和漢名數初抄會
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- 錦鳳堂主人畫
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- 錦鳳堂主人畫
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- 日本語
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- ワカンメイスウショショウカイ
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- 東北大学
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狩野
狂類和漢名数抄
松顕和漢名数抄
申
丙
大
天保
大
一緒樹団大人撰
錦鳳堂主人画
和漢名数抄
花王連
電
もろこしの優旃また我朝のそ呂利といへる人は滑稽を
もてよく君の心をなため女夫いさかひをさへしつめける
とかやされ婆先師六樹円の翁はからやまとの尚春
にひろくわたりて所謂腐儒生博士のたくひには
あら受なんされと滑醤酒落をもとゝしてたはれ
たるみちの影をさ閉このみて宿屋の飯盛にて生涯
を過したまひぬ其子藝外楼清澄ぬし同しくこゝろ
さしをつきて狂る月並のむしろをひらけぬれとさち
なくして世をはやうしうまこ梅多楼君いまたとし
若けれはとて我縁樹園のこしをもてあつかひものせん
ことを乞ふしかるに近頃狂類の風調変して故翁の
すけるあたりにはあらゝ受されと是をとり夫をすつと
いふにはあらすとて大裏上臈のたけ高くみやひて
屋さしき姿もて天地をもうこかし御守殿の椎
茸たほちからをもいれすして鬼神をもとりひしき
あるはたはれ女のはてになまめきたる姿もて武士
のたけき心をも和らけ又は竈の前の水し女鼻の
あたりに鍋のすみつくをもしらて火吹竹ふつと吹出す
をかしみま伝えらひ出せる月並の初陣に魚の
鱗の陣取も国々英雄の加勢おほくおもひの
外なるかちをとりけれ婆ことしもまた和漢名
巻の人々をかそへ出してゆくすゑなかき鶴の
契や長蛇の備へをしき辺の諸若達相かは
ら受力そへたまひねとつまらぬことを長たらし
くなかす涎の牛ならぬ我こしの尾にすかりて
三本たらぬけたものゝ人の真似する申の年おの
か号なる緑銭の五十にたらぬ器さへ百に当れる
通用は実に幸の喜足しるす
工麦少
和歌三神
陸奥仙台
吹ちりし梅か
あらぬか
笛川の
千柳亭
岸にのこれる
雪の花龍良
浦々を
霞の衣に
つゝめと母
すきとほり
さほり
玉津嶋山
春秋庵
十五ヽ
詠なす
かすみの海を
こす雁は
瀬川か妻の
文かとそ見る
文泉舎
(四天王へ
蘭相如にも
もろこしの
檜園
さわらひ
あたる
露の玉さゝけ
袖おほふ
人はあらしな
縁日の
梅か香そはる
薩摩
らふそく
梅屋
北辰の北野の北野の
岩間
宮に春のよは
こゝらの梅の
緑銭園
喜足
星そあつまる
一俎板の紙の春の小口と
みとりも
そさたてる
見る
年の市
仙台
千菊園
□□□□□□□
七福神
髭たにもそらぬ
江戸崎
江戸長
長松園
清女
しはすにたつ春は
えひす国ある
東より来つ
日再ひく
霞の網の
めこきか甫は
あこきか浦は
かさなりて
阿波徳島
六暁国
あらはれぬなり
どくさかん
酒くもりをも
京
玉兎国
そへよかし
さらすとてすむ
春の月かは
枝毎に
玉こそふへめ
うくひすの
滝とみたるゝ
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
事の柳は
日光
鳳鳴閣
客の園生の
梅は闇の夜も
なほ
かくれなき
にほひ
なりけり
けり
下総関宿
檜集園
其二
紀若山
玉川舎
さくてたに
けしきも
与謝の
うら浪の
うちあかり
たる
春の
御ほの
酒鳥の
たよりやいそく
としの内に
雪ふみわけて
春のきぬるは
江戸嵜
六字国
子文
(七賢人へ
野にひける松
人を子のもの
みゆるかな
根さしのつよく
千代へぬる
根さしのつよく
十三
六朶園
かくて
精進しよき
山里に
経よむ鳥の
所えてなく
花の尾
其二
越前府中
竹生国
一としの内の柱こよみに
としの内の柱こよみに
とりつきてをさなき
梅里
春も立そめにけり
ども今
蓬莱居
ふるへき兵や
うくひすの
法のこゑ〳〵
匂ふ御ほの
咲むる花をも
またて鳥やり
たつことやすき
花ならすとて
出羽山形
夢の屋
ぞよし
里の
山の麓のかき蕨
はやも明なん
花のさくら戸
在福島呉綿堂永良
大君の寵にひかれて
姫小松はや輦に
のれる草の日野
摂津兵庫
一の屋
名数抄
耳方
狂歌和漢名数抄初会
撰者緑樹園元有
年内立春
としの内関こす春のさほ姫は露男と身をやつすらむ文泉
一香の内に春のきぬるはふる草ににひ草ましりおふるたくひか花
東金
とく春をつけのたち木もつこみてすかたをつくる手の内庭
秀作舎
阿波
ふかねの雪ふりつみて手の内にはや千金の春はきにけり
仝
烏衣紋
としの内の雪つむ中へうれしくも足跡のなき春はきにけり
嬉
蜘のいに白駒つなくとしの内に二道かけて春は来にけり
春秋庵
京
年の内にいをかりに来るさほ姫は東隣のやもめなるへし
九洲舎
仝
としの内の眼にもかすみて見ゆる哉暦の末にしるす立春
年の宅へ春のかしらをさし込は肩車にやかりて来つらむ
黒野
玉児園
龍雲固
欠分
一度まても行はる故に日のもとは手の内より立いそくらん
ほと遠きもろこし迄もゆかんとやらねの内より春のたつらん国吉
はつ露二すちひくは立春も手の内同のしるしるしなるらむ飯成
蜑翁か馬にたくへんとしの内に又立くり来たる春駒
仝
有香
ふるとしのふところよりや這出てをさなき春の立初ぬらん
若山
何事のありてさわくと来懸りし春やしはすをいふかしむらん
国栗国
神日記の五ひらのこる年の内に梅さきぬへき春は来にけり
仙府
鶏のかけもすまぬに関こえてけふしもいかて春は来にけん春秋菴
日光
大極の国をはつざしと年の内に立ぬる春や陰中の陽
また年の内外の神の宮はしらけつりかけする春はき祭り
としの内は佐保了ふ姫もしいす女いた末に結へるかみの御ひきり秀作舎
さほ姫のなまめきたてと春こゝろつかぬはかりに年はひけり
▽名数抄
事しけき年の内より来る春もさする捨てはおかれさりけり章雄
冬なからけにより春と呼子鳥さるとやいはんひつしとやいはん駒雄
来し春も旅こゝちせん手の関花の都へこえて出ぬ間は
手の内に千金の春むかへては暮の仕舞もゆたかなからん松人
かけ廻るとしい暮にもまたかりてあら駒いさむ春は来にけり梅屋
としの内に春は立ゐて市人のせはしき袖をひかへこそすれ六朶園
清女
神棚のまうけたにまたせぬ暮に来し春はたゝたちてこそ居れ
村田
節季候の外にも年の内にたつはるに声ある門の松かせ
菊成
上須田
いせ暦くはりてありくとしの内御初穂ほとにはるはたちけり
奥津
冬なから軒の氷のとくるこそ春たつけふのしるしなるらめ
光輝
