誹諧[タヅ] 初編

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慶窗梢魚校
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慶窗梢魚校
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ハイカイタヅ
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東北大学
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伽鶴鶴刀編 分軍ノ 宇博士 世に誹諧盛んにして 当時点取高判の 帖数多翫ふ中尓 觴の糸くち長く 一枝筌の花実しけり 同断 種おろしは年〳〵の 実入を楽み浜の 真砂なる事尽す今切 五百五十一人一列拾余人に およひ群居る鶴の 芦辺に遊ふ古哥の 言葉にもとつき 誹諧鶴と題して一列 一冊に綴り高点の句を 写し書肆星運堂梓耕 して初編の一助となす 猶年毎にその新らしきを ゑらみ永く続編を 出さん事しかり 東都馬街故人 竹窗一洲述 三 松寿庵一漁 蓬莱の其下草に福寿草 北を恵方に猪牙の乗初 狩活の香にむせる揚屋の料理人 元日のこゝろに近き神路山 鶴の舞ふ日に喰初の椀買ふて 梅に奥あるうくひすの哥 立寄影の清き宮川 外に 散り失すして箕に白き餅の粉ナ 煤を仕廻ふと一万度来る 若水に浮くしのゝめの星 今に絶せぬ傾城のうそ 早苗貰ふて戻る住吉 さゝ啼の側に這ふ子と冬の梅 振返り〳〵して二見潟 来る人に始引合ス松の内 白魚の網に佃の去年の豆 はまその箙に添て年の梅 瓜小屋も見へる代々木の下屋敷 ふら来る内を夜宮の門違 昼をは何と客分の駕 正月へ手を出す除夜の恵方棚 破磨弓の台にして置く刀箱 今買ふた火打に神の灯かとほり 蓋を明れは請取に屠蘇 水菜を喰に僧の嶋原 いちう タツ 餝りをわけて燈す神の灯 放れても草喰ふ迄の神の馬 礼楽の名を繰返す春の風 上下て逆井を乗る春の末 もふ春を子に着せて行年の市 梅に手の寒い師走の草履取 雨後長閑黒木に八瀬の蓑干て 禮帳の先ッ上書に筆始 餅の箕の中に年暮の熨斗包 二見かたとちへ向ても神の風 神風を笠にいたゝく抜参り 内て喰ふ程は漁村も稲苅て 雲に入かと思ふ沖の帆 嶋原の真中を行ず其中を行ず 蓬莱に寿の盃の箔か飛 宮川て買手拭も清め艸 歳旦も園女は伊勢の事いふて 松の精夫婦と現し弓矢はま 四日 万歳の酌に譜代の年男 きよくはつ日の移る神棚 宮遷吹寄たほとわら草履 木屋町寒く残る箸紙 神の灯に白魚の寄る佃島 熨計にさはつて居る新宅 神もやとりし参宮の笠 参り合せて伊せの元日 重ね着も軽く北野の御忌小袖 松窗堤亭 五月雨の軒に沢辺の風の音 川狩の盃に浮く水すまし 茅場丁染井から来る竜田姫三 釣の笛けふは田螺に汚されて 八判もいらす戸山の関越て 手を櫛に遣ふ三日の山かつら 春風に護す木のはねる江戸の日枝 ダツ 時雨から人足しけき寛永寺 釣燕涼しい風の裏見せて 九日の格子明るき茅場町 稲こきし中に伊兵衛か童田姫 起〳〵の見せへ大師の雨舎り 北南生姜の匂ふ江戸の伊勢 合羽着て土産を送る釣戻り 行徳の廊にきれいな瀧干て 卯の日迄延す亀戸のかりた年 番椒はかり高瀬に秋見へて ほたけにほとく紅の国の籠 船宿て袴をたしむ草履取 佐保姫も来る十月の寺 土器計曇る青湯 一葉つゝ気長に秋の散て見せ 八ツ代。