二條家天爾波抄

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ニジョウケテニハショウ
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東北大学
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狩れ 二条家天尓波抄 上 家天尓波抄上 } 武長 同文文章 建文記談 一享保四年 東京大炮談 凡和歌は詞をもていろみえぬ こゝろのほとをかへ侍る事なれは てにはを肝要とすされはいたち たる相伝にして心のほかにあら はさす はするといへともひそかにこれを しるすなるへし丁和に 第一巻はねてにをは十七字の事 やか いついつくいつちいかに いつれいかなるいかてかいくたひか かはかもたかたれ なになとなそ也 らんとうたかはん事はこれらの詞いか 荒井恭信氏の歌 以テ購入セル竹滑博士 羽野亭吉氏藩蔵書 すしてははねられ侍らぬよそ歌に 古今春上 免之 くるとあくとめかれぬ物を操花いつの人まにうつろひぬらん 古今秋下 素生 ぬれてほす山路の菊の露のまにいつかちとせを我はへぬらん おほそらは恋しき人のかたんかはもの思ふことになかめはならん 新古今雑下 増賀上人 いかにせん身はうき舟の荷を重み終の泊やいつくなるちん 古今爰 清原深養父 夏の夜はまたよひなから明ぬるを雪のいつこに月やとならん 十九 古今夏 紀友刈 五月雨に物おもひをれは時鳥夜かく鳴ていつち行らん 新古今難中 不行法師 すくか山浮世をようにふりすてゝいかに成行我身なまらん 古今四騎旅八 壬生良成女おと 山かくす春の霞そうらめらきいつれ都のさかひなるちん 新古秋上 左衛門督送具 武蔵野や行とも秋のみて暮ひか成風のか成風のらら 若紫 お生ト老ト 少納言 はつ草のをひゆくす酒もしらぬ間にいかてか露のきえんとすらん 古今秋下 在原元方 殿ふれは露もめらしをかさといの山はいかてか紅葉そめけん 新古冬 源泰光 さためなく時雨るゝ空の浮雲にいくたひ出なし月を侍らん 同誰中 河嶋皇子 白浪のはま松かえの手向京いく世まてとか年の道ぬらん 同下 寂蓮法師 かすならぬ身もなき物になしはてつ誰かためにかと世をもうらみん 同意三 柳本人丸 一衣手に山おろし吹てさむ支夜をしきまさすそひけりかもねん 古今秋上 紀友則 秋風にはつかりかね愛きこゆなる多か玉章をかけてきぬらん 同秋上 左大臣本院贈大政大臣 〽女郎花秋野風にうちなひき心ひせつを誰によすらん 同秋下 紀友則 ・一もとと思ひし菊をおゝ沢の池の底にも誰かうへけん 同雑別 七 同 をしむから恋しき物を白雲の立なんのちは何心地せん 十一 同春下 清原源養父 はる霞なにかくすらん桜花ちる間をたにも見かへおへ物を 新古難中 問融院 昔うち絶せぬ川のすゑなれはよそむ計を何なけくらん 古今夏 廿一 大江千里 やとりせしはな立はなもかれなくになと時鳥声たへぬらん 新古恋 三 民部卿家定 あちきなくつちきあらしの夢みうしなと夕ぐれに待ならひけん 村草にくさのなをもしそなはらはなそしも花の咲にさくらん 古今春上 年をへて花の鏡と成水是ちりかゝるをやくもるといふらん 同春上 はるたては花とや見らん白雪のかゝれる枝に暮のなく 同春上 春日野ゝ若菜つみにや白妙の袖ふりはへて人のゆくらん 同藤 紀引貞 あはれてふことをあまたにやらしとや春にをれて狩ちさくらん 石かくのことく五句のうちのへても つめてもよむへし たゝし又かつらきやるといへる別の事也 壱巻ノ 第二治定してはぬる事 是をさくらんといふ治定したる 所をはぬるをいふ おもはんみんねんせん けんなん此たくひなつ 壱巻ノ 第三おさへてつめてはぬる事 是をかゝへのかなといふなり 一本ニ彳是ハかくのかなかなかはれり これらのかなにてはねへし そをにはてさへさには心得有り 拾を 民部卿定家 春日山みねの木の間も月なれは右左に登神も守らん 古今恋 紀友刈 東路のさやの中山なか〳〵にいつしか人を思ひそめけん 同春下 承物法師 いささくち我もちりなんひとさかりありなは人にうためけん 同春上 読人不知 心さしふかくそめてしおつけれはきへあへぬ雪の花と見ゆらん 同春上 五十九 奈性法師 見てのみや人にかたらん桜花手ことになりて家つとにせん 壱巻ノ 第四のへてはぬる事 第五片かたかひの事 第六諸かたかひの事 同 第七こゝをもてかしこをうたひ へ見てわつて是をうかふ一本 かしこを。以てこゝをうたかひはね字 是ばおの〳〵ひとつの風にて侍る 壱巻ノ 第八らし 第九あらぬ 第十ぬらん同ぬし 第十一ましといふてには 壱貫文 第十二へきといふてには 右いつれもらんのかゝへなるへし 右は濃むかねをあたしへる とも一子ならてはゆるす やからす御許 心得あるへきなり一げ古くれもくれもらんのいくなるへし 壱巻 第十三かゝへのかなを略したる らんとまりつめはねにてふかき心得あり 同詞の外のうたかひのはねの事うへ よちつちりといひくたしたるらん有 詞の外餘情有也これを言外のはねといふ也 はにしをのりさへつゝたに 此九字をもていかてといふてにはを つけてよむへき也たとへは歌に 古今春下 読人不知 春のいろはいたちいたちぬ里はあらし咲るさかさる花のみゆらん 同 凡河内躬恒 我屋とにさける故浪立帰つ過かてにのみ人の見ゆらん 同弐万 化貫之 別てふことは色にもあらなくに心にしみて侘しかるらん 同意二 三十五 壬生石峯 秋風にかきゐすことのこゑにさへはかなく人の恋しかるらん 同駒名 藤原敏行 心かち花のしつくにそをちつゝうくひすとのみ鳥の鳴らん 同応三 しるといへは枕たにせてねし物をちりならぬ名の空に立らん 同 五十壱 小野小町 あまのすむ里のしるへにあらなくにうちみんとのみ人のいふらん 伊勢 同 ふる里にあらぬものからねために人の心のあれて見ゆらん 同 五十八 宇多天皇 山の井のあさき心も思はぬにかけ事のみ人のみゆらん 同主七郎 読人不知 一心さしふかくそめてし折けれはきへあえぬ雪の花とみゆらん 同春下 紀藤則 久かたの光のとけき春の日にしつ心なくはなのちるらん 同意上 秋風は身をい気てしもふかなく小人の心のそらになるらん 同話下 かへ 尊世祈王 一我か身から浮世の中と欲つゝ人の多発さへかなしかるらん 