村田
としの内にけふは腰をもかけこひの刻にも笑へる春はきにけり
竹来
一木菊久
始る天より早き月日は雨もなく手に二たひはるは来にけり
都保美
大谷
としの内に春はたことも人みなの詞に花のさかぬせはしさ
春たつと人はいへともかけ取の帰らぬうちはあらしとそ思ふ
興津
日光
しはすめの洗へる髪の柳かけせはしき中に春はきにけり
清音
東金
東金
秀作舎
千金の春はゆたかに立ぬれとわかせはつまる来の内證
阿波
春香
くれぬとはまたしら雪のふる手に早くも春のたちにけるかな
としの内に春のきぬれは懸取の帳にも霞引てめてたし
仝
年の内に何をいそきて千雪のつもれる山を露そむらん
うか〳〵とあゆむ末のとしの内におもひかけさる春はきにけり
仝
仝
政徳
静丸
柊といもしをさすもひとゝせの首尾をいはへる春はきにけり
春も過小春も過て舟の内にまた三度目の春はきにけり
仝
歌文
六暁国
春はそこ冬はこゝにと手の内は霞一重やたちへたつらん
矢来ても猶かせきつゝ遊はねは老ゆく舟の悦ひやせん扇松垣
名数抄
守谷
年の内に春の来しとてよろこふり梅さへけふは笑をふくみて
松町
としのうちに言重れる春かすみふたあら山の名こそかくれね
常磐園
京
手の内に残る日数を立かくす霞は春の道案内かも
常葉園
宇都宮
としの内に雪間をわけて声たてつ春や来ぬらん鶯の瀧
和多吉
帝場
年もまたくれはてぬまに春立てふたゝひかすむ四才の山の端
としの内にはやも来にけり是敬と思ひの外の春の御保姫
結城
としのうちに春のたちぬるいせ暦見るめやかすむはしめなるらん
山名
たゝちなる関はれしと年のうちにぬけ道こえて春はきにけん
立春はけにも今月のうち日さす都の外止霞かゝ残り村住
としの内にやたつとなりてもとり草も春もろ共に立習ひけり呑安
めてたしなとしのうちての小槌より打出したるあら玉のはる最中
能野
年の内に春はきにけりる人も納会なからよみ初やせん大照
とりませて暮と春と春とを二見潟いせよりやまつ春はたつらん季柳
年の内に春はきつねの次衣霞のきぬの外にぬくとし乙楠
早春月
十枚るともう正月と指を折るをさな心に春はきにけり
せはしなきねの内にも立春にころけまはれる鬼うちの豆
人心のとむる春のいかなれはいぞきてとしの内よりは来し
佐野
喜幹
淡浦
貞樹法師
尾一宮
としの内に寒さいとはてたつ春は梅とともにや宝をいつらん
朋来菴
山形
せはしさを見着てまたき手の内に手つたはんとて春や木にけん
金雄
下総
一春されは月の水さへぬるみけん酒気の立めかすむおほ空
都曲国
御く梅のかをりや天にのほりけん霞もにほふ春の夜の月
崎眉山の秋の霧には引かへてのとかに霞む半輪の月
はつかしの森のこのめしはるの月うひくしけにおほろ也けり
村田
橋向
小七
佐原
蒿村
蓬莱や屠蘇くみ祝ふかはらけのうちくもりなる春のよの月春秋庵
名数抄
四
日光
不二を見し二日の後も夕月のたゝまぬ舟をしける夢山
日デ諸雄
結城
月の水今は霞に濁るとも村たつ雲のあしなそゝきそ
春浅み月の影にも青馬のひつめのあとを雲ゐにそみる
屠蘇いはふかはらけ形にみゆる哉うちくもりなる春の夜の月
しら川の関もおほろに見ゆるかな霞とともに出し月かけ
常信太
とその酒頂戴めけるかはらけも同くもりなるはつ春の月
可奈女
岩間
一取おとすつり針とみん春の夜の霞の海にしつむ三日月
喜足
弓々見て雁はゆくらん春のよの霞のひまにいつる三日月
鳴かくれゆくさまなれや春の夜にほの〳〵見ゆる三日月の船
江戸嵜
さくうめの星の光にけ出されて月もおほろに霞む春の夜
春秋庵
つこもりのつかれなるらん春来てもねふたさうなる夕月の顔
阿波
長閑さにかひの出しかとみ空なるもちの月さへかすむ初春
六暁国
とこやらか磨のたらぬひかり哉またあらむの春の夜の月
仝
月八
仝
初春の空の海路もかすむ様は月の出舟も日和につらん
志幸
京
宵月の舟にこゝろの乗初はいつも三日のはれにさりける
九洲舎
楠のこす葬の露にぬらしけり七日の月も爪なりにして
春もまたをさなき月の女子はかすみの衣につゝみてやおく
三日のうちやすめ置つる鎌なれやさひて出たる春の夕月
熊野
ノ女水
あら玉の春のはしめの同影はみからぬさまにおほろなりけり
在福島
春立て三日の月影弓はりの弓はしめよきけふにそ有ける
一右神津
尾一宮
大空にくもれる月は梅からにむせて霞の袖やおほひし
笹丸
梅かくの空に薫りて春の夜は月のかゝみもくもるなるらし
仝春澄
信田
おほろ夜の月のかゝみの曇りてはいかりも薄きあら玉の春
ヘ常有
とそ酒にうつりし影は蛇にさらてかの臆客か弓と三日月
菊成
名数抄
浦霞くらけなすたるかふ浦の霞より葦牙のこと出る帆はしら大名近峯
あめつちのはしめのさまか浦の面にうける脂の如き霞は
たか故にのほりてみれは往来する船もむなしくらすむ浦く
さほ姫の霞の衣よそほひてたれをまつほの浦にたつらん子
なにはかたけさは霞てゝみをつくし見えぬや春のしるしなるらん
関宿
唐めける霞の衣の舟とはり今もかけたる三熊野の浦檜
一去つたふ日傘の浦はさほ妊のかさす霞も薄みとりなり
堺
朧夜の月に比しな難波かた浦こく舟も春はかすみて
船君の衣の色と見るまてに霞たちけり朝妻の浦
あかた召除目をしらぬ浦人も袖をつらぬる霞をそみる
霞たつ霞か浦も春くれは猶ひとしほの色まさりけり
君山
蔭広
玉くしけ二見か浦にひと筋の霞は巌のしめかとそ見る抜人
鳥の名の嶋の海へにこく舟は霞の浪も打かつくなり
阿波
千代女
目に入し声いあけにうち出て見れはみなしく浦も霞めり
安足
桶のうら辺はいかに包めとも霞の袖をもるゝつりふね
鏡てふ浦さへ春は日々〳〵にとかくかすみて見えぬ人顔
仝
同断同同
仙府
雪なせる浪さへみえす田子の浦ふしもかすめる春の朝風
千菊園
鮭野
さほ姫の洗濯衣かはるかすみさをも長居の浦小ほすみゆ
富士
もしほやく須磨の浦わの八重霞いとへは蜑のしわさなるらし
帆はしらは浪の草見の幕串や霞かゝれるうらの友ふね
伏蔵のかとりの浦の春の空霞の衣をかけておきけり
縮林
みほのうら不尽をめさてに行舟はかすみの中にぬけ穴やある
亀俊
岐阜
打かくる浪中帆影も水祝ひ霞をあむるむこの浦不遊
一紫に染るかすみの袖かうら上総木綿やをちのしら雲文泉舎
▽名数抄
舟の帆の鬼木綿さへかるの浦の霞の衣とともにしはらく葛成
風はらむ真帖も霞にまのあたりいはた帯すとみゆる浦風蔭広
一安房上総かけて霞のはしかけん品川うらも下に見るかに米住
一縁結ふ神のますてふ出雲浦かすみも赤き糸はひきけり千柳亭
一去かすみひくやまさきのかつらより長くたえさる和歌の清女
むらさきの藤江の浦にふら〳〵と霞の棚をひき渡しけり
禁断の札もかくして明の如河漕かうらにひくかすみかな菊成
禁断のあこきか浦に引そむる霞のあみそゆるし色ある
わたつみの神あそひかも浦の面をおほふ霞のむらさきの幕
大谷
岩間
田子のうら霞につゝむふしのね管の咄しをゑかけるか如
喜足
江戸山五町
春なからまた夜や寒き住吉のうらの霞のころも薄くて
清女
一案内せし昔にこりて海瀬をもおほふ藤戸の浦の霞か
