三座例遺誌 前編
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- 曲廬庵主人
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- 2026-08-17T19:23:18.243Z
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- 2026-08-17T19:23:18.243Z
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- 場所: 江戸
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- 曲廬庵主人
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- 日本語
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- 尾張屋忠輔等
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- サザレイシ
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- 東北大学
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- 2026-08-28T18:53:25.651810+00:00
将棋
三座例遺誌全
一江戸芝居濫觴の事
同広紋草
一元祖猿若勘三郎は猿若芸小唄の名人能を好す
一既に元和中奉願上義二御免寛永元甲子年二月
十五日より於二中橋初而芝居興行同九壬申年祢宜町江
今人形
移りて勤
一同頃豆州より阿宅丸入津の時金の
町と云
一麾を頂戴し袖先に立雲樗號頭を相つとめしとぞ
寛永十一甲戌年村山又三郎ふきや町に芝居取立る是
市村座の元祖なり当座にては番附奥書に江戸大
芝居始歌舞妓續狂言引幕道具立切落元祖伝
心以二十文一始といふ是二代目羽左衛門なるべし慶安四辛卯
元祖猿若ノ図
上
一年正月猿若芸尽相つとめ此時金襴衣装頂戴し
一此芝居はいまの堺町に有しといへり承応二己年美少年
の類を刺しめ巾をかぶりて勤る様に相成明暦三丁酉
一年芝居回録におよぶ同五月元祖猿わか忰召連上京
にてさるわか新発意太鼓の芸相つとめ此時せがれ
一明石といふ名を賜りそのうへ装束丸之内に三ツ柏を紫
一糸にて縫たると御簾の総角等下し給り九月江戸え
帰場町にて興行都合三十四年の間相勤明暦四
戌年六月九日終道順と号櫓幕定紋の起りは元祖
猿わか夢に銀杏の葉を折敷にのせ鶴筵をくわへ
けれいし
一不二山に飛舞と見し是を以て替紋と定む元来は
抱沢瀉の紋を付たり抑さるわか名目の事は神代に
猿女の君遠祖天細目命天の石窟の俳優を紀
原として又神楽の神の字を分て申楽の名起り
中は猿に通ふを以て猿若の名筵にもとづくとも云
又総て優人を呼で猿わかとすと宇治拾遺に見へ
たり一説に性得愚純なる男ありて其名を猿と呼り
其ものゝいふ事なす事おかし夫より工夫して
たゞ猶かしき真似をして人を笑はせふりをなす
至て古雅なる芸なりいよしへ此芸に名高きは
中村庄
同次猿若彦作同三作又は元祖坂東又次郎
一右猿若道順神村庄次猿善彦作同三作又は元祖坂東又次郎
元祖
といへる道外方足元祖猿わかとその業をなすと古き伝に
見えたり又きね屋六左衛門きねや喜三郎などわキ師と
おぼ
中村座元祖
覚ゆ
暦紋舞鶴也
一二代目勘三郎元祖猿若忰明石といふ是も続て右の尻公
を得たり此頃より中村を名乗といふ万治元戌年十二歳にて
一座元相続て相勤延宝寅年まで十六年の間つとむ
替紋丸之内に
宗月と号
に寛文中市村竹之丞座にて京師ゟ
三つかしは也
舞小唄三味せん芸者を呼くだし一番ツゝの放れ狂言を
いたすとはその頃市村座をおどり芝居といひしとぞ併
せりふを云事なく道行やうの事をうたにあわせ舞ふ
よしいひ伝此ごろは勘三郎竹之丞勘弥長太夫四座にて
あれども市村座のみ一日続狂言にて外は一切つゝのきやうげん
をなしたりと云寛文中市村座江京師より右近源左衛門
といふ役者下り紋所愈ねりきぬの浴衣やうの物を着
て女の真似をよくうつすと云是女形のはじめなりかづら
の製は是よりはるか後の事なり此源左衛門海道下りと
いふ事を勤るよし云伝
近来市村座百五十年の寿の時此術道くたりといふ事を
つとめしなり至而古風なる芸也
座元羽左衛門善太夫舞蔵今の坂東彦三郎三人して花を
一三代目勘三郎二代め宗月子始明石といふ若衆方延宝六
一午年まで天栄と号す此ごろより元祖中村七三郎いづる
中村座親類にして和実の名人江戸名物男と称曽我の
十郎丹節あさまが嶽の元祖なり同延宝中より市川
団十郎出荒事の元祖世に知る処略之当時団十郎まで
七代におよぶ父の恩に曰顔のくまえせりふつゞき狂言この
三代目勘三郎
市川氏より始ると見へたり
替紋鶴の丸
一四代目勘三郎三代め天栄子延宝六より貞享迄七年の
間座元をつとめ隠居して中村伝九郎と改舞台を専
勅正安す所を附奴丹前朝比奈の元祖今に其風を伝ふ
さゝれいし
一正徳三ツ年行年行年五十二歳本住院道観日法と号
一一五代日勘三郎は三代め天栄勘九郎の子幼名長太郎貞享
元甲子年より十八年の間座元をつとめ元禄十四辛巳年七月
四日終良悦と号貞享元甲子年二月十五日より芝居六十
一年の支干にあたり寿狂言興行是天和四年なり狂言は
門松四天王元祖団十郎鳴神大あたり其外狂言おほし
