[1507]
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[1508]
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[1509]
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[1510]
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[1526]
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なめるをことなのこひたまひそかしとのたまへはかゝるつゐてしも侍らしかし
又侍りとも夜のまのほとしらぬ命のたのむへきにも侍らぬをさらはたゝかゝる
ふるもの世に侍けりとはかりしろしめされ侍らなむ三条の宮に侍しこしゝうは
かなくなり侍にけるとほのきゝ侍しそのかみむつましうおもふ給へしおなし程
の人おほくうせ侍にける世のすゑにはるかなるせかいよりつたはりまうてきて
このいつとせむとせのほとなむこれにかくさふらひ侍しろしめさしかしこのこ
[1528]
ろとう大納言と申なる御このかみの右衛門のかみにてかくれ給にしはものゝつ
ゐてなとにやかの御うへとてきこしめしつたふる事も侍らむすき給ていくはく
もへたゝらぬ心ちのみし侍そのおりのかなしさもまた袖のかはくおり侍らすお
もふたまへらるゝをかくおとなしくならせ給にける御よはひのほとも夢のやう
になんかの権大納言の御めのとに侍しは弁かはゝになむ侍しあさ夕につかうま
つりなれ侍しに人かすにも侍らぬみなれと人にしらせす御心よりはたあまりけ
ることをおり〱うちかすめのたまいしをいまはかきりになり給にし御やまひ
のすゑつかたにめしよせていさゝかの給をくことなむ侍しをきこしめすへきゆ
へなんひとこと侍れとかはかりきこえいて侍にのこりをとおほしめす御心侍ら
はのとかになんきこしめしはて侍へきわかき人〱もかたはらいたくさしすき
たりとつきしろひ侍もことはりになむとてさすかにうちいてすなりぬあやしく
夢かたりかむなきやうのものゝとはすかたりすらむやうにめつらかにおほさる
れとあはれにおほつかなくおほしわたることのすちをきこゆれはいとおくゆか
しけれとけに人めもしけしさしくみにふる物かたりにかゝつらひて夜をあかし
[1529]
はてむもちこ〱しかるへけれはそこはかとおもひわくことはなきものからい
にしへの事ときゝ侍も物あはれになんさらはかならすこのゝこりきかせ給へ霧
はれゆかははしたなかるへきやつれをおもなく御らんしとかめられぬへきさま
なれはおもふたまふる心のほとよりはくちおしうなむとてたちたまふにかのお
はしますてらのかねのこゑかすかにきこえてきりいとふかくたちわたれりみね
のやへ雲おもひやるへたておほくあはれなるになをこのひめ君たちの御心のう
ちとも心くるしうなにことをおほしのこすらむかくいとおくまりたまへるもこ
とはりそかしなとおほゆ
あさほらけ家路もみえすたつねこしまきのを山は霧こめてけり心ほそくも
侍かなとたちかへりやすらひ給へるさまを宮この人のめなれたるたに猶いとこ
とにおもひきこえたるをまいていかゝはめつらしうみきこえさらん御返きこえ
つたへにくけにおもひたれはれいのいとつゝましけにて
雲のゐる嶺のかけちを秋きりのいとゝへたつるころにもあるかなすこしう
ちなけひたまへるけしきあさからすあはれなりなにはかりおかしきふしはみえ
[1530]
ぬあたりなれとけにこゝろくるしきことおほかるにもあかうなりゆけはさすか
にひたおもてなる心ちして中〱なるほとにうけたまはりさしつることおほか
