射法新書 附李滿弓射法指南

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平瀬光雄
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平瀬光雄
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シャホウシンショ
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東北大学
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2026-08-28T18:53:25.651810+00:00
第10日 府町一 1册 附録李満弓射法 全 射法新書 射法新書序 弓はひたりに。箭は右にたはさみ。ねらひたらむ所あ やまたしとするは。わらはへかすさひにもこののりたかはす。 しかはあれとも。とほきにをよほしかたきをとほさむ に。ちかなき的いえたらんをいみしともいふましく。つよき ゆみなかぎ矢なるをも。あなかちにめおとろくへうも あらすかし。たゝ襲津彦かまさしきわさをてねひ。天 のはゝ矢のかしこきあとをたつねさらむなん。あたりて あたらすいていすとやいふへからん。和か師かゝ年比のなけき忍ひ あへすして此ふみつくれるは。おほより道々のをしへ。まつ法 にいりてのち。のりをいつるを以たりとすへきあらましおる へし。今まのあたりとひ方ねひてうに。わか師のわさのことに たかはぬ事は心えつへけれと思ふに。いかゝはもたあらんとて。 おほけなく此はしきしたり。猶知かほなりもときはひぬへくやと 寛政丙辰十月 柳河富士谷成元謹識 射法新書自序 登射は万芸の長たり故に授事ともに難しと いふ余窃におもへらく其難しといへる物は法と道とを 失すれはなり正法に因て其道を学ふときは其効 速にして且いたり易しひとり射のみにあらす 百事皆しかり夫和漢の対書をよひ者流の秘して 蔵る所の書多しといへとも所謂正法にして精 なるものは聖徳太子の御撰なりといふ射法本紀 日置の證書明高叔英の射学正宗柏迷集なり しかうして本紀正宗柏迷集は既に刊して世に 行はる證書は師資相承の制戒ありて容易に 授与を許さすいはんや上木をや故に余證書 中より道に入へき階梯数条の日のみを抄出し 図解を加へて射法新書と題し世に公にす 晩進後学これに由て学はゝ其道を得る事 すみやかならんかまさに挽て発せす其穀に 至らしむかの教にもちかゝるへしと云に 日置の證書とは本書五巻末書五巻共木十巻道統の 射者へ相伝するの證據といふよりの名なり 寛政八年丙辰八月 寛政八年丙辰八月長水平瀬光雄 七 □ 射法新書 平瀬光雄著述 男光孚謹校 弓を射るには五味七道五重十元高とて惣体に規矩あり 其五味といふは一に目附此所を射んと主意をたてその 目当物を見定め足踏を定るに法あり二に引込弓を 開き推と挽と左右の釣合引収る迄にこと〳〵く法あり 三に仲合弓を引収め肩臂胸背の骨筋を以て仲合に 法あり四に鶏仲合て矢を発するに法あり五に見込 矢を発し其矢の落着所をとくと見込む後の 仲ともいふ右の五味を調るに七道とて七この法あり其七道といふは 一に足踏此所を射んと主意をたて左の手に弓をもち矢を はけ右の手にて弦の中関より下をそともち弓の本溝を 左の膝にたて心を鎮め気を臍下へ収め目当物を見定め 其目当の筋へ左の足の大指のうしろかとをあて右の足の 大橋の爪根を左の足の大指のまへかとの筋にあたるやうに 右の大柏は左の大拍 ふみ より少し出へし 左右の足の広さは其身の矢束ほとに してきびすと爪先は扇を五六間ひらきたる其地紙の 