元禄十丑年元祖柏筵幼名九蔵也
初舞台より凡六拾弐年の間出勤にて万国に其名
高し宝暦八寅年終古今の稀もの世以て知る所なり
一六代日勘三郎勘九郎子又三郎事五代め第にて娘子と
成て相続元禄十四より座元相続勤む享保の頃は女願にて
すこしの間舞台出勤四十九年の間太夫役にて寛延三ヶ年
隠居して勘九郎と改宝暦七年十一月廿五日終善穴と号女子
保八癸卯年芝居百年におよひ二月十五日より寿狂言太平
綱引と云柱言興行二代目七三郎鶴屋南北勤三代目
団十郎頼徳元祖廣治口上を述夫より寛保四甲子年元
延享
え也
支干にあたり寿相勤口上は古柏莚大広治なり正徳四の頃
三階桟敷相止享保九にいたり下桟鋪をゆるさる替紋二本
一七代め勘三郎実五代めの子幼名七之助明石といふ誂名雀童
谷松に霞
一号
寛延三午年より座元役廿五年の間勤安永四年三月廿七日終
安永二癸巳年二月十五日芝居百五拾年寿につき猿谷新発意
太皷門松狂言当勘三郎二代目伝九郎舞雀二代目七三郎
五代め団十郎
一少長勤口上二代目海老蔵を
香紋盛
一八代目勘三郎七代め雀童弟幼名勝十郎享保十八娘方にて出
延享二丑年より二代目伝九郎と改誂名舞鶴安永四年より
一座元と成三年の間つとむ安永六丁酉年十一月廿五日五拾五歳にて
終清河冠子と号替紋釈
一九代目勘三郎実は二代が中村七三郎孫幼名七之助明和六より
子役にて出明和七寅年三代目七三郎と改安永七より勘三郎と
改座元朝九年の間天明五乙巳年七月終廿一歳
一十代日勘三郎雀童養子として相続幼名熊吉天明六年
六月より座元相つとめ同七未年病気にて身退く
一十一代め勘三郎
二代め市川八百蔵
中卓子
弘化二十一年九月十二年舞台子鶴養養
と成三代目伝九郎と改若太夫天明七未年より勘三郎に改
座元是九代
目に准す
寛政五丑年迄座元勤休座
都伝内
同五年め寛政九
勅
丁丑年九月十二日再興願叶再座元替紋
右中村座代々の旧記は寛政九年巳年の顔見せ評判記に載
する処に代々の替紋を加へしや三芝居ともにすこしつゝ
違ひあれとも大概札なしけれはゝふくのみ
けれいし
歌舞妓行事嘉例之事
一世男定
三座共に同
毎年九月十二日の夜其年の顔見せに抱置たる立役の
座頭女形の立者立作りの作者楽屋頭取表帳元を
太夫元江招き当かほみせは誰々を抱へ可然哉并狂言は何を
但此相談は余人をましへる事なし
取組べきなと相談をする事也
是をはなし初と心得たる者あり
誤なり座頭役女形立者は春狂言半ころより来年の極有て手附金をつかはし
置事にて此夜太夫元え出席するする座頃女願立作りは兼而来年の手附
金を渡し置たる者なり其外の役者は此夜右の者とも相談の相極る事なり
甚塞々なる事なり然るを近来は金主方の存よりを立る事ゆへ此夜も
一金主方立合ふ事に成たるよし左も有る事にや
此夜座元の宅及
はなし始といふは狂言の噺を惣役者にする事にて別也
芝居楽屋口え灯燈を出す
森田座
相座河原崎座
都座ノ昨之
相語極りたる役者へ手附金うつ事有略之
但し此頃に来年外の座[リ]行くに移りたり立者女願など其座
一惣役者長州囃子渡なり大夫など入替り相定りて役者附
十二丁
三座共に同
毎年九月十二日の夜其年の顔見せに抱置たる立役の
座頭女形の立者立作りの作者楽屋頭取表帳元を
本文元江抱き当かほみせは誰々を抱へ可然哉并狂言は何を
但此相談は余人を流しへる古人なし
取組へきなと相談をする事也
是をはなし初と心得たる者あり
年の極有て半附金をつかはし
前立作りは兼而来年の手附
〇者とも相談の相極る事なり
て存よりを立る事ゆへ此夜も
夜座元の宅及
中村座
市村座
森田座
桐座河原崎座
都座略之
一相談極りたる役者へ手附金うつ事有略之
但し此頃に来年外の座へ行くに極りたる立者女願など其座の
一名残に所作事など勤る事あり尤上京の役者もしかなり
一惣役者其外囃子締留り大夫など入替り相定りて役者附
けれいし
の下絵に掛り出来上りて板行急ぐ事なり
一十月十五日十六日ごろより役者附を出候先ツ最初に役者
一中江座元より是を配り扨茶屋〳〵より客人江配りて
但此日何方へも可時に出く事にて板
夫より町中え売出す也
元殊の外いそかしく配り歩行く者も
四方へはせまはり
甚いそかしき事也
但此役者附町御奉行所并諸かゝり御役人方
一町年寄組合名主肝煮方え者座元より差上る也依て
千枚程之板元にて役摺とて太夫元え運上に出候よし
又是を配り出る者江戸橋を通る時善イ衆中に無理に
取らるゝ事ゆへ甚用心して出るとそ
尤芝居かゝりの者は役者付の出来上らぬ前より数を極め板元へ誂へて
置事なりとて
此看板に大中にあり紋にこん
しやうと朱とろくしやうのさいしき
一入替り役者役看板芝居表え掛るは
に差別有て其位を争ふ由
此事十月十三日頃なり近来やも
亦看板の並へやうにも次第有也
一寄初
すれは廿日ころに成事有り
十月十七日也是をはなし初ともいふ也芳男を
はなしそめと心得たるは誤也くはしくは左にいふ
此日昼の内より惣役者え金を渡す事あり尤座頭の
立役女形の座かしらより始て立者分のみ也役者は此寄
初に出席するやうになるは出世したるにて皆此席へ出るを
願ふ事也
但狂言作者筆役は初心の者迄も此席へ出る其外は中役者
のかしら一人いなり町の頭一人はやし町の頭壱人此外は不出
其夜役者の迎として仕切場の者袴羽織にて芝居
定紋合印の付たる箱てうちんを持せて所々の役者の宅江
分壱し
但し仕切場の者計にては
迎に行役者の宅にて吸物酒肴出す
不足ゆへ桟敷番なそも
袴にて出る立者の分には留場の善衆も付
てうらんは半畳火なは売の者出るなり
其内に役者は支度を
調へ銘々の紋付たる箱でうちんを供にもたせ此辺の者と一所に