長良読人不知 きりおちて雁貴鳴なる片岡のあしまの原は紅葉しぬらん 仲原家光 秋萩のうらひれをれは足引の山下とよみ鹿のなくらん 敦右司司 ちりはれしかもの河原に駒とめてしはし水かへ影をのみ見ん 右十三ヶ条のほかに下知のてにはの はねの事 古今春で 貫之 ひとめ見し君もやくると梅花けふは待見てちらはちりなん 同藤 十五 猿丸太夫 こゑはして泪は見えぬ時鳥我か衣手のひつをかちなん 同社上 右府良相 恋〳〵てあふ夜は今宵天の川きり立わたるあけす浅くなん 六十八 伊勢 同春上 見る人もなき山里の桜花外のちりなん後長さるまし 右いつれも下知のはねてには也 第二巻そと云事 此その字にあまたのとまりは五音の 第三の音にておさへたり第三の音とは しもへにておさへたり見ゆとよりも連声第三にてをさへてとむる事 うくすつぬふむゆるふなり 我楚とふ花そさく浪遣たつ 〽同そ袖に玉はなすとひそこぬ 物をそおもふきぬたをそうつ 人をそたのむ かくのことくわたりてのへよつゝめよ 件のほかにかくのことくのことくのことくのことくのことくの きしをしにしかたとへは哥に 古今恋一 四十七 橋長蔵読人不知 から衣目もゆふれになる時はかへす〳〵世人はこひしき 同春上 凡河内躬恒 一神屋との花見かてちにくる人はちりなん後世こひしかるへき 同春 六十八 伊勢 見る人もなき山里の桜花外のちゆなん後豊さかまし 同難上 五十八 同 水のうへにうかへる舟のしならはこゝそとまりといはまし物を 花そ見る月をそ見しに松を豊友とおも ひしにしそしるらん吟をうるはしくむへし とまりをもちひ侍らぬその字有是を げちのそと云 人なとりめそかくなせそ此たくひ也 〇そとやとのへつゝめかよひ侍るたとへは歌に 古今賀 十五 乗性法師 春霞立を見捨てゆく雁は花なき里にすみやなかへる 定家 拾遺 むさしそゝかすみもしらせて。津雪にまた若草の葉やこもれる 是はそをのへたるや也此ゆへにとまりそ 等ひとしきもの也又やをつめはこそ なるへし吟味にこるへし 春日野に若菜摘つゝ万代をいはふ心は神ぞしるらん 春る野に生る子の日の松は扇千世を愛へつゝ神野引らん ウクスツ又フムユルウナリ一本 そとのとのかよひ侍り是ふかき習也歌に 古今秋上 世 定明親王読人不知 きのふこそさなへとりしかいつのまに稲葉およきて秋風そ吹 同春上 延喜帝 おりつれは袖こそ匂へ梅花ありとやこゝに鶯愛なく これよてしるへし 風愛吹風の吹鶯のなく鶯おなく いつれもかよひ侍るのと云時は一首の 内にうたかひててには有へしかた 〇かくあるへしかゝへなくはそ かはすはそなるへし哥に。そこそ後藤の 古今春上 在原棟梁薬平朝臣男 一春くれは花も匂みぬ山里は物うかるねに暮ぐなく 拾遺愚草 定家 山ふかみ人はむかしのやとふりて月よりさきに軒そかたふく これらの分別大切也心にそむへしとそ 〇思ひのこしいひ残したるのゝてにはの事にもとのまり 大切なりき 新古 俊成 しめ置て今はとおもふ秋山の蓮。のもとに松むしのなく 後撰恋二 参議等 あつま路のさのさのゝ舟橋かけてのみ思ひ渡る人のなき これはそをのにのへたるゆへにそのとまちも也 かだ〳〵 をそ をそとそにそて これらの心得あるへきにや 〇そといひのこすすてにはあり そかよ三のかなかよひ侍る こそとかこよかやうのたくひかまた 君か心は君か心か君か心よ是未也 〇いひすつるそあり下知にはあらす 此み字はてととまらす口伝 祈続古夏 定家 御移して結ふ川なみ年ふともいく世すむへき水の流は 以上十ヶ條は口村奥書出前 冬といひてはなととむる也たとへは歌に 古今春上 人はいさ心もしらす故郷は花戯雀葺の香に匂ひける 同春上 二十二 青柳のいとよりかくる春ししそそみたれて花の外ころひにける 同 九 かすみ立木の者も春の雪ふれは花なき里に花野ちりける 同秋上 読人不知 ひくらしの鳴つるかへに日はくれぬと思ふは山のかけにぞ有ける 化友則 同春上 花の木を風のたよりにたくへこそ暮御そふしるへにはやる 同春下 承物つ師 さくらちる花の所は春なから雲降つたきえかてにする 同夏 請人不知 いつのまにさ月きぬらん足曳のやま郭公いまそ鳴なる 同献上 藤原殿行 〽秋来ぬとめにはさやかに見置ねとも風の音に逢お落れぬる 同秋上 かは 藤原たゝふさ きり〳〵すいたくな鳴そ秋の長のなかき思ひは我ぞまされる 同秋下 十五 雨ふれはかさり山の紅葉は行かふ人の袖さへそてる 同様下 五十三 藤原興風 自治に秋の木の葉のうかへるをあまのなかせる舟かこそ見る 同秋下 清原源養父 神雨備の山を過行祐なれは龍田川にそぬさは忽起くる これらにて分別すへし但てには一 やうにそあらすころをつくすへし 第三こそとめの事 五音第四の音にてわまるへし 一 ゑけせてねへめゑれへにてとまる也 物をぞおもへ人をこそまて ありとこそきけ玉とこそなせ 身を盛こそ見れそれそれそれそれそれそれとこそみめ いこそねられね め此五句のうちのへてもつゝめてもと まり侍る也○上件のほかに らししにしかをよきににきか 幸平 花すゝきをこそしらす思ひしかほに出て人に揺れにけり 同 霞花立こめけらし鈴鹿山はるかに成とはいかにいふらん 一万代と三笠の山はよはふなる、あめか下の多のしあるよし こひすてふ我か名はわたきたちにけら人しれすね思ひそめしか イ 徒に身をこそかこち捨へきに人のつちさをなといひにけら 月こそ月ようら見んとこそ思ひしか われこそうらみはつへきに め此とゝめ侍るへし 〇いひのこすこそあち 一春も過夏のくるせもありある訳も逢みんことを北兵衛 花もなし人めもしらす業の中にさすかに春の暮ゝけふこそ そといふにもこそといふにもとゝめてと まらぬ事侍るこれまたふかきならひ世歌に ちの涙落て瀧津白川はしか世まての名にこそけれ め此瀧津のつにならひあつこに誓ひ こそいふ時は けれならめてめらめなめ ぬれつれれめみめ なとゝとむる也たとへは哥に 駒なへていさみにゆかん古真雪とのみ社花のちるらめ 相坂のゆふつけ鳥にあらはねしかゆきゝをなく〳〵もみめ 大かたの秋くるからに我身こそ悲しき物と思ひしりぬれ 散ぬれはこふれとしるしなきものをけふ純桜ならは折てめ かへしうへはれるる時やさかさらん花のちらめ根さへかれめや 色かわる秋の菊をは一年に二たひにまふ花と被見れ あかてこそ思わぬ中はなれなめそをたに後の君連かたみに 