法忍律師歌詠
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- 釋法忍
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- 釋法忍
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- 日本語
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- 盤谷山
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- ホウニンリッシカエイ
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- 東北大学
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法忍律師歌詠全
法忍律師歌詠序
服部蔵書
唐慧能鬻レ薪供レ母。聞レ経有レ省。往参二五祖。五
祖器レ之付レ法。是爲二六祖一。大振二宗風一。高足如二
神秀一。碩学多才。不レ得レ追レ塵。可レ見得悟不二關二
学之有無一也。我法忍律師。亦初売レ柴養親。
不レ学二文字一。不レ渉二経論一。早歳志レ道。厭二人間事。
年三十六。出レ妻屏レ児。入レ寺薙髪。爾來二十
年。所レ造極深。所レ化極衆。徳愈崇而躬愈卑。
輕暖不レ服。甘旨不レ御。一旬無二閑處一。三日不
留跡。律師之號不虚也。去歳八月。罹レ病不
起。世寿五十四。寛可レ惜矣。師平生所誦歌
詠。矢レ口而出。不レ加二修飭一。皆心源流出。無二半
點塵氣。讀之使人遊清淨界。師固不欲遺二
文字於世間一。唯其徒集二各所レ聞者一。以為二。一
冊子一。欲下刻而頒レ之以省書冩之勞一。使予記二
其由一。予舊辱方外之交。故不敢辞而書。
図同
発見
吾曜
于時嘉永六年癸丑冬十月
薇園居士識
薦法忍律師大亀和尚
仙台大
年寺住
夙證得無生法忍度生幾歳懐慈愍全身
渾是観世音没邉願海何時盡
同前
薇園居士
五十四年轉法輪今朝還了幻華身松風
澗水長如此常住随縁調自真
法恩律師略伝
師は武州荘原郡大井村の生れにて
若かほし時より俗をいとひ仏の道を
したひて出家せん事をねがひしかども
父母の許さゞりしかはやむ事を得ず婦を
むかへ一子をまうけしかど幾本となく
両親のみまかにしより婦をその親里へ
かへし師の姉奈るものに家も子も託し
天保五とせの春三月廿一日弘法大師
千年忌にあたり三十六歳にて永峯と
いへる処の真言宗高福院にて剃髪
一染衣しそれより同じあたり同宗光
雲寺に住す師の生れし家の宗は禅
なりしが嘉永五年子八月廿八日道元禅
一師の六百年忌に相当り巳の時寂然と
して遷化すその親くせし人々皆父母に
別るゝが如し師の家世々薪をひさぐ
をもて業とす半若き時薪をさき
なから口すさみ自作せしいろはごゝろ
及ひ法語等あり又はおのれ師の平生
こゝろにうかび詠せしをかたはらより書
あつめかつは州より聞伝へしをあつめ
て一巻といなしぬことしの秋はやくも
一周忌のめぐり来ぬれは報恩のため
師の志を梓にものして永く後の世の
法の道しるべともなれかしと思ふ心に
なん有たる
▼
嘉永六年癸丑八月
何某誌
いろは心
いきて此よに居るうちにろく字の名号唱へつゝ
はなのうてなに遊びてはにち月星を友として
ほう身仏となるゆへにへたてる道はさらになし
とう天ぢくのはて迄もちゑの光明かぎりなし
りん旦の中のくるしともぬけて此身は有がたや
るてんにまよふこともなしをの〳〵方もまことにて
あかうの道に入ぬべしかりのうき世と心得て
よろこぶべきは法の道たのしむ所常なれば