立やくは座頭の宅女形は女願の座頭の宅えみなより集る也
但役者不残
狂言作者はみな多くは女願座かしらの宅えよる也
麻上下女形
狂言立作り同二枚め是は裏付
一金のわたり方遅き時は
大概夜四ッ頃也
是なり筆役の者ははかま羽折
夜半に至る事も有
扨芝居より双方へしらせ有て座がしらをさきに立双方
芝居の櫓の下にて出合会釈ありて一同に櫓を拝して
木戸より入る木戸の内に帳元金主方なみ居て銘々に
手をうつなり夫より役者舞台え上る頭取案内にて
三階江上る向に嶋台蕗の台三方に三ッ組の置のしこんふ
等の式肴別に白臺に蜜柑を盛り上ヶかざり付太夫元并
但し太夫元谷大夫ともはかま羽折也
扨座頭をはじめ
若太夫側に座
座頭の立役古参は袴同折新参は上下に
烈座する也女形の方も是に同し此座なみ差別ある事
〇但し狂言立作者は櫓四枚の女かたの次に
にて頭取甚心配する事也
すはる二まいめの作者も立役四五まいめの
内に此夜の上客
清太夫元と惣役者盃事あり蛤の吸物雑煮を
なれは成へし
此盃事新参の役者先にする也い人〳〵の
出酌は頭取上下にてする也
盃の内はやし町のかしら末座へ出てにたひを
うたふ也夜の遅刻によりて古参の者は
盃済て狂言立作り恵方に
順盃にて仕舞事有是は座頭の差略也
むかつて顔見世の大名題をよむ同二まいめの御者惣役
割をよむ也昔は此所にて頭取を相手にして作者狂者狂言の
けれいし
筋を噺す是を惣役者謹而聞たる事なり依るこの夜を
近来とかく寄合おそくなりたるによつて今は
はなしぞめと呼たる也
此はなしを略して役者しへ役からと衣装の
事を狂言作り
はなし合ふのみ也
此事済てみなく袴羽織になりみなりみなり
一座して本膳出る桟敷番の者袴にて給仕をする帳元仕
一切場あいさつに出るなり饗終りて後座元善太夫盛の
みかんをつかみて座中へなげるみな〳〵是をひろひて手を
一足かほみせ狂言のはじめての噺にて此夜まては
うちて退出する也
煮やく者芝居かゝりの者まて一向に狂言のおもむきを
しらさぬ事作者の法なりされは
各類かんはん番附なども是より後の事也
是をあたり蜜柑といふ
一此日昼の内踊初とて舞台にて子役并制外子
なとの踊あり
但此時はやしの人々へ頭取盃事ある也
正月元旦の踊ぞめとは別なり
一廿日ころより狂言番付を出す
但し入替やくしや付の出る
時にかはる事なし尤狂言番
付は常にも両町御奉行所へ
さし上る也
但しかほみせのかんばんには作りそのなど
一同大名題看板を出す
花やうにする事也追々櫓下かんばん不残也
一本読稽古の事はおくに出す
一十月晦日芝居其外茶や役者の家々燃灯を出ス
其外表通新道迄茶屋〳〵軒にかざり物有或は善荒
中よりの積物樽蒸籠引幕等甚はなやりなる事也
一役者の家々には今度の狂言に着る衣裳を不残座す
にかざり燭台を列に神酒鏡餅を備へ酒肴を供て
客人をもてなす翌朝は芝居がゝりの者の家々のこらず
一雑煮餅を祝ふ事正月元旦におなじ
一此夜若く衆中役者の門々に来りて手をうつ也
是を手うち連中といふ論などふぜくために留場の者めい〳〵の
かゝりにて役者の門口に待かける也
手うち連中夜いけに至りてみなし芝居の切落へ
こみ入戸色をつかふ也一番太皷は夜る八時ごろ也明がたに
二番太鼓をうつと此人数を追出すこれまでは舞台に
幕引てこゝにて幕を引明け舞台をきよめ真
一中に三室に神酒備餅をかざり左右の大ばしらへ大きなる
角行燈をかける是を翁あんどうといふ此時表にて
切落札うり出し木戸にて詳をあげ見物を呼こむ
一式三番
霜月一日暁なり
是を翁わたしといふ太夫元若太夫これを三ヶ日の間別火
物忌にて出るよし三日すぎれは稲荷町の若イ衆是を
つとむ
一芝居木戸前江立者役者の紋付たる大でうちんを大込に
かけ並る切落の上にも惣役者の紋と名を出たるてうちん
但し此てうちんは役しやの
をならべかける
方より芝居へ遣候也
両側上下の桟敷え茶や
方より芝居へ遣ス也同仕
〳〵より丸でうちんかける此事顔見世ばかり也
一櫓三枚の立女形より木戸の者へ綿入羽織とほうかぶりの
尤面々の紋付にしてはでなる染也ほうかふりは
手拭と扇とを出し
六七尺の長さ也かしらをいゝみあたまの上にてむすふ
此外送り迎の留場の者へ仕着て革羽折等遣ス
此留場は表かたゟ
さしづにて誰には誰
こと二人ツゝ
付る也
又舞台後見をする若イ衆に紋付の小袖と献上下
一楽屋番道具衣裳方などへも紋付の仕きせを出す也
下り者の女願などは隣町の髪結朱などへも
一是は顔みせのみに限らず
紋付ののふれんなどを遣す事有は是は定りなし
一追善狂言或大所作などの時は常にも有事ながらまづ
一表立たるはかほみせ也
一惣而かほみせには太夫元帳元役者中其外其組にに
一互に看鰹ぶし等の音信を取遺する事なり
一霜月朔日初日大がい一番目までする二番日一二日も過
て出る
初日は町内よりもみな見物する也金のわたり方次第にて
はしまりはやし
一初日狂言一幕〳〵に仕功場大勢連立て楽屋祝儀行キ
二番目の出たる日も二げんめの幕毎に
手をうつなり
右のことし但しかほみせに限らす
一初日上下桟敷に太夫元立者の役者帳元大茶屋或は表立
たる金主の苗字を書たる札を下げる是み芝居より馳走
に出るこゝろなりかならず夫にかぎりたる事にはあらず
一初日二日の内は町内或は役者の内方など桟敷を貫て
見物するなり夫すぎては仕功場えも楽屋え茂容留
といふ札出る
一霜月十二日の夜芝居打出して後座元宅にて春狂言
但し出席する者等先の通り
の世界定あり但し
ちだせいし
一当り振舞楽屋にて有出役者狂兵方囃子町浄留理太夫
是かほみせ半のごろ也
一皆夫々の出合にて大振舞有打出し後也
