五撰狂歌集

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石川雅望選
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石川雅望選
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ゴセンキョウカシュウ
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東北大学
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狩 十一 文政 花 五撰狂類集 三年 似五撰狂類集花 春の部 下毛板荷 歳中暮としの内に春は来にけり一とせの帳面にさへ露引つゝ南山縣 年のうちにすなる障子の切腹に梅の花さく春はさにけり鷹外橋清澄 立春風ともけざこちになりけりたゝ一夜ぬるまにかはる玉川の水 目薬やふたみかうらの岩間より真珠の珠の玉の春は来にけり花園亭麟馬 春きては余虫ことともにゆるみけり松をたてたる門のしめ縄代々菴照住 鶯に経をよませて題目を門の戸板にはるはきにけり松花堂俊経 下緒サクラ 暦さへなき山家へはうくひすの月日をつとに春はきにけり 勝股池路 とし神のたつねておはれ宿札は門にはりたる立春大吉栗々菴万丸 オク 紫の霞のきぬのうふ着にてをさなき春の立初にけり三友堂兼堂兼益 タカサキ むすひにしよへの氷もたつ春の風にとけゆく白いとの瀧興帖楼東雄 泉ヽサカヒ 元日雪きへてのとけきけさの使者奏者水の流るゝ弁もふるひつ 元日雪きへてのとけきけさの使者奏者水の流るゝ弁もふるひつ柏樹園仲垣 仙フ びとゝものからくりをすか元日にくむ若水はせんまいの音 千柳亭唐石 神代とはいへともけさのとそ酒は小坊主からそのみ初めける 塵外楼 二ノハ山カ こゝろみる梅の文字まてけさ東風のふくさ唐紙に匂ふ書初花魁開枝折 ヒタチエトサキ かけ乞もさつかにけふはとりかねつ龍の腮の玉の春とて・ 緑樹園元有 みちのくのけふより春のしるしとて礼者はせはき庵に布引 おなしく クハナ 散亀甲のいろやかさしの花めきて春のかしらにさく福寿草 養老舎玉丸 下帯もよへ落したるはたか身はことをかきたるけふの初風呂 下帯もよへ落したるはたか身はことをかきたるけふの初風呂燕子楼田刈 あら玉のとしをもかさぬ盃のみつのあしたをいはふとそ酒 尾、 燕子楼由刈 玉亭玉々 蓬莱をかさるはかりかちりも又山になれとやはかぬ元日 浦の名のみつの初のいはひとてよしあしいはぬとその酒もり 二ノミヤ 明来庵亀丸 冨士高岑 獏よりもまきゑなからにはつ夢のふしの根をのむとそのね おなして とそ酒の肴もけさは組手こと四角に物のあら玉の春万松園下風 鶯の経のくとくかかけ是の鬼もさへゆく元日の朝鶴千代子 鷹ならてかはらけをけふ手にすゑていはへる人やとそまの君有明月彦 とその酒くまはやけさの三番叟おさへて見ましよろこひありや竹亭景吉 もろこしの人はしらぬとめてたきはまたくゝりたる門松の下便霞楼久方 一夜あけて光りのとけき玉の春いかさま丸き人心哉哄堂為俊 けふといへは手桶も帯をしめかさり行儀とみへをはかの若水秀種俊 吉例のとそはかりかは餅をさへ二つかさぬていはふ正月洗心平頼法師 大ふくの挽茶の外も家々に立てみとりの色の門松天笑草裏行 新艘も引舟も出ぬ元日はよし原のみか淀川の岸一風流貫也 かくれ家ははゝきをとらぬ元日も床にかけおく雲山の像浅浅梅庵永世 としの浪としの関をもこへぬれはいせの浜弓門の松坂松花堂 鶯にあまりうかれて一つるへ声をこほしくそさの若水 福辺房宿成 元日のせちによはれし雲客にけつけいといふ生酔もあり 悟智窓腹満 盃を手にとるのみにかつちりとおとかはしむるとその酒もり 桃溪園虎住 はゝきをはとらぬあしたも年礼の肴にはさむ紫のちり。 仙ふ 一柳髪亭唐輪 雲おこすたつの春とて車井の綱まきあけて若水をくむ 石川浪清 かんふりのひもたかはせす是も又としの頭にむすふ若水 阿波 豊恵右稲 箒をもつかはていはふ儀式にも五味にひたせるとその杯 筝をもつかはていはふ儀式にも五味にひたせるとその杯俗〻房浮丸 かさりたる串柿の外店〳〵もとをさしなからいはふ初春 かさりたる串柿の外店〳〵もとをさしなからいはふ初春机上亭羽扇 元日や子ともはかりか霜とけて泥もはねつく庭の駒下駄 大景房初風 花いけに袖かさはりて水仙のはかまをもとかとその生酔東色甘商人 トモトチキ 双六のてつちからのむとそ酒はつゝかなき身をいはふ元日桜交年松俊 い氏家 元日は春たつ年の堺杭これよりきたと惣方をそふる糟粕園文車 年礼いかのほり供にもたせて上下の四角な人も来る年礼橘堂彳 鶯のはつ音とともにとそ酒にゑひし礼志の舌もまはらす六果園桂丸 治れる春そめてたき礼はらか腰にもに代をこめし竹みつ高岑 とそ酒をついのみ過て上下のすみかぬちかふ大工年礼文徽屋菊雅丸 衆生をはすくはんためか影迄もしやくしのやうな坊主年れ 老たるもわかかへるとて門なみににき〳〵しやとみゆかねれ 年礼の上下みれはこし板の不二丁ものしめの妻引らし三松平友鶴 青柳の下る枝よりいと長うことはをのふる女年礼松枝住 年玉松たてか門さへくはるとし玉にとひししるじを三輪の杉箸竹房白酒 はつ夢に見たるなすひのなり紺の春袋とてもらふ巾着陶々亭催馬 あかき帯しめておくりしとし玉は姫か子とよふ峯半切白毛金万守 くひつみにのせし沙糖には茎菜の出嶋とみゆる年のたま物半月楼真弓 万歳草よりもさきへもへきの色ふかき素積やはかの大和万才紀晴也哥 はゝきめの浪打よする門口につゝみの音をきかす方才 紀・ワカ山 から人にみせたきものは橘を袖にかくさぬ大和万才花の屋咲足 門松に大夫の職やゆつるらん新端に雨をしのく万才藤花房 ことふきをとなへし跡も吸ものゝかひのはしらをほむる万才 八橋の三河より出て紫の花の花のお江戸へわたる万才小路花巻 旅衣きたる万才も八つはしのくもてにいたる江戸の町筋 いそかしきくれをゆるりと旅寐して春立てまふ三河万才 鶯もけさは月日をよひかねん老せぬ門といはふ万才 仙フ 一千路堂栄 つるかめのよはひを門にみしめ縄千とせの松に万才もくる アハ ワカ山 早春達磨をもつくりし雪かぬくとさにとけて本来空となりにき 一時に風も霞もわか水もまいてもて来し辰年の春 おすわりの餅にしひれやきれぬらん額にわらのはかのしめ縄桜川亭清伎 鶯の笛にはあひに相生の琴をしらふる門の松風一二山人 あたらしきわちに作りて豊なる年といふ字をみするわかさり 鶯の出たる跡も谷の戸にはつねのひらく雪とけの水 才若かかそへぬ庭の霜はしら風まけのする春ののとけさ としの坂こゆれは春にもとり駕よき棒組の梅に鶯松風舎茶店 袖につく梅かゝよりも子ともらか先百ついたまりのうれき〽日馬馬園盛砂 タカサキ 青柳の髪はさなくてうつくしうかざりかけたる門の若松松花堂 クハナ 二神のいます筑波に右ひたりこれもなみたつ春の門松一円窓文字丸 をさまりし御代の春とやものゝふもそなへは神へかさるのみにて積業 あかゝりは口のとちぬる頃に又口をあけたる庵の北岩素花園天馬 つくり身のことうねたちし畑中に大根おろしや春の雪解山積園飯時 神代のさまか春くるやとの親王にほんきみゆる門の立松 須弥山の夢にもまさるうれしさはけさ手にすゑし扇画の不二針業右大尽 四方の御しつけき御代は肩衣の肩もて枝をならす門松鹿〻亭其 鹿々亭其美 早春山鶯はなくになとてか春くれは八幡の山のはと笑ふらん 春里 余念なく笑ふ山〳〵此ころはたらすよたれや雪の下水 松代 一鎗亭鳴海 ゑくほほと雪かきゆれはよろこひの春を笑へるふしの山姫文風金夏粥 アは なそよりもかけたる雪のとけぬれは一度に笑ふ春の山〳〵 月の中丸 サアヒ 早春川山〳〵のわらひにつれてたまりえす雪もよくれを流す谷川一福 一福舎南草 宝船たから舟うるにもやはり歌のこと上から下へゆきつもとりつ とし波をこへてけさうるたから舟是らや春をつみてきつらん 宝舟枕の下にしきそめてよき夢みんどこく床の御 現金の右から左両となりかしにはつけぬ宝舟うり 双紙亭此主 六玉園殿守 伊勢小詠 宝市亭升成 初夢敷寐せし宝舟にや水わおほきふくの山へものほる初藤六光園秀丸 よへみしは〳〵とて咄さぬははなすにをしき鷹の初夢井筒吉人 模も又あまりあきれてくひかねんさて大さうなふしの初夢池塘庵是後 たから舟敷てねし夜もあけてけさ人にはなきぬ鷹の初夢虎住 鶯の看経に目やさめにけん鴫やき茄子の功ゆめの朝一琴方千本 うれしさはにきりこふしの手枕に鷹すゑたりとみたる初夢六帖園雅雄 初春節分に鬼を拂うて又海老の角を大事にかさるはつ春八陣本堅城 松竹にえひや昆布の門かさり海とやまとの間の初春三樹園広記 子日はつねとはつゝみに縁のはしかゝり二人静に小松ひくみゆ 弓形にこしをかゝめて握る手のやになる迄も小松をそひく仙窟堂高丸 行末はかくのことしと長いきのこしをかゝめて小松をそひく緑々山人 子の日せし小松にかへて御車を牛もひくなり千代のためしに朝毎興急 十五 模をとく 桑名 一雲舎 行業 夜着の裾野へ おひ出さん 初夢に見し 富士の 牧狩 千番 はつ子の日こふある松は宮人のはち合せして引やしつはんじ 松代 古葉三年 伝〻イナリ山 子日野や女の髪の外に迄すへらかしたる宮人のあし 蘭渓亭泉 松まきもやすきねの日のことふきを車につみてつれもひかはや 風をさへ琴と聞なす宮人のはつねにめてゝ小松をそひく豊年比津比津知 みや人も歌の力を出しつく子の日する野の松や引らん枝住 次めこそかよわくみゆれ夫人は歌の力に小松ひくらん駅路鈴成 松井田 若餅門へくる万才に先参らせんきぬもつゝみの音の若雁蝶々年仲住 山カタ 霞たてはたちたゝねはたゝてまねをする霞は春のかけはうしかも六枝園連樹 四方山を露みかくせはかくすほと春のけしきはあらはあらは花月因雪道 帯かともみゆる雲水をさほ姫のしめにかゝれる元日のそち松俊 せんたくのほしさほ姫の物そとて四方に霞の衣かゝなり長左 羊にもなる仙人のくひものかよしの紙ほとたつ薄霞の字楼丸澄 青柳の髪ゆら〳〵と此にのかすみにこもる春の北山春の屋成丈 さほひめの手品にすきし去妻の袋にぬうてつゝむふし山泉元清 佐保ひめの守れる春の山口はかすみの袖やあて笑はん志好 青柳のかみのかさりやかうかいをさしたるやうに霞たなひく一二山人 鶯をとり逃さしと野に山に霞のあみをはるのさほど 春あそひ目のない千鳥させてけりまつたなひくあはちとま山五十軒古琴 ワウ山 いさなとりくまのゝうらの功霞海よりくかへかけてひくなり千代の屋枝足 松代 こそたてし印の棹の上に又たてる霞をみこしちの春 イナリ山 としたまの角のやうなふしか峯水引ほとに霞かゝれり柏亭茂 西行の心になりてけきみれはふしも露の衣きにけり仙遊楼若女 さほひめと女子同士のさくや姫ひいきふんにやこく霞むふし俵楼旧米 八丈の嶋をかすみのつゝみしはさほひめさまへおくるとし玉 くる春を定へ規となしてはつ霞よこに一筋立わくるなり双紙亭 たちぬひの妻の花せはしとも門の松葉の針とかめすな匣々甘和樽 ゆく舟の跡からも又夕露引つゝいたる春の淀川張花堂富久留満 クハナ 一応をひきし霞の書初もならひはしめの難波津の春 うつかりとたてるやいつこ〳〵とてよしのゝ山のかすみ見てゐる 一木次東亭可志丸 オクホハラ 春のきし印はみわの山つきいとくりかへしひく霞哉 一紙燭羽風 仙フ けふの里霞の布は賤か屋のむねにもあまるはゝをみせけり 千柳亭 めさましの火のいきのかゝりては枕の山もかすみそめけり柳絃亭唐草 初霞帯も羽おりも衣手も春を定規にたつや山姫遊水楼川舟 春なれや舟の外にもけさは又かすみも引し淀川のきし桃栗園成俊 たちそめし霞のきぬに門松の針仕事してぬふやさほ姫花月房蔭芳蔭芳 春霞淀の川瀬の柳こしにほつそりたてる次めうつくし竹友亭中吉 鶯 よしの山やよひの花の縄はりやけさ引そむる秀一筋豊年金木秋 から横のつなかとはかり初霞ひくや若菜の半と向の山一樹園久澄 山も海も霞の色にあへぬらん紫のちり此子の御苔六帖閣 月日星三光院の御説とてたふとしときく鶯の歌西来居未仏 鶯の声きゝに来て口とりの氷砂糖もくたく客人聴風肝草浪 花笠は梅にもたせて清水のふたいをとんてきなく学梅樹閑魁 真丸になかせて見たし鶯の片言にいふ声の目日を蘭薫亭亭 氷とく鶯のねに聞とれて朝茶も水にかへしぬる哉深哥堂真砂雄 鶯もうたひそめすか番組の軒端の梅にきなく声〳〵蔵器園長人 さを鹿も得道してや彼岸ころ角をりてきく鶯の経泉音澄 春宵のあるひのはしか鶯の一こゑたにも一部八巻柳春風 春なれや花笠着たる鶯の歌行脚くる梅かかくれ家香折 のし包折しり顔に歌人へはつね進上申すうくひす 扇の袖ふる巣を出てうめかへに今やう〳〵と来なく鶯松なしく 暦なき口こも春をやしりぬらん鶯かなく山の中段中住 長房のすゝにつくれる梅にきて最第一の経をよむ鳥仲垣 友とせし白在の竹に来やとりて小鍋たてとや鶯のなく遷喬亭水解 うめかゝととも〳〵こゑの匂ひ鳥袖へもとめて聞たくそ思ふ双六斎乞女 鶯の経よむこゑに角とみし軒のつらるもいつかおちけり一睡草夢成 くすりよりきくうれしさは医者によふ藪よそなける学の打枝兄 寂珠となる梅の梢を宿として玉をつらぬく鶯のこゑ殿守 朝な夕なかきの本なる鶯を哥のひしりとほめてきくなり春水楼音高 はつ声は下和か玉か鶯のゑにはむ蜘のあしもこそされ狸空寐 若菓つみ若水をくむ松の戸に春をしらする鶯の経阿房 日をおうてほそねもふとくに松葉の畑にすむてふ鶯の声二雀房竹人 梅かゝも酒にひたしてとそ袋ぬふてふ鳥や花の笠あて阨々辛 すり鉢をかふせし梅のつんきりにこそ一もしの鶯の哥桃桃園売女 経の徳たるひも刀刃段々壊たん〳〵枝になるゝ鶯跌堂 くれ竹のはやしにのりてさへつるはふし雨白き鶯の哥風治楼花守 うくひすの玉をみかける一こゑに氷のかとも丸くなりけん塵外楼 鶯のはつねをきゝにもろ人の耳をならふる千金の春丸二辛三友 千金にかへんとすれはうくひすのたん〳〵にねをはかの一刻樵雲辛猿成 めにのみか耳にもしるくさく梅の笠のうちなる鴬の声旭陽園千霞 のとかなる春にあふむも鶯のはつねをまねる声の妙〳〵催馬 春といへはうめかへよりも三の人の耳にとまれる学のこゑ琴風金松戸日 けさ春の序品第一わか耳へ妙に聞ゆる鶯のこゑ筑波庵此者陰 一ともに経をよみて回向をしもふさや梅若寺の鶯の声種俊 鶯はよむ法花経と中もよくあみたにかふる梅の花笠水草跡成 十種香の客をはつして思はすも初音をきゝし軒の鶯法昌房谷住 おほへとも音やはかくるゝうくひすの梅の花笠青様のみの橘樹園早苗 髪ゆはぬ里へも春をつけのくし梅花油の匂ひ鳥なく万葉耳言数 鶯は竹にそたちしくせつきてまたさゝなきのぬけぬ初声半枝楼梅梅梅梅秀 一くたり文のしをりは梅かへにかへり恋をはみする鶯の錦為継 うめかへにむすひし哥そ青によしならはぬ経をよめ鶯甘棠金安丸 年始寄もてなす酒の縁さきに跡を引たる学のこゑ娯歌楼犬馬 うくひすの経よむ内は耳に意字なるやかへん百日法花双紙牛 耳の垢とりし琴柱のかんたしになく鶯のしうへきかまし腹満 うめの花笠にぬふてふ鶯は糸ある蜘をまつたつぬけり琴樹園二弁 鶯のひとくと告しその日より。まはり道する諏訪の里人積々同行竹 里遠み深山かくれの鶯もはるは軒端の谷わたりろ平沙園長浜 ほうといふその息にしも鶯は月の鏡をくもらせやせし歌柳亭直正 春ふかくなるてふ庭の鴬はいかにも丸う人なれし声山水亭喜好 子の日せし後にも長くねをひいて松の木の間に鶯そなく一鳳鳳并八桐 けさ春のたちから雄とて谷の戸をひらいて出る鶯の声孔雀玉光 うくひすのなくねのふとく聞ゆれは雪消の山のやもそみへぬる比津知 まつ人の心もしらて鶯はあたらはつねを筈におとろ中吉 小式期のむかしもかくやうゝろさまにふしかへりきく鶯の経六々園抜足 辺の面のなり平竹になれも又哥よみ顔てきなく尊一曲亭奇雄 劔ならてあたる初日に氷をもくたく破軍のほしうたふ鳥 そろはんのたまの春とて鶯のこゑも二つにわるゝ山彦室有金槌丸 梅見茶屋古香前火はきかすとも竹より出る声匂ひ鳥升成 若菜浅沢の水におひぬる若菓こそつまぬさきかち葉はひたし物哥海亭住安 こゝの沢かしこの沢と賤の女の口さわかしくわかなつみつゝ楠香 ちはやふる神主も出てつみはやすかくらか思のすゝなすゝろ きへのこる雪間のわかなつみに出し人もむら〳〵みゆる春日野音高 八日市 消のこる雪の中なるわかなこそ七くさかゆのさまとみゆらし百草廣道 三ヽヲカサキ 鬼のすむ噂なからもつむ若葉こはくはあらしあたちのゝ原六綾園三重丸 梓弓ひくまの野へののとけさに片はたぬきて初わかなつむ刀佐解雄 けふもわかなあすもわかなと春の日は夏みつめるひわりこのいひ連樹 人日はやおきよ唐土の鳥はしらねともくひなとたゝく七くさの粥月桂舎宜風 粥杖とあちらかちうにまな板の柳をたゝくけさの七き此君亭直道 とし月のめくりも早くくる春に車なりせし葬をそひく都幾女 ましめにてはやす若草のそはからも拍子にのつてたてあた口鳴海 ちはやふる神の御国は七くさにすゝなすゝころつみはやしけり射柳開軒風 あたゝかに化る陽気か七くさをはやせはをとる杓子すりこき香取絹広 芹なつな七つ道具をとりにとてけふ野に出るこたつ弁慶假堂以瓢 京 せんたんの二葉の薬粥こけつきて釜の中さへかうはしき哉菊の屋真恵春 浅春庄日改 春雪かつきゆる柳の枝もまはらにてまゆ玉みする春の白雪浅桑園安良 わた帽子きせたるこその姉よりも早くかたつく春のこ雪瀧水辛強気 尤見にと思ふさかりに時しらぬ人のき色もをるゝあわ香画工斎揚月 風にとふこてふのさまにみへなからなにもとまらぬ春の沫雪浮木幸亀義 粥杖にたゝき落すもおからさよ戸尻につもる春のあわせ千本 つく〳〵し筆のほさきとみるからにかきけすやうなのへの泡雪紀早丸 残雪ふみちらすこかねか原はとひ〳〵にあし毛馬ほとのこか白雪長丸 ワカ山 くるふてふけしきもなくて白犬のふしたるさまにのこか妹雪 山々の笑うにはちて谷かけにかくれてのこみその白ゆき石黒素人 つき山のこかけにすこし皃ほととくさの中にのこる白雪枝折 春風に霞の衣ぬけはまた山の下着は雪のしろむく純位亭美任 さほ姫の化粧か雪のおしろいは手のひらほとの庭にのこれり文数金星丸 鶯のなける涙にほとひけんかれいひに似しむらきへの番 余寒節分の柊はかりか春さむみつらゝの計ものこる軒口秀丸 四蒔絵にも此まゝうつせ金銀のふんと匂へる花の梅かえ山積園 つくしまてとひしはおろか琉球の畳もかほる梅守か宿千柳亭 鹿射香ほと匂へはへそのあたり迄ゆからく思ふ梅守か妻六々園 横顔に春きしかたを見て笑ふ南の枝の梅の初花千戯堂方々成 おのか餌の蜘のす似せて鶯のいとなくぬへかうめの花笠藤の屋長総 春風にかけひの氷とけそめて匂ひを里へ流す梅かゝ高丸 富貴にもかへぬかほりとかく鼻も二つへつひの梅守か宿泥田坊太記 さきみちし本の専めてゝ弁当の梅干をさへひらく木の本五足弁后住 鴬の羽箒に又はきよせよ隣へこほす氷のうめかゝ 尾 ものゝふによくもたとへし梅の花たち枝もあれやうの名ゆり楚山亭玉駄 吹風に向うとなりへかほらせて義理をはたらく軒の梅かへ 玉々 うめかゝのかほらさりせは宿あけて餅ひく鼠いれたるましを 伽羅の下駄はたしにならんのとけきやむつきに匂ふ梅日和にはおなしく 