源義經軍歌之書
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府中山
源義経軍歌之書
源義経軍歌之書
一東北南國大學圖書
源義経軍歌之書
一冊
衣川之御船といへる軍書有も彼軍書は義経
一世の間軍仕給へ類調儀相互の勝負の有様善
悪の万事を軍書に顕し給ひぬ其後高館
破て善経むなしくならせ給ひし時小山
の小次郎近忠彼軍習を取て長崎殿へまいらす
一類四郎殿頼朝の御目に懸ら留軍書披見有て世に
出されすかくしおかせらるゝ其後頼朝むな
しくならせ給て彼軍書世にもるゝ其書の
中の御哥共かきあつめておく所也
大将は人に言葉を能かけて
目をくはりつゝかけ引をせよ
軍兵は物いわすして大将忠
下知きく時そ軍にはかつ
軍兵は団取ぬる人のたゝ
調儀を聞てとふもかくにも
わけもなく面々に鳴髪ひたきなは
其日の軍負としるへし
大将の下知の声のみ聞ゑつゝ
皆しつまりて地ひゝきは加つ
かけ引に多勢計をたのみなは
たゝ闇の夜の飛煤なるへし
時と日は味方よけれは敵もよし
唯かん要は方角をとれ
日数には其家々の吉事あり
さては照日と風ふるぬ日と
方角も所になりて見分すは
月日星にて東西をしれ
敵をたゝ鞠と思ひて人々の
ほめひらきせはいかてのかさん
百人を十所に置そなへこそ
千の敵にもきり勝と聞
長良を百万騎程あつめても
下知に付すは負に成へし
大敵を見ては欺に敵をみてはあなとると
云事也一味する事肝要也
唐の七十余度の戦も
高羽の下知を聞てうそりて
北て行定軽共かわきを見は
其みゆ方に伏有ことしん
きほひ来る敵にさうなく出あふな
あひしらひつゝしかゝぬかせよ
手を分て備のやらをよし積れ
碁石一ツにしちやうかくれは
猛勢かひゝつに成て分なくは
其日の軍負としるべし
火勢行もなくはたらかは
却而小勢に出とるへし
朝軍たくみて負はそのゝちの
いくさにかたんちやうきそとしれ
勝とてもたかきほひすな古へも
勝て甲の緒をそしめける
敵川をこさは取のけ半分も
ほをこゑなはかゑさんかため
川を帰たる敵味方也川を越は相かゝ里にかゝりて勝負を決すといへ共
最前よりうち入さも勢多分勝なり然者龍川をこそと見えて
味方の勢くり引にひかせて敵に心を付大勢しとろに川へ打入時
とつと取て返し身金を出しますふせくに敵ひるむ也
熱川を降てたる戦は比ん川を越たるか多分殊也但渡しやう口
伝也
とう秋のひらめく時はうらこみを
して先敵をたゝなふるへし
一伏を有とうろは川や橋の本
はへたる藪のかけとほそ道
幾度も調儀を入よ敵城へ
なるもならぬをうたかひそある
一大風や大雨のふる時にこそ
夜つめ夜討入類物なれ
武略をは夕々まわす物そかし
敵の心に油断はしそな
一働は紅辰の刻にうち出よ
巳午の時に勢を入へし
うち露道の行末見分すは
ふかく働事をつゝしめ
軍兵の高名をせはかん状を
頓而つかわせ致の名のため
比類なく加せく武者を引分て
褒美をいたしさかつきをせよ
かたまりてのきぬる敵を慕なよ
敵二道にわからんをまて
幾度も敵の中にはうたかひの
出来るやゝにかうくみをせよ
気なけより武略うそませ武士の
まけん軍に勝ならひあり
軍をは大事とおもへかりそめも
敵をあなとりけるをはしすな
大敵を見は欺き小敵を見てはあなとらすと
云り義経は小勢にて利を得なり
大将の武略もなくてけなけなは
嵐のおかりうつろへるはな
義園法師美濃国すのまたにてうたれ
給ふを思るよそへ竹ふにや
何時も大将軍はうしろにと
敵の見かく類やらにそなへよ
引時は大将軍を中にして
後陣の勢を先に入へし
