日本武尊吾妻鑑
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- 近松門左衞門
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- 日本語
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- ヤマトタケルノミコトアズマカガミ
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- 東北大学
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一日本茂尊寺妻講演
嶋之内
二十六
布倉町
竹染
本武尊五口妻鑑善鑑近松門右衛門
一暴逆をいましめ兵才をおさめ。大をたもち
功をさため民をやすんし衆を和し賊をゆ
たかにす七ツの徳。御名にあはる天津丑神
武十二代の帝景行天皇十ツといひつゝ十
返りの春秋をかとねましませば。第二の姫
天神賢姫高穴穂の宮にて父帝の御寿
奈河晴助一
一ツ六歳ヲ為シもみぢの御賀を進らせらせらるゝつか
さ〳〵の太夫達諸のつかへ人思ひ〳〵のさゝげもの
一剱剣號鳩の杖糸竹のしらべ舞のそで
哥人文人和歌からの歌をも越松竹によせ鶴
亀によする砌のさゞれ石岩ほとならん八千とせの
はじめと。けふを祝しける弟一の親王大碗のわうじ
つゝしんで御よはひ一百余歳に満御加はめて方候へ共
なくれ国の政道に御心をくるしめ一日も御たのしみ
ましまさすあはれ五体あんらくに猶千年の御
長生あるまはしう然との給へは王子の伝当麻の諸
置気あへす御孝行の御詞臣らが願も此通今日
より天下をにきの御方に打任せ。御位をゆつられ
一御近後の宸襟をやすめ給はゝ。国土万民の悦と銀
のうち杖にかはくけよそほひ御国譲の御盃とく〳〵とすゝ
むれ共えい魚にそまず。いやどよ神武父すいに夫
王迄百歳に余ても存生に位をさらず。乱をしづめ
民をおさめ給ふ今わ中に帰するといへ共築紫
には八十の島師坂東には外浜の恩能東西に二人の
大敵やよもすれば都をうからふ朕が左右の病かれら
を退治せずては。天下に生たるかひなしとみことのり
もおそぬに。御垣守の官人あはて敷西国よりの賞
物とそなんの声諸共に七尺有余の夷男蛮
衣をちやくし西国と書たる籏印さんごこはくを麗に
もり庭上にそんきだし某は九州の大将八十の商師が
しほんの蘓のくゑはやと申者弟この姫君神賢姫
の御こと。主人島御見ぬ恋にとがれ夫婦の婚哀をこ
ひ願ふ。御同心におゐては朝敵の心をひるかへし。東国の大臣
敵外浜の恩熊をせめをつぼし東にさゆに二等にながく
る命にしたがひ申へといひ入のみつきを以姫みや御迎ひの
ため遠帆を馳候と奏する所に官人つゞいて坂東より
の貢物と披露し東国としるせし能押之髭かみあかく
夜刃のこときあら夷砂金のまろかせ盤につみ御姿のもと
小路是は東八州の大将外浜の忍熊がしほん筑
波の長卿といふ者。帝の娘子神賢姫日本一の美人
と聞及主君忍熊申請度のぞみ嫁せ給はらばてに
たいのやしんをやめ。つくし方八十の気を討たいらげ。東国
西国二等の御味方たのみの印国の加金をみつぎとて
姫みやの御廻候と奏向す坂東声声西国の使聞も
あへず。何と〳〵愚熊とやんが始みやを所望とや。先に
いひ入はつくしの惣官八十の鳥師の使は此阿蘇の鉄速
叶はぬ帰れと詞をはなす。いや前後はともあれ東郷の惣
大将。外浜の恩熊公より姫みや迎ひの使つくばの長脚
おめ〳〵と帰りそうな顔か見た。見たゝ津軽。かつはうの辺土
に住蝦夷人半分。こけ猿の如な顔付。姫みやせんたゝわよ
ぐばい〳〵ポア西国のとつはふれ庵介まじりの家牛喰姫と五軒
及ぬこといに物はるな帰れ〳〵。もうぬあれおのれかへ
れとせり合せり四道将軍の下司武官太備のたけ共
都もかけかけアヽ無礼御方しづまれ〳〵。さすが東国西国に名を
得し奢に似合ぬ不了簡姫みやは御一人望手は両人
一方にしたがへば一方の恨がんぜんに敵を扣としりながらが
と勅諚有べき様なし先此度は両方帰国。かさねて神妙に
そなんぜよと詞の中より。其歌と成東国の恩能神記記
けいやくにて姫みや所望と申出す詞ひるかへさぬさぬさいふさい
国の南師そすに何のこと并東国へ給はるとのせんし只今
と。東西ちつ太聞入ず。天皇天皇一々えん有誠に武彦申
通一方にしさがへは一方の類を扣とはいひながら。又両方の望
をかなへずは東両方の朝敵一度におみつて国の乱民
のなげさ擾なし此うへは神恩をあふく計也両方の使定て
馬をひかせつら。競馬のせうぶは神の納今遊上
にて三度競。二度乗かつたる方へ我姫をあたふべ心得
たるか成立せよとせん也有のぞむ所と領定し両人御前を
立志とみの陰に立寄うへ製椒さづとかに袖ひろしぼり
かりてよさまくり上ぐゝりをといて高にする心々に出たり。
東国はあをの駒其たけ八寸余り。かひにかふたる肉十か。
からくらおせかつし〳〵といり出す西国は白月毛かみはお
はなへは柳かぜにいはへて野取の駒まだかたなつけの口こ
わく白みがへん轡しるあはに血をませかませて乗たり
けり。さこんの陣の行廊に両馬はなをならべしが。そつと
都をかけ一鞭くれてかけ是は。きもんにいな書のとんで空
行月もの刻一さんに乗ぬくれば東国の方はくらそばへおどり
あろて高いならきあをづゝうつゝ十四五間おくれはせの馬
場末より。激速しつ〳〵乗戻し先一番は西かたの勝。二度め
のせうぶにござれと呼れば長脚大きにまけ腹たて。たし
ぬいてまんかちに乗出すな。五六へんも輪をけつくめを見合せ
静をそろへ。いふ三でのり出せてともかくもと手綱かいくり。しと
〳〵〳〵引廻しのり廻す二輪三輪にちがひに乗ちかへ〳〵
すきまを見てぬけがけに馳出さんと長脚名をばる眼ざし
くゑはやきほと見しや先はこざせしと。都をかけて一あおり。
かくを入れば飛あがり。長脚が馬のふと腹さけてのけてのける
程にぬしはたまがくまつさかさまにどうとうど落馬はおどろき〳〵
ぶかひし御門の外へぞうけ出ける。砂打はひ起あがり。よいゝ勝
負にたはず姫みやをうはいも東国の手なみ口をあいてけん
ぶつせよとのうぬ事に逃難打て逃出ればくゑはや高上なし
がら御前にむかひせよぶはつくかたの勝姫みやを給はる勅諚
よく相違は外ましともをせめたるけいばつめり。しこうの臣下手
に片の二たび返くぬ論言朕がけいやくたかへず神賢非は
八十の雷師が妻に定義式をとゝのへ日を着主て三るべし
外浜の恩熊をたいぢせんとの。此やくをたぶなと御いとま
給はり退出す国の境と二言なき君こそあまつ日のひかり
もさぬ。がけや。売ゆんくしみ。見めも心も人間のたねにはあらぬ
一神田姫ノ深宮の内にかしつかれ錦花帳の奥ふく長々
せ給へは。たが涙はかに見人とてはなければ。おほろげならぬ
ひじんの名。偽の外にかくれなく夷心のむる所望一天の
君のえいわよにもひゝに引れぬあざゆみ。八十の鳥師が
妻と成都のなとりもけぶあす計心つくしの御舟の内波
路にうれ候ふとて雲のうへ人女官奉朝とねにい
たるみざかりの花を山人のたまにくだく思ひにておしみ合ふ
そやさしけれ武官吉備のたけ彦妹の友妙に色々の染
小袖取持せお前に出前国の御用土もはやなり。東
もお供とは存ずれ共。都にも又人し皮一大し見挽だく
一則弟国彦同じ此妹をながく築紫へ召連られ外
のお供はあはぢの国武嶋。お舟迄との位が霧と
成給へは姫君の位を下今より平人の御身御身御髪を
もゆひかへぬされし表大坂に蚊御はまをも祝おかれ
地下の女の染小袖をめされねば先にも心打とけし
口をしとなはほしめされそ西国の敵をなだのれば東国の敵も
亡び国土安穏民あはれみの天皇の御仁心百余歳にあまら
せ給ひ御位にもかへたき。御親子の御別れいか計とかおほしを
此うへもなき御かう〳〵御きけんかく門出の御用意とそうもんし
御ちうたいのしんきんをやすめ奉らん。是妹国彦と兄弟心
を合せぶなぢをながざめ奉れと心をくばり立ければ。ふしやう
顔に敷妙にかしらふまへた大臣人師をいはるゝ。下主下郎の賤
の女でも女は氏なふて玉の医次第に出遊しへあるこそのほま
れ大けい日本の主天照太神主すそのながれたゞしい姫文様
つくしの薬のはて八十の鳥師が女房に。さゝ小腹の立名こそ多けれ
島師とは何しじやのくゞらにこそたけるといふが有げな。さぞまつ
くろなしやちゝこいはだへヲゝむくつけやうるさや是上らうを
此おに袖おくへもてゐてにほひをとめ御くしげ候するづき乳ならべ
おげかひのこと頼ますこちや手も力も落はてたと。御前の人々立
を見てつか〳〵とおそばに寄物をもいはず御顔を見上みおろし
しみ〳〵と思ひ侘たるはら涙何とはしらず姫みやも共に御心
打しほれ思すまぐみ給ふしきにしたへ泣も恥しけに袖口ひねり手
ぞは止り年月おそばに召つかはれいつそは〳〵おりな〳〵と打込今
申出すもおそれがましう。なかし。てんほいふてのけ。ほんにあられ
ぬ女が女にほれるとは神代にもき殿なと我をせいしいまし
めても。まゝにならぬ此心め。エゝ表此身が男に生るゝか。定
さまがおのこゝかならば。夜りのお御座へ参りお歌りとかば。一夜
のお情は有ふ物何のむくひに女子どしに生れ合。かなはぬ
思ひにこがるゝと思ふ猶思ひのたねせめておほかし又の生には
ふたりの才体は爰に生れて国夫婦に成成り天ちよつといだきかせ
て下されなば御忍の人のお恨とほころびそめし恋衣思ひはたけにあまり
けり姫みやはつと御顔あかめ扨〳〵是はいか成嫁ぞいの我もそ
もじに露ゝかけぬ相思ひ。女ごどしの名とはあんまりないたづらなり
ひきやうなことゝたしなめばだしなむ程心に心がさらひ猶ゑいやま
さる命といふ今あかしあふもぬかい縁と身をよせ給へばしき給へはしきたへ度
かと身もふかはれア〵忝いとお伺にいつはりなくば今申たそついちよ
つとがテとり成と。アウ嬉しいとたきつけはせいもん我もうれしいと
共にたき合しめかせて顔を合せ身重ね夫女〳〵といふ迄の
詞を惣の印にて何をちざりに下紐は上かれぬ中ぞしんきなる
□□□□□□□□□□□□□
有がたい精いよ〳〵みや様に命かけたり敷妙思へつく呑の為な
ればとてゐなかえひすの寿と成。お名
の恥無念におほしめされぬる。中あにの国産もこをかんで口をし
がり。のかれうばけふの中。あの軒のちのこずゑはお庭にしげ
れ共もとはらうかのあなさ是をつたひおかれば先は御門一重やす〳〵
とぬすみ出し候人出首を頼みつくの浦にもお身をかくし世の治
を放給へ始みやだいりを落給へは鳥師とても何とせん日も暮
かゝるよう御用れ〳〵とせく所に出御そうと呼はり女中の聲の聲の聲の聲あり女中の御
父帝の是へ入御成とやりそもじも次へみつからも顔さよめんと御粧
物に入かたの日くれまきまきれに始みやを伴ひ藤奉らんと思ひ
きはめて敷母が。太刀わきはさみだいはん所の縁の下はう〳〵し
のび御染水ながれをしたひ浜床の渡殿より椒景入者の小
庭にしばし身やひそめ給ひとふたる心の色も共に染なす紅葉