香の通ふ破れ障子はつくろはし梅さかりなる時よりの母駄山人 す風に香はちらしても本は木にのこんの雪とまかふ梅かへ緑み山人 くらまきれ行あたりたる袖垣に鼻をもかるゝ辺のうめから林下穴住 風の手に量もつきぬくやり梅の鑓印かもさくるたんさく六斎用益久 落たるをひろはぬ御代の春に又袂へはひる風のうめかゝ六蔵楼蓑丸 松代 善の戸も錠のあるにや鶯のかきつけてくるへの梅かく玉屑園道間 袖垣にゆかしき伽羅の匂ひ鳥とくよりはなにとまる梅かゝ桂樹園満呂人 うめの尤折てる人もなしとてやきにもいたみのあらぬ山住 一町もとほくて近く梅かほる杣かとなりもつゝらをり道浅桑園 是も又にくや風見の葛のみあちらむいたる軒の梅かく楞楽堂寺盛 チゾ 鉢うゑのあるしの眉も此末の戸も風かもてきてひらく梅かく日蔭遅咲 きのふから春はきた野へかけまくも門はたがはて梅にお百度おなしく 下枝て香をかきさきの頭巾さへぬくとき春の日あたりの梅 をりとりて人にかくせはあやにくに袖口からそもらす梅から春眠亭権成 川又 よみましたとて下かきのすきかへしそれさへ匂ふ梅守か歌井筒孝光薩 二本マツ 舟なりに枝をつくれは咲おくる風になかれて匂ふうめかく森錦亭安豫 桜松してわきにして鉢の木の世にやいてその時よりの梅鐘女 はさみもてはさみきりてん一枝は花のかにめくよこはひの梅柴蔭 銭重をいるゝさいふの梅も又神の御とくに足なくて飛ふ垣の屋由都留 花の香をよそへなやりそつ梅のわかあめらやをつき通すとも一風流 人〳〵と梅の花見に日くらしてかへりにも又ほしをいたらく柳糸成 春風の力に雪をかたつけてそれからはこふ庭の梅かゝ歌林堂糸道 一枝ををりてもらへはうれしけにいたゝいてゆく梅の花笠松平山住 鶯のほそきはつねの糸引てひらかはかゝれうめの花かさ腹満 たつ語事も思安に顔ぜり長居してをられぬ水に匂ふ梅かく便々台潮静 クハナ となり同士かた立にめつる花も音も枝ふりもよい中坂の梅舞雀亭松川 尊にるすをたのみて夜あるきは枝にかへらぬ風のうめかゝ琴松金綾金綾重 うれしさをつゝむにはよき万才の大きな袖にとむる梅かゝ 梅龍園辰丸 かほりにはつのだまれはや思事もすかりてそなく庭の梅かへ 鶯かねをつけつらん大原女か黒木にそへし梅の折枝唐輪 旅人も足とゝむれはわらんちのひもとく梅の匂ふへさき福寿窓魚 そめかゝの袖にあまれるうれしきをふろしき出してつゝまれもせし川舟 吹ちらす花のゆふへはにくけれと梅かかはゆき雁の朝風おなしく 鶯のきなくしるしかたんさくに鳥の跡ある庭のうめかへ六々岡 羅浮山の夢はともあれ梅かへに月の美人はよなくそみるおなしく 枝ふりを直すはかりか望人をとらへてつみをつくる梅守千竹并鶯前 たきさしの火ともす梅のかほりをも伽らかと思ふ蜑かやの軒ゝ本名岩猿 一枝もをる事ならぬ禁制を風かやふりてもらす梅かく生得大酒 岩の戸のそのふく穴もほしとみん梅かゝきぬる宿の曙時雨房濡丸 龍の筆いきほひみゆるうめかくは風をおこしてそらにのほなり真恵美 よそにさく鳥の吹こして春の宿墨絵の梅も匂ふ此ころ源吾楼鮒人 凧 けさ春のきたとはいへと梅かへのみなみかつてにひらく初尤槌丸 いたつらにたをりてもしもたゝかれなわり竹垣をこゆる梅かへ情厚丸 吹すさむ風や引けんきれ凧のうなりの音さへ花にかゝれる猿成 鳶凧を天にいるほと引あけてふち辺にをとるあまか子ともら殿守 落やせんあかりやせんといたいけな子にためさるゝ獅子の大佩寿園永雄 絵てさへも春はいさむかあけつけて尻尾をふりしにらか馬凧万丸 くもの子のちる女むれて尻ならぬ臍から糸を出すあけ凧浮丸 きれ行をあれとめてよとなく和子に風かいとまをこふ奴凧泉源楼寿女 楢の恋よく飯ははますともあれわらへらに棒くはさるゝ春の丞猟泥田坊 六条の町の小屋ねを丞横のしのひありきもさわかしき声橘薫 忍ひ出て煎するころや眉根かきはなひ細とく宿のかひ菴荘蝶園中雄 司馬相加ならねと琴もかきならしつまをいとめる妹かかひ猫龍の屋弘器 藪入匂はすかつとの梅本もなつかしく箒鶯の宿下りの妹有武 宿いまにつの髪むすふ児若衆閻磨まうてや春のさい日綾重 若給ひすくる客のわらひ上戸も足たゝぬ神まつる日の廿日正月松梅亭商人 柳わか庭にうつしうゑんと一株をたまにもぬける春の柳が元有 つれ〳〵のゆこはともあれ春雨にのひてめをもつ岩の青柳蓑丸 若草のもゆるかと茶屋の土かまとけふりたな引春の青梅成俊 髪かたちとはいふめれとみたれてもにくうはあらぬ風の青柳濡丸 梅もまた咲そろはねはことわりや善云しかある青柳のいと詞玉礬 かたよりに流れよりては川の瀬の枕くせつく青柳の髪長銘 眉白くこしかゝまりしたふときは老さらほひし犬柳哉元有 賤の女は眉かたちたにつくらぬを垣根の柊春めかしたり長人 ひやゝかな氷はとけて行水の藍より青ききしの青柳詩高苅安 花さかは錦おらんと青柳のいとくりたむる春の此ころ東境道雅様 たち初る春の霞のたなおろしのひてうれしき青様の髪花栖亭真芳 鶯のこゑはなくとも猫梅めに時をしる春の山さと浦見る女 したれたる柳の下にみる時はやはりうらみか滝の白いと文車 サカニ 粥杖にをられぬ枝も子をはらむつめの尻をたゝく青桜手繰頼房 ふところも暖うなる春の風にふり廻しよき青柳の枝葛草亭正木 縄のれん分て出たる門辺にもやつはりたれし青柳の枝亀丸 松代 鶯の歌に感する涙ほと格のめよりおつるしらつゆ 一拾翠園時風 みわの杉ならぬといとを引かけし柳も春の印とやみん拝堂馬刈 風の手にもみおこされていとほそきめをひらきけり鷹の青様筑地島人 真直な計のためしのあれはとてつりするさまや川の青桜桜桜扇亭琴吹 ぬひかけて妹か障子にさす針にいと引かくる風の青柳浅桑開 去年つくる雪の達磨はとくきへてのこかほつすや庭の青様今草庵朝風 蛇皮線のいとにもよけんうるま女うとくろまくさま青様の髪藻辛花正住 風の手をはるかうかゝふ青柳のいと様にこそ君か千代みめ六蔵亭宝馬 オク郡山 白妙の雪の餅花さくころは犬ころ柳枝もくるへり六五関京住 硝子の青める池に女ともみへてさかさの柊うつくし跡成 文まなふ窓になひきし青柳も縄によれつゝむすふ春風吾壮軒折折安 春雨にみとりの髪をけつらせて梅花匂はす隅田の青梅野辺青記 万才に腹筋よれは青柳はせすちをなてゝねかす火の子富久留満 やうしにもなれる梅へ春風のこまかにうたすさしのさゝ浪早記 万才のくるころ風に舞立てつみをうてるきしの青桜山積園 紙袋きせねときしの猫柳風にも枝の跡しさりするおなしく かゆ杖にきり出さんとてよちのほるをのこのこしをたゝく青梅頂月堂市住 としの関きのふこへきしさほ姫のときてそみするするまの髪千柳亭 五日めの風になひける青柳を十日の雨と云るもめてたし柳新林千條 いかり綱とはならねともきしの舟しはしつなけるまは桜の髪柏葉光吉 一花もなく香もなき物とわれと我ひけしてきかる青様のいと六々園 春風に雪のあかりを吹けせはあとにけふりてみゆる青梅おなしく 類をもてあつまる物かきれ凧のいとのかゝれる青柳の糸友久平琴子 山のこし廻る霞の帯のはしふさにさかれり青柳のいと春里 さく花を坊主になせる風の手てむすふはをかし青梅のかみ浮丸 かんさしのさしこみめきてさほ姫の柳のかみにとまりたる蝶濡丸 青柳のめもとさとりて此ゆふへ霞の袖をひきしさほひめ友寉 三ヽヲカサキ 花の王もならひて春は錦さへきる宿瘤かこふ柳かも六艘園伴刻 賭弓春くれは此にかすむ旨帝はりて一筋ひけるけさのたり弓霞楼閣頼芳 初午油桶を鳶にとられぬ。やうにとや霞の縄をひくいなり山唐琴 トチキ 大鼓にもゑかく巴のみめくりにとんとゝ人の参る初午花成 絵馬や額うてか大鼓の音につれてきものほりたつ初午祭景山辛ぬか子 いなり山供御にもて行魚に色をりてかさせる杉のもふ柴花咲唐米守 午まつり初雷ときく宵にへそをかゝゆる地口行灯万守 そなへたる強飯のみかはつ午の笛や大鼓にふかす夜かくら絹腐 はつ牛のいなり詣のかへかさにつまゝれにけりのへの若草蜃気楼近郊 二日灸いとせめてくるしき時ものうしろ衣かへしてきか二日灸荘蝶園 なみこへてやまひけのなき家たにも二日灸をはすゑの松山亀丸 行灯に火ともす梅のつほみほとめくみて赤くみゆる初灸文齢舎蔵丸 春人事軒にたつおことをさめは青柳のけふりしるしとみゆる竿竹橘葉園蔭住 涅槃会いける物はものしをとてや雪上さにけものゝ炭も出るねはん者右大尽 生る物の外にもそふのねはんゑは子にいしられて銭そなくなる種丸 西行君西行にたむけの音もそのまゝにけふる様にかほる梅かへ幡馬 西行の忌日とはんとわか宿のなすゐに柿を置て出けり文齢舎 西行へ手向にをらん坊主ともなれ道のへの青梅の髪東雄 若草阮藉かむかしもかくや春くれはめの青くなかのへのわか草裏行 文学ふ窓にねふけをさませとやきりのさきほと出る若草亀丸 早蕨鶯の谷の戸出しるすゐにや首長くしておふるさわよひ蓑丸 彼岸灸すうか頃ともおび出て山のせなかにもゆかさわらひ 松代 足音のなき春雨にめくまれて手はかり出すのへのわらひ 春雨の足にふまれてくちをしとにきかこふしやのへの早嶺 さいらひのにきりて出す手のうちをひらかぬさきもあてるすれ 賢人のうゑしもむへか初わらひ飯のさいにはならぬたしなき狂蝶子文丸 いく日ありて若葉つまんととふひ野に指をかるともみゆる早蕨全亭正直 つみとるも雨故丈の二三寸手のひになりしのへのさいらひ蝶運并津吉 のかけ道歌案すれはあちうにも首をまけつゝ出るさわらひ物事早秋 山このあまり笑へはをかしとて横手もうつや風のさわかひ柳糸頼 関取のにきりそふしに似れはとてやはりちからも出るさいらひ哥雄 鶯に谷の戸早くあけよとや鍵を出せる峯のさわらひ春里 つもりなは山にならんと春ことに人のつみとる此子のちり同花卯時 野遊秋風にさわくのもむへ野遊ひの股をこそくる夜の下ももへ便々甚 馬の加屁をもひらましおのかまゝ道草くひてあそふ春のゝ頼房 焼飯の弁当箱を枕にて夢さへむすふ春の野あそひ正住 つまはやなふきのしうとめ母子草娵菜も命のひか野遊波上亭走 子の日する小松より先野遊に出さる人の耳をひかはや素星因 ぬり桶の真綿のことき春の中よめ菓と母子かきわけてつむ玄向楼調雄 サクラ のとけさになかむるのへの菓の花はこかぬの色巾千金の春成俊 春駒秋くれはくもゐにのほる鳥飼のみまきにいはふひはり毛の駒長人 風さそふ柊にむちをあてうれてかけ出したるのへの春駒仲垣 賤か屋をはなれし春のあら駒も又つなかるゝのへの若草六児園 上京京 巾着のこかねか原のわか駒にまゝりてあさる連残あし毛家小友丸 吉信改 春曙鶯と梅に耳鼻せられて朝寝もならぬ春の春の曙豊秋園稲吉 松代 あたらしき霞のさぬや若水をきよしとめつる春の曙夢の門真倉 庭の梅豊後といふに三絵の糸霞ひく春のあけほの梅の屋荒 春月雨乞の小町さくらのうしろからかささしかくる春の夜の月秋雨亭笠人 青様かさけ髪すれはそらに五初眉つくる春の三日月夏初 鼠より所元顔に朧夜の月も霞の棚に出にけり六極国南北 オクホハフ ましなひの哥や忘れてねふけなるあかしの浦の春の夜の月月泉房喜代住 盗人のたつたの山の春の夜ははたかにしたき月のかつか男菩提樹蔭住 春雨あくひをはうつして花に唇をひらかせたしな春雨の庭駄山人 豆いりて欠の口はあしらへとついころかりぬはるさめの宿記長丸 夕カサキ 木々のみかつれ〳〵わふる成六のさいもこひめを出す春ゐ茂葉 桶の輪のゆるみもいつかみるもなくおのれとしめる春雨の宿桜琴堂堂音新 春雨のふりの客にも深川はかしてひらかす梅本の傘真芳 暦にも名によふ花にふるさまはこまかいものゝおやにそありける毛頼堂軸成 ついまつに男もまゝる春雨に台所ても豆いりをしつ頼房 長居する客の草履によもきてふもくさももゆる宿の春ゐ一木金季心 門あそひせてなく子よりわか腹をすかしかぬたる春雨の宿草浪 野あそひにけふ出なんと思ひしに口又つなるゝ春雨のいと夜半寐足 軍学の書もよみあきてかひ餅のそなへもくつす春雨の宿通路亭曲成 春の雨格のいとによりませてふとりのみゆる氷の玉水 はつれたかくゝり枕の口とけてひらきし花をみする春雨光蔭 粥杖にすなる柳をつたひつゝ雨戸のこしをたゝく春まぬか子 かひ横ばひさにねかせと春雨にとなりの軒へつたふ玉水橘樹園 極ほそき去年の仕込の寒さらし粉となりて飛ふ空のすま 草や木のちすちにわけてしつけきはうむ桜麻の糸の春ゐ為継 行灯の日和像にかきくもりからかさ灸に春雨そふる臥竜園 めくまるゝ草木の外に行灯へ髪ももへ出る春雨の宿の宿橘守郡 凧あくる日和はなくて糸さへもこくらかりたる風の春雨直直正 タカサキ 針ほとに出る草のめへ糸水の地の底まても通す春而対人 ふりつて此退屈に船若凧大あくひする春雨の宿長人 鐘迄もしめる声して風鈴の音なくふれるよるの春雨后住 やくそくの花見はやみてぬかり道芝居ところふけさの春ま両升成 さほひめのいとふ涙はつきぬ哉花にしつくのたるゝ春雨浪々海孫月 人はみな足袋ぬくころにいかなれは霞につゝむすたの足山積園 ふる日さへ花にうかなし出あかきに女房の釘のきかぬぬがた万宇 彼岸六あまた道からぬけてよし原のかの岸へとてつなくやねに台外楼 炉をふさく頃穴を出るくちなはし釜敷のかわにもなからし亀丸 帰鳥秋こんと春のなかはに夏の季をとんてこしちへかへる雁かね正木 かへる雁馬の額に引かへてこれは男鹿の角おつるとき荘味園 麦くふをしかりし雁もわかれにはわりなく思ふ春の山里桜露堂玉成 逃水にうゝろを見せて行雁をきたなしといはんかへりくるかに松花堂 料理にも貴人高位のめつるとてつち高かしてかへる雁かぬ卯時 やれなくななくなよなくな故郷へそれほと無事てかへる雁かね葉満の屋数成 草のことつらなりわたる雁かぬのやはりこしちをまはりてそゆく 三日目を爪判としてゆく雁は花を見すてしあやまり証文花下庵二本法師 千金の春の日数をつみてよむ雁の文字さへ一日の学隈川網代木 よしの山ふりむきもせすかへるのはいつくの里の桜かりかぬ千律庵 こたつをもふさく頃とてひの本を遠さかりゆく春の雁の雁の わをかけて待しひはりも手もちなや破りてかへる雁かぬの竿東田舎堂樹 上京目 出代りにはやほと近く証文の文字ともみへてかへる雁かぬ又一盃河丸 松風のさそふ琴柱のいときれてはら〳〵にゆく春の雁かね桃樹園冬住 雲雀駒の毛のゆかりあれはか雲の上に書を立引ゆくすの野ひはり枝折 落雲雀かゝる霞のあみた仏たすけ給へとねにやなくらん浅藪 凧よりもたかくひはりは上るなりのはせやのへの青柳のいと栢樹園常人 鬼ゆりもはやつのくみしあたちのくひはりの床は一つ屋の外花豊 タカサキ 春の野や駒の毛色のひはりさへそらにわのりをしてのほからし調雄 糸桜ほくれては妹か手にちるいとさくら今とくとみか下紐の関美左古 花 山里はなへてかひこの糸さくら花のさかりそ庭にひろかる多留家内喜 をたまきのみわの山路のいとさくらさかりそ人をたくりよせぬる詞雄 峯にさて有明さくら見てあれはよしのゝりにふらぬ白香米守 をる人もをらるゝ枝もおなし名にたつたの山の花の白波東雄 いりあひのかねはひゝけとかへる翁はつかすにめつる花の下ふし正木 いさゝちは目のすわる迄酒くみていく千本にもみよしのゝ尤一二山人 酒さへもちるとはけふのいみ詞ひらけとそよふ花見弁当下風 扇もてちちしゝ枝に一念のほつきりをれし熊谷桜栄薫亭 花の色にほれたしるしにきりもせんさわらひの指まか様の髪橘樹園 江ヽシカラキ わか国の山さくらにはから国の君子の徳の風はいとへり花鳥の屋乗康 さくら狩酒の肴に下戸上戸つとひてはなの下をさわかす倉積 尤の間馬にはの多し道しりて家にかへらん事のうけれは六つ 庭守かめしくふひまに一枝をまんまとうはふ花の聖人竜の屋 つきものゝうるしの木にはましはれと世にはなれたるみよしのゝ花池路 提重の鯛のさくらもさかりにて春のまなことみよしのゝ花化鉄并刀子 いたつらにをられもせしな児桜岩間をのそく影はあふなし正住 さほひめの匂ひ袋も春風にけふとけ初る花の下紐咄菊成 真さかりをあふいてほこる花守かおとかひ掻る風のたんさく泥田坊 しはられぬさきに一枝次里人かうしろ手みせて逃る尤因おなしく 神風も心しあらはいせさくら花のさかりはいさなきにせよ見る女 尤見には酒のみそよき下戸つれの肴あらしもいとひこそすれ また外にあそひはあるそ児さくらかならすのかな風の手車車玉杉君 春の夜の目には物を思はすや笑ひ顔なる西行きくら連樹 出茶屋には花見団子の串のみか心をけつる春の山風長総 花の枝次わ人の外みな来ませあけはなしなかわか家桜二本法師 枝こはく像つんほといらへなん耳は不用な花のまさより伴刻 風をいとふ花の王とてすき間なくなかむる人のたちし肉屏六友園増盛 花の下鯉の料理に風袋やふれく音も耳にさはりつ一円窓 天をとめ今もくたるとみよしのゝ花の雲間にかすむたをやめ永雄 さく花も笑やこほさんのろしほとけふりをたつる春の山峯や玉老 餅のみか花のころにもまた人の心をくはるみよしのゝ山秀丸 山守かひる寝のたまや化しぬらん花盗人をおうてゆく蝶船則 斧つかふわきもやすめる杣か家に花見の客の引きりもなし藍亭麗丸 江ヽシカラキ 物いはぬから桃よりもことたまのさきはふ国の山桜花 を 山守の目をぬすみたる一枝はさくらに哥の出来心なり松なしく おとろきて花の梢をなかむれはちるといひしは盃の酒おなしく 大原女かもちしたきゝに折そへてさくらの花の雪のふり売松なしく 見る人の心の駒はつなくともちらしてくれな山さくら花おなしく さわらひの手を出すのはにくからす指もさゝせぬ尤の木かけにおなしく をしと思ふ心を蜘は糸にしてちりぬる花をつなきとむるかおなしく ぬる蝶のかへをやふりて一枝をぬすみとりゆく花の盗人松なしく 犬さくら手をりし花の盗人をかみつくやうにしかる山寺菊児堂笑丸 さゝかにのいとをはらひて水茶屋はすをかけてまつ花の下かけ燕子楼 山寺の花にくらして人相の橦木につけし道を下りつ 世に光る金のみたけのさくら花見れは心のうこく一枝桜花亭金丸 のせて来し旦那より先駕かきのさけとねかふは志賀の初花干霞 雁かねはかへれと花のたんさくの砂子にみゆる鳥のあしあとおなしく 山王のさくらに凧を引かけて子らか心のさるものほれり雪道 くまかへのさくらにわかれをしみてはわれもうしろへむく駒のかへ六々周 うかやてふ神代はいかに今も風のふきあへぬ間をめつるさくら木右稲 五百世はともあれ尤に酒くみてなきをそめつるけふの風の手春里 将門か紋とて今もさく花の王にゆるさぬつなき馬哉おなしく 風をいたみちりしく時に笠をしもかつくや花の間見灯篭天狗右扇 さく花の浪間につけしたんさくにせんとう哥迄みよしの山胸本談 ちらさしと夜も称す守るいせさくら枕詞の神風もいむ卯時 いかにせんたをらは本もちらうかとおのかとふしをにきる木のもと濡丸 花を見て腹のへるのはわすれても心のつきしいりあひのかね文鶴金 花さより木かけにゐては袖乞もつくなと思ふ入相のかね真恵美 すまひとり花の一枝折入てのそむにも耳をつふす唐守幸 とらへたる花次里人は足白くても面白したんさくの歌有武 雁かねは見すてゝゆけとさく花の枝につらなるたんさくのもし向水丸 八重垣のなかれの歌もうかふらん花の雲たつみよしの山晴雲金月丸 晴天の花にうかれてあふむけはともにそりたる林に制の札五井軒聞丸 ちる花の雪とつもれる盃へ友かつけこむ足はいとは〳〵右馬堂盃止 のわきより気もさわくなりちりしほと花の雲間にあき風窓緑〻山人 たのしさは天へものほるこゝちしてよしのゝ花の里をわけゆく一二山人 