參篭百首

creator
森羅亭萬象(二世)選
created_at
2026-08-17T19:23:18.402Z
updated_at
2026-08-17T19:23:18.402Z
field_rights
CC0
field_creator
森羅亭萬象(二世)選
field_language
日本語
field_has_image
true
field_identifier
10010000015493
field_ocr_status
completed
field_title_yomi
サンロウヒャクシュ
field_attribution
東北大学
field_oai_datestamp
2025-12-02T15:07:44Z
field_oai_identifier
10010000015493
field_ocr_updated_at
2026-08-28T18:53:25.651810+00:00
俳諧歌参籠百首 俳諧頭参籠百首 二月 三月 歳油 歳仲春山霞春雪朝鶯沢若菜 餘寒梅薫風行路柳春雨若草 金銀壱枚 春月帰雇初花見花翫花 惜花落花籬山吹松上藤暮春 四月 首夏待時鳥聞時鳥早苗溪五月雨 夏艸夏月水邊蛍夕立六月抜 五月 六月 早秋乞巧奠萩風萩露秋夕 初雁秋田夜鹿暁暁申山月 湖月野月渡月庭月関霧 聞棲衣重陽宴杜紅葉川紅葉九月盡 俳諧歌参籠百首巻之上 屋竜 森羅亭撰 年内立春 毛々豆多布 陸奥一関 一年の内に名にはたてとも来る月の一字浅さと春そとする声音 諸人の心ひらくるとしの内は花さく春の室にや有ん目積 年の内にせわしくみ云のきぬ配り引たらぬものは露成へし隅成 陸奥にわたくし大も有ものをいかに春たつ師走成らん多万伎 巨勢山の椿咲けりとしの内につら〳〵春のけしき見せつゝ川船 毛々多良須花三 年の内に春はきぬとて衣配霞の袖もたゝんごそある雪也 としの内に春は去年ともことしともいはでの関や越て来ぬ難奇免 ゆふ〳〵としてゐられしと春やたつすはる間もなき年のゑさに奈賀女 同花二 打ら玉のとしや遅しと門に松立てまつとて春は来にけん物築 年の内の月日残りて来る春は余慶りてたしと申入ればや真名井 尾張名古屋 禅寺の門に立春大吉をはるより先へ春は来にけり影住 早咲の梅にや春の後れしと急て気の内に来ぬらん比左志 としの内に春ははしりて来にけらしいた天井の煤もとらぬに鉋屑 たまされて鳴鶯や梅を見てねの内より春や立らむ槌丸 年の内にかざりとともにたつか弓はるといひつゝおしつまたる保登理 寒しとて春待人にいそかれて手を残して冬の行らん同 明て来る春のやうにも思はぬは分けん年のへたて心歟重喜 一とせの暮はてぬ間にあら玉の春の日数そふゆといふへき真弓 年の内にはやもゆづり葉歯朶そえて注連もろともに其朱注連縄 常陸笠間 としの内に基立しとは降雪にひともす梅のけしきにつく駒主 冬の内に春は立ともいとけなきことしの世話やおほく成ん以登良 としの内に春は生れしけふよりそむつきの用意するも。長き宿成 武蔵青梅 年の内に春たつ浪そ分かたき二見の岩に沾連ははれとも綾磐 加幾加曽宇花一 正月は何処迄来しと年の内に先たつけふの春にとはゞや多万伎 蒸篭の酒気も霞て年の内に春の次めを見る鏡餅千賀江 陸奥二本松 来る春の袋の口は秋洲津にまた此年もそこに残れり山住 正月を子等か待とて早としの内神田迄春は来にけり注連縄 恵方棚としの内外の松餅定規にしてや春の立らん物築 世話しなき暮の内にも春の来ててんてこ舞や丸一の獅子松蔭 正月の頓てきぬると年の内に霞の衣はるや立らむ雪也 冬に春たちあふ年の関角刀霞やいかに引分るらし難音免 陸奥二本松 としの内に春はきしそと松か枝のみとりも霞む住吉の浦銀子 冬なからけふちら〳〵と糸宴としのくゝりに春や立らん豆 おしなへて。しつ心なき年の内に春や貴人の姿なからむ万象 山霞 毛々豆多布 筑波根の此面かのみに雪はあれと霞に消て見る影もなし諸実 打かへる其段の波もむらきのこさでめしたき末の松山琴葉 陸奥一ノ関 弓始よしといふ日に立ぞめているさの山にひく霞かな御常 時しらぬ山とないひそ春くれは笑みを霞の中にふへめり喜代志 横に寝てゆしく空洞の跡先もなして引出す甲斐の覚 同花二 花の波みふねの山の霞をは友むやひする綱かとそ見る寿 武蔵野に立あまりてや筑波をも霞に引て山も見えさる柿人 むさし野のゆかりの色に霞ては山なしとけれ青梅秩父も真臣 越後五泉 おのつから端山の方は一重なる霞を分て八重に深山路仲住 陸奥一ノ関 山〳〵を遠く引せて春の日の長くなりしは其段成べし鈍屑 市松に染やしつらん色きぬの繁かすむ春の山畑杉成 音にきく尾上の鐘の跡つけて外山の霞長うひらん琴通 春けしきをりこそよけれ高我の山の霞もきぬとみゆむ松蔭 立てみつ寝てみつおきつ嶋山に霞は日毎かゝりてそゐる楽也 紫の服紗のやうに引つゝむ霞の中の玉津嶋やう富恵舛 陸奥二本松 ふく風も乱りにきぬの薄毒日〳〵こくすらん此しのぶ山実次 妹脊山互に思ふ中なれや霞の袖も両方へひく弥津峰 若餅の杵ふり上てつくば山根はりも春の薄霞かな年長 佐保姫の霞の衣雪によごすな山の裾はひくとも東児 花鳥を袖につゝみて朝霞山分にひく二並の峯千賀江 草も木も踏ならしたるいにしへに今も霞のた一日養山秦巣 今朝覚ぬ夢か現かうつの山に霞立しひまとふ暮の細色愛瀧 陸奥郡山 はつ瀬女のさまを真い似てや笑ふにも霞の袖にかくす山口歌形 照そひて霞は空に立田山紅葉より日をおしむ夕盛綾住 加幾加曽布花一 春霞深くかくれは奥まりて浅香の山も恥てはえぬ歟近住 光陰の矢面にたつ春霞ほろやかけしと見る兜山本枝 陸奥二本松 鶯もに上て出しや御船山霞ははやく谷渡りせり木葉 山の端に雲か花かと争ひの中に立しは霞なり見霍 咲しより花をおしめはをのれ先霞にむせふ春の山人連人 みよし野の山に霞の糸引て花の衣やほころはすん月影 咲花に霞の服紗打かけて蒔絵の重とみる箱根山重喜 越後五泉 山姫も伊達やしつらん春風に霞の衣きつ脱つして優成 笑ふとき霞の袖をおしあてゝ口をかくせしをはつ瀬の山道足 大君の姿よ不二の高御座とぼりやかけし霞成らん万象 春雪 毛々豆多布 陸奥二本松 早わらびの手をあてゝたに一日ももたせて見たき春蝶音実次 咲梅のいたみやせんと思ふ間に育る雨となりし清雪家樽 みとり子の山登らしく笑ふ頃あは〳〵といふ雪そ降ける種成 毛々多良須花二 あかしにとかき立る間もなかりけり風にゆりこむ窓の法音真名井 春の夜の夢ばかりなる白雪はさめて跡なき庭の明ほの雛堅 武蔵青梅 おのつから春に心のおくれるか水に戻るもはやき陰雪綾繁 足跡をいとふとしりて降雪も春は跡たにみせぬ成へし琴葉 花の枝をりそやせんとをしみつゝ降ればそ雪は積らさりける綾住 同花二 武蔵青梅 花さかぬうちの詠めとをしめばか花より早くちれる浅雪綾敏楽 詠には水と成ても絵行野の日記に姿はき発あは雪折主 毛々多良須 いつわりて花とや人の心にもうつろひ安き春の後雪汐時 風に散る花と見よとや咲花の妨をしてふれるあは雪諸実 降うちに雫となりて我軒のつまでそつる春の浅雪目積 駿河府中 風にちる不審紙かと見上れは文よむ窓に春のあは雪静左 春寒み吹風は身にしみなからしみてはふらぬけふの後高楯成 陸奥一ノ関 武さし野の広きゆへにやをやみなく降とたまらぬ春の鈍眉 降ふかと雨に心をつかふ時やすむ間になく消る後ゆき真名井 若草のもえ出る中に散て来る雪は野風呂の灰にやらん同 早わらひのよはき挙に漬音の持こたえすや消る成らん舛成 ちら〳〵とふりくる雪は咲梅の花笠もれて袖にとまれり同 つもの間も浪うち上て磯による雪や木つみの上の汐錆真臣 瑞籬の水に早くもなりけらしきねか鈴ふる袖の淡雪粂流 加幾加曽布 陸奥一ノ関 つむ雪の翁かと見しは偏目にて霞に埋む春の山〳〵鉋屑 左義長の白灰院に飛来しと見れは跡なき庭の御宿家樽 庭の松にふせし摺鉢不尽の如春の雪解の煙り立けり寿 白紙とみるまて雪のふ老門わざとはかりにかき初そする槌丸 梅さくらさかぬ枝よりさきかけてちれるや春の雪の初花冨恵舛 朝ゆたき穴さに梅の薫りより衣にしみる春の洗雪半日亭 つむとすれは其侭きえて目にみえぬ風まぜに降る春の後雪象 朝鶯 朝日さず竹の園よりもれ出て細くのひたる公分の声喜撰亭 経よむにつれて氷も段々壊朝日に向ふ鶯のこゑ声音 汝か親のうみつけからかしつけ弓のあさいともよき鶯の増成 寝ふたさに夜明もしらぬ窓に来てひとしいでも告る草粂流 一鶯の袖から聞て朝起の高きにうつす押入のおは 毛々多良須 朝まだき目さましによき鶯のほうにうまみを含て春満 朝またき初湯戻りの道すからゆつたりときく尊の声真名井 鶯のねをせし花そ一りんもよそへちらすれ風の梅がく成好 下総助ケ寄 ふし柳目をもひらかぬ枝に来て朝ねをおこす庭の尊出来成 朝手水くむ湯もぬるくなしてけりうめに来て鳴尊の音に透成 同 朝戸随て出れは門の松竹にめてたく立るうくひすの声西信 陸奥二本松 ゐきたなしといふとも我は鶯の朝音このみて弐なからきく山住 有明の月また入らぬ我園にひとくと鳴るうくひ寸の声千香子 朝な〳〵鳴尊は谷の戸を月星のあるうちに出けん羽締 尊を心のうちに留置て今朝まつ祝ふ七草の術真臣 加幾加曽布 春は頼朝寝好める人たにも目をさましたる鴬の意仲住 西真二木松 香に匂ふ梅に鼻むる朝風はひきて嬉しき鶯の声堅女 尾張名古屋 飛騨人も口やとつらん工合よく天の戸明る朝の鶯雅流園 サン上六 塒から声運ひ出す鴬のひとくるまにも引声にも引き 陸奥二本松 来なけよと朝な〳〵に指折て月日をまつか崎の暮杢女 ゐきたなき人も声にやゆすられて手もなく起たるの鴬雛躬 夕暮にすたく蛙と顕身とり分てよき朝の労正義 朝機嫌あしきい人たに鶯のやさしき声に腹はたゝれず於兎門 引まだき人を起して餌より先日をもすらせる必然の尊宇万之 月星の幕をも春の柳嶋朝つとめする鴬の声真菊 庭の梅折られし夢は覚てけるをとり立やう剛の声千国 日いでたる音に鶯の目さましく人の朝寝はきらふ成へし綾住 待はうし籠の鶯餌かひをもまたれじとする春の影起万象 澤若菜 毛々豆多布 一あさりする沢辺の田鶴も若菜つむ翁の友と見えたき琴葉 毛々多良須 陸奥一ノ関 水も漸ぬるくなりしは津辺なる若な日にしみゆるゆへかや鉋屑 沢辺なる稲春興も這出て春に若菜の飯や焚らん杉成 心なき身にも春そと夕暮に鴫立沢の若菜指なる月影 春寒みかたき氷の沢水に心くたきて指根芹かな喜撰亭 下毛野渡 また雪のふる野の沢の初若菜つめどたまらぬ神そ露き茂登 茂登也 籠に入れてつとになさはやもえ出る蛍の沢の初葉菜は写 冨恵舛 橋はやす若菜は君を祝ひつゝ千年を不老不二の鳴沢注連縄 広沢も霞埋てむらさきのこさはとめて若菜指てん正義 サン上七 加幾加曽布 八ツ橋の沢の若菜を行水のいとかけ廻り蜘手にそつむ増成 芥薺つまれぬ先にほと〳〵と雪解の沢の水そたゝける家樽 出羽新庄 今朝祝ふ粥の若菜をいさ指ん飯たく蟹もみゆる沢辺に真坂樹 袂まつはねたる泥も沢水につまさて洗ふ若菜たしなき麟馬 陸奥二本松 もえ出て雪解の沢に摘居米洗へる水もいたかなる春堅女 手弱女も沢にそみゆる初若菜しめし野守の妻伝有し な 餘寒 下総古河 春くれと越後あたりはかくやとて空さにちゞみをもつしき笑人 同花二 留たくもとまらで雁のゆゝ中に残る寒さはいつ迄かをる万戸 冴帰る春の空きはふるとしの余り葉なれやふたを生ぬる雪也 春来れと穴を思ひやれ障子ひゆと声してはいる夕風琴葉 毛々多良須 