山崎與次兵衞壽の門松

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近松門左衞門
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近松門左衞門
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ヤマザキヨジベエネビキノカドマツ
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東北大学
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2026-08-28T18:53:25.651810+00:00
山崎守次兵衛寿之門松 狩 上巻山崎よす一山崎よす京寿の門松 筑波根のみねよりおある。涙のしら玉ひいふうみいよ いつむなゝや。九軒の町にはねかはす。ひよくの羽子板 申候に可申候に むくろじも見がに入ては色に成恋の二葉のかふろ松 枝と枝とをやり羽子もみいよういつも末なかぬ事 になるゝ門の松がゝへの松あり客は侍先新町の物な の日松たゝさんにふかみどり千代も根引はたへずまましく 新介いやといふ物むりつきやつてそれみやの羽子を松へ つきとめやつたもとのやうにてかやしやと袖に取付秀共 一取付きやんな男につかすりやとまるとは。あまからしれ たことめづらしそうにとふりそなし手をたゝいてほつほらほこ ちやしらぬあべかこの新介と走て内へかけ込はそりや〳〵 にがすなといへよと。羽子からおこるいとかひはとぶがごとくに追ふ てゆく情くぜつのゆゑ出り。雪間に乗足さやるほり。が すみの夜虹の帯雲の上着を行はかけて新破つき出し出 立ばへ殊にうこんに落ぞめあさきおり物ぬひ物そめもの づくし小もん三重ぞめぶさゑぞめあさきかのこにひはかのこと さきかのこにふる年のうざをも芥子のへに鹿子ごゝざいしきの 越後町三物に三つの春たては松若みどり梅じせつやもがお だれあかねさす天も酔ふたり人々酔ふ初さかつきの内祝ひ過て 諸札のよね揃へせつたの音のしやら〳〵と春めく中にひらさきは。 色のかさや藤屋が内あきといへる名木の松にはつぐ花も □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ なき名と利発をめのはり情こぼる道中は。道中は。行きゝの人も立 とまり花を見捨るかり金も帰るくりはのはれ所身にも年 にも食もせず七十斗の古ばゝの古綿ぼうしのほかぶり。春しり顔 に七つ屋の蔵の戸出る玉ひす茶の木子の袖をすれもつれ つきまとひ行足もと。やる手のかやがこは爰に是爰なばさま 此広ひ道をなんぞいの。高砂の射と雖が艶別したやうな なりで。太夫さんにすれもつれ[サ]いやうしいこじたあの緒から おんなしなたつゐて来るわかい男は。おろせの風共見へぬとなた のつれる。とつとゝのいてもゝはふと押やれ共腹立す。お道 理さまや御免なりませ。旁に聞えたあづき様お恵外ながらし み〳〵とお咄し申たい事ござりましくるはをぶら〳〵致ますどふ ぞお聞入なされて。お情にあづかればばゝが後生もたするを 大なの〳〵太夫のに鬢のからい梅干ばゝがすいこなやつくおぼし めは。おはづしやといひければ。ラいや。名をやしるゝ。是に。是に。命をやしるゝ。 さん進の金盛を見かけて。俣の髪のといふかたりとはふかひ〳〵 其夏のやり手。是めがくろひ見ておきや。ランナルこはいといふて下され なが百といふ様に見へきする〳〵びんぼうはせまいものづれあひやせん 場てかくれもない千貫目の直しもしたなんはやのみなしかはせの かねが。滞大坂を仕廻ふて。やさへ引込はてられた。其難波屋のこして ござるあの下よふり。能むすこ千貫目の大金のゆげてはざさなやつ 九市允 なれと今で銭壱貫のともなずなん年〳〵と其日過の日も 取かたほく見ゆるも。お道理と老のくりとめに渡とむ證にいにしへ を上び出し方ふぜいなり引舟かぶろ遠慮なく。くゝおどり歌によまは 盤のことか。ゑい〳〵やまさき〳〵。女笠山崎なんと平のお □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ばゝき此誠にかねを出せきほんにござれと笑ひける。あゆには始終 もひ泣皆のしゆは何笑ふぞゑで有ふが有まいがつとめする身 のなひ。おちめと聞ば見捨れぬ。あづれを見込でおむとは。いとは。いとしらし いばざれけいせいめうが聞気らでごんず爰は人立しけんちよつ と横町の小店をかりの楊屋町。爰へ〳〵と手をとれは源をなし。 忝なづ〳〵。お咄し事迚も此要が此ねで何の願ひござりま しよ月は日生共思ふはあの其平め。いつぞや人さやとけれ。此軒町へ文 の使の頃手にあづき御を見そめて。等とく親の口からにおはじ恋 病みに煩ひます。家主憐の聞へも有又しさけるはいそうと。 しかつて〳〵追出てものけふとなたれ共。むしの身なり。 ものゝわかけめかけのといふさい申。申にくいが太夫様を一年二 年買つめてもどこのいたみにもならぬ身体其気でそだつた 十九月九日 やつの事。かいやどうぞしてやもたいと母がやせがも子のぞみ も金銀といふつはものには又してもへし付られ。見ぬしにか子 の命。きがひするな情をしやうばいさなさるゝあぶき様なげざ申 てお互にこゞかしよそれで思ひ切はれと。あつをつれつきまとふ ものかいと。母が命が命が一夜さけいせい代にも成なば今でも。 しんで見せませう。押付がましいことなれど。ちよつと計のお盃し。 