の影は御池の為読論を見れはアこはしけるこすゑの如にがれ
に万程に出立男一人枝に取付ねとりのみさをやすむかことく
かたちをすゝめかくれゐるすはくせ者と心をしづめ水にうつるを
能々見れはいつの間に及び入たりけん大碗のわうしの奉り
小猿丸く方あをのいて敷妙おのれ面は見しる。爰姫天の床
てん恋かぬすみか。そつと我にかたれ見のかてたすけ帰す。たも
なくばあんびんにおろしはせぬと声かけられア〳〵女高声すな
すみでも忍でもなし我君大焔の王子弟一の宮なれ共御父
天皇のお気にいらず。お位ゆづりのささもなる神賢ひめを
御てうあひはくせ物のないせうけんみせよと当麻の諸王殿のめ
がねを以元み出された小猿丸まる腰なれ共是見よ手裏
釼いくらもにぎつたり。都へたてはうぬを始人たねはあらせぬ左
まれ〳〵といふ間にて今出御の警蹕なむ三室我身さへ
人めを忍ぶしの竹の。君の陰にゆめをかくしめをもはなさずた
めひける。忝くも。天王は御人は御人にあまる雪霜のふりすて
かたき御発命ぬのひともづれ候を御伴ひは嶋の友王いけい
でんの孫ひさし御沓をひかれしは採桑老の日衣の袖かへす
〳〵もしゆせう也宮出むかへ参らせ旅立もはや明日寅残も
けふ計と奏し給へは龍眼に御酒をかけながらみゐの御ぐし
をうきなで〳〵。心に任せぬ人間世兄大碗は一の霊は一のみてい跡を
のぞめ共天性不仁不道にて民をあはれみ国をたもつき
りやうなく殊にがしうさやうまんの夜念ふかく。御身を男子と
しるならば。毒がいてうぶく承くいけてはよもおかしと。たんじやう
の始より一天下に姫みやといひなし。神賢姫と名付。たけ
彦が母のちぶさにそだて外には武彦一人なで弟の国花妹
しきたへにもしらせず玉ざれ凡怪のおふく野山の花を
見せざるは子を思ふ親のはかりと恨とな思はれそ此さび東
夷西夷あるひてのぞむこと御身位につくべきずいさる船中
にて国花弟にいひ聞せ真の女と心をゆるす八十の雷師
が憲の中。思ふまにちうばづし西国をしたがへ帰洛あれと。表
の下より交叉取出し是ぞ神よりつたへ先代伊球に納りし
天の村雲の双子万騎の味方と成立の守りと渡し給へは入
一御悦てうだい有父のゐくはうに御釼の神刀へはゝり。雷師を
討こと案の内とするりとぬいて打ふり〳〵引かへ男のまひ
敷妙見るより。扨は男か我興しあてた〳〵と。心もいさむこ
一点には。聞とゞけたとしてやり頬卿につくしなまに
都へては。手裏双うたれ五体あやうし。予何とと身をむ
所にたがぬる矢共貞身に真羽のとが矢一筋小猿丸が
のどのくざりにずつはと立。うん計に五体をあがき手裏海
うたんとはたゝけ共腕はこははり眼もくらみ朱の時雨にちる
もみぢ血まぶれに成て御階のもとにとうど落るをしきたへ
すかさずつと寄おさへて少したうわかせず。天王御親子おど
ろきさはせ給ふ所に。重藤のう横たへ兄の武彦かけ来り。
もみぢのしげゝに忍ひの者のかくひしと弓場殿のやね越前
見るより一矢仕うし。何者ぞ顔を見て息あば白物さ
せんと立よれば。しきたへ袖にて顔おしくしアヽ見ぬこと〳〵きやつ
に口を聞せてはえいまをくるしめ。大内さうどう乱のはしざいこく
お門出のさまたげことの次第は妹が聞置。きめつを失ひ只今
上のお詞を世にもらさねば。当分都御世いひつ何ことも先おん
びんと夕日のもみぢにかやく刀どめをぐつと指なし〳〵しざを御
にころばし入物一夷たいぢの御門出血を見給ふは一ツの吉事御
帰りにはにしきをめす印のもゝぢに候と云へと見かはすめの中
に心をそむる。こいもみぢ御門出て三辛十たび衣。着てかた
ひぢを。はりまぢへかゝらさりせば。あたを。ちさに御らんもないことゝ。
神賢姫をしゆごし参らせめい所おしへて敷妙が御手引
道の力草。見くざげの原に着給ふ。なぶ姫みや様。つくしより
のお臣ひは。あはぢの武嶋に舟よそほひと聞つるが。しほに
さこふてまだ見へぬか。しばく爰にとむかふを見れはあたり
かたの人家より東国こと印たる。大はた風に吹ぞらざせあづま
夷の二三百。打れに成て馳来り。国老おどろき妹みたる。
東国と打たる籏は。忍熊がせいの詩ふせ。君をうばひとらん為。味
方はにとねり仕丁計ふせぐべき筈なしばいとられては末代のかきん
つくしの母はなぜおそいと兄弟身をもみ心をくだに案しわへらふ程
もなく。どつとかけよせどきの声。つくばの長音上げいぞには負
たれはくん法は日本一旦稀がてだてを見たり。命おくばひめを
渡せ但所は海辺也。国彦のうし下に成共手里やうりのあんばい
見るかとひたばつたり。国老むつとせき上ヲヽ所ははるまがたた
の名すねひつうだこにてくれんと。姫みやを妹にまもらせ。
むかる中へわつて入しうおうむじんに切ちらすは油吹かせにひき
地のいさごをとはするみ事ごとくへかへれいても敷妙玉しも
その外心始みや御どう五召の爰へ敵が又来たらば女の手わざに
なんとせり。是上もけんと。大かたに殺て戻らいでおぞや〳〵と
見やか海手に波を切しいとうどうどうとこぐ互に西国といふ大は
た立成をこずだせりなふ〳〵姫みや様お迎ひ舟がそれそこへ子
人力じやと御手を取。波に半分おく立てお迎びおそい。東国
の丞脚か。姫みや様をうばんと大ぜい侍ふせ御なんぎのわゆい
中ヨシ姫みや様しつかと渡す。国彦殿も追付爰へ遣や〳〵と
いさみをなし我身も舟に乗所をほうぶり引ちぎり引ちぎり。ふう
ばたるにつゝ立。敷妙を浜へにどうと突とばしおかしやぐにんとん
で毎に食脚が頬見しれたか。し立出せ籠立久す
都の下西国のはた海になげ挽東国のはた押立て三反ばかり
これ出す。しきたへ我の身をあせう。いひかいなや女のちゑのはなの兄
天下の大にし出しけるとの家の程。おのれ其丑こぎ小せぬか。
姫みや様をかへさぬこと小石ひ給ふて投付〳〵さけび臥ては又立
あがり。立てはもだへこがれても。かひなき跡の白波にまかせて。
ぶねはへたゞりぬ国彦敵を追はひ息を切て立帰り。見
れば妹はなぎさにひれ臥沖にちらつく髭のあし
口をしとじだんだふんで気も狂乱沖をこんで立たる所に船中俄
にさはがく御身かろげに神賢姫。御衣をぬぎうけおたけびて
舟やかたおどり出給へ飛脚おどろきなふけが有ては我々が
身のなんぎ。ひらにやかたへ入給へと。立寄所をひつつかみにばりに
打付候共足にしつかとふみ付給へは東夷ら大きにさはぎ立
あのつよさは女でないぞ海へほり込打殺せ。足那をすく人と呼
わつてぬきつれて討てかゝる。こゝよいすいわやう女でないといと
ふんたる所をうごぎもせす。うづまく波のまん中へかんでなけ込
ひらいこみ。そこのみぐすに見ごりしてあたりにより付者もなし。
エまだるひやつらはやうしんでしまはぬこともへに渡せしろ
かいを思いとふりとし。なず立られて東夷のせい。小すみにかゞみ手
をあはせ。命をたづけ恐れとふるひわなく計也。予命いき
たくば。此舟をもとの所へこぎもとせ。やといへば。此通りと。かうべに
ひめめくろいの影打たてられてびくりしアヽ何様御意次第
と手々にろい迄乱てもとのなぎざへこきとを磯には兄弟。
いさみをなしできたゝねし候とてものことに毛長野国老い
りやう致たしこにそいでふみこまぬ思ひのまにはから人とかい
つかんでかろ〳〵と三たんかりへだて方袋へかつことなげ給へは
おこしもたてす国ひことつて引しきながすねがくび引ぬいてぞ
すてゝける。見ことふねよりとびおり給ひ。女の時とはかくべつ
に身さんばいよし心よし。国産まそつところで見たし。
のこりのとうゐはないか。たがしてよふとかけ出給ふ。袖にす
がつてこれ〳〵〳〵。たけるたいぢの御手だて。見どのちよく
ぢやうわすれてか。つくしのてうてきほろぶる迄はいつ
までも神かしさまもとのすかたになり給へと。からげおろせば
ふりさつて。かけ出るを又引とめきやうだい左右にとり付
て太聞へ入れない。天わうさまにかまするぞ。兄弟次第
にしてござれと。はねるをとゞめてむかむたい。小そでの
御かたし入れて。小つま引しめ引つくろひ。是そよけれ
神しのもどのやうにおひろひといはれてせんきなげ
くびに心もそまぬあゆみぶり。しやなら〳〵もけつまづく。
わかいくせにはそみやすき人よ心よ世よ月よ。花有実
有ものゝふは。しはしか内のわざはひもはれてくまなき
くもゐのたび月のみやこ跡に見てつくしの空人といそがるゝ
第二
京に袖似せむさきのかさね妻。あすは国人お嫁入二聖
の行烈に毛鑓数鑓大とり平波のちゝみの人君より。糸はしん
くのむすび刃だい笠たてかきお長刀。中におこしをはさみご
尉のそろへのくろさきや。により茶は世の朝あけに。わぢぶら
付あやざちろりがたつく草分の道をはやみて里を過昏
行共しらぬ日の築此条の方御が城近き御垣のさとにぞ着
給ふせんぐはちつさんざひの国彦おみしにつゞいてしきたへは御祝言の
かいぞへ役おそばさらず秋さりの浦山かけてふうけいをおこしの
物見はれやかにながめやすび給ふ折から飛脚のあしこし
ぢうを飛内は見ね共急きの状しきたへが輿けちらし見へるも
せず打て通るむしはやき国座まてめくらめと飛かゝり。四尺
間土にどうどのめらせふみ数さんとけあぐり候へきやつも去
ものじつと取調よりきものはつたやつおけよ〳〵置をろふ
のり物の百二百けちらしたとて何のこと。忝々八十九両師公より。
都大雄の方へ御取状のゑびの飛脚の其おもむきは此状に所
のやつか旅のやつう。悪外いたした御免あれと。土につくばい
さんたしろめうがしらずといはせもあへず取たるゝうて首ふ
みえなし。うんとかうべを一ひしざに。しがいをたにへふみとばし。
大磯の王子へ島師が有状とはふんの第一[サ]御覧ととく間も
おそしと状はこの封を引さき引ひろげくりへしませし国彦
見たる。尊九らんなされたがはつと計に詞なく文ふところに
おさめたる。兄のそうさめ顔を見て敷妙も心ならずなふ兄様
心もとなや何ことぞそつと聞させ給へといへは。さればゝゆざんの
ならぬ御矢大碗の王子八十の番師に心を合天皇の御はかり
こと尊の御身のうへどもこと〳〵くつぬけ御内通忝の神姫の
参り次第手たてに乗たりていに見せやす〳〵と討取天下を
わかちおさめんとの京師が丸状妹きもがつふるゝか。今年に
入るゝは幸々さらりと嫁入取おいて。ゆだんの所へとつと押こせにけるが
首は国彦が此手の内女のしやうそく取おいて尊にも御きせながだい
かさ立笠捨ちらかせ鎧子楯よとひしめいて御しゆつぢんぞせり
かけけり。尊ちつきたはぎ給はす。いや〳〵興気にはやつては父天王の元
いわよにそむきしそんずれば天下の歎ぜくなくと御思案有是
くつきやうのことこそあれ。兄ま子の内通によつて夜はいつかう男と
思ひ付んと子をはかるへ我又我又手たてにいてしき三人を神し姫となのら
せ我しきたへと入かはりにけるに男でないとを分明にしらずればその
内通きよどんと成心をゆりしおやに来らん折を待一刀にさしこません
此十人の分つ有ましじきたへかにとの給へは。かけ何とも一者の為ぞかはりにはとめ
てしらせふかふそめて恋衣鳥の小袖我小袖楽にきへて今よりは神ひ
