我おもしろ
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- 手柄岡持
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- 場所: 江戸
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- 手柄岡持
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- 日本語
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- 角丸屋甚助
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- ワガオモシロ
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- 東北大学
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狩
我於もしろ上
胸中に万巻の書なく眼中に天下の
奇山水なければいまだ必しも文をよく
せずたどひよくするとも女わらべのことばなり
とはもろこし元朝の呉立夫がことばなり
けり朋誠堂平沢天寿平格子薙髪
して苦のにさ人となりしと戯れて自ら
我面白序
□□□□□□□
平荷と名づく胸中に万巻の稗官小説
をたくはへ眼中に天下の人情世態を見
つくし上はやんごとなき王侯大人より下は
あやしの倡優津卒にいたるまでこと〳〵く
見てつまびらかに諳じたれば心に思ふところ
筆にのらずといふ事なく筆の動く所
心のごとくならずといふ事なしむべ
なるかな誹諧に月成の婦たかく戯述に
喜三二の名をつたへ狂るに手柄岡持
ありて詩をつる釣針にひとしく狂詩も韓
長齢と称して平仄の娼を刻すべし
狂文にいたりては一流の文法にして源に
千百百万
あらず勢にあらず支にあらず許にあらず
人の気のつかぬ所をうがち人の意表に
出る事を楽む思へばむかし鄭の国に
東里の子産といふ御留守居その国の
辞命を潤飾すときこえしもかゝる筆
にやありけんかしことしその子大奇
ぬし父の手沢の遺れるくさ〳〵を集めて
一集とし旧友円乗燕斜のこ子をして
一予が序をもとめしむわれ朝夕の
いとまなくて一日〳〵とすぐせしうちに燕斜も
巣を辞してとこより国にいりぬればわが身
さへ心もとなくとく筆とりて同じ心の
浅面白序
千百日乃
一円乗のもとに贈りぬ平荷翁みたま
あらば破顔微笑し給へ余人のしる所に
あらじかし
文化の暦も十あまり一つかさなれるきのえ
戌のとし葉月の比
六十六翁蜀山人
關
自序
労弁兼信氏ノ寄贈会ヲ
以テ隣人セル竹関博士
「狩野亭吉氏藤蔵
誹諧歌といへるものと狂歌とはさま呉なり今の側
諧のつらね歌はいかいの発句なといへる物も誹諧哥の
趣にはあらしかし芭蕉以前のはいかいと云物は狂哥の
片うたとも申へしや詞たくみに狂したるさま多し
今の俳諧は狂句とも云かたかるへじこのかみ久敬帝に
示していへらく狂哥とてあまりに拙き事は云まし
き也いつく迄も能は和歌也其内を少し犯してよむ
利匠白府
へき也口に任せていやしきこと云出るは歌のほいを
失ふ也とてみつからの和歌三首とり出て見す
歳且喜興歳暮の哥なり
門松のひと葉の針を棒ほとに千代とそ祝ふけさの初春
氷とけみとりの枝々の影うつる空にも魚のいかは登りて
かけかねをとるてふねの夜もふけてやゝあまの戸も明んとすらん
かゝる姿に心得よと也さればこれを物にたとふれは大
諸侯の御前にめされて出る時往侯書院の正面に上下着
給ひ給ひ給ひ給ふこなし給ふこなたも礼服を正し
はるかの下座に這出て礼をなし申さんに物語なとし給はゝ
言葉すしなくおろ〳〵答へ奉らんのみこれまことの哥の
さま也其後常居給ふ一間に袴をも着給はす座し給ひて
肩衣とりてを〳〵とよりてたはこをものみつゝ世の中の
事物かたれとあるに打とけておかしき事共云出なは
笑ひもし給ふめりされ共大諸侯の御前なれは友
とち物かたるさまには何事も申かたし狂歌も此心持
浅面白亭
我匠白雁
にてよむへき物か我にひとしき友に対して物
云ことき心持にてはいやしく拙くて狂哥のさまを失ふ
なるへしかくは云なからも折にふれてはしたしき友
にもあらはこそ従者に向ひて物云こときいやしけ
なる狂歌も多く出るそよしこれは只哥のさまをも
えらはすこゝかしこにかい付け置たるを拾ひあつめて
書つらねつゝわれおもしろと名付くわれのみ
見るものにしてかしましと思ふ人に見せんとには
あらすされとももし見る人のあらんにはいたゝける
おもしろしと思はれんをほりす心もあなれは言
葉の縁談又両段にかよふ文字等の一通りに見ては
わきかたきもあらんと左右に文字を添て心をつく
せるをは人にも知らせんとのつたなき心も見へて
われなからず猿けれといはゝゑひす哥の戯れ
なれはかたの如く恥へきにもあらすと云事さへに
初終り定らぬも狂人の哥の本ならんかし
我面白岸六
己
寛政元年己季の秋手柄岡持
酉
北席は家君みづからの狂歌をかきつめられしをりの
はしがきにて狂体の短歌の事をのみあれつらひ
おかれぬればこたび長歌狂詩仮名の詩狂文をさへ
書加へて梓にゑれるふみのはじめに載むはおたやか
ならぬしわざなれど我おもしろと号けられし
守は子春迄かふるにしのびあへぬこゝろよりこゝに
出し侍るなり
文政二年夏
文政二年夏男平沢太郎識
我おもしろ上の巻
手柄岡持詠
春
年内立春
年のうちに節の早さもあらはれて清き障子をはるはきけり
ぬけかけに春はきにけり池水の水のかこみいまやとくらん
亥年翌年甲子なれは
ふたまたの大根の如く手の内にまつかたあしはきのえ子の春
一閏のありける手
十月あまりみつきに春をひきつめで畳とやいはん幸柱とやいはん
立春
鶯も梅も霞もつゝけとてさつたちけりなあら玉のはる
元日立春
けふとなれは去年とそねのてふつかひ二枚屏風の春はきにけり
元日
久かたのそら淀なれや天の戸のあてたつ春のかきりなけれは
是もかみのあつきめくみにしまりよきはるにあふきの末広き御代
二男より年ことの大つこも理に青竹の花生に梅の一枝
をそへて贈りける辰の手えるこしよめる龍虎梅竹
くの竹のよもはやとら卯たつの春けふの用意に昨夜この花
戊午の手のはしめに
狂言にあらぬ宝のつちのえにうち出してうまのはるは来にけり
戌の年のはしめに
大みそかその大の字に一てんをうつてかはりし犬の春かな
える両国橋を過て蜀山人
両国のはしくれ武士の手礼に鎗一本のかすにいら
はやとよまれしをきゝて
両国もまたさえわたる年礼に花をもたせしきみかやり梅
立春のおそかりし年のはしめに
徳若にこまめ鶏もかす都みてえひやつといふて春や立らん
早春
遊ふいとに思ひよりけんあけそむる春につくてふ風も手毬も
万歳
まんさいかもゝちとりよりさきかけしふるきしらへのね色のゝけさ
若菜
鏡けのつまにもなさめ山鳥のおろぬきそむたるけふのわかなは
七種
かへ玉のわかなを粥に用ひてはたしかれそんと見ゆるなゝくさ
霞
戊
にけ水ときくもきたなしむさし野にうし路を見せすたつ霞哉
霞似下帯
たちわけてひとのふたのとみよしのゝ妹背の山の腰の霞は
梅
宵やみにかを間のみなるやり梅はつゝきいてゝこそ見るへかりけれ
これもまた名はふた葉よりかんはしきせんかたん巻のやり梅の花
隅田川の梅いまたひらかさりけれは又こんことを木
のもとにちきりて
又於出なんじはしめて咲ころに裏やくそくもさつすみた川
梅と椿の鉢を洗ひあけて
去年から色けつきたる梅つはきゑかほも花の二はぢ十六
鶯
白雪はきえさうなか鶯の文うをはるへに習ふ法華経
柳
やなきさへ少しは雪のさはりてや霞もはれすひためをく
柳の馬場の柳
一春風のふくは猶となしこふりよしはゝそたちとは見えぬ青梅
むつきなかは雪のふりける日貧しきともつきのもと
より
とし原の春をも我はしら雪のふるといふさへ恋しか
りけりかくいひこせし返し
ふる手もはらはて積るむくい今めくずくるわの雪は見られし
春山
春寒し富士とつてほゝにらみてらたかひに笑ひふき出すかせ
かくはかり春はをかしきものなるか耳なし山も笑ふとのころ
江春月
見
□□
霞こめてまゝの入江にうつせしはかまくら山を出し月かも
春雨
はるさめをたのみやすらん掛水もかたき山田のたねおろすには
遊糸
ひとゝせのおしうつりゆてからくりのしかけをすとや結ふいとゆふ
あかりたる凧の文字よめかねけれは
四角なる凧の文字をもよめにてかかなひきといふ糸もありらん
源長寺宿を忘れて見えられけるまゝ加茂の奏
すきいれたかをまゐらせし礼としてみつは芹多
まはりけれは
ふたはなる加茂のあふひにひきかへてみつ葉は鴨の相手なりけ
帰雁
かくかへさかねのこし〳〵かへ間利そくかすみのうちに塵都もる山
上野山の彼岸桜さかりなれは日ことに山をかけめくりて
彼季氏にならふとはなく彼岸の花の奴と我もなりけり
弥生のはしめ十軒庄を過て
これもまた花そといはく家さくら十二ひとへの雛の盛りを
したしき友より手づくりの白酒を贈らんとありしのみ
にて弥すの朔日になれとおとつれなかりけれは
いつはりの花かけふまてつり狐白遺酒てふころもきぬれと
青楼の桜
よし原は花のさかりとなりにけりよしのははたし飲城は下駄
けいせいにはまる桜の花こゝろみのなるはてに酸やさむらん
在五中将のよませ玉ひし三十一文字の上十五文字
下十五文字はそのましにすゑおきて中の一文字を
換て
□□
さくら花ちりかひくもの猶いらんのこんといふなる道まふかに
弥生十日はかり隅田川の花見にまかりて
ものゝふのは十氏人のまとゐして花のさかりに来あてつるかな
すみた川富士と筑波をむかふつらに咲つらねたる土手の花道
御殿山花
常に見るをりは三点五てん山はなのさかりはおくのかきぬき
湊汐干
まとかたの湊にいたるしほひかりねとふめあては星鰈なり
一春暮
けふぎりかやつの巻とや春の日のおほし月夜鶯の声
ひとゝせ風のこゝちにて花を見すくれゆて春となけれは
老のみに寒さのはてはなかりけりはなみつにして春もくれゆく
三月晦日柏餅を数くひけるをり景富のぬし
かしはもちむいたみころは月の形つきなり桜のくふともり
ととありけれは
かしはもち月なりなきと影もなしけふは三月みその小豆か
三月画
光陰の矢よりもはやくたつか由み春畵類日もけふにあたりて
百反
四月朔日
けふらいへは春もすき菜のふしのまの都きのも見えす夏はきにけり
更衣
わたぬきのわの字をこれはたぬきゆゑ小袖も化て袷こそなる
卯月また寒かりけれは
水よろなけれは質も流されされさのぬきてきるもきられす
卯花
十
勇とのみ古願にはよみし卯の花も我めにはたゝしほらしくみゆ
丑とふけ寅とすき申て短夜はうの花よりやしらみそむらん
新樹
笛の名の青葉にしける木には皆はるひうちゝにめをやふきけへ
牡丹見にまにしにいまた花のひらかされは
いつよくいつか〳〵と咲花をまた類ゝほとも二十日草なり
時鳥
鉄炮にうつてかはりし時間折なし卯月のはつ音なれける
深川時鳥
梅本に玉かふ尾花の春秋の仲丁さしてやさほときす
駿河臺時鳥
吾ヲ復知レ所レ止ル也向チ二聖堂ニ一啼ク郭公
孟宗の筍をもらひて
うれしさを心のたけのこれほとゝお礼孟宗こゝのはもなし
松魚
のこのものものといふはつ松魚み折江戸ものゝさしみにそする
一卯月八日帆立貝々秋田風呂を人のもとに贈りて
摩伽陀国の軽き産とも見たまへや卯月八日におくゝ物から
五月雨
そらいろを絆に染なすさみたれも前たれに似てはれはせぬもの
蚊遣火
いふされては逃て出るから柱ブウン長久敏ないあむせん
扇
あふけはそ少しはしまる我身かな扇の骨のゆるむはかりに
ふるき舞扇を繕ひて
あつさ訪ふ人をあふきて涼しめんこれはふる舜扇なるもの
}
我
唐扇をもらひて
暑にまけすかみもそゝけすはたらきのその骨柄も一器唐扇
渋団扇を人に贈とて
いさゝかな進物なからこふさみまを壱分のこしてしからしや
反古団扇
これも人の手本となりし反左団扇三尺さつてあふけ火のゝけ
亀井戸天満宮の開帳に天国の太力出れはいつと雨
ふる事しけしとそねはわきて梅雨のうちなれはを
やみもなく日こと雨のふりけるまゝに
鯉口はあま国なるかとめもなくぬたるほとふる梅の事かな
夏雲
あま国と見るこそよけれむら雲にらいの目利はさくも怖し
氷室
氷の貢みなつきそひていとへともついたち〳〵としつくなれ都く
水無月十五日すみた川にまかりて
てんかくのみそかはいはす下戸の身はもちの月夜にみそきしてまし
夕立
夕たつといふは木たちのたくひかもよくふりあてゝ跡のはかれは
瓜
花を乳に蔓を手縄に引はへて紋は
縮
すきやちゝみ茶の多て絵はわひたもの三てふならはたかきてもよし
精
石の如きほしひ袋は狭夜姫の針さしかとそあやまた社ける
両国の涼
涼しさに両国はしの梓弓いきかへるとて人のよりくる
十一日
瞿麦
露ふかみそのここなつの夜もあけて朝きけんとき開麦の花
紫陽花
おし合ひて百里んも咲くあちさゐの花のおもさは壱匁ほと
暑気見舞の帳面を見るにいとつゝまやかに慎
て書るは右筆の衆なれは
御右筆これそまことの書記見舞汗もかくなるもしの有衣
夕鯰
府生殿のおうまかりつゝ夕河岸の阿字〳〵とてそけふもめさるゝ
百万か秀作に銅の蚤かとはかりなかめけりと
あれは
よしやのみあかゝねにても用はなしめにかけて見てつふしにもせん
六月立秋
秋
夏秋を地頭にもちて入会のひと村雲におとろかすかせ
はせたまへなとありけれは
一文月朔日日医師よりのふみに此ほとのはやり風いと
おとろきてのむふり出しは持得たり秋来ぬといふ目楽もかな
文月に入りても立秋のおそかりけれは
六月からすわりつゝけのあつさにてけふまて秋のなつこともなし
文月六日星に手向なは庭の竹贈らんと隣の
あかしよりいひこしけれは
くの竹とあれはこなたもほし合の空辞義なしに貰ひ申さん
七夕
ひとゝせに一度は吝きちきりかな七夕つめに火をともし妻
草市
五
なきたまは目玉の事にあらねとも座頭の名かと思ふ草市
廿六夜の月の土を見ると見さるとの二首
柿のたねの形にをかま社玉ひけりあまけことつかすはツしぶの月
客よんてねむいめをして月も見す弓や三様のむるといふら共
文月廿九日に
鉄炮の玉も冥途に帰るらんぽん〳〵〳〵〳〵はけふあすはかり
同しく晦日の夜に
文月もつこもりの夜となりぬれはめてたしかしく八朔の米
萩寺にて
なりえたりきても見よとて植おきし萩やにしきのはたといふらん
同
火空に磨き出せる月かては天下一面の鏡なけり
此歌野口蛙鳴か扇に書てつかはしける後月を
画る扇とり出屋ことなき方より乞社しまゝ大空
の月の顕かきてよるも又天ち一なりなとたは社
けるその扇に
天下と義理いつへんの月合は世の中そらに合せかゝみう
かく書てつかはしける夕方再見えて先の扇また例の
麁相にて落したりそのいひわけりてよとあれは
手の長きものやとりわわんさるにてもいひわてくらし月を落して
三番叟早人のこととより月の歌とて
秋草のはなもこよひはひしけりたゝ一りんの月に
捨されてとあるかへし
大船はたゝいちりんの目なから光はさらにはかりしられす
十五夜雨ふりけれは
米ねてよりほうや〳〵とめてぬ秋はあまへてふれる事にやけらん
我
もちの夜金通ふねの前にて
一価千金魚もをとす水の面に照都きかけりそ藻中なりける
月見の宴に我ひとり下戸なりそれは
盃のめくるをうはの空に見てともにそてれりもちつきの影
欣城の月見に踊を催して月丸へ此事たのとける
に踊の童はとく来ぬれと囃子方のおそかりし
をわひける時
江戸よりはへたゝるさとのちりからにはやしといへと遅くきつらん
はやし楽たかけてもさして咎めぬはそのしよくならぬ目丸の名に
八月傾城に示
いたことの月見はよしに信濃なる見えをは捨て恥をさらしな
高輪の月見むと誘れけるにさはる事ありて
ゆかさりそるその夜よめる
見るへもはなれかねなんたかないのはなやとちのつきのなこりに
駕籠のうちより立待の月を見て
楽とのうちに立れはせねとまちをれはろく尺ほとにさしのほる月
千蔭翁の門に入て書を学へる人のもとより良夜
の用有て紫苑を贈りしくみの瀧木におもむき
のうつりけれは
月こよひちかけをうつすふみのうちにはやくしをんの花もみえけり
閏月の為に草月つまりは秋のなかはにあたり
ぬれは
まつくらな秋のもなかを楽そふれはこよひそ月の背中なりける
月前河漏
もりかへをうつず手ことの月の前に殊さらしなのそはそたふたき
檀年子のもとよりふたゝひ新そはを贈られはしめ
一
よりはいろも黒くたうへにくからんなといひこしけれは
新そはのうちをかへせし磁色をこ下くともりてくらひぬらかな
鹿
人ならはかのとはかりにその名をもしかとはいはてつまやたふらん
西路
ぬれぬさきこそいそきしかおよ〳〵てすゑは流るゝ覧くさのつゆ