中役者の頭せ話して
万事とり行ふ
方中とり行ふ客者太夫元善太夫并怪元仕切場の奥役の者に
など呼也仕功場よりも酒樽蒸籠肴鰹節など楽屋へ
進物にするなり
一貌みせ舞納めの日そゝりとて茶屋の亭主仕切場の呑き
者ども又ははやし町の者など役者の衣裳かづらを借点を拵
其興見世狂言の内を二幕又は三幕ほどはゝ素人狂言をする
なりおかしく面白き事なり右畢て惣役者袴羽織にて
座つき大夫元善太夫も出席する頭座舞納めの口上有て
打出す此日すゞに役者中大夫元帳元茶屋に座頭の宅江
一祝儀に廻り銘々互に歓びにゆきかふ也
魚見せの事あらまし如此此外細かなる事ともあれどわづ
らはしければ略之
太夫元
勤之右済亭
善太夫
一正月朔日仕初昼過の頃式三番ありは
舞台へ毛艶薄べりを敷毛せんの上へ太夫元莫夫うす
べりの上へ惣役者並居る座かしら前へ進みて年頭祝儀
の口上を云頭殿春狂言の大名題小名題役人附を三宝に
載せ持出て座頭の前へ置座がしら此大名題小名題を
一譲次に役割をよむ時曽我の五郎に誰とよめば其役者十郎
誰とよめて其役者一々頭をさげる右よみ終て子供のをどり
一三番有其外呑き役者何か頓作なる藝をちよつとする事
但し舞台に大きなる鏡餅かざり置三番叟まへに
も有て終る
ごれを引也
足済て表鼠木戸江狂言名題と役割の書たる行燈
を出ス櫓下え来る十五日よりと云札を出ス
一続て春狂言大名題看板を出す
一此日役者とも年礼にまわる
一春狂言より辻看板一枚階を所々橋々辻々髪結
但し初日より五日までの客札
床などへは芝居より配る
四五まいつゞ付てくばる也
すぐに
一辻看板うり出火かほみせ役者づけの通りなり
一本よみ
一二がいにて有りかほみせ春にかきらす狂言かはうめ〳〵みな詞
一但し一日の犯言を通してよむ事も有又追々日をつきてもよむ二
但しかほみせはみなはかま羽折なり
未座に
春よりは平服
座がしら始め惣役者不残置居
生にいなり町のかしら一人はやしの頭一人ふり附一人大道具がよりの仕切ば一人
小道具方一人衣持衣方一人出る
付出る
付出る
狂言作者正本を持出る
の者誠に
筆役の者跡に
に作者面々の書たる
一幕自身に読なり此犯言の内に座頭より二三枚め迄の
一役者は不存あればいさゝ好む事もあり然れども多くはいはぬか
事なりまして夫よりすゑの役者は役ぶそくいふと言事は
なきなり狂言よみしまひて一幕〳〵に手をうつ時架け
但し書めきの表儀に立者
やくの者書ぬきを銘々にわたす也但
には作名を書其外は実名なり
一所存のあるまゝは出入て跡より書ぬきをわたすなり
すぐに稽古にかゝる事も有本よみ次第にて夜る速く
なる時は翌日よりけいこにかゝる也稽古には筆役の者
一正本をひかへ居て其づきは誰々といひ又仕打出は入の卜書に
正本の出やうおゝに
よむ
少しはかり出ス
其幕に出る役者少々ぬき見て銘々の
せりふをいひ合する也
一道具付衣装付小道具付囃子付みな狂言方より書
但しあつらへの鳴物などいふ有是はさまりたる外の
ぬいて渡す也
なり物にてはやしと相談づくわら。あつらへる事なり
其外大道具に道具にもしかけ物有又衣装にてはやごしらへこはせ
がけ物引ぬき物なじみな佐者と役者かけ合て窮苦かたへあつしへる事也
一浄留理の文句独吟のめり安は狂言作者より作りて渡す
其うた所作の文句ハ囃子町の立三味線これを作る事也
然れとも狂言にかゝはりたる所作
又拍子舞直作者是をつくる
一浄留理狂言作りより文句を請取太夫の方にて節ぼり出来
上れば芝居三階江浄留理連来りて語る也浄留りに出る
役人とふり附と狂言作者と是をきくすゞにふり附はふりを
一拵へ出来上りて後役者口をしゆるなり
一所作事も右之如くふり付ふりを拵へて役者へ渡す
一たての事は中役者の内にもたて師といふ者ありて立物
同士のたてにても或者四人づめ六人づめの仕のきのたても
但し太刀打ひさつめはげしき合にあるひ
拵へて立者へわたす也
つかみ合其外しつかなるもするどきもこのみ
次第にてこしらへる
事なり
依之しんになる立ものより四人ぼめ六人結
ちまし
一分三丁
にても紅絹じゆばんなど拵へて出すなり
一追善の所作又大所作出囃子にてする時は着付けの表と
麻上下を出ばやしの人数へ其シテの役者より拵へて出た
ゆざらひとも
鳴物入
一附たて中
一惣ざらひ鳴物入
いふ
色まては皆すはりてせりふ斗りを言合なり立稽古には
舞台の座なみにして思入も仕うちのする事也たてなども
入てする又その次に付たてといふ時は一人に衣装は何〳〵
小道具は何〳〵出は入の鳴物は何〳〵と狂言作り正本を
ひかへていふ衣装方も小道具かたも手帳をもつて是
をつけたて其役者〳〵えこのみを聞合せるなり鳴物も
はやし町の頭付たてる也此時より狂言方にて柏子木を
入るなり又惣ざらひは初日の前日にて稽古みなそろひ
ての事なり明る舞台にてする通り鳴物も入調子も
はつてする也唯かづしをかけぬと衣漿をきぬと小道具
但し舞台にて書物は筆役の者書て出す又
を持ぬばかり也
しかけ物の北道具はとりよせて仕て見ることもあり
一しばしく対面朝正な其外長きつらねなどはひとりにてもかけ合にても
別にけいこし置て惣ざらひの時まではいはぬなり
此時はひきのある者は三階へ見物にゆかるゝ也近来諸人
これを見たがりて所々の心きより言こみて見に来るゆへに
一甚三階こみ合ふ事なり
一此けいこ場は三階の中に三間の板間あり舞台と同じ
むきに居てするなり向に狂言方正本をひかへて居る
上の方には囃子の人数なみ居るなり
此板間の両側に常には中役者の居所なり板間へ鏡台を直
しておくゆへに中通りの事を板の間といふも芝居のことばなり
