夷曲ことし俵

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田原大湊舍船積編
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場所: 江戸
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田原大湊舍船積編
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日本語
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伊藤與兵衞
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イキョクコトシダワラ
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東北大学
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2026-08-28T18:53:25.651810+00:00
夷曲ことし俵上 四十二月十一日 ことしたはら序 申上 一以テ購入セル南博士 たはらの船積といふは天明薩洲 冊之 され顕の作者にてそのかみ耳をなし 名をとりし人なり遺稿の中に ことしたはらとしるしゝふみありさるは 硯の海に水あけして杉なりのたかき こゝろを胸のくらまちにつみあけたる けに〳〵さえて八斗のしうけよねにて むかしとりたる杵づかのつまは〳〵しき 詞ともりおほかるあはれ此たはら のあるしよみのをはりといふ時きたり てかの岸にしもつきぬなりときけは いまさらなにとせんこくとほしの糟粕 をのみめてものしてこぬかの雨に袖ぬ らしつゝなきからうすの音をしのふに すむ 門持園 夷曲こそし俵序 足曳の山の手よりたはれるの道ひらけて久かたの あめかした町に比路こり此道に名たゝるあいそこ いろのうしたちさはなるその中に田原の船積翁の よりの出たるこそあふよりにたるうたのさまのあされ たるう地に人のうへのいましめともなりあるは もせにしらねきのこゝ路をさましくあるは せりひちのよをさとらせなとゆへつきたる頭の まめやかなるそおほかさいにてとしおきな つゐにねにかへされ花のねのくにの土を支にしもとを ひかれて反左のみ残見たるを其門に遊ひし とちのあらましにおもゝ尤あふものからこれを 梓しにゑりていの地とこしなをしせん事を ふみ頃さくいちくらのあるしにつたへて予にいそ くちのことはを流よといふもとみりあかさへのみし かきももて人わらへにとおもすあへ風いかにともいふ 色くもあらねとあふな〳〵あたらしきものゝよにさちあん なれはたゝにやみよんも書ゐなくそよやとてあそにはし なら漬のこにものにせんにははし身にそのことはりなきは あやめもしらぬこゝちにこそとなま心つきてこそむかし のこぬか俵そふとちものにたくへて見れは一粒ことに しらひ出たる尓為よねのことしたはらなりけらし 十返合一九諸 文政辛己のは縁 夷曲ことし俵 大湊舎田原船積編輯 年のはしめに 一年のはかりことは元朝にあり大晦日の気楽は 常にありさあらは鈴のね忘れ給ふ時 元日のありの鷹の三番聞おときなしとつけわたるかア おなしこゝろを回文によめ歟 元の今朝きよき司の君謡う神酒のきかつきよき酒の友 題屠蘇酒 虎のすむ藪医もいらすまめてとる年はくすりのとその酒も軽 貴人の書初し給ふを 高砂の松とあそはす書初を十かへりもほむしやうさまのうは 人の こゝろはかくも やはらかくも かたよらぬ糸柳の いとまめせ かに餅花の はな〳〵 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ からに ほめ有しりなきほとこそ あらまほしけれ よくねれてかたく柳につきあはは人の心そもちの花なかれ 書家嘗をきてといへる齢にて 宇久比方の音はほそ筆か巻軸の梅にゆえんのすみなれてなく かつしか毒見にし里人のことはをもてよめる 東風ふかはにしらかほうへかほるへい梅かがさいを尋ね来さいな 初午に嘉社まふてとしけるとき 掃し湯の際のいなりも初午にどんがらは茶から捨られもせす 春のうた回文 歌のらむやよはるのにはいさきよきさいはひの声はよせむらのまこ 題花下宴 三度くふべしよりあかす詠むれはいのちはは明のしたこそあれ 題早蕨 早わら程のにきり挙も知らかによくあくをさりせんにすゝめり 卯月のはしめつかて北野天外に詣て 春過て夏は北野の味鳥鳴たむかしを人つてにきく 伊勢の明星といふ所に衣更して 明星のあかつき茄子脱かへてあはせにうつわれ旅しらみかな 題納涼 けるに涼しな風の嬉しきも昼のあつさのあるゆへにこそ 題月笠 上見れは何ほとかほし星たらけ笠きてこざる月もあるよに 或人雲のはれる類よみてよとあるに 秋風のたちおの川からぬけ出てくもきりはらへ月のらいくはう 