射術部分歌(外題弓書)

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黒瀬義房
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黒瀬義房
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シャジュツブブンカ
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府中 射術部分歌 弓書 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 3952 射術部分歌目録 射礼 少人 壮人 老人 無器用 癖稽古 修行我増 殿道誤 偽盲射 学悌 名匠 誠師 射礼 芸能のうはもりは只射術にや礼義作法を専にするゆへ 芸能のうはもりなりと射術をしやうひしたる 哥也誠に弓は神代よりはしまりし也◯神紀ニ 振二起弓彌一といへりそれよりこのかた弓の道 だゆる事なくます〳〵さかんなれは弥礼儀も 正しかるへき事や弓をそんきやう有ゆへに 書数之六芸ノ其一也 礼法を専とする心也今按に礼楽射御 大体に作法正しく町宜ふく其とき〳〵の法式にせよ 此大体とあるに両説あり○大体とは一人の身の 本の慎の心を教の伝も有○又曰大虚ト書紀 伝も有とかく大底をしわたり作法正しくせよ との教也〇時宜はときによろしきとまめは何 国へ行て射術をおこなふ共礼義をいだす師 の本へ行て礼法を聞て能習ひて可射事 肝要なり 時宜作法ならはすとても不礼なく其時々の家風専也 此哥のならはすとてものもの字に伝受有○習はす とても不礼なくは増て習たるにおゐては猶以作 法正しかるへきとの心也〇其時々の家風専なりと 有此下の句に心をつけへき也家々に依て 礼義品々有何国へゆきても其家の風儀を 能聞て家風に合するやうにいたす事日花流 の始の教也 武士の弓の興行礼義あれ人の和を巻しとせよ 此哥武士の弓興行に禮儀あれと断たる なり四民各弓は射るなれとも就中武士の家の 芸なるに依て断たるなるへししからは弓興行 に礼儀あれとなり的場なんとにあまた集り 不作法にして不礼のみあるはさなから町人百 姓のことくなるは弓矢の冥加もいかならん此ゆへに 武士たる人の弓の興行には礼義あれと断て 礼の用は和を貴しとする習そと云教たる哥也 的の会貴賤の人も集れる礼義正しくそまつかたるな 的の会貴賤の人もあつまるは是弓の徳なり 不空して高位にましはる心也然時には礼儀を 正しくすへきなり俄に礼義をいたさんとしても 身しほも有まし増て麁抹なる事云ては ふつゝかなるへし 大底の人はする共貴人へは外竹ほこ先根先むくるな 大底人々の常にする事なれとも貴人へは外竹 をむくるなと云教事は第一弓の外竹は敵に向 方なれは也尤ほこ先根先も是にしゆへし 貴人の前にて加様の義致す事大なる不礼也 弓を持中人の前をとをる時玄人を馬手になして行へし 此哥心は軍中にて主人への礼儀也主人を貴の 礼也惣而弓手の方は敵に向ゆへなるへし万事 に此心持有へきなり 弓を射は摩鼻紙下に置梁をさして手をつきて射よ 此哥心は弓を射る時は肩子はなかみはもとより下に 置元もんをとくと押くつろ当はたぬき自由に可致 の心得也扨謀をさしてと有を何心もなく見ては 無念也とく殊の差心を改結のしめ加減に心を つくへき也貴人の前にて助なんと討る時は手を つき可慎との心なるへし 少人往昔八歳にして弓始有し也其時袴をし 少人の器用なるをは苗にして秀ことくつめて討させよ 一少人の器用なるをは苗にしてといふ心は始てけいこする 人へハ何の髪もなく推挽と肩二の節を少直し 射放ては左右へはたらかせたとへは大鳥の羽をひろ けたるやうにいひらかせさなへなんとの日々に秀こ とくつめていさせよと云心けへなり 蛮弓はいつ迄もせよ癖つかす馬の輪乗と同しこと也 此哥も少人への指面の心を云かなへたり少人の始而稽 古ずる時は引弓を久しく引たるか能とていにしへは一年 〽二年もひ色たる由と古人云伝へたり尤久敷引 たらは手前も平直になるへし今時の人近道して 中々卅日もひかすあまつさへ師匠もとらす我 流に射るほとに終に癖を付止るより外の事 なしたまかに引弓を能して手前の直をため込 扨いはなしたるにおゐては癖は付ましき也下の句の 馬の輪乗と同し事也と云つゝけたり輪のり する事人馬共にくせつかす人は聴つき馬は 足つくものなりといへり 鷹弓て筋骨又は手持直絶すしならへ弓の万病 此哥心は先引弓にて筋骨手持ろくをよく 習へとの教也一段面白也射術は筋骨の直 を以こそ手持自由なれ筋骨違ぬれは弓 いる事も叶はすもとよりかゝへぬる事もならす 是身一の病也 初心なる人にはしめて指南をは先弱有てすち骨の輩 此心は少人に限らす社なる人も新稽古ならは 弓は少人の格なり其人に指南せは弱弓にて いさせたるかよしとや少も強弓は筋骨を押 まくられて惣の躰のすくみて筋骨のろくに ならす節々かゝまりて肩の落る事もなく あまつさへ癖付へき也指南者の教方肝毎也 付高く胴をもすくす引手持郡常に射よ少人の弓 此心は新稽古の時はかならす付さかるものなり 依之勝手高く鮎にあはすへし胴をもまつ すくに万事を止て手持へき事郡希なるそと 断たる也郡常とはつねをたつぬるとよむそ はやき弓は常とはいゝかたきそ 壮人 