今一首よません花の下心かわく矢立におつか夕露おなしく 三日ほめせうるゝ娘にくらふれはさかり久しきむこ山の花荘蝶図 風の手をしはりてやらんきのふけふときにし花の細か紐ならおなしく 海のなき大和も花の波たちてみるめはおほきみよしのゝ山玉々 枝をりしそのわひことによむ哥を反古にもなきてゆるすむ事亀丸 山寺のむねにあけたるさちほこも花の浪間にあそふ春の日種丸 さく花の雪ふかうしてはくれにし友の居所しれぬ山奥雲上館高岑 雪か雲よたしは山の名物の葛かと思ふみよしのゝ花蓑丸 さく花の雪にも疝気おこりしか見とれてこしのたゝぬ下かけおなしく 一枝とむりな無心も花守にのみこませてん樽の酒をは夢正住 ほの〳〵とよしのゝ山は霧よりも霞にかくす人丸さくら糸成 すみた川荷ひつゝゆく重詰のひらかぬ内か花にそありける林亭繁木に 桜かり山路まとひてやすらへは花見風の北ををしふる勝躬 不書の酒もよしのゝ山さくら風はおゆるしちります〳〵鴬園楼古 春霞引さけてゆく重詰のいく組となき桜かり人寿千尋 よしの山蔵王も臍をかくせかしまゝすさましき花の夕立千柳亭 みふぬ山波としみれはをるとてもいかりしつめてゆるせ花守柳寄堂光吉 たんさくにかゝはこくすれうすゝみのちるをもいらふ花の山守院院 案内子はわか跡にせんさくら花さきたてか物は酒肴にて影法師 たらうゑて花を雲そとみよしのゝ山をまよひのたぬとなしけん長丸 貴妃小町名にはよへともさく花の雲には月のさはりたるなし下住 なけてまるかはらけよりも風の手は花にやつらのあてみたにせず昇町金竹孝 にこりゆく雪消の水を又もとのころさにかへし影うつす尤浅菜園 待わふる雨のゆふへにいかたうめ火ともしかゝる野路の桜木谷住 志賀の山さかりの花の浪間には駕の四つ手もおろす旅人萩の屋仲佳 雲助とはなしを志賀の山駕をかいて見たきは花の旅日記東雲舎一磨呂 枝なとはもつての外とをる事をたんさくにさへいとふ尤守多利雄 桜かり蝶ほと花にたはふれて夢てくらしく春の此ころ桜蝶辛舞台 さくらむねになかへりそよみ哥に枕詞はいくつありとも丸澄 風にちる花を雪かとみよしのゝ山も霞の衣かふりつ恵美成 よしのろは長者とならん春ことにはなて物くふ人はかりなり紀良やく ちるをみてをしむ心のいつ迄もきへぬ雪ふる花の山かせ魁 思ひ出て又木の下によるの尤見るめによくのふける月かけ花壷見 くまの山浪よ雲よと舟人のめをおとろかす花の真さかり穴住 桜木をねくらとかへる小鷹のいたゝき白く花やちるらん折安 地にしかは人やふまんと梢より花をの世行風の手車竹意摩為丸 里人のもちしきせるも桜はりよしのたはこの香そ匂ひける中吉 そろ〳〵と花支度してよしのには霞の幕を引はりにけり花薫 風よりも花見もとりのおそしとて宿にはおこる風の神あり跡成 いなつまのかきは宮ゐに三めくりの土手の桜の花の夕立蘭薫亭 鶯の羽袖打はらふかけもなしさくらや佐野の雪のなくれ平道文 ぬり樽を荷ひし竹もたわむらしちりかゝる花の雪の大ふり道雪 さく頃も七十五日いきのひん花をみるのも今初瀬山詣広 木のもとにひく三弦のちりつんて人の山をもなす尤さかり素羅囲 雁かねの外はくる人はかりにてかへるさしらぬ花の山道菊酒亭蔵人 松代 あらし山嵐なふきそしつらくは王の字のつく花にさし合満昌人 三峯の犬てふさくらさきなからなとてふせかぬ尤の花の次とへ直道 雲と云く花の王子やあすかから又化されに廻るよし原山守 めかれせすまたゝきもせてなかむるは今をさかりの花の王戎軒風 さくらさく花の雫の下かけに此ころめくむ草花草茶屋升成 いたつらに枝を折るとて山守はしかりつけたる花のたんさう興楊并金直 雪とちる花ははかせぬ心にやうつみかくしゝ庭の手箒箒得徳斎隣 手の奴よくもちありく花の枝はこれ長明か家桜なり以狐 花の雪笠きて月はめくれとも霞の袖は打もはらはす 川又 いこま山花に霞の此には人を引出す手綱なるらん ん遊肆老亮俊 尤守にいとま乞する舌まてもかへりかねたる生酔の客 案内者の口車にものせられてまはり道する花の山ふみ 雪とみる花の山路にわけいりつ心の駒の道しるへして 一枝ものそみかねたる家さくらくれかぬてよき花の夕はへ さきみつか花もこふかく月かけもるせきはなし相坂の山江南辛池住 みふぬ山舟の暮般のたくみにやつゝく桜の雲のかけばし六極園 タカサキ 手の長き梢の猿のこゑにさへ尤次と人とさわく山守東雄 ゑひられて花にくるへはわきもこか髪を飛ざるかんさしの蝶槌丸 文字しらぬ山里からもさきしそと風の手紙におくる花の香小左丸 さかり過し小町桜のうたてくもさそふ風あらはちらんとや思ふ比津知 桜かり煮ものゝ汁も杓てもれちりれんけては花にさし合 江戸なれや梅か兄きの舞ふ跡はさくらにきほふ花の日くらし初風 さきみちし花のふもとに宿かりてけふもみよしのあすもみよしの丸木園唯仲 ワカ山 此ころは野にふし山にふしもしつ風かかたきの花をたつねて花の屋 風にちか春のゆふへのさくら鯛おふのうらわの浪にうかめり楊樹園髪児丸 海棠ねふりては夢に化しけん海堂のはない中より飛出る蝶千柳舟 三、 煙日ぴら枕しひりきらせる弓手めて光陰の矢やたゆむ春の日壺歓楼三声 山吹の花もうこんか昼の事わするゝはかり春の日長さ吉人 一ねいりさめてはつかし行儀よくすわりしまゝの春の日の足浅菜園 酒のみてまろふ昼寝のゆめさめて二日酔かと思ふ日長さ俵積方 碁所にゆくひつしの刻にまたならぬあゆみの遅き春の日の足跡成 松代 たち雨す霞も今はくたひれてなかくのひたる春の日の足鳴海 鎌倉へ上下すれともわらんちのひも高輪にときされぬ春雲居久方 雛市むかひあふ十軒店も風流や都の田夫ひなの中みせ宜風 きまらきへのこかさむさき雛亭のはたか小僧も風の子ならん文齢舎 日二日灸のもくさにつまぬ夢れもて三日のひゝなにすう草餅晴旧今早丸 恰もそなふるひなに白酒の汐干かたある盃の海 客むかふ巳の日はぬさもとりあへすほとりはたいてはらふ雛棚頼 三日のけふ汐はかりかはたはれ女のさみせんもひく住吉のから泥田坊 雛壇の枕の林におもしろやつなけるやうにみゆる撫牛万々成 物いはぬもゝのせくとて枝をりてとくりの口をさしてこそおけ哥名文折人 十五 ふらすこを つけはさかさに つけはさかさに 雪消して 上からきゆる 冨士の白酒 花咲庵 米守 十五 たかつきか 思はすこけて 雛棚に 雛の琴ひく 菓子の松風 甘棠舎安丸 小渓園 賤か屋はひなに馳去への重詰もまかりなりなりなあらひせんまい真芳 たけたかき哥よみなから曲水になと盃をこしをりてとる仲垣 物いはぬ尤たにあるをかしましき女子とものよかひなのまへおなしく そなへたる物くらはんと牛の加猫の御殿に入りしひなの日頼房 実方の雀の化しゝ蛤も内裏にましかけふのひな棚草浪 盃を水にひたせは指さきにうつまくもあり流るもあり松の宿 ものいはぬもゝの節句のひな棚に物いひさうな人形もあり川舟 ひなたなへたてし屏風の松かへにかゝれる雪は尤かめの花音高 雨合羽きし形りに似た紙ひなは今もむかしのふりのまゝなり友鶴 豆いりにましかあられや春なからつめたく思ふひなの重詰竹人 桃の酒下戸も上戸も一つらにくみ〳〵ならふひな棚のまへ音躬 さきみつかさくらそなへてをかしさはちひさきはなの頃郎左衛門雛橘楽堂 能 物いはぬ酒の相手に愛敬はもゝの媚あるひなの人形宝馬 ものいはぬ姫桃の花そなへてんから衣をもかさぬ花の雛文丸 菊医者のくわゐあたまは弁当の三重静も出す曲水おほしく 手にふれて下戸も流せは岩角にかつちりあたる桃の盃升成 盃にかいてなかせは桃のみかことはの花もうかふ川水捨魚 ものいはぬ花をかさりしひなたなに口もあかさる蛤もみゆ 中井亭黒金 ホハラ 耳揃ひせしひし餅にきかせふりはやしかたあるせくの雛棚 初孫かひなの節句にゆつられていつもおわかい次郎左衛門との美官守 曲水のえんりよかちにそみゆかなるたゝ物いはぬ桃の盃 喜好 小さしきのすまの内裏はこなたよりさかおとしにそかさかひな棚一風流 なきたちし野へのきゝすはいてとれと物いひそめぬ姫桃の花不見亭清石 桃の花に天みな酔へりわれひとりさめ心よき春の曙 をりとるをとらへられては三千とせの寿やちゝむらん桃の次三人 三千とせをへた絵のかきと桜にも梅にも庭の桃の真さかり 仙人にみせなはいかにたをやめのはきよりうへの白桃の花 ものいはぬもゝのさかりは口なしときゝにし天も酔るかとみる 仙フ 香白兼 桃の花もらひかくれば腹立てあがしもやはり物いはぬなりぬかこ 上・京目 源平と名をよふ桃の花園も御代の春とて白かちにさく 白酒こぼしたるをとめか顔のもみちより流れもあへぬ山川の酒 サカヒ 商人は見せに茶碗もはたちはかりかさぬてうれる不二の白酒 白酒はひなのいもせの山川にめつかさくらの花の雪けか桜露堂 汐干汐干潟とりのこさなし蛤の命もやはりひろひろひ物なり 汐干かりけふは命のせんたくにのりのついたる。貝もひろひつ あら海の障子のさまや汐干かた夕日かゑかく手長足長荘蝶園 元暦の源氏のよせしみきはから沖もたひらに汐のひてけり 元暦の源氏のよせしみきはから沖もたひらにゆのひてけり小鞠 そつ浪の音はたへたる汐干かたつゝみにたて吸筒の底 汐干するけふ住よしのうちもやうかいとりもする里のたをやめ 汐干には樽もつゝみになるみかたあしを千鳥にまひつかたひつかたひつ しほひかり蛸の枕はひろふともすへりて磯へねてはかなはし ふみちらす砂地へのこる鳥の跡見て筆貝もとる汝干かた錦木園文門 ひなかさるころとて汐のひのはかまさしぬき足てひろふ花貝常養軒糸正 とこへやう水のへりたる汐干潟おのれかすきな貝もひろはん増盛 汐干かた遠の千舟もとりえたる蛤ほとにみゆる海原一磨昌 汐干かりつに的場はなけれともあたり物とてとる星ひらめ若女 うちかたのみな。見へしの汐干かたやよひも今や清明の頃獨楽堂 沖遠く汐のひきめのまを見つゝやをらいてとれあさり蛤 親のしため出て麦哺の烏貝ひろすも孝の道並へのうら照住 波風の音は洩辺の松にしてことによくひくせくの海原夕顔亭元戌 海川のしたしき中と汐干かり浪をへしその人のしからみ初心辛旱丸 かりくらすけふは浜辺の汐のみかもたるひさこの酒さへもひぬ軸成 遠はしりなしゝ干かたに思はすもふみ出したるあしのまめ蟹便々臺 賤くさき匂ひも袖にうつるらしひろひてもとる梅の花貝松風舎茶庵 燕 恋かしましさ是も女のことくなり口へにさしゝ軒のつはめは田中稲人 出代ゆく雁の涙の跡に出かはりてつはめのやうにくろきみつし女氷解 けさはまた水もくまねと出代の涙に袖をぬらす飯たき 物いはてけふは涙の出かはりに下女かまふたも花の桃色 此春も重年させてめてめてはやなふうをさかりの花とよふ下女旭峯高 せんたくもいたしますそとけいめんか垢ぬけし下女つれてきにけり 橦けんよくいとまもらうてたつ鳥の跡をにこさぬみつし奉公桜露 桜露堂 青柳とよふはした女もめをふいていとま乞するけふの出代り歌林堂 下駄草履つゝらにつけて足もとのあかかい内とさかる出代菊酒亭 三絃のさつりとなりてさかりけり忍ひ〳〵に手をつけし下女全亭 なみたまふらぬさきから出かはりの下女は荷物にそへしからかさ岳亭春信 出かはりのなみたの雨はやゝはれてつゝらにつけし下駄とからかさ綾重 糸遊 からくりのじかけのそらのいとゆふに人の心もうこく春の日一字静 汝かまの名ある桜の梢とてけふりのやうにのほかいとゆふ興金 菫 かへるさの雲の浪間を糸ゆ女もつなきてつくる雁の舟橋麟馬 すみれざく習にもち出て是も又一夜ぬしとてある酒やうる笑丸 浅沢にすみれのかけをひたらは露のきぬを染か下地か玉丸 藻の花菜の花のいろのうつりし辻堂の石の地蔵も黄金の肌六魚周波穂 蛙 うつくしき小松葉の花真さかりにちるかとみれは黄なかそふ〳〵 二本一ツ 葉の花のいはぬいろには壬生寺のをとりのふりをまぬかてふ〳〵錦翁継 まともして連歌やすらん蛙らもうつれる池の月の庭になく壺貞楼千本 大海をしらぬ蛙は井の内ていつくの事を哥によむらん波穂 たつた川春もかはつはおのか手のもみちを水に流してそなく車道文 啓蟄のころは歌より先おのか土うこかして出るかはつら千霞 つゝみをもうつかときけはかはつらかねをあらはせる笛吹の池三声 行灯を出すこしろからかち〳〵と火をうつやうにかはつなくなり腹満 賤の男か土をそこかすあら小田にやまと哥よむ蛙かしこし世間辛吉住 梅若の忌日のころはすみた川桜の下にかはつらもなく酔升庵一計 ともしひのあかしとみれはかめつらもあちらのするへはひあたりぬる文車 たつた川わたらはやはりもみち手の蛙のこゑの中やたなん山積園 骨のなきこゝすくひけん鳴声に力なしともみへぬ蛙は竹は竹意房 山吹のたわめる枝にうたれてはみにしみてなく井手の蛙ら文齢舎 思ふ事哥によむへぎ力なき蛙やはらをふくらしてなく六帖園 苗代よき種をまけとさとしく釈迦よりもみのりの事を思ふ哉 秋のころ鼠てふ米とらんとて棚田はして田かこふ苗代濡丸 またわらにならぬさきから音のなき雨にうたるゝ小田の苗代一世晴保 長雨にたはこの火さへきゆれとも足に吸つくなはしろのひる 淀川の水引いれて崎の男かくらはせ種をおろす苗代千寿楼松仲 出来秋のころはかくとて今も猶なはしろ水を流す賤の男裏行 紙ならて浅草あたり春の日にこれて何枚すきかへす小田 暦見て中段下段吉日のたぬまきしたる小田のなはしろ 生百斎万寿々 野辺青記改 かみそりのはやまの小田のなはしろは月代ほとにもへ出にけり・ 紀安丸 梅若稲梅若のかへり道とてよし原へこそのもやはり立ちかひのまた鷹外桜 躑躅松の葉のけふりをみせて岩つゝし花のもへたつあたかなす遊喜詠女 ヲカサキ 下戸上戸いさやなかめん酒の名の男山なるもちつゝしをは玉初亭左解雄 苦むしてすへりさうなる岩かねにしりもちつゝしとりついてさく 杜若かきつはた紫なれと折る事はゆるさぬいろの見ゆる花守元有 タカサキ かきつはたちともひくなと尤守のつよき心は江戸の紫浅葉 款冬花ざるは見にやゆかんと山吹のきによりて魚をもとむ弁当千霞 活花を拝見といふかまへして蛙つくはふ井出の山吹一二山人 紫の霞のきぬにつゝみしは小判のいろの野路の山吹柳風堂京頼 八日市 山吹のいろをかさぬし尤長者きなかしにする庭のやり水司馬房濱人 にくからぬ小判のいろの山吹につらをはらる井手の蛙ら由都留 口なしの色にそ井出の風景はいふにいはれぬ山吹の花島人 藤 山吹のこかねは山にさきすてゝふちになけこむ露の白玉双紙耳 吉備の山風吹わくる山ふきの花のこかぬや露の白かぬ鈴也 せんし案の名とのみいへてなかむれはきをひらきたる山郷の花桜月窓文則 一通り出代り済て此ころは口なし色の山ふきの花森羅周 物いはぬいろにこそあれ炉の口をふさく頃さく山吹の花浅草 木母守やさく山吹はうめ若の身をしかまにみをしらぬ花西来居 千両の春のあたひを見よかしにこかねのいろにさける山吹 垣ひとへとなりにすいてみへなから八重にもさける山吹の花只仲 七重八重さけとみならぬ山咲の花をひとへにあめめれとそはる髪児丸 さほ姫の袖几膳かもさく藤の此にむくのかゝる松かえ三年 たんさくをかゝんとすれは頼えて硯の海もさわく藤浪六々園 つるはうつのことくなるとの波よりも音に聞へしこゝの藤波濡丸 ゆかりある人にも藤の一枝はゆるさぬいろにみゆるへ守有武 土瓶の手となかてふ藤の花ふさか茶瓶あたまも撫せかしさ一杯義高 位ある松の梢にさく藤はこやむらさきめ冠のひも蓑丸 桃さくらちりても跡へ春夏のふたきをつなく藤の花ふき便霞楼久方 いつしかと手いれし酒のゑひ出て杣かかたにもかゝる藤浪正住 越後路やこのした家も白藤の雪には春もうつむ山里おなしく 藤の花今をさかりと天さかかひなの軒端も紫の庭双紙亭 いたつらな鼠の外にふちの花棚をつたうてとなりへそゆく清伎 春雨のおやのゆるしのいろふかみばれて咲そふむこの山藤以瓢 此子にさきにしふちをはなの穴通してみんとめつる牛かひ専女辛艶好 暮春いりあひをさひしく思ふすて清つ春のみつきもくれて行らん風林堂常成 ゆく春のかたみにのこる物とては二日の灸の跡はかりなり杉馬場也 茨木にあらぬわらひのこふし迄ころけにみゆる春のくれかた一重舎 ちる花をはきし箒のさきとゝもになくなりにけり春の日の数蓑丸 ゆく春へをしむ噂をくる殿へきかせしと炉の口もふさくか芦長人 くれてゆくこれそかたみの桜鯛春のなこりにおくも一しほ阿房 若もへのすゝきの袖は。うしかくてくれ行春にすりはもなし唐琴 ゆく春に花見の酒の借銭をはらふもうしや庵の蜘のす遅咲 楊貴妃の花にわかれてゆく春は藤のかんさしかたみにそする松俊 春もはやかへり支度と其へにけりあまり霞の物をつゝむは山積園 松代 ゆく春に草木も花のゑびさめて青葉に色をかへてをしろ鳴海 ナダウラ さわらひの手にて霞の網なりと引とめてくれ春のわかれち髪児丸 月昼春の日もけふ一日になり平やしほめる花に匂ひのこりて住安 ちりはてゝけふはわかれとなりにけりなこりの春にはなむけもなく 花の春もはやわかれそとうしろからつきおとろかす志賀寺の鐘楊月 サカヒ 春風たなひける霞の網のさわきしは雲の浪間をゆくあゆの風 白川 春山春の山あないは入らす南白き心とさけか先れてゆく六此園竹 六逸園竹盛 やよひ山笑へることきけしきなりゑくほにのこる雪もきんつゝ 上、 春川所〳〵氷もとけて紙屋川すきゝれみゆる春の此ころ犬馬 若鮎ちりかゝる花の鏡はくもれともさひけはさらにみへぬ若鮎茶雅丸 山吹の花まくころはせにすみてはらにみのなき玉川の鮨商人 春鳥百千鳥いきもつきあへすしやへるなる春の調もやはり口口元有 ワカ山 春植物見る人のめをもかすめてさく花を葉からにかくす品玉椿泥田坊 こきませし西行さくら横柳風にすてたる露の白かぬ六帖園 春雑雁はとくかへりし跡へわたりくる紅毛人もよこに文子なす獨楽堂 うめの尤ちりゆく頃にかひそめてほしをみせたる正月の餅守郡 霜にけきわかれの衣を又ひとつぬくとき綿のたねおろしけり文齢舎 さそふ水あらはいぬとて流すめり小町かなれの果の古雛浅浅藪 根わけする鉢の梅子たかへしと札をたてたる郭子儀が宿盛砂 田楽の狐色には山梅のめしもつまゝれてゆくそむへなる跡成 花にいとふ風はかりかはすた堤かはらけ売もなけてもらはん升成 春の心を遠山の雪ふみわけてゆく人もきゆるはかりにみゆる春の日勢雅竿人 三月は風も旅をすかならん相宿せぬといふ事はなし ナダウラ なとて此花を見すてゝ去り状の三下り半にならふ雁の 日荒垣改 天の戸をきりことあけてけさはとく若水をくむ車井の音六曲開岩垣 狸ほと八畳敷にひろこりてつみの腹をうてる才若 つゝみさへちゝたる春になりにけり打つれてきし大和万才髪児丸 酒檀塩ぬいかその夜のさめきはに見たはしらふの鷹の初夢綱人 かひこかふ秩父の山の桑畑に春も霞のまゆつくりせり大松舎千本 春霞立わたりては人かよふ氷たへけりすはの湖髪児九 子の日にはとりのこさなし若松もけふは霞の引ものこさす岩垣 春の野に人くとわれもさへつりて鶯菓をそとひくにつむおなしく ふたもとにあらて杉蘭の生ふるのは春のしるしとみわの山里六石園飯持 雪とけの雫はたれて松かけに若栄をたく春の七くさ総人 論語よむ窓をひうけはおのつから友遠方より来る梅かゝ髪児丸 古今集見かたひことに匂はせて耳へもはひるなにはつの梅飯持 きゝすほと長き尾つけし凧を又子を思ふ野に出てのほせつ仲垣 妻こふる心こゝにしあらされはみれともみへぬ宿のかひ楠花成 時々を告る櫛より横といふ柳のめにそ春のしらるゝ飯持 老僧のぬすみの袖もあふなしや猫背に拝す西行の像宝馬 