是であがつて下されと袖から出す小半入の徳利にあまる親 心かけ昼の府彦の猩々笑ひこうして涙の軽泣ことしらんふり 手さへあちむくこそ表なれ聞程あぶきおしうつむき群なばゝ さんわたしが洗ふ詞かないと平のこどこにぞ顔がらんたいござりや せと呼れて祖母も一時に子年をのぶる門松の影子かくるゝ なんみ平ゆびをくはへて這出る袖口取て引かせほれ也〳〵と人 ごとに。誠もない口くせさへとめする身は先ほまれ公ののな 男を煩わしたは此あづき嬉しうござんを忝い命にもかへ身に もかへ逃返したい物なれど。恋といふてはちよつくの詞もかはされ ぬふかい男が有はいな山崎の真す重様と申て新坡のくつとと より出しろいと。悲しいとわけのありけ仕つくて。望めは名計 御届一統一 夫婦といふて。今一人と外にはもりす。水もなし。といふて母御さまの 御しんじせついおまへお心入立ながらの盃にぐみながさんも ほんゐでなし是重山あづけた物それ爰へあいとこたへて引 一同二十一日 ふねが神の内のふくき物色こそいはね子吹の十両年旬是も か給ひ山さまゆへわけの有かねなれど。母御給へしんぜます与 平御の身の廻り。わつぱな大じんに仕立て下さんせ渡り並の 客に身を売はげいせいのなひ枕をこそかはさす年月の物 思ひ酒でながしてくざんせと。渡す小判をなんみ平あつきが ひざへどりど投付とうかくにござり。曲がない。かねにや ほれぬ。ひんなものとあなどつて。金て口をやどは 庭かけて七畳半びんぼう神の出旅所といひそうな住吉師兵正 月もかんなし市子一枚なれどもいせいに金囉ふて揚屋へいたといは れては。此なん平人中へ乱が出されうけ。然にかこ付物取とはめ さゝがちがふたあぶさぬ七十に余り母と名に顔きぶらせ無念にご ざり。ゆるして下さつ母者人と都を忍びて泣けるがよふおもへば うもし天調法延付と次衛殿に請出されおたさまにそなはり出身。 我らは日用衆内方へやとはれて。妙仰でもすればおくふの為にける いと。後を大しになさるゝは心と気遣なされなふづゝりと思ひ切 ました鼻のさき計で忽せぬせうとは是成と。腰のさすがひん ぬいて次ににあびか押あければ。あづき取付まつて下され落たと 漸に押とゞめ。金しんぜたはあやまりなれど。身のおさまりを思ふ などゝ。そうしたさもしいあまじやない金頭素のには勿なじ。のほん かりやし さい有てゝごれもなひいしんいしんちよ也わしからおこるおやどの もやく悋気やら御朱見やう。跡の極月の九日まへちよつとあふて それらはぶしゆび〳〵のふみ計おろせ揚屋の付届物もんのかい 論もわしが独のむな万年の有うへね切まし労の心をつむ 一身ぬけのなかん。此くげんぐるはで祖母に成あづまがはひと思ふて 下されと能も表もおあけてべがなくこぼす。正月の涙も顔ににからず 八十四日といひ上いつん しぼる袂の人重打かけぬいで帯ほどく並ふ夜の床の丸より 一十一月十一日 又あふ迄はさまさしとふかい中着はうば玉のくろくぶさへの蛇のめの紋 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 近頃ゑさまのお小袖しばしも身ははなさねど是がわしが心一はい 是を着て衰む雁の声に成てくだんせとに袖渡せばなんみ平 これが誠のお情私はかなふたと押いたゞいて臣計母給経つくり と。いふなけはせのつめひしきはむつしそうな事やとて耳をすますぞ 神勝成与平涙押どいおまへに逢ふて真実の涙といふ物覚まし た金のわらぢて尋ても。二人となひ女郎に思はるゝ。与頭京殿は めやかり物着物も戻しませうがはりにいぜんの小判もひまし の たと私せを母がはづたとおびきやう者。今の詞がはやちがぶなん □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ばやの家に疵付るかけびたやめとしかられてかぶりやりいや〳〵 身の欲にいたすにこそあづさ様とよ次京殿是程のふかい中の聞 すてゝは男がたぬ此金を此まゝおけば楊屋の庭銭をこりに 成てすたるにす。小判と見れば小別あづきのの身の油かねをなれ が顔つてこつちも身かゝ油商ひどかもうひけすればどが損すな。つ ゐと江戸へぐだつて。十両を百両。百両から弐百両弐百両から五 百両段々もうけのあきなひ拍子千両に男は三つ羽の征矢 くるとう廻しのあさなひの笏道は。我らが家あづきの根引にしみず 急殿ことおざりよろこびの顔を見て。けふ情の御字惣をお くらねば。此なんじ平一好〳〵。常々金がながなし。是を。かふてかう売 てと。心当の事共色江戸の道中二歩では高砂のみや。母者人は 横ぼり揉むこにあげりやゆるり。その内。かねものぼしま しよなんみ平が立身。あづきの御出世よのの御出金子 つねやうしフシきるふ事 り一とび一拍子一黒量有男也。過けは聞ね頼もひ御心てい此あ べきに惣有身で。其頃京様に末ながふそはせうとて俄さ江戸の 思ひ立ふたる中のむすぶ料さん。川出の盃しみ〳〵お礼申たし。 ゐつゝ屋へ伴ひかきしよ。母御れなどふしやへりやみ原が勇かなへは。此世かた の奉仏太夫御おさらば弥頼上ますると。今平がせなかしとしとしとしとしとしとゝと □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ こりつ。あやかり物。嬉しひか〳〵と興をもさせてやはらぐる奴は。いと子は 大じんはつと打たり露よるも。太夫が情いたびて帰るさに。そゞ長持 いそくいそ〳〵役々揚屋町。やり引女ゟァレ〳〵太夫さんあわざらうるさい わろか見へるぞはほんに〳〵ぜばこれの彦さんしもぶく酔ふたあし もと。みとかめられて猶わる口とたくる。かるべしのゐづゝかもと。内證 くはしやに吹こめは。こんごと計よす煮が小袖をかりのなんみ平見なれぬ あげつの大さこに恋ふるひて見すぼらし。