[1547]
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[1548]
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[1549]
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[1550]
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[1551]
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[1552]
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[1553]
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[1554]
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[1560]
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[1561]
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[1562]
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[1563]
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めりとうらめしくおほすもみちのさかりにふみなとつくらせ給はむとていてた
ち給しをかくこのわたりの御せうようひむなきころなれはおほしとまりて口お
しくなん御いみもはてぬかきりあれは涙もひまもやとおほしやりていとおほく
かきつゝけ給へりしくれかちなるゆふつかた
  をしかなく秋の山さといかならむこ萩か露のかゝる夕くれたゝ今の空のけ
しきおほしゝらぬかほならむもあまり心つきなくこそ有へけれかれゆく野へも
わきてなかめらるゝ比になむなとありけにいとあまり思しらぬやうにてたひ
〱になりぬるをなをきこえ給へなとなかの宮をれいのそゝのかしてかゝせた
てまつり給けふまてなからへてすゝりなとちかくひきよせてみるへき物とやは
思し心うくもすきにけるひかすかなとおほすに又かきくもりものみえぬ心ちし
[1564]
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しはへるかけにかきりありけるにこそとおほゆるもうとましう心うくてとらう
たけなるさまになきしほれておはするもいと心くるし夕くれのほとよりきける
御つかひよひすこしすきてそきたるいかてかゝへりまいらんこよひはたひねし
てといはせ給へとたちかへりこそまいりなめといそけはいとおしうて我さかし
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  なみたのみきりふたかれる山里はまかきに鹿そもろこゑになくゝろきかみ
によるのすみつきもたと〱しけれはひきつくろふところもなくふてにまかせ
てをしつつみていたし給ひつ御つかひはこはたの山のほともあめもよにいとお
そろしけなれとさやうの物をちすましきをやえりいて給けむゝつかしけなるさ
ゝのくまをこまひきとゝむるほともなくうちはやめてかた時にまいりつきぬ御
まへにてもいたくぬれてまいりたれはろくたまふさき〱御らむせしにはあら
ぬてのいますこしおとなひまさりてよしつきたるかきさまなとをいつれかいつ
れならむとうちもをかす御らむしつゝとみにもおほとのこもらねはまつとてお
[1565]
きおはしまし又御らむするほとのひさしきはいかはかり御心にしむことならん