佐原
一浦の名のかすみかくれにみゆる哉風をいとはぬ浪の花さへ
高村
帯の如長く立らん春かすみはかたの浦にめくり〳〵て
橋向
門住
みほの浦むかしもりくや天人のかすみの衣松にかゝれり
これのみはゆるしの立やはる露あこきか浦に網をひくなり
仙府
イア千柳亭
佐保姫の着たる霞のす、そまくる風の手わさや童部の浦
松風の琴のしらへに引つれて最男や蛍ふきのうら
なまめける霞男は浦の名の袖をもひくや朝子夕なに
一志賀のうらひける霞の藍を出て煎より青し松の一木は
日光
塩かまの春のけしきのうら〳〵とうち煙りつゝたつ霞かな
薄墨にかくるゝことくみえぬるは絵處の浦の春霧かな
月入
うき業をあまはやすめとあみの浦霞はけるも引にけるかな
全
琴彈
仝
禁断のあ漕の浦も岩の霞の網を引いゆるしつ
五名数抄
阿波糸糸糸
内化糸丸
鏡なす海の面も高砂のうちのもやうもかすむ春の日
いせの海あこきか浦もかすみのみゆるしの色に網をひく也
千門
仝
朝風にかすみかゝりて風早の浦の名さへもかくす長閑さ
枝遊
仝
あさもよしゆふへもかくやきの国の和類の浦わの春の霞は
一樽
一佐保姫や霞の糸を引はへて浦の名におふ錦おるらん
六暁国
春雨のにこりにしまぬ初霞はちすの浦に糸やひくらん
須磨はのすまの浦松ひとすちにひける霞のいとも曲あり
京
九洲舎
仝
一尻嶋潟きのふの冬にうらかへる霞の帯もけふはふまめく
玉兎国
古河
見わたせは藤井の浦の春霞松のこすゑにかゝるむらさき
桑の門
霞ひく鳴門のうらの春のみは濁なき海を見るものとけし
恒光
佐保姫のかすみの衣立かへり又もきてみんわかの浦やま
宝来
一一角清竜
一余古の海かゝる露は水あひしあつまをとめの衣らやみん亀住
名古の浦しつむ夕日にくれにゐをふほまんとていたす霞か梅屋
梅さける子につの浦に棚ひきしかすみの袖も香に匂ひけり
名古屋
千糸亭
紫を海苔にも見せて春霞ひくにかくるゝ品川のうら清
海原にかゝる霞は神の代のかの際はしの跡にやあるらん
浦こにほす白魚もけふはまた霞のあみにかゝりこそすれ
蝕野
長閑し那浦のかすみのまくの内に浪のつゝみをうつ音のして蔦
立初るうすき露の衣着て風をふひきそわらいへの浦物種
よる浪の花さく春は色つきてにほふ霞のうらの朝なき六朶国
そさたゝむ夜のにしきの袖かうら地しるしやかすむふさ国
けさ春のさつや霞の袖かうら江戸紫のかゝる海苔鹿葉末季季
いさりせぬ御こきか浦にさやしくもそ朝は霞の網を引けり居鷹
明ほのにそめ出す色の霞こそ袖か浦辺にたなひさにけれ有歡堂君
▽名数抄
行平かしらへの琴の須藤うらけさ一筋に霞ひきけり清風
春の色はあらはれにけり幾たひもひくやあつか浦の霞に藪根彦
須戸のうらかゝる霞の玉すこれふるき都のおもかけやこれ勢槌人
藤いまた咲ぬなからも紫の霞そかゝる田枯のうら松
花姑に見とるゝ聟のうらゝかさうつとりとして衆ひきけり
春雨のみやのめくみに咲いてゝ子故のやみに匂ふ梅かた
土浦
見わたせは浦の霞に遠近の海士の小舟のみえつかくれつ
子日
千らせとも結ふ丁固り夢といふ野はらの小松ねこと引けり
子も野にひくや禿のみより松末は太夫の名をもおひなん
仙府
うつくしき中に瘤ある姫小雲ひかれてのほる雲のうへ哉
天宜
下総
菜畑の雪も田舎はきえなくに都は野への小松ひくなり
都曲国
若山
一酔しれて縫のもやうに小松ある妹かたもともひける子日野形柿
寄居
子日野の留守する妹も常盤津の老松ひきて千代せ院はん
宮人の小松ひく間を待わひて奴も野へにねのひしてをり
鼠にもあてし子のりの松ひかん歌の道をもきゝかしりては
手を経は琴や名を得ん二葉からよきねあらはす早野のの
仝
氏なくてゆくに生たつ姫小松玉のこしにものるかな
京
玉兎国
宮人に引のこされて中々に松はうれしき千代を経ぬらん
たる手にもひけはなれきて子日野の松は柳にまさるすまさち蓬莱居
なしみたるに松にいめれをしめるや根にすかりつゝ土のひかるゝ檜園
五渓
ちとせをもけふはゆくると子日野に小松や我を引よせにけん
檜陽亭
仙府
かしこにも子のりやすらん松のかけ浪にひかする龍の宮人
イフ千古亭
仝
天宜
姉はにはあらぬ松をも都人いさとてひけるけふの子の子の日野
名古屋
みちとせのよはひたもつや野への松もゝの媚ある孫ふひかれて千糸亭
▽名数抄
乗て来し駒をつなけは思はすも我より先へ小松引なり狐遊
姫小松千代の外にも舎人等はおのか力をためしにやひて
入道をにくむ昔の跡とめて大宮人は小松ひくなり
下総
もろ〳〵の直さをあけて撰まはやまかれるはおく子ものゝ松〽丹真寿雄
ひかてたゝ事しのくへき花にまたん枝ふりわろき野への小松は文泉舎
氏の名の小松床しな子日野の常磐の色を父はめつれと
一金平の力もからてたはやす〳〵ひく牛府根の里り野の松
村田
仙府
妹はれて小松ひくりは鼻の下難とともにのひぬへらなり
岩間
子のりにはひて手あまたの姫小松くとせをたれと契納らん
村田
喜足
御筆ある子の日の野への女松瘤も中て見にへからしな
千代かけて青きかのほるほとみえて子の日の姫ひくき松原
江戸嵜
波賀
鶯の初ねの日とて宮人は若菜の兵の小麦をそひて一鳳
村田
子も野の酒に小松を捨置て手をひかれゆく生酔もあり
菊久
結佐
居眠
子日野に松いそのまゝ猶おきて芝居の酒の跡をひきけり
阿波
をみな草のためしにひかん子り野の松は常磐の操あなれは
千門
ひかれていつれの宿にいたるそと冷汗をかて松の朝露
仝南方
千よろつとめてたきものゝ其中をみとりにひける子日野の松
阿波
我名をも祝ふ子もと鼠まて浦の松をひいてゆくなり
ひも千代いはふ子りは四里へに出て小松や竹の杖もひくらし
仝
けふといへは松の太夫の根引せん千ちのこかねにかふる初矢
たをやめは野にもいてすて松尽し引て遊ふや早日野の興い春秋庵
大野
いとひきゝ松を引つゝいと高き千世の類をしめんとそ思ふ
弘海
京
早日野に子枝孫枝ある松を引けり家の巣え脱ひて九州余
一孫や手をひかるゝ老も子日には引て来にけり野へのわか松
▽名数抄
一宮人やけふひかれんと兼てよりさか野の小松浅くおひけん山守
みや人の手ふりには似す四人の雪ふみしたきつゝに松ひけるは
守谷
に松をもひかす酒のみ跡ひいて野守る宿にねのひしてまし
阿波
立よりて小松をひかん子りするけふは大木の花もたのます
宮人のましろき手にて今松は雪にたわめる風情なりけり
打むれて露む草の日にをみれこそ野へに小松を引すりのに給
尾一宮
むらさきの霞のまたを引まはし君を待らん子日野のまつ
海老雄
仝
千代こめぬ松とてはなしかれこれと木言えらはすひけやもろ人
朋来庵
江戸山入同
一花垣
宮人も野への小松を子りには猫骨になりてひくそをかしき
今しはしまたはみこりになりなんを早日の小松引ぬくや宗そ
青公家の五位の蔵人装束の赤き顔して小松足なり
うられめもけふの草の日のはれきとて松の模様の裾やらん
白人の手にひかれけり力言ふあなる脇木とならん小松は文泉舎
君山
枝ふりかわるいなとゝて子も野にひきのこさるゝ松そ千代経ん
蔭広
仙府
残雪
雪なたや日の落れゝらこほちえぬ去ねのまゝなる雪の小塗