屋張名右屋 一朝川の舟乗初に幕張て水主とも堪ぬ風そ寒けき雅流園 陸奥仙台 梅もまた笑はぬはつよ春寒み筧の口も氷とちけり筆麻呂 下総古河 日のあしは伸ても春の空けさに指の先まてちゞむ聞也影井 陸奥一ノ関 春もまた冬の穴みさの餘りものふくとけさへまだ所竹香 去年よりも春の空さのますといへは餘りて雪のこぼれ百本枝 風ふかぬ日たに障子をしめはらの軒の氷柱と見えてきかき目積 冴かへる今朝の寒さに咲梅の花を雪かとあやまたれけり於兎門 吹風に垂るみもみぬ凧の糸春にもよりの戻る穴き真菊 引のばす霞の神に子蕨の手も出しかぬる春の窓たける二字守 サン上八 加銭加曽布 上毛小幡 風冴て春とは猶も白雪のまだ古としと思ふ寒けき寛見 さへ帰る風に寒さの置巨燵あたりは春のけしきながらにきさ子 冴かへり雪ふる年の内に居て春ともしらぬ埋火の元近住 残りたる寒さに風の送りしと恩に着せたる紙子をかしき重喜 芳野より国栖の貢の其日からうら帰りたる春のきけさ一旦 上下や袴着て人の来る春は氷もかたくはりて穴けき目積 春寒み風さへ氷る身をいかに炭焼ばかり思ひもうけし万象 梅薫風 毛々豆多布 かる〳〵と梅の匂ひを運ひてもほこり気はなき春の嵐琴葉 うたゝ寝の枕に風の運ひ来て思夢にやあらん袖の梅音一旦 瞳夜に梅のけしきは薄けれと香はこく袖に月の下雲喜 竹火の花のちら〳〵ちるもよしそれから薫る風の枝か香種成 同花二 梅の国見に来る人を嬉しとや薫りも門へ風に出向ふ艸成 吹送る梅の薫りやそみぬらん霞の袖も匂ふばかりに真名井 春されは空も長閑に梅か香の薫るに風の有をつれ奇志丸 陸奥一ノ関 吹こすは咲とはしらし梅か雪を呈へる風そ花にかたき艶眉 上毛厩橋 花咲く人の心も春かけはしつどして居ぬ風の梅か香妙約 立有ふかよはき風を力にて来る梅か香そつよく廻り音高 花守の梅見に来よと心にも呑来なる風の使うれしき保登里 陸奥二本松 すれみの技あまりてやもらすめ通りゆく跡の匂ふ梅音路成 長閑さに梅の匂ひを吹送る風をそとも思はさりけり東児 梅かえを船に遺れは花の香も風待をして出る成らん麟馬 わらはへの破る障子のあなかしこ吹底げてよ風の梅香好成 加幾加曽布花一 陸奥二本松 夜目遠目分手と梅の花笠をかふれる風にしらせたり鳬縫女 誘ふとも吹なちらしそ梅に風遠きは花の香に匂ふなる組子 武蔵青梅 起もせす寝もせ侍夜半をあかたり梅か香誘ふ風にれて綾繁 吹風に匂ひおこせば目の覚て梅を伏見の舟の御方愛滝 同 いとけなき春の寒さもいとはす伝友だちつれし風の槌槌 春かせに遠く薫りを出さしとや先を留たるかり辺の梅山角 咲花のありとしらする風の来て暫しは留る袖の梅か香鴛鴦 春かせのしらべゆかしき梅か枝の花の薫りそことにたへなる組子 梅か香を送れる風の手伝ふてきはつく斗袖にしえけり舛成 袖の香を人の誉れは花守も鼻おこめかす梅のした風和樽 巽の卦の風にも薄ぬ瓦よりわれてにほへる毒花心易愛漬 濡縁のひかりもみえて朝な〳〵ふきていで来る風の うめか香 行路柳 青柳の枝垂し影をうつしてやいく筆わくる野辺の細学俊英 川添の柳にのせて行道へ風も及はぬ波を上けり諸実 声なれぬ旅鶯にやとりをもめぐめぐめる野詰の青柳枝真名冨 一綴りあふ道のゆきゝを見習ふてかたへによれる風の青柳羽繍 毛々多良須 道はたにたてたる茶屋の肴板か来る人招く青柳の枝増成 陸奥一ノ関 中川の松見にとゆく道すから風にはら〳〵青柳の露鉋屑 春なれや風か透へはあちこちとより道迄もしたりを柳成 毒か風も柳の糸をくるま坂たら〳〵もりに露も枝ゆり枝折 往かひにたみの柳のたれもかみさそはれ安き春の心は秦加女 青柳の糸よりかけし春風の道筋かへてみとる穴さ。連行 多葉粉の火からんと思ふ道すから先に烟りをたてる青柳守吉 道の辺のゆきゝの袖にすり寄て心をつなく青柳の糸喜撰亭 ゆく人の肩過る迄のひ過てたれも見あくる青柳の髪雪也 いと細き柳の腰もかけ茶屋に往かふ人をよれと招く歟難哥免 的にして来し細道を見帰れは弓と弦なり春の音柳重喜 手綱して心の駒を引とめつ道草くはす青柳の陰同 出羽高畑 手を延て道行人のむすべるは清水ながさゝことの青様真名冨 詠め居て道はまとへとやよ柳笑ふなか目はとがめ兼して寿 加幾加曽布 また篭裏とならぬ先より旅人の肩にもかゝる青柳の枝真澄 枝にしも餅花咲す青柳は初卯参りのかさし也けりみと干 来る人に往あふ風の細道は片よりてまつ青柳の糸槌丸 穢をへるやうな徑を行ゐけて柳の糸の道はいく筋楽也 いそかしき街も春とからくるの引かはりたる青柳の糸年長 風諺ふ侭に行〳〵賤の男のわたくし道の柳をそみる琴葉 越後五泉 玉鉾の道の柳の糸ひけは誰もはたして詠てそをる雅枝 輪にむすふ火縄片手に縄手道けふるもをかし風の青柳真菊 芹の緒にも春の色そふみとり飴三間ばりの青柳の枝万象 春雨 毛々豆多布 尾張犬山 潰れ〳〵をよめど徒然なるまゝに日くしかぬる春飛庵石成 武蔵青梅 されはこそ白く見へけれ侍花のとぢめをほどく春雨の糸綾繁 毛々多良須花三 花見をも一日さきへ送りけり春のあしたの雨のあしにて重喜 下総古河 かた〳〵と結ふ氷をやはしかに翁よとかゝるはか雨の糸望月 同花二 陸奥一ノ関 世を捨し身をも恵むか春雨の音さへ忍ふ山の下庵苞丸 かき餅を八雲御抄にせんし茶も八重垣匂ふ庵の春雨雛望 よいほどにしめる中にも水餅の火桶にかわく春雨の房守人 運ひ来て空も近くや成ぬらん次第にきこゆ春雨の音満成 肥前佐賀 妻よふる猫のちり毛と疑ひの晴やらでふる春雨の空響 まてゆに宵から寝たる庵の戸をほと〳〵おとす軒の玉水真名井 毛々多良須 下毛野渡 降そとはさらに見へねと松か枝の雫の音にしらす春雨真問 陸奥一ノ関 世の夢のさめし住家も春雨に寝ふけはつきてはなれざり鳬折香 大和竜田 ふるぞとは目にみえねとも打払ふ柳に船のぬるゝはる雨山角 尾張名右屋 是ままにしめして花を育たるをやみたにせてつれる春雨真澄 花といふ子を持てより春雨の何にもつよくあたらさりけん琴葉 常陸笠間 軒近く音頃は逃る穴さかと聞は追行はるさめのあし三衣 客島の道のほこりも落つきて哥まてもねる春雨の庵東児 田も畑も万よかれと降出す闇も吉身の村の春雨春満 武蔵小野宮 水をもつ月のかたふく山の端にゆりこほれてやふれる春雨金厚 蜘の囲に玉をならべてほち〳〵と京くり書す軒の春雨綾住 花一 春雨のいとつれ〳〵にをと女子かまたふり出す双六の賽真成 うばと呼ふ桜はあれどこのやうにそたつる花のかそいろの雨真広 下毛赤羽 春雨のいと長〳〵と手枕に夢さへむすふやうに静けき見霍 糸よりも細くたれたる青柳の枝にふとりをみする春雨正 春雨の足もちとづゝ運ひけりまたいとけなきみとり子の山月影 いとのやうに降る春雨は綻ひし花の衣よりほつれ出しけん楡成 花の紐とくと詠て諸人の趣向にむすふ春雨の糸増枝 鉢の梅とり入るゝ宿のつれ〳〵に常餅もほしきはなさめ真音安 潤ふて咲せし花のちらぬ間につゞりてをけや春雨の急汐時 草木をは育てし親といふ事を誰かいひふらす春西の穴種成 よいほとに雨戸に油ひかせてや音なしにくる春雨のあし枝折 春風に霞の棚や払ふらんほこりのやうに雨のふれへは川船 新らしく草も木のめも春雨のふるき松迄ぬれて色そふ祭加女 甲斐市川 春雨は花もちらさ侍世の人の心をつな〳〵軒の糸水常道 陸奥仙台 雨の庵愛雄 野中なる清水を夢に結はせてぬるき催ふす春雨の庵愛雄 同一ノ関 よし野川花をさかせに雨降れはのほりてみんと鮎にさはしる十戸音 常陸笠間 生立の小草にかゝる粒も猶こまかと見ゆる牧の春雨友由 空さまて遠くなりては耳たてゝ聞に聞えぬ春雨の音仲芳 つれ〳〵の宿に春雨ふることを軒にしらする玉水の音弓彦 軒をうつ力なけれと世の人の心うごかすはる雨の庵楽住 武蔵青梅 人こゝろかく有たしと春雨は真直に成てしめすなるへし綾繁 此頃の花に曇ると見るほかり脇目は小しぬ軒の春雨万象 若草 松の葉に似たるわか草枕してけふもねの日の夢やみるらん琴葉 生酔のあしたのはらに好ましき水雑炊や雪の若草愛滝 をらは指をきらんといひし梅のもとにちとめもゆる春の名なり 出羽高畑 去年の雪おほひし竹の下道に三寸斗のひし若州真名冨 久堅の空のみとりは武蔵野の草より出てや色の増らん同 常陸笠間 一花妻となりぬる萩に二葉より契るか側に鹿の落角友由 陸奥一ノ関 風にふす程はのひねと春の野の若草みれはねよけ也けり声音 吸筒の瀧も野道の若草やひとつ二葉に杉菜生り和樽 若草のもえ出る庭の地水の藻へ出て遊ふ春のいろくず物築 芹藁かぞへ摘しが雪消てひとてみとりの色の色のわか草比左志 加幾加曽布花一 つまたつるやうな若草されはこそ高餅の水の底を流るれ直名井 下総古河 狐火の夕部はつてケ朝みれは青くもえ出る野辺の若窪深華 武蔵野の岩のゆきしめの雪分つゝ摘める春のわか草田刈 サン上十四 春雨は糸のやうにもみゆるとて針ほとめぐむ庭の美草近住 下総古河 春日野の飛火の野辺の煙りよりもえ出にけん春の客略雨霍 陸奥一ノ関 芭九 さすらひし人の跡とふ浦見にはつえなくしけん磯の輩苞丸 父母の雨に育てしまつか崎うぶ君もいまた分ぬ若草本枝 垣根にはちりもいとへは若草のつましき人と人や笑はん寿 春雨のめぐみをたれし糸よりそ糸にのひ出てむすに万象 春月 古河 一春の夜は月の桂男志のはせてしら玉姫の袖そ覆へる難奇免 咲つゝく芳野はつ瀬の花の中を分てそ匂ふ春の夜の夜の花の夜のこ 滋賀の花熟たてゝにほのうら〳〵と船の帆のかに匂ふ月影保登里 何となく目の上おもき春のよの月は我にも笠やきすらん目積 板間もる不破の茶屋のもり桶へ笠着て覗く覗く春の月目住 空の海に霞の網を以くら引てうは濁りする春の夜の月一旦 かさらへも開らける花の夕立の晴れてはさらぬはるのよの月槌丸 雨をしもふくめる顔は出替りの袂にしのふはるの夜の月万戸 透ゝれる霞の色は弘徽図に晴月夜のさまそゆかしき真坂樹 春の夜はにづき光りの月影もおはゝならざる気也けり諸実 高畑 上みれは及ぬ事の大空に月さへ笠やめし給ふらん真名冨 天の川流れて出しは春の夜にと遣し氷か薄きる影千国 真名冨 陸奥二本松 立出てみれは蛙もすむ池にすまで霞にせぬる月かけ安利州 サン上十五 山の端にきし出し花の枝雲をよきをり所とや月の動かぬ真名井 氷とけ霞流れて行空にぬるへもよとむ春のよの月杉成 霞たつ一重几帳をすきれる程かつくしき月の顔な家樽 咲花に匂ひあふ影を中君に霞てわくる春の夜の月花子 霞けくも霞霞ふて月影の光は花にゆつる春の夜雛子 春のよの月も餘寒やいとふらん霞の衣かさね着にして槌丸 隅田川霞流れてきす小網に月の光すうつるしら魚雛望 朧夜の星のあかりの梅か言も月の匂ひに消されとやせん保登里 春風に動く柳を降雨と思ふて月の笠やめすらむ堅女 一花に曇る空を雨かと用心に傘やさすらん春の夜の いく春もおなし霞の衣着てはれをこのまぬ月の柱男路成 下毛野渡 みえ渡る霞の海の月の船にかけたる影もほのくらき空茂登也 陸奥郡山 芳野山花の吹雪にめす笠もとられさらなる春のよの月国人 同 鶯のほうとひと息かけてより爰にくもる月のみづゝみ影住 木賊山月の出しほは磨とも自然とさびてみゆる寿記 さく花の雪のあかりにそむけてやあらはにみえぬ春の花行長 こほれなは雨とやならん水持て霞の棚にのほる月かけ隅成 鳥の給ふ梅の花笠ちいさしと月は無段の衣傘やさず声音 吹くる穴さよけんと梅の笠風にそむけて月やめすん千一刀斎 相模藤沢 絹ませて霞かる影の高蒔絵底いたりなる春の文甘里人 サン上十六 甲斐谷邑 