちてゆく甘布 長町のだん 物おもふみは春の夜もながまちやこゝも なにはのうらじやくやこんのだいなし くぎぬきのかんばんうつた小まんがすみ家 おもつはひとめしのぶすりみだれし 印は五郎八がことば 印は小まんがことば かみもとりあげずあんどうひきよせ たいまいのかんざしぬひてともしひ見 かきたて〽いつぞやおまへにもらふた本 かきたて〽いつそやしまへにもらふたま へひそれなりにわすれたをさかきに にばこで見つけだしよんで見たれば 此人のはらきるとこがかなしいといふに 小まんもさしよつて〽こよひはとなりの ねんぶつこうでとこへいつてもやつは ねられぬほんに此ゑざうしを あげたときはせい十郎とふたりして あけたとき あつちへなげたりほをツたりこれでは おなつ へ此本にも 京伝店口上 ○きせるたばこ入 風りうの品いろ〳〵 ならぬとひきだしへいれてわたしが かへッたをこゝでおよみなされるもやつぱり本 にありさうなふしぎなゑんでござんす いひつゝへうしうちかへし○此ぬしたじまやなつ 読書丸きおう丸 京山てんこく 古てい新てい 御このみ次第と 〇いつのまにやらもうむだがきだいぶお手があがり かいてあるはいな ました〽あれ。いやいなそれはさうとこのせい十郎 どこになにしてゐやることぞ夜じやといふて 人のめつまにかゝるまいものでもないと 〽ヲヤこゝでも又ふられた さうだコレついぞあひはしま あんじわびたるかどのくち〽たばこやの 北まんどのとはうちかたでごんすかト いふにおどろきあたふたといつものとだ せぬが小まんといつてはたれしらぬ ものもなにはの女だてわしも男だ かほをたてゝだしてもらおふ〽だせ なへおなつをしのばせ〽あい。小まんとは とはなにをたじまやのおなつを わたしがことようがあるならまアこちへト かどの戸あくれば内にいり▼〽ようがなくつて そんならあのおまへさんがうはさに きいた五郎八さんでござんすか ながまちくだりはる〴〵たづねてくるものかに いふもひとくせさてこそと小まんはなをも おちつきがほせなかそむけてのむたばこと 百両といふ金だしてだいてねようと たのしんだむすめはそのばんずいとくじ 大かたこゝらへいけだすみとつぎへ 安右衛門 むゞききしむしようにおこればおこるほどはねものがしれやすぜへおかうし うすつぺらなひろしまやくわんたきつけられてあつくなり わたしににえゆをのませにおいでか。ほんにおちやでも あげやせうかこれゑゝかげんにはぐらかせおなつは どうでもかくまつたおぼへはねへといふのだな 二十 さへさかうしてさへおきなさりやアなんにもふそくは いひやせんなかゐのお市がいふとをり酒といつては どなたでもひけをとらぬやつこの小まん おだいどこにもおざしきにもげんくわん ながやさむらひべやひつくるんで 九しやく二間いざまづあれへの おくの間はないしようしれた ほぐばりしやうじその □□□□□□□□□□□□□□□□□□□ しれたことさ見なさるとをりのひとりずみ きよがきのそろべく候 二度目となればそれなりに やぶれしだいのふるだゝみ それもやらうとへりつきと しようことなしのいちまつがた これでもむかしははやつたもの □□ おなつさんをやめにして いへでもくらでも いつそわたしにしなせへな まづだいいちのとりえには あさねがすきでしよくごのみ ちとかんしやくにさはるがさいご だうぐひようしき手あたりしだい なげこわすそのときにずゐぶん おきにさからはずさみしいをりは きのかるいたいふはをりをおその つめ女かみゆひじやうあんま おねまきにまではぶたへちりめん ぢめんでものみつぶす のがわたしがいつとく さうだんするきはござん せぬかどこのほとけが のりうつつたかさま〴〵 こだくをはきだすな 〽コーたしかなしようこと いふやつもあたりめへだと かわらかみであたつて 見てもしらねへと そらツとぼけにでられちやア さらばこれからきやうげんの 一小だうぐをおめにかけようで 六ノ巻へつゞく 杖 扁 地 五ノ巻のつゞき「今こくのかどぐちに おちてあつたうしろざし せい十郎とのひよくもん此ごろ 天までひろッておいたこのかん ざしとまづいつつゐかしら よくしてゑりかくさずと びやうぶにかけたふりそでは 同部ゆくのじやござんせんト とる手をはらへば又つけいり きつと見あはすかほとかほ きし二郎さんじやござんせんか さういふわりやさき川か あいだかつた〳〵あいたかかたに ようとアきてくださん こひといふ宇のきんしぬひ うたにもうたふおなつがこそで さてまくぎりのぼんぼりへ した。