霧きゆる風にそなへもかひかころひよ青みのみゆる若草強気 わらひつむ供の奴をたつぬれはさきよりこゝにをりますといふ三友 百千鳥ちとり足して生酔も花にさへつる春の野遊寐覚 またさかぬさくらの下に弁当のつゝみをひらく野遊の友千代子 花の雲ひける妻に見とれては心そうなる春の野あそひ真倉 あらひつゝかこにいれたる鶯菓ねをきゝによる野世の人犬馬 羽をのしてのほかひはりの外に又うはのそちなる野遊の友高丸 桜にもつなかぬさきにいさみては人をちらしゝのへの若駒木工女 さく花の雪の白きは浮にしてゑにも及はぬ春の曙鴬蛙亭哥佳 さほ姫もしたひやきぬるをたまきの糸ゆふかゝるみわの山本髪児丸 ふきおとす物ほし竿に梅のみか猫のさかりもちらす春風六樹園飯盛 夏の部 首夏いとけなき夏の来しとはしられけりけし坊主さへみゆる花畑真芳 そらの色も青きは尤のゑひさめや水を好める夏はきにけり乗康 さくら木の雪とうつきの白雪と行ちかうてそ夏は来にける夏躬 花に風いとひし春もすき戸口けふかへよとて来しすたれ売 ゑほくゑはた沓手鳥無礼講まに執てくらす夏はきにけり不老園梅友 首菱藤のり合の舟はむかうにつくた島春から夏へわたす藤浪筑位平美住 山カタ 更衣夏衣かろくしたてよ花ちりて春の力のぬけし人には枝折 フチ五 山吹の花のちるころぬきかへて春のきもなし夏の衣手糸成 身をかみし風布子をけふよりはぬいて質やの利にくはせなん泥田坊 花の香をとめし布子のあかつきにぬきかへてよき夏の衣手右扇 鴬巣花色うらの香にかへてうすきをめつる蝉の羽衣玉眠辛夢也 引しむる帯もくれゆく春のひもうゝろへまはすけふの衣手浅桑園 一花鳥のつきものははやはなれけん身かるになりし夏の衣手茂 花の香をさりて着かふる袷にものこりしつきのしきしたんさく双紙亭 いとあつくなりあまりたる所にはふとしきらひもこまかうす衣駄山人 ぬきすてしめつさにきゆるぬけからも今そなくなる蝉の羽衣胡面楼綾右 尤いろのよかの衣をかへしてはわかれし春やゆめにもとらん麟馬 遅桜くたひれて一休みせし遅さくら夏の出茶やるこしかけてさく雲居久方 余花さくら尤たつねてめくる山林に一二りんほとのこる谷かけ富久留満 庵もせにさけるうつきのきをかへてちりし桜の花の乙雪住安 つき山の富士につもりし花の雪これも夏迄きへのこりけり百摘草 牡丹蓬の雨のほたんも今かしゆんの作南の風にかほる花の香山積園 煩此なかき蝶はことさらめつるなりちとからく花ほうたんの花葉康 伊豆箱根両所にちかくとれなから酒の誓詞はやふる夜鰹跡成 一本の初かつをにそ四文銭の浪をしたゝか打よせにける塵外楼 いきてきし今のかつをに袷さへふちころしてもくはんとも思ふおなしく 一枚のあはせも質にとはせけりはぬのはへたる鰹かふとて浮丸 うの花の雪はきへねと味ひの口にたまらぬ初かつをかな中丸 琴をひく松てふ魚のつくりみに爪をかけたる宿のかひ従泉久雄 毒ありと今そしらるゝ初かつをかはんと賃にあはせころしつ乗康 片肌をぬいてうりゆくいきなひに両肌ぬいてかふはつかつを望海開重浪 万才のゑほしてふ名をよふ魚に夏のはしめもうつ古つみ仲垣 そらをとふ沓て鳥よりそのうへをとんた高ぬのゑほし魚魚 一尤の雪大根おろしとなるからはさしみにつくれ此はつかつを下住 片はたをぬく肴屋の上かしてはたかになりてかふ初鰹裏行 そのかはり芝居みやれと女房にうまくくはせてかふ初かつを由都留 初鰹海より出ても通宝の青海波のうこく大江戸虎住 かまくらの沖をはしりのゑほし魚めせやお江戸の大あたまたち瀧々開孤月 若好か毒といふなら毒にして皿迄なめん此はつかつを春信 つれ〳〵の毒もむへなり初かろをたちまち袷打ころしけり茶雅丸 初茄子江戸に似し駿府の町も名物に出るなすひは此子のいろ真芳 狼藉にとらんとすれはあちからも酒をやふかて出る竹の子濡丸 ほとゝきすまたぬのたらぬあしさにもよの短きをめつる竹のこ商人 新樹せんたくのきぬほす場さへなくなりてさをよしけれる庭の草桜山積園 尤ちりし夏もよしのや哥人のよみつることの葉山しけ山歌園玉繁 挑灯とよひし桜も今ほしや木の下やみをゆくにつけても 見るに目の薬とそきく木々のはは仏をあらふ頃にしけれり仲住 花はほしとなかめし梅も青葉には月日をふからおほふ山里六々園 鶯の花笠ぬひし梅かへも雨もらぬ迄若葉しけれり葉康 白雲もとみへしさくらもちりはてゝあをくもしける木下やみ哉松なしく 氷室山青葉にとちて日の足も上すへりする木陰すとき船則 おく露をもらさしとてか若楓手をひろけたるやうなしけり葉浅菜園 うすくなる衣につれて木々の葉のあつくなりたる四方の山々高丸 みよしのは青葉にしそくなりにけりこゝやきのふの花の故郷 花ははやちりけもとからにつとする毛虫のためにたをる葉桜全事 毛虫是も又栄花の夢の蝶と化すかうるしの園にそたつ香火は糸丁 卯・花それふむな〳〵といふは卯の花の雪の下なる飼犬の糞伴則 月雪の色はぬすめとしら波もまたにくからぬ垣のうの花真芳 卯の花の雪にはころふ所なき杖はかきぬまつかぜてそおく はざみをももちて工夫の庭つくり葉末をつもか卯の花の雪六児園 雪と見ん卯月の雨にうの花のちりて浪かへ玉川の峯香折 冬迄は秋をへたてゝ遠けれとゆきにはちかきうの花の色連樹 下帯のせんたくもむへ症妾にはさはりとならぬうの本の間東人 鶯の老となりしもむへきかかはや月とみる卯の花そざく糸成 卯の花の雪のげしきは風にたにはらふはをしき庭の袖垣六通園文盛 仏にはつくられぬとも仏にはまつらるなりうの花の雪六々園 うの花の雪にふす木はみへぬとも宵からねたる山の賤かな卯時 わた入をぬきしその日は雲からて為にしらるゝうの花の雪左解雄 きらうかとはさみを持てうの花をきらすにみたる豆腐やのべ栗栗恵美氏 尊の老となるまろ夏山のあたまをしろくみするうの花秀丸 あやなしとよみにし梅のみのる頃やみなあやある庭の外の外の花 す尺をそろへておきし袖垣に又ゆきをさへつもかうの花月桂女 白たへの月をそはひしとかめかも縄にからむる垣のうの花月丸 枝に手をかくれはちりてをられぬは水にやかへる卯の花の間香折 こしたけにつもれる雪のうの花に尺とり虫のあるもむへなり高丸 松代 白たへの袖猶さむしけふも又夏へこしちのうの花の雪蘭薫亭 仙フ 深山路のうつきの雪に汝か巣の穴の中にもこもる熊蜂 応さきに料理のいかの烏迄飛出してけり卯の花の月 みな人はきぬかふる頃夏の雨にさく卯の花のわたは沢山 瓦、 その花の波にぬれしをほすならん垣根にかけし蜘のすの網 くものすのくまたになくて庭守か手入にひかる卯の花の月 花の名をうともいへはやその影のくゝりてみゆる庭の泉水高岑 うたかひてみれはみるほと犬よりもわか目そくるふうの花の香簾丸 卯の花の雪見の酒はつもらねとたふれかゝりてみゆるやれ垣枝足 瀧をなすはかりたわみて立石をたはしか浪や庭のうの花正住 垣こしに隣へかせはうの花の雪にのこりし鍋のあしあと山守 つまつきてゆるむあしたのはなを迄つめたく思ふ卯の花の間富久留衛 盗人をよけんかためのむ根からてりて月夜をうはふかのむ全亭 あら縄ていまゝめらのしうの花のさきたつ涙のこふ袖垣誰法師 卅日にもうつきの花を月とみて玉子の鮎に酒やくみなん清石 その花をそちにしられぬ月とみれは糸引かけに出るくもゝうし茶雅丸 潅仁会 寄進する遠湯のたらひ柄物迄生れかはりし古寺の釈迦三樹岡渡 白米を欲につめたる紙袋その横はちもさけし濱仏泥田坊 おとなしや生れし釈迦はなきもせてきやあ〳〵ていと経をよむ僧増増増成皿 うの花の雪に仏はつくらねと氷室の寺の釈迦の誕生枝呂 ましなひの卯月八日のその哥をみな家ことにはるもさかさま 獅子うさき泣しにかへて卯の花や牡丹も笑ふ仏生会時春里 参詣の他人同士さへ御仏のみうちはかりをあらふ誕生ぬかこ いたつらにくみ出す子らは誕生のある茶にへかす御仏の箔米守 せんたくのあはせきるにうまれ出てあまぬてよつのりをとく我也 すみ染の袖をまくりて経文をはやめによめる釈迦の誕生影法師 さくらすく月ののひたるしかしにや花見掌たつ釈迦の誕生玉光舎占正 哥からんけふの前火茶に御仁のうふやのはゝら並にうつれり便々台 まつり見にこし車より朝露は芝の葵にのりこほれたり泥田坊 まつりには誰しもかけてみうけ山目かぬの形りの二葉草とて后住 加茂祭ほとゝさす聞た跡から又鳥のまたるゝ物はかもの御まつり素羅園 負勝をわけいかつちのくらへ馬真黒になる雲の上人宝馬 時鳥親なしときけはあはれやほとゝきに今木のまたを出てなく ほとゝきす加護頻伽か月かけのかひこのうちに声のことなる至清堂村々異 はなしせす志はふきなさす時鳥待夜われからさそふ忍ひ音おなしく ほとゝきす八千ほとは宵になけあとの八声は鶏うたふころ山道列樹 きくらけの耳もかりたし火かけにあくほときかん山をこゝさす菫 ほとゝきすかものまつりにあふひ草声も二葉のみすにかけたり成後 おのかなくこたまことしらすまけぬ暮て声をくふの山時鳥おなしく 雲助のかこにのれはやほとゝきすしたに聞つゝゆく箱根山濡丸 ほとゝきす八千八声なく頃はかつをに血をもはらす香屋壓外楼 まつうちは次めもみせてありあけのつきもなき頃なく時鳥種成 暦にも八せん八声ほとゝきすないて通りし山の中段泉深金端住 なきすてゝりをせはしく過つるは何を見かけた山ほとささ □□□ 上々原市 ほとゝきすねさめて閨を見廻せはたゝ有鳴の月の丸窓花元 たま〳〵に雲を打ぬくほとゝきす初音は歌の種が嶋なり猿楽戯楽 ほとゝきすねてまつよりも山へ出てきくらけとかの耳果報あり堅城 時鳥八千なきてあと八そゑかけにゆつるかみしか正のそち笑丸 ほとゝきす山から山へとふときにかけたとこゑのはしやきくらん行竹 ほとゝきすゆかりのあかる山砂のわら沓つくる軒にしはなく やり水は雨にませともほとゝきす聞なかされぬそうの一声月丸 まりほとに月をのこして中そらの雲をけたてゝなく時鳥舞彦 ほとゝき吹待つたいくつに時の間も長くそ思ふ麦の秋の秋の夜丸燈 かけたかといふ一声にもろ人の心をくたく初ほとゝきす 時鳥まちくたひれて欠せしなみたの雨にふり出てなけ真倉 わかたまのあくかれ出るとみゆるなり時鳥まつ夜のよはひ星夢成 やよまてと引とめたくも雲の袖ふりきつて行山ほとゝきす しなてるや片岡山のくつて鳥またそたちのあはれ親なし伴刻 ほどゝきすねは薬日のしるしにてきくは第一章のつきによし川舟 時鳥それときく間も夏羽おりたけををしむか声の短夜種俊 ねそひれし子はしかれとゝ時鳥夜なきするかとおきゐてまつ照住 桜ちりてなくほとゝきすそれさへも次めはやはりゆみと見するか栗と法師 おこされしうらみにかへてうれしさはくひなの跡てきく時鳥波穂 鳴てくれくれよ〳〵はあひの山ほとゝきす飛ふ雲の袖乞一二山人 馬はあれとかちはたしにて飛んて出てきかん木惜の山時鳥おなしく なみならぬ声高くしてほとゝきす梢をみゆる末の松山おなしく なく里のあまたあれはや得意場に顔はからすてゆく時鳥おなしく ほとゝきすきいてかけ出す下駄草履雨と日和の中そらの声おなしく 茶漬くふやうにはなかぬほとゝきに待夜ふかして腹はつれとも 雨にたく蒼求よりもきてよくうつ気をはらふ山ほとゝきす緑〻山人 かはらけにかけかへあれと一声はあたらあたこの山時鳥松なしく 一声にあれと見こしの神楽岡あとの祭りの山ほとゝきすおなしく まち覚かにか〳〵しさはたらにすけきけはよしのゝ山ほとゝきに益久 かはほりも出る夕くれのほとゝきすあふけはそらに高き一声 夏かきた夏かきたのゝほとゝきす絵そらことにも一声はなけ竹房 雷除のかものみことのあふひよりそらをかけたる初時鳥三千寿 おさへたる蚤をにかしぬほとゝきすなく一声に身をひねるとて強気 見あくれは雲の上野のほとゝきす山のぬきしにおろす初声早丸 一声にやふれしゆめのうきはしを又かけたかとなくほときす新竹園一摩 親したふつくしの海のほとゝきすかたふく月の早舟になく西来居 一声は重々の上野をあとにしてかくれみのわの初ほとゝきす言数 うまくきくぬさめの酒につきたして耳にたらさる初時鳥為継 目のさめてさかす枕はふとんよりはるかにさきの山ほとゝきす虎住 一声は手形もいらす関守の耳迄雨す山ほとゝきす芋人 せんたくのたらひにうつるほとゝきす今一声もきかまほし竿おなしく ほとゝきすしやくの薬のそれよりもきいてうれゝき今の一こゑ麻呂基 夜あけぬと枕あくれはほとゝきす丸行灯の月かけになく六極園 ほときす待くたひれて窓の口欠とともにあくるしのしのゝめ清石 八千の数やみてにしほとゝきに八声はあけの鳥にまかせつ鶏声参起人 ほとゝきすかけ出るはつみころんても金ひろうたと思ふ一声鈍々亭 時鳥たゝ一こゑに夜のあけてあとは烏かなきしみしか夜腹満 雲間より声をこほしゝ時鳥水もつ月のかたふきしころ不老園 ちる花の浪しつかなるけふよりや真帆にうれしときく時鳥浅桑園 新形のけふの桜のうす衣に尻いとなかうひけほとゝきす松なしく よはに見し夢よりも又うれしきはふたつともなき山ほとゝきす得急辛数益 大都 石よりも小夜の中山ほとゝきす夜なきをなして人にきかるゝ丸丹園煉鹿 夢ならて鷹にまさりし時鳥ふくに聞たるよはの初声早起 早苗白鷺とみへてとひ〳〵賤のめか植るをいそく小田の菅笠岩垣 さをとめはをのこのまたに手をのへて人目もはちすにさる玉苗一樹園 たくましき但大将の手くはりにうゑてのいたるなはころの跡戯気 早苗時るすゐのちゝもぬく頓此を宿の障子にうゑつけそする秀丸 みのりなは臼にいかへきほさつ苗ぬうつきなからとれるさをとめ桜露堂 龍の如水かきにこすさをとめのと申手も早くにきる玉苗宝馬 筑摩に見なれさるつくま祭の女らをほゆるもやはり鍋かふり大千柳亭 さらぬたにおもきか上に二つとは鍋なかさぬそけふのつくる舎宜風 鍋の外つくままつりの酒も又かさぬてかふるさかつきの数永雄 はへきはのうすき女もけふひと日鍋かふりとそなりしつくまゑ裏行 忍ひあひてみそか事せしむくい来てけふ汁鍋をかふるつくる女 仁和寺のかなへも思ひつくま詣かむりし数にぬけぬあたし名万 五月五日はつの節なかしは饌よりまつさきに心をくはる重のふた親樽丸大夫 けふかさる武具はそのまゝ鉄炮の火ふたをきかはさうふ酒の風呂李郷 そひ孫のけふはせくとてちゝ波めみもなてさすりてそ祝ふ柏餅清伎 なら坂やこの手かしはのもちも又うらおもてにてつゝむあん読鳴強気 玄宗の夢の謹雄のはつのほりちをのむ和子もめをさましみる髪児丸 抱かしは子持の筋の大のほり惣領風やふき流すらし宮守 帕や蚊にきすをもつけてたちちぬのさすを悦ふ菖蒲刀は文車 菖蒲ばち巻の頭痛はとまれ菖蒲草ねをきりに行さとのあけまき谷住 薬ともなる菖蒲もてわらはへか病の根をもたちに作れり唐琴 菖蒲打つよくうたるゝうらみさへねふかき事はあらぬいらかへ俵積方 盧橘晴明のあへ橋の鳥にめてゝわれも一日見争くにせん山積園 万葉のむかしを忍ふる事なのもろえの花の咲匂ふなり良貫 若竹千代迄もちきりやつきぬ相生のことしたも出る女夫わか竹阿房 五月雨五月雨のふれはふるほとさひしきにかわきかちなる宿の酒大皿乗康 端午には薬ふりぬときうしよりさつきの雨のやますふりぬる常成 屋根のみかやすむ手わきに身上も穴のあきたる五月まのそち千條 かたつふり壁をわたりてかきくらす宿に光りをみするへ月雨揚月 わか門へまらうとのみか月も日も顔出しはせぬ五月雨の空ゝ裏行 ぬひあけしひとへものよりとにかくにしつけの多き五月雨の頃ぬか子 縄やくちし風見の暮飛おりて鵜のさまみする辺の五月ま 旅人の欠はかりか五月雨にやはりめこをはつかす川こしおなしく 昼寝していひきの舟もこき出ぬ昼はあなす五月雨の宿蓑丸 しけよけにのめよと酒をしひられて口迄すへる五月雨のへ現金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金銀 日をかさぬふる唐紙のもみち葉もかひて霜おく入月雨の頃麟馬 五月雨に水のたかさも此ころは九合はかりになりし富士川草浪 水におふかしのふにつたふいと水もかきりしられぬ五月雨のそら 蝸牛ゆかみ女子くはと見なから村長もすきとよめさる蝸牛のめと春里 川狩これも又はりにかけてそあくるなる女の鬢に名めたほはせ山積園 水鶏七くさにつみのこされし芹の間にかくれてくひな何たらくらん堂蛙草寄住 いまたなしなけるくひなはえもきかて朝寝は人にたゝかれけり卯時 たはこのむ火入の火のけきゆるしろおきよとたゝく水のにはとり六児園 内からはたそととかむる門の戸をわれよとたゝく水のにはとり三重丸 目かさめてはかられたるか残念やくひなかやふる芝居みた置成丈 此ころは獺の口たにあけぬ間に夢をくひなかやふりこそすれ いつもくるころに木魚をたゝかれて寺から里へくひな逃けり有武 うなされた夢をはたゝきおこされてひやりとしたる水のにかとり弁好 夏月かやり火のけふりの外はくまもなし月にさゝるゝ座のすらき仲吉 氷めくかけやうつりて潮に狐をはかす夏の夜の夜の月琴吹 若竹の露にたわみてひつみたる障子に弓をはぬ自かけ布引滝住 ほろゑひの権姫て出しかやの内一はいさしゝ月のすゝしき調読法師 瞿麦なてとこの花を大事とへ守かめつる心のかはゆくもあり島人 みしか夜のねふたき顔をなてこの花に目さむる夏の窓の紫 はし物してしく花こさのへりとみんさらさ形なる庭の撲子升成 夏草若草と見しはいつとか春くれてやく髪かちにみゆる夏の野鈴也 ひまりき野遊よりも夏の野はねてゐる草によりかゝる草花盛肝遠守 しけりてはかよふ道さへあらかねのつちふまてゆく夏の草むら平樹園気侭 百日のてりに波をもあらたてゝつゆの水ます野路の元草初風 そたてられし恩しら波とみゆる哉雨ももらさぬの人の文草五古斎昌二 汗の如露をちらして風の手にはたらうのへのすまひとり草東雄 照対五月やみかり出す麦の秋の鹿松のほくしにかゝるあはれさ松花堂 鵜川魚ひとつとらせぬ月も罪そとはしうて鵜飼の咽をらめけり米守 此世かちやみを好みてとる魚もつみかさぬたるうつかひの舟八乗国真弓 鮎をとる鵜母のかゝりそれたにもいやかうへにそつみかさねたる軸成 鵜飼見に出ても罪はむくゆらしかゝりのはねて衣にやけ穴山草庵八重咲 蛍 引さいてほたるをつゝむさとの外よまはこかさん女房かむね増中 十五 いにしへの 聖の道の をしへくさ ほたると なりて へを はしるか 英山 猿楽 戯気 松かねのちりもみえすく蛍かけこはくの玉と人をあさむく槲樹園片丸 茶にあらぬ山吹の瀬のほたかかりつまみためたる宇治の里人六和園笑門 金のなる木かとみる迄集りし枝のほたるを手につかみたや戯気 夜をてらす玉の光りのほたるかこ御所車にもつくらせてかん よへよりもこんやの蛍とひみたれ小紋つくると見る衣川髪児丸 山吹のちりにし跡を宇治川にこかねいろなる蛍みたるゝ松なしく 銭よりもよるはほたるのとふかけにこかねをちらすいせの宇治ばし ほたる追ふはつみにこけしらふそくのもゆるもをかし桃灯の尻永雄 夏虫の尻になれてや俗物を屁とも思はぬ貧学の窓文丸 友たちにこよひかならす来てみよとはなしておきし庭の夏虫竹孝 春の日にもんにし草はけして又もゆるかとみるのへの夏むく春龍 文をみぬ無筆のわれもかりいれてむたに光らす窓の夏虫増盛 玉川や山吹ちりし峯に又いはぬ思ひをうつす夏虫 合戦をまたせぬ内は夏むしの草の根城にかゝり火のかけ二喜 月代のかたちの野へになつ虫の光るは五十あまりなかへし裏行 瓦 石祟か富の小川に飛ふほたるその珊瑚塩樹のくたけとそみる竜の屋 