とおまへなる人〻さゝめききこえてにくみきこゆねふたけれはなめりまたあさ
きりふかきあしたにいそきおきてたてまつり給
  あさきりにともまとはせる鹿の音をおほかたにやはあはれともきくもろこ
ゑはおとるましくこそとあれとあまりなさけたゝんもうるさしひとゝころの御
かけにかくろへたるをたのみところにてこそなにことも心やすくてすこしつれ
心より外になからへておもはすなることのまきれつゆにてもあらはうしろめた
けにのみおほしをくめりしなき御たまにさへきすやつけたてまつらんとなへて
いとつゝましうおそろしうてきこえ給はすこの宮なとをかろらかにをしなへて
のさまにも思きこえ給はすなけのはしりかいたまへる御ふてつかひことのはも
おかしきさまになまめき給へる御けはひをあまたはみしり給はねとみたまひな
からそのゆへ〱しくなさけあるかたにことをませきこえむもつきなき身の有
さまともなれはなにかたゝかゝる山ふしたちてすくしてむとおほす中納言殿の
御かへりはかりはかれよりもまめやかなるさまにきこえ給へはこれよりもいと
[1566]
けうとけにはあらすきこえかよひ給御いみはてゝもみつからまうて給へりひむ
かしのひさしのくたりたるかたにやつれておはするにちかう立より給てふる人
めしいてたりやみにまとひ給へる御あたりにいとまはゆくにほひみちていりお
はしたれはかたはらいたうて御いらへなとをたにえし給はねはかやうにはもて
なひ給はてむかしの御心むけにしたかひきこえ給はんさまならむこそきこえう
け給るかひあるへけれなよひけしきはみたるふるまひをならひ侍らねはひとつ
てにきこえはへるはことのはもつゝきはへらすとあれはあさましう今まてなか
らへはへるやうなれと思さまさんかたなき夢にたとられはへりてなむ心より外
に空のひかりみはへらむもつゝましうてはしちかうもえみしろきはへらぬとき
こえ給へれはことゝいへはかきりなき御心のふかさになむ月日のかけは御心も
てはれ〱しくもていてさせ給はゝこそつみもはへらめゆくかたもなくいふせ
うおほえはへり又おほさるらむはし〱をもあきらめきこえまほしくなむと申
給へはけにこそいとたくひなけなめる御有さまをなくさめきこえ給御心はえの
あさからぬほとなときこえしらす御心ちにもさこそいへやう〱心しつまりて
[1567]
よろつ思しられ給へはむかしさまにてもかうまてはるけきのへをわけいり給へ
る心さしなとも思しり給へしすこしゐさりより給へりおほすらんさま又の給契
しことなといとこまやかになつかしういひてうたてをゝしきけはひなとはみえ
給はぬ人なれはけうとくすゝろはしくなとはあらねとしらぬ人にかくこゑをき
かせたてまつりすゝろにたのみかほなることなともありつるひころを思つゝく
るもさすかにくるしうてつゝましけれとほのかにひとことなといらへきこえ給
さまのけによろつ思ほれ給へるけはひなれはいとあはれときゝたてまつり給ふ
くろき木丁のすきかけのいと心くるしけなるにましておはすらんさまほのみし
あけくれなと思いてられて
  色かはるあさちをみてもすみそめにやつるゝ袖を思ひこそやれとひとりこ
とのやうにのたまへは
  色かはる袖をはつゆのやとりにてわか身そさらにをき所なきはつるゝいと
はとすゑはいひけちていといみしくしのひかたきけはひにていり給ぬなりひき
とゝめなとすへきほとにもあらねはあかすあはれにおほゆおい人そこよなき御
[1568]
かはりにいてきてむかし今をかきあつめかなしき御ものかたりともきこゆあり
かたくあさましきことゝもをもみたる人なりけれはかうあやしくおとろへたる
人ともおほしすてられすいとなつかしうかたらひ給いはけなかりしほとにこ院
にをくれたてまつりていみしうかなしき物は世なりけりと思しりにしかはひと
ゝなり行よはひにそへてつかさくらゐ世中のにほひもなにともおほえすなんた
ゝかうしつやかなる御すまゐなとの心にかなひ給へりしをかくはかなくみなし
たてまつりなしつるにいよ〱いみしくかりそめの世の思しらるゝ心ももよほ