るのこりはいますこしおもなれてこそはうらみきこえさすへかめれさるはかく
世の人めひてもてなし給へくは思はすに物おほしわかさりけりとうらめしうな
んとてとのゐ人かしつらひたるにしおもてにおはしてなかめ給ふあしろは人さ
はかしけなりされとひをもよらぬにやあらむすさましけなるけしきなりと御と
もの人〱みしりていふあやしき舟ともにしはかりつみをの〱なにとなき世
のいとなみともにゆきかふさまとものはかなき水のうへにうかひたるたれもお
もへはおなしことなるよのつねなさなりわれはうかはすたまのうてなにしつけ
き身とおもふへき世かはとおもひつゝけらるすゝりめしてあなたにきこえ給ふ
橋ひめの心をくみてたかせさすさほのしつくに袖そぬれぬるなかめ給ふら
むかしとてとのひ人にもたせたまへりいとさむけにいらゝきたるかほしてもて
まいる御かへりかみのかなとおほろけならむはゝつかしけなるをときをこそか
ゝるおりにはとて
[1531]
さしかへるうちの河おさあさ夕のしつくや袖をくたしはつらむ身さへうき
てといとおかしけにかき給へりまおにめやすくもものし給けりと心とまりぬれ
と御車ゐてまいりぬと人〱さはかしきこゆれはとのゐ人はかりをめしよせて
かへりわたらせたまはむほとにかならすまいるへしなとのたまふぬれたる御そ
ともはみなこの人にぬきかけ給ひてとりにつかはしつる御なをしにたてまつり
かへつおい人の物かたり心にかゝりておほしいてらるおもひしよりはこよなく
まさりておかしかりつる御けはひともおも影にそひて猶おもひはなれかたき世
なりけりと心よはく思しらる御ふみたてまつり給ふけさうたちてもあらすしろ
きしきしのあつこえたるにふてひきつくろひえりてすみつきみところありてか
き給ふうちつけなるさまにやとあひなくとゝめ侍てのこりおほかるも心くるし
きわさになむかたはしきこえをきつるやうにいまよりはみすのまへも心やすく
おほしゆるすへくなむ御山こもりはて侍らむ日かすもうけたまはりをきていふ
せかりしきりのまよひもはるけ侍らむなとそいとすくよかにかき給へるさこん
のさうなる人御つかひにてかのおい人たつねてふみもとらせよとのたまふとの
[1532]
ひ人かさむけにてさまよひしなとあはれにおほしやりておほきなるひはりこや
うのものあまたせさせ給ふまたの日かの御てらにもたてまつり給ふ山こもりの
そうともこの比のあらしにはいと心ほそくくるしからむをさておはしますほと
のふせ給ふへからんとおほしやりてきぬわたなとおほかりけり御おこなひはて
ゝいてたまふあしたなりけれはをこなひ人ともにわたきぬけさ衣なとすへてひ
とくたりのほとつつあるかきりの大とこたちに給ふとのゐ人か御ぬきすてのえ
むにいみしきかりの御そともえならぬしろきあやの御そのなよ〱といひしら
すにほへるをうつしきて身をはたえかへぬものなれはにつかはしからぬ袖のか
を人ことにとかめられめてらるゝなむ中〱所せかりける心にまかせて身をや
すくもふるまはれすいとむくつけきまて人のおとろくにほひをうしなひてはや
とおもへと所せき人の御うつりかにてえもすゝきすてぬそあまりなるや君はひ
め君の御返こといとめやすくこめかしきをおかしくみ給ふ宮にもかく御せうそ
こありきなと人〱きこえさせ御らむせさすれはなにかはけさうたちてもてな
ひ給はむも中〱うたてあらむれいのわか人にゝぬみ心はえなめるをなからむ
[1533]
後もなとひとことうちほのめかしてしかはさやうにて心そとめたらむなとの給
けり御みつからもさま〱の御とふらひの山のいはやにあまりしことなとのた
まへるにまうてんとおほして三の宮のかやうにおくまりたらむあたりのみまさ
りせむこそおかしかるへけれとあらましことにたにのたまふ物をきこえはけま