関勇
たりといふ名もにけなしや揚弓のあたりと見えすみすむら〳〵のせき
赤蜻蛉
五位髪はその色としもなかりけり赤とんほうの秋の夕くれ
土佐の八つ歌といふ芋を
子に孫に産やしはこのいたととせの親こそ八つの歌なりけれ
うち栗を貰ひて
宇ちかさねくいふうのしさをとりまへすとなとなとかめ玉ひそ
野菊
春の野に見し幼名の菜をかへておきくみなれば今か花嫁
初丁
かけ出て見れは軒端をさゞき皮のひさしほりなるはつ雁の声
十三夜雨ふりけれは
十五夜の柿のしふらは二分ぬけてあまでもつきの十三夜かな
つゝら長持か十五夜の歌に
空色は雲もはれ着とそめあけてこんや名におふ
こくもちの月と聞えけれは
紺尾
十三夜又かけ替にこくもちを染よこんやのあさつての月
何調子難問の歌に
後の月いさよひにてもあるへきにとうした事そ十三
↓
団上十一
夜といかへし
字の画て見よ望月と後の月と丁度かなひて十五十三
又問
後月の文字のくりては十三夜之の字いかれは十六夜なり
かへし
四角なる之の字は歌にあたかまし丸いのゝ字てすめる月かけ
辻番の菊
咲
そんしよそこへはとう行ときくの花今を盛らさきの辻番
上野の元光院へまねかれけるにいつも菊の畑あ
りけるまゝ今年もあらめとはらみかたよみて
ゆきしにとくちりはてゝなかりけれは
沙汰なしに水となりしは中條のくすりかきくのはらみ哥なり
長月景富子のもとへ菊を見に行けるに俄の
太鼓きこえ気社は
来
よし原の太鼓をきくのはなりさきこちのにはかと思ふ計に
城
紅葉といふ字を除きて紅葉のうたよめとあり
けれは
照しあふみむろの山のまほしきは新田の川の西日なりけり
三番叟早人のもとより紅葉狩の影とて
夕くれも狩ゆて気をは空にしておまんかへに
の紅葉をそみるとあるかへし
夕くれはへにかと見えしもみちはもしもむら消の朝のおしろい
秋天象
ぬか星は雨とふりきぬ桂男のこゝろと秋のそらのならひに
秋地儀
田にまけす月にもまけす畑ことに花の浪たつそはの名々ころ
山路秋色
秋の声なてつゝみをうつの山あまたつたはふ岩ねうつれし
九月画
遣ふ立といはせの杜に木かくれて神あり月の長月のすゑ
冬
初冬
景しよしに味ひなくやなりぬらんはこと落参る冬の口と
時雨
五月雨のまねをもしられ夕たちのまねをもしくれ空定なき
里時雨
あしもとをみのと笠その価さへむらしくれ楽こと高安の里
人のもとにみの紙をこひにつかはすとて
紙
ふる筆のかさはあれとゞかみな月しくれをふせしみのをたまはれし
神
十月の末に
十月の末はあさ漬役者附煉馬大根小屋くら太鼓に
昼の雨夜にいりて雪となりけれは
日のうちい事とふりしこと片仮名のヨをこめてこそ雪となりつれ
残れる菊を凩の吹たふしきれは
天都神のはらを立てやかしはかりきくのは札をも候はすよらし
物からの不案人か網代の郡に
猿猴か月にたかひてあしろ守水のなかなるひをも
とかけりこのうたのいとおもしろけれは
ものかうといふうち人はひを追ふて終にのほらめ顕のみなかみ
冬至
来復のふくをにこりて河豚とよまは一陽の字は銀杏大こん
文
佐倉炭
赤きより白くうつろふ切岸の古は菊に似てひなるもの
水口をことさしといはるゝものゆゑに折くるたんてはきかぬきり炭
炭竈
内に居て見れは真黒にたつけふり富士の峯とは雪々炭多
山茶花
八重ひとへかさねて見れは水重の九々のかすにもあひしさらん花
冬夜夢
夜のふくるまゝに炭団もきゆらしを白雪と見る夢はさる夢
霜鶴立洲
沖の洲に宵より霜の気さかけてねまみ色なか鶴の毛ころも
考詳子のもとより狂願のをかしからぬは蕃椒
のからからぬにおなしとことかきし玉ひて
いとはやもくれぬる年か矢の如くその光陰にはや
いつきけ無みありけるそ我胸の的にひしとあたり侍
りぬこの暮はことにむつかしくその事書そへて
椎の実は辛からぬ蕃椒とも申へしやと射返し
まゐらせて
かたつかぬ筈よら勝手のわるき上にはやけつき弓ひかすつまりて
歳暮
筆の矢のはなしのやうな不手まはしかけりならはいぬとうたへよ
掛よりのとつてゆこりと聞えしはとしの関屋のそうねなりけり
年なものよするひたひのしわみよりくるらはいたくをしまれにけり
ひとせの月にあふきの骨のかすたゝつは形も矢の如くにて
午の年の暮に
午のとしてけふのひ。つめに止つめてとめくちわかき咎にそ有ける
同
今日やたつ春のひつしの手ならは喰ふて仕舞てくのの書たし
関歳暮
関守も何かとゝめんゆく年をみやまの小松きつていたせは
逢坂の関の清水に米かして今やひくらんもちつきの粉な
申の手大つこもりの夜に
こよひこそさるのしかへも有礼なゐのとりのかしらとあそめぬらめ
離別
銭別に蝋燭を贈りて
は
都見無にて出立玉ふよし羨しさかき理なし
供せる従者となりても行てんこゝろはしきりなれば
ろうそくはとても叶はす都まて我か名代にもさせてたへ
蝋燭
日吉氏御よろこひの能つとめんと律経
賀して
此たひはよきをもえほしよき素袍上広けれは下もわさ〳〵
旅
司総日肇祀子の旅立を送りて
たつ時は奴も雨もふるさとにむらふそはれの旅路なりける
同軒旅
箱根山を過るに霧ふかし夜の明たる事のいと
遅かりけれは
薄紙にはかさへきりの箱根山あけなんとして工合むつかし
喜世川の橋にて見たる富士の景色の正宮を小
田野何かしか見せたりしをおもひ出つゝ喜せ川
にかゝりけるにをりしこと雲のおほひて見えさ
りけれは
戊
上十五
させつに気をさませんとふしさんを隠して影も見せぬうす雲
沼津の清水助左衛門か宿につき上段の間を見るに
諸作の御関札あまた見えけれは
大名のまねをしみつか興の間のしやうたんらしき我身なりけり
清見寺の門前の膏薬屋を見て
腫
青巣屋脊中にうみを持たれは夕日ことあかくはれ渡りけり
箱根山にて朝の月見しのちは雨つゝきにてろく〳〵月
其見さりけるに都に着て弓はり月のはれ渡
れるを見て
箱根山明し時より理紛失の夜光の珠の月をみやこに
忠臣蔵の七段目もまさにこの所なりと一力か椽か
いにて
えんかはのいとくしのひてふみ見れはわか心からきし〳〵となる
南禅寺の山門の上に十六羅漢あり脇に藤堂侯の
阿羅
臣あまた戦死の位牌ありければ
あらかんし入たることや君か為いのちは二そくさんことんの上
新町の高嶋屋にて太夫あまたかりて見侍るに
うちかけのさばきは優劣ある事と聞えけれは
なしあしもあまねくかりてみつの浜にみせていかへす波のうちかけ
島原の角屋か庭の松を見て
秦の始皇のやとりに雨をもらさゞりしより松
に大夫の寶あり又太夫に松の位あれば雨もも
らさず水ももらさぬかたらひをなせとてこそ
この松は植おきつれ
角徳か松の位にたちよれは太夫しきりにふる事なし
本宮宿の鯉屋といへるにやどりける時めしもり
〆
上十六
□□□□□□
のかさかきくづれたるが鈴仕なとしけるはいと見ぐる
し名を問へは玉川とこたふ友のいふこれはむさし
の玉川なるべしとおのれはさにあらずこれなん紀伊
の玉川なるへけれとて
わすれても買やしつらん旅人の鯉屋の鯉屋の玉川の君
難波の長命がもとに三日逗留してわかるゝ日は
三月晦日のことなりければ
ゆて春のわかれ才なにかなにはかた短くとめしあしの名残は
哀傷
刀の鞘鳴のぬし松島の紀行仙台通宝を著て
おのれに席をかきてとありしをうけがひながら
等閑にうちすぎぬこのぬしやまふの重きにつけて
も心にかゝれはとく書て贈らんとおもひしか深くおし
はかりて力やおとさんなどかうがへつゝいかゞせんとこゝろ
くるし九て
深くへくやとまるへてやとさるともかくともわかぬ仙台通宝
鞘鳴ぬし水無月の末より文月にいりては病の愈へ
くおもはれしもむなしくなりぬと聞て
いかなれはたて直してもうちかへす人のしやうしのたけの短き
一三月晦日味噌のなれ兼白まりけれは
あすははやなつかしからぬけふまてにはるつき弓の弦のされては
胡方このめる人の身まかりぬと聞て
玉のをも馬の尾にし似てきれぬれはあはれ姑きようの音も聞えし
伴我子の尽七日朝にて呂英のぬしより杉の
折に白き餅を入れて贈られけれは
〆
ほとなしや七日〳〵もすきをりにきふつきぬものもちをみにも
能笛を好みし人の一周忌にあたれは
ひとめくり初段となりし早舞のけふの日やうらうらむかひなき
まんたらにてをか〳〵手柄せし岡釣好の人の
三周忌に
曼陀羅の詩にもますかあらたふの三国にみとせ河岸をかへすも
前田のぬし一周忌に風流の交も深かりけれは
月の秋雪の冬又花の春つゝきすさつなつかしの人
文月七日の鞘鳴ぬしの七回忌に
月の名の文もこぬかや糖星のそのぬるに針うつゝなぬも
寿七十九歳
辞世三首
つひの身の瀬々なりぬれて飛鳥川あすより渕とかはるへきかは
死たうて死ぬにはあらねとおとしには御不足なしと人やいふらん
狂哥とむうちは手からの岡もちよ与まぬたんては日柄のほしともち
懐旧
三河坊なもの前の観世太夫が邯鄲を舞ひた
間水衣なりとて人のくれけるを着し気
れ恐ら
今の身は栄花の夢もみつ衣無常を観世流にならひて
邯鄲の装束は水衣にあらず其頃の工夫をもてかく
の如か
おもふことありて
なき友の韻は髑髏となりぬらん今世の中のしやれを見るにも
老の坂のほか〳〵てふるとむけは霞むまなとに大をくなる耳
戊
十八
述懐
金なきとひまのなきとにかへてまし病ある身と苦労ある身を
初午の翌日に
はつ午の太鼓にあらて鳴か耳のおころふる身もはやしとそ思ふ
毛ぬきと鏡を得て
かゝみ山ひたひをぬきし若草も髭ほう〳〵と霜かれてゆて
板〆ちりめんの切ませの紙衣胴着をたまはりて
一老てこそうれしく着つれ花衣はつかしと見しころそ恋しき
七十を越してひとせましに。おとろへのはなはだし
ければ
このうへにしゝくちいはし花生のいけるかひなき我身なからん
慶賀
寄福禄寿祝
福禄と栄えなむ極星霜を都むはあらまてしれた寿
姦
寄顚祝
ふくのとくもすめる御代とてなくとれの字にはあらられと身にはあたらす
寄竹祝
編竹の直きつ代とて此君のかゝるめくみになにかもるへき
寄草祝
萩蒔なひかさらめや秋の野のちくさかりける代にしあらねは
寄碇祝
はんえいやくみていかりつなをうとかぬ御代のためしにそひて
寄文字祝
をさまれる御代とて天下大卒の文字にもへんのなきそめてたき
四十二賀
竹契遐年
四十一
十一
上十九
くの竹のかはにもちきれいく世餅つくもつきぬ君か齢を
此歌を見し人のもてはやし都ゝたはれうたを贈
られけれはいとはつかしくて
岡持のこゝろのたけの短きをはねたといたかかけ言葉そも
年賀にみかさねの瀬のうた与みてつかはし
けるに狂歌をもよみてとあれは
みかさねにつゝみの滝を打そへて又千千千千千千代かさねてよ
蜀山人令堂六十賀
老木花
歯
こふりよしめよしはなしの者木とは誰みよし野の花の色艶
志月菴素鹿六十の賀の哥よめとありしを
はたさゝりけれは
御一首をひとへにこふや六十の若衆さかりをよらて
たまはれとありし返し
六十の若衆さかりはおめてたきためしにはにん釜かしてよへ
素庭六十賀
六十の十の字の上に即仮名の人の字を千代ツとそへて祝はん
そのぬしの若山静虎老といふ字を句の上に
おきて本卦かへりを祝ふ
若かへり山皆笑ふ静けさを虎渓の友と老を忘れん
寄松祝七十賀
此さきは九百三十ねんかね松ね松に契れよはひを
七十も先長いきのひとつ松これからさきそ千代の友なる
鈴木氏
七十賀
辛崎
一七十を古来稀とはやうかまし鈴木の叟千代もふるもの
一瓶斎の翁銅釣瓶の水さしに木地の替蓋
をつくりてその割蓋しめでたき狂哥せよ
父
米の賀に用人とあれは
割ふたのよし〳〵五千五百歳釣は千年瓶は万年
宗幸老人米の祝
御
君かとしの
よみやう
とつかとしのよねにあやかり申すへい
いく千世こめてかきりあるまい
昭阿のぬし勧進九十賀
集の名の千載も生延ませやおなしとなりけふの説に
元日拾ひたる扇にめてたきうたを望まれて
これもかみのちかいうちには幸ひと身にそふみのう末ひろひろひもの
出渕両雅のぬし甲寅の元朝髪を結せけるにもと
ゆひふつと切れ同三日の朝の雑煮に香の物三切つけ
出しぬ又十一日の鏡ひらきの餅の欠指にたちて
血出ぬこの三つの事心にありぬれは祝ひてみあり
けるまゝに
香物
こう〳〵とみつのあしたや折公梢にちとせをちきるもゝゐをそみる
孝行
初雛に毛氈を贈るとて
喫茶
たてまつるそのひな鶴のすゑかけてもうせん手の色は見えけり
殿つくりあるべしとて水無月五日事はじめありて
反
葉月五日に柱をなん建そめけれは
の彦はりいつ。少くの日もつみてとはからぬまにたちもみろはん
霜月酉の日の聟入を賀して
るい聟をみりの町中御贔屓に猶や子いもせのともにひやくまて
たらちめにまつらす扇なり奇書てとあれは
くれ竹の手代もといのるおや骨の命なかきそ要なり金様
卯月五日老をやしなひ玉ふけりを行せらるゝその老のか
ずに加り侍りておほてなき
御恵をかうふりたてまつり御酒なとたまはりけれ
は
頃へのほるや老のさかきけんあしとらはよろ養老こしうして
越後屋の手代の役替を祝ひて
金銀のあまたあつ○身の上は堂等福とくの三年めかも
致仕して差ふりを丸め平角を平荷と改て
平角はくのなき人となりに足も角もこれつゝ丸きはちす
怒
初恋
さまれる代にもひとたひ吹そむか此恋風のいつかやむへき
不言恋
もし人のかき道けやせんくちひるに錠をおろしていはぬ思を
聞恋
糠に釘きけは恨めします花のありとは知らてはかられし身は
遠慮
玉つさの便もきかすかな聾もしの関屋を遠く隔て
進恋
父
き
山下二
恋人はあまりにちかの浦なれとくみわけてよといふしほもなし
振恋
うしや旅わかれ洛もはや二里三里しりくらへとは暫らさりしに
逢恋
そろは無のたま〳〵にあふこよひこそめもはち〳〵とおきつゝけなれ
穴蔵逢丞
あなくらをえんのはしこのをり〳〵はまへはたふれて水もとらさし
隔霞恋
あひ見んとすかして手を市類狐今はかすみのへたてとそなる
恨恋
あしく人は秋のゆふへか恨みても葉ももみちもなきこゝろかな
終恋
なかたちの調子あはす間盛公はもしまことかといきそもつらふ
祈恋とて早人のもとより
利生なきつらさを何としまた髷今はむすふのかみも
うらめしとあるかへし
猶いののむすふのかみのおつけ櫛其るゝさきもつひにこけなん
一歌妓豊若眉をおとして後比さしふりにてあひ
けれは
いまも猶かはりていろはにほへとも眉毛はいつかちりぬかおわか
名さしの子は梅もとに出たりと聞て
あかぬかときをもむことの多きのはぎりあそひもいふにや有らん
逢し女をしるせし千人切といふ巻物に
いつれにも源氏のたねと夕顔の五條わたりの一騎当千
出口の柳
かんはんを出口にかけてたれにしもなひてと告るはゝ柳の糸
国
□□□
またこのうたをとめて
なひかんは君かこゝろにあるへきをさし出口なる門のはゝやき
寄学者恋
猶やたちに油とられて恋のやみ雪にほとるにふみを見るかな
寄板木彫恋
いたつらに上らみ落候残み板木ほりひたり文字なる恋もするかな
寄臼目切煎
めをとちてかみわけことなき石臼のかたき心はひけと飛かれぬ
寄腫物恋
あひとめてもふそおもひは其れものゝ色こそまされうむことはなし
寄七草恋
七草の六くさはい国のいろに出て女郎国こや恋わたからむ
歌山恋
富士浅間むねのほむらの口舌にて勝手にしなのすけりうした
寄長薯蕷恋
足曳の山に生ふてふなかいもの長くもい手にあはてやまめや
歌胡瓜恋
成気
蔓をひく人たにあらは垣ひとへとなりかくなりなるきうりかき
生胡瓜
寄道成寺恋
かねことの水となりしは遠きかねの湯となりよりもくるしよりけりけりけり
しのふともおもひたえかねわすれかねすば〳〵うとく我心かな
寄餅恋
ちきられぬものとは今そしかこもち一本はしのかたおもひにて
寄茶恋
胸の火のたえすも月りふる茶釜かたるおもひをくみてしれかし
寄羽織恋
戊
寸
我こゝろゆきたらねはそ薄羽織それてなしとまて君は見るかも
寄温石恋
箱入の娘なれともいつのまにたれかは穴をあけておきけわむ
寄田楽恋
たかために君こかるらんてんかくの我にはおちぬ耳のかるして
寄釣恋
うけひかぬ君かみさをのひとふしにいとしとおもふはりあひもなし
寄味増恋
まめやかにこうしたうそもしほありて情をしるにあたるきみかな
寄鉄炮恋
こと人の口くすりうりうつり気のうき名は四方にひゝきわらゝれり
寄材木恋
鋸の義理にも君はうけひかすおのかきとりのあしけれはにや
寄詩恋
平仄のいつあふことかおほえ山を以韻字をまたふみもらす
寄大鼓恋
一大つみうつしこゝろの君なれはいつかはさめておもひかへなん
寄能箙恋
ましや恋終にははなのちるゝぬらんかさしかしかしともなれかえ
疥
寄箱水溜蒸
水溜の箱根の杉のいたつらにわれから君か名をはもらさし
寄鞠恋
情あり〳〵と思ひてはまりしは葛のはかまのうらみなりけり
くれ竹のかきくみけるも恋人は上手のまりか落さうもなし
鶏
上世五
七十一
□□□□□□
同
春は長く冬は短き日の形と我かめにはいつもまん丸に見ゆ
富士山
いかほゝにこそをあけてもにしからす摺鉢ふせし富士の姿は
