東西百首

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森羅亭萬象(二世)選
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森羅亭萬象(二世)選
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トウザイヒャクシュ
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東北大学
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俳諧歌束西百首 未年 二初春海辺霞残雪山路鴬春雨 月里梅寄日恋ヽ月〻社頭寺鐘 三春月水辺柳帰雁野早蕨春曙 月峯花艸庵花寄星恋磯松川舟 四花盛橋落花遅日野雲雀軒葵 月池辺藤寄雨恋ヽ風ヽ垣竹旅行友 五首夏坂卯花時鳥浦時鳥菖蒲 月五月雨水鶏寄野忠洲鶴樹上鳥 六早苗夜鵜河蚊遣川辺蛍夕立 月林蝉寄山恋ヽ川ヽ樵路名所滝 七夕顔船納涼初秋秋艸露七夕 月濱辺荻稲妻寄海恋田家江鷺 八野辺薄初雁山辺月野月原虫声 月園菊寄木恋ヽ艸ヽ山賤漁村 九川紅葉浦霧松上蔦秋夕暮秋 月時雨麓落葉寄関恋湖水市人 十橋霜枯野川水鳥湊千鳥網代 月岸辺水寄鳥恋ヽ魚ヽ山家懐旧 十一冬月閑居霰鷹狩駅路雪舩雪 月夜神樂年暮寄獣恋暁夢年夜 に 俳諧歌東西百首巻之上 初春 撰者森羅亭萬象 屋龍 毛々多良須花二 さほ姫のそなきうけん紫のかすみめにたつ春の山まゆ柳楼亭花成 陸奥盛岡 つほみゐし去年を今年の葉あふ心はときの本と開けり 悠々館名歌記 仝香乎留改 青風の枝をならさでこそ〳〵と去年と隔てし今朝の初空 一森昌亭実乗 全貫記改 今朝春の立て来るとて門ことに松の並木の道造りけり 一とま酒に顔は桜の色みせてことは花咲春はきにけり江立亭雄富 元朝のみきへ清めの火打隠石もひつじとなりにけるかな春秋庵永女 待えたる春の来しとて嬉しさは露の袖につゝみかねたり窓竹庵寿亀 あたらしく春はなりけり物事の古きを人の改めずして壽室諸實 信濃松代 家国の梅も咲ぬと都人東よりきしはるをほめけり蘭芳亭梅丸 毛々豆多布 尾張名古屋 一茜根さす初日の本ゆ異国の べんがら迄も春や行らん 龍迺屋弘器 一鯛に富士をつね見て海山の 置春洞福養 さちある江戸の春けしきかな 初はるにゑまひもみゆる福寿草 陸奥二本松 森路亭安遊民 これからいくら花に富なん もろこしへ春の船出の時ならん 松代 一蘭薫亭義信 今朝は氷も岸をはなれつ 一春たては尤も水やく節小袖蝙窟石綱 ひのうら〳〵となりにける哉 はつ落長くひけとも神代から諸実 春はす分も違はさりけり 毛々多良須花三 雲と泥等しき海に今朝春の 陸奥盛岡 直成改 森集亭繁門 文書はたてし初日の出りな 也 去年といへは遠くてをきし 似寿改 はつ暦 はつ暦一 ひらく折めもつゞらをりなる 森翁亭 万事馬 蓬莱の山とて不尽を唐人の全 さぞ見たからん春の初夢 下総古河 いか計けふは延げん日のあしの 森仰亭難奇免 遅きも遠に行とゝく春 柳さへまたいとけなき春ながら森林亭木守 森林亭木守 露は山を引まとひけり そないはふ屠魚なめ初るをさな事の万々斎真長 まはらぬ舌を酔へりとや見舞 東上 花鳥はまづさし置て嬉しきはさしふたる春の日の日のかしき 一同一十一同一同 陸奥白川 横重の別るゝ脇に影さして露の橋を渡る日のあし 白雀房宿成 出羽庄内 雲の上に四方をあふきていつくしみの息やかたりてのとになる春 閑雅亭外成 陸奥半田 一正賤が草の庵さへへだてなく来にけん今朝の春ぞめでたき豊田舎 豊田舎真富貴 仰向に寝てそ見にける春の夜の枕に高き富士の初夢 芝口屋岳住 二本松 よこにひく霜の衣のなかりせば春の立るを何にしらまし 浅 海 万代をほき〳〵酔の桜色にとそくむ顔や春のはつむ 竹垣内美直 相模藤沢 初春のいきほひありし惜ゑび髭もなつさふなのりそ藻類 運才都代志 粥杖に逃る処女の舞りたる帯をしめよと猶や打らん狭込屋大門 万歳ははるの初音のつゝみにて君か代静御前にて舞松能宿 青馬をみるめよりかる春の海のなみにかぎりはあらめや〳〵 黄鳥亭大道 東上二 毛多良須 下毛朽木 笹色の小町べにさす初日かげ竹の都の春のあけぼの通宝亭為保 松代 桜おもふ新らし椀のざうに餅むかつをだに匂ひそへけり蘭陸亭文簡 すえおきしこぶしの鷹の初夢はあはせて見んと思ふ人なし 若菜橘春の野に出てもろ人の心なつます処女うつてし梅花堂煉方 一立帰る神代の春や初夢の富士も一夜の程に見ゆらむ全 盛岡 はつ日影そ朝臣もむかふ鏡餅千代の春にぞうつるもでたさ 仝 寿万数実 さほ姫の初日産出す玉のはる霧男のひきめするらし 公 一盤手森蔭 石の上ふるき衣は脱るへて遣ふ初春のきそはじめ哉実乗 めせ〳〵と懸相介もて売ら人に春の心やつき初にけん萩翠亭大杖 儘ほ姫の梅に露の糸細に手きはにすなる言のびし まよの浦うつせるふしの高蒔絵はつ日の匂ふ屠蘇の雪遊水桜川丹 天の戸を明て神代のふることにまた新しく帰る春哉松古砂女 二本松 海原やや空やかすみや門松の辺も一場の春とみるらん いく薬のむつ地するとそ酒に蓬莱とよぶ喰つみの山松道亭海近 下総古河 年一夜ぬるまにわきてあたゝかに水のかよひもあらむのゝそ松重館風流住 陸奥川又 一笠を縫業にかはりて難波女に正月させるむめの尊田廬懸 一田廬螽麿 仙台 鶯の初音にまけぬ山からすあを〳〵と春の色にこそのす千押亭唐丸 世話しなき去年はこそ〳〵なくなりて心より立けふの初春花園亭麟馬 此やうに稚き春は今朝年の初よと汲鹿葱のさかづき万事馬 目出たしと猶答るは年礼に出す蓬莱の山彦ぞかし 仝 常陸麻生 つめたしといはで祝ふは春の来てかんもなさゞるとその盃 桃林舎午牛 ふる年をさるう納てあら玉の春の初をいはふとそ酒不尽八嶺 東上三 年の開越て安宅の松の内扇を配る春のかどれ秋雨亭笠人 国栖人の心の色はいはずしもそなふ旅所の熱にこそれ斟酌亭跡人 一土器につく屠蘇さけを上戸なる人の後にはしみたらぬなり 肥後人吉 万亀亭甲良 あらたにぞ春はき初し肩衣の役さへみつの初め也けり 仝 年中此成 あらたまりひししとかくみの雲度かなや門の青柳 芳野山かすみそめけり春は今唐土までも往わたるらん燕粟園千類 天の戸の明かたおもてしろ〳〵と賑はし立る門の獅子舞春雨此女 栃木 肩衣にかすみて都し六条に松はたてずも春はたちけり 全 通用亭 一棚引し空に霞の帯舞けて心のゆるむ春は来にけり用染亭唐草 陸奥桑折 紫の霞の動きかざりて美しき春のたちすかたかな長閑房御座 いとけなき春の妻は山〳〵の情よりや出てたつらん万流亭世冨 下毛佐野上岡 家毎に屠蘇のふくろはきのふけふ来し初春の土産成らん森忽斉官県 加幾加曽布花一 名古屋 一初もかげ産れかゝりし妹山の腰をいだくは露なりけり弘器 松代 乕の住唐土までも行く春のあしたにいはふ千里同風梅丸 ひいふうとかぞへし夢も明て今朝又ひいふうとつく羽様の音妹方 氷をも一時にときて春風の水を汲せるかへ字の南凧偏長 盛岡 髪筋のほども勤りぬ御代なれや桜のはを曳ことき年禮避過為成 仝 蓬莱の海老に譲りて老人も腰をいしたる春のうらゝか実乗 上毛宮崎 はりつめし水もとけてさゞ浪や冬をむかしのし賀の都は 茅草園千本 名古屋 風さゆる子の日のあした御車も解る間はなし野への白辺 弘器 相模頼谷 幾千代もしろしめすらん数取の塵迄かそむ御代の初春 竹園真栖 めでたしと互にいはふことの葉の栄て開くはなの初春千英合松 千契合松友 東上四 越後高田 拾ふたる年をや袖につゝみけん袂ゆたかにみ代の初春華秋庵万韻 かたしな袖のしつけも若白髪苧にをゝ付て祝ふ初春秋長堂物楽 大和新庄 春来れば恵方参の家土産も本侍顔の桜あめなり 薮住虎 むつきふぞあら玉の春の産聲かあふぎ〳〵や扇やと聞散和楼騒実 をさなくも年のあるじと世に広く露の袖ぞ先おほひぬる古沙女 二本松 添へば似るものとはいへど門松の縁にそむる今朝のはつゝ共豊文 古河 気のとぢし尤も若やぐ初春はあきの方より祝ふ寿 ・志真子 下総駒ケ崎 一夜にぞ立帰り来て真等なる春を迎へて心のびけむ灸 ○灸点舎捨瓢 白川 試る筆に初日をかけのなく東より来る春は結構毛品利館雄々 出羽庄内 新玉のを長きはしともろ人の手にむすぶなると都の若水雪避円春樹 いづくにもめでた〳〵と斗にてこと葉すくなき神代てや言外成 仝 是も薬を出るらし雲の上に遣ふ日のはしめ事をとなふと 梅月亭墓 信濃幾年 豊なる家の風さへふく尋草こがね色なるはなのこうな 三五屋月美都 仝小冊山 侭不姫と露男は家〳〵に幼き春をつれて来にけり 一田毎亭穂鳥 仙台 唐丸 新らしく今朝はおろして書初の筆も箒をいとふ元日 仝 初庵ひらきそゆたる花の春見るめに先ぞ露たりけん ル日東子真根人 半田 きし春のいはんかたなき立婆嘸都にも愛給ふらむ 四海浪静な春にゆつたりと碇おろしてねる室ふね巨丸 霞不尽彦 梓弓春長閑なる初ひかげ顔へもまとにあたりこそれ 人吉 はる〴〵と思ひしも今朝春なり山も霞に遠くみえけん 喜多多 同同 全 同高亭土手住 春の来て先めでたしと一礼をしたる姿の門の春柳 仝 一行年の午は未にあふ坂のあと引かはる春かすみかな山川亭水住 東上五 猿曳のさるもめでたし本笠もかをる計に春は来にけり河原直路 藤沢 森節亭里人 とくきて礼者も門に松竹のをとも静に来ぬる朝東風森節亭里へ 色かへぬ松のゑさへ本となり今朝はざう煮に祝はれにけり 仙台 麓近樹 初春の目出度さは汲てしられけり歴蘇に福寿の光る土器 柳鶯亭常笑 半田 行義よき春の来ぬれば上下の詞もとなは折目高なる 真冨貴 三川吉田 火のしにも似たる柄杓に汲上て年の皺をぞ延すと水水桜園元衣 月下亭音高 下毛間々田 むらさきの露の衣たつふりとしたて上てそ春は来にけり月平樓松守 春たつといふ計にてゆつ上りと朝寝もせざる年ぞをさなき万象 海邉霞 伊勢四日市 毛々多良須花二 はひ渡る今朝の霞はさほ姫の笑顔見初て腰やぬかせし森量高柳王 八平政 磯くさき風の花は海面に霞のふたをするにやくらん生花荷照道 海原を手にひける春露浪もおさへて立せさりけん世冨 常陸水戸 海原の浪もうらゝにうつ蝉のもぬけの衣か今朝の霞は 板谷棟成 信濃上田 いわしよる越の海面紫にいやかさなりてたつかすみ哉 豊島惣麿 名古屋 毛々多良須 来る春の道の邪魔ぞと山ほどな浪を霧の引てのけけん 橘五園 四日市 難波かた芦亀につゝまれてけらき事をよしと見にけり糠主 遠くなり近くもなれる嶋山は露の綱や引な行らむ眼道 盛岡 朝霞ながりやおもく荷ふらんしばし休むる海士の汐たと撫下亭春音 露立いくせし船のもれ来るは誠にみるめの多きゆゑ也秋雲合千形 誰ほ明の御殿山辺のこしもとやなまめ露のふり袖がうら暁霞桜井丸 四日市 浪士が家のそだれ越より須磨紫の霞の籬帰てぞ見る三江亭 東上六 毛々多良須花三 引てゆく汐の跡なる遠浅に斟酌亭町人 又も露のうみをなしけり 伊勢四日市 水やそらつゞく千尋の海の底ゆ森盛亭高木 露の原やたぐり出すらん 袖がうら海苔とる船はむらさきの石綱 石綱 霞を積て戻るかと見つ 下毛宇都宮 頓てさく藤のむらさき色みえて 平性為持 かすみ棚ひく二ふさの海 海事饗屋の軒の軒の朝新比左古園 あまぎる衣を干かとぞみる 数恵 海原は舟たな楫の音斗つゝみもらせし八重めかな松友 しはつ山露に船とさほ姫のめしたる見ゆる笠縫の島木守 白浪のよすれば遠くへだゝりてあぶなけもなくみかすみ哉森徳亭山松 吾妻平 一千子堀神の遊びのうちよに露わたれる天のはしは蝶花楼 蝶花楼馬則 陸奥日出山 和田の原今朝は霞て雲迄ものぼるかとおもふ海士の釣舟翠松林丈長 白浪のための衣にかゝりたるしみおと見れば消ぬしまい諸実 明近く見渡国の肥前から日ごとに霞つゝく海原小松善女 二本松 春露いかにつゝめど行船の帆にあらはれて見ゆる海原浅海 立かゝる妻男をしら浪と見てや門守る犬吼かさき物諺 蔽蒔 うらかたや漬の手筋を見渡せばはんだん帰り霞かゝれり 陸奥半田 さほ姫かしたく馬娘か一やうに着たる霞の衣もそろへり金山予麗 東上七 手の届く斗り見えけり須磨の石霰の棚の上にならべて竪川伊志女 石見津和野 一淡路島いく夜宴の立こめて通ふ千鳥の道や絶けん風魔入五味 立浪のかたらや打てすはからん霞の棚のひくき海原萩栄亭方業 天の原裏の原に綴つけて青海原とひとつにぞ見ゆ巴木亭目積 一浪風も立さる沖の泊り舟幾日もかゝるはるかすみかな向饒亭菱聚 沖を行舟の白帆は紫の霞の袖に舞ふ都てふかな森迺屋広長 本願の浦に汐みち来るもわかぬほど芦辺をさして露立けり森彩亭月隆 藤沢 汐干潟かひ拾ふ身は海士に似て露の海の底をくゞれり有安 都にもまさる詠のはゝ磯海のそのうへにたつ春霞かな浅光庵元庵京成 立上る霜の裡ものり鹿髪と根はひとつなるむつましき色金谷園真広 一蜑小舟帰る浪路や迷ふらん沖の窓にかくす家しま詞蜑記 駿河吉原 ねむくなる春の浜辺の夕露おほひかけしは風ぞいとへる 高根常躬 信濃天神林 海のうへに海をなしつた霞原に春は世界にわくかとぞ思ふ 冷斎真水 浦〳〵に塩やくとみる蜑が家のけふりにつゞく春宴りな 河向亭柳枝 下毛間々田 時しらぬ不この心までゆつたりと露こめたる男子のうらゝさ 恵風舎春艸 加幾加曽布花一 岸にある露の衣は打よする浪にぬれぬぞあやしかり 青葉亭松成 海風になびくころは海原にありのしほやくそふりとぞん事春遊亭大成 袖が浦宴のきぬの裾にしも絶せしやうに見ゆるうら船弥平垣真鬼 盛岡 伊勢の海二見が浦にしりくめのなはも新たに春霞哉 金剛舎砂守 全 ひき続く露は四方にみつの浦浪の淡路もみえず也けり 實乗 仝 長閑さに浪たつ余この海面も空とひとつに露込けり海月平規 勘定の外が浜まで残りなく春は露の棚おろしせり伍業今高澄 東上八 高田 百敷の大宮への来ても見よ露の袖のなが浜のうら常盤丸 あら玉の瀧はも春のことぶきと霞めるさまや引て長のし 琴の花の須磨の浦辺の春露いとやもたろくひき初にけり 二本松 おきに露の窓もゆかしとや覗くもをかし春の海原春亭和歌音 浦浪のうへに愛な日の御影うみなし顔の朝宴かなし日積 精家がねがひもそ朝はたりぬらん爰の埋む春のうなはら相竹楼真槌 淋つらもそきの霧に埋むよとみるもあこきに蜑のなはたき歌廼屋歌仙 青畳しく大源の峯にひく露はなつのえんの本ごで順風亭入船 古河 うごき出るむかふを見れば糸付しやうに露のひける浮嶋 難哥免 仝 あり海の浪も居りて霧たつ龍の都も長閑かるらん 太良里 磯はたにおろす網より初露先へひいたるあけぼのゝめ三千成 庄内 春露はるの季たてにあらそはであとへ引けん荒磯の浪 一海風に浪の本をも散すると霞の刀や立へだつらん第亭永長 常陸府生 海の果高るき低きともならぶ露は浪と背てべやしつ高砂亭永樹 露立海もなる門の汐さかひかしこく渡る舟もみえぬる三井 海に引露のあみにこほどな鯨も見ゆる春の明ぼき森森徳亭村へ 海こしに春は露の引よせて白浪よりもかゝる磯やま菱泉 朝風のにてる浦浪幾重はる露をへがす白紙の儀花月堂彳 見るうちにかゝる窓に消つるは名にや立けん淡路しまやま三星亭真潮 名におひて渡らぬ所も音なれや露りけたる天のはしまて三津丸 松がえのきれとをもたゝ日のあしも渡りて霞む天の橋立月池亭粂夫 一沢廉明石心にこめて春霧あめ惣房と上ねへはひ渡りとゆ大道 東上九 須磨の浦たてる徳と一つらに露むくなる春の夕風広尾原性 波間なる小島に桴をさし渡し行てに震む沖の釣船挑湊今静半 美濃黒瀬 那古の海風たる蓋も浪の如震にゆらぐ遠の嶋ゆ 龍珠園唐器 尾張新田 一洗濯につけし糊ほど淡雪は露の衣の裾に残れり匙迺屋四 三川吉田 海原を静な春になさんとて浪をふるへて来たつらん国正樹 うつ浪も露の原によりあひて春のけしきを繁ぐ海原大門 一春雨の原となるらん和田の海の和田よりひけるうらの霞は京成 初日の玉鯛の背ほどにひら〳〵と露の調にかゝる沖津辺岳住 むらさきに匂ふ霞の網を引海士が夕家のいはしほす雲菅蔵箕船 いるよりはやみの浦の朝霞かすむあなたは去にやし大江浪音 面々旧 冬つきて今朝来ると春のかはりめや銚子の涙に露たつらん朝霞園様氏 松もきせに磯もかたれおもしろく霞も糸をひける海はら万菓 残雪 毛々多良須花二 古河 一山へは笑ふと水の囁けど聞流しなる谷のしらゆき歌種魚久楽 春風も行届ぬか去年降しゆきも其侭のこる深山路花迺時女 この神祭る木の葉のかいしきにひもろぎ程の雪を残せり真広 人吉 いそがしく春を巡て冬の日にとり残したる山のはの雪土手住 毛々多良須 本と残る雪の明に筏士も闇の初瀬を越るたに川真鬼 寒さしるあとに気つゝ行水に帰りはもなく残るしら雪 高田 一あし高の心のしら雪春風の手もとゞかぬかきえ残けり万緒 盛岡 花の春にうつる詠も芳野ゆよく〳〵見れば道残るゆき奥細道 春の日の木の下かげはぬくからで空にしられぬ雪ぞ積ける目積 毛々豆多布 見くらべて人もすさめぬ梅咲て鉄廼屋大門 雪やかなしと消かゝるらん 毛々多良須花 松寿庵年益 飛越て踏まくをしと見しは高に やはり飛〳〵むら消にけり 長閑なる日の顔をみぬ谷陰の万葉 雪は春をもしらで残れり あたゝりに露の花はうさねても守黒亭ト人 残れる雪に比房の如もと 去年に見し梢の雪も谷川の森遊亭人成 浪の花とはあらはれにけり 春風の手にも餘りししら雪は 糸成 わやくなる子や丸め置けん 足跡をいとふ名残かぬ里は手もつけず置去年の白雪諸実 陸奥二袋 松がえをすべり落てやなやみけん寒さは行に残る白雪鞠垣真史 人吉 去年の雪南はきえて北河はすわりの餅のやうに残れり扇形亭三角 松枝を折たる咎をわぶるかと云訳ほどに残るしら雪不老亭若松 去年の雪春にも麹の白山は日のあしさへもまた行ぬ哉森楼亭志十里 春ながら春とさとれぬ女里は雪の達磨も猶ざぜんせり松能宿 梅に似て白丸なしと春山に笑はれながら残るしらゆき美直 宮しげの大根ひく頃降初て残りし雪は尾張はつもの岳住 暖かな春におされて少しつゝあとしさりする谷のしら雪京成 間々田 行落のかへ字をよめとや北窓のあかり程にも雪ぞ残れる春草 加幾加曽布花丁 尾張津島 隣にて軒も並ぬ山里はあそみ爰にぞ消残しゆき六笠園菅雄 東上十一 寒しとてうとみいとひし去ねの雪を今更をしむ底の村消人成 年浪のかへりし道の枝折かもあはと残れる門まつのゆき伊勢小詠 あつめおく学びの窓の灯火も春はとぼしくなりし白雪世富 一世の端に残れる雪をむかとも見しは露のとかにやあるらん集賀 古河 鷲の住筑波のゆを分行共ばひとつかみ程残るしら雪風流住 麻生 一東宿もはやむら〳〵に崩出て望と見るほと残る白雪許 ニ許牛 出羽高畑 さがなしと姿やむにあらはれんよごれて残るゆかけのゆき嶺雲豪歌弐元 見上ればほのかに回のひたひ白駒が嶽にも消残るゆき谷迺尾深志 桑折 家士産にとりて行かはやくらまゆ火打石程のこる白雪御空 相模鎌倉 春来ても七十二段時しらぬ山には未そのこりしゆき森雲亭様 一縁遠き山里いかに春来てもまたかたつかぬ去年の弟宣仝 横に降る心なほうで残る雪は柳桜のめだにあかせず跡人 長門萩 小鼓の皮より薄き浅雪のたゝ谷間にちゝと残れり山路淡雪 春ほのかげに消残る白雪は去年の寒さや忘れ置けん岩垣積方 藤沢 見あぐれば神垣山ぞ面国しおそなへほどに残るしら監 孝行道守 ほころびて山の裾より出し錦と見にくゝなりてのこる白雪浜辺朱人 月代やきいふをさなき春の雪斑に残る山のいたゞき一木松成 信濃八幡 音に聞黒塗に残る雪春日のあしやけちらかしけん千葉軒常盤 下毛栃木 口かたの亀の尾山の谷蔭に手のひら程にきえ残る白き通世軒言妻 春の日にもゆる伊吹の艾さへひの廻らざる谷あひのゆき諸道亭好成 見はやせし去年もや終り初ものと春まつ花に残るしら雪万泉 山路鴬 東上十二 毛々多良須花二 鶯の声なかりせば怖決めみちいかでたのしからまし不掃庵共成 色々多良須 盛岡 うぐひすをはあげて休む九軒道もをくて近く聞えつ 縫ひならふ笠置の山の鶯は夏のなりねを引きこそなけ高澄 肥前唐津 朝やほしと鶯聞て旅人もあめの餅かふ小夜の中山郊原亭一幹 高田 鶯の声の月日にくらぶくい道のあなひもしるく静けり万籟 二本松 うぐひすは白路の梅のあるじにてひ香に人も留んとや啼縫女 新庄 松杉のいかい根のある山道に音いろやさしき鶯の聲 鶯のこゝら鳴しと此道に覚束なくも呼もとす故諸実 うぐひすのひとくに陽つ箱根の初音が原はいづかさがみか 行来さへたま〳〵にしも深山路に聞人ほしとや鶯のなく力自多楽庵 谷の戸の心おぼえか鶯のうたを残せしこのみたみち木長 毛々多良須花三 陸奥白川 岩をころがし出せと鶯の こゑの玉には疵もなかりし 鹿角房折雇 盛岡 大さいのほうといふかと杣も木を 森蔭 さらできくらし鶯の声 巴末亭目積 一人来とて我をいとふか巴木亭目積 分のぼる やまきにのりの 花の薄 栃木 鶯の声に聞とれ 栃木 通用亭德成 耳遠き 老のつれにもまけしめ道 此道 東上十三 出羽高畑 山賤か背負し梅を鶯の月日にかへてほして鳴らん山越菊路 かたらひの山路のおくの鶯をきけは都の心地なりけり 山荘の障子にもれて鶯ももれす聞行小倉山みち うひたてる春はをさなく深山路にまたかたことの鶯の声三津丸 信濃村松 杣人の通ふゆ路ほそけれとふと耳に入うくひすのこゑ 一仲道堂厚房 武蔵岩槻 一今まてはゆふところにありにけん聲暖き春のうくひす春遊亭 春遊亭三千草 駿河吉原 有馬白いなといはれん鶯のふしのへてなけさゝなきなせそ柳樽人 加幾加曽布花一 盛岡 八重にひて露にもくる山路にも声はくもらぬ春のうくひす槌迺音成 仝 ひをつみて声も白路のおのつから次第に高く告るうくひす名歌記 仝 帰るさを急く山路の此大人をしは〳〵鳴てとむる鶯御供は 鶯の声をしるへに深白路の杣木をはやも谷出しそする実栄 誘はれて我もいなはの如道に待合てかうぐひすのなく平規 芳市家にそ生れし杣も鶯の里人巣立のうふなうそする万里亭弘暦 なき初る聲は古巣の名残そと山彦迄に答ふうくひす仝 素たては氷りし雪のしたとけて山路を伝ふ鶯の声喜元綿 より〳〵に啼を越てほうといふ息をやつける箱根うくひす外面森雄 二本松 花もなき山路なからも鶯の声には梅の匂ひそみけり豊文 鶯のなくねに雪も消しかとうたの心をさとる如賊海近 仙台 鶯も人珍らしく歓てひとく〳〵と深山路になく真根人 うくひすの経よむ声に明て行黎もよくなる春の鴬照道 出入の山のは近き木曽路にも月日はなかくうたふ鶯茂善 鶯の声にはあしをとゞめけりはる〳〵遠きゆ路なれとも朝寝四ツ起 東上十四 武蔵忍 山坂に春の日脚もつかれけん遅く木間路の鳥の声 うぐひすを斧の音にも逃さじときをこらしつゝ杣人の御声目積 初聲を聞て沖つの旅かごにねむけをさつための鶯諸道曼妓成 都にもおとりやはするくう浪ねにそだちよろしき歌の声年魂合合泰則 尊にひかれて美濃の中ねや笠縫の里に出にけるかな美直 岩槻 経よみて道をしへしと思ひの外うかれ迷はす山の鳥 同十丸堀守 総水海道 一逢坂の山路になける鶯は都へゆるこゑのたて場か若根亀人 初木 そめ紙となどか覆せで神道山経よみ鳥の音を立にけん言の葉 佐野上岡 回路たどる君をしれしも法花経をきく夢のきどく成らし宵寐 万象 つゞらをり行柴人を鶯の木伝ふさまにみてや鳴らむ 春雨 毛々多良須花二 名古屋 墨染の桜の花の子をもちて空に生るゝ春雨の空弘器 盛岡 木々の女第はひらき戯ける春雨にいとゞふら〳〵眠げさしけり実乗 かぞ色の恵みはやがてしりぬらんこのめにかゝる本の春む睦実 二本松 やがてこの柳桜をこきまぜて錦おからん春事の糸豊文 桑折 春の雨頓て桜のさえたにも莟のやうに溜りぬるかな 野遊びと約せしつれも糸の石の有てふ事に綴られてはる仲吉 三河言田 一騒がしく言ふるよりも春降るを誠に梅の事といはまし杉園真玄 九重に匂へる花の子を持て雲ゐにえんの近き春雨 志賀の浦あれし都も花といふ子を頼にてふるか春事 尤日和つゝく下地とおもふにぞ繫しくも有春事の宿花成 音なくて枯枝に花を咲せたる心は雪に庭の春雨 東上十五 冬かけて柄杓に肘をはるのゆたそ来ませとや松風の煮梅仲麿 毛々多良須 花のために父母と聞なるふかことに遠くあそばぬ春まの宿岳住 人吉 顕へのことのは草もそだてよとやしなひたつる春雨の宿 春雨のまたなが〳〵と降るならん晴間を見れば月も笠きて弘麿 春雨はふることのみを種にして三十一文字をめぐみけるかな 新庄 いかめしくはりし氷の和らかに降る春雨に扇初にけり雀登丸 糸とふるこの春事は幾重なる宴の衣のほころびやせし大木繁成 妻もふてぬれつゝ猫の軒つたひ隣へへふ春事のあし若女 余所めには本を見る程雨の恩ことなるものと人もしらな物菓 二本松丁 きのふ降りけふ降あすもふる年のよごれをあらふ春ののか成 待はなを恵める事のよもしいへ通ふ心のこまかにぞふる数恵 毛々豆多布 八重雲を千別にちわく春雨や糸成 はなにみおやの神と頼ん 毛々多良須花三 伊勢小詠 うつくしき花の親てふ春雨の ものにつよくはあたらさりけり 盛岡 春雨はうつり巻縄のいとめきて山星亭摩守 たくみ出せる木のめ草のめ 大和新庄 降るをだに静なことゝ聞なして藪住虎 うまい寝もする春雨の庵 海底の針のみぞをも通すらん森松亭比左志 なみ風たゝぬ春雨の糸 一時も花にをしむを夫ならで教和楼睦実 ながめにくらす庵ぞ淋しき 信濃菽蒔 同にこそはそれともみえね涙山に有明亭月彦 まされる恩や巳にはる事 うたゝ寝の短き夢ものびをして万葉 むずひかへたる春事の庵 一両代の頭ふりつゞけ寝つゞけに大門 賤苦にせざる春事の空 甲斐谷邑 春ゆに眠りて舟を湖月抄 真久 その侭顔へ苫をきせけり 研御成て眠れる救か斧迄も 陸奥福嶋 六種園 石を枕に春雨の宿 東上十六 天に口なしといふめる諺におともせずして春雨そふる真清二 我時の枕もあたへ千金のね心のよきはるまの宿難哥兎 仝 長〳〵とたれる柳によりそへてふとめにみゆる春雨の糸秋亭萩秋秋秋草草成 菽蒔 数への花をそだつる苦労にやいとゞほそりてふれる春雨 仙台 真根人 山まゆにひくといふなる霞よりすくりになりし春雨の原 麻生 一信ほ姫の霞の衣のしつけ苧か糸を乱せる春のの 庭の面の苔の衣のそめ下地あつらへ通りこのめ春ゆ笠人 染雪はより場はなしと春雨の糸を頼に戻るをかしさ春艸庵類女 春雨の降乱したみ邪風にさわぐ柳は軒の原水傘守 浅茅生の小野の源原しのぶるやため草のめにもみえぬ秋亭歌秋金亭歌亭 静なるふりをならひの風さへもやみて音なし春雨の空四ツ起 東上十七 盛岡 降て咲えにしぞむすぶ春まの葉こそむによりところめれ 幼なき春は雨さへ小ふりよく見えて静にしかもおとなし世富 よに花の給びたりと計ても目にかゝるほど降らぬ春雨空鍋屋真枝 四日市 たれこめて春の行渠もみぬ人を友となしたる事のつれ〳〵 三江亭 人吉 春雨の軒の原水くり出せば蜘のあやとる夕くれの空 麦ゆのかゝる柳の糸水をよりて見ばやことくる人もなし蘇亭梅人 水戸 ねよげにも降る春雨は初夏の宝船こぐかひの雫か糠成 ぬかのことふればされがら庭石の臼へ輪をなし廻る春まか 咲花を和らかに打着事はふりゆく親のしもとなるらん月下亭音雨 梅桜さかせぬ先に親といふ名にもおもつ春ねのそら万葉 春ねの柳に糸にそぎかせし雫は玉のすだれとぞ見る常笑 上毛厩橋 糸水を折にひく夜はよみ類の手にはを繋ぐ春年の宿此道亭暗記 信濃式郡 物いはぬ心をそだつる親なれば声をも立ずふれる春子 仝天神林 雪よりもねむけもよほす春事にねし呉竹のなどて起けん白糸曽丸 駿河吉原 しづかにぞかこむ碁石の音のみに打くらしたる春事の宿押樽人 出羽庄内 なは長しひはながしとて春雨の心しづかにいそがでやふる豊秋庭訓又 枝垂るゝ柳は軒に瀧なせど落る音なくふれる違ゆ浅光庵等成 加幾加曽布花一 盛岡 かぞきの妻の袖やひちぬらん花の雫もにほふはるさめ春音 昼も夢結ぶ静かな春雨に軒の原水とく〳〵とやつ千形 松代 散る梅の星はとべども大空はくもりがちなる夜半の春過 咲花の詠を雪の葉ふかとふりつけて遣すかぞいろの雨福養 ながの日にふる春雨はよりあふて落る軒ばにふとき糸水山松 新らしき家とてもなき山里にふるとみえぬる春まの空関迺岩門 春雨の音なしやうにわらべ等がふる成六も上りをぞまつ不尽は嶺 春年の親に似ねはか梅の花角のやうなる枝もありけり真長 二本松 高砂の尾上の桜今年より幾代やゑむはゝのはさめ縫女 大和新庄 消残る雪の軒はの春雨は真綿より引糸かとそ見る千載亭真欄 松代 野山には縁の色やまさるらん草の屋もこのめはるま松木亭宗草 高畑 静さに心ちつく春まはことのは草の親とこそなれ菊路 春雨のあししろかけて高山の嶺の雪をも崩す谷川汲上亭音成 吉田 化粧して伊達を駿河のふしの山青くなる程みかく春子前川亭花期 人吉 御代の春月の弓さへ袋から出さぬやうなる事そしつかき水住 仝 吹風に砂をかむりし青柳の髪のよこれを洗ふ春也胸川亭君様 あし音もたてす伝はる笹かにの糸よりみたす軒の音寺向鏡亭菱参 花の手の薄かき餅の取め袋ひもとく春の雨のつれ〳〵善拙 式部 辛崎の松にかゝりし春雨の糸は葉ことの針を通せり 水海道 名所記の姥捨よし野松島も日々幾度見る春のなかる桃迺屋種義 吉原 いとなく降春雨は静にてたゝのぶとのみおもふ玉の緒 春子のおちつきふりは衆郷へいそける雁をいさめん心か海近 種ふくろ出して賤もそれ〳〵に振分てゐる春雨の宿仝 海棠の花にも親のやさしさにたゝいてねかす松木の春 上毛松井田 降つゝく此はる雨に賎か家のひつみをみする軒のいと水麓舎茶廓 木末伝ふ風に心の猿だにもふりみてなごむ春雨の為万象 里梅 盛岡 老かくひ怠らの里の梅のはなまつかへる春のひかり遮り琴和謝繁樹 高田 余の花にかつらの里を照月のわが身にうつるうめの下ふし はなとのひ匂ひも袖に忍ばれてさぞ梅の実も住よしの里福門 人みなのおして来るにも梅がゝのおされず匂ふ難波津の里活垣魚人 栃木 此里に咲むみよといひつぎつゆのぎにせし鉢植の梅 毛々多良須 四日市 魚に愛て遠里小野の油売ひともす梅を荷ひ歩行か高木 盛岡 むつましき隣同士の里ならひ送りおくらる門の梅がく名歌記 仝 袖ひきし霞に花の香を留て客にもてなす梅原の里実栄 ひんがしき隣の里ゆ梅がゝをはこぶ朝風かはらすてこれ世冨 いざるにくらぶの里に無智有替もうち行て見ん桜の盛は常盤丸 猫がえを黒木にさして鶯を里へと成の道しるべせよ寿々馬 毛々豆多布伊勢四日市 毛々豆多布 知るよしのあればこそしれ奈良の原三江亭 かすかに通ふ里の梅がら 毛々多良須花三 短冊の和顕名もさはに宮人の 芥丸 きます芹生の里の梅が香 一細布のけふの里人袖よりも諸実 むねを御てや入ん梅がわ 春にしもならの里なる 御梅園 藤沢 森節亭里人 いへのすみ迄匂ふ梅が香 上毛吾妻 しら梅も紅井の梅と匂ふ迄森鏡亭夫高 出る朝日の里にほのめく 梅咲てしばしも油断ならの里しりもつき行袖の匂ひに根少ききさ子 つのめたつ芦をよしともいひなしの難波の里に咲やこの花物菓 こどり子の跡おふごとく袖に付て捨て置れぬ里の梅がく真枝 きたなげな里のをとめのかさすのもをしくぞもらふ梅の一枚全 一山里はなじみ薄しと青風につれられて来るか夜の梅がゝ青葉亭松成 春風に誘ひ出されて遠里のおのが気侭にありて梅がゝ真清 里つゞき行来の袖に誘はれて梅りくざりはあらじとそおもふ伊志女 それよとはしるよししけり春日野のいことかをりくる風の梅がく 木のもとにあれど袂のなき故に梅がゝこぼす庭の裡垣山家亭根へ 一夜をぞ宿るねざめの里に咲梅は匂ひを絶ずおこせり菱象 風にある雪の匂ふは梅がゝの降るかとおもふみよし野の里春則 梅庵ひらく忍らぬ四里にそなくりかへす春のきこ日若垣積方 藤沢 影つゝむかすみをもれて匂ひけり朝日の里にひらく紅梅 丈有安 吉田 むめ咲てかねて囲し板塀のすみから隅に匂ひみちぬる 一正樹 仝 咲かたる軒ばの梅の花かつを匂ひは土佐のゑにもかけまし ○春園由名 加幾加曽布花一 盛岡 一月かけはまづかすませて梅がゝのいたらぬ里はあら玉の春 摩守 合 よしめしを云もおろかよ咲梅に難波の里は春めきにけり 實乗 全 梅がゝをはこべる風に心あらば問ん微喜の里にさくやと 繁門 賤が家の破たる壁もあなどかな障なく通ふ風の旅がく 森数亭音樂 相模沢柳 朝茶より見て目のさめる白梅の匂ひも高きしがらきの里 松山亭真影 日のあしの延て此頃山ひとつまたぎて匂ふ里の梅かく若女 里の子の手まり杓子のこ梅かゝのつく袖おほき春のすさみは 東上二十一 更科 雪も翁梅もひらきて日の遠きかた白里も息は来りけり 松風庵真琴 高畑 朝夕にみなれても賤がしゝ鼻を笑ふやうなる凶里のうめ雪中奄青松 鼻をしも通して匂ふ梅がゝは牛に小津の大はらの里万多羅 一胡風のあちらこちらへ吹入て伏見の里におこす梅がゝ鏡臺山月人 常陸麻生 一長閑さに雪の明りの消行けば梅が火ともす難波津の里桐原舎駒荷 吉河 咲しとはいはねどしるき梅がゝの匂ふ衣の里人のそで鶏奇免 袖さへや跡だに留し文好む梅はめてだき金沢文庫万亀 寄日応 毛々多良須花二 日の出ぬさきに帰れど人にあふて顔ゆ火の出る夜〳〵の空世富 あふ首尾の嬉しさけらにかさなりてみそるごとの名つい立にけり八嶺 うたがひの晴ぬそなたの心より日は照ながらふら涙かな歌沙九 毛々豆多布 あふ夜半は初日にむかふ心地して 薦垣真葛 手を合せつゝおがむ嬉しさ 毛々多良須花三 四日市 むねの火のもえぬ日もなき思ひをば森量亭糠主 君水晶の玉の匁にとれ 盛岡 はてもなき思ひや空にめぐる日の袋角舎若牛 及ばぬ影を応ふるくるしさ 一胸の空はるゝ情のあらまほし万葉 あらまほしやと向ふ日の影 東上二十二 ほしあへぬ涙の雨のやるせなやてる日の影は袖にかざせと伊志女 毛々多良須 四日市 しのふ顔を見居られて苗さす日の烏よりくろいまなこに糠主 盛岡 昇る日をしはしか程はおし戻す扇もかなとおもふ衣〳〵 森蔭 全 かけひなたあるかとおもふ心こそてるひを覆ふ疑ひの空 仝 今宵しもゑべといひし秋の日のくれさへ春にます鏡かな あはでたゞ過る月日も久かたのあまぎか空と曇りが出なる永女 高田 我恋はこがるゝ胸もてれる日のあつさをさける扇だになし 左和亭達徳 かさねたる日は雲晴て明るきに恋路はくらく迷ふ身ぞき 小舟山 仮にたに君は来すして久かたの日照りによれる恋候にぞ 恥かしや涙の袖もほしあへずひるまを契るけかげなくして眼道 まどろめば板戸をくゞる日の鼠矢よりも早き別路そうき花成 妹と称し明の別のくるしさは朝日にまよふ恋のやみほり喜多留 はかなくも照日にむかふ孫より届かぬ恋に身をなぐる哉石綱 取分て此頃胸のつゝざれば恋の日望りのひよりこせ歌老松尾万餘 あめとなり雲となる迄契るとはいかによひ日の下に生れし月池亭癸夫 爰ばかり日は照まじとおもへども見ぬふりさへやならぬ御帯森開亭誉校 恋すれば忍ぶ心のうち日さす影よりも猶人めまばゆき跡人 藤沢 日う〳〵に贈れる文の誠をばひぐに新たにかへしせよ妹里人 この頃は胸の日照のつゞけども涙の川の水やひざらん大門 上毛吾妻平 日の入を悦びし身のむくひにて恋路の闇に迷ひぬる成千年鹿雨霖 加幾加曽布花一 春の日のなり〳〵しくも書送る文の返事も暮ぬつれなき寿々馬 盛岡 契しは此夕くれと待わたる日も西山に入ぞ嬉しき細道 東上二十三 相模沢柳 遣ふの日をかけて誓ひし誠さへ言葉這ひとなるぞうたてき柳辺屋景直 いづる日の赤くなるほど顔恥ておき別たるきぬ〳〵の空川面常朝 あすの日と約束かたき常陸帯うらかへりけんしかしだななき馬松亭古路 人吉 閨の戸に朝日のかげのもるゝより先に我名のもるゝはかなき水住 一日の中に我身はくらく浮君たつ恋には影の頼むかひなし天久亭栄人 吾妻 慈院てぬるゝ袖だにかはかねば日に〳〵送る玉草ぞうき夫高 仝 我恕は雪に照る日のさす程に心も帯もとけるうれしさ多丸 仝 日の影に磨ける玉のかざしさす妹に心はくもりたりけり秋安 妹を忘かゝりたる日の蝕や心の響ぞはなはなはだしかる万象 寄月恋 毛々多良須花二 盛岡 一人めをも忍べと月も笠めすを君おぼろ気に思はましやは壽万数実 毛々豆多布 盛岡 あはでしも帰る戸ほそに月影の森昌亭実来 入をえるさへさすがねたけれ 越後高田 常盤丸 月はたゞいけらん心地なくてみる ころしもさらにあはぬ衣〳〵 月によみし山の端ならでうき人の諸実 何所へか逃て入れぬ室の戸 むかへども我影をだによせつけぬ杉園真文 月の鏡や妹がたましひ 毛々多良須花三 うき人の詠る目にも見せたしな 三星亭真湖 霞ににじむ袖の月影 一心らふていらへも朧つきのよき大門 此うれしさにしくものもなし 東上二十四 いかにせん袖は涙の水溜り今は月さへ宿るばかりに梁門 月は水溜にいつはひ恋しさの思ひあふれて涙とぞなる寿々瑪 月みれは千々に思ひのせすら男に心ひかれて眠らざりけり一髪堂集集賀 月かげのみつればかけしねき事の届てぞあふ宵響の頃真葛 うき人の来しやとおのが影ほしにとはず語をする月夜哉真枝 煎すれは木の間を洩るゝ月の影心ひとつをちゞに砕けり 毛々多良須 宵にひと目ちらりと三日の月の舟跡は慈路の闇にこがるゝ糠主 月かげは蹴けなれどあふて胸の思ひは春の夜半のむつごと寿々馬 後ゆひ月にさゝれて我しらず立聞したる影ほしや誰そ松琴千代住 下毛麦倉 しのぶ身をそれそと月やさしぬらん泡名もまだき立る顔下し高山武歌積 麻生 忍夜の月をいとふて暗き身は晦日ゆるの名にや両つらん暗夜亭平也 灯火もけして今宵とおもふ夜はさし込月の影ぞ像しき音成 並べたる枕のねを高くして今宵は月を近く見る哉 不破ならぬ中を隔てし人の目の関もる月の影はにくな志乎里 門口へしのぶ後ろに月かげのさし足をして我とおどろく 初月のちらと見そめし思ひより夜にまさり行君の面影常笑 めぐりあふと見しや夫ぞと心して雲かくれにして宵の月出大門 近江日野 さゆる夜は愛にし窓にさす月の影さへいとふ忍び寝の床通閉亭内鑑 加幾加曽布花一 一朽かゝる袖の湊とあやぶみて泊らぬ月の舟ぞかたてき照道 しのぶ夜を月の後と妹はまた問ず語りの空ことぞうき川南 人の目を忍て通ふ月の夜は我かげにしも驚かれぬる木守 夜をすがら月におもひの増鏡外に心はうつらざりけり山松 東上二十五 朧なる月は中〳〵こがれぬる妹とねる夜にしく物ぞなき箕船 沢柳 照る月の鏡に影はうつらねど尽れる声に恋すとぞ知る うはの空夫からそれへ誘はるゝ田母の月のうつり安さは真枝 古河 恋路には月なき夜半に忍来ていつもつきなき閨の睦言浮越亭望月 恋の闇月のかけ侍心地して身は浮雲の空に迷へり麟馬 いひよるも月にしらけて恥かしと都へあてたる村雲の袖蝶連斎津吉 うき人を待夜の門に月かげのさして驚くおのが影ぼし蝶々亭菊住 しのぶ門にさし入る月に我かけを人の居るゝもとあやしまれぬる扇雀言人 人まへは重れきやうに見すれども思ひに晴ぬ胸の月かけ花成 人しらず月のなりによむ殿の跡を団子にまろめるもし松人 阿波徳島 山風に霞の衣ほころびていとはり出やし鶯の声静丸 あはぬ夜は月より先にさしやし積がもとなる愚病の床真枝 かくとみつる月をかさねてやらみは書のみ見つるかへしだになし万象 社頭 毛々多良須花二 染姿と経の名をさへ付げんのあぶらも光る伊勢の神嫌真杖 老の身のかゝらん杖の鳩の峯まめて世をふる恵嬉しき真槌 さわがしや並べる沓も水鳥の加茂の宮人群て立音千穎 一時津風柱をならさぬ神垣に千代の類そふ松の尾の宮種成 いかづちの加茂の社は賑ふて轟く如き人のあし青糸戯 毛々タタ良須 盛岡 奉納の絵馬の太刀さへ錆みえて赤木の宮ぞ尊かりける 実乗 下毛宇都宮 鶯のふくめる声の玉垣や浪にねをはる竹生嶋かな 為持 一荷瓶を庭に燈すえうま酒の三輪の祝部の舌鼓打 東上二十六 毛々多良須花三 肥前唐津 一郊原亭一幹 飛梅のあまりふしぎに太宰府は郊原亭一幹 うそかへといふ神事ぞある たつ風をなごめてむや霞にも物菓 子守勝手の宮居めでたき 種成 三熊野の山の烏の告しより種成 夜もほの〴〵とあけの玉垣 石見のや高角山のこのましき福養 こと葉の花は神のめぐめり 神心こればそ三輪にあらはして杉は素直に生立登り はら〳〵と梢の露は霰にもまがふ鹿嶋の神の広前茂善 一人心染りやすさを見せしめの白木に造る宮居尊き大門 太刀も弓も納る御代はしん〳〵とさびて高ときやちほどの神通用亭 久音のあまつもつきの尊くも先をみするいせの神垣志井里 豆糧に鵲のすがたは清社のぬかつくさまに見ゆるむかき戦人 いせ給事の降る日はゆるしけん坊主かつはで参る神垣仝 玉津島立し姿の柳髪緋のはかまなる朱のたま蛇甲良 鳥の名の加茂の社の神路ではこへるあしのみつ垣の中目抜 玉垣の松杉だにも年帰りて色も常磐に来えこそすれ山松 加幾加曽布花一 一萱香に白木造りに美麗をも非れも更ぬ神ぞ尊とき三葉亭緑 東上二十七 家の風吹せてたべと一心に扇を敷て祈る広まへ真枝 ねきことを水にはなさじ恵み有心あつたの神の御社鞍人 ねき事のことのは草を取上てあづかり給ふ鎌倉の宮鬼笑 熊野ゆ社にきねかぬかつくと見しはゑぼしのひもすな 十ながら物のかなへみ祈る哉みつの浜なる七のみやしろ石綱 天につる宮居の梅とつをふくむこのいり口がすがはらの神大道 一仰ぬる顔も日よしの産神のめぐみに心のどかにぞすむ万象 寺鐘 毛々多良須花二 一鐘の音を東風にはこびてなもよひふると聞へし石の上寺梅貞 湯になりし背語を長〳〵ときけば日高も入箱の鐘石綱 世の響く鳴りも名聞くるしとて風なき頃は山籠るかね大枝 葉之喜弥志 一蜑小船はつ瀬の寺の鐘の声諸実 ゆれてゆくへも風にまかせり 毛々豆多布 盛岡 くれるをもをしまでつくや山寺の 繁樹 一鐘も浮世の顔をはなれて 毛々多良須花三 名にしぐる桜をかこふ月の輪の 森開亭発枝 寺のおぼろになれる鐘の音 花ものをいはねど憎さやま寺の巴水軒指月 かねつく僧にあむせかせけり 藤沢 一あがりたる物とぞしらこ清し音に里人 幾代か三升のふる寺の鐘 三井寺の鐘のひゞきの湖にいるは大枝 たつか都へ通ふなるらし 「宅々多良須 つく〳〵とおもへば胸にこたへてぞ表に聞のゆめ守のかね世富 四日市 執念の深き女をいましめの鐘に三井の古寺のかね 北三江亭 二本松 三井寺の鐘こそ龍の都より上りたる代の物にぞ有ける 白川 白川 霜さへて氷るよかはの法師をもあつめに鐘は響出せり ノ折雇 麻生 時だにも中か酉かと呼子鳥おぼつるなさよ山寺のかね 一柳糸軒琴足 夕風も花には折のあし鼎つきてはなれぬ仁和寺の鐘跡人 吉田 つかねども音に卿にて皆人の奥の院迄三井寺の鐘前川軒花朝 よの中の夢さませとや暁につき驚かす重々のかね杉山人 音に聞鐘をはる〳〵三井寺の宿につきたる頃は入相芽人 猿のすめるものから山寺の鐘はうなりもすさましき哉春則 年ふりて鐘は錆ても夜嵐にさへたる声のひゞき山寺百人 高砂の尾上の鐘は富貴にてかねのなる所を持る松が元甲良 