武道心鑑
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- 高坂昌信編
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- 東北大学
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狩
武道心鑑
甲陽軍伝記
武道心鑑
武道心鑑
甲易軍専已武道鑑
甲陽軍伝記
武道心鑑
廣
内大記談
○○○○○○
北北北北京
第式記談
図書題
武具要説
道
天文年中五月八日信玄公小幡山城守
原美濃守横田備中守多田淡路守
山本勘助五人を被召出土屋右衛門尉内
藤修理正両人と以被仰下けるは一切の
武具善悪の分ちなく拵ては必用に立間
舗と被思召候若き士共他国の境目抔に
て敵討其外勝負をして仕損するも
仕す万すも常の事なから其手道具を
悪敷拵用に立得すして仕損したらん
者の不覚は不及言甲州信玄り士何某
といふ者不審なる道具を持て仕
損したると沙汰あれは信玄か不覚になる
へし武道具の吟味は度も手に合すし
ては弁かたし若き者共の為又は御道
具の拵被仰付為なれは所存の通何レ茂
可申上由にて則一冊に被遊被仰付候御家に
数度手に合他国にも聞有る衆数多く
得共一城を預ケ置るし侍大将にハ御遠慮
有之不被仰付候尤与刀同心中には場を軽手
柄を数度仕たる者何程も御座候へ共是は大
勢の事にて誰レ彼レと御撰被成候事も
如何に被思召足軽大将の内にて右の五人切
者と申何れも五十度余充手に合たる衆
なれは可然とて此衆へ被仰付候
一馬の事
一鎧の事并具具足下益手臑最の事
一脇差の事
一刀柄の事一脇差柄の事
一鉄の事一目釘の事
一鎗の事一長刀の事
一弓の事一矢の根の事
一鉄炮の事
馬の事
一横田備中守申分大長けなる馬悪鋪と申者
有之候其子細は第一敵の中にて急成時大馬
は気下り自由ならさる故ときく是は名人
の何そ理有事を申たるを聞伝へて手に
合さる者の口に住て申たる事なるへし歌
の中にて馬より下り勝負を仕り又馬に乗
働候事無左右無之儀に御座候疲たる馬は
組討抔仕たる時其儘立留る事も候得共十ヲ
に九ツ止らぬものにて御座候馬の気の向き
たる方へ駆行物なれは其馬をとらへて匹乗
候勝鎗の時追討なとには中間に者も続もの
なれは気放シたる馬をも引寄て口を取らせて
気には安き苦き指引もさのみ御座有間
鋪候勝負いまた不知時馬を入れ下り立て
敵相を仕又馬に乗て働くなとゝみふは
不穿鑿なるへし五寸余の大馬に棄たる
敵に一寸二寸の小馬に乗てはいかに覚の人
なり共敵を仕ふせる事なるましく候馬は
の組討と申は先勝の物にて御座候両方先
後なけれは両方共に馬より落るものにて
御座候二寸の馬と三寸の馬と出合たる時二寸の
馬に乗たる方より先を仕れは勝になる
物にて御座候三寸の馬に集たる方ゟ先を仕れは
二寸の方負になる物にて御座候鞍の前輪に
押付て首を取揃と申も先勝の時の事にて
御座候我等所存には軍馬には大馬にこす事
御座あるま敷と存候
〇一小幡山城守申分横田備中守申所尤に候常には
小馬扱能御座候間人の好とも道理に御座候得共
常に乗り下り仕有候へは大馬も苦にならさる
ものにて御座候間大馬を好み気有申度御座候
〇一原美濃守申分右之衆被申所尤に若板垣
一信形と村上方と働候時名高く相聞へ候長谷
倉照し凡と申者鵯毛の二寸にたらさる
馬に乗信形同心の小嶌忠兵衛に駆合せ
忠兵衛を切落し候長谷倉流石の者故忠
兵衛つれか首を取不申某に乗掛り鎧か
ら美を仕候私馬は五寸に余りたり馬にて長谷
倉り馬を引まへつて腹帯を引切鞍と
もにはね落し候を我等小者首を取申候
勝負は運に依ると申なから我等小馬に
乗候はゝ安らと仕ふせ候事成間鋪候是は
大馬故利を得申候
▢一多田淡路守申分右の衆被申所至極に候
大馬の一ト曲ある馬ならては戦場にては役
に立不申候曲と申候内に籠曲ある馬は
一毎用に候平生乗合能馬は大勢の中に
ては人に酔ひ馬にせかれすゝむ気ならし
て中々気の毒なる物にて御座候へと気勝
れて強起馬なしては大勢の中に気
込候にわざは無之候一手の大将を仕り候程
