水魚金石集
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- 寶市亭等選
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- 日本語
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- スイギョキンセキシュウ
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- 東北大学
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- 2026-08-28T18:53:25.651810+00:00
狂歌水魚金石集
狩
八
撰
者
宝市亭大人
花咲菴大人
梅屋大人
「荒井泰旧院ノ割調
以テ購入セル
「狩野亭吉氏藩藩
歌
全
水魚金石集全
在
春友亭蔵
狂歌金石集上之巻
撰者宝市亭介成
柳若水風よきて家居建こむ都よりぬるみそむらんけさの若水
けふといへは影くみ初る日の御門手桶にうつす水の瀧口文泉倉
しのゝめにちかしと祝ふ若水にむかふはつ日の烏丸筋
けふといへは氷もとけて汲人の心にまかす賀茂の川水
上野高崎
菫庵
春はとく都の町のみゆきかも車井きしるこなの若水
下野佐野
川の瀬もきのふにけふとかはるかなわか水くめる飛鳥井の声
九重の竹の周生の色ふかき千代のかけくむ春のわか水蔓垣
つまの牛飼わらはとくおきてけさもつるへの縄やひくらん玉丸
若水を汲たていとに朝日かけうつる錦も見する西陣仲母
寡金石集上
陸奥岩出里
むかし矢の流れし加茂の水上に舟はの妹々くめる若水天鶏
武蔵宗岡
まねかすも人のむれさつ春の野にうら若薄袖はあらすも
米麿
陸奥盛岡
御そめて御垣のかゝりもひとりのくむわか水に影やうつらん森集
森集亭
ふるとしの水くみかへてける春の若やくかけもうかむせの大老
青きものめつる春とてわか水に都はかもの川水やくむ雪風
日のみかけうつして丸き若水は内侍所の鏡なるらん道廣
引あくる音も都にきこゆなり若水くめる御所の重井寝覚
一寂斎初夢に見しふしのねは裾野よりのほりなからの淀の川舟
枕原はねて夜舟の世苫にあたらしく見る淀の初度清樹
一春駒の初夢や見ん淀川を綱にひかれてはしる臣舟水静国
はつ夢のふしのいさこと淀の舟のほりくたりも一夜也けり文泉舎
名古屋
一宝寺ちかくすくれはたかち舟しかて夢見ん淀の楽そめ便々口
上総一官
淀川の舟ひくつ水のなかき夜にのほると見しはふしの初麦松径
松径
雑煮をはたかぬ舟路も餅くへといふにさませり淀のはつ夢
花咲菴
ほときすよりもなつかし淀舟に見し初夢の鷹のゆくへは
京
玉兎国
みの笠を枕にむすふ淀舟は宝つくしのはつ夢や見む
伊勢国輔
愛樹園
よと舟にはつ夢結ふのり合のひとつはち浪の峰やみるらん
上野山名
がれしくも見しはつ夢に玉の緒もひかれてゆらく淀の川ふね
輝明
舟底を枕ともかな淀舟をのほる都のふしのはつゆめ
美濃岐阜
神垣内
浪まくら淀の眠りに初夢をむすふこよひは宝舟かも
はつ夢も旅なれはこそ淀川の浪のり舟を敷寝にて見れ
上総東金
母住
秀作舎
白露の玉をちらして水車はつ夢さますよとのあさふね
初藤はさめてあくひのあいたに餅うりつけるひらかたの舟仝
淀河の舟に旅鹿の夜を寒み見る初夢や大ひえの山鹿住
一所金石集上
白魚蓮葉の露より泣し雪とけの濁りにしまぬ春のしら魚
雲井園
珍らしきうちを花かゝとひめおきて風にもあてぬ箱のしら魚
隅田川網をもれりしら魚はかけうく花の雪消なるらん
ふ魚の白きを誰もめてぬらんまた見ぬ花を見るこゝちして
霞岡
はるの夜の月の濁りの水色も青み一夕やあみにかゝる白魚
あわ雪の立をもちたる白魚はすくへと舟にたまらさりけり
網の目をもれて逃ゆくしら魚はかすめる花のちる風情うな
松たける再のもとのしら魚は庭少馬流士か袖にかも似る
ちる花のそほろ豆腐にとりそへつ筏焼なる隅田の白魚
千銀と見し白魚は江戸川の黄金水の流れにやすむ
をとめ早のひゝなまつりにさゝけんと先箱入をいたすしら魚
水楽園
下総花王
よるはもえ昼はきえつゝ白魚のかゝりも楽士のたく火なるらん
凧
畑沖はなれなからも麁楽につく海苔の相手になさん小魚
すくへとも逃てゆくへは白魚のかすみのあみのめにもかゝらす
上総一宮
松狂
いさり冬の影もしらみてふしみゆるつくたの沖の雪の白魚
仝
雪とちる花におとらし隅田川れとくひあけたるきしの小魚