よの人の積りし籠を遣すとつく鐘には花の雪もふる寺余友 入箱に本を散そは何寺の鐘の音はこぶ風の咎なり万葉 埋めおく鐘のあとかと旅人も来てはほりする中山の寺大門 一蔵深き毒のみつをつき猶て仲の道に入相のかね伊勢小詠 音をたてゝかへろと鐘を聞たるはしりと縁きにのせし三井寺一幹 四日市 いねかぬる老楽天の夜や明るあくる枕に正寺のかね糠主 永き日も最う入相に寺〳〵の鐘は本見の花の梅さめ常笑 吉田 なや今盛なるらん止寺の入相の鐘の遅くきこえて中村恒方 陸奥川又 鮒鶏やめて木魚をたゝく気にならせるかねは三井の入相 独楽庵好文 をしけなく入箱のかねをつき出して其侭くれる冬の如寺 東上二十九 鐘の音の往来ばかりやゆるしけん大聲とて通ふ関寺真清 あり汲てみのりを聞し嬉しさは橘寺の入相の鐘種成 とけそめし氷の耳も山寺の鐘のひゞきにくたけぬる哉弘麿 近くにもなければ淋しあれば又耳かしかまし山寺のかね旅人 名に高くきく耳塚のつかでさへ世に知られたる大仏の鐘万象 春月 毛々多良須花二 盛岡 竹の秋といへど朧の月かげにすまざる名をや誰がおはせし 四日市 一照もせずくもりもやらずのかさずに人皆曇る春の夜の月 幽かなる月にあかるきともし火の花を見出せし朧夜の窓弘器 花にいとふ人な恨そ露月をはらして見たき風ぞ待るゝ寿々瑪 春の秋の月はありてふまりの如難波のあしのもとをはなれり菱衣 毛々豆多布 諸実 去年の冬月をするとに仰過て ひかりや薄くなりし春の夜 光さへ忍ひやかなる春の夜の 松人 月は露のうら通りせり おしうつる髪を思へは光陰も 四ツ起 夢おほろなる春の夜の月 高畑 秋めつる光を花にとられしと菊路 あちら向しか春の秋の月 毛々多良須花三 吾妻 一昼の流れつくめ三日月の花竹 影は霞のみをにうかへり 涌泉亭 光をは秋詠めよと 春の夜の 真清 月の鏡やうらをみすらむ むすふ手の雫にやとる 春の夜の 真枝 月の瀧やしみつなるらん 繁成 世の中の花の薫をも そてるかも かすみに匂ふ春の夜の月 春の夜は寝もやらぬ秋と 盛岡 雁来行長 替りけり みらるゝ月もねふき顔して やはらかなきにつれぬらん光さへ 睦實 うちばに見ゆる春の夜の月 春の夜の空さへ正に酔心ねふけや月のうつとりとして一木松成 野も山もかしき調ふ春の夜に月も瀧の不足さへよき大江波音 みやびたる露男にけおされて月のをとめぞかこち顔なる入船 かつらきの山は露て見にくきも朧月夜ぞ明る催しき百人 毛々多良須 名古屋 うぐひすの宿とはよべと瀧夜の月こそやどれ庭の梅がえ橘五園 盛岡 くもる夜の雨になるやと咲はじむ花笠を着て出る月かげ春音 駒ケ崎 春の夜の空に露の関もかな笠とらせたき月の瀧は捨瓢 むさし野も今は賑ふ家並のかまどの煙に露む月影世富 客艸のもえ行まゝに春の夜の月の様やふすぼりにけん春丸 二本松 梅がゝの立まふ影のおぼろ夜に月のをとめをこゞめてしかな はなに匂ふかけさへ薄くみめぐりのかたきにさせる春の夜月汲上亭吉茂 東上三十一 新燈の輪よりも少し縁なる月のあかりに花も見るへ森彩亭月澄 春の秋はあまけりちにて露也月の中にも蛙すまひて和歌女 空の海雲の浪間にたどよひし朧舟なる春の三日月真枝 人の目を忍ひ歩行のさて持月も露の衣やかつきし 松能宿 信濃焼捨山麓 雲と見る花や心にかゝりけんうかぬ顔なるおほろ夜の月 蘭渓亭 栃木 芦欠たく煙もたてぬ春の夜に何難波津の月かすむらん 通用亭 盛岡 打かさす霞の袖とみよし野のはなの雲間をもれ出る月 千筋糸長 厩橋 川の面に影はうつれと若鮎の背ほどひからぬ春の夜の月 秋の夜はあかしそ愛し影よりも春の月こそ次廉で詠れ 万事馬 麻生 散るはなのふゞきを月もいとひてや笠かたむけて登る山のは高砂亭 小舟山 春の夜の月は露てくらしとて火ともす梅の明りかすらん穂鳥 一尤もられはなてふ花の其中に匂ひかさなる春の秋の月菱泉 枕のてり桜のくもりとちらへもよらすさはらぬ春の夜の月若松 天の戸は霞にしめて光りをは花にゆづりし春の夜の月凍方 つかげの空あたるに露あるは翁も氷のみをやなしけん目積 天の水催す色やほのめきて月のをとめの面はゆげなり睦実 一哀れさのみにもかゝらで嬉しきは露の裡にやどる月かげ跡人 かすむ夜の月はみ空に咲花の影の間れるやうにそみれ繁成 越後五泉 どちらから風が吹ても川そへの柳かつれてうつる月かけ麦 森龍亭仲住 本の露に宿れる月をみつ鶴のなめていたくはさゝぬ春の秋森雄 二本松 頓てまた秋の哀と見る人の涙にくもる春の夜の月 出来立の月の鏡は鋳た計磨あけぬかとおもふ春の夜千代人 秋までは大事のものと薄衣の霞につゝむ月のみからん百人 めでたくも光をむにゆつり葉やうら白〳〵と露月かげ寿米流 天神林 一寒までなるゝ程の雪翁に月の水さへにこるへら 吉田 さく花にくもる匂ひやしたゝかに重ねてうすき春の月かげ 名古屋 ほのくらき灯油のさらなしていきたなく見る春の夜の月弘器 いかなれは露のきぬのほゝかふりおもてをつゝむ春の杉の月麟馬 藤沢 長閑にて風もふりねば鏡山くもりかちなる春の夜の月 春の秋の桂男はさく花の色黒にそみて朧なるらん常笑 水戸 一枕灯の重骨の所ひく露ゆみはり月もくらき志の夜自多楽庵 今朝共に舞ふ雲雀より輪をかけて雲ゐに露む春の春の夜の 庄内 天なりて地定まらてよろつ物神代めきたる程秋の月十日本外也 上毛吾妻 咲花の筵には猶しかしとや勝月夜に露こめけん雨霽 遣しきよき露男の立引に月人男顔なよごしそ目積 加幾加曽布花一 盛岡 其中の葉を吹く風にかさといへは月の召るとおもふ春の秋実栄 仝 仙人のくらひ尽さは春の夜に霞まぬ月を詠してまし 仝 飛火野の野中の水にさすかげは鷹かしらふの春の秋の月 けしきたつ春のものぞと構すも霞める侭に月や出らん 全 仝 窓の文も朧にみえて春の夜の月は感有てたけからぬ影 名にしおふときめく春の夜するには露のみすをかくる月かけ猿人 世の人の花をみし目のつかれとはしられてかすむ春の夜の月真清 古河 山〳〵の花の盛にくもるらん脇に見ゆる春の夜の月 本筵しいてしひのむ酒もりにさすもひかへし春の夜の月山松 東上三十三 都郷のあるゝけしきを見せじとや縁にかすむ春の夜の月木守 しやめなへる月のおもしとて霞の底へしづむ春の秋音繁 見せはやななには渡りの春の月船も勝にかすむ白浪百浪百路 勝けに月のかゞみのくもるのはむに仰むく人の息かも三津丸 瀬谷 春の夜の縁に月の露頭あやしく見ゆるもじ障子哉真柄 はなを見て此上なきと思ひしに花のうへ行朧夜の月百枝 よめかぬる薄くら雁の玉草もかき立てほしき春の杉の目青葉亭女の 山くに春の色気のつくすは月も露の垣まみぞする松能宿 宇都宮 春の夜の月は霜のかくし妻晴ては顔も合さゞりけり 一春風に桂の花や散らさじと露の衣をおほふ月かげ菊人 千金の詠を花に今しばし霞に籠る春の夜の月四ツ起 今宵からあすの日和もさしかねてさたかならざか春のよの月岳住 春の夜はあしも沢庵もさらしなも参所にかはらぬ雛月哉 新庄 むらさきの霞の衣のかつきしてむにはつるか月のをとめこ 一照とても塵あくたも見透さぬ難心の月の長閑さ直路 伊勢乗名 浪かすむ願は瀧こで船の棹に濁るかと見る春の夜の月鶯蛇亭藪 麻主 朧夜の雲の浪間をちら〳〵と影みかづきの舟ぞこくらし 匂ひさへ花の鏡とうつる水の通ひて月や朧なる空 水辺柳 毛々多良須花二 行水も曲る蓬の杣川に素直にたるゝ麻の糸柳海近 幾すぢか枝はあれとも谷川のながれはおなじ一もと柳 ゑこゝろあらは出てみよ素直なるこの心ある岸の青柳真清 東上三十四 毛々豆多布 青柳は蓑のなびくと水上へ 名古屋 弘器 あゆみながらに下す筏士 毛々多良須花三 砂川に文字を書のは素直なる 照道 水に手習ふ柳なりけり さく花の笑顔に嬉し浅川煉方 ほろりと落す青柳の露 逆のほる影ともみえて柳葉に梅吉 梅貞 あゆの風ふく玉川の岸 さら〳〵とたつくりさらひ玉川の睦実 女姿や風の青柳 子日亭 風なりに曲てしたるゝ青柳に 千代人 まげて二つに水も流れり 水をひくせきのほとりの糸柳頓てをだまきつて賎の男岳住 風の柳岸のひたひへ打つけてをいたゝ川にめをもこすれり 目のはやき柳は川の向より春は東風よりしらせ顔なる真広 珍らしや峯の柳の影ひむし枝に花咲水のさゝなみ糸成 水の面にうつれる枝の長さはと見る長津の池の音柳 毛々多良須 一悦綱をうつめ見えて陰おほふ柳の枝のくるふ川うぜ花也 盛岡 川水の籃にうつりて藍よりもあいらしきめを開くはけ柳 仝 たをやめのやうに柳はなよやかに誘ふ水にもなびく也けり 官松亭佐義成 仝 水底はさやにも見えずけゝれなくよこをりふせしに。ふの川柳 津嶋 春風の手に遊あげんかほの池乱れかゝりし青柳の髪管雄 春風に水の面をうたせしと柳の枝やふき上ゝらん人成 東上三十五 駒ケ崎 一長閑さよ雪も水も打とけてねむると見えし川の青柳 古河 川水にうつる柳のやさすがたはでは桜にまさるものなし 浅みどり浅かの四の山の井に影さへあさく四つゝ青柳寿米流 板川の岸の柳は春ながく霞が立てひき延しけり弘麿 川岸にけふる柳ははるの日に高瀬の舟や下をゆくらん千形 おとたてゝ手あらき風をしなやに流して逢す藤の青柳森戯学可仙 栃木 墨田川岸の柳の淋し気に都鳥をや招く枝ふり木絹迺屋織女 ひよろ〳〵としだり柳の糸たれてよさそふ薬のむなきもとむか福養 青柳の目のよる所へ玉川のすれほな水へすなほなる顔雨休亭音姫君 川柳今朝のながれの濁りしは夕への事に髪やあらひし三津丸 青柳の糸よりさけて沈水をくりあげて露を結ぶ白玉ききさ子 ひん水のつやよくうつる鏡川かげすきへる青柳の髪福門 菽蒔 あらそはぬ風の柳の下水に角たつ芦は見にくかりけりけり 武蔵忍 幾年か池の柳もみな底も緑の春にうつるめでたさ雲廼折竹 方円にしたがふ水やよしあしのともにもよらぬ川柳かな四ツ起 青柳のしつえは水につくまきのかぶるもをかし岸の鍋鷺真長 棹させば家根舟もつく川岸にすだれおろせし風の青柳忠賀宮子 京祇に出る清水はいく筋の流れをわくる青柳の影万葉 天神林 さら〳〵と雨の姿を池のおもにうつす柳や水髪なからん冷斎真水 式部 河風のみづりかけたる柳髪たばねんとするさゝがにの糸 吉田 朝なゆふな吹来る風に争はで柳は智者か水をたのしむ 仝 おもろき流に何を愁てやかくも柳の髪の延しは由名 東上三十六 櫛田川岸の柳の春風に輪をなす枝やもとのちこはけ鱗馬 青柳のうつれる影は網に似て驚てちゝきしのいろくづ原住 吉原 青柳の水に閉りし姿をや川瀬の鮎も友と見るらん樽人 石見津和野 咲花の香をかぎながら帰るとはつらなる雁のさまみてぞしに樽枕歌王 露つゝそことも空のわかれぬに別れていかに雁や行らん 一加幾加曽布花一 四日市 一ひ入鏡置たつ風に扇ながらまたむすびぬる青柳の糸糠主 盛岡 大山へ参る行者の骨柳となる柳も岸に堆籬やとるらん 尾張新田 回 水に留る柳の枝も雪翁てにぐりに煙ふくむやうなり 仝名古屋 川岸の下枝は水になひきつゝ風のまゝにもならぬ青柳 深草軒野野中 古河 賤が識あやことりよりも打浪の柳の原にひあたりもよし ヽ田山人 仝 風かゝる柳の糸によりて来てつながるゝ船にゆめむすぶらん 春雨につやあらひして深川に色をうつせる青柳の原世冨 一青柳のすふりもよし沢水にうつるは花にますすがた也我流亭讀丸 春風に柳は中のむつましき水と魚見てなびく川限音繋 二本松 ふりをたに水へうつせる青柳にすがたの池の名にや立らん 日船あふ友とうちある川浪にこしをかゞむる風の青柳若女 栃木 苫舟にゆられてねむる舟人をなでゝ起せしきしの青柳道形亭数中 盛岡 水底も深きみとりの色みえてうつまく糸や岸の青柳 川せみの立にもつれて行水にとび〳〵うつる青柳のかげ魚人 小舟山 青柳のふかるゝ影やうつるらん風の姿をみづのかゞみに穂鳥 丁百とおく十鶴盤の玉川や目の出にけりはるの青やぎ弟人 三日月の影も昼か新桑の眉ほそくたる青柳のいと若松 東上三十七 人吉 立まじり入江の岸の青柳は出舟をしらす風のざいふり喜多理 春風に枝のうづまく青柳のみどりの渕の色ぞ深かる真長 白浪のむき柳にうちよせて汀ぞ春のにしきなりける数恵 青柳の糸にひたすらよる魚も釣あがぬ事はかねてしりけん跡人 昔に生ふ柳と水は春風のすがたを写すあはせかゞ見也苦戒 桂川岸のひたひのはえきはへ千筋乱たゝ青柳のかみ平通避堤形 朝日り布煙を高くたてつゝも岸の柳の水しわざせり縫女 式部 むさかぬ身をや柳もうらむらん川迫にうつる水鏡見て 藤沢 近江春青畳なるみづ海のへりは柳の糸をさしけり 仝 孝々道守 水にうつる月見て猿の手の如く長く延せし糸柳の枝丈有安 石見高角 春風にさら〳〵さほの川柳ぬのやさらすと人も詠めん酒上是呑 沢水にたれふりそゝで柳髪日和に風のけづりながせり常笑 池水の鏡に写し親といふ殿の姿ににたる青柳亭唐丸 白川 七曲の玉川の水に枝たれてすき通りたる青柳の原折雀 上毛吾妻 浅々どり色そふさまや水鏡めでたくうつる春の若柳角一亭外也 仝平 渕だにも縁迄そふ青柳の雫にそむる心地すすれ多丸 仝 猿沢の池の柳の枝は手を出すこと水の月を望あり馬則 しがらみとなる枝川を流れ来るものを遣すも柳也けり万録 素直にぞ行なる。水にさからふて上へ流るゝ風の青柳万象 帰雁 盛岳 毛々多良須抱二 立跡の水をも文字もにごりなくすみなれし所へ帰る雁かね ○森蔭 高畑 棹にしもさはりて花の藪ふるとさかぬ先にぞ帰る雁かね 歌沙丸 東上三十八一 毛々豆多布 寿父流 しら雲に声打かはし行届は壽米流 花の峯こす志賀の山駕籠 毛々多良須花三 遠山の花の雪こえ行越る世富 かりも越路のそりと見なせり あらたなる春たち帰る雁かねは弘麿 我ふる里のむつみしれで 一係係の一関はとり得ずとても行雁は縦安 路のがさきし花やみるらん 春行て秋又来ぬる雁ならは壽々馬 花の都をふる郷にせよ 久志丸 古郷はみまゝなりとて寝ふけさす久志カ 春はとこよへ帰るかりがね 村松 空の袖露の袖と重ぬればぬき捨て行衣かりがね 「石見高角 天津め爰流るゝうたかたのあはやとみれば消あり金肱枕歌種 咲椿つら〳〵なして行庭よ秋は忘れず巨勢の春山真湖 古河 なえぬといへどもおのが文好む梅を桜にかへる雁がね鶏母兎 毛々多良須 盛岡 行つらを来る恋と見ることにちいさくなりしてつかりがね 月雪にうかれ過して花にまた見これましとやゑく雁がね猿人 松代 問絵の霞の衣にやき筆の跡をけら行雁の羽箒 一聴すまた来るそふ雁の請合に露の立てかへる古郷 雁望の帰る恨を聞せじと霞や余所に屋だてたる也木守 あの頃都を捨て御つゝへあきの来る迄かへるかり金山松 光陰の廻るははやし秋に来て春帰る座もつけし文車寿々瑪 東上三十九 紅葉する時きし雁の行時は常磐いそぎて時は嫌はし音繁 かひつけてつなぎとめしも追風にのりなれ行雁金の船年益 散りやすき円は見捨て散りうせぬ松の常野へかへるかりがね夕頬亭元成 雁がねは筆の海路もえらみなく能書の文字をなしてかへれ 栃木 陸奥半田 通章亭畏 羽袖さへ色のみかへぬ道徳へと花のにしきも見ずに行座真富貴 梓弓矢の如とくも行雁は帰れる筈にことやつかひし大枝 人吉 行雁を目の届くたけ見送れば影も扨も露とぞなる此成 怠也便たにせでかりかねのみもみつからかきけして行睦実 風になびく富士の煙の夫ならで行ゑもしれずかへるへね松中 一雁のみ涙そぐからずなるけふぞ名残といへる二字にて古沙女 国も見ぬさとび心や取郷へかへり手に葉のころきへがね物築 咲花を雪と見て猶春の日をしはしこゝまれ帰ら為運繁成 色かへぬ常盤へ帰る雁がねはちるてふむは見しといそばり彼音 田はむれて立行時やから〳〵と空笑かも帰るかりがね万葉 離かざる先に立てぞ行雁のそれも名の棚に並べり花也 稲荷山越行雁は初午の幟さをとも見ゆるなりけり 庄内 仝 ひのもとの盛りは今と桜なき国へしらせに行くか雁がね むのえん薄墨にしむ雁の文字消行かたや雪のふる郷秋衣菴縫女 夢に見し妻や悲しと床の山にかへせる夜るの衣かりかね 村松 厚房 吉田 ぬくとりにはや北の山さしつゝも蚊がいづるのと道通行らん 麻生 かたゑと誰名つけらんよりあふて心一筋に帰るかりがね 牛也 藤沢 咲花をかくす露はをしむやと見捨て行かかへる雁がね 東上四十 津和野 本の雪の中総分て行雁の貫ゐにさえて跡もとゞめず丁那言文無 仙台 児桜の花も見捨る春の雁仏法僧のたぐひならまし まつとてや柳桜も気にあはでかへる道磐の嶋はすねもの蜑記 加幾加曽布花一 盛岡 衆星のむかふがごとく北辰の其居をさして帰るかりがね万数実 仝 霧に来て霞に帰る雇金はいづれ羽がひもうつとしきも摩守 雁金も寝所をかへに帰るす我も寝所を起て見る空 風呂に入て空詠れば春雨に骨をながさせてかへ衆事 行雁にかゝる霞の衣こそ故郷へかざるにしきなるらめ 二本松 かり金の首さし延て磁石なす春のきたとはしりて行らし安遊民 峰越へて霞の原にかゝり行道の聲柱を送るまつ風月澄 咲花にあとしさりをやしたりけん飛おくれつゝ帰る雁がね海近 武蔵岩附 棹となりかぎとなりつゝ行届と霞の衣ひきさきなせそ早咲庵梅中 上毛松井田 珠数のごとつらなれ遠の山寺の軒端すり行かりの玉草螺集亭花盛 恋をいそぐ余りか花も見で心と空にかへるかりがね氏人 盛岡 花さかり散るはうしとて雁がねは都郷のかたのねに帰り行箕舟 高畑 とこよにてまた出あはんと約束のたかひちがひに帰る雁がね 雪中亭青松 宮崎 帰行雁みおくるやつまたてしやうに延けり麦の若生千木 春風に咲花の浪たつみ見て急ぎてかへる雁がねの船雄冨 人吉 そりて見ば山ともなりて越の獅子そく地をはなれ帰る房がぬ喜多留 吉田 雁のに月を見当にゆびをだにさすかひもなく急ぎ行空 藤沢 いとも音の名残床しく聞えけり琴柱に並び帰りゆく雁 一家土産もなくかり金は前よりもさき急ぎつゝかへる故郷若垣積方 東上四十一 たつ鳥のをしへ。も空に聞流す霞のみをやすまぬ石がね万象 野蕨 一経になる野辺の震もよくじて賤が世渡るつなとなるらん一枝 しめじ野に鍵の名に呼ぶ早藤はひく其手にもあくぞみ覧 生酔を引出こしつゝさわらびの身をかりながら戻る春の野目積 春のゝに遊び尽して子嵐の手に手を取て帰るたをやめ 若草の春海原の浪かしら春の野風にさわぐ蕨跡人 毛々多良須 早顔のこぶしを喰ふ野守をば子等もこわくは思はざりけりかり 望来し野辺の桜はまたしくも手短に折て握るさわらび世富 盛岡 人群て煙草のかふり露葉させるのやうにいづる早顔黒牛 一漁人の旅食にかへし早蕨の羽をまげたる手枕のを望芹丸 毛々豆多布 武射志野のはてやいつこと探るらん 古河 難哥免 くもつかむさまにみゆる早嶺 狩くらす春のそが野の初顔 物築 手をむなしくはまさゞりけり 毛々多良須花三 四日市 春風に撫さすられて 三江亭 手枕の 一野辺につふりを上るまわらび 腰をかゞめ手を下なから折る人の 折る人の 年益 ものうくはみえぬ小野の 早露 東上四十二 山桜最さきしかとすそのより馬をかざすやうにみえし草嶺定丸 手柄めの裾ひき留る手を出しておのれ折るゝ野べの早嶺百船 信濃南宮 春日野のこぶ火の野辺にけふるてふ柳のもとにもゆる里蕨玉眉国道四 玉たれのこすの大野の岩に愛てまき上ながら出る早蕨種成 ほちまきてかゝりし船の岡の辺に碇りのさまも見する黒瀬若女 野遊びの人足とむる早や顔は和らかな手も地から出けり万葉 下もえの草に手先をあたゝめてまたのびやらぬかべの子顔住虎 延過し毛たらけな手を乙女等がこわさうにとらぬ此べの早厳苦成 人吉 とり得ばや狩場の鷹の尾房より候とにからまる紫のちり喜多留 津和野 案内につれる野守も身をむしてそこそく云よとさせる早嶺楽水女 山蔭は餘る寒さに手も出さず日向にそつと野べのさわらび常笑 早麗の手出しかぬるは春またき焼野ぞけにもはら黒にみゆ久谷間兼麿 加茂加曽布花一 一野宿する行脚に報謝なさんとや握りこぶしを出す早蔭平規 野狐の踊れるときの足の如さわらびの手を曲ていだせり 合 さわらびの手を取あふて諸ともに野遊びせんと招く風の手広山 二本松 春の野にめつたにそだつ早蕨の花咲かたに手をやかざせし片田庵西里 さくむに命ものべのさわらびはめでたき春の折にあひけり堀松 稲荷山 暮りぬる春の日脚の伸あくびまた手を延す野べの早嶺柏林学行直 つむ袖のしみをこがむる野守にはゆかりあれどもかくすます きのふてに焼野の草の灰さしてあくやむすらんむらさき蛍梅貞 野をあらす子等に煉やうつむきて土を握りて出るまわらび秋金亭毒気 春相場たつ野の市やや子金とにぎる手と手も袖の下蕨森雄 春風にごみもあくたもちるゆべに残りて愛するむらさきの墓直路 行駒の蛇やとらへて掘る手のそろ〳〵ひらくすべのさすび数恵 吉田 長やさは始菜も出る春の野にちとに糸顔の手や出すらん吉田指月 延しても春の日脚の届かねば手も出して見る野辺の黒頭卵羅久 堀に出て朝から背を折つめのある平程な野べのさらび真遊住 衣手の小野に衣手からげつゝをる早霞の手まづさへぎる万菓 春曙 毛々多良須花二 高田 一起出て三保のけしきもほすが様も風にゆりふこす春の曙仁義堂深道 瀬谷 空の海かすみの海とわたつみとまたきはたゝぬ春の曙真柄 紫に霞む烏の色めつらしきの初めの春のあけぼの若女 花のかを雲の袖にやつゝみけんほのかに匂ふ春の明ほの三千草 毛々豆多布 二本松 時は春はるの中にも明ほのと御幸 えらみ出されし烏三つ四つ しら浪にあはち嶋山さゝぐ如万葉 心うきたつ春の明ほの 一本の空起さねはとて待身には数恵 寝ても居られぬ春の曙 毛々多良須花三 春遊亭 一月望は花に囀る鶯に 三千草 ゆづりてしらむ春の明仄 ふたかたにかゝる国雲朝日山菊好 見るにゑまるゝ春の曙 鶯の音のうつくしき色つやを目積 めにみるやうな春の明ぼの 東上四十四 菽蒔 春はたゞ明ぼの也とほめられて月も山端へかたよりやせし 本鳥の色音に富て何となく心ゆたけき春の明ぼの 遠山は西に夜明をつくるかと見れば霞に消える曙志乎甲 宵の月童の花鳥集ても物数ならぬ春のあるぼの春則 夜昼の間にはなど成つらん並ぶものなき春の明仄 吉田 毛々クダ良須 盛岡 哀れ色もしらでのみしか茶に一夜夢もむすばぬ春の曙 古河 山の端は世にしらみて月影も入るかた迷ふ春の明ぼの 高田 山口に霞をこめてさま〴〵のけしきを含む曙の空 二本松 見渡せば賤が其にふの小家までも夫さへ目立春の明方 春の気の汐よりみちて天津空海より深く霞む曙春秋亭月澄 大江戸の名にこそたてれ此末のかすみが開の春の明ぼの松守 山の端はむらさき立て名にたほふ此うへもなき妻の明仄真長 侭ほ姫の霞の袖のうら見ればあかねさす日の匂ふ初〳〵川舟 ほんのりと海つら赤く匂へるは花にや砕る明ぼのゝ空如水 春の夜のやみはいづれへ烏ば玉の光をつゝむ明ぼの空粂友 つぞ渡る為の声に峯をみけしき呼出す春の明仄真樽 面白き音の曙朝寝してうまいの夢を覚てうらみつ真清 吉田 一とあへる人の言葉の花にしも色黒をそふる春の曙元衣 美濃黒瀬 朝寝をばさせざる親の恩を今おもひあたりし春の曙水器 石見高角 鶏が啼東の空や霞まであかねさすなり春の明仄 是呑 藪 曙のかすめる空の紫は夢にぞ見たる初茄子の花 淡雪 加幾加曽布花一 一鐘の音に霞のちるを桜かと驚かしたる春のあるずの木守 盛岡 春のながめみつよつふたつ飛馬枕草草の曙の空細道 露引く将かくれして行舟のほの〴〵見ゆる春の明仄川南 うらゝかに匂ひさきたつ東より横雲ひける春の明ぼの 吾妻 栃木 白雲はまた桜とも定めぬに世を花にする春の曙用亭 近江日野 夜の間には雪かと計みたがひの桜にはるゝ春の明順通湖亭司鑑 麻生 諸鳥の声に心はかけねども寝意はせぬ春のあけび許牛 久吉 春風のたつておこせと横にねし枕の峯の御ぼのゝ雲鬼笑 高角 松風の音も引出す横空にことなる空の春のあけぼの歌種 富むれば柴立し薄露帯〆なほす御ぼのゝやま花也 梅に火を焚つけさせて暮るの小なべたてする春の曙春樹 春けしき人の心にそみ安き東白なるあるぼのたき万亀 峯花 毛々多良須花二 一吹風に峯より花の鳥おろし谷は春にも埋れやせん寿〻馬 等のはな散るとも影のよし野川流ての代も花の名所 桜花峯より落る名におはゞ三七日はあれなみのうへにも寿米流 毛々多良須 千金と詞にほめて高根なる花を見たふす人のにくさ 古河 天地の恵うれしき神妙のいたゞきを見る歯のしらゆふ 太良里 嶺の花きたの莟のふくれしをみな見に出し枝の花か 麓へと峯からをりし白雲は桜かさして帰るもろ人寿と 白雲はよほど遠目にみねの花近くはをりて詠めこすれ 冠来ぬる人の心を仇なりと峯の桜の見へしやせむ 二本松 田舎とて訪人もなき峯の上の桜計は意みなりけり 東上四十六 毛々豆多布 大枝 一よし野介動かぬ雲をしる人にて大枝 ことの盛りをみねといはまし 一雲を分さかしき峯を探し来て跡人 花をは花にみるそ楽しき 毛々多良須花三 盛岡 聞およふ耳我の峯はよしのなる る細道 花見の日きのとちめ成けり 一路分てのほれる峯の初さくら百枝 花には我も行者なるらし 森陽亭 さく花の雪のしらふの高昌助福川 福門 峯の桜をかりくらしけり みな人もかちはたしにてみよし野の峯なるむも云々の足なみ和哥女 まさかりときけば心にそみかくだ花の吉野の峯入をせん年益 身におはぬ雷を歩行に折そへて負つゝ戻るみねの桜末 緋おどしの鎧や爰に埋みけんむかしあをねが峯の誹楼春迺麗 春霞かゝるすだれをかゝげぬやと朝しら雪と峯の初花綴安 詠れは人の心ぞうごきぬる雲ゐる筆のはなの盛りに万葉 人吉 名に高き所はめをも届かせてみねども筆の本をしる哉 降つもる雪には近き図の色も露て遠くみ緒の白妙寿米流 おのがけの枕の峯の夢見草みておるうちにつひ痛め目積 筆高き本は雲井に進けれは空にしられて雪とふる諸実 ら〳〵も酔へるか峯の桜花谷の流も色そへてけり晩盛舎秋輝 東上四十七 雪と見て麓はとまれ白雲の花の上ふけ風越の如ね久志丸 時ならぬ雪こともみねの桜花雨とふらすな春の朝古風氏人 小倉ゆ峯の桜もひとたびはみゆきと人の告るこの頃 一事足 松代 峯よりも空につゞくと見るはなは骨股もしらぬ望のかけ橋木男 加幾加曽布抱一 盛岡 咲白ふ花のありかを風のつてに尋て誰もみねのさくら木実乗 仝 筆にさく花には鷹ぞうらやましくにめのつく是のたるさ 仝 吹おろす風に匂ひをつれて来て峯の桜の盛りしらるゝ槌迺音成 高田 家農の花をねことに折らんとき人も桜も峯にみち〳〵常盤丸 分のぼる道ふみ違ふ三世も野の峯さと花の雲の戸させり音成 入相の鐘に心や動てらん横川の筆のはなのあるじ今弘麿 こわかとも白雲かともうたがひのかたるめやみねのはつむ 一咲みちて峯にも花のすきまなく日の足だにも遠さり一枝 のびあがる早嶺の手やこそくりし一度に笑ふ峯のさくらは古沙女 新庄 降つみし雪かと計分のぼりうたがひとけし峯の初む 萩 かんざしのやうに見えけり桜花見事にさいた峯のいたゞき 咲みちて峯の雲かとうたがひの心とゞめて花を詠ん秋衣庵縫女 天神林 いたゞきの帆かけ桜も春風に花の浪うつ舟木山かな 石見高角 千代をふる松がえ越へて峯の図雲と疑ひ見る遠目鏡 庄内 折〳〵は露の袖を覆ひけり峯の桜に蜂のつとへば訓文 峯の桜花は咲かとふもとにて噂なかばに風が持て来る舟人 遠目にも花には腰をぬかしけり峯はへつたり皆桜にて若松 高〳〵と露の紫衣をゆるされて錦をかざる峯のはなやか花朝 東上四十八 富士が根と三上が嶽にさく花の盛も雪の面影にたつ万万 草庵花 毛々多良須花二 下総仁連 庵しめて世のうきことは聞ねどもひらけとぞおもふ図の唇万重 花による人のあゆみはさゞ浪やしかもあれにし草の店森彩亭内澄 朝夕の露をむすびし草の戸もその頃にはしがき人あし時女 詠さへ散さで愛る桜世草のいほりを結ぶこゝろに種成 常陸麻生 鎌をもて造れる草の庵もしばしからるゝいゝの盛り嬉しき桃花房三千紙 新庄 世を捨てむすびし草の庭へも前には捨す人の訪けり真綱 山の奥に庵はしめても人のとふむがひらけはひらく草の真槌 柴の戸を皆取早きて尤一枝とつたりといふ盗人もなし酔好亭浦へ 膝入るゝ斗の庵に咲花を見に人足のふら所さへなき真清 葉之喜弥志 花させば桜一木をなとして 川南 ひときも稀な庵そ 毛々豆多布 住よき 世の中をさくらに軒の 結成 かくる程 うれしくそみる花の下庵 文窗 花の紐とくより起て夏をまつ有明 朝の妹は世事にうとき庵主 毛々多良須花三 盛岡 一柴の戸に詣ふなもむつかしと名歌記 花に心も奪れて留主 二度三度かへりみらるゝいほり万数実 咲にほふたる花のめいほく 草の戸を叩くは人か山風か壽々瑪 さくらも我もとはるゝはうし 花さけはおるかと友にのそかれて 万事馬 をるかとなを覗く柴の戸 桂真遊住 客人に勤ていたむすはり痛 さくらにせはし草の底りも 草の戸も明ていはれぬ気色かな照道 心にしめし花の桜戸 世をいとふあるしの心しり顔に福養 いほりを花にかくす真盛 余の念をたちて詠る房室の花は誠に普賢像なり福養 毛々多良須 一割子たに散しにはせぬ草の庵むすびてぞまつ花の移へ兜桃成 やうもなく世を捨し身の草の色も花に詣はる人そ嬉しき木宇 草深き庵にのがれて楽あればくは咲花の盛り也けり全 本見にと花の都の人とへば人めはかれぬ是の度かな細道 若草のつまなき庵に木枕のまくらのかたに図のともし火粂友 深草の序のはなだにかりに来てしばらく足を留る諸人弘麿 両宮 色品のあるとあらゆる草の庵も花の筵にしくものはなし 稲荷山 ことたらぬ草のそぼそも此頃は猶あまりある花の白かね行宣 栃木 咲ひは守本尊の普賢像しかも都の辰己なるいほ通用亭 住あれし賤が庭へ人来とて此頃花の咲ふさぐらん深木 東上五十 麻生 歌志久 軒端まではなの白浪かゝれどもみつにことかく骨の草の戸 桑折 花ゆゑに人の詣来る草の庵春はさくらぞあるしならまし 待えたる甲斐あるむは朝まるき目さまし艸の庵の友とち万多羅 世をさける桜に軒のかくる程嬉しくぞ見る花の下庵油垣庵結成 浮世をば軒のあらしよりの戸に桜の雪のつみな作りそ数恵 ふさうしな庵の本見に蝶々の夢にもしらぬ人ぞ詣来る文谷園草麿 上田 伊勢乗名 尊蛙亭歌住 みとりそふ草の底も火ともして人のよるまでとへる花の戸 其の中のひときも花になりなりなまし庵のひと木の桜咲出て照道 盛なる花の庵の埋むほどさきし桜のにぎはひけり山松 この中まへて楽しき桜花捨す詠る庵の長閑さ末成 雪にきるみのかと人のあやしまん花のおほへたそふきの庵全 都より便なけれど春来ればはなに賑ふ山かげのいほ甲良 うき世をば捨てむすべる草の戸にときかゝりけり花の下ひも 加幾加曽布花一 四日市 浮世遠き序の花の一もとを人もともなひ来ても見よかし 古河 一訪人もなくて我のみ詠るはうきよをさける本の桜戸 高田 草の戸の余りせばきにつとむればはなのつかへる庭の桜木万類 雨もゝりかゝる為に住居ても花は都にかはらざりけり八嶺 古河 草の庵の軒にかう〳〵散る花のふだきにさそふ風鈴の音合方庵百柴 生茂る草の庵の詠にはわけて目に立さくら咲けり山松 麻生 尋来し庭へさすが入かねて苗桜戸のあかず詠めり牛也 藤沢 春はものゝ床しけれども草の庵に独図見て世をさくらす ありかたき草の庵も花咲を御法の縁となるぞ嬉しき常笑 東上五十一 吾妻 よを捨てすめる庵にも咲みちて桜やものを思はするらん南陀楼秘安 訪ふ人におらぬといはゞ折やすと案するむもうたがひの雲万亀 寄星恋 毛々多良須花二 盛岡一 一衆星のむかふが如くいひよれとちとも勘かぬ妹や北辰行長 約束の是も違はず落合は心となる迄あやかためん 毛々夕良須 四日市 空主をいふてつゝめと恥かしや忍ぶ思ひの星をさかれし糠主 むら雲のふるまひ見つゝきら星の光りきませる君を待背岸井丸 古河 待人の今宵破軍の打向てくるやうにとて星を頼めり田山人 星のこと腰にあふ夜の真玉手の事まてさしかへぬか夜嬉しき世冨 逢で恨むしぞつれなし大空の星より多き人目忍べば壽々馬 さかまほしみまほし妹が便ほし哀れ一夜の逢望もかな左和亭達徳 毛々豆多布 君か心ひとつといへと大空の 木守 星の数よりまさるうき照 毛々多良須花三 人目ぬすむ恋の響こそ 物藻 ごさんなれ ほしをみとりの林とは見て 高田 永日堂春丸 蒸ふる魂の星のやうにも飛ゆりは永日堂春 ひかれし妹やつまむすひせん うきへは天津星ほど隔たりて。糠主 昼間はみえぬ袖そ露けき 恋ふる身は宵暁の明星の三巴亭三津九 あちらこちらにものぞ思へる 加幾加曽布花一 恋人をうはの空には思はしなはれてぞ妻にほしと願へり弘麿 忍ぶ身は雨夜に出し一つり人にしられてゆびやきゝほん好成 星よりもかぞへてそぬ思ひさへ唯空ことゝ聞にける哉備丸 我心月なき夜はや恋やみのはれぬ思ひはほしの数〳〵真遊住 契りさん遠く隔てこゞかざる空に数みる星も恨し種成 藤沢 忍ひ後目の病をとかこつけて星を尋ぬる恋のやみの秋道寺 あふ夜はゝ路のおそきぞ恨めしき是に巽の名をも思へば 織姫の星やまつりてあえにけんはたしてあはぬ君を思へば秋安 川又 夜這望と咎られなばぬき猶し帯と衣とは村雲にせん 四日市 かたき石の約束をせん星のめうはの空なる人も落なば糠主 待宵にふけ行空を詠ればししこぬかの星計見ゆ 忍夜のねになさんいりひとつはつからふかと足も空なら照道 いもとせの契も深き天の川ほしの数ほど年や道ならん八嶺 舟底の枕に妹と契らんと星をめあてに給ふやみの夜氏人 伊勢津 星落て石となる夜も忍路の室に夜這の名や立ぬらん 人吉 宵月の入間をほしと頼む也夜半に忍ぶる恋のやみ路は水住 かさねぬる夜はひたほど別路はあとへひかるゝ心一そぢ森雄 つかへたと妹が言葉のにごりから恋やみとこそ星をされつ直路 通路は人めを忍ぶ恋のやみ月よりそのかげぞたのもし常笑 契りだちらすき星の空たのめたかへすといひしかね言碗万衣 磯松 毛々多良類花二 浦嶋の鯛釣り鰹釣る儀におもはず年を経ぬる松かな諸実 枝折し昼かと見れば白浪のよせて色ます磯山のまつ万葉 風の音を跡に残して引汐の浪の声有るいそ山のまつ山松 毛々多良須 目でたさ 《名《《仮名:《振り仮名:《振り仮名《名仮名:《振り仮名《名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名仮名名名仮名仮名仮名仮名仮名仮名名名:名 浪の上に薬もとめて長生の松は磯辺に年をへぬめり甲良 伊豆下小野 藻塩たく浦のけふりと打浪の音につれたつ磯の松風 繋く舟を力や入てとゞむらんこぶ立て見ゆる磯の松枝松成 栃木 むら千鳥雨にやどすは逆にし爵をしるはの磯のまつが毛 日野 言の葉 蜑が子の葉や見習ふ浪風にもまれてみだつ磯の松枝月澄 磯枕させて老木の松の腰うつなるなみの音ぞ聞ゆる菊人 海王がたくもしほのけふり風に消て松のみたてる浪の荒磯貞益 幾千もよらで月日のたつ浪のはなみて暮す磯の松枝跡人 毛の多良須花三 高田 年を経ししるゝの皺は打まする 万籟 なみにゆつりし磯の松か枝 汐風にもまれ〳〵て 深木 枝ふりの つくりしやうな磯なれの松 立て来る浪のかしらのあやふしと 真清 さし出の磯の松や 覆ひし はき高うあらはす松はにゆるぎの磯菜つみにと出るやう也真広 たてバたちたゝねばたらぬ浪の音おもふとちかや磯の松風跡人 磯はたにうなつくさまの松蔭は打よする波に答へなつし繁成 沖遠く磯辺のしほはひさやけど千年もあとに残る松哉諸実 十かへりと数も限りはあら磯の松のしづ枝に浪の花さく睦実 千代をふる年のなみきに磯の松春の若めも出る也けり弘麿 あはびとる海士が主党を見習ふか浪をくゞりし磯の松がえ寿米流 海原にさしむる月を待とてや磯辺に高く延上るまつ氏人 親の日に魚くふ海まやそだてけんせいの延ざる磯の松がも岳住 打よする磯の藻屑をまとひつゝあらめづらしき松も有はり照道 幾千代の事を重ねて額のよる浪に腰うつ磯の老松種成 松がねを越うつ浪にあらふたび根はるは枝のやにやらん大枝 十かへりかくして打浪に団の咲らん磯のまつがえ糸成 加幾加曽布花一 古河 一塩の山さし出の磯の松枝は浪にうたれて瘤やむけん太良里 松がえの色をふかめて深みどり詠に人もこよろぎの磯菊好 汐越の磯辺のもろは鷹の如にし日に影のよこ成行せり千代往 阿波徳島 船をのるめあてなるをの沖よりも松をあかしの磯にこそみれ鳴戸静丸 またしては小舟を枝に引とめてとかくさし玉の磯のすねまろ入船 藤沢 打浪の音をそへたる松風に煙れまふしほかまのいそ 海風に吹さそはれてゆら〳〵とげにこゆるぎの磯の松がえ 一かたになびく姿は浜風の自由になれる磯のひまつ真湖 こゆるぎの磯立ならし跡ならす姿とぞみる根上りの松〓魚 川舟 毛々多良須花二 盛岡 落したる故事をいひつゝかひ川にはかせふりして留る沓に繁門 よる年と流るゝ宇治の柴舟はおほく積ほどあし重げ也寿氷流 梢迄のぼるやうなる猪柏子に月はさしたる枝川の舟 吾妻 みなの川みなれし舟はつくは根のはご板ほどにをりのぼりせり 毛々多良須 一水馴様身にはなれこと行水にまかせて下る淀川の舟木守 梅の木をきりて積けん音の花の柴舟かほる春の川風真槌 さゝがにの木の葉にのりしためしあれば糸もて曳る淀川の舟三津丸 馬で行ようは木幡も山さきも寝ながらあゆむ川舟ぞ川南 空治川にこれも源氏の物語釣りのうき舟ゑのかゞり火若女 むかしより引つゞきたる君が代はひけど尽せぬ淀の川舟岳住 毛々豆多布 山谷の名に流れ来てすみた川万葉 人も落あふ渡しにかな 最上川みかさまされば舟人も跡人 かふりをふりてのせぬ乗合 毛々多良須花三 二本松 のぼるかと見れば下りついさよふは 美種 否ふねなりとあやしまれけり 盛岡 金岡 一川風に顔を覆ひし其袖を実栄 帆にして戻る宇治の柴舟 一芋野川下せる舟の揖の音に真清 真清 聞えて紀伊のはしもとにつく 人吉 土手住政 汐ならてさすのもあれはひくも望月満丸 のほり下りの淀の川舟 東上五十六 加幾加曽布屹一 盛岡 納りし御代は鎧の渡し守みの里着たるさまぞ愛たき 津島 両国の薬研堀からやげんにも似たる小舟ぞこぎ出しけり 最上川早瀬の水の遣はしさにあとしさりして行かぬ稲舟真枝 夕風のふきて桜の事とふる花にぬるめる隅田の川岸呑込麗 すみ田川桜乱れて舟人の目をつくばからはこぶ嵐か仝 世の中のなり行さまを見するこやのぼれは下る淀川の舟木守 横だにももちつけてうす鴨川の舟さへ安くとうぞあつかふ弟人 木下川に燕と見し花あれば土をはこびて船も行めり大枝 明やすき月の夜舟の木枕も寝耳に水の利根の川音発枝 夜はのぼり昼は下りて明かたは水の淀にや留る川舟里人 人の為にさして渡せば居ながらにむの詠を隅田の舟長袴家 十一 花盛 毛々多良須花二 福島 さく花にあたなす風に宿かせし松もかくれてよえぬ真なり 盛のみ見るものかはといふうちに藪ほは花の跡ぞつれ〳〵万事馬 伊予三つ浜 此頃は風ぞ通さぬやうにとて桜のちやみちふさぐん 佐茂信都亞蘭 高田 きのふを餘所のなみに日を追ふて宿の桜のさかり知らざる深道 二本松 雲となり雪となる木の盛には雨となる日ぞ気にかゝり 鼻鳥を花の枝折に八重一重さき尽したるみよし野の山花咲庵氷守 半田 咲み出て花も残らず出る人もけふが野とみよし野の女 一真冨貴 麻生 まさかりの花に心を打込ておもがたつきをしる杣人牛也 一時に笑ひ出したる花と花にらめくらせし茅野小細瀬蓑葉蓮葉 雲の居る所もあらじむ盛見る人さへぞ山にみつれば睦實 高畑 世の人のゆすれる尤の盛みれば七日からぬも不思議なりけり 蒼さへたゞひとつなく枝と枝ひとつなきなる花いわりな繁成 五泉 一森龍亭仲住 一面の花の鏡の池水に心もうつる姿みえけり 仝 書信の絶てあらぬにとはるゝは花こそ春のみやびなりけれ 天神林 盛には訪れし人の帰るさを本の数よりをしむ山里天 庄内 咲みつる花を雲かと疑ふて動くは人の心なりけり 白妙によし野の山は埋れて本に帰らん方角もなし常笑 毛々多良須 真智のよし野の本の花の鈴にせん金の御嶽の金もなら龍迺屋 咲みかて数る斗なりさはるをもひや〳〵おもふ花の白雪 人の気も外へはちらし風の入る違方もみえぬ花布成 なへて皆花の都となりにけり雲井にまがふ四方の山〳〵実栄 毛々豆多布 芳野山日を覆ふ花の雲の陰 万葉 うつる麓かくろむもろ人 こもりくの泊瀬に通夜の 夢見学物楽 藤見学 物楽 七日そ満る花のしらまら 寿々馬改 咲満て枝やをれんと思ふ程 森野亭 花の雪には気遣ひもなし 馬伎 松代 花盛親てふ雨をしたふてや 蘭薫亭 みな雲となるみよし野の山 山さくら咲も残らぬ本に猶彼世 あかて心ののこる夕暮 色々多良須花三 盛岡 うるしさへ名に高けれは一面に森昌亭 花にかぶるとみよし野の山 實乗 一咲満し枝へのほりつ花折て龍廼 龍迺屋 こがくれにけり親はをしめど 白雲の延分れゆく朝ほらけ世富 まことの花の盛なりけり 気をつけてみち〳〵匂ふ山桜若松 さかりの花の雲のあしもと 枝折して分入る山はゆく跡も川南 さきも残らす花になりけり 菽蒔 さきまて埋れし松はさも あらで 有明亭 月彦 酔ふす人よむの雪折 柳鶯亭 遠乗の駒引かへす本盛 ちるを惜めは繋く木もなし 常笑 東上五十八 盛岡 宮人のかりの使に盛なる本は見捨て行れざりけり 藪もせずさきものこらす花の枝に心の猿も繋れにて 仝 薄露蝉の羽ほどに透通りうつくしよしの花盛りな繁門 賤が家も出茶屋となりてむのやし谷の替りたる音の賑ひ目 麻生 咲みちて軒端にちかの花の雲うつし種たる塩かまさくら歌志久 白雲と三輪の山さへ埋れてしるゝの杉も花となりけりけり 盛岡 一南晴る西山の端にからやくは夕ひさくらの盛なりけり細 姨捨山麓 一花のみか折たる人も白浪とうたがひの雲も又たつの山蘭溪共 吉原 隣からむの盛をしらせ来る風をかならず人ないとひそ常躬 どことも隈なく花の咲つゞき是ぞたになくみよし野の山小詠 しつ枝迄本はみち〳〵折れるいと思ふやうにも心のりけりけり みよし野の花桜戸にしら浪のよるみだんはならぬ山寺秋木庵縫女 一花盛内をはそとに山風のふくとをすとそ入替りみゆ綴安 麻生 一めんに咲し桜を花守のくれぬ工面につくるしう面三木亭枝繁 楽しきは先目のまへの花盛頓てちるてふ声をもしれて古沙女 出けいまも嵐にちらふかと咲てかへらぬ物思ひぞする比左志 日野 青かりし木々の梢も埋みけりよし野の山の花の白雪 空とみえ雪とみえたり〳〵と咲かさなりし九重の花数恵 桜花賑ふ山の奥までも見に来る人の盛なからし月人 吉田 爰かしこ透間に流る枝川は盛の花の雪折とみつ 元衣 世の中に春の心の長閑さは花の盛になればなりけり 真柄 庄内 花の雲に心はのりて内は野となればいひたて艸ぞ多かる外成 仙台 ゆひつけし埋木摺の短冊もさかりの本の浪にかくれり唐唐 桑折 世の中は桜につれてむ見する人も盛になりにけるかな 御座 花にはな押あふて咲ふさくにぞ風さへ給てたゝぬ長閑さ朱人 五泉 ねん入れて盛の桜けふこそはちりしく迄に花の下臥 泉音清 仝 むかし忍ぶ志賀の山路の本盛宮人もさぞ御こしなさんし 扇加那女 伊勢津 本の雪道もとむるもたつきよしかねて木幡に馬ありとく 十字街 大和新庄 折る人のひまや有んと山守はひまなく廻る花の山道 真綱 全 雲雪に似ずよ色にの深きにはまがふ方なきなせなり 白川 本七日家路しれし酔人はあたら桜に科を負せり 折鶴 吾妻 日和さへよし野の花の盛には人の心も香に匂ひけり 合歡亭己起 上岡 人皆のかざしにしても余りある翁の嶽の花の真盛 東上六十 加幾加曽布花一 仝 一盛には雪ににばなやせんし茶春の寝ふ葉をさます桜木永白 石見高角 豊なる御代や盛とさく花の枝をならせる風さへもなし 野楽斎酒月 津島 姥さくら稚児桜だにさきたてゝ見にぞ集へる尤も若きも 。