[805]
いまはかくおも〱しきほとによろつのとやかにおほししつめたる御ありさま
なれはたのみきこえさせ給へる人〱さま〱につけてみな思ふさまにさたま
りたゝよはしからてあらまほしくてすくし給ふたいのひめ君こそいとおしく思
ひのほかなる思ひそひていかにせむとおほしみたるめれかのけむかうかりしさ
まにはなすらふへきけはひならねとかゝるすちにかけても人の思ひよりきこゆ
へき事ならねは心ひとつにおほしつゝさまことにうとましとおもひきこえ給ふ
なに事をもおほししりにたる御よはひなれはとさまかうさまにおほしあつめつ
ゝはゝ君のおはせすなりにけるくちをしさもまたとりかへしおしくかなしくお
ほゆおとゝもうちいてそめ給ひてはなか〱くるしくおほせと人めをはゝかり
給ひつゝはかなき事をもえきこえ給はすくるしくもおほさるゝまゝにしけくわ
たり給ひつゝおまへの人とをくのとやかなるおりはたゝならすけしきはみきこ
え給ふことにむねつふれつゝけさやかにはしたなくきこゆへきにはあらねはた
ゝみしらぬさまにもてなしきこえ給ふ人さまのわらゝかにけちかくものしたま
へはいたくまめたち心し給へと猶をかしくあいきやうつきたるけはひのみみえ
[806]
給へり兵部卿宮なとはまめやかにせめきこえ給ふ御らうの程はいくはくならぬ
にさみたれになりぬるうれへをし給ひてすこしけちかきほとをたにゆるし給は
ゝ思ふ事をもかたはしはるけてしかなときこえ給へるをとのこらむしてなにか
はこの君たちのすき給はむはみところありなむかしもてはなれてなきこえ給ひ
そ御かへりとき〱きこえ給へとてをしへてかゝせたてまつりたまへといとゝ
うたておほえ給へはみたり心ちあしとてきこえ給はす人〱もことにやむこと
なくよせおもきなともおさ〱なしたゝはゝ君の御をちなりけるさい将はかり
の人のむすめにて心はせなとくちおしからぬかよにおとろへのこりたるをたつ
ねとり給へるさい将の君とててなともよろしくかきおほかたもおとなひたる人
なれはさるへきおり〱の御かへりなとかゝせたまへはめしいてゝことはなと
の給ひてかゝせ給ふものなとのた給ふさまをゆかしとおほすなるへしさうしみ
はかくうたてあるものなけかしさの後はこの宮なとはあはれけにきこえ給ふと
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しきみぬわさもかなとさすかにされたるところつきておほしけりとのはあいな
[807]
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るをめつらしかりていとしのひやかにおはしましたりつまとのまに御しとねま
いらせてみき丁はかりをへたてにてちかきほとなりいといたう心してそらたき
もの心にくきほとにゝほはしてつくろひおはするさまおやにはあらてむつかし
きさかしら人のさすかにあはれにみえたまふさい将の君なとも人の御いらへき
こえむ事もおほえすはつかしくてゐたるをむもれたりとひきつみ給へはいとわ
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宮の御けはひもいとえむなりうちよりほのめくおひかせもいとゝしき御にほひ
のたちそひたれはいとふかくかほりみちてかねておほしゝよりもおかしき御け
はひを心とゝめたまひけりうちいてゝ思ふ心のほとをの給ひつゝけたることの
はおとな〱しくひたふるにすき〱しくはあらていとけはひことなりおとゝ
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もりりにけるをさい将の君の御せうそこつたへにゐさりいりたるにつけていと
あまりあつかはしき御もてなしなりよろつのことさまにしたかひてこそめやす
[808]
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ぬへき御心はへなれはとさまかうさまにわひしけれはすへりいてゝもやのきは
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[809]
