貴賎百首

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四方歌垣選
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四方歌垣選
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キセンヒャクシュ
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東北大学
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俳諧歌貴賤百首 俳諧歌貴賤百有 二月 初春霞鶯梅聞恋 憲冨山國穀類公家 四月 閏月 五月 柳花花原風落花不逢恋 恋山家湖野菜船 帰雁春野牡丹杜若忍通恋 恋隅田川坂草武士 更衣時鳥山時鳥時鳥遍占応 応閑居瀧木車 早苗水鶏競馬納涼変約応 六月 恋芳野山里鳥諸工人 覚弁恭信師ノ副会ヲ 以テ聞入せり 狩野亭吉防書様画 俳諧歌貴賤百首巻上 初春 撰者四方歌垣 龍 都へといそぎて春は過にしをいかなる霞たちとまるらむ俊頼朝臣 波那細 草の戸も春は畳の若みどりねよげに人のむすぶはつ夢 信濃諏方 此ねぬる夜の間に夢の浮櫛をそつと渡りて春は来にけり 裏微加花三 山は雪川は氷の春にはやあたゝかき風はいづこより出し年長 上総芳野 春やとき花や遅きととへどまだ鶯だにも口をとぢをる浅十 奥栄折 雪よりなる芹のふる葉はたゝかれてたゝかれぬ菜をたゝく七草金文 佐保姫の衣のつまを鳥が鳴東から実に春は来にけり松彦 いとけなき春と思ひて東より霞男やそひて来ぬらん真史 出羽山形 何といふ花ぞと梅の咲出て東より来し春なぶりそ 真砂雄 裏微加花二 さし登る初日の影のうつりては障子も春の桜薄様松秀 立帰る春の姿や見わすれしまだ物いはぬ雪の下水春満 下野大田原 初日影匂へる春の日のもとのかたじけなさは身に染わたる景山 春もたち霞も立し元日は寝るつもりでもねられざりけり跡人 今朝来しと都の人の耳にたつ東なまりの春風の声諸実 起よとの鐘の声より霞つゝぼんやり明る春の初空春妹 裏徴 むら〳〵と残りし雪の鷺の中に春やときとは思はれにける 駿府 直古 立そむる薄き霞の取着てをさなき春よ風な引そね 水戸 栄 仍て今朝先よきものは野山より若やぐ人の景色なりけり 初夏の鷹やいとひて夜は寝ざる朝から眠る松が枝の鶴神人 貴上一 上総芳野 鳥が鳴東は年の尾をとしのかしらにまたもそへて来る春芳麻呂 注連引て神代の春といふ口の下よりとなふ星仏かな鳴音 幹長改 けふといへば門の松竹がさ〳〵と上下を着て風も来ぬらん 真福 鏡餅かざる白木の四方まで日本の風のうつる愛たさ 桑折 金文 仝 老の身も若やぐ年の関角力一番とりの春は来にけり 遠近と来る初春の年始状ひらく梅が枝のぞく青柳 仝 全 古としの雪のしら綿春くれば糸取初てへたりとけたり 信濃諏訪 けふといへば都やからへ行春をきのふは待し立帰るとて 三恒 三河坂崎 昨日かも年はせ話敷暮行てあとにおとせる雪の下水岩守 出羽新庄 若水の桶ふり当て我袖にこほすも嬉し枝の梅がら繁樹 山の端も今朝は霞のひこづらひおそぶらひ春の窓の花にたつ奥成 いづかたへきのふの庭の雪丸けこかすか苔の春にあをめる 山形 花を待はるし来ぬれば風の出る扇は箱にいるゝ年玉 真砂雄 全 春の来し年むなれや霞にて扇に似たる富士をつゝむは 若柴 佐保姫の立田姫にや送けん行へも知らぬ雁の玉章 全 松人 いとけなき春は衣を着そこねて露の袖に出す日のあし 三河吉田 仝吉田湊 日の内のぬく〳〵するをくれてから取戻したる春ぞ幼き 橋守 駿府 聞分もなく争ひし耳なしもうねびも笑ふ春は来にけり 和海 日妙加花一 奥桑折 吉野山花咲迄は遠けれど春の心は今朝ひらけたり 御室 仝 古年のふる井の蛙春来れば霞の海に出しこゝちせん 棚持 明ててさ春のきそむる方角の辰巳あかりに告る庭鳥 常陸笠間 としは行春はくるまのわかれてしあしたよりひく初露哉 貴上二 目妙 仙台 梓弓ばるたつ明の初夢に見しはこぶしのやかた尾の鷹 上総竹岡百海改 東路の霞が関をはる風の越るころとや鶏の鳴らん道規 初露なれぬ所をめづらしと四方の山辺や立めぐるらし うと〳〵と眠る柳もけふよりぞ春のきざしの枝をたれける 雛堅改 男也 奥岩城 去年の雪も今朝は寅婦に消ぬれば卯の方よりぞ春は来にける元 陸奥二本松 時日月あらたに注速を春の朝揃ふ三つ子の屠蘇のかはらけ 戻れとて唐土迄も行春に霞の糸を付てこそやれ空寐 卯の年のうの毛でついた疵もなく光もきよきあら玉の春中住 信濃松代 海の老野の老山の老松のかしづくみつの朝ぞをさなき秀雄 奥桑折 かけろとはきけどしづかに鳥が鳴東より立春のをさなさ 春来ぬと告て氷をたゝくかや音かしましき鶯の瀧 仝 仝 水戸 よればまた爰まで来よと遠霞をさなき春のも引なすらん 東より春のかけ来る足置かばら〳〵といふ門の注連縄 大田原 まだ春に深き馴染はかさねど氷の帯はとける山川 上毛高崎 節少袖みつのはじめと着する子にあまきはなめて親心なり 我がちに見つけ争ふ姫小松子の日する野に家や引まし 上総佐貫 真総 下総佐倉 松立ずとも霞にて春のきししるしぞみゆる三輪の杉村 繁記 三河寺領 初春の初音の穀万歳の手に打からにゆらぐ玉簾 二星成 筑前福岡 若水の若い勢ひよく辷る水の上をはしり行けり 乙吉躬 出羽新庄 大ぶくの茶碗と屠蘇の盃を蓬莱めぐる月日とぞ見る うたれじと腹をかゝえて春若き女どち〳〵逃る粥杖 笠間 東より都く光るあら玉の春を貢にさゝげものせり 責上三 陸奥一ノ関 程遠く川音霞む暮際は月の御舟のはつ春の山 仝 梅が香の風に出ありて春くれば人のこゝろもすわらざりけり 信濃松代 立て見る春の雪解の川水にさかさにうつる木曽のはゝさに鳴海 駿河沼津 一去年ことし引渡しする親式かも霞の幕をうつ吉野山益良 熊もなく嬉しむ人の心にはをさなき春やいりかはりけん鳴音 上総冨津 ほの〳〵と東にたてる朝霞鶏か啼頃冬や別れし枝繁 奥桑折 初日影わたらせばやと海原に窓の橋を懸るとぞ見る高持 仝 天の戸をあけの島に起されて霞の帯を結ぶ僕保姫 出羽山形 雪とけてよかりし腰は仲にけり若がへる年の門の松竹梅守 三河吉田 立そむる富士の霞の一筋はをさなき春の餅の緒とみゆ岸守 吉田湊 鷲の如重りあひて散れざるかゞみもちひももとは水とり橋守 駿河吉原 咲桜をこよみに春のあし白鶴のすつくりよしの日や撰ふらん 霞 佐保姫の衣きぬ四方の山姫にかすみを配る春の初風松永貞徳 波那細 名古屋 咲花の枝にかゝるは心なしとちりよれば跡へ引霞かな真哥 裏微加花三 日にとくる雪のゆげより立まさる露も野山また隠しけり 武蔵野をかくいく野にかたちわくる霞のきぬの輪ぞひろがる 裏微加花二 一綾織の霞の帯をみへ廻しまがねにしむる吉帰の中山 裏微 むさし野の広き所へ立出てはゞするものは霞なりけり 沼津 さなきだに籬が島のあるものを霞へだつる塩がまの浦 仙台 真根人 白雪の胡粉下地の遠山を色取初る春霞かな 岩城 春のきる霞の衣世の人のしつけともなる青柳の糸真晴 紫の霞の棚は花の咲藤の棚より見事なりけり松秀 奥桑折 紫に縁の色も見えぬるは霞の衣の裏表かも御空 よし野山花の支度のとゝのはで立かくしたる春霞かも百林 春霞こやのわたりはつの国のなにはの色もみなひとつ也水枝 中空の月はまだひぬ朧染の霞の衣の紋どころかも菊盛 信濃浦野組 紫の色に露し月影は見しやそれともわかぬ春の夜 駿府 あきつ羽の形の国にうす〳〵と霞は先ぞ立はじめける和 目妙 姫路 白雲のまぎれものをば追たてゝ霞むよしその山のばんかた 二黄 棚桟のすにかすべき支度かも立し霞の衣の驢初真樽 山風に吹落されて立かぬる霞や峯へ這あがるらむ重躬 岩城 冬の侭雪を下地の三箱山上塗けらし露一剤毛元頼 大空の霞の関は行かひの鳥あらたむる物にやあるらん 魚とらぬ霞の網は外にまた春の景色を色取にけり 仝 いとけなき春と思へど子持筋霞二重の天のはら帯 仝 一佐保姫の霞のきぬは誰かれにきせんともなく愛あへるなり万象 出羽高畑 右左をさなき霞引連て先立のぼる孫彦の山 東山松も桜もひと色のむらさきにして露渡れり 名古屋 山の肩山の裾へと佐保姫の霞の模様天地して見ゆ銀子 野司に立る霞はみどりにて六位の色の衣とぞ見る 越後針村 去年の内代し船木や朝霞はや引そむるあしがらの山 亡木守 桑折 あつものゝ若菜の湯気やなかつらん緑色なる野辺の露は 御空 伊勢よりも春は暦にのし付て霞ともに引て廻れり 仝 長熨斗 貴上五 仝 我ごとく花を尋て麓より高嶺のかたへのぼる霞か 真名冨 水戸 富士のねの腰を露の帯しめてかひの口にも見ゆる也けり 東よりひける霞は唐土へ春の渡れるはしとこそ見れ笑麻呂 上総佐貫 紫の霞の衣は木の公の上着にさせん春の明ぼの 宮守 露立〳〵たる其中にいくらの春かこもりをるらん貞俊 武蔵長竹 紫に霞そめたる浅間山やけにし時の灰やさしけん 駿河台今朝は霞の筋違に引て昌士さへ見えずなりけり糸人 下総佐原 男体も女体の山も一面にえたいもしれず霞初けり 人真似 常陸笠間 日のたけの延るにつれておろすらん霞の衣の山の腰あげ三衣 全 藤つるをもて松枝に二重三重つりし様なる棚霞かな 弓彦 仝 くる春のつきあたりけん痕見えて山の額のかすむ紫幸風 上総小糸 いと長く春は霞の裾引ばあしの隠れて見えぬ難波江 雪の綿いつか露の糸にしてそめあげつゝもかけるさほ姫 沼津 なにとなく人の心の動けるは四方に霞の引けばなりけり 駿府 和田の原八十嶋かけて露む日はわけてこぎ出す海士の釣舟月好 信濃上田 月よりやひの来るかとおもほゆるみなれしゆも見えず霞むは広丸 上総坂志岡 遠ねに片腰かけてあちこちと霞の尻はすわらざりけり花住 鶯 覚 うぐひすは梅の花笠着たればや事にもそのしほれざるらん師光朝臣 波那細 驚て飛ゆかぬまを我ものとしめおく窓の外の鶯石綱 裏徴加花三 一尊のくるに朝戸も明かねて覗く細めの柳をぐらし千賀江 はやなけとそだつる身では手に入てまろめて見たき鶯の声真春 貴上六 岩城 一尊の初音を聞かば経をよむ人も歌よむ気にやならまし真酒躬 三河吉田 経よめと木の根に塔をつくりしは蟻とやこゝに鶯の類に真文 駿河吉原 竹潜る朝は常にさらすれど声の匂ひはくしき鶯 甲斐身延 いきたなきものと笑へど鶯のあさ音好まぬ人はあらしな仲澄 裏微加花二 仙台 口先のさゝ青の寒さ通りてやのどになりたる鶯の聲 三河土呂 風呂ならでうめよ竹よと鶯の鳴には水もあぶせかねけり 鶯よゝきるよめと大和籠に和仮名をいれてをしへだてけり蔭友 歌の姿取通姫か笹亀のくものふるまひ愛る鶯於鬼門 笠間 鶯を追たてし児のしかられていつゝとも庭にないてをりけり 聞にくる数多の客の饗応にあるじなかせの宿の鶯幸風 三河吉田 鳴声の高きを聞てをらんには柿子もいらぬ梅の鶯真文 裏徴 信濃諏方 生ぐさき下餌喰たる鶯の口もすゝがず経を読かな 生ぐさき下餌喰たる鶯の口もすゝがず経を読かな三恒 御田舎とて片言にほか〳〵とあたゝかう鳴薮の鶯 姫路 梅が香に声をものせて鶯の風吹たびにうきしづむむ 因幡鳥取 あやまりて摺餌に飼へば鶯も七草はやすさゝ鳴の声真広 仙台 鶯は籠の水をば吸ほして餌飼するひとほしくなる中 かしましき森の鳥の千声にもおきぬ朝いを起す鶯 うつばりの塵を燕の落すかと見れば軒端にうたふ鶯 岩城 人の世となりて人来と鶯の影も霞の中津国ぶり 仝 仝 谷間より都に出ても鶯は人の気に入る口を持けり 年長 上総芳野 文好む梅が枝に来て朝な〳〵目のあかぬ人や笑ふ鶯 浅方 世の中の葛蛙もうぐひすの声の月日の中に籠れり磯名 貴上七 朝まだき人来と告て祇門のおもてをおこす鶯のこゑ松秀 鶯は田舎育のうせかねて花に恥るかほゝと啼居る今成 名古屋 鶯の声美しく生れしは功徳品よむ果報成べし弘器 奥桑折 一余念なく経よむ鳥のみぎりには邪魔になりたる山寺のかね金美都 むたすきうねびの山の鶯はひとくはごとに高くなりけり真史 仝 いたくすくこゝろ癖には鶯の餌をする音も聞どころあり万他伎 千住 円に鳴音は和歌のみか詩の日や月やともうたふ鶯東作 信濃五加 竹藪の中にふしなるゝ鶯のよを通してはなどか鳴ざる 涼風 上毛高崎 声だにもやせ鶯は山里のをりかけ塩の梅にこそなけ亀水 ともし火にとてもならぬと尊の舌打をしてけす窓の雪高盛 とはるゝも国にいとふか人来とてさがれる城を喰ふ鶯蔭友 笛の音と人をたばかる尊は方便品をよむにやすらん真風 君に日も長房のほくゑ経や谷より堀の内のうぐひす真久 梅柳あなたこなたへ飛うつる鶯などてひときとは鳴真芳 歌をよむさはりになるか鶯の人来といとふ庭の梅が枝 新庄 春露立帰る袖の錦より鶯の聲のあやぞよろしき 笠間 鶯の声のふるふは青柳のあぶなき枝にとまる時かも 三衣 常陸笠間 火ともせる梅の油やふくみけん声すべりよき春の鶯 藤丸 三河吉田 鶯の音はきのふけふあすか川流れのよどむ春日とぞなる 3真文 信濃御園 青柳の枝に鳴日は鶯の顕に雨ふる姿なりけりけりなりけり 日妙加花一 聞とれて法師もけさは時の鐘つかれずに鳴鶯の聲 出羽山形 月と鳴日と鳴休は大きくて星はちひさき鶯の声 真砂雄 貴上八 目妙 光なき谷より出て聲の玉みかきが原に鶯のなく 口あいて鳴鶯に裏の戸も心もあかず聞ぞ楽しき 因幡鳥取 小松川 人来とて声を自慢に庭もせの豊後の梅にうたふ鶯米 光房 二本松 百ひろも鳴けよ尊いとながき春の柳にとりすがりては安遊民 打なびく春さりくれば梅に火をともしくおもふ鶯の声高彦 香に愛て花に遊ぶはかならずもほうある物よ鶯の声男也 餌飼するあかじを見ても人来とは扨そゝかしき鶯のこゑ琴葉 梅がえに来嶋しらせかさゝ鷹のいと引跡へ鶯の声袖人 石見津和野 尊のちひさな口で初春を弘き大和に告渡すかな 奥桑折 生るゝと竹に心をつくし琴ひとくみうたふ鶯の声金文 桑名 里人よあはれ耳やもとめよかしねぐらに迷ふ尊の声一生 水戸 春雨の糸に細音を引出して琴にきこゆる鶯の声 春雨の糸に細音を引出して琴にきこゆる鶯の声 老せざる門にはおそく鳴ならん声に月日をもちし鶯 仝 百鳥の中の色音ともてはやす果艱とも鳴か鶯の声 桑名 青柳の髪さかだつは梅に来て鳴鶯にりんきするかも 真光 下総佐倉 朝餌する鉢に若菜を搗いるゝ籠からももる鶯の声 三河新田 若菜橋妹もしばしは手をとめてはむ鶯にゆづるやさしさ 仝西尾 聞あかぬ笠縫高の啼声にひも長いとは思はざりけり ヒ雨盛 仝中島 子に智恵を付る心か尊の藪から梅に移る宿替 蛙 鶯の会の直立も桜田村あげねさげねのこゑきゝにくる 暁もしらぬ眠気の春浅み引起さるゝ鶯の声真似摺 松囃子すまぬうちから一ふしを竹のはやしにうたふ鶯 笠間 貴上九 笠間 遠方の友の来るに初音さへ同し門からいれる鶯 奥山自 梅ならぬ軒の栗にもほゝゑみてこぼるゝやうな鶯の声 仝一ノ関 鶯を驚かせじと畔道にまはれば田にし口をとぢたり 真司 上総小糸 きく足は先ふみとめつ鶯のころがして鳴玉の初音に 佐智子 朝いする人をも窓に起しけり扨にふしのよき窓の鶯 仝 咲梅も高低のある枝色かつまづく様な鶯のこゑ 仝 喜可寿 去年老し尊なるやふけみたる梅の立枝にそりかへり鳴 松代 真升 春風に筆は氷れど鶯の声さむからぬ窓のさゝ鳴 鶯の細き初音をきかまほしならば暦の太き字のうち舟道 名古屋 来啼とて障子ひらけば其まゝに立て行けり庭の尊蔵主 出羽山形 牛馬も渡る氷を鶯のくだくは類の力なりけりけり 武蔵青梅 雪翁して海なす庭の梅枝に其魚の名のうぐひすもなく 三河吉田 短冊のやうにひら〳〵身がるにも梅枝にまふ鶯のうた忠慎 梅 梅 うらうへに身にぞしみぬる梅花にほひは袖に色はこゝろに清輔朝臣 波那細 老木さへ図を立枝にかざしてはみちがふる程梅の若やぐ柿人 雪深き谷間を寒みあたらかき風を迎ひに出る梅がゝ真風 裏微加花三 残庭と陵の庭の梅が香は何所へ出るにもさそひ合けり目積 春風に吹いるゝ門の梅が香を宵からしめて寝るぞ楽しき空寐 名古屋 たわめたる枝よりこぼす梅が色にまづ我鼻をもがれさう也 貞就 色にそみて麝香になれと猫の子を捨る藪にも梅の花咲真枝 裏微加花二 尊の縫に来るを待けや枝にたてたる桜の花笠春妹 貴上十 仙台 誉られて花の薫を持ありきなくして来るな梅の春風 出羽新庄 大としのひと夜に木の図さくや姫袂に孕む風の梅が香 繁樹 裏徴 三日月のかまだの桜の花守も勝手に枝はをらせざりけり真枝 春寒み梅の下風苔むきて大事にせよといはるゝも嬉し真春 鶯に宿広うしてかさむとや香をはこび出す梅の夕風 仙台 燈火もなけれど響の拾ひもの袂に入し夜の梅が香 近道 公 一人 振袖を着たるむかしは心なくとめで今更をしき梅がく なまじひに付たる枝の短冊を文好む梅も笑ふなからむ 仝 唐麻呂 上総竹園 春風は先へるへして我室に一夜はとまれ花の梅がれ 水戸 よごれたる衣を着ては梅が黒を袖にとめるも恥しきかな 帰るさを送るばかりか来る人の迎ひにも出る風の梅がら月好 梅がゞめをあるじにあまり誉れてひらく障子のさぶきめぞする 袖に留る人しなければおのづから梅もや山の裾に薫れる春則 上総芳野 咲みちてこぼれかゝれる梅がこに風や袋をひろげたりけむ瀉 春は今梅の世なりと薫るより風もちひさくわき道を吹春則 夕間暮風のわるさや連出して袖なきかたへ誘ふ梅がく 奥桑折 梅ははや花催して鶯のなかば〳〵と半ひらけり 熊照みこのみやすかと立よりて聞曙の梅の門ぐち 上総木更津 たとへつる光りや似ると梅の花星の出る迄詠けるかな 春信 信濃神代 草の庵の春を訪ふ鶯に戸明れば先へはいる梅が香 歌麻呂 粟祥の飯喰ふ宿も春くればむせたき程に匂ふ梅がく春江 心きゝて柳は背中撫にけり梅咲寒の風にむせれば道列 貴ヒ十一 上総佐貫 ごとつむれより嬉し梅の花北斗をさゝふほどの匂ひは 下野古河 梅の花ちらぬやうにと神いじり鶯は来てねぎと頼も レ雪也 全 都にも替らぬ梅のよき玉をばゐなりと思ふ人はあらじな 難可免 下総佐倉 軒近く吹入る風にゐなじみてとまるも嬉し袖の梅が香 美種 鶯の餌にはむ庭の蜘の囲にちりとまるさまか梅の花笠清澄 桑折 鶯の小枝撓めて飛のきしはづみにはれをはじく梅がく清音 朝東風にそれから夫へ送られて行先しらぬ宿の梅が香峯義 枝ぶりも健気に梅のさきかけて匂ひ桜にまけじ魂於鬼門 かをれよとあるじがいへば手をれよと聞てはやまる梅の一枚大道 かをり出しもとの梢や忘れけん襟や袂にはいる梅がら張雄 沼津 川上の咲梅がゝに押のぼる鮎こそ鼻のまがりしもあれ益良 花屋から買て匂ひをいれけても恥しからぬ袖の梅が香 上総小糸 どこまでも匂ひはつきの桂川梅津の里を跡の追風 信濃片倉 出羽山形 夕風にのりうちをする香は落て梅の匂ひのたるゝ神垣 永言 か 武士の道をも捨て梅香の風下にのみ立たりけりけり” 素男雄 吉田 梅香に酔てよろめく春風か花にさはりて散もいとはぬ 吉原 花の中に白き髭あれど梅香はとしよりくさくなくてすかれり 百妙加花二 一紅東風の寒さやこらへゑつらん内へはいれる庭の梅がく 水戸 沼津 用のなき人は入なと札立て梅の番する巨燵弁慶 一益良 巨妙加花一 駿河両部 一にくしとて風の行へを尋れば咲ぬ軒端にはこぶ梅がこぶ梅がこ の中住 新しく立ぬる春にけふうつる梅がかさくをめでぬものなし 古河 目抄 駿河岡部 春風の手ごとに花の一つ二つらそへて来る梅の道もせ 吉雄 貴上十二 仝 花ものをいはねと跡やしたふらん袖にとりつき匂ふ梅が香 藍垣改 梅の花かほどに人の愛るのもあやかり取の袖につくゆゑ 手折此空に飛たる梅が枝のつぼみは直にほしと光れり 仙台 から猫の登りて枝をゆすぶれば蓐このやうに匂ふ梅がゝ 真根人 梅がゝをとめてもどりし袂をもさがせば道で摘し露のとう花満 又好む梅見に出ん約束は反古にもせざる花の友どち さゝ鳴の鶯にまた酒ありとつげし鉢木の宝咲の梅真枝 水戸 一詠居る人のはなにもとまれるは胡蝶のやうな遠の梅がく民則 藪の梅さながらありと見えねども頭よむ鳥は紅来にけり元頼 さやと吹風のちからに鎗楼のつきぬくやうに匂ふ塀ごし 春にまだなじみも薄き桜が色をなれ〳〵しくも誘ふ夕風味之 吹入る風にかへりてとられけんかるうなりたる袖の梅が香千巨 折らば軽きらば鼻をも切らるべしかばかり匂ふ響の梅が枝銭有 水戸 一花見んと尋て行ばそこらまで迷ひに来たる風の梅が香 あつさりと花に香のある吸ものは酒が杉田の梅と見るかな近潮 庭守も梅咲春は戦くしてはなつまゝるゝこともしらじな花守 柳より花をかざりし髪形痩たる梅の姑射姿よき真福 咲梅の花はひと色なるものを匂ひは薄くこくも有けり 名古屋 真歌 梅はまだ花守が売梅干のしは〳〵寒く袖に入風年長 火ともして落す紙燭の油程しみてひろごれ袖の梅がく 小松川 建 雪の色に咲たる花をほだしにてさむさやうせぬ梅の下風 桑折 匂ひなきむつの花より匂ひある五つ開の梅の花びら 時よりもさむかる雪はしのがせてひにあたらする鉢の木の梅福住 しだり枝の桜の莟は玉にぬく柳の露と見えて光れり 水戸 春風に誘れて梅の香は雨寺とものみたげな図の唇音成 千住 欲書て枝につけてもかな釘のをれとはいはぬ梅の花守隆街 一把ある薪の中のひともとがにはにもあまる枝の梅が香百林 三河土呂 奥のかの小袖もにほふ花盛ふせごとりおく鉢植の梅米也 また類ひ難波の梅の花平はこれも匂ひの太政大臣南北 天神の跡をしたひてつくし瀉しらぬ火ともす梅の一もと甲良 人とはぬ梅の匂ひを風にきみて風に尋る春の深山辺音繁 下総分江 文好む兄を手本に見習へと子等に教へる難波津の梅一二 奥一関 御恋の岡の名に似ぬ梅の花真袖にとまる匂ひ嬉しや真司 上総冨津 一栽木屋のつくりし手間も咲てよりかぞへてぞ見る梅の玉びら友鶴 仝小原 千金によし一かいをかへるともをしからぬ香の梅の花笠 喜可寿 公 此頃の月の瀧に曇れるは梅のあかりのつよき故かも 道直 片倉 夕まぐれ仕舞ふ出茶やの渋茶迄別価と思ふ梅の下風 駒彦 臼ほどな餅屋が株の梅が香は往来の人につきてとむらし 信濃式部 常陸笠間 鉢植は扇子丈なる梅ながら開けば広く匂ふ花の香 藤丸 三河吉田 一旅人の里はぬぎても梅がゝはかぶりて通る関の下路 聞恋 ひらくの心まどひぬうぐひそのわかたれはを聞初しより基俊朝臣 波那細 一こゝにして妹が上をもしるをや恋の山田のそほどてふ神水枝 裏徴加花三 筑前福岡 一妹がは聞てしぬ地獄耳くるしや恋にせめらるゝ身は 吉躬 貴上十四 よりてこそそれかとも見め地越にものゆふ顔の鳴きたそがれ跡人 深き実とありかゝりとをとめ子がすむ趣を聞けばなつかし 奥一ノ関声音改 一同にも見ず声聞よりの急病をとはれば風の心ちといはなん さみだれの雲ゐになける時鳥聲のみ聞て晴ぬ胸かな百林 貫改 日妙 見ることも叶はで春にの声は我耳たぶの薄きえにしか明方 我恋はやみの夜に鳴古なれや聞計にて見るよしぞなき花守 外心ありと聞より我慈の奴はつかみかゝりにぞ行御座 上総藻原 離住妹が噂を聞ば亦枕につきて寝られざりけり舟人 来るといふみの便をきくの露命も如す程に嬉しや真芳 恋人は皆ばかりか物こしに聞とるそもうつくしとおもふ春秋 恋 難波瀉あし手に書る玉章を見にくしとてや返す白浪仲正朝臣 破那細 匂はせてばかり我をば釣夜具にしまぬ心のうはの空薫百人 命をも身をもいとはずつかはるゝ恋の奴をとりあげてたべ真春 福岡 恋渡し身をば心もうとみてや我を離れて人に添らん 上下のへだてなきさへあはれなり恋の奴につかはるゝ身は博寛 佐倉 わきかへる心の底をくみもせぬ人のつらさにあまる涙か 哀微加花三 名古屋 うき人のとはぬ日数のかさなれる恋の山こそ住うかりけれ稲 稲丸 綿木をとりいれぬこそ怪しけれこれには何かあやの有らん空寐 恋の如心の駒を引たてゝ契る夕はいそがれにけり松秀 裏徽加花二 かくばかり恋に心をそめながら色にも出さぬ胸ぞくかしき家樽 下総佐原 忍ぶ身は何ゆゑぬれし袂ぞととはれて袖のゆきつまりけり 貴上十五 こゝむにいる心ちこそすれ菅庵の七府に妹と二人ぬる夜は百人 裏徴 一下総佐倉歌胤改 串 一閨に唯思ひくゆらす蘭奢より我心根を聞せたきもの 岩城 一心にもあはぬこと葉を仲立に逢てたのむぞわかなかりける暖丸 恋といふ物を是ぞと覚ゆれば又迷ふことの出て来にける磯名 来べき夜の凧のきるれば笹盤も鋏やもつとうたがはれけり 名古屋 俤をまた連て来て立せしは恋の奴の仕業なるらん 真歌 恋すてふ名には疵をもつけじとて大事にかけてつゝむ物哉春妹 人しれず恋の重荷を負ふからに心の駒のあがきくるしも 床に伏我慈病は憂人の待し返事をおこさねばなり物成 目と顔でしらせし中も此頃は鼻であしらふ人のうたてさ真寿 書初る恋の仮名みかなしくもかぞいろはにはひろはれて しらでたゞひとりあぢなき身を悔ぬ逢ふ事かたき恋のたねとも千賀紅 綾のきぬつゞりの袖もめでたしとおもひそむるにふたきやある石綱 まぼろしに立恋人に引るゝと見れば涙に重き袖かな復春 上総冨津 よき色の返事を聞し嬉しさにそなは心もつや〳〵とせり 送たる文のかへしのまだ来ぬに浮名は先へ早走りけり 全 君をおきてあだし心はもたれざる恋にちからも先落てけり 仝 仝 床は山袖は海とぞなりにける高き低きのなしと聞しも 沼津 錦木を取入るやと忍び来て夕は門に立明しけり 恋病て泪のわくにかゝれとや糸の様にもほそるこの身は しらざりき君が枕にかせし手を今更胸に置んものとは 上総芳野 浅方 門に立背戸に立つゝ思詩ばたちまち人の目に立ぞうき 奥岩城 貴上十六 目妙加花二 小松川 あぢきなく変るはつらし一夜酒なれぬ昔と思ひなほせど 目妙加花一 一尽めせと寒さいとひてきぬ〳〵にかさねてきぬる約束もしつ袖 目妙 ちひされる妹が心のまめに何まくべきと思ふ我ならなくに真□ 小松川 花の姿見るばかりにて潤雨ふれども胸のひらく瀬もなし 上総芳野 思ひ流し思流せどはてしなやみづから涌る袖の涙は浅 名古屋 宵毎に通ふ心はやま崎やいらぬ油も君ゆゑにうる 取直し取直せどもあきらめぬ恋は思案の外へうつらず春満 塩断や火のものだちの日数さへ立ぬ先から浮名立けり催馬 奥桑折 たゝらたてふいても見たやかねの如かたき心の妹が底意を真民 我しらの日毎にへるはうき恋のつのるかたへと身のいればにや跡成 桑名 中〳〵に軒にさがれる笹芸のいとにつられて侍夜くるしも一生 恋死ぬといへどなびかぬつれなさは生れかはりてこよとなるらし復春 佐倉 かたるにも人のとふにももらさねどしのぶに落る我浅かな美種 玉くしげふたがる胸のくるしさを明ていはれぬ恋中ぞうき真中 思ひ入恋の山路をたどるには見初しふみやしをりからん仝池路 言よらん道のなきには足かりてゆくせにやらん恋の媒稲丸 七種のよき俎板を見合てほと〳〵たゝく妹が閨の戸真久 千住 恋〳〵て歌に願のかな釘をまげてもかなとおもひけるかな餘魔 しをのみ思ひまさごのうまやかに袖もかわかぬこひぢくるしや百休 一夜のみ逢ては朝四暮三ぞと思ひやまざる恋心かな 山をさくちから業にもひと筋の恋の恋のきづなの切がたきうな道足 姫路 行末は一つ所の水ならんきつてもおれぬ君と家中登万留一 貴上千七 上総小糸 千々に身をくだきてぞ祈る末つひに君と一つにならんとおもへば雁 ハ厚人 信濃浦野組 約束のたがひ違ひに胸算のいかによせてもあはぬ君かな染安 恋すてふ胸の煙にむせかへりやせかへるほど思ひこがれつ厚房 かたらひし夜の睦言はもらさじこ口をば袖にふたぎてぞをる真清 冨士山 都よりかされる山は獅子にてふじや箱根のふたとなるしん光広卿 波那細 久かたの雲をもぬけてうつせみのから迄見ゆる山は冨士の嶺真寿 富士の根と天の間は飛鳥の往通ふほどやあけてあるらん磯名 せの海はさもあらばあれ不二の根に妹とむかへる山はあらじな千韻 裏微加花三 越後針村 一大なるなりに似合ず白波に影をとらるゝ田子の浦不二 駿府 神の代に高天原のたきさしの庭火の煙残る富士の嶺 神代より雪もすゝけぬ富士の根は煙のあける穴ぞ有ける真春 山〳〵の中より出てやらにまた入といふ字にまがふ不二の根千臣 久かたの雲につかへてすれつらんいたゞきくぼく丸し富士のね 上総小糸 一月より高してふ名のすみよりも雪は寄麗に見ゆる不二のね道雄 飛鳥もかけりがたしと神の手にかけりと見ゆる不二の巓春秋 駿河吉原 打ゆする駿河の国のおもしにと神やもて来て来て恋し不二のね 衰微加花二 ふたつなき冨士の高ねと見あぐれは雲の上にもまたひとつあり 仝岡部 富士の根は国の鎮としづめても立あがる名の天につかへる空寐 風になびく煙に山を立こめて富士の行へはしれぬやうなり春方 玉章を焼捨し富士の頂は薄墨色に立煙りかな 桑竹 裏微 紫のちりよりなれる富士なれやこにはひさす煙絶ぬは春秋 貴上十八 駿河岡部 一吹風のちからざめしか押て行雲にのせたる富士の高嶺は籬 籬 目のとゞく程に残して陸奥とつくしへわけし富士の山かも元季 小松川 昔より今にはたちの不二の山十八のまつは半より下光房 芳野 なさらに中〳〵まをすことぞなき古ぶりの雪の富士の嶺芳麻呂 宝船しき寝の夢に入ときの見当しておく春の富士のね万家 飯ならでたくせん有りて浅間をばうつせる富士のおちちれう成花守 信濃松代 一今見れば煙は絶て渡る日のかげろふほどももえぬ冨士のね 桑折 蓬莱の島臺よりも駿河なる富士こそ国のかざり物なれ薄墨 水戸 半より下を霞の立かくし富士もをさなく見ゆる初春角住 神代よりこりつむ雪にうるほひて今にめがれぬ冨士の柴山万象 信濃諏方 久堅の雲の上なる冨士の根はふらぬ先から雪つもるらん鈴名 唐にさへほしがる山を日の本にふようの峯となどて云らん 天処女はこぶや雪の富士の根は雲の海辺に煙る塩がま 大きなる富士を盗て駿河迄夜半にもて来し近江どろばう 桑折 浮嶋の子もとの松の木間より鹿子まだらに不二を見るかな 佐倉 名もくろきすみてふ山や恥ぬらん雪にまばゆきふじにくらべば 目妙 七曜の星よりも猶釼の岑高くぬけ出し富士の八葉 駿府 一直古 春来れば霞の衣雲の帯かたゆきにきて見ゆる不二のね 鳥取 雲晴る夕部の富士はしげりたる星の林の中の兀やま 奥岩城 笑ふとて山や涎を流しけん水かさまさりし春の富士川 仝 神代より数多の人の語つぎいひつぎ高くしたる不二の嶺鳴音 富士見れば空は晴着の滝とゆきたけ積る越後屋の店 瓜跡改 棒をもて一夜に荷ひ来りたる跡にやあらん不二の人穴阿坐成 桑折 神代よりすわりしまゝの富士のねは膝も崩さぬ足高の山 仝 玉手箱ふたもなければ冨士のねは煙のうちに雪のしら髪 仝 月日星へ捧る富士の高盛は雪にしらげし供御と見えけり 高持 ふりつもる雪におせども冨士の山低くもならずくづれしもせず 名古屋 三国の店ざらしなる不二の山たかねに雲のちりもつもりて 蔵主 仝江 時しらぬ富士は夕日の蔭になりてくれぬ先からくらくなしけり 諏訪の湖へうつれる時か冨士の根の雲の上よりのぞきかゝるは折香 笹川 山笑ふ春は来にけりさればこそ富士の高根に吹出す空 鈴成 上総小糸 まさ〳〵と見えて忽曇れるは夢のやうなる富士のしろ妙玉斎 佐倉 春過て廿山とは思はれず霞のまゆねはらふ冨士の根美種 佐貫 降つもる雪に湿るか燃かねてけふりのみ立富士の柴山幸雄 新庄 富士のねは里の川門の落口をうけてやくぼく鳴沢の水 国 国 もしせまき国にやゑづむとおもひしによくのぼりぬときくそ嬉しき清輔朝臣 波那細 やすらけく神のうましゝ国なれば地も納りて強がざりけり石網 裏微加花三 あきつばの姿の国よこちらには道ありといひて子らもほこれり水枝 天地をうごかす程の大和類うごかぬ国のおもしとぞなる 裏徴 藍垣改 一住民はひくき枕を高くして寝ても寝られぬ国の尊さ 小松川 踏分し神の御代より日のもとをとよあしはらと名づけ給へり 大田原 国造る神の踏しゝあしはらのくには平にかたくゆるがず 真寿躬 目妙加花一 鳥が啼東の枕詞より夜も明むつの国といふらん 貴上二十 〽国〳〵の絵図を開て見る人の目もくたびれてまづ休みけり はや人の薩摩について日の本のめぐみうるまと国名負けん 松代 跟にて墨摺国もあんなんとふみ見てしるき鳥の足跡 秀雄 桑折 不老ふしの山を隣にみすゞかるしなぬ国こそ雲たかりけれ 金文 上毛館林 国多き中にもよきは芦原のあしはら持たぬ人のしたしみ 滋美 大田原 並びなき不二のあなれば此国を大やまとゝはいへるなるらん 路遠 仝 みちのくはあきつの口のあたりなら蛇喰ふまならん阿武隈の川 巳城 神仏聖の道も鼎なす動かぬみつのあしはらの国 五加涼風改 貢 大きなる月日を御代のまなこにてながかたちせる秋津はの国 名古屋 江戸からは家の網をかけてげり鰯とるてふ安房も上緒も百人 下総と伊予と隣れる二つをやあはをちらしく国といひけん千綴 穀類 敷島の道のまさひに拾ひくふ詞の愛の豆にもあるかな堯孝法印 波那細 橋ほどねばりのなくて尊きは人の命をつげるうさしね千韻 裏微加花二 もろこしの立並ぶともおよふまじ参は日本一のものにて百人 小豆にはよく煮たりしが大角豆にて餡に相違となるぞをかしき跡人 裏徹 木食の其玉の緒もつなぎけりそばは五穀のうちにあらねど强記 豊年のしるしは賤が門〳〵に杉なりに積俵にぞしる空寐 一豊作を祝へばなほも粟黍を餅につく程とりあがにけり仝 宇賀の神咽より吐し粟ひえは腹のふくるく程とこそなれ春秋 耕しにしたる賤の片しづく落てみのなる米のおほきさ真く 麦搗て小麦をつきてかくれどに生たる豆の手にぞ生ける水枝 積上し俵の山は籾をするちりひぢよりぞこれも成ける真福 日妙 はかりなき人を救も西の国百万石のぼさちてふ米似寿 白雲に似たる畑のそばの花中なる粟はほしと見えけり松秀 酒腹の七の賢き人どちもほりして喰ん竹息の麦比左志 桑折 酒になり餅にもなりてとにかくに人のまゝになる米ぞかしこき 一粒をつまみて拾ふ米俵つもれば山とかたちなすらん下見 苗代へおろすぼさちの一粒が秋はみのりて後生ともなる竹光 つみ送る米の麹の車うしともによだりを流す上戸等林知 神代よりかむ粒〳〵は神なるぞぼさちと米をのみこむれゆめ よきことのきのえね祭る供御にせん前米をば豆飯にして千賀江 公家 翁さびはう〳〵のぼるくらゐ山雲ふむほどにいかでなからん頼政卿 裏微加花三 住山いかにも高きみや人は雲の上にぞつかへまつれる真杖 裏微 冬平の御末と聞る鷹司げにせつせうの家にぞ有ける竹光 大田原 位階ことなるときゝてや大内のやまの山人このみ拾ひし 類のよしのぶるに懲ず親の杖よわるにつけてもものをこそいへ跡人 蛸どめの歌もゆるさぬ雲の上はしとする事にのりもそあれ千穎 目妙 桜花誠の雪と宮人もくつははなさぬ九重の庭末枝 百人是の中にもあらぬ歌がるたつくれる公家は外のかた業種成 新庄 欲を作り書を拝していとまなくたぬしや内の民の司は 一信濃片倉 願ひなき冨士にも同じ名をおへる芝山殿は雲の上かも川常 のごけしな〳〵とはいとまある大宮人の口遊びとか真顔 柳 朝寝髪乱れて靡く玉柳たれとふし木の姿なるらん仁和寺宮 波那細 やう〳〵にいとをなびかす春風は柳ほどなる力なるべし 五和 音 貢 諏方 朝かぜに髪かきあげて有たるは今目の覚し柳なるらん 鈴名 一ノ関声音改 なでられてねてみんものを春計り根にねさせてよ青柳の枝大道 春雨に居眠る柳きのふよりこもるはあしき藤やはづらん 美しき花の中よりさがりたる柳の枝や薬玉の糸磯名 裏徴加花三 福岡 手酌女の髪ぞと愛る青様にむしの居るとて取があやしき吉躬 朝露がむすべど癖のつかざるはすなほなりけり青柳の髪竹光 枝折戸にたてはさまれし柳こそあるじより先来る人はまて石綱 枝くゝる悲めになびき風吹はちどりにも又なびく青柳稲丸 細搗の尻のかるさよ春風がそよといふてもうごく格は真福 水更津 春風になびく図田の色狂ひいとしたたるき門の青柳春信 春信 磯はたは波うちかけて青柳のめのよるかたへ玉藻より来る春則 吉田 朝夕に立るけふりを絶さしと風にはたらく青柳の枝橋守 梁に行持かけし形にて色は青菜に似たる青柳干頴 裏徴加花二 高畑 一桃の怒り桜の曇りよそに見て柳は雨のふる姿あり津房 古河 あたれどもあまりすなほにめられて風も柳のなりになからし難歌兎 春の風けふも出ぬかとこちらからさそぶやうなる門の青柳米積 火鼠のかは色の柳あやしくも烟ると見えて色のかはらぬ亀成 一花の雪咲つもる比は青柳もみのきて立る姿有けり道則 裏徴 たきこめてはひりの柳一本にひともとひとぬ春の庭哉 眉つくる柳は人の心ひくけふりを見たる立姿かな芳麿 春風に髪を乱して美しき柳の姿見違へにけり潟人 薄る春にかくや霞の絹地にて絵にある滝と見ゆる青格 青柳のたれししつ枝をさでと見てさでやはやてふいものにぐん 池の辺にとる有やさし柳ねばり亭水に枝やそゝげる繁樹 みよし野の花に負しと白妙に六田の柳葉や作れる道雄 高畑 道の辺の柳の煙空に消し行衛は奥の富士に続歟 吹ぬ日もそよぐを見れば青柳のいとには風やつなぎ置らし 最上 舞花にまちる柳は賤の女が蓑きて若菜物姿あり 風のまゝになびく柳をつらしとてふりますさるゝ露やうらまん 青柳はまゐらせすがたつのこゝろすなほな水にかく丸のたる物菓 ゆかりある門に立たる青柳の糸をもて来し田舎尊恥女 村上 賤が門に立る苦桶のいと柳細き煙りのしろにぞはかける 河成 小松川 もえ出てけふると見しはかくや姫のやく火鼠のかは柳かも 雉 楊枝をもひさく宮ゐは狗犬の奥歯もさいふ風の春様跡人 風になびく馬場の柳はせめるの尾ふさに布を曳かとぞか真枝 庭にあらば人めつらんを糸柳よりによりてそやぶにかゝなる亀七 門口の柳につれてなびけどもよつてもつかぬ縄すたれかな春秋 村松 焚さして煙りながらに水くめば居ながら用のたる柳哉 目妙加花一 起て居る門の戸たゝく青柳はねふり過して寝ほれたり給ひ真春 恋のくはそし藁のかゝる日は洗髪かと見ゆる青柳方住 野遊びや花見戻りか尋来て柳は髪をゆふひまもなし 水戸 曇りなき月をうしろの姿見にねむる柳は髪いはぬかや名 目妙 ふりかけし宮守の灰に庭もせの雪の柳は妹が姿歟 今きゝし鶯の類を心覚え砂にかきとる青柳の文字 一池水にうつる柳の髪の中に中判ほどに浮ふ月影 人の気をそゝる霞のつ重帯柳は露の洗ひ髪にて こぬかまふれる雫に枝たれてみどりの髪を洗ふ青柳金丸 いとはるゝ花の宿にな行ぞとて風をとゞむる青柳の枝御 事に手を延すやう也青柳は落たる露の玉や拾ふ歟真清 山形 真砂雄 女とは見もあやまたし青柳のひたゝれ姿なよゝかにして 最上 最上川岸の柳は春風にいなとかふりをふりてこそたて 咲花の鳥の中よりぬけ出て炭竈ほそく煙る青柳繁留 仝 心ほどをかしきものか中垣の柳も妹が髪かとぞみる人成 ねばき枝に糸は引ともあちこちへ梅がわのやうにつかぬ青格 片倉 たよわなる枝につながる柴船に日のさし込て煙る青柳川常 夕まぐれ薄くらくなる柳花池の蛙のむつごろとなく松秀 緋さくらの阿田にもゆれば今戸にてときしく顔にけふる青格袖人 野田 すなほなる柳は風につかはれて髪とり上る隙もなきかな