山吹の枝ふく風をおとろきて露とはかりにちれる白魚
近江高島
月雪にかへてもめてんすみた川水にかけそふ花のしら魚
をさなくり出す出す鳶凧もひよりを見てや高くのすらん
佐保姫の供するやうに母風雲ゐに高くのほりてや行
をさな子は平もてとらんきの凧の蝉は声なくとまる梢に大
つまきは帯にはさめと大空の風にひらきてのす扇風
神の代の春は童も文字風ふ魂をむすひて尾とはなけり満世
をさなこの手にならしたる肩凧これもや風をたのみなるはん
延金石集上
梅
手駆ひく鴨にはなれとも烏風寒の浪間をくゝるとそみる道広
書初の絵師の気意もはなれ駒手綱にまかふ風のまさ肴
ゐなからに霞かくれの冨士と見ん糸をはるかにのす扇風中
岩出山
天国
風まちてあけにし風は大空の海路をはしる千帆なるらん
花王
上喜
夕風にきれ行春のからす凧やとるねくらや杉のむら立
仙臺
千菊園
たらちねをねたりいたしく稚子はかふりを凧に見せてあくらん
好住
大坂
御くちまつ心はなくて風の子の童かあくる釣かねの風中
窓の屋
歎しらぬをさなとうしもわつかなる風に気如はつけてあらそふ
春の野のあら駒よりも風に飛梅かゝとめよ袖をひろけて
このかみは智恵うとしとや梅かゝを夜な〳〵風のかとひゆくらん
加都良
名古屋
陸奥信夫
御そひ出て風なき夜はの梅からは軒端の滝の鳥にひとしや笹
藍白舎
するまた残る寒さをかことにてかさねし袖にとめん梅か夫
枝うはす松のけふりもたきものとかをるはかりふ梅は咲けり
さく梅のたへなる香さへ花御関に星の位の人もめつらん
高寄
菫庵
越後芝田
菊寿朗
わら宿にうつしうゑにし梅かゝはなしみなしとや出ありくらん
恋猫の声する頃は梅の花風のかをりも肝つたひしつ母
ねかはくは秋まておきても秋萩の蔵にもこゝらん梅にほふ袖
名古屋
このり頃つゝく梅見の留り客とり出す夜春の袖も匂へり
ゆきかひの人の袖へもいれてやる梅はかをりをもちあましけん
下総野田
柏樹園
もろこしの梅さく山も日のもともなへてかをりはへたてさりけり
高島
一兼郎
丸窓に咲出る梅はくもりなき月のかつらの花かとそ見る
京
手折こし我をにくまてやさしくも跡よりおくる風の梅かゝ
玉兎国
仙台
解いせかあるしやうとむ早朝の湊へはこふ風の梅かゝ
野田
香を袖にそへてもあかて梅をゝる人をや梅はうとみをるらん柏樹園
野金石集上
梅かれに風をそ今はまたれける花にいとへる人なうらみそ
露おける梅見小袖の下着まて通し小紋に花のうつり香
もみち葉のたくひにあらすのとやかによるさへ匂ふてらの森
たちぬはぬ霞の袖のひろきにもあまりて梅のにほひゆるゝか
梅咲て賑はふ前の難波津は人のつとひも今さかりなり
野をひろみ風の先へとかとる梅は春の来にける道しるへかも
芝田
菊寿躬
仝
嘉寿雄
高崎
菫菴
尾一宮
弘住
立も色て花すあるしにまさる哉客をようけし庭の白梅
中こに風ふかぬ日は宿にゐて客をもてなす庭のうめかゝ
追風にのりて行らん舟形につくりし梅のかをりはしりて
邯鄲のまくらに酒の浦心ふかれてそよき風のうめかゝ
武蔵赤山
なか〳〵に雪にはつらき破笠も梅かゝはこふ春はうれしな
油とはちかひてうれしふく風にひろこる袖の毒の花の香如蓬
をちかたのかをりそこひて春風に梅見ぬ袖もにほひ添けり津毛
津毛成
岐阜
きゝすなく野ふさく梅も香を宣ふ風やほこりてありかしらるゝ
神垣内
梢には手のとゝかねは影なからくみてをらはや梅の下水
在岐阜
阿弥店
ときおそきならはしやなそ梅の花八重もひとへもおなし給はして
子守はよききぬ着たるこゝちせんつゝりの袖に梅かをる日は
下総飯沼
影俊
春雨のふるにいとはぬ梅見茶屋しはしは花はしはしはしはしはしは花は
よしや指きらるゝとても家つとに一枝をらんなにはつの梅
上総一宮
三河上野
わらはへも跡をおひゆく万歳の袖にもすかる門の梅かゝ
伊勢守
袂にもとまりたらてや梅からに袖頭巾まて花のうつり香
高島
梅さくや南に人のさりかねて折るかじ枝の花そすくなき
うめかゝのつよき方をはしるくにて闇にも綾の小路たつねん
夜もすから夢にも梅の陰にそふ心の花もうつり香やせん
嗩吶斎金石集上
ちる時の為をおもひて梅の花香をは風にもまかせおきけり
守田
柏樹園
一本を小なはさそ玉ふらん星の井にちりこむ梅の花のしち雪
福禄亭
咲にほふ雲ゐの庭の白梅は大白といふ星にやあるらん
梢をは霞の袖につゝめとももれてうれしき空路の梅かゝ
よい中の垣をもれくる梅からは心のへたてなきしるしかも
越前敦賀
實乘
