七新薬 巻之中

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1862
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パブリックドメイン
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司馬, 凌海, シバ, リョウカイ
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医学
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jpn
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[出版者不明]
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シチ シン ヤク
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九州大学
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2026-08-28T18:53:25.651810+00:00
七新薬中 3714 七新薬中巻目次 第二篇 解血変質之薬中 晶硝酸銀 硝酸銀一 熔硝酸銀 硝酸銀一凡の功用利害 硝酸銀中毒の救療法 附録 塩酸亞鉛 第三篇 解血変質之薬下 酒石酸蝋鉛 酒石酸鎌鉛一凡の功用利害 酒石酸鹸鉛の製劑 ○第一催吐酒 ○第二発疹膏 第四篇 補血強神解熱之薬 規尼 規尼一凡の功用利害 規尼の製剤 ○第一純規尼○第二硫酸規尼○第三一 一塩酸規尼○第四醋酸規尼○第五〇 砒酸規尼○第六燐酸規尼○第七酒 石酸規尼○第八沃顛酸規尼○第九一 硝酸規尼◯第十銕加青酸規尼○第十一 青酸規尼◯第十二銕加枸櫞酸規尼 ○第十三枸櫞酸規尼○第十四難酸 一規尼○第十五纈草酸規尼○第十六 一幾那酸規尼◯第十七乳酸規尼 附録 撒里質 七新薬中巻目次終 胡桃 一奏羽麗品○第十一集中央演劇 野原の妻十五鈴草舞里舞里 ○某十三林誠兼民 一靑翅兒子○草十二幾五郎 南部氏八〇第十一刻青年癸丑年十一 ▽鋼鉄品の草人大気運具 母姫君子○孝大御教師思ひ○菓子郎 武彌助子 七新薬中巻 佐渡凌海司馬虧公損著 下総寛齋開務致道校 第二篇 解血變質之薬中 ニットラス。アルゲンティキュス○二ットラス。 硝酸銀ニットラス。アルゲンテイキュス〇二ツトラス。 硝酸銀 アルゲンティ○二ットリュム。アルゲンテュム 此薬の医用に供する者二般あり。一は硝酸を以 て純銀を溶解し。之を結晶せしむる者にして。此 品特り内用に供し。名けて晶硝酸銀と云ふ。一は 其既に結晶せる者を再ひ溶解し之を小管に注 ひて、以て其形を取らしむ地獄石即ち是なり 第一内用品 二ットラス、アルゲンテイキュッス、キリス 晶硝酸銀 タリサテキュス 晶体四角或は六角整斉ならす。色なくして透明 なり。味苦くして嘔すへく他の礦物の如し。氣を 見て變せす。日光に逢て速に黒色に變す。同量の 冷水◦半量の温湯に溶解し。又酒精にも克く溶解 す。火を点すれは焚へて爆裂し、只之を温むれは 熔化して流動す 第二外用品 熔硝酸銀 ニットラス、アルゲンティキュス、フュシュス○アルゲ ンテュム。二ットリキュム。フコシュム○コースティキュー ム、リュナーレ○ラーピス、インフルナリス 一地獄石○腐蝕錠 長圓管状にして灰白色・中心線状の旗体をなし。 光輝に触れて黒色に變すること猶前物の如し。故 に共に黒紙を包纒したる瓶中に貯ふへし。其餘 の性質は皆前物に同し、只冷水に溶するの量稍 大なるのみ 硝酸銀一凡の功用利害 第一健康作用 以上小量を用ひて胃膓に入れは。初め先つ其中に 在る所の蛋白質と相結んて、一種の機生塩を作 り。遂に塩酸に合ふて塩酸銀となり。之に由て其 効分の発達を妨く。故に動もすれは大量を服す るも。更に較著の患害を見わさゝる者あり。フゥー ヱルの説に曰く。予嘗て一次に十五氏の硝酸銀 を九劑に製し。之を用ひて更に患害を發せす。五一 瓜を清水に溶し用ひて。危劇の諸症を見わすを 見たり。是れ溶剤は其質甚た稀薄なれは機生物 に会合するも。敢て塩を作ること能わす。以て十分 の効力を発すれはなりと。蓋し或は然らん○小 量を長服すれは別に患害なしと雖とも。皮膚黒 色を見わすに至る。盖し此奇性は硝酸銀。什麼の 變革を血液に致すに由る所なるや。尚未た詳解 を得す。カラームル私は硝酸銀を以て成る所の 機生塩。皮膚に分怖するの際に光輝に逢て以て 黒色を生するに由ると謂ふと雖とも、若し果し て然らは分泌排泄の機。何そ之を駆除せすして。 長く黒色を皮表に止むるの理あらんや此説信 し難しとす。諸酸硝酸酒石酸等。克く此黒班を除 くと稱すれとも。之を實驗して良効ある者は沃 顛酎及ひ青酸蝋なり 置大量を用ひて吸収さるゝこと。速に且つ他物に 抱合するの機会なけれは。局處を刺戟し之を腐 焦し、悪心乾嘔或は嘔吐泄瀉を発し。神経系に甚 しく侵掠さるゝ所あり。血行之か為に良らす動 脈の血○動もすれは闇黒に變し。精神沈鬱苦悶し。 四支麻木せるか如く。呼吸困厄し。眩暈自睡。痙攣 播掣を発し。遂に窒息に由て斃る○死屍を剖験 するに胃膓の粘液膜。處々に白色の凝固したる 乳汁の如き者あり。或は其膜腫大して恰も焦灼 するか如く、又は既に破潰して孔穴を為す者あ り。口内○咽喉・食道の粘液膜も亦斯の如し。然れと も硝酸銀の人体を害するや。常に甚た一様なら す。其製劑の各異なるに從つて違ひ、又其死する ことの遅速に由て違ふか故に。爰に記する所の事 件を以て、毎常不變の確状と爲すへからす 總て硝酸銀は機生體に抵觸して。速に其部の蛋 白質と結ひ、胃に入れは其中の塩酸と相合ふて、 以て一種の塩となる。之を外用して大功ある所 以の理も、亦蛋白結合より外ならさるなり 第二医治功用 以亘古より胃脘痛及ひ胃痙に用ひて。イッンソン 共に 五ノ 及ひヲーテシリート 大に硝酸銀の効ある 人名 を称せり。乾今に至つては。膓管の冒寒性及ひ焮 衝性の諸病。下利を兼ぬる者◦腸血◦腐敗熱・亜細亜 霍乱◦慢性下利◦胃の潰瘍曽軟化○白帯下○義膜咽喉 焮衝鵞口瘡に之を称用す。然れとも其功を致す の理に於ては。尚疑団の中に在り。 区諸般の神経病。殊に其症間歇ある者。舞蹈病癩 癇喘息百日咳に効あり。而して癲癇には克く謹 慎して之を用ふれは。