されにたれと心くるしうてとまり給へる御ことゝものほたしなときこえむはか
け〱しきやうなれとなからへてもかの御ことあやまたすきこえうけたまはら
まほしさになんさるはおほえなき御ふる物かたりきゝしよりいとゝ世中にあと
ゝめむともおほえすなりにたりやうちなきつゝの給へはこの人はましていみし
くなきてえもきこえやらす御けはひなとのたゝそれかとおほえ給にとし比うち
わすれたりつるいにしへの御ことをさへとりかさねてきこえやらむかたもなく
おほゝれゐたりこの人はかの大納言の御めのとこにてちゝはこのひめ君たちの
[1569]
母きたのかたのはゝかたのをち左中弁にてうせにけるかこなりけりとしころと
をきくににあくかれはゝ君もうせ給てのちかのとのにはうとくなりこの宮には
たつねとりてあらせ給なりけり人もいとやむことなからすみやつかへなれにた
れと心ちなからぬ物に宮もおほしてひめ君たちの御うしろみたつ人になし給へ
るなりけりむかしの御ことはとしころかくあさゆふにみたてまつりなれ心へた
つるくまなく思きこゆ君たちにもひとことうちいてきこゆるついてなくしのひ
こめたりけれと中納言の君はふる人のとはすかたりみなれいのことなれはをし
なへてあは〱しうなとはいひひろけすともいとはつかしけなめる御心ともに
はきゝをき給へらむかしとをしはからるゝかねたくもいとおしくもおほゆるに
そ又もてはなれてはやましとおもひよらるゝつまにもなりぬへき今はたひねも
すゝろなる心ちしてかへり給にもこれやかきりのなとの給しをなとかさしもや
はとうちたのみて又みたてまつらすなりにけむ秋やはかはれるあまたの日かす
もへたてぬほとにおはしにけむかたもしらすあえなきわさなりやことに例のひ
とめいたる御しつらひなくいとことそき給めりしかといと物きよけにかきはら
[1570]
ひあたりおかしくもてない給へりし御すまゐもたいとこたちいていりこなたか
なたひきへたてつゝ御ねむすのくともなとそかはらぬさまなれと仏はみなかの
てらにうつしたてまつりてむとすときこゆるをきゝ給にもかゝるさまのひとか
けなとさへたえはてんほとゝまりて思給はむ心ちともをくみきこえ給もいとむ
ねいたうおほしつゝけらるいたくくれはへりぬと申せはなかめさしてたち給に
かりなきてわたる
  秋きりのはれぬ雲ゐにいとゝしくこのよをかりといひしらすらむ兵部卿の
宮にたいめんし給時はまつこの君たちの御ことをあつかひくさにし給今はさり
とも心やすきをとおほして宮はねん比に聞え給けりはかなき御かへりもきこえ
にくゝつゝましきかたにをむなかたはおほいたりよにいといたうすき給へる御
名のひろこりてこのましくえむにおほさるへかめるもかういとうつもれたるむ
くらのしたよりさしいてたらむてつきもいかにうゐ〱しくふるめきたらむな
と思くし給へりさてもあさましうてあけくらさるゝは月日成けりかくたのみか
たかりける御よを昨日今日とは思はてたゝおほかたさためなきはかなさはかり
[1571]
をあけくれのことにきゝみしかと我も人もをくれさきたつほとしもやはへむな
とうち思けるよきしかたを思つゝくるもなにのたのもしけなる世にもあらさり
けれとたゝいつとなくのとかになかめすくしものおそろしくつゝましきことも
なくてへつる物を風のをともあらゝかに例みぬ人かけもうちつれこはつくれは
まつむねつふれて物おそろしくわひしうおほゆることさへそひにたるかいみし
うたへかたきことゝふた所うちかたらひつゝほすよもなくてすくし給にとしも
くれにけり雪あられふりしくころはいつくもかくこそはある風のをとなれと今
はしめて思いりたらむやますみの心ちし給ふをむなはらなとあはれとしはかは
りなんとす心ほそくかなしきことをあらたまるへき春まちいてゝしかなと心を
けたすいふもありかたき事かなときゝ給むかひの山にも時〻の御念仏にこもり
給しゆへこそ人もまいりかよひしかあさりもいかゝとおほかたにまれにをとつ