かゝる事は風のことく引事は塩の
ことしと云り
人数をも一度に入る事なかれ
くり引にして又はそなへよ
軍に敵も味方も引時を
火事にかくる物そとをしれ
はやく行かろくかへりて大将に
敵のてたてをいふそ足軽
矢をもいす北類を恥と思ふなよ
かけつ引つは足軽のわき
足軽の行かさなりて帰らすは
惣故軍のすいそうそうそうそうそうそか
足軽の敵と味方の中に居て
軍をさせんきやらしそとしれ
足軽も段々に出かわるへし
たゝかんやうは備なりけり
敵にもし取詰られて日の暮は
虎蔵をいひて夜の明て退
虎落をもいわれぬ程に間近くは
へうひをふせてさかもきを引
平剱は沙汰に及す山し路も
こらくをゆひて陣取をせよ
敵城へ取かけたらはやかてひ遣
なふられて日の暮は敗軍
我城へ敵とりかけは日を暮せ
ひかん所をしたわんかため
方をみて敵のきほひて働は
あひしひつゝ軍はしすな
敵陣に馬のいなゝきしきりにて
なりさはく時火付入へし
敵陣にたてを備て陣とうは
かならす軍有べしとしれ
幾度も敵の陣へは馬鷹也
者を送り計略をせよ
軍識曰興師之国路先降恩攻取之国路先生長良民
大将は民をはこくむ守護なれは
先らんほうのせいたうをせよ
酒はくち女や喧嘩狼藉の
はやる陣をはやふれんとしれ
大将の右へ落馬はよきそよし
左へおちはあしきとをしれ
大将の落馬の時
まわりてやかて左よりのれ
敵よりも二けなる馬のくるはよし
大将へ之下る様に並也
其外恋し神に近せに
敵より来る馬を底へ引出し尻を西へむけて並へし其煙
左畠にあはして尾の中むかふ。うにを切て御神に近へしと也
中を少馬をは
大将の乗たる馬のはやりなは
一鱠としるへしうちなるはませ
一分もなく味方の人数成ならは
馬よりおろしねまらせておけ
篝火の天にのほうは勝そかし
のろしには狼のふんを
入ル也口伝多し
地にほふ時は負と知へし
〽出陣の三日のうちに雨や風
雪の降なは大事そとしれ
陣中に鳥立さはき馬牛の
一芸しきりなは夜討そとしれ
敵の陣あまた所に取ならは
助の付し陣をやふれよ
我城のあたりの北による鳥の
三度さはかは大事そとしれ
〽おさへ来る勢にたすけの付ならは
必敵は負としるへし
たすけとは陸ならは
我ためにたすけ付て其たすけ
烏海にてはかもめ
敵にうつらは敵は敗軍
いる又風に有雲
に有
軍場に追手の風の吹はよし
むかふ雨風ふ吉とそ聞
出陣は立願たてゝ祈祷して
諸願成就の上に出へし
とりあひて勝べき方は武士の
大きに見らて声そしつまる
合戦はたゝ天道のわさなれは
不浄をえらひ信心をとれ
不浄にて甲冑を着武士を
軍の神もいかて守らん
大将の信心ならは軍兵の
軍にかたんすいそうとしれ
いのりつゝしめきたうせよともけさせんとの天道のつけ
一章のあらは万つゝしめ新念せよ
よきことあらん天道の告
気かましき事又は心にかゝる事有には具足を着ては上帯
のはしをとき両方の手に持て護身つをして存立て了
のにきりを左に持右の手にて弦音を一ツする時に観念して
悪魔を払気をのくる心中也鳴強聊言かして其後子の為図
の為家の為と念家也但鳴強むゝかすしてつる音せすは頓而弦を
取へし其時は八幡大菩薩と一返唱へし具足を着さる時は帯は
かまの帯にてもすへき也又略弦すへき時向方は敵の方へ又我ため
に能方へ向や気へき事などは腹帯を脱てしめなせす也又出陣の
時乗馬に鞍を置て引立て置時に自然馬嘶事有それは
吉引出て案さまに噺事有それは悪し左様の時は腹帯
を解てしめなをす也大将は上帯の跡をしめなをす太刀なとを
もはきなをしそ矢をいたらはおはなをしうのほ付たらは付
