[1677]
やふしわかねは春のひかりをみたまふにつけてもいかてかくなからへにける月
日ならむとゆめのやうにのみおほえ給ゆきかふ時〱にしたかひはなとりのい
ろをもねをもおなし心におきふしみつゝはかなきことをもゝとすゑをとりてい
ひかはし心ほそき世のうさもつらさもうちかたらひあはせきこえしにこそなく
さむかたもありしかおかしきことあはれなるふしをもきゝしる人もなきまゝに
よろつかきくらし心ひとつをくたきて宮のおはしまさすなりにしかなしさより
もやゝうちまさりてこひしくわひしきにいかにせむとあけくるゝもしらすまと
はれたまへと世にとまるへきほとはかきりあるわさなりけれはしなれぬもあさ
ましあさりのもとよりとしあらたまりてはなに事かおはしますらむ御いのりは
たゆみなくつかうまつり侍りいまはひとゝころの御ことをなむやすからすねむ
しきこえさするなときこえてわらひつく〱しおかしきこにいれてこれはわら
はへのくやうして侍るはつをなりとてたてまつれりてはいとあしうてうたはわ
さとかましくひきはなちてそかきたる
  きみにとてあまたの春をつみしかはつねをわすれぬはつわらひなり御前に
[1678]
よみ申さしめたまへとありたいしと思まはしてよみいたしつらむとおほせはう
たの心はへもいとあはれにてなをさりにさしもおほさぬなめりとみゆることの
はをめてたくこのましけにかきつくしたまへる人の御ふみよりはこよなくめと
まりてなみたもこほるれは返事かゝせ給
  このはるはたれにかみせむなき人のかたみにつめるみねのさわらひつかひ
にろくとらせさせ給いとさかりにゝほひおほくおはする人のさま〱の御物お
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かし人にもおほえ給へりならひたまへりしおりはとり〱にてさらにゝたまへ
りともみえさりしをうちわすれてはふとそれかとおほゆるまてかよひたまへる
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てまつる人〱はくちおしかるかの御あたりの人のかよひくるたよりに御あり
さまはたえすきゝかはしたまひけりつきせすおもひほれたまひてあたらしきと
しともいはすいやめになむなりたまへるときゝ給てもけにうちつけの心あさゝ
[1679]
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るしつえをゝしおりてまいり給へるにほひのいとえんにめてたきをおりおかし
うおほして
  おる人の心にかよふはなゝれやいろにはいてすしたにゝほへるとのたまへ

  みる人にかことよせける花のえを心してこそおるへかりけれわつらはしく
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[1680]
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[1681]
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[1682]
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[1683]
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[1684]
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[1685]
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[1686]
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[1687]
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[1688]
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へきこゆれは
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はへのこひてなくやうに心おさめんかたなくおほゝれゐたりみなかきはらひよ
ろつとりしたゝめて御くるまともよせて御せんの人〱四ゐ五ゐいとおほかり
御身つからもいみしうおはしまさまほしけれとこと〱しくなりて中〱あし
[1689]
かるへけれはたゝしのひたるさまにもてなして心もとなくおほさる中納言殿よ
りも御せんの人かすおほくたてまつれたまへりおほかたのことをこそ宮よりは
おほしをきつめれこまやかなるうち〱の御あつかひはたゝこの殿よりおもひ
よらぬことなくとふらひきこえ給日くれぬへしとうちにもとにもゝよほしきこ
ゆるに心あはたゝしくいつちならむとおもふにもいとはかなくかなしとのみお
もほえたまふに御くるまにのるたいふの君といふ人のいふ
  ありふれはうれしきせにもあひけるを身をうちかはになけてましかはうち
ゑみたるを弁のあまの心はへにこよなうもあるかなと心つきなうもみたまふい
まひとり
  すきにしかこひしきこともわすれねとけふはたまつもゆく心かないつれも
としへたる人〱にてみなかの御かたをは心よせましきこえためりしをいまは
かくおもひあらためてこといみするも心うの世やとおほえたまへは物もいはれ
たまはすみちのほとのはるけくはけしき山みちのありさまをみたまふにそつら