いせものかたりにおもひよりて
山の名のひえとはいへと富士は猶はたちかさねし寒きなからん
海路
帆柱のしの字嫌ひもあるものをおきにかゝらはねよしてもおほ
野
くう〳〵と月に追れてにけ水のこれや十六むさしのゝ原
高野玉川
妾ありと音に聞えて身にあたるこや鉄炮の玉川の水
楼上臨三騎江
水上にちりすて考るか三線の堀のさらひも見ゆるたりとの
琉球人
日本とは七分三分の国なれは中さん有といふにやあからむら
結果老
仙術にあらぬ温泉ほの細工にも独楽を出せる瓢たんはあり
布袋
別伝の禅味に肥て智仁勇の三徳ならはいれられぬはら
蜆子
ゆひ二本出したと見ゆる海老の髭されはけんすと人のいふらん
達磨
一世にめつ間さくらもさけもさとりてはくらけの腹の一物もなし
傀儡師花か見たしは吉野へござれと傀儡舞
しのうたふなれは
上二十六
〆
五十一
花かほしくはよし原へゆきやののうなれもくゝつのそのまはしよかた
大原女
おはらめといへはもともおほはらや産てのゝちはやせの里人
吹城
梅干の皮をはかへののほせにていろもてりそふもゝの小ひたひ
竹
吹風にまかせてなひく九礼竹はうき川竹に身をやならへる
吉原
一せいろうの簾もかたるこしきみやそのかは竹のよとをふかすらむゝ
木魚
出来は魚なるか又木なるかとせなりたゝけはほし〳〵といふ
鼠
大黒につかふか道のちう〴〵は書物のはしも喰ひかちつたか
鶺鴒
地神五代以来日本にあるとある人はみなこの鳥の弟子筋
井戸よへ
井戸かへにくみても知れと神の代の穴に住にし古事を引たり
あるへ膝にて拍子をとり謡ひつゝこれは老をやし
なふ薬飲こゝろなりとあれば
一大つゝみにつゝみの二味を合せなは一へきいれよ笛のせうかも
酒上不埒妻をむかへして二親のこゝろにかなは
で子ある中をわかれてるゝち後妻をむかへよと
すゝむ間人あれば不埒
おもひにはにえこちるともまゝ母の手鍋にかけすたきもり
継
たてむ
すねの毛はえこれをきゝて
我
我
ましことのせんにもちかきみとり子のかゝとは
いはしとゝのよけれはおのれことこの哥に
ならひて
みとり子はてしほにかけてとりたてよらかう〳〵あらはさいはなしとも
親しき老人のもとより
菱相のかさねて手も不けぬれは次第にしやうの
こはめしとなるかへし
手ふけてしやうこはめしとなりならはむすとも今や餅につくらん
ある人おののよ作の大小をよふとて
世の中の人を茶柄のお火にを見ぬ恋けや鄙の
ほし見せかへし
一暦にはおよひかた〳〵ものなれはさしてやくにもたゝぬ大ふ
萬象亭宝合の狂文をよふ文のすゑに
お願ひを何分おきしすみよしの宝のいへちを出し
てたまはれかへし
一趣向にも潤きすみとしと猶もへとも仰はかしこまり升の不
かねておこなひあしきと聞し人にはじめて
逢けるかまめやかなるものがたりのみにて
わかれぬれば
かたきものにたのみかたなき世の中と飾るはなしもいれはなからん
鳥越橋普請ともしらで行かゝりて
鳥越を飛こえかねつ世の中も理を非に曲てわたるへきかは
あるへほら貝の紋所をいかやうにも崩して
よとありけるに用のしげゝればことわり申
常かはすとて
くつす事もなれと崩せは鳴らぬなり鳴らねは紋のそのかひもなし
□□□□□□□
我
硯箱の蓋のうらに二見の浦の蒔絵ありけれは
硯箱あけてふたみのから波に添しれらしは縁もありけり
おしやといへる婦人より何ぞ書てよと扇おこせ
しを事しげしてはたさゞりけるをとく〳〵と責
聞えければ
一名を聞けはおとやとありてけや〳〵とせつき玉ふは少しあたらす
輪かけ替たる手桶の水もりければ下部か笊
のやうなりとつふや〳〵を聞て
大学のをしへによるこそのたかはざかに逃しといふをきくにも
粟にてつくりたる牡丹餅を客にすゝむるとて
牡丹にも萩にもあらぬもちまへの色よきをみなしあかれたそ
やことなき御かたのお羽織の胴裏四度まて
書てたてまつりける後又も書てよとありけれは
猶もひよるはしこそなきれ五つめはわたしもこまる羅漢とう言ら
国によすかお多福といふ題にてある人の守
さけるかつなりとて人の見せける
山あひの谷の桜はいろしろく両ほう高しはな
ひくしみゆおのれ思ふかし狂歌の題となりて
は定りたる事もなけれど終らくは此哥何
となしよみ出て後哥に叶ふ題をすゑた
間なかべしいろしろくといふ五文字おゝふく
にかゝりたる詞ながらなくてもすむへし哥
のゆきとゝかぬゆゑに何とより題をま
うけたるか
山間の谷の桜はおたふくか両ほうたかしはな
むく見ゆとあらは桜はかりの是にて
戈
我
すむべくやよし題をかゝずとも桜のかつとは
聞ゆべし題の力をかるに及まじき事
なり
いらぬせはやいて三平自慢顔人のうたにはおよめ八取て
永宿町の板新道に田中隆軒と新しき宿
札を打たる家ありいかなる人かしらねとも
戯とし其主に代りて
家主と相談すみし上からはいよ〳〵こゝにたなりうけん
味噌麹馴兼より物の中結ひにせよとて小鼓
の古しらべ贈りて
一すちによきをとしらへ見つれとも紅染なれはあかつ
きにけりかへし
あよつきと云はいへともひのいろの残れるはまたよいしらへなり
鼓の古しらべを寐道具の中結にせしを
見て
ふるしらへそのふかされし恨みてつゝみし中を今はゆふ也
手入よく枝たる黒楽の茶碗の払物をみて
持ぬしはかゝれとてしもぬは玉のこの黒らくは撰さとやありけん
寛政十午年の大ふの即案書てとある扇に
本扇子に書くも恥かし夷歌字大申せと訴小仮名はす
発句令の点取の懐紙に白紙のあれは
貸地
間口は勺
奥行十七字
この明地我ものならは金からんたはむれうたをかきいれして
我
我
狂哥のすりものゝ出銀五銭目づゝなりといひこせしもとへ
その料をつかはすとて
一歌柄は己さんにあらぬ文銀のこせん集とも名つけてしかなく
馬を彫すかして障子の引手に張しははし理のよき
為なりとこたふる従者に
おほつかな馬ならはよくはしらめとひきてとならは引とめやせん
女郎花の一調をうちしあとにて狂哥のぞま
れければ
田楽はつきものなからをみなめし一てうはちと食過てけり
あるへ聟をたつぬ公に十八と二十と二人のうち
十八のかたに極めたりと聞て
十八のかたを娘にめあはさはてうと三五九一のむこと雖
さし〳〵けを不公まはれて
旨
あらうまや第一口にあたりよき輿のおとかさく〳〵〳〵の汁
頬の赤き女に狂顕せよとありなれは
しら医のいろとはさらに見えぬなりほうの赤きは五位にや有れ
一寸病を見舞また来んといひし医者の遅かり
けれは
まちをれといふしのくるまのおそかるは病ふ重しとひきもとめしか
民の家にてちひさき斤口に灰をいれ火入となし
たるをみて
出のれのみよしとのゝしる片口もひをいれらるゝ時は有なり
白紗綾の羽織の胴裏に
かきいるゝ羽織のうらのしらさやはきれぬたちをやよしといふらん
鉄炮土瓶を恵まれけれは
色まはりし土瓶はかねてほしと思ふ心にあしもあたる鉄炮
みちのくの細布を貰ひて状さしに作りしその裏に
一幅広く地合もほとくいにしへの歌のむねにはあはぬほみ布
流行の風邪をよめりとて生崎千歳のぬしより
はち巻は助六風邪のならひにてひくてあまたの水はな川戸
かへし
ふり出しのつゝみ八ちやう風くすりのめやはやりのきみなら〳〵
酒宴の席にて
さかことりは碁に似たるかな酌とりの伸てつて手にかけるおさへる
八十年以前の一枚絵を見せられけるに今の絵
にくらほれはそのたかひたとふるにものなし
〽八十とせをへ事なる絵師の渋ぬけて今さいしやうのころきにけり
羽州より漉樽の求に十三屋よりとゝのへ遣し
ける後くしのはの欠けて届しよし咎めあれば
おのれか目のくらきをわひなから
秋田から招くすゝきの其死九四は十三やゆゑかけもこわすれ
人のことはに合する世の中なれは
一冷気にもさう暖気にも又さうと人のことはに袷きるころ
伊勢の塩鯨をもらひて
しほ鯨所はいせのかみしめてたふらきことを今そしかのみ
眼鏡をつくろひもらひし礼に奉書紙五帖
精入紙五帖之の紙五帖贈るとて
一明月の恩ともおもふめかねゆゑ十五帖にて御礼申さん
団乗子のもとにとまりける夜眠かねつゝ床の
間を見しに太公質の掛ものかゝりありけれは
一平荷坊大言望に申すやう釣をなさらはこゝはし岡もち
はたとせふ野にて竹田氏はし逢ひしに顔かた
ル
上三十二
ちかはりて見送るばかりなり年をたつぬれ
ば初老なりときゝて
四十
にも花さき実生りゆく年のうつりかはるもしゝうからに
草も木も花さき実すりゆく年のうつり
上戸ばかりの席につらなりて
くころえおもひの外の潮煮にまたさしのほるさかつきの影
ひてころとおもひの外の潮煮にまたさしのほか
しをりに哥かきてとあれば
をり用のあかをりめしのをり手水のをりて四をわやはふ
手製のかすていらと喜撰の茶一袋に茶ほう
しをそへて贈られしかし
かすてらの花撰たのみて夕飯のあととふためのこれは茶ほらし
塩野氏の代りに佐藤氏を出入にとて頼おこせし
かへりことに断申つかはすとて
このたひはあまい詞もかけられすしほのかわりにさことうなれとも
流行におくれ俳諧を止るとき
学名し口をとちたる雀かなく
屠龍君のこの句を聞玉ひて
宴の遊あひくらゐは友雀
千ウとはいかいも御とり出し可被成なと仰らと
ありければ
猶あひさへ奈良漬に酔ふ雀なれはさゝれぬうちに飛のきそする
かねてほしとおかへる如意にのし包を添て贈ら
れけれは
いたみいるおのし乞の剱先は殺人力のこゝらこそすはの
名月堂の蕎麦をもらひて
世の中にそはてふことのはなかきか橋の名月堂にてらされてより
品川の村田屋より挽ぬきそはをもらひて
〆
ひくもうつも波の縁あるしなかはをとりたるしなるしなのそは哉
三番叟早人、のもとより
世にふる歌書のうちにも通用のよきはこきんの一ふと
そきよくかへし
うちとする和歌のうらなみ数よめはこきん一ふは二十くわんなり
角かなやの田ことくいふ禿の笄を買ふてよと
責るまゝにもとめつかはして
田ことならかはすすむへき笄を月かうはきにけふやさすらん
中洲に仮居せし傾城によみてつかはす
さとの意地はたてぬきにせよ門はたのあやしき家に至るといとなみ
經緯
吉原の八重といふ芸者は奈良の木辻の生れと
きゝて
なみして江戸へき辻の八重桜さとのはなしもあをによし原
南都
上野の谷中門の外にて
一弘法の作り玉へ間いろは茶屋ち野ぬるは我札の御用心とて
衣川弁慶腰掛松をよめる
こしかけし人こそくつの千とせふる松は文治のころもがはらし
晦日掃に煤にそみたる達磨の出けるに尻の土これて
起しても起あがらずこれなむねたがり小法師と
いはんか
寝るならはねかしておきな三番叟こみのたんてもすゝのたんても
書ものゝれにとて割かけの箸をもらひて
定の外とも思ひそろはんのたまものなれや割かけの箸
十四盤
山葵卸こし障子といふとりあはさる題を得て
大根おろしわさひおろしも風の名とおもへは防く障子なりけり
兼てたのみおきし毛織秋田よりはる〳〵有登
一
上三十四
我
くれければ
百四十三里の灸にあらねともあつきおせはときくのほせもの
蹴鞠を見物しけるときかれは上手かれは下手なと
人々の噂をきゝて
垣
上手のみあつより場にやおほすらんかきともいへは瓦いへは有うち
一菜の価雪の為に高きを和泉の国書師の浜に
いひかけて詠し哥の返しに同国の篠田の杜を出
もひ出て
あへこへややすなにあらぬそのうへに皆くすのはそうらみなりける
又
番叟
一文に三はさうなる鈴菜こそ何よりもつて安う候へと
十
よみしむかしには事かはりたれば
かしらには雪をいたゝくおきな故たらり上りに直をやあけなむ
飯田町今様せんへいの軒に
今様に出嶋のせんへい和哥の前あまの薄めに砂糖てはなし
景富のぬし致仕の後猶更駒のみたのしみ玉ふと聞て
世の中をのきふく風にまかせおく釣しけふこそこゝろやすけれ
軒
画賛
両国橋の画
なるは橋の音に聞えし両国のたえす通りもありうとろ〳〵
銀泥にて城を画し扇
膳所堀
南鐐の色にゑかけるせゝのしろ時相場にはあふみあはすみ
かく書てつかばしけるのち若ものとも是は膳所
の城にてはあるまじ水車のあれば淀なかべしと
いふにより眼鏡とりいでつゝ見るにいかにも
□
淀なりければ
はしめにはありともさらにみつさて二度み三度見実によとの城
貴嶺扇に
骨か出たのかみかあついのゝ愛想をおつかしなんしともきれいせん
ち理紙の天地金の廟に南天を画て
梅かえか拾ひ残しか手水鉢の上と下とに金壱歩都へ
山吹の花をすきいれたる扇
一金枝のいろにはいてぬ山ふきをちと貸さぬかとすかしてもみん
武蔵野を画る扇
入る月ことなしろを見さぬ時々へなかに逃水の名はむさしきたなし
獅子に牡丹
からしゝのいかりをなしてかけるとも流石牡丹のはなはとほはし
辛子
谷風梶之助の画
谷風を船のへさきに立せなみ帆の代りにもかちのすけにも
色好める人の紅葉すきいれたる扇に何そ書てとあれは
好色にめて玉ふによりて紅葉を御神体ともあがめ参らせて
新田川薄き氷にうちらるゝことみちもかみのうちにこそあれ
扇屋の瀬川が画たる葡萄に
絵を見れはかきてなれとも此かたち鈴に似たのはふりやへらん
西行に清水様
道のへの柳も腰もほそなかれ火箸とてこそ立とまりとけ
三絃を画てこれに賛せよとあれは
うたかあれは一も二もなしさみせんのさんのそまれていと宝りけり
谷風か掌を押たる扇
谷風か手形なりせは日の本のすまひの関は誰かとゝめむ
谷風かこれてかしはの二人前々にもかくにもねちられはせらし
十一
上三十八
大黒俵にのりて扇と小槌の曲の画
ありかるい親はないかと誉られて親父はないかお袋はある
鯉の画
鯉の鱗三十六歟くは四九はしらす六とかそへても見す
獅々の画
〽おそろしや山にひゝたる君子あり彼洪のくまにまさるといふらん
黒ふちの猫の画
さいつころ白々黒との親猫の恋そつもりてぶちとなりぬる
挟箱によりかゝりて奴の船饅頭を夢に見る画
箱さきの君か姿をさき箱の奴か見れは夢はさるゆめ
歌妓の画
船よりもお座敷をよくつとめよや論語にも者は川を主とせす
蕪の画
矢の根にはあらぬまことのかふらゆゑ腹にいるとも何かあたらむ
射
竹力木刀立むかひたる画
三尺の真菰九尺のあやめくさしやうふいかにとひきそわつらふ
山の腰に萩
ふきかへすあしたか山のすそはきに景色をみほのうら模様式
楼
猿まはしに火のほえかゝる画
時にこれは七つ五つのいぬとさるとり持しても中の六つかし
銀泥にて鷹を画し扇
翔
一しろかねの色なか鷹のうつし画ははねをはかりにかけるなかへし
葵を透いれたる扇
御
此地を御息所の懇念かあふ比のうへにおほいかゝれは
梅花をすきいれたる肩
薫りくる梅花をかみにすきこめて我こしもとの伽になさはや
文
一三十七
□□□□□□□
鬼の腕に小鬼二つとり付て泣居たる画
見ては泣きみつめては泣く鬼の子の歎きも今はかひなかりけり
三爪
腕
くるさし
流石
一稲竿のつて長き夏の日はさすかゑさしの身もたらけつく
一帆に蝙蝠画し扇に寄書てとありしを事しげ
きにうち捨おきるがかいくれ見えざりければ
代の扇に
ふしきやな蝙蝠は飛ひ帆ははしりゆくへしら地の扇にそなる
耳鳥斎か角刀場を画し扇
勝すまひ各は花をやりつるか目とけはかり見ゆる見物
玉を画し額に
此お額たれしとあたまあをの気て見るゆゑにこそなまといふなれも
両国の橋杭に猿まはしの船を繋き富士を
画そへたる画
両国に三国一の山みれは四国にまさるなかめなりけり
竹に蝸牛の画
一竹の葉もかみそりの刃も辷るらん名なるとかけたるかたつふりにて
ぶんぶく茶釜の狸を香合の様にかきたる画
春若とは木明ならぬおもひつき茶人にちかきふる狸ゆ
旭に三番叟の画
照る日にも大くら流といふなれは黒いかほても鷺とすれ
の騫駕に乗りてゆる夢を見し画
猶いらんを猶おもひ寝の枕して虚生か夢の五十間みち
稚子の鈴々扇持たる画
おまひあらは葡萄の鈴をまゐらせう是はおいろの貌せうさま
衝画たる桃色の扇
上三十八
用ヲ
十八ト
幸治
一夕日影あかしの浦はあすもまたひより〳〵と千鳥なくなり
画工の酒の為におそなはりしとあり茶橘の画
うち〳〵とおそなはりしハ酒の罪茶指といへと茶に鬼はなし
芋茎の画
見て涼し葉は鮑貝子は蜃珠さてこそ芋のくきのめくすり
騎射人の立姿を唐人と見ゆる様にかきたり画
一けんふんかさいと馬場以大駒もてこつめろ弁当供はよか〳〵
組入に橙飾海老の画
も三升にとしの市川はたいく江戸の飾海老なり
組いれも三升にとしの市門はたい
横
舌切天狗の画
魔
説法
とくの
かりをさまたけはやとおもふよりまのあたりなる摺鉢の罰
解釈
若松五本画たる扇
門松のあたまはかりをさしとなにいつかとまちし春もならめ
六顆仙の質を六人にたのむべければ何にても
このうち一枚に賛せよとありける故遍昭をな
たてゝ
巻
傾城に似たと思へは本れもしつまことすくなき歌の姿を
一奴の侍鎗ほどの長き刀さしたる画
やいおのれ武士にむかつて推参な功てしまふそぬいて下され
○如此輪をかきてこれに賛せよとあれば
めるは遠山の山にいりてこそ見
牡丹に蝶
