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[952]
かきやらてなき給はゝ君いてやとて
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[953]
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そはものせられけめさおもはるる我身のふかうなるにこそはあらめつれなうて
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なときこえわつらひておはすひめ君をたにみたてまつらむときこえ給へれとい
たしたてまつるへくもあらすおとこきみたち十なるは殿上し給いとうつくし人
にほめられてかたちなとようはあらねといとらう〱しう物の心やう〱しり
給へりつきの君は八はかりにていとらうたけにひめ君にもおほえたれはかきな
てつゝあこをこそは恋しき御かたみにもみるへかめれなとうちなきてかたらひ
給宮にも御気色給はらせ給へとかせをこりてためらひ侍程にてとあれははした
[956]
なくていて給ぬこきんたちをは車にのせてかたらひおはす六条殿にはえゐてお
はせねはとのにとゝめてなをこゝにあれきてみにも心やすかるへくとの給うち
なかめていと心ほそけにみをくりたるさまともいとあはれなるにもの思くはゝ
りぬる心地すれと女きみの御さまのみるかひありてめてたきにひか〱しき御
さまを思くらふるにもこよなくてよろつをなくさめ給うちたえてをとつれもせ
すはしたなかりしにことつけかほなるを宮にはいみしうめさましかりなけき給
はるのうへもきゝ給てこゝにさへうらみらるゝゆへになるかくるしきことゝな
けき給をおとゝの君いとおしとおほしてかたき事なりをのか心ひとつにもあら
ぬ人のゆかりに内にも心をきたるさまにおほしたなり兵部卿の宮なともえし給
ときゝしをさいへと思やりふかうおはする人にてきゝあきらめうらみとけ給に
たなりをのつから人のなからひはしのふることゝ思へとかくれなき物なれはし
かおもふへきつみもなしとなん思侍との給かゝることゝものさはきにかむの君
の御けしきいよ〱はれまなきを大将はいとおしと思あつかひきこえてこのま
いり給はむとありしこともたえきれてさまたけきこえつるをうちにもなめく心
[957]
あるさまにきこしめし人〱もおほすところあらむおほやけ人をたのみたる人
はなくやはあると思かへしてとしかへりてまいらせたてまつり給おとこたうか
ありけれはやかてその程にきしきいといまめかしくになくてまいり給かた〱
のおとゝたちこの大将の御いきをひさへさしあひ宰相中将ねんころに心しらひ
きこえ給せうとのきみたちもかゝるおりにとつとひついせうしよりてかしつき
給さまいとめてたし承香殿のひんかしおもてに御局したりにしに宮の女御はお
はしけれはめたうはかりのへたてなるに御心の中ははるかにへたゝりけんかし
御方〱いつれとなくいとみかはし給てうちわたり心にくゝおかしきころをひ
なりことにみたりかはしきかういたちあまたもさふらひ給はす中宮こき殿の女
御この宮の女御左大殿のゝ女御なとさふらひ給さては中納言さい将の御むすめ
ふたりはかりそ候給けるたうかはかた〱にさと人まいりさまことにけににき
わゝしきみ物なれはたれも〱きよらをつくし袖くちのかさなりこちたくめて
たくとゝのへ給春宮の女御もいとはなやかにもてなし給てみやはまたわかくお
はしませとすへていといまめかし御前中宮の御方すさく院とにまいりてよいた
[958]
うふけにけれは六条の院にはこのたひは所せしとはふき給朱雀院よりかへりま
いりて春宮の御方〱めくるほとによあけぬほの〱とおかしきあさほらけに
いたくえひみたれたるさましてたけかはうたひける程をみれはうちの大殿のき
んたちは四五人はかり殿上人のなかにこゑすくれかたちきよけにてうちつゝき
給へるいとめてたしわらはなる八らう君はむかひはらにていみしうかしつき給
かいとうつくしうて大将とのゝ大らう君とたちなみたるをかむのきみもよそ人
とみ給はねは御めとまりけりやむことなくましらひなれ給へる御かた〱より
もこの御つほねの袖くちおほかたのけはひいまめかしうおなしものゝ色あひか
さなりなれとものよりことにはなやかなりさうしみも女房たちもかやうに御心
やりてしはしはすくい給はましとおもひあへりみなおなしことかつけわたすわ
たのさまもにほひかことにらう〱しうしない給てこなたはみつむまやなりけ
れとけはひにきはゝしく人〱心けさうしそしてかきりあるみあるしなとのこ
とゝもゝしたるさまことにようゐありてなむ大将殿せさせ給へりけるとのゐと