黒豆にあられとも見んしら雪の消のこりたる萩の焼はら
江戸崎
泡たちて雪はいはほに残りけり口そゝきたる跡と見るまて草雄
これしさは去ねのうちみとうらうへや足跡にのみ残るしら雪
阿波
嬉
立よらは大木と雪のくはぬらん小松の陰にふみけたれては
種ありて巌にのこる松か根の千代にあえてや雪の残れる
恩をもて縦にむくいぬ枝折し雪を木陰にかこふ山雲
濃州
白酸のむかししのひて若草をすゝき出すやしねのゝ白雪乙摘
みつめては白さまつゆき色なれや目薬ほとに消のくる雪六
有歓堂君
おりなしゝ姫のはたへの白妙や残れる雪のところまんさら
江戸嵜
等空
名数抄
十一
ひとらせは夢と過してけさはまたまほろしほとに残る白雪
日のあしの歩行とゝかぬ所かも手のひらほとにのこるしら雪
人のみか日のあしさくもいらされは八幡しらすにきえ残る雪
仙府
いなは心消のこる雪の舟兎霞の海にひたるかとみゆ
千柳亭
春くれは笑ひ出して山のはのふくみゆるは消残れる雪
日光
鳳鳴閣
照月にまかひしことは昔にて見る影もなくのこる白堂
山形{
蒔し如またらに残る田の雪は苗代水のたねとなるらん
越府
梅里
またらにも立わかれつゝ残るなりいなばの山のみねの白雪
阿波
満香気
ふるねにまろめし雪はまりほとにやはりあり〳〵庭の松陰
日光
枝をりし罪わふる如松陰にちちさくなりてのこる白雪
須弥丸
はこね心関の外面に残れるは手形をもたぬ雪女かも
春もまたまはりはてすやむさし野にしねの侭なる雪のみゆるは恒元
しら雪はひらの高ねに残りけり長等の山の花に焼ひて
下総
都曲国
結城
行かよふ人ふみしめてみ山路に黒くものこる去年の白雪
長住
尾一宮
朋来庵
枝折し罪ある雪は松か根にちいさくふりて残りをるらん
盛岡
冬は又谷の岩間に居すみるりからぶた程に消残る雪
真数香
尻すゑてすわる寒さやたのむらんわらふたなりに残るみや雪
堺
長樹
借銭を乞はたられし我宿に残れるものは雪のたかね
神路山松の木院に鏡ほとけのこる雪も光そひけり
江戸嵜
花垣
岐阜
峯にたつ雲はさらなり消のこる雪すら花とみよしのたむ
仝
滋見
故郷に雁は帰れともとの水に戻りかねてそのこるしら雪
岩間
仙府
黒髪の山の谷間につなかれてのこるや去ねの雪の白象
庭師かこもりしときく草山にまことすくなくのこるし大雪
日光
ありとしもしられぬはかりそここゝに雪消のこる国原の山
▽名数抄
仙府
夢山にけのこる雪やさなからに模かあましく不二のくひさし
消残る吉野の雪を花と見ておとろかれぬる竹の秋風
山の裾霞の衣の破れめより綿かともはん残るしら雪
可及
歌雄
帳面に棒はひきても春にまたきえ残りたる雪の白かね
同仝仝杉丸
杉丸
染病
熊笹のおふる山路はまたらにて月の輪の如残るしら雪
不尽ならぬ片山里も春来れはかのこまたらに消残る雪
在風
衣浦
竜住
雪仏けぬは春さへいたりえぬ西の御国の果かとそみる
青梅
咲まては是をも花とみなせとやよしのゝ山にのこるふ雪
深草や御くらか本に残り居る雪さへあえて花の塵満
祝町
木芳雄
寒さをももて来し雁の帰る跡に置みやけかも残ると女雪
岐阜
わか草は空の色にて武蔵野に残れる雪かをちのむら雲
俊直
また春もなしみうすくてうちむることならすして雪は残れり
またらにそ雪ものこれる涙かと春の雨ふる竹の葉かけは
君か為つめるわか菜に添もたん野へに消残る雪の真も
仙府
千菊園
東庄
道文
去ね花とめてられしより桜にも名をゆつらんど残る雪かも
名古屋
千糸亭
紀伊
佐保姫の器へる春の口もとに山のは白う雪そ残れる
蔦丸
ぬくとさに霞の衣のぬき綿か山の裾にものこるしら雪
仝
本来の水に戻らて残けるは春をさとらぬ雪達磨も
仝
常磐木の青みも見えて大根の尾張の山にのこるしら雪
仝
かすかにも白きを葉と思はれてとけかねたりし谷合の雪門鑑
佐保姫のわらひぞめたる山口に白き歯みする村消の雪
青梅のめには見えぬと春の来し足のあとほと残るしら雪梅柿
谷の戸に消残事雪はさく前に恥てやもろく水になるらん
尾一宮
笹丸
一笹丸
盛岡
めてらるゝほとい残りて初ものゝけしきを見する春の雪とけ
浜の屋
名教抄
日にそへて花の咲こそ嬉しけれ残る雪さべ色のかはれ婆
熊谷
おすわりのもちひはいかに日の鼠はみ残しさるしねの白雪
春風の手にもあまりしふ雪はわやくなる草やまろめおきけん
岩間
喜足
同梅の草ちらさてよるも吹風は心つくしに香やはこふらん
夜梅
日光
梅守の黒き心に闇ありて月夜も枝を折なやみけり
阿波
美人ともならは名たらん我軍へ夜母にかよふをちの梅かねへ
枝遊
ともし火の丁いふ頭をにほはすは学ひの窓の夜はの梅か香
仝
梅かくの匂ふ衣はぬは玉のやみにもよるのにしきとは見す蓬莱居
くれふゐのしそくてらしてよるも見んもかざのいろの梅の莟は
星と見る梅の薫は春の夜の闇にそいよくあらはれにける
香にめてゝうしろくらくも一枝をほしと思へるよるの白梅
仙府
千菊園
結城
一朧夜についふみきりし庭下駄のおもはすはなをとほす梅かゝ清
ぬは玉の夜さつや花の星明りそこゝなき道んしるき梅かゝ
秋長堂
朧夜の天にかはりて道のへの梅さく色は百八の星
山形
筆花国
岩間
一羅涙ならぬ爰にも我は宿からん女字ある梅の色に迷ひて
よるとても枝をな折そ指くひの女文字ある難波津の梅
こちらにてきをいためけり真春の梅かゝさそふ夜はの嵐に
世の中をいとひていりし山里にかくれかねたるよはのうめる香
信田
うくひすの初音やならて春のよは梅のかこめにとはす花笠
よひ〳〵はうちもねならんついひちの崩れしのひて通ふ梅かゝ
阿波
吉陰の梅のかほりもよるの道誘ひあはせて里へいつらん
京
一燈火を吹消す春の風の手にさくりあてたる夜はの梅かゝ
上天の星にはいれとよるの梅をるに音ありかくに音あり
思ひねの夢にも梅は匂ひけりかへす衣の袖のうつり夫蓬莱居
名教抄
深海
鎗梅の香は板塀のふし穴もつきぬくはかり匂堂の夜
くらふ山火ともす梅に宿からんたと〳〵しさをかことにはして
神泉永良
春雨のおやの心やいかならん夜歩行をする風の梅かゝ
一槌人
ひとりぬるこゝちのせね春の夜は梅のにほひの袖にうつりて
夜もすから妻よふ猫や麝香かとおもふはかりに匂ふ梅かゝ
さそはれし風にはくれて梅かゝはよるゆく人の袖にすかるか
夜も寝すに文好む木はうか〳〵と眠る柳をわらふなるへし
狸穴
東風ふきてかほる北野の梅の花よるは南の星になしかな松平
闇の夜の梅のにほひはとまるへきそてなきかたへまよひ行らん
匂はすはとらるましきをよるの梅ないてうたるゝ雉のたくひか
仝
たてつけのあはぬ我家のうれしさは透ま〳〵へよるの梅か香
窓守
大須加津
論語よむ意に火ともすよるの梅是さへ宇宙第一の花
魁の花のやり梅闇の夜をつらぬく匂ひ雄こしかりけり
竹来
手弱ゆる髪にたくへんぬはむのやみにも匂ふよるの梅かゝ
江戸寄
春の夜はくもりもはてすてりもせぬ月夜にしるき梅の星影
冷艶の梅は雪をも欺きて門に匂ひをはける春の夜
絵にかける女文字あるよるの梅にほひに心うこかしてけり
狸穴
同糸成
恋猫はうちにゐつかぬ春のよも夜着をくゝりてはひる梅かゝ