従前諸般の薬剤を用ひて。 治すること能わさる者も亦治すへし。實に癲癇の 妙薬と称して可なり。然れとも此方は百法寸効 なきの症にのみ用ふへく。且つ用に臨んて極め て小心翼々たらんことを要す。否らされは動もす れは大害を惹くことあり 用法は八分氏一至半氏を一日數次に用ひ。漸次 に増加して二氏に至る。丸劑を最も良とす。且つ 之を用ふるの間は塩味を避くへし。是れ其用薬 と結んて塩酸銀を作り。以て効分の発達せさら んことを恐れはなり。之に配するには蜀葵根末○甘 草末。亞刺伯膠。白糖・蒸餅母等を以てす。左の方最 も良なり 一 晶硝酸銀 三瓜清水少許に 溶解する者 甘草末半 甘草膏適宜 右研和して三十丸を作り一次に二九つゝ一 日三次 硝酸銀は之を外用に供すれは。其大功実に正切 適當にして。外用の一大良薬たることは。猶他の幾 那◦阿片◦沃顛◦鉱石等の内科に於て。必須にして闕 如すへからさるか如し。西國の諸賢皆曰く。世若 し硝酸銀なかりせは。吾また外科たることを欲せ すと 硝酸銀を外用に供するは數般の標的あり。故に 或は之を刺戟衝動の劑となし。或は之を解血變 質の方に作り。或は之を腐蝕焦礫の薬となす等。 病に従つて各異なり。然れとも腐蝕劑として之 を用ふれは。其効実に諸薬に冠たりと謂ふへし。 但薬力の深達を要するの地に至りては少しく 他の峻腐劑に讓るのみ 波疥瘡瘡肉等の癌毒に由らすして発する者○小 静脉怒脹する者母班等を。消除するか為に硝酸 銀を用ひて効あり 仁刃創若くは潰瘍。努肉を生して其痊癒を妨け らるゝ者下疳の初発毒未た遠及せさる者・痿瘡 角膜の潰瘍耳内の諸病骨潰瘍乳房及ひ唇皮の 剥脱。子宮及ひ膣の潰瘡寒腫陰嚢の水腫及ひ其 他外薬を施し得へきの部に。潰瘡を発する者に 射注剤とし、或は洗滌剤として良功あり 杯突創・及ひ咬傷創殊に其毒獣の咬傷に由る者。 水蛭創。或は抜歯に由て発する劇しき出血に効 あり 六十一諸般の組織将に焮衝を発せんとする者は。直 ちに之を用ひて其部を焦爍して効あり。又其焮 衝既に慢性に變し其症頑牢にして治し難き者 に効あり。故に咽喉焮衝・義膜咽喉焮衝・鵞口瘡・音 日咳◦口内の焮衝◦流涎◦歯齦の壊血病◦横痃・陰嚢焮 衝◦劇盛の眼焮衝◦眼瞼焮衝の粘液漏を兼ぬる者。 梅毒性の眼焮衝急慢二性の皮肩焮衝・凍瘡・軽易 の火傷標疽打撲傷皮疹・鍼癬梅毒性瘡疹・頭瘡・著 癬角膜水泡白腫○関節の焮衝様諸病夢中遺精寝 中遺便・痳疾・後痳等に用ふ○総て此般の諸病に 硝酸銀を用ひて大効あるは。善く其量を詳にし。 良く其法を弁するにあり。故に病に從ふて其量 の大小を議すへし 登硝酸銀は神経の知覚機亢進する者。神経痛痒 癢等に。蒸劑とし用ひて効あり 知尿道食道・耳孔◦鼻竅直膓等の狭窄に焦燥方とい し用ひて効あり。而して今人の説に曰く。硝酸銀一 し用ひて効あり。而して今人の説に曰く、硝酸銀 は諸道の狭窄を治するの功ありと雖とも、尿道 の狭窄に至りては止むことを得さるの外は。之を 用ひさるを佳なりとす。如何となれは尿道は本 是れ脆軟柔潤の地。若し之を焦爍すれは或は硬 痂を結成し。大に通利に妨碍を生すれはなり 硝酸銀の用法は疾疾に從つて各異なり。又其功 の軽易ならんことを欲する者は。熔硝酸銀を用ふ るに適せす。唯晶硝酸銀を用ふるを良とす○溶 剤は大抵二瓜の熔硝酸銀を一万の清水に溶す るを要す、是れ其小量なる者にして其効も又緩 なり。以て眼焮衝・皮膚病・下疳・義膜咽喉焮衝等に 用ふへし。若し劇甚の刺戟腐蝕の効を取らんと 要せは。四十人至六十氏を一了の清水に溶解す へし。之を灌膓劑と作すには半氏至五氏を一号 の薬液に和し。軟膏を作るには一瓜至十瓜を一つ 了の脂膏に混す。若し又局處の刺戟甚しくして 堪へ難き者は。食塩の溶剤或は塩酸能く之を寛 解すへし 硝酸銀を外用するの法は。疾病の各異なるに從 て。其宜しきを撰はさるへからすと雖とも。又其 定規なきにあらす。故に今記して以て用者の撰 擧に供す即ち以腐蝕の功を要する者は。先つ其 單質を冷水に濡し。且つ又之を施すへきの地を も濡して。後之を抵触せしむ甚小結郷。班点。水泡 等は之を施すの前。先つ能く其部を洗滌すへし 渡腐蝕法を行ふの後。繃帯を施すには綿撒糸を 良とす。若し患部を刺戟するの恐れあれは。單蝋 膏を布帯に攤し之を掩ふへし仁腐蝕の効深達 せんことを望む者は。屢反復して之を施し。或は散 末となして。其上に撒布し掩ふに硬膏を以てす。 保〕患部に膿或は粘液ある者は。海綿を以て浄刷 し。而して後之を施すを要すべしレ臍脈及ひ瘻瘡下 疳◦咬傷等は注意して悉く其部を焦燥すへし。一 点も残遺の処あらしむることなかれ登眼瞼の焮 衝皮表の焮衝及ひ粘液膜の焮衝は。單質を以て 只其外表に抵触すへく。角膜の深潰瘡及ひ腟。尿 道等の潰瘍には。小刀にて單質を削り細め以て 之を腐蝕すへし知開節の焮衝○白腫横痃・陰嚢焮 衝等には初め先つ表皮を濡し、而し後單質を以 て之に触るへし○風湿毒に発泡法を施すに硝 酸銀を用ふれは。其力芫菁より劇しくして効も 亦强しとす。即ち單質を水に濡し以て患部に抵 觸すること一二少時にして。後單蝋膏を以て之を 掩ふ奴尿道狭窄には硝酸銀を塗りたる紙捻子 を用ふ。但し爰には晶硝酸銀を良とす。出血を 留むるには火酒燈に硝酸銀を溶解して之を用 ふ速慢性の眼焮衝に嚏薬とし用ふる人あり。其 方即ち硝酸銀一分〇菫菜根末三十分龍脳一分〇右一 調勺して以て嚏薬となす(和」丹毒及ひ其性の諸 病には表皮を洗滌するの後。特に其焮衝の部に 抵觸するのみならす。又兼て近圍の部も共に之 を焦燥せんことを要す〔加〕咽喉の所患肺労気管支 の焮衝等には。七十分の白糖に研和し極精細の 散末となし。小管を以て之を翳入し以て其部に 抵らしむ(十〕白帯下及ひ子宮の諸病には。水筒を 以て其溶剤を射注す太痳疾に射注剤とし用ふ るには。五氏至十人を一等の清水に溶し。先つ患 者をして尿を利せしめ。而して後之を射注し暫 く寝床に安臥せしめ。若し尿道の疼み甚しくは、 再ひ寒水を射注し。或は其疼みあらんことを恐れ は初め先つ溶剤に阿片片酎を加へ用ふ礼の慢性の 膀胱焮衝には。硝酸銀の緩溶水を射注し引溺器 を圧重して其流出を妨け。中に留むること一小時 ならしむ曽軽易の湯火傷には。之を膏に作り施 すを要す。即ち硝酸銀十氏を二等の脂に研和し。 綿布に攤して之を貼し、或は一了の硝酸銀を適 宜の水に溶し四了の脂に研和して之を用ふ都 皮表手指等の硝酸銀に由て生する黒点は、沃顛 謙の溶劑を以て洗滌し能く除くべし。又硫酸鹸。 