源氏花鳥大全
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- 橘正勝傳
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- 場所: 江戸
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- 橘正勝傳
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- 日本語
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- 木下甚右衞門
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- 10010000014807
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- ゲンジカチョウタイゼン
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- 東北大学
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此段物板行出来合目録
廿五
当世薄雪
卅七
せみ丸
一酒呑童子十三当世薄雪
泰平篁
卅八
〔廿六
美人桜
芳野だいり
三なごや山三郎
廿七
廿九
皐月十二段
一花鳥大全
十六定家
廿八
四十
お国かぶき四
相生源氏
五現在松風十七土佐日記
対面曽我
六大職冠十八一の谷八嶋
三十万歳頼政
牧狩曽我
七紅葉がり十九女眉間天
卅一橋両露左衛門四三
七紅葉がり十九女眉間天卅一鵜藤秀左衛門四三管様
四巻老
九中将姫
八楠湊川廿中将姫卅三間海湯歩四四巻老
九色小町十一三世二河白道卅三芝生来源氏四五領城三岡志
十光源氏神鏡元三大塔宮卅四源氏六条通
十一難波物語廿三小野道風
十二源氏十二段廿四金盛くらべ死去柏木右衛門四八
内に
一家伝秘蜜の真旨は木下氏に伝て
章句を世上に弘是一流を翫ふ人
まきこらはしき節々に徳とはす正風
なれと願ふものならし
実水五戊子初秋上旬
土佐少掾橘正勝
候段物板行出来合目録
廿五せみ丸
一酒呑童子十三当世薄雪廿五世之丸疱瘡平篁
卅八
二和田酒盛
二和田酒盛十四とほる大臣美人桜建芳野だいり
廿九
廿七
三なごや山三郎
十五把覧挽
花鳥大全
九日皐月十二段
十六定家
廿八
四十
塩屋文正十六定家廿八お国かぶき
五現在松風
○土佐日記
五現在松風七土佐日記廿九度佛難波鏡四對面曽我
十八一の谷八嶋
六大職冠十八一の谷八嶋三十万歳頼政四級侍昌を
牧狩曽我
七紅葉がり
十九女眉間天
一廿一嶋多露左衛門
七紅葉がり十九女眉間天卅一鵜藤秀左衛門豊谷様
卅二寛暦洛湯寿
八楠漆川廿中将始卅二寛酒添湯寿四四巻
九色小町廿一三世二河白道二巻薬源氏四五千石
十光源氏袖鏡元三大塔宮卅四源氏六条通四六
十一難波物語廿二小野道風
十二源氏十二段廿四金盛くらべ死方柏木右衛門四八
内匠
一家伝秘蜜の真旨は木下氏に伝て
一章句を世上に弘是一流を翫ふ人
まきこらはしき節々にまとはす正風
なれと願ふものならし
実水五戊子初秋上旬
入セル間隔博士
『芳蔵書
土佐少掾橘正勝
近来土州の一曲は俗を離れ風をたて声は梁の廉
をたゝしめ筋は利休の茶杓よりもしほらしく都鄙
なべて風をなすも亦樂しからすや予も此道を殺寄て今
高徳の太夫にちなみ章句を弘むる事数年に有身を
たて名を発すは一芸の徳なり書は万代の鏡一字の
違百万の誤を恐れ千度頼合し百度琢磨して
清酒を撰ふも道を思ふが故也然に頃日類板の塵芥
街に海或は筆頭紙数を減少し値の軽きを以て
あやぶめんとす其書たるをみれば筋章の誤かぞふるにたらず
依之愚が板行の正本には
かへのごとくしるしこれをいだす
四四
今改
問
如斯印出之歟
小伝馬町三丁目
木下甚右衞門
上ヘイテ新山
一つ
一所謂荊山と申はそも楚国のたいせいをまも
り。五朗のぜつけいを帯たり。前には海水じやう〳〵
として月真和のひかりをかゝげうしろにはねい
しやうぎゝとして。風じやうちくの夢をやぶる
やうたいじもみてり一声の玄鶴そらになが
くはこう秋ふかし。五夜のあいゑん月にさ
けぶ共云つべし。かく物すごき山中に。住な
れし身はさもあるに。汝は住もなれずして。悪
うく有らんな。乍去いにしへも。雪山に薪を
こり。あんじんに。こぶしを切し人も有。身をぢんがい
のごとくにし。心を鉄牛にひしてこそ。積功の
せいりき顕れん。彼一盃のふんゑは。こうの
玉札成けると。長房はしらざりき。汝もわれ
に師匠の礼ほりをんをなすべきか。いかに〳〵
同十一日
とのたまへば。臆明おくするけしきなく。誠
に師恩の高き事。たとふるに物なし。命のつ
づかん其ほどは。ほうじやの勤いたさんど思ひ切
たる有ざま也尓時伯道よきかな〳〵情明と。
持給ひたるしゆじやうをは。数千丈の谷そこへ。
だんぶとなげいれ給ひしに。せいめいつゞいて飛
でいり。ながるゝ柱杖をとらんとすれば。白浪
さかまく水煙。がんぜきいはほに。あしもたま
らず早キ瀬の。とぶてもあられと落くる
水にながるゝ柱枝をとるべきやうこぞなかりけ
れ。ふしぎや川浪立かへり。俄に川霧立くら
がつて。柱枝は忽飛龍と成て浪間に出る其い
きをひずさましかりける也次第なりせいめいつ
るぎを。ぬき持て。飛龍にかゝれば飛龍のいき
をひ。修行のいりきにかんをうし。せいめい共にかづ