の秋にせわしき竹細工 目白の茶屋も寐て聞は淀 踏れた形にひらく河岸 寅の門薬師の間の植木売 気の散る紅葉は江戸の北南 鴨の来る松も雪の噂 四月廿九日のかはる北風 金沢か門トに染井の梅咲て 白雨に消へる笹屋か門との雪 八百八百八百八丁玉川の恩 土器に田畑の荒れる三河しまゝ 紫衣を皆着る日光のとうからし 佐保姫に絶へぬ染姫に絶へぬ染井の女客 鮒をたゝめは沢潟に風 いえつとに土佐のしほ干の持重り 郭公又寝に淀の夜かしらす 風て落の張る奈良の旅立 来た先のいはれぬ夏の扇箱 藻のやうに菜の葉流れる小松川 恋の出口を御随身門 美濃と近江の鼾間違ふ タツ 二ツ堂みかん大根の国ふたつ かりた矢の置場尋る舞支度 竹へ巻付く駒込の麦 細布も染木も母と胸あらす は世先の藝も八日のこほれ萩 大黒の湯も交る雹爾 今戸すらりと曇るあけほの 葛飾は余所の春程秋の蝶 物額の丸まはゆき朝大師 社日菴来爾 女には無理な階子の神楽堂 針箱の内は一生かた付す 後桑坊の先へ鉄ナ棒 ありし世の持仏ほとある草の庵 我か髪は梳して乳母のひゐな艸 あちらこちらの娘の腰え 行灯を夜に成ては張る気なり ヤツ 木屋町も借り人によつて草の店 四五寸織て帰へる紅黄 甚か手をは盗み課せてまくら鮒に よい縮着てはつかしい乳 刺る気に成て母のついき 手まくらは人の姿の草なれや 一他家を出て急に涼しき更衣 入歯はつして顔に立波 糺になまる太々の果 朝はかり法事のやうな百年忌 見る内になくなる牧の溜水 半襟取て僧に借す横 在番城の代々の落書 茸狩に曲突踏消していとま乞 蕎麦打て仕舞て直に密になり 関に焚落葉は夜アの嵐にて 度々小判崩す助太力 男坂からあかる生娘 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 川留に跡の祭の祇園見て 寐せ付て草紙へ母の作り綿 見せ馬に黙礼をする猿廻し ちきれ具足を持あます寺 覗かれるとは聟も合点 気を出れはもとの六月 瓜塩の土用干には気も付す それほとの男てもなし前頭 いきたなく何を頼みのまくら鎗 一たひは畳へのほる放し亀 泥亀と顔を見あわす周戊叔 たまく晴て遣ひ足らぬ日 世は雲に其夜降る雪 との宗旨にも中のよい蓮 救ても焼きやれと起す安産 からくりのつらりと知れる十二月 耳のある壁を嫌ふて草の庵 鑓珍らしき京の元日 □□□□□□□□ □□ 土弓場のねらいうるさく日か当り 腰抱も医論の中へ鞘走り 能く売れて秋に気の付く油売 恨めしく本尊詠める猿くつわ 国家老落し咄のおちぬなり 井の音の更る揚屋に接り来て 叱ら過して其夜寝ぬ母 見かきりて居て去らぬ孝行 本腹近く折習ふ鶴 蓬莱軒園女 島原はみとり白きは中の町 廿日から糺の夏の目に立て 南湖の宿に酢の宿に酢の宿に酢の過たぬ 卯の花の雪解に蝉の雪解に蝉の雪解に蝉の雪解に蝉の雪解に蝉の 柳島戻る芸者の袖に萩 苫明て蛍涼しき十三里 二葉から小鯨涼しき蓼河原 □□□□□□□□ ノ〆四ノ 日はさま〳〵に暮る木屋町 虫干の若菜の巻へ蝶か来て 涼台抱子に桃の匂ひして 猪牙て荷の来る堀の婚礼 揚屋まはゆき千金の顔 蛍火は皆夏艸の夜のはな 請られてこまる袴の畳娘 