なをすへしさて弐々の肴にてなく共かち楽昆布打
鮑鰹香の物此五色の内一有にても宮にてもそとくわへて酒
を右へし八幡の真言と磨則支天の真言を三返つ唱へし九字
を切へし
日と月の日数をしれる人〳〵の
陣屋を作り方角をしれ
川上に大将陣を取そよき
家かかならは魚鱗成けり
前に川を当て取
陣は川上に大将有て
よし軍笠はを川上に
大将川下に取は国子細有
敵陣を霍翼にとるものならは
味方の陣は鋒矢なるへし
敵陣をほこやに取て置ならは
味方二ツにわけて置へし
知人に談合をせよ武士の
大事と云は陳取そかし
陣所をは兼ていつくと定べし
山城もとれ平城もとれ
日はよくと其大将の絶命や
給体禍害月日をはいめ
旗の手の敵へなひ〳〵はいむそかし
味方へなひく時はよろこひ
貝の音のいろよく吹は吉事也
つまりならすはつゝしみをせよ
篝火のしんほそくなく色赤
程す燃ぬる陣は破れし
篝火の大なりともしんもなく
乱て白きいろはいむなり
籬の気の風吹方の消は吉
風吹ぬかた消はいむなり
出さへ来す勢にほこりの晴のかは
負と知べしのかさるはかち
月にそひ星の有うそ不吉なれ
ほし有方のまけと知へし
宵毎にむつらの星の道を見よ
むつらのほしとは
光星也あしからん
白きは吉事黒有はいむ
とては有黒く見
ゆる
敵の伏置たるしゆんに星そな丈
くけ夜は又雲白きなり
矢初は子午の男こしらへて
七日精を日とり門出
着る具足いかき裏する物なれは
身はやしろにて魂は神
軍神を勧請すれはなの上や
よろい甲にいたるそとしれ
大刀大太刀をはきおも具足
くせ馬に乗る武志はむしやかは
里には百千万のならひよと
有をしらすは人にたつねよ
陣の上に魚のうろこの雲あらは
七日の内に陳は破れしん
先立はまつ事有てしつかなり
兵は不祥のうつわ
もの也天道は是を
にくむ無智にて弓
一矢を取らんは一旦勝
利を得たりとも永代
一治世介かたかるべし
常に兵書を翫して
一天道を供すべし
かくれていそくまさに利はなし
おなし気の敵と味方に立ならは
呂律くわへて呂ははろきなり
已下有異本如本
我国の治る時他国をも
はこくみて出け後の代のため
大将の神や仏を頼なは
信心なるそ軍にはかつ
働は敵も味方も軍せん
しほあひをみんためと知へし
追加
物前に行もなくて長引は
一唯故軍のもとひ成〳〵し
もの前に見物衣の多からは
きおひはしめに先くつすへし
一二人あけからかひの下兵をは
捨て数多の人をたすけよ
人は城人はしらつち人は堀
情はみりとあたは敵なり
物前におもくみしかき持道具
つるきなりともかなふへからす
敵陣に主人のうこくやう見へは
かならすてたて有へしとしれ
兼ても猶いそかんはせつ所にて
しんかり論は無益なりけり
しんかりの苦労もしらて先勢の
あけからかいは無益なりけり
場よしにて小はゝのうこくやう見へは
馬を入ると頓而知へし
物前におもひも入ぬけなけたて
おくひやうよりはおかしかりけり
武具衣装たしなまさるは大将を
かろしめ思ふ心なるへし
大将の忠も不忠も不忠も不忠も不忠も
すめる武士とてすくなかるへし
大将の一領よりもはや具足
数多にきせて先を出させよ
一数万騎の其兵のうちにても
心の油断敵とうそなれ
酔ぬれは敵となまそ酒はたゝ
とわしりなからのむはしれもの
一命を捨てたゝかへ虎口にて
いきんとすれは死するもの也
常は唯いかにも身持またくして
軍にならは心たけかれ
一国所見走家へをもとめつゝ
物見の先の案内にせよ
他の国に入ても地形方角と
人数の多少つもれ物見よ
文政十三庚寅歳
中秋廿日写之終
一中秋廿日写之終藤原安定