して御心さはかしたてまつらむとおほしてのとやかなる夕くれにまいり給へり
れいのさま〱なる御物かたりきこえかはし給ふついてにうちの宮の御事かた
りいてゝみしあか月のありさまなとくはしくきこえ給ふに宮いとせちにおかし
とおほひたりされはよと御けしきをみていとゝ御心うこきぬへくいひつゝけた
まふさてそのありけんかへりことはなとかみせ給はさりしまろならましかはと
うらみ給ふさかしいとさま〱御らむすへかめるはしをたにみせさせたまはぬ
かのわたりはかくいともむもれたる身にひきこめてやむへきけはひにも侍らね
はかならす御らむせさせはやとおもひ給れといかてかたつねよらせ給へきかや
すきほとこそすかまほしくはいとよくすきぬへきよに侍りけれうちかくろへつ
ゝおほかめるかなさるかたにみところありぬへき女のもの思はしきうちしのひ
[1534]
たるすみかとも山里めひたるくまなとにをのつから侍へかめりこのきこえさす
るわたりはいとよつかぬひしりさまにてこち〱しうそあらむとゝしころ思あ
なつり侍てみゝをたにこそとゝめ侍らさりけれほのかなりし月影のみをとりせ
すはまをならんはやけはひありさまはたさはかりならむをそあらまほしきほと
ゝはおほえ侍へきなときこえたまふはて〱はまめたちていとねたくおほろけ
の人に心うつるましき人のかくふかくおもへるをおろかならしとゆかしうおほ
すことかきりなくなり給ひぬなをまた〱よくけしきみたまへと人をすすめ給
てかきりある御身のほとのよたけさをいとはしきまて心もとなしとおほしたれ
はおかしくていてやよしなくそ侍しはし世中に心とゝめしと思ふ給るやうある
身にてなをさりこともつゝましう侍を心なからかなはぬ心つきそめなはおほき
におもひにたかふへきことなむ侍へきときこえ給へはいてあなこと〱しれひ
のおとろおとろしきひしりことはみはてゝしかなとてわらひ給ふ心のうちには
かのふる人のほのめかししすちなとのいとゝうちおとろかれて物あはれなるに
おかしとみることもめやすしときくあたりもなにはかり心にもとまらさりけり
[1535]
十月になりて五六日のほとにうちへまうてたまふあしろをこそこの比は御らむ
せめときこゆる人〱あれとなにかそのひをむしにあらそふ心にてあしろにも
よらむとそきすて給てれいのいとしのひやかにていてたち給かろらかにあしろ
くるまにてかとりのなをしさしぬきぬはせてことさらひき給へり宮まちよろこ
ひ給て所につけたる御あるしなとおかしうしなしたまふくれぬれはおほとなふ
らちかくてさき〱みさしたまへるふみとものふかきなとあさりもさうしおろ
してきなといはせ給ふうちもまとろます河かせのいとあらましきに木葉のちり
かふをと水のひゝきなとあはれもすきて物おそろしく心ほそき所のさまなりあ
けかたちかくなりぬらんと思ふほとにありししのゝめおもひいてられて琴のね
のあはれなることのついてつくりいてゝさきのたひの霧にまとはされ侍し明ほ
のにいとめつらしきものゝねひとこゑうけたまはりしのこりなむ中〱にいと
いふかしうあかすおもふたまへらるゝなときこえたまふ色をもかをもおもひす
てゝし後むかしきゝしこともみなわすれてなむとのたまへと人めして琴とりよ
せていと月なくなりにたりやしるへするものゝねにつけてなんおもひいてらる
[1536]
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らにやとこそおもふたまへしかとて心とけてもかきたてたまはすいてあなさか
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へはみねのまつ風のもてはやすなるへしいとたと〱しけにおほめき給て心は
