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  それもかとけさひらけたる初花におとらぬ君かにほひをそみるほをゑみて
とり給
  ときならてけさ咲はなは夏の雨にしほれにけらしにほふほとなくおとろへ
にたるものをとうちそうときてらうかはしくきこしめしなすをとかめいてつゝ
しゐきこえ給ふおほかめりし事ともゝかうやうなるおもりのまほならぬ事かす
〱にかきつくる心地なきわさとかつらゆきかいさめたうるるかたにてむつか
しけれはとゝめつみなこの御事をほめたるすちにのみやまとのもからのもつく
りつけたりわか御心地にもいたうおほしおこりて文王の子武王のおとうとゝう
ちすし給へる御なのりさへそけにめてたき成王のなにとかの給はむとすらむそ
れはかりやまた心もとなからむ兵部卿宮もつねにわたり給つゝ御あそひなとも
おかしうおはする宮なれはいまめかしき御あそひともなりそのころかむの君ま
かて給へりわらはやみにひさしうなやみ給てましなひなとも心やすくせんとて
なりけりすほうなとはしめてをこたり給ぬれはたれも〱うれしうおほすにれ
[375]
いのめつらしきひまなるをときこえかはし給てわりなきさまにてよな〱たい
めし給いとさかりにゝきわゝしきけはひし給へる人のすこしうちなやみてやせ
〱になり給へるほといとおかしけなりきさいの宮もひとところにおはするこ
ろなれはけはひいとおそろしけれとかゝることしもまさる御くせなれはいとし
のひてたひかさなりゆけはけしきみる人〻もあるへかめれとわつらはしうて宮
にはさなむとけいせすおとゝはた思かけ給はぬに雨にはかにおとろ〱しうふ
りて神いたうなりさはくあかつきにとのゝきむたち宮つかさなとたちさはきて
こなたかなたの人めしけく女房ともゝをちまとひてちかうつとひまいるにいと
わりなくいて給はんかたなくてあけはてぬみ帳のめくりにも人〻しけくなみゐ
たれはいとむねつふらはしくおほさる心しりの人ふたりはかり心をまとはす神
なりやみ雨すこしをやみぬるほとにおとゝわたり給てまつ宮の御かたにおはし
けるをむら雨のまきれにてえしり給はぬにかろらかにふとはひいり給てみすひ
きあけ給まゝにいかにそいとうたてありつる夜のさまに思ひやりきこえなから
まいりこてなむ中将宮のすけなとさふらひつやなとのたまふけはひのしたとに
[376]
あはつけきを大将はものゝまきれにも左のおとゝの御ありさまふとおほしくら
へられてたとしへなうそほゝゑまれ給けにいりはてゝものたまへかしなかむの
君いとわひしうおほされてやをらいさりいて給におもてのいたうあかみたるを
猶なやましうおほさるゝにやとみたまてなと御けしきのれいならぬものゝけな
とのむつかしきをすほうのへさすへかりけりとの給ふにうすふたあひなるおひ
の御そにまつはれてひきいてられたるをみつけ給てあやしとおほすに又たゝむ
かみのてならひなとしたるみきてうのもとにおちたりこれはいかなるものとも
そと御心おとろかれてかれはたれかそけしきことなるものゝさまかなたまへそ
れとりてたかそとみ侍らむとの給ふにそうちみかへりてわれもみつけ給へるま
きらはすへきかたもなけれはいかゝはいらへきこえ給はむわれにもあらておは
するをこなからもはつかしとおほすらむかしとさはかりの人はおほしはゝかる
へきそかしされといときうにのとめたるところおはせぬおととのおほしもまは
さすなりてたゝうかみをとり給まゝにきてうよりみいれ給へるにいといたうな
よひてつゝましからすそひふしたるをとこもありいまそやおらかほひきかくし
[377]
てとかうまきらはすあさましうめさましう心やましけれとひたをもてにはいか
てかあらはしたまはむめもくるゝ心地すれはこのたゝむかみをとりてしむてん
にわたり給ぬかむの君はわれかの心地してしぬへくおほさる大将殿もいとおし
うつゐにようなきふるまひのつもりて人のもときをおはむとする事とおほせと
女君の心くるしき御けしきをとかくなくさめきこえ給おとゝはおもひのまゝに
こめたる所おはせぬ本上にいとゝおいの御ひかみさへそひ給にこれはなに事に
かはとゝこほり給はんゆく〱と宮にもうれへきこえ給かう〱の事なむ侍こ
のたゝむかみは右大将のみてなりむかしも心ゆるされてありそめにける事なれ
と人からによろつのつみをゆるしてさてもみむといひ侍しおりは心もとゝめす
めさましけにもてなされにしかはやすからす思給へしかとさるへきにこそはと
てよにけかれたりともおほしすつましきをたのみにてかくほいのことくたてま
つりなからなをそのはゝかりありてうけはりたる女御なともいはせ給ぬをたに
あかすくちおしうおもひ給ふるに又かゝる事さへ侍けれはさらにいと心うくな
む思なり侍ぬるおとこのれいとはいひなから大将もいとけしからぬみ心なりけ
[378]
り斎院をも猶きこえをかしつゝしのひに御ふみかよはしなとしてけしきある事
なと人のかたり侍しをも世のためのみにもあらすわかためもよかるましき事な
れはよもさるおもひやりなきわさしいてられしとなむときのいうそくとあめの
したをなひかし給へるさまことなめれは大将のみ心をうたかひ侍らさりつるな
との給ふに宮はいとゝしき御心なれはいとものしき御けしきにてみかとゝきこ
ゆれとむかしよりみな人おもひおとしきこえて致仕のおとゝも又なくかしつく
ひとつむすめをこのかみの坊にておはするにはたてまつらておとうとの源氏に
ていときなきか元服のそひふしにとりわき又この君をもみやつかへにと心さし
て侍しにおこかましかりしありさまなりしをたれも〱あやしとやはおほした
りしみなかのみかたにこそ御心よせ侍めりしをそのほいたかふさまにてこそは
かくてもさふらひ給ふめれといとおしさにいかてさるかたにても人におとらぬ
さまにもてなしきこえんさはかりねたけなりし人のみる所もありなとこそは思
ひ侍つれとしのひてわか心のいるかたになひき給にこそは侍らめ斎院の御事は
ましてさもあらんなに事につけてもおほやけの御かたにうしろやすからすみゆ
[379]
るは春宮の御よ心よせことなる人なれはことはりになむあめるとすく〱しう
の給ひつゝくるにさすかにいとおしうなときこえつる事そとおほさるれはさは
れしはしこのこともらし侍らし内にもそうせさせ給なかくのことつみ侍ともお
ほしすつましきをたのみにてあまえて侍なるへしうち〱にせいしの給はむに
きゝ侍らすはそのつみにたゝ身つからあたり侍らむなときこえなをし給へとこ
とに御けしきもなをらすかくひと所におはしてひまもなきにつゝむところなく
さていりものせらるらむはことさらにかろめろうせらるゝにこそはとおほしな
すにいとゝいみしうめさましくこのついてにさるへき事ともかまへいてむによ
きたよりなりとおほしめくらすへし