足ばどれても如かとはつよきはかま かた衣横すぢかい町一はいをひよろ〳〵とすぐにとれ辺ゐづゝが座 敷あぶまはきせるの父口とぢ物といはずにあちらむ〳〵其平は人に見ら れじとこさつのゆへ顔さし入がづくやとんのどんすよりむりやうのことぞ 思はるゝ老介二はしやをひつとらへ御やくはじや始め聞給へ正月は新兵の 御夢めで度申納候此〳〵此はなは新酒の酔まぎれゆる恨を申始候を なんといやかおしろい。そこなやるためやう聞。いなあづき殿でも。太夫 さまでもびつきやう直段の高いそうかじやないかなんといやがいやとは申 されいそれに心房よひ花には売て。此葉やの顔にはなぜらぬ 一文一銭ねぎらぬ拙者をい成者とか思ふん忝くくはんじ無躰 のこうい人荷川津の国長都の住人楽屋の彦介大坂に見る日の都 も所持仕る。妙薬つまへた大手持をしらぬかさぬかゝ慮外 ながらいやとはいはれまい都嶋原上林の哥はしに金つかふて髪切 らせた伏見しゆ木町神屋のたをに又したゝうつかふて心中になま づめをはなてくれた。まだ鼻もそいでくれたゞみをそいこれた。大し じんの彦介山崎のみ次急にしきけて藤ゆのあづまに三度四たび ふられては此彦介一分たらぬ半分もたば今日から三日ひこ ずるつかんだ打場の高いそうかの黄そめ仕り金銀米銭ぐはらつ。 人と蒔ぢらしたるあづまがくるり〳〵とまはらだかけじや。なくかふた としなだれよれはあつきむしと煩がまちびつしやりとみしらせ。 十才あたぜいばつた聞共ない。其後はしとやらたかおとやらは。そなたの御 なうつそろでも。金さへかへは髪もきつ爪もはなそ。原や伏見はし らぬが此軒かけいけいせいは玉しゐがちがふた。おそら此あぶさはかな〳〵 一半身あかりしくらしても。そなくの候ないぢくさりに小判の手木で もいごく女郎じやないぞぬかつ〳〵夢男のいぢなば手がくにあ づきをまはて見やとずんど立々はりのつよいに猶ほれたび元 介はあづきをまはて見しよ。きはるは〳〵やるねめが頬かくり〳〵廻るは 爰の堺もまはるぞよればかは〳〵山姥が山又たにどめぐりおもし ろいとふでもこうでもあぎ殿をおくへつれてと引立りとれに 下地の無息力是はどふぞと引のくる引舟にむかふ風くはしやは あなさ五押込でやり手も乱てやり梅の落花らうぜにむかしこらへぬ なんみ平はぎりをしてもかんにんならず彦介が足首をきつの内 よりしつと礼うんとしむれはあいたたゝに足首がちさるゝはと めはしかむれと口減らす此きつにはおほかみが有そふなとけもじる をしたをしふとん押のけつと出じゆくしくさい彦介が。はなのされに しぶかきのしぶい顔で立はたかり。といふ何じや。何者とは眼を明ケ 人しづ。男じや。男といふ物見てなけがぬは何者葉やの葉やの声と いふ男らんておげ。なきごさい方よばり。おけ〳〵おいてくれ額にけぬき もあてる者がいとしぼげに女郎しゆいぢつなんの音におとこが定 ならなれとせいはせぬかいいつせぬかい方どしのけんくはといふ物おしへ てやろとつと入小がいなねぢ上ひつかづいてさかとんふりぎやつくい わせづてんごう腹ばいにはべたとのめくせ敵ほねを七つ八つうんと いふ程ふみ付て。はな喜に懐手あまつき〳〵おかしきこらへ 笑ひをころ笑とく夢断おのあかり聞た〳〵みすとすとゑ がまはし物彦介をふんごぞよ山崎み頃某おぼへておれしたがふき れてもこつちに七歩のかち。正月早ゝおれがしんだいやみねろげ てくれたな殊にことしは戌の年の頃ぬは土にねる物年八卦に叶た 人の巳年が元方ぞとひぢをはつて立帰れはやまれてさへめ のおとがひ人をふんだらどふあろく跡は笑ひの賑也。正月買の さはずぞめかざりの下ではしやみ引はしごの影では夜引せつぶんまめ きめまきね軍槌のこだいていねつんでわか戒にかけだいみらんかうし たち花だい〳〵と祝ふてどこも吉野がやかちくるそでござらぬ ほんだはくいつみにかきけ。さすぞ盃ちよつとおきへてしねより ことしはみづ〳〵〳〵〳〵。わかみんづりねづやうきてにぎてにぎて。彼はへり。 一棹のこへたる急の心をこへたる是をとばせて西口よりお ろせがいきなて旦那お出といふより家内こりつめでたいとはだし でとんで門口迄福の神のおむかひぢやうさやよふさやせんざい らくまんさいらくおくのごしきにもうけの欠難ていしゆほうらい内 義にてうし娘はかはけ牛蒡も身も身いにひ大夫様も御全成立かか げて我々も仕廻はほるかくはんとで先犬ふぐの口明にかはつた咄しが ごんすると。あづきは其平を上京に引合せありし有様一々をたり 詞によす兼兼てゐしゆ有葉やの彦介どふがなと存るおふし忝い 与平殿此後いつ迄も心やすふ御意得きせうおね上られいと 記すみなれいひなれ聞なれぬ詞つかひく夫は足のしびれになん よりいあい〳〵と計也御伴義で重慮〳〵江戸へとの思ひ立尤々 あづきがことはくになされず一かどのもうけして仕合の上洛門出に夜も すがらのあやうたへや一寸されはやみの夜と共母が案しておもさせふ いかひ御造作上次急のあまさま皆のつらりとつかひ立たお暇申と 立出る余りといへばけたらさし今宵一夜はくるしかるまいや〳〵一歩は寸 の初りゆざんがせずの大毒と帯引をどけがあつき凡付遠い折ら御達 魚のふやはや袖を召れせい道中も奔川とやういふ川は。いかにあふない 事じやげな御無事て吉左右待まするやがてと別れみ次参も見 おくつてと夢ふさきには候事有と此其頃京御心便に心召せ慮外 ながら江戸にも兄弟有と思召等の無事は状通と別れて諸は 戸障子しぬ月も雲井たねしぼろ松に嵐は群してみ平は五軒 を一足二号へ三ばんたいこ打やみてくるはざひしきおりそあれ待ぶせ したか葉やの衣じやのめの紋をしるべにて与頭魚と見るよるも。 