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のめくさうのことのねこそ心えたるにやときくおり侍れと心とゝめてなともあ
らてひさしうなりにけりや心にまかせてをの〱かきならすへかめるは川なみ
はかりやうちあはすらむろなうものゝようにすはかりのはうしなともとまらし
となむおほえ侍とてかきならし給へとあなたにきこえたまへとおもひよらさり
しひとりことをきゝ給ひけんたにある物をいとかたはならむとひきいりつゝみ
なきゝ給はすたひ〱そゝのかしたまへととかくきこえすさひてやみ給ひぬめ
れはいとくちおしうおほゆそのついてにもかくあやしうよつかぬおもひやりに
[1537]
てすくすありさまとものおもひのほかなる事なとはつかしうおほひたり人にた
にいかてしらせしとはくゝみすくせとけふあすともしらぬ身のゝこりすくなさ
にさすかにゆくすゑとをき人はおちあふれてさすらへん事これのみこそけによ
をはなれんきはのほたしなりけれとうちかたらひ給へは心くるしうみたてまつ
りたまふわさとの御うしろみたちはかはかしきすちには侍すともうと〱しか
らすおほしめされんとなむおもふたまふるしはしもなからへ侍らむいのちの程
はひとこともかくうちいてきこえさせてむさまをたかへ侍ましくなむなと申給
へはいとうれしきことゝおほしのの給さてあか月かたの宮の御おこなひしたま
ふほとにかのおい人めしいてゝあひたまへりひめ君の御うしろみにてさふらは
せ給ふ弁の君とそいひける年も六十にすこしたらぬほとなれとみやひかにゆへ
あるけはひして物なときこゆ古権大納言の君のよとともにものをおもひつゝや
まひつきはかなくなりたまひにしありさまをきこえいてゝなくことかきりなし
けによその人のうへときかむたにあはれなるへきふることゝもをましてとしこ
ろおほつかなくゆかしういかなりけんことのはしめにかと仏にもこの事をさた
[1538]
かにしらせ給へとねんしつるしるしにやかく夢のやうにあはれなるむかしかた
りをおほえぬついてにきゝつけつらむとおほすに涙とゝめかたかりけりさても
かくそのよの心しりたる人ものこりたまへりけるをめつらかにもはつかしうも
おほゆることのすちに猶かくいひつたふるたくひや又もあらむとしころかけて
もきゝをよはさりけるとのたまへはこしゝうと弁とはなちてまたしる人侍らし
ひとことにてもまたことひとにうちまねひ侍らすかくものはかなくかすならぬ
身のほとに侍れとよるひるかの御かけにつきたてまつりて侍しかはをのつから
ものゝけしきをもみたてまつりそめしに御心よりあまりておほしける時〻たゝ
ふたりのなかになんたまさかの御せうそこのかよひも侍しかたはらいたけれは
くはしくきこえさせすいまはのとちめになり給ていさゝかのたまいをくことの
侍しをかゝる身にはをき所なくいふせくおもふ給へわたりつゝいかにしてかは
きこしめしつたふへきとはか〱しからぬ念すのついてにも思ふたまへつるを
仏は世におはしましけりとなんおもふたまへしりぬる御らむせさすへきものも
侍りいまはなにかはやきもすて侍なむかくあさ夕のきえをしらぬ身のうちすて
[1539]
侍なはうちゝるやうもこそといとうしろめたくおもふたまふれとこの宮わたり
にもときときほのめかせたまふをまちいてたてまつりてしはすこしたのもしく
かゝるおりもやとねんし侍へるちからいてまうてきてなむさらにこれはこの世
のことにも侍らしとなく〱こまかにむまれたまひけるほとのこともよくおほ
えつゝきこゆむなしうなり給しさはきにはゝに侍し人はやかてやまひつきてほ
ともへすかくれ侍にしかはいとゝおもふたまへしつみふち衣たちかさねかなし
きことをおもひたまへし程にとしころよからぬ人の心をつけたりけるか人をは