青酸驪◦消酸及ひ升頃水等皆良稱あり 西国紀元一千 米利幹新紙に曰く。安政元年の 八百五十五年 紐 約尓格 地 地 地 名 百人 の一医ゲレイン 一硝酸銀を用ふる 名 一新法を創め、以て大に名譽を得たりと。其法 は即ち柔脆にして撓屈し易き一箇の管を。氣 管支或は肺中に嵌入し。以て硝酸銀を此中に 輸り。喉頭◦及ひ気管支の焮衝或は肺勞の膿嚢 を作す者を焦爍して、以て大勲を策するなりシ 盖し此般の術は實に新竒に出つると雖とも。 豈損害なしと云わんや。吾人謾に之に擬する。 ことなくんは是れ可なり 硝酸銀中毒の救療法 硝酸銀の毒を解する者は、塩酸灰塩・殊に食塩の一 溶水なり。其理盖し此両品の硝酸銀と相合ふて。 共に塩酸銀となり。一箇の溶解せさる塩類を作 るに原く者とす○硝酸銀溶剤の毒に中る者に は、食塩を用ふるも更に功をなすへからす。此時 は唯粘滑緩和の薬液を与へ胃膓の焮衝を処置 するを要とす 附録 塩酸亞鉛 ミュリアス。シレシ○シンキュム、ミュリアチキュム ○。コロリデュム、シンシ○シンキユム、コロラテユム 塩酸亜鉛は硝酸銀と共に、外科の稱譽を得る 者にして。其用頗る廣汎なれは之を不講に委 ぬへからす。盖し此薬は薬効深達を望むの地に に的應し、能く前薬の缺事を補綴するに足る 者たり 一塩酸亜鉛は炭酸亜鉛を海塩酸に溶開し、而し て之を蘇化するに由て成る者にして。白色晶 体の粉末なり。気を見て流化し。火に入て白煙。 を發し。香臭共になく。味蒼にして鹹。不快の鉱 氣あり。冷水及ひ酒精に容易に溶化す。局處に 用ひて峻刺戟。収歛変質の作用あり。其製純なる れは劇腐蝕の性を見わし。動物体の蛋白質及一 ひ膠質に親和し。之と相結て不化の結合物を 作り。體質を侵すこと極めて甚しく。其力竄透に して、其効徹底深達す。発する所の痂皮は白色 にして厚く。五六日の後良膿を醸して自ら脱 離し、其部速に瘢痕を遺す 此薬は内服して他の亞鉛諸製劑の如く。解凝 變質の効あり。分泌排泄の常度に越る者を調 理し。養育生植の器具病機の変調を受くる者 を故復す。故に神経系の諸患癲癇・路病・神経 痛・顔面痛胃脘痛血質不良、及ひ之より発する 諸病瘰癧・病腫・梅毒・慢性頑固の皮膚病癩瘡・疥 癬皮疹等に効あり。然れとも少しく其量を過 せは。腹痛嘔吐○苦悶○呼吸短促。播掣。冷汗◦衰弱等 を致し易けれは。之を内服に供すること稍稀 なり 塩酸亜鉛は外用に由て偉績を建つるの品に して、其効数般なりと雖とも、之を総ふるに必 す先つ二様の標的を以てす。即ち一は之を刺 刺戟解凝変質の剤とし。一は之を収歛焦灼腐蝕 の薬とす。爰に其用法を擧くれは以原発の梅 瘡未た数日ならさる者は。此薬半氏を糊劑に 製して瘡上に貼し。之を焦爍せしめて傳染毒 を消滅し、包茎疳には之を包皮間に射注し。裸 茎疳には溶剤を以て之を洗ひ。横痃には膏薬 を製し豆大を取て。之に塗擦し其部赤色を顯 わさは寒水蒸湯法を行ふ○痳疾の焮衝◦劇し き者は溶劑を以て陰茎を洗ひ。膀胱焮衝◦攝護 一腺焮衝◦陰嚢焮衝等は。塩酸亜鉛膏を擦入して 効あり○痳毒眼焮衝。梅毒性結膜焮衝には塩一 酸亜鉛一瓜○阿片酎一刃○清水四等の水劑を点 入し。豆大の塩酸亜鉛糊劑を顕額に貼上して 良功あり呂後痳及ひ急慢二性の諸部粘液漏 名人 に。ゴウディリアト、 に。ゴウディリアト。此薬を射注して大に其効 あるを稱す。又白帯下には此薬に莫非を和し て挺錠を作り。之を陰戸に挿嵌して良功あり 瀉諸般の続発梅毒症。経久の咽喉潰瘍骨痰腫。 骨痛・科髪病・皮膚瘡痛・及ひ小疹・疣療潰瘍等総 て梅毒に因する者は。此薬を膏薬溶劑蒸湯方。 含嗽劑洗滌劑等に製し用ひて良効あり○梅 毒性咽喉焮衝荒蕪の潰瘍を兼ぬる者に。塩酸 亜鉛一瓜を清水一等に和して含嗽劑とし。又 塩酸亜鉛三分。清水一勺を攻塊蜜に和し。之を 潰瘍に塗上して効あり「二瘰癧性の潰瘍膝蓋 の白腫・腺腫・輪虫・癌腫・慢性皮膚病・癩瘡。疥癬・動 脈腫◦母班◦海綿腫等に。膏薬或は擦剤を用ひて 功あり、(四十二歯牙の潰乱に由て発する歯痛は。塩は 酸亜鉛の風化せる者を筆毛を以て塗上し。而 し後微温湯を以て口中を含嗽して良功あり。 内服には二十分瓜一至四分瓜一を、蒸餾水に 和し一次の量とし。一日四回に反復して用ふ。 且つ二瓜の塩酸亞鉛に一滴の海塩酸を加ふ へし。是れ其腐蝕の性を脱せしめんか爲なり。 洗滌・薫溺・射注の方を作て。之を外用に供する には、一氏至六瓜を一滴至三滴の海塩酸・及ひて 一了の蒸餾水に和すへし。膏薬は一刃至四刃 を半滴至二滴の海塩酸及ひ一弓の脂に調し 或は沃顛酎を加ふるも可なり。糊劑は此藥一 一分澱粉一分至三分清水適宜を以て之を製す」 ウーストルレン氏洗滌剤を作り。之を梅毒潰 瘍及ひ慢性弛発の潰瘍に施して。屢大功を得 たり其方左の如し 一 方 塩酸亞鉛四瓜 一海塩酸或は沃顛酎四滴 蒸餾水三勺 右調句し洗滌剤となす 塩酸亞鉛の膏に作る者は其功最も緩なり、故 に之を老人。小児◦及ひ病後刺戟を必須とせさせされ る者に用ふ。糊劑は総て之を貼するに。初め先 つ其部の表皮を剥離せしめんことを要す。否ら されは其効少なし 第三篇 解血変質之薬下 酒石酸鹸鉛 タルタリュス。カリコスティビキュス○タルタリェス。 スティビアテェス○ステビヲカリ。タルタリキュス ○タルタラス。ポッターヒ。ヱト。ヲキシディアン ティモニイ○カリ、アンティモニイ、タルタリュム○ タルタリュス、ヱメテイキユス 吐酒石○酒石酸鉛○酒石酸鹽酸化鉛一 酒石酸離鉛は即ち坊間の吐酒石なり。酒石酸驪 及ひ酸化鉛より成る。故に今人此名を命す。白色 晶体の塩にして香臭共になく嘔すへきの礦味 あり。十五倍の冷水及ひ三倍の熱湯に溶解し酒 タンニ 等は皆鋸を キュム して沈澱せしむ。盖し此品の百病に大功あるは。 人々皆得て之を知る。實に其褒稱硝酸銀の外科 に於けると同一般なり。而して諸多の鋸製劑も 爰に此品の存するに遇へは。又之を撰用するの 地少しとす 酒石酸蝋鉛一凡の功用利害 第一健康作用 以局處の作用は胃膓に入て其粘液膜を刺戟し 之を皮表に撹布すれは同しく之を刺戟し、炎熱。 腫痛し遂に痘瘡の如き瘡疹を發す。又咽喉○食道 にも此疹を発することあり○此薬は之を散若く は膏にして用ふれは。扁平にして大なる疹を発 し。之を溶劑として用ふれは球状にして小なる 疹を発す。ベックステーンス の説に曰く。酒石酸蝋の 名人 鋸に由て生する所の疹は。其中に含む所の漿液 の性質。他の牛痘と甚た相譲らす。故に天行痘流 行の時。他に牛痘の良漿なき時は。