たましすかしてはたと切ひし給ひしなんみ平扨は曽のたわけ者 ゐしゆがへの笛ぶせかと。つと入てはねたをしさす。をさかねに めつたづき。みけんをつかれのた打て。人と声たつる。身付付 てはしゆつせのじやまとおくれを見せぬなん平風を追ふ てぞにげせける町中俄にさはに出し棒た熊手よちやう ちん出せ。大門うてとひしめけが彦介はころ〳〵と。相手はだきみす 兵衛ゐづゝやのあめじやとわめきたにればみ次兵衛聞より然にはつし とこたに参是にと立出る。静をしるべに産はうしろよりしつ かとだきとめ。相手はとらへたきふせた。さはぐまいといひけれはあつき引舟 なも手迄狂ひ出れどはなさばこそごつと斗の涙さへの涙身のみ 中巻 〽おぼつなつみなくてはいしよの月を見んといふ古人 の物ずきいかなれ也。日かげも見せぬざしきろう九軒町 のけんくは葉の彦介手おひしこと代官所の沙汰と成あひ手 たざきよす京とうつたふれば与次景もおとこの気理なん 与平とはあらはさす。わが身のとがに引うけおやじやうん に預らし相手の衣は養生ししぬるか本ぶくか二つ一つの左右次第 我もいきの瀬死ぬる瀬を。さだめかねたる飛鳥川あすが日しら ぬぞ忽死家の中に取りて女房おきくの物思ひ一日も気 をつめぬ人煩ひも出よふが何がなくさみと。あぶるかちんもわが 胸も。共にこがるゝ庭づたひ。障子あくれはみ次藤色も色ざめう つとりと気あひ。わづけにうつぶけり。二三日はお食もすまぬどこ ぞわるゝばへするでもまいりませ。ぢたいおまへん気がわたしが 明暮くに成た。も私にいたづらあはずの相手を切もころしもな さる筈がけいせいはり物いくたりにもうらいでは。よしないほうか いわんさかく此難義もおこへ但其あづきと私と私とひとつゑで くださんするこんなことしつたらば一寸も出すまい物悋気せいで今では くやうござんこと恨まじりのうろ〳〵涙いふてたもかな〳〵一天下の人 よりもなさひとり拙しい士ながら清水後宮へ あれ身はきらぬ。なれ共立めがよす草やらぬおぼへたりとなかけた けんへは身が切たも同然殊に其切手とは万内士の義有中なく くのそこと此はひ参が切たに成て相手がしれだらきしるゝかた といへ彦介めさ程の底ではなけれ共ねだつてねにするもがりとは かゞみにかけたことみす〳〵かねでかはるゝ命とつちの蔵の金銀では かがれぬそうなり顔いれたは母の命日皆是親に不孝のばちと なげくびすかぞ不便成されば私がとつさまもそれをいふて浄 末が聞えぬしいら子による。千両二千まいればとて独の命 に入らるが欲をさへはなかればづゐ。埒の明こと。皆しい此治部右づ 浪人の身てなくばとくいふて恨ごとたぶんけふら見へさせり とま雨の袖にてはぢしめていくせたらなん下しやいやぢさまも とくじんなにてなんとせうウウアとつれの声がずり。やかで熊と聞せ さしたりういにやるか又後に見廻ふてたもいましやさびしからふのと めうとの顔も打しほれ涙へだて引立る時障子のあかりにもく らむ心ぞ表介より毎日淀の辺とて毎日淀の渡し母梶田治部 右衛門は相契の事こと思ふも娘のため老の心をなやませ共父 浦閑はさもなくて。治部殿お出するのさかけの将泰勝負はず ましよりぎれ是はぬまりなす薬をは こぶもよ次景こときがひさ持泰公には参らぬきのふ。きのふ。勝負は どちらへ成とつけてお仕廻〳〵といへ共。いや〳〵ばかめがごとは宜次第。 ぎのふの約いごかせず並ました。サウ〳〵。然る勝ても さけても是一番夕申から盤の上とろくと見立めの書夫した相 手とさをはこは物也お手はこなさかアあそばせばせ。先宛参されば。 をつきせう此なり今してやらふでのこうよりませう。浄 閑敷殿をたゝいて。なむ三此高落たふか田に水をかけおとし ひいけ共あかすうて共ゆかぬ望月の駒のかしらみはこと つかしゆ成たと賞し女日。おきく盤のそはにより是とつぬ。あちら の方がおちればこちにも落り。両方のからみ合ていつとも埒明ぬ めいにくする物はたへた藪浄閑のおゝには金銀がたんとある秋を はなのて金銀文おうちなさかれば是此とゆ殿のむかふの清半の の此馬はたするとうぞ手に有金銀を打出させます様に思 案て見さしやんせがてんか〳〵と袖を引ば治部右衛門おうなづき よふち思付たのみこんごといへ共浄閑気とつかず親しやと思ふ て物といふまい〳〵又いふこりと歩であいたてシテお手に何〳〵 浄閑が手に金三枚銀三枚歩もござか此歩できは左まだ金銀 がふゑましたかひかね持浦山〳〵の蜂物とは此角がにんでゐる かうつたらば金銀出してうたずば成まいぞでも金銀はなさぬ程 雨をめがろ治部右衛門さへねがけかひしはん妙沢山な金銀握りて 何になさるゝ。来世へ持ていかるゝか。是御らんなとれ。此飛車をかう ひけば。天にも地にもたつたつたこなたの此王がかたすみへ座敷牢 のごとく出つあられ。今の間に落るが金でも誰でもおちらして。かこふ て見る気はごさらぬか。我らがしやいはしれたこと。座敷牢へいろふが 都づめにならふか。金銀は手はなさぬ。哥あしらひでうつらせう此方 も歩をもつてぶに首をさげらるがくやみはないかかれはや〳〵。先やげて ゐきせうし其内に香車のやりを以鑓だまにくしるがそれでも 金銀出すまいか勿秘ないとやる国に上られうが獄門にあがらふが。 手まへの金銀ははなさぬ〳〵と両馬つしき歌のかはそばでおさくは気 をもみてつむ儀も手見せ禁舎手ばめと見えに名治部大門腹 立顔盤中の駒かきよせ。ひつつかみ浄楽がみけんにへばらりつとなげ 付たりおさくはつとおどろけ共浄用はびび共せす治部大将軍立直し 恥をしれず閑あひやけはもと他人約を願へ投付られどがめも せぬ恥しらずにいふも国土のついえなど。将棋にことよせ金御出し て嚏ばすゑ令たすけかといふめてことがてんせぬおなしてなし。