磯のかみふる支部の時鳥こゑ中こそむかしめけれ おとにきくたかしの渓のあた浪はおけしや袖のぬれもこそすれ 第四やの字の事 従 十四ヶ条有凡此やの字にしたてやう あるへきとはたとへは 口合のやまたやみん花や見ん 月や見んゆきやこほりのたくひ也 吹出すやすみよしや会坂や 葛浅や小西瀬やのよくひ也 うたかふや花や咲らん雪やふるらん 霜やをくらんたくひ也 うたかひて捨るや袖ぬらせはや 物おもへとやの類也 ねかひ捨るや心ならはや人とならはや うたかひて捨るや ねかひのや是はるの内に有へし願なるに 同しと云々 はかるやたとへは歌に 一淡渡撰秋下 一金銭為氏 秋ことになくさめかたる月そとはなれてもしるやをはすての山 千載恋一 大納言公任 おほつかなうるまの島の人なれや我か言の義をしらすかほなる 冬河のうへはこほれ馬をなれやしたにかよひて恋わたるらん みちしあれやいみまあれや 是等をしはかりたるやの字也 なれやはなるや也あれやはあるや也 ○めやといふてにはの事歌に 世をてらす日吉は緒をたれてけつ心の闇をはるけさらめや はるけさらめやはるけへしと也 うらみさらめやうらみへしと也 行古今 式子内行王 忘れめやあふひを草に引結ひかり弥の神人の話の明ほの わすれめやは忘れん物かといふ心せめやは 大略風心多し 前人改人臣 同意二 しるらめや木の魚ふりしく吉川の若川の若間にもらすしたの心を しるらめやは人のしるかといふ心也 古今恋 返喜帝 かりこもの思ひ見たれて我こふと妹しるちめや人し告すは 妹しるちめやは妹しるましきと也 いたつらに身は花咲ぬ梅あさの毛の浦浪六十こゝ歟や 六十越めやは六十越やせんとなり おもひ川絶すなかるゝ水の泡のうたかた人にあはてきえめや 人にあわてまやせんといふ心也此かた かたといふに水のあわによめるもあり 此うたはうたかたとキリテ人にあはて 消めやと読へき也うたかたとは寧と かそり式抄に最隆卿言うたかたと読 りはめやもやかな るとかならすなる足也といへり何れも 心をつそて見侍るへ支也 ○やはといふてにはの事 是はめやと問し心也たとへは哥に 老にける渚の杜のふかみとりしつめる陰をよそにやは見ん しつめる位をよそにやかみんを身のうへ是也 新古賀 大納言経信 〽子日する御垣のうちの小松原千代をはよそのものとやは見る 千代をはよそのものみやは見ん窓かうへと也 心をつくへしとそ 是はめつとおふしこゝらへなりしける浜下よそにややは見ん本方の上となり一本 ○国やはと云てにはなれとも休字にして やはといへるもあつむやはちらん 夜半のあらしに此たくひ也たゝ本 やちらんまてなり 〇又やはのはの字を略してたゝやと はかりいへるてには有はの字をそへ て見るへし歌に 難波かたかりつむ帯のあしつゝのひとへもしに我やまつる 秋の田のほのうへてらす楯妻の光里の末にも我心えるゝ 行やらぬ夢路をたとる袂には其つきなる雲をくらん 行やらぬの歌は別義もあるへし 〇こやと云てには是をこひかけて にはと云りたとては歌に うつゝにはあわぬ気色に難面て見しをは夢にいひなさんとや 難波かたみしかきあしのふしのまもあはて発を上してよまや くちはてゝ夜の衣もをかはす哉しほとけしとやあわれなりとや 〇やすめたるやの字あり ふるやあられさすや夕日の雨花也 是は歌には用捨有へし 以上十四ヶ條奥書如前 ○第五のちのこと五ヶ條口伝 凡うたかひのかつねのことしうたおひ のやの字にひとしき也 〇哉といふに七種のやうあり かといふてには三つ品有うたかひきか哉のかは也子己哉 あふけともこたへぬ空の音縁むなしくはてぬ行未もかな てにはのかや 東路の不破北関屋の類帳を馬やけぬると思ひけるかな 肝心の哉 忘れては打ゐけかるゝ夕部哉袖のみしりて過か月日を ○物をほうひしたる哉第哉表哉君哉帰る哉 秋の露や袂にいたく結ふらん長き夜あらすぐ かへるこゝろすこし有これか餘情残て 見たつ扨も長夜夜哉藤いく門もなう と云心也かへる哉 君か代に会坂山の岩清水こかくれたりと思ひけるかな ○中の哉 かしこまる袖に関のかゝる哉又いつかはと思ふあはれに ○なかす哉 一梅咲老山鳥のしたい尾のなか〳〵し日もあかぬる五哉と 右のうちかへる哉ふ義なかすかな是 ひとつの音也あまねく人のしらぬ事也 又哉といふ事かといへるてには有居す夜に 心かへする物にもの御意はくるし支物と人にしられん 夕附目さすや庵の業の戸に淋しくもたるか日くらしの声 あさみとつ糸よりかせて白露を玉よもぬける春の神か 是等は思哉也まへの哥は心かへする ものにも哉と云り初心の人のた めにしるす 〇しかといふてにはの事欲に 恋すてふ我か名はまたき立にけつ人しれすね思ひそめしか かうへ字清也哉の心にあらすしてしなと意也 なと云心也 おもふとち春の山部にうちむれてそこともしらす旅ねしてしか きて心はしてし哉と云心也 きのふ祐早苗とりしかいつのまに稲葉五つき秋風そ吹 三明の月もあかしの浦風に波事こそよると見えしかく 是等のしかは大かたは過去のしのて には也又者をと云てにはにもかよひ 侍る也又ありしか見しかといふ をねかふ心に用る事も有よく 〳〵心得あちわひ侍給へき事也 また過去のしの気にかをやすめてしかといへるもあり ○是はやはと云てにはに通る哥に けふのみと春を思はぬ時たにもたつことやすきことやすかは あかしかた名なし〳〵の袖を見よすろに月はやせるものかは 又かはと云てにはにも八の字をや すめてにはによむと有歌に いかならん若ほの中のすゑかは世のうき事の事の客をきらん あふひ草。