き上げ。もとのいはほに上りしはふしぎ成ける
一次第なり。時に伯道ぜんざい〳〵せいめいと。彼
一巻を取出し。是こそほきの真伝也。汝が
家につたひにし。金烏。玉兎集といへるも。
皆此内にこもりたり。汝は此書をたづ
さへて。日本へ帰るべし。あやうき大事いで
来れり。いそげやいそげとのたまひて。
御いとまたびければ。飛龍のかうべにの
りをゑて。天にかけり地にわだかまつて
ちすいをかへしでうぜにけり
行事
源氏花鳥大全第一ギン
一緒茂其後。寿花の清くかんばしきも。は
なはだやせて事たらず。桃はまだこべたれ
共。色ふがふじてなつめるとや。思ふになをぐ
かだちよく。あいすべきもの世にまれなり。
爰にくわうとう。六十五世の帝をば。花山の
院と申奉る。時の関白。藤原の頼忠。まつり
事わたくしなく。天子をほさし給ふゆへ。四かいの
涙もをだやかにをざまる。みよこぞめてた
一けれ。扨又后宮に。后妃あまた有中に錦の
あけもうばふべき。藤つぼの女御。さはらばき
ゑん萩の戸に。かうきでんの女御とて。春たり
ぬれは芳野山花かとみゆる。こびあれば。秋の
詠めのたつた川錦を。さらず忝びをそへいづ
れもおとらぬをんかたち。朝なな夕なの御ゆう
ゑんなぐんはあらざる君達にておしかの。津のゝ
哥やつ
つかのまも玉産をはなれましまさず中にも。
かうきでんの姦には君御心ふかげれば。藤つぼの
御方は。朝夕是をねたましく。うへにばこびを見
せ給べと内には如夜にの。ごうをまぬかれ
給はず雪のおふぎもきへぬべき思ひに。むね
をそこがさるゝ。扨時の武将には。清和源氏の
一嫡流摂津の守頼光。誠にゐ有てたけからず。
古今まれなる名将なり。平氏には桓武のかう
いん。是持の舎弟。平の左官重茂。血気の猛
将両輪として君をしゆごし奉れば大内山の
震そべしなをにたゝぬ日もなくて。誠に寛和
の時とかや。こどざじけふは名にしあふ。うこ
んの馬場の日折とて。加茂の競馬の御ま
つり。藤つぼ。かうきでんの女御にも御見物
有度よし。御ねがひましますゆへ。御預りにて有
ければ。平の左官しげ茂源の頼光両将供
奉の勅諚あり。はやみくるまに召るれば。二条を
東へ千本を。北の方へどとゞろがし。右近の馬
場へと出給ふ尤やが。なりける上次第なりけいば
のぎしきにぎやはしく。洛中洛外五畿内
迄。きせん。くんじゆのけんふつは。をびたゝしくこ
そみへにけれ。扨。くらべ馬の役人思ひ〳〵のしやう
ぞくに。かばのばゞぎやきんせんくは。つゆを
ふくめるふぜいにて。うわうざわうの追か
け声われをどらしともはせけるは世に
目ざましき。見物也。かゝる折ふし。いそじ計
の男一人くんじゆの中を押わけて。けいご
の。ゆばくに近つきて。申上たき旨あるよし。
重もち頼光立向ひ。事の双子を問給ふ。時に
かの者某は。天文のはかせ。秦の道まと。申
者にて御座候。某いへのひみつ書に。金烏。玉
亀集といへる。天文の書有。是にて窺ひ奉
るに。帝に位をさらせ給ふ。ずいへん顕れ候故。右
妃の内。御てうあいの一たる方。たいゐしんし
とかたたがひ。てんだう火木の悪性。是国家
ぞうらんのもとい。わたくしならぬ御大事。やむ
事をゑずして。恐れながら言上と謹てぞ
申ける。右大将かげかた。けいばのちよくしを蒙り。
ゆばくの内におはせしが。此よしを聞給ひ。立
出て宣ふは。天暑ゆしき御大事。后妃
のうちに一なるとは。只今に至ては。かうき
でんの女御也。君の御為国のため。急ぎそう
もん申つゝ。里へうつし奉り。君御物いみ然るべ
し此義いかすで有ければ。平の重茂。げに
尤と同心す。時に頼光。いかに道満。后妃の不
吉と申には。たゞしきしやうこ是あるにや。
そこつの義を申上ケ。後悔さきに立べきぞ。
時に道満懐中ゟ。一巻を取出し。書の表
に顕れ候。勘文の通り。言上いたすと申ける。
かゝる所へふしぎやなかたへのまづにしらぐも
のかゝるとみへしが。中ゟも。せいめいはとんで
出。人〳〵に打向ひ。某こそをんやうのかみ。せ
いめいにて御座候。入唐のこうをとげ。つゝが
なく帰朝なす。しさいは並てぞんじ。事を
伺ひ。罷有候。いかにどうまん久しやな。われ
渡度のきざみ。某が書をぬすみ取。うつす
とは思ふ共。非道にくらむがん力の。たばかられ
し浅ましさよ。ひじする金烏玉兎集は。
某是に所持して有汝がかんがふ其おもて皆
よこしまのぼうけい也。われ帰朝する上は。中〱
もつて及ぶまし。しやうこのあらば汝が書披
キ見せよど申ける。どうまんはつと思ひし
がさあらぬていにてあざ笑ひ。抑々此書
と申は。文珠ひさしの二巻。我ゟ外にしる
ものなし。汝が書こそ偽りならめ。いらざる
事をいはんゟ。そこ立されといかりける。時に
せいめい。ろんは無やく書をひらき。勝劣を顕
すべし。どうまんをくせず押ひらくに。ふし
ぎやもじのすみきへて。皆白紙とぞ成に
ける。晴明いかんと責けるに。どうまんは詞なく。
赤面して逃行を。頼光。それあますなと
宣へは。定光末武つつとより。とうまんを取
てぶぜ。高手小手にぞ。いましむる。其時頼
光けふはけいばのさい礼。後日に事をたゞすべし。
せいめいにはさんだいあれ。どうまんは某が。宿所へ
引てせんぎをとげん扨女卿にはおかへりあり。
然るべしとそれゟもぐぶの。ぎやうざう引つつ
くろび。定光末武博押破り。御車をとゞろか
寸。右大将かげかた。こはろうぜき也頼光。けいと
ばもいまだなかばにて。藤壺の女御にも。
御帰りのさたもなし。其上勅使を蒙る身に。
一礼もなく埒破り。うらかたのさうろん。老な