管雄 盛岡 盛には誰しも心奪れて無心〳〵にこまる本寺 森蔭 嶺はみな桜の花の咲みむて風雲の出る穴たにもなし真長 咲かへていく世も花の常磐山老木も今は盛みせけり森影亭月隆 一松さへも身すぎ休て珍らしな拝織きてみる花の真信亭数成 相模磯辺 一みよし野の山の魚迄見通しにくはらりと開く花の桜戸堂歌亭年久 咲みむし花の頃とて妙家迄しらむも早き明ほの桜高澄 風待はせねとも花の盛なる帆かけ桜に人そはしらす万葉 一杣人も山の桜の真盛に我まさかりは捨て詠めし四ツ起 なさかり守てくる〳〵廻りへも立せさりけり風本売跡人 さく花の雲の八重蛇さかりには初て顕をよむ人あり諸実 諸人の通ふ外山の道はあれと花の盛に家路忘るゝ 栃木 衣迺屋織女 雲と云ほひ雷とも峯に顕はわついづれ桜の花はみよし野人成 ねが上にふりつむ雪とみよし野の花のかわは人なだれせり寿米流 白雲も山の桜に埋れて誠の花の盛をぞ見るききさ子 一盛なる小町桜に雨風を歌の趣向の外に案しつ万多羅 山桜咲る盛をかれずみん根のなき雲の花に迷へば真 咲あまる大内山は歌人の詞の花もそへて愛けり種成 桑折 日にましてさきの盛のさくらむ中〳〵風のたゝりになし 綻びし花の盛をぬふてゆく針目どほどもみえぬ青空 東上六十一 盛なる花を骨に飛鳥の山でさしたりおさへたりしつ森宮荘湯楽 かゝる時すたれ雲とやみるならめ霞かくれの花のさかりは糸成 麻生 歌人は気を砕く花の真盛に出砂は手を休めてぞ見る 吾妻 入相と夕日の影を今しばしながめにしたき尤盛かな 杣人も尾の上にしばし休らふて外山詠る花の真盛馬則 天人と思ふをと女の姿さへとゞめし花の空の通ひろ万亀 橋落花 毛々多良須花二 吹風の手児處の宮にちる花はふる雪にそのまゝの継はし真槌 うらやましうまいもさす橋の上花の筵を着たるかたゐは跡人 雪ならば袖や袂を柳はましむのふゝきのふるの高橋結成 雪と見て秋寒の風にいる花の取かたしく宇治の橋姫種種 毛々多良須花三 色々多良須花三万亀亭甲良 夢ならは宙も飛なん花の雪 万亀亭甲良 ふまゝくをしきうたゝ寝の橋 鹿杖庵真臣 散ることに心にかけて詠たる はなの七日や夢のうきはし 栃木 長等川に折たる跡へちりしくは 通宝亭為保 花の浮はしかけ替にけり 三河吉田 ちる時は花も八苦のくるしみか 杉山入 橋にしくあり川に敷あり 天和新庄 吹いるゝ風に水かさや増からん橋の上越す花のしら浪 風を覆ふ袖もかなとてながく間に橋の袂に花ぞ散しく 人目だによるの御風にちる花のしばしよどむか朝えの橋静牛 ちり積し花の鳥にも埋れて撓める枝とみゆる柴はし万葉 毛々多良須 ちる花の姿の橋を踏はをしと廻り道して遠くよりらつ真清 吹寄て橋の袂にあまりけん風にこぼれて桜ちりかふ仝 こき交しさまにぞ詠む桜花ちりかゝりたる青柳のはし菊好 ちり積る花の白雪踏せしと隔てしやうれ橋のゆきかた難哥兎 通力を得たるか風は本をいれて朽てながらの橋を渡れり世冨 東路の佐野の舟はしちかむもしばしは枝に繋き別てよ穂積 夕風にちりかゝる花の雪の袖ふるふて渡る佐野の舟はし森蔭 丸木橋わたりてともに落なんと花にすがりて風のふかへる万事馬 空のあしいとふて月の渡るそふ橋には花の雪そつもれる芥丸 人皆のちりゆく花をしはしとて橋の袂に心とめけり千形 ちる花の雪に跡なき長等橋ふしんそかゝる春の行へは広湊亭古船 糸桜咲はだれては一筋の道のはしさへ分らざりけり ちらぬむふみて木曽のかけ橋も陰はしたなく散稍かな真進良 萩 橋の上をみれば其侭ぎぼう珠のぬれぬ事ふる花の夕立淡雪 秋よりも猶春風は咲花をちらすに胸ぞとゞろきのはし睡実 時しらぬ雪りとぞみるひちりて鹿の子まだらになりひら橋は森雄 雪消る時も木曽路の掛はしに又あたらしき尤ふゞき哉波音 盛なる花もさそへる風に今ちりて乱れのはしとなりけり 東上六十三 世の人の心ゆすりし桜花ゆれてゆるきの橋に散けり寿米流 天神林 名にしおふ天の川原の打はしに散のむむや雲のかけ橋 藤澤 一誘れて風に桜のちりしける花水橋の春の夕暮 加幾加曽布花一 盛岡 をしまれて袖打拂ふ影もなし駒雨橋の花の雪吹は実舞 名古屋 春は猶越て行らん懸はしに散にし花を枝折にはして野守 高田 雪と散は力もなそのしら橋にかけてとけざる花の白浪春丸 行着に冬の姿の橋なれや数つもりたる花のしら雪弘麿 かつらきの契はさぞな花のむる頃は往来も絶る岩橋菱象 散むに佐野の船はしさして来て猶人とむる浪のしがらみ吉成 花の雪ふむををしめば戻橋向ふへわたる道はあらじな青葉亭哉 咲へたつ屏風飯をも飛越て三枚橋にちる桜かな花也 咲乱れみなぎり落る谷川に橋や流れん花の雪解 一春風の花こきちらす青柳の橋は雲語錦なりけり春則 かさゝぎの渡せる橋におく霜と散つもりたる花の白妙伊佐美若駒 かけ橋を渡れる人ぞなかりける深くふりつむ花の雪雲も小詠 ちる家の雪には跡もつけなとてあぶな〳〵も木曽の懸橋久志丸 散埋む花の詠めも又よしとみつればかくる橋もしらずで古沙女 美しき花も梢をさるはしやとゞむる智恵のあらしもぞく波音 をしまるゝ心やりにと散しきてけしきそへるか花の浮橋繁成 桜花長き盛りも過て今短かるはしに散積りけり岩門 上岡 雲井迄匂ひし尤も風の手にうきを束ねし柴橋に出る ちるむの風に廻りてわたものゝ打はしにかゝる雪とそそそし万象 遅日 一々多良須花二 紅葉見し秋のふた日を春の日の継橋にしてもかけたらぬな 小望井へを葉をして桜見に馬のはるひものびし此頃福養 春の日の足の遅きは乗拝して辷る心路に手間やとるん三千草 世の中は花になり行長閑さに道学なれや達き日の 妹にあふ夜をまつ人やうからましむにくらせとなき春の日森雄 六阿弥陀あるきしまふて見れどまたやく物かたへ廻る日のあし満葉 毛々多良須 盛岡 咲前を見ばやと月もとくむればまた暮さうもみえぬ春 日のあしの遅くなる程春は夏へ近つく事を知らで過せり馬枝 源氏よむそばへよる女の童にもなれきて蝶の眠る日永き龍迺屋 かたふきし日さしに賤が夕煙りちゝと計にやつとけり祭友 毛々豆多布 一暮ねしきのふや今日に残るらん本人 けふはきのふに増さる日永さ 春の日の永き昼夜にゆつくりと 二日になして遊ひけるかな 毛々多良須花三 伊豫松山 くるゝかとみれともくれぬ春の日は田井鰭振 扨どうよくに永くこそあれ 古河 さほ姫を連て廻るははからぬ難気 なみなりけり春の日のあし 一退屋の余りにか遣し時計さへ岳住 くるひやせしと思ふ日長さ 松梅亭 雛の節句過ても身をぞちにつく商人 もちにつく商人 よもきの宿の春の日永さ 東上六十五 本見にと霞の衣の上やはに穴より望き春の日の足甲良 うか〳〵と三日ふりをもとりしまふ糸より永く思ふ春の日商人 暦には土風舟倉かさなれどあくび計に過る春の日松能宿 うらゝなる春の日永にこく〳〵と猿子柳も眠るやうなり数成 一枝を気長に乞へば本鳥もやはり気長にくれぬ妾助年益 道艸もくふやゆか〳〵春の野に日の白駒の金〳〵あゆむは万業 鶯の城に繁るくれ卯の夜を隔たる春の日永さ物菓 春の日は昼寝の程も一夜にて今朝をきのふに思ひまひつ千顆 冬の日にあまる用事を二日ふりしまふてもまたくれぬ さて永さ春春日とともにのむる艸に隙やく駒もなつむ成らし跡人 わづかなる花の七日を見な行に何とて逢き日のあゆみぞや真臣 木のもとに来しはきのふと思ふ程むをみてさへ永き春の日橘迦古世 みかの原三百ふり程の日永さに足ものばさん枕りせ山麟馬 加幾加曽布花一 伊豫三ツ濱 旅衣永き日あしに灸すえて三里ゆつくり春の一時海松布長房 盛岡 一空に遊ぶ糸遊までもからまりて長う引なる春の日のはし南福楼烏川 松代 落さうにみえても落ぬ春の日は霞の棚にのせて置けん蘭薫亭 長閑なる昼寝の夢にもろこしへ往て戻らるゝやうな春の ふるき世の書をしなにつれ〳〵を慰めかねつ春の長き日川南 春の日は暮かゝりても入かねつ長きを人のもてあます 栃木 暮かねて町みて歩行旅人の下駄の鼻緒ものびし春の日通用亭 かたふけるけしきはあらし長閑さにすはり込たる春の日の影月人 吉田 春の日の足の遅きは糸遊や露の原にからむ成らん指月 東上六十六 仝 朝の事昼に忘るゝ長き日は若きも老の心地すれ杉山人 程もなく聞入相に永の日も短くぞ思ふ昼孫過して万象 野雲雀 吉原 毛々多良須花二 一筋に寝る空へ揚雲と雀ひきゆく糸のつりあひと 巣に育つこや野のひはり親の恩を天より高く聞へ上らん 雲井より野辺に雲雀の落方は足を霞の引やしつね かぞろふの小野に雲雀の上てけりあるかなきかと思ふ計に聞 春の野の森の網の目に留てみれどもみえぬ揚雲興菊好 古河 耳のなるそれかあらぬかせの雲雀空にのほすとみえて舞 盛岡 留守の間に床やとられん揚雲雀心も空にをりは忘れて名歌記 是はらや空に其雀ははゝきゝのはことはみえて声そ聞ゆる福養 毛々豆多布 駿河吉原 森嶺亭 雲間より落しひばりを尋れは 常躬 常躬 めにもかゝらで空に啼なり 毛々多良須花三 むさし野の広き所をせまたみて真清 心大空にたつ雲雀かな 木守 見る目にもかゝらで高く飛火野の 〆 夕日の雲に入るひばりかな 向鏡亭 若草の床も野辺なる 菱象 夕空の菱泉 月を迎ひに上るひばりみ むさし野に床しめておく雲雀にて春則 千畳敷に寝る心地せめ 東上六十七 霰たつそ辺に煙草の薄かにあしを留はやよき麗筆堂 啼音さへはるかに富士の銘おから低くて高く楊雲声知万葉 下りとる影は蕨の手すさみに投しつふてと見ゆるせならむ 手枕の小野に野馬のうたゝ孫を覚す雲雀の床や揚らん 村松 なきりに退屈せんとうたひ岸野守にみせる五々正やき 五日妻 富士がねのすそそを舞て橋其夜天津乙女のまねやする 武蔵野の果のしれねば見上たる空を近しと揚る雲雀に 加幾加曽布花一 津和野 久方の雲井はるかに揚重森いつの間にかは落てかくれ松歌の 古河 枝望もなき青空に舞上りめにも留らで空雀啼野とも 大空へ雲を露の袖頭中それともみせで揚る野雲雀花也 舞雲雀たつ野の空の空の海に入て霞の網の目にも留らず世富 盛岡 蓑葉のそれかと見せて梶雲雀野中の水に影をうつせり 仝 あら鍬の砂が手葉のさまみえて揚つおろしのしの春の野原 啼音をも本とちらして上雲堂堂夕辺小草の根子帰りけり 磯辺 梓弓矢田の大野の揚雲雀霞の中へひと筋にいる 折〳〵は国府のやゑる野がけ道空も雲雀の舞留て見す真遊住 盛岡 露海之若葉の床はうるさしと水なき空に上る野雲雀 麻生 鶯の類は雲井に聞えすと思ひを野辺に上る雲雀 藤澤 目のやくたせは空井に揚雲雀影も名におふ飛火野のはら 都代志 桜ほばりちを笹葉野の名におひて笹葉の風にそよぐ羽かく羽遣ひ万家 軒燕 一商人の見世をこやすのかひあれとかまへし棚に通ふ堀大枝 餌をはこふ雌雄の燕は肝の端をすれあひながら中のよくみゆ睦実 吾妻 一整かふ軒のつはくら我子にもくはへて来けり糸を出す蜘甲米房花竹 一番子二番にまても育けり孫庇ある軒のつばくら古沙女 毛々多良須 立並ふ軒端もかすむ春ゆのふる巣まとはて来る恋かな馬伎 一茲は畑の土を運ひ来て栄作る軒に千種おろせり木守 うるさしと柳の柳入軒の端をのきもせずして通ふ葵花也 古河 青柳の糸に習ふて己か巣をかくる軒端にからむ蒸 盛岡 尤よりも團子といへば汝も又ひがんと知りて来ぬる意 伊豫松山 京に飛るは鳥屋か軒の音板か誰しもかはぬつばめ啼なり田井鰭振 馴来ぬる門忘れてや幾たひものそいては又のきの恋菊住 旅衣きつゝ馴にし軒端にはかきつはたにぞ似たる燕若松 毛々豆多布 一福草のみつ葉よつ葉の軒端には岡人 うべもとみには来けりつばくら 毛々多良須花三 猩〻庵 一子を育つ新の燕は塵の外に菊人 冬に心も運ぶなからむ 青柳のけふる軒端はつばくらの堅川伊志女 やうつり粥を焚にや有らん 一橘はまたきながらも宿りけり種成 むかし忘れぬ軒のつばくら 藤澤 布をうつ足袋屋か軒に女夫して有安 つちを互に運ぶ鬢 鳰とりのかつしか早稲はまたきに青女流 にひす作れる軒のつばくら 燕は来るその日より休なく出這入しげき町置の軒 往つ来ついくらの春をふる軒に刻〳〵敷ぞ通ふつばくら 土と塵もて恋は誰が軒もきはつかはずに栄を作り もの言て汝もよさりやええふらんうぶ屋を作る軒の煮万葉 運び来て落すつばめのちり〳〵となへ顔なる軒の風鈴全 水浪なる杜若にも似たるかな土に生るゝ軒のつばくら睦実 なれ〳〵て来ぬる恋のやきし比に軒端の小庵の屋だてつぞ 鍛冶が軒鋤鍬隠をうつばかへあられの土をはれぶ恋海近 村長が軒のつばめは汝が子へも依怙贔負なく餌をあたへ仝 用心のよき軒端には猶も子の為に土をもぬる売りな人成 栄えたる新端になとて燕は子の養ひに苦労なすらん訓文 新庄 市ぐらのぬり籠おほき中に来て茶をぞいとなむ軒の蒸住虎 世にすたる土と塵とを軒端にもつばめたりぬと葉をぞ作大枝 去年の巣に土と蜜土を積みてなじみかさぬる軒の燕諸実 茶を作る頃は藁家も瓦家もおなじさまにぞならつ鬢万葉 さく花のいほりに絶ずゆき画ふ燕は軒の小蝶とぞみる山松 廿軒こる賤が家居に二羽三羽しば〳〵通ふ軒の乙鳥商人 加幾加増布花一 大黒や軒に来て巣をかけ恋つちうち付て出す子宝行長 さく花の空さへみゆる軒端にはすをかけに来て燕師なり繁樹 此春もふる巣尋てきさらぎの軒端しれず宿る燕廣長 己が巣は人の軒端に懸り人肩をすぼめて出入るつばくら松能宿 育たる汝が子の数を三つ五つむつみてぞ住軒のつばら数成 東上七十 池かけの如うつ軒につばくらの菓子もをそろへ 野馬台の四軒間口にきなれつゝ蜘を尋ねて運ぶ恋真避住 そぼぬれて斯ばに這入智恩院傘をたのむか事の丞大枝 塵にまじる神地に巣をかけまくもかしこく作る軒の熊八嶺 長閑なる春の原ゆふ磯おるかひのさす軒に通ふ恋真水 春まのふりも永井の居合こしそりみに軒を這入る丞不二彦 去年りれ育られたる賤が家のふる葉に来てぞ馴る恋原住 つばくらの軒端みたてゝ置そとこそ〳〵作れ社といふ古に鶴亀 池邉藤 池の面の松廉に影のまつはれてこみぬむもあがた藤野 一紅梅のちりやし池の水浅黄うつせしむの色や宿なみ森蔭 一本の色の青田の池のみぎはへも人の心もよする麗なみ秋食庵縫女 鶴亀の池の汀にさく藤は盛りも長く色もめでたし小松若女 石見高角 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 盛岡 いろくずもともに御寺の池水へはなたれて咲藤の藤浪全馬 仝 風をいたみ岩うつ浪におのれ又打合ぬらん池の麗なみ広成 藤が枝のからみて常にものつかぬ松にも心うつす池の面 鏡なす姿の池にのぞみてはふりをもなほす風の盛み入舩 古河 亀の跡いはれの池の汀迄舞さがるつるの窓のむふさ 栃木 よい程に虚の下りて松の鶴池の亀との間にこそさけ通用亭 春深く咲田ふらん藤の花長津の池にゆかりうつしてきさ子 池の面にうつれる藤は上なしと見る人母にかゞむ棚下満莱 東上七十一 森彩亭 毛々多良須花三 春夏にかゝれる池の藤なみの 月澄 よせつかへつみする夕風 高田 暮秋菴 藤なみと汀のなみのふたなみを 万類 みなみに人のきよすみの池 懸りたる藤は紫のひも刀 大枝 さやまの池にみさびたになし 式部 真糸庵 一池水にうつりし影かしら藤は房得 底より浪のたつかとぞみる 求銀丁が 武士武士 藤沢 問ずとも池にかむれるむ房に藤なみ家とはみえて位高し 一庭馬の藤をや折とうたがひてとばしりかゝる池のあだ波若松 紫の言をうつして泥水に染るとみゆる峯の藤なみ原佳 天も花に酔さめの頃池の面に水をのぞみし常の花房松梅亭商人 ゆく春の池のほとりの雪の花夏へとうつる水のゆうな弘麿 紫にいくしほ染る藤なみの打上りたる池の水際 吾妻 夫高 紫の藤の厚房かけてほすもがりとやえん池の上の棚 加幾加曽布花一 常なみのよる縄とみる鶴亀の池にさかりもなき春の日馬伎 姫松の花のかざしやさしいでし池のかゞみにうつる藤浪 駒ケ崎 古河 酔覚か池辺の松にふら〳〵と水をほしげに伝ふ藤なみ 百米 盛岡 吹風に争はずしてよしあしも友によるかの池の藤なみ 々繁門 東上七十二 池の上左右に藤の橋かけて春から夏へわたる藤房音繁 麻生 一佐保姫の役所かも下り藤陰と日向にうつる池水野 さげ髪のうしろせをうつしみる合鏡の池の藤なみ菊人 見て居ても咎ぬ池の心よし折るとて藤のなみは騒げど 汀より池にかゝりし橋に迄這上りたる亀井戸の藤連亀堂 稲荷山 春の日の分てぞ永き藤の花影みる池の底にうつりて行宣 吉原 一咲日より本は朝夕水かゝみ影も益田の池の藤房博人 老て行春の詠めをます鏡姿の池にうつる藤なみ弘麿 紫のうつれる藻の花衣ちりめんとみる池のさゞ浪 池水も風にしはよるちりめんのおもてを藤に染るむらさき 藤かつらはふ木に餘る本房は池の松原にからむ水類叡恵 花は誰が見事一よい池の坊水きはのよき岩のむらさき喜元締 筆にむかぬ風もあらふに白藤は鏡か池に替らざるさま月人 村松 しからみて水もたもて見箱の池ふたきにかけて咲藤のむ 箱の池にうつすは藤の紫の服紗につゝむ松の玉琴 藤澤 都代志 紫のふくさのやうにかけてけり池のかゝみに覆ふ殿が枝 仝 池の上にひたゝれかゝる藤の花みれば冠の房かとぞ思ふ 咲そめて盛りも永きや殿のびて取へとうつる池水 吾妻 影うつす池の辺の藤浪はなみ〳〵ならぬ色そ深かる 見る池の心にそみし藤なみをたつてのそむそ餘義なか 寄雨窓 毛々多良須花二 高畑 恋人のあをといはれて其まらに涙の事はまづ凌ぎけり歌沙丸 東上七十三 毛々豆多布 一首尾をしも告てこさめに妹かりの 柳桜亭花也 あしもしづかに運ぶ通路 思ひ川あはで日をふる雨つゝみ 真湖 つゝみよはれる程の柵 逢へはやむ涙の雨の夜上りに青氷沈 間なく降出す衣〳〵の空 毛々多良須花三 盛岡 一せんすべも夏の夕辺の俄雨 降てわいたる水のさし合 一訪れざる夜毎浅のむらまに年益 むらさめのせし袖の色うき ゆりきすなゐも七つかきぬ〳〵に花園亭 はては涙の雨となりけり 麟馬 川又 玉草のさきめに付し口べには涙の雨の晴る夕虹に 麻生 ふるされし袖の涙は雨の夜の品定にも入らでもれけん 人心定まらぬ雲やあふことのかた時事してふる涙かな哥多丸 毛々多良須 一つゝめどもあふ夜の事は里にもり関よりもりて浮名立らん馬伎 思ひ侘涙の事とふりぬるを君か袂にかゝれとぞ思ふ木宇 恋の道涙の雨の水たまり深き思ひに路込ぞうき旅人 盛岡 雨の降る程に文をばやりぬれど思ひの晴る返事だになし 水臼搗守 降しきる事もさはらで忍びあふ夜半に心ぞ晴渡りぬる 仝 恋侘る身は春雨の心地せり空にしられで袖ぞ濡ける好成 五月雨のふらぬ今宵も水まさん思ひにふとる家涙川三千草 晴間なき涙を事にたくへなばむら雲は我が胸をふさり 半田 宵の雨は凌て来しをいかにせんしぼる斗の衣〳〵の袖真富貴 恋草の花出ぬらんめにたゝぬけふの涙を春事にして比左志 藤沢 通ひ路に人めをもれて雨の夜を水ももらさず逢ふぞ嬉しき有安 忍ふ身はそれともみせで春雨の音もしつかにしめる闇の戸雄冨 瀬谷 忍び路に首尾せんと題を思ふには背なうつ事も嬉しかりけり 真柄 川又 身にしみるいさめはうはの空にして涙の事にぬるゝ袖かな 為貞 吾妻一 あふて嬉し涙のつらゝ打とけて室の枕に雨はふりけり馬則 加幾和曽布花一 門に出て待夜ふりしく殿ゆゑに君は来まさで袖ぬらけり世富 盛岡 しめやかにふたりぬる夜は春雨のいとしと結ぶ契り嬉しき音音音音 蒸催て袖だにしぼる悲しさは涙の事のはれる時なし可仙 五月雨の頃より長し我恋はいつ迄はれぬ思ひなるらん馬伎 黒瀬 待てど来ぬ恨にいづる涙こそ恋のやま家の軒の軒の南水器 降かゝる雨をさはりに君はこで猫は曇りにふたかりにふたかり山松 恋侘る心に笠は春つれども涙の雨は袖ぬらしけり弘麿 独寝の枕わびしき村雨のはれても君に逢れざりと千代住 しつほりと今宵ぬるゝを楽しみに心もこさると待夜娘川南 忘られぬ姿は春の長殿かないとしらしさの君がなりふり 陰日向ある仇人と空しらで心はかりを運びなかな照道 袖の色の所〳〵のむらさめは雨ならなくに涙なりけり四ツ起 うき涙やらすの事や望の袖分れてしほるきぬ〳〵の床秋衣庵縫女 麻生 足音も分らで雨のふれよかしはれてあはれぬ君を待夜は 歎物のはるとしもなくいかなれば涙の事のこのめにはもつ一木松成 思ひ出て涙の雨のをやみなく曇りし胸の晴る間もなし元締 音もおなし雨にはぬれで待降る音なき事にしぼる裡かな千代人 雨の夜に忍びて人に洩さしとしめし合せてぬるゝ嬉しさ満葉 藤沢 床は海浜は雨の水まして流れ出なん浮名くるしき さ里人 新庄 雨となるちかひも今は身にうけてぬれて嬉しき恋衣なり 吾妻 色なく晴て噺も中〳〵にふる雨待てぬれんとぞふ夫高 過夜半をたのむ木陰に雨のもる妹か浪の涙くるしき万象 寄風窓 毛々多良須花二 迷ひぬる雲と浮石の立ならばはらへ神戸の風や頼まん花也 忍はしき移り色をさへ誘ひ来て風は心を動かしにけり大枝 恋侘る妹をなびかす風のあらば我が涙をも其時にふけ馬伎 毛々豆多布 美濃黒瀬 噂すれど妹はくさめもせぬかして 龍舟園水器 そよとの風の音信もなし 恋風の間なく時なく吹からに梅員 むねのほむらはいよく燃けり 伊佐美和哥駒 人の目を忍ひてぞ見る玉章を 風かひろげてたつ名くるしき ひかるゝも縁のはし風琴の名の跡人 是なん風のたより嬉しも 盛岡 毛々多良須花三 森集亭 一恋人を待わひおれば飛鳥風繁昌 繁門 たよりもせずにいたづらにふく 忍ぶ身のかくも浮名に尾巳風文香園 兼麿 いなさならずといひ替てまし 東上七十六 戸を叩く風の姿のみえねどもおとつれと聞は嬉しかりけり 木守 何歳へ今さた風の這入とき寒しといふはならひなるべし 仁連 万重 人の目の関は越てもくるしきは忍び煩ふ引風のせき 高田 君か方にたつ秋風は飛脚の火を吹付て焼まさるらん 萬籟 上岡 里の戸を明てへへるうつゝさへ夢こと計騒ぐ恋風 毛々夕夕良須 真清 なびかざる妹にみせばや心なき草木も風にうなづける さま 石見津和野 友無 急風の立そめてよりそは〳〵と心も空にもめるなからし 仝高角 青柳のいとしき姿ふきなびをわがねるやうに風のむすべし 哥種 打絶し君が音信ふき送る風の便に聞聞よしもかな酒上是呑 目にみえぬ風の姿は艸や東の鹿くとみせし妹ぞ恋可仙 行燈を吹けす風はむつ言の花にさはりもあらしといふ 詩宵の蜘吹ちらし来ぬといふ知らせか憎き風にふまひ 岩槻 応風のやと立初し其日よりも雲かちなる胸のむら雲 胸の火はいよ〳〵もえぬ恋風のけして兎かずなり行共に伊志女 盛岡 辺松半は胸さへすゞし燕風の心あひなる中に通ひて 我鞠のうき雲柳ふ風ふかばかゝる涙の袖かわくめり一木松成 靡かぬと恨みし風に面なさよ空なかをる星のしるべを大枝 酒のみ袖にふかせておく石はことゝふ風のたよりだねき人成 忍ぶ夜は姿もみせず風の如ともし火けしてそゟと入けり万葉 ふく袖の濡や胸の雲ならで目を泣はらす恋の凹風数恵 夏の夜のあつき思ひに詩談の風のたかりもかなと思へり志乎里 麻生 窓深く妹は住めども恋力風ともならば入なましものを真牛 待夜筆にしびれさらせば蒸風に枕の塵をちぎれとぞく真樽 更科 かたちなき風の姿は急痩て吹倒さる身にぞみえける松風庵 小舟山 姿をば見せじと忍ぶ小松風の音張る松に顕はれてけり徳鳥 吾妻 忍ぶれは事のあしさ也いとはれて成つける人のそもするやと 高角 加安加曽布花一 室に忍ぶ風の手早く燈火をけして人目にみえぬ嬉しさ 又しても門を叩ける夕風に胸落つかぬ待宵の床早見浜風 麦倉 盛岡 仝 終夜松ふく風のくされ縁今は妻戸の音信もなし 仝 廣成 さくむに憎みし風のたよりさへ今は嬉しく思ふ恋中実乗 いろ〳〵に浮世は風のふく中に替らぬ君が心うれしき木守 吹上しこそのひまよりみすよりみずみもせぬ人を恋風ぞ梅貞 夜もすがら独ふす草の淋しさを霧戸に通ふ松風どき弘麿 寝てみても蚊屋の広さに物思ふ風のたよりの浪ぞくるしき読丸 玉音を送りては又かへしふく恋の中にも風はたつもの大枝 いかにせん君の心はうはの空吹風にても聞はうらめし山松 今はとてかへすならひぞうかりける網にも風のとまるためしを 尺八の音色も通へふくまゝに風にいはせん恋の歌口三ツ井 妹と背の中を隔る浮雲を吹払ふべき恋風もかな淡雪 吉田 秋風の立ころ水をさゝれつゝつめたく成し我恋ぞうき花朝 まつ人の秋とは色もみせずして風の心地といひるこし 網のめにみえざる風のとまるてふ人目にかゝる恋風ぞ朱人 恋風のつよくふけばや肉の先へちらつく妹が花の俤苦成 東上七十八 吾妻 君か代の風にあひねど我恋はいつか逢てふ事を頼めり山仙堂多丸 焼しさよ受てあらしに閨の戸もがた〳〵ふるふ忍び路ぞ万泉 毛々多良須花二 垣竹 菽蒔 悪害はこの上もなき弓となる竹を撓めて地とな〳〵けり月美都 窓先の障子に垣の竹みせて墨色うすき月のうつ風常笑 毛々多良須 松山 かたつふり角を争ふ竹垣になとすぐなる虫の義千代鰭振 地に生ふ地とも素直にいく秋をへたり〳〵と風にしなへり世冨 朝日かげさすがに延し若竹の丈さへ高く垣をのぞけり 磯辺 近かりし中にも垣を最前の根は隔てなく焼て 中のよい我な蛇と向ひから名よひかゝりし庭の着竹歌多丸 呉竹の地ゆひ近く面白く言の葉繁る類人の庵朱人 毛々豆多布 生蚫にゆひ込られて卯花の 青葉亭松成 ゆきに撓めるさまのなよ竹 毛々多良須花三 一鶯の産家かこゐし透地に芥丸 ふしよきねをもはり上る竹 思ふ事互に曲て垣をゆふ千類 隣づからの庭のなよつ 丈高く素直にみゆる此君に睦実 へたての垣はありとしもなし 栃木 一杖ほとの竹や柱けん卯花の 通用亭 ゆきにころはぬ垣の用心 松遠亭海近 こなたへと直き千尋の影さすは 三度かへたる中垣の竹 加幾加曽布花一 三ツ浜 一生ひ立も素宜に繁る若竹にひとみる肥もみえぬ袖蛇 高田 むら中を柴さす塩にゆひ込てふしかくれなん此世うければ万嶺 ふしもよき雀醒の酒盛を塩こしとそなはす此君芹丸 吉原 朝風に髪のそゝけとみえしをもゆひ仕舞たる庭の竹垣常躬 極至て友と契るを若中の家と隔つる庭の中堀種成 寺〳〵の境に植し竹を持てふしをかませて作る生垣満葉 中蛇の用心に。とて植そへし竹は自由にくゝりてぞ出る万万 旅行友 毛々多良須花二 十月十一年の道速となる初りははつか煙草のむかりてし 毛々多良須 寝覚にもみえて慰む月ど藤大便泊りのともしなけれど世富 連たのむ旅もはるかに遠に人も情をす川の宿金馬 盛岡 毛々多良須花三 きのふよりけふ又遠くなる旅に 搗守 猶近くなる友そ頼もし 森戯亭哥仙 友の荷も附て木曽路の 山駕籠に ほかによけいをのせし道のき 森松亭比左志 前の世の契りや深き大井川 こすやれ台に相のりの友 上岡 森息斎宵寐 独旅身にそふ影にうなつきて 問す語りも友にしてけり 名古屋 相宿の友の寝言に夜明ぬと驚かされておどろかしけり 橘五園 行道も跡や先にて竹馬の友のこづけとなれる初旅 春艸庵和哥女 大勢の旅には合事ぬし替り好な咄しを士農工商浦人 案内だに知れざる旅は人まかせまれかくまれ建次第如水 長旅に足いためそと心をもつけてくれたる竹馬の官照道 菽蒔 つらなれるえにしも深き友むつみひよく焼みて有し旅路に 月彦 加茂加曽布花一 五口妻平 花を見に初瀬もうでをかこつけて二道かけし間も頼もし 古河 長き日もあきなく春の独様月雪花を友となしかく望月 古郷の咄もあふて旅の友きも揃ふたる群の松直菊住 明ぼのに旅たつ友を待かねてさつ〳〵とはしる山の端の常躬 いそ〳〵と磯辺を旅の友千鳥たつもあるも相宿せり弘堂 古郷に名残すくなき旅の空おなじ心の友はのこさで古沙女 旅の空親と頼みし道速に此ゆく先はまかせたりけり 人丸へ詣る旅の道つれはつれなき事はともにほ見路真槌 枕をかへす〳〵も古里の夢てふものを友と頼めり麟馬 水戸 独様心つくしと思ふ間にしらぬ人を友となりけり自多楽庵 日にくろみやつれし顔の鏡雲見知らぬ人ぞ友となしか大枝 諺の一河の流れさす棹のみなれぬ人も旅の道迚全 いにしての筆のすさみや道のきの詠ぞ旅の友となり 俳諧歌東西百首巻之上終 俳諧歌東西百首巻之中 首夏 撰者森羅亭万象 毛々多良須花ニ 伊予松山 散行し本の名残に今朝薫る風なつかしき夏は来にけり 田井鰭振 下総駒ケ崎 けふといへば春だに夏のき替りて身にもとき分衣とぞなる 豊作出来成 卯花の雪のふる巣に鶯は春の寒さや思ひ出すらん万亀亭中氏 一麒麟ほど風師の筝も夏のかしらに南の生けり森縁亭松人 卯花のしらぬ所へ取ついて藤をゆかりに夏は来にけり 猩々庵菊人 賤の女の田母にしつけとらねども早くきたりし春衣りな 霞不尽彦 三河吉田 夏の来て木〳〵の茂れはかたちなき風もあやしく隠れぬる哉 桜園元衣 毛々タダ良須 尾張新田 卯年の月の出さきの明るさも夏に木の下響となりけり 《迺屋回 陸奥ノ盛岡 なめずにも夏のかしらに立たれと誰も咎めぬ風ぞ涼しき世渡広成 葉之喜弥志 今朝夏のきたに行なる風のみか教和楼睦実 人もみなみにかへしうす衣 毛々豆多布 青簾かけて思へは春をうら斟酌亭珍人 夏を表と若葉色そふ 花の枝は青葉となりて真白なる森眸亭馬伎 あふきそ開く夏は来にけり 盛岡 けふ夏に給ふ扇にめくみをも菅菰箕船 あつし〳〵とあふく宮人 夏山の若葉の中にいかにして杉園真文 かれしとおもふ松風の声 風通す伊豫染やかたいは庵松寿庵年益 いよ〳〵夏にうつる身かるさ 流れゆきし春のかへしの風よする森栄亭万葉 また夏浅き卯花の浪 毛々多良須花三 一花の雪もいつしか消て卯花の森林亭木守 月を詠る夏は来にけり 今朝夏となれはひとへに夏の季に水垣真清 つれてうつれる人心かな 木下やみ闇山祇や蚊のさせし龍迺屋弘器 ちより葉守の神やなるらん 盛岡 夏きぬと風の薫るは行春の箕船 はなを送りしかへしなるらん 初かつを初時鳥花をゝしむ睦実 人をなつくるもうけなるらん 東中 仝 むちらすとつてかへしに夏来れば憎む星さをよせぬすが風雅来行長 尾張名古屋 里人のみる目も恥す筑摩鍋かふるしこ女が宮出尻ふり 龍迺屋 咲むのくも今さらに圧たる心つかひも夏の涼風春栄亭古葉 常陸麻生 花の衣八重の霞の袖ぬぎて一重すゞしき夏の山〳〵 藤迺屋万都春 仝 暮くゆく春のかたみに並みやげ袷のうらに残る本色 崔亭儔 花の雪辷り落たる枝にしもさらりと替る夏は来にけり 巴末亭目積 信濃 信濃菽蒔 きのふ迄馴染の衣けさの間にきかへしと本や恨むからん 有明月彦 夏の来し糸を見せて卯本の白き衣や干せし袖垣柳櫻亭花也 朧なす霜ははれて卯四日の月影匂ふ夏となりにき狂月亭真晴 けふははや麦の秋来て卯花の月の光もまして明るし松人 一向鏡亭菱象 さく花の雲なくちりて名残さへみとりに晴て夏は来に 東中ニ 石見津和野 夏衣花の名残の袖の香と入替りてや薫る朝風 丁那言友無 信濃天神林 夏きぬと菜書も青き衣悦て白帷子とみゆる蝶の羽 一白糸曽丸 上毛吾妻 夏またき咲匂ふ花の橘にむかし語りと春はなりけり 公 森鏡亭夫高 けさ殿の節分とてやひらきさす門明てふくは内へいる風 角一亭升成 近江日野 かさね着の露の衣ぬきかへて薄みどりせし夏の山〳〵 通湖亭月澄 加幾加曽布花一 陸奥盛岡 一花や好て名残りもけさは夏けしきみどりに木〳〵の葉山繁山悠々館名歌記 一脱替て公ゆき袂となりにさりけふよりの長き夏は来なり馬伎 きのふ迄露立しか今朝よりは青葉に晴る春の夏の色木守 越後高田 曲りたる紙垣こしのなし本は夏のかしいの雪とこそれ常盤丸 けふよりは霞の衣ぬき捨て青葉深しき藤けしきかなきききさ子 む守か日の長〳〵と盃寝して心つかひも夏は来にけり梅花堂康方 麻生 一春にしも陰別れたる隣から風がすかせし夏の衣手蛙虹丸 吉田 若葉せし木蔭さしゆく日からかさ紙さへ青き夏のむれ 全 夏母にから〳〵残る藤つゝじしれて春の急き行しか杉山人 薇蒔 白妙の衣あらたに春もけさ夏ときかへし卯月朔日 三五屋月美都 筏士も棹のさしこを脱替て床の衣を木曽の如川秋歌亭久光 陸奥二本松 艸も木も繁れる頃となるまゝに早涼風も侍れ初けり 脱かへし衣ほせばや空も名も名を奉けふあめの文字をかたい森翁車方事も 陸奥半田 一紫の霞もあせて模様をば青葉にそむる夏の山椒豊田舎菖蕷葉 一枕桜過て袂に蚊のひとつはやとりつきの夏は来にけり 常陸水戸 春もはやきのふたて茶の初昔なつめのみゆるふたむらのひ自多楽庵 上毛宮崎 云々にいる鳥ははやことかへりみる音もや届て夏は来けり 水やそら花の鏡の日望りをもふいてとりし歟やしる斯風万葉 阪卯花 下総駒ケ崎 毛々多良須花二 家土産にをりて戻るととれると咲外花のゆき合の坂灸器舎捨織 仝古河 誰か爰に種をやまくは瓜生坂わりなく似たる雪と卯窟 東々亭太良里 山垣を覆ふ青葉は横雲にしらむさまなる卯花の月万葉 毛々多良須 盛岡 白妙に雪かとみればひえの山きら〳〵其母坂の卯花遊野高成 仝 稲荷坂さく卯本は時ならぬ雪とみれどもつまゝれはせし 吹やろす風にさながら瀧川瀬とみ坂にちらしなしなし花の浪馬伎 一登下り八里の坂を右左り目も手計し道の卯図一覧堂集賀 箱根路に杖をかしの木積廻りましらにちらす坂の外円永白 仝 名古屋 海月平規 吾妻横尾 卯花の波押上る坂道を兎とみればはしる白火深草軒野守 七々豆多布為君堂芹丸 毛々豆多布 ゐさらひも転ひうつ迄みとれけり 為君堂芥丸 卯坂にしもとみゆるうの花 吉田 毛々多良須花三 夏山を青海はらにしら浪の 玉壺庵 よせ来る汐見坂の卯花 五葉舎高澄 朝日影ほんのりとさす化粧坂 さくら色にも見ゆる卯花 久志丸 葉桜の夏も弥はに帰り坂 久志丸 さかりよし野の卯花の雪 東中四一 信濃松代 卯花も風にかふりもふり有てむれ居るやうにみゆる鷺坂蘭亭浅草浅草浅草 吾妻平 女行負ふ賤も雪とや詠らん杖たてゝ見る坂の卯花 行人の道や明るく照すらんくらやみ坂の外花の月煉方 しらげりとみる卯本の飯田町わづかながらに二令半坂桂真遊住 一木松城殿 黒からば烏ぞまねん卯花の雪にまがふて鷺坂にさく 松陰 常闇の夜とは思はし神楽坂あな面しろき月の卯花秋長堂物雑 花の雪はきのふにけふの卯国を行合の坂に咲る白妙年麗合泰則 卯花の雪にも一寸脇見して思はず辷る坂の下り口不掃庵吉成 相模藤沢 登ゆく八十すみ坂を見上れば頭に覆ふ外本の雪 行文有安 駿河吉原 卯花の露はさながら水あびる行人坂に覆ひかゝれり 坂道をけてあゆめど卯本の雪にはころふけ遣ひもなし諸道亭好成 加幾加賀加幾加幾加賀加賀郡 盛岡 手習は坂に車をおすめと子等に学ひの道をしへ艸。 歌種實栄 仝 旅人の笠かあらぬか行先を遠く見越の坂の卯花 ○槌野音成 仝 洗濯も清き衣と見まがふはあら行人の坂の卯花 〃恵益美 仝 集めなば書を学ぶにたりぬべしいろつ坂なる卯花の雪 セ森集亭鑑内 仝 坂道をあへき〳〵も登つゝあな卯花の陰にやすらし 仝 いふ広成 らふ 逢坂をのぼれば咲し卯花の月の都に入心地すれ 水垣真清 高田 大枯木にかれ木坂の卯花は冬のけしきに道埋む雪 暮秋庵万籟 黒汗を流す重荷の登り坂右も左りも白き卯花柳寫亭愛宕 卯本の月よし夜よし足物のみさかひ分ぬ夕まとひには斟酌亭跡人 吉田 一木下蔭一しほ白て瀧津瀬の落来るやうな垣の卯花 よや夏の木曽路の名にし信濃坂小咲卯花は雪ことけれし外面森雄 雪の色をまんまと奪ひ咲出し岩戸かぐらの坂の卯宅相代樽夏槌 伊豆小野 疑ひもまたひやらぬ雲井坂それかこそみる卯花の雪 陸奥福島 春のゆく時おもしとて坂道にぬきて捨けん卯花のわた 一三ツ井 苅玉章 時ならぬ雪かとみれば梺迄風にちりつむ坂の卯図鏡台山月へ 雨晴て坂落す水も雪翁かとなたれかゝりし卯花の枝花月堂午 讃岐丸亀 一鶏か啼東の坂取響の秋もしらみ通しの卯花の雲明安 咲つゝくさまはしらげに流れ枝の白水坂に撲む卯花広尾原住 節花は風に靡きてまねき坂薄に月の宿るかとみつ寿室諸実 坂におとす水から臼のこほ〳〵としらせ粒たつさまの卵む万象 時鳥 盛岡 毛々多良須花二 嬉しさは剰利も是陰も時鳥聞なら苦をもしれぬる声磐千森蔭 備前森田浦 哀れかる聲きく川の時鳥血を吐てなく詩筆顕雲 石はしる瀧津早瀬に落かへり啼香はけしき山時鳥園菊好 時鳥聞し人より又つてに其一声をいくなかきく真清 おちかへりなけに時守我宿に侍し日数をかさね掛ても森陽亭主に 時鳥橘氏そ花押の名乗をかへせ墨染のそら芥丸 麻生 一鶯の捨子なりとて仇し名の立本鳥やうき雲の袖野藤武太夫 長門蔵 ほとゝぎす鳴一声に星まても跡をしたへる影はみえけり岡辺淡雪 物思ふと人に訪れて時鳥よき色に出し初音嬉しき諸実 氏なくて玉の初音の時鳥親は藪にて子はならの上万々群集也 ふり出て啼かとみれはほときす声のときれし村雨の空 鶏に八声ゆつりて八せんの空にふる程なく時鳥冊子卓微安 毛々豆多布 盛岡 ほとゝぎすはやも啼しと聞からに森集亭繁門 池田の阿鳥も耳の垢をほれ 名古屋 或は帝或は田長とよふ鳥を龍迺屋 都も鄙もなへて待けり 毛々多良須花三 盛岡 やむとなき事や薬とふる軒に興宜金馬 心地よけにそ聞ほとゝきす ほとゝさす啼香はほすの煙りより向鏡亭黄象 行へもしれす空に消らん 越後高田 ひてゆく親の月日をうけつきて春秋庵万類 こゑに曇りもなく時鳥 ほとゝきす一声に跡名のらぬは蔦垣真葛 都の空に出きえやせし 此 陸奥福島 鶯の継子ときけば夜食にも小鍋迄してまつほとゝききと ぎす 六種園 老人も目鏡はづして一声を耳にかけたる時なりな春則 讃岐丸亀 ほとゝぎす声なをしみそよしさらば耳にし入らば帰す由彦 信濃天神抔 時鳥落せしみは其伝し哉鶯の返事なるらん冷斎興水 一声を夢のたゞちに時鳥啼を揺ほれて聞ぬにはまし松光亭海近 子規まつ夜の伽の初音は来なかぬ程そ聞きにける 冷斎真水 松遠亭海近 相模磯辺 尊歌亭年久 児をはしる烏帽子てふ魚の頭をもひしく斗に鳴る事集 毛々多良須 雪よむと壁を穿て如月を入る穴からきて時鳥万流高世富 盛岡 時鳥なきつと申す言伝の来るやと馬に鞍置せけり名歌記 仝 しら雲に姿をつゝむ時鳥一声もらせ其羽袖から 全 耳の有てふ壁うがち待肩にあな嬉しきく初ほとゝぎ頃実栄 なに心なき人迄も一声にきた耳立るほとゝき頃な木守 二本松 ふたかみの山に夜の残るほとゝぎす水にてから只一声はなけ 薬ふる夜半に来鳴し時鳥遠き耳にもよく聞れり春勇亭若駒 時鳥なけは泣やむをとなして聞訳のよき子にぞ有り 二声ときかずはいかに時鳥つひに其夜は音もせざり 我耳のうとくなる程長生ときくも愛たき初時鳥物楽 時鳥待労れ寝て初音よと起る騒きに聞はつけり菱泉 下毛麦倉 一声に障子明れどみえざるは何をしきりに啼ほとらす高山亭井積 愛ぬるをかさに着つるか時鳥雨にしほれぬ今の一ゑ声音少鳥 吉田 入紅の鐘の中半にほとゝきすきく葉跡をつきぬるもし玉壺庵 水かゝる千町の小田の早雷時早曲鳥とて聲ぞせて我流亭譜丸 いさゝらば高さくらべん沓代鳥声をはりやと上る庭鞠瓢園数鬼 茅野川ちりにし跡に時鳥花の音流す色ぞめでたき竪川伊志女 天の原生れ出けん時鳥玉にたくへし今のひと聲柳櫻亭花也 時鳥ひと聲高き初音をば深山の奥の人や尋ねん不尽八嶺 時鳥かくせど雲をもれ出る月の光や玉の一聲関迺岩門 初聲を聞た聞かぬの争ひも寝しづまる頃鳴時鳥秋衣菴縫女 曇らずにさすが月夜の時鳥玉のひと聲みかく心歟森徳亭山松 明おきて待ほとゝぎす一声も汝がたてずは立ぬ閨の戸数恵 一声に歌の趣向はとらへても形は見えぬ山ほとゞぎす若松 空に手のとゞく五月の深山辺に鳴ほとゝぎす世に覆ふ 丸亀 大和新庄 うたゝ孫に聞一こゑは覚て又よき顕種の初ほとゝぎす千載亭真綱 東中八一 下毛杤木 時鳥枕を上てきく耳に只ありつきの鐘ぞ残れる通用亭 仝 仝 ほとゝぎす鳴つる方は長等山本と盛の音をそ重ぬる通船亭数守 仝 初音をは下戸に聞れて時馬上戸も寝酒やめて侍けり 通宝亭為保 信濃式部 鶯の親にしたかふ時鳥鳴行跡に残る月星 真糸庵房 仝 ほとゝぎす汝か鳴岡としめ置て御ぬ内にや夜たゞ鳴らん井幹笹丸 さる父は鍋を恋しか時鳥初音はになきものに愛けり詞華記 一声に寝覚のたばと呑てさへ忘れはやらぬ初ほとふきす東州鹿馬継 はら〳〵と降こほしけり時鳥雨もつ月に声のひゞきて 出羽府 鳴鳥啼か〳〵と啼ぬうむも枕について寝られざりけり 秋豊庭訓文 仝 閑雅亭外成 影をだにみせざるも又頼もしき忍びて来るを待時そ 仝 公 思ひ出す去年の今宵の初聲に猶待れたる時鳥かな梅月亭真草 吉原 声もらす頼にこそは須磨簾心にかけし初ほとゝぎす 時鳥たゞ一声をあまたなる詩人分て嬉しときくらん大木繁成 加幾加曽布花一 松山 思かげずふじの高ねに道迄を行まどはせる時鳥かな いく声か知れず闇夜の時鳥げにもつきなく啼にけるかな 仁連 我軍の枕をこめてほとゝぎすきくは命をのぶる暁 古河 百敷の大内山の時鳥雲の上なる初音愛たし 待かひもなくて明ゆく時鳥またざる鶏の八号をぞ 時鳥血を吐までに鳴ぬるは鵙の艸茎咽にや立かん海近 一心さへすゞしき夏の月影に声に曇りもなく時鳥和哥 六十経し老の耳にもしたかはぬ橋鳥よ昔恋しき森翠亭大枝 思ふさま人を待せて来る道をかけた〳〵と啼時鳥 目積 東中九一 大黒へ神酒も備てほとゝぎす今宵きのえのねずにすなり 風月亭真名美 麻生 ほとゝさすいそがしさうに明方のはら〳〵雨に声こほしゆく 三木亭枝繁 時専鳴つる声は有明の月についてぞ耳に残れる 仝 高砂亭永樹 卯年の盛たつねて時鳥あかるく名のる月に一声万石亭高穂 初鰹よりも高ねの郭公かひ付られぬものにこそあれ 一宿やふく軒も草月の雨足のふる如きなくの時鳥森戯亭可仙 後から声をかけしか時鳥ふりむく空の雲になくなる春曲鬼和歌女 暁の目さましくさの時鳥頓てはなしの種とこそなれ 陸奥白川橋 一時鳥手にとる程に近く聞玉坂山に玉のひと聲花和櫻木 花和桜木 天地の広きに道を嫌ひ来て耳に入たる初時鳥花仙亭百枚 時守頭は何ほど有明のつきせぬ程に東えあひにり山松 灯雲を男の子よとかき立て初聲高く聞ほとゝきす森迺屋廣長 うひ出し凶時鳥道迷ふ都の空のうのうき望候あなく天久亭弟人 噂して一声をらす時鳥つれなかりしは去年の此頃菱泉 山〳〵を尋ねて啼ぬ時鳥帰て宿にきく初音哉に 子日亭千代人 信濃稲荷山 駒に乗ゆくち橋にておとせしはかの心公公る沓手てふ鳥 丸亀 柏林亭 かけかねは心にかけて柴の門のあく迄聞ん山ほとゝぎす 梅成 下毛上岡 横平の糸をくり出す山の端に引つゝきなく時守かな 栃木 濡るとも外面に聞ん村雨にふり出て啼初ほとたきす衣廼屋織女 式部 あふ坂の関の清水に時鳥心の駒を引立てきく笹丸 