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るをあかすおほしてけにこのこと御心にしみにけり
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[810]
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[811]
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[812]
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[815]
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[817]
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〱にさもくみ侍らむたゝいとまことのことゝこそ思ふ給へられけれとてすゝ
りをゝしやり給へはこちなくもきこえおとしてけるかな神よゝり世にあること
をしるしをきけるなゝり日本記なとはたゝかたそはそかしこれらにこそみち
〱しくくはしき事はあらめとてわらひ給ふその人のうへとてありのまゝにい
ひいつる事こそなけれよきもあしきも世にふる人のありさまのみるにもあかす
きくにもあまることを後の世にもいひつたへさせまほしきふし〱を心にこめ
かたくていひをきはしめたるなりよきさまにいふとてはよき事のかきりえりい
てゝ人にしたかはむとては又あしきさまのめつらしき事をとりあつめたるみな
かたかたにつけたるこのよのほかのことならすかし人のみかとのさえつくりや
うかはるおなしやまとのくにのことなれはむかしいまのにかはるへしふかきこ
とあさき事のけちめこそあらめひたふるにそら事といひはてむもことの心たか
ひてなむありけるほとけのいとうるはしき心にてときをき給へる御法もはうへ
むといふ事ありてさとりなきものはこゝかしこたかふうたかひをゝきつへくな
[818]
んはうとう経の中におほかれといひもてゆけはひとつむねにありてほたいとほ
むなうとのへたゝりなむこの人のよきあしきはかりの事はかはりけるよくいへ
はすへてなに事もむなしからすなりぬやとものかたりをいとわさとのことにの
たまひなしつさてかゝるふる事の中にまろかやうにしほうなるしれものゝ物語
はありやいみしくけとをきものゝひめ君も御心のやうにつれなくそらおほめき
したるはよにあらしないさたくひなきものかたりにして世につたへさせんとさ
しよりてきこえ給へはかほゝひきいれてさらすともかくめつらかなる事はよか
たりにこそはなり侍ぬへかめれとのたまへはめつらかにやおほえ給けにこそま
たなき心ちすれとてよりゐたまへるさまいとあされたり
  思ひあまりむかしのあとをたつぬれとおやにそむけるこそたくひなきふけ
うなるはほとけのみちにもいみしくこそいひたれとのたまへとかほもゝたけ給
はねは御くしをかきやりつゝいみしくうらみ給へはからうして
  ふるきあとをたつぬれとけになかりけりこのよにかゝるおやの心はときこ
え給も心はつかしけれはいといたくもみたれ給はすかくしていかなるへき御あ
[819]
りさまならむゝらさきのうへもひめ君の御あつらへにことつけて物かたりはす
てかたくおほしたりくまのゝものかたりのゑにてあるをいとよくかきたるゑか
なとてこらむすちゐさき女君のなに心もなくてひるねしたまへる所をむかしの
ありさまおほしいてゝ女君はみたまふかゝるわらはとちたにいかにされたりけ
りまろこそなをためしにしつへく心のとけさは人にゝさりけれときこえいて給
へりけにたくひおほからぬ事ともはこのみあつめ給へりけりかしひめ君の御ま
へにてこのよなれたるものかたりなとなよみきかせ給ひそみそか心つきたるも
のゝむすめなとはおかしとにはあらねとかゝる事よにはありけりとみなれ給は
むそゆゝしきやとのたまふもこよなしとたいの御方きゝ給はゝ心をき給ひつへ
くなむうへ心あさけなる人まねともはみるにもかたはらいたくこそうつほのふ
ちはら君のむすめこそいとおもりかにはか〱しき人にてあやまちなかめれと
