怜野集

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京曲園等畫
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京曲園等畫
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レイヤシュウ
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東北大学
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□□ 松歌恰野集春之上 ・四二 ▽弁恭信防衛卿屋ヲ一 以テ購入セルヿ精博士 狩野亭吉氏菅様画 清原雄風のうし川にしね万葉より新勅撰まて おほやけわたくしの撰集の歌ともを類題して 齢野集となん名都遣こけれたまさるは古学に 新くさまし理といふるのことはによられしなり 争利今この集を見るに霜のくち茶のふる然 気留をはいさゝ可覚ましへす亭□草の新ら しきかきりをは出年留におなし名せし毛よひ 持遣たるはことのこゝ呂たか飛て聞ゆめ礼登 それはたゆゑなきにあらす西舟はつる故かへしの海こ かね花さくみちのく山はるけき境の人々まてもかく ひとつのしふにつとひたるは思ふ友たちかい侍らねて 藁おふるむさし野の事の大野の草をちしろにあせ 礼あ弊らんこゝちせられていとおもしろきまとゐなれは 冬思ひよそへ天のこゝ呂しらひならんかし 天保五年三月 天保五年三月千種庵諸持 狂歌怜野集春之部 上の巻目録二十種 元日門松立春風霞鴬 礒若菜残雪似花梅早蕨春夜月 春朝春夕春瀧春魚春海辺 春車春舟春烟春夜春閑居 大漁夫 元日 亀屋 主 牧屋 末の世も 神代の春に かへる日は 初日に人の み羽の大きさ 武蔵小川 熟全堂 世ににくむ 光煉 たくひならめ也 朝からす 一去年のわかれを つくる声々 阿波徳島 ぎのふをは 緑芳園 まねとへたてゝ 春條 門松 花さかん 日ををかれと 思ふけふ哉 花屋 其 馬を見る 日まてめてけり 縁をもて 名古屋 花春臣 杭小つれける 耳にきゝ 松の青きも 目に見る ものゝある 限り さなからふ あたらしき哉 包塘国 十二 春雨に土うるねへは 広好 門杢のなき根も 三 文字楼 春されは青き 松をそたてゝける 本成 夏はすたれに かけをなす門 一縁をもてかけをなす門 逢生の宿とはいへと 春されはゆかまぬ 竹をそふる 門松 武蔵越谷 武蔵越谷岩 在峯月亭 根つくこゝち こえすれ 青葉見る 軒端 たくひに たくひに をくらき 十五 春といへみ あらす 春の門口 お立て 千束菴 酒うる門の 若松に 章雄 一越後新発四草種園 菊寿躬 杉のふる枝そ 立ておよはぬ 岩の上に生るたくひり上野高生 石の上のすまひの門に たつるわか松 上野高崎 桃室東雄 立春風 霞 五 びきそむる 章雄 十五 日の面寒の 眉桁の 嶺の内を眉根色あかし 霞の網を いかに霞の 下れてけさ 酒はくみけん 名古屋 あゆの風ふく 春は木にけり 曲水国君羊雄 十五 甲府 ほき酒の 檜松園 とそに破けん 喜寉 東より 伊勢松坂 鈴鹿の屋 十三 真津丸 風の神 たつ春風の たつ春風の春たつける 春たつけさは 春たつけさは 声のあらきは 袋をも あたらし 下野栃木 十二 通環亭 春のたつけさは かのたつけさは真袖 のとけしめに見えぬ 真袖 かへてふくらん 風也 姿を あらこむるめ 伊勢津 跡に見る都の 荻屋 空の春かすみ へたゝりし 程はへたつ なりけり 十二 三輪の里 おほふ霞の おほふ霞の 仝 新酒也 杉の匂ひや あらん 六 磯若菜 栃木 真袖 つこもりの闇にも知布をは を雪間の磯菜 たつねわひけり 大坂 大坂 水あみて磯の若菜は 乙我の名前 梅香園 守近 君かためけふつまれんと 身をきよむらし 残所三似花 下総野田 春山の雪の花には 柏樹園 うら〳〵となきたる 空そあらし也ける 出羽竹杜 花に似て匂ひ 濃迺梅守 あらすと春山に 笑はれなから 残る雪哉 明冷野集春上 □□□□□□□ 都曲園画 春車 菫さく野をなつかしみ たてぬらん牛を ねかしゝ物見東は 武隈庵 十三 名古屋 牧屋 玉の緒に ゆらくはかつそ しかくの山 車とゝめて 桜手をれは 大漁夫 栃木 梅 真袖 香のそひておつるを 春風をよき香 うしとさく梅の枝を つたふか花の朝露 もたりとゆかしまん おのかにほひと梅は しらすて 越府 右橘国美崔 十三 をりかさす梅をや 武隈庵 香にめてゝ花をおもへは 一男の夜も心にみゆる 人の恋ぬらん深き かをりに我そはなひる 園の梅かこん 津荻の屋 づき穂せし蒲田の梅は 霜除のむさわらかさに 馴て咲けり 名古屋 琥珀国 夜あるきを兄の 清根 いさむみちして ふり捨かたき宿の うめか香 くれなゐは葉たに花の 花の屋 うるはしとおもひしを 花もこそめに匂ふ 梅かな 着なれたる 衣たに梅の 香のゝみて 檜樹園 秀明 京 玉兎園 文このむ梅は あつむる雪の色 蛍の星のかけも ありけり 江戸町 緑樹園 春あたしき 心ちこそすれ 右同所有之事 春海辺 にはよくて 章雄 うら〳〵かすむ 難波かた 浪はやしてふ 名さへかくれつ さち多き 春の海へは 本成 たひらにて 魚は中々 山をなしけり 武隈庵 えその海家なす ほん屋根にふく 昆布のみとりの 色にかすめり 中々に浪の 花こそ咲にけれ 秀明 磯山さくら 風にちる日は 春魚 十五 若鮎の それと見る間に かけきえぬ 遠江見附 水の中さへ 大君に 万葉亭 春は かすむか 都音成 さけん魚也 材木 より来らん 真袖 霜にあかき 春の長浜 十五 春夕 上総東金 秀作舎 十二 春といへは をかしさめつ時 夕月の くれをまたぬも 入かての日も 武蔵赤山 檜峯舘 海は凪山は 明一 かすみて くれなゐの わかけまはゆき 春の夕くれ 新曲団画 花屋 距離 さく花の花を かさして吉野川 わかゆてふ 名の魚も あそへり 流をは枕に なして若鮎は 浅瀬の石に 口そゝくらん 春舟 広母 三河寺部 雅流園 磯山の花 弓景 風ぬるき 海の上ゆく 舟あしも 春はこゆきか うこりさりける ちらさして 春風を 帆にまとめ つく はしる にて 名古屋 奉山法師 明怜野集春上 画四 鶯 十五 花草八重は 檜目庵 三 徳島 飯山亭 桜谷のとかに 出る鶯のけふの 喰主 はつ音や春の 手馴て縫へしと まつ一重より はつ花 鶯の蜑ふ 檜樹園 十五 しめはへし秀明 しめはへし あした下たれか うくひすの 秀明 法の声をは よそに聞へき 火みなの心に 名古屋 水魚園 友雄 声をやとらせて 梅の時にかへる うくひす 仝 梅かゝの風に出あるく あく留の類やよむらん えたのうくひつ 十五 花さかぬ 梅に来なける 鶯は留守に ぬしまつ こゝちすらしも 武蔵小川 熱全堂 光煉 名古屋 蘭亭羣雄 鶯の類の袋は 梅さくら酒の小切や よせてぬふらん 肝並ふ都は狭き すまひやとかこの鶯 わひてなくらん 三河寺部 三河寺部雅流国弘影 花笠をかさすゆゑかも とし毎に来なく鶯 声そ老せぬ 近江信楽花鳥屋 仝 うへを見ぬ 柳の原に 世をしのふ 梅の花かさ ぬふか鶯 しめて聞らん 梅もくに こゑの初花は こゑの初花は こゑの初図は 浅湾菴 三河道目記 鶯のたへなる な 十一日 栃木 大和 真袖 声にさへ柳の 梅のくひす 蕗 何およふ 花はあり へき 河鳥画 大学写 早蕨 十三早蕨廣好 十三 十二与府庄屋 あはれてふ事をはおのか 廣好 手ひとつに握らんとする 野への嶺か 越前府中 右橘国 風さわく桜か 一もとの早蕨はかねの瓜 美寉 のふる苦をやなすらん 三河寺部 雅流国弘影 山里はわらひの肱をきる頃や 雪のたるましうこきそむらん 春月阿波徳島 一衣うち虫なく秋は 緑芳園 春條 夜さえして春の かきりをねふる 月も 章雄 は重こむる前に霞に 月のかけこもりはてゝも 内のかけ三十めはてゝも あはれなりけり 春朝 松の国 一秋の夜の砧に春鏡 うつてかはり 霞の衣 たてるあしたは 春閑居 十五 世に出しと 思ふ心にしめは 花屋 ひきぬ 春とて門に かさりせねとも 十二仝 十三 一おのつから若菜も 松も庭におひぬ 春とて野へに 出ぬ宿には 春衣 色そぼる 甲府 檜窓菴 人とはぬすまひは春の 文舎 夢見草枕の山に 寝てそめてける 様見るより いそかれて 徳島 花見小袖の 世をさけし 春條 したて はたりつ すまひは春も はたりつ ものいはぬ 桃山吹を 檜貝庵 うゑてめてけり 同八太号集巻上 狂歌恰野集春の部上之巻 撰者檜園梅明 尾張名古屋 元日神の代の春をいはへる元日は法の師さへにわさやすむなり友雄 元日は若水くみて賤か家も明るもんとの司めかしつ調布 大坂 一春といへは早さきそめぬ御してけさ神にさゝくる燈火の花春園 恋しらぬ身もしれる身もおしなへてけさいまたるゝ鳥と鐘の音今 伊勢津 月をめて星を祭れる秋はあれとかゝふの日影にあまさるへき萩の屋 美濃門屋 一夜さを去ねとへたてゝけさははやふることにして笑ふ元日西蔭 一門さして広める春は神の代の穴すまひにも似たる元日日々器 越後新発田 さくらさく春来にけりと手添きのこと葉に草をかさる元日菊寿躬 陸奥八丁目 その原やそのはゝきらに春風の手をたにふれぬけふのしつけき俳優詮社 常陸土浦在 一夜きを去るとことしのへきそにて氷も水にかへる元日明郷 上野前橋 あたらしき椀の匂ひも春めきて梅にことたる元日の朝一岱 神代より今もいはへり元日は柳のはしのふたはしらをも仝 武蔵氷川 夜のほとにとしのふるさとすみかへてけさは都に春やうつり 人心前の春たつけによりそひなの長路も七日にきはふ花咲菴 上戸まて雑煮いはひて下戸まてよ居藤いはひぬるけふはめてたし秀明 橋さくら小袖に見えてけふといへは心の名もひらく元日仝 はゝきをはとらぬあしたの啼りつみもちりよりなれる山のかたしろ一喜 陸奥乗折 くたかけや明のからすの声まてもけさとりなてあらたまりけり瓢泉恭 上野山名 あら玉の気のかしらにいたゝくはにほふ初日と尾蘇のさかつき明芳 よもの海底にきけふははゝきめの浪りくこすて宿下しつけし輝明 一つこもりを寝すにあかせは目にさへも霞をひける元日の朝文舎 明恰野集春上 S 欠S S 狂歌恰野集春の部上之巻 撰者檜園梅明 尾張名古屋 元日神の代の春をいはへる元日は法の師さへにわさやすむなり友雄 元日は若水くみて賤か家も明るもんとの司めかしつ調布 春といへは早さきそめぬ御してけさ神にさくる燈火の花春園 恋しらぬ身もしれる身もおしなへてけさいまたるた鳥と鐘の音合 月をめて星を祭れる秋あれとけふの日影にあまさるへき萩の屋 美濃門屋 一夜さを去ねとへたてゝけさははやふることにして笑ふ元日西蔭 一いさしてやすめる春は神の代の穴すまひにも似たる元日日々器 越後新発田 さくらさく春木にけりと手満きのこと葉ふ花をかさる元日菊寿躬 そのゑやそのはゝきらに春風の手をたにふれぬけふのしつけさ俳優詮社 常陸土浦在 一夜さを去まとことしのへこてにて氷も水にかへる元日明郷 上野前橋 あたらしき椀の匂ひも春めきて梅にことたる元日の朝一岱 神代より今もいはへり元日は柳のはしのふたはしらをも 武蔵氷川 一夜のほとにとしのふるさとすみかへてけさは都に春やうつりし高吟社 人心前の春たつけによりそひなの長路も七月にきはふ花咲菴 上戸まて雑煮いはひて下戸まてよし鹿森いはひぬるけふはめてたし秀明 指さくら小袖に見えてけふといへは心の葉もひらく元日仝 はゝきをはとらぬあしたの喰つみもちりよりなれる山のかたしろ一喜 陸奥乗折 くたかけや明のからすの声まてもけさとりなてあらこまりけり瓢泉恭 上野山名 あら玉の気のかしらにいたゝくはにほふ初日と尾蘇のさかつき明芳 よもの海底にきけふははゝきめの浪にてすて宿下しつけし輝明 一つこもりを寝すにあかせは目にさへも妻をひける元日の朝文舎 明恰野集春上 のとりにも心はなりぬわか為に春は来ぬともおもほゆるかな花鳥屋 下野栃木 しつかなる御代とて亀のおちつきてはらきもあそふ元日の朝霍成 氷川 うつこしき歌の姿をうつさんと初日の鏡みかく初そら高塗社 髪かたちつくろふけさはうるはしく初日も紅粉をさして匂へり全 くむとそのかをりえならぬ元日に声のふほひもそふるうくす拙人 つ松と春と霞と立初るけさこそみつのはしめなりけれ輝住 松竹のはやしとなれる元日は人のこゝろもしつかなりけりけり細記 上野舘林 一結構と鳥さへ告て何こともこゝろのきよき元日の朝貞文 上総松ノ郷 初日かけ山のまゆねに色そふをひもめかねをはつしてそ見る広躬 下野間之田 一東より一夜に春はくるま尾の鶏なくよりそいはふ元日人成 神棚のともし火まてもうちかへてけさあらたまかひのはしめ哉順全 飛こらぬ世のならはしと元日は手わさをやそむはゝき屋の宿一戸 ものいはぬ桃の板うつもとつ日は口をかくしてうる感想ふみ琵琶彦 元日は人のこゝろもやす川につとふ神代もかくや有けむ胡椒亭 一庶積いはふけふは肴も組重と四角にものゝあらたまの春 蓬莱の山住なれやあけてけさ世のうき事はしらぬ元旦諸春 かしましき音に似つりて雑者大たく足木のけふり長閑にそだつ 仝 美濃大尻 一手礼に出るあしたはさふにもち上下ともにいはふ元日定 越前府中 一けふよりは花さく春をよく尺よと目にいる飛もたゝぬ元日月守 門松 門松にみとりふかめてさす竹の部も影もたつるはるかな瀑布本 松たてぬ心こそなけれ奈良の京青によしとは春をいふらん福禄亭 常磐木のかさりも花の春なれやさかり七日とかきるつ松浜の屋 一人みなの心に立つる松も世の春のいろにはそめられにけり 門に松立すは三輪の里にたに杉をめあてに来へき春かは静 巡恰野集春上 阿波 玉椿八千世の春につきにして千代の松竹門にたてけり紫 甲斐市川 一うこかさる御代を祝ひて門毎に岩にもおふる松を立けり美都成 八丁目 芥あてぬ柱といはん門松をたてゝ神代のはるをいはへり俳優吟社 津 松たてる七日か程は三わの里門たかへする客もあるらん萩 萩屋 一門松のふたはしらのみ目にたちぬ神代の春にかへるあしたは 月のかけめてさる春は懐となる松を家毎門にたてけり金 四舛 松たつる中にかさらぬ門口はみやに鳥居のなき心ちせり影住 をたしくもけさたつ春に繁間戸の二程とも見ゆる門まつ真津丸 門堂と人のよへるをともにたつ行はつれなきものにおもはん 尾張熱田 津知久 越府 春立るしるしそ見ゆる門松のみとりにつゝく雲の八街梅 一梅里 常陸江戸崎 ゆつり葉に海老あしらひて海山の幸をひとつにかさる門松緑樹園 名古屋 酒ひさく新端小杉をさす如く屠蘇くむ門も松をたてけり琵琵彦 武蔵舟堀 一蝶 子日をもまたすて門に立てけり松はかならすひくはかりかは 下総干潟 なか〳〵に都の春に門雲をいたして賤の庵めたちつ 陸州国 上野倉賀野 松たてゝ春をむかへつねたてゝ酒に人よふ家の門にも 千歳庵 千歳恭 下野佐野田島 神います都大路は門松も一夜に千もと立つらねけん 二木 武蔵飯田 花蝶 門愛も草の春にはかきりある花にならひて七日たてけり かりそめの小松なからも門かさり根さしふかくそ春をいは雁 栃木 真袖 遠江見附 春されは花の都にたてらるゝ松の心やいかにうれしき 武蔵寺山 松をたて竹をもたてゝ門えに言葉の花も春はそへけり 明一 信濃長岡 錦木をとりい水にけるわか門にふた木におふる松は立けり久苗 久西丸 越後今保 門松に竹をそふれは千代〳〵とかさねて雀なくもをかしや苗 苗子 とし浪のこえし霞の海原や魚木にのほる門松の海老静 八 家毎に植ならへたる門書をひく日を今は子日とはせむ楽恨舎 且恰野集春上 琴の音を鳥ちゆつるか春風に枝もならさぬみよの門盛一妻 神の世の春をいはひて二はしら門に女夫の堂はたてけり福書堂 初夢に見たる若駒つなかはやふたきたてたる門の松元綾雄 松とこゝゆたけき宿は蓬莱の山にあそくる心ちしてけり本成 一軒のはもつく波の峯と見ゆる哉女男たちならふ其かの門堂 ひんかしの海より春や来にけらし浪の音する門の堂風一の屋 京 一門きにそへし薪の桃さくら花はもたねと春めきにけり貝益 君か代の実ゐやまひてい松も地にはひかゝむるはなしけり美実 仝 みちのくの千束のりも門松をけさは目かたく立かへぬらん道桶 越前本保 一門雲の心しりてや降かゝる木すゑの雪も根はもたぬなり花琵 阿波徳島 枝をりし雪も木陰にひそみゐて千門に立る松を見るらし 仝 ゆたけしな都にたつる門松は山そたちともさらに見ええすて胡蝶 越後芝甲 人心箱やく春は門松の青きいろをそまつはめてける元明 津 神の代のおもかけなれや門松はあらきのまゝに門に立けり五十瀬の屋 美濃世保 春されは都大路も蓬莱の山家めきたり門のわか松麒鳳 女夫中むづましほは相相ひの雲を門辺にたてにける哉皆本 春されは朝は門に松たてゝひなの長路をゆくこゝちせり弘丈 岐阜 初夢にふし見し朝のつかさりつゝくちまたやみほの松平俊豊 海山のさちいはふらん海の老熊野の蔭もかさる門まつ 神の代近こと深く春の門堂は宮もわら家もふたはしら也職人 相模厚木 来し春の旅の姿もけさつかり笠もちなからたてる若松吉女 いせ海ひもかされる門の松の風ひかことゝきく人はあらしな うきことのしるゝ春のたのゝさよとしの若木を立る門松美年 武蔵南畑 一舟にたてたる松を来る春は千代もかはらぬ友と見からん亀成 明恰野集春上 酒造る家野春は師つきて杉ある門に松はたてけり登丸 仝寄居 へつらすのなき山賎も春来れは腰をかゝめてくゝる門まつ長世 舟堀 中々に山より出て里人の門めつらしき松そいろよき恭門 上野高瀬 青尊を見るへき春の木にけりと鴨の羽立の盛たてる門守邨 陸奥向川原 むかしよりかはらぬいろの松立て千とせの春を門にいはへり 出羽島畑 松たてゝ宿もけさより住よしやう色をわするゝ草おひつゝ高畑歌垣 下総佐倉 一門毎にたてぬる松はけさ来ぬる春にをしへし葉なるらん 仝高生 わか宿の垣の梅よりきはたちぬたつれははるとかはる門松調布 立春風 としの夜にさしく柊はふきなから春たつ風のかとのなき哉歌垣君 松竹によりてさゝめく声すなりそふたつ春を風やうれしむ磐雄 わかさりのちのわくゝるはたつ春の風もみそきの心なるへし牧屋 世につれて春たつ風はちり雲をはらひもあへす空にふくらん弘影 みこれたるちまたの声を吹よせて春たつ道を風やきよむる梅在 けふははやゆたかに春のたちにけり風もやはらく元日のそら うめの花とへさかせんとあたゝけき風をさそひて春はきぬらん 千金の春の重荷やつみ来らん風のくるまの音をたつるは美 はゝきをはとらぬけさしも春の来て風の神さへ飛にましたる今 門松に春たつ風の声さへにきのふのみねに似かへくもなし 梅にめて桜にゝくむ人とゝろしりて春たつ風のふくらん津知久 やはらける人の心をこゝろにてはるたつ風ののとけくやふく 草も木もものいひやみてをさまれる風に神代の春やさつらん たつ春をしつかに告てふく風はなやらふ声とひとしからめや 一柳より春たつ風は世の人の心をさきにうこかしてけり喜寿雄 柳ふもとく咲桜のにほひにも春たつけきの風はなれすや 同冷野集春上 梅かゝをさそひ出さんこゝろみに春たつけふは風のふくらむ瓢泉菴 陸奥半田 真富貴 をさなきはあしよわしとや初東風をのり物にして春のたつらん 越後浮島 あらむとつゝくる春のひかりをは風の袋にいれて来つらん古渡住 一初日影いてん東の海へよりはるたつ風のあたゝけきかな道人 阿波 吹風のあらき心もやはらくはけふたつ春にあえしなるらん 赤山 春たつと告る心か柴の戸にすかた見えすも音つる風 寄居 としこゆるみそきにしめのわかさりをくゝりて春の風を立けり 一五十半堂 三河衣捕 よし野川出らぬ浪に草さきぬけさたつ春の風わたりけん瀧口 ちりやすき花も咲ねはのとやかに春たつけさや風のふくらん諸春 岐阜 梅かゝの出ありくためと雪消ちて春たつ風の道つくるらん俊濤 一花ちらすわさはありとも見えぬ哉春たつ門のしめにふく風清 春たつといふはかりはや庭の面の松ふく風もけさはやはら〳〵美陶 霞 うら舟のはおとにしるしけかなく東路よりそ春風のたつ一の屋 越府 としの関手形なくして越きぬと春をとかむる風のこえかん美美 春たてるけふとしいへはかたちなき風さへ人にめてられにけり明澄 軒の梅花咲ぬやと柴の戸小春たつ風の音つれてけり綾枝 白によくけさたつ春の初東風は梅さく峯へやかてゆくらん本成 青柳の枝にそよきてたつ春の色はいゝ来る風にみえけり満盛 大巾のあのあるをゆきたけのそろはぬ衣着るははつかし秀明 山のあはいかに成るまん浅香山かけ見えぬまてかすみこめつら長樹 雪とけて足たまりなき山のはに何をふまへてたつ妻そも北岱 海の面に酒をも見せて立わたるは重汐の上の八重かすみな琵琶彦 ふしのねをおほふかすみに去るも猶ふたゝひ夢を見る心ちしつ俊濤 なかめなきまきたつ山も賑はへる春は霞の色に出けり春條 同明治野集春上 一けしきよく気の海辺をふら菊に絵にからせんとひくあから紫 いとへより妻そめつら咲いつる草にならひて八重に立らん貞吉 名古屋 大かたの山はしつみて見えぬかな霞の海のいかにふかゝる明雄 津島 おうしろかすみの衣のわからぬは春の国のしたてなるらん菊芳 伊勢田子路 天の原けふりて見ゆる夕かすみ空の海にもしほや焼らん清風 上野高崎 浅みとりかすむ限りたそめいろの山つゝきなるむさし野の原東雄 下総関宿 めつるものすくなきよしと我庭の外はへたゝて見せぬ霞か亀世 上総苅谷 ゆえいつる木のめそのめつゝみつゝみとりいろこくくつ家かな直彦 下総桜井 たゝなはる青垣山の春かすみ霞といわきてうまはしき色都曲国 ふしのねをもとくも見せつちかくへもよするかすみの力いくはく美年 葉鳥を袋にいれし心ちせんみなら野山おほふ霞は高吟社 武蔵飯飯 一久かたの天の岩戸も春されはしめかさる如かすみたなき〳〵花蝶 山人の庭の白雪とけぬらしあかきかすみそ峯になかるゝ一樹 天地に立ふたかりて世中をひろく見するは霞なりけり静雄 越中富山 一このおくの初栄見よと山川に橋うちわたす春かすみかも菊見 信濃長岡 としほきをいはふけふより初霞鳥玉の山をたちかくしけり千代住 にひまりのつくその山を色糸にかゝるかすみもみとりくれなゐ満盛 春かすみ一夜寝し間に色にほふ天の原にもすみれ咲けん瀑布本 一もめきる気のきぬは幾国もやまともおなししたて也けり磐雄 あくし山赤ちらさしと佐保姫は霞の袖をうちおほふらん居鷹 川越小赤尾 いさなとる蜑たにけふはやすめるをかすみは泪をひく磯へかな実則 寄居 その上に匂ふ霞のくれなゐは五位のかさせる袖とみえけり五十半雷屋 仝 うら風になひく妻はもしほやくけふりや空に立まよふらん種雄 一村のもなへてかすみにたひらりく峯もすそ野とあやまたれけり米丸 且恰野集春上 一鶯の答のこほりをくたくより霞は山にはしをかくらん栄 雨ばれて立うるはしくたつ霞あらひはえする衣にたくへん澄 若水にかけうつし見て初かすみかすみたらぬをたさんとやする真袖 うき事をあけおく棚かはつかすみかすむあしたは物もひもなし全 さほ姫にたかあつらへて石ふみにけさは霞の衣するらむ 前橋 上野下仁田 針あとの星も見ゆなる大の川かすみの衣のせぬひなからし春駒 桜井 天つたふ日かさのうらのかゝり糸かゝる霞のみとりこれなゐ都曲国 腐捨し心ちしてけり不二のねのかすみて見えぬ竹の秋の夜 結城 こと春と行あふ空に薄美濃の合紙ほとに霞そめけり 甲府 陸奥日出山 一春山の笑ふもうへようつくしき霞の衣のきそはしめしつ平工 山形千興改 ふし筑波つゝみて見せぬ朝霞ひろくてせはき心なりけり直路 出羽秋田 たらちねの子を思ふめさく花に風にてしとや霞おほへる不朽亭 芝田 もろこしへとゝく霞の袖のたけ南近はかる鳥いかに見舞梅国 いたつらに花ふく風をとほさしと霞や実をけふたてにけむ桃年 月守 見るまゝをうつす絵絹も日のかけにすかせはかすむ遠の山松 熊の皮木曽の山人かすむ日はたはこに月の輪をも咲けり梅里 初草の帰り道かん肝端よりふしの裾野につゝく霞は菊見 徳島 時しらぬ山の雪をは染かねてふもとのみこそ霞たちけれ薫 ときしらぬ山さへ春はかへること霞の海の底に見えけり静 美濃黒野 一春風にたちはのほらて霞さへよこぼりふせるさよの中山房足 いせの海魚もかゝらぬさみひきてひかことすなるはか霞かな立宦 仝 みよし野にさらしく葛の鳥よけに霞の網ははりておたらん草雀 青によしならの都の初かすみさくらの八重を見せて立けり三保雀 三升馬のかねのひゝきも春くれはかすみの海の底にしつめり歌雄 ゆへ恰野集春上 噂 古としはきのふとたちてけふのり細布ほとのかすみひきけり玉美 春されはなへて霞にさへられて老の目かねもこのみかひなし日々器 とをうつすけつりかけなる煙より祇園の森そかすみ初ける琵琶菅彦 岡の名のゆきゝの人の外にまた見ゆる袂そかすみなりける真津丸 花鳥の色音を袖に立こめてかすみの衣うつくしきかな 一ひとなくきゝすの声にきらさしと子の錦をつゝむかすみか寉丸 鯨よる紀の路の海にたつ霞百尋はかりひさはへにけり千晴 春のいろふかくみえけり常磐山おなしみとりに霞そめては 一みしるよむはかりかはうくひすは法の道にもうとからぬかな市住 京 あやまちを人なとかめそ鶯の声の玉もてちらす菅そ玉兎国 声にむせてるうくひ春厚氷くたきそんして足なきられそ一の屋 梅にたになくなりぬ枝ありぬらん梢めくりてえらふ鶯津知久 摂津福原 玉すりもおよはぬわさそ春にあえて光りことなる鶯のこゑ梅雪 近江信楽 軒ちかくなく鶯にわか庵も玉をつらねしこゝちこそすれ花鳥屋 名古屋 香をしめん心なるにもうくひすの拝袖をぬらす梅の下露瀧雄 ぬかまにぬ袖を洗ふ鴬は火ともす梅のあふらしみけん明雄 飼猫に鈴をなふりそ鶯のこゑの玉には何およふへき鎌成 なふたりえたる心ちそこのあさけふみこのむ木に類よめ鳥長良 甲府 梅うゑてまつとしらすや隣なる砌の竹にきなくうくひす由加利 娘ともおほしたてとりくれ竹のながよりえたる籠のうくひす菊見 油さる若菜はみつゝ火をとりす梅見てなくや一折の主比夫真 常陸麻生 なかれゆく水もいはほにこしかけて善わたりする鶯やきく宮望垣 山形 青様をないてわかるくうくひすはわらひてまてるにや訪ふらん直路 野へちかく家ゐしをれは鶯のなくやと人のあさな〳〵とふ仝 巡恰野集春上 ゑにかはん雪間の若菜つむよりは初音たしなきかこの鶯燈羽 人来とていとへる鳥は鳴こゑの玉をつくるを見せしとやする真袖 酒のみて詩をつゝるめうめがゝに成てはるをよむり鶯仝 うくひすのあかぬ音もうし餌になさん若菜をつみに出るも出す 置もつ人にならふるよるといへは玉の声をは出さまぬ玉ひす春條 宿よりしおくいにすらしくれ行に玉をならふる鶯のこゑ仝 蜘かゝのよそあるきせし枝に来て留守居わひしと鳴る鴬緑 聞いりて目をどちぬれは鶯の声の声のにほひそこちまさりける彌繁 越府 一鶯の花なる声は風なきてのとかなる日そちりまさりける美雀 文このむ梅をしたひてかたことのひな鶯やまないなすうし春久 一山寺のあかつきのかねにおき出て経よむ鳥の声をきけり春園 うつし植し野咲の梅をうくひすのなしめる虎と訪ふか睦き藤 西湖 火をともす梅にやとかる鴬はあやなき里もしらてすくらん兼躬 法の外なほもきりまし鶯に茶つみ水くみけふもつかへて清根 さほ姫のたまものならん明てけさ小さゝにつゝむ鶯のこゑ ねもころに梅をはなれぬ鶯またかあつらへの花笠かぬふ 逃るやと障子たてきり聞われを心なしとや鶯の見ん立雁 瀧小名をかすうくひすの初声は耳をあらひ一ゝいさや聞よし 鶯の声のにほふはさく梅の花にしたゝる露やなかめん俊直 きけかしと梅のやとりに鶯もしたり顔して立る大窓照蔭 こたふたひいきゝれせさる鶯は酢をもつ梅の露ふくむらん歌滝 一念仏の木魚の音にうくひすは宗方違ひの経をやけり歌雄 はちぬへきなれからかは人来とて琴をなやめそ宿の鶯五十瀬の屋 子をすてしむくいおそれて谷の戸を出る尊経はよむらん行安 同題吟集春上 中々に鶯なきて法の師に経よむしわさおこたらせけり千成 うくひすのわれる涙とけぬやと見れは餌飼の水こほしけり花妻 ふたらしき月日となれる春つけて先鶯のはつ音をそなく喜代経 そたてたるなか子おもはゝ一声はよるもなけかし軒の鶯春住 仙台光永改 夢さめてきけは鳴やむうくひすは手にもつむを失ひし如栄 るよみて事をふらしゝためしありと鶯はまつ笠やぬふらん細記 美濃山形 一花さける春おこたりて朝いする人をせむるか来よく鶯桑吉 浅香山ならひやすらんくりかへしおなしるまむ肝の鶯春駒 さく梅の星をいたゝく鶯をいきたなしとはたれかおもはん春種 一春雨のはれやく軒に鶯のもらす初音のこゑや玉水米丸 わか留守の梅の梢のまもりにと毛虫を餌にははまぬ鶯喜吉 主いすのさゝなきするはくたきたる覚の氷水になること峯月亭 下総東正 梅かゝと風の中をもねたまさるこゝろや竹に習ふうくひす道文 うくひすのものはつ音はいちはやく谷わたりする山砂そさく緑樹園 朝日子の影さす新はうくひすの初音の玉のひかるとそ思ふ美都成 かつらきやみ谷を出るうくひすは姿も今もうつくしきかな居鷹 袈裟沙今けの松にしたしむ鶯はならはぬ経もよみえつる哉承知業 前かさにひとくと鳴てかくるゝはまた里なれぬ春のうくいす呉秋 香ふかき谷のふる巣を出れはやまたくちとけぬ鶯の鶯のこゑ仝 春といへはなしまぬ宿もうくひすの心おきなく初音かたりつ明俊 うくひすよるよむことに実をいれて縫なそこねそ梅の花笠明澄 青極の枝をくゝれるうくひすは花笠をぬふ糸やころぬ子広開 異くれは笑いふくめる山のはになく鶯はうれし聞かも福書堂 鉢うちの手入の梅の外にまた丸くねをはる庭の鶯筆雄 御吟野集春上 山かけの草のいほりもうくひすの声の月日はかくれさりけり本成 松たてぬ竹のあみ戸も鶯の新端の梅を尋ねてそなく居鷹 梅の花軒端にさけは馴涙ある宿とて来なく旅の鶯瀑布本 人とはぬ水に朝夕音になける世をうくひすや我たくひふる千代官 ける春と廟につくるうくひ月の蛍は梅にもさいらさりけり総繁 人とはぬ谷より出しうくひすに琴ひくわさはたかをしへけん かゆかりし耳の垢をはとりすてゝきく鶯のはつ音嬉しな 蓑かさを梅と柳にもとめつゝ春事しのく旅のうくひす花蝶 氷川 門前の子らかたくひか雨によるみのふのいみのうくひすの声 仙人の住てふ洞にそたちけん声の老せぬ春のうくひす雪 天の戸のあくれは来なく鶯をもとめて籠へなとかいるらん うちはふき鶯なけは聞われる心も梅を木つたひそゆく 仝高津戸 一氷をは千々にくたけと鶯の玉のこゑには疵なかりけり梅盛 仝下仁田 あらかねの土動かして鶯の類は蛙の友やよふらん春駒 わか心ゆきてさそはゝ梅かゝをまたてもなけや谷の鶯鷹記 仁和寺の鼎のみつの月日星ひとの耳にもかくる鶯貞文 一莟をは汝か掌の玉としもめてはやすらん梅のうくひす守邨 間々田 花かさを冠言葉の類やよむ梅かえさらぬ春の鶯保加良 壬生 火をともす梅に来なける鶯は昼下夜かひの心ちすらしも淵本 主いすの谷間に経をよみをるは世をのかれたる僧のたくいか友雄 いきたなき日頃のくせも鶯の初音にけさはしられけり夢業 鶯の飛ふをいとひて木のもとにたつわれすらんしのひ足しつ吉女 一呉竹のしけるふしとにうくひすの何かこつらんふしにくしとて歌雄 うくひすや花に洞のつこゑはにしきにつゝむむにこそあれ吉女 且恰野集春上 三河岡崎 花かさをいそきてぬへや雪に堪は雨をこひもこそすれ音成 仝中垣内 雪消ぬ新潟なからも鶯のうちとけてなく春の山里弘風 遠江見附 一鷹なきみ山そたちの鶯よいかにおほえて月日なくらん 名古屋 梅に来なく尊きけはてにをはのそろふるよむ心ちれこれ酒の屋 仝 雪わけて尋ぬる花菜えてしめきく鶯の初音嬉しも芳影 のとやかに覚の丸くたきつゝ竹よりつたふ草のこゑ稲豊 滝と見る様に来なく鶯は玉ちるこゑもうつくしき哉雀庵 茶をはみてくちはし青き鶯はかたことのみそさへつりふける二見 月たとなく鶯ようへを見ぬ梅の花かさいかにきぬらん俊直 籠に結はん砌の竹にうつり来てなく鶯や庭のかひ鳥諸春 暦なきかた山里はうくひすのみ谷いつるを春としるらん美泉 たつきなき山路の旅はうくひその声の月日に春をしるらん竹草 仝溝口 さく梅のちらぬためにと鶯は枝にやとりて経やよむらん野遊 春雨のしのひあしをも聞つけてひとく〳〵と鶯のなく千代浪 吉川の岩にせかるゝ水の音とともに春めく鶯のこゑ幹直 草やいすゝ川へにくりかへしふるき神代の歌やよむらん触鷹 仝津 春吉るひな鶯はうら白のあるてふ谷や出て来にけん津留丸 南都 枝をゝる人来と聞て黒守か昼寝の夢をさますくいす其雪 青様へ梅よりこつる鶯はあめにみのかる心なるらし藤浪 立枝をはえらはて来なく鶯に枯木も花の咲心ちしつ 兵庫 堺 よるも猶絶すなけかし学よ月と星とを声にもてれは 近江彦様 鶯の初音をきけはいさめこときかぬわれさへ朝起をしつ友寉 阿波 谷川にくたく氷ともろともに水の上流す鶯のこゑ喰主 るよむはしつけき病にしかすとや茶の軒にも来なく鶯菊寿寿 五恰野集春上 信濃下平尾 久かたの月日となける鶯は雲の上にもめてたまふらし内人 すりあけく海棚の玉とめてゝけり彦の海のうくひすの冬真袖 仝松本 あら玉の春たつ日より鶯の玉のはつ音そ光そきる瀧丸 山形 雪や風にをれぬ様にをりかへし根つよくはりてうたふ声直路 米沢 香に匂ふ梅の梢を鶯は唐木つくりの粉とおもはん時代経 陸奥盛岡 耳につきてはなれさりけり鶯ののりの声をし聞そめしけり 一浜の屋 仙台光永改 春風になひく柳を雨と見てぬれぬ羽袖を鶯のふる 栄 仝 しはらくは枝にとまりて梅からの出あるく留守やまもか鶯七葉 飯野 直針に欠つりえたる心ちせり梅子き庭に来なく鶯歌都住 福島 月日星こゑもる梅の花笠に旅鶯のやとりをそする松門 梅にのみ心とむるをにくしとや頬ふくらして鶯のなく真澄 仝塚本 うつくしきものゝはしめぐや鶯のはつ音のむと梅のしら露輝辰 結城 山々の葉をいはふ春なるになくをよろこふ蔵の鶯の鶯 下結東庄 君かためつめる若菜を鶯はわかしのためと見てや鳴らん鯉丸 江戸崎 山の腰ひくき吉間におひ立て世にほめらるゝはるの鶯緑樹園 一常陸府中 木かくれの見えぬかたにも早しあらは鳴てしらせよ谷の鴬水守 上総佐室里 油ある椿に来なく鶯は子笠を給ふ針につくるか種雄 磯若菜おのつから浪にあらひて眠際はわか菜つむにもしほは有けり柏 君か為磯菜つみをる老人は汐しみたりといふかあやなき楽浪舎 あまのこはわさをやすみて磯菜つむけふさへ流に袖いたすらん春鏡 あらふやかる蜑よ涙草をつむ日にはつゝりの錦浪にす峯月亭 雲の上のみけにならんをとくしりて磯菜はしほけふくみそやをか耀羽 たしなさの磯の若なは海馬につけて都へたてまつらはや仝 杓子にもなる日まれる磯辺には粥に煑るてふ若賀へてけり 但恰野集巻上 伊勢の蜑の雪かけ分て磯菜つむ手先もあかく海ひとなりけり明一 めをかりしきねらも春はなみたてる磯の若菜をわけてこそつめ浅勢菴 厚木 春くれはあまもいとまの有磯海や渚の若菜うちむれてつむ志都丸 下総関宿 つまれてはうちしをれけりいつとなくしほにはなれし磯の若菜も亀世 うらうへに減の若菜はよる浪のしほなきときぞ打しをれける一蝶 一かにかくに袖そ露けきあまをとめ手わさやすみて磯菜つむかも本成 雪分て見出す心ちそよる浪のかへす間につむ底の若菜は綾雄 けふといへは磯菜つめとや野に雪をかわくるさまに浪ひきる喜代実 浜へたひ磯菜つみ来て洗ふに下浪くゝらするあまのをとめち満盛 越前本保 わさやめて蜑のつみとる物若菜あらふ小磯の浪かつくらん花笠 岐阜 磯に出て鶴菜をつめる蜑か子も脛をはたかくあらはし書り雀丸 尾張津島 一かへる浪ひきゆく磯の初若菜龍の都も峰会いはふか藤浪 甲府 尊菜磯辺につみて塗る子は時の竹の蔵にいれけり文舎 一浪よする磯のわかなを人の日につむあまかくのしほらしき哉花道 手なれたる蜑は磯島の若菜をも浪のうねをや分てつむらん嘉寿雄 はさみもて若菜つみゆく蜑か子は磯はふ蟹の姿なりけりけり細記 あはひとる手業やすみて蜑をとめ岩間の磯菜かふそつける春久 もしほやくわさを休みてもえむる磯菜をけふはま人そつみける春波 名古屋 いとまなぎあまさへけふは磯に出てなみにたゝきし若菜をそつむ美都垣 田朝むれてあきらぬ先にわかの浦磯のにせりをいさやつまなん琵琶彦 武蔵青梅 人の日は人なみにとて塩とるあまも磯への若菜つむらし扇松垣 仝氷川 こかめなる酒をのみつたこよろきの磯の雪わけ若菜つま也脩徳 下総沓掛 沖にをれ浪といひつゝこよろきのいそきありきてわか菜つむ蜑百草国 あもり子は霞の海をくゝりつゝ磯のわか菜を朝なきにつむ安成 但恰野集春上 十六 信濃貢取 よる浪の渚にありて蜑か子の磯菜尋ぬる道をしへ鳥木数 みかたまのみるめのとけくこよろきの磯たちならしわかはをつむす也歌垣君 残雪似花似たりけりけのこる雪もさく梅のいつゝの足のむつの花にて 阿波 さえかへる寒さを雪の世の中と花にまかひて春さえすや緑 名古屋 花としもめつるを雪よいりてかははえなき陰にむねとのこれる環 越谷 遠山の松に消のこるしら雪は空はれし日に花さける如峯月亭 仙台堂 きえのこる雪のとくるは日あたりの花よりたるゝ露のたくひか栄 甲斐市川 一おふけなき色くらへんと花の春よし野瀬にのこる雪かも美都成 一塩かまの桜ききぬとみゆはかり磯山かけにのこるしら雪全 名古屋 つくり花見る心ちせりあたゝけれ春も梢にきえ残る雪瀧雄 仝 似て似さる花と梢にあたゝけき風をわひつた残る雪から泰山法師 うとまるゝ春にも花と見る人の心をいかに雪のよろこふ都音成 のこりゐてしはしは花と見られけり桜かもとの春のしら雪仝 花に似で花にあらぬをはちらひてくらき木陰にのこる雪も 一中こにさきもそろはぬ草なれ也高嶺に残る雪のまたらは呂 枝をりし嵐やあかなふ咲いてぬ桜に花とのこるしち雪千々雀 花に似て雪はのこれり雪と見ん花葉またさかぬ花の吉路喜吉 たしなきをめつ子ならひと袖花の色にまかひてのこる雪も 花をまつ目をなくさむる春の雪心なしとはおもはれぬ哉 めつるうち目やつかれけん消のくる雪を花とも見わけかたきは 越後柏山町 さく梅の梢にのくるしら雪の葉もきえなは水のにほはむ朝目 信濃長岡 日のかけのさゝぬかたより咲初し花かとみれは消のこる雪長良 日の鼠はみのこしたるふ雪は小米さくらの立に似てけり行雄 消残る雪はかをりもあらぬ也ゑかく桜にたくへてや見ん三千年 且恰野集春上 仝 門堂に残れる雪は花の如さかり七日とかきりあるらし竹成 越前敦賀 遠山の眉いそむるは消のこる雪を花とやらたかへにけん実垂 一肝の梅草のささ母とおほろ夜に見れは梢にのこる雪哉其雪 津のこる雪はなか〳〵あらしにもちらぬ桜の花とえけり高躬 岐阜 をりかさす花にも似たりふる草の老をかくして残るしら雪 咲出ん梅の木そゑに残る雪香さへいろさへ草とまかへり瀧雄 枝をりし罪やわふらんその枝にさかん花草源と雪は残りて清根 花もかく夏へ残れと遠山の雪は春まて消すやあるらん 一花に似てせんなきものを白雪子何をほたしに春へ残れる鎌成 一去ねの雪桜のもとふのこりゐて七日はかりは花と見られつ種成 一霞たつ山へに残る雪の色は日うらに花の咲そむること都音成 桜まつ心をしりてみよしのゝのこりの雪や花とみすらん貢 下総佐倉 遠山の峯にのこりて出るもの紅さす雪やはるの初花上喜 常陸山王 しら雲に不咲ましる心ちせりいまきの筆に消かての雪喜足 栃木 うくひすのこゝにもなけと雪は今梅にまかひて花とみゆらん真袖 ちりぬやとによつ人のおとろかん桜かもとに消のこる雪蛍 消残る雪も命のありてこそふたゝひ花と人に見らるれ寐覚 武蔵五関 きえ残る雪に初日の影そひて薄くれなゐの花と見えけり笑梅 上野七日市 花とのみみしは麓の心にてわけゆく山にのこるしら雪香保留 陸奥桑折 葉かくれに咲たる花と見ゆはかり松の木かけにのこる白雪三秋堂 出羽赤湯 残りたるかひはありけりふ雪も春としなれは花ともられて真常 さかは雪とちる花の枝にけのこりてしはしは雪も葉とみられつ松年 雁かねよみたかへなせそさく花とみるまて峯に残る白雪広明 けのこりし雪をも花と見る日には去ね枝をりしことも忘れつ ゆへ恰野集春上 梅 さかぬ間は雪さへ梅と思ひしをあかぬ心にさかりみしかし檜月菴 すかたなき風に出ありく梅からは夢の胡蝶のたくひなからし歌垣君 たきものゝ香くゆらして鶯をまつか軒端に匂ふ梅かえ水游図 信楽 色よりも香こそあはれの梅の花うつろふからに匂ひ増れり花鳥屋 あつらへの間あるたくすか野咲よりおくるゝ肝の梅の花かさ菊寿躬 仝 梅の花兄とよはるゝかひありて立さへ香さへめてられにけり磨安 日かけに濃波いろなき梅かえは昼ともし火のくらきたくひ都音成 上野吉 松竹をかさる春へは左蔵長にたかぬ梅さへ火をともしけり月の門 うくひすは日毎になれて来鳴けり梅も軒端はなしみやすしと菫 仙台 中々に花より表よりうれしきは根つきし宿の梅の一もと細記 梅の花折てかさせはかんさしのこてふもめてゝ枝につきけり浜の屋 つゝりをも錦とめてんかたゐらは御咲の梅の香をとめし袖嶺雄 さく梅のゑみをふくむ草の人の立にこめてぬることや嬉しき たをれともぬし事しらね心ありてわれをかくすか梅の花かさ月守 袖といへは庭の真垣の袖にまて匂ひをうつす梅の花かな杉明 梅かゝをとくさそはんとたつ春の風も木立を分てふくらん うかれ出て夜をふかしゝを梅からははつるか歳の外にたゝまむ清根 ふからの袖にすかるは枝手をる人をなためん心なるらし菊芳 