の者か敵の中へ馬を入るらは自ら勝負仕
人為計りにてハ無御座候就中足軽大将
なとの馬を入るゝは畢竟敵の備を集り
破て我手の者共に能働せん為なれは一寸
一二寸の小馬にて大勢の中を駆破る事中々
成間鋪候
一山本勘介申分何もの申分尤に候馬にも
不吟味なる所より出たる馬は容牙鬱金仕可
一求事也其故ハ今川義元の御家中によね
まきと申白楽参り肢ふり悪敷馬の
筋を切申候不吟味なる士衆馬の振りを好ミ
馬を求めては前肢後肢の筋を切常に責通
ては前後能なとゝいひありき候或時義元
の出頭三浦右衛門大夫と申者松平蔵人清
一康内の内藤又左衛門と申者登天龍の
渡りにて喧嘩仕候処内藤は馬乗十騎計
歩行彼是五拾騎計の人数にて御座候三浦
は馬集五六十騎歩卒足悦には三百斗にて
押掛ケ候間内藤川越引越候を見て取て
通シ鎗を合せ候例の筋切馬共川中へ立千
得すさん〳〵に押流され候内藤突勝て
一乗馬足軽五六十人討取申候馬の筋を切と
申事は馬鹿者言語同断に候彼筋切れ
馬水をおよき得す坂を越さす大形木馬同
前成へし尤常には坂も越し川を渡すにも
流の遅き水と浅川は越す物にて候坂を早
道に乗上ケ城下候事ならす水早き川と
長ヶの及さる川は渡得ぬ者にて候ケ様の
馬は能く吟味有へし何も尤の由申候
饉の事并具足下蓋手臑宛の事
一山本勘介申分シ昔より人々の届次第色々
感候得共善悪の差別聢と無御座候甲
も鎧も糸少ナに手軽く感たるか能御座候
身のかこひに成候事は桃形りなとのことく
鉢細く軽き甲たるへく候鎧は桶皮仙胴
なとの如く胴の内に糸のなき様に威たる
にしくは御座有間鋪候具足下は夏
冬共に綿入り能御座候蓋手臑宛ハ
善悪の覚無御座候
一原美濃守申分山本勘介か申候処至極候
韮崎御合戦の時成程見事なる絶擲
一胴の鎧を討取候我等身に能合申候間
瀬沢御合戦の時着仕鑓を合せ疵を蒙り
候前後無覚深手を負申候是は縫掛明敗
と存候其故は縫掛は鎗たまり刀たさりに
成申候少し申りたる鎗も脇へ走る事
なく候故能抜るものにて候様を心に懸り
ものなとか縫掛を着る事可為無用候
具足下ハ山本如申綿不入候得は冬実ニ
〳〵夏金物日に焼堪忍ならぬ物にて御
座候其外の小道具はさせる吟味有之
間鋪候悪けれは取てのくるに安けれは
なり惣て鎧は少つまりたる方に拵
たるか能候一大事に可仕は腰裏なり余
の所は少〻手負ても妨に成物にても無
御座候足の裏は少しにても疵付候得者
働るしものにては無御座候韃之上に板
目皮又はうすかねなとを踏鋪たるか
能御座候鎗刀なとに踏かけたる時不痛
為なりと申候何れも尤のよし感し候
刀の事
一小幡山城守申分ン刀ハ長短によらす直な
るを嫌り申候第一手の裏廻るものにて御
座候又切先下りのものを切てきられす候
勝負にはさのみ長短にもよるましく候
某其以前信州海尻にて盗人を仕留め
候に壱人は三尺余りの刀を持壱人は弐尺四
五寸の刀を持相手に仕我等は三尺の刀にて
長き刀を持たる奴は唯一と太刀に切伏候短き
刀を持たる奴と渡し合半時計切合候得共
切留め候事不成組討に仕漸仕留め申候放
討は十五六度も仕候得共是程難儀仕
たる事無御座候長短の勝負聢と御座
有間鋪候得共一寸手まさりと申事候間
長きに利可有之尤短も長きも所により
可申候
一原美濃守申分レ刀ハ指主の腕次第に長も
短も利有之候三尺余の刀を自由に振廻す
者度々手合ひ物馴たる人は格別初而の
者なとは兵法を伝りても海仕事は成間
鋪候我人鎗場は申に及す殺害人切籠
者なとを仕るにも二度三度迄は心せき
平生の心とは替るものにて御座候一度も手
に合さるものは敵合を仕れは気上ツて目
見えす候故切先回五寸違ハぬ程にて打
太刀引太刀の見わけなくひた打に打て
勝負を盲物に仕候尤兵法を能つかつて
度々手に合ひたるは山本勘助か如く鬼に
金棒たるへし某は終に兵法の稽こ仕
たる事無之候得共此以前ゟ二尺九寸の刀
一ツを持て戦場仕毎には四十度に余り手に
食候得共不覚を取たる義無御座候小田原
に罷在候中に中村兵弥と申景流の兵法
つかひ傍輩をあやまち欠落仕候を追掛ケ
抜流し切結候流石の兵法者にてつつと入
て某時に刀をすけ候無調法なから度々
手に合候しるしにすけられたるを早く見