咲たらぬ花の餘情もありはゝや匂ひ残れる春の文鳥 霞ぬる衣も喜撰か哥のさまにさたかならさる春の月影乙近 大空を霞の網にはるの夜は月の花を追ふかとそみる石成 影濁る月や霞のきぬかつき種芋あらふ宇治の川岸真澄 青柳のけふる梢に影とめていとしも霞む春の夜の月琴通 山の端の桜がとめば春雨の孫とやいはん腫夜の月柿人 影みれは欅の枝を落さらにあやふの月や寐ふたけにて雛賀 若人のすさみにかけし目鏡程かすむもをかし春漿の目下蔭 氷ともみえける月の春くれは解てや濁る猛夜のかけ穂並 霞空浮あふらかとかきがすぬぼこの影や眺書のて於鬼門 木賊もて風の鹿ける月影のありとはみえて最む素金厚 天の戸を開きし跡に障子もや薄紙ひとへ春のよの月重喜 加幾加曽布花一 中空に霞の糸にとちられてとくとはみえぬ春の夜の月真名井 降りかとみれは日和に月の暈もち直す空にさゆる春風万戸 空の海いくらはかりや限りなく深き霞にしつむ月影真弓 火をともす梅には風を当じとやぼんほりみゆる春のものて正 空の海霞のみをに傾くは船てふ名ある夕月のか計麟馬 月の暈雨になる戸の沖の船箱はなされぬ締夜の空注連縄 逃水の行方もしれぬ武蔵野にさだかならさる春の夜の月実次 老の身にとり違へてやい右目鏡朧にかすむ夜半の月影高木 花誘ふ比良の山風くみりけり積に月の舟みえぬま伝流園 棹姫の息やかけけん春の夜の月の鏡の影そくみれる麁多知 月影にさはれる雲をよせじとや霞の網を春の夜の月真旧 よしの紙に包しやうにみゆる哉春の朧の月のふき 色よりも香こそ哀れと照もせ侍其水に匂ふ春の夜の月万象 帰雁 毛々豆多布 花もよす行雁かねは古郷のかた恋すなる搗に似たるかも真臣 隔る穴に霞の袖やしほるらんしみ込やうに雁の消ゆく重喜 古郷へいくらばかりのくさりもてつゝなり渡る鳫の船橋一旦 ゆく雁にとらせんといふ笄も古郷させはふりむきもせぬ勝羅 同花二 雁も今もときた方へ帰るとてみなみ送りの風そ出て一日望月 行雁は見上る空に帰り点射はよみ下す文字とみえずが多万健 花守のをるかと書も心なや制札を見て雁の帰れば烏清 帰りなは秋また来ませ駒木を反古にはなさその玉札雪也 下毛野木 教へねとさき立友を手本にて帰るならひの雁金の李比文 尾張犬山 名残をしと見送る空に興暮ぬ雲のいつくに宿をかりかりかね 芳野山またき桜の跡になり先もそろ汐伝帰る雁かね真澄 くたといふ縁はあれとも糸遊につなかりてゆく春のかり重見霍 帰かさは都伝ひとつとる年に行儀もつきし雁の一つら。寛見 陸奥一ノ関 春母に道を忘れす帰る雁うはの空なる心にはあらし都 サン十八 越後五泉 古今を思へは花を跡にしてさきいそく雁のつらそ都るゝ仲住 同 青柳の枝に寄れとも戻り風かたいと鳥のわかれ行空口は麻呂 加幾加曽布花一 甲斐谷邑 十三のいとま乞して雁かねも琴柱のさまに並ひてそ行真久 高畑 暮近く道やいそくと夕月の舟よひつれて帰る雁かね真名冨 中絶る霞の帯をみぬうちがけび田といそた衣かりかね同 梅もまた実のいらぬうちに帰れはやすゝなくみゆる春の保登里 陸奥二本松 棹にしもなりて帰れる雁かねは霞の衣の袖や通れる深道 空の海月の船こし棹と成り雁と越路をさして行也雨霍 先達に声をかはして大峰や入相ちく帰る雁かね名哥記 月の船に乗るともみえす雲の上を棹なす雁のさせる君歌兼 国になき花の鏡のまはゆしとつらをそむけて帰る 出る月の舟を霞に奪れて帰る伊勢をのあまつ雁かね愛雄 春の里の土筆ほうけて幾行もかきちらすやうに帰る雁かね真摧 まて雨のふる里きして山の端のさをになりゆく雁のひとつら万象 初花 毛々豆多布 藤沢 訪ふ友のなき山家にも花の頃絶ずひと木の咲初にけり里人 一まつ人の心鎮めとはつ花のひらせは結合云よむ木のこと満成 引てゆく山の霞の糸筋のほつる先にみゆるはつ花真名井 一二りんお初穂ほとに咲にけりすくな彦名の神垣の花多万伎 陸奥飯野町 ちら〳〵と冬見し枝にふりかへて日氷に愛る花の初雪金人 古河 名にめてゝ小町桜の花見堀ひしきかけたるうちそやしき俊英 陸奥三春 折を得し扇ケ谷のはつ花は皆ひらくとも風はいとへり末学 日当りにより来てみなみおもてなる枝に咲出し庭の初花喜撰亭 甲斐市川 心なき雲にまかへとほゝ笑て心ありけにみねのはつ花常道 いやよひの月と替れと人の目にまた正月をさする初蔵侘住 莟より風にもあてぬちご桜笑ひそめたる花のやさしさ千香子 谷川の氷もときてまた春雨に紐ときかゝる山の初図睦実 幕もかなちらまくもをし咲初る花の梢にはるの山風奈加女 越後五泉 さほ姫の笑顔とやみんうつくしうはつかにひらく花の唇音清 加幾加曽布花一 木の間よりはつか斗に顔出して助さうに笑ふ初花光房 風通ふ小町桜の名にも似すとき初て嬉し花の下紐仲住 あたゝかき風にな消そちら〳〵とみえぬる枝の花の初音目積 指折て待し桜の五ツ六夕ひらきてみする山の手の花栖 咲かとて訪へははつかにひらきてそ口おもげなる花のゆか万象 見花 毛々豆多布 雪こそは花ともみつれ待えたる花をはいかつ雪とみるへき鉈屑 毛々多良須花三 花を見て散るかとはかり芳野山さらにをりてはこゝれより 花の浪くゞる進夫もにほ鳥のかつき息を見るは休まぬ真臣 楊貴妃や小町さてにをとらしをつくりて花にみする妻家椽 高砂の尾上の鐘はさし花を見にこう〳〵と郷音くやう也同 花に目もやまであれとてけふ七日峯の薬師に籠りてぞ雪也 掃除して朝夕登る庭桜ちりこそみえね花の盛は影井 高畑、 去りかたき用をも捨て見る花に猶ざりかたき桜木の本真名富 肥前有田 命をも野風爐もたせて花の山桜も酒の色に出れは恵記成 月影に夜も花見て磯桜そなれて帰るしほやまたし年長 世の人の心を浮したかしつゝ雲とや見せし山さて花真名井 雪に似て見るにはふりも替りけり気侭にあるく花の下蔭真久 陸奥桑折 寝ても目を閉ても花の見ゆるのはあかず詠る心なりけり御空 一重をも二重になりて見る翁かしらも雪とみよし野の花浦波 上みれは及ぬ花の朝曇り傘持ほとのことはあらしな真笹 咲ときけは花見に袖の綿迄も心せかれて落つかぬかや道足 みよし野の奥のおく迄水分山みわけやつきぬ花の白雲琴葉 加馬に足はやすめど花を詠むとて目はやすまさる志賀越仲住 加幾加曽布花一 咲しより散る迄見はや木の元に日数もつみる花の白雪骨志丸 花とみつ又雪とみつ雲とみつ見つれはかくる月の夜桜影井 霞をも分て桜をみよし野の花は雲井に登るやう也真和昌 吸筒の酒もあたりへほかしつゝ花にのまるゝみよし野の山増枝 隅田川流れにそふてみる花につなき留たる駒形の船みと子 我宿はともあれかたもあらしてぬるに見にそ来山〳〵の花艶眉 陸奥三春 桜色に深く染つゝけふ幾日心ちらさすみよし野の花競 梓弓はるは桜にひかれつゝひとやも見えぬ深山にそ入る年長 老の身も花をしみれは思ひなく昨日かけふかわか伝暮しつ喜撰亭 まれ人に賤も筵を借しきりて花にしく物なしといひ 咲花の皮の上にはみる人の心や浮てしづまざるらん目積 花見堀過て狂へる失礼もかんに堪てそみる幕の内注連縄 木のもとに見る程花は雲なれや照日覆ふて咲みつか枝菖菜 翫花 毛々豆多布 一老をしもかくさんとする花の陰にいとゞ頭の雪そ目につ蛙今葉 夕暮の花の雪にもなつむす児すご〳〵野辺や戻りかめらん真名富 毛々多良須花三 ちらふかと花に心そつかはるゝひとかゝえあるさくらまれとも雪也 北嵯峨に侘て人をもさくら花はなし相手になり乾しき仲住 咲花の色に登ては手折とも思案の外とゆるせ山守妙約 鏡山花のさかりに五寝子か次女うつしてもてあそひ。ぬる夏象 心をは花にとられていつしかに我身も酒のから樽となる杉成 日の影もさらぬ程枝に咲みちてしは〳〵寒き花の下㙒綾住 陸奥三春 おもしろき夢見草には蝶〳〵の露すふ花も涙もめるな蝶也 一ノ関 露芽のうきも忘れて花の楽うきい〵とする我心かな声音 花の枝折へからすの制札もよま伝をりたき夕さくら蔭千町 謡にも庭の桜につれほしき今をさかりとおもひ候里人 枝折をも制する花を其まゝにおきて嬉しくみよし野の山同 稚児桜ちる折からも戯れに花を集てかくす弁当愛滝 烟徳も跡つけさせて諸人の愛る桜のはなのしゝ者方丸 加幾加曽布花一 陸奥仙台 にこ〳〵と笑ふやうなる児桜の花を愛してけふも後つ近道 此頃は花に曇りて日和さへなまけみなみの春の山野雪 春のみと花を思へはいとゝ猶めつる心にあきもあらす伝睦実 市川 斧の栖の朽るもむべよ国碁ならぬ花をうちみて家路 野渡 乙女子の手毬桜に暮る迄目見て花を翫ひけり茂登也 翫ふ手鞠桜をつく〳〵とかそへてそみる花の日数を楽也 なごき日は庭へ出しつとりいれつ吉をもとめし花万象 惜花 毛々豆多布 一ちる花をあけみおろしみする風は手放しかぬるをしさ成 花をゝしむ哥の式紙を数あてゝ風の袋を八重張にせん難奇免 毛々多良須花三 咲花は折もやられす心にもをしむにとまる七日ならねと保登里 同花二 吹風の袋の口をならふならむすんてひらせ花の夕露雛子 陸奥二本松 常盤木の山に生ふてふ桜花ちりうせずして千代も匂へよ菊守 風ふけはもしちらうかと夢見草あんして松半もとゝと寝ら春満 魂を散る花毎にそえてやる我や桜の木性なるらん下蔭 落葉にはとはぬ無沙汰を催しけに風をいとふも花に面なき跡人 夢見草見つゝをしめる花の枝をたちへぬ蝶は我魂かそも真名冨 一地震ほと人には山の動くとも風にななりそ花の盛は松人 加幾加曽布 入相の鐘も無心もきらぬ顔くるゝといふはをしむ花守根成 をしみつた詠る花の向ふから吹込風にむせてちるらむ槌丸 散る花をゝしむ心は有明の月しらせたる空ながめすれ安楽 ひと成廻りかきりある世の習ひにて花の落にも惜れけり琴葉 さく花を望しめは風の吹につけ心ちらさでまもる木の本家樽 花瓶の花の枝ふり直すとて雪に帰らぬのち悔そする万象 落花 毛々豆多布 一さくら花咲乱れしを命持て集める程にちるが信しき高積 峯の花ちるを惜めはしばしまたしらぬ梢に咲す春風折主 見るにあかぬ心は跡へひかるゝに花は人より先へ飛ゆく千生 いとことろく風に散ゆく花は世をゆすり立たる力も似ぬ綾住 毛々多良須花三 巻に戻るきのふのふの声見受けふのうつらにちらす花苑千賀江 みとれつゝ明たる口をあくびかとうつし心に花やちるは児下蔭 越後五泉 無欲なる人にはありとも散花を惜まぬものそすく侍ける雅枝 散国を蝶と愛れは草の葉にとまりて風に動くとかしき正義 きのふ迄をしみし花もちりひちのやます散来る花の白雪深道 よき人のよしと誉たるよし野ても花の散るには心いたむる高木 散る花の雪に心をひやしてはつらき酒にもしのげさりけり常道 花貝とならは干潟にひろはなん磯山桜風にちりしく種成 一盛なる花にくみるを春風のはやてを入れて夕立にする哥忠丸 不思にちりうく花のはらわたへしみてや顔も桜色なる下蔭 春風に梢の花の雪ちりて庭にも消ぬ跡をこそみれ麟馬 花ちらす風起す度いくばくにくはすることか此夢見艸難哥免 志賀の山越す旅人に散つめど花の雪にはいさみてそ行松蔭 春風に花の白雪解つらんみなきり落るみよし野の滝山角 雨ましり風とて来たる松か枝もしはし桜や花のぬれ衣琴葉 風誘ふ太山の花の雲あたり散るを頭痛にやまぬりはなし東児 ちらせしは風か人歟の疑ひははるとも春の花はかへらし鵠 手をあてるやうに気をもむばづみにや吹ぬ嵐にちる桜哉真澄 水にうちそ色や替らん散花のほとりは空に高くたつ共鈍屑 山風にちりなは流セみよしのゝ川の面にも花さかり見ん羽締 吹とりて荷へる風を打すえん桜あらはかせ花の山守雛丸 盃に散込む花を呑つれはいとゝ心のうき立にけり侘住 明烏桜の杉に香を〳〵と花ちらしゆく風に騒ぐ歟以登良 