一舞に題して一向宗のこゝろを 朝皃の花は垣根を他ゐにてたゝ一筋にしたゐみつる可難 寒夜の我とり寝といへるを ひきよせて捨て寝る夜の二さのかな衣の妻と膝小僧とを 題髪置 福禄寿そなはる三つの髪置はあたまてしれも長枝ふき おなしこゝろを 正直のかうへにかみを置をむるこの子のとしもなしの数ほと 年越の小 ほうろくを 題して まめてゐる 恩を ほうする ほらろく われも の 終には もとの 土くれ 右 朝戸を出て見しかは庭しろ〳〵とつもりたる 夜の間の雪におとろかされて かくはかり老ゆくとしの積るともふるともしらぬ庭の白雪 年内立春 一五郎妻路は伊勢の太夫とい出寿とゆきあひの間より春やたつらん 葱の花の賀 ねきのこの花のゑかほも田舎ないやんもしろ根のなまめき道は しかいなみしつかにてといふ十字を 句の冠と履とによめられる 一君もありて上時はゆたかにいつまてかなをおきまりつ御代栄ふへし 福禄寿のつふりへはしこをかけて月代を その画のおもてに賛せよとあるに 年をふり御ふりに積類月代をそりにこそのれ雪のしら山 之戸焼の賛 面かけのかはらてとしをぬのり袖姿は 小野の小町かねきこたに叶ひいつも 十七八十の前にも姉さまと称せらるれと たより紅とことなしけふなる さとを立出て火鉢やほう ろくのかたはらにかしこまり 御縁次第の奉公にすみなし 壺のふた古々路なく 始はむすめのあるへき やう粧ひすれとも紅粉油を 費さす何ことも見さるきかさるいはさるを守つわて 中言をいはす人にさからはねは三歳のわらへも これを愛して其父母のこゝろをなくさめ 子もりか手助りとなりとならむかすれは 三年もむいた儘心なけれはくるしみもなく 色性なけれは恋したに人もなし一生世之事の 境界は口いそれ生れつきのまゝにして本来道に 入間郡のそたちか 三世とりし姿に人の迷ふらしおなし今戸のつちとおもはて 海老之賛 よの人の賞翫すれとるふらすゑひはひけして腰をかゝむ類 猿之画に 学はさるしらさる人にさるものといはれさるこそまさるなりけれ いほふかへまかりけらば 田舎にもふらつき過て射風のふくへの音におとろかれぬる 一人の子のもとへおくる 竹の子のふしの虫有にそよそかし親孝行と人の孟 わかまゝなれ人へおくる いてゆ此世は入世に呼れて我世とへうれは客に来りし とおもへは何事も有合に聞か勢て不足いふ へくもなし人にはお世話の礼いふまてにして 何の気に入らぬことのあら共に只〳〵我かこゝろに かなはぬものもわか心ならむかし 三手にいらぬ事みなもとを尋れはよきにまかせぬ我心の うんを見なといふ五文字を句の上におきて うき世何道かとかならんおしなへて身のほと〳〵〳〵になりは頃の道 木刀を人にゆくるとて けにせひとりの御代の間は袋に鎗は鞘に治れる ときにこそあれ今世おほ江戸の栄に罷合程の長 かたなす歯みかき商ふ宿板にしておそるゝ人も 奈く百性町人の小脇さしはえさゝぬつとめ有里に なきありけるされとあふなけなきそいにしへの 名作にもまさらめとうまこかいも背かとらふ引出 ものに木をたくみわきさししをつくりてぬかぬ 太刀の高石せよとあたふにあたふにあたふにあたふに ものならし 一祓出す身の錆出さぬ木刀は常におさめてあやま地になし 子のために めきり 親は粉になる ろうすの 老々 しらるゝ 沙門そ和といへる人坂ほといふ所に小庵をかり すまゐし候事に よにやすきみのしの道やあのくだら三百店にしすみそめの袖 美衆の馬に乗たる大津絵言賛 小題てもさんしやうの髪武士の子は大つほ流の馬の乗そめ 人の衣服を借着したるに 幾ちよをふる着の紋の橘もむかしの人の袖のかきさき 題心神 古ら路とはいかなるものかしらぬひのつくして見れは自在天神 狸のかたかけるに いとふしや世には金持病気もちきんか都磨して口迄を行れば 題釜之賛 なむあみ随ふつ〳〵煮類飯釜の中の菩薩そ人をたそくる 恵比寿に鯛五つを画たるに 儲たい金かもちたいとふしたいこうしたいより我まもしたい 木賊かりの讃 そのし也腹をたゝぬかとくさかりすめ客こゝ路の目に雲なし 茶によせていへになきはとて 茶之安部よりも宇治人之氏 よりしんちう薬鑵は 土瓶にしかす福者も貪考にしかさる ことは何れしん茶かこせしらぬみなもと しらぬ心の水にあいえん材縁の交見を と伝からす十いからすまへよせんし茶のさめぬ心に花も手いもあり 木魚火鉢に 池田炭はよくいけて其火をたもつ人とよく異見を 聞てその身を保んしあくをさるもひをあらためて かんきをうくる事なかれ 一ひとり子をたゝく木魚に手をあてゝ極る火酔も親こゝろか難 わかきいへのもとへておくれ それふんてをとれはものかゝれふ森器を御れは音を たてんとおもふ不思をとれは酒を思ひ賞をとれは 獄うたんことをおもふ心す必事にふれて来類仮にも 不善の戯れをなすへからす つゝし義は朝なゆふ風の其のはの仮初ことのうちにこそあれ 大黒之賛 里子素其位行ひ其外を不都米尾は米を踏鍛冶 屋は槌を打おのれ〳〵から限の袋の口のしまりよく たる事をしらは一体分身の大黒天なるへし 