見まくほしとたつぬる草のつまくしにひとつ火ともす初蛍哉竹意庵 梅の雨はるゝをまちてかりゆけはほしとちうつく夏虫のかけ新風 新風 とらへたるほたるたひぬとかる人の尻おひありく里のあけまき桜の連茂穂 桜の連茂穂 追かくるかつはのやうなわらはへは逃るほたるの尻やおきへん小槌亭福亭福寺 おさへんと袖すり火打石山の岩のかと〳〵とふほたるかけ文齢舎 とふほたるおさふる袖はみな月にかひの入りたるほしかとそ生るおなしく 都鳥のはしよりおかくすみた川あらまにあかき夏虫の尻摺楽堂 ラカサキ かんはんにつかひし杉をくゆらせは思はぬ酒のかまてちりけり しうとめかいふし立たるけふりには蚊さへも軒のつまをさすなり花の屋 ならうちは出してあふけはかやうにも飛火のみゆる夕くれの宿仲吉 賤か屋も夏のしるしこと夕くれにいふすかやりも三わの杉のは隣 賤か屋はひゝきのいりし火鉢をも涙をかけてつかふかやり火幸 かやり火にいふされてゐる藪医師のおのれか針もさしかなり万寿々 日ころより何かけふたき姑につくろひ顔のよめかかやり火山越人 かやり草集る賤もせおうてはせながまゝるゝ松のはの計光蔭 卯の花の雪消のころも山里の夕くれかすむ賤かかやりひは森羅園 蚊帳いきたなき女房か髪に引かけしかやのつり手も片はつしなか東雄 氷室朝貌をつくれる秋ととなりとしおなし日かけをいむ氷室守が唐樹 すはしりすはしりの臍も捨るなそろはんの玉によく似た勘定の中竹房 夕顔からうすのひゝけは今かきぬ〳〵と花もうなつく夕かほの宿飯持 干瓢にならぬさきからふるほの花を引たる垣のくものい一楽園久吉 おしろいの花へにの花ある中にさくや素花の夕顔の花哥林堂 ほりものゝらんまの龍の外に又露まきあくる池のはちすな長左 にこりたか池の中にもすめる物のほりて丸き蓮葉の露 百貫のかたのゝ沼にあみ笠をかへしたやうにうつる蓮葉紅葉 鳥の名のくひなに似たりくひにきた蓬見の客のたゝく暁笛竹音風 祇園会祇甲を会の長刀辞をみる人も自然と身をはそりかへなり 一日吉祭ふしの根はその日にきへて山王のみこしにふらすおひぬりの番南中なみ広 虫干梅さくらきくころきにしきぬほせはほしと言ひ浪とわる壺千覆 一聖人のかゝれし書ともろともにきりんの屏風出るむし干文車 故郷の錦をこちのかけ竿のはなにかけたる姫のむしほし仲吉 かぬくひの虫をおそれて土用には姫か郡屋にほす小金らん岩垣 むし干のけふは竹からさきへ寝て跡よりかゝる雪の白むて同桂庵長盛 虫丁にかのうつほのすよりもぬけからの出し権脳の紙力丸 かけわたす峯かへしや目につきて楯か飛つく虫干小袖浪清 頬当のあきとはつれんむし干の具足櫃から出る笑ひ絵荘蝶園 わか家のなかくもつゝく古小袖原図て恥をすらく虫干栗々法師 むし干に出す小袖の黒繻子はやみにも星のみゆる酒かひ下風 ヲカサキ 都には貢の雪やはこふらん庵の木立にせみそしくるゝ サウヒ おさへんとせし間にぬけて飛ふ蝉の時雨に袖やぬらすをさなこ 瓦、 あつき日富士の絵の角ももめるあつさには胡粉の雪もきゆる夏の日 ヱマタ 東雲房一摩昌 をとめこのゆかたをしみて出る汗は柳しほりを玉にぬきつゝ万々成 孟母にはあらぬ女も子をつれてゐところかふる夏の日さより楯人 もらひ水してしのけともあつさをはやらん方なき夏の日さかり葵千郷 雨よりもつらしや菅の笠もりて夕日のぬらすかたひかの汗南耳 今そしか出くる風のすゝしさに扇のつまの金を秋とは長総 風ふくむよい帆とひらきてつかふ手に波もうたする扇すとき腹満 酒のなきひさこは枝に打かけて清水を手してむすふ酔め伴川 むすふ手に十九土用もわすれけりはたちかまぬし山の下水日時房良丸 旅人のあつさにしはし笠紐をとく手にむすふ清水すゝな扇かな女 涼すゝしきは秋かとそ思ふ名物のうちはもいらぬならの下風髪児丸 よみさしのふみのしをりも吹ちりて夏秋の郡もわかぬすき商人 引まくる川逍遥にまたくらを吹通したる風のすゝしき岩垣 夕くれにむすふもすこゝ瀧のいとあつさのよりももとる藤草おなしく 風そよくかもの川原の夕すゝみはたかそ夏のしるしなりける芦下見着 あたりへはけしてあつさをよせぬなりつふてに打し瀧の白玉可し 八橋の風情にならふこしかけのさゝみもてなす松風の琴 夕風に秋をもやひのわたし再ひるのあつきは先はしげたり笠人 秋風のたちえぬ内はみな人の門すみして尻もすわらす川舟 竹藪のさは〳〵うこく夕風にすゝめと出る夏の縁さき若女 川岸にたつの都やあまたゞひ汗の玉とる風のすゝしき裏行 ひらきたる源氏窓よりてこみし五十四畳のゐゐまのすゝしき一麻呂 夏をむねとたてたる宿の柱迄よくふきこみし風のすゝしき軒風 西山へいる日の丸の扇もてもとすあつさなまぬくすゝしき真弓 見たふしにかけても秋と思ふへし古袷出すほとのすゝ風二本法師 いつくしま祭りにきほふ舟人もふくをのみまつ沖の涼風友寉 風そよくならのうちはもいらぬなり小川の岸のゆふへすゝき催馬 西瓜とり出て赤きはこれと目きしてぬくや西瓜のたちかりか辻全亭 夕立がたひらの井筒かすりを袖笠に一つるへほとしほか夕立鈍々事 かそいろの雨にそたてし撫子を他人かましくたゝく夕立催馬 夕立のふりやむころは合羽迄たゝみこんたるそうの留雲政住 犬も尾をふりて逃出するん双の雲には空もふちまたらなり売安 こらふれと風のはやてにひちかさもぬけるほとふる夕立の雨戯気 雷の大鼓の音もとろ〳〵ととろおし流す夕立の雨おなしく つゝみくつす蟻も流して池水にくまの月の輪うつす盆仲垣 遠目には雲てあたまをうつの山ついはれあかる夕立のそら有武 音にきくきんの鈴かと思ふらんふるなる光る夕立のそら孫月 人よりもそらおそろしく思ふらんわれからふるふよはの鳴神 ふる雨のこゑはたつれといつくにゝも戸をふたく夕立の宿柳葉野守 俄雨ふるを合図にせん香の火の手をあくるかんなりのほ錦沢堂百羽 馬のせをわけて小庭はきれ沓のはかせやうなき夕立の雨長丸 雨をもつ雲はみかうちはけあたまけもなくなりし夕立のそろ裏行 なか神につりにし宿の蚊屋さへもすゝしそといふ夕立の風寝覚 大鳥もふるもきひしき大名を馬よりおろす旅の夕立魁 うき草とおなしうき雲吹はれてさらに根のなき夕立のそち出羽兼吉 此月はむら雲たちて日もみへぬはしら暦の五月酉のもり竹意房 夕立の手の矢さきとふる跡に弓のやうなる虹のかけはし紀安丸 一ふりにたちまち跡のすゝしさよ草なきたてし夕立の雨梅の屋荒 夕立の雨にぬれしと右左人のかけこむ餅屋酒みせ玉柳園枝樽 雷のするとおとろく荷車もにくるまにはやぬるゝ夕立升成 ふる音にくひなは逃てわか宿の雨戸をたゝく夕立の雨是従 夕立にぬらす日かさの骨と紙はなれ〳〵になりし道つれ調雄 むさし野は市となりても水売の水をになりて逃る夕立盛砂 夏祓いくしをは杉てつくりてみわ川のみそきそ夏の印なりける川 こそき川ちのわ麻の葉なかめりわたるはわれもつみやたへなん 夏風笛竹の音に聞つゝきてたられは春葉ふくなりすまのすゝ風飯持 ひか寝んと枕よすれはもてなしに手足をなつる風そやさしき髪児丸 葛水を呑てすゝらく志のく日は昼寝のこきのうちかへす風紫雲 海原のいろをみするや青すたれすそも浪うつ夏のそよ風玄菊金鉄丸 あつき日にふくすゝ風の功能は第一人の汗とりによし八重咲 夏夕すゝしやとかさす扇をたゝむころはねをひろけて出るかはほり素人 夏夜のみと蚊にくひつくされて掛物の横にやられぬ夏の夜の夢哥春年賀記 みしか夜の寝過す夢に見し鷹も朝の雀にとられそすれ早丸 呼声のたけとちかうてつるかやのすそもこしかくあくる夏の夜影法師 夏雑狂言のあひたにひさく瓜西瓜あたり芝居も夏の水物広記 荅遺けさ雨にぬれ哀着ぬる卯の花は雪の色をもうはふとそきく犬馬 一声をきく間にかけをふたこ山見失うたる初ほとゝきす豊後桜梅芳 ふしのねの雪にも庭の外木垣犬のくゝりし穴もありける 脇さしの蛍こしりの光かなり草むらをゆく夏の旅人おなしく そら耳か絵そろことかも時鳥かきけすやうにうす雲の声 一しきり夕立雨の通り丁あつさはらうて過か西川岸女堅岡弥佐平 むさしのをたゝ一声に東から二四八百中なくほときれ六樹園 以テ購入セル而関博士 狛野亭吉氏龍勝蔵書 20063 □□□ 狩 册 及撰狂歌集 月 秋の部 キフ雑亭改 立秋けさははやあつさもぬけし箒耳にきつと覚への秋の初風髭親父駄鹿 名月の姥よりさきに竹てせし婦人もすつる秋はきにけり 琴になる桐の一葉をおとしゝはやはり松ふく風にさりける双紙亭 けさみれは露の稲葉の白鬼身にしみわたる秋の初風竹童菴 ふみぬきし蒲団はいつのむかしにてけふは肌身のさむき秋風昇得因芋人 たつ秋の三番叟とやちり初る桐の一葉に舞をまはせつ駄荷杉豆 けさ桐の一葉はかりかのこりにしあつさもちらつ秋の初風中住 桐の葉のさはらはおちん風情にや聲かはりせし秋の初かせ喬樹園本子郷 くる秋の風待してや箒目の浪にうかみし梅葉の舟頼房 かゝりゐし舟も帆かけて白雲の飛ふことはしきの秋風おなしく 秋きぬと目に物みせて今公前に桐の印の小判ちもつ百種閑有武 田の面にふかるゝ稲もふく音もまた実のいらぬ秋の初風泥田坊 秋風のわたる桑内しか泉水の瀬ふみにちらす庭の桐の葉玉磨呂 から〳〵といふ音もなく夜すゝみの下駄の相ちる秋の初風 汗くみし夏のわかれはさもなきにくると袂をしほらする秋 かたひらはきかへてもまたすゝしさにふくりもちゝむ秋の初風梅花閑煤満春 灸治よりあつさまさりし夏過て相にちりけのみゆる初風政住 力なくおちたる庭の桐一葉朝めしまへの秋のはつ風 またさかぬ女郎花にも桐の葉のころけおちたる秋のさかの野 一葉ちる桐の箱へと扇をさしまひ込たる秋の初かせ夢成 たゝひとりからりと秋やはいてきしおとよく道の桐の駒下駄千凾文丸 ここそきしてかへるをまちてなには女のあしのもとより秋や立けん玉艶亭光丸 一庭の面に生んおくものは露よりもうちはに似たる桐の一葉か鈴也 おく露にたるみし萩のそり橋にわたり初するけさの秋風池住 萩の葉にそとおとつれて今きたと耳こするする秋の初風浜人 へのすみもちしむくらも風頭の音におとろく秋のはつ風佐野渡 薄茶より水屋の窓にすゝしくもたてかねまへや秋の初風頼法師 難波江にまつ涼風をはしらせてあし音しけく秋やきぬ川 まのあたり覚悟しなからちる桐のひとはたにしむ秋のはつ風松仲 持つめの扇も風に吹とられ手もともけさはあきとなりにき香折 きのふ迄汗をなかしく行水のたらひもけふは秋となりにき清伎 海の上も秋やきぬらんけさは又桐の一葉とみゆるつり舟成俊 門の戸に秋のお出のおとつれに肌をいれたるけさのはつ風花の屋 秋風は手拍子てとる歯ぬきより手もなく落す桐のむかうは納凡 ひやゝかな手をふところへさしいれておとろかしたる秋の初風全亭 堂嶋にたつ市人のふところをうこかしもする秋のはつ風おなしく けふ秋の初元結にむすふ露やおつる一葉も相壺の内一二山人 風頭にそへたる銭の耳にまつきたりと秋の森て立らん緑々山人 秋風にわれおとろけは夕まくれちゝみあかれる。かたひらの袖浅藪 朔日にかなしき秋のはしめとはいはぬいろなる女郎花月 秋たつといふよりはやく盆前のちかくなるにそおとろかれぬる 西のせは秋たつ風に夏衣すそにも浪をうたすすゝき 子安山御堂のまへの蚊はしらをほそうけつれる秋の初風花豊 身に覚へあるおとつれや袖口のあきをたつねてはひか初風為継 匕とみし柳の一葉ちりてけさかけんのちかふ秋のはつ風広記 桐の葉の一葉おつれはおとろきしさわきまきれにはひる初風升 たんさくやしきしの外に秋たちてきりちらしたる風の子ともち 麻のはをなからゝよへに引かへて桐の一葉そ秋のかたしろ長人 秋さぬとそれをさほとに思はぬとたゝ今前そおとろかれぬるおなしく けさ秋のたてはさはりてちりゝんとなるほとすゝし軒の風鈴吉躬 桐一葉池にちりきて人のみか魚おとろかに秋の初風綾重 初秋鳥ならぬ桐のはおとにおとろいてあつさも陣を引し初秋静右 露にぬれて雁のもてくる文月は夏と秋とのつきめはなるゝ六玉園 秋たちて二日の灸のいたきより風のかはきり身にそみぬる大鵬亭羽風 をとめこかろほゝつきをふく風もすゝしくなりし秋の口もと裏行 さつまいもつくれる賤も秋くれは胸につかへしほとのせはしき栗々法師 さつま芋みのいる秋かくれは猶むぬにつかへし妹かせんたく気若女 残暑暑とゝもなのこりてさすはうかさきに秋をかなしとたれかいひけん 夏秋を角力になせは土俵きはあつさかつよくまた残りたり岩垣 秋たちし風の音より此ころはのこるあつさにおとろかれぬる葉康 秋たてとすてかぬるなりしふうちはいまたあつさの六分残れは紀吉成 夏はらへしてもあつさののかさりき執念ふかき秋のとりつき宜風 三伏の夏をはらへのちのわをもぬけてあつさの秋へ来ぬらん糸治楼唄好 ましなひのちりをもてくる風もなししひりきちてさらぬ星きに種成 けさはまたよへのちかやの左縄あつさのよりのもとか秋風川舟 秋風もまた立かぬつきのふけふしひれきらしてのこかあつきに三玉楼棟高 椀の葉もむしりつくしてのこりたるあつさに枝のさきし秋の日不老園 星のつよく武志の小路にのこれるは過行夏のしんかりかそも言数 ふみとめてのこかあつさのつよけれは西のかたやの秋はかたれと梅邦 秋迄もあつさはのこしおきの石汗手拭のかわく間もなし雲居久方 秋風の立さわけともうこきなくすわる早きの尻のおもたま夢舞彦 七夕瓜二つわりなき中の枕ともなれど手向かほし合のそら岩垣 たんさくをさゝにむすひて祭れとも雨の雲形いとふほし合飯持 ひく牛の角もしすくな文字にもや落てなくきほしのさぬ〳〵仲垣 たまにあふほしの別るゝ暁はともにしをるゝたんさくの竹中住 小袖よりまさる手向ははらわたの錦をかさるたなはたの哥一円岩 世の人とあちらごちかに天の川あきか来てからちきるほし合后住 ひこほしの長命をしてとし〳〵にいたり初するかさゝきのはし乗康 なき事の名に流れたるおりひめのあふ瀬はうその川にあるへしおなして 頼うつすたらひのたかはさもなくてほしのあふ夜そかけかへの花長説 たなはたをしまひてもらふけいせいもほしをめあてに願ひかけたり文車 ほし合のそらにたむけてたて琴の夫人尾をやこよひかしなん藍臼冬苅歩 山川白酒玉ノ 一十五 燈籠を けしかくる時は 犬かひの ほしもわかれの をしきといふらん 三栗菴 栗々法師 十五 蛇の目なす 赤かゝちにも さく花の いろはのまれぬ 稲田順百合 死 ワカ山 沈田坊 山カタ たむけ。おく水には宵に星うつり物かはるらんけさの歌路 一とせの恋の重荷をおひかぬて牛やかひけんあまのかはらに 棚拭へさゝくる色紙ちきらせよほしやとぬたるをさなともあり たなはたにひかてそなへし琴のねを雲井に告る軒の松風 竿にかけてふんとしなりとかさはやなたなはたつめにきりもかゝれす 竿にかけてふんとしなりとかさはやなきなはたつめにさりもかゝれず伴列 ほし合をうつすたらひに吹落てふとんをきする色紙一枚 ほし合をうつすたらひに吹落てふとんをきする色紙一枚増盛 しつほりとほし合の夜の秋風に紙をもまるゝ笹のたんさく く六陽園紫〆 松代 哥つけてきのふさゝけしさゝのはもしをれてみゆるほしのきぬ〳〵 蘭花亭光興 伝々 いく千代もつゝきの布をおり姫は願ひのいとやたてぬきにする 梶の葉の紋日とほしのけいせいもはてな花漿を打かけておす島人 すヽカリヤ かさゝきやもみちはかりか下界にもひきてたむくる琴の八橋月の屋児遊 たなはたの哥をかくてふ硯へもほしをやとせる芋のはの露笠人 此やうにあひ給へとやかし小袖上着下着も二つかさねて そのかけをうつすたらひの水も又あくるをいとふほし合のそち 越中のふとしをかきはあふよはのさそみしかしと早やおなさん川舟 彦星のひくてふ牛のよたれより願ひのいとをくりかけてけり枝足 羽去るさへけふたなはたのはた〳〵と俄普請やかさゝきのはし 賤の女の手向る帯はたなはたのたなのねものゝほし入純子穴住 天の川ほしをわたさん手向にやきりこの舟へつけし梶のは益久 もろともに首たけはまり給ふとや天の川瀬をつたりあふほし浅草 本玉のたまのあふせといそくらん目かね二つのほしの心は高岑 そなふるも瓜柿西瓜桃に榧かす〳〵ちきれほしのあふ泣おなしく 張塞かのりしはしらすあふほしの中はうきたるきにはあらしな松なしく 錦なす橋はわたるな中したへん天の川原にかけしもみちは正住 おりたちて天つほし合にかさはやなとしふる池の水のあやをも阿房 たなはたのつまゑ衣きても猶なるゝ間なくてわかるそうき これも又もみちのはしかかし小袖地赤をさきと竿にかけては梅邦 人しれす琴をやほしにたむけなん雲井のてうしよくあふよはゝ たんさくも色紙も風に吹ちるはまさしく旱のちきかなくし便々台 女夫竹まつかこよひは此やうにひとつねにともほしやおほさん升成 おりひめも遠き思ひをしつはたのひをかそへつゝくれや待らん由都留 さかさまにみへても天の川水にもらさし物とちきるほし合 こよひあふ二つのほしの影絵こそたらひの水にかつてもされ軒風 たなはたの天の羽衣まれにきてなてまはさるゝけふやうれしき戯気 たなはたのあふをねたむか一めんににらむやうなるほしの光かは江都閑常恒 たなはたのむつこと聞てたまらひのちうをとんたる星も立けり燕子楼 月かけをはつかしさうにたなばたのあふ夜はかさすむら雲の袖壺下園大丸 一とせをこかれてつらきたなはたのこかれてうれしつまむかへ舟吉住 萩風にする萩の葉音も上下の礼志にまかふ竹の初春仲垣 神風やいせ路は浪の白にきて秋のかしらにそよく浜夜臥竜園 山姫のお入りと秋のさきふれにうきたつ風やをとり園萩梅秀 はや秋の生れたちより物いうて人おとろかす萩の上風燕子楼 萩原に瀬もせにはらも又かへられし玉川の萩みやきのゝ萩三重丸 秋風の門にたつころ何本もいろとりてさく萩の錦木抜満 朝寐そとととまる小鳥やゆすりけんおきあかりた露の萩かへ長丸 紫のうへなき萩の色なれは秋てふ文字に草のかんむり これそこのつゝれの中の錦とは賤か軒端の秋萩の花里石 茶たて虫なくてふのへの萩原はけに紫のふくさかとみる照住 枝は筆の軸となれはか上露に鹿の毛ぬらすみやきのゝ萩東雄 都へとのほれる萩かむつまは女なからも関はこゆへし東田居専樹 さを鹿とゆふへ〳〵にそひ寝して露を孕める萩か花つま艶好 女郎花落馬せしうちみにねりてつけよとかきはたの色にさく女郎女郎 おいらんの印か露にうつりたるほしいたゝいてゐるをみなへし六々岡 彦星のあふ夜の風にをみなへしきをうこかしてゐるもおかしき友之辛琴平琴琴 薄 通昭とあちらこちらに風ふけはをみなへしから落る白露鳴海 物いはぬかたにはあれとをみなへし秋きにけりと咲てしらする三友 二季鳥わたらぬさきに七くさの女らむ生んひときさくなり盛気 逃水のゆくへ所か秋風にすゝきか浪をみするむさしの行竹 今すこし買うてとよへるすゝきうり籠の中でも招くおかしき真芳 実盛のしらかとみれは小すゝきも萩の錦のひたれをきつ六々園 なく虫の声にあはれやそひぬらん尾花も袖をぬらす秋の野藪蚊成 オク郡山 うつくしくそのうらことに玉おきて孔雀の尾花みたす朝露同房真似保 秋草の浪にひとつの嶋すゝきあはちむすひや露の白玉鈍々亭 此末の戸のさして馳走はなけれともおまぬき申す風のにすゝき吉秀 蘭むさしのをわけ行かたの名をとへは川越ひらの藤はかますく折安 種園 槿もろ人のめをさますのは渋茶にか一把のたきゝにはの朝がほ梅樹園魁 桂 朝老のさかり見はつすいきたなさ笑ふ時分に尤は笑はす るり紺のさつま茶臺はにはなより先めのさむる朝皃の老戯気 