人ことの袖にもつゝみかねこけり梅のかをりの枝をこほれて
芝田
之足
若草しなりにはいつかむすはん岩代の松の葉丈にのひし若学
こほれ葉の二葉を見せて松か根に千代の数そふ春の若草
炭やきし誠とは見えす立かへてけふるともなくもゆる若学
花王
鈴成
いとけなき春の野へらにもえ出てまた何と名のつかぬ若草
かそいろのゆにめくみてはらからの姿におふる野洛のわか草
和多守
尾一宮
弘住
雪きえて野に生ひ出る若草は花ちるあとのは寒そ見る
満盛
春の野に今いくかありてつみなんと指をるほとはのひぬ若くさ
算
むさし野のふしを毛後の扇たこ月代ほとにおふるわかく斜
東金
秀作舎
仙台
さわく荻しつけき萩も見えわかてをきなきうちそ草もめてたき
鶯のきなかぬ野への下もえに雪の花かさ着たるわか草
若草のおなし縁はすゑつひに花のにしきを秋は見すらん
千菊固
近江信二
照陰
岐阜
神垣内
花王
色かへぬ松のみとりにならひてやおなしふた葉の春の若草
す駒のかけゆく野路の跡さへやのひるに足のはやき若草
上喜
上総一宮
登
仝
はむほとにまたのひたらてこより葉はこしにくさめをさする若草
谷鶯
寫うらゝさよ霞の吉にうくひすの声うつくしくたちはしむらん
やう〳〵と水もしうあるさゝ鳴に鶯いたふ谷のいはかと
尾一宮
梅うゑてまつ人ありとうくひすはしらてや吉を出かてになく百枝
武蔵土屋
月と日のさゝぬ吉間に月と日のはつ音ほのめくうくひすの声
酒盛
野金石集上
六
雪の内にこはめつらしや鶯のはつ音の花のさくさくら谷佐和久
都へもやかていてなん谷かそのうつほに琴をひける鶯
春寒み谷の雪間を飛いてゝなく鴬の羽をやふるはん
山葵ほる伊豆のあまきの谷つたひきくほとめせん春の鴬
巌
うくひすの経よむ声の高野山春つけそむる四十八谷
鎌倉の谷七郷にうくひすの掟をひろめて春はなくらん
京
蕃門
谷の戸をまた出やらぬうくひすは心にあかぬるやつゝれ類
仝
仝
うくひすの初音にしるき谷の戸や霞なかともあらはれにけり
玉兎国
仙台
世は花にうかれやすしとうくひすは吉かけふかく類やよみ進る
春吉る霞の谷のにほひ鳥ふかきいろ音や引いたすらん
うくひすもうかみいてゝん地獄谷ほうほけ経の声の御法に
阿波
なか〳〵に力いなしとうくひすははしもてくたく谷の薄粉
うくひすの声の月日はかすかにも谷をほの〳〵のほりそむらん
花王
事たらぬ深谷かくれの杣か家にまつ春告るうくひすの声
時めけは尊谷のうくひすも友としてなく山のやまひこ
春はとく苔の戸いてようくひすもなかなく声の月日かそへて
かせ山の古薬をわふれうくひすも谷をへたてゝなく立聞ゆる
上サ一宮
羽衣
上野山名
重明
武蔵加須町
春吉
うくひすもすくなる声にそとつらん杉の梢の見ゆる谷間は
谷の戸の旅立よしと鶯は梅こよみ見て里へいつらむ
駿河岡岡
茂士も雪消の水に鶯のこゑのまろきをめつる谷川
月や日のおそきみ山は谷の戸になくうくひ後の声そひせぬ
政山城
梅かゝを風のさそへは梅わにきそはれいてし谷のうくひす
声立て流るゝ雪の下水に春やしりけん谷のうくひす
敦賀
実来
鶯は滝の玉水ふくみてやうち出る声の匂ふ谷の戸
延金石集上
宗岡
柳露あらそはぬ様になれて風にちる露のこゝろや柳なるらむ
米店
ねみたれし髪と見るまて白露のひん水かけてぬらす青柳
花王
ふく風にゆみてや扇を直すらん露うちこほす青様の髪
つやいつる柳の露は佐保姫のかみにあふらをつけしたくひか
信濃富竹
月芳
ぬれ善を風にあつると見るまてに露の玉ちる軒の青柳
かゆ杖にすなる柳は春風にうたれなからも露やみこる
みのかけぬ柳の髪のあらひたて雨ふらぬ日もさきは露けし
枝ふるふ柳の露のしら玉は雨の中なるあられなりけり
柳葉はわかれの櫛と夕風に露をなけたる春の野の宮
露たりて軒端にけふる青柳はにてわくにまく糸にかも似る
浜ひさし露しとゝなる青柳は磯辺の海士かかけし腰蓑
しら露をふくむ梢もみつき寒やぬらしてはたく風の青柳
高島
さく花もおよはさりけりちれはまた跡よりめくむ青柊の露
蕪躬
仙台
青梅に玉なす露は大かたの糸にふしあるたくひならめや
一樹
高寄
夜あらしにつかれし後の朝露は給ふる柳の寝汗なりけむ
菫庵
たをやめる事になやめる風情かな露をおほへる肝の青柳
冨竹
青柳を風のこゝろにまりせてはいそか露の玉もむすはし
月芳
仙台
ふく風にくりかへしたる青格の糸をみことりにそむ事白露
山形
香根雄
うくひすの来なく柳のしら露は初音の玉をぬきしとそ思ふ
上総一宮
きほ姫の姿とや見んは極に玉のかさしをむすふしら露
