詩朗読:ためいき、故園晩秋の歌、反歌
- AI要約 (β)
- この文章は、ため息木の国の五月半ばの風景と感情を描写しています。椎の木の下や流れのほとりで咲く野う薔薇、柳の芽や杉、椿の葉など自然の描写が豊かに描かれています。主人公は恋人のため息を感じ、黄昏の山を嘆きながら登り降りします。みかん畑では夏みかんの実を支える様子に、自分の重い憂いを重ねます。古い故郷の家や秋の風景も描かれ、主人公は遠く離れた人を思い、心からの愛を学びます。最後に、古い家の庭で虫の声を聞きながら、過ぎ去った日々を思い出し、感傷に浸る様子が描かれています。
- pid
- 3571571
- date
- 1939-12
- note
- 商品番号 : 33651, デジタル変換後ノイズ除去 : 無, 詩朗読
- year
- 1939
- genre
- 文学作品の朗読、解説
- creators
- 佐藤 春夫[作詞], 佐藤 春夫
- duration
- 182
- persName
- 佐藤 春夫
- publisher
- コロムビア(戦前)
ため息
木の国の五月半ばは、
椎の木の暗き下陰、
薄濁る流れのほとり、
野う薔薇の花のひと群れ、
人知れず白く咲くなり、
佇みてもの重めに
小さなる涙もろげの、
砂をなる花をしみれば、
恋人のため息を聞く心地するかな。
柳の芽は柔らかく吐息して、
丈高く若き五胞は憂いたり、
杉は暗くして消しがたき、
憂臭をひめ、
椿の葉、火の光に激しくすすり泣く。
太いづくよりともなく君が越えす、
柳の花の匂いのごとく君が越えす。
嘆きつつ、
黄昏の山を登りき、
嘆きつつ、
山に立ちにき、
嘆きつつ、
山を下りき。
みかん畑に来てみれば、
かよわき枝の夏みかん、
楽しげに大いなる実を支えたり、
我も支えん、
大変がたき重き憂いを、
我が恋の実を。
古さとんの高島の山を歩めども、
家の嘆きはたがたまいけん。
遠く離れて、
またえがたき人を思う日にありて、
我は心からなるまことの愛を学び得たり、
さは求むるところなき愛なり、
さは心深き乙女ごの、
願うことなき日も、
聖母マリアの像の前に指を組む心なり。
何と言うにあらねども、
涙流れてやみがたく、
ひとりでてたたずみぬ海のあけがた、
海のくれがた、
ただ多く遠きあたりは、
たとおれば古き思いで、
波をする近き渚は、
今日の日の我の心をぞ。
古さとんの古りたる家の哀れなる秋の間がきは、
一割て昔上西白木区の盛りすぎたり、
荒れまさる桑の畑は一床縫わせの片道、
鶴がねの花枯れにけり、
古井戸の石畳には人知らぬ桂塔の花、
うつ伏せに倒れやさくなり、
ひとりただ園をめぐりて、
遠くゆく雲をねぎらい、
うつつなる秋の古町をあわれみてわがたたずめば、
山ちかみくるる日早し、
かえしゆた、
古さとんの古りたる家の庭にして、
ひるなく虫をきけばかそけし。