正に此疹の漿 を以て人に播種し。以て其傳染を防くへしと是 れ甚た疑ふへし 區此薬胃に入れは局發・洗發の作用相並て起る。 但其劇易用薬の多少と知覺機の鋭鈍とに応し て異なり○此薬は血中に入ること極めて早く。且 脳質及ひ肝臓に見たり。又或は之を尿中及ひ脂 名人 つ諸般の器具に循布するか故にヲルセフ は 中に得たる者あり。然れとも此品胃に入て什麼 の會合をなし。血に交て又如何に變化し。諸器に 循布して又何様に転化するや。吾人明かに之を 知ること能わす。唯其作用の迅疾なるに注目して 之を推考すれは。此品は胃に入て蛋白質及ひ其 他の諸品に遇ふと雖とも。決して之と結合する ことなく。直ちに達して血中に入る者に似たり 十分瓜一至 渡小量 四分氏一 を内服すれは。別に較著の患に 状を發することなし。若し反復して之を用ふれは 惡心を發し。胃膓膵。肝及ひ唾腺の分泌増進し。蒸 気○汗○尿等の排泄大に旺盛す 仁少しく大量、 半氏至 を用ふれは上件の諸症の 一氏 迷走 外尚神経枢位の病状第十対神経 神経 に属する の諸症を発す。即ち悪心○違和◦倦労眩暈し。肚腹力 なく時々疝痛し。下唇及ひ下肢戦振し。舌強ばり て運動し難く心動大に減して力なく。脈軟にし て徐となり。彼部に血液充積して是部に血液減 少し。膓の運動増進して胆液を交へたる水便を 瀉利す 二瓜至 保稍大量 二瓜玉 六瓜 を用ふれは即ち催吐の功あり。 此に於てや胃大に脹大し。其下口収滴し。横膈縱 緩し。食道も亦反常の運爲を起し。腹筋収満して 胃中に在る所の物を吐出し。又腹痛して水便を 瀉下す。然れとも尚量を重ねて之を薦れは吐瀉 又發せす。却て上件の神経血管の諸症を発す此 に由て之を見れは。此薬胃膓に抵觸することもな けれは。其洗發の功愈强しとす。故に催吐は此薬 の定発功となすへからす。昔人誤て之に吐酒石に の名を命し。今時尚之を循用す。大に其實に稱わす 二十瓜至四 辺大量 十八以上 を用ふれは胃膓を刺戟する、 こと。極めて甚しく嘔吐下利し肚腹劇痛し。患者倦 労して百事に堪へす。眩暈苦悶◦搖掣-転筋・呼吸困 苦し精神知覚を失ふて遂に斃る。又然らすして 嘔吐下痢を発せされは。神経諸症愈劇烈にして 其死愈速なり○ラッソリ 其死愈速なり○ラッソリ鉱及ひ意太里 ,国 名図 諸医の 十九歳十巻酒石原直筆二冊 経験説に曰く。此薬三十氏以上を用ふれは。更に 嘔吐を発することなし。死後屍を開て之を験する に。胃膓に少しも變状あることなし。唯其生前に黔 視する所の症は。眩暈疲倦。大衰弱等にして心動。 脈搏共に減し。脉一小時間五十至或は六十至を なし。呼吸も亦減して一小時間十次或は十五次 に至り。皮膚の温度大に減却す 第二醫治功用 酒石酸驪鉛の醫治功用は最も廣汎にして。片そ 之を用ひさるの病なし。是れ其無味にして用ひ 易きか為のみならす。其功数般にして能く劇易 の度を殊にすれはなり 一第一之を内用するに由る 以此薬は胃膓。肝○脾に局發の効あるのみならす。 又兼て発汗◦利尿の効あり。故に此標的を以て之 を左件の諸病に用ふ。即ち腸胃汚物の症。腸の粘 液膜の冒寒症。胆液の分泌障碍ある者。急性皮疹に 風湿毒丹毒様焮衝等に小量を用ひ。又急性の腹 水腫及ひ胸膜間漿液滲出の症に用ひて効あり 呂呼吸器の粘液膜に。膿粘液等の積溜せる者あ り。即ち之を排除し兼て鎮痙の諸方を用ひんか 為に気管支の冒寒肺の風氣腫及ひ水腫気管支 広濶喘息、百日咳、レ労気管支焮衝、義膜咽喉焮衝 等に用ひて効あり。ベルナルドー私は肺労及ひ 名人 喘息に一日に五分瓜一を用ひて。莫非の如く鎮 降の効ありと称す 波其鎮降寛解の効を以て。神経系及ひ血管系の 知覺刺衝の兩機亢進せる者精神の病的変章を 受くる者◦狂病鬱憂病◦黒胆液病。相思病。酒客に発 する震暢譫妄諸般の疼痛痙攣破傷風産蓐痙攣 神経熱家の譫発正に脳焮衝を発せんとする者。 舞踏病◦間歇熱金創等に用ふ。盖し間。歇熱には小 量大量共に用ひ。或ひは催嘔剤とし或は催吐剤 として。胃膓の汚物を驅り。神経の機力を變調し て。以て効を奏せしむ○脳背髄に直下に鎮降の 効を達せしめて。以て筋肌の強く攣縮する者を 寛縦するか為に。関節の脱臼に用ひて施術を容 易ならしめ。又此標的を以て箝頓膓癩頸筋の牽 張子宮の痙攣等に用ひて効あり○催嘔剤とし 之を用ひて肚腹の諸病。殊に肝臓の腫大変貭に 効あり。又皮膚の諸病に用ふ其法十六分氏一至 八分氏の量を一次に服せしむ。即ち一日に半氏 至二氏を六号至八号の清水に溶開し。一茶七宛 之を服せしめ患者將に吐せんと欲するに至て 止む。此法は又大飲家の酒癖を斷竭せんか爲に 用ひて効あり 仁)大量を以て血液の運為を変革し一凡の代謝 機を変調し。以て神経血管の系統及ひ呼吸ぬ諸 器に。解血◦變質、鎮降の功力を致さしむ。故に肺焮 衝・肋膜焮衝・胸膜焮衝気管支焮衝・関節焮節焮衝・急性 風湿毒・痳家に發する陰嚢焮衝・静脉焮衝・子宮・焮 衝・乳房焮衝・眼焮衝及ひ其に兼発する粘液漏・咳 血◦痰血◦肺の組織中に血液の滲出する者脳中風 脳焮衝・標疽等。及ひ其余諸器の焮衝諸病に用ひて 良功あり○此薬の胸腔諸器の焮衝に於ける。其 炎の功歴々として確指すへく。実に無比の良方 たり。而して肺焮衝は尤も其功を見るの病なり。 人嘗て刺絡を施せは却て其功を減すと謂ふも のありと雖とも。是れ無稽の説にして信するに 足らす。今之を用ひんと欲せは。先初めに刺絡し て適量の血を放ち。而して後一時毎に一人至二 氏を用ひ。其症劇烈なる者は十二時間に二十氏 至四十瓜を尽すに至る。通例之に由て嘔吐。下利 を発し、大に発汗し呼吸容易となり疼痛減し。諸 般の檢索共に疾患の軽快するを見る。此の如く ならは漸次に其量を減すへし。若し然らすして 之を用ひて疾苦少しも寛解せす。却て増重する の機あらは。速に其用を停めて他の方法を投す るを要す○之を用ひて病苦は大に寛解すと雖 とも、口舌焮衝して鵞口瘡状疹を発せは。明礬塩 酸硝酸銀等。其症に的応するの薬方を用ひて・之 を治し。若し其毒に中る者は中毒の救療法に隨 て之を處置するを要す○肺焮衝に此薬を用ふる れは其功実に正切無比なりと雖とも。是れ必す 小心すへきの法にして敢て乱投胡措すへから す。故に患者甚た少壮なるか。或は既に虚脱する 者知覺敏捷の人○殊に産婦には。此法を用ふるを 禁す○已に上款に列擧するか如く。此薬の諸病 に効あること実に欣賞すへしと雖とも。其中或は 其功害決し難き者も又之なきに非す。盖し一時 新法に癖するの風習にして。褒稱其實に適せさ ることあらん。