射儀私記 歩立之部(小笠原流)
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- 小笠原持長
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- 2026-08-17T19:23:21.343Z
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- 2026-08-17T19:23:21.343Z
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- 小笠原持長
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- 日本語
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- シャギシキ
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- 東北大学
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- 2026-08-28T18:53:25.651810+00:00
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2402.
射儀私記全
也
4254
な
必木
射儀私記
歩立稽古の事
夫弓の稽古の第一は其急望を
よく見わけて人々生れ〳〵にした
かひて強弱長短延屈のことひとし
き事かつてなしそれを弁へす
只一へんにけふくんするゆへならひ
うくることおそくつよくもよわくも
まとにもあたらすたひくつ目ラ
發して邪路におもむ〳〵なり是
みちひきのつたなきまゝなり御日記
の上如けなを又御意の上もたし
かたく亡目筆をそむるなり
ゆみの力の事
初て稽古の時弓の力は竹合ほと専
へしいとけなきは尤竹合なり
たとへ年たけたる人もく世を射
なをさん時は竹合にて射へし
あつちの遠さ出鹿ほとなるへし
その後かたち大概なると思ふ
とき神のきて立へし其時弓の
力も少しあくへしかやうに次第に
そろうへし万のくせゆみの力
つよきよりおこるなりいかにも
弓を我進退にしあわせへし
たとへは大木にふじなわのまき
つきたることくにはかるへし
木はなか力ゆみは藤なるへしかくて
こそいろくも給くたしらか
なるへきにやゝもすれはつよ
弓をたのむによりてゆみにから
かい本意を失ふなり如此なる
ときは我身は藤ゆみは
大木のことし能く此趣をます
て弓の力をはかるへし
地つきの事
凡弓のちはんなり足のつまさ
きよりえほしの風口にいたるまて
つよく調るをもつて地つきの
福き射手とするなり其調ふ
こと何のわさといへはたゞ胸中
の所作なり全ク弓場に立て
地を強くふむにはあらす何と
なく矢かまへより打上引おちし
矢をはなし了倒にいたるまて
五体たしかにみきれざるを大綱
ちはんといふ也就中腰をすへ
腰を折らせ物論なるといふその
いわれなかきよし先達而申
すれ候ことなり其ゆへは膝を
おれは殊に腰すはるかならず〳〵
首をなくるなりさある時は異
なる形を作り出してしかも遺
作ありて地着必すわるかる一しと
云々但し弓の趣にもよるへし
能々思慮あるべし
矢かまへの事
いかにも矢のとをりを的に向て
うでをたか〳〵とかまへへし弓の
うらふし過ぬれはかたのかゝ
見にくきなり矢構前に取
過ぬれはかた打上になるなり
よきほとにかまへてきつと胸を
ねた〳〵と見て其顔もちやうも
すれはなくるなり口惜かるへき
事なりいかにも真向をふしと
いふはこのゆへなりかほにて酌を
見おとかひをわのほねにもた
せよといふ事秘事なり但シ人の
このみ〳〵はいふにおよはす惣体弓
の難有よるべきかそれは好む
所にあらす
うち上の事
打上は煙のたちのほるかことし
ひきおろしは大島の羽をひろ
ておりさがるかこと〳〵なるへしいか
にも諸打上をこのむへし矢構に
よりて片打あけになる事あり
矢構によりて其心ありていさゝか
弦立てする〳〵と打上てにほくと
引わけへし相かまえてつる高と
云事を聞て引てうち上に事
あるへからす只弦のあいしういなり
ひきぬれは上にてゆるす事も
ありそのよわく比興なる事なり