付其侭蹴倒勝はなき物にて候是は兵法ふ
存候得共度々手に合たるにて見付ケ申候
指主の腕次第と申スハ甲の真中抔は小き
刀にて打ては相手の死ぬる程にはわれぬもの
にて御座候
一多田淡路守申分刀は人々の生水付次第に
指て可然事にて候微力に而重き力は業なく
候強き力にて軽き刀も又悪鋪候大男の短き
刀も不好事に候小男の長刀ハ猶以不好事
に候我手に合ひて古き身の能切るゝを持て
可然候新身は今年切れても明年不切
頼なきものにて候身細き刀は生唐者は嫌
不申候得共鎧の上を打候得者名作は不存
一大体の刀はゆりむ物にて御座候ゆりめは名誉
の切物もきれぬ物にて御座候
一横田備中守申分長き刀は大勢に渡し合て
戦は後には切先下りになる物にて御座候切
先下りに成ては敵は切られぬ物にて御座候
美濃守申候ことく初心の間は盲打を
仕切先を打下け多分土に切込物にて御座候
数多手に合たる者と不合者の替りは爰
にて御座候土を切る初心者を切馴たる者か
切るには何の造作も無き事に候平賀成頼
と信虎公との御合戦のことし日の中に八度
この合戦に成ては長き物は皆切先下り
たる由に候昔も判官吉野山にて忠信に
太刀給るに寸延たるは大勢に逢てはあし
かるへしとて二尺七寸の太刀を給りたると
有りはなうら相手向又は二人三人をしまふ
には狭き所にてさへなく腕に叶たらは長
き刀にしくは有ましく供
一山本勘介か申分喧嘩口論又は放討に仕候
ものなとに長き刀を抜立ぬ内に短き刀
を以手早く仕伏せて利を得たる者は短き
を好申候又短き刀を持たる者を長き刀にて
強刀の者か打倒なとして勝たるものは長
きを好申候塚原卜伝は刀は人々の長により
て指物なり臍の上に鉄の越す刀をさしぬ
物と申候由及承候しかれ共小男か長き刀
にて働きたる例も御座候尤卜伝は戦場
の高名其外仕合仕物に度〻馴たる
兵法の名人にて御座候得そあらぬ事は
申間敷候勝負と申は人の運に依かなれは
一長短の沙汰は不及申候得共山城守如申
一寸手増りと申時は長起に利有へくと被
存候に男に而も抜にさわりさへなく脇にかな
ひたらは長き刀尤に候常に三尺の刀か自
由に抜候はゝ二尺七八寸の刀を指て可然と下伝は
近江の蒲生殿江参り候時三尺程の刀を
指て屏風の脇を通り候時陰より抜身の刀
を持てつつ北之出打掛候を卜伝飛しさつ
て脇指を抜き其相手を仕留め申候間さゝ
まりたる所にて刀を抜候はし物にもつかへ又
物あひも遅かるへし卜伝刀を抜たれはと
て不利に刀計にて仕るも至らぬ事なり
其時下伝を討んと仕たる者は落谷虎右衛門
と申兵法つかひとト伝都にて木刀打の
一仕合に負て蒲生家中に居たるか其遺
恨にて仕たると聞候
脇指のの
一原美濃守申分脇指は刀にて働れぬ所を
働為なり又さすかなとゝ申て尺にもた
らぬ物を懐中仕者も有之候其体水天
一園合点不参候腰に付たる刀脇指をさえ
用に立チ得ぬ不覚人か人の手籠に逢
たる後懐中のさすかにて指殺さるゝ程
のぬけ者は人を手籠に仕事成ましく
所詮刀脇指の吟味一ツにて可有御座候
一多田淡路守申分膝を組かわし又ハ細戸
物の下なと刀の扱ひならぬ所にて脇指にて
可仕候美濃守申分尤に候脇指の寸一尺七寸
より内は業有之間鋪と存候其故は三尺に
およふ刀を以て切籠者又は立合の勝負なと
仕に毎度刀の物打にて切るし物にては無御座候
切先中り手元に申り尤中にも中り一円定り
無之候然共壱尺六寸の脇指にて切はつ
し候事多かへきと存候短き脇指に
ても敵のたゝ中なとを突通しなと仕た
らは子細はなく候人を突といふは成事にて
無御座候由断したる所は不知目と目を
見合立合ては切る事はいかにも仕れ共中
し短きものにて人は突かし物ならす
候たとえ突たり共鎗にてさへ突レなから
働者有之候況手と手を取かわす程にて
突たらんには当の刀を打ぬ者は御座有間鋪
候尤名人ハ一尺弐三寸の脇指にても思様に切
あて可申候我等こときの者は幾度も手に逢
ふても刀の切所を定る切る事はならす候た
めし物を切にも少シ間積り違へハ中り所も
違ひ申候増て男と男か刀の柄も砕よと
振り石をも金をもわけすたまらす切れ
よと打時に刀の中り所かある事にて無御座
候中ルか幸にて御座候刀の中り所か違時には