蝶のかほしこれは牡丹の三つ布団菜の葉と寝たる心持とは
端午と重陽の二幅対
染む夜はられも雲井にかけてけり玉屋か家の秘事の薬玉
桑玉にかはつてまゐる品玉の茱萸の袋は玉のおふくろ
戊
止三十九
丑
円窓のうらに傾城の画
丸の内に飲城といふ紋所うは絵はかりて末や兀なすし
生田の杜の落葉すきいれたる扇
か御代も生田は風のたゝかひに森のこたゝちのみはこほなり
すめる御代も生田は風のたゝかひに森のごたちを
五時詣の足駄の鼻緒を立る絵
ふみつけにされて足駄のはかり立や顔も鼻緒も立てたへ神
猩々酒屋の通ひ帳を見あたま捨居画
しのはのふえたこおもふ〆高は秋のしらへやのこすこの暮
鉄
鶏頭花の画
土佐
唐画もあらす狩野家の画にもなしとさかと見ゆる鶏類の花
猫の大鰹節を引くを鳥羽絵の追ひかたる画
しをひく三絃も猫の皮鳥羽屋か弟子の鳥羽画也けり
立派なる山水の画
八十一日
山よりも高き心を見する画の水清なれは狂歌うつらす
円窓の内に黒主遍昭喜撰三人の画
業平と小町はにけて康秀を述人にやりてあとの相談
僧に狸の睾丸をかふせたる画
七条の袈裟より重ておもふらめは反かけのこれは八ちやう
狂言の末広かりを画し羽織の胴裏に
過しころ此胴裏に何そ書てよとさりを箪笥に
入置てそのまゝに忘れけるがはしための見覚さる
羽織のありしといふからにとくとり出てけにもさう
よやよけにもさうよとてとみに書つく
され伝さつとかきし羽織の胴裏も末広かりになりし脇入
小槌俵袋鼠二疋の画
大黒天はお留守と見えたり
止四十
十九
千
けふも又かのてあらふと鼠らは旦那の穴を聞かちつたか
桜色の文やうしさしに
表の方に
裏の方に
今尾
おとはやま
人々のみしをりと
さか
りと
タし
なる桜はなかな
真壺の形の楊枝さしに
さゝけぬ間者は壺を見てはけことに世宇治茶師とや人のいらん
文化元年子暮小原女に牛の画の扇
上の句は来年の大小
五の年父化二の年うるふ年仮名は大原文字は小原女
従者の拾ひたる扇に狂歌書てよといふにひら
き見れば桔梗を画しなりかれは都のうまれな
れば
一今さらにきゝやうの事もおもはまし江戸紫のいろにそみては
軒場の梅矢瀬の葱加茂の葵高雄の紅葉
嵐山の桜井楽の山吹高台寺の萩すきいれ
たる扇
帯みれは都の名所七色も茶漬のやうにおもはれにけり
一韓信燈下に劔をみる画
此道具末をかゝえて売主もその買主も漢のきれもの
蜀山人の能書不擇筆日々戯言
出若使藝扶身天晴男一匹
とありし扇の末に狂哥書てとあれは
ふけわたるよをうしみつのいとはてそ親をやしなふ女一匹
一稲禄寿の鞠を蹴畫
一おつふとも役にたらなんきよし鞠か見たいといふも恐れあか〳〵
十一
花盗人々猿々の壬生の両面の画
平假名に白かな真かなとり交て楼も猿と見ゆらめ
親骨にはかり節を見せくし十間骨の扇
のりつけし竹のふじみの舟も今親ほねよけて八けんやまて
節
粕
橘の画
実の色も丁度右近のたち花は少しその煮て名付そめしか
月に夜発の画
婆々
月の弓に
疱
はゝに
的場に出てゐにけり
はゝに
月のうかさかけにてや辻君のはゝに的場に出てゐにけり
九十年あまり三とせに及へる公平本の表紙に題す
中々に残るは足袋のうらみかなつはものゝ名をふみつけにして
靭猿の画
靭に入る幾手の矢にも換るまて躍の一手ゑつほにそいる
葱漉入たる扇に伯夷叔斉を画て賛せよと
あれば
忍痩腹
蕨のみくひてはかなく世をし給ふやせたおはしや首陽のもとに
慈悲小原
百人一首の歌のこらず書たる扇
扇新ら表に百人の歌はたるその裏の方へたはれ荷
書てよとおのれが黄哥千首かきたりとも表の歌一は
にもあたり侍らぬはさらにもいはずされど思無邪の
一言は毛詩三百篇を蔽ふと夫子ののたまひたれば
邪
一竪縞と見ゆる百首に思ひよる我よみ影もよし
よこしまはなし
横縞
振袖の女獅子に腰掛たる画
年に似す恋の諸訳もしり菩薩はらに毛のなきしゝの十六
樫にかし鳥の画
樫の木の堅きこゝろにかし鳥は比翼連理の契なるらん
疱瘡見舞の鍾馗の画
〽
軽々と邪きを追出すゆゑにこそ名も不換金鍾馗さんなれ
紫蘭と菊を画し服紗
問は一時の恥石問は末代の恥といふ事仮初の諺
ながら聖賢の教にかなへりといふべし
聞
しらぬことはちてつゝむな此服紗しらんとならは只きくそよき
菊
竹の画
紫蘭
けふなん三月晦日にて甲子の日なりけれは
春の日も遣ふくれ竹のひとよにて夏かきことのうしとおもへと
菊に尾花の画
尾花とは叔母の名なるかさなきたに作り菊にもめいはありけり
おいらんの衣裳を阿蘭人の着たる画
おわらん陀宗旨を問へは馬鹿羅宗ありんす国の生れなるへし
外山の御庭をうつせる巻物の末に
堂宮も豆を蒔たる如くにておには外かと思はるゝかな
張子の虎の画
街道一と聞えしぬき衣紋の遊君も今は曽我の
狂言に名をきしのみなれは
虎けんをけんとなしつゝ大磯の色に易たる御代そめてたき
布袋と狸と腹鼓うつ画
化されたふりて狸をつゝたつた布袋のはらは仏法〳〵
達磨の香をきし画
木所をさとりえてこそ本来の木香はみな無ともきくめれ
山に三日月鳥の画
小鳥は名にかなひけり山の腰にさす月かけを剱とも見ん
百器異形の巻物の内猪の片股を高つきのやう
にかきその上に桃を積たる画
我
上四十三
一包もなもももももももももももももももももちのもしゆこもこもこも
物名
乾
八卦宴の席にて
けんにまけのまぬはそんしやよいかんてくたりのしんし申二こん三こん
生田琴瓜箱服紗
琴の爪箱の服紗へめてたき事書てよとあれば積
幾
善家有余慶といふこゝろを
くたいかつくすまこらのつめはこそふしさへかまるよろこひもあれ
いくたいかつくすまこみのつめはこそふしさへあまるよろこひもあれ
一山椒茗荷柚生姜蕃椒の画の扇にめてたき歌
書てとあれは
生姜
茗荷
しやうかいにおみのみやうにもこさんせうたうからしれたゆてすゑのさち
生涯
此うちにこしやうのなきはめてたしな八百屋万の佳味のめくみに
故障
黒朱黄溜青の五色なる肴入の提重の蓋に
つくろはぬあるしのための御し申肴お客のきにはあをふともみす
馬の名九近江の国に馬渕といふ所あれは
のさめつゝめくりてあかずつぎかでにかはらのあしもあをき馬ふち
神祇
初午
初まのとろつてなかに商ひの道はぬからぬあめのふりうり
名所初午
いほ崎に人も太鼓もとろつくは田中の神のはつ午そこれ
寄鳥神祇
剱羽のけんおはらひをふりたつる五十鈴の川のをしのふかまひ
社頭卯花
四
ヒコトロ
野の宮は鳥井に暮て柴垣の外の花よりそ夜は明にせる
神田明神の祭礼質素を守るへしとてねりもの
家台なと出ぬと聞て
さみせんのちんともいはす木て涕を久たの神のちりやいとひて
十月朔日
けふ神のおゝらなれはや風をあらみ空さやさやけくもこのは乱るゝ
櫛田川にて
正直をもゝゐにせよとゆふ四手のかみのおつけの櫛田川かな
八十末社賽銭をすゝむる事のいとあさましくて
何事もおあしますのみむねとしてあたしけなさに泪こほれす
我おもしろ上の巻
5127
レ
我於もしろ下
狩
我おもしろ下の巻
安濃九
長歌
千蔭ぬしより春のこゝろを
よみしとて
あさほらせ
あくるひかりも
しろかねの
火皿をいつる
□□□□
安士へ
けふりよりしも
薄まひの
たなひきそめて
うすかすみたなひきそめて
やまのはになくやからすの
羽織ととも○
黒したて
同二十一丁
寺
なかき日に梅よやなきよもゝさくらあかぬことなき
ひとゝせのさかりをおきてその名さへ四手の田長と
これはしきひと声をまち艸も木もうらかれそめて
さびしがる秋をあはれとはて〳〵はおもしろすぎて
いとさむき雪をまつらん人皆はなまさしらの
こゝろそよおもへばこれも中むかしえせうそつきか
さかりのみみるべきものかよそぢにて死なまくほしと
こゝろにもあらぬひぬかをひねり出しそのことのはを
よきことゝ又そのうへを一ねばりねぢけ人らは
いふめれどたゞとにかくにさかりほどよきものはなし
へら鷺のへらず口いふおきなどもさかりの時の
まねをしもならばなしてよおその翁ら
まねをしも
花もさかり人もさかりがよきものをひねるは老のへらず口なり
此返りことに夏のこゝろをよみてつかはしぬ
からころもけふぬきそむかわたくしぎも
そのついたちにうまれいで乳かと
乳かとみつる
一印の花やくれなゐふかき
ふかみごさ
ほうをとめでしかたことの
山ほとゝきすはつかつを
とゝよかゝよとひさかたの
あまやかされてそだちつゝ
うつきばにはよのつねの
をさなこゝろにすぎしかど
なにのむくいかはらあしくなさけのみちに
あら海の底意地悪くおひたちて
れば五月雨をはれる
皐月となれば五月雨をはれ間もみせず
十七
ふらせつゝ物に僕生ひうちしめりこゝろもくもる
つれ〳〵をくらしわびぬといふ人はいとこゝちよく
おもひにきまた品かへて水無月はとみに日てらし
人の身をやくばかりにしせめぬればたへかねつとて
みな人のくるしむをのみなぐさめに風をもとゞめ
吹せずて夕たちの雲さそひ出てふらんけはひに
見せぬれば今やふりなんうのしとてまちぬるかひも
なか〳〵に猶いきれぬとかこてるは見るもたりしく
あるときは筑波二あれふた国のいかづちあまた
かたらひて水をふらし風をいたみなりはためけば
あらをのこ桑ばらとなへ経誦して居れるばかりぞ
をみなへしそれ落にきとひしめきていけるこゝちも
あらたのしよきなぐさめにさふらひきさもなき時の
なくさみは蝿をかたらひむれたゝせ昼寝の夢を
やふらせてやゝ夕くれになりぬればこゝろやすげに
見ゆぞとてかねてかくぞとかたらひしかず〳〵の蚊の
むらがりておどろしく〳〵さすからにさすがかしこき
人ながらかくてはたへじかゆしとて蚊やり草もて
やらへどもいつまで草のいつまでも五大力てふ
唄うたひつぶやきつゝもかやつりて入りぬることの
にてければ蚊帳のすそのしづけくも蚤飛入らせ
手にあしに脊中に腹にしりもせぬ名どころまでも
くはせつゝしく〳〵乎ともぶんといふ蚊よりもいとゞ
わぶる夜に猶むしあつみくはへつゝやゝあけがたに
なれるころ涼しき風をふかすればひと夜寝ぬめの
つかれにてぬるまはなか秋ならぬ涼しき風に
戊
おとろきておき出ぬればはかりしごと寝冷となりて
むしかぶり痢といふやまふひきいだす車のしらに
あらねども九十九度までかよひしがつひにむなしく
なりぬなど人のうれひをよろこびしむらいのつみの
けふの日にあらはれぬればあらにこのあらにくやとの
神のせめそのいひわけもちかやの輪ぬけくゞりても
今さらにのがれんことはかたき役のたくみのもれし
せりふにていめいましいとゆふしでの神のみしめの
いましめやいたじめならぬあさのはを切にきりても
川へざんぶと
腹はいねど命ばかりはたすくとて川へざんぶと
腹はいねど命ばかりは
死地をのがれて
やつきをまたで
早き瀬のやつきをまたで三月めに死地をのがれて
流されにけり
めあかしは浦わの名にもあゐさびの嶋都とやならんさすらへの身は
又秋のこゝろを詠て千蔭のぬしへおくりぬ
空ものどかに
こゝろから
霞のたなびきこほりとけ
梅かえのいろをみせつゝ
谷の戸出てあをやぎに
我もまけじと糸あそび
かげろふのぼり水ぬるみ
野辺の若艸もえいでゝ
桃も色こくさくら木も
あけそめて
雪もけぬれば
うぐひすも
まづひとへよりひらきそめ
八重さきつだき雲かとも
真さかりに
見まがふばかり
声かはし
蛙もろどり
山ぶきつゞしいろそへて
ながき日も
四方うらゝかにみな人の
こゝろうきたつ
下四
ひかりのかげはとゞまらでさけばぞ花もちりつきて
柳もくろみ葉をしげみ雲ゐの雁もかへりつゝ
くれゆるともなるからに春の名残にくれてゆく
年よりも猶をしめるを要はそれにはひきかへて
ふけゆくまゝにいとゞしくさびしさまさりかなしとて
おもひわびぬる人ごゝろなぐさめ顔にさきのこる
籬の花のつたなくもちるそふことはしらぎくの
なほこと色にうつろひて霜にしぼめるころまても
うきを忍びてありぬべし木々の梢もそめながら
猶色ふかきこゝろよりしぐれの雨をまちつれて
今とても
にしきの色を見せめなどさかしらいひて今とても
にしきの色を
のこるらむ
数らんけみひもみえさればこゝろ空にやのこるらむ
散ら也けはひも
長月も
ともなひゆかん
空なる月は常なればともなひゆかん長月も
かふ終る日となりぬればいさまでなんいざまかでなん
あすよりは我をかなしと見し人の春にまかへる空をめづらん
千蔭のぬしよりまた冬のこゝろとて
はるもいつしか
くれはてゝ
投箭四女
なぐるさのごと夏登秋
過ゆきぬれば
過ゆきぬればきのふまで
もみぢばも
ちしほにそめし
やゝちりそめて
しぐのふり
草木ことぐ
しほれつゝ日にげにまさる
さびしさをあはれ〳〵と
さびしさをあはれ〳〵と人みなのめづるまに〳〵
春の花秋の月にも
我はたゞ
春の花秋の月にも我はたゞおとらじものと
戊戌
おきなさびまけじ魂ふりおくしまづ遠山の
山のはにちる花ならではつみ雪見すれば人の
めづらしと見るに心のほこらひてふりにふりつゝ
里までもましろになせばみやび男も門守る犬も
うのしげにゆきかふほどに日ならべてはれるもみせず
ふりすさみ道さへたえてつひにわがくれていぬべく
なりぬとてたれもをしめば我うへをめでゝをしむと
おもひしにさはあらずしてみな人のこゝろは春を
末ちながらよはひのつも●おのが身ををしむ也けり
我をしもをしむとばかりおもひしは老にほれたる
おもへばくやしいざゝらば一日もはやく
年の矢の射るかごとくにくれていなまし
かくばかりわびしきものをくれぬとてをしむは人の身を惜む也
月に狸の腹つゝみうつ画に
鳴の名の八畳敷にひろけたるそのまたぐらも
くらからぬ月のひかりにたぐへてしきんたまの名は
むさし野の狂言戯語のたのしみも皆
なかべ・ぞかし
千蔭のぬしに寄す
やまとにはうまれにたれどやまとなる歌はよまずて
敷しまの径にまよひ市川のえびすの国の
国ぶりのをかしるのみよみぬれば我と君とは
折助がはける劔のすつぽんと月ほどにこそ
たがふらめ筆の跡をしまねびてもまねぶ心の
うとければなにかにな也難波がたあしもとにだに
よらなくてかなしとおもほゆ年月のつもり〳〵て
十
たゞひとつ君に似てげるうれしさは遠くなりぬる
耳にぞ有ける
国ぶりのかなつんぼうにとくならめ君にまさり人のめでまし
千蔭ぬしのかへし
よの中にたのしき事はあつまれりみちかゝ山に
さく花の光り也けりその花はよしなくとても
若からば花にまされるをとめ等はまじらひをりて
たはれつゝたのしむべきをよはひさへ七とさなつな
七そぢにちかつきぬればとゝんとんとんといけなく
なりはてゝ耳はとうどのとりのぬも日本のとうの
その声もきこえずなればいかにともせんすべもなし
しかりとて長芋ならぬつくねんとしてもゐられず
ものいはぬ硯と筆を友としてよみかきのみに
くらせるをよしとおもひて難波なるうらやましとは
おほすなよ君
人なみに人はおもひてものいへばかなつんぼうも文字しとする
大盃に懸す
大み国のふるき子みには抔の字をつきとよみて
杯の字に用たり一つきふたつきとあるは今の
一杯二はい也とぞさればひと抔をひと月におもひよりて
のめやとて銚子の口をさらつきについたち〳〵と
つぐ酒はふつかみかよかいづかはやなかばとみつる
ゆみはりのはりもたわ壱十日あまり其かよかいつか
なみ〳〵と手にもち身の影みてりいざといふより
のみそめてたち待ゐまちふしまちや廿日もすぎて
ごく〳〵となりばはのみぬせるあまりよかいつかはや
文
さりつきの庭にのこりてあり明の影までもみな
のみほせばみそかとなりぬひとつきの酒
さかつきにみつるは望の月の影みなのみほすや酒のひとつき
節分の豆の数も既六十九となれば
春来れば年頃とつづゝとるといへば年よれる身は
このうへに何かのぞみてとりぬべきそはおもはずて
はつ春のやがてまゐらんあないとて年頃とつづゝ
くばるなるそのならはしにゆくとしをとしくるゝとも
夕なみのより所なき貰ひもの何と見きの
夕なみのより所なき
腰のほねいたみ入たる春のいへつと
いそぢよりあとへと年をとらば今みそひとゝせのわか旦なかぶ
和歌
若
雀躍の画に
紙を通して
ころも手の脊中の紋の釘ぬきに縛を通して
大手下馬先
つなぎなば一もんやつこなるらめど大手下馬先
猿さきもまづ通用は吉田御油赤坂やつこ
ふるき名にあふさきるさも金点じやあれさこれさの
かけこゑによけて通してくれ竹のよに傳へたる
うつし画のすゝめ躍をひと筆にちよいとかく内
角すけかふりもたへなる身のひねり路考杜若を
ぶんぬきの二金半でもたましひは金平鉄平
折すけとさへつる声も君にちう〳〵
すゞめらがをどる手あしも立奴その末めの字をちう〳〵と鳴く
十五夜に閑稚のぬし月に備ふる団子五つ草庵へ恵み
給ひけるそのぬしの紋所丸の内に十の字なれば
お手つからおそれおほかなこのだんご買てござつて
くれ竹のかはらぬかずは家例にて五つなれども
戊
寸
むつましきけふの目見のまめ人はだんごほどなる