日は神君心かは影さすいた小まつなひくらん 第六かはといふてにはの事 けふのみと春を石すぬ時たにも夏川ことや十支花の陰かしは あかしかた色なき人の袖を見よすゝろに月はやさものかは イやはといふてにはにたひ侍り 〇かといひてかはに用る事もあり やの字のさたのことし ○休めてにはに司るか歌に 時鳥と朝の朝気に鳴つるは君きくらんか物のやすらん 〇かもし二つありてはかたかひに てはなし留も何にても不苦 第七しをと云てにはの事 凡ゆのおはらにしをこ云はなゝく いひのこす事有へし 我か恋のあちはに見ゆるものならは都のふしといはれなましを つぬに行道とはかねてきゝしかとき給ふいふとは心はさりしを イこれらしをとおさへてことはるかわりおり 此外にをとおさへてことはるすかたも あるへしたゝをといひていひ残 す事も有欲に 有家朝臣 行古恋四 もの心はてたゝ大かたの露にたにぬるれはぬるゝ秋の袂を かへしのを 行帰る八十氏の玉かつちかけて野だのむあふひてふなを 是はあふひてふるをかけてたのむと 云はかり也物をといふ事これはいゝ 残すてには也歌に 白玉か、何そと人のわひし時露登こたへて消なまし物を 一金雑秋五十七 はふり子かいはふやしろの紅葉たもしめをはこへてちるといふ物を 新古恋 夢にても見ゆらん物を歎つゝうちぬなよひの神のけしきは ○又ものからといふ事是はいひ捨 たるてにはせうたに 心あるおしまのあまの袂哉月やとれとはぬれぬものから 〇ものをと云てことはる歌も有まとへは ちると見て”あるへき物を梅の花うたて匂ひの袖にとまれる 第八かなをりやくする事 きま〳〵有と爰にしるす心をつけて 見侍るへし歌に てへ アヽキヽハキケハノコト かりにたに我来りてへ露の身のきゝはともにと契りをきてき てには恋すといふ心也 恋すてふ我か名はまたき立にけり人しれす祐思ひそめしか いとなきいとまなき也中略也 あはれともうしとも物を思ふ時な定か泪のいとなか侍らん 同 日くらしの声もいとなくきこゆるは秋夕くれになれは成けつ 同 一春の池の玉もにあそふ鳥のあしのいとなききする哉 ことはことく也下略 秋はきのいろつきぬれは蕪我ねぬことや長はかなしき さゝれしはさくれ石也 信濃なるちくまの川のさくれしもしもしもしもしも君も 見えすて こえすして也 秋はきをしかちみふせて鳴鹿の目よせ見えすて音のごやけさ あへす とりあへす上略也 秋風にあへすちりぬる紅葉ゝのゆりかへしてしみちと大なから さらに今さら也上略 ふみわけてさちにやとはん紅葉ゝのふみかへしてみちと見なから がくし め此しつ也 かくしつとにもかくにもなからへて君か八千代にあふよしも哉 三ゆ三百ない下略 みゆ 〽土井にもかよふ心のおくれねはせかるゝ人に見ゆはかち身也 宮城野たりとあらの小萩露をゝもみ風を待こと君を社まて こと〳〵ことく也下略 梅の香のふりをける雪にまひせは誰かこと〳〵いけてならまし われて別て也中略 よひの間に出て入ぬる三日月のわれてもの思ふ比にも有哉 はやさんもてはやさん也 一山高き人もすさめぬ桜花いたへな侘とわれみはやさん かくしけんめ此シケン也 かくしめ昔の人の玉章をきゝてそそゝくそのなみたは かきるすはかきならす也中略 秋風にかきなすことのこえにさへはかなく人の悲しかならん 一今しはしはし也下略 今しはと侘にし物を蜘蛛の衣にかゝり我をたのむる るみたか弐也下略 つれなさを今は恋し友思へとも心よはくもをへる泪か とつとも也 もはちみつとも也 あふことのもはちたえぬる時にの人の恋しきこと知れ さやかにもかへ さやにも 一豊姫殿な神代さんしかけくれなくよこほりぬりふせるさやの中山 たはれたはむれ也 なにしおはゝ”あたこそあるへきたはれ嶋浪のぬれ衣さすといふ也 そよとそよきて也 独して物を思へは秋の田のいなるのそよといふ人もなき つきてつゝきて 今よりはつきてふらなん我宿の藩をしな人ふれるしら雪 るへてなかへて也 駒なへていさみに行ん古心は雪とのみこそ花はちるらん 給へてせし給へて 桜花それとも見らす久長のあまさる雪の給へてふれゝは こしを来しを也 ふりはへていき点の花見んとこしを匂ひそうつろひにけり ことにことはに出て ことに出ていはぬ事そ水無瀬川下にかよひて恋し支物を しましまさて也 君田さてけふりまににしつかまの浦さひしくも見え渡る哉 もゝはもへよと言心也 ふしのねのならぬ思るにもへはもへ神こにけらぬむなし烟を 泪の略也 せんかたなみ 一枕よりあはり君のせめくれはせんかた浪かた浪かたになる おんみつの義也随たる義と仏堂幽陰ノ字也 かくろい かる人のあさふすにたゝ草わかみかくろひかねて雉子鳴なけ みなは 水泡也 よとともに流れて世行渡川冬もこほらぬ見なは成けり ゆめ夢にあらすふう心也 恋しけは袖もふらんを武蔵野うけらか夜の色に出ぬゆめ 同 こひしくは下にを見へ業のねすり袋いろに出るゆめ せぬらしきへぬらし ふる事はかつそけやうしあしきの山の滝川て奉るまさる也 少句右同 ことのはゝとこなしみはなせるとなせるとなへての人にしらすなよめ なに也十ニナクケント哥ノ外ニフタメルテニハ也 涙川中にねえも色ものをはろふ計の露はなになり よしやそモアラバアレノ捨言也 きよち なかれては妹峯の山の中に落る吉野ゝ川のよふべ在中 きよる木ヨス此波也 来ヨスル波也 もろこしを住し所のなにしおへはきはる波をも哀とそなもふ もふとをふと云詞ヲ上略せル也 いのりくる風もふとぬけあやなくにかゝめさへたに浪と見ゆらん るかこ汝子也 沢物かみなるこを思ふ芦鶴は声も心も空にや有らん 行かよひて也 つかひ 白砂の波路をとをくちかひて我にいへきはこれなちなくに 細引 あひき 君か名も我か名もたてし難波なるみ川もいふにあれ共いわし 寝ルト也 ぬとは 連れもなき人をやねたく白露のおくとは歎きぬとは岩のはん なそもかく何そめ此也ト云心也 いく世しもあらし我身をなそかく汝士のかるもに思ひみたるゝ ことやことつけ也 春くれは雁帰るなり白雲の道行ふりにてとやつてまし をりかくは折て力かい也 一龍田川にしきおりかく神世月時雨の雨を多てぬきにして なみにおもふ人なみに思ふと也上略 わかゆづる松浦の川の波海のなみに思はゝ我こひめやと うち恨也下略 みなめなき我か身をうちとしらねやけれなて徳のあした行くる もみちぬ其ミ千セス也 雪ふりて年の暮ぬる時にこそ終に紅棄ぬ松も見えけれ よになはぬ相応せスト也 色も音も此世になはぬ物とてやしはしも花をとめぬ春風 身におふ身に相応ト云心也夏介懐ノ心也 ひとへなる身におふ程のたのしみやあさの衣の夏の夕かせ 花まひなし花モイヒナシニト云心也 春これは野へに先咲見れと。