此やうに手足に障のなかりせはいのらすとても福有きのえね 紙細工する人へおくるれ 人はみなのりのたすける事細工しはをものはむ身をも破るな 猩々之酒呑ゐたる画に の世に降に喜る人と猩々ととよくものいへと舌はまはらす 西行花のよとに居たる画 一類はくは花のしたにて我喰んくさもち月の彼岸たんにを 井戸かへのかたかけるに 井戸郡のみつから砂よ人こゝろくけてしらすむもにこりを 六十七に及ふころ赤貝の画に読せよとあるに 歯にあはぬ鞘や蛇に念はなしわすれかたきは赤貝の味 六顕仙之賛 頃と位ある類よみの六人は六割ましの御きんにそ見ゆ 布袋の浄留野かたる画に 重山寺みそけてかたる浄間柱をなめてうましと誉そやす也 在出不わか庵はいともしつけくなるひあり 時定いとなくてはたおらぬひもあり 四十一 一脇差に類して わざあゝ舌の剱をさし出て鞘はしらすなこいくち共と物 鐘馗と鬼のかたかけれに 菖蒲酒さめてしやうきになりぬれは心の鬼かはつかしはも地 達磨の賛 さま〳〵の好みもあるに九年ほうひらつのあちをしりくさままて 一向宗の信者いとひん奴をそりて法解し けるな ひと筋にたの世にいと賀奴の巾そりてそ弥陀の風にまかする 芦のはにかはせみの賛 あらしあしのことのはしけき乗合の船行をせる清の川せみ 柳に鶏の資 くゝこの計のまたきに鳴てけつからな春のくるらし春郷抔しの糸 竹に蜘蛛の巣をかけてあるを雀のとらんと する画のおもてに 蚊をつゝる蜘蛛は雀にとられ花は鷹を おそるへしおのの樹の竹の竹のよもみち長短あるを もて天下たいらか奈和等 身のほともしりからひとの細もとてかならす額にすゝめらるゝ 沖の釣舟のかたかけるに みなそこの物如くも罪をおもりつり五戒をたりつ比丘もあるよに 梅に覚る月に時鳥を一紙にかけるおもてに 一鶯の巣に入舞のほとゝきすむめのかとくもすめる月かけ 分 福の神たからそ もちに つきたまふ かせきて 世そふ 人の有けれは 達摩之賛 此程残の縞よりしたを煎かゝねは世煩のおこ歟一物もほし 老楽之六色六根之保明 たらちねのかゝれとてしも猶ひつれ我ひけしらかさゝよくひを ばか目のうときもよし也よの中の人のあらをは見出さゝりけかし そし老てきこへぬ耳のさちなしや囁くことによきはすくし 老て鼻のきかぬも嬉しよしよしあしの匂礼に心うこかさりせは ははなくも花味の食そいたゝきぬわれ乳のみ子のむかし思へは 老ぬれはものみすれしぬ死ぬといふことも忘れんわすれついてに 太田氏の老母か七十のか言をことをきて 七十をしたからよめなつむ春はちとせも腰ものへに若やく 加藤何某ふたと勢はかりさきの頃都よりはる〳〵と はゝ君をともなひ給ひてその母君につかへていとねも ころによろこはしら見えけれは孝子をもたるは こよなき親のさちなりと蒲山しう思ひしに 生者必滅会其定離のならひにてけぬなん はゝ君頃とりとをきみくにへ旅たゝせ給ひけることの さこそ色残おしうかなし久おほしめすらめと 老か手向のこしをれ顕をさゝけまいらす うのの親の深きめくみをしる人のこゝろをくみて。霞かの水む事 また法華宗なれは くりかへしかこつ涙也玉をなす親子わかれの長にさの数珠 小児の扇に鶴を画たるに 父のすね母のちゝにてそたつ子のちとせものひて遊ふなき 摂取不捨之心をよめ客 糊にわきのりにかへりつのりむしののりはなれせぬ法の道か角 こた美京師東御門跡の御使僧より人〳〵に 扇一戦つゝ給はりしその肩の画に遅さくらまた 一本は春梅をゑかけるなりこやまたのし 御門師の御願に夏山の壱葉ましりの遅 さくらはつ花よりもめつらしきかなとあるに もとつきての画なるへし此御詠は新題林集に 見えたり此二本のあふき一哥よみてよとよれて いなみかたくさくらのかたかけにすに ひともとに心もちらぬ遅さ久羅花か雲かのことかつもなし 春梅のかたかけるに 青毒はすゝ世の種のみのりよくしそのおしへにつくそしほらし 廣治寺といへるにて むさし野居善寺は三俣谷四郎か建立せし 寺なり舜部和尚之享保味分の住僧にして 行学益備にいますかりし法要集となくいへるを あらはして無是の二字を念する今万善にも すくれたりと云云 胸算じの知恵才学をさし置てとかくまかせよ二一てんさく 鬼の念仏 極楽も地獄も おのか身にありと 後 奉か帳 聞て母まよふ 凡夫心甚よつとあつたら どふしやらそ地こゝのさゝもかね次第鉦をさゝいへ也 なもああたあめと〳〵とふりそふなそら言仏も傘の用心 酔狂の人をいましむる 金剛宝戒章源空曰酒常殺人能失正念 雖有息と入鮮如死人 酒すたゝのまねは須磨のまさひしすくれはあかし浪風そたつ 伊城の 道中 いへに水を 一生をうき 旅人のこゝり かな いろと欲とを南かけにして 一遊所にふける人え異見申せす北之事 大孝は細見を買ふて見す大通初運に遊はす 此さとをしらぬ人こそ粋ならめとかの三浦屋の 高尾か言しくも宜なるかむかしなからの夕 けしきは八相のかねもおします立ならぬさくらに 色をきそふ君たちのちかふ姿につときめき茶 尾かあないのたかとのには花かたみのならふ筑言 