さきの世にいかに契りて青柳は風とのがれぬ中と也けん糸女 せわしなや露をも結び片手にはかみをもとかす風の青格仝 風にしも姿つくりて和らかなはにやすの池の岸の青柳万象 城々の戦ふ声を聞しよりくり出したる青柳のいと甲良 世の中を渡る海士人なぎきこぐあふなげのなききしの青様可都楽 さし柳根よれる髪を洗ふ事に此下蔭の水にごるらし 坂崎 幾春を重ね老木の枝ながらよりはもとけぬ青柳の原 岩守 足門 一本成 よろ〳〵と風に吹れて生酔にもたれかゝれる柳をかしや 一ノ関 こきめし桜ちれゝは青柳は春の錦のさいて也けり 奥海 坂崎 うつむいてくしかづれども根そろひのみだれかゝれる風の青柳 門ふさぐ柳の糸にからまりて花も見ずしてくらす春の日 吉田 春風によりもとけてや男川にしなだれかゝる老木の柳 銭丸 仝 もえ出る燈心草のかたへなる柳の髪は風にあぶなし 牧馬 桑名 朝露に枝は大慈の糸たれてえんを結びし観音柳 いづれへもなびく姿はうかれ女の看板なるか出口の柳 ほそやかな名にや恥けん青柳はこしの太木をかくすさけ髪角住 一乱髪たばねもやらぬ青柳は糸をもつにも似合さりけり友由 上田 谷川のきしのひたひのこぶ柳邪魔なる物と誰も見ざらん音清 仝 百代 和らかな風の手をもて青柳はまゆをつくりて髪や結ふらん 村松 遠目には尾をふるやうに見ゆる也風にくるへるゑのころ柳辛 青柳の煙ふくむは池水に髪を洗ふて干にや有らん 花 こさくら谷ふところにこがくれぬ風そよめきて花もとむ也俊頼朝臣 波那細 何かたも同じ鳴の山さくら是よりまさるはなしなければ石網 底といへば野辺もひとつの家桜さく時人のかきはなしけり水枝 花はみなよきて瓜木にこれ〳〵と山崎も子に桜教へつ凹 雲ならぬ花の雲間に空ならぬ青空高くおほふ山松仝 貴上廿六 裏微加花三 岩城 千尋 桜木を薪に伐しをはづかしと花にかくるゝ山賤が家 松代 ともし火も花咲てまづよしといふあしたの嵯峨の山さて狩に 秀雄 裏微加花二 厩橋 犬桜一枝をればうしろからかみつくやうに呵る花守 暗記 新庄 山守かとがむる声は折花の雲の中なる雷と聞く 一 小糸 やう〳〵と桜日和のかたまりて風もくづさぬ花の国空 太田原 見る人の花に酔へるは名にしあふよし野の葛もさまし若けん 花は花老は老にてかくれねどかざせば子ともらしう見えし春秋 土産にやるあてどなけれとも折みて蜘をつかみし花の一枝百人 裏役 一桜ゆゑ長閑き春を朝けから花見したくのなとて世話しき みよし野の山は桜の一樹にて高低のある花の枝道 高畑 家さくら折てかざせは夏計日の照国とおもはれにけり真名冨 駿府 一妹にさへうとまれにけり夢見草枕も花のちりにうづみて和海 唐土のよし野といへど唐土に此やうに何図のさくべき諸実 野田 よし野なる花の君とて楠木も赤まつもみな風やふせがん 桜さく道の案内にけふも又たのまれて国を見る人もあり鳴音 花見つゝあゆめは近し唐土のよし野も六丁壱里かとおもふ柿人 墨田川咲た桜につなかせしと駒留石や道に立らん竹光 さほ姫の霞のたすきかけまくもさらせる図の市引桜真久 花のえすひとむらさめのさわぎにてわり子さゝへもちらされにけり古則 坂崎 高山の桜さかりは一枝を越るとこくぼむ花の白雲 吉田 一枝は家つとにしてさくらむやどなる山の神にもみせばや 移し植る我を恨かうれしむか花物いはず笑ふもあやし 桑名 隅田川水にうつれる花の影はよせ来る波ぞ折て帰れる道則 一恥かしや美しき花の下蔭を心きたなくけふもはなれぬ高行 咲花のかたを尋ねしちり〳〵の友を桜のもとにあつめつ 長崎 目妙加花ニ いさ破子ひらけよさけといふを聞かば花やうるさくおもふなるらん 太田原 目妙加花一 〽春風か梅のともし火吹消して跡はくらまのうす桜哉 桑折 金直 仝 見る人のうさをさくらの花咲ぬ苦労あらしの山をかくしつ 棚持 坂崎 そよと吹風には弱くちりながら花は世界をゆすり立けり 岩守 目妙 岩城 みちのくに名こそ立けれ山桜ひらいて通す関の花守 峯也 公 緋桜や浅黄桜のいろ〳〵に重ねて来たる衣手の杜 暖丸 毛むしよりいらち心の花守は化して小蝶の夢になれかし 新庄 我影のながくなるまで手を延てをれどをられぬ春のひ桜 小糸 筆さくらても美しやかな釘のをれとは見えぬ花の制札 喜可寿 左貫 外に吹風に心の内よりも花に油断のならぬ庭寺 笑麿 柿崎 事にぬれ風にさゝやき佐保姫もつゐにときぬる花の下ひも ○網業 峯は雲半霞て焚をは花につゝみしみよし野の山 仙台 真根人 吉野なる神はかりとは桜狩入相のかねは我もをしめり 桑折 咲みつるえだは猶更惜まれて折まどはする花の白く雪 竹広 仝 児桜かごよ車ともてなしてすきまの風を厭ふ也けり 薄墨 山里のきたなき庵も此頃は花によごれて寄荒にぞゆ 仝 一 児さくら親てふ事にやしなはれ雲と見まがふやうに也けり 仝 引よぢて折らんとすれば胡蝶さへ花ををしむか手にすがり 仝 太田原 高砂のおのへとやらか花の顔霞の袖にかくさてあらなん 資上廿八 最上 かたよりによろめき立る糸柳是も花にや酔るなるらん 繁留 駿府 こぶからす三つ四つ二つ足あとをつけたる花の雪の曙 桜さく峯立かくす霞をばちらす斗のはる風もうな空寐 絶間なき客に中〳〵山里は花見てくらす春ぞすくなき柿人 とはれさる山家のはなも世の人のをりにあはぬはめでたけり 七重八重こゝから見れば遠ねの花や桜も目には白雲中住 笠間 莟居て雨に桜の国うるしぬれる程猶艶ぞ増れる 小田原 稚子の守り縫ひ程糸さくら咲初てけり山のゑりもと道 〃道連 青梅 此頃は松も一枝かさしつゝ花みにつけてけしき催す喜代住 稀にみる人もありけり白里に浮世を捨し墨染さくら幅足 盃をこちからさせはあちらから幕のへだてもなき花見出金 唐土は藪我朝は花の内酒に千里のとらの尾桜真久 佐原 一伊吹山やいと草よりかたはらにもゆる斗りのひ桜の花八重垣 一枝はぬすまるゝともいかにせんとても盛の花の雪折延年 高浜 家土産の枝にはかへて花を見るけふはみじかくおもふ春の日万世成 山〳〵の笑ふ比にも初さくらふくれて見ゆる莟おほかる 坂崎 折得てはもとれどあとのそけ枝に図さはるやと木をもいためり枝重 小糸 嶺に咲花は親てふ雨をもつ雲に似たるもことはりにこそ厚人 ずつしりと手折し枝を荷ひたる花の雪にもたわむ竹棒真民 泥の如酔たる人はさもなくて心ぞむにとらかされける万象 三條 海士のたく塩雨桜花の頃わけてめつらん須磨の夕米 竹か岡 呵られやせんと桜を少しづゝ綻ばせ行風のやさしさ 貴上廿九 吉田 一長閑さにいつれの山も目の前やちらつく国の先にこそあれ 花厭風 山桜霞のころもあつく着て此春だにも風つゝまなん西行上人 波那細 あなうたて花の七日に二日まで五日の風のふく日ありとは 諏訪 裏微加花三 風よけとなれば隣の蔵も又花の為には我宝なり 高崎 松人 水戸 大宮の桜咲しぞ風の出る穴にふさかれ不二の笠雲 川波 裏微加花二 小松川 千金と愛ぬる花を蒔ちらす風はよくなきものにぞ有ける 光房 もろこしのよし野は花の盛ぞとだまして遠くやれ風の神 仙台 梅が香を盗みたらいで此頃は必をゆすれる風のわるもの 裏徴 盛には山をもとぢて桜桜風の出べきすき間あらずれ 五加 芳野 吹はいやいやとて風にかふりする可愛らしさの児桜哉芳麿 桑折 負ふた子を七日たつぬる国の内風をいとふに心せはしく 鶯よ花に人来といとはずも経よみて風をいのりのけた 八重〳〵の花のにしきにくるまりてさむけ立ほど風をいとへる万象 風雲の出もやすると空を見に花なきかたへくゞり出けり真春 花の雲かさねてからは気をつけて今ものやうに吹な山風采女 ふく音を聞て胸さへはしりけり追風さそふ帆懸桜は万象 六手 一花も火もともしかゝればふく風に手をかざしてもかひなかり 風いとふ取かせ山しら雲の綿を着せたる花の真盛り津守 花咲と告やるみになるならば風の神をも封しこめたし真福 山々の霞の衣重ねきて円にはいとゞ風をいとへり真久 風がもし尋ぬるならば朝露の中につぼみて国はかくれよ方住 吉田 待し間は二百十日の心地して風を気けふ花は咲けり真文 日妙加花二 ことならば松をこそ吹め花にしも騒くやみつのをこのの風千穎 一目妙加花一 花に風いとふ心のよみ形は扇へかくもいかゞとぞおもふ安丸 あたゝかな風にひらきてまた風をきらふは国のきまた也けり虎住 目妙 いと柳くり出されて国をちらす風の袋をくゝらんとすか潟人 岩城 風をいとひ露の衣あつくきて花も若木は伊達やつかん 左貫 帆かけさくら国の盛りは名にも似ずそよ〳〵と吹風も殿へり 一山風の吹こなせどもさくら花ひらき直りのさからひはなし下見 風こゝろあらばこらへよ花盛過ての後は人もまたなん芳文 咲満し桜のもとにくむ酒の泡も散らすな春の山風真風 一枝はよし手折とも春風の花にさはらぬ剰札もかな延年 高崎 いかなれば風を五日と定めけん七日計りの花の盛りに亀永 皐月比かならず来よとちらぬ国くれて弥生の風かへさや張雄 広前に開き初ては吹風のみやゐはとちてさけ桜花 咲むに風のつむじをよせしとて軒端にはさむ哥月の隠水戸川波 春雨も足を休めよひ桜にふはご程なる風もいとへば跡馬 土産にとて図の一枝たわむとも風の手あてる事は厭へり 落花 としごとにこゞめ兼ては藤花のさきにもたゝぬ物をする哉凡河内躬恒 波那細 一旅人の小笠の上に散る花はどこまで行か風もしらじな真春 まてといへどちりもとまらぬ妙桜ひて世話しくなりにけるも松秀 見るにありぬ花の姿をそこなふはかたちなき風のそねむなるべし万象 ゆるされて折にかゝれば藪初る花ぞ中〳〵迄地わろげ也鳴音 裏徴加花三 男なら枝に帰れといはましを小町桜の落ぞすべなき 新庄 散花を風がふたらびもて行て氈にひとつも残さゞりけり 諏方 散尽すしだれ桜は雪やみて雨に成たる姿なりけり 犬山 花の雪ふりやみぬとて見上れば梢の事は先はれにけり 須磨の浦の如しほたれてやく塩のひとかたまりに落るからさよ 吹風に磯山桜よきよとはおもふどちなる波にたのまん水枝 裏微加花二 布施 あまあふね初瀬の寺の花ふだきみなとを明て吹こませけり 裏徴 かへるべき道だに花の白雪の梢にきくもうそ鳥のこゑ 岩城 散浮て流るゝむは誘ふ水あらはとよみし小町さくらか 新庄 桑折 一枝も人にくれんと花守かをしめど風が散らすひさくら 高畑 よし野川妹脊の花のちりてよる中わけて漕く舟は何事 真名冨 山形 桜花雪と降とも惜しな松の梢に日数つもらば 真砂雄 折らるゝも踏るゝも厭ふ嵐かや枝にも地にも花を置ぬは 鞍馬山麓の川へうく花のちることまではつげすもあれかし跡人 山つとに折られし花の枝は世をさけた姿の墨染さくら真枝 散る花は芥よといふあくたいを咎めて枝にしばしとだまれ千韻 日妙加花一 名古屋 仰向は口の中へもちり込てむせるは図をゝしむ成べし 三日市 散物を踏をいとふかはね越る鹿は春さへ哀れ也けり 長俊 目妙 芳野 あたゝかに風はふけども花の雪ちらせる時は胸をひやせり 花守 江尻 見るひまもなくて散ぬる花莚まかせざりけりをしむつに 岩城一 亀も香もみなそつ合ふて吉野川ながるゝ野や水をさそはん 暖丸 貴上三十二 小松川 大原の花散る野辺は若柴も雪をいたゞく風情也けり 仙台 一山風か花をちらせば吉野川しらきふきてはらを立波真根人 昏過ねに帰る花に毛書迄胡蝶に記して飛音見え草百人 事露の父母有と散てさへ木蔭はなれぬ国ぞしほらし復春 ねぐらへと烏もいそく夕風にしつよつふたつねにかへる花 春ながらさがの桜のちりふきてしやかの産屋を造るかとみゆ 世の中をゆすりみてたるふさくらうごかし過て花や散るらん万象 をしとおもふ心のいとにちる家をえだにつなぎて落さずもな明方 桜花胡蝶のやうに飛ちりて菜樹の里の菜にもとなれ 先も見えぬ程に咲れば山風もつきあたりてや円ちらすらん花満 小金井にちり込む花を又みよと江戸へもて行玉川の水種成 名古屋 心さくらちるよと風につれたちや里まで花の告に来にけり 桜花うまき色香を持ながら散時はたゞにが〳〵しさよ にくまれし風も日をへて聚る桜を乳てわびに来にけり田廬翁 高崎 なゐふりてかくもちらせし花をなどゆりかへさゞるもとの梢に やぬりてきて袖の口へと入本はなかめつかれる人や補ふ真友 千住 おのづから音気へ春はかたむきてあはれ桜の花をこぼせり 越後 都からさき降りしかと山かつのおどろく春の図の初雪木守 不逢恋 かたゑのより〳〵君をせとる身は思ひほそりてあふべくもなし為忠朝臣 裏微加花三 一とけかぬる人の心は先の世のかたきどちから生れ出けん跡人 肩〳〵に独つぶ寝の浅ましき姿は恋の奴なりけり春秋 裏微加花二 さりとてはあはれぬ恋のやみ〳〵とたゞに死るは悔しかりける空寐 逢ふことはかたれのさやをぬる間さへさめ〴〵となく夢を見し哉真春 うたる寝の夢にだに見ん逢事はかたかひなのみつら荻にして千賀江 裏徴 仁熊 あしの海歩行はこぶはおほけれど妹を見る目のなきぞくるしき 真村 高畑 君に逢ふ事は七世の孫に逢ふ命ありてもあふよしぞなき真名冨 恋痩をいかにとむかふ枕もとかゝみにも塵のつもるはかなさ跡人 妹が方へやりて置とも我心つれなき真似は覚えざり 目妙加花一 名古屋 あふ事はかた違ひなるかたゝ鮒かため契し事や忘れし真歌 目妙 落合ぬ人の情の浅き瀬をうらむ涙は渕と也けり千静 高畑 一夜だにねも見ぬ小野の恋草は唯年をのみつめといふのか 絶ぞふる泪の雨は恋人のあをといふ迄しのぎてよとや仝 夜は明るに明ぬ妻戸の北風は歯の根さへげに合ぬくやしき黒塀 青梅 別路のつらきはしらで鶏鐘に待くるしさをまつ覚えけり いつとてもつきのわるくて逢ぬのは恋の衣の仕立下手なる真枝 年を経て涙の海の気もなくあはでつらるゝ身もつらけれ真広 前の世に何とちぎりて逢ふことのかたき同士や生れあはせし折香 恋れども後路にねせてあはれぬはうしろ姿にほれしゆゑかも 恋 恋は今はあらじと我は思ひしをいづこの恋ぞつかみかゝれる広河女王 波那細 漸々と人をしづめて忍ぶ夜になど我胸のさわぐなるらん空寐 我恋の玉僧なるものゆゑに袂も袖もしぼりつるかな磯名 裏微加花三 岩城 たまさるにいたき鶏静のむつことを誰きゝつけて口真似はする長伎 かくばかり恋に心をくだかけのあけて一声つぐる日も哉真長 玉草のたよりも絶ていたづらに月日ばかりを送るはかなさ糸女 逢ふ坂の関守る神にはら〳〵とちらす涙やぬさと手向ん空寐 耳ありとおもひし壁の穴よりぞ見られてよそに浮名立けり 駿府 むねの火はいかに燃てもまゝならぬ人をこめとぞ待が愚さ蔭友 裏徴加花二 佐倉 吾妹子が来べきといひし約束もだん〳〵のびるさゝがにのいと 桑名 我おもひとゞけてくれる仲立の気を長くもてといふを頼みつ 裏徴 桑折 〽衣〳〵の涙の事は美しき妹が言葉の図のかぞいろ 稲主 全 胸に火を互にたひて逢ひながらあたゝまる間もなき別哉 我恋の重荷をはこび出す恋のやつこのあせか落る泪は 巻こめて送る泪の玉れぞひらかば人の膝におつべし石綱 相おもへばこちらのむねにわやうに妹が心をしる心哉春好 壁に耳あるとはしりてしのべどもひとの目ぬりのならぬ世ぞき 土呂 朱也 高崎 玉章の紙にすきゝれありとても読時人に覗かるな君 松人 坂崎 親〳〵にかくせし恋のあらはれてむねよりもまづ顔に火をたく 澄 、澄 かへらやといそぐ別れの船唄に袖の湊のさわがしき哉 駿府 笠の骨あむさゝがにゝ今宵しも忍びて来ます事はしれけり道則 いかにせんあとより恋のせめくるにむねふたがりてよき道もなし春秋 こりずまに夢喰ふ書のすくせかやからき目見ても猶ぞ恋しき かくしおく袂のみも洗たくにあらはれ出る事となりける 恋草を力車につみあまる跡はあふごにかづかせて見ん磯名 三味せんとちがふてわれは君が孫にもたれてゐても声は出されず 目妙加花一 ふけぬ間とかねてぞ契る待宵は侍従といへる煙ものやせん真広 胸の内は雲でかくせどいつしかに色にぞ出羽の我恋の山 目妙 岩城 こゝろさし水にはせじと口の内にぬるきこたへの妹が言の葉 見られしと袖に引入るみよりも心のうちのもめるくるしさ 仝 恋ふる胸の弥ふさがるはおもふ所せまくほしみて願ふからなり万象 一ノ関 よしや我おもひをにゞにくだきてもひとつ心になさでやまめや 初雁のはつかにこひとやくそくも晦日にとのばす人ぞつれなき百林 名古屋 枕より跡より恋のせめくれば袖になみだの落したくする 仝耳風改 しのびつゝ恋の本さくみよし野はねやくいるまの郡也けり 秋津 一君来やと鼠鳴しつゝ待とこねば猶寝ず鳴になきなす哉真臣 舘林 人目をば重となりつゝつゝめどもつゝみかぬるは涙也けり 公広 佐倉 待夜半は風のてまへもはづかしき独あく戸に幾度おきつゝ諸国 恋せしときのふみそきてけふははや春の心ぞ又うごきける水枝 我おもふ心のたけはふる雪とつもる恋路のしるべにやせん つれなさにやせこゝの瀬のおもひ川はやいくとせか恋渡れども凹 山家 止風は戸を吹明て入るものを何とあらしの窓たゝくらん西行上人 裏微加花三 都へは顔出しもせず浮れ出る雲を見下してくらす心住真枝 裏徴 仁熊 山道の曲りなりにて世の中をつくろはぬこそ住よかりけれ 岩城 世に立はうしとくるしと山にいりて寝ころびかゝる庭にすゐぬ長人 月に老花に若やく山住はいつ見ても年のよらぬ也けり 片倉 山賤のほだしと思ふほたの火にたゝれぬばかりぬくもりにかり かしましと風のふくべも捨にけり世になり出るをいとふ山住 目妙加花一 山里は都とちがひ交はりに高き低きがなくて住よき男弘道 目妙 山里も図には風をいとふかとととへばかせさをふせく柴垣 世の中の外とも思ふ山家には鶯の音に春やしるらし今成 深山にも八重ね吹の花はあれどみの一つ家に住ぞわびしききん子 一人の来て世のうき事を語る時ちらすも嬉し軒の瀧津瀬 世の事はさらりとさるを友として心やすくぞ杉の下庵百林 都人来てはほたてゝ濁らせつ板井の水のすます心を水枝 名古屋 身をやすく住るの家はしゝ自ものひざ折ふせて容さばかりて弘器 山里は雨のまし水多く見てあやうきをかく谷の柴橋仝 捨て来し都のほだしたえぬれば蔦や紅葉のまどふ山里平加鳥 浮世へは道を付木の世話もなし月に明りはいらぬ山住糸人 甘樫も笹木も共に樵走て世にはたつきのからき山賤 湖 近江の海塩はやかねど豊嶋のあるによりてや辛崎の浜作者不知 波那畑 世渡りのしほなき海は釣人も風のくさるを待計り也真臣 近江の海たつ白浪はほこの根の跡に残りし雪の浮かも水枝 裏微加花二 小糸 諏訪の海夜毎氷のつくりたる橋はさながら桑の岩はし 吉田 逆さまに富士引提し腕とみゆ諏訪の海辺の大松の枝高田真 衰微 小糸 不二の根にふりおく雪ことせの海はいづれも塩にあらぬ也けり 桑折 ふこの手うしろ姿を見る時の鏡なるらん諏訪の氷海 松代 淡海を夜ぬけに来たり富士の類かくれし所や諏訪の湖秀雄 貴上三十七 四方山も若やく春の朝風にしはののびたる志賀の海つて明方 錦なす志賀山さくら散うけばふくろにいれし枇杷の水海石網 みなこゝにみるめこそよれ塩しりのあけて出たる跡の瀬跡人 笙といふ文字なる島にます神は琵琶や大湖の名に孝らん 目妙加花二 高崎 あまのはらみるめは更にほかりけり盲人せおふ琵琶の海には茂葉 目妙加花一 戸塚 玉くしけ箱根の海にゐる魚のはらは紅もて粧ひぬるかも 中嶋 一浪の花散ぬる床の浦風にいけるこゝちもあらぬ釣舟 外ケ濱 ごちらへもうつりあふみの鏡山にほの海つらあはせかゞみに寿応 目妙 太田原 たまて箱とし明る時氷も尋て浪の皺よる諏訪の湖 不二の嶺の出しあふみの海中に人穴ほどは残る島山真長 唐のみか式部が文を書しよりあかしにかへし潮の月桑羅図 常にひくかの蝉丸かびはの海みる目のなきもことわりぞ 散る花のちり銘よする鳰の海波にもやうの唐崎の松真久 遠目鑑かりては近き江の海にめをからぬ紫の業迄も見ゆ百人 野菜 くひどころ見ればうねなる尤茄子うゑたる人のくへるなるべし小大君 波那細 取かへていくらのとくを都人きたなき水にきよき水にき水糖を石綱 裏微加花三 七草にもれし日本薬を今つめばうら此原の色にみえけり物薬 早わらびの挙にまけず春も猶いく手か出る岩附のねぎ真枝 裏微加花二 大江戸の市に山なすしろ爪と茄子の色はふじよつくばよ綾羽 諸神の憎みたまへる香ばかりか法師となりて経るねぎも水枝 裏徴 東の露のつちに落ては光りなく埋れし玉や芋の子となる吉躬 貴上三十八 小松川 そら直なく菜をうる人はそら名うる人よりも世をしうくらせり 一渓のみか山井に半ゝ菜すゝぎとて根ごとを喰ふ人も有けり蔭友 風寒み色紫の土蕪蓑をきて出る雪の朝市四 もきとりて日を経たからし葉なくてしそのよりたる此老茄子高行 目妙加花二 山鳥の尾張おほねをいかにしてなか〳〵しくはきりて干らん磯名 目妙加花一 春の日に田芹沢芹三つ葉芹せり合て梅砂のをかしさ真芳 大井や小介もゆでゝうましとはうまし御国のさたにぞもける高行 目妙 目まつしけれどもとめあさに芋かしら多く喰ふぞありがたきもの琴葉 さかり葉にぬかども多くふえのねののびやかにしもなれる長芋万象 くさといふわけきはしらねふん〳〵とかほどよろしくにほへるものを二黄 ころ〳〵も野辺をころける童は鈴菜のこらずおしつぶしけり水戸重美 津の国の難波の春を天王寺蕪も塔に立て見えけり空寐 盗人の昼寝の跡もみえにけり菫の咲し武蔵野の原甲良 いやよひのせちねふとてつみ洗ふ娵菜に水をかけるをかしさ 茎も葉も匂ひもおなじ時に出てそこしたがへるひるとあつさも 兵と名にし大根は今も猶むしやふり付て喰ふべかり窓香 手なつちも足な土をもいとはずで山またにほる八かしら芋真廣 縄はりてしめたる畑の内にこそねぎやすゝなも生る也けり 鳥ならぬたか菜つる菜をあらそひて梅にわらはの飛で出けり 物からぬ田舎の人の作ればかねからまがりて出来し一文字亀成 つみ揃ふ松菜つる菜に茗荷たけ亀の甲笊に見るもめでさ 船 逆風の吹ぬる時は行船もほてうちてこそ嬉しかりけれ淡路専女 波那細 新庄 一日の本にはじめて作りいづの船いかにから野と呼伝へけん辛真紫 裏微加花三 木の葉かと見るうち色をうしなふて沖の時事に舟ぞちりゆく真春 朝ひしき船のしら帆は水の上の淡路の沖にやがて消行空寐 裏微加花二 むかしより君にたとへし物ぞとて屋形つくりの舟もこそあれ鳴音 袖の浦波の皺のす火のしかとゆふひをいれて舟ぞおしゆく道則 足門 海原の波はゆた〳〵はこべとも帆はかけて行沖の大船 裏徹 千住 波の上に柳の一乗行船にかけし帆綱や蜘のいとの如 よる波も嫗の名にあふ桧垣船米かしくとてみつはくみけり万象 つらなりて空の海とぶ雁ほどにくものきはゆく千船百船元丸 諏訪 諏訪の海ふじの上こだ舟の帆は扇にのせし夕顔の花南雀三恒 母尊をしたへる雛か親船のそばに小舟の浮ふ糸色は竹光 上る帆は蝶屋形のさまみえて銚子の口を出る親舟桑羅園 ほの〴〵と日の出のうつる帆の色もむらさきに見ゆ江戸の入舟百林 一舞柳の葉をもて作る船なれば風の心に今もまかせつ於鬼門 根引にはならぬ大木も舟と成て今はたやすく人にこがるゝ 高崎 東水 駿府 うべしこそ公とはいひしよしあらの中を真直にわけ渡る舟直 朝日さす熊野の浦に鰹ぶし干たるごとく並ぶもゝ舟 吉田 九花 空の海にかすむ小舟は久かたの月の柱の木の葉なるらん 真民 汐はよし孝は多しと釣人のうけはりなから舟出してけり 目妙加花二 そのさまも薄に似たり帆を揚て風をまねける袖が浦風 高畑 真名冨 吉田 名にし玉ふ宇治の扇の芝舟のひらく歌は梶にぞ有ける橋宇 潰上四十 みつ汐の戦ふ内に引上ん車かゝりの舟の帆はしら高行 一目妙加花一 たいもつの浦さし出せと揖枕浪の高さに寝も出来ぬ也 小糸 雨をふらせ風をおこせる名僧ののりたる舟もかぢにこそよれ 目妙 水や空雲ともまがふ浪の上に夕月うかぶ雪の釣舟真芳 左貫 浪風のあらくあたれどさからはで木のよき舟の走る海原 全 をちかたへ琴柱とみえてつめかへる船にかすみのひける海原 真総 太田原 くしの道釈迦の教を運ひ来し船は徳をもつめる物也大 さら〳〵とあしわけ小舟あしわけてすりくる珠数の玉刈の峯跡成 桑折 山川に雨のまされば渡し守舟も酒代をゆすりこそれ 高畑 風持て木の葉の如くむき〳〵へほ手打てちる沖の百舟真名冨 海原のあれにあたると唐土へけんとうしてぞゆく四の船似寿 馬ならばせはしからんにゆた〳〵と壁にのりかけてよき家船諸実 難波江に世渡る海士の京のぼり人のあしかる淀の川舟仝 姥ならでこれは小舟の幾通ひ桧蛇の船へみづはくむ也比左左志 追風に矢を射る如く走也命を的の沖の船乗健雄 青梅 みじか夜に三十石はまたたらで総で引出す淀の川舟 さゞ波に麁朶を運びて世を渡る品川の海はのりよかりけりけり 梓弓まともの風にやほかけてほしもはづさずはしる舟へ高行 寺領 最上川登り下りの稲舟へうちこむ浪に帆や濡るらん 西尾 参宮の下向の舟の家産にのりをくれぬは無理とおもはじ あし多く入のをよしと岸につけて人のあかをも流す湯船は 岩にわれてつけてもつかぬあら磯の焼ものなれや南京の松真額 歸雁 時来ぬと古さとさして帰る嶋去年きた道へ又向ふなり為忠朝臣 哀微加花三 一草麦にあくまで腹をこやしけん小米桜も見ずに行鴈東水 今朝立し雁の前やなでらん倒れふしたる小田のかゝしは松秀 裏微加花二 一山を出てかへらぬ雲を雁が事は朝にかけてつれて行かも鳴音 新庄 科さかる越へ帰るか二つ文字すぐなる文字に見ゆる雁がね杉中 一春露引袖はらひ行雁はつれなき里にすみやならへる稲丸 一居風呂の焚木くはへて渡りいゝあるむ頃帰る雁がね松人 かみしたく筆草のの鞋波津をけふはあげ字の春の雁がね 裏微 書そめを焼さぎ長の灰ならん行雁がねの文字のかたちは篠木木守 芳野 心こゝにあらに田立し庵がねは見れども見えずえず空よきえ行芳麿 帰るさをゑぎあわてゝ立雁は露の棚にかしら打らし 古郷へ雁もゑぐかむらさきの霞の衣の新らしきうち 常世からくひ持来たる枯枝に花をさかせてかへる雁がね 玉櫛毛ふたきとかりに名づけけん明てから〳〵春かへる故 桑折 越後脇野町 明かゝる鳴戸の澳をから〳〵と謎になりつゝ帰る雁がね いにしてはいさ行雁も室咲のさくらを見ずて帰るべしやは大道 花見ずは身のひしくひぞまてよ雁それたの雪に思ひかへても跡也 曙の霞に消て行雁は誰が見残せし夢のうき橋千賀江 みよし野のたのむの雁もいそげばや立ながらよると鳴て行らん石 渋成 古里へ帰る事をも忘れ草餌にかひて見ん春の雁がね 見てゆけと帰れる雁を追てふく風もや花をほころばしけん 一くだり見えて帰るは常世辺をあて名のやうな雁の玉章に ○直路 仝 雁の文字帰るは五言こしろかとみれば霞の中にはいりつ 喜加寿 かならずも常世へ行て秋はまたわすれずとこよ小田の雁がね 目妙加花一 新庄 一二月は露に消て三かともしるとも見えず行雁の文字 ○ 目妙 行跡も奇麗にせむとちり雲に羽箒遣ひ帰る雁がね 赤沼 気仙沼 古郷と思ひて雁のとまらなんこゝもときはの松が浦島 四 厩橋 山さくらいまだ花さへひらかねは封じのまゝに帰る雁がね 暗記 越路なる雪の封じめとけもせで其まゝ帰る雁の玉章 芳野 鳴連て夢はさませど行雁のつらにくしとは思はざりけり花守 大田原 春の夜の朧手とは見えながら棹にもならで帰る雁がね 小町 おくれたる友のしをりと白雲にらくがきしつゝ行か雁がね琴富貴 望月 あし引の山形に見る雁がねはかけず崩れずかさして行 富津 枯枝を見れば来るより表なり図の中行事の雁がね 鉾田 花も見ず女夫づれにて雁がねは点也ねにかへるなるべし。 豆人 士 三吉野の花の盛を天雲の余所にも見るか帰る雁がね ○文成 大田原 小安方 点ゝへいそぐとてこそ雨の夜も月に笠をば雁鳴わたれ安 最上 玉章をどこへ落してから〳〵と文箱の底をたゝき行鴈。 棚露引紫の濃黄紙に五段がへしの雁の玉札 新庄 笄をもらうたよりも嬉しげに越路をさして帰る雁がね真清 伏黒 流したるその形をさながらに八島の浦を帰る辱がね 桑折 花や見んみずやゆかんと夕まどひ心も空にかへる雁がね 梓弓はると聞ては雁がねのこはゐられじと逃て行らん百林 みかゝでよしと燕のことつてを空に覚えて帰る雁がね浦成 なはしろの水はせけども行雁のうつれる影は引とめかねつ 木更津 松代 行つらの末ひとつだに韻塞おさへてゐたき雁がねの文字 ○秀雄 さし汐にみな雁がねの立行ば跡を追てや波のかけくる 笠間 待花の盛も見ずに行雁をうかりと見るは鳥にしかずや 脇野町 海原を霰とゝもに立雁は波の花をも見ぬ心かや 野遊 一ノ関 秋は稲におのが名おはせ春は田をかへすといへば帰る雁がね 大道 仝 此春もまたかりゆかば越の海の浪の白馬ひまやなからん 親覧 諏訪 妻雁は露の関を越かねて雲の峯迄まはるやうなり 三恒 下総 朝に来んしをりか小田に足跡の紅葉を残し帰る雁がね 一二 春雨の糸につばさをよりそへて縄になりつゝ帰る雁がね 高崎 菱喰は名のみなりけり草餅の形ちも見ずに帰る雁がね 茂葉 野田 桜狩家毎に留主となる頃はとも引たてゝ帰る雁がね 寿美香 江尻 雁がねの花の笄もらにては古郷さしてもどる夕暮 心よく花咲よとや邪魔になる寒さを連て帰る雁がね 松代 おのが身の世事なをひろひ物にして花を見捨て帰る雁がね 上田 玉章の走り書とも見ゆるかないそぎて帰る春の雁がね安筆 世の人の別れをしむと雁がねも心月夜に鳴てかへりぬ 小糸 ふつゝかな羽風は花に似気なしと逃てや雁の帰るなるらん” ル道雄 仝 一は二は三月大根出る頃ほそねに啼て帰るかりがね 静雄 柿崎 立鳥は跡を濁さぬものぞかし聲すみ渡る春の雁がね其 其樂 駿府 尋がねは霜のきぬにひとへ帯しめるやうなる春雨の空 沼津 月を見に来たまゝをりて花の頃迎ひうけてか帰る雁がね 芳野 雛の餅搗頭一羽残れるはひし喰ひと云雁にや有らん 春野 茅花ぬく浅茅が原も老にけり白錦ひける野辺とみるまで曽祢好忠 波那細 なつかしき茎咲㙒は広けれど花をよけては寝所もなし空寐 帰りても猶春の野をなつかしみ夢に見て又一夜寐にけり千穎 裏微加花三 鍋をさへかづき出して若草のつまにも恥ず遊ぶつくまれ比左志 一夜寝し野辺のすみれはさもなくてつぱれの孕む事ぞあやしき和歌名 裏微加花二 名古屋 春の野をけふはなやきそ摘草にみがつま持て我も難れり真歌 野を内と日毎遊べば内は野となる迄おほき裹の摘草磯名 はて知れぬ此むさし野の野遊は暮るをはてに戻る梅草竹光 野遊に誰が焚捨しく愛の跡すみれ取るにも手をふごしけり百也 裏微 梓弓やだの大野の早わらびはこぶしかためて何をいるらん 去年の冬鷹狩したる跡ならんすくみて出る野辺の鷺草真長 春の野は花黄純子に浮糸の飛金と見るたんほくのこと春秋 あきつ野の春の蕨のたゞむきにとまりし堤や喰いりぬらん弘器 春の野は露にこめて有なから人の心をはらすものかな 若芝のつゝきおこすを春の野にむかしの人はいかに寝つらん真光 春の野のゆかりの色の紫に背を摺付て狂ふわか駒物菓 野田 糸萩も薄の糸も名のみにてまだいとけなくみゆる春の野 吉田 紫の茎に一夜赤人は山鳥こときけどすべに寝にけり橋守 小糸 養ひし親の事さへこまりには名を付あへじ野辺の若草幸子 紅草を敷ものにして寐つきつ天井なしの春の野遊銀子 目砂加花二 祢津 蓮花草柄はるけんと野辺に来て髭題目の野老ほりせり 事富貴 目妙加花一 富津 一梓弓春の野がけの楽しさは兄や弟やと引連て出る 村上 むら〳〵と焼たる野久しは筆つばなさもかきちらす反古かとぞみる 牛ばかり先へかへして道草を又くふ春の野等の総角 目妙 菫咲野辺へ出茶屋の甘酒も一夜ねかしてひさくをかしさ真 岩城 青みたる野辺に出れば青みたる面も花の色となりけり 仙台 舞ふ空雀うたふ鶯さま〳〵のひとのきゞすや遊ぶ春の野真似人 冨津 梅草につみや作らん春の野の孕みつばなを喰し処女子 千代丸 仝 楽しみをつくしよめなにあをはいつともをる春の野遊医曽 雛草にとまれる蝶は宮人の日扇かざす春の野遊繁昌 新庄 春の野にかへさ忘れて遊ぶなり心の駒を放ち飼して 舟人 桑折 詠れば茅花の孕む春の野に結ぶ寝やいはた帯なる 金直 仝 駒の鈴なる青よりも春の野にすゞ菜すゞしろ摘は賑はし 金丸 仝 菫咲野中の清水紫の市紗につゝむ鏡とぞ見る薄墨 孫がため春の野に出て若菜梅我ころぶ手をひかれながらも百林 駒鳥 神詣かけて北野につむ茎つくしの筆も取習ひけり捨瓢 脇野町 こく薄くかい〳〵の草色どりて更紗染とも見ゆる春のゝ 都可喜 一ノ関 春の野に飛出て蝶と菜の花に立とまりても遊びつるかな 寿久道 仝 さやぐ萩まねく芝の草の戸も若世となりて知れぬ春の野 折香 きたなかりし冬の野づらも春されば面変りして奇麗なりけり 物こはゞさぞ疎まれん春の野は野路行人の袖につく蝶真風 左原 永き日に短き草を持人の心は野辺によく揃ひけり 猩〻猩〻 春の野に老も出ては愛らしく娘菜持こそ楽しかりけれ 野田 衣成 草もまだをされければや男とも女郎花ともわかぬ春の野 仝 青畳敷て寄荒な春の野にみぐるしからぬ紫の芸 寿美香 村松 手枕の小野の野守がうたゝ寝を覚す雲座の床やあぐらん 厚房 此世にはあらじと思ふ楽しさよ蓮花草橋遊ぶ春の野 柿崎 桑名 早蕨の手を握る野のかたはらにつくしは指をさして笑ふか 牡丹 こゝろざし深見草とぞおもひしに浅ましげなる花のさまかな行宗卿 裏微加花三 一夕附日あかねさしたる白牡丹くる年はもしきにや咲らん真歌 哀微加花二 姫路 牡丹をば日のもとにこそ植べけれからしこといふものゝなければ 左原 浅まなる賤が庭には過ものと思ふ程咲色深み草杉盛 裏磯 姫路 桜木の譲りを受し花の王民もなつきて咲牡丹かな 剛樹 小桜や卯の花色の鎧草春と夏とのさかひおどしか 家彫のいかに一輪牡丹程さくも久しき廿日草かな 仙台 片倉 富貴なる庭の牡丹の花の露蛇もたからでめでたかりけり 三島 春夏と咲つゞく物をどちらから隣草とはいひ習ひけん磯名 葉に置る霞のみほして夕づく日さしいらぬ花の底深み草跡人 堀間よりみそかに見れば廿日草とうから咲ぬいつか折るべき 高崎 富貴とは名のみなりけり廿日程花見る客に酒を呑れて 松人 江尻 百草の中にまじらで隣草隣といふも白と紅井梅守 花を見て狂へる獅子の十六に四つ咲まさるせる草かな仲住 貴上四十七 岩城 兜ともいふべき花ぞ木ぶり迄ゐ首に見ゆる此鎧草本頼 ぼうたんの咲るかたへに庖石のにらみあひしも獅子のやう也花満 今井 富貴てふ名を負しより唐土に牡丹を花の王とや云らん 比丘守 目妙 仁熊 獅々の子の狂ふ牡丹の盛には手毬のやうに花も莟めり 岩城 行春に力もぬけぬ牡丹哉花を夏迄持越しつるは 仝 大輪に咲にや日数かゝりけん夏の日も十日雇ふ牡丹花 真酒躬 根を分し秋の雪の月よりも廿日の響を照す牡丹花暖丸 仝 太田原 冬の日の二日程ある永き日にさく牡丹は四十日艸かも 一小桜や卯の図よりも日数へて花のさねよき鎧草かな 富豊なる牡丹の露はしろかねやこがね色なる蝶も遊べり秋穂 桑折 その位おもげに露の深み草散る休音のぼたんとやせん 姫路 信あれば徳有こといふたぐひなり借家くと此富貴艸とは黒塀 笠間 鎧蝶わがもの顔にほこるらしおなじ名をよぶ艸にとまりて 一ノ関 諺の天にありてふ富貴草くだりたる世は庭に植つゝ 肩響となるもしらずに本日艸牡丹のもとに日をくらしけり伊丸 其むかし花をみかどのきさきとて妻紅ひの色深み草真久 舘林 こせつかぬ花の姿や富豊草きを大きくは植も育てし 王といふ花の跡から将軍の威をしめしたるよろひ草かな 和らげて作る花壇へ心なくふみ込土もふかみ草かな 狸塚 庭の面に咲乱れたる牡丹こそ其まゝ獅子のかしいとはみれ 富津 十日づゝ春と夏とに掛わけて露のおもさを見ん富貴草音成 牡丹花といへば名におふ老人のやうにいたはりおけよ庭守未枝 貴上四十八 花の顔笑ふ牡丹にあるじをも富貴さうとや人のほむらん満足 杜善 紫の色にぞそまるかきつばた池のぬなはのはひかゝりつゝ師時朝臣 裏微加花三 岩城 一菅ごもの生る深沼の杜若君と我が寝る床なへだてそ老母母の母母妻 沼川の去年の古洲に燕の子紫なる花は咲けり竹光 杜若あだなる色にぬなはさへ少しみぬまに這ひかゝりけり甲良 隔ねば水のあやめも分らぬに咲分てげる杜若かな四 裏微加花二 一杜若むつまじき色に咲物をなどすれ〳〵と人のいふらん糸女 衰微 影うつる水のうごけは燕のくるへるさまの杜若かな 岩城 軍する池の蛙の紫の幕とも見ゆる杜若か郡岩州長人 鉾田 筆にこそ莟は似つれ杜若日をもてかぞふみつか四つかと ひつまじき色に咲てふ杜若魚と水とはへだてざりむ群住 咲前にあとの莟は隠し置てなにへだてたる杜若そも春秋 一かれ飯の涙ならねど乳露に花のほとびし杜若かな稲丸 杜若羽袖にすりて池の面を立ゆくみればもどの白鷺空寐 花ぬしのゆかりの人かひともとをおもひきりても出す杜若 千姓 杜若笑はゞ池の藻伏鮒釣する針の腮もはづれん 貴人のころもの色の牡若五位の鷺など歌もつかじ石綱 箱の池や水の色迄ふた藍と心を入て見る杜若 ひとつしぼむ其しかへよりまたひとつふたつに咲る熱子花かな春秋 雨風のあらそふ池にすれあひて色を赤めしかほよ花かな 高崎 燕子花やう〳〵市に求しをすりにすられてならすくやしき 賞上四十九 若城 紫のふくさと見ゆる杜若池の鏡を包てぞさく 長人 杜若みかく太刀葉や長刀葉水に葉引て見る池の面満足 目妙 三島 真鈴 池水に橋はかゝれど杜若国紫はこす色ぞなき 針村 堀川に咲杜若花是程詠ても見たき花の色哉 開宿 葩は三つばに見えて燕のなりひらに咲杜若かな 仙台 傘の形に莟るかきつばた雨を待得て開くをかしさ近道 庄内 池水をかきたてゝいるにほ鳥の筆かと思ふ杜若かな 弓方 伏黒 水色も紺に染りし杜若中にしぼるは明日の下地か 一紫のにくまれ色と知つゝも奪るゝあけのかほよ花哉真梶 をし鳥の廻れる池の杜若むつまじき色と誰も見え 水にうつる四ひらの花を上下と八つ橋に見る杜若哉 水と魚と交はれば猶心して美しく咲杜若かな 吉原 もとつ葉に泥をふくみて燕の姿の池に咲杜若 紫の色もあせぬは杜若池にぬなはのはひさせばなり松秀 忍通恵 かくれ蓑かくれ笠をも得てし哉きたりと人に知られざるべく公誠 波那細 人の目のさめぬあひだをたのむ身はうつゝもやはり夢の通路千穎 哀微加花三 しらざりき閨の敷点に流せしもみづからもらす浮名なりとは石綱 つゝみもて恋の奴のしたひ行目先にたつは妹が俤春秋 裏微 仁熊 妹と我中は思ひをかけ樋にて人めしらずに通ふ水ぐき真村 足白き盗人にとて腹黒に追まくられし忍路ぞうき万象 人の目にたゝぬやうにとうら浪のより〳〵おくる袖の玉章静丸 ついひぢのくづれをはやく挙きなば通ふうき名のよそにもれじを真風 逢たしとおもひて忍ぶ通路も人にあはじといそぐくるしさ 村上 くらがりに妹がり行ば辰すがりこわがりながら嬉しがりけり水枝 我あしの音き也耳に忍ぶ身は急の奴に草履とらせん 声たつる軒端の萩に驚きぬしのぶにつらき恋の中川百人 日妙加花一 仁熊 書終る筆にも笠をかぶらせん人めを忍ぶ恋の道には 忍路はふるえてあしもひかねつ恋の奴が腰はおせども 諏方 目妙 小車のきしるばかりにとゝろきてむねのみ先へたる忍路真清 垣越る賎き真似も忍路や人がらのよき来小袖着て諸実 人めをばしのぶうるてふ大平めの身はやせながら恋ぞましける百林 草深く袖もしぐれて雨になる小麦ばたけも賤が通ひぬ真枝 しのぶれば人目に見えぬ所とて胸の中のみひたさわぎけり米積 忍ぶ夜はこゝろがさきへ行衆に恋の重荷も軽うなりけり桂雄 まだ魚はあやぶまれけり忍ぶ山しのびて通ふ道はつけども高盛 人ほどにこわくおもはず忍路の跡よりおくる恋の山犬跡人 通路は夜半の風にもしのべ竹ねふしはともに人にしらせ竹光 左原 忍ぶ身の露にも心置ぬれはかよふにぬるゝ袖のもぢ摺 逢ふ夜半を神や仏にかけてだに忍びて通ふ道はもどゝかし千賀江 駿府 やう〳〵と忍びよれども手枕をまかせぬことぞかひなかりける 恋 恋 なり〳〵てもとに落ぬる人をこそ色このみとはいふべかりけれ壬生忠峯 波那細 駿府 我八たゞ思ひしなへて歎くかな人の心のをれぬものゆゑ 貴上五十一 衣服をもうけずおぼえし物ゆゑに恋はやさしと思ひけるかな水枝 名古屋 恋の山のぼりつめては中〳〵に人のけしきも見ては居られず真歌 いかにせんくるまなしとのことわりに名の重荷のやるかたぞなき蔭友 煤にまかせて見ても我妹子が玉手まかれぬことぞくるしき磯名 妹まつと人にいひなば中〳〵にざれ言よとて心ゆるさむ真風 裏微加花三 一落る時人の目かどにかゝりけり涙の玉は丸きものから梅景 起つ寝つ急の奴のつかみあひ引分らるゝ時のくやしさ空寐 見しんはいづこの誰とまよひ子の行へもしらぬ恋見するかな 一ノ関 袖ははや涙にくちて後にもし嬉しさあらば何につゝまん たのしさは連理の枝の著いれて妹と比翼のとり膳もしつ真久 慶照を下緒にある千葉笑ひ寄あつまりて名をや立らん真枝 しのぶれば人目に見えぬ所とて胸の中のみひたさわぎけり米積 忍ぶ夜はこゝろがさきへ行故に恋の重荷も軽うなりけり桂雄 まだ魚はあやぶまれけり忍ぶ山しのびて通ふ道はつけども高盛 人ほどにこわくおもはず忍路の跡よりおくる恋の山犬跡人 通路は夜半の風にもしのべ竹ねふしはともに人にしらせ竹光 左原 忍ぶ身の露にも心置ぬれはかよふにぬるゝ袖のもぢ摺 逢ふ夜半を神や何にかけてだに忍びて通ふ道はも〴ゝかし千賀江 駿府 一やう〳〵と忍びよれども手枕をまかせぬことぞかひなかりける 恋 なり〳〵てもとに落ぬる人をこそ色このみとはいふべかりけれ壬生忠峯 波那細 駿府 我八たゞ思ひしなへて歎くかな人の心のをれぬものゆゑ 貴上五十一 一服をもうけずおぼえし物ゆゑに恋はやさしと思ひけるかな水枝 名古屋 恋の山のぼりつめては中〳〵に人のけしきも見ては居られず真歌 いかにせんくるまなしとのことわりに恋の重荷のやるかたぞなき蔭友 煤にまかせて見ても我妹子が玉手まかれぬことぞくるしき磯名 妹まつと人にいひなば中〳〵にざれ言よとて心ゆるさむ真風 裏微加花三 落る時人の目かどにかゝりけり涙の玉は丸きものから梅景 起つ寝つ急の奴のつかみあひ引分らるゝ時のくやしさ空寐 見し人はいづこの誰とまよひ子の行へもしらぬ恋召するかな安筆 袖ははや涙にくちて後にもし嬉しさあらば何につゝまん たのしさは連理の枝の著いれて妹と比翼のとり膳もしつ真久 慶応を下緒にある千葉笑ひ寄あつまりて名をや立らん真枝 恋すてふ我名は人の耳に満我耳にさへ今は入けり 裏微加花二 青すなよおとしもせじと忍ぶなりあふ夜をまれのひろひもの也 これ程に思ひこがるゝ念力はいはでも通れ人のこゝろに 犬山 古河 鴨川の水をさすとも我恋のかろき方にはいかゞなるべき 雨鶴 もとは只袖のしのぶの露なれどつもれば床の海となりけり 裏微 辺はずのいかに間違ふことやらん二筋となき恋の道にて光房 一かへさじとひきとめし袖を夢さめて見ればかへせし衣なりけり 鉾田 寒恋は手をも握らず早蕨のたゞ穂に出てまねく計ぞ 媒にまかせし名の種はげにみにはならざるもの思ひの図春秋 あふことはかたし立する白路寺のふみやるをだにうかゞひてをり目積 二ノ袋 さゝの葉にうつやあられのたし〳〵と夢のうちにも妹を怠つゝ したゝかな思ひは身にもあまかなり恋の奴につゝみもたせむ比左志 とり入て嬉しと思ふ錦木を焚木にされて胸ぞ燃ぬる睦実 やう〳〵とうつり香しめし恋衣これぞ思ひのはれ小袖なる糸女 思ひつゝぬる夜の夢は現なる涙の川の浮はしかそも於鬼門 中〳〵に妹に愛きやうこぼされて夫からよごす我袂かな国風 死て後文の返しを賜ふとも黄泉にもてくる人はあらじれ磯名 松代 比翼蓙しけど待夜の独寝は羽ねなき鳥の心ち祐すれ井蕃 脇野町 朝まだき隣の火打いぢわるや君をかへせとたきつけるなり 日にそひて疲ほそか程つよくなる恋の奴の力あやしや真福 手のうらをかへすぞつらき今更に我にあふべき筋はなしとて 蒸發し我に田川の水車ふみはやれども届かざりけり石綱 逢もせで立しうき名は知るといふ枕もわけをしらぬなるべし全 いひ出さぬ先から落ぬ瀧つせの浅き心をうらむ泪は真枝 日妙加花二 きそめては間もなきものを急衣はだ馴ぬ間にあかつきのかね 目妙加花一 かひもなき恋に心を染過て色に出しか人のとふまで明方 笹鷹の糸にくるとはしりながらをりあしく人の寝ぬぞ物うき道則 脇野町 君の手になれし扇を貰ふよりそれぞをりよき要とはなる 仝 米山 水上は細き恋路も加茂川のふとくなる程深くなりけり 目妙 飯山 廣道 顔を顔あはせ鏡にぬる夜だにうしろを見する妹ぞつれなき 全 あしならぬ手ぎれの返事聞てたゞ泪の玉を抱てぞなく 〃本丸 小町 こぬかとて見る春ゆの人しれずぬる夜は図も咲心地かな 大山 文車のふみはたまらで塵塚とちりのみ積ゝ枕わびしも俊吉 貴上五十三 長門 に手巻のいとゞわくせく思ふれり恋の手くだの切し砌は 我やうにわれをおもはゞ我やうに人もやみなん思はずもかな 新庄 春の野のつばなのめきおゆびだに握りなばかく恋や七はせじ 繁樹 青梅 あみにかゝりて。