あかぬ花まひなしに誰なのるへき さゝさらん 世をいとふ名をたにもさへとゝめ置て数ならぬ身の思る出にせん 一夕月夜塩みちくらし難波江の若葉をこゆる白浪 かし求メ来かし也又トヒユカシトモ是ハトフラヒヱカシト也 〽こめこかし梅咲男をうときも人はおりにこそよれ そをたにそれをたに卜云詞也 ち徳花の生すれかたみの峯の雲そをたに残せ春の山風 ひたひきいた也中略 秋くれは朝けの風の手をさむみ山田はひたにまかせてそをく いかにいかにしてト云詞也 一業の戸に入日の陰はさへなからいかに時雨も山邊なるらん らぬたに也 さらねたにさやうにありとす也 さらぬるに秋のたひねは悲しきに松にふくなり床の山かせ さりともはさやうにありとも也 去ともと猶あふことを頼ひ哉しての山路もこえぬわかれは うみをうめる芋 我せこかうみをかくてふかせの山時のゆけれは都と成思 さてたにさやうてたにて 人心うす花染のかり衣さて雨にありていろやかわらん 山城の京背山をは衣かせ山とも 蘇又帯をくるかせにもよみなす也 つ 其如此都となる時の歌也何も此 哥のやうをみて胎する心をし 御へき也何れも心得へ支也 みかの原に有みかの原久東の 都といへり 第九てにはをたゝしよみ のこす事是もひとつの風也 今明のつれなく見へし別はありあかつき物はなし 且千文選 見ゆる有時より見えぬ暁とまらせつ 月見れはちゝに物こそしけれ我身ひとつの秋にあらねと と我か身ひとつの秋のやうにとたゝせり 〇かゝへなくして読ましき詞つれ なき事をはけしきと云時は鼠 のかゝへ也あるゝといふ時は海藤郷 約なとによせたち一向といふ時 は田なとによせていへるつかの まの時の海也しは草なとにかく へあるへしからきは辛労なり おこかく塩によせて読る也 空蝉のいてからくても過す哉いかて此春に音をとゝめん しほといへはなくてもからる女中にいかにあへたるたゝみ成らん あへけるはかんあん也そゝろをすゝろ にいふには芦萩薄笹なとのちゝへ 有へししをるゝを海に寄せ てはしほたると云也左大将の歌 合に春約を縄たつと読り塩あ らき詞にして品出化よし難せつ 古歌に名の立ことによせて読有 且初心の為にしるし侍る也 第十入魂のてにはの事 たゝなをさへたになといとゝ かやうの詞先達の詠する所にあち はひてしるへし逢ゝとはかり云 心も有又是はかりと云心も 色かきる心也のみこれにかきると 云心も有又のみといひて心なき も有 12899 四月 レハ死死 世話 } 狩刀 二条家天尓波抄 二条家天尓 草文記談 同 第十一かなをやすむる事 一 同休字しも今はしもかも これをもやもはまたをし みちしあるはのたくひ也にを てをと休る也たれをかも見らく 一ふらくたちて見ゐて見 ふり見なと休めたる事今の世 用捨有之余誰之多巻歌に 岩間こち生る見るめし難面はしほひ塩みちかひもなからん としふれは君はけぬしかはあれと花をじ見れは物思るもなし なきとむる本じなけれは暮もはては物うく成ぬべし也 まつとしをまつときかは也 立別成はの山の峯に生るましきまかは今かへりこん ほめ〳〵と明石の浦の朝霧に嶋かくれ行舟をじそ思ふ から衣きつゝ馴にし妻じ有ははる〳〵きぬる旅をしそ思ふ 両てといふにちらてしとまる物ならは何を桜に君るまさまし 今しはと侘にし物を蜘蛛の衣にかゝり我をたのむる 君ををきてあたじ心ををもたは東の松山波もこゝなん かきちらし雪降はゝしかすかに我家のそのに暮のなく もしくもやモシモト云心也 よひ〳〵にわかたちまつにもしくるや君きますはくるしかるへし おほそらにむれぬる田鶴のさゝなから思ふ心の有けなる哉 桜花こよひかさしにさしなからかくて千とせの春をとはんめ つれもなき人を恋とて山しんのこたへするまてなけきつる哉 ちはやふるうちの輪守なれをしそ哀とは思ふ年のへぬれは けくにウトキ也 世中のうけくにあきぬ太く山の木の葉にふれる雪やけなまし こりつまに又もなき名の立ぬへし人いくからぬ世にし住へは わすれしもせんわすレもセン也 秋の田のほにこそ人を着さしめなとか心にわすれしもせん あたらしき年の始にかくしこそ千年をかすてたのしきをつめ 露ふる人やまの里の淋しきはきてたはやすくとふ人そなき 昔人や今そ恋しきほとゝさす故郷にしき鳴そさつらん これにも也うれし これしかもとめてなりつる春霞たちかへすらん山のさくらを 一女秋か花ちるらん小野ゝ露しけにぬれてをゆかん小夜はふくも 夕されは量よりけにもゆれとも光り見ねはや人のつれなき 立番を見てをめたらん取乗候は雨とふるとも水はまさらし すぬ人を待夕暮の秋風はいかに吹はか侘しかるらん もそへ字也 心上ふるやおのこの太刀も哉くみのをしてゝ宮路賀はん こしなの音拝の山の音にたに人のしるへく我意めやそ 残をといふ心也心はそ也其外に 色よりもかこそ哀とおもほゆれ多か袖ふれし宿の梅とも 人はいさ我はなき名のなしけれとむかしも今もしらす足をいさん 見へれ 君といへは見まれみへされふしのねのめつらしけなくもゆるを恋 恋しねとするわさならし烏羽玉の魚はすからにゆめに見えつゝ なくるへにナリカラニ也 わかほとにいなおふせ鳥のなく給へにけさ次風にかりは平にけり 秋の月山へさやかにてらせるはほつる紅葉のすを見よとか それをたに思ふ事とて我やとの心きとないひそ人のきくかに 水くきの岡の屋かたい妹となれとねての刻もの雪のふりはも 青柳の糸よりかくる春しもそ見屋の花のほころひにける 神無月外山の時雨過ぬ也西木のかつらちりもあへねは スカル也 袖へちかく家居しけれは鶯の鳴なる声をあさな〳〵きく 明ぬとて今はの心つくからになといゝしらぬ君ひそふらん いつはと八時はわかねと秋の夜は物思ふ事の限りなりけり 恋しくは下にをち給へ紫のねすりの衣いろにいつなと いかはかりちりもつもれはか大井川なかれもやらぬ紅葉成らん そことも そことしもしられぬ梅はかほりきて垣ほの末に鶯そなく さむけくさむきなり ○同体字事 つしの文字をいへり 時鳥なくや五月のみしかよも宿しぬれは明しかねつゝ 能ねたれはといへはいやしくきこゆれ はひとかしぬれはとやすめたる也 ひとし人としいひとしみとし きゝとし 云つ玉つ奥津あやうのしつの 文字きはめてやさしく聞る也 右佞名をやすむる事同休宗 かくのことくいつれも此哥をもて やうをしるへき也 ちはやふる神代もきかす立田川からくれないみに水くゝるとは 事十二をにかよふにゝゝ よふを歌に 足曳の山本とゝなす我ことや君に君に恋つゝいねかてにする 之者に恋つゝといへるは君をと云詞也 是ことはのつかひやう也 聖武天皇 妹に恋わかの松原見渡せば塩干の潟に田鶴鳴渡る 妹に恋つゝも妹をといふことはせ 是詞のつかひやう右にななし 第十三はにかはるももに かはるはの事 つの国の難波の春は夢なれや芦のかれ葉に風渡る也 もとのとかよへりあり にこのとかよへる有いつれも心を つけて見るへき也 第十四いひかけてには清濁 の事 ふたつの心をつゝみて読る哥を いへりたとへは歌に 何時 何時泉 人かの糸分てなか得た泉川いつみきとてか恋しるらん 不見簾 君により我身はつらきたまたまたれのみすは先とし思はましやは 啄吹云気 かくとたにえやはいふきのさしも。