さかんなる人は数討よ達えわさ強弓又は中はけめよ 此心は壮人をいはゝかたち落て身体盛なる人の 義也如此の時けいこせは矢数を村て達えをすろ み或は強弓なともいならひ適中なんともはけみ 心をつくし名人にもなるへき心懸肝要なり 芸能は若時骨折されは上手にもいたりかたしと也 器用なる人百度てしならはゝ我は千度と十倍をいよ 此哥の心誠にすくやかなる志射術けいこの人にに 骨をすはせたきほとめおもはるゝ也如此の志ならは 何藝にても名人に成へし併人か母に一端はかく 思ても後には退屈して末の通るは稀成へし さえなる時に手蔵稽古せよ代の末迄の口すさみ哉 さかんなる時とは若時節手蔵き稽古せよと 一亡心也手蔵とはきひしく矢数を射与一度は上手 に至らぬといふ事はなきそ然る時はたれは如何程 の矢数をいて終には上手とは成たるなんとゝ云其 身も尤後迄も口すさみともなるなり且又世の 末迄も云伝の也とそ 稽古者の身には暑寒もいとひなく抽てへこそ射手の名とり名とい 身のさかんなる時は夏の炎天もさのみ苦にならす 又冬の厳寒をもいとはす稽古をはけまし諸人 に抽て社は名仁の名も取へきこの教の哥也とそ 是非いんと思ふ心はとくさもみかき出せる弓のすかたを 此哥の是非いんと思ふ心か欠来賊なるそと 断たるなり是の非のと分別して稽客の功を かさねたく弓を面白思ひて多年志をつくし ぬる一心かたとへばとくさにてありたるそいかんとなれは 弓の射形を悉みかき出したるそと自問自答の哥也 老人 梓弓老て後こそいそのかみ年ふる迄も武を閉すれめや 梓弓老て後社とは老たる人を腰に梓の弓張な とし云て老人をいはんとての枕ことは也此哥の心は とかく老て後まて弓をいよ年ふる迄も武を わすれさるの功を思ひ入たる哥也今時は武道不聞 琴になりて五十越たる人の弓をいるを見ては物すき の様にそしる事武士道の冥加もいかならんと浅 まし磯の上とは布留といはん枕ことき也大和の 名所なり 走て後おもき具足やさてたて呼箱ものかたのめ弓杖 老て彼おもきく足着事は難成身体さへ自由 ならさるにましてさぞくたてはならすさあれは とて味方の戦よりんて或にいさみなきは誠に無念 なり然時は別て弓を心懸は足のかなはぬ時はひき をくみても弓を能引て放さは敵の限による事 は成ましきそら老人の杖を頼ことく老武者の たのむへきは弓杖なるそと云の心也しからは身も さかんなる時より可学は射術也老たる後迄を 考武道についへなき事を思ひつゝくる儀は誠 に弓道に切[サ]なる志にて読たる哥なるへし 器用 笠用とは数寄て射るの笠用なれ生せてもいぬふきやう 急用といふに両説有かたちのすたやかに生公の能 を器用と云〇本来の生付はあしけれ共心のすなを にして師の教を能覚へ弓の道に志の深きは 終には上手になる人多し射術に数寄なる人を 一笠用といふの心なり 篤用なる人は必捨やすしとけなは奥は限り知らさす 器用なる人かならす捨るもの也と有必と云所か肝要 なり生付の焦用なる人のとけてけいこをいたさは 末にはいかへうなる上手にも成へきそと云心なり 指南者の分てそれにと教へねと受而器用はおのか品々 指南者の分て是を上手にせんとひゐさする事 はなきそ生時は悪けれとも心のかしこく物のかてんの 能人は指南を能うけとるほとにはかの行なり 是をは愚なるものは不知して分てひいきして 教るなとく予若時思ひしなれは今人々も 如此あらんと思ふのみ此哥のことくうくる器用は 己が品々と有況にて存当りたる也ひいきにて 上方に成事は弓にかきりてなき事やいかんと ならは我子ほと大切なるものはなけれとも無器 用なれは上手にする事ならす爰を以考あはされよとも 教たる哥なり 無器用 無器用と人はいふもけいこせみ器用計はいそ有へ有へき 無器用と人は亡とも秘灸せよといふは無器用なりと 人にいはかれは其まゝけいこもせす何そや器用無 器用えらひて何の益か有もと敵を討防 矢をもいて君に忠をもつくし或は身の遁れてき 所を弓にて難をのかれたるもの多し其上無器 用なるものゝ上手に成たるもあまた有さて又 急用なる人は稀也たま〳〵念用なる人有とても とけかたし 無器用も器用になせる故有習ひ積らは身手とるなん 此哥のことく不器用もけいこさへいたしたらはまつ 急用也といふほとには教ゆる法有それより稽古 者の気根次第に習さへ継らは射手となすへし ならなん との心召へなり 無念用もけいこを遂て射るならは師匠の人も押てゆくへし 此心は人々無器用なりといふ共稽古をとけなは 師匠をも押ほとの上手に成へきもの教也無器用 なる人の上手に成ては必明師となるものなり 弟子に領射手多有もの也と兄師の常の宣ひし也 癖 人毎に癖をもたぬはなかりけり然る古次第になをらぬはなし 弓のみにかきらす人毎に一つのく世の有物なれは 身術におゐても曲をもたぬはなし然れとも 日置の流をくみて代々の師伝を以指南をいた すに終になをさすと云事なししかはあれとくせに 退屈して止める人も多し此哥一段弓理に叶ひ 面白く侍る心を付給ふへしとそ 癖多く有とも数を直すなみ迷ひて後に捨やすきもの 初心なる人にしきりに教ゆる弓に秋風吹てみめらす 五門ほとあらは癖をは二つほと主にしらせて射さする事よき 曲数多有か中にも一つ宛分てあしきを直しいさせよ 右の四首の心を以初心の人に指南有へき也然共 射術に陰の癖陽の曲とて二品有之此伝受を 罷不得は師道成かたし先幼より学はしむると いへとも筋骨未レ剛は声レ弓自由ならすさり