うくらすの来なける軒の青柊は枝にも露の玉そふくめる
きぬ〳〵をかこてる妹とおもふまて柳の眉のおもきあさ露
たゝさへに姿うつくし青極の露の玉もてかさり立けり
高島
武蔵五円
仙台
わたし守いさこととはん青極の露はむかしをしのになみたか
延金石集上
遊ひやかきぬ〳〵かこつ涙とも見ゆや出口の青柳の露浮寐
飛ちりて枝より枝にうつりけり猿子柳の風のしら露
青柳のいとやさしさは朝毎に露のしら玉ぬかんとやする
美蔭
前よりも香よりもよしと朝夕の露を柳こゝりてあそふらん
芝田
嘉寿雄
橋上霞
上霞むらさきの霞にこめて止すけのにぬりの橋の朱もうはへり
はつ霞けさかけかへて春の日の長柄のはしは朽すみえけり
むらさきの霞の衣ひきまとふすかたみの橋妹にも似る
たなひさし霞も空に中たえてふたつにわたる瀬田の長橋
今もなほたえてなからのはし柱たつるは春の霞なるしむ
水静国
上総一宮
朝市のたゝぬに春の立そめてかすみのわたる両国のはし
登
八重ひとへ露につゝみかくすとも春のすかたの橋としれけり
吹わたる風の切戸もきれとなくかすみのかゝる天のはし立
かけうつゝあやふき谷のかけはしものとかなる日は露わたれり唐来
敦賀
一棚ひける霞は天のはし立や松をそのまゝ橋杭にして
あかねさす夕日のかけはかくろひて霞わたれる瀬田の長橋喜義
若かへる春の色めく青極のはしにかすみのみとりをや見ん
常成
上総一宮
宜乙
あつさらはる立けふののとけさよ矢則の橋に露わたれり
仝
山松もつゝむはかりのはたかすみむらさきまくかゝる藤はし
鈴成
八重かすみ立て道をやとゝむらん人かけ見えぬ粂の岩橋
仝
焼公
たれまちて衣かたしく霞そとうたかひかゝる宇治のはし姫
東金
秀作舎
秀作舎
春かすみ糸ひくけふはさなからに異則のはしも弓と社みれ
京
玉兎図
浅みとりぬれいろみせて初露糸をくりたす青柳のはし
百千舟入こむすのみなと橋霞海なすみつのあけほの元照
いつれともおとらさりけり岩国の錦の帯のはしのかすみは存在
財金石集上
むらさきの手端みやめんすのきて駒とめはしにかゝる霞は唐米
浅みとり霞のきぬをよそほひしすかたの橋も春めきにけり
とたえしと見えし久米路の岩橋に春は妻の立わたりけり
信濃
残雪
西花に世をゆつるまてとやよしの心梢に残る去年のしら雪
赤山
す深くのこる山路のしら雪はさくら待間の花とこそみれ
蔵と見しのこんの雪も若菜つむ七日のけさに砂ちらしけり
あたよき柳の風をのかれんと片よりて雪は残りをる其ゆ
甲府
喜霍
春の来し跡こそ見ゆれ日のあしのふまぬかたへふのこるあは雪
雷の鳥すむ松かけにかくろひてやすちにのこる雪のしら山
みちのくのこかね花さく春なからまた蓑山は雪のしくかね
春くれは花とやは見ん白鳥の鳥羽山雲にのこるしら遠
奥山にひそみて残る白昼は世の春しらぬ翁なるゝむ
田尻
むすひおく葉のまくらのあて紙と見えてのこれる春の野の雪
春明
野田
常磐山木かけに雪を残し置て花もまたさる風情なりけり
柏樹園
相模国
仙台
すも猶耳なし山はうくひすの声きこえすや雪ものこれる
一樹
われにましておほくふりぬとよしの山花見てのごる雪やおもはん
芝田
根にかへる花とや見らんよしの心さくらかもとにのこるあわ雪
かれうつきめくまぬ枝の花と見んはたの垣根にのこるしら雲
上総一宮
山名
松かけをたのみて雪は残りけり去ね枝をりしこともわすれて
重明
うくひすも鳴出る頃谷あひにとひ〳〵のこる雪のむら消
来老し遊ひに似たり色さめてうとまるゝまて残るしら雪
田尻
霞にくゝふしもきゆるに晴らてのこるはあやしむさしのた雪
仙臺
ぎえのこる伊勢路の山の春の雪花と見たるはひかめなりけり
人とはぬみ山にもの残りしは春の日あしのとゝきかねしか国文
金石集上
よしの心消のこる雪は前まてる人のこゝろをなくさめんとや
霞岡
愛樹固
やかてさく前にや色をくらへんとよし野初瀬小のこる雪かも
芝田
嘉寿雄
おりはたの露のぬきとも見ゆる哉いとにひかりをもてる柳は
室市亭
拾遺
諸鳥のわたらぬさきに若水をとく起てくむからす丸筋
すへらきの御家きよめてすのけさ鍋とり公家もくめる若水
當座夢見廓中花宝珠亭判
夢にたに花見てうれし思ひねの枕の紙もさとのふみから
夜さくらの栄花も藤の五十間出たる腕にたのしみにはあり梅屋
入ほくろ消さしきとの夢見公にさめて跡なき歯の手まくら升友
うつくしきくるわの葉を思ひねの夢見る我やかこの鳥なる船唄
金石集上巻終
狂歌金石集中巻下巻
撰者花咲菴米守