見送て心はやれどほとゝきす啼音は耳の底に留けり 浦時鳥 盛岡 毛々多良須花三 まつ夕辺訪れて嬉し時鳥 森昌亭実衆 門に立かひかまの立掛 猩々庵菊人 いくなかおきつ島山ほとゝきす 待にそかゝる床のうら船 信濃村松 俳道堂厚房 謹促に来よちをはくとかり置し あしの浦にてきく沓代鳥 毛々多良須花二 網引せで待して宵の月あかし浦見はらして聞のほとゝぎす森松亭比左左志志 盛岡 鶯にこれもえにしか時鳥梅貝ひらふ浦に聞けり広成 時鳥かきけす如く鳴空をもしほもたかで詠む浦へ秋響千形 甘鳥待ていく夜もねぬ縄のうらみはらせし今の一声秋倉喜歌繁気 うらやし浦の苫船食明て聞間もまたで行ほとゝぎす花園亭麟馬 時鳥賤しもきくを告りの浦何かたへさして鳴て行らん諸実 鶯を観に持たる時鳥知類に心をよする滝なみ甲良 加幾加曽布花一 新田 時鳥音に 紅ゐの色とりて錦の浦におちかへりなく 、 伊豫三ツ濱 たのめ置て来るか〳〵と鳴鳥なりぬかぎりはねぬ縄の浦紫竹雲幽城 御影もみぬめの涕の時鳥覚束なみの音にまぎれて馬伎 夜用姫の魂や化しけん時鳥をとこ恋して啼松浦芳丸 東中十一 古河 夏の夜も明石の浦の時鳥きりなく鳴てかくれざる声浮船亭望月 時鳥きく明方に浦舟の沖をかすかにほのめかしけり吉成 浦〳〵に泊する蜑も鳴鳥空に心のひかれぬるかな花松屋万錬 時鳥あれ三保の滴打こしてなみより高き一声をきく丸井亭麗 河内狭山 朝風の浦にせはしく引網もひきかけて聞ほとゝきす 此頃は蜑の衣の浦なれて継くになく山ほといたす江立亭雄冨 みをつくし難波の浦の時鳥初にたてたる聲も愛らし一得斎種成 吾妻 待かねて居る人さへも大磯に恋に小磯の初ほとゝぎす升成 丸亀 時鳥声に帆かけて空の海に走とぞみる風子の浦梅成 大和新庄 時鳥やとめつらしと三穂の浦影はみそらにまぎれ矢けり こりす殿に内裡の跡に時鳥ひよ鳥越をおとすとぞ〳〵歌多丸 難波浦千船百ふねいづる帆と入ほとゝぎす年にあへで万象 菖蒲 毛々多良須花二 盛岡 一薬ぞと咄す帯浦の根問ひして本艸迄も引せたりけり繁門 常陸麻生 薬とて呑やあやめの酒だにも過てはそれも毒となるらん 薫風舎薫 仝 しら露も五月の玉か菖蒲艸ひ遣は乱れて袖にかゝれり暗夜亭牛也 かた言をいひもて賤の荒窪草されはひくをはふくといふらん目積 あふぎえる扇垂木の殿造り軒のあやめにふけるすゝ風原住 菽蒔 家母に軒端にふくはあやめ草門に有てふ禍ひはされ 月美都 毛女多良須 位高き人もひくきになりはひの賤と菖蒲を引くらべけり 盛岡 晴かゝる雲間のかり橋を又押流す五月五月事の空 御供黒牛 下毛宇都宮 害さへ筆をこそみれ流れにも名あるさやまの波の皮の皮の 東中十二 毛々豆多布 ほろ酔をさます端居のくれは鳥 柳櫻亭花也 あやめも軒のつまに匂へり 松能宿 一橋の花さく軒は薬玉の いとに菖蒲の薫りそへけり 盛岡 毛々多良須花三 夏の夜のねたらぬ頃に引かへて 御供黒牛 ねながきあやめ枕にぞかる 置春洞福養 あやめ草こゝのふし戸の枕にも 薬の露をむすびそへけり 弓は袋をさまる御代の祝ひにも矢張いく筋ひく普蒲芝口屋岳住 盛岡 けふ軒にふける書蔵は桧皮家もわらやも同し匂ひすひそし 神躰はふき合せずの御社も軒の菖蒲はなき合せ真遊住 やれ庇それも隠してあやめふく賤がわら家もしる 天の川ためしにやむく一とせに一夜のつまにかる雪浅草 麻生 引て来し渋の菖蒲の酒くみて泥になりたるけふの酒盛枝繁 あやめ草蓬と共にふく軒は茶をうけてひさくのちくら諸実 難波にや汐の外にもあやめ艸ひくかとみればさす蜑が軒蝶亭菊住 菖蒲酒くみて影も延ぬべし永くとふる五月雨の空 葉にむすぶ歌を覚と詠れはかりし菖屋もねはなかりけり 丸亀 あやめ草ひく時水に影みえてさせし姿もさかさまの池愛寉 出羽高畑 薬ある茎浦をふける手ついでに軒のいたみもそと直せかし山越菊路 富豊祝ふ我みとり子の初節句に甚兵衛の歌も手の中の玉芝柴庵貞進良 陸奥日出山 太刀岩をやへるもの迎軒に迄さして菖蒲の長し難し 藤沢 心して菖蒲をむけば水際も不覚はあらぬ勝間田の比森節亭里人 菖蒲艸千代のためしに孫子つれむことて出るひぞめでたき比左志 盛岡 一短夜も長く寝いるゝあやめ薫る枕の風そすゞしき松緑亭繁樹 宮崎 泥の所砕人あらんあやめ草きのふは沼根けふ酒の池 加幾加曽布花一 盛岡 あや魚子くすりと軒にさせしよりさらにやますに風しほり 菖蒲竹ひける汀に水増は植し烏芋も頼かひなし福養 駒ケ崎 薬ふるけふの菖蒲は頭痛ある病ものきのひたひにて出来成 淀川を盈る舟の綱手にもけふは雷兵衛を引て行らし捨瓢 誰が宿もあやめを軒に蓬甘添て祝ふ皐月の祭の言の書の豊年屋万作 あやめ草草太刀造江に引ぬくにきれると思ふ子等が争ひ濱辺朱人 淀川や夜ふねのほの菖蒲草やはりねながら人に引るゝ 麻生 公 枝繁 五月雨にはれぬ掛地のあつらへのしそ表天とは申ながらも 全 書学ふ窓の軒にもさしてけり川てふ文字をなすあやや艸歌志久 降つゞく五月の雨のまし水のひかねども引池の菖蒲は 白川塚本 菖蒲草ふくといふ名のあればにや日に笑みわれし軒にさしけり 菊川亭酒盛 くれは鳥あやめの枕ゆつたりと長きねをたにかりてふすらん縫女 いつか成て菖蒲のみかは菰迄粽の料に誰かかりけん苔成 うたゝ腰もいつか長孫となりたり薫るあやめの草枕して鷹亭興晴 菖蒲草賤か軒端にふく禄寿つふりもせき葉に撫にけり好成 時鳥なくや皐月のあやめ艸匂ひあるねを軒にふくあり岳住 軒の帯兵衛みれば臨うる大剛いねを上てふきおろしたり 五月雨 毛々多良須花二 一月の笠召たる夜より降つゞき箸なぬ襖たるむ五月ゆ世冨 五月雨に朽かゝりたる板庇もれど久しくもらぬ日の影馬伎 けふ幾日ふるき軒端の五月雨に猶ほとりあるとひ竹の水真清 雲井より運び上けん水音の高くなりつゝふれる五月雨目積 木幡川岸の上こす五月雨にかち路もやはり舟にてぞ 吉田 天地もひとつになりて五月酉の空も心も晴やらぬなり 高畑 寝むき気のさして来ぬるは心迄くさるらやうな五月雨の空 舟人の苫をしぼりて見渡せば鷺も羽袖をしぼる五つ番千代人 毛々豆多布 くもの上はありし背に替らぬか水垣真清 月のゆかしく見ゆる五月雨 毛々多良須花三 さみだれに柱も朽てくさびらの文否園兼麿 出しを壁の耳かとぞ見る 賤の男が世渡る総も五月雨の浜辺朱人 ながさに朽てきれんとすらん 花の親とそしもひてくりかへし青葉亭松成 ふる五月事や愚痴になりけん 川明をまち草臥て旅日記に森翁亭方交馬 つら杖つきし五月雨の宿 五月雨の降につけてもしめり〳〵谷迺屋深志 かべとはいはじ小竹生けり 五月雨のふるに光れる夏虫は苅玉章 ほしの林のくされもやせし 毛々多良須花二 信濃稲荷山 五月雨のふる糸を持てつゞれとも雲の衣にほころびはなし蘭溪亭 仝天神林 やせ川の河岸さへもみえぬ哉皐月の雨に水のふとりて 毛々多良領 盛岡 雲の浪よる昼わかぬ五月雨のふる家の軒は瀧のしら原 青物の鯉も登るとみゆるかな洩の滝なす五月雨か庵広成 仝 空の曇る日はかさなりてしら菅の蓑毛のやうにふれる五月過 古河 五月雨に着なし川も此頃は耳たつ程にふとりこそすれ春秋草艸成 五月雨と呼とも同じ親なれやにた物に僕の花の咲らん衣奴雪葉 五月雨の日数ふりゆく旅衣きつゝぬ札にしほすり和なく吉成 萩 庭の面は水海となる五月雨に竹生嶋ともみえし築山淡雪 月候星と啼鳥もとく雲に入て影さへみえぬ五月酉の空真名美 麻生 なるならば此五月丙を仕返置て土用の中に運び出せかし本 薫 遣ふもふる〳〵とそいふ口のすくなる桜の雨の此ころ松翠代住 降つゝく皐月の雨に御空なる星の抔も朽てみえぬか少鳥 五月雨のあまり永さに空よりも水の切間も井山の玉川高積 材木の丈は短くなりにけり普請はのひる五月雨の頃万録 庭もせに白浪とみる卯の本のぬれ衣はれぬ五月雨の穴禁食志丸 あかりさへはつきりとせぬ空色はけにもふる事とみゆる五月雨五葉合高澄 笠とりの山も笠置のやまてふる雲をうさねし五月雨の空竜竜舎玉腰 菽蒔 雲の衣あまり重ねて風の手も日の足も出ぬ五月雨の空 白川 月と日のをやうもみえす五月雨のふるき小袖に星はおれども旭雨房折雀 東中十六 五月雨に水かさ増りてあすか川替る渕瀬やいつ地にほけん森桜亭志半重 狭山 泥水の小川とろ〳〵落合てすみだ川さへ濁る五月雨夜 ふれる日をかそへらるたを恥かしと人の影だにみせぬ五月も百枚 谷川の岩こす浪にさく花はみのいりて降五月雨の空八嶺 天の川深さの程やいかならんいく日ふれども尽ぬ五月な菊人 山に空の足のよごれにこしかけてあがるはしきはみえぬ五月ま茅 一長者より願ふ日和に星ひとつみつけて嬉し五月ゆの星橋亭衣越 けふいく日漁休みて五月雨にぬるゝ袖さへかはく浦人爲継 すぎはひに濡てもほさぬ春衣袂も朽てはれぬ五月丙原住 信濃村松 一しれぬ此五月事に武蔵野の迦水ならで水に追るゝ 俳道堂厚房 世の人の欠び斗かまし水に川口ひとく五月雨のころ新緑亭若菜 磯辺 降そよし薬の露にあえぬらんやむとしもなき五月雨の空 加幾加曽卯花一 宇津の山ふりこむ家は戸をさして雷の子もうらぬ五月雨の頃世冨 盛岡 晴曇るうはさをすれど日の影はさゝでそふれる五月雨の空春亭実秋 仝 旅人は泊りあきても大井川あくせしきなく五月雨ぞ書 仝 糸程にみえし谷間の清水さへ増て溜まく五月雨のよろ 松山 五月雨はけふでいく日をすぐ六のふりあがるへきをりはだになし 鰭振 難田浦 五月ゆは日数ふれども久方の雲の袖さへきれ間だになし南陀羅 水かさも昼まか池の蓮葉のかふりもふれる五月雨のころ木守 庭の面を海となしたる五月雨にひかす侘らし笹亀の綱音繁 五月雨のいともふる家にあ〳〵と軒の雫ぞかゝる玉窟弘丸 家根板も筏となりてとひ竹の細谷川をくたる五月雨淡雪 木の根さへ朽る斗の五月雨にはへたる事も傘とみえけり朝寝四ツ起 出水して人もほひ来ぬ我門へ雲の足のみ近き五月に真長 降来るは達者にみえて五月雨のはれ足もなしやみ足もなし綴安 吾妻 軒をく雲は下りていつ上るけしきたゝみえぬ五月雨の空夫高 月のすむ都へだてゝ天下る郡の長路にふれる五月雨目積 五月雨は庭をも海とみちのくの松嶋めきし数の飛石花也 江の里も小嶋のやうに浪寄てゆきゝも船に通ふ五月雨山松 庭の面も川となるより道絶て月も詣ざる五月雨の庵春勇嘉秋雨 里はらの山のはゝきゝ伏へからみなどありとは分ぬ五月雨松能宿 即死来し人もころびて泥まぶれ上りかねたる五月雨のまし数成 栃木 学ひを休めば発はさずおきし干魚の塩もたるゝ五月番通用亭 式部 まかなくにいつかしめりの煮有に花を吹せし五月雨の宿安房得 津和野 肌寒き程五月雨のふる藤照司引出して着る醴盆の肥枕奇種 盛岡 新らしく案たてみても五月ゆはふることのみにいふよし。そなき 信濃八幡 五月雨の降つゞきたる庭の面の築山さへぞうき嶋とみゆ千葉軒常盤 天地もひとつに人の心までひたとしめりの通る五月十万万万 水鶏 盛岡 毛々多良須花二 一逢と見し夢をかす水鶏をばこちらからとく叩かへさん広成 賤鳥にあるをさらひし舟底の枕寝耳に水の庭鳥 毛々多良須 盛岡 立出てみれば悔なす水鶏哉戸を叩かでも明安き程を 文岱 仝 調布の打やむ頃も叩くなり。月に水鶏の夏の狂仕事 奥宜金馬 三つ浜 天の戸を早くも明る夏の夜は叩く水鶏のかしうましとや 幽昧 東中十八 一訪ふ人の叩くまことを嘘にして狂 うその水鶏に明し槙の戸 狂月亭真晴 毛々多良須花三 常陸麻生 一枕辺に近く水鶏の叩くにそ雀亭伝 戸はやれいでもかべは破りし ちのみ子の目さへ水鶏に覚せども万々斎真長 母がつけばよく寝入けり 天の戸を叩き明しかそのゝちは青葉亭松成 たえて水鶏の音せさりけり 夜お行はあやふきものと門叩く目積 水鶏は夢を送り届遣し 恐しき夢をくひなのとりたるは松双舎千代住 横にもませし手柄なりけり ほく〳〵と笑みて木名もさしひて叩く水鶏をきく法師哉菊好 何所爰といふ差別なく叩くなり昼夜を捨ぬ水の鶏真清 鶯の人来と告し跡へ来て水鶏は門を叩くなりけりけり海近 やよ水鶏叩けと門は明ましといふ間にいつか明る春夜諸実 吉田 外伝なく水鶏の声に目を覚し内伝なく子を叩く母親 叩遣ども妹と寝ぬ様の衣〳〵は聞浪したる水のにはとり綴安 藤沢 宵にせし相図と門を明てみれはひと音もせで水鶏立けり行文有安 うたる孫に風引せしと門の戸を叩く水鶏の心嬉しや小松善女 偽りて詩夜に我もやはり又しらす水鶏にはかられに 上岡 叩くのをなと社すれ夜もすがら水鶏を松の戸も明ずして 栃木 宵寐 終夜水鶏の叩き明すなり戸さらぬ御代と汝はしらぬが 東中十九 肥前唐津 だまされじ又水鶏かと明ざればしたゝか真の叩く門の戸 郊原亭一幹 夜毎刻て水鶴は叩き起せどもねたまゝにみる賤があばしむ松梅亭商人 山住の貧しき底の此木の戸を何をくひなの此用ならすらん弘丸 苔ふるき岩間の虫をあさりゐる水鶏の中用を叩く沢水 底面せは藪蚊の多き故やらん夜さら水鶏の叩きてぞ 加幾加曽布花一 一くらべなばそれも口をや憎れん日の高より水のにはとり 三ツ浜 墓はらの辺にも来て終夜こつ〳〵とのみ水鶏なくなり 三斗酒太人 古河 川添の柳のこふし福あるは水鶏のいたく叩くなりも 森亭難奇光 仝 夜の明た事も知らずに叩くなる水鶏はうかりしのあの空 麻生 一合方庵百柴 閨の戸を叩く水鶴の口先にたまされながら明るしのため 万都春 だまされし恨も晴れん降事に水鶏を叩く軒の玉れ 終夜たゝく水鶏に谷の戸の低みもなく明て日の出し常笑 驚かす水鶏でなしとあやめ酒のみなとちの叩くね東の戸可仙 噂せし水鶏を聞に来る故も左の戸ほそを叩きけれ福養 内よりも覗てみよと水鶏こそ穴のあく程戸を叩きけれ藍垣真葛 高畑 夏の夜は水鶏に門を叩かれてまだ宵ながらなる天の戸嵩麗獣丸 藤沢 白川の夜舟の夢のなかばをも驚かしたる水の鶏里人 全 何となく叩く水鶏に驚て起て朝戸出するぞをかしき運方都代志 志賀の謎を思ひそ出る水鶏だにいらぬ口をも叩かせてきく万象 寄野恋 毛々多良須花二 忍ぶればあやしまれたるかたち野の根く尾前に心逆へり花也 我ばかり思ふかた野に恋まてどかひなき人の心浅茅生 いと深く思ひ入野の花すゝき招く姿に恋やしつらん山松 広き野も思ひの艸のしがる程世をせばめたる丞の道都和哥駒 忍ぶ程心せまれど武蔵野にひろく浮名の立ぞくるき岩門 黒髪の尾楽とことに待ほうけ今は枯野に朽や果まし森遊亭人成 毛々多良須 独寝の淋しき松半は野を守て荒果し庭に住心地せり馬伎 あふとみて消し夢野の恋草に涙の露は又むすびけり 別れ来し跡なき雲を三寸野のたのむめ雁の行へなつかし木守 野末迄ふかく誓ひし夏艸も忘れ水なる妹ぞ恨めし千形 古河 情をも互にかけておた鶴のまろび合たる手枕の小野太良里 契りむすぶ草の程をかり初に伏見の野辺にあふぞ嬉弘丸 通事をばいなと夢へついなみ丞の野もせの夜の落安くも川南 毛々豆多布 桑折 野となれと思ひし心しづまらで長閑房御室 うちに籠れとやしける恋草 武蔵野の広きもせまき家物の森眸亭馬伎 おもひの果のなきにくらべん 天地とへたづ思ひもしらまゝに万葉 とらせは未はつゞくむさし野 毛々多良須花三 蔽蒔 汲よかし野中の清水ぬるまなく有明亭月彦 もとの心に想ふる此身を 恋艸の萌出る野を焼人の不掃底苦成 あれはけふりの絶ぬ我むね 思ひ草茂る計に道絶て松寿庵年盛 あだの大野のうき名恥かし ゆかりあるひともおめん武蔵野のはらにもあまる残思ひ草松古砂女 玉たれの大野ときけど逢さるはこすてふことをかふり言葉 吉田 恋艸のひともと故にもの思ひあはれ果なき武蔵野の 丞草のしける野道の跡やは只一筋に分まよひけり 福島 涙雨ふるから小野のもとかしはもとかしき程またぬ夜はなし 半田 茎野に狩ふすとはまきらせと二人か袖にそみて侘しき真富貴 忍はせて門をしめ野の艸枕むすぶも深き契うれしや若女 恋傷ていく野の道は遠けれど近き契りのはし立もな 月に応なひく雲だにとめの浦磯の宝野に明しかねけり 武蔵岩附 恋わぶる心ひとつは武蔵野のはらにも餘る思ひ果なし 初木 もの思ひ身にかさぬれは筑部次のなへての人のめにやかたらん 式部 袖ひちく涙の雨も恋艸の茂りあふ夜は嬉し野の八郎 竹亭直成 津和野 別れ路の涙の雨や藻分し野に置あまる晩の鶴 加茂加曽布花一 独寝の夢にはみえし手枕の葉をなつかしきしりおもよげ世富 野辺みれば風に千草のなひけるにほひかぬしが心つれなし木守 尾張津島 我恋は野川にかけし丸木橋渡れる如く脇も見さりき 六笠園菅雄 はてしなき恋水はつらき武蔵とやうさ名をかくすらさへもなし隣馬 果もなく広き心も怠艸にせはめられけり野辺の細道集賀 春秋と心の色をいかにせん紫の野のかはりやすさを生花斎眼道 むらさきのひともとかめぬ武蔵野に思ひ艸をやつみて契らん伊志女 小舟山 武蔵野の薄における露程の契ともかな月のをと女子田毎亭秘馬 藤沢 忍ひあふ夜には夜星さへ草の床敷寐も嬉し手枕の輩有犬 いひよれと君は逃水むさし野の巣だにもなき歎きをぞする苗人 津和津 若草のいとやはらかな手枕の野にあふ時そかひなくもなし むかしをも忍ふ野沢の杜若ゆかりの色にうつる心は亀遊 恋艸はしげる夏野の道だにもあらぬ方へや迷ひ入らん万象 洲鶴 毛々多良須花二 をし鳥に習ふる女夫とはなれすに離れ洲に居てあさる商人 毛々多良須 是も又ひとつの島になれるかと神代ぞ思ふ洲に立る鶴諸実 白鶴に浪も送らす流れば洲に流れず池のよりしかとし 仝 あしなかき河崎に遊ふ朝鶴はめて度御代の長きはしなれ益美 松山 まな鶴の姿はみえす聲はして沖の白渕の啼かとそおもふ 枕の頃をりなはかひも有ぬへし青洲に何をひらふ難鶴 森林亭木守 毛々豆多布 千とせをも馴来て爰にすみま川 より洲に常に遊ふ友鶴 万葉 沖の洲にむれ居る鶴は浪の花 よせて作りし出るとそ見る 睦実 丈高く浮世をすつる姿かな 洲崎の岩にたてる老鶴 万代亭寿米流 毛々タタ良須花三 嶋にあらす潟にもあらす沖津洲に おるは真白き鶴の色ころも 津の国の一の洲浜の鶴をみてめで度臺や作りそあけん大枝 いく千代も君のめぐみの深しとや思ひより洲に遊ふ故鶴岳住 浪をみし水なき空も舞てはにや流れ洲にをりて立る事也 一加幾加曽布施一 みつ汐もひるか洲崎の貝の花のほたて尻してあさる艶雀 盛岡 仝 群つゝも居並ふ鶴の毛衣は洲崎に立てせんたくやかる 広成 全 朝しほに洲崎によする白浪に洗ふか清き鶴の毛衣 松代 箱の浦砂のなし地に蒔絵ともみえて洲崎に立るまなき 千代かけて海さきに鶴の集れは亀も甲らを干に出るらし木守 亀に乗し浦島が子の七世より九世渡の出海に千代の立都井丸 盛岡 友鶴の通ふ洲浜の松風の琴の音色にたてる諸声 枯あしのほや貝鮓のすにつける鶴はいくとしなれてつむらん真進良 日のたけし夏山をりて秋津洲にすみつきぬらし千代の鍋座真清 梓りはるかに遠きはなれ海になひきつれて鶴もゐる 類をも君にゆづりて手代ふともしら洲に馴て遊ぶ故鶴種成 親の側はなれて餌をもひろひつゝなか洲におりて遊ぶ雛鶴煉方 鹿さがる姿をみれば手遊びのいともめでたく鶴沙なり 樹工鳥 毛々夕夕良須花二 名古屋 名主の跡は夏をもしら鷺の雪ふりつもる沢鹿の浦松橘五周 姫松の声ひくといふは誠かとよく〳〵きせばうそにぞ有ける 庄内 今も猶尋ね濡らん三輪の山杉の木末の百舌鳥の竹茎 森にしも群居る鳥を遠目にはなんじやもんじやといひなつみ 千丈の松の樹の上に羽をのすは此とも見ぬ鷲にや有らん 照道 毛々豆多布 十五人のすえぬ野鷹もひともとの森仰亭難奇免 こぶしてふ木にとまりなれしか 毛々多良須希三 なく声に時過さそひて梢にも盤亭奇多く気寒寒ののののののの気気 紅葉をみする山鵬の足 すゞしさに雪かとぞみる川柳難哥免 葉たれて枝のたわむ白鷺 八幡ひ木らは青葉をかさねても煉方 親鳩に羽は重ねさりけり 及はざる事もあればか響さへも世富 花笠おほふ梅にとまれり 白鷺の城みかけて旅からす跡人 椎の葉に盛飯とやおもはん 立並ぶ杉の林に酒ならですを造らんとふくろうの啼八嶺 毛々多良須 若葉さす枝に留りて白ななる不断桜とみゆる白鷺弘麿 際出し殿はおのれが明ぬるにやまばといかに森手隠れし睦実 蜑に船はつせの山に鵜かとみしは烏なりけり卯花の月跡人 火焚鳥梢に啼は行水を遣ふ烏の湯やわかすらん諸実 暑き日をよけて思はず下枝に留る親鳩子に心せよ繁成 鳥なれはこそあれ訳はしら鷺も五位さへのぼる椎の上つ枝跡人 藤沢 美しき姿山鳥尾長鳥きにとめてこそよかりかれ 岩附 それて来しとみれば野中の松が枝の挙にとまる通るもあれ 十八の松の尾上の梢にや仏法僧を鳥の啼こん福養 降つもる雪にまがへとよくみれば目黒の森に群るしらせ おりて餌をひろはんとしつ又ふる梢に雀時晴して啼四ツ起 老松の腕にあづけて親鶴草をあいすやうに逢てけり 気に留てみれば月夜にあちらでも木に留り居る森の子馬全 梢にて眠る小鳥は箸鷹の夜さらぬくめしあしたなるらし海近 千とせふる鶴の声より千代と啼座は松のみどりなからし岩門 一枯枝に粘すれと啼ふくろうはなぶる雀の口ふさぎかも大枝 卯花の雪と詠る遠山の梢に留る数のしら鷺山松 耳つくの啼も麻布の六本木それと分らぬ夜半江戸好成 蚕飼する桑にはいとふ鶏鳥村からすぐに追に追に出る跡人 時鳥まつ夕暮は木末にも湯やわかすらん火焚鷹 水なき鵜の府中の森の中にゐて人のざみ寝や珍らしとみん大枝 梅に来て鳴鶯にまけしとや肩を並へて目白出しあふ万葉 子を持てば松の針雲身をいとふ栗のやうなる鶴の男香龍目積 加幾加曽布花一 夏忠を餌にはみしにや飛て巻くひの木の枝に対する鳥 月の夜は梢にねぐらしめながらうかれて啼や山の子鳥馬氏 騒かしく梢に風の吹すさみとまりかねたるむら烏かな木守 一羽二月友をよぶこのふはて今朝ひから乱れてみる梶原心 めでたさは契り替らで老松に手代をかけたる心得の栄蔵常笑 丸亀 かうとしも啼て親をや碁をふらん北なら柏にとまる事烏愛雀 時は今ひじりの御代の桐の木に啼島をほうと聞けり春秋居清統 樽さく花の梢にゐる鷺は霞につゝむ月とこそみれ若柴 人にさへ馴る恋は葉直なる風の柳の枝にとまれり松蔭 うつくしきさげ髪と見る青柳のきさきの目にもとまる小鳥岳住 おなし声同し島と聞ゆなり熊野の山の木々に啼とも真名美 露時雨ちゞに深たる上を又いろ鳥渡る梢うつくし数息 高砂の翁みわたす松が枝にさんば舞ふ鶴のとまもめで世富 暁を松に宿りて啼やらん仏法僧ときく鳥の音は比左左志 鳶烏ねぐらやいかにうりからん匂ふ木の芽のあへかなる頃万象 早苗 毛々多良須花二 盛岡 まけまじとかたみにはげむ乙女等のかつしか早稲の早苗となり 仝 実乗 植まさる程猶跡へしさるのはほこらぬ様をみする早々女行長 早劣とる菅の小笠は賤の女の日やけをいとふ顔も田面も三巴亭三津丸 しが代の為とてうゝる若安はみのりて後に身の利とぞ 毛々豆多布 みよし野の田の面の早雷とり〳〵に寿氷流 ゆるをと女や春の雁がね 盛岡 手に足の逃るゝ中に田植哥海廼為成 さりながらよくとれる早乙女 八束穂も今植つけし若苗に馬伎 みえて猶たつ露ぞ繁かる 毛々多良須花三 柳櫻亭花也 荒くれし男の手からやはらかな ふしたゝぬ雷をとれる子乙女 名古屋 住よしに穂をはらむべき若面に龍迺屋 いかで流れの身を雇ふらん をとや等が笠はさながら白路るや繁門 早苗うゝるをあさるかとみし はしごまの植つけしまふ折からに目積 月は笠着て上りかゝれり 山鳥のおろぬくやうにとる早宙真進良 うつす鏡とみこしろの小田 蓑いるを願ことにしてとる雷は墓参菴房得 ふる五月雨にうゝるなりけり 天の時地の理もしりて苗うゝる朝霞亭波音 一賤も和しつゝま哥うたへり 賤の女も機織ひをばさし置て比左志 よき日えらみてとれる若苗 庄内 早縮とる手えすゞしく鹿田に風の姿を植出しけり 真牛 毛々多良須 盛岡 住よしの御田の餅苗早稲なれど遅苗をとる心持なり 為成 仝 降雨に早苗とる事も早稲波稲おく手休までうゝる早々女実乗 豊なる代にすむ賤は飢ぬなり植る早苗も秋の八束穂馬伎 乙女子がうたふま歌はふし立て節たらぬ間に取早苗かな世富 古河 をさな子の腰巾着を引つれてねつけ〳〵とうゝる早乙女” 森薫亭俊英 津和野 一秋はよく実のいれかしとまこひてふらぬ日も笠きぬる田植女樽枕哥王 筆の如手にとる雷も植田流つゞきさへよき水茎の岡岳住 植はてゝ誰がしれたる黄石立とみれば田の面にうつる月影山松 早苗とる乙女のさまもふたへ腰かく実のれとやうらなるらん うへ見ては及ぬ業と早々女も笠着て植る小田の玉宿月迺屋可都 東中二十八 出来秋の姿をみせて賤の男が腰をかゞめてうゝる若苗八嶺 賤の女が早留とりつゝ出さへあのね此根と分る言の葉 仁連 みいりだに秋はさぞかし植立て田毎につきのよき早留かな 湊田に船をうかべてほになれとさをにもみゆる子稲とる田子入船 磁岡 五月雨に田の面につゞく笠のはしかけて早苗を植わたす 此頃の小田のかか露にひまなきを蛙の歌のやむにてぞしる岩門 植のこる早苗はほして更科の田母の月の鏡とぐらし甲良 きのふには花せき入し田の面にけふは早雷の青葉とせけり麟馬 早々女はつらり並びて田をしきる畔のやうにて白き菅笠目積 筑波山影をうつせる田面にも女夫並びてうゝる若苗跡人 水のとち植る早苗におくれじとすゝむ程なほ跡へさがれり睦実 ゆきゝする音と秋との其間に雁のつらにも並ぶ早々女仝 濁りなき御代す格別早雷とる民のよごれのめだつ業哉波音 萩 夏笠に乙女が早雷とりなりを鷺も真似して群る田の面 田植にも乳守の里のうかれ女は枕もあてな笠を忌にけり松能宿 信濃八幡 水深き津田の早苗乙女等がみぎは斗をとりやしつらん。 松迺翠 天神林 田子の浦にうつれる富士の雪分てうる早雷や春の若草 曽丸 藤沢 早し女のとる稲ふさのゝの田には頭にふしさへたちてもでたき都代志 加幾加曽布花一 高角 早乙女の唄にまけてやけうる時に蛙の手をつきてゐる歌種 とる苗は稲葉の雲とならぬ間に賎が小笠は月にまがへり岳住 名古屋 田子の湯にうゝる早苗は水越て富士の高根にのぼるかとみし野守 五月雨に草稲田の早苗とり〳〵にもろ手にゑぐ賤が早業きききさ子 東中二十九 鯉つる鎌倉近き湊田になまりぶしなる男女の唄年益 古河 もろ人の命をつなぐ苗なればながめにもよく植る早々女田山人 盛岡 老ぬうちにゑぎ袖んと夜の間さへ長きふしをばいとふ早乙女箕船 早敷とる手にいとなくて砂女が髪もむすはず取乱しけり寿米流 実入よき秋を祈て顕にことみな実を入てうゝる玉苗歌多丸 ゑぐとてまかきのにまはふし立を心へだてす早苗とるり種成 玉蕃を植る田面に早乙女が笠は真白き鷺の一むれ深志 若苗の色も愛たき青すだれ節もそろひし早々女の類有明 一餅になる苗をうゝるによくつけと腰ものし〳〵とれる早み女 水戸 カテ自多楽庵 麻生 賤の女がわくせく早富これる吉はまた楽しみの種にてなれ 新庄 化粧田をうゝる乙女の夏笠もいと白〳〵とみえて美し 早雷とる田子の瀧田の白妙は富士も手伝ふか並ぶ藤 栃木 植残る早雷を助に菱笠の二つ出しかうつる夕月未天通用亭 紀伊若山 壱二番札うつ笛を早々女のいそぎてこれる観音寺領花廼屋堂丸 早し女の田の面に腰をかゞむるは頓て身のれととれるしま男鶏 夜鵜川 毛々多良須花二 一鵜をつかふ価まとめて月の出ぬ晦日はやはり頼みなり目積 松山 一烈ならで夜半の鵜舟の篝火はいく瀬思ひの身やこがすらん 淀川にてらす冊の舟後光弥陀次郎ともいはん鵜飼方芹丸 鵜飼舟響を篝に照らしつゝ焚なるひでや槙の嶋陰松人 労れたる鵜をば休めて明かたの浪をくゞらす篝火の類千代注 楽しみも笄もしらけ帰るなり狩けふ舟を月にさゝれて年益 東中三十 《題:《振り仮名:《振り仮名:《振り仮名:《振り仮名:《振り仮名:名:《振り仮名: 石見高角 夜もすがら魚を吐せて煙草だに方円斎貞水 のむひまもなき鵜けひの業 桑折 月影の登れば照らす筋火を御空 水くゞらせて戻る鵜遣ひ 夜もすがら労れたる鵜を遣ふ身を川南 うやつらしとぞ人のみるらん 月影のいづるを焼てあちこちに万業 一鵜舟のかゞりやみになりけり 人は皆月を惜むに鵜遣ひは諸実 まつ間にひまのいるををしめり 古河 朝夕に細きけふりの世渡りは夜半に鵜遣ふ綱を頼めり 春秋亭艸成 河内狹山 舟火の消なばやみの鵜遣ひのあやふき業の川宿刈 かゝり火の鵜舟にさすか短夜や焚さし長く残る御方 盛岡 糸長 月に背をそむけて遣ふ将洞男の此世からたに影法師阿蘭新 魚のよる浅瀬みらんて篝焚鵜飼の罪や深く成らん三津丸 月の舟に先かけされて鵜遣の今宵は川へ出かねたりけり松成 笄さす高瀬のよとの鵜の外にけひなれたる有なれ棹哉種成 解火をたきつ早川二十日にはよい闇のまといつく鵜遣ひ苦成 夏の夜の更ゆく程も早瀬川鵜縄せはしくしらむ舟火河原直路 篝火を消しても飛は消ぐらで猶ふかくさす鵜遣ひの棹可仙 鵜遣ひは神ならねども短夜の明か侘しきかつら川かな綴安 明らかな月の光はよけつゝも鮎のさびをばきらふ鵜越波音 無益には飛つくらじと思ふらん夜川深しく鵜益有有て比左左志 夜もすがら流しつくりつ鵜遣ひのねぬ證といふ業にや 新庄 あくかれし魂かとみれば玉川を鵜けふ舟の筋その影 住虎 後の世の迷ひの程をまきの将鵜の暇ほとを夜母いたて松能宿 水の面を照らす筋は鵜遣ひのひでや焚らん槙の嶋陰母伊平政府 白川 玉嶋の川上よりも川下へくだり闇にぞすゝむ鵜遣ひ鹿角房折雀 先の夜の報ひの響は白浪に此世の響をてらす鵜遣ひ一髪堂童賀 紀伊若山 一我髪のしらむはしらで照月の雪を照しむ老の鵜遣ひ玉川舎妾戒 岩槻 山陰に月のみふねは漕入れて鵜遣ふ響を照らす篝火 加幾加曽布花一 日出山 後の世もかくやく冊の火も消て闇路を渡る鵜飼にうな竹長 遣はるゝ命を繋く鵜遣の罪は消ざる夜半の筋火 鵜飼舟川瀬に鮎を追廻ししらず顔にはふける短杉梁門 笄火により来る魚をとり得たる嬉しさに飛もしれたり木守 筋火のくらき川辺にぬれし鵜をほしも頼までけふ山陰世冨 夏川に月の舟にはさしかへて夜半に転遣ふ冊火の類 世渡にする鵜けひの邪魔をせし月にも飛は有明の空 舟火に此世の響はてうしても精遣ふ後の世こそくらけれ常笑 飛つくる業としりてや手縄をは百万通もくら鵜飼かな伊志女 月影にすける雁皮の紙屋川鵜舟の冊うす赤くみゆ雅喜過格良 庄内 月消て毎にうつる鵜飼男が頭に夏の霜ぞ残れる 出羽竹井 諺の子故のやみにみなれ棹さして花ともしらぬ鵜を橘古代 麻生 海ならぬ川も鶴舟のさし引に出入をくれる月の汐時 後の世のくらきに迷ふ身としらで月影うらむ樽遣ひの峯花也 鵜飼舟よる〳〵川の上の瀬に星の影ほどうつる舟火終雪 飛業もしらで夜な〳〵むくつかき春よりそいつる鵜遣跡人 弓張の月の出たのに驚て放つこぶしのゆるむ鵜を和哥駒 身を楽にすぎはひだり鵜飼男のくはすとみれど苦はぜざり万象 けり 蚊遣 麻生 毛々多食須花二 明らすき月はみねども賤の世のくゆる蚊遣にかなし顔する繁樹 蚊柱のねる程立る蚊遣火の煙を猶もねかす夕風万籟 ちりし花の枝を忍びて焚ぬれどそふりに残る蚊はさらに菱泉 つらかりし他人の中もかほどには思はず浅こぼすふすべ火商人 毛々多良須花三 ふすべ火に漬松か枝や焚ぬらん橘五国加久美 ざゝんざ諷ふ軒の蚊の声 肥後人吉 我しらず橘の香も追出して漬夢 後悔先にたちし蚊遣は かなはしと煙にうたれ逃るかな比左志志 石になる木の楠の蚊遣火 此頃は昼寝ばかりに夜もすがら山松 かやりのけふり立通しなり 月のさす影も追やる蚊遣火に閑雅亭外成 何を悲しとむせぶ涙そ 我すねの痩我慢にもされてはたまるもの蚊やいぶしささ 毛々多良須 声ふとく立蚊柱をけふりもてひとなてに只たふすふすへ火 鋸屑をくゆらし立る故なれや次第にひける軒の蚊柱 盛岡 松山 発る家もかたふく斗藻屑たくけふりに崩す軒の蚊柱 鰭鰭振 下毛麦倉 賎の雄か刈来し真草履口に蚊に喰せじとふすへたりけん ん高山亭奇積 古河 一是も又飛騨の道にみせはやな煙にけつる軒の蚊はしら松重館風流れ みえがぬる印の杉にいふされてうろ〳〵門に立る蚊の声福養 又も来てさすや将棊のばん方はかくておふにをする蚊遣 くゆらするけふりは空に雲すなりて夕迄は蚊を流したりけり柴諸房 上つ代の文字もかくやと夕暮に縄をむすひて蚊遣にて物菓 宵のまゝ煙はたえて博居を蚊に起されて又いふしけり森雄 隣への義理も忘れて夏の夜はふすへ火に蚊を避やりに繁成 麻生 掛物の龍もけふりに黒雲を起すとみゆる庭の蚊やり かをるとてみかんの皮を焚ぬれは匂ひにつれて蚊おらざり 佐久式部 ふすへ火に宇治は茶の木を焚かして軒に蚊もよく出すなり 福島 葉柳をくべしけふりの素直さは枝のまゝなる風坂遣火 松代 夕顔の棚に臼つく蚊にむせてごぼ〳〵いふか賤がふすへ火 人吉 ふすへ火の煙になみたごぼしても蚊なしといふは嬉しかりけり 加幾加曽布花一 雲の峯とみゆ 四月十一里の峯とみゆる計に立けふり山のなるほど蚊のむれて行真清 上田 けむたきは庄屋か門とみゆるほり一むらなひく夜半の頃暮火 難田浦 笹盤の雲を覆へる煙には客の来るのもみえぬかやり火南陀羅 盛岡 軒端なるけふりに月をかすませて蚊遣に春の影を思へる名歌記 東中三十四 仝 狐火と見しはひがめか信田なる里にもえたつ賤が蚊遣火実乗 家母の蚊遣の煙に夕月のかすある空ぞ春の面影馬伎 世渡りの業は細くもかやり火の煙りはふとく立る賤が家菊人 燃たゝぬやうにけふるを蚊遣火と上手のわから水を漏して万録 ふすべ火の煙に富の蚊は失て窓からぞさす夏の月頼可都良 うたがひもまた蚊の声に難波人荷のあしいだす軒のふすべ火菱象 夕暮に立る蚊遣のやりてはにつきのけられて逃る軒の蚊弘麿 夕くれに蚊は追出して夜すがらかをらざれどもすくもいぶせり川南 責らるゝ蚊をばふせぎて日暮から多く蚊やりを立る賎が家月人 真黒なる煙にちらつく蚊を火は雲間に光る宵の稲安めめ万葉 いぶされて宿を逃出す蚊の聲のいつくもおなじ夏の夕暮月美都 早之女の帰る頃又さそひ合て蚊遣の煙り出る賤が家高田真文 村雲の色にけふりてさす月の影を曇らす軒の蚊遣火 栃木 朝夕の細きにかへて長者より軽はふとき賤が蚊遣火通用 大通用亭 仝 卯老の月は晴しに心なくたてしは賤が蚊遣火の雲言の業 すね松の鋸屑をもやふすふらん煙に節のみゆる蚊遣火蜑記 瀬谷 筒花火もちの月夜の蚊やり火は玉吐龍とも空にみなり 坂遣火に縄をくべれは其まゝに煙は軒によれて立けり木守 うるさしと焼る蚊遣火息まきてけふり真黒に立る賎の男万万万万万万万万万万万万万千千百万万千千百万万万万万 河辺蛍 毛々多良須花二 古河 わらはべのかれる野川の艸記して猶もからるゝ夏虫の影 鳥羽玉の闇もあやある梅津川是と見まがふ夏虫の影井丸 毛々豆多布 古河 川の瀬にそなき兼集りて 志真子 はなす光は夏の夜の友 毛々多良須花三 星の落てなりにし石の光かも 麟馬 川浪ゆれて飛へる蛍は 一夜もすから宇治の川瀬に木守 木守 ひかりつゝ 朝日山まで照らす夏むし もえ出しとみりの原よりいつみ川わきて流るゝ風の夏むし菊人 夏昌は闇を照して武蔵野のつきなき詠めとも恋せり弘麿 木隠れに行水くらき音羽川道しるへして飛足かな種成 イ政 烏羽の古事ならて絹川にかりし並をうつすもしむ 毛々多良須 三ツ浜 己か心をあらはにみせて飛蛍おとなし川に育つゆゑかも も幽昧 盛岡 光さへ水にうつれる玉柳つらぬき留し岸の夏むし 石川に波の打まゝ火の書んいてゝ散とふ暮すゝしき馬伎 夏出は爰にすみまのすみまても船の明りにかしを照せり木守 五口要横尾 とふ蛍追廻しつゝ思はすも片足羽川へ踏込にけり 一永白 麦倉 ころへともなかぬ是を進廻し音なし川に遊ふわらはへ 一わらはへの鏡をは置て夕暮に川辺の岡かりにいてけり不尽彦 東中三十六 とぶ蛍水にうつりて後せ川あやに行かふ願ぞすゞき若松 淀川に廻る車の水勢につれてひかさや藤虫の影槙迺屋炭人 なく聲はせねど蛍の涙川流るゝ時ぞ玉とちりける和哥女 むとみる蛍は色の名とり川あだな光に人のうかれつ高澄 大井川越る蛍はまし水に留りし人の魂にや有らん久志丸 里の子も蛍持する星川や日永台扇の風のすゞしさ物菜 川そひにほとりし草の暮待て茲に艸のほとりをそかる真進良 庄内 川の辺のいつ藻の花は是ならん風にちりても消ぬ夏虫訓文 菽蒔 夏むしの身は浮艸や夢を絶てさもへる水に影をまかせり 仝 燈火とみる夏虫の昼はきえ夜は光ます玉川の峯 山川の水にあらはれみゆる哉いはねどきよくうつる蛍は道守 花鳥の音色はさめて露艸の深き川辺に光る夏むし蜑記 川上へ並の類は流れけり風に跡おふ青柳の橋 夕な〳〵並むれ来る酒匂川にはさりかはきにやうちを好めり折雀 唐津 狩に出し蛍はおいて川端をあぶなしとなを追歩行頭母一幹 一加茂加曽布花一 一堀田川渡れば蛍とびさりてうつりしたの水をすくへり真清 声はせで世に名も高き夏書に貴賤群集の宇治の川岸 玉川に玉の光は如明の花より子馬のめづるなむし音繋 津和野 伊勢武者の魂かも宇治の細代に火野どしの如みゆる蛍は哥王 昼の間は決すみまの川つらによるはもえ出る夏虫の類月又 きり〳〵と絶縦ならしてみゝと川なりぬ魚を狩ありく外万横 川の面水の上ゆく夏虫をほしと思へと手にもとられず仕合吉成 宇治川にわらへか遣ふ軍配にむらかりかゝる蛍合戦柳岸亭数成 夏火をほしとよみしも天地と飛違ふたるけしきなりけり弘暦 もゆるとはみれとも涼し川水に影をひたして蛍飛ゆく来人 川岸に見つけられしと灯火を跡へ廻して飛ふ蛍かも松成 狭山 集りし茲を玉とみなしては川辺の蛇籠風やきさん神山尾見通 おさへんとか茂の川原に童部は夢の飛てくるまあらそふ麟馬 浮艸のねなき夢の玉水や袖につゝみて帰る川風秋夜菴絶女 文月も待たて渡るか天の川ほし命の空とみる藤頼千代人 加茂川に稲妻の如とふ爰わけいかつちの神のいませは跡人 宇治川の白吹の瀬をとひ通ふ黄も今宵出尤成らし若女 山吹も益に遣して此頃は黄金の色に光る玉川和哥駒 烏羽玉の闇路を照らし飛かけも清き川原によるの藤虫米吹 川水にうつりし己が影をしも友とこかれてよる蛍かな花也 大和新庄 草化して夜は光れとも夏虫の明れはけたくみえぬ川岸 真綱 吹れては蛍ちるなりいさゝ川いさとさそふて風の持て来る 藤沢 つかむ草に消る光を露かみて散せはやはり谷は飛ゆく万象 晩雨 毛々多良須花二 夕立のあかりかねたる雲のあし人もこそりし雨の軒下秋衣巷健女 夕立に田畑も猫のひたひ程作れる梅も喉をならせり松蔭 墨の如たつ黒雲にうろたへて白きまよとかける諸人万事馬 毛々多良須 盛岡 泥になりてかけるを追し雲の脚洗ひしやうな夕立の空 立のほる富士と浅間のけふりをも遣しきほふたる夕立の雲木中 毛々豆多布 水ほしと願ふ所の夕立に睦実 うるはしげなる賤の雄が顔 夕立はいかづち山のはたゝかみ跡人 はた高みより瀧なし色ふる 毛々多良須花三 盛岡 凌つゝいつる木陰を吹風に寿益美 はれての後も夕立にあふ 黒雲は墨ぬるやうにかき 月迺屋 可都良 あつさけしたる夕立の雨 雲の浪間今たゝよふと三日月の久志丸 舟くつかへす夕立の雨 古河 雷の餘所へおちたる夕立に命ひろひしやうな深しさ 難奇免 狭山 かみなりもなる程つよき夕立の足を空にぞ急ぐ諸人 万祝 雷の音に肝さへひやしけりすゞしくなれる夕立の事四ツ起 雲脚の葉山繁山夕立の事は篠をぞつくばかりふる寿米流 白粉の雪をあらふて夕立に素顔をみする不二の崩菊 高田 音もとへはげしくかゝる夕立をしらぬふりなる跡の山〳〵 万籟 夕立に流してゆけば暑まで通りぬけたる跡のすゞしさ菱家 雨のあし帆あしと騒ぐ舟人の手さへ廻らぬ沖の夕立吉成 わたつみの龍の巻たる夕立は広き野つらも海となしけり八嶺 上岡 いちあしを出して逃れば意地あしく猶追かけてふれる夕立 月影のさしてもしばし梢から風に降やまぬ夕立の雨川南 東中三十九 佐悪ずはぬれまじものを走船おくれし舟はあはぬ夕主常笑 立帰門夕立雲は一しきり星を囲ふ屏風なるらん照道 はら〳〵に山よりほる杣人の跡よりかける夕立の冬九井亭麗 筑波山雲の花のかぎさきに裾輪の田井にかゝる夕立縫女 夕立を瀬田の橋より見渡せばかたまは晴て辛崎はふる若女 むら空に中半ははれてかたへより空もしきりにふれる夕芝万葉 瓢をはすにたゝせば夕顔の花も叩くか夕立のた はげしかる天の数と夕立は巴瓦もおとすやうつ花也 夕立の降ゆく道か虹の橋山のこなたにかゝりこそすれ おとし来る風に追れてはしり舟みなといれよと夕立の空葺人 日数だに草もゆるがぬ暑をば一度に流す夕立のた 夕立の晴てたゝみしほろ欝に座敷の中も加をすれ 村松 雲のはやし天の鼓と夕立に軒の雨たれ拍子をぞく赤木厚 懸わたす虹は紅葉の橋なれや夕立通ふ星命の浜蜑記 天神林 西風は唐土よりや起りけんひやうを飛する夕立の空 吾妻平 七つ鉢並べてしのぐ夕立のはれて月もる不破の関の 何所迄も清くそゝぎて夕立は跡に濁れる空も残さず真清 夕立のせはしく降るにせはしなく雨を分てもさす日頼かな 加幾加曽布花一 いづれよりふりしものかと夕立の空に不審もはれる日の類桜下亭春音 馬の背を分てしきりに夕立のふり行緒の晴てすゞしき世富 夕もの先になりたる鳴神にまげじと急く雨のあしかな友無 かげ込てかる傘は夕立にさしかゝりたるむしんなりけりけり 傘なくて濡くさりたる帷子も罷直させる夕立の空 車軸をも流せしまの夕松の輪立斗そ残るすゞしさ芥丸 鳴神に勝やとられし真桑瓜ころけ落たる夕立の跡山松 夕立にあはぬうちにとゑぐとて汗に袂もしぼりたりけり真長 夕立の雨に遁れて逃水のかくろふ所もあらぬ武蔵野菊住 降雨に星さ忘るゝ夕立の軒端へだてゝいづる日の類豊平屋万作 いつよりも早くぞかゝる夕立のふるや降らぬに風のすゞしさ滝辺本光成 出かけたる月も恐るか忽に雲にかくるゝ夕立の空朱人 星さつよくこらへ兼しも夕立の跡は出来たる堪忍めにじ真遊住 夕立に欠込み居れば軒端から星はわきへ出行にけり和哥女 不二の根は晴ゆく空に顕れて裾野は曇る夕立の雨直路 堪かねし星さに雨のふるまひは礼から先へゆふ立の真名真名美 秋といふなき名負ふ程すゞしさは此夕立の雨のぬれ衣物菓 肥後人吉 夕立の早く所をふりかへて隣村には蝉ぞ時たる 商人のあめやおこしの雲早み雷門にさわぐ夕立 夕立の晴ゆく跡にたつ切は暑さを凌ぐ人の息かも 女 夕立の日傘雨傘はれゆけば影と日向に画から村菊花朝 仝 暑き日に寝入しやうな野の草を起して廻る夕立のま杉山也 仝 夕立の雨あし追ふてからむ程から身ではしる長縄手かな玉壺庵 村松 さなきだに短き夏の月の水あける程ふる宵の夕立木 厚房 藤沢 笠もてといはぬ計に雨雲の雨具ももたぬ夕立の空 肥前唐津 いかつちのゐます所は夕立の雲の上るも雲の下加茂養柳軒山貢 東中四十一 五日妻 耳に手をあてゝ逃れば追て来る足の早さよ夕立の事狂病堂か多丸 いそがずは濡まじものと夕立はわづかに降て汗にしぼれは万象 林蝉 毛々多良須花ニ 一林をもゆまりて風の姿みんと鳴なる蝉の力声かな弥平坦貞雄 麻生 茂り枝の林に汗をしぼりけんきかへてそ啼蝉の羽衣万都春 はやしともしらで餘りの涼しさに秋かな〳〵と螺や鳴らん廿 薫 