目の足の西へかたむて盃もつもりとみゆる花の白雪守吉 下総佐倉 散花を惜む心の葉そふて跡を追ゆく春の山風美種 心なやまたきに散し桜花又風を出す海にそ遅く諸実 をり得ざる山のかけ道なか〳〵にとぶはかしこき風の桜木琴葉 咲花をちらす風には覆はず伝霞の袖そ有かひもかな重喜 しつ心なく散かゝるさくし花そふて心も落つかぬなり勝羅 加幾加曽布花一 一掃除する庭の桜もそろ〳〵と敷かゝりたる手箒の先安伎照 同 ちる花は筆も及はし塵塚にかきちらしたりふみちしたり菊守 同 よし野川水に流れてうたかたのあはれたゆとふ花をなき安利州 論語よむ窓に桜の散をみて手の舞足の踏所なし影井 けふ翌ると思ふ心に油断して風にとらるゝ花は惜けれ勝羅 香を盗む風には名をもつけやら伝梢に呼へる花の泉見霍 真白にそ散つむ花に風冴て雪と深山の桜木の本千香子 峰の花散て谷間の遠近に二度の花見をするそ嬉しき春満 散かゝる風に心をおきの石音は来間そなき花の白浪露丸 祭せし太山府君を名にひへる花は退散ふくあらしる万万 籬山振 毛々豆多布 七重八重垣をつくれは知る人の門見失ひし山吹の花愛瀧 朝夕にきねか清めしひもろきに黄よくみえたる山吹の花雪成 山吹の花の黄金をやぶさかに薮逆にして籬をそゆふ雅流園 毛々多良須 花三 友まねく文にもきませ〳〵とて垣つゝけなる山鳴の花真名井 色は似ねと姿は庵の萩垣に花すりあへる風の山吹満成 陸奥二本松 晴がゝる雨のまがきの山吹をみのかしてくれといふて手折らん安遊民 しら露もかゝや姫かとゆふ垣の竹に黄金のいろの山振金厚 人をもていはしむる垣に咲みちし天に口なし色の山吹影住 春雨の蓑干す垣にいひ訳の種とはみへぬ山吹の花物築 実をひとつ結はぬ花も言の葉の種となりたる垣の山吹方丸 毛々多良須 をらせしと垣をするのも隣同士きはへだてなき山吹の花みと子 ものいはぬ花とはいへとよくみれはしかとこたへし垣の山ふき みつはくむさまに籬のうら長きをくばり山吹の花透也 山吹の黄金はなさぬ挙かなとたす籬の蕨縄には目積 ものいは侍こもる初瀬の山吹やかさねの外の口もふさきて琴葉 黄金もつ人はかくそといはぬ色に身をはつゝらぬ垣の山吹同 陸奥一ノ関 花の噂とり〳〵あれと口なしにいはぬ色なる塩の山ふき二羽 藤沢 籬なる花の露すふ蝶〳〵のみにもならんとおもふ山吹里人 尾張犬山 賤る家のやふれ垣根の山頃はいふにいはれぬ花の見事 弟とも兄ともいはぬ色々えてよい中垣に咲る山にき方丸 一加幾カ曽布花一 遠目には欝金木綿のたふたきを籬にほすとみゆる山吹栗葉坊 大原の米木いたゝく外に又黄をゆひそゆる垣の山ふ喜糸成 鶯の衣干かと山吹の垣間見するは蛙なからん声音 我庭に有余りては隣へもこしば垣なる山吹のみな真名富 ひのよみの文通ふへきたよりにと八重恒作るその炭も真味 夜にみれは又黄を葉てしろみたる雪の籬の山吹の花下蔭 七重八重こゝの垣根も御花咲く枝もとをゝにみゆる山吹きさ子 こたえなき。花としりつゝ籬にもいはせてみたる庭の山吹万象 松上藤 葉之喜弥志 咲花も上見ぬ藤のめでささにつゝがなく松もいらせ経ぬらし諸実 毛々豆多布 一荒はてし大津の都斗なれや藤をかゝしてたてか姫松鳴音 毛々多良須花三 神神の顕はれたるかしら藤ののたり出てさく妙見の松注連縄 何某の物見の松に御廉かけし紫房とみゆるは孫魔槌丸 鷹すえし松の挙に紫のゆるし緒かくる菊の花房綾佳 武隈の松にかゝれる藤なみは春と夏とのふたきにきく深道 松か枝をかりて命も延しと永くかゝれる藤の花房楽也 まつかえに波より多く疑ひのかゝれる儔とみゆる白藤苞丸 松にかゝる花も咲やとうたかふて十帰りも見に清滝の藤の影住 花の顔やさしくみせて赤松の色をも奪ふ藤の紫増成 松か枝に御遣し霞の跡たれてなみも面白き和歌の浦藤愛滝 梢まてかくす霞の名残をも松にまかせる藤のむらさき千賀江 藤波はうちちらさしな高砂の松にあらしの音はかりて高積 藤なみの紫にさす灰かとて見れはけふれる松にざりけり琴葉 かろからぬ色とて花の紫を松は高くも揚て置ぬる家樽 源平の桃より松の一言ゐ高くみえぬる花の藤原侘住 日連の賀掛松にかゝりしはこれも北家の前の花房満成 加幾加曽布花一 一霞ほとなひきて峯の松か枝にかゝれる故の花も紫方炭 千とせふる松にかゝりて咲藤のつるさへまいて枝にかもたき槌丸 武隈の松の梢にみえぬ程花にふたきてかゝる藤波最高枝 笠松の枝よりさかる藤の花空とけたる紐かとそみる真葛 吹風につれてかゝりし藤なみの隣の松にこさんとも見折香 男山松のふぐりをみせしとやたふさきめきし籬の花直輔 松か枝も老をかくすや咲藤の若紫のた花をかざせり安弥成 さし覗く池の堤の松かえに波うちかゝる白藤のはな舛成 行平の名残や藤の花衣そなれ松にも打かけてみゆ折枝 握袖とみる花房をうち懸て姉葉の松もめたつ藤靡真名冨 年ことにまつかひ有て松か枝に咲藤も又ときは違へす雪也 老ぬれは千年の松もかくれ居て表をひろく春の若藤望月 千とせ給る松の高さのいかほとゝ尺とるさまや風の寝靡東児 松か枝をよぢ登る蔓につる〳〵とつたふて下る露の鼻亀 暮春 毛々豆多布 鳥つける花も柳も一からげおろしてそゆく夢の春駒真名冨 名残をも惜む心の先立てくれゆく春の案内やしつ同 一花鳥に別れて何を思ひ出にせんじ詰たる春の暮かたきさ子 一跡のなき花は心の胸にしも引とむる程春はすされり鳴音 行春をなどとゝめぬや其やうに野辺は蕨は手を広顕て家樽 花の枝折へからすの札はかり跡に残して春やゆくらん本伎 はな散ていとゝ淋しく思ひけり哀れ今年の春もいぬとて狂今葉 花は根に帰る山守の給金も一両日や春のわかれ語真澄 きのふけふ蝶に花かと思ひ寝の夢ときめゆく春の別路真菊 花は根に鳥は古巣に定るにいつちさしてや春の行らん家樽 日のあしはいかにも達し追付てならは止たき春の別路杉成 来し時の作り逆ほと散有る花の上もや春のゆくらん鳴音 鶯のねいりし夜半のふくろうの声に恐れて春は行らし声音 春のゆく道を埋てつるけかし花の白雪青春柿の糸真坂樹 大空の霞の棚も明かけて春や何地へ越んとすらん真名井 なと春は末なし川となりにけん霞は夏へ流れ出なから千賀江 きのふけふ花の香勢ひきなく成て春をとゝむる力たにかき真名井 行春の別れ酒にて跡引をつされる花の雪は何事琴葉 世の人のをしみ〳〵てへらしけん春をすくなく猶思へるも諸実 肥前佐賀 咲花に老も若きも稚気となりて遊ひし十五ヶも暮より鋤百 けふ限り暮行春の夕霞たち休らへよしはしなりとも一旦 新らことくきかゆる夏の衣より花によごれし春は惜けれ勝雄 暮てゆく春を惜しとや三井寺の山の端に日も入相の鐘奈良丸 一ノ関 くれて行春はをしまし年の内に今年も立て来んと思へは声音 藤沢 梓弓やよひの霞引とめてはなしともなき春の別路高木 芳野山けふ行春を留に出れは去年の枝折の道替てより真澄 なまちの帰る春をは今しはし押てしゐても引としめたき川船 遊ひにも。なれたる事そ散死の害にはすこし居続もせよ萬象 首夏 毛々豆多布 今日よりそみわすゑ祭る月なれは神に榊やとれる成らん音高 野遊ひも夢の正月すみれ草ひと夜寝しまに夏は空の隅成 ける夏の入なれは月も笠とりて礼をも四したりけん満成 毛々多良須花三 麦の秋となりしけふより卯花の目の色増夏は来にけり杉成 春過て卯月に花のめつらして朔といふ日そ夏は未詳也 同花二 暑さをは凌んと庭に水をしもうつきにけふはなりにける哉楽住 毛々多良須 一花の香のしみし衣をとき分てなつかしとのみ思ふはかりて安遊民 衣更こゝろ安くはしたれとも夏に馴染のまた浅くして目積 花染を名残をしくもぬきかへてかとりの衣とけふやん侘住 汗つかは暑くるしとて夏衣けふより綿もぬき衣紋しつ琴葉 きのふ迄思ひ流せし夏箕川夏みれは水に心なつみぬ折香 頭痛やむ花はきのふに散てけふ夏の頭そかろく思へる方丸 花の香をさそひし風につれ立て簾吹上て夏は来なり勝羅 花の音の通ひし窓に夏はくれと心迷へる雲の峯かな同 朝もよし着かふる袖にとくなれて肌さはりしき夏の初野真名井 夏へ越せとまた重ね着の藤の花松の老木も汗ばかやん千生 春過て夏きにかゝる藤波にたゆたふさまよ夕月の船仲道 ぬき替し衣に花のかは〳〵と尋るやうに啼烏かな目積 宵越しの酒もさらずの戻りかれ然花も実もあるけふの初輩雛望 きのふ迄花を愛しが今朝はまた風傍顔な夏は来けり真樽 夏にしもゆかりかゝりし藤の花棚に霞の色を残せり睦実 花一 加幾加曽布花一 けふといへはきのふに春は杉の門しるしにたてる夏の初野真名富 同 行春にけき来し夏は隣とて境をたてる垣の外国近住 夏来れは空も若葉の色添て木末もとりに風そよくなる鉋屑 癖つせし花にも雲れる空晴て梢みとりに夏は来に 待時鳥 薬之喜弥志 ほとゝき頃松の魚もてまち酒をきこしめせとは心きく従者契て葉 毛々豆多布 鶯を籠に飼置て汝親をしたふて来よと待時鳥高積 忍ひ音に今宵八来なけ時鳥待し心の闇のまきれに真名富 一こゑを我は聞しといふ人の声はきゝつゝや山ほときす千万声 思ふ侭に出て来られぬは待我を泣せる恋の山時鳥楽也 毛々多良須花三 一ほときす待ぬる宵にきける音はいらざる月夜烏也けり松人 鶯にこやせし耳をいたぐらに痩ほそる程に待ほとゝさす折香 郭公待夜の空にまだなかぬ蛍のやうな星はとべとも雛望 同花二 か遣たかと後し場聞ん時鳥待に心のはしたなき夜は真根人 時鳥まてどくらせど鳴ざるは人をなかすか心なるらし春満 一今や啼〳〵とてほとゝきすともに寝もせで待そ院近道 時鳥こえの色のみ見するかや待明したる朝やけのそら御穴工 ほとゝきすまたも鳴かと一声につられてそ待籠の渡し場影住 ほとゝきす待夜はなか伝待すして鳴はしめたる晦の鶏穂並 山里にひと夜ふた夜と来て待はあれ見よ月に鳴時鳥深道 いく夜半かおきてまもるに時鳥啼では須磨の関な通して保登里 上毛小幡 一声はせめてきかせよほときすいく夜八声の鶏の鶏の強く元倉 茎さく頃より待てほとゝきす一夜も我を寝かさゞり甲良 待夜半のさう〳〵しさに声もせ伝人を寝かさぬ山時鳥諸実 今鳴か〳〵とて待夜半にさてもねかたきほとゝます哉透也 時鳥まつ歌よみて柱かけにかけたかと汝にいはせたきかな琴葉 いら迄もきかぬ卯月の半頃なかば〳〵とまつほとます安利列 甲斐谷邑 郭公待夜の数も六よなし夜やより今宵は鳴て聞せよ真久 ほとゝます声待侘て鶯を訪へは谷出て父子とも留守増成 聞かで日をふるから小野のもと柏みどかしき迄来ぬ時鳥多丸 ほときす待乳の山のかひもなやすだきて耳にさはる蛙は跡人 時鳥まては短き夏の夜もいとながしとそ思はれにける三棟 夏山を雨もつ雲につゝみてはもらさぬ声を待時鳥杉成 明るまで待ともきかぬ波鳥もうなかぬとて告る烏歟真葛 ほとゝきすまつ夜長柄の橋柱あとなしとても一声はなけ真臣 山路より海辺に翅たつ売みなきこと待はつ津鳥愛雄 ほともきすまつともいさやしら浪のよるもふ遣ゐの浦見明 しつ 棟もせずにまつとうらむを取違へ汝か音もせぬかや時鳥睦実 加幾加曽布 是ほとに待し心をしらま弓やよ時鳥いるかたの月綾住 ほとゝきす待わつらふを信しけに尾越しに来てや宇ななく正義 山里へ聞に行ばや甘鳥都にまつをうつけといへば千生 妹春山汝もかたれに時鳥まつひよりさだかにそさく三登子 野渡 夏の空二十日過せどほとゝきすとをから待に来鳴さり 下総小林 待侘て日数かそへは十九日はつかにも鳴け山ほともまず群住 時鳥まてと来啼伝わびしらに憂を添寝のめづこさへ万象 啼 聞時鳥 毛々豆多布 一ノ関 ほとゝさす野末の雲の地にとゞくあたり成らんひくき春は十戸音 毛々多良須花三 時鳥いく夜眼を損させて待とうけたる今の可応文鳥 時鳥聞んとほりし今の音は左りの耳のかゆかりしかに睦実 ほとゝきす待とていく夜ふかし来て不可思議にきく初音嬉しき一旦 同花ニ ほときす鳴つる方は二十日余り空にかけたる月は残れる音高 時鳥無常の鳥と何いはん誰もよろこふ初音めだし諸貴 ほとゝきす鳴しと告る一こゑに人越へわれも飛出してさく杉成 菖蒲月あやめもわかぬ中宮を蜘手にかけてなく味鳥佐保丸 草臥し寝かへりにきゝ時鳥まつ心よりおこす成へし冬好 ほとゝきす関夜寝覚は過ぬれと声は、枕にある心地せり保登里 道をしも学ひの窓に音信て心つれゆく初本とゝきす真名井 親鳥の谷こすよりも声高く雲の峯こす山ほとゝます百嶺 廿二上帆四 左りなる耳我の峯に初声を聞てよし野の山時鳥堅女 初声を月の都へあぐるときこぼれて世にも聞此鳥綾住 ほとゝきす嘸待遠といふ事もなく一声に明る夏漿目積 今聞し声の行方はしら雲に跡をかくせし山は花寺松秀 草刈の笛かときけは夕月の鎌をうしろに啼時鳥万戸 一筋に聞ゆく道はほとゝきすふたつともなき声のか 待侘てやまふの種の時鳥声そ薬のきゝめみせける仲住 一ノ関 一声もをしむ習ひのほとしきすなかばと待て其なかぶく声音 同 ほとゝます山道なりに鳴声もひきくなりては高くなろ〳〵以登良 待かひもあり〳〵とさく時鳥。