白藤源太談

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歌川豐國畫
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場所: 江戸
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鶴屋喜右衞門
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シラフジゲンタモノガタリ
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東北大学
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シラフジゲンタモノガタリ
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2026-08-28T18:53:25.651810+00:00
東上総 夷滞郡 白藤源太談前編 讀 曲亭馬琴作 頼豪阿闍梨怪泉伝 本讀 全部六冊 葛飾北斎画 文 化 浅草繪新辰氏 桜姫後日之仇討 山東京傳作 歌川豊国画 全部七冊 曲亭馬琴作 葛飾北斉画 全部六冊 新 絵 小鍋丸手石入船 越中 幽霊村仇討 立山 草 城 曲亭馬琴作 歌川豊国画 全部六冊 右のこらず出板うり出し申候よろしく御評判 十遍舎一九作 歌川豊広画 同豊府四郎 申候よろしく御評判 全部六冊 被遊御香とめ御覧可被下相都奉指上候 江戸通油町倭鶴堂鶴屋喜右衛門版 山東京傳作 鶴喜版 旨騰 臘香 丙戌 「発兌 歌川豊国画別編 山東京傳作 歌川豊国画 四十四區 南西 東上総夷潜郡 白藤源 太談 両曹相対 カ 角力餘黨 競 全部七冊物誇強敵強 ○述意 江戸通油町鶴屋喜右衛門版 此草紙はむかし村歌にうたひつたへたる東上総の夷隅郡金置村 に住し引田源兵衛が婚相撲取白藤源太が事跡を記し 且下総国八幡なる八幡不知の事を録せり都て彼国 人の口碑に残れる昔話を閉狂言綺語につくりなし たる物語なり案にいちみの郡といふは非なり夷帰あるひは夷隅 といへり 山東京傳誌 文化四年丁卯二月稿成同五年戊辰正月発兌 ○白藤源太 膽 気 猛 烈 大力はかりしるべからず剣法もつとも 通暁す義気忠心たぐひすべき なしつひに主君の讐を復す 容貌美師埜花といへども 人の眼をうばふ孝志貞心 もつとも厚し従来の薄 恩 報 守 節 一命一旦苦辛にせまると いへども皇天の 憐を蒙り ふたゝび けうげつ 皎月の かゞやく 時に あへり ○白藤一子兵太 しらふぢつまおかん ○白藤妻於勘 匂ふち一 ○筑麻栗之進 穴 中 邪 神 ぶんぶたのじんいつとゆうし 文武の達人一箇の勇士といへども過去 の因果不幸にして非命に死す 嗚呼おしむべし 安定協議 神莫大於化道福莫 長死禍四国 ○蝿頭微利 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 一個の勇士といへども邪神のために 精気をうばゝれて夢中異類の変化を 見る 総治年。中正利よしのり公の時代のことゝかやひがしかづさのいちみのこほりかねおき村といふところに よく田源兵衛とてうしくなる百しやうありまへはあまたの男女をめしつゝひてかうさくしけるがだん〳〵 こしおひたるかへにそのみびやうしんなればのうぎやうのせはをうかさくおもひでんぢでんはたをしんまいに あづけおきてそのものなりをわけとりいんきよしてくらしけるがつまつなでといふはのちぞひにて せんさいに一人の むすめあり なをおかんとて ことし十七才 〽いなかにまれな うつくしひ むすめじや みめかたちみめかたちみつく ことにはなはだ かう〳〵なりおとゝは のちぞひの子にて なを波ら介とて ことし十二才なるが ぶしになりたきのぞみ にてあわの人にたはらの かしんつゝま栗のしんといふ おしのいへにさたひ ぶしのいへにさふらひほうこう にいでゝ今は家におらず 源兵へふうふむすめおかんと たゞ三人きちくにくらしけり さてある日とうじよのいそべ ひやくしやうをきらひ 八まんにじんしすまふあり ければ源兵へおかんをつれて すまふをけんぶつにゆき けるにあまたのすまふの うちにしらふぢ いふす まふとり 天りき