め見てきたへ共見はす尊の御手だてくにひともじん也諸そつもあつとんし入
御さんんのしばし旨はかた人に御聴をおもふけるとはしらずしらして簡師かに
くつきやうのわきしや女に出たゝせまち上らうのおむかひあん
内すれば国差出入召見ればまがひもあら男おのれなぶつてやらん
物どんざんざんしく手をついて我ら神し姫に付そふきびの国とす
とも者いつれにもしよたいめんつれあひ東の御けやう。女中の
お孝も承り御一人つゝ御意得たし先かしらに垂たや。三へいじ
まんの大口べにはだへのつやの四十過炭にぜうのたまりしごとく
もこまだらのあつげしやう。のこんの雪のふり袖にかたらすその
けまはし迄入色の介いのたぐりなはいか成殿かむすびとめそひ
ねの夢のねたまし聞にほしとぞやすれば色のくろびは
親のとが口のひろひは生れ付せいのたかいはつぎ足入らず四十
ぶり袖なけしまだ。男ゑらみにふしだけてけふ迄親のふとこ
ろ娘名はしがらさとゑしやくして歩びをくはへ座につけば玉ひと
おりさしづとこらへ次に見へはねくろに平もとゆひのさけ
しだしかみよりおほき給ひげをゑり引しめてかくせえもれ
てまはゆきはで小袖だけなが〳〵とゆるみじが。女出立の男は
たそゑのらせ給へととかけ顔しらけて男にあしらへはふはと
詞におのつてさん候某はたゝろの大心とも者じこんは申ざん
すへごと。こゝびやくすれたるあいさつを腹からそれと気を付れ。
はつとにつまをかい取てとなら〳〵とあゆみくり。諸によせくり
世の波八十の角師にちゝまいらせ。そだて上たりたばぐる
此度の御祝言。花待つたり心地にて待上ろうの数に入
あゆむもその腰いたろ。耳はかつふつめはうとしよめきみは
どれどこにと身ぶりじまんの形にくゝ。国老立よる手の
はらめびでほのどしらすれは。なふけうがれや都人しるも
もない身をといへそんなけんによはないことゝがむかぬとこし力に
一便せ。づゝりつめれはあいたしこ嫁者様にあひとりといひま
ぎらしてぞゐたりける。其外なみゐるつきゝ迄からといしやうは
女にてすくり立たる四万廿五才はといはゝとひぢをはりのみとり
眼でひかへは鼻のさめたるいきほひ也時分をよもひくにひこ
こしをかきせなふおむかひの上ちうす是迄は我々のしゆ
ご只今こゝを渡し申しる処給へといはせもあへす
と立ける手し々に中に引つくみ。しげ〳〵とかの出す国彦する
さず輿の根先しつとつかみ春〳〵〳〵〳〵。凡土民の嫁入にも
更取渡す大ほう有。いはんやくばう女の下しこし入礼義において
渡さうと思いと四五間引もとせばとづくいさせぬ此大心が。見
もだこし一寸も帰さぬと引もとせば又引どし。しやうな大石こつて。
でもかけ石でもきへて見よと引立れはたぢ〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵
れまつかせと力の有たけ人有さけ。国彦人にあせたら〳〵ぴ
けばかへしかせは引仕のされ源の姿になれかぜにも青柳のよる音かま
ことくにて足をさたかにふみねたる大心せいて大音あげ此こし成非
に男神し姫と偽り。主人雷師を討とらんとのばかりし。大しない
こしの戸越にさしま也。プレつけ〳〵と呼はれば国藤つと手を
はなしなふ大殿しばし〳〵此こしを男とは心得ぬ一言。ねよ
せんまのろんむやく。男か女かたつためでしるよと。見てみたがび
をはれられよといへばそふよと立よりて敷妙ことは不ろしらず
おこしの中て手をうぞ〳〵。飲らふてやびつくりし。飛のいては
又立よりさがては猶ひろくり。飛しさつて三はいし。色がひはれ
た国彦慮外はそこの御礼なしおこし慥に受取申。いざお手を
上られり。御ふしんしはれて東に珍重御じふんかゝお手あげ
られう。いやそなたら。こなたら一度にはつと立あかり。けい
一かう天王の姫みや神し姫主人雷師に御こんれい御こゝいれ
の供廻り。行烈そろへてふりませい。はつときへて立ならびよはひ
太露の大とりげし。御代たいかき家立足。とれにはさみはさみはこ
万々歳とふり込てつくしの城へとし入給ふ雲みを爰に
あまさがる九州二嶋の浦々迄八十の南師にしたがひな
びき新に御殿をみがき立神かし姫をうつし入后の御所と
かしゆき我住やかたら盃の御座夜の御殿朝かれるにゑ
どのなど天子をまなぶ身のおごり人もゆるさぬ万乗の
そゝ頼もあやうけれ。夕へはほしの数よりも御殿のともし
かゝやけど。おくの出入は人をえらみ。参りつかふる者とては御かい
そへのしきたへ。吉備の国彦たゞ一人申上べきことありと。御座
のしやうし押ひらけばなぶ尊のけん歟と。めづらし顔にしきたへが
しとね出るをわんとはたがたがこと神し姫様外に聞人なけ
ればそ。そそさうではきづがひたへず。急度怪根に御入あ
そばせぼんにみづからは神姫お顔を見ての嬉しさに我なし
を忘れし恥しや。草のけんかへにおわびなされて下さんせ。ま
だ尊のいはぬこと。エゝぶきような妹めとしかりこかて心付
我でにちやつと耳ふさずぞざうはまとたはふれてふつと吹出す
計也尊御鼇色にいて汝を神かし姫と名のらせ是迄はしのび
あふせたれ共。心ゆるさぬ敵のていけふ迄迷へも入来らず。いたづらに
日を過す所。こよひ主人雷怖おくへ参り筈也とくゑはやが方
より内通有本望とぐるはみよひのこと。雷師が来らば酒をすめ
ねやに伴ひ心をゆるさせかれがね入折を待一刀にさしころ也
日比のおしへ忘れはせしに色をさとらるゝなはやつてことを仕損
すな心へたるかとの給へは二あのみづかに島師とねよる。アゝつがも
ないこと計。鳥師をころも計なり。たとへ此身をさざまれても命はおし
ます去とては君より外によの人と帯剣ほどく御用なら。
ゆるてたべといはせもたてす国彦ヤ郎女おのれも武士の娘
武士の妹。なせわつはな心をさげぬ。しぬか計が忠てもなし。友は
ぬことに身をくだきならぬこともなしても何にぞやおのれが恋
にかゝまれ玉家の火をやぶんとは見かきり果たる心ていとお
どても猶聞入す。エ兄の忠義の犬の大へのとやかましい。こなたが男
の道を守れば。みづからも又女の守る道が有。しぬる一生三人
の夫にまみゆるなと。母うへのものげん。高いとはいひかはして
一度は思ひをはらさせんとげいやくの我夫殊更かよとす女の手に
さ鳥師を討ふやう討れうやう。しぬがとなるとなると仰ひ
露よくそむゝまし其かはりにはたつた度御かてんかゝと御手をねん
国もさし合打明てこほす涙ぞせまなけれ国彦ほつともて
あまし。大のまへの小事妹がなつて致やう。御了簡もあれりしと
いひ捨て顔あちらむ〳〵尊情のたまるの。二人の心くみ取て猶も
ひそかにいふこと有しきしきへ来れとなを引てしやうし引立入給へは。
扨ももぎどふ手ばしかい。妹がはつ藤兄の身でのぞきもならず
立て入も諸きつかひか□とふがなく不便や京の女房が。今晩な
どはさひしかろ。あずも日知じやよい空やとほとはしをかぞへていたり
ける恋はわりなきあづた弓。八十の雷師は姫みやのしん所に逢ふ
なげたに露ふみ分て飛石の道を手しよくにかたやかせ間の
戸いと〳〵音づれて天津空介君ゆへに鳥師があがれま
いりたり。けふかくだいてねて給はれ都の姫とぞ申ける。国彦
聞付さ来たは。すたは。すぎほとくや曳もまだお仕廻てなさそふなま
たせては首屋あし内へ入れてはことのやぶれバアヽヤイヤ
せんとしばしばしそしそれるゝとかくいふて隙いれさせんと
しおる及ひつそふて俄につくる女声。たそやたぞ合のこをりに音
するは。みつれの夢がまだ里なれの暮がまだ里なね也。けふ迄まさせし
恨有帰らせ給へと申ける。島師はよしを聞よりも。御恨はさる
ことなれ共爰にたとへのおほしますだにの大木道かいとてみねの
小松にかげたゞす風にもまれしくれ竹も。小鳥に一夜の宿をうす
たで打とけ千人心。ひになびかせ給へなふ都の姫とぞくどきける。
国差おしさじつくこらんくもにかけはしかすみに。千鳥と。ひけれは
鳥島聞聞て扨は及ばぬ恋との給ふかや主有人をこふるこそ
雲にかけはし霞に千鳥といふべけれ御身我が妻なれびふ
一一一七七七二二一五十一
に及数年ことぞや山といふ山にかすみのからぬくやもなし女と
いふ女に関やがり女もなし恨をふりまて。おなびきあれや都の姫
其入られぬとごどく内。しやうしにうつる人かけを国彦見付て
是迄お返りなされと戸をひらき。東に顔を見合せて今
のはおのれかが吉備の国彦とも孝の国彦ともお返りとつくばいながら
こたへねて吹だせば。勇師もおりき約でけし気がいやつゝま
ぎらしてしん所へゆかんとする所をやりわして国老おのれよい
しゆび妹が手迄渡まし一討にてくれんとはまはせ折身を
かためねひよれば。ふもう。なしや何する。。或あらば呼べごと行すご
れば又かけ寄ふりのはぞらさぬ顔二三度四五どすきをあら
せずゆだんせず。国彦をかいつかみ大地へとうと指付。俄に合
ぬのいかぬ難付。人はなきと呼はればくえやとこたへかけ付る声
に方も走出。見れは鳥師が手込にて。国彦ははねかへさん〳〵と
身をもんたり。そつくおどろく気をしづめ。きのどくや又すいさやう
か。よの酒のみにことかはりかたがひの立するぬきくせを殿に見せ
ましましたなはおしくつみゆるさるゝと世上のた人みつから姫みや
一付そふしきたへと申者申者。物の願ひのおわひことゆるしてたべと
わび給へは。介しきたへ聞及ぶ。此ゑうたんぼが妹なりよい〳〵はゞめて
島師がねや入酒興ならばたかけ置去ながら。ゑひさむる迄
しばり上い後のしつけぞれくゑはや壱松の木にからめおけと
引かんで。投出す尊の詞そむかしと国老かまのゑひ。すはといはゞ
しばかなははり切てくれん物と。性恨たはひもなき弟。そら
ねふつてそゐたりける姫みや風のさぞ待ねみづからあなひと
しきたへは。手しよくを取て先立ば。くゑはや休息〳〵と案内に
〽引れておくの間に島師は姫を一め見てひつくりおどろく片かほ
におくばかみ出すにが笑ひ。気に入たり悦びはなにちら〳〵見へに
音尊のしやくの三々九度次第に廻りかわけも数重りてふく
る夜の天も酒にゑゝりや島師心もほれ〳〵と。ひぎを枕のうたゝ
ねのいびきも酸によする時岩にくだくることく也折そよけれど見
こと一は奴ぬき出し心とを一刀と立よる間もなく島師がね返り。
たんとうめくも感有てたけり。釼をなけ捨さもの尊。しやうしの外へ
ぬけ出て内をうかゝふ気も落付ず息をつめておほしが。又すや
〳〵とね入はな尊志やうしに口指よせ。まく〳〵姫宮様新さへら
とてこはいこともろにもない鳥師のよい時分にぐつと引しめ御
ちそうなされそれ。御馳走としらすれは尊のくかい釼そつとひろし
ひざる手に臥てさし返さん〳〵とするねもふかひ心はやれば身
もわな〳〵はのねがた〳〵がさ付ひやうしに又ね返り。ちやつと剣を袖
に入いんの子〳〵となでさすりそさぬ顔もあくめり。鳥師むつく
と起あがり。なん〳〵ふしぎや我のどに。くちなはまと思ひしは
うたゝねの夢で有しよな。たけるけふ迄かかきくかの夢を見ず。心
得ずと不興顔はつと詞に品付ていや〳〵ふしぎなことでなし。福
におまかな有た物此哥紐のしまつたをくちなはとは思ひなしろく