春雨名賀山の花子かけ紋さゝ浪の細輪にぬふりはるさめの糸
花をおもふ心こゝにしあらぬ日は見れとも見えす春雨のふる
器楽庵
しつかなる人のわさよきたくひかも音なき雨の花をさかせつ
芝田
菊寿躬
なゐよりやふりいたしたる春雨は国ゆすりする花のかそいろ
春雨のふるとはなしに玉水のたまさるおつる軒端しつけし
雲井園
野田
しめやかな雨を軒はのかけ樋にためて雫の音は立らん
柏樹園
中々に花をまつ身は春雨の足のうときそうとみはてける
雲井園
草や木にめくむ春雨碁かたきの石さへ給ひてめをはもちけり一蝶
音もせす軒はを帰る飼猫の背を撫てしる夜はつ春雨升友
財金石集中
若火鉢にる煮こほれて引出しのわらひ手に露をそふる春雨
かそいろのいさめの杖か春雨はうてとも花のいたまさりけり
めくめるはこと木はかりか友としのことはの花もさける春雨
呂舟の煙にやせはみゆれとも柳はふとるきしのはる雨
信夫
春の日に雨のあや糸くえとてつ柳さくらのにしき下地か
藍臼舎
野田
袖袂ぬるゝも嬉し春雨に花の下かけしはしたのめは
もろよりによりてあはすや麻苧うむ賤か軒はの春雨つ糸
一柏樹園
山名
紺かきもわさを休みて春雨に野山の青くそまるをそまつ
重明
信示
袖庇にもとめてけり手に匂ふ梅にも恵む春雨の露
よき程にしめりもつらんたは葛うゑしはとけに春雨のふる
帰り花時雨にさかん春雨の楓を秋のいろにもやしつ
芝田
雨の日はすも淋しと思ふをりすゝき尾花や落まさるらん
芝田
しくれには去ね枯にしをあらきるはわきて草木のもゆる雨哉
仝
仝
日嘉寿雄
志賀の郷花さきいてん雨の日はありしむかしの都こひしも
之足
桜かけ枝よりたるゝ春雨はひもとく花のくゝり糸かも
かくれの雲よりおりてさゝかにの糸をみせたる軒の春句菱垣
夕くれの雲よりおりてさゝかにの糸をみせたる軒の春雨
張あけてけふはかわかぬ春雨に作らん傘の骨休みじつ
咲花をめくむは誰かうと花へきなと忍ひふるよはの春句
宗岡
米店
くりかへし夢を結ひておもしろや春雨の糸なかくふる日は
蛇の目傘折にあひけり清正る一代記よむ宿の春雨
初午
午いなり山枝なりかさすをきな子の鳥ゐつむしも杉にかくれつ至清堂
初午いなり山枝をりかさすをきな葉の鳥ゐつむしも杉にかくれつ
初午に王子みやけのおもたましとりて片手のうこく駕舁
しうまやをさむる顔に我ありかしるすさすの秀恋の宮升友
たふめんしきかされは桃灯に玉や健屋も見ゆる初午文盛
一助金石集中
海山のさちをいつれは年まつり神にかゝなふる豆腐このしろ
尽語楼
奉納に工風燈籠をかけまくやかしこき神をまつる初に
有観堂
山形
いなり心も水も杉のもとつはを酒うる軒にかさす参詣
霞岡
一山形香根雄
初午は竹の秋みていなり心あかきのほりのもみちかここし
梅香
整り真いの太枝の浪に烏森酒をもよのとのめる初午
茸狩もしのふ祭りのいなり山かさのならにし地口行燈
いなり山もみつる秋もしのいれつ赤きのほりをたつる初干藪蔭
初午や神の供物にたつさへしこのしろにつく絵馬の野狐煙則
一雨後堂植木屋も八日薬師に雨はれて持出するりの壺華草
雨はれて兵のあせにしすみれば夕日紅とく露に染はや楽聖も
楽聖庵
に見川
雨はれて葉うらにのこる雫さへころりとまか寐する一夜草
きのふとはかはるうき世に紫孟子一夜の雨に花はさきけり梅常
雨はれて遠坂寺に宿りにし名にもゆかりの吉はや福禄亭
雨雲ははれて北野の台かけに千もとはかりそ咲一夜草姫則
つほすみれ咲みやきのゝ雨あかり萩もはたしの色の熱文泉舎
こゝろよくゆふへの雨に一夜て朝日にはやく咲すみれな
す雨の雲はれてより月かけも菫の露に一夜やときり
山名
雨はれてぬれし姿をはつれはや野辺の塵の顔もえあけぬ
むらさきの霞をしほる雨はれて残る雫か野へめすみれは
宗岡
そみれ草雨のあしたはむらさきの立やそこねし花のうつむく
山吹白吹の花の黄金は一束剃紙におすことちいてあれかし三宝其
山ふきの影うく池の水すましましまさしこかねをひろふやう也仝
一かは瀬にはさけと山吹花脚にもあつらへかねつ花のとかねは一徳
ものいはぬ花の山吹をらせしとあるしは庭の口をとちけり喜母
野全石集中
氷や空うつる川瀬に御く花の雪その雲とさける嶺竜雄
山吹のこかねをあまた折てやる人ツよしはり多き中垣春時
やま吹の影こて水のふろ屋紙こかねの箔は中にうつかぬ
信夫
藍臼舎
庭守も山吹の花くれぬとはいはぬかくにていふにまされり
高島
水入小さして寺草もしはらくはものをいはさる山鳴の花
山町はあを春乾の種としてゑんふこかねの色にさくらん万葉亭