仙府
千柳亭
箱庭のすまから須磨へ咲みちてあかしにもなるよるの白梅
源氏窓ひらいてみれは瀧夜にひかるきみある庭の白梅
日光
春の夜の闇にもたつねまとはぬは火ともす梅の匂ひなりけり
梁の上をもこして夜いに入る風の君子の資む梅か香
東金
ぬは玉の闇もつく夜も出あるきこえ若木の花の梅か香
阿波
接穂して眼の梅の今になほいくより薫る星兜鉢染唐
五名数抄
十五
様のこゑも聞ゆるやみの夜に山路をおくる風のうめかゝ
玉川
まひなしにたゝは名のらぬ花なれと音をたつねてはよるさへそしる
丘也
詩にうゑて戸はさしなから諸人にかきつけらるゝよるの梅から
阿波
りし瀉春は霞の海のうちに夜母火どもす神かきのうめ
大野
あかぬかな夢もうつゝも梅わのみちわたりぬる春のよの歯
京
梅かえに残れる雪は月かけに星かけかくすたくひなりけり
九洲舎
うちにねすめてあかしけり通ひくるよひ〳〵ことの風の梅か香蓬莱
匂ひのみしるへにはしつ咲梅のはなつまるゝもしれぬ関夜
古河
紅もふきもわかす闇のよのまくらに匂ふ風のこめかゝ
三州小川
まつ妹か袖の匂ひと思ふまて閨へもりよふ夜はのうめから
守谷
久かたの月ふき夜はも梅の花やみにあやある小ほひ也けり数成
下総
闇の夜の匂ひもとより通燈籠火うらす梅のいろもかくれす都曲固
宝来
香はまゝにちらさはちらせ小柿ほらし見あかぬ梅の花後かせし
名古屋
火をともす梅の油やとりつらん祇園の杜の響は河ややふし千糸亭
呉はとりあやなき闇の錦より匂ふ小袖の梅かかゝきぬ
佐世
文このむ心ならひに梅の花しつけきよるとむねと薫るは
淡路
貞樹法師
沼田
長記
目をあきてみれはみえすて袖にかをとめて詠むる夜はの梅かゝ
堺
匂ひなき空の星になまかへそとよるも絶せすかほる梅かく
あつめたる雪はつるまて咲にけり夜学の窓にふみ好む梅
錦とも見る若梅の朱賢臣よるふく風の香はさそへとも
村田
山家鶯
○鳥春あさみひえのやまかに鶯の経よむ舌もほり出しもの
岩間
喜足
音たくる杣人の斧こゝろしてなく鶯の琴なやふりそ
日光
清音
山里はけふうくひその初音とてまつふれ流す廿日正月春秋菴
うくひすの類はけたりし山人のたきゝをおへる宿にふけとも蓬莱居
名数抄
十六
おのつから春は谷間をうかれ出て峯の高きにうつる鶯雲井国
鶯も時えし春と鷲の山今や誠の経をとくらん
六朶園
堺
浮雲と宝は見なす山住も捨すゝぬ玉ようくひすの声
一槌人
在江戸
扇さへなき山さともうくひすのはつ音とくきく徳口ありけり
飯成
貞加津
山路は隣の遠き老の耳にめつらしときく藪の鶯
元英
結佐
ことたらぬ山さとなれとうくひすの初音の玉は手にとるかめ
浦人
佐原
蔦村
のかれすむしはのあみとのしは〳〵もひとくといとふ鶯のこゑ
狸穴
糸成
月となく鶯を手にとらんとて心の猿のさわく山すみ
朝子〳〵来て鶯も法花経となくはたふときまきの花どり戸
阿波
暁
京
そくひすにとはるゝけにはかくれかの山桜戸も明ほのゝ空
常葉園
濃州
心なき本のひゝきにうくひすの初音の玉をくたく山崎
枝尚
宝来
山にいる人の心をくみわけてひとくといとふ軒のうくひつ
木紙にて熟けるむか国原のやまかの軒に来なく鶯最中
千代倉
おのつからほとよくきける主ひすに伶天翁もしのふ山住
くれ竹の周にそたちて宇治山に経よむ鳥や優世寒の宮
うくひすの声を肴に酒くまん小鍋もあらぬ山すみの庵
世を捨て入にし山のいほりにも鶯のみそほたしなりける
山住は木こり水くみうくひすをきく耳さへもやすむまなき
角寄
夢成
日光
一春くれは宇治の山里庵をく辰巳あかりにうくひすの鳴
岩間
文質を兼とやいはん鶯は山かにすめとるもよめるは
業平の竹に生れて舌たらぬ在五そたちの藪のうくひす
山家より籠にのり出す鶯は金衣美馬の名さへふさはし
村田
世にうときやまかの賤も鶯をきく耳はかりもてるやさしさ
人来へき仰りまれなる柴の戸ふ日母音なふうくひすの弾
結佐
名数抄
結佐
木曽山のろくづ細工の底に来てよへもまはれる鶯の舌
杣人の音はかりきく山かにもかとのとれたるうくひすの声
聞わくる人たになきを打わりし畳引鳥もなける山さと
世をすてゝ入にし嵯峨の山里に経よむ鳥の今もきなへか
信田
唯一の伊勢の山家も春来れは経よむ鳥をめつるをかしさ
狸穴
山家とて葉の戸口もひとつなる袋塩はむうろひすか声
うくひすの声を経とも詩朝ともきく耳なしの山里小なく
若山
鹿を追ふ猟師もけさはうくひすの初音を聞て山をみるらん
春もはや暮るやまかに今打し月もほしとやうくひすの時
浮世をはすてゝいりにし山里に経はかりよむ鶯のこゑ唯澄
山里は水菜小松菜庭にあれはなにふそくなく鶯を飼ふ
類をよみ経よむ鳥を山家にはかの西行のたまとみるらん春香
敷辺の道のひらけぬ里もなし山のおくに入もうくひ浪の類
御ぬれはねくらの竹のよの中をさくる庵にも来なく鶯
来る人もまれふる山の庵ちかく春をつけてや来なく鶯
是成
一ゆしのくみのゝ山かの軒端へは桜の花かさきなく鶯
生盛
梅よりも松葉をすきて鶯の声も方士のすみか放れて
よき耳や持けん来なく鶯をきくらけおふる山のひとつ家
仲住
世の中のうさを遁るゝ山住に人来とつくる鶯や何
山住のうしろかこひの痩竹にふし高うなくけさの鶯
法華経のまきのいほりふひとりよむふみを学ひふ来鳴鴬
仝
暁
山里の都の梅に天もんの月日星まて学ふうくひす
仝
六暁国
舟板をきり出すへ杣か軒に来て琴引そむるわひすの詳
空をのみなかめくらして鶯の声の月日を過す山すみ道丸
▽名数抄
十八
鶯に春つけられて山里はけふ正月とふれ馬賎の男
国栖人もしらぬじらへやみよしのゝむりにきく鶯の笛
古河
桑の門
仙府
千菊国
沼田
山人の山田の庵に詠るのたねをまき松く鶯のこゑ
国明
兵庫
湯へむ投るり如し山里の無仏世界に経をよむ鳥
一の屋
鵜飼同
経験て顕をよむにも静なる山里よしと鶯のなく
市場
山ふかみ雪たに消ぬ紫の戸に春そとしるきうくひすの声
緑
一御仏をたのみていりし山すまひ経よむ鳥も友と社みれ
津山
同幸山親
宮
山さともすめは都そ顕をよみ琴ひく鳥を友となしつゝ
滝見
東庄
春されは鶯のみはまたれけり人来をいとふ山すみの身も
東庄道文
道文
佐世之
鶯のひなとりはまた都をもしらて山家にかたことをなく
太郎太太
山さとの庭のかけひも鶯の小鍋をあらふほとはたりけり
うくひすの初音をきけは煮より山さと早く春や立らん
高崎
海川へ遠きやまかに経よみてすり餌の魚ははまぬ鶯
海川へ遠きやまかに経よみてすり脾の魚ははまぬ鶯
館林
うくひすははなち飼にて籠ほとの家に声きく山そたのしき
野馬台の蜘を餌にはむ鶯は春とよまする吉備の山里
岐阜
江戸崎
両中柳
柳春雨の柳につよくあたれるは花のなき木やふりよかるらん
窓守
仙府
千柳亭
雨そゝく見かへり柳これのみは髪あらひ日もきためさりけり
阿波
春雨の一夜にめくみ生るはに牡后か腰もしのふ青柳
六暁国
染るにもかよわき枝をいためしと柳に雨のこまかくそふる
楊墨はともになけかん春雨に岐路の柳の糸をそむれは
仝
長房
ぬか雨に洗ふ青柳手のなきは油のぬけし髪のたくひか
大須加津