かりこちてにしのうみのはてまてとりもてまかりにしかは京のことさへあとた
えてその人もかしこにてうせ侍にし後とゝせあまりにてなんあらぬよの心ちし
てまかりのほりたりしをこの宮はちゝかたにつけてわらはよりまいりかよふゆ
へ侍しかはいまはかう世にましらふへきさまにも侍らぬをれせい院の女御殿の
御かたなとこそはむかしきゝなれたてまつりしわたりにてまいりよるへく侍し
かとはしたなくおほえ侍てえさしいて侍らてみ山かくれのくち木になりにて侍
なりこしゝうはいつかうせ侍にけんそのかみのわかさかりとみ侍し人はかすゝ
[1540]
くなくなり侍にけるすゑのよにおほくの人にをくるゝいのちをかなしくおもひ
給へてこそさすかにめくらひ侍れなときこゆるほとにれひのあけはてぬよしさ
らはこのむかし物かたりはつきすへくなんあらぬまた人きかぬ心やすき所にて
きこえんしゝうといひし人はほのかにおほゆるはいつゝむつはかりなりし程に
やにはかにむねをやみてうせにきとなむきくかゝるたひめむなくはつみおもき
身にてすきぬへかりける事なとのたまふさゝやかにおしまきあわせたるほくと
ものかひくさきをふくろにぬひいれたるとりいててたてまつるおまへにてうし
なはせ給へわれなをいくへくもあらすなりにたりとのたまはせてこの御ふみを
とりあつめてたまはせたりしかはこしゝうにまたあひみ侍らむついてにさたか
につたへまいらせむとおもひたまへしをやかてわかれ侍にしもわたくしことに
はあかすかなしうなんおもふ給ふるときこゆつれなくてこれはかくいたまいつ
かやうのふる人はとはすかたりにやあやしきことのためしにいひいつらむとく
るしくおほせとかへす〱もちらさぬよしをちかひつるさもやとまたおもひみ
たれたまふ御かゆこはいひなとまいりたまふ昨日はいとまひなりしをけふはう
[1541]
ちの御物いみもあきぬらん院の女一の宮なやみ給ふ御とふらひにかならすまい
るへけれはかた〱いとまなく侍をまたこのころすくして山のもみち散らぬさ
きにまいるへきよしきこえたまふかくしはしはたちよらせたまふひかりに山の
かけもすこしものあきらむる心ちしてなんなとよろこひきこえたまふかへり給
ひてまつこのふくろをみ給へはからのふせむれうをぬひて上といふもしをうへ
にかきたりほそきくみしてくちのかたをゆひたるにかの御名のふうつきたりあ
くるもおそろしうおほえたまふ色〱のかみにてたまさかにかよひける御ふみ
の返こといつゝむつそあるさてはかの御てにてやまひはおもくかきりになりに
たるにまたほのかにもきこえむことかたくなりぬるをゆかしうおもふことはそ
ひにたり御かたちもかはりておはしますらむかさま〱かなしきことをみちの
くにかみ五六枚につふ〱とあやしきとりのあとのやうにかきて
めのまへにこの世をそむく君よりもよそにわかるゝ玉そかなしき又はしに
めつらしくきゝ侍るふた葉のほともうしろめたうおもふたまふるかたはなけれ
と
[1542]
命あらはそれともみまし人しれぬ岩ねにとめし松のおいすゑかきさしたる
やうにいとみたりかはしうてこしゝうの君にとうへにはかきつけたりしみとい
ふむしのすみかになりてふるめきたるかひくさゝなからあとはきえすたゝいま
かきたらんにもたかはぬことの葉とものこま〱とさたかなるをみ給ふにけに
おちゝりたらましよとうしろめたういとおしき事ともなりかゝること世にまた
あらむやと心ひとつにいとゝ物思はしさそひてうちへまいらむとおほしつるも
いてたゝれす宮のおまへにまいり給へれはいとなに心もなくわかやかなるさま
し給ひて経よみたまふをはちらひてもてかくし給へりなにかはしりにけりとも
しられたてまつらむなとこゝろにこめてよろつにおもひゐたまへり