三島記
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仝
三島記全
三嶋流船軍巻上中下全
一
一
一
一
十九
永田家傳書
昇平之世亦不レ可レ無二武備二本邦武備天假レ之使一人士驍勇
世市不可知山信
甲堅兵利一殆真非二外国之所及雖治己久陸戦者其法
蜜且精唯水戦之一術今既知焉者少本邦往昔各水戦
者非唯数十家然無レ如野島久留島因島之三家者一所
謂三家者異家同巧唯不レ鳴二本邦一中華亦懼之由宋
以往倭冠之防皆為彼設焉率環菊島氏悩法令中華
其法精巧可知中華所用曰遊艇曰豪衝曰楼船曰走
一舸鷹船海鶻以至渓松鴛鴦其法遷而其枝緩無如我
術約而其節短然三豪之苗裔或存或否其法術或絶
或否予所学者野島之正脈而兼之留因島之術者也
身雖不職海防業戦艦従遊人士若干数師棹即益物
干戈無備且不知然古者其術自試自熟人々知之事々
暗之無書無教而可也今也不然四海久無兵草其法無
所施其術無所試無合無教則卒至失其伝子雖此
其家非其職惟内挫海浜之逆賊外防異邦之侮此
術為至重終録師之所授以成書名曰水軍全書蓋
非子孫之青檀将為国家之法実者乎以序
三島記巻上目録
〇一軍船可務本事
ム一兵船可作様之事
口一船道具様并諸道具之事
○一船戦の勝敗以所優劣可知之第一船頭は湊泊を能知風波
の時にも難をしのく事を鍛練すへし是船頭の勝也第二船の借
一来左右皆機を以致所也況合戦の時は必人数一方に集る此時
機取叶時ハ其船覆る也故に機取の功優なる所有ものは機取
の勝也第三水主は櫓を押水膝を巻へしとゝ建敵にまさるものは
水主の勝也第四舟は作事に依す遅速足の強弱あり故に船作事
一敵にさる物は舟の勝也第五海防は異に依て戦具又不同故
に戦く敵にまさる物は兵器の勝也第六敵味方相難て戦より
以上は平陸海上別事なしとへ共肝要とする所有曰水主を数手
人より機取を打にしかす職水を打りより船頭を打にしかす船頭を
打ゟ船を砕かんにしかす又干潟に船を申せす敵に我船の後を
見せす船を離て敵を追なふ遠是則軍船法也然る畢竟主
一将の謀ゟ出る事なれは勝敗は必わ身の勝敗也故に海陸哥也と
いへ共其本の一理にして其所にして其所にして其成能々可定事
一敵の労を知て我不労を以打時は戦て不危其労を知事定りたる
法なしといへとも心を可付大かた知れる先つ一に大寒大雨に走来
二に大息押来三口粮食水薪尽たる四に大雨大風に逢前後
の備ふ定五にいまた浜を不得六に食時七に風替て潰を退
時八に既に潰を出て風逆にして押戻る九に潮風に向て潰へ
急く如此の時味方能力を以打之時不危夫か迚時借不乱退時前
後定皷を打押鐘ゐて止る船中数にして恐る色なす老者の
下知を出て漫に戦ふへあらす
一合戦我戦事を不好といへと敵来時は必戦ふ敵戦を不ふといへとも
我往時は必戦ふ往者は其方勝所有に依て也敵大勢にして
我小勢ならは潰を取堅めて防へし敵小勢を大勢ならは敵の
人数の船数なと御寺分にわけ段々に備をわけて両方より懸るへし
相矢なき心得水要也
一淡の形遠を広狭千麦万化也究言しかたし然共其利田有
一敵の来るやすれと敵の来る事かたきと我性所有を我往所な
きと也敵来事あるは我も往事少しま可致合戦と思時可用
所也敵の往事難きか我も往事難く一艘まて十艘てて攻入
ものを不得所有是不好戦小勢の時不用所也往還自由余潰
は味方の心分る者也分る時は心恐る専可戒之我往て帰る事
成かたき所にては士卒能戦ふ者也湊は風に依て善悪有汐に
依て不往所有此所を考へ絶て法にかたわるは智の不足也
一大将乗船の事あたけ作也足強く作る事吉廻りの縁に楯の板
を一間ツゝに蝶番にして置敵懸る時引上ケ上に懸置をしてか
こふもの也尤さまを切鉄炮を放つへき也是は下のかこひ様也
敵船へ乗移時右の懸金をむつし敵の船へ乗様にしたる物也其上
に矢倉をはり脇は取放して天井討張也扨身隠程水楯の