醫家別に心眼を注ひて以て其當否 を斟酌せは。又他の乱投大患を惹くの害を免るへ しとす 図催吐剤として之を用ふるの病。百般なりと雖 とも之を要するに。此薬は動もすれは吐逆を発 せすして却て下利を起し或は少吐を得んと欲 して暴吐を發し。其惡心違和の症時としては患 者に幾般の苦悩を授け。之に由て或は原病の。痊 癒を妨ることあるか故に。總て胃中に含有するの 物品を吐出せしむるのみにして。別に他功を須 つことなきの時は更に此薬を用ふるを要せす。吐 根○皓礬及ひ其餘の諸劑皆其撰に代るへし。然と も爰に又吐酒石を催吐劑とし用ひて。其功諸薬 に勝る所の病症あり即ち左の如し□内臓諸器 あり即ち左の如し□内臓諸 の冒寒症・肝臓の分泌機障碍を受る者。胆液湧出 して膓胃汚物を生する者及ひ腸胃の粘液夥多 等総て催吐を要するの外。兼て肝◦脾◦膵等諸器の 分泌を催進し。或は之を変革せんと欲するの症 ▢肺焮衝◦胸膜焮衝◦気管支焮衝・咽喉水腫・咽喉焮 衝・丹毒様焮衝・血液溶崩症・眼焮衝・腺の焮衝様感 傷・乳房焮衝・横痃・脳焮衝等、総て其症焮衝・漿液滲 出等に因て発し。而して大に身躯を震暢して神 経血管に、一箇の大変化を受けしめんと欲する 者にあつて。肚腹多血の症なく。心臟及ひ大血管 に形器性の鉄損なく。経久の便秘積年の閉塞な く。卒中風の素因◦頭脳に血液上逆するの癖なけ れは。之を吐剤とし用ひて良功あり。尚且つ酒客 の震暢譫妄百日咳◦諸般の肺病◦喘息咽喉の痙攣。 善性腫瘍・結節肺労の・初期に効あり○蓋し吐酒 石の此等の諸病に効ある所以は。吾人明かに之 を知らす雖とも。恐らくは其遠達の功を以て。神 経血管の常機を一変し。多少血液の成分を変改 し、収歛諸織の牽縮を寛縦するに由て。以て其効を 呈するならん。用法は催吐剤としては半氏至二 氏を八分時毎に反復して用ひ。之を散劑に製す るを最も良とす。或は又溶劑として用ふることあ り。然れとも其漸次の量一次に萠發するの恐あ るか故に。長く之を持長するを禁す。又動もすれは は膓胃の焮衝血液上逆等の症を発することあり。 是れ最も畏るへきの症たり。故に正に吐根に配は して之を用ふへし。小児に在ては殊に然り。若し 又此を用ひて更に嘔吐を発することなくは。微温 湯を多飲し。羽毛を以て咽喉を刺衝し。刺絡◦浴湯 を施して以て其運為を助くへし。或は又患者の一 知覚機甚た敏捷なれは小量を用ひて已に大吐 を起す者あり。此の如き者は速に後服を停め。鎮 降の諸薬を胃部に塗り。鎮吐散を与へ灌腸○浴湯 の諸方を施すへし○咽喉に異物硬塞する者○牙 関緊急望息假死等の症に在つては。薬方を用ふ るの常路已に閉塞せり。正に之を灌膓法とし或 は静脉に射注し。或は之を内皮に傳ふへし。殊に 内皮法を以て最良とす。鎮降寛縦の効を要する には半瓜至一瓜を清水に溶解し。一時若くは一 時半毎に之を用ひ。催惡心◦袪痰發汗の効を須む る者は、一氏至二氏を以て全日の量となし、必す 之を接骨花水◦橙皮水◦薄荷水若くは蒸餾水に溶 し用ふるを良とす。決して諸灰塩諸酸炭酸諸塩 タンニ 及ひ鞣質」 一の諸品に配することなかれ。若し此 キユム 禁を犯せは薬質。是か為に分解せられて寸効なし 酒石酸蝋鉛功用 酒石酸驪鉛は其分解消散の効を標的として。之 を左の諸病に外用して良効あり。即ち脳膜焮衝に 癲狂病・百日咳喘息慢性の気管支冒慢性の寒 頭焮衝◦胸膜焮衝肺労風湿毒神経痛麻痺背骨痛骨痛痛痛羸痛 に用ひ、又單に其局發の効のみを以て。之を急慢 二性の荒蕪の潰瘡慢性の皮膚病白禿瘡◯丹毒様 焮衝・諸腺殊に乳房の焮衝急慢二性の関節諸病。 陰嚢水腫・白腫慢性の眼焮衝・陰嚢焮衝・頭瘡癬癩 等に用ひ。又之を慢性痳或は其閉止する者◦白帯 下◯潰瘡瘻瘡等に射注して効あり。用法は或は溶 劑或は膏薬時に随て之を撰むへし。其分量は作 用の劇易を望むに由て大に異なり。通例其効を 強くせんと欲する者は。十五瓜至二十氏を一号 の清水。或は一勺の豕脂に和し用ふ。餘は類推す へし○溶剤は之を膏薬に比するに其功少しく 弱く。焮衝疱疹を發することも又多からす。然とも 汚膩なきを以て用ひ易しとす。左の方最も良なり 一 酒石酸蘇鉛一了半 蒸餾水 四万 右調和し患部を洗ふ 酒石酸鎌鉛中毒の救療法 多量の水液を以て胃を充満せしめ。羽毛を以て 咽喉を刺戟し斯の如くして。尚吐を起さゝる時 は槲皮。楊皮幾那皮○没食子等。総て鞣質タキキ タンニ キュム を含 んて此薬を分解するの性ある者の煎汁を飲し め。其毒已に中和性とならは即ち粘滑の飲漿を 與へ。食道胃腸の患害は油質劑。阿片劑。浴湯刺絡 等の方法を以て之を治め。中毒の症全く退去す るの後も、尚攝生を嚴にし食飲を慎み。遊運自適 して身躯を艱ふを要す 酒石酸鎌鉛の製劑 第一 催吐酒 孑ニュム。ステイビヤニイム○フイニュム。ステイビヲカリ。 タルタリサテイキュム○フイニュムヘアンティモニアテヒュ クシヤミ 鉛酒の扶苦散鉛酒 催吐酒は之を鉛酒といふ和蘭局方に從へは。酒 石酸驪鋸二十四瓜を上好酒十二号に溶和する 者にして。此液一等に二氏の吐酒石を含む。緩催 吐○発汗○利尿揚奮の効あり。催嘔剤として皮瘡風 湿毒冒寒等に用ひ。兼て其発汗袪痰の効を賞す。 催吐劑としては小児及ひ薄弱の人に妙なり。貴 重の諸器焮衝様の感暢ある者は之を用ふるを 禁す 用法は催嘔発汗。袪痰の諸剤としては、一了至四一 了を用ひ。小児には二十滴を用ひ。催吐剤として は半写至一号小児には一了至二了を用ふ 第二 酒石酸餅鉛膏一 ユングヱンテユム。タルタラス。ステイビコカリ○エング ヱンニュム。タルタリ。ステイビヤテイ○ユングヱンテュム○タ ルタロヱメテイコステイビヤテイ○ユンクヱンテユム。ヲウ テンリテイ発疹膏○浩天利膏 和蘭局方に從へは。酒石酸餅鉛一分を家猪脂六 分に和する者なり。激府局方に從へは。半号を以 て家猪脂二号に和す是れ甚た強劇に過く、正に一 前方を以て良となすへし 用法當否は上の酒石酸鹸鉛の外用條下を參考 すへし 第四篇 補血強神解熱之薬 規尼 キニューム○キ二二ュム 解熱塩○幾那塩 規尾は幾那皮より出つる者たり、此物他の諸品 聖草尼規餒、実革垤等と相並て。幾那樹の皮中に 名国 在り以て其成分をなす。キナは伯剌西里国 の方 言解熱の薬方を称す。故に資て以て之に名くと 云ふ 規尾は灰白の樹脂様物なり。乾白堅固の後変し て軽稀の粉末をなし。味甚た苦くして。香臭共に なく。水に溶解せす酒精にも溶解し難しと雖と も。其量多けれは則ち溶解す。紅變したる青紙を 還元し。