薪つみ祈れるさまやうちけふる柊のえたにそゝくはるさめ
村田
春雨の松やのあし音聞つけてめやひらくらんねふる青柳
菊久
ふりつゝく雨にきれ間は見えねともむすひめの出る青柊の糸
▽名数抄
あはれとも見る梅若のいと極めことにたるゝ事の夕露
雪しのく時は姿もかゝまりて長閑な事に延る青柳
るよみてぬるゝ小町のおもかける神泉苑の事のあをやき
信田
常有
須加津
藤丸
若山
一円栗国
寄居
ふる雨に炭も藻塩もやかぬ日はなか〳〵けふる春の青柳
ふる雨に炭と葉塩もやうぬ日はなか〳〵けふる春の青柳長房
筒井筒をさなき春の事いくるふりわけ髪やたるゝ青柳
阿波
鈴成
世の蔵をはらはんとしもほつすらん事に軒はく寺の青柳
仝
正明
春雨にいよゝつやます青柳をうつろふ梅やねたく思はん
名古屋
一泰山法師
青柳は髪も結はぬ手油を落せとふれるぬかまやおそ
兵庫
。唐歌
青柳は髪あらふとてふる雨を湯になさんとや惟たてけん
土屋
土屋
酒盛
じめ縄のわらもて結ふ姿かなあらひ髪なす雨の青極
下もえのますをます穂を見分んと事もいとはぬ青柳の善
関宿
檜集図
髪切てさゝくるさまや降雨のめくみもおもき春の青極仝
こゝに蓑ありといはまし持資りよるてふ門の雨の青柳仝
縮林
春雨にうたれなからもやはらかにきのふとからぬ糸極かな
知義
千代倉
髪かたちなほき柳はかそいろの事のそたてや正しかるらん
清英
岐阜
糸に急ましりて乱す風情かな雨ふりかゝる軒の青柳
滋見
秋は又もみちぬ柳中こに春ふる事に色をそめけり
仝
さく花の王のかたへに雨の日は水晶簾とたるゝ青極
若山
國栗國
大須加津
既籍ににはの柊ははるさめのふり来るたひにめを青くしつ
元機
江戸山入司
春雨にぬれてしたゝる青格は水をくゝりし髪かとそみる
窓守
仝
君か代はあさてところり十日めの事に染けりあをやきの糸
青杉の枝もしとゝにぬれぬらんめのうへおもき青句の朝
村田
あめの日はたこの足にも似たりけり露を結へる青柳の糸
買主
奥津
一去句にあらふ柊の髪かたちむすひあけなはいかに増らん光輝
名数抄
春雨の親にうたれし契りもめをふいて辰子門のあをやき広記
粥杖にきらぬ柊のこすゑにも月の少女そ露をはらめる
若山
こぬかてふ事に柳の立よきは髪をあらへるをみなとやみん
東金
かそいろの雨も極はをみな子とたらしかちにやそたてあくらん
阿波
七月月
青柳のその孫枝もたらちねの事のおとにはめをひらくらん
ねはん会の頃ふる雨に瓦家の鬼もめをふく寺の青柳
仝
春香
糠の如ふる春雨に青極の髪すく風の手やあらふらん
春雨にぬれて船引淀川にみの毛とたるゝきしの青柳
春雨に薪ふらせる宮舟の上にけふれる青柊のえた
おとなしくふる春句にいかなれはおとろにみたす青柳の髪
青柳の手玉もゆらにふる事は春におもへる人や侍らん
衣てふ川へに年をふるやなき事にも糸はみたさゝりけり
風の手によるとはすれとみたれけり杉のいとに春雨のいと
衣捕
くしけつる風や五日め十日めの事に髪をもあらふ青梅
春雨にぬれても髪のうつくしき柳は海まのたくひならめや
岡部
三千歳
仙府
千菊園
兵庫
天上をなせるりやく春雨にけふる高野の山の堀柳の
いつもとの様に雨のおもれるは五斗米に腰をるるとそみる
仙府
鵜飼飼
一壱雨の降るや霞の衣ほすしつくのたるたは柳の露敬
津山
ぬきみたるむとこそみれ春雨の雫のつたふ海をやきの枝
土屋
しめるほと葉のひろかるは加賀蓑にたくふなるらん雨の青柳
ちる花の白水流す谷川に柊の髪をあらふはるさめ梅
思はすもあくひの出る春雨にのひ〳〵したる昼のあをやき
雨ふれは気うつもよほすならひとてそよく柳もものうけにみゆ
雨やみをまたていてぬる芒蓮かみのなす柳兵馬渡辺
関宿
▽名数抄
春雨の染てかけけん紺かきる軒に露たる青柳のいと花月堂
雨はれてあくるあま戸にはら〳〵とまたも音する青極の枝若葉
雨こひの小町ともし見んさけかみはぬれてつやある峯の青極呑安
春雨の親は節より青柳を糸よいとよとめつるさやあり
庭もせに枝ふりふかくしたるゝは柳かたかたか柳か最中
一降初る昼の柳は事こひてぬれし小町か髪と社みれ大
白露の結ひめみせて其句にたるゝ極は糸のはすちん六朶園
在福島
人のみか降春雨に青柳の目もとも日々に成れる名
親としもよふは小糠の雨なれは犬ころ柳そたちこそすれ
父母の雨にすこしもさからは始終はいとゝすな心なりけり
ぬれてなほいろよきものよ春色にふりみたしたるまゝ柳のかみ
たてぬきと見る川はたの春雨に応おりこむ青柊のいと
春雨に庭の柳のみたれしはさゝめのきぬのこゝちこそすれ
沼田
長記
小野
高き家の昔もかゞくやひくきやに焼ふきはふ事の河をやき
友直
蒲
事の糸柳のいとにふりませてなか〳〵しくもはれぬわひしさ
千年
江戸寄
春曙
前鳥小夢さまされてにくしともおもひたとらぬ春の明ほの
絵にかゝは是もおとらんなへて世は桜いろなるはるの明ちの
花鳥はいふまてもなし烏なく並木の盛の春の明ほの
花月堂
尾一宮
花なくは定の児鳥鳴かきりねてきかましをはるのあけほの
朋来庵
岐阜
うつし絵のあやにもいかておよふへき花捨山のはるの明ほの
滋見
跡先のかすみてわかぬ明ほのはたか見残しゝ草路なるらん
混沌とかすめる空もやくはれていふにいはれぬはなの咲
月朝は花にのこりてそよくと風さへにほふはるのあけほの
子文
梅かえに星を残して鶯の声よりあへるはるのよこ雲
て諸雄
▽名教抄
追々にきえたる星はみな梅の花にやゆつるはるの咲下杉丸
いつはあれと此上にほふ武蔵問わの春の御ほのあはれとそみる檜園
ふしかねの雪よりしらむ横雲は霞の海の明ほのたそら
恋をする人の別れをいきたなしと山戸笑ふる春の明ほの
名古屋
村田
菊成
耶鄲の夢にまされり一時の富の小路のはるのあほの
夢さめて枕草琴のおもかけや烏みつよつ春の段ほの
受領
福向
ね下師の箱根の山か五色なす雲もたなひくはるの曙
門住
九沢
はつ夢の茄子のゆかりの色みえて薄紫にかすむ明ほの
黒主
大空はしらみわたりて咲梅の星のみ残る春の河けほの
保原
曙
むかさきの霞の衣をおりはへて春の緑のうらゝかな冬鴫立
阿波
極より空もみとりやくれふゐの花の春なる曙の空
一六暁国
仝
け五春は東よりたつためしにや江戸むらさきの曙が空笋芽
恋にこそいとはめ春の明ほのは鶏もうれしや鐘もうれしや
清水へ朝まゐりするをみなさへ花とみやこのはるの明仄
千金の宵よりはまた結構と鶏すくもなくはるのあけほの
仝
人みなに花見てけふも荒りせとやさくら色なる春の御風の
玉兎因
目の覚るさかりの梅かからす猫肝はをわたる春のあけほの
在江戸
はるたては飲めへる老人ならの里にもまさる早起
関宿
檜集図
かゝる時花はめくまん山のはにくれなゐにほふはるの明ほの
方上
山守
むらさきの名ある霞も出るものさけはうはゝぬはるの咲
金沢
千枚業
にはつ鳥なくやたれ尾の誰となくいさむこゝろのはるはる○堤
岡崎
三四
海原の盛に初日の死さしてむかすむうらのあけほの
仙府
多琴
霞たち木のめもはるの明ほのは薬なき口もあかすみそみれ
ヒ申
初夢のこふしの鷹のひものひて紫見す事はるのあけほの