板口二尺斗に張矢間を切て上下ゟ鉄炮を放つへし敵船へ乗
福村矢倉ゟ鉄炮を打其勢を以可乗ため也面に大鞁矢倉明
間大将の矢倉爐に鐘の矢倉あり船のかたり梢の板上枝にする
なり弓鉄炮も直成時ハ抜やすし内へなひきたるふ抜第一船も直な
もは弱し内へつぼめて強し大将の乗船は絵図の如し中に立そ此
船ハ海上の城成故に惣矢倉左右胴壁作り子弓シ箱トモ押込の
一大船也人多乗船成故そ西亀甲作の船は常のひさしの様に
一造也釣桶は軽構也向左右戸を立る仕様もあり口伝亀甲の
一内に中筒見合て可置台なしいかゝ用捨可有矢倉上楯かき
様右の仕様同然高サ大方人の居長ニ入吉高キを嫌ふ
一大将学習繁き大方右自然かこひ以下見合作へし急船夜
一雑様に乗通し
一軍奉行前様のその小早作也いかにも足軽く作也西一のからかい
に軽楯を釣撲に仕也
一付候船の事小早也天トウ船のとくいかにも軽く造也桶
かこひ右の心得を以見合て造也
一鉄炮船の事弐百石積程の船也面に亀甲此仕様シヤウ
ゴノ船はり中之所に柱を立也中の長サ三尺左右弐尺程扨
三の柱人貫を通しひらきつなまさる様にとめせんをさし
一のからかひの中ゟむなきをわたし左右はからかいゟ壱尺計り
程さけて木を渡し上葺棟の板也如此調は亀甲形に成故
亀甲と云之向左右は軽楯にて釣楯にすれ左右の垣は胴
より面はかけはべしの橋也此懸はづしの仕様は下は台に長く
ふちを打上は垣がツに鉄の丈夫なる折釘を打垣の間
〻へ右の板を狭て棟木か何木にても強木を以冬の如くにして
彼折釘へ懸とめにとむる也此木の長さカキタツの間四五間
にてとめる子物敵船切な時も或はそこ〳〵の楯の板はづし
度所をかなへん為也軍監の明様は上の方へ見合て明よ是
より鉄砲をも打也穂はしけふちのさし板垣かはた板垣か
内に楯かゝい是も右の仕様也臆押廻し面の亀甲の内に露
なし一挺て二挺も可置台の仕懸口イ
一討手船作様の事五十石程の船を面一の船はりを楯の板
にて仕切也此板棟厚サ三寸長サ長サ大方四尺五寸広サ大小可有
之比仕様船はりの前に又船はりのとく木を打付此間に
一右の桶の板梅彦様にして立る也はつし度と思時はつれへき
め也左右に短楯を二枚はりに釣楯する事もあり扨鉄炮打
手を一人二人乗参込も可乗掛取能者を前よ歎船の孫
を見て鉄炮討手の心を祭し機を取軽の者よし射手船の
備様絵図の如くなれは船の左右は不見共依る時服に鉄砲来
らは台の左右苫ふく時の為に水棹さす穴有へし拌を立
幕或ハ一ノ楯にて凌くへし此船いかにも手軽く調物也惣して
手重き仕様不可有之船数定なし肝要の合戦船也
一近習乗船かの見合て可作何も関船のかこいか垣ゟ外ハ泊
一楯を釣捕す内に幕を走らかすへし面の亀甲右に同
し子ウシかねの事并シヤシかねロイ
一丸木船かこい様の事牛の皮にて船の上を包に廻し前後の真
中に四尺斗なる木を立夫に桁を渡し其上に右の午皮を張也
是は敵の大船へ押付錦にてモヤー船服を切抜方便に有也
▢一鍵拵様の事煙木にて鑓の柄のとくにして筒かねを入穂の
長さき吉とす
一鉢のかのかなつきの事也敵船へしそく付にして鍵にてかけ
つかたるを又敵船ゟ鍵かけ討んとする時は此鉾にての買有
也又何にても船が取落しさる時突て可取為也此躰色と能有之候由
一とら付のなみさほの事也梅様大竹の根を堀て夫をそきて
用也根付ぬ時は竹の末泥入て重く成其上よはし
一かないかりの事瓜は心角也円は泥の内にて錠むけよにもの也鑑は
かと有よし
一蔀の事板しとみわらしとみを閉る常のもし軽桶にてし
とむ事秘侍有之
一小鉄砲の事常のかないかりの小さもの也
又是は鉄のくさりを付置敵船へなけ懸引寄る事あり焼草
船も入事あり
一かた手碇の事御常一合碇同断一わら総の事
一しら継の事シツヲ一く縄の事一かつら縄の事
一かゝそ縄の事可モノ一柔縄の事バツ一小もの縄の事なり
一小もの縄の事なり
一桐油管の事付縄の事
琉球ウラ表
紙桐油
一帆柱の事付蝉の事