声花〳〵し花もわするゝきさ子 はげしかれと祈らぬ声に法やとくきゝも初瀬の山時鳥真菊 沓手鳥雲井をかけて鳴行は我も足さへ地につかで千町 鶯の月と鳴たる跡追ふてひと声なの日山時鳥川船 加幾加曽布花一 薫物のその香にあらで雲井より声そ匂へる山時鳥喜撰亭 大黒の耳たぶ頼むかひ有てねまちする夜に聞子規難奇免 紙より程細き初音を耳の垢ほれ〳〵ときく山時鳥多丸 鶯の関を越たるほとゝきす聞すてならぬ初言なり松蔭 越後五泉 ほとゝきす待夜にしはし手枕もしびれきらして鳴ける一声音清 山〳〵を山時鳥廻り来て時雨窓より聞ける一着綾住 親に似ぬその大声を親船に通ふ小舟にきくはときす真名富 下総関宿 時鳥鳴て雲間のかくれ笠たからかな音をまじ沸た檀 ほとゝます鳴にかけ出す椽がはのきく〳〵といふもをかりける持丸 糠雨に釘うつやうなほとゝきすきかぬといへる人はまれ也又ン好 帯とか侍いら夜か待し時鳥聞て心もゆかみたりけり万象 早苗 毛々豆多布 一植〳〵し余りはほしく鏡とくは毎にとゝせん化粧田の苗声三日 さみたれてしての田長の鳴がへにねをはれよとや早苗庵 早苗とる砂は跡へとしぞきつゝ親族あまたに出る村長雅流園 早て女の足に吸つくひる休たばこ休も小山田の畦真菊 賤男の祝ふてかける田の水も早曹とてせくは有けり真笹 陸奥二本松 月もはや井手の田面に蛍かとみれは早苗における夕露丸顔 是も又よく作るとて若苗のはえ際とれる嫁花粧田雪也 二本松 一早苗とる手に葉揃へて賤の女のすだく蛙と類合しつ安弥成 住よしのみとしろ植るたはれ女の田は群れつも早苗とる也一旦 賤の女か脊丈のひよとかゝみては腰をのべしうゝる玉苗琴葉 陸奥川又 すみの江の田植の哥におもしろや琴を合する岸の好松亀俊 雅子を背るに負たる嫁も出て早くねつけと植る若苗臼王月 皐月雨小田に雷女の袖と袖ふりもいとはでかゝる玉苗正 陸奥森岡 一カ幾加曽布花一 早乙女の行義に並ふ小笠原しつけかたよく植る玉苗元郷 雨に笠みのと近江の早苗とりても隣へ通ふ畦こし草也 小山田に暮かけて猶早苗とるをと女はひるに恐れけらとな千香子 賤の女は下はかり見て笠着ても苗は植みる物にとてあれ目積 早乙女に。ましる彼女郎さへ年〳〵に跡へ〳〵ととれる若苗万象 溪五月雨 帯に廻る谷の水はゞひろこりて山に腰なき五月雨の頃隅成 長く降る五月の雨に水増て短くなりし谷の柴橋満成 おろちとも見違ふ谷の丸木橋流れてをよく五日雨の頃喜撰亭 五月雨に濡れてさひしき苔莚ひあがらさりし谷の下庵二羽 さみたれの足に労れはみえなくていきゝの谷にいく日降らして近 谷川の流れるそふて日和にも戻らさりけり豊島の共琴葉 降つゞき谷水越て紫桔を魚のわたれる五月雨の頃千香子 さみたれの頃夏痩をするのみか川一はいににとる谷水透也 五月雨にいく日は合の戸たゝいても雲に鎖して出ぬ日の影古家 五月雨に谷の下是辷りてやあがりかねてはさがる雲あし里人 加幾加曽布花二 高畑 鶯の留守見葬にや谷の戸を岩たゝくなる五月東の水真名富 一ノ関 一橋柱流して谷の水こえんいさ五月雨にむなきとりめせ声音 入 足引のやまぬも道理大和なるゆきゝの谷の五月雨のあし袖丸 三芳野の谷にゆく水高〳〵とひくきはみえぬ五日雨の比影井 谷水は峯につゝけと降雨の上りはみえぬさみたれの空羽締 肥前佐賀 月星と鳴にし鳥も音を留て谷の戸くらき五月雨の宿種也 けふいく日ふる巣の鳥の真似をして谷渡りする雲爾の雲種成 帯と見し細谷川もきれ〴〵にしまりなくふる五日雨の空広 水けふりたつかとみれは蒼朮も滝なす軒の骨たの庵菖亀 夏草 毛々多良須花三 押合て一人ならでは広き舟もむれて行れぬ草いされ哉琴葉 同花二 しけりては風炉先窓のさはりそとかまかけてみる庭の祭真澄 風の来し道をふさぎて暑ま伝さて広こりし野路笠草綾住 風に波出し寄せて来る夏艸に野守か家の浮かとそみる真笹 夏草のしけくなる程来ぬ人のつらさもみゆる宿の通路侘住 秋をよつ虫のことる歟武蔵野にねもあらはさで茂る芝艸種成 春の野にもえ出し火を水かけてけす如夏の色いきれかな琴葉 略をさける薬ややふくむ露みれは涼しき秋に似たる夏菊難哥兎 薬ほる人さへ歩行煩ふや道にふしたる風の夏草出来也 若草のはり程に見し春過てほう〳〵となる夏の草村杉成 籠れりとは似たる時や落しけん武蔵野のはらの桧扇の花愛龍 加幾加曽布花一 逃てゆく水は栞にならしとや行手に結ふ野路の立草満成 茂りては境杭さへかくれ野の右も左もわかぬ夏艸比文 はらへともおのつとのひて庭の面に露を花なる相の坂草三棟 大江山今もいく野の道もせに鬼は住とも百合あざみな年長 若草と見し春色ていへしかにおひかさなりし丹路の夏艸高木 暑き払ふ枇杷葉湯の見ゆる頃からず扇の花も咲けり万象 夏月 毛々豆多布 不二の雪辛し団扇の風よりも柄のなき月の影野しき都 毛々多良須花三 すゞしさい 同花二 ば船へのり込む心地すれ月の御船に夏の夕野花子 涼しさに夜釣せんとて烏より月にとかれてかはと出ゆく都 夏月の影は軒端に出る霜のとけにし帯も結ふすゝき年長 夕風もよくふき廻しぬれ縁にひかりすゝとき夏のよの月高木 吹野も涼しく月の影さして寝むけはさらにさゝぬ夏の夜山角 照る月を昼となしては三ツ一ツ扇にはかりたけも夏の夜露丸 庭にうつ水はら〳〵と夕風に落して涼し夏のよの月保登里 高畑 走井に影を宿して動かねと明るははやき夏の夜の月真名富 時ならぬ氷とみええて水の上に星さをくたく夏のよの月二羽 夕立の跡のよごれも洗濯にあらひ上たる夏の夜の月月住 隔へき意力も露も夏の夜の月を覆へる木々の葉見霍 雨そゞく音かとはかり夕風に弁の葉をもる月のすゝしさ柿人 西はまた入日あつしと海遠く東に月や出て涼むらん琴葉 をしめとも月はふし所に入めめり山をまくらになせし短夜真櫂 暑さにて月やは労る夜はねぶの花や蚊にとく更て明る上芦葺 母衣帽の山は崩せど又ひとつ今宵の月に邪魔な蚊柱愛雄 涼しさに是もいつか軒の端に照そふ夏の月の夕草也 見る人の老せし程は星をもいつかよはらす夏のよの月路成 水の上に月はてら〳〵と見る内にはや寺〳〵に告る暁久米流 宵なからなんと須磨の廉より目影入るゝ風のすゝき道足 日の出るは早しと目もいそかれて夜の近道を行にや有尾一得 加幾加曽布 さす影を霜ともみれはかみよりも薄き氷と短夜の月杉成 夏衣まとはで寝たる蛹の中を月の覗くは恥かしき哉種也 短夜に笠めすむまも夏の空曇しぬ月の影そすゝしききききききききききゝきききさま 門涼み賤か円居にとくふける鶏衣の短夜の月万象 水追蛍 毛々多良須 陸奥二本松 流れゆく水にけたれぬ蛍影とゆる思ひはかゝやあらん為清 夕風に蛍の影のゆら〳〵と水にたゆたふ蓮の浮舟綾住 淀川に船漕めくる蛍かり車にあはでつる逃しけり保登里 目かよれは至も夜川の水艸にすたく蛍もねはなかりけり満成 文をよむあかりの宮のすさみかな蛍集まる唐人の地琴葉 柵の水に砕けてちる月の光りとみせて蛍飛かふ真澄 石山の石にあたりて砕けらん蛍数ちるにほの海つら家樽 転ひてもなかぬ蛍を追廻し音無川に遊ふ童部真和留 打群て子等か手に〳〵軽の地袋堤に光る夏屯同 ぬは玉の闇のよるべに漕船のひとさへみゆる夏虫の影雨霍 わらはべは蛍の尻をおたへつゝあやふく川に落んとやせし目積 押へぬる蛍は逃て川端にやはり根のなき草を掴めり愛滝 首閣にいとも乱れて飛蛍からむやうなる筏士の棹繁喜 光りては闇も月夜と隅田川むる藻やけしてすだく夏虫雪也 馬柄杓にすくふ蛍は山吹をちらし蒔絵に井手の玉水一得 加幾加曽布芥一 宇治川にすたく蛍の打軍はよい草の葉に陳とりやつ甲良 夏むしは身を光らして十文字かぎにひらめくやり水の影二九郷 源は山吹の瀬といはねくも光る蛍の宇治を床しき縫女 濁りにはそまぬ蓮や仁しぬらん汀はなれて飛し蛍は臼木 行水に透れましと浮草にすがりて光る夏虫の影正 あなとふと阿弥陀か法の蓮の上に光を放つ夜半の夏虫里人 影清く光れる蛍さはにして干かれはせさる流れ 晩立 毛々豆多布 夕立は海から出てまた海へ戻るもはやき山川の水諸実 堀出して釣間をそしと夕立の空よりさがる稲妻のかぎ景住 同花二 夕立はみる間に晴て又もとの日影そわたる虹のかけはし綾住 堪忍のにじの掛橋高山は夕立雲のくゞる木のまた本枝 佐賀 水ほしき里はほこりを吹立て真黒にかる沖の夕立種也 毛.々多良須 遠江掛川 すぐ風もに金か原に脊を分て駒の足より早き夕立楽成 陸奥飯野 金人 雨具持てと親の言葉をそむきては薦をかぶりて清夕五金人 短冊もふりきるはかり夕立にすゝしくなれる軒の風鈴増枝 御覧せよ龍の水まるせみあしのはやくもかゝる夕立の空多万伎 降出すよたちの雲の足はやみ逃る人より先へ廻れる粟葉坊 鳴神と組気とみえて賤の男の腕まくりして走る夕立景井 夕立の足のはやくも晴れゆくは近道つくる虹のかけはし家樽 照つゝく日やけにかはく庭石も心地よげにそぬるゝ夕立鄙生 夕立を日傘でしのく青空に雪も晴ゆく心すゝしさ松蔭 一馬の背を分て降るとや夕立の肩には重く思ふ傘勝羅 渕も瀬も水のあせたる飛鳥川翌日も替らでふれよ立繁喜 夕立は下より上るほとぼりに押上ぬらんはやく晴るは高積 中絶し左の庵に嘉るうち又遠ざかる夕立の雲同 俄雨過ゆく跡を追風にまねく扇と夕月の影安伎照 加幾加魯加魯加魯州豆州 浮ましと逃て這入を追欠て降込て来る夕立のあし安良多 夕立の雨にあはてゝ取落す雷ぼしもひしや〳〵となる軍釈子 しゞかみの髪にかけたる葵よりにげなき人もあらぬ夕立楽住 急かずはぬれざらましを夕立の雲に追れて走る諸人春満 ぬれじとて急ける人とかけてに労れてやかし夕立の足繁喜 起りたつ夕立雲の根はなくて跡から笑ふ自の黛年長 一しきり崩るとみえし雲の峯はやくもつくる遠の夕立真名井 赤羽 虹のはしわたりて逃る夕立の雨の足より早き雲めし見霍 鳴神は雲のはやしに乗て来て太皷やうつの山の夕立楽也 秋風秋風秋風秋風秋のふくけは扇も捨て逃る夕立目積 雪にかくへし臍も雨晴て笑ふやうなる夕月の影多丸 帷子の色のにじめはにしめとて虹見てたてる昼の空折香 是をもやはらけてよき夕立のあめつち迄も動かせて万象 六月抜 毛々一足多布 