れんげはいつもさかり也そく心仏のたのしみは
つねに浄土のことばかりねてもさめても有かたや
なむあ弥陀仏の息斗うらかんも多くあつまりて
むりやう寿仏の経をとくう相むそうにへたてなく
ゐつ心仏かまもるべしのりの御山にいたりては
おくに金銀なりの花くらくは更になきゆへに
やくわうの玉を身に得たりまことの心となればこそ
けがれ不浄は更になしふしやう不滅の者なれば
江んなきものも助なば
こうめう常にてらす也江んなきものも助なば
てん地の道に叶ふべし阿字の深山に至りては
さん世諸仏も友となりきめうふしぎのあらはれて
ゆめやうつゝもさめにけり
ゆめやうつゝもさめにけりめくみて育つ此身こそ
みのるに付てうつむけるしん〴〵常にたへずして
ゑたるたからぞ有がたきひとももらさず助なば
もとのあ弥陀の心なりせん里万里と隔つれと
すゝめばちかき法の道
京の日もあたに暮さぬ心にて世をわたるこそめてたかりけれ
一法語師いまた俗にてありし時の作
けしの中にも大千界の深くかくれてあるのも
妙よ妙な心のその本体を釈迦も達磨も諸
菩薩達も是を悟るを仏と申すさとる文字を
よく〳〵見れば吾中ぞと書ではなひかされど
われから悟はこけよ真の知識のをしへを
うけて是をさとるがまことの悟達磨大師のその
ことの禁に人は石火の如しといへり教外別伝文
字を立ず心をもつて心に伝へつたへ受たるこの
一僧心を世々の知しきにうつしておひて末世末代
すへ〴〵までも人をすくふが我心願に神や仏や
聖人とても外の教は少しもなひぞかゝる尊ふとき
此心法を伝へしめんとちよひあるのみ
古歌に
一かゝげても見せばや人に東の世をあまねく照す法の灯
師の雑歌
一棺のふすやま里もへたてなく
なくうぐひすの声ぞやさしき
かくばかり人のこゝろにまかせぬる
仏のたねをもとめぬるか南
立かへりふたゝび和かの浦風に
こゝろも清くすめる海ばら
とちらから登りて見ても何もなし
三国一の冨士のそらかな
一福寿海無量の徳を備へたる
こゝろをこゝに知るぞうれしき
あみだ仏の外に宝はあら玉の
ひかりは己かつとめにぞある
何もなきこゝろになれば何もかも
わが身のうちに有明の月
一六根もまた六識も六度も
つきたる時ぞはんにやはらみつ
きのふに暮けふに明行てつつてつく
仰けば高き日の御影かな
天地のふかき恵みのあらはれて
いまぞひらくる梅のはつ花
一あら玉のとし立かへる御万歳
ひげおやぢでも愛敬があり
有かたや一切衆生ごくらくへ
すゝむる功徳ともに成仏
お冨士さんあなたのやうな御姿は
まづ三国にならぶものなし
新玉の春にむかへばおのづから
ふるきむかしの歳わすれけり
一すじにたすけたまへと頼みなば
つひにはたすけ給ひこそすれ
ふくうちにいつかひらけてしら梅の
おには外まで匂婦はる風
一蔵びらき鏡びらきもこの備へ
みなにこしとゑみわれぞする
おのづから花咲はるのあしたには
心のどけきうぐひすのこゑ
くもりなき玉の如くに身をもてば
世々に光りはあり明の月
一浅間しきこゝろも身をも捨はてゝ
ふかくぞたのめ弥陀の本願
どちらから見ても卍はまん字なり
わがはからひのなきぞ嬉しき
春の日に氷もとけておのづから
ながれも清き谷川の水
六道のきづなも今はきなはてゝ
たゞ一すじに弥陀の浄土へ
玉子よりあたゝめられてそははや
そらとぶ鳥の心地こそすれ
鶯の生れし跡はからすなり
ほゝ法花経はかあ〳〵のこゑ
みづからの心をすてゝみつからの
心に月もやとるうれしさ
一春なれややぶ鶯も庭に来て
ほうほけきやうを告渡る也
天地の深き恵みにさく花の
すへたのもしく実を結ふ哉
まつしきをかくれ家にしてたる事を
しれは大福長者なりけり
日は入ぬ月はまだ出ぬ中空に