一みなはの事に付はづの事一けたの事付打廻事一帆の事付手縄
の事二一ツ一や帆の事一織の事付機柄の事一櫓の事
一付はや諸の事付の苧櫓くぬろぢ一かいの事一つかい事
一ほての事一あえたれの事一水箇の事一すまるの事
一柄長の事一柄長曲刀の事一乗梯の事一はやかきの
支繰り一船鑓の事一熊手の事
以上
三島記巻中目録
一道具配事
一道具配事一船中役人事一道具飾之事
一楯ノ事
事一幕事一金鼓旌籏の事
夜旗并霧内心得之事一船戦心得過事付夜討夜申事
一船中洲法之事付船乗合法度之事一隅の声の事
一船中付候之事一会船備之事一船中作法のなし
一船扱之事
道具配事
一石火矢二丁亀甲左右一同二丁胴矢倉
一同一丁手作り帆極一短不火夫二丁胴天倉留守屋
一中筒異風矢倉一小筒矢間ノ内
一弓
一弓矢倉一長柄祐之矢倉
船中役人居所之事
一主艘一人龍之手作り一主職一人駄之手作り
一主山一人西之矢倉一出主一人損
一海主一人穂一飯二人同断
一胴突掛棹四人矢倉一長柄曲刀四人矢倉
一ホウロク火失二人同断一水筒水ハシキ幾所ニも手順之役
一水筒水ハシキ幾所ニも手順之役
一抛續松ノ事
一抛續松ノ事伝之役也一船鑓之事手配之役々
一品輪之事備之役也一飾の事水主の役也
道具飾の事
一船印の事風に小商物を用穂椀
一大将橋印の書付甲立手廻の道具等筒のからかい但矢倉
船は矢倉之上筒の脇腕に立る也大将矢倉の上にて下知有
時大将の傍に持物也諸始見て大将為知之事也
一対の道具弓鉄砲一手の印は船印に並て艫に立
一旗舳先一のからかい左右中
一同三のからかひ左右
一同六のからかい左右
一手楯之事旗の間々に見合てかさる
一諸侍差物甲立は射手船にても鉄炮諸船共に筒のからかひ
但働時ハ面の一のたいに立る也小早は向のあまず可立敵船
を切取時早く差物を差上某と知れ也為也
楯之事
一楯の板の事様の木を用
一釣桶の常は様を用当流には軽槽を用
一竹抱之事ロイ
一手桶の事いため革にて円団を拵金箔にてたみて立へし
此手稀用事多し
一籠をひらめに作外の方を牛皮にて包内に真綿を入る也
一屏風楯の事一柔構の事フトシ楮に同し
一右一ケ条ハ極意の巻に書之
一木備人之事
一掛取居所楯の事軍船には先機取を目に懸鉄炮弓にて
一射もの也穢取居所には鉄の桶よし但小舟は足弱ゆへ屏風
高サ三尺五寸程にして脇の広サ三尺二枚屏風にして板に
てつかいをは坪腕にてつかい其外の方に鉄の鎖を懸不残
様にする也板屏風に成程ほそき穴を明尤鉄炮の出矢の恐
れなき様に所々にて明是は船面を見計の為也軍監の穴
能々可心得又外侯使番の船にも用
一水王はた着いため皮にて鎖帷子にしてきせる也
一船頭織取は実よす鎧きせて能也是すはり居て働者なる
故に二領もさせてよし軍船にては船頭職もを討せては其
利得かたきかゆへ也
幕の事
三重幕の事一袷幕之事一天幕之事
一仕切幕の事一俄幕之事
軍船の幕は二重幕よし大将の船に二重幕にして中へ
鎖を入たるかよし家の紋知安き様にして如常打様順の
垣ゟ一尺も一尺五寸も出してよし大船等三尺も出す其内に
軽橋切されにして又其内に絹幕又其内に柔幕かくの
ことく段々に走らかすもの也
金穀貝種旗の事付夜族并霧の内心得事
一鐘大将の船には一し
一大皷右同断軍奉行の船家老組頭の乗船にて有
大皷用事碇入起し或か瀬戸口其外汐の品所にて用尤
合戦近過の時用之折様は大将の下知次第
一恩の事是は大将港へ入泊を足事を諸軍に知せん為也
一大将の船取機の面に青旗立たらは先手の左備の船可を
同所白旗立たらは件の船を退二色共に引たらは無進退
候常可押行先備左中右中備左右後備左右中都て八
一ケ所此心得同然也青色ハ陽故近白色ハ隠居に退
一八方の船八色の旗可立
黒白
先備
赤白
黒青
幾重も如斯
中備越後備田
黒青
一中船大将の黄難を引て紫雄を立たらは八方の繁残大
将の船脇へ可押寄又柴を引て夷旗を出たら物の物の船水