御祓して茅草の蔭に入ぬらん蛍かゞやく神もはなれて甲良 水無月のけふ祓へする人よりも先へつみならす畑の麻のは満成 毛々多良須芥三 御祓するしるしの幣も夏秋の境にたてる住よしの神方丸 夏抜細き茅の輪にゆひつけしふゝ柱よりたてる牡風増成 御祓をも神はうけるとえすきてかろく流るゝ加茂川の水勝羅 罪科も皆つきねとて一家内みなで流しすつる形代満成 川端にいぐし並て田楽のみそきになで流すかたし門元郷 御秡川夏の別れのとてなしは先一番に秋やまねける真名富 みそき川神もうけゝんにき罪も浮門流るゝ麻にしれて琴葉 うれしさよ罪もゆるむと御秡川流す茅の輪も水にほつるゝ同 神〳〵のしらぬ罪さへ己から愚智に第の輪を先くゞりせり折主 雪の肌撫て流せし麻の葉に奈良の小川も埋むやう也真名富 蓬生の曲かを直す麻の葉は祓ひ捨てもすぐに流るゝ種成 此頃の施我鬼船よりすゝしき分秋をとなりの川杜かな声音 御祓川瀬織津姫はかはかざる衣もて火災鎮め給はん同 秋霧もたつや涼しき麻の葉をきりに切つゝ流しけり目積 御秡川みそきし滝をうけじとて茅の輪も浪をくる成隅成 海はらへ流れ行なは雛形に波くゞる海士の身をや撫らん諸実 飛脚も大海はらへ押出して世界も広く夏抜する甲良 うれしくも身は浮立て御抜川中に飛上る魚も焼の真名井 夏祓みなつきはてゝ罪といふ罪もなききの森のすゝし御里人 加幾加曽布花一 時鳥八千八声鳴つくしこなつき祓ふ一万度かも透也 御祓川夏と秋とのこし表此手拍手さらすはふり子純縄 さめ肌になる程涼し星をも罪をもけづりるす形代きる子 かたしろも残さしと祓ひ流しつゝ深き罪にもかゆる鹿万象 欠 俳諧歌参籠百首巻之中 森羅亭撰 早秋 一秋たつや風に黄金の名のあれは桐の一葉ゆ吹ちらしけん於鬼門 入口にたつ秋風に驚きて暑やうらの道求むらん真広 一葉つゝちらせど広き世の秋はいく初風や吹初るらん隅成 御移をはそよに科戸の神はけふ秋をしらすか薄かな愛雄 秋たつと夕辺の日あし早けれはつきてそ急く鐘の声哉勝羅 ひや〳〵と風の服もや替るらんまたきに秋のきた斗にて雪也 はや秋としらせて先にたゝせけん風の便りに来ぬる文月俊英 木末にはさやかにみえて来る秋のしるしに立る風の涼しさ松蔭 時しらぬ富士の裾野もきはたてる模様を替て秋のさめん元住 驚くといひかひなくも我はまたいは伝よろこふ秋の初風琴葉 また露のおきそろはねは草の戸を叩やすらん秋のはつ風真似人 今朝しりぬ西より秋は立田彦ふくろをときて出す風とは穂並 天の川前よりし柳の一葉舟星によく似た露そのりゆへ目積 夏の日もいつしか秋と奈良奈扇露置かへて風そ身にい真菊 秋の来し印は相のひと箱の扇もしたにおかれこそすれ声音 南浪に風のかけたる須磨簾うこきし時や秋は来にやん三棟 秋来ぬとみゆる田面に居る鳥の足元よりそ立る初かせ高積 三伏の夏はきのふになり瓢風にみのいる秋は来にけり方丸 今来しと相の一葉に音信て門に立たる秋の初そ同 明方の燈火よりもおく露を先へ吹消す秋のはつ風と干生 加幾加曽布花一 夏過てみれは暑ははや他人隣の秋へこさせすもかな透也 今朝立し衣の里の秋風はまたきにきぬる袖そすゝしき宗也 さやかにもみえねはいとゝさび刀身にしみて吹船の初野真名冨 一葉ちる柳に相に数そふて憂を集る秋のはつ風千賀江 はや秋と天しる地しる我しりてしのきよくなる風そ涼しき 谷川の流れに散し笹小船さゝと渡れる秋のはつ風雨霍 ぽつ〳〵ともゆる暑も今朝ははや鳩ふく秋となりし涼野夜船 心ゆるむ涼しき風の出迎ひに扇忘れて立るはつ射槌丸 夏衣ひとへに薄きかたゝ寝を驚かしたる秋の初風き御子 御移して肥たる人もきがるにはみゆるなりけり今朝の初秋常道 御そきとて身はそがねともけるははや肌へにしみる秋の初風の道足 きのふ迄おもては暑き葛の葉の裏吹かへす秋の初かせ里人 吹立る其いろさへもみえすして身にそめ〳〵と今朝の秋風麟馬 目さましき程に草木も出しるへて世の中にたつ能の山風万象 乞巧奠 毛々豆多布 玉琴に燈をつらね香焚て更たける迄星や祭らん雅流図 棚桟にけふ待かねし一夜つ今ひと夜星もねかしたき哉種也 ふしの間も長かれとてや相撲に手向る竹の音そ久しき槌丸 折よくも藍天島紙のかしに袖かたしけるへも男星めすらん雪也 一棚桟へ願ひの糸のとゝきし歟つたふて下る笹の葉の露道足 橋となる鳥と紅葉に一礼をのへてもかもな星の逢夜は真弓 祭る夜に応わたるてふ棚桟のばたともせざるかさゝきのはし梅人 心を餘りに庭の燈火の明か過なんほしあひのそら年長 ことさらに星祭る夜のかくし芸年に一度はしらべあはさん雛子 五色の糸を手向て吾妹子もいついろかへぬ星雲祈らん真名井 七夕に手向し爪を塵払ふ枕やかすと人のみるらむ目積 かしに袖心置なくとめ給へ帰すを惜む星合のそら諸実 一とせのはなし尽せぬ天の川もい砂のやうな星の数〳〵冬好 一加幾加魚加曽布花一 あれもほし是もほしとて乙女子は二つの星を祭る夜の空石成 鶴のはしの永き契りに亀の脊のきつから魚そ星入候のせい注連縄 織姫の仕立小袖の行丈も今宵は妻にあふそ嬉しき真和留 逢ふ事のすくなき星を祭る夜はねかずの多き琴臼木 星合の咄の邪魔やつかまつるこしをれ哥の手向耻かし万象 萩風 毛々豆多布 はや秋の来しと驚く胸よりもはしりかゝりし薪の上風諸実 秋風の声さしすせそたちつてと思ふて荻にものいはすらん目積 うら秋の秋になればかさはかしくとはす語りや萩の夕風の夕に 更日夜に猶寝もやらで荻の葉の物いふやうに風そあや笑人 吹風の目にはみえねど秋来めとものいふ花の葉にやしむ尾俊英 淋しさにおのれか先へ驚て人を寝かさぬ荻のうはかせ真名冨 野分せしあしたにふせし草の中に草臥もせぬ荻の上風雛子 一姿さへこは〳〵しげに生ふ萩は痩てもふとき風の声かな真似人 寝つ起つ風に騒きて淋しさの秋の哀れもしらぬ荻原家持 一秋来しとわれのみたちてさやかくは人にはしるし荻の上にの声音 櫛とら待そゝけし賤かおくれ毛の萩より立て風に乱るゝ勝羅 遠江森 風誘ふ萩のかは気をさみしても淋しき折そ声も待るく梅人 加幾加曽布花一 声高に草の庵へ音信てさてかさつなる萩の上風栗葉坊 吹ならす峯の松風遠けれは籬の萩に取よせてきく雛望 秋来ぬと目にはみえねと告顔に耳にさやめく荻の初野折香 秋風のきがるに動く萩の葉に露も心やおかれざるらむみ万象 萩露 一薪の戸の萩におきそふ白露は星の林や玉しきの庭琴葉 手の中の玉と愛ぬる萩か枝の露にはあらき風もいとへり羽締 しら露を重けにたはむ萩か枝は本末さしにわからさけり穗並 秋の野の鹿の妻てふ萩か枝にたはゝに露のすがるをそみる難哥免 照月の影の宿れは萩か枝も重くあつかふ露のしら玉守人 ゆくと来と道をよくれは両方の社そぬるゝ露の蘇原丸顔 同花二 風誘ふ男花か許に画ふてや霞きほぬれし萩の花妻筆方 毛々多良須 一此子の季の子の帯と夕露のむすびさけたる女秋の花妻茂登丸 同影の光を隠し糸花の錦にをりし露のしら玉増成 分入て袖をぬらせる荘の露は添寝し鹿の涙成らん綾住 夕されは月を宿さんしたゝにや葉毎に落をおける船萩真久 加幾加曽布花一 射の来ていく日もあらぬ宮城野に数もしられぬころの玉華能種成 白露のおくと聞より草の名に仙台荘といふも有けり群住 是程に咲そふ花の錦もや夜直をかけて露のをりけん目積 おく露に花の枝をりかゞめしは風のたゝむと思ふゆへかも臼木 何人の算へそめしやせんもなき萩のしら玉おくといふらん望月 誰か植し庭の玉花とろ置て朝な夕なに光そふらし園竹 みる人はいざしら露をおき明しいく夜か月を宿す荻か枝安遊民 吹風に払ひ落すはにたい程かはゆくおける萩のしと寄増枝 月令寒きんごといへは荘か枝の露も隣泊の玉とこそみれ川船 蘇寺の花につらねし白露はつまぐる数珠の玉とする高積 ぬは玉の夜のいと萩につらゐきて枝にとめおく露の皇見霍 萩か枝にたゆけにおゞひし白露をおろして息をつくか 仰むく 種夕 一琴ひきは峰にこたへて松風も哀れをそふる船の夕くれ千生 一秋の音れ心の外に尋出す星も数そふ夕くれのそら於兎門 淋しさにことを垣根の朝顔の翌りさく花をかそふ夕暮雛望 寂蓮の詠やいかに淋しさは何所ともなしの秋の夕逢安遊戌 竜田 年毎に淋しき秋の夕そとしりつる老は増て悲しき山角 野渡 淋しさは誰をとらへて夕暮の秋の風のみ身にこたへぬる楽也 露ひちし尾花の袖の侘しらに風吹しをる秋の夕盛花干 から〳〵と笑ふやうなる雁かねも人を泣する秋の夕くれ音高 夕暮はいかて心のよはからん秋かはきとて食はすゝめど真葛 淋しさに泪ころばぬ用心に頬杖をつく秋の夕くれ 松風の音すみよしの浦さひてことなる秋の夕けしきかな銀子 心うき事は知られて笑ふにも泪の落る秋の夕暮千万喜 淋しさは槙立山の薄煙りひもす鳥なく秋のゆふくれ里人 山里は鹿の音よりも雁よりも児の泣秋の夕部淋しき文鳥 加幾加曽布花一 山田より戻れる賤か庵淋し妻もいそける秋の夕飯万戸 淋しさに思はすこぼす浅さへあくびに口を秋夕くれ槌丸 さひしさは何の咄もなかりけり親子三人か群の夕暮真弓 酒をさへゆるさぬ寺も淋しさは色に見えたる秋の夕くれ真広 忠岑の哥と心は替れとも憂にはもれぬ秋の夕暮深道 空なかめしてうき其その行方さへ消いかやう分秋のゆふ暮万象 初雁 毛々多良須花二 山里は秋をしるさへ早かりきはや雁来ぬる声きこゆ也桑流 みよし野のこれは見捨て文科の月には参たる一の初み袖丸 秋の田の初穂を喰に来る戸は七十五日先にたちけん真広 村雲の袖にかくせど意地わかく風の乱せし雁の玉章景輔 秋風の身にしむ肌に二ツ三ツき初て寒き衣かりかね槌丸 大空にみえそむる雁の七八羽くはえて来しや風呂の焚物川船 つゝなれとつらも揃はぬ初雁は長く短く我待し如諸実 雲の袖に入るゝとみれは綻ひの有てや落る初雁の外比加留 秋まても帰らで居るをあるしとや爰に田面の雁は来つらん声音 ことの川星の逢瀬のその先へ渡り初する雁の一むれ正 来る雁も道や同らん南へと指てをしへる風見人形鴨立 加幾加曽布 先のより少しおくれて二季ま尊みたりにつらもならで後れり安遊民 声空う耳へ這入れはくさめして花水橋をわたる初かり梅人 文目を待えて送る嬉しさは初便りなる雁の玉章保登里 方角もしれぬ旅路に空みれは南をさせし初雁のつら楽也 棚はたの船こく楫はかゝせとも棹してわたる空の初かり綾住 秋もやゝ更て空さのいやませはけふきそめけん衣かりかね千賀子 人皆の見るをいとふや清雲の神に覆へる初雁のふみ重喜 替り安き。