立さちてこゝに鶯波せよよその梅とて香やはかはれる弘影 けたかくも袖にのみこそかをりけれ槿もとにとてはつかぬ梅から全 くれなゐに火ともす藪の梅かえは竹の油や花にそひけん仝 目のとくと白きをいへとさく梅は目薬よりも猶にほひけり なへてよの人の登るをほこりかに風は梅かゝもてありくらん 一しならふものあらしみやほこりかによるもかくれぬ岩の梅かゝ春條 但吟味春上 ふりをせめらるゝをやいとふらん風に逃つゝにほふうめか香石根 花かさはかくれ笠かも吹風のすかたを見せすにほふ梅かゝ由久良 越府 梅かゝの風にこほるゝ木陰にはふりの袂もせはき心ちそ月守 いたつらにさかりの梅をちらさしと風もふえをはふかぬなるへし一の屋 おもしとはさらにおもはぬ梅かゝも袖にとむれは立うかりけり長樹 中こにたつぬるわれや待ぬらん風に出むかふ聖路の梅かゝ玉兎図 木のもとのたちうかりける心より猶をしよるら袖の梅かゝ真鈴女 大坂 一春風に香をちらさしと賀梅に露のしめりはたれかおき兄杉門 弟のおほき柳をうゑてまもらせん梅かえ手をる人の為にと麒鳳 すなほさは柳はかりかさく梅のかをりも風にまかせてそおく房浪 梅さけは鶯こよとおもはれて春も心ののとてはなし津知久 さくらより心やすしや梅かゝは風のちらすをさかりとおもへは美都垣 鷹の巣をくふ藪に火をともす梅は夜飼をするこゝろかも芳顕 ほてをうつ風に花の香一み出す難波はうめのみなとなりけり酒の屋 さく梅にまかせておけはまねかても香になしみある人そとひくる ぬひおもまたせぬものを梅かえに木はさみいるゝ妹やあなり玉側子 一異風小匂ひまするしたり元の梅は柳にふりならひけん泰山法師 風のなき日は中々に匂ひけり宿の梅かゝ外にもいてすて全 とかためて香をねらはや朝な〳〵白ひをしむる梅の下歌仝 野路の梅風かはこひてつみたむる鶯菜にもかをりそへけり俊直 下露にかけをやとして花色を月にもかする春の夜の梅稲豊 仝 風ふけは手にとるはかり匂ひけりとほくてちかき野路の梅の梅ら俊豊 花かさのかけは寒しと日あたりへ風か持出す打の梅か香母住 鶯のなくことあれはさく梅の笑ふよろこひありてうれしな浅緑菴 明治野集春上 ひにちかき南は先にふくれけり餅やく宿の軒の梅かえ龍泉窟 旅たちの門出にひらく梅の花かさめくまれし心ちありけり栄 一たゆれと手にもとられぬ梅からは水の上なる月にたくへん 梅の花をらんとこひてすりよれは袖につきけり板屏の墨武暉 木のもとをさらぬこゝちそ梅からの袖にしみつゝぬけぬ限りは静雄 梅かゝをはこふはよしとほめられて風よはてにい花なちらしそ元亀 栃木 なれくるは鶯にして咲梅も雁の文をはこのまさるらん真袖 尊も来鳴ぬよるはかひなしと立見えさらんくれふゐの梅仝 もみち葉の色をも見せつあたゝむる酒の手半するくれふゐの梅仝 梅さけ花ぬきうし香をおくる風ひきぬとて湯にもいらな仝 ひとへよりは重さく梅のにやふるきあつきはわきて匂ひしむ袖仝 血をわけてやるこゝちせん花の梅のひともと贈る花守美都成 一時雨にも紅葉そめんや春日にもはなくれなゐに流る梅かえ真中 さく梅に親さへ遠く遊ひては子もよひあへぬ春の夕くれ一岱 春といへは屋蘇いれしめ匂ふらん梅かゝ誘ふ風の袋を磨安 信濃下塚原 前守にいさまひをしてもらひなんかの袖垣の下の梅かえ芳薺 仝長岡 梅からの春をほむるにほこりてや風もしこにはおしぬもなる盛長 うめの花羽風に飛をうくひすの声のちるやとおとろかれぬか つくり花と人や見るらん宮人の手舟にかさす家つとの梅総繁 一ふとぬるこゝちせられつきりねのまくらに匂ふ梅の子の香米丸 常陸麻生 立よれは枝をはなるゝ梅からはほしくはをれといふこゝろかも宮望垣 上総苅谷 子さけは外に出ぬわれを見ならひて庭の梅かゝを遊びすな 下総高宅 柄もりとていましな梅の草笠をつたふ雫に袖はぬるとも調布 さく梅の木かけは風もさりかねて吹けはや絶す草の香のする花咲菴 同吟野隼春上 一足といへは優なるものをさく梅の花はこと木に見たちにけり本成 おもからぬかをりも袖の荷とふりて道はるとらぬ梅の下陰福丸 杏こきて琴をしらふることくなり松ふく風のさけふ梅かゝ明俊 雨にたにぬらさぬ袖に梅からのしみのつきしはうれしかりけり 梅かゝをまとめて袖にうつさんと風もしはしは手間やとるらん仝 笠かさぬたくひなるらんなしのく肝はの梅をこへとゆるさぬ仝 うかれ女の袖にかをれる梅かゝもぬしなきものゝ心ちこそすれ つさせしな梅の匂ひいくたひか風の車のつみてゆけも明澄 吹さそふ風にはくれてゆく人のたもとにとまる野路の梅がゝ小松国 さきみてる梅の花には朝よまぬ人の言葉も春に匂ふ哉市住 梅かゝを日舟さそひてかへりぬる風のすよりやいかにゝほはん万代 立よりてほめたる心したふらしかけ見えぬまておくる梅から楽住 舟かたに枝作りぬる町の梅に舟底まくら花とかをなり喜代賢 てんかくをいさく出茶屋のからしより鼻にきかする風のあから呉秋 梅かゝを袖にとめては宮人にはちぬこゝちに賎もおもおもはん 雉子をもかりえてつけん梅の花つくり枝に似て立なかはりそ長樹 梅かゝは客の袂にとまれはやたすきはなさぬ茶屋 さそはるゝ風には遠く匂ひけり老来の梅も春はうかれて菊寿躬 東より春たちそめてあたゝけき南の枝より梅はさきけり元明 一酢をもためさきより梅の初花に紅そふる春のあさ目か直人 遠くまてはこひかねてや梅からのこほれて匂ふ望路の朝風 一くれなゐの梅にへにさす乳日影ねほれたる目も覚る事哉花盛 蛍と見しつほみの花に消てけさひの色見するくれなゐの梅唐嵜 雨ふれは軒はの梅も葉かきにかをりやしはしこもりをるらむ 嗩吶集春上 一鶯の声のなかるゝ谷川に星かけうつる岸の梅かゝ正臣 うくひその声のむかとおもふなり風にちりくる桜の下露清風 掌のぬひにし糸やきれつらん雨にみたるたるたうめの花かさ 尾張宮 梅見水上戸はかりるねにむせて下戸のはなまてつまるををか たわめつゝもに折ねてはなしたる舞よりつよくにほふ梅る香歌澄 梅の花にほふさかりはぬはむのやみの夜たにもめてられにけり寐覚 肝の梅哭くる門はうくひすの初音きくへきさちも木ぬらん うくひすの初音の玉と見るまでに抜にならへる梅の朝露 中こにつくろはぬこそうれしけれ梅かゝ通ふ壁のやふれは立霍 目にみえぬ梅の匂ひい中こに袖につゝめとかくされぬ哉今 前守の心をしるか折もてる跡をおひくる風の梅かゝ房雄 瀧のこる雪をうとみてうとまれぬ先にや梅のちらんとすらん燃鳳 うくひ春の愛はありとも梅の花いさ一枝は一とにをらまし 仝山形 素直 名古屋 一梅かゝをいくに留ぬと春風のかます袖をもゆまりてそかく真風 咲しより人のめのよる梅かえにたまもよりくる草のゆふ露吉女 仝 遠のりの駒なつむとも梅の枝むちになうちそ葉のちるへく千 千暗 ぬは玉の関も月夜々うたかはん火ともす梅の葉のしけかけ 荻野三幡改 一雪人 足よわき親のつとにと子心にをれはかけりのつよき梅かゝ 鯉鮒下飯坂 一機墨 川俣 やりはこふ袂おさふる少女子はとめし梅かゝをしむはか浅鶏菴 奥柳田 一鶯の月日となける梅かえは星とみまかふ花を咲ける金干 仙吉室 一ふくれたる梅の巻はさかぬ馬に坂をる人をうらみかほなり 二本松 ともしするさつをか軒に火をともす梅には来やき鳥もとひこす しら露の枝より袖につたへるはをらるゝ梅の涙なるらん 盛岡 まこに雪の立をしうはひてゝあしき世のなき屋の真盛大郎 一一吟野集春上 奥金ケ瀬 一初日かけにほふあしたはあたゝけき南よりこそ梅は咲けれ学住 下風に難波の春を見し夢のさむれとさめぬ袖の梅かゝ 花さけは人のかさしとなるのみかおのか老にもかへす梅かく 秋田 白魚もわきいてぬへし白妙の花のかけうく梅の下水 市川 うつくしき梅の葉かさうくひすにたかあつらへておさぬいせ あすぬはん豆の下地をまつ見せて軒はの梅にかくる蜘の巣 油ほとしみてなぬけそ我袖に香のうつりたる梅の下露根 春風にさそひ出されてよるまてもかへさわすれて遊ふ梅から筆丸 浪よする磯家の軒は春風に梅のにほひ〴〵みちいありけり 下野佐野田島 二木 木 我かけをむかくるやとうつしみんをることかたき梅の下水居村 沼田 春風にかをりちらして笑ひゐる梅の老来も若かくりけん 嵩むがひにらみあひゐて咲梅も扇やまけてまつ笑ふらん東雄 めてあかぬ色をあまたにやいしとや花に先たちにほふ梅かえ ふゝめるもさけるも見えて梅の花物なし枝にもあにおととあり 雪のくわをうはひてさけるむくいにや香をぬすまるら風の梅かゝ政義 とふ人のなきをわひてやいゝ風にさそはれ出る宿のうめかく耀羽 一音雨の夜に不関ひらかせてことくあそへる風のうめかゝ峯月亭 舟堀 梅かえにのこれる雪を心あてに手をらはやかて床と消ぬへし恭門 かめかゝをはこふになれて春風も枕の山をやすくこえけり米丸 風の手もとゝかぬ庭の高塀は犬くゝりよりはこふ梅か香明一 人こみの中をくゝれる梅からはこそなしことたる袖やさつぬる柏樹園 まつしさの優の軒もとふらひて梅のかをりはへたてさりけり 花王 一ぬは玉の春の袂にうつしても仏くさくはあらぬ梅か香山隅 相馬細井 あわ雪の中に匂へる梅の花手をうてみるもこれしかりけりけり吾楽 段恰野集春上 野ふせりのやとり定めぬ袖にしもおなし思ひにかをる梅哉秀作舎 桐女井 早蕨野くちかく家ゐしをれはさわらひを折りもて市に朝な〳〵出つ 一都曲国 栃木 露の玉たなひらもりて落ぬともしらて蕨の何にきるらん をられてはなまめく妹か袖に手をいれらるゝ野の嶺あたしな 笠ぬきて手をかさすめ見ゆる哉花ちか梅の陰の藤は美堂 武蔵和戸 一壱寒みすゝきの袖下あらなくにまくり手みする野への早蕨蔓金 賤の男は薪に添しかきわらひおろして門の錠をあくらん 里の子をまあふか葉近手車にのせて遊ひの岡の子わらひ俳優隆社 安近聖は鬼のなこりかり蕨の手におそろしき毛はおひてけら国海 越後黒井宿 よしの山桜かもとの早蕨はゑひふす人に手枕やかす礒住 信示 あら玉の春をにきると見ゆはかり早蕨の手に露のひかれる花鳥屋 早わらひの手やあたゝけき物若なわけにしのへの雪はきえけり弘影 一童おふる四かへのわらひはきさらきの二日の頃やもえ玉にけむ清風 手に汁を握るかたちや野遊ひにをみな酸ふすもとのさはらひ花守 ねそろひのわろく結へる早落はくしとりあけぬ妹やつみけん水游園 世の中の声をいとへる人もなほあかすやめてん野への御藤本成 風にちる桜かもとの品わらひはあなやとあくる手にもい哉居鷹 あらそはぬ風の柊の下わらひなにいきまきてこふしあくらん 八 一初葉のさきいてん日をゆひをりてかそふ事手にも似たる荻か梅彦 つみとらん手さぎのひゆる箱寒み穂をまきもくの山の森 一佐保姫の袂の屑る野へにたつ霞の袖をもるゝわらひは歌澄 おひ出て物ありけふる早落のこふしのうちそゆかしかりける胡椒亭 はき〳〵とすめかぬのに手に汗を握りてや出る野への早蕨 一浪かつくあまのさか手にとくへなん桜かもとにおふる早わらい諸春 且恰野集春上 峰 日のあしのあゆみにそひて春の野の早わらひのわんやゝ延光り翠雀 浅西郷 まつけふ事往日和はさもなくて雨のふる空にもゆるさわらひ影住 金門屋 さわらひは山のひたひに手をあてゝ立ゆく雁の跡や見送る 西蔭 松阪 一春日野の若紫の物わらひをりにあひたる色もむつまし奈良串丸 申 手をあくる山田のくろのさわらひはたてし田場の門や音なふ萩 阿波 青様の髪やゆひけんあふら手を雨にあらへる野路の甲鼠 信濃長岡 梅かをる頃は落も手を出して野への霞の袖もとむらん行雄 三同九久平 書のしに似たる蕨を山法師里へおくるはをかしかりけり影雄 沼田 春くれと野へは寒きか子落ん手をかゝめつゝ出かてにみゆ鷹記 越谷 一嵯峨寺の庭の雪消の蓮子草さゝけんと手をのはす蕨り峯月亭 栃木 まひ雲雀見あくる人に似たる哉手をかさしたる野への品顔 出羽竹杜 むさし野のひろきをせまき裳に探るり雲をつかむさわらひ梅守 春 一春なから雲やこさふく秋ならん霞にくもるおほろ夜の月水游図 ちる時のうさを思ふか春の空月はおほろになくもりせり明一 一鋳しまゝにとかて光らぬたくひうも春あたらしき月の鏡は歌都住 春の月かすむならひとめてにけり秋たつ霧はくしとわひしを喜吉 有明の油たしなきたくひかも影てりたらぬ春の夜の月都音成 月のかけ春は袖にもうつらすやうきことしらぬ世のならいにて美都垣 むかくす花の心にもとらしとさやけき影はみせぬ月かも春臣 仝 春の夜の月そ朧にかすみける柳はけふり梅はかをりて 八重かすみおほへる月はたれこめて春のゆとへをおもふ宮哉 春のには月の都のとのつくりたえすかすみのとはりくらん 仝 ちりやすきものと桜に世をしはしゆつりてかすむ春の夜の月春條 道目記 一猿とれる花の雲間をいくれとも猶かけくもる春の夜の月浅崎春 巡恰野集春上 ものなへてあらたまりぬる春なるに月のかゝみのいこともれる立雀 一育てらは秋をいかにとむさし空に夜毎かすみて見する月かれ輝明 のとかなる春は心のゆくものと覚きる月やかしこくする磨安 武蔵太田代石 もちふるす野守か妻の鏡かもかすみて見えぬ瀧夜の月六花 出羽竹社 さく桃の子のさかりはみ空ゆく月も波けん浅りもなり万福貴 仝一本柳 春夕ふほかけにむかへばおいぬらん月を見るめはかすみ青丸が小瓶 若くる。春へは老をすゝめしと月さへ影の打くもるらん金発肉 天の川雪消やすらし見し秋のてる影にてる春の木の月春次 春のよの霞の海の底にます月のみかけや汐みつの玉真富貴 一池水に影のやとりて青極とわもに給ふるかおほろ夜の月月影 松辺やあしまの雲のけふるよりすゝけやすらん三の森は みかゝねはひからぬものゝあらむのむとしめつる壱の夜の月花蝶 一薄きぬをかけし鏡と見ゆはかりおほろにかすむ春の夜の月澄泉 花鳥のなかめに心つかはれて給ふるかことし春の月かけ甘竹林 海棠の露にやとりてさく花とともに眠れる春の夜の月 にふきものはあやまちなしとおほしけん春はものうく成る月類驚面 さやかなるかけ見る国もありぬらんかすむあなたの山のはの月 市川 かけくらき瀧月夜は聞なれし犬のほゆるもかすか也けり 新漬の梅の花湯に影やれてにほひもくもる隅田の月かけ琵琶芭彦 〽花ゆゑにのとかならさる人みゝろかつさしとくもる月の鏡か 一その夜也爰に霜のたちぬるも月なかりせはしられさるらん福口 さく花になかめゆつりて春の夜の月はあらはにてらぬなるらん稲豊 赤見んと思ふよひとて秋よりも月にこゝろをいるゝ春の夜明郷 雪とくる地にうつりて蓮葉をひたせることき春の夜の月種雄 巡恰野集春上 梅を見よ桜を見よとこの頃はかくれかほなる春の夜の月玉照園 花雪によはさわかしと月ひとり春は霞のおくにすむらん梅茂 一春の夜の月のあかしのをくらきはしねの油のおりやましりし一の屋 はかの夜の月のかゝみの曇れるはわらへる花のいきせかゝれる唐歌 おほろけはならひなれとも花のさく庵にははれよ春の夜の夜の月友鶴 てりぬらは花さく山の通んとや月はおほろにかすむなからん雅持 大坂 春朝霞たち鶯来なくあらたこそ春のけしきいあらはれにけれ客 芝田 寝てまちし果報や春の朝師は耳にも目にもとめる花亭 常陸向上野 とくおきて庭の花にも杖をひく老は朝出の旅篭せん片住 さくらさく春のあしこは烏さへあくとはかりにほむるやう也窓の屋 花鳥の夢をしまれて春といへは朝もまくらの山にこもりつ雌羽 春夕たらちねの杖の下よりくるしきはゆふへの花を雨のうつ声福裸亭 長きりに仲をなしくも花にまたちゝむやうなる夕くれの鐘 秋のあした見し朝顔はあすもさくをあすはいろなき花の夕くれ柏樹園 すめはまたよし野のお〳〵も世のうきはのかれぬ花の春の夕くれ長良 春もたゝ花あれはこそこのしけれゆふへは秋にかきらされとも 桜見ぬ人のこゝろはいかはかりのとけからよし春の夕くれ春條 美濃黒林 春されは浦の箱屋も花鳥にゆふへにきはふ蜑かさへつり竜雲国 なりむれは物のあはれはなかりけり花ある中の秋の暮日々器 あすありと思ひなからも花鳥に春のゆふへはをしまれ光り泰山法師 島のさくませのやふへはうとまれて風や夜りをもとめわふらん玉義 紅葉見し秋よりましてかなしきは花にわかるゝ夕なりけり俊豊 うきゆふへ秋にゆつりて花鳥の春のあらたはたのかりけり宣舎 西へいる夕日のしはしとゆうふは花にわかれをゝしむなるらん弘路 巡恰野集春上 鳴つれて雨の中やく雁見れは春のゆふへもあはれをそしる志都丸 さく花に心の駒をつなきてはたちうかりけり春の夕くれ 鐘の音もなか〳〵うにし桜さくあすまちわふる春の夕暮金慈円 一花見てゞくらしかぬるか日のあしも長くのはしゝ春の暮金正 心あかぬ花にわかるゝ夕くれはとほき秋さへちかく繁葉 一膝いるゝまての庵にも日のかけのこしをかけたる春の夕くれ 梅さく梺のさとの夕けふり雲とたちつた葉まかひつ 吉野山前のひかりに禁路はよひやみおそき春の夕くれ 花鳥にあくかれ遊ふ春の日のくるゝはをしき夕くれの空 山亭の咎なきかねもあれかまと心とゝろく花の夕くれ 梨沢 月芳 賑はしき草見かへりてその跡のさひしき竹の秋の夕くれ 明芳 家さくら新端に高く花咲てともし火くらき春の夕くれ巣 さく草を見つゝ戸をさす夕くれは雪をふみけつ心ち社すれ 一目に涙もよほす秋にひきかへてあくひの出るその夕くれ さくら見の人はちれとも燈火の花さかりなるやふへ賑はし 葛の葉のうらみんこともなかりけりやままて笑ふ春の夕暮歌友 桃さくらなかめくらしてこそかれにまたるものはよるのかれひ 春滝 一やはらかき酒とのめなん吉老の滝もかすみのきめとしにして米九 白露の風にみたるとみゆはかり春は瀧さへ極めきけり梅雄 みよし野の山にひゝける瀧つせはさかりの花の雪おろしも 音をたつる千とりの滝も鶯の春におくれてのとかもり喜吉 一ことゝひし昔はしらす春といへはわらひ声する瀧の音哉俯徳 佐保姫の霞の衣や洗ひけんみとりにおつる布引の滝甘竹林 酒にうく風ふきけつと見ゆはかり春風にほふ養老の瀧大蔭 且恰野集春上 黒井 水上を流れて来ぬる花をくつれておつるみよしのゝ瀧磯住 越後島倉 引はへし霞の衣のまよひよりみたれてみゆる瀧の舟原 彳 野田 春魚鋤鍬をもたる銅すむ海よりやえにけん立のこつくりの黄柏 佐倉 ちらつきて見とめかたしな人の目の目の玉をもぬける柳葉の鮎 本保 うちよりてむつひあそへり白魚のはらくろからぬ中はとへし 越府 一真心をたゝすの宮の神にこそ腹前の魚も熱にそなへめ梅田 磯山の花見の客に桜鯛さかなとなして酒をすゝめん春久 雪は水とかいるならひの飛鳥川きのふの滝をのほる黄鮎千々々 雪消て水ます春は谷川の底ふもなひて柳葉の鮎今 東風ふけは水下ぬるみてけふりたつ川になひける様葉の鮎音成 中空に鳶舞ふそののとけきに渕よりいてゝをとる若鮎幹守 まつら川海上とほくひれふりて石にすれつゝのほる若鮎魚店 春の日ののひやく岸の柳葉に犬やくらへん瀬々のわか鮎兎具民 よしの山けふは川にそ狩ありて桜うくひを花とめてつゝ広店 若鮎もとらんとよれは加茂川や逃て心にまかせさりけり満盛 下総馬橋 月かけのくたけてちると見ゆはかり網をもれゆく浪のしる魚一入 春海辺 一硯とる干潟のうけしむら砂子絵によく似たる土佐の海面歌垣君 わたつみの宮居も春は春は敷かみとりにかすむ八後路静 春されは浪の鼓の音たえて海は苔むす色に青めり居鷹 むさしのゝ月もおよはし初日かけうら〳〵かすむ春の海へは一の屋 海の面の色はきのふの侭なから初日のひかりけふはめつらし雨眺 をちこちの峯かすむ日は荒滝に風おろす浪の山もみえすに光輝 磯山の花に寒りてかつをらも鯛をもつらて七日くらしつ高畑歌垣 越府 鳥の遊ふ春の海辺のしつけきはいさめの鼓声なきかめ月守 嗩吶一牧野集春上 わたつみの都は浪の花の上をかへる夕とも舟を見るらん魚店 さくら花さくこの頃はおきつ風ふけ頃の浦の名をいとひかり独楽齊 花のみか霞のうらの潮干狩貝のさくらも狩くらしけり今 一沖はみなひかたとなるを春の浦浪のよる所ならふ苫の屋梅国 春といへは水の心も和らくやのとかにあするあら蟻の浪三蔵樓 春の日は土佐の海へに打むれて女もすなる汐干狩哉満盛 浦ちかき坊から屋根もけ羽されん磯山さくら白く咲ては福禄亭 東金 一春車下ふしの人の夢路をとゝろかす花見なし黒きしりの音 本保 横ちる木陰にきはしやすらへるなも花のあふらさすらん花笠 小川 舎へらる先おふれも御車の牛のあゆみも春はのとけし光煉 雷のか茂のみやしろよ今に見て花見車の大路とゝろく 名古屋 一泰山法師 仝 草なから藤のかつらを結ひそへて引たき春の柴まかな玉淵子 一折そへし花やちらまし坂路をいく柴まこゝろしてゆけ美安 むちをうつ牛飼わらは心せよ春は日あしにならふ車そ春條 なやみたる冬にはかへてちる花の雪にのとけくひく東かな大郎 雪とけてせはしき春の水車まふたもめくるやうにみえけり春次 仙台 一柴東花をりそへて春の日は山さとへもひやわすれん金藝国 はつ夢に見しふしの如高荷物つみて二日に車をそひく秀明 春船 中々ふ部は草のしら雪にくるまのゆきゝしけり 大尻 春の日にあえて車のおそしとや牛にむちうつ竹田街道 とゝまりて飛をも見すや梅かをる風に出はらふ難波つの舟秀明 梅匂ふ難波の浦のかゝり舟薬つみぬとおもいれにけり玉 うめの風柳の雨をかことにてなつなとかぬなにはつの舟 一業やすむ春のあしたは淀くゝみあしやいとなくのほる舟人泰山法師 嗩吶野兵衛 七日まて花につなくを人みなは鯛つりかめる舟とおもはん春臣 あま北舟さちある壱はみとれつゝくかにつらるゝ人もありけり光嫁 こゝらちる花をしのせていつくにり春をはこへる志賀の浦舟吉正 一吉野川岸寝りの舟見れは浪の枕小花ころも着つ升女 舟人は初夢見んと田児の浦にうつれる不二を敷寝ふ煩種雄 一春の夜はこみあふ夢の宝をもへみて都へのほる院ふね耕葉山人 名古屋 風なくて花の雪ふる隅田川探さしのほる舟そ多かる此辺甚彦 朝ほらけのとかにかすむ渚よりわたる小舟やあけの小鳥宝舟 こく舟のからろの音はまりゆく雁の声りとうとまれ有り同唇 隅田川つとの桜の枝ならてをりかへしこく花かたの舟香居 乗物の屋頓舟をも来し春を送りとゝけてもとく立る真富貴 一雲露いつれふなんと長閑なる春はけふりも空にたゆたふ彌繁 よそめには霞とや見ん蜑か家小春の花塩やけるけふりを秀明 泉せまき塗りけふりは外に出てもかすみの棚の下をはひゆく花咲菴 もえいつる草木のみかは野遊の竃も春はけふりのとけし静雄 さくらさくと口野の里の夕そふりさかりの花のおもかけにたつ雅佛 うら〳〵と音は霞にたちそひて里のけふりものとか也けり清風 枝手をる人より心きたなしなけふりをたてゝ花をよこすは都音成 山里は花やさけるとうたかひの雲にも似たるけふり立けり香保留 しらむとたちまかひても花の中に深心木なれや賎る煙は浜の屋 あらそいふかたやいつれと風そよく極かもとになひく凝る梅春 なりめなき浦の心口屋はさく花のこちにあえんと焼たつらん春條 青様の下枝につなく苫舟のたつるけふりも風になひけり雅佛 春日野はまた水学もももえなくに飛火の野守幄とてけり 段恰野集春上 都人今もそつして塩かまのけふりをたつる門の松島琵琶琵彦 心なき人や柳を折てたくけふりの末の糸と乱り芳影 遠方にたてる霞と見ゆはかり野末の庵に煙り立けり米丸 左義長に松と竹とをたくけふりのほりて空やみとり落ん五十半当屋 美濃守 一目路遠き霞の末を見せてけり煙にちりの塩かまの浦稚敬 もしほやく浦の煙はあまか露にたえす霞の立とそ旨唐躬 しほかまの桜にとみて山太平屋はたえさる家にけふりたつらん小松国 春衣梅見んといそく春春のしたて物まつ袖よりそぬひはめしける柏葉亭 かすみたつ遠山すりのかり衣春もぬひめのわらはぬはなし磐雄 けふはとて妹か着かふるはれ衣梅見ぬ先にかをらせにけり滋見 うら赤きぬか衣のきそはしめ母の真心見えてうつくし真風 山賎にめてといるゝもはつかしや花見に着たる風声の衣喜吉 唐蘇の酒こほれて袖の匂ひけりまた梅からばとめぬ衣も全歯図 咲いつる草見の料とゑられけり小桜ぬへる妹かはれ衣上喜 梅さくら小袖にみするが女子かかさしの花にさくる短冊国海 花見んとしたてし衣そ心してあたをりなしそ襟たむき 草さくをまち針かけてをみならか仕立る衣も桜いろなり浅鶏菴 よき衆も何にかなさん梅からのしみたる袖そぬきうかりける千歳菴 風のつるすきまなきまて袖ほそくふみ小袖は仕たてたりけん菊見 梅かゝをとめん心にしたてけんたもとゆたけき妹かふり袖守近 うつくしき初日の影のへにかけにそめし小袖そ春の空色福丸 中々に草も恥なん色鳥を縫のもやうの妹かはれ衣金雄 春閑居世をさけし家にも梅のかをりなはなく暮の声やまたるゝ香 ことしけき月日のかれてはむ庵はよをうくひ道や春の友なる柏葉亭 明恰野集春上 春といへはもとりにかへる草の戸もかれにしまゝの人目さいしな荻屋 花鳥の世にかたろひて住竹の柱の庵也秋なかりけり み山へはおのつからなる門松に人のとひこぬすまひのとけし春波 沼田 すちよもゆくる春風と春の日のあらいるゝのみ人とはぬ宿 忍 鶯のふるすもりしてしつけきは春をよそなる谷の下庵梅在 二本松 のかれこし里へ鶯いつるときしたふ心のゆくもはつかし森 一花のちるうさはのかれす世の風にそむきてすめる庵から 初夢にふし見ることも願はすよ枕の山に高くぬ身は 世をうしとみ山にすめは梅さへ春にそむきて遅くさらん春繁 若草の葉をはぬかし長き日につれ〳〵わひてすめかいほりも真袖 むらききのちりにおもはすましる哉春はうき世を撰し亀市住 よをすてゝ友もとひこぬわか庵も聞すてかたき鶯の声春鏡 ●カルキウム 5245 いかなれは世をのかれたる隠れかへ人のとひよる草はうゑけん南向堂 南都 世の春をそむきてひとり住ぬれととふ鶯はにくからぬかな石根 越後神田 世をいとふすみかといへと花鳥をめつる心はのかれさりけり巴流彦 朽木 たれこめてすむ庵たのしあれうき春のゆくへもしらすあるへく真袖 桑折 春雨にわひしき庵も梅かゝのもり来るをりはくれしけりけり三秋堂 二本松 かたたかひして居りぬる心かな花は南に庵は北むき安遊民 当座 武隈菴大人撰 折かへししめる帯はとくおきていつるまくらの山の細道 のあしたはふはかぬ春のあしとは玉はゝきみきさへ神の棚にあくらん 雪をふむ習音たてゝしらけ来かしく越路の山出し男梅屋 米をとく雪をふむ沓音たてゝしらけ米かしく越路の山なし男廿 相咄に 板をふかす ともし火の油いくたひさしぬらん東座にゐてはなす相咄花屋 同断一吟味春上終 十一丁 狂歌恰野集春之下 狩り 狂歌怜野集春之部 下の巻目録二十種 柳夜春雨鳫別花雉待花 名所花惜落花野遊遅日牡丹 茎 菫蛙躑躅山吹移水燕子花 藤花慕春雲都春春旅春神祇 ◎吟野集春下 かほ茶筆 九人 柳 十五 髪洗ひ 糸も煮ん とや 名古屋 琥珀園 湯舟 清根 まちかく うちけふる 良藤 青極は良藤 青柳は □□□□ 十三 名古屋 酒の屋 十三 阿波徳島 乙峯舎 静 いまの ものうけに 風にまかするなひく様は 風にまかする なひく様は 青柳は 風に今 流るゝ水の心 流るゝ水の心ゆられて眠り なるらし さましたりけん 近江信平 花鳥屋 玉師またつらぬく 北山の桜も風に ことし鶯の わらは病 くひもちて鳴 やみてや枝を 青様の糸 うちふるひをる 日府 槌の屋 和泉堺 十文也 うちなひく 和群居 風の柳は 髪の毛の 長樹 長崎 桜ほと人のめてねは 春の日を柳は春の日を柳は すゑをも いれぬましらひ 春の日を柳御昼も 眠りをるらん そこれ 武蔵永川 高吟社 高吟社 武蔵舟堀 東風菴一蝶 長きものをれやすき 世の習ひそと風の まに〳〵なひく極か 夜春雨 十五 歌垣君 梅かゝのぬれ来て袖に 一かをらすはふるとも しらし 夜はの春雨 十三 花を見る 昼をはよきて 夜はにふる 雨はそたてし 親こゝろかも 包焙固広母 十四条幸大夕子也 夜春雨 十三 阿波 花の紐 とくをは人に 見せしとや 二葉庵 練 越前敦賀 角の屋 夜をむねとして がくし子をそたつる 彌繁 春雨のふる 一一句のふる 一腰のこゝろかもしのひて 花による通ふ雨 上総東金 そへ乳する母の心か 秀作舎 夜もすから花の梢を 声路きへぬかりやすらん 夢路さへぬかりやすらん めくむ音句 ふるとなき事にも足の ふるとなき事にも足の 三河寺部 雅流国弘影 たゆき春の夜 雉 十五 狩人に 甲斐市川 桑の屋 嶺雄 ありしらるゝ 主 一 荻の屋 かさらさる雉の 嶋鳥の羽袖言 子をもつ親の 心なるらめ 野への程 陸奥二本拾 逢ふにはかふる 命なからん 武濃の松の 言花園 こもたる下学に 十二 伊勢津 四ゆゑに 荻の屋 うたれやすらん わさはひの 門田のきゝす 草にいれとも 子もたる雉子もたる雉子 伊勢津千代や千代やうに 千代や 〽ねかはん 下野栃木 雲井真袖 玉にしもかへぬ宝と にしきなす羽袖に 子をはつゝむきゝすか 武蔵引又 便豊舎 恋ゆゑに 米麿 かさる錦の 羽袖も 野へのきゝすの かたちくつさぬ 仝小川 沢泉舎 喜吉 妻こひの へたてとなれる 若草は あさる きゝすの 恋の 海かも 御令写集三郎 待花 春も猶霞の窓を 大坂 春園 栄 とちてよりまたるゝ さくら花 花鳥屋 ものは花のはつ雪 さかぬ梢を 越後新発田 草種園 まつくに 人をかくまたする花は 見つめらるゝや ひとへより ひとへよりたまより わひしか事らん 八重にさかんと 菊寿躬 日数をやふる 越前府中 右橘国 あつらへし ものよか花は たのしきや 美寉 またせすてひと日も 早くさけかしな盛は 上野山名 檜昇園 花よ六日なりとも 輝明 まつ間に錦 おると思へ医 びとゝせも まては 今いく日 そと 待しをきくる 待しを ひさしさ 初さくら 名古屋 玉淵子 〃. 待わひて 出るあくひの 数ほとも とく咲出よ 庭の初花 出羽山形 夢の屋 直路 〽今しはし 檜月庵 といてしのはん 花も人を まつ身とよく まつ身と まつ身とならすめ さくをいそかん 雁別花觜田尻 愛山人 ねにかへる うきを見しとや さく花に さとして雁の 北へゆくらん わひしさよ 庭の梢も さかぬ間は 千束菴 章雄 遠山さくら まつ心ちして かほ茶筆大文子や 名所花 十三 空なきて さかりのいけし 山の名の 嵐を花や 咲ふたきけん 常陸江戸寄 陸江戸寄 縁棟棟 都曲園越画の □□□□□□□□ 惜落花 ちる糸を 風のゆと一の よしむ 見らるにや 棒は さもあらて なそ 名古屋 清根 明今野隼人 京 をしと思ふ 心あまりて 玉兎園 さくら花 くかたの 雪もなかめつ 大坂 春園 しら露を 梢にとめて ちる花は をしむわか袖 猶ぬらせとや こん春はまたも あてなる桜花 三河道目記 浅霧菴 見んとおもへと ちりゆくはをし 下総野田 ましまるゝうちを桜も 柏樹園 花なりと七日もまたて 風にちるらし 武蔵青梅 扇松垣 扇松垣 一舞姫の手ふりなからも 何めてんをしむ心を 一袋にちるはな 蛙 津 主 野遊 目のはれし 目のはれし 日のはれし こかね 摂津兵庫 一井出の蛙はまもりて 一の屋 山吹のよる也 をとめらは いねすや 萩の屋 胡蝶にいたり 苦土よし 貫よし 三 なの花よしと 水にうつる花を 遊ふ春の野 木つたふ鶯を 信楽 花鳥屋 城の下に鳴か とそ見る 遅日 名古屋 陸田代荒浜 十三 鶯笑亭 うちけふる 酒の屋 花のかけ 坂火屋か下の 花のかけ胡火屋か下 吉次 しはし酸ふす 柊の絵に 一夢さめて柳の絵に 夢さめて すたく蛙は 七日もねぬとすたく蛙は 七日もねぬと 思ふ日なかさ 菫 文字楼 むさし野に 本成 問ふる苔の むらさきは 一もとたにも あはれとそ 檜川楼 童子 つめはしをれつ 明澄 はつかしこ うつむく妹か ためにも似て 躑躅 紫の霞そゝきて ふる雨にあらひて 色のまさる菫か 阿波 豊秋舎貢 酢くさの くれなゐに 色よく匂ふ 姫つゝ 露や さして さして そめけん 名古屋 名古屋 水魚因 友雄 かほ茶筆 御上戸芋三匁丁 一四条筆 山吹移水 熱田三蔵楼 山吹の花の うつりて うつりて 水底の 魚もこかねの 立に見えけり 寺部 弘影 〽おきところ おきところ なしとこかねを 山吹は 池にしつめて おかんとや する 難波江に うつるやい たゝらにも たゝらにも とけぬこかねの み仏の色 名屋 松寿因 茂光 影しつむ いかほの沼の 山吹は湯あみて 子もつくに ならふか 武蔵小川 熟全堂 光煉 光炉 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 兜子花 江戸崎 る人に 緑樹園 冠におくを かきつはた をるとも 足に花な けかしそ 春旅 名古屋二 胡蝶亭 春臣 行雁の冬に 秋をも思ひ出て 春の旅路の ゆふへさひしな 藤花 小川 十五 ひき見れは 喜吉 やすくひかれて 中こに をること かたき かたき 藤の花哉 陸奥会津 千条亭 さめやすき 花の紫 はかなしと 常磐の松に する 藤利 行めくり 春の旅路の 一里塚 榎を 花にかへな ましかなめ 蟄 天長舎 津知久 明冷野集春下 S 欠部 S 柳 狂歌怜野集春の部下之巻 撰者檜園梅明 春くれはまゆより糸をたれてけりこかひする家の軒の青柳杉門 青様の湯なす色にくらふれは梅もさくらも瀬々のしら浪高吟社 下総馬橋 青柳のふくめる露はうつくしきめもとにはりし鈴かとそ見る一入 彦ふみて道ゆく人に心せよこれはめのあるあと川やなき花の屋 飛ちりて今は柳の世となるを風はうれしみむつみあふらん酒の屋 青夜の癖なき髪をつむし毛のおほかる妹やアアうらやまん友雄 仝 よし野川水にうつれる音極の枝にも浪の花はさきけり 仝 春きても花さかぬ身をあきらめて極は髪もとりあけぬ事も泰山法師 尾張清負 ものおもひさする花より風にちるうさをはしらぬ柳めてたし耳風 ちりやすき花に見よとや枝たれて柳は風をなしへかほなる諸春 花あらはかくはあらしと花なきをほこり顔なる風の青極 同 顔洗ふ妹かすかたや青柳のまゆよりたるゝはるの朝露三蔵楼 一美農岐阜 一影なひく峯のやなきの浅みとり庭の玉原もはなん色かな三保雀 伊勢津 恋ねたむをみなと見えつき船川髪をみたせる岸の青柳津喜丸 遠江見附 ちりやすき花さへ七日あるものをしはしとゝめよ青柳のえた花妻 仝 打なひく様の髪のうつくしき見てや毛虫もまゆつくるらむ閑鵲成 大坂 真ふなる吉野の山の花を見てむつ田の柳めやすめにせん杉門 阿波 風さそふ柳の露そあたらしき莟なからに花のちること 仝 ちりやすき花何なりと吹風に春の限りをあそふ柳か春條 風にむくふ柳に恋さゝやくは花をそしりてへつらひややする元明 顔にしき妹かこゝろのよきかめ花なき柳青なほなりけり磨安 ◎恰野集春下 崩一本柳 青柳は枝にまねきて春風をしはしもよそへやらしとやする小瓶 仝竹杜 日長さに眠る梅もつはくらのさへつる声にめをひくらん月影 あらそはぬ心くらへか道のへの地蔵の顔をなつる青柳直幹 鶯の枝くひもてる河窓きの露ははつ音のむかとそ見る居村 朝またき寝こき目よりは音なしの滝とあやまつ露の青極米麿 下総野田 一吹まゝになひく様は春風に枝をられしとへつらひぬらむ柏樹園 相模厚木 玉といふ名はありなから青様の疵とやいはん花のさかぬは 千晴 陸奥二本松 草さかぬ身をや恥けん青柳はみたるく髪もとりあけすをり免其民 同同 つかねをのあらぬゆゑかんとにかくに風にみたるゝ音柳のいと大節 下総桜井 吉ふかみ人申すさめぬ青様はこゝろほそさを糸によるらん都曲国 よわき風つよき風にもまかせおく柳の枝もあそひなりけり一蝶 川水にるうく枝そなかれける雪にはをれぬきしの柳も喜吉 氷川 一唐かたにつゝりてよけん春のこのあかつきしらてねふる極は高吟社 花めつる春を恥てやさき故はかた身せはしとやせ細りけん本成 青柳は風なき日にもすなほさは流れにうつる影そなひける明俊 雨に洗ひ風にとかして青様の蟻にはくせのふくてうつくし毛衣 すなほなる心見えけりやはらかく風にしなへる青粒の髪檜月菴 一春風よ心してふけ青柳の露は花よりちりやすきもの広明 青柳のあたしすかたはうつくしき花のかゝみにまゆつくりけん呉秋 つかれてや眠れる庭の音格をもみおこしたる春の朝風千春 川水にあらひてほすはさほ波の手渡の糸の峯の河をやき乗住 青柳は花こそさかねしはらくは露をつほみと枝にとめけり花鳥屋 彦杉 雪つめと枝をれしらす風をたによきていたまぬ極めてたし 去風にうこきやすきもことわりやもといさし木の川添森森歌澄 ゆへ恰野集春下 伊勢地 吹風のまに〳〵なひく青柳はあそひかこしに似る姿かな清風 仝松坂 ゆとせんの見えぬはかりに枝されつなひく様のいとの細みち真津丸 津 川はたに水かたみ見る青柳はかみゆふ里の妹にたくへん津々丸 なかきにはまかれよといふたくひかな強き風にもないく音極俊直 鯉のほる瀧の岩根に影残る柳の髪も風にそゝけす 一咲花は見てあきやすき物そとて錦かさらぬ青柳のえた花吉 阿波 さく花のちるをゝしむかふく風をこなたへ来よとまねく柳は 越前本保 一さくら花ちらすをうしとうとむらん風に柳のうしろむきしは一 仝府中 川竹の出口のやなきうちなひき風になかれの名をやうつらん梅里 越中富山 夕月を太刀とおひつゝをかしくも男帯する風のあをやき 青柳の枝よりたるゝ朝露は糸をそめたる藍のしるしか芹淡 たらちめにあらひてもらふ心ちせん春雨そゝく青柳のかみ豊守 甲斐市川 一立葉つむ花に似たるかな髪うるはしき春のあをやき嶺雄 一髪みたすしはす女に春めきぬおくれ毛のなき柳見る日は文舎 仝 三音 一音の日のなかきにうむか吹風にゆられてめをは青梅のする三吾 池水の豆にそ影をひたしける柳はなほも色そめんとて 相模荻野 一仝石子木 春雨にあらひて風にくしけつる柊の髪のつやの見ことさ 一菊丸 上野室田 一成りてもめをむき出す青柳を枝をらせしの子亭にせん紅葉樓 友とする花のわかれをゝしむらん姿みたせる風のあてやき 仝七日市 去ね雪にをれたる松を見ならひて風にまかする青格のえた 武蔵舟堀 一恭門 総結城 一七竈あつめてそめん初かねの色にくろみてけふる青柳のゝ字亭 むら時雨すもふる如けく風にはらつく窓の青柳のえた 下野戸長 昌保 陸奥高子 伊達にさく花より見れは青様の髪はかさらて着しきかな道足 仝三本松 たらちねの植しゆゑかも出はひりに我髪なつる門の音様同 明恰野集春下 うちよする浪の枕やはつすらんきしにみたるゝ青柳のかみ月麿 一粥杖に手をりし垣の青様も夜の間の露を枝にはらめり金雄 夜春雨夕はえのあかねうはひてあすさかん字にやつくる春の夜の雨玉兎一 うち見やるかたはくらくてともし火の花にはえ流る夜はの春句弘影 音雨は花まつ人にいそかれてなりき日に夜をつきてふるかも泰山法師 仝 御くむに風をやらしとさらそひて柳は髪をみたされにけん清根 春雨は鶴にも庭の児さくらおもふこゝろによるもふるらむ胡椒亭 清須 咲しより花のあせゆく春の雨うとまれしとや夜はにふからん 花の子は夜なきもせすやくれここに声たてすふるよるの春な真袖 引又 咲いてん花の錦に春の雨よるもせはしく糸そみたせる米麿 下総関病 一昼は日にほして艶をや出すらん夜さら草木をそむる春も亀世 尾張衣浦 一乳をふくむこゝちすらしも児桜くちひかうこく春の夜の雨滝臣 名古屋 草を悪む夜はの雨にし思ふ哉かくてや親も我を愛しと春臣 そたはぬる心は闇か花といふ子ゆゑに雨のよるも休まぬ美雀 花をまつ親の衣をぬふ夜はゝふる春雨もこのしかりけり梅里 花を子にもてる故にや春句の親の夜のめも眠らすにふる嘉寿雄 よるの雨菜種の花にほち〳〵とふるは油のはしくるかも俊豊 人しれぬ夜の間に花をこしらへんたくみか音もたてぬ春句静 けさはたゝ花の下にそしられける夜の間にわつかふかし春雨輝明 下総野田 春の日の長きにうみていねし夜をしりてしつかに雨のふるらん柏樹園 しく袖には見はてぬ夢もその夜の事にはあとをつきたしてみつ夢業 陸奥水沢 こゝろよくこよひはいねてあすはとく花見に出よと春雨やふる年久 苔衣料の雫にうつおとは秋より春の事夜さひしも福禄亭 窓うたは心くたかんとはかりに音を忍ふる春の夜の雨仝 いへ恰野集春下 かそいろの南にあつけて子寺もこよひ一夜はうまいをやせん福丸 しそくしてみつる庭木にぬれ色のあらすはわかし春の夜の夜のゆ万代 心して寝いりはなをもちらさしさしとしのひあしける夜はの春ゆ春久 ふるとしもなき春雨のひと夜さに野辺をは青くかくは染けん花妻 染かねし時雨もあるを一夜にて草木へたてすめくむ声物閑万成 蛸地 ともし雲の花ともりして見えにけりねふりもよほす春の夜の雨清風 越後柏崎 煉の雨紅葉そめしにおとらめや夜の間に花をそむる春雨 阿波 子を思ふ親の誠か目にたらぬ夜の間に雨の花をめくむは帯 厚木 草や木の成なる頃もさく花にいとなくふるかはるつ夜の雨菊丸 さくをまつわか庭桜はるさめのあつらへふりの夜はそ嬉しき文 上野倉賀野 つれくにふみよむ岩の燈火の花にもめくむはかさめのやと千歳菴 花をまつわれにめくみて春の匂あすさかせんとはよひふるかも梅盛 武蔵小川 月のさすふるひしく立の亡の宿なもるゝはかりのおほろ夜の雨光煉 下総万才 咲花にとま〳〵めくむ春雨はちふさふくむる猶こゝろかも照蔭 戸下さゝて猫を呼こむさひしさは妻の留守なる夜はの春雨琴足 阿波 雁別花 鳫剤花花のこに馴てはあかぬならひそと心ざりしくかへる雁かも春條 子を見すかへ過かねくありや七日は旅にたらぬもつとて行也 陸奥田尻 秋は野をそめし涙もさく花にかけしと雁のかへりゆくらん霞山人 名古屋 さく花を翅にやみし雪と見て雁はつもらぬさきとやくらん群雄 雁の舟なといそくらん咲花は風になるへき雲ならなくに清根 風よりもゆくしと草やおもふらん見捨てかへる雁のこゝろを 見付 