戦争文学朗読:土と兵隊

AI要約 (β)
11月8日、雨は止んだが泥だらけの衣装は乾かず、午前8時に出発した。道は泥だらけで歩きにくく、足の痛みや首の痛みで頻繁に休憩しながら進んだ。本道は特に歩きにくく、稲田の中を進んだが、それでも泥に足を取られた。坂上上等兵が心配して付き添ってくれたが、本隊から遅れ、分隊とも離れてしまった。本道上では車輌部隊が泥に苦しみながら進んでおり、馬や兵隊が泥にまみれながら奮闘していた。放射は悪路を通過できず、分解して運んでいた。進軍する兵隊たちは苦しみながらも美しく勇ましく見え、私も勇気を感じて再び歩き出した。
pid
3571578
date
1940-02
note
商品番号 : 33657, デジタル変換後ノイズ除去 : 無, 戦争文学朗読
year
1940
genre
文学作品の朗読、解説
creators
火野 葦平[作詞], 火野 葦平
duration
164
persName
火野 葦平
publisher
コロムビア(戦前)
11月8日、雨は止んだが、我々の泥の衣装は少しも乾いていない。 気持ちの悪いことを怯ただし、午前8時出発。 降雲が始まる。 本堂に出ると道は広いが、泥雨をつつき散らしたような道だ。 靴の跡や車輪の輪立ちの跡が深い穴になっていて、歩けたものではない。 私は足のまめがうずくのと、昨夜打った首筋が痛く、少し歩くとすぐ息苦しくなってきて、 胸が詰まるような気がするので、たびたび休憩しては水を飲み飲み歩いた。 本堂は歩きにくいので、両側の水の溜まった稲田の中を行った。 ずるずると滑り、かかとまで埋めるけれども、本堂よりはましである。 坂上上等兵が心配して私に従ってついてきた。 私は本隊から遅れ、分隊の兵隊とは別れ別れになってしまった。 休憩しながら本堂上を見ると、我々より以上に車輌部隊が苦しんでいる。 馬はあえぎながら泥にかみつかれた車輌を引き出そうと力を込め、 今度は自分の足を取られ何回も転倒する。 泥の跳ねのために真っ黒になった兵隊が馬の手綱を取り、 あるいは手で車輪を回したりしている。 それがほとんど一歩一歩である。 放射はどうしてもこの悪道をそのまま通過することができないので、 分解し水牛につけたり馬につけたり、兵隊が砲身を担いだりしていく。 定林陣への降軍で馬が数日と倒れたということを聞いた。 すでに我々の軍馬の間に倒れた馬の代わりの水牛やロバがいる。 本道上をそういう苦労をしながら進んでいく車輌部隊と、 歩いていく兵隊とが見渡す限り延々と続き進軍していく。 そのどの兵隊も足を痛め胸苦しく歯を食いしばって歩いているには違いないが、 ここから見るとむしろそれはただ殺草として美しくさえ見える。 いや私はまさに次第に角のごとくも世に美しき風景があろうかと感じ始めた。 角のごとくも一個一個がたとえがたいロークに満たされながら、 それが全体として非常に美しく見えるということは、 見えるのではなく本当に美しく強く勇ましいのだと感じた。 私の身内に喜びに似た勇気が湧いた。 私は歩き出した。 私は歩き出した。