正は顕るれど。をこと独のきばきやう。さりと
てはわが侭也。しんていあらばまつすぐに。只今こ
出にて申されよ。さなくは此場はさらすましと。
気色かはつて申さるゝ。頼光は聞召。しゆごを
蒙る某。かくそう〴〵しき祭礼の場。からき
でんの御供して。帰るがひが事候か。但。覚しめ
寸侭ならねば。残念に候かと。にが〳〵敷も宣へ
ば。重茂はすゝみ出。いかに頼光。貴邊の詞何と
やらん。ゆへありかぼに存る也。身ふ屑ながら某
も。藤つぼのしゆごなるぞ。ふぢつぼおかへりな
きうちは。かうきでんの御車。まつたくさきへは
叶ふまじ。我〳〵をおし下さば。此重もちがうで
さきにて。車をとめんらいくわうと。いきをひかゝ
つてのゝしれば。渡辺の綱つつと出。こは。ぎやう
花鳥
〳〵しき有様かな。頼光供奉の御車。とめて
見だまへ〳〵と。四方をきつとねめまはせば。重
もいかつてきつくはい也。おのれ目に物みすべし
と。たちのつかに手をかくる。坂田の金時かけ
来り。てきたふぬ原片はしゟ。つかみひしぎて捨
べしと。飛て懸るを綱をしとめ。はやまるな
金時と。さま〳〵にせいすれど。もとよりこらへぬ
あらものにて。せいし。かねて愛見へにける。かげか
たも重もちも。此いきをひに肝をけし。す
こしちゝする其陣に。頼光みくるましゆごなし
て。だいりをさしてぞ帰らるゝ。天晴けうのちん
じやど貴賤上下をしなへて皆かんぜぬ者
こそなかりけれ
第二
一其後右大将かげかたは。平の左官しげもちと。つ
れだちやかたへかへられしが。小声に成て宣ふ
やう。扨も藤壺の女御とは。のがれざるゑんにより。
深くも頼まれ道満を。かたらひ事を伺ひて。
けふ本望を奉せんと。思ひ立たるかひもなく。
せいめい帰朝し剰。どうまんをとりことなす。
後日にかれを糺明せば。たくみのしだいを云
もやせん。いかゞあらんと大いきつぎぜんひを。
ぐいじ御ことばず。重茂姫をいらゝげて。かく
大望を思ひたつ。某とても女御を。預り申せし
かひもなく。かうきでんの御ゐせい。ひゞにつのら
せ給ひなば。頼光人うさへぎゞめくに。ほこさきつ
よく成敗を。只独にておこなはゞ。中〳〵無念
の次第也。幸こよひの御とのゐ。頼光番にて
有ければ。ぐぶよりすぐに大内に。勒あらんはじ
でう也。今宵ひそかに頼光が。やかたへ立こへ夜打
して。道満をぬすみ取。ひそかにがいし後日の
さた。頼走ぜひをたゞさずして。無せんぎ成。よし。
きろく所へ申上ケ。あはよくはかうきでんをも
なき身となし。本望を達すべし。それも叶はぬ
物ならば。大内山をよそになし。朝敵の名を立て。
ていとをやみになし申さん。御心安かれと。手に
取やうにぞ。申ける。かげかた二のいきほつとつ
き。ともかくも此上は。万事貴公にまかず也。よし
きにはからひ給ふべし。はやとく〳〵と有ければ。
御暇をこひ重茂は。したくへ帰り用意して日の
くなくをぞ上待居たる。是は扨置頼光は。暫時
諸共参内し。加茂のけいばのちんじの事。どうまん
が有様。せいめの帰朝しふんみやうに。事顕れし
其旨を。いち〴〵そうもんいたさるゝ。主上ゑい
ぶんまし〳〵て。しつとのねたみは藤壷が。股を掠
るたくみの程。甚
中に藤つぼを。親里へ送るべし。扨せいめいには。御
ほうび数〳〵給はりて。天門の役となし。どうまん
をばをんるのつみ。頼光かたくしゆごすべしと。御みす
さつとをりければ。せいめい面目ほどこしで有かたし
〳〵と頼光に式代あり天門屋敷にうづら
なく。扨頼光は。平井の保昌を召れつゝ。こよいよや
某とのゐの役。おことはやかたに立かへり。どうまんを
きびしくしゆごし。其上にもてきたふ者の
多ければ。構てゆだれいたさるゝな。早とく〳〵
との御諚也。保昌よしを承り。いさゐ心へ候と。御
まへを罷立。やかたにかへり下ぢをなし。門々をかた
めさせ。きひしくしゆごせし其有様げにゆくし
くこそ去見忠にけれ既に其夜もごやの
ころ。平の左官重茂は。三百よきの兵を。野ぶし
のごとく出立せ。姉が小路へ。押よせて。物になれ
たる忍びの者。二人塀地を飛こべて。ねいりし
下るを指ころし門をひらけば三百よき。皆
広庭へはせ入しが。され共中門きびしく
して。内へ入べきやうもなく少ゆうよを。したり
ける。され共平井の保昌。いまだいねもやらずし
て。近じゆのぶしをかたらひて。物語などし。いたりし
が。中門のひろ庭にて。大勢の人声は。まさしく
夜盗かしれものか。かた〴〵用意いたされよ
と。弓と矢つがひ立ければ。始はそゝやくぐん
ぜいの。今は思はず大音上ケ。門を破れとぎ
しめくを。保昌少茂さはがずして。中門を押
披き。指取引つめいたまへは。はやりをの兵共
たふれかさなり上射ふせらる扨其陣に。御家
人達。ものゝぐかため切て加軍は花をそ
〽ちらしにける軍中ばの。事成ルに。主は誰共しらね共。
六尺ゆたかな大男。大まさかりを引さげて。よ
あけば何のせんあらん。我につゞけやみかたの
せいと。むらがる中にわつて入はからり。
一なぎたふす。ひとへにやしやのごとく也。此いき
をひずみかたのせい。ふせぎ兼てぞ。みへにける。
井の保昌是をみて。天暑てきやよきかたき。そ
とをひくなと云まゝに。れいの岩切かいかふで。打
てかゝれば引はづし。かくれば払ひうてばひらき。
一両方めいよの兵術にてしばし時をそり
〽うつしけるかくではいかに。もどかし。よれくまん尤
て。互に打物なげ捨て。おしならべてむずと
くむ。只一ひしぎとなす所を。保昌古老の勇
者にて。した手に入て四つがいを。ちぎれての
けとしめつけて。ひらいてはたとけたをせ