におよれとたらされて。けにも〳〵なふ神かし。何と鳥野はかわいひか。
但にゝいか聞たい〳〵都をはなれつくしの薬頼みに思ふは殿おひとり。
いとしいのかはいの段かいの。云哥い命取元ゆ〳〵とうつゝなく。心帳
いまつそれ入にける尊とつくと御するへおのれが口から命とり
こまことはよい口うらしゆびはいかど立て見給て見おくをうひ
給ふ折ふしば。ぼく思ふりかゝるもなくじやうじやうしげやぶりしきたへか
くび引さげ鳥師を討んとはかりしゆへ。神し姫がくひ取たり。都
より来るやつぱら一人も残さず打殺せ。者共出あへと呼はり起る
尊はつと御身にせまり火也爰ぞと立かくれかたへに御身を
忍はるゝ国彦も案の外尊はいかにと身をもめばもむ程しまる
しばりなは。そ無念やといかりのはぎみ。鳥野は出あへとわめね。
一猶せの狂ふ五たいふさう六みん六腑む事にあまつて
木の根むか〳〵土はなればなれてやしてやつてうんとしや
くればゆざくゝ。当師もあきれてうつうと見る間程なくとし
ふる松の木木を根かぐへすり引ぬいたりねみゝにおとろある師
かぜいくゑはやを始かけ付る。ヲまつかせと後手に松の木川さけ
めつた打如何かへおそきくゑはやがかうべみぢんに打くだきむかふ
者をなず立りなゐ師がいかりは鳴いかち。手葉せんとにさすが諸
をしたふて三重廻り。尊者の御剱をかい込うす衣かづ
き鳥師をめかけむかふを見れは。あれにあれたる鳥師が
いさほひ出のき侍受こんでふせんと待共しらず走れるをやり
通しかいなからんでしつかとだくきれて事共せをかゞめ。一ゆりゆつて
ふりほどき大手をひろげ組付を尊ひりと御身をはづ後さま
にかうべのみゑいとつんで引立る引たてられてちが足引どせば
におとりし。はなさんはなさしくまれぐまんと。れゝうこのはげみなん
なくにはきに乱て引付御奴にきも先一刀ぐつとさしもの八十の
島師うんとのづけにそり返るを猶々つよく捻付遠く
に物申さんおはし〳〵と智をうけ何条おのれらが釼さす共つく共
我身には去ましと思ひしに。くるしめたへがたや六こんはしきをのうらん
鳥師がさいご今此時じんじやうにゑのいてさせいふかし海は
たそと問ふたれとはおろかけいかう天主弟二の子。いせん手にかけ
みやしはしれたへといふ戦つかへ女神し姫と宮のくせはおびれを討ん
はかると王位にそむく天ばつの奴覚たるをの給へはされはす〳〵
つくし九り国いきつきた湯四分の其中に我にうへこすゆうしや
なけれは東国も心にゝかず凡も本にひりしやは鳶師一人と四
海をくつと一のみのあどくひちかへ御ふる也。万郷がうんめはくるにあら
すけのゆう刀けいりやくの我に来ざりしゆへそりしゆへそうしゆへそりしゆへそうしゆへ
の武士のつれ。末代ほうしいぶのしん今り御宮を改め日本武の
尊と習師がまつごにきすかゑぼししなげ也といはせもたてす。
朝てに国賊双の身を以て。尊を乞がしばしよとはきつでい千一刀。去な
がら余の者千騎万騎よりべがひおけ給ふてきのゆうし心を改
きふくせばくいないきせて古かはん。うさんせよとの給へは事御暇
をへはつと見ひらき。万一亭くからん時かうさんとすめなば。ゆうしやの
万レを捨敵に一味有へきか。よもやかうべを土にかへ付。味とはの給ふ
まじ出ることならぬは天命鳥怖く天下をとかへ。京行天皇に
あはふかせんと将親の名を得し此かだ。心をひざくだくだくだくだくだくだくだくだう
がれいまはしや〳〵情あらば敵をかし菊師が首蛮師が手にはねが手にはね
落れてくりやりまいかが聞ゐたりと成をぬき心任せどつさはなれれ
よろめくひざをゐなをつてかう文をさむけ涙をうめ。恐れ有ことなら。
ゆうしのかさんと申とかりにもいはぬいみ詞/朝敵の名をかだにとめ。
末代に砂へのくせて情有尊に引る鳥師がこんはくは。うさんと詞にそ
出さぬかうべを落て其後に一いの印を見せ申さん此詞たるばから也
たは朝敵心は尊のしんか成どからだからだ心引りて金石にとめしる
さすと剣をぬいてうなじに押あて。我と我手にゑいうんと引まづく
させつるきれて首はころり落ると見へ古にひゝりことび
あがり眼を見ひらさはをたゝきふすまにくはつと吹かくかいれはち
京のかくれない。神代も聞ずたちに日本式のみことゝいふ
もんじあつ〳〵と吹あくはしかうべ眼もしほむることく。草のまへに
とゝり落さいごの一句こんは暮になびきしたがひしゆうしや
の終ぞめたましき尊不便と立寄てか文を御衣の袖等のせ敵ながら
もこゝの後士今より我なを改て日本武となのる上はたけりは尊がゑぼしお
や守りの神とかう文を持いけて御言になさゞりし残念さよと計にて御落皃
そ有がたき内も移さず五頭二嶋の国主城主国ひてが取次にて我国々
の歩せきを捧皆御味方と平伏しさいかい一とう。納りし。朝てきたいちのごと
ふき事は都へがいぢんの。にしきの教ひるがへ悦のわる。与ひゆへ言ゆふ語
つたへ聞て食世にゆる者の手本神日本式の尊とは此時よりぞ名付たり
第三礼之
一代の勲功騒人の筆を光し千歳の日かけ忠臣の名を
つかぬく。くしの朝敵八十の島御こびて第二のみや男体を顕し
女まとたけの哥と称じ奉り久州すてに平きんのよしていとに
ちわん有しより。此じやうんく下が下が下迄尊の御名を重し。
御位はやまとたけといまだ御きらくなき中より。御ゐくうならぶ
方もなく諸郷残らず参内有御悦びをそうせらる。惣行無状
の大磯のわうじへんしうがまんをさみ。おなじさんこせおれしが。
程なく王子御たいしゆつと呼はらぜゆるぎ出たりきやうそう。薄
頼のかんふり引なをしさながら天子の出立。文帝の玉床の辺
童に大太刀持せ大床につ立。さふこと〳〵敷さんれつ弟のみや
西国たいぢの悦びな。見くるしいへつひ。きやうぼうの内より女
とそだち。今更何のゆう力有て手がらせん皆当卿が油断
よりそび合たすらしいしやうに。日本一の武ゆう日本庄の
尊とめたりとて。すゞにおのれが尊忠のわうじやくぶ
じんざぞ面々が心にもやまとたけに御国譲位に郎と思ふは
大成帳館父天王は一日余来の才もう死人日歟勅諚も
せんしもこさいなしと合思せよ。此大雄を茂る者とうかまに者
の心てい。かんしよく一々見なり置恨いふか礼いふる時節有らんと
に〳〵敷ぎろ〳〵〳〵人やとし姫卿おほらすがんふりさげあつ
とひれふを計也。一かりまのせんもなきにむかひのこしを御防
にすゑさせれつ床の名の衣紋はかまをふららしえいを
袖にひかけながら直にとづかと乗給ふ無礼のふるまひ。おそれ
て誰かとるいべき各加文をかたぶくれば御太刀持の童子
のもたいじゆつお供参れま。いれ〳〵とよべんばこたふる者もなく武
官丹波の絵田兵士あまた引くし南舌を中に追取まき
藤蔓又にて約たりなはあみ輿にはゝりと打けそこをまはして
四方のすみ〳〵〳〵かゝみ付しめ付左右の戸をくぎじめにひづし〳〵と。
打付らるゝ槌の音心計はうへ見ぬ鷲の見さおれたるこ
とふ今迄免伏す公家をもそれ見たるよい気味とめま
ぜめびさし笑はるゝ八織田こしに近付。天下の補佐とも成
べきに子の御身にて。ふかうふじんの御かうせき。皆御心におほへ有哉
行によつて佐渡が島へゆざいとの勅諚なりとのべければ太腹の
立大破程の者がやみ〳〵ときかられひつふの手にたつなめらる。
無念〳〵とのび上るもせくゝまり身をもんでもはたるがすこしの
のまどより顔さし出し。おそく雲のあなたをも見ぬへ王子。父天
王の内心をしらず。給ひげ顔にばかされ此所にあふた人まの
諸主がとつくあんひを極よとすめし物エヽこうへい〳〵もろぬしは
いづくに有心を合せし諸主も見此がアヽ口おしいと身をかんで
ろうごしもわるゝ斗にはだ〳〵だねつおしつ物にくるへどせん方
なき八総男かさねて。たへまもろぬしは君にあしをすめしとが
今日しざいめしうとのていを見せ申せとのせんじ諸主ひけと
下知すれは切なはの高手に手口にばいをふくませしは。こんごとゞめ
したくはせぬ禁ろうこしのまへに引すゑられ眼に無念の涙
をうへおそ〳〵とおめくひ也。さもの王子しぼしと。おことがつね〴〵とつ
くむほんし大内をせめやぶり。親弟を討ころせるをのはてくやむ
なとすめしを延引東に此ざまめんほくなや。今日首を討るゝ
とな我も今ながさるゝ嶋にて病死したり共一念は又の生には
くはいとげん。おこともさいどに此人を忘る夜ざ一物の思ひ出てう
ふくのためためたいりを一にらみにらんでしねと。なづき命のびあがれは
一八俵。それめしことに我まゝさするな泥付ひけ。ろうごしやれと
わろしを外に引出しげいごきびく先ぢやう兵士こしの前後に
兵具をたいしねこみづれ出さんとせ所に吉備の武彦しぼしひ
たゝれさる間もなく取はかまにてなふ〳〵ろうこし待てたべ御そせう
〳〵と命をかけて走付。御殿にむかひ涙を給へ御親きの御中と申。
加へんの人々を指こへ我魚にの申あぐるもはゞりおほゝとあぐるもはがりおほゝとあぐるもはがりおほとあぐるもはが申あぐるもはゞりあぐるもはがりあぐるもはがりあぐるもはが
ことながら。王子御兄弟共に我が母ちふさをふゝめ参しせ申此子
は此武彦が乳御弟やませたけは弟国彦が乳にてひとなり
給へは。恐れながら乳兄弟母がまつごのゆいごん。よたきけ武彦
いか成ゆへに大磯の王子はいとけなきより御思ひが〳〵しく言むざん
の朝人させいじんの後が思はるゝ人と生れて人の道にそむけば
人にかはつた死をする。お身の果のいたはしや。母が詞を忘れず
一日子に身をくたきより。御心をためなをし。人となし奉れ是にまたり
孝行なし詞をそむかばよみぢのそみより勘めぞと我子のことは
一句もなくやしなひ君のまを。ふびしにの母がゆいこんほねにしみ
立ゐに付て御いけんあるひはすうしあるひはいかり陰に成日方に成
御心のやごり有くみほさんかへほさんとはいたせ共。脇よりすゝむる
悪心はふる殿にて今此つみにしやみ給ふは此武彦が六かひなさ。
残念共なげかし共皇路にさまよふ母が恨したり母のかんだう
うくる。忍ッの悲しみ。いからいうへのあはれみ王子のさいくはをゆるされ
戦にあげ下さればせつかんでうちやくを以成共御心を我なをし母
一生の歎奉んごの願ひとげ申たきごん上情ある公殿上人御前
近き上らうを。てんそう頼奉ると御階に手をかけ置さひを付歎
入てぞ奏しける。王子顔さむし。せはやくな武彦ざどか島へながさ
なれば嶋一ヶ所の天子は此大碗天子に父母なしむつかい都より
親もたぬ嶋がましと。ひるまぬ顔のへらず口はだとねめ付。其
根性よりもござま。両人とこらしだいりを出し。都一里はおくびを
討といも内迄をしらずといふよりハヤツともゆる火に水かけし
すくにて顔引入り有哉ざすが笑心と見る所に。女計の女房
のたが妻ぞ共為筆の好ひ物したる紅小袖すそは花田の平
かのゝゆいしよ有けに武彦に不申やしつゝと出どなたぞおとりて
頼ましよう。私は此武彦弟きびの国彦が女さゞなみと申者夫
国彦さい国より申こせしは。やまとたけの尊御おのござまへのかたちを
あらし八十の島師をもろばし。つくゝの果のはてと波かぜもなふ治ル
とは申せ共。東国に外が浜の恩能といふ大敵。まだ〳〵ころいあぶ