諸酸と合へは結て一箇の晶塩をなす。 規尾の強神解熱の効は卓然至大にして高く。百一 薬に愛絶し、他の諸品一も其門牆を窺ふこと能わ す。幾那皮の世間に貴称を得る所以も。亦此物の 存在するに由るのみ、嗚呼規尼は是れ万病の宝 丹にして百薬の君長たる乎。左件の所説以て其 聖効を知るべきなり 規尼一凡の功用利害 第一健康作用 以皮膚に撹布して少しも変化を生することなし。 若し其品清浄にして其量も亦夥多なれは。唯。 しく之を刺戟するに似たり。然れとも皮膚能く 之を吸収するや否や。其機微にして見ること能 わす 一一 区小量 武一 二 を用ふれは。其苦味に由て口中を刺 戟し津液の湧出を促進するのみ。別に較著の症 狀を發せす。又或は之を用ひて脈搏を増し。發汗 を促し。神思揚発することありと云へり。○小量を 長服すれは消食の機少しく不和を覺へ。胃部に 温熱疼痛を覚へ悪心。嘔吐を発し。動もすれは頭 痛眩暈。耳鳴寒戦。下利。疝痛・悸動等の症こも〳〵起 る。是れ規尼は消食機及ひ神経系を侵すものに して。其漸積の量一時に運為して以て此般の諸 症を発するなり 波大量 十六瓜至 二十疋 を用ふれは。初め先つ口◦喉◦胃◦膓。 に局處の作用を起す。即ち咽喉乾燥して緊約せ らるゝか如く。胃部熱痛を覺へ。嘔吐下利し。全身 發熱し。漸々にして患者衰弱を覺へ。憎寒し視聴 共に衰へ。上に記す所の諸症陸続として次き来 り。其症恰も麻醉毒に中るか如く。瞳孔の縮張常 度なく思慮混乱し譫語を発して狂燥し、或は昏 睡し隨意の運動を爲すこと能わす。筋肉震慢し皮 膚知覺を失ひ寒冷となり。脉弱にして不同。動も すれは耳聾眼昏四支癰瘍等を残すと雖とも。此 症太抵二三時にして止む 仁極大量 一了至 三了 を用ふれは。精力一次に沈衰し。 三了 眼華昏闇にして物を見ること能わす。瞳孔散大し 昏々として熟睡し。隨意の運動を爲すこと能わす 遂に播掣に由て斃る。死後屍を開ひて之を験す れは。其変状麻醉毒に中つて死する者の如く。血 液変して闇黒となり凝固せすして流動す 第二医治功用 以酸敗液飲食不消化・胃脘痛等に効あり 図血液衰乏して水質を含む者。及ひ此より発す る諸病・萎黄病・壊血病◦経久の脱血・下血◦水腫殊に 其間歇熱後に発する者。又虚脱の人痛風を患ふ る者に効あり 波佝僂病瘰癧殊に其勞熱を兼ぬる者。悪性の流 行病◦赤班熱・痘瘡・發黄熱・疫熱等に効あり。但し之 を用ふるや皆其末期に於てす、是れ其強神解熱 の功を脩めんか為なり。然れとも其病の初発己 に虚脱に陥る者は此例に非す 亞細亞霍乱に神効あり。最も其初起病勢猖獗 にして駿歩迅疾なるを。一次に頓挫するに至て は。実に百薬無比と稱すへし。 司馬子曰く朋百氏謂く。夫れ病性は百病の因 依する所にして。世期を追て克く轉換する者 なり。医家の治方を施すや。必す之に注目せん ことを要す。三十年前は世界一凡の疾疾。悉く其 性を血管系機運の亢盛に託す。是故に百病皆一 消炎の療法を先にし、亜細亜霍乱の如きも。亦 刺絡吐下等の法方を行へり。今や運改り星転 兼腸 す。病性悉く復た在昔の神経性 胃性 に歸す。此 病は背髄系刺戟の甚劇に起る者たり。規尼の 克く大功を奏するは、盖し又理の當然思ふて 能く得へき者なり。予我邦の諸君を視るに。動 もすれは此病に放血を行ひ吐瀉を施し。普歇 蘭度氏の遺方と稱して。以て患者を萬一に救 わんと欲す何そ其偏固なる。抑病性に從て治 方を議するは。既に普氏の論せる所なり。今其 書を読て其意に達せす。其方を学て其時を察 せす。却て普氏をして寛を千載に抱かしむ。予 又爰に一大長息すへきなりと。嗚呼諒なるか な此言世の学者其れ少しく意を留よ 保虚脱の人梅毒を患ひて經久なる者。殊に其労 熱を兼ぬる者経久の麻痺病。背髄労尋常の脱疽 病院脱疽等に効あり 塩肺労消渇渇病。粘液漏◦気管支の冒寒等。分泌排泄 の機大に亢盛に過る者に効あり 登殺虫剤として膓虫に用ひ。殊に其より発する 冒寒様諸病に効あり 知規尼の間歇熱・神経熱・痙攣及ひ神経性諸病◦麻 一痺諸病に。聖効あるは其作用全く一種固有にし て。悉く洞暁すること能わすと雖とも。精細に之を 考察すれは。其病間歇の性あり。時日を追ふて来 止する者なれは。規尼の力愈強く其効愈切なり。 今正に左に一二の病症を列擧せんとす イ間歇熱は其何性たるを論せす。皆規尾を以 て聖薬となす、故に之を捨て又外に求むへき の品なし、盖し間歇熱に良稱あるの品。其數多 からさるに非すと雖とも、要するに皆其功害 疑ふへく、或は其品峻毒にして容易に之を用 ひ難く。或は其物平穏にして功理常に確切な らす。規尾の克く無畏安行にして。其功の百発 百中なるに如かされはなり○間歇熱に規尼の を用ふるは。常に其免熱時に於てすへし。其他 時を以てするを要せす。是れ即ち輓今高尚の 学説に由て定まる所にして。規尼の効此際に 最も確切なり。然れとも又時としては此例に 從ふへからさるの事故あり。則ち炎熱の諸國 他の雰毒腐陳の瘴気に由て発する所の悪性 熱。其再発作あらしめは患者の性命必す保全 すへからさる等。極危殆の症狀ある者は。其發 一了 熱時に於て大量 の規尼を相次て用ひ。以上 以上 て其熱を截絶するを要す○規尼は実に此病 に効ありと雖とも。其之を施用するに當ては。 能く注意して合併の諸症を減却し。而して後 に用ゆるを要す。殊に内部の貴要諸器に焮衝 一充無刺衝機旺盛等の候あり。或は膓胃汚物の 症ある者は。預め之を剋治せすんはあるへか らす。然れとも其合併諸症も亦能く。之を精細 に。考察するを以て医家の一大要事をなす。何 となれは吐下◦滌除の薬剤を投すと雖とも。其 合併症、更に減退せす。規尼を施用するに及て、 本病と共に脱然として消散すること。屡これあ れはなり○間歇熱に多く併発する所の肝脾 の腫大は、規尼を用ひて大に効あり。グローム、 の説に曰く。予嘗て此症に十五氏の規尼を一 次に用ひ三分時を過るの後。其腫大の減却す る直ちに手を以て按し試みても。著しく知る へきに至れりと 司馬子曰く間歇熱に規尼を用ふるは。諸説 紛々として未た一定せすと雖とも。要する に舌苔。胃部胞脹等の仮症に迷ふて、之を停 むることなかるへし。又時としては幾那皮。規 尼に勝ることありと雖とも。是れ唯胃の知覚 機甚しく亢進せるの時に在るのみ。盖し此 一時に當ては幾那皮も亦害なしとせす 曰諸般の間歇性神経諸病神経痛痙攣心悸動。 往来寒熱及ひ喘息呼吸困苦等の間歇性を挾 む者に。規尼を用ひて効あり。是れ此般の諸病。多 くは背髄系の刺戟を受るに。