今はもろもちに持出すごとき葉名くるしや 喜代住 高田 鹿のもの筆にあやほす文を見て恋の山路にまよひ物けり常磐丸 重荷をば我に負せて我よりも恋の奴ぞされば身軽き隅成 ならびふす枕のやまと山城の背中向たる妹ぞつれなき ひとり寝の淋しさしるか小松千寺枕に積るちりと鳴ぬる 仝 身になれぬ新手枕は知らびて何といひよることの葉もなし いつとなく恋のいろはは覚つゝそれよりきみのわすられぬ哉 小田原 風りんに又さはる夜のおとづれはあらじ心に秋の来ぬらん 逢ていはでさすが文にも書やらぬ硯の水の乾くうらめし八輔 今ははや人めづゝみも切てけりいづれの瀬より恋わたべき 落ざりし妹をおもへば両袖に落べきものは我なみだなり 裏戸口明てまてども来ぬ人は表ばかりの恋路ならまし百船 玉章を隠して袖にいれおけばさて気のもめるものとこそれ甲良 つれなさの君が心のあらゝぎに癩をぞつくる我むねの内袖人 我胸もあけぬに今宵いづこより夢に入来て見ゆる面影凹 かよし荒歎く泪の深ければ渡りに舟の媒もかな 上田 などてかく我は慈路に迷ふらん君がおもかげ先にたてども 面影の日毎〳〵にうつれるは妹が鏡ぞ我こゝろなる道直 嬉しさはあひてふすまの老草に妹もともれり我もこもれり音繁 やう〳〵とつてをもとめてやる文のあて形姿を見そめてしより 隅田川 都より心に人の興すゞりるよみてする墨田川かな玄旨法印 波那細 ○隅田川水上遠くのぼる帆はやがて筑波にかゝる国雲 裏微加花三 紀の国も武蔵駿河もとり〳〵にみどころ多き深田川かな真風 身延 胸かも寝んとよみしは吉原へ遠きむかしのすみだ川原か松雄 裏微加花二 一右左遠近わかぬ心こそ冨士と筑波の中隅田川比左志 裏微 春春は猶梅に桜に大江戸のすみにおかれぬ角田川かな真似摺 紫によく合ふ水の隅田川つねに筑波の兵頭をひたして千静 一筑波根を築山にして隅田川詠め庭よき所なりけり四 すみだ川今をしらねば都鳥みやこはしらずとも家の影水枝 日妙 隅田川に遊び過せば今とても親の心を迷はするらな 只今は遊山にこぐ角田川むかし男の泣しところに下見 夕月も空にすめ〳〵隅田川つくばね遠く落る流に万象 入相の鐘が渕から木母寺の念仏の声もはや深田川虎住 江戸入といきほひ付ていそぐかや花もみかへらぬ阿田の河水 諏方 此頃の日和に水のすみだ川波のむみに魚も出らん南方三恒 小野宮 水上の雪翁の水も隅田川瀬々の霞のきぬごしにせり金厚 つき薄き堤の草も桜田川袖すり違ふ駒形の道 坂 戦ひのむかしの庭も鶏の赤さか越ておもひ出つゝ後成恩寺殿 裏徴加花三 うすび山馬も上荷をはね石はこれをぞ坂の一だともいふ 高浜 貴上五十五 わく〳〵と胸より汗の玉たちてのぼるゆ坂のぬるからぬかな 皆人の心の駒のつまづきてつくる衣紋の坂ぞあやなき石網 裏微加花二 高井山大師をしたふ道にしもふみならはするいろは坂かな万亀 名にしおふ坂はよいとこよい処とほむるやうにも皆のぼりけり 裏微 箱根山打越す坂の岩角は釘のやうなりふみぬきれせそ春秋 神代より通へる旅も世の中にたえて愛度よもつ平坂真風 汗ながら登る湯坂のあつしとて梅干にのどをうるほしてけり 休む度腰をたゝきて阿弥陀ぶと念仏坂にかゝる老尼四 しらす坂やこの手柏の餅からで腰をさすりてのぼる老人末枝 名にも似ぬ杖突坂は饅頭のあんに相違の小坂なりけり 日妙加花二 冨津 一旅人にたのもしき名のまねき坂登れば足もまづ休みけり 同妙 力足踏つゝ木曽の御坂越ほとつく恩にかれん篠原万陀岐 呼坂と名に負ぬるは山畑に猪延ふそのひらくなるべし明方 若城 稲荷坂夏は青葉の杉をりてのぼるあつさを凌行らん 新庄 世のさがのさかしきをいふ坂の名やいつはたと行かへる山路に東登九 さま〳〵の名のある坂よめでたきは逆さまごとを見ぬ老の坂真広 あしえを見つゝ登れる坂道に何とて取の前さがりなる万泉 幾筋の鑓かと見えて秋は唯きり懸わたす長刀の坂月満 打連て宿を出てもいなり坂おそくとくなる女わらんへ柿人 かせ杖をつきつゝくだる老の坂ふたまたぎ程来ては休めり真枝 あゆみ行あしも一さかふた尺とのぼれば木曽のみ坂なりけり隅成 千住 もゝたらず八十すみ坂に杖曳てひとやなりし腰のいたきは あしにしもあやを恕つゝ年をへておりのほりするいつはたの坂春則 股野町 ひとつら数を背負し我としの重荷にぞしる登り坂是 之芳 しら鳥の驚坂てふは名のみにてこゆるはいたくくろうなりけり 上田 となへつゝ念仏坂をあぶなしと一心になりて登りける哉袖古 神楽坂上れば天の岩戸町明がた近く鳴ほとゝぎす竹光 草 ゑのことおのがころ〳〵ほに出て秋置露の玉やとるらん為家卿 裏微加花三 一春駒に喰残されし武蔵野の草もよき程肥ふとりけり 裏微加花二 脇野町 春の野に出てちかしくなる人にわかぬ小草の名も尋けり 裏徽 日にやけて花もかわくか置露のしみぬやうなかはら撫子枝重 小松川 二葉なる鷹の羽薄かげもなし野守の鏡草はあれども耀 こもりくの初瀬に咲る山ぢさのやまぢさびしき花の夕露 萩も物いはず薄もまねかねば夏野はしらぬ草ぞ多かる春則 丸亀 春秋を山ふところに納おきてほこるけしきも見えぬ冬艸 目妙加花一 一十一庭もせの蘆が松の杉菜こそひばらの中のあすならふかれ春秋 若艸は葉ごとに露をもち月の駒の饗たるあとも見えけり中住 目妙 はびこりて道ふさげるを旅人の杖に打払ふ野辺の犬蓼音繁 祢津 春の草たち野の雪をつらぬきて光る葉兄も二三分計り くされては蛍ともなる艸もあるを文もよませぬむぐらあなり 庄内 新庄 うき事をし葉とはいふめれど猶いにしへを忍ぶやさしや よく深くねさへはびこる草の名は金銭花とて世の宝なり枝重 足門 住捨て窓をもとづる夏草に宿かるものは露ばかりなり中住 貴上五十七 犬蓼に玉しく露の翁丸ほえかゝりたる朝の村事晋乎 撫子の寝そべる垣を片へから蚊屋釣草のあるもやきしな蔭友 野辺はまだ浅草寺の観世音一寸八分程の若草真文 三浦 をさな子の桃の節句のたはむれにひゝな草もて作る人形 いろ〳〵の草の中にも目立かな袴を着たる野辺の土筆は道規 諸人の旅の枕にかす賃か草の葉ごとの露のしろかね真文 武士 ものゝふのさげはく太刀の尻鞘の席の尾踏ておそろしの世や椎僧正公朝 波那細 一弓とりて音に聞えし人〳〵は瀧口にこそ居流れにけれ 裏微加花三 一武士のさやは疵をもいとふべきひきはだぬぎてたち向ふ時千類 裏徴 祢津 一動さぬ心高さは三国に富む士のやまとたましひ 唐土の吉野の国にたとふるは古今扶桑の国の武士川常 柄糸のにごんなしとはものゝふのこれも刀にかけてこそいへ鳴音 目妙伽花一 武士は戸さゝぬ御代も由断せずくわん野ざしの腰刀かな真文 目妙 仙台 長刀二本さし木の柳にてあらそはぬ世の春のものゝふ 治りし世はますら雄が梓弓矢たけ心もひけ物ぞかし於鬼門 序のごと威をふるはする武士はおはで見てだにおそろしきかれ糸女 武士の二本さすゆゑ日本とぞ此日の本をさしていふらし竹光 ものゝふの腰の刀は二木にて心もさぞれたけくまの松真風 唐ひとはなど及べき武士の二ほんさしたる大和竟真寿 桑名 武士のほまれの代々に薫れるはせんだん堂の高ゑの鑓松砥 武士は八十宇治山の茶にあえて名も今むかし世々に薫れり真顔 更衣 夏来れば賤の麻衣ときわくる片田舎こそ心やすけれ仲正朝臣 波那細 一夏夜あらたに湯あみせぬ人も今朝はふるへり肌寒して千穎 袷着て身がるになりぬ残りたる花を尋ねて駈廻らばや神田 けさ早く衣がへせんさきんだち人にはだち裁縫せして美種 裏微加花三 国栖人の取は花の真もなくや藤箕の川に洗替せり春秋 花の香にしみし袖より葛衣かへりて風のうらめづらしや 駿府 歌雄 をしめども夏の衣に花の香のうつりかへせぬことぞ侘しき空寐 花の香に染し役のをしければ櫃にをさめて衣がへせり諸実 一綿をぬき裏をも取て夏衣香をゝしみしとひとへみせし 野田 透通るかとり処女が湯かたびら化粧も殿は薄きよしとや鳴音 卯の花の雪の朝に着替つる薄取手の先ぞつめたき高持 裏微加花二 皆人のかふる衣をかとり女にしこめといへば返事だせず磯名 裏微 駿府 花の香をとめきの衣祝かへてけふ着籠たるあはせたきもの 直古 桑折 明ぬれば春もきのふとくれ行てけふの細布夏は来にけり松 高畑 山吹の花色衣卯の花のしろきにかへて気がるにぞなる 〃真名冨 桑折 春夏をはぬひあはせて旅衣ゆきのよろしき卯花の袖金文 春過て夏は木にけり磊衣花の錦につがんものかは下蔭 富津 春夏の行ちがひにや着たりけんかた身下りのけさの袷は千代五 千代丸 松代 蚊に堤に持て来る夏のうれたきに置着かへて出向ふやなぞ木 高崎 春夏の行違ふときひつたりと身に取付のよき袷かな松人 夏きぬる時につたれば錦でもよもきはせじれ麻の薄取万象 貴上五十九 笠間 花の香の薄くなる程暑さにて汗をしぼりの取がへせり 織安 多古 我ながら尻かるくなつの衣着て花の蔭よりたちよりけり 艶良 目妙加花一 花衣惜みをしまの蜑よりもぬきかふるとて袖ぬらしけり 桑折 店守 仝 白重ね着て訪ふ人を卯花の雪女かとあやぶみにけり 御座 脇野町 取かへて身はかろ〴〵と中〳〵に荷物は重くなりし旅人 都世喜 木更津 かこむ碁もうつりかはりし夏衣白地の多きものに見ゆるは 春信 目妙 安原 うつり香の衣はぬぐともかたひらのもやうに花を染てだに花を染てだに花を染てだに うつり春の衣はぬぐともかたひらのもやうに花を染てだね 仙台 きかへつゝ二親に礼をのへるにも折目たゞしき麻のさごろも伽墨 夜とゝもに春の戻るをしたひ来てかへるもつらき夏取かな明方 庄内 蝉の羽の衣にけふはぬきかへて花の袂をぬけがらせり 菱されば涼しき物の好まれて裾に浪よる帷子を着つ比左志 江尻 春の色をかたみにやりし花染の夏はきよしとたつ衣哉雪斎 駿府 衣をば着かへ黒木を代にして帰る袂ぞ軽くなりける 真哉 桑折 人なみに着かへて見れば卯花の雪風さむし老の薄衣 清音 全 金鷹 一金鷹 花を見しきのふの酒の酔さめに今朝は茶色の衣がへしつ 本 金益 草も木ももえぎ表にかふるとて風は露の衣たゝめり 染仕立おもひ〳〵の夏衣きればいづれもかろき袖哉 草加 花鳥に別てきたる夏衣身にそふかとてうしろ見ら 僕ぬれば襟には霜のふる袷肌にひやりとそな着かへけり笠丸 夏花今にも風が孕かとうばおくみにぞ仕立あげたる蔭友 千住 しほたれし蜑がとき衣間にあはでかふの磯着にいそぎてぞ縫ふ 藻原 きのふことかゝり小袖とおもひしをけふは猶子のやうにぬぎたり 貴上六十 最上 卯の花を雪かと見れば今朝かふる袷の僕も森かとぞ思ふ 豊秋 松代 身にあつく筑紫の綿をそ朝あきて今しは急ねば深しくそ思ふに 水篤 新潟 夏もはやけふよりたつのとなりなる卯の花衣かふる身がるさ 柿崎 吹ば飛ぶ軽き我さへ蝉の羽の薄衣にはかへやすき哉 神丸 安筆 一ノ関 軽きもの重き布きて身のおもきかたにはかろききぬやあす 〽花の香をとめし衣にも離れもの袷もの着る夏は来にけり 小糸 大道 玉樹 中嶋 老も今朝若やぎけりな着替つる衣に皺のなきをならひて 蛙 身延 富士のねの雪のもやうもかはりしとけさぬぎかふる夏夜かな 長房 天人に誂へつくる物ならばかるく仕立ん殿の拝ごろも 空寐 ひざくらのあつき衣と卯の花の雲ときかへて涼しかりけりけり 時鳥 鶯のすは出けりとほとゝぎす今なく声に聞ぞとがむる勝俊朝臣 裏微加花三 一落しみ今に尋ねて来なくかと拾ふて置て待ほとゝぎす空寐 まゝならぬ世かな目さときひとなれば耳うとくなる小杉時鳥柿人 子規卯の花くたしふる雨に白くや洗ふ古年のふる聲下蔭 吉田 雲の袖突やぶり行郭公聞うれしさを何につゝまん吉田真文 裏微加花二 名古屋 一時鳥落しみして尋るかおなじ所を往かへり啼真歌 芳野 中鳥なけよみそかのくらまぎれやみにつぶてのたゞ一声も芳麿 裏徴 花をもつそうつくしき郭公頃は卯月の空豆になく真告 時鳥呼かけるとき雲の袖かさせし月も顔を出しけり道則 三浦 郭公寝ずにまつ夜の蚊遣火の黒き煙もなかでしらけつ 真友 大田原 橋とかぎ違へてや時鳥匂ふぎ柚の梢にも鳴く景山 待人のうさをも少しおもひやりもらひ鳴をもせよ子規 一ノ関 一郭公一声名乗る出たちは卯の花威月のさしもの 君城 子規まつとせしまに群て来る蚊の鳴音は八千八声 真酒躬 名古屋 鶯のまゝ子とわぶる郭公夕月かげの落くぼに啼二水 杜宇飛出す我もほろ蛸の弓張月を跡に残して 夕雲は持こたへずてふる事をわれは力に狩郭公 来ぬ夜半は人のみかどへ行やせしかしこの説ときく蜀魄磯名 郭公聞しといふをくせ耳とひがみ心にいひけすやなぞ 時鳥一声落す響にておもはずひざのおどる嬉しさ よみさしてきかばや願書の夏の部を今折返し鳴時鳥 千住 耳の底に入れとて声を出す時か羽根をすぼめて鳴子親 子規啼つる跡を見あぐればくゞりしやうな其間 むかふかと見れば跡から郭公我に聞けとて声をかけたが真恵美 かけたかと青きすだれの外からも一声もらす時鳥哉 一ノ関 花のやぬるうきめ見ざらば時鳥嬉しき耳はきかざらしを大道 脇野町 五月雨の橋の落たる川上にかけたと鳴は時鳥かな道好 なけ〳〵といく夜初音を松葛やをしまできかせ山子規 時鳥初音聞たるつきうを人に咄せばおしかへし聞春則 月の弓はるか雲井の時鳥耳に立たる今の一声 盛鳥こゑ啼けば跡へ二里戻りさうなる越のさい濱井結成 夕月に鳴しはたしか子規よく聞たしと人をさへまつ綾成 菱田 五月事にぬれし羽袖やしぼるらんちからを入て啼郭公 音芳 責上六十二 小糸 時鳥消行雲の一筋は青を引て行く跡にや有らん 菊二成 桑名 子親啼行かたをあぶなしといらぬにかあらん弓張の月 由刈 塩売のしほと見づゝや時鳥沓代はたりて卯毛になく ヽ福住 吉原 子規鳴くにひそまる静かさは都も山の奥の小夜中 裳顔 目妙加花二 冨津 ほとゝぎす一声聞くや耳もとの八千八声のかに起されて 医屈 待夜半にかけたと鳴し一声をつぎ〳〵に啼けやよ時鳥 野田 寿美香 寿美香 目妙加花一 庄内 一郭公きのふ聞たる初声を今宵は鼻にかけたかと鳴 弓方 桑折 一声に草臥足もなほりけり薬もの程なくほとゝぎす 真武 あさる物何ぞとゝへば草ぐきのかへるにしかずと鳴ま鳥 目妙 短夜を秋の夜程にまたれけり汝がよになればなけ時鳥 姫路 花散て取もどしたる心をもまた郭公空へつれ行 姫路 剛樹 待かねて眠気さしゝが時鳥めざましかりし今の一声百林 時鳥あまたの人をまたせじとたゞいそがしく啼て行らん大枝 杜宇なかでまつ間の遠ければ近くなるらん暁の鐘 沓代鳥なけど見えぬは卯の花の雪の中にや隠れたるらし 月のあてにもしもと思ふ枝折戸のあけ行空になく蜀魂平 わすられぬきのふの花の面影もつい見うしなふ初時鳥・ 鳴習ふ初時鳥珍らしと送りて来たる風の一こゑ 籬 江尻 千代迄も寿命をのぶる心ちせり初影公菊川の里 桑折 時鳥初音を松が浦しまやあけてくやしき夏の短夜 なく度に遠く聞ゆる時鳥我心もや追ふて行らん 横雲の帯やつばさに引かけしつまつくやうに鳴子規金元 供つれぬ身をあなどるか時鳥諸にも先にもたつた一声 全 竹廣 名古屋 子規つゞけて鳴したかびくの声に思はずつまづきにけり 真歌 太田原 あなたこなた聞時鳥耳果報二羽か分限の心地こそすれ 安方 地獄耳もらさぬしての田長鳥えんまの庁も名乗て来つし 深山にも住めは徳あり古巣からたちばれ鳥の立はなを聞 小糸 くさ〴〵の名はなくもがな時の鳥待るゝ時をたがへずに鳴け 〃道雄 連城のたまさかにきく時鳥趙氏も高くおもほゆるかな 福岡 片岡の森の雫か郭公うへより落て身にしみる声 吉躬 水戸 飛ありく姿は目にもかゝらねど声をはかりになく時鳥 清風 長門 しばし〳〵爰にかたらへ時鳥餘所の初音はけふなかずとも 1穂並 立帰り又も来てなく卯花の波よりこゑのよき時鳥三 三条 薫 一声を耳にとめ木の伽羅程は聞たらぬのも初時鳥道連 郭公月なき方を詠れば待かげたかとうしろから鳴 村上 子規五月の雲のすきもなきにどこから落し今の一声真長 富津 一郭公初聲高く仮親の老鶯の耳にふるゝか枝繋 二声も神子へも耳に留たきは神楽が岡のはつ時鳥 野田 一声を花と待夜の深み草はつかに啼て行郭公 松代 薫 きかんとて待くらしたる時鳥たゝ一声に夜はあけにけり蔵守 時鳥かけたとなくは皆人の待ぬる頃といそぐなるべし松秀 気仙沼 此里の小弐部つゝじ咲頃は山の北野も啼郭公 今井 一郭公侍て寝ぬよにくらぶれば啼て寝させぬ夜には物かは 〃丘守 子規子供のやうに見送りて見えぬ跡までしたはれにて健雄 磯部 身立に逃行人のうしろからあぶせかけたる山時鳥 尾佐麿 時鳥八千なけば短夜の鶏は八声をすけてなくらし 左原 一声は耳の底迄落入れど心は浮て聞ほとゝぎす音瀬 仝 男魂かけた〳〵と啼ぬれど一夜もかけず聞ぞ嬉しき百船 脇野町 登り下り鳴け時鳥最上川おのがさ月は此月ばかり ム 一声に腰はぬけけり郭公立心なや跡きかまほし 柿崎 きれ〴〵の雲の衣を吹まとめ歌につゞらすほとゝぎす哉瀬踏 郭公鳴て杉田の梅の実のいまだ熟さぬ初音を不聞真長 卯花の雪の深さに子規そり身になりて啼はしらし愛滝 矢のやうに飛ぶ郭公どこへやら弓張月を跡に残して静雄 時鳥うまきはつねは耳にだにたまる程にはなかぬなりけり 佐倉 卯の花の地を囲に熱し公家もの顔に初音をば聞 時鳥いまだに来ぬは巣に帰るやしなひ親の伽やしつらむ豊秋 左原 沓手鳥卯月の中の酉の日は冠にあふひかけたると鳴杉盛 子規今なく邪魔ぞ鳴やめとしかられて子もなび給ひ給に 花の兄のみをもつ頃に夜哥行は弟と名のる郭公かな百人 長門 月の輪をそつと抜来て時鳥おのが脚さへかたしろに鳴 むらりの袖にすがれど時鳥邪魔になる程鳴ぬなりけり真名井 流ゆく月の御舟へ時鳥飛乗るときや遠をの声中住 山都公 暮にけり声をさめてよ時鳥おのがをぐらの山にやはあらぬ俊頼朝臣 波那細 一山彦がふたつにしても鳴声はちひさくならぬ時鳥かな磯名 雲に入風にとられて我ものと聞はまれなる山ほとゝぎす千賀江 裏徴加花三 一皆人の得がてにすとふ時鳥やすみこなしにきくは山里石綱 高畠 時鳥啼てとむるか山の端に出べき月の遅き事空 真名冨 裏微加花二 駿府 夏山の茂きがもとは熟し云啼声だにもすきまなかりき ・國利 裏微 水戸 箱根山どろ〳〵ふめば足もとの雲より出て啼ほとゝぎす木戸 榮 望月 一郭公こゝを初音の忍ぶ山雲の衣に羽をすりて飛胸 駒彦 高畑 一声は心のやみにせきめきてくらき鏡の山ほとゝぎす 真名冨 桑折 煙立浅間の山の龍し公すゝけぬうちに声さらし啼け閔住 山坂を越て尋ぬる沓手鳥我あしさへもきかぬくるしさ 野田 一ノ関 あし曳の冠こと葉に思ひいでゝ沓代はたるか山ほとゝぎす大道 朝茶たく朝〳〵耳になら柴のしば〳〵来鳴く山子起香成 桑竹 弓張の月の入べき山の端にやと鳴出すはつ子規 村上 オ金元 横雲の帯をときはの山彦にうち明て鳴曲鳥かな 岩城 目刻加花二 聞とめし今日はよき日よ妹背山三々九度も鳴け郭公 日妙加花一 一馬方の月の光りともろともにそうすくなる山郭公 山形 目妙 子規形ちも見えす声するは箱根の山の底になくらし 水戸 岩城 箱根山あしのしたにてなた聲は沓手鳥とぞいふべかりける長伎 一声は耳に筑波の山おろしなかたるみして鳴く子親広樹 合 木の芽とるくらまの山の時鳥塩うる鳥を尋てや啼く 仝 ノ暖丸 きく耳は洗はざりけり瀧津瀬の山のきくらの布引の声 庄内 横竪に声は雲井をかすりしま花手山に鳴時鳥 桑折 梅の事降日は繁き子規山彦の口も酢くやならなん 鳥の孫かと問へばほとゝぎす答へぬ谷の山彦の声金文 薬ふるゆふべの露のふくみ声きく身は不死の山時鳥万宝 天神山 松風の音羽の山の郭公琴にあはする声のかしこさ ヽ寿喜升 富津 あの嶺をふり出るとは村雨のやまでしれたる時鳥かな千代丸 千代丸 あしがらの山にかけつゝ鳴しより沓手鳥てふ名には負ふらん 公 郭公聞に来てのむ山家酒まだ口なれぬ今の一声空寐 時鳥箱根八里の山越しにくり返しつゝ鳴聲をきく豊秋 脇野町 金桜尋ぬるこの時鳥思ひもかけぬ谷に啼けり 釈迦塚 村雨の晴るゝ箕尾の山の端の笠めす月に鳴郭公 玉くしげ箱根の山の子規ふたなきなかで明る東雲明方 待兼る月の出汐の遅しとやむかひの山に啼子規寿喜成 山の端に月のとれる跡追ふて息もつぎあへず嶋津守 山里は置さへ来る頃薄くらく卯の図の月になく郭公 高田 奥山はさびしきものを時鳥などて里よりおそく鳴ん 奇笑亭 仝 きゝもらすあぶなげもなし子親けはしき山にをち帰り鳴音成 菱田 一徒保姫のあまへそだてし時鳥山ふところを出かねてや鳴恒澄 坂志岡 飛ながら松葉の針へさはりしかいたく鳴行山ほとゝぎす花住 桑折 一文箱のふたむら山の明方にかへす〳〵も啼郭公金直 釈迦塚 暁のかねてまたれし時鳥一声耳に響く山寺美左子 佐倉 夕暮に急ぐ山路を一声にあしやすめ居て聞子親広守 鶯のおやをしたふて雨の夜は忍び音を啼山時鳥雛子 味酒のみむろのこの時鳥から紅によろめきて鳴く暖丸 子規遍 をちかへり野にも山にも時鳥声の程まけ来ん年のため正徹書記 裏微加花三 一郭公聞くたびれに此ほどの待くたびれも引出すらむ春則 裏微加花二 戸塚 此頃はあれりまくらとおもふ程どちら向てもこほとゝぎす 吉原 きかぬとてうらむへだになき頃に猶はゞからず啼郭公 駿府 裏徴 何地へもゆかず啼らん郭公互ひに声をしきり合つゝ 桑折 聞ば聞程〳〵恋し時鳥恋のお山を出る一こゑ未下見 古ね蒔し声の種かも子規此ごろふえてかれず鳴るは水枝 ふり出て雲の袖から袂から山ふところに鳴時鳥於兎門 釈迦塚 今宵ふるくすりより猶人の身にあまねく鳴は時鳥かな雪人 伽羅の香のいくよとめてもとめたらずけふはあまねく聞な規三喜也 直堅 目妙 眼ぶたさへあはぬ頃かな時鳥鳴音は耳に入餘るほど直堅 世を捨て耳をふさげる山住もせばしなき程聞時鳴幸彦 待てば来ずまたねば聞と此頃はあちらこちらに鳴子規 片倉 啼つれて夜も偽りかま鳥我をかけたるけいせいせいがくぼ近湖 桑折 鳴捨て行跡へ又ほとゝぎす又鳴すてゝ行跡へまた金輔 時鳥迄かけ〳〵鳴夜頃どこへ逃ても寝られざり万亀 時鳥いたくな啼そこんとしの詩わびしさに残せ一声 子親かさね〴〵の盃に鳴はくせかと思ふ程きく真広 眠たさにおはれながらのなゝころび八度起ても聞時鳥下住 空の袖くひさき〳〵五月雨のはれぬうらみを啼子規 鳴鳥八声の鳥を散とりに百千かへり鳴声はめざまし綾文 植つけをかけて田長のやり水も照る日にひたと鳴子規百人 占恋 うき人のうまれの月日とひ聞んけにあひがたき事や見ゆると後普光園殿 波那御 うらかたをたのめる鹿のかた岸に恋の童荷ぞしばし休める真歌 おもてのみつれなきけをもつくるを見ればうらにもそれと出にけり 駿府 裏微加花三 白かねのかさしを投て夜せすから来るかこぬかをとふのすが 裏微加花二 我胸につゝみあまりて占ひのおもてにども出るくるしさ 裏徴 うらみてもわびても逢はんけは見えて今はえきなき恋いぞくるさ百林 安原 中〳〵にむねを焦してうらみじな亀のかうした事としりせは 寒き夜に来りす灰うらあたるかと炭もさん木に置巨焼せり寿米流 杖つきてとへるゆふげもくふかたのことゝ思はん恋やす吉を水枝 日妙加花一 秋風の色もやすると葛の葉のうらも問ひけり詩ど来なくに うらかたを見れば火の中水の中はなれ離れぬ末をたの 辻占もあはねばかなしめど木にも円のさく夜の契あれかし千枝 棹荒の肩はあかねど辻うらのあしきには先こしぞぬけぬる 恋しさき辻占にうらの山見ればうちとげかゝる薄雲の帯鎮二 日妙 卦にとれば中はきれたり今宵こそこんといひしもうたがはれし 鉾田 新庄 神かけてみつのかしはにとふことのうかむは嬉し泪なりけり 青梅 嬉しきに妻乞ふ荒のかた焼はこがるゝといふうらに出にけり 芳野 芳文 夕げとふこと葉のはしに逢ふことはいよ〳〵かたき石うらぞき 煮てみれど心の波立て君によるべのうらかたずなき銀子 中〳〵に思ひさめよと卦なされて易なかりけり今朝の夢占 真福改 十九 脇野町 まてど来ぬ君の心を占ふにめど木かぞふる間さへまだるし保町 恋 いかなれば恋しとかくはかゝるれど思ひけつにはけたれざるらん覚性法親王 波那細 恋草のあまりしばりて我にさへ我心根のわかずなりけり糸女 露たへの枕の下の海は干ずわが恋草は弥生なれども石網 裏役 とやせましかくやせましと思ふ間にはやくひろがる家浮名名 真心の赤きは急の奴ぞと大津絵見ても人のしれかし万佗岐 逢事は遠山鳥と隔つともをろの鏡のうつりけれせそ空寐 恋といふ重荷背負ふて行道に高き低きのなくて嬉しや磯名 福岡 杉くれの枕流れん湊川恋の山にてながきしつれば吉躬 はかりなばいか程あらん恋しさきますにこぼるゝ我が泪は蔭友 露程も思はぬ人を怠る身のほどてぬれけん袖しぼるで采女 小町 恋力日にげにまして我とわが心をならに砕く頃かな 日妙加花一 我心恋に此ごろくもりつゝ泪の雨の降出しけり中住 中絶て此頃あはびさだをかや聟にせんとも妹はいひしか音芳 一みにふれる涙の事はあだし君のたつてふ日にやまきて 帯紐をとけとのなぞをほどいかに妹はとかうのいらへだね松秀 人目をばしのびおほせしきぬ〴〵の我めに忍びかぬる泪に百人 三浦 人の目を首尾よく包おほせては夜着の袖にもあまる娘真友 柿崎 うちつけに逢ふていはばやかな釘の折のやうなるみは初かし 目妙 玉糸を見てもしれかしはなれじと思ふ心を封じめののり枝重 駿府 我常につれたる恋の奴には履をかさねて手にも持さし和海 売上七十 桑折 君ならば身を粉にしてと思ふより心をくだきはじめつかれ ねがたさの人ゆゑ我も物思ひにうと〳〵したる恋をする春秋 我ひとりくるしむゑの渕といふ名をこはがりて落つぬ妹かも目積 此やうなものかとむねを撫てしる恋の湊に浪さわぐとは 新庄 人しらず握りあふたる手あぶりのあたりにかねてより添も あぢさゐの花にたぐへてあぢきなやかはる色香によひら寝られぬ 姫路 玉章をくる〳〵貴ておくればやくる〳〵といふ返し嬉しき 新庄 青梅 約米の今宵もけしてみえざればくるを便りに珠数うらならん 真丸 松代 かしこくも神にまたするひたち帯ふたゝび人のうらがへるかと 秀雄 脇野町 我思ひ積るは不二の白雪かあふてふことの酒をしらねば 政女 かはゆさは身より油もしめつける其手枕のあかつきぞうき 仝 なえし身にたえず思ひを抱けるは我ながら強き怠力かな わかれたる後姿の目につきてふたり花程今朝は思ひつ 逢事の時しらぬ身は富士の雪つもる思ひのとくる間ぞなき厚人 したひつゝかけし詞をとりあげぬすだれのうちもうらめしき 洞川とまりもやらず行水の跡へもどらぬ恋の道かな実則 身もたけもあはずふる手の下手踊腰や間ぬけの魚の衣は末広 閑居 世をそむく柴の網戸のかけがねの思ひはづせば人ぞまたるゝ行家卿 波那細 世をいとふ身の置所深くしてしるゝまでに人のかきねぬ水枝 山川を庭にとりいれて世をいとふ心せまさに似ぬ住居かな石綱 裏徴加花三 呉竹の折かけ地の折かけ地のおし曲て不善をなすと世には思はん水枝 貴千七十一 桑折 燈火に広げし文をのぞき見て我友としもなる影法師 のび上り外からのぞく夏くさに柴の戸たゝく水鶏うるさし 仝 裏徴加花二 仙台 世の中を離れきりたる槙の戸はうちつけに訪ふ人もなきかな 訪ふ人のまれにある日は常よりももてなす地のなくて淋しや春則 裏徴 山住に折〳〵通ふ友なるか戸もなる音の軒の松風恵久保 世の中のわづらはしきをのがれんと急に建たる蓬里の門 仙台 駿府 物いはぬ花を友にて静けくも世にさかりをる庵の楽しさ直古 小糸 世をいとふ槙の戸口に月入れし糸色計ぞ人に見せたき 静なる硯を老の友とするすみてこそ思れ艸の庵は亀成 朝夕の煙りも細き独住こゝろに修羅はもえぬ柴の戸中住 人訪はぬ隣しらずの柴の戸に心かを樋の水ぞ青なふ百人 目妙加花一 人目たえし庵は二目と世の事をかへりみめやと書をこをすめ千韻 谷間の狭きに庵結びたる人の心やむろく見ゆらん年長 針村 世をさけてかくるゝ庵へ淋しさは誰か教へて有来にけん金木宇 柴の戸にものまうといふは野飼牛どうと養る音は谷水 世をぬけて竹の綱戸の気楽さは細き覚にたることをしる 燈火の消し如くにひつそりと苦楽して住柴の庵かな花守 里遠く結ぶ底りを音なふは只とく〳〵の清水ばかりそ真牛 灸をさへせで蓬生に住める身は肱を枕の病ひけもなし さびしさに松もむかしの友とすればすぐなるも有すねたるも 訪ふ人も淋しき宿とあなづるか黄の子に腰をかけみらず磯名 塵の世の馬も車もいとひきてのりわすらへぬ庵ぞしづけき 青梅 物しれしたるやうれる山住居ほだしは里に置て来しより 仝 人問はぬ庵に朝夕人なみのおとづれしけりさつや狸は 生しげる蓬も友と柴の戸を人にしらせぬ宿ぞわびしき吉人 人とはぬ庵に塵の世をさけて酒で折々浮世尋ねつ 小町 松風のふくべ一つもむづかしと手して清水を結ぶ山住 古河 かしましき浮世の前の家桜友にしてよきはものいはぬ花仲義 赤堀 世の中は名と利の川の埋木とさとる心の花の隠家田鶴音 釈迦塚 世を捨し庵のともには松風のおとづれるそのぞく月影三喜也 木更津 谷間の狭きに庵結びたる人の心の奥広くみゆ冬名 夕がほの棚さがしくて白露のおき所迄みつけたりけり 柴の門をとへど答へず居眠りしいびきやもるゝ峯の松風真連明 八重むぐらとぢたる唐は世の中をはなれし人の住居なりけり 滝 音にきく枝の瀧をうち見ればたゞ山川のなるにぞ有ける檜垣堰 此寺のぬかの声さへ落添て心をあらふ清水の瀧石綱 糸たれし春の柳と見るもむへ落くる瀧の水も煙れば 桑名 真民 新庄 裏微加花二 手にだにもとられぬ瀧の白泉を哥につゞるときくがあやしき 百五十三筋程も黒くは見えず年を経て老にけらし都養老の瀧 小松川 安原 神酒徳利こけて棚より養老の目出たき瀧を流す初春 天の川にみづく麻苧か高きよりまたひろへたる白糸の瀧 仙台 岩城 風の手にさうしつ霧をふきかけつしわの見えざる布引の瀧 年を経し衣の瀧の白いとは岩にさかれてほつれ落けり春秋 売上七十三 姫路 ○二黄 布引の瀧のしらゑくりかへし又わたつみにいるぞあやしき 小糸 白玉におとらじとてや烏羽玉のくろき心ある那智の瀧津瀬 吉田 尤こくを養ふ瀧の音のなど人の耳をばうとくなすらん橋守 天の川水の早瀬にさらすとて取落しけん布引の瀧幹長 むくしげふたあら山に元結をこくかと見れば素麺の瀧挿人 素麺と名に呼ぶ瀧の水落て朱ぬりの橋へかゝらさりけり相児 真白ふの多か汲とりて呑見れど酒の気味なき養葉の瀧武光 脇野町 水けふり立る景色も霞にていつも春なる鶯の滝政女 佐倉 水底に瀧の白原くりためて絶ぬ深さやいくらあるらん 一縄をもつ不動の手にも一筋はむすび給へる瀧のしら糸 日妙加花一 幾千代かふるの滝津瀬岩角に腰をかけては休むさまあり真長 左原 しら糸を桜の枝にくりかけてたれかほせしとみよし野の滝 股野町 ふたつとはなちの瀧津瀬童高く第一番に名の響くなり片好成 信濃 養老のむかしをしたふ泣上戸泪の玉や瀧にまさらむ 針村 のみきりに似たる氷柱もさがりけりむべこそ岩もうがて瀧つ瀬 牧布施 世の中のあつい噂の聞えぬは瀧のひゞきに耳やつぶせる広丸 散国を小役とみればたち経はぬきぬは羽織か龍門の瀧百林 内山 万年の世をへし亀の甲ならば気ながにあらへ養老の瀧唯仲 岩城 一燗鍋の下に紅葉を焚る時水烟りたつ養老の滝本頼 名古屋 どう〳〵と響てはしる水音のきほひは馬といはがねの瀧真歌 岡部 鳥柴 瀧水は手拭なれや苦衣きたる岩ほのかたにかゝれり かたしはもにけて通せる養老の瀧はおのれも酒に酔けん 駿府 桑折 煩穏に濁りし耳をあらひすてけふは心も清水の瀧安文 名古屋 岩はしる音をきくさへ応へんにさとのぼるやうな龍門の瀧稲丸 春は花秋は紅葉の折〳〵に錦経律しら糸の瀧真久 八日市場 達桜よし野の瀧に雪とちれば藤もつらゝとさがる岩角浜人 わたつみの龍の部に捌くらん幾むらさらす布引の瀧比左志 梅の事に猶一しほのねをまして玉をならぶる鶯のたき真静 さらせとも其かひもなく五月雨に水上濁る布引の滝小河 をとめ子か針魚ひて引出す顕はおとはの瀧の白原水枝 口なしの色にぞさける山吹は無言の行か瀧にうたれて潟人 むかしよりみれどあかずとほむる声になりのやまざる三吉のゝ滝浅方 瀧童へ瀧の白原くりためてこはいろ〳〵に染んとすらん梅景 くり餘る瀧の白糸きれはなくうづを巻つゝ水の流るゝ松秀 猿楽の鼓が瀧か水上は岩間よりシテワキ出るなり 相坐間 岩根くる瀧の白糸引のべて細き流の赤結ぶなり 左原 雲間より水岩角にたばしりてあられ小紋の龍門の滝八重垣 越後 布引の瀧はさらしの帷子かけふきてみれば夏も白糸 柿崎 切れもせず代々へる瀧の白糸をくる人ごとになど結ぶらん 佐倉 山高く落くる水もはら〳〵と千鳥の瀧に立ししらむ金満 坂崎 水煙たてどすゝけぬ白糸をふるの瀧とはいかにいふらん岩中 生田川水上はげに立声に似たる姿の市引の瀧由刈 これやこの耳なし山の口なしかいふかひなしにみもなりにけり小馬命婦 木 波那細 あらそひし根葉にやうねび耳なしの山のくちなし物いはぬ色 裏微加花三 仙台 陸奥の栗駒山の朴の木は顕枕にも作りたりけり 真似人 裏役 岩城 一腹鼓うてる狸のすむ山に琴ひく松の友も有けり 腹鼓うてる狸のすむ山に琴ひく松の友も有けり 駿府 三輪の市に商ふ酒は夏来ても火の気は見えず杉斗りにて