やけ又片打上の矢かまえわろしと
聞矢さきをすくにかまへたりと
いへとも打上にうちかゝむる事
有口惜き事なりかやうの事は
まことに心にかけすは迷ふへき
事也次に打上のたかさは年の
ほとにみるへきか若き時は
高きが面白し年たけては聊
心あるへし殊に入道なと打上の高
からんは似合ぬ事なるへしえぼし
なきあいだひきゝもたかく
みゆるなり身に引かけて引
あくる事わろし打かゞめは弓
のことそるなりする〳〵と打
上へしうち上る時その本はる事
は時人ひよわきにみる也ゆる〳〵と
とゝこほる所もなく打上て
引おやすへし押手かり手は
いかにも同しやうに下すへし或は
かほのとをりにかつ手を引おろして
肩につくるもあり或は矢柄を
引過して肩によせている射手
有いかにもさやうの所たしなむ
へし又かむり打上常に成て用之
しるへき時あり
ひかへの事
ひかへといふは人内をとかへ
矢所をたしなむ第一也しかるに
其人内と云は弓手にては弓を
いかにもにきり二の時に力を入
妻手はいかにもひぢに力を入
うてくびをは肩に付てすげて
持て両方気を取納てそと放
せはゆへ手馬手たぢろかず
十分に矢も走るを人内の肝
要とす矢所此外に不可有
かけの理も不覚して無明に
ひかへる射手ひかへたるほとは
弓の力にて何はたらかすといへ
とも既に放しぬればいつくも
みたれ更に調る事なし剰窮
る事なきへせ有なり爰と覚へて
ひかへをわすれす諸の用をかなへて
放しぬれは人内より調ひ聊も
たぢろくへからす如此の間をひかへし
申也しかも又かやうの内の肝要也
外にもひかへのなきは見へるしき
事なり得たる弓の前にてもひかへ
の不足何とやらんあいそうなく
不足成義有聊またつゞ
得ざる時手なれとも能かた
にてひかへぬれば主の〳〵〳〵
見所有よ〳〵可心得事なり
いつれにも工夫肝要なるへし
二目仕の事
此くせは失所を了簡するなんといふ
よりおこる事也更に了簡あて
がいにてゆくへきことにあらす
矢所をわすれて正理を専と
せすんば此くせ付へし矢所は
自然にして我もしらざる時
あるへきものなりされとも又
其あたらすといふ事はある
へし夫もゆる〳〵と的と矢所と
見合にならす或は我等至りぬと
思ひてかまんの心あるものか様に
邪路に入事有能用心あるへし
押手を握得さる射手の
おし手かつ手思ふやうになき事
ちはん弓を送り返し得さる所に
よつてなりこれよりもろ〳〵の
一くせ出来なり然筈の時絶了
にて握り得すして挙だけ
たかく射定あたる間この元司
に定りて握かぬることなり進
退たやすき弓にて近きものを
先いかにも射へしかく稽古を
よく〳〵して遠〳〵して可射
若シ又遠き時も本の気残うは
引おろす時かわとおして見よ
引おろすときおさすんはすべて
後にはおさるべからす
かつ手着さる射手の事
これをあなかちに嫌ふへからず
能つかんにおいては申におよばす
たとへかつ手は着とも臂だ
にもつきて力をつよく射ぬれは
さらに相違あるへからす
いかにもかつ手つくといへとも
肘くびおしつけたらんは
千万其甲斐なくて剰
第一の禁じなるへし
放もみたれ矢所ちかひ失
立もわるく有へし
ゆるす射手の事
これは矢柄を引すこすより
おこり万事一念にとゝのわ
さる射手このくぜを射出也
そのゆへはしかもまた放の
心拍子そろふへからす時
くびの力ばかりあるゆへ静に
はなす事ならすそれゆへ
放きへとするあてがいを
めてするほとにかつてたし
ろ〳〵なり是をゆるむしと
いふ次にさま〳〵の大事とも
有肝要は種々の事を一念に
取とゝのふる所にて自然に
覚えずねすなり神変
不思議の堪能なるへしこゝに
造作出来てゆるすといふ
ことあるはもろ〳〵の力を一
一倉に調すしてわれと放を
あつかふ射手此曲を射出す
なりよく〳〵工夫有へき
ことなり
放れの事
およそはなれはかて”じん鉄名を通す
もとはたゞ此放れのわたなり
諸の体曲もはなれを専とせり是に
よりて矢も走り所も違わす自然
の徳更に古頭に定むへからす然とも
先ツあら〳〵弓の姿たしなみ心得
へきむねを大概しるす也そのやう
めななれは馬手をこえては
逢〳〵臂にまかすへし引より
矢柄のほとひ〳〵なり入つめて放す
所たく臂の力肝要たるへし
左右の辟付に身を入てよくつめ
そと放すへし如此そと放すと
いふに往々の秘曲あり能々工夫
有へしやゝもすれはねきあしくて
矢もこへ矢声もわろきなり