月の 昼 は おのか こゝろの 生 はら雀 かごて飛せ歟 子のもてはせしてのめやうたへやひけ四つまての さゝめきに誰の心のうこかさらめやうかれ女の色手いかし めてゝは帰るしをにも忘れつへし面にや実相無 一漏の大海に五芸六類の揚屋となけれとも随縁 生は如の客の来らぬにもなし客の立残もなにゆへそ かりの枕に心を留てひかれぬ義理もありそうみの 深き堪のみなそこて粋か身を喰ふ蛤のしんきらうも 此十とにこそとおもはなれ ふ二のおやまとちから見てもよし原にかゝるむし○の雲はうるし 品くたりたるは揚居の直上り客も女郎も いたら貝の身のほとしらすはいふもさらなり茶碗酒 の青切にまはさるゝ床の海にはふう〳〵貝のねも やらすさゐを鮑の色代新造にわるこれたる みさかなは鯛もひらめも御老ざこもみな海原の いろくすにして頃と網に引あけたる浜のきち このしれのか哥〳〵におとかいをたゝきゐ方の女郎に やつあたりしてじぶくらるゝを思ふ中の口古と あまんしにか口いふ人にしはつまはじきしてより つかす律義ものをはねふいつてうとのけものに しておのれ由大門の口から水道尻の塵塚まて 尻くせわろきを通人とおもふは間ちかれの辻 新遺禿の伏勢に生捕られて馬鹿の町に 名をなかすも皆是茶尾のせんしから指しため めはさみむしにかたこひんをはさまれてうきめを みゝすの笑止さゝは女街の目にもあはれなりけらし 但事にいらさる射をはりぬきの面目もなく後は皆不同 女郎買の汁の冥くはすはたとへのふしの粉ひと袋 やうし一本そまつにせぬ女房か身の為をつけの 櫛一まいたに買かふてもやらす己か身の仇となる遊女 蔵主者には莫太の金銀をつかひすてゝかへらぬ 夜半の気心はいかはかりにか有明のみ夜からすも 気にかくよす母津の泪は鼻にかみませよもの いはぬ父御のなみたは枕紙にしみわたりていく度 となるゝ寝返りにその骨を引ちかへていたく更行 鐘の音は妻かむな板にひゝきつき上たる癪の くすにを尋れは宵寐まとすの子にせかまれ苦し きむしの子もり唄たましすかして閨のうち 二枚屏風に張交の女らの絵さへうらめしく こそおもふらめかはかりの罪も不孝もしら壁に 楽書をせるうない子か目隠しの鬼か神見の 挙酒か修産のたいこか狐挙に化されて庄せか はな毛のみ長遊す猟人。から鉄蛇たま〳〵うちへ かへりてはこはひ顔して白眼つけ知恵たふ〳〵と 見世さきに国府の煙草くゆらせは手代小者の かきつけてくす〳〵笑ふかたはらに異見かけのごし きことなとは露受けぬ風情には見ゆれ 朝増しりきよろつく狐わか宿の門戸をまもる犬に恥らへ うは気にの深る風中は糸のきれん事をおもひ 唐人の 寝てと 異見聞明 時なして また 目のさめぬ さとかよひ可南 あそれに実のいるこがなしはえたのをれんことを おもはにや身の程〳〵をしるの実は息子かぶでも 大根ても朝夕なけれはなら真木をさしくへて置 釜の下の灰毛独かしりの毛に火かつきたらんこそ おかしかるへけれ春の桜類の燈籠の桜粉もせして ゆかぬかよし原といふにもあらす女郎買は 女郎にほれて出のれに惚れすは一夜ふときさんや ほりの深はまりもあらしこからしいたへて帰る 舟路も安けしきあしたの雨の居つゝけりは ふるから傘のうぬほれ買笊也おもちやと とりかへて妻子をやしなふ世の中に親の ゆつりの財宝を土の化たる供城にとり かへてうつそいやすきはなのしとにほん つつゝ夢の破れかふれにいたる事なかれと 小網漁人器物てか にくまれくちにいふ 住城に誠かひよつとありの穴堤を崩すかねのかす〳〵 21280 夷曲古とし俵下 一、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、〇〇 第二十七年間開発ヲ一 夷曲ことし俵 一以テ購入セル竹蘭博士 半下 大湊舎田原船楼編輯 善悪のことはたゝかひ 俳身 或に差支人〳〵あつまりて芝居筵具若竹 なとせる席のかたはらかし有けれは客我に 別していふ翁もむかしはたゝはれるをよみ あるひは噺の會をなしまた或はす素人 狂言なともせられしよし今宵は老 はうちましり互に遠慮なき序な れはめ何そむかしくのおもしろきはなしを うけたまは見としくとせちなれは五羽答て古歌に 老ぬれはよそになされていにしへをかたるをたにも聞んのなし とあるにさて〳〵各かたはたのもしき心さし かなしかし吟も額かなけれははなしにくきもの 奈て何しそ欲を出されよといふに盛三類にて 類中翁いせ〳〵それは今流行の噺家達の 事なり我類と申すは朝起るより寝る迄の ことなり客それはおはなしなされすともしれと事 なかし翁も今色に御老裏のさしておもし ろき事も安るまし何しそ昔のおもくろき 咄を承りたし絹われらか今再白きことはおもし ろくして将楽しく面白きの根あなり一さい みなその根本あり各方も西白くたろしき根 本をしれ置や客われ〳〵か面白くたれしき 根本は女郎買なり翁何としてか女ら賢か 西白く楽しき根本有る也客先奇麗なる 坐鋪におの〳〵美服を着かさに菊酒 美味をとゝなふこれ衣食住の最上にし