すくよかにいひいてたる事もしわさも女しき所なかめるそひとやうなめるとの
たまへはうつゝの人もさそあるへかめるひと〱しくたてたるおもむきことに
てよきほとにかまへぬやよしなからぬおやの心とゝめておほしたてたる人のこ
[820]
めかしきをいけるしるしにてをくれたる事おほかるはなにわさしてかしつきし
そとおやのしわさゝへおもひやらるゝこそいとをしけれけにさいへとその人の
けはひよとみえたるはかひありおもたゝしかしことはのかきりまはゆくほめを
きたるにしいてたるわさいひいてたることのなかにけにとみえきこゆる事なき
いとみをとりするわさなりすへてよからぬ人にいかてひとほめさせしなとたゝ
このひめ君のてむつかれ給ふましくとよろつにおほしのたまふまゝはゝのはら
きたなきむかしものかたりもおほかるを此比心みえに心つきなしとおほせはい
みしくえりつゝなむかきとゝのへさせゑなとにもかゝせ給ひける中将の君をこ
なたにはけとをくもてなしきこえ給へれとひめ君の御方にはさしもさしはなち
きこえ給はすならはし給ふわかよの程はとてもかくてもおなしことなれとなか
らむよを思ひやるになをみつきおもひしみぬる事ともこそとりわきてはおほゆ
へけれとてみなみおもてのみすのうちはゆるし給へりたいはむ所女はうのなか
はゆるし給はすあまたおはせぬ御なからひにていとやむことなくかしつききこ
え給へりおほかたの心もちゐなともいともの〱しくまめやかにものし給ふき
[821]
みなれはうしろやすくおほしゆつれりまたいはけたる御ひゝなあそひなとのけ
はひのみゆれはかの人のもろともにあそひてすくしゝとし月のまつ思ひいてら
るれはひゐなのとのゝみやつかへいとよくし給ひており〱にうちしほたれ給
けりさもありぬへきあたりにははかなしことものたまひふるゝはあまたあれと
たのみかくへくもしなさすさるかたになとかはみさらむと心とまりぬへきをも
しゐてなをさり事にしなしてなをかのみとりのそてをみえなをしてしかなと思
ふ心のみそやむことなきふしにはとまりけるあなかちになとかゝつらひまとは
ゝたふるゝ方にゆるし給ひもしつへかめれとつらしとおもひしおり〱いかて
人にもことはらせたてまつらむとおもひをきしわすれかたくてさうしみはかり
にはをろかならぬあはれをつくしみせておほかたにはいられおもへらすせうと
の君たちなともなまねたしなとのみおもふことおほかりたいのひめ君の御あり
さまを右中将はいとふかく思ひしみていひよるたよりもいとはかなけれはこの
君をそかこちよりけれとひとのうへにてはもとかしきわさなりけりとつれなく
いらへてそものし給ひけるむかしのちゝおとゝたちの御なからひににたり内の
[822]
おとゝは御こともはら〱いとおほかるにそのおひいてたるおほえ人からにし
たかひつゝ心にまかせたるやうなるおほえ御いきほひにてみなゝしたて給ふ女
はあまたもおはせぬを女御もかくおほしゝことのとゝこほり給ひひめ君もかく
ことたかふさまにてものしたまへはいとくちおしとおほすかのなてしこをわす
れ給はすものゝおりにもかたりいて給ひしことなれはいかになりにけむものは
かなかりけるおやの心にひかれてらうたけなりしひとを行ゑしらすなりにたる
ことすへて女こといはむものなんいかにもいかにもめはなつましかりけるさか
しらにわかこといひてあやしきさまにてはふれやすらむとてもかくてもきこえ
いてこはとあはれにおほしわたる君たちにもゝしさやうなるなのりする人あら
はみゝとゝめよ心のすさひにまかせてさるましき事もおほかりし中にこれはい
としかをしなへてのきはにもおもはさりし人のはかなきものうむしをしてかく
すくなかりけるものゝくさはひひとつをうしなひたることのくちおしき事とつ
ねにのたまひいつなかころなとはさしもあらすうちわすれ給ひけるを人のさま
〱につけておんなこかしつきたまへるたくひともにわかおもほすにしもかな
[823]
はぬかいと心うくほいなくおほすなりけり夢みたまひていとよくあはするもの
めしてあはせ給ひけるにもしとしころ御心にしられ給はぬ御こを人のものにな
してきこしめしいつることやときこえたりけれは女この人のこになる事はおさ
おさなしかしいかなる事にかあらむなとこのころそおほしのたまふへかめる