八十四日の鐘に冷たき上ハ呂殿 き婆そろ〳〵春の美山 新造は万歳の名を聞たかり 太郎か鯉に若殿御網 こほしては又汲淀の電 爰も田を行嶋原の駕 遣人か珠数に禿一部 来た先のいはれぬ夏の扇箱 案内には仲居を連れて地主の春 西より外に北の極楽 八朔の雪を丸めてひとへ帯 十八ツ 松餝り門へ榊の来たこゝろ 能く隠し課せて初瀬の影解き 朝皃に猪身から上るふ人相 木屋町の宿と仲居は合点して 枝川へ艘きよろりと山かつら 六月の綴に去年の歯朶の葬 えよし原て育ツ傾城 雪ほとの星[サ]]雪ほとの星[リ] 三圍と真乳は猪方の両の袖に 掛稲の中に根峯の琴の音 桐一葉二葉と温泉場の人あて 深川の歌仙見に来るさくら人 葛冷す水もゆかりの吉野丸 世帯染たる瓜城の冬 苅と蛇になる駒込の麦 片側照す堀の送り火 すそ分の氷室は水て届きけり 島原の寐覚に鴨の代替て □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 木屋町寒く残る箸紙 とし忘隣に腹をたゝせけり 居続の雪を仲居に彫踏させ。 夏一日素顔を見せる二十山 雪見の転ひとまる吉原 石上ふる舞水も樗かけ 行違ふ船の芸者に点懸て 兼好を吹つきにして初書急に うしろから被つくろふ夏河原 薫風舎美佐古 蛇の衣からむ空也の花瓢 今追ふた蛇の又来る関の雨 牡丹に廿日庵の鳥影 鹿聞の火縄踏消す関手前 猿を一日なふる屏守 鳶に追るゝ魔所の舞鷹 冬近く煙の蓋とれはきり〳〵す □□□□□□□□ 院の桜の埋む穢多か家 尼か身の縫ふ手書手をおしかられ 池水の氷る間もなき鷲見寺 さくらか咲て皆沈む塔 足跡は狐か雪の女人堂 琵琶にも通ふ日枝の風 盆を踏割る阿部川の馬 蛇穴を出る比温泉場の願書 関の火を狂のねらふ夜の霜 妖怪のあるとも知らす聟に来て 女人たまて口を利く尼 野守か様に狐狂の寝た跡 地鼠の穴へ踏込む鉄之助 移転の跡へ居る赤柑 はしたなき懺悔も尼の手指より 津浪の跡の屋根を這ふ蛇 蚊も恐しき戸所の下響 僧正の作りし罪は菊の虫 □□□□□□□□ 文章十四 乳貰ひに二度出合ふたる寒念仏 ○同年記念の記念の琵琶に声曇る尼 艸も木もだまつて居るに雪の竹 蚊も罪と夜伽の尼の手して追ふ 古寺の童も狂に荒されて 一氷室通して二度寝する屏 笠島や草にてぬくふ笈の泥 鐘の声したれ桜に震残り 鳶尾しんと崇る厠に咲溢シ 夜か呼んて名を替る尼 新尼のまた恥しさすゝぎもの あはれ双タ子の日枝と鶯原 虫の声止むと気を置鉄之助に 化された人も来て吸ふ狂汁 蛤の居るに桑名に鴫も居て 虫さへも鳴ぬ七野を鉢たゝき せくらも凄き磨所の晴天 山葵咲く水を茶に汲む関の裏 足音の下に春来る鉄之助 千鳥に近き網字の国 白く生れて神馬淋しき 鷲行く花の山に宇治殿 配膳に目の狂ふ浅岡 夜ともねむらぬ浅岡か高地 千鳥に更て狂煮る屏 鉢の木を庭へ取込梅の木を庭へ取込梅の歯 二ツ飛ふ蛍見とれる初瀬詣 坐來菴傘車 吸付て酒買に給吸付て酒買に行ら菊の主 折ふしは髪結の来る遊ひ寺 着替すに踊つかれの喰ふと寝て 鞠場からんと在番の留主 とちらへも似す申子の顔 やり手か笑ひ唯事てなし 枝城の堀迄かりて種おろし タツ □□□□□□□ 飛ふ神のいつか仕掛し瀧落て よく〳〵のねたみか刃物隠されて 雨に燈りの早い宇津の谷 潮来も近〳〵船に月代に 鶴の番日の内たはこ飲切て 