きにのみおもひなされし人の御中のかよひをことはりのたえまなりけりとすこ
[1690]
しおほししられける七日の月のさやかにさしいてたるかけおかしくかすみたる
をみたまひつゝいとゝほきにならはすくるしけれはうちなかめられて
  なかむれは山よりいてゝゆく月も世にすみわひてやまにこそいれさまかは
りてつゐにいかならむとのみあやうくゆくすゑうしろめたきにとしころなにこ
とをかおもひけんとそとりかへさまほしきやよひうちすきてそおはしつきたる
みもしらぬさまにめもかゝやくやうなる殿つくりのみつはよつはなる中にひき
いれてみやいつしかとまちおはしましけれは御くるまのもとに身つからよらせ
給ておろしたてまつり給御しつらひなとあるへきかきりして女はうのつほね
〱まて御心とゝめさせ給けるほとしるくみえていとあらまほしけなりいかは
かりのことにかとみえたまへる御ありさまのにはかにかくさたまりたまへはお
ほろけならすおほさるゝことなめりと世人も心にくゝおもひおとろきけり中納
言は三条の宮にこの廿よ日のほとにわたりたまはんとてこのころはひゝにおは
しつゝみたまふにこの院ちかきほとなれはけはひもきかむとてよふくるまてお
はしけるにたてまつれたまへる御せんの人〱かへりまいりてありさまなとか
[1691]
たりきこゆいみしう御心にいりてもてなしたまふなるをきゝ給にもかつはうれ
しき物からさすかにわか心なからおこかましくむねうちつふれてものにもかな
やとかへす〱ひとりこたれて
  しなてるやにほのみつうみにこく舟のまほならねともあひみし物をとそい
ひくたさまほしき右のおほとのは六のきみを宮にたてまつり給はんことこの月
にとおほしさためたりけるにかくおもひのほかの人をこのほとよりさきにとお
ほしかほにかしつきすゑたまひてはなれおはすれはいと物しけにおほしたりと
きゝ給もいとおしけれは御ふみは時〱たてまつり給御もきのこと世にひゝき
ていそき給へるをのへたまはんも人わらへなるへけれははつかあまりにきせた
てまつり給おなしゆかりにめつらしけなくともこの中納言をよそ人にゆつらむ
かくちおしきにさもやなしてましとしころ人しれぬものにおもひけむ人をもな
くなしてもの心ほそくなかめゐたまふなるをなとおほしよりてさるへき人して
けしきとらせ給けれと世のはかなさをめにちかくみしにいと心うく身もゆゝし
うおほゆれはいかにも〱さやうのありさまは物うくなんとすさましけなるよ
[1692]
しきゝ給ていかてかこのきみさへおほな〱こといつることを物うくはもてな
すへきそとうらみたまひけれとしたしき御中らひなからも人さまのいと心はつ
かしけに物し給へはえしゐてしもきこえうこかしたまはさりけりはなさかりの
ほと二条の院のさくらをみやり給にぬしなきやとのまつ思やられたまへは心や
すくやなとひとりこちあまりて宮の御もとにまいりたまへりこゝかちにおはし
ましつきていとようすみなれたまひにたれはめやすのわさやとみたてまつるも
のかられいのいかにそやおほゆる心のそひたるそあやしきやされとしちの御心
はへはいとあはれにうしろやすくそ思きこえ給けるなにくれと御物かたりきこ
えかはしたまひてゆふつかた宮は内へまいり給はんとて御くるまのさうそくし
て人〱おほくまいりあつまりなとすれはたちいて給てたいの御かたへまいり
たまへり山さとのけはひゝきかへてみすのうち心にくゝすみなしておかしけな
るわらはのすきかけほのみゆるして御せうそこきこえ給へれは御しとねさしい
てゝむかしの心しれる人なるへしいてきて御返きこゆあさゆふのへたてもある
ましうおもふたまへらるゝほとなからそのことゝなくてきこえさせんも中〱
[1693]
なれ〱しきとかめやとつゝみ侍るほとに世中かはりにたる心ちのみそし侍る
や御まへのこすゑもかすみへたてゝみえ侍るにあはれなることおほくも侍るか
なときこえてうちなかめて物し給けしき心くるしけなるをけにおはせましかは
おほつかなからすゆき返かたみに花のいろとりのこゑをもをりにつけつゝすこ
し心ゆきてすくしつへかりける世をなとおほしいつるにつけてはひたふるにた
えこもりたまへりしすまゐの心ほそさよりもあかすかなしうくちおしきことそ
いとゝまさりける人〱も世のつねにうと〱しくなもてなしきこえさせ給そ
かきりなき御心のほとをはいましもこそみたてまつりしらせたまふさまをもみ
えたてまつらせたまふへけれなときこゆれとひとつてならすふとさしいてきこ
えむことのなをつゝましきをやすらひたまふほとに宮いてたまはんとて御まか
り申しにわたりたまへりいときよらにひきつくろひけさうしたまひてみるかひ
ある御さまなり中納言はこなたになりけりとみたまひてなとかむけにさしはな
ちてはいたしすゑたまへる御あたりにはあまりあやしと思まてうしろやすかり
し心よせをわかためはおこかましきこともやとおほゆれとさすかにむけにへた
[1694]
ておほからむはつみもこそうれちかやかにてむかし物かたりもうちかたらひた
まへかしなときこえ給ものからさはありともあまり心ゆるひせんもまたいかに
そやうたかはしきしたの心にそあるやとうちかへしのたまへはひとかたならす
わつらはしけれとわか御心にもあはれふかくおもひしられにし人の御心をいま
しもをろかなるへきならねはかの人もおもひのたまふめるやうにいにしへの御
かはりとなすらへきこえてかうおもひしりけりとみえたてまつるふしもあらは
やとはおほせとさすかにとかくやとかた〱にやすからすきこえなしたまへは
くるしうおほされけり