世をゆする花をうしとや雁かねははななき里へかへり行らん都音成 大坂 やよや雁花見てかへれ月に来しみやひ心や水になるへき守近 越前敦賀 咲いつるにを見すてゝゆく雁はちるはかなとを見ぬ心に 巡恰野集春下 甲斐市川 さく花の都をたちてゆく鳥は別れの櫛と三日月やはん嶺雄 夜立していすける雁は咲花の七日限りの文やもつらむ内人 なかきり鳴ゆく雁は咲いつる花にわかるゝことやわふらん枕年 うつくしき前にまよはてゆく雁は親のをしへを守るふるらん花蝶 みよし野の花にわかれてゆく雁は世にへつらはぬ春心か吉次 仝 かふかくに跡見かへりてゆく雁は花にわかれをゝしむなるらん直寐 山崎山宿米沢 みよしのゝたのもを立てゆくてゆくてゆくて花 摂津福原 かへりみてなきゆく雁はさく花になれもわかれを惜むなるらん秀光 尾張執田 しかうの花さきぬと告てゆく雁のふみや野田の片たよりなる津知久 名古屋 一咲いつる花にわかれてかへる雁汝か旅路もとりへぬらむ芳艶 仝在江江 古くゝのときはなれはやあせ安き草のにしきはめてすゆく雁真風 藤鴨鵜飼洞 はてやうな花にそまらてわかれ行雁はおこりをこのにさるらん敬々 さく花にわかれをしみてかへりゆく雁のなみたやまとふるらん雅敬 梅ちれはさくらは文をこのますと花を見すてゝ雁のやくらむ元明 さく葉を見捨てかへる雁はけふなか名のひしと後にくいなん菊見 越前本保 咲前の都をあとにゆと雁はえひすそたちの心なるらん一村 残りなは花のおこりになつまんと老はわかきをつれて行雁由久良 仝府中 さく花のみやこを跡にゆく雁は麦くひくらすひな心かも道頼 なか〳〵に花にわかれやをしむらんふりかくりつゝ雁のなきゆく片住 信濃八幡 沖遠くこきゆく舟にたくへにん花の浪間をかへる雁かね道人 咲花の都を詠にすてゝゆく身は墨皮の衣かりかね木数 わかれ行雁の羽風にちる花は門送りするこゝろなるらん旗明 咲花の雪つもる日は三越路をさしてけふしまたちゆく明芳 来し国の枝のかはりに雁かねはとしを加へてかへるなりけり紅葉楼 但恰野集春下 雉 一さく花を跡に見なしてゆく雁は王姫君のおもひなるらん橘丸 行なつむ花の浪間の雁のふね漕くき棹やうちたえぬらん光妹 これにます花はあらしとふるさとへさくらくはへて帰る事も根向 咲花を見つゝわかるゝアかねはとこよへ春をつけにやくらし清水 一声いらつ夜はのきゝすはしか妻のこと心ある夢や見にけ舞富安 一□こふる春野のきゝす火打羽にうち出すらんむねのはよ矢緑樹園 春の心くのつはなはくへといやらせにやするきゝすは妻やつれなき広母 香の野にあさるきゝすの薬喰一みをむなきと子にはます元福禄亭 こ春の野に恋する解ははむへみのなりくもかなとちきるならん ちる花の雪に真白くみゆる難いさすへらさへたいまつらはや一の屋 子をすつる藪の中にも子を思ふきゝすは声をたてふきをり松年 千くきゝす恋にやつれて今ははや月袖の錦かさらさりけり明澄 夕されはきゝすも羽袖はたゝきてつま待床に身つくろひせり行也 妻こふるなみたのしくれ日をへてや誰はまふたのもみちそめけん 汝か声のつるきをけふやをさむらん八はたの森にきゝすなくなり俊豊 わか葉のもゆる春野に鳴さゝす身をこかしつゝ妻やこふらん翠雀 伊勢松坂 妻こふるきしの恋路もむきし野の広さに果のなきをわふらん真津丸 常陸岩間 子に迷ふ焼野を出て若草のもゆる山路にきゝすふくなり喜足 氷川 妻恋にうへも痩けり茅草をもくはてほろ〳〵なく野への雛政義 一剣羽はいつれもあれとをしよりも声あら〳〵し難の妻こひ蔓 蔵の葉はまた下もえの野へなから羽風のあらき雉子とふなり仝 一山鳥のたれをのきゝす妻恋に野守のかゝみ見てや鳴らむ牧の屋 かりとはわれはこさるを心からおとろきぬらんつまこふるきし環 こたふへきこたまもあらぬむさし野に妻よふきゝすあはれふりけり俊直 一吟集春下 清須 子を思ふきゝすの声に聞とれておもはす道をふみまよひけり諸春 妻見えぬとり目をなれもかこつらん日のいる山にきゝすふきをり津知久 おもひ内にあれは色にも出るめ顔あからめて妻こふるきし花妻 紅草のつまに添熊やなしぬらん朝たつきしの跡のつゆける元明 飯田 野への誰長きくちなははみなから心みしかくいかてなくらむ花蝶 佐野田島 いかてかく子にはやさしき野へのきし長むしはめる心には似す 八ちまたにわかるゝひなのあら野にもたゝへすちに子をおもふ難 栃木 しかさりし錦に灰をつけしとや児野のきゝす羽たゝきをする真袖 一花くもりけふほろ〳〵と春雨のふるから小里にきゝす鳴なり月影 子をおもひあるはあさくわつ妻こひつ鳴音やおのかきらすなるらん都曲国 相模カシヲ 波守らか火打うつつ羽たゝきて恋にきゝすは胸もやすらん美知業 はらひえぬ枕の亀やなけくらん羽たゝきをして香こふるきし明澄 武蔵忍 同村花待わふる雲には雨もふらすして花にまかはぬ雲たにもなし松雄 二本松鬼成改 さけかしと花をおもへは此ころは春雨さへにまつまたれけり群明 松坂 まつからにいとなる〳〵し山鳥のをのへのさくらさかぬ日数は真津丸 名台 思ひや高野山はいかに庭さくらまつ間もいとくはるかなりけり玉淵子 まつうちの心の花をまたさかぬ桜か枝にうつしてしかな春臣 十 仝 侍うちの花のさかりも七日色とさくらも我をなかめてやする翠雄 仝 まてとなほさかぬをかこつよしもなしいつとも花にちきりおかねは日々器 信楽 もゝ千鳥さへつる春となりしより花のくちひる動くをそまつ花鳥屋 まつうちの花のつほみはにしきゐる糸くり出すまゆと見えけり曜羽 さくら花さかり七日にくらへてはいかてまつまのなかきならひそ藤浪 一咲いてぬさくらまちをるもろ人の心やそのつほみなるらし直人 笑はんをまつそ久しきふくれたる花のつほみとにらみくらして吉女 巡哈野集春下 蔵さかは告んといひし山里のつかひは妹をまつにかはらす緑樹園 岩米沢 まつわれに物おもはせて色と香をいつまて花のふくみをるらん 仙台 さかりをは七日とかきる花よりとまつに日数をかさねさすらん品 花まてはいつしか咲てちりにけんと思ふはかりにわひしかりけりけり章雄 春来てものとけからぬはさくら花さくをまつ間の心なりけりけり福丸 咲出ん花をまつ間は峯にたつ宮雲きへにめてられにけり廣明 ざきいてん花を待間の長々しかゝるをりには雨のふれかし明澄 南都 一庭さくら花まつ枝にとふ胡蝶おなし心か尻のすわらぬ其霊 福原 庭桜さかんをまつは軍とちて妹まつ宵にかはらさりけり秀光 和泉堺 友をまつ其人しのふたくひりも花まつころのみねの白雲 美濃古市場 きのふけふ使や来んと馬にくらおきてまつともしらぬ花かな房雄 銅屋 花よさけ吸間よりも待われる心の底にか江の生ひなん西蔭 岐阜 頭人のつとひて花をまつ間ころた雲夕の花もつほみなりけれ三保雀 待うちの日の長きをはさくら花咲ての後にたすよしもかな まつうちか花と霞にくもらせてさくらあやなく錦おるらむ道頼 咲やらぬ花にわか身はあこかれてまてはむなしくけふも日くれつ花盛 貴妃さくらひらかぬ先も侍人の心の内をかたふけにけり都音成 きのふけふまつにきかさるわか庭の草はあるしのこゝろしらすや雪主 さかん間の日数しれねはまつ花にたのしむ酒の樽をひらけり清水 かくまてにきくをまたせて桜花山のかひなきなかめさすらん梅在 底さくらつほみひらかぬ京の誕とくより我はまつとしらすや柏樹園 ゆひをりて花まつけふはねの内に春まちうくる心也けり行長 ことならは花待わひてつもる日をさかりの程となすよしもかな 片岡の山さくら花あはれ親なしとないひそ事はふりをり歌垣君 但恰野集春下 都やはかつき着されて白雲をおこす御室の花さかりかな楽混合 このまゝによし野の花をゑかくせてちりにし後の思ひてにせん花蝶 ありときく兎よりも猶よし野山葉まもりをる毛虫うとまし都音成 あらし山花もりたちをつくろひて大宮人の来るをまつらん三蔵楼 さくその雪にもひゆや志賀の山ゆき来の人のあしのなつむは房浪 雲と見しきのふはけふの林下にて花よりあくるみよし野の山真津丸 一咲花の雪にうもれて道ひかん駒はかよはぬみよし雲の山清風 恥らひて立かくれけん吉野山花さきしより見えぬ宝木は守近 あらし山花にあらしは名のみにてこむる霞の袖もかへさす大蔭 ともし火の光ぞはりて桜花平野はよるのにしきはえあり緑樹園 一春の夜の月にし見れは吉望川ちらぬ桜もなかるゝかこと一樹 桜さく此山ふみよあらしてふつれなき名をはふとおほせけん本成 一事風はたちものにせよ清水の瀧にうたるゝはなのしたつえ千巻 小雪のきゆれは花のさきそめて山の色をは見せぬ吉野路仝 満田川さかりの花をちらさしと入相つかぬ寺もありけり福禄亭 雲にいる鳥とや見らんよしの山蔵より葉をわけのほる身は歌垣君 心あての桜い雲とへたゝりて道まとはする花のよし野路清磨 よし野山原に賑はふかけ奈屋もおくはひろしと人をよふらむ福丸 さくら咲吉野の宿に扇屋と風うとましき名をや付けん宣舎 よしの山花のさかりのかけ茶屋にたつるけふりや雪の炭かま都音成 仝 紅葉ふふは角のありしとさくらにはおとすもうなし春日野の荒周胤 津 榎かへて見かふる花のなきものを嵯峨野のさくらちりゆくやろ荻の屋 津島 薪こる外山の音もみよし野の花のこたまの胸にこたへん津知久 尾張一宮 みよし野はふもとろたにもわかぬまてさかりの花の雪そつもれな 由成 但恰野集春下 磯山のさくらをゝるはをしまれて花の影くむ須磨の蜑かも三保窄 一咲みちし花の白雪とけぬらん吉野の瀧の水そふとれる俊寿 世のわさの湯濃のかれてけふ木すはあすかの梅あすはちりなん菊見 吉野山葉の雪にもさみせんのこまをたつぬる生浦もあり秋村 小はつ瀬の花のさかりは入相の鐘も七日はつかせすもかな唐嵜 見処は日々にかはれと吉野山はおなし花の友かき真澄 前に世を譲りて風もふかぬ日はあらしも山の名はかりそかし明郷 かつらきや高間の花に一言のぬしとなるへきことのはもかな緑樹園 風の神けふはなこめてうれしくも花の世となるみよし野の山亀成 咲そめて宇津の山路の花ともりわか影にたにあはぬ也けり梅盛 岩にあたる響はよきてさくら花よし野の滝を咲かくしけりのゝ字亭 たつね来て花を見る日は吉野山よく見てよしといはぬ人なし大節 二本松 花の陰によしかとの外山かくるゝは月に通しや癖となりけん森喬亭 陸奥川俣 しかふ山しのひんやらて桜花こすゑは雲とあらはんにけり春舎 急きくらふきく春は三輪のりいさとふらはん杉たてる門一樹 吉野山さかりの花の白たへをはなれて雲の立やくらふる直路 惜落花 藻にすめる虫ならなくにちる花を惜む心に我からなく津知久 我植てわか侭ならすちるものとおもへともなををしまるた哉友寉 一乗しみても時なき雪と花そちるわれは涙の雨やひよなき周胤 声にさへちるをなしみてくの夜すめさむる我や花に飛けん扇松垣 人皆のをしむをあたにちる花の梢や樵らぬなけきならまし 風にちる花をゝしめは心ありやしはし毛里も糸につなけり米麿 さくら蔵風に吹雪とちるを見る胸は氷のとつる思ひそ石根 をしやばしる人にたにをらせぬをしらぬやとり一さそふ風 以恰野集春下 雪の如のこらは人のうとまんとをしむを花と風にちるらむ由久良 をしまるゝ桜もおなし心にてしはししつえにちりかゝるらん俊豊 一桜子雪とちる日はみな人のをしむなみたそ雨とふりける花鳥屋 さくら花風に梢をはなれてもをしむ心は枝をはなれす諸春 あたらしや人のふみゆく花莚しかせんならはわく折るへきを秀作舎 よろこひもさかり過ては物おもふたくひるをしき花そちりける亀世 ちらしては見れとをしとや花ひらをしはらく風の模がねてふく真路 をしと思ふ心空なるあしとりに花澄したく志賀の山こえ楽浪舎 あかす思ふふの錦のちるけさは身をさかるゝにいとしりけり本成 わか心千々にくたけぬ山さくらちる花ことにをしとおもへは全 世の人の見はなしまんとぬは玉のよるにまきれて花のちるらん友雄 ちりぬみて思ひすつへき桜かはむなしき枝も猶まもりをり玉開子 老ほれし我ならなくにおなしこといひつゝちるを惜む花かな環 立さらて梢に心とゝめなは花もしはしはちりおくれなむ胡椒亭 よし野山風に桜のちるみれはかねのくさりもきる心ちせり福器 をしと思ふわれには似すよちる花は姿には似ぬねちけ心や日々略 あはせぬる羽風はけしと宮人は鶏よりもなほ花をいとひつ真風 一昼にうくる酒よりふく風に子のちるこそをしまれにけれ定晴 一仝黒林 一をしみてもをしみかひなや夢見学うつくめやうに花のちるらん房足 一けふとなれはこと国人もうらやましちりゆく花のうさを見ん日は耳風 あきやすき人の心につけなしや中々花のちるをゝしむは一声 をしみぬる人の心やそひぬらんちれとしはしは地につかぬ花杉門 さく花の雲ふきはらふ風ふけはをしむ心そうはの空なる石根 なしと思ふにすちらす春風は梅になれたるくせのうせすや一の屋 一吟吟集春下 わかをしむ心とゝくや梢よりちりて下枝に花のたゆたふ一の屋 あかをしむ心思ふか風ふけはこすゑちりつゝゆきなつむ花菊寿美 をしめとも七日限りの過ぬらんちりて山なす花のしらゆき武暉 山さくらちるまて花になれてたにましむ心はや事かたそなき夢業 花をしむ人の心をとくしりて姿を見せすちらす風かも北岱 野遊御仏につかへまつらぬ少女子も菜つみ水汲春の野遊ひ一 こゝろよきけふのまとゐよ若草のはり敷ぬとはおもはれぬ野也萩の 深草や霞の棚の野あそひはほしならへたる伏見人形酒の屋 野遊のつとにせんとやあさち原つはら〳〵につはな結をる十文也 八重霞立ふたかりてかへるさの道さへわかぬ春の野あそひ文舎 さくらかけ酒をひらきて人心草となりゆく春の野遊ひ紫 一雲雀かりよくさへづれるたはれめもうはの雲にて遊ふ春の野道丸 若干の妻にわらひの手をとりて遊ふはためし春の野の面千條亭 竹杜 つくしつむ子うも行俄をくくしつゝはかまをとりて撫ふ春の独万富貴 吸筒のふくへたゝきてたのしむや尻のすわらぬ里あそひの友道足 行くるゝことをかことに一夜ねて華さく野にあすも極はむ春繁 上野七日市 吸酒の軽くなるほとゆるさの足のはこひのおもき町遊ひ加保留 一小竹筒のかろくなるほとたのしみの底たゝきけり春の御構ひ笑梅 たつさへしいさこの庭もたらきけり七野めくりてあそふ春の日一喜 遅 一こしかたをおもひ出けり朝の事わするゝ程の長き春日に雀群 天の戸の明にしこともゆふへにはむかしのやうにおもふ春の日胡椒亭 花さかり七日と限りあれはにや日も心してなかくなりけん歌澄 たゆみなくはこふ日足もさく花になつみて春は遅くなるらん由久良 いつしかと心ひられて生してふ春の日あして花にしられつ宣舎 ◎恰野集春下 春の夜に立をくらへてあまる日の長きよりしてあふけましけり森喬亭 たちてまひゐて眠れとも暮かぬる春日は夜も遊ひわふらん草雄 をたまきのいとうらゝけき春の日はあしたの事もくりかへす如真城 さくら持肉に酔ひく上戸さへ二日ゑひかとおもふ日なかさ十文也 市川 一音の日はひつしのあゆみ見せなから時は冷しも午にそ有ける嶺雄 わか宿のはしら時計もくるふやとおもふはかりの春の日長さ梅守 さかぬうちはたのしといへとまつ程は花ゆゑいとゝ長き春の日滝道 国のうちに蝶飛かふは富貴草麗子あつめて栄耀なすらん真袖 富貴学さく庭の面は山吹の花のこかねもおほくつむらん吉女 いさゝかな株さへ今はとしをへて庭に大きくさく富貴草毛衣 たしなみのよきものゝふやとし〳〵に手入をさせて見る鎧草仝 一花さけは五日の風に十日めの雨をいとへる廿日く料かな 重 一南蛮たねにやまくんもしく白血頭にさけるほたんは真文 山さくら花いらはこちかさぬともおよはぬふしの白たへ牡丹魚佳 出羽高畑 限りさる薬のせ日を過しつゝさくはこゝろの盃ふからく料高畑歌垣 三河道目記 一すくれ草さく野に夜母やうちましく夜の妻とあさくやは見ん浅紡菴 立ゑものゝあれし思ひそゝ雲さかぬ義すみれ学人につまれ事友雄 松坂 すみれさく野をなつかしむ此頃の宿なり猪の心ちこそすれ真津丸 見附 一度まても一夜の内に成てけりあしたの原におふる事は都音成 兵庫 つとにもつき野への童学学京羽二重にねすりしてまし唐 唐歌 高畑 つみありく野への堂のはなをすれ思はすあしも熱にしつ高垣歌垣 阿波 つむもをしつまぬになしと頭人はすみれと野へに一夜ねに先紫 △ 八春條 ありとさる草の縁はすみれさくむらさき野へにけおされにけり春條 一類人のつむを慎みて一夜ぬしゆるしの色にさく青みれかな 皿吟野集春下 蛙 熱田 表すみれつむとて童のつきし如子等か手さきも日照参けり 名古屋 ふらすこの恋すみれ草舟戻に花のいろまて見えすれふけり茂光 美瀬四御 手枕の野への童にとふ扇婆めてゝいねたる人のたまかも毘 仙台 よそなから見やれは人のしめし聖に一夜ねたくもさく煮かな七葉 松かえにさく藤と見んみとりなる松菜かもとにおふるすみれは むさし野の葉の色のむらさきに加茂川染もおよはさりけり明俊 高畑 桃の花かへる井筒になく堪こゝそ日の恐る国とおもははむ高畑歌垣 陸奥白川 何事をいめる地そしめはへて水口まつる小田になくなり香居 阿波 おなし類猶なし其の葉くりかへすゝ塩やかみ字を去ゑかねにけん静 乗居して影をやよめるこゝかして気を〳〵音に堪なくなり消根 右 一梅ちる木の下かけになく堪雪ふり来ぬと脇や見はるらん美都垣 浅香山この山の井に手経ぬる塩も頼の母にやあるら黄鷹 下総飯沼 一堪等に類をよまれて賤の男はかへしをせんとおもふあらや男 越後黒波宿 芝生る地の蛙はてにをはもふらて泣きるやらひらむら蒲団住 山名 類をよむ心のほくのしられぬいはらのおほきな城なりけり輝明 一庭くらき井戸の堀も朝水をくむ音きして夜明をやしる春吉 一鶯の類ゆかしみてさく梅の下ゆく水にかはつなくなり米店 堪なく声のをる〳〵なかゝるはせとうらをよむ時にやさるゝらん 甲府 かつまたの池に蓮の見えぬす髭なき塩うたやよむらへ 釜かけしかこひの庭の池水にあわをたて〳〵堪なくなり 書肆 武蔵幸手 一田の面にうつれる月の都にはめされて城うたやよむらん雁羽 阿波 せきいるゝ苗代小田の水口にかはつも夜さら声なかしけり 薫 岐阜 うき草の根つなき春の池水に声にぬのはる蛙なくなり羣雀 彦根 手をつきてなくは涙の事あかり庭に堪そかこち顔なる友雀 ◎恰野集春下 大坂 賤の男の苗代いそく春の田は幡のこゑのいとまなきかな春園 躑躅 駒その花の色はあしひにいかよへと駒はゑはせぬもちつゝしから花の屋 くれなゐにふりぬる雪とみやかりの岩かきつゝし花咲にけり綾雄 一卯花の雪にさきうつ霜なれや尾上またちに白きつゝしは藪雀 妻こふる雉のなみたにそみぬらん片山かけのつゝしかくこし道頼 かくてこそ湯にいわくらめ浅間山もゆるつゝしの陰めくる水荻の屋 一餅つゝし薬の数をもつけんとやねはりのつよき土やうゑけん千晴 これなゐは下着そよきと花えかさぬる陰に匂ふ躑鷺か檜目菴 大原女か黒来につゝし折もつてもゆるはかくとかさしてそ行広成 ふもとにも多くれなゐりしつらしたかねにのこる日かけとそ見る 藤脇田 朝茶のむ目覚しにとや浪つたし老の手わさに庭へ植けん竹草 まみとり里ほるくにさくつゝしきこりのうちし火かとこそみの 山吹移水 陸奥大ク保 一紅気とみやまつゝしの莟をもをとめは折てもてあそひけり 入工二本松 松極けふるを見れは竈山妹に似つゝし火を焚にけり安遊民 山吹のうつれは黄にそなりにける色になるてふ染川の水窪店 山吹のうつれる岸に打もする浪も実のなき花そ咲ける諸春 一目覚しふめてすやはさらん山吹の茶にあふ水にうつる花をは岳明 一願ひたす岸の山吹をらせしと雪消の水の枝かくすらん花道 かも川の水にうつれる山吹は目かたの軽きこかねなるらむ 山吹のひとへをやへに見せてけりたくみの庭のふかき谷川大倫 二本松 かさなりて一重の花もは重に見つ山吹の瀬に山吹のかけ 一 さく花も水をふくみてうつれはや物もいはねのきしの山ふき武暉 黒野 水にうく影の流れぬ山吹はこかねのおもみあれはなるらん 蛙なく水へうつふく山ふきはるかるたとる妹にかも似る長樹 且怜野集春下 山吹も黒せく水にうつりてはものいふやうにおもは袖にけり胡蝶 芝田 願いたす岸の山ふき黄をかへてさくらのくいにならんとやする菊寿躬 朽木 滝川のきしの山鳴影しつむ花はこかねのおもみなからん 水にうつる山吹をるもさかはかしや佛の箔を刺すにも似て楽浪舎 名古屋在江戸 一ゆく水の心は清きみにならぬこかねの花の色にそまらて真風 松坂 山吹のいもに似るてふ影見えてあかぬはいけのかゝみ也けり 真津丸 熱田 石はしる早瀬の水の声かけてゆけとこたへぬ花のやまふき三蔵楼 阿波 枝たれてうつれる花の山吹はこかねを水にしつめおくこと 越府 山吹のいはぬ色をも移せるになと声たつる浪の蔵そも 敦賀 山吹はうつる朝見ておなし蔵水の底にもありとおもはん帰繁 よし野川金のみたけのうつるめ水の面きはむやまふきの花 影みれは流れもやらす谷川に花のしからみ懸るやまふき 一山吹の影のうつりて。吉野川花の雪消のそらいろのみつ住也 一やまふきの花のこかねに心なき池のぬなはしかけをしからむ 一黄の色は水にうつして月影に白くなりゆくきしの山ふき魚店 みを捨てうかふ瀬もありとはかりに浮てたゝよふやまふきの影 一 とても手のとゝかぬ岸の嶺はかけもをられぬ水にうつれり 厚木 水かゝみさくとみなからいかにしてみこしらへせぬ山ふきの花 竹杜 一山吹の影をたゝらにふきて見ん水は金よりいつるならひに一蝶 夫子花にこり江の泥の中にも水際のたち皆なきかほよ花かな蛤 杜若はなた字るなと制札の文字かく雪のつほみ見えける 初かねの色に花さくかきつはた七ところよりもらひてもきつ菊寿和 藤花葉は立のつかさと松かえの高きにのほる藤の花かも本成 ぬれぬへき花ふらねとも藤浪を折るには袖をまつかゝけゝり弘影 四恰野集春下 打よする浪の声ある松かえに色なる藤の風にゆらめく其雪 よし野川くきりとたるゝ藤浪になかるゝ草の筏つなかむ寉店 むらさきの藤の花さく松かえはかゝる霞の海の海苔麁略 信長岡 うくひすと郭公とに見せはやと春夏かけて鹿の花さく久番丸 芝田 菊山のあなたに匂ふ藤の蔵外山のかすみたなひくかめ之足 恋の霞ひきぬと見ゆはかり遠山堂にふちのはなさく 蛸路 春もはや末の雲山こゆならし梢ふ藤のなみそたちける清風 水にしおへる橋のかたへにさく藤の花はくさりと見ゆる松海宝船 藤浪のかゝれる松はすみの江にひたるしつえのたくひならめや松柏 おしなへて花の雪消やなかるらん野山も藤の浪をこちける花蝶 花の雪卯木の雪のつらゝとも見ゆる軒端の藤の花ふさ筆雄 暮春雲くれて行春のしたくきのふけふ花鳥くゝむみねのしらくも 咲やらぬ花をまつるは俤にたつや夕ゐる山のしらくも三保雀 名古屋 けふ迄はさくらと見ゆる白雲も卯花垣とあすやなりなん泰山法師 春のあとしたひゆくとて山松に雲よ袂をかきさきはすな 一今はたく花のかたみと見る雲もくれゆく春の風にちりけり津知久 さく花にまかひし雲も春と共にけふは山根にかへるとそ見る米唐 米沢宮内 御酒姫も春のわかれになき顔を見せしとおほふ雲の袖りも千可喜 桜井 春をしむ人の心をなくさめて花になかふか峯のしら雲都曲国 越府 春はけふ花をりもちて行と見ん霞をはなるゝ遠の白雲美美雲雀 黒井宿 一くれてやく春の姿を見せしとや山根に雲の言おほふらん礒住 一其と見し花ちりぬれは花と見ん雲を残して春はたか行恋明 山まゆに其さへ袖をあてゝけりけふしもにての別れをしむや明芳 一むちさきの霞ゆみねの白雲とかはるは春のきえゆくること鷹記 仍一牧野集春下 花ちりしきのふ思へはけふくるゝ春にめのつくみねの白雲美美 行音のわすれかたみによくさまん花なき後の後の峯のしら雲安岡 米沢 一なとりなく花をさそひて行ものかたみあたなる峯の白雲春繁 仙台 ゆく春にわかれやをしむ花と見し雲も涙の雨をもてるは萩友 春はけふくれんとすなり花と見る雲さへ今はちるつちしつ明 都春 都路はゆきかふ人の袖のみる春もにしきの名をかさりけり長 名古屋 九重のみはしの桜咲にけりおまへに雪の山をなすこと 環 鶯はとまれ都は琴の音に春木にけりと見えて賑はし 世のうさ近けさはわすれぬ都へしみ山おほゆる門かさりして本成 越後神田 限なきものにはあれと花鳥の春は都にとゝまりにけり明珠堂 春たては姉か小路はことさらに手より羽根つく音そ賑はふ 上野前橋 一花かさす大宮人のゆきかひになへて錦の小路とそなる松雄 大原女か黒木にそへし一枝も猶ひなひさる花のみやころ 宮姫のいます故に春されは格の馬場も眉つくりせり千糸亭 敦賀 花さけは野山に出茶屋うちつゝき広きかうへに広き都路 春されは銭おるてふ西陣に霞も糸といきそめにけり毛衣 春旅 山やけは前の浪たち海ゆけ婆波の花さて春の日の旅広母 うきつらき事はいつらそ花鳥の色音見聞てたとる旅路に喜吉 一咲花の雪道わくる春の旅足はひえすてはりのゆくかな すなほなる極見てたに旅路には思ひ出さるゝふるさとの妹今 み山路をふみなれし身も桜ちる花の雪には行なやみかり春繁 花にふし霞をわくるたのしさを旅せぬ人やうしといひけん志都丸 花鳥の色音のなくは草まくらまてもおひしき習ひなら申し春後 古郷の夢より外は中々にうきことしらぬすのたひかな清根 凹吟野集春下 一鯰日記のおくふかくまてしるしけり吉野の山の桜見る日は千巻 小涌海やよし野の花に思はすん春の旅路の日数へにけり道頼 一子鳥にいとなき旅はこその日のせたの長はし長からぬかな津知久 うしとしもおもはぬ花の旅衣つゆにあやしくぬるゝ袖かな 一花見れは七日日数もふみを霞へたつる旅路たのしな入 草枕木の下かけにやとりせは我をあるしと花やおもはん藤明 くさ枕春はさひしく思はしな火ともす梅に若草のつま俊久 桜さくその旅路もふるりの風のたよりはきかまほしかる長房 一旅なれぬ枕にあかすまその夜はすみれに眠る蝶のこゝろそ米麿 舟のりし物をやすみて春の旅葉の浪間を志賀の山こえ宝則 一暮雨の日をふる趣そうかりける故の心もしめりかちにて梅在 春の脇はかとりかねついくたにか花にこゝろの跡もとりして早雄 陸奥日出山 ゆふれは花も咲んと思ふよりひと日おくれる吉野路の旅平久 山形 一咲籠に旅のうさをもつかれをもわすれてけふはたとる吉野路静雄 江戸崎 こしろ髪花にひかるゝこゝちしつこての旅路のはかとらぬ日は清女 春神祇させ居の八の耳にも愛ぬらん春日の宮のうくいすの声歌垣君 いつはりのなき世の春にうそかへてまこゝろこむる亀井戸宮綾雄 はふりらもしつまりませといのるらし花さく春の雨風の宮檜月菴 芝田 よしの山不見かへりのねきことをなにうけひかん勝手明神菊寿躬 受うくや神の思はんみやしろのみきりの花をぬさにをり子は 鶯のぬかへきにけり咲いつる花の火ともす梅のみやしろ春久 花の浪霞の海ののとやかに春を香取の神まもるらん一声 子のれの匂ひのとけき風の宮めくみつ遠き柳にそしる光煉 さく花をよきつゝ来けん矢風は極に青き溜息そつゝく捨図 同一恰野集春下 二十 一諸日記のおくふかくまてしるしけり吉野の山の桜見る日は千巻 小涌瀬やよし野の花に思はすんにその旅路の日数へにけり道頼 子鳥にいとなき旅はかての日のせたの長はし長がらぬかな津知久 うしとしもおもはぬ花の旅衣つゆふあやしくぬるゝ袖かな行安 一花見れは七日日数もふか谷を霞へたつる旅路たのしな今 草枕木の下かけにやとりせは我をあるしと花やおもはん綾明 くさ枕春はさひしく思はしか子火ともす梅に若草のつま俊久 武蔵寄居 一猿さくすの旅路もふるりの風のたよりはきかまほしかる長房 一旅なれぬ枕にあかす春の夜はすみれに成る蝶のこゝろそ米麿 舟のりて物を思すみて春の旅花の浪間を志賀の山こえ実則 暮なの日をふる趣そうかりける友の心もしめりかちにて梅在 すの様はかとりかねついくたにか花にこゝろの跡もとりして早雄 陸奥日出山 雨ふれは花も咲んと思ふよりひと日おくれる吉野路の旅平久 山形 咲花に旅のうさをもつかれをもわすれてけふはたとる吉野路静雄 江戸山町 うしろ髪花にひかるゝこゝちしつ春の旅路のはるとらぬ日は清女 春神祇 さを取の八の耳にも愛ぬらんまて日の宮のうくひすの声歌垣君 いつはりのなき世の春にうそかへてまこゝろこむる亀井戸宮綾雄 はふりらもしつまりませといのるらし花さく春の雨風の宮檜月菴 よしの山不見かへりのねきことをなにうけひかん勝に明神菊寿躬 色うくや神の思はんみやしろのみきりの花をぬさにをりなは春臣 〽鶯のぬかへきにけり咲いつる花の火ともす梅のみやしろ春久 花の浪霞の海ののとやかに春を香取の神まもるらん一声 子の黒の匂ひのとけき風の宮めくみつ遠き柳にそしる光煉 御花をよきつゝ来けん矢風は柳に青き溜息そつて捨図 仍一恰野集春下 二十 狂歌恰野午楽夏之部 狂歌恰野集夏之部 目録二十種 更衣餘花留人卯花葵待郭公 五月五日五月雨久閑居蛍夏月鵜川 氷室野夕立樹陰納涼松下泉夏風声 晩夏雨夏暁夏山夏川夏糸 毛 也 御薬筆 餘花留人 人のみか 春もとめけん 達桜匂へる かけは夏とし はなし もなし 常陸江戸仙台 緑樹園 十九月 下総図宿 万束子亀世 めつらしと人を とむるかとはるゝも 谷かけに残れる 花の雪みれは こゝえぬあしも うこかさりけり 甲斐市川 桑の屋 嶺雄 まれになりゆく 夏山の花 ほとゝきす 待郭公 下総野町 柏樹園 卯花 甲斐府中 檜松園 喜寉 一老て今かへる 鶯おとろかん 待わふるそと 古栄をうつむ われよりや おとし文せん すみか尋ねて 文字楼 卯花の雪 武蔵小川 福烟亭 葉秤 雲間より さす月影に 卯花の月の影さへ 雲と見えけり 露をやとし露に宿るそ卯花と 本成 まことの月のけちめなりける 沓なくて あゆまれぬめ 名古屋琥珀国清根 ▼ 郭公とひもや すると家を出 かねつ いやよひの桜は七日 一紅花は卯月八日を さかりにそさく 遠江見付 万葉亭都音成 継木せし つけていやさん 沓のから屑 鳥のから屑声のにほひの しいれには まちてきれたる ほとゝきす 天長舎 津知久 花まつめし 新兵 声のにほひの 親にまされは 美濃岐阜 美濃岐阜 神垣内 俊豊 尾張織田 夏山は海の 一立にて風ふけは 浪のみなわと 見ゆるうの花 下総印西 松嘯堂 同月月一日 鵜川 十二 後の世をまつ 乗浪舎 かこつけて 手馴鵜小 いもひをせよと 魚や喰せぬ うかひ雄よ 魚のあふこの たわめるを 一罪の重蔵と 江風亭 呉秋 汝はしらすや おのつから 羽立のやみは ますら雄に つかはるゝ 鵜の 鵜の すくせふるらん 阿波徳島 二葉菴緑 かつ茶筆上や 仝 総芳岡 夕月の 一春條 春條 いるを鵜飼は 生業の 越後神田 東風亭 罪ふかき うかひは見すや 巴流彦 早瀬川 昼になりぬと 水の底にも 舟出いそかん もゆる かゝり火 名古屋 胡椒亭 照月に胡椒亭 〽照月に かゝり火のあしもと にらまるゝめ あかくてるまゝに うかひは見えぬ 鳥目にうかひは見えぬ 鵜飼舟 罪をしらすや 脊をくゝめつゝ罪をしらすや 背をくゝめつゝ こきかへる見ゆ 都音成 夏川 夜常から 仙台 夜霞から仙臺 つかはるゝ鵜は すゝみをる此 すゝみをる此 夏川の 一藤川の玉島の川上に 玉辺の川上に 水よりもなほ 水よりもふほ風のすみかも 風のすみかも ほそく痩らん あるかとそ 痩らん あるかと思ふ 思ふ 美濃岐阜 及濃岐阜 松屋栄 神行国 俊寿 ◎恰野集夏 大才也 かほ菜筆 樹陰納涼 名古屋 いくたひも 玉澗子 木崎の辺 木浜の辺 敷かへて 風の跡おふ 夕すゝみ哉 仝 水魚園 われしらす 友雄 眠けいてけり 気の時 せし木の絵に さくら花 跡なき度の 下すゝみ 風そこよひの あるしふり なる 全 千糸亭 すゝめ時め 仝 徳島 夕風に けふる柳の 滝屋 琵琶彦 松陰もむなしく 九峯舎 静 人はとゝめすや 下かけは 汗のむをし 字もより来すて 来すて汗のむをし とりてかへさす 涼しかりけり 仙台 和泉堺 和尋居 ゆふ風に そよく広葉の すゝしさも すゝしさも なくならす なへてならすよ 長樹 遠雁亭 一杉はやし風涼しさに 細記 馬駕の立坊となりぬ 酒はあらねと ならの木絵は 松下泉 上野竹田 魚すまぬ 清水のもとの 松かけに だおふる 岩ねの清水 くめとなほ あゆの風ふく つきせぬ ゆふへすゝ しな 越前府中 冬翠園 月守 種のありて わくらん 尾張撚田 三蔵楼 三蔵楼 北地堂 国長 わすれたる 鶯さ恋しく なか迄に 木陰の清水 結ひけるかな ◎恰野集夏 かり茶芋 大耳や 氷室 一けふといへは 雪も涼しく 思ふらん とちかこひ 室を出つゝ 越前府中 右橘園 義雀 羽根ほしと 氷室つかひや いそくらん 鳥もかよはぬ み山いてつゝ 下野栃木 通塚亭 通環亭 真袖 野夕立 清根 宮城野に みかさとまうす 人もなし いかにかせよし 夕立の雨 やとりなき 野路は是さも 鳴神を おちて逃るか 夕立の雨 尾張洲千芽庵諸春 芦崎 〽夕立に野中の 緑樹園 清水わき出て 十とのなかれや たつねわふらん 夏月 夏山 三河守部 雅流国 山かけは青葉の響と 弘影 弘影 なりにけり月日と なける鳥もかくれて 〽日の長過 あしたを待て のこやかに いらんと残る 夏月に 野田 柏樹園 ありま心 ゐなのさ原 吹風に 仝 湯あかり 湯ありり 夏の夕くれ ◎松野集員 大じや かほ茶筆 葵 伊勢幸 十一 人ねたむ 涙とやさん 神山の 荻の屋 葵のうへに むすふ白露 五月五日 菖蒲をは 子にひかせつゝ 酒の池に ひたるわか身や つのやうなる 仙台 東籬亭 五月雨久 幸 十五 宵旬の 日数ふる井は 萩の屋 水こえぬ 城下庭の 海を見るまて 越前本宗 鴉舟 十二 数しけれ 由久良 文の林の 陰なくは 何にさつきの 雨はしのかん 甲斐市川 味酒改 閑居堂 一閑居並御門 十二 咄しせん 壺麹肉 晩夏雨 美都成 友なき庵は 寺部 ものいはぬ 弘影 友とむつむか 家にありて 蛍むれきぬ 御抜遣よとや 夏風声 うつし植し 窓の下獣 さわかたゝ 包塘国 広好 庭の面に 小川ひとすち 流すむらさめ 夏はおもはん 夏はおもはん 夏糸 風の声かな 陸奥二本松 恩にこれも 雨空の くらきに なれて 五月重々 主 花ちりし 花ちりし 東吟社 染らんつくはねの にひ桑まゆの 夏の梢に 夏引の糸 ふく風の しはしはれ間の 声はためいさ 摂津兵庫 一の屋 日頼まはゆし つくたくひかも つくごたくひかも一の屋 つくたくひに つくたくひも 越後芝田 草種園 菊寿躬 四百五拾百匁 の 欠S S 狂歌恰野集夏之部 撰者檜園梅明 名古屋 一貝衣蔵の音を愛つたきぬの腕うきを物ましむとや人のわらはむ友雄 遠江横須賀 匂ひけり衣かふれと花の山乗来し駒の手綱はかりは滝臣 名古屋 吹風も匂はすなりぬなへて世の花そめえぬきすつる日は春臣 卯花のひとつにけふは脱かへてさくらかきねはねにかへること群雄 尾張執一 衣ぬきてうすき袂となるけふは蝉なく夏のはしめ也けり三蔵楼 薩岐阜 鶯の羽いろの衣ぬきかへつほとゝきすきく夏の来ぬれは後豊 伊勢松坂 夏くれはとくぬきかふる衣手をうすき心と花やうらみむ真津丸 秋ならぬ夏のはしめも露そむく花の音をしむ袖の上には荻の屋 花のこをとめにし春はわすられす青梅しまの衣かふれと吉女 山吹の花色小袖ぬきすてゝおなしみのなきあはせきかへつ千晴 脱かへて表に肌を見する如裏こそなけれなつの薄衣柏樹園 上野岩井 一草衣いさぬきかへて風またん桜とむねのあばぬ細布魚丸 香のしみし衣ぬきかふるけふといへはふたひ花に別れをかする春繁 あたちしき袷着かふるうかれ女ははたなれぬ前にあふ心ちせん秀明 花いろの袷きかへて風をまつくをさくらはいかにおもはん 武蔵舟堀 けふ孫の着かふるこその夏衣たけみしかきそ嬉しかりける一 蝶 けふといへは重荷おろした心ちせり肩先かるく袷着かへて仝 摂津兵庫 おふといへは風と中よく成にけり格もやうの衆ゑかへて一の屋 仝 鍋かつく筑摩女さへ小着かへぬるけふの袷につまはかさねす唐歌 くしけつる少女もけふはぬきかへて風のはたすくきその庁衣春久 花に馴し衣をかふるけふよりはあらしも袖にたまるまてやけ春條 四恰野集夏 名古屋 折かねて手懸引にし近思ひ出て花涙衣ぬきうかりけり牧の屋 甲斐市川 花の雪に染しも今はさるものゝうとくなりてや衣かふらし茶の屋 厚木 衣かへて風より前にかをれるは春の名残の蔵のかけ香菊丸 武蔵加須町 一行春の舟にわかれて卯蔵のふかさね着る夏となりけり春吉 下野佐野 一脱かへて風にしたしむけふよりそ花にこゝろのうす衣ざつ糸屑 仝栃木 なれ衣けふはぬきけりこなたより春にかたみをおくる如くに 一仝佐野田島 朝顔の花そめ衣着かへけり日かけ廻りをする夏の来て 下総結城 一ちりて空の残る心ちそぬきかふる衣の名さへ桜鹿にてのゝ宗 のゝ字亭 陸奥八丁目 花の香を留し衣は着かへつゝむるゝ藪蚊を袖にはらはん浅経庵 ぬき捨し花見小袖のかたみほと残るあはせの袖の花色筆雄 鈴花留人 一みな人のゆきなつみけり水枝さす梢をこゆる花の浪間は梅里 一姫はひし春におくれてさくら花道連ほしと人やとゝむる春條 今更に春やわかれ近らしむらんさくら残して人をとむるは黛 一咲のこる花そあやしきさはかりの雪には人もこまらさりしを荻の屋 人みなをまてとつふめとゝむるはまてといはれてのこる花も 遠皆府 咲残るさくらは人をとゝむるをしらすや春の過行にけん れ桜かへさとむるは見る人の心の花をちらさせしとや すくなきを今はめてよと遅さくら往来の人の足やどむらん しはらくは春の心ちそ夏もなほ花なつかしみ木陰立うし 陸奥自宗 下総万才 照陸 舟堀 一恭門 越前本保 たちよりてのこれる花にことゝはんわかれし春はこゝにありやと 一村 常陸仁戸寺 めつらしと家路しれて見る人は残れる花の陰にあまれり 出羽米坂宮内 友いみなちりてはかなき一花はのこり多しと人をとむらん 上野藤樹 雪のあした月のゆふへのこゝちして夏をよそなる庭の卯花 こうかきの垣の卯蔵よきいろを成也まうけのさらしますめ 皿恰野集夏 かくてこそ月も見ゆれ一もとに老たはるゝ山のうのはな胡椒亭 卯花のみ雪はかりはきえぬへき日向よりこそ咲物にけれ かさすとも老いかくれしなり〳〵にかしらの雪と見ゆる卯花群雄 雪といへはきゆる習ひを日影さす身は猶さら匂ふ卯花雀 山吹のこかねにかへし白銀と見えてあまたの庭の卯蔵梅里 若風もみつる垣のうの花はにるさへ見よとてる月の如長樹 ほとゝさすかくまたするは初声を楽しみて譲りあふにや有らん静 卯花の雪は日よりも中々に月にくるか露のしたゝる全 飛はかぬ残る垣根の卯蔵は日蔭に燈し雪とみかけり春鏡 卯蔵の下葉青きは春の野の雪間のわかな見る心ちせり本成 根をほらはよる光る玉とりえんとおもふはかりに卯花そ咲貞成 ねてみれは垣に咲つる卯蔵の月もまくらの山にかたふく明澄 一夏の夜いまた宵なから明ぬやとおきまとはする卯花の月由加利 一卯花の軒にちる日は照月の頼かたふけるこゝちなりけり さらしなや秋しのふまて卯花の月も田舟のあせにさきけり業雄 うの花の窓に夜すから又よむは雪にまなひしくせにや有くん恭門 玉川の岸のうの花咲にけり水にしつまぬ雪と見るまて真城 一月おそき廿日のよひもわすれなん卯花さける小野の里人梅在 持扇つかひつゝ見るうの花は富士の影うて田子の浦浪教訓亭 つこもりの響もあかるくみえにけり垣にゆひたる卯蔵の月影俊 昼かふ残り垣根に卯花のわたより糸を蜘そひきをる道足 卯花を手折る袂のひちぬるは袖のさはりて雪やとけけん春住 朝な〳〵露おきかへて晦日にも咲うの花の月そやこれる花妻 松坂 池水にしろくかけさすうの花の月の中にも堪すむなり真津丸 四恰野集夏 葵 ひまねりふ人なき世にも白浪の猶たちこゆる塩の卯の花荻の屋 へたてある月の影ともみゆるき垣根はかりをてらす外花美都垣 わたつみの娘とみえけりおひ茂る青葉の陰にさけるうの花 尾長清須 枝なれはかへ露ちりて外蔵の月にも袖をぬらしぬるかな諸春 横須賀 亥の中の雪と見るまて霧さえぬこしの白根にさける卯花 お雲の月にかゝると見ゆはかり衣服ほしたる垣のうの花俊直 卯花の垣にむつるゝ夏虫は月に間ちかき星にかも似る 紀伊若山 峨眉山を底にうつしくたくひかも夏もふりつむうのはれの雪樽 一阿波麻植 一鷺の毛にまるひことやく咲ものをなとうの花と呼はし日けん喰 仝徳島 桜木に並ひてさまてはえなしとこの月まちてさくか卯花袋 かたつふり草かの上にとりつきて何あらそひて角たてぬらん本成 照りにもしをれすないく只か学もろ葉草とは許名付けん仝 名古屋 御車にかくるあふひはひく牛の角のふたもと生い出ること翠雄 仝 水鳥のかものふたはの塵草かくるまつりはあしに隙なし酒の足 越府 水鳥のかものまつりにふたつ葉の声しやはりつかひ散れす梅 仝 ともしらかまてもとかくる葉学のよくの鳥のもろはと見ん目守 美濃古市場 上下と加茂の御社わか事如かさす茎もふた葉ふりけり房雄 見附 一なか〳〵に軽くは見えし加茂川の水端の声かけし宮人鎌成 御まつりはあしにひまなや水鳥のかもの葵をかさす宮人吉女 なる神の加茂の葵の二葉草かさすまつりは世々にとゝろく春鏡 宮人のかさす葵の二はしらかれぬ神代のためしならまし貞成 むたれの見えすく影は水に似てつかひうかへるかもの声を 待郭公 聞まては思ひよわらし郭公あしたの月は影ほそること うはさする鳥はなかすて短夜の習ぬき石に月影そきす俊豊 以恰野集夏 またぬ夜もいこそねくれぬ郭公おもひ終なは鳴もするやと萩の屋 ほとゝきすきかんとまつか我ことく隣も夜さら沓音をする弘影 一思ひやる心はこゝにあらすとや正ほとゝきすまつに来なかぬ貞吉 朝公月もわかやまちわひてかたしきぬるかむら雲の袖杉杉 