なひ朝敵が。天王様の御ひざもおはなの先にきよろりとし
て御代をうばゝふくつがへさふと明くれたらし悪人あんぼんにいけて
置るゝはとらの子をやしなひ剣をだいてねることく。はや〳〵くびを
はねられずば国家の大ぞとがはまへの恩熊に味するは今の
ことすでにそせうこ。八十の音番師と内通の状。道にて行合飛
脚をちうしよばひ取て指上る。少々たれにもしらせずち
方一人さんだのし。此状をさゞげ尊様も此仰とそなんいたせと
一ツがきにして猶々かきに迄。死人おころしなされいと。くどふ申と
されし返付も落しもいたさず則是は内通の状とふところ
よりも出すを方ろ〳〵ぞさう申な。我に渡せと武彦とり
付びやならぬぞういふこなたがぞさうじやと互をもいでひ
つたる。是武彦さま父御様。大のの天下のせうこに成状。
りふじんにそばからおさへそさうとは。弟御に手がさせまいでか。そ
わやおとなげな情がない。介さて彼がめのまへ上へ毛状の上りを
見て。悪人のざいくは極りきびの国彦手がらいたしたとの。南替
を聞へばかりいたひさをいなことかう〳〵いごかさぬと。おとこ
思ひの詞づよけに似た者がめをと也是弟にまがらさせま
いためとは女のひがみ。大しに事によらず一旦文にもしらせず。何
たへだてしつくしのはてより三百里みなたの都が成しせつも
しらず女のぢさにそうもんせうとはをえぬやまひに聞
及のりやうぢすることし都の答人悪人は某かけんみやく
でも一寸やらず。きればきるたすればたすくる。弟頼ぬ〳〵。
ふゝみやくを見たゐしやどのりやうぢうぢうぢうぢうさんなしに都
の悪人々神かし姫はもと男。其方で打ころせと内通有く
もしらぬいしや殿見たてがちがはふ。けれう弟御がひきやを
どいへ状をうばひ取たればこそ妹御が成かはつて命を捨高さま
もつがなふ。梟師が亡ひたはなんと。あぶなひかげんではなかつたり。
是程の名人を見のがしにしては。候へもとから鳥の立非ことあ
らふと。アヽじめるじやないが国彦殿のふるい案善にもせい
更にもせい我夫のいひ付をそむき。こじうとの御意にまか
せるが女の道か。めん〳〵の女房にとふて見たがよいわいの。そ状を
上へあげねばどうも夫へいひ分けなしと。取付所をつさりけるを
ふまへた武彦が心もしらずたかし過たる女此状が有ゆへと
すん〳〵に引さき捨たりけり。
東四十七
つさけびよい〳〵ぶんしやうおほへてゐる。悪人の名をきていふて
のけんとのびあが。いふてのけては物がないといと口をおきへ押ふせ
てもいやといふ〳〵こりや大の場じや都てくれと男思ひ
とも思ひ身を振てせりあふ所に出御也と進ん中そよめ
き天王見ゆれの御有様せいじゆかたふく上にさへ御殿の中は
手上るまにもめされす。御杖力にたよ〳〵よろ〳〵と。長はゝの
高やる哉志とねに着御成けれは武彦も守波もあつと
しさつてひたひを地に付恐れ今ぞひかへける君御声たが
〳〵と武彦が願ひ国彦がちうしんの便。女房が詞皆のこ
らずつたへや心は各かはれ共落る所は国のため上のため出
といひ孝といひ道を守る者共かな金銀しゆきよく計
を煮とせず人たる人そ世の災只国賊とはあのまたな
此度しざいにおこなふと。父とて愛の道しらぬに似た
れ共。上に立身は世の読不孝不仁の悪人は。天子も其とがの
がれずと我より手代をあらはて下万民のおしへぞやされ共
ちをふゝめし才母かいゆいこんをまる武彦がかう〳〵はもだされを
しざいをなだめあぐりぞひつふ下らうに押くだしごぶしはおろか杖
をあてゝせめなをしそれにも心たゞさずばとふに及す首をうて。
親子のたいめん是かぎり。さぞ親の顔見たる共あやまし我も
忍人の顔見たしとはゑね共おんあひの情に。うたれしくびの死
顔を見てとせんと計にて御涙をばら〳〵と思ひかねさせ給ひ
ければしこうのげいしやうんかくも皆々袖をぞしぼしるゝ
武彦も□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
に余り朝恩とすんど立てろうしのあみゆんどきくぎこぢは
なし。ゐさいはせんじの国すぐにしたくへ御供と王なの身を取引出
せは恥けに打たぶき顔をもあげずあゆみならどもをにく
さうにくつとねめだる眼付。こは。めん〳〵の身を恨ずたがしつ
たこと。あの根性をさめなをさふとは合点いかぬ武彦丸もし
なをらずば御兄弟顔は合されまいヲおほなをすもなをらぬも
武彦が此物一弟嫁も弟も手やひ頼ぬしあげを見
一よ先おいとまへと御前にむかひ夜すれば帝とかふのせん
もなく御涙にしまれたまひさぞや世の人の十善両
百の由位には苦もなしとこそ思ふらめ数ならぬいやしき身
のよろづ人におとる者は昔も又おとりてすくなれぞ。名も位
も感せいも。よろづ人にまされば吉も又人にまたりこ
と聞天上の日しよく月しよく此土より見ゆれ共月日
の神の御くるしみははかりしられぬことくぞやそも人間のくは
ほうはたとへ山かつ磯のめも。孝行の子をもつはくほう人やつ
きの家七はん万ほうあきみちても。不孝の子を持ものを。
世にくはほうなすひんじや太郎ぐわれ天か下の主とてなび
かぬ草木はなけれ共不孝不義の子をりでは此日の本に
戦にまさかびんじやもなくにれにまさるふくはほうなじ〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵
よしなの位や物うさながいきやど。御ざりの御欲立
あらんとしゆへ候。御足は老木の腰なれ松[リ]よは〳〵
よろ〳〵どゝぞ座し給ひしをくぎやう立より御手を引合な
らせ奉れは人々も涙ながら王子を先だてたいしゆつ有。神
におなじき御身にも物思ひあが子ゆへのやみ。恐れなからも三重
君はわさ米わりづからうすよ。ごぬる〳〵はふみで見る。
さまの心はあさ木のぎやうにふしの有のは我わるゝ木トツカラコそ
りやたがわるいよいはよいねよぎにすらなくからうすの木は足でふ
まるゝ花のさゝ木は枝もおらせずやなれはみどり見こしの松
に子とへば何の御用かおくのお庭の下にしごと木のやげ
のからすも花の雪ふむけしさろとねりの幡槌木を
わるさし何と安十思ふぞ。殿の御両主といへばおゝさまの
御意とて。ぢり一本置ぬ大しのおくのお庭で。奉り仕丁
のやくでもない。木をふめ木をわれとは。殿非のお留主にたゞ
置ぬ盛に定しおそばのとしめにもぼろにもぼろさむしらせ。
ちんしことかなさせられう。こまかいおく様でないかいな。何にのい
やいいふても吉備の武彦様のおゝる。げびたこと御ばんある
物か。やゐ共が米木をぬすむによつて。それさせまいでおく
のお庭で。おく様の御意とはおまかないのちりやく。そせうには
中ゐ共が腹たてゝ。薬を一ツぐれぬ。そうたい此季の女子共は。
兄弟やうて見ることいふこと付つそへつそへつたへつそへつけて
心せいといふ所へ中雨のわかなる走出是とねり衆向の音
も木をわる音もせぬとてお風是へ吟味めお出のらかは
かず共せい出しやしやといびちらしてかけ人はそれづゝぬけた油断
がならぬわつてのけふんでくりよふみもならふきたからかすを。
武彦の妻おほろ月八さいもたづ若いざなひゑんざびに見へ
けれは。そりやしかられなとひくひに大あせとづからことつから
うすのさほの哥。木わりがこびんなけふりにかぬさきよりこかるらん
女五十二
〽是々大ないしかりせぬいひ聞するごと有番へ〳〵と思ん先
に近ゝ召よせ吉備の武彦といふ仁義呑ぬ人がひし
らぬ女屋とかげざたも心かし皆の者のしんぢうわる夫婦名あつ
かひ聞て恨をはれてくれか猶もないこともないこともないく心
しま殿が申おつし組々の御意んでもしみ付た悪念はなをらぬ
色くだしてかさしほふませのため。からすふませ木はらせても。
武藤のめのまへ計。愚人ながらそばから見るめもいたはしく。なすに
なれば此ごとく皆にほねをらせ是に子の御志ことゝ間に
合せづれあひの手まんをつくらへ。此高くろうすいてくれこしと共
勝ねで九こんのませほとびとらせよやかてはふりやすんでくれと。
げすをす詞にのり。上な御夫婦の御くらうはあそばせ共どうで
木の元ですゝませずは。あのさんじやうはなをるまいと。世間一はい取
さた。名こそ多けれ大王の王子とはアゝ大しよくしさりな。あの
わろにふませたゝけつくはんまいの御そんで有ふとそしかせて。
これ聞てや王子長江方やみゑろしつゝ出事に付あぶ
同然のとねかめらずいさんな丸が評判今の世に道を守り善人
いづくに有砂シとおかた。愛だべ水がも気に入ぬこと有共にもこ
ろしはせまい道しね父藤。かた引にやまとたけをあひし丸を
るざいしざひとは敵になれとのしき此物に亦案有て世を
ひられ雀を待ケ某に。武彦も聞えぬ。かふりをひめくぎあのたな
にぶぢ上。だうし物の外に下々迄恥見せ。そ上に木をわれ
米をふめと飛がふんだ米のゐにかしきもつたいなし共思はずたかくかふ
けすめら見ごとくふかぬかせやつとねめ付けれどねる丸身の毛を
立アヽめうどない王子のおふみなされた米何しに人間が
たべませう皆犬にくはせますといひ梶にけて走入に匂いなと
がひせいばいせんとかけ出る次の間武彦は帰かさやる名にはたと
行合たり。むなぐら取ツて引すめれ共。こんにも出ず押ろむいて
まじめ顔コレ悪人殿。道しらぬ父天王とはめんの道。こなたの哉
就中
よこしきの道はしろしめさまいたはしやうへもなき御身に
て不孝不道の手をもてば天下に越権のびんじやもなし
との御くやみ身ぶしにしみ。母のもいごんしるよまもなく
なさんと鹿に予うのしわざをならべ見せてさへ夜念てう
くはし今のざうんごん残らず立聞せなふには鳥はときをつげ
いぬは我をゆり。牛馬はかうさくぜうぎよの吸。ちよまさへ徳有也。
こなさは世のため害はなせ共[ア]由が国が有名なるほこの有し
木さへ庭にうつし枝をため敵をすかせば見所有めいぼくは
成しやうくはんをぼくせれにおとつた王まま給ふの中にあの来
ふみ上させねばきかめ。先此しやうぞくおそれ有。はいで
下昇古わんぼうにきせかへいはやう〳〵ばれざるよしやと
いつになき主人のあらお。下女下申共立かり。ひつとく玉の石の
帯にしきのかさねられうの衣はかれてたれをうらむさき
のざしぬきぬがする恥よりも命夜の島もめんおぼんお次め
時の間にたちまゆしづの米ふみすぎ大すのわね引かへて。
からすの王子と成にける心からその有の有の日おし共思はず此武彦吉
をがな恨給はん表悪心ひる返り。天せうだいじんの御子孫の印
のかんふる。王子のかうべにいたかせ給へと。天てる神にきせいし日参の心。
毎日南の山へのぼりいせの方をやうはいし只今もそのあるさ。
おくの一間を清め日々に千度のはひをくり。かひをくり。となし
給へと。いのるは母の古公生栄ふみ木わるでくらする。二度冠を
いたゞく忽次第を尋取て座に引おろしきすいならぬと
さめ付よれてせんかなくついに手なれぬ身はなる。おしきのふは
此の住ゐて。かくとは音に聞計そのとなりのなりのぬかばたゝきけふは
粉米の身をくだく我はひね米三年来のしろみねたる心から。
位はふまじからすをふみもならはぬちんば馬。たにの板ばしがくり