とて又歯壮年に及へは筋骨に疵出来る事 多し是を発事明師にあらされは不能いにし へは八歳より射を教ると有は其力相応の弓を 以教事肝要也 痢をのみ直して後ハ白鹿弓村手とやいん手便とやいはん 此哥心は痢を直して後は白磨ことあり是を心を 付て見給へ痾の有内はいかほとの苦労をかして漸 直しつらんと身に覚へあらん人は密すへし直して 後は白磨弓とは成たるなり然る上は射手とやい はん手便とやいはんとしやうひしたる心なりの射手 と云に両説有弓をいぬ村手弓を射る討手と いゝ分たり爰にては前句の白魔弓射手とや いはんとあれは上手と思ひ入てよみたる句なり○ 手便と云は弓を能射て中も勝れたる人を手便さは云也 稽古 弾正 養由も舁も手二つ我も又稽古次第と身を砕いよ 養由もげいも唐土の弓の名人也養由は柳の葉 を百歩にして百に百矢を見すさゝるのよし此家 由もけいも手二つ人にせりもなしかれも弓数寄 なれは我も又と身をせめて稽古次第そと得 道して身を砕いよと云変られたる哥也此心を能 考て末の稽古者も身に功もつまて上手に なるへき思案いたさるゝ事大なる非也如此の あやまりは早くあらたむへし或人の曰身をくたく の砕は切辟琢魔の功思ひ出すへしとそ 稽古の矢大事にかけて不断射とはれなる時も心かはらす 稽古とはふるきをかんかうるよむなれは古しへの 名人の伝へ置たる輩を其まゝなをす事なれは 常のけいこの矢一筋も大事にかけ不断いよと也 此不断と談たる所に心を付へき事肝要也不断 はれなる所か主人の前にて射ることく稽古すれ ははれなる所にても心はかはらぬそと教る哥なり 〇習のなき射手は不断は麁相に稽古しはれなる 所は大事と思ふ故に射そんしぬるそとこしなへに思へと いふの心や 弓はたゝ推と挽とに至極ありそのいにしへをかんかへていよ 弓は只出すとひ〳〵とに至て大事か有そと心也 推といふは肩より押口迄を推と心得挽と云は馬手の 肩より肘臂腕口指迄を云心也至極とは至り極而 の心也推挽か討術大事に極なり其いにし道を 老ていよとは稽古の事成へし明師の直しは皆 名人の言葉をかりもちいていふ事也 稽古には百矢いんより四つ五つ習をせんと射るそ増れる 此哥心得違ぬれは一歩千里の違有たとへは百千 万の矢数を討ても麁抹にいては骨折甲斐も なし誠の稽古といふものは押手勝手胴作股腰 足踏物見骨肉皮一味放いひらき留り迄の間 を一々改出来弓を只一筋いたきと思ふ心にて矢数 をいて出来弓を四つ五つもいれは大なるけいこと 云もの也四つ五つ習をせんと射るはまされるそと 云心也せんは専とよむまされるは増なり麁抹に矢 数をいたるよりも増るへ此心を以矢数を討ては 早く上手にするの教なり あたらすは師に能聞や押返し又くり返し稽古せよたゝ 手前能射手もあたらぬ人有脇よりも如何して 中らぬと思ひ其身も合点のゆかぬ事に思ふ時色 々に我と心をくたき様々手前をして見る内に手 前も悪敷なり中も弥のくもの也其時は師匠に 押返しくり返し新聞て稽古せよとの教の哥也 こゝろ能いらる時は数を村よ又後の世に残る矢も有 弓けいこの時分いにくき事のみたし然内に心もすゝみ 殊外に射能時有は其折節は気根次第に矢数を いよ又後の世まとは末々相続てといふ心也残而矢 も有とは残るとは射能事の残るへしと也矢も 有とは此一首の内に休用の心有手前を体とし 矢を用となすの心也体の正しき時は矢も直に 行へきの心なり 稽古小そ二つ有ける時と師と成人は習ひ残すな 弓をけいこする人々の心持色々雖在之先二つ そゝいひけたり第一武芸なれは武士の嗜 にすへきと思ひ立てけいこする人有是は持領 ほと射習ては大方すたる物多し或文此道 を数寄源をきはめ師伝を不残伝へ我ことき の数寄もあらは可伝と思ふ人も有尤角 師と成へき人は習を残すなといふ声の哥成へし 当流の弓の雑談有ならは心にかけて聞とめよし印曲 此哥印西家の哥也当流とは日置流也吉田流共 言なり弓の雑談有ならは心にかけて能聞留 よといひ置れたり此心は弓の道はこしつ多き物 なれは心をつくし習置へき事也我知らぬ 事を人雑談せは聞覚て師に都て心を あきらむへし稽古の種にも成へし 修行 弾正 習ひてもたんれんせすは小車の片輪のなきと心得ていよ 習ひてもたんれんせすは小車のとは第一習ても といふ五文字は習うかへたる人なり共常に能たん れんの功を弥つむへし我は一度骨を折て 習ひうかへたほとにとておこたりたらは小車の 片輪のなきと心得よとの心也事と理は車の 両輪のことく也事言は弓をいるかたちか思ふ まゝに行はるゝが事の能かなふたるといふ物也 理といふは弓いる事を能はつめいたしたるを は理と云もの也爰を以知へし習うかへても 一たんれんせすは車かなふまいそ然は片輪の 左記ことくて有へしとの教成へし心を付味ふへし 手馴すは縦弓前見よくよく共矢の働のよもあらはこそ 手なれずはたとへ弓前は見よし共弓前は手前 といふもはし事也〇弓の手前見事成共常に 手馴すは遠矢なんとをいても矢のはたらき はあしかろふと云の心也尤的にもこまかには有 まいといふ心なるへし 事と理は車の輪そと思へたゝ一つかけてもかなはさりけり 此心はわさといふは前にも在みことく弓を射る かたち其術をいふ弓は事芸なれは事を 第一とする也理と云ものは心に弓の射とる事 を食点したる事を云也事は表理は裏也表を 能いたさんとしても裏に守る所なけれは事 は成かたし此事理の内一つかけてもかなひ かたしと云心也 