豚カツ(下)

AI summary (β)
ナイフが皿に当たる音が気になり、50銭を女の子に渡そうと腹巻きの中を探したが見つからず、代わりに金の爪こすりを渡してしまった。結局10銭を渡し、女の子に感謝されたが、30銭を返してもらうように頼んだ。とんかつを食べる際、周りの目を気にして3分の1を残した。その夜、崖の上を歩く夢を見て、後ろから追いかけてくる黄色い大きなものがとんかつだった。
pid
1322280
date
1935-04
note
商品番号 : 53406, デジタル変換後ノイズ除去 : ノイズ除去なし, 落語
year
1935
genre
落語
creators
林家 正蔵(七代目)
duration
188
persName
林家 正蔵(七代目)
publisher
ビクター
ナイフの先がお皿に当たってね、カチカチって音のするたんびに、僕の脳の中枢神経へ響くんですよ。 つまりこのカチカチが積もり積もって50銭取られるのかと、情けない響き方だな、脳も。 早く50銭女の子にあげてね、穂がらかにさしてやろうと思って腹巻きの中をね、探ったんです。 皆さんの前でございますけど、私は財布や金口をお金入れておくの嫌いな性分でね、腹巻きの中をザグに入れておくのが好きなんです。 アメリカの方に行くと、ポケットの中にマネーでも金時計でもザグに入れておくんだってね、それマネしてるわけじゃないんですけれどね、腹巻きの中を入れておくのが大好きなんですよ。 手探りで50銭銀貨探ったんですけれど、なかなか見当がつかないんです。仕方がないから周りのひざひざで見当をつけようとんで、親指の爪で小判のところをぐーっとこうしっかいたんですけど、みんな滑っちまうんですよ。 小判のないんですよ。ようやく背中の方にひとつね、しっかかるのがあったから、姉さん、すまないけどこれで負けといて、あらま、すみませんわってね、上級さんが受け取ってみてびっくりして、あらま、いやだお兄さん、これは金の爪こすりだわーってね、こっちは面食らって爪こすり出しちゃったのさ。 今のシャレにやったのすまない、10銭だわ、細かいんで、すまない、姉さん負けといてくださいな、あらま、ほんとにすみませんですわね、ごしご飯あがんないのにこんなにいただいちゃ、ほんとにあたしすみませんって思いますが、ほんとにお金の得さまですわ、ほんとにすみません、わーって言ってるから、そんなにすまないって、お前ならそのうち30銭こっちに返してくれ、みっともないね、君んなこと言っちゃ。 女の子は向こう行かないでそばでこしょかけて見てるんですよーって、いずいこしょかけてさー、こっちはとんかつも好きですけれども、周りのキャベツだって大好きなんです、けれども女の子の見てる前で、女級さんのこう監視してるそばで、あんまり生のキャベツばっかり食べて、こいつうさぎじゃないかと思われても残念だし、とんかつだってみんな食べたかったんだけど、 いい若い者が普段こういうものを食べているのかと思われちゃ残念だと思うからあたしは、万国の恨みを飲んで血涙さんさんとして団長の思いをして3分の1だけとんかつを残して帰ってくると、その晩の夜中です。 おっかない夢を見ちゃったんですよ、みなさんの前ですけど、なんでもあたしがこう崖のところをスーッとこう行くとね、片っぽがこう海みたいなんですよ、チャチャチャチャ波の音がしてるでしょ、こっちは崖なんです、フーッとこう行くとね、フーッとこう油臭い風が吹いてくるんです。 後ろからなんだか知らないけど黄色い大きなものがグーッとどんどんどんどんおっかげつくるんですよ、みんなの前だけどこれなんだと思う、人の見た夢わかるかい、なんだその黄色いものってな、はっはっ、めんぼくないがそれがとんかつなんですよ。