袖垣の袖にも今はかくされす七月めにはめたつ朝かほ草浪 袖垣に竹の春とて朝良もさわらひの手にまかふつるき静 刻限のたつにさけはかつるの手に露の玉をもにきる朝皃永雄 鉢植の朝かほはりをくらかなりみそきは過し跡のまつりに乗康 尤はなりとめつかのもむへ朝かほはつるさへ垣へわたり物なり 老となる月はまたきにさもあらぬ日をとゝてしわをよする朝臣 おしろいもまゆのけはひもはくる頃口へににさく朝かほの花卯時 朝寝するわれかあらすは朝かほも秋の哀れに何笑ふへき増盛 つかの手をにきれは妹か袖垣に顔をかくしてわらふあさかほ夢成 植木やの肩にかゝりて手拭のしほりにみゆる鉢の朝かほ千石 化粧する水ほと露もあり明の月のかゝみにむかふ朝かほ壺保楼里住 おきてみしよへの紙燭もそのまゝによりのもとりてひらく朝貞峯高 朝かほの花は朝寝の世の人のめもさめやすき花の紫隣 目さましの薬にせよととなりから露をたしたる朝参のちよく笑門 源氏てふ垣にからみて朝な〳〵さく朝かほもまきの名にして裏行 たてこめし霧のとはりのつよけれはそここゝさきし塩の朝貞ぬかこ 朝かほのつるはふとしのひもに似てしほみし尤は越前の形り 狐つかつかののひたる朝かほはこん〳〵とさく庭の袖垣呉竹円 沓ぬきの石のあたりにはひかけて二三そくさく朝魚の花蓑丸 雫たるゝかきねにひらく朝興の蛇の目や雪の雨のぬれ傘石根 袖垣にひらきなからもひる迄はたもとゝみへぬ朝かほのむ枝樽 くり出すすゝきのほわた手伝うてつる打のはす朝皃の花可し君丸 袖垣の内よりつるのはひ出して風しほりにさける朝かほ矢坤唯仲 おく露にあらふやうなる朝かほを手水つかひてめつか庭寺光蔭 草花芹なつなすもめてたく過て又雁の羽たゝく秋の七草桃三千寿 朝皃のさかりとともになかめんと門の戸たゝく七里の国竹房 仙薬のある月かけをやとすなり亀の尾花や鶴の萩かへ六々園 秋の野は御所にも似たり草花にうこん赤染紫紫広丸 露 虫 つみてみんまた打雁も唐土よりわたらぬさきの秋の七草荘蝶園 秋風のふくろ戸棚の絵にも似て引てのみゆる七くきの花元有 おく露も龍のつかめる玉とみん秋の錦のえそ菊の花摺楽堂 よるをひるになす月かけを宿すのは人の寝る頃おきし白露玉繁 竹の春ひな棚とみる萩かえにこほるゝ露も豆いりの如新玉春龍 夕露のなりの光りは庭の面に薬師といへる草のはにおく まめなりとみゆるのもむへや朝ことにはやくおきぬる道の白露高岑 月の中にねるてふものは白魚の星からそとる露の丸薬米尚 きぬたうつひゝきもたゆる朝またきつちに音なく落る白つゆ高丸 権おるも蓑きて居るも馬おふもみなのり合の虫篭の舟荘蝶因 むらあのあとの祭りにかも山に声をあらそふ車とほろき乗康 ちりりんとなく松虫の音色にて舌をまくらん軒の風頭おなしく 秋風に尾花の袖もやふるゝろつゝりてさせとさり〳〵すなく髪児丸 源氏なる椎か本にてきく物はつちなる巻の鈴虫のこゑ浮丸 のむ酒の肴にきかん松虫のちんちろりをもかへてくまはや峯高 むら雨の秋のゆふへに軒ちかくふり出してなく庭の鈴虫煉満寿 仙フ 声のあや虫の夜なへのをさの音にのへの錦やおり出すらん 柳葉堂丹守 秋の夜をなきあかせとも月かけの霜には声のかれぬ松虫 秋風のふくにつけても琴の音のさまをなすのゝ松虫の声音邪 朝またきふと目のさめしきり〳〵すねたらぬ声や古打の音 くたひれたおのれかのらんやうもなし虫をたつねてあるくからむ 賤の女に手つたひふりやなく虫のいとはり出しゝ秋の夜仕事裏行 此野へにやかてにしきやなしぬらん秋きぬいとのはたおりの虫常人 小すゝきの葉にそおゆひをきり〳〵す秋の夜いたくなきあれらし山辺奇侭 心よく出て夜ことになく虫もひるはかくれて草のねはかり新木楼宮見 かつまたの池の堤の葉かくれに汝かひけなてゝなくきり〳〵す万守 揃やケタ よし原の日本つゝみの虫えらみ是もかへさはかこてとはせん 竹葉亭陽記 サカヒ 蜻蛉づらなりし雁かりかは片かなのキのもしなりに飛ふ秋つむし 中元文月の伏はきたりいんきんに一こしさすかちうけんの節な宜風 草市なき人へたむけの物をひさく利は竜の草木のかけ手芳 花売の清きはちすを心なくきたなくねきりかふやつやたれ松なしく 草市に賑ふ人をおしわけて馬ちや〳〵はみな真菰なり堅城 いくたひか袖すりあうて紫の萩の花まてひさく草市双紙亭 魂祭なき親のくへきしるしは蜘ならぬ葉に糸をひく魂棚のはす聞左 目にみへぬ物とてさらにおとろかす秋風たちてきぬるなき魂軒風 松虫の症をたゝいてたままつり草野のかけの人へたむけん なき夜のきますとさけはたま棚の遠きにゆきて遊ふへきかは髪児丸 露とのみきへにし人をむかへてははすに涙の玉そなかるゝおなしく かなしさの涙はかりかこほす茶も蓮葉にうかふ露の玉棚早丸 秋風に扇わすれてうら愈に仏もてなす祇王寺の尼一円岩 雪ならて迷はん道のしかへにとそなへてまつるたま松の馬永雄 なき人の数をうそへてそろはんの玉棚かさるあき人の家連樹 とんふりの手向の水にかけとめて八百やからひくたま棚の馬成丈 いきみたままつれる膳は子ともちのとゝとていはふ盆のめてたさ塵外楼 膳椀のふた親いきみたままつりかけす抄うていはふさし鶏津吉 なき人のうかむしるゝははちすなにに米のほさつものする魂棚千柳亭 かさりおく茄子の馬よりうら分に足を棒なる棚経の僧岩井霍摩呂 たまたなにそなへてみへし枝豆は瓜と茄子の馬にはますか桜露堂 たまたなにかさりかけたかさうめんは落る涙の瀧の白いと孫月 仏まつる中にいはへるいきみたまこゝらかうまいさえ七界なり福丸 極楽の幸六一家のたま棚へちかいとなりの波めさか出飴に仕緑々山人 精進もおちすに分は過古帳のことしみて古きたままつりする竜の屋 念仏の外に馳走は何をかな申やうなきたまの客人朋来房 家々の門はさひしき迎火やきへにし人のたままつる日は虎住 たままつりものゝ具かひに駒下駄てのり出したる女武士あり山守 ありし時すねかしりとも思ひ出てはきをは親にそなふたま棚陽記 燈籠たま棚の駒やいさみてくるふうん花をちらくきりこ灯籠甘栄金安丸 まつらるゝたまはさもあれよし原に苦旱の罪はさへぬ灯籠小鞠 両方へふりわけ髪もおも白し井けたにくみしさりこ灯籠 戸をさゝぬ軒につるさんすかし絵の鳳凰ますむきりことうろう とうろうに来てくむ酒の中の町てうしの外にかはりめもある喜好 たまるなへたむけし馬に引かへて風かあふりをあつかとうろう唯仲 盆踊心さへうきにうきたつをとり子の手のまひ足のふみ月のそら髪児丸 浜萩のいせ音頭とてなにはなるあしもそろへてをとる分の夜飯持 夕くれは花をかさりしをとりこのちるかとをしむ明六つのかぬ刀子 たまるなの馬も大鼓やたゝくらんをかしみのある疑目をとり行竹 心王の日はをとるをとめか柳こし手さきも風になひくかとみゆ六児園 よき妹かなやめるさまに手拍子も小町をとりにつよからにうつ増盛 なきたまをおこつけにせし金踊見る人の目の仏よろこふ 一横ひさくわきも休みて今三日人を引出す木曽のをとりて百羽 なきたまのまつりにおのかたましひも飛してさわく鳥の踊子清伎 輪となりつ筝となりつゝ雁かぬのひたひならふ音のをとりこ穴住 いせなには名はかはれとも分立の夜にあしをそろへてをとか子ともら盛砂 さそふ人あらはいなんと夕まくれりにきはしき小町をとりを元成 神風のいせをとりにはむかへたる仏にるすをさする心との夜便々台 十四五をかしらになして小娘の八つ七つ迄をとる分の夜摺乗堂 八朔竹の春来しそと梅か八郡にさきはらるして匂ふ朝風竹孝 クハナ よし原や老し心の駒さへもけふはまよはん八朔の雪倉積 みな人の手すりによりて見はやせる俄はしちに菊迄の花 カヌマ 甲フ 秋田山田もか賤のますらをいとまあれや鳴子の総を風にひかせて多利雄 出来秋あたり年田善も高きまくらかのこかぬ色そふ稲も十けり麟馬 ホハラ 稲の波に賤か小笠は舟めきてほをとりあくる秋のに田かり八桐 さをとめのかふるし笠は出来秋のかゝしとなりて出るに山田竹盛 夕くれはせはしや早稲をかる賤かいそけはまめる秋の日の口へ草香楼下風 稲妻いなり山戸帳にかけし金襴のもやうもしるき稲つまのかき弥佐平 光りたるあとはくらまのつゝちをりあちちまかかいなつまのかけ六玉園 おのつから文字となりつゝ文月をほくにはなさてわたる初雁李郷 竹の春といへる秋来て雲井からかき初すなか雁かぬのもし葛羅園正木 たんさくの雲の中そらなかむれはみそひともしにわたか初雁片丸 むら雲の袖から出る文月の月によめたる初雁のもし文門 真葛原吹こす秋のはつ風にはのうちみせてわたか雁かね千柳亭 をみなへしさきしさか野に落ぬるはこや通昭か衣雁かぬ糸頼 松風の琴柱のやうに峯こへて雲井にならふ雁の一つら富久留満 帯となりたすきとなりてむら雲の袖から袖へかゝる初雁初風 すみよしの橋のたもとにみゆるのはらくかきをす戸の玉つさ仲吉 高い山子かい海路も毛衆をはしをうてわたる雁の一つら寝覚 大文字をかくともみへて雲の袖まくりあけてそわたる雁かぬ唯仲 たかんなもいつしかのひて此ころは筝となりつゝわたか雁かね雪道 駒迎抜当に仕合吉とかゝねとも仕合のよき望月の駒頼房 曲のりのはしこのわさは何ならん雲井へのほる望目の駒一二山人 月 月まはゆしと夕日にかさす手のうちをかへして招く山の端の月鈴山人 おく露の水かぬいれて落かゝる月をさかさにかへらせまほし有武 あすはもちになるへき月のさやけさをつく〳〵とみか待宵もそら見る女 月見にと出ゆくあとも影さへてさすかぬたくはあらぬ女房 西へゆく事はいとへとすかるへき雲の袖さへ中秋の月 これそとてあやしきくもらみへぬなりさやけき月のかつらきの山 朝磨になる雲は錦とおりこめて西陣にみる月のさやけさ うつくしき月のをとめをこひしたふ人の鼻毛もみゆる秋の夜跡成 見覚へし松はともあれむさしのゝ枝道迄も月のさやけき強気 無遠慮に此姫松の。また間へ足をさしこむ月のかつら男広丸 こほ〳〵といひきはかゝぬ月の夜や夕魚棚にかけはもるとも一二山人 ねもせすてこよひおきなと名にもよふ犬ほと月の雪にくるはん緑々山人 月のうちの薬はしらす丁稚にはまつねる数を申つけたり魁 鮮朝のあら海を出て吸物のうしほにうつる月のさやけき裏行 道温の母も姫もよみ歌のいかに久しき遊ふ月夜はぬかこ 尾、 めさはりの松かへきれは是も又月の雪にてをりしさまあり蓑丸 旅人も月に心やとめられん一夜をあかす草わけの宿東雲房 秋の夜の月をは人のほめて〳〵ほめなくしけん鳴方のそう歌林堂 ちりはかりくもらぬ秋の月の夜をたかむさしのと名にはおほせし戯気 よるをむると思ふはかりの長さにもあかぬは竹の春の夜の月文丸 八月十五夜いけるをは月にはなちて芋くひし腹に放屁はころす十夜六書閑記筆 鳩雀はかりか月の十五夜はつるをもはなつ塩の糸瓜明来房 ひく駒の屁をひるとても雲の袖月のかつらのはなくおほひそ草浪 生酔の人うらやましふたつなきこよひの月をいくつにもみる葉康 はなたれて猶おも白し山からのこよひの月のわやくゝるらん万々成 影ひとりわれにそへとも秋の夜の月に用事の間はかけてけり稲雲平穏足 かはらけの駒をひくてふ中秋の月にこよひは雲のけもなし政住 もちの夜の月すみわたる松浦川ひれふる魚もみゆるさやけき催馬 もちてさしてひさく小鳥をかうて又もちのこよひにはなつ御社 月見よりひるもふから団子汁みそてしたゝうくふへかりけり竹人 焼栗はさつま火鉢にいけおいて豆のさやわる目見友たち芦の屋押照 そなへたる団子のやうな丸みにて尾花にそへるむまのゝ月曲成 こよひてか月の都は雲のきぬいくへかさぬる着たふれはなし緑〻山人 そろはんは横にねませて月こよひ目をはち〳〵とあきの夜の月髭親父 月こよひへちまの水の酒ならは思ふ壺にやいらん生酔裏行 から哥をふしてめてはや月こよひてらすは世界一とうの韻おなしく 月ひとつみるとて数の酒樽をあけてそかへる十五夜の客朋来庵 みな人のねもせてめつる月に又ねつけとてさす十五夜の菊千律閣 すさましき物よ月夜に糸瓜から四十女のとるけはひ水米守 けふこそは夜もふかしぬれ望月の花子はかりはぬる物にして戯気 ひとゝせの月のなにはの橋つめに雲の出入はあらせしと思ふ万守 擣ヽヲカ山 くむ酒の肴の硯ふたつなき月には雲のかいしきもなし 喬松園広孝 秋風稲のほのいろつくまゝにたん〳〵とこのいりてくる小田の秋風千草浦成 北ゝつ山 すま寺にあらてつまこふ鹿笛に青葉を染る秋風そふく氏丸 くひな来しあとの軒端に秋風の又たゝき出す風鈴の口 柴の戸へおとなふ盆のかけとりに胸おとろかすけきの秋風紀八重丸 松代 不知役月関にそらは野郎畳にますかゝみすこしへりあるいさよひの目蘭菓亭 よへよりはこよひは時のおくれしとかけて出たるいさよひの月真倉 秋夕ざひしさを風にさそひて桐下駄のはおと耳たつ秋の夕くれ永雄 みにならぬ客にも秋のゆふへには物いふさまのくるわさひしき静广呂 きりはりに花も紅葉もなかりけり破れ障子の秋の夕くれ荘蝶園 むら雨にふりつめられてこはいかに霧たちかぬる秋の夕くれ玉駄 入相のかねよりさきにためいきをほつとつき出す秋の夕暮浮丸 さひしさに酒よ肴と鹿のみか銭もなくなる秋の夕くれ白魚 さひしさはその色としもなかりけり酒のきれたる秋のなくれ栗康 かくはかり秋のゆふへは鴫焼の茄子のみゑみの見へてさひしき きかぬ京になりてあはれや忍ふらん耳なし山の秋の夕くれ松花堂 霧の海かへるつはめにわたる雁二見かうらの秋のゆふくれおなして 沢辺から飛たつ鴫もたゝ一羽にはかにさひし秋の夕くれ富久留満 さひしさは遠山里の笛の音の鹿ともわかぬ秋の夕暮大平金武士武法師 淋しきは酒も肴もなかりけり女房の間すの秋の夕くれ多利雄 秋夜五十年栄花の夢も長き夜の秋にあらすは見づくさんよし幡馬 秋野さひらさにまぬく尾花やいとすゝき心ほそきは野路の旅人成俊 うたゝねのゆめ野をみれは秋草のめさむるはかり尤さきにけり池住 秋雨松茸のかさいたきし大原女も大ふりといふけふの秋雨友友 やかてかる稲にひとしく小田守の首かたふけし秋の長雨仲垣 わらひつむ夢見しはすよ手枕ににきりこふしの竹の春雨竹意庵 一壺の酒もいつしが此通りふつてさひしき秋の夜の雨仲住 鹿 妻こふる鹿をあはれとよそなから雲の袖をもしほか村雨真弓 つま恋のこゑより聞て荒れなはあはれをしらぬ人の鹿笛泥田坊 てる月の雪なにも興やつきにけんかへろとなきぬ舟の棹鹿静丸 岩ふかき谷へおらせはいく里へわれて聞ゆるさをしかの声乗康 さひしさをくるすの野へのすゝきよりいとほそ長く鹿のなくなり 小男鹿のつまをこひつゝなくたひに萩の袂もすりみたれけり岩垣 もろき紫の外にも鹿のつまこひに魂とはす秋はかなしき如雲斎楠香 たなはたとおなし星毛に煩悩をおこしてくるふつゐこひの鹿おなしく つまこふるしかのくるへは捨かまのすみや尾花の袖につくらし月丸 ねなからにあはれをきくも山にすむかひよと思ふさをしかの声松見鷹 山里に抜こもりからすみわひてしかのなく音に秋をしりけり古琴 ふりかへりみかや碓氷のやまとたけ吾妻こひしと壮廉なくなり戯気 よしの山春はわらひし花の香も秋はなくなる鹿の哀れさ小鞠 さを鹿は南極星のあたまほとほそ長くなく秋のよすよう つまこひて袖ふる山になく鹿は上毛のほしや石となからん玉丸 かすかのく秋のなかめは名にきゝし山より高きさをしかの声柳春風 汝か声のこたまをよそにつまとふと聞て男鹿の角やたてけん竹意庵 身のはてはまりとやならん汝は又くれに数あるきをしかのこゑ種丸 弓に矢をつかはぬさきに彼人の耳にたちたるさをしかの声中丸 もみちはのもゆるか中に立つゝも身をこかにうんつまこひの鹿高丸 筆の軸になるてふ萩の下枝をかきわけてなくみやきのゝ鹿玉光 枝角をもつ鹿の音もこたまして二つにさけし月の雪の夜唐琴 もへたちしもみちの中によもすから物をこかしてつまこふ鹿菱崎戒 筆は毛にまたならぬこも萩かへをかきならしたる野路のさを扉全事 人するぬ深山のおくの者かのねに聞耳たつる筈のきくらけ草香楼吉風 サクラ 谷川をこしてなきよる鹿の音は聞流しにもされぬ哀れぬ哀れき中吉 霧鳴子引あしもとからは鳥よりもむら〳〵空し野路の朝霧馬坊也 八葉の名所もきんてみつ海やかゝみの山もくもる秋きり益久 カ又一 桑おふる田のほとりさへ定めなくいくたひ雪の海をなしぬる壺仙楼積方 エトサキ 持衣みよしのゝ賤は大汗なるしつゝ故にめつく衣うつなり元有 狭衆の砧にとへるいなこ丸ひやうしうつなりよはのつちおと竜の屋 とくり形の槌てとん〳〵うつ砧酒屋もおこす月の番の夜増盛 上手ちやと賤か手おりのから木綿つやをいはるゝ秋の夜砧万寿々々 拍子よきりの砧をきかんとてもめんも耳をのはしぬる哉暗也哥 かしやりてかへさぬさきに隣より音のみ耳へもとる夜砧春里 から衣まけしとうてとくたひれてよわきぬを出す姥か相槌糸正 破戒せぬ比丘尼もなかきに夜すから衣うつ手や蛸になるらん泥田坊 姑の相槌すれは秋風も身にしみてうつよめか夜砧玉丸 手もいたくぬむけのさしく小夜砧力をそへてうてか山彦岩垣 たをやめの顔に似合ぬ鬼もめんこはき夢をもやふる槌音かみこまろ なく子をはすかす片手にせはしなくたゝいてねかす賤か夜炬燵おなしく 手つたひに馳走のそはをうつうちもつなきにいるゝ妹か夜砧 夜なへする骨はもちろん吸ものゝなとりの里に衣うつなり ひとつつゝ拍子かそへん十団子夜さら砧をうつの山里三年 から衣またから衣うつ音もころもさひしき秋の末つむ緑々山人 いよ染のゆかた打らし左八つ右九つの相つちのおと荘蝶園 あひ口の友の相槌おもしろく打あかすらん妹か夜砧袖長 真黒のやみのよすから打きぬの音はかちんの染地なるらら 高砂の松坂しまのもめんとてせいを出してうてる夜布歌業大一 槌をもて衣の耳をうつ音はつんほうになるほとにひけり峯高 うつ妹はさそかしたへぬ槌さるにわれも打くたひれしぬかへり 相つちは夫婦中よくこゑかけてをつとまかせにうつや屋様六玉園 月も笠めず夜はさすら砧まて雨たれといふ拍子にそうつ枝足 合槌は秋のきぬたか親和染よめにくさうにみゆる声め岩蔭 かんさしの胡蝶もいもかうつ布のもやうにうつる目の夜酢里住 われのみかとなりの人もめさましてまふたをたゝくりの夜姫 かゆ杖のむくいは今と花娵も柳しほりの衣をそうつおなしく ひゝきには横もおそれて逃つうんゆめを破れる里の夜砧真雅名 秋の野に七草おふる此夜ころ打はやすなり妹か夜枯枝樽 山寺の十夜念仏のさうはんにあはせころもやのりのよきぬた阿房 銀箔をうつ槌音にかよふなり光りかさぬか月の夜炬 よもすから鼠のいろの衣をもぬこせなかなる妹やうつらし糸成 槌音のひらくたひ〳〵月かけにさゝ浪よする志賀の夜根腹満 鴫 一神風のいせはまくりにはさまれて鴨もかんきんならぬ夕くれば 鶉つまや子をやしなひ顔によふ鶉見出す落ねのめれ世帯の中駄山人 あはれさに出るなみたの露はみ那尾花の袖にふける野うつか金龍 二幅対うつらの床にかけてみん荻の上風萩の下露東雲庵 なく浅ふけるうつらの床の山か草の枕やさそぬれつらん戯気 鹿をよふ笛の外にもあはれ野子がつらのふける秋の夕くれ遊喜永女 小町田の鼠は化して深草の里にうつらの来やしくらん跡成 首 咲おろす風にすそのゝ真葛原うちをみせたる甲斐のふのぬ成丈 はかまにもしたてゝふるくならはかうとうちをかへしてみを葛のは濡丸 あらはれし狐のいろにもみちするしのたの森のうら三葛のは 野介野わきしてころひし家をかたつける賤の手足あれてみけり六児岡 