弾正 弓は射よ只いるほとの師はあらし習はぬ事を我と社知れ 此哥修行の心に残るひたる哥也弓はいよたゝ 討かほとの師はあらしと修行の人に教たる 心や○たゝといふ心か日置のしんせつの詞也 〇討るほとの師はあらしとは如何ほと能事を 見聞しても弓を討されはわさはかれぬほとに討る ほとの師はあらし習る事を我とうそしれ 習はねともひたものいる内に悪敷事もな事も 我と知る我と知くらいになれは修行の功の顕れ たるといふ物也いるほこの師はあらしと有所の念 違可有所也射る程の師はあらし習はぬ事 を我と知我と知位に至るほとに猶以師に 能指面をうけたらは上手に成へしとの心成へし とく〳〵と落る岩間の水よりもはゆき流は湊にその 此哥竹林か家の哥也とく〳〵と落る岩間の水 よりもとはたとへ歌と云もの也とく〳〵と岩間より 落る水也惣而何れの大河も源は高山の岩間 よりとく〳〵と落而小水也それが流て行にした かひ少の溝か次第〳〵に川となり大河となり 後は舟渡になり末々は湊に着底もしられぬ 海に入事也是を弓の修行にたとへを取たる也 初心の時に引弓を始て習ひ一つ引二つ引初 てより此かた水の紋間もなきかことく鷲の功 をつみ年月を重ね修行いたす内に終には 湊に着ことく弓もめ武印可致事を怠 なり浅より深に至の道ならん 我増 雪荷 我の強く増る心の有人は無器用なりと射手と成へき 此哥は雪荷か家の哥也我の強く増る心の有人 はとあり此哥上の句の家のつよく増る心と云所か 面白き心也人々の心持品々に替りあれ共就中 人におとれる事をきろふ生付有万の事に人 に増しん事を常々思ふ人は世俗我慢者と云 人也如此の人は必世のそしり有て能にはあらね共 弓稽古の人に限りて我慢の人は無器用成 と討手と成へきといへりいかんとなれは弓は諸芸 の中に筋骨を直にして惣身に一つとして まりれる事をゆるさす骨折事周身にある 故に大儀なるは此術也然は射術人におとれる 事きらいなるほとに我慢の人にかきりて骨折 もかへり見す人に増らん事を思ふ故に女上ケ手 になる物そたとひむ器用にてもと云心也 我のつよく増る心の有人は芸に限りて能ものときく 此哥竹林派の哥書とて見来す按に雪荷の我 のつよく増る心の有人は無器用なりと射てと成へき と有下の句を芸にかきりて能ものときくと 心を付替たりと思ふのみ我のつよく増名と いふ所を目付にしたる哥也兎角藝は身を いたはりては成就ならすと見へたり 毀 増れるをそねみはしすないひ捨な必我かそしらるゝもと 此哥吉田の末流一岸と云人の作なりとの伝なり 此人弓に名を得たる人なりと見へたり弓に限らす 常の志正敷人ならん今時世上のならひに増れ る人或は芸能にすくるゝ人をは其芸をは云事 ならすとも何そ外の少の悪敷事をは大きに 取なし又は其芸に邪魔をするか芸を 悪口する人多しそれをあしくいひ捨かなめ此 増れる人をいひ捨れは必わかそしらるゝもと也 と門第に示したり惣而一芸に達したる人は 藝のみに不限仁神正友もの也正しからされは 藝成就せさるなりとそ 知らぬ事人云とても綴るなと虚は顕て実はしるゝそ 此哥一峯の作也世上の人必しらぬ事をは知りたる ふりをする故に世のそしりをうけにたるゝ物也 め此の人は本来愚なるゆへなり弓の道知る人 はしんらうし也月折習たる事をみたりにいふ 事おしき事に思ひて知りたる事をさへみだり にかたらす射術を深く重んする人め此日しら ぬ事を物しりふりをして云人は本慮なる故也 しらぬ事を云て人よとひつめられて恥をかけ共 恥をみぢとも思はぬ也加様の人有ともそしるなよ かしこき人は露は虚と知実は実とあらはるゝ といふの心也 道誤 豊秀 貴命にも習はぬ事をすへからす推てするこそ道のけがなれ 此哥心至て誠有○貴命にもならぬ事を すへからすとは貴命とは主君の命也命は仰也 主君の被仰付とも習はぬ事はすへからすとや此心は 一日至弾正豊秀と云し人は天下の弓を改今 一統に日至流といふ也此日置にもれたる討訴 なし凡弓を射る人六品をて知六品とは第一 射術と云は巻藁を置常に曲直推枕を 正し看るを巻はら前と云的を立中を心方を 的前と云/延矢を学ふを遠天諭矢前と云 矢数を学ふを指矢前と云軍中戦場にして 自由に射る事を学ふを俗に修羅前と云 是等を悉究学ふを射術と云也第二に射 礼と云は的を射る時の礼也歩射騎射の間を 辨じて君臣の義をなし長幼の序節するを 云也第三弓法と云凡弓矢を取あつかふ法也 是も村礼の中にある事なれとも必師討る 時のみにも限らす常に弓箭をもてあつかふに 其法を不知は美巻さすけれ共射礼の法は 礼家より法を立る掟也射術の儀は日至家 より出るしかあれはとて日置家に討礼のなきに しもあらす此所伝て能知へし第四に弓箭 と云白木塗弓等の差別矢服繁に 至りて其品々辨可知第五弓工と云て弓を 削矢作の道を能勘弁するを云ま六鳴弦 蟇目等の法也扨此六の品は強てわかつといへ共 射術射於鳴弦引目は相図り弓法弓器 弓工相はなれす此言を究知るを達者と云へし 此六を出て弓を学ふ事無之千万の事も 此六品に過さる也如此をたかい習覚る事なり 此義を習はすして貴命有ても真わやうの沙汰 にしりたるふりしていたさは推てするといふもの也 然は道のけがと云心也其身一分計のけかにあらす 流義迄のけがれと成へし知を知とせて不知を 不知とせよ是知也 其人の弟子と云たる計にて習翁事をいふそおかしき 其人とは師匠をさして亭子に成たる迄にて 