ば。まつきかさまにたふれしを。何様しれたる然
者と。頓て縄をぞかけたりける。是をみて敵の
せいとりこのあらば後日のさた。乱入てばひ
とれと一度にどづと。をしている。かゝる所へ四天
王。やかたのさうどう聞付て。我も〳〵と大内
ゟ。一さんに欠来り。敵のうしろを無二無三に
花鳥
はらり〳〵ともなきたふす。かくでばいかくでばいかくでばいかくでばいか。
はして。重茂馬にむち打て。跡をもみずして
迯行をのがず。まじいと。追欠る。保昌じば
しと。押とゞめ。そぶしごときの奴原を。おふ
ても何のせんあらん。こなたにしやうこはとめ
置たり。まづ〳〵こなたへ来れよと。四天王
の人〳〵を。せいしとゞめてそれゟも。夜の明る
をぞ待たりける。天晴かう成。兵やど斗せん上
下をしなべて皆かんぜぬ。者ごそなかりけれ
ホノリ
第三癸
イロ叱
第三
沈香亭のよきかほり。なくても色は紫の。
すべに匂ふ殿つぼは。秋かれに見しわれもかう。
時しもをとる粧ひを思ひ。出ればかきくもる。
ウクイロ地
ますみの鏡引かへて。我は恨みでくらせとや
一ゑゝ腹立やとみかへれば独こがるゞ身のうぎ
大ム以上
につれてほたるのあなにくど。扇を上ケて
片タフシ
神守
はだと。うつ。常にこよいは文月七日かのもろこ
しの王建が。銀燭秋光。くはびやうすさまし。
けいらのしやうせんりうけいを。うつと詠ぜし詩
の心。そらのけしぎと思ひ出のらんかんに。立
尽して大内山はそなたぞと中ばこびし
く。うらめしく詠めをくれと。白雲に妻
よふ鹿の声計。我もかはらぬうきねぞ
どとはず語りの手枕にしばしまどろみ。
一たまひける
一土清絵音山本ツシユリユリウウウウウウウリステ
〽千年ふる君のおまへのまつがゑにひなつるは。
すをくへは池のみきばに亀あそぶ天下たい
へい長きうに納まる御代の。ためしかや花の
はるのきんきよくはくはくはふう。らくにりうくはゑん
はるのきんきよくばくはふう。らくにりうくはゑん
りうくはゑんのうぐひすは。同し曲のさへつり
月の前のしらべは夜寒をつぐる秋風雲井
に渡る。かりかねの琴ちにをつる。こへ〳〵なみ
だの露の玉章いづみ涼しき。夏ぎぬはせ
みの羽ころも。夕つゆの。草むしことに。立よれ
は。あつさぞ。増るとこ夏にいわ井のみづを。
むすびとめても白たましづぐにたへやもま
しら玉雫にたへやらんたへぬをもひのこひ草
に。君かきまさは。むこにせんみさかなには何
一〇ハル
よけん。千世のちきりをかねよけん音羽の瀧
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
の。たきのしらいと。糸〳〵いとしやのいとしけ
りやごそあふ事のせんさんごをくだく一両匁。
こほり。きよくばんにをづ千万声。時の調
子にきをそへて糸竹呂伴の遊興は筆も
詞もしおよふまし今ばたゞ。思ひたべなんと計
あり
を人の恨み世のぞじりをつゝむに心のいと
まなく。いもゝ月にや侍らんと。主上はそだつ
に御心せき。左ちうしやう是なりと頭の少
片田節
花鳥
将よしかぬを。御供に召れづゝとゞろかしゆく
み車にさなくと。さゝんしのびの緒霧のま
がきもをぼろにて。月にはあらでゆふづく
よ。御てんの辺りへ御車の。ながへをさしよせたり
ける時。かとりかづきし女房の。そともに寄そ
びゐたりしを。さきに立たるよしかぬが。此ふぜ
いを見るゟも。君ををそしと女臣ゟ。御迎の
其為に。つけ置れたる物ならんと。ぢじうの
つぼねかすけどのか。たれ成らんと尋れば。女
房こたへてそなだにぞ待人有ていそく
らんわらわは君にふがさるゝ。難波入江の
捨小船。筏の葉ならは時色て秋風ふけど
暮するにかれにはをとる浦かぜのときわのま
づと。契りし物をあだすけりし藤壺が。すこし
おうらみ申さんだめ。是迄参り。侍らふ也車
のながゑも恨めしとすがり。ついてそなぎた
まふ。よしかぬ是なり申処。扨は。藤壺の女御
にて渡らせ給ふか。ゑいしんよろしふましまさねば。
にさねて叡慮を伺ひ。よきにそうもん仕らん
とかたへにたすげのけり。御車内へ引入れ
イロ地
ば。こは情なしかだ〳〵と。すがらせ給へばふり放ち。
頼取つくをつきだをし跡押立て入けれ
はぜんかたなくもついぢの外。やまと。かたりも
からいしきひどり敷ねの袂だへなみだや。露
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
けがるらんかくて主上は上入御相連はかりき
でんの。女降は。官女達に打つれて。御迎に出た
まふ。主上叡覧まし〳〵て。こよひの月のさや
けさの。ことあひたりし詠めをば。あはれ諸共
見ばやとて。是迄あこがれ来りしと。勅諚あれ
はかうきでん。わらはゝ君を待侘て。忍びね
になき候と。もゝに餘りし御こびは。てんねん
みめうの御ようしよく。たぐひあらしと覚す
花鳥
にそ叡かんはなはだかぎりなく。ごやふみ月の
じるしとで。其数〳〵をかけられし。きりこたい
このなりもよし。ことに色絵をうるはしく。かみに
切ばむゑやうもし。いにしへ今のかせんをば。あり
〳〵とこそ写されし
奇仙
二つ三里
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
一先人丸は。ほの〳〵とあかしのうらの。朝霧と。穀
吟あればかうきでんみきばつらゆき。さへら
ちる。木の下気は寒からで空にしらに数雪で
ちる。木の下風は寒からで空に。しられぬ。雪ぞ
降ける。げにや。ぢる花を雪ことまかふとをもし