もんどころその十の字に十五夜のかずも合たり
酔ふたりまだ出やらぬ月ながら君かおかげれ
まづあふぐかな
人なしとこゝろ月見のおなさけはだん子の教のいづか忘れん
大なる蛇の貝に蓋作りて肴入となし是に何かあらめと
酒の内ノ直寝のもとめに
さりつきと肴入れとを兼昌がよむうたかたの
蚫し末かよふちかりの燗銅壺鍋をもかけつ
さかなをもちよつとやにもたつかゆみいく夜寝酒に
うさわする友ちどりあしひくはうしほさいつおさへつ
なみ〳〵と浪こゝもとやお手もとを見るめかるてふ
及ひものにもしほたるそふこのうらのあま口から口
身にしあれば夢のごとしらぬ夢のごとなる
一しやうを関とし守るまでもなしもとより銭は
孔子
わくらはにとをはたみの田楽のくしもいはぞや
唯酒ははかり菜漬也大根のわぶとこたへて
すまぬ酒盛
「
みさかなは下戸の口にし蛇貝をたれかいはほのかたおもひとは
年の暮に金からんかさんと約せしことの大みそかにもはた
さであそよあさつてよといひのぶるほとに人日も過て穀日の
あしたとなれり遣ふこそはかならずかさめといひ
おこしけるかへりことに
とるものを鶏のあしてはそらねにて遣ふかとおもひ
物の日もいつか猪のりこくれすぎてあすは羊の
必定とゆふくれかけてはゝかとらぬ牛のあゆみの
戈
日もすから待にかひなき甲斐か根の牧にいはえる
黒駒のうまくもくろめいつはりてまことすくなき
人の日とはやなかぬとそせりなつな五行たびらこ
ほとけにも神にもちからおよばぬはたゞ金といふ
ものにぞありける
にげかくれても掛乞はつけねらふ金か敵の世の中じやなア
青楼秋色
与し原の夕まぐれこそたゞならね秋は寂しい
悲しいとからのやまとゐことの葉のその色としも
なかの町趣向は千々の花燈籠七夕まつり
八朔はとけぬゆきゝのむれ立て拍子にありの
伊達こき交て
にはかぞと茶に薄にぬひものゝ伊達こき交て
にしきとも見よや二夜の月はことさら
月見んとてうちんあまたともせしは松のくらゐか目のくらいのか
浄玻璃の鏡に頒城のむかひたるを悪玉か団扇にてあふく
側に閻魔王ゆびもくはへゐる画
悪玉か何ぞと客の問ひしとき露のいのちも
ぬしならばをしみいせんとゆふ四手の神に誓ひし
いつはりの胸のかゝみにひきかへて影あきらけき
浄はりにぐつともすりもいはしろの松のくらゐ也
いひわけもくらい〳〵とせめられておそれいり米
豆あられふりにし罪はをかみんす御めんなんしと
夕汐のさすが地獄のおや玉も書れとてしも
ぬばたまの恋の闇路に迷子といふらむ
晦日にも月がござるとじやうはりのかゞみもやらず手もさげずして
↓↓
狂詩
万歳
雑煮何千椀屠蘓幾万觴大夫雖徳若一ト元気在二才蔵一
仲春見二懐炉ヲ一
寒盡テ餅還ス盡コキ世間花欲レ燃レ懐爐銅穴ノ契今更有レテ誰憐レ
吉原八朔作二ス青黄赤白黒ヲ
青楼紅日落チ黒歯白衣決總テ總テ是黄金ノ氣宜哉唱二色郷ト
題六歌仙画
見渡ス天憲数僧ハ多シ七福神ナト此分指引処娘獨ニ壻三人
閻魔大王大齋日
内ハ言二閻魔詣一ト直ヲ懸ル日本陂一ニ今生遊一ニ今生遊楽ニ来世ハ侭之皮
送二大森君還二ケテ故郷ニ
雙蝶是誰魄隨レテ君ニ向二ク北風一ニハ道中看二テ萩白一ヲ萩白一ヲ莫レ失二武陽ノ通ヲ
題寒山拾得一
持レテ書ヲ知リ二拾得ヲ採レテ幕ヲ覚ス寒山一ヲ一ヲ第一レ書如シ此ノ依レ何ニ得ル何ニ得レシ顔ヲ
海老亭喫二ス山屋豆腐ヲ
吉原豆腐ノ王肌ハ是美人ノ耕山屋ハ富山ノ意富山ハ白雪ノ光
製ノ方三国一名物五リ町長玉箸過二ト唇上ヲ消テ消テ如二六月ノ望一
題ㇲ撞鐘形ノ蚊遣火鉢ニ銘ヲ一
初夜聲ハ蚊蚊後夜ノ烟ハ紛紛影至二テ晨鐘一ニ一ニ尽キ形ハ待二晩鐘一ヲ群ル
是則生滅ノ意尽ノ晴後生ノ雲因二尽然トヤ蚊音ノ訓一此器象レ鐘云フ
題鶴ノ画ニ
籠目籠目籠中ノ鳥待二テ何時一ヲ欲レ出レキ二籠ノ中ヲ夜明之晩鶴應ト
入ル童子ノ戯言那ヲ得レ通ヲ
霜月朔日作二ス寺尾ガ七十ノ賀ヲ一
一陽ノ霜鬢梅花濕年ノ賀新ニ関ク周代ノ春頼見セ古来稀ナル大
手
入東方朔日九千人
板橋街於テ萩窪ノ宿ニ一作
萩窪ノ旅店冷ナリ如レル船ノ肴尽スヿ酔窮ヲ高レヲシテ眠ス驕ハ以轎ハ似二郎鄲盧氏ヲ
夢ニ一覺聞ハ五十五ト有餘錢
七月十日詣テ二浅草観世音ニ作
四万六千日本一成スレ群ヲ四万六千人金ハ揺ハ揺テ四万六千ト
雨天上起レ雲ヲ草履塵リ
題二猿ノ画ニ
三万三千三百禄山王桜木遠レテ花ヲ遊テ可レ憐不レキレ及二ハ人ト及二ハ人ト聞ク
数一ニ九万九千九百毛
詠雨
奉公人ノ涙巳ニ晴ル時梅若ノ祥忌復ク見レ奇ヲ虎御前同ク雖二作ト
雨ヲ梅天混雑メ自ラ生レ疑ヲ
七月七日作
怪シ來ル銀漢白鰒形チ更ニ見ル天邊青貝ノ色何レ憂ツ二星ノ三布
國雖二天文者二那ヲ得ルレ識ヲ
和フ二其葉カ品川ノ落雁ノ作一ヲ一
早逐ヒ無レノ時本宿ノ邊寂リ寥ル晝店ニ覺スルル二君ヲ眠一状箱自有二雁書ノ
論一替ルレ代ハ人夫問屋ノ前
九月十二日ノ作
長安一片ノ月看前万万戸挽レヲ声聽天ニ天上不レ天ニ天上不レ知明日ノ
事雷神芋シテ膽ヲ被レ衣顛リ
題ス二衢番火鉢ノ屋根ニ
衢番火鉢在リ二衢番ニ因レレ在ル二衢番一ニ衢番一若ク言ヲ縁一似テ一似ニ衢番ニ一如レ此ヲ
号アスル自ヲ兼テ兼テ一ヲ失二ス根元一ヲ
見テ隅田川ノ月一ヲ詠二江ス江上ノ清風山間ノ明月ノ明月ノ心ヲ
散シ来江上ノ清風ノ香打チ出ス山閉ハ明月堂月映ニテ漣ニ如二ク蕎麦
艇一風翻ニテレ葦ヲ似二美人ノ裳ニ一
㊂如キ此ノ肴入ノ銘
見レハ汝カ形一ヲ如二甘露子ノ子ノ三重互ニ抜ス是瓢レ簟顔リ回若レ得ハ斯ク有一
入ヲ一器空ク殘二陋巷端ニ
舞子の年を尋るに十八也と答ふ我七十二歳になり
ければ
問二ハ婦人ノ年一ヲ言フ二十八一ヲ一吾セ還十八是レ同年莫レ疑リ相與ニ把テ錢ヲ
算但我ノ波錢君ノ小錢
一難波かた数はたかはぬあしのはによりくる老の波そかなしき
一吸筒に狂歌かけともとめられしを諾しける後風呂敷に
包たるものゝ来りけるまゝ吸筒ならめとひらきみるに
格の毛織木綿也いかに間違てかゝることありやと驚て
かへすとて
狂歌求メ来ル一酒筒化ノ為二大格一ト大潜二ス巾中ニ家童冷レテ
壁ス君見一所レ包ム恰好同ヲ
青楼十二時歌
青楼ノ子ノ刻駈揚ノ関階子廛先廊下姦セシ引ク四ツ打更ル街道ノ
躰家々偏ク鑚ス一時ノ閑
ひけよつの名も江戸ながらことのははけふとあすとの替るさかひに
青樓丑ノ刻寂リ寥房通ノ聴レク三弦独断レヲシテ勝ヲ残ル物引テ行ク明キ座
布先生饌作二ス下卑蔵ヲ
忍みつの頃にしなればくひものにおにすむ里のさまも見えけり
青樓ノ寅ノ刻欲ル帰ト天新造被レ被シテ興ニ起テ復タ眠ル茶屋御迎寄戸
隘シ成レ群出駕大門前
とらの時君かうそふく寝姿に帰り風をもおこしぬるかな
第十次
青樓卯ノ刻衣々ノ袖焼レスヿヲ把レヲ把レテ杯ク惜レ別テ長シ菌取縦ス中ノ中ノ町ノ
裡チ臭風忽チ奪二歒カ移香ヲ一
客の気をとりかねなから夜とともに無心のことはあかしつるかも
青楼ノ辰ノ刻世ノ開静ニ不レ寐番人成二栢餅一ト微ト微リ雨蕭々ヲ奥座一
敷逾窮二居続一入二入二金屏一ニ
ゐつゝけに名やたつの時ふる雨をわたりに船と碇おろして
青樓巳ノ刻何ノ須レ見テ起テ起キ出ル素顔皆鬱々誰シテ遁レ城傾リ城傾リ国ノ
姿ト中三曾ツテ國二シ三文カ物一
風呂に入る姿を見のはむさし乾さすがに化けのかは竹の君
青楼午ノ刻用充チ盈。少レ妓學レ書ヲ長妓筝損料似癡全ク我ヲ
物昨今ノ紋日遣操情
べにかねのかねのみありて質難はかくしかねたるふ昼の色里
青楼未ノ刻昼廊ノ身採レリ髪カ読レテ書ク席不レ均ヨリ緋縮緬黄シ細猿ノ霍ト
乱白無垢黒メ鼠ノ婚姻
一西東みなみにもこぬ時なから昼見せはかりきたなきはなし
二青楼ノ申ノ刻道中ノ装芸者牽頭迎客ヲ觴発ヒニ嗅テ発レス拳ヲ秦、右ノ
上姉君御早附金ノ光
夕まぐれより出す大か姿にはこゝろもそらにぬれずやはある
青楼ノ酉ノ刻自レ鳴レメ鈴テ一炬ノ光輝黔山麓ニ言ハ毒ヲ地廻リ歎ク毒ヲ地廻リ歎。素ト
見徘二徊ス五町一ヲ緯ニ于レ経
一三線の糸もてゆへるすかゞきは昼とよるとの声だて守からん
青楼戌ノ刻實ニ隆哉門限可レ憐武左ノ面ル左ノ回シテ店者ハ些間旅客ノ
緩リ挑灯来往ハ送迎催ス
しらせ申しやおつれ申しやと茶や〳〵は五ついつものいそがしきころ
青楼ノ亥ノ刻称二ス鐘四一ト中座先ツ揚ヲ揚テ美色稀。見立移レノ時ヲ今更ニ
損大門已ニ閉テ地廻リ帰ル
一寝たいともいひかね四つの時をえて今や不粋のとこにいからむ
題二廉紙一ニ
三茶梅茶の号はたまく古き細見に残り弐朱判吉兵衛か
作りし大豊拝の唄の唱歌に残りて今は中三といふを
さへうち出して三分女郎といひ二分つけまはし壱分女郎
弐朱女郎などいふはいと拙し此茶の字は唯傾城の
心にとゝまりて人を茶にす勤の年凡廿年火をおこすに
みす紙をもてたれりとするはこれもまた茶にあらずや
青楼ハ少婦乏シ団扇一ニ雖二五明楼一ト樓一名似タリ虚ニ簾中紙風微ニテ情レシ発ニ
火ヲ任ノ茶漸ク熟スス三時餘。
廣ク鈴木陸成寄二嶋屋茂七一韻ヲ
從來手代総金々堤側遊君可箸レル君可レル襟ニ小額真青風復
若素顔生白カ濕猶深我ノ辞二馳走将一ニ帰レ帰レニ帰レトハ使二御先ニ欲ル
レ飲コキト心売上ク早ク憑ルト不レ出ルモ不レ出ガ四方山ノ話シ似二知音一
一弥生七日羽州秋田より江戸に至り着ける人の如月末の比
いで羽なる尾花沢のうまや路を過けるに左右の家ゐの前の
雪を通りの中へかきあつめしその高さは二丈ほどもある
べく左右の行通ひかなはねば其雪を幾ところもきり
ひらきてかよひぬと南んこなたの事をいはゞ上野飛鳥
御殿山隅田堤の花も過がてになり吉原仲の町の
花のみけふなむさかりときこゆこれも左右の行通る
ため花に結ひし埒を幾所も切ひらき茶や〳〵ゆき
かよひぬ桜木の高さは尾花沢の雪より遥に劣りて
一丈に不過古より花を雪となかめ雪を花となぞらふ
言のみにもかなへばかの尾花沢の事によくも似侍り行て
みるものならばさそなことなる詠めならんとたは言をぬかして
奴傾ノ円女ト與レノ男差ヒ振リ出ス道中譬ハ鷺ハ鷺リ鴉新吉原ノ花尤ニ似
レ雪ニ尾花沢ノ雪那レカ如レ花ニ閨中ノ中ノ和ノ暖金襴懶ク山ノ内ノ餘寒濁ト
酒奢ニ青楼駅舎雖二雪ト全ク清風正六共ニ豪家
品川亀野屋の若松肥満の婦なりしが新高松本屋の抱と
なりお今と名を改め鉄醬をおとし再白歯と化しいつしか
細腰の姿になり又さかんなる事はなはだし坐敷の袋戸は
橘中仙の画ありければ
南海ノ媚家亀野ノ女今来二西域二西域ニ在二松寮ニ西瓜ノ枝ハ愛ス為二瓢二瓢
枝一ト獨活ノ腰ハ瘧テ作二ル柳ノ腰一ト毎レニ階二階二一ヲ成レ若ク若ヲ否セ隨テ加二歳ノ豆一ヲ至テ至ト
レ児ニ昭クシ若松却テ有二古今ノ色一疑是レ橘中仙術ノ妖
玉川の水にみがきて今の名の老まぎれてやなほもわか松
ひろげたる巻物の上に福禄寿の乗りたる画の賛
達磨初祖座禪ノ牀獅子洞中出入狂フ住吉シ鸞橋朝映ル
レ氷ニ東山ノ大字夜分レ煙ニ獲発発翫フ月ヲ登レテ梢ヲ下ル鶯鳥道花ニシテ花ニ落テ
レ餌ヲ賜ル曠野阮々タリ杉ノ一樹曲全ク畢テハ庶二ヲ響聲ノ長一ヲ
角力中入ノ篇
中入結シ終テ辨當催ス重箱ノ結シハ却テ此時開ク土瓶ノ澁茶信玄ノ
蓋吸筒ノ冷酒熊谷ノ杯出入似レ潮ニ人似一リ浪ニ小便如ク漏レ漏カ膝
如レ摧スル桟敷ノ小便蜀ノ棧ト道落間ノ煙草越ノ烽台見二テハ髷長ク紋一ヲ一ヲ
思二シテ酒ヲ顧二ツハ検使ノ縄一ヲ慎レル障レル障一リ既ニ醉レ人ニ見物是迄ニ見物是迄テ去リ懸レル目ヲ聞
取見付来レ跡出ス百匹離レテ召匹離レテ遣リ先ニ投ル羽織成テ皺ニ回ル朝晩ノ
取組裂上下半日ノ勝負榻一サ一ニ一ニ一ニ一ニ一ニ一枚二
物曾テ不レ至レラレ長レ腮ヲ
汐干ノ
行尽ス高輪十八町品川ノ色里列二ス長汀一ニ嘗テ浮二ナ文月三尊ノ
潔一ヲ今顕二ス春風萬里ノ腥一ヲ住吉加多宜レク宜レル壁安房上総若シ
廿一日
レ望レル庭テ越中禅代二テ布帆一ニ白ク博多ノ帯ハ雙一ケ貝ノ口一ニ青シ娘入二海中一ニ
沈ハ影蛤通登洲上ニ映ル光蛍魚ハ老蛍魚ハ蛍魚ヲ脊ニ欺二ス辨慶一ヲ穴ニ霏々
レ舷ニ疑一ヲ義経一ト楼上手麾平ノ飯盛欄干欄隠ケ是レ幽霊其時
義様少レ少レ心噪ク今更辨坊同ク眼冥ハ足股泥清松阪屋駕
飛ヒ馬驚ク石橋亭軒ハ連ル七津八ツ山ノ宿廊ハ續ク九曜七曜ノ星
東海東禪齊シテ所レ羨ハ名斉傾リ。国両ナリ。自ラナリ。自ラ有二千ノ玉。自ラ有リ于
満一物日紛レラレ愁ヲ酒未レ醒メ
傾城も皆かひつくし海ならで見世もするから引てしま山
憎レ風賊
風ハ者天地之肝積東リ西南北随レテ意ニ易ル声ハ假一松柏一ニ不レ見ル
レ姿ヲ画レクニ之ヲ因二ル柳与一ニ女ノ斎一ヲ静カ時ハ五日ニ而一而一タモ發ス稱二時津風一ト不
レ鳴レ枝テ東風惚レテ花ニ伴二ヒ香色一ヲ南風ノ南風ニ懼レテ花ヲ起二ス一國一ヲ退テ托二ヒ恨ヲ於一
入相鐘一ニ自ラ驕ル我ハ是レ君子ノ徳ト龍吟雲スルハ罷出テ助二ク浮雲一ヲ况復ク竹
林虎ノ嘯ク刻ス梢ハ為二ル照シ坊一ト炎リ暑ノ天雲ハ却テ懸ケ黒ル明月ノ邉味二方ノ邉味二方ノ
知盛一ヲ揚二高浪一ヲ荷一膽ヲシテ國ヲ像一ニ顛一ス大船一ニシテ行客ヲ見二天上天上天上一ヲ颱一
使二ハ釣師ク冠二テ冠二テ毛氈一ヲ中ノ町ノ花燈燈又滅ス滅ニ町中ノ火消消セハ亦燃ニ
箔屋永代無二シ附合一船頭生涯有二腐シ縁一箔屋船頭塗師ノ
属ニ腰張席書女中連レ鳥毛ノ鑓持長柄ノ傘豆ト與二徳利一是
誰ノ愆ス突突スル明子一風莫レ吹クルヿト
雖掛レ掛ト鼻ニ秋ノ愁殺人一ヲ不思届入二テ不思ニ入二万二為二為二為二百病ノ長一ト在二一
作ル百姓對一ト不是風魁此ノ風ニ一
風流之仲間應使肝積無理ニ應二
仮名の詩
柿山伏の狂言の画イキシチニノ韻
これを画工にたのめばかき山ぶしこれを地口にいへば柿あまぼし
アリヤ
そのかたち鳶に似て鳶にあらずさあらば鷺か大蔵流なるべし
瓢簟の画ウクスツヌノ韻
空也にたゝき出されては山雀の住居なる
許田に投捨られては額淵か茶碗なり空也にたゞき出されては山雀の住居なる
天正年中時を得て馬印と輝きしも唯今蕎麦屋と約牢屋に其名をとゞむ
イキシチニノ韻
手長嶋の猿まはしの画
毛は猿猴より三本多しといへり
手は凡人より三尺も長かるべし毛は猿猴より三本多しといへり
ともに水の月はとることかたし
されば畜類にはまさるといへども
七つめの牛の画ウクスツヌノ韻
巣父にひかれては隠逸の友となり桃林にはなたれては仙家の寺を俟つ
黒牡丹の名に富たるを得ぬればうしといへどもさらにうき事を知らず
黒牡丹の名に富貴を得ぬれば
瓢箪吸筒の銘
起してもねたがるは此瓢たん
達磨はわるい酒ねかせばおきる
本来空ふくにごく〳〵これ極楽
性は善也生は千なりとも
太公望の賛合
上の字を覆ふ時は高野をひらき中の字を覆ふ時は万里に當つ
三字を備ふ時は文王を相く
下の字を覆ふ時は朝鮮を感し
蛤よりおいらんを吹出し蜆より禿を吹出したる画
月に随て突出しと化す
蛉汐のみつるを待ちえて月に随て突出しと化す
蜆閨中のことをまなべば終においらんの蛤と奈流
狂言を妨のからなさけはうきめをみるくひのたねとならん
あはれむべしかのよし原すが廓中に入て瑪珂貝となんぬ
弓矢に雁的を結付たるを荷ひし奴の画イキシチニノ韻
主人の弓とりは知行とり家来の矢とりは草履とり
射るは商売鷹もほうばい
ともに鳥の名ありて此鳥を射る射るは商売鷹もほうばい
持せたる弓矢いつれの所にか預けし
傍輩のつき合に女郎買にも持せたる弓矢いつれの所にか預けし
お旦那雁的仕おほせましたと角内か地口中くあちをやうき
お旦那雇的仕おほせましたと
下十八
十一
鉢押の画ウクスツヌノ韻
一水鶏はくすなといひて觜をたゝき空也は喰ふやといひて瓢をたゝく
腹内空なる時は喰ひて泡茶を喫し泡茶満ぬる時は食と共に消て又空
俗は喰ふを以て短き生涯を楽む
仏は空を以て長く真面目とし
世は茶基の泡其器にあまるといへども消る時は空に帰せすして唯茶に帰す
一本来は喰ふとさとりて世の中の人を茶にする茶筌めされよ
大蟇の画イキシチニノ韻
一掾の下に身をひそめては九太夫が如く
一蚊をぱつくり呑てもうまさらにもみえず脂をなめさせられてはいと苦しげ也
されども腸のせんだくを仕て仕舞へば
常に三つゆびの付金に置てもらひし
もとより水に住て歌よまんといふ了見なく
七種四郎に雇れて敵役の性を顕せり
仙人の居候となりては悪玉を学ひえて
何につけてもさつぱり気のしれぬ先生
これを福がへるなと尊む人もあれど
永田呂英子火災の為俳諧の点箱を失ひけるに俄に用る
事のありて印は彫せたれど箱なきまゝ小き弁当箱を
仮に点印箱となしぬ弁当箱を用ゐたりと見ゆるやうに
蓋の裏に題せよ金沢にてかゝせんとあればウグスツヌノ韻
衆人なんぞ此うつはを笑ふ我もとより息者にあらず
故に常に引墨にうゑてたま〳〵この弁当をひらく
朱肉又酒肉になぞらふ
判と飯と音相通せり朱肉又酒肉になぞらふ
心になま味噌あれども深き意味はいかでかしらん
しるなくさいたらざるをもて弁当にかなへりとす
さあ弁尚はなゝなら納豆蕉蓮の皆さん
布袋に傾城の衣裳を箸せ道中の姿の丞女
つとめの身の意気地てふものはをしへの外の別の傳へにして
こかねたくはふる事奈く一物なきをもて心とし年の明ん
寸
年月をもわきまへぬにはあらねど夫は其時の事としてあし
くらすこと虚無所住而生其心ともいふめれのおいらん耳たぶ