弓の習の道を聞すして免をも取たるやうに もてなし妖怪なる生付日置の時代にも有たる かと見へたり今の世にも多く有へし下の句に 習はぬ事をいふそおかしきとはおかしきとは心有 人の可笑思はんとの心也 左近 あをによしならひは弓にいらぬとは功者の心引て見ぬゆへ あをによしとはならひのならをいはん春の枕詞也 大和国桑良の事を云かけたり吉田左近の時代 我流の弓はやり世の人いへるは弓に習はいらぬ敵 にあてさへすれはよしなとゝ云て師匠をとり 稽古なとする人なかりしと也尤器用なる者は 間の有人と同しことく思へとも二三年も射る内に癖 付いられぬ様になる事を不知稽古する人は 次第に中も出弓前も能なるは習の徳也習を あつくつみたる人を功者とは云也功者の心を引て 見ぬ故と門弟の人に教たる哥也万事射術に 悉習ある事を不知していかんとしてか上手に 可成便とかせん功者の心を引出し習の道をたんれん しみよと也 印面 伝へなよ合点のゆかぬ射手ならは太事はさらに大ならぬそ 此哥印西家の哥也○得へなよ合点の由ぬ射手 ならはと云かけ大事はさらに大事ならぬそと有 伝ゆるとはかてんのゆかぬ討手に大事を教るな とめ印可の討手にしめしたる也此心は弓を大切 に教正敷学ふ討手或は弓に志深き人末々 上手にもなり師の名を挙るほとの射手ならは 大事を伝へんといふ心也有伝に曰合点のゆかぬ射手 とは未射術に至らぬ内には大事を聞ても 射術の身に不叶もとをらぬ内には大事かさら に大事ならぬといふの心なりとそ 偽 一峯 うそをつき初心の人をたましのれ功しふりして世を渡ると 此哥の心うそをつき初心の人をたましいれとあり 〇うそをつくと云事武士の有ましき事なれ共 今時も有事也本来うそをつくといふは愚知の いたす所也跡よりはけても恥をみち共思はぬゆへ なり然とも初心の人は誠と心得てしからする ほとに弥功者ふりをして世を渡る人も多かり きか様なる師を取あたる人は一生弓を討まといて 物いれたるそんのみにあらす骨折とふなとふなと書物也 人毎に物しりふり小秘事多く五体すくみて弓に射らるゝ 此哥の心は人毎に物知りふりに秘事多くとは め此の人世に多く有と見えたる心也人毎にせみ はなり○物知りふりとはしらぬ事をは物しりふり をし少知たる事をは是は大秘事也といふなり しからは弓も上手かと見れは五体悉すくみて つけたしゆるみ手を打つらを打也弓を射ると いふものにてはなし唯弓に討らるゝといふ物 なりと云の心ならん 当流の弓の射形もいかなへすとはす語を物知りふりに 当流とは日至流の儀也弓の村形もいかなへすして けちゑんゆなしなと取て大に骨折して取たる やうにいゝなし初心の人を見せてはといもせぬに 弓知たる様にもてなしとはす語の体誠に浅 ましき事とも也本より愚知の至りなれとも なましゐめなと取ぬれは弟子もつくもの也 弓の射形もいかなへすして何としてか弟子の 弓もみのるへきや能心を付可慎事共也 指南者の習のたりぬ不学より我慢も出而偽もいふ 指南者の習のたりぬ不学よりと云かけて我慢 も出る偽もいふと也○指南のとは師をする人の 義也師をすへき人は不学にては指南は成かたし 不学といへばとて経書を学するにはあらす弓 道の学とて射術の学有所謂中正ノ道 也弓は適中するを以本とする也適中せんと 思はし骨肉皮を直にして曲直を分明に正し 矩合を修煉する事也本是中正の至也中正 とはうちたゝしきとよむ也中正とは一心の正しき に依而外骨肉皮筋道も直になるそ曲直 分明推挽屈伸所々の組合修煉して 節に放は遖中す中正のいたす所也己身体 を納て其あまりを人に散てこそ誠もあらは るれめ此の道理をも不知してみたりに指留して も習のたりぬ不学なる人は何そ人にとはれて一 恥をかきて面目をうしなひ俄に人に習も 無念に思ひ我慢も出る也それからは偽も出ると 見えたり明師に逢て指南を得は芸のみに 不限其心はせも誠になり弓も正しからんといへり 弓前の其善悪もわきまへす功者ふりして指面する見よ 弓前とは手前の成也其善悪とは癖の有も 無もわきまへぬ人の指南するを見よ笠用なる 人はたれか見ても生叶の能は射手のやうに思ふ もの也或は又生質あしき人は習有てもあしく 見ゆるもの也兎角身に骨折多年稽古の 功をつみ習の有人を功者といふ也如此の功名にあら すんは皮一重下の肉骨のせんきは成かたし生質 あしく共手切のゆきたる討手は矢はたらき大に 違もの生質能器用也とも稽古の功つますは 第一の矢はたらかす常に教の大事も村手 の手前の高下其位〳〵にいたらされは大事 聞ても無益加様の習を委細にせすしては人 の弓前の善悪もわきまへすと云心やなまなる 人前にて功者ふりして指南すれともまはづれ 計をそほとに人の敗をうくる也惣而芸能をする 人の一念のあやまりて慢勝になり人のけいを そしり或偽り云て人のわさはいになる事を いふ少の芸に取懸り悪人に成人多し当流に おゐては堅法度して人をいさめ我も可慎事 肝要也 盲射 左近 めくら村に琵琶村なくはいられめや道を教る人にとはなん めくら村にとは我流に弓村る人をめくらにたとへて 詣たる哥也たとへはめくらいふ物ハ琵琶を弾し 平家をかたるか家業也めくらと成てハ杖をつき 己か眼とする習ひなれとも琵琶も習はす杖も なくはひとへにめくらの杖を失ひたることく十方を うしなふにことならす如此君を我またに習もなく 射る人はめくら討と云ものやとても弓を射は 能明師に逢て稽古せすんはいられめやと云 