一尺四五寸の脇指なとは切はつし申事
道理にて候短くするものとてさのみす短
は詮なかるへきやうに被存候
一小幡山城守申分名被申所尤に候先年
小田原ゟ真景の兵法者大田和源内と申
者参弟子余多指南仕候大田和申候者
壱尺五寸の脇指と三尺の刀と相打に成と
申候つゝしか崎にて切籠り者有之候を
一彼大田和行合せ壱尺五六寸の脇指にて
仕候相手は三尺程の刀にて御座候ひきし家の
内にて相打に仕候相手寸延たる刀ゆえ戸
に切込たる所を何の手もなく仕留候其後
大田和才延参詣仕候に道にて殺害人に
行合刀は不抜脇指にて切合候是も相手は
三尺程の刀にて御座候相打を仕大田和腕
を切られ候大田和は脇指は相手の刀に当
り申候大田和兵法去能もつかひ候へかし
手に不逢ゆ元不容穿鑿なる事を申候
其故は三尺の刀を壱尺五寸の脇指とは
一脇指か一尺五寸をく候得は片手打に仕候故
三尺の刀と同すに成也手を添て三尺になる
道理なれは三尺の刀と相打にしては先の
刀手に中ると云ふを合点不仕候か算打
木打のことし真剱も少の請はつしにて
勝たると心得たし手に合ぬ兵法者ハ越
度可有様被存候大田和初のつゝしか崎
にてはせまき所なれは脇指にて仕候事
尤に候身延参にて仕たるは不切者なり
一度の利を朝晩能事と思ふは僻か
事なるへし北条早雲の歌に
入日道具いらぬ道具を思案して
いれとも持ないらすとももてと
読給ひしは尤の事なり美濃守申ことく
刀にて働ならぬ所を脇指也新身古身強
しよわしの吟味は同前に御座候
一山本勘介申分何れも申所至極候塚
原下傳は常に二尺四五寸の刀を指候得共仕
合ひなとの時又は放打のもの其外悟シ
たる時はいつれも三尺程の刀を仕候由承及
候爰を以案事候得は長物のあつかはれぬ
所を短き物にて仕道理と一にて可有御座
は
刀柄の事
一横田備中守申分長き刀短き刀によらす
七寸より内の柄はあしく候長きか能とて
八寸より上の柄も悪鋪長くしても柄先
を取て打合るし物にては無御座候柄先を
持打候得は中りも弱き物にて御座候しかれ
は長きも詮なき事に御座候又短き柄は
鍔元を取ても柄者を取たる同前に罷成候
握たる左右の手合少もすき候得は打
一太刀少延不申中りも悪鋪物にて御座候
聢と手に不逢ものか柄を一尺にして
手合を明けて握るか強みにて中りも
能きなとし申すは可笑事にて御座
候長き刀は間を延してあたるか肝要にて
候得共打所か延年は短き刀も同前にて候
一長所の詮無御座候柄長けれは第一馬の気
下り蓑の下何共指にくき物にて御座候
〇一原美濃守申分柄の大成は早く腕草臥るゝ
物にて御座候聢と手に不逢ものか津よみ抔
と申すは可笑にて候某此以前大成日柄を好み
まゆみと申す木にて切込弓弦にて巻き堅
め其上を菱巻に仕手をいたまかし申候其故は
細き柄より殊の外手の内せき結句早く砕
とて仕入候木さへ丈夫に候はしこたへ可申様に
候へ共一向左様に無之物にて御座候柄ハ少し
細めに仕り能き鮫をかけたるか手の中も
能少戦は微塵に摧申物にて御座候並崎
御合戦の時太刀打仕大きく手を痛しを
覚罷在候故申上候
一小幡申分右の衆申所尤に候白く洗候
鮫黒く塗候鮫は弱く巌候あら鮫のまし
にて裏をさのみすかさしるか能御座候
一山本か申分右の衆申所至極に候柄は革
にて巻たるは能無御座候其故は血にぬれ
たる時拭へは手の内廻る物にて御座候
脇指柄の事
一原申分刀の柄と吟味同前たるへく候人に
より片手打の物なりとて漸一束はかりに
仕も御座候是は無沙汰に候強力にても片
手計にて時を移し戦るし物にて御座候
なく候腕疲たる時は両手にてさえ働れ
す候何程短き脇指にても一束三ツ伏せ掛り
程に仕て可然候二尺に餘る脇指には柄二
束不掛は悪かるへく候塚原と伝か一尺二尺
にたらぬ一尺四五寸の脇指を片床に持て
居たるを三尺の刀を以て打に少も不動落
る事無之を諸人奇妙と申せとも下伝は
何の用にも立事不成ト伝程の者かうた
年はこそ此脇指を打をとし得衆愚愕々
不如一賢唯々とて卜伝は一向左よふの事
を不用よ及承候ケ様の名人か片手にて名
誉をしたるとて是をまねるは鵜のまねるは鵜のまねるは鵜のまね
する雁にひとしくは脇指は刀のことし
強く戦ふ事なけれは柄短くても不苦