先かも又人なひさわかしくなる
なりいかにも弓にまけたる矢なり
とも射そろへたる射手のいんは
矢もふらす矢所もたかわす是
放の静にして人拍子の調ふ所にて
覚へすはなすゆへ也さと挙は
いかにもにきるへしこふしめうけも
持やう臂にてはか過しひしの
ほかにいわさしたもちはるる
一し
大紋の事
是よひちに力いらすして時くひ
に力入しさるによりてゆへてうそ
こふしのことくに弓の力まさるに
したかつて大放と成ゆくなり
かへひしひしに力を入てつは
そつとはなさは大放になるへうま
にはなれの事
これは書面に専といふとも工夫
不足によりてたゞぬかして放と
ばかり心得て如此小放になるなり
或はまた手のうちを見するなと
いふ事は書面に見ゆるなり当世は
さやうには放さすなとゝいふに
かたよりて小放になる事も
有かやうの邪路いつくにても
一大事なり求めても求むへし
たつねてもか尋詩
打挙の事
もろ〳〵の曲はゆみを我と遺し
泊さる所より出来れり殊に打
こぶしはゆみの力すきまたは
正理をしらさるよりおこるなり
其正理をしらすといふは二の
時に力を入ひしてたゝ弓をにきつ
つめんとするほとにそれにから
かいてねすゆへ弓の力さりてこふし
をうつ也うたかひなきけか
これをはなひへきやうは弓の力
をおとし我進退たやすきほとの
了にて射へし打なけ引おろして
扨手かつ手しおわせて弓をいかにも
強くにきりて二の時に力を入て
辟日をつめて両ほうしかとかためて
打ともたちろかぬやうにしんせ
入て放しみよ駕らず〳〵此くせ
なせるへし二の時に力いらさるに
よりて打挙になる也二のうてに
力を入る事我力より過たる
ゆみにてはすべて入らるへからす
いろ〳〵に直ひやう有といへとも
この外のに簡にてなをりたらんに
正理にあるへからさる歟能々思慮専
へし
前おしこすきの事
これも大願は前のことし此三ッ曲は
手のうちをえきるによりて出来也
手の内得すといふは弓をよわく
にき家によつていかにも我為に
よわきほとのゆみにて弓をくた
けよとにきりて臂をつめ二の
肘をさし両方に力を入打くせて
心にてとりそろへ放す時手の
内をくつろくへしこの心拍子更に
おしへの外なるへし此拍子そろい
ぬれは自然にか手の内より見る也
この時さしにこすきもせす前
おしもあるへからすめけの曲に
かゝらすしてあてかいよくすれは
おのつから直る所神変なりいつく
にもたたこの心なるへし
おくり放の事
これは二の義あり一ツにはいまた
放ささるにおへり二ツには放して
のち送るいつれも稽古の時弓の
つよきによりて出来曲なりまつ
一ツには放さすして送るは弓の力
まきによつて身の内よわへなりて
おつからの哥の心拍子違ひておへる
なりかつ又放し煩ふおこりなり
第二放して後送るは弓わか力に
過たるを弓手にてはおかづく
ひしとはかりなる間これささ
から弓の力にて我か力更になし
さるによつて了にからかい人杓子
そろわさるにはなすあひた弓に
かくうつる程にて弓の力にて
はたらかぬやうにあれとも難
放しぬれは御前押つる力がわれ
なるやうにてかならず〳〵送り放し
れる也是を直すへきやくはたゝまへの
ことし但シこのくせは殊に身の
内よつき射手如此成へしいかにも
ゆへきつくむねの間の気を
取そろへて息をはりて
そくりと放しぬれは自然に
このくせなをるなり
ゆみ例の事
立たる前のかどへはつまてかみ
うら〳〵としかもゆみのはつまで
神を入てかみ弓手をすゝめて
肘くびはかりにて時はけうふうに
みへかゝわろきなりひさをすへ
身にそへて打もゆん手かけて
打も見くるしき也此の二ツの中
ほとしかるへし弓持たる時の
一時目のかゝりなる也は能ほとなる
へきなり又勝吉初に弓倒す
へからす
弓取落す射手の事
此曲は手の内わろきによつて成る
なりかねの内をへつろけると心得も
手をひろへる事大きにあしき
事なりいかにも心はかりを
くつろくんしよくかましく
くつろくれは或は弓を取おとし
あるひは放て後弓の本そる事
有いつれもかいなく見へるし
き事なり
引のく射手腰ののく射手
の事
これみな弓の力強きによるなり
肩をよする射手もおなし
ことなり能進退なるへき弓にて
射直すへしこれ等の曲はたゞち
なるへせなるあいり他所より直る
へきにあらすよわき弓にて直す
所をくせに射なせは子物有へからす
放し煩ふ射手の事
左右の心拍子と気とそろわ