の心也下の句の道を教る人にとはなんと也めくらの 杖をつき手引をつれてゆかすは道はしられましき そ弓も如此射術の道を教る人にとはなんと たとへたる心也習とけいこの徳にてこそ上手にも 成へしめくらいに射る人は損をするのみならす 一骨折かひもなきそ浅まし かりそめにたはふれ遊ふ弓迄も皮関骨をは心かくへし 一仮初とは苟且と云心也少の義也たはふれとは 戯也無実之謂也○遊ハ勤テ不倦之怠也此方 の遊は無実してたけふれ遊の心なりと可知非実 かりそめにたはふれきゆふ弓まてもと無実して 一 弓射る人に教たる心也しかれ共弓まてもと云迄も の所に口て有め此かりに戯遊ふ弓まても皮肉骨 を心懸よとあれは真実にけいこする人は猶以後関 骨の斗とてこそ大切にせよとの心明也ういる事は 此皮肉骨の三にてこそい詩る也雖然皮肉骨に 二品有之弓矢射者の骨肉皮有今云皮肉 骨は射者の皮肉骨を指て云なり人の全体は 皮骨二肉也惣体皮を以包み肉は皮の内に満背 は肉の内に隠れ一身を貫通筋皮肉は骨に 十一絡各三を合而一体也一體を分て云時骨肉 皮三也骨主として皮肉は是に順骨全体貫 通せさる所なし雖然左右の臂に六節有を 以て事なす左三節は肩口肘腕口右三節 肩口肘腕口左右六節也胴に二節七騎腰 十四上下両節足に六節股付根膝口クルフシ 左右六節項のつかい以上十五節也皮肉骨 をひとしうして骨の次目を正す曲直屈伸 不正は動と静との違有て適中無事愛 依之皮肉骨を専にす属は右伸は左也胴の 曲直腰以下足六節合余体の骨節繁多 雖有十五節合へし能合すれは数也都なる 時は適中すへし◯或曰人の生質に依て骨 肉皮有皮の弓と云は人の体の内皮は表を主 不レ能レ在レ力如此弓引たる貌無レ力柔弱にして 精無弓前不正拙射也皮骨肉を心かけ たるにおゐては次第に弓前いよくなるにしたかひ 浅より深に至るへしとの心也関の弓と云は皮と 骨の中央に居て皮骨を兼不堅弱底力 強くして又和也是を関の弓と云上手の體也 骨の弓と云は皮骨の底居て其體堅くして 力大なり如此弓前堅過てりきみて不レ和也 骨の体は矢数を売て温和にして肉の 弓になるを善射と云也是を骨の弓と云 めくら射と云は師匠のなき人よとても射は只然而古せよし 則如此前の哥の心也弓は武士たる人の家案なれ は家道をふたんれんにめくら討に弓ふとり まはしにしては非本意或曰弓は軍陣利用 の芸也敵を討たをすが本意なりとて中を 第一とするなんとゝ口かしこくいへる人有それは かつてのめくら弓といふもの也そのかみ日直弾正 の時代は皆国々所々に古流弓はんじやう したる事也其時代も我慢者も多からん 然とも日医の射術に妙ある事を感しけん 今日の本の弓は皆一統に日直流となりたる 事なれは軍陣利用も敵を討る事も中の 教へも悉く有事也めくら時に師匠もなくて 人中にて討るものは弓にいらるゝといふもの也 とても射はたゝ稽古せよかしと也稽古とはふる地 をかんかふるとよむなれは古人の云老伝置たる事 を師に聞或は問或は習てこそたんれんも あらん利根にて討術はかりはならぬものなりと 予か師語き 学 印西 一皆人の其師を学ふ物なれは己か弓構大事なりけり 皆人の其師を学ふ物なれはと印西能心に思ひ つゝけて談たる也弓射る人々の心を能察したり 初学の人は大方若人少人なれは師匠の弓 はかりも不学指面者形気も似侍るもの也 世俗の世俗にみとり子の心はせ父よりも母に似 母よりも師に似といへりしからは己かち構大 事なりけりと指南す給人へ教たる心也己かとは 指南者也常の行作を弓構にたとへ又弓 構或射術も人の矩と成やうに志を第一に 慎あれといふ心也 吉田 我家の教へ正しく学ふ射手元師の弓や誰におとらん 我家とは日円より吉田へ伝授安の射術也 教正敷日置より吉田へ正統の伝法を少 もたかへぬ実正明白なる正敷射術の法を 能習得たる人は元祖弾正豊秀にもお とらしと云心也されとも弓討るほとにおと るましきと思ふは我慢なり教の正敷法 を学とあるにてかてんすへし弓討る志六品 能学たる人は其身一分の自由は本より 指南者と成てもことのかけぬる儀は有ましき也 然者元師の弓におとらぬと云心也 学へたゝ我を立るな師にしたい髪の道をもらさゝらし 此心は尊へたゝと有射術を稽古して其 間々に弓の学文せよとの心也たゝと云所に 心を付て見へし上と下へ力を入て我を立 なれと云たか心成へし先弓を成就せんと思はゝ 我を立るれと云句に子細有我を立るなとは よほと弓を射れは射手たてをして師をもとき 自慢心出て悪敷所なと直さんとしても指 南すれとも心にうけす過言をいふ如此なる人を 我を立るといふ也か様なる人をは人々もそしり にくむ物也指南者の心にも不叶也然時は 成就せさる也一向に師にまかせ稽古すへし 師にしたへとは随ふの心也指南者に身体を なけうち射術の思ひ入を一致して弓道を なけかすは髪の道をもらすへきと云なるへし 付 出雲 をしなへて知るもしらぬも射る物を能なりかゝり行ても射よ 押なへて知るもしらぬも討るものをと云はいにしへ 出雲の時代には生質能も悪敷もなへて弓 いぬ人はなしといへり上代には猶以飛道具は弓 一品なれはさもあらん世の人をしなへていたる也 知るもしらぬもとは日赤流の習有ている人も 又習なく我まゝに戯れに討る人も有器用 無器用有礼義作法能も有如此をしるへ 射るなれは能なりかゝりを尋ても射よと也 惣而弓けいこする人は先人の弓前を心を付見習 或は弓にかゝりて立ふるまひを心を付能射手の 