ろや。いせがよみぬが三わの山いかにまち見ん
としふとも。だつぬる人も。あらじといへど御身
をば。いか成ル山の奥迄もまろば。たづねんい
かずやと。勅諚あればかうきでんげに勤めいな
り。去ながら。こなたにも又進みての後の
ごゞろにくらふれば君まざぬ夜のひとりねや
一あるば侍侘ねもしやうでふけ行かねの。声さけ
ばむかしばものを。思はざりけりとよみしばげにも。
ことはりと。思ひしられ候とかこぢ顔にて窓
一ギン川丸
へは主上は由を。聞し召。しか也〳〵あだらよの
月かたぶかぬそのうぢにいざ〳〵こなたへ〳〵と
れん中ふかくぞ
イロシヲリしうはなり打
一くねゟこゝろのふぢつぽは。いよ〳〵まさる乱か
リレイセイカヽリ
みほぐれかねたる。思ひをば。筆にいはせて。ふた
下りみとの。こもりの折からに御れんまぢかく
立よりて。さきづかだゟ哥仙共。御ぼうへん
有げるが。此哥の心ばへ御ひほうならせ給べがし
ど。御れんの内へたんさくをなげ入給へは。ほうき
でんたれやと取上ケめ給ふに。小野の小野の小野の小野の小野の小野の小町が寄
とみへ色見へでうづろふ物は世の中の人のこ
ごろの花にぞ有けると。吟じさせ給ひつゝ。
蛇鳥
いともあやしとみ給ふに。思しよらざる藤づぼの。
いどろうたけてをはします。かうきでんは心へ
ずや。雲井にくゆる藤つぼの。とかぶのつたへも
ましまさず。御れんに近づき給ふ事有べき
事共おもほへず。藤つぼは聞たまひ。をろか也
とよ大内山ともに詠めしくもゐの月ほぞを
一八
ならへしふようぞ、と。人にいはれし身の花も
かたゑは残り片枝は秋くる風に。ちり〳〵とふり
捨らるゝわがそでを。思しもいださで。ながま
ぐら。いやかはらしなわずれじな行末千世と
の御契り。聞も恨めし見れは猶起ふしわかぬ
うづみ火の跡ゟ恋の責ぐれはぜんかだ浪に。
立かねて是迄参り侍らふ也主上叡聞まし
〳〵て。おろか也とよ藤つぼ。まろか心の替ら
寸は人に恨みは有ましきになどかくねじけか
たくなに。牛のつのもじすぐならぬ。はや〳〵
かへれと勅諚有ル。藤つぼ承り。かほど迄に
なげ其つらきは君に添ぶしの。あふむの尊
のくだかけに。あだこと申もの有て。ますほの
そめのゆへならめ。今は早是迄と。守刀をぬ
き持て。御れんの内へかけいらんとし給ふを。
かうきでん刀をうばひ。君にはむかふじや
いんのつみ。我をな恨み給ひそと。心もとを
指通す。差通さるればきも魂もきへ〳〵と
成うせ朝日うつろふ秋風は。身にしみ〴〵とち
んの上。夢は破れて藤つぽは御目をさまし
給ひつゝ。あたりを見廻しこはいかに。君を恋し
と思ひねの。わが心から。見る夢よな去にても
ゆめにさべかうきてんの女清に。けをされぬる
こそ口をしや猶も思ひは十寸鏡。見よ〳〵
今の恨みをば。牛の時詣して思ひしらぜん
物をとて。面色けつてみへ給ふ。じやゐんの一
念ヲツチをそろしき共中〴〵申計はなかりけり
第四
一丁一つ
其後。陰陽の頭暗明は。源の頼光と。殿下の
みたちに参りつゝ。頼忠公に申やう。扨茂比る。
くとのへいていうすくして。かくせいしゑんをお
かしつゝ。月をつらぬく。ずいへん顕れ候故。天
文地理をくはいがうし。へんくはを伺ひ候に。ほう
そをしゆそなす者是あり。ことに今宵は月
ぢかく。星の位の高ぶりて。くはきうに相みへ候。
此由申上ん為。はせさんじ候と謹でぞ申ける。
関白頼忠聞召。大キに。おどろかせ給ひ。おぼ
ろけならぬ御大事。神祇官にてはらいあり。
御物忌有。やうに。そうすべしと宣へば。せいめい承り。
某レ家のひみつにて。邪魔将来のしやうげをば。
はらひ除き奉らんと。白紙を申うけ。神道
ひみつの文をじゆしかなだ。こなさへ折たゝみ。
かたへをきればふしぎやな。左ちまち。ひとつの
鳥と。なる。時にせいめい。頼光に打向ひ。器望
の武士をつかはされ。此鳥の落所。見届けさせ
給ふべし。然らば事のしれ申さん。早とく〳〵と云けれ
は。頼光渡部ノ綱ヲ召。此鳥のをち所。みて参る
べき由仰らる。せいめいかの鳥を。こぶしにのせて
文をとなへほづとふくいぎにじやうし此鳥ご
くうにまひあがる。渡る馬にむちをあて。其
をちかたを進行しば。ふしき成けるもしたい也
サコロし貴布祢の道行
花さかは。つげんといひし。やま里の雲音。つ
れはあらねども。わがみは出る恋のやみかなわ
に焼る燈火に猶たぎ。そへししんゐのほむらむ
ねを。こかして。わきかゑる。ひさげの水はゆとな
れと猶さめやらぬわがをもひしばしばしはるゝと
立よればかもの川せも我にはつらや君をま
もるとなかれ行。其水垣の水浅き。替る
心のをく迄も。誠たゞずの神ならば。など
偽りをゆふだすきかみはをどろにふりみ
だし心の鬼は。いづしるに姿恥かしみぞろび
いけのはたへやはたびろの蛇身と成てて
な〳〵〳〵くるはたれ故君ゆへと思へと。いとゞこく
ろうき一夜と。たにもかなしきに。百夜は。
つらや小町塚市原野部を見渡せはほたん
やばちずのとうろうをかのもこのものこす
べにかけて。にゐたままづる。有ざまは。こや初
秋の印かや。君もわらばに秋きぬと。目に
はさやかにみへね共心はよそにぶく風の風に
もまるゝいなむしろ。しいてねん〳〵ねたまし
●ハル引取
やあなねだましや。かほど迄。かばる心。の有
ながらこせかけてとはいつわりや是は二のせの秘
尾山侍かひなきも理りや月もみそがにくらま
哥ハリハル
色鳥
ギン三重
やま。くらくどかへらし馬も車もなく〳〵そちし
ほにそみしわらんずもつゝかんほどは。緒を
しめてしめてゆるめでねしよばも人うはりんゑ