れきこゆれと今はなにしにかはほのめきまいらむいとゝ人めのたえはつるもさ
るへきことゝ思なからいとかなしくなんなにともみさりし山かつもおはしまさ
て後たまさかにさしのそきまいるはめつらしくおもほえ給このころのことゝて
[1572]
たきゝこのみひろひてまいる山人ともありあさりのむろよりすみなとやうの物
たてまつるとてとしころにならひはへりにける宮つかへの今とてたえはつらん
か心ほそさになむときこえたりかならす冬こもる山風ふせきつへきわたきぬな
とつかはしゝをおほしいてゝやり給ほうしはらわらはへなとのゝほり行もみえ
みみえすみいとゆきふかきをなく〱たちいてゝみをくり給御くしなとをろい
たまうてけるさるかたにておはしまさましかはかやうにかよひまいる人もをの
つからしけからましいかにあはれに心ほそくともあひみたてまつることたえて
やまゝしやはなとかたらひ給ふ
  君なくて岩のかけみちたえしより松の雪をもなにとかはみるなかの宮
  おく山の松葉につもる雪とたにきえにし人を思はましかはうらやましくそ
又もふりそふや中納言の君あたらしきとしはふとしもえとふらひきこえさらん
とおほしておはしたりゆきもいとゝころせきによろしき人たにみえすなりにた
るをなのめならぬけはひしてかろらかにものし給へる心はえのあさうはあらす
思しられ給へは例よりはみいれておましなとひきつくろはせ給すみそめならぬ
[1573]
御火をけおくなるとりいてゝちりかきはらひなとするにつけても宮のまちよ
ろこひ給し御けしきなとを人〻もきこえいつたいめんし給ことをはつゝまし
くのみおほいたれと思くまなきやうに人の思給へれはいかゝはせむとてきこ
え給うちとくとはなけれとさき〱よりはすこしことのはつゝけてものなとの
給へるさまいとめやすく心はつかしけなりかやうにてのみはえすくしはつまし
と思なり給もいとうちつけなる心かなゝをうつりぬへきよなりけりと思ゐ給へ
り宮のいとあやしくうらみ給ふことのはへるかなあはれなりし御ひとことをう
け給りをきしさまなとことのついてにもやもらしきこえたりけんまたいとくま
なき御心のさかにてをしはかり給にやはへらんこゝになむともかくもきこえさ
せなすへきとたのむをつれなき御けしきなるはもてそこなひきこゆるそとたひ
〱ゑんし給へは心より外なることゝ思たまふれとさとのしるへいとこよなう
もえあらかひきこえぬをなにかはいとさしもゝてなしきこえ給はむすい給へる
やうに人はきこえなすへかめれと心の底あやしくふかうおはする宮なりなをさ
りことなとの給わたりの心かろうてなひきやすなるなとをめつらしからぬもの
[1574]
に思おとし給にやとなむきくこともはへるなにことにもあるにしたかひて心を
たつるかたもなくおとけたる人こそたゝ世のもてなしにしたかひてとあるもか
ゝるもなのめにみなしすこし心にたかふふしあるにもいかゝはせむさるへきそ
なとも思なすへかめれは中〱心なかきためしになるやうもありくつれそめて
はたつたの川のにこるなをもけかしいふかひなくなこりなきやうなることなと
もみなうちましるめれ心のふかうしみ給ふへかめる御心さまにかなひことにそ
むくことおほくなと物し給はさらむをはさらにかろ〱しくはしめをはりたか
ふやうなることなとみせ給ましきけしきになむ人のみたてまつりしらぬことを
いとようみきこえたるをもしにつかはしくさもやとおほしよらはそのもてなし
なとは心のかきりつくしてつかうまつりなむかし御なかみちのほとみたりあし
こそいたからめといとまめやかにていひつゝけ給へは我御身つからのことゝは
おほしもかけす人のおやめきていらへんかしとおほしめくらし給へとなをいふ
へきことのはもなき心ちしていかにとかはかけ〱しけにの給つゝくるに中
〱きこえんこともおほえはへらてとうちわらひ給へるもおいらかなるものか
[1575]
らけはひおかしうきこゆかならす御みつからきこしめしおふへきことゝも思給
へすそれは雪をふみわけてまいりきたる心さし計を御らんしわかむ御このかみ