そつくりとあゆみないむがこと也是女房我科のにておゝなひ
の間。たづのもゑ度ばやうてぞんざいめさらばぶてたねあけ
むねがどくかひぞときびしくいひ付入ければ。夫のおもてを大ぞと
まもりあてもくるね。に。つぞつゝの事なのてい何とお身によむ
おまへの悪心をうなしみ。天王様夫武彦明くれ心をいためる。七
くらうに合せてはからすは物の数ならずそれですいわやうあそ
はしおほくなかれかしといへばに子をいきつきつき何かはしらず五たい
には父のあせがながるゝ。足ねはおれてのく勝へひぎあた〳〵
めくらい。そむりならば気付に酒一つのまふ物。づれない浪世の
一人心無念しごくとかこと見るめにたへ年是田嶋の丐々
さまのみ人今ぬ祭女ど左にいひ付。そつと有こんあさせて
持ておじやあいく立まも侍かぬる先の成共はやう〳〵めがまに
くなふうとまじやと庭におり身のいぐりくめくみはくんでもおちや
われはなしが何でかなひしやで成共上ましましより。ひしやくでもい
げでもどろ給でもくるしうない。召のさい〳〵。第一口と指出をひ
しや大に手をじつとしめ。水のみたいも酒のみたいもかこつけ。
胸のいたいは此君ゆへ我が約さきにかるすのさは程よこたはり。
くはつたゝといためるは此うつくしいおきめべ。もるとひのあらぬをた
つた三夜の絶にかけてもひたいからす様とだきつけは。ひめしよ
なくふりはなしあされて詞もなかりしが扨々さてそこのそこのすみ
からすみ迄。念に念の入た悪人じやの。身では下女はたい
も。じやれけいはれぬ所。まて夫有此おぼろ月。夫はたれぞ
命の親共しせう共。がうをんの武彦が妻見ちがべたか。悪人の
人の官も人といふ子でそなたに過た。惑ちよとめれどいへ口では
返事せぬ。こり也是であしらふと。あぐる足のすそ共にひつたり
とだきしめわふみ成共けなる共とつくに此象をぬけ出天下を
くつかへすくしつたれ共日本一のにながかんふりしやうぞくはかれ来
迄ふんで爰に長ゐは何のため。そもじと一夜の枕をならべんと。
迄むすぼれし心の下を刀といて寝て下されとしなざれか。又
つきのけ。又いか〳〵しいなふうるさやそばへよるまの身がけがけがるゝと
かけあがればとはつれなしやならいやのしんじやうづくとづゝいて上る
ゑんうはのはしらくれしやうじのかげにげてもかくれてもくれても。
いて付まとひ帯に取付たもとにすがりたき付とめんと追よせし
後のやり戸ざつと明たぶのが手を引て武彦門と出ければわれ
うたへがたつた人工うすあがましたとし。過て座敷にいる給ふ
武彦とかくの詞なくたづ水を取て引よせ心もとを一刀ぐつとさせば
あつとひにされてことたへ見てたり。女房是は狂気とすがり付は
狂気せぬ〳〵此しぎに成て親子ながらへふと思ふか。とても
なをかまじき王子の心。さればとてある。主人にて見せん人はう
げんはなち。世間のひごん母のゆいごん。弟一おと嫁のさなみと
向がひ詞。門作門に頬出しならず家のめつゞう。此せがれを仕
廻ふたれば夫婦が死も心やすしたゝ今おことは我かいして其
刀ですゝにしねとしがいをきび見もやうぬ。夫の心に身也恥て
女もこぼるゝ涙をおさへよしなび悪人にからまれ不便のさいごと
思へ共親子しゆかたへなればうき世に心のこりもなし。葉武彦殿
あれ御らんせまだかや〳〵笑ふてもり御なとしがいにひろしとだに
付都を立すのによび泣夫もつむにつまれず涙見せど
のみこめは胸もくだくり計也時かそうつれと武彦を押ぬがん
とせ所へに庭のしはかず押やぶり身嫁さゞなみせきに
けまろびかけあがり。刀持手にする付。まづひら〳〵御免あれだけ
表外方等は西国で高御にしたび。世に聞ゆりほまれ。人ご
のお身に是をそねしみ。王なをもり立ぎやいと。女のさかぢゑ
うたがひそめし物一念夕ぐれことの折にふれへいごしかきごしにう
かゞひ聞琴といふ今かたがひはれ御心ていも恥し。大海はひだ
と成共まなの夜心やみせぬ天しの子をうつし大このお身をはた
さんよりなんとおぼろ月様ころすはに子で有夫有夫かゝそうじや
思へば子の敵いざせりして討て挑んと立ある。氏馬者共討
奉る程なれば此くらうはせぬいやい。忠孝のさまたげする女
めらと二人を以て以て引としてにかうと見へたる所に渡のしやうし
さつと明ヤ熊武兵郎切はゝがちかふさ腹のきりては此手なとば
だ押くつろげさすがさか手に取なとせば武彦ちつぱうごかす大
声上て。ヤイ〳〵大悪人の大たとけのはる者。むやくの腹きらんより
相性はなぜなをさぬ。めのまへせがれをさしろ我々もしなん
とかたごする。てんがうに子がころされうか。なださみに腹がきら
れうが三人のじがいに恥悪心もひる通らば。其只ちぶきをふ
くませし母かよみぢの歎をやすめんと子を殺すもそなさの
ため腹切もそなたの為。根性なし無事あんおんじんの王子となし
父天下に悦ばせ奉んと心をくだゝがめに見へぬか眼にはかゝ
らぬか。アアあやまつた武彦去なら眼にかゝらぬうめに見へぬか
とは。それはめあきにつかふ詞。生我身の善悪しらず。礼も法も
わきまへぬ此王子は。今日迄あきめくらいとをしきなをころし夫婦
く共に身をはたし我に善心をすめんとはたれかさ程におもふべき。
ちぶさをふくめしおとが母の奢ひやと思ひしられてつくりし夜の
くやしさよめにかゝり事ごとに忍念を持はさむ。心の敵は此両
がんとさするを眼にぐつとつれと。ゑくつてめ玉をかつはとすて捨
てはゑぐる両がんかりつたふちしはしはくれないの糸をくり出すごと
くなりおほろ月もたゞ波も是は〳〵と立さけば武彦から〳〵と
笑ひ合なく其手はくはぬめが有てさへ善悪を見しらぬ初。
めくるに成てなんの浦。尤ゝ身の忍行をかへる女者を及くもりし
一眼を上り握世間は長夜のやみなれ共心はさへたる月夜のごとく
善もゑも見わくる。今春秋のめあきなれ去ながら父天王
我にむかひ。心よき御顔がせをついにといせず。思へは両がん有内に
おそいをたゞし御さげんよき百余歳のそんかんを手せん物久し
也浅ましやどきちくをあざむくじやけんしん始てしぼれ先
非をくひ。わつとさけび入給へは扨は誠の善心ぞと皆々。神をぞ
しぼりける武彦三郎しさつてかうべきげ有がたし忝なし。いる所は
是一つ御めはつぶれひじげても。玉しゐは天てる神の御神孫是
ぞしるしの御かんやりきのふは悪人けふはけんじん改てうゐみふり
せさせ奉奉らんと。たなに上たり御かんふりを取おろし王なにわたし
参らすれば手に取て押いたききは扨々〳〵有ざやこんじやうにて
此かんふりをちやくしふたび人間の数に入ことは天神地祇のめう
かんに叶ふといひながらびとへにおことら親ながしんみやうをなげ
打て我をいさめしゆへぞしたづ水がしがしがいはいづくに有おしへよ
武彦おしへてくれよとの給へ。涙ながら御手をも我さのそばち
かく是こそとおしへければ御手にさぐつてしよ〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵
らくないかんふりをたづ水がかうべにのせいざりしさつてたみにくひ
付しがいのみゝは聞候こんはゝは聞給へ御身がしなずは何を
もつか此夜人が善心には成べきぞ父が手にかゝりぎやつと
いひしさいごの声みにこたへて我聖の返念の夢はさめしぞや
此夢がさめずんば。此かんやりをいてうだいし。武彦が今の悦び都一。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
悦の詞を聞べきゑんがたづゐは王子がゐの太か神文のさせたる御んでもろ
若がかうべにいたれは女季にをなじごと今と今とくせしふるうのみちへるへにおゝりし
我通は公共是にかげてふみにしり。御いかりをやすめ給はれとたべ給足を御
手に見分我とわが加うへに押あて押あて押いたぎ初時のはぢはぢ父のはぢ父のはぢご
表へ帰がいざしせめて一日に一ツでも是でほする物ならば。王さがめうど計
にて名の人いたり御悔武彦夫婦とゞ彼主もやはなし共めうが共此うへの有べき
を。たいなげしさけび入顔を計に泣いたり武彦やうしうゝ涙をとゞ
めぐ善心と成給へばたれはらぬ御さんご御しやうぞくとのめけ。いや
ちくんにおなしき身。しやうぞくもこし平もおゆるしなでは恐れ有
一ちよりゆかんとくがゐかしがいを御手にいだき上。又天母あかけ此
おもむきをそうせんと涙と共に立給へばさゞ彼は御先に立おほろ月は
こせが能武彦御手をなりて小路〳〵町々を案むむゝ道敷も仁の
道王院の道御めはくきとこやみも。然のいはとを抑ひるき人の面も
しづけのかねふみにとめて民のわだしるこそ。君がまことなれ
第四
○
つねをとれは性に本智にみちびかれて化するものは
其正を失ふなかひ。東夷の首領外が浜の忍熊城の
ゆう力ちほうにほとる。寶祚をかたふけ秋津洲のまたて
と。奥土を立てするがの国沖津にたむろをかまへたり諸
卒をあつむかぢん中の鐘をらんてうさせ。ぶるいけんぞくを近く
まねき扨も我討手とて。都よりやまだけの哥といふ者大
ぐんをしたがへむかふと聞し此幾万騎の天一さび我手をう
ごかさば。ごぢんになすはやすけれ共彼尊ばつくんのゆう力つくし
の大将は。十の雷師をたばかつて。討取程の不敵者ぐん共に先立
忍ひ入我をうけふもはか付たし此札は尊が絵図所々に関
をすへ此絵紙に引合往来の人を改て心ゆるさず。そなへを
かため敵の不意をぶせぐべし元々の曽なはほそめのふと口。
二人はおはりみかはの国に手歌をなし。家々に人を改味方に
なびけしたがへようたがはくば湯きしやうとらせ敵にすね
をとめさするな。尊を討て尊名せよ打立やつと下知をなす
ゐせいはかれつゝはやちかぜ草木を帯びくり三重夫のはら月
日の陰も日の本の神と君との二はらくぢせぬためし是
かとよつかへ久しくなるみがたおはりの女の源太夫国中の百姓
のうざやうかさくの点とかゝづき。庄屋〳〵ともてなされ
心すなをに家とみて里に杖つくとしばひや。屋形の内の
片すみに土を清め地をはらひ。あむる千木の御あらかの
衣は。木の葉のちはやふり袖橋ひめと名にかほり。裸娘
を先に立。ばこぶあゆみのこゝめなはいが成神のやしろもじら
ゆふかくる玉垣ひらき源太夫数々のぐもつ奉れば姫も
大御酒そなへ置しやだんのとびら音づれて遠近に人気な
けれは。松風の里のひな露のゝ羽世よいざゝぜ給へ我
君と一首のわかの合詞かうべを地に付うやまへば。内より
御戸をはつとひらきやまとだけの尊しゆつきよ有。著し
親きの者〴くれをくの音づれがんしよくもつねならず。いと
なしかたれ聞んとの給へば。はつと間をゝ指よつて折なければ
また上ふんにせせず。某は都の者なれ共。おりし候女房は。此
国のしゆつ生にて所にゆかりおほければ聞をつゝしみ。君を
かくまへ奉るとは夢いさがしらせ申さず。今朝両国のみやづく
ひそかに女房を呼こせ。君の御こと哉々におどゝすかし尋をひ候よし
もとよろ存ぜぬこと故しらぬ通申物之帰て候跡より数百の人
夫大成かなんを我庭上にかきすへねつとうに鉄丸をまじへ浮出
立迄たい脱てゆりしが。君をかくするかゝさぬか。某一家にゆぎ