なるえに すぐれて びなんにて一人として此すまふにかつものなかりければ 源兵へ大にしやうびしてすまふはてゝのちしらふぢを さかやにまねきてさけをあたへこんにちかちすまふ 一のほうびなりとてこしにさしたるわきざしを あたへけるにぞしらふぢ大によろこびけるが ほどなくいりあひのころになればかさねて ゆる〳〵おんれい申さんとてたがひに わかれさりぬ 〽あれはしらふぢ といふせきとり といふせきとりじや なんとよい おとえ 浅草 御休処 候せんじ茶川 〽おとゝさん あれは なんとい おす しらふけて しげりてくらきところより大のおとこ三人おどりいで 源兵人をとらへまるはだかとなして松の木に くゝしつけ三人。しておかんをとらへちうにかづきて にげゆきけるむかふよりしらふぢげん太 はなうたをうたひつゝきかゝりけるがかくと みるゟ三人をけたふしおかんをすくひて うしろにかこひけるにぞ三人しらふぢを おつとりまきなんぢなにやつなれば われ〳〵がさまたげなすぞその女を こつちへわたせとよばゝりていちどに かたなをぬききつさきそろへて きりつけたりしらふぢもひとこゝを ぬきはなしてしばらくたゝかひ一人を どうぎりとなし一人をけさかけに きりたふしいま一人はにけいだす ところをきつさきはづれにみけんを きりつけたるがかのものはきづをおさへ てにげさりけりさてしらふぢ源兵人を みつけくりなみをときかれらがすておき たるいふくをきせさて〳〵あやうきことゝ いふにぞ源兵へしらふぢどのかかたじけなし ともるべしまことにいのちのおやもどうぜん なりといへばおかんもこの御おん丁やうわすれ もふさずとあつくいちれいをそのべける もしおんみのすくひにあはずはむすめをうばひ しらふぢ 〽きやつをつかみころさんはやすけれども さいはいせんこくたまはりし一こしの きれあぢをこゝろみんとそんじかく はからびしがあつはれのわざものとてもの ことにいざおやどまでおくり申さんとて かくて源兵へはおかんをつれていくにかへらんとながら山の山みちに さしかりけるが曰はまつたくくれてみちをいそぎけるにじゆもく 両人のしがいをたにへけこみ 三人うちつれ かねおき村人 かへりぬ 〽しらふぢさん とゝさんを たすけて よいところへきて くごさんしたどふぞ あやうい所を おれかへの いひけるはふしきの御ゑんにてなんぎを すくひくだされし大おんわすれがたし かのみけんにきづをうけてにげたる 一つは今此ちか村にすみしいはかべ 一へび九郎といふかうにんなり ほか二人のものはきんごうの 一ワるものにて候へび九分こと かねてむすめにれんぼし たび〳〵むこにならんと のぞみけれどもわれ しやういんせざりしが 思ふにかれおかんを うばひつまにせん ためなるべし まことにあやうき ことに候おんみは すまふのじやうず なるのみにあらず みればけんじゆつもたつし たまふとおぼへたり それがしもおやは ければしらふぢ まつしばらくわがやにとうりうあれかく とてねんごろにもてなしぬ ぶしにて候とかたり さきほどのはたらきを まに主いさいをかたりさま〴〵ちさうして かくて源兵へしらふぢをつれていへにかへり なるほどせつしやがおやもぶしにて候がせつしやは すまふをこのみついにすまふとりになり候と かたるにぞ源兵衛す〳〵おくゆかしく思ひ 〽いはかべ へび九郎 みけんに きづを うけてにけ きたる 〽せつかく しおふせた ものをけち いま〳〵しひ しらふぢすじつとうりうの あいだ源兵へそのやうすを みるにはなはだじつてい にてかたちにゝずころ やさしくぎやうぎ 源兵へのちそびのつまつなでよろこぶ うへにおかんが そぶりしら ふぢにこゝろ ありげなれば どふぞかれを むこにしたき とゞめてよきをりを やめてわがむこに なりくだされよと いふにぞしらふぢ たゞしくみへける ものと思ひ一日〳〵と みあはせおんみをまふを しれぬはたくし しれぬはたくしを むこになしくださる ひたすらじたいし けるがたつてすゝめ けるによりその心ざしを かんじついにとくしんをぞ したりけるさて吉日を ゑらみげんぶくさせて しうげんをとゝの人 おかんとふうふにしよき むこをとりしとろうじん ふうふ中むつまじくふたおやにかう〳〵 をつくしほどなく男子をまうけてひやうと 〽しゆつしよも だんなにともことばに つくされませぬ ふうふよろこべばおかんはもとより ころあるおとこなればなをよろこび なづゝ 〽これから わしらはおねん う太とぶついつさんまい だのみます いせはよきに にあひ まし めて たい さはらのさへもん 〽たはう のさへも のさへもん ふた山の かみなり ゆうらんある こまはりいまたはらのさへもんまですだいそうそたを やる子ぎちいそが もくあやまりてそのうちにいるひとあれば つくまこりのしん そのころあわのくにの俵のたろひでくにと きこへしはたはらとうだひでさとのしそんにて ひでさとへいしんわうまさかどをほろぼしたる おんしやうにあわかづさしもふさのみがこくを 〇こゝにしもふさのやはたにやはたしらずといふ すこしの竹やぶありそこにぬしすみて ふたゝびかへることなしといひいた人 すむにやしらざるゆへやわたの やわたしらずとはいひけるとかや さてたはらのさゑもん正月ふた山の かみなりがりをゆうちんあり きんごくのめいしよこせきの はなしのついでにやはたしらずのことを きゝたまひたれにもあれかの やぶのうちをみとゞけて きたるものあらはほうびとし きたるものあらはほうびとして ところのものさへうちになにものゝ わがさしりやうを しあたふべしとのたまふ おんそばにありつる しつけんしよく やつるき雷ゑもんといふ ろうじん申しあぐるは つくま栗のしん事 かね〳〵ぶゆうに かね〳〵ぶゆうに ほこり候へは おんこゝろみのため かれをつかはされ しかるへうといふにぞ さへもんいかさまとて 〽ぼうしう ふた山の かみなり がりといふは まいとし 正月あり 人のしる ところなり 〽せこのもの としふる きつねを いだす 栗のしんをめして そのぎをいひつけ たまびければくりのしん さつそくおうけを まうしすぐに しもふさに おもむき けり ○さてくりのしんは いそぎしもふさに いたり おどそかに いでたちてかの 竹やぶの うちに いりてみれば 日かげのすく ばかりなる やぶなれども やふなれど 四ほう まつくら なれば たいまり 大をと ふりて すみぐ みなき あふを ふみ こひとつのふかき あなへぞおちたりける ならが二 さてくりのしんす十丈の ふかきあなのそこに おちつきてみればはなはだ ひろくおくふかきほら あななり たちまち たちまち なまぐさき ければ だん〳〵 をくの かたへ かぜふき ゆきて みるに あやしい かな あま たの しやれて かう こゝ かゝこ に 〽はておびたゝしひ 此はつこつちしほに 此はつこつちしほに そまりしは がてんのゆかぬ みだれちり なまちながれてくれなゐの 川をなしければいかさまこの ところようぐわいのすみる なるべしさもあらばあれ たいぢしてかうみやうに せばやとなをおゝふかゝゆきけるに滞 われそれをふびんにおもひこゞにきたりて はたとにらみなんぢはなにのへんげ ちのたき なが きりはたり〳〵ちやう〳〵とはたを おとをしたいつゝおくのかたへ たづねゆくさてむかふのいりの うへに二八ばかりのようがん びれいなるじやうろう りやうらの五つぎぬを きてはたをおりてゐたるが 栗のしんをみつけたへなる こゑしてこゝはにんげんの ものゝきたるべきところに あらずとく〳〵かへれといふにぞ くりのしんまなこをいらゝげて なるぞはやくしやうたいをあらはせ さなきにおいてはたちどころにきり ころすべしとかたなのつかにてをかけて いへばかのびちよにつことうちわらひおろかや われはこれ神女なりわがおつとはいく千年を へたるものにて人のちをしよくする事をこのみ むかしはおほくのにんみんをとりくらひしゆへに われそれをふびんにおもひこゝにきたりて かのものゝつまとなりこの こころよりほかへいづることを とゞめわが神がうをもつて おるおとかするにきこへければその 日下げに ちのたきを いだしつねの しよくとなさしむ こゝにきたるものふたゝびかへりがたくと いへどもわれなんぢがぶゆうをかんじ さいわひおりとは今ひるねして ゐたまふなればゆるしてかへす ぞかしかならず此ところの やうすを人にかたることなかれ もしかたらばなんぢが身にわざ はひをおひめべしおりとの目の さめぬうちとく〳〵かへれと のたまふをりしもかんぜき すさまじくめいどうしてそ たちまち黒気わきおこり其 うちにかゞみのごときりやうがんひに