ひとりとゞまる法のともし火
おのづから人の心もすみだ川
流れて清き秋の夜の月
月の輪に心をかけし夕べより
たまのゑと身はなりにけり
立かへる道おもしろきけしき哉
是ぞまことに雪のふるさと
いにしへの人の思ひもしられけり
身にしみわたるけさの雪風
頭陀袋只一物もなきものを
さとればいつもむねの広さよ
一日はのぼり水は流れて住の江の
岸よりきしに通ふ松かせ
玉の緒の絶とも何かおしむべき
深きちぎりを結ぶとおもへば
風流はかぜに流れて行舟の
水にも跡をとゞめざりけり
何とまたほめよふ事もしら雪の
中より匂ふ梅のはつ花
君ならで誰かは是をしら梅の
花の匂ひの四方にありとも
あらがねの土より出て土よりも
世には尊とき物となるらん
是非しらず邪正もわかぬ心こそ
それこそそれよ夫よその人
烏羽玉のやみより出て明らけく
うき世の中をてらす月影
一教島の道にひかれておのづから
三十一もじのこゝろをぞしる
よしあしを思ひ定めず谷ふかみ
一問へば答ふるやま彦の声
一初雪と同じこころの白たへは
つもるほど猶一物もなし
ふたつなき命を君にたてまつり
千代万世もかぎりあらめや
いにしへもかくやと思ふ雪の山
一先ふみあけて道しるべせむ
天照す神の恵みの深ければ
こゝろのどかに暮す春の日
来る年も又くる気も御万歳
君がよはひにかぎりなければ
南無阿弥陀仏まかせの身の上は
ねてもさめても心やすさよ
一有がたや初音のつゞみ聞しより
世をすぽゝんと打忘れけり
人よりも先に立つゝ本国へ
今立帰る道のひろさよ
君をのみさして行ゑは三笠山
雨ふらばふれ風吹かばふけ
あら玉のとしの光りのあらはれて
見るもの〳〵のうつくしきかな
立帰りみるめかひある浦島に
御法の水の深きをぞしる
よき事を風の便にきくの花
秋ならねどもこゝろ涼しき
一すみ登る月に曇のあらばこそ
たぐひあらしのやまの秋風
只頼めたのめば直にすくふべし
五劫思惟のその誓願に
足ることを知れば楽しきこの庵
もとめなき身のこゝろ安さよ
秋風の吹上の浦のさよ千鳥
なくこゑごとに月ぞさやけき
鷲の山峯にはかゝる雲もなし
只まつ風の声ばかりして
たぐひなき世にも尊ふとき御仏の
跡したひ行ゆきの山みち
見るも花みらるゝも花今しばし
ちりにし後は春のやま風
一誰もみなむあみたぶを唱ふべし
ひとつ蓮にのりの身なれば
二つなきものと成得て一物も
胸には何のたくはへもなし
仏どもしらぬが仏ほとけには
ほとけと思ふ心なければ
おのづからちりに光を和らげて
こゝろ長閑にくらす春の日
いにしへも今も替らぬ法のみち
たゞ一すぢに誰かゆくら舞
何事も唯堪忍を先として
世にすむときは住よかるべし
一無二無三無分別智にいたるには
わか本心に立帰り見よ
世の中に願ひ望みはなかりけり
大千界を手にいれしより
おたがひに柳の下のおん事
さればその事めでたふ候
一虚真蔵地蔵ぼさつの大恩を
いく世ふるともわすれ給ふな
一身を粉にし骨をくだきてするみその
其あぢはひは言にいはれす
いつを初めいつを終りとしられじな
たゞいく秋も君にひかれて
何事もみなこの琴のをしへぞと
聞けば妙なるしらべとぞしる
十三の琴のしらべの糸までも
何か仏の教にもれめや
此所の雲路をわけて出る日の
光りさしそふ賤か庵に
夢の世にまぼろしの身を捨てこそ
こゝろにかゝる物はあらじな
南無阿弥陀仏の慈悲にめぐまれて
ともによろこぶ身とぞ成ぬる
天地の深き恵みのあればこそ
おもいずしらず世をわたりけれ
吹ば行ふかねばゆかぬうき雲の
風に任するわが身なりけり
一一すぢの道を便りにふる里へ
帰りて見れば雪の白妙
有がたやお玉じやくしの身となりて
人をも身をもすくひこそすな
菊の水ながれ〳〵てわたつ海の
ひろき心になるぞうれしき