事さしもしらしなもゆる心にて 掛留新認 五十鈴川神代の鏡かけとめて今もくもらぬ秋の雪の月 巫 杵 神祭る卯月にさせる卯の花はしろくも衣のしらけたる哉 湯寝 あさかしはぬるや川辺の東雲に見るて見れは夢に見えける 戸海士 世を海のあまさし人を見るかゝにめくはせすとも雨のまるゝかな 初 袖浦 春雨のふはそめしより春柳の糸のみとりは色酒さりける 香米陰 候合の夜のやみはあやなし梅の花色こそ見らねかやはか〳〵るゝ 松待 久しくも成にける哉住吉のまつは苦しきものに祐有ける 徒に過るよはひは武張のまつこともなき身をいかにせん 時鳥人まつ山になくるれは我うちつけに恋まさりけつ 世 世夜 〽よとくもになかれてそ行涙川冬もこほらぬ見なと成けり 根橋 寝為 夏浮 こゝあら花のしつくにそふちつゝうたひすみのみとりのなくらん 恋しくは下いをおもへ業のねすりの衣いろにいつなぬ男 霙 身其 さえかてにふると楽じ夫かきくらしわかみそれもおもほらぬよに 取放鳥は無 東路のきのゝ船はし。とりはなしおやしさくれば妹にあはねかも 酢物数寄物 梅の花咲ての後の身なれはやすきものとのみ人のいふらん 竜 田鶴龍 口情や雲井かれにすむたつも思ふ人には見えける物を 無名鈔ニ委ク見へタリ法性寺殿ニテ歌合有 けるに俊頼基俊二人判者にて名をかくし テ当座ニ判シケル俊頼ノ哥也是ヲ基俊 鶴と心得タツは沢にすめすめて雲井にス ムコトヤハト難シテ負ニナシケリ俊頼仰 ケルハ鶴ニハ非ス龍也委ク林間録ニ 見ユ葉チヤウカ故事也忽篤考之 折 居 しふかくそめてしおりけれは酒あへぬ雪の花と見ゆらん 苅鴈 かりてはす山田のいねのこきこれて鳴こそ渡れ秋のうけれは 雁狩 あまとふやかりのつかひにいつしかも奈良の都へことつてやらん 氷川 水副見馴 よそにのみ聞まし物を音羽川渡となしにみなれそめけん 穴晴 被助 雲もなくなきたるあさの我なれやいとはれてのみ世をは経ぬゝん 幾行 亀山等いく薬のみ有けれはとゝめんかたもなきわかれかな 置 紀 君にけさあしたの霜のおきていなはゑしき事にきゝや法らん 造 造畫 難波なるなからの橋もつくる也今は我か身に何かたとへん 鶩惜 おしと思ふひとやとまるとあしもの打むれてね我は来にけり 右いひかけてには二の心有 哥其如此心得へき也今は かやその哥本のまゝいかほとも 読へしつゝけから分別は へきこそ 第十五比とまりの事 三嶋江の嶋のうきすの人たれあしの末葉にかゝる五月雨の比 時鳥しのふの里にさとなれよまた卯の花の五月雨の比 五月雨の比ととまる事耳馴たり 五月雨の水増興なとさし出てあ る事なれはおほく比とよめり是 習有とまりなり 時雨つゝ袖もほしあへす足曳の山の木のはにあらし吹比 春は殿ゝ霞むはかちの山の端に暁かけて月いつるころ 我せこに見せんと思ひし梅のもそれとも見えす霜ふれる比 淋しとは誰かいひけん山里を見せはや田なんさゐへとる比 文集詩曰琴詩酒友皆抛我 雪月花時最憶君 此時の字比とまりにおなしきと いへり 五月雨の月につれなき深山より獨も出る時鳥かな 五月雨の比の月はと比三字を入て 見ねはすまぬ也 五月雨はほふのかはらのまこも草かくてや波の下に朽なん さえたれの比はと三字を入て見 ねはすまぬ也 一今夏八雲のたえ申代詠つゝゑとよりた西に月を待かなし 龍田姫今は。比の秋風に時雨をいそく人のそて哉 右比とまりめ是いつれも習 はゝ心をつけて見るへきなり 尾上より木のめも春の雨そゝき雲の立ゐのしつか成候 き五の句云のこしたり能々心得 をかむとせち 第十六にてと云てにはの事 もにはをのさへからぬそ かよ志過去之事此にてと 云こと心のあまた有時のてに はせ哥に わくら八にとはれし人も昔にてそれより庭の跡はふりにて 物ことに忘れかたみの制そそをたに後とくるゝ秋かな は 一秋津しま外まて治は郡にてむかし”かへるやまとことのは おのつかちよはなをおのか刀にて柳の枝に雪折はなし 山関野辺の真萩を恨にて雪のま垣等うつらなく也 の 入相のかねのひゝきのしつかにて さへ あらしさへ花のゆふへのかたみにて からぬ 恋しさに身はをしからぬはかりにて の 雪あられ山の陰かと風ふきて ちるを見よとはかり花の匂ひにて 山ふかくすろしをとへはむはしにて 右にてと云てには此十一の字 にてるく候へはとましぬ也して と云てにはの事にてと云て にはと同しきせたとへは歌に 今よりは契りし月を友にして幾秋なれぬ山の住家に の 年月はきのふの年の心地して見なれし友のなきそおしかる は 侍のひかふるにかへり見る郡の山は月ほそくして 又してといふてとまりにふたつ のやうありひとつは常に云うち ませたるてとまり也二つには ことの外に心の残るてとまり也 たとへは證哥に 陸奥の奥野く萱原遠ければ伴にして見ゆるといふ物を といふ哥をとりて よしさらはちるまては見し山桜花のさかりを付にして 為家卿の云此哥は見ゆるといふ ものをと本歌の末を哥の詞の 外にふくめり心をつけて見侍 るへきなり 第十七見ゆるといふてにはの事 五音第三の音にて出さへてよめり うくすつぬふむゆるう 此文字にておさへてみゆると 留る也此外に しかにともおさへてとむる也 たとへは さ さすなかと君はふけわらし雁金の聞ゆる空に月渡が見ゆ 箱根路を我越えくれは伊豆海や仲の小嶋の小嶋○波のよる見ゆ あせたる池にさきのとふ見ゆ くるゝかたより雨をつる見ゆ ちせ行花を人をしむ見ゆ 舟いたす江に人さはく見ゆ 〽さ山おろしの雲かへす見ゆ 袖くちしろく戸をあけし見ゆ かりはの野辺に矢をはなつ見ゆ 右局といふ事此外あるへ からす からい ○第十八たすけ字の事 きみはもむしめ 容ふかきといへはよくもきこえ 侍らねは谷ふかみとかゆるなり きとみと相通也みちぬらし みちぬらんとかへよむ也 いてく月かは出し月かもとかへ よむ歌に 夜をさむみ衣かりかね給へに萩の下葉も移にけり 秋の野に宿りはすへし女房ひるをなつかしみ旅ならるに 御ほ山のはゝ野の紅葉ちりぬへみ夜さへみ夜さへ見よとてらす月かけ よるへなき よるへなみ身をね遠くへたづの心は君かかけとなりまき みつ塩のなかれひる間のあひかたみ見るめの浦によるをねみて 