と云ふ沙汰有之へく候得共諸事一偏
にかたふくは悪けれは脇指の柄も強拵自
然の時越度なき心得肝要なるへしと申候
何も尤の由申候
鍔の事
〇一山本勘介申分鍔は大成能御座候由功者共
申候丹波の赤井悪右衛門は刀をためすと
云ふはさのみ切るし切ぬの沙汰はいらぬ事
也鍛冶能不折不曲刀を以て身を捨て
だに打たらは敵を仕留ぬ事ハ有まし
〳〵候刀を様は鍔もためさては詮なしとて
刀に鍔を掛て刀にて切らせてためされしに
いか程薄き鍔にても鉄にてさえ候得は鍔
を切をとすと申事は御座なし候厚き鍔無
地鍔細き鍔は鍔に強切あて候得は目釘
一とたまりも無之又目釘強候得は刀か鍔
元より曲るか折有しか致候故悪右衛門は常に
一銭の大き成薄きすりし有るを掛け候と及
承候強に強か中り砕る道理なるへし
一銭に中る事は十度に壱度中るかあたら
ぬものにて御座候得共中りたる時の為なれは
少薄き方の鉄のすかし有之鍔の鍛よき
を掛申度事に存候
〇一原申分勘介申処尤に候某以前目釘を
一ツ打はよわく存二ツ打て指たる事御座候
太刀打の働を仕後に見候得は自釘か僅に
残る事も御座候又少しも損せさる事も
御座候是はいかさま鍔へ切付候時の損し
なるへしと申候何れも人の気のつかぬ
一所の吟味尤のよし申候
目釘の事
〇一小幡部分某親日城か教候ひしか目釘
をは枯たる此の堅きを以削り松脂に入
て煮通し目釘竹を引上て打へし竹
はかり打たるは刀からみをしたる時抜るもの
なり又強為にとて金を以作り打へからす
鎧の上又は其外堅き物を切又は刀かしみ
をしたる時必刀か折る物也強く物に中りたる
時刀の損せぬ為に金具を金銀銅の類の和ら
かなる金を以する也亦目釘を二ツ打事も
さまて好むへからす性の能竹にて一ツ打へし
竹の内外トなし小悪鋪打ては二ッ打ても
こたへぬ物なり能打ては一ツ打てもこたゆる
もの也と申候某は目釘を竹にて削り一ツ
打て度々手に逢候得共終に目釘損し
たる事無御座候是は日城の教を覚たる
炊にて御座候何も目釘の打様初て聞たる
と申て感し申候目釘のぬけつしたる
事度々見聞たる事也打様をしらて打
たる目釘こたへぬは尤のよし皆申候
鎗の事
一原申分鎗と申もの刀長刀にて掛る敵
を仕伏せ候為の鑓にて候得は二間より短て
は詮なき事にて御座候第一短候ては一馬
武者が突れぬものにて御座候敵味方相
掛りに掛る時人より先え進メハ何程長く
ともつかゆる事御座なく候しかと手に
逢ぬ者共か鑓の逢時は気もせき心を取
失ひ先へすしむ事なし大勢にもつれ合
て鑓にて敵を突事も思へすとは声に
成て敵味方をも見分得す足元ト斗り
見て盲打に仕る者共か鑓のつかゆる
なとゝ一向不吟味なる事を申候鑓の身も
願くは長きが能御座候四五寸の穂にて突
ては早速死ぬものにて無御座候しかれとも
長きは重く御座候故人によりあつかひ
成兼候間穂は短くても其分たるへく候
一横田申分美濃守申所尤に候塚原
ト伝か常には短き刀を指せとも悟したる
馬の有時は長き刀を持たると承り申候ことく
常の用心持鎗には九尺壱丈に仕ても可然候
戦場には長きにあきは無御座候自然長き
鑓悪敷所にては短するは自由にて御座候
盗人殺害人等を仕留候には短き鑓も可
然候長刀なと持たる敵を九尺壱丈の鑓
にて突ては相打に罷成候三尺二三寸の刀
にても相打に成候短き道具仕伏るための
鑓を相打に成よふに拵ては詮なき事
に候何も原横田申分至極之由申候
長刀の事
一山本申分長刀はさのみ替たる吟味有
之間鋪候是も手にかなはゞ身のたけ
程に可仕候小長刀は聢ら役に立ぬ物と
功者とも申候塚原卜伝と下継より出たる
梶原長門と申長刀の名人武州川越にて
仕合ひ仕たるに彼長門は常に壱尺四五寸
の長刀を以燕なとを争て三ツを三ツ共に
切落シ雉鴨なとの地に居たるを長刀を以
寄せ候に其位にすへみ立得す居る所
を切程の名人にて鎗太刀なとゝ数度仕り
後には手かれて此度は左りより切て右の
手を跡にて切り其上にて首を切るへし
なとし言ふて少も違すしすます程の
手たれなれはト伝か弟子共彼長門と仕合
は如何あらんと思ふは理なり下傳云ふ
よふは皆道理をしらずして奇妙なる
事を貴み候長門か長門ほとの名人に出合