本備て可押行船数多少によらす此心得を以旌の相図を
究むへし
一夜中の相図は火を以する昼の程の代り也并に劣につゝま
れたる時も同事也又濁物にて相図する事有へし定りは無之事
其刑専とすへし
一遠所の相図は狼煙を用草木の葉何にても煙強き物よし
小に用るは艾葉に狼糞を合て火を合て火を合て火を合て火を合て火を合て火を
船戦心得の事付夜討夜軍の事
一瀬戸口合戦瀬戸口にて敵待うけ戦の手行は瀬戸は敵の
地也故に枕ゟ両方の山に人数を置討手を置て瀬戸には大
縄を張船を不通して指挟討る手行と知て先心方より両
方の山の後へ船を付かせてかさへ廻少々兵士を船に残置両
方共に待懸たる体にして浜にとも碇を入ふる懸りにして
少戦体にて鉄炮を打弓を射させ喰留は必敵是に戦ん
と一所に寄所を又山のうさより味方をおろしかけふきに後
より裁はく心勝を得へし其時味身の乗船を袖付にしてあゆ
之をかけ可乗尤敵を追拂右の大綱を切捨也其所をさへ
を追拂はく深追する事なかれ前々の船袖付に仕たるに
我人皆乗迄は臆破其侭置て乗逢たらは袖付の絶
をとれ臆砲にて繰やす味方の船一同に摺通りゆへき事尤
沖は沖の方に柔菊を走らうし地ハ地の方に柔華を打
て置也是は弓鉄炮防の為也
一小軍にて大軍と敵する事日暮の合戦をすへし日中には
一大軍ゟ合戦せんとする共色々言久して暮して可戦大事
一夜軍は人数扱にくき故小軍の方利有
一大軍にて小軍に敵する事大軍早は朝合戦すへし夜
一合戦をせぬ物也夜は人数廻にくき者也若戦時は人数け
様あり分々の備多而戦ものも。かかゝ能能也人数を分押
向ておひき出し横成付へし若額引取ハ畑の後見ゆる時
追打すへし
一款味方同勢の事此時ハ敵一なる時の五ルハ十と云一ニハ正奇
二勢あり十には二の先穴を横鑓にも直ならねたて敵の
奇正をおさゆると立心也とか〳〵定る事不可有良将は
時の利に随て変法を行故也味方ゟ忠之謀をして両方ゟ
攻を正哥といふ也
一朝の気は鏡昼の気懶暮の気は帰風心を考へし朝は
人気勇む故にしめて合戦する也実人の心ゆるやかに
なる心を此時はいかにも急にもみ付て戦に利有昔は次第
に夜分に入故人気泣気に成物也おそいて戦に利有依て
四季に人の夢考有是を右の心得を以可知
一順風逆風の事人皆云順風は勝道風ハ負と懸て不残ハ
一疋夫の勇也然引自由成時勝利多かるへし潮風順方は
如有利といへとも懸事自由にして引事かたし汐
風向方は遂に利なさか如くなれ共引に利有焼草路を先
に進め後に服帯の法を以戦時は順風の方に利有て逆風
は利あらす如此事を以能々可心得又浮相の不働心得も必一
様にいふへからす瀬風に依て乗なをり乗しきの心得ま要
たるへし口イ
服帯は手はイ蜂の時味方も用之手蠅蜂の方細辛鬼角
胡椒灰右等分是本法也又灰中にても
一潰に味方居掛沖を過る敵船を可留方便は瀬戸汐相
を考へ所々に鉄砲船射手船を見合待請可戦体を見せ又
敵のふ意に出る横矢を支度して戦ふ時は利を自然
其所にて討洩たる時の脇ゟ敵船の可泊湊を考へ船を遣
はしふきに夜寄懸可討此奉行をせんと思時の右の所にて
色々壱尺日を暮すへし又此心を以味方炊地一働時
敵誰か心得さらん油断有へからす
一小舟にて自由に合戦すへき事小舟を組合板を散自
由に働へきもの也
一敵に夜打夜懸仕様事夜打ハ時分有敵潰へ着時打物也
いまた淡我不取時は敵気遣して張番出用心する也敵船湊
を取仕廻懸場能時は夜軍も夜打も有間敷を油断する
物也是夜打可致時分也先犬を入様子を見届打へし
一夜打して備たる時心得の事相伺の事并立すへり居す
くり相印色々を以可改之
一夜打懸ゟも引を大事将可心得可退方に請備を可置相
図の火を立鉄炮を打帰路方角を可知
一夜打は敵に会て名を乗なし
一自敵夜打来らは其夜即座候へり討すへし
一夜打は敵の不意の所を打に利は故物音せさる事第一也
楫を乞事は縄を引へし武士足軽水主楫取不残物いふ