行帰り空にのみしてふることは我ぬる山の風はやみなり おしろへ 今よりはつきてふしめん我宿の薄をしなみふれる白雪 女戸の屋の灘の塩焼いとまなみつけの小くしもさゝすきにけつ 春のきる霞の衣ぬきをうす大山風ヲこそ見たるへしなれ 紅の色には出しかくれぬのしたにかよひてこひはしらねさも 右多すけ字如此心得ある へきとそ ○第十九縦名をえるといふ事 しもよのやみむ是等やさし くきこゆ文字也たとへは歌に 夏の名をねぬに明ぬといひおきし人はものをや思はさるらん 偽のなき世なりせはいかはかり人のことの気嬉しからまし 十一日 時鳥鳴や五月のみしかよも悲しぬれはあかしかねはゝ 十七日野ゝ飛火の野雪出て見よ今いくか有て着なつみてん よ 余所に見てかへらん人に藤の花はひまつはれよ枝はをるとも 大かたは月をもめてしこれそこのつはれは人のせとなるもの のとまりの哥三首は心の残る のなりたとへは歌に 薩野吹まよふ野風を寒み秋秋の移りも行か人のこゝろの 昔思ふね元の空に過にけん行ゑもしらぬ月の光の あらはれていとゝ浅くもみゆる哉あやをもいかすなはれけるねの 色に ○こましぬ哥とて 天の川うき木にのれは我なれや見しよもあらぬ世と成にけり はるのきる三段の衣ぬ。支をうすみ山かせ”にこそ見たるへらなり 住吉の春を秋風吹からに声うちそふるおきつ白波 右仮名をえるといふ事は世字 ふて過何も此心にてさとすへき也 志文字歌の上句のすそご下句 のはてによみつれはやさしく聞る也 も文字上句の末にあれはよくつ よく聞えて詞をつくといへり よ文字歌上句の末に又は下句の 上の七字のすそにおけはよはく 聞ゆれとも詞をつきやさしく 侍る也の文字下によりきては うカモ やはたにしか有てやさしく聞 ゆるや文字歌上句のすそにを きつれはたくみにきこえて やさしとなり 見文字上句のすそ下句のす ゑにあれは詞をたすけやさしく 聞ゆる也 右仮名をえるといふ事此 外不可有之能々心得あるへき事 第廿つゝとめの事 伝受なくてはたやすくよむへから す凡七字の習有つゝ文字いまこゝ にしるすて受師説ことに依て 文字の心かはりて読也たとへは 思ひつゝぬれはや人の見えつらん夢としりせは覚さしましを う右歌小町か哥かゝりといふ心は つゝと雨もありつゝとまりは句の うちに物弐つ色時留る詞也 〽賤かえに去ぬる暮春かけて鳴ともいまた雪そふりつゝ 山里は秋こそことに侘しけれ鹿の鳴ねにめをさましつゝ 春霞たてかやいつごみよしのゝ吉野ゝ山に雪はふりつゝ 山桜わか見にくれは春霞峯にも尾等も立かくして 妹もやすくねられさりけり春賢は花の殿のみ夢心見えつゝ 此つゝはかへるてには也詞筒彦宛拾 充ほとをふる心也 右つゝの文字如此いつれも歌 に心を付て見侍るへきへ也 〇第廿一過去現在の文字 よみやうの事 〇現在は物にむかふをいへりあをひ なとゝいふかことしいつれも文字 の下にひの字をつくる也たとへは 青黄赤白黒 慮ひ窺ひ遠ひ近ひ迷ひ迷ひ迷ひ漁を慕ひ 〇過去とは過たる事を云すきたと いふかことしいつれも文字の下に た文字の付たるは過去のてには也 過た去た来た行た越た待た 聞に見た有之無に住た 右いつれも心を付て見侍るへき也 石上ふるき部をきて見れは昔かさしく花咲にけり 花ちりし庭の木の間もしけり合にあまてる月の張そまれなる 一近明のつれなく見えし月そ出ぬ山時鳥まつよなからに 〇第二十二年ぬふのぬ又畢 ふのぬさてもなき歌もある也 平ぬ見らぬさらぬきらぬたらぬ たゝぬきこえぬ風ふきぬ殿ふりぬ 降しきぬかへわぬ ○ほのぬみねさしぬきゝぬ たゝぬたらぬたらぬきこらぬ 風ふかぬ雨ふりぬ誰しきぬ かへらぬ 〇畢ぬ不のぬにてなき歌の事 か〳〵なかち契らて世をはつくしきぬ花のときはゝ有と見るへく 難面さのたくひまてやはつらからぬ月をもめてし有明の空 右二首の腰のぬ文字畢ぬにて も不のぬにてもなし能々吟味 すへきこそぬのぬ又久字 の事つきぬ。かといふ心也 後にを考ふ心をつけて見る へき也又歌に あはち嶋かよふ千鳥の鳴声にいくよねえぬす戸の関寺 是はぬらんといふ心也いつれも心 得あるへき也 第廿三詞のとめの事 あるならし みたかひにあらす あるらんと云詞也 たゝあるといふ事也 なからしなるらんと云心也 外ならし清外ならんと云心也 外ならじ猪外てはあるまいと 云心也 ふからしふかゝらんと云心なり ふかゝらじふかくはあらしと也 おもふらしおもふらんと云也 おもふちじをもふて有まひと云 ならんとすらんならふすらふと云心也 あらんとすらんあらふすらふ春心也 もそするもせうすらふと云心也 過にけらしすきにけるらんと也 おもひあらはおもひあらはやと也 たよりあらはなりあらはや也 第廿四 哥にはかならすきるゝ処一所あり 二所にて切事そあしき也 きるゝ事一句二句三句四句 五句のうち哥のていにはりきるゝ 所不定也但五勺にてきるゝと いふは吹なかすかなとの詠格 成へしかやうの事能々習 しるへき也第一の句にて切歌 消わひぬ補ふ人の袂の色に身をこからしの森の下露 一事二句にて切歌 夢にても見ゆらん物を歎かゝ打ぬるよひの袖の気色は 第三句にて切歌 忘れては打なけかるゝ夕哉我のみしりて過る月日を 第四ゆにて切歌 あたにちるし海のまくらにふし綾奴うつら鳴也床の山風 第五勺にて切置 せきかぬも泪の川の川のはやきせはあふみせ外のしからみそなき 是等体め是親句は第五句にて 切也誅句にも第五句にて切たるも ある也誅句は第三句にて切ためし をのつかち侍るへし又親句の歌 には秀歌なしをのつからあ れともまれなり親句の哥はあまり 名詞をうけつきて根より枝葉 なとのやうにつゝけくたすほと に春の歌にて平懐なる事 のみ可有也めつらしきやう 有かたし誠句は何の句にて もいひ切て必つゝけんともせぬに ゆへに秀逸も常に出来か誠 句の中にも第四の句まて切たる 八まれ也初の五文字にて切たる は有とか〳〵第二の句にていひ ゆたるよろしきといへり第三 の白にて切事はあひとをに きこゆなるへし但いつれの句 にてもつゝきたによけれはく るしからす一けんにかさるへか らす歌に二の大途あり心 あらはにして詞おほめき ことはたしかにて心たしかなら 思此二たひあり此こたひに はつれん歌はよむへからすまた 心詞ともにおほめきたしか にして心かすかなるよりは詞 おほめきて心たしかならんは まさるへき歟詞心ともになほ め支たるを上手の一切読姿 と申へし心詞たしかなるは 左右に不及心詞たしかにて 哥能案したりける物かなと 見ゆるこそ本意におほえ 侍れ心言葉のおほめきかすか成 歌は達者の一すち読事なれ とも歌合毎度まくへし歌に 無尽のていあり道をひろく わきまへたる輩は只我こむす ちはかりの哥をはよろし きと思へり我うけぬ風情 をはいかによくつゝけなし たれともよしとはいはす此五の 切字を能てわきまへよろつ 心をつけて見るへき也 留に何也と云てにはあり成けん と詞をそへて心得へきなり 泪川なかすね覚も有物をはしふ事心露やなになり 思出て音信しけん山彦のこたえにこりぬ心なになり 月日をもりそへける哉若恋寺数をもしらぬ我身なになり 第廿五哥は五句なからつゝき たるはあしき也たとへは 立わかれいなはの山の峯に生る松としきかは今帰りこん 拙哥つゝきこせとも今帰せえ といふか諌句になるによりて面白也 梅の花それとも見らす久方のあまきる雪の給へてふれゝは 此哥おもしろき歌の頭上也みな 謹句にて久方のあまきるとつゝきるとつゝき まて也 ○事廿六かへるてにはの事 五文字にかへるも有二ノ匂へかへ るも有又心にてかへるも有能々 習しるへし 〇〇束廿七なにをさきとすへきやう の事心詞とをかねたらんを 能哥とは申へし心詞は鳥の 左は避のことくなるへき也風雅の 序にしなたかゝらむとすれは そのさまいやし縁あるはたはれ やすくつよきはなつかしからす と侍り風雅は当時もてあそは ぬ集なれともこれ金言也心詞 風躰此歌此三ツにすくへからす 京極黄門庭訓抄に云哥の 事尤実をもていはゝ実と 申は心花といふは詞也古人の 詠作にも心のなからんをは無 実の歌こそ申へき今の人のよ めらんにも心のこるはしくたゝ しからんをは有実の哥とそ 申侍らんとあり右之条々にて 先哲の心さしをさくり見て万事 を意得へき也哥は詞をもとめ て心をつくるはあしき也心によ りて扨詞をかさりもとむへし 読方の習也 第廿八 歌を読に一やうにはあるへおち す下ゆへつきてよきも有一向 つゝかてよきもありいひのこして よきも有いひのこしてわろきも 有かねてよりかうとはさため かたきもの也哥は先縁の字をむ ねすそにをくことよき也されとかね てより定かたし読きを見てよき あしきのせんきをするものなれは なり縁の字かた〳〵に有ても 能歌おほくある也心を付て 見るへし 第廿九後にをく五文字事 いかにせんの詞定家郷の云第 三句には自然いかにせんとも有へし 第一の句にはあるへからす女五文字 何とかなと思ひいつらひていひ出たる 詞也此親大かたは不て懸合但両 はしてよめる五文字也 いかにせん宝の殿しまに宿も哉君のけふりを空にまかへん 此五文字後に置たる五文字なり 心は先宝の八嶋をもとめて 恋のけふりをまへんとすれとも 室のやしまも遠けれはいつも宝 八嶋へ行事もならぬはいかにせん といへり此詞はまはして読詞也 いかにせんさしてうき世はかくさますたのみし月なみた落けり 是も後に置たる五文字也心は月 を見れは往事かおもはれて泪 かおつる也さらなゝては別になく さむ事もなし、いかにせんと読たる 歌也 麦三十 歌の本体と云は色のまゝのことを かさらす云出すを本とせりそれを 万葉の末つかたより曲によみそへて 哥のかさりとしたる也多とへは 人丸の歌にほの〳〵とあかしの 浦のとよめるかことしたゝ明石の うちの五文字ならは綾磨なる明石の 浦とこそよむへきをなの〳〵とあき らかなるをいふを詞の花の句にしたる也 其時代にも猶かきらす兵のまゝに読る 哥多し 第三十一 物哀の体は哥人の必さためする 所也此たくひそこのみてよまはさこそ あらんすれとも生得の口つきにて 今也物哀をよまんとて哀なる哉なと 云てあはれからせうと読は更に物 哀なる体にあらすたゝ何となく 体か物哀なるてひにてある也 俊成郷歌等 しめをきて今はと思ふ秋山の蓬かもとに松むしのなく なといへる歌は何となく物哀なる也 第三十二 身のうへを人とむる読事 以上 しひをく人の心にしたはれて露分る袖のかへりぬる哉 いきてよも明るまて人はつらはらし 此夕暮をとはゝとへかし 是は人に云かけたるにてはなき 也たゝ独りおきてあすまては ならふへき心地もせすとふ へきならはこよひとへかし と歎きたるにて有也 情むへき春をは人にいとはせて空たのめにやならんとすらんとすらん 右読る歌は人といへる歌は我 事をいへる也 ○第三十三 下旬より上ゆへかへして見る 哥の事 凡かへるてにはに五文字へか へるも有二のゆへかへるも 有三のゆへかへるもあり 又心にてかへるも有能々習 しるへし 折 俊成卿 打ふしもうつれはかへつ世の中の人の心の染のそて 〇同下句ヨリ上ゆへ 式子内親王 〽忘れにやあふひを草に引結ひかりねの野への露の明ほの 〇同下旬ヨリ上ゆへ をのかつまこひつゝ鳴や五月闇神なひ山の山ほとたます 過にけりしきたの森の時鳥まえぬ雫を袖等のこして 鵜飼舟哀とそ見る武士の八十氏川のゆふやみの空 をのつからすゝしくも有か爰衣日も夕暮の雨の名残に いかはかり身にしみぬらん七夕の妻待宵の大の川風 たへてやはおもひありともいかしせんむくらの宿の秋の夕暮 日くらしのなく夕暮そうかりけるいつもつきせぬ思ひなれとも 給へて世のおしさに添て情哉あきより後のあきの限りを なめつゝ幾度袖にくもるらん時雨よふくる今明の月 かくてしもあかせはいへ世過ぬらん山路のこけの哥のむしろに 詠め侘ぬ柴のあみとの明方に山の端ちかく残る月陰 つらき哉勝ふまては八重桜とへともいはて過る心は 萩の葉もちきめ立てや秋風の音信そむる妻と成らん わすれしな難波の秋の夜半の空こと浦にすむ目を見るも 鳴鹿の声に目覚て思ふ哉見果ぬ夢の秋の秋の思ひを 物思ふ袖より露や習ひけん秋風ふけはたえぬものとは 心あらはとはまし物を梅か香に誰里よりか匂ひ朱くらん 梅ちらす風も越てや吹つらんかほれる雪の袖にみたるゝ 右下句より上句へかへして 読る哥如此也 第三十四幽玄躰 摂政大政大臣 あすれ引はしかの花その聾にたにたにたれかはとはん春の古郷 西行 第三十五有心体 つの国の難波の春は夢なれや芦の枯葉に風渡る也 摂政大政大臣 兵将のつれなく見えし月は出ぬ山ほとゝきに待夜なからに 一右二条家出葉鈔一冊不慮見 出之令繕写本書魚魯之分 以来憲之頗可謂哉正木 宝永五年陽月日葛山之人 其尾丈 十一 正四 レール 三三