恰好に心得うく所なく土にひたと付やうにふみすねの筋を 引のほし殊のふしを後へ出すへし大前に立時は右の足を 少し出し大後に立時は右の足を少し引べし但し近き物或は 低き目当物は足踏を狭くすへし 證書蜘蛛之尺闇夜之鐘 二に胴造足二ツの真中へとりたりを居て身を直にもち左の 肩を下け右の肩を上け胸より腹迄の中筋を足踏のかねに 十文字にあて背中の結目の骨をそらし此の袴の腰板背中へ ひたと付様にすへし日当物の遠近高下によりて胴の進退 仰屈は自得すへし明の不違不遂不仰不屈中央なるを五身といふ 證書日月身身之曲尺 足踏を定め朋造をしたる図 三に懸弓に矢をつかひ其筈の下へ大指を一文字にあて中指を 大指の頭にかけ食指はそと流たる計にて大稲の中のふしともとの ふしとの真中にて弦をせくやうにかくへし四ツかけにては 無名指中指を大指にかけ食指はそと添たる迄にすへし 證書 一文字十文字弦搦浅深弦計 恵休善力半念半弱 四に手の裏弓の内竹の中墨を大指の根にあて中指は大稲の 根際にそへ大指の腹にてそとおさへ無名指と小拍にて 弓を握れは三指の骨と小うでの骨とはかねにあたるへし 食指の屈伸はこゝろに任すへし 證書鵜首鵞鳥中三毒骨法呼立吾加 懸手の裏を定たる図 五に弓構懸手の裏を定てより本。拝を膝にたて弓と矢と 拳と三ツの間大指の中のふしを目当物の真中筋にあたる やうにうでをのべ大指の根にて弓を推かけ無名指小杉にて 弓を握り左の肩を後より前へまき込肩を下け肱をかへし 右の肩を上け懸の拳と同肱を外の方へひねり出す四に すれは胴は自然と少し右へしまる ひねる こゝろ也 是にて目当物は 真脇の通りに当るなり右の如く構ふれは矢の根は目当 物見の 物より少し後にあるへし顔は 事なり 目当物へ真向になり右の 事なり 目にて見込左の目は右に随ひて見るへし 證書墨指之曲尺 弓構をしたる図 六に打起弓構の時の形状の違はぬやうに左の肩を下け右の 肩を上者弓の左より右の目にて目当物を見掛左右の 拳に上り下りなく同しやうに眉の通まて弓なりに打起 すへし手の上るに随ひて腹は帯の下へ残すへし腹はに 気を臍下に収る 近き物或は低き目当物は 上るを嫌ふなり やうにする事なり ひきく打起すへし足踏より打起し迄を過去身といふ 證書弓懐弘道残身猿臂射 本 弓を打起したる図 七に引取弓を打起し目当物に随ひて高くも低くもその 一恰好の違はぬやうに引取へし引姿は前条にいふことく打起し 弓手は弓を推と共に上筋を内へひねりかへし肩の次目 より二のうての筋骨迄も滞る所なく推かけ馬手は 弓手を推につれて懸拳右の目通り迄は弓手に随かひ 目通りを越すより付所へむかと引へし 付所とは右肩の 一頭目の所をいふ 弓を引に目当物に差当て引は筋骨差こはりて引かたし 矢束も引けねは高く打起して引へし偖弓手は胴の 積りに応しひくきも高きも後にあるも前にあるも わろし身の積りを以て手先のかねを定め勝手の付所も 低きも高過たるも悪し平付とて手首のをれて肩に 付過たるを第一嫌ふなりのけ付とて肩に遠きもわろし 右肩の頃目の通りに懸の大権の中のふしの収るをよし とす肱ははり肱も下りたるも悪し右肩の後の平骨の下へ 詰るをよしとす弓を引収め左右掛合弓と弦との間へ胸を 張出すこゝろにすへし引収め矢を発する迄の間を抱と いひ現在身といふ 烏兎之梯反橋比人雙父母大三 證書 父母之収懸母剛父三心相引掛合之話 轄町無理大将一騎當千 紙引五部之詰八方詰抱 弓を引収たる図 右の通引収たる時左右の拳には高低なく後より前へ巻込 たる左肩は少し低く右肩は少し高く弓と矢懸の大橋と 弦弓と手の裏くひの骨と矢此四所おの〳〵かねの十文字と なる矢を発する時に臨ては左肩は少し上り右肩は少し 下りて左右の肩一文字のことくなるゆへ胴の骨と肩の骨と 