のりをとく磯山寺のむろの木はおのづからなるうろも出来けり 左原 様〳〵に染るこの葉に目もつけずみさほたゞしき岸の姫松 目妙加花一 岩城 琴をひく波の鼓にふりのよき松の姿は鶯の千歳 天地のことはかられず楠の千枝からも猶もる月のかげ虎住 目妙 仁熊 夜のものならねど粃のうづらもく是も床にはなる木なりけり 小平 いく筋か糸もてつりし枝下に笹芸の寝て見ゆるかやの木元丸 片倉 けしきには人の心もおよぐやと波に腹這ふ残ぎはの松 夕鳥とまりにこそは来たりみれやどり木といふ木のあれば 安房 おしなべて色かは里行山の端に一きはたてる岑の松がえ雪丸 名古屋 壇の浦波間の月の御剱をさがすやうにもたるゝ老松弘器 新庄 ひく人もなくて幾代か古樗おのがなるべきうしを隠せり かひこかふ妹はえびらにつき弓のやさしや野辺に出て桑つむ窓香 新庄 松風の琴の調べに今も猶猿の慕へる山のうつほ木 露霜に負ぬもむべよ腕木には力病さへ見ゆる尤松軒風 三条 うみわたる山の木のみのそが中に船となるべき杉も有けり 一ノ関 三笠山月の名におふ槻の木は中丸き玉の杢もありけり” 真布司 上毛 やどり木のそだちぬるのも大木のくちたるうろの恵みなりけり 亀水 小糸 年経たるうろの恵にいつとなくちをはなれても育つやどり 貴上七十六 もし波のもて行んかと藤つるにまどひ置しか多様の浦松直路 祢津 梨の陰に昔やどりし人の名も松柏なれや世々に朽せぬ神事富貴 車 車 山賤の油もさゝぬ柴車きしみが嶽やおろしかぬらん契冲阿闍梨 哀微加花三 邂逅の物見車は嬉しさのあまる袖もぞこぼれ出ける千類 裏微加花二 末折 花やうな躍舞台の車にもけい有りてこそおまはすらめ薄墨 衰微 仁熊 川はたの水のうへをおしかよふ車もかもの音をたてけり 枕桜ひけはとうじとにほはしき花見車ぞたち並びける百人 目妙和花一 祢津 白たへの雪は仕丁の袖に似て御車高き八葉の嶺事富貴 目妙 賤の女か夜のいとなみいとくるまいとせはしくも立まはかれ百林 新庄 不二のねとつみあげてひく綿車きしれる音は鳴沢の如富佐子 炭車騎車とて引にさへあたゝかなるもあせを流せる春秋 書のするむかしの人のちからとて独〳〵しくはひけぬ文車常文 ころ〳〵と寝ころぶ牛にひかれなば車の阿弥陀参りをやん吉人 千住 葵草車のこすにかけし日やあらそひのはしは引出しけん 野田 細道はおしてゆかれぬ車とて遠き所を廻りこそすれ いそが何に懸る車ぞあはれなる世にある時はひかせつものを武光 小町 高駕籠はとらぬ旅人宿引の口車にはのりて行うな 高崎 暑き日に水の車の音聞けば我も火宅を出る深しさ 駒崎 くる〳〵とかた手廻しの糸車細きもとでの賤がいとなみ みぐるしうなしといはれしたとへにも引るゝほどにつまん文車鳴音 行燈もつえて火宅を宿かへの車に油さすがたのもし真顔 早苗 竈もかみつわの姫庵よりはひ出の小田の早苗とる也仲正朝臣 波那細 住吉の岸田にたちてとる時を忘れぬ草は早苗なりけり水枝 鴨川の水せき入て植る田にあしの短くみゆる早少女児黒政女 一ノ関 秋をまつ棚棧つめを早少女も引かたなれや天の川水 裏微加花三 高砂 司待て植出す田の玉苗はかぜからさきにちる松葉かも真砂雄 脇野町 中わろき隣同士の門の田に植る早苗もふし立ぬらん道好 高崎 能因が乞たる雨に植る田のおもてはちとも日にやけぬ也松人 岩城 菅笠の雪もだん〳〵諸しさりきゆれば青む早留草かな真酒躬 坂志岡 向股にくひつく蛭は恐れねど跡しさりしてうゝる早少山花住 裏微加花二 諏訪 一植に後雲と見るべきたのしさは花にもまさるさくら田の苗金家 不二移る田面はいゆきはゞかるか跡しざりして植るさをとめ真哉 裏微 波かつぐ姿に笠も鳰とりのかつしか早稲の早苗とる田子春秋 実のりなばうまく練ろとてうまくたのねろの田子等が植るもち苗玉樹 黒〳〵と太る早苗は植たつる田子等が経にむべかたるかも 日はいると早苗とり〳〵いそがれて田螺もかさをかたふけてみつ金文 三浦 男とは隔居れかし早処女の笛とる時も人のそしろま豆成 二葉よりそだてあげたる若苗を実をもてとゆへやり水のせは隆之 さし汐に貝ひらふやうれにげ足に海士も磯田の草蕃とる也常文 角力にはあらで立生ふ早留草実を入て秋はとらんとぞ思ふ隆之 高砂 草臥し夜の寝乱れ引かへて昼はいねよくうゝる早少め 芳野 元芳 花田なる早苗をうゝる衣手もあしもみしぶに染る早処女 芳丸 売上七十八 高畑 若苗も一ふしこめてたけ高き竹田をうゑる早少女のうた 真名冨 桑折 新らしき笠や湯かたを着揃へてふるびし田うたうたふまぶ女 みこしろき御田うゝるは蛭の吸ふ血をもあせとて拭ふなるべし鳴音 早稲晩稲植仕まふ田の水にうくきらこそ民の身の油なれ跡人 松代 筑波年のすそや袂の雫田に賤草臥て早苗とる見ゆ 水笹 新庄 目妙 ほふし子の稲になれとやひかのすふのりにそまりて早苗とる田子 新庄 舟人 高畑 更科や田毎に早苗とる頃は捨られさうな姥もせはしな 諏訪 とる笛はもえ出る草の姿にて並ぶ小笠や雪のむら消巣垣 仝 あとになり先になりては早苗とるかたまは雁に似たる賤の女し呉鷹 鉾田 水にすむ蛙の外に賤の女も歌うたひつゝ早苗とるなり 岩城 早き女は髪をも葉ほでたばねつゝつげのくし田に早苗とならし真酒躬 飢しのぐものぞと早富植る時田子や養ふみなくちの水千尋 中むつみやとび合してうつくしくふしたゝぬうちうゝる若苗 千早振神の恵みのみとしろ田のつと尻してとれる玉苗 跡へさり〳〵つゝ植る田はたがひに畔をゆづるとぞみる 賤の男がいそぐそしろの濁りまをすみからすみと植る玉宿 秋みつぐ上を恐れて腰かゞめ跡しさりして植る玉苗 仙台 最上 仝 金九 駕のごと女夫我れとる苗もしたやすからぬものにざりける 殿のたね〳〵とて賎の男が膳田の早帯とるぞやさしき 小松川 光房 鶯の瀧の流れの玉笛やこゑもそろへるま処めの類 福岡 老ぬ間と小草助男を雇ひ入てけふしまつまに早劣とかなり さいことめが植る早苗の水かゞみ見て生きはを作る化粧田隅成 貴上七十九 うら若き早笛をはるの草とみれば並ぶを笠も雪のむらきも。 戸塚 庄内 貢にもさゝげぬ先に頭をたれて跡しさりつゝうゝる若苗 仝 村長のいそげ〳〵の下知をうけてうゝとうなづきうゝる若苗 訓文 一ノ関 うゝる田に筧の水も山めぐり谷渡りしていそぐ里人大道 仝 みのりなば酒にもせんと賤の男が泥になりつゝうゝる若苗 気仙紹 卯の花のゆきの内よりとる雷は子の日に若菜楠心ちせん 手をついて蛙もともに田うゑ歌さても行義な四角四面田雛子 一姑によく似て娘もよく深く早苗あまさずうゝるしまつ田杉鬼門 夕風のそよぎ初しは植つくる早苗に波のうてはなるべし 親よりのしつけ田うたかおもしろく夫婦がふしも揃ふ若笛ぎん子 急とる夜の早苗を手伝ふて明りさし出す月の桂男中住 富津 ながき日をながしてうたふ田植うた水に響て聲清く聞友雀 上総大久保 一念仏も山田に独り五升まきぼさつになれと植る若苗苔成 高崎 子や孫の行すゑ思ふめたから跡へ〳〵と植しさる苗甘亀水 濁たる代田にうたふ早苗唄聲すみやかにうゝる萬め村居 桑折 五月雨のふるあしなりに早少女の跡しさりして極る若苗高椅 安房東條 早苗とる田毎の田子が菅笠に昼も月見る更級の里石雄 脇野町 弁当の外にもひとつ早処女は人に結びて貰ふ笠紐保 千住 手駒女に苗ひきまけてますらをが恥ぢよくも水にすゝがでぞ 柄のくちしをのゝ山田を詠れば碁盤のごとく早宙植けり 京都 雨乞の顕は蛙にあつらへて早苗とるなり粉の小町向真恵美 深田にも軽こそ長く見ゆるなれつる鐘をはきてたつ田子千類 早処女の菅の小笠を雪と見て貢にせんと早苗とるなり 治れる御代には畔をゆづるかと跡しさりしてとる黒百かな 軍せし蛙や敵に降るらん笠を揚たる小田の早鷹女弘器 早処女はうしろ向にて段〳〵にをりるやうにも見ゆるはしこ田百人 水鶏 槙の戸をさしたる事の有がほにたゝく水鶏の人おどろかす光俊朝臣 裏微加花三 一夜もすがらたゝく水鶏は鵲のさきて橋もや渡すなるいん真哉 姫路 たゝきたる戸はさもなくて見し人の壁をやぶれる水鶏あやしや ヘ岡樹 四河のこの戸ひらけと叩きをる水鶏をたゝく事そゝぎかれ磯名 裏微加花二 最上 一松風に声をあはせて木琴もたゝくやうなる水鶏をるしれ 冨津 面にくたゝく水鶏に躍出て見れば音せず拍子ぬけせり松友 高砂 柴の戸を雨にたゝかせて溝川にはしる計の水鶏をぞきく真砂雄 裏徹 諏訪 我門を事あり顔にこと〳〵とこと〴〵しくもたゝく水鶏か 夕立のはれ間待得し水鶏より早くもたゝく軒の玉水真長 ほと〳〵とおとすをきけば漏刻のはかるとはしる水の鶏万象 水鶏かと門をたゝくを捨おけば夜更て聞に来たる稀人柿人 うちたゝき水鶏のやぶる夢はさぞ槙の食ふにも食よからん磯名 庄内 転寝の夢の破戸をたゝくにはほと〳〵こまる水の鶏 寝かゝりし賤が小家を見かねけんおきよ〳〵とたゝく水静は空言 蚤や蚊のさし合のある宵夜中不遠慮と戸をたゝく水鶏は干 水鶏なく門田も雨のふらざれば手たゝき水となれる此頃 土呂 京 照月のかげに水鶏のだまされて戸を明よとやたゝくなからん真恵美 われる程たゝく水鶏に槙の戸もはなれ〴〵の横雲の空雛子 日妙加花二 千住 たゞくとて紫の戸ざしはよもあけじよもあけてこよ水の鶏 目妙加花一 風吹て波にうたるゝはら立かたゝきかへして水鶏逃行秋穂 一槙の戸をたゝく水鶏の響にてひゞけたやうに明る横雲 休みなくたゝく水鶏の心にはあくるを遅き夜とや思はん梅景 萩 朝餉水鶏のはしをたゝき汁にゆるすまでうまいをばして 真髯 目妙 長崎 一里の戸をたゝき起してきぬ〳〵はひとになかする水の鶏 新庄 夜もすがらたゝく水鶏に砕けん月もかたわれ残る明がた 信濃牧 をやみなく月の氷をたゝくかと水にのぞめば水鶏なりけり駒彦 仙台 苫舟の浮寝の夢を覚せとやなみをおこしてたゝく水鶏は近道 高畑 来めやとて月に友右衛門門の戸をたゝく水鶏にはかられて真名冨 起出て水鶏おはんと思ふまにたらき明たる夏の鶴夜棚持 退ざれば水鶏も人にはかられて夜ひと夜たゝき明すをかしさ 僧は池の舟に深みて睡る頃水鶏のたゝく古寺の門天馬 夜更てはなれも淋しきか門ごとにおきよとたゝく水の鶏 我手をもまたず水鶏にたゝかれて水盗人のにぐるをかしさ 全 御菌 夏の夜は水鶏にいたくたゝかれてやぶれしやうに明かくる空 やよ水鶏しらでたゝくか時守よる寝ぬ癖をつけし鹿の戸真柴 千住 茶の友に夜ごと水鶏はきぬれどもあはたゞしくは門をたゝかず かね拾ふ夢破りしは箔をうつ音にひとしき水鶏也けり芳丸 佐倉 明けばとく梢の水鶏たゝきやらん夜すがらわれを寝宿にくさに 竹ヶ岡 やよれ鶏あまりたゝきてはしたなきあけのからすの口にかたれ 何ものとのぞきて見ればふし穴のふけ〳〵とせし水鶏也けり 脇野町 石切の門を水鶏の夜な〳〵にひのいづることたゝきあかしぬ沖馴 蚊能釣て侍身は夏の網代打たゝく水鶏をきん物毛下蔭 時事なの事が如くなのらねばたゝく水鶏に門も明見ず水枝 いづくにか水鶏は逃つ門の戸をたゝける人に驚かされて全 競馬 物はひつる手はうけかけに見えながらにひにとられてにげぶちの約為忠朝臣 裏徴加花二 桑折 くらべこし振分髻のくらべ馬乗勝鞭を誰か揚ぐべき下影 裏微 親馬今にかけるか落るかと目もはなさずに見物やせん伊丸 駒のあしとく乗勝し方人は埒をあけてぞ先へ出にける千韻 木のまたに眠る僧より落さうであぶなき馬の走せ競かな春秋 おくれてもまてといはれぬ真手詰うつ一トむちに埒は明けり真晴 目妙 仁熊 一かうふりにかくるあやめもかけうもふるきためしを引くらべる真村 岩城 ほめられて猶もまけじと競馬かつにのりたる人も見えけり ほめられて猶もまけじと競馬かつにのりたる人も見えけり 仝 鴨川の水を飼たる競馬飛ぶがごとくにあしのかるさよ真酒躬 三浦 競馬とばする時ぞかうふりのゑいといへるもみやびなりける 競馬かろくばしるは加茂川の水にあしをやひやしたりけん鳴音 一ノ関 一飛如くかけゆく鴨のくらべ馬あしもみじかく見ゆるなりけり かくいれてきほふ競馬の高あがりふにとられたる辛子のかな跡人 腹帯延落かゝりたる競馬木のぼりよりはあやふかりけり、 大坂 坂崎 水の上にうきたるかもの競馬地に足つけず壱るやうなり岩守 宮つこが其つたなさの競馬見るにも汗の出るわざなり蔭住 我がちにのりこして見るくらべる埒あかぬ人ぞ跡に立ぬる百人 納涼 風もらす槙の其穂の苦むしろいかに山伏ふしよかるらむ俊成卿 波耶細 涼しさよ月のみ誉て秋風の音聞するもしらぬ夏の夜千賀江 天神山 夕風の色もたかしの浜ひさし崩れかゝなる波のすゞしさ 音丸 裏微加花三 夏の夜は月につられていつ迄も入事しらぬ門隙りなし 駿府 真哉 極楽とおもふ樗の下すゞみ日影をさそふむらさきの空万象 播磨荒井 浪の上涼しき風の家しまは夏をあねとや神の造りし 兼涌 桑折 燈火を吹けす風のくら響に出かねてゐるか閨の涼しき御空 裏微加花二 最上 〽一口をつき落す鐘の聲すぐにもて来る風の涼しさ 村松 おもひ出すやうにふとたつ夕風にいつら暑さを忘れけるかな 裏徴 諏訪 ついて来る暑さをさきへやりすごしかくるゝ杜の蔭の涼しさ 夕風のたび〳〵来れば見覚てつひに暑さや忘れたりけん 夕風に暑さを外へもて行けば跡はすぐしの蚊帳なりけり 暑き日にちゞみしからだ涼風がのがしてくれし月の影比河 掛竿になるべき竹の葉をわけて袖を通ぜる風の涼しさ 涼とる人の詩とていそぎ来ば暑くやならん門の夕かぜ磯名 夕風のさと吹てくるさわぎにて月をこぼせる松のそゞしさ全 夏の夜も冬とおほめく隅田川のぼればしもになる鐘が渕石綱 霰ふる鹿嶋の山の七不思義夏も氷ると思ふすゞしさ有安 佐原 そやのす門にすゞめば弓張の月にあつさをいてとられけり八重垣 吉田 蚊屋の中に遣ふ扇の涼しさはさながら水の底のされ貝橋守 佐倉 くつろぎて客待宿も夕風のくるには肌をいるゝ涼しさ 木更津 着けさを追ちらしたるかへりかやほこり立来る庭の涼風桑直 桑名 手桶にてあぶせし水の勢ひに暑さは逃て涼しかり望真民 小糸 夏の内に来る秋風のこゑたてゝ涼しさふれる竹の下露直堅 名古屋 蝉の声にえたつかたにふきこぼす木の下風はつめためむ 仝 夕涼み風を袂へいれけるか重くはならで軽うあがれる広丸 桑折 名にしおふ太夫の松の下すゞみ肌をだしたる庭の夕暮金輔 日妙加花二 一約束はせねど此頃夕暮はまちがなず来る風の涼しさ安筆 目妙加花一 諏訪 見えねども秋やかくれて忍ぶらん竹のゆかぎて出る涼風 最上 霜入の風が出しかと思ふ程桐の葉をふく夕べ涼しき豊秋 月の出をまつち山からながむれば秋葉も近く見えて涼しな丘守 さす月に肌身ゆるして帯紐もとけ〳〵と寝る蚊屋の深しさ 月の舟ひとつに積し涼しさを此市中にわくる夕ぐれ千穎 目妙 昼森であひたる風も跡へなりてやう〳〵軒を通る夕暮 昼の間の暑さや余所へ運ぶらん月の舟出る頃の涼しさは 一涼風のあたればなびく夏柳暑さを払ふ風情なり 夕風のはだへ通して夏衣かさねてきたき住よしの浜常豊 仝 仝 湯あみして暑さを流す夕暮はぬる迄涼し川添の宿 夕風がふけば扇を腰にさして礼をたゞその河原涼しや千尋 前橋 相撲草しほれし程の暑さをもとりかへしたる風の涼しさ晴記 やり水に逃し暑さをどこ迄も追行やうな風の涼しさ 夕涼み夏出の火の一ふくに昼の暑さはまづしれたり 最上 貫上八十五 仝 川岸にこほりつくかと思ふまではなれがたなき夕涼み成 川岸にこほりつくかと思ふまではなれがたなき夕涼み成 身にまとふ帯も衣も取のけて裸に風の来たる涼しさ 荒川にうつ網ならで荒波をあみせるやうな風の涼しさ 姫路 一花の頃にくみし風をほむるかなあつさにたえず顔をのごひ 袂にもあまり深しや風の神に袋をかりて家土産にせん百林 先へたつ箱挑灯を吹けして跡より送る風ぞすゞしき正路 立ようで余所へ行かと門へ出て風まちうける夕涼みかな 鴨川の水を吹くる凉風は袖にふとてもかろくぬけ行 烟草盆火入の炭も吹ちらし暑さきも行風ぞ涼しき仝狂夢 うら柱はあつさ後に打出て門なみ風に涼こそすれ蔵守 汗とりはいつか落して慎や袂をさぐる風のすゞしさ伊丸 戸塚 水のある方へ〳〵とうかれ出て汗をながさぬ工風際しも真雲 野田 夕風にかふりし笠はとられても昼のあつさは取かへしたり。 ノ里四寿美香 角力にもあらで暑さに丸はだか涼にせきをとれる木のもと 新庄 仝 夏の内に秋は来にけり涼しさを定しどやいはん松のえ方 燈火を風が消す夜の涼しさは夏か秋か秋かもわからざり しばし腰かけて休めば風のいさうちは扇のいらぬ涼しさ長丸 一ノ関 皆人の肌をぬげるに懼たるか暑さは遠くにげて涼しき 笑雄 気仙沼凸改 さゝがにのくもは糸引笹舟に風の乗出す池の涼しさ 仝 真布司 少倉 暑き日も枇杷葉湯の目しるしのからすの帰るすぞ涼しき 仝 水売も日おほひとせし松の根にあまりをうつて帰る深しさ ○小道 柳蔭糸ほどの水涼しくて結ぶ手にさへ暑さわするゝ初遊 涼しくもみを引登る川舟のもそろ〳〵に秋や通へる 村上 あつさにはくらしかぬるか家出して橋のたもとに涼風を乞ふ 練好 人目には深とるてふ友だちの手をまくらかの木かくれの宿 高砂 風の手に吹かへされし袂より暑さ落せし心ちこそすれ 荒井 浪花江の津辺の恋の鋏もてあし葉すかすか風の涼しき 小林 打わたす棹の長風うたはせて室津こぎ出す舟ぞ深しき 高砂 生ひ茂る木々は日のめも通さねど風のみぬけてくるぞ涼し 曽祢 涼しさは乗た伏見を下り船よどこゝで淀もこゆる川かぜ五百九 花の頃かたきの風もふところへいれてあつさをしれける哉吉人 摘入る雪間の若菜ひや〳〵と袖にたまらぬ風の涼しさ 涼しさの風の手なみに夏の日の凌ぎがたきも逃失にけり既之 合 夕さればゐなのさゝゑさは〳〵と出そよぎたる風の涼しさ 天神山 嘘のやうに跡かたもなき夕立を真帆に請たる舟ぞ涼しき大揺音丸 風もなく暑さ凌につかふ湯をさます扇の縁の涼しさ 仝 寿喜喜 三條 暑き夜の寝つかざりしと夕間暮風も出かけて来る涼しさ 名曳 相模磯部 燃るやうな暑さ凌ぎに狩人も水鉄砲を戸へ打らむ 仝高杜 ぬば玉の夢が吹消燈火は涼しき風の事妻なりけり これを見てたもとふくらむ涼しさは待えし風のつとにぞ有ける 新庄 柿崎 川水の苔の衣はあつくとも黒ては涼しき石の上かな 渋成 公 夕風に雲はしらせてやり水に月影とむる庭の涼しさ 瀬路 仝 寝かねたる夜はに軍の戸そつと明帯紐舞て入る涼風形丸 高田 我小屋は大川筋の船に似てゆらつきながら涼む夕風 桑名 見るも涼し此河岸の夕風に暑さ乗せ行三日月の舟真 脇野町 たえかぬるあつさもおして降雨は涼しさまさる庭の池水 都世喜 仝 涼ら居る妹が袂は夕風もそつと引やうに吹かとぞ思ふ 米山 全 ふところに吹入る風をおさへつけ子の涼しさはかそくぞ思ふ 政女 坂越て峯に木樵が摺火打涼しき風をまつの下かげ 仝 隠れ居る秋やたづねん風入るゝ家をば人に涼みとらせて 芳野 涼しさに逢ふと立よる蜑が家のひさし。ふりなる海つらの風潟人 松代 眼に見えぬ風がもてくる涼しさは口にはれぬ心地なりけりけり 掃除して待てば入来る涼風の先挑灯をけして通れり桂雅 秋風を盗めるやうな涼しさはしら波よする浦の夕暮晋乎 菱田 強く出し風に暑さのしりぞきて汗も引こむ夕辺涼しや音芳 合 夕かけて涼みにやけば山寺に汗も程なく入相のかね 小糸 美袖 千つ秋の葉作るとゆふ風の向ふに月の鏡すゞしも 夕風に暑さをはらふ跡へまたまはちらしたる水も涼しな道則 涼しさは秋のまねしてよる浪に岸辺の苔の衣うつ音目積 逃て行暑さにあむせ掛んとや追かくるこまの庭のうち水 暑きをば風がどこへか吹とばす秋のけしきの森ぞ涼しき 一しな玉か何ぞのやうに人の目にいりたる汗もかへす夕風松茸 列子とはあちらこちらの河岸に涼しや波に風ののり来る 仝 夕立のもりに磯が家ねずの番盥の水をあびるすゞしさ下見 旅衣木蔭にぬきて帯程のながれに水を結ぶ涼しさ 夕風に庵の暑さはどこへぞとさがすばかりの門の涼しさ冨佐子 長崎 新庄 仙台 物すごくなるまで橋の夕すゞみ送りてかへす月のかつら男女真根也 仝 ・花満 鞍馬山春のふごより遠方の峯をおろせる風の涼しさ 駿府 駒彦 秋風はいまだしのぶをこちらから先立さわぐ夕涼み人 見付なばあつさや来んと杜蔭に隠れゐて吹風の涼しさ 山形 あくた火に反魂香や交りけん恋しき秋の面かげのたつ 同真佐雄 仝 おのが家は暑さにすてゝ涼しさにしらぬとなりの秋をしたへり 長琴 夕間盛閨に通へる涼風の大きくしたる妹がふところ 硝子の水吹上の浜なるか盥の波を見るも涼しき桔風 盃を洗ふてはさす月かげの水に流るゝ船ぞ涼しき 変約恋 今宵さへ事しがしとて逢事をちがへ遣戸のたてるくるしさ知家卿 波那細 名古屋 見通さぬ人の心の魚ぞうきたのめしこともくひ違にて稲丸 裏微加花三 一行末をおもひやり戸の口づから今契りしも引違ひつく水枯 裏微加花二 小糸 またよその手と手をにぎりかはすかこむとりこぶしをにぎるくやき 梓弓もとの心とみえぬかなうらかへりつる言の末はづ 裏徴 約束の風が替りて浪高く床の海辺によりもつかれず 長崎 諏訪 くむしほのやくを違へて来ぬ人を猶もまつほのうらみられつゝ 待明す胸に泪の出羽なる室のほこだてかはりあさよ千尋 駿府 契捨て日の出ぬうちといそぎしはひるがへるべき心なりしか直 我かたへ心おかじと契りしはよそへもて行しらせなりしか磯名 雨と誓ひ空と契りしかねことも風の変れる空ことぞうき 今宵ぞといち足出して来しものを二の足になる妹ぞつれなき 貴上八十九 信濃土田 仇し岩によごれし顔を洗へとや妹はちかひを水になしたる高原 味気なきかはるとしらず此日頃君待酒も酢にかへりつゝ春則 思ひきや仇し名たちて約束のやくにもたらぬ恋をせんとは 高畑 約束の風かはりたる夕暮は心の空もまよひあるけり 打明て契り置たる里の戸も親のしめしにこゝろかはりつ 目妙加花二 狸塚 うらがへる君としりせばなまじひにひたち帯をば頼まじものを 自妙ノ如花一 恋すてふ口をすくして二世迄とかためしことのかはるかなしさ いひかはすことの矢先と相違して妹が心ぞうら崩れする 日妙 誓ひてし末の松山まつ我をおきていづちへ越るしらなみ 諏訪 根津 うき望の空言ならむさしかゝり月の障りといひてこせしは さながらにうまき返事もへんずればにが〳〵しきの其屋により川常 二条 返事せしみの春だにかはかぬにかはるは妹か腹の黒さよ菫 一今さらに妹が約束ちがひ棚こゝろ置るゝ物となりけり ものうらをかへす心としらずしてりよ事よと契るくやしさ 人ならにこえて今迄なけかせつかゝらばいかに末の松やま永枝 口はいつも八重増造りつまごめのやくもたちまちかはるあた人野人 枝かはす契も今は枯果てめをふくものは潤なりけり比左志 狩衣の霞たがはじと誓ひしをたれにひかれて破りそめけん石網 恋衣比よくの後のつき草もかげやひなたとうつるわびしき雪人 佐原 あすの夜とあまりに釘を打過て通ふにあかぬ妻戸くるしや 八重垣 磯部 恨めしやその約束も違棚われのみ床の置ものにして 尾佐丸 新庄 新庄 出てなる神にうたへん今夜金ふやくも違し人のつらさを を真葉 貫上九十 来る筈のくるふてよ所に槻弓のひき違たる人ぞあだなる 芳野 花の色のうつろひやすくきかはかはしが情のあさのさころも 佐倉 思はずよかたく契しがね言の其しんぢうのつめたからんは 鍬形 諏方 思はずよ人の心のまつしまにたちまちかはるけしき見んとは ハ高根 桑折 かね言も他事に月日移し置て今さらしなのかはる君かれ薄墨 恋 なり〳〵てもとに落ぬる人をこそ色このみとはいふべかりけれ忠峯 波那綱 駿府 胸の火の消んとしてはもえつきぬ契りし中も枯柴にして 常雪 裏数加庵三 鳥取 迚も出る泪なりせば瀧と成て嬉しき瀬にも流あへかし真静 うけひかでつれなき人よ一夜あふにかへんと死地に入し我身を跡人 風呂よりもとも寝ぬくとし絵さへ参さへ鳥ふすまてふ駕誉のふつつま 裏微加花二 玉のをもたゆるばかりの患病をけふまで夢に結びとめしか其静 裏微 恋わびて心のこゝにあらざればうき名も念所に立走りけり三恒 嬉しさをつゝみし袖を目にあてゝまたかなしさをつゝむくるしさ金家 岩城 一夜さの泪も湖となりにけりあふみがやき也名のみと思へば未暖九 駿府 恋人と芝居さずきは並べても打出していふ折のなきかな をしへたる人しもなくて覚へたる恋の道にははやまよひけり磯名 家恋はうしと涙をのみ迚てうしはきいます神になけかん下蔭 青梅 短夜をなどて寝ぬぞと問はれても心は母にあかしかねつゝ 吾妹子を鏡と見ては男をもつくる心になりにけるかな水枝 新庄 くだかけの引さくをりにこぼしたる泪は袖に血となりにけり 寿 松代 しかべき道もなき迄見し人の面影草の落るこのころ薫 一妹青山中よし野川末かけてきのかはるなと契り置ばや 桑名 桑折 一龍の身にそふ玉よりも添かぬる妹が心のとりにたきかな 一田加花二 諏方 此頃はたがひの心深くなりて人の異見もとゞかざりけり。 用妙 駿府 逢ふと見し草のさむるはふたり寝のうまきところを撲や喰ん 駒彦 人の目を忍び逢しも此頃はわがめにさへも見えでうらめし 人の目の下をくゞりて忍ぶ夜に中立するは酒にぞ有ける 青梅 かこつけによそにのみみて人まてばあやにく月の照増るかな 萩 あはぬ夜のふる雪程に積りなば我こそ先へきえぬべらなれ 仝 ねうといはぬ妹が底意のよめぬかれねこのこねこはよみおほせても 山越 君が心さぐりあつべきよしぞなきいよ〳〵恋のやみとなりては 荒井 書送る千束のみに痩筆の命もはやわづかなりけり つれなくて出る液もまん丸く恋は角なき物とこそしれ 一晁館は美濃の大洲に住城のぬしある妹をほる身なり石網 朝露のおきわかれにし時しより今にかはかぬ袖をみせばや繁樹 筑前 恋風に浮世の塵を吹立て人の目口の戸やふさがなん安吉加鳥 芳野山 吉野木の材木なればあたひをも花におほせてはなたかるなり逍遥院殿 葛の花咲此ころは筆野くい酔のさめてや笑ひやめかん景山 裏微加花三 茅野ふかねのみたけにつゞきては勝手よろしく見えにける成春秋 あし島の中に一株受りてやよしの山は出来はじめけむ 根津 水哉 三條 名くはしき吉野の山をよく見よとくはしく案内するぞよき人 天神林 薫 哀微加花二 遠目には白く見えける吉野山真黒にする人群集りな 片倉 花をはらむよし野ゝ山の冬木立こだちや雲のうぶぎ立らん へ川常 市川 芳野山瀧の白玉岩かどにあたら桜の藪かとぞ見る 裏微 あさもよしきぢから見てもよしといふ吉野うるしの蒔絵した山 目妙 天神林 紫の露の衣ひきはがれ青くなりたるみよし野の山 真鰭 三浦 豆成 春毎にふみへらせども吉野山名の高き故かさらにくぼまぬ 市川 茅野山ふれる玄よと見る迄に有明桜さきにけるかな 笠間 三葉野は何の名所ぞ雲雪とふふうふけの花を見やりて幸風 一ノ関 ヽ二羽 芳野山花見したくの頃とてや華張をしてのぼる白雲二二 吉野山ねにかへりたる花をしもたづぬる人と見れば葛堀長親寛 顕人の遣ひ捨てもつきせざる金の御嶽にあまる言の葉 香のみか夜の気色もみよし野の山にたてたる燈籠の辻千代丸 桑折 吉野山花の衣を深かへて夏来てみればもえぎなりけり むれ人を千本の中に見失ひ夜の花までさかす三吉野 里 ものゝふやをさむる国のいくさみて矢矧の里とこゝをいふなん雅康 波那細 一土の声椀てふものゝ流れ来て人住里ぞしるゝ水上下蔭 根津 裏徴 朝露の垣根に光るさらし布しろをつらねし玉川の里根 仙台 からくりの竹田の里にうか〳〵と足なし雲もけふは出て来つ 佐倉 貢物をさめて民も平かに心おりゐる稲敷の里伊美種 ゆだねまき愚の里の名をとへば詞のしなのたのめとぞいふ春秋 目妙 諏方 杜若今朝はさかりに業平の花さへ七つやつはしの里千里 小糸 さゝ栗の飯は笑へど喰飽てさらする人や大はらの里道雄 貞上九十三 福岡 世の中にたつみはうしとすむ方はやはり辰巳の菟道の山里吉躬 野はあけび山はさゝ桑朝夕に拾ひくふ児や大朶の里於鬼門 荒井 秋の野の千草ふみ分尋ぬらん露にぬれしとつまどりの里 一兼浦 佐原 世の中へ遠つあぶみの山奥もすめば都ぞ京丸の里 杉盛 新庄 哀れなり糸鹿の里に夏引のいとより細き小男茗のこゑ 白糸 仝 などてかく目と度御代をかたくなにあなうの里は名をもかへざる 小町 夏もはやすゑもの作り団扇師のひまになりたる深草の里 柿崎 来て見れば衣の里はきゝしより身巾のせばき心地こそすれ 松代 菊呑頃はぬるまもをしみ渋いめのひらかでも摘宇治の里人未定雄 道をとふ都の人にこたへても通辞かねたるもろこしの里実則 鳥 分あさる野沢の蓼のもみぢしてからくれなゐにくゞるに驚勝俊朝臣 裏徴加花二 一名をきけばかたいやうなるしたゝき和らぐ人の道をしへ鳥杉盛 裏微 太田原 木かくれの鳥の宿にもみそさゞゐひたきのあればことはかけまじ木田景山 吉田 鶯の花笠をぬふ針にとて松をむしれる鳥もありけり 磯部 目妙加花二 鶯の巣をかり衣やゑぼし子を沓手専とは名付たりけん 目妙加花一 蓮光寺 御仏の御弟子にせんと子やさらふ鷲の御山の名にしおふ鳥 日妙 長崎 豊なる御代にあふあしの鳥なればめでたしといふ人の口真似 新庄 杜かけに寝に来し鳩やねにけらしあまたきこへし声の静まる 山家から出ても影の徳なれやかごで都へのぼるうぐひす 時鳥鳴かぬ噂のくさめよりこさめ催す空ぞたのしき 量 仝 今こそはみぬもろこしの鳥も来んしの御役の桐をしたふて高根 小林 生茂子芦の向ふにかくれても鶴はちとせの見ゆるなりけり 一ノ関 雁がねのふねにおよばぬ烏だに鳥の数には既に乗て大枝 筑摩江に見にくからぬは千代万代をかさねてぞたてる鍋座挿人 鳳凰の聖の御代に出し事は鳥の跡にて見るもめでたし ひなの時着たりしまゝにたけ仲てあしにとゞかぬ鶴の毛衣 戸塚 みゝづくをなぶる〳〵と己が羽に小鳥はもちになぶられにけり 高砂 月かへして若く見ゆれどねふれば腰をかゞめてあさる老鶴 新庄 角ありと詩にうたはれし雀等は鼎かふりて踊もやせし 一繁樹 小町此丸改 譲渡 看経をしながら苗を喰ふ鴫は数珠かけ鳩に笑はれやせん 村松 にばなする匂ひ鳥かとよくきけばこれも朝条をほうじろの声 厚房 坂崎一 日短の頃も夕餉を口たけに出かしかほれる百舌の早熱 中嶋 百疋とも蹴るうき名を立られつさゝの相手にさわぐ雀は蛙 首に数珠かけたる鳩のほうとなくこゑは御法の文字にさり 松代 生れしはやまと聞しか時鳥からくれなゐにふり出て啼 合 野竈の百舌鳥の早熱にすごすな時鳥来て客の遅きに秀雄 筏士の蓑かと見たる猫柳さしてにやうと都鳥啼窓香 あめなるやさゝらの小野の寒風にかやうる跡のかやくきのゑ春秋 鶴のあしさも大またにゆた〳〵とあゆむむまにもなをやへぬらん鳴音 諸工人 殊掻の西紺のあさぎ脊戸にほしてせに欲ぼるやこの世なからん慈鎮和尚 裏微加花二 湯加減の程はしらねど刀鍛冶ぬるからず打槌の音かな比左志 裏役 岩城 殿作る墨な違へそ違ひなば外のみるめにさけすみぬべし真酒躬 売上九十五 駿府 いつの世のかぬちや打し釼太刀目釘の穴もひとつみゆるは 菓子つかさ落雁を打音もまた堅田〳〵と聞えこそすれ真芳 むかしたれくるはぬむねの中よりやエみ出せし時計なからん鳴音 目妙加花一 仁熊 風出るふいごをやめて鍛治も見よほどよくひらく花のまさかり 真村 眼をいと也こまりきくずの飛入て又星となる石もあるべし比左志 目妙 根津 夏のものまさかり鍛ふかなたくみ暑さに唱ぐいきもきれなん 仙台 直き木もまがれる木をも扱ふて聖堂建し間匠かしこや をさまれる御代はゞからず刀鍛冶たがひに大花ちらしてぞつ静方 青梅 さればこそ匂ひ深けれ打槌に火花をちらしきたふ釼は布土伎 戸塚 おのづからのりの道にも入ぬべし仏のとかせ給ふ経師は真雲 取うつ音かときけば扇師の布目地歩を折にぞあり 彫物師龍に心を入ほくろ命にかけて腕やこぐらん梅成 切むすぶことなき御代も具足河がかざりに付し組打の紐押照 藍臺に朝夕かげはうつれども更にしら髪のそまらぬぞき於鬼門 吉田 一鉄屑風にまひたつは番匠の飛騨の細江によする白浪真文 朝起にさづかる福も天からよ天からとうつ鍛冶の槌音真芳 目出たさよ大黒傘を張織のえびす紙をも見つけ出して 堂宮の一本橋日本にもまれな工と呼べる飛騨人真似摺 いろは付違はぬほぞの合口はかんなづかひのよき内匠なり隅成 黒かねのやうなからだも夏の日は汗を湯にくむたゝら踏哉物菓 皆人の手にならせとて面白ふ拍子とりても折る扇かな百人 くみあげて水の。漏らずはなか〳〵にいかき上手と人のいはしな真顔 俳諧歌貴賤百首巻下 撰者四方歌垣 七夕 織女に外心をしかしたらばたゞ一夜にはかへらざらまし国基神主 波那細 桑折 さゝ契も星に願ひの原かけて人なみにかす蝉の羽ころも かし小袖取出す宵は棚桟の恋の奴や櫃に入らむ 左原 棚棧のかはらぬ色はいつ迄もみどりの空の契り成らん いかならん紅葉のはしをうつくしくわかるゝ時の星の心は甲良 松代 春の野の茎にすりしかし小袖棚桟つめも一夜寝よとて木代水 雲霧に月の都はあれにしをむかしながらの星合の空 裏微加花三 天の川妻をむかふる月の舟三日の夜から出てまつみゆ唯仲 棚桟にかすべき筈の小袖よりかせといふなる糸をそなへん大枝 鵲のより羽の橋を待かねて酉のひとかにいそぐ彦星 年のはに逢ふとはすれどみの川みごもり草はなき名也けり下陰 たなばたの真似して渡るかさゝぎのはしより落したやながるゝ於鬼門 天の川夕立ゆにせきくだす跡は彦星渡りやすけん中住 裏微加花二 天にても孫をかふより太かひのほしを彦とてめづるなるべし 待かぬる妻を迎ひに彦星はつかひのかはや先飛すらん 天の川漕渡りたる岩船も今朝は歎きに沈むなるべし 針邑 長崎 棚桟の契はかたき岩まくらかしらいたしと明るやなげりむ 真玉 裏微 全 あはまほしほしと待あふ二つか里は年やおそしと今宵契らん 二熊 棚桟の目やさまさんと朝露も雨もたゝかぬ秋の七平真村 山形 織姫や曳とゞめけんかし小袖今朝は袂のほころびてがり り若柴 かさゝぎと紅葉の橋に棚材のいそぐ夕べは行違へなよ 最上 一繁留 物あまたかりて渡りの天の川紅葉の橋もこゝろせより 富津 千代丸 伏黒 多月も雲の衣をかけたるはつまをほしとの願ひことかも ○金元 芳野 玉くしげふた夜とあはぬ棚桟の恨みはあくる空に有らん 芳麿 諏訪 二筆を渡す紅葉の橋ばしら雲にゆりこむ雁の一行 三恒 別路のはしのもみぢ葉心あらば今ひとたびはかけよ星合柿人 彦星の妻をむかふる舟うたもかぢの葉をこそとりてかたれ鳴音 吉田 鵲の橋のたしとや懸つらん賤がかしたるうづらころもは 真文 翌よりはほしの契りもかさゝぎのはしもいすかとあはずなりなん 声の音に通ふ松風くさ〳〵を空にしらべてたや侍らん雛子 中島 たなばたに折てさゝげん山の裾露もゑぎて上る白萩岩守 吉田 天の川橋にもがなとこゝろつき星にかたる厚板の帯吉田銭丸 天の川き葉を橋になどかけし渡らば星の中やたえなん春則 高砂 天の川出水に渡す舟よりもあぶなし中に乗れる産屋 たなばたの逢夜は今宵一夜粉さゝに付たる歌の短冊久良喜喜 彦星の妻むかへ船おそしとや立かゝりたる天の川波種成 千住 一仮橋はあやふしと星も鶴の玉子まもりやかけわたるらん 竹ヶ岡 天の川紅葉のはしを此時とわたしそめけん秋のあさきに 天の川見上る空にみどりなる短尺竹や玉藻なからん真広 彦望にふねかさんとや秋風も柳の一葉空へもてゆく 棚桟に手向る香は香賀脊壮にまづかゞせてや後にきゝらん春秋 星舎は月の都路かさゝぎのはしからばしの待遠き哉幹長 一とせにひと夜渡れる天の川むる間はさらに見えぬ也けり 野田 天の川あまり広くもなかるらん飛越る星も折には有り 目妙加花二 富津 一織姫の女こゝろのいち年にひとたびはこす天の川かな 天の川葛の紅葉の橋かけてさだめの外も這渡れかし道雄 目妙加花一 たなばたの嬉し泪の玉ならんころ〳〵とする芋の葉の露明方 姫路 水晶の数珠のやうなる望もけふつまぐる夜とてみがき立らん 岡 長崎 目妙 〽とこよゝり玉章そへてほしにかす秋のかり春の天の羽ころも 真砂 二星のおあひなさるゝ取もちについてや並ぶかさゝぎのはし 仝 望月 一棚桟に手向の舟の梶の葉は古欲で渡れるこの川かな主駒彦 斜四 たなばたのもはや来んかとての川紅葉の橋を渡しそめけん新田針女 岩城 天の川かち渡りせし裾よりも前れにしぼる織姫の袖 恋の重荷負ふとて今宵もてなすか牛の前なる糠星の影 新しき衣かさなんたなばたはあかつき厭ふものにしあれば いろ〳〵の手向の中の爪ふたつ星や今宵の枕にはする 最上 年毎にわたるとすれど天の川星や一夜の夢の浮はしが たいばたの行逢ふ空にゆきあはぬ物はかしたる小袖也けり松友 一かし小袖幾重も堂に手向るはあはせ給への下着なるらん 富津 極機にかすべき衣もたざれば枕にかさん棚の夕顔 比誓後つけし小袖は稀に逢ふ妹背のほしにかすもやさじや道雄 駿府 顔うつす盥の水は引て来し牛に手向のすそ湯とやなる 水戸 七夕に八夕水夕一合とはかるほど猶おもひますらむ 仝 世の中に今宵はふかく恥ぬるかとりわけ赤く見ゆるふたれ 祢津事冨貴改 星の中をさくら重ねは名もわろし手向によきは桧扇にこそ 伏黒 新らしき小袖仕立てかさばやなありつき厭ふ星のこゝろに 竹広 桑折 御代住 いつしかと待渡りたる天の川一夜計りは夢のうき橋 眉澄 物はこぶ牛ひこたに賤の男はいねよかれとて稲や手向ん 仝 仝寝成 綻びし尾花の袖を賤の男はけふ棚桟にかすもはづかし 仝 ならべたる枕の類は二つたひとつになりて逢夜うれしな 金秀 仝 金文 彦星の牛に乗るのを羨むかさゝげも今宵竹にまたがる 仝 棚桟にかさゝぎ申古小袖恩にはきせず書干ぞする 下見 親と子が類を教へて梶の葉にまごか書てぞ願ふ彦星 仝 落組の唱題も添て草の名のあさがほ姫に琴司向ばや浅方 嬉しさのつゝみあまらん袂をばゆたかにつくれかさゝぎの橋三恒 今宵逢ふその契りも木や鳥といはねどしかき紅葉 明吉る烏は星の逢夜にはいむとてさぎの橋とよぶらし末山越 鶴結ぶ草枕して棚桟のしつほりぬるゝ床夏のはな銀子 短冊を会符に立てや渡るらんはれてはれ夜の妻迎舟跡成 棚梯の辺夜の雲のすきまから遠地ころくさす稲妻の頼花守 織姫の手織の取や配りけんいづれきらめくた合の空 たなばたの枕の塵を払ふよははゝきたもやせはしかららん 仝 姫路 天神仙 色〳〵の顔の筋をたなばたの目には五色のいとゝみるらんヲ 仙台 仙人も鶴に乗ればやたなばたの是につばさをかさゝぎのはし 二星の手向にこれもかさばやな帯することのあらぬかつぎは 夕立もはれて逢ふ日と織女に手向やすらん松のかけ橋噺 世の人におほくかされていとゞうき□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 青梅 棚桟はねがひの糸のくるゝまもながしと待て今宵契らん ル芳文 一ノ関 ほしうつすたらひの水のふた夜ともあはでひと夜にあくるわび 彦重の孫子の数やみの川汀の真砂すくれかるらむ 全 あこよくだもてこと星のにしきせかたへに天のかはら捨子 士 全 昼かけし取はとりてから竹を星のみ舟のみさほにやせん空言 