這付けは生薪の煙る間イの宿 鰹船煙りの浪を凌キツヽ 南湖の宿に酢の過た妻 禿か草履出かゝつて買 旅の稽古に鎌倉へたつ 延付に朝茶の煮へる年忘れ 雲切れに餅米をとく宵祭 一拍子ぬく暮のよし原 まし〳〵とした生キ異へ壱人扶持 出し入れに椀の音する類泡袋 いわい事には亡八けふとき 穢多も来て汲む大寺の井戸 寄かねる梓に水もぬるむなり □□□□□□□□ 群集に酔て昇気する児 因果含めて留主に置瞽女 なけなしの銭はたき切るごまのはひ 時のつかへる淀船の笠 織そこないの縞を着る母 鑄立の鐘を時なしに鐘 酒醒て淋しきもとの物おもひ 寺古し鼠を喰ふ蛇落て 相場のしれぬ市は馬市 歯を洩れる謡殊勝に尚歯会 鴨居へ箸をはさむ川留 誉られて止む始の看経 通夜ほの〳〵と乾く唇 夜咄に鉄炮於て八庄司 花の旬告んといひし御乳か里 物見好なる毒の煩ひ 後生大事と網代守聟 燥筑せる本陣の番戸 タツ 門も細日に太々の留主 追れたと見る女の足跡 朝の物屋におほとるいけ鯉 片輪車に遊ふ鳥羽の子 碁敵に挑灯かして別れけり 嚊当テらるゝけいせいの年 各い所て銭の入る京 左迂君の奥に催るゝ 狸の覗く關の黄昏 露十 竹葉城露十 女あるしの目に立ぬ京 雪を見し目に手の狂ふ鹿子結 不成就日を繰習ふ始 泊り御鷹に袴着る聟 礼帳に牙婆か仮名の名か伸て 鮎汲し川をも越へて御身拭 秋の暮妾は碁立見習ふて 多 社日の酒に母の手枕 富士はつきりと独子の炙 双六の旅さへ母の手間とりて 行春も雪の中なる桜守 寺と女に目の覚る京 魂棚の蓮の行衛もえの水 油手て出る娘の愛相 僧正の見おろす十津に母置て 桜には憎き名を持つ嵐山 年暮れて少は濁る京の川 懐の子へしたむ盃 流石京廓に女の算置て 木曽の宿御僧一人に蕎麦打て 世盛に女房夕奢京を見て 物さしの何所へも足らぬ京の雪 遠く受取る芥子の口上 夜ルを寐る程に呼屋もおし詰て 竈から先へ絵図書く京の町 □□□□□□□□ 蕎麦賭にとう〳〵娘を笑はせて 春の野に女一群富士を見て 桜には気の前羽あい京 しらむかと夜船の雪に苫明けて 手枕て雫見て居る軒あやめ 彼岸鉦母も持薬の懈怠して 絵踏の足を洗ふ女気 碇の股に踊子の年 何所やら淋し拝領の妻 老尼の牡丹に若く遣はれて うたかひに味方の多キ雪の留主 みな水くさき寺の献立 焚置の飯に歯のうく庵の秋 唐様と迄傾城を奢らせて 柱寐入のもとはよし原 熊野に似た女見かける東山 碁の強い子に衣着る相ありて 魂棚の牛盗人は我か子にて □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 藪入の譬に楊枝の置土産 桜も雪も京の足留 あした来て酔ふ約束の待女郎 買見へて草花捨る女連 建継の厠見て置く侍女郎 門礼に二階を廻はる牽頭持 我かものゝやうに春待つ男の子 日の脚も踏仲す頃涅槃像 官軍の桜にゆるむ楽の音 路通庵理啓 帆はしはし雪の上行田子の浦 とちらへも似ぬ申子の顔 表替一畳つに春近し 待合す野渡の案内子蝶追ふて 雲と見る三千坊の飯煙り 掻分る師走の雪にこほれ松 取巻て這ふ子立せる梅の椽 江戸 藪一重都へもれる田うへ吹 田船おろせは煤の浮く池 梅折に仲居か仲居抱上て 子を寝せた信て田植の忘れ笠 生麩の桶に十月の蠅 箸折れは野陣の飯にこほれ萩 元日の寺には寺の人はかり 蝋燭の箱も流るゝ涼川 二三尺猫を胡蝶の釣上て 