十文字の曲尺に当るなり以上五ツ所十文字となるを以て 是を五重十文字といふ 女 矢を発する時の図 右の七道五重十文字調て矢を発するを離といふ適中の 肝要なれは深く考へて自得すへし 左の目は右に 離弓を引収め右の目にて弓の左より目当物を見込 従ふて見るへし 椎手は後より前へまき込たる肩より二のうで拳まて 大杉の根と 無名指 小拍に心を 用うへし 御目当物へむけ左肩のうしろより力を用ゐて推出し 懸拳は引収たるまゝにて胸より肩の陰の平骨の下へ かいかい骨 といふ 腕を廻せはむねおのつから左右へひらけ矢束その 身の尺に収る 此時低き左肩は少し上り高き右店は少し下りて 左右の肩一文高のことくまつすくになるなり 目は 目当物を見込なから推手の大指の根より目当ものへ こゝろさし直くにおし馬手は肱にこゝろを置て弓手の 大楯の根にて椎かくるに随ひ懸拳の大指をのはす心に すれは矢は自然と離れて目当物に至るへし矢を 発して後も目当物を見込手足身首ともうこかす 打起しの時弓を上るに随て残したる所の臍下始終 一貫して堅実なるを第一とす矢を発したる跡を 未来身といふ 十重剛々正直寝々小法師ノヽ 證書汰流左計弓計五箇之離 四部之離惣部之離両露利三世之重 雪之目附退込二目弓脈長短之息 同目中見越之曲尺檜垣十文字一分三界分 着已着界的介 矢を発したる後の図 季道画器丁 四 吉田村田村 右の五味七道五重十文字離迄の形状と意味をとくと心に 細き竹弓なり内竹はつしの 合点して篠張の弓に矢をつかひ 弓にてもよし 射前より六七尺 射むとおもふ所を見さため 巻茶にむかひ 間をおくへし まきはらの中に目当の 印を付置くへし 第法にあるを以後の規矩を正しく法の規矩を正しく法のことく弓を 引収め骨節のくひ合を身心におほえてのち矢をはつし 又右のことくにしては矢をはつし日々数を稽古すへし 其数は多きにしかす稽古の日数は骨節の 骨筋のくひ合を覚えて くひ合をとくとおほゆるを期とすへし のち法のことく矢を発すへし離も熟すれば見込たる所へ 中るへし其時に至て汝を射るへし巻藁とはちかひ て聞ものひ殊に的に中たきこゝろ生ずる物なれは 最初には五六間先に四五寸計の向をたて中りはつれに かしはらす。法のことく射るへし射終らは巻薬にて七道の 規矩を正しく骨節のくひ合をおほえて後に止むべし 右のことくかはる〳〵射れは巻藁を射るも的を射るも 人々生質の目 射こゝろ同しやうに成て目附見込は自得すへしは くせあれは 自得 すへし 水中数も定らは少し間を延し的も少し大きくして 射るへし次第に間数を少しつゝ延し的も段々に大きく 間数の遠近向の大小定式あれとも すへし は的射終らは前にいふ 遠近大小とも意に任せ射試むへし ことく必巻藁を射て骨法を正しくして後に止むへし 骨筋法のことくになれは自然と力を生する 初心の間は七道の規矩を 物なれは次第に強き弓もひかるゝなりこ 一ツ〳〵離れ〳〵に稽古して仕おほえ次第に熟して後は是を 心に得て手に応するゆへに其射むとおもふ所を見て足路を 定むれはおのつから胴造極り懸手の裏弓構まて一貫し 打起し引取抱に至て矢を発する遅速も意に随ひ 発すれは必中るへし其中らさるは七道の規矩の相違か 弓矢の掛合さるか或は暑湿寒暖風の様子七情の動静 にもよるへきなれは熟思深考してこれを其身に求めは 五味七道五重十文字抱難未来身迄の規矩其法其機を 猶余が著す所の射形規矩の 自得し教外の神伝湧出すへしは 回あり合せ見るべし 證書六四雀積壹町三尺十段百手 右述る所は日置氏の證書より其奥に至るへき階梯 数条の目而己を抄出して図解す此書をよひ印行の 射法本紀略説射学正宗指違集財学要録等を合せ 看は射法の真妄を明悟し其薀奥に至るへし 或問三條 