秋の空にはならはす伝違へす未める初雁のつし万象 秋田 一おし玉へて早稲田のをしね苅たばのまんぞく顔にみゆる村長於兎門 三日目とみゆる鎌もて州財は稲葉の雲の中に出入る筆丸 サン中七 同花二 刈けるそはから稲をこしやうにばら〳〵とぶは螽なりけり琴葉 鳥おどす山田の僧都ひたすらにたのみ暁稲のみのりめたき楽也 稲の実の入舟もよき夕風にほをこきおろす秋の湊田影井 秋の田をかる賤の男もみを入てよに入らぬ間といそき比し望月 つくる田は碁盤の目なり一面に扨よくみえしなかて晩稲も宗也 千町田も穂に植きねて国民のめでたかりける稲の春秋雨霍 集りし鳥立さはく秋の田に落付顔の賤か穏かり常道 人の手もかるてふ稲の出来秋は案山子も役にたちに山田舛成 加幾加曽布枕一 秋風の吹は波よる湊田の稲のほかけにはしるしら家家 稲の穂の雲とみえたるかた田にて初苅に来る志賀の里人枝琴 幾つかね田の面の稲をはかるとて雇ひとます二合半傾高木 実いりしき稲葉の雲やしのゝめの穂からと明うかれる秋の田万象 夜鹿 毛々多良須芥 寐かねたる枕に鹿の声するは泪や誘ひ出しに来つらん真澄 あふ事のかた糸薄よるの鹿わけて妻恋ふ声ほそりけり見霍 月を見て友なし鹿の声きけは我ともなしに涙ごぼるゝ堅女 同花二 声聞て夜半の時雨とふる泪袖もぬるでのもみち鳥啼柳 毛々多良須 夜もてから惣鳴妻やいかならん遠き麓にきく鹿の声影井 常燈の心細さと鹿の音に二ツの袖をぬらす小夜中琴葉 あたれて鹿も夜風もよはりけん更行声の細くやせしは同 八町猪さへ寝られぬ鹿の妻乞に夜殿のかるもからや侘しき甲良 菫の根の長き夜すから鳴鹿の思ひ乱れて妻やゑらん元倉 赤羽 京車くるや雄鹿の恋妻にひかれてよかの声細らきく見霍 照月に酒の種を袖にまきて夜毎ねは絶ぬ鹿の妻乞真澄 小雄鹿の声は夜さらに燈台の春の春日のかたに細く聞ゆる光房 尺八のある淋しさよ鹿の音もれんぼの響にふける夜の空し菱象 眠られぬ種と成けりに夜更て鹿の音細く耳へ送入れは重喜 山にいる月の弓にやおそはれて夢野の鹿の声や立らん鳴立 一同四十四石加 恋痩を妻に見よとや小男鹿の月の鏡にさし向ひ啼楽也 小夜更てさく鹿の音も細筆のしんとなりたる山陰の菴吹雪 幾つかね田の面の稲をはかるとて雇ひとます二合半傾高木 実いりしき稲葉の雲やしのゝめの穂からと明りかれる秋の田万象 夜鹿 寐かねたる枕に鹿の声するは泪や誘ひ出しに来つらん真澄 あふ事のかた糸薄よるの鹿わけて妻恋ふ声ほそりけり見霍 月を見て友なし鹿の声きけは我ともなしに涙ごぼるゝ堅女 同花二 声聞て夜半の時雨とふる泪袖もぬるでのもみち鳥啼塵 毛々多良須 夜もてから恋鳴妻やいかならん遠き麓にきく鹿の声影井 常燈の心細さと鹿の音に二ツの袖をぬらす小夜中琴葉 あたれて鹿も夜風もよはりけん更行声の細くやせしは同 サン上五十 は丁猪さへ寝られぬ鹿の妻乞に夜殿のかるもかゝや侘しき甲良 菫の根の長き夜すから鳴鹿の思ひ乱れて妻やゑらん元倉 赤羽 糸車くるや雄鹿の恋妻にひかれてよるの声細らきく見霍 名古屋 照月に酒の種を袖にまきて夜毎ねは絶ぬ鹿の妻乞真澄 小松川 小雄鹿の声は夜さらに燈台の春日のかたに細く聞ゆる光房 尺八のある淋しさよ鹿の音もれんぼの響にふける夜の空菱象 賜られぬ種と成けりに夜更て鹿の音細く耳へ立入れは重喜 山にいる月の弓にやおそはれて夢野の鹿の声や立らん鳴立 恋痩を妻に見よとや小男鹿の月の鏡にさし向ひ啼楽也 小夜更てさく鹿の音も細筆のしんとなりたる山陰の菴吹雪 小夜中に妻よふ鹿の音にそえて衣数そふ山寺のかね三登子 風かもて来る鹿の音のひう〳〵と吹遣しそうな窓の灯火真名井 脇指のみひとりきけはとぎほしや夜はいと淋し秋鹿の声影住 並ひたる枕の山に住む鹿の妻よてなく秋の夜すがら近医 月を見て思ひやる夜の鹿の音に貰ひ涙を袖にうつせる綾住 通ひ路に夜さらさつ雄の篝たく火憂とや鹿の声 立ぬらん 暁虫 花二 毛々多良須芥二 殊勝さよ高野所わの宿とりて其暁をまつむしの声静立日 騒かしき馬追せや鈴虫に爰も旅寐に庭の暁都 一平むしに露はおきにし暁に寝いるやうなる虫の声〳〵槌丸 生の音のかれんとしたる息継にのどやうるほす暁の哥家樽 夜もすから鐘にうらみや数々の虫も音そふる明方の空真広 さま〳〵の虫の音色に寝覚して寝いろともせで聞つ楽杉成 暁に猶も桟織むしの音は何十疋やをりもしつらむ真久 明烏告ゆく声に戸明れはまたきにさせと鳴きか〳〵す真澄 加幾加曽布花一 暁にかたねさせとこほろぎの糸のやうなる声にはりうつ松蔭 秋風の処へひやつく噺にまた寝もやら伝機織のむし喜撰亭 夜並して糸とかやうにきり〳〵すくだかけ鳥にかゝる虫の音目積 おく露の玉の重荷を羽にのせて引明方の車こほろき真笹 燈火も消かてになる暁に油させとやきり〳〵すなく雪也 鐘の声に時は何そとかそふれは七つころ〳〵鈴虫のなく影井 暁の虫の音いろも有明のともし火細く聞えすれ守吉 暁にさはく祝路の鈴虫や馬追土に目をさましけり楽住 天の戸を押明方のころ〳〵と神いさめするか鈴虫のこえ羽締 寝覚てそきく世えのと下〳〵に史の啼音も乱れけるかな万象 山月 照月を嫌捨山に夜毎めでく捨られたりと人やみから左雪也 文科の月見にのほる人をしも通てや影の田にうつるらん琴葉 相坂に夜さむの衣のかた下り月を抱ける乳母がふところ多万伎 月の船雲の波間を漕出てはるかにこゆる末の松山楽也 古河 透也 待兼し客の遅きはいかにやとむかひの山に出し月かも透也 一ノ関 黄氏の鐘つく頃に皓々となるは尾上の月にざりける鈍屑 肥前佐賀 風渡る御船の山に出しほの白帆とみゆる月のむら雲種也 いく秋も文科山のさやけさは信濃かはらぬ月そめえたき深道 月の弓雲の引たる気色よとはなし相手のほしき山栖路成 遁れつゝ遠く深山に住身には月の都のちかゝや成らん百嶺 名にしおふ姥捨山に照る月を見捨て戻る人はあらしな常道 詠さへつとりし老の恥かしや向ふ鏡の山の端の月葭方 邪魔になる木を伐出せし杣人を月の客とて招く山寺勝羅 芳野山とく〳〵の水にうつりつゝ西行庵にすめる月影里人 不二か根は雪の光に照月の玉もて作る山とこそみれ臼木 稲毒の光ちらせし火打鎌丸くなりたる石山の月多丸 日光の名にやおふしん秋の夜も昼とそみゆる山の端の目仲住 海辺には何と詠て岩間とる月こそ二とはさらしなの山注連縄 加幾加曽布花一 我なから老と成しもしらざりき鏡台山の月に向へど比加留 山の端にかけたる月は遠目鏡広き世界をのそきてやる近住 山風に先払はせて村雲のかたよる中を出る月かけ花子 山田守僧都も今宵ふく風に笠を脱てや月を詠めん月住 玉の斧取て木こりて造りけん丹生の桧山の月のみなね 萬象 みふねは 湖月 虫月の雪にやたはむ竹生嶋千尋の影をひたす湖一旦 因幡鳥取 瀬田の橋のみさはに浮ふ月の船流れやすらん左りにも如穂並 陸奥三春 漕出る月のみふねにきゝ浪のよるはしほあり鳰の海つら競 にほ照るや月の乙女に漣もをとなしやかなわらはべの浦甲良 陸奥二本松 覆ふたる枝をくゞりて月一ツ松間にいつる志賀の辛崎深道 同花二 同三春 心ある屏風か浦の月の夜や風のたゝめる波たになし蝉虫 余古の湖夜毎月出か崎や阿渡所かはかを待とりてみん隅成 向ひみる硯の海か高嶋に匂ひめてたき月のすみける里人 毛々多良須 魚は鳥もうかえて目には月影のすめるものからみゆる水海仲佳 影うつ春月の桂も青〳〵としけるやうなるみつうみの色目積 から崎の海辺に月のさしかゝり雨の支度も間に合ぬ 讃岐丸亀 夜の雨のふりをもかへて月の雪にひときは目たつ辛崎の松峯雪 辛崎の雨も今宵はやみぬらん笠たにみえぬ湖の月螺也 伊予三ツ浜 玉くしけ箱根の海に丁度あふてふた夜の月の詠終れ幽昧 鳰の海しほの満干はあらねともみちぬる月の昼もか影元倉 水の面に影をうかめつゆり世つ月を自由にしかの浦々浪家樽 「陸奥二本松 湖をわたれる影や三日月の船に邪魔なす風の村空景輔 影まる月をたゝえて楽浪や近江の海はさし引もなし綾住 諏訪の海秋も氷と月影のさすか狐はわたらさりけり声音 同仙台 同はをみる目は有なからみるめなき海をふせとは人のいふらん愛雄 太和竜田 ゆら〳〵と打出の浜に月影のさしてたゝよふ丸太舟も山角 水 湖にもはるか冬の如あきなく愛る諏訪の月影於鬼門 水海に都の富士とくらふれは二十にたらぬ月の乙女子諸実 加幾加曽布花一 讃岐丸亀 星と見し菊もやにほの湖にはなやうにさす秋の月影春道 諏訪の海に月人男こた船の棟にきはらぬ氷なるらん保登里 尾張名古屋 又たくひ内侍所や湖のみくさにやとる月の鏡は影住 同犬山 月影は近江表にさしつゝそ青畳なる床のうら浪石成 下野野渡 あつらへしやうにも月のさしてよき箱根の海に二夜みあす茂登也 鳰の海に秋の姿や磨たん合合る鏡の山の端の月花子 花と愛雪ともとて氷ともみつまてらす目のさやけさ殖舛 さゝ波にすむ月影は二千里の外迄みゆるからさきの松羽締 照つゝき一夜も雨の降すして月に淋しき辛崎の松増成 水海に曇ら伝てらす十寸鏡かゞみのやうにうつか月影元住 世にふりし。名にやたつん辛崎の松に雨きく月の松に万象 野月 毛々豆多布 大空は月にすまれて武蔵野の草葉に四まや下る夕露綾住 下総古河 牟謝志野の広さいづこに落めらんつひ見失ふ三日目の針に難哥免 菫つみし春より秋の月をみてひと夜明さん手枕の小野保登里 毛々多良須花三 空間もる月の光はかけゝろふの小㙒の草葉の露にうまれり声音 春る野の三笠の山に照月はころこし迄もみゆるさやけさ波音 世を通てひとり嵯峨野にすみ染のころも落けき秋のきさ子 同花二 よの月 おく露の光磨て夜もすから花野にみゆる月の乙女子増成 手枕の小野もおのもに楽しみはまた其中に有明の月松蔭 越後五泉 弓張の月はさしつめ引間野にはなす光は露もはつさす雅枝 陸奥三春 雲霧も風に追れて逃水のすみて影さす武蔵野の目墨菊 遠江掛川 むさし野の千種の花に露おきて寝ては居られぬ月のには 賛岐丸亀 出るより入間で影に障りなく月よくする平射志野の原明安 同 逃水に影をうつして吹風に光流るゝむさし野の月赤主 陸奥二本松 世をうしと思はねはにや遁れ入る山さへみえぬ武蔵野の実次 めでたくそみる式蔵野のはらからも月はうまれて出るやう也保登里 穂芒の袖にかゝことむさし野のはらは目にしも月の桂女種成 順風に覆へる空のつゝみをはとり広げたる野路の月影勝羅 武蔵野の草追かけて逃水のにがさ伝月をとゞめ置たや盛莱 むさし野の家ゐと成て照月は瓦花か袖の宿り尋ねん比左志 相模藤沢 なく虫の丸薬とみる野の露に箔の光をそへる月影里人 大原女のひさきて帰る野辺にしも黒きはみへぬ月の白妙広喜 加幾加曽布花一 霜と見て鹿もさめなば驚かん夢のつけ野の月に寐し夜は陽成 むさし野の花の錦にをりはえる露のかきりや月の入後難奇免 陸奥二本松 路成 なと水の逃て行わんむさし野をてらせる月の影はとりも路成 尾張名古屋 月の船漕出してや武蔵野の草の浪うつ夜半の秋風琴通 秋の野に露を結ひし京薄風にあやとる月の乙女子広喜 同 下総古河 むさし野の風の尾花の招けばや草より分て出る月影雨霍 手にとれぬ月の桂も逃水に持てや行らんむさし野の原万戸 陸奥一ノ関 武蔵野の千草に宿る月影にくばりて置る秋の夜の露千香子 三笠山にさし出る月に春日野の鹿と灯篭の数はみ焼り千万喜 枝雲のかゝる障しあらざれは影もはきとは宮城野の月近道 春に見し其みよし野に秋の夜も月の桂の花そ匂へる墨菊 影荷ふ遠里小野の油売ひかりは月にうち消されけん万象 渡月 毛々豆多布 月こよひ隅田川原の都鳥都にもなき気なりけり諸実 相模藤沢 水や空月の行方に棹さして心ありその渡し寺哉里人 渡し守月に任せて棹さゝば天の川迄船やゆくらん愛瀧 隈となる雲の袖をや拂らん佐野の渡の月のしゝ雪殖舛 陸奥一ノ関 隅田川あるかなき歟と夕暮に渡りに船と三日の月影飽眉 越後五泉 むやひたるやうにならひて水則棹さしてそ月の船もたれる仲注 月を見てかこつ泪はみちのくの袖の渡りに渕やなすらん琴葉 渡守る翁か寝顔を憎しとやさしつけて照る秋の夜の月千万多 陸奥一ノ関 くやしくも葉おくれたる渡し場の向ふよりさす夕月の船完人 毛々多良須 下総古河 一水増て人をとゞめし渡場に安くも月の舟さしくる望月 宮と見る佐野の渡りに駒留て袖打拂ふ月の下風影井 月の影にせは渡りにさす棹もくもなく岸へ船やつゝ見透成 越後五泉 濁さすに渡せ今宵の月の月の新底まつ清くすみた川雲 渡し守暮れは戻る其跡にさし出て月の船そうかめる雅秘 船かし伝向ふの岸へ月影のさしつゝ先に渡る野渡喜撰亭 舟なべて二子の渡ふた白に空と水とにさせる月影冬好 渡守見よ雁かねの探させど月の氷はさらに砕けす勝羅 穂薄の袖打はらふ風なし佐野の渡りの月のわむ 隅田川影すみ渡る月もまた雲のつゝみや出はなれぬらん目積 水棹さす袖の渡りの瀬についてみごろとなりし秋のかの月喜代志 すみた川渡りに月の雪の夜は船に寝かせし竹の長棹舛威 詠やる老の涙の雨雲の袖のわたりにうつる月影三季子 うち寄る。