事なかれ竹管大サ筆の軸ほと長サ三寸斗に切て口に食し
一味方打なき相印はかぶとにあり
一挑灯のとほし様常々其船くの作法を定残なき様に一の
一仕事付紙むやうそくの方
硫黄一匁塩硝五分紙口煎付て紙縁にする也
船中制法の事付船哥合法度の事
一相伺の事そん〳〵の頃ゟ相印相伺を定へし水主等衣
類とも君の紋の外我々乗船の水王には見合て我家
の紋を付て無紛様にすへし上り働なと有之時我人の船
の水主紛るもの也陸にて敵にて敵には追立夫々の船へ乗時
残るし事有之是ハ其船々ゟ相印を可出ケ様の事急而定
事也尤上働に陸深く行事なかれ必伏を置て不覚を
取もの也付候并殿の役者専一にすへし
一右左不働事腕ゟ敵懸る共祐者不働状ゟ敵を見候銃
は不動戦はんと思時は安座して夫々の道具を構へ打合
ふ負様にして常々其賽にて肝取入事也船にて一方
へ乗働勝様にそ仕付候船を踏色又倒れ申に付人の
足不定故悪し鎧武者は一人にても重きゆへ猶以可有を
慮是を風吹は山不動と云
一軍船に女を乗る事堅く禁へし
一船乗合法度の事
懸船に押船行懸りたらは押船可為越度事
大船へ小船押懸りたらは小船可為越度事
荷船へ関船押懸たらは関船可為越度事
荷船人船押懸るらは人船可為越度事
落船へ荷不積船押懸りたらは荷不積船可為越度事
押船へ走船行懸ららは走船可為越度事
向汐船へ相汐船行懸たらハ相汐船可為洩度事
一向風船へ追風船行懸たらは追風船可為越度事
先漢入の船へ後漢入の船押をたらは後浜入船可為をひ事
下碇船へ上碇船下懸船下通船下懸船可為越度事
右海上之往来淡泊之出入定法如件此外大風時節候
時によりてよろして可沙汰也
鬨の声の事
一つるへ鉄炮を打て其後関の家々を上るもの也あけ様地
に向てよい〳〵おらとあくる也
一鬨の声きをいおくれ聞様耳を上下にして聞口イ
船申付候事
一敵船に小舟往来有る時事是は頓て合戦を初るとて知
是又一篇になつむ事なかれ時の機発に依へし口に
一敵の船懸らんとして又引時の事味方のかこいを見てお
くるゝか又何そ其船にぐわひ違たる事有へしと知へし
一漕戻りとすれは俄に懸らんとする時の事無二に一戦をせ
んとおもふ心持と知へし
一大皷を打噤て弓鉄炮放さゝる時の事大皷を打果て
弓鉄鉋不放是道具すくなく玉薬矢穿く舟と知へし
近付て討んとて玉薬しまつすると知へし偽丹壱人音なし
一敵はるかに我方を伺時之事敵間をして我方を伺は前
そるといへし
一敵船岸に添て我方を同時事如此する舟は懸らんと可
知脇に余の船かゝる舟有せ可知謗をして置舟邪声
に成ると可知
一敵船岸に添て我方を伺時事如此する舟は懸らんと可知
脇に余の船かゝる舟有と可知謀をして置舟邪魔に成事
としるへし
一歌の舟夜数多火をあけて梁時の事其儘の懸り場悪敷
備ふ堅して利を取替たると知へし
一退舟かゝる舟の事小舟大船の面へ出る時は退と知へし小舟
大船の後風有時は敵かゝると知へし
一自敵侯を以其船を憤レか為に聴と案内者を出す事
可有先漁父か侍かを可見知面色言語手足或ハ食酒
をあらかへて可見之不可有疑一人の立所は難信故二人も三人
も釣人を取て別々に其口を聞へし
▢一斥候漁文に紛て釣竿或は手総なと持嶋陰磯際を伝
て敵の進退を遠伺へし
一嶋陰海辺の森茂草深所に心を付へし煙気の有所
を頼以切に見伺て帰るへし
一船ゟ陸へ物見に上るには沖に碇を下し艫綱を陸へ引張
て可緊急に乗時綱を切は自ら船出る物也
一得気の事得気は千鳥鴎鳥鴨蕎鴉の事也山陰ゟ敵忍ひ寄
事有時磯山に居る小馬鵜千鳥島立保巴と見は必敵船忍寄と
心得用心手堅くすや海陸共に此心得有へき也
一飛鳥不恐事敵船人数寡時偽て舟をかさり備置事有
人無之に依て飛鳥恐るなし右の口伝を以人の有そを知ん
兵船備之事
一先陣の備一ニ付候船四艘小植ニ付二ニ射手船六艘大渓居三
三ニ長柄四艘関杭二四ニ四ニ武者船六艘関在三五ニ石火