ぬによつて名誉なる事を致シ候鷹とい
ふ鳥は照しが第四ツ五ツ合たる程の鳩を
追廻す機違物なれともゑつさいと云ふ
鳩半分もなき小鷹に逢ひて其気逸物
も不出木の葉竹の葉の下にかくれ廻る物也
惣してわれより初心の者に逢ては奇持
不思儀も有物なり長刀と云ふ物は太刀
打の間より二尺三尺遠き物を切て取道理
のものなり然に壱尺四寸五寸の長刀にて
相手の二ツの腕を二度に切なとし云ふは相
手が能く曲けれはこそたはいたすなれ
某は常に長刀はつかはねとも兵術一致
とて皆同し道理の物也三尺の刀にてさえ
おもふ図に人は切られす候増て壱尺四寸
の小長刀にて六尺外にて切はつさぬやうに
切ると云ふは鳥獣物はこゝろを取失ひた
る相手ならはさも有へしものなれたる
ものかきゝては至らぬ事なり実より内
の長刀は柄の短き鑓と同前たるへし九尺
壱丈の鑓にて突ぬかれても当太刀は打るゝ
もの也況長刀にて突れたりとも当太刀
をうたて死ぬる事よも有ましと申て
二尺八九寸の太刀をさして仕合場へ罷出候
長門は壱尺五六寸の小長刀にて仕候互に休
木を立てさら〳〵と掛ると見る中に長門
か長刀鍔元より壱尺計を以て二ツに切落
され唯一ト太刀に被切候卜伝ハ兵法の家な
れとも時により長刀をも鎗をも持て勝
負仕候長刀を持時は二尺四五寸程の長刀を
持りしからは長刀も長釼に利か有と被存
候何れも尤のよし申候
弓の事
〇一原申分弓にて仕たる覚御座なく候間可
申上様無御座候
一山本か申分原申分尤に候日岡弾正と申弓
の名人握を常に革にて巻候得共戦場
又は持弓は稗の細縄にて巻候と及承候以
か様道理有事にて可有御座候一宮随巴と
申射手か申候八弓は勝筈に仕たるもの也
さのみ遠き所計を射る弓にあらす弓にて
勝負せは切先の届く所にて失をはなせと
申候尤に被存候何も尤の由申候
矢の根の事
〇一多田申分射て覚たる事は無御座候得共
細く長き様か可然様被存候其故は矢疵
を被り候に細く長き根ならては深く立
不申候只根は大成根も痛不申候大兵の
討たるには大成根程利可有御座候へ共大兵
はさのみなきものにて御座候得は尻籠
一勤の根は細々長きか可然候と被存候
一山本申分多田申さるゝ所尤に候討手方
には以か程も善悪の沙汰可有御座候是
す我々矢に中りて考たる所なり一宮随
巴か申候四五間の間にて敵を射るには大成根
にて射る物也少遠き物を大根にて射ては
失業なしと申候尤に存候いつれも尤
と申候
銕炮の事
一小幡山城守申分鉄炮は遠き物を打には
一無双の道具なり殊に城に籠りたる時重
一宝なり鉄炮の難水て雨中にあつかわれぬ
所計なりと申候
▢一横田十分山城守か申所尤に候敵合遠き所
にて無類の道具なり間近き勝負を鉄
炮にて仕は危き事なり其故は少しの
内に火通せぬ事有之物にて候其上矢次の
置き物にて候士と士か出合に戦場は格別
其外鉄炮にて仕てはほめられぬ事御座候
と申候いつれも尤と申候
右五人の衆鬮取に仕諸道具の事段々に
銘々の所存申上候其後信玄公家老衆
を召此書付御見せ被成御意候は人は道具の
善悪によらす勝負は運による事なれは
此吟味いらさる事なれとも一度も手に逢
ぬ若輩者はこゝはの時役に立ッ心得なく
諸道具を拵候はし以来信玄か鋒鈍与之
基と思召右五人の者に被仰付て御家弟鑿
被成候然ともかやうの事諸人の手遊ひに成
ことく物毎浅く成ては如何に思召候間士大将
に御書付御見せ被成無宮弟鑿成道具の
拵を仕る者には家老衆は申に及す侍大将
衆迄も能々申教よと被仰付ゆへ家老
士大将御近習の外は此書付を見たる人無御座
候ある時信玄公被仰には大事を書たる書
を一巻計にして置は必失て後には絶る
也とて山形三郎兵衛横田十郎兵衛に此書を
写取候様にと被仰付右両人写申候長篠
合戦の議定相極りたる時山形三郎兵衛
方ゟ今度の合戦に十に九ツ討死可仕さ
しも信玄公厳重に被成候書を諸人
見さらし候事死後迄も口惜けれハとて
此書を川中嶋へ持せ遣候故我等所持仕候
明日にも我等相果候はし誰人の手に渡り候
とも麁略に被成間鋪候其故は赤螺の
黒焼は名誉の喉痺の薬なれとも諸人
多く知候故用ひ申者無御座候如此能事
も人毎に知候はしさせらぬ事のやうに成