心にてもすくさせ給てよかしかの御心よせはまたことにそはへへかめるほのか
にの給さまもはへめりしをいさやそれも人のわきゝこえかたきこと也御返なと
はいつかたにかはきこえ給とゝひ申給にようそたはふれにもきこえさりけるな
にとなけれとかうの給にもいかにはつかしうむねつふれましと思にえこたへや
り給はす
  雪ふかき山のかけはしきみならてまたふみかよふあとをみぬかなとかきて
さしいて給へれは御物あらかひこそなか〱心をかれはへりぬへけれとて
  つらゝとち駒ふみしたく山川をしるへしかてらまつやわたらむさらはしも
かけさへみゆるしるしもあさうは侍らしときこえ給へは思はすにものしうなり
てことにいらへ給はすけさやかにいと物とをくすくみたるさまにはみえ給はね
といまやうのわか人たちのやうにえむけにももてなさていとめやすくのとかな
る心はえならむとそをしはかられ給ひとの御けはひなるかうこそはあらまほし
[1576]
けれと思にたかはぬ心ちし給ことにふれてけしきはみよるもしらすかほなるさ
まにのみもてなし給へは心はつかしうてむかし物かたりなとをそものまめやか
にきこえ給くれはてなはゆきいとゝ空もとちぬへうはへりと御ともの人〻こは
つくれはかへり給なむとて心くるしうみめくらさるゝ御すまゐのさまなりやた
ゝ山さとのやうにいとしつかなる所の人もゆきましらぬはへるをさもおほしか
けはいかにうれしくはへらむなとの給もいとめてたかるへきことかなとかたみ
ゝにきゝてうちゑむ女はらのあるを中の宮はいとみくるしういかにさやうには
有へきそとみきゝゐ給へり御くた物よしあるさまにてまゐり御ともの人〻にも
さかなゝとめやすきほとにてかはらけさしいてさせ給けり又御うつりかもてさ
はかれしとのゐ人そかつらひけとかいふつらつき心つきなくてあるはかなの御
たのもし人やとみ給てめしいてたりいかにそおはしまさて後心ほそからむなな
ととひ給うちひそみつゝこゝろよはけになく世中にたのむよるへもはへらぬ身
にてひとゝころの御かけにかくれて卅よねんをすくしはへりにけれはいまはま
しての山にましりはへらむもいかなる木の本をかはたのむへくはへらむと申て
[1577]
いとゝ人わろけなりおはしましゝかたあけさせ給へれはちりいたうつもりて仏
のみそ花のかさりおとろへすおこなひ給ひけりとみゆる御ゆかなとゝりやりて
かきはらひたりほいをもとけはとちきりきこえしこと思いてゝ
  たちよらむかけとたのみししゐかもとむなしきとこになりにける哉とては
しらによりゐ給へるをもわかき人〻はのそきてめてたてまつる日くれぬれはち
かき所〱にみそうなとつかうまつる人〻にみまくさとりにやりける君もしり
給はぬにゐなかひたる人〻はおとろ〱しくひきつれまいりたるをあやしうは
したなきわさかなと御らむすれとおい人にまきらはし給つおほかたかやうにつ
かうまつるへくおほせをきていて給ひぬとしかはりぬれは空のけしきうらゝか
なるにみきはのこほりとけたるを有かたくもとなかめ給ひしりのはうよりゆき
ゝえにつみてはへるなりとてさはのせりわらひなとたてまつりたりいもゐの御
たいにまいれる所につけてはかゝるくさきのけしきにしたかひて行かふ月日の
しるしもみゆるこそおかしけれなと人〻のいふをなにのおかしきならむときゝ

[1578]
  君かおるみねのわらひとみましかはしられやせまし春のしるしも
  雪ふかき汀のこせりたかためにつみかはやさんおやなしにしてなとはかな
きことゝもをうちかたらひつゝあけくらし給中納言殿よりも宮よりもをりすく
さすとふらひきこえ給うるさくなにとなきことおほかるやうなれは例のかきも
らしたるなめり花さかりのころ宮かさしをおほしいてゝそのおりみきゝ給し君
たちなともいとゆへありしみこの御すまゐを又もみすなりにしことなと大かた
のあはれをくち〱きこゆるにいとゆかしうおほされけり
  つてにみしやとのさくらをこの春はかすみへたてすおりてかさゝむと心を