山川は何を善乾の種としてゑんふこかねの色にさくらん
一兼郎
野田
縁遠き妹にこそ似れ山吹の花は色さへ口なしにして
きのよきを人にたくへん薬にも毒にもならぬ山ふきの花
柏樹園
信楽
札をもてこかねにかふかこゝちせり短冊にちる山ふきの花
芝田
所をもえらはぬ花の山吹はとみておこらぬ人のたくひか
嘉寿雄
あかすのみおもふ心の色をしも八重にかさぬる山順の花
小見川
さく花にこかねにてはか山咲は身はもたぬとも株はありけり
少女子のをりてかさせば鼈甲に色をありそふ山ふぎの国
水たえぬ古川野への山ふきはつきぬこかねのたくひならまし
よしの川こかねしつむとみえぬるは影のなかれぬきしの山ふき
二日灸灸めのとみやくけふりきさらきの裸山よりたつかあやしき
一口舌せしとりしりはん背をむけて初灸すうるめをと中には万葉亭
母親の二日やいとにとり出せはひるも万ゆゑの買行燈岩主
孝りは親へすゝむる二日灸釜やもくさにくるの竹むら升
小見川
二日灸すうるけふりの目にしみてもらひなきする親下ありけり
病をもやきうちにして二り魚並ふかふとの星もみえけり
はつ灸をこちふる顔はいかならんしかみ火鉢の火をうつすより友頼
二日夜すゑたりよりもすゑてやるおやこそおつとこめ息つ花光龍
堀悪の袋もくさの初灸もあつさははらにこらへかねけり玉店
燐金石集中
をさな子をたましてそうる二日灸あつきは親のめくみ也けり強喜
山形
子をおもふ親のめくみのあつとて二日に灸はすゝうかなるらん山井香根雄
早蕨風さそふ桜かもとの袖わらひ手に汗にきる姿なりけり表
初午につみてもとりの王草道のひるの玉にさわらひの鍵
たをやめの足よわつれも早蕨の手にひかれてはそとくきにけり
京
人皆のへみとらんとてまわらひのまねかぬ手にもよりつとひけり
紫に霞の衣染あけたやうな手を出す由かさわらひ梅景
山里は各へ馳走の初わらひかゆいところへ手いとゝかねと
田宿
霞岡
早わらひの手ふりみやれは蔵よりもみやひ心にをるへかりけり
仝
愛樹園
中々に手はふれられし早蕨はをらぬさきからたふさみせけり
仝
仝梅香
梅綾
おのつかた露のそはりて大江元の山の蕨も数珠やつまくる
老の身は孫り手かりてつまはやな山の背中にもゆる早藤
早蕨はねふる柳にかさんとやこふしをいたす手まくらの小野
大坂
さかりなる花の下枝をるとみん手をのはしたる山のさわらひ
窓の屋
佐野
風越の輩は霞の袖いろくまはり手めきし木曽の子芸
糸屑
空をやきし灰の中をもかき分て火はしをかたし見たす早鼠
宝市亭
人ならはおもてはつかし手をさきに出して生るゝ筆のさわらひ
す寒みいかにせよとり早藤も山ふところに握り手をしつ
飛火野のもゆる蕨をあらそひてつむに水かけろんもなしけり
ぬき捨し羽おりの池も紫のちり打はらひさわらひそをる
信夫
藍臼舎
奔異すりませる木のめの色の音によしならふ出茶屋の妹か田楽
うくひすのつはさの色の田楽に木の芽のにほふ梅のを食
黒ぬりの器の梅の花うるしかをりをそふか木のめてんかく毛衣
あすか心春は野もせの音によしふらふ茶みせの森茅図楽如蓮
嗩吶
浅くらの山椒の木のめ田楽に木の丸はしもそへて出しけり文泉舎
霞岡
一よし野山蔵のさかりは出茶やにも日毎にかをる木のめ田楽梅寸
敦賀
実密
一す雨の糸すちつけしすりはちに匂ひをそふる木芽田楽
に見川
みそひともしつける木のめに田楽は短冊なりに切てこそやけ国
戌草やよふうたひめのはやり草に箱の数うるきのめてんて
野田
婦雁古郷に妻や残して北の方こひつゝかへる春のかりかね
来る秋は霧に対してかへるには霞につゝむかりのむつさ
咲花のかゝみも見すてゆく雁はいかにきた千きつらみたすらん
にろしの日をもえらはす花暦ひらかぬうちに雁のゆくらん
尾にはさみもつ乙鳥にすれあいて寿なきられその玉草
草あまたこえて木曽路を行アはお六としをやつとにもつらん
一飛こよみ見すかへりゆくかりかねはおもいたつりをよしと定むる
親しらす早しらすの名弟下にみてわかれ〳〵小加賀を行雁
阿部を小田にのこしてゆくフは紅葉の秋に来んしるしかも
高島
雲なせる花にはうとき春の雁さやけき秋の月になれけん
恋へかさる錦はもみちはをたしむか花は見すにゆくかり
ふる里にます花ありや咲いてんさくらも候すに雁の立ゆく
佐野
糸屑
敦賀
実垂
さくらをも見すてゝかへる雁かねは汝かふる里にます花心ある
信楽
照蔭
花さけはゆく雁やなそ去ねなれし雪の梢もかくあらぬかは
芝田
菊寿寿
わさと来るつはめのあるを春そとてあは帰れるならはしやなそ