矢船四艘焼二六ニ武者奉行船二艘関小砲一大小船都合二
十六艘并赤応橋船有之二三備し此積りを以押へし
一本陣備一に射手船三艘大概一二ツ長柄船二艘荷砲一三艘大概一三
関左三
落右三
五に石火
武者船三艘関勢四に大将乗船一艘大左に使番船三艘
先所
一小没二右ニ手明船三艘
後二乗替
跡ニ橋船一艘足浅五二
水船一艘足浅六に馬船二艘荷杭一七兵粮船一船一艘大
八ニ雑兵船五艘荷紙ニ九ニ目附船一艘小十ニ家中馬船
十艘荷十一ニ押船三艘関合テ船数大小三十九艘相応
之橋船有之遠国に行時荷物有は此間に何艘も可押行
一後陣備一に武者船三艘帆一二ニ長柄船三艘荷帆船三艘荷帆一三ニ
一村手船三艘荷砲一口ニ物光船四艘小銃に
三艘并に相応之橋船わて大軍の時は後陣二備或は三備
一左陣右陣の備先陣右陣の備先陣右陣の
一兵船の備横広は敵の目当多し故郷中を明て二行に可押
三行の時中備は一町余行下て押へし矢道に船を押へな
らす
一一番に押出したる一与合の船半町斗行て櫓を止れは
弐番に押出ス一組合の船半町計行過て櫓を止
三番に押出す一組合の船二番の半町斗行過櫓を止
如斯次第〳〵にして又番船を押出す是水主の力を治
事道也引時又同断
一夜雷の船は火を認て若敵夜打来らは味方に可通湊に在
時の宿は山の上に置てよし
一台所に船心得の事右台所船は大将乗船の跡に各不残
飯を沢山なる様に調る也射手形合戦船には飯を炊障
無之もの也故に小船を以飯を送るもの也惣而兵船は兵粮
沢山に不残しては働不成もの也
一小遣船置心得諸事に小遣船入故に大将乗船新速に置
類也台所船と並ふ手放にしては凶し
一兵粮船白米にして積せよ兵糧奉行可沙汰之大将の乗
船の硯江押へし
一水船は不断水を不絶様にして合戦船心を付へし
一一門家老乗船は大将を中にして二行に備越守護家
一東の射手船を調へ大将軍奉行の下如に随て意節を可守事
船中作法之事
一武者は胴甲小手斗腰に角取紙を付る
一水主は船瓶衣製の色を替へし役所は一様にすへし
左右混乱すへからす
一合戦の時ハ水主ハ夫ニの櫓間に伏すし
一朝夕昼夜の食胴の間より上下かはる〳〵に食すへし不時の
食は束飯也
一楫を請事太鼓を打へし祐腕は右長左半数を定書へし
碇の伏き螺を以定へし
一懸引は金鼓旗族団扇採配時有候儀へし
一相調は時の吉事を以可定之船中は一入言語に禁忌有
之もの也
兵船の事
一小近手の事秘伝の巻に出之
三島記巻之下目録
一荷物積様之事并ある留様の事一船配の事
一汐時考の事一日和考の事一灘忌の事
一日取方角の事幷破軍北辰の事付磁石の事
一船言葉事付船名所之事一火矢并ほふつく火事
一投松明之事付手筒の事一海上道法の事
一瀬はへ考の事一町見の事一焼草船之事
一斗策の事付矢文の事一船中心得浮物寝覚物
音の事付船に不酔薬の事
荷物積様子并あかとの様事
一局積事付わくの事同橋
一ほてあみたれの事平生のあみたれゟほそくする也敵船
より上棚簀もらせの上あゝ弓を鉄砲にて打抜歩多し
其時あかの不入様に給ふ響ゐ也わく并ほてあみたれ陣
屋にえイ
ありとめ様は餅を拵へ湯餅して置されにつゝみ打こ
抜れたる所へ押込とむる也
船配の事
一射手船大船五百石已上一大将乗船の事右同断
一兵粮船の事右同断一小筒中筒船の事百石已下
一長柄船五十石已下一武者船同断
一石火矢船猟船一使番船小早
但間ノ物作吉
一雑兵船同断
一馬船荷船百石已上
足浅
一水取船
一水取船足浅一物見船猟船
一目付武者奉行船小早
一右船配之大法如此惣而働船は関船よしといへ共船数無之
時は荷船をも用事あり大小の分別は右之類を以可定之
汐時夜之事
一上旬一二九十八
九〃六〃
三四五ハ
子午卯西
八々五々
丑未辰戌
六七八
七々四々
壬申己亥
一中旬一二九十ハ
八二五〃
丑未辰戌
八七〃四々
三四五
に申己亥
六七八
一九二六
子午卯酉
一下旬一二九十八
七々四々
に甲巳亥
三四五ハ