一三階には座がしらの立役はじめこまいめ三まいめ或は客座
の役者立物分相中中役者之な〳〵席定りて銘々の
名札張て有立物の分はかぐし師中働きと弐人ツゝ人を
遣ふなり中通りの分は一所に髪結ありてかづしを付て
まはるなり衣漿を着る時は座がしちより中通りまでも
衣将取方の内に最将衣付ありて幕ごとに衣漿をつけに
ゆくなり中二階はみな女類なり是は部屋〳〵に仕切て
但しか役の
あり衣漿着るも一通りの事はかづら師着せる也
時は衣漿
付ゆきて
着せる
此かづら師の内に座がしらの女願に付かづら師はより
一親といひて其芝居に付て居る事にて惣かつら師の
せ話役なり俗にいふ様人立役の立者に付て居るかつら師
までもみな其者の支配ゆへにより親といふされば座頭の
女願其芝居〳〵にてかづら師かわる也。はしごの下の向
一段たかき所は頭殿座なり爰の上に居る者頭取と狂言立
但し座がしちの
一作者二まいめ迄なり外の者はのぼる事あたはず
立役用事あれば
のぼる又太夫元喜父など楽屋来る時は
此所に居る其時は頭取席をゆづる也
此座のまへえ腰をかけて
居る狂言方筆役の者ばかり也三階はしごの上り口に二かい
一中二階へ女中がた堅く無用といふ張札あり
一頭取座
多く出る狂言の時は
此べに代ぞうげん有
右にいふ所也惣役者化粧代日々三貫五百文ツヽ頭取うけとりべに
をわたす中二かい女がたは手すへにてするひどりよりはわたさず又ぬり
出しろいとてはだかになる故者はおしろいをに道具より出すなり外のおしろい苦らい
はと役の方にてする也道にばかりは頭左よりわたす但しべにぬりとてあかつつうつど
仕切勝へ用事ある時はびらといふて半紙を
一細く札紙にたちたるに用向を書付て頭取座の押切判
をしてつかはす事也
をしてつかはす事也但し楽屋より夫の見物は頭取へ頼て此むしを
貰ふ也一客壱人勘取と書て遣る也
一衣装蔵
頭取座の脇
三がいのはしこと向
役者幕毎にわたす蔵いしやう爰
但し頭壱人仕立屋壱人ツヽ
にあり衆将殿着せの者爰に居る
付居る也
一小道具部屋
一稲荷町
狂言のに道に
小道具手帳に合せて幕毎に頭取座へ持
出すなり
一囃子町
楽屋の両側にあり稲荷の宮あるかたに居る役者をお下の
呑イ衆といふ囃子町は鳴り物三味せん長唄の人数居る也
但し大概いなり丁十一人はやし町十三人といふが定りなれども今は
蜂城さだかならずいなり丁のかしち幕毎に口上に出るなり立物の後
見も大かた此わかいしゆの内にて誰にはたれとさだまりて出るなり郭言
のつかひ物とてかわつしとりなびなどのたぐひあるひはぼしうんきなとも此みかい
より出てつかふ也然れとも市村座はひかしより此つかひものは小道具かたまて
つかふなり
評に日市村座之稲荷の宮はやし町に有ていなり丁には
なし兄中ごろ芝居廻録の時いなり丁の衆中此宮を
持出す事をわすれたりしにはやし町の者持出したすけし
〇時よりはやしの方の請取に成たりと云然れどもむかしゟ
呼なれたる名目ゆへ若イ衆の方をいなり丁といふなり
けれいし
二月初午には楽屋中よりて稲荷まつり有て甚さ
賑はし此日楽屋にて田楽をやく此日楽せうほの
つけやき也是味噌を付るといふ事を以みて也
楽屋の入口に有之
一湯殿
とろ入水入くまどりべにぬりの外無用
と云定書張て有然れとも私に風ろに入事も有なり
一銅壺湯殿のまへにあり
一床山
下のかみゆひ所なりいなり町のわかいしゆのかみをゆふ也
出ばやしなとの有時ははやし町の者も結はする也
入口なり口番とて大ぜい番の者あり遂にも頭小頭有也
一楽屋口
役者の出入口も今はやはり此所よりする也
一楽屋番
役なり
二人或に三人ありいとしき役也楽屋の炭真木一切之事を
する其外役者のに遣ひをするゆへまた毎にはしり歩行
一大道具部屋
舞台さしろ也幕引頭にて幕事に飾り付る也
一穴番
大道具かゝりの仕切場の支配する也
舞台椽の下のかゝり也せり出し切穴さしかねものなとに行く
道をさうちしかんてうをとほしむしろを敷いろ〳〵用有
一蝋燭がゝり
つとむる
大道具にて
一窓番
両側さじきの家根の上の窓の明たて也
楽屋口の番よりつとむ
惣而此分のかゝりの者ハ日々いかほとゝ云銭払を仕切場
より是の頭請衆惣人数え割渡す事なり
一焚拾
一立銭
是は日々舞台にてつかふ鼻紙ゑんせうたどんだばこ
その外日々すたる物の代なり楽屋のがしち仕切はより受取
是は座かしらの立やく座かしらの女願此二人りより外なし
日々弐文ほとワゝ仕切はとりわたす也いへいみゆる座頭二人の
日々焚すての代なるへし給金の外なり然れとも仮者の高下によりて
此銭増減あり此立銭を日々四〆文ツヽとりたるは古人忽ひ蔵はかりのよし也
一立者役者ぶたひにて間違そさうあれば楽屋中へ
蕎麦をふるまふ也
福山にそは札とて紙のは書あり此札をどりよせ
て銘々にくはるをらひたる者勝手のよき時分真
一札を一りていくつてもとりよする也すべ中食などに表よりちそふにそはを出て
にも此札を用此札になみそはとにしきといふ御膳と一色あり
一助六の狂言の時舞台にてつかふうどん箱かつぎの
胖天は新しきを福山より出るなり
一昼食
大夫えより焚出しをする是楽屋へ不残はこぶ昔汁とさい
と付たるよし今は飯ばかり也御通り以下はにな此昼食をする也
芝居をぶ首尾にて引こみたる者は此壺食をくわず宿にてくふゆへ不首尾にて
引立たるをひやめしになりしといふ。此謂也
一制外子
俗にいふ色子に供の事なり町内の子供屋より三人ツヽ御役にて
舞台へ出すこしもとなとおほく入用の時はこれをつかふなり
役者の下地なれとも頭取座頭の制の外なればかく名付る也青海子など
にたるは訛なり衆将衆も子供屋より出る也