入歯か出来て新いひ 芝にへたりと陀阿拝す婆〻 芋を堀る館に苫屋の棒か出て 松坂縞を越えて入聟 春の巨燵へ濡て来る猫 管にも人に隠す引出し 灰汁の蓋取れはぬかこの蔓切て 着旦那譜代の婆々に呵られて 川添の合羽干場も京の端 夕州北耳 かし本の上に蒼朮一杯 大寺の雪間に並ふ畳さし 買て開たまゝの笈の戸 しかも男子を傾城の怪我 ふ図追ひし狐にその夜寝苦しき 我か心意に戻りて草の庵 辛子酢を誉る座頭の眼か動き しひれの顔のゆかむ雲守 うたかいに味方の多き雪の留主 梅薫る風に吹れて懐手 引出しの風さへ誉る土用干 能見れは前歯のかけた音頭取 狂歌か出来て厠から出る 追かけて母の行る佐谷廻り 辛子酢の加減もてうと時鳥 横平と我もしらさる渡し守 占も蛇の道早き若わな 籠懸の犬をしやらして仕舞けり タツ 鍋はならぬと明渡す庵 三粒降ても賭に勝るゝ 二尊院雪に成ても損はなし 女に垣のゆるき九重 一丸さす春の暖簾の紺臭き 蝉の積り〳〵て芥川 来た先の言れぬ夏の扇箱 袖留て拍子の抜し段階子 落人に柴といふ物折くへて 寒玉齋英屋 一月十九日朝よら酔 ひたのない袴着て来る猿廻し 曲りかねまからぬ曲尺に遣はれて 妾の二歩兵はいわぬ御牽頭 煤掃く門は呼はぬ鮫売 相惚れ同士の熊とすれ〳〵 俄雨無沙汰の友の尋来て 一夕月十五 男禿の袖に啼く蝉 縫上ケのありて捨子の猶あわれ 花柚つれなく酒入れぬ寮 庵室にすつしりひらく壱人扶持 売られすは稲も苅手に琴弾て 置てさへ只は寝かさぬ伏見の蚊 庵室へ投込て行大根曳 実はむすはせぬよし原の花 芝にへたりと陀阿拝む婆〻 我衣手に蚤這ふ歌まくら いつ起やうか知れぬ癲癇 帰るにも女商人誘ひ合 ほいろかりあふ水竹の会下 留主へ来て居る八瀬の入知り 奇麗な顔てぬつへりと喧 寺の名に並ふ大工の忘れ年 遣り手か笑ひたゝ事てなし のみやれと夫の雪に和らく タツ 鶴見の町て下戸の大言 長寿きらりと長閑なる眉 とちらへも似ぬ申子の貌 七種の産れ諸芸に拍子訓 生酔の廻らぬ舌て放下僧 薬取鋳鍔と知らす撫さすり 嫌はれつゐて升呑の間 何そ出そふな医者の懐 薪に声のないか納豆 髭ぬきて鼻毛迄ぬく鶴の番 恋病も龍耳に近き請谷 ほつちりと雨を驚く兀あたま 取揚婆々の酒も底ぬけ 風巾の尾に縄とはあらき翫ひ 一しまり揚屋しつまる送り台 魂すはる雪の居つゝけ 荒御所へ響く狂の腹鼓 蓴菜菜菜のノ法に入母 タウ おふよふに虱這出すうらゝかさ 桜紅葉は気に入らぬ妻 無筆をは咄し上手のかくしとけ 乞食か願ひ聞は怖し 章魚壺の中にまし〳〵居られけり よい風と踊の稽古誉られて またいた〳〵し冬の白急 手の筋形りに逃る丸薬 編かはねても怖い古寺 敬忠 任他郎敬忠 景清も宿の春には十兵衛 面蛇 箱王かにきび閉坊押出して 文覚に降る雨は夕立 宗鑑に降る雨はしよぼ〳〵 明渡る小町か時も春袋 椀久か顔に番屋の透間の灯 元信と斗秘め置〳〵軸のもの □□□□□□□□ むいきに蚤をつぶす閉坊 せり出しのやうに日金の朝ほらけ 旅芝居柱四五本芽を出して 兼好か死年との年も鍋を着て 庫裏くらく文福寺の編たはこ 国両まて下戸の身の身の身の身の身の身の身の身の身の身の 無造作に舞子のあかる金闇寺 入相も桐大倉の道具建 だまされて松急に起る温泉の昼寝 寐掛て咄しして居る女客 銀喜せる湯女と妾に張分けて 盆大皷富士はうづゝも子を愛し 