もの也能々秘蔵有へき事肝要に候外
題は武具要説と被仰候
天正五年三月八日高坂弾正書写之置
〇一信玄公武道具の御吟味之後被仰は一国
一郡を守る身は云ふに不及人は育チによつ
て能も悪鋪も可成候生れ付て能意ある
者は老功の者にたよりて弓矢の事は勿論
一切能き事をきけは次第に行義能万に
功者と成へし人は大小によらす七ツ八ツより
十二三迄に大名の子ならは能大将の行義
作法を語り聞せて育たるか能小身成物は
七ッ八ッ十二三迄大剛の者か武勇の働を跡先
踏詰てうかつけ成事なく能語りきりせて
然るへし惣して人の心は十二三の時きし入
て本付たる事か一生の間失すして谷水か
川水に成り川の水か海の水に成ことく人の
知恵も若輩の時きしたる事覚たる事
年のつもるに随ひて次第に広大に成る
もの也能事をきゝ入たるか広大になれは善
人也悪鋪事をきし入広大に成は悪人なり
善悪ともにきし入たるか大将となれは能き
内の者を持たるは良将と成悪鋪内の者
を持ては悪将と成に名なれは傍輩の善
悪によつて能も悪敷も成類物也十四五
より後には婬欲さへたしなめは人に成るも
の也是は我心に弁たる所也武邊人に勝るし
ものは常々働の便に成る事を仕間すは
勝れたる働は成かたしそれは我分
別におよはす手に逢て身に覚へぬ者
心得違ひ可有とて武辺場数ある
老巧の衆十七人被召出御尋被成候に何も
申上候趣土屋右衛門原隼人佐小山田弥三郎
三人にてきし届け一ツの書に仕御目
掛候
一若き時は万に心掛たるか能御座候茶の
湯連歌鞠の類は武辺の足りに成不
申候へ共其すへを少宛不存候へは我身の
はち斗にもあらず他才の人に逢たる時
も沙汰をしらねは大将の恥とも成へく候
間少しつゝは稽古書を仕候事尤に存候
一学問を仕は書の一巻をも読候ハ何より
も肝要に御座候古人の善悪を考て
身の慎に致候事なれは書物を師匠に
仕武辺は申におよはす一切の功者に可被
成候
一武芸の内に弓馬鑓八少しにても稽古
仕候はねはあつかわれぬもの也此三ツは申に
およはす若き士の刀の柄の握り様鎗の
柄の取様弓構をもしらさるは其心入是
非におよはす候たやうの者は十人に五人は
淫乱なる者にて御座候淫乱成者は花見
野遊月見なとゝて女子童を引つれ小歌
うたひ酒をのみ遊ひたわむるゝ事ならて
は好不申候かよふの者はかならす大将の被
召仕間鋪事候そのゆ元は遊ひたわむるゝ
計を心に懸候得は他の事を一切おもし
ろく不存故武辺の心掛ケをも不仕候武
辺の心かけなけれは武芸は本より好不申候
友傍輩なと武芸を稽古仕れはいや
なから誘れて稽古を仕れとも心から好
ぬ事ゆ元ほとなく廃候功者の衆か
武辺の咄仕れは合ぬ事を云かけ大あく
ひに成り強き働なとしたるときゝては
それもあらしなと氷をうちきゝ覚へ
て我後学にせんとおもふ心なきゆ元武邊の
者の中に居ても身の為になる事をきゝ
覚へすきし不知候常に心に掛ぬ事は
急成時は猶以思ひよりなき物なれは戦
場にてはあはてさはき末練を仕る事う
たかひ無御座候
〇一鞠茶の湯連歌なとを一片に修行仕
武芸を脇になすを無問付鑿なる侍の
作法にて御座候そのゆえは士は老若に
よらす足手のかれさる者は夙に立不申候
鞠茶の湯れ歌にて手足からさぬ者は
老人は煩多く若き者は不達者にして
相応の働不成候
生れ付悪舗とも心かけ能ものは相応を
仕候侍の生れ付悪舗と申は骨細く力弱
きを申候心に弥武を存ても力よはくては
強働不罷成候一ト手の大将を仕る者も
さのみかひなき生付の者は崩間鋪勢
を崩し負間鋪軍に負候其故は雑兵
一千二千の侍大将如何様に覚ある人にても
強く掛る敵に逢ては人数崩るゝ事常
の習ひにて候そこにて其大将かふみ留て
自身敵相を仕下知を仕れは崩れたる
勢も返すものにて御座候又一万二万の人数
を持給ふ大将出陣の時夜討士伏なとに
逢給ふて人数崩たる時も五百六百の人
数下知する士二人か三人踏留て手近に
寄敵を突伏打ふせして下知すれは
人数しつまるものにて御座候士大将
なともかやうの時生れ付弱けれはいか
ほとに存ても働不罷成候働ならねは下知
は猶以不罷成又下知斗仕ては崩たる勢
立直る物にて無御座候強く働く事
ならぬ士大将はかよふの時必討死仕候侍
