[665]
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かきものともはものもおほえすつなかぬふねにのりて池にはなれいてゝいとす
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  こゝのへをかすみへたつるすみかにも春とつけくる鴬のこゑ帥の宮ときこ
[705]
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けなくわたりおはしまいたるになんさらにむかしの御代のこと思ひいてられ侍
とうちなき給さるへき御かけともにをくれ侍てのちはるのけちめも思ひたまへ
わかれぬをけふなむなくさめ侍ぬる又〱もときこえ給おとゝもさるへきさま
にきこえてことさらにさふらひてなんときこえ給のとやかならてかへらせ給ひ
ゝきにもきさきは猶むねうちさはきていかにおほしいつらむ世をたもち給へき
御すくせはけたれぬものにこそといにしへをくひおほす内侍のかんの君ものと
やかにおほしいつるにあはれなる事おほかりいまもさるへきおり風のつてにも
ほのめききこえ給ことたえさるへしきさきはおほやけにそうせさせ給ことある
時〻そ御たうはりのつかさかうふりなにくれの事にふれつゝ御心にかなはぬと
きそいのちなかくてかゝる世のすゑをみることゝとりかへさまほしうよろつお
ほしむつかりけるおひもておはするまゝにさかなさもまさりて院もくらへくる
[707]
しうたとへかたくそおもひきこえ給けるかくて大かくの君その日のふみうつく
しうつくり給て進士になり給ぬ年つもれるかしこきものともをえらはせ給しか
ときうたいの人わつかに三人なんありける秋のつかさめしにかうふりえて侍従
になり給ぬかの人の御ことわするゝ世なけれとおとゝのせちにまもりきこえ給
もつらけれはわりなくてなともたいめんし給はす御せうそこはかりさりぬへき
たよりにきこえ給てかたみに心くるしき御なかなり大殿しつかなる御すまひを
おなしくはひろく見所ありてこゝかしこにておほつかなき山さと人なとをもつ
とへすませんの御心にて六条京極のわたりに中宮の御ふるき宮のほとりをよま
ちをこめてつくらせ給式部卿宮あけんとしそ五十になり給ける御賀の事たいの
うへおほしまうくるにおとゝもけにすくしかたきことゝもなりとおほしてさや
うの御いそきもおなしくめつらしからん御いへゐにてといそかせ給年かへりて
ましてこの御いそきのこと御としみのことかく人まひ人のさためなとを御心に
いれていとなみ給経仏法事の日のさうそくろくなとをなんうへはいそかせ給け
るひんかしの院にわけてし給ことゝもあり御なからひましていとみやひかにき
[708]
こえかはしてなんすくし給ける世中ひゝきゆすれる御いそきなるを式部卿宮に
もきこしめしてとしころ世中にはあまねき御心なれとこのわたりをはあやにく
になさけなくことにふれてはしたなめ宮人をも御よういなくうれはしきことの
みおほかるにつらしと思をき給事こそはありけめといとをしくもからくもおほ
しけるをかくあまたかゝつらひ給へる人〻おほかるなかにとりわきたる御思ひ
すくれて世に心にくゝめてたきことに思ひかしつかれ給へる御すくせをそ我い
へまてはにほひこねとめいほくにおほすに又かくこの世にあまるまてひゝかし
いとなみ給はおほえぬよはひのすゑのさかへにもあるへきかなとよろこひ給を
北のかたは心ゆかすものしとのみおほしたり女御ゝましらひのほとなとにもお
とゝの御よういなきやうなるをいよ〱うらめしとおもひしみ給へるなるへし
八月にそ六条院つくりはてゝわたり給ひつしさるのまちは中宮の御ふる宮なれ
はやかておはしますへしたつみは殿のおはすへきまちなりうしとらはひんかし
の院にすみ給たいの御かたいぬゐのまちはあかしの御かたとおほしおきてさせ
給へりもとありける池山をもひんなき所なるをはくつしかへて水のおもむき山
[709]
のをきてをあらためてさま〱に御かた〱の御ねかいの心はへをつくらせ給
へりみなみのひんかしは山たかく春の花の木かすをつくしてうへ池のさまおも