棚梯は年に一度の一といふ文字に横たふかさゝぎの橋真芳 明かたは天の川風身にしむるたり合ふて並ぶかさらぎ橘守 小袖より帯をやかさん棚桟のながき契りを結ぶこよひは脇野政女 天の川年に一度の渡りとてかけ流しかやかさゝぎの橋 むしろ織女牛飼ふ賤の男も年に一度と祭るたなばた たなばたは船よ牛よと一年の恋の重荷のいくら有らん八重垣 柳棧のぬる夜の床のねまきにはかしてめさせんひよく小袖を音瀬 土田 去の川紅葉の橋を棚棧の渡れどにしき中は絶せず高景 五色の其中にしもたればたにしんくの原は手問ざらまし文松園 棚桟に棒る類はとまりよく帰り手等本ふやきれ咲ばん小よみ 玉琴も天の川よと見る糸に柱も又似たるかさゝぎの橋年長 ねきかくる五色の糸のより〳〵にまつ間やけのくるしかるらん種成 幾年か習ひきぬらんかさゝぎのはしを渡るにあぶながのなき かさゝぎと紅葉にみする契かな羽根をならべつ枝をかはしつ比左志 秋風に天の川辺の寒からん今宵は重に夜着をかさばや 笠間 新庄 年に一度あふたしなみの深ければ星の命や限りなからん 一登丸 仝 襟あかのつかぬをえりてかし小袖これきよしとて生やらす也 名古屋 たなばたのつもる枕の塵の山はゝきほしにてはらはせぬらん 棚桟の識はしならん稲妻は金原とちらす天の川風百人 桑名 一飛のきし数多のほしは鶺の渡せる橋の邪魔になるらん真民 野田 稀に逢今宵命の洗濯のたらひに移る二星の影 佐倉 棚材のかはらぬ色の藍染もあけにはかへすよし小袖成 たればたの枕の塵を払ふ夜の節とぞ見る短冊の刻百人 萩 秋風に裾野の萩はおし合て声のみたてゝ露をはらへり為忠朝臣 裏微加花三 萩刀露本未結ぶ和顕の浦風にてにはのみだれしもなく薄墨 高畑 小雄鹿といろくるひする花妻をあてこする萩の声の高さよ真久 真名冨 芳野 葛の葉のうしろ向しにきのつかでいつまで萩のさゝやきはする浅方 裏微加花二 秋はまだ若くてき萩の葉の葉のかれたる声を出すがあやしき鳴音 天神山 薄より萩は葉広き釼太刀さやにも風を受てそよげり 大きなる薄と見しはむがことくいせの浜蔵笑ふ聲かも春秋 裏徴 山形 夜山風におそはるゝむしのねごとかとよび起すやうな秋の高聲真砂雄 富津 萩の声高く立れば秋風の来ちがひかとも疑れけり友雀 桑折 一朝きよめ庭の萩をば薄とてあらそふ従者もさわがしき成御空 大きなる薄と類によまれしをはらたつやうに萩はさわがり鳴音 風の間を伺ひよりて女郎むに物いひかくる萩ぞあやしき木守 吹はらふ風にもうせず萩の葉の身より出たるさびしさやこれ鳴音 姫路 女郎図あまたなまめく中なれば娠さわぐ男木とこそみれ黒塀 青梅 呼かとて立よりみればさゝら萩吹過る風にかふりをぞふる 芳文 うはべには風にしたがふさまなれど下はすれあひてさわぐ表の折香 伊勢の海浪に其根をひたせばか塩から声を立る浜萩真芳 あなめとは何ぞと小野のをすたきに物こふやうな風の下萩東作 難波がた風にさわげる萩の葉は交りてたてるあしやいためん磯名 いせのあまの手でもひよつとながしたかもつての外に騒く漬萩 白露のなか〳〵すわるひまもなく風にみだれて噪ぐ夜のは真晴 目妙ノ加花二 手を打て薄の躍る中にたちて声かぎりうたふ萩の上風潟人 目妙加花一 古き書を学びの窓に荻生てそらいと高き風ぞ渡なる跡人 目妙 物言はまだわからねどやと立ぬをさなき秋の萩の上風豊秋 庄内 星祭る頃より秋も竹の葉にひとふしまさる萩の上かせ真丈 小糸 満汐に入江の口を塞ぎてもさゝやき聲はやまぬ浜萩道雑 秋風が来ると難波のよしあしをこそ〳〵といふ伊勢の浜萩 よるひるとさわがたてゝ聲よりも葉をなからしそ萩の上風端文 白露に傾きかゝる萩の葉をまねき返しやゝ辺の秋風真武 仝 あしの笛波の鼓の拍子時千秋楽を舞かなづ萩金美都 秋はやと立そめにけるをさなさに物いひわかぬ荻の迄かぜ花守 はしたなく問はずかたりに荻の葉は何夕風と軒にさゝやく 萩 青梅 よくなびく姿には似ず高声に何をあらそふ萩の上風 涼しさをいつからさめて秋風にまろめた露をこぼす萩原 左原 大きなる薄かと問へばさゝやかにつぶやく如き萩の上かず 赤堀 紅葉焚夕餉の烟立田順つかふさゝらか萩のざらめく田鶴音 荒井 秋の野の千草あらそふ風に猶まけじと萩の声はたつらん 兼浦 上田 夜の夢を破りし花をわぶるかやけさはひれふす露の下萩 難波江といせの言葉のよしあしもわからぬ声を出す浜萩孫孝 玉もいへば露もたからか秋風のふくをこぼせる庭の萩の葉数成 もてはやす声もたえせず来る秋を下にはおかぬ萩の上風梅景 夏はゆき秋は来てまだ落つかずさてさわがしき萩の三風 浪の声あらき海辺に生たてばもの言高き風の陰秋行業 蘭 獣風にほころびぬらしふぢばかまつゞりさせてふきり〴〵す啼棟梁朝臣 裏徴加花三 ふちばた道侯の神のみづがきにゆかりありとやはだかりて咲水枝 裏微加花二 裏徴 大口の真神が原に踏こめば首たけとゞくゑぢはかま成真武 いたづらにまねく屋敷の袖よりもふぢはかまこそ行義なりけれ駒彦 露ふかく踏こむ野辺に股立を風にとらするふぢばかまかな 最上 目に見えぬ秋講ひてや萩の葉の音なふ声もはやかはりけん 虎やふすもろこしが原の煮かれて後にもかはとゞめけり下蔭 一ッ関 ふぢはかまきてみる人のうしろより腰に尾国の手をも添らん ふぢばりま結び初るかたへには細すね出してなく火もあり ふぢ袴もめ艸ならし秋風のたゝんでしまふ日だもあらねば隅成 村松 五郎国なりめき立る中にても行義みださぬふぢ袴哉木木厚 うつゝともわかむらさきぞさめやすき麦路にかよふらにの匂ひは物梁 目妙加花一 男静まふる嵯峨のゝ女郎国風にまとへるふぢ袴着て磯老 目妙 二熊 野分せしみまひにゆけばふぢばかま腰さへそらぬばかりをかしや 最上 ふぢばかまほころびたるをさゝがにの糸をもちてや風のぬふらん 小松川 股立もとらぬ中道のふぢばかまをみなへしさへ裾をはしよるに 蕈着る人なしに綻ぶは下部が庭にはきやしつらん 駿府 桑折 藺夜はの野分にほころびてはけどはかれぬ庭の面かな友成 さそはれてきつけぬ野辺にきてみれば腰のねぢれし党さく見詰 ふぢ袴大宮人もきてみれば雲の袖まで香はとゞくらん笑雄 ふぢばかま今人の来てみたりとは猶あたらしき折めにぞ知る 誰か着したもの短きふぢ袴ほころびめより芦のみゆるは二羽 一秋風に身もかたくなりてふぢ袴さけるをもきてみたき此頃糸榧 秋の野にきてみる花のふぢばかま小袖のあるを奪ふ紫金厚 有にめでゝそなきて見れば薬腰までとゞくほどにのびに 太田原 見おろせる庭に咲ても秀たるらにの薫りははるかけだかし友成 一稀人のきませる日だもあらばとて長くまちをる煎かな目積 紫の裾野とみしは逆夢か明ぼの染のふぢばかまにて仝 女郎女なまめくそばのふぢばかまよくも行笑を乱さゞりけり 蟠蟀 盃はめぐりてゆくをきり〴〵す誰にさせとか啼あかすらん暁月法師 裏微加花二 岩城 夢の穂の庄錦をばこほろぎの髭をつゝめる袋とぞ思ふ 芳野 きり〴〵す朝開く窓にきり〳〵と揖の青きこゆ六籠の舟浅方 千住 書を学ぶ机の下のふでつむしもたれかゝればぎしと鳴止む街 裏役 安原 つかれつゝふせばか夜はにかたさすれそそさすれとて書の鳴らん 岩城 角力艸にしかみつきつゝきり〳〵す手をさせ〳〵となくぞをかき 緑 小糸 すり付し露の薄のかみそりに髭ぬらし居るきり〳〵すかな ◑菊盛 花のにしきしてもつゞれをさせ〳〵と云はとんでもおごらぬぞよき 祢津 糸を引蓮の露やなめつらんにごりにしまぬはたおりの聲 草ふるき薮の中なるきり〳〵す越後縮のうみや桟おり 桑折 諏方 莟おのが破りし夢を又つゞりさせよと鳴ぞをかしき なでしこの露をうましとねぶりつきしばし鳴やむ菴哉 味のある千種の露をすふてみて舌打をする菴かな 文字をなす雲井の雁になく声をあはせてほそき筆つ公哉 若ミヨ むさし野はつゞりさせてふ書だにも萩のにしきの下着きて鳴 ○素顔 名古屋耳風改 青にびの竹のうちしやきり〴〵そおのれがはぎはほそ長にして秋津 秋津 安房小町 夜もすがらつゞりさしてやつかれかん茶立むしをも呼ぶ菴議 ぬき足によれど鳴やむ養壁にも耳の穴に逃けん午 脇野 蝶蜂まつ初秋に散初る一葉の舟に棹させと鳴 小野宮 霜またで草の袂の色つくはさせてふ土のわぶる泪か 取いれし籠の隙より逃んとや聲をほそめて鳴蟇 佐原 穂薄の浪のあなたのきり〴〵すあし長き嶋のものかとぞみか 目妙加花一 中島 いと清き青色をもちてきり〴〵す銭おれとはなどて鳴かざる 目妙 長崎 吹風の草もみたてゝきり〴〵す秋のよなかを鳴とほす也。 富津 幾日経しはた野におれる蒼こゑされ〴〵にさせ〳〵となく しをり戸のひらくかと聞きり〴〵すちよつ〳〵と立る音もする哉 きり〴〵す細くて長くなく夜はの閨にひゞける声の淋しさ一 水戸 是ほどに広き野辺にもきうくつに足をちゞめて鳴きり〴〵す きり〳〵す長き髭をも秋のよに籠の目さへもつきいでゝなく 早稲の穂のちらめく野田の岡にゐて声をはやめに桟おりぞ鳴 足はやせこゑもおとろふるきり〴〵すひげのはりだにたてかねぬらん きり〴〵す草を敷間も逃やせん籠の戸早くさせといはまし 小竹筒もて野見に出れば露寒みちとさせ〳〵と鳴きり〴〵す 天神山 鬼薊しがれる野過の養肩をさゝれておのれ鳴らん もろこしの屋形はこゝの賎の女の綴さすてふ書の住家ぞ木守 丹波綾部 板戸濁る夜はの嵐をきり〴〵すもみこむやうになく枕もと蔭頼 中島 夜草する人をいさめて眠るほとつくへの下にきり〳〵す鳴采成 一ノ関 裸土汝がうからかきり〴〵すいそがしさうにつゞれさす聲 かたさせの裾させのとてのみや蚊にさしづ顔にぞ鳴きり〳〵と折香 めみゆ図おほかる野辺のきり〴〵すなどおのが手につゞりさすへん春則 きり〴〵す塗こかられな破壁に土をもさせと教へだてして隅成 きり〳〵す立れつくせば心なき千等さへ瓜の腸をたつ玉伎 やくたゝでもの入てある居風足をまたぎて出すきり〴〵す哉跡人 ひやせてやう〳〵ゆかにはひよれど髭の白くはならぬこほろぎ水枝 きり〴〵す枕の下にしかれても声はつぶれぬものにざりける春秋 坂志岡 露にぬれし国染衣きり〳〵としぼるやうにも鳴きり〴〵も仲佳 疑惑 はからす人の詞のつかの間に我も狐の心をぞかる正徹書記 波那細 時熱りてし待夜にこねば胸の火の外にもひとつおこる疑ひ柿人 裏微 四阿のま屋のあまりに侍せずと我疑ひの胸もひらかせ万豪 疑ひの兄にたてばかまめなりし人の心もしかと見えざる磯名 日妙 あひたきの心とほきで日をふれば身に秋風かしら川の関 庄内 疑ひを互にいだきあふ夜半をいづれか狐ならんとすらん 吹かはる風もやあると蜑小舟狐鎮してよせぬまつが浦島水武 ちぎれども心はかねておく露の昼間はかはる朝顔の色 加しや君のあさゑにより合ふ哥にとけぬうたがひ市住 ならべたる枕の山に花の顔見て疑ひの雲もはれにき恒道 もしよほへ心やむくとむくきを付てもみたやしが帰さに隅成 眼に見えぬ人の心をさぐりみる恋の闇路は疑れつゝ年長 胸の火の燃れどけして置されば水くさしとも起れけり何也 一兵訳も合ぬ手にはは疑のかにあらはれし袖のすら焼由苅 恋 恋くさを力車になゝくるまつみて恋らく我心から広河女王 波那細 いつの間に心をんに奪れし恋ふとはうちもあけず有之を石網 裏微加芥三 美くしき姿をめづる我丞の海の底にも神やあるらん磯名 松代 しのぶ時胸とゞろくは常もえの火にや涙の雨のたゝかふ 哀微加花二 嬉しさにうきを重る小夜衣おもくなりたる身をいかにせん 裏徴 さねかつらさ寝て別れのなくも成かゝらざりせばくるしからしを鈴名 待宵に来ぬ人よりも詫しきはえせま見えし客の長尻 恋ゆゑか胸もみだれつむすぼれつ糸のやうにぞつゞれはてける真芳 恋のたね何を府しか知らずしていもと出来たも不思議なり金百林 書送る牛の角文字其侭につき戻したる人の難面さ虎住 桑名 うき点の山路くるしや今更に手を引用意したる仲立由前 目炒加花一 仙台 一面白う嬉しがらせて変れるは目鏡違ひの妹がからくり 真根人 長崎 目妙 恋の山のぼりつめては玉章の文字もくだらぬ身とぞなりかき 唐衣きまさぬ君をまつ毎に袖の泪をしぼるあけぼの 鉾田 夏衣袖の薄さに此頃はつゝみあまれるわがなみだ哉 山形 最上 月まつと人をはかりしむくひにや出て来ぬ君にはかられにける 登 仙台 せきかくるこゝろの水の届かぬは思ひ懸極にふしやあるらん 後の世は枝かはさんといへばまた人もそのきになりし嬉しさ 恋やせし身をあはれみてみつぐりの中立早くよきたよりせよ わづかむつつく鐘の音に君と我恨みの数のしれぬきぬ〳〵実元 とにかくに思ひやむには止れずて恋やみとこそ今はなりぬれ琴富貴 佐原 ゆき通ふ人静まれば我胸のさわぎ出して待夜くるしや女百船 村松 歎きてもくどきてもたろぬゑをみる目より泪の落る悲しさ未染安 新枕海月の岸に逢夜さへ岸がなくばと聞ぞうれしき天馬 君照る思ひはさらに山鳥のなか〴〵しき尾ひとりぬるよは久良喜 来るかとて夜ごと寝ねばか夢にさへ顔出しもせぬ君ぞ難面き真長 闇の夜もいとはでたの飛やうに足も空なる恋の通ひめ興次 若くさき人の心にいとゞしくわきかへるわが胸ぞくるしき糸女 きよかれと親はそだてついたづらにそまるこひぢをかくすくるしさ比左左志 名古屋 うき人のはだへの雪に身をよせてつもるおもひを打もけさばや 繰返し同じこといふ玉章をひしれたりと妹やいとはん 藤菰をあけて待夜にこねばまたむねは一はいふさぐなりり海近 佐倉 疑ひの雲かゝりてかうき人の目には心の見えぬ悲しさ伊琴月 もらさじと袖うつしなる玉章に先嬉しさを包み置けり復春 恋衣きまさぬ人を来ませよと針業に夜をかこつけて待真名井 関路 昔見し関守もみなひにけり年のゆくをばえやはとゞむる重之朝臣 波那細 とく事はよしな〳〵と陰鼻のおさへの実や下紐のせき赤等下見 裏微加花三 一梓弓引とめられぬ月や日の鼠が関は名のみなりけり竹光 庭つ鳥かけろといふに関の戸の鎖をはづすはをかしかりけり磯名 裏微加花二 日も西にかたふく山のみちなれば早くとほれとせき立にけん年田銀子 裏徴 一いつとても霞が関は春にして花の大江戸盛也けり百林 目妙加花一 武蔵なる露が関も今ははやせきなく家を立つらねけり逸覧 目刻 とん〳〵と打は扉かかな槌かくき田の関にすだく水鶏か 飯沼 河口の笄をくぎぬきぬけて来てまたもくき田にかゝる旅人 もさんも波立ぬ代はひるねしてふねを漕らん白川の関弓方 小町 手形にも怠つかれじと気けひぬいまだ習はぬ文字の関路は琴富貴 くれをく杉の下道ほち〳〵と杖にぞたどる足がらの関中住 太田原 みだりには通さぬ物と戸垣迄改めにけり開の外形安方 千鳥しも安くはこえじ夜もすがら月のさしたるす戸の関の戸糸女 郡 しがため命かひへぞ我は行鶴てふ郡千代をうるなり壬生忠峯 裏徴加花三 大鮑の柿の苗木を植るにはみのなる土岐の郡たのもし春秋 裏徴加花二 蓮光寺 吾妹子をこちこせしいとよふ聲の高市の郡名に聞えけり玉伎 裏微 市川 毛衣にあらねどこれも千代やへん鶴の郡に織出すきぬ常道 御名方の神の祭のねりものもすはの期やまづわたからん東作 さむざしの綴喜郡つゞきつゝ来つゝ行つゝ続く人あし 松代 誰もみなすみあるかたをよろしとはひきの郡のおのがひき〳〵水枝 野田 角田川くゞりて江戸へ嶋とりの葛飾郡頭いだせり 真寿人 仝 四十から老にいるまのさかひ河是よりとしま郡なるべし 目妙加花一 武蔵野は郡にたまのみつありて御代長のしの上におく国下蔭 天神林 目妙 因果しらず月見ありかば武蔵中の豊嶋郡に年やよるらん保鳥 小松川 大江戸の広きが中に美くしきとしまの郡世に類はなし 仰ぎらればつるの郡の群山の傾赤く夕日まばゆし浅方 不とをもつ不二の郡にくらぶれば蓬莱背負ふ亀は物かは山越 三浦 昔よりかはらぬ衣の模様して伊達の郡にきなれてたがむ 小町 日は西へ入間に月の武蔵野やくらき郡は名のみなりけり 高崎 石碑とともに和銅のむかしより太胡郡の名は立にけん” 東水 陸奥のしのぶ彩どるすりころも伊達の郡のおくつくれや芳 成り合に橋立渡る世の人はながめも与佐の郡とぞなる 煙立朝けの部夕ぐれもさかゆる民のめしやたくらん 太田原 日の本に二つとはなし五十四つの郡を分ておくのひと国 景山 武蔵野はかぎりも見えず此あたり皆白露のたま郡にて 積入る四方の郡の貢物いくこほりあるかしれぬ馬の背 糸頼 三日市 夜を照らす月をめでゝや武蔵野を玉郡てふ名はつけつらん長俊 獣 かゝりける心つくしのうしの子を誰が東路のみまといひけむ顕輔卿 波那細 日の日の花の獣の王とよぶ熊はうべもゐ高き物にこそあれ真芳 裏微加花三 延年改 獏といふ物とかはりてよき夢をかみやぶる犬の夜声憎しな 真恵美 塵の柿かすめし事のあらはれし時より猿の顔はあるけん水枝 名古屋 一寒しとてたつる屏風のうつしゑに風を起さぬ虎も有けり稲丸 裏徴 一けもの綿に莫といふ字は形なき夢をはむてふ戦なりけり竹光 文字のごと万代迄も伝ふほど筆になる荒の声ぞ長かる 松代 思ふことなき犬の子もこれをのみ是をだにとて厭ひ顔なり石網 笠間 目妙加花一 妹と化てかぶる玉藻の雫より男をたらす野ら狐かな 脇野町 花妻の萩は見すてゝもみち葉の色づくこに迷ふ小男鹿 目妙 長崎 一月の水空の浪間をいそぐのは兎の耳の檻に似ればか涛麿 鉾田 人は見てたけたつのにおのが身は皮ころもきつ夜はの狐火 岩城 夜な〳〵におのが口から火を出して身もこげ色の毛衣をきつ 人真似をすれどもとより山様の及びなければ面赤くせり 仝 仝 唐人が威をから国の虎なれど日の本にてはしりさやにけり真鬼 駿府 くる〳〵と巡るばかりの猿をどりやはり四国をめぐるこゝちか 高畑 おそろしく荒し浅茅が門近くこんとなきぬる老狐かな 芳野 唐土の虎てふ紙をはりぬきにして持あそぶ国ぞめでき浅方 人真似に猿も長生いのからん我秘蔵せる枕をぬすむは柿人 孔子の時出し麒麟は其国のろにある炭の名にやおひけん木守 ことわりと思ふ狸のはら致ても打つゞくまん作のこし明方 麝香橋命におよぶにほひぞとおのれめでたき臍やかむらん鳴音 ひぬれば劣ると聞しけものより若〳〵やくにたつのまぞよき下蔭 つらなりし猿をおもひの玉とみればあらしは梢おしもみて吹真雲 けふき夜むすびもあへぬ夢山やうひよと鳴る荒を聞ては平雄 夜もすがら月にうかれて寝ぬゆゑかうさぎのまれこそくみゆん 恋したふ妻は葱にぞかはりける獣店の鍋屋きの鹿仝 山にすむ猿も折〳〵かふからん松の下枝の蜘の網笠浅湾庵 日に千里往かふ虎はくたびれてふしよき竹のもとによるらし百林 たるみたるしわには浪を打よせて目もしほらしくみゆる大象天馬 大田原 よし跡をかへりみずともゐのしゝは武者とよばれん世の功のもの 月の輪の中に薬をたしなむは闇の色なる熊にぞ有ける物梁 仏だに射る狩人の罪よりも重し望をはかる狸は春秋 名古屋 人並に伊勢へ参るは十二支のとりゐの中の犬にざりける弘器 一棟荒よ恋の重荷を身におひてかならず人に馬といはるな真寿 鐘 さなくてもねられぬものをいとゞしくつきおどろかす鐘の音かな和泉式部 裏微加花三 湖の庭より出し三井のかねひゞきもふじの鳴津の如浅方 世の花の物なりながら世の中の時の用たす山寺のかね柿人 模鐘のみつがひとつの初夜過て子のこゝのつはもちとはやけん物梁 人皆にねよとの鐘のねうなりは鼾のやうに先きこえけり春秋 裏徴加花二 岩城 今も猶ひえの山風三井寺の鐘の聲をばもて行にけり真酒躬 福岡 一撞鐘のふとしき声がいかなれば人の心をほそくなすらん 裏微 青梅 寝よとすゝめ明ぬと起す鐘の声こや鳴ものゝ親とこそきけ喜代住 脇野町 足引の山寺の鐘は山鳥の尾としだりつゝ響くやう也 村松 暁のかねおとすとき拾ひしとおもひし夢のさめてをかしや 後世をとく僧より峯につく鐘のとき聞せずは日々に迷はん年長 模がねと世にはいへども時の数聞落させぬためにもつけ石綱 にひなめの夜には都の梵刹にぼんといふ音も出せぬ撞鐘 門を閉霧に閉ても山寺の入相の鐘は響出にけり真民 目妙 内山 同水海にしづむと音にきく鐘のねがひは今にうかむ三井寺山住 伏黒 化物も出るかと秋の淋しさにうなるやうなる山寺の鐘 血ぬらねど三井なる鐘のひがきには大津の牛も驚やせん芳麿 寝るうちもしるなとてや人の子にたゞ孝行と告る鐘の音金家 時の鐘かくせはしきは夏のよの月の霜もやよほど置らん穂並 玉拾ふ夢は覚ても暁のかねはしかとぞ耳に残れる有丈 名古屋 鋳しときに水銀などやまじりけん打たてずなりし大仏の鐘秋津 小町 高砂の尾上の鐘のおとすときくづれてしまふ夢のうき橋琴富貴 中島 高砂の松にまけじと縁青のうくや尾上の鐘の青みは星成 公 縁青のうかみてみゆる釣がねは人に後生をすゝめける哉 一ノ関 聞しより見れば大きなならのかねなるほどうそはつかれざりけり 夕暮は日の没る国ゆ響くらん梵音とこそ鐘は聞ゆれ秀雄 寄進せし袖のかゝみぞなつかしき橘寺の入相のかね真寿 山鳥の尾上の鐘は長〳〵と大声あげて跡を引けり美種 をしげしきかねの御嶽の猶鐘は今や弥勒の暁のそら真顔 相撲 さしかねて投まふよりもすまひ長のひさこ花とげしきまづみよ親隆朝臣 波那細 一大きなる相撲なりしがまけてよりちひさくなりて這入うしろ手春江 裏微加花三 桑折 一相撲人かたに小袖のかづけもの山に雲ゐる風情なりけり 御座 仙台 一山の名をなのり出たる相撲人ちから生ひたるやうに見えけり 大きなる腹はかけたるかつらからなりひさごかと見る角能人春秋 名古屋 一狩衣をかなぐり捨て褌ちひさき物にあらぬ角力男 重さうにこえふとりたる角力人雲のうへにはよく登りけり磯名 むさし雲の月と吉野の花角力秋こそ西の方はまさらめ真玉 一憚らず雲の上にも裸にて手だにつかざる勝角力る由折 しゝつかぬ案山子に似たる疲相撲あらしにも寝ずうを取けり真武 裏徴加花二 勝すまひ投つけられてよろこばんたゝれぬばかりかづけ物して鳴音 気仙沼 勝角力ほめぬる声は嵐にて花を飛する人のおほさよ真布司 裏微 天神林 見物もちからを入れて勝かたをまもりつめたる宮角力哉保鳥 最上 さしぬけてこのやうなる相撲人雲のうへにも出る時あり ノ由多賀 山形 立出る角力人よりなり高くゆすりみちたる見物の声 数おほき四十八手の手ちからのたらすて残る相撲ほゐなし明方 勝負のなきをばちから草にして角力の花ぞわれもかうなる幹長 東へと団扇の月の上る時西の角力ぞ影なかりける真 名古屋 角紙場へ並よくならぶ表手助手江の次第にねりかにけり弘器 まゝの上にめされし物を家ものに角力の行事預りにけり磯名 脇野町鎮二改 水ものよ名取川てふ関相撲ひかれて足の流るゝ見れば ビ上證 角力にはさす手ぬく手もある物をぬきさしならぬ見物の足 松代 関取のすまひ人より勝まけに目のこえたるは行事なりけり 一ノ関 角力人こけぬかた木の春臼に杵なす腕やもちとなるらん 角力人こけぬかた木の舂臼に杵なす腕やもちとなからん 目刻加花二 姫路 玉敷の庭に寄麗に投たるをむさうかけしといかにいふらん。 黒塀 佐原 勝負を天にまかせて地取にもつちは掴まぬ角觚かしこし 目妙加花一 立合に落つきはらふ相撲こそかへつて花の名をばとりけれ鳴音 目妙 仁熊 相撲とる人のかさしのひさご花いづれの方へちりやつくらん。 真村 天神山 一関相撲動ざること山の如仁者も是をたのしとや見ん 天神林 勝ばなほ四方に名立る顕相撲おのづから人の上にぞ有ける 真水 桑折 見物もたがひに射を張弓の矢といふてとる相撲人かな松共 陸奥御代田村 衣のらせて大の字なりににこ〳〵としこふみ顔のよき角力人 関とせき互に得手をつくし聲きてはほぐれほぐれては組中竹広 紅葉の綿をこしに引まとひ山のやうなる角力人かな仝 寅上 まはしには牡丹の経のにしきしてふとりしゝなる角力人も 央 仝 豊秋 弩の名は清水に似たるすまひ人互によりてくみかゝりけり 水戸 贔負なる角力の勝負見る人のなどてかたづをのみて居るらん民則 貞勝の二つ一つのみつせとりよつに渡りて組すまひかな明方 富士おろし足柄かけておし出す夕部の雲の歌相撲かな年長 仙台 草相撲かたへに左させ〳〵と足ふみはりて鳴書もあり真似人 相撲人桟敷へ呼て盃をさすにもこれは席をとりけり万亀 大和新庄 相撲人弓取としもいふことはつるをもかけていればなるべし 小米 踏ならす寒の醜草それならで顔うつくしき草角紙かな道雄 貴下二十 関取の朕をくゞりて千人の上を投こすほどのいきをひ 夕貌のかつらの方の勝へとて扇にのせてたまふみけしき 板庇はなれ物ぞよ負るともあからな不破の開取相撲 諸人のかたをはるかに越の海なみにすぐれて見ゆる角力男 村松 一厚房 見物もちらで詠て花ふらす月のかつらの秋の夜角力 上田 音清 相角力たがひにちからくらべるどちらが負る加茂しらねども 岩城 軍取の名のる山にも弓取のかたには月の入るかどぞ思ふ 仝 錦をばまはしになして古里へ裸で帰る角力人かな真酒躬 月 木賊かる寒原山の木の弓よりみがきて出る秋の夜の月仲正朝臣 波那細 照月の跡追ふて来る村雲を天の川守川とめをせよ 照月のめぐるにつれて前に居し稀人もつひわきになしけり 皆人の泣つらうつか物ならば月の鏡は見られざらまし目積 山の端に花を見られし白雲も月の都へ出てはみにくし 月の夜は烏の声に驚きて東のかたをまたながめけり磯名 松代 一みはやしを月の舟木に伐つらん星もとぶさと空に見ゆるは 裏微加花三 思ふまゝ月を見はやし戸をたてゝ寝やうとすれば夜の明にり 小松川 最上 花と見る雲をかざして秋更し月も老をや隠すなるらん 京都 雲の波に月のをとめのかつく夜は空の海にも見るめ多かり 真恵美 むさしのをおわけ出る月の顔薄で切し疵だにもなし春則 諏訪 心なき物とも見えず月のためそしればいよく起る黒雲 昼だにも葉かくれしたる空豆のさやけき月にあらはれにけり福麿 時に取て船と呼名も有明や磯山松にかゝる月かけ 二つなき今宵の月のあかるさに夜る昼をさへひうつとぞ思ふ松秀 裏徹加花二 立昇る月の処女のうつくしこだきつくやうな峯の老松梁留 あふなしと山の端遠く逃よかし大きな月の落かゝる時真春 中空に傾かゝる月の水こぼるゝ物はなみたなりけり 京都 水にうつる影のとれぬを腹たてゝ猿も人真似月になくらん真恵美 小糸 雲の衣風に取られて恥らふか赤うなりたる月の乙女子直路 気仙沼 道芝の露の玉見てひろはぬは月に戸さらぬよにこそ有それ道住 駿府 月程の眼を持てにらみなば山の端いかで逃す有べき和海 松代 盃を洲浜の松にかけさせて月まつ程の雲の上かな松廬 裏微 今正月てる月見てひししるしには寝ることを先わすらへにけり 山形 夜の明しやうに烏も鳴つれてねぬ目を覚す月の出汐 京都 真恵美 一飛鳥になりても見たし空に行て光りかゝやく月の都を真恵美 佐貫 打寄る穂浪にうかぶ月の影賤見もやらで夜田や新らん 大坂 月見ればひもやすらん盛なるかつらの花を折てかざゝん 真垣 防原 一三日月の雪なりと正面におこしてみする十五夜の影百船 石山の月見にいそぐ夕日影つねより長き瀬田の庄橋吉人 仙台 空の海雲の白浪おしわけて見ゆるや月の来のそほに 一ノ関 月て宵みちて赤きは紅葉を染る時もの水やたゝへし 月を見てしばし若やく影法師白きかしらも黒くなりつゝ 全 軒の端に飛残りたる秋の蚊の数さへ見ゆる月のさやけさ 秋日和よくかたまりて夜な〳〵に落れと破れぬ月を見る哉 しら山の月の鏡はかゞみとぎ磨てやことにさやけるらん 久かたのあまのはらから出し月は面向不肖の玉とこそ見れ真 邪魔になる雲の衣は山の端に月のいるまでかたつけてまし 諏方 傾し月の舟路か行あとに白く引たる雲の一筋 難波かたあしの葉照す月見れば秋さへに夜のみじかかりけり 仝 さやけさに着ゆるやうに覚えしがむかしのまゝの秋の夜の月 言葉かはす物ならいかに唐大和いくらの人の向ふ月影 全 仝 波に乗せて沖より月の玉もてこ霧はれ光りましらゝの浜門 竹ヶ岡 猿猴の手は及ばぬを歌人は趣向にとなる谷川の月道規 佐倉 真連明 照月にうかれ烏の飛出て泊さだむる枝雲もなし 一ノ関 月出んと晴行空に青雲の底のみゆるぞ取れふかゝる大道 長崎 空を見て寝る人のなき秋の夜は枕も月に遊ぶなるべし 真砂 目妙加花二 桑折 海原に波の数こそ見えにけれ玉のやうなる月の生れて ヽ有益 上田 され類の手尓葉もいとゞ乱れけり虫はむ月のかけるよりして され頭の手よ葉もいとゞ乱れけり虫はむ月のかけるよりして広丸 目妙加花一 岩城 燈火のあかしの浦はもとくらし月もる松の類おほくして 真酒躬 仝 宵の間にいとひし雲の八重蛇の今さらほしや月をとゞめん 長伎 太田原 御かたちの餅ひに見ゆる物なればつきとは人の名づけ初しか 一ノ関 月見よと引起されて泣上戸哀れもよほす酒の酔覚 千住 てる月の色も雲の浪の上を鰐の背踏て渡るとぞ見る 松代 影ぼしは田にならべとも更級は他にならびなき月の名所 目妙 内山 〽照月にくまがなければ蟻の這ふすかたも見ゆる中秋の空 牧布施 大空の晴わたる夜は露まても草にのぼりて月やまつらん 高畑 月見舟つきよき方へかう〳〵とからすも騒く磯の杜蔭 真名冨 桑折 日南の珠かと思ふ月を見て泣尽したる秋の哀れさ 家上 汐ならぬ空の海より月影のさしてそ人になみたくまする 今宵てる月の都のさやけさを廿日ゐなかとなどていふらん 公 天の川月のわたりに雁がねもかさゝぎの橋とつゞくさやけさ 仝 しらげたる米ほど光る秋の夜の月の側には見えぬ照か星真芳 武庫山にむかひて月のさうじみをよめに見るとはいともかたし 一大空に手のとゞくならするの月星の林にしめ結はましを釣人 江尻 一仙人も月にうかれて歩行らん我乗る雲の見えぬ秋の夜雪斎 山の端の雲吹はらふ風の手が月を遥にまねきあげけん 高砂 くさびをも磨け鏡が池の面今宵の身の影をうつさん繁樹 思はずもいろの詠にふけりては顔はづかしき十五夜の月蔵守 ひかりほに天の戸渡る月の船興に乗てそ見るべかりける明方 四角なる窓に向へどかどもなく丸き心や望月の影中住 水ときゝ水と思へど月影は雨のゆふべにかはる嬉しさ年長 真壁 一詠めゐて今宵はこゝをさらじなや傾く月に見捨られても足兼 仙台 荒川や石は流れて影しづむ月の柱の一葉重しな真似人 芳野 鶴亀と名を呼ぶ星もと肩てる月の鏡のうらにや有らん 富津 世は月の都となれば赤駒をつながる小屋も人めづる也千代丸 秋来ぬと月の儲に敷嶋の道広沢の池のさゝ波嶺子 月を見る後ろに居れば影法師も延あがたらん丈のながきは常葉 駿府 おもしろく庭を苅こむ座敷をは月見る友にまたかられけり真哉 氷かと詠むる月の夜すがらは門をとぢたる家もあらしな道則 三條 一掛物の野馬臺の詩も月きよみくもなくよめる程のあかるき 太田原 この世にしかくもてはやす中秋は月の都や淋しかるらん 景山 脇野町 格子よりさし入る影は絵に似て八畳の間をてらす月の夜 誰も皆にが〳〵しくや思ふらんかゝるさやけき月にくまのゐ 上田 諏方 中空に月の桂木根つかせて入さの山へうつさずもかな 峯の空うごき出せしを入月に山の端迎て行かとぞ思ふ 平恒 山よりも出来る水の月影はめぐり〳〵て海にこそ入れ 入桐の鐘の響に山の端へわれて出ぬる秋の夜の月 柿崎 桑名 一終夜邪魔なすひまを山の端にかためて雲よ月な入らせ 照渡る月の雪には村雲の袖打はらふかげだにもなし糸女 折〳〵は雲のしがらみかゝれどもとゞめ兼たる水の上の月 晴わざと月の桂の男舞雲の衣を脱かけて出つ みとれ居て心の餘所に勧かぬは月の氷やとぢつきまて佐倉美種 月厭雲 秋風は夜寒なれども月影に雲の取は着せしとぞ思ふ 裏微加花三 一さら〳〵と降村ゆは月も見ず風に追るゝ雲の泪か磯名 裏微加花二 雲ありとしらでぬぐへる老の眼のしば〳〵すればうとき月影 裏徴 長崎 秋の夜の月を待にも草臥し心は山のかたにかゝれり 入かたの山さへうきにうき雲の出て峰つくる月の中空 高畑 天津風あれ吹はらへ月の雪にあとつけさうな浮雲のあし 目妙加花二 月の夜は口のさがなき烏よりにくさよいろの黒きむら雲 姫路 佐貫 目妙加花一 最上 月の入山を崩してその土に雲の出る穴ふさぎてしがな繁留 目妙 新庄 真柴 照月の柱の枝に障るたび破れよと思ふ雲の衣手 祢津事富貴改 思ひかくすくも出来る見れば月だにもさして浮世の人にかはらぬ水曲 水哉 桑折 うきりの月にかゝるを尋かねの棟に引かけ行もやさしな御空 高畑 一照月の桂の花の花の花の花の花の袖なさはりそ 真名冨 最上 てる月に今宵さはらば雲の袖に賂を入てもとくかへさなん 央 一企 てる月の跡追ふて来るむかた雲をとゞめてくれよ峯の花松秋穂 青梅 月のため雲を厭へば雲はまた月の覗くをいとふやうなり 笠間 天の海に月のみふねの出しほなりかならず立な雲の浮波弓彦 月影にかゝるひやみあなにくと黒くなりつゝ腹立もをかし真名井 ざゝがにの糸も見えすく月影にからむはにたき雲のふるまひ小詠 有かたきみかげを人に蹲せじとかへつて月をいとふ空かも長俊 爰で惜みかしこで退れ風望の居所まよふ月の夜の空高景 風の手に雲の衣をたゝみつく月に厭へばかたよせにけり河澄 月前砧 すみのぼる槌の響やかよふらん月さへ雲の衣うつなり長硝子 一衣持手もとしどろに月みれば洞こぼれぬゆびをたゝきて折香 桑折 一かへし打市にも月の宿りけりこゝらやきぬの袖になるらん 二ノ袋 月の前うてばまた打影法師こたまも音を添ふる夜炬 高砂 一小夜衣うてば響てすみながらにじるか月も所さだめぬ真砂雄 野田 ひとなる月のさす夜の小夜炬皺の出来るを戯ひつゝ摂寿美香 樹もの月に響かば乙女子が羽取さへや寒く有らん蔭友 一 一ノ関 一賎の女に月や手伝ふ小夜加高く低くぞ音の聞ゆる弥古 柿崎 表打月の影ほし又外に風の尾花も手真似をずる 月をのみ打見る人の気は揃ひ拍子そろはぬ小夜作哉糸女 ならねやこの手おりさへ月影に艶打出してふたおもてなる春秋 終夜うてる夜も風影も薄くなりたる暁のころ松秀 上小堀 目妙加花二 弓張の月にきそひてしころ持はいかなるものゝ婦にや有らん田雀音 目妙加花一 一窓あてはつかの月のとし覗く遠山摺の衣うつ花に帯かし北 長崎 目妙 照月に雲の花はたゝませて打やきぬたの音なしの里清麿 拍子よき賤が砧の相槌にうかれ出けん月の処女子光房 静さよ浮世のうさも晴月夜はにふの小家に我打なり 桑折 月影に昔しのぶか文字摺の里の砧の乱れ拍子に全兵 打貼空にひゞきて月の中の兎の杵の音かとの聞御空 詠居て我た更行月影にしは打のばす唐衣かな津房 青梅 終夜砧をうてば月の春る雲の花も尽かべすなり布土伎 太田原 月の色もちつく杵と終夜きぬたの槌と今宵くらべん景 大坂 さらでだに悲しき月の小夜貼うちつけに物の哀れなりけり 真垣 てら〳〵と光りて艶の月の夜や尼がうつなる麻のさ衣真根人 よく残れる夜打影も月の中の老の餅を椶姿あり浅方 合 三日のころゆ夜毎砧のひゞきにてこよひぞ丸くゆり出す月 全 夜を深み槌の拍子も入月に眠けきぬたの音たやむなり 芳麿 大和新庄 兎より今宵のもちは取打拍子についてつきのよろしも登丸 月の夜は砧へ邪魔な松がえをうち折さまや杣人の妻元成 月を見て手えしどろにうつ槌の音声づから空に響けり 仝 月の夜にうてば木綿も光り出てさやか〳〵と人のいふなり 奥海 気仙沼 巾広き空色衣きぬたにて打まに丸く出る月影 小道 千住 望月のこまかに音の聞ゆるはいたひきかけて衣うつらん 街 駿府 寝もやらでえり出るまで〳〵と月待がてら衣うつらん 真哉 小町 一砧うつ処女を見ほれ給ふかや折〳〵雲をのぞくかつら間 譲 あはり 折〳〵は賤が砧にかけ落て雲の衣も月にうちけり琴富貴 月のてりにまけぬ布ぞと隣からことはの艶に合槌をうつ 上田 槌の音のはやくなりしは照月にひて世話しく成にや有らん 諏方 柿崎 月さへて摂や砧の唐衣つまの旅寝に音とゞけかし木操成 村上 妹が手にうちし砧の響にてかたわれ月の出る山の端 秋の夜の月の哀れをうらみてはうら見てはうつつまのさる友文 一砧うつ手伝ひ顔にをとめ子は月の中よりさしのぞくらし真光 土呂 月一つ槌もひとつの手仕事に光り争ふ賤が夜砧木也 桑名 桐槌の手玉もゆらにしどの浦もどろに眠る月の夜砧松紙 隔恋 なこそといふことをは君がことくさの関のなぞともおもひける哉俊頼朝臣 波那細 一逢て後ほりをかさね印籠の道だてがちなる恋もする哉 裏徴加花三 一花心へだて有げに見えたかしは思ひをませのかまへなりけり下蔭 仙台 多賀城にあらねど千里里道だつともかはらでくれよ臺の石ふみ 裏徴 君は空我は海とぞ思ひける近く見ながらすきへだてに春秋 をみなごの今更垣をしはすともかいこぼちてぞ思ひもやしつ 一 一ノ関 程遠く道だてゝ住ば夢さへや中途にして夜は明にけり遠覧 服野町 戸をたてしやうに道だつる恋人に心を明ていふ折ぞなき 目妙 高浜 一へたてじと聞ばぞ今は祈りける恋に上下の加茂の御社万世成 妹が門にすゞめる人のあまたにてへだてられつる身をこがす最初遊 山鳥のをとこなきこそせられけれ影をだに見ずへどてぬる者 恋 恋 うらめしや筑摩の鍋のあふ事を我にはなどか重ねざるしん井広卿 波那細 一我ために汝こそは関と思はるれ心の奥を帰つ物ゆゑ石綱 裏徴加花三 夜々につむ枕の塵はひとり寐てならに心を砕くほこりか真春 うるさしといやうる人の面影のなどて我身につきまとふらん糸女 世にまなび習ふ物なるゑならば今までなどかゆるし得ざらん比左志 佐倉 中〳〵に見ずは恋じをうらめしき我目を今は注つぶさはや美種 裏微加花二 玉梓を皆引さきてかへすこそ我にまかせぬ胸とよめつれ幹長 小町 朝夕にはこぶ心のたゆみなき恋の奴はわかいものかな からたちや萩をわけて忍ぶより心のいたむ恋ぞくるしき長使 裏徴 一たびに持れぬ恋の重荷をばわけてみにぞ書贈りける 登る程恋の山路は重ら深くわたくしものゝ涙雨ふる真名井 仙台 身を入れて思ふ心をうちあけてかたらば人にそれとしられん 三浦 洞にて日に〳〵袖の重くなるはくちをしけれどすべなかりけれ 蝶の心つよきに持れ居て落しもはてぬ急ちからかな 迚も逢ふにかふる命と魂しひはとくより妹がもとへ行けん 服野町 人目おほく書やる文のみしかさに思ふ心の届きかねしか むかしにもかはらぬ恋をそのかみの人よりはやく今はしる哉磯名 桑名 此侭にあはではてなば煩脳の出死なりと人や笑はん由利 我ならでならずの都といひし人うつりてよそに住がにくけき石綱 目妙加花一 一文をかく文字だにしらぬ我物にならはぬ恋を何覚えけん 目妙 秋津羽の匂へる衣を打かふりとなめせる如ぬる夜嬉しな 天神山 木になりて枝かはさんと煮しを他家へはさらにうつすなよ君保鳥 はねられてよしや腰をばぬかすともたゝいて見たきあらうまい尻黒塀 玉札に積る思ひをかきやれど枕のちりをはらふ夜どなき 仝 いひよれど片口にしてをだ巻のいとも乱るゝ心くるしさ酒宴 一物の火はつらや枕の山風の吹日ふかぬ日たらずけむりて花満 此ごろはふみのゆきゝも何もなし恋の奴のつかれはてつゝ跡成 袂から袂へうつす玉草は恋の手ゑの程となりけん孫彦 仙台 一虎の尾を踏こゝちする忍び路は千里ほりなるやうに思ひぬ真似 真似人 名古屋 壁に書く相合傘に名の立て涙の事にあれぬもぞなき 