吹まくるのわきの風に鳥よりもかゝしのかさの飛てちりゆく聞丸 なさけなくのわきの風の一つ屋はおこしてくれるとなりたになし岩垣 藤はかまいえまくられてあし原のはきもあらはにみすかのわきか玉誓 のわきせしあしたもやろり音たてゝふき直したる賤か屋のむね種丸 鬼こもかあたちか原にのわきしてほねをみせたる賤かあはらや音躬 駒か原あらきのわきのふとたちて将棋たふしになれる草老中吉 野分する風の神らをいけとりて春なら花の王へさゝけん陽旭亭金長 木々の実をひろふのわきに山寺のくりの軒端も吹おとしけり八相 菊 翁草露の水はなたらすのは七百歳のとしよりのくせ伴刻 箱庭にさくもうつくし後の雛かされるころのきり秀兼山盛 きせわたをぬかする跡へおきとめてほうし計ともみる菊の露 七百歳いきのひにしといふ菊の酒に咄の聞にも長うなる聞丸 さひしさに露ほとものめるくれのまきれにはよき菊の盃戯気 うつくしく花さくや姫ふしの根に立ならふべき高作り草おなしく いにしへの彭祖かうその八百もなかきためしにひくときく哉 云ナ 孕は似ても麻にはつれす蓬生の庭の小菊のねなからそ古く一重金行業 長いきをすなる菊とて仙人のいりたる壺の内庭にきく永雄 下露をなめておのれも添竹に兼のちとせをのはす園守船則 星なりとたれかよみけん白菊はわか目に月とみゆる大輪倉積 花の名もひぬりてつけし札紙のお初穂ほとにのこる白きく積業 打むれて見に来し人も前ひくらならひてめつるきくの本室一円宿 延命ときくの下水両手もてすくうてのむは歌のかわきか浦戒 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ひちをまけて枕とすれは香そ匂ふたのしみは此中庭の巣かみこまろ 千代のためいさ下戸とちもなめよかし薬ときくの盃の露片丸 しら巣の霜よけにせし菅笠は花のとまりのめしるしかそも明来庵 もとゆひに霜のおきける菊つくりなめたる露のむすふなるらん古琴 花といふ花におくれて花といふ花におくれぬ菊の花の香六々園 一りんもあたにはせしと花いけのつゝにいれたる銭菊の枝藪大事左大太郎 露なめて老せぬ用心せよやとてこけぬさきから杖つかす菊 熟界の苦はすてぬれとくふ物もくはてつくりしこかぬ兼るも 渕明か無絵の声とともにめてしきくのさかるもひかすたるゝむ 閑におふる花の弟の曽我菊にとまきてふは紋所かゝも六兒園 ゆめむすふてふ〳〵のみかつらなりし下戸もゐふれる菊の益六玉園 信ゝ上田 菊もはや霞のおきなとなりぬれはころはぬやうに杖をつかせつ両道兼磨雁呂 因守かをりてくれたる袖の下はな薬にも菊の露銀影法師 さく菊へもちたる杖をつかせけり花のさかりに老を忘れて竹孝 務みてあきの方へとうゑおきしきくには花の大小もありおなしく 雨障子きくのためには五方丹はなをたすけし礼は千金弥 たはこにとつめる花より雨おほひの障子に油ひける菊園葉康 千代をへて山に自在な翁草にほひは風にのりてかよへり二喜 手をいれてあけまきともかとるもむへ唐のまかきの菓子袋兼新風 川サキ 七草と一枝をりてとりかへん小栗の寺の銭きくの花花豊 守か自慢の外に又一つはなにかけたかきくの染わた裏行 けふり草くゆらせなからなかめはや花のとめなる菊のさかりはおなしく そのむかし穀祖か杖やのこりけん山路のきくの花の添竹竹岩平和則 新へ高田 積善の家によけいの花さきてとし〳〵ふへし庭の浅草寺隣軒其丸 菊つくりいたらく霜の翁にもわたかふりたき朝のさむけき友鶴 九月九日菊の酒けふいはらんととり出してきやわたぬかす箱の盃聞丸 下戸なから薬ときくの酒のめはゑひもあたまへのほかせくの日恵美成 仙フ 菊の酒過しゝけふは皆人のたかきにのほか猿にかも似る タカサキ 異国にもかゝるためしや九日のけふはあたまにのほる軒酒頼法師 犀 きく酒の肴ぬすみし猟おへはこれもたかきへのほかせくの日 テハロヌ けふせくとくむ菊酒によはひさへ高きにのほる蓬莱の山 花園にもとめしけふの酒のいろ黄菊に蝶の白たへの袖臥竜園 フチ五 猩ことよふめるきくをなかめつゝ酒にひたりてあそふせくの日 九月十三夜放生会とりなちかへそ浮の夜もめははなされぬ月のさやかき文齢金 秋もまたひなの棚田にかけうつる蛤なりの後の夜の月葉康 三日月のころよりいつか〳〵とてまちしこよひははや十三夜雲井久方 雪とみて守るはよけれと氷室山ふたよといひて月なかくしそ有武 こよひこそおしあうてみれなる油にも味噌にもなれる豆の名月泉陽軒北端 望のには及はぬかけも秋の夜のあはれはみちしほの月かけ泥田坊 戸障子をあけてめつれはのちの夜の目にひつみはみへぬしてつけ永雄 むさしのゝおなしはちより生れ出て二つおとりのほの夜の月文門 手習の筆の山よりすみあかる二度めの月の影のきよかき呉竹音清 樽ぬきの柿をそなへてなかむれはしふはとれたるのちの内かけ周守 八日市 風の手にこよひかつらの枝雲をはしき出したる豆の名月春月辛梅成 十三夜月見の酒の肴には口をあかせて出すはまくり千條 十三夜月に遊ふもよし原ややはりいひつな金の光りに聖外楼 紅葉目から火か出たかとそ思ふ手折るみてかゝらを打てちらにもみあは六々園 蛤の時雨に酒をしひられて顔もいろますもみち見の下戸増盛 十五 春青斎画 にしきする 紅葉に松は 紅葉に松は はつかしと 瓜くはへしや 琴の音も なく 尾州 月花菴雪丸 十五 わせみのる あとに鳴子の 縄きれて 命をつなく ギフ 雀何百 梅樹園 椎林園 もみちはの日てりつゝきてすこしつくそりかへりけん通天のはし高丸 盃のそこぬけ上戸つれ〳〵の秋はもみちの色もこのめり若女 花鳥のをこりもつきて赤はたのもみちの代にそなひ山雅綱代木 何事も心のまゝにたのしみのこかねにまさるいろのもみちは塵気 諺もちかふたか尾のこゝはかり日はてるとのみ思ふもみ寺は刀子 錦なす紅葉の小枝をるをみて堪忍袋やふる山守仲垣 布子にはまた対面をせぬ人のもみちの錦きてかへる秋おなしく 家つとに先とりあへす鼻紙のかみの間子〳〵うつすのみちは盃止 秋風にもみちはの手は入日をもまぬきもとすが夕くれもてる正木 ちりのこる木々のもみちの色のみか落葉ももゆる山守の宿一杯義高 鮎よりも秋さひぬらしたつた川流れて海へ下かもみちは中住 しら波のたつたの山のもみちかり道ならぬ道も入りてそれ燕子楼 一枝をこはぬさきからくれなゐにもみちかそむる山守か顔行竹 万灯のよるのけしきを日にてんしてらす高野の山のもみちは奈次初成 ともしせし山の橋も秋くれは又もやもゆるもみちはのいろ長人 故心へかへらんとての冬用意もみちの錦きたる山姫岩垣 大枝のもみちのいろをゆつりけんかつかれてゆく生酔の顔連樹 見わたをはもゆるやうなかもみちはをけしてをかなとしかる山守煉湯寿 村雨にあらひ朱かとも色つやのますをみ山のうるしもみちは一二山人 枝かはす松はもみちのあかゝねにふき出たりし緑青のいろおなしく 善酒屋かつくる山辺のすてかまと秋はもみちのかり世帯なり駄山人 ふりつゝく時雨にこれも染ものゝあさて〳〵とのはす紅葉見荘蝶園 一枝も手をらせましともみちよりむねをもやせる秋の山守蓑丸 もへたつとみゆるいろなる紅葉山ひをうつ人のなとてあるべき常人 火にもゆるもみちうつれる谷川の水もぬるてにわくかとそ云かわつの屋羽穴 鶏のとさかのなりのもみちはゝときをたかへすあけをしらせつ梅の屋香み丸 とくおきてもみち見よとや朝な〳〵あけをしらする山寺のねおなしく 雁かねのきたよりくれはもみちはをひともみなみにゆく秋の山広孝 たく火かとみゆるもみちにうかされておのれか袖ももやす吹から静丸 色めてゝ一枝こへはもみちみの赤目をしたる山守か子ら千本 もみちかり酒にいろなす生酔やそめぬ物には松に青へと 何ものか酒をのませて狸このちらほにそめし峯のものみな もとの歌末の雫にそむもみち秋にはおくれ冬にさきたつ川江 しら波のたつたの山の夜あらしにもみちの錦はきとられけりおなしく 山ふかてもみちかりしておもしろやよみたる哥も鬼ひしく体三子康 さんこしゆのいろの紅葉の枝をるをくろん坊かとみしは山残正住 柞 しからみのもみちなかれてたつた川浪に錦のうきおりもみゆ加賀笠盛成 もみち見の酒を過して上戸のみ青める顔は目にたつた山跡成 くむ酒の興に山路の女つれかさすもみちのひわたしそする鈍々 手のひらこと見なすもみちのはの上にまろめたやうな露の盛そふ双紙亭 つまこふる鹿のなく音を聞しみていろけついたる山のもみちは吉人 こたつた路やくれゆく秋のかたみとて袖迄風かいるゝもみちは大石昔也 もみちするはゝその山のふところに快童丸のやうな杣の子春里 そたてからはゝその森の若木さへなへてそのきにそまるもみせは谷住 孟軻氏かはゝそのもりにそここゝと所をかふるもみち見の興千柳亭 葛紅葉松さへももみちするかかとみゆる迄かうまか鶯のまきそへにあふ 山姫のにらきの帯か松かへに一筋かけしつたのもみちは寝覚 杣人のつたひかぬたる岩かねにはひあかりたる鶯のもみちは赤松下住 評してつゝめるひなの一つ屋は後のかさりかつたのもみちは清伎 暮秋烏瓜いたゝき匂う霜おきて秋はいつちへかへりゆくらん千柳亭 風うこく雲のはたてに武者の名の木のはゝはつとちりて行秋孟止 野こも山もそめつくしてはしら菊にへに迄さして秋そくれゆく草浪 さきへゆくほとかなしさもさひしざも段〳〵せまる秋の日の数燕子楼 ゆく秋は声もかれのゝ気つむしきれかゝりたる露の命毛棟高 さひしさもはや入相のすてかぬに秋のみつきわくれて行らん常成 夜あらとにかゝりけしつゝもみちはの落武しひきて松や行らん調讃法師 此日ころ梢に霜のふるさとは山もにしきをかさりゆく秋筑位亭異住 あはれさはつまこふ鹿にむとの声耳にもとめすけふかへる秋涼 琴となる桐の一葉もちりはてゝ引とめかたくくれてゆく秋 すかれとも尾尤が腕に及はしな袖をはらうて秋や行らん笑門 ゆく秋をおのれよひかへさんとてや声をからし庭の夜のは しら露は下和の玉かくれてゆく秋の日あしもけふはきれなん ゆく秋のわかれをしむかほうけたる尾花の袖をぬらす夕露梅の屋薫 質にいれし露といふ字の流れては秋をとめおそめ菊くなし跡成 こき出せは虫のぬかれて秋にたゝわかるゝこゝちすたの川舟糸正 くれてゆく秋のかたみにおくものは庵の草葉にのせし朝霜霜羽風 角融焼仏に似たる土俵へさしきよりこくうに花をふらす南刀場 あら駒のまへ髪たちも玉しきの庭にめされてのほる関取升成 放生舎八幡の秋にいけるをはなたれて峰ようさをはらすなるへし夏躬 閑行儀たにしらぬ山家の子ともらに手をつかせたる枝めいか栗中丸 をさな子をつれたる母も深山路て手にあまるほとひろふ落くり児遊 つゝちをり馬かよはぬは落栗をひろひなからにこゆる丹波路隣 柿 茸 さゝ波を枝にうたせてむら鳥の烏かあらす志賀の御所柿葉〆 心なき子うももらうて渋柿に口をとちたる秋のさひしき列樹 きやら柿と名をよふとてももきとりてからきに逢なゆのあけまきぬかこ 秋雨の此つれ〳〵もおとつれてさひしなからもおくる初たけ笠人 花ならぬたけの匂ひや味ひの秋もよしのゝ千本しめち海 山守か鵜のめ符寺のめれかる外に蛇の目はあらぬ松たけのかさ 下露の雨もいとはしそれそこにほすゝきのみの初たけの笠濡丸 時雨するいなりの山に松たけのかさからはやといそくもろ人千柳亭 岩のはなのたかき所の天狗たけかきわけてとか木みのはちは うつらなく秋の野山をさかしてはやはりゆかりの峯首とる兜遊 秋の山あまりに茸をかり過て月かけ迄もかりしかへるさ松の宿 柘榴つま戸へももへ呉かりうつりけり邊の柘榴の口をあきては晴也歌 蓮子びらきなをぬまとなしては清水にとんてみせたる朝の蓮の貴谷住 落鮎わさはひを節るよりはやうさそんと谷川のせを下さひ鮎泥田坊 ゑとり川やなにかゝれる木々のはも鮎もさひしき秋の夕くれ百羽 新酒男山と名をはよへとも新酒はまたきのよわきをみなへし文葉康 のまぬとも舟てつみくることく酒頭にやのほらん龍の五人梅邦 秋雑文月やおとしておいたかんざしも幸便にませませされ井戸へ正木 名所の鴫たつ沢に尋ぬ来て旅の日記さへはしかきをよろ木工女 菊の日の小袖や出来ん爪さきにほしのみゆるをいさむに娘有武 拾送 残暑しけしくつかふ角のかなめはなれてものこゝめへさはいまたゆる 七夕たなはたにふとしたむけしから人のふりしむかしを忍ふをよしさ元有 あひ給ふふしおほかれとなまよみの甲斐の糸をそほしに手面兼蘆麻呂 草花そのいろのこき此志にさくもむへ江戸の自慢の萩の語絵 揺牛のやうにふすゐの床の間や萩の錦のかさぬふとんは塵外楼 女なら品定めをやせんさいにさくをみなへし萩か花つま出帆しく みやき野代たちてはる〳〵長ひつや都をしたふ萩の花つま楊月 むせる栗のことくそさけるをみなへしなまめめめるとなと人はいひけん中住 くものいはさなから虫のたれ石とみへてや野路にさくからむ積方 をみなへし花のうしろにのこりたるあつさにくぬるひるも一時仕 鉢植によくも咲たり二つ三つ四つとはもたぬ朝かほの花万歳金福門 しら露の玉をほさきにうけたるはこれや風雀の尾花なるへき よふ声は萩にゆつりて川向ひ舟をやまぬく風のにすき糸頼 フチ丘 秋ふかみ月には老となるもむへしらかをみたすのへのにすゝき正住 老となる月を宿してほすゝきののらかをみする秋のむさしの星丸 和、タカタ ちよこ〳〵とかふりふりたるほすしきをうなづかせたる露の白玉佳気世帯丸 於達 露 虫 松代 心なき身にも哀は白露を涙とおける鬼の志こ草光興 エトサキ 秋の野の花のにしきにおる虫のこゑにあやあるしつはため山音澄 門口も秋の夜風のさむしろに戸をさせ〳〵となくきり〳〵す調雄 氏家 とふ人もなくはたおりはその村のをさを相手にすたく山里文車 落書の壁に声あるきり〳〵すたかふる筆の化してなりけん青松園友由 むしの音のあはれな声に壁のみかほろ〳〵〳〵〳〵と涙おちけり恵美成 秋の野のにしきをつなくさゝかにのいとよりほそきはたおらの声飯持 やるかたもなき秋の夜のあはれさをもらひなきする虫の声〳〵六児園 けいせいとおなし夜みせの鈴のみるやめきなふ虫のくつわやか軒桜露堂 草枕旅日記しるに矢立にもすかりつゝなく筆つ虫の音早秋 夜角力のつくす手しなに左ざせ右させとなく虫のこゑ〳〵翠庫江 くれ竹の春としいへは賤か屋の門にもたつる松むしの声春龍 雁 立よりてきかんとすれは駒下駄をあちらてきくか虫のひそす 行灯の火はねふるころ灯心のほそきねをさす油こほろき文盛 山鳥の尾花の袖にすかりつゝ月のかゝみの影になく虫塵外楼 らふそくのあかりをけせは草むらになく虫のねめらんと聞ゆる里石 虫うりのさひしき秋もにきやかになかせてひさくるやくし道吉躬 いとの子かいたつら書の気つむし野守宿のかへにきてなく西来居 おもてかと立よりきけはうら壁に又かへしてはなくきり〳〵す黒金 前と後に対をなしつゝから哥のこしの方より来戸かぬ后住 北国の文使する雁か来てわれに無心の歌をよませつ跡成 竿とみる雁もくるわのそろとてか八文字にそなりてわたれる てる目の雪のしるしかこしちよりさをになりてそわた声かぬ陽記 秋風のたよりにいそく気の海あとやさきなる雁かぬのもし 月 そうの海の月の御舟やかたふきし棹を流してわたか雁かね真芳 くまとてはさらになけれと月のわをみるもこよひの肝とらなり左大尽 さやけさにうかなありけはこしさけの緒〆もひかか三五夜の月暗保 てる月の雪にはこよひ岩の竹ひしきて芋を次む子ともら楠香 鶯も出よこよひも竹の春月に邪磨なすくもをとらせん長人 秋の野のうつらはかりかあけぬれは月もなくなる深草の里おなし その光り下和か玉にます月の邪磨なきはされ足からの山元有 月見酒天つそらをもゑはせはやうきむら雲の足たゝぬ迄八重丸 棕模はしらすおのれも手を出して及はぬ筆を月にそとれかみこまろ 見せはやと小嶋のあまか心さし松の葉にさへ匂ふ目かけ浅草藪 とうみても月にかはりは仲丸やあつちからてもまた日本も琴子 忽におへる鷹の羽すゝきそなへつゝ月にへちまのつるもとるなり左大尽 赤駒をむかふる夜には引かへて月の児そ田西にはらはふ春里 十五夜の月にむかひてけしよりもあすのひるねの種やまくえ ひるほとにてる月かけをなかめてはよるとはみへぬ白いとの滝成俊 てる月にむら雲出て朝磨をせは雁またの矢にいておとせかし金満 むら雲の袖打はらふ風もかなさのゝわたりの月の雪には舞彦 もちの夜の邪磨に出たるむら雲もむかふる駒のかたちかみも竹房 いさみんと茶のみ友たちさそはゝや月の出はなもさた宇治の川文盛 東山かたふく月のさやけさにせくらへをせん塔のかけほし為継 月に逃て山の端みせぬむさしのは心のまゝになり平の哥臥竜園 山のはに入かたをしむ心から月の宴には出ぬ西行おなしく 清水のふたいはいふもさららなや月にうかれて飛鳥のかけ浜人 よるをひるにとりかへはやの物語にかつら男も目のをとめも捨魚 たれもみなにか〳〵しくそ思ふらんかゝかきやけき目にくまのい はれわたる月見の客のお出そとくものす迄もはらふに聞敷筆丸 行灯のあかしの浦は気紙にかきたてられぬ十五夜の月源蔵法師 たのしみはこれにてたりぬ上みれは及ふものなき秋の夜の夜の月紀八重丸 於処 稲妻もみち見にはやもきませと山の端をてらしてみする宵のいなつま正語有員 駒迎あふ城の関の岩りとふみすへりわらくつのひもきりはらの駒左大尽 うしとのみみことのりある秋なれと望の月毛の駒はむかへつ卯時 秋田豊年の功なる後はこれも又五湖へしりそく秋の田の水 すてられし涙なるかも小山田のかゝしの笠の目をもるゝ露蕗彦 山田もるかゝしの弓も出来秋をまとにあてたるやつかほの稲金丸 とよとしのほさつみのりて道はたの地蔵の肩もこすやかけ稲宜風 たち通しにせはしかりほにくたひれてかたしも秋はたふれかちなる片丸 御年貢に穴はあけしと賤の男かみをいれてかる小町田の稲波穂 めてたさは小田のかゝしの弓たにもいる事のなき秋のゆたき 豊うけの神や守りとなるこ縄小田のいねにも鳥ゐたつなり春里 みいりよき稲のかゝみし秋の田をみるに心ものひし賤の男文門 出来秋は作大将の軍配に小鳥をおふ手稲をからめ手真芳 秋の田にかゝむかゝしかひて弓もあたりと其ゆの女豊年の稲雪丸 賤の男かいねとるころは手つたうてかりてもみたき小山田の房清水舎岩雄 かり稲をあさる鳥よりおのか身のわきにおはるゝ賤そせはしき直正 松凌 秋野秋風のわたり物とていつしかに野も男江のにしきとそなる八重丸 鹿春日山もみちに手をはかくるとも枝はをられぬ小男鹿の角摺楽堂 一擣衣行列の足拍子とも聞ゆなり大名しまの衣うつおと木工女 ひやうしよき砧のつちのひゝきにてをとり出したる棚の大黒左解雄 中廿九 一紅葉去年の秋縄をむすひてしもみちは鳥の鳥の跡めきにけり鈴成 山姫の手おりのはたやたつた川ちらしもやうの秋のもみちは調雄 見わたせは格さくらももみちして都そ二度の錦なりける東雄 柿鎌倉のむかしは鳥もはなちしをうませてそとる鶴の子の柿松仲 暮秋なかれ行もみちのめとをおひてみんしからみかけよ秋のとまらは弥佐平 さからまにこれもかゝるかうる金のまこもの縄にさしゝ栗柿六樹園 冬の部 一 初冬鈴虫もなくぬとめしは神〳〵の出すみへゆきしなわのしかしかかみこまろ そさ有になるこの弾ともおのつからきれてそ光が霜のつかき身おなしく きのふけふいつしか時雨ふる障子かみなし目となりてさむけきおなしく そなるにめつるや松のみとり子もはをふきならふ冬の口もと宜風 おきそめし霜にゆかりとけさはまつはな柱さへつめたくそ思ふ益々 