物に 首を提られやる玉に上られても。金銀とては出さぬこと絵部大づ に汝をいゝせおもろいかおかしいか。そのちもひとりて此方もひとり娘。 両方共にかけかべなむ也を子と思ふてゐるが嫁をむすめと思はずか。 与兵ゑがきられたゝりはいやきくがなげかふと思ひやつてたもらぬは。去 とてはうゝめひ深池の時葬がとゞめて小身成共侍に縁絶たいせし ぼうぶげんしやかね物でも。町人と云馬があふまひとくれ〳〵ころだ。いや 〳〵名にふれた山崎浄閑武士まじるもする仁と我ひとり情 ばつて此頃祖母が恨ごとおめしがしがしはい無慈悲から五十年そふぢいばゝ のめうと合迄不知に成我子の命にかへぬ金銀さぞや親類縁 者が飢死する共かまふまい我よそ牢人主人持た一家も有物しら すと縁を左一門の色をよごす無念至極と計にてせきあげ〴〵 泣けれ降閑もしん〳〵め。侍の子は為の親がそだてゝ。武士の道 をおし給るゆへに武士と成町人のへは町人の親がそだてゝしやう はいの道を教ゆるゆへに商人と成侍は利徳を授て急をもとめ 町人公名を捨て利徳をとり金銀をためる。是が道と申もの。 いか成大務なん物もやまひには療治さま〴〵有。国法でとらるゝ 命には人参て行出させてもいかな〳〵たすらねど。金銀ではたす かる命のかはるゝ金銀大事の寶といふことをよす意めがしつたれば。此 難義は仕出さぬなんぼうおしみたくはへてもしんではたびら一まい とは。此浄末もしつたれ共。しぬる迄金銀を神仏といふ是 が町人の天風に。年の刻のあたつたやつぎ此うへにおげもなふ かね出してい成天討大難にかなあひおろかとがばいひ程猶 出しかねる。しはいゑをとり此浄楽金銀計おねでなしぢるはい迄 おくの物たつた穂の母忰が命おしうなふてなんとせうとぼうず ぬたまを将棋盤とんと根臥臣けるが治部右殿のお恨もむこ かはいさとは存ずれ共さ程におぼしめすなもなぜ日比引せて。天元 もして下さつたらか様のことは来まい物と我子のたかけは思はず 脇がらの恨が出り。子ゆへにはくどんに成不調法申しもなぜぬおくへ 参る治申右殿[ヲ]しんだ祖母はくはほど。涙にむせび立ければ 舅も非いふ事もなく〳〵〽表へ立出る跡にはおさゝ将棋ばんど こへ取付しまもなき浄閑のおほの道理は聞てたやうなれど金銀な ければお命ないあの内蔵のねばこも身にたてねば将棋の駒も おなしこと云ひのなひ親御やと浮世のたのみ涙にくれ無道心や入有の 錦物をくれ渡り雁の数よむ勝月とまり烏のよるべなき 藤屋あづまがわくせきのこびをのせてざい所かこ淀灯のながれ の身。行も正さき帰るもやまざき霞が内のあせつたび。そりや打に 渡す。木橋見合のくめにはおそろしかごをとゞめて折立てしよ ていくりも町風に。わけなき夜半の松の風に吹かへし呼がはし。 恋の山崎ぞんじやうそこと人のおしへし家並も所まれ成やづくり の裏川塀のかゝつた扨は爰ぞとしられけるかごのしゆ爰がみす 京さまのおやしき。塀越に見ゆるがお都屋そふないとしやあれに 押こめられてこそにしやあそこへいくぞや。いつと隙が入ふ共かなゐて や。もどるも猶ぞや。たはごがなくはしんぜふか。終ゐてこふとすそかろく。 寄程塀の高ければのびあかり〳〵のびあがりてもともし火の影 も母さすすきるなに用心きびしき内の報あらしと共たろぢの 戸をたゝいて我かむねおどるみをかへに押あてゝ聞どひつそとおとも せずいつきかうしてゐたとても。誰がしらせの便もなし。あつきが来たと よばいふかと。たゞむ足はへぎとほり身もひ思渡りさえ帰りさえ帰りさへ さへなん座敷牢いとしや寝てか起てかくかきくが見廻ふの下駄よ 飛石でたふ足音の花じやと飛立計。ひさんじゆないなが有に もあられずあづきが見世にきさいなど。聞よりおきくはつとして。さても ふといけいせいめどふする事ぞ心見んと内よるべをなつしげに ほと〳〵たゝけば。ケ聞えたる。定めしどこもしまつて入事も成まいと。 わさしが心に思ふことこま〴〵と此文に有。と誠で自進の事 見ますれば。生の本望み隣ごしに投こんたり誰がひろはふもし らいで女房の有男の唇敷。遠慮もないとひらけば見しつたこと。 勝川にも見ちがべぬあづきが筆じさいらしい一つかき此利刀はわたしが みがく心の刃ものおりはからさもい者の手にからず。きゝいさいご しつゝ時はたがふと日は同日さいと所はかはり共来世は一つはちす案に。 ながきちざるをめてとくかし此利の今度はどうぞお命たすけたさ女 房しうず泣しみつきてゝごの共あそふ程のだいじの命沢山そうに しねとかた此にみにめてたかしは何じやの男大にいひ付たゝき出して くれふが。その程夫の名が立ぢさにあふていふてのけうと畑路のまひら き立出れば。其外まかなかしやとずがりよる呼をしつと取本とに聞た あづさぬか。今のふみも見また。わしやとひ参殿の女房きくといふ者 はる〳〵の所よふぎ雨の立てぬしにあひたかろのしらしやか通の難 夜で[リ]有の座敷に押こめられてござれがあれがあせつ。此さくが あはせぬ折づさまにはをふにあふて礼いふ筈どなたゆへにごしの御案 も余所に成内は野ことなれごとなけ夜を日についでの里玉ひ親御の ぶきけれ世上のわるは此度のなんだそれ見たるとに人にあざける我とても 女の身腹がたゝいで有物か夫のちじよくさがくび女房といかれまいとだし なんでいればかきくはさどゝな。悋みせぬ鬼女〳〵とげんぢよごかしの おがみだおしにあふて。あづにまつげたまれゐるといれ。なさを女房 かと思へは鬼かこ朱さが此利刀で人の労にくべしとはしんでよくばみな たひとるしんだがよい大事の男のはだへばあされ心のそこは見さがされ也 けんにわるふ。意こせ。止まりしめかのなんざも誰ゆへしばけいせいそそ たゆへいさげいせの心しらずとなる恨の高聲により。