罪深き鵜舟も寺の一トけしき 遠くから女の覗く土の牢 実方の落馬の跡に篠 染に来るうみ帯の札に源氏の名 しかられる迄関の戸の桜見て 白箸を焚付にするさくら守 二十一日 龍膽 りんとうの花見て温泉場の膝乞 一百二十四日不二も岩本院の道具建 四条から乱へ夏の早かはり 秋の暮余所の謡を舞て見る のしの侭枕して見る温泉の土産 雨後の樹のばら〳〵こほす鵜の魚 振動の片〳〵落るすゝみ台 我か衣手に蚤這ふ歌まくら 鎌倉は石も者も烏帽子着て 薄霞鞍馬の児の吹玉もの 腹の立時寐道具へ腰をかけ 焼筆も佐々木は先へ当られて 青鷺の火も恐口しきかさねか日 君か代の蚊遣りに遣ふ照る天松 田にさして梅売仕舞ふ水間道 うつ向くは百合なれはなり案し癖 温泉へ立た留主も牡丹の日数ほと 言水か墓に被も春の色 温泉場から出合そめて碁顔 投て来た日も有し錦木 拾た沙汰を聞かぬ経石 一九三十一月十九匁 筏に乗て奥嵯峨の公事 仲居か銀て蛍買はせる 夏は夕日の足らぬ弘法寺 牡丹に廿日庵の鳥影 世捨ごかしに金遣ふ嵯峨 桐窗琴嶺 今暮る日を傾城に落付れ ふいとたつ雉子に茶摘の子は泣て 乳貰ひの替る磁はちからる 妻をよふ鹿も木辻の里馴て 茶の水に鮎も汲るゝ桂川 霞の舞ふ日に傾城の後江帯 川霧に昼さへ夢の室寺 □□□□□□□□ タツ 実桜にくらき八坂の鬼簾 斯解を伊達の始の宿車 初瀬の朝損ねぬ髪の艶抜て しかも男子を傾城の怪我 よし原も一頻りつゝ夜の秋 しらむかと夜船の雪の苫明て 雇ひ禿の名を二ツ持 初瀬の通夜被を明ケの子に着て さし汐に峯の姫松色添て 江戸は涼に富士ははつ雪 横に傘さして朱雀の露時雨 冨士程に城を見て行雹の淀 轉ふ子にふつと療疽の手か動き 禿を消して廻る様子木 今貰ふ産着へ乳母の乳かはねて 鮎汲に水の桜の散らされて 憂き事の初瀬に桜の片明り よし原へ来て音のない秋の風 タツ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 雲の峯たつ頃冨士の雪解て 筏往て芳野は散る歟其桜 富士見ゆる方へ片向く帰路の船 辛近く蝉も時過るゝ小窓山 傾城の身も雲となり雨となり 嶋原の雪の柳はさくら程 勘恩のならぬ夫へ子を見せて 藪入を母は虞氏とも西施とも西施とも 目出たさの親から酒を押へられ 居続の追人に懸る夜の鶴 八ツ橋のやうに並へる聲の宿 浮世の夢に迷ふ新尼 吸付て子伝の遊ふ梅かもと 二度遣ふ牛に女房のもの言ふて 蚊も蠅も飛ふ傾城の樹 春静桜か峯に鬼群れて 掘を瀧に江戸の清水 初雪の貰ひ乳程に二子山 女少〳〵 五十二日旅駕の片へは白く不二晴て 居続にふつと気の付く桐一葉 雉子の声捨に出た子を抱〆て 宗鑑ほとに痩る乳貰 富士青き日に客のある峯の寺 我か声を盗む添乳の枕もと 迷ひ子の鉦に砧の手かゆるみ 雨静須磨と明石の鐘あふて 島原の髪洗ふ日は比叡晴て 雪仙斎 雪仙斎梅堂 山伏のいく野の道に鬼あさみ 煤払に置まとわせる鉢の梅 見せはやな雛にも負ぬ始連れて 身をつくしても雪の吉原 有明けの灯て見る除夜の福寿草 また宵なから除夜も寝る僧 人こそ知らね琴もなる僧 仲助 誰をかも揚屋は娘と引合せ 心にも妻は注連張る伊勢の留主 今一たひの伊勢の元日 露に濡れつゝも子ゆへの蛍狩 光りのとけき溜暗殿に銭 紅葉ふみわけ仁和寺の僧 唄比丘尼人には告よはつ桜 