しろくすくれておまへちかきせんさい五えうこうはいさくらふちやまふきいは
つゝしなとやうの春のもてあそひをわさとはうへて秋のせんさいをはむら〱
ほのかにませたり中宮の御まちをはもとの山にもみちのいろこかるへきうへ木
ともをそへていつみの水とをくすましやり水のをとまさるへきいはほたてくは
へたきおとして秋の野をはるかにつくりたるそのころにあひてさかりにさきみ
たれたりさかの大ゐのわたりの野山むとくにけおされたる秋なりきたのひんか
しはすゝしけなるいつみありてなつのかけによれりまへちかきせんさいくれた
けした風すゝしかるへくこたかきもりのやうなる木ともこふかくおもしろくや
まさとめきてうの花のかきねことさらにしわたしてむかしおほゆる花たちはな
なてしこさうひくたになとやうの花くさ〱をうへて春秋の木草そのなかにう
ちませたりひんかしおもてはわけてむまはのおとゝつくりらちゆいてさ月の御
あそひところにて水のほとりにさうふうへしけらせてむかひにみまやして世に
[710]
なき上めともをとゝのへたてさせ給へりにしのまちはきたおもてつきわけてみ
くらまちなりへたてのかきに松の木しけくゆきをもてあそはんたよりによせた
り冬のはしめのあさしもむすふへき菊のまかきわれはかほなるはゝそはらおさ
〱なもしらぬみ山木とものこふかきなとをうつしうへたりひかんのころほひ
わたり給ひとたひにとさためさせ給しかとさはかしきやうなりとて中宮はすこ
しのへさせ給れいのおいらかにけしきはまぬ花ちるさとそゝの夜そひてうつろ
ひ給はるの御しつらひはこのころにあはねといと心ことなり御くるま十五御前
四ゐ五ゐかちにて六位殿上人なとはさるへきかきりをえらせ給へりこちたきほ
とにはあらす世のそしりもやとはふき給へれはなにこともおとろ〱しういか
めしきことはなしいまひとかたの御けしきもおさ〱おとし給はてしゝうの君
そひてそなたはもてかしつき給へはけにかうもあるへきことなりけりとみえた
り女房のさうしまちともあて〱のこまけそおほかたのことよりもめてたかり
ける五六日すきて中宮まかてさせ給この御けしきはたさはいへといとゝころせ
し御さいはいのすくれたまへりけるをはさるものにて御ありさまの心にくゝお
[711]
もりかにおはしませはよにおもく思はれ給へることすくれてなんおはしましけ
るこのまち〱のなかのへたてにはへいともらうなとをとかくゆきかよはして
けちかくをかしきあはひにしなし給へりなか月になれはもみちむら〱色つき
て宮のおまへえもいはすおもしろし風うち吹たる夕くれに御はこのふたにいろ
いろの花もみちをこきませてこなたにたてまつらせ給へりおほきやかなるはら
はのこきあこめしおんのおりものかさねてあかくちはのうすものゝかさみいと
いたうなれてらうわたとのゝそりはしをわたりてまいるうるはしきゝしきなれ
とわらはのをかしきをなんえおほしすてさりけるさる所にさふらひなれたれは
もてなしありさまほかのにはにすこのましうをかし御せうそこには
  心から春まつそのはわかやとの紅葉を風のつてにたにみよわかき人〻御つ
かひもてはやすさまともをかし御返はこの御はこのふたにこけしきいはほなと
の心はへして五えうのえたに
  風にちる紅葉はかろし春の色をいはねの松にかけてこそみめこのいはねの
まつもこまかにみれはえならぬつくりことゝもなりけりとりあへすおもひより
[712]
給つるゆへ〱しさなとをおかしく御らんす御まへなる人〱もめてあへりお
とゝこの紅葉の御せうそこいとねたけなめり春の花さかりにこの御いらへはき
こえ給へこのころ紅葉をいひくたさむはたつたひめのおもはんこともあるをさ
ししそきて花のかけにたちかくれてこそつよきことはいてこめときこえ給もい
とわかやかにつきせぬ御ありさまのみところおほかるにいとゝ思やうなる御す
まひにてきこえかよはし給大ゐの御かたはかうかた〱の御うつろひさたまり
てかすならぬ人はいつとなくまきらはさむとおほして神無月になんわたり給け
る御しつらひことのありさまをとらすしてわたしたてまつり給ひめ君の御ため
をおほせは大かたのさほうもけちめこよなからすいともの〱しくもてなさせ
給へり