九二六〃
子午卯西
六七八、
八〃五八
丑未辰戌
又一二己ヨ三四五手ニ六未七八九十ハ申トコツキケ
十一ヤ十二ハ酉ノサヘツリテ十三四五ニ戌ノホヘケリ
十六よりハ又一ニカヘル
日和考ノ事
一船戦は天の時考事肝要也天の時とは風雨雪霜霧
霞等の事也就中風の考専要也春度は東南の風強シ
秋冬は西北の風強し昼の風は陽にして吹事短し夜の
風は陰にして吹の長し又巽の方は風雑は火坤は地気は
金乾は天坎は水艮は山震は雷是を以考雲気の利に乗
て可知懸て勝利有も風雨に逢時は不利東風にて暖なれは
南へなをると知へし離は火の方なれは暖なると知し
海上の合戦は無雨風日をゑらふへし但夜打は風雨の時
物音不聞をよしとす
一風荒向は大傷は不成もの也敵来は我防我往は敵防く残く然共
風は両方順なるものなく我風を得て打て通程ならは懸
損有又追と被追今の心に労候有
ても不苦跡に戻事は危し尤敵も向風といへとも我は往来
灘忌の事
一一九十七廿五と知へし此日船にてきらふ也
朔日九日十七日廿五日毎月此日を患也
日取方角の事幷破軍北辰付磯石の事
一日取方角を目て勝負に明利事如何なる日代吉日とし
いかなる方を吉方と定めん凡軍は小にしては国を争大に
しては天下を尚惣而向ふ道也先其将の徳不徳義不義兵
の和不和民の労不労を見る時は則其勝負已に定る国家
敗す日取方角の為に非す天下国家政邪則必亡其亡也
一妖声起て自然に悪日に当る凶方に当な事有金日取方
角故に非す能然兵気を励るん為用之団扇日取并方角
の図を錦の袋に納於時用也
一方角の大安震兌坎鶏を為方乾坤巽艮を為角依て
相剋相生を考吉凶を定是使命使愚之道也夫節将の
方角は有道を為考無道を為角良将の向方悉く不去の
方なし其地形す献の虚実と旌旗と気勢を察して名つ
く其役るへき方凶方とす是に向ふ者は吉方とす是方角の
至極也
相生木生火火生土土生金金生水水生木
相剋木財土土剋水水剋火刻金金封木
一破軍上り様の事舟桑不知る時は角方に迷ふあり
時四ツ去て月ノ数正五九一ロイ
一北辰の事是はいつも不動星也此星を不見覚浄中にて
時を取そこなは方角も失ふたる時破軍もくるへき様なし
此星は常に見ぬ覚てを夜何時そも北方に向て日の七ツ
の上刻にたる程の所を仰て見れは只一ツいつを不動星あり
是を北極星といふ也
一曇て星の如見時聴石針の能を嗜置事肝要也
一ヶ所の事付船名所の事
一火をはてらしと云幕を打を走らかすと云薪割をも上同
帆を上るを巻と云帰るは戻ると云物を指て習ふを嫌ふ
何日何地へ可念と云事をさきやりとて嫌ふ割砕るカヱ
ルアヤヤル等の事嫌ふ也武士たる者如此事忌思ふに非すと
いへ共水主楫取の習ひにて始る也水主楫取不当時御難
用取に記之もの也
一船の名所の事不知の時は言語ふ通事有船の小形に書付
衆略之
火矢并ほふろく火矢の事
是は別伝に有て
一投続松の事付手留の事口イ手留とは疎事也
一松明をいかにも短く手一束程にする也長きは又投被返損有
鉄の両方とかりたるを十文字にさし込て投るなり性よき竹
にても此外色々有別に可尋之
海上道則并瀬はへの事
別巻に有之
一遠方ゟ浜を見て遠干潟床海知事先浜急に立て
見へは床海と知へし浜なるらならは遠平と知へし
一山を見て洲瀬はへ有無を知事洲といふは砂の高四所
瀬といふは石山の足のへかたにして石なく砂山ならは洲有
もの也はへは山険して石山なれははへ有を可知
一里村を見て川の有無を出る山屏風を立たる様にそ
は立たるには川なし山の足あまた見へ山の足違ひ見は川
あるなり
一前海端口人家有後引除て山有は必其前遠干潟なり
町間の事
一浜見ゆる時三里人見ゆる時一里水湛見ゆる時矢地といへし
天の晴陰快晴に依て迷ふ事ありといへとも大かひ如此と
知て時に念心を付て可伺之
焼草船の事
一焼草船は上足強かさだろ余の船ゟ高くいかも弱く見ゆる
薪を沢山に積穂と表胴の間之所に焼草を置火縄