射形風情を見習善悪を見て師に聞題て 即射形のたよりにせよとの心也惣別能手前 の射手をは諸人似るもの也己か心に能と思ひて 朝暮似せぬれは必似るもの也伴とは人の弟と 書はなり 物南者の心を我に写さなんたとへ射形に替り有共 此哥弓けいこする人の志尤也推南者といはるゝ ほとの者は大形に心懸ては難成射術の儀は 不及申六品を心に納すんは師道は成かたし 依之指南者の心を我に写さなんと也たとへ 我弓の村かたに替り有とも己か心を師通の心 と一致してあらは稽古も次第につのるへきもの 心也たとへ姿の器用無器用の飾りありも 師匠の心中を我心に写置たるにおゐては 上手にならて有へきかと思入たるなり○古 物語に曰姿かたち社からめかしこきよしかしこき に写さはうつさなんと云る心成へし然は師の代 うつらて有へきか 水の面に弓張月のおしけもうつれは写す習也けり 水の面に三ケ月の影の有を見てよめる成へし 此心ははるかに遠天にかゝる月の池水に面影 の顕はるゝ本来水のいさきよき故也◯月の光 のあきらかなるを以水のいさきよきにおもかけの あらはるゝは天地自然の理也〇弓を学はんとて 師に頼弟子となり姿心を写さてあるへきい かんとなれは遠月の影のうつるを見よ水に 月のかけをうつすへきとたかいに心なけれ共月 の光明なるに水のいさきよきも依てなり ましてや間近き人と人との互に心有写さは うつさんと也下の句のうつれは写す師うつ れは我うつすいかんとしてうつさん習をいといふ の心なり 名匠 指南者は其弟子毎に気質見て討手相応に念を入て 此心は指南者のあせたの弟子をあつかい弓をとり たつる心得有其弟子毎の気質見て指南 する事肝要也生質に上根中根下根有 理の発したる有理のにふき有急用無器用 あり我慢有それ〳〵の人毎に指南替る へし其村手〳〵器量相応に倉を入よと の義也念を入よとはけいこする人のかてんの行 やうにと六心も有兎角我子を思ふことく 念を入へし 百人の弟子は百五百品に其分長の箱用相応 此心は百人の才子の生質百色に替る心入も 百品かはる也たとへは百人よせても同し顔の なきことく弓の直しかたもめ此上手下手を 見分て其分際に直し弓の長を能はかりて 其討手ほと直すへしとの儀成へし 我本子の直してならぬ痾まねて見せて工夫をしていよいへ 我弟子を直す事し 道理を云ても直らぬ曲を其人の癖をまね て見せよとの教やき子の弓悪敷は指南し のあやまりになれはなり工夫をして射よといへと なり工夫とはかれをたくむとよむけれは心を つくし稽古する事肝要也 初心なる人に精出し敷ゆかれ癖も大や付退屈もする 此心は初心なる人とは新稽古の時分といふ 義也精出し教るなと有惣而指南する心 〽持は初中後の三ツを合点なくしては指南 する人も稽古する人も退屈するもの也○初 とは新けいこの時分には何の習もなく残弓 を以第一弓構打発なとを念入肩根を落 馬手の肘先に精を入能引廻させ胴腰なと を能すゆるやうに教込なりとくと此心持を引 弓の時節に教込漸肩も落肘のしまりを 能覚たる時にはなさせ娘弓かへりなと早く かへさせぬれは前権ならする癖出る物なり 弓返し早くするゆへに手先に種々の曲出る也 是非弓返しを望む心故に馬手のしまりも わすれ後には大曲弓となるほとに娘には弓 返しもさせすいはなすと左右ともに射ひらかせ 矢数も多くいさせす一日に廿卅ほといさせ 其身の器用次第にすきふすきのさかいを見 其身すゝむを待て段々に直し立一両年 もけいこする内に其身我とのひちゝみもかてん して末々討手にも成へきと其身すゝむ心 あらは大事をも伝へる也○中とは始め程 は如前教へ立我と迄縮合点して進て はけむ心の出るか稽古の最中といふもの也 此時分指南者の巧と不朽と有之上手にも ならす骨折甲斐もなきやうになる事多し 此時少の曲もゆるさす矢数を射させ矩合を 能教込達者を専にして中等をはけませ 一々此射術を得さしむるやうに指南をする事 也此時節には精出し教はけまする事肝要 なり如此の次第を修練し是を心得是手 応是巧と云◯後とは矢数の功もつみ射術 小おゐて癖もなく短合も能合て達者 すくれ中も能弓前も十に九ツ揃様に討 さしむる事也功者の師にあらすんは成かたし 如此相叶人を討手と云也此境合を見てめを 遣す事肝要也色角癖のなきやうに退 一属のなきやうに指南あるへき也一岸 我家て過言をいふな理を語て問つかられな常はかゝせよ 〽わか家とは日並流吉田に吹代々相続て小田 一岸へ相伝るの村街の法也一岸門第への示し の心なり過言をいふなと有惣而弓法と云もの は奥もなき古法品々有物なれは知らさる 事を物しりふりに云なといふの心也日花流は射 街の家なれは射街の義ならは討手に依而 めと替り印可と品の飾りあれはめの村手 はめの教の理を詰印可の村手は印可の理を 急度詰胸に備へ置へき也如此射術の理を 胸に詰置何そ人に弓の不審を問れても 問つめられぬ心持肝要也常はかくせよ隠せよ隠せよ隠せよ なり弓の道骨折習ぬる事みたりに人々 に云へきことにあらすすてに約学の時分には 神文を以習其身庭望深き志をかんし めをとる也又其ことくの弟子あらは伝へよ との義なるに可云事にあらず依之幸は かくせよとの心也 こしつ知りめ歌の村手なりと弓の大事は限しらすは 故実也古きまことゝよむやすべて古事を 集て知人也又討術におゐてはめ印可と 替事始終の心先免とは初学には神和文 を以大事を敷悉射術に相叶故に其志を 