田にもなるはたけにもなる此田地
何をまこふとまゝのいち念
きのふまで冬こもりせし草も木も
けさはのどけき春にあふかな
我庵の庭の池水よもすがら
すむともしらですめる月影
ほとゝぎすほつとひと声聞初て
あふくみそらに有明の月
六八のかや一ぱいにつりあげて
あふひて入れやねやのとこ迄
弥陀仏の法なかりせばいかにして
うき世の人の罪はきえまじ
有がたや自由自在の餅くふて
今はお中も張つゞみかな
八重一重けふ九重に立帰り
もとの都のはるにあふか南
此世からあの世にちよつと花蛍
ひかりもともに身にそふて行
その人の今はむかしと成にけり
只是のみぞ世には残れる
世をうしと思ふむかしに引かえて
今は楽しきはなのはつ春
しみ〴〵と身にしみわたる冬の夜も
こゝろは君にかよふ松かせ
玉手箱あけてうなしき今朝の春
しらぬ翁に身はなりぬとも
移し植てみるもうれしき姫小松
幾代ふるとも色はかはらじ
西東南や北とまよふ身を
たすけ給はる一天のきみ
打とけてねたる時こそ楽しけれ
随縁真如の浪もしづかに
高き山深き千尋のそこまでも
みな御仏の外はあらしな
咲ときもまたちる時もよしの山
花のこゝろにこゝろなければ
一柴の戸をたゝく水鶏の音づれに
聞ばや峯の松風の声
一言の禁に及ばぬ事の言の葉を
君にはつげよまつ風のこゑ
白雪のつもる思ひもおのづから
とけてよろこぶ庭の池水
つゐに行やみちもさらにくらからじ
是ぞ誠の法のともし火
春の夜のおぼろに月のさし出て
匂ひもたかきしら梅の花
青柳のいともかしこき大君の
おさまる御代にすむぞうれしき
おのづから心も清きすみだ川
ながれわたりに世を渡らばや
此もちの妙味を口にあぢはえて
見れば天地の内に一ぱい
餅搗に
とつさりと心もちまですわりけり
かゝるめでたき春をいだひて
一神〳〵の備へを取て猶もまた
よくつきぬけよ富貴自在もち
甲子の夜大黒恵比寿の像を
拝して
一おたがひに皆福神の中なれば
外に望みはあらじとぞおもふ
いにしへの人にたすきをかけられて
めでたきたいをつるぞうれしき
手遊ほこほんのくだけしを見て
ほこほんのほんとくだけて音もなく
香もなき本のものと成けり
出家せられし時
山田守法師の跡をしたふ身は
世の雨風もいとはざりけり
秋風に栗の吹落されたるを
見て
秋風に吹おとされて我しらず
栗もころけてゑみわらひけり
道無心合レ人々無心合レ道といふ
心を
心なき身になり得たる嬉しさは
何にたとへんことの葉もなし
一鎌倉建長寺奥の院岩窟清浄
肝にて
いにしへも今もかはらぬこのやまの
清浄軒はしる人ぞしる
江のしまにて大雨にふりこめられ
し時
秋雨にふりこめられてうきもまた
つらきもしらぬ宿のなさけに
鎌倉扇の井にて
底きよき扇か谷のあふぎの井
むすぶこゝろぞ涼しかりける
為相郷の墓にまうで今の紫の雲
路に続く藤か谷此山蔭のゆかり
尋ねよと詠ぜられし返しの心にて
むらさきのゆかりの色を尋来て
見るもうなしきこのやまの蔭
一植木屋より梅もどきをおくりけるとき
残る葉ものこらずちらばおのづから
なをうつくしき梅もどきかも
日光山へのぼりて
一老が身も黒髪山にのほりては
ふたゝびわかき心地こそすれ
四季詠
春は花夏は涼風秋は月
冬はみゆきのきよきこゝろぞ
夢中の詠
是の春雪のあしたもふる里へ
かえれとさそふ天津かりがね
又夢中にて如レ是〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻〻
かくのごとく〳〵につとめなば
かくのごとくのものとなりけり
又夢中にて仏にあひ奉りて
久かたの空に月日のあらはれて
猶ならけきあしはらの国
又夢中にて
夕やみにそれともしらずむらさきに