くれなゐのしたをはきてくわゑん をふきいだしぜんたいはみへざれども 大じやとおほしければさすがの大じやうぶも 五たいすくみてどうと たふれ けるが うの神 女てを ひき ひき たつると おぼへて きつき おき上り てあたり をみれば かのやぶの いでゝぞ ゐたり かくてくりのしん ぼうしうに かへりてしゆくん さへもんのまへに いでかの所を 見とゞけてかへり いとまうせば さへもんそは でかしたりして そのやうすは いかにありしと たづねたまふ くりのしん まうし けるは かの うの ところ のぬし やうす をかたる べからずと かたくいましめ 候ゆへそのやうすを 申し上ることは おんゆるし くだされかし といふかたはらに しつけんしよく しつけんしよく やつるぎ雷ゑもん ゐあはせてくつ〳〵と わらひだし日ごろは ぶやうほこれども 〽それ はやく やくたうを あたへて かいほう せよ まさかのときの御用にはたゝず まさかのときの御用にはたゝ やうすをみとゞけかへりしなんどゝは 大きないつはりといふにぞくりのしん いや見とゞけたるにさうゐなし きみにたいしたてまつりてなに いつはりをまうすべき〽いつはりに やうすもいはでみとゞけたる かひありや〽いや申しあぐるは わざはひをおふべしとかのところの ぬしかたくいましめたるゆへに まうしあけず〽それがやつはり いつはりごとたとへ又まことにも せよそのみをかばひていはぬは ふちうとせめかけ〳〵いひければ あらずばなぜやうををまうしあげぬ やすけれども人にかたらば身に 〽みやくていに べつじやうも ござり ごさり ませぬ そしみ くりのしんせんかたなく しかるうへはぜひにおよはず とてかの所のやうすをくわしく かたりおばるとひとしくあつと さけびきぜつしてうつぶしにきをたしかに たふれければみな〳〵おどろき 〽これはどうじや くりのしんどの ごぜんなるぞ きをたしかに もちめされ よつてかゝりてかいほうし きうびやうとひろうしてかごにのせかれがたくへぞおくりける 〽いかさま がてんのゆかぬ くりのしんわがたくへ をくられてかへりければ つまつくばねおどろき いしやをむかへきつけ ぐすりなど あたへて かいほうし ける にぞ やう〳〵 よみ がへると いへども 〽あゝ ついに たいびやう につき となりねつき つよくそうみ火の ごとくあつくなりて いろ〳〵のうはことを いひそのあいだには くるしむことはなはだし よりければつまつくはね大に うれいそばをはなれずかんびやうす 〽なんのいんぐはで此やうなきびやうをいづらひ たまふぞあつくてぞかへよることさへならぬ ひのやまひとは此やうなことかこりやまあなんと したらよからふぞ 〽くりのしんが一子ぬま太郎ことし六さいになる 〽とゝさまくるしうござるかかなしや〳〵 こゝに又かのひく田 一源兵衛がのちぞひに しゆつしやうしたる なんしなみの助 ことしはや十八才にて いまだまへがみをとらず いく未栗之進が方にさふらひ ほうこうしてありけるかはなはだ ちうぎのものにてつくばねとともに しゆじんのびやうしやうをはなれず してかんびやうにこゝろをつくしよる〳〵 うみべにいでゝこりをとりなご寺の くわんおんにはだかまいりして主人の びやうきくわいきのことをわが命を かけていのりけるまことにちうぎの ものなりけり 〽なむだいひくわんぜをん わたくしのいのちをかはりに おんとりあそはされ主人の びやうきへいゆをひとへに ねがひ上 ます 栗のしんが ひやうき とかく くわいき せずをかく むちうに なりて さま〴〵の うはことを いふことやま ざりけりさて あるよにはさきに ともまはりのりものを かきすへたゞいましゆ おんめら くんゟ八郎きうの に候とく〳〵 おんいで候へと いふくりの しんこれを きゝいぞ かばしく のりもめにのり ければかごをとば せてはく部ゆき せてはしりゆき とあるところに おろしおきて ともまはりは いづくへかたち さりぬくりのしん かごのうちにていぶ かごのうちにていふるしと おもふところに大ぜいのこへして 地水 火風 から〳〵とわらひければます〳〵あやしみ かごよりいでゝみれば四ほうびやうぶを たてたるごときがんくつなればこゝは いづくと あやし るい ぎやうの へんげあら はれいでければ くりのしん なんぢらは きかね