さるによるなり油断よりおこり
父は心得やうあしくてなま
しいに弓手かつ手に力を含
なといふて一念の詞はさるより
出来曲なりまた程喜の時むりに
ひかへて神を入さる時手如此なる
ことなり所せん弓手馬手も顔
もちもあしのつまさきも
ひつきやうして調事なくんは
むくうの曲か出来なり
朋根のよわき付手の事
およそ弓のかんじんなりおしね
かづ手かけ合たりといふとも身の
内弱くはいたつら事なるへし
さる事の候そかしうつくらく
射そろえたる射手なれとも何と
やらん物よわきかひなく見へ
或は殊の外に引ふしなとするに
胴の弱き射手なり前に申つる
條々ハ能もあしきも一念の所作
なり一心にして能もろ〳〵のなて
かいを調ふといふともかやうに身
のうち弱き事はいつれの所
為ぞといへは肝要は息の
はりやうなりたとへは番匠の
いかなる堂塔を造立するにも一心に
うかへそこしくえたゝすると
いへともかたむる所は一ツのくさび
にてかたまる也そのことしいたゞ
きより左右のかたひち手の内
こしひざ足のつまさきにいた
留まていろ〳〵むじんのた人み
ありといへともかたむる所の
かなめわ一つの息也若人さびに
喩なり大形息をはると云ことは
誰も心得るといへとも如けの肝要
しりて信する人希なり猶く
此息の事に多くの大事ごもる
へきなり能て工夫あるへく候
引のりする射すの事
とれは又息の所為なりいかにと
なれは前の段は息のよわきに
よつて五体こと〳〵く弱し
此段はいきのはりやうあしきに
よりて殊の外に引の事なり
ひへて息をあながちにはるへき
にはあらす矢かまへて打先と
する時弓手馬手に心をかけ
的を急度見つるよりかの所へ
神を入る時息をはるといふ事
定まる也其後者更に他念なき
所則息のとゝのふる成へし
此時は不求不問たゝ自然に
調るを肝要とすへきなりこゝ
を知らすして息をはると
いふはいかにも気をはりて息を
つめは身の内緒なるへしと
心得射手の心次第にいきのわる
随ひてぬけのる気有なり
かやうに差別し教ゆるにつか
すんは叶ふへからさるもの
なり
矢所の事
およそ失所は遠くも近くも
そのあてかいなるへしまつ打
上る時こふしにて帰をわり引
付てはこふしのうへ弦の内
弓の外かとより胸を見へし
さて矢所はうしろの下なる
へし近き物をはこして後の下
二寸さげてにきりの上六寸より
見てねへし如けいふをあしく
心得て二目つかひ出来る事
あり口惜きこと也握の上
いふは弓の内かと外かとにいふ
自然におしにてかふ時見る事
成を一度このくせ付ぬれは直り
かぬる事なり心得へし
能なてかいたれとも
矢所大きにちかふ事
これはおしてかつもそろわさる
時めひ也いかにもろくにかためて
放時はさらに違ふへからす
いかやうにろ〳〵につめたり共
致しあらきは違ふへし
委細申かたきにより出しまし
記す口伝有へし弓手のつめ
かちかつてまけぬれはうしろ
矢にゆくなりかつてのつめ
かちゆん手まけぬれは前矢
にゆくなり弓の本付ぬれは
前矢弓の上ふせはうしろ
矢以上前後の矢所也いつれも
やけ射つけ見つけたる時にも
かくへつ身の内弱けれは前矢に
行なりつめたくされは矢
さかる能つめてもはなれあら
けれは矢こゆる是等に大概
心えへき也如此には申せとも
真実ちかえは矢所違ふなり
矢所違ふことをしらずは
夜的を射てこの義をあんじて
みよ聊もちかはすかゝみかけ
たることくに可覚去れは古人も
夜師を体しけるはこのゆへ也
さらに面白からすは射へからすは
その心にては百夜千夜射たり
ともいたつら事なかへしこの
正理を心にかけて射ん人は
かならすなつとく有へし
心もすみ挙の下より則
矢所見えて面白きものなり
稽古につき禁事有依之
記之
第壱弓の力過たるにてにてにてにてにてにて
第弐然旨右の時勝負不可射
第三酒に酔て不可時
一
第四つかへたるとき有時
第五ものへさき時にて時
第六ひんからずしてにて射
第七す手にて不可下候時
第八弓射る時たわむれへからす
第九つゝうつへからす
第十嫁事にて犯
めけ記置といへとも其人に応し
て教訓なからんに於ては
千句萬句もいたつら事
なるへし他見有憚
もの也
応永二十年
三月十五日備前守持長判
右此時儀私記歩壱部
一冊者
細川殿澄元自筆之写
無相違者也
右京大夫
イ木右京大夫
永正二年九月二日澄元判
大館六郎殿
寛政九丁巳
坂田段次
正月写之
十