てその上芸者たいてか我れ太夫ともの 音曲その席へ来るほとのものはみな〳〵 我にしたかふ者はかりて生等りてとりはやし きてうつくらしき女郎を相方にして折ふこれ おもとろく楽しき根本ならに也翁頭を 打ふつていせ〳〵其たれし義は女古みといふ裏か ついてあれは誠に楽しき根本にあらす 実に楽しき根本そは苦しみといふこらなし 都てあたる楽しみは皆応してくるしみと いふ裏かついて思るゆへ真のたのしみに足 あらす客しから波め翁は何しを楽しみと するやし翁われは楽しみをもとめにゝ なきよりたのゝきはなし 苦不憚無苦楽不求安楽 人は唯心をまめに身をまめにはたらくははた薬の種なり 老人先思ひ出さる侭を証類へし或智職の いはれしき事あり凡人地獄きらひのちてすき 極楽丹きのこくらくきらひ有りと 抔と尓も。地こくもおのか身にありてをにつしほとけに問ことふれ 尤かし何某の忰折りへかよひはしめしけ〳〵 なりしかは其親たち異見えし給ひとし其異見の 銭かねも ふんだん達て ゆへに 被遊候 まと居はゝけの 尻をくさら 寿 しかとか気にくはぬとてかの遊里へかけ出し 馴染のかたへ行今日もかへらに羽赤も戻ら 寿三日居つゝけとなれは宿もとは大さはき 迎比の人も帰らすゝ今は親類打寄てあろに まち〳〵なりもときにかの息子悠々と褥の うへにておもふやう我けふまて三日居続するう 誰壱人無人相すなる者もなくこゝろに叶はぬ ものもなしわか機嫌をとりて我にしたかひ 美渥美味はこゝ路のまゝにして宿もとの うさをわすれ此やうなおもしろきき楽しき ごとはなしと思ふうちにも元来せちかしこき 持前の気性ゆへ女良かよく勤てもきやつ如方の ないしろもせ床花にしせんといふ仕懸なりと おもひ落言者たいこもちかお頓卅のちり竪こし なとさすれはこいりも若ことには如才のなき 屯つとおもひ茶屋船宿か折〳〵の機嫌伺ひ こいつも故業にぬけめのない者ともとおも飛 やりて若者か入かはり立替りきけんとかしに 客 けの 居つゝ 雨となり 雲となれてふ うかるゝ よしはらの花に 来るを見てはいやこれも世まふ事に透間の ないやつらとおもひ思ふの中に風らこゝろつきて おもふやうは渠等かあのやうに勤まれはみなおの れ〳〵か職分のそよしかしこき者ともなりさて まとおれはどふうらせとふり返り見れは道もなく 職分を忘れおほくの金銀を遣ひそ親せしは そむき家内を騒動させ何程とつ取処も なきうつけものは我計なるそと思ふてみれは 俄に帰らりたくなり立んとすれは何しこと歟 御気にさはしたるかと大勢おしとむるをふり きつてかへりそれより不孝の段々を催き遊ひを 也めて今まて交りたる者ともへは相応〳〵に 途をあたへ途中にてもものいふことなかれと 立切孝行になりたる息子もあるそかし さきにいふ親の異りか気にくはぬとて かけ出すときのこゝろは鬼なり我にたち 帰て不孝を僻る心は仏ななしさて此 息子とのかあらためて家業を精出せ婆 衣食住は湧いてゝ何しのくるしみもなてをり ふらしは親子にてきまふ打くれて月花をも 詠め其居見物も心よくすれは精楽世男 なりしか類に我ひとて金銀をつゝ有む すて親をあやふめ借金の渕に落入一家 親類妻子もうとむやうになるにならは地獄に あらすやその地獄の苦しみす鬼にいさゝ なはれて火車に乗とあり鬼とは息悪悪鬼 とて我あらゝき気にひかれて太心の仏を うしなひ私心の火高ふりて赤鬼となかし 肝の臓の気さかんに春鬼となり此身を せむかとらの車乗まいそ〳〵 のりやすき人の門の火の車いろと欲とのわかふたつ昨季 吉さきに翁のことは心得かたきことあり都て求 たる楽みは真の楽みにあらすと人〳〵身 分相通にたのしみは求めてせさることなし もとめさる楽みと只かやうのことなる也翁 御かれなから高徳高官の御かた〳〵より 下万民にしいたるまて身心全く楽はならぬ もとといふ事をしり給へ上々塚もそれ〳〵に 御勤のあらせらるゝその御勤をなされねは 御心かくるしむましてや下々われ〳〵こと敷 もけは猶さらの事身を勤め働らかさねは 何ほとのもの持ても楽にはならぬもなり 譬言は今日わか筋へき道を御敷置て花見折山 片心におもふ侭楽しからさるもけなりまた召 仕大勢あれとも其主人かさきに立て働けは 家内よく行届て大晦日か安楽なりおれは 此家共旦那さまじせと手代まかせかしす歟は 当時楽なやうなれとも長持はせぬものここれらの 事はたれ〳〵も皆々知る処なれともかの 聞智聞思聞信なり余は察ししらるへし それとも冬方身心全く楽かなるへきせ否容 よく〳〵考へ見れは両方金葉はならす翁それ 明らかに弁へ給ふその智君子にかはることなし しからは両方楽のならぬといふこと先決定し 給ふなり二つとりには何れを楽にしてほし 或そ略それは申すまてもなく心を楽にせん こそよけれ翁我もしかり世の人一統こゝろを 楽にしたしとおもふは通義なりしからはめ 銘々影路達も心を楽にくらしたしとおも 八類へし先各かたみ親の苦になる人か楽に あふにす人の客親ともは明くれわれ〳〵を苦に いたせとも是はいつれの親もおなし事先世間 笹の順おくりといふものなり理に付いやとよそれは大 なる僻事なり各かた候としとみ末ちけれ共 心を楽にしたしといふ親御たちは老年の さき短く心ほそくほしとそ忰ともおとなしくなり 一家業に精出すを見て安心してせめて一年も 楽々とくらして往生かしたしとはかなき願ひを したまふそやある頃は其この為に神ほとけを 祈りたちりのなとしまたはその子のうへ気やむ ことをえねは芸者女郎なりとも忰の気に 八たるものを内へ入妻にもたせてなりともおとな しくなり家業に精出すものならはと さま〳〵こころつかひし給ふことなり孝子は親 に事類にその力を尽し喰のもの衣類は いふかし及す夏は冷しめ冬は寒気を防き 其心を慰め養頃親の余命を延るもの也 不きものは親のすねをかちり或は母姉妹の 衣類まても剥き親に借金を負せその心を 苦しめ親の命をせゝめ終に勘気をも受る これを順おくりと申へきやよし勘当はうけす とも凡親の心をいたましむるは不孝の大い なるものなり見すや五刑の属三千にして 罪ふ孝より大なるはなしと其勘当したる 忰にても親の慈として憎しとはおほしめさす 行す衛にもと折〳〵はおもひ出してなみたを 奈あし給ふ雪の夜やし不孝もの如か居江と 古き句に見えたりましてやかり子におゐて をや客翁はもはら孝道を勧められたれ〳〵 もよき事とは思ひなから出来ぬものは孝行 また世間の親孝行を見るにいつれも孝行に せらるゝ親はおやからさしてちかひまにゝ雨 あらこれ〳〵馳も舌に及はす何をいはしゆる孝 行するのか親の善悪ましよつしたものてはきら ぬそ親の心子しらすとかや疾病風雨雷鳴とも に子の事をおもはぬ女もなし胎内重恩のことは さし置よふおもふても見給へ生れ出るよしこの 可被義はくの御苦労之出候痘瘡やら麻疹 至ら胎毒症の尤し立たて見れは売薬の 頃き私はものかはよし病気なく育にし ても暑寒の厭ひある頃は火事地震洪水 等にもわか身より生子を思ふ事安からす 成人するにしたかれ衣類も親たちは色さす ともその子には分相解いかしきせ手習よみもの 何事か子の尊にあらすといふことなしそのうへ 子のために何やうの守日行も太儀とは廻召す死後の 行末まても深く遠く思召給ふ事世界に何猶万 ある人かしらすその中に親ほた我を大事におもひ 給はる人よにあり也ほ口 客一同になるほど 菊その大切なる 親御たち今こゝに かきをかき候はゝ其加馬に 乗て女郎買に行申 否客それはおきなの ことて共おほへす われ〳〵何程不孝 者にもせよ朝に 駕を舁せての歟へきせい 我等はかりにもあらす広以世界にも有ましき をや扇御答はかにも至極せり何しほとの悪くも 親に駕をかゝせて女郎買に行ものはあるまし その乗られすの類もの葉しとしる心は則銘〳〵 天より受鳴たる処の良智良能なりおしへを またにしてしかり鳥畜の及ふにあらす人 なる哉親に加馬をかゝせての類事あたはすさきに 各かたへ問ふ時身と心とふたつ取には心を楽にせんと 答へ親御は猶更心を楽になされたきことは御食 真なりしかるに子の子の身として夜のかくかるには のられぬ事其ん能しれる夜の心の駕に乗て 嵩しに御心をくるしありは身に骨折の駕に乗 よりも重き罪人なることをしる也否もしこの 罪人ならさる事をえすんは親に駕を臼させて 甘良し買に行ものといはんかもし〳〵且町こつが 親御の大恩寺前もふ目を覚してお酒手〳〵 子はしらす親の思ひは四つ手加等しくしも体む自石杖はなし ふつかの旅 風露庵遅月 田原船積 中秋の花ゆかはかり風露庵遅月上人を いさなひ龍眼寺の蔵見に行んと宿を立 山られははせ両国にそさしかゝるけにや おき江戸の国水流すよね津の町より右左を 見わたせは河辺の茶見せ賑はしくよせ 浄留理のよし簀はりこなたは軍書 の講釈場たかすに筆をはりあふき打たゝき 〳〵てそきこえ計類弓手にしたかき籠たれ は軽業しはゐおてゝこてんよせだれこの音 かしゝまらくみはしより乾のかたを見わた 勢は五十嵐のの紅看板へんほんとするかへり 名あのいくよもちはあけ暖簾にいちしるく ゆるひなき屋たい見世は遠近にかそふへくも あらすからくり見せるいひ草は雲柱の くせるにほとし見せものゝ看板に偽り なしとよはふむしは猥に異ならすあし 飛きの山うりは居さりも腰をたちところに こしの旱道安しなへにせんと息もつき あへすさえつるにそえしれぬ薬にすかされ 高巾着はたきて帰しるもありそか中に かしこけに見ゆる男はしりひに首をふる道 具見てこゝのね目貫のほり出しせんと 眼をくはり小間頃くみさふらひは矢とりの 尻をそねらひけるあたりはつれは日和にまか せていつもかはらぬあやつりはこくせんせの 魚か程とらちやるめらの音とかて鄙人の 耳をやおとろかさひとかたへにつぶやきはなし 亀は明し鱧はさもなくて己かこゝろの 一数生会に比れふる莫のおとるかことし 水菓子喰ひつゝうかれ行四方の唐〳〵 には売ものに花をかさりて諸人の目に つくはねと尽せぬ御代にし何頃とつ不自 由しらぬ白雪の富士かみねを乞んかしに 見わたすをもて両国のはしこそいふならせも 