家にのみ待をらんより郭公きゝにむはや沓用意して志都丸 まちてねぬおのかおもひのみつひとつむくいてもはかけ山都公柏樹国 ほとゝきす初音まつ間は我こゝろしらぬ山路にゆかぬ松もなし酒盛 みしか夜のあくるもしらて郭公まつ身やそしるをそ鳥の声東籬亭 ほとゝきすまつふ来なかて雲路には月のかけるを見るはかり也秀明 一今しはしわれはまたまし郭公ふかしと月は山にいるとも広明 ほとゝきすおもかけはかり夢に見つまつ夜つかれていねやしやらん 心あての雲の絵間に月出て猶またれぬるほとゝきすかな仝 音つれをせぬや何なりつとゝきすまたぬ水鶏はいたゝく夜に春国 名古屋 村ないはれ夕月はいりにけりやよほとゝきすまつになかすや 聞せてはいかてねぬべきほとゝきすみ空の雲は横になるとも胡椒亭 人みなにまたれてこそと時高けふもつれなく尽せさるらむ歌澄 熱田 梅になく鶯の草のほとゝきす橘さけとまつになかすや津知久 松坂 もらすやと侍しはつ音の杜くら空たのめなる宵の村雨真津丸 出違ひのくいもありなんほとゝきすまたん限りはよそへゆかめや菊寿躬 あつらへの沓用意してたつねゆかんまてと来なかぬ山ほとゝきす元明 みとり馬の泣て寝かさぬ夜もされはなかてねかさぬ朝公かな喜雁 ほとゝきすまつ夜つもれは恋しらぬ我枕にも亀のおくらむ桑の屋 まつ身にはなるなといへる言の葉を反古にならして初郭公縁 眼をとちてまづるはをらん郭公汝かおもかけの見えんものから春條 四恰野集夏 上野山夕や ほとゝきすかけさすこともありぬへしいさうはさしてこよいまたま 沼田 うはさしてまつ子親雲の袖おほふあたりにはでもはなひよ住也 たへぬまて心つかれつさし曳の山ほとゝきすまちあかす夜は大蔭 待わびて膝をれぬとも乳公きりてこゝろのおもひたえめや松 ほとゝきす待わふる夜は麦秋もまことの秋のこゝちこそすれ葉科 郭公今や来なくと卯花の月あるかたにこゝろこそやれ光煉 下野戸奈良 一ほとゝきすまつ夜はふけてわら沓の数をやおほく賤いつくん清水 郭公まてと都ふいてさるはいとなみつくる沓やきれけん緑樹園 いさ寝なんまつ夜もふけぬ郭公はつ音をあすのたのしみにして栄 ほとゝきす声きかせぬは侍わふる人をなかせて子くさまんとや夢の屋 米沢 ほとゝきすよつになかねは香に匂ふ桶寺にこもりてや見む玉満 陸奥今目 郭公山路出来てまつ闇の枕の谷へこゑおとせかし木山人 大空にまてる心の関すゑつはつほとゝきす名めりゆけかし守近 きかて夜のかへしくなりぬ住吉のまつをならひのはつほとゝきこへ籬芳 草のふるすにそたつほとゝきす月日かそへて待想ひさしな 熱田 なれまちていもせぬ我はほとゝきす寝覚にきかん折とてもなし 有明の月に鳴やとみしか夜の雲に気長くまつほとゝきす まつ我をあやしき物とうたかひて声かけよかし初ほとゝきに 待わふる卯月も過ぬほとゝきすなけやさつきの薬ふる夜そ けふなくか明日はなくかと郭公よつまもさすかたのしかりけり 夏されはかならす鳴んしかはあれとまたぬ夜はなし山ほとゝきす なかい又跡をゑんとほとゝきすなかぬはなくにまさるこゝろか都音成 かたりつきいひつくふしの山にさへなりぬか時のとり沙汰もなし鎌成 待うちる心の花よたちはなは咲しになかぬほとゝきすかな 山蛤野集一見 ふくるまていゐすまてるをよるなかぬ親にならふれ山ほとらきす春條 市川 ほとゝきす待にあかして祭見るあすは樫の木にやねふらん茶の屋 夢路にはなきもやせんと時鳥まつ夜もしはしまとろしたん美都成 ほとゝきすまちあこかれてまとろめは夢のうきいしかけたかとなく道人 郭公玉のふるこゑくもりぬとみかくにいとゝ手間やとるらん 一銭布施 待またぬ人のこゝろのさま〳〵にさてや来なりぬ山ほとゝきす 越府 家にまてといまたとひこぬ郭公行違ふともいさやたつねん 芝田 ほとゝきずまつ夜は受て有明に思はぬからす月に鳴ゑ 雪の上の霜にたくへん待わひてまとろむ隙になくら公輝明 桶は軒にかをるをほとゝきす声の匂ひをいかにきかせぬ宝舟 佐野尻奈良 夜もすから物もせてまては朝公やはり音もせて我を待せつ昌保 待らし山郭公こゑすなりねぬ夜あまたのかひはありけり明保 小川 郭公はつ音きかんとまつうちは沓したくする旅むうちは喜吉 武城川越赤尾 君まちし心ならひにほとゝきすこよひも一夜我をぬかさぬ実則 持わひてかそふる鐘の時の鳥をりにし梢の数ほといやけ呉秋 みしか夜の月をなかめて郭公まつ身はいとゝふかくおほえづかくおほし 一花も実もなき心ちしつ松宇まつ夜に限り月のくもれる秀明 ほとゝきすゝまつ夜かさねて一声にいをやすく寝るゆふへ嬉しな明俊 かくはかりまてともなかぬ時鳥おとしく文や尋をるらん明澄 春といへはとく鶯は鳴にしを子の郭公なと待すらむ はらくろき人になもらしそ郭公君まつかことわれは恋をり福禄亭 五月五日 もゝ草をたゝかはせぬるけふの日はさうふの酒もくみかはしけり春覚 下総馬橋 ほとゝきすなけるさつきの節句の日はねを空にしてあやめふきけり 仝飯沼 軒にふき酒にひたさんあやめ草ひかるゝけふをさかりとやせん 四吟歌集夏 留るものとまぬわら屋もけふといへはみつ葉よつその菖蒲葩穴 いてゆある伊香保の沼のあやめ草薬と酒にけふひたすらむ千糸亭 あやめひく池の面見て忍ふかなけふ童国に鋳つる鏡を琵琶彦 一雨はれてあやめふきたる軒はよりつたに雫や匂ふ薬玉真風 薬ふりしあしたは軒のむら雀あやめの露や子らにふくめん浅綺菴 桶の紋の幟もにほふなりむかしも今もかはらやの声雀麿 山鳥のたれ尾のあやめ君か代の長きためしにふきとす覚 思ひあるかたにやおくるむすひたるかさり粽の糸の赤きは光燥 ことほきてけふくみかはすあやめ酒あやめもわかぬ迄に思ひけり美都成 宮人にけふはめされて軒とくたかきへあかるあやめ草かな柏樹園 下野間之田 打にふくけふのあやめにおく露は玉の緒長き薬なるらん升少 出羽竹社 節句の日に酒すゝめんと袖ひくはあぐめひきにしねくせなるらん月店 五月雨久 つかれつゝ休みて息をつくかめ時あかりしてさみたれのふる木成 五月雨はいさにふりつゝはれぬかな天の川瀬も水やかれはめん喜吉 月の舟日頃見えぬはきみたれにつあてやくちてなかれゆきけん静 そふいくる岩戸のむかししのふまて日かけも見え晩月雨の空立雀 熱田 大雲の藍にそみつゝ落けんと見えて若葉に青きかく山三蔵楼 紺かきも手わさやすみて五月雨に盛なす空や待わひぬらん津知久 南都 五月雨軒の雫の落そひて人のこゝろのはれ間たになし藤浪 さみたれのふりこそつゝけこの月はふらぬ日数をかそふはかりに清根 一月に一尺つゝや伸つらん五尺になりし節句のあやめは津知久 美濃西郷 こん月は水なし月となりぬともしらて五月の雨のふるらん影住 大坂 さひしさをとふ人たえて妙徳にも鳥の跡見ぬ五月雨の頃春団 げふいく日ふるを軒端のこひ竹に猶あまりぬる五月雨の水真都丸 凪へ恰野集夏 天の川雲の塔やくつれけんほり久しきさみたれのそら浅紙絵庵 うみをなす軒の京水いとなかくう意なしけり五月雨の庭 桜井 ふりつとくさつきの雨の長柄川かゝる時にやはしはくちけむ都曲園 下総印西 五月雨にあさかのぬまの花がつみかつ見ることも絶て程へつ松嘯堂 江戸嵜 日数さへ久しきもうへ八せんのはしめよりふる五月雨のそち緑樹園 梅の実を染るにてまやとりならん日数かさねて宵句のふる明澄 壱雨は花をさかせつ五月雨は何こしらへに日数ふる良葬秀明 五月雨はふるから小野のわすれ水わすれてよそにいく日流るゝ緑樹園 をやみなくふる五月雨はみな月へ流れこむへき風晴ふりけり仝 常陸岩間 思ひむつ曽我の昔の古ことも久しくなりぬ五月雨のくも喜足 ふりつゝく五月の雨にかまと山秋のもみち葉下もえやせむ保加良 さつきなきのふにけふはわをかけて水まさるらんみそき川には人成 日のかけをとく見まほしと口をすくなさぬ人なき梅の長雨筆丸 朽木 五月雨は月の都に見せすしてひなの長路とふりつゝく雲 飯沼 夜国かとおもふはかりに五月ゆの日表ふりつゝ月かけそ見ぬ錦園 だれこめてよるとおもへはふすまにもかひのほし出る五月雨の宿 目めうへの軒は小くらき五月雨にまゆねやおもき奈良の早記米丸 二本松 手習のさうしもくちていたつらにかきくらしふる五月雨の宿森惣亭 はてしなきまとやならん五月雨のやまなくそふるむさしつゝ原 さみたれにみかさ増りてみりめかるあまんむなしく日数をやへん 千晴 ふりいてゝ久しくなりぬといかりにて日数おほえぬ五月雨の空 名古屋 天国の剣やむかしをさめけんひさに五月のあめふりの山玉淵子 日数ふる五月の雨にめつらしく軒に星見る蜘のいの露三脈雀 越府 一屏風絵の舟なかめ居て肴雨の宿に日をふる川留の客 但松野集夏 越後黒井宿 ふりつゝく五月の雨にかけさらぬ月のみかさも破れもやせむ磯住 開居蛍 此日頃月は見えぬと空いろの小袖に星のいてし五月雨 仝 大坂 地にふけしむかとそ見る世をそてしよも過か宿の夏虫の影春国 かくれすむ門へ蛍の飛いるはたゝかひの場やのかれ来つらん 上野館林 思ひなきむくらの宿は蛍をもたゝ露とのみ見なすはかりそ真文 沼田 とちはてし薄の宿にともしとのもれぬるかけや夜はの夏虫可楽喜 厚木 友と見て蛍より来つ露むすふ草のいほりのともし火の影忠都丸 世を捨しそのいほりもくかねもてちりはめしこと蛍とひかふ細記 とふ人の稀なる庵の草の戸にはらはぬ露とほたる飛かふ言玉園 世のうさをきかぬいほりはおのつからなかぬ蛍も住よかるらん嘉壽雄 夜軍にまけて忍ふか輩生の茂る軒端にひそむ夏むし 夏むしのこかねあつめてよむみに見ぬ世の人も友とつとへり春條 世をうしとおもはぬ序にうれしともうしともいはぬほたるより来ぬ長房 一蓬生の庵もこよひはくらからし露と蛍のやとりにはして同守 射ちかく飛度むしは世をさけてあれたる尾も御とやおもへる籬芳 世のけふりたてかぬる身をあなつりて蛍むれ入る松のした店文舎 夏月 一堪居して見る夕月の影すゝし舟あそひする心ちせられて長樹 かなしさはしらす涼しとむかひゐて秋より夏の月に寝られす諸春 身にしみて涼しき風は夏の夜の月の氷にあさりてやふく七福 立さわく雲かたよせて吹風の中よりいつる月のすゝしき夢の屋 みしか夜の追かけくるか夏の月あふなき雲の蓬はしるは北岱 雨雲の中より出る夕月は水のたることそゝしかりけり宿也 みな月の雪の風かけ今宵ふるあしの雪とも見えて涼しな松雄 生かへるはかり涼しき月の中はあつさにしなぬ薬あるらむ柏樹園 同一帖野集夏 よるそのへたても藤は御やすくこの頃月にふすまさへなし柏樹園 蚊遣其の大窓のかれて門みれは風はすゝしき浮ちなりけり之足 葉桜のしつくにやとる月見れは涼しき露の秋かゝそ思ふ若年 いそくときあつきならひを夏の冬はしれる月のいかて涼しき弘影 一春の夜の眠りさまして大寒をいそくもをかし度の月かけ 夏の月すみわたる夜はおしなへて水うちしめすゝしかりけり 青夜のけふらぬ夏は月かけも蚊をいとひてやあける冥くはん琵琶彦 すけたつほとにすゝしき塩屋のうちはさす月かりの霜やおきけん森山法師 ゆくさきへはやもまはりてし清水を乗しくるなる野路の月頼清根 夕立の雲のたえるをうち見れは月もぬれしとはしかやう也津留丸 夏の夜の風なちとしたて打水のたしなきて前にやとる月影道頼 場居して風まつ軒に雪もちてとひくる月のかけそ涼しき本成 水に水もつ月色のあやしくも汗にぬ水にし袖かわくなり明澄 雲見れはさひしき秋のこゝちせりあはれはかなきみしか夜の月 涼しきは軒にちのわの影見えてしのふをくゝる夕くれの月 麻 吹風にあつさ忘るゝ涼しさは秋にもちかのうらの月かけ 下総宗道 喰主 月の水うつてかはつて涼しさはまたさきたらぬ夏の夜の冬教訓亭 仙台 見てたにもあつさ忘れつ水清き月の都やいかに涼しき 仝 夏草の流路涼しくてる月は諸に玉を見るこゝちせり 栄 陸奥岡部 すらしさに捨しうちはと見ゆはかりこしろへさせる夏の夜の月 ○母住 扇たにいらて涼しき夕風に秋かとはかり月もさえけり 同大久保 年久 昼のうちの暑さゝめすや空をゆく月も清水に影ひたすらん 夕立にあつさ流して空の海すゝしくいつる夏の月よけ 春住 あつさをは軒の芦に巻あけて影さしいるゝ月のすゝしと 吉女 四拾野集夏 鵜 にはたつみ鏡となれる夕立にうつれる月のかけて涼しき米丸 たへかぬる立のあつさにわをかけてかけは涼しき刀なの夜の月輝明 庭たつみ風にたゝよふ頼みれは月の御舟の出汐すゝしな知義 中空に残りて明る夏の月乙の川原にすゝみてやを事行安 ほしくれやみて涼しき夕くれに霜おきそふき夏の夜の月千糸亭 なには瀉みしかき夜はの月影はあしの露にも宿る隙なし琵琶彦 一加茂川や床机の足をひたしつゝ月のかけふむ川へ涼しな霍磨 ぬはむの里の夜川におなし色の黒き鳥こそつかはれにけれ楽浪舎 とる魚の罪のむくいとしらぬよもよもいねやらぬうかいを妻 月の夜をやつむそかひのうらむらんあしきはよきをねたむ習いに巴流彦 わさにこそいといもすらめうかひ男もかへきは月をめてすやある酒の屋 山吹の瀬にとる魚をはきひしてみにならすとや鵜のなけるらん花妻 越府 うかひをに月ふうちみそ再火のきゆるをおのか罪にたくへて梅里 鶏飼時のいといゝ殿へさしのほる月こそ魚のたすけ舟なれ 鶏かひ男か心のやみに住鬼も月あるき夜はひそみをからん同守 かゝり火にもゆるはかりの川の上はあな朝と思ふせいなるらん墨主 一月を見てうちむる鵜飼こゝろなき雲を恋しきものとおもはん春條 今今恋にとられらせんと響の夜は浪の枕もたかく寝ぬ鮎琵琶彦 夏見川月夜小静舟出ぬらしこの山かけを闇とたのみて春臣 此世をは仮の子川としらま弓やたけ心に鵜をつかふらん 川水をましてひと夜静つかひの罪すくふらんゆふたちの雨俊 かゝり火のともしのかけにほたきれて魚はうきめをうにやあふはん浅綿菴 助か罪は後の世またし水の面にほのほもえたつ鵜かひをの頼守近 月の夜をうとみなからもかつら川かくら鮎をはめつる将綱 四恰野集夏 月かその昇れいやかて最上河棹さし下る鵜つかひの舟高吟社 身につもる罪をもしらぬうかいをの心のやみは月もてらさし輝明 よの川うふねのかゝり葉桜のかけにふたゝひ花とちりかふ春秀 一鵜煙はひといならし月の夜をうき世の闇と戸さしねぬれは紅葉楼 かり火を消して家路にかへるころ月は鵜川の水くゝるらん さちありときほふ静川のたゝなかへ出にし月も家をつくれり安遊民 あさき瀬の矢をとれとも応られぬ湯よりふかし鵜かひをか娘餅雄 一後の世のつみおそろしともかみあうかひり舟もかしらをやふる長住 闇の夜をこのむうかひは目の老の罪のみえぬそ哀也ける小松国 一心には月出ぬ前近月夜にて月出し今を闇のうつかひ清明 一鵜飼男の昼ねの夢のうきはしは絶す長栖の川にかくらん同 世のあはれしらぬうかいはぬらさしとなか〳〵袖やしほりあくらん荻の屋 月かけをいむ静間雄はかゝり火にかつらの枝やきりてたくらん 名古屋 月出てやずらふ舟の手なれ転は夢のさめたる思いすらしも酒の屋 里の夜は宝淋しとてさしのほる月をまつらんうかひ男か妻泰山法師 一いとひけりよしのゝ川にうかひするかゝりの花も月のした風久影 あはれをも中々しりぬ妻や子を思ひて罪をつくるうかひは 釣針の夕月いりて時来ぬと静かいは魚をとりにいつらん末澄 中々に鵜につかはるゝ業なれや魚とらぬ日は餌かひなしをり細記 川の面の浅瀬も滝もえりながら罪の深きはしらぬ鵜遣ひ真富貴 さしのほき月のかゝみはうつかひの罪をうつさん浄はりにこそ梅守 つかふ鵜の魚をはますはますらをののとへは水も通らさらまし柏樹国 家はあれと身はあらはさしぬは玉の玉しま川のやみのうかひを長住 しまつ鳥鵜飼る業をのみこみて色をはやくもほふ雪かえ其雪 巡吟野集夏 若鮎もいをに与ふ文字なれははかせもそする夜はの鵜遣ひ藤浪 室 水 日の神の御末にあすはさゝけんと氷の岩戸けふひらくらむ周守 大君にさらくる雪は日のあしもふまさる山にるこひおくらん梅業 松をゝり竹をひしかん力ありて少雷に雪はもちこたへけん玉満 おくれさく卯木の音にせみしくれ冬を忘れすぢ室守らん東塗社 あつき日は中々胸をひやすらんまもる少のもしや解むと静雄 草に木に氷室の雪なこふかな花に垣ゆふたくひならすて真袖 雲ゐまてけふのほるらん松か崎巣とも高鶴のいろの氷も一喜 山陰の家の氷はいかなれは星さをしらて夏やせいする石根 蝉しくれ露しくれして氷室もるみ山はさらに度としもなし梅正 ことつよく乞へはおくりて氷室より人の心も水となさしな金雄 吉庭のふかしの山は夏の日のあしも氷室にとゝかさるらん断住 野夕立 こその冬かたいら雪をとりいれて土用給のこにも甚専見ゆ福禄亭 飛生野はとはてもしるし稲妻のひかりみたるゝ夕立の空清根 有馬山雲たちきわく夕立に猪名野は湯葉の煙たつみゆ広母 人里にあつさかたよせ夕立はすゝしく野路をふりそゝくらん仝 美濃大丸 夕立の雨はれ行て嵯峨野には神落にきと人の語れる定 原木 むきし野は限りなしとや思ひけんしめりたらすもはるゝ夕立 二本松 夕立ははれても野へはかわかすよこぬれのしつく風にみたれて 仝 秀然亭 うち見れは野末にしはし雨をのみのこしてはるゝ夕たちの雲 むさゝ野に逃水となる夕立に雨をのかれて汗にぬれけり 下野小山 森喬亭 元亀 佐野茶 昌保 はかされしやうにさりけるきつのすむなす野の原の夕立の空 津知久 ちからさへ夏野の草も首あけて見るや過ゆくゆふ立の跡津知久 夕立にゆりおこされてしをれつる夢野の草も目を覚しけり 四拾野集百疋 西郷 夕立に立より見れは衣手の野守か留守を雨そもりを類夥住 越前本保由久良改 野をひろみ逃る方なき夕立にあつさは雲の上にひかむか琴筒 小男君の脊をやわくらん夕立のはれ間に星のみゆる春日野石根 樹陰納涼 春いかりめてんものかは青柳のすゝしき花は夏もたちうし本成 死ぬはかりたへぬ是さをふり捨て風を命とたのむ松かけ うき夏の哥見えぬは木かけふく風やあつさをかとひ行らん 名古屋 環 忍 一音よれは水あむるめすゝらさよ浪の声ある雲のした風松雄 下総関宿 木下やみあつさはよると心えてとはぬか昼も涼しかりけり亀世 ゆかりさる一河のなかれ音添て一梅のかけの風そすゝしき東吟社 かたちなきあつさふまけてかたちぬき風の逃いる木陰すゝしも武暉 尤松によりていこへるすゝしさよ風も大木のかけこのむらん胡蝶 松本をしはしたのめはあつけさをよせしと風も力出すらん長房 一木立なき都大路のすゝしきは花やの声の葉柳のかけ緑樹目 あらそはぬ枝には風のしたしみてふくる様のかけは涼しも すゝしさに人つとひ来る若なかけあたら梅と夏もかこたん仝 あつき日は文字のつくりの風をしもたのむ楓の木陰すらしな清女 松を降る夕風なからうつし植て夏をよそなる宿となしけん環 いつくにか夕そゝみせん松陰もゆかし様のかけもすきうし清根 仝 さらやかにうこく葉末の風見えて日のめは見えぬ木陰涼しも羣雄 熱田 小簾かけてすゝむこゝちそ夕風に横になひける青極のかけ 岐阜 初瀬川すゝしき風や秋ならん夏をも杉の二もとのかけ翠雀 寺部 すゝめとてわれにゆつるか木下かけよれは貴さのいつちへかゆく 本保 一涼しさは秋になれとも木のもとは人に姫はふ夏のゆふくれ琴簫 阿波 間せはきはあつきならひを夕月と相やとりせし木陰涼しな春條 凹恰野集夏 花の頃うとみし人を松かけにのること風のふくはすゝしも薫 ともしけつ風吹をりのこゝちしてくらき木陰そすゝしかりける真袖 うちあふくをらうちはよりならの木の陰はすゝしき風通ひけり錦国 夏は風を花ととつゝ葉柳の木かけに人のよりてすゝめる鷹記 一村なのはれて柳の木下かけえりに露たるゆふへすゝしな順全 日あたりをよきて夏とはうらおもてこの手かしはの陰そ涼しき東哈社 一我よりもとく吹風のいこひゐて涼しかりけり松のした陰 笠松に大つ日影をよきさせてやとる大木のもとの涼しさ美都成 松かけにさく卯葉の雪風にあつさわするゝゆふへすゝしな都水 春秋の色にそまらぬ松かけは藤もしらすてすゝしかりけり本成 笠とりてたちよる梅の青葉かけかさになりつゝすゝしかりけり秀明 あつしとて立よる松の下うけにとく秋の来てまちあはせけり福丸 日さかりは風もしはらくつとふらんあつさ寄りえぬ木院すゝしも異秋 松かけの風そゝしきに立えぬは琴ふきゝ入るすかた也けり菊寿躬 我のみか松の木かけの涼しきに月はしはさしのそくらん嘉寿雄 さしいるゝ日影は松にふたかれて風のみかよふ木陰すゝしな安麿 照日かけさふる木のもと涼しさにあへく道よりあゆみかねけり長樹 下かけはすゝしかりけり明風のかよはぬまてに音ぶしけれと弘影 尾一宮 手の如き若葉ひらきて日の影をおほふ楓のもとそ涼しき すゝしさは川瀬の風や通ふらん浪の声ある松のした陰 阿波 あつさをは日向へ出してやりたる木かけに風のつとふ涼しさ年満 信長岡 京による様のかけにたちよれは春の心にすゝしかりけり久留丸 仙台 吹風に驚きく松の下すゝみおのつからなる秋のかくれか東籬亭 二本松 落しけき尤木の下のなすゝみわれもあつさはものわすれしつ夜怒亭 但恰野集有之 うちはもて夕風まねくたくひかもよれは涼しき桐の下かけ千可喜 陸奥盛岡 一葉塩をもり来る月の夕すゝみ夏なきりにすむ心ちせり滝道 日の類の是れさかりも檜の陰の厚き木下はすゝしかりけり神楽声屋 山名 葉桜の花すゝしさにまとろみて過し花見の夢結ひてん慈明 音なしの瀧にうたるゝ心ちしつ是さをくたく青柳のもと 佐野下多田 吹風をうけつゝあふくいてう葉の扇の蔭そすゝしかりける根 雪のころとひしにかへて立よれは酒屋の杉の陰のすゝしさ すゝしさいつれかまさん瀧づせの音と木かけの山のしたか是照蔭 すゝみ居る木陰は心あはしとて日向もとめていこふあつさか喜 舟堀 柳かけたのめは枝にうたれてやあつさは我をはなれいにけん恭 松下泉 熱田 かわくへき日にはぬれ来てぬれぬへき清水に汗のかわく松かけ三蔵楼 日の影ももらさぬ松の下後水すゝしき風のみなもとにこそ盧成 舘林 松有のみとりの清水結ふ手のいかてもみちの立にいつらん真文 七尺の屏風岩をもこえて来る泉すゝしき杢の下かけ福禄亭 苔清水松にむすふと見ゆはかり岩間なかるゝ音のすたしさ貞成 城 下かけのなかれすしき真清水に松はそへける風の姿を長樹 桜井 紅葉せん秋をはしらぬ松かねの清水も夏をしちて涼しな都曲国 幸 涼しきのやとりと見えつ紫紫言をむすふしみつのもとの松かえ一の屋 苦衣つゝ事心かかけうつる金葉の針にとほすいとみつ 南都 一ちりひとつ見えぬ清水は影うつる松の琥珀やすひつくしけん其雪 一松かねの岩よりいつる菅清水ははたへはたへあらふ心ちそ梅里 ときはなる松にならふか其根より出る清水のみとり立こし安店 名古屋 一松谷のしみつは秋の流れぬとおもふはかりのゆふへすゝしも 岡崎 ときはなる松の髪もあつさにはなけて清水に影やひたせる行安 ◎恰野集夏 十八 みな人の清水むすふをうらやみて松もこふしやさしのいすらん香保瑠 老松は苔の衣をかさねけりわきむる水の雲けれはふ也可楽喜 一心よく出る清水の涼しきにねかへりやせん手まくらの妻橘丸 枝高き松も折えし心ちせりかけうく清水手に結ひては 真清水を結ふなかれに松かけの風なき日にも動くすゝしさ春繁 松かけの清水むすへはすゝしさに千代もよいいをのふる心ちそ本成 すゝしさふわすれ置けん日さかりも鹿なかるゝ松の下みつ小松園 山松のかけの清水に立よらは笠着てれからむこゝちならまし秀明 涼しきは松かたうつる真清水のいろもみとりにわき玉にけり 夏風声 かたちなき風の声にやおとろきしあつさは寒く立かへり来す 風の声聞はすゝし嘉木下かけむしなく秋とおもふはかりに 木立なき里はあつしと吹風も山にすむらし声のきこゆる 舟堀 音梅 日をよくる軒の松かえかさ荒て貴さのゝしる目のこゑかも すゝしさよならの小川の夕風の声きくなへに御祓せしめ仝 山名 ちらしゝを焼る心かする一て桜か枝にこゑたつる風 肝近き松に声ある夕風は隣の秋をよふかこそきく 芝田 嘉寿雄 さく飛にふくなといひし諸人の保むるをわらふ風の声も 花あらぬ夏は梢にふく風もとき来にけりと声やくつらん 越府 本保 うれしともおもはて風の声そきくあつさをむねと扇をる人 岩戸 白川 水をもつ目のかへらの梢より吹出ろす風の音そすゝしき香居 晩夏雨 夏暁 度といふもけふのひと日を限りそとせはしくふるかゆふたちの事弘影 野田 背段の月もろともに卯花の垣よりしらむあかつきのそら拍樹園 寺部 中々に夏はをかしや卯花の月よりしらむあかつきのそら弘影 香屋 夏の心はみしかきまゝにひとへ下おほえや六する暁のそら茂光 秋ふらて草の袂の露けきは夏をなこりに降し雨かも 道頼 おまりは秋としなれはけふの句に淋しき種も生ひいてぬへし 山名 夏の夜はまた宵なから明ぬめり油て月も残るあかつき 南都 夏 山土りつみてなりたる山を夏ゆけはいつる汗たに滝となかれつ めつらしと誰か見さらん青葉山枯木に花の雪を見る日は 道目記 花鳥の春のなかめの豊きて笑はぬものか夏のしけ山 氷川 春の花秋の紅葉のあらそにもなか〳〵夏の山はめてたし 時しらぬ山さへもちのあつさにはしはし雪消の夏痩そすり 甲府 熱田 伐すかす梢を窓の心ちして杣も昼餉やつかふ夏山 見付 雲色の青葉にくらき山やなそ子の色にはあか事かりしを周 たへかたきあつさにあれとふしのねの扇はかりはならさゝりけりけり もみち葉は青くしけるを菰のよるほくしもみえぬ夏の夕山千晴 夏 花の酸きのこときめて桃山も水粉にけふは青くなりけり厚丸 川 一水底にむなきすむとも見えぬ哉日ことのてりにやする谷川弘影 夏やせに世をあらはして流れけり涙とはかへぬはら川の水十文也 水上は秋にかあはん大井川あつさをなかす風のすゝしくしさ 二本松 此日ころあつさにやする野路の川暮のむなきすますやみたん安遊民 一庭にはひきく見えしか峯つくる雲より見れはたかきふしのね真風 黒雲の袖ひたすらし夕立にとねの川水うはまりせり春秀 美濃勝田 夏の日にくめはねふけの覚にけり空にくぬさきの雲浪の川水竹草 鹿島路や京成し川は名におひてあつさ消ゆくゆふへすゝしも鶴群 十一 舟縄 夏糸 入糸あつき日をしのく衣におる糸をならむしと名ふはよふらん 八 名古屋 一度引の不正の桑草のいとまなみその目にとりて其夜くるらん数の屋 しられまへ撫る隙なくくりためて京へのほせんなつひきの糸亀雄 同へ恰野集夏 二本松 つゝれさす海のなくてまゆつくる賤は裾より糸をひきけり吉玉園 拾遺 信濃嗣村 更衣綿ぬきて着かふる肌やいやつくは水浅黄なる夏の薄衣 南都 一余花百人梓うはるにおくれてさく花はくめつらしみ引とゝむらむしむしきしししきしきしむしむ 三河土橋 一切花いとゝ夜のはやくしらめは神蔵はねかぬる老の窓にうめはや 亭主金を かそふる 二会同 當座花咲庵大人判 植込の山吹わくる心ちしてかそへ尽せぬこかねめてたし 羽織を 羽織を 着する うしろから着する羽織の鏡裏なゝこ小役の襟をかへしつ 金を上ふる胴巻のはら帯ときて子をうみし金の顔見る時のうれしさ 当座 千束菴主人判 花見弁当 つゝむ 花の浜七日こもらんまうけしてつくむ初瀬の山の檜わりで面堂 塩うりからきわき蜑にたくん鳥の鳥の目の浪をかつきてかへる塩売全 二月分 拾遺 鶯 もえ出る草のはつかに鳴そめてうらめつらしき野への鶯真都丸 春月名取つかすみなかるゝ春の日は月のかつらも庭の埋木仝 三月分追加 柳 身を涙にしつめやせんと春風におしもとさるゝ岸の音様順全 雁別花よしの山花の秋の歌けきはわかるゝ雁のなみた成らん 名所花雲とのみ人うたかひてみよしのゝ花をも雲となかめけされ酒盛 狂歌恰野集夏の部終 狂歌恰野集秋之上 狩 狂歌蛉野集秋之部 上の巻目録二十一種 初秋七夕待荻葛萩 艶女郎花夕薄蘭垣種花草花 鹿 秋眺望 露野分虫鹿秋暁望 山路秋行秋夕雲秋田菴秋夜長関駒迎 秋時雨 初秋 下総野田 人中 十五人よりも 猶やおとろく 柏樹園 秋風にけさ おとさるゝ 桐のく葉は 十二 去なほなる 仙台 千菊園 心ならひに 秋たてる かさはかならす ちる極かも 北溟北 秋きぬと けさふく風も 尾張清順 千芽菴 諸春 われよりや うちおとろきて 声を立らん 下総関宿 万栄子 待七夕 十三 いせの海 けさわたりくる 亀世 秋風に 秋風にあらしあふ あまもおころく 十五 面堂 侍わひて 天地のたかひは 隙ゆく駒を あらしあふを待 ひきなれし 星もわか身も 荻のよひ声 牛よりおそく 心はよりは 星やかこたん 檜樹園 秀明 春されは家毎 秀明 扇くはりしをふたゝひと 扇くはりしを 牢 十五 ひとゝせに ふたたひとこぬ 五十瀬の屋 秋は夜の 家舟すつる秋は夜の 家舟すつる 秋はきにけり なりきかよきと 星はまつらん 星はまつらん 燕雀園 十五 伊勢松坂 天田孫彦 たくへたる梅と菊より 二星のあふ夜の花の 星はまつらんまたれぬる哉 またれぬる哉 一美濃小谷合 水寿図千代浪 千声 かくらきや 千声 たなはたの 寺田の稲は 一夜まつ間の なかきより 色つきぬ 秋にちとせの 西よりや来し 名はおほせけん ねきことを かくるをとめの まつるより またるゝ星の 雁木 風柳亭吉女 心いらたん 上野大間々 豊田守 萩 名古屋 曲水国 敷輩の前もなれけり 群雄 花さかり萩見の家の つとふまとゐは ぐれぬうよるの 仝 にしきになさしとや 真萩は露に 月やとすらん 岐阜 神垣内 俊豊 春日野の さかりの萩の 紫は昔の糸の ゆかりなるらん むさし野の 萩の此草 京紅粉も いろはちぬへく 花咲にけり 檜樹園秀明 翫女郎花 面堂 をみなへし秋に あはしと露の玉 たえすかさして 我をもてなす 草花 名古屋 水魚園 十五 見る人の心の 友雄 まゝにうすくこく 咲にやあらん 野へのは千くさ 赤山 檜峯館 吉 明一 一哀しる露は 泪か秋霧の 花のまふたの おもき朝明 桃園 仝 立れさへ 井沢環 ところの名さへ ふた芸に 玉雄 日のかけにもろく玉雄 うつろふ朝かほは 霧のまかきに さかせてしかな 匂ふは原の きちかうの花 寺部 ことさらに露そ 露 雅流園 弘影 主 しける女郎花 をみなは涙 もろきたくひに あまたある 土人形の魂 としも 鳴出す 火の泪と 思ふ迄 壊 和君芋居 見えて 風ふけはたゝに長樹 一なひきて花薄深草の露 なひきて花薄 ちひさき 深草の友 みたり時そ 露おきける 美濃大田 千代の屋 春雄 秋のゆふへは 露そおきける 岐阜 神林舎 俊直 以上 野田 鹿 兵庫 十二 心なき 一の屋 岩木おほかる 山としも 柏樹園 妻恋に 物思ひふかみ ゆふへには 空をなかめて しらてや茗の をしか鳴らし 妻をこふらん 葛 南向堂 十二 野風をや うらみて おもては さらに 秋を すこす 見せぬ らん 葛の葉 十二 大坂 西水図 もみち葉の 杉門 火の中をたに いとはすや 夜さら恋路に まよふさを落 高砂の尾上に たてる女夫荒 とし久しくも なるらん 江戸崎 緑樹園 野分 名古屋 西水国 大浪のひきり 群雄 あらゝ見る迄に 草をりしきて 野分はれけり 名古屋 十二 牧の屋 耳ありと いふ壁おちて むしの音を ちかくきかする 野分をかしや 甲市川 桑の屋 夕薄 十二 十五 花薄まねく ゆふへはあり余る薄あはれさも ゆふへはあり臨る 嶺雄 淋しさのみそ よりにより来る 打さわく夕の 薄あはれさも まきらかさんと 袖はふるらん 花咲菴 五十瀬の屋 十二 十二 七くさの 風吹て露 しらなる 花薄 ましわり 深き 友をおきて 夕はたれを 夕は袖の おもけ なりける まねく薄そ 上野一宮望月舘 垣槿花 黒野 竜栖園 ねかゝりし垣根に 梅尚 さけと朝かほは 人にないを ゆるさかりけり 北溟田 有冷野集秋上 十三 露 包疇肉 包塘肉 広母 をしと思ふ 氷川 高吟社 かに代田 □□□□□□□ 瞿固 捨集軍 わか心より 千露や ちりうからまし ぶ露の はかなき物を もてあそふ 萩 十三 秋萩の枝 をみなへし おほかる中の 萩みれは こかねをちらす 客にもなる 名古屋曲水国羣雄 花も実 あらぬあら野の むら萩は品 すくなしな ことはおほくて 秋の心や いかに寂しき 仝 琥珀国 清根 阿波 九峯舎 物いはぬ近き 静 包塘国 うちさわく荻の 広好 うとみて声高き 歌をよろこふ 心に路の風色 仝 二葉菴 中々に声の高きは かなしさにたへかね つらん荻の上風 緑 見附 萩の屋 いせの海風もろともに しかたつる秋は萩より 立かとそ思ふ 花都石 まきれに世のうさの きこえぬ宿そ しつけかりける 十九 檜樹園秀明 子をもたぬ妹か身かる事 たくひにて色なき荻は 風にさわかし 虫 松坂 鈴鹿屋 ぐつわ虫 真都丸 たかのる駒そ 草手綱 結ふねくらを さらすなきをり 道目記 浅嶋庵 松やさき なれや淋しき 霧の海 もにすまぬ虫も われからと鳴 がなしひやいたく せまりし夕風に 起ふししかく 狂ふむら荻 面堂 下総 夜ふくれは 都曲国 住もあらさぬ 庭なから 秋の野らほと 虫の音そする 文字楼 ばたおりめ 本成 たえ〳〵をちに声す也 かほりに 糸のあやをひくめ 同断断以組 関駒迎 名古屋 群竜窟 十二 出羽江又 真綱屋 ほのくらき 美津総 杉の村立 けゝらなく 駒なすゝめそ 駒なすめそ 水かひて 引駒も やかてや月に 関路の月に いこへ甲斐人 あふ坂の関 十五 大君の みくらま近く 三河寺奇 雅流因 弘影 引駒や 関の清水に 口きよむらん 十一 秋眺望 檜月庵 いたてぬる霧の まかきを誰とりて 月に奥ある 山をみすらん 檜舟亭 十三 逢坂の関の 静 杉村葉を しけみ 駒のいくきも わかうさりほ わからさりけり 照月の汐の 水游園 ひかたと みゆはかり あらはれわたる 沖津島山 秋時雨 ぢやをふるふ 文花楼 清丸 風ふかぬ間に 木々をみな そめんといそく 秋のしくれか 秋夜長 檜樹園 あすの夜は 秀明 否て出んと 長きをは 思ひうとみて 月六りけん もみち葉をそむる 青梅扇松垣 山路の夕しくれ峯は 一雲さへ色にむけり 秋夕雲 信長岡 崔汀園 夕つくる思はぬ 千代住 秋風はまた 手よわくて 初しくれ 雲にかけさして 霧のまかきに 霧のまかきに 紅葉をそ 見る かろき都の 水やはこへる 名古屋 泰山法師 菊の 柳 菊泉樹 印 S 欠S S 狂歌恰野集秋之部上之巻 撰者檜園梅明 初秋竹とつる秋はきにけり人みなの星につるにも魂まつるにも本成 扇うる都はいかにならの里うちはを捨る秋は来にけり秀明 二本松免具民改 木色なき都も軒に燈籠の蔵紅葉見る秋は来にけり干文 美濃太田 小山田のかゝしとゑをかたふけて秋たつ空を見る姿かな春雄 ふく風に枝をならして常磐山もみちぬ松も秋をつくらん扇松垣 なか〳〵に秋きぬる日やさをしかの春の心はうこきそむらん清根 朝顔の花咲そめて空の色日ことにかはる秋は来雪り今 秋の来し西はなかめのあはれさに風見の鳥や東むきけん琵琶彦 涼しさをあつき昨日にくらふれはけふ目に見えて秋はきにけり諸春 東より梅咲しこと秋たては西のかたより露やおくらん津知久 松たてゝ春は立しを竹たつる七日とまたて秋はきにけり万世 北山や秋たつ風のこゝしさに病なき身もふるひたちけり十文成 哀てふことを見しとや桐はとく秋たつ風に葉をおとすらん千代住 あしたのみ見る花咲てけふといへはゆふへさにしき秋は来にけり仝 三河寺部 もみちせぬ桐に柳をえり出してけふやすづらん秋のはつ風弘 高崎 来る迄の旅路は汗になりぬらん露けくあたる秋の初風諸文 一葉ちる極の露に袖ぬれて秋のあはれをけふよりそしる守近 さひしさをさそひて来ぬる秋風とも萩にあたりておころきやせん美都垣 きのふまてめてしをけふは秋きぬと風を扇にたゝみこみけり酒屋 さわかしくけさ立そめし秋風に友えにけりと萩やよろこに鎌成 月めてん秋は木にけり目さはりの桐に柊の葉をちらす風由成 但恰野集秋上 仏ます西より秋の木にけらし里路にみなから草はぬかす笹丸 浪かつくいせをの蜑下おとろかんはたへいやつく秋の初風俊直 ださかるあつさに山の庵の如春中そむくる秋の初風俊豊 来し秋の心ほいなく思ふらんものおもひぬるかこち顔見て柏樹園 小田の庵あつさにたわむ鳴子縄つたひて秋のけさやきにけん もみちはのにしきかさらす来し秋のたちのまゝふる姿さひしも高吟社 羽江又 秋風の出けの様吹そめてすさかの大路西よりそたつ真網屋 塙 おとろける人をましと風や見んあつさにうみてこひし秋をは蔵主 風かはるけふは松さへ聞なれぬつくり声して秋をつくらん広明 風かはるけふは早稲田も立つきて声かはりする秋はき習り梅遠 桐のみる青葉も落る心ちしてすこれをたゝむ秋は木杏り秀明 すなほなる軒の柳もさからひておふをおとさるゝ秋はきにけり明澄 雲の峯むら〳〵しろく砕けしはけさ来し秋や道つくりけん静 一持ふるす庭に秋の風立てゆるむあつさを夢にそし類福丸 一方角のとりのかたより秋の来て風の羽おとにおとろかれけり春久 一雲の峯風にくつしてたひらけく道つくりして秋はきにけり梅近 南都 西の海の浪より立て葛の葉のうらつたひふて秋の初風藤浪 めに見えぬものこそよけれ来る秋の姿はさそふ哀なるらん広丸 毛の梅る秋は一葉のちりそめて柳の髪もうすくなりけり嶺雄 けさ風の立したくして人みなの扇わするゝあきの入くち文舎 白雲をめつらしと見るけふよりや秋のあはれの種となりける若雅 うちはをはかく捨よとや桐の葉をけさすおとす秋のはつ風行安 秋風のけさ葛のはに立初てきのふの夏のうちを見せけり鎌成 鳴子にも吹おとつれてたつ鳥に賤のおとろく秋のはつ風春雄 巡恰野集秋上 立ひとり訪ひこぬ峯のひとつ家にまつ音つるゝ秋のはつかせ俊直 月の入るかたより立ぬいつくにもさやけきかけをめてもやす秋胡椒亭 もみちせぬ秋のはしめも立田姫にしきおり出す野への京萩干糸亭 吹かへて帆表あつる西風に舟人はやく秋をしるらむ恭門 手に持し床を風にとられつゝけさたつ秋におとろかれぬる森義 米相場下るときゝて穀問屋むねにおとろく秋の初風百草国 社きぬといはぬはかりに真葛原うらさひしとも見する風かな照蔭 関宿 一仏ます方より立る秋風になへて涼しき国となりけり亀世 常向上野 あつさには結ひし折の滝すたれ秋たつけふの風やとくらん片住 仝波賀 そよかせし扇をすつる秋たちて打端の夜に風さやくなり菊成 佐野 秋きぬとしらする風に藝ひちもけさおとろくる立さわくみゆ糸屑 栃木耳寄改 秋にはやなるこをひけは立さわく鳥の羽音におとろかれぬる 悟 あつけさの重荷おろせはあはれさのうきをかさぬる秋はきにけり磯住 一年の中をふたつに吹分てさつ秋風やいかに手つよき武暉 一きは〳〵とかゝしの蓑はうこけともつにはふかめへ秋のはつ風宿也 一秋きぬと目にはさやうに見えにけり色つきそむる庭の木のはに静雄 風かはる秋葉の山に秋されは麓は夏のひよけをそとる具 来る秋の道さまたけか月の手に桐の一葉をおとしそめけり秀雄 むしはまた鳴もすきめぬ空くにとくかなしときくは秋風のこゑ本成 秋風のふとたつ時のはつみにや落ておとろく老のつけ散呉秋 みそきせしちのわくゝりてくる秋や袂すゝしき風のふくらん音羽 柳からもて来しやうに吹風はけさたつ秋のすかたなるかも原店 夕かほをのせて出しく扇をも棚にあけおく秋はきにけり秀明 待セタ 人の日は爪をとりしを秋されはたなはたつめの七日まちうし仝 以恰野集粳上 硯あらふ少女は袖に墨つけて星の逢夜をこひつゝそまつ千声 極葉のちりそむるよりまたれけり舟をつくりて星ふかす紅は五十瀬の屋 松坂 一おり姫や日くれ十つ間はおりかけしはたとせもふるおもひなすらん真都丸 岐阜 くれやすき秋のゆふへもたなはたのまつる間そ長き限ならまし俊豊 脇 たまいたのあふせはさそ子節句をまつをとめもこよひいねかてやけり竹草 松たつるすまちしこと何たつる秋も七日ををとめらのまつ長房 一喜花をまちしちそ秋されは星のあふ夜も七日とおもへは柏樹園 おり姫もうれしかるらん我さへに待にしけふの夕くれのそら明一 一棚桟の心のたけをくみわけてまつにはつけぬ立紙短さく緑樹園 たなはたの紅葉かさらき侍かねてこなたにかくる夢のうき恋藤都美都成 たなはたの一夜をまつはさくら咲その七日をふるこゝちせん春條 なてし。