おるすとて神にすゑにしかけ膳のひへてつめたき冬となりにき すはの海の棚の外にそさは又さむさもわたる冬のきた風成後 時雨北時雨通りし跡もよし原に日のさしかくるおいらんの傘益 達磨忌に参る草履のしり迄も時雨にぬれてされくさつたり積業 小夜からくれちらすもみちに引かへて酒の雨ひは染はしめけり美左古 あとさゝてねたるこゝちそ時雨そら雨のあし間に日足さしこむ帯丸 ひとり旅官となしてはかさ一つはなしもならぬ村しくれそら一 ヱチロ三条 里の子の笛の音たへてよもすから竹のはならす時まはけしき千葉 風ふけは琴のねたつか松かへにしくれの雨のいとをかけたりおなして 尾、 いくめくりめくる時雨に下帯をほすひまもなき井手の里人荘味岡 ときはなる松はしくれの手にのらてしつりかいたる草やそむらん月花庵 落葉冬かれの庭の木篇の楓葉は文字のつくりの風に垂れ玉駄 尺八の秘曲は風にふかせつゝほろ〳〵おつる峯の木このは 春の花のみか桜は冬かれて落葉もやはり八年につもれり六々園 一鉄かいか峯の落葉の吹ちりて今もたひらにしける赤つた錦凰堂永雄 もみちはのちりて六期のせなにおふ仏もにしきかざる御戸帳仲 もみちはも風にちりきて人形をいろとかやうな深草の里秋寐覚 御所の名ののこかさくらの落葉して柿もあるゝし志賀の故郷 浮の春西行さくら落葉してゆへもしかす風かもてゆく行竹 ぬひ紋の月をのこしてこからしにいちるもみちすそもやうめく出羽兼吉 あつ燭のほしき寒きに風そひて煮かりの端ももみちちちかさむ池住 ちりうきていせ平氏めてもみちえをみな打ひしく滝のみなもと 宇治川にうかむ落葉はいせ武者のよろひのいろにみゆる此ころ飯村 山姫の奉かか露にぬれ仏木のは衣のかさぬ着そする花正住 霜 夏のみか冬も藤葉に朝霜の衣かけたる天のかく山長総 番匠の入らぬ深山も冬されは立ならひたる霜柱哉晴也歌 かれはてゝみる朝息のおもうけに又日をいとふ霜の花さく精馬 はちたゝき出るころには茶筅もてふりかけたやうな軒の初霜左解雄 貧乏の神を出雲へおひ出してけさ門にふる霜の塩花烟讃法師 花すゝきまぬく人めもかれはてゝ霜にそふるふ山賤か袖羽風 朝かほのつるのかれたる垣ねにも日影をいとふ初霜の花煮孝 あれはてし不破の関屋の普請次郎霜のはしらの何本かたつ枝樽 木枯身にしみていこからしに木々のはのあかはたるとはなりて空気宛岩垣 根もすむてふ山のもみちえを林下へおくるみねのこからし鳳鳴闍 松の琴浪のつゝみにおつる葉のそうに舞子か浜のこからし蝶康 松風の声のしらへの外に又ひはのはならによはのこからし出なしく 枯野おく露は玉藻のまへとあらはれてなす母は我いろの冬かれ為継 落葉するころはかりかは氷にもくまてせはしき冬の山の井六々 あふなけもなき大平の国民はあつき氷をふむすはのうみ そらになる神なし月の川にさへ稲つま形とみゆるうすらひ 鶯のやとりし竹の杖をもて氷をくたく池守か子ら京仕 風さへてまはらぬ淀の水車氷のくさひあまりつよくて轎馬 風さむみ漁父さへけさは鼻たれてあしろの氷たゝいてそさる跡成 手水鉢神はるすてもうす氷おのれとむすふ縁のかたはし美左古 風さむみもまれて落る紙屋川水にしみよる岸のうすらひ出来秋 舟人のけんへきよりも川筋にはりし氷にろかひまはなし夢正住 せつかひの鶯をもてすり鉢の氷をくたく下女か朝おき荘蝶周 毒ときく名はわすれても玉川の水は氷かくませさりけり竹意庵 打わりし砂のあつさ尺とりてよへのさむさのたけをこそしれ東雲房 すはならぬ硯の海の氷にも上をはしらす狸毛の筆種丸 冬月夜あらしの旅の木のはをちらにころみかくや白き冬の内かけかみこここ 尾張なる名古屋金衣に名物の大根のやうな関をいれてき静丸 たのみつる仕たてやともつい紺かきにそまりてあさてめさて小倉助竜園 もみ紙のかみ白たへの老かきるふすまもしわのよるの物なり実孝 千鳥かる石もみゆる汐干のなにはかたあしをこすりて千鳥むらす裏行 影さゆる真砂の月のしう浜に碁や打浪の黒浜寺より一二山人 うら松のしらへなかはに糸きれし琴柱のやうにとふ千鳥を 出た杭にとまりてみても浦浪にうたれては又千とりたつなり乗康 しは鳴てわかれしつまをまつらかたその姫の名の小夜ちとりて裏行 玉川や千とりより猶ちり〳〵とちゝむは野田の里人のきん蟻道 水鳥風の手にはるしゝ月のかけをまたあしてかきけすよはの水鳥六々園 水鳥のうきにし形りはまり沓に似ても中よくけあはさりけり 源平のたゝかひし次戸のうらあたり今も水鳥の波にうたるゝ遊喜永女 山鳥のをさきの池の水鳥は月のかゝみのうつりてやなく升成 池紫雲守池の面につかひはなれぬをし鳥にとりもちなとはいかしとす思ふ腹満 池水にうつれるかけとおのか身のはらのあひたるをしの友つれ峯高 あつ氷かたきちきりをむすひおきて水もらさしや池の水鳥蕗彦 から人の池にうつりて松か根のまたもくゝれをしの冠毛升成 なるはかた入江にうきてふしぬるはみしかきあしの鴨にさりける文則 あくた川小舟のあかもとる水に声をあらはすかもの毛衣影法師 網代はし姫のむかしはしらす宇治川に夜ことねたれはみぬめしろ守桜露堂 霰風そひて玄関の内も上下の小紋にあらぬ霰たはしる仲垣 むくらふの宿のまうけのいり足かはに音させて玉あられふる強気 大黒のつちの打出の浦の辺にふり出したる玉あられ哉児遊 きのふきく砧のおとに打かへてたゝくあられの玉川の里中吉 木枕に片寐しひれて耳迄もいた屋の森ゆめはさめにき積方 おとたてゝふるさむさにはねつかれす雨にあられのましり〳〵と直道 不破の関釘のはなれし板ひさし打つくるやうにめられたはしる千心 雪 あなさむしまたる狐のかは名鳥居をこゆるみこしちの雪鴬霜閑石根 目の多き蒼顔ほとはあし跡に気をつけてゐるまゐの庭守赤松下住 雪仙つくらて酒をのみしもの手やあしのなきふくとなからん井飼吉人 これも又雪に出かねてあかゝりの内にはひりし熊のかうやく米守 北国の雪には夜黒の穴あけてとなり聞殿へかよふ西つゝけ跡成 おもせぬに 先一姓国写 一 十五 鬼の手より よき元ものして つむ雪に 破瓦を出入る こしの穢人 桑名 一雲舎行業 足にさへ覚へはなきに房守のめとつけしとていかる雪の日ぬかこ 炉のもとに見れはさむさに枝炭もいくなかをるへの大書 首たけにふり埋みてはこたろから出る人まれなきの夕くれかみこまろ 鶯もきてやなくらん冬なからうめにさいたる雪の花かさ松林新馬嶽 相おいの松の枝葉にふりつもる尉と龍との友しらか雪六児園 あとへとはひかぬ男もさむけさに腕に覚へのあらぬ雪の日おなしく くるひ出る犬はさなくて沓ぬきに雪をくはへし庭の下駄のは静丸 雪の日は鰒の趣向の聞こときにもあるしかいとふ隅のあし跡増盛 門迄も出られぬほとにふりつもる事にをれたる女房か角松なしく かきくらしふりし趣向のえせ歌はやつはり雪に疵つくるなり元有 よろこへる犬はかりかは庵さきのさる戸もくるふけさの大雪枝足 鷲にあらぬ毛をも飛して手料理の鴨もにてゐる雪のもてなしおなしく 花とみか雪にも風はいとふなり老ほれし身の此さむけさに右稲 ふり出せは酒をくまんとすこ六のさいに豆腐をはやす雪の日香々丸 なには江のみつの浦辺もふりつみてあしの跡たにみへぬ雪の日浮丸 豊年のみつき物とて米麦にかはり丁日々にたかうつむる雨眺 にきはへと煮うり酒屋もかし多くふまる事をいとふ雪の日南荒亭 雪の日はこたつやくらに籠城のせめ道具には酒とあつものおなしく 有明の月かとめきゝちかひして直やすにふみし暁の雪 ふる雪にかこひも垣もうつもれて庭からつゝくこしの白山鳴海 あし跡はいとひなからもふる雪をふんてなかむるから哥の韻 こたつをも出かぬるほとのさむけさに門の戸尻のおもき雪の日 とこれもかこ字のしの字大原や雪をみゆきの御くるまの跡鈴山人 霜よりもまたきはたちて風さへもふくりんとりし雪のおはしま一二山人 琴山 さむけさに鴨料理するほともなし日足へみしかき雪の夕くれ秋花園道住 一めんに山なす雪のつもかたけ炭とたきゝのねもたかくなる文真似好 野も山も染く時雨にふりかへて白地にもとす雪も又よく真似保 穴熊をとらん工夫も手のうちにありとてほこる雪のかり人真芳 月花とうかれあるきて此ころは雪にかたつて人のめし跡月花永女 山カタ 真直なる道しかへさへ迷はさてよこにこからけさの大雷 夜学れかるあかりはかりかつむ番はぬふりもさます枝折の音正木 雪見んと高きにのほか冬はまた紙屋の菊の酒やくまゝし頼房 鳥かひにゆく使さへふみ込てはきもみしかくなりし大雪盃止 くることに袖をはらへは酒みせの新の下にもつもる大雪草浪 ふる雪にをれしは藪の竹のみかこたつに腰もをるゝ雲渓恵美成 山カタ 小野の山けふりもたへて此ころは炭の直段のつもる大雪香折 中三十五 ヱチセン 白たへにふる手屋町の朝ほうけかたひら雪やわたほうし雪 尾 なにはかた人もとたへてかりとりしあしの跡たに元ぬ大雪常人 青桜の花田のいろやついさめてもとつ色なる雪の白いと石黒素人 わか門を守る犬とは伯母つゝき地をわけてふる風の白雪雷夏 剣札をふりうつみては難波津の木ことの枝ををりし白雪 芹くわゐ鴨まてひとつ鍋焼にとちこもりたる雪の酒もり 雪の日に鉄炮ふくのすひものを煮る内あたる人のをかしき竹井京吉 こゝへては雷見車の牛かひか手をふくいきもあへてやうなり 山すみか門うつむまてふりつみし雪にさげはぬしをり戸のさる 雪の日はめてゝなかむるあるしより掃除男そしたり顔なる 母の恩きしわた入も雪の日は水になしつゝあそふつの髪桂女 鮫汁にはふかれしとて頬へたのふくるゝ友をわらふ雪の日 あし跡に鳥は永字をかきやせん八方よりそふりてくる雪葉康 中〳〵にあたゝかくなししらぬ火のつくしの綿のやうな皇 さむけさをしのくそた火に木々の枝をらすも雪の力なりけりけり米守 やとはれてゆく幽霊かあし跡の白きもおかし雪の立山松なしく 酒よりも駒の出よかしへうたんの吸筒さけてまよふ雪道是従 鬼やらふ時分ちかしとふりつもる雪に弓なす桃の下つえ花豊 山カタ ふりつもか雪のさむさにねぬよはゝとくりの尻もあふるかん酒枝折 ふりつもる一筋道のしゝら雪に二すちくろき御車のあこ富久留満 ふりつもか雪にくろきもみゆるなりいたゝいてゆく大原女の薬おなしく あめの餅もいや〳〵とふる雪の日はいしもなくなる小夜の中山揚月 武〻五日市 一杖になる竹もしらかをいたゝきて次第にこしのまかる大雷 行くれてたつぬる宿も人里もむらなくしろき雪の山道煉満寿 中三十六 さら〳〵とおろすはかりの焼塩やふりかけたらぬ壺の初雪青竹亭節長 つめたさもいとはぬ雪の車よりしんほうつよき子ともらか豆若女 寒くれは時はたかへすふる雪に小鍋たてする鶏もよし東々法師 手料理に友もこそりて花とする雪には鮫のてふも飛せつ花好 刀をはさす事のなき百姓もそりをみせたるこしの白香阿房 冬こもりきのふきよるを木には又花のひらきしやうに雪ふか弥佐平 鮫よりも置つかひのなき鞍鯨とはらふくれなる間見友ち浜人 いかはかり雪にもこしのかゝむらんとしをふそふ松のうちかは文盛 つもりたる道てのはしゝ下駄の緒もつめたく思ふ雪の白たへ雲丸 魚鳥をとゝむる日にもとくりなる白鳥は入る雪の門口長人 ふりつみて窓もあかるき雪の日にいつはりかまし夕くれのかぬ音澄 ふる間に印の杉は埋れて酒うる軒のわかぬ夕くれ多利雄 仏にもつくる雪には立山の地獄もけさはうつもれにけり柱丸 ふりつみし雪はともあれふみこんてこたろに足のぬけぬさむけさ蓑丸 雪をもてつくる布袋の子出来さにはらをかゝへて笑ふ友たちおなしく 酒肴やれ穀汁の趣向とて雪に骨をはをらす傘下風 ふる雪はめてたくつもる盃の巣よりのちに尤とちうつく戯気 かれ枝もみのりの辺の角かくくひら〳〵つもかいたほうし香松なしく よひに煮しふくの名におふ鉄炮の音かと思ふ番折の竹元成 わかやける春をとなりにもちなから松にしらかのつもる白雪羽風 ねおろしの大根やそはのからみほとひらにつもりてめつる初書菅成 江戸まへの鉄炮汁やむさしのゝはらにとつさりつもる白まな八桐 棚橋も雪にうつめはつまつきて道しる駒も足を折りけり川舟 春の花秋の月よりこしは垣くろ木はみへぬ雪の野の宮 中三十七 鮫 くれ竹は弓となりたる霧の日に命を的にくふふふくと汁六児園 雪の日に犬かくはへし生鮫のあたりはつよき商人の棒三重丸 こち汁とうまう一はいくはせられ二はいはこちから乞てくふ殿有武 鮫汁にちゝむいのちを引かへてのはすこよひの足のあたゝか成俊 雪煮磨つくれるころのふくと汁くふもくはぬも散外前伝西来居 心よしとみゆる人さへ雪の日は腹をたちたる鮫の手料理裏行 下折の庭木のひゝきそれよりも高ね聞せし間の蚊売明来房 鷹狩衣ういへを切てはなてはせこともう所きらはすはしか草原李今今 もちすりの信夫の音をはなちやれはみたれてそたつ鳥の一むれ茶店 狩人に御感の御酒はたまはれと鳥えし鷹はしらふなりけり谷住 酒もりをすなる雀を御かり坊にしらふの鷹の一つおさへつ新風 炭竈はし鷹の羽風につれてす其うまのけふりは山のようへそれゆく月花永女 かへり花さくや小春の山の端にかゝる霞とみゆる炭かま笑丸 すみかまのけふりをみれは小春月四峯にたへせぬ桜木の雲正住 をきなこのおはらあたりかやいとやくさまにけふなるまの炭かま音 炭売世わたりはかくそくるらき顔も手も真黒になりてかせく炭かり元成 埋火埋火を花とも思ふ此ころは水仙鍋もあたりはなれす糸戌 雪の日の竹のこよりもたうちねにほりてあたへんよはの埋火卯時 弓ならてあたる火鉢のまとゐにははなしてくらす水々そさむけき茂 くさるほときたるふとんのから草や化してほたるとなりし切火草浪 本の時期やつなきしさくら炭はぬつゝちらす埋火のもと成丈 風さへて此埋火をおくすのはよこに寐酒の燗をせよとか羽風 うつみひの灰の雪さへすめきぬ夜ふかき里の花桜炭阿房 さくら炭灰かきわけて一りんの花ほとのこるけきの埋火閉守 中三十八 まりのことみゆる火鉢のたとんさへまたけのこりし明のうつみひ甘棠金安丸 尾草香楼改 ひへ腹をあふるたとんは赤玉の丸薬ほとにのこる埋火 六橋周前守 一ツ井タ 炉開夜もひるもさむさに老は飛騨たくますみをさしくあたる炉開開里住 炉ひらきのまうけをなして切美は冬の小口をみすかさむかき真 炬燵ふみのはすこたつの足もそのまにすへかよへる夢のうきはし楽人 雪仙何かぬかはん冬の夜はこたつそいける浄土なりける ゐのしゝのあつものよりも冬の夜はこたつやくらの四つ足もよし 吹革祭相槌の弟子もふいかうのまつりとて打てかはりしけふの将太束卯時 冬至神裏をまつる冬至に金のまき絵の草をなむるをかゝき朋来房 顔見せ顔みせの大明神を迎ふにはまつ柏手を打いろふなり頼房 雪ふりのあたり芝居の見物をつめたくはかり思ふ木戸宿金丸 たのしみは春と秋との二丁町花やもみちをかさる顔見せ種成 よる人は雲ににひはりつみ物はつくは山かとみゆる顔みせ一円宿 としよりし役者の顔もわかやきて顔みせに出る周の正月重康康 顔みせは夜のあけぬより賑はひぬ今を日の出の役者みんとておほしく 髪置坊主子もけふはつむりのさまかへて参る内外のいせのかみおき 神楽夜かくらにつかきをとりてうたふなり孟嘗君か客人の宮龍の屋 神心ちりはかりかは夜あらしに逢火の灰にましりますらん泥田坊 夜かくらにさむさのたねも笛の穴六つてふ花の白たへの道大江岸也 里人の寐耳に笛のいるころは一番割ともうたふ夜かくら松仲 笛の音に吹あはせぬる木からしの女も出る夜かくらの舞曲来居 寒たまこもてはやす是とも時にあふ坂のそらぬの高き寒玉子哉 葉くひ鹿の身をにる人さへも鹿ににてすくふ杓子のかひよもよふ陽記 紅葉鳥たまされてくふたをやめか何そととへとしからこたへす跡成 中三十九 鉢扣はちたゝき時雨てさむき夕めしをあたかにしてくうや上人飯持 十夜つまくりし数珠のかたてに十夜蛸とちうをみもいほ〳〵にして風律亭丸一丸 宇念仏やふるなと酒いましむる口にさへ寒つくりなる念仏のこゑ竹孝 ワカ山 早梅くる春を待計たてゝ袖垣にほころひかけし梅の早咲馬場也 日のあしもやくのひぬれはことしよりまへまたきてさかん寒梅見鷹 つこもりのころ火ともには王子村の狐ににはの早咲の梅 寒菊寒菊は弟なからも室咲の花の兄より時めきにけり 煤掃すゝつきに銭はともあれなしなひし青砥をさかす縁の下哉元有 掟をはそむかぬなからすゝとりにさゝをやいれん禅寺の門 いにかぬるとしの尻にははうきさへさかさにたてゝつかふすとり鉄丸 すゝめきに油をひけは戸障子もはしるやとしのくれいそくらん葉康 商売をかせく外にもけふひらひまいくろになりてはらふすき裏行 餅つききぬの手に力をいれてつく物を増しのつよさとなむる餅つき若女 歳暮来年は現金実にいたまんといへは笑へるかけ乞の鬼朋来庵 せきあへす又もやこへん老の波ことしもすてに末の松山六玉園 金ゝ銀をこちらへとりてけいせいを実に泣するくれのかけ走元有 かけとりの気ははり弓の挑灯に矢よりも早くかけ思かなり其松 正月の汁のみにもとまうけたるおほねよよするかけ取をおへ玉繁 思ひきやいろふ雑煮を待くれのしまひを餅につきぬべしとは夏粥 せはしさは人はかりかは金さへもねせてはおかぬとしのくれ方 千金の春まつ身にもかそへ日のともしくなりてゆく年はをし 大年もわすれてくらす山里は覚へ一つの書出しもなし 尾 荘蝶園 ホハラ くりためし数の月日をのこりなくめてたくかへす年のをたまき ワカ山 大卅日元日の雑煮の用意すり鉢に大みそかこす年の関守晴 百八のかぬの外にもかけこひにうそ八百もつて大卅日三重丸 除夜年中にしめ出したる身の汗の油てあかき除夜の神棚泥田坊 あす春かくへき宵とてさゝかにのくものすなりにありく掛取 追傍柊の枝折助か部屋の戸もあかいわしさすとしのつは際泥田坊 いきほひにのまれて鬼も逃ぬらんいれは口あく節分の豆 いり豆の雨あられとふりかゝりてはのこらすうたるなやらひめ鬼波穂 冬夜わか足をあふりつくして酒つほの尻迄こかす冬の夜さむき静丸 猫火鉢かくへて一夜ぬす雷の目も時しりて給ふけさすらん伴刻 おのかきぬきすれとその夜をさむみなく子に母はふすましになし茅綱舎稲人 さむけさに霜やふるらん小便にわれも朝迄八たひおきけり川舟 冬風仙人の木のは花や雲の袖吹ちきりたる風のさむけさ岩垣 さふけさによな〳〵山をまはりきて里の酒屋をたゝく風の手壺壷峯楼高丸 冬山寒垢離のこう〳〵きたる冬かれの山は落葉に赤いたかなり喜好 冬川いかた師をやめて薪やこりゆらん水のかれたる水々の枝川吉住 枝川や水はいつしかかれはてゝちる格妙ちるもみち鮒折安 冬植物鷹の風と葉は名におへと小春日に小鳥かあらず里との茶の花見鷹 山茶花も咲てあかめる南天のみところ多き冬の内庭照住 かへり花いとまをはやりしやよひの桜木も小春に花のかへり新参真弓 冬蝿縄をなふ力やなくて破かへのすさにすかれる各々の日の蠅知雨園穴住 冬祝君か代はよむともつきし夜をかけてあさ草市のかりための残由都留 冬雑木からしと時雨とふたりつれたちて神堂目てふるすことにくる岩垣 品川に御苦をとる手もさむかきに此にたつや江戸の入口泥田坊 青つきて又しろにきてにき〳〵し神ある月の大社には一二山人 雪の宿大福餅を買ひなから足下孟子の注者かと問ふ狂蝶子文丸 さむき日も出る商人はかう薬の油をなかすあかゝりの口刀子 谷の戸を出るもちかしと法師らか中と声つかふ鴬の経后住 大根をぬすみていにし心より跡なる穴をふとしとそみる飯持 琴ひかぬしはすの庭にひくなり餅つき歌の若松の声六樹園 }