よす急々障子 そつと助あちもこちらもこちらく道理の道理のいは我計二人の心お もひやり顔は焼火のひやあせにきへも失せたき事也いか程おからみ おしかりもおまへにあふて此あづまが。申あげふ詞はない引手あまた の身の上さへわんさ妬は女の。ほそだち誠なれけのせい ぬがだまてのくらしてのにくや〳〵は土道理ながらよ次京のにあひ ましたは女ばうにならふ共。手かけめかけたないふ共申かはした事も なくとめ計もなじみだけ夜を日にますおいとしさ女子のなづむ ふうぞく。よい殿御もたしやんしたおくさまお世話はおまへおひとり。此 度のさうどうも人違ひをおもしづくて。お身のなんざもにしからお こり相手もやがてしにそなげな悲しいは我身一のしらせてかくご もたづましたく。くるはを忍んで此有の見付しなれは見せしめに逢 も合ぬ相手がしんごらじがいさせましわもお供と利なく用意し ましたおぬしのゑもながさずわたしも情の御恩に命捨る心ざし 〽おまへの御縁はたまぬたつたるた一度お顔見せて下さんせため をすぐにふさきます。おじひぞやとくはい中の剃刀咽におしめて しやばの鬼神と涙止ゆひ切たる哀さにおきく断むねむかけ 袖引とめて是あづきぬ義理にも命撰ふとは偽にはならぬ事に 心ていがいといぬしも定めしあひたからふ妙。汰なしにそつとあらせ きしよ色ばいり習ぶいおとてひ天の殿御を沢山にだいて なりきこらへてやがが取かへされはせまいしそれだけなさのしあはせと 心とけたり煙路の中おきく〳〵と呼声はしうとの浄土鼠気の 升おとし手に持て嫁はどこにと立出るが爰へ親仁様おるがわるがわる ひ先しばしとあぶやを塀のこがげにかくしまたおよるもあそばざず 夜ふけてなんでござりさす。〽別の用はない是見やおきくわかい やつらがしかけておいた神落しは。はつたりとひゞいたゆへ明て見くれは 鼠にていんだと見て神の内にはなんもない是でつく〳〵〳〵世 の中のさともひらいた。中の余食を頼みにてゆだんすれはおとしに かゝつてつゐころたるゝ思ひ切て鯉を挽逃てのけば其ねづらが 命をたするひか。競鼠罵ねづみ女房鼠も有であらふ。此 一家一門の鼠共が悦び別して老鼠の親ねづみが石のやすまりは いか計嬉しからふぞ若わる鼠の分別なしが逃たねで親鼠が又落し にかゝらふかと。よしなひみ。地を立おらふがいかな〳〵親鼠は老こそで おとにかゝる事じやない定て伯父鼠も有ふ其巣へかゞんで爰 らさへかげを見せねば風落しもおとなしに成てすむ。此さびの中 おとしによふこつて夜りことにた立棚はしり。盆かぢつたる親の小 判くはへてぬすんだる。あれ廻ることふつ〳〵やめ後には白鼠の図 貴と栄るを。親鼠が見る嬉しさどう有ふたわけ鼠のうろたへ 鼠此がくてんがいぬおと。おりや。此夜がねれぬこと。涙させをふく ませば。かにかく〳〵おじひな鼠さんに成程わたしがにがしませう さまんぞく〳〵ざつと悩がひらいた。比心に此ことばつかり持仏へ参つて も仏の顔も見えなんし嬉し也今宵から心しづかにかんきんせうと 念仏ちからの後すぎ見るに心ぞやかせなきみ次参走出妙をし るべのかたしけ涙おきくは舅の足跡を手にいたゞいてあき御上次兵衛 さま今のおじひを聞しやつたるはやふ爰をのく程がお心やすめ孝 行浄閑のおきふしはひきゝが。ゐるかゝは今迄より猶気をつける。 跡に気置あそばすなおまへに諍ぞ付たいが早クどうかなとあん ずれは是おきく様それには此あつきがゐる。食をすてゝ出たくるは 姥中 二たび帰る心はなしおまへさへ御了簡お供せよと有なればわしや かたじけないくるはへは帰らぬこと思ひつめたる詞の末[スそんなりや諸 ときしゆびがよのあふけぬさきにと引たつれば。頭草鞋を打はら ひそうでない〳〵人の父とては恋にとゞまる人の子して孝にとゝ まるといふ預り者が欠落し先の相手がしぬれは忽親は下主人に とられ首刎らるたしたれか無事でも身にがしたるとがめにてそれ 程のつみはおやぢのの身にかゝる其難をいと数じび心おやぢは起 の道が立与頭殿は今日迄始終夜の気に違ひ別刻を身がはり逃 て食すかり百年子年生追人きじるもならねば天地の内には すれぬお心をもどくでな歌をかくるがおもしろふなければややぼり此 ましなせてくれ命を授て一生の孝行がして死たいゝ声を上てなき ければこれも又お道理とふざるも心やふるね泣より外のことぞない浄楽 内より難を上出菊〳〵不孝者めがおちまいといふはれとく情ない哀 しず七十戔浄閑がもかれたといふ。不聞するさ人にそしらせね。 内證手を入二百両迄扱ふても足りと見て手留でも御官といふ。あた 感とは聞領人の生身どう有ふかく親の家しとうに持参で心をま ぎらせは残ゆそばか気を付て出す柱胸くる山方から心粉にはた いた騒おとしはかつてもはかられぬ親の歌を思ひやれますでもおるまい。 一どは親にも成おらふ物の中がしらせたいおつるおちぬかりぬかせと。声あら けても泣顔かへより外にもれにけり頃急涙さひれ臥て直だいなき 程どか也此十次名爰が立ておられぬ。まつひら御免と云しむよい〳〵 年寄た親を持者は一日も親をされず其身そく者で手忌迄善 とふひたいとなふぞやおのれは親に召れ歎がかけて見たいかいかゝ此夜口 しは腹へつこんで望の友にしてやかぞなむああらいるにも おちませうちて下され親仁のととりと都てで泣ゐたるしかとなるか 何の偽申そうぞうそん嬉しや落付た今迄の不孝皆ゆりし三十年のかう〳〵 をさつたどに更取としんごばも嬉しからふおきには親が有浄閑にはお きくが有諸には少々まかひすなへれ女中が有そうないやがる其実す ゑさせ酒のさせて下さるな。馬では人が頬を見るたかく共かごにのれ頼み まするとそこ〳〵に心は千数百物の傳のさいふを投出しさらばと計ひさし て諸涙にむせびけり。