一坪時の紅葉せしかと見渡世は嘘にも濡ぬ松林なり比左志 盛岡 毛々多良須 ハ名哥記 啼ゆする林の枝葉青あらし深しくもある蝉の羽題名哥記 夏木立むれ立蝉の諸声は梢も動くやうに涼しき音成 咲花の雲の林も青葉して春をはしらぬ蝉の諸声馬伎 蝉の羽の薄き衣のすゞ風に星さを凌ぐ林陰かな永白 葉之喜弥志 一御法とく雲の林に籠居て年益 一夏たゆまぬ蝉の諸声 毛々豆多布 麻生 夏山の蝉の時雨の林には薫風舎薫 木々も夕日の紅葉してけり 毛々多良須花三 豆蔦のつるをば珠数に栗林寿米流 つく〳〵法師経やよむらん 尾張津島 すゞしやと夕日の影の影の照そひし六 六笠園 六笠園 菅雄 雲の林に蝉ぞしぐるゝ 涼しさに林の陰に居成れは万々斎真長 ゆりきすやうな蝉のもろ聲 影をだに浅さぬ月の林よりもれて聞ゆる蝉の聲〳〵 、世冨 稲荷山 暑き日も椿の木にとまる油蝉やけつくやうにじい〳〵と鳴 蘭溪亭 すき間なき林の中に鳴蝉のすゝしき声に秋を有らし照 雨乞のしるしはぞや鉦太鼓はやしにはやも蝉ぞ時留る跡人 ふる斗染ぬ時雨は名にしやふ松の林に蝉の啼なり読丸 蜘の囲に梢やかくる蝉の音の時雨をよほす木平端な数恵 旅かごを下りて林の下すゝみゆらるゝやうな蝉の諸聲平散成 瀬谷 蝉の聲聞て涼しく暑き日も凌ぐ林の葉月中の葉月 吉原 すゞしくもなるを嫌ふる夕鐘を揃に蝉のつくはうし為博人 加幾加曽布花一 三條の浦松の林の蜘の巣にかゝりてみゆる蝉の羽衣 時雨にもそまでつれなき松林憎しとゆする蝉の諸聲寿米流 飛て行を過寺のつく〴〵ほしとみる蝉の小川の林陰かれ煉方 過てゆく夏もはやしの木隠にをしい〳〵と蝉や鳴らん弘麿 古河 山陰の松の林の苔清水わきたつやうな蝉の諸声 七貫の遊びし東の林には王戎としも蜂や鳴らん跡人 若枝さす木々のみどりの林には己が取まて脱た空蝉物菓 麻生 わら屋等が林の蝉をとらへんとみれば梢につく〳〵と鳴永樹 吾妻 昼餉喰ひし山田の賎が腹つゞみすゞむ林に蝉うたふかり秋安 切紅葉おそし林の夏木立桜の葉かくれに蝉ぞ啼万万 寄山恋 毛々多良須花二 恋の山しるべのみの枝折ともならで踏迷ふ身をいかせん花也 人の目に早く立けり富士筑波それにも並ぶ我恋の山真清 東中四十三 稲荷山 忍びつゝみみる恋の山路をばひとくだりづゝまさか嬉し 柏林亭行宣 忍べとの君が返事は逆ひ入る者の山路の枝折なりけり 八嶺 人吉 かくみも筆捨ゆとなりぬべきけしきの替る人のつらさに あはで過るあし引よせて山程の枕詞を語る夜かな目積 高畑 富士がねを誓ひに立し故かして二つ並ぶる枕だになし あはでたゞ吐息計を筑波山うらやましきは霊の峯跡人 盛岡 行末の松山を浪の越るともこさで替らぬ色の常磐木 仝 恋しさに積る枕のちりだにもいく松待乳の山をなしけり 廣成 石となる思ひにこりてそとむけと袖振山の妹ぞ恨めし 仝 わくら八にあふ夜は月の真夜やしも曙山の名にぞ驚く馬伎 重荷をば持てどこ迄登るともくたびれはせぬ恋のゆ道木守 毛々豆多布 雉田浦 覚束なたつきもしらで迷ひ入唐樹園南陀羅 恋の山路のふかきおもひに 我恋の山懐にいりてみよ目積 目積 涙の雨の雲は絶じな 長門萩 毛々多良須花三 毛々多良須花三長門萩 恋したふ君の心にゆとならば山辺淡雪 よそにうつらぬかけを頼まん 尾張新田 世の塵も枕のちりも柳へかし 匙迺屋回 妹と二人の床の山には 弥高くかさなる恋の山彦の歌多丸 こたへだになき君ぞあやしき 恋の山深く入しかつひ口へ諸実 出ては跡へ戻らぬぞうき 東中四十四 ふみゝれとゑのね路はなか〳〵に箱根より猶たどりかねに 好成 待侘てうきふすまろやいつかせなる引手の山ぞ悔しき 待つてうきふすま路やいつか夜の明る引手の山ぞ悔しき菊人 ふすま頃の引手の山のありてより待も嬉しき閨の入口 ふみはればつらさ重なる恋の山胸のむらく絶ずかゝれり柳岸亭数戒 うき恋に迷ふ心のくらふしいやみなくまふ思ひはかなきききききききききききききさ しのぶ山心の奥に分入れば辺ともなとか人はしらまし松目合亀齢 人しれず思ひは富士の山よりも高さぞ増る丞を駿河路槙迺屋炭人 いひよりてすかる裾野を払ひつゝ袖ふる山の妹ぞ侘しき春金 一跟に居はいつかは妹が懐に入袂の山のはしも有らめ全 待宵の屏風の山の明近くみるも恨めし横雲の帯千代人 かりの世に契も夢としりながらさめては迷ふ面影の山米次 出羽竹井 つれなさの餘り積れば枕よりいとなるべし送る玉草古代 石詫び鳥の跡をも通はせて恋の山路の奥やらん 栃木 言の葉 佐久式部 恋の手に重荷を負て登る身は心の休む息杖もなし 竹庵直成 山程に恨かさねし恋中もあふ夜の床は海をなしけりは 仝 松山 あちこちとゆがみてふみも出しかねつ山道形な妹が心根 君故にならぬ堪忍駿河なる富士の山程迷ふうき魚 藤沢 いひよれるつきたにみえぬ我惣は思ひの山の高くなりしか 二本松 松代 独ぬる枕の山のむら時雨峯の紅葉やもみの小枕 北蘭薫亭 加幾加曽布花一 盛岡 なれそやしもとは塵程思ひしに積れば山となれる恋中 平規 山程の思ひあればややせし身に猶細布の胸あはでうき 月よりも待てそ越し石山のあふみと聞すばそれを力に朝霧深木 恋しさはたゆる間もなく山の如段々積る不二のしら雪若松 君ならでいはでしのぶの山の奥心の奥を人にかたるな山松 ぬく沓のかさなる事の重なりていつしかゑの山と成けり海近 亀の背におふ山かけて替らしと万代ふかく契る嬉しき春金 色狂ひ餘りし果のいさかひも須弥てふ山や宝のむつ言 逢みしは五弗ふとんの床の山俤恋ししがうつり香若女 恋したふ心のたけは千丈が歳にものぼる思ひなるらし森雄 人吉 不こにさへ今のぼる道は有ぬるに応路になどやふみ迷ふ喜多理 恋そめて登ゆくともよし野山花の姿をしるべにはして骨人 紀伊若山 心出羽忘る間もなくとめ所なく登る思ひの恋の山路松戸館古琴 壁に耳そのものいふ世をさせて窓と致ぬる小杉の中山 そめ紙のみまだるしと思ひてや恋の山路に踏塩ふ身は馬則 一文月の中にもゆると都なる大文字山は我と知れかし万象 寄川恵 毛々多良須花二 一芳野川とし惣ふる身はよどみなく妹背の山の中を流れん木守 別路のあした面なみ川浪にうつら影さへ見れば恥かし世富 恋病にあひ参さへ夏川の水もほそると君はしらずや井丸 恋渡る中は小川の浅瀬から一足つゝに則とこそなれ常笑 人の目をぬけて出羽の最上川いなといはざる妹ぞ恐しき春金 毛々多良須 竹井 片しきの枕の下の涙川袖のしつくを水上にして 古代 生田川いく度いへと落やうで二人前なる我思ひかな 盛岡 はりなさよ浮名斗は立田川渡らぬ先に中絶やせんバ ん實栄 毛々多良須花三 かならずと契りし松半の会津川馬伎 岸打浪のきしとうつなり 天の川遠き思ひをを懸りの真清 ちかく居よりて逢みたき妹 浜辺朱人 よれる瀬の出来て淀む歟浜辺来人 来ぬへに 流れせはしき我が涙川 ト 涙川ふかくも名をば流さじと身は浮草の思ひたゞよふ 金馬 仝 恋中はいはと柏の常盤にて替らずあふぞ吉野川なる 恋中はいはと柏の常盤にて替らずあふぞ吉野川なる 高角 偽りの大井川なる台越や君が詞のうかと乗られず歌種 深川かは隈もなきみを杭のくひの八千度思ひなせど青米流 胸の中に絶ぬ思ひは涙川涙かはかぬ袖や折なん百船 うらとふて三円あたり隅田川妹に誠のありやなしや 川の瀬の深くも妹にみをつくしたそ越す水ぞくるしおり千形 古河 忍んとすれど人めの大井川ふみこす事もならぬくるし 逢夜半は嬉し涙をみなの川関とめ兼し衣〳〵の空二三千 しられしな其睦言は一夜川一夜かはせし枕よりほか真槌 本を見つ月とみるめに俤はさらしな川に思ひ流せど 麻生 いひよれと思ふやうにも任せぬは妹がいや加茂川の水底 牛也 吉田 玉川のたまにもあはず通ひ来し恋の衣ぞ恥をさらせる あのやうにあれと泊瀬に祈るかなふる川の辺の二もとの杉真文 目の渕に土俵やつかん恋初て日々に涙の川のましろ雄富 二本松 飛鳥川替る習ひぞ頼まるゝ浅き契りの今の此身は 人皆にみたれしことをみそぎ川身にはみそぎのならぬ恋中木守 加幾加曽布花一 あふ夜里は妹のいづみ川わきて浮名のよし流るとも 思つび人にはつゝむ涙川かはかぬ袖に顕れやせん馬伎 忍ぶ夜はあたりへ心おきつ川水と魚との中ぞ嬉しき古池亀成 恋したふ君に心の駒とめていつしか色に井玉の玉川煉方 浅川袖のしがらみせき留て塵ほども浮名浪さじみ 恨み侘もえたつ胸の日高川蛇になるとてもなどいといべ真樽 水増る恋の山川音によらば世のうきことは聞えざらし和哥駒 怠る胸の曇りをうつす鏡川清き流れも濁るあるべし米次 藤沢 四方山を妹とさらやく耳と川尽ぬ咄しに船はつきけり鹿頭有 あふ杉生の嬉し涙ともろともに流す枕のちり芥川真名美 恋すてふ心はせまき溝川の思ひ流せとふさがれに胸万象 樵路 毛々多良須花二 盛岡 瓜木おふ荷縄ゆるめて戻り道家路のかたも休めてぞける 杣が子と生れながらの業なれど道にはうまず通ふ山坂 柴車こかせし道は餘所に見て我は廻りて下る杣人 毛々多良須 山道の見分ぬ程に生茂り柴人も木やおり迷ふらん 毛々豆多布 豊年屋 誘ひつれて帰るさたとる山賤の 万作 おもに汗ふく夕風そよき 毛々多良須花三 戻り道我だにつかで負ふ柴に比左志 杖をつかせて憩ふ山崎 見おろせば不審真実の歩行跡人 思へば顕にしらる山賤 万里亭 からげたる荷かさは高き山よりも弘麿 思ひ〳〵に背負ひ下れり 道もなき道は通へと一筋に睦実 世にそま木こる道は守れり 分のぼる道さへなきを狐狸子も馴てしば〳〵遣ふ柴刈睦実 吹おろす峯のあらしも背におふて足え軽く戻る実人 したゝかに背負ふ木樵はにの生をふめど迷はぬ馴し枝道岳住 一人立しける若葉に夏山はむれて行れぬ杣の通路山松 山道は木〳〵の枝葉の生茂り梢みち〳〵杣やをるらん煉方 山彦の跡におくれて杣人のひゞきを運ぶ谷の細道松成 様のめおのがきまゝに枝道を伝ひつおりつ通ふ山賊物築 谷の水をり〳〵結ぶ片手には柴かる男心すゞしき種成 加幾加曽布花一 盛岡 夕飯の火をもたかせに切ためしに柴たばねて帰るゆ賤黒牛 つまき魚ふ荷は軽けれど菰をも思ふものからゑく山残 整積し磯が薪の柴車山の組路廻りくだれり馬伎 東中四十九 松山 踏分し兎の道を夕辺には月を背負ふで帰る宿人 古河 あちこちと路分のぼる山賎のおろす枝道つくる椎柴田太良里 狭山 ましらともいはゝいへかしのぼり道枝から枝をつたふ山崎 杣人も深山の他木にかゝりつゝこり取て帰る行著越な小詠 背負にたる柴の小枝の細道に休み煙草のけふる吹死真名美 諂ひにきをこらすのはしらずして木をこる道に通ふ柴へ 栃木 しゝ猿のおきく山の細道をきもやふとくもたゞる処通用亭 松風を琴とや聞ん柴人の路も流泉たくぼくにて万象 名所滝 毛々多良須花二 浮橋と岩こす水のみえにけりしよりくだるいさなみの瀧万多羅 不思儀にも遠くひゞくや人あしも高く聞えて音無の瀧秋安 岩が根にむれて飛たつ羽音かと千鳥の瀧の闇をぞきく園菊好 音にきく音羽の瀧は清水の清くも絶ずかゝりたり深木 けり 稲荷山 立かけし聲かとぞみる香里山の滝のしら原峯の松風柏林亭 尾張新田 くりかへしみれば愛度白原はしら髪なしけり養老の瀬回 一木綿にもきぬにもあらず五月ゆにふとりとぞみる布引の滝茅人 白原をくりかへしつゝ山姫の五百桟たてゝ布引の瀧高澄 高きより飛くる水に羽根やあると疑ひかゝる鶯の滝 春殿の柳のやうに糸といふことはいはれぬ那智の天瀧繁成 栃木 養老の滝は酒となる孝行に水くさき事は少しでもなし 通用亭 幾多とつゞけて長く岸よりも引はへしやうな市引の瀧原住 養老の瀧の響は酒呑し人や騒ぐと遠にきたらん浅村尾千本 毛々豆多ノ布 天照す神のめしたる乳なる歟 比左志 きよくはしれるいさなみの瀧 硯にもするどき水や岩角を物箪 うつ音高き嵯峨の鳴瀧 毛々多良須花三 ほうといひて旅のうさをも流しけり小松若女 駕籠からのぞく鶯の瀧 薪にぞ木をきり降の瀧津瀬の 風月亭 真名美 水の手業も未は枝川 高さたに外には那智の瀧の音跡人 耳よりも先膽ぞつぶるゝ うま酒の養老の瀧詠ては詩類連俳ともに酔たり川貫 養老の酒の泉はたりとてあがれる代よりさめぬ名所毒也 吾妻 夏も風の寒さに冬の気色して白河は雪と申留の瀧津瀬加多丸 霧ふりと名によふ瀧の青すゞし夏さへ秋の心地こそれ煉方 行水のえをさへぎる岩角もよけては通る音なしの瀧松成 衣にもぬはぬ先から白妙の常をかけたる有日と山の瀧福養 いく筋か乱れても手にむすばれずくみだにからぬ白原の瀧百人 加幾加曽布花一 すぐしきに秋のきぬたと思ふ程岩間をうてる布引の滝難奇免 三縁にあらねど山のも清水の音羽三筋の瀧の白糸の白糸 谷を伝ひ樹の間をぬける通路はおなじ月日の鶯の瀧真鬼 三線の音羽の滝のしら原も三筋並べし名にぞ聞ゆる集賀 せん手後手うつや碁石の口よりも黒で地をとる那智氏沈傘守 麻生 たて置し聲に似たりともろ人のつめかせみれど音無の滝琴足 大和高取 うらみなん思ひは夏の瀧壺に落来る水の流れつゞしき亀遊 吉原 是にも風をさそふて爰ばかり照る日にかれぬ鳴瀧の音樽人 氷しも春はあかねにほころびて取の瀧の糸ぞ乱れし世冨 上下の厳にあたるしらむはあられ小紋の総門の滝不尽考 清水の音羽の瀧に身を洗ひ心の垢も打流しけり百路 一妹背山水は流れつ落合て中よくむすぶ瀧の白糸菱象 山姫の手紙にふとき白原のきれる事なき布引の瀧弘唐 一一冊に喰ため置し仙人の吐や露の市引の滝諸実 いつきても衣の瀧のきれざるは賤が手減とみゆるなりけり 一 諸声のこたまに響く山の裾に住てやさしき音音無の瀧直路 桜木は若草茂れとむやかに蛍ちりかふ清水の滝松能宿 世のうさを聞こともなき耳なしの瀧は藤の鼻を洗へり安信郎敬成 香具山にほすてふ衣や亀洗ひ引上しさまにみゆる瀧津滝津瀬万泉 夕顔 毛々多良須花二 つまこがす扇のほねと夕貌のほの〴〵みゆる垣ぞゆかしき 賤り家になり出しまゝにうつくしう作うで目立夕顔の花 盛岡広成政 森悦亭幾雅 上総小苗 あらはなる垣根も時世盛には是見よかしと夕顔の花 釈泉口 松山 人気なき賤がいほりのたそかれに堀間見するは花の夕貌 鰭振 賤の男の麦つく臼のこぼ〳〵と音に聞ゆる夕顔の宿 藤沢 賎が家を埋む程さく夕顔の花はすゝけぬ雪と見まがふ 名古屋 手弱女の乗せし扇のぬりほねも塗師定まらぬ夕只の花童迺屋 冬かとぞ疑ふ花の下深み雪を欺く夕顔の棚炭人 笹藍の糸吹みだす風にしもほころびかゝる花の夕顔音繁 そみふく扇に残る匂ひより蚊にぞいぶせき夕顔の宿若松 盛岡 隣なるつまをもとふて二かたに這かゝりたる軒の夕顔箕船 ゆるがさる程の暑さを凌居て秋へかたむく夕顔の棚照道 麻生 夕顔の花の白さに我宿は春のやうにも暮かねにけり 上総小苗 氏よりも育と人も夕顔のはな白めなは恥る様が家晴安 賤が家もみいりさへよくなる金のつるにとりつく棚の夕衣米粕 伊予松山 賤が家のあらはに見ゆる破垣に見えよけて咲夕かほの国 棚にしものり出し花の夕顔のふらつくみこそあやふかりけれ青孤 賤が家の中半いでしと夕顔の目積 はなは棚ひく富士のしらまく 毛々多良順花三 一軒の妻にさく夕顔は宮人の木守 しのびありきを覗くかと思ふ 深みにと棚をかられてさし覗く照道 隣のものゝやうな夕顔 下すゞみ夕顔棚に命まで卅 長くなりたる心也こそすれ 藤沢 夕顔の花の姿のすゝしさに孝々道守 ふら〳〵棚の下に眠れり ゆふ顔の下隙みしづの顔と花に扨 雪とすみかも思ひやられつ 朽木 通用亭 東中五十三 古何 賤が家を覗て咲る夕貌の花をのせしとみる扇窓 難哥免 涼しさにたゝむ扇を又ひらき開くのせる夕かほの花 一加幾加曽布花一 賤が家の灰小屋うつむ名いの花はこやしのきゝて茂れり おひとつ片われ月の片われの爰に有るかと思ふ夕顔 盛岡 雪とのみ見しは僻目かつもりにも深くなりし夕顔の花 レ実栄 仝 八郡の廓のふりとも夕顔はみな白妙の花の愛敬 全 錦木塚主 似合ざる賤が垣根のはき溜につるのおりたる夕顔の花 新らしき紙帳を約し如くにてかのなくてよき夕貌の花 賤が家は匂はぬ花の夕顔の雪に隠るゝ厠有けり竜迺屋 菽蒔 名古屋 一金馬 月彦 竜迺屋 牛器の薄衣とみんほのくらき五条あたりの夕顔の花散成 なものをいはねとしるき夕顔の寝ほれしやうな朝ほらす 時ならぬ雪かと計夕顔の花につゝめる垣の白妙万作 破垣をそとさしのどき来る人を待るけはひと名いの国若人 しをれたる朝顔よりもしら露に光たきみある夕顔の花若松 夕顔の本こそ笑へ棚の下てゝら二布に深む女夫を岩門 縁むすひむすべる紙に似たるかなとある垣根にゆふ顔の国若松 夕顔は露さへ玉をつらねたれ炒が伏望もみにあまるらし跡人 朝顔のあしたも秋にまたでさく詠すゞしき夕顔の花睦実 盛岡 こそかゝる賤が庵に手をかけて起すやうなる夕皃の蔓 行長 肥後人吉 己か身を棚へ上おきつるさかるいたつらすなと夕顔の国 誰待てけはひやすらん白露の地よりのそく夕顔の花若女 草の名の美人にまさる夕顔の花のゑくほにあまる白露真広 高田 まひなしに名のらぬ花と夕めいのくるゝひしも咲さかりなり万籟 一糠ほとり抑ふ扇に咲花のしらげをのせし塩の夕貌松能宿 信濃八幡 黄昏に賤が妻戸をのぞくかとみれば名におふ夕顔のごみ千葉軒常盤 這かゝるかほちや。侘しと夕顔のむくべきさまもみえぬ砂が万象 家 船納涼 萩 毛々多良須花二 一川風によりて命もとも縁の延びしやうほと夕涼舟澄雪 川水に暑さをさらり流しやりて吹入る風を涼みけり よる浪にゆらるゝ舟の涼しさは扨秋かくぞ心うごきぬ可都良 数多くうかぶ船迄両国はよく深風の行渡りけり菊人 夏川の夜風すゞしと舟人も月よき方へ標やさすらん千代住 小苗 船出してしばしりさもしら浪の立田の川の流れすゞき米枯 毛々豆多布 大和新庄 川の面によしやみ額もかゝり船 藪住虎 けふの涼の花とみえけり 両国は船に埋てすゝしさの 生花斎照道 秋も自由に通ふとそ思ふ 毛々多良須花三 夕風の船にはひれははひる程松成 かるく流れてはしるすゝしさ 陸ならは汗やかくらんはしる船を真長 追ひくる風の猶もすゝしき 東中五十五 松代 夏をむねと造りたてたる屋形に風も事広にはひる深しさ 毛々多良須 ものいへぬ程の暑さも夕風に音をそみをす立れす 名古屋 夏しらぬ程に涼しく吹風の秋にも荷たり船のすゞしさ 一吹風に簾量せて詠れはすきや縮とみゆる川水 月影も汐もさし来る涼風を爰にむやひし舟の友綱弘麿 すゞしさや月の出汐に棹とめて楫枕する高瀬舟かな万作 高畑 追風に逃るとみゆる舟人の汗の出ぬこそあやしけれ 涼とる隅田の川風吹すぎて舟長は結句汁にうなれ入舩 入相の鐘がつれ出す家根祭浪の本ちる夕部深しき花也 星さ越て秋に向ふのきし〳〵とに漕よする川辺つゞき 甲斐谷邑 すゞしさに船をもしはし橋杭に綱もむやひて繁く玉の諸 嬉しいさは詞にあまの小舟よせて汗も干潟にかゝるすゞ風哥多丸 すゞしさに居寝ふりさせておきながらゆすぶり記す船の夕風和哥駒 拳酒もさんや橋から湯田川すむゆふ月の舟出つゞき百船 涼風の手を広げなは人心駒とめ橋に舟をとゞめん真槌 広からぬ船の中さへ屋形てふ名はかくべつに涼しかりけり波音 近風に勝もおしやめて舟長がほといふ息をつけるすゞさ年益 向ふ風すゞしき船に夏痩の早き忘れてふとる衣手目積 小苗 さ吐安 船の帆のはるかにみえて白鳥の鳥羽山風の通ふすゞさ 吹おろす簾おさへて風の手に又上しほの夕すゞみに秋木庵縫女 石見高角 そよ〳〵と吹川風に打とけて帰るさ忘る舟のすゞしさ 是善 吉原 大坂を出て伏見へ下り舟風もひくかと思ふ深しさ樽人 東中五十六 加幾加曽布花一 春はうく思びし風も浪の花ちるはすじき隅田の川舟馬伎 盃は流さずとても深舟汗をは流す夏の夕風木守 猪一才に乗てのぶる命は爰ならめ千とせ涼しき首尾の松 仝 水車くむ深しさは苫あけてのぼる夜舟にふしみてぞ玉川楼清 夏しらぬ心は春に戻りに花ちりかゝる浪の夕風橘五園 新田 深み舟住よし風と住吉の橋のそり程風はらむ真帆 両国の川瀬に舟をつく波根のこのもしげなる風のすゞき真名美 嵐山吹おろす風のすぐしさに星をくたす舟筏かな十字街 船遊び豊さ忘れて吹風もさむさ橋なる辺りすぐき読丸 一苦も流し星も風に流しやりて楽になりしと夕の深み船可仙 萩 吹風に星さをはらひ捨小舟あきをや浪す川辺すゞ 川風に汗をふかせし深み舟こがれて来るかひはけり弘麿 芳野丸花毛氈の玉ふりとわあてる斗風のすゞしさ一木 行舟はふく川風にまかせつゝとめて留らぬ程のすゞ若若 吹風に棹さへ横にまくらがのこがてすゞしき隅田の川舟梅住 さからはぬ柳橋より舟出して風にしたがふ夕部つゞき岳住 夕立はあがる其まくふり出して涼しくなれる須磨の鈴に煉方 川風に扇とらせてすゞみ舟月の出しほによら浪の図常笑 隅田川こぎ出す船に月の舟並ぶものなく深しかり 藤沢 川はたに舟は繫て蝋燭は風に流るゝ夕辺すゞしき 里人 福島 もみぢ葉の模様の裾を吹はらふ秋かと思ふ舟の夕風 石見高角 川風にさらりと汗もふき流し吹流しゆく舟のすぐき 東中五十七 栃木 深まんと紙も小舟に棹させは暑さは先へみしりぞくなり いつちともなく是をは吹やりて漕遊ぶ舟の夕アすゞき 岩槻 通用亭 梅守 萬象 秋風の通ふは。しるし小舟さす日傘も開く朝只の花 初秋 備前灘浦 難波江のあし音高く聞ゆるは秋やはしりて早く来る心 南陀羅 馬伎 肩より露より先におきてみんきのふに替る秋のけしきた 梢にははや秋風の立騒く音もすゞしく楢の下庵弘麿 涼しさは悲しき秋の始にて泪もはふれ落る羽の葉目積 六種園 山の裾ふきまくりては女郎老こしかゞめさす秋の初風 一大一石は本領五百類あるものをまだしも忍ぶ風はかひなし 一秋来れは千額五百類あるものをまだしも忍ぶ風はかひなし 一葉とも紙をいへばか文月の封をきり間にるに乗る秋風紫門 毛々豆多布 忍びつゝ松に通ひし秋風は 森野亭馬伎 そさ文月にあらはれにけり 盛岡 一とせの真中にしもたつ秋は森昌亭実乗 あはれな方へ心よりけり 麻生 昨日迄凌かねたる暑さをば万都春 さりとて涼し秋のはつ風 万都春 一登れるも一葉落るもおなじ名の一 冊子亭綴安 きりより秋はたつとこそしれ 伊豫松山 燈籠見に踊よ月よ紅葉よと平武光 いろこのみする秋は来にけり 毛々多良須花三 盤岡 うつかりと夏のきぬけを見すて一升大豆守 耳たふをする秋のはつ風 寝し内に立や往にけん白露の数成 おきて冷つくけさの秋かせ けさははや暑さも餘程うす紅葉仕合吉成 立田の山に秋は来にけり 桐の葉を落せしをみて耳にしらぬ 万事馬 馬もおとろく秋のはつ風 高畑 年もはや中半過ぬと初秋の 年もはや中半過ぬと初秋の山雲亭歌沙丸 風よりも先驚かれけり 輝きぬと音にはさのみたゝねとも数恵 みの入る豆のさやかにそしる はや秋と鳴子にあたる風の来て難奇免 酉の方よりおどろかしけり 東中五十八 はく側へ一葉ちらして邪魔をする秋や常の先に立らん寿米流 毛々多良須 雲の峯崩れかゝりて来る秋に驚きさわで蔵の上風世富 古里は秋のけしきに成にけりいつと同し庵の淋しき菊好 御移してね宜のふりにしすが風の音にしられて秋は来木守 盛岡 暦見しやうにめくらもあり〳〵と目にみえぬ秋を風にこそ 帷子にしみたる汗もかはく頃腹にしみこむ秋のはつ風 今朝ははや星さも餘程薄紅葉たつ田の山に秋は来より吉成 今行し夏とすれあひ来たりけんまだあたゝかき秋の初風真長 朝は来て桐の一葉のはつたりとつきあたらしき文月の風福養 秋風の土産にもて来て初ものと桐の一葉をしるし斗に音繁 桐の葉と雁の羽音の其先へ音してしかき秋の初風千代人 盛岡 夏痩のまさる星さに秋は来て今朝よりふとる松風の音 ちりそむる桐の一葉は秋風に扇を捨る心なるへし目積 いたつらに年の中半を過しつる人にけへのふみ月の風睦実 百艸におく落よりも朝ゆふは猶袖しめる餘のはつ風雄冨 燈籠のあかしもぞよき吹風に宿のすま迄秋は来に岳住 いそぐ日のあしにまかせて桐の葉の一はしめ来るけさの秋風結成 一賤が家の軒の数遣のけふりためて立るは秋の風にざりける月人 秋たてば照かためたる雲の峯の西の方より崩れ物けり麟馬 村松 風に飛ばす柳の一葉舟にのりて西の海より秋は来けり 誰がゐるかしらねど桐の一葉をばあたりにおとす都の初風原住 天の戸はまだ明なくに軒に来て簾勘かす秋の初風真牛 松をふく音も空なる隠れ家の山から送る都の初風常笑 加幾加曽布花一 盛岡 今朝しもそ立来る秋の初風に夏はこれきもの一葉にちりけり 松声亭静風 仝 浦への肌入ぬれと裸嶋また衣もさぬ秋のはつ風 鶯春音 仝 狩人の口よりもはや音立てはと吹出す程の初風 同山里亭摩守 全 年毎のことの不覚にけさ又も驚かされし秋の初かぜ 森蔭 小舟山 夏の日の暑さ煩ふ人の身に無事で来りしけさの初秋 穂鳥 若山 秋きぬと手にはさやかに分てけり髪ゆふ暮の髪の髪のさ 毒也 よべ迄の豊きにしをれ伏艸を吹起したるけさの初風可都良 まだ人の耳にはとめじ初風のこぐちは少しきゝ出しても真進良 今朝はまたなるといへば桐の葉のかふりふりたる初秋の風山松 御福川度を流してけさよりは残る貴手の形代もなし松人 東中六十 津和野 動かざる是も宵に逃去て人驚かす今朝の涼風 同林友無 麻生 米を搗水車にも今朝よほど星さもへりの立し初風歌志久 仝 楊弓にあらねと秋のたつ矢にはきりの一葉の的は這はず 人吉 天の戸をけさ引つて初秋をつれてへれる峯の白雲漬夢 山〳〵に秋の模様のみゆる迄滞そめ出す木々の色かな満丸 陸奥福島 すゞ風の立て暑さもこれきりと一葉を落す秋のしるに 古河 堪かねし星さ払ふて文月のすゞしさ習ふ初秋の風望月 水正月はきのふとて朝は桐の葉についたち初る秋風の音 式部 なれけふ扇の骨のゆるむ頃夕にしまりよき秋やきぬる 茅の輪よりころけ出たる露玉まだそめあへぬ秋の色か人成 越後村上 今朝秋のやゝ立そめてをさなしやよろめき渡るあしの葉冠海岸亭浜住 どこへ往ても堪ぬ星さを来る秋の風の音にぞ落付れける万象 秋草露 毛多良須花二 和哥山 あてなしに人な根きそと咎むらん尾花の裡にすがる白露 穂薄の手を苅萱にもたるは霧狩重る故にや清 立のぼる葉末の露に月は宿りおりては露の宿る月草馬 秋草にいくらか数もしら露をおくとはなとや人のいふらん千形 天神林 藤袴すそをふまへて秋たつかまろふやうなる風の朝露 ツ曽丸 白川 秋の野の手程におけはしら露の玉の数〳〵色ぞ異なる折雀 ゆく道の次第にほそる夏くれて露に肥たる野辺の秋草花也 毛々多良須 糸萩の花の錦の玉かつらかけし末葉そ露おもげれる好成 初秋の千種にむすぶ露の玉は同し色なる莟とぞみる 東中六十一 毛々多良須花三 女郎花なまめく野辺におきふしを 万流亭世冨 すれど色にはそまぬ白雲路 手のうちの玉と愛つゝ朝な夕な真槌 下にはおかぬ萩の上露 盛岡 夜も長く暑さもされば朝早く雁来行長 おき安けなる秋草の露 武蔵麦倉 大空は今宵の月にゆつり置て高山亭哥積 ほしや下れる煩草の露 日野 野はらをも狭しと照らす月影を月澄 ひと葉に宿す秋草の露 どこへ往ても堪ぬ星さを来る秋の風の音にぞ落付れける万象 秋草露 和哥山 毛々多良須花二 あてなしに人な根きそと咎むらん尾花の裡にすがる白露 穂薄の手を苅萱にもたるは霧物重る故にやうたん 立のぼる葉末の露に月は宿りおりては露の宿る月艸万事馬 秋草にいくらか数もしら露をおくとはなとや人ののふらん千形 藤袴すそをふまへて秋たつかまろふやうなる風の朝露 天神林 白川 秋の野の千程におけはしら露の玉の数〳〵色ぞ異なる折雀 ゆく道の次第にほそる夏くれて露に肥たる野辺の秋草花也 毛々多良須 一平萩の花の錦の玉かつらかけし末葉そ露おも成れる好成 初秋の千種にむすぶ露の玉は同し色なる莟とぞみる 馬伎 東中六十一 毛々多良須花三 女郎花なまめく野辺におきふしを 万流亭世富 すれど色にはそまぬ白雲路 手のうちの玉と愛つゝ朝な夕な真槌 下にはおかぬ萩の上露 盛岡 夜も長く暑さもされば朝早く雁来行長 おき安けなる秋草の露 武蔵麦倉 大空は今宵の月にゆつり置て高山亭正 ほしや下れる煩草の露 日野 野はらをも狭しと照らす月影を月澄 ひと葉に宿す秋草の露 百艸に露はなしとも思ふなり色さま〳〵の玉にまがへて木守 盛岡 宮城野の原に筵もしかな草色な流しそ露の玉水 木守 為成 萩蒔 穂薄の袖をつらねて白露の玉をかざれる御代の武蔵野 月彦 秋草に露の契りをむすびてや桂男の種やとすらん さなきだに焼る枝に大きなる月の宿りし露の玉萩 麻生 枝繁 京萩をちらさぬためのおもしかな朝な〳〵に露のおきもの 三津丸 松山 虫の音もはり出す秋の草の葉にぬき通したる露の白玉 レ鰭振 藤袴ひもとく題て庭馬にはかれぬ先にむすぶ白露菱泉 露程のわつかな物にむすはれて風にさわがぬ駒繋き草真清 一照つゞく日を凌来て秋の野の艸葉は露そ命なりける睦実 工総小苗 武蔵野の広さやうつす大空の星影やどる秋艸の露 東中六十二 吾妻横尾 秋風の身にしみ〳〵と衣〳〵に艸の枕や霞けるらん ん永白 松代 小いゆ荒のねたしとやみん月影を夜母やどせる秋夜の露松代男依 白玉か何そと思ひさし出せし紙燭そ消る萩のしら雪か 唐津 加幾加曽布花一 盛岡 白露の玉もやどれる女郎なし栗の飯ほどもり上てみゆ 仝 秋の野に寝から萩や薄にもおきまどはせる風の白露 仝 燈の夜にきらつくりは宵の間に艸にやどりて露となる益美 二本松 玉のうてなれにまがふ芋の葉にずいきの涙不なそかるし 露斗あつき心の忘れ草くれ行夏の置みやづや弘麿 戯るゝ蝶の程もや宿すらん露のみたる秋草の花深志 日も西へかたふくすや月艸に星のやうにも光る夕露平広使 糸薄ほすゑの露は吹風に落て下京に結び上けり森雄 麻生 岩田帯むすぶ藤野の女郎本はらわる露のおもすにぞ鹿生牛也 何をかも思ひ出けん百艸の袂に露の玉をならべて麟馬 秋の夜はいつこも淋し草の戸も早くしめりし露の軒かな 小苗 鏡なす月の光を研出せし水銀なれや秋草の歌丸迺屋実宮 全 秋草にきら〳〵光る白露は月の影だに通ひてぞす 仝 吹風にくだかせまじと熊草の錦につゝむ露のしら玉哥多丸 夕くれにまたも野守は寝もせぬに艸の葉ことに露はおき 萩 上岡 艸母におく白露は諺の有手からもやこぼれたる 七種につほめる色は日に増てよる〳〵おける八千艸の露 吾妻評 庄内 秋されは哀みゝもとや袖垣に先朝かほの露こぼれ 吉原 むら艸に光をそへて置露は夕部の主の数やまた 東中六十三 式部 夕露のかゝりておもき糸夜もかろく音せる秋の夕かぜヲ 一笹麿 仝 白露に風吹そむる秋の野は色なる浪のたつとみえ 鶴経にしてもつる〳〵のぼり来て露斗とはいへぬ草むら万象 七夕 毛々多良須花ニ 盛岡 一棚はたの契るそこれは餘の目かくしにもや霧の立名歌記 天に口なしといふのに七夕のあふ杉と誰が名にや立けん真清 新庄 一天に雲さへなきは七夕の晴てあふ夜のしるしなり来真綱 短冊に思ひのたせを繋き棹長くなしてそ星舎の空 橋わたる間もいそがれて天の川飛こし給ふ星はそれかも真名美 に袖よりそ宵仕立てかしまろしまろし手の手をすの迷ひ寿米流 七夕のあふは別れの日の影や烏も思ふ紅葉かさゝぎ万事馬 毛々豆多布 星にかす地赤地黒のなれ衣も 柳櫻亭花也 もみちのはしにかさゝきのはし 星合の空燈しめてかし小袖真進良 かはす枕にかはしますべし 伍業舎高澄 一識明の五百桟たつる いとまにも ひをかぞへてや今宵待らん 毛々多良須花三 一七夕の心や先に渡るらん菊人 天の川原をとぶ星のかげ けいせいのよみあれは契る星合を松人 一夜妻とも名に立るらし 万代も朽ぬ契りは棚桟の雲竜舎玉腰 竹の一よをいく千とせ経し 高田 万籟 大空の重の衣はたなはたに万籟 あまつて女のかせし小袖か 庄内 いく秋も替らぬ星の契り 作りて手向く菊の燈籠 むらさきのきぬをかさなん 庄内 梅月亭真牛 星の逢夜のあけ妻ふかに 星合の天の川辺に妻迎ふ山松 舟出とみゆる夕月の船 原中六十四 津和野 あふすも牛も嬉しと思ふらん恋の重兵あをおろすと身 すみれ移し野辺に花咲床衣を一夜寝ませとけるゐん種成 一綿入は今宵ふさはずつまと妻ひたと袷を星にかしてん 毛々多良須 たま〳〵に契る一夜の迎へ舟水をさゝずに梶をとりなせ山松 天の川むかしよりして月も日も相かはらずに星あひの空世富 盛岡 神代よりかけし契はほし命の遠く渡れるかさぎのはし 合 天の川浮木に乗れる織姫のうき気晴しに逢今宵か 津島 ほし合に宵に手向し衣〳〵の別れをしくそ思ふ暁菅雄 七夕へさゝぎ上たる爪茄子是も今宵にちぎりたりける 若山 三ツ浜 望をつく足高ゝいによち登りけふの逢瀬を見えたり 七夕へかしゆ程よりあらたにぞ仕立てかさん妻迎へ舟若松 東中六十五 天の川年に一夜とかさゝぎの渡せる橋やとりおきにせし八嶺 竹井 星祭る庭に備へし竹に来て願ひの原をかくる笹芸 いく夜半かまへつら夢の浮橋をかけてそ野のあふ瀬侍 そん 萩 天の川星の逢瀬もそにほのみあすは涙の渕となれ 残姫の召れし天の羽衣も今宵やまつにかゝり居る也有明 ほし舎を慰めんとて糸竹の調へや空に高く聞へし大枝 麻生 草紙なくて是に手向の部にかく硯をあらふ水の黒主 大和高取 逢ことの深き契りの天の川より羽にかけてかさぎの橋亀遊 天の川いそく契りは柱ものゝ柴船にとくめせといはまじ真広 藤沢 柿折てさそや待けん七夕のそ第あふみの三井の入相桧建賑鷲 天の川色ます水の子けれは橋とくわたせ紅葉かさき 石見枕瀬 七夕の契りも深き天の川羽をも並へてかさふきのはし 全 色にそむ思ひこがれてもみち葉の橋をやたの慈渡る也 古河 天の川橋を渡せる鶏も飛越て星のあふをいる 吾妻 ほし合にとをあふ中の天の川今岸そしかとむすび給はん あかねさす日の出を嘸やこゆるらんたきもの姫の別れをし 式部 天神林 七夕にかしつる糸を結び合せ猶長かれと思ふ秋の夜ヲ 栃木 雲とならずまともかうでいく秋を望はほしにてほし今の空 七夕の出ふねにいざや手向なん一首うかみし梶の葉の 日野 岩槻 人並にたへ手向んけさころもあはぢ結びと叶ふむすびとを 月日法師 きのふ迄かへして寝たる衣をもさ宵は星のかりてあふらん海近 天の川浅瀬わたれど年母の契りは深き七夕の縁人成 東中六十六 七夕のとしに一度の替りなく逢瀬めて度契り久しき常笑 上総小苗と 七夕のあふ夜は夢も結ばずにとせ〳〵としも延る玉の諸紀米粘 加幾加曽布花一 天の川今宵あふ瀬に彦墨のさぞいそぐらん妻家へに好成 いく秋もかさねて契れ七夕の天の羽衣よし薄くとも馬伎 夕月を星や頼まん天の川妻追舟にさしていづれは菊好 盛岡 くむ水にうつす一夜の星合は契りたらひでとは思ふ影 小盤樹 全 浜風 今宵あふ二つの星を推してそ心つくしの琴も手向ん 全 ことし竹立る今宵はふしの間もやくのびよとて星に手向ん 織姫のむすぶ契りは厚板の雲の帯もや今宵とくらん 幾羅 たいとふ望に手向の硯石黒空みせてなど洗ふらん 夕虹にかゝれる雲は七夕の紅葉のはしに鶏かそも音繁 身にしみて間はぬ子等は短冊を七夕さまへ恥のかき上可都良 七夕に手向し香の煙り迄願ひの原の一筋にたつ若松 時雨ふる天の川辺は水まして星の心やもゆるもみぢば千代人 文月の二度ある年のかけ替るき葉のはしにかさらぎの橋山松 その川赤き楓のかけはしはこがるゝ星の渡るゆゑるも千形 田なつもの箕をもて計る秋は詩ど三粒の雨もいとふ生命有明 をと女子か願ひの原をかけながらたゞいとけなく祭る七夕岳住 あふ瀬ぞと是も磨くかての川星も水際立て光れり伊志女 麻生 七戸の小袖のほに常陸帯星に鹿嶋の浦の蜑人永樹 虎の住ぬ千里もおなじ七夕の思ひの中に繁る一夜さ集賀 手向たる盥にうつる糠草を供まつ牛やはみたがるらん甲良 誰一人しらぬ者なき七夕の逢夜は晴の契りなり 天の川波のいろはのちりぬを笹竹につけて上るうなゐ勝良 吉田 願はくは明の烏や天の戸の口をも閉てほし合のそら 松山 天の川水のひるまやほきならんたつた一夜の星のあふ瀬は 高角 一短冊の雨雲形のもやうだによせて手向ん七夕の歌 古河 笹竹のさゝめ言をば誰が聞て星のあふ名を立る短冊難哥克 織姫の折よしとてや棚はたのひも違へずに今宵運 星舎はかねて一夜といははしをかけのたれ尾の長くともかな 栃木 このやうに逢ひ見よかしと七夕に羽袖をかはすかさぎの橋 七夕へ手向心にひく三味のさをに願の糸やかくらん 日照には天の川瀬もひた〳〵と歩行わたりして安き宝金原住 名のしれぬ草の哥だに星舎の影りとみれはゆかしかり かりそめの契りならぬを天の川入らぬを天の川入らぬつまく 浜辺萩 毛々多良須花二 一旅寝する伊勢の浜萩折しけは側から起す秋の小杉風仕合吉成 打よする浜辺の浪のあしよりもはしりて過る萩の上風睦実 毛々夕良須 一春聞し外が浜なる呼子鳥今ぞ答ふる萩の上かせ馬伎 盛岡 風故といふて騒がばあしかるぞ他のよしもちとみつの浜夜実乗 招きては声をもたてつ来る秋を明続の浜の萩の上風毒也 波の如聲をは立て高浜に松風よりもさわぐ萩の葉松蔭 岩代の浜の松が枝見ならひて萩の上葉にむすぶ朝歌福養 越の海の角鹿の浜に鹿ならで聲さへ侘し萩の嵐岩門 桑折 毛々多良須花三 一大浪をかつぎて伊勢の浜萩の 長閑房御座 さわげる琴や蜑のさひづり 角くみし時はみわかぬよしあしに万多羅 もまれてそだつ浜萩の風 難波津に聞しそたに秋の空独楽居 かはりし風も伊勢の浜萩 四つ起 打よする浪の真似して浜風に柳樽人 おひ帰すやうな萩の大声 さらに目もあはて此夜を過してき跡人 騒きてやまぬ伊勢の浜荻 一哀れ気に名草の浜になぐさむは松の下風萩の上風跡人 あら浪のうけ昼へする浜蔵は大声ばかり上間ひけり岳住 秋まつるはふりが袖は尾図にてのりとの声や伊勢の浜林大枝 風の手がちよとさはりても薄より大きなきを出す漬萩苔成 吾妻 汐風のしみてぞ萩の袖しぼる髪の浜辺ぞ淋しかりける秋 小苗 漬風の吹よせたりし萩の声はたてる浪をも真似てさわし 色つきし紅葉を見てはさゝやくもひがことならぬいせの浜森平広伎 終夜つよくふけども浜風に声のかれざる萩のひとむら真長 青海はら吹来る風は高浜の萩に浪をぞ打せたりけり 松山 万多羅 難波江の盆踊よりいせ音頭あしも休めすさわぐ浜萩武光 加幾加増布花一 一秋風に萩は轡の音立て手綱の浜に遠乗やする木守 東中六十九 盛岡 よしあしも合点しながら判頃の鎌入る度さわぐ浜荻野金馬 伊勢の渓蔵もつむりを振立て風の音頭に盆踊する若女 麻生 篳篥の舌にもならでふく風はそのみたてる伊勢の浜森 人吉 沖はなか浪の白馬うち乗て浜辺によする荻の上風喜多留 浜辺より磯を伝ふて秋風の葉末に波をみす善兵衛 難波にはあしといふぞと艸かりもはたかりさわぐいせの渓嶽 呼かけるやうにもてなすこ見浦風に乱れてさわく漁荻都代志 遠かたへ届りぬ声を呼終の浜辺にさそふ躰の上かぜ久志丸 風の後よこに倒るゝ浜鞍は騒ぎ過してつかれたる也 篳篥の舌になるなと上になる声うと涙の獣をふくも万象 稲妻 毛々多良須花二 驚く茶碗をおとす鳴神に重もひゞきの入し給妻山松 工総小苗 つゝめども穂に顕はれて田にみゆる稲葉の雲の袖の稲露丸延屋実谷岩 まのあたり遠の松のあり〳〵とまつもにからむ岸の稲川南 毛々多良煩 天の戸をめんとするか宵ながら謎を合する稲妻の亀山松 盛岡 消かゝる灯火もまだもゆる也と見れば窓よりはひる稲妻 全 一山姫の衣の櫃を明るにや腰より出し稲妻の鍵益美 主妻より早くぞ目にも稲雪の種あるからに穂にも実の 上田 夜這星のあたまや打て目から出る火かとぞ思ふ空の稲荷 名古屋 夢よりもみる間はりなく遥なるふ是の高根にかゝる稲妻橘五園 雲の袖に月の鏡をかくすると疑ふ程に光る稲つま和哥駒 風だにもひやりと思ふ秋の夜に又驚かす稲妻の影弟人 東中七十 紀伊若山 毛々豆多布 花迺屋愛丸 一龍田姫のおるや紅葉のにしき機 ひを通はする稲妻のかげ 毛々多良須花三 一秋風の手にもたまらぬ稲妻の久志 久志丸 ひかりは竹の春のかげろふ りの袖に月の鏡をかくすかと 和哥駒 うたかふ程に光る稲妻 松代 五十縣男依 菩薩てふ米のみのれは金箔の いろに光れる稲妻のかげ 光さへとろくも消て稲の穂に実を入しとはみえぬ稲葉万葉 いそがしく光ながらも秋の夜のさびしき影をみする稲妻波音 秋の田の苅込む間にも合鍵をかけて丈夫にみのる稲妻 一加幾加曽布花一 山伏のうつ火かとみる葛城は稲魚の出る空のみね入馬伎 宵の間に幾度てらす稲妻の光は露にやどる間もなしききさ子 盛岡 稲妻の契る間もなき早しねは穂に顕れてはらみ初けり平規 風をいむ秋の位は金箔や光うち出る稲妻の影井丸 雉田浦 光ちらす行へもしれず人の目をくらまの山の稲妻の影南陀羅 三方へ光る稲妻みれは空にいつかけのやうに縁をとり中米水 実のりよき初穂を神に捧んと打し切大や小田の稲妻商商 宵闇に足袋やの門の門の橋へもひかり打こむ稲妻の類福養 東中七十一 越来ぬとさやうにみえぬ人の目を驚ましたる宵の稲妻微安 石山とかねの御嶽の空と雲すれあふてはやかし稲魚大枝 麻生 花火かとあやまたれぬる武蔵野の薄やうつる稲妻の類万都春 高田 切戸より光ひらめく稲妻は見とめかたなのさやばしにぬ 人吉 一稲妻の鍵を出しつての戸を以ては立るやうにみえけり喜多 世の人の命のたねのみいれとや情ふかくも通ふ稲妻敬恵 藤沢 宮詣て夕とあかり海老鈴のあたりも光る稲妻の鍵道宇 くら闇を心でさぐる手もと迄ひらめくやうな稲妻の鍵の張鷲 吉田 ひらめかす抜身のやうに稲妻はさやともわかぬ闇に光れり青狐 石見産和野 玉鉾の道ふみ迷ふ夕闇に光みせたる稲妻のかぜ 同高角 耳に身をあての極こそ違ひけれ鳴神ならで宵の稲妻野楽斎風花 きら〳〵と戸の道間より突込むは鑓りとぞみる稲妻の鍵 黒ほくちちらせしやうな村雲に火を打かくる稲妻の顔奇積 一物もたぬ賤か家なれと稲妻の謎の光りに明ぬ戸〆り田山人 天神林 久方の天の戸ひらをしめたりし緑の光りとみゆる稲妻 硝子のかざしやさして出いらん黒髪山にひかる稲つま蜑記 稲妻は稲の実いりをことゝして人のみにしもとゞめざり 寄海意 毛々多良須花二 一汲上し恋のみかしほ月宿るふたつの袖や田子にてべん目積 いく杉半か涙の海にたすけれと聲たてられず泣沈むり比左志 忍ぶ杉ばからき思ひをしほ海の汲てしれかし恋ふる我胸若松 いとゞしくせまりし胸の内海のなみだにぬらす両袖が浦森雄 東中七十二 毛々豆多布 逢へはかはき逢ねはひたす袖の海数恵 なみた満干の玉をなしけり 毛々多良須花三 一縄の海によるてふ浪のかへらずは木守 むすふ契りの深からまじを かはかねは人に心を沖の石の目積 讃岐の海となりし我袖 有磯海のふかき中には忍れて万葉 人のみるめそいとゞ繁かる なみならぬ思ひをしれやわたつらの万作 深き心の底にありとは 盛岡 涙にて袖は干潟もあら灘に御供黒牛 うきみるめだになきそ悲しき 〇 最蒔 胸にあてる事にも防がれす是ぞ此思案の外の恋の大海 底深き思ひのあはれ出舟になる戸の滝も越んといふ米吹 うら道を忍びて通ふ恋の海しら浪としも人や否めん若人 君にあはでかへる海辺は蛤の貝さへあふをみるもうら 盛岡 打寄し契りもかへてあだ波の立て涙の海をなしけり箕船 