▽名数抄
山のはにかゝる霞ともろともに心ひきたつはるの明ほの
むらさきはさめ安きみことぬは玉の黒双紙にやつゝむ曙
須加津
一花またき頃よりなかめふかゝるはさくら色なる春の暁玉輝
竹の秋と人はいへとも山さとは心うきたつ春の御ほの
岐阜
江戸山哥
はつせ山梅のさかりは久かたの空さへにほふはるの明友
阿波
帰雁
姉雁雲之か日記の哀や数たらて土佐の海へを帰る雁かね
生盛
ふる里へかへるに日をやえらふらん梅暦をも見つゝゆく雁
仝
ゆく雁の文字すくなきは文使またせてかきしかへしそみる
名古屋
懸惣又つとにももたてかくれるは春の心はあらぬかりかね
京
房王兎國
雲井国
石ふみの文字をならふかち筆柄多胡の春野を帰る石ね
関宿
昇優の霞のはしをゆく雁も文字をとゝめて後や賀れる
昇僊の霞のはしをゆく雁も文字をとゝめて後やそれる檜集団
かちなみてしかにの海に棹さすは船路やかへる春の石跡
盃に影どうつして行房をおさへて見たきこゝちこそすれ呑安
在福島
こと国の蘇武か忠義を立させし棹をねかして帰る所ね
村田
おのつから手形の文字をかつみせて露の関をかへる雁かね菊
江戸崎
山鳥も跡を湯さぬ心にや麦の畑よりかへる雁かね
のこさるゝ我身もあるになく〳〵もなれは故郷へ帰る雁かね
仝
仙府
高野正児さくらをも見捨つゝゆく墨皮の衣よりかね
千柳亭
日光
神の代の春にいまれて墨浦のころも雁かねいつち行らん
鳳鳴閣
桜見ぬ雁は事なくふる里へ帰るを蔵と思ふなるへし
つはくらのわたるそれ矢におそれしか乱れてひける石ねの車
保有
それから文字をつくりて鬼の如夜にも啼くゝふる雁かね
阿波
野あらしと人のそしりや恥ぬらんつらをそむけて帰るてね
帰るとも秋は又も成こんてんき北計の星をさして行雁
▽名数抄
これもまた六位宿世と人皆みん青花かへる衣かりかね
とく行て雁よとく来よ春は草ようときも秋は草となかめん檜
池水を湯さすたちてすめるもの登りし空をかへる雁かね
方上
山守
秋わたる雁と思へは春さへもかへるゆふへの空そ淋しき
仝
雲井国
うとまれて森の畑より立雁も跡は湯さぬ水いろの空
東金
来しをりの藪にやたらぬ土佐の海みかへりかちに行雁のふみ
古河
わか国の桜咲ぬとふるさとへかたれたのむの沢を立雁
日光
花もみす長き海路をゆく一人はしら浪といふ名にやおちけん
つはくらのかまとの数をかそへつゝ備みたして雁のゆくらん
名古屋一
桶の継木にせんとさく梅の枝をくいへて雁はゆくらん千糸亭
御殿山御くら咲くろ雁かねははねたの花も見捨てそゆく清人
壱霞立ていつくの田面にもゐるゝ共なしと雁のゆくらん六朶園
故郷へ無事てかへるを花にしてさくらも見すに帰る万ね
山形
我国ゆ渡りし雁は真名文字のかへるならひと春は行かも
江戸崎
ふ浪にあとやおはるゝ土佐の海を逃るか如く帰るかりかね
阿波
さみせんの糸のあそへる空に又棹ともなりて帰る雁かね
上総
やらしとてとむるつか帰り路をまとふかすみの衣よりかね
秋の頃かりにし書を今かへすこゝちして見る一かねの字文亀
隅田川花を見捨て夕くれに棹さしかへる雁のひとつら
狸穴
ゆく雁のかけぬる橋もかすみてはなかはたえたるかつらきの心
仙府
寄居
ほに出てまねかは来んと若もえの薄にちきり一や行らん長
咲前のにかたまもの意すして五湖のかたへとかへる雁かね
村田
大谷
易にのみ心よすれは行雁も河国や洛書のさまに無なり大名近
粟嶋の浪のあわにやはしかれて常世をさして死帰る雁今
▽名数抄
犬の草の姥捨山にさく花の雪をみすてゝ帰る雁かね
涕臣か賤のこの字なしてかへんなんいさと越路へ雁の行らん
おほろ夜の星を目あてにもろこしの梅さく峯を雁ありらん
かんならすさくらの頃は帰る雁さきぬと告るふみのこくひか
城等かなす合戦の伏勢につらをみたしてかへる名かね
形樹
花をうとみゆく雁なそと人とはゝときはそおのる国ととたへん
合戦する小田の城に殿をたのみてひくる雁かねの陣
八幡山まはりの頃に来し雁の春もみこしをさしてかへれり
沓掛
故郷の義国張して又来んとゆくはよこれし衣部かね
百草国
歌文
たくひなき花を見すてゝ山にさへ笑はれなから帰るかかね
友成
遠山の雪はかりかは見るまゝに雲にきえゆく春の石ね
浪たゝぬかすみの海はしつけしと雁のみふねのゆたにゆくらん千門
故さとの空にやかへる浦の名によへる銭の衣かりかね
嬉
錦をもかさらて帰りゆく雁にさくはつ花の衣かせやま
染店
仲住
吉野心おくれてかへる雁かねは花に名残やをしむなるらん
仝静丸
帰りゆく雁の玉章よみ見れはかへすら〳〵ももしき別路
鈴藤山こえゆく雁と旅笠のしるしの文字もならふ春の日
無道
高くひすの音にや其つらんみ空なる月日にうしろみせて行み
仝
春雨にぬれし羽油や干ならん羊ともなりてかへる雁かね
好人
古郷へいそきて花のにしきさへきすてそかへる衣かりかね
仝
仝六暁国
銭つきしやうにならひて浦いたへ青海なみの上をゆく雁
野馬台の詩の文字なしてさゝかにのくもゐはるかに帰る万年
ふりむかて行は色なきをのこにもたとへん春の春の花しらぬ
こか身なくとさとする木のはしをくはへてかりの世をのかれゆく蓬莱居
▽名数抄
花さかは帰る心もわすれんといらかぬうちに急たかん楽住
ゆく舟の船の音なしつみよしのゝ薬の浪間をかへる雁かね
捨かこの子等引つれて妹か名の常磐の国へかへる雁も
水にかく文字とこそみれ海にせる霞の中に雁のきえゆく須弥九
立わかれ因幡の山を跡にして松のときはへかへる雁かね
津山
千はやふる神の御幸にあらねともみこしをさして帰る雁かね
仝
さく花の錦の衣きもやらて故郷さして帰るかりかね
潜竜
見付
風にちる桜を見子はうからんと一ほさとりて帰るなるらん
春の雁くはへて帰る一枝はなかの旅路の杖にせんとか万葉亭
官石
山里の花のつかひのそれならて常世にいそく雁の玉つさ滝見
故郷に錠をおろしておきつらん鍵となりつゝアめ帰るは
長脇を帰るつひえのかり金とゆひさゝるをくいて鳴りも食翁
咲花を見すてゝゆくと山々の笑ふをよそに帰るかね
雲の泥ゆたのたゆたに帰る鳥声を帆にあけて船をこく如
御く花は香量ならんはるまゝに雲ゐにきゆる雁の玉草呑安
ふさくらやゝ咲頃にあまつて越路にかへるはなをそろへつ笑持
越路へと自らもはかとらす跡や先なる左のなか又最中
竹の秋去年来し名にもにたり舟棹さし達て帰る雁年
空の海碇の足を引あけて舟こくさまにかへる雁かね下家父
やへひらへ声も霞にこもりうた河の山こえて帰る万事
高崎
御く花の娘たらぬまと雁の舟なきたる雲の海やりらん
盛岡
正蔭
世の中をゆする力のある花をいつらは雁の投すてゝゆく
仝
夜を深く迷はて帰る雁の舟うこかぬ星を目当にやする
浜の屋
千金の花のうき世を捨て行なや墨浦の衣かりかね
名数抄
空むいて文字習ふ子に似くりけり一はん先へふる雁かね
脇さしのこねに霞のたつ時はこしくさしてそ帰るかりかね
通眼は誠なしとて花山をあとになしつゝ帰る雁のね
帯と見る霞のすゑを行雁はさなから文字の織とめとみん
岐阜
雀店
月雪になれても花を見ぬ雁はみちてはかくるならひをやしる
仝