頭京猶も有がたき親の恩と妻の思ひ別れ のつらさにうつとりと。きぬけのことくよろ〳〵とぜんどもわかず見へければ。是あ つまじや合点があれはおくぬおきく様さらばとせめていけんせきのよはひ お入やと力をつくり我が身も。介をふかくゑに夜のにさ相がごとさゝやきて。 袖打払ふ春の霜かどの故おじやと招けり。おきくの声もうらがれてなふ いづ方におちせても其侭御ぶじの紋を待泊くの朝晩にひへぬ様に頼 むぞや。何やらいひたいこと共が胸にはあれど只出ぬ只ごぶしてそく打でと いふより外は泣計。誠をいはゞ我こそは夫をつれてのくか道。何じや始に くんだ人相かごでやかねたましき浦山しさと悲しさと。浅かの胸はおほけれど。 いとしひ計道に見おくるかどもはる〳〵と。さり〳〵のふさるの都をまざら す後夜の鐘。跡へもゝるは雲の足先へ先へいそぐはかごの足ぜめて加つてとめ もせず衣の重荷に小付して親子の衣打のせてわかれゆくゑや 三重 与次京あづまみち行下巻 春にそだつも花さそふてふはなさねののぢしらずなさね のてふは花しらず。しれすしらぬ中なばうかれそめま ひくるふまひ物あぢさなやあつま立より。嬉しや お心もしつまつたかん御んぜよむでさへかひはなれぬあ げてのてふ。我々も二人つれすいなどうしの中に。お心よはやと いとむれば。あまにうけだせだ。ざきよす京うけだせ〳〵ふざき 兵次京。いつか思ひのチ下ひもとけてむかし思へば。思へば。う やつらやしのがむかしもうやつらや情なつたれ有ふぶざき よす京のとて人々に。おくれぬかみのみだれはあづまが顔も見 わすれてうつゝなやとせいすれはそなたは藤屋のあづきかのみ順慈 にもまれて。色のわかざよいとしさよぢかい〽内には。かならずと うけて。らゝきしよせたいして子共もうけてふさりがつれておちが かたくにおてゝが日駕かたで風きかたざの子親の御恩をふりてゝ そなたのせはになりふりも。むかしには飢ぬ男山今では人もの しのやとやきの松よ事とはんまつかつらいかわかれがたいかるも則 れもせぬやうに。親のゆるした女房はぎりて情の二おもてかけて 思へとかひもなく。今のすへのはなれこききのふはあつきにゑを のせけふはこきやうのこがれ巨我からくるふ秋の葉のみだれて袖に 置くせずねもせで露のたま〳〵も生たるら共約身に成なお やと子の便をしのゞござきの春もさこそはみだれがみいふた詞が ちからぞやにしがなじみは。三重の帯。ながひ夜すがら引しめて ねたみわんきの心なく。あづかる物は半ぶんのぬしはわすれていざん する。めし月見はゐつゝゆでそこいくまないくまなはんにおどりあした おもろたすしや百迄もわすりやせぬにすれぬ物よみあ かぬ君がそと八もんじの道中すがた。めつたでころしたていさ なつむげいせいせいこきめにたゝいが女ばう。うけ出したゝいのぞこ ぬけて。かけもやどらぬきぬ〳〵の親をかなしみ菱をこひ心一つ を二しなになのりて給ふ。とず。とずすしやが父に似て。父に似す。子は 色ざとにはつねふる。かむりはきねど大じんと。くはしやがとゞ ろくくぜつのもんやかてがたく。かぶろかねふりみな夢のまの きやうべいとやぶれはぐはぢもなかりけりかくはしれはやなぎのいとの おどろをみだす山おのはげしき親の巨宴の詞妻がわかれの 一ことば身にしみ〳〵とこひしやと。たがひに手に手を気かはし声 もおします泣い万せきやうくきに程もなくせいほくに風おこり とゝなんむかふ空の足へこずゑ木のまもばら〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵。こすゑ木のまもばら〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵こずゑ木の兵へこずゑ木のまもばら〳〵こすゑ木のまもばく〳 さら〳〵〳〵くものは袖もひ〳〵と。あなさへなびき。こなさへなひきぐるり 〳〵くる〳〵くるもとめくめぐるや月はゆけてはてしなき思ひはもく ぜん親のはちあたつてくだくり男のすがたはしればはしるまれ ばとまりぐるはぬ袖もみだれ心命づれなきながれの身 なかれわたりの世の中に。しばしとゝまるしつが家の のきを。ろねて 難波瀉むめに器を取をしけるもみぢのにしきひるさへや 夜見世を新におほるしと。どしやおそゝ見にくるは四首の町 の軒ふかく。ともし火星のごとくにて。三五以上の月の顔さすしは かげのわいもよきつぼね〳〵の手拭ぬれぬ隙こそなかりけりけるべいは 分たで大川にとゞろくるの高いなきゐづゝがもとへ乗かけのきやくは やけたのなんみ平。ゐせいびゝしたびおかれはていしやむかひの橋 て庭ばくまい九郎た見しれか当正月には遺作の人貴殿がせはに なんみゑいぜんは金銀内大臣けふ参るは内證にの子も金も有 大しん通るとつと入誠にそうにおめづらし先おちやたごとげい はくに油のせたかとるだいもはや立かはしらうそくのながれの里ぞ さぎん成太左衛ふと招きたせしらるゝごとく此正月藤屋の 太夫に怪ふた金すぐにあづきにめを出して人にためずのとかもうけ。 馬のやづねもおかひ有て此度罷帰る所。太まあづまはくるはを 外打せきをやぶりし科人とゆくゑをもとめたがさる由道中すがら 承り。恩を受詞をつがひし此其平捨置ては野すかれを受出し 世を広ふしてやらんあづきが年季の證文あらん此方へもらしたし 一金にかへて今宵の内にしゆびする御給けらき御さはい〳〵と。ちよつ との露もしつほりと家内うがおふ計也おめでたい〳〵御聞有らは りに及ばず去ながら。しぎな事がござります。けふくれ方にゐなが めいたり浪人しゆ。