つるこゝろの色はかはらじ
一師の兄雪ふりの折にかくばかり
清き心になれよとてしづがたも
とにかゝる白雪と詠せられし返し
白雪の中をふみ分行人の
あとにはきよき道を伝えん
鶯のすを見て
かくばかふめぐみも深き親の恩
巣をつくりては育て給はる
一師常に書尽の懸物を好みたまふ
あるとき三峯山へ参詣のついて
師のこのかみ山水のましきをながめ
途中にてかくなんよみてまいらす
名僧のくせに懸物よしやさんせ
この山水もぬしがものなり
師返し
山水のかけ物もまた外ならず
清きこゝろをうつしてぞ見る
百足小判に七福神の像あるを
見て
六拾目小歩の中に広大な
徳をそなへし七福の神
師の母人のうたに有がたや大慈大
然のふところにねてながらへる身
こそ安けれとありしに
有がたや我はゝ包のふところに
ちぶさふくみてぬるぞ嬉しき
中里屋といふ家にて
行も又かへるも爰にやすらひて
見るもうれしき花の中里
屏風をながめ是を開けば六枚と
なりこれをたゝむ時は一枚も有
事をじらずの心を
中〳〵に屏風のうちの面白さ
月雪花も何もかもあり
千代〳〵と屏風の外はすゞめがた
うちは鶴亀まつ竹に梅
自問自答
うぐひすやひばりの声もそれ〳〵に
なくは何物きくはなにもの
一鶯やひばりのこゑももろともに
阿字本不生阿字は不可得
おかめのめんにて
あなうれしあな心よや幾千代も
只この君をふかくおもへば
御殿山より見おろして品川
沖に舟のかゝりたるをながめて
親舟も子舟もかゝる君が代の
ひとつ湊のはるのあけぼの
ある人の蔵立前に
天地のふかき恵みの数〳〵も
はかりしられぬ米の御蔵ぞ
大津ゑ藤むすめの賛返し
どこといひこゝとおしへてくれ竹の
ふしみのさとにあそぶ子雀
水上に鯉のおどり上りし絵に
飛出して見ても世かひの外はなし
はや立かへれふかきこゝろに
花に牛の絵に
よをうしとおもふむかしに引かへて
いまは楽しきはなのはつ春
象牙のかんざしをひろひ老女に
たまはるとて
かん〳〵をつむりにさしてのゝ包へ
まいるむすめのこゝろにはなれ
一綾手音声
一盡にかきし竹のすゞめの声きかは
たゝき千代も千代も々々々
宝船
一春くれはいづくも同じたからぶね
のり得し人は福の神〳〵
我ひとりのるはあつたらたから船
みなめし給へ法のともどち
上天之載無レ声無レ声無レ声無之声無
之詠
一音もなく臭もなきものが音をきゝ
にほひをしるも是何じややら
或人の名をよみ入られたる
散はてゝ跡なきものとおもはじな
実をむすびつゝうつる花の井
一是まではほそき流れを伝へ来て
末広瀬とはいはひこそすれ
人しらず浜田に遊ふ水鳥は
心すゞしく世をわたるかな
病にふし給ふ時とひ来し人々に
いとまごひとおぼされその名をよみ
いれ一首づゝおくり給ひし哥
忠臣のいまぞ誠のあらはれて
たすけ助かる道をこそきけ
ぜんしん
善心を身におこなへばのちの世も
この世もともにたすけ給ふぞ
平生の心が直にみちとかや
十一口をまもりたまへや
一すぢに直きこゝろを守れたゞ
我王の緒のあらんかぎりは
無作の作を守るが本の作右衛門
役義のことは無造作にすな
政蔵る御代にうまれ来て
また上もなき道をきくかも
歌のみち知る人あらば敷島の
国も栄えてすえははんじやう
能悦をやまとことばによむ時は
よくよろこぶといふにあらずや
一常くに誠の道をよろこびて
くらす人こそさてもあんしん
人に勝こゝろなければおのづから
ひとにすぐるゝ人となりけり
平生に五常の道を守りなば
現世安穏後生善処ぞ
福の山に喜ふ庵には
神も佛も守りまします
一常を見る眼がいつか備はれば
外に求むる物はあらじな
一喜のもとは和合の道とかや
師弟の中もむつましくして
おのづから春の光のあらはれて