一浄留理
太夫ワキ三味せん
上調子
富本連常盤津連
此外にも
有り
浄留理連中は中二かいの明たる部屋を
役の内遣ふ也
河東節連中一半太夫連中一半太夫連中
一義太夫節
浄なり狂言の時遣ふ是をちよぼ語りといふせりふと文句
のうけとりの所へけいこにある紙と音がみにて本へ印を付るゆへの名也
一大薩摩土佐ぶし外記ぶし
是は囃子町唄うたひの内にて勤む
一乗物駕
四ッ手駕はいなり町のわかいしゆの役なり乗物の六尺は表の
役あて也かんばんは衣装蔵より出ス
一犬猿狐たぬき馬
やくなり手のまわらぬ時は表の枝あても出る
犬猿きつねたぬきはいなり町のやくなり馬は大道具番と楽屋番の
一せり出し、四てん、ぶんまわし、引道具、
みな表の役あでなり大道具の手のまわらぬ時も表の役あてより
手伝ふなりせり出しはしやちにてまく口てんは口人にてかつぎ上る
一かんてう
ともし火也舞台先はまゝ引のやく花道は半畳ばん
よりつとむ
一拍子木きつかけしらせ
幕毎に楽屋にてうつをしらせといふ初て二ッうつは舞たい
の道具かさり出来たるを二かいへしらする也二度日の
しらせにて幕明に出る役はしごをおりて舞台
揚幕とへまわる三度目のしらせは舞台の出口
にて打四度め舞たいにて打と口上出る口上終て
拍子木うつと鳴物かゝる是より幕明きの拍子木
なりきつかけといふみすのあけおろし道具替り
などにうつをいふ又引かへしの幕の内打つゝけるをつ
なぎ木といふ惣而拍子木を上略して木とばかり
いふ也此木は段々習ひ有て幕明の鳴物によりて
うち様みなかはり有幕際も是に同し其外心やう
しまく一番目大詰の拍子木打出し拍子木みな
一左法ある事にて狂言作者筆役の者の役也
一呼ビ
幕毎に出る立者の名をまくの内にて呼ふいなり町のやく也
此よびに入を役者は出世とする也此外上使出仕御入今様はじまり
などよぶこれみなおなじ此まくの内にて呼ふ名をわたりがすんだと思へたる人有
それはをし付ずいれうにてくはしからぬ人也
一寄
せ見物入さかつて来る時まくの内ニて小だせを二ツ打とまへがまばらて
うしろがこみます太鼓ついてまひへしとよぶ又太皷のしやぎり
一くさりうち切とまそつとよつたりと呼ふすぐにはやし町太皷しやぎりうつ也
一急用
誰白きう用とよぶ也是は見物にさたる者やどより用ありて
居所しれざる時頭取へ頼みきたればいなり町へ書付をやりて右の
ことくよばする也但し舞台狂言さい中の時は
ぬりいたへこふんにてかきてぶたいの大げしらへかける
一一ばん太鼓はふちより打初め打出しの太鼓仕舞を縁にて
とめるなり
一新道の茶屋より屋敷。方の見物など楽屋を通行
さする時は右頭取へことはりに来る頭取より楽屋中へ
但し茶屋より礼に酒さかなを
云し也
頭取へ送るなり
一舞台番
留場の者やくにて一幕に二人ほどづゝ半畳を敷
舞だいの下に居て見物のさはがしきをふせぐ役なり
うしろの方のさはがしきは楽屋口ばんの者
せいする也
一立者の役者西の下桟敷うしろあげまく退行にはかゝり
留場来りて先をはらつて行事也
一揚幕
花道の向ふなりあげまくのやくをつとむる者壱人あり
是は大道具番の支配下なり
一東のあげまく
つねにはなし入用の時は東の下さじきのませを明て
出入する也さしきばんのかゝりなり
此内二間は幕
一上桟敷舞台の方より八間を内格子といふが
の内なり茶や
にて買直段
四月廿一日のあいたを太夫といふ其次をひらと
廿五匁廿匁なり
東の方は直段やすし
いふ六間あり
尤入の有無によるべし
上さしきに同
一下桟敷舞台の方より八間を内髪簾と云ふ
直段も同然
九より六間の間を外みすと云其次を新格子と云ふ
筒あげ
まくの代は
ばたといふなり
直段右同断
り但し東は六まで有
一桟敷上下とも定直段三十五匁也
但桟敷番といふ有て是を割わたすなり此桟敷
番は太夫元の名代なと表向の役を勤る也衣装
改其外公辺之事にもみなたづさはる役なり
つれいし
直段廿五匁也所によりて
一本土間前土間
高下あるなり
但市村座にて近頃は本土間に手すりを付ケ毛氈を
かけて三拾匁に売
一東のかた本土間より花道の際まで八側有舞台際
より中の間の方え十三有十三を切土間といふ
一切落今は土間の七側め八側目の末にて十一より十二迄
むかしは舞たい際より中の間のあゆみの際
の内すこし斗の所なり
まで惣而切おとしなりし也
土間番といふ有て割わたすなり
一上桟敷西の上に幕際より高場三間あり同所に張
出し四軒あり
一金主へ引当ての
所なるべし
一西の方花道の脇土間の割残をおくみと云あげまくの
すこし先にも未のおくみ有
一花道西之方本土間ともに二側有
一舞台之脇西の方切落したる所を升と云
舞台之方を
浅井中升本升
一おくみの先を升の三シ升の四といふ
と云
一舞台の東の方切落したる所をまつといふ松の
松の一松の二
に一
一舞たい際土間の前に一並びに居る所を雨落と云
一中の間花道より東へ行あゆみの側なり是にも今は
土間あり
一中の間とめ場の際に高場あり
一金主の居所
なり
けれいし
一二階白桟敷を引ふねといふ是も本船中船跡ふねの名
有
東を一として
十軒ツゝ有
一羅漢台舞台のうしろ高き所也まへははしがゝりと云
一目高見物といふは舞たいのうしろ外座の方におし合て
居るをいふ
一鼠木戸表西の入口をいふ
此名いかなるゆゑありやむかしかり
かゝ呼きたる也
一仕切場鼠木戸の側札売場なり
芝居万事引請本〆を大役なり帳元の仕方あしければ
帳元へ
よろつ手づかべて興行なりかねる事也
又おく役ともいふ金衆方公辺方役者給金方大道具方
奥帳場
小道具方衆装方其外いろ〳〵の役かゝり有り此手に付て
まわるわかいしゆといふもの