簑着ても濡れにそぬれしあやめ引 其さきは行衛も知らぬ寺紅葉 名代はつれなく見へし髪の裏 蜘蛛の囲に風のかけたる花一葉 しら露に琴のゆるみし星の朝 身をは思はす着せたかる御忌小袖 御垣守狩りつふやく又五郎 鹿聞にかり穂の底の泊り客 宇治の庵なか〳〵し夜を茶てあかし 一尾家の白きを見れは菊さひて 苫をあら見の舟て呼ふ君 タツ 駿河から夏来にけらし初茄子 足引の戸山に母の鼻緒すれ 帯解は山鳥の尾の肩くるま きり〳〵す庵へ飛込秋の数 時鳥湯豆腐て呑む後の朝 最ふ初て隠しかねたるみなの川 棹させは染むら出来る龍田川 夕貌の白きを見れは気かそれて 下闇にしろきを見れは華卯木 兄弟も伊勢路の馬に三笠山 猿叫ふ峰より落る松ふくり 青柳の乱れそめにし陽田の雨 君かため琴弾いた手に鍋提て 月見れはしらむ石和の鵜の海 咲花にしつ心なく斧当て 吹からに飴福引も春袋 名にしおはゝちつとも匂へ梅嫌 行も帰るも夢の間の猪方 松浦 老尼のいつみきとてか能ウ咄し 柴の戸に人目も艸も枯れ瓢 留められて吉野の里の一夜銚子 国れの心も知らす舞をとは 玉菊は知るもしらぬも里の秋 夜をこめて寐覚の里の糸車 逢ひ見ての後は隠れる雑喉寝して 人知らすこそ聞母にいわた帯 もらわれて新造くるみ手向山 相応菴秦川 虫の音は止むに茲はまた更す 火を借りに人の落合ふ店の春 奈良の町立消のする鹿の声 古戦場敵も味方も草の花 鬼籠後口を雪の鉢扣 藪陰に捨子の笑ふ冬の梅 初陣の母衣に忘れぬ母の恩 タツ 柴の戸に雨のひまもる琵琶の音 身を蚊に喰れ尽す孝行 渡る雁ともに浮世を桑つ 行秋は升細工する鉢たしき 愛相も淋しく見へる琵琶法師と 捨た身も寝ては喰れぬ嵯峨の奥 鐘から先へ日の暮れる寺 寒念仏へ定式の粥 淋しさに老の夫婦の庭いちり 身を捨てまた問て来る説義の奥 禅林の瀧の外にはかんこ鳥 一煙に昔恥し尼か庵 歯の間にまた鉄醤気ある松か囲み 風も共に眠りて座禅堂 草庵の留主をして居る秋の蝶 八瀬小原夫の渡世は目に立す 佐保姫は来て居る嵯峨の鐘供養 襷はつして老のむかひ火 同同 インマ 啼鹿のいとゝ身にしむ狩り旅 雪の升たゝけはもとの姿にて 異見する時は我か身の懴悔して 秋更て水音高き糺川 いとゝ身にしむ嵯峨の五月雨 眠る子を起して淀の城近し 草庵の枕に響く虫の声 淋しく消へる尼かともし火 手拭も木になる比に寒念仏 児の出世を涙くむ母 草も木も寐て淀の水音 あしたは翌夕尼も荒升 乳黄の寒さも知らす戸を扣キ 順礼も夫婦連にて鷲見寺 夜の庵を音信に来る枯柏 桜か咲て暮れ兼る寺 世を捨て見れは病も遠さかり 我か庵は手拭かけも鹿の角に □□□□□□□ 同十九日 胡座の膳の目に立ぬ琵琶 世の糸もきれは切なり尼か琴 朝露に被つめたき初瀬戻り 八坂に余る塔の図両 寺静庭に似合ぬ女郎尤 道具揃はぬ会下の七種 踊て来いと蟹を釣母 鹿聞に庵主の枕油しみ 流石貞女のこつそりと刺 選者竹窗一洲 校合慶窗捐魚 安永九庚子中夏 東武下谷竹町 書林 花屋久治郎 ヨト毛 江戸近左所名集 誹諧種卸 誹諧雀の脛 誹諧礎 松寿菴一漁選 二篇迠出来 松泉堤亭選 六篇迠出来 一年々続編出ス 松寿庵一漁選 一列并社中像讃 松寿庵一漁選 一貞所四季同分 誹諧鴉初編 一漁側高判句帳 一松寿庵門人選 年々続編出ス 誹諧早引席用集 近刻 二日 「十三木 ア 21409 同一一一一一