子のもやうの小袖かさはやとちりうちはらひ星合なかつ住也 荻 一昼夜まつ星の涙の雨とふらは天の川瀬も涙となるらん岑松 天の川家とわたらぬ身にさへて君か舟むをけふよりそまつ望月館 あかつきとしとおほさんかしに袖したてゝまたん星のみけしに真綱屋 二星の七日をまつはあすきかん花を宵よりたのしめるめ秀明 をさをかそつてまては星合ににに花さりするもちかくなりけり福禄亭 士 其際のすかたをかくす秋さゟは軒端の蔵そ風にさはつく清丸 かなしさをこらへてなかぬたくひかし秋のゆふつに露おかぬ花檜目菴 むつましき秋たちきぬとよろこふや風にさはつく窓の下をき吉女 風になれきわた我かもさきてとくちるものもひの花をもさねは長樹 荻野 大声をたてゝさわける村蔵ををさなき秋や友とよろこふ美年 鳴門 秋の夜のふけゆくまゝにきひしきかわれからさわく風の夜はら 十 麻植喰主改 から〳〵と笑ふやうにてかなしきは風吹わたる秋のをきはら 食翁 同一帖野集秋上 徳島 われなくは秋やさひしと思ふらん風にさやける荻のこゝろは静 壊 をとりたちさわくとすれとざひしさの限なりけり風の蔵はら長樹 一吹風に夢も結はぬむら蔵いねられぬまゝによるもさわくか行雄 すかたなき風になひとこと村夜してけふ来し秋をしらせ顔ふる御国 中のよき軒の極のちるを見てときえ顔にも風きやく萩千代浪 かしましき子くにもいて文にいふ窓に朝磨葉す萩の上風春久 きひしさにこそりてうきやかたるらん風にさやける花のむらみ茂光 ことさへくもろこしまて申来にけんと人のおもはん風の夜いら日々暴 野田 角方草野分にしはしこらへぬを高声あけて笑ふ歌かも柏樹園 仙臺 風にけきとわける萩は人みなのくしをる秋をなくさめんとや千菊国 百草のしけれる中を蔵にのみわけ来て風の吹かとそおもふ同芳 ねといへはさひしきものを中々によるはにきはふ風のをき糸菫 秋されは雲ゐをわたる初夕の羽音にまかふをきの上かせ其聖 なかめやる品すくなくてさひしきは雲の葉ふ多き萩の上風孫武 中のよき柳にはちす秋風をのゝしりさわく萩のむら立千糸亭 仝 あやしくも軒湯の花やおもふらん風に紙帳のさやく伏家を本山法師 尾一宮 一秋をなけく人なくきむる心かも夜な〳〵きわく萩の上風下風は きわかしき風やと歌もかこちけんおのる声とはさらにしらすて諸春 市川 さひしさの野末はいとゝたべかねてときやしきりに声を立けん真文 風さやく萩かしかまししかはあれとほりすてんにも一さわき也魚店 持ふるす府のほねは折てけりさは〳〵荻のさわくこの頃輝明 声あらきをきにむつみて夜もすから肝はの風の立さわくらん明一 ひとりねのさひしき秋の夜床には軒はの萩そ伽となりける仝 龍田経ならせたまふと秋風に露拂ひする萩のこゑるも緑樹園 且恰野集秋上 葛 〃 よしあしもわかすて風にむつれけりいせをの蜑の軒のはま荻梅臣 十二 われはかりいやしき布におられぬとにしきなす野の葛やうらみん玉雄 物ことにかなしき秋はなかめすとうらやむきけん風の葛の葉琵琶武 色香なきことを恥てや野へをゆく人におもてはむけぬ音のは千糸亭 秋されは以来る風をうらむるかみなうらうへになれ暮の葉月芳 岩やるくもつよくはりゆく葛の蔓根ふちつのりやかにきくらん愁明 松による藤のゆかりの色なからことなし草にはふ葛や何言花園 目立たる色をはもたぬ白萩は流手をこのまぬまみやなれなん器楽菴 むらさきはうつろひ安きかゑなりとそますや有らん白きに蘇は本成 とく人の袖にすりぬと見ゆはかり花に色なき空への白萩秀明 名にしるき江戸総もはちぬへしまかるはしくみやきのゝ萩吉女 宮城野の小萩になれしなれ衣これをも櫃にいれおきては真袖 むさし皇の萩の花皮見てよりや江戸むちさきの色いたしけん教訓亭 こきませし朝の春におとらめや萩のにしきのみやきのゝ秋 身におはぬ衣といはまし土萩原わくるあき人花摺にして緑樹園 一都まてさかりたかへぬ宮城野の萩の花こそ長もちはすれ 一夜ねてあすもにかめん春の野の茎にまさる萩のむちさき清女 此葉は色あせやすきならひとてふきもさくるゆへの秋萩万世 照月の都をうつす夕露になりのむしくみやき野の萩志都丸 錦にはあるへきものとさく萩にうきおり見する塩の糸も輝明 咲萩の錦をわくる頃そとは行かふ人の袖見てもしる墓都丸 藤巻 一花に来てたはるゝ蝶を秋萩の錦におちはいかによからん千種 一秋見れはみとりの色はなかりける春もえ出しのへの真萩は秀明 中みに子咲みてる萩か枝にもとあらはには見えぬ也けり器楽菴 山吟野集秋上 なつかしやふるき都の跡も今さく秋萩のむらさもの庭呉秋 めつらしき綿おりかく荻か蔵風猪をしかをもやうにはして本成 地水に錦うつして咲風水あやなりそふる庭のいとはき真咲 玉の枝なし心かな露なから手をる蓮か中の萩かえ金雄 みやきのゝ花の綿は雨とふる木の下露に色もかはらす 限りあれは花はちりなん紫の袖にすりてそ恋きのゝ萩桃平 一布さらす玉川のへにさく萩も水にそゝくる花の真白き明一 糸はきの野分の風にみたれしを結はんとしておけるべども柏樹国 一白かねと見ゆいかりなる夕前もうちおもりしてたわむ萩かえ行安 むらさきは表なるらん白萩の花いにしきのうらをはるめ七福 手折るともいたくなのりそ庭守よゆかしの色ふ萩は蝶とも笹丸 一真萩原立よふ蝶は花妻のもてる扇と見えてうりし真都丸 紫のくかりまとも見ゆるかなえたたれしたる玉川の萩唐歌 わか袖に宮の契とゝめんとすれは立なくちる萩のつゆ守近 秋の野のねくらさひしと煮の花風にをしかやまねくならん 翫女郎花 桃女郎花野路やけはわれになまめ〳〵女郎花をられてみたき心なるも行安 うかれぬといはれの野への女郎花いさ根引して庭にうつさん真都丸 をみなへし枝さわむるはこかねにて遊ひなかするにくひならまし春條 秋萩のなかにそたてる女郎花にしきよそほふたはれめれん本成 をみなへし手毎に折てかさす日は都のあられも野も花の街そ秀明 少女子に根分をさるゝなみなへし兎つれゆく心ちなるらん あら野よりうつしうゑぬる女郎花あそひを宿へ浅かふふかめ明一 くねらすとしはしはなひけ女郎花なにいたつらにもて遊ふへき具 わか宿にいきといひつゝ女郎花心ひとつの鉢にうゑまし琴或 監恰野集秋上 立めてゝにてあそへとも女郎花絵にかく妹にものいふかこと福禄亭 をみなへしくさへ音さへその名さへともにめつへき花にさりける泰山法師 道目記 空遊ひの頃根ひきせしをみなへし秋はきまにさける我尾浅房菴 金衣宿 うるはしき露をふくめる女郎花風にあわやと手をもあてなん梅遠 夕薄穂薄は入日見おくりいゝかへす風に月をやまねき出すらん器楽菴 夕くれはもの思ひありやおく露にうつふしかちの野への小薄踊り 花すゝき秋のゆふへのさひしさをかくまねけとはうつさりしに俊豊 かなしさの秋のゆふへのなみたをは見せしと薄袖おほふらん糸屑 夕くれのあはれをしるか月はつゝうきをますほの薄露けし美都成 秋風にまねく野条の花すゝきゆふへはふれもつれほしけ也嶺雄 ほすゝきよまねかすとてもゆふへにはあろの恵の露はおくへし真文 袖といへば秋いひちぬるならひかも尾花も露にぬるゝ夕くれ一声 夕風にすり火うつめすれあふはほくちにならん薄なるらん道頼 夕くれにあやしく人をまねけるは狐の尾に似る時人のほ薄唐苦 たれとなくゆふへに招く花薄遊ひか見世をはるたくひかし鹿住 さりかさにおとさけたきを夕くれのさひしさいかに招く薄そ鎌成 一落人もなき世の薄夕風にぬくらの鳥をあとろかしぬる花笑 一社の夜の月をまねきて穂薄の老けん風に白敷みたしつ鎌成 夕風にみたるゝ軒の花薄すゝしき月の影もやとらす千枝成 館林 夕されは小鳥も時しめぬるを鷹の羽すゝきあまねこん真文 人たにも通はぬ社のあら明らにゆふつは薄何まねくらん守御 風まねく野人の薄もゆふつには冬のしたくの穂残みえけり梅正 夕されは虫のやみれる蔵すゝきあはれをいよくまねきよすはん 人みなに袖をひかるゝ初尾蔵ゆふへさひしとおもはさるん八重垣 以恰野集秋上 繭 わらひ縄帯に結にし神垣のこしをはれぬ藤はかまかん一蝶 昔ならはうちかへてたに仕立んを演ひかちの藤はかまかな五十瀬屋 藤はかまさける由くふは露草もいとはくゝおのれふみ込て也百草園 夏やせのなほるたくひる藤はりま夕ツ露を結ひそへけり真文 堺 まち内ふたれりは酸て扇はかまこのやまの野に脱ておせん 山寺のみたりに匂ふ藤はかまおほしたてぬる児にとらせん いま人のあらけくきけん藤袴をりめみたれて淀ひにけり琵琶彦 をみなへしなためく中にましりても立給みたさぬ藤袴かな志都丸 竹杜 むさしかゝふ誰ぬきかけし落袴江戸むらさきの色に白くり をみなへし多かる野への落語ぬかせしぬししわにらさりけり音高 よかなくてめてたき物そかなしさのかをしらぬ塩のあさ顔周胤 をしまるものゝ世をへぬたくひかく日舟にかはる垣のあさかほ種成 咲かへて久しきものをはかはりしといいなおとし太垣の朝顔 はかなきい垣の日かけと日をもてとよはひことなる朝顔の花長良 難波津やあし垣にさく朝顔も見るまみしかき花やゆる行雄 るり立に咲たる垣の朝形は紺に染てもつよからぬなり千晴 一あすさかん花の莟をかそふれはゆふへたのしき垣の朝かほ弥繁 朝かほはものあきやすとはふつかにあれぬ垣根も結れすらん真袖 一朝な〳〵秋のあはれししらすてやゑまひつくれる塩の朝かほ由武 国の名のいつみにうつる朝顔はとふりさかひの垣にさくらん七福 袖垣に露しとゝなる朝かほははかなさかこつ花の涙か吾吉 おく露に絵の具ほとひて上まる色とりすらん垣の類類見 一かはりやすき空色ならぬ花も猶うつろひやすし垣の朝年本成 袖垣に朔日おほふは朝かほをわかてはたつるたくいならす政明 内恰野集秋上 をさな草の花をちらしく袖垣の淀い給ふかあさかほの蔵政明 一朝かほに水をそゝきて笑いする花にも秋はぬるゝ袖かき よわりたる秋の日影につらされて哀ちひさき堤の朝かほ柏樹園 一出る日を花のいらふや袖垣のうらへ〳〵とまはるあさかほ教訓亭 ておきて朝かほみれは花もまた咲そろはさる健仁寺垣守輔 沼田 朝毎に笑へる垣のあさかほはゆふへのあはれしらすや有らん亀住 縁の文字垣様に見せて朝かほの食の気はつくりいてけむ住也 袖垣をぬふつか見れはめらしきは女郎花より朝かほの花千代住 雲はや太子年をふへき行僧のかけをたのみてさける朝ほ直人 あかれしと朝な〳〵に咲かはるこゝろせはしき塩のあさかほ都音成 車にもゆひたる垣に出し衣の立につかしきあさかほのはな嶺雄 むらさきのはいかけんよく朝顔は垣のかれ木に花さかせけり今 あたらしく其日〳〵にさく花のふるきへたつな垣のあさかほ胡椒亭 仝 あかぬまにうつろふ塩の外蔵ははかなき花のかきり也けり茂 黒野 あはれさを人にしらせて袖垣にうらおもてなくいらく朝かほ龍王 袖垣につくりし花のいろ〳〵と朝ふ〳〵にかはるあさかね日々菴 種まきてそたてし垣の朝かほのわらへる花を見るかたのしさ今 朝かほは業平竹の生垣を蔓はひ出て花そ咲ける仝 草花をみなへしおほかる中くにをとこ倍し梅くは女護の雁すゝきも 一花ゆゑにをらるゝ野への女郎蔵書かねに身をは捨るたくひそ弘鄙 うれしお過するたくひかも涙ほと露をふくみて笑ふあさ顔黛 鳴門 赤いけの舟あそひするをみなへし客をもてすうたいめやこれ南秀 一かたふけし骨やしのふ城跡にさくをみなへしものもいはぬは弘影 うつり安き人にあかれぬ心かゞきく朝かほの日毎かはるは都音成 巡恰野集秋上 既恰野集秋上十一 露 館林 糸荻のおくに露は結ひめのふしありぬともいふへかりけり知義 聞かへに袖そぬれける露ふかき尾花かたしき虫のなくらし五十瀬屋 一枝されてものやおもへる月見学房の泪そかこちかほなる緑樹国 むさし野のうすかき染の花薄華小袖をはいかてすらさる道頼 人形に目鼻をつけて見るかめ子くき花さく衣の深くさ真波 かくしや花と白とを咲ませて露も結へる水引のは水引のはな星照 いけなしな風緒の床のをみなへし草枕してねぬる姿は さひしさの秋の里屋も立きわひぬきく女郎蔵萩か花妻筆武 参秋は妻ことなりしを女郎花ないさためなき身をかこつらん 一こみ明信し朝夕常にかくるらは身しまひをぬる折々らん行安 白露の玉のこしにそのりにけるこすの大野にさく女蔵内増 丁の文なわたる夜頃に涙ほと露をうかへる鬼のしこくる亀丸 月草の蔵は埋末に見えそめてさし来る汐と尾蔵浪よる真鎮 ほといひ度とよふ名はかいれともやとるはおなし秋草のはな 山形 かたるなとよみにしるをきにもちていはぬ色にやさくをみなへし神楽声の屋 打なひくをはなる薬も秋みえて袂度けきつゆくちのはな雅敬 ちらさるら風にいといすまたもおく処の心やかとなかるらん音高 あめよりのめくみと千草一千艸のふしていたゝく露の玉物に松国 丹前の玉をかゝへてくたかしと夜もしはしは声もえたす氷海国 舘林 一もゝ草におく舟露は大ならの星のかけかとあやまされけり くたら野の千草にゆら〳〵白露はあやむる機の手外足珠一の屋 ゆふへまちて葉末にのほるに露は月の光をからんと崩る美都垣 夕くれは野へさひしさに露さへも里へつれよと裾野にてかるか行安 月のかけ数にくたきて夕露のうつすはちらにものやかなしき真文 四拾町集秋上 一おく前はふきをいかて秋の野の花いろ〳〵にそめいたすらん浅勢菴 白銀の玉を扇にのする如宇治の芝生におけるあさず 水川 さひしさの心をにうにくたけはや千草にわくる秋の夕露高盛社 野田 風さわく夜の上葉はあやふしと前はしつけるこ下葉にやけて柏樹園 秋といへははやもあいれをおほえよと月やとすらん神の上の露日々思 むらさきの匂へる萩の白露に月の都はうつしてしかな久西丸 照月はたのひさこにかけみちてこほるゝ水や露とおきけん長良 一八千くさふかす〳〵おける北露のもろきは玉の疵にさりける千晴 風そよく秋の花野にあやふきは上葉にむすふ露の白玉全 八重霜とみれよりならん草の上にあしたゆふへとおきかふる処春條 越府 いろ〳〵に千くさ酒なす白露の心やいかにせはしかるらむ道頼 松坂 むさしゆにありといふなる近水は風におはるく草の上の露孫彦 津 ゑぬるに草の露のゝとのみなやうらさん霜と結ひかふれは五十瀬屋 清須 そつろひしのちまて花におきかへて菊より露は久しかりけり諸春 露ほとくいふ白露の大きさを見まやあまてる月をやくぬ真風 一歩といへははつりなれとも世を広くてらせる月の宿はなしけり同影 しら露は影をやとさん月草をしはしかのみて月やとすらん喜吉 くもる夜ははえあらしとや月影のさゆるをまちて露かおとん磁朋 トみち葉のうへなる露は手のひらにのせてめてぬるこれなゐつむ亀住 七草の花を手をれは秋もまたわか瓜先を露にひたせり周左堂 むらさきのあせやすきをやうとむらし露は小萩の白きなく筆丸 蓮葉をおちなく池に消ぬべしと芋の葉にのみなやあつまる長樹 染あけし時雨はこよひ出きかへて紅葉にそまる枝の夕つゆ亀成 しをれぬる花よりはかな明の風日の出もまたぬ朝かほの聲 ◎恰野集秋山 池水の浪の中よりのほりてもにこりにしよぬ蓮葉の露還智 蓬葉にかたち流れはや畑中の泥になつまぬ芋のもの露仝 むさし野におく白露は八百日ゆく浜の森の数千五は一の屋 照月の光りにむかふ百くさのゝ布は水とる玉と見えけり真都丸 ものなへてさひしき秋は八千くさにおくに露も涙とは見る唐嵜 吹風のさそへはなひくをみなへしおくに前もかりのやとりか長良 もみち葉におと白露はおのつから鋤瀬の床とみえてうつくし守郷 多賀城にひろふ尾はくたけても玉はまつたき草のはの露売茶園 旅人の矢立に萩の露とれはゆひたる筆の荒下ぬれけり仝 春り野の露鳴草にもおきそめて上毛の星とゝ見ゆる白露千糸亭 さらぬたにさかりみしかき朝かほにこほれて見治る露や何也酒の屋 いろせぬぬるて紅葉をしたちより艶をむさんと白露やおく弘澄 その原やとくさにすれて朝夕におくしら露の丸くなりけん春澄 かく山に衣ほすてふ夏過て尾は小か袖そ露にぬれける芦丸 その数の限りはさらにしらずをおくとはたれかいひおふける真文 まこふる御ふすのへの萩かえにおきそふ露は泪とや見ん可楽喜 一吹風のはらふ跡よりおきかへて花より清きあさかほの露真咲 一しなぬなるすりのあら野の朝露は千草のしなぬ薬なるらん政義 はかなしと見れとめてたし鳴生の命をつなく露の玉の緒高吟社 むらさきの春にも一夜宿る露すみれめてにし人の魂かも魚住 風ふけは転ひておつるゝ露のむすへりひゆともしらておさん宿也 一秋されは音の千尋の海底に光るい前の真城なりけり居尿 月の夜の重の類と見ゆはかり草の葉うらをつたふ白露鷹記 乳下らひの野を分てゆくねこそ露をかなしふはしめならめ福禄亭 監恰野集秋上 十四 月めうちのくらの水のしつくかも手にもとられぬ里への白前本成 いろ〳〵と秋の花里におく露はひとがたならぬ心なるらん野主 一分たふるゝは草木はかりの野なして家にもけさは杖をつかせつ南向堂 くたひるゝ程にさわきし萩ならんけさの野分にねたるま。な 一四分して野守る宿は有明の月よりさきにかたみきにけり千声 大空の瓢をいてゝ秋の野をわけゆく風のかしましき哉光永 天の原野分の風に影さゆる月のかつらや葉をふるひけん文舎 あつらはいかにりあらん野分して風見の舟の行へしられす五十瀬屋 ひとかたに雲のなひきて見えつるはみ空もけふは理分立らし環 西一とふ野分の雲におとろきつ月は東をさしてゆくやと津知久 頼くもる月のかつらは雲はらふ野分の風そ蔵さりせける吉女 一ひたふるにあるゝ野分は堪忍の袋やふれし風にやあるらん春條 画 たせ木をおこしておかぬ里分には中々一夜ねられさりけり福丸 さらすとも荻の錦はほころふを野分ふきたつ宮城のゝゑ唐歌 一子草の蔵をちらして桧扇の骨のみ残る里分わいしに千糸亭 四分して風見の烏とはせけり散生春にもはなたさりしに亀丸 花咲て見にゆかましのたのしみも野分か腰を折し萩かえ国海 一里分する跡はさこねにまかひけりをとこ女の花もふせれは鹿成 枝細き柳はきらて中こに野分にふとき木こそをれける静雄 つゝりさす妹も夜寒をかこつらしさせとなにおふ虫の鳴原本成 とらへんも心やほしなきちかうの袋の中にむしの鳴日は千菊園 きかんとて皆ひかたゐて幸ふかき虫鳴宿そしつけかりける真袖 一れくにきけはよろつのむしの音も月てる夜こそはえ増ゆれ玉洲子 梅さくら花なき秋の夜ふかきに客をもなす松虫の声 御へ恰野集秋上 かつまたの池はいかにも蓮よくてしかなく虫の髭あるやふそ春條 十 一秋の野に馬追琴をひくむしもさとひみやいのなかいひや 機をおりつゝりさせてふ野の虫も思ひ〳〵の身過なるらん黛 さらてたにかなしき物をさよふけて風にみたるゝ虫の琴な薫 この野へのあはれいつちへはこふらん馬追虫の夜をこめてなく胡椒亭 さいしさをしらぬ都やうき秋の哀を市にいさく虫うり泰山法師 八千くさの花を守るか鈴の音をたてゝあら野に虫そ鳴なり日々器 藤春 秋の野の萩の錦をひろものにおらんと虫の夜をかけて鳴千種 太田 聞耳をたてゝきぬれは足音を聞んと虫も声やとゝむる春雄 野田 ほころひし花にすかりてきり〳〵すさすわさしらて鳴窓返ん なきけはわか袖ぬるゝ野への虫尾花における友やためけん喜吉 くさひをもゆるめん風になく声のまはりやはやき車こほろき輝閉 秋はまた名のみ千代ふる松野に子もせし野をとひにける哉松世 野路せはみゆけはふきやむこほろきは車をしはしかたにする如 秋草の花いろ〳〵にさくさかへは声いろ〳〵にむしそふ霜る糸屑 こし張の壁にきふけりきにくすこのなた書し筆やなりはん村住 虫の音のやみもやせんと庭にさへおりぬわり身や蔵にをかめ 二本松 同同同断断同 むらさきの庭にめされて髭なかき虫も里国の類やよむらん千文 市川 ふり出てなく鈴むしは八千草の葉末の露のゆらくにみしる美都成 哀にもさひしく思ふせの音はなに思ひ学なめて与くらん呉秋 はたおりめ草のあみ戸になきをるは馬追虫のかへりをやまつ武暉 声きけは宝の神さにひちにけり旧ゝへの夜露を虫のはこふか本成 いとせはき飛のすまひをわひて猶虫は気の音にや鳴らん万代 さひしさは舟につまても鳴虫の馬や東にありあまりけり 御吟集秋上 鹿 秋の野の駒のはむてふ草村にくつわの名ある虫そ鳴なる食翁 松といふ名はありなから鳴けなくも霜にかれゆく生のぬかな慈明 紅葉せぬ木の名にはあれと松虫は萩の錦のなかにしもなく望月館 きかましとまちかくよれは鳴やみてよるの錦の萩はらの虫春雄 とねりらか弱いく雪とおもふ迄関のこなたにくつわ虫やく俊寿 一飼猫の鈴むしの音の聞ゆるはたてる女三のみやきのゝ原稲豊 村雨いはれて音ふきしの原にふりいてゝなく鈴虫のこゑ同店 秋の野は花の蒔絵のかけ硯筆つむしさへありと思へは売茶国 一わけ思ひぬ広野をせはみ鳴虫の声ふみしたく心ちのみして押 秋寒み尊葉の露も初霜とむ春ひかへしかかるゝ虫の音義津総 仝 さらてしもさひしき秋を一人ねの枕をゆける虫のこゑ〳〵浅光 一孟子よむ岩の外面に声そへてはたおり虫そいさめ顔なる孫彦 さく萩のにしきのみかは秋の野は虫の声さへあぜになくなり津都丸 夕霧や千くさの露にうちしめり冬のきしるる車こほろき 夕霧の御間にすたくきり〳〵すうきしつみある声の聞ゆる唐寄 一声きけは袖に涙のしみいらんをとり小野の油こほろき花都店 朝前に今やわかるゝ野への虫草の袂にすかりつゝなく鎌成 一本立むしなれや淋しき乳にまて目をさまさせて鳴かあられき玉彦 もの思ふやふへは心せはむかを虫はあはれを鳴ひろけけり仝 真袖にはすりたき物を心なくみのさし虫のすたく喜はら義都成 足音のちかくなりても鳴居るは人目しのふのかくれみの虫音澄 ともすれは村雲かゝる月を見て舌うちしつゝきりくす啼清女 一立よれは火もしはらく音をとめつあら野にすむを人に恥かか糸屑 社といへは与へて淋しき習ひあるを尻に賑はふならのるくれ真城 巡恰野集秋上 十七 持人にありかしらるな鳴最上命にかへん恋路なりとも すからに袖はぬれける妻こふる荒は尾若やわけてふくらん道頼 能されは千くさの外になく落の妻思ひ草花のさくらん日々略 ちきりおかぬ山彦たにもこたふるを妻つれなしと落の鳴らん弘影 さをしかの声を外山へふきおくる風もや恋の心しるらむ静 春日野や神のいかきにこゝむ鹿も秋にはあへす立けつくらん嶺雄 子はひとつもちぬる落よいかてかは恋にみたれて夜たゝにらん長樹 関宿 山にても妻とふうさはのかれすや里へ出くるならの小男丸亀世 見付 麦こひて恋の山路の奥ふかく入しか鹿の声のたゆむは花都麿 仝 さひしさもこのうへやなき雲のゐると手に妻とふ棟苑の声鎌成 聞たいに出る涙は露深き真荘をわけて菰のなくらん都音成 さをしかは筆つたひして裏ふしの国はかいよと聞てすくらん緑樹園 鹿の音を林下にきけは春の頃わらひし山もなくかとを思ふ長良 かきくれてふらぬはかりそなく荒の声のしくれに袖のぬるゝは照陰 もみち葉に涙のいろをあらりして声の限りをなくを鹿かん 里にありてきけはなれにし鹿の音にわかすむ山の淋しさそしる千文 しゝめつる人をうれしみなく若はかたりてうさをはらす心か真網屋 をみなへしにまめく御みへはさをしかもとりわき妻を思ひこふらん ひちよさる袖のいかてかわくへき妻とふ所のひよと鳴とも 奈良の里夜なきする所に聞なれし君のふく音の哀しるらん文舎 妻こふる鹿の涙に吉川の水にもみちの色にそむらん十文成 妹山に妻とふ君は恋痩てなれか背山は守はかりなり俊直 打しくれめくる山路に妻をとふをしかの声もゆくへさためす房雄 なか角を小紫となしてなく落はあすはの神に恋いのるらん一の屋 ◎恰野集秋上 如来 左京のねよけに見えし春よりやをしかは萩にちきり落けん もみち葉のほくしともゆるしかけにも哀をしかの身をよせてと 呑しけき野末に鳴てきく人の袖のかきりをぬらすさを露諸春 尾宮宮哥澄改 ねたむへき妻にあらすてねたまれんをしかに角のあるかをかしさ歌明 萩すゝきわけつゝつまをとふ霞の直きてわれも袖の度はせ春澄 一妻こふる鹿は尾東の露けきをよその袖とはおもはさるらん清根 かしましき風の村蔵さかなしとつまとふ落の心おくらむ企 一照身のなかめて妻をとふ落はみ山にさすらへしめ喫茶国 まこふる夜をあはれとに山田の葉山子も風にうやふすらん春山法師 鳴てたつをしかを見れはうきことの聞えぬ山の世にはあらめや もみち葉の下こる道をふみわけてみ谷にわたる苑の声かな胡椒亭 五月山火串のかれしきをか居のあやめしらぬ恋やふやふすらん玉淵子 妻恋に身のやつれつる菰の音をきけはこゝろも細くなりける石根 ゆか思ひ岩とくるへくおもふりなひれふる山に妻こふる故輝明 あふ坂の名はありなから夜もすから妻にあはてやきなのふくらん南秀 恋やせて人のをはくる小男霞は廣野もせはき心ちなすはん守近 妻こふる鹿の鳴音のあはれさに角ありぬとは思はさりけり梅雪 もとあらのに萩をわけて来こふる花のなく音そあらいふりける美雅 妻こひて雄荒は姿やつれしを月のかゝみに見てやなくらむ花笑 さしく戸のひわれをもりて聞えけり鳴音の細きさを荒の声俊寿 仝 立田川わたりて菰の鳴ぬらんをり〳〵声の中のたゆるは 名古屋 夕声にあえて夜長しほとゝきすめてし夏より節をきく秋清根 仝 あふ坂はたゝ名のみにて禿こふる笊やわふらん実の戸さしを美都縦 尾一宇歌澄改 あはれしる人はかりかはなく落にもらひ鳴する秋のや草彦歌明 ゆへ恰野集秋上 文 かへりまつきつ煙かためや身につみてよく鹿の音を聞わけぬらん瀧臣 萩か花うつむきかちに咲ぬるは鹿とそひねの夜やかさねけん 痳すゝきよはすまねかぬ夕風に妻とふ鹿は恋風やふく今 一ふか妻の来ぬにいらつか小雄落は千草の錦ふみしたき鳴小松 めをとあかつくはの山にこの夜頃つまなき鹿のふへか哀さ梅在 桜井 夜もすからなく音たえぬはあふ事のかた野の右の片思ひかも都曲因 しはらくも妻にはなれぬさを君の角は連きの枝とこそみれ周左堂 角こそは枯木なせともさを鹿の心は花にふして青とふ守一 沼田 妹山の妻こひしとや小男衆は脊山の嶺に夜舟なくらん住也 佐野田島 夕されは小萩かもとに床しむる雄花もよるの錦をそ着る二木 ロ二木 朽木 りんきする事もあらしき夫こふる里への妻姦に角の生ねは 狩くにえられしつまの生わかれ山のかひなくをしか見おくる鉢也 さを落のうきや涙のしくれより木々の葉おもていはふん柏樹園 さり荒のしらのくもれるあはれさに月さへ雲の袖をおほくり 筆にまたゆはぬ秋野のさを落の上毛はふかく哥をふくめり筆店 阿波 なく鹿のこたまそひゝく二声をいつれかそれと妻のまとはん胡蝶 草枕ふるさとしのふ思ひ様に妻とふ節の声そ身にしむ影俊 しくれせぬ笠取山の鹿の音はなか〳〵人の袖ぬらしけり花業 甲府 事ませに風のもて来り落の音は胸にこたへてあはれなりけり 一咲萩と言ひねのくせやつきつらん人の袖するならのさえ広丸 胸にたつ煙をくふる妻に見よと浅間の山に露の多くらん真波 ぬはむの夢野の露は月かけを拳におく霜とみてや鳴らん緑樹図 暁の月になくなる落の音をかすかにきくや宇治の山さと鹿成 空高きみねにあとふ花の音にものゝあはれも此うへやある金雄 御吟野集秋上 京春をわけてや妻を恋ふらん声のみたるら町へのさをしか千代住 信長岡 山風に横しくれふる心ちしてきく落の音に袖そぬれける長良 金衣宿 村しくれわむる紅葉になく落し山めくりして妻やこふらん梅遠 さつをらか矢さきのかれし小男前はおのれのふかくいれはなからん北岱 女のめかくわさの糸の細きよりなく音の細きさを落の声筆雄 つまこひにつかれやしけんさを鹿の朝祝して居るならの古里小松国 妻に今わかるゝならん立田山なこりをしの声のあはれき楽住 秋眺望 はれやけはうちみる目路も程なきをへたてゝそとき光の嶋山南向堂 穂薄のうへにおきぬとみゆいかり浪のあふたの秋の露鳥島 なこりなく見ゆるかきりを蒸篭にかきじけしきそ秋のなかめは帯 なかめやる外山の月は一しほに紅葉の秋とてりまさるかな其雪 名古屋 かけ物の煤あらふ如秋きりのはれゆくまゝに見る篭の山琵琶彦 信長岡 沖遠みのりゆく真帆のたゝよふは雪に船路や見としなひけん行雄 夕つく日思はぬ空にかけさして霧のまかきに紅葉をそらる千代住 山路秋行 枝ふりのわろきもよしと思ひてる月に見えけり山のはの松秀明 うすもみち立つく見れはおしくれ我より先に山路こえけん望月館 分ゆけはみ山も菊のさかりにて星のはやしにいるこゝちしつ泰山法師 かなしくもうれしくあり鹿紅葉見つゝ聞つゝみ山山ゆく日は千種 下てらす若葉の陰はやみよりも道ばかとらぬ秋の山ふみ音高 もみち葉の日照つゝきて川留のあらぬ木曽路の旅そうれ 山路ゆく人も秋そとしりぬらんきのふ長きの峠こえ来て真文 御ひしさの秋の山路をゆくけふも菊に紅葉そうきをやしなふ魚店 分いれはこと家葉せり世の秋の月日は遅きみ山なからも春條 秋夕雲ものおもふ秋のゆふへにたつ雲の赤きは人をふくさめんとや緑 同帖吟薬献上 もゆる火のけふりたつこと見えにけりゆふへの雲の声の紅葉おほふは都音成 物見ふ秋のゆふへにたつ雲は空を見せしとおほふ袖かも志都丸 初雁のなみたにそまる木々のはにゆふへの雲やあえて色つく秀雄 ほかけのいてなは人のうとまんとゆふへは筆をよきてゆく雲 さらぬたにゆふへはうきを藤のなゝひとかたならぬ秋のむら雲 天の戸にもみちうゑぬと思ふまてくれふゐ匂ふ夕はえの雲喜吉 一秋山はいとゝゆふへの淋しきにおちつかれすや雲もむありく明一 秋といへはゆふへさひしく空の海雲の浪さへしつかならしな今 まきるゝか秋のゆふへは峯の雲心小花とみよし野のさと仝 もみち葉のまかひ錦か夕はえの雲はよわくて風にやふれつ光煉 春は花秋は紅葉にまかはんと雲はゆふへにいろやかふらむ 一立田川紅葉はいまたちらぬ間に夕やけ雲の影そ流類ゝ下風 敦賀 秋来れは木々を染んとかかくれに水もつ雲のへかにをとくらん弥繁 もみちなの立やうつりて日影さす山の端あかき夕はんの雲清丸 見るうちに紅葉してけり松嶋の松に色そふゆふは元の毛光永 人とはぬふ洛の庵はむら雲の行かひしけき秋の夕くれ美智業 厚木 月見よと秋のゆふへはむら雲も嶺をはなれて遠に行らん吉女 一露霜のしたゝりうけすいかにして流けん秋の夕やけの長房 むら雲も秋のゆふへは寂しとや山ちを出て里に行かふ万代 秋田庵 世に辺とき小田のいほりも目にかゝし耳に鳴子の音は絶せす広 うつふしてみのるたりほのしなひ見て伏庵なから心やるかな現 秋の田のかり庵せはみ賤の男はたわらをいるゝこの作りせり守郷 一稲の浪あれたつ夜はゝ瀧こゆるこゝちすらしも湊田の鹿菫菴 みかふと白に手つたふやては稲のほの浪をかつきてはこふかり尾言玉図 明松野集秋上 二十一 湊田に庵しめてより蜑の如鳴子の綱手ひかぬ日かなき一の屋 横楯の山下庵となりにけりいまはあらしもふかぬ心ちそ光煉 出来秋のみのりよき田の楯のみり露にうつふく仮房肝満盛 一橋むしろかけてをするし露けくて袖そいちぬるに山田の道本成 みのりよき杜田の庵は風そよく稲葉の浪の高枕せり嘯月庵 うきことをしらぬ身にしも秋の田の月もる庵そいとゝ露けき崔成 秋夜長 みし花の春のひと日におとらめや夜よしといひてゆふねぬむ梅臣 ともし火の花をふたゝひさかせけり春の日よりも長き秋の夜秀明 夢の間に昼なき国へ来ぬるかと思ふはかりの秋の夜しかさ琵琶彦 秋の夜を竹の春とは春の日の長きより水をつけしなからん酒屋 いたつらに春は過しをのとやうに花見る夢のなかき秋の夜胡椒亭 月めつる秋の長夜はさくら花さける春日のくれかぬる如杉門 あけつくる鳥より後も夏の夜の一夜ほとなり秋の夜の空宮望園 秋の夜のなかきに鐘をかそふれは九つやつと跡もとりしつ明一 昼寝して夏のひと日はくらしくをねて秋の夜はあかしかねけり秀明 糸ひける賤や小手巻くりかへし秋の夜長き程もしるらん玉雄 時の間の夕くれたにも悲しきをあはれつきせぬ秋の夜はかな 永き夜のつれ〳〵草をならして見ぬ世よことん燈火のもと津知久 いくたひかかきたてられて燈火も秋の長夜はめをさましけり明一 仙台 もの声鹿のなく音にくむ酒の酸さめ淋し秋の長夜は光永 夢にたにこえてみまほし留り川あけ詩わふる秋の夜長さ内壇 関駒迎 一月かけはへきてさりけり金坂の関ひきのほる香妻の孫彦 下総 信濃より不破の関路を引ころも猶あれゆくや牧のゆく駒都曲国 甲府 砂そふり立野の駒をとねりらはほこりかにひく逢坂の関 且恰野集秋上 みちのくの駒を都へ引のほるとねりか袖も白川の關七福 あふ坂の清水にかけをとめなくに雲路わけゆくきり原の駒久留丸 望の夜の月にいなゝて鳥黒駒もうかるゝあふさかの関千寿 あふ坂の関にとねりり国こと葉常陸の駒は尻へはねけり漁商 秋時雨 一おく露をはらひもあへず花薄しくれにしとゝぬるゝ神哉蒹 谷川もらすくれふゐにもみちしつみやまの奥やしくれなるらん梅尚 もみち葉をこゝそめはやと秋風を北山しくれやとひてやふる水游国 もみかん葉の下徳をいつくしみ秋のしくれのむらなくやふる一蝶 定めなき秋の空にやあえつらんむら〳〵しくしくれさためふる霍群 中みちらや思ひたかへて秋の野の萩の錦にふるしくれかも真鎮 松坂 花すらきいせをの盛の心ちせん袖しほたるく秋のしくれに真都丸 しゝくもる鹿の涙のしつくより秋の山路はしくれそむらん宮聖垣 鵜飼飼 一おしくれわれみくもりみ干物のたのむかひなき秋のそら哉敬郷 芦敷 うき雲の立田の峯はしくれけり衣笠山は秋日本にて重光 一秋の夜に我意たゝく村これ隣の冬の門たかへせし行安 南畑 ほ見れはかなしき秋の袖の露こよひしくれとふりかはりけん亀成 をり〳〵は秋の深山木しくれけり人目も草もまたかれぬ世に真澄 ほみち葉をとく染てけり村しくれ気の長月は名はかりにして檜国 当座秋野遊 春友亭政明判 一秋の野の立うきやふそうきことをさくらに似たる花はなけれと面堂 秋の野の尾参かもとに遊ふ日はたえてあらすよ物思ひくさ全 こよひしも我をうつらと鳴ぬらんおの花野の床をとられて政明 四冷野集秋上 二十四組 狂歌怜野集秋之下 狂歌怜野集秋之部 下の巻目録二十種 山月野月川月海上月名所月 雁 夜擣衣鴫鶉 雁霧夜搏衣鳴鶉 菊山紅葉惜秋暮秋雨秋山 秋野秋里秋庭秋植物秋動物 秋野 山月 徳となる 松おひしける 遠山の あなたや 月の都ふる らん 檜樹園 秀明 美濃 菊泉 二十一歩 三河道目記 浅綾菴 もみちする 月のかつらも 社といへは 山のはよりや てらしそむらん 岩しけき 山路は月の玉免 疵つけしとや こけの生けん 尾張一宮 実亭歌明 十五 仝 ゆふへにはうき其 かへる山の端と うとみて月の はやく出けん 阿波 橘花園 十五 いめよき松を 薫 えらひて峯の月 庭にうゑよと かけをうつすか 十三 秋こよひ 妹山いつる ほかけは たしむ鏡と 見えにける かな 阿波」 緑芳園 春條 水游園 ぶか〳〵にをかし かりけり炎の松 月に逃よ 何おもふへき 十三 鶯の山より月は 兵庫 いてにけりいかて 一の屋 世をしのふ 人はさもあれ てるほの 日は入星はみえさる 東風菴一蝶 山紅葉 何をいとひて 山にいるらん 江戸崎 山茶屋に いたすしふ菊の 緑樹園 更火は 立たにも 紅葉見る日は くしつまりて めてられにけり 山のはの 月に声ある 峯の松風 赤山 檜峯館明一 同令野集秋下 海上月 美濃山形 大道軒 二見かた曙にほふ朝日にも 素直 あにおとらめや月の出汐 名所月 名台 千糸亭 なから川くちしまゝにて さやかなる月になかけそ 雲のかけはし 仝 思ふまゝ酒屋 空にひかり し 空の色は 松にやつり 松嶋の月 なかめゐて なかめゐて 身はひぬとも 檜樹園 秀明 日かけの さすかたをかに 一夜あかさん 川月 ふし川や 名古屋 片岡 茂光 岩をもなかす 水上へ 影のほり行 月 あやしき 岐阜 岐阜 一ぼかけは空にかはらて かにかはらて神田 川の向は空にかはらぬ 神垣内 俊豊 水のいろかな 川浜にうつれと 月はなかれけり まろきはまろふ ことのやすさに 城 和群居長樹 南星舎 美蔭 葉やすむ美蔭 業やすむ 秋は鵜飼も 人なみに 月を哀し 月を哀と めてん玉川 雁 十五 名古屋 知り寒し 雁の諸舟 秋風の 売茶園 真西を横に うけて来つらん ト千千 悟画 北溟北国 鴫 野田 十二 淋しさの 柏樹園 全 鉦たしき虫 大かたの秋の なく野へに 哀すむる 哀とさひしさを かきあつむらん 時のかんきん 鴫のはねかき さはかりの拝音ならねと大風の 跡ほとさひし鴫のたちては 一栃木通環亭真袖 鶉 名古屋 夏虫の 栃木 真袖 曲水国 羣雄 ともし火もなき はし鷹の かりちの小野の 焼の野の鶴の 床やいかに かた鶉 下すそかゝけて さひしき 逃んとやする 名古屋 秋の野に 羣雄 穴すまひして なく鶏 鼠のなりし 宿世なるらん 菱垣 一度なから片しく 床の菅むしろ なかきよすから うつらとやなく 秋野 檜月菴 一ば千草の花薩敷て 野への台月見の客や 待合すらん 厚木 秋山 風柳亭 水鳥のかもの羽立の吉女 磯山も秋の 色には下れぬ かな ものは 海はかりにて 名古屋之 水魚因 友雄 青葉山秋は錦の さゝほみえけり 仝 紀志都丸 紅粉ときて 流す夕日に 秋山の 松さへしはし 色つきにけり 人のきの うかぬやうへや 紅葉して 白きは見せぬ 秋の山のは 江戸嵜 縁樹固 北溟 菊 三河寺部 雅流国 十五 世のうきを 弓影 きゝとしよへと 名には似す きかてや 西の千代を 経ぬらん 十三 なか〳〵に しらぬ翁の こゝちせり 着せずとりし 庭の白菊 名古屋 琉球国 清根 菊の花 堺 聴風軒 いてやたはこに すひてまし老は けふたき ならひなり 甲市川 主 きくの花 桑の屋 嶺雄 秋動物 寺部 霜にあえんと 池水の さひしさの 弘影 さつ 影にそふらし 浪のきせ綿 浪のきせ孫 下総飯沼 青樹園 庭守も薬と影俊 きくの花の めにそふらし御飼の東に 四月の東も おきふしに 秋はたへすや 声をたつらん 花咲菴 〽虫のなく よるも 戻らぬ 間猫に まことの鈴の 音をそつぬる 香に風ひかせしと 綿やきすらん 後世願ふ そしよりこよと 月二よひ 花咲菴秋植物 檜集園 蔵飼の鳩や 空見つゝなく 菊さける 野川に匂ふ 檜樹園 月の影 ほの影 日くれぬと 秀明 花の鏡の の鏡の たくひならめや 見える狐は 見える狐は もみち葉の 託間へ人を 菱垣 さそひいぬらん 雀羣 一夜といへはそまる異木に てらされて松はとりわき 青くみえけり 高崎 菫庵 下みちする秋を春そと 心してしくれは竹を 青くそむらむ 甲市川 夜擣衣弐氷川 十二 小夜衆うつも 壷麹園 高吟社 にくきほと母の うちぬる小夜砧 美都成 さひしな極の音の かはゆき子等に 子えはなれて きする衣か 遠さかり行 野田 霧 柏樹園 よしの山桜紅葉に 朝霧のはれめく かたや春の御ほの 綱手ひく 人はかくれて 朝霧のはれゆく人はかくれて 文房の 花咲菴 堤分ゆく 淀の川舟 花咲庵 三 方こめし道をしへんと とふくにあたりの山を 我そたつぬる うつもれてふしさへみえす なりにけりいかほとふつき 霧の海そも 一左ヱ門奈亭真風 うき秋の姿見せしと 恋の山朝夕音の行人の 恋の山朝夕音の たちおほふらん 赤山 檜峯館明一 大坂 行人の 風の 姿かくしてあとのみ 菊花園 籬芳 すかた 霧は なき みせけり 十二 秋里 名古屋 胡椒亭 照るかけを 数の男母に 見る里は 月のかつらの 林ならまし 暮秋雨 はやとく 立かはりけん 秋はつる 此夕くれの おくれ 空 包嬉固 廣母 主 悟画 さらぬたに わかれかなしき 秋なるを 事さへけふは なくことくふる 蝶田 草種因 菊寿躬 S 欠部 狂歌怜野集秋の部下之巻 撰者檜園梅明 山月明ぬれと猶山のはに入かての月はあよりてたらぬ影かな一蝶 嬉しさの袂にあまるたくひかも山ふところをもれいつる月秀明 錆のうく鏡にひとし石山のいしを根とせし月の封雲牧の屋 雲の海月も地のむなれや山のかひより出てきやけし真澄 思ほにくまなす諸木たきものに鎌くら山をこりつくせし泰山法師 仝 山の端にかいつくろひて秋こよひ物おもはする月の影かな売茶園 中こに悲しかりけり風見れは世のうきことはしらぬみ山し諸春 はるけくものほりにけりと山の上に月り海路をのそみ見るらん緑 峰 今宵てる月を見伝ぬる人はあらしさてやむなしき手枕の山俊直 影をしむあなたに心おくならんなかはほのめて山のはのはのはのは 見附 一照月の雪に折れぬと見ゆはかり軒端の山の雲そうつれる都音成 かいりに根こし山こしほかけを風情ありとや甲斐人は見ん嶺雄 二本松 なかは恐る月はをしめる山かけの里に残しく影にや有らん言花園 佐野新吉水 常磐山もみちぬ松の下かけは月もうとみて思さゝるらむ糸屑 石子木 赤銅の中より銀の出ることもみち葉わくる山のはの月鷺面 荻野 恋をこよひはかりはわすれけり志賀の山路を月にくゆれは歌種 市川 しら山や鵜の鳥たにすくむらん雪とさえたる秋の夜の夜の月嶺雄 仝 岩橋は思ひたえけんてる月のみ舟をわたすかつらきのやま美都成 一皿月の桂ひと木によし野山千もとの桜秋は色なし春久 てる月の桂の中にならひては板色なき秋のみやま木緑樹園 むら雲は風にちらして吉野山梢に花と月を見す水薄琴琴成 同一恰野集秋下 お雲もいゆきはゝかるふしのねをたちのほる月の少女あやしな都音成 稲葉山いな葉に露のおくことく下より嶺にの深る月かな津知久 此上にこすものなしとめつるかなふしの高根をてらす月影元住 嬉しくも月は山にそ出にける峯こえてこそ花は見てしか清根 時しらぬふしの高ねの雪の上に霜おきそふる秋の夜の月浅光 名所はことまれいるこも月のむを待かね山そひかし千尺き玉淵子 杣山に根こし枝とり代すてし松やこよひの月の雪をれ武暉 仙台 かへらきや昼にまかへるほかけにわたす人なき夢のうき橋千菊国 二本松 一滝の鳥はなつこよひは惣なくてねこし山こし月見ありきつ言玉園 さちこちと月にうつさん前もかなよひは東にあけはにし山無声窟 やよ木こりしけれる峯の松林きり都くしくゝよ月を見るへく梅里 ましの山金のみたけに目かゝやく月もこかねの光なりけり 一秋といへはひかりめてたき月かけをたかうとみてる山にいるへき魚丸 村山も低くたひらに見ゆる哉月の都のちかきわたりは高吟社 世をすてぬ人のすみかと思ふまてみ山の庵も月に賑はふ秀明 雲と見し花なき秋は山の名のあらしにはれて御き月かけ唐来 ちかひちのなれるみ山にかけもるゝ月はうき世の外もてらさん梅遠 秋の夜は月もしそしと思ふらん山めくりして松に宿るは政明 かたふくは消るにおなし氷室山月の雪をもなとてかこはぬ清記 心なきいはきの山の杣人は今宵の月もあたになかめん楽住 あはれしるましらも秋ははらわたをたつたの山の月見てや鳴美蔭 枕雲をはらへるひえの山風は月の都のよもりなりけり音高 小夜ふけて山ふところに出る月は人をいのらん鏡とやえん政明 こるひ此月には松そくまとふるまつをともしてこえし山路で秀明 巡吟野集秋下 山ひとつへたてゝ月の影さえぬ木々の限りやくまとなりけん秀明 枕をもあてすめてぬる月かけにちりよりなれる山そ一たつる仝 阿波 山松のかけを夜毎に植かへておもしろしとも月は見るらむ薫 越後島倉 〽花と見し顔のしら雲ちりはてゝ月かけさゆるみるし野の山 イ 赤山 日はしかき秋は月さへいそかれてくるゝもまたて出る山の端明一 沼田 かつらきや月あかき秋は中こにたえてうなしき雲のかけは亀住 仙台 雪に暮そひぬと見れと中々に月にはひくき遠のふしのね千菊国 根となしゝ是をも風に払はせてすみのほりけり石山の月千代浪 鵜飼洞 山の名の鏡となれは人みなのうちあふきぬるけふの月影敬郷 遠山の眉根のしろくみえぬるは月見てひとなるたくひかも よし野山月のやとりし白露は桂の花の花の莟とや見舞笹九 むら雲のなるより月の玉兎みかき出したるたわしねの山 八幡山はなちし鳥よ心あらは羽風にはらへ月のむら雲竜丸 お雲はよこほりふして秋こよひ甲斐かねてらす月にさらす 月影よ雪にまかはゝ山松のくまなす限りをりつくせかし 橋向 物思ひあらしの山も秋の夜は空にさひしくほそすみける有年 心にく春は笑ひし山のなとねちけて秋の月かくすらん緑樹園 よし野山雲うちおほふ月かけは木の間の花を見るこゝち哉 吉野山春のしをりの跡とめて月のかつらの花やうさゝむ 鏡とく越の山路はくもらすて月にはほしのうとく見えける かたふける月の鼠を追かへす猫をも山にすませてしかな嶺雄 立田山にみちをてらす月かけのあかきは秋の色にそみけん音 笑ひたる春やしのひんてる月の氷に寒き山の口もと鷺 西山のにしきかさるは照月のおまし所のまうけにやする 巡吟野集秋下 山風に雲の通路ふきとちて月のこよひはいたさすもかな鷺面 一姨捨の山の月見に老人のけふしも道をひろひてそ行秋成 秋こよひ笠とり山の月かけにあすの日和の見えてさやけし 野月秋の雲の尾花り袖の前まてもくたけて月の影やとしめる菱垣 一望の夜は引馬の里辺の前にまてうつすか月の都大路を都音成 宮城野の木の下露は深くとも月にみ笠と誰かいふへき籏明 みやき野の木の下露に影うつる月にみりこと誰かいふへき高吟社 名古屋 春日野にあそひめくりて秋の夜も長しと月におもいさりけり 仝 むさし野の千葉の露も一種の月の桂の影やとしけり美津総 仝 宵なからはやいりぬよと月まねく尾子を野守はやも刈ほせ日々器 蒔より外にかけなきむきし野に月もやとりをとりおくれけん明一 むさし野も狭きに似たり雲はれて月の宿らん木陰なけれは今 むさし野もせはきに似たり雲はれて月の宿らん木陰なけれは仝 のとかなる春はかすみてむさし野の秋のあはれをてらす月よも海老姫 さはれて峯は見えけとみる人の山をこえゆくむさしのゝ月教訓亭 いを寝すて月かけめつる武蔵野は枕と見へき山の端もなし村住 ちひさなる尾花か袖木むさし野をあまねくてらす息いわん清良 一路はしく花さく野へに遊ふ日は秋のさひしき立はなれけん千種 むさしゆや月の都に白かねのこい砂しきぬとみゆる露かれ千米 武蔵野やこよひの月にかへかたの星のはやしを露に見る哉貞吉 一正月の都となりぬ萩すゝきひなのあらすのおり殿にして唐骨 心ゆてまゝにめてけりむさし野は月のいるへきこのなけれは高吟社 ひとつ家はなしみあらすと月草の露に宿るかむさしの自三宝亭 雲いつる山もなけれはてるかけのはてたに見えぬ武蔵野の月唐米 明恰野集秋下 むさし御や木立あらすも照月の桂の花のかけはたちうし寉峯 白露のむしく庭と秋の野を月や都とてりまさるらん秀明 萩薄月のやことらぬかたもなしなほ露ふかく野へはなるらん みる人のこよひつとへる方もなし広野あまねく月のさすらん仝 たのしさよ里へも文学の花莚しきてこよひは月をなかめつ このまゝにいさや手向ん蔵薄たてるこよひの武蔵里の月漁商 むさしのゝ草はの露にてる月はかつらの花のこほれ種かも廣明 しつけくもさか野に夜さらすむ月は愛らるゝ世の秋やいとへる照影 武蔵野の尾草か末に入る月は浪にしつむる鏡なるらんの丸 月かけにさはる物なきむさし野はいと村雲も風情ありけり南秀 かたふかん山しなけれは武蔵野の内は薄の袖にいるらむ都万 いさゝかの尾品の袖をいてゝよりはてなく思すむさしの月俊寿 一誰かよみし歌の身そむさし野はくくれて月のいる山となし俊豊 むさし野は木立なしとや月のかけしはし千くさの哥に宿れる栄枝 とけて寝ぬ子もち烏は塒出て安部野の月に夜をや鳴らん弘貞 しら前に光のそひてこよひてる月の匂ひの源平の野へ氏登輔 月のめすよかの衣と見はやさん名ある錦の萩のみやき野教訓亭 大雲の月あかき夜は春日野の鹿の上毛の星は見えけり緑樹国 いかにしてとめてんものかてか月の水の連やくむさしのゝ原清女 わかいらん山があらすと中空にたゝすむならん武蔵龍野の身居保 仲まろかがすかとよみし四人に今しかとみかさはめさぬ手頼永良 浅ちはらうつろふ月をなかむれは露に心はみなやとりけり吉花園 燈火しけして月頼めてゝけり南おかての野へのいほりは月影 むさし野の月は夜明を限れとも人のなかめのはてのなき哉琴筒 同上吟集秋下 ▼ 主 一月月影のうきて流るゝ川の面はかつらの紅葉なるかとそみる檜月菴 隅田川うくれる月に鳥の名の部は水の底に見えけり広母 てか月にひやしつらんあかるきに岩につまつて谷川の水広明 一谷川のつまつく水はあふなしと朝さたかにはすまぬ月かも茲明 山川の瀬こにちりゆく月かけも水の淀みに落あひぬべし仝 これのみはひかことならし久かたの月の影すむいせの星川美都成 一川水の流れに清く照月は下見てくらす人のかゝみか照影 かなしさをちゝにくたくる淀川の車にうつる秋の月かけ諸春 一谷川の岩きりとほす水にさへうこかてしつむ月のかける丞泰山法師 一月かけを浮せて凌く流るゝは空にしられぬ星川の水七福 かも川の水に影うく月清み濁りなき世の鏡にはせむ玉曹子 下濁る利根の川浪たゝぬ夜は水底清く月そすみける松浅 飛鳥川かはらぬ秋の月影もてるとくもると浅瀬ありけり琴彦 村雲のふたかる時は見る人のかたゝかへする中川の月春餘 おち鮎のさひは流れて玉川に月の鏡のかけそさえける呉秋 村雲のほりははれて水やくうはすむ月の清き利根川貞吉 川水の流れにきよく思月は下見てくらす人の鏡か照影 新暗き隙のに川の月夜よし水さうつくしよしと愛いや梅遠 早瀬川なかるゝ月も論もとりなさぬ水をは見習やせし義津総 四月の水を車に汲あけて影をふたつに見する淀川琴成 望の夜の月の徳の川水にうかへる魚のかけも見えけり末彦 さや川の浪大かゝやく月かけは杉の今宵そ目となるらん杉守 一よしの川月のかつらの花筏なかるか竹の夜あらし通頼 水上の露や雲のおちあひて月を大きくうつす川の面真金 同牧野集秋下 海上月照月十山の説逃るさまなれや高浪ゆるゝ秋のうなはら広母 雨はれて湊に月の出ふねも苫とることく雪のはれ行三宝亭 いせの海の清さ渚に月を其ぬ目のよるあたり玉のよかめ本成 思ほの薬やつめる海原に薬研底なる舟のめくみゆ秀明 照月をちゝにくたきていせの海清き渚にむこゝよせくる静 月影を清みさぬきのわた中にあつきほとなる嶋もみえけり章雄 むさし野に登るたくひそ松浦潟山なき花の海はらの月一の屋 二見潟ひとつの影をいくつにも打わけ見する浪の上の月由成 いせの海やかゝやく月はまのあたり見てもえかたき真珠也けり翠雄 出汐の月ふさはらんともの海秋たには和布をからせてしかな玉淵子 藻かくれは月見にくしと秋の海飛上る魚や心あるとむ仝 浪の上にうつれる月の影響てあまはかつらの花しほやらく真風 あはひとる蜑もとりえし海底へふかくしつめる月の真様は泰山法師の わたつみにすむいろくつもこよひ思る月には貝をもあはせさるらん こよろきの磯のくきよみ御一月の影なくたきそおきにこれ限 月こよひたつの都はたつ浪をは重雲としもいとふなるらん茂光 ひきくおく物にあらすとあら浪の月かけたかくうちあけぬらん滝臣 かくてこそむとゝめつれいせの浪間を出る望の夜の月嘉寿雄 月の雪ふくぬ水に積ぬらん海の面は浪のしろたへ菊寿躬 みちのくの海路も月の出汐にこかねの浪の花そ咲ける重光 秋こよひ月にひけん白たへにさえにし沖の嶋山のまゆ梅尚 お雲になりいおほへとをふの海かた一は月の影そさしける千晴 中々にくまといならてほかけに見出されたる沖の辺山秀明 人をたにねかさぬ月も鹿の海浪の枕に影はやとせいり清記 但恰野集秋下 水底のあかるき海をいつれはや光りことなる秋の夜の月嶺也 月めつる夜は朝戸なりと出はりたる磯山さくらたゝく岩浪菫菴 打よせて岸にくたくる月影をひきやく浪のまとめけるかな嶺雄 月のむにしはし朝雁せり山のなき東の海に山つくる浪 わたつみにてる月かけのさやけくて蜑のいさりてゝ藤虫のめ琴彦 八汐路の海のたゝ中おしわけてのほるは月の真水ふりけり まてらす月の都は蛤もおよはぬ業と口ふさくらし春條 名所月 心なや月にねてをる舟人の苫ふきあらせ風早の浦千糸亭 仙台 江戸の滝てる月かけに渚なる雲は中々けしきすへけり千菊園 松嶋やめくる千嶋の辺ことに月のけしきもかはる秋の夜仝 うりされて朝寝やすらん夜もすから月をなかむる雲浪の里人柏樹園 さらしにや田母の月に名残なく浪とる雲い捨てやりてん有年 秋といへと冬のこゝちそ誰のえの月の雪見るあられ松原胡椒亭 一秋ふけて夜寒の里にてる月も雲の衣はからしとや思ふ真鎮 人みなの月につとひて夜もすから床のうらへにぬる人はなし 独見る月にあらねは名所に夫々人をくは事なるらむ四外 名におへる屏風の絵嶋月すみて砂はこかねの一ゆおこしめ梅臣 沈ぬといふ覧さへてる月にうかふかことし住よしの浦菊成 詞の江の岸につとひて月みれは世のうき事もこよひわすれつ国海 お雲は風にけされて燈火は月にけさるゝ塩かまの浦文舎 風はやの浦としきけは浪のことにうかめる月の舟もあやふし元住 汐けなきひはの海つらかけうつる月の鏡にさひはみえしな 厚木 一月に昼ともまかふ秋の夜をいかにわふらんかつらきの神 蓮葉の露にやとりて湯かにもしまさる月そたまさかの池 いへ恰野集秋下 雁 一国糸やありとは見えぬみゝきゝに雲をはきしか月のさせさ 腹白くゆふへに見ゆる初かりは月の光りにすれて来つらん真澄 秋といへは汝もさひしきやいくつらも友をさそひてわたる雁 こえ来つる浪のゝの里のこゝちせん霧の海原わくる石ね琴彦 照月の都大路に御車をきしらす音か初雁のこゑ杉門 時の間にかはりて定めなき空をアや定めてわたりきぬらん 月あかき夜にわたりては燈火の花なきりと雁は思はん聴風軒 赤山 事の夜に斑かさねて渡り来る雁もぬるゝやいとふなるらん明一 うき秋を告来る雁の玉章に鴫のはねかき泣て淋しな津知久 玉章に焼ぬくふと見ゆはかりてる月よきる雁のつつら日々略 さはりなくとゝと思ひそ雁の斎藤は落しく鳥もありしを牧の屋 仝 くはへ来し枯枝の花と見ゆる哉丁のつはさにかゝる白雲胡椒亭 大坂 衣手の露にぬるゝは天の川今はた雁のこえて来にけん有之 郭公落しみせしよりに似て雁なきわたる村事の空 むさし野や葛の葉わたる秋風にはうらかへして麻木にけり全 おく露を汲とやみらん椎のはにもらひ鳴する顔の雁かね柏樹園 ことにの錦をかさる舟なれや紅葉わけくる雁のひとつら光永 音ふかき越路の空を雁かねの車に廻るそなへ見すらん九雀 本保 一異国の文字をならへて声のある画の如わたる天つ雁かね琴筒 めつらしき物のすくなき心ちせり多きにまきる初雁の声緑 かなしさはこの上やある寂しさの秋の其ゐをわたる石ね俊直 小谷合 むれて来か専に哀は忘れても常世は嘸なさひしかるらん千代浪 松坂 我国の文字のすかたを見習ひてつゝけからよく渡る万那真都丸 ふしきなる越海の竹の棹なしてさかさに落る秋のはつて福丸 巡吟野集秋下 雨の花軍を破る星と見て雁やそなへをみたしおはらん秋成 汝は蔵を見るとも人にまたれしとかはるつはめにアやほくらん静 粧はなれしたる障子に知らもれて今そわたれる雁の玉つさ真風 一今かきし文字と見る哉名におつる筆の山へをこゆるフかね月丸 土橋 ひとりねの枕さひしくそす也秋の夜寒の衣かりかね雪主 空の海月のみ舟の友舟と見るまてわたる秋の雁かね磯住 一常磐なる国をむしは銭なす紅葉をあてに烏来ぬ元梅里 一絵半切書やる文の色とりや山の袂をこゆる雁かね亀成 世をしのふ処や持らん遠山の雲にかくれて渡る雁かね小松 よのゝへの秋の哀をすゝめつくそら鳴をして渡る雁かも末澄 一つらに舟もつなきしことくにてわたり来る也佐野の初部星輝 むらくの目に見るふみのこゝちして雁鳴わたる秋霧のうへ音高 霧 たなはたのたのわかれをしめるに夜をのはへんと雪はたつらし義都垣 八重霧のはるゝをみれは松を吟植わたすかと思ふ松島友雄 ゆけはきえゆけはむかうのあと川にあとしさりして霧そ立音 西へ行月のみ舟も迷ふほと目当の山をかくせが夕きり千可喜 大きなる山をいくつか埋めてもふかさはしれぬ霧の海原菫庵 其妻桜おほへる心ちして浪の花をや霧のこむらん静 一庭の面にめなれぬまりきつくりけり軒のは山を音はつみて春臣 野に山に哀を人に見せしとや情をふかく霧のたつらん水游園 うき秋の哀やこめて立ぬらん霧をわけ行袖そ露けき静 一妹山を霧立かくす夕くれは脊山よさそなさひしかるらん福禄亭 白塗の白きものちのけしきにて鶴嶋か崎をかくす朝霧酒の屋 たちまちに人の姿をかくしぬる霧は神ます山よりやたつ雁峯 同四拾野集秋下 男山宮居をかくす秋霧は八幡しらすの名にやたつらん真都丸 夕きりの橋はかけゝりかつらきの神わさにさへ及はさりしを千代浪 蚊遣火も今は門辺にたかなくに軒端をくらき秋の夕霧余慶 秋方に漬の遠くへたつ日はみ山のおくに家居なす如羅芽 横の花のまかきと思ふまて霧や朝日を立へたつらん下風 茸狩の人をいれしと松生ふる山口にたつ秋の霧かも梅里 ともし火の消しこゝちそさひしさは紅葉を覆ふ秋の夕霧梅尚 一てか月の光かしこみほ山への霧はふもとへ逃るやうなり敬郷 けさ竹の春そといはん駿田山霞の言に秋霧そたつ麟鳳 淋しさも秋のゆふへのかなしさもふかく沈める霧の海かな俊豊 うつりゆく星の影さへかくしつゝ索畑をしも海となす旁琵琶彦 一段ぬとて鳥はなけとも立公むる八重の声にそ夜は残すらん長居 秋といへは空はかりかはたつ霧のはれみくもりみ定めなき哉二本 秋霧は水より立てむさしのに逃るか如く風ふ暖やく仝 秋鶴の海となる日は我庵もたつの都の心ちこそすれ悟 さひしくも落鳴山のあはれさをつゝみかくする秋の夕きり喰は 古郷へ不二もかへりし心ちせんけさ朝霧のうみにしつみて全 大かたの死葉もえぬと見れは猶外山にけふりたつる夕きり広明 夜構衣 月に寒かゝる時にや打つらんよるのきぬたのむらに光るは三宝亭 夜もすからうてる様は身ひとくの秋の哀をよそへゆつるか春條 沓掛 一榧音のいとくひゝくはつけさす妹や衣の耳をうつらん百草国 月いてぬ関のこよひはぬは玉の墨浦衆うつこゝちしつ琴成 蜑か子の衣うつ音か夜を深み所さためすかよふひゝきは群雄 あらひ髪とりあけりせて打ぬらん耳にうるさき夜雄の歌文舎 且恰野集秋下 一小夜様ふけゆくまゝに寝過して門をうたるゝ朝もありけり文舎 明ゆかは人目わひしとあらひ衣よるのみうつかかつらきのり十文也 をふ通ふあしやの里の夜碗は足袋をしたつかぬやうつらん文舎 夜限の拍子またらに聞ゆるは右と左へ槌やかへぬる仝 らふしより出す立とて夜碗は手にとかやうに聞え社それ 冬にもの思へる妹や打ぬらん夜風に槌の音そくたくる春臣 をちこちにうつ音のわかぬ夜碗に対にさそやこたへまとはん年満 一走よりてひゝき高きは照月の霜にさえけん衣うつ音杉門 長尺の布やうつらんよもすからしはしも音のたえぬ様は音高 小相碗さひしく人に聞せしとさそひあはせて音のかよふらし菊寿躬 木枕をあてうちぬる夜様は旅寝の耳にいたくひゝけり鶴成 柿そめの衣そらん小夜きぬたきくわか目さへしふくなりしは竹草 みちのくのおきゐの四とのふ夜眼よそのゝへまて寝かさかりけり吉女 小野様なれぬ少女か手のひらは野辺の守すほの薄かきかり 槌の音の乱れかちふる夜作は物えふ妹かうりにやあるらん柏樹 小夜姫槌にうちこむ月かけの霜や衣のつやとなるらん頬也 皇の夜の碪につやのよくのりて松坂鳴も月をやとしつ日は器 一疵の音につれてあはれをそへぬるはつまゝつ残り限なるらん車知久 うらくしうつ根の音や真葛咲風の春にて来る遠の夜始 うき業を夢になれとやうらかへし重通しうつよるの衣手春條 月はつゝ物おもふ身にいとゝなほあはれをそふる遠の夜姫 夜嵐になきやむ虫の音ふかへてあはれましつゝ衣うつらん 浅の女るもおりの布か招きぬたの槌の進鳥りてふとく聞ゆる音澄 夜根の音にめさめてねか子はうり〳〵としてはにつかさりけり梅正 御へ恰野集秋下 遠方の夜はの秋のうつの山槌の言さらにあはぬなりけり十文也 一照月の水にさらして其色の光を出す妹か夜きぬた 名古屋 一真立しかすみのきぬとうたかひぬ音り紙のそとの夜きぬた ねられぬは恨也けりさよふけて葛布にてる槌のやかに玉美 手をぬきて木浅衣やうちぬらんみしが岩まふ秋の夜の夜の 夜をこめて若ぬ妹り榧の音は旅子る夫の衣うつらん弘住 榧の音の一よくひゝけは夢のみか破れやすらんうてる様も うつ組のかはん〳〵と言するはかちん成なる衣なわらん月丸 つちの音の折はやむはくこひれしかたをたゝくかむの夜炬 うらかへしかてる衣の槌おとに中々よるの夢そやふるゝ 行燈も寺〳〵て夜貼うつ賤は瓜に火とりすくくしなからん峯松 おごすやとめさめてきけは漬にて格子しまうつ夜作音華成 むつましやうら春なく夜下すからこのねかはしはの衣うつくん をり〳〵に風のもて来てわか雪に夜寒しらする砧わひし前大平 夜明の音のひゝきてうつ〳〵とみたぬこの身も洩りかねけり北岱 寝もやらて夜のふくる迄うつ衣のいらめも細くわちにける哉光永 たいらかに雫やなるらん槌の音のたりきひくきもあらぬ夜姫山守 参件のさはりになりてかしかましあらぬ声のみたつる夜姫真袖 打衣はたてじまならん槌の音のひゝきてよこにねくれさりかり秀明 秋ふけて夜寒の里にから衣うつ身にいたく風のしむらん歌業 小相交てこゆむ様のたすけにや音を山彦の打かへすらん津都丸 紙屋川かけらく雁は漉くす反左の文字の流るゝかめ石根 うつ音もおもりになりぬ小夜衣いくへかつまをかさねたりけん 一秋深き夜寒の里は名のみにて汗はめる迄衣うつ賤一の屋 四拾野集秋下 鴫 鶉 に山田の鴫たつ跡の淋しさをしらぬかしの蓑も露けし清丸 立その跡をにくしく浮水につとめて清き時のかんきん清記 かひつくる鼠とや見ん秋のからに尾蔵の袖をくらる鶏は七福 本保 わひしらに鶏なくなり丈たらぬ裾野にふける床の山風琴筒 堺 立よりははむものよしと女郎蔵おきて栗穂ふよれは静か長樹 牛の穴くひゆくはかり聞ゆるは鼠のなりし鶴なくら鹿 一赤便み陰花か袖に入る鶉月の鼠やなりしなるらん弘貞 仝 風寒み朝は衣のみしかきに夜の長きをやわひて鳴らん 越府 一秋の野の尾子か袖の下うつら夜風を寒みわひて鳴らん道頼 夜折るを吃る雲守る大声ときけはうつらの鳴にも有ける都音成 さひしさは夕日かくるゝ高かやに鶏なくなり山かけの庭一の屋 浅草の里の秋風身にしみて月かけ寒みがつらなへふり音丸 菊 深草やきぬうつ音のひゝく野に尻かへしのかたうつらなく真都丸 床あけて風寒き四郎のかた乾みしがき裾をふかれてや鳴仝 秋の四郎の鶴は衣のみしかきに人目はちてや草かくれする 深草の野への尾花の大袖はうつらの床のよるのものかも順全 うり物とあるに鶏のねをきけはよくさへたかてふける商人円人 問なれし霞や化してなりぬらん尾花か袖をくゝる鶏は清女 草かくれすたく鶉の声をしもまね〳〵尾花のよふるとそ聞 秋の野にうつらかる日は宮人も露にぬれしと裾やかゝけん小松園 下水に千代をのはへる菊の花がさゝはひてとくかくれなむ 秋の気のこゝにつとふと思ふまて黄金の色の菊は咲けり百枝 馴し野に別れをしむか草かりの籠の目ぬけて落る白菊清根 千世ふへきよはひあえんと白露も菊に契りてしけくおくはん諸春 十五 一恰野集秋下 山人の庭の見なる袋菊これにも薬くめてあるらん花都万 うつり安き色を好まぬしら翁の花は翁の道や守れる麟鳳 きせ綿をとらるゝ菊は時雨空雲のはれたる心ちすらしも道人 二本松 南の音は梅に其また庭の面にめしろよ来ふけ鶯と見ん興声窟 一杜霧のまかきの菊も白露の玉のうてなにのほるけふ哉清記 南の花かしらおもけは尻かろくたゝさる鶴とおなしきに本成 かくてこそ千代はふへけれ菊の花手をりてもてと色のうつらぬ章雄 花さかぬうちも子代ふる心ちして日舟まつらん菊つくる老一樹 菊の花匂ふさかりは山賤のかたのまよひ哉なつかしき哉仝 けふといへは高き人より汲そめてひくきくわたす菊の土岩酒盛 月の霜おきまとはせる秋の夜は心あてにも菊はをられす酒の屋 仙人とくや見るらんいとまなき菊の手入に髭のひし身を清根 さく雨の薫りも風にちりぬやとしめりをおくる露のしけきは豊秋 一咲みて過南子名に呼ふこよりもて花のみされをいりてとめぬ由成 霜よその傘の下なるしら菊は事もる宿にすむこゝちせん野遊 一棚楼の星とやめてん白菊にいとよきりふる竹も添はや山守 一月かけの霜にあせけん白さへに黄菊もよるは立ふかりけり俊直 白菊をうつし植たるうれしきに扇も杖を花によしけん七福 くれなゐふまりし菊は酒の名のおのか薫りの黒にや酸けん都音成 白かねやこかねとめつる世の人のこゝろを菊やいかによろこふ仝 長生の薬としるしさくた菊の花こしらへに朝起をして輝明 霧深き山路に匂ふ雨の花世をのかれたる翁とやえん日々菴 山路めてつかれわすれて其色を見るさへ菊の薬也けり貞益 一てる月の霜にも色のあせぬらん黄菊もなへて花の白妙千晴 四恰野隼秋下 根わけせし霞のゆかり色そひて此ち匂ふ菊のひともともと これらとや酒の地ともたゝへまし唐なる菊のにほふ大ほ真袖 おく露を有妻にして千世へなん翁とよへる庭のしらる梅臣 鋳そめたる昔はなれる若かりし時にやあらん銭菊の花秀明 むさしのゝ野へにまかひて嬉しさよ露限りなき庭のしく菊広明 千代ふべきよいひにあえて富花園に作るや翁くさなる鉢成 もる人もなくてきまゝにそたちぬる秋野の菊は千代やへぬらん柏樹園 いくに世をたもつ小菊や紙入にいれし薬のかをりこそすれ四外 見る人の多かる中にくたいれて臨めしき寝の菊の花こさ森義 千代ふへきものなりなから翁筆しはしも枝ははなさとりけり きせ綿もとく用意しつ菊の花千とせを経なん老のためや高吟社 一菊うゑて根つくを待にたのみなやよそにふり行行の春也亀成 飛てふ名ある白菊見る人も垣根を杖につくるをかしさ千寿 柏尾 鶯のそたちし竹をそへてけり月星みゆる肉のし山翁美智業 厚木 根分せし菊咲そめて春よりのそたてしせいのかひい有けり十晴 さく菊の花にひまなくおく霜はちらさてにくき嵐りけりけり仝 梅かゝをとめにしすそしのはるゝかさねし油に匂ふ八重雨九雀 白露を花の袂に留羽きてひかりをみかく国のむきく玉讃楼 千代の坂こえんさかりの菊か蔵七百らせに杖やつくらむ住也 菊の上におきそふ露は大かたの天つよりあふ星とやは見る千枝也 へに葛におきそふ露はくれにゐの玉をかきぬるやうにみえけり 一ひてり秋のわかれを惜めるか竹枝つける菊の面やせ下風 葛の花先綿こせついたゝきのひえん翁かたくひならねと琵琶 七台に根をやまけけんむきくの匂ひたつねて城主よりたる牧の屋 巡恰野集秋下 ともに千代経ぬる心かさく菊の花白だへの鶴の毛衣都音成 しの上におきぬる露は国菊の老をかくしく玉かつらにも 下歌をなめて帰陣も酸めらん間なく立まふたる哉因房雄 世保 手触して見つるゆふへのこより雨露にもとりて花咲にけり輝月 朝ぎりのまかきの中のしら菊はさけほのてらす月影とみん泰竜 仙臺 露をすふ小際やいかに白菊の葉をはむ中て冬せ一ぬへし 一鹿あかる園の小路ハ菊の虫の高きにのほる跡やおひやく順全 城 薬こそうれしかりけれ菊の花とてよそにすへき色かは小長樹 おく露に月をやとして南の蔵しなぬ薬やねりあはすらん頬也 下水に枝をひたせるふくろ菊ひめ薬やふりいたす良舞全 事前の親や千代もといのりけんにのさかりの長岡の菊一の屋 万国に入しあるしを伝わふる従者も千代ふる心ちすらしも守近 けふといへは庭の黄雨も月かけにむけん花のしろく見ゆるは連俯 一たそかれの庭にさしこむ月影のひかりをそふる露の玉菊 あみたにもさゝけん庭の白菊は輪後先見せて咲いてやけり よそへれはやらしとすれと垣間より匂ひのもるゝ袋袋菊か加輝明 山紅葉 紅葉八千草の花の錦にこくんとみねのもみち葉庵にやちる檜月菴 見るうちに立のさめゆくこゝちせり霧たちのほる山のもみち葉本成 ならの里山はみなから紅葉せり青によしとは何をいふらん秀明 月の香見し目をいさややしふはん山の紅葉の色を詠めて入 大賀の山風にやふるゝもみち葉はふかき朝の錦ならまし 心して紅葉ちるらん神路山神はもみちぬ榊めつ桃婆琵琶彦 染つくす山への家葉毎人のこのうへにたつ色はあらしな千糸亭 寺部 もみち葉の事とちりしく源山路はすへるにまして行なつ立り弘影 御検野集秋下 龍田山盗人さへもにしきにはあきはてめへきもみち葉の色長樹 おしくれ立めなき世の色香にはそまぬ山路のしら両の花菫菴 もえきしてけふるをみれは山松にひあたり悪き鶯のも驚きへ干可喜 深山木も客繁しにけり春今まは子にはちめや立並ふとも都曲国 す酉の花そたてしもおことらめや時句のそむる嶺のもみちをふ 中々に秋賑ひぬ三田山紅葉に日毎人のつとひて糸母 葛をとる吉野の山はもみちほふにかにもしほると思ふはかりそ美都成 うすくこく染る山路のもみち葉は八重ひどへさく花のたくひか仝 風に火のつくめもゆるもみち葉に亀の尾山はうこかさりけり仝 度たにももらぬ山路の下もみちしくれもしらぬ春にいてけり浅勢菴 みわの山杉の木の間の物もみち下戸はつかしきいろにいてけり 朱のいつるたくひなるらん吉野心かねのみたけのもみち葉のいろ亀住 手向山神の手向にもみち葉よ庭火たくともぬさなちらしそ琵琶彦 山きに花をちらしく入相の鐘ゆにせんともゆる紅葉る俊寿 いさりとはあとなくきえて朝朝磯山もみち浪にかゝやく菫菴 世の秋にさきたつ峯のもみち葉は春におくれし桜なるらん章雄 秋されは下葉のこらす紅葉ふしぬ夏は青葉になりしかきりは静 いなり山青葉と見しもきのふけくにはけてかくこき秋のもみち葉梅臣 手をらんとしよる枝に夕日かけさしてまはゆき山のもみち葉唐町 里まていふりこぬ山の初しくれはるゝかたより紅葉しにけり唐一来 わかくれの紅はふ色こし山堂をそめんと時雨ふりまさりけん本成 にくら山照かもみち葉の魚錦たつことをしくおもはれにけり還知龍 小倉山みねの紅葉のから錦事にあらひて立まさりけり南秀 初しくれとらかぬ山の薄石野に秋はあさしと思はれにけり澄雄 巡吟野集秋下 耳なしの山のもみち葉あしくれふるをさとりてかくはそみけん春條 手向山風のまに〳〵ちるもみちぬさもて神にいのりとめてん聡風軒 初しくれふりみふらすみ定めなき山の紅葉はうすくこからん魚丸 たつ日姫外心はのちとすまひなす山の紅葉をそめはしむらん鷹記 一しほは松も色ませをしほ山千しほにそむる崩のもみちゑ菫菴 東にそむる神なひ山のもみち葉は葉守の神の殿つくりかも道 箱根山うら表なくもみち葉のぬるてうるしのつやは出けり磯住 山人もうねのもみちの葉衣に錦着かさるこゝちすらしも十文也 片枝てり片枝しくるたもみち葉はかけといなたの山にさりける文舎 みわの山しるしの杉ももみち葉に赤きはゑへるたくいにるらん喜寉 爰かしこまいらに見ゆるもみち葉はしほかし布か布引の瀧月丸 白雲のふきをのちとゑかく如峯の紅葉やいろこりぬらん津知久 玉塩も丹塗にせしと神路山神風あらく花葉ちらすか琵琶彦 右を射るさつをありともなみち葉の枝をなをりそ山のそま人 よしの山花の一重の桜木もおくのかたより初もみちせり亀也 こさの如きりたつ山のもみち葉はえそ錦とも見えてうつくし小松 秋山に紅葉かる日は蒔絵より朱ぬりの樽も貝につき居る明一 月の水かゝりてかこのあせつらんよるははえなき霞のもみちぶ酒盛 夕日さすしつはた山の鳥紅紅葉秋にはもれす錦おりけり 酒のまぬ人にたくへんもみち葉のにきはふ中にたてる山松吉女 見あかすよ日は入ぬともにくら山にしきの上にをるかられしさ軽山 まはゆくて共にくかりけり朝日影かゝやく山にてらすもみち葉静雄 みわの山もみちかる日も杉たてゝ青き門辺はよそならぬ哉無声窟 花の時おくれしみねの梢より心せかれてもゆるもみち葉千文 且悦野集秋下 一月十二日夜 山寺に一枝こへとくれなゐの紅葉ゆるさぬ立はみえけり永良 一立田姫手浦にしけんもみち葉の錦とかはる布引のやま酒盛 高崎 夕日さすあめのかく心もみちはの錦の衆社はほす周む堂 山つとの黒木に紅葉かさしつゝかくともえ色見する大平女西蔭 足いきの山も入日を見習ひて子しほ染ぬてもみち葉の色雅敬 黒野 むくしくれ成るしかしか薄くこく色のそろはぬ山のもみち葉玉蕾子 もえまさる片枝は灰となるかめ山のもみちにかゝるしらくも冥秋 惜秋 一月を見し夜のあくるより秋くるゝけふの入日はをしまるら哉都曲国 あすとならは涙氷くんとはかりに思へは秋のをしまるゝかな一蝶 わかれ給はうき秋なからをしまれて涙けかめぬ我心かな静 もみち葉をあとに残して行秋はをしむ心をなくさめよとか春條 夜を昼にけふはかへたしよのつねはさひしき秋のゆふへなから うき秋にあきはてぬれとけふの日をあれと思へいをしまれにけり喜雁 行社をゝしと思へはトみち葉に忘れしうきそ身にもとりける千種 けふのみとくれゆく秋をましむ哉あすの小春はさらに思はて吉女 おほかたの紅葉の色もあせぬへておもへはをしき秋のくれ哉有之 月めてし秋のわかれは西山にかたふく日さへをしま水にけり聴風軒 くれてゆく秋の名残のをしまれてわかれの涙事とふ事らん雅敬 あすはわか袂そふかく花葉せんこれゆく私をなじむ涙に道頼 寂しさは目にあき耳にあきもけくは限りとなれはなつしき所浅紡菴 をしまれてとゝめかねぬる涙さへさそひつくして秋のゆくん守近 みな人のをしむ涙の雨ふりてくれゆく秋の川よめもかな春久 一中々に秋の哀をわすれけりくるゝをふかくをしむあまりに聴風軒 いたつらに月の夜頃をくらしては今はた雪の秋をゝしみつ海老雄 四恰野集秋下 市川 秋くるゝ事やをしめるこしはそのすかるも里くに声のかれゆく美都成 わか庭の菊あせぬやとうき秋のくれゆくはけふはをまれにけり雇翠 行煤をなしむ心かむら雲の月なき空には市たちにけん真澄 暮秋雨 峰 いきたなき秋の心やくれてゆく今はた春に時雨ふりけり もゝ草に秋やなこりをゝしむらんゆきてはもとる村雨のあし 栃木 くれてやく秋の哀をしりかほに旧くもしめりてむら雨のふる清丸 暮てゆく秋さへあるを村雨にぬれまさりける袖いかにせん水游国 まねきたる尾花もけふはふる雨に夜のかきりの袖ぬらすらし津都丸 雪となり幾とならん冬ちかみ秋の限りを事はふるらし一蝶 日々にあしとき村田は行株を送り日ほとおも添ゆるかな恣眺 くれてゆく秋にわかんやをしむらん事のあしさへ力なくふる志都丸 暮てゆく秋も事夜の藪しさに我なみたをもさそいかすか春吉 一 一都たにくれ行秋の淋しきをましてや事のふるさとの庵野遊 佐野 もみち葉もさそひつくしてふる雨に空さへ秋のかきくれて行 秋山ニ 一旁にあみとくみゆらん月にのみ逃よと人のいひし山の端唐哥 紅葉せし樹々をはおきてをのゝ山黒木のみこる賤心あり弘 一常磐山松の緑はみとりにてかはらぬ色も秋はめつらし諸春 在京 笑ひたるすもなか〳〵菰の鳴秋の山へはをかしかりけりけり春臣 栃木 鳴露の声を哀と聞なして山も眉をや秋はひそむる もみちする木をは龍にをりるゝねて枯枝たづぬる秋の山賤美蔭 吹おとす冬のあらしにもみち葉のぬれぬ雨ふる笠とりの山鹿業 一山姫の通路ならん秋やこの谷にかけたる雲のうき橋繁丸 阿波 猿さけひあはれかなしき秋なるを石まてなけるさよの中山 愛甲 こるはしきたる磯山のもみち葉はひをかさねてや綿おりけん花房 同五拾野集春下 秋野一とにもつ尾花の袖のすれあひてあら野も秋は新は都めきけり 秋の夜の人目まれなかその宮に鈴の音たてゝ虫そなる酒盛 一秋の野の花の錦はむらさめのいとをたてにやおり出しけん喜寉 のかれ来てすまんとそ思ふ荻子公子戸はりこんふらぬ秋の咲峨村は春臣 百学に風しつかなる秋の野は月かけなからむすふしら露牧の屋 茎とは品こそかはれめてすやは萩もゆかりのむらさきの野へ雀羣 むさしさらや飛追ふ秋の露人はふしより外の山はみさらん嶺也 一宮城野の萩咲中のをみなへし婦と妹を見るこゝちせり七福 悲しさを秋野の落まねくらん根にすむ雪の声のあはれさ重光 子を思ふきゝす鳴にし春も野にあはれ妻とふ秋の小姓鹿鹿鹿鹿浪 秋の野の花のにしきは糸すゝき糸はきありておりいたしけん長成 中々に道なきまてにはなくさの咲てはせはき秋のむさし野琴筒 秋里村しくれるつくしたるもみち葉に秋のいたらぬりとてもなし日々梅 うは風のたくひならめや孟六兵衛のをとりにさわく萩原のり其雪 一うき秋と落す涙のひと雫袖に星見る菊川のさと小松 老人は秋の夜長をわふるより寝覚の名をや里につけゝん秀明 秋庭 秋庭をみなへしおひて咲つる家庭はいともかしまし人のこひにて守 とくさの花咲そろふわか庭を秋の明ゝらといおもいれぬ哉唐来 さにしさは野山にやりてわか庭の千くさに秋を見るそ楽しき 虫の音や千草の花の色とりに寂しからすよ秋の庭の面清丸 この上に匂ひのなはゝいかはかりうれしからまし庭のもみちろふ広明 月こよひ魚鳥はふつ泉れや薬山めたつ庭を広がる福禄亭 さま〳〵の虫鳴庵はむさしとにつゝきの原の心ちこそすれ藤浪 我庭は千草に虫の知らみちて秋のすみかとなりにける哉籬芳 御吟集秋下 大塚 おのつからちりなき庭の苔延しきて雨見の友をこゝまて玉瑣楼 沼田 あら野よりうつしゝ萩の花妻はおもはゆけにも庭雲をるゝ住也 ゆたけさは春の子より実の多き稲むしろしく秋の庭さき緑樹園 秋植物 花よりもひかり久しきもみち葉は月てる夜はをつきて愛けり本成 この色にかをりをもたは秋もなほ春におとらし桜もみち葉恭門 はかなさはいつれまされり竹垣に露をやとして咲る朝彦春春春彦 立れなき花の葉音のすけなきは梅に桜にふかぬ風も藤浪 中々に世ふうとまれて紅葉より秋をは先に松のしるらん弘影 一春花に立ならふともおとらしをいかてもみちのはつるよる本成 秋といへはみなからもれぬ姿かな松をもそむる蔦のもみち葉駒守 のそまれて一枝をるにもをからさはしふき顔する柿の庭守漁商 さく花に春はうつみし山松も秋はもみちにあらはれにけり元明 葉案のみそまる紅葉は酒ひとつ飲て顔のみゑへるたくひか薫 おくほとの露もかくさす色に出て赤き心の見ゆるもみち葉全 秋動物 一深草のさとのもみちは百度もかよふしくれに色やそみけん浅記 柿はまた立つかぬ間に枝つたふ業には熟す秋のやま猿福禄亭 落栗や落紫多きみ山ちにこのみくひする木の木の葉猿哉清丸 秋風に鷺のみの毛そよたちける小田の案山子のすこき名書本成 わか袖も紅葉せよとや夜もすからしらしくるゝ遠の花の音俊直 声さらは哀はかふく鳴ぬへし影さえ〳〵の秋の蛍は泰山法師 をみなへし脇をむけるは摺よりてなくこほろきの髭やうはれる福丸 芝田 めと萩の花わけなからなく花は妻のゆくへや良とひぬらん元明 ある物もけふおとなしくひかれけり都の人に笑いれしとや弘影 夏の日のあつきにこえてすゝしさの秋はやせゆく鮎や河なり仝 同一吟集秋下 一秋木ぬと風にかゝしの鳴子紙より〳〵通ふ鳥やおとろく片住 寒けたつ日あしにあえて秋の野の蛇にみしかく縮むふらん 岐阜 ふく風に先を折られて鳴声の妻にとゝかぬ峯のさを荒俊直 一菊のこの匂ふ流にすむ魚はかならす瀧をのほかこそせめ千種 一庭鳥はたかへす時を告ぬるを月にうかるゝ鳥なになり秀明 〽照月の雪やまたらにつもりけんふきも色のましる野翁は 日の夜は見にくからんと恋痩し鹿は思ひの闇に鳴らん俊直 下皿をしたみて歳のともし火につきたす油こほろきか鳴軽山 やれはてし法師もすまぬ山寺に何唱ふらん弥たゝき虫蔵主 一しうたつる萩に軒端をまもらせて手飼の秋はいをぬん檜園 檜目庵大人判 当座秋瀧 一世の人のうきにはやする秋をさへ時句をませて滝はふとれり水游国 山々の木々の錦を深つくすしくれのはてや白き滝つつ花咲菴 水上は松の雫やおちにけん秋のいろにもそまぬ瀧つ瀬面堂 衣うつ時は来にけり山姫の数まきかへす瀧のしら布檜目巻 頃恰野集秋下 二十五終 秋木ぬと風にかゝしの鳴子紙より〳〵通ふ鳥やおとろく片住 熱田 寒けたつ日あしにあえて秋の野の野にみしかく縮むふるはん 岐阜 ふく風に先を折られて鳴声の妻にとゝかぬ峯のさを荒俊直 一菊のこの匂ふ流にすむ魚はかならす瀧をのほかこそせめ千種 一庭鳥はたかへす時を告ぬる近月にうかるゝ鳥なになり秀明 〽照月の雪やまたらにつもりけんふきも色のましる野雨は 日の夜は見にくからんと恋痩し鹿は思ひの闇に鳴らん俊直 下皿をしたみて歳のともし火につきたす油こほろきそ鳴軽山 やれはてし法師もすまぬ山寺に何唱ふらん程たゝき虫蔵主 一したつる萩に新潟をまもらせて手飼の犬の秋はいをねん檜囲 檜目庵大人判 当座秋瀧 世の人のうきにはやする秋をさへ時句をませて滝はふとれり水游国 山々の木々の錦を深つくすしくれのはてや白き滝つつつ花咲菴 水上は松の雫やおちにけん秋のいろにもそまぬ瀧つ瀬面堂 衣うつ時は来にけり山姫の数まきかへす瀧のしら布檜月庵 以恰野集秋下 二十五終 狂歌情野金楽冬之部 二十 狂歌恰野集冬之部 目録二十種 立冬時雨晴雨中落葉霜氷 寒芦冬明月霰月前千鳥池水鳥 月照網代雪鷹狩早梅歳暮 待春冬天冬籠冬遠晴 淡渕 立冬 若山 歌の屋 萩すゝき 霜の初花 津都丸 咲出て 人目かれゆく 冬はきにけり 山里 菱垣 竹のすかきに 木からしの 湯風呂 しらする 冬はきにけり 時両晴 芝田 草種園 うれしさに空そ 菊寿躬 みらるゝはれてゆく くれをしたふ 心なくねと 文の屋 中々に 草の下屋 はれてけり はれてけり 里のもみちに しくれふ間は 東風庵 名古屋 もみち葉を染 一蝶 水魚園 友雄 つくしけん我しくれ 水にたも はれて夕にと くちさる枝は 主やくらふる まらすと 雨中落葉 そゝきかけては はるゝしくれか 染かねて 琥珀国 清根 はるゝしくれを かひなしと 笑ふやうなる 崩の松は 檜集図 おしくれかた枝 雀羣 残して晴てけり おなしなをも るとむならひに 兵庫 一の屋 むらしくれ ふるにましりて ちる紅葉 あしきをえりて すつるふるらん 在京 御そはるゝまに〳〵 胡蝶亭 春臣 ちりてさらに今 事をしくれの 成かへすらん 恐令野集冬 雨中落葉 ちらほらと風に 花咲菴 十五 野田 雪 柏樹園 ちる花の 落葉の乗る計り おもかけ見えて 雨に淋しき ふりつもる 雪にも霞む 荻村村平 をしまるゝうちを 遠の山もと 十三 つくり花 糊のはなるゝ こゝちせり 朝日に雪の とくる梢は 名古屋 泰山法師 葉とやもみち葉も 水游園 事にまきれて ちりそめにけん 十五 お事に翅なやめる 小鳥とも見えて 檜肉菴 梢をとふ 木の葉哉 十五 一関のけしきを ならのさと 仏もめてゝ のそきみるらん 熱田 天長舎津知久 三〇 むらさきに 仝 匂へる春に おとらしな 見る人の言葉おほきに 初雪の品すくなきそ なかめありける たゝ白たへの 夢御ほの 名古屋曲水園翠雄 十三 白雪たわむる 一升はりの神のつくれる 弓のたくひ ならまし 寺部 雅流国弘影 仝 じくれにも つれなき松の 下陰は雪も うとみてつもち さるらん 八合予集冬 野 ゆく水に 野田 柏樹園 消んもしらて ふる雪は かすかくよりも はかなかり 阿波 こと木には 二葉菴緑 たりたぬ雪も やに多き松は 梢にとめて おとさす 栃木 初雪は木らに 通環亭 真袖 心をゆるさせて やかてをらんと かろくつもるか 佐野 紡菓子 糸屑 けたれんを 高もいとふる 日のかけの 足跡を うときかたより なれもいとふか ふもつもりけりなれもいとふか ふりつもりけり はりせしと 甲府 十一村 槌の屋 十文成 雪は庭下駄 ふかうつめけん ばつ雪はつもりも あへす消にけり ありの火吹の うへにふりつゝ 檜樹園 秀明 早梅 名古屋 曲水園 早咲の梅の花笠 群旗 うくひすのぬふへき 春の雛形と見ん 鶯のあるしまちして ことしより やととゝのふる 木咲の梅 熱田 三蔵楼 市川 桑の屋 鷹狩 名古屋 花と見て つとゝいはぬを 玉淵子 嶺雄 大鳥も うらやみぬらし ねたみてや おもれと雪の 宮人の手車に の事御持場の 枝を折けん 鷲 名古屋 曲水因 群雄 なかくれしのふの けり 陸奥たちの 鷲つかふるは 十二 霜 氷川 高吟社 ちる花を かる花を桜もみちに ふまん春より わひしきは 空けき野路の 霜の朝明 枝ふるふ 桜もみちに 小春月 をられぬ 霜の花そ 咲ける 野田 白菊の 松坂 松坂 鈴鹿の屋 真都丸 柏樹園 星かけうはふ 外霜の 光りや秋の 月にたくへん 沼田 冬枯の 草におきぬる 塩の屋 可楽喜 初霜は 子と 見えても さひしかりけり 月照網代 檜舟亭静 すへらきのみけに さゝくる船魚 なれや 月に あしろを 守りあかすらし 三 大坂 霰 杏梅園 飯田 檜遊園 花蝶 玉に疵つけぬつか花蝶 いたつらに 守近 白雪のつもるかうへに あられは玉をあらなふり来ぬ あられふり来ぬ あられは玉を 敷庭そ もみちぶちりて うきことをしらぬ 人のとはぬに 袖にもむあられ 月前千鳥 鬼さへなかん夜はに ふりけり がしかまし妻よひ 春友亭正明 かはす群千鳥 月あかき夜も 人めはちすや なく声の霜拝に かれぬ川千鳥月の 檜樹園 一薬の度ふくむらん 秀明 熱田 一円舎一方 玉兎円四 五百四貫四拾五軒 池水鳥阿波寒芦 寒芦 池水鳥阿波 緑芳国 五 大澤の池の 春條 おもはるも 汀の雪そ をし鳥翁の香を をられける 羽袖にこめて 一氷にすへる 妻やむかへん 妻やむかへん 風にけられて 冬明月仙台 花咲菴 主 さゆる夜の 千菊園 そらいととき まことの霜と 月の影あすは 