水茎を渡す人目のあやふさを望の海にや譬たらまし大枝 麻生 と哥志久 床の海恋のやつこにこと問んみるてふかひははゝやなしやこ 人吉 恥かしや海なす床も恋人に浅くみられん心うき身は満丸 恋人の言葉のしほのみちくれば心の海の底深くおもふ小詠 岩にさへ女夫のあるをいせの海に思ひ沈て祈る侘しさ麗 高角 胸にみちて深くも沈む恋の海今さら何とむくしほもなし久手巻 吉田 目の汐に引れてはまる恋の海たせ知らずとや人の笑はん 指月 福島 我むねは海より深く思ひしを妹はなみ〳〵に思ひよせざる 伽羅丸 加幾加曽布花一 逢夜半は胸の浪風しつかにて折れし悋気のつゝ海はら 若山 わたつみのあれにし床の波枕ひとりうきねの寄る方もなし吉成 海ふかく契りし君はなにはかた寄来る浪の音信もなし炭人 いつしかに恋となる海の中深く揖も浮名もたゝぬ嬉しさ菊人 こがるゝは舟路ならぬにうきつらき人の心の海をへだてり跡人 今さらに少し言葉の濁り水外心もや有磯海なる若女 別れても未は互に青海の又もより来る波ぞ頼もし辛淡 初恋の思ひ成らんはつ汐も磯のみるめを隠しこそすれ三津丸 ともすれば磯うつ浪の立ながら帰るは我にうみし君かも大枝 一床の海にやなみだにたつみ風とめやうもなく走る風し石菱泉 我胸につもるうらみのはてぞなきす海はうや恋のみち汐 みるめさへ人をおきつ風在のおもひうちよする浪鼠口 吉田 いつしかも君には阿波の鳴戸にて舟路あやふき恋もする花朝 深くみる互の心よさの海爰にきれとのいさめくるしき真樽 思ひせまる胸はてしなき恋の海は目も心にも及ばさりけり万象 田家 毛々多良須花二 盛岡 耕して本咲みのる迄の苦はほに顕れてゑみふくむ賤 麻生 男てふ文字を分れは田に力いれてつくれる稲の見事さ イ政 箕てはかる米の出来秋小踊にかます袖ふる賤が家〳〵 都近き賤ぞやさしきひた引て田守れと妻や子にもいふらん睦実 東中七十四 毛々豆多布 とり入れて実のかさあれと蓑笠は寿米流 案山子に着せて 鳥入れぬ小田 毛々多良須花三 栃木 万歳も夏は我家に春ほめし通用亭 千五百畳青田にそ見る 村長も賎にむつみて 跡人 下主近や ちかやさかふさ住める原居 一秋も冬になる子の縄や引水もきれて淋しき賤がかり庵馬伎 門田守る身にし秋風手伝ふて引かぬ鳴子を聞もその 仝 平規 秋の田の苅穂のたばを積民はうえずこゝえす霊賑ふ 仝 朝雨のあしも延していねよけれ貢も済し枕田の店幾羅 大和新庄 軒のすきには鍬も休ませて苦はなく互に暮す賎が家 暑さへさらりと稲を刈落のむしつくともなき秋の風綴安 賤の女は手鍋さけても釜もとのゆるりと遣す都ぞ安有明 植つけしたふせの稲の花咲て葉末に浪をみする秋風万多羅 松山 苅稲の重荷に裾を高からげあしの丸家に運ぶ出来秋 稲の花詠て居れば我分もたぶんもよしと思ふ出来秋里人 中〳〵に松の木すねの田舎人心はなへて柳なりけり 東中七十五 人よりもみをいれし程出来秋の我が田の娘に実の入ぞ睦実 古河 見苦しき庵は稲にかくれけりまから実のかさ高く積ては 田の庵は案女子に弓を持せつゝいてはなさうといふ家もなし不二彦 越後村上 湊田にとく入やいなほをさげてこくかとみればつきにけるな 浜住 加幾加曽布並一 出来秋の田中の床の霧ふかみ月さへ顔の埋れて見ゆ山松 新庄 麦をいく田家の賎のとりなりはとりつくろはぬさまぞ直 名古屋 秋風に門田の稲葉浪立て世渡るにとみゆる賤が顔野守 とふ人も片田舎なる賤が庵秋の田よりの風ぞ待り 出来秋は都のやうに賑ふて月待日待庚申まちも和哥駒 一賤かもつくは柴の程崩し坂すき間はみえぬ秋のかり 田をゆくと畔を行との道のりは案ゆ子に持る弓と弦なり四ツ起 世の中はゆたかに稲の縄すだれよるも戸ざらぬ房ぞめで度結成 村〳〵に音に聞えて杵歌の枕にひゞく夜半のうすつき 梓弓稲刈こみて門田もる案山子も横になりて休みし縫女 月雪に心よせねとたぬしとて日毎に稲の花を詠る睦実 藤沢 親子して小田の床の道普請作りついでの秋の夜すがら 数〳〵のすき鍬かまを集ても鯛の味をはしらぬ小田守年益 吉田 露にぬれまから刈とり運ふにもみのかさありと祝ふ賤が家 民安き徳もひゞきに応しけり五穀は国の護りなりて 江鷺 毛々多良須 梵語にはありと呼なる水の江にさしぬきけくにあさる五位鷺芥丸 雨降らす入江の浪の白鷺や朝しほれて飛ちかふらん好成 東中七十六 毛々多良須花三 一難波江の短き芦を長き足に世冨 ふましとそつとまたく白鷺 住の江に朝夕なるゝ五位鷺は 雅喜迺勝良 おなじ位に松やななる なれもまた入江の水にすめる時万事馬 縷をやあらふ鷺のかふり毛 囲む碁の白鷺立るをのゝ江の大枝 くちにかゝるは魚にざりける 此夕辺何を仕事にそくいねる種成 めしつぶら江に立るへら鷺 ぬき足に入江の鷺はさもなくて万葉 色を奪ふてよするしら浪 十一日 住の江の岸による浪白波のよせ来るさまや鷺の一類煉方 難波江のあし間にあしきかくろひて文も短くみゆる白鷺商人 栃木 水底もすき通る程真白なる一枚紙と三嶋江の絵 為保 小苗 はら〳〵とむれて入江の白路寺の跡も渇さで立る水の面紀晴安 なには江に芦やつゝけるつま立て一あらぬきに歩むしら鷺松成 打寄る浪かしやると和歌の浦玉つしまひに群る白路守万葉 加我加曽布花一 玉川西野田の入江にたつ鷺は真白に浪のよるとみるらし木守 菽蒔 白雪といろおなじくてよしあしはみつとも分ぬ趣波江の島 三ツ浜 一帯程に流るゝ細江見まはせば夢をむすぶか眠るしらろ守幽昧 吾妻 難波江の短きふしの声の間に首をは長くのばす白鷺 立鳥も跡を濁さぬ江におりて猶満さじと鷺のぬき足吉成 東中七十七 かゝつからぬ身とはみえけり江をあさる足もやう〳〵に上る五位鷺世富 ふむ是に若は漏れと住の江のすまし顔にそ立る白鷺山松 夕菜の色にうづりて流れ江に名も時えたるさまの糸鷺鶴亀 野辺薄 盛岡 ふく風によりつ戻りつ糸薄海の如みゆ浪柴の野辺実乗 風そよと招きあひつゝつけ野にはともに寄来てはなすゝきかも目積 見わたせは目さへ及はじ何所迄ものむろと思ふ一むら薄入船 いそぎつゝ幾野の道の糸薄戻りもよりて猶詠めばや真遊住 曇りけん野虫の鏡手を出して磨くやうなる薄やさしき真長 筆の如穂を出し初て糸薄いまた夏葉のさめやうぬ野辺住虎 光さへ今迄月を隠したる薄の袖もひろきむさしめ毒也 毛々豆多布 一目路遠く広き所も穂薄の煉方 袖にかくせし武蔵野のはら 毛々多良須花三 野辺をふく風にあやとる土の音の花也 あやも乱るゝ糸薄かな 盛岡 松声亭浜風 行は跡廃れはうしろない袖も ふるから小野の花すゝきかな 葛の葉のあちらむくにも気のつかて松成 いつまてまねく野辺の小薄 武蔵野を招かれゆけは果しなや月迺屋可都良 はてしなやかな風のを薄 いか斗丈や高かる武蔵野の福養 尾前は空にとゞくとぞ見る 春日野の若むらさきのすり衣真清 を花の袖に似合しきかな 東中七十八 武蔵野をあちらみからへゆすぶりて猶も広げるやうな穂薄睦実 毛々多良須 千草さく野辺のにしきを夕風につゝるとぞ見し糸薄かな菊好 盛岡 一武蔵野にいで入る月の大きさに薄は袖をほころばしけん ふり帰り見れとも分ぬたすかれに風のものいふ野辺の穂薄 張置し薄の歌の粘はなれ野辺の往来を招くかけ原道景信亭数成 逃水は追つかずして武蔵野の露の薄の浪にぬれけり難哥兎 玉川の水に合てやむさし野のむらさき匂ふ一もと薄波音 まねく事や払へる袖といはるゝも風かな沢野の原の穂する松蔭 つゞれさせと六の鳴野に風の手のひろけし綿と見る尾老福養 秋の野の草の浪間の薄にはほのある故に風やうくらん 野に書の啼音をぞきく夕暮は哀れます穂の薄うつふく真長 一照月の雪や薄につもるらん白妙にみる武蔵野のはら好成 末は雲の衣にはひる穂薄の綿の糸より広きむさし野目積 まねく度風がこもらは武蔵野の薄の袖や広く成らん松人 何をかもせはし苅萱とりまぜて手にひまのなき野の落成 声たてゝ騒ける夜をしめし野の薄や袖をまくり手にして仝 誘ふをはいなといふてや秋風の主に手あらそふ野辺の穂薄数穂 武蔵野の月の塵をや払ふらん参酌の御みゆるねすゝさ四ツ起 心なく当るをうしといなみ野の風にかぶりをふれるを薄万葉 津和野 武蔵野にねくは月を穏薄の袖から出して見せんとてかも 上田 そを行は廻り道そとさし根きをしへるやうな野辺の穂薄 新庄 いく筋か分る野道の糸薄風にもつれて踏迷ふらし真綱 秋の野の薄の色にそみ心みのかりて見に来たる法師も大枝 茶立むし啼は野守か庵なれや庭に薄の手続きも甲良 麻生 女郎花もたれかゝれば傍の薄は恥て穂もや知らむ 夕風のそよと通へは伏見なる野辺の薄もなびくなりけり 訪すとも語るや小野の花薄あなめ〳〵の風に声あり麟馬 武蔵野の果なき道も迷はじな薄はまねき風は迎へり真広 打よする波かとみえつむさし野にわたつみうつす風の穂薄万亀 一秋さひの色みえてより穂薄に風のはなれぬ野辺そゆり 一加幾加曽布花一 笹芸のいづくよりはる糸薄くる栖の小野の秋の夕暮馬皮 招かれて幾野の道の花薄風に穂浪ぞ打かへしみるきささ なとてかく取広げけん糸薄野辺ふく風によりつもつれ 鷹にきくきりふの薄はたゝけは風に鳥たつ野辺の御持場 吾妻 露にふす野辺の薄を朝な〳〵ゆすりて起すやうな秋風 村上 武蔵野の広か中に横よりもたて細長き糸薄かな 白露をふり落し行秋風の跡より招く野路の穂薄数世 袂まで入てきたるかうす綿の袖さへかろき野辺の穂薄花盛 上田 つく間野の薄はなべにならひてや露やかくたげにいたぎてたつ 小苗 狐釣る野辺の広さに狩人の狸寝入を起す近薄閻雲吐安 吹風にはらへとぬるゝ白露の玉田横野のほすゝきの袖万葉 さしてゆく舟岡の野辺に浪のたつ薄の中に嶋もみえけり跡人 なまねく賎も今宵は夜遊びに引出す原や野辺の穂薄薄若女 穂をはらみはや月数もかさぬたむさしの原に満る薄は 糸薄露に延ては細路のいくひろ有し遠里の小野道守 招かれし野守か宿子茶はなくもないろをいだす薄めでたし菱象 黄昏に毛だらけな手に招かる那須野の薄きみわるき哉菊路 分行は葉にさはる手も切たゝやみ招く立野の薄あやふし四日箕船 子日せし野辺の薄は諸太夫の松の着たりし大紋の袖 人まねく野辺の薄の袂には穂綿の屑やたまりおから 逃水の跡を追ふてやおひ〳〵に薄なみよるさまの武蔵野万裏 初雁 毛々多良須花二 初雁と名を改て秋は猶関屋の里を越て来にけり木寺 人吉 はや秋を南に来つゝ田の面の実の入ほめて雁渡るかも 去年の秋きたから道も忘れずにみなみ覚えて渡る屁かね 鵲の橋とや見らん雁かねの渡そめにし天の川つら 落つきは大事と志賀の浦に来る雁は野田をかた道へ跡人 来る秋の文はならはでそれぞとは曲りなりにもよみし初雁吉成 秋の空替るといへと替らすに年母わたる初雁の声好成 盛岡 越路よりくはへし数を初雁の渡るみなとの柴にやゆく 、春音 一陸奥のものぶ文字摺いかなると問ばや風に乱す初雁馬使 秋の空替り安きと夕暮に来る初雁の声はかはらずきさ子 海の上を渡る初雁くはへ来し芦に号れし足は休めり世冨 名古屋 咲本を見捨し道や通り来し月にことゝふ夜半の初聲橘五園 毛々豆多布 一国を出の文字の山〳〵越来つゝ芥丸 けふ江戸入の文字なせる雁 冊子亭綴安 初雁の玉章なれはこちらから冊子亭綴安 よんても見たし声も聞たし 毛々多良須花三 武蔵川崎 朝またき霧にしめりてきしるかと空筆楼 風管 きく初雁の文車の音 古河 さやかには目に見えねとも来し秋の 田より聞たるはつ雁の声 雁の舟雲の浪間を漕ゆくと甲良 とこせにたよりつけよ燕 何といふ文字としれねときのふけふ照道 よまれに渡る雁の玉章 橋立へわたり初ぬる雁かねのふみ見ぬ人にみみするらん 久堅の月のすみ色よき夜頃文字の関屋を越る初雁春丸 天のはら月もみちぬるころほひに生れたやうな初房の声 初雁も民の蜜の賑ひと薪くはへて日の本による若女 礼義ある鳩より先に田の面には三四羽おりてみゆる初雁 羽袖よく揃ふ折めもみだれぬはけふきそめたる衣かりかね 頼む文いくら積らん雁がねの舟のあし入多くみゆるは 麦倉 一雁がねに渡り初をや頼むらん爰に木曽路の雲のかけはし哥積 初雁のたよりのみを明らかにくもらぬ月の影に見る哉波音 物おとも哀れに沈むうき秋の空を賑はし来たる初島人成 陰になる雲ひとつなき蜂の夜の月に色ある初雁の聲繁成 東中八十二 蔽蒔 かさゝぎのふしんやすらん天の川へ先雁橋をかけ初にけり 小苗 公得墨にかく玉草は入用の初かりがねの渡る手形毛山歯晴安 月彦 うす雲に影を隠して初雁の恥かしさうに声ぞ低かる福養 見捨たるな思ひ出て南にぞさきを急ぎて来しか初雁百体 外山をばいくら打殺して常せからふじかねさして雁や来ぬん岩門 天の川にまた橋なせる初雁は文通すや星舎の後万事馬 麻生 うはの空飛来しくせる初雁はまた小山田に落つかぬなり 夜もすがら寝もせでいそぐ初雁をうつかりと聞聲ぞ更ゆく吉成 月影の丸挑灯のひかりにて夜道やたどる旅の初雁浦近 天の川渡りてや来る七夕におなじころもをかりがねの船玉頼 都入に身つくろひをやすむ月の鏡にうつす初雁の影/哥王 小苗 真へ帰る恋に来る雁の玉草たのむ秋の口もと 騒がしと小鳥はつれず小杉やしをことりともせでわたる初雁松成 仰ぎたる雲の上にもうき気のなびくとみしは初雁のつら万作 春は花見捨てゆけど来る秋のはなにみせてぞ渡る初雁橋本人真似 三つ口に三つかとの菱喰そめてのどにつまりしやうな雁かね真進良 藤沢 行舟のかた帆計におも白うみる初雁のこゆるぎの磯尾都代忠 初雁の秋はきたとて北よりも人にをしへて渡りこそすれ千形 是といふけしきのものは二季守ひときは目たつ秋の初め音繁 麻生 打かけし抔とみえけり羽袖をものしてき初る衣かりがね万都春 長旅を木曽のゆ路を越す跡のはなみつくろひ渡る初雁蜑記 加幾加曽布花一 かせて来しみの文字だに読とかん今宵の月に渡る初雁馬伎 東中八十三 から櫓おす舟かと聞けは初雁の声打そへて渡る由良の門菊母 盛岡 夜碪を打出の浜にから〳〵と堅白を跡におらす初雁 幾羅 人吉 海山を越る用意の棹となり鍵となりつゝ渡る初庵 雁がねのかへ字に成てか白姫も木々の色葉をそめ給ひ音繁 むさし野の浅茅がく小ろの玉章をちよつと頼むの花の初戸紀随成 古河 春の野の雪かき分て道付しやうに並てわたるはつ庇 渡り来る初庇がねの行儀さへよくつゞきたる遠き空藪橋本人真似 大空にかく玉草の薄墨は外へちらさぬ初庵のつら山松 初雁は二三羽みえし門田なる早稲にはいまだ銘も入ねど花也 寒なに萩のはなりはつ座の玉草みてやなびき初けん糸長 麻生 うひ〳〵し桂男に届るか雲の袂の雁の玉章哥志久 また気にかけるもなれぬ初雄のふみの字遣しとみゆる白雲 伝 仝 降つゞき天の川原に水ますや舟橋かけてわたる初麻 旅にやせし己が羽袖の見なくしと月の夜深に帰る雁がね梅住 覆ひ来る雲の上にも浮雲のなびくと見しは初醒めつら万作 別れたる春の侭にて珍らしとまねくや花の落る扇田千代人 上毛吾妻 花の頃霞かくれに帰りしも霧あらはれて来たる初雄 同尻高 初府の音信ゆかし一人居るいほりへ詣ふて心なぐさむ英矩 秋の空につゞきし雲の峯我で九軒なす初房のつら万裏 山邉月 毛々多良須花二 秋の夜の月出が崎や床の浦寝ては居られぬ沖津島へ菊好 むら烏ねくら逆はん朝日山さしむる月は明ほのゝそら馬使 東中八十四 藤沢 かたふかぬ月の光は玉くしげ二子の山をいづるさやけさ 里人 萩 白雲は寄てもつかず志賀の山月のかつらに花園の里未談雪 三月のゆふ辺影を三笠はかすかなる峨眉てふ山に出し月かも万 讃岐丸亀 一人毎にいづるを松にゆう〳〵と落付顔の山の端の月拙影亭成振 毛々多良須 高野なる山に三鈷の光るかとみれば松にそかゝる月影世冨 吾妻 照影を玉と愛てや雲の袖にさゝげ上けん山の端の月永白 高畑 山里は秋をうしろにけゝれなく横をりふせる小杉中の月歌紗丸 隈もなく思渡りたる月影にしのぶの山もあらはれけり米吹 春山の花をは雲と見なせしか今はた月の晴るゝ秋の秋万録 三芳野の花の朝にもをこらめや姥捨山の月の夕辺は万多羅 月影のそなたもあかしこなたにも山のすまだにさえ渡る なり 毛々豆多布 金谷園真広 たちのほる山の二十に四つ五つ 若くみえたる十五夜の月 石見津和野 今宵みつる月ぞと人のもてなせば丁 丁那言友無 忍ぶの山も晴て出にけり 毛々多良須花三 向鏡亭 世を捨てゆきゝの雲もこの端に楚象 よらすさはらぬ秋の夜の月 楽しみもまつ間はうすひ峠にて外面森雄 月の都はまたはるかなり 麻生 柳糸軒琴足 一鏡山月のあかさに我かほの しは計こそよるとみえけれ 東中八十五 もみち葉を折ておひ来る山賤のおもに照そふ月のさやけさ 麦倉 邪魔な木を切て作れる楼に居ながら月を挙越の影睦実 穿筆山春のはなしも出る月を雪と詠る秋の秋の空和哥女 賤男が帰る山路を待うけてあかるを出せし秋の秋の夜の月百路 新庄 照そふて七ます神の日よし山月もいやます詠めなりけり 真綱 木を切て入る月をしもみせよかし鋸山の名にしおひなは真槌 山程につもる用事も姥の如捨て詠めんさらしなの月綴安 雲を見し富士のけふりもいつしかにたゝずなりしは月の散かも岩門 唐土も顔じ雲なく空はれて今宵三笠の山のはの月山松 麓には袖をぬらすに丹波山月みて粟の笑みを含めり菊人 盛岡 山の端の尾むか袖にまねかれて露ふかくなる月のをとめ子 遠山のみねと焚は道たてゝも隔なく照る月のさやてさ千代 茶の名ある宇治の山より出し月は夜すからみても寐ふたけも 泊瀬山比丘達もあふき寒るらん一はう口の月の光りは 若山 加幾加曽布花一 盛岡 かほど照る徳捨山の月みずはいかでか老の名をや忍はん 為成 全 常磐山かへぬ梢に秋の色のしたひを見する月人男 黒牛 吉田 望の夜に疵を付てはならじとや月は静かにのぼる石山 真文 高田 猟人の分入る山はほこ杉に弓張月のかゝりてぞいる 万籟 人吉 山の名の姥をたよりて今宵しもめいてふ月のをとめみけり 漬夢 〽照月のかつらの花の下道に心ちらさでみやる山の端 舟長の影は一人もみえなくに月のみふ事の登る心のは 杣人も襟かき合す鏡山鬢のそゝぎもみゆる月影千代住 東中八十六 津 有馬山人形半の外に又みえつ隠れつ木の間もる日 月 高山のうしろに住る賤が家はうら成しけれ月を待し月 十字街 いつれをかくらへて愛ん鏡山姿うつせし蜂の秋の月柳岸亭藪成 有馬山いで湯に影の入る故か夜毎に雲の衣をぬぐ月福養 藤沢 青空に枕の山のうつりしかあいたに出し月のさやけさ有安 草の葉のあやふきころに影をめて落かゝりけん山のはの月菊住 新庄 照渡る影も大井の川向ひたくひあらしの山の端のほ住虎 ひの身は又来ん秋も命なり今宵の月やさやの中山大枝 丸きこそよけれひづめよかけよとはいはぬ生駒の山の端の月真名美 鏡台の山にかゝりし月影はけに世を照らす鏡とや見ん集賀 秋暮のころふみ分かへるさの月を友にてたみる紫人 八はた山鳥は虚空にはなてとも目をはそなさぬ市の月影若形 まん風にみゆる鏡の山の月応き出して影そ照そふ 麻生 露にぬれし雲の衣は山のはにかゝるさやけき月はひるなり万都春 吾妻 をしむにははてなきものを心残の月より薪積てこそみめ 秋安 尻高 あらしぶく山辺の月のう張に飛てはしれるゐのことかも諸実甘秋 全 此川のもとはと聞へは爰からとそこの山よりさし出る月大槻 庄内 ごぼ〳〵と匂ふむ音に窓ひけはしらけて見ゆる山の端の月真牛 雲は皆風に追せてきら〳〵と跡すみ登る山の端の月原住 秩父山秋の哀れを観気在坂の東を照らす月影万泉 野月 毛々多良須花二 月の薬露をしなめて武蔵野のきゝ道多き千種百艸秋衣鹿縫女 出しより入る山もなき武蔵野の事なとゞまる秋の秋の月馬伎 吉田真文改 皆人を招く薄のもてなしは哀れすゝむる野辺の月頼 はてもなく広くはありし大きれる月の出所のしれぬ武蔵院 宵闇に心残して過ゆれは跡そひかれる武蔵野の月有安 一月を見てかとつ心は武蔵野の広きが中に胸そせまれる甲良 毛々多良須 薄にも招かせ月を待てはにやとくほのめかしいつたなは蔵野 仝 むさし野の月にうれて鳴烏ひとなるらん汝かかしらも幾羅 武蔵野に照渡る月は数繁きさゝめが露に影さゝめやも世富 かたふけと月はまくらの山さへもはてなかりけり武蔵野のはら満丸 目の及ふ果たに山はあらなくに月には名さへ高きむさじ野の字富向吉 邪魔に出る空は風にて逃水のすみてそのほる武蔵にの真名美 毛々豆多布 水をもて空ゆく月のゆりこぼし目積 野守の鏡出来やしつらん 千雀亭 昼と夜のさかいも分ぬ武蔵野は 万亀 よにひいてたる月の名所 ふしなからと宵詠ん月みがく数恵 風は君子のとくさ生ふ野に 毛々多良須花三 一七日見し春の花より秋の夜は馬伎 なら野に帰る月の影かな 蝶々亭 逃水も今宵はとまれ武蔵野の 菊住 月におひつく遣しきなけれは 盛岡 影やどす野中のしみづ濁れとも悠々館 もとのつやしる月ぞすむ 名哥記 全 草の戸は明てくれなよ今しはし槌廼音成 露に宿かる武蔵野の月 満る月の生れて出し武蔵野は世冨 さても大きなはらに有ける 一菫咲し野をなつかしみ秋は又物菓 すまひとりして一夜寝ぬ月 浮雲のあし手まとひもなかりけり 不老亭 若松 若松 月ひとりすむ武蔵野の八郎 山のなき武蔵野も入る月影は睦実 とゞむることのほりかねの井や 信濃式部 東から出て来る月も旅なれや竹亭直成 くさの枕にやとるむさし野 東中八十八 虫えらみありし嵯峨野を照る月に愛てそねなく明す秋秋松花花 古河 白州の月の光りは唐土のよし野も惣なし雪とみるらし。 志真子 酒くめは赤きます穂の薄糸いつはいにさす十五夜の月浦近 目にさはる物のなけれは何むとつ影はつくらぬ武蔵世の月川南 月の入る薄の袖の広さにはあきれ果たるむさし野の八郎松成 筑間野の津にうかれし烏をは鍋かとはかり数もかがべし照道 武蔵野の月やいつくに宿るらん入るへきやうな山も見なくに万作 木陰なき野辺にも雲の垣間より月の光の透影そ也 按草にかゞめし腰を今宵しも月にのばせしむさし野の原 藤次 風に動く薄を分て出る月は目にもちらつくかげろふの小野 草の葉に露おきかへてつらかに月に御宿をかするゆのから米也 うつくしき月の乙女の出所は何くらからぬ武蔵野のはら山松 武蔵野のはら一はいに思渡り世にかくれなき月の名所弟人 萩薄なみうつ野辺の夕風に月のみふねの影わたなり花也 夕されは野辺に外猪の髭さへもあらはにみゆる秋の夜の月 麻生 みがゝれて光まされる園原や月も木賊にかゝるとぞ見し千金 秋毎に月のかつらの花やさく錦にうつる野辺の七種常笑 栃木 雪ならば迷ひやすらん道分の文字さへみゆる野辺の月影 武蔵野の広さもわかずはし迄もかけずに照す月のさやけさ鳫 加幾加曽布花一 一背を岸かたふかぬのは武蔵野の霞か関に留るとぞみし木守 盛岡 一菅姫月のかつら男さし来れは犬の笑顔を上て見からし 晴わたる雲井の月を宮城野の夜にうつして望とこそれ 女郎老なまめき立る秋の野に夜母かよへる月のかつらせ 松山 風そよく野中の薄ほを上て月のみふねの影うかふなり中 武蔵野の原に鳴ぬる虫ともにくもなく生れ出し月影米次 信濃式部 秋の夜に千種の花の色〳〵をかそへてぞ見る武蔵野の 女郎出しむさか野に月のふけ行を落にきとしも人にかたるな勝良 鎌倉 呉竹の春やさくらの色はへて光をむとみよし野の月新宿花 野にも月のすめは都と夕暮の詠めはおなじ雲の上かな弘麿 月初に月はみれとも月今宵又ならびなきむさし玉の月弟人 露もおきてゐる武蔵野にねぶの春にらむやうなる月の影分跡人 武蔵野の月を見てさへ本薄友もやほしとひた様くらん山松 もゝ草の花はちらねと野に出て月は見るにそみは入にけり雄冨 女郎花粧ふとみる姿野に鏡のやうに向ふ月影春樹 月今宵もれる野専の住家迄もる所なく照しは 原虫聲 毛々多良須 盛岡 一夜もすからふる野にすたく雨上りはれやかにきく頭虫の戸実栄 仝 きく酒はせりくなりけり武蔵野のはらいつゑに土の啼夜は森蔭 盃母程艸にやどりを移しつゝいさめにやたつ桟織の声金馬 天神林 おなじ原のおなじ露をはなめながら虫は千種のいろ〳〵に啼 右の音もそこと思へは逃水の遠くなりゆくむさし野のはら松能宿 川崎 聞つたふこま唐土のはらに生ふ松虫の音は夢にあらすて山鳳管 萩か枝や薄の原にきれ弓なくつゞきのはらの虫の聲〳〵 陸奥の安達が原にすだくのを鬼こほろぎと聞は誠え高登 毛々立多布 いつくへも此書の音やひゞくらん目積 遠く聞へし武蔵野の はら 毛々多良須花三 白露のおきよけに見る草のはらに 伊志女 ねよけなりけり土のいろ〳〵 谷邑 をやみなく嵯峨野のはらに真久 啼土を 子は籠に入れて親に すゝむや 東中九十一 来て見ればしかも高ねに啼虫をやまなく聞ける武蔵野の 睦実 天原の草枕にもあちらから袖に這ひ来る桟織もあり花成 声はきけといつ逃水か草雲雀すかたもしれぬ武蔵原春金 あはれそふ書の音色のゆり立て沈む思ひも浮嶋かはら万葉 口こわき駒をはなれて轡虫こがねが原に声乱るなり百人 聞ゆけは書もその先〳〵と声の逃たる武蔵野のはら通用亭 ふる事にまけじと啼や鈴虫の声もふるから小野の艸はら夫高 加幾加曽布花一 鈴鹿山ほどをければ鈴むしやあのゝ松はら松土の聲馬伎 鈴虫のころとなく音も草のはら風にそおとす露の白玉菊好 いにしへの浅茅が原の笛の音と今聞まとふ鈴虫の声木守 京深み荒にし原の不浄をははらひ清むる鈴虫の声 一雖轡馬進むしもしつ〳〵といさみの原に聲ぞ聞ゆる むさし野の原は錦の秋草にはたせるむしの綾とりて啼鼻信亭敬成 竹井 行やうで今宵は原に一夜寝んふり捨かたき鈴虫の声 音たてゝ駒やいさめる轡むし小金が原に聞も愛たし百柴 りん〳〵と桔梗かはらに啼虫の音そうつくし又聞にこん松蔭 月にひく駒の手綱やむさし野のはらかけて啼轡鈴虫縫女 さま〳〵に世はからくりのつもりその竹田が原に聞むしの聲真遊住 行先も猶道遠き草の原淋しと連をまつ虫の聲万作 添寝して草のはら〳〵思ふ親の心にいとふ轡むしの音柳琴亭数成 秋の日のたけ田のはらの一つ家に人の足をも留る虫の音真長 藤沢 一炉深き真野の茎はら遠けれと近く聞ゆる火の聲〳〵 草刈を通辞に頼み聞なんもろこしが原の書の諸戸真槌 月の笠きたる事杉も武蔵野の原にぬれたる蓑虫の声好成 片岡のあしたの原に道とへは夕辺をつぐる六の聲かな吾妻多丸 秋されとまた白露の浅茅原ちゝときつきつきときときつき 園菊 毛々多良須花二 大空の星の林を目の下に見る心地せし園の玉菊真清 のぞまれて薬ときくの花園にやむことを得ぬ短冊の歌 盛岡 庭守の慈悲はかみから雨障子霜をぞいとふ菊の花園 とな庭のしめりにさける袋菊千代と露とをこめ過してや 飛鳥のあすか井殿の七夕に手向たるらん庭の鞠菊 毛々多良須 菊園におく落の身は八百年も花に経ならん心やすれ繁樹 毛々豆多布 盛岡 竹斎の庵も朝から訪れけり盤手森蔭 さぢと呼れし菊の花園 上総苅屋 毛々多良須花三 菊園の着を綿のみか節句の日は 酒迺屋呑安 出す盃のわたもとりけり 源氏をも名に呼ふ花の品さため我人 雨よけさうし覆ふ菊園 桑所 千代といふ齢を己が手作りに御室 のべちゞめする菊の園守 東中九十三 手入よく園に咲菊籬よりはな高くしてみする庭守 公 咲が中にこがねの色もよし岡の黄一と登る菊の花園 吉田 誰も見に来たり酔たり家の名も菊に酒うる園ぞ賑はふ 玉壺庵 全 願はくは露も命の長かれと還生の菊におけるものかも ○元衣 越後高田 月星と是るしら菊我心遠に移せは人ももてはやしけり 菊園のきくの生酔望うたふ霜の夜神楽舞ふかとぞ目積 きのよきを集めたるにや作り人のいふことをよく菊の花園米次 小苗 しら菊の園を月夜をうたがひのかゝるは花の星なりなり ノ米粘 藤沢 挙るのを笑を含て垣越にきく其人と菊園の主 麻生 寒守のよはひ八十年の翁草朝に杖つく事もゆるせり東琴 色も色も世にもとちめて重ねさく隠逸としも菊の花園常実 栃木 蝶の羽も黄に染るらし菊園の油障子に胡麻売の垣 庄内 花さけば露を吸んとする迄に菊の齢は翁作れり 加幾加曽布花一 一しら菊は雪の降る迄我国に其侭のこれ色まがふかに馬伎 盛岡 かむろ菊に袖すりあふて行さまは大尽めきし園の前守 實栄 合 菊見にと入に驚きうたゝ寝の枕も我と越るへ守 繁門 きのふ迄寝入しむもけさ人におきな草とて目をず 人吉 漬漬 全 園の菊誰もほしとはみる中にくれなゐ色の本も有て 全 喜多留 若やくときくなる霞の玉くしげふたものによき尤のなめもの 古河 一商人のみせなる貫金菊園にもうけの客ぞ多かる難奇免 囲ふ程みちし余りに真垣より薫りこぼるゝ菊の国万葉 周の代の流れを汲し胡蝶さへ命を延す園の白菊山中楽也 東中九十四 手を誉し渋茶の手まへ恥かしと思ふて園の菊にもて玉腰 藤沢 一運を見にけふはいくひ思ほゆれきくを立たる盃の数道守 仙へもいく秋やかさね咲花の匂ひを籠し園の白菊山松 作りなして時めく本のよそのより内に栄ゆる御運生の菊万葛 俳諧歌東西百首巻之中終 追加 毛々多良須花二 灘浦 恋草の勝にしけりて踏まよふ人の道をもしるばかりに 南陀羅 毛々多良須 名古屋 あらし吹野辺の薄の露ちりて穂とびにけりな小田のかれ飯 〃龍迺屋 露にすれ風にもまれて木賊はら次第に細くなりし虫の音に 仝 野守 津島 刈暮し大原山の賤の男は柴の外にも星をいたゞく ヽ管雄 青柳の糸より細き手となりて髪なで上る恋病の床 加我加曽布花一 名古屋 眉すみに悪かきしやうな遠山のひたひの際に薄き三日に 同片野守 猿もすめる深山の月影に兎も空の浪をはしさむ南南陀羅 俳諧歌東西百首巻之下 撰者森羅亭萬象 寄木戀 毛々多良須花二 長門萩 一よき人にまつはる胸のともすれはもゆる椿の木の家からそ山辺淡雪 岩代の松にむすひし契さへつひそれなりに恨のこせし鏡臺山目人 つれなしと思ひな捨そ後にぞや浮木に亀のあふよしそ花園亭麟馬 出羽左内 恋の山分てよき木を見当なはいひわたりぬる橋となさまし 豊秋庭訓文 毛々多良須 一錦木にみせし昔を思ふにそ今は心をたてる恋中森林亭木守 陸奥盛岡 恋しさにさゝでそ忍ふ杉の門すきなからたに訪ぬ恋人 一槌迺音成 逢ぬ夜のながき積るにこりはてず哥のえにしのなきぞ侘 万流亭世冨 信濃松代 誓ひたる連理の枝となりにけんはなれかねたる妹か白影 蘭菱亭義信 胸の火に燃る薪のつよすきて焚てこぼるゝ浅くるしき巴木亭自積 東下一 毛々多良須花三 恋すてふ身をしる秋か桐の葉の 森眸亭馬伎 おつるはもろき涙なりけり 伊豫松山 一通路もいつか絶にし深山木の卑鰭振 立かれしたる心地なりけり 伊勢津 妹と我りとこ世のうき名橋の魚園十字街 にほひを人に嗅るゝそき 恋〳〵てよもやと思ふ錦木は浜辺未人 くちいだしてや浮名たつらん 陸奥白川 はゝき木のまへをかねるか来る松半に白 白雀房折雁 ありとはみれと逢ぬ君かな さるにても妹か心は折ずして木から落たるやうに思へり真盛米次 木堂さへ寝しつまかてふ秋中にも絶ぬ思ひに目もあはで 下総古河 かれ〳〵にしをれ柳もあふ夜半は嬉し涙のめぐむしら露花住 一恥かしやうき名は門に立ながら朽て響にぞ光る錦木秋長堂物築 いたつらにうき名取川いかにせん思ひ沈みし急の埋れ木秋衣庵縫女 上総苅屋 武隈のまつ夜はそれと心してふたきてくれよ餘所の門口酒迺屋春安 打解てぬるて紅葉のうれしさもかへるでと聞名たに侘しき盤亭形多死 西風の夜も音つて松の木のときは替らで逢ふぞ嬉しき楠本人真似 年経つゝ松に久しきやどり木の宿れはねさへ出来にけるかな森総亭山松 妹はたゞつれなき中につれなくていく夜替らず松ぞ久しき 哥の柄のくちにいとねど深山木の命の内にをれてくれかし森緑亭総人 東下ニ 陸奥二本松 末の松まつに来ぬ夜は我恋ふる人なみ哉て思ひ過せし 森路亭安遊民 約束に心ひかれて出る門になれもつまたつ根上りの松 庄内 十帰りも寝かへりをして主枕のまつは久しきものにそ有て 梅月亭真牛 加城加曽布花一 盛岡 妹ようき思ひをかけし柳腰なびく姿も風にみゆれは は繁樹 仝 むらまをさけつゝ陰にやどり木のねも見ぬうちに立名はづかし 松声亭静風 神かけて願ふ月日も杉の木のたゝいたづらにのびゆくそき いくよふる霜にも心熱し柿色にいでなは人見てこらん仕合吉成 外にきもなく来ぬ人を松山のまつ斗なる恋ぞ像しき森戯亭可仙 いつ迄もつれなき色を替ずしてすねたる松の妹かこゝろや大木繁成 信濃小舟山 千とせをも経たりし松の埋れ李なりても契り替らずもな 穂鳥 思ひきや連理の柱と誓ひしに今さらにきの替るべしは橘杏亭香に 承るより長夜に独寝むり木のこそくり起す風も防ひよ平花也 陸奥桑町 一言の花やも世にしげくして我恋は心の侭にならの木そうき長閑房御空 飢人は桧の木の中の明日ならふとは思へどもならぬうき恋根歩きさ子 妹かみは栴檀之子のめでたさにいらんの胸の苦も消に万象 寄艸恋 毛々多良須花二 伊豫松山 一草の露分て妹かり行秋半はわかれぬ元にあらす袖かな田井鰭振 肥前唐津 なよやかにみる若草のめもとには心の駒ぞはなれからねける。 養木軒川貫 あふ事はかた葉の芦のひと杉だに言の葉かはすふしたにもなし 目積 信濃式部 恋艸の繁りて道も分かねつ迷ふ我身を哀れとも 真糸庵房得 夏艸の葉き人目を忍びつゝ露ほども名はもらさしとこそ 毛々多良須 つれなしと思ふ妹にも庭艸の恋しさ増る床夏の花 一不老亭若松 森野亭馬伎 東下三 跡先の分ちもさらに夏草の森林亭木守 道たに忘る恋人そうき 玉の緒も絶なはたえよへみいちご涌泉亭真清 一部くちなは後世契らまし 出羽高畑 我袖にとりつく妹か朝顔の山辺菊路 つゆの別れを惜む衣〳〵 武蔵岩槻 かれはつる中にめたつてみえぬらん早咲庵梅守 冬も思ひの草は繁りて 毛々多良須花三 一人をまつ関のあたりに植てみんの宇宙向吉 しのふてふ草あふひてふ草 待夜半はかやつり艸の床のうち小松若女 ねてみつおきつ露の手枕 出羽高畑 恋の道深草に迷ふ妻問ひを胸かゝけにせし麓に聞か山雲亭歌 山雲亭歌弐丸 思ひより心の駒のうかれ出て我恋草を夜ことすさめし森数亭音楽 秋の野の艸葉に風のふく夜半へ寐つ起つして待そくるしき 月迺屋可都 越後村上 相思ふ中はとり分角力草ませずおとらぬ恋力かな 海岸亭濱住 ひゝな草にむかし妹背のまねかたを今は誠になすそ嬉しき 為君亭芹丸 上総小苗 はら〳〵と落る涙を露草におはす心のうちぞ苦しき 山家数意師 仇波のよるは殊さらうき艸の根なしこと迄いひたわかれて 一芝栗算具進談 相模藤沢 孝々道守 約束の替りはせまし草の葉にふかくも色のそみてみえし 仝 俳人にあたには心ゆるさねと招く尾前に思ひ乱れん 運方都代志 盛岡 諸ともに立しまゝにて錦木は朽てもくちぬ浮名くるき 菅菰箕船 住の江の岸に生ふてふうき人の忘れ艸にもわすれたりかむ月人 東下四 讃岐丸亀 庭迄も我恋草や薫るらん道はなしとて君の来ぬのは松影亭成娘 二葉艸向ひあふひは妹と我ちん〳〵加茂のうまきむつむつみ美和垣夏樽 出羽竹 加幾加曽布花一 つかの間もしたゝ事は夏草のしけき思ひを君はしらずや橘古代 秋風に心うごきていつしかと乱れかゝりし糸すゝきかな米次 二本松 五月闇夢の通ひもあやめ草ひかるゝまゝに袖はぬれけり 思ひ草茂らぬうちに朽よかし夢とならは妹にかられん斟酌亭幽人 恋草の朽て蛍となるならばもゆる思ひを君にしらせんヲ 仲立の言の葉艸もかれはてゝ今はみになるたよりだになるたよりだな 恋〳〵てならに思ひをはこべ草とゞかはうけん露の情を一髪裳葉質 松代 五月五月二月五 あやめ草かり枕して我かたに先こゝろひく根ざしともな 一得斎種成 上毛吾妻 いたつらにしけさそ増る恋草のかりにも来さる君そつなき馬則 全 種とてはまかなくふえし恋草の契り捨たる妹そつれなき 十 角一亭樹成 なき のき 思ひ草かりそめにたに入れざるはとくしめおきし人やあらん しをれしも妹が情の水に従て万年艸のいきかへりけり万象 山賤 毛々多良須花二 妹山につ早木のあるはしられけり肖の心残の日母へへば伊勢小詠 相模鎌倉 冬されは木葉衣もいくかさねよくきみなして背負ふ賤森華雲亭雅盛 世の中の苔は遁れても山崎の桑のかれさる蚕かふ頃真名美 毛々夕良須 桜花まさかりの柄の朽る迄家路わすれし春の山賤馬伎 三河吉田 山賎の仏に此末を負来るはかなしき身にも花は有けり春林亭青林 深山木をこり〳〵賤はからげつゝ早く麓へおろしたからん万里亭弘麿 家作のいとあさまなる山賤もけふりは日らに立て過ゆく諸道亭好成 東下五 毛々豆多布 賤の男か五軒をくたく斧の音も 松梅亭商人 ふたつにわれし谷の山彦 毛々多良須花三 万流亭世富 深山路のゆついはむらも足なれて 賤はしつ〳〵廻り行らし 仕合言成 山崎かたつ木のけふり白雲と みれはくらうもせさる炭焼 炭焼 相模瀬谷 一炭のひとかたならず持そふる紅葉は花の枝とこるらめ竹園真初 紀伊若山 又付持て瀧川の辺に山磯は伯弟か声をたつ風情なり 上毛吾妻平 松風を斧に楽しむ以砂は琴になる木やきり出しぬらん馬 ん馬則 加幾加曽布花一 陸奥盛岡 山に居て猛たつことを知らぬ身は日母きをこらす賤かなり さつ弓を手にきり持てさつ男等はさつ矢つがひて山を廻れは世冨 三河吉田 山磯のまろき心を持ながら谷のかけ橋渡るあやふさ 杉山人 肥後人吉 柴薪せおひながらにおりこゞみ都人にも増る山賤 喜多多 公 世渡りに心曲らぬの磯は骨を折とも思はざらまし漬夢 信濃菽蒔 朝またき山の端つたふ山砂の里はさながら有明有明の月有明亭内考 小苗 陸奥の安達にあらでひとつ家の鬼もなき世に住る如賎紀晴安 相模藤沢 山崎はのひ〳〵として育けり生ふるきまゝに立ましらへは道守 青迄もたくはへんとて雪ふらぬ先に枝をり廻る白賤猩々庵物人 朝な夕な出入る雲は山坂を登り下りつへふ山賤白饒亭美家 沙汰なしに盛りは過しむ紅葉音つれ計山賎か寺常笑 磯の男の山を上りつ下りつしてかせきはしかも名におひぬ万 漁村 毛々多良順花二 一浦小船かせぎ男のひく網の女は又序にうみをなしけり跡人 蜑人の涙にめかれて干網も富士の姿を作りてやえし馬伎 色黒き顔はかり有る汐風に白くされたる坊喜の家根数和楼瞻笑 毛々多良狼 こちいなさ名によふ風も巻か家の干ぬる網の目にや留らん花也 いと弓なく昼は引あみ夜はいさりあらいそがしの蜑が手糞也音成 松代 大なる鯨をとりて賑ひのつり合ざるは漁士の家作り 毛々豆多布 一蚤か家のやねに蛎上る浪ならて 森総亭山松ノ くゞり入るやうな心地こそすれ 毛々多良須花三 陸奥盛岡 越て干頃網のひるまもよる浪の御供黒牛 いとまなきさの蜑のなりはひ 風月亭真名美 鰹つる其竿になる竹の浦 ふし切る蜑の磯家いそ 後 造 巴未亭目積 濡たりと干せはほすとて網の猶 ひるてんとなりて鳥もかゝれり 打廻し網干する時発か家の一むらかゝるいわし雲うな酒泉亭真清 地引網魚のいろこの光れるは黄金をよする思ひからん睦実 蜑か子の育はあらき浜風に家根はおもりの心もひけり すなとりの業のみなせる一村に又田作りの干鰯をもしつ仝 蜘蛛ならぬ蜑か新端に網はして得ものあれとて待風情春華亭大枝 一鶏ひく苫家にあすの幸ひと夕辺の雲に苦もしれ月池亭表友 釣舟の戻るゆふ辺は三日月を拝むやうかる蜑か家砦目積 地とる蜑の住居と知られけりさゞゐのやうな庵の並へは生花斎照道 網干て昼寝する間も塗が家にうつ音絶ぬ磯の大波岳住 加幾加曽布花一 水心あるにつけても漁人急にこゝろを引れぬるかな平規 干網の目もはるかなり蛮人の朝な夕なに露む海辺は繁樹 鯨さへ七里地引のいわし網九十九里だに賑ひにけり井丸 浪の上をぬけつくゝりつ千鳥程其むら〳〵に帰る瀧人岳住 風なぎて浪はたゝねと蜑人のしるしを立てよする浅舟米岩雀 いたつらに雑魚もすくふて持遊ふとゝ交りなる浦の蜑かな弘唐 鎌倉は北条酉の跡留て漸の下迄鱗みえけり森苗亭里 藤沢 漁の業にしあれは引網にかゝる目出度鯛もなよしも 〃道守 仝 すなとりのこちやいなさと夕風も網のめにさへかゝる髪が家 一垂が家に網打かけて網の目に風もとまる凡浦の鼠山松 給べもせで露の命をうろくづにつなるだし浦のいさり舟柳写真寛文 松山 いさりする紫か住居は世の中のよしやあし火の影たのむらん うき世をも渡れる釣のいとなみに細きけふりをたてる蜑が故馬伎 東下八 松の魚三千本は有ながらせんざいものに事をかく村万泉 川紅葉 毛々多良須花二 名古屋 富士川の嵐に月の都まで逃る紅葉やくれなゐの籏竜迺屋 紅葉よの錦なかれて蒔絵とも見まかふ波の花うるし川小松若女 麻生 星合に重にやかくらん龍田川わたれば中の絶る紅葉を 伝 古河 飛鳥川浅瀬も定なきといふ時雨に深く染るもみち葉雉哥兎 藤澤 風にちる紅葉に埋て紀の川もうは深したるれにみえけり森師亭晃 毛々多良須 秋山の立田の紅葉影みえて川も白へる朝日影かな世富 紅葉はの緋の川上ゆ流れ来ていつも色ある浪の下とに真清 照紅葉移る立田の河筋は火水も中のうつくしく番浜辺朱人 紅葉はの散し気色も吉野河一目千本しからみの杭森秋亭顔好 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 真進良 一龍田川もみぢを秋の錦とは 延喜よろしきみことのりなり 上田 むら濃なる桂のき葉川に照りて葱麿 猶さらしなのみえてうつくし 讃岐丸亀 寿楼愛寉 うるゝ川きしのぬるでに覆はれて寿楼愛寵 外の紅葉は皆まけにけり 毛々多良須花三 大井川きしの筏を臺越しに 花也 のりてわたれる風の紅葉は 馬伎 をみち葉の影うつす浪も西川や 錦照そふ夕附日かな 外面森雄 もみち葉の秋はもゆると御祓川 夏のひの遣はしつめ申せと しらぬ火のもゆる紅葉は秋の詠め 真槌 爰につくしの松浦川かな たつ田川岩波こゆる紅葉はは山松 山の梢の影かとそ見し 一仇皺のより来る浪にもみち葉の 糸成 ひのしをあてる衣川かな 紀伊若山 花迺屋愛丸 渕は瀬とかはる飛鳥の川紅葉 ふかき浅きも流れゆくなり 海士小船初瀬の川に朽ながらくちなしと見る紅葉はの色木守 水に浮き波にしつみで谷川をそめぬ紅葉の影ぞ流るゝ美和垣真樽 高田 草生水も流れ至るか谷川に紅葉その緋は水にすえたつ逢徳 二本松 散とみれは時雨の原や結ぶらん筏の木〳〵に戻る紅葉は 安遊民 高角 蜀江の錦を読るから人に立田の川の紅葉見せばや通酒屋久手巻 紅葉はを風吹なかす天の川おこほしうつむ秋の夕アは音繁 なかれても川に絶ざる紅葉はは水の底よりわきいづるらし岩門 川浪の後に紅葉のびをなしてはたうつくしき唐錦哉紀楽成 鎌倉に青砥か浅の沢川松の火てらす岸の紅葉は物菓 川崎 鬼の住む深山路流る川紅葉ちしほ洗ふとみる龍田姫 鳳管 紅葉その五瓜ににきる露の玉蝦夷錦とも名に立田川万事馬 麻生 龍田山水にうつりて木末なる紅葉も川の底にみえける 薫 仝 くゝにてふ糸やありけん紅葉はの影をぬひゆく針川の水千 くれなゐの浪も立まの川紅葉秋のよとみや深く見ゆらん万石亭吉成 伊勢武者の咄し迄出る人の口宇治の網代にかゝるきすやは高澄 紅葉はにそまれは染る立田川水のこゝろも赤くみえけり背亭夏晴 立田川うつゝ紅葉も山磯が身にはうつらぬにしきなりけりけり山道健女 