匂ひも高き園のうめかな
貞心のその御こゝろに福寿海
一無量の鈴がそなはりにけり
一広き瀬を流れ〳〵てとこまでも
御法の水は絶へじとぞ思ふ
といふといふがあらばいく度も
只はい〳〵と返事せよかし
富貴自在末繁昌と守りけりけりけり
神も仏も謀ある身を
ふみもみず爰に居ながら楽々と
いくのゝ道の奥をきくかも
ゆかしくも又恋しくもおもふ哉
親孝行と忠義なるひと
あはぢ島通ふ千鳥のこゝろまで
さやかにてらす秋の夜の月
たま物をたまはる人はむかしより
深くぞしのふかくなみのかさ
濱松の枝もしげりておのづから
みどりの色の影ぞうつれる
一瀬も山もみな天地のうちなれば
たゞ大君を仰げもろ人
やさしくもおやをうやまひいときなき
子には慈愛のこゝろ尊ふとし
万代もかはらぬものは住よしの
漬の松風
万代もかはらぬ岸の松よりや
一田沢にひゞくつるの諸声
自ら心も清き波の音
きくにつけても尊ふとかりけり
弥とその安心のおちつきて
のとへとのあるにまかせよ
利はとほるとこまて通るはてしなく
四方八方天地一面
人の中の一字をつらぬけは
又人と返る八十八
師の常に賞美せられし句
茶袋翁
夜嵐やこれは桜になるあらし
一除夜の奥無弦の琴のしらべか南
師の白
すゝはきや是こそ親のゆづりもの
和らかに踏かためけり春の道
春の水こゝろのまゝに流れけり
かるきほどその身はやすし裸ひな
千代尾の句に
千生やつる一すじのこゝろより
師附
かくの如くに実を結びけり
さそはれて又さそひ行よしの山
卯月八日時鳥をきゝて
その声をきく歓びやほとゝきす
一達磨忌やさとれば本の無一物
有がたやうき世のひまは明の春
一遠山や松の木間に花ざかり
八重一重けふ九重の花のさと
御祓してこゝろすゝしや川柳
元日やまたよろこびの初日かな
一豊手の皆たまものぞけふのゆき
はるは春の風にまかせて柳かな
有かたやふるしら雪も曼陀羅華
花の色もうつる神代の鏡かな
夢にて
持かへて笠もすゞしきなつの月
西沢氏より
有がたやゑくぼもらふた親の恩
師附
さてもうれしやこちのかゝり子
右同断出淵氏一周忌に
春の日はくれても是に月夜哉
風袋翁の句に
何もかもこくうにうれや奉の市
師附
むしやうに買て帰るうれしさ
くるゝほど明るく成ぬけふの月
露の身は消てものこれ秋の月
むさし野や尾花もまねくけふの月
一老が身もわかやぐ花のあしたか南
童の石をなけてのゝしりける言葉につけて
一屎ぼうず物のこやしに成にけり
五重
一に宿善
その程の今あらはれし梅のはな
二に善知識
さそはれてわれも行ばや花の山
三に光明
うちとけて見れば嬉しき春の水
四に信心
この外にならぶものなしけふの月
五に名号
称名の声すみわたる寒念仏
辞世和歌二首
法性のま月輪はひとつにて
一新万水にうかふ尊ふとさ
尊ふとや南阿大日尊は大師にて
同し台に無生法忍
法に忍ふ
その真心の
もの葉を
なかき此世の
かたみともみよ
一心兵衛
周徳
そのかけを
汲やうきせ
の
水の月
満粟風
鶯之囀花蛙之鳴水皆骨天然之節奏不
出二乎作意也故人皆喜聞之今之和歌者
流繪刻藻畫筆事靡靡麗一令読者不覚有自
然之妙二尊尊尊尊尊雖巧何為我法忍
上人之於歌詠未嘗有所学也而其発諸
口一者樂レ天知命之餘而皆出自然是以野
翁村嫗皆楽聞之何啻蛙鳴鴬囀然使和
歌者流評之必以為平平無味是所以爲
在レ近因書此以填二巻末一
上人之歌也頃者杉田某刻其歌竣功
嘉永丑季晩夏中澣嗜痂子録
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嘉永七年甲寅秋
盤谷山蔵版
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