ころにゐ給てひゝとひきこえくらし給ことはよさりまかてさせたてまつりてん
[959]
かゝるついてにとおほしうつるらん御宮つかへなむやすからぬとのみおなしこ
とをせめきこえ給へと御かへりなしさふらふ人〱そおとゝの心あはたゝしき
程ならてまれ〱の御まいりなれは御心ゆかせ給はかりゆるされありてをまか
てさせ給へときこえさせ給しかはこよひはあまりすか〱しうやときこえたる
をいとつらしと思てさはかりきこえし物をさも心にかなはぬよかなとうちなけ
きてゐ給へり兵部卿の宮御前の御あそひに候給てしつ心なくこの御つほねのあ
たり思やられ給へはねんしあまりてきこえ給へり大将はつかさの御さうしにそ
おはしけるこれよりとてとりいれたれはしふ〱にみたまふ
  みやま木にはねうちかはしゐる鳥のまたなくねたき春にもあるかなさへつ
るこゑもみゝとゝめられてなんとありいとおしうおもてあかみてきこえんかた
なく思ゐ給へるにうへわたらせ給月のあかきに御かたちはいふよしなくきよら
にてたゝかのおとゝの御けはひにたかふところなくおはしますかゝる人は又も
おはしけりとみたてまつり給かの御心はへはあさからぬもうたてもの思くはゝ
りしをこれはなとかはさしもおほえさせ給はんいとなつかしけに思しことのた
[960]
かひにたるうらみをの給するにおもてをかんかたなくそおほえ給やかほをもて
かくして御いらへもえきこえたまはねはあやしうおほつかなきわさかなよろこ
ひなとも思しり給はんと思ふことあるをきゝいれ給はぬさまにのみあるはかゝ
る御くせなりけりとの給はせて
  なとてかくはひあひかたきむらさきを心にふかく思ひそめけむこくなりは
つましきにやとおほせらるゝさまいとわかくきよらにはつかしきをたかひ給へ
るところやあると思なくさめてきこえ給宮つかへのらうもなくてことしかゝい
し給へる心にや
  いかならん色ともしらぬむらさきを心してこそ人はそめけれいまよりなむ
思給へしるへきときこえ給へはうちえみてそのいまよりそめ給はんこそかいな
かへいことなれうれふへき人あらはことはりきかまほしくなむといたううらみ
させ給御けしきのまめやかにわつらはしけれはいとうたてもあるかなとおほえ
ておかしきさまをもみえたてまつらしむつかしきよのくせなりけりと思にまめ
たちてさふらひたまへはえおほすさまなるみたれこともうちいてさせたまはて
[961]
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とゝしつ心なけれはいそきまとはし給身つからもにけなきこともいてきぬへき
身なりけりと心うきにえのとめ給はすまかてさせ給へきさまつき〱しきこと
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され給けるさらは物こりしてまたいたしたてぬ人もそあるいとこそからけれ人
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れとひたふるにあさきかたにおもひうとまれしとていみしう心ふかきさまにの
給契てなつけ給もかたしけなう我はわれと思ものをとおほす御てくるまよせて
こなたかなたの御かしつき人とも心もとなかり大将もいと物むつかしうたちそ
ひさはき給まてえおはしましはなれすかういときひしきちかきまもりこそむつ
かしけれとにくませ給
[962]
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なきことなれとも御ありさまけはひをみたてまつる程はおかしくもやありけん
のをなつかしみあかいつへきよをおしむへかめる人も身をつみて心くるしうな
むいかてかきこゆへきとおほしなやむもいとかたしけなしとみたてまつる
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かてこよひかのとのにとおほしまうけたるをかねてはゆるされあるましきによ
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ちやすみ侍らむ程よそ〱にてはいとおほつかなく侍らむをとおいらかに申な
い給てやかてはたしたてまつり給ちゝおとゝにはかなるをきしきなきやうにや
とおほせとあなかちにさはかりのことをいひさまたけんも人の心をくへしとお
ほせはともかくももとよりしたいならぬ人の御ことなれはとそきこえ給ける六
条殿そいとゆくりなくほいなしとおほせとなとかはあらむ女もしほやくけふり
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[963]