式問むかふにゆとりを取といひ或は優和なとゝ唱て弓手を 少しやたる射形あり此編にいへると反す其是非いかん 答曰射形に実躰表裏の差別あり余か著すところの 射学要録に弁す一覧せは其是非分明なるへし故に 爰に答へす 或問甲冑を着しては矢束もひかれされは兜を脱て射たる こと古戦の記録にみえたり又或説に着具の上は平常の 射形と別なりといへりいかん答田軍陣にていまた 戦闘に及はさる以前か合戦中といへとも其虚を窺ひ 知たる時節又は城中より射るには兜を脱き或は素肌にても 射るへし日置氏以来の射法平常の鷲に射形の 規矩を正しくするは軍射の為にして着具の上蛇を ぬかす其身の矢束を引て自由に対しるゝならひあり 然るに着具の上平常と射形別なりといへるは軍射の 事実を弁へさる妄説なりと知へし 或問鎗薙刀を以て射者に対しては勝をとり易しと の説ありいかん答田矢は飛ものなれは金勝を得へし とおもへとも彼ひとへ身になり鎗薙刀の類を半かふり にし面と脇とをかこひ弓手の拳を目当として進み 弓合の鎗薙刀に秘術あり 来る者には射れとも中らぬ物なり こゝには其大体をいふのみ 其故いかんとなれは脇身四寸其中間へ凡経壱寸余の 鎗薙刀の柄あれは左右の虚隙一方弐寸に過す去は 脇を射れは柄に中て体にあたらす左右の虚隙を射 れは柄を除るゆへに矢左右へはづるたとへ中れはとて 素肌といへとも皮肉にて別れ潤達せすいはんや甲冑を 着したる者をや胸背を射んと射者左右へひらけは 彼も又ひらきて拳を目当とす或は一の矢は射損すとも 二の矢にて射へしとの説あり是全軍射の事実正理を 弁へさる妄説なり此時適中せしむか射法は相承の 伝あり其法を知らされは先は中らさるものと知るへし 軍射六曲をはしめ其弓合一筋の矢中拳にいたるまて 射学要録に弁す妄説の為に惑はさるゝ事なかれ夫 近世は俗間に巻藁と定間の的より外に射る事なく 射術是にて足ぬとし或は堂射に深旨あるをしらす 徒に堂前矢数のみを専らとして財芸これに移ると おもひ或は軍射の事実正理にくらく甲冑を着して 射るのみを要前と言得射道の本旨を遺失し五射 六科を弁へさるも少からす故に余浅陋寡聞を益す 嚮に一書を著はし弓道の始終射法の真妄俗説の 紙縄を弁し五射六科より射形実体表裏の差別 教導の精粗射を尊ふ本末主将士卒の四段に射の 差別堂射稽古当日の是非弓鉄炮利用の得失引目 鳴弦の正説軍射器械の利害戦陣攻守士卒荒川の 射事弓備の配立隊長卒長射士の意得にいたる まてを編輯しこれを射学要録と題し梓に 上し世に行ふ敢て博達に示すにあらす晩進後学 新意を発し親徳武用の射の興起せん事を欲するのみ 射法新書終 肘法新書附録 一李満弓射法指南 当流半弓射術の濫觴は元禄年間近藤嘉太夫 李満子と号す播州宗栗の産 といふ人ありて 大坂に寓居し後東都に住す本 本朝の弓尺 鰭にあらす に本つき鯨魚の鰭を以て半弓を造る物 咽中の をさなりといへり近藤氏の号をい 称して其弓を李満弓と云ふ 時と併て射法を発明し殊路に 携へ座右に置立し不虞に備ふる要具とすしかし より以来其法に由て学ふときは能中り又遠に 至る硬弓に至ては堅甲をうかち五七歩以内に賊を 射例すこと最験ありといへとも半弓制作をよひ 射法ともこれを伝ふるもの多からす終に法術の 湮滅せんことを惜み賤子光字に命し伝来相承の 秘書二巻忠恕の巻 岡貞 書より 先その射法の綱領を挙て 弓の制作射法を記す 朝令さ 図解をなさしめ李満弓射法指南と題し 新書に附録し公にすと云に 丙辰八月平瀬光雄識 李満弓射法指南 長水平瀬先生口授男光孚述 巻藁前体配の事 扇子懐中物さけ物等を次の間に置きたすきを たすきゆかけの図は 懐中し或はたもとにいれ薬をさし 巻末にしるす 無名指小指にて巻藁矢の根の方をもち中指食指 