厚く人は腹ふくれなどいはめど揚屋葛籠の儲さへゆくて
布の袋一つに悟りたるいと高し
戸棚には経山寺みそをたくはへて名染の客に依て禅味をすゝむ
客迄大門の外に放下しては又眠蔵に入て下早蔵をなす
上の方うなぎにて下の方は山の芋の画エケセテ子ノ韻
山の芋化してうなぎとなり娵ふるびて姑とふけ禿引込んで
おいらんと登るのたゞひ吾妻七十二侯ともいふべくやある人此画の
如くなる物を得てよろこべるをりしも日頃相なれたる法却の来りければ
我かゝる物をえたり北下の方を聖にもてなし我は上の方を
たまはらむといふに法師のいふ願くは主人の精進日にまゐる
へければその時までたくはへ給へかしその時は主人下の方を
喰ひ給はむ我は上の方をたまはらんといへりけるとぞ如才なき
法師なりき此時主人筆をとりて
妹をさへかこひおく世にうなぎのみこのむは野暮なお僧なりけり
法師も又筆をとりて
我如く寺へ置てもすむものを囲ふは野暮な出家なり計理
此返しに主人答ふる詞なきさまなれば法師かなきり声を
張あげて
うなきよ〳〵直なる長いも裂くことなかれ折ことなかの
うはべはかりの情はにくや
うはべはかりの情はにくや腰より下もなびかん也
狂文
花の周序
此ひと巻はあまたの人の花をよめりしたはれ歌の詞の花を
十八
十八丁
丁廿
あつめたるなれは花の国と名つくへしそのことをおのれに
ついでせよときこえ給ふまゝに巻のはしめにかいつくるにこそ
などやうに三くだり手に書をさめても事はすみだ川なるべけれど垣しも
春の花盛自然薯蕷の田楽に機嫌上戸の興を催しあめん棒の
茶菓子にも喜見城の楽を極る花間笑洛の声らに貴賤上下の
春遊びは夢の根の長きにあかぬを御建中の狂歌の序に蘇錦の
根の短きも離縁状めきて興なるればとしごろおもひよる波の
浅草川のあさまなることをさんや堀にすき返して紙を費し侍るに
なむそも〳〵世の中の流行は高尾薄雲が絵姿と今のおいらんてふ
ものゝ姿を見てもしり給ふべきなれはの調度のたゞひもかたちを改て
便利を専らに作りあるは古雅を慕ひてきよらになける流行の事は
さらにもいはず鼠の毛色菊の新花青物の早作りなど造化の製も
人の智恵にたぶらかさるゝ世の中なれば衣類の製髪のゆひかた氷
おろしを盛たてたる上菓子の女もあれどさすかに丈の高き低き肉あひの
痩肥りは手の届かぬ事にあれつめ梅桜のたぐひとても鉢植の早咲のみ
にて大木の花に至りては流行に抱込れぬぞ尊きまし人のかたちにも
流行あらば便利なる事を考つゝ目鼻口もとの工夫はいふにおよばに
一生不用の臍などは行燈の前の横木とともに取捨られ乳のある親仁は
流行におくれしとて笑は終女の尻の棚なるをば三四寸上へつりあげて
守り袋の下らぬ為としうしろの方にも眼あらば昼いあらかせぎ巾箸切
夜は鎗の用心にもよしといひてうしろの方にも眼つくらば先箱持脇よれも
たんまりにて済むべくもし前の方のつぶれもせばあとしさりにあゆみ行
とも本めくらにいまさるべしうしろのめはつぶれても人なみといふべしなど
いひて和製の砂糖の外にも又前座番こしろ産南と唱たるものもあるべしや
唯飲城客をふるにいうしろのかたる眼かありてはふりばえのせぬ事なるべし
口舌のときのそら泣にはうしろのめはいけしやあ〳〵とねむさうに見ゆるも
十一
下廿一
おかしからむ老ても耳の遠くならぬ為とて堀ぬき耳といふものと工夫し
手のひらへ呼耳を作りさゝやき咄などする時はこなたの手を向ふの
口へかざしてきけば口中めしき匂ひもきかず彼是もつて重宝なりと
さるかく新製も出来ぬべしはた和歌の姿も世こに字つり来り来りて松類の
一調に至るまでも年月の流行あるをはなは昔の色香にして前葉集に
よめりし楼く八代集十三代集及び新題恩によめりし桜もさくらは今の桜
奈るをあかすめかゝにてはやすこそ飽やすき世の人心にはあやしともいふべ
けれ助六の江戸桜は桜草に打てしめられ桜田の作り花は五瓶の枝入れに
投出され浅草寺の千本桜は土場浄瑠理に名のみ残り飛鳥の山の
花桜は海老屋扇屋のお先につかはつ御殿山の桜木は村田屋枡本の
刷毛ついでにかんられ上野斗は香泉のすまぞ濁らぬ花ながら瑞味寺
感応寺と同しくなまぐさけのなき花なるこそ玉に瑕なれと難をつけ
小金井のふるきをたづねて隅田川の新しきをよしとするもともに花の
盛にはあらねど奢行る心によるなるべし花に遊ばゞ祇園あたりの色持へ
と高たす名花候園両相歓と作りし忠臣蔵の七つめも清平酒の三首めも
同し心の花にして花のながめのたのしさは吉原にしく所あらんやこの花
よし原に植られては油鼠の役まはりなきば桜の本意にはあらざらめど
うらなく心の底をあかさば花の姿をそへて見る吉原の花こそうる心さへ
花にはありぬれわきて狂歌の媒には吉野の野を原に替て吉原の花こそ
めつべかゝれ素より廓中に植る花は一夜の内にも生ひ出て一夜のうちにも
ぬき捨れば江戸はえぬきのうは気の花にして人の心のうきたりものは
桜と傾城の二つにとゞまれりかくたのしき花なるを花は桜木人は武士と
おほえたる不所存ものあれば花より団子と覚えたる馬鹿ものありかゝる
人にも此花を見せんものかは此花を見せんものかはあたら桜を
吉原細見序
細見の序は短きをよしとし大通の衣は長きを腹とす牽類は智恵なた
四十一
千
を以才とし傾城は素地あるを以賢也とすは善といひ腹といひ才といひ
賢といふこれよしはらさいけんにあらずや嗚呼細見の序此位なものか
吉原流行小唄惣まくりの跋
石上ふりし世の手ぶりのめづらにのこれる事は序文にゆづりて更にいは更
抑此小冊の序跋を求むる人は我郭の梅の花とは見つれどもとよめりし
壁の耳遠なり序を書れしは畝火の山とあらかす勝し耳梁の大人也
跋をもとめられし我は天王寺屋の額を書し耳の遠風也耳遠は桐屋と
いへども耳の穴をもみあくることを不得あはれなる哉かな聾耳加あとしは
名のみちかげにしていと見事なるかな仮名聾遠風は豆腐のひゞき
あれども耳なくしてあわ雪のことし不手際なるかなかな聾手柄の
岡持からうじてかゞりをさむ
燕斜か奉加帳の跋
からえきよく清らなる表紙をひらけば蜀山人筆を揮て其はじめに物す
こはいとおもしろきふみ祭らんとひとひら開けばおもふにたがすて
奉加帳じやか草子が帳か夢かとばかり行すぎの丸太橋のまどりなる
光りを初筆につきの秋三五夜中の深切な色になるてふ床花の桂の
花のちりつもつて山の謡てらすいぢよひのつきてもおほきこがね作りの
たち待居待今の間に二千里の外御仁恵のこゝろ〳〵につきのよな〳〵
果報は寝待のつきせぬ説次はつかにあらぬ鼠衣の南加も時にあゐ鼠
ひかれてうれしき弓張月おかけを燕斜か大中かふうきといふもその
名にて奉加といふも冥加の玉いたりや射たりやんや〳〵
時はみつき廿八日此帳面の尻ッたくり呉陽人手柄岡持織
桃太郎の巻物の跋
吾十有五ヶ月にして違ふに志し三歳にして立ち四歳にして桃太郎
五歳にして狸の舟六歳にして精と蟹七歳にして子供の欲する所に
舌切雀の精をこえざりしも八歳よりことし七十二歳迄六十五年
反
寺
過しかば泰団子の味ひをたに忘るゝを此巻ものゝ画に詞書せよと有
ればなりかへり〳〵思ひ出せるまゝをかいつけ侍るなほたがひたる
所あらば後の童のをしへをまたむ
桜草記
鳶色のもろこしのことは不知用心すひのもとのうちに人おほく集れる事
江都に過るはなし日ごとにあまたの人を見ること伝内や花の都高嶋や
梅の難使も及べからずその所によりその日によりては一椀の蕎麦を
傾るひまにも千万の人をも見るぞかししかはあれど人の面は人毎に異にて
未だるゝ事なければしらぬ人にものいふ事なくしれる人を忘るたもあらず
人のみには不限いきとしいけるもの皆かくあらんか犬馬猫鶏のたぐす常に
畜おくものはあまたのうちにも見わくるなれば常に見馴ぬ鳥獣蟲魚も
おのれ〳〵が中々には鹿兵衛蜂兵衛とみわくる事もあるにや樹々の木櫛
枝握も前松前杉皆異なるべしその中に草の一つらに生にいづる
のみころいつれを一根一根一株と定るいためもなければ人面の異なる如には
あらずさるが中に有隣斎の主人かやしなへる桜草はいかなる手煉の長
せるにや人の面のことく花願皆異にして彼と是と同しきなく是と彼と
わきかたきはなし野辺に生ふるものは唯一種にして円業子のはじめに
画かゝる花の外他なし此花辻氏の誓ひによりてかく容を易へ色を変し白きは
塩の如く売なるは笋のことく濃き比には紫蘇のことくなれるも梅漬分の
一種より作りなせることいかなる折ぞや奇々妙々といふべし昔ふた柱の
おほん神はじめて男女の交りをなし給ひしより年を積世をかさねて
猫脊中の男あれば杓子頬の妹あり或は釈迦嶽と生れ碁盤娘と生
るゝもあるそかしおもふに天神七代のうち国常立の尊以下三代は彼野辺に
おふる桜草のたゞすにておもてのふりも替り給はずありけらし四代の尊泥土煮
沙土煮より以下伊弉諾伊弉冊まで二神の姿少しく異なればこそ男神
女神のわりちはつけたらめされどもさのみには替らで尋常の桜草の如く
〆
なりけらし此時鶺鴒の教によりてはじめて桜草の手入を覚給ひ一やう
ならぬおもての人を作り出しはじめのほどは百種の人などいひて並べおかさ
給ひけんとぞ思はるされどもその時は見物すべき人とてはなきまゝに彼
先生なりける鶴島なんどに見せ給ひたるやこれをもて考侍れば今
有隣子をして楼草のためには二柱のおほん人ともいふべくや
楊田記
秋田城の北にあたりて搦田と名つくる地あり長河にそふて一亭を儲け
つゝり漁猟の地とす山川の風景日の本の地ともおもはれねは唐を見ると
いふ心をもてからみでんといふとも可ならんかされば川もからかはといふべけれど
水の味ひり〳〵とひりつくにもあらずもとより此家居の山荘にあらさるゆゑ
にやそつたん又遠からじ晩鐘に蕃椒の響ありて喉にあらぬ耳をつらぬき
岸辺の孤松に胡椒の音有て危石に咽ぶ泉声嚏ともきくゆべくゆべくや
泉の山の木枯に粉辛子の訓有て岩の鼻を通せば雫の滴りも涙と
見るもおかし太平山の腰には生姜の形せる雲左なひき峰にかゝやく朝日
をして山葵の地口ときくものから太平の根より吹風ならは大根おろしといふ
べきのみされば此一村からみでんといふ事又むべならずや
千齢扇記
千齢扇といふ事此扇千年の齢をたもつや又此府を持てる人千年の齢を
たもつやいまだ知べからずこれを学者に問へば先生饌と答ふこれを基打
にとへば先ぜん先と答ふこれを詩人に問へば真淳臻と答ふこれを傾城に
問へばかゞんじいせんと答へて仙台銭の円からず方ならぬ挨拶のみ也不得止
して京師の此扇をひさく人のもとへ飛脚を立て問ひけるに答へて
いひとしけるは扇の齢にもあらず又持人の齢にもあらず鶴を画るによりて
千齢腐といふとなんこゝにおいてはじめて我心安きらかになれり都人の
智はかくこそ深かりけれ
酒樽記
八文
手
一升樽といへば一生足るべき事なるを一升は夢の如しと二升めの樽にとつて
かゝるは足る事を不知也貧乏陶に足る事を知るは貧くしてへつらふ事なき
にあたり四斗樽に足ることをしるは富て驕る事なきにあたるまべし
山々の楽は其うちにあり下戸の内の神酒陶は二タ月を越て酢となり
上戸の家の樽酒は一ヶ月を不遇して売となる其売樽上戸を退き下戸に
随て終に剣菱は菱餅と変し七ツ星はお備と化す樽の鏡の糸なるは則鏡餅
にして切ぬきし窓の方なるは是切餅也。。三月半輪の餅色は灸餐に
焼て喰はれ再明る樽となりやくどものゝ寄合に入りがくそく病身に
なりしも浅漬沢庵老の匕の塩加減にて又世に出しは全く医師のおもし
の利たるなるべしかくさま〴〵移りかはりゆく一生の身のほどをおもひ
合せておのが名のたる事をしるかし
日月論
月の出入には遅速もあり又雨雲村雲の障りあるすはいゝまなき折
などさしひけば心のまゝにながむる月は一年に十の夜も覚つかなし
日は出るも入るも同しとこしなへに影盈て出ぬ日もなけれはのおもしろし
ともおもはぬかごとし
日の影は日々に顔みる妻にして重かれこゝろの月はうかれめ
船と筏の論
船と筏は陰陽にして文と武にたとふべし船は馬の如く智者の如し
筏は牛のごとく仁者の如し船は広大にして又多端也蒼海を走る
大船あれば泉水を漕く小舟あり長河を流るゝ高瀬舟あれば
大河を横たふわたし舟あり丁子の薫る安根舟あれば鼻を抓む
葛西舟ありせきこんだる猪牙舟あればうごかざる石船あり湯船は
浴するに足れども茶船は茶をのむによしまし茶菓子にならぬ
一饅頭舟は永久橋の名にも似ず大学の五章とともに今は亡ひたり
狂にあらぬ土船を見ては岡なるかとうたがひ水船をのそんては底なき
国
コトナ
かと怪しまる船の数のおほき事はいふもさら也筏は禅の気骨有之
一すぢに九年も流るゝおもひなるべし終には岸につきゑいとう〳〵の
声に其身を放下して万本の筏も只一本の鳶口ばかり残り
筏士は陸路をへて家に帰るこや万法一に帰すといふ本来の
真面目なるべし
地震説
つよき地震のとき外へ逃出けるに猫も諸とも駈出るうち地震は
止ぬ其日は曇りて時わかちかたければ猫のめをみるに柿也柿なれば
四ツ也四ッなれば日照也猫の目にて時を知り地震の時にて日和を
知る二首の歌は皆人の知る所也。印心根を砕て二首を首につゞり
一首にて時も日和も知るゝなれば人々おほえ給ひて重宝ともし給へかし
一針病ひ玉子は雨に柿日照り丸後の柿風としるべし
郭公鰹辨
天に時鳥有地に松魚ありて其尊きを世にもて興しけれと鰹は上声
人此むねを不知浦島か子の釣に掛りし頃迄はこのしろほとにもおもはずぞ
聞え侍る世下りて後も尚いやしめておめしまなれや播屋殿とも詠ぜしや
ならびか岡の大通も鎌倉の海に鰹といふ魚など他人向の挨拶いと無下也
抑松魚は太平の瑞にして江都の花なりものたふの気骨おめづから
あらはれ凝ては鰹節となりて容牛の角のごとく武士の角めたちたる
けはひ其寺は木刀の如しされども小刀の手際をみせての花は桜木の警
にかなすいかなる病にも害をなさゞるのみか脾胃を養ひたすくる事概穢の
角ともいふべしや唯餅鰹の下戸にへつうふ名はなくもがれとぞおもはる
卯月を不待魁せし走り水のはしりは価のたふときを不厭古春新省は
古刀新刀に髣髴として腹の地肌は天の核雲ともいはんやまことに天下
第一の名作相州物の最上代金三枚に打おろして庖丁者の手煙を
からば天晴の御指身なるべし色附の切かたにはだんびらの趣あり焼の
十
塩梅は雉子とも極るなるべし中打のあらみはにえも又たゞひなし
たゝきに鶸のえにしあればかれが烏帽子の名も幸なる哉それが中に
鮮にあらず肺にあらぬまぎれものはなまりぶしの名もむべなるかな
今更何と奈良刀に類せんものか時鳥〳〵汝か事は更にもいはず心に
かくる事なか性祖をしれる哉時鳥時を得たる哉時鳥すいなる哉
ほとゝぎす大通なる哉源とゝぎす
一時鳥松魚もろともまらすやう天上天下唯我獨尊
まめとよむ忠の字の辨
とこしなへに飽ざるものは豆腐と忠巨蔵也先ツ胡めしの献立は鶴かおかべ
のおみおつけにきさらき下旬の花かつを二股めの幕あきは水打の奴
豆腐気をいりどうふは御殿の騒動蕎麦切どうふは塩屋の腹切鉄炮場
は山かけどうふ勘平か血判ははらわたのつかみ豆腐祇園とうふは一力や
石焼どうふは駕籠ぬけの計略八盃どうふは八段めの道行山料の
段は山屋のあわ雪酒煮豆腐はあま川屋手打の跡八豆腐の吸物
まつ先かけし田楽は四十七本の袖印則夜討の夜食なるべしその
塩梅のよしあしは其役の工夫にあらんか
まめとよめば忠も豆腐のたくずにて咄しにもよし歯なしにもし
戯号譲渡証文
一読書万巻始て神に通し奈良茶三斛始て俳諧に通す今や大通
口に茶をいひ傾城人を茶にす予此茶をのむ事万石にして始て小便に
通し麦杏黄の本意を達す挽割名遂て身追くは天井を見ぬの道
なるを以自今以後善三二の戯号をして譲むく事実正也然りと
いへども洒落はてんでの口拍子なればとこしなへに此名をもてひけら
かさんとの腹にあらず脊中の方へ五六寸寄て章門如件
喜三二二
喜三二亀
浅黄裏成殿
十六
一名越のぬし剃髪を祝せし天
易居庵の主人年頃茶を翫べることは其職に據れる所なればさも
ありぬべきことよしあれど勉めたる風流にはあらで其志もつとも深し
素より其職すぐれてたくみなれば上諸侯より下むぐらの宿に
あびて住む世すて人も茶をこのめる人は此ぬしの作れるをもて
はやさゞるはなし齢ひすでに古稀に及びぬるまゝに
おほやけのみゆにしをかうふりてこた黄角釜の肩衣をぬぎて
梅屑となり袴のせめ紐をとき八卦釜の日撰て頭を丸釜に
まろめ名を浄越と改て田屋の糸釜いと身がるにふとん釜の和らかき
姿となり尻をかうけのかまになき境界にて四方釜を万字の
ごとく十王にかけめぐりてあなたこなたひつ釣釜の苦を去りぬれば
起臥も自由自花竹の世を広口の面風にまかする雲龍釜のすつ
かりと長き夜をわすれ棗釜の夏の日には夕立の車軸をもいとはず
尻張にさふき冬の日も富士形の雪あられをきらはず楽しからんかし
されば阿彌陀堂達磨堂地蔵堂のありがたきなどをがみめぐる
累塵釜のたぐひにはあらで百侘陀仏とも天明法蓮華経とも悟り