起因すれはなり は刺戟及ひ充血の諸病。加之諸部の焮衝。出血 病等の間歇熱性を挾む者。或は其病時日を定 めて齊整に發歇する者。或は神経系の機能著 しく障碍を受け。精力一次に沈降し痙攣疼痛 並ひ起る者に効あり。故に其功を擴めて之を 脳焮衝。肺焮衝・義膜咽喉焮衝。眼焮衝・咳血。皮膚 〖療等に用ふ 二 二神経性諸病其間歇の有無に關せす。總て背 体系の刺戟に因て発する者。癲癇◦舞路病。百日 咳咽喉痙攣攣痰不遂筋の痙攣牽縮及ひ心臓 の形器性諸病に効あり ホ風湿毒痛風等其発作間歇ある者。衰弱繊柔 悪液質の人に発する慢性焮衝様の諸病。瘰癧 性眼焮衝癒て後残遺する所の疼痛に大に効 あり 神経熱及ひ其般の諸病には。強壮剤として 14 之を唯其未期に用ふるのみならす。又其初發 病未た十分に發達せさる者に。解熱劑とし用 ひて殊効あり。特に其のみならす百般の熱性 一病。血管系の刺戟太甚ならす或は其人衰弱せ る者は、之を病の初期に用ひて。其熱を掃ふこと 一恰も響の音に応するか如し 夫れ規尼は幾那皮の中にありて。他の諸品と共 に其成分をなす者なれは。其効も亦幾那の如く ならん。幾那を用ふるの病は。皆規尼を用ふるを 得へし。然るに人特り此品を貴て。其効幾那の上 に在りとなすは何そや。盖し規尼は之を用ひて 胃を害すること。幾那よりは少なく。小量を用ひて 幾那の大量より其効強く。規尼の一二瓜能く幾 那皮の五六了に当れはなり。尚且つ之のみなら す。其解熱強壮の効を以て神經機を鎮静し。血行 を調理し。寒熱を変動する等は。実に幾那皮の及 ふ所に非すとす 第三規尼を用ふへからさるの症 規尼の用否は既に之を其病症に就て之を論せ りと雖とも。尚反復して之を謂へは総て左件の 諸症は、皆之を用ふへからすとす即ち 以消食器械の刺戟焮衝。及ひ其形器性鉄損ちる 者は。用ふるを禁す 呂腹内諸器の真焮衝。熱病焮衝性を挟む者。膓に 【B】 潰瘡ある者。悪液家に発する熱病及ひ其大衰弱 虚脱の人に発する者は。用ふへからす 渡急性天行の瘡疹病。血中膿液を交る者。産婦に 発する焮衝病。神経の知覺非常に敏捷なる者。内 臓の閉塞、或は硬結腫の経年頑固なる者等には。 規尼を用ふへからす、尚其他の禁忌の如きは健 康作用◦医治功用を参考して。医家宜しく商量す へし 外用に規尼を用ふるの地。甚た尠なし唯其病障 碍ありて。内藥を用ふへからさる者に。灌膓劑と し。或は内皮法として。其汎発の功を達せしむる のみ 夫れ規尼は其施用の標的に従て、各分量を別に せさるへからす。故に通常これを以て強壮の功 を収めんと欲せは。四氏至六瓜を全日の量とな す。然れとも單に之を強壮剤とし。用ふるは稀な り○間歇熱には免熱時に於て。十二氏至十四氏 を用ひ。悪性危劇の者には免熱時と発熱時とに 論なく。一了或は尚多量を用ひ以て性命を救ふ へし。又輓今の人関節風湿毒◦心嚢焮衝及ひ其余 の神経諸病に半了至一の規尼を用ふる者あ り。然れとも此方甚た危し用ふるに足らす○規 尼は之を溶劑とし用ふれは。通常其功確にして 且つ疾。丸散に優ること夐に遠し、故に之を溶剤と なすを良とす。然れとも又症に從て丸散劑を作 らさるへからさるの地あり。若し然る時は棲椒。 葛根◦龍脳◦阿片◦炭酸銕等を配し用ふ。其苦味を褪。 するには白糖は少しも効なし。唯茴香・纈草等の 香竄薬を一盞の濃煎茶に浸し。規尼を服するの 前後に之を飲ましめ。且つ之を以て含嗽せしむ へし。是れ苦味を除くの最良方なり○亜細亜霍 乱には。唯其用法の善悪に由て。病の治不治を致 すか故に。精密に之を斟酌商量するは。盖し其人 に存するのみ。然れとも通例三十人の量を二時 間に服盡せしむるを以て其定規となす。若し此 量を服盡して。其病即ち抗拒の良機を見さゝれ は。是れ其症太抵危殆なり。故に規尼の量は一日の にして六十介を用ふへし 司馬子曰く亜細亜霍乱は、一異霧霧の瘴気に 由て起る者にして。邦俗之を虎狼痢と云ふ。文 政の末年。初めて東印度の河浜に起り。爾後次 て全世界に瀰蔓し。遂に我邦に來る。安政年間 此病大に崎嶼に流行し哭泣衢に充つ。當時の 一明府岡部某君側然の至りに堪へす。我師蘭疇 先生に謀て和蘭の授教師。海兵部醫官。兼日本 地方格致任員。魯西亞帝御賜章位。忠義連社。海 外列邦学社会盟。首府侍臣。玉ノ函涅朋百漢蔑耳 垤児高爾徳氏に。咨詢し医局を開ひて、大に病 一瓶一紙一箱一箱 一者に賑給す。規尼を費すこと百瓶一 を容る 治を 仰く者殆と千人に及へり。而して其中死する 者僅に十分の二に足らす。伝へて以て美談と なすと云ふ。今爰に醫局に於て當日用ふる所 の方薬数款を記して。以て異日の考証に備ふ。 五 十二 右研 甘草末、 吐根 甘草末鱸右 即ち第一方硫酸規尼 正五 八五 和し四包に分ち。二時間に服盡せしむ。輕易の 症は之を用ひて足れりとす。第二方硫酸規尼 刃 1 阿芙蓉液 三十 滴 廿五 一忽布満鎮痛液 滴 滴 蒸餾水 一ケ 半 右混和し四十滴至六十滴を米麦の煮汁一盞 に和し。半時毎に服さしむ。第三方硫酸規尼。又 刃 半 半代 半代 甘汞 硫酸莫非一 右研和し四包に分ち。二時 八 凡三 二十 三十 一間に服盡せしむ。第四方硫酸規尼一 龍腦三 八一 式 一忽布満鎮痛液 三十 南十 滴 上好火酒五右混和し三十 一滴至四十滴を米麦の煮汁に和し。半時毎に之に を服さしむ 既に之を醫治功用の條に論するか如く。規尼は 百般の諸病に於て、其用甚た廣汎なるか故に。悉 く其用法分量を擧くること能わす。唯時に臨て人 々得て之を商量すへきのみ、若し之を溶剤にし て用ひんと欲せは。須く忽布満鎮痛液若くは上 好の火酒及ひ少許の硫酸に溶し。而して後之を一 薬液に和勺すへし。又胃の知覺機敏捷に過くる 者は。之に阿芙蓉或は苦扁桃を加へんことを要す」 和蘭の首府安私多爾当 名 地 の医院大教頭。コベー 氏劇盛眼焮衝 風眼 の類 の神経性に陥り。其疼痛劇甚 にして間歇の候判然たる者に。左方を創製して 之を用ひ大に其良効を稱す。予之を試験すること 既に六回其功実に神の如し 一 硫酸規尼三十八 清浄阿片三介 甘草末十八 右研和し散となし十包に分ち。一時毎に一包 を服す 規尼各般の製劑 第一 純規尼 キニニュム。フュリュム○ギニナ、プュラ ○ヒダラス。キニキュス 白色無臭の塩なり。水に溶し難く酒精に溶解せ す。故に醫藥に供すること甚た少し。唯苦味稍微 なるを以て。時として之を小児の諸病に用ふる のみ 第二 硫酸規尼 シュルファス。キニキュス。バシキュス○キニニュム、 シェルフユリキュム○シュルファス、キニニ〇シユルア ス。