しやうとらせ。じろふをたごさん敵の手だてわしなし君此家に
とめ置てはしんめい正ぢきのゆぎしやうにいつぱりをみすうさ
れかへつて火を引出す道理おそれ有申ことながらなばらく
外に御身をかくしことすんで後心やすく御安奉願ひ奉る幸当
国あはてのもりはじんわんはなれ数々それとは得しかましはや御立
と申上り。尊やく打うなづき給ひ我大君のちうを更東書やせい
ばつの大将なれ共折をうかふ其内を頼もとかくし置沙ら親子
がいかひ互をへても忘るまし某蘆を亡し父帝のしんきんを
やしむる迄は。千金万金にかへぬ我命に何せ此家を
一出ん外には立よりしるべなしとすまば便せよさる〳〵と立給へば
初にすべて橋姫跡からそつと引とゞめ討通へはめでしらせこひし
ゆりをだきこむる。尊もなきめきゝやれ声。アリアアンおやぢの見てじや
はなしや〳〵といひつゝも弥見かへりてほにあらはれとなづくすき
はつへきみかやを親は穂もみぢ色に出るかゝわなけれ源
太夫みゝをすなし門なの人音けしからず。敵の来るござゆれおもて
よりは北軍姫のこつてう道の案内申せ先おいとまあば手の
もり御将ゆへに御左右申さんと我〳〵先へ立帰れは能は娘が上ひ
のまゝ空やきうなづき打つれてみもんさしぞ出給ふ時もうつ
さすゑ壁大王の御使元々の鷹縄御入なりと呼はゝせ国中
の人民数十人けんぞくにしゆごさせ源太夫がびろ庭に引すへ
其身は上座にのさばれば源太夫ふうふうふ出むかひ思ひやけなき
御使い成御用とよらへは女房には先達てたいめん源太夫は其
方な大王の御歎やまたけの尊。当国に忍び有よし聞しめ
されざしもそうゐの聞に有八十の雷師を女にかたちをやつし
討取ねのおとの者。又々するをうへ忍ばんと。是見よ暮のすぎを
絵図にうつ人別家ことにせんぎせよとの物館一々に吟味
をとげ国中の人氏こと〳〵〴〵御味方申上残るは庭に引すへた
やつはらと浦太夫其方一人尊をかくすかかゝさぬはうてがたく
かたゞれぬ身ぎしやうとれはしるゝとそれ先一々ゆぎし
やうとらせ与畏て従卒のそゝと大手々に国義を取て引立
もろだぬがせむかむさい大かきにさしむけたり。なしやおそ
ろしや是程たきる湯の中へ此手をつけてたま物かワしとばし
りがあつ〳〳〵尊とやうの行方はぞんせぬしらぬこと知みに。ゆさ
しやうは見るもはじめ聞も始なざけに御しやめん〳〵と只だい
をふるはししるごみし土にくひ付法さけふふさかしましいかんざい
めら。心にいつてりない者が。此湯の内成鉄丸をつかめば有日有
との神のちひ。覚なくば。アつかめとうでをねぢて用捨も
なくわれ見か湯につれとけり。常にも神国しんめいの
きらにひたまは四三万に飛ちれ飛はあからず水にもあらすそこ
成鉄丸いかみ身の色へんせすゑいとさし上。ゆきし上。やき
取て候ぞ是御らんぜと呼はれは始の人に落付ておい〳〵
たまになをさし入前後をあそひて笑ひ是はけんがゝ心
やすひつい手に行水せまいかと悦びいたみたはふれて皆大王
の御一味と都をそろへて平伏すだかなは急度見ツゝ大王の味
方とは能分別くはほう者共立帰て休息くなふ源太夫
きよれいふまいの神の湯ぎしやうちつきおそれないと。ウ
とく〳〵とつめけられといひもふし源太夫尊此家にましまさねばゆ
きしやうおそるゝことなしとおらする色なくにつくなひ仰に評せひぎ
しやうも御わがひをはさんとをこことをちぼつてわまにさしむかへはつ
まは気もき入はくれるゝあやかず身をひやすなやくしばしと様姫人
句非ず走出たとにする是父大おとしかられてかる大なん御名
代にみづうに湯きしやうとらせて早取りし是迄何のかう〳〵なせめて一
生身の妙ゝがと思ひこがれて従て足とけは父はしほるゝ眼を見ひらき
はつとにみ。さござりいさをとは何のわだまていよと取てつける
にのぞめば又引とめ母は二人の家代にみづら一人とすがり寄親子三人我
かはらんね我かせん我もとまにあそふかんもひかせひかせひかせひかせひかせひかせひと
の風さしやうによそのたもとらぬれぬべたくはあれかんじ。深
太夫ゆきしやうに及ず。三人に。三人にこなまへ。つと親子は口をも
れし生畠の海にひれふることにて悦びいさめばな源太夫き
りやれひ孝のそふゆきしやうこんとのぞむからは。みとを
かくもひかゝさぬぜうこふん時にあられ。親子はたの。源太夫にも
うまびなし。されば数大に海に長し色もん。あきのびぢよを召
あまへ共。そちよのよのときはいに見す。度れうがんからば一のささき
にそなへ御てうあひかめるまし。大夫さげば一人の親はしうと君。
一家のくめるゑようのしあき。さき橋娘同道とはやぼたんづ家
玉ゐ仏恩姫をあげい思ひくよすアいや〳〵とがふかぶ給ふり娘出へ
押やればたりなは眼をへろと見ずさとれがいふならずぎやう
とれ但は娘をきしあへわが二いに一のへんとうせいなん〳〵とせりかけ
られ源な夫もこのなんぎ付ほうよし見へければだかないかくて
しやつてれと。森よりはやうけんばく共はつなはたぐつててとも
まく女房あいてけへだてお使者せらまいそこのせるいぞ御
けらいしゆゑはらくなぶと押止め。父がゐはい申さる元娘は母が
奉る。予奉るとはまをもどく女め。娘やることならぬ〳〵。モアわかいの
み辺此方から不矢きりあくばきとれにか主なされるか
みつかつくうまれしは娘がくほう親のくほうだつてぎれなふ
お使者の方今お聞なさるに通姫は母が格めくり。去ながときう
に入もいふてはかくどもなし。すがたもよそほひ。心しづかにいとまよ
天に参らせんいをなだめておなりとよびければ。ウ母がいぶん玉と。
然らば明日たづの一天にむかひ乱れてごんあへん給へんあらば親子
一曲事にかくなはんとやくそゝかたゝ身をけたておもがりよしゆくへ
帰り給は日子もかげもくれれて。子ゆへにまよふ二人のやみさり。むで
ぬたりしか。源太夫こらへね。女め。おのれ実も娘をやるか。アヽやとい
でなんとせう。忠賢大王のしうと君とあをがれ。ころいにくらせば
すの人まいあやかりたくばふんゑ〳〵。せ娘を娘こ袂にあたふるはちく
生に縁を組内蔵四千年のなみをさき。いとまくるゝが娘をやるか。
ハサ五十年百年のなじみも。是。此程が一寸ちかへ。みずしらずの他人
もかなしこといふが出ればあかの他人娘は母に付さほう。けんへいはれ
てやく見せう。おもしろい縁切た夫婦でない。おのれしか娘
をやれよ。アヽやれよくひぢをはりいもせの糸の糸の中きれてむす
ほふれとけぬ石のまよひ別れておくに入月の夜半の冬にかた
ふけり母はやひに身をもやす手しよくかくかく〳〵。矢のねは
ばめてかいゝ敷けしきも腰のあさち。いいにまししめ〳〵てかなへ出
に文わがひやの手さしへべい〴〵にさがし口で吹立ふきおこすがよは
きその心ざも重てあつきめうばのほのつ。鉄籠原林
とおどろ後にはいつのかけか源太夫よび見る共しもの矢の
ねやげもやけたりといやきなり引ざげてかけ込所を。まてと声
かけられてはつとおとろたどうとや身も手もふかひわなけ
り源太夫いかりの声あらげ。不義大貞の女は。いまだやにも
おさず。そやのね火にやいてなんとすりつまずぬかせときめつ
くる。源太夫殿おろななふ物ことかくして打あけぬ手はこ
なさが出したぞろ。我女た手本を知れ。女房にはつまずいへが。
聞たくばいふて聞そう。惣破よりお都のやまたけの間。こなさが
ふくかくしぞ。標姫をおとずにまいらせ。御盃ふかふかふかふるとほとふ
からしつてと成也けつと源太夫おとろき顔のかたちかへたまれ
女めいきね立ばゆるさぬぞ人聞んときしろ〳〵娘あたりきを
ぞくばりける。母は恨の妙をうめ気をなされな人にいへす程な
れば道か呼よせて。曽のことを為し時身をすてゝつみかそふか。
よふ〳〵起さふさりなづいて舞捨をろき出しものかくしたいのそこ
聞きい程は大をもらそふと。見ゆるせ品々有てのと恥しや情なや
ひなにはまれ出されて。縁こそあらめ夫母と成四十年の物也
夫の心をかゝみにしてけさとうつぞむかぬ物見落して間の
戸のべたてられつかなしさよ。女の夫にうたがけるは武士の敵に後
を見や戦場をいぐり事なしこと我身の生蔵一門の類だごししね
ならば死きまし身をこにはたきぐだくたごんせまいかたるまいおそれ
有てながら娘が母でいと専れを只一はおがませて下さるが。なふ
御怒来と惣どの涙にむせび泣ゐたる。ヤヤヤウムとぬりたり。
尊をたへみ夫にしさがふ所存ならば。娘を明日おくらんと。使にけいやく
詞あたりゐは二心。よがひなしといぢばつたり。なふ。似合ぬう
たがひにかひ。娘をやらふやるまいと使とあらそふませに。御身を
しばるめかと目前のなんざみなれてかどふかかうも事さう也
しづむる手だてにつぎてゝ娘をやらんと請合しが時日までと
のはせしはふかい案に有てのこと。其品案とは此やね娘が顔
にぶつたりと。ヤアやきねねめてゝのくるしみ云と云てくるしみはとにじりし
ゑの父はおどろく女は涙がたが彼が娘を見て。あまたのび
ちよはあやまれ共是ねのきりやうはなしきざきに上よと難
だいは人にすゝれてうつくうつくも御まれし娘がふらんそや尊様の
御ねまのとぎ御不便に預る娘否今が金に成禍楼を
にしきにしさかゆるもおなし悦びそれを引かへ物おそろき東広
ちよくの薬となしそもへ始が挽られうか。顔そこなはゞあひそ
ゆき仮も二度予ましと家の有姫が為。不便きにあてかなれば
の母は妻子の身をみがす夫や姫はきはなでうしがやしりかだがたがたがるゝ
我身のはてのたなやこと名ばとさけびふしければ所に縁有者ゆへ
にうたひしも尊の間。女房ひるせとすがり寄木深にむぜびしが
かはいひ余りのはなき娘がめためためたを見ぶひしかひも有まじ
きねている内とうなづき合夫賤かなへにかなび。又さしくへて吹
おこす。二人の色に火はもへて心はくらむ哉也。。。母がゆへに成て。御
身是持て軍へ行始か顔へあつかまがめくなへさへさへさへめす
やうときし出せば母は身のきいかなしいせんはこなたとはり合でお
のれなんてもあてふぞと思ひませばかげ玉か露かとなでし
子の顔にむげ〳〵あてられるか。みめわかいねをよふせんととずみがく
親はあれどうふしい子い子の顔かたちそみなふ親は我計かだねにも
たびことに一生のやみにしやいや〳〵こなたごされといれどせば。ラう。女
むごひあの顔へ。飛火のあつとも思ひやりや出るやねがふるふ身が
ぢぢ御めんじとすりのけば。男婦身にさへてはぬ物也女の手わざにそ
もつとも親のはちかなのぢか顔うくうくうふ神にも恨有
人にも世にも猶なししめつない時は身一ツとはつとさけび入けれは
夫も左に臥きろびなよりも先に親々のきもに立ゆる如き
年粉をこかすそ衣成時しやう天にかふひて時方近く紅
めく願二不もはつゟせぬ夜明てとりくいせんより。思ひ切て母
おじやれ二人一所にほとやき御引ごげ打つれてやけばうさめを
せ〳〵あゆみその足気たゝみなきゐに。めつきり切戸をそつと言せし
めなさめそとねやに入父のぞく母二つと見やうすみやりす給ふばつ
とけふもたち飛にしやうし給ふる思ひもよらぬやまらぬやまとやけ
顔にやきね請書てつ立給へば源太夫うんと都の介ぜつの
つけにふてございなし母く性根はあらおそろしや。もつたいなやとひ
れふしておとうやまひ奉る尊忠める御顔色我とはこま
わざながらやきねめてたる天のせめ不便のかん。ことがをゆかをゆかをゆ
るす〳〵と御聞のてそのまゝ心身もこのことく尊を見るより二なび
つくりはつと都のさひれふせり。予源太夫。いぜんおことに。阿波子の
もりへの忍ばんとはやくせしと。ゆへば跡もきづかはく。朽姫と入かはり
夫婦があそひとつくと聞。殊にあつりやきねをかはつて我身に
受さるは。朝てきには股を亡すべきてたでの一だかひをもつてうたんと
すれば大ぐんやうがいにさらへぶせくたはつゝかれを討んとすれは所々に関
をすへ我すだを結びにうつ。草をわうつて郡枝忍んて討べき
道もなし今やき手に面るを絵図の面にかへたれば。人もそれとは見
とづるまし忍熊がひざもと近ゝ忍び入通き時いたれり。有ざや
天てる神源太夫夫婦が手をかへて我におうごの神のやねに
れし〳〵恐れと思ふな夫婦の者いさめ〳〵との給へは。二人もあつともやい
涙めるが涙を引かへて悦び涙すまらす尊かなへに立寄給ひ猶々
とうゐせいはつを神恵に住する御せい願つゝしみつしんで恐れみ
申矢の八側地の八万七百卅七度のれは神高御危目生産
日事代至の八神殿東夷をよもつあく風とはらひ八天のちり
納つてくんや名儀に吹渡候には我は本の所顕をなへ参立のしるを見
せゝめ給へ三元三行三州うぢとへの念し。御身かつげかひとり飛血
にかつてと入給へはゆ玉四方にほどはしりうすまゝゆけは寒かすみず
ふめはてる程もなくふしきや神明和元の夕方の御身につかなくにうは
の男引かへて。紙たあけの朱をそぎ面にふんぬのたちをずし。色を
やす〳〵おどく出張願じやうじゆ鳥海と天地をはいして立給ふ御身
のたけは天余り。鬼神もひしぐいきほひは顔国玉子力雄仁王か
つちくかくややん焼に八勢の事鳴て表の命の命のよく音ゑみのたかろは大
音上橋ひめの御迎ひけいやくの刻限おそなるは。上への悲風に渡せと
呼はつたるとびもうけしことながらなふかせん色やと。二人そべと。これは
〽薄いちつゝ身をかみまなむすびし縁の女やす〳〵おのれに渡すべきか。ふい
もよらずかへれやつといかりのかん色たなも天孫しぜんのゐにおされ露
かへす詞なくあれ村とれと諸卒いさめべきにあれ〳〵切てけることくしあぶ
はち共[サ]夫々と大な〳〵と大な。あさるを五行かみ。致もき取ぐつと。
にげ押ゆがめくびかせす身足がせや引しめ〳〵三重つきはなす穴い
をもめはずつかり我子れうりのむさづにながるゝ浅哥かる魚あ
よ〳〵の勢たく身内にうでは口計すばかせつて引有給て
ざりの手はらび右や左の物笑ひ人にまいにてかゞみける気すむ
をことはせず故に及ののみろことじんだいはつぶに力を入なごよろ
〳〵ゑいと上さかひよもう刀。かなへのおもさいはやざん手代にはかり
猶やすく知るに諸革も是やうにやかる治がふ所をふりまはし
ゆきちらして并おひく此いゑひに疎身をなしく置て又むかふ
敵もなく卿ゟなければやまたけ親にいさめて引かれ敵をし
たぶて立その雲にものぼれ地にも入ひ争ひしけがひらそうだけざは六
よく天もにからず。こんなかくのそみ迄もほつけする事事を首を首うの切て
立帰んざる〳〵行袖になごとめて今の世いに心のぶれし其
跡をあつたことは名符たり。扨はあつたの明神。源太夫も神
を成出たりの末かいて心を守りのすかひ神道を清ぬ神屋の
第五たち花姫道行
○中ウ
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
恋衣とのごのはるに引れ行妻はしんの糸なれや其めかつきに
ほころびし別れをぬふてつらんといちいに思ひたち花姫膳とはし
たし給みして見ことのとうゐせいばつの御便にもなけふりをうつすい
にとの神遊びかぐらおとめのおみの袖しらゆへかけしからひつにたい
さんまぐんのしゝら。皆一やうの花笠を。きつれ打つれになひつれになひつれになひつれ
人めをころめ得たびの心ふかひそわりなられ姫はすぶりの股敵
を討は太の使どゞめをさすはふ原の役ありやしたつゝみうつゝな
きぜんれの後はまたるがいつみおぼへて取なりをみかはの国の国の
町小路だいらくらめづらしと見る人立のにきはひもつまの御
なれど忍へは心置露の玉をばたびの道草にひろへどもるゝふくろ
ゐや思ひをぬきに水のたて情のおきのめをこめてしづが手わざ
に是ぞ此里のなひか門ことにくすてふ布をかけがばの宿より。
末いとまちの神の御名さへいかめき我行たびにあやかな。
見ことにあぶはねもなきたちや力のつかのまぞ身をかくせとて
今とゆりさやの本山としたけぬ我々あゆみのくるしきにいか
に近木のみねの松のちとせの春にあふこと命也けり世也けり。
猶行さきにあまざがる。四十六所の神かきに。和光のとしからや
けばにはびのかけとぬかつさてきんくさいといさいへいと思ひ。きよし
めりはかのへきの年いせ番宮数百廿末しゆ也かゞに姫のしらし
山みのになんぐう扨ひごにあそさんあふみにたけへおたむさし
にひかはわしのみや十二の時のやくなんにひるのおどろさ夜のさはず
水と火とをのはひもけ。おびはかなふきう〳〵によりつれう諸頼
しやうしゆとふしおかむかむれば。れは。妻はひかしにおはすらしアヽわが
つまた我妻としたひし詞後の世にひかしをあづまと呼なれて
昔に渡り大井久分には幾世の物思ひて行陣所迄の陣所ささ
もちかへ成共にかくらだいとを〽さいのとつたの錦はきつれ共古郷に帰る故
つと書てかつてがくしてと一心にたゞれは手のなた成給見かせんにて
見ればむかふにたがも木行はせ。黄久をならべげいどの武士恩
きびしきせき所の守り風ももとぬいきほひ也也恐るゝ色なく
橘姫世き所の縁にゑとやくして是はせいしういすゝのかは上にあらは
れ給ふ。太る神のおとめ見と。今年はおゝるの道者すゝなくじん
りよいをざがを大便と思召れなたより神たいを持けて。縁む
すばせよと神ての大にて。おばんなせす所せす所通ります。皆おじやと
呼あまつとなればほそめのふと口。あきまふならふならふなめ過たる女郎忠
ことは有ましやまとさけの馬するとかへ忍び入んと吟味のせぬ所。やし
の方女ばゝ越の大かくらにもせよ。忍熊熊夫の領内。神ささはかたふてうし
一人もならぬれ〳〵。是は心得ぬ殿の仰尊のぎんみ我々がしぬこと神
にひに生てねさをてうしとは。正じんのむくりくり。おせうしなもの
さほり。それといふも御介ないから神の御ばつはやみの夜のつぶてとみから
どうの思ひかけなくいつ身にあたるもはかれず。其御てうじを取お
いて神と人とのますゞ成。道なぐざめの火立ら見て見石はれ給へ皆の衆は
やしやとすゞ迄力いせは神ひ二驚くはうなぐうじなぐう内文のみやが八十余
しや八まへの人のみり四十末しや中にもさやあれはれ給ふが。雨のみや
かせの志内よみ日よみ。十二日の府へやくなん石のおとろをろきひるのさはで
立もふ内に橋姫かはひ川にかしせし玉手ばく。きかくしんと鉢まき小
つま引しめてばん所にこんて入うりやくはそめを取ておき程に王の助たる
神がひしれやと一刀に。くつとさまれてほそめを見て。大からめいて。
たへり問命ばん立さはずみちんになせらひしめけば。きべきべき人の下也
にかくせしとやりおゆぬきつれて。太刀と〳〵のこためく音がくのごにし
おごとく上段下段のつゞみづさふばうのぶへまの刀さきくはじんたいこの
打乱れ手をつくもそ二事きり立り神時およびのたちがせに敵は天の
にへ立を吹ちされて逃ちつたり娘はいさんで長追をなり〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵〳〵とこ
せきもたる山の時間加府上た名上た暮もいまだ此下よりに忍び
給ふはうたがひなしはたの手上よとかひつよりにしきの御はた取出しさつ
押立押上りやうぢんひ上の声じほらしくも又地よし茶いたか
わずゆまと武こがねざねの御させなが天のいにゆきまびらにおひかけとつか
の御奴からめじりにはきなしかごちに八めのふうや気そへにこれをなぐし
はたをしるべに出給へは忍びしまくん引もきず御せいすでに三千余
騎夫婦音臣つくせぬ縁御悦ひに悦ひを重ていはふしめつちんの時
の野へ并に載す朝日のことの草のことひ給ひ。夜にしたびなひしぐん将士そ
〽民二百姓ぜんの力もつき皆御みたにきぶくの印ふじのすそのすそのすその
きを立。ゆづけはづ鎧をぬき。かさんの賑うし霞鳥くひへしは。
すその輩のほに出て人のみいりしと也程なく市にひこをめぐし
御せれに付給へは加さんの者はつとしんこしやうして。太郎だ物御分
につらねも代万せいのもめ見へ霊の弓のいきほひたり東南せいの歌
をやすくしたみへり専御さげんじめなすま事玉ひとかる時節の来ずば。
此つだのぞゆり〳〵〳〵もるなざみ三所二山も三世一の五の
国へのよいや。入め〳〵と心もゆかみうた〳ねやらせ給ひける。御気たるみの
折をよひかひかくれゐたかぐんそつ方にまれあべのとく。常に火さけ
〽やれさり忍ひておごろきこをかみその御手を引立アリ御んせう
さんといふはいはり。君をすかしてやきこん歌のれどてむれ〳〵とはいくふ
たり無念やな一方切ぬけも仇せんとけ出すむにいとびちるへゑん
はいさごがへせば都のくろふり敵いさみのねたい。風わん大地に
あふれ出後をうし得たなく。其清顔を合せてあされはて其計
なり尊いかりの御声たく天のいくらにて天て天天なねはみづほの玉
の君たるへし神のさかへんとあめは元にかざりなく代をまらんと御しんと御しんと御しんと御しん
一ツのしるしを見せ給へと腰にたのせるとつかの御剣敵はむかつ
てなげ給へばたちまちさろをぬけ出てさめひひる
かけもとつかにがゝやさわたり十方にとびちつて。もやろ
くさをなきふせ〳〵づるぎのはかせあまつかぜ。ふきしき
りふきもどし。くゑんはかへつて葉がくれたるがたきの上
にもへかり一きものかれぬあおちしにづるぎはもとの
さやにおさまり。これよりとつかをくさなぎのきよ
女の
けんとあらため。まつたい三じゆのしんぎのひとつ
しんとのほとぞたくひなき大じやうおしくまいかり
をなし。一ぢやうあまりのてつのほうがろ〳〵と引さけふり
上るをくにひこばじりかゝつて。思いやうんとふみおとし。
〽アアこいととはうふねむんすとつかみじいとおすにたじ
ろず凡てふせんとする所へやまとたけの尊まつくろに成て
かけ付せしくまが。かうへをつかみかろ〳〵引のけそまにふまへ
国をきふけ民をなやまし神明にそむ〳〵しざい思ひしれし
と首思いやつ引ぬいて御敵の根へうせてけり。橋姫を始
として。御いかひの諸ぐんぜい。の山にみつる民百姓尊を
しゆどして今いぢんの道ある君が財つかせ吹つたへたるに草な
ぎの銘になびかぬ方もなく。百かく万ざい末かけて民へ
草五こくもほにはじをめぐみ。国にはんてんくもり
なきつるぎの。ゐとくぞあきらける
「奈河暗助一
5803
嶋之内
河権助
同十六日
紋布袋間