たらんは其身の大徳寺釜なるべし千本松の千代をかさね鶴首の
長きよはひも高砂の尉と姥くち万代釜の栄を見ん事尾垂
のたれかうらやまさらむ
一水無月の名越の祓する人はとよめりし古歌もぬしの苗字に
よしあれば
霜月の元結のはらひ剰る人は千とせの齢のふとこそきけ
妙画伝
予かたしむ処の画法は漢より明に至る迄歴代の名画を慕ひこれに
加ふるに蛮画の細密祭るを以てし和画に至て八古法眼書舟土佐の
三流を兼備へて探幽以来当時狩野家の筆意をまじへ北黨翁が
寺
滑稽の趣をも味ひ八流兼兼学の恵也見る人奇々妙々とすゆゑに其
芸の勝たるにほこりて猥に筆を下さずといへども世の人予か画を
もとむるが専門前市をなして白絹白紙を以亭中を埋むわきて妙を
得たる所の画二つあり炭因と鼠のふんと也こゝに山田景宿の主予が
画を求むる事至て切也依て以これを画て贈ることゝはなりぬ
ぬは玉の夜の間につもる白雪を
かきのけて頭の顔を見るかな
この炭赤名画の徳に火とならはあふなしとてやかきそふる水
一鼠のふんもし蚰蜒に性をかへなんもはかりがたければ
とりあけて我画の妙を見る人の
をとゝひ来いといふにやあるらん
奇談
紅毛の地は日本を去る事一万三千里にして地球を以これをはかれば
互にあなうらを合する国也と聞て
よろつあまりみちさとゆけばあなうらをかたみにあはすくにもありとや
といふ歌をよみしを紅毛の通辞に見せ侍りき通辞長崎へ帰りていひ
おこしけるは甚奇とする一事ありとチモカヲノラガテといふ紅毛人が
よみたる類を見せけるに
ヤトリアモニクスハアニミタカチラウナアバケユトサチミリマアツロヨ
とよみたる歌也これを和解すればぬしのよみ給ひし哥の意に少も
たがふ事なくあまりのふしぎさによみ給ひし歌とり出つゝノラガテに
みせけれバノラガテしばし見横手を打ていふやう奇なる哉〳〵地理
のみにあらず此日本人の歌を下の方よりよめば易我よみし歌となれり
歌までも足合せなる事よとて感したりといひおこしけるまゝ見るに
いかにも蒔合せり猶奇なる事ありそのうたをよみたる紅毛人の
名を下の方よりよみて見ればテガラノヲカモチ
町村一冊
拙き歌よみし物語
あるをのこの年老るまで物まなぶ事もせでいたづらに年をおくり来りしを
歌よむ人のいさめていふ長きりながき夜をむなしく過さんは
無下の事なり歌にてもよみ給へとすゝむればよみて見むと
いふまゝあり合に題をあたへぬ
山路萩山紅葉深山菊雅百恋
ひと日ふたす過てけたよみたり直してたべとてもてきたりぬ
ひらき見れば
あしがしやその八重山の露しげみ夕はえかなる萩の白妙
このもかのも染つる木々のもとは猶枝よりつたふ白露とみよ
菊しげみそのおく露をとめ来れは河瀬におつる滝のしら糸
此ふみ見つ放ち戻さばいぶせきのいやましながらまづやりて見へ
四首ともにいさしかづゝ難もありとゝのひ侍らぬもありまた
山の題にて山のなきもありてにをはとゝのひかねたるもあり
わきて恋の字さこゝろえがたきことばおほしあとにてなほし
侍らむさりなからうまれ出てはじめて歌てふものよまれしとも
おもははれぬところあり甚ふしんなり何草紙か見て読給へりや
と問ふにをのこいふよくも見とがめ給へりまことうまれ出て百人
一首をさへ見侍らぬゆゑとりすがるたね侍らずされば此歌は
我よみたる歌にてはあらず傾城の名は歌の詞に似たるやうに
おもはれ侍ればかの吉原細見といふ草紙をとり出て四首の
字たの文学の数に及ひつるところを見出てそのまゝに。かきつけ
侍りぬ細見に山形おほくあればこれにゆづりて山をよまぬるも
ありといふ師さればこそ心得ぬ歌ともにて侍れとてその細見
見るに
図
十一日
あしから屋其八
へしうつゆ
せきのい
やましな
一金弐百文
からまつ
夕巣
入おく露
萩の
白妙
染つる
なほえ
つゝふ
くれは
かは瀬
におつる
瀧野
しらいと
此ふみ
みつはな
ちもと
さはいふ
水鏡見る布袋の賛
ある人布袋禅師に問て曰水あれば影をうつし水なければ影うつらず
されどもその影をうつせる水はしばらくもとゞまらずして流れその水に
やどなる影は流るゝことなしさればその影は何にとゞまりて流れさるや
此理をしめし給へ布袋答へていへらく水の流るゝは理也影の流れざるも
また理也又問ふ其理といふは何ぞや布袋の日理を挙る時は流れず
あげさる時は流る又問ふ理をあぐる時は不流あげざる時は流るゝとは
質のりの事にあらずや禅師は福神にしてよく貧人の情をも知り
給ふことよといひければ布袋巻ていふ何ぞしらざるべき我も
しち福神のうちなるをや
唐人の十露盤はじき居る画賛
喜見城のたのしみも機嫌上戸のたのしみにはしかず一杯の酒は一ぱいに
しやれ一升の酒は一生の茶花のたねなるべし李白一斗詩万篇と
あればこれをそうばんにあてゝ見るに一升に詩十首一合に詩一首也
五言絶句とみて二十字に割り一升二百の酒に積らば一字が一銭に
あたるべし一字千金といふ本文にくらぶれば李白が詩ほど安き物はあらし
此算用にかゝはらぬこそ酒のたのしき所ならめ
十露ばんのたましにけしてすばしりのへそくり金も酒にかへなむ
傾城の画賛
北州に鬼あり其母晦日の月の夜に四角なる卵を呑むと答見て氏
鬼をうめり名つけて町呉卯といふこのおいらん筆なくして書き劔
なくして殺す書くに口を以し殺すに手を以す大道をかいて野暮と
なし野暮を殺して大通となす志の厚き事は諏訪湖の氷の如しと
いへども終に打とけてはまるべく情の深き事は飛鳥川の渕の如しと
いへども終に瀬となりて照らさるべし画師の工絶妙念がら幸に
神魂をゑがく事あたはずもし此画のおいらんに神魂あらば
此賛を見てしつたかといはむ
下にもはとけてもさうはとらの皮性はまつかなうその川竹
九郎助稲荷へおいらん新造禿若いもの参詣の図皆裾より
狐の尾あらみれ化たるさまの二枚ふすまの画に戯れ文かきて
よとのもとめに
抑狐の女と化して人をたぶらかせしためしあまたありといへども人皇
七十四代の皇鳥羽院のうへわらはに玉藻の前ときこえしは天竺にて斑足
太子をおんべらぼうとなし大唐にて幽王を悪玉にしこみ我朝にわゝりし
三国伝来の出奔狐也の嵯峨の清涼寺の御本尊も三国伝来也といへ共
人をすくひ給ふと人を害するとは実にお釈迦様と出奔程の違ひなる
しぐし浅草の御堂前の醴も三国侍来とあれども疑らくは麹一石飯
一石水一石の割にて仕こむといふ伝来なるべくやそれは扨おきこの狐
勿体なくも上皇をかけのめし奉りて初めのほどは物前のむしんも
太ま〳〵のことなりしかばたま物前とぞめされけるとなんこの九尾の
一狐につゞいては黒狐白狐等也尤術も殊更にして人を化す白きを帯
一たる黒狐もあり又赤きを帯たる白狐もあり鼠黒狐焼白狐といふ此
両狐たがひにあらそひて天に登らんとす傾城も客を化す事を旨とし
座敷持に登らむことを願ふ未煉なる新造部屋持は人を化すに
尾をかくす事おろそかにして見顕はさるゝことあり坐敷持に至り
ては尾のさたに及ばさるゆゑに尾いらんといふ各その術を受たる是も
おなし狐余れば心ざまの看板に尾をかきそへたること仏に後光を画ける
が如し又稲荷は稲を荷ふ神にして狐は此神のつかはしめといへども
狐に禿倉をたて稲荷と祭る時は哥稲荷にしていづちより尻の
きたるためしもなく稲荷が狐か狐が稲荷歟こん〳〵としてわかちかたし
されば傾城も受出してからはお神有とも又御神像はこともいふ山の
神と祭りし上は人を化す事もせぬまゝに星ないぎともいふなるべし
いづれ神の類なれるの五衰三熱のくるしみありとなん其五裏と云は
一櫛笄衣類夜具新造紋日是也三熱といふは爪を放し指を切り
入ほくろをそこれ也この苦つねに絶ざるをもてくつねとも訓ずと此
苦労を助け給ふ稲荷なれば告労助といふを今九郎助と書誤れり
何はともある狐には化されると知り傾城を買ふ人は馬鹿にされるを
もて本意とすべし化されまじとするは今の世の野暮てふものにて化
されずは何のたのしきことかあらんかの狐挙の狩人めかしてこはもてに
頭からんより殿様の類してしやん〳〵〳〵と化されたらんはいとたのし
かるべしこれにつけても山吹色の油鼠こそあらまほしけれ
箸紙も茶碗も出来てくふめしは馬ふんにもせよ二に供しかりけり
文化といふよつのとしひのとのうきさらき七そぢあまり
三つになれる宝暦年中のいろをとこ手からのをか持
しるす
傾城と禿二人を三尊の弥陀となし長柄の傘を薄墨
にかきて後光のごとく見せたる画
〆
京師の極楽は西方の嶋原にあり浪花の極楽は南方の新町にあり
江都の極楽は北方の吉原にありて此絵は則北方の極楽にまします
みほとけにして人の金銀をすくひとり給んとてそら泣をし給ふ故に
泪如来とまうすされども大通はそら泣を承知なれば泣はむだなくは
むだと唱ふ野暮はこれを誠として金銀を費し人には馬鹿者々
いはれ親族にも見限らるゝ三つの損あれば三損のむだなりと
いさむれどもなんのむだ〳〵と唱へて開かずかくのごとく三つの損の
上に二階をとめられて三界無安の身となり下る也たま〳〵信心を
し遂てねんのあくとまち我かものと定めて安楽世界と落つけば
これを定物の素懐を遂るといふ其時は泪如来も名をあらめて
お内義だん俤となりたる所が面白くもなんともなし此時初めて
悟りをひらきて今はむだ〳〵と唱へてよくも〳〵むだの利剣を以かき殺し
おつたと胸ぐらを取て恨めば女房はさあらぬ夜にておいらんじやないよ〳〵
とぞいひける
陶と茶碗を前に置き三絃を弾居る大津画の鬼の賛
奉加にもつく人なくてたゝき鉦の念仏もいつのほどより止めけるにや
飲酒の罪たちところに三弦のはちもあたらめなどおもひつゝ歌かゝんと
筆を持けるに不思義や此鬼我持たる筆をばひとり自此画に賛
さみせんは道すく弥陀のみてのいとひづかける酒のあじは極楽
風鳥の賀
此画に賛せよと求め給ふといへども風鳥の事我更に知る事なければ
ある人に問ひけるに風鳥は風をこのみ風の起るを待て山を出て風に随て
飛めらり又風を食こすと也むかし孔子の弟子仲田しらぬ事をも知た
ふりを云て高慢をしける故世の人これを子路味噌とといひける白味噌は
麹多く塩すくなければ饐やすき故に久しくは貯がたき物なり孔子
仲田が自慢をしろみそにたとへて教てのたまはく摺を汁とせよ
寺
摺らざるを焼味噌とせよくれ饐る也と我又風鳥の事はしらざるを
白猿として私意を加ふる事なし蓋風鳥を白猿とおほえては
海老蔵と焼味噌ほどの違ひなるべし
鳩の賛
維鵲有ハ菓維鳩居レ之之之干干干干ノノノいふちんぷんかんありて
これを或儒者に問ふに儒者答ていふ鳩は不細工なる鳥にておのれが
巣を作ることのならぬまゝにかさゝぎの巣へ来りて居候となりてゐらる也
この子こゝにとつぐとはその鳩の娘をよめらせてやりし也若しき娘
と見えて支度金百両にしてこれをむかふとあれば居はおかまを起し
たりといふことなりとぞ此説うたがふらくは鉄炮こしくきこゆ
されば万八幡のつかはしめなるやと更に決しがたく此画の鳩に
たづぬれば羽ばたきをしててゝつぽうとぞ答へける
おもひきや例のことくになとりて鳩に賛詩の場を狂歌とは
三州の賛
南泉は猫を殺し蜆子八海老を喰ひ丹發は佛を摧て尻をあぶる
など時に随て禅気はさま〴〵に動くといへどもうこかざる心の真面目
に至りては一に歸すなるべし此佛の焚さしにて胴と棹とも造り
海老の尾を以てんじゆとし猫の皮をはりて三弦となさんに
二は上り三はさがれど一は唯その本来の本調子なり
霊照女の賛
或人問く曰霊照女は何人ぞ我答て曰菅丞相の御妹にして天清浄
地清浄内外清浄六根清浄吉田の少将浅草の少将そはす坂の
少将の御従弟めにておこれを七人猩々といふ又問ふ七人猩々とは
何なるぞや曰晋七賢人にして今も猶冬の子孫あり吉原の七軒の
茶屋これ也日七軒の茶屋の家名はいかむ曰平井の保昌越前の
奉書俳諧の宗匠蓬莱の方丈に田原の北條小田原評定おや〳〵
どうしやう也日おや〳〵どうしやうとは何のことぞ曰かほちやの
是
丁廿六
こま汁のこと也曰それですめた
亀の自画賛
一万年葛籠に問て曰汝万年をたもたん事覚束なし葛籠
答ていふ千年に一度づゝ渋をひき給はら万年を保ん事疑なし
とぞ又万年橋に問ふ汝万年をたもたん事覚束なし橋答ていふ
千年に一度づく根継をなし給はゞ万年をたもたん事疑なしとぞ
一又亀に問ふ汝前年をたもさん事覚束なし亀答ていふ千年に
一度づゝおのれが舌をもておのれが尾をなむれば万年をたも
たん事うたがひなし毛頭相違有べからずとぞ又問ふ汝今年何歳
なりや亀答ていふ我は神亀元年のうまれにしてことし千八十
五歳也このうへうたがひ給はゞ万年過てそのをはりを見給へと
いひて水の底に沈みぬ予水底にむかひて日うきやあがれ
筑紫の押領使の屋鋪の前に土大根の武者の画
或書に曰筑紫に何某の押領使などいふやうなるものゝ家に敵襲
来りし時たちまちあまたの武者顕れ出たり第一番には尾張国の
住人甘木太井之進官重附したがふ郎等には星田伊子六縄歩切星太郎鍛有
練馬之助冬ま白井新大根季春森口秦名之進細根清水の冠者夏桂信濃
勢には鼠の三郎辛味其外京都の紫勢を初として諸国の軍勢沢庵の
おし合ひ置しあひなますの太鼓を打たて〳〵射かくる遠矢は千六本かぶら
にあらぬ大根武者風呂ふきの湯気煙りをけたてもみあひもみ大根積に
あたれとぞふせぎけるとなむ
からきめを敵に見せたる其ゆゑをきゝて心を甘んするかも
國両の自画賛
人のこゝろははかりがたき中にも
かくのごとき物を画て
わきてしれがたきは傾城の心なるべし誠の心は紙ひとへにへだてゝ外に
あらはす事なく只心の図両とかたらふがことし図両はおなじ形りに
戊戌
見ゆれど其性さま〴〵にして大小は煙を去る事の遠きと近きかり
よれらば也。たとへは国両のかたちはかくの如しといへども何の影なるや
わき難し先つ野暮なる客には甘きをもてよろこばしむこれ唐右と
みするかげほし也のどやるなる客にはにこ〳〵とやさしきをもてよろこばしむ
これお福の面と見する図面也人がらのよき零にはわるずれずしておほやうに
あしらふこれ丁子風呂と見する図両也ゆき過たる客には悟り顔に壁と
みて物なしこれ達磨と見する図面也毛の三本たらぬ客にはおろかに智恵
なきと表にすこれ猿の火入と見する図両也生酔の客には鯰のやうにぬら
くらとして床へおそくまはるこれ瓢箪とみする図両也腹ふくれのはらつゞみ
うつゝぬかせし客にはそら寝入をして化すこれ程の香合と見する図両
なりされば八畳敷の坐敷に錦繍を敷てかたらひしはさん玉の
臺といふなるべし
猿まはしの賛
君として臣に聞はさるゝも父として子にまはさるゝも夫として婦にまはさるゝ
もともに智のたらさるがゆゑ也されば臣子婦の智は君父夫にまさるといへ
とも人たるの道は知らさる也君父夫のをかさるゝは聖賢のふみを見ざる
がゆゑなり臣子婦のおそれざるは聖賢の教を聞ざるかゆゑ也これ易
君臣父子夫婦とも毛の三本たらざる所なるべけれ其うち夫には
鼻毛の三本延たるもあるべしこれは論の外にして云はざる所ならん歟
舞はすこそまはさるゝなれ人なからその身を猿に養れては
白拍子の画
頃は平治大政入道どのは仏御前にのぼせてあつくなられしゆゑに
火の病にくるしみ宗盛公はゆや御前の湯気にあがりて西海の水に
はゆり九郎判官は静御前にすひ付てたこの如くのし上られしも感風
尽て落うどくなり相模入道は田楽を好みて北条九代目に味噌を
付られたりこれみな舞の手にうつゝをぬかし果はてん〳〵舞をまはれ
寺
しといふべし当時慶子路考などか所作事を見せましかは仏
御前は名にも似ぬ地獄に身を売りゆや御前は女湯の湯ばんとなり
静御前は二丁目の玉屋へ地まへの居候となり田楽の役人は真先に
おはらひ箱ともなりなんかし
昔の風流士の画
昔時ノ大通ハ當時ノ野暮當世ノ大通ハ後世ノ野暮若シ後世有二ス
稱二ル大通一ト人上循環ヲ却テ却テ當二昔時ノ野暮一ニ
鉄の褌杖を突恭しく鬼の立たる画
故ある絵にこそあらめと画ける嵩谷翁のもとに便して問にけるに
さにはあらず大津絵の鬼の念仏の図を取替て流義の筆意に
直し画たるよしなりければ
一蝶流の筆意を得ては二畳鋪の菴室に住せし時とは三條の大橋と
四条の仮橋ほどの違ひ又吉原五町の遊女と青山六道の夜発ほどの
たがになるべし七條の袈裟に僧ぶりを仕あげて大津八町の売絵
には似ても似つかぬ鬼がら九識の窓の前十界の床のほとりにも坐す
べき風情屠龍翁はこれ奉加帳の大檀那なるべし
たゝき鉦を英流にうちのべし鉄の大つゑつくる人品
松茸に赤貝の賛
物の物に似るといふ事は天地自然の事にして何ゆゑに似たるといふ道理にし
あたらず子の親に似たる理にはいひがたし大蓼蛇覆盆子烏麦のたぐひ
これ也孔夫子の陽虎に似給ひしはうれたく初会の客の似てゐなんすと云れしは
誰とはしらねど嬉しく思ひ法華経を尊み給ふ姫君にても君は鬼子母神の顔
ばせに似給へりといはゞはらたち給ふべく路考が顔に似給へりといはゞ悦び
給ふべし此松茸と赤貝とばかりはたとへなまにもせよよくにたもの
にしてよき女夫とおもふぞかし
松たけの千代の契りもあか貝の海山かけていひかはす中