両こくのはした銭まく実はへよりかねのなる木の花のさかし坊 かくくちつさみて古礼より遅月上人にゆつる 上人筆をとりて書つく此つは名におふ 陽田のなかれにて橋うちわたるよりこなたは しもつしふさとむかしはいひしとかや今は かたしけなきおほんめくみに民くさの家 たちつゝきてもとの所名に呼ふものから賑は しきはさきに舟積のかきしさまに御ゆ 替らすむかふに門の高く見ゆれすかの無縁 寺てふみてらなるへしこや明暦のむかし 丙丁わらはのいかににおほ〳〵の家とともに矢にし 七 拾万余人の 大かるわさ 昔そにとて おほやけより 草剣ありし 道場にて回 向院といへり 常行の鉦の鉦の音 しつしかにすこし くれないの莖 をへたて顔 奈相れも たうとし 市なのやと船をたゝき鉦 駒とゝむといふ橋より飛たりのかたへわりのした 水といへるをなかはも来にけんとそふ みちのかたへにまたちにそめぬさいかちの陰に 人いこふへく儲しいほりの見ゆれはやをらた地 よりて杖を休め茶すゝり煙草吹つゝ 見めくらすれは蓬葎のみたれあひたる中に 雁来節の安か〳〵とさし出たる莟つくる 菊のまかきなと野らめきし庭も同ん ところあつて 犬蓼のはなみなしたつか秋の雲 混し沼にありといへ歟は此は花にしやと上人笑ふて 上十三 サ 筆を返す舟積また是よりくちつからいつる まゝをかいつけんとてき世留打はたき音を 立出れはこれも荻見にゆく人火舞 みちかたなさとゝうるものゝふのみたりより 打つれたびて道ゆく〳〵西瓜たらへるを見て 断うりの西瓜にたつに割下水あつはれ武士のおたしなみせん かくわらひをしの飛亭おもてをあはするもかた はらいたしと渋し目に空うちむけは秋の 廿あらしのはせくも午の声八つかしらの芋 畑なんと生垣うち越て見ゆるもひなめかし きみやしき町のうちをなかるゝ一筋に情 ところを商ふおみなの赤きもようの肩切 かへたる衣に丸くけの帯しつるかとの もに出て袖ひけはなまこゑりの合羽てふ ものめたるおのこなんとあやしきいた かきのうちに八十五ら是なん恋のぬの通ひ 路ならし 煩悩の犬さきたて猟人やかりのまくらにはなつし鉄炮 いと土崎の町よみ北にひたりの小橋うち越ゆけは 法恩寺てふほくゑのみてらありその森のしけ みに蝉の声すたくをきゝて と伝ころもおのか休とや声たかくつく〳〵ほうし読誦すらしも かたにつゝ行程なく亀戸のさと勝田氏のもとへ とふらひけれは友人あつしまりてむかしを 十一 かたり或は上人とともに筆すさみなとせる 序しに弐人わかしつの病癒るるよみて よとあるにいなみかたくて 魚深しにあまる小袖のかひくさきしつの病もなをり羽二重 さてよのふけゆくまゝにいさやふしなんと 千代よろつ夜咄に受て蚊居をつるかめらに命じ長祢をやせん けふは友人のそめきにみてらのと秋も見さりしか あすは鶏鳴におきはて露ふかきけし きを見されこそあはあはれはふるへけれなんと いひつゝ一間処にうつりけれは猶むしのねの あはれにもまとおもしろさに いねてまつ夢にはをはきうつゝには虫のせるきかん耳の果報に 朝とく起いてゝ庭のけらしき見はやと障 子おしくひらけは秋霧のふかくたちわたして き給ふみし数の木草ともみな海の そこに戦くやうなる方興あかしと上人例の 筆をかみて のこる蚊のすりにつくや亭の朝 とすゝく霧間に朝北のかけのきらめくに 上十五 ト あるしに暇こひてこゝをさち出つゝあまみつ みやと路にまぶてんとみつしのはしく打わたりて みまへにしはし諸遊し奉りけれは船積は 右りの梅のもとに立寄筆をうけとりて 所王廓の結構らいふもさらなくはけにや四神 相応の地にして前に磨地あり是なん むかした鋳銭座の跡なりせは銭朱雀とも いふ奈秀へて比たりに委也し前の川 龍梅あり右によりの藪のうちてふこみ 地あかし此いたりに張子の虎なとつくりて いとなむものおほくすめ霜もまたおかし 万代の亀戸の名はおのつからそなはりて まことに自在天神のみやしろとあかめ たてまつるもことはりなり白太夫のみや つくしの飛梅は爰にうつして年ことに 花さき実のれとも今はそのおもかけたに わすれて此はなりひとへなりしか八重 □□□□□□□ にやありけひ心まとひししけれは 飛梅の花やふんこか里を八かとはゝや露の白太夫との とよみて上人へ筆をまいらす まことにけふははせ名月になかははちくの つきぬ此頃の夜のさまさそか池水の ほとりこそなつしかしくけれと 又橋に八歩月の曙そはゝいつれを弓とみたらしの影 なかれにそにて折ししまなれ慈雲の山 寺にたつね此朝これや世にいふ萩寺也 けり名におふ萩ははなすこしおよす けなからやり水おかしく堀めくらして 白きすもとより色あるのにもみな 上十七 しら御ゆの罪はたらてむかと見し難 磯野の秋の曙宮城郡に袖すりて 野も雪からに月をま地しゆふくれ なとも今のやうに猶其ひ出られて胸に かれ是はあはれのかよふも又やみやかし またや見さらんとあはれ明木子 霞けさの草履すくなりこまれ花 おなしこゝろを 御甲花のいろさま〳〵にこき六人て秋も錦の枝し島そも かたく舟積また筆をとりて 