堂にふく 風もわるか おくらん しら雪の ふる江の 〃 秋よりも 社よりも 思こそまさん まされ 薫て うちも なひかぬ 大空の 月の鏡も 冬はときけん 名屋 琥珀園 清根 名古屋 滝の屋 琵琶彦 堺 上 霜にかれ 和君平居 風をられて 長樹 なにはきの 蟹のいほりそ あしのやへふき 三 氷 名古屋 泰山法師 薄少八重に結ひて 九重の春のためしに あはんとすらん 栃木 紙すきとうらうへ なれや雪風に なれては氷 通環亭 真袖 厚なりけり 住宅藻屑も 一今はあらなくに われからとつる 池の氷る 檜月菴 中川やとつる 檜樹園 〽和のふたかりに をしもうきぬの 秀明 かたよひせん 輪集巻写 武田 四百 むつの花 早梅 甲戌 一相成 黛 梢に匂ふ 小春をや おもひたかへて 梅は咲けん 紫蘭亭住也改 綱亭住也改 細工して 檜結国 花さかせぬと 明信 うたかはん 作り国屋の 早咲の梅 捨集団 □□□□□□□ 十月廿一日 歳暮 十五 つこもりは 野田 柏楠園 いねすわかれを をしむかな なしみし舟は 捨がたくして 十 となりまて 東風庵 一蝶 ゆひをりて 春木にけらし 燈火の花も 常よりさかり にかきく かそへまつ間のけふの日を またるゝ春に なすよしもかな水游国 待春 名古屋 名古屋 水魚園 十二 喰つみの山の 眉根に かゆからん 友雄 来ん春こふる 人のおほきに 三河寺部 雅流園 雅流図 来ん春を 弘影 まとに侍けり 冬立て 三日に弓の 射場つくるより 黒井宿 風月庵 一屋藤袋 磯ノ住 ぬふ少女子は 盃の井の水 くまん春やまたるゝ 赤山 檜岑楼 松をたて 餅をもつきて 来ん春を 明一 まてはや 暮の日さへ 長しな 三宝亭 梅うゑて鶯 なかんもをまては 春に心の枝 うつりしつ うつりしつ ば時して春まつ宿は しめわらの霞かくれに 花咲菴 うくひ跡のなく 一十五日朝臣今朝 欠 狂歌恰野集冬之部 撰者檜園梅明 十二 立冬きのふまて板屋に白きほかけを霜に見るへき冬は来にけり春臣 もみち葉の日はきえぬめり寒けきに埋火めつる冬はきにけり俊豊 今朝神の留守ともしらす広前の鈴をならする風のはふりこ真都丸 社されは井の底ぬるむたくひにて湯さへ出れる冬はきにけり秀明 月影をあはんと見にし秋くれて鏡とくへ冬は来にけり広明 一秋されは捨し扇もとりあけて火鉢にかさす冬はきにけり 風寒き冬は来にけり人真似の猿の毛衆きてやしのかん秀明 小春月けきは来にけりさうしにもはけのかすみのにしむ功張三宝亭 風の中の虫はかくれて木枯の木らに声ある冬はきにけり牧の屋 秋もはや夢と暮してぬるかへのかわきの早き冬はきにけり仝 さつをらは火串に菰のよるかこと炉の火をこふる冬はきけり もみち葉のにしきやふるゝけふよりやつゝりさせてふ虫も発せぬ弘融 出雲ろへ神の旅たつけによりや木々のもみちのぬさとちるらん嶺雄 もみち葉を風にゆつりて冬来ぬと時雨は松にむつみよりけん鷺面 芝田 さひしさにけさはこのはや時雨をもさそひあはせて冬のきぬらん嘉寿雄 おく盃をよけんさうし国両国のはしらたてする冬は来たり道足 けるよりは小春の門そ鉢うめの梅にならひてうくひすなけ嘉寿雄 風あれて落る木の葉ともろ共に人めのかるゝ冬は来にけり道人 阿波麻殖 かなしさの袖くれゆきて山笑ふ春を隣の冬はきにけり食翁 阿波 弓矢持秋の田の面の捨案心子ふみしくはきつゝ冬はきにけん花戸 山風のきのふに増るはけしさは冬のはつせの寺にしられつ其雪 巡恰野集冬 木の葉ちるをくらの山の下庵は日影もるにて空をしるらん有之 きのふまてあはれにきらし棟苑を薬とめつる冬は来にけり春臣 まき塩と露はおきけり出すろく神たち給ふ冬のいり口同店 虫の音はたえて淋しき木からしの風に声ある冬はきにけり清根 行秋をきのふおくりてもみち葉も枝にわかるゝ冬は来にけり美都垣 熱田 けさははや野への錦も芦のほの綿入ほしき冬はきにけり重畳 葛の葉のうらみははれておく霜におもてしろくも冬はき穴り三蔵楼 寒や時過しくれや雲と雲のかつも手のうらかへす冬は来にけり千晴 荻野 けふといへはふく風寒み肉猫の日向へまはる冬はきにけり 太田原 吉川や梢の秋も落ちりてもみち葉こほる冬はきにけり 一そふもなほ霧こむるめ窓とちていとゝをくらき空はきやけり真袖 家の革しとねにしきて死懸たく炉に人つとふ冬はきにけり あかれにも虫なく野へに秋くれてなかてさひしき冬はきにけり秀明 風吹し跡とこそみれ花の葉の野くにしらなき冬は来にけり仝 一つれなしと松にはれゆく村しくれいつこのもみちそめんとかする津都丸 ときい山しくれも松にそめられて雲さへ青くなりてはれゆく澄雄 香く山の峯にほすくんおしくれはれ行雲の袖のしろこへ売茶園 感あけて遠目にはんと秋山の木らの梢をはるゝしくれか環 木々をみなつくしてや晴ゆきぬ時雨はしるを松にのこして浅綺菴 かゝみ山時雨の雪そはれゆきぬ木の葉にくもりぬくひとること清記 またおほふ雲の心ちそむら時雨はす間にかさすよそのかり傘三宝亭 染あけてしくれははれぬ木々の葉をけふは夕日に干さんとやする広母 おしくれようやすきゆく蟹津のうるし紅葉の立そあそあせゆく元照 今ははや立そみぬと思行めくる時雨も松をはれて見るらん広明 監恰野集冬 あれにける不破の関屋のさよ時雨はるゝかたより月かゝもりくる菱垣 ふりにけるしくれははれて青みつらよさの苫屋に月そもりたる 風さそふ木のはを道のしるへにて時雨の雲の峯うつりしつ仝 松かえのそまらぬことをはつかしみ夜の間にしくれ晴て行らん秀明 村しくれ和田の原には残るものさらになしとやふりやみにけん そめかねて時雨いはれぬ日の影に中々松はそめられにけり南秀 一日かけもる旅の菅笠もらぬまてしめりをあくらゝ時雨はれけり むさし野はそめん木立のあらなくに時雨や早く晴てゆくらん静 なこりなくしこれは晴ぬ夕はえの雲まて今は染はてぬとや 熱田 あともなくはるゝ時雨はやふりたる夢のうきはし通り過けむ三蔵楼 村しくれはるゝゆふへはからさきのそまらぬ松そわきてめたらぬ むら時雨はれゆく跡の青冬にそみし紅葉の日てりみえけり弘住 村しくれおよはぬわきとはれゆきぬ空よりつゝく峯の松原亀丸 紅のかきりを木々に成つけてしくれの雲はしろく晴行山守 染つくす木々の手際のかくそとやはれてしくれは色を見すらん志都丸 夕米の冬の立にはおよはすとしくれはもみちすてゝ晴けん鷺面 なかくに日かけにしくれそめられてはれゆく空そも雪葉の色高塗社 松嶋の松にしくるゝおしくれ晴行跡やもとのそみいろ琴成 たちよれは時雨ははれて色染野の木の下度にいたぬれてけり美都成 あられふり最嶋の野への時しくれ立かはらすと松をはれゆく照陰 しくれ雲風にやふれて不破の関軒湯をもるゝ月のきやけさ村住 おくれ晴たる跡にをのゝ刃のひかりするとき松山の月琴音 むち時雨ふる間に余の如ふれなり月もるはかり空ははれけり永良 武士屋 一秋ゆのむら〳〵もみちむらなくやそめつくしけん時雨はれ行酒盛 四恰野集冬 旅合拝着る間にしくれ晴なからまた山の端にのこる笠雲 うかれめのなけるたくひそふりさして空うるはしくはるゝ時雨は 上野大塚 越神田 むらしくれ晴ゆく松を定めなき空とや冬もしはしなかめつ 岐阜 仝 おしくれはれゆく跡の雫さへ松には青くそめられにけり七 七福 ふかさうてふらすなりしは村雲と心のあはぬしくれなるらん 兵庫 阿波 冬かれし山はさひしと雲たちてふるより早く晴るしくれか 大坂 見るうちにはるゝしくれは染力つよくてよわき糸のたくつか 掛塚 みよりてかさを買ふ間に村しくれてりふり町を通り過けり明親 もみち葉を染にし後は程よしと松はのこしてはるゝ時ゆか都音成 行かよふはれな〳〵の真葉かり時雨とともに山めくりしつ雀翠 そめかねし松には音を残しおきて時雨の雲のいつちゆくらん文の屋 雨中落葉ふるまゝにおいるもの葉は雨あしの沓ぬき壱つる風情ありけり胡椒亭 もみち葉はさいてとちるを村事のなにゝぬはんと糸をかくらん群雄 もみちせし木の葉を又も村しくれちらして泥の色にそめけり真袖 一ちる紅葉事にぬるゝは色のこき錦をあらふこくひなりけり琴也 阿波 そめたらぬとはかりふるふちるもみちほいなきわさとゆばがこたん静 道目記 松風に時雨の声のさそふこと事に音そふ庭の木々の葉 一ト総 いろのよくいてぬはえりて捨ぬらんそむる時雨の木繁ちらすは都曲図 信仏郡 はら〳〵とかさ岩の山におとたてゝしくれにましたる木のもみ察 染むらをなほさんとしてなか〳〵に時雨はもみちちらすなるらん広明 さそはれてもろく雨にも木のはちる浮世のさものならひなるらん全 きれ〳〵に紅葉のにしきなりにけるほつるゝ糸と時雨ふる日は秀明 さらそはぬやうに嵐のひかへ居てゆに木の葉をいさなはすらん清記 ちらさるゝ雨をうらむや木々のはも覚うつめて水いへさす薫 巡恰野集冬 霜 心こめて染しもみちにふる雨にちるはをしめる血の涙かも石根 村しくれふりみふらすみかへるてのうらかへしつゝ木の葉ちりけり春久 山人の庵にふりつむ雪なれや事にましりて紅葉ちりけり海老雄 淋しさは冬そまさりて聞ゆなり事に落葉のもるませてふる竜雲国 松坂 池水に木のはさそひてふるしくれそめぬ松蘭も色は出にけり 甲府 もみち葉の日はてりなから降雨にきつね立なる木葉はしれり 石木 おのれからちかも嵐のさそへるも落葉の音そ雨とあらそふ千晴 沼田亀住役 うらうへやさそふ嵐の吹あけてしくるゝ空も染るもみち葉 雨のあしにふまれて糸のきれつらん木の葉ほころふ衣手の杜 越府中 風のみか手伝ふ事に木々はかくあらそひかねて落るなるらん道頼 そめらるゝ時雨の空にてりなから風にふりくる木々のもみな 咲のくるまかきの菊に霜おきて翁の名こそあらはれにけれ秀明 またれ馬火のあらましまつみせて心なこむるかさの初霜春臣 小す月桜見まねて榊葉に七たひ花を見する霜かな貝吉 おく霜に朽やしつらん丸木橋ふめはみちつく音のさやけさ 一咲のこる庭の白馬染てけり霜北も赤き立やありけん下風 榎よりまたき梅にやたくへまし霞は雪よりききの初蔵諸春 こりはとふ人さらし朝風に八重さく霜の花さかりには清根 いとすゝきかるゝをみれは中々に寒さによりのかゝる初霜俊豊 山里はかそへつきしな霜はしら万歳のしらぬ柱立して 南都 秋の色うつろふ野へにおく霜は千種の外の花にそ有ける其 廿一田 おつの花きかんあらましまつ見せて梢々に八重霜のおく菊寿躬 仝 朝ゆふの風になれてやおく霜の花は日向をよきて咲らん嘉寿雄 もゝ草の花は立なき庭見れはわひしや霜の艶まさり行 ◎恰野集冬 たはやふる神なつきとてこの頃は霜のみふとく柱たてけり長雄 宵にふるさられも花の咲ぬやと思ふはかりに朝霜のおく居保 もみち葉のにしきはえある庭なるを霜の白布敷かくしけり秀明 見し秋の野への白露おきかへて霜の花野と今はなりけり若陰 紅にまし木のはの白たへはもみちかきねやけさの初しも菊村 いろ〳〵の千くさの露もおきかへて霜の初子みやくさきけり音高 霜おくや野末によわる嶋すゝきふたゝひ白き花は咲けり元照 一萩尾真色なき野へも夕霜にふたゝひ秋の花をみる哉恭門 かれはてゝ霜しき野へも夕霜にふたゝひ菊の花は咲けり 一剣なす霜柱こそいてきけれ身をきるはかりさえ夜風に筆雄 もゝ草のあせたる庭の淋しさをなくさめんとや霜の花さく弘住 宮城野の萩は立なき枯枝に白き花見るけさの初霜采枝 ひとふりの霜の剣にもみち葉の錦もけふはさいてにはしつ安丸 子を思ふ鶴は毛衣はしかしと寒き霜夜をかこつなからん藤浪 一秋草の度にもましてあはれなり日かけにきゆる野への朝霜琴彦 初霜は花と見る間に八千種を野くにみなから黄に成てけり松門 捨おけるやれ摺鉢に霜おきぬふしの芝山雪やふるらん嶺雄 一信濃路やけふ初霜は就そはのうち粉はかりにおき初来り文舎 秋過て秋の色みるひつちほにふたゝひ花を霜そさかする千晴 立あせし嶺の菊をあたへに成なほしたるけさの初霜村住 しらむととはれし野へに結ひかへて霜は露ともいらへきりけり照蔭 はし秋の花野淋しくおきかへてほとろかれぬるけさの初霜干寿 童より木かけにのこる初霜は春葉かくれの花のたくひそ花蝶 梅きくら雨に咲てんたくひかは月さゆる夜の霜のはつかに亀成 且恰野集冬 氷 八重にさく白菊よりも夕霜の花はひとへもめつらしきかな光雄 朝かほのかれ葉にむすふ霜の花はりなき名をやかりてさらん道頼 まとかなる池の氷は末つひに花のかゝみの水となる良舞清根 うくひ後のかよわき声にとけんとは見えぬ谷間の厚氷かな仝 あた浪のさわく浅瀬もそこひなき湯としつけし氷はてゝは長樹 踏ところくほむこゝちそをし鳥のたてはそのまゝ氷る池水緑 池の面に氷かさねてこの頃の冬の深さの底見えぬかな長雄 一諏訪のうみや八重に結へる妙にも一重は神のちからそふらん よの川流の花さへさかぬ日は八重に氷のとちてわひしな糸屑 吉野川とほりて見えぬ浪の花春は山路のかすむたくひか雀群 平少水見えぬほとはりつめつ深き寒きの庭しれぬまて秀明 杣川や夜はのあらしに木挽さへしらぬ少の板は出来けり明一 箱根路や嵐さふみ谷川の氷の関は水もとほさす仝 もみち葉のちりし錦にたつた川耳糸しろく氷りそめけり千書 寒けさに殿すくみにけん水の面の水は氷りてうこかさりけり山守 照月の少を今や冬川にさするいまなき水の板しき浅誘菴 絵天井はりぬと魚やよろこはんもみちをとつる池の薄少 冬といへはいさゝに川も少りけりいかになかるゝ寒さなるらん環 風ふけ共木の葉の舟中冬川にとつる氷のうはすくりゆく 松坂 人抱たてすもなりぬ神わさのすはの氷の橋かくるには真都丸 脳 池田川もみち葉とつる薄氷秋のにしきのうらにや有らん竹草 一水音は松のあらしにうはゝれて覚も口をとつる少か其雪 さふき日は少かて影を見ぬもよしみまくさかるゝ成高井の水 一氷かてはかけ樋の音の絶てけり夢の下庵朝いなすらん獅々丸 以恰野集冬 むやひとる木の葉の舟のよとみけり氷のむすふ木曽の山川磯住 白野に魚とらせしと箱の池冬は氷のふたとはるらむ文舎 魚あさる岸をなかるゝ薄氷は水にも骨のありとみえけり千里 大堰川このはの舟を茂木と氷のくさり岸につなけり嶺雄 一楠の木かけ流るゝ下水もこほりて石のことくなりけり一樹 淀川もいまや氷らん車井のしつくもつらゝなせる真袖 一忠清水寒さにたゆる冬たにもあかす結ふは氷なりけり照蔭 川よとの関は氷にとちられて水も中々とほさりけり夥髪 池の面にむすふ氷の厚ふすま寐こゝろあしく声やわふはん藤陰 山川に木の葉の葉の舟そとゝめける水も氷の関すゑてより直明 瀧川の早き流れも水とちて氷にむすふ瀧のしらいと菊村 三田川岸のかみちの敷こみて冬も氷に錦をそ見る百枚 一魚を取るわさをとりけり山川の外はあゆの風ふかんまて清根 さらし千やゆ毎の水の氷りてはなかめすくなき冬の夜の月千原亭 瀧川の流れの水の少日日は冬の冬さのとまりなるらん梅尚 滝なす池の氷に水底のむ葉のすかた見えすなりけり長房 一奈少とちふさかりし壱はの湖わたる狐の火にんわけれて久雷丸 冬の夜は川風寒み水まても氷の下にひそみゐにけり柏樹園 おく霜の柱たて治る冬の日は氷のくさひかたくしむらん照蔭 孝行の人まねやせん徳なす池の氷をくたくわらはへ鉢也 舟形のすゝりの海もこほりつたものほさへもたゝすなりけり 神にくす少をわたる駒下駄も鈴の音すなりす水海和多吉 二本松 谷川に氷のはしをかけてより隣もちかくおもふ山さと 江戸崎 水瓶のかりとわりてうれしさを袖につゝみて遊ふうなゐら緑樹園 四百四貫四巻 一裏芦池江や汀の氷はりしより峯の枯葉を人もわたりけ嶺雄 笛になるうとのゝ声も空をす風の音色やふしてきくらん一方 をしけなく風にちらしつ枯あしのほわたは糸にとるすへをなみ さわさる秋とくとてこからしに声もたてえぬ岸の枯芦竜雲国 一川舟をひく舟長のあしよりし空さによわる岸のむらす 一のこきり又見せて川水わる日はふしよりをかゝ峯のかれ蘆敬郷 なにはにのあしは枯けり舟人のゆきゝの夜に霜ははらへと清根 巻の葉の狐いろとる寒けさは青はの眼医者り庭の泉水 あら葉に渡る浦風寒けれは見るにもともにかれにけるかな真澄 風さえて冬の夜川の氷るほとわやけき月の氷はこみけり国海 すり房と見る雪はれて空間よりむをつくりてとゆる月願孫彦 少にも霜にもそびて水の夜の月の桂の花はさきけり麦垣 霰 ときあへる鏡とみえつ冬の夜は月の水さへ氷るなるらん恭門 木のもゝは雪にしらみて中こに影さえわたる冬の夜かけ有之 やとるへき池は水にとちられて空につゆく冬の夜の夜の月 御らけき月の鏡にはちらひて人も頭巾に顔をかくせう明親 をあられやまと心をこめぬらしあたりつよくてくたけやすきは一蝶 梅の葉井の雫こなりてしらむと見ゆる爰そ冬はふりける春條 つれなしとしくれやかねてつけにけん松をあられのいたくうてるは 一目のむれは夢もろともにふると見しあられは消て跡もとゝめす長樹 板屋根にふりてくたくる花あられはかなさいつれさむる夢とは 一急たゝく音にやふるゝ我夢の玉のありやあられなるとん琴彦 一御人舟宮のつかきのさゆる夜に今も霞のむはえつらん七福 名古屋 玉められ梢にとまれ早咲の梅のつほみとしはしなかめん売茶園 以恰野集冬 蓮葉の枯てかいなしむあられあさひ〳〵露にふりかはりて 秋風の吹より猶もしかまし蔵のかれ葉にあられふる 竹の葉にたはしる霰油にも水いかし如音はしてけり光永 声ほとに力あらぬかなよ竹にはねかへさるゝ風の霰は小杉図 竹のはに音を残して玉あられ風の露よりもろくちりけり音高 玉ならまろに変を鶯はひろひおかすや春なかん為広母 ふしのねの氷くたきてふらすらんむの光りのきよき霰は漁商 かゝましき音ほとふらぬむあられ音ほとふらいいかにつもらん秀明 しら露は枝にしはしもつたひしを玉と見る間にきゆる敷そ仝 風に声立にし蔵は枯にして小さゝかもとの霞さわかし清店 あられのみ山家の軒に音つれてさひしき冬はとふ人もなし仝 柊の十度盤はしく音はしつ大津の駅の軒のあられは歌妻 つくし潟松浦の山にふるあられこれさへ石と氷る云々けさ梅遠 松の葉のちらぬを風のにくみてや霰のつふて後ひさぬらん真風 土をたふぬらさぬ爰むら雲の袖しぼるとはあやしかりけり 風の手にいたくもまれて雲かより敷はまろくなりてふるらん胡蝶 椎の葉につもりもあへぬもあられまた飯にせぬしらけ米色 松坂 ふりふれとみりく間もなく消るこそあたり髪の玉に疵なれ真都丸 掛塚 一思はすもあられふりきぬ冬の夜は闇にねをうつたくひにて明親 しら浪のよほる磯家の軒つゝき浜ひさし也あられた川に 手にとりてみれはきえぬる玉あられ秋のゆふへの前にかも似る なやらひの声もろともに鬼尾あられのうつはをかしかりけり 赤山 しつけせぬ陰の畑にも冬のきてあられの玉の種おろしけり 手されは消ぬる義をいかにして雲の袖にはひろひ置けん真袖 四恰野集冬 熱田 月前千鳥影やみる月をふましとみなとへに立居いとなき夜夕の声のふ専か三戒楼 妻こふる千鳥は浪にてる月のちゝにくたけて物おもふらん春條 尾一宮 たつ千鳥ちひさきなれか羽風にも月のみ舟のかけくたきけり元住 在江戸 一巡月の鏡をなるきかたみとも妻なし千鳥見てやなくらん真風 日かけ近冬にくたけるあら浪に友をまとめてなへ千鳥かな清根 月やとす川瀬の浪を羽にうけて光りをはこふさよに千哉 あら浪にまわれしても又よろくなるとの月にし子雪子雪哉春澄 はしたてやよさの海辺に月さえていとゝ寒けく千鳥ふくらん重畳 いはほうつ浪にくたくる月影のゆくへを見せて千そむれこつ杉門 木立ふはやとらぬ千鳥てる月のかつらのかけを何したふらん春條 野田 小夜千とり月にむかひてちりと鳴は浪の枕のうきふや有らん柏樹園 いにしへの関の寝覚やしのふらん月にいをねぬす前に哥千鳥は九雀 細引する蜑になれてや月かけに丸くひろくる千鳥一むれ菊見 袖のうら浪にあそへる小松に高縫箔ひかる月のかけ後琴也 月の色はいよ〳〵ふし群に鳥をちになく音の寒き浦風元照 池水鳥 一水自力土解なれかせんとや池上に釼羽ふりてめくるをしかも元成 千代よろつかはらぬ中をなし鳥のちきりあふらん鶴亀の池千菊園 池の面の連理とうつる枝の上にをしの比賀の契りむつまし なかれゆく名をいとふらし池水のなかれぬなり然るなし鳥 大坂 から人の池にあされと毛衣にやまとにしきをかさるをし鳥 水舟にかひつけらるゝこゝちせん花の池にてあさるあし鴨酒盛 はつかしみ姿の池の水なもゆりけつなかん月の影をは静雄 風わたる少の床の寒けきや足をちゝむる池の水鳥一入 芝葉のうてなに池のをし鳥は後の世有て契るなるらん小松国 凶恰野集冬 八 貧こゝろありてふ池に水こゝろ得たるをし鴨むれてあされか 清記 妻鳥の心告ても池の面をとくる少進をしやかこたん元成 雨咲しあたりに見ゆるをし鳥は色かはりなる大澤の池福禄亭 をし鳥のつかひはなれぬ中を見て池の心もうこきそむらん いもゝせの中のかたことめてつらん池の水にむかふをし鳥 阿波 兵庫 住ぶる頃池よりふかき契りとははなれぬをしの中にみえう 唐歌 一池の面に床をならふるをし鳥はこれやうさ世の契ふるらん千代浪 大間は うこきなき池にあされるなし鳥は水もちさしとぞこむらん満雅 一思すのみますまの池の水の面に妻あらそひてすたくをしかも 馬盥の姿の池のをし鳥は床に挿たる花とこそ見れ しのは後の池の氷の沙凌かたは蓮の糸もて縫やしつらん酒一 をし鳥のむねふたく火のあれはにやあそふ池にも水けふりたつ松門 月照網代 一照月の雪風寒し雲治川や網代に木魚の打柱見えけり春久 御あれて水魚よらぬ夜は宇治川のあしろを月のかはりてそもる福禄亭 日かけに浪の花さくあしろ木にもみちはのひもかゝる雲治川菱垣 雪 月さゆる夜風寒きに網代守火桶のひとやほしとおもはん月店 〽でる月の嵐は氷魚をとらんとやあしろ近きにかけはよすらん元成 宇治川や網代にさゆる月かけをおのか友とやいをのよるらん真澄 こはくある松は埋みて中こにちりひとつなき雪の明ほの楽住 音なかしの山の名しるくなりにけり峯の松風雪にうつみて全 はしそのおもかけ見せてよし野梢に花とつもるしら雪水游園 松かえのをれてけふりをたつれいや梢の雪は灰となかける静 香なから鉢にうつさんよしもかないさはにまかふおもとたち花緑樹園 書見よと使をやらは跡つかん空飛鳥のことつてもかな ◎吟味集 ふる雪にみ山の木々はうつもれて花と見るへき摺たになし美獅成 風にちる花の心ちそしのひて梢をすへる木々のしら雪明一 花の枝こりしたくひそ杣人の背負ふ薪につもるしら雪仝 甲府 跡いとにものとしりつゝ踏雪にはちてか足の赤くなりけん文金 下総 むら鷺のふくらとりぬもゆはかりゆるきの杜の雪のあけほの都曲国 花鳥の春にまさりて日の影の光りのとけき雪のあけほの百枝 名古屋 ふりおもる雪にたわめる松かえは針のむしろにゐる心ちせん売茶園 吉野山桜か枝にふる雪はつくり花とも見えてうつくし清根 つのめたつ鬼瓦まてうつめけり仏をつくる雪のことろに貝吉 一まいゆしとまふたなつれはまつ毛を思はすをりぬく番の明ほの和多吉 雪ふれは春色またるゝこのいろに梅も桜もさくとおもへは千暗 梢には爪もたゝぬを貫ひけと松の雪をや風のはらふか仝 かくてさらは雪の深山木はちらはて春の花にも立並ふへし仝 いとなみを海人も雪にはやすむかな塩やく業を冬にゆつりて仝 もうちせぬ松をしくれのねたしとや枝をる雪とふりかはりけん全 一壱匁もおよはぬわさそふる雪は枯柳にも花はさかせつ宣全 よるの雨ふりかはりけん唐崎も志賀もひとつの雪の明ほの唐歌 一木々の枝をり〳〵声をたつる程さひしさまさるけるの山さと藤浪 なか〳〵にけしきそへけりなかめなき枯木に雪は花とうづりて清根 あかくてる月には衣うちにきと雪には鳥の鳥の骨たゝくなり琵琶彦 初雪のはかなくきえし詠みれは露となりゆくことのあはれさ めつらしとめてぬるけさの初雪そ寒さをそしるはしめ也ける春澄 一夜部すから下の音たていづむ雪はふみよむ都戸になこしやする喜雅 ほくらこつ鷺のゆほりて一枝は青くなしたる雪の朝やま仝 巡恰野集冬 ひとりゐていさまくまんふる雪をへたてぬ友のとふ心ちして千種 栃木一 一をさかんすまちをれゝふる雪を梅さくらともけふけり 佐野 ふまるゝを雪もいとひて人すまぬみ山ちよりやふりつもるらん二木 五関 めてあそふ人をやこひてふりつらんはたくにつけはとくる白雲 白雪も梢の花とめてはやなたちのほる日の紅粉をそゝけは仝 松をゝり竹をひしくは月花に負しとちからためす宵かも高吟社 遠山の雪のはれ間の夕日かけすをそふたにみる心ちしつ光永 四日山も雪にうつめはうづむほと冬の寒さそあらはれける松門 十かくりの花さきぬやと見ゆわかり小すに雪のつもか松え柏樹園 友またて水ときえぬる初雪の心やいかにせはしかるらん仝 はさまりてあゆみをとむる高足駄雪うち払ふ庭の袖垣融俊 のみさした朝茶も水になりにけり初雪つもる庭をなかめて楽住 ちりしときかくふる雪とをしまれし花にまかいてつもる吉野路菱垣 冬くれはけにもみ雪にかきくれぬ時雨ふるよりつゝくはかな雀華 ゑられてふる初雪やうらむらんつもれは袖をうちはらふ人静 一里塚松のこそめも雪つみてあかるき道もふみまよひけり唐木 ふりつもる雪にはなへて村山も色のみふしにおとらさりけり 鳥よりもふりつむ雪にはかられてまた夜ふかきにあくる里の戸仝 うつこともふみ分かたしぬる夜はの草路につもる雪の白たへ梅臣 松をゝる音なかりせは夜も治からふるともしらし庭のに雪文の屋 鷹狩にぬす立鳥のすかた哉雪のふる日にゆきゝする人直明 くひつきてうらむ心かあし跡をつけゆく下駄にはさまれる雪秀明 つむ雪に石はうほれ一六ツ折のまつに声ある小夜の中山春臣 梅やしき梢に雪の花咲て冬もなか〳〵人目かれしな琴彦 巡吟号集冬 酒くみて見る上戸より雪をもて茶にゝる下戸は心あるかな福丸 古くもかくやとはかりうかれ女のこしかた思ふ雪の夕くれ仝 大内のついちの屋根につむ雪は瓦の紋の菊のきせわた石根 天つ空山吹立に黄はみつゝふるしら雪は実のならぬ国仝 冬かれの梢さひしと吉野山雪もさくらの色につむらん一の屋 跡つくる人をねたしところはしぬ雪もあしこにまふれつきつゝ黛 雪に跡つけしは木毎花と見て折たかへたる人にありけん薫 心なくつもりて枝を折る雪も後には影のなきを悔らん胡蝶 しつけさにぐさ引出す糸車つむ音低きよるの大雪政明 蒼顔かむかしはいかにしら雪に鳥の跡さへ見えぬあかつき 一夜風には麦に八重さくむつの花朝日にもろくちるや何なり 尾官由成改 木からしに巻のほわたのちりぬやとこれは雪ふかふる難波つの浦清明 にさゝうの庭木につもる初雪を鳥よ来なきてふみなちらしそ弘佳 降つみて通路わかぬ空みれは雲あしはやき雪のあけらの笹丸 仝 猿たにも穴こもりする大雪に梢をつとふこじのやまひと明造 名古屋 よし野山花のさかりに似たる哉雲につゝきて雪のふる日は美都垣 仝 酒といふ霞なとへてふる雪は空のひきこのかひの花かも胡椒亭 千代をふる松につもりて消やすき雪もしはしはよいひのふらん若都総 松田 たわみては一夜に山をつくりけりよかきの竹に雪のつもりて一方 朝餉たく焼の末も折れてけり松はかりかは雪のあけほの津知久 清頂 みわの山杉の青きもかくろひて冬のしるしや雪の身たち諸春 けふみれは木みにつもりし小雪も花と見まかふしかうの山さと弘歌 あれはてし梢さひと久賀の郷きくらか枝にふれる雪かも都音成 ちゝはゝの昔はなしも出にけり枯木に花のさける雪の日喜雇 同一吟味冬 常闇のふりつむ雪を戸口よりおもて白しとのそく寒けさ文舎 藤巻 一に春月桜か枝のはつ雪は風になやめる花見るかこと千種 身にいとふ風をは酒に酔せなん梢の雪を花と見る日は全 大空へとゝくはかりそむきし野の末野に雪の山とつもりて千 めつらしといふ間に消ぬる初雪は息の風さへいとふ花かな 栃木 寒けさに烏も時たちかねて雪ゆゑ黒き枝にありけり真袖 秩父風市 松にふる夜の間の雨のふりかへて朝けしぎよき唐崎の雪清良 氷川 こき交し極さくらのけしきかな雪に一はち青き山川高吟社 諸鳥の通路迄もたえよとてつもにや雪も跡をいとひて 佐野 野田 春雨のそたてしむにゆれはにやふる白雪の水と消らん栢樹園 一吹あくる風にふたゝひちる雪はつもる枝をやたつねわふらん 初雪にまことも友の訪こぬは友しわかめ我をまつかも静雄一 白か事の花も咲ぬとみゆはかり雪ふかつもるみちのゝくのひ永良 口なしの空より雪いふりなから木々の枝をる声のはけしき一樹 黒色もの烏はかりとなりにけり見わたすかきり雪の白妙久留九 春雨のまく子なるらんにす月枯木にゝほふ雪のはつ花草の門 鷹狩 御狩場に鷹をはふては大鳥も小鳥は十羽一からけなり梅臣 ふる雪になす野の石はうつもれてあいする夜に鳥そ出雲さぬ千菊園 もし鷹におはるゝ鳥はおそはるゝ夢こゝちにてのかれゆくらん春條 いかはかりちからあるはんはし置かは雁の山ふくもろこしの原千葉亭 薄氷ふむこゝちせん御狩館の鷺はぬきあししつゝひやく玉淵子 はし鷹の屏房に鈴はつけなからいかて桜を袂ときりけん 白紙にかいつけしめかひつけに黒み見せけり高の鷹狩 かけおとす鷹のえものたり語るに衰毛を雪と云らす其かける ◎菅野集冬 はやふさのつかみてちらす鷺の毛は重にしられぬ香とせみめ星輝 弓となり僕ともふりて来しアを的にはないるやはたをのほる食翁 御狩野やそれ行鷹に太刀持もむなしきさてにこふ〽有ける牧の屋 それ鷹のゆくへたつゝんてみわの里杉にしるしの鈴の音なきく野主 めりやすと足袋とに爪いかとしけり底すゑかへる御狩場の人職主 平梅おましほかさね一だんよきたかひも雪の下より匂ふ海かゝ檜月菴 となりから風のもてくるとくひも未のこなたにかをる梅かゝ 早咲の霜の梅からんこふ日は風にくからし雪の海したも はや咲の梅かゝはこふ雪風の枕やすれとうとからぬかな仝 寒ことも梅は咲けり暮きよめ雪のかつけ綿野む琵琶彦 雪ふれと火にす梅の咲にけり星佛うる時りさつれは仝 相飼する鳥の空音にはかられて東の関路にひらく梅も 白菊は霜にあせなく火なるを梅は雪ともあらそひてさく浅勢菴 龍洞てなかぬる鳥もしらきゝて笑ふる室の鉢うゑの梅菊寿朗 あたらかき室はまへと草少とつる冬たに梅のさくらむ武暉 あたしかき春と思ひて梅さきぬ窓のうちにはくるもふらすて秀明 春まちて髪とりあくる氷女子か油とにほふ梅のはつ花漁商 星とはし雨の後にもふる雪のきせること着する早咲の梅千糸亭 仝 あはれてふ香をはあまたにやらしとやたる狭き室に梅く愛らん清根 万才 埋火の春めく宿は梅の花わきてよそより早く咲らむ照蔭 幅兵改 歳暮 ○合手りつく春い藻とをとめ子の心のはつむとしの夜はかな 人々なのあしの早きは行来に追かけらるたこゝろなるらん春臣 一春まては香のへ日も中こにくれやすからぬ心ちせられつ諸春 一くれてゆくとしも玉の言板を流るゝ水と思ふはかりそ雀翠 巡哈野集冬 とゝめはや流るゝ東の早瀬川をしむ心をしからみにして友雄 いとまなみいを孫かねけりうちよする香の浪にい音の真左れと真袖 八 生死の海の蛭かし香の夜は寒念偏に懸乞の庭海老雄 後暮の中もいとはす行としは月日の駒を宿にたつらん滝臣 小まのめくるか如し月や日のかそへ日となる暮のせはしさ 来ん春をとくむかへんとい松にそふる竹もてちりそはらへる花蝶 世の中にかすまへられぬ我なからせはしかりけりけり手の数へ日文の屋 鶯の来なかん春をまつくれの月日ははやくたてとこそ思へ柏樹園 一春まてはみしかき冬もくれかねてたらはぬものゝあなか心ちそ よみるの手にはしらへて鶯もわかこと春をまつにや有らん娯夕 松竹にゆつり葉けふはとらのへて神代の春を待はかりなり 年わすれしれやすきに老かくす花咲春そ猶またれける真袖 一兵をまつ宿は肝綱にきゝかにの海の巣はらひ得迷も張ける鶴成 大原女のかつく黒木に雪ふれは梅をりかさす春そまたるゝ菊見 若松もむつの花かさかさしつゝ千とせの春にあえんとやよつ久雷丸 一花さかん唐のすもとしの内七日ありぬとゆひをりてまつ干 下総守谷 春日野や若草山をしのふかな春まつ宿は畳かへして 数盛 五関 笑梅 日をかそへ春を待ぬる心には雪を花とも見てや過まし 秩父風布 少女子は手鞠かゝりて来る春を日にいくたひか指をりてまつ 名古屋 一時雨にもそまて青かる天の原星のはやしや松のおひけむ おのつから天のさひしく見ゆる哉雲の林も冬枯やせし 環 熱田 日のかけももらさて空をふたき居る雲はあすふる処やもつらん 一各篭埋火のおきに花をはさかせつゝ風をもいとふ冬こもりかな広母 花鳥の春まちわひてこもりをる我や寵飼の鳥にかもいる 以恰野集冬 一花鳥の屏風に心うつし絵や寒さわすれて冬籠しつ志都九 冬といへはしくれみ雪にこもりゐて世の中せはくなりにける哉環 宇治よりは少魚の便やくそつらん網代屏風に火桶絶日は福禄亭 恋しらぬをとめもねやの冬こもり初瀬の山に雪つもるす文の屋 腹あけてかたる一間の憶ふちにも木地を見せたる空蔵かな津知久 ふともりせはきすまひと成にけり庭にも雪のふりうつはつゝ真袖 冬遠情 いさなとる蜑のさふさそしのはるゝ硯の海の水少るより南秀 冬遠情いさなとる蜑のさふさそしめはるゝ硯の海の海の水出るより南 熱田 ひか身は寝覚かちにて千鳥なく須磨の関路を思ひやるらん一方 大君のめくみかしこしけふといへは寒さしのけるひをたまひけり檜国 一當座御講詣室市亭大人撰 うつくしとこれかみさらん嬉姑うちつれたちし御講小袖は梅屋 御講風しつけき法のみ舟には我おくれしといそく御朝時文の屋 八月歌 八月分追加 追加 九月分追加 みのかけに髪粧うてうゑ髪の弥陀の御講にまゐる手郭女花咲庵 相をかけて越路も通夜の寺とまり御講詣にいつる高田派宝市亭 小男前の声きく夜はにともし火の消て我妻よふ逢ひし子 伊勢守 名取川月のかつらはめてぬへき人なき夜はそ浪のうもれ木 西山に匂ふもみちの色ふかく夕日もはちて早くおつらん仝 折とんと花は笑顔をくつさしな堪忍つよきふくろ菊とて 十月分 追加 ふくる夜を月にうかれて十三里くもなくのほる淀の川ふね伊勢守 ふりなから庭ふ消ゆく初雪はなかはにさむる夢のこゝちそ花都井 春はかく花さきいてよ底さくら枝のたわめる雪の段ほの元明 炭やきも顔のくろきや恥ぬらん小野の山家の庭のはつ雪仝 めつらしと見るまふ消る初雪は秋の歌よりはかなかりけり 旅里に印しゝ国はうつもれて道つれわかぬ雪の夕くれ にしき羽を身にまとひつゝ池の向ふ河水鳥の寒さわふらん花都万 ◎恰野集冬 二十終 一花鳥の屏風に心うつし絵や寒さわすれて空籠しつ志都丸 冬といへはしくれみゝ雪にこもりゐて世の中せはくなりにける哉理 宇治よりは少魚の使いたてつらん網代屏風に火桶抱日は福禄亭 恋しらぬをとめもねやの冬こもり初瀬の山に雪つもるす文の屋 腹あけてかたる一間の塩ふちにも木地を見せたる空蔵かな津知久 冬こもりせはきすまひと成にけり庭にも雪のふりうつはつゝ真袖 各遠情いさなとる蜑のさふさそしのはるゝ硯の海の海の海の海の海 ひか身は寝覚かちにて千鳥なく須磨の関路を思ひやるらん一方 大君のめくみかしこしけふといへは寒さしのけるひをたまひけり檜国 當座御講詣室市亭大人撰 うつくしとこれかみさらん嬉姑うちつれたちし御講小袖は梅屋 御講風しつけき法のみ舟には我おくれしといそく御朝時文の屋 八月分 追加 九月分追加 よかけに髪粧うてうゑ髪の弥陀の御論にまゐる手郭女花咲庵 夜をかけて越路も通夜の寺とまり御構詣にいつる高田派 小男花の声きく夜はにともし火の消て我妻よふやさひしに 名取川月のかつらもめてぬへき人なき夜はそ浪のうもれ木 三河上野 伊勢守 引又 西山に匂ふもみちの色ふかく夕日もはちて早くおつらん 折とんと花は笑顔をくつさしな堪忍つよきふくろ菊とて 一橋 十月分 追加 ふくる夜を月にうかれて十三里くもなくのほる淀の川ふね 花都萬 一ふりなから庭に消ゆく初雪はなかはにさむる夢のこゝちそ 春はかく花さきいてに庭さくら枝のたわめる雪の明ほの 異やきも顔のくろきや恥ぬらん小野の山家の庭のはつ雪全 めつらしと見るまふ消る初雪は秋の度よりはかなかりけり 旅笠に印しゝ国もうつもれて道くれわかぬ雪の夕くれ 見付 にしき羽を身にまとひつゝ池の面に河水鳥の寒さわふらん花都万 且恰野集冬 二十終 狂歌恰野集立雑 狩 朋 狂歌恰野集恋雑之部 恋之部目録二十種 『荒井恭馮守勘辭ヲ 以テ購入セル竹蘭博士 ・・・・・・・・ 初恋 契恋 意書 近意 初恋恋書契恋増恋近恋 遠意 絶応 遠意片恋絶恋春恋夏恋 秋恋 冬意 秋恋冬恋幼恋恋命恋涙 恋鏡 恋枕 戀鏡戀枕戀慕恋床恋鐘 雑之部目録 二十種 関 星 原 星風谷原関 驛道橋水浪 池瀧竹松鶴 匠 漁 民 民匠漁社賀 ◎吟吟集意雑 初恋 十三 近意熱田 三の屋 十三 檜樹園 一二三一四二 見初たる君か 秀明 日の上の の員士 貞吉 貞吉 病ほと思ひ なやみけり 姿の目につきてなやみけり 姿の目につきて 白くてあはぬ 目につく物は白くてあはぬ 一目につく物は 人のつらさに めにもつかしな 契恋 檜舟亭 静 池水のいける 世なから後の世の はすの うてなの髪うれして 遠慮仝 三蔵楼 へたちたる 君をしたへは 大気もはるけき 末そなかめられける 片意 東風菴一蝶 東風菴一蝶 ごほさしとすれと涙そこほれける おもはぬ人をおもふめより おもはぬ人をおもふあまりに 絶意 十五 一床のまひとり 信亭 清記 さびしく捨ちれし 身やたよりなき 恋の島守 恋涙 増急 熱田 十三 一円舎 恋やせて 身はかれ〳〵の一方 明らなから 思ひますほの 薄生ひけん 一檜集園窪君筆 つれなさの妹か心のへたてより ちかきも土とくなりまさりけり 十三 かはり行 妹にならふる 我洞門 めたくいつる をりも 三何道目記 へたちたる耳さへ 君をおもへは なか〳〵に 今はとほく なりけり 浅納菴 一蝶 恋涙 くちこもるわか心をや 菱垣 よくしりて袖の泪の さきにたつらん 一 トチキ 悟画 原 春恋 名古屋 玉淵子 十三 思ひ草根さしを ふかみ胸の雲に 春野やくめ もえ増りけり 野田 思ひ川とくるを 野田 たゝにたのむかな 春の氷と妹り下紐 柏樹園 仙台 夏恋錦随国 光永 中々に思ひふたかる我胸に 夏野としける恋草やなそ 冬恋 兵庫 くにしらて なかくにしらて 過ゆく 思ひ しかりて 恋草そ 霜かれ も うき の屋 若草のねよけに見ゆる 仝 妹なから思ひそめては 扨たゝねられす 秀明 似ぬこゝろかな 妹は格に 包嬉固 子鳥も ねに よそに なきわたる 青様は妹に 広好 いつれと中々に 見なして恋も 恋も 色にいて 色にいてするかな 応床 南向堂 わか思ひ深草野へも かひなしなうつらの 床とあれまさりては 一慈筵上野山名 檜昇園 ひとりねの輝明 ひとりねの いとり糸の いめいぬは 処にあはぬは 輝明 夢の間に 輝明 いさむしろも このさむしろも うちかへり うちかへりけん 水游園 ひとりのみ 寝ぬるなゝふの すかむしろ あつらへおりて 今はあせん 今はあせん ◎恰野集恋雑 檜月庵 づかけ しれとかわれひとり ぬる夜の床の かたへつめたき 凡四 む湯 十五 恋枕 ありてくそ なか〳〵物を 天保五甲午年 初冬檜集園写 野田 柏樹園 おもはすれ 里のまくちよ うつり香なせそ 江戸嵜 十二 たけくねのふたきの松を 緑樹園 あふ夜はの園のまくらに つくらましかは 南都 床の上に ふたつならふる 枕こそ 南澗堂 藤浪 枝かはす木を えりて つくらめ 雲井園 あふ夜はゝ 心はかりか うにしさに 枕の熱も 立さわき けり 意命 あすしらぬ いのちあせん 後の世も 南向堂 四十四日 十三 なかくに なかくに 桑の屋 嶺雄 しなはと思ふ うき恋の つれなきものは かはらしと思ふ 命なりけり 君にあふ夜は 城山 檜峯館明一 十二 一朝かほにおく露よりもはかなしな 君ゆゑきえんわか命こそ 意鏡 面堂 向ひ見て身を うらみよと我為に 鏡てふ物 神やつくりし 一胸の火にいて浅直さん 恋やせの皆見にくゝ 恋やせの姿見にくゝ うつる滝を 南向堂 阿波 九峯舎静 恋やせてかゝみにうつる わか顔もわれをうらむる なみたくみけり 参 鏡見てしはし 心やなくさめん 君に逢見し 顔のうつれは 顔のうつれは 山名 檜立固重明 恋鐘 わかれちをいそかしたてゝ さかしらに御告る鐘の ため息やつく 仝 輝明 明令即集憲誰 北溟 九四 十五 関熱田 関 天長舎 手弱女の髪 津知久 あらためて 中こに おとろに なし 苅萱の関 星 花咲菴 雲の浪 たゝぬ限りは 陸路まて 星のはやしの つゝく 大空 十三 夕つゝは 夕つゝは 月にえたち あかほしは 日にさきたてや 影の さやけき 阿波 瀧 緑芳因 ぐり出す わくの音のみ 聞ゆなり 十三春條 櫛の歯を ひくゆきかひも 春條 雲たちも おほふ 関の戸に 髪あらたむる うちはとめけり しら糸の瀧 しら糸の瀧うちはとめけり 一蝶 廣母 十二 関 厚木 風柳亭 吉女 吉女 恋しらぬをとめにさへも結ひたる 一髪をとかする下ひもの関 谷 栃木 通環亭真袖 居所となしなはうへよ人すまぬ み谷のいりてくほくなりけん 驛路 仙台 千菊国 小落船馬鈴は雲雀の音たてゝ 雲ゐはるかにのほるうちやろ 水 芝田 草種固 だつかりの 菊寿躬 仝 檜宝園 嘉寿雄 参の丞助に 大江戸へ 流れひかるゝ 玉川の水 山川のあらきも 旅にもまれ来て やはらきぬらし 加茂の川水 一巡吟味意雑 北溟北 水 十二 世にいてぬ 人のたくひか み山への いはほの中に 水のすめるは 武州又 便豊舎 米丸 世のうきを しらぬみ山は中こに かなしくつかふ 谷川の水 文泉舎 宿 浪の山 面堂 くつれかゝれと 酒にたちて 海にたちて 眺れる鶴の 心ゆたけし 主 老ぬとも 清須 千芽菴 諸春 おはて鶴は 千代やへむ 子のかはゆさに としもしれて 民 静 大君のなてたまひつる 民草は御手にみなから なひき社すれ 福禄亭 十二 中こに千とせみしかく 仝 かこくらん限りなきせに 鶴はあそひて 十二 恭門改 千代ふれと おなし事をは 舟堀 舟堀 おなし事をは小竹林堂 竹林堂 鳥羽の細道 絵によく似たる 夕日に僧正の 人のかけおつる 唐記 いはぬ也鶴は 雀にたかふ 道 在大坂 人の浪よする 一名 君か代は 文栄子 文栄子 千秋 はかりの大江戸は 松 宝市亭 かた心院 かた心院も 浜の真砂に 賑はひて としほとに見えぬと賑はひて 〽どしほとに見えぬと 岩のかけ道 松をほめられて酒を岩のかけ道 松をほめられて酒を 吉むさぬなり のまつる主をかしや 道つくりせり 宝鏡園元照 以恰野集恋雑 尾一宮 十五 風 三 胡蝶国 御あれて 宝市亭 なしときく 春澄 風のたちは ありそまの 舟おさな日も 舟出さぬ日も 一絶せりしほやく 手つきの蜑かしほやく 呼つきの けふりにそ見る 浜にたみ声 たつる汐風 寺部 雅流同 いあれて風も 檜貝庵 草や木に いをし見れは 弘影 おもなくおもふらし 山風も 声にちからを 凪たる跡の いれてゆすれり 空のしつける 浪 あらうみの あらうみの いかれる魚の よる磯は 浪もうろこを たてゝ するとく 面堂 山名 十五 かたちなき風の 檜立国 重明 力に黒雲の山を 根なからぬくは いさまし 玉川のきし あゆの風ふく かけ梁に 室市亭 魚のもれ行 浪あれて 浪 檀固 五 大岩によするを 雅持 きけはわたつみも こたふる声や 浪の山彦 十三 田子の浦 陽鳥亭 影をくつして はやち風 沖なる浪に ふしを見すらん 十三 中こにかとある岩を つゝまんとよせてやふるゝ 浪の白きぬ 花咲菴 うら〳〵となきたる魚は うちよする浪の花には あらしなりけり 粟 白木旭菴千晴 此恰野集恋雑 北溟北 画六 欠S 狂歌恰野集恋雑之部 撰者檜園梅明 十一 初恋世の中のことにはうとくなるまてに恋てふものをしり初てけり広野 時も日ももえらはさりけり恋衣思ひたつよりぬひそむるには梅信 あらたまる心はつかし恋衣またなれぬ身にきそはしめして孫孝 神田 いつてよりいりてよけんと恋の山ふもとなからもまよひぬるかな巴流彦 こうしきもしらぬ色にそ染りけるけるけたちそむる恋の衣は 見初たる君につかへんとはかりに恋のやつこと身をやつさはや 尾一宮 一封しめをねふりていらく玉章に恋のうまみを覚え初けり海 うれしくもかはすことはの初花に恋の山にしろくなりけり千 さきにたつはつかしさをは案内にて恋の路芝もくる初焼武暉 思ひそめてあからむ顔をうらうへに人に見らるゝことの恥かし霍群 人しらぬわり物おもひの初花は世り春しらぬ草のうもれに躬千里 物思ひの花咲出つ見初たるけふより明雨とふらねと秀明 一北章にことはのはしをかけ初てけふより忽に恋わたる哉明通 いひ出て見ても中々はつかしと口こも事恋のをはつせの山梅遠 見そめたる君におくらん梅の花文このむ木といふをたよりに明 はつかしとあからむ顔の初にみち涙しくるゝ種となりけり千代浪 はつかしと顔に紅葉をちらせるは胸に火をたくはしめ也けり 亀丸 仝 とにかくに胸につかへてくになりぬまた初旅の恋の山みち清明 かそいろの月もの影もわすれけり恋路のやみに建ひ初ては津知久 うなしさに蹴れる胸はたましひを妹にとらるしはしめ也けり 恥かしとくいふる指は入そむる恋の山路のしをりならよし嘉寿雄 且吟野集恋雑 一恋書いさみを左衛しになぎはやなかへさは死といはぬはかりに捨月籠 いろ手よきいらへもかもなかくふみの硯にいるゝ花の下水 水くきのふかき思ひをくみわけぬ人のつらさにぬるゝ袖かな吉女 今はたし文の文字さへ恋や。