栄 気仙沼 恋に門なしと思ふていひよれば眼にかとたつる人のつれなさ真布 吉田 手を握る事さへならであし曳の山ほどつもる我思ひかな 及野丁 恋人の医の入し顔を見てほれましたともいひゑにより 上田 豊定 我思ふ心の念を通さんとしきりに恋の道を造なり 仝 だん〳〵と恋の深みへ沈とき泪はふいと浮む目のうち 柿崎 通ひ路の道はこのごろふさがれて恋の重荷のおろす日ぞなき 忍れば胸に思ひを埋火のいけるかひなき我命かな味之 真砂 あを〳〵と互にいへど苔清水すみて結ばぬ契りなになり 武蔵野 武さし野をかこはぬ庭にしめ置てふじの高嶺を築山にせん戸田茂睦 裏微加花三 相模高森 一行秋の跡にかへりて咲花ははて霜しらぬむさしの糸春の 裏微加花二 下総をこちらへ分に鳥が鳴集めてふたつぶりの武蔵野 萩 裏徴 桑折 武蔵野はもと芦茯の中なれば江戸になりても声さわがしき 武蔵野の家作り毎に六とりて百船はつる海や広ぐる下蔭 山のなき方には川も住兼て水の逃たるむさし野の原於虫 盗人の住といへれは人の目をかすめて広き武蔵野の原物築 小糸 むさし野や招く尾花のかたよりてなごめば風の果は見えけり 小町 大江戸の町となりても武蔵野はさりゆく末の果しなき哉 顔気には果のなくして薄まで売と思へはせまき武蔵野鳴鳴 目妙加花ニ さはるべき山のなければ月をうむ海のうぶやも見ゆか武蔵野 武蔵野のはてはげづくと白雲に都筑の郡比企つゞきつゝ 目妙 長崎 逃水もにげ草臥てあきれなんあまりに広き武蔵のゝ原 涛麿 小松川 夕風に草の浪たつむさしのに帆かげと見ゆる根なし雲哉 光房 一海のごと草の浪うつむさし野に船の帆ほどに見ゆる富士根正春 大かたは聞も空にてむさし野の果は雲井に都筑の郡 天神山 武蔵野に穂浪をうてる花薄ちるかとばかり見ゆる月影 村居 磯辺 むさし野の月もや学に入りし時くらき郡と名つけたりけん 長麿 武蔵野のうちより立て旅衣はる〴〵来てもやはり武さし野 姫路 からき目を見し堀かねの井にかへて水道水の味き武蔵野 萩 召しへの薄の穂ほど鑓のほに錦をかざるむさしのゝ江戸中住 江戸の秋ゆかりあるとて紫の根をほりみてを尋ぬむさ野孫彦 三浦 武蔵野の広さを申のべんにも口にはゞかる方八百里 豆成 芳野 一むさしのは四里とはいへど渡り千里あるてふ月を入る広さよ芳麿 小田原 逃水のにぐるを追へば出る月につきあたりさうな武蔵野の糸糸頼 朝夕に絶えず白露出し入るゝ薄の袖も広き武蔵野真名井 武蔵野の八百里とは千里より口にあまりて広く聞ゆる比左左志 橋 いにしへと今日との事を橋にして後の世迄におもひ渡らん源兼澄 波那細 小糸 一なかばにて落しと見しが覚てまた心にかゝる夢の浮橋厚人 裏徹 素直なる六手の柳のかたはらに筋違橋は誰がかけたん真芳 恐こみし暑さもさむる夕立にうかみあがりし水の板橋竹光 名古屋 百足かと見ゆる長橋照わたる夕日は瀬田のまなこなり 納豆をたゝくが如く聞ゆなり浜名の橋を渡るあし音曽兼麿 清少が書し頃にはにぬりにて日の光添ふ山菅の橋末松廬 目妙 三国を渡る仏の開帳に二国かけし橋ぞ賑はふ真芳 武士の矢矧の橋の進長く弓を袋に入れし姿そ下蔭 大和新庄 両国はむかしながらの人立の今に絶ざる橋はしら哉富 一ノ関 長柄なる橋は尽るか造るかと穴かけられてこまる里人若枝 仝 水にうつる影と合せて桶の如たがかけ初し住吉の橋 奥海 佐倉尾上 幽霊の出る立山へ行道にくちてもしんの残る丸橋中 あろしや木の枝渡るこゝちしてけはしき山の甲斐の猿橋柿人 魚 待つたる人のなさけもすはやりのわりなく見ゆか心ざしかな頼朝卿 裏徴加花二 一是もまた江戸の花なり隅田川つゝにいけすの鯉を切らせて石網 いときなき年のゑとてゆく川のせにのぼるさまもおはゆくぞ見る 脇野町 玉川に波枕して山吹の花の口吸ふ峯のわか鮎 道好 諏方 一腹を藻にかくせる鮒はふところに見られてすまぬみや有らん 裏徹 新庄 真柴 花くはし芳野の椀の匂ひにてきかねど汁は桜鯛也 天神山 はねかへるいなにはあらで最立川のぼりし鮎を待下り築音丸 立かへる浪にひかれて梓弓矢幹といへる魚もむべなり川常 幾尋としれぬ八百會の海にをるまたのさものゝさより糸より杉盛 少々の違ひなれども淀川の車のもとに通ふのもこひ糸頼 陸奥の蜑は千引のいしもちを地引の調にひくぞをかしき春則 目妙加花二 吉田 こかれ行釣舟にふと飛込し鯉は思案の外にぞ有べき真文 目妙 荒海で取たる鯛は遣ふにもさしみの波やうしほ煮ぞよき 水に住亀の鋏をうちたるは海のかぢかゝ川のかぢかく 一ノ関 三浦 望の上にきこしめすには宇治川の供御の瀬に住水慈こそよけれ 豆成 富津 色品の多き中にもひれありて魚の王とも見る桜鯛 文珠鮫海士がちからに釣兼るもりやなどでも及ばざりけり 大和新庄 へたづみ轍の鮒の水よふは泥に酔たるゑひさりかそも 名古屋 水をよく走る物ゆゑこの魚の名をもふな子といふにやはらん 十露盤の玉嶋川にあらねども置ならべたる岸の鮎龍嶺 大海の広きもしらで池水にきらめく魚ぞはたのせは物亀成 早咲の室の海にて釣ばにや花のいろある初桜鯛真槌 吉田 大口を明て居る社おかしけれ龍の都のすゞき何某真文 真文 脇野町領ニ改 さやの海のこしにひらめく太州いをやがてさし身になるとそしれ 石上澄 瀬をのぼり年〳〵ますの孕魚うみおとす子のはかりしられず好成 川水に浮て見えたる紅葉鮒風の音にもちるぞをしけれ 上田 中嶋 鵜の口をのがれつ網の目をもれつ命ながらの川の請鮎 農人 さしつどひ損毛こはむあらましや百姓口の名にも立らん道遥院殿 裏微 岩城 田を作り畑をつくれる世話しさに髪かたちをばつくらざりけり おとしめな郡のこと葉のだみそにも玉をつらぬることの有てふ鳴音 たがやしにすぐれし民をほめたゝへ村主とこそはすぐり出しけめ春秋 くるしさの小田にしたゝる汗の玉をおほんたからと世にはいふらん馬記 猪を追ひ土をおふにも手間とりて稲刈わざに我も追れつ真長 早苗とる姥もて女も小野づから七小町田に雨やよらん百人 辺又おしなみて見よさくみ田の浪のほのみなの武学によみてみなしを艶良 目妙 仝 取置し秋のかけほの稲もちひ猶もつきには夜やふかすらん 仝 仁熊 畑も田もひじりの道もたがやすはすきこそ物の室なりけれ 磯辺 鋤鍬のほそる程なほ氏の家の竃の煙ふとく立けり 長麿 戸塚 打ものゝ鍬を取ては鬼神の作大将ぞすなほなりける真雲 百姓は鍬一本のたつきにて外の渡世の鋤もなき業真鬼 棟入ししたんの小田を磯の男がたかやさんとてひく水調子 酸府 雁がねの鳴つる声をみのりたる稲をかり〳〵聞ぞたのしき 何やつかたり穂の秋のたはことにみのり過つと由をは愁ふる真顔 稲 田をかるに暑うも寒うもあらなくてうこゝが稲は色になる秋雅章卿 波那細 みつはくむ山田の稲をかる磯のいのちの親と負て戻れり柿人 裏徴加花三 草生の真黒なりしか墨染の袖田豊けき法あ子の稲 桑折 湊田の小舟にはこぶ稲つめば庭に穂波のよする嶋山 金輔 小町 秋もなほ見事に花のさくら田の稲にはわきて風をこそいとへ 琴冨貴 稲刈て心やすしと案くい子さへ伸するやうに高く目立ぬ 真名井改 八平 出来秋の田面は野路のおとゞともいふべき稲の穂さへ鮮黒 名古屋 雪丸 打寄る稲の波間の舟に似し賤が小家も千石の株年長 衰微加花二 世の人をたすくるゆゑかぼさつともこくうざうとも申稲あり 桑折 鳴子引ひとり残して稲の中をしよびつれて行雀かな 福岡 信濃村松 山田守案山子の弓もあたりどしつるかけしやうにたはむ稲の籾 植てより八十かあまりの日をふればわさ田の稲のは木となりけり 仝上田 裏微 苅伏て穂波もたてぬ千町田は稲村が崎の干潟ともみゆ 岩城 豊作を悦ぶ秋はうるしねも餅につくほど取入にけり 前橋 今町 宇食保の神の鳥居を打越てきつね色なる稲をほしかり ノ三喜成 稲妻と契りし事や恥ぬらむ色赤らめて稲のうつ伏 最上 左貫 衣手を露にぬらして苅稲を棹にかけつゝほせる賤の女 幸雄 桑折 風にもまれ頭をふれど倒れぬは取分足の強き餅稲 〃見詰 月と見る案山子の笠は出来秋の稲葉の雲の中にかたふく 高畑 毛並よく揃ひし稲を刈る須児もすごものうへに酒をすごせり 桑折 おん神の御名をとなへて秋の日の稲ほゝ出みのみごとなりけり よく出来て磯が田の面にふす稲はまどろみとこそいふべかりけれ 相川 赤らみし稲は苗からほめられしそのうれしさの穂にや出けむは 仝 榮 水戸 花のひたねやまきけんみのに穂の根に帰りたる桜田の稲 かりてほす稲葉もやより雲と見えて山のかひこそ多く有けれ 小松川 田の中を鴈にこねられ稲刈のかりにくさうにかるもをかしや 光房 姫路 骨折し磯よりさきへおのれまづ寝ころぶやうれ豊平の稲 岡樹 久能 春の田をかへす時にはいかなりしかる顔はまづ真薩なる稲 昼飯もしれてそこら干す稲にひだるき腹をまづふさげかし 富津 美しき名に立ながら化粧田の稲は黒むを出来とこそみれ鳴音 豊年の稲葉のまのきばめるは貢の米の雪もよひなる 葉丸 一ノ関 賤が家は秋の日和のつゞくほど稲ほの雲ぞ軒におほへる奥海 風の神袋もいず落穂をば鳥にむろはする秋ぞ豊けき 与板 鳴子引この出来秋の片手にもあすき仕事におはれどと思ふ 雀さへよりもつかれず出来秋のいねにむらがる人の多さに 村松 鳥おどすひだのをりめも行義よきあしのまろやの稲袴代る 厚房 上田 稲の穂は山吹色に見えにけり井手の山田の名にしゆへばや 音清 鶴ケ岡 かけまくも貢となりて雲の上にあがるめでたきはしご田の稲 同二色 目妙加花一 新酒に作る稲かや苅らぬ先ものむほど置る小田の朝露 左貫 竹ばかり春とれいひそふし立て田毎の稲も花さくものを鳴音 目妙 岩城 世の人の夢のやうにて暮せるはこれやいねよき徳にぞ有ける ○井正春 牧布施 七初穂上てもあまる八束穂は餘りこぼるゝほどの豊秋若駒 式部 案正子よりみのかさまして宿ゝなり穏首延せし子稲の八幡 芳野 藁は縄となりにし稲は世の人の命をつなぐ田の実成けり 紅葉の綾やにしきのおもてよりもみうらのよき出来秋の稲 仝 早稲苅し頃とて暦とり出して日をみる民は日和をもみる 御代田 天地の恩を忘れず袴着て梅是をさげる稲ぞかしこき 秋の山の紅葉もなどか及ぶべき里の籾地の稲の稲の葉には御代住 桑折 七つにはよほどもあしの下る時露はのぼれる梯田のいね眉住 高畑 大たばにたばねて己が田場〳〵にかさねて祝ふ稲の出来秋真名冨 江尻 山吹の色にまされる秋の田は稲のみのりのこがねなりけり梅守 おのが田へおのがしつけし稲なるをかりにゆくとはやさしかりて 八香穂の稲のみのりのよき田から桑山子も風におどり出すか 松代 照月の雪の夜寒にたてまはす屏風のやうにみゆる掛いね 薫 風の神袋もいず落穂をば鳥にむろはする秋ぞ豊けき 与板 鳴子引この出来秋の片手にもあすの仕事におはれじと思ふ 〆読安 霍さへよりもつかれず出来秋のいねにむらがる人の多さに糸 村松 鳥おどすひだのをりめも行義よきあしのまろやの稲袴哉る 厚房 上田 稲の穂は山吹色に見えにけり井手の山田の名にしゆへばや 一音清 鶴ケ岡 かけまくも貢となりて雲の上にあがるめでたきはしご田の稲 同二色 目妙加花一 左貫 新酒に作る稲かや苅らぬ先ものむほど置る小田の朝露 竹ばかり春これいひそふし立て田毎の稲も花さくものを鳴音 目妙 岩城 世の人の夢のやうにて暮せるはこれやいねよき徳にぞ有ける 正春 牧布施 七初穂上てもあまる八束穂は餘りこぼるゝほどの豊秋 式部 案正子よりみのかさまして宿ゝなり穏首延せし子稲の八番休 貴下三十六 芳野 藁は縄となりにし稲は世の人の命をつなぐ田の実成けり 紅葉の綾やにしきのおもてよりもみうらのよき出来秋の稲 仝 早稲苅し頃とて暦とり出して日をみる民は日和をもみる 御代田 天地の恩を忘れず袴着て極是をさげる稲ぞかしこき 仝 秋の山の紅葉もなどか及ぶべき里の籾地の稲の柴には御代住 桑折 七つにはよほどもあしの下る時露はのぼれる柿田のいね 高畑 大たばにたばねて己が田場〳〵にかさねて祝ふ稲の出来秋真名富 江尻 山吹の色にまされる秋の田は稲のみのりのこがねなりけり 水戸 おのが田へおのがしつけし稲なるをかりにゆくとはやさしかりける 月丸 仝 八束穂の稲のみのりのよき田から案山子も風におどり出すか 松代 照月の雪の夜寒にたてまはす屏風のやうにみゆる掛いね 稲舟に責かちかひ五百顆の權干す間なく貢すらしも 仝 豊なる御代は案山子のなき田にもみのかさは有稲の出来秋 野田 豊なる秋にみがいればうつふぎて稲もいねふるやうにみえけり ノ真寿人 祢津 一秋風の鳥羽田の稲をあふぐ也人は扇をわすれたる比 鉾田 一段の詠めなりけり早稲おくて二たんに分る秋の棚田は 秋の日に赤らむ稲を春の日の春日の人もかりにいにけり 越三条 刈かけし鎌の光りは月の形稲葉の雲の戦く中から 有竹 千住 秋の野の千草のにしきこき交て刈穂の稲も菜となりけり 気仙沼空言改 女夫田はゆひも雇はずたはふれてたゝ一たんに稲をかるうな。清通 一ノ関 秋の田の総波の中の露の庵空にしられぬ事の苫に張雄 刈稲の俵となりてめでたけれ実を放埒にもたで納る寿久道 貴下三十七 豊なる年は目出度十分に苦見なく実のる八束穂の稲国利 大船に川添小田のいねつみてゆた〳〵はこぶ故の春けさ 八束穂の寝ころびながら秋の田に袴もあがずいねのよきかな全 与板 世の中もよしや豊に四海浪しづが門田の稲もよろしく 祝 祝 八束穂の種は十束にみのりけりめぐみ熱田のみとしろの稲竹光 米にしもまだ取あげぬ稲の穂に雀はあまたつきにける哉春則 柿崎 箕にいれてみればよし野の花よりも団子にはよき桜田の稲 形丸 太 出来秋にむらがる磯の友千鳥稲のほなみをくゞりつゝ刈る 喜多恵 承露の恵みの恩をうけ持の神へ初穂とさゝぐ早稲いね 天神山 上田 君が代のゆたけきまゝに富草のねたるよりしていねといふかも広丸 田まはりに出たたび長も悦びぬしゝつく稲のきばみ渡れば 畦まくら心よげなる稲の花をゆすり起すれ秋の山風 みのりよき玉のおしねはわら迄もひとの命の綱に成らん本内弓方 菊 菊 耳なしの池のそがひに咲にけり何をか香にきくのしら露後成恩寺殿 裏徴加花三 谷水におよびかゝりて菊折れば齢よりまづ手を延しけり 京 ひせぬといふを我かと花も顔うつす鏡か菊の下水 裏微加花二 きせ綿の雲間をもれば星に似て風にはちらぬ底の白きく柿人 百草のくゝりめに咲故なるか袋きくともなが月の花真若 処女子も愛づらん庭の手鞠柔きてつくやうれ蝶々の袖興次 村上 三千とせになるてふもゝ世草なればぬすみやせまじ山人の種清成 庄内 一霜にだにうつろひやすき菊の花なとせを契ることはあぶなし 裏徴 最上 袋きくひらきて落す白露は入にし人のたまかとぞみる繁留 桑折 山姫の掛香ならむ袋きく尾図の袖も匂ひ出るは広丸 宇津宮 千とせふる露は花となるからにきくといふ名を付て置かん太記 小町 ねんごろに竹とり添て翁草生し立たる媛菊ぞこれ琴富貴 太田原 菊の花せまき所に作りても広く聞えて人ぞ入来る友成 植しより左みぎりにさくむの両袖地に匂ふ白きく園子 京 何すと菊の大きさいふ中へさしむものなる尺とりの虫真悪美 秋風のちれよとふけどうなつかでかふりのみふる菊の国に明方 一北窓にむかふてひらく一りんは動かぬ量とみゆる国きく跡成 十五夜にさしたるゆゑかほほどに窓にあかるき庭のしる菊花守 大坂 おほかたのとし歌ものめ菊の露つもれば人の若くなる水大 名古屋 菊の恋にあまり狂ふて侍れしか蝶の羽袖にまとふきせ綿鬼影 夜も深き黄菊の露の玉る箱あくれば霜をおきな草成 色赤き猩々菊は匂ひさへ酒ほしとのみあやまたれぬる真長 長竹一 菊の香は梅の香に似て梅が香もきくの香に似る花の兄弟行也 柿崎 菊の露吸つゝ花に寝る塩は夢のうちにも千代や経ぬらん 信濃佐久 老ぬれば花の王よりねがはしや菜の童子と若がへりたく 岩城 白粉の色にとかれて若がへる菊は化粧のものに社あれ 暖丸 桑折 目妙加花一 応守は首の長者とほめられて慎まずくれる銭菊の枝 金美都 甲斐若御子 庭もせをせばみ〳〵て咲菊に霜もよげよとおほふ小莚 素顔 下今町 いづれ世に香はしき名の梅の国あに弟のそが菊の花 雀ケ岡 柿丸 目妙 梅は難波さくらは吉野きくはまたもろ〳〵の国のをはりなりけり ヒ二色 貴下三十九 桑折 ふくらみて大きく咲し袋菓中に千とせや入てわらむ御空 一我妹子が口きと見る菊の花など白粉の霜はいとへる金鷹 尊の生るゝ竹を添てより月日望とぞめづる白菊 七夕のほしとぞめづる国菊にかざし取のわたをかけらむ 菜の酒露ほとすふてよろめくは秋の胡蝶の袖おもきさま 江尻 小町 諺の二度童都かや翁草を禿ぎくとて人のめづるは 針村 幾千代かこめしぞ花のほころびて匂ひこぼるゝ袋菓子 花守よ余りほこりて面髭の霜をれあてそ菊やいたん八平 ちよと契りひたきばよろぼ世をふべしいざやくめ〳〵花のおとゝを 姫路 一ノ関 底の葉に客人絶ず盃もひかずつもらば千代は道ぬへし大枝 池の辺に植しときくの一本もいかにふえけん花の多さは 高森一 杜砕 桑折 一秋もはや老てみゆれば庭もせの菊も頭に霜やおくらん高持 方住改 うつろひし野栄は誰もみぬうちにいたづら咲の花の弟は方作 まだのびぬ花きくにはよい花のふり袖垣はかはゆらしさよ銀子 紅にさく菊の名は金の米秋におくるゝ白の後殿 牡丹より富くなからん買金の花をつみてぞみゆる菊園園義人 きせわたの上からみれば薄雲にへだつる星とみゆか国菊 きをいため心いためて手入せん薬ときくの花のしら露早記 みな人の詠にさぞやみのいらん花のおはりの音のひともと保丸 名古屋 まどはして霜とみつねの後も又霜をあざむく庭の国菊 千垣 大和新庄 作さ人もいかにせんかの花と見んかくもきまゝに咲る茶をば 住席 露払ふ袖につきたる菊の香はそこしもぬかず千代を通ぬべ 貴下四十 詩に残す其名も雪か髪と衣の色きくのはな海雄 短冊につくるに菊のはな紙も頭かたほどにさきにける哉花守 七夕の量ともめでゝ・白菊におくるよけの傘かさばやれ千 一染竹もたはむ斗の花さかり雪かとまがふ白きくのはな 一九重の内野に咲る八重菊の上の一重は置る白露 よろこびは此花にますことなくて世のうれしさをきくといふらん 薬てふ菊の中にも皿咲はとり分露をもりてみえけり もの貰ふ法師が庵の袋きく鉢へもうけてたのしまれけり やせかぶを分てもらひしこかね菊とし〳〵ふえて米ゆむいを よりてくめこれそ延命袋菊齢ひをこめし花の下露 水に影うつせどしらぬ口羽草千とせの後もおなし俤真清 村松 みを入れて作れる庭の袋きくいつはいにこそ花は咲けれ厚房 かた〳〵は兄とやいはんおとゝ草二もと咲る曽我きくの図直路 土呂 禿葉ぐらり〳〵とするものをそへ竹をしてねせぬ花守 仁熊 かぎりなきよはひを野べの白菊は千代の堀行枝折なりて真村 市川 こゞむ時杖を添ぬるものなれば翁学とは名付たるべし常道 上総藻原 九重に八重咲みちて匂ふ色これも源氏かしら菊の花 此川の流れをくまん橋むかふ身の花の咲て参れば弓方 手酌女にたとへられねばて女草かゝる盥もねたむ花なし 紅葉 大井川紅葉をわくる筏士は棹に鎗をかけてこそ見れ致親 波那細 露時にあらそひやみし秋山の證しといふは梢なりけり水枝 衰微加花三 旅買の気流れて出る谷川に峯の紅葉のひがうつり ちる紅葉わすれがたみに夕やけの雲だに残せ秋の山風柿人 にぐら山御気をまつと夕栄の紅葉は色に出まし所春秋 中空て風の吹上るもみぢばは雲の取のうらかとぞみる真文 草も木も皆もみぢする時をしもまもりて染るかどのご蓼水枝 柿崎 一山風のふけは飛ぶほどかろき身も秋は紅葉のにしき黒にけり 裏徴加花二 野田 花曇くもりし春の日数ほどてりやつゞん桜もみぢば もらふにもぬしやそれともしれざればかせよとて折るうるしの紅葉花守 三条 小ぐら此時過する頃の紅葉狩きのふは薄き酒もくみけり 薫 駿府 宮人の手折れるき葉かつぎたる青侍も赤うみえけり 紅葉うく龍田の峯は毛氈も水のうへかとあやぶまれけり右網 裏徹 ぬるごとはいへどぬからで紅葉の中にも早く色つきにけり秋穂 秋の色に染るはかたきいはほさへ蔦にまかせて紅葉しにけり近由多賀 全 夕暮はとり分秋の淋しやと火をたきつける宿の紅葉 むら山の梢にかゝるむら時雨染るもやはりむらき葉なり御座 銭する紅葉の中に立まじる尾花はやれし袖も恥ぬぬ也金文 高田 玉川や玉の盃店なしようつるもとぢもいとさう〴〵し 全 綿着てとふ人ありと出むかへば門のもみぢぞ風にちり来る 春丸 相川 国波の堀田の山のもみぢばはひとまどはする物にざりける 田實 紅葉は枯てもさのみあつからじ秋の夕日に笠取の山枝重 手の香をかへる手紅葉おもしろやきのふは黄はみ給ふはくれなゐ八平 立田酢秋をもどるこゝろみにはしを少しは湿てけるかな奥成 松代 真倉 紅葉の色に酔ふ頃鹿聞て泪ながすはなき上戸かも、 紅葉の色をよく見よよき人のよき緋といふてみよし野の山 奥ならん信夫の松のもみぢ葉はたよりもおそく色付にけり 野田 片時雨なれども樹々の紅葉は裏表なく染にける哉松秀 紅葉の色を時雨は駄賃馬鞍馬山よりつけ出しけり 大和新庄 登丸 小男茗のひゆとなけども山の端はもえ出るやうにみゆる紅葉 千住 東作 山守に顕このまれてもみぢ葉の赤き恥をもかきにける哉 気仙沼 浅香山類のはゝその紅葉してあさくもあらぬ色にみなり 山鰕は鼠をたのみ谷の戸へ取入るゝ秋のみねの錦木磯名 まばゆさに幾度袖をかざゝまし花にこえたる志賀の紅葉 もみぢばはそのかへる手を帰る手に一枝折てつとになさばや真芳 一ノ関 露しぐれもらぬしづえは初入の木の心よりいづるもみぢば 大道 仝 ひとさかり黒みかゝりし木々の葉のもえたつやうにみゆる心のは 七.寿久道 竹ケ岡 牛曳てくらがり峠越るなり照らせ生駒の夢の紅葉 紅葉の色深うして谷川の水も青くは流れざりけり 霜に酔ふけもなき笹の強くしてもみぢばははやこう成けり えむ柘榴吹かくる風にいとゞなほもえて北野の杜の紅葉 夕日かげかつぎて戻る酒樽へ横にさしたる紅葉一枚 天神山 さればこそさめぬ出湯の箱根山ぬる手の中にもゆるもみぢば 旧住 全 宇治の茶のほいろともなれ朝日山匂ひよろしき桜もみぢは 寿寿弌弌 小糸 もみぢ葉を忍びて折れば山風が吹落す谷のそこし恨めし ト道雄 上田 入日さす外山のさくら紅葉してまた夕やけの雲とみえけり 佐倉 音たてし時雨も晴て夕日かげひそまり渡る峯の紅葉 かま山の夕日のき葉ちら〳〵としりに火の付秋のを話しさ 立並ぶ木々は薄くて弘徽殿の合せし絵ともみねのもみぢば 日にあてしかた枝は色のよくみゆるうるしぬる手の朱のもみぢば 同妙加花一 暦だになくてもすめば紅葉して日のくるゝをもしらぬ山里 与板 目抄 狩くらし紅葉の下にふしてこそ綿見にきしかひも有らめ 最上 紅葉の中に青ばは麁相なるいそぐ時事や隙もらしけむ 唐錦よと紅葉をさないひそ染し吾日のもとを忘れて 庄内 青漆の色を時雨のとぎ落し朱塗下地とみねの紅葉 紅尻 寒さうにみえつゝ峯の老松は紅葉の火にやあたりそめけん 梅守 吹風にもゆるやみねのき葉は朝な夕なにめにたつた山雪斎 そばたをへて行さきの村き葉ゆるもにしきの長が庭もせ面独 蔦紅葉もゆるかたへに打けふる松は時ゆにぬれそまりけり八平 たることはこれもちなどを取合せ夕山深く紅葉かりゆく読人不知 色に愛てかへさ忘れてしからるとこらのき葉を見てやる千箱 初霜のわざとおけどもおいただけきばみてみゆるこのもみぢ 姫路 うたがひしみどりの林こと〴〵く赤き心をみするもみぢ葉 岡樹 初紅葉我や見ださん深山路をめぐる時手の跡につゞいて 三浦 真友 松代 名に高き紅葉や空にうつりけん世に通天とよぶを思へば木 仙台 山守がむづらをはりて折らせじともゆる紅葉に膽をいるかな 稲荷山杉の木の間の紅葉はさながらみづのともし火ととゆ 全 旅人も時雨をしのぐ笠松に紐ほどさがる蔦のもみぢば 野田 全 永廣 火のもゆる紅葉の枝を折取てもて行にくき山守の庭 仝 児さくら見に来し頃はさもなくてしたしみ深く染る紅葉 冨津 をしめども庭にとまらぬもみぢばをよそのにしきに風のもて行 ぬるでより漆紅葉にまきつきし高もかふれてひとつ色也 全 時雨来てぬる手かへる手蕎作はしのかたより染出しけり松秀 もみぢばのにしきのあたひ何ほどゝふみはうてみる花やしるらむ跡成 おとらじと春のけしきを色に出して秋もひと岡さくらき葉琴 鶏のとさかに似たるもみぢ葉に色は時雨のときやつくらむ花中 貴妃とほし桜の梢紅葉して猶さら黄緋に色ぞまされる愛清 谷の戸を時雨のきてはたゝくにぞ出てみえけり紅葉の色仲芳 手折たるに枝かたげてよろめくは紅葉に酔し人にや有らん一百船 青梅 もみぢ葉の秋の色にもうつろはず契りこのもし末の松山喜代住 山守が愛相に出すものとてはたばこの火よりもゆる紅葉興恒 錦色の蛇とみかどの夢の森まとふは鶯のもみぢなりけり弘器 大和新庄 瀬戸焼の手水鉢をも色どりてちるもみぢばに錦手とみゆ 千住 牛に鞭うつの山賤紅葉見てあがきも遅き蔦の細道 山守もしひて所里にしぶ〳〵も折てくれたる柿の紅葉真芳 一谷公陰のくらき所に美しき紅葉はよるのにしき成けり 仝 もみ出す時雨は枝を空蝉の青葉もぬけてから銭せり 嘴 脇野町 ひとさかり松もにしきを着かざりて我もの顔の尊の紅葉 酒くみて紅葉狩するその中に松のみひとり酔はぬ衣が豊定 与板 秋風のふき細工にてもみぢばも四ト一ほどはひいろにぞなる秋風 貴下四十五 なつくこく出る如紅葉を詠れば風のまきしかゝ庭の何子地 西山に紅葉のにしき織やらむ夕日のあしにあやをとりける真酔 鬼なりと冷酒なりと汲て酔しひはくれなゐに紅葉狩して 仝 祝 山緩の常燈明やあげぬらむよるひるぬらす巻の紅葉 竹ヶ岡ノ 口なしの色なる峯の紅葉はまた錦とはいはれざりけり 柿崎 こくもなし薄くもなしにもみぢばは片〳〵よらず色付にけり 哥保留 秋山に徳利たづさへてぷら〳〵とふることながら紅葉焚ばや 水を火にとりなすさまやふり過る時雨の跡にもゆる紅葉 介 諏訪 三恒 山伏の法螺ふく顔ぞ赤うなる大峯入の紅葉うつりて 世の人のしらぬあたりを見せたいとこく〳〵おもふ杣のもみぢば 望月 岩城 酔顔にみゆる紅葉はさめやすき風にふかるゝ心よさかな 紅葉見る人の面ももみぢするあたゝめ酒のしにやある 相川 七夕に橋をかけたるもみぢばにまたもや時雨渡りぬる哉 青くとおほひかゝりし峯の松紅葉の色を引立にけり 秋山の下水男の下もえにもゆるき葉は龍田姫かや音丸 九月尽 いかなれば紅葉にもまだあかなくにあきはてぬとはけふをいふらん順朝臣 波那細棚ノ迺愛 一天の川元に流れて行ふをこゝからみてはとめられぬ哉 波那細 飛鳥川あすの水の関をけふとぢめとおもふ秋ぞをしけれ 裏微加花三 桑折 土の音も又雁の音も鹿の音もみね越て行秋ぞ淋しき下見 をしみこし秋の三月も捨鐘の声の内にや暮て行らん花満 行群のわかれに涙こぼさねどはれ水のたる冬はうるさき於毛門 貴下四十六 をしめどもとまらでいそぎ行秋はあはれてふ事をしれものせり 長月もけふと暮なば飛鳥風あす来る冬に吹つよるべし 裏役加北二 長き夜はあきはてけりといひれがらをしくもなるや暁の鐘銀子 きのふまで鳥を追ふたる鳴子縄けふ行社を引とめよかし 出さらへとあすは旅立かみつぶさ秋をかぎりのこやこゆらん 裏徴 高田 川口にうきて押あふ木の葉舟西の海へと秋は帰るか万籟 長月もつきてゆくらし正直にのびぬは神のお立なりとて万衆 けふのみの秋を送りてたつ其はあすの時雨へふりむかて行千箱 白き秋黒き冬もの行かひに雲まだらなる夕暮の空下落 行秋の別の袖にとりつきの冬の泪や水初ら芋仲住 御祓せぬ此長月のはらひくさかれて霜なる夜のかたろ千賀江 余もはやひと夜めぐりの神につれて爰を出雲の旅に行らし春秋 大和新庄 けふぎりに秋もいぬゐの大き口くるたをしさよ長月のくと冨佐子 福岡 秋もけふひと日となりぬさしもくさ奉行日あしすゑとゞき 与板 けふのみとをしめる秋を行がしにつき出したる入相のかね一米秋風 坂やけふもちて行らんな〳〵に染し紅葉を霧につゝめり二色 自妙加花一 御積川茅の輪くゞりて来し秋のゆくにかたしろ残さぬはなぞ 目妙 十五百六ものをくれ行秋は何所迄も九月仁者と聞へはゝべし 吉野 一神まさまとなりの冬へさたなしと秋方みそかに暮て行らん 馬追がのせ行ふも遠く成ておくるくつわの音もかすか也 くらやみへはいる心に暮行てうしと見し秋今は恋しき三喜戒 さびしさも秋の名龍も木の葉をもおきあつめたるけふの音 貫下四十七 小町 やり所なきさひしさをとなりなる冬へかたみと秋やくれ行 琴冨貴 水戸 春江 時雨んといそげる雲に誘れて心ならずも蚊の行らん 根にかへる小車の花も道つれにけふはひかれて秋の行らん 一ノ音也 姫路 元結の霜をば置て行輝ぞあその朝からかみな月とて 富津 百草の野辺のにしきも紙しまひ綾もわからぬ闇に行ひ 茗は鳴薄はまねく哀さをふり捨て行秋ぞつれなき春満 かけ取の来る日に逃て行秋はいかにさびしき心なるらん月好 群もみや冬に踏込ばかた〳〵の寒や鷺の足をちゞむか愛滝 一貧乏の神の御留守に明るなればたみの九月はけふ事なり 名古屋 行秋の余波に月の出しかとみれば葉越にあからみし柿真歌 けふのみと秋をしたへば慕ふほどとめ所なき泪なりけり仝 与板 明日たゝせ給へる神に先立て跡かたもなく秋はくれ行 やゝ秋もけふぎりとこそなる海沼をしまるゝ袖をしぼる夕暮 からくりの糸引中に渡り鳥お眼にとまれば秋はきえ行 とゞむるもとめんそべなし置霜の紐ふる夜も出て行秋岩守 け秋のにしきもけふのほそ外やせまきひとひにおりつまり 独寐 花うるしぬる人もなき我身かな室ありとても何にかはせん室君 波那細 独寝はくるしきものぞ此鳥のこれを鏡に人も急すな 裏微加花三 わびしさは恥かしとおもふか腰言さへいふばかりにて聞人のなき 上田 狩ぬる閨の枕の山奥は里よりしでふる泪あめ高景 裏微加花二 高畑 海山はみな下しきと成にけりひとりふす間の床の広さ 相川 枕よりあとより責る面影におされてくるし狩集の床 真行 水戸 角住 妹にあふ夢もみぬかな将棋の夜着をかへさん力だになく 裏役 ひとりぬる寝言の夢や破りけんつもる枕の山の山彦 片倉 岩城 せめてははたのめどさらにひとり孫の夢にもあはぬ事ぞくるき 并真酒躬 相州 床の海のをしの相寝もうら出しうら山鳥のひとりぬるみは 小町 思ひやれひとりぬかよの明る間をそれはひさしいものといはず 淋しとてちゞまればなほ胸のうちふさがりて来るひとり寝魔 松代 寝られぬは何ゆゑなるぞ寝がへりにどちらむきても遠慮なきた 明るまでひとりねさしてそれとだにいひおとさふぞ猶くるしけれ 胸の火のけぶるおもひのひとり寝を何とするがの不二のゆ鳥 ひこり寝は淋しく胸のせりるほど次第に床の広く覚ゆる百林 一独ぬる枕の下の氷柱かと見ればかざしの落るなりけり石綱 思ひきやかこつ泪の玉くしげふたつ枕にひとり寝んとは保息 心さへ妹にこられてひとり孫のむなしくなりし身こそうおりき木中 日妙加花二 川となる泪の水にうき草やねつきだにせぬひとりねの床 者城 〽わきかへる胸もつめたき妹ゆゑにひとりぬる身ぞかなしかりける 根津 つら杖をつく〳〵ひとり岡の外の月にぞかこつ如意浄観音 恋病てたゞあぢきなき狩寝はものだにくへず痩ほそるかな花中 気仙沼 来る人のこぬばかりかは枕まではづるゝものかひとり寝の床道住 こがれつゝひとりぬるでのもみぢばの色にもみせでもゆる我物 あし曳の山鳥の尾の古類を枕ことばにひとりかも寝ん道規 いかなればむなしき里のひとり寝をしれがたきの恋は責来る 逢事は潤に床は海となるふとんの嶋のひとり寝ずうき音清 一寝つかれぬ我を根付と思ふかやふとんの上にひとりおきつゝ百人 恋 我女やいとけなき子の思ふこといはでのみこそねをば泣けれ雅有卿 波那細 〽これにまさる重きものなきなき命きへ投だす恋の力つよさよ 針村 玉草のとりのあとだに通はざる人めけはしき我慈の山 相川 よの人にうき名よばるゝ度毎にこたへる胸や恋の山彦 裏徴加花三 背かはとやつれていとゞ急風がふけば飛やうにゆらぐ玉の絵奥成 妹がうけにたつといふ我のかふ恋の奴よ飯にだにつけ春秋 相川 君と家中に結びし厚氷われても水になさじとぞ思ふ 熊病の薬にもならぬ我うき名弘めて歩行人はうらめし 裏微加花二 竹ヶ岡 おのが手におのが心をもみこはす恋は思案のほにざりけり 仙台 真似人 恋痩て影もほそなどたましひはふとく成つゝ人目いとはぬ 裏徹 天神林 思ひ痩今は力も落ぶれて恋の奴の身とはなりけり 仁熊 妹こほる袖の涙は玉あられ日数ふれども音づれもなし 真村 岩城 思ひきや心をちゞに砕きたるちりが枕につもるべしとは 真酒躬 桑折 怠すてふ浮名が立てはしればか心は身にもすはらざりけり 太田原 はゝき草我恋草のうちに生ひて絶ず拂はゞ胸やきけん 腰すゑてあはんといへど今一日まちてやいとはこらへがたさよ 松代 恋しさは山ほどゝいへば山ほどゝこだま通しの返しうれしき 大坂 思はずよ神のをしての道にしもかくまで多き迷ひあらんとは ハ真垣 三条 さればこそ妹が誠は空言の浮世絵に似し姿なりけれ 薫 責下五十 名古屋 ・稻丸 急促し庭の心を沈めあへずかきたてゝやるみぞうきたる 藪 くれまどふ心は恋の乱れ桶いふにいはれぬ人のつらさに ●海雄 太田原 まだ逢はぬうちから人のやかまき口はからすの風束海の杜 景山 いかにぞと妹に問れて我袖はひたとより添ふ夜半ぞ嬉しく 駿府 直古 海山のはなしのあふは急の道みちもかはらず逆ひたりきや 上田一 いひよるも三年越の長はまのさてはかゆかぬ恋の道かな 菱四 第九 目阿加花一 音芳 あふことを人にしらさずいつ迄もかくしもがもと唯願ふなり 根津 あふことも玉に泣しを今さらに人のへんくわの手をきれといふ 水哉 名古屋 身に過し恋の重荷は重けれど思ひそめたるかたはかへじな稲丸 岡と我かく落つきて逢ふ夜半になどてか鞠の立さはぐらん花守 高畑 神ならぬ身に添恋は目のうちのほとけがものを思はするなり 太田原 いなといふ君かかぶりの纓やつとかたぶくやうになりしうれしさ 人の心しりぞき勝に我恋はいよ〳〵さきへすゝみぬる哉 京 仝 仝 子にまよふ親の心の闇路よりやし〳〵くらき恋の道の過 水戸 真恵美 我恋の重荷はうしも背負はまじつけてたまはれ君が了ふ間 松代 民則 くるしやな木草もねるといふ頃を恋の奴のつかはるゝ身は 安筆 冨津 みさほにもまたほしあへぬ濡衣かけられしのは幾度成らん” 人しらず胸は藤買の風呂敷に恋の重荷をつゝむ苦しさ 磯辺 笠間 来る人を戸を繰人がをりあしく見付てうき名立これにう 佐原 恋といへばやきしきものゝほそろしや人の命をとらんとすれば八重垣 三条 ひごと胸にもゆると書し玉章をみづにかへせし妹ぞつれぬ有竹 逢ふたとき嬉しや手をば小ぎられて胸のありたけはなされもせず久良喜 貴下五十一 一蛍の数かさなれどはかなさは思はぬ人をおもひざしなり弘界 嬉しさよ枕払ふて逢夜半は命もちりとをしまざりけり ひよわなる妹にはまくる恋力重き命は投よけれども 与板 逢夜はゝ人めの関をぬけんとて入るより迷ふ恋の山道 袖ひきてふりはらはれば中〳〵に出さぬてさきぞ恋しかべき若村 仝 その人の影はうつらで泪のみますみのかゞみくもりがちなる 柿崎 一一滴の水も洩らさぬ我中のひと夜逢はねば泪こぼるゝ 瀬路 仝 約束の水になる夜は中〳〵に我胸の火のもえまさりけり 我恋の手つまの種の空はてゝつゝむ涙はかくされもせず安筆 桑名 胸の火とともにこがるゝ立出のなかぬをせめてたのみなり 高田 詞のまのほのめかされてまどひありき恋の奴のいねがてにする常磐丸 相川 一枝の紙にかひこの玉章もふえつゝ恋のもつれいとなり 上田 うしとだに思はぬ妹にぼん脳の犬死とまで恋病にけり広丸 了簡のなとはいへど恋すればやはりいの内ぞせつなき大 さま〴〵に思ひをかへてくどけども扨も女はかたきなりけり南暗記 前政のつらき泪にくるゝより君を待夜の御てくやしき柿丸 漁家 哀れにもいまだ乳をのむゑ人の子のかゝのあたりやはなれざるし玄旨法印 裏微加花三 海の底くゞるより猶くるしけれ泉郎の苫屋に雨のもる様は折香 波をかつく海士の力も大きなる家は持かねて小屋手社すめ幸雄 しほひるは日ねもす沖に出て夜なべに網をすくも焚蜜物菓 衰微加花二 一ノ関 くもの囲にかゝる蛍かほしあみのあなたにみゆる蜑のかゞり火 貴下五十二 祢津 裏微 す望のあまた家はあれどもかゝる家外に荒和郎や海専ふきにて 名古屋 水哉 津波こそ恐れもすらめ国波は苦にせぬ蜑が宿の貧しさ 真歌 たぐなはゝ千期百郎ひろらなる海士が庭にもほしありりりて 釣舟のかゞりも消てやう〳〵と谷屋のあかりさして戻りつ木守 魚岸にゆたりとかける魚は得ても米はもといふ丞事に留む豆成 いさり人鯛はつりても朝な夕なあぢだにもなき腹やくふらむ女 三条 松の魚数ひきあがしよろこびは子の日にまさる蜑のつりに 岩城 風つよき夜とて漬りに出ぬ雪のふせ家はやはり船こゝろなれ 渋くれて蜑が軒端にほす網ももみぢの色の秋の夕菜竹光 年寄てあふなき業はすなどりと手繰の返せや錦数をくり みるめかる浦はの海士袋なれば苫もあらめにあみてみえけり 市 裏微加花三 商人はいかで立らん勝折の市にかつけをうらにぞ有ける道興准右 大江戸の市の菜はぢいばゝかむかし〳〵の噺にもなし 夜ぞ寒き龍鳥の市にあす行ばあさて小衾買てきぬべし 上田 仙台 広丸 河内糸を買人価遣りながらかせとはおかし三輪の市路に 南風のかけるもやうの紙ものも相生の市に出る君が代 千住 街 真似人 うへをしたと返すばかりに賑はしく市の立なり辰の市日は あかねさす夕日とともに色きぬをしろになしつゝ帰る帝人 大和新庄 蓮光寺 舟人 糸繭に桑のみやこは売買も口数多き女本人 蓮光寺 裏微 足たらぬひるこをまつる市場へはひとに押れてあゆまで来つ 春秋 所ものをやまと積しもよくうれて十市の十が一も残らず 仙台 真似人 貴下五十三 戸塚 真雲 海の幸潮のさす如より来ると見るまにひける江戸の朝市 小野堂 勝折も今はかつけをうらねばやよく立市と人のいふなり 一ノ関 橘良 むさし野に春詩冬は夏よりもおし分られぬ浅草の市 岩城 大かたは物の相庭も居りにて立さわぎ売市の商人 長人 桑折 来る春と過行年と取かへるさかひの市の軍がしきかな 下見 朝市に麻の布こそ買よけれ朝あきなひとたとへありせば 山鳥の尾ぶさの市女業にかまけてをろの鏡をやみぬ鳴音 上田 目妙加花一 名によらぬ事にこそあれかち郎をしりまの帝女まけて実 小野官 売物に羽ねやはえけん飛鳥のあすかの市の立さかる日は金 金厚 岩城 売買に立草臥し人ありて茶屋も賑はふ膝折の市北玄真酒粉 目抄 佐原 国〳〵の産あつめつめつゝ商人は荷をさばかんと市に立けり杉盛 市人は女がちにて売際も寄麗にまける大間々のきぬ玉呉 おして売事なき御代にあしなくて市を往通ふ人のあやしさ磯名 一朝な〳〵重荷になひてひさきつゝうき世を軽く渡る市人百林 飛鳥のあすかの市女残りたる品は渕瀬と直を替て売小町譲 貝 おなじくはかきをすさしてほしもすべき娘よりは名もたよりあり西行上人 波那細 一青葉の笛吹子等の袂よりこぼれて落る梅の花貝石網 裏徴加花三 手遊びの館よりもへなたりのよくあふものやあはせ薫物磯名 裏微加花二 つゝしみて猥りに口をひらかざる貝は妄語の戒をたもてる 根津 あふむてふ貝のつきにてのむ酒に同しことをもいふがをかしき 名古屋 うちよする衣の浦の砧貝またまきかへす磯のしら波 服野町 貴下五十四 住よしの浜の汐干のさくら貝花をかざりて拾ふ処女子 鳥取 難波女が梅の花貝とるゆびを弁慶鷹にはさまれやせん石網 小糸 拾ひつる枕の貝のかひもなしいそ家は波の音に寝られで 筑前姪ノ浜 雀にて有し暮やしのぶらんなくかひもなき籠の蛤 裏徴 岩城 あだ波のよりてはもどれ花貝のよればまたよるすゞめ烏に 三浦 小條呂木の磯の花貝ふみちらすめさしめがげて立て追へ波 真友 一ノ関 蛤に雀はならはうぐひすもけして成べき梅のごと貝 貝とりて家もさだめぬ蜑がなをなぶりに出しか磯の宿かり千賀江 大和新症 うつせ貝忘れ貝をも見覚の有磯の浜に拾ふ蜑が子 夕波に沈みし日にや染つらんにしてふ貝の赤くみゆるは折香 みつ汐にあらひさらして善儀へ波のうつにぞよさきぬた身 脇野町 久かたき月日貝とて朝夕に涙よりあがる物にぞ有ける道好 並べたる女具に男貝辺ふ時もあれうれしとはいはいはれたり 天神 処女子が袖貝拾ふ遠浅は波も衣もひた〳〵にうつ天神音丸 打むれて竹の浦はに蜑が手のさひづりながらすゞめ貝とる村居 類枕覚し徳は有磯海秋の寝ざめのうさ忘れ貝兼 身も軽くなるみの海に生ればぞ子安てふ名のかひなる 目妙 わたつみの中より出て高山の案内に先へ立るほら貝味之 坂崎 香煙草の雪とみえぬる白波にまかせてあぐりすだれ貝哉岩守 枚布施 こぎ交るうしほの花に桜鯛にしきの湯の春の色貝広丸 仁飯 妹が嶋こかるゝ船の行かひに思ひますほの貝拾ふた 真村 三日市 時しらぬほこのかたちもありはらやかのこまだらの業平蜆 貴下五十五 藻原 秋風がたつの都も吹かして鳥あし貝も紅葉してげり 舟入 桑折 大空にめぐるに同じ月日貝海より出て海にこそ居れ 三浦 蛤の流れもあへず笹漂の竹にとまるは雀なるべし 真友 服野町 海の親のうみなして磯の姥貝に育てさせしか此子安貝 上田 名にしおふ取の浦のきぬた貞波のよる〳〵打にや有らん 音清 貝の名は馬刀とはいへどさわ〳〵と打来る波につれ立て行 水戸 静なる海の底までおだやかに治る御代のたいらげの貝枝重 太田原 いきほひは海を出てまた峯に入その螺貝の聲もすさまし 四方の海あらき波風しづまりてたいらぎといふ貝はくより下蔭 幾とせかすむ飲貝の山をぬけてあとをも泪にするぞをりき物菓 汐のさす時にいたりてとりあぐる子安貝こそめでたかりかれ 住の江の松も汐干に手をのべて拾ふ風情の梅桜貝小道 枝 竹馬を今は杖ともたのむかなをさな遊びを思ひ出つゝ西行上人 裏微加花三 ふりあぐる杖のしもとよ思ひ子に道を教ゆるたすけとはほれ方作 細臓をこきしはむかし古稀過て杖を力にたのむ老が身芳麿 若がへる春のあしたは竹杖を老のかざりにもつがめでたき浅方 老の坂忘れし秋をとりにとはこれや若きに帰るならん石網 上田 一ふしに千代をこめたる杖などゝ頼基あそもうそはつかれし 裏微加花二 岩城 たらちねのいさめの杖も老の坂のぼる今こそ心つきけれ 枝やりにせし秋ながら神となりし後はおのづとゐもつきにけり鳴音 気仙沼 百までにうら枝なれど買人は五十ごろよりつける成らん小道 真直なる杖に曲りし老の腰そりのあひしはをかしかりけり磯名 裏徴 まわりたる力より猶悲しけれ杖のみ有て打人のなきは 三浦 一ノ関 親のうつ杖の刀のつよきをばよろこぶ病ぞ福のものなる大道 ころばざる先の杖をも格によりあとより後者が持ずをかさ百林 老の身の腰のかゞめはつく度にへりてほどよき杖ぞたのもし真長 磯辺 江尾佐丸 やと立てすがれる杖は老人の腰に弓はる弦にかも似る 空蝉のからだもいつか衰へて杖を力につて〳〵つあ 鵜ぬにまづ杖つきて年寄のつら杖つきし分別ぞよき明方 家を出し人もすてずにつく杖は長く此世にあかざとぞみる鳴音 目炒加花一 散しまの道たど〳〵しつら杖もつき草臥ぬちと休まばや 千住 目妙 長門 頭の道永くも世々につきみしとて鴫たつ庵に残る竹杖下山越 うち寄る老の波間につく杖は標洛ともみえやしあらん不時風 馬駕にゆらるゝよりもなに竹の杖にすがれば腰もすはりつ 青梅 庄崎の松見るときや一群に同じやうなる旅人の杖芳文 新庄 ひが身のおのれも首に珠数かけて鳩の杖つて足の豆さに 弓の如腰のまがりし老人のつく杖は弦とみゆるをかしさ真芳 直かれと諫の杖を今は身につく〳〵こしのまがりてぞしに比左志 上田 ひが身のつかれぬ為とつく杖はあかざといへる草をたのほん 片倉 たらちねのやがて齢に退つけばむつく狭に年の坂越 世の業の童荷おろせしひ楽はかへりて長くいき杖ぞつく百人 よわりたるしもとをなげく真心はふしのあいだにこもる杖竹物薬 あしよわき我にかせ杖かしの木のつよくてまたもちからつくがに真顔 落葉 庭の間も見えず散しく木葉沓はかでも誰の人かきて見ん和泉式部 波那細 落葉焚火にあたりゐる山賤が松の木すねも紅葉してげり大枝 うつくしき木の葉ばかりを散らし行風もいろにはふける物かな 裏微加花三 岩城 雪霜にあはぬうちにと風の立てすゝめに散紅葉かも 一ノ関 散紅葉別るゝ枝に声あるは落つくかたをしらせてや行大道 北時雨枝折まげて云ら間より散らす紅葉は冬の稲妻真春 釜音の時雨につれて炉に煙る落葉もいとゞ赤くなりけり鳴音 裏微加花二 紅葉を染し時雨もひぬうちに持行冬の風ぞせはしき春則 陸奥中瀬 一柿の葉の風に散り来てがさつくは濁色になればなりけり 庄内 風にまけて落し木の葉は山川をまつかになりてせきて見えけり 照のよきうるしの紅葉散うきて蒔絵と見ゆる箱の比水 あき品て梢の錦ぬげばまた庭も葉高になるがおかしき稲丸 しがらみをかけても水のもり行は朽し板屋の紅葉なるべし近湖 風の落す紅葉は錦手のかけかと思ふ久米のさら山奥成 裏徴 青梅 一朝まだき小春に霜の花咲は入桐の鐘に散る木の葉かな真 岩城 冬山の淋しき中にから〳〵と笑ふやうなる落葉するとき 大井川藤うく木の葉押わけていそぐてもなく下す筏士柿人 陸奥伏黒 霜の上に紅葉ちる日は京中があやと錦の小路なりけり 桑折 一月をはく峯の紅葉の散てより箒のやうになる梢かな 金美都 高畑 数しれず葉の落る度数しれぬ柿の数までふへて淋しき 真名冨 三浦 一朝白き筏の上にちる紅葉柳箱に置錦とぞ見る豆成 成川 音をのみ時雨ときかせ夏山の蝉のやうにも飛落葉かな音近 桜色に染がひもなき紅葉のはなるゝ枝にとぢめかたくて春秋 名古屋 水上のいろ〳〵の木の葉流れ来てかつらの川も紅葉してげり 針村 蛙手は名のみなりけり風に落て梢に戻る葉ぞなき住 ふり捨て木の葉のよそへ行とてかふくれて居たる枝の梟磯名 小糸 風をはげしと見るは色あせてうるしぬるでのちればなるべし 柿崎 散らぬとて松を憎むか風のもの落葉礫をはら〳〵とうつ井淡成 仝 有馬山有たけ風にはこばせてこや野に小屋をふく木の葉は好成 紅葉を拾はんとすれば常磐山こはかり物と風がもて行石網 鴫よりも木の葉の飛で淋しきは冬立沢の梢なりけり真寿 一影は見ずいとゞ浅香の山の井や哥のはゝその落葉つもりて山越 吹風に散来る峯の木々の葉を下行水のまたろ引ゆく虎住 吹かけて積る紅葉を笠松の我物顔にまた散しけり諸実 目妙加花一 夙に裸になれど男山紅葉のちるは見事なりけり清音 仝 葉良をぬげば楊貴妃桜だにはだか姿の見にくかりけり 真民 水戸 何事を祈るぞ風に声立て宮のあたりを廻る木々の葉 豊 一ノ関 井を埋め筧をせきて水もなく散るぞ紅葉の日照なりける大道 笠間 木の本はから紅に落葉して梢にすき空ぞ見えける織安 佐原 目を覚す花もそへし小春風落葉の期かきのけて見ん ついまつのすみだ川原に乙女子が争ひあふて落葉拾へり百枝 岩城 目妙 かるもかき伏る猪の子をいたはりて落葉取を着する四風綾丸 高畑 まだ冬と思はざりしに降かゝる霜に黄ついて散木の葉かや歌砂丸 貴下五十九 甲斐市川 散て行さまはされがら飛鳥のあすかの山の風の木々の葉 常道 吉野 芳丸 木々の葉をはやあらしこのかんな月霜にしらけてさゆる夜津な 仝 一筆越えて吹ちらし来る山風にこらぬ木の葉も脊負ふ出人 最上 山風に細谷川とあなどりて手でふさくやと見ゆる紅葉 央 仝 葉の散れば淋しがらるゝ時ゆさへさびしと夜にあしはとゞめず繁留 沈なして風に落来る紅葉にあらはれ出る峯の岩かど 風に音のする程あてられていたや紅葉のはは落にけり真倉 夕やみを照らす紅葉の火の消て落れば黒む松のもえさし松麿 諷もわかも楓もわかちなくおなじ木ぶりになりてちり行仝 事ならでふるの御前の木葉替こははゞかりとはくはみやづと千箱 鰈ためしこほれ松葉の針までもまき込落すしら糸の瀧園子 山姫の錦の錦の衣蓋はてゝたちのまゝなる寒けし直寐 小松川 神のお立眼には見えねどちら〳〵と見送るやうに散れる木ら 姫路 黄にもみに落葉衣を重ね〳〵土にきするはおらき物なり 桑折 昨日まで錦に記し紅葉も今朝は落葉の狐いろなり 深山から谷の小川に吹かけて風の渡れるはし紅葉かな見詰 今朝見れば霜の白地にさし入て紅葉を散らす取手の表店中 氷魚の寄る川の中まで散廻て網代にやどる宇治のき葉今 陸奥佐沼 神風の伊勢路を来ればから〳〵と鈴萩の山に落葉ふるほり呑馬 桑折 山は雪里は時手の降まゝにふるひ〳〵やき葉ちるらん金輝 仝 落葉して木々の裸になりぬるはきのどくのみや寒ふ有けん 水戸 小初瀬の口も二つになりぬべし落葉と山のくちと〳〵に民則 貴下六十 水戸 木々の葉の散れば梢はからあきに留主居は月のもるばかり よごれたる上に木の葉をちらさじとをしみて風の持あるくらん 小糸 ほすゝきの白浪さわき風立て千鳥のやうに落葉散飛ぶ 隅田堤見れば落葉にみめぐりの鳥居のあしも深く踏込長房 烈しかれと誰が祈りしぞ初瀬山みねの木のはをちらす木がらし下照 松風の聲のしらべに合せつゝ落る木の葉も一手舞らん松雄 照ると見し峯の木の葉の降出してしぐるゝまゝに梢はれ行明方 散らせども流石をしくや紅葉を落さず風の持行にけり仝 小糸 春の頃慕ひし花の縁なるか裾にからまる庭の木々の葉 直堅 天神山 塒にとすれば羽風に驚きて鳥より先に木の葉飛ちる音丸 梢よりせまきあいだを飛かつてけがすれ木の葉神の広まへ旧住 水仙の袴をかくす木の葉雨をやみもやらではくもはかれず一徳斉 空の海風に流れて藪に木の葉月の御舟のせんまとぞ見る音近 杜の下道過行ば跡追ふて襟を落葉のこそぐりにけり 木々の枝は箒とも哉風の手にはき捨られておつる紅葉枝繁 柳ばちりはけばちらしていたづらな子はしかられぬ風のはゝそ葉真晴 駿府 はきちぎるやうに梢は落葉して箒の形りに見ゆる枝ぶり 一吹立る嵐に逃てこそ〳〵と落葉は霜の下にかくるゝ真 一散てしも燃る紅葉は山がつの烟のしろとなれるなりけり 風を防ぎかねてや木の葉或者梢残らず落て見えぬる 柿崎 着重ねし落葉衣を吹とりて裸山なる風ぞ寒けき 空を飛ぶ雁かと見ればそれならで風にから〳〵落た木々の葉音成 全 瀬路 哥人の心や乗らん大井川ながれて出る紅葉の舟 出雲人と旅立神の道すがらぬさとちらせる風の紅葉 仝 喜多恵 脇野町 かる〴〵と月影乗せて落葉舟はせいよくくだる山川 女 玉札の紙とも見えて深し葉をやがてもてくる風のつかひか豊定 ム から〳〵と風は鳴子の音に似てちり飛ぶ木のは鳥とこそ見れ 誘引れて空に舞行紅葉は風にもしばし色や見すらん 一葉づゝ梢ほつれてきゐの錦の落葉つゞられもせず好成 風の手に伏せつおさへつに倉山顕かるたとも峯の木々の葉 神無月いづくの宮のはやしぞもつれて木の葉も風に立舞ふ糸松 冬枯て淋し梢を嬉しげに落葉は飛んで踊るさまなり虎住 溝川のはゝやなしやと迷はする落葉はやはり狐色なり全 風に乗り風をも乗せて早瀬川帆かけて走る木の葉乗物築 落しもの様はぬ御代に拾ふても恥かしからぬ色の紅葉空寐 まばらなる葉は落ぬれど気は若し霜一度雪の花咲かすとて桂雅 信濃村松 昨日まで照よき挙の紅葉も冬来てけふは雨とこそ降れ 染安 相模磯辺 秋はてゝ冬来にけりなさらばとて誘はれいづる風の紅葉 風に木々の梢も落葉して肌あらはなる羽束師の杜真久 一ノ関 風に散る青は時雨に似せものゝ扨こそ赤き木の葉なりけれ 気仙沼 落葉はく竹の箒も遠目には紅葉の枝と見ゆるなりけり真布司 上総菱田 吹過し風の跡よりちら〳〵と落るにひまを取る落葉な 霜柱たちたるくに落ちりし木の葉は屋根をふきしやうなり小詠 水 永 池のみの水に田鶴のおり居るを鏡のうらと思ひけるかな道済朝臣 渡那細 諏訪ならぬ硯の海は氷てぞなか〳〵みも通はざりける石網 秋の池の水の下にすむ魚はいつも藻中の月夜とや見ん万象 裏微加花三 いつの間に橋は出来けん諏訪の海水のくさび打音もせで芳丸 衰微加花二 高車氷てきしる谷蔭はとかす日かげも延らざりけり 諏訪の湖の水の上はあぶなしと狐だに火をともしつゝ新高行 裏徴 天神林 一素直なる池の心の底しらずうはべに意地をはか氷かな 片倉 昨日見し霧の箱根の湖に浪のかけごの今朝の薄氷川常 太田原 厚くはる水はをしの冬様もほどの透も見えぬ池水 水つき〳〵してからすほど中〳〵痩のめだつ冬川八平 箱の池水のくさびしめたれば逆さにしても水はもらじな柿人 うつは物に順ふ水のすなほさもこりかたまりて冬は勘かず棚持 さくじりに似たる三日月うつれどもむすぶ水はとけがたきかな金鷹 水の面をとづる水は空までもはるか今宵の月も動かぬ関住 太 仙台 冬の夜は盥の水もひになりて手を入れられぬ程の厚さき 寒さうにふるへる物を終夜たが蒟蒻を水らせにけん鳴音 飛鳥川ものふの渕をそな見ればひくちのやうに氷りつくせり明方 諏訪の瀬水のうへを追ふ馬に狐が乗りて行かとぞ思ふ於鬼門 小糸 近道を造りし諏訪の厚氷水に戻りのなどて遅かる 小糸 喜可寿 大和新庄 一氷ゐて立得ぬ鴨の哀れさよ津辺のあしもをるゝ霜夜に富佐子 冨佐子 河はみな氷となりて水無月の氷室守かと見る網代守真春 大井川岸の傀儡が帯に似てむすびてはとく薄水うな石網 貴下六十三 青梅 をざしたる氷のうちをゆかしげにさし覗くやうな冬の夜の月 つめたさは歯にもこたへて此ごろの氷は水の骨とこそしれ 服野町 道好 氷る夜は松にあらしの近づきて志賀の浦浪音遠ざかる 仝 静遣ひしなつみの川に貫来ぬといは間をくゞる水も水なり種成 諏訪の海氷の上を馬のみか木の葉の舟もはしる山風 上田 吉野きめほどに張たる薄氷をこして流るゝうるし川かな 兼務 千位 吹立るみかねが嶽の風こほりきの川水をいてかためけり 東作 目妙ノ加花一 吉野 寒けさのまたも来んかと声立ず水もひとまり氷てぞ居る潟人 山風の吹絵に似たり紙屋川氷にとづる松葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅葉紅 日妙ノ 岩城 千鳥なす水や薄つれて玉川の光りをむすぶ岸の薄氷 とぎ初し釼が池の薄氷はさはればきるゝやうにつめたき 家上 をし鳥の女夫も恥よ昼はわれて夜はちぎりをむすぶ薄氷 志津賀 松代 昼はとき夜るはむすべる氷こそ世のて女子の紐鏡なり 真倉 太田原 破れ衣とぢ重ねふす冬の夜は氷も桶をとづる寒けさ 実盛が髪を洗ひし池水のすみからすみへ氷ゐにけり 勢屋川岸の木の葉も此ごろはすき入れし程見ゆる薄氷園 此ごろの寒さ重なりかさなりて池は一重の氷とぞなる 仙台 薄氷のまだ危しと狐より寒さのわたる諏訪の湖 水戸 動かれぬ氷になるをきらひてや逃るが如くはしるさゞ浪 栄 栗折 ひとへ山いとゞ寒さのます冬に谷行水の氷かさぬる 大坂 谷水もそ朝は氷となりひさごわりなく手にてむそぶ山人真 灘の原結ぶ氷にだん〳〵と寒さも今朝はよりをかけたり早記 売下六十四 佐原 あしも手も延しかねつる寒風に水もちゞみて氷るなるらん 水鳥の七つれ八つれ行なかにくづれてきしを氷流るゝ山守 万歳の鼓の音のするまでは浪も動かず氷る冬川勝良 浪の数今朝姫粘の薄水引のしやする風の紅葉雛子 一世渡りのうきにくらべて今ずしる諏訪の水もあやぶみはなし蔵守 風を厭ひくぼき所に寄合て水のかたまる冬の夜寒さ 京都 諺にはやき壁のたて板にさつ〳〵と氷る冬の夜の水 富津 初ものとめづらしみする手のむらにもとの雫ときゆるゆる薄氷有安 湯さねば池の心に塵もなしとづる氷や水のかくれが弘器 冬夜のかはの上まではりあげし水は水の骨にやあるらん跡成 厚氷はると風の解までは奇縁守の口や開けん愛瀧 とぎ立し釼の池の氷こそ水もたまらず切るゝかと見ゆ 諏訪の海の水の橋は神よりも寒きや先へ渡り初けん中住 駿府 木々のぬぎし紅葉の錦黒かさねて氷の帯をむすぶ川水 國利 吉田 諏訪の海狐わたらぬ先にはや水が氷ときにけるかな 一 石川や蝉の小川も氷ては行水音もぬけがらとなる 仝 雀ノ宮 冬寒み今朝も氷のはるかとてたゝけばかんと答ふ水瓶 哉與安 張つめし桶の水をたゝく夜は筧の水の音はやむなり 小糸 柿崎 世渡りにあやふまるゝはつめたさの人の心と氷なりけり 音成 湧く口も氷のとぢて廻らぬかしらゑさへも絶し瀧津瀬 脇野町 ふたをせし鏡が池の薄氷に蒔絵にうつる松も柳も 諏訪 あやうさのためしにひかん諏訪の海氷の上にいさりする網 長崎長崎 貴下六十五 竹ヶ岡 乙女子が髪ゆふさまの薄氷むすびてはとき結びてはとく道親 京 手水鉢氷くだけば柄杓から五両三両ちらす白かね 真恵美 高砂 和らかな水は氷になる鐘のひゞきもいらでかたく見えけり 出羽新庄 一底しれぬ池の心の氷には魚と水との中もわれなん 荒たへの市引の瀧も此ごろは氷りて染る木の葉うつくし真久 風さえて夕浪な鳥たつ跡に氷ゐかはる野田の玉川 薄氷のはりいだしても流るゝにいとなき水はもぢられもせず同積 さゞ浪を氷の結びとむる夜は月のうさぎの影もはしらず金輔 しれては汲やしぬると氷もてふたして奥の玉川の水清風 水鳥 終夜澳の鈴鴨はふりして渚の宮にきね鼓うつ仲正朝臣 波那細 磯辺 いかなれば沓鴨ならぬをし鳥のはなるゝことはかたしといふらん 川獺がよれば飛のきて独寝もぬし有る池のをしの妻鳥 裏微加花三 名古屋 流し稲くゞりて逃る水鳥は火の中を行心地なるべし 跡に糸引てあるくはさゝがにの蜘の姿の池の水鳥 京 楫の音に驚きて立水鳥の羽ねかられ時くれふるなり” 真恵美 裏微加花二 水戸 水鳥のぬるをゆすりてさゞ浪は枕をせよと起すなからん 栄 杜若夏は昔しになりひらやきつゝなれにし池の水鳥 裏微 水心有る鳥はみな衆にすむ魚に心のありて潜れる 吉野 最上 夜も昼も離れぬをしの毛衣にきぬ〳〵といふ物はあらじれ繁 梓弓矢はぎの川に水鳥の魚をねらふてゐる羽葉せり枝重 暁はさしも一恵合紙や水にみがくをしき釼羽千箱 池の面に氷つきしと見えつるはとけるやうなるをしの女夫孫春則 姫路 恋しらぬさつをの友も弓に矢をつがひ放つはをしとためらふ 黒堀 放れ住きなしのかるの池水にしたなきになくをし鳥の声 桑折 水に浮をしの夫婦を浮草のねたみてあしをからむかと思ふ 金文 三浦 世の中は流れ渡りと水鳥のあがくさまなく眠りつゝ行 豆成 大坂 打浪に乗りて浮寝のをし鳥は恋の山越す夢や見るらん 筑摩江に鍋の色なる黒鴨は浪を重ねてかぶるおかしさ ひらにかすをしのつかぎ羽あぶなしと跡しさりする峯の薄氷真春 水鳥の騒ぐに琴を取出すは翁さびたる浦の松風柿人 あげ庭の形に氷る箱の池に拝ねをかいしく羽白青首雛子 冬の夜の月かん〳〵と門たゝく僧に驚く池の水鳥於鬼門 池の面を妻追ひめぐるをし鳥の息つく時やさゝ浪は立つ春秋 大知新庄 菰枕高瀬の淀の紅葉を釣の床と寝たるをし鴨 冨佐子 めぐり行中によどむはねぬなはのあしにやからむ池のをし鳥 名古屋 夕浅日はつ〳〵とゞく川岸にあしつまだてゝ求食をし鳥真 水鳥は水をはなれて寒さうに日南へ出てふかひをりけり空寐 紅葉の散うく池のをし鳥は火の中水の底と契るか石網 脇野町 日のさして解る水のほころびを水に縫はする略の毛取 波をだに氷の関のゆるきねばこゆる道なく戻る水鳥種成 とも寝するをしも夜風のあら浪に隔つあいだや峯の山鳥千頼 をし鳥の浮むは池の紅葉にてはかへぬ松や鴨の縁毛 長刀と三日月の影と見違へて入乱れたるをしの釼羽清風 薄氷を見てもはのうく北風のすにつきてゐる水鳥はさぞ百人 磯辺 水鳥は氷の床の寒さにてちゞみあがるがあしのみじかき 加茂川や放れぬをしもふたば草水の簾にかゝる姿は 御秡川冬は氷のしら幣きりにきり行をしの紐羽 寒霜を払ひあえねば水鳥の水を潜りて洗ひ落す 隅田川関屋の声の片はづゝすれ違ひてぞ氷食をし鴨 仁熊 赤ふなる程あつしとて水鳥は足を氷のうへにひやすか 目妙加花二 難波江の枯たる芦にあし入れておし合ふやうに見ゆる水鳥 目妙加花一 ねぎごとを神に祈るか沈水にこりをかきつる鈴鴨の音 最上 桑折 をし鳥の水に住るは過世よりぬれあふ事や煮り置けん御空 庄内 龍田川水を潜りてをし鳥は散し紅葉といろぐるひする訓文 をし鳥のあまりたはるゝあたりには居にくしとてや水とくらん折香 目妙 あしにいとは見えねど岸の柵のわくのあたりをまはるをし鳥 岩城 芦の葉はかれてすくとも夜かれなく水ももらさぬ水鳥の床 風に川浪あらく立行どしづみてはゆく真鴨さき鴨素顔 朝日影氷も岸をはなるらにさても離れぬ池のをしる梅守 紅葉のちり込水に染にけん池のかもめのあしの赤きは 桑折 ためし見よ鴨川に住水鳥はくふてもかろき味のそるやと詠草 佐久内山 磯山は皆冬枯て淋しきに別には青ばの鴨見ゆるなり直記 香見 霜枯やいろも香もなき沈水にみとりあぶるゝ岸のあし鴨雪丸 鉄炮の音羽の瀧の水玉に驚くやうなをしの羽たとき 桑折 笠間 をし鳥の見れば釼羽請江にてくされつきしかつがひ放れぬ 仲芳 貴下六十八 仝 天津空うつれた水につがひぬるをしは比翼の鳥と見えけり 友由 御国 水鳥の水から跡のひく原に引かれて長く月はうつりし 川崎 冬の夜の月の蛙のすむ池に沓かた〳〵と見るねれ鴨 天神山 荒波のたつ日は鴨の浮草も屏風が浦につがひてぞをる 大和新庄 ぬぎ捨し沓かとも見め応すてふ二つかさなる池のをしめ 舟人 名古屋 一朝な〳〵水に煙の立ぬるはをしの枕のちりを払ふか 青梅 紅葉を沓かさなるとおもほえてねたみやすらん池のをしる 駿府 恥かしき寝顔を妻に見せじとて詞へ首いれて眠るをしける 全 寒けさに日田部てひとかたへ群れてよるかの池のをしける 真哉 ろ引水あらばとをしの睦あふ中をうらやむ池のうき草 仝 打かける波の切れ弓を縫ふやうにぬけつくゞりつ遊ぶ水高 枯果し汐のあし間に居る鴨はおのれのみこそすばなりけれ豊定 四方で名をあふぐ扇の悪じま巴のやうにまはる水鳥真直 埋火 頃に出てまだおきながら埋火は舟ならなくにこがれこそすれ匡房卿 波那細 一十一埋火にこゝのゝこらが小鍋立はしさし出して我もよりなん水枝 名古屋 つぐ炭のはやく流れてうせぬるは火桶の底のもりやしつらん 裏微加花三 左貫 けだものゝ夜をおこせば耳もとにほえ出す犬の夜行う寒 火のつて氷のやうな炉によれば雪になりたる灰の立けり八平 鐘さゆる夜半に目覚て埋火をまたつき崩す程の空き鳴音 灰口のよくあたるとて埋火の炭も算木におきし手よび物菓 木の葉よりおこりつくばのくぬ木炭このもかのもと積る埋火奥成 裏微如花二 夏の日に風の起るを待しより心のまゝの冬の埋火水枝 吉田 埋火の火鉢の獅とに白眼れて寒さはそばへ寄らぬなるらん 真文 裏徴 埋火は雲間を出る月に似て次第に影のうすき暁 最上 太田原 枝炭を柱に立て風の夜もたもちよきやうにつくる埋火 冨津 終夜かきならす灰の文字形りもあがるもぶりや埋火のもと千代丸 夜飼する暮までも春の雪の欲をつゞれる埋火のもと 夜忌の山裾のあたりの桜炭帰花さくやうな埋火年長 寒さをも忘れて咄す壇火の白きを見れば夜ぞ更にける真広 焚捨しおきのぬくとき老人も塩をかきたてゝ舟をこぎけり百林 針村 麗な程の露立こめてひと間まは白き埋よの花樹守 目妙加花一 小糸六手 ことせは立の申はやき桜炭春をよびつぐ夜半の埋火 大山 終夜寝られぬ侭に友としていぢり起せばおこる埋火 青畳敷て春めく籠火鉢炭入つむなり埋火のもと 冬の夜は長狭の郡みね岡のこまかに残るまきの埋火真守 目妙 岩城 もりの如重き火箸に取まはす鯨ほどなる榾の埋火 信濃祢津 寝る猫は胡蝶と化し夢や見ん鼻もぬくき埋火のもと 水哉 かきをみす灰は桜の花とちりしたに紅葉を埋火のもと千箱 めで度はいける物とて長き夜によはひ久しくたもつ埋火方作 伏黒 寒き夜をしのぐ寝酒の池田より巨燵にいけた夜の火ぞよき 一竹広 佐久 けだ物の炭のうい火のあたりにはおのれが故と猫も敗れす の唯仲 仙台 猶果し奈良幽府もて炉の炭のかすかなる火もおこすなりけりけり 漏留 二浦 寒さをもさらにしらぬは昔にて手のうらかへす埋火のもと 寒さをもさらにしらぬは昔にて手のうらかへす埋火のもと 貴下七十 庄内 冬ながら夏とひとしき暖かやはいも飛出る埋火のもと 我そばを放しともなし埋火は是起か小町か桜炭にて ム 笠間 埋火の色は珊瑚と枝炭を室のごとく老は抱けり土田幸風 甲斐今井 車座におつとりまいて寒さをばあたりによせぬ埋火のもと 月のもる家家の内と思はれずほる〳〵とする夜半の埋火友寉 消残るじやうは雪かも埋火の若草なるか下にもゆるは花守 福岡 おそろしきけだ物炭の埋火を寝られぬ伽におこすおかしさ ○加鳥 埋火の煮かげほど残れるは夏木の炭をいけしならん中住 行燈も消て寝床はうば玉の炭団にさかし附る埋火 脇野町 宵の間の火桶にいけしけもの炭穴うもりとも見ゆる暁 仝 更る夜の寒さに負て鹿く程に灰うちになるねやの埋火言成 寒き夜は火さへ衣を重ねつゝ灰に埋みてかほも出さず末松 燈火の花をさかせに桜炭ほり出し物のねやの埋火 村松 埋火の火や量と見て暖かに春谷鳥のあたりにや来る 磯辺 夜寒さに手をぬくめんと埋火にまづかんざしの足をいれけり 世の塵は払ひもあへず置巨燵寝るをつとめき尤が埋火 高森 後朝恋 きぬ〴〵の近きかたみか寝し床の泪もいまだあたゝかにして正徹書記 波那細 ながめつらへり車の牛のしり恨みし鶏の口はものかは千 上田 あなにくや捨る程ある物をなどいつきりつかぬきぬ〴〵の鐘 兼麿 床の海はなれて出たる袖はまだ露のたるのに日あがるもうし 裏微加花三 きぬ〳〵の閨のながきのあつ食なごめてこしが我もかなしき水枝 振捨て帰りしが今朝ふみ書て妹が心を取にやりけり春秋 裏微加花二 こげ〳〵と別れを急く鳥の音と都絵をこかぬ鐘つきぞき 扇に逢ひてあした面なみなまりたる田舎詞をやだちふな吾背千頼 逢見ての後のあしきは何となく人に見らるゝ心地こそすれ比左志 裏微 別れては朝只程にしをれけり露もまだひぬ袖塩のもと川常 うき事を忘れて来つる妹が家に取かへしにはゆかれざりけり 前のに恨みし鶏のあし跡のみえねばまたもうららみかさねの 哥〳〵の袖より奥のふところは人にはあけてはなされもせず きぬ〴〵は狩場の鳥の立がたみつれなき骨子に退るゝぞき稲丸 明ぬとて別れし跡も落つかぬ心や宙を飛で来ねども真雲 きぬ〴〵に今朝も又逢ふ豆腐売耳はありとも四まめれせそ近湖 嬉しさのあまりな今朝の袂にもこぼるゝ程の君のうつり香百林 長門 遠島に鐘つく富の朝戸出は進退こゝに縮む気ぞする 山越 目妙 〽我妹子に別れて帰るあかつきは見送たやうれ月もうらめし三 三条 帰りつゝまた寝をそれど寝られぬは妹に心をおきて来ればか八平 うつり息を風の心地と今朝はしも歯にきぬきせて浴だにせず 庄内 真牛 きぬ〳〵の袖も裂如別れきて人目つくろふことの葉もなし 公 別れ来てまだ暖なふところにあたゝめてよむとなの玉札 佐原 富の戸を明てかへした跡にまた心のこりや有明の月銀子 村上 帰る時君が手を取とられたる手にも取られぬ床のぬくとさに 繁樹 取あぐる寝ぐたれ髪のいく筋か別れて今朝は思ひ乱るゝ 小町 名古屋 あふにかへて我は死けんいあれこしそなしも魂のなきこゝちする なごやかれ妹がはたにそ添集してそ朝はきぬけのやうになりにし奥成 魂を跡に残せばこちらへも付て来たりし妹が俤睦実 恋 大原へゆくとはなしに恋すればやせ通りぬる物にぞ有ける清輔朝臣 波那細 苦しかる恋のおもむき書得なば地獄の絵にもいやまさるべし水枝 這渡る近き家にて戸もなきになど逢ふことのかたつぶりなる花守 急病てしぬる命もいかしほこなり取もてる君がまに〳〵石網 嬉しきは今宵あふ瀬となる神のおとこの胸もとゞろきにけり真久 裏徴加花三 二ノ袋 独寝に枕のもとは露そくて我恋草はなほしげるらん二本真史 高畑 音信を聞がせめての花うるしぬることかたき中の契りは 真名冨 桑折 つゝしみをしれず山も恋すればあふくま川の深這入しつ下見 恋の山どちらの山が高いなといふて遊びしをさなだちから空寐 誰かたに人は心をはこぶらん我に逢ふこのはづれがちなる石網 打あけていはれぬ恋のくるしさにふさがるむねをたゝきてぞ給る 服野町 胸の火のあかりを我と知りてげり暗き所に文をよみつゝ 諏方 打なげく泪に袖は朽木書絵にもかゝれぬ我思ひかな 上田 ヽ并丸 嬉しさにつもる恨もどこへやらけり違へたる夜半の手枕 裏微加花二 其人の腰の柳が目につきてそれより源そる我手足かな 狸塚 我恋のひと筋道もかひぞなき人の心の行違ひつゝ 高成 裏徴 吉野 恋渡る人は落ずて涙のみ落ると見たる夢のうきはし 浅方 取〳〵にこぼすなみだの多くしてひらふに手間を取戻り足 左貫 幸雄 二本の杉の折ふしとばかりに送りこしこのしほりきんとん 受引かぬ恋の重荷に小づけして肩のはる程書送る文柿人 桑折 恋しさは互にまけじおとらしと泣くらす中に楽しみもあり しのゝめは明るわびしき富の戸をさしも思はで帰る君かな いかなればかくまで迷ふ心ぞと人に問はれぬ恋の色かな中住 盗人を逃したりしと偽りの中より出し誠うれしき 針村 一明の鐘吹越す風はむつものはなしの花を散らしつかな樹守 逢ふてつもる咄の山は崩るれど浅くはならぬ急の渕かな真雲 恋祈る神は貴舟ぞ合す手も誰をもむ程ちから入れべき景山 懐へそと手を入れて人の目を盗む心の出来初めにけり凹 うき恋のせつなき時にすこしの間親を出して留守に立たき諸実 目妙加花一 合性は水とみづかも我袖はかはく間もなや君を思ひて千秋 駿府 脇母子が夜ごとならべる枕うち拍子違ふて逢ぬくるしき真金 恋すてふ名のみよごれて一夜だに身のけがれざることぞくやしき 目妙 我思ふ恋の重荷を持てゆけば妹が身もまた重くなるらん 最上 松代 鳴海 恋のたねおろし初たる苗代にせきいれよとて落る泪か 涙にて腐てとれたる羽折をも人はうはきに袖なしと見ん 仝 仲立に思ひさめよといはるればいとゞにえかへる胸のくるしさ 仝 逢ふ夜はにかはす枕の引出しの口までよせてかたる嬉しさ 見られじとすれば文さへ思ふ侭にかき立られぬ證火のもと いたづらに独身もちとなりにけりさし荷ひてし恋の童荷 一ノ関 袖しぼる程の寝汁は夢の内も休りぬ恋の重荷背連大枝 水戸 替らじと髪まで切し恋中も人に其けは見せぬくるしさ清風 貴下七十四 仝 二つなき一つ枕はひとり寝に胸の烟のたえぬ富士のね春紅 ひぢをまげ枕となして待宵は今に来るかと楽しとも有り長房 恋〳〵て心はちゞに砕どもきみはみぢんもしはざりけり真長 富津 見かはせし目とめが人の目に入りて見つめられたる時のくるしさ千 名古屋 逢ふ夜半はちりを払ひて間もなくかはす枕にあかつきの鐘 青梅 いふは大事いはぬはくやし武蔵證うまき折から妹をえながら いゝ度か筆の海なる藻塩草よせてもかへす浪のあら磯真静 桑名 胸の火とともにこがるゝ言虫のなかぬをせめてたのみなり 大江戸 来て見れはむさしの国の江戸からは北と東の隅田川哉信尋公 渡那 家あまたたてさせんとて神の代に山つくらずや大江戸の地は豆成 天伝ふ日のたてぬきに大江戸のよりとより来る四方の国人水枝 東微加花三 物さはに大江戸の身の身の身の身の身の身の身の身の春則 見ゆつせば東の比叡の山下も雲と集る人の賑はひ 裏徴 岩城 一揆も薄は見えす武蔵野は人の林としげる大江戸 一体も薄は見えす武蔵野は人の林としげる大江戸井真綱躬 武蔵野は江戸になりても見物をするにも月日立てはてなし 大江戸の深き恵みは水道のかゞるめでたき御代にこそしれ 小糸 家落しるす暖簾を見れば国々も軒からのきへつゞく大江戸 日妙加花二 世限りは誠に広し武蔵野へ書売の来る大江戸の秋 高畑 歌沙丸 甘妙 武蔵中のはらをこやせし大江戸は諸国の米の入れ所なり 岩城 正春 桑折 不二筑波袂に入れて人込の邪魔にもならぬ両国の橋 イ御空 生れより人の立との大江戸はおひざえとて居住ひぞよき 仝 仁安文 武蔵野は招く尾花の手もなくてまねかでもよる四方の諸人 村上 百舟も千舟も這入袖が浦実大江戸の広さをぞしる 天神山 大和新庄 老るまで果はつくさで折〳〵は人に所を問ふや大江戸 市中に見る物多き大江戸は雪も溜てはおかぬなりけり 小松川 扇持てまねけるやうに人のより江戸は諸国の要なりけり 入船も飛如はしる江戸の海鉄炮洲より矢の倉の辺真芳 一金銀のちり積りては江戸中に人の山をもなせる武蔵野真文 脇野町 枝さへもならさぬ今の時津風ちることのなき花の大江戸 大江戸は外にたぐひもあらかねの土ひと井が望ひとます真寿 大江戸の手の行届く地の底も透ぬは汲で知れる水道真似相 四里四方有りと聞つる大江戸はあとより〳〵ふゆる家数比左左志 川 藤枝にかゝりとまらば鞠子川かへりあしをものべ足にせん雅章卿 波那細 都にもとり〴〵にこそ沙汰すめれ此都鳥隅田川をば 三浦 豆成 裏微加花三 水上に誰が洗ふらんころも川藍のいろにて流れ来ぬるは 裏微加花二 仙台 真似人 谷川にさわぎし水の淀に来てくたびれつらん声も立ざる 岩城 綾丸 蓮台に乗ればさながら仏にていきた心はせぬ大井川 仙台 水上は帯とやいはん衣川山をめぐりて流れ出れば 服野町 裏徴 岩城 一雪解て嶺低くなる春の日に高く流るゝ富士川の水 同長人 片倉 うるし川渡りてかゆきあしにまでぬるめた物と春や覚ん 川常 仙台 稲舟にいなむ早瀬の最上川もみにもみつゝ水の行らん。 