川の面の影は近くて遠目がねうつるやうにも岸の紅葉は万葉 人吉 人しらぬ深山の紅葉めづらしくもて来て見せし谷川の水漬姜 盛岡 川上の秋のふかさは筏士のかさす紅葉の色にこそしれ黒牛 仝 龍田川流る錦の遣ふこそは飛鳥の花にまさる紅葉は 梅下亭春音 麻生 立田川紅葉も鮒に名を負ふせちりては猶も水をくゝりつ柳原軒琴足 麻生 紅葉はのうつるそのひの川上を下す小舟もこけるなるらし道俊 蔭ひたす紅葉の色に泉川そこからわきて流るゝともつ真清 海遠き川瀬も千しほ百しほにみちて岸までひたす紅葉諸実 川水も紅葉の緋にやこかされてさらに縁のもなかりけり明安 立田川水にうつりし月よりも日に照まさる紅葉はのいろ 同 乗ものゝ網代を渡す大井川にひを見せにけり秋の紅葉て用幾丸 てる顔を袖に覆ふて紅葉はのひをよけのぼる宇治の川に向饒亭菅影 名古屋 鉄網に寒き粉あぶるけしきありよつ手にすくふ川の紅葉は龍迺屋 川上の秋の深さそ汲てしる筏にはせてくだす紅葉に人成 加幾加曽布花一 此頃は色つてまゝに朝なるな水鏡見る岸の紅葉は薄墨 二本松 水の面にしからみかけてちり紅葉名にや立田の河浪による縫女 泉河いつみてもよき紅葉ばの錦の衣しばしかせやま岩門 菽蒔 玉川は盃ならで底なしに移る紅葉のいとさう〳〵し有明亭月考 露に染時子にさらす紅葉の銭色そふ秋の河水万作 流れ行川瀬の水の浅くともあさくは見えぬ紅葉はの色月人 菜指川つみて日増に色つきし紅葉は赤葉斗り也けり鹿杖庵真臣 龍龍河河夕くれなゐに影とめてをられぬ水をくら紅葉は山道縫女 盛岡 しからみのさゝはりもなし紅葉ばの手形見せ行実の小川に黒牛 仝 一立田姫錦のはしやたち捨し紅葉散らて瀬々の河波早見浜風 仝 立田河もゆる紅葉の火に水もわく如人も岸に集へり森陰 河浪はちらぬ梢にしがらみてこゝろもよどむ紅葉色とき松谷氏住 秋雨に増せし水より立田川ながめは深き紅葉はの色梅成 たつた川ふかく色とるもみぢ葉も水にうつして安見をする定丸 ながれ行紅葉を綴て帯程の川も氷のはり仕事せり雄冨 立田川秋のしるしに此頃は水の色さへ錦そめけり山松 深川といふもうべなりかたの如紅葉色つく夕米の空 藤峰 渕は瀬と替るならひやちかは葉ちよろ〳〵水の川も埋れて都代志 松代 きのふみし梢も替る飛鳥川流れて早き川のきをば 山の端に日も落かゝるゆふは川夕米してぞ紅葉流るゝ万泉 浦霧 毛々多良須花二 丸亀 一淡路潟へたつ浦辺の霧間よりやとを島も有無かとぞ思ふ 思ふ愛寉 ほの〳〵と明石の瀧は朝霧の和類でこそみれ人丸の塚秋金寿多死人 竹生嶋つゝむけれは秋にみる春の霞にかほの浦霧真清 毛々豆多布 みを杭をたよりし霧の籬をは 甲良 吹な倒しそみつのうら風 いつる日の色を移して浦波の数恵 花に霞とたてる朝霧 毛々多良須花三 一朝またき霧立こめし浦〳〵の弘麿 みなとは遅く御にけるかな 一むら千鳥浦わたりする道をさへ物菓 よぎりて夜霧ふかく海なす 一滋賀の浦霧の中からなの出て真清 あらはれ渡る膳所の城之由 毛々多良須 皆人の衆を凌て手おきよくひかさの縁をつゝむ夕方嶺松堂貞観堂見静 塩やかぬし賀の浦波秋霧に水の煙りやたちそひぬらん馬伐 立渡る霧のまかきにつゝまれて煙りはみえぬ塩釜のうら木守 一浦淋し霧のまかきのひまことにちりかひくゝる柳葉の舟真進 朝霧は夕部の露をふとらせて蜑が折端にたる姫の浦睦実 ゆ子の浦に打よる浪の音計り不尽の高根をつたむ朝暮 藤澤 一立霧に瀧の苫屋をかくせどもひとすむと見し聲は有安 福島 心から人さま〳〵に詠らる和歌の海霧ゆかしくぞ見ゆ 名古屋 立覆び滝をかくして己からふかき海なす浦の夕霧橘五園 吾妻 夕暮に霧の海辺のまつ原はしら様も鷺とみほの浦哉嘉多丸 降ぬへき空を日知にしかなの浦人手をからぬ霧のはれ業綴安 東下十三 舟の帆をかくせし波のいたづらもあらはに出さぬ瀧の那霧山松 一我門を人に間来しをかしさは浦の苫屋をつゝむ深きり真樽 君まさで絶にし跡へ霧立て煙りにつゝむ塩かまのうら万事馬 麻生 霧の海の底なる枝も高砂の浦半の松はみるめにぞまがふ千金 浦風にあれし苫屋を見せしとやまがきを作る霧の海哉照道 霧の海波にたゞよふもくずことほのかに三保の浦の松並万葉 三津の浦一つにかくす夕霧の智恵は深くも見えにける哉元衣 浦回なる舟の柱を錐と見て霧をふくろの内かとぞ思ふ馬伎 七夕の類を流せし笹澄も朝霧わたる竹雲のうら芹丸 加幾加曽布花一 三つ浜 隈取に吹たるか堂か薄くこくゑしまる浦にか遣し朝霧紫竹堂幽昧 舟人の目当に立ししるしをも立てかはせし浦の夕霧世富 吾妻 一立ふさぐ二かんか浦の夫婦石朝霧はれておき出る見ゆ 朝日かげほのめき出て立霧も霞か浦は春の面影菊好 ほの〳〵と明石の浦にむかしおもふけしきぞ舟の霧にかくるゝ 乗折 風もなき難波の滝の朝霧はあし火たく屋の煙かとおもふ 御空 麻生 伊勢の海も霧に二見の岩戸たに見ぬ道冨もかくや有けん 薫 よめかぬる歌のこゝろそ難波瀉其よしあしもわかぬ酒霧吉成 一須磨明石浦の見渡し進けれと其足本の分ぬ朝霧柳岸亭数成 藤峰 晴かる屏風か滝の霧間より一二艘程見ゆる釣舟 里人 松か枝をいつしか包む袖か浦又あらはすも霧のはれわさ 仝 干揚し浦の苫屋の網の目に飛かふ鳥もかゝるあさ霧花也 ふくろひもつゝみおほせん袖かづ行さきとちて見えぬ朝霧三津札 吹絵かと見ゆる嶋根の薄霧にいとゝ景色のよさのうら波紀随成 陸奥のあらき磯辺の霧こゝもにけふりそ立る塩竃の浦真盛木次 浦にはふ松のねすかた世の人にみせしと霧は立こめにけり 人吉 戦ひもなくてめでたき朝風に霧たちさわぐ檀の浦波 喜多留 仝 起上りたつといふなる秋霧もけさは寝てをるか床の浅波 満丸 むら雨の露もまた千ぬ槙ならで霧立のほる和頭の浦松 盛岡 見渡せば白と紅葉は先くむて浅の節屋もしれぬ朝霧 嶋田を立かくすときうたかひのかゝりて晴れし浦の朝霧梅住 声を引松風の手の出し入に破れかゝりし袖の浦霧木鰭振 十分に風より真帆にうけてゆくふ事もしづみて和猶の浅霧 塩誉のうらの塩屋のけふりより深く有てぞみゆる朝霧人成 なにはなる名にひく汐もみつの浦みつとみえしは深き朝霧霧万亀 松上蔦 毛々多良須花二 色鳥のとまるとそみし姫松の枝にはならふ芦の紅葉は浜辺来人 松かえに秋と冬とは紅白の花を咲せる雪と萼の葉月迺屋可都良 盛岡 時雨もる等の紅葉の火を焚は松の梢にはひかゝるらし 毛々多良領 一松か枝の梢高師の浜ひさしかしたる帯に上を越されて真清 谷間にさし出る程あふなしと松のこぶしに蔦やからみし大蔵 吾妻 錦にも心うつさぬ松か枝をつゝみて見せぬ帯かづらかな 明永白 高角 本の外に松の姿のはな〳〵し蔦の錦の打かけをして 下野小山 木鼠のつたはりて行松が枝に蔦はりすにやのぼり行らん ん森岸寺都美 古河 志真子 松かえの千代を頼みに取ついてよはひはつるに任せたる書 毛々豆多布 十帰月の外にひとむ咲せけり睦実 つたの錦をまとふ松か枝 枝舟にゆらける蔦のもみち葉は照道 松の類の玉の緒かそも 毛々多良須花二 高田 松は皆駕のからみてたま〳〵も万籟 なきが交るはつたなかりけり 琴ひける松に似けなきことの葉の物蕈 つたなからむと恥る色かも 小苗 紅葉せし色もちとせの秋りけて我婦 森煉亭水 松につたはる駕かつらかな 時事して松から松へ染わたす弥牟垣真丸 蔦も紅葉の橋にや有らん 神代にもきかぬ時雨に松か枝をくゝり染せし葦の紅葉は万事馬 もかへぬ松も栄あり美しくそむる紅葉の蔦にまかせて万葉 蔦紅葉秋の夕日に赤けれと色にはそまぬ千千ふる松好成 牛なる松の上には御車のかさりの房とたるゝ蔦の葉に花也 水のそむ松をとゝめて高かつら高野の奥の玉川の岸詞蜑記 藤峰 すがるとそ見し老蔦は手を出して松のかた枝を拭と頼みし 松の葉の針につらぬく糸の如蔦のかつらの錦つゝれり 萩 上田 むら時雨いつしか松をそめしよと見れは小嵩の紅葉なりけり 加幾加曽布花一 藤の葉の紅葉しつらん蔦かつら同しと雨にもかゝる松か枝馬伎 津島 碪打残が軒端の松か枝にくるり〳〵と堂付し嶌 管雄 上岡 這ふ草のかつらを糸に風けて誰に聞とや琴浦の松 いつしりにまきこまれけん松かえも色を替たる萼の紅葉は山松 松のへにまとへる事のみ事さはしらへる声のかざり京かに も可都良 萩 鳶かつら糸をかけつゝ風の手にしらふる聲のねあがりの松 淡雪 人吉 染あぐる帯の紅葉ははりをもつ松かしたてゝ着る衣哉 盛岡 這ふ専の長きものにはそれけり紅葉するかと見ゆる山松行長 仝 今も又蔦の錦をひるかへすむかしもかくや羽衣の松 仝 魚の名の松の梢はことさらにからみかけたる帯の紅葉は 繁門 公 何所へやら幾世と見せて姫小松草の紅葉の錦きにけり 福島 姫松の月の鏡にいなしつゝ花かんざしと見ゆる紅萼六撰園木亭 小舟山 一幾千代も〳〵へよひまつの若かへるやうなせるの紅葉は 麻生 緑青の松の梢にくれなゐのひの出みや見ん紅葉せし鴬万都春 川上の龍田の山の蔦紅葉水の外にも松をくゝれり 丸亀 千年ふる松はそれ程気長くてからみつく書にいかるみるなき 大和高取一 何とてかく若やき見せて老松のうは着は鶯の錦きにけり亀遊 高紅葉秋の夕日に赤けれと色にはそまぬ千年ふる松好成 吾妻 一色かへぬ常磐の松の上に出て錦をかざる芦のもみぢ葉加多丸 とりついてもみ出る亭に立だにも替ぬ松こそさかん成けれ万象 秋夕 毛々多良須花二 一秋立て桐の一葉のならはしになれて涙のおつる夕くれ世冨 沸しさに泣を立出てなだむれはどの子も同し秋の夕暮小詠 恐しき心の鬼の角までもをれてしほるゝ秋のゆふ暮人成 毛々多良須 一庭の面は秋のけしきになりにけりあはれ聞ゆる入相の鐘きささ 毛々豆多布 一山は紅葉野は草花に富ながら福養 なにか事たらぬ秋の夕暮 書みれは知らぬ人迄胸に来て真臣 あはれすゝむる秋の夕暮 一燭のゆふ辺淋しさも又中〳〵に松成 みつれはかけていつる月影 毛々多良須花三 一菓子壺の口さみしさに覗みれは真名美 中もむなしく秋の夕くれ 灘浦 淋しさはまさるの声に腸を南陀羅 たつた独の秋の夕暮 入相の鐘の響の絶間にも猶たえかぬる秋の夕暮馬伎 淋しさは誰をしへねと身にしみて空にしらるゝ秋の夕風和哥女 石見枕瀬 淋しさの心あまりてよみ類も詞たらざる燧の夕くれ樽枕哥王 同高角 入相の鐘の響も常よりはさびしさ増る秋の夕くれ酒上是呑 又しても憎まれものゝ空に出て月の邪魔する秋の夕雲山松 山里は紅葉にを鹿月に雁表身にしむ秋の夕くれ岩門 鈴虫の啼音も淋し秋のそうふり出しさうな夕くれの雲山松 淋しさは案山子の蓑もやれかるのほねにこたへる秋の夕暮菊住 小苗 秋は猶うきにうきそふ夕暮に何とでおもひにしづむからん 毬栗の笑顔みてさへ何となくそゝろかなしき余の夕青 秋のりの火ともし前は我殿の影法師さへみえぬ淋しさ万事馬 東下十八 吉田 つゝむへき薄の袖は多かれどうれしさはなき秋の名音 沸さにくみぬる酒に居眠りをさそひ出せし秋の夕暮岳住 段々に秋の日数はへる程にさびしさまさる秋の夕方松能宿 鳩の鳴都の夕にとひ来たる友は我程たのみなりけり 盛岡 淋しさは身にも餘りて露ばかりおき所なき余の夕暮実栄 仝 淋しさは積来る稲にかくれけんさて賑やうな宿の夕暮 仝 哀れとは心のつかぬかろき身も気おもくなりし秋の夕くれ幾羅 大和新庄 露おきてうつむく草も人の気もおもけに見ゆる秋の夕暮 福島 何事もわすれてをるは酒のとく笑ふて遊ぶ群の夕上れ伽羅丸 真綱 淋しきは内から見てもそともまで賑かならぬ秋の夕くれ原住 いひ出すことさへなくてあくびのみうつせる口も秋の夕暮古琴 若山 さびしさをたとへん方もなつとのひとり留守する秋の夕方 愛丸 淋しさの涙の時雨袖うらのもみも色づく社の夕くれ 汐やうで浦さびしきの昔とはかはらの院の蝉の夕くれ折雀 夕間暮秋の浅か桐の葉と共にほろりと落るしら歌 加幾加曽布花一 淋しさなあまりあきれて涙さへ内へ引こむ好の夕暮真清 心なき身にも□やしら鷺のすくみて立る秋の夕くれ百船 滝浦 酒肴いつしかたて口のみかはらから淋し姫の夕暮南蛇羅 枕瀬 はら〳〵と露吹風にさそはれて涙のいづる秋の夕くれ哥王 高角 茶も立ぬものから己が腹のむし啼程淋し胡の夕暮貞水 葉さうて又くれなゐの色見せて空さへ赤き秋の夕くれ百紫 紅葉はの綿も風にほろ〳〵と表に見ゆる好の夕部は煉方 淋しさは夫婦岩のみさし向ふこみが瀧の秋のゆふぐれ睦実 物おもふ心も秋のそらことか雲なく見ゆる身春の月弘麿 哀なり秋の夜長のかなしさに鹿も鳴出すこのゆふくれ月人 なにをもてけづるか人のこゝろをも細くなたる秋の夕暮真晴 ことたらぬやうにおもへどうき事はあまる程なる秋の夕暮松能宿 淋しさにおとろかされておのづからいさめ身にしむ程の夕暮米吹 紅葉はの主たに深き山寺に赤く見にける秋の夕音数恵 盛岡 見も聞も皆淋しとの種ふくべるう〳〵あるく蛙の夕くれ金馬 本見にと賑ふ春は夢の如うつゝに淋し秋のゆふくれ菱象 淋しさを語ふ友の落合て庵にきはしき秋の夕暮浅児庵衣を 若山 酒といふ水をもちひん人の気もしほれかちなる余の夕くれ 淋しさはいつにもおなじことなれどいつにことなる秋のゆふぐれ諸実 甲斐谷邑 物おもへはひとり淋しき柴の戸もあひてほしさの船の夕暮寿真久 鵲もつれて寝くらに入相のかねに舞ゆく真間の紅葉は苛納屋某賀 侘しさに誘ひにゆけば去も又出違ふて店も秋の夕暮小詠 松山 一對淋しとぎする人も長刀のせぞり火びの出る夕暮 秋淋し慰めにとて見る程のものに哀れを添る夕暮万象 暮秋 毛々多良須花二 行秋をいざ見送らん有合し小葉なりともはれむけにて真進良 したひえぬ草もへだての壁一重ある草もまたて秋の芽行種成 月とゝもにさえて聞へし右の音もしたひ〳〵に請て行秋集賀 形なく奉行余をしこふとてとめやうのなき涙なりけり 月の留守様逃に秋の立のくは書置やせしべかねの文字万余 毛々多良須 行秋を送る出口の柳腰冬もお近いうちとなりけり若松 菊月のようをもいむと行秋の隣の空へ引うつるらし山松 白菊の星を残してつもごりの月なき夜半に重て行秋菊人 とゞむとも迚も留らぬ涙なら秋をやらずの殿とふれかし睦実 秋もはや十日過しと右の音もはつか斗にきく月の頃満丸 盛岡 露も霜と名をおきかへてぬらせや袖ほす間なく秋まな行繁樹 庄内 あす神の道速またで一人の秋は淋しき事や好みし 今は留る手さへつきたり承てゆく秋には金の跡もきかねは 仝 仝 秋山の下水をとこと立田姫みそかに連ては音に行らん梅司亭真千 藤浄 なさへもなくて侘たる長月も短く思ふ秋のわかれ路都代志 毛々多良須花三 あやはともみえし紅葉のちりて行木守 秋はくれはの鳥の音もせぬ 追かけて見れどしれぬは神〳〵の菊人 たつに交りて秋や行らん 一燃まさる紅葉をみせて行秋の目積 ひと日もあたに思はさりけり 鳴事もあしを早めてゆく秋の弘麿 をまりそ近きゆふ暮の空 ゆふ暮の鐘を相図にうつりゆく山松 時こそ来れ秋はいぬめり 加幾加曽布花一 兼てゆく秋に違ひはないたとて笑ふた迚も留らざりけりけり真名美 吾妻 ゆく秋をとゞめ兼てか六までも哀れ葉うらに声もかれけり 高角 長月の尾花の袖に置露は秋の名残の涙なるらし ○久手巻 古河 錦する木々の紅葉も吹ちらしをしむ気みなく付て行秋望月 木々の葉のさそへはともに涙迄ほろりと落る群の暮かた岩門 くれて行秋のいそくは来る月の神の御留守を猶淋しとや吉成 う生の浦枝にも知菓子の木の木の色数さかたへさしつゝ秋そ奉行松人 色とも争ふ菊もつく杖とともにかよわく暮て行秋花也 かぞふれば秋もふつかと三日の原くさ葉もともに枯る虫の音真晴 声立し萩も薄も皆ふしてくれ行秋ををしむさま也真長 菊たばこ袖引とむる風情には蝶も露すそふ群の別路山道縫女 村上 をつきの冬は隣へ来たれども戸を立つけて入れぬ山風厚房 麻生 行秋の面影にしも龍田姫紅葉をとめよ川のしがらみ幸亭美頼 新庄 一暮て行秋の別をかなしみてもしひ涙か野辺の白露住虎 鎌倉 とゞめてもとまらぬ秋は逃足の追てもつかずいつちゆくらん花盛 行秋を留んとすれどあらき風ふり向もせで冬に移れり山松 庄内 秋はやくひてやつれて見にくきを成てや房にまぎれ行らん まねきかへす扇もいつか頼なく夕日の落し群のつき嶋万象 時雨 毛々多良須花二 一はけるかとみればはれゆく村時ゆ雲やつかれて休つゝ降る万葉 時事さへ俄に障子はらんとて冬を定木に紙や立らん人真似 寐ころびて炬燵に交を見る頃は風に時雨も横に成けり福養 毛々多良須 吾妻 一木枯の紅葉散らせし山の端にまたも落して時事浄なり花竹 村雲の袖から袖へ配るほどもらふ計の初時なかな照道 古河 入〳〵を廻る時雨に聲あげてあと追ひかける峯の松風 柴の戸のはう〳〵時雨出て見れば夕日に窓も紅葉してそ 晴るかと見れば時雨たゝ山の端のうきたつりに請ふてぞ降万作 残り家のせとのやれ戸にふり込て音に男も女もさます夜時ゆ いそがしく風のさそへは村時雨思ふさまには降ぬなからし万葉 野路廻り山路廻るか村時雨まくらに高くひくゝ音きく数恵 こしかたを思ひ出せしかふりかへりふりかへり見る村時雨哉入船 盛岡 村時雨雲のあしさへ立兼て麓へ辷る山嵐り那森蔭 傘さしてたれかは庭にたゝすむを見れは時雨の柏うつ音千代人 毛々豆多布馬伎 木の葉ちる音に似しよとおほえすは 馬伎 しくれも常の雨とおもはん 毛々多良須花三米次 秋風にあれたる庭も掃除して 米次 あとへ程よく時雨しめせり 諸実 むら時雨空も誠にさつはりと あらひ上しと夕月の影 甲斐谷邑 夕立のやうに時雨の午の背を喜ても降るも小六月とて 庄内 紅葉はを薪にきりて積置は又時雨来て軒を尋ねし 吾妻 傘張の庭に日のさす片時雨さしてさほとは降ぬ也けり 角一亭枡成 むら時雨空にた覆へる夕日こそ霧につゝめる峯の紅葉は菊人 加幾加曽布 木のめふく春には似れど小春には木の葉を散らす初時事哉 高田 紅葉はを染る下地か赤くまた黒雲見ゆる村時事空 古河 村雲のひを覆ふても片時雨紅葉ばかりぞ照り増りぬる志真子 下蔭に晴間を待るうちにまたまなく時雨のふるの神杉菊人 定めなき世をしもしれと時雨きてけふもに春の日和狂はす川南 久かたの天の岩戸の山時雨雲をちわきてさそふ神風種成 福島 西へゆき東へはしる雲のあし時雨は冬の道案内かも伽羅丸 小山田の関越へゆそは煙草迄しめりかちなるむら時事かな数成 新庄 北山の方から時雨ふりくれば西の洞院に笠やとりせり 若山 神無月詣りみからすみ傘のさし定まらぬむら時事哉毒也 降くせのつきてはやまぬ村時雨風のさそへととりあけすして万餘 一傘の供を一日しぐれ空ふりみふらすみけしきのみして高澄 偽りのなき世時過の空ことは誠から出た吹とこそみな万象 麓落葉 毛々多良須花二 松山 一散里積りなれる山より梺へもまた女まの如積る春のは鰭振 山越しにみえすく里はありながら焚の道を隠す木々の葉 目積 毛々多良須 吾妻 音羽山嶺のあらしの流れ来て焚の落葉滝をなしけり 馬則 ちる音を雨とはおろか梺には落葉瀧なす山賤か庵深志 深志 花也 吹おろす筆のあらしの行方をも みせて麓にとふ落葉かな 浅兎庵糸成 茶をつくる宇治の山風枝こきて ふもとに木々の落葉 つみぬる 盛岡 山々のせをあらはして吹風に柿に泥をうてる木々の葉 一実乗 高田 ひのあしも継て長しとおもひしは梺に散れるうるし紅葉は南水日堂春丸 ふりかくす雪より先の落葉には橘へ通ふ道だにもなし若女 梺には焚つけにとや夕けふり浅間おろしに落葉ふりつむ 小笛 森岫亭吐安 風の吹は木の葉も散つもる梺も山に並ぶとぞ見ゆ 三国の名にし横に落葉してしごくみそれのよき山の裾 吾妻 一合歓亭已起 加幾加曽布花一 釜戸山林のかたへぬ河葉してもえさるやうに見ゆる紅葉は大蔵 吹おろす風に梺は落葉して高きも山にまさる程つむ雲龍舎玉腰 二本松 梢踏て冬は来るらし梺には落葉時雨の足もやすめず二木 ヒ宣元 津和野 落たるを拾はぬ御代や紅葉はに麓の道はかくれたりけん 藤降 はら〳〵と積に落葉に焚なるいく筋道もわかり着けり 峯よりも梺へ風の送りもの落葉のにしき積重ねたり弘麿 口なしの色の落葉も峯よりぞ散りて焚は風に聲あり 梢よりふもとへ風のつれて来て皆ともたちと成れる木の葉松成 盛岡 とこの山柿は誰か食ぞやあつく紅葉の錦敷しは そ實實 仝 松声亭静風 冬来れば梺は冬のかくごして木の葉の衣重ねてぞおく 一梺路をわくるせきひのうつもれてつもる落葉の深さをぞ 吾妻 鈴鹿山神に木々のはふり子のふりおもしろく風も発行 時雨とも峯は紅葉のひに照りて焚へ風の落葉ふらせり商人 深山より瀧落し来る林鹿川又ふき付る風のもみち葉馬伎 ちり積て山をなしたる梺にはむかし忘れず落葉よすらし万象 寄関意 毛々多良須花二 一つ逢ふ夜半は忍ぶ心の関の戸を明くれこふる思ひしらせん大蔵 人の目をしのび〳〵て清見潟関もる門を幾夜通ひし山松 小苗 へふ身にとく秋風の立ふとはうしやそれとも白川の関小 願はくは寝ほれからすの噂よりしよにはれ坂の関や越えなん数成 千世までと立しみさほも恋の関こゝろをしめて君を専らん弘麿 盛岡 森蔭 たら出ねのゆるさぬ道も関守る思ひきつてと諫いふ乳母 新庄 戸さしせぬ御代にも忍ぶ恋中に人目の関をすえしくるしさ 毛々多良須 一我おもふ君にあふみの名のみして人の見る目の関ぞ道だつる世富 寝もやうで待て開の戸明る間も忌に催しといはせし物を大蔵 ぬけ道を教へ顔なる言の葉に情をふくむ恋の関守 真名美 津和野 洟さしとまとふ衣の関こゆるうき名は袖に包かねけり 友無 枕瀬 毛々豆多布 逢坂といふ名のみして越られぬ 哥王 関の清水や涙なるらん 毛々多良須花三 手形よりかたき約束しるやと 橋本人真似 まつ夜は心せきにせかたゝ 千雀亭方亀 千雀亭方亀 みのあふみ寝ものかたりも帰りて 不破の関ほと住あれし宝 上毛吾妻 森鏡亭夫高 忍ひ路に我からそきの関守の とがむる計けけり 中絶て不破の関屋の板庇もるは涙の雨にさりけり藤輪垣鼻構 小苗 一へひ路を人目の関に道だてられて我物ぞ先ふさかりなる実筥 夜こと〳〵つまとふ千鳥須磨の関志を待身の意を探らむ 人目にはいつみちのくか世に立し名こその関はたれかゆるせし花也 我恋は不破の関屋の板庇やれてあらはに浮名なれけん万葉 名のみ逢ふ娘の里の戸かくれにしげき人めをとめてくれかし月人 川口の関守る人も妹ゆゑにながすうき名は留意にけり千形 盛岡 嬉しきに胸も開けり関の名の妹か下紐とけて逢橋は 全 かはるなと送るき語の文字が実きつて渡さんかみと指意を 加幾加曽布花一 わきかへる儀はさむれ関守の奴に過る恋の奴に過る恋の通路朱人 忍びつゝしやせし身もやう〳〵とこえて嬉しき下紐の関若松 東下二十七 高角 しのぶ戸の口にも人目はゞかりのせきはらひさへならぬ苦しさ歌種 古河 難歌免 へだてなく通ふ恋路に立こるゝ名こそ名こその関と出ぬる 小山 守りなき不破の関路を忍ぶ名のいかにもりてやたつる口〳〵 歌都美 玉章を手形と見せて関守の目をも忍びて通る嬉しさ菊住 うらみ侘いはでや君にあふ坂のせきたつむねをとゞむるそき 藤沢 おもふ事通りかねぬる我恋はいつも人目をはゞかりの関 忍寝の其むつ言にうたかひもとけて嬉しき下紐の関賑鷲 夜ふかくも別れすゝむる鳥の音は人目の関のぬけ道かそも海近 妹が閨へ通るといへばとほれよと契りし恋の中川の実真槌 もれてうき苗代水やにやまたの関をめかぬる涙すべなき物葉 思ふこといはての関をこえかねて気をくさらする谷の埋木喜多留 麻生 うき恋の奴と迄にさまをかへて人の見るめの関やみえてん歌志久 恋侘るむねの戸さしを開かせよ妹がなさけの有や無やの関松蔭 かはらしと心通はす文字の冥越かたの事も書送るふみ桂真遊住 甲斐谷邑 一書送る其ことの葉も侭ならで多き人目を憚のせき二見浦人 恋人のいつかとくべき逢ふ事もかた結びなる下紐の関世冨 さなきだに心の関は有ながら恋路に逆ふ我身恥かし木守 何事も只しら川の関とのみ我が心に秋風やふて楽成 明くれと思ふ恋路も通さゞるあいづの里の名さへ違ひし弘麿 誓ひして破らぬ中を関ならであれみよと人の咎らずき万象 湖水 毛々多良須花二 藤沢 志賀山の桜散うきしあとぞとはみつ海ににほのとり群て居し 賑鷲 名古屋 毛々豆多布 遠浅の氷は陸ににほの海や竜迺屋 都の不尽の浮嶋かはら 塩尻のこに積てや持て行し真清 跡はしほなき水海にして 藤沢 毛々多良須花三 流れねは鳰の浮巣も氷るやと 都代志 すき通るやうにみゆるみつ海 ことなる冨士は一夜の検授に四ッ起 ひわの形に湖も作れり 月の雪ふかくなる夜は湖に煉方 たはめるやうに見る竹生嶋 毛々多良須 ひえおろし浮ふ木の木の葉と見ゆる間に見へばれ来る海士の釣舟 琵琶の湖夜な〳〵ひくか辛崎ははらり〳〵と雨になり行馬伎 伊勢津 辛崎の松見てうたふ供馬等や琴の声するびその海つら十字街 年月の流るゝ計り湖の水は中〳〵勘かさりけり真臣 おそろしと思ふ程猶みつ色の青くなりたる鳰の海つら入舩 一不二彦ノ政 玉くしげ箱根はむかし誰か細工上手のてからもりしみつ海竹芝屋衆彦 若山 みづ海の源氏のふみの須磨明石這わたりたる志賀の松頼愛丸 盛岡 いざ爰に平家のむかし語らばや琵琶の海辺を引ことにして 加幾加曽布花一 一声にしもさゞ浪あらく吹風にひはの海つら水に琴あり山松 箱根路の二子の山にくらぶればうふ湯盥と見ゆる水うみ好成 吾妻 風吹はむかしを今にたゝかはんよせては帰る志賀のさゞ浪 塩尻の山のしほたにさゝ浪やからき世にさへしまぬ水海万菓 市人 毛々多良須花二 かけていへは其気につれてかふかたも追ひつかぬ緒を付る市人万禄 毛々多良須 買ふ人か高ひといへは頭をさげて下から出てまてまける市へ世冨 十露盤はよくも光れる玉にしていくらのしろにかふる市人万事馬 売ることにやすしとよべる市人は実にあきほひの道もかしとし睦実 市人のおろす重荷を売て又おも荷おろせし心地なるん ひんがしの市の植木は生気よく花もひいづと買ふ都人 一仝 三ツ浜 とぶ鳥の飛鳥の市に立さわぐ人にもはねのはえしやうなり 空にたつ煙より猶諸人もすみうる市は賑はひにけり馬伎 藤沢 三日月の頃よりゆるむ米相通両はらに事をはかる市人 毛々豆多布 一紫のはひさすつはの市人の目積 あせたる顔やなとてみすらん 肆の品はこゝらにもうけなし万事馬 もうけなしとてひさく市人 毛々多良須花三 毛々多良須花三藤沢 市人か秘蔵の仲をつれて来て賑鷲 せはしき中に帳合そする 人込にあゆみあひてはうり買の商人 道をも譲る御代の市哉 一雷もならぬ日和のいとよくて真槌 かひこのあたる三輪の市人 市に手をうちも賑ふあき内のもうけの見えしぬきて古名や弘麿 程よしの名にし宝の市人は神のまひとて人やはからん 盛岡 難波路の市矢をいることにたつくるひ相場のあたるもあり 吾妻 金馬 うりかひのものあらそひに角はやすしかまの市女しかすりにう 夫高 麻生 升にさへはかられぬ程行かふは宝の市にいでゝもろひと 儔 雨上りそれもとにかくなりはひの道にぬかりはあらぬ市人 雷神も臍やかくさん年の方人のとゞろく浅草の市商人 一女子のちりふの市に早わらびの手を越りあふ馬の売買今 朝はやりすれはまこもの牛馬も尻はねのしてうれるな中松人 当れたる姿もみえではづみよく鞠を高ふ年の市人若松 落たるをひろはぬ御代の市中に捨うりと呼ぶ人も有けり種成 加幾加曽布花一 一大黒を買ふもえんきの俵町福をこめにし市の売物真名美 東雲に声をからすかうの真似に露の水をもあする草市山松 陸奥のみのを仕入しみの市にむさしの客もかさなりてかふ仝 箱生鉢細工自慢に引出しの口数おほき市の商人若女 海の老野辺の翁の気につれて心せ話しき年の市人甲良 一管笠を売世渡りも楽しやと己かみの程おもふ市人 盛岡 ねを聞てうしと買ぬをむりや望にこらまへてうるたつの市人繁樹 諸人をのする手際も口車くり廻しあるかるの市人直路 大江戸のとち万両のとしの市土も金なる延喜の百両 咄しさへ一部さかえし年の市はよろつはじめの春迎ふとて万象 橋霜 毛々多良須加花二 二本松 木を喬く並へし橋に置霜の雨にあふまでけなてあれかし安遊民 三ツ浜 川添にはかるゝ芦の見ゆれはか霜のはなをも結ふ橋けた さす鍋の湯加減をせばとろけなん鈍き檜橋の霜の例は弘器 床さえておそはる計り見しの夢のうきはしの上に霜やおいふ 糸竹の道もくらからす夜は霜のはなむすひする空道楼姫種成 吾妻 谷川の上は水のむすべともしもは橋からとけてなかれし夫高 毛々多良須 日のあしもち 秋五月春日あやふしとてか跡もなき深山のかけの柴橋の霜馬伎 冬の夜に鳴て渡れる雁手のこほるなみたやはしの朝霜山松 日の脚の渡りぬうちは初霜のおき渡したるまゝの継はし辛真綱 くらき夜にこしりとかめもなかりけり霜の創の行合のはし弘器 古河 さゝかにのいとおもしろく八つはしのくもてに置るけさの初霜 毛々豆多布 一横たはる龍の腮の玉と見ん真明 真間川南 朝日に霜のけふる大橋 柳櫻亭花也 とまりては目たつ烏も面白し 日また渡らぬ橋の朝霜 比左古園数恵 今朝冬のけはひつくりぬ橋姫の はしきやしろくおけるはつ霜 津和野 おく霜を踏もちらさて其まゝの 那言友無 橋へは雁も渡らさるらし 毛々多良須花三 一入はてぬ片われ月にくらふれは 寿室諸実 ひかりそ増るそり橋の霜 梅花堂煉方 うつくしく朝日の紅粉にはつ霜の 薄化粧せし宇治のはし姫 みそれふり晴る時雨の中むすひ 関迺屋岩門 霜やおくらん行命のはし 万里亭私麿 世の人のふみらぬ天のはし色は こゝろ置なく霜や置らん 浜辺朱人 はつ物の多き中にも初霜は 直になくなる日本はしかな ゆきゝする袖もかさねし呉服橋読丸 袂も寒きけさの初しも 東下三十二 上岡 日をいとふ霜のはつむかふるとて橋のたもとを広くせしかも 育寐 水をもちもたぬたもとよ橋の上にわきあるもなく霜や置 仁連 霜柱いくらたもとや立そへてゆるきのはしをかたくなすらん ふたら山に夜風寒く置露もさらせし色や山菅のはし 水に影うつる地勢の麻橋きら引とみるけさのはつ霜 麻生 跡たえしながらもいまにくちずたつ霜の柱や杭のおもうぞ 本の弟におきまとはせて今朝はまた姉はの橋に咲す八重箱綴安 丸木橋書ははまねと霜柱置添てよりけつくあやふき百人 藤降 両国の橋とはいへとどこからとわからでかゝるけさの初霜 里人 仝 はつ霜はしつけ哥の如見えにけり錦の帯のはしに白くて 賑鷲 因幡鳥取 みやびなるすかたの橋もわたり来る道のふみ見て霜作ら 嶺松堂真静 式部 消さりし霜は日あしもあぶなしと渡らざりしか木曽のかけ橋 吾妻 すさましきけしきを見せておた霜にふるひ上りし宇治のはし姫 加幾加曽布加花一 盛岡 手も水あしもふるへる丸木橋渡り煩ふけさの初しも黒生 とふ人もなき深山路のかけはしにかへり咲ほと霜のはつむ幾籬 おた霜の日の出にとけて川の瀬にともに落合朝水のはし煉方 其名さへ折さなからの橋柱霜のはしらをけさはそへけり世富 二本松 勢田の橋朝日の渡る先ふれにきよめる霜ぞしほらしてゆ 高田 化粧ともいはゝあまりにすさましき姉はのはしにおける朝霜 雪つまはあぶなしとてか霜柱ながらの橋に立そへをせし岳住 右上ふるの高橋はつしもにまたあたらしく渡しそめけん吉成 四方山の噺もいつかみたれはしそれもそろ〳〵しめかゝさ夜半数成 寒き日もたからあつまる日本橋霜にわらしの小判かた見ゆ第人 おしろいをこほせしやうにむ様筒ふたつの国のはしのあき霜千万千千千千千千千万千千千万千千万万千千万千万千千万万千千百千千万千千万万千千百万 高角 踏足の先もいたゝの橋の霜むえ渡り行風の朝夜出 長門萩 ふみ渡る霜の立みさはいつよりもながうおぼゆる瀬田の長橋忍蔵 松代 一剣太刀佐次の橋にうち粉ほどふりて朔日に光るはつ影 下野小山 取かへたやうなけしきそさる橋にもちのしら粉とみゆるはつ霜苛都美 古河 紅葉ちる頃も木曽路の橋の霜落はかけよのしらせなるべし望月 ひとみとは残りながらの橋杭につきて建たる霜はしらかな入船 ちり発し紅葉の形にかさゝきのあしきつけて橋におく霜集賀 ほの〳〵と紅葉より夜の明渡るはしにむるとみゆるはつ霜見楽 いきたなく寝て居る人に初霜ははやおき渡す朝むつのはし真槌 朽はてゝ跡もなからの橋柱霜の柱のわつかにそたつ伊志が 麻生 大橋のたもとにおける朝霜は団子の粉かとあやまたれ 万都美 老夫婦渡り初せし橋なれはもろしらかとも霜や置 仝 儔 冬枯の木曽路の落葉顕わた霜斗りおく谷のかけ橋 細谷の丸木橋にそおく霜の辷らは影も渡らさらまし 人吉 天津日の渡りし跡や置霜の橋なるはしにかたついてみし 小舟山 宇治橋に薄茶のあはをふりし程けさ置そめし霜やつし 穂鳥 霜は露つゆも朝日に湯気の如のぼりて跡へもとり橋かや 松蔭 小苗 乞丐は夜半のゆきゝに伏鉦のねもかたくなる橋の上の霜 吐安 月落て鳥鳴わたる難波江の天満橋の暁の霜万象 枯野 毛々多良須加花二 一鶴野かで月にも宿をかさぬかなあれしこや野の冬の枯子諸実 鬼こもる安達の薄冬かれてほね計りなる野辺ぞすさ 置嶺に野辺は千葉の葉斗りか六の音迄も枯るゝ覧しき森蔭 鏡野の野守る宿を冬枯てたりそれとたに訪人もなし むさし野の枯し尾犬の広袖は風を通して寒くみかけり松成 覆ふたる草にわかたぬ右左りかれ野にみたす碑の文字玉腰 葉は枯てかり行野辺に小春とて本となるみの梅もときかな弘丸 毛々多良須 武蔵野の尾屋かるかや皆様てはてなきやうに見送り まねきたる薄尾家もいつしかとともに枯ふす手枕の小野米次 灘浦 錦きし鹿のふしとも霜枯て是も夢野のあはれとそみる 南陀羅 古河 美くしく見えし千草の花深も枯てしらけし衣手の小野 難歎免 東下三十五 毛々豆多布 きのふ見し真萩跡なく小男荒の 森緑亭校 声もろともに野辺そ枯ゆく 森束亭哥志丸 萩薄かれを見これをみる野辺は 都にまさりて冬そさひしき 高田 左和達徳 見るにたにおとろかれ野の淋しさを ねか上にそふ入相の鐘 松代 なやきそとよみし若草枯はてゝ 六絃園男依 書も籠らぬ冬のむさし野 ひう〳〵と風に枯ふす鹿嶋草生花斎照道 しかなくてさへ野辺は淋しく 野は枯ておほふかげなき夕くれに身にはのかれぬ風そえて菊園見楽 よそほひしかたちの小野の女郎もほねのみ残る冬の淋しさ年益 もえ出る春にも近き野辺は又火の付やうになりし冬枯百船 毒虫もかくろふ草は枯はてゝさすは月日と望斗りなり 彳 若女改 めに立てまねきしか尾国枯ふして袖なきやうに霜にかくれ野 秋にみし色あみ秋の花寿のかげもかたちもなき枯野かな人成 吉原 まねきあふさまも見くるし枯尾団みかたか原にほろを乱して樽人 吾妻 枯し野にまねく尾国もとまらねは日あしも早くなりにける 松山 秋の野の盛りもいつかしほ〳〵と青き艸葉も霜かれにけり鰭振 加幾加曽布加花一 冬されは淋しき野辺の草の庵かれはの霜を花とこそ見れ 盛岡 蓑になるかた野の真菅霜枯てかさ〳〵と吹風も寒き 仝 東下三十六 常磐なる色に小松のほこら程猶冬枯の野辺そめにたつ 仝 千代の菊も夕かけまたぬ朝かほもわかちたになく枯し冬の野 茂りたる千草は枯て今迄はしれぬ野守か庵そ見えける木守 霜枯て千草残らぬ武蔵野に月はかはらすすみ渡りけりきさ子 露の間の夢野の草は枯はてゝそ朝霞袖に結ひかへけり岩門 草も木も枯はに霜をいたゝきて花めきたる冬の野の面山松 武蔵野は道の行へもしら雲の色にまかへる冬の枯草好成 ふちはりまやふれはてたる野は虫のつゝりさせてふ聲も聞のみ まねく手の尾花も今は枯はてゝ寒さ身にしむ野辺の鼠万作 百葉にこれのかれ野と目移りもかれて枯野は心のとけし真進良 高角 錦なす千草の色に引かへてけさは枯野に咲霜の花 残りゐる姿も霜のおきな草これや枯野の野守成らん麟馬 津島 枯はてゝ見くるしきとて藤袴あられ小役の置形とする菅雄 古河 朝日野に薄の糸も冬かれてむすふとすれととけるはつ霜 山さとにまさりて冬そ淋しかる人めも草もかれ野と思へは物菓 海士の住すまの上野に虫の音も枯たる艸もしほたれて見ゆ百人 虫の声たえて枯野の返り馬くつわと鈴の音そ淋しき梅住 吾妻平 一吹風におはれ〳〵て野かれけん水さへ逃て跡方もなし馬則 武蔵野にみとり深かりし逐水も今かれ〳〵にひつく斗そ万豪 川水鳥 毛々多良須加花二 川水に空もうつれは水鳥の逆さに立て餌をあさるゝし福養 毛々多良須 並へても見習へ駕誉の女夫中うつくしく見えてきれい成真清 東下三十七 桑折 毛々多良須花三 長閑房御空 くるしみて鵜のしつみたる夏箕川 一面白さうにくゞる水鳥 森総亭山松 世に聞ゆ鐘は渕瀬に沈ても ひゞきなれたる隅田の水鳥 扇雀亭百人 川浪のよすれは寄てたては又 たつも番ひの岸のをし鴨 睦ましきをしの音孫の中川にあなかま風にさわぐ様戸小鷹早房 をし鳥のそひ鹿の床に流ても邪魔にはならぬ川の身影曲竹長 波のあや紅葉の錦いろ〳〵に羽数ましはる川のをし鳥山松 枕瀬 川浪のうつはねと水底に沈みて餘所にうかむ水鳥井熊野駅 逢坂の四の宮川にひとつかひなれもうき世を渡るをし鳥見 うるし川ついてはなれぬ一つかひかきまはすやうに廻るをし鳥真槌 人の上にこれもおなしき世渡りかうきつ沈みつまはらをしる和歌女 萩 淀川の水車あるかたへにはその真似をして廻る水鳥 はやきつと波のあやことるあやしきは足のいとなき峯の有高種成 紅葉はの錦写せし谷川の岸の氷にくゝるいろこき 人吉 淀川のおなし流れにめぐりゐる鴨も事もやより水とり満丸 東下三十八 小舟山 瀬も深くなりにし筑か大井川鴨の舟にて渡るあさきり 川船もつなかぬ岸にをし鳥のちきりは深く結ふよせ杭万亀 小苗 引はなつ矢よりも飛て早川に羽白の鴨もこゝまるとみし レ米粘 松山 最上川いな船ならぬ水鳥のわきにもふらでゆく波の面 越後吉浦 糸を引やうな流れの川筋をはたへるやうに通ふをしる 濱住 加幾加曽布加花一 盛岡 水なれ棹みなれ棹みなれてさすか行く船に驚もせぬ川の水鳥 ○實乗 風寒み浮寝のかもの浪枕夢も氷に結ふふゆかは 全 川上を朝日渡れとふし川の水に出きえぬ雪の白鷺真清 に夜ふけて渡るは風のかよふかと聞は川辺にあきさ立也世冨 中絶ぬ錦なりけりたつた川つかひはなれぬをしの色紅 氷隔てゆく中川のかたたゝへ寐くらもとめに並ふ沓鴨大枝 大井川おゝいとよへとこたへぬは名もをし鳥の中にいるかも吉成 をし鴨の住はみやこの鴨川と名に立鳥よ跡なにこしそ弘丸 紅葉はの散うく中を芦鴨の青はをみせてうかふ川面 高田 萬籟 南新 枕瀬 飛鳥川渕は兎もあれをし鳥のあふ瀬はいつもかはらさりけりけり 歌王 うきぬなはくるまの川にをし鳥のうつまた水にめくりてぞなる 小山 生田川妻あらそひの弓と矢はむかしはなしになれる水鳥 麻生 芦のはの笛吹川に猩々の赤かしらなる鴨も箒たつ 行水に数かく足のあし鴨は流れにうかふ鳥の跡川 いろくずは氷にとぢて鴨川にいたふしもみえす遊ふ水鳥物菓 飛鳥川に浮懸はすれとつかの間も渕瀬かはらぬをしの契り きぬ川にうきつ沈みつおる浪をぬへるさまにそみゆるをし鳥音楽 津 をし鳥もとにかく妻に目なし川あつかましくもはる氷かな十字街 藤澤 越し鳥のともにはくゝむ川水の水の床もあつき思ひ羽道守 吉田 思ひをは外へうつさですみま川水には影をうつすをし鳥花朝 音羽川ひゝける鐘になみ枕ゆり起すらんをしのそひ孫を睦実 村松 流れ行水をよこきり行をしは羽にも釼のあれはなりけり厚房 船の名に呼てそうかむ難波江の安治川口に来よるあし鴨万象 湊千鳥 毛々多良須加花二 行通ふ千鳥は浪間くゝりけりみなとはからり夜の段いして岩門 藤澤 千代八千代〳〵とそなく友に鳥みなともともにいはひあふらし 毛々多良須 一しほ船のならへて泊るみなとへに浪の花のことな鳥立けり世冨 夜くらにも頼物岩間の波まくらよす湊の夕千鳥かな山松 菽蒔 毛々豆多布 有明亭月彦 たつ時は山とみなとの群千鳥 崩れては又ちりと啼なり 毛々多良須花三 森眸亭馬伎 さす汐に頓てかくるゝ湊の沙 みなとひ立し群千鳥哉 □□□□□□□ ちいさなる羽風を立て群に鳥 早房 覆ふはかりに大湊たつ 廿一日 也 東下四十 こゝちさへよさの湊の友子守あしきはさらに浪に寄らし 滝浦 夕しほのみつのみなとに浪よせて千鳥の恋の近く聞ゆる 南陀羅 友ふねのともよびかはす聲はかり千鳥の立し跡の湊は よき折と袖のみなとを引汐に通ふ千鳥やむつみよるらん 藤降 闇の夜は聲をしるべに友をよふ船も千鳥も磯つたひして。 