十人ほど有
仕切場の平
此内にもらうそくがゝり札書勘定やく着板書その外
いろ〳〵有あり
一留場
いへまづ見物のふせぎなり此里丁ゆの内より立者のやく者の付人
に出る者あり舞たいばん縄手はなばん等いろ〳〵有
一声番
半畳うりの内より出る役者の出は入所作の支度の間などに
こゑをかけるやく也
一半畳売火縄より
あげまくいゑにたまりてゐる火縄のかずにて
見物の入だりをはかる事也又きせるとも云
一東の口
高ばに
桟敷がゝりの
番あり
一木戸
頭ありむかしはまねきといふ事有
今はなしおとしといふ物をとる
又よみ立とて役割をよみこはいろを遣ふものは別に抱て有也
一仕切
芝居の衣にて合羽の羽織のほうかぶりのと通りの者に目印を付
その通りの者を引て見物さする也二文〳〵辷りなどいふ食ことげ有
又先にいふ吉の役あてとは此事也乗物の六尺大道里の手伝ひなどみな此内ゟ
出る也
惣而芝居ものへ座元よりわたし置木札あり万一失ひたる
時は過料五貫文出すこの本札に押印形両御番所
一火方盗賊方御掛りえ印鑑いだし置居芝居者皆捕
候時此札を證拠に差出す事なり
中村
表
〽楽屋口
誰
裏
三座共准也
一芝居法度書之事
三階に張る有り
左之ごとし
定
一先年従
御公儀様被仰渡候通
十一
狂言役者舞台衣裳者不及申平生之衣服共前々
御定之通絹紬麻布之外御法度之品一切着用仕間敷候
事
但寛政元酉年中町人男女共衣類分限不相応之品
一着用不仕髪之餅其外花美之儀無之様委細御触
も有之候ニ付無意脚急度相守役者共平生万端不益
相止メ失墜無之様心懸家業等閑なく出情相勤可申事
一狂言役者居宅堺町葺家町木挽町之内并隣町之者
一別達方に住居致間敷事
一女形野郎子ども共之儀は右三町之外他所へ一切罷出不申遊興
之客江一切出会申間敷旨前々より御定に付日々在宿改め印
形取之候間弥堅相守可申筈
但在方親類病気或其身病気にて湯治等他国いたし
候節は前々日限致両人并座元頭取印願之證文差出
罷越候所近来猥に相成無沙汰致他国候儀も有之候以来
等閑無之様其時而前々は通急度證文差出可申候事
一惣而狂言ニ男女申合相果候儀作り入申間敷旨享保八卯年
一中御触有之候間堅く相守其外世上風儀に拘り昼儀決而
狂言ニ取組候義堅く致間敷候事
一狂言打出し之儀夕七ツ時限相仕廻可申旁に及明り燈候而は
一火之元不宜候勿論風烈之節は別而大切に相守可申候事
一但芝居打出後桟敷楽屋其外心付重役之者差添火
ええ大切ニ相守可申候事
一芝居楽屋其外に而転変諸勝負一切致申間敷旨厳敷
一楽屋表方共申付頭取別而心付可申事
前書ケ條之趣無等閑急度相守可申様可致候以上
寛政九巳年十月太夫え
一此外にも役者行跡之掟書又宮芝居田舎役者等相加り候
時は友吟味にいたし右之者相交申間敷なといふ事色に有之
一事繁けれは略之
蔵衣裳定書左之通
おほくち
一直垂
一大口
一直垂一大口一ゆかた
一てうけん一綱丸一三尺手掛
一さし貫一四てん一化身物
一十二ひとへ一てつかう一ちはや
一緋の袴一すね布一おひずる
一狩ぎぬ一もゝ引一ふきかへ
一十徳一合羽一ばつち
一法眼襠一襦袢一ゑりまき
一素袍一きやはん一たちつけ
一麻上下一泥入一かるさん
一陣羽織一水入一仕かけ物
一仕丁一正ぶ草羽打論一軍兵
一頭巾一衣袈裟一しきん
一たすき
右之外御法度之衣装一切出不申候
大夫え
右之ことく書付衣装蔵に張而有り
但し狂言之もやうによりて此外にも蔵より出火物有
といへどもみな此類ひに准る者也
又中村座にては合羽馬乗
はかまを出す市村座にてはふ出
又女願より善に衆を勲立役より女願をする時は
加役とて衣漿かづら共みな芝居よりする事なり
小道具之事は限りなければ略之
一同はやし名目の事
かぜおと
おと
小道具より拵へてわたす
一雨車
雨のふる音也其願を略ス
一風の音
一天王立
笛太鼓
大小
一波のおと
大だいこそ打
同
一楽
三下り笛
太鼓
一辻うち
かるわさなどの
鳴物也
一下り端
天王たちに
同しはやめ也
一音楽
笙ひちりき
太コ
一管絃
二上り
ふへ太鼓
一肥前節
三みせん
つゝみ太コ
一又コイアイ
一のつと
物着の相方
一かけ入
鼓大小笛
一つゝかけ同笛
一太皷謡
三味せん
い由大だいこ
一人よせ三味せん
大小
一三保かぐら
一本神楽
笛太鼓大小
一宮かぐら
太コ笛
テレツクゝ
一大拍子
大たいこ
大ひやうし
一早神楽ふへ共だいこ
ふへ太鼓
一岩戸
一通りかぐら
草ふへ
一時の太鼓一遠よせ大事以
一遠よせ
大たいこ貝
大たいこ太皷
どら
一捨がねどら一禅のつとめ太に木
一禅のつとめ
太コ木魚
一対面三重一行列三重
一うれい三重一忍び三重
引こみ三重とも公
一六部の相方
一はや三重
又松虫の相方
といふ
むけんかねに用
一はげ物相方へ
一はやめ
うかれ三重
一てんつゝ一しころ
又きぬた
尺八入
一れんぼ
一常の相方時々かわり有
又草ふへ入有
こきう入
一相の山
一草ずりの相方
笛大たいこ
一ねとり笛大たいと一修羅の太鼓
一大どろ〳〵一うすどろ〳〵
一はやふへ
笛太二
テンテレツク
一とひよ
鳥のね
しばらくの時は早め
一出の唄一引込の貝
一出の唄
一出の唄一引込の唄
一琴うた一田舎うた
一さわぎ
土手のてうちん
よし糸月夜哉
一深川さわぎ
一とてちり大に入一祇園ばやし
一すかゝき一ぬめりすかがね入
一みだれ大工一片しやぎり
一しやぎり一打込是より二げんめ初り
一よせ一和歌大げめ
かた〳〵さしば
一らいじよ執一ながしふへ大だい
やみなん〳〵にてをし出
一こたま一大小浮拍子
一草笛の相方一楊弓の松と
一雷のおと一曲ばち
ちうへし
十壱せいし