のしるべかと昔恋しく忍るゝ忍ふ其夜はゆみ
こそよしどいへど山ぢに行なやむなやむ思ひ
の身は埋木よ朽でみ谷のちりとなる谷の水
春とん〳〵とゞろ。おづるなみだの瀧ならん。如何あや
まつたり吹まよふ念きをろしに夢さめてみれ
ばよじなや人うかへに。恨みられしも憐みし人もと
もずきへ行あだしのゝつゆとは思へ共ほんのうの
つよききづなにせめ。られて。牛の時詣する。
我身ながらもつれなしと。よし足曳の山水
のだぎりて爰に落合の。川も豚に見へみ。み
へずみ亡め執の。雲となり。雨となる。心のたけを
夕時雨思ひ。しらぜんまてしはしと。ないつ笑ふつ
悦びつ。じやゐんにひかるゝ一念の。うしみづ過ゟ。
比ほびに貴船の宮にぞもつきたまふかゝる
一所へ渡るの綱は。してうの行方。跡を求て遠きし
が。きふねの山に落ければ。爾馬ゟ飛てをり。暫気
息つき爰かしこ。見廻りたりしに物すごく。膿月夜に。
人かげのあやしく見ゆがふしぎさに事を。伺ひした
ひよるかくとはしらでふぢつほは神前にひざまづ
き。なむやきぶねの大明神。こよび七日のまん
さん也足を空にし詣たる印を。みせてたまはれ
と。深くきせいし御まへなる。神木に打向ひ此釘立。
かうきでんにうづ成ぞ。泣くしつゝりしの一念は。尋共
なり地共なり。終には思ひしらせんと。でう〴〵と
打給へは。大杉ゟ血ながれて。貴船の川もくれなゐ
に。錦をさらずごとくなりあらありがたし〳〵と。重
て釘を取出し。又此釘はわが国の。あるじには似ず
一惜めしや。あせのごときの綸言の。出てもかゑゟ
よきなみだ。遣るましとのむづことは皆締にて。
イロサゲ
一有げるどしらでとけにし下ひほのうらかく氷
一主上をば。うつ手の下にちるだまのきどくをみ
せてたび給へと。鎹押ツ毛て神木に既にうたんと
し給ふを渡部頓て。飛かゝり。押とゞめ。そも先汝
こや何者ぞ。一天の。御あるしにてをはします。君を
しゆそする様子はいかに。まつすぐに申べし。さなくは己
目に物見するが。いかに〳〵とはづたとにらんて申
ける。女清は由を聞召。みづからを何ものとや。汝等
こときの下〳〵に。名のる共よもしらし爰を。はな
せと有ければ。渡部聞てしも〳〵とは。くわんたい成ル
詞かな。我こそ源の。頼光が郎等。渡部の内舎人
綱なるぞ。何うとねりつなとや。わらばゞ藤つぼの
女卿なり。其時渡部。はつと云てひざまづき。何
女御にてましますとや。ぞんじ申さで無礼の段まつ
ひら御めんを蒙るべし併。かくかちはだしの御有様。女
御の御身にははしたなや。しつとゝ申は下るの心。后
一妃の位にまし〳〵て。何の御ふ足候て。君をばのろは
せ給ふぞや。藤つほは聞召。扨は汝が主頼光。かう
きでんのうしろ見故。あなたのみかた聞もいやあだ
なるいろのますはなに見かへさせだまひにし。
のゑいりよのうらめしさに君諸共にかうき
でん。命をたちて長き世の。しんゐのむねをは
らさんため扨こそかくははからふなり。渡部聞て。
げにや高キも賤しきも色には乱るゝならひか
は。かうきでんへ御恨みは。御ことはりにて候が。君に
恨みはいまし。女臣と申も我君の。御恩にては
候はずや。今ゟ後は此事を。ふつつと。覚し直させ
給ひなば。頼光方へ御供し。互におとゝぬ后妃のさた。
よろしくぞうさせ申べしまづ〳〵。ごよいば。おかへりあ
れ。藤つぼは承引なく。はや此ごとく汝等に。見あら
はされし上からは。いよ〳〵をもひはとまるまし。ぜひ
〳〵こよひは過さずして。命をとらで叶はしと。面
イロサシ
花鳥
色かはりすざましく釘押取て神木に又立向ひた
まひしを。渡るをさへてかほど迄。りを尽し謀るに。
御承引候はずは。ぜひもなし御命を。うしなひ申がい
かにと云。何。ころさばころぜきらばきれわらはがねが
ひをさまたけば。汝共に取ころすぞ。渡部今は是
迄と。太刀ぬき持てはたと切る。はつと云て藤
つぼは。渡部に飛かかり。持たるたちにかなぐりつき。
ゑゝ恨めしやかほど迄。みてし願ひをかくのみか。やい
ばすかゝる腹立や。死に替りいきかはづてまん
〳〵功をふるとても。かうきでんと我君を取ころ
さでは置べきかと。御目もちはみ色替りはが
みをなしてぞみへだまふ。渡部是を事去せず。けぎ
はなつてかきいだき。心もとを指通せば。はつと計に
藤つぼは。終つむなしく成給ふ。しがいをきふねのが
は浪に打入て神木に打たる釘をぬき捨て又
立かへる橋の上。中ば。渡るとみへしときうづまく。渕の。
底ゟ。も藤つぼの。をんねん忽大蛇となり。橋かる
〳〵とかづき上ケ。渡る共にみなそこへはねかへさん
としたりしはすさましかりける
も。さはがずし。たちぬき持て切払へど。はたらくべき
やうなき所へはぐしの鳥のとびきたつて。渡部を
かいつかみいづこ共なく
ゑつゝ。神木にくる〳〵と。くるしげにつく息は。猛火
と成てもへ上れば。みやましきりにしんどうし。風雨
いなづま天地をかへせは
手に。たいまつを。我も〳〵ととほしつれ。川へ来れ
は執心はあら、腹立やとほのふ、をふきごくずむ
りやうに追かけ〳〵貴船の川浪しんゑんにとん
てぞ入にける。天姫きたいのしだいやときせん上下
をしなべて皆恐れぬ者こそなかりけれ
第五
〽アア一人。
一其後。関白の御やかたに。せいめい頼光会合し。
しゆそする者の其有所。渡るが注進を。今や〳〵
と待給ふ雲井はるかに。くだんの鳥。渡部諸共。
庭上にどうどをつん〳〵是はと。立よれは。鳥は
爾。伯道と顕れ。はるかに有やせいめい。我は是。
もろこしの伯道。汝にあたへし一巻の。ひじゆつ