いや〳〵あんまり ござんせん同丁 しゆりけんがはりの此米さし なかからおちたおなつがふみ せい十郎とふたりづれにげてゆく とのたのみのぶんしやう 下 ところがきまでなが〳〵と かなでながまち六丁め。おつと 罪あいさわたしはきちがひでござんす かぎ母ごさんのおゆるしうけそにてもだいじ ないものをろく〳〵にわけも いはずしやくがおこつて とりのぼせ城 卅 それはにせひつといはせぬ ためにはそのゑざうし 此ぬしなつとたしかにどうひつ これでたいがいよからうがなんでも よりどり十九文でへぶおみせが ならびやしたねしちむづかしく ゑゝ。おまへは。 いひなさんななるほどふたりは かくまひやした。が。わたしも女だ 此うへはほねがしやりになるまでも たさねへとしやうねをすえて しれたことさ■おもしろい女でちつと ふそくだがちよつとかうしてその手で ○おまへは。ほんになにうら いはふやら。かうかむねが くら〳〵して口へはさつぱり でぬはいなじむなぐら とつてふりまわす きちがひめしづかにいつ 十 めをひきつけた そのうちに いんろうを なげつけて どこへかついと にげさんして 〽つぎに できいきたかともしんだかともたづねても くださんせずいつの間にやうりつぱになり 三百両のしきがねしてたじまやへむこいり するとは。いやも。あきれてものがいはれぬはいな そしてまアおとなげないむすめに してもよいようなおなつさんにほれる とは。あい。きちがひでござんす けりやうおなつさんに けるやうおなつさんに せい十郎どのといふ 男があつたりや こそよけれ こそよけれ 今のむすめは きがしやれて いやみのない ところがよいと ひよつとおまへに ほれまいもの でもござんせん これみやしやんせ わたしや又くわん おんさまへちかひたとをり なつさまんちがひたとをり そのまゝのかんばんが いめうになつたやつこたばこ ひとりかうしてくらすのも どうそおまへにめぐりあひ 三日なりともふうふに なやくたさいふにいはれぬ うきくらうぶじてゐたか からのおまへのあくしやう アイめつたにゆだんは なりやせん なりやせん うれしいやうなれど日ごろ やうにきを もんで又しやくでもおこすものだ ひさしぶりたさき川さん ヲヤいやし此なりで□はテ でへじねへこつちへよりやト むかしなじみぞむつましき かゝるをりからかどの戸おしあけ すつとはいかせい十郎それと見るより 五郎八が物をもいはずきりつとも やれまアまつたいふこと ありとひつばづ せん ●又切こむ しゆれんの 手のうち せいすら あしらいかねて めきあはせ ちやうどうけ れは 小まん は かあいやとたつたひとこと いふたとてぶしもすたりはしますまい 四八テざういふもみんなぐちかんだうをうけるほど かよひつめたそなたじやものなんのにくいことかあらう わかれ〳〵になつたのはしゆじんとおやへの申わけ おなじなにはにゐるとはしらずつね〴〵からつよい しやくもちもしや此世をさつたかとおもひいださぬ 日とてはないそれじやによつて 今まではおれもやつぱり ひとりずみたじまやの いりむこはふかいやうすの あつてのことさういふて くださんすりやどうか ○ありあふ にばこ とりあけて わがみをしづに しらはのうへ 〽まア〳〵まつてト みをおしまず おなつもともに はしり出すがり とゞむるばかり也 しらはなげだし せい十郎はるか ばつさに とびしさり 〽むとう あしらひ つゞきかなひがたくいつたんさやははらへどもまつたくはむかふ しよそんにあらずさいぜんよりもとりかゝりあれにて やうすはのこらすきくせつしやももとはごけらいすぢ さじ忠兵門がせがれみつの介と申せしもの ごしゆつ国のそののちにいつたんおいへの やうしとなりしがふりよのことにて 