大杉にて弓の附の歩し上を持て弦を下にして 弓矢巻藁の図は 弓矢巻藁の図は 提いて巻藁より 弐尺四五寸程間を 巻末にしるす 置て坐し弓の末弾を巻藁へむけ弦をむかふ にして席上におき矢を弓の外の方に本弾と 矢の筈と揃ふやうにならべ置き見る人の方へ向て 長きたすきにて 一礼し襷を右の肩より左の脇の下へかけた 左右へかけるもよし 刀の下緒を鞘の上を右の方へかへし右の手にて矢を 一手とも根の方をとり大指食指中指にて弦をつまみ 手前の方へおこし左の手にて弦の上より弓の附を 執て本弾を左の膝の上にたて矢をけけ一本は 一射法は左に 小指に挟み法のことく射るへし 一手とも 述るかことし 射終らは末弾にて巻藁をそととめて右の手にて 甲矢をぬき下に置き乙矢も同様にして弓も 最初置たることく席上に置きたすきを取て懐中 或は袂へいれ下緒を戻し矢を右の手にてとり 弓を初のことくもち一礼し座を起て次の間へ入る へし的射の時は的矢拾本左右へ分て持出へし 射形胴造の事 左の膝を巻藁の中墨より少し前にむかはせ 右の膝をひらき体を直にし気を臍下に収め袴の 腰板背中へひたと付やうに坐すへし立て射るにも 胴造は同様にして左の足の大指の後かとを目当 物の正中筋にあたるやうにすへし 点の事 弓に矢をはけ其筈の下へ右の大指をあて弦を中の ふしのをりめにかけ食指にて大指の頭をおさへ少し ひねるこゝろにすへし 手の裏の事 弓の内の方の中墨を左の大指の根にあて中杉は大柏の 根際にそへ大柏の腹にておさへ無名指小指にて弓を 握り大指の根にて推かくへし食指の屈伸は心に 任すへし半弓の制本末の正中壱寸下に附あるゆへ 上は弱く手下は強し其弱を推て強を扶くへし 此心なき時は弦の戻り手下より早く矢鋭にして それやすし此故に右に述るかことく弓を執れは 手下の方手の裏空虚になるによりて上下強弱 釣合ひ弦の中通にて矢を追ふなり 懸手の裏をさため弓を 半分引たる図 寸法所書付録 引込の事 左の手 をいふ 大指の根にて 懸手の裏を定め権手の をいふ 右の手 伊腕を鳩尾につけ矢を 弓を推かけ勝手の苫の手腕を鳩尾につけ矢を 半分ひき 手先にてひかす就にてひきかげ足 は弓をふせさまに左の りきみなきやうにすへし 肩を前へまき込み肩より二のうて拳まて滞る所 なく推かけ勝手の腕は鳩尾につけなから椎手を 推すに随ひて胴を右へひねるこゝろにすれは左右 釣合ひ骨節対偶し定すの矢平題まて引詰 らるへし是を鼓といふ此引込違ふ時は片離に なるものなり弓矢つかひの内は静にして引込む 時は何の滞なく骨節を以てすらりとい込むへし 遅くひく時は自然とこたはりとなり矢も不直にして 勢よわし 弓を引込たる図 二 二十一 息籠の事 弓に矢をはけいまた膝上にある内呼吸を平にして 息をはらりと払ひすて心裏虚霊にして一物 をも求めすすらりと引込み矢を発ちて後まて 息をつかす一息の内に射出すへし息をつかんと すれは自然とりきみになり或はもたれと成べし 目附見込事 射むとおもふ物を見定めあてたきと思ふ念意を すて定寸の矢平題まて引詰め心気の滞る比に 目を箆中より鉄やしりより目当物へ移るや 否に発すへし先を見詰れは発識に奪はれ 欲念生し自然と手前乱れ精気漏散し審固の 習ひ違ふへし古語に持満の末に発すといふと いへとも半弓は持満の始に発すへし短弓ゆへ本尺の 弓とは相違すと知へし 誰の事 弓を引込みおし手の大指の根と勝手の大指の根に こゝろをし左右釣合椎手の大指の根にて推かくるに 随ひ急の大指をのはすこゝろにすれは魚なかにほろりと 離るへし少にても弦にこたはりある時は短弓ゆへ 弦のとかめつよくして矢それやすし 弦おくりの事 半弓は弦の余計なきゆへに追ふのこゝろなき 時は矢落るものなり然れともこしらへて追ふ にはあらす弦のもとりに随ひ自然と弓なりに 追ふへし 矢を発し弦送り 追込の図 残躰残心の事 体は盤石のことく気は鴻毛のことく内志正しく 外体直にして矢を発したる跡まて澄渡り たるを残体残心といふ心にせはしき所あれは 乱るゝなり躰は動かす椎手勝手収り内に尽 さるものあるやうにすへし射術に限らす諸芸 皆しかり 調子の事 巻藁はいふにをよはす的射の時も十本つゝ射終 るまて遅速緩急なく心気一はいにしらへ合ひ たるを調子といふ十本より百本に至るまて右の ことく心得へし一本射る内にも序破急の調子あり こゝろを用ひて修行すへし 起心の事 活物に対しては彼我心采の発する所を察し 相気にならさるやうに彼か未発を射るへし 己発といへとも盛衰あり其説気を避て 陸気を射るへし鳥なと射るにも彼と離れて 我心を起さす彼か気に移らす風と射出すへし 此心得なき時は矢の至らさる内に飛さるものなり 的射五間より始る事 半弓は五六間の内にて賊を射倒すを以て本意とす 六七間以上は実理修行の余計と知へし 的高下の事 最初には五間に一尺弐寸の的を地上より的の錐 もみ迄弐尺三四寸にたて幾発にても半分に 中る時一間後へより的高さ一寸四五分さけて立つ へし五間より拾五間に至るまて右の間積りを 以て的の上け下けをすへし 小的をきらふ事 目に小きものを見れは心も小さくなり大きなる ものをみれは心も大きになるものなりこゝろ小 なれは業小さくこゝろ大なれはわさゆるやかに すなほなり当流空の曲尺を専要とし中心に つくの修行にして時処により本尺の弓に代て 武用の功をなさんためなり中こゝろにつゝ位に 至れは矢先も自然と細くなるものなり故に其 わさ始終大さはきにしのひやかに修行すること 第一とこゝろ得へし 的には中かたく活物には中やすき事 的は其体不動亭々として清くたとへは明鏡に 向ふかことし潔白不動なれは我心気をうははれ 散乱麁動の念生して中かたし活物は変動す 我心気も動物なれは動物と〳〵其機相応して 中やすし先の動には応しやすく不動には応す へき様なく却て我心動すへし修行清月の 位に至り中こゝろにつく時は的も我も一体なれは 奪はるへき様なし活物はましてはつるへきやうなし としるへし 曲の事 行住生外前後左右触る所に応して射るを 曲といふ半弓は短小にして取廻し自由なりと いへとも修行不練にては曲に至り然し事々物々 心を用ひて修行すへし 以上拾七箇條 李満弓射術諸具図式 李満弓 張立長さ弐尺五寸強弱は鰭の厚薄によるへし 附は本末正中より壱寸下る弓幅附にて七分なり 弓の内の方しのき本末に通る張合高さ三寸五分 弦はせきつるなりまかひいと上下仕掛中関も同原 矢 惣長壱尺六寸六分六厘 巻藁は羽角木棒角木箱根等にて射るへし 的矢は木矢竹矢長短制作に習ありといへとも寸法 掛合根等に一家の伝あり 根矢同右 右は定式の寸法なり駕輿中の弓矢は短くすへし 制作に伝あり法に合されは矢飛はす又中りかたし 尻籠 □□ この 数品ありといへとも二種を著す 弓矢を尻籠に 刺たる図 同村土竹書付録 殊 巻藁同台 祥 も 季道画図 嗣出李満弓射法箇條 一硬弓射様の事一軟弓射様の事 一臥弓を好む事一柳乱の事 一蜘蛛の事一清月の事 一小を捨火を取る事一膽大心小の事 一気凝心濁事一操存涵養の事 一霜を聞事一毀誉を離る事 一身中の事一中り心につく事 一気あたりの事一弓に雛なき事 一矢色の事一四季風候の事 寸去斤書寸承 一心違の事 一尻篭着様曲尺緒留様の事 一鎗合射様の事し一鎗合弓綾急の事 一立なから射様の事一走なから射様の事 一矢文射様の事一水に濡たる矢射様の事 一暗夜に射様の事一暗夜に音を聞事 一堅物射様の事一遠的射様の事 一火箭の事一毒前の事 右三拾弐箇條 對法新書附録終 木 1900