一葛西念仏
一わたり拍子
一馬鹿太鼓
正伝
神田ばやし
一さうば
念仏かね太二
ジヤン〳〵
一白はやし
大小
又水うち
立かたの役也
一常念仏
一唐楽
一琴の六段
一独吟めりやす
一はやまひ
二舞ばたらき
是しゆ〴〵のこの
一あつらへの立
有事也
一右あらまし混雑にしるす此時のもやうにより種々の
相方あり略之
道具建是も限なけれは略之
一蛙のこゑあかゞいをすり合す
一日ぐらしのこゑふへ
一鶯ほとゝぎす雀むしの音鶏
是等みな笛あり
いなり丁のわかいしゆこわいろを
一からす猫犬の急は
けふ
一樟脳火
狐火なり
小道具にてする
一せうちう火幽霊の火也
一せうちう火
一ゑんせう火
てつほう大づゝ
又は出霊の出るまへ消るあと
てつほうのおとはぶたひのうしろにて板の間をつよく
打なり又竹でつほうにてする事もあり雷の音は
外座と日覆にて大だいこを打合せ又六丈六尺棒を
縄にてゆるくゆわへ板の上をころかす也稲づまに
日覆の日ざしにむかひて鏡をひしめかしたる事
ありしが雨天の時は昼なげれはあへて是を用ひず
かづらの名目
一百日
くまの皮あるひは毛にてもする
しつちうくしはらひなと付るも有
一ゑんで
一ぼつとせい道外方なとうける
一八まい
ひろうと張ぬめばり
しつちう付もあり
一逆髪
長髪也
定九郎なとか用
一くりさげ五
宗清忠信なと
一ひしかはうしろへ毛の立たる也一矢はづ米御思供なと
一出じま梶原一鯰ひげ
前髪あら事
一掴たて赤髪あかる一巻たて
一はりがねのちり〳〵一車の百日景晴
一立テ髪丹前
一立テ頓反丹前一摺はがし惣髪はげ
朝ひな
一鎌類此朝ひな一長ひげ
荒休
はうげんかる
一たれ
さんはつ也
一糸のたれ
一合せびん一くりじん
一羽弐重一三折
一平太髷一さうのちやせん
一油ちやせん一ほうちやせん
一まさかり一ふつつり
一なまじめ一いたづら
糸毛なり
一なまじめ
耳の脇より下ケる
浅き有之有
一いが栗
一ほうづかづら
赤かね有老僧
一おやま
島田島いづし奴び田針打勝山ぶんきん片はつし
一兵庫手がらみ
つれいし
一善衆
一いねかづら地髪の中へかける
一さばき
中に筋有能の女つ通
山うはなど
一切かふろ
一白髪
惣はつ有
又こましほ半白也
一かもめつど
上方の和る師也
江戸にては不用
一かづらの下を下地といふ也一角かづら
此髪の製此外おびたゝし役によりて種々あり又一
仕かけ物などあり此かづらの圖と次の顔の隈どりは
後篇に画をもうけて委く記すべし先度に略す
魚のくま名目
一筋ぐま
一青ぐま
一半ぐま
貌の下のかたを青くする也
景清など
一猿ぐま朝ひな
一薄肉一むきみ
一愛染
一一ッぽん一愛染
一龍神
一不動一龍神
一化身もの
一にゝしき一化身もの
一狸
此外おびたゝし後篇に図をまふく
太刀打
一天地一文七一柳一切身
一廻り天地
此外おびたゝし後篇に図を儲く
つれいし
たての事
一千鳥一大まはり一むなぎば
一腹ぎば一横ぎば一ぎば一ぎば一ぎば一横ぎば一ぎば一ぎば
一入鹿ごし一ひとゝこがへり一ひよつくり
一二つかへり一つゞけ返り一逆立
一杉だち一胸返り一手這
一猿返り一あと返り一かさねとん〳〵
一飛こし一ほくそ返り一死人がへり
一中返り一かはむき一水車
一一所返り一仕ぬき
せんぼう
一かけとりの事
馬鹿
一おんれうトはかけとりの事
一おんれうトはかけとりの事一はねるトハ馬鹿
一質をおく事
身にしみて
一とゝもりトハ質をおゝ事一しやわん玉トハ身にしては
身にしみて
する事
さしの有事
いひたる事
一さやあてトハさしの有事一でんぼうトハいひ
むかし油虫と
トハ
見物を入て札せんを
一とらのこ
一のん太郎
なで是にする事
見物を土間へ
まゝ事
物をうちすて
ぬすみをする事
一うにや桜
一うちきえ
にしおく事也
ぜにのなき事
一ひつてんトハぜにのなき事一うつよ
一うつ此
ふさゞ事也
又いやな事
一てつてれツヽト
しよせんしようの
ない事
一いたゞき
できのわるき
事也
一あて身トは
物を買て銭を
かりてやる事
茶屋のかくしことは
大だい
ちゝへへ
つれいし
一南部トハ水の事陰物入は油へわる事也
一久松とは物を小買にする事一めくらは砂糖の事
一行徳トハしほの事
一行徳トハしほの事一砂利と
金壱分
一との字トハ金壱歩一里扶持六金壱分五里
一あたまトハ銀二十匁一大ぬけ六拾四文
一小ぬけ七拾弐文
一小ぬけ七拾弐文一大角百卅弐文
一小角百拾六文
此外さま〳〵あり略之
一表大茶屋
堺町十九軒
吹屋町十軒
木挽町七軒
本名岩代町
茶屋十六軒
一楽屋新道
一小茶屋
一水茶屋
堺町十五軒
吹屋丁十七軒
堺町十五軒但し堺丁そは小茶やの分桟敷本古間は
吹屋丁十七軒とる事ならす吹屋丁にてハ桟敷をもとる
八幡丁廿八軒
吹や丁十七軒
土間桟敷とる事不成
一総而年中狂言の模様にて右之外おびたゝしく作法
一有及曽我祭の事相撲の狂言こもそうの狂言助六
〽お七などの狂言には付届けする所あり表方にも此外
極りたる事又懸り〳〵の役儀も有并下り役者
の迎登る役者の名残追善改名元服女願の帽子
かけ寿狂言の定其外役者結金の割合三座にて
式法の違ひ有る事委く記すに暇なけれは猶半を
一洩して後篇に皆さん事を欲すこひねがはくは
けれいし
御見物之好士其不足をゆにし給へといふ
場
三座例遺誌
海
場
戯
職務
全一冊近刻
時々狂言に依て例の違ある事并役者の心得くまどり事
かづらの事立仕うちなどの分は彩色の画図をくはして出す
三座例遺誌前編修
維時享和三癸亥春陽日
板元
江戸日本橋通四丁目
上総屋忠助
同麹町平川町壱丁目
伊勢屋忠右衛門
同本銀町四丁目
尾張屋忠輔