をしるせし其きどく。今こそ思ひさとるらめ。此
上とても其ごとく。妙術をきはむべし。是迄也
やさらばとて。文珠井と顕れひかりを。放つて
とびたまふ。何れも。きいの思ひをなし御跡。拝
したまひける。渡部が申やう。鳥のをちしは貴船の
山。しゆそする人は藤つぼ。是玉体の御大事。御
いたはしくは候へ共。某が手にかけ。御人印をたち申。以
さいどの有様。其かたち異形にて。既にあやう
き所にしてう来つて参。命をたすかり。罷
帰り候と。一〳〵申上ければ。扨〳〵。をそろしき
次第やと何れもかんじたまひける。関白頼忠
宣ふは。藤つぼの有さま。じごうなればぜひも
なし。せいめいが占かた。神に通ぜし故ならん。そうもん
なさんと有ければ。せいめい承り。此上とても御つゝ
しみ。然るべしと申上る。かゝる所へ日蔵人。あはたゝ
しくはせされじ。かうきでんの女卿。御殿を出させた
まひ。いづ地共。御行方のしれざる由。禁中の周章。
をびたゝしく候と。大息ついで申ける。関白藪馬に
給ひ。其御行方を尋よく。爰よかしこと夕間暮
らうがばしくこそぞえに見えて見えに見ねに。主上
は。御物着の其内。かうきでんの女卿さへたへ。たへ。たいりを
失させ給ふにぞ。しんざんをいたましめ。残し置れし
御文を取あげ。ゑいらんありければ吹ちらす。萩
の露にて身をしりぬうき世のあきにあはで
はてめやとかく計なる言の葉は。藤つぼがねしみ
のほど。思ひつゞけてあぢきなぐ身を捨。ぼだ
いの道に入けるかと叡慮くるしくみへ給ひ。ひそ
花鳥
かによしかぬ是なりを。御側近く召れつゝ。思ふし
さいの有間。忍びて。花山寺へまふでせん用意せ
よとの綸言なり。両都目とめを見合て。是は
いかゞと思へ共。りんげんなれば力なく。畏てをうけ
をなす。それゟも主上は御しんでんを。出させ給ひ
一花山寺さしてそみゆきなる
花山寺御幸
一哀れ。もよふすおか。野辺に。夜ずがらとほ
一ずほたるひもきへぬ思ひのあればにや。虫だにむ
ねをや。こかへもらす。音にありはらのなり平のき
古うの詠めに飛ほたる雲のうへ迄いぬべくは秋
風ふくと初雁につたへてくれの。かねの声百八
ぼんのうのねふりさめずとみほどけの。をしへは
それどしりながら。恋のやみちにたと〳〵と。道
もさだかにみべわかずあゆみ益させ給ひけり
よしかぬ是成申やう。こよいの中に花山寺迄は中
〳〵行幸。成がたくましませは。向ふに。人家の燈火
みへ候。あれへ行幸なし申さんと御手を。ひかへたてま
つり。ひかりをしるへに。たづねゆくかゝる。うき世に
秋のきて。朝げの風は身にしめと。むねを休むる
事もなくきのふもむなしく暮ぬれば。まど
ろむよはぞなみだなるあら定めなの生がい
やなかゝる所へ両郷は。主上の御手を引まいせ。
やう〳〵だどり。つきたまひしばのあみ戸を音
つるゝ。あるしの女立出て。たれにて渡らせ侍らぶぞ
や。其時よしかぬ我〳〵は道に行くれ足よばの。
そつしがましく候へ共。しばしつかれを休むるうちをや
どを頼みたてまづる。女は聞て。安き事にて候べ
と。よにみくるしき芝のいぼ。殊によはひも中そら
にまだかたふかぬひとりゐの。さしもいぶせきねや
の内。みせ申さんも恥しやおやどはかなひ候まじ
よしかぬ重て。道はくらぶの山たかみぜんごをほう
筑紫
じいでかへはつことも
じで候へばあこぎとはをほざめど。こよい計はかりね
せん。いや叶はじと此木の戸を。さするをもへはいだはし
やさらばとらまり。ましませと。扉をひらけば人〳〵ば
急き立入たまひけり。見なれ給はぬしつがわざ。主
上よしかぬを召れつゝ。あれは何と云物ぞ。よしかぬ
あれこそ賤の女の。いとなむわざのわくかせと。
申物にて候也。主上此よしゑいぶん有。しもが下にも
此ごとくゆさしきわざの有けるないとなみ見せよ
ど勅諚有り。よしかぬあるじに近付て。いざもてなし
にわくかせを。いとなふで見せ給へ女は打ゑみつね
にさへ。いとなむわざをましてやは御なくざみと。成
ならば。いく世もへなんわくかせの麻草の。
どを土くりかべし
トナセ糸綿トキヤウシヤウシヤウシヤウシヤウン
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
まさうの糸をくりかへしむかしをいまになぞ
らへて君にもつるゝ糸柳が乱でもなを麻ざ
ぬや賤がうみそのよる迄も世渡るづきこそ物
うけれかゝるうき世に。ながらべて。明暮隙なき。
身のうさをたれにかたらんかたいとの恨みて。かひ
はなけれ共めぐり〳〵て月がげの光ル源もじ御
げんもじ五条あたりのあばらやに名がほの宿
をたつねしは。日かけのいとの。かふりきし。それは名
高ぎ人やらんかものみあれずかざりしはいとげの
ぐるま引つれできづれて度にいと桜色も
盛にさく比はくる人多き春のくれほに出し。
秋の糸すとき月によるをや侍ぬらんノテ今ば
だしつが。くるいどのなかき。やみぢやくろかみのを
もひみだれじ。いにしへを。まきかへしつゝゆひもど
し又ときなをす玉の緒のむずひどめだよ
恨みのせぎに。めぐりあひたりめぐれやめくれ
品よくめぐれに車のそのぐるしみを思ひある
しの浦千鳥ねをのみ独なきあかず。ひと
りあかせる恨みをば。よその上となをぼすな
と。云かと思へは忽に。めんしよく替りつのをひ出。
頭にいたゞく金輪の足のほのふの赤き鬼と
成て。あら珍らしの我者や。うゝいめしや捨られ
て思ひにしづむ泪川。むくひは今ぞ夕露のき
へなん命いたはしやと。はつたとにらんで立たり
しはずさましかりけるしだい也。よしかぬ是成さは
がずして。つるぎをぬき持切払へば。をんれうさす
が恐れつゝ。少ちする。其隙に。両人君をかこひ
つゝ。足にまかせて逃行を。いづく迄かのがさんと。跡
をしたふで追かへるはずさまし。かりける上へしだい
なり。かゝる所へ源の頼光。五人の郎等引ぐしても
のゝぐかためたちをはき。主上の御まへにひざ
まづき。あやうき御なんをしゆごいたせと。せいめ
いしらせ候故。はせさんじ候と。謹で申さるゝ。良
兼これなり力をゑて。君をしゆごしてをはします。
かかる所へ。藤つぼのをんれう。ころ煙を立てはせ
来り。八めんの悪尋となり。やあ頼光の夜はもと。山
国のをそちが一念。藤つぼねたみの一心に。会
つて玉体に。近づきて引さき捨。まこくに
なさんとはかりしに。せいめいがかぢ頼光が武勇。三
種のじんぎに恐れつゝ。本堂達せぬくやしさ
よ。つかみさかんと呼はる声てんぢをかべして
飛かゝる。人〳〵少も。さはかすして。じゆもんをと
なべ切立れば。あまてる神のをうごのかけひかり
に恐れてうづまふを。宇天王の人〳〵。すだくに
切たりけり。頼光すかさず首打をとし。八方にらん
で立たりしは。地国増長広目多門。誠に四天の
者こそなかりけれ
しゆご也とで貴賤上下をしなべて皆恐れぬ。
同一一〇
第六
其後。頼光。四天王の者共は。君の御供仕り。だ
いりに還幸なし申せば。あべのせいめい。かうき殿
の御供し。急キ参内仕り。若しんきんをいた
ましむるも。女御矢させ給ふ故。ひみつをもつて
御行衛。尋ね申てかへりし旨。謹でそうもんす。
主上ゑいかん甚敷誠にふしぎのせいめいやと
おの〳〵。かんしたまひける。かかる前へ。勢列のたんざい。
左千の太夫はせ来り。扨も。右大将かけかた。平の
左官重茂。すゞが山に城郭をかまへきんざいの
野武士をかたらひ。むほんをくはだて申也。捨置れ
なば。ゆゝしき後日の御大事。急キ討手をつかは
され然るべしとぞそうしける。内ゟのせんじには。急
本頼光立向ひ。逆臣ちうばつ。仕れとの勅諚なり。
頼花をうけを申つ。都合其勢三百よき。都を立
てそれがもせいじうさしてそみ向はるゝ。すゝかの城に。
なりしかはふたへ三重に押取まぎ時の声をぞ
上にける城の内にも。兼てごしたる事なれば。同く
時をぞ合ける。其時頼光駒のり出し大音上ケ。ふてん
の下に住ながら。君をあざむくふてきもの。頼光上意
蒙りて。罷向て有けるぞ。命をしくは降参せよと。
たからかに呼はつたり。重茂聞て。物ないはせそ打
ちらせと。てきみた入乱れ爰をさいこと
ける。坂田の金時。是をみて。ゑゝもどかしみかたのせ
い。某さきをかけんとて。れいのてつ捧引さげて。大労
に割て入はらり〳〵となきたふす。何かはもつて。
たまるべき。むら〳〵はつとぞちつたりける。時に城の内
よりも岩上大六。飛渕。鉄どうと名乗て。一もんに
打てかゝる。金時すかさず引はづし。ゑしやくもなくかい
つかみ。一ふり。ふつてなげゝればみぢんに成て。矢に
ける。鉄どう得たりとむずとくむ。ゑゝおこがましやをのれ
めと。ひざの下に引しいて。首ねぢ切て捨にけり。重
茂今は是迄と。打て出るを。渡部すかさず立問ひ。
しばしが間たゝかひしが。いつ迄時をごすべきと。渡るい
時をぞ合ける。其時頼光駒のり出し大音上ケ。ふてん
の下に住ながら。君をあざむくふてきもの。頼光上意
蒙りて。罷向て有けるぞ。命をしくは降参せよと。
たからかに呼はつたり。重茂聞て。物ないはせそ打
ちらせと。てき文かた入乱れ爰をさいこと
ける。坂田の金時。是をみて。ゑゝもどかししみかたのせ
い。某さきをかけんとて。れいのてつ捧引さげて。大勢
に割て入はゝり〳〵となきたふす何かはもつて。
たまるべき。むら〳〵はつとぞちつたりける。時に城の内
ゟも岩上大六六。飛渕鉄どうと名乗て。一もんに
打てかゝる。今時すかさず引はづし。ゑしやくもなくかい
つかみ。一ふり。ふつてなげゝればみぢんに成てぞ矢に
ける。鉄どう得たりとむずとくむ。ゑゝおこがましやをのれ
めと。ひざの下に引しいて。首ねぢ切て捨にけり。重
茂今は是迄と。打て出るを。渡部すかさず立問ひ。
しばしが間たゝかひしが。いつ迄時をごすべきと。渡るい
らつて打太刀に。かたさきゟちの下迄。はゝりずんど切
落シ。首ちうに打をとし。むほんのちやうぼん重茂は。渡部
の綱討取たりと。たからかに呼はつたり。景かた今は是迄
と。取てかへし逃んとする。定光末武をりかさなり。高
手に手にいましめて。勝ときどつと作りつゝ。都を
さしてぞ帰りける。千挽万歳目出度と貴
賤上下をしなべて比日かんせぬ者こそなかりけれ
源氏花島大全巻之終
21539
右此本者土佐少掾橘
正勝直之仍二章白ク附秘
寅有節遂相合一概一令二開板
者●
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同村
引付
らつて打太刀に。かたさきゟちの下迄。はゝりずんど切
落シ。首ちうに打をとし。むほんのちやうぼん重茂は。渡や
の綱討取たりと。たからかに呼はつたり。景かた今は是迄
と。取てかへし逃んとする。定光末氏をりかさなり。高
手に手にいましめて。勝ときどつと作りつゝ。敵を
さしてぞ帰りける。千挽万歳目出度と貴
賤上下をしなべて比白かんせぬ者こそなかりけれ
源氏花鳥大全巻之終
右此本者土佐少掾橋
正勝直一之仍二章白ク附秘
21539
家有第一通二瀬合一令二開板
省●
十四日同三丁目
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