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[964]
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に心えかたく思ける御返きこゆるもはつかしけれとおほつかなくやはとてかき

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[965]
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やとさましわひ給て御ことかきならしてなつかしうひきなし給しつまをとおも
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なるふることなれと御ことくさになりてなむなかめさせ給ける御文はしのひ
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六条とのゝ御前のふち山ふきのおもしろきゆふはへをみ給につけてもまつみる
かひありてい給へりし御さまのみおほしいてらるれは春の御前をうちすてゝこ
なたにわたりて御らむすくれたけのませにはさとなうさきかゝりたるにほひい
とおもしろしいろに衣をなとの給て
[966]
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へつゝなとの給もきく人なしかくさすかにもてはなれたることはこのたひそお
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[967]
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かしつき給へはえしもかけはなれ給はすまめやかなるかたのたのみはおなしこ
とにてなむものし給けるひめ君をそたえかたく恋きこえ給へとたえてみせたて
まつり給はすはかき御心のうちにこのちゝ君をたれも〱ゆるしなううらみき
こえていよ〱へたて給ことのみまされは心ほそくかなしきにおとこ君たちは
つねにまいりなれつゝかむのきみの御ありさまなとをもをのつからことにふれ
てうちかたりてまろらをもらうたくなつかしうなんし給あけくれおかしきこと
をこのみてものし給なといふにうらやましうかやうにてもやすらかにふるまう
身ならさりけんをなけき給あやしうおとこ女につけつゝ人に物を思はするかむ
[968]
のきみにそおはしけるそのとしの十一月にいとおかしきちこをさへいたきいて
たまへれは大将も思やうにめてたしともてかしつき給ことかきりなしそのほと
のありさまいはすとも思ひやりつへきことそかしちゝおとゝもをのつから思や
うなる御すくせとおほしたりはさとかしつき給きむたちにも御かたちなとはお
とり給はすとうの中将もこのかむの君をいとなつかしきはらからにてむつひき
こえ給ものからさすかなる御けしきうちませつゝ宮つかひにかひありて物し給
はまし物をとこのはか君のうつくしきにつけてもいまゝてみこたちのおはせぬ
なけきをみたてまつるにいかにめいほくあらましとあまりのことをそ思ての給
おほやけことはあるへきさまにしりなとしつゝまいり給ことそやかてかくてや
みぬへかめるさてもありぬへきことなりかしまことやかのうちのおほいとのゝ
御むすめのないしのかみのそみしきみもさるをゝくせなれはいろめかしうさま
よふ心さへそひてもてわつらひ給女御もついにあわ〱しきことこの君そひき
いてんとゝもすれは御むねつふし給へとおとゝのいまはなましらいそとせいし
の給をたにきゝいれすましらひいてゝものし給いかなるおりにか有けむ殿上人
[969]
あまたおほえことなるかきりこの女御の御かたにまいりて物のねなとしらへな
つかしき程のひやうしうちくはへてあそふ秋のゆふへのたゝならぬに宰相の中
将もよりおはしてれいならすみたれてものなとの給を人〱めつらしかりてな
を人よりことにもとめつるにこのあふみの君人〱のなかをゝしわけていてゐ
給あなうたてやこはなそとひきいるれといとさかなけにゝらみてはりゐたれは
わつらはしくてあふなきことやの給いてんとつきかはすにこのよにめなれぬま
め人をしもこれそなゝとめてゝさゝめきさはくこゑいとしるし人〱いとくる
しと思にこゑいとさはやかにて
  興津ふねよるへなみ路にたゝよはゝさほさしよらむとまりをしへよたなゝ
しをふねこきかへりおなし人をやあなはるやといふをいとあやしうこの御方に
はかうようゐなきこときこえぬものをと思まはすにこのきく人なりけりとおか
しうて
  よるへなみ風のさはかす舟人も思はぬかたにいそつたいせすとてはしたな
かめりとや