大将討死仕れは其手の人数は一段崩
るゝものにて御座候聊手に不逢して
軍法の稽古計仕たる者は敵強けれは
退て敵の弱みを見て討なとゝ器用
に申候得共是は軍に逢ぬ人の申事
にて候又士伏夜討なとに逢ふ事は能大
将の上にある事ならす大将の身に成て刀
の入事なしと申すは初心なる事に候たと
へは碁将棊をいたすにも見落と申事
有之候名人の上にもある事なりと承り候
能き大将と申は自然見落を被成たる
時も越度なきやうに成る事也頼朝の
五郎丸を御馬添に被成も見落を被成
自然急成時のためなるへし見落は
なきと云ふはせはきこゝろ也見落の用心
し増て見落さねは元より懈怠なし
一大将さへ遑にあきはなしましてやその
外の士か生れ付はいらぬなとゝ申すは
可笑事にて候志かれとも弱き生れ
付にても日来武芸に心掛遠道なとあり
きて達者を仕習ひ川に入ては水を游き
弓を持て猪狸を常に射覚たるは戦
場にて見かけよりつよき働も仕候
一学問を仕り候ものは其国其家の目ありし
なれは何より宝なれとも悪鋪仕れは
中国の大内殿の如くにて御座候その故は
全我随殿書釈に取ては何事にてもくらから
す七書抔は空に覚て良将は不戦して
勝道理也又戦ては勝ても不慮の戦な
りとて皆謀の沙汰斗に掛り大内殿の
近習外様も皆謀の吟味計りなりせめ
て一手の大将をするものは謀に心を掛るも
尤に候へとも軍を取むすんで討れぬ敵に
こそ謀は入事なれ是は大将扨は其
家老士大将の用ゆる事なり外様の
者とも計略を心掛けて戦場の働を
心掛さるはその大将の下に鎗を撞く者
は有之間鋪候学問は能事なれとも
義隆の学問は滅亡の本に成たりその
故は大内家の大第者に相良遠江守陶
尾張守と云ふ二人不和になりたるに義
随殿相良を愛して陶を殺さんとせ
しかは陶大勢を催し義隆を責けれ
は義随かね〳〵の謀も出合す打負て
石見の国吉見を頼とて二千余にて落
しを陶追駆ければ落延ひ不得して
自害せられし日比鎗の柄を取て戦を
心掛る侍あらは時の運にて軍には負る
とも義隆殿の身には恙なきやうに防
て落し可申事は安かるへきに不入知略
の工夫たてにて年をくらし属シ随ふ
士まてゆひかひなき死を仕候此類の学
問はせぬにおとりにて御座候
一金銀米銭を大切にして代事を心に掛
ぬは身かまへをして臆病花の咲たる士
なり亦衣類普請金物等に金銀を
責し物毎不弁なるは未練の士也武家
多してあきのなきは人なり是を悪
鋪心得て女なとを多く集るは沙汰の
かきりなり惣して百姓か耕作の道
心かけさるは渇命に及ふ町人か売買の
道を心かけさるは利潤なし士武辺なけ
れは懸命の地を失ふ事無疑候士たる
ものか武具の外に金銀を費すを不覚
人馬鹿者耄者とも申候武具不調
なれは自ら働事ならす臆病人未練
人とも申候
一若侍の専らに仕習ひ申へきは達者にて
御座候東一者仕候とて用になきに道あり
かるしものにても無御座候様を仕て鳥獣
をねらひ候へは面白くをもはす達者は仕
習候門に入山に登り夏冬のわかちなく
身をからしたるか案になりて戦場の
働も苦成り不申候武家の慰に鷹狩
猪狩水練の類ひに越事は無御座候此
外存寄無御座候由何も申上候
右之条々申上候十七人の衆は士大将足軽
大将の外室賀入道なとかことく覚ある
老幼の者は召出されての御吟味なり外題
をは武道心鑑と被遊候若き士の心かけに
可成ハ是に過たる事御座あるましく候
此書も外様には御出不被成若きものとも
召仕給し御心持に被成たると相見へ申候土屋
右衛尉に御見せ被成写取候様仰付られ
右衛門尉此書を所持仕候長條合戦前に我
等かたへ遣申候たとへ後々余所の御家中
一衆の手に渡り候とも麁末になされまし
〳〵候其故ハ何国にても武辺の手柄仕ハ同
前なり武田家の人数三万五六千の内にて
すくれたる働三十余度宛仕たる功の者
共か申たる事なれはさのみ僻か事は
有之間敷候誉の者共か申たる事を
をろかに被成るゝは其人の心入もあさまに
被存候間能々御覧御秘蔵有へき
事尤にな
天正五年卯月上旬高坂弾正書置之
文政十一戊子夏四月写鈴木則桁蔵
細論
川東
一、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、〇〇