小さくらのたんとうふんじつ ひやうえさまはぞのばでめぐ ひやうえさまはぞのばでめぐりあひしが ごじがいそのゝちわれは まつかうして小ざ とうちにきたり とうちにきたり てだいぼうこうつと くらのたんとうを かたりとらばほうび むるもかのたんとうを として小ばん百両 せんぎのためトいへば 五郎八うちうなづき そくさにやらんとわたしへ たのみ母ごさんのしどうきん 〽たゝものならずおもひしが かたりとつた申わけそのかね みつの介とはしらざりし われも父うへこせつぶくと とつて此きやうもろともかうや さんへおさめんとおもひついたがいんぐわの きいたるときのそのぎやうてん せめてもの申わけそのたんとうを せんぎせんと心をくだきしかひあつて 今手にいつたよろこべ第〽何たんとう おんてにいつたるとや〽ほかでもない なんじかたいせしそのわきざし はぢめお名はしらずみやうじはかはる ひやうえさまをしうとごとは ゆめにもしらずあだちのししや しむらかづのしんのいもと まがきといつはりみのと あふみの国ざかひ 〽ヤヤ〽ヲゝやうしとなつてほどなくふんじつ 見しりなきはもつとも〳〵いつぞや天まの 水ちややにてじがいせんといひつのり おなつがぬいたる此わきさしとをめには 〽見たれどもたしかにたからのたん ねもの とうとおもひしゆゑにおしてのいりむこ 今なんじにきりつけしもこんれいの 夜のあつこうも此わきざしを ぬきはなさせしんぎを見んため めきはなさせしんきを見んため ばかりぞじきいてよろこぶせい十郎 小まんはむねもはりさくせつなさ 〽そんならあのねものがたりの さとにおいてごせつふく ●かたりの さとにおいてごせつふく ●かたりの なされたるかみないひやうえ といふおかたはおふたりさんの 里においてたんとうを かたりとつた女はわたして ちゝごさんでござんすかト ござんすときいておとろく とふに五郎八ふゑんのがんしよく 〽われはをきなきときよりも きし二郎みつの介はくわい 〽ぢうよりいんろうを おやにたゝるさうありとて 立田とこののかはおくびとの かかたの名字にしてかみないが すなはちほんせいみうして そなたがひやうえさまの〽サウ ごさいごをしつてゐるその わけきいてくださんせし とだなのうちよりとりいだす ふくさづゝみのふもんほん くちおしなみだばら〳〵〳〵 こぼるゝあまたのかねもろとも たゝみにうちつけどつかとざし 〽石山でらにておわかれまうし しよ〳〵はう〴〵とさまよふをりから 五じやうさかでいちざしたしかまがいたらに一 とりいだし〽おふぐれといひ がつぎにてかはさへしかと 見きはめねばをんみ なりとはしらざりし そのばにおちし此いんろう のちのしようことひろひあげ 母うへのおんめにかくればこれこそは きし二郎かひさうのしなとの おんものがたりもしやかんどう うけたまひがい九郎にいちみして 兄のしよゐにてあるときは 血で血をあらふどうりそと 心におさめ今日まではういつ たじやくにみをもちなしてはか〳〵しく せんぎをなさぬはかくのしたいじぎりある兄をつぎへし たじやくにみをもちなしてはか〳〵しくたんとうの 同断 つゞきうたがひし せんびをくひてそ うづくませ 〽ヲゝそれこそ 石山にて此辺 川にあたへし いんろうまきゑの きくのおとゝぐさ なんじが手にいつた れはさうおはふも もつとも〳〵して〳〵さき川 此たんとうを工左衛門がしよち } せししさいはどうじや〳〵 〽サアよこしまひとうのがい九郎 かたりとらせたそのうへでたいしを 人にもらさじとほうびといつはり だましうちそれも世にある ならひぞとさきへくゝつて がいたらにあたへたはまつかな にぜもの正じんのそのたんとう はとうちにもつてのほりしが どういふわけか工ざゑむどの かひたいとあるゆゑに金百両に かひたいとあるゆゑに金百両に うりわたし母ごさんのしどうきん いまこそとゝのひうれしやとおもひのほかに たんとうゆゑごじがいありしもやつはり父うへ手は おろさねどげんざいのしうところしのせいばいはまつこの とをりト米さしをはみへくつとつきたてたり〽のうかなしや ゐられぬどうりこのゑ さうしにさへかいて