朝またき萩寺の庭に露けき萩の さかしを見えへりて 咲そろふころもきにけり秋はきの錦のけるの露のきらめく 一打なしこゝろを ふしつ声つ朝かんきんやする数降の玉をつらぬく露の糸と秋 しら萩と むらさき 秋の すねおしに 花や いつれか 二十一日 かつしかの さと みてらの茶店にしはししやすらひて宮城 難しのこのした露の古顕なんと思ひ出られは けるときと秋の筆めせとて商におふ姫の ありけれはかたへの士衆土産にとてもとむるを 見はへりて 下露は雨にそまさかなみさふらひかさをさしめせ萩軸の筆 上人筆をとりて 公社の古枝を箸にしくりてひさくもあれは われはそれをと求てその袋のはしに仇書す 着物のきれとみやけのひと袋はきのにしきの是もをりはし おろしくこゝろを間文 六半はらしのまたも来さらん草は木はさく此糸も玉のしら公然 ことせていやしきも回かつなれはゆるせかしと そこなる枝に結つけてたちいてぬ上人その 筆をさしおけは舟積とりて 押上の妙見に詣高名にのきこえありける 松の下の計に立よりてなにめつしれはええたそた 葉をしきみとうのいろせい〳〵ととてもうもともに 千代もへねへきこゝぢしぬれは この松の頃と木奉公せん年もわれ請あしをおしく上の神 その筆の序に上人もとて ほしをさそふ立てゆたかなめし船の松 こゝより杖を西北にめくらしてなを秋草の こみちをたとる〳〵まことや臥龍毒の 秋の寿かた見ゆかへきをと人にたつぬれは たつみのかゝを指さすに 上十九 雁なくやこれとかにひかし毒やしき おし上をすき請地のさとを右に見なし つゝゆく〳〵 唐黍とならんてそよく尾はなか南 なりひらはしうちこへ小梅中の郷なと またにきはしきかまとのけふかしたちつゝき たりめくり〳〵てふたゝむすみた川の ほとりに出はしま十つとに遠くも来に けるかなと安川満橋わたりてそこに ふるき石燃みるあり鎌田正清か造りし といふ山の宿てふ街を過れはものあきなふ 家さま〳〵あるか中本 きり売の冬瓜にはやし秋の霜 夕越くれはとよみし侍乳山へこゝくさすまて 舟積に金をわたせはうけとりて まつちやまに登波歓喜古天にぬかつき かしこの出茶屋にしはしやすらひて見わた せは四方にうらむる山もなくこ廿月の 目のなかめこそよにたくひなからんなと おもひつゝけて 一打月々に月の出ししほを待乳山秋はこゝらにすみた川の辺 上んも一首とて香つく昼しはらくは蝉さへ なかて秋の暑きになけれは 月影もさこそすみたの川し風にくれを待乳の山すゝみせん みやまの坂を下りつゝ露れにし 上人も坂のあふなし女郎花 といひかけしかは上人取あへす すかれはえたせをれるはかりそ と付合給ふもよの 小馬の人のおよふへう もあらねは爰に しるに 舟積筆をし めして あし曳の山の 宿秋くさの花川 戸ははな茂 紅葉もなのみにて馬道すくに矢右片門 より金龍山の観世とてにまふて抜苦与 楽と手向してみたうのうしろおく山の かたへ見めくれは木立〳〵の下かけに小弓引 ゐる庵のうへに木のは漸ちかそ懸ぬるさま なと見はへりて 楊弓の矢さきにたつしや秋の風きりのひとはをいておとしぬな おなしく やうしにもならぬさきから秋くちの風に柳のはをせゝる也 上人また筆をとりて 山門のかたはらに玉つき地蔵といふかたち 給へりねきことする人みな土器にしほを 本四て是まつし春いかなる事のもとにやけん 何かしの院とか門に孔雀の彫ものしたる これやいたり甚五郎といへるたくみの つくりたるそのしるしとて冠木に鑿を 打こみて今も猶のこれ程 うつしはりのこ路やいく代の鑿の鐘 雷神門をいてゝそのほとりなれ茶店にし やすらひ昼餉なとしたゝめてたちいてつゝ 並木にかゝ新波の舟積いふ今ゆこひし處に わすれしものあるも君君しはしこゝにま地 給へと弦をはなれし矢のふしたゝひ安とへ 帰るも今に侘んの遊ひなり計り あふきより心に秋のひとこしを忘るゝ人は涼しかりける 舟つみ筆をとりてそのかへしにとて さへ返今の暑さとともに頃とこしを忘れて涼し秋の夕風 今やし夕日かけの駒形堂をふしおかけ川 辺になみゐるますゝ男かふねか〳〵と そは〳〵しくいふめるもあつまふりならめやあみ わたひつゝ打つれてすはの町黒舟のまち なと上人の衣の袖を真帆かた風に帰る みちすから あしもとのあかしの浦や急くらん月のみふねのさしとるまに みくら前の鳥越はしをわたりける時 うかれつゝのへに遊ひて諸ともに社くらに帰れ今起のはし たへたるをおこしすたれたるを あくるはかしこき人のわさになん 侍るを何かしのあろし田屋の 翁かよめる哥をあつめてもの 寄るはまきこしろのふりき ためしとてその名きこえし うしたちのはしめうあけ つうへるを猶たゝへるはおも ねるわさうにつれとあさ 妻姫の浅ましきまたの日の 笑りをたはれとゝむるいましめの 哥にし侍れはしめをのかつうなかく いひつたえんとする人のいとも かしこきことことをふたへも三元も くりかへしいさしか末にむすひておきぬ 加藤元越 下之巻終 文政四辛巳年初春新刻 永代橋詰佐賀町 東都書肆伊藤與兵衛板