海こえて浪路はるかにゆく雁は水に数かく文字と消めり
早蕨
王蔵之かくの字なす一は石を根となしと其間に打こんて行
一水くきの器にとりつゝ妹とあれと枕になさん早花のひち
村田
江戸崎
其色に紫気のみゆるは老酣かのりし牛屋の岡の草華
仙府
イフ千柳亭
七草につみ残さのしうらみにやこふしをにきる野への里藤
若山
雪翁の水におほるゝけんよめの在所の蕨其手とらまし
東金
秀作舎
花嫁の佐保酢いはふ墨塗にくろきとふしをみする里蕨梅屋
一つよいれし妹かに笠に笠南の来をもうはふ契のちり仝
其国の食ははましとむらさきのちりをえらめる人そかしとき秋一
さわらひのまくり手をして世をゆする花に身をたくふをかしさ
盛岡
又東のふみな折らせそ唐塚に見くるしからぬむらさき此郭こ
山形
華花因
髯と見る薄の中に光陰の矢疵はみえぬさわらひの腕
村田
波賀
先は江戸自慢かもむさし野に腕まくりして出る早蕨
松風の琴の調子をうたかふる脇をくみたる野へのさわらひ
仝
若もえの鋸草にましらひておふるわらひの腕の喜三郎
仙府
千柳亭
つみためて山をなしけりつくはねの麓におふるむらさきの蔵か
東金
秀作舎
ゑんこうはいかに見るらん月影を手ことにゝきる露の早落
寄居
さわらひを折るにうかれてかた岡やうえもわすれて我遊いつ
二河
越府
今張り棚になす間もまたすして雨にひちける野への早顔梅里
五名教抄
二十八
一我もまたぬすみ出なんうつくしき北山野への葉のちり
仝
さほ姫のくるはれしと手を上てまねくやうにもみねの葉厳
母人
浦島か箱根あたりにもえ置てひらかぬうちをめつる筆蕨
一竜住
仏の座おふる嵯峨野の早落は釈迦頭ともうつはまきけり
鷲はなつ狩路の小野に春といへは崩る蕨の穂をつみきう
仙府
高雄心もゆるわらひも文覚かこふしに似たる西行着頃
ものくはてうゑしこふしやふせわらひ伯春か昔侍にたつ梅屋
さほ姫かおくり来始の年玉にのしを添たる山のさわらひ清人
手を出して残れる雪を一握り夏まてももて谷のさわらひ
まはゆしと手をかさしけり早厳も夕日の朱は奪はれしとて
千代倉
是も又南に向つ橋南車のかたちの小野の早蕨のうて清英
宮人の小松引ぬるかたはらに手に汗にきる露の早蕨文泉命
さほ姫やかさてあけらん子藤は小さ〳〵をするをさないふのさま
江戸崎
春日野にやたもえそむる子蔭のをりよさすになりにける哉子
西もの桜にこふしふりあけし高雄の山の峯のこわらひ
侍
し笠の山僧もわけいる蕨狩手をとるからにゆらくむの緒
春雨のうふ湯そゝきて早蕨のこふしいらさしみとり子の山
石案かと見の岡へに珊琉珠をくたきし如意とみゆる早落
今も又やかれし草の黒塚に鬼わらひおふるあたち野の原
手枕の小野の蕨もこゝくよくのはさぬ内を人のめつらん
東金
あたし名の立田の山の初顔鍵といはるゝ手をやはつらん
秀作舎
金山におふれと人のとらされば手をむなしうそすなる里鼠
阿波
内の栗はまぬ心に早蕨のあくのつよきをなとかめつらん
さえかへるこその寒さに早蕨も手をちゝめ居る山のふところ
▽名教抄
書とにのしはそへねとひらかなののしといふ字にみゆる早落
仝
をらはやとしらぬ山路もふみ見るは源氏の巻にいつる早落
枝遊
仝
六暁国
まわらひにそ一とおこせる文すらも手のよしあしをいふそをかしき
名古屋
泰山法師
にきる手を朝日にいらく早蕨の露は尊き仏舎利の如
守谷
松入
まわらひの握りこふしを枕にてしはしまとろむ春の夢山
金沢
きゝす鳴やけのゝわらひつとにしておくるも近く子を思ふ親
千枝業
信夫
道盛
就になる蛇の穴より朝露の山をにきりて出る早落
芦沢
はし鷹の御狩の津への早鼠のこふしの露も野くみえけり
とふへもなき山里の早落は何かそへてか指をゝるらん
御遊ひの千ちにふまれて嬉しとや握る拳の紫の花の
は〳〵と春のりあしの仲しとは谷の鼠の手にそしらるゝ
葉てふ山へになとか馬蕨のこふしにきりて風にふるらん
朝春雨
もろこしかはらからつきて帰りけり瀧のためにはならぬ早嶺
一音澄
すきはひのたすけにせんと山崎は落の手をもかりに行けり
盛岡
山さとにそたつわらひは和ちかに見えてもとこかかたけ也けり
正蔭
仝
あふさなん火暑に似たる早落に灰さし鍋に湯わかせ子供
江戸江江守
真数香
岩田川きしのひたひをたとなり風にゆらるゝ早蕨のうて
松年
のとかなる春まて雪にこもりくのはつせの山に出るさわらひ
朝戸出に一里きてから旅人の笠かしつくのたるゝ春ま
花垣
あさな〳〵ふるはるさめのつれ〳〵にふらすか岡の花を見へ
本安
江戸嵜
きめ〳〵の涙よりしてさほ順のころもはるさめ降まさりけ
子文
阿波
朝寝して夢をむすへはまた横の命をつふく春雨の糸
面也
仝安宅
引まきの合羽にあらぬふとん着て旅の夢見る春雨の影
空見
木も草もひときは如をはひらけともいとゝ洩たき春の類雨
五名数抄
南畑
海棠の寐顔めてゝや朝またき野とにたてぬかそいろの雨
亀成
朝な〳〵雪はつるまて前の顔猶みかけとやぬかまのふら文泉舎
岩間
尭の代の斎のみつのあしたより四方の民学悪むはるゆ喜足
角崎
朝またきなく鶯に心して足音せぬかはるのぬか雨夢閉
岩間
あしたとく四方の草木を恵みぬ事しゆんうともいふか大年の恩
喜足
青梅
しつかさのその類のさに朝ぬしてねいりはなをも咲す春雨
扇松垣
方上
佐保姫の乗すてぬらん三日月の舟は露の浪にたらよふ山守
さけかしと花まつけるも春雨のあしの松そきはうとみえけり
たまさかに軒の玉水音つれて寐心のよき今朝の春雨
新端なるしのふ伝ひて朝またき雫に音を立る春合六朶国
伊勢
花さかす雨としきけはうれしくて祝ふたき眺さへひらは候哉歌良左
す雨の朝の四つからやまさるは暮にみつほと花つけんとか緑樹園
当座若水
緑洞園菊成撰
君山
一若水をくみし手桶の熊野杉おきにしあとにのこる月の輪蔭頗
と初はまたせぬうちに車井の縄を結ひてくある若水
岩間
喜足
江戸端
おもかけのかはらぬことをみなへのねきてやくめるけさの君れ
浪風のたゝぬ井戸より汲てけさをさまる御代をいはふ若水
仝
山の井の古きをさつね新しき年を祝うてくめるわる水
狸穴
咲梅の星かけうつる若水を井戸よりくめる鎌倉の里菊成
鯉鱗集納会追加混雑
うと〳〵と侍夜にたえぬ居眠りは君に心の魂やかまへる
岐阜
俊直
津
津留丸
雪とけの水の流るゝ音たかし春来し山の笑ひ声かも
岐阜
ふく風のすゝしきけふも不二の山社の扇と見捨かねけり
宝玉子
仝
俊清
をさまれる御代のみゆきやもり砂のかけす崩れすむふ雲ね
名数抄
三十一絵
21356
岐阜
日の玉御君かめくみのあつくして不宮府のたゝむ間葉き
俊直
若山
一本としもめてこれんよりたまにあふ髪かはらくまつときそなき
なけきはしひとりぬるよに引かへてあくる間早き逢夜はの空
はくかしくあふ夜はあけをうははんともし火熱ふ紫のきぬ
一金されは腹さへくろく
急草に便のしくれかゝるとも紅葉なしそ色に出めや
やまへの術もおよはし日の成のかたち縮めてみする情頭
仝
実則
もえいつる伊吹の山のさしゆくさ霞の衣をまへに着てけり
津
津喜丸
狂歌和漢名数抄初会終
同断
三十四ツ
牛メ
六百七十九