御けはちるはてのうきをも思ひ出て花をしりへに帰る雁も
南風せおひてかへる一けねに越の山路の雪もきゆらん
今こゝにきとふりたるもゆりゆくとこよや春のはつ夕あせ
桜をはよしうとむとも一かねよをしむ言葉の花子見捨そ文足
財金石集中
信夫
秋はやく来れや春もまた寒ききたのきの字にかりのかへる字
藍臼舎
苗代はえ龍ふ蒲の青きにはちらひて糊は泥に髭をかくせり
楽里庵
せきいるゝ水も貢の雪しろに道しる駒のかへすなはしろ梅
舟つみのゆたけき秋をみなと田に附木のみい帆の並ふ苗代
角もしのいせの山田におり立て牛いきめくる賎か苗代
臥竜国
信夫
花さかりなる桜田のなはしろに田螺も家をからにして出つ
藍臼舎
紙銀なかはにやめて首代の田をも四五枚すきかへしけり
都への真田ならん堀川の水引いるゝ賤かなはしろ
八束穂の秋もけふより影みえてなはしろ小田に浪のこほれつ
駿岡部
春時
霞岡
苗代のさそふ水には浮草の松をさえてゆく小野の小町田
市中輿はこひにしきのふの芸はけふの茶とかはる花鳥の市の乙鳥
市中柴
一つはくらのさへつりよりもうりかいになほかしかまし市の人聲在
ひさしをは川岸の音市一はくらの女夫かせきにおもや作りつ元照
信楽
肝並ふ門もたかへす来るつはめくはへしちりにくはしやある
人なれて市女か笠の下くゝる蒸りにから今よそほふ田窪
きく花の色にあえけん横市にとひちるいはめ頬の赤さは臥竜国
ぬのひさくしかまの市の市人にましるつはめよ何をもとむる
撰者梅屋雀子
雑茶一符はあつま男に京女郎千月の雛玉山のひな
一冠のまかりし雛の不行儀を見て舌を出す蛤もあり節儀
むつましき雛の夫婦にそなへたるさゝえにつのゝあるもをかしに
たてそくし花もめてたきみに代草紅ひさき祝ふこきんひい葉菱垣
みよしのく花をかされは白酒に雛の妹春の山川もみゆ文盛
金石集下
ありし世の吉野の宮力内裏雛かさる桜にしのはれる音高
つのゝあるさゝえを供御堂なへしは鬼千疋の小しうとの難
汐干汐まかた磯の砂地にてこみて人のあしさへ遅き春の日强
講先もかすむ汐干の沖中にみゆる白帆やむさしのゝ名へ
高島
汐干する賤はさいすもかる石の淡路潟なる砂に去りけり
我妹子か衣の裾ををりかへしうらめつらしく汐干持しつ
楽聖庵
霞岡
うくいすのすさきあたりの汐干かた飛候ひろふ梅の花かひ
浪の花あらぬ汐干の遊口にははまくりつまも見えてうつくし
芝田
嘉寿雄
しま山に汐のひるのを待うちにひさこの酒の干かたとそなる
上総宮松径改
下住
海原に霞の幕をうち張てさくら貝をも見か汐干かり
手ぬくひのむきみ絞りは蛤をひろふ干潟の舟のしるしか
汐干かたれはよこして足のうちしろくなしつゝひろふ蛤花源楼
花
おれつゝも蛤ひろふ汐干かた磯をふくめる妹か貝つめ消盛
春風にないくもをかし糸桜ちりて柳とならん枝かも
高よしのゝかねかみたけは世の人のめつる室の山さくら花
をはつせの花にかくれて火をすれる檜原や風のすみかなからん
霞岡
枝に手をかくるを見つゝ山守のとかむかしらや花の雪をれ
山さくらさかりを雲とえまかひつ我目もはるはかすむなるらん
野田
雨のふることをいとひてさく花を風は雲とや見てちらしけん
柏樹園
霞図
わか宿の庭をうつみし香は皆となりの花の雲よりそたつ
梅香
初さくら見よとて告るつかひ女はことはの花もすくなかりけり
仝
愛樹園
すみた川桜のもとの菓子うりも花にくもりて傘ははなさす
よしの山花のさかりは葛の根を吹出る風の薬にやせむ
あまり舟はつせの花にくむ酒の肴によけん泡さたをか
一金石集下
仙台
花の山道は羊の腸や紙をしをりふわけのほりつゝ千菊国
八重雲と花さきぬとも神路山しなとの風はふかせすもかな仝
より〳〵とわきてめてけり桜花さかり七日の中の一日は仝
人はしめかゝる山路のさくら時花にこゝろや日毎かよへる
信楽
かさしもつ扇のふしに時しらぬ雪降かゝる花の下かけ照蔭
折もたる花いえたはあき人の袖にいあはぬにしきなりけり三宝亭
咲みてるよしのゝ山のさくら花大和にしきの名に負せけり光陰
ふる雨に雪のましれる心ちせり糸さくら花風にちる日は仝
飛みんと摺鉢山にこそなるみちゝすり坊主出てちらつく母住
御く花にさくらかもとのかける茶屋はたきる湯気きへ雲めにかふ
一雉子を思ふ四人のきらすのねや心かゝらひのこふしめてしらすか悦山
時雉子を思ふ御とへのきゝすのあや心はらひのこふしめてゝこらすか
鉄砲の玉の横野に身はそれて草に飛こむ雉そあやふき
奈良
世にあるもかいなき身とやしのふらん御くにかくれてあさるきもは