感して神文を返して指南迄をめなり 印可とは終に遣す終美の心也言は名ト挙ト 也名とは上手の聞へ有人射術七ツ村揃と云 事書○挙とは戦場におゐて敵を討或 弓にて忠ある人めいよのもの道中するたゝい也 如此の人に終に遣す也終は後にと云心なり 〇射手とは曲尺に相叶たる射者を云也弓いる 人を世人なへて討手と云はあやまり也如此故 実知免印可の射手なり共弓の大事は限 しられすと云は弓の事は種々の古例古法 ある事なれは限を知る事かたし若故実を 一知る人あらは郡聞てあきらむへし是了道の 幸なり 日置流の心の水や方円の弟子の薫用にしたかひせし明 日至流候は今一天下の弓の流儀の源也其源 之流長此教無レ絶此流普射者伝を不レ続 と云事なし心の水やと有は人身の一水也 一難中之一陰三離卦を以可知也◯必火の 内の一水也是則本心なり言は元祖日置 弾正の心の水を其門弟の心水へ流行して 段々に流伝するなり然共水は方円の器 にしたかふと云かことく小稽古する人の器用無 器用其志の浅源の其ほと〳〵にしたかひ て長一盃に稽古してのくものけれは浅 志の人に推て存るるもならず深き志の人に 残して教給るもならす其人々の志まち〳〵也 誠に百人よせてもほし顔のなきかことくな れは百めと替り印可とへたつる事如此 上場の良師の指南請て射よ思ひの外に名をあへるもの 上巧とはたくみの委細なるを云無上たくみ達 仁シの心けり良師らは猶良将身を治両人を治 一良将は能人知人不捨是体用歟良将の心 はせをたとへたることはなるへし◯良師は射術 悉規矩に叶ひ人の矩となる也身を治て人 を治己を知人を察るや射術の良を云のみ ならす皮肉筋骨を正し五臓六腑分明 す一心の沙汰を少し云五臓神所レ舎論 なれは只よの常にしては良師とは難言 指南を請て射よとは如此の良師の指南 受而ならは内外共に弓道にまよふ事もなく 思ひの外に名をあくへきう也指南と云は 昔周ノ成王ヘ南越ト云処ヨリ白雉ヲ 奉シニ此使者越ニ帰之旧路ヲ忘ル時ニ 周公車ノ上ニ人形ヲ作イツチヘ向テモ此木人 南方ヱ指サシ教ルヤウニ機テ使者に賜け レハ終春年ニシテ南越ニ帰リヌ是指南 車ト云此心ヲかり用て其芸の道教る人 を指南者と云り車を者に替て書へし 疎師 一初心にて弟子のゆへとる人は只一毛衆毛引つるゝ弓 此心は約心にて玉子多く取人はたゝといへるは 〇先初心といふ心は表を知て裏を不知絶 は其身一分は箸用にて能射るそと 思ひても射術の伝受なき射手は初心 初学の人やいかんとなれは器用にまかせ 新稽古より四五年の間も弓も能射 的にも中といへとも筋骨少の違とへ弓 も時にくゝなり中ものきたる時何国に 如此悪敷なりたるそと其出所を不知故 に己か一分の埒も明す左様なる人の弟子 多く取はたゝ一毛衆毛引つるゝ弓となり 一毛とは一毛の誤衆毛に引つるゝ弓なりと 悔める心也言一人の誤衆人に引つるら也 つるゝは連る也引とは弓の縁如此指南の の速を衆の弟子引連つて共に迷へるこふ 心なり 志川 我たにも弓の迷ひも晴やして散分の弟子を其に迷す 此心は我たにも弓のまよひも晴やしてといへるは 指南する人に押当て讃たる哥也器用なる 人はあまり骨折たる事もなく見分か見よき けれは我も人も是は上手なりとて人につむる もの也ほめらるゝを悦ひて討る内に筋骨 の違少の変もあれは討術大にいにてゝ て終に本のことくに討られす彼是と心 をつくす内に次第〳〵に癖のおもくなれは 弥心迷ひて日並派弓書にもうたかひを 一發すもの也如此迷ひを幾度も発て明師 に射術を改癖の出所を直して窓迷ひ をはらし弓道悟りてこそ指面もなる へきに左もなくて裏表も不辨只一返 に心得弓の建ひも給やらて指南をする人は ◯数多の才子を共に惑はすると云心也直して 弓けいこする人は唯一返とおもふへからす能 たち入て具を郡習ふへし古哥に麓なる 一木の桜り知るほに奥もまた見ぬ三郎野の 本師に付て稽古する内に委細に可有 若師教を残しぬるやと疑を発して能 尋詳に習得ては後に指南の便主ならん 不功なる疎師の指雨をうくるなよ同し粘出しあからさりけり 不功は芸術に不レ功を云疎師其道不 達を云如此の人に指南を得は弓道可レ運 事無疑といへる心也下の句の同し精出し あからさりけりと有弓けいこする人の堪能 を不懸心はなし然は上手になりし人 の上根に修行をしたるへと同しことくに 精を出しても上手にならぬは己か無器用 はかりにてもなきそさいへる心也上の句に 心を付て可考人々の心懸にて不功或は 疎師とも成へき也然とも約心なる時に師 の善悪を難辨一歩千里違ならんかな しむへか 日昼流と名乗んかりて教方目録迄も相違社あれ 日置流と名乗計て教方といへる心は先我 朝の射術の元祖日置弾正といふ人 応明之比諸国を修行せられしとなり 依之暮此派世広し今天下一統弓を手 に取ほとの人日至流と名のらぬ者はなし 然とも此伝を次しは吉田上野介正統也 弾正忠豊秀嫡子依無之上野介と親子 ノ契約シテ唯授一人之弓書ヲ伝フ其ヨリ 代々吉田之嫡男に次之今元禄二至り高 助右衛門豊武唯授正統也其伝は射 術ニ以二規矩為レ本修煉為巧失適中 求二其身術ノ書伝有定数凡免 六十二ヶ条卯可八十五ヶ条也皆是射術 ニ用レ之ハ如求二方円ノ於規矩一救平直ヲ於 準縄上引而伸之触類而長之可レ為一無窮 之応用ト 右者以数年間置候弓理愚註書加畢 外見在之者誹謗不可遁御執心依 不浅潜令書写平聊不可在他見者也 宝永四丁亥年黒瀬九助 義房 五月 大塚又四郎殿 一一一、〇、、