ビキラキュス 雪白疎鬆針狀の小晶塩なり。香臭共になく。味甚 た苦く。日光に遇ふて褐色に變し。紅變の青紙を 還元すること能わす。七百四十倍の冷水三十倍 の温湯に溶解し。酒精にも亦容易に溶化す。若し 少許の硫酸を加ふれは。之に由て其中性となり。 冷水に溶解すること甚た易し。其用法禁忌の如し きは既に之を上に論せり。故に爰に贅するを要 せす ジェクロス以此塩を用ふるの一新法を創め。之を 名人 以て其遠及廣達の功。夐に内服に優ることを稱せ り。即ち其法は此塩一人を忽布満鎮痛液一刃に 溶解し。毛筆を以て之を齒齦◦頬内○咽喉に塗擦す。 斯の如くすれは其甚苦味に由て劇盛の流涎を發 し。之に由て背髄に其効を達し。以て間歇熱神経 病等に大効ありと云ふ 第三 塩酸規尼 キニニュム。ミュリアテイキュム○ミュリアス。 キ二二〇。コロラス。キニ二〇キニニュム。 ヒドロ。コロラテュム 白色針状の小晶塩なり。味甚た苦く。三十倍の酒一 精に漸く溶解し。熱湯及ひ冷水には容易に溶解す 此塩は其用前物の如く広からすと雖とも。揮発 利尿の傍効あり。且つ胃を害すること甚しからさ あり。且つ胃を害すること甘 るを以て。大量の規尼を用ひんと欲するの地に 能く適應す。然れとも其功別に前物に異なるに 非す 非すべ敵。し後よしが重殺の咄を失職より合 第四 OWKVK、チニ二 キニニュム。アセティキュム 醋酸規尼 ○アセタス。キニ二 晶体の小針にして光澤あり。冷水に溶け難く温 湯に容易に溶化す 第五 亡所奏中巻現尼四十六尚所堂蔵 砒酸規尼 キニニュム、アルセニコーシユム ○アルセニアス。キニニ 白色の晶塩なり。水に溶化し難し規尼砒酸と直に ちに結合する者なり 第六 燐酸規尼 キニニュム。ファスフヲリキュム ○フヲスアス。キニニ 無色玲瓏の小針にして真珠の如き光輝あり。冷 水及ひ酒精に容易に溶解す 第七 キニニュム。タルタリキュム。 酒石酸規尼一 ○タルタラス、キニニ 白色にして光輝ある四面柱の小晶針なり。冷水 に溶け難く温湯に溶け易し 第八 キニニュム、ヒドロイヲディキュム 沃顛酸規尼 ○ヒドロイヲダス。キニニ 褐赤色無晶の粉末にして。冷水に溶解し難く酒 精等には容易に溶解す 第九 硝酸規尼 キニニュム。二ットリキュム ○二ットラス、キ二二 白色苦味無晶の粉末なり。水に溶け難く酒精に 溶け易し 第十 鉄加青酸規尼 フェルロシアナス。キ二二〇キニニュ ム、ヱルロシアニキュム 黄緑色の小針簇つて不齊の晶を結ひ。酒精に溶 け易く冷水に溶け難く温湯に由て其質を解析 せらる 第十一 見己ヒドロシアナス。キ二二〇キニニュム、 青酸規尼一 ヒドロシアニキユム 黄色の水液なり。甚しく青酸の臭を発す 第十二 シタラス、フヱルリ、ヱト。キ二二〇 鐵加枸櫞酸規尼 キニニュム。フヱルロシットリキュム 此塩は四分の枸櫞酸銕。一分の枸櫞酸規尼より 成る者にして。闇赤色○晶體鱗状の鱗片なり。味極 めて苦し。冷水及ひ酒精に容易に溶化す 第十三 シタラス。キニ二〇キニニュム、 枸櫞酸規尼 シットリキユム 白色晶體の塩なり。水に溶解し難し、枸櫞酸曹達 を以て硫酸規尼を解析するに由て成る。カヱン 共に トー及ひマーシャンディー 大に此塩を稱して 人名 曰く。此塩は耳鳴◦頭痛等を起すの憂ひなく。甚た 焮衝性の諸病に用ひ易しと 第十四 轆酸規尼 キニニュム、タンニキュム○タンナス、 十二二 白色にして蝋屑の如し、冷水に溶解せす 第十五 纈草酸規尼 キニニュム。ファレリアニキュム ○アレリアナス、キニニ 無色斜方の小針晶にして大に纈草酸の氣あり。 冷水に溶け難く温湯酒精等に容易に溶化す 第十六 キニニュム。キ二キュム 幾那酸規尼 ○キナス。キ二二 白色細微の小針集て節状を成し。風に遇ふて獣 角様に変し冷水に容易に溶化す 第十七 乳酸規尼 キニニュム。ラクテイキュム ○ラクタス、キニ二 節状の晶体にして光沢あり。冷水に溶解し易し」 斯の如く規尼の製剤数般にして。各其殊効を稱 褒すと雖とも。是れ皆輓今新奇を好むの流癖に 褒すと雖とも、是れ皆輓今新竒を好むの流癖 して。此中醫薬に供すへき者は。特り硫酸塩酸の して此中醫藥に供すべき者は特り硫酸塩酸 二品のみ。其餘は悉く繁剰無益の品物にして。更 に任用に堪たる者なし。斯の如き新奇の剰薬世 に出て実用に適せさるは。予既に之を沃顚の條 に論せり。藥室の美觀を存する豈醫道の本旨な 七新薬十合中九一一一九一九一〇 らんや。世の学者新説に惑溺して謾に多品を募 召することなくんは則ち可なり 附録 撒里質 サリシニュム○サリチニュム 此塩は白色小針状の晶体なり。味極めて苦く。 二十二倍の冷水半倍の温湯三十倍の酒精に 容易に溶化す。此物は水楊樹の皮中に在り。以 て其成分をなず。サリキスは羅甸の語にして。 水楊樹を云ふ。故に資て以て之に名くと云ふ。 文化八年 西国紀元千八 百二十五年 一同十日、ホンホンホンホンタンタンホンタンタンホンタング 人 を撿出し。後三年を経てレローキス人之を精 名 製し。以て醫薬に供せしより。以來其用大に廣 まり。動もすれは之を以て其解熱の功。規尼に 勝るの説を唱ふる者あり。盖し其効実に斯の 如きに至らさるも。規尼の幾那皮に出つるは 一本是れ海外遠來の品なれは。偶其缺乏に遇わ さること能わす。水楊樹の如きは各國各地これ なきの處なし。人々得て以て撒里質を製すへ けれは其益又大なりとす。附録の起ること盖し 之に由る 一撒里質の健康作用は。未た詳ならすと雖とも。 醫藥としては。總て規尼を用ふへきの病は。皆 撒里質の的症なり。而して規尼の如く血管系 を刺戟せす。又胃を害することなし。此薬を以て 規尼に優るとなすは之か爲のみ。故に間歇熱 一殊に其粘液質の人。悪液家衰弱の人。及ひ再陥 の癖ある人に發する者。間歇性の神経病。及ひ 神経痛飲食不消化◦慢性の下利◦気管支及ひ其 一余の粘液膜の冒寒諸症。膓胃肺等諸器の粘液 膜の衰弱諸病。呼吸器の痙攣性諸病。百日咳○喘 息粘液熱萎黄病◦白帯下○瘰癧性の眼焮衝等に。 撒里質を用ひて効あり。又輓今の發明法に由 れは。慢性経久の痳疾時日を玩暢して痊へさゝ る者及ひ頑固の腟粘液漏等の諸症に、此薬一 氏至三人を内服せしめ。一刃を清水一兮に和 し之を射注して大に効あり 用法は間歇熱には。十二氏至四十氏を一日數 次に用ひ。他の諸病には一氏至三瓜を一次に 用ひ。又症に従ひ一二瓜を全日の量となすこと あり。散劑を最も良とす。規尼の條に列擧せる 諸薬を伍して之を用ふへし 七新薬中巻畢