登
矢先をは逃て野末はなく鐘の声はさつ男か耳をつらぬく
へはくひしむくいなるらん魂網に春野のきゝす身をそまかるゝ
へみくひしむくいなるらん縁網に春野のきゝす身をそまかるゝ
芝田
たつねてもあはぬ妻子のわかれかもやけ野のきゝす鳴くらしをり
妻や子に心よわくもひかんけんやけのゝきゝずたちもやらぬは
代呼はめれしか心をもとらひて奉公つきまきまき出かはりの下女花咲菴
一出代呼なれしか心をももらひて奉公の口つき早き出かはりの下女
〽出かはりに涙こほしてもいはぬ桃の節句にも口や尋ぬる
出代にくむ車井の二釣瓶さかる水仕女あかるちた女
一跡をしも濁さて立し出代にすむもめてこき水仕候は満盛
水しめもけふは涙の玉たすきかけしか袖のぬるゝ出代
桂経よはし手児葉の昔しのふらん真間も入江に幡亀うむ福祇亭
水辺桂龍よはし手児葉の昔しのふらん真のふらん江に浦亀くむ
なかれゆく水の東に粉を引てふるふやうにそ城ふくなる
延金石集下
濁り江にすみてるよむ城らる清きこゝろは蓮もはつへし北岱
るよみて雨やこふらん堪らも小町かまねを猿沢の池
阿波
おもすから城の水のかしましと門田の田にし戸さしをるらん
弱大原やか花にそへし大繁栄もゆとはいはて色にみせけり雲井国
躑躅大原女か籠にそへし大藝学もゆといはて色にみせけり
風はやみ三湯の浦主のつゝし花よせてかへらぬ浪かとそみる
嘉吉
藤津の小栗の塚にさきつるはいろもてるての姫つゝし哉
盛岡
畳をひく松のうつほの姫つゝし馴ては花ををらぬ山猿
森集亭
仙台
海はらとかすめる春は磯山にいさり火見する紅つゝし哉
若鮎もえかねてに柴けふりつみなからふ針に釣し鮎を焼にも
川水にうつる柊の影ゆれて葉をちらすめさわくわかあゆ
しら雲をわくこゝちせんよしの川影うく花にのほる若鮎
山形
香根雄
高島
一松上藤神垣の松の梢にきよけなるしめ縄めきてかゝるしら藤
藤の花枝に匂ひて時わかぬ松にもはるの立はみえけり
芝田
菊寿躬
風やとる松にまとひて咲藤の花の浪にも声はありけり
死の雪降りきてつもる松かえの軒につらくとさかる白藤
こほれなは掃除せはしき松かえにたすきとなりて咲藤宗
嶋山の松にかゝりて咲藤は音なき浪とみえてあやしな
身をかろくおくとも人のしら藤のいはほの松にかゝりてそ咲
嘉吉
仝
はひ松にさかりし藤の釣瓶つな花の色さへみゆる山の井
やらすの日数も妻の堂山に枝こえてさく花のふちなみ
土屋
(酒盛
ふちの花夏へ手を出すほとみえて高き松にものほりそそ
仙台
葉の針にしたてあけらん女松松袖と見まかふ藤の花ふさ
千菊国
高島
旅人に降くる雨をしのかせてふち浪かふるみねの笠松
兼躬
立琴の袋のふさとみねたかみ松にかゝりし藤のむらさき
仙台
一文金石集下
廓春春雨に猶とゝめん物をゆく春の露かつき傘そそうらみなりける
三宝亭
引とむるかすみの袖もけせされて春にわかれの里のきぬ〳〵
雲井国
すのゆくとしろあや衆後坂きぬ〳〵遠くかすむあみ笠
むりとめにしてもとまらてゆく春を格子のうちにをしむらかれめ
ちる花も露のかへさもとゝめすや春のむけになけくうれめ
音に鳴てくれりすやをしむらん龍のとりふる里のうかれ女
楽聖庵
大門に霞横たふ貫ぬきもはつしてかへる千金の春
吉原の春の名残は友女郎身請の駕のおもひなりけり
三宝亭
上総一宮
よし原の滝の鳥をも鳴せけりくれゆく春の花のわかれに
くれて行春をしはしと見帰りの極も枝はあけてまねけり
山町の花のこかねをちらしつゝくるわを跡に春のゆくらん
工屋
酒盛
霞岡
大いをうたする客は行春をくるわにとむる心なるらん梅寸
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二會目
春友亭政明撰
勝角力ニ與フレ花ヲ
当座
御くら木に名はかをるらん縮すまひ土俵も花にうつむはかりそ
一貫ぬきをかけし色こその関の戸は流すまひにも衣をちらしつ梅屋
衆ぬきてと。らせぬはなし旅角力しかまのかちのうちはあくれは
舟唄
三会目
曽我狂言
鶯の屋光蔭撰
当座
在江戸
かわんけの花にたはるゝこゝちせん小袖の紋の蝶も時えて滝守
うわんけの花にたはるゝこゝちせん小袖の紋の蝶も時えて
影くらき花水橋の月さよに引ちきらるゝ雲の片袖梅屋
仝
一仝三階ニ祝二当振舞ヲ一
一大大をいはふ芝羽の湯はんに稲荷町まてあたる杉のは仝
寿きは松の大夫の中二かい三かいまてもしける酒もり
大入の延懸。うちたる狂言のふりをいはふ福山のそは光薗
仝
田雀
狂歌金石集終
カウ