などの し け ても うで におぼへ あるぞ いでもの みせんと よは ▼かたなをぬきてはしりいで ければいまいくばねなみの介 これはゆめをみたまふてかとて だきとゞめやう〳〵とこに ふさしめけり 〽これより いちさま〳〵 のあやしき ゆめをみて くるひまはる ことたび〳〵 かなり思ふに これみなかの 邪神の たらをなす にうたがひ なし つくばねがこゝろづくしの かんびやうなみの助が まことあるいのりを かみほとけのあはれと だまふゆへにや くりのしんがやまひ しだい〳〵に心よく 百日あまりのうちに どうによろこびほど なく出勤をしたり ければしゆくんさへもん やくそくのごとく邪神を みとゞけのほうびとして さしりやうのかたなつき さしりやうのかたなわき さしをたまはりけるにぞ 栗のしんはいつかちうにぶゆう のほまれをあらはしぬ 〇こゝに又かのろうにん岩うべ へび九郎はぼうしうに にげきたり碁のあいて などしてやつるぎ雷原もん としたしくまじはり栗の しんがかたへもいで くわいきしければいち けるがあるとき らいゑもんりやうに いづるとてへび九郎を いざなひかいちうにふねを 〽でかし めさ れた のりいだしひそかにいひ けるはこんにちはまことのりやう にあらずきでんの大しやうぶ なるたまゝひをみこみて ひそかにたのみたきしさい あるゆへなりわがせんぞはへい しん王まさかどの家臣なりしが ゆへありて俵のけらいとなる いはゞ俵のいへはわがせんぞのかたき なればなにとぞわれたはらの いへをほろぼさんとかねていん ぼうをくわだていちみのものも よほどいできぬそれにつき たはらのいへにひでさとより いたはるりう玉丸といふいるぎ ありこれなくてはかとくさう ぞくしがたきたからなれば まづこれをとりかくさばやと をりをうかゞひつるに主人 ひでくにしんぐわんあるに よりちか〳〵にすさき 明神のやしろにかの つるぎをそなへて神事 をとりおこなふよしいる ぎをあづかるやくめはくり のしんなりきでんなに とぞかのつるぎを うばひくださる まじやさすればつるぎ をうばふのみならず 日ごろじやまなる くりのしんめをつみに おとしなにかのつがふ はなはだよし それがくほんいを とげなばきでんを 〽こいつを つかまつれば ヨンが三 十一 かうろくにとり たつべしひとへに たのむといひ ければへびけら うなづきあわ よくばかれめを うちころして うばひとり 候はんかならず きづかひし たまふな みろじをもら 〽さいはひの 月あかり たゞひと うちに そふじや さぬぶしの きんちやう これみ給へと いひつゝせん どうをうみの なかへきりこみ みづからろを おしてかへりけり 〇くりのしんは はかりごとあり とはゆめにもしらず しゆじんのげんめい をかうふりりう王 丸のつるぎをたづさへて すさきのやしろへまかり こししうじつしんじ ありてたそがれどき 大せつのものなればかの つるぎのはこをふゝろの まみづからくびにかけて へび 馬上にて候へるところをへび九郎 はるかのところにかくれゐて たねがしまをもりて 栗のしんをうきより したにうちおとし たちさはぐけらい たちさはぐけらい どもを四かく 八めんにきり ちらしてなんなく つるぎを うばひとり とぶがごとくに にげ きりぬ } 洲崎社 〽りう王丸の つるぎといふはたはら 藤太ひでさと りうぐうより もらひかへりたる めいけんなりゆへに りら王丸となづけ たはらのいへの つぎめには なくてかなはざる たからなり とぞ 読書丸 京傳店 一つみ壱匁五分 〇きこんをつよくしものおぼへを よくすうまれつきよわき人 男女にかぎらずいろ〳〵 こうのうあり しんがたしな〳〵 きれぢかみたばこ入きせる類。 ○京伝自画さんあふぎあり へびたらが たねがしま くりのしんがひざ しらをうちぬき ければ よのつねのもの ざにしぬへき ならばそく はそく〳〵ざにしぬへき なれども ゆうじなればいまだ〳〵 いへどもいたでによはり かだい丈夫の ゆうしなればいまだ〳〵しなずと いへどもいたでによはり〳〵めし たゝねばおひかけゆくごと ならず たゞむねん〳〵といひつゝはんがみをなし そこらをはいまはりてくるしみやゐたるところに なみのすけしゆしんのむかひとして此とごろへ きかゝり此ていをみてきもをつぶしかいほうすれば くりのしんなみの助かよきところへきたりしぞ かく〳〵のしだいにてりう一王丸のほうけんを うばゝれたりもはやじこくうつりたればおひ かけるともかひなかるべしわがかいほうには およはず此事けろしてきたをせずはやくたち かへりてつくばねにのみひそかにいひきかせ たゝは人のきんすをたづさへぬま太郎とゝもに こゝへつれきたるべしいきのあるうちいひ まではしなぬ〳〵 のこすことありそれまではしなぬ〳〵 はやく〳〵といひけるにぞなみのすけ こゝろならずもとつてかへしそのことば のごとくしてつくはねとぬま太郎 ちうをこんでき ちうをこんできへたりけるがつゝばねへ ていをみてとり をがりなくよりほ いひけるはなけきて なきくりのしん きくりのしんいひけるはなけきて きけよ ゆいげんをよく ことなればわが 一王丸のつるきし たいせつのりう りう一王丸のつるきしを たればわれしすし ぢらまでもなんぢらまでも 〽いまひとあし はやくんば とうぞくを とりにがしは せましき ものを ざん ねんな きて ござり ます 波 さまなぜしな しやるぞいのう おもきつみに それゆへに此 おこなはるべし ことお とおんやかたへ しれぬうちいひ きかす いかになみの じやくねんなれ ども きのものなれば かしこれ なにとぞ たつねいだし こうをもつて つみをつくのひ 太郎にかと ぞくしある なしくれよ いまつみ 〽つるぎをうばひしは つねのとうぞくに あらずやかたに できたふものゝ しはざか たゞし やかたの うちに いんぼうを くはだつる ものあるか みをまつ たがね なにゝもあれ とうして くれよ 〽たゞ ありてかめいを かゞものあるべきや われはとても られねば此こと もれぬうちじさつ なりとてさしぞへをぬい 此わきざしとかたなはとのより はいりやうせしものなればかた なはぬ夫太郎に つかはすわがじさつするこの さしそ人はなみの介につかはすぞ 大小ついのこゝらへにてまつにふぢの きんめぬきながきうたみとみにおびて しゆう〴〵のふかきちなみをわするゝなと▼ 〽おもひがけ なひこの ごさいご これはゆめでは ござんせぬか ふびん なるは このせがれ どうぞ おひ かめいを つがせて くれよ しがいにとりつきてはなれがたなく みへにけりぬま太郎もとりすがり とゝさまのう〳〵もふおまへはしな しやつたかわしもいつしよに しにましよとなく〳〵いふぞ あはれなるかゝるをりしも あらしぎ あらふしぎやたちまち そらかきくもりいなびかり ひらめき大つぶのあめふり いだし大かみなりなり はためきけるがそら よりくろくみてまひさがり うつぶしにふしていきたへければつくばねは いひおはりてはら十もんじにかきやぶり くりのしんがしがいをつゝみて そらたかくのほりけり思ふに このじやじんのしよいとしられ たりつくばねなみの助は とらはれては みてなをもかなしみ けるがもしやかたへ もれきこへ ゆいげんの かひなしと 思ひきり〳〵 くちのうちに きもをつぶしそらを ねんぶつをまうしつゝ おちゆきぬ 〽こよひのことおんやかたへきこへ われ〳〵におつてのはらぬうちはやう〳〵 〽おつとゝともにじがいしてしぬも しなれぬみのいんぐはどふしたらよかろぞいの なみの助はつくはねとぬま太郎をつれてふねにてうみをわたり むさしのくにかなざはへつきけるにあとよりおつてのものふねを とばせておひきたりくがにあかりてつくばねおや子をとらへんと とばせておひきたり ひしめきけれはなみの助はわたさじと あらそひさうほうぬきあはせて たみひけるがおつては大ぜい くこなたはひとりついにてきし がたくなみの助右のうでを したゝかにきられければ かたなをおとしてどうこ ふすそのひまにおつての ふすそのひまにおつての ものつくはねおや子を とらへてふねにのせ とぶがごとくにこき ゆきけり女ありて なみの助おきあがり 一くち おしや ざんねん いきは ゐらしぬ 両人をこりかへ さんとあせれども ふねとくがと へだてたれは たゞ身をもだゆる ばかりなりなみの助 どうとざし御両人を うはゝれてはとてもいきてはゐられぬいのち はらきつてめいどの御しゆじんにまうしわけせんものとすでに かたなにてをかけたるがまてしばしこきやうにごさるはゝんや あねさまにひとめあひまいらせてよそながら此よのいとなごひ してのちはらきるべしこしあんをきはめてぬぐひをとり きづをつみてやうじやうしくがをまはりてかづさのくに人と いそぎゆきぬ 東区区区区区区区区区区区区区区区区区区区区区区区区区区区区 へおつてのものつくばねおやこをとらへて かへりければ女つるぎらいゑもんそしらぬ かほにてこれをあづかりせめころして あとばらのやめぬやうにすべしと おもひくりのしん人にうたれしとは いへどもそのばにしがいのなきはふしんなり さつするところくりのしんかのつるぎをうばひ さりなんぢらおや子をにがせしにうたかひなし はくしやうせよとてにはさきにつなきおき しもべにいひつけつよくうたせければおや子共に いきもたへ〳〵になりけるをしなはさいわいしに しだいとそのよはまづそのまゝにくゝしおきぬ あらいたはしやつくばねおや子はうたれたるきつ ぐちよりちをなかしよあらしきづにしみこみて いたみたへがたくひとたひはたへいりけるがやう〳〵 いきをふきかへしつくばねいひけるはおつとを うちころせしものゝ御せんぎはなく候へつて おつとのしはざとうたよひ給ひわれ〳〵をせめとひ 給ふはなんぼ御しゆじんのおふせにてもあまりとや なさけなしいかにぬま太郎かくなりてはとゝさまの 御ぜいけんのかひもなしながくくつうをせんよりも そちもしねよわれも死しておや子両人てをとり あひてしでさんつをたとりゆきときまといつしよに なりてくらさばやこいへばぬま太郎くわんぜなくかゝさまと いつしたならどこへなりとゆきましやらはやくしなせて くだされといふにぞつゝばねむねふさかりしたをくひきつて しねよわれもしなん かゝるときのぢからには おねんぶつばかりそこ おやことうおんに なむにみたぶつ〳〵 なふ をりしも しろきもの ふはり〳〵と へひをこして こなたに おつると みへしが おやこ ふたりは むちうに なり なり おほへす へいの そとへぞ いでたり けるこれ すなはち くりのしんの れいこん さいしを さいしを すくひいだ せしも なるべし 〽此よの なごりに どふぞ さまと だかれて しに ござり ます 〽ぬ上 しらふち前へん田 二十七 ○此ときしらふぢみちにてかつぱつ はけていてたるをつかみころしたること ありといへてもことしけければこゝに 〽ときま おもしろいの 〽あつかうしてにくい こゝに又 しらふぢが やうふびく田弥兵へは からびやうにてととし みまかり一子兵太ははや 六才になりけるがある時 逸太をつれしもふさの くにゝゆきてかへるさ 日くれがたにこがのわたし ばまできたりいまでる ふねにめりおくれすみし まちてのせくれよこ さま〳〵にいひてたのみへ けるにせんどうはじめ のりあひのものあつかう してふねをいださんと しければしらふぢ大に いかりふねのはなにてを かけてくがまでひきあけ けるにぞせんとうてを あわせてわびければ やう〳〵ゆるしてふねを けゝのごとくおしいだし 兵太をだきのせわれも ありてぞわたりけるこれ よりしらふぢが大りき きんごくまでも きこへけり しらふぢ前へん四 なみの助はひとめはゝおやあねにあひこのよの いとまごひしてしなばやとこきやうにきたり やうすいかにこわがやのかどをさしのぞきけるに ろうぼつなでめばやくみつけやれなみの介でないか よくきしぞひさしぶりのたいめんにふじのかほ 見てうれしひぞまづ〳〵めでたい〳〵さあ〳〵こちを ほた〳〵してよろこぶにぞなみの助はなんにもしらぬ はゝの心をおもひやりてむねせまりしほ〳〵として うちにいるさてはゝはます〳〵よろこび御しゆじんの 御用などにて此へんにきたりしついでなる色たづぬ ればなみの助しさいをうちあけかたりなばはゝの なけきと思ひいゝどふぞはゝにうとまれてしごの なげきをかけまじといつはりていひけるはイヤ さやうには候はずわたくしめは御しゆじんのきけんを そこなび御かんどうをかうふりてせひなくかへり候と いふにぞはゝのがんしよくにわかにかはりなにと いふぞ御しゆじんの御かんとううけしとやなんぢ おさなきときよりぶけほうこうをのぞみ すきゆかれし源兵へどのものいりうまはず ぶげいがくもんをしこみのぞみのとをり ぶけほうこうをさせつるにりつしん しゆつせもする事かまだま人がみも おこさぬにかんとううけよくもこきやうへ かへりしそふしよぞんものめあほうめ ふちうものふかうなやつといかりのまなこ になみだをおとしなんぢうふかりに ことかはりかう〳〵にしてくれるむこ けんだどのおらんがてまへわけてすぎゆる れし源兵衛とのゝゐはいにたいして なにといひわけあるへきぞ ならずともく かたときもうちにおく事 いでゝうせ おれとて しゆろ ばう もつて さん 〴〵に かたときも くゝにはおかれぬ はやくでゝ ゆきおろう ちやう ちやくすれは しらふちげんだ あねおかんはゝの じつしのなみの助 ぎりをたてぬく しんていをかんじつゝ 御りやうけん あそばせと おしとゞめて はゝのきげんを とりはくろひ しばらくまづ なみの助を このやに とゞめ おき ける とぞ 第四五 〽おんいからは御もつともで ござりますあく おとしよられて およはりあるにや うでのおちからが おとろへ 〽まづおまち くだされい しかるにしらふぢはいかなるてんまの見いれしにや にはかにみもちあじくなりきんざいきんごうの あふれものとつきあひ大さけをのみけんくはかうろん してめつたに人をうちたゝきさきからさきをあそび ありきて五日も十日もうちへもどらねばによりほう ありさくて五日も十日もうちへもとらねばにようほう おかんがなけき大かたならずはゝはせんさいの子の おかんにつれそふものといひおつと源兵衛がめがねで とつたるむこなればかれこれのきりを思ひ なにごともかんにんして かへつておかんらまへを とりつくろひしらふちに うちたゝかれてきつを かけたるものどもいくたり もきてわしはうでか きかぬわしはこしが しらふぢ大せいの 百しやうどもを てだまのやうに とりあつかふ たゝぬとまいにちの つけことわりもだんぎ まいりのほまちがねを いだしてきづやうじやうの かうやくだいのとそれ〴〵に つかはしわびことして ことをすませ けるにぞそばて 見てゐる おかんがむねの くるしさなにゝ さてしらふぢひさし ぶりにてもとりければ おかんひやうたを たとへんかたもなし 〽おかいの まづなみだをさきに おとしつゝこれのふ しらふぢどのおまへは てんまが見いれしか よもやほんきじや つれてそばちかくよりそひ ござるまいすぎ ゆられしとゝさまが あとのことたのむ ぞとくれ〳〵の ゆいげんをわすれ てかあこにのこりし はゝさまもおまへ ばかりがちから なるにあふれものと つきあひてけんくわ かうろんたいしゆをこのみ かたときもうちにゐず ことしのぼんはとりいけて てゝさまのにいぼんなるに せめてたまだなへかうはなを たむくる心はござらぬかおんなの かたをならべさせあれこそ源兵へがひとりまごとそんきやう ぜらるゝやうにそだてあげてくだされかしこのごろは心ばかりに あさきいけんなればもちゆるこゝろも あるまいがひとりある子はかはゆくなきや せめてひやうたがちゑづくまではさけをのむこと たちものにしてむらのよりあひうぶすなさまのまつり にもせめてむかしのちゝごのとをりむらのおさしゆて 〽あゝ かなはぬ ゆるせ くよ〳〵とおさなきものをみるにつけけんくわばなしをきくにつけ〽此辺をもちへし □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ ししよす府いづけ なかぬ日とてはござらぬぞや これてをあはせておがみます きをいれかへてくだされと おつとをおもふひとすぢか なみだなからにゐけん すればひやう太は 父にとりつきて これとゝさま かきまがないて わびさしやかほどに うちにゐてどこへも ゆかしやるなとなく〳〵 いふぞけなげなる さればむかしより 四つ竹ぶしに 〽そやかましいもふだまれ 〽ひがしかづさのいちみのとほり村の小名をばかねおき 村よひゝ田源兵衛がそうりやうむとにすかよふ取 にてしゝふぢげんは力じやろでわうちのことにかたで かぜさる其なりふりを人に主まれ大酒をこのみこじや かうはんかしこじやけんぐわがん太く〵ときなが立て親の 源兵へがはてられてのち五十五とくのでんはたやしき酒の なんのにみなうち入て〽女房おかんはなみだをながし ぬかにくざうつきしがゐけんどふで聞宮若いなれど ひとり有子はかはゆふないかトうたひつたへたるは此ときの ことなりとぞ 此つゞきかたきうちまで 一かうへん三さつ出来 〽かきま のませて 〽これてを あはせて おがみ ます きを いれ かへて くだ さんせ 10432