せて心ほそきをかきるくらまし諸春 へにふてにいさ又かきておくらまし赤きくと君しらん宴花蝶 くたかけも明のからすもうらみしたにつれなき鳥の跡みつる日は神楽戸屋 畳いろのうちにてもしれ泪にて気をしめしてかきおくる文 する墨に思ひの雲のかさなりてかきとつくさすふる涙かな明通 うれしともかへしのふみはわか胸のほむらをしのく水茎の跡陽鳥亭 梅みれはつれなき妹そうらみなるかきやるふみは手にもとらす三宝亭 袖に雨ふらぬ日もなしそ妹子の心つくしの水くきのあと長来 はつからさ文にいはせてかく筆のたへ命毛そたのみなりける影後 一 一玉気の筆の命毛きるゝほときらぬおもひをかきかつくぬる軽山 恋しさにかきやるふみの封しめもとけて逢との通事嬉しな清記 思ふ事気にいはせてかきおくる文はむすふの神のなかたち歌輔 中々に身のうき草はとりかはす水暮よりやおひ出にけむ胡椒亭 同断 一夢にさへわすれかねぬとかき送る文箱の徳も境に結へり嶺也 二本松 なゆけは道なきかたもとはるゝをふみ見ることも絶て悲しも千文 君にあふこゝちそ気の跡見れはかへす〳〵もうれしかりけり明一 〽恋くれしともちきるこよひはぬはむの夜あけぬ国になすよしもかな其雪 引よする閨の屏風のすゝめかた千代にやちよと契りこめまし さくらにも梅にもまさる花ありと人はしくしな契る恋中助糸 中とにいけみころしみ心根をさくりて契る夜はそ嬉しき梅里 そこひなき心くみつゝ山の井の深くもかなと契りけるかな喜楽 巡恰野集恋雑 手枕にしきるゝ梢のさきの世もかはらぬ中と契りあふ哉千晴 下紐をときてぬる夜は玉の緒の長くもかなと契りこそれ茂登輔 明からす心してなけ熊野なる神をちかひにちきりぬ夜は千門 増意 一逢ことのわたりは絶つ涙川日々に水かさのますはかりにて三宝亭 うき事は中こ今そ増りけるはつかしかりし昔こひしも豊明 毎月を一てもうれしき事そなきなけきの数は日々に増れと南向堂 あふ夜はの閨のともし火けちてよりつよ〳〵恋の闇はましけり 思ひ草君かなさけの哥おきて中々袖のひちまさりけり真城 むすほるゝ心もとけはとかるゝをいかにおもひの日々に増れる千晴 君しらは心の駒にはまさはやわか恋草のしける思ひを澄雄 近恋へたてある人目の関のあら垣に逢ことと遠き中とかけり嶺成 ませ垣も冬をへたつる思ひかなあはてぬる夜の恋の山鳥真風 神田 一垣一重へたてぬ中の通路もあひ見ぬまてはあやふまれけり巴流落 清須 なかくにちかくて遠き思ひかな人目の四分のへたてありては諸春 遠応ゆく雁のむけたにもとゝらすや雪ゐへたちし花のおもかけ唐木 かけへたつみ山に海を埋水なはこふる我世こちかく見えよし津知久 白雲の八重にかさなるをちにてもありは君に心へたてん千文 程遠き妹かりなからたましひは日ことかよはぬ夜もなかりけり千菊国 栃木 あふことはかたいと鳥とへたつともへたて心のなきをたのまん ほと遠き恋の山路は鳥の跡かよふはかりそたのみなりける緑樹園 海山をへたつるなかは鳥の跡筆のあゆみをたのむはかりそ吉女 一おもはすも遠く鳴尾のうら千鳥心みたるゝ恋のあた浪志都丸 忍ふれと云を山鳥の遠くしてをろのかゝみの影も見ぬかな 中々に遠くなるほと恋られて目先はなれぬ妹か面かけ酒盛 以恰野集恋雑 信八幡 いつしかに雲ゐとへたつ妹や我ちゝうはの空にはおもはさりしを道人 十二 おもはさる人をこひつたくみれはうしや月まて貝の片われ貞吉 人しらぬ深山のおくのしくれかもわか袖のみそぬれてかわかぬ都音成 中々に心つくしの恋の海君しらぬ聞そもえまさりぬる秋成 恋風はわかかたはかり吹ぬらしそらなる人のそよりとも露墓丸 りしかた心つくしの片思ひ君しらぬ火そ胸にもえける滝臣 中垣を心にゆひてすみかさへそひらむけたる人のつれなき 岐阜 うとましや涙の海にしつみつゝ何かた思ひのあはひとりえん おもひわひぬらす袂にとはるゝも中みつらき片われの月重 のしに折て水おくらまし人しらぬ我はあはひの片思ひにて わか心君はしらねの浮雲やかひなき恋の山つくるのみ 一人のめを忍ひあひにしお後てわか目を先のふ人のつれなど柏樹国 絶恋人のめを忍ひあひにしや泣てわか目を意のふ人のつれなき 耳しひし君ならなくにかはらしと契りしものをいかに聞けん なけきのみ今は残れりいつれにかつらなる枝はうくし植けん 一たえてこぬなけきの枝のしけりあひて咲いてつらん物思ひめ花貞吉 水くきの跡の絶ては恋わたることもわひしや粂の岩はし香根雄 なたらかに恋の山路はひらきしをいりてたえけん君かかよひろ千晴 鳥の跡かよはすなりぬ海山と中をへたつる君かこゝろに智義 みのあふみねものかたりの名にも必す不破の関屋と中絶にけり美陰 一づれなさにこひ渡るへき中絶てなけく我身やくめの岩はし梅遠 うかりける人の通路たえしよりいとゝたえまく思ふ玉の緒琴彦 なかたちの言葉のはしの泣てより恋わたる身の袖はくちけり茲明 ふりしきる雪のたくひか来ぬ夜はのつもれは後る恋の山道居保 みくきおひて流れかねたる古河と心にこりて中位てけり千機 四恰野集恋雑 一常陸帯給ふの神もたのみながや未なし川の音つれもなく松人 わたるへきたよりも今はなから川恋のうき橋中絶しより五鹿 文かよふ道さへたえて今はたゝ思ひ草のみおひいてにけり秀丸 又いつといふ雲の葉もなくはかり夢かうつゝか恋のわかれ路片住 鳥羽なはてたえて通はぬくそうきよき作り道よそにつけきや三蔵楼 春意 合恋通路はたえて久しく程ふるを人来とつくるうくひすや何花都花都芦 たゝいとりねにのみ啼つ百に鳥囀る春にあらたまれとも嶺雄 度けさの袖とかめなは君か為若菜つみぬと人にこたへん緑樹園 初夢もむすはて君にあふ夜はゝ夢かとはかり嬉しかりけり諸春 春といへは干潟となりを恋の海袖のなみたのいかにかわかぬ友雄 しのひゐていはま思ひは若草のふる草かくすゝ雪の下も元 我恋の山はうき雲たえぬかな四方の山辺ははれし春りも明澄 めてたしといはふ春たになきあるすうきみいひとり秋の夕くれ津都丸 きぬくの空うちめしや春霞かけさへ見せぬ半明の月 一契りたる人の心もこのめすようつりやすきは枝の主ひす しくれしとすれと春野の七くさかうき名はよそにはそれに 春の夜の夢にしあふと見えつるは霞のころもかへす時かも 梅かえにいさゆひつけておくらましけさうをみのなをくにして十文成 こび〳〵て空見るわれに人とはゝ峯の桜をまつとこたへん鷺面 わか恋の山ははかなし春成てもまつはかりにて花のさかねは松門 一瓢満津の梅もおよはぬ雨ひある妹にゆひきることいをしまし枳風 心うく有ことしもなし俤の花見てくらす日さへなけれは八木丸 中こにぬれての後そまさりける妹か次めの花のいろれは緑樹園 一綿木の木かひなき妹かつ松竹たてゝ何いはふらむ 国吟野集恋雑 うつくしき前によそへていひよりし妹か心のちるはうかりき月丸 麦こひて堪ぬなみたになきあかす我多焼野のきゝすをか光 やしなひて梅の立枝はのはきはやわか思ふ人の見つゝ来るかに望月館 うれしきはわかなし袖にうつりこの匂へる妹や梅のはつ花喜楽 すみれ草親のゆるしの色みせて君と一夜はぬるよしもかな柏樹園 見るはかりいひよることもなら梅手折たきもの君かこゝろそ久雷丸 花と見し妹か心は鬼あさみ其葉に角のあるそわひしき友丸 なか〳〵にのとけからしな物思ひの花咲出し春のこゝろは長房 わきも子の花にもあはてかへり来しこのむ音や春の雁かね春條 空の葉の花さく夜はゝ手枕のすきまの風もいとはれにけり やるふみも心持ちゐて書にけりけさ書初をかことにはして華雄 夏恋あやとをひとへかたのむ度衣心うらなき君そうにしき明一 一五月雨のはれぬ涙に恋病の薬ふる日もしらてこゝきけり春條 こよりしてえにし結はんよしなさにひとり蚊をやく狐燭にはしつ葵垣 なけきのみ夏の梢としけりあひて心の闇ははるゝ日もなし静 軒ちかき花たちはなの丞をとむる袖なつかしき君か僧清記 君か袖ひかれぬそうきかふといへは池のあやめもひけはひけるを秀明 夏衣うすきひとへに見えすきてあつきなさけを着るは嬉しも花蝶 堀遣火を軒にくゆらしまつ宵は人めといとゝいふせかりけりけり堅右の屋 わら思ひ夏のは山の梢かもひと夜〳〵にしけることの葉岑松 我こひは夏野のなとしけりつゝ日に〳〵深くなるそ嬉しき おそ桜見るにしはしはなくさみぬうつろふ中も花の咲やと真袖 やる文のかへしあくねは胸の火に身をこかす我や野への夏虫米守 うくみのみかさねて薄き度衣ひとり着よとの君の心か菊丸 以恰野集恋雑 見そめたる君にうらなき恋衣ひとつにあふをよてるはかりそ久苗丸 むつましき恋中なからわかれては鳴て血をはく鳥はものかは仝 夕やみに蛍とらんをおことにて妹かりゆかん花の道芝鉢也 吹風のたよりもあらし門すゝみかことにくよひ君をまてとも しうたてゝなかれぬ我は夏むしとおなし思ひに身をこかしけり真澄 度やせとまきらかさはやへしれす思ひやつれし色の病を囚人 思ひつゝひとりぬる夜は軍の戸をたゝく水鶏て心まとはす竜栖 あやめ草見るもはつかしわか心あらき根さしと君しらぬ身は真津丸 あはぬ夜は雲ゐはるかになる神のおくつれのなき恋に侘しき水楽園 首さへうらやきれけりわかめつふ君か閨にもいかとおもへは万花 一立子は胸に度野としけれとも君かなさけは度程もなや一樹 思ひやる妹かそなたの空みれはまよひの雲の峯のみそうち北岱 一あやにくにくまるかゝらし物思ひに目をとちて侍有の月影花咲菴 ふりあはせするえにあれといのりをる我片袖に前のくたくる陽鳥亭 うらみなはうらみてゐよと雪の葉のうちかへりたる返事恨め音音高 むさし野のひとむら薄ほのかにも見そめてしより袖そ露候き福九 恋中を人のうたふとおとろけは新潟の萩かさやく也けり元住 さやかなる月をかことにあふ夜はく胸のくもりの晴てうれしも清明 袖のくに露おかぬ日はなかりけり君か心の秋にあひては湖糸 ひとなるまてにとこよひ契らまし月をかことに君にあひては千菊園 思ひをはつゝむとすれと糸すゝき横にあらはるゝことのわすき文百丸 阿波 身にしみておとろかれけりさりともとおもへる君に秋立ぬとは茂種 守谷 君まちてなきあかす夜のさひしきは秋のゆふへも物の数かは 松坂 袖におく露はすへなし忍ふ山秋のこすゑと色にいてけり 同吟吟集恋雑 松坂 逢ことばかたりのうつら床あれて身にしむ秋と音をのゝそ也 米沢 数しれぬゆふへの露は恋草の袂にあまるわかなみたかく蓮也 一昼夜はのねやは杜望の心ちしてなみたの露そむみはぬる頬也 一秋こよひ月をかことにあふ夜はのこしろくらきそわる心なる梅盛 なきやみし大そ嬉しき侍てねぬ妹やわり来し事をしるらん明澄 人とはゝ目見るためといひぬけんまつ夜ほそめにあくる家の戸元照 一応草のしけれる時や秋ならん涙の露のむそみたるゝ一蝶 はつかしとかさせる袖の初尾花ほにあらはれてしられぬ哉 長き夜をよちあかさせて木ぬ君は秋の哀れを思ひしれとり今 杜はつる人の心のうすゝいなとわるふるておもひそめけん真楫 初風に月さゆる夜も君を思ふわか心よりおほろ也けり明通 秋の田のいねよく君とふす夜はら嬉しきいろの穂に出にけり春久 葛の葉のうらかへるへき人そとはしらて手枕かしくやしさ環 まつ時はなつも長しとつにしをあへはみしかき秋の夜はかな千文 照月にあふ夜の器は蔵の鳥生沙の魚のはなたれし如藤浪 此ころの夜御風のおとつれてたえて胸のみさわく苦しき可楽喜 玉つさのかへしなきこそうちみなれ雁のわたるを見るにつけても 冬恋問とに残る事をし見れは我おもふ君か心もかれすや有らん菱垣 水鳥の下やすからぬたくひかな忍ふこの身はうきにたへすて浅縷庵 つめたやと雪をかことに握事手もおほえなしといはぬ嬉しさ正臣 あふ事はかれ野の尾花物おもひのわか恋草は冬としもなく明一 時ゆゆく老間もる白のこゝちかな泪にうつる歳のともしと明造 春秋もすくる思ひそ埋火を花や紅葉と見つゝ待夜は牧の屋 これしさの涙のしこれかゝるより日かけの花葉色にいてけり胡椒亭 且恰野集恋雑 行燈に衣うち着せつ雪風の寒さをあふ夜かことにはして茂登輔 雲の葉の蔵さへたえてひとりねの歯はさすしき白人の冬枯清記 くれまてはなかくおほえつ冬の日に小春てふ名は恋にいひけん水游図 一わかみし千束にあまる錦木をふりかくしたる雪はうちめしさゝ丸 ふる雪とつもる思ひをいひよれと袖うちはらふ君のつれふき仝 うれしくも時ゆふりきぬまつ夜はたえにしを給ふ糸に見るまて蓮也 一妹か心とけぬしるしかみからん気の氷りてまらにならぬは千書 雨をかく硯の水のわれるは君かこゝろのとけぬしらせる喜楽 床の山おもひはかりそつもりける雪はふらすも毛の木鼈は松門 雪はあといとふ物そととりつきてかへさしとする妹のやさしさしさしさ 冬来ぬと野へはあるゝを中々になほしけりぬるゑ学かうき秀明 冬の夜も春こゝちしつ室の梅の葉を咲する契うれしも綾雄 人目さへかれ野は名のみ恋草のしけれる胸に冬やなからん静 後の世のはかなきなりてをさま草の行閑たのむ契りうれしも真袖 一幼恋後の世のはかかきならてをきなりの行果たのむ契りうれしも真 寒らしき姿は苗のかむろ菊花さく秋をまちて手折らん志都丸 難波津を習ふ寺子とおもひしを袖に墨つく中となりけり いとけなきふりわけ髪をとりあけてはつもとゆひの契うれしも清記 みたれにしをさな心に黒髪のとらかぬまてもものおもふらん雅持 あやをとるをさはに海そひしも末かけてあるきえにしの糸と結はん音高 石なこのむとめてつるをゝめさへ手のうちかへすあいさつそき玉成 志命 恋しなはうき名やみん君ゆゑにつらき命をすてかぬる身の嶺雄 逢ことのなくて月ものたつか弓命を的にかけしかひなや田雀 一なる〳〵にあはて過なはとくはてゝ今かくつらき命ならしを弘影 中立のことはのはしをたのみにてと宵命をかけてわたらん三千春 ◎且吟集恋雑 わか食ましと思はぬうき人の心の湯に身をやなげまし藤浪 一つれなさにうきをましらの山すよひこのみの命何をしむへき食翁 こかねにも玉にもかへぬ命さへ逢ふには我はかへんとそ思ふ ふたつなき命にかへてあふ夜はゝたゝめのまへの別れをしめり浅騰菴 立しなん命をこよひひろひけりあふにかへたる物にはあれと柏樹園 やう〳〵とくらきおとして我々わる命をこよひ取ろふうれしさ緑樹園 牧布施 あふ夜はゝ床の海へん汐干して命をひろふかひはありけり正臣 一涙なきはらす目薬にてはなりもせぬ涙は何の玉にあるらむ一の屋 舟堀恭門改 一誰か為にいつる涙そかれ〳〵の人の心をくるほしはせて麿喜 うれしくも泪はいてつわか袖のぬるらはつらきをりはかりかは しられしむかしやしたにしられし事はおもはていつるなみたは柏樹園 妹こふる我役人の身なりせは涙に数の玉はえなまし都曲国 一雨とふる嬉し涙は君とわかつきぬこと葉の花のかそいろ千門 一つれなきをかこつ涙は山まつにそゝく時なのたくひならまし弘影 二本松 はかなさのわか身をわれか泪さへうとむる袖をたちはなれける興声窟 阿波 これしきもうきもつらきゝよく知りて涙さきたつ恋の山ふみ代 下総 袖におつる涙の滝の糸くりておらはや恋の山わけころも都曲国 床の海うらむる泪しほみちて蜑ならぬ身も袖かぬれける真澄 あいふきと見しは夢にて手枕にかゝる泪はまことなりけり水降図 中こに泪はよろくいつるかなかとある人のこゝろには似春鈴繁 はれやらぬ胸の材雲かさなりて泪は袖に雨とふりけり 山名慈明改 一かにかくに我身はなれぬうき袖の涙や恋のやとりなるらん重明 一諸たにも汐干るをりはあるものをいかに泪の袖はかわかぬ千晴 心そらにもめぬ時なきわか袖もしのふ涙の村しくれ雲 一題吟味意雑 いひ出ん空の葉よりもあふ夜はゝうれし泪そさき立にける桂雄 一かにかくにたえぬ涙は恋の山深き谷間の清水なるらん泰山法師 一しのひあふうれし涙の大雨にうき名流すを床のふぬけ明雄 うれしさに落す涙はあふ夜はの言葉の葉のかそいろの雨春澄 あふ夜はの嬉し涙は春雨に咲そむる花のこゝち春れ明造 ならへたる桐の枕に我妹草の秋風たゝぬこゝろうれしも下風 一忍ふれとしはしこらへす両袖にうけあまりたる涙すへなし 一人とはゝ何とこたへん口なしの色に出にける袖のなみたを大年 あふ夜はく胸のくもりの晴てよりうれし涙そなとふりける輝住 またいつとくもりなる前語の眼には涙の雨をもちけり太丸 あふ夜はの嬉し涙ははらいたる枕の声の目にやいりけん花蝶 あふまてのかたみとてこそとゝめしか今は涙のたねとなりけり軽山 うれしさにものじいはれしさふ夜はゝたゝ泪のみいつるはかりそ三千春 きぬ〳〵のわかれに袖を喰ききて猶もれ出る涙くるしな八木丸 うき人の心のかたき石をもて涙の湯にしつむくるしさ 嬉しさをつゝみし袖に今ははたうらむる泪つゝみかねけり水也 思ひ川涙の雨の水まして君かわかれの舟出とゝめに安丸 うき人のくの秋に物おもふ袖は涙の露そおきける千秋 しられしと忍ふ心におさふれと泪まろくてたえす出けり嶺雄 瀧なせる袖の涙のみなもとは胸の岩もる清水なりけり今 あふ夜はのうれし泪の雨よりそ恋のはつ花さきそめにける薫 とく〳〵と落る涙は人々はぬ枕の山のこけのしたみつ春條 ぬれにしを思ひ出てはうき時の袖にやなみたをさそふなるらん柏樹園 うき恋にかこつ泪を人とはゝ床とこたへてきえもいりたし 巡恰野集恋雑 なか〳〵につらき折にはすゝみぬる涙そうきを時得かほなる菊寿躬 うきふしの枕の山をなかれ出る涙や恋の滝となるらん山守 思ふよりいつしかぬるゝ袖たもと恋のしるへの涙なるはん白主 槙の戸もさゝすぬる夜は月影をやとすもつらし袖の涙に宜久 語鏡ますかみむかいへむけてたておかんわか思ふ人の影うつるやと 妻鏡 一世につれて心定めぬ君やなそ鏡はかけも誠ある世に魚丸 むかひ見るかゝみの手まへ恥かしやきのふにけふに恋やする身は桂女 うち見れは袖そぬれけるなさけをもあはれもこめてはす鏡は雀群 来ぬ夜はゝ鏡にむかひうはさせんはなひる君か影もさすやと われなからおもいたえけり恋やせしすかたを笛の鏡にはみて蓮也 恋やせてわれさやと思ふわか顔に鏡見るさへはつかしき哉喰主 玉くしけふはい鏡手にとりて見ましとさかりしやせより忠都丸 妹か心うつらぬやいかにたましひを鏡となせるかひはあらすて春吉 一中こにふかく思ひのますからみ見れはみるほとわすられぬかな磯住 おもかその恋にやつれしわか顔を鏡に見るもはつかしきかな琴彦 立やせて見にくき顔をきかしまに見するはつらし硝子鏡花蝶 わすれんと思ふ程なほます鏡夢にうつゝに見ゆるおもかけ秋成 迷想思思思ひとつけの枕の山のはににくしの月を見るそ嬉しき静 恋枕 うつりこの残る枕をたきねせん夢になりとも君の見ゆやみ梅信 よきさかをつけの枕の山もとに妹か姿の花うゑてよし菊成 影さしてしらする鳥の羽たゝきに枕のちりもはらひてそまつ一樹 君のこぬ夜はゝ枕も山鳥とよそにつたてゝあたはわひしも柏樹園 ひとりねの枕の山のさひしさはなきて妻とふ秋のさを採囲海 なる〳〵にいのちみしかくなりふけり枕の山に捨られてより住成 同検吟集意雑 なかくにうきこそたえね河はぬ夜はひとつ枕の山すよひして亀住 あふ夜はゝ結ふえにしの赤きいとくゝり枕に見えて嬉しも唯義 ちかつもる軍の枕は立中をへたつる山と見てくらせとか道人 咲ぬとも何たもしみに見あかさん枕の山のものおもひの花 一新まくら酢をはらひてうつふけはみかはすやうにうつるぬか菱垣 あふ夜はゝ心もはれつうたかひの雲や枕の山にいりけむ秀明 中々にちりはらひたる枕より思ひの山はたかくなりけり わきも子かくのおくの花も見つよし野うるしのぬり枕には滝屋 中々にうさこそまされ恋病のねやの枕の山こもりして美都垣 契り跡の枕の山は人しらぬ涙岩せく瀧とおちけり ため息のかゝりてくもるぬり枕なみたの雨のふらんしるしか房雄 ならへたる枕に君の来ぬ夜はゝへたての山と見てあかせとや うれしくも枕の山にかはらしとちきることはの花そ咲ける木丸 ならへたる二つ枕のかひなきは妹峯の山かあふことのなき茂登輔 あふことのたえし枕は身なしの山かとひくる人さへもなし何考 あふ夜はのふくつ枕は妹とふもの名にかよひたる山にそ有ける志都丸 武濃の愛の木まくら君とわれふたつならへてぬるそ楽しき喜妻 床の海渡の雨に水ましてよるへさためぬ舟底まくら 独居をかこつ涙はしきたへのまくらの山におつる瀧つ瀬 熱田 あふにめて別れにうとみうれしきもうきも枕の山におふらん 手月の思ひの夜やつもりけんひとりぬる夜の辛き枕は 仝 夕かほの花のことの葉かはしつさほ枕にぬるそうれしき 名古屋 全 こぬ夜はくつくため息にうだかひの雲と枕の山にかゝれり若津総 通ひ来ぬ君か心に秋の来てまくらの山そさひしかりける鷹記 近今野集恋雑 あふ夜はの閨のまくらに恥しき嬉しさふたつ並ふ詠ぬ様嘉寿雄 一筵 契りたる人のこゝろのあやむしろあやしきまてに待なとひ落る美陰 うつくしき妹かこと葉の莚あふ夜に敷てぬるよしもかな 約束の君をまつ夜は寝もやらて置の筵に折目立けり直 ひとりねの綾や錦にまさりけり妹らぬる夜の昔のさ筵黛澄 ちらさしと思ふ心の葉むしろしきてぬる夜は嬉しかりけり歌輔 意床 一床中をぬけ出く見ん枕より跡より恋の猶せむること広母 一新まくらふたつふらふるうれしさに飛も立まふ逢水の床月影 つらしともつらきや残る心より命もたえん恋やみの床喰翁 君にあふへ夜の内に玉つらん恋てふ山は床の海より有也 あはてぬる床の山路はこゝむ月のこよいもとつる疑ひの言輝明 冬こもり恋の初花さかせぬる床は春への心ちこゝすれ弘住 逢夜はの床の海には世の人の見るめはかりはおひすもあらぬ 鏡をはとり見ぬゆゑる床の海心の浪の日ことさわきつ雀翠 一逢見てし姿の花の匂ひのみのこるあしたの床の山かな千文 たくちねのいさめのつゝみそれよりも鶏におとろく衣々の床緑樹園 一今更に何といは橋中たえぬ明るわひしき逢夜の床直幹 恋鐘 鐘まつに来ぬ夜はふけゆきて恋の鐘の声のみ聞かわひしさ春 星 一逢と見る夢の花をもちらしぬる鐘こそ恋のあらし也けれ嶺雄 一よしさらはわれぬはかりにつけや鐘又のあふ夜の朝戸ふかるへし敵郷 あふ事をしり子は恋の山法師こよひもぬすめ三井寺の鐘竹草 一正路をかくつ様にも嬉しきはわれて知らせぬ古寺のかね興声や 阿波 いねやらて待あつ夜も御つくる鐘は来まさぬ君よりかうし み空にも昼はことわさしけきにやかるも桟松のあるらん一蝶 御吟野集恋雑 一ほのかにも匂ふ星かなしく菊の園生ありとんきかぬみ空に湖糸 てる月の都のとのゐなすかこと釼をおひてめくる巻影滝屋 轉つかひの舟のかゝりかかへかたの月の出しほに消る星かけ土美都総 我袖に露おく夜はの空みれは星は雨ふる穴かとそ思ふ香窓 入月の都の跡はさひしくて星のはやしそ夜ことしけれる頬也 天の糸月の枕の露と見ん響にもしるき星のはやしは嘉寿雄 てる月の都にかよふうまやちと見えけり星の二十八宿豊明 天の戸の夕とゝろきは門守の犬飼星やほゆるなるらん梅遠 天の原星のやとりの林にはあられ酒をやひさくなるらん雀翠 落て石になりぬと見れは川水の清きにうつる星に有ける陽鳥亭 みとりなる天つみ空は大かたに星の林の青葉ならまし丘人 水色の雲をなかるゝ星かけは天の川原の小石なるらん童司 風 草の葉の哥をかたみに残しくゝあかつきかたにつる星影 丸窓の月のかたへに飛星は空にも梅のちるかとそ思ふ草の門 一天の川末いかはかりひろからんたえす流るゝ星のみゆれは行也 かをりなは梅としめてん材雲の袖に匂へる天つの生かけ光永 大空にてる星かけ影高き月のかつらの雫なるらん多 一星の音に梅ちる如くあかつきの鶏なく声に消る畢な真袖 一咲いてんかつらのかちの莟かも月なき空の星のひかりは諸春 大空の星の林に影たえすうこかぬ星は中の常磐木仝 十二 かたちある水はもれつゝかたちなき風は網にもとまもそい一蝶 草や木はうとみてうしろむきにけり枝とり花を発す風火音高 わたのはらたつあら浪を吹わたる風にも白き色は見えけり美陰 水うみの比巴になれたる松風は琴にくわさしたへにやさな津都丸 巡吟野集恋雑 谷 海の神山の神をもいからする風のこゝろやいかにひかめる津都丸 もら葉をふみゆく見れはひめなき風にもあしのあるかとそ思ふ友雄 かしこしなもろこしかにを木々の葉と吹ちらしたる伊勢の神風昌保 目に見えぬ風の出入るところをは袋なりとは誰か見つけらん めに見えぬ風のちからも目に見えつ千石船も軽くやる日は豊 一心なきものとはいはし月に出て朝戸なす雲を吹払ふ風喜雀 世にもしむ花や紅葉を吹ちらす風はよくなき物にそ有ける好佳 一雲払ひかなしき月も見するかな人の目にしむ浦の汐風糸屑 吹たひに目をふたかするむかい風発見せしとするわさならん たいらけさひらの谷間の吉筵雲のあしにやふみならしけん梅信 わさひとる谷をしられはめにしみていつる涙とたるゝ山みつ福禄亭 薬ほる山より風そおろしけるやげんのなりに見ゆる谷合 原 関 むらさきの雲ゐの庭にさゝけぬる萩に名高きみやき野の原浅勝菴 うこきなき御代のしるしはあふ坂の関も名のみにのこか石こ丞弘影 一尊の関路こえぬる旅人は蔵をいてたる心ちなるらむ ゆる人は足の掟をかさに着て笠きる人をまつとかめけり鈴盤 あれはてゝ今はるかく筆にのみ足をとらする不供の関の摩前守近 仏郡 あれはてし不破の関屋は月かけと雨にゆらせておくはかり也 あら垣にちかくみゆれと心根のみけぬは妹の下ひもの關躬千里 一板庇月の扉やはみつらん不破の関屋に夜そよる影緑 跡もとりする旅笠は早雷とる賎にも似たる小山田の関範都葛 板間もる月をかくしてふり出したほとはふはの関守十文成 むくしけ箱根の関のゆきかひは櫛の歯をひくことく也けり小瓶 駕の窓のそきて通る人もあり秋風寒き白川の開元明 凶恰野集恋雑 道{ 駅 楠 旅人の名を書とむる文字の関鳥もあし跡つけてたちゆく真澄 しら雲のよそに聞しもをつきて花をわするゝしら川の関頬也 みちのくの衣の関に都人いくもかさねてたとり着ぬらん柏樹園 とりし火の花さくすそ宿とらん名に匂ひたる梅沢の駅福禄亭 渡し坊の舟にて加進はませけり焼はまくりをめつる桑名は鈴繁 色かへぬ松をしをりに嵯峨の山いさわけいらん千代の古道 ほとゝきす多し梢も雪くつの下学なれやこしの山路酒の屋 おくしれぬみ山に籠こる妙の細き世わたる道はありけり唐木 上見れはおつる毛虫の限りなし黒きてくゝれ薮の下道長雄 一野さかく後そかゝはて雨あかりゆかはや鶴の千代の古道輝明 若菜つみ松をもひきて旅なから身いはひやせん魚の方辺浅訪菴 杣人は命のつなとたのみけりふちかつらにてとむるかけ橋七福 水 在大坂 うこかさる御代のためしに打渡すゝかすかひなれやふた国のはし 諺の舟か山路にのほるめ峯にもわたす橋はありけり 一から崎にむら雨はれてかの頃と日影の匂ふ瀬田の長はし弘影 一なりはひの行かひしけき為にとやかけわたしけんそろはんの橋頬也 つたへたる咄しはかりはかけかへて今やむかしの真間の継橋清良 も水のみとりにあえてなかれたる名はとことはの青柊の橋俊豊 はひわたるけしきそ影はゆく水にうこくむかての瀬田の長橋唐織 一むかしよりたえてなしとは土はまぬ書にてかけり久米の岩はし全雄 空をゆくこゝちなりけり打雲をふみてわたれる木多のかけ橋可楽喜 あやふしとねたにこえぬ朽木橋風のみ日舟ふき渡るこらん百枝 むらゆもなかはに晴て夕虹の中絶てけりかくらきの橋重光 一人すまぬみ山さひしと谷川の水は大声あけていつらん枳風 山恰野集恋雑 浪 紺かきのつかふさ水はうつはよりさま〳〵そまる兵窓たかふ糸屑 底にこる利根川見れはうはすみしみとりの水や天つき山守 根あかりの松の股をしくゝり来て巌のかたをこゆる山水重 かとのある岩にあたりてすなほなた水も物いひあらくなりけん松木 なによる人のこゝろのたくひかもひけはひかるゝ谷川の水 一砧うつ秋ならなくに暮衣うつ音高き木曽の谷水秀明 湯風呂には汲いれねとも樋にもめてあかのぬけたる玉川の水福根亭 一誰か宿の酒にかもさんさく菊のしつくしたゝる谷川の水 佐野 ひとはしりりては岩にたゝすむる高きをくたる谷川の水糸屑 一耳あらふことをもきかぬ山すみの心をさらふ谷のみつねと ときは山松か根もとを流れ出る水はみとりの色はありけり磯住 梢をも咲かくすめふく風に水さへ浪の花にうもれつ神垣内 和田の原とはにうちよるしら浪は龍のみやこの桜なりけり諸春 わたつみのみやこのさくらこれならんふき花のみ咲いつる浪檜貝菴 海苔麁原に乗さきぬ此ことみゆはかり浪打よする品川の関元照 わたのはらみとりの沖にたつ浪は青葉か中の花とこそみれ菊寿躬 四郎の末は空の海にやつゝかまし草の浪たつむさし野のゑ静 こよろきのいそかしけにも蜑の草の手毎にひろふ浪の白玉 よしの川匂ふ桜もおよはしな風に八重さく浪の花には うくひすは経ことしらし梅つ川風のさかする浪の花かさ住也 ゆく舟にねなから見るゝうこましや風に花さく浪の山路は よしの川みねの桜をしかくめ浪の花さへ咲つゝきけり神垣内 阿波 ふけはさきたゆめはちりぬ浪の花あやしと風や思ひまとはん 松坂 伊勢守まき白草の浦による浪はふたんさくらと花咲にけり真都丸 山恰野集恋雑 滝 池 一わたつみのみちひの浪はなへて世にいきある人の脉のたくひか 一加茂川やかろく流るゝ水清みいほへの浪は玉とこそ見れ喜楽 汐風にくろむ葉色をあらはんと松の下枝によするしらす藤濃 底に見し南のなこりと思ふまて星の影さす大沢の池広好 わとつみにつたへてふかき釼太刀さやまの池は水さいりさん つゝむへき銭ならすとしらむをそこらみたすか布引の瀧真袖 岩角に瀧の白玉くたけんと布をいく重もしくにやあるらん滝屋 滝口の落こむ水にむせぬらん脊をたゝかする谷川の岩竜雲国 一いと清水あまたあつめて山姫のおり出しけん瀧の白布弘影 白いとの千筋をねるか落滝つ壺に泣せすけふりたてるは都音成 汝ものは都るよしとみ山よりそめす出すや瀧のしら糸桂女 立よれは耳のつふるゝはかりなり何おとなしの瀧といひけん神垣内 竹 一雨に残り日にさらしてや瀧の糸かくも真白く色のいてけん一蝶 岩角に落てくたくる白玉はみたれて雨とふるの滝つせ静 一幅広き衣の瀧をとことはにいはほはかたにとりかけてけり重明 音にのみ聞し数の瀧をけふうちみれは猶高くひゝけり楽住 習ひても手おほえあしきたくひかもみなきる瀧の糸のふときは崔琴 うらうへの名にこそありけれ白原によこれはみえぬふるのなせ柏樹園 はけしともふるの滝つ瀬知ら立てあられのことく玉そちりける明一 大原女かひさく黒木にくらへては重々雪なり白川の瀧滝屋 小すゝめのねくらの竹の小雀をさすへき棹といかてなるらん都音成 さひしさをへたつる塔にゆひてまし世の秋しらぬ庭の呉行福丸 一月と日のかけさすかたへ鶯のねくらの竹のねをやはるらん千晴 まつひに門のかさりとなりぬへしふしのそろひし庭の呉行鹿住 ◎恰野集意雑 松 一葉に露をのせておとさぬことし竹末には馬とならんしかしか千晴 君か代の恵の風の袋にも納る弓とたわむくれ竹重明 うくひ浪の声の月日そこもりける空のみとりの国めくれ行亀住 梅よりもうゑて嬉しや思鳥のはやもとひくる窓の花竹元明 春を秋秋をは春と逆し給に年をつめはや竹の老せぬ直離 よる浪にひかれしとこそ磯山の松はいはほに根はふなるらめ 阿波 君か代の千世ことほきて哉松もたちよふ時に根やくりけん静 わくら葉をなほす心か枝されて瀧にうたるゝ岩かねの松亀丸 万代のさかえめてたき生り松恥ある世とはいかこといふへき琴彦 み山より都にいてゝかさり松はつるか色のあかくなれるは政明 庭ふりき苔をのそきてあやふしと松のみこもや青くなりけん田寉 みならふこと木のなくは千代ふとも松はよはひの数をしらまし言花園 しら雲のたちゐる嶺の松かえはしなぬ薬を放るけふりも都音成 風あるゝ高ねにならふ松かえは海路によする浪のいろかな光永 たのしみはぬるにしかしと月花に心よせぬか手まくらの松嘉寿雄 一壱秋のいろこのみせぬ松かえは恋にうとかるくやうゑけん望月館 岐阜 一女天岩ならふ二石の浦堂もみさをまもりて千代いへぬらん七 七福 十かくりの花のさちをや侍ぬらんねてのみくらす手枕の雲海老雄 人みなのうたひめてつゝいにしへも今もかはらぬ高砂の松松梅盛 一鳥折の夢や見つらん庭の奏あせをかくこと露はぬきける正明 よる浪にしわは見えてもよる年の皺は見せさる住よしの松 百年に所枝の数をかそへけり松は色をもかへぬのみかは仝 しけ引の屏風のうちや村句に墨絵とめたつ松のむら立音丸 こゝ等にはことをとはれし万代のむかしをとふは松にそ有ける酒の屋 監恰野集恋雑 雀 一呼風も枝をならさぬ御代なれはやづらに寝たる手枕の雲城人 千代のかけこもるしるしは釘つけにうこきなき世の箱庭の松 から崎の松の老木よねへてもひとつとよくる名さへめてたし歌輔 とことはの千らせの松は春秋の花紅葉をやうとみ居るらん鶯面 さゝれ石なりたり岩に松をひてうき世の千代の数に入けり 一大きなる月さし上る山松はこれより枝に瘤は出来けむ照也 風かよふあねはの松は琴の手のおくゆるしをはいつるとりけん梅遠 山ふかみ人もすさめぬ小松原おのかまに〳〵千代やへぬらん喜楽 よるの雨にいさこととはん辛崎にいか程かふる松のよはひと種母 仙人のこゝろ長さそしられける手飼の鶴のあゆみ遠きに檜月菴 千代の坂ごえたる時のすかたかも裳裾かゝけし鶴の毛衣菊寿好 一麦の穂の綿何にせん毛衣にわけへたてなく子を思ふ鶴春條 大原や千らせの松に立詩はむかしのことをかたりあふらん貞吉 よる浪の玉の数々おもひ子にしかしとなくかわかの浦鶴香窓 子を思ふよるをうしとや入夜のかねおとろかん桜田の鶴友雄 諸鳥は君とあふかん白こへの御衣着ならしく千代の友雀滝屋 あしたつは霜のまくらに松風をあてしとひなに母おほはん其雪 馬橋 一白浪のよすると見れはわかの浦あし辺をさして田断か残りくる一入 仙人の庭に遊ひて千とせふる詩も毛衣着かへさるらん雅持 一よはいをもおなしかねと契りけん松の二葉の友のひな鶴其雪 親鳥のよるの思ひにひなつるも遠く遊行の浦にあさらし酒の屋 いたらきの紅葉色こきあしたつは羽袖の霜にあへす暮る音高 巣にこもる鶴は子ゆゑの物思ひに去よふへくもあらぬ惣か春條 花と見る白雲かさすあたこつは千年の老をかくす心か都音成 明恰野集恋雑 民 匠 社 漁 二日冬しらぬ伊吹の里々へもわらひとらんと山をやくらん福禄亭 一世をわたるつなね也けり墨縄のまさしき糸をつかふ工は弘影 すみなはのたゝひとそちのたくみより玉の臺につくりあくらん一の屋 扇もてはやされにけり風いるゝ夏をむねとしさつるには雀翠 一墨壺の車を先は引てけりたくみか門をけふたつるにも滝屋 栃木 珊瑚珠の玉のうてなもあさからぬ智恵の海よりたこえ出すらん 一影うつる田草の浦人ふしのねのすはしりといふ魚もとりえん 一御あれてさきはひなしや蜑に舟魚につられて嵐にこそよれ同芳 いさり火に灸のよりくるたくひにて業によりくる姪のつり舟桂女 一かしろしな海なき国の山城に貴舟の宮のたちていさしも鹿住 あらふねの神としきけはたひちけくのりみをあけてなこめ申さん よの国の神なし月は賑はひて常にいつものやしろ海しな 賀 一千代よろつかきりしられぬ君か代は池の汀に遊ふ霍気紫 筑波根の瀧の流れの末まても君か御かけは渕をなしける 君かにはひ米の文字ほとつみぬれと猶ますかすか後のはかりしられに蟇丸 寄国祝 当座 檜月菴大人撰 めてたしな角なる銭も治まれる国はこかねをいるはかりかは一螺 不尽といふ山の司をたてものにひくからぬ名や新つ洲の国梅信 みちめくの山につゝきてむさし野の土もこかねにかふる君か代宝市亭 松 仝松 柏樹園大人撰 十五 厚木 妻あれは吉ありと松も春秋の花もみち葉をうとみするらん鷺一面 宮人の手にふれんとや姫小藝かねて根さしも浅くおひけむ権国 子日にも門かさりにものかれきてこゝろやすくも松は千代つん諸春 ふりかゝる雨しのかんと立よりてけつく雫にぬるゝ笠まつ水游国 いへ吟味意雑 なしよりもしろしよ雪に花咲てみとり立なきをふの浦松水游園 千代をへて高く生ひけん影みつるふしを見おろす田子の浦松仝 とこしへに千世ふる松と庭の面に居るにしゆ木の杖やはなこぬ光永 其のちは幾世経ぬらん昔より久しといひし住よしの春静 十かくりの花のさちをやまちぬらん寝てのみくらす手枕の雲海老雄 あは嶋の宮居の松はこほれ葉ををさむる針と人もこそみめ南向堂 もみち葉のもゆるか中にたゝく木ひになりかねてそふる松か枝花咲菴 くれなゐに渡ぬはかりを心にて愛も時句の声はありけりけり牧の屋 夜の雨にぬれて朝日にほせはにや緑色こきから晩のまつ広母 われひとり醒ぬと松や笑ふらんふもとの紅葉酔る顔見て静 今はたゝ笠なす寒の下しめて世のうき雨に袖はぬらさし仝 るとせふるえにしや結ふ鴬花をふ赤き糸ひくむこの山まつ梅信 久かたの空のみとりにくせつきて冬野に松はときはなりけり柏樹園 冬の部追加 かく霜のおしろい見てやをし鳥も池の鏡に羽袖つくらふ房雄 八 ほかけと見ゆる氷は千代能るいたゝく桶の底やぬけ出し梅里 手柑理の鴨の足さへ雪に跡いとへはそつる所なきかな伊勢守 恋雑之部追加 壊 わけいらは末いかならんはしめよりおもひなやめる恋の山口長樹 一花とよふ名はありなからこつ浪の風といかておもふとちなる仝 ますらをの目にも仏のあるるめみとりやさしき嶺のすを松輝明 都へは遠きみ山の姫松よ琴ひくわさをいつならひけん小松国 上野 天の川としろになして名にしるき軍を破る星はみえけり伊勢守 赤沼住人改 一酒にせん米つくる頃は酸さめの水よりほしき養老の滝住明 巡吟野集恋雑 二十四大尾 住明 白雲の花をかさしてまふ雀はちとせふるてふむかくすらん雪主 箱根山関こゆれと初旅はわらちにあしをとかめられけり小拾国 藤にはならぬさきより西意の夕日をおほふ肝のむら竹歌業 狂歌恰野集恋雑之部終
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