あづきは爰にゐられず共手形成共身請がしたい 金はなけれど一腰の宇多の通行二尺計のたんびゝ物折紙共に引 かへど。おくの座敷にゐられます親方へはまだしらさず。おまへと一 所に親方へいふて見きしよと立出る。表のたはぎはぎはなにやの老介 どか〳〵と入来たる。めづらしい上野とぼしが〳〵景難な道き金もうけう なら我かに廻れ。かるいお出が身請の談合きついか〳〵。しつたへ 此はる早々。山崎のよす京めに小げんさきをちよつられた。弓 矢八まんにんせぬ天代官所へもうつたへ親条閑に御あづけ。 内論から手を入て段々と侘言する。金銀で扱へは一日万両 でも聞ぬ写シ見よ疵も平愈したとき意めはにゝけれ共期め が心が不便さきゆるしやつた。其礼とてめへさりかね樽代とし てよこし。酒もとしはせぬ物ゆへきあ受取て置たじや。 づまめかせきやふるも。み次兵衛がそゝのかしお影の内をつれて逃た 浄末は其たゝりにあづきよす忝尋出す迄道具諸色に封印 付きびしい男川ざけばよす京めはのたれ死したけなでれば其侭 切しるゝ首仕合者じや有まいか扨談合はあづまがこと関やぶり の株人こいつが命もたすらぬ仏性に生付たか壱分が病じや 是もたすけてとらせたい。先あさめが手形を請出し諸で緩々 ゆるを尋合でもたかせ。すゝぎせんごゝ手足さすらせ一重は やしなひ数しにするかくこじ分なりやこそこそこそこそこそこそこそこそこうもいへば 埒あけいて。現銀じやと六十両ていしゆが前へ投出す。こくより始終 を聞すまし御めんと襖おひらきていしゆ〳〵。あづまが身請は身が 先じや。金子は是ぞと持せたる。千両包の木地のざいまへにいづ しりざらせたりぜんごのあらそひなさるれば此浪人者は一番こと よばゝつて座敷に出身請の代金此一腰三千貫の折紙とぞ に投出すなりかつてになかごは見ねどよひ京の治部へもん まがひなしとなん立血をとぢてうぐひゐるていしゆけら左は 福徳の三方論義に行あたりとかくは親かた了簡次第呼にやくへ か身が参らふ。それはご丸〳〵とひゝりごとしかけ出すあとは たかひのにゝみ合彦介は手ごるしたみ平が顔の気味もろく心も 心ならね共見つきはきついはつとりそだち。見てだちよせてけ ふり吹出すぶつてう顔きせるぞめいわく灰吹をたゝいて左事を 待ゐたる。あづまが親方勘右つていしゆにつれて座敷に出 様子は有左物語あづまが手形を身請とはつゐにくりはにない かくにて。とかふのお返事申がたし。いづれへ手がた上ましても。此こと 世間になふ有て欠落させた跡にてもかねさへやれば済事と わるい性根を吹こまれぞこにも欠落爰にも逃たしてはぜき やふりとぐるはの騒動親方中間のなんざ也此相談は成ますまい一旦あ つまがかほを見て其跡では能のにと聞もあへず聞た〳〵余人はしら ず此彦介早速あづまを尋出し身夜はおれじや詞をつかふた居帰ると ずんど立そふはさせしぬことなん平小がいな取引かづきてどうと投ぜぼねに しかとおまたがり逃足もいに足も在者に生れ付た男。わがばあまは り上だく合思り。藤やの勘右尤子万分の詞は聞所。あづまが顔を一め見たる也 其座で身更は違ない。何のきたごん申ませふ末にね草のすくないあ 〽まさ。金はもうけてくれる偽はませぬ。こゝにおしろい代官所の首尾 も別条ないか。其段も此方よりおろせば相済ます珍重〳〵。下々共 其かはつぢ物てこい音主二門をひらかれにあつとつゞりの奴と〳〵。中より あづきよ次兵衛正気に成て立出る。彦介はびつくりし親方亭主も興 さめ顔治部右衛門は包かね。与頭参か治部じや〳〵無事な顔見て嬉しやと 跡はいはずの悦び渡よすかからをさげ何ごとも御免有。親隆等へ お焼言頼むに及はぬ浄閑の心入も聞てゐる。あづまもいかひくらふ ぬきつたつ也。親方殿此夜に引かへてあゆきを身共に下されと手を つけば。あづきも久しいげたのとめ給へお侘言頼きすると泣ゐたが。 与ゑひさんで彦介を取て引立。のれよふ聞へ聞此与平が江戸へかせぎの 根本式あつき殿を受出してくるはのくげんをたすけんと思ひ込だる一番ひ 五百貫目に間のない金手間隙入をもうけため。立帰る道すがらみす 慈殿にもおめにかゝり給て段々聞届左おのれを切たは此み平よす 参殿に祐義を見せ金銀太郎取たな。打のめしても従いねどめで たきしせつじやとつとゝかへれとつきはなせば。 敷で取てなげられ。跡はきられてけふ又ころたるゝかと思ふたが おたすけはかたしけない三度の数か合ましたと逃出るを治部へもん 腕ひしぎに取て投おのれはどるもいなされぬ。浄果がいひはけ させ閉門御めんうけねばならぬこと手ばしかくしばり上。身穴は済 だかよ平殿いやき済ぬ。金きは千両一枚の手形にかへてとなんみ平 親方がまへに置勘右衛門かぶりふり。来二月にはねも明身任せ に成あづき。千両といふかね取ては人の思はくおとこがたらぬ 金とらず左と申たけれどよもやそふはなされまい諸六月をば 三百両のこりいらぬことつきもどすよゑもとより気さんじ者 出来た〳〵手形は取た金取ためづきが身うけすみました。 そつこでうけだす三百里やう打ておけりしやん〳〵。きひとつ せいしやん〳〵。ころとせい。ていしめ。此子両は始より身更 にあてた一銭でも残しては本迄なす。三百両はていしめには むして哥い二口合て六百両におけしやん〳〵しやん〳〵四百両残つて気 にかるよつて祝へとばら〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵色かへたり。あげ 屋の男女わかちなく。おしあひへしあひ。ひろひとり皆 とりこんだかめでたい〳〵。いはふて三度しやん〳〵と 手びやうしに口びやうし。しあわせひやうしの さん〳〵九度ずゑはせんしうまんねんもかは らぬ。いもせをかさねける 九月二日