一一月十一
蒲焼で酒をのむ達磨の絵
本来喰ふと覚えて蒲焼を肴として嚢中の銭こと費し壁に向て酒を
呑事既に四年嚢中乏しくなりてはじめて本来無一物と悟り者なしに
塩をなめて壁に向て冷でごく〳〵のむ事又四年終に徳利の酒たると
いへども銭も又たるに至て徳利を大地に擲て人を壁と見る徳利は二つに
われ徳は逢魔の腹に舎う利は迷ひの雲と成て去るはじめて本来宝と
いふ真百目を得て九年にして大悟すこれこれを九年酒といふ
塩引鮭与鯣之画賛
鮭ハ是レ松前ノ産遠ク去ルト江都ノ地一ヲ二百九十里鯣ハ是レ五嶋ノ産
遠去二江都地一ノ地一三百九十里互ニ隔二所生地一ヲ地一ヲ地一ヲ地一ヲ六百八十里
今相ヒ交ルトト如レ此ノ方ニ可レシ謂一ヲ因緣一雖在二リ可愛男ハ三百卅里向トニ
偏ヘ不レ可レ可ニ恨ヒ悔一悔ム高砂爺婆ノ曰ク隔二山川万里一ヲ里一ヲ妹背ノ道ハ不レ遠ク
隔何愁色道鮭ニ對シ
普賢菩薩の象に腰かけし画の賛
うしとらの人うなぎを喰ぬは虚空にうまい故にやかく旨はものをたつ
よりは虚空蔵の蔵の字を象の字に書かへて象をたちたらんこそよしめ
又そのとしの人を守り給ふは文珠なるに蓼を喰はぬは獅子と雖との間違
なるべしとりの年の人は不動の身に添ひ給ふゆ寺はあたゝからめど夏は
迷惑なもの也子の年の身にそひ給ふは千手観音なれば脊中のむつかゆき
事にあらんかくとかゝれるとの違ひながらかくたをやかなおいらんめきたる
菩薩の守り本尊常に肌身にそひ給ふ辰の年巳の年の人こそうら山しけれ
深川の君とは見えぬ此菩薩辰巳普賢と歌によめども
沢村宗十郎が事ほめて書てよとある扇をひらきみるに
かげの輪大小とりまぜ十報泥にてまばらにありければ
女中はみなは○上手といふは此人口と○弟子は皆此芸にそ○同座役者は皆の○
惣座中皆ちゞ○兄貴もあや○見物は芝ゐ中にあ○狂言はき○
十一
ぶたいはし○評判は日本中へひろ○
丸い中へいの字いちいちいれて見いいかにもいとしあいらしい紋
箱根山の画しきに駕より出てあゆめば暑し駕にのれば
寒し悪寒発熱のくるしみたはれうたも出ばこそ抑箱根は
いかなる山にやあるらんと人もしきかば
大石一匁中石二匁小石未及細竹二匁松樹三匁杉樹五分雲霧三反川音一匁
鶯声一分挽物二分山椒魚五厘皿駕篭一匁
陽症には富士を加へ陰症には松明を加ふ
右湖の水にて煎し用ゆ温泉湯となりては方組大に違ふ
明神下に住し藪の内流の茶和尚岩田宗幸一時庵とも又
一瓶斉とも号す霜月朔日八十の賀の茶に招かれ主人に
代りて作れるつらね
東夷南爽北狄西戎四夷八荒天地乾坤の其間にあるべき茶人のしら
ざらんや千の利休が前載の千里に続く藪の内虎にもごされ一こぶしはつて
春めく時雨月や霜なり月の長閑なる頃を祭し岩田帯しめた〳〵の大入は
冥加に叶ふ明神下谷お丸の内外八百八町本所切てのお客但評判よし原
浅草の朝はとうかうからの正月冬至梅夫は周の代是はしう幸春風春水
一時庵一陽来のふく加減どなたの口にも相生の真壺の口切賀の祝ひ
一ふく上ます出しますたてます合せて三ますの素袍にもます花君
十徳のふくささばきも一ぴん斎ゑぼしのかけ緒にかへぶくさ若紫のあやめ
草五尺の大太刀とり置て茶杓のかひさき茶筌のほさきひとふりふり出す
ふるつはもの念者は福禄寿老人那智八十の色若衆寿の字まんぢう
筋へににまた着楽の角前髪凡た所は赤らくやしばらく焼のらくんが
けふ顔見せの亭主ぶりとこゝ敬て曰ス
稲荷奉納玉の画の額
抑狩野家の玉を見れば緑竹の色なるありこや孔雀石の玉と思はれ
赤きは大津の赤玉にして白きは御膳白玉とも見るが中に黄なる玉の
なきは狐の毛色にさし合なればやこなたの目玉のくらければ目利に及がたし
いづれ初午の奉納なれば共にこん〳〵じきの光りを添ふなるべしもし
一酉の町の鷲大明神に奉納あらはたうの芋ともいはん歟
上野広小路蕎麦飯の引札
私家傳蕎麦飯の義は嘘八百年来一子相伝にして粟の飯五十年の草
ぐらゐのことにあらず先づ飯椀の蓋をとれば露をふくめる月の如く口に
入てはあわ雪の解るに似たり扨やく味と申ても趣向の智恵をしぼりけ
大根おろしに比叡おろしちり〳〵ちりくる花かつをかねは上野か浅草海苔
ないとうからしの紅は蓮池になく千鳥味噌其外山海のちんひ。を集め
あつくぬるくは夏と冬ひとへに小袖に御来駕を奉希上候
我おもしろ下之巻大尾
元禄には椿のかはれる花百種にあまり
寛政には橘のうるはしき葉千金に換ぬ
桜草の彩帛をかさ初楓樹の綾錦を
截たる草木いなしといへど人のもて
はやすによとて珍なるかたちめでたき
色をも見するぞよしまして文苑に遊ん
人を人のめでもてはやさんにはおもて
白くも心を染る紅にも詞の花を咲紙
ざらめやこゝに三絃の名に於ふ水に
おひ出て取けき荷の名にたて類翁
いましけり名は荷をもて呼べど才は薬
十一夢の新に水をとるが如し詩歌ふで
のすさみすべて濁にしまぬみやびたる
しらべはさらにもいはず茫による魚の
戯れたる体さへいとあやしく妙なれば双頭
一重台たるひとやいはん悲詞の花びら
ちりぼひうせなんことををしみて文化十あまり
ふたとせの夏三と歩前に花の台にのぼり
給ひなし翁のみたまを祭るをりに其祭を
つかさどり給ふ君浮葉の世に知れたるより
巻葉の深くかくれたるまでかきつめて
すり巻となし給ふにぞありける詞林の
にぎはへる今島の梅より多にして文花の
多くみなる巣鴨の菊にもまさりぬべし
芍薬亭のあるじ菅原長根しかす
江都書林衆星閣蔵板目録
麹町平川貮丁目
書物問屋
角丸屋甚助
一法眼多紀先生著
作文率
金匱要略輯義
全十冊
北山先生著全四冊
文用例證
諸名家の説を委く論じ先生の考を加へ金匱の注
全四冊
親は此書にて尽さずと云ことなく医家必見べき書也
古今文章の異同を論じ書やうの例をあぐ文
中詩学筌蹄
小林順信卿著
折本一冊
此書は初学の人詩を作るに安からしめん為に四季
人事等の詩題を分其に用ゆべき熱字款楚を多く
一集是に平仄を起たれば此書ていかやうなる侍も作るゝ也
十七帖晋王義之書
しやうをまなぶにいたつてちかみちの書なり
孔子系譜全圖
露木直信撰
一枚
一孔氏の始祖黄帝より聖人一世の徳行如媒家歴代
衍聖公襲封綿々としてたえざることゝ文流の
一孫賢達の人々の伝をしるせりすべて孔氏
一家のことをしるにはなはだ便なり
王義之の草書十七帖を第一とす書を学ぶに
はなはだよきてほんなり
杏園詩集
蜀山先生著
近刻
狂詩砕錦
六樹園先生著
小本全二冊
同
同文集
一狂詩に用ゆべき語并歌礎をあげ悉平仄を附す初
全一冊
入官第一義
心の人此書をよみ見ば立聖狂詩を作んこと自在也
大峰家田先生著
滑川談
全二冊
全一冊
聖道辨物右同全二冊
全一冊聖道辨物
聖道辨物
一銭反貫目
駒龍先生著
庭訓往来捷注
全一冊
流筧法點竄指南
梅田
両先生開全三冊
大原
ようどうひつがく
本文をは大字にて書たれば幼童に筆学のてほんと
増補塵劫記
全一冊
なるべし音訓をば本文の頭に平がなをもつてあげ素
とくの便とす注解のことは古より在所の注に誤有をたゞし
はせを翁更科紀行全一冊
一たらざるを増補せり老訓往来のことは此一書につくせり
全一冊
古状揃捷注
遠訓注解のごとく童義
どくがくはなはだ
独学甚ちかみちの書也
近刻
剣桃隣句選七巻集中本一冊
じつごきやう
右に同く夢児にも解し
實語教捷注
安き至てちかみちの本也
同
俳諧田ごとの日
桃隣先生著
小本一冊
一かしらに四季の季よせをあげ季ごとに古今の句を
右に同く本文のぎりを
同證注
一細注して童蒙の便とす
全一冊
新撰碁經大全
秋山仙朴著
全三冊
あつめ季よせの解しがたきに注解を加えもつはら
俳諧初心のべんりにそなふ
俳諧
四季名よ勢寸珍懐中
全一冊
季寄
鐘閑斎老人著
武家諸法度
全一冊
一四季同よせおの〳〵新題を出し関東名所神社祭礼等
をあつめみなこれまでなきことをこと〴〵く顕しならびに
増補徒然草鉄槌
大本四冊
小本四冊
一去始てにをは俳諧の式等れ〴〵くえらみ且蕉門十哲
の発句四季顕分にして巻末に附す尤俳家掌に懐
一中して大に益有又旅行の友とす未曽有の珍書なり
きやうぜうこゝろ
ほくさいまんぐはしよへん
魚に乗じ心にまかせて
書札獨稽古岩田夫山先生書
さま〴〵の道を写す編を
北斎漫画初編
此文章は世の文とはちがひ本文は大字にて直に手
統で全部に充こと辺なり
此文章は世の文とはちがひ本文は大字にて直に手
一本となすべく頃書には本文を真宗になをしこれに
初編にもれたる人物草木
同
二編
山川鳥獣魚鼈虫に至る
一一編山川鳥獣魚鼈虫に至
までこと〳〵くあつむ
平かなをつく実に幼童第一の書なり
色紙形詩歌
右同
墨帖一本
三編
まんざうもの
二編に残れるを拾ひ森羅
右同
ちらしぶみ
万象物としてのせざるはなし
さうひつくはせきせうりんほん
四編
草篭を加へ席上の臨本に
同四編
しからしむることを要とす
菅神廿八品倭歌、
右同
短冊形
右同
諸証案文集右同大本一冊
とりゐだうとうがらんげつけいうん
花表堂塔迦鑑月郷雲
五編
かくくはんさいぼうしやくわ
一客館斉房舎を委しく
風月往来右同大本一冊
写て尚尽ざるは篇々に洩ことなし
けんほうきうほうきうばほうじゆつわう
剣法鎗法弓馬炮術等けいこの
同
六編
像を写て詳也もつとも武徳
の尊を表せる一書といふべし
商売往来右同大本一冊
右同
古状揃独稽古右同大本一冊
国々名勝の地風雨霜雪の
七編
けいしよくをしかす
此忠は▢〇の二ッをもつてもろ〳〵の
一かたちを画く万物規矩をはなるゝ
略画早指南初編
此書によつてまなば。此書によつてまなば
戴斗先生画
西道にいることすみやか也
ぜんへん
おきなかつきん
ぜんへん
前篇にもれたるを補ひ且錦
同
八編
しうようさんぎやう
同八編
同二編早稽古
繍養蚕の薬をゑで
やまみづてん
此書は山水天ぐのしこし山を初め
文字を以形を為ゆえにいろはを
習ひし幼童此法にていかやうに
かきう
六ヶ敷絵たり共書侍ること建て
和漢の武者および貞婦
同
九編
れつじよ
烈女のたぐひを戴す
前篇にもれたるを補ひ且その
かたはらに一二三の合符を記し初
同三編早稽古
同
一学の立皇家をして李安からむ
しんぶつきそうかうそうげんじゆつ
神仏并に貴僧高僧幻術
同
十編
ほかふうりうじんぶつ
一外風流の人物等を記す
はやびきぜんへん
〽書は西木いろは引にした
此書は画木いろは引にして譬はい部
同四編早引前編
鋳物師石工ろ部六歌仙慮生と
かくのごとく都をわかちまなびえん
同
と思ふ人物を求りとすみやか也
しんぎやうさうひつゐ
三體画譜
真行草の筆意をわかち人物山
初篇にひとしくかなをもつて
部をわかち実に心にほつする
川草木禽獣虫魚に至るまで
同五編早引後編
顔をわかち実に心にほつする
ところじんぶつもとむ
一戴斗画あまねく巻中につくせり
同
所の人物を求ること此書に尽せり
一たいとぐはふ
戴斗画譜
全部十冊
先生七才より五十有四年画道
一摺学の筋骨を図して画師の
あきふどかゞみ
しちうせうかしゐじ
商人鑑
一市中商家四時のいとなみを図して大平
の恩沢をあらはす数篇をかさねて
一助とすこと〴〵く其妙を尽せり
戴斗画
一物も残るところなし
あづまひやくにんおんなたまづさ
吾嬬百人女玉章
葛飾北斎画
女用文章
今川の
万代百人操文庫画人右同
大本二冊
光琳画譜
大成百人智恵鑑
北斎画
女今川入
ひらがな
南畝莠言初編二冊出来
南畝莠言
絵いり
通俗排悶録六樹園訳
絵いり
十冊
一此書は杏花園先生数十年の随筆の中より抄出して一
孝行忠義貞列友愛璃行
しげきをはぶき要をとるものなりすべて和漢の書籍を
一本拠とし古今の事実を参考すたゞに一夕の清鈷にそなふる
のみにあらず実に千古の考拠となすべきものなり
千紅萬紫初編二編
ゑよくざんせんせいきやうぶん
蜀山先生狂文狂詩狂歌くさ〴〵をあつむ
明断義侠玩世仙縁霊異
此書は清の孫珠がさくなりすべて明のにゑより
清朝までのめづらしき人の傳をあげたり
一小児警戒のたすけとなるべき書なり
源注餘滴六樹園著全二十巻
午都のてふり六樹園著前編出来後編近刻
一東都のいちまちのにぎはしきさまを雅文につゞり
たれば和文をかきたまふ人〳〵のてぼんとも
なるべきふみなり
一源氏物語のとけがたき詞ともこと〴〵く證文を引て詳に
一訳し古注ともにあまた誤多かるを子細に弁じ正し引
一歌のかけたるを補ひ各出所を附注す湖月抄岷江入楚
徒然草新注同著全三冊
一をよまんには此書によりてその義をたゞさは古注の
あやまりをわきまへその正義をあきらむべきなり
初編
雅言集覧六樹園著
二編
寝覚のすさひ
六樹園漫筆
全五冊
一此書はいろはをもつて部門をわけ古書のはし書古物語の十
あづまなまり
一詞とも同類をひとつにあつめてその下に今の俗語を
同著
一同所一塵外枝清澄校
全二冊
もつて訳したる書也たとはゞひゞらくといふ詞は源氏
一帚木の巻十四丁ウラニ馬のかみ物さだめの博士になりて
ひゞらきゐたり〽落くぼ巻の二度のやくが鍵をとらせ給へれと
これは人きたりてもとむるまゝにきようじたるふみ
つくり出られしを此たびほうごともの中よりとりいて
かく木にえりて二まきのふみとはなしつよくよみあぢ
はふ人はいたりふかきところをしるべきものなり
うちとにしか〳〵とかためたればたちゐひゞらきて
○紫式部日記に云々〽発心集に云々和名抄に云也新撰字鏡
一に云々とくはしくその文をあげて帚木の巻は右馬かみが物
一證するに頭手などうちふるさまなり〽落くぼなるは典薬が
痳葉津加蛭子
六樹園撰
全二冊
四季の詠物より恋雑にいたるまでをかしきふりを
のみえらひてにをはかなづかひ等をあやまらず
一狂哥しよしんの本とすべき書なり
もがくさま也日記なるは口ひゞらかしとあれば口びるを一
二丁ばんだいきようかしふ
萬代狂歌集
撰者右同
撰
うごかし物いふこと也〽発心集なるはうごきて腫物のいたむ
全四冊
さま也和名抄に動痛と有ごどく腫物のづき〳〵とひゞきて
いたむをいふいづれにもひゞらくといふはいそがはしくうごき
いたむをいふいつれにもひとらくといふはいそがはしくうこき
さわぐことにいへる詞也真洲の説にひきひらきてなりと
一拝したるは甚しき誤也とかくざまにくはしくその詞
此集は明和安永の比よりいまにいたるまで名たかき狂歌の作者
たちはさらなり和歌の家の人〴〵のたはむれによみ出されし
をもすべてもらすことなくあげたり也かのくすみぬめりたるふり
にあらねばこと〴〵くうち聞よりわらひのもよほされてをかしく
一興あるうたどもなりみなその人〳〵の家の集のうちより
どもを訳せる書也諸書にわたらずしてめのまへに
一なにくれの書の同證をひき出てみれば実に和文かき
ならふ人のためには撲経となるべき書なり
ぬき出たればさき〴〵木にえりて出したる人ゑりたる狂哥には
あらず今の世。月なみの集とてはしがきだになき狂歌の
一集さつ年〳〵あまたいづめれどさるたぐひにか
あらずとしりたまへ
文化
劇狂歌百人一首
新撰ヤ
六樹園撰
大本全一冊
狂歌雪月花六樹園撰
秀逸の狂歌に肖像をそへおよそ奈良の御時よりの
一雪月花三顕の秀歌を集め十二月の部を分つ
一戯笑歌中世の俳諧歌近代高名なる人〳〵の狂歌
こと〴〵くかしらがきにくはへてもらすことなし古今の風
こと〴〵くかしらがきにくはへてもらすことなし古今の風
自讃狂歌集
一体をさとりしらんこと此書にこゆるものあるべからず
撰者右同
後編近刻
諸名家画
狂歌道中記
武者盡狂歌合
撰者右同
いにしへゆうし
一五十三つぎのめいぶつかつ古の勇士の肖像に
一狂文のほめことばをそへて歌のよしあしをわかつ
歌新撰調度集
撰者右同
諸君子の恋歌をあつむ
飲食狂歌合
六樹園先生歌の勝敗を枉
文にておもしろく評したる狂哥合也
狂歌浜萩集
便々館湖鯉鮒大人撰
小本全三冊
狂歌五百題
一四季恋雑の題どもをあまたならべあげてしよしん一
一よみかたのてほんとなるべき狂歌数あまたあり席上
寒燈一
小栗外傳
ふところにして便よからんため小冊となしてひろめつ
夜話
金鶏著
小本一冊
小枝繁作前
葛飾北斎画後
十六冊
飛騨匠物語
六樹園飯盛作
葛飾北斎画
六冊
春宵
東嫩錦右同
奇談
新編水滸画傳
曲亭馬琴譯
葛飾北齋画
十一冊
春霄
夜話
玉乃落穂右同
全五冊
前
編十冊
後
標注そのゝ雪
同作
同画
一銭五百目
烏亭焉馬作
五冊
冊仮名手本後日文章
葛飾北斎画
五冊
忠孝潮来府志
馬馬作
北齋画
五冊
五冊斟朗詠集独稽古全二冊
御成敗式目独稽古全一冊雑書年代記大成一枚摺
画本葛飾文庫鹿斎戴キ老人輩江戸往来独稽古
一当時流行する所の聞人の画とは異なり一派の風
情を顕し草筆の孫本を要とす
情を顕し草筆の臨本を要とす
画本外傳
前北斎戴斗老人筆
一鳳眼燕尾の筆意にあらずしておのづから画道に
いりやすきの書なり
安濃九
一、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、〇〇