ヽ道守 吉田 一むれに袖のみなとに立たるは露とも見ん友千鳥かな 青砥 湊にはかゝれる船のなみまくらゆり起されて千鳥立也 若山 声きいて人もなみたやしほるらん袖の水門に千鳥なく夜は古琴 加幾加曽布加花一 大船もかゝる湊の賑ひになれて千鳥も立居するらし 盛岡 皆人の淋しき秋のみほどには寄集りてなく故に専米次 一つ二つみつの湊に四つ五つ郡をはなれて飛ふ千真石真名英 順風に鳥羽の湊の夕千鳥波の花よりさきみたれたつ山松 八声なくかけのみれとの夜風にむれたつ千鳥汐時ややけの深道 上岡 漬出る舟の帆あしに蹴上たる波をみせてぞ三千鳥朝 なけは寒しなかねは淋しみなと口みな戸口よりさく小杉千鳥 行船に千鳥ははつとたち風やみなとにかけし波をくゝらん水 麻生 淋しさをみなと〳〵にもよほして夏よふよふよふ千葉 村子鳥波の数の拍子よくちり〳〵からの湊にそなく諸実 藤降 広くと小野のみなとに今や引網にむれ立千鳥をきる都代志 よる浪の先により来てはつとたつ鳥羽の湊の磯ちとりかな万豪 網代 毛々多良須加花二 盛岡 利を得んと守る秋の業は銅代木にかゝる我身のひをそもかる實栄 東下四十一 古河 いとえらき夜半も網代に水魚とりて川とたにおる賤かいとなみ さえわたる冬の夜川の網代守ひをちからにてあかす侘しさ年益 何人の伝へによりて網代守水の中なる氷ゑはとからし花也 ひをこれるさま哀けにみる僧の笠のあしろそをかしおりけりけり 毛々多良須 盛岡 一寒きとも思はぬかして網代守夜昼ひをは待明すりな 網代守寒さをしばししるゝはよりしひを得る内と見れ馬伎 火を専る人は伴義なよしの川網代に魚の夜るへもとめて菊好 川水につちもてうてる網代木は氷魚かねにせん業に従 高田 獺に氷魚とられて網代もる人はおのか火をもて逃失を見る也 伊勢武者の鎧ほと身に綿入を着置てかゝる網代さかな諸実 網代木のひまうががふてえる魚は守よりも猶きやつかふらん高澄 麦倉 晦日歌毛鳥 毛々豆多布晦日哥毛鳥 毛々豆多布 はねかへる氷魚のひかりと 三日月の 影そかゝれる 宇治の網代木 毛々多良須花三真字垣万事馬 あしろ守る心の猿は ほならで 水にすむなる ひをとらんとて 夜もすからひをまつひまに浪よせて月のかゝれる宇治の詞代木菊住 世渡りは水の中なるひを取てやとのけふりを両つるうき業 我家へと帰れる頃は夜も明て朝日を負ふてくる網代守 加幾加曽布加花一 盛岡 川水の直なる中のあしろ寺ひをもて利をは得んとするし 實業 左 暦には上のかたのみ網代守とるといふてふひを撰むらし繁門 笹かにのくものすの如銅代寺せゝにひまなくかけて待らん廣岐 新庄 網代守短なる日に夜をつきて心なかくも水魚のよるまつ 真綱 月かけの淋しき冬の夜もすからひとりはさそな網代ぬるひと松能宿 五月月のきもて行方はしら浪の宇治のあしろにひをは当けり千形 夜もすから寒かる床に火を抱て水悪のかさしと網代守なり伝 大君にそなふ物とて網代守こよみの外のひをえらふらん歌洲丸 水晶の玉しま川の網代守ひをとる花やいかゝなすらん 網代守よるを頼てひをとると一人寒さをしのぐ川風万象 岸辺氷 毛々多良須 高田 一石坂の崩れし岸をいくへにもあつく水の是あけたり仁義堂深道 加茂川の流れはやさに寒けさも渡りとゝかで孝は氷れり万葉 川の面中は流れて蓑船に水もむやひて岸は氷れり今 岸をうつ波にはあらで舟ひとのくたく氷の音そひだる諸実 わらはへのなけるねもころ〳〵と鈴花の川の道をはしれり甲良 衣川きしのなりのうすきをは風の夜なへにとちかさね好成 いつまでも岸見ていでぬ氷りにはたゝこゝろのみくたくふな人 流れ行水にうかへるあはし田にけさはりあけし岸の薄氷岳住 盛岡平規改 峯栖 毛々多良須花三 岸による浪の数さへのふとみれは あしをちゝめて氷る寒けさ 置春洞福養 浅みより寒さも川へ 這入らん きしの方より氷かゝれは おしよせてよくも世話しき御巻すしはすゝなみの氷る峯の辺目積 棚とよりし岸の水の下をゆくそやつかへてひくき水おと万葉 加幾加曽布加花一 硝子のやうにも透て紅葉らの金魚の遊ふ峯のうすらすらひ翁文館信式 麻生 ちりうきし松はの針の仕事まてとち初にけん峯の薄氷琴足 盛岡 住の江の浪のよるひる水面鏡姿をつくる岸の船まつ 寒けさやとなせの岸の戸をさすかとづる水をたて川風馬伎 武士の行かふ峯の渡し船氷に瀬をも二こしにして春丸 庭の辺にたてる一木の松の類千年をうつす水面かたみも 水心ありてゆるがす杭をしもときてはむすぶ岸のうつつかひ万象 寄鳥恋 毛々多良須加花二 日に千度通ふ心をしら雲に鶴のひと声かけようきへきさ子 東下四十四 ふくろうの昼はうと〳〵いきたなき夜の目も寝ずに怠る侘広岐 あふと見し夢も邪魔して明鳥こぬ君にさへ別れさせけり麟馬 待人の影かと恋のくらしさをしはし軒端にすくふつばくら数恵 桑折 嬉しきは今宵あふむの鳥の跡よひはまさしく君か口紫の御空 盛岡 村鳥のはつと立名もはし鷹のそれさへつらやあいできを 仝 思ひやるみのかしくのはねかきもはねつけられて鴫のかんきん あふにかへん身をはいとはし我恋は鳩のはかりにかけられしか世冨 人は雁我はつはめかくになるも行違かと思ふかなしさ馬使 山鳥のをろの鏡のあるならは君かこゝろの誠うつさん木中 とにかくにそかるゝ迄さひづれと四十からにてねみもなき楽成 やるみの今に返事の聞えぬはわが耳つくやとりのぼせけん真名美 毛々豆多布 毛々豆多布諸道亭好成 忍ふ夜はちいさくなりてみそさゞゐ 諸道亭好成 みそかに契る夜半そ嬉しき 高角 南方圓斎貞水 人知れす下に通ふと思ふ間に にほのうき巣の浮名たゝよふ 毛々多良須花三豊年屋万作 別れ来し妹か詞の口まねに いつかあふむのとり告よし 山道縫女 ことりとも音せぬ君をまつ風の 山道縫女 ふくろふの声そ鳴明しける いとはるゝ身は鵜の真似の馬にて及はぬ恋の渕に沈めり睡実 あかしてもまたうたがひはこりつまのうらみて夜さらなく千鳥 睦実 可仙 高角 歌種 鳥の名のうそとおもへと頼むかなこと引かげてくれる中立 もろはかひかいやるみに飛鳥のあするそ宵と胸そせかるゝ真進良 ゑゑひなきなす身のうやつらやうつら〳〵と思ひくらしつ志真子 きぬ〳〵に涙こぼすはには鳥の羽根にからしをぬりしむくひとひ 恋ひしやと思へと渡る船はなく我によりはをかさきのよし集賀 逢ふことを妹にしらせも大股にふみ見る田鶴そ嬉しかり千形 比賀そとかねて契りし君はなと赤うそ鳥となりて恨めし 諸ともに思ひはうとはりつめてしろき鳥にもきす契哉諸実 すもとりをしてもいとはし恋のいく度かよふ君か門くち森雄 山鳥のをは隔つとも影頼むかゝみにかけし伯は曇らし花也 巣に有すきゝし子安のかひなくてつはくらやみにゆけとも せめてひと夜契らはよしやよしきりのよしきるとも恨みさらまし唯住 百羽かきかく玉草にあらはれてかなしき鴫と成にけるかな千善 福島 うる人亭 たまさかに逢ふて山〳〵かたる秋に不如帰となきし島ぞ 若山 おもふことみなうちあけてはなし鳥くとくにうけぬしかきつよ 上田 そめかねてこがれ死になは其恨松むしり鳥とならん後のせ兼丸 若山 逢ふことはかたね〳〵の悲しさよひよくの鳥は有てかひなし 加幾加曽布加花一 別路の涙にふかくくれは鳥あやにくにくき烏なきゆく真清 水鳥のあしにたくへん浮身にはかく迄胸のやすむまづき馬枝 籠の鳥かやうらめしと鳴声は君の外には耳にもらさし万禄 東下四十六 二本松 夕吉る声嬉しさに引かへて夜明は鶏のさきに鳴るゝ 安遊民 へだゝりしこその尾の長き夜をひとり寐ゑて恋る侘しさ好成 逢ふ夜りはうれし涙に鶏の我からないてしらすきぬ〳〵弟人 枕瀬 尋ぬれと鴨の草くきそこと。行衛のわかぬおそつれなき 仝 君はまた献手になれぬあらせのはなしかけてもとりくそれめち松哥 松代 窓をいたく外にもあらは明去る鶏をおさへてなかせすもかも ・男依 萩 夢にだに俤うかむ水鳥のぬるまも恋の渕は誑れず忍蔵 雁かねのみを朝夕みるに猶がへしたなせぬ妹そうらめし朱人 大和高取 うき人を思ひも深きをし鳥の羽刻はなれの心くるしき亀遊 恋の山はるかにみれは蛍るの心そふかき谷渡りしつ可仙 だまされし事を心にはさみては恋のすめの舌もきりたし道俊 鳥の名のうたかひ深き川水に先から先へくゝる俳人唯住 胸つくしとる手放さぬはし鷹の思ひは恋のちから草かな甲氏 瀬谷 数多き世の人のそ村すゝめつらき浮尻のはつとたるお真柄 五妹子は今やきらすかしはふきの音高うしてありかしられそ彳 福島 逢ふ夜半はいとゝこゝろもせきれいのをしへたりけん恋の道とて尚高一聚 仝 やく束をせし夜はふけていたつらにそのなくまでおきなしけり伽羅丸 式部 詩願山恋の病の薬にはほとゝきすより君かひとこゑ嶋三ツ雁 仝 鶯にあらぬ我身も君にあふ月日をほしと啼明しけり柴津や女 せゝなぎのせまき心にあがく身はあむるもおなじ恋の泥水万亀 寄魚恋 毛々多良須花ニ 恋そますいかにこちのみあぢきなきなきすへはものかはいなふりはせそ楽成 毛々多良須 小山 □哥都美 咒命延けり恋のはつかつをたゝひと口のうまきへん よき縁にし結ひさよりもあいなめも嬉しき恋の海の幸なる 中をさく恋の病の薬喰あい深川のむなぎとるらん種成 若鮎ののぼる思ひの早瀬川とまらぬ心すいて見えぬる唯住 福島 君を思ひぬるゝもとをほし魚のひに〳〵やせる恋やみの床 加幾加曽布加花一 盛岡 あいた口かくまて妹にあんこうのつくれて計あふ日まらん 名哥記 恋の海深かる文のかなかしらはう〴〵で鳴するぞ侘しき岩門 忍ふ夜は互ひに首尾もあちやりてぜんごわすれて噺すむつし若松 なげきつうらむ詞のしほさいにいはでふくらむ腹を見せや大蔵 たいならでつりつけられてうき妹に逢ふて目もとの塩に引るゝ数成 自らに思ひますてふか思の身の赤きころと人はしらずや 毛々豆多布 丸亀 寿楼愛崔 あなりしうましとあふは初鰹 我ゆゑ身をも作る をとめ子 桂迺貞遊住 相思ふ中は日に〳〵鶏なるを 鮭よと人のいふそ うたてし 東下四十八 うき人にさしてもいはすくし〳〵とやくや小鮒の身もこかれつゝ人真似 逢ふことはかたくのうらの難ならでひとめ計りそくるしかりける 麦倉 魚の名のこひてふものに身のうきも覚えつふかく思ひしつあり 恋ゆゑにちゑを出していろ〳〵と首尾つくる夜そ人まつの とりもてに力のぬかし恋病に人の情のいし将の魚松成 もろあぢのもろく涙の落るかなひものゝやうにゑやせししし 麻生 一今さらに思ひはますの塩引もさけ〳〵らるゝ人そうらめし 思ひ酒にあれはいろにや出にけん御留の川の関こゆる鯉弟人 菽蒔 泪の水あふれにけりなれ見ざるなけきやよりて魚も得つべき 魚の名のあぢな事のみ夕河岸や売言ばとは思ひながらも数成 胸の火を打出しつるかなかしら石持や恋の海に住らん睦実 福島 うま酒も求めて待ど恋の名のしひれきうして来ぬ人ぞ 式部 恋やせて目にかゝりたる涙川うりむ小魚の数そそひゆへ六首笹丸 恋をする身はかまぼこの恋ほとやいたづきとなりて猶もこがれし万象 山家 毛々多良須加花二 空の海近く住ゐていわし雲あみ戸にかゝる草のひと門商人 柴の戸をさしたる庵に世話もなし風より外に詣ぬやま住大蔵 世の中へ背中をむけて山住のひなたほこりにくらす気気しき苛志丸 高畑 生魚の味はしらねと月花のうまき気色をふくむ山住 庵なき山のかけ路の中段にたつなる家のあやふくそつ松蔭 夜あらしの吹しく此末の戸はなりてとなりしらすの山の下いほ 世のうきもしらぬね家はくもあれと心にとてはかゝらさりけり 毛々豆多布 照道 一屏風岩しきれる庵のまろひ寝に うき世の風もひかぬ心住 吾妻 毛々多良須花三 木をもむは風計にて臨所をふく 森鏡亭夫高 人気も遠き山家すみよし 朝迺屋四ッ起 山住はたてられましき世の中の 人の口さへたてし柴の戸 麻生 一日春宵園千金 ふみ通ふけはしき山に住なから 浮世をみれは行路難かな 冊子亭綴安 瓢をは枝にむすへどあひとつ きがゝりもなくらす女住 ちりの世をさせし此身もまた塵にいりてこのみをひろふ山住雄冨 上を見づ下みつへふ山住の心のそこそふかく惣はし真清 毛々多良須 山里の暮しは心やすくして苦とては軒の熊の膽はかり 訪れてははらふも侘し山住の打ふほふたる雲のとでかき馬伎 とふ人もなくねは鹿の声斗りねさめ淋しき山賤かいほまさ子 山住の軒端に通ふ雲の袖にそでふる里のことやとはまし山松 淋しさのついたる癖は山住のいつくも知らぬ入相のころ菱象 新庄 世を示にすき松柏津山にかねになる木の中のやま住真綱 麻生 枝折戸のさるもつなくかあれはてしのきにくさりのみゆる心住万都春 柴人の薪の外は世のことにかれこれと世話もやかぬ山住数恵 世の塵をすて果つゝもおのが住庵は高根の山となしけり花也 牢 梅の花咲て春しる山住は風の匂ひのかくれ家にして十字樹 藤沢 世家にはよそのあはれもしらまゆみひくきふもとの名多の雲 うき世をはわさともすてすひろへるも山に生ひたるこのみなりけり睦実 世の義理もかけひの水ようせんしの茶立出こそ床の立なれ 松の戸に音なふ物は風計りとふ人迚はあらしとそ思ふ鰭《振 清水たにとく〳〵へふ山里に四来るほどの両さへもなき読人不知 うきといふ世にあき果し山住にやまず身にしむこからしの風万事馬 世の塵を払ふ心のうら表木のはにうつむ山住のいほ菱象 争へる友のなけれは世の事もきかで住けり耳なしの山唯住 山里は降も遠き壁の耳岩のものいふこたまさへまれ万葉 ねられねばおきてぞ守る埋火や寒さきびしき冬の妙里真槌 人とはぬ柴の網戸のはつたりときておとなき山の下いほ梅住 都には遠きみよりの頼なし近きたに水は山里のさち海近 うき世をは捨ているさの山住も花の塵にはのかれさりけり 落はたく山家にとてはあたりにもとふ人なくて松風の音諸人不知 加幾加曽布加花一 にごりなき心にすめる山清水くむも流すも我かねひとつに山松 世を捨て月守花の都より楽しみ深きやますみの序菱象 応きたゝ歌のみ光りはなすなり朽てともなき山賤の庄岩門 山住のまこと額の延ぬるも癪といふなる病なけれは住虎 津和野 かすりにも住柴の戸に松風のいともやさしく通ふ音つれ一々 ひが身の日ことに出てくすり堀もおのれやまひをしらぬ花真長 うき世にも通ふやうしのあれはすくろもじの木の生ふる山住佐倉傍住 露老の瀧のおくなる山住は世をさけたりし人とこそ見れ睦実 都人稀に木のこのもてなしに魚よりはねた山里のあき海近 さわかしき風を友とす山家には柴の戸なりの外にきみえず きのはらぬ山家住居はまつくろななりでもことのすみ焼の翁伊佐女 山高く庄りむそびてうき世をばとくすてにける身こそかろかれ 世の塵ははらへとちりはつもりけりつもり〳〵て山住のいほ 牧布施 真猿 寝てはかり暮すも楽し山里は君の御徳のたかまくらして音 吾妻 むつの花木〳〵を埋みし白妙に冬の山家はたのしかりけり 仝横尾 よび入てけふかけひの水だにも滞なきやま住のとく永白 盛岡 このみをもひろふて過る深山家は都はなれしさらの交り金馬 暦なしといひけん。人もこよみよや雪とづ窓にひらく桜が枝万象 懐旧 毛々多良須加花二 名古屋 今更にしのふもおろか年波の越来し代にはかへらさりけり 橘五園 高畑 我影のむかしにかはり果しとは人のすかたのかゝみにてしる 小苗 若人に異見いふさへ身をつみてしらぬむかしを忍ふなりけりけりけりけりけりけり 實筥 半田 日の入になりて心の夜も明しむかし思へは響てくらせし 真冨貴 毛々多良須 盛岡 力くらべせし友とちも有も有之やかなしさてこしいたく大教 丸亀 天地の恵のふかき親ゆゑに飴と乳このむ昔恋しき 替らぬは酒と豆腐の味斗り外にくはなき年で苦しき真名美 寒さにもまけた事なき身もひて今は巨燵と首引する山松 老の身にわてかひなの入ほくろいまにかはらぬ命なれとも弘丸 なき親に気をもませたる我身にはむくふ手足もしはたらけ 毛々豆多布 馬使 一植置しむかしは遠き耳にさへ馬使 いらて邪魔せぬ軒の松風 寝ては待〳〵しを寝こかしに真盛米次 果報いたなき身とはなりけり 打寄てむかしはなしのせんたくに のりの道をもといて聞せん 毛々多良須花三 秋金亭奇多丸 打れしとむかしは逃し親の杖は いまは力とたのみこそすれ 若き時命とほりし入ほくろ煉方 ほりてとはるゝ尤の身そき 高畑 菩薩ともいはなし顔はなかりけり山雲亭歌沙丸 六十に角のいでし姥か身 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 人とはぬ昔はづかしこしかたをひとり寝さめて問ひこたへ 妻こひし昔を今に小男荒やくわい炉に尤の毛とさしのぎし物菓 読かきにふ月きせそとうるさかりし親の目鏡の違はぬそ かく老となるまで契り替らしともに悲せしやり悲しき睦実 天神林 こし方のいさめの杖はもちひ得で今ぞ恋しき老の坂道 我子故に親の恩をも身にぞしる子を持てみよと教ふる人成 庄内 霜置ぬむかしは我も男山さりやき髪も若まつにして 真牛 加幾加曽布加花一 盛岡 風車持て遊しも昔かなし子にねだられて思ひまはせば繁門 年を積し車おし行老の坂油断はあれとあとへ戻らず世富 若き頃思へはことのかけ目鏡耳にしたがふひの身つき四ツ起 鬼渡しして猶ひしも今の身にとらへ所もなく濡なり米次 上に立しつとめも侘しふた親の下におかざる昔恋しき福養 孫愛て始の乳房を吸ふまねはやはり書のみつ子也けり 上岡 仁連 昔ゐし矢竹と思ふ杖をいまのちからや腰も弓とまかりて 白髪になりてそ夢は覚にけるひとよふたよと見しはこした朱人 一菜打し枝やさしけん古塚のしるしとなりて柳栄行川南 高ふりし若気もいまは年とりて卑下する身とはなりしくやしさ井丸 小苗 手習の墨に汚れし昔程猶手に黒きしみそくやしき 吾妻 つよかりし過し香の腕おしも今は巨燵にまけすすねおし 公 外を家と出あ行し昔吉にもせぬ堤をうちはにひの身ぞ已起 植置し様や桜の木ふりよりふりし我身の音恋しき秋安 ひて身はの其事ならぬ風の糸親にまかせし昔恋しき綴安 老の身はのす事ならぬ凧の糸の親にまかせし昔恋しき綴安 塩ならでからきめらせし親のいさめ今ぞ我身にしみて覚えし百舟 若かりし時は意気地をはりのめそどれと通せし昔恋しき唯住 二親のいさめを聞かで有し耳のうとくなりしを悔むひのの万万万 冬月 毛々多良須加花二 手水鉢の氷砕て月かげを我が手にむすぶ様半ぞ空にむすぶ 寒けさに氷も水にうき空のあしさへ月のうはすべりしつ可仙 小山 空の海も月の氷にとぢられて雲の波さへ見えぬ冬の夜歌都美 吾妻 武蔵野の尾花が袖の枯はてゝはなはだ云らき冬の月影枡成 愛られし姫縁もさすがとし更て然が化粧や冬の夜の月物菓 五泉 夜あらしに吹込雪とおどろけは透間よりさす酉の月影榊稚枝 毛々多良須 冬の夜の月の光りのすごけれはうつりし水も氷りぬる哉きさ子 灘浦 年老し山のふること姥よりも世に捨られし冬の夜の月南陀羅 寒風に月の曇を抑ふとき雲は逃はにこまる武蔵野音繁 上毛兄高 寒けさは見てもふるへの井毘河に冬の月はひとりすむなれ山森大槻 高田 喰しばる寒さといへどはひとつもなしのとすへの冬のゆふ月永日堂春丸 寒さをば先へ送りて雪霜をまたつみ出す月の船かな伊志女 石山の月の湖水へのぼる頃三井の鐘さへ氷り渡れり三津丸 霧も晴れ露はまたき大空の月もあらはに氷る冬の夜甲良 すむ秋と氷る冬とは水さへも更ににげなき武蔵理の 戦のあしもやいたく附る夜の月には雲も出歩行はせぬ万事馬 麻生 信濃路や田母の水の氷りては月も流れを尋てぞすむ幸亭美頼 庄内 毛々豆多布 昼なる犬より冬の秋をかける開雅亭外成 月の鬼のすさましきかなく 毛々多良須花三 ふき払ふ風は梢をふるはして向鏡亭菱泉 寒さにすゝむ冬の夜の月 うつくしき軒のつらゝは冬の夜の喜読 月の柱の枝よりや出し 盛岡 あふきみれはいよ〳〵高し雲の衣御供黒牛 荒れともかたく氷る月影 仁連 哀れとは思はぬものを木枯に万重 涙もよほす冬の夜の月 人皆の繁くむかはぬ冬の夜の桜園元衣 月のかゞみはくもらさりけり 月の中に序はあれとも寒けさに万々斎真長 月の中に序はあれとも寒けざに こゞえてさらにはしらざりけり 川の面の浪にうつれはつめたしと置春洞福養 影やちゞめる冬の夜の月 かん物 肥後人吉 昼は日と文字にかくさへ短くて月にながる冬の夜半哉満丸 水口をふさく氷りは冬の秋の月の桂の落はなりけり目積 つく度にひゞや入らんと昼霜のさえ渡る月に承るかねの百人 いかほどの厚さや有とゆびさしてつゝいて見たき月の氷は真清 盛岡 文見んと雪をあつめしまと先に光りをそふる冬の夜の月 仝 村雲をあつしとうらみ蝦夷か島にむしろ寒けき月をこそれ 公 霜柱つるぎの山と見ゆるなり身の毛もよだつ冬の月かぞ 仝 すさましや針計りなる透間よりも身にさす月のいたくけき 仝 形なくあらそふ風をことゝせでうごかぬさまの冬の月かぜ名歌記 讃岐丸亀 張つめし水の下にすむ月は川上よりや流れこみけん 伊豫松山 空までも氷りと見ゆる冬の夜にとこをもりきてすめる月影鰭振 東下五十六 藤沢 軒は霜庭は落葉に埋れてもあらはに寒き冬の秋の月里人 戸さしても透間の風にさゆる夜の月も氷れる影ぞもよき都代志 仝 寒龍戸古するかつゞみの音も高くさえて夜ふかき冬の夜の月賑鷲 きもつかでいる戸口にひやりしてふるへながらに見る冬の月 紀伊若山 さほ姫のやがてむかはむますかゞみどぎたてしやうな冬の夜の 玉雪楼人女 五泉 研か如月の光りのするどくて雲もよりつくこともならぬか 狐より先かけなせそ諏訪の海氷をたる月の影法師真樽 空の海底に沈みて動かざる瑞かあらぬか月の氷りは照道 宿かさぬ池の心のつれなさにひとりすご〳〵行ふゆの月万事馬 風さゆる鉦も聞えて迷子よぶ聲猶さびし冬の秋の月彳 山風に月の柱の影高く落ばすればや晴てくまなし好成 水色の空さへ雲の浪絶て氷れるやうな冬の夜の月一樹園影考 泣し千も日の暮は寝ておとれしくほらむやうなる月におちてや米次 麻生 水底に留りし影の氷れるをぬけて出しか山に入月 人吉 風曇り真黒な雲の袖頭中月のかつらも包む夜元よく 萩 おしろいの色のやうなる霜をもてけはひすさまし冬の秋の月 はりつめし水に月の影さしてきらめき渡る諏訪のうみ あはれけも冬は嵐に吹とく歟さつはりとせし月のかつらぬ 盛岡 西北庵十文 見るにさへ胸ひいやりと薄氷あぶなげもなく渡る月かげ 仝 木々の葉は落てくまなく月させと秋にあきてや見る人もなし 一實乗 上岡 散り残る紅葉を砂が焚火かと月はこゞえてのぞく谷の家 古河 一兎にてあたゝまるかや寒さをもいとはでめぐる冬の夜の月 東下五十七 世の中の鏡としれとゆき霜にすこしさびしと見る冬の月仝田山人 仝 引かふるおこそ頭中の雲間よりもれてぞとする月の影はせ集賀 雪風は道出に寒きに月はほどくもの衣はぬぎ捨るらし歌多丸 吉田 影丸き月も時雨によがきつくかどたつやうに冬はするとき花期 晴くもりうき迄雲の波間より月のみふねのみふねのみゆ寒さ 高取 露はまた霜とかはりし冬の夜の氷にやどる月のさむしろ 藤沢 水の上に氷りつきしか月の輪の夜のふくるほどうごくやうなき 行丈有安 信濃八幡 夜も昼も同じやうなる野の雪にさかひもわかぬ冬の月うな千遊打竈地 庄内 霜雪の寒さをつめは冬の秋の月のみふ事や動かざるらん 吾妻 するとさはわがくとくさも冬枯し園原山にひかる月かげ花竹 月をみて水に手を出す猿猴もするとき影に逃やしつらん仲住 秋よりも哀れひたる月さむみ涙とゝもにいづる鼻水 閉居霰 一震ふる軒もしせぬ跡よさは世をのがれたる草ふきのいほ馬伎 庭もせの尾花も枯て催住はまねく友さへあられふる也我男依 尽かけて待友ならで松風につれて藪のふりくるもうし万杭 教ふるそのおとつれのたまにしてひときもまれな松の下庵万葉 高田 玉穀軒のはせ紙にたはしりてさけしうき世の夢もふれば 生立し所敗れてかくれ家の霜もふりて脇へたばしに 一訪人もなきわらふきの我庵はたまの藪も音せざるかな柳岸亭幾 人とはぬ序にたそと咎むれはやはり藪のおとづれてふる菊住 庄内 ぬき乱る人こそあられ玉散て壁も破けり廬もせばきに 真牛 東下五十八 石見津和野 毛々多良須花三 一草の庵におとして来るもたまあられ 木蔭花守 ともめつらしく御てみる窓 人訪ぬ宿に音する玉あられ あるしもころ〳〵悦ひやせん 伍葉舎高澄 湯のたぎる程松風の音のして芝口屋岳住 あられふりこむ庵そ静けき 盛岡 しつかにそすめる心を玉あられ 世にふる我身おとろかすらん 修善亭万里 七 ひとり居の折たく柴のはねるかと 森昌亭実乗 聞は窓うつあられなりけり 津 訪来つる人しなけれは玉に敷柳はぬ庭のそで垣にふる十字街 盛岡 独り住宿の笹のは音つれてあられ吹散す山飛の風幾羅 仝 槌を出る宝つくしの玉藪みのかくれをもたぬ庵にも 信濃八幡 煤はきもせさる庵に玉教やとはぬ軒をうちたらく哉 五泉 松亭翠 一侘住の釜をかければ灰ならで空まどよりぞ藪ふり込稚枝 おのづから門に音なふ人もなし軒にたばしる霞ならでは森雄 世のうさを捨し住居を訪ひきつゝたる霧やいづち行らん福養 訪ふ人もあられの玉のたま〳〵に音をなたてそ世をいみにや庵妹方 肥後人吉 通ひ来る望極も閉ておとつもぬ夜半にあられのたゝくず 狩鹿の槙の古家も玉さかにおとのふものはあられなりけり吉成 とふ人も絶て鼬の道をしも横きる計り降るあられかな数恵 門たゝく音さへ耳にうとしやと霰ふる日の友ほしけかる大枝 暦たになき柴の戸を玉藪冬の来りししらせにやうつ花成 上毛尻高 蒔やうに庵のなくさに玉あられ詞の程を雲の上より諸実甘秋 吾妻 藪ふる音を頭にはよまぬりな耳をそむけて草の庭りに秋安 雨のあし丸きあられはなか〳〵に音してわびしわひ住の庭青砥 のがれてそ静に住る我庵におとさわがしき数ふるなり世富 若山 蓬生の静けき宿にぬる玉も霞の玉にくたかれにけり古琴 音に立て霰降る夜もさら〳〵に心にとては然らざりけり万象 鷹狩 毛々多良須加花二 野東まで心くばりて狩人はおのれそつかふ鷹のめにして木守 武蔵草加 鷹あはす折には鳥の氣になりて鷺のぬきあしなりは鶴ぎ四方園早丸 毛々豆多布 それ鷹を尋ね暮してさし向ふ森野亭馬伎 月や野守の鏡なからし 初夢にかゝるけしきを見せんとや松蔭 富士の梺にはなすはし鷹 毛々多良須花三 庄内 御狩野の木立に目だつ鳥主をは稲垣訓文 たゝ地に鷹の飛立てとる 桑折 一獲ものつむ狩場のそりのから戻り長閑房御空 鷹の欝にて戻らざる日は あら鷹はならしかるのならしばの我流亭読丸 しばしならして遣ふ御持場 はなちやる拳はなれてそれ鷹の柳櫻亭花也 雲の袖をやつかみゆくらん 東下六十 盛岡 ○森蔭 我君は千年を経緒と桐来て鶴をさゝせし御拳の鷹 仝 仝名歌記 それ鷹に飛火の野守うろつきて草にかくるゝかゞみ探せり 毛々多良須 鳥を見ばつかんでこよと握たるこふしにすゑて出るはし部 立鳥を其まゝ的に手こゝろのこふしをはなつ矢形尾の鷹 天の川かりくらす日はおこぶしにたるもとまりて一夜あるさん種成 盛岡 平規 こぶしよりはなるゝ鷹のちからくさつかみかへたる御狩嬉しき 仝 金馬 百貫のかた野に鷹をあはす頃笠一かひにしのぐ大雪 古河 武士にまさる手柄の組うちはけふの持場の鷹の高名寿美江 吉田 指同 ぬれましと鷹狩に出し人かまつ野守へそれるひと鳴る哉 仝真文改 蝶の所見えて飛ゆく白鷹を夢になれとて鳥や逃らん杉園千善 松山 弓ならではなつこぶしの違ひしはそれしといはんやかた尾の鷹 百貫の鷹もこふしのはなれみざけふはほまれをあぐるはやふき集賀 庄内 一たつ鷹にあはせし鷹は降雪に見それていづ地主どひ行けん 五泉 ひめもすに小鳥もかけずふる香に犬骨をりて帰る鷹狩仲住 式部 空の海にむやひし舟とみる鳥をゐきりしやうなやかた尾の鷹 加幾加曽布花一 そことなく平 四月十一月の行方有たるはし鷹の行方尋ぬる鈴の音つれ万作 鷹かけし跡へむら〳〵雪に似し鶴の毛残る春日野の柴数恵 薄墨と詠せしもむべ鷹狩に文字のちり行雁の玉章千金 いや高き雲井の鳥とみ狩のゝ気もはやぶさに合せつる哉弘丸 草加 一仕損せし折には君のきけんをもそらさぬやうに遣ふ鷹人早丸 はし鷹のひともとゆゑに武蔵野のそれし行へも哀れとぞ見る千善 はなちやる雲間の鷹の鈴の音に命から〳〵にげる雛鶴鶴蜑記 はやふさの紙子をとりてはなつ時雉子は野末に頭かくせり甲良 動揺めくは狩の獲物かそれよりも鷹のしれざる騒ぎなりけり 驛路雪 毛々多良須加花三 居て見ては道にあかるきふみよみも旅の宿にはふみや逆はん綴安 かた頭痛重荷なやみし見ふれをきにしてゐたる雪の雲助物慕 目印の看板迄も白妙の吹雪にそれとしれぬ定宿仲住 毛々多良須 ぬる魂は旅寝の雪のふる郷へ雪まろけにやなりて行いん 麻生 ほと見し梢も折るゝ大雪やこやきにならぬ志賀の山道 降つみて折ふす竹の下道はひとあし留く箱根路の雪歌多丸 初雪はうすひ峠のまつがえもおもからぬさまにみるかる井沢真槌 蓑笠も雪に埋れて白すかかやふりおもしろく風の舞坂花也 毛々豆多布 往来する足跡さへもみえぬほど教和楼睦実 つき〳〵ふれるうまや路のゆき 毛々多良須花三 いそぎてもゆきの旅路のはかこらぬ森鏡亭夫高 ごり〳〵として十里はか行 巴末亭目積 白雪に埋て道もなし原の巴末亭目積 えきはありけり留る人あし 雪積る竹のふしみのこむ宿に百船 曲ても泊る旅のゆふくれ 黄鶴園 黄鶏園 梅住 ふる雪に道のゆくへもしら川の 梅住 せきとめられしこゝちこそすれ 雪の日はうさも忘れて旅の空朝迺屋四ツ起 我がふる里も思はざりけり 東下六十二 盛岡 殊路に人より先といそげとも跡ぞ見らる今朝の国雪 仝 ふたもとの杉も埋みて古川の雪の初瀬路は人も通らぬ 繁門 上岡 うき心細久手もつむ白雪に夜は長久手もよき泊かな宵寐 藤沢 都をもはなれて日数ふる雪につもりの違ふ旅の道のり道中 つむ雪に跡のつくのをいとふやうに足を空にて是迄飛脚は真長 白雪に踏込あしの赤くなるはひがことなれやいせの旅人大枝 箱根路や駕籠のあたへも小判そとわらしの跡を見する雪の 行先もわかぬ旅路にふりつもる雪にあからきくらやみな あかず見る日は高けれとこえかぬる雪にはいとふあしからの実種成 くゞつめにひかれし袖をうかはらふ佐野のとまりの雪の夕暮百人 松竹にかゝりし雪は蓬莱の山ほどつもる亀山のえき真樽 加幾加曽布花一 降積る雪を見なから旅ひとのとこか詠の泊りなるらん万葉 しらゆきのつもるふかやをうちたてうまやうましと酒を熊谷万籟 取粉ほど降白雪を踏分て難路の駒に貢く餅米三津丸 雪の日は酒手ねだりてゑひ顔の明荷付出す乗かけの馬士寿氷流 降つみて軒をも越の駅路に重荷を背負ふ旨の如何 積雪を踏分ながら仰向て日の足もとを見る冬の旅散成 しなの路や雪の白なみ立おほひみどりの林影だにも見ず真進良 詠やる都のかたはふりつみてふみもやられぬうる五好の雪 あす行ん旅の途方にくれ竹のふしみの里の雪折のこゑ玉魚 ふり積る雪に問屋は馬駕籠もなしとみたへてきゆるねぬ から〳〵ともうさうやうもなき雪に竹の子里でしのぐ駅路益実 東下六十三 仝 毛衣を身にまとひしとみゆるかな鶴の郡の雪のたび人 駿河吉原 みちのくのあれか原に積ゆきをたか黒塚といひふらしけん 五泉 きかぬ気の若き男もつむゑに我慢はをれる松井ゆの宿稚枝 藤沢 ふりつもる雪にうきめを三輪の茶や雲だす事もからのはたみや賑鷲 麻生 降つもり〳〵てはかけはしの渡りも見えぬ木曽の大雪琴足 降る鳥にみえざる富士の百類は駄荷に乗たる飛脚なり万裏 船雪 毛々多良須加花二 釣舟はつもうぬ雪に埋れてかち青はかりはきとわからず万餘 鵜遣ひし衣をは冬に引かへてつみうかみたる雪の川に数恵 水の底しづまば雪の消やすとふかくは生も入れぬから舟寿米流 長門赤 降れば水と消てたもたぬ青海のそここら船につみし白雪 毛々多良須花三 毛々多良類花三森林亭木中 一浦風もしつかに須磨の鈴木の 森林亭木守 音たにたえてふれるしら宿 つみ上し貢の綿とみるまでに 沖よりつゝく雪のうら船 高田 青海はら真白にそちるむつの花の永日堂春丸 なかめを分て三津のうら船 道絶て荷の出ぬ里は戻りより相什楼真槌 ゆきを重荷につみし苫船 雪の朝難波の浦にしら路の花朝 むれゐるやうにみゆる百船 東下六十四 毛々多良須 田子の滝にふ言の影もや移りしと見れは深雪を積し宮舟世富 友綱もとかず岸辺に打よりて咄もつもる雪の浦ふね 松代 二本松 啼き綿とや見らん筑紫につみて真白き雪の夜寒さ 面白やふり積雪もひとしほにしら浪と見し沖の苫舟万作 足跡をいとひし雪のおもみにてあしを入たる宇治の柴に入舟 跡つける人々せしとや降雪の楫かくしてぞ積る川舟数恵 てう〳〵と朝日の渡るはしけやしはしけやしたる舟の薄雪に 寂蒔 月彦 冬の日も枯木に花の酒さりなうれしく積し雪の友に真遊住 降雪とともに積つゝ豊なる年の貢の舟重気なり 麻生 薫 ゑかきたる不二の印の酒樽を積重ねたる舟の雪かな山松 かぎりなく雪をふらせしくゝをかみ舟にやつみてはこびたり 海士小舟泊瀬もさうに及ふましみよしのかたに積る白雪芹丸 雲の波立へたゝりてかたかたの淡路にきゆる雪の苫舟松寿庵 ふりつもる景色を岸にみなれ棹さして急かぬ雪見舟哉唯住 名古屋 打わたす遠方人にもの申す聲さへ白き雪の淀有龍迺屋 盛岡 白妙に雪ふりつみし大舟は青涙原に山を作れり 為成 仝 白妙に降つむ船の新造も十嶋もみゆる雪の丸山金馬 仝 ふじか根の昔は誰もみづうみに山を出せし雪の苫舟 實乗 仝 田子の浦漁の船にふりつみていくつか雪に富士の翫形幾羅 吾妻 ふるゝ守をはなの都へみやこへと淀の苫舟見つきにぞる 高角 降つむを綿かと思ひつめたさもぬくきにそみる船の白ゆき久環 信濃牧布施 沖遠く家路に戻る苫舟もしら様とみゆる雪の夕暮山中舎真猿 東下六十五 仝式部 うら船に積りし雪は海の上に深しとそこにみるも冬らし 五泉 音なしに迷ひて岸のつなぎ舟一夜に雪の重荷を経 加幾加曽布加花一 海つらに跡はいとはぬ舟のあしいかはふり積雪の重荷る馬伎 白浪をくゝる心地やそるの雪舟を我家と櫛枕せん人真似 狭山 ふる雪に磁石のけんのふり分て来た方角もしれぬにつき夜山万祝 全 作りなす兎とみれば高瀬舟雪吹は白く波をはし松 柳かげつなぐ小舟に居る鷺は雪にみのきし渡し守るも真長 白妙に積にし雪も新川にふじの印の見ゆる樽に弟人 沖のかたへこぎ行舟に積雪のきゆるやうにて島かくれけり松成 豊年の俵をふねに積かさねつみ重ねたる今朝の大雪 雪の日にこれはゆるせと墨田川水につけたる舟の足跡歓志穴 安房上総小嶋の多く見えぬるは此夜つもりし船の雪かも草成 あし火たくすゝによごすな白氷の雪を積たる難波江の舟 小船こぐ手もひや〳〵と成にけり笛の浦辺の雪の夕暮愛丸 おもく見てをしむ心かしら雪のつみても足はいれぬ流船万象 夜神楽 毛々多良須加花二 盛岡 冬の夜の長鳴鳥やうたふらん天の戸ほそも明星の声 霜さへも寒さをわぶる夜神楽の霜にさへ行むしろ田の声甲良 暁によきさかつきてとり物の星も諷へる八聲八をとめ真進良 津島 横雲のたなびくやうに華張て朝日の宮に諷ふ夜神楽 毛々多良須 名古屋 素智馬の宮居にきねが鼻たりのは和幣ふる風の夜神に竜迺屋 ときはなる縁の色の松たきて一入信のまさる秋神楽 古河 毛々豆多布 森仰亭難奇免 鶯もしらぬ冬至の梅の色 ほしをうたへる夜神楽の声 小苗 毛々多良須花三 森入亭実筥 日の神もかくやと今宵月朝の おほふ雲間をのぞく夜神楽 鹿杖庵真臣 夜神楽にあられふりちふふふくり有之 をも ありちふあぶらん餅も蝶に 親もすがら諷ふ神楽の榊ばの声はからせど霜枯そなき三浦六 底火たくまゆみつきうおしかへし諷のや神の心ひくらん種成 盛岡 かけしろく底火たく杉の空さえてひもの神の光りをぞ 花の左郎兵郎でねもせでほぎやうにきくは春日の宮の夜神楽松蔭 石見高角 舞姫の外にむら立杉までも霜の袴をきたる夜神楽 加茂加曽布加花一 一赤根さす天の岩戸の昔より夜里の神楽にあらはれに菊好 舞諷ふ声も面白さ夜かぐらねきか拍ふをとり驚きて真名美 名古屋 森に住ふくろふの目はかゝみならで神楽の襟昼とおどろく香久美 打払ふ袖にも雪のふる程にむからつもる夜神楽の店菱象 寒風に水もやせし天の戸のいる間遅き冬の夜神に弘丸 草加 さゞ浪につれて太鼓も打かへしかへしてはうつ松半の御神楽早丸 東下六ト七 をだ豊の三輪のやしろは夜神楽もくりかへしつゝうたふ声〳〵好成 我心きたへ上たるつるぎもてはふりも神をいさむ夜神等真清 盛岡 今宵ぞと荒も上毛をほしあかり聲も春日にみかぐらの笛金馬 夜神楽をうたふ庭にも霜さえて其榊はのおもて白やな若女 古河 夜神楽に天の岩戸も開きしか昼の如にてらす庭火は 藤沢 神鏡に焚火も白く宮つこかうたふ神くらの明星の声都代志 神と君の光をまして長き夜を育暁のあかほしの声万万万万 歳暮 毛々多良須加花二 一ひんするもよけれやる物取物もなくて静かな年の暮かな弟人 毛々多良須 春秋の行にまさりし一年のくれはせ話しくをしむ間ぞなき馬伎 春風は年の内よりこゆるぎのいそがぬ老の浪やよすらん好六 菽蒔 毛々豆多布 一網代木にしはしは年もいさよふて 有明亭月彦 ひを得る事の有よしもかな 毛々多良須花三 睦実 立居して氷もやらぬ年限の よせて御走る暮そせはしき 高角 肘枕哥種 ゆく年の関はすえてもひまをゆく 駒のあゆみは留められぬなり ひと替の世話しき年の暮にしも春つけ顔な梅のはつ国真長 高田 身におへる年の外にも数多なる用をかゝへてくれのせはしさ万韻 春秋のはなや紅葉の夫にけふ年をひとつにをしむ草かな山松 霜とけの道にすべりて人よりもとまりかねいゝ年や行ん和哥女 道草をくはぬ故にや年の暮ひま行駒の足のはやさに吉成 くれて行年ををしみで追やらん市を走れる人多きは 世の人の心もしらず暮て行月日かぞへる籠のうぐひす川南 を話しさにつひうろさへていつも〳〵先へとられし年の夢哉米次 かけ乞にうそつくい餅のあぢうまくゆかなんとしの暮かな満丸 降る雪は木々の梢にとまれどもとまらで年ぞ夢行に 行としを惜むかしはし柴垣に隣の春をへだつ白香実ふは いそがしき年の暮には山さとの遠きとなりもちかくなりけり音波 年は行春は来るとて梅が枝もひとはしかけた事ぞおほかる深志 五泉 ひた〳〵とよりくる年の大浪に漬賑に暮の人あし 仝 仲住 加幾加曽布加花一 まき庵引てみたれば残りなくたもつこぶしにはなつ年の矢稚枝 春をまつをとめもひふと手せりつきをもかぞふる年の暮な世富 初露柳のいとのあるかたへ心ひかるゝ年のくれかな馬伎 松代 光陰の矢をだにそへて破魔弓をまけるも早き年の市人義信 追かけていそげるけぞあやふけれ向ふに春のたつと思へば和哥女 またひとつ年のふへるも侘しさに通り行暮の日を越しみけり福養 うつくしきしかうしろに見てゐればたゝひとつとる年も恥かし照道 常におろそかはなし四つ手駕籠とぶが如くに年は暮けり玉腰 暮て行年によくなくおもへともまたるゝ本の春は忍はし千形 麻生 隣なる春へ童の行烈やかざり弓迄もたす年の尾美々頼 いたづらにすぎる月日のくやしさよいふてかへらぬ年のくれかな種成 松山 くれてゆく年の日数もへりふみてたゝみさはりもいそがしく うか〳〵と夢でくらしてやう〳〵に今目の覚しとしの音な睦実 小根とるいとまもなみのしはす下女よるは眠りの増る草臥万象 寄獣恋 伊勢津 毛々多良須加花二 萩ならぬ君が胸さへ分やらで何のかひよと世名のなたらん十字街 妹と我深き中をは瀧さへきる事ならぬ恋の道かな四起 小舟山 象の重さ舟に積れと我かしたふ恋の重荷は斗られもせず穂鳥 津和野 妻其ふとしれなはなんと奈良の鹿なれし人にもつゝむ身ぞき 毛々多良須花三 席の尾を踏心地して忍ふ様の 馬伎 命はあふにかへてこそあれ 盛岡 益実 枝折戸にしかも合図の笛の音に より来る妹のしれる庭下駄 上田 文杏園兼吉 いかなれは心の駒の恋にのみ 人目のひまを過る間のなき 東下七十 別路を越しとて引や我袖を心ありけないもか飼ねこ数成 足も地につかず月そのこま〳〵と妹が返事に心いさみて寿米流 一筋におもひはさきへたり猪の心は外へふりむきもせず万葉 くるしさにまたも見送る猫背中脊なかへしたるあらの心に寿朮流 古河 こは〳〵に送るを手にもとらの尾のふみも其まゝ帰さるゝうき志真子 吾妻 名所も人にはつゝむさるおかたそれもかのえにはなされもせず釣人 象の重さ知るも妹か心をもふねにさそひて斗りてやみん睦実 一駄ほどつけても文をその侭にかへすは馬の耳に風なり 物音は猫りと親にとはれしをしそくにけして見せぬ忍路万録 加幾加曽布加花一 熊の山道のしるべに先たてゝ心の駒に君を尋ねん木中 諸ともに危ふす野辺と誓ひしにいつかうそふく恋風ぞき数介 表甫 逢見つゝいつ迄草も生茂るかへくふ僕は牛馬のかい 逢夜半に千里の道もいとはねと帰るそうしやとらの一天真遊住 高田 恋の重荷つむ身はいとゞ大原のうしや日に〳〵やせとほるかさ春丸 恋忍ふ思ひそ物におほかみのたゝおそろしき世の人の口花也 忍ぶ夜の跡かきつける朋犬は二人りの雪の机をふるとて甲良 吾妻 うまけなるめつきは我に人めをはよけておはする恋の主荷そ 高角 老国のとらふす野辺の夫よりもまよふ恋路ぞあやふかりける貞水 若山 我恋の重荷をつむも牛車ふみむれともひく縁のつな 入えねはこよひもあはでいぬしもの門もる人そつらくおもほゆ人女 今宵またこんとのふみの嬉しさよはやくさつねて物語せん楽成 狭山 詩身には車牛ともおもふまで恋の重荷の数をつみけり尾見通 東下七十一 吾妻 態なりといつはるきつのたなこゝろ他な心とは思はざりしか つみかさぬ恋の重荷を苦にせざる心らく駄になるよしもかな万象 暁夢 毛々多良須加花二 暁の夢に歩行はかねの音につき当りしとみえて覚けり馬伎 毛々多良須 御仏のあと追ふ老の此世をはいまはし夢とさとる暁仝 證文を懐にせし夢さめて利足にならぬ暁のかね 夢になりうつゝも夢に今迄の思ひをさます暁のかね吐安 行燈の消てむかしの行へたにをしや見果ぬあかつきのねきさ子 名古屋 さま〳〵の夢は跡なくきえうせて枕のもとにのこるともし火香久美 目さめては夜の長しとてあかつきにむすびあまれる夢もなり 胡蝶とぞ化す春の夜の夢見草ちらすはをしき晩の鐘商 毛々多良須花三 夢に訪ふむかしの友を心なく年益 つき出して帰す暁の鐘 盛岡 雪迺屋森蔭 取替て獏にはめなでくたかけの せなみる夢をさます暁 古河 森薫亭俊英 一金拾ふ夢を見しとてはなさぬは いまたよく目のさめぬあかつき 五泉 森龍亭仲住 黄金をいたゝくとみしは正麦が さめかしらなる暁のかね 暁にむすひし夢のさめぬるに時こそ来れ御六つのかね山松 蝶となりて花に遊ふも鐘の音をきくか名残のあろきのね数恵 夢に見し桜の花の其侭にさめてもうらむあろきの山愛鶴 吾妻 重ねぬる衾にあしを柱にてあかつきかけし夢の浮橋 紐ならでしんくしれてたのしさに結びかへたる晩のゆめ睡實 加幾加雪布加花一 あけ告る鐘の声にやおとろきて戻て覚るゆめの通路万葉 暁のからすは鳴て渡るころかけかへて見る夢の浮橋哥志丸 一升の酒もうつゝに呑て寝て極楽と思ふ夢のあかつき見楽 古河 一横雲に不二を半分かくされて五合めさめの暁のゆめ百柴 ながき夜を帯とくいねて快よく短くむすぶ暁の夢 枕瀬 宵ならは横や定めて喰なんを鶏にとられし暁の麦 式哥 ほどもなくいつか明たる天の戸はあかつきの夢さまさせしとや ふる人にあふたる夢の行方さへ空闇に見失ひけり万象 年夜 毛々多良須加花二 松代 燈明を備ふあかりにあすは来る春の光りも見ゆる年の夜男依 麻生 掛乞は急延しても残りなくはらひ仕舞ん年の夜の塵千金 古河 日もつとり今宵斗りの年の夜に我も小酔につもる酒盛寿美江 吉原 年の夜も念仏をとなふひの身は心で鬼をやらひたりけり 掛乞とにらめくらする大晦日あしたは春の来てや笑はん真名美 方違へ少女はにげし門礼のひと夜廻りの際夜の生解 今宵しも鬼を退ぬる跡おふて老ぬる年も追はらへかし 年浪の末のまつ山いとまなきこしかげたやうなと宵世話 菊住 毛々多良須花三 神棚へ昨是の薬の空印地 福養 石にうち出す除夜の御あかし 麻生 雀齢舎舎 年の関金の行来もおきであれは 手形を書て越んとやする 万事馬 年の夜に豆売をたく門〳〵は 七歩の吟に尼も払へり 間をくも成ぬる春につかへてはおしつよりたる年の暮哉万未 年の夜を明渡さむと待宵のかどにや春の立て侍らん弘丸 老何れは人並越してをしむ也此大年の末の末のまつ山微安 春をまつ晦日しらずは取やりもやみにけらしなくらしよき深夜森雄 吉田 年をのみをしみて人の騒くとて冬は素気なくこよひ行らん ひた〳〵と寄来る年の大浪に湊夜ふ暮の人あし 五泉 あすは来るかはりにす舞行年のなと我身にはひの増らん睦實 一加幾加曽布花一 一塩の外も積れる香はかはらねど春の隣になるとしね哉世富 小苗 年を越す夜はほたたいて三つ三つ噺たりぬにはや明ら春 吉浦 とめ所なき月日や立て今宵しも春へ越し行年の別路 冬のはや今宵計りにせまかほどとり散したるまぢや賑はし佐倉傍住 東下七十四 年の夜にしらぬ袋をはおふせつゝ我かつみし老をくやむをかさ 盛岡 壁に耳となりの言はきくものをかけとてこうと暁の鶏幾羅 仝 月日のみたゝいたつらにをくるまのめくり〳〵てくるゝとしの夜音成 名残をしと年のとちめを立めし戸のすき合に春はほのめく若女 吾妻 耳の垢までとり捨て年の夜のくるゝ音もやきかまほし 高取 ゆく年の月日はけふに鳴る蒸麦のびて嬉しき胸の算用竜遊 五泉 春をまつ年の一夜におしつめてしめくゝりさへよき今宵な ゆたかなる御代の光を来る春にかゞやかしてそ見するとしの夜万象 俳諧歌東西百首下之巻終