あるおまへがたの一 わかげの いたづら これで いけんは しな しな がらも とゞむるおなついまんはくるしき いきをつき〽なんにもおと ろくことはないわるいたくみを したものはどうでいきては二 うへとはしら ぬおろかさ 此米さしは とりもなを さすしうと七 ころしの 時竹のこぎりおもひいたせひ石山にてふたびさあやちりめんのト蕪うきくらうはさせまいかのいきやうもんにいみないと わずないしやうをきる事ながばたちまちこはつをあてたまへとみやうじをせめてしるしたならそなたもそれと一 くわんおんやまへおかひをたてそのばできさへたこんかだいなしひづきかは九郎にはたのまれまいトおめふもおつばかり 給はく〳〵とおもへどもまがきといつはるそのとさはかつざまぶ女このおちこれもさざまるいんえんづくくわんさま にそうのやういいにこのみにむくむくひきてところはなにはまはのおちからにもすくへぬことであらうぞとことはて れどもわ角分は国を分るとよむたばこのにばこはさかひ思ひしはなかりけりも〽そんならおまへがあふみのおばきよいに あふみおもてにみのふとんねのかたりてひやうえささままろこのたりさんでござんでござんすか下かなしいなしいなうにも やうにごせろふくいんざわがめぐつてきし二郎さませめてみらいは〽まつがよろ一ぴきし二郎すゝみいできにそうにそうに ふうふやといふとさへもならぬのはなんたるがうらかなしやト白船ありとつね〴〵母の物がたりはおとわやのにてありけるかへ ふうねやといふこときもならぬのはなんたるかうかかなしやと白ねありとつね〴〵母の物がたりはおとわこのにてありける かつばとおしてなきいたり〽せんひをくひてけなげのしやうがいそのえにより此たんとうもおひとりおかれし物ながら わめいは母がいかうどしてやうふになさん心のこさずじやうじうじ上花のうちにうらくちの身をおしあけてこゝろ かねとしゆもくをたづさへいで〽イヤそのたんとうは女ほう 戸をひらかせかみないのこうしつ三むろ大下さすが はぞんせぬことみむろさまにはせつしやがかほヨモお見わす りつぱのいでたちおとわとうちつれ内にいる〽おもひ れはあそばあそばすまいむかしの名は矢草とてひやうえさもの かけなき母うへさまどうしてこゝへとおどろくきやうだい かさむらひ今やうさゝますればせい十郎がすな おとさは小まんにとりすがり〽そのかたなさへもどつたなら おまさははまんにとりすかやと〽そのかたなさへのごづたならはち父といふほうばいといふほうばいとこざいともをもが どうかしようもあらうのにひよんなことしてくださつ そひそれがつひいひつのり二人ともおんいとまそれより たしいふにやう〳〵めを見ひらき〽おとわさまみむろさま せろしやはとうちにきたりゑんでがなもつたる女は にはとりわけてめんぼくなうござります此きやうもんに にはとりわけておんぼくなうござります此きやうもんにはこしうのおくがた三むろさまのじづめにぬいべしい みをかへりみておとづれはいたさせねとひやう其介 かいにのがれぬ天のあみそのみにかたるとおつしやかたにつゆちりのごせろふくはくはしくつたへうけたまはりおも たがはぬ此みのはて〽コヽそのなげきとわりなれどしらぬ用ぼしにそのたんどうはいけんいたせしことも」 ことはぜひがないこれにゐらるゝおとわどのわたしがためには ことはぜひかないこれにゐらるゝおとわとのわたしがためにはあれば心をつけてたつけてたりその小まんがしよぢ あねなれどみつの介がほうこうしてそこにゐるともきし あねなれどみつのぬがほうこうしてそこにゐるもきしなす一トこしたしかにそれと見きはめてかひとり 二郎がたんとうせんぎのそのためにむこいりしたといふ 二郎がたんとうせんきのそのためにむといりしたといふおきしがおやくにたつてせつしやがくろこび此うへなし ことも今まではゆめ〳〵しらずさいぜんおとわどのもろとも ことも今まではゆめ〳〵しらすさいぜんおとわどのもろともこよひとなりのねんぶつそうできみつけたこの家の みつの女があとをつけあのかどくちにかごをよせきいたるさうどうどうそのまゝらへまいつてはせいすしやかなつ はぢのそやとくにもかくとしかならば兄弟こめに此やうに意をめがめんぼくなくおめはうかとうれしいつまへ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ つゞきことやかならいことをしんばうしてをりました はなしなかばへみむそのさむらひともがさとつてずろと いり〽矢平ひさしくあはぬなトいふにおどろきふりかへり 〽さういふは左介でないか〽されば〳〵せい十郎をほうこうに おこしたは人だのみたがひにかほをあはさねば矢平とは おれもしらず四五日いぜんあふみにくだりみむろ さまのおめにかゝりかやう〳〵と申たればふしぎな えんもあるものかなそのたじまやの女ぼうは わしがためにはひとりのあね工左衛門はまへど つかふた矢平じやとやらいふうはさひそかに のぼりてあひたいとおほせをさいはひおとも してたじまやへきて見ればむすめをつれて せがれはかけおちなむさんぼうことのやぶれと やうすをきけば兄弟ふうふしう〴〵おやこ たにんといふはひとりもなくやう〳〵あんど しましたトことばにじつきぞあらはれける ○小まんは今をしくはつく見るも ふびんとこうしつみむろ 〽それかいしやくしてとら せよトさしたる大小 おとわどのゝあんないにてたづねあたつた此家のかど口 きし二郎にわたせば 小まんはかぶりをふり 〽かいしやくなどゝはもつたい ないくつうをさするが世の みせしめ此うへのおなさけには きうしよをおしへて〳〵ト心は はやれどそきだけのしぬもしな 〽なむあみだなむあみだぶりなむあみだみらいを たすくるそくじづめきし二郎つつたちあがり 〽今さらいふにはおよばねどもおのれゆゑに 父うへはあへなくもごしやうがいおやの かたきのやつこの小まん女とても 承めたんまつまなみだながらに工左衛門しゆもくとりあげ ようしやはならぬ此世にてその つみをきり母のことばのおもければ みらいはいちれんたくしやうぞと かたなすらりとぬきはな せばありがたいともいひ かねてにつことわらふが此 よのなごりくびはまへにぞ おちたりける〽わつと ばかりになきふす おなつおとわは しがひうちかくす びやうふにかけし ふりそでもこひ といふ字にちり はてゝ花のうてなへ のりのみちぐぜいのふねの ろをおしてたれかわたさんみつせ川はやたうぜん寺の あけのかね〽たんとうおん手にいつたるうへはいざごきこくと すゝむる左めなみだはらふてこうしつ三むろ〽おつとの きうこうおもければそのたんとうさへぢさんなさばばんりやう あんごとかねてのごないいみつの介はなにはにとゞまりおなつと ゑうげんすんでのちゆる〳〵とあとからおじや一りのこうのつぎへ おやつあ たりたりたりうへはかんどうゆりすきし二郎サアいつしよにと たちいがる〽さやうならばこうしつさまわかだんなにもこきげん よう〽矢平〽左女すゐぶんぶしで〽さらばやさらばとたち わかれあふみぢさして〽いそぎゆく ○かくて小ざくらのたんとうをさしあげしかば さつそくこゆるぎあだちの両家わぼくとゝのひ きし二郎はふたゝび本りやうにたちかへりせい十郎は おなつとふう坂となりゆくすへめでたくとみ さかへけりとなんめでたし〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵 ゑあやつりにへん 二十五日 六冊 口上さて此冊子にてみつの介が手に かりましたるしかまがい九郎はじつは かい九郎がふたごの兄弟にてまことのがい 九郎はおもひのほかなるちうしんものにて ふたゝひ小ゆるぎ家にさうどうのおこりし ときそのじつぎをあらはしまするを いちぶのしゆいとなしおなつせい十郎があふと 又〳〵六冊につゞり一一めんかゞみ二へんとなづけ 来巳の春うり出しまするあいだ扨かはらず 御そとめのほどこひねがひ奉ります ○作者のにがほも ゑまき きやうにむすめ いちぢのしゆいとなしおなつせい十郎があふみにのゑをかりうけ くだりまするみちゆきのほつたんよりさき川が じやうぶつとくだつをえまする大ぎりまでを 百鬼夜行の 絵巻めきます ればごあい のゑをかりうけ まして申上升 そのため口上さやう 彫刻江川留吉 華耕千形仲道 歌川国貞画柳亭種彦作 10288