赤火を付敵船へとゝく続をしてしかけ穂ゟ枝船に取乗
一艫砲を繰引に引へし引様にも松時を手毎可投入就中
胴の間に焼草多く置也
一焼草船にて焼損たる時の事焼草のことくに別に拵置
能武者多のせふ意に敵船へ押掛働ハ必勝也
一人数引上にくき所にて燒草船を押かけ其勝れに引取
事あり
一斗米并矢外の事
一味方の内にて二心なき忠節の志深き者を桜梢つかわし
漁人か或商人なとに拵へ親人え味方の利有ものを説しむ
又味方の内にて敵に縁す者に偽に敵の内通をさせ或は
旌旗或は野狼火焔火挑灯等を高くあけ相図有躰見
せ敵の内はに疑出来る様にする也是等の類を以考計
栄すへきなる
一敵の旗幕内に見ぬ味方にも拵へ所持して方便によする有之
一斗米又は敵と相図もなけれ共度々射時は我人を疑ひ
一人は我を疑もの也故船中和睦せす矢の尉様は人のふち
古文字の何にても相改の人の不合点事を専一にす矢柄
の中へ押入隠す躰にして端はつれの見ゆる様にして大将
の一門か又御家老の船と見ゆる所へ夜時を定人の無心許
思ふ様に大筒なとを打其後矢みを射時は必人の心我々
に成て船中知睦成かたきもの也併方氏ゟ射時は偽と知る
か故に一手より外は射な事なかれ
船中心得の事
一親子一船に可乗候又是古へゟの法也但不乗して叶はさる時
は艫舳か左右の間を違て乗へし就中大将たる五親子一
一船に乗事大に不覚也大将船に大将不乗事にも
一夜海中にひさといふもの浮てひから物也大なるは火と見ゆる
事あり能々心を付て静に見る時は青色にして誠の火と違也
一大風の時流の夕日に移る火のもゆる如くに見ゆる物也海の
もゆるといふは此事也可心得大急の浮たるを船と見る事有
小船には浮懸る事あり何にても物音をすれは則沈む物也
惣而汝中には他急有て船を悩す事有と云伝ふ何時もあ
やしき時か檻概を火に焼は他急を付事なしと云々
一常に案内を不知海にては高気に怪ある事なし漸といふ
は海中の大石也外へ不見浪の当て汐の道巻所也はへといふ
は山の足海中へ入たる所也例とふは砂浜の海中へ出て浅き
所也是皆陸を島をき所ならねは此害なし故に潰入口考
あり法曰不レ用二郷道寸一不レ得二地利一と云々海上の安内か其
浦人をかたらばされは悉不能知之漁父を求て音物を取
せ我船に乗て導とすへし
一藻草にてもわらあくかふても海上に浮たる物に心を可付事
寝覚物音の事夜は不寝番を二時暫にすへし世間物
音船のふれ廻能々可聞定油断有に依て夜打に逢あはて
梁也海上にては浪の音風水鳥なとの味声々夥敷聞ゆる
物也此心得を以一心を静め万事をきく定むへき事
一自然走船に楫折るゝ時は折櫓に縄穴引七穂にろ弐丁
たて楫を取也
一敵漢の口に乱杭なと打たるを抜様は船を乱杭の間へ押込
汐の干たる時強く縄を付しかと結付臆の荷物を西へ
取越人数を面へ越乱杭をしかとしたる縄を面の船ゟ先
かけ物又右至物人数も穂へ越候へは必抜申也
右の記様夜敵に知れぬ様にする也
一碇入起すに平生も亀甲の内にて成程ひそかれあつかふへし
ゑひの時の為なり
一大将の船を繁にて直に碇を不下脇の船に碇をおろして
其船に繫くす
あり我又可用又忍繋もよし
一敵近所にては枝碇にて可整若敵ゟ海士を入総を切なり
一風波の時碇かゝらさる時は合碇よし
一大風の時は財道具損る物也揖柱櫓綱いつも替道具を
可用意也
一船に霰菜の事
武鳥鋪木香十匁松散敷
青皮五匁丁子一匁甘草
右粉にして蜜にて練也
当流伝来次第
永禄十年正月廿一日村上山城守武家判
天正五年正月廿日
天正五年正月廿日村上山城守武勝州
文禄三年正月廿日村上大和守武吉判
慶長十五年正月廿日村上掃部頭元吉例
寛永三年正月廿日村上能登守元義并
慶安二年正月廿日村上掃部頭親勝并
文化元甲子三月廿一日宛佐田助太郎勝米判
横尾次郎右衛門基武郎右衛門
天保九年三月五日横尾次郎右衛門某武義
天保十年十一月十一日永田諸領賛典
1829