真似人 「 山坂をまはる時雨は淀川の車をもおす水力あり 天神山 貴下七十六 小松川 此水に酒を造らん利根川は銚子の口へ落るとぞきく 光房 針村 真直には行かぬ川にも随ふは流れて清き水心かな 針村 樹守 高田 鮭とては一尺方なき絹川を瀬つきにぬひてのぼる渋鮎 操成 目妙加花一 御薗 糸の如流るゝ水も青めるは山のあゐよりくればなるべし 友足 上田 濁りなき御代の流れは橋の花の永代かけて猶すみだ川 兼丸 千住 かんな川あらしこのかた水ませばかづり屑ともみえてうずまく 街 目切 川の瀬もすき通る程見えぬるは水も痩たるゆゑにぞ有ける 仁熊 真村 岩城 二本にすき行水の古川を我もひともと立とまり見つ 真酒躬 祢津 実に智恵の愛して心得しより青くぞ見ゆる川波の色 水哉 太田原 木津桂それからわかる流れより枝川といふ名をやほらん 景山 夏の日に照つけられて色黒く流れもほそく八瀬の川水枝重 一文の銭に名高き消川むかしの緒を尋ても見て長房 一深川も冬ぞ名にこそおひにけれ渡れる人の脛の赤きに 詠する硯の水のすみだ川流れて未は海に入るらん花守 大井川いつも雪舞のころ〳〵と心をころかす水ぞするとき四 武士の雷字のやうな岡部にはあさひな川といふもありけり小鍬 千住 行水の深き所はうずまきてひと筋ながる指のはら川東作 雪解て渕のみどりも笹にごりましてなきの竹川の水川 菓子 思ふ事なかてふこのみ願ふことみつのをり櫃これをまゐらす行宗卿 波那細 うまか人のあがりたる世のかぐの沫あは〳〵しとはおぼさざりきや千韻 裏微加花三 美くしく上屋を見せて皮一重人の心に似たる渋柿石網 貴下七十七 裏微加花二 上田 ことの外うまき干菓子の松風はいづれの世より製し初けん 兼兼 裏徴 みどり児の泣をやめけりうつくしき木の夢の色に焦しせんべい 桜麻の生ふの浦なし片枝をなるもならずも先ねうちせん 菓子壺のひちらまがりにひぢまげて茶のたのしみも其うちにあり 小糸 さま〴〵につゝれる菓子も皆もとは渾沌よりぞわかれたりけん 蓮光寺 ころ柿のあまみもしろくふきたるは粉のうへもなき菓子の最上 たぎる湯に時雨の声をあまんずる菓子は松風大の葉吹よせ 目妙加花一 加茂川のみづからおこし松風はみやこにかろき口取の菓子 目妙 仁熊 口にいれて雪ときえぬる水菓子はあつさを凌ぐ物にざりける ○真村 太田原 折菓子の花紅葉にもほしいまゝの喰あらしをば厭ひこそれ 景山 仙台 松風は春にも似たりあるへいの筋も十三本に見えつゝ 真似人 庄内 茶の口に松のみどりの菓子喰へば今一しほの味まさりけり 茶の口に松のみどりの菓子喰へば今一しほの味まさりけり出羽住 をさなきはちひさきをとてことわけて取たか梨のみごとなりけん かぞいろがすかすも甘き松風を琴の稽古に通ふ度毎朝人 村雨に行平鍋の馳走より茶の口取は松風ぞよき 真鶴 口ぬちに翁る氷のうき麩余あたかも似たり玉霰には 天神山 音丸 青梅 ければねだりければねざると子の親や菓子よりあまくおふし立けん 芳文 上田 干菓子てふ名にもよらずてしめるのは砂糖のあまけあればなるべし 兼丸 菓子盆の花や紅葉は歌詠もうたよまぬ人も口に味はふ 仝 音清 茶をいるゝ折にあへとておこし米味はひあはき寄ぞればし 甘口といへば手ぬるきやうなれど目の覚る物は菓子にざりけり 甘口といへば手ぬるきやうなれど目の覚る物は菓子にざり 冨津 味はふて見ればころ〳〵音の有る聲のやうなる松風の菓子 子枝繁 商人 垢づける身をば思はで商人のよき取ぬぎておくられん尺光広卿 裏徴加花三 よきらぬをひさぐ我人身におはぬ負ひめは人におはせざりけり 裏微加花二 詞こそ柳なりけれ十寄盤の玉にぬけめはあらぬ商人真春 桑名 陸奥のけふの細布売人のまけぬは胸のあはぬなるべし 真光 裏徴 相場にもあがりさがりの有ればにや銭を山ほど積両替屋 売物にかざりしふみも歌人の言葉の花の古今万葉 日暮には込合ふ客へ段〳〵とはかりては売る油高人 身の丈にあまる高荷をおひくにたちながら売木綿高人 磯辺 艶かたな都の女商人のこそすさましく忽直をぞいふ 艶かたな都の女商人のこはすさましく忽直をぞいふ長尾佐麿 残らずしてよき衣も黒つよき米もたがやしほふて安き商人石網 数しれぬ木の葉の船に商人も山の如くに唐錦つむ武曲伏種 高人の世渡りくさに一粒のたねは百花のほそもとでかな 出来ぬうち米商ふて後は身をはたする人もそことこそきけ からげたる縄も干菜もほそえ手いつかは時にあふこおもたき 庄内 身におはぬ衣を綿とはりたてゝ言葉の後も飾る商人 室咲の梅を売にも実を入れて口をすくしてひさく商人月好 身に負はぬ能取はきぬ商人もかざること葉に綾はははり天馬 鳥の子をひさぐ紙屋は其脇へまさつけて置ゑ半切有り真芳 一体をも多ひながらいつはりて利を取る人は罪もつくれり 吉野 引張て売は破魔弓利を射には矢よりもとしの市の高人 うれ残る昨日の餅にあき人の今日は酒屋とかへにける哉真顔 雪 波那細 雪きえぬ富士の高嶺は世とゝもに立壇にも煤けさりけり俊頼朝臣 相川 卅一世にふれば清き衣だに市人のあしにきたなくよごれぬる哉 取つきて草木を多くなやませる雪はたゞちに雪女かも水枝 玉敷の庭に降ては雲の上にふたゝびのぼる雪も有けり 松代 折れんかといとへば雪にたわみつゝうらもとなくも見ゆるくれ峠井水嵩 裏微加花三 枝とりて踏こたへたる柳から雪の辷るは襟につめたし田川 美しきうちに見んとて皆人のいぎたなからぬ雪のあかぼの田実 木にも有らず草にも有らぬ花なれや竹の梢に積る白雪幹長 降雪に跡をいとへばとぶといふ車もがもれ乗て見に出ん勝良 相川 此景色ひとりで見るはあたらしと我もなまつ雪の松島 岩城 いろ〳〵の物をかくしてつもれどもきたなき名をばおはぬ白雪 月に雲花に風よりあらしより雪にさはりはわらじなりけり 桑折 秋の夜にさはりし松の枝を折る雪には月の水やなりけん 一ノ関 から風の寒さに雪へ穴あけて隣へ通ふ国ぞ恋しき 大道 雀ヶ岡 ふれ〳〵のこゑもふるひて口にさへたまるやうなる粉雪寒けし 払ふたる逆さ箒に漸〳〵と隣へ戻る雪のくれ竹鳴 しらりのちぎれて落し雪ならん積ればはるゝ今朝の青空 針村 裏微加花二 一台より恐ろしさうに柳にはさはらで置し庭のしら雪 岩城 川岸の竹にすがりて向ふへもわたる風情の雪のあぶなさ 博多 桑折 横さまにはひる時雨の来ねばまた雪がおしこむ山の下庵金文 小松川 豊年のしるしに降れる大雪に結句小鳥は餌に飢やせん 貴下八十 小町 一松がえに雪の烟を立る日は空もすゝけて見ゆる也けり 笠間 庭の面を踏なといへば軒たわむ雪に戸障子のあるかぬもおかし 水戸 松の枝をれて落るをこはがりて下には雪のふりつまぬかや 庄内 松が枝につむはあぶなし〳〵とあせを出さする雪も降成弓方 降雪に海士の苔家は埋もれてかつがぬひまもくゞる国波福宮 裏徴 おしろいに紅をさすかと見え渡る雪の野末の夕晴の空晴の夕晴の夕 ませ塩に積たる上に蜂雪は菊に胡蝶のくるふさまかり繁留 炭売の翁は道のぬかるとて雪の降たる跡をいとへり柿人 野も山も踏まくをしみ居ながらに心を遣りて登る白雪勝良 降積し遠山のはに雲はれてうき月を雪舟かとぞ思ふ高成 鷹人は降来る雪もいとはずにかたのゝみのをかりて行けり仝 昔見し鹿子まだらのそのむかし真白に見てし雪のふじのね大道 こえがたき雪を踏せん越路より今参りしと申をのこに仝 此上に出る眺めはよもあらじ草木も雪の下にうづめば幸 松を折その勢ひに白雪も力瘤ほどかたまりて落つ 大坂 水戸 心なく老木の松に積雪を見かねて風や吹落しけん” 重美 仝 なよ竹のはぢきあげしは白雪を降たらぬ空へ投かへすかや 三浦 しら雪の花は枯野の木にもあらず草にもあらぬ竹に咲いめ 松嶋と見まがふふりや大船もをぶねもつもる雪の黄昏糸頼 大和新庄 竹はねて見なれぬ山も今朝はゆる雪の詠めは目さはりもなし登丸 名古屋 雪に跡つくを厭ふか家やうに早くあゆめる冬の日のあし千垣 芦の葉に降しら雪はそくひにて竹のへら鶯井や動かす桔風 盗人の立田の山に雪積て今朝は大きなあし跡もなし 空の上にみゆきつむるは沓音もつねよりことにしづけからん花守 小糸 降雪をさゝげ連ても女しき姿は見えぬつくま江の松道雄 宵の間は木になる餅と見たりしに庵をつゝめる夜半の白雪百林 上田 むへ雪は綿に見まがふ物なれば降かさなるをつむといふらし 兼麿 仝 一二寸わづかに積る雪になど千尋の竹の桂むなるらん 漸〳〵と草木をねせて花さゞこゑさへ有ず降れる白雪雪雪 雪の道行旅人はきせわたの菊を並べし風情なりけり清風 京 隣から風にちり来て春をまつ木ことに雪の花を咲せり 露よりもことにおもかる雪の中に小萩は春の風や侍らん水枝 佐倉 だん〳〵と雪にたわめるくれ竹を我もちゞみて巨燵にぞか 降つゞく雪の月には葛さへなき出しさうにこまり顔なる糸女 美しき雪にや恥る向風顔かくし行人のおほきは 朝日さす庭の山路に雪消て瀧を作れる岸の立石 相川 月影にまがふ深雪の底になる草へも遠きむさしのゝ原 相模高森 古今にもそのよみ人をしら雪のふるとはたれかみよしのゝ山 桃粹 目妙加花二 下今町 蜂かさねいよ〳〵寒く覚ゆるは雪のみのみのしろ取手の杜 日妙加花一 鞠ほどの雪をまろばし過ぬれば土へつきつゝ動かざもに 水戸 雪の日のうばさの中へ来かゝりて寒さは門をはひりのゑけん 一葉守 小糸 西東薩摩と陸奥の富士かとも見えけり雪の門跡の屋根 心喜可寿 あし跡のつくだに厭ふ雪をぞな人手を入れて捨さするとは 信濃五加 貢 上田 大原女は薪木に雪の花添て都の人に手を打すらし 音清 売下八十二 柿崎 しら雪の袋となりて呉竹の弓はをさまる世ぞ静なる 渋成 目妙 望月 鐘の音も限りの有れば其跡のつかぬも嬉し雪の都戸出 駒音 岩城 長人 山吹の色の空より降雪にみの一つだになきぞわびしき △ 拙斎 紅に染ししぐれの山あくにふりそゝぎたる雪の白衣 一丈も二丈も雪のありといふこし路の沙汰は都めきたり 仝 仝 心なさ雪の柳のふり袖もときめく寒の明りとぞ見る暖丸 降雪に絵嶋の松もいろとりて波に千鳥の模様見せけり道規 初雪を寝て見ぬ人は出歩行て踏ちらすより心なき哉幸雄 灰の如降くる雪を積らせてあくまで見たる庭の松がえ 文よまぬ山家の窓はおのつから埋て雪のくらくなしつる 松がえをたすけて雪を吹落す風は中〳〵慈悲深きかな 松代 豊年のしかしも見えし雪の日にほど賤糠の腮をつるせる。 定雄 仙台佐沼 雪丸め干和が玉に似たればやあしをきらるゝやうれつめたさ 呑馬 桑折 大空の空は黄金の色にして降しく物は銀世界なり 金冨留 仝 風寒み手出しもならぬ雪の日は雲の袖さへ口なしに見ゆ 棚持 仝 綿によく似たる物ゆゑ降雪をつむとは人のいひ治めけん 店守 合 口なしの空の袖から降雪の寒さに風も手を出さぬかや 一伊達彦 野も山も染尽す後は白妙に黒やすくなく織ししま雪 公 やさしくも心有うげにふる空は寒さをいとふ綿ぼうし雪 仝 真心の赤き友とはしられけり雪をわけ来しあしの色にて 仝 要 寒国の雪のうはさを下手にしてあつたら口に風をひかすれ 最上 秋風に騒ぎしものがふる雪に身しろぎもせぬ軒のかれ森 庭の面に散かと見しが木々にまた咲かと見ゆるしら雪の図真綱 降雪を見んと思へば花よりもなか〳〵風はいとふ寒けさ 冬の夜に積れる雪はよくに似てふみらぬ人や道を失ふ 仝 紅葉の火の上に敷雪をまた風がちらして烟とぞなす 仝 仝 仝 文東のふみゝる程は降らずしてたゞ魔塚をかくす初雪 峯の松折てこけ落る白雪を下りにかける兎とぞ見る 日枝の山椒の庵の夕けぶりしの字のやうにみゆる雪の日 踏をさへあたらし物と見る雪をふりにしといふ人もありけり いたゞきに蜂積雪にいつしかと黒木は見えぬ大朶のゝい雪丸 雪の重荷かつぐ汗かと見ゆる也松の下枝をたるゝ雫は幸風 降積る雪にかゞみて白鷺のはしの黒きも目立小山田長丸 水の色を黒き物とはいにしてもかゝる雪の日見極にけん 高低の地形のまゝに積りけり天は正直雪の深さも保丸 草も木も隠るゝ今朝は人もまた夜着をかぶりし雪の朝明 水戸 まだ尺はとらねどやはり木竹にも積りて見ゆるとなのしらず 雪の日は庵の炉に来て寒さうに吹つゝもやす冬の山風 芳野 髪のものぬけし姿や恥ぬらん雪をかぶりて伏せる柳は潟人 降れば消ふれば消ぬる初雪のたまらぬ景色おもしろき成 埋み果し越の伏家は白雪のくらさに置も明りつくらん隅成 大和新庄 立ならぶ深山木は皆花となりて花にもまさる雪の白妙富佐子 名古屋 埋ほど降ては雪見燈籠もふよう峯かと思ひける哉稲丸 仝 降積し雪に夕日の照すへば暖げにも見ゆる物かな かつぎたる雪の重荷に草臥て今朝は起せど起かぬる竹梧風 消ねども兼てぞをしき松がえにつもりし雪もあはやと思へば桂雅 汲かはす酒の座敷の興のみか庭も一ばい積るしら雪明方 伏黒 めづらしと詠る雪の初ものは白き梅見る目薬ばかり 桑折 雪のはる竹の弓こそ豊年の秋のあたりをねらふとはしれ高持 大田原 盗人も見たばかりなり銀世界雪はもて行跡のしるれば 朝寝してあけぬ門より問ふ人に先邪魔をする鳥のほよ竹井 松代 小糸 綿と見てぬくとからねど塩と見る目にはからくもしむる雪風道雄 高山の末よりかけて短山さくなたれたる雪おろし哉外成 こしかけて休もならず白雪のこしたけつもるこしの心道百林 西へ行事を好める老の身も雪仏をば厭ふ鳥けさ けふやむかあすはやむかと山袖のむねをいたむる雪のふる家全 蜂しきる空は口なし色なれば吹雪に物もいはれざりけり真長 相模磯辺 寝過して朝日のさすが恥かしくそろ〳〵起る雪のなよ竹尾佐丸 牧布施 不二の嶺に降つむ雪は跡やさき夢のやうにやつく行らん若駒 上田 蓑笠に積れる雪の重荷をばかるの市路に行て売ばや 音清 下今町 訪ふ人もなきつれ〳〵の茶菓子と霰まじりのはつれ専任三津守 脇野町 柳はねば重しはいふはをしまれて守見の蓑につもるしら雪好成 仝 夜をかさね日に〳〵快る白雪に常盤の松も見えずなり 与板 色かへぬ松さへ千とせふりとてかそ朝の深雪に白かさねせり 京 京 真恵美 積雪に藁家は不二の俤の添ひ行棟に烟のぼりて 雪つもる藁家の棟の烟窓さながら不二の山の人穴 仝 資下八十五 梅桜松さへとなはめづらしく一同に雪の花盛りかな かねの音も露む尾上の梢にははるをうつせる雪の初花真守 人訪はぬむての宿も冬はまた八重にも雪の降つもる也虎住 うき事と面白きことをあがけにしなのぢこゆる雪の様人味之 珍らしと昨日の口に引かへて今朝は戸口もありぬ大雪月好 佐倉 反古とせぬ庭の白雪かきちらし足跡つくる鳥ぞ憎けれ広守 坂志岡 角もなく雪をまろめてうなゐらがうかれ歩行も轉びがち 長崎 積りては風なき日にも白波のかゝにけしきや雪の島〳〵 全 真砂 窓をうつ竹を塒の鳥も嘸雪の夜風にふし経ぬらん福富 ふる雪にみどりを染て左寺は白きはとなる庭の松がえ 降つみて草木の腰も焼けりおいその森の雪の曙の字楼 踏ちらす子等を追ふとてかけ出て我から雪に跡を付けり 時雨たるきのふの山の景色より一段高き今朝の白雪折香 仝 春求 年積る山のかしらのしら雪ははげし空より光りかゞやく 仝 宵よりも降つむ雪にねし竹も出る朝日に起上りけり 古暦にもふり積る雪の山こゆれば春におれ坂の関真似相 静なる雪のあしたはこそ〳〵と宵の噂か軒の事音 三越路は神代の春のくるまでは雪に世界の道もひらけず 氷上雪 取川むすぶ水のけぬがうへにつもる鳥をやとぢかさぬらん俊成卿 衰微加花三 一紙ほどの氷に雪のつぎて降ば乾帳に似たる蚊屋が渕かな琴富貴 名古屋 諏訪の海往来をめて積雪は氷の橋の普請なるらん鬼夥 貴下八十六 長崎 木曽路なる片わり竹のかけ樋水氷て雪の丸木橋かな 積雪を朝日にときて夜はまた氷へむすび添ふる池水 諏方 冨津 薄水をもろき物ともしらせのいつまでこゝに宿かるの池枝繁 辛崎の水の上に覗たる松の下のみ雪間なりけり 仙台 裏微加花二 岩城 痩川の水も氷てすき通る岸にかはほどふれる初雪 河水のめぐるをとづる厚水上には雪の風にうづまく 松代 新庄 みし〳〵と下に氷の音するを押へる雪の何隠すらん 亀遊ぶ峯の氷の岩根をもかくせる雪の六つの花びら天馬 薄氷に抜足をする蓑草のまたせぐゝまる夕暮の雪訓文 磯辺 誰とぢし表が崎の厚氷はり目をかくす雪の白無垢尾佐丸 裏微 降かゝる雪はつよくもあたらねぞわるゝかひゞの入りし薄氷枝重 若神子 氷たる池の鏡にむかひ見れば白粉とふる雪のうはつら 左原 鶴亀の池は水にかたまりて蓬莱山とつもるしら雪八重垣 詠ればとぢし氷にしら雪のわた〆かけし衣川かな明方 甲斐根 衣川綿の如くにつむ雪はとぢし氷の上にぞ有ける 丘守 太田原 木の葉にあまた氷にかゝりゐてつめども雪に出る日ぞなき 降雪をかたつけ見れば染川に麻のはになる薄氷哉小詠 雪ながらうつれる不二を山越にこえ行冬のすは乃瀬水枝 富津 勝間田の池の水のきよかるにかつまた雪の上化粧せり 枝繋 鳰鳥の水の上の雪の中に踏込あとはめづらしきかな春秋 上総麦田 明六つの花の雪散る厚水棒もてつけば鐘の音する美袖 なれども手洗ふ水は猶たえずありとやこゝに雪のふる川比左志 一庭池の薄氷につむ白雪はふまで愛るによき物ぞかし直路 薄氷の上とも知らで積雪を風かろ引て飛のかせけり磯名 風に払ふ雪間に見ゆる氷こそ雲を洩れ出る月と見る こちむきて物いふまでは白鳥も水の背なか打続きふる高持 目妙 寒けし寒けしれける葉重ねの薄氷にふはとふすまをきの出し鴨真久 信濃式部 降雪は氷のうへに水銀と一めんに見る鏡川かな 伏躬 仁熊 諏方の海氷の橋は降雪をもり砂にして人を渡せり 岩城 諏訪の湖氷の上のしら雪を不二のうつれる影かとぞ 仝 諏訪の海は水底のみかなよりうへとも深くつもる白雪 大田原 ちら〳〵と降ちらしたる薄雪は氷の鏡ぬぐふ白粉 箱の池の上は氷の二重ぶたつまみにたらぬと朝の初雪雛子 松代 寒廃するや鏡とはる氷降し小雪を水かねにして 寒簾するや鏡とはる氷降し小雪を水かねにし 桑折 箱の池のふたになりたる氷の上覆のやうにかゝる白雪 金美都 仝 みし〳〵と氷は池のつらあてに雪の下にていふもおかしや 一関住 磨あげし氷の鏡いたはりてくもらぬやうに包む雪綿 仝 猿沢の池のあたりは雪女水の鏡のぞくあやしさ 二ノ袋 川口を閉く氷も雪の下にやがて物いふ春をまつらん 桑折 一向に雪は氷に留られてかへりかぬらんえの水には 水戸 波の花氷るが上につみかけてきせわたと見る雪のぬ川中住 降雪の綿をも入れて衣川あつく氷のとづる寒けさ道連 下総左原 みぞの上の氷の上の雪のうへに植たるやうな飢鷺も見ゆ 太田原 屏風かと見やる谷かるの氷にもうはばりしたる雪の白髪 賣下七十一丁 雪風に手やこゝえけん封じめの紐とけかぬる箱の池水道雄 薄氷のうへにこわ〳〵つむ雪はかたへの芦をたよりにはせん梅景 鉾田 川面に氷とぢては埋もれん気遣ひもなくつもる雪かな 豆人 野田 水の面に皺は氷てのしつれどまた皺よする雪のさゞ波 行業 鳥取 賤が家は氷の柱立添て屋根ふきかくる雪の山風 脇野町 ひとふりの雪は水にさし添の白鞘物になりし二ふり水上澄 与板 一渕の面の薄き氷もあぶなげの見えずひら〳〵飛渡る雪小丸 降し雪を氷の戸さしあけてはるきなしの軽の池の心や奥成 佐倉 薄化粧薄き氷の嫁が田の面も白く目立はつ雪金満 みの毛きて氷のうへにかたし立あしまの池の雪の白鷺 いたづらに消るはをしとはりつめて雪をのせたる池の薄らひ 雀ノ宮 降雪も氷の上に辷りてはつひわらはべに転ばされぬる 興康 柿崎 ちら〳〵と氷の上の化粧雪薄くも落ぬ路詩の湖 綾成 仝 水はりにちらり〳〵としら雪のかさねてあつき薄氷かな 渋成 嶋辺の下は氷とあやぶむか片あしあげて立るしら鷺 板の如はりし氷に辷りてやよこにのみふる風の白雪 小糸 降雪の綿をいく重かかさねたる池の氷はあつく見えけり 歳暮雪 家々に払ひつくすをあやにくに空は煤けて落る雪成正徹書記 波那細 日にまして降り積雪の重みにておしつまりたる年の暮成 桑折 裏微加花三 くれて行年のをはりに降ながら河内のわたに似たかしら雪松秀 名古屋 降れば踏降れば踏けす人あしに雪もせはしき年の暮れ 小町 雪に跡いとはゞ年の内ばなる春のひかへてこずや有らん琴富貴 野田 白雪のかゝるけしきをふりかへり見るなら年もくれて行かじを一 真寿人 追儺のこゑよりも猶雪折の竹の響きに鬼や逃なん於兎門 雀ノ宮 足跡のつくを戦ふて大あしに春へ跨がんつごもりの雪興康 一一一 信濃安原 行年の春の隣の近道もふみ迷ふほど降れる大雪 太田原 押つめて雪の降れるはよごれたる師愛の人の心きよめ歟 景山 仙台 鬼の蓑かりてしつらん取て行歳の姿の姿の見えぬ雪ふり 取替す歳暮小袖の口上も雪にそこ〳〵おちつかぬわた雛子 掛乞の来らぬやうになし給ふ雪の布袋も福の神なり金富留 壁ひとへ隣は雪に逢給て春にはちかき年の暮かな柿人 来る春の儲に雪の槙の戸をけしき斗りやおし明石潟山越 新庄 紅梅の取に添て配らなん柳の紫に庭のしら雪 ニ真真 芳野 きたなしと春や笑はん降鳥をけして今年のとしなこさせそ 潟人 催保姫の春の支度か年の内に夜をこめてつむ雪のわたへ 小野宮 つごもり。の闇の深さを降埋む雪こそ年の行あかりなれ 金厚 行年の世話しき中へ心なく降くる雪や邪魔にされなん 明日なしと思ひし年に雪つみて行先深くなりにけるかな春則 冨津 踏をさへいとひいとはぬ人皆のあしを空やく行年の雪 年の暮降積雪にあし跡をいとふて人も飛歩行かや 目妙 行年を送るしるしか白雪は柳の枝を輪と撓めける 仙台 取引も済でめで度しるしとてしきりにふれる除夜の高い 桑折 月と日のつもればつもる雪なしも目のくれやすき年にぞ有ける 貴下九十 雪もくれ今年も暮て入相のかねをつけても貰ひてのなき 白雪をふむとて風のかたつけてこねかへしたるくれのせはしさ真長 夜をこめて鶏の絵馬をも鬻なり雪降る年の関を越んと山越 鳥取 富し家も貧しき家もうつくしくはるに越路の雪の山里 真静 花と見て慰む枝の白雪をかたみにくれてねや行らん 見渡せど山もかすまぬねのくれになどかちら〳〵雪の降らん 仝 いそがしき年の暮とも時しらぬ冨士の山ほど雪は降けり 戸塚 持まへの冬の日数もたぎりと雪は早けるがごとく降かも 行年の尾にさへ雪は積りけりまた添ふ老のかしらのみかは 越やうであなたに春や泊たらしとしの坂にも雪のつもれば道雄 春の来る道作りする年の坂こゝを越路とつもる白雪直堅 鉾田 降雪に花の俤まづ見えて年の梢に春ぞ待るゝ 舟見 磯辺 尾佐丸 まだ年の明ぬうちから春や来し門の戸たゝく雪の夜あらし 尾佐丸 庄内 一弓方 山隠す雪はうらめし年のくれいづれか春の堺なるらん 野田 けふひと日ふるとしせはし降雪はあたらしき春にかき初にせん 一栗人 下今町 何雪の降行年はくれ六つの花咲春の近くなりけり 天神山 梓弓はるは来てゐる年の矢のあたりは雪のあつちなりけり d舊住 仝 あらむの春を迎ひに行水もあしをとめたる暮の大雪 寿喜竹 来る春を咲かけて待梅がえを今しばらくと雪につゝめり 柿崎 人並に煤を払へばしら雪もちりにまじはるねの香かな 瀬路 一ノ関 地や潜る空をやかける白雪は跡なく年の暮て行しは 満門 気仙沼 竹も木もこゞみながらに暮て行雪にもねのつもる物かな道住 貴下九十一 佐渡相川 行年も空の名残を惜めばやまたふりかへるけふの白雪 上 与板 一片の雪も南鐐八片の一両ると年のふりにき 除夜 鬼をのみやらひやりつと思ふ間に追うしなへる年にも有かれ長流 波那綱 いそがしく年と用とに追れては逃行鬼もうらやまれけり凹 あしたより四十の春ぞと思ふにはけるかたもなくをしきねかな下蔭 ことはりや年を取みている豆のつらにも皺のよりて見習は 裏微加札三 隣まで来て居る春を大声によばりてまけるこしの足れ鳴音 裏微加花二 何もなきと宵をさして諸人の年を取らんといふもあやしな 高畑 むそぢあまり心の駒のいさみつゝのりこえぬあすを待翁かな真名富 一と勢のくゝりめのいと世話しくて今宵は夢も結ばれぬなり八平 目に見えぬ老はやらひて梅まつは目に見えて居るやうれ切言隅成 みそかにぞ年のあれを惜みける隣に春の聞を厭へば糸頼 年の夜は数せ給しさに正月もひとつにぼんとつき出す鐘百人 裏徴 ちりつもる用を払ふてひとゝせのくゝり枕に寝る閑報さよ川常 大田原 暮て行としの明かた車井ははやきし〳〵と立かへる音恵久保 千重の春をいそぎて咲梅のかをりはとほせ年の関守 与板 冬と春行合ふ四つの袂かな都へ渡る夜半の長橋目積 一年を夢の心地にくらし来て今宵うつゝに寝られざりけり春秋 幼き春立そめて夢の間に早くもとしの花となりにき 柿崎 古年と春の境は垣よりも春高やかに鬼やらひせり 天神山 桑折 これにますの悦びありや福はうちふくはうちとてまゆな大こゑ 貴下九十二 目炒加花一 芳野 あすは来んと皆家〳〵に燈火のはなのさきなる春や待らん 目妙 天神林 一とせにかけあふ程に事しがきことしも今宵ばかりなりけり 一とせにかけあふ程に事しがきことしも今宵ばかりなりなり 松代 紫に宴める野辺の下染にせんじつめたる年のくれなゐ 鳴海 新庄 人皆のくるゝを惜む年の夜になやらうとまた聞もいさまし 青梅 寝忘れば来る春や見て笑はなん笑ふてけらん詩あかしゐて 仝 喜代住 行年の名残や今宵早く寝ん夢で送ると思ふ物ゆゑ 仝 青こんとつき出すかねにせかれてはなれたる年もをしと思はず 芳文 大和新庄 明日来べき春は隣の方違ひ一夜へだてのふすまなりけり おしのめて用のみ多くふえ竹のひとよきりとぞなりし年の尾 行年は今めたし春は待遠しとやかう〳〵と鳴除夜の鐘 百敷やもゝのう射る今宵もぞ逃行鬼のはやきあしの矢丘守 越て行隣の春へ近つきになりし毎日やそばねふらん花守 赤いわしあぶる烟の立添てかまど堀ふとしの音うな明方 磯辺 みあかしの丁子頭もあすはまた花咲はるのつぼみかとはつ 尾佐丸 庄内 心よくうたふを聞む家つ鳥かけこふものも最早来ざりし 出羽住 仝 いたづらに過来しものとつら杖をつく〳〵ひとり惜むとしかな 真牛 上田 行年をけらじと門の戸をさせば留主遣ふなと笑ふ掛乞 一高景 服野町 打豆はころけまはれど年月の逆さまに行ためしなきかな” 志都嘉 仝 行年にもふれぬと思ふゆゑひては猶もなごりをしさよ 冨津 逃れる鬼は退ずてくれて行事をとゞめてやらふなの真 新らしく隣の春へうつらんと年越支度する夜せはしも百人 逢增恋 我恋はあゐそめてこそまさりけれ飾磨のかちの色ならねども藤原道経 波那細 千五百五百嫡子があぶらつきたる肌ふれていよゝ心にしみこみにけり水枝 あゐ染ぬきのふはうすき恋衣こんよとまでは思はざりしが石綱 哀微 天神林 夜の物かつぎあふより中〳〵に恋の重荷のいやまさりけり 真水 川崎 恋の海はれぬ泪のしほくもり袖もほしあらずたてるあだ波鳳 鳳管 新庄 思ふ事叶ふ結びの解てよりまたもしんくのふさに逢ねば 逢見ては猶さらつくる髪かたち心の内は取乱せども 目妙加花一 庄内雀ヶ岡 今一夜〳〵とて逢ふて後遣らんと誓ふ命のばせり外成 目妙 信濃平尾 逢てより妹が肌着のこい色に猶こく染る恋も其かかな 六歌 大和新庄 妹と家その中川の薄水もとけて二人の袖しぼるなり 中〳〵にたまに逢ずは胸算の一刻まさる恋はせまじを幹長 玉の緒をかけて逢はずはかくばかりしぬくるしみはせまじきものを糸女 逢ふてまた思ひの増はこれやこの恋の恋の童荷に小附なるらん中住 逢ひ見ては君がかげのみ身に添て朝夕思ひます鏡かなきん子 逢見ての後の心はくらべ馬鞭うつばかり飛ばす我魂 恋 病 おこし火の夜をば灰にかくしつゝ埋れぬ名のこひをこそ思へ馬内侍 波那細 我袖の泪は泣てつぶす眼の雲より落る瀧にこそくれ 君と家中は枯さぬ恋草やいさめに親のしもとふるとも 相川 くち残る泪の袖はこれのみとかたはしをだにしらせてしかな 祢津 急疲し身をこやす貝もとめ木に命をすくふつばくらになら 水哉 三浦 逢ふことに年をこしばのさしさはりあすはと申神や祈らん 浄はりの鏡にふたり向ふとも外へ心の何うつるべき 四 見せばやこと結たる髪をいたづらに独乱ゐて崩さぬもうし 哀微加花三 人の口に戸は立られずかけがねの南蛮までも行浮名かな 高畑 仝 太田原 思ふこと胸のこづみとなりぬるは絶ず急風吹やよせけん 景山 きぬ〳〵を惜みをしまのあまたゝび立かへる波に袖ぬらしけり 桑折 悉病の薬喰して其人のいりこ〳〵と待侘るなり 三浦 命をもやらふとまめにうちつけていふにも逃る人は鬼なれ 恋死ん我身としらで人をしも世になき物と思ひ込つる 脇野町 逢ふ時は天にものぼる嬉しさもあらはれて地に入る思ひかな 恋の種遠山畑にまかねどもとりいるまではひまどりにけり 長崎 人もいゝみ我も隠れて忍ぶ夜は月人男出なとぞ思ふ真砂 相川 逢ふことはかたし釣瓶の古縄や通ひながらにきれんとぞする 夏海 裏微加花二 信濃牧布施 〽林より深きみどりの恋の渕ぬし有る妹を盗むは恐ろし 永江 佐貫 恋こがれ日増に痩てあしえのよろめたまだ転び寝もせぬ 幸雄 仙台 声きくは初尾の鏡姿さへまだみねごしの丞の山鳥 逢はでのみひとりうきめを水暮かるしなぬ命も何にかはせん 高畑 脇野町 酒川身さへ流るときゝながら手をだに取てくれぬ君かな 越後針村 よく〳〵にしめし合せておきたるを誰が取はづしもらす浮君 思はぬを思ふといふは仇人の閨へ入間の詞なりけり千韻 裏徴 君に深く思ひ入身の日にましてやう〳〵みをやりつけにけり真久 仁熊 ひと筋にくるしき恋をすがいとのよりあはぬ間に絶もせんかと 真村 岩城 我胸を恋にこがせばかたへより妻がいよ〳〵やくぞおかしき 真酒躬 貴下九十五 竹ヶ岡 逢ふ夜はに我黒髪の解たるは乱て物を思へとてかや道硯 逢ふことは難波の春の夢なるにうき名を立て騒ぐ麁 物いはずならぬ思ひに泣〳〵てすもゝのやうになれる目のうへ下蔭 袖の海潜りぬけしはうつくしき我たまとりの蜑ぞ迦それ大道 あくがれて心の駒の出つればいやまし茂るむねの恋草幸風 恋衣頼の糸も切れはてゝ今ばいひつで人だるもなし早記 水戸 いひはやす人のことばに乗てこそ浮名は遠くはしり行かれ 思ひきや連理の枝と契る夜の鶏になるべき時刻なりは 書送る恋の重荷をかる〳〵と取あげし文の返しうれしな 逢たびに増れる恋の重荷には別れのあしの上りかねけり 行届ふねやのなさけを君にのみつもる契りの多くとなりつゝ 京 くだきぬる思ひの数をあつむればいつしか恋の山となりけり 真恵美 佐倉 愛敬のこほれし時に我目よりいりてや恋の種はふえけん 美種 仝 待侘つ心いられて門に立矢さきへ人の見ゆるうれしさ 床の海枕のしまに火を焚て身をうろくづのつられはぞの 長崎 仝 永落す泪の瀧のみなもとは妹が雷のふかき谷蔭 後あかしなきつくしつゝ泪さへ出こぬ人を待ぞくるしき 糸女 気仙沼空言改 恋すてふうき名ははやくたちつとておこそといひしかへしはぬ間に 〃清道 忍草しげりあふたる恋の道わけて二人が袖ぞぬれける 相川 真波 しぼりたる袖もほしけり逢ふ夜はの姥しさは身にあまの香久山 全 ) ▲ 仝 日妙加花二 佐倉 海となる床にてんまの舟有らば恋の重荷をわけてつみたや 金満 妹が肌はなれて寒く鼻ひるは恋風ひきしうたゝ孫の夢 一ノ関 貴下九十六 廿四日加花一 桑折 ふたひろか三郎の文を送りしにいつひろごりて立浮名そも ○金鷹 鉾田 物思へば心はこゝにあらずして見ねども見ゆる妹がまぼろし 三弦のいとくらき夜もいとひなく君に添陣を待身くるしき真久 結ぼれし気から病のとこしへにあふて生べき妙薬もがな 約束の喰違ひたるくやしさよ押てもあかぬ妹が閨の戸真似又 思ひよわる心にしかと抱しめて君と寝あせの袖ぬるゝ夢雛子 洗濯に袖のちはみあらはれて夫よりぞ名はよごれたりける稲主 妹にあふたびに心を置わすれ見れども見えず我はなりかき見詰 人の目をしのび返しの竹釘にとげべき恋もあぶなかりけり 両のしさよ心の鏡移り気のなきを辺夜はみがき合けり光房 一ひぬれば我恋力弱くなりて引けども人の心うごかず真通 面疫を見れば歎きのます鏡照ながら降袖のむら事 笠間 つゝむほど猶もしみ込む恋取ひともきはつくやうになりかは早記 大坂 忍ぶれどとにかく恋の責来ればはたのいろ見て浮名防がん” 真垣 佐原 恋のいろは覚て後は真といふまことの心送る玉札 百船 仝 感衣仕立し夜はの短かくてこゝろのたけのたらぬしのゝめ 八重垣 水戸 恋死ぬる我露の身ののちの世は蓮にのせてひとつにもかな 綾羽 耳はゝりといとひし壁の穴ながらみを通はす時はうれしき なまなかにあゐ見る草より物思ひそめぬ昔がましろほ二重 芳野 人しらぬ身をしる事にもみ出つひとりぬる手の下もゆる哉 ○浅方 佐原 恋病のくかしき床に伏中に娘しや君がおこす玉章 百船 しらせじと火にする文のもえ過て人にけぶりをさとられにけり 村上 貴下九十七 名古屋 恋の渕はまりて見れば中〳〵にあふせといふも有ぞうわき 二世までと契りし事のくやしけれいつはりおほき人としらねば 余の人にもれもやせんと引かれたる縫び口もとめし衣手 胸にあまる思ひこぼれて袖の色のありさでそれと人にしられつ 散妙の枕は今宵妹背ゆふたつならべし中よし野川 庄内 かならずといふて来ぬ夜のうたがひははれぬになきて眼をはらかり 八木三成 村松 十日ほど身をしるゆは数ふれど風のたよりはいつかとぞまつ 染安 上田 唐崎の事に名を得し一つ松ひとまつよりぞぬるゝ我袖 廣丸 服野町 恋人はいつ見しまゝの給橋ぞあだに月日を怠渡りぬる 里好 仝 君に謎かけてもとけずある時は落し噺で落さんと思ふ 道好 恋慕ふ君に心はのぼり竹かどに立けり浮名もろとも 与板 筆にさへかきたてられぬ胸の火をとはれし路のくらきあんどう 水茎にこま〴〵かけるはし〴〵をふみりよはせて恋渡事かれ 近湖 慶應に初瀬の通夜から風引て今に枕のあがらざりけり 冨津 ○瀑布 ほれるてふことより出来し恋の山人の落入る穴も有けり 目積 夢にだにせめて見んとて思ひ寝の枕もつらし夜母はづすは 笠間 仲芳 古井戸の神だに今は祈らばや君が心の底のしれねば 岡崎 左解雄 急の海深く入てはあまよりも潜りまはりて妹を尋る 気仙沼 小道 命をもかへんといひて逢ふ夜はに名のをしまるゝ事ぞあや 諏方 長伎 相川 孝の海洞の川も埋にけり逢ふ夜は恋の山を崩して 真行 本 かへされし我玉章のもみくさに泪の露を置添ふるかな 長成 神社 貴下九十八 千歳をもたゝみいれたる箱崎の松に花さく折にあはゞや豊臣秀吉公 裏徴加花三 一よみかたき神代の文字に田舎人名をかきちらす辻やしろ哉水枝 辛残の宮居にたてる松風の聲柱と見れば鳥のなり神人 葛城の神よりましてちまた火見にたき物を祭る石宮 名古屋 宮奴は面白さうに笙鼓はやすさのをの神の御神楽 弘器 表術 神賀の類を棟木にはみ残す土は杵築の社なりけり 天神山 一音丸 佐原 柏手もあらくなうちそ鶯のねぎと定めし桜の御社 八重垣 味酒のさめぬしるしか三輪の神今に赤みの杉に残れる 御社の神楽乙女が羽衣になでゝもつきぬ石のこまいぬ 千住 船大工作るきぶねの神木にたが手備て釘はうちけん 街 諏方 諏訪の色鹿を集る火くしとも見ゆるや森にともす狐大破大未方三恒 日妙 一釣にものなき候のうたてさよ咽は城子の神もうけひかで舟人 天神山 霰降る鹿島の神の御社にはら〳〵豆の青も大嵐 仙台 御社のあふぎ垂木は末広く世の諸人のあふぐなるべし 真似人 人丸か草な手折そ折みねと口くせにいひし神の広前 桑折 一御御 米の種もち天くだり日の本にいなりの神ぞ尊かりける 小松川 百済までをさめし宮はこまにしき戸張にかけてしら木つくりか 祢津 神も嘸恵美こぼすらんことの葉も世にみつ栗の本の薬を ヒ水哉 佐原 大海少彦名や国つちを作りかためし石の宝殿 杉盛 戸塚 花有てとり物にせばよし野山神はよき地をしめ給ふなり ノ真雲 神風や吹りや屋根の御社は天照るめぐみもることぞなし 庄内 正宣に人こそ祈れ杉にだに赤き心は三輪の御社鳴音 黄下一一 下今町 風寒く霜置夜はの御神楽やみまふ袖のおもしろきかな 三津守 与板 元結師これも出雲の大やしろ諸国のかみのよりによります 智垣 吉田 小菜より神や雲らん昨日けふあすはの宮にさす月の影 奉納の鑓や刀もいくとせかさびて尊き神の御社虎住 広前に餅ひなそへてみしめ縄ひくは鼠の社なりけり 世にたぐひ少名名彦君の社ぞとおほくの人や跡で来る也 湊 今こそそいるが如くに梓弓やほかけそへて船も出けれ雅康 哀微加花三 出船のなごりの波のさば〳〵と見送るやうには佐婆の水門 親船も小舟も翅あるやうに帆をあげてたつつるがの湊真似人 表微加花二 網引ける蜑の小舟はみづぐきの岡の湊のちらし書かも於兎門 朝な〳〵かごの湊を出て行沖の小舟は鳥と見えけり松秀 裏徴 天神林 一さし汐にさし心得てまくりあぐる袖の湊の蜑が引網 保鳥 古郷の夢をみなとのかゝり舟波はつれなくゆりきしける 二浦 かもめかと見かすみし帆はしら鳥の鳥羽の湊にやがて入るに 出る舟も入来る舟も有そ海にすれあふ袖のみなと口哉 芳野 笹の葉をちらすが如くよりつどふ舟にぞ竹の湊とはしる八平 楫花とかや見るらん高鼾ひゞきの灘を越すと思はで万象 漕いるゝ袖の湊に夜あらしをふところ手してしのぐ舟ん四 日和山に風かん定めてひと飛と鳥羽の湊を舟出かすれ比左志 小町 夜是は沖津しら波からこしとみなとをさしてかゝる藤船琴 琴冨貴 自妙 牧布施 梓弓ゐなの湊の引汐は矢ごろへざてゝ船かゝるかれ比露九 安原 舟の帆の風にはらみてつきぬれば湊は海も近く見ゆらん 仙台 真似人 船あしもよろめくばかり汐積て何盃かはいる銚子の湊 村上 すゞき釣よさの湊の海士舟に夜さらさら〳〵よする浦波 我いちと鳥羽の湊を走り壁赤まへだれの船の夕べに格風 水にひてゝ磨けばくだく玉ゆらのみなとにかゝる宵月の鐘幹長 天神山 村居 外面よりいくらの舟の入来てもうち広らなる大江戸の水門 長崎 初汐のみつの湊のしめ餘り縄の浦よりひく霞かな 四海波しづめ給ひしおほ君の袖のみなとに這入るな船街 酒 酒 あかさりし酒の中にやいりぬらん酔ての後は魂もなし暁月法師 波那細 猩々の乱を酒のゆるしとは聖もしらぬ教なりけり千賀江 味腐はふるきやしろの事やどりやめてゐるうちすさましきかな水枝 酒はたゞよく飲ことの奈良刀ほどを過せば身もとろけけり石網 裏微加花三 一暖き酒の上こそ氷よりふむあしものあぶなかりけれ真春 酒の池気道水のうへにこそ根もなきことの葉くさ生なれ石網 しれんと酒を過せば酔出てうき事が目に二つ三つ見ゆ真光 味酒をかみのごとくにあつしともうすしともいひて人のすく いましめを破る心の浮屠氏等も酒にあかてふ名を呼上む景山 おのが眼に酒の力や増りけんにうめば山も逃るやうなり 酔ぬればひちりこの如なる酒をひじりとは誰が横なまりん石網 山里の人の呑なる濁り酒すめば都の味もこそせめ真寿 竹の葉といふべき酒をきといふは杉をしるしに立るゆゑかも春秋 一御花二 佐貫 一楽しみて踊るが中に酔過て目の舞ふ人もまじる酒 腹の内をかけめぐる酒のくたびれらつひ寝て仕舞下戸ぞおかしき真長 裏徴 岩城 よしありあしは酔へばこそ有れ雪も難波のみつのつ寺よろしれ 皆人の心を青になす酒の引原よりやかすみそむらん八平 賎の女はおのが蚕の桑酒に酔て目もとも原になりけり景山 姫路 あびる程呑たるゆゑにくせの出てあやまつ料は酒にあびせつ。 剛樹 祢津 汲かはす酒の名に呼竹の葉のなすれをして参なたてそよ 戸塚 いもとせの仲立となる酒をこそよしのゝ川の水につくらめ 一世のうきもしるは酒の徳なれどみだせしことぞふみに多かる石網 一なきはらふはゝ木といへばひたじひにたてかけていざ下戸をいな 甘口やから口ありて酔人に酒が口数いはずなからん興恒 時酒のかずはしらねど盃に今一こんとなるかねのこゑ真寿 むすぼれし人の心を酒をもて杜康とてこそ作り初けめ肌義 味濁を常に神とも仏とも尊くもひてこひのみをれり水枝 此殿のおくの酒やのうはたまりくめる姿に家もこふらし美種 相川 童部にもひけば引かれてうま酒は口つけやすき物にざりける 新酒を乗入る船は殊更に思ひさゝといふ声きほふかり 昼に小波うつ酒に魚はさは鯨の汁のひえぬ出さん 目妙加花二 盃にかひこの様な糸ひくは賤が手業に作る桑酒酢成 目妙 仁熊 紅葉せぬ杉のしるしは植ながら新酒はいろに出つるなりけり 真村 川崎 鬼の面かぶりて伯母をおどせともをぢおそるゝは兎ころしの酒 甲若神子 わくせくとふさがる胸もはれはり酒は心のひらく物ゆゑ素顔 十一百二 天神山 あやにうたたのしさゝ呑舞人は樽の底をも鼓打けり 武蔵玉川 野にいさむ心の駒は吸筒の瓢の酒にあらはるゝなり 一諸人の呑は次第に赤くなる酒にしゆといふこゑ有れどそ金盛 節分の神酒に備へてよかからめ鬼の恐るゝ三州の酒面独 姫路 彼のほからかもする酒に下戸上戸あつやさむやとかはりゆかしさ 祢津 鯉をきる舞を真似つゝ酒のみて遊ぶもけふの胡徳互なれ 一福禄寿かく大津後に新酒はつむりにのぼる物にざりける種成 酒のめば心は空にうき立てあしは定まらぬ物にこそあれ百体 酒のめば心の花もひらくるか顔も桜のいろになりける八重垣 酒のめば手あしも顔もゑうなりて心一つはおもしろきかな全 一積かさねかたちは直に男山見あげるやうにつくりなす酒真友 芳野 義をも忘るといへる酒のまた人を注することのをかしさ芳麿 大和新庄 一呑ば気のひらく能あり去致樽酒には誰も吉つゞみ打富佐子 気を延ばす酒は霞の糸ならん春の心を引出しけり登丸 古への李白が好る瀧水か酒もえよりから口にして梧風 相撲より左りきゝれる盃はさしも手取とくみてこそしれほの子 鬼ころしと呼るゝ酒も上戸にはたゞ一口に吸ほされたり糸榧 酔てなす枕のとがはゆるせかし彭祖が昔したふ菊酒真寿 水酉とかきたる文字を呑ばはやあしまで赤くなるもをかしき肌義 千住 酒のみて吉つゝみうつ紅手あらば我生酔のくせ舞をせん東作 法師等にさす鍋かぎりすゝめばやかへなしとよぶ酒をたゝへて 嶋所へあしは参らし春の空流るゝ露しひを添ふれば鈴成 貴下百三 汲かはしあびるが如く飲酒は是や命のとんたくの水 雀ノ宮 狸塚 荒浪に酔ふてふらつく新酒にてらしの口を出るとてかや公広 祝言 鶴亀の命くらべの勝まけを君こそしらめ万代をへて仲正朝臣 裏微如花三 何ひとつかけたる事のなき世ことて草のかき葉はことめめけん幹長 裏微加花二 盗人もそまぬ御代には鐙鍵も戸にかくいらぬ物とこそなれ 裏役 四海波しづが口にははゞかれどまつたひらなる御代と申ん道規 博多 静かさは波もたゝざる四方の海の表向よりうら安の国 太田原 怠らず貢くもあれば蒙古等はもうこりて来ぬ御代そめで景山 仙台 一目出たしといふことの葉の替らぬは千代万代も常盤なるらし 一ノ関 事祝ふ赤の飯焚竈よりほき〳〵といきの立て賑はふ 岩城 治りし御代は物こと安くして高きは君の恵みなりけり 名古屋 目妙加花一 国民のはら数うつを万代の亀鑑とするぞめでたかりける 高畑 弘器 目妙 君が代は諫の太鼓こけむして民の打べきはらつゞみかな 御薗 小歌沙丸 鋳おくうや霞はゆたかなる此秋津洲の案山子なりけり 桑折 友足 君が代の長きためしの貞にはいともめでたき賤のをだゝこと 御座 大坂 通用のかねの御嶽に不自由なく弥勒の代まで動きぬき御代 真垣 名古屋 口くせに釼は鞘の七文字も請てはなれぬ御代のほぎる 提ふりのいと長き代のめでたさを規矩と定めてたつる家かな 与板 呑芳 君が代は筆のさやかに治りてかくもめでたき初春の状 舘林 そめろぎの御代栄んと東路にこがねの花のふき替て咲 滋美 かぞへたて並べ立たる嬉しさは手の舞あしの諸ところなし 貴下百四終 文政二己巳年撰 七月 八月 九月 十月 十一月 七夕荻蘭蛙蜂疑怨 恋関路郡獣鐘 相撲月月獄雲月前砧隔応 一同慈武蔵野橋魚辰人 稲菊紅葉九月は独寐 恋漁家市貝杖 落葉氷水島埋火後朝応 恋大江戸川菓子商人 雪氷上雪歳暮雪除夜逢増応 恋神社湊酒祝言