やりての給へりけりあるましきことかなとみ給なからいとつれ〱なるほとに
みところある御ふみのうはへはかりをもてけたしとて
  いつことかたつねておらむすみそめにかすみこめたるやとの桜をなをかく
さしはなちつれなき御けしきのみゝゆれはまことに心うしとおほしわたる御心
にあまり給てはたゝ中納言をとさまかうさまにせめうらみきこえ給へはおかし
と思なからいとうけはりたるうしろみかほにうちいらへきこえてあためいたる
[1579]
御心さまをもみあらはす時〱はいかてかかゝらんにはなと申給へはみやも御
心つかひし給へし心にかなふあたりをまたみつけぬほとそやとの給おほとのゝ
六の君をおほしいれぬ事なまうらめしけにおとゝもおほしたりけりされとゆか
しけなきなからひなるうちにもおとゝのこと〱しくわつらはしくてなに事の
まきれをもみとかめられんかむつかしきとしたにはの給てすまゐ給そのとし三
条の宮やけて入道の宮も六条の院にうつろひ給ひなにくれと物さはかしきにま
きれてうちのわたりをひさしうをとつれきこえ給はすまめやかなる人の御心は
又いとことなりけれはいとのとかにをのか物とはうちたのみなからをむなの心
ゆるひ給はさらむかきりはあされはみなさけなきさまにみえしと思つゝむかし
の御心わすれぬかたをふかくみしり給へとおほすそのとしつねよりもあつさを
人わふるに河つら涼しからむはやと思いてゝにはかにまうて給へりあさすゝみ
のほとにいて給けれはあやにくにさしくる日かけもまはゆくて宮のおはせしに
しのひさしにとのゐ人めしいてゝおはすそなたのもやの仏の御まへにきみたち
ものし給けるをけちかゝらしとてわか御かたにわたり給御けはひしのひたれと
[1580]
をのつからうちみしろき給ほとちかうきこえけれはなをあらしにこなたにかよ
うさうしのはしのかたにかけかねしたる所にあなのすこしあきたるをみをき給
へりけれはとにたてたるひやうふをひきやりてみ給こゝもとに木丁をそへたて
たるあなくちおしと思てひきかへるおりしも風のすたれをいたうふきあくへか
めれはあらはにもこそあれその木丁をしいてゝこそといふ人あなりおこかまし
きものゝうれしうてみ給へはたかきもみしかきも木丁をふたまのすにをしよせ
てこのさうしにむかいてあきたるさうしよりあなたにとおらんとなりけりまつ
ひとりたちいてゝ木丁よりさしのそきてこの御ともの人〻のとかうゆきちかひ
すゝみあへるをみ給ふなりけりこきにひいろのひとへにくわんさうのはかまも
てはやしたる中〱さまかはりてはなやかなりとみゆるはきなし給へる人から
なめりおひはかなけにしなしてすゝひきかくしてもたまへりいとそひやかにや
うたひおかしけなる人のかみうちきにすこしたらぬほとならむとみえてすゑま
てちりのまよひなくつや〱とこちたううつくしけなりかたはらめなとあなら
うたけとみえてにほひやかにやはらかにおほときたるけはひ女一の宮もかうさ
[1581]
まにそおはすへきとほのみたてまつりしも思くらへられてうちなけかるまたゐ
さりいてゝかのさうしはあらはにもこそあれとみをこせ給へるよういうちとけ
たらぬさましてよしあらんとおほゆかしらつきかむさしのほと今すこしあてに
なまめかしきさまなりあなたに屏風もそへてたてゝはへりついそきてしものそ
き給はしとわかき人〻なに心なくいふありいみしうもあるへきわさかなとてう
しろめたけにゐさりいり給ふほとけたかう心にくきけはひそひてみゆくろきあ
はせひとかさねおなしやうなるいろあひをき給へれとこれはなつかしうなまめ
きてあはれけに心くるしうおほゆかみさはらかなるほとにおちたるなるへしす
ゑすこしほそりていろなりとかいふめるひすひたちていとおかしけにいとをよ
りかけたるやうなりむらさきのかみにかきたる経をかたてにもち給へるてつき
かれよりもほそさまさりてやせ〱なるへしたちたりつるきみもさうしくちに
ゐてなにことにかあらむこなたをみをこせてわらひたるいとあひきやうつきた