浪の穀の花形の渡りの船にこたふ同夜万象 庭月 一箒目は波にも庭の白砂にはしる兎か月の出しほ透成 さす影はさなから雪に庭たつみしみて嬉しき月の出汐雪成 照影は雪にも庭の梅なし侍月の匂ひを留る袖垣深道 よく請し庭の木立の月影をとぎにして見る秋の打の虫明安 月清く光を敷る庭の面に雁の影とも見ゆる飛石雅枝 てる月の雪や積りて枝も地へたわめるやうな庭の松影殖舛 もみち葉の色にも庭の時雨垣赤く照こむ月の桂は綾住 庭もせに邪魔せし松の枝にしも月をさげてするやう也麟馬 尤となる月の詠に庭の松の陰も杖突さまにみえけり舛成 月影のさして馳走は賤か家の庭にかつらの花盛也春満 庭中のあすはの神と夕月の影も嬉しく小柴さへさす完人 雨晴てうつれる影も庭たつみ下からも照る月のしけき繁喜 一盃もあらはで庭の酒盛はつも濁らす月もすみけり同 今宵よる月の支度に骨をりて休むやうなる飛石の臼目積 一月を見る庭は自然と前度に植し薄も故まねり真広 庭もせの芒の穂波たつとみれは月の御ふねのさして参る 邪魔になる枝をおろして待人もさはりなく来る庭の日影丸喜 一加幾加曽布花一 世のせはもはなれ座敷の中庭にくるなくすめる秋の夜の 我もまた烏に庭の飛石にうかれ出てみる月のさやけさ折香 庭の面の燈籠の窓を吹破る風にもきえぬ月のともし火保登里 にはの功を諾なく照頃月影に戸さゝぬみよや楽しる秋守吉 露置し庭の千種の月影は秋に残れる蛍とやみん近医 飛石につまつきにけん月影の轉ひ込たる庭の池水真和留 庭の面に月影さしてあり〳〵と蟻の這ふ迄みゆる明るさ雨霍 紫の戸の鳴子に風の音信て庭に出向ふ秋のよの月盛業 にはの面に興をそへけり柳影蹴上し鞠とみゆる目影川船 興をしも深くそへけり影清く月宿れてはほりし池水万象 関霧 毛々豆多布 秋の夜の明ても霧にしめりてはむらきかぬらん扇屋の関千賀江 花二 不破の関戸はあき霧に有なから往来の袖はしかる哉杉成 下毛野渡 野分して倒れし垣や夕霧の立ておさへの関をつゝろふ茂登也 下総古河 年ふりて荒にし不破の関の跡に立ぬるものは霧にざり俊英 越後五泉 おほやものおほ目に見よと軍の戸に立てあらはにせさる朝方仲住 是も又上よりおりるものとてや情も深き関の朝霧音清 川口の関は明しと見ゆる也深くも霧の波そ流るゝ雅枝 行先もみえすあゆめは秋霧の立田の関やしら伝知らん目積 明し戸を霧の籬にたてこめて夜への侭なる朝くらの関組子 霧深く道はどちらへ書羽なるむや〳〵といふ関にや有らん年長 雁の北舟霧の深みへ沈みてや声もたゆたふ白川の関繁喜 あしえもあしからなんと足柄の闇路に人を留る朝霧羽締 加幾加曽布花一 旅僧の霧間過るを見違て女連かと咎む聞守本枝 讃岐丸亀 明かゝる関の戸ほそを朝音のしめるは侘し旅の衣手麁菜 声聞てみれはあら井の関近く今さり分て来たる雁手綾住 関守の忘れて戸をもたてこめし朝揺の科は夢におはせん袖丸 暮ぬまといそく番匠名亥の戸にきをそみて居る霧の中道多万伎 霧深み連にはぐれて立帰り又あふ坂の関をたつねん久ン好 同 栗橋の関をつゝみし深霧は晴て朝日のゑみ出ぬらん笑人 逢坂の関はつゝめと朝霧に鶏の啼音かゝれざり琴葉 ほの〳〵と朝霧晴て鶯の関屋も竹の春の時ほの槌丸 名にたてる霧や覆ふてたゞごへの関にわき目はさせぬ万象 なるへし 聞擣衣 毛々豆多布 我なからをかしや月にうかれ出て宿のきあたを餘所にけり袖丸 上毛花輪 囲む碁もしはし咄にたゆる頃打音きこゆ秋の夜まぬた紙は丈 毛々多良須花三 一寝かへりて又こちらにも聞ゆるは衣もやはりかへしてやうつ津守 山里は隣も遠く隔れと砧の音やいひかはしけん琴葉 下総古河 夜焔の後頃関ゆる淋しさをよくもこたへて宇津の山産雨霍 両隣うてる砧にはさまれて耳もつぶるゝやうに思へり家樽 同花二 哀れるに気はふさぐのにどこから歟とれて聞ゆる遠横坊大路路成 箔をうつ音かと聞は織ためし機に金をものはす夜酢目積 小夜擣衣きく槌の音にうりされてこちらにはとんとねもせざり 小幡 まてしはし衣やよはらん幾度かむすへる夢を破る槌音万戸 尾張名右屋 うたぬ身もよその碪の巻そへに思はす通夜をしのめの真 下総駒ケ崎 打添る滝の厨に聞えけりきぬかたの音羽山に響て捨瓢 陸奥三春 ぬは玉の夢も砧に中絶て心細布長してふ夜は雨夕菴 伊予三ツ浜 蜑の子か波かけ衣うつ音をきし身そ弦句袖はぬれけり幽昧 丸亀 涼乳にもひゞくや槌の音そつてやゝねんころに衣打也峯雪 旅人の草臥し身に夜砧のやすまで運ふ音そ聞ゆる三千丈 小夜枯風や誘ふは行ぬらん次第〳〵に遠く聞ゆる保登里 吹風の音をも聞は賎の女の夜寒の衣身にしらてつ吹雪 誰か為の麻の糖衣うちとけて寝ぬ夜かさなる槌の声種成 小夜更て聞は打音もいと細き衣より妹か手やよわりん 因幡鳥取 衣らつ音羽の里にかり枕夢も破れて目もあはぬ也枝琴 言の葉の種と数よむ槌の音はしきしのみえし衣や打らん於兎門 甲斐市川 我かうつはさもあらなくに隣なる砧の音を淋しかりける常道 下毛赤羽 幾里も隔て妻を直衣うつ音高く送る小夜風見霍 久医の空にひらきて衣打こや荒金の槌の音かな多万伎 衣うつ音さへ秋の長き夜に布目はかりやつまる成らん里人 加幾加曽布花一 打槌にひかりもみゆる糸薄分て音そふ賤か夜碪碪広喜 風誘ふ浪かけ衣うつ音の高くきこゆる滋賀の古里座楽 巻かへす程や隣の高笑ひ聞えてしばしたゆむ砧は声音 小夜中の鐘に目さめて寝返りの耳にうつ〳〵聞旅哉仲住 秋は猶しきに涙を打出す砧焼しきひとり寝の床末学 榧の音に寝覚の里の淋しさは心ほそぢの衣や打らん堅女 夢の如うつゝに砧うつの山音には目さへあはぬなりけり真菊 衣うつ音の耳にもさはらぬは枕を高く寝れはなるへし万象 重陽宴 一けふ酒にひたして千代をたもつへきとぢめに茱萸の盛園琴葉 尾張名古屋 命をも延ると公生の酒もりに崎恒とて高き山に登れり雅流園 同花二 黄かね葉花をちぎりてうらむれは蒔絵のふんと薫る盃道足 毛々多良須 一長月のこゝぬかつきてとふきを祝ひてそくむ菊の杯真問 菊の酒しひ付られて九郎といふ重ね詞も忘れことのむ楽也 盃の数も重るきくの酒匂ひめしたきけふのことの香仲住 菊の露硯にうけて重住のうたけにのふる筆の命毛影住 きく月に匂へる菜のさかつきをいくつ重ねん限りしられす保登里 齢をは延してほしと愛つらん名にも老せぬきくの盃真菓 菊酒に酔てはくどく九日もけふは十日か陶家かと思ふ都 諸ともに長生祝ふ盃もかさねやうとて菊の酒盛高木 加幾加曽布花一 尽し盛あまりたる菊堀を袖へかけぬる茱萸袋袋哉槌丸 御肴につむ菊よりも客人の酒ひたしなる節句と垂しき比文 礼に来て酒盛につゐ長月の入相の鐘をきくの雪雅枝 秋風のそと身にしむも呪のきゝの酒にてあたゝまりけり穂並 十分に露もうけたる盃の酒もこほるゝきゝの匂ひは月住 千代の秋いきのふるとてひと息にくゝと重ぬるけふの菊酒万象 杜紅葉 毛々豆多布 下総古河 一神世自なれとも神の居ます如ひと尊ふとめる杜のもゝち雪也 讃岐丸亀 色かへぬ常盤の杜も定らぬ時事に染る木々のもは地葉座楽春 上毛花輪 恋の森に妻こふ鹿の声たてしあの紅葉ゝは錦木にこそ糸丈 陸奥二本松 時雨する杜には秋の大木蘇や小木蘇見えたかはしの祭安遊民 杜の名は酒もりとこそいひつらめ紅葉の色も酔をする繁喜 常磐なる森へも秋はくる〳〵とまとふて暮の紅葉そへけり高木 託宣も有とみえけり神南備の杜の紅葉のもゆる火の色雨霍 申所よりも先へ時たや染ぬらん秋のけしきの杜の紅葉く里人 夕日さすけしきの杜の紅葉ふくのひをたして今しはし詠めん近医 星と見る麓に筆は有なからまた日の高き杜のみゝち葉園雪 千早振神路の山の杜にしもかせのうすめにみゆかもみち葉春道 思ふ事いはでの森の薄紅葉口なし色にみえらはをかしき麁菜 常磐木の杜の紅葉の中に立て三才の毒さらにみゆる老松静音 紅葉せし木々の錦にくらふれは我着し衣そはつかしの杜波音 もみ地して花の詠に似る頃はひらたけるらし杜の掛茶屋殖舛 もみち葉のぬる手の色や照る日にも蝉時たせし杜の下蔭綾仕 伊勢桑名 夕日さす紅葉をみれはまばゆくて顔あはされぬはづかしの杜直蔭 錦ぞと森の紅葉をしら浪の心かゝらん神の留主には山角 もうち葉のあかぬ詠めに哥をさへよまでも照らす月読の杜槌丸 加幾加曽布花一 人目をも深く忍ふの杜にしもまたきに色に出るもみち葉赤主 冬きぬるしたくに染てしたてるか紅葉の色の衣手の杜難哥兎 むら烏ねくらに迷ふあかるさは紅葉てりそふ杜の夕栄万象 川紅葉 顔てらすもみち葉のひの川上へ船ものほせて行そをかしき歌志丸 毛々多良須花三 其み地葉は火のみゆる如みかの原わきて流るゝ泉川には同 宇治川のきしの紅葉のひをよけて高瀬になどか登る柴船綾住 讃岐丸亀 水清く移れる影の一面にちらぬもうかふ川のも冬葉峯雪 五泉 童田川紅葉ちりしく能風に幾反はかり錦持て来し音清 錦そとみちの奥なる衣川霞や時雨をきしのもみぢ葉千香子 赤く光る木々の紅葉の下ばかりのほせてや色に深川の水菱象 七夕の紅葉の橋や落ぬらん立田の川にかゝるしからみ近道 木のえに出茶やかみせの割詣も紅葉やとぢしふたまたの川糸丈 加幾加曽布芥 美しく染るも色の恋瀬川紅葉のひよくみゆる水面透也 もみち葉を踏分ねとも小相砧しかと聞えて秋は淋しき宗也 もみ地葉のちりて流るゝ衣川水の錦をみにやきぬらん安利列 百しほの流れの瀬をやへたつらん五十鈴の川の峯の葉ゝ綾住 わらはへの文春川にちらせるはても愛ゝしきいろはなりけり杉成 言津なる山川にみれはぬりものゝうるし紅葉や朱椀朱折敷栗葉坊 山城の梅津の川の紅葉くはひとしほ色そ染まさりける福養 秋更て北山時雨きふね川こかるた斗みゆるもみ地葉高木 もみち葉を目も綾にみる川はたに横に日のさす笠の夕薬丸喜 幣にたる紅葉のちりに交りし神南備川に浮と云元けり縫女 立田川に浪打にするもみち葉は綾をり入れの錦とそる銀子 朝日山うつれる宇治の川浪に照そふて岸の葉の色臼木 水草に流れてとまるもみち葉は川にひ水ふる金魚とそみゆ麟馬 水の面にちりて流るゝもみち葉は浪をくゝれと消ぬひの川増枝 山川に銭をりたるもみち葉は唐か倭かえぞしられざる真笹 その色の深さしられぬ渕も瀬も立田の川を埋むもと葉真方 川水にう。つれる紅葉の緋にそめて魚もひそめるくゆやらん万象 九月画 陸奥仙台 毛々豆多布 けふといへは秋の別れに風るへもよほと力を落しける哉近道 行秋ををしむか菊の建札も面かたして倒れにしけり景輔 先立に出雲へ神の案内して今宵に秋はさる田彦氏 秋ははや今宵かきりに月艸の葉におく露もひやつ殿同 けふ迄に涙の露を皆出して悲しき社の底たゝきより保登里 秋暮てはや入相の捨鐘も冬のみつきとならんとす覧高木 泪もろき秋なら戻れ虫までも声にはる程鳴てとむるに杉成 行秋も翌日は淋しさ忘るへし万の神を送達にして望月 一ま秋に錦を着てや立田姫古郷へ帰る支度成らん。仲住 ゆく秋の別れをしみて虫の音も草の袂にすがる夕露続仕 行秋もけふにせまりてさわくにや俄に木の葉取ちらん琴葉 老てゆく秋の哀をよ所にして明日の小春は誰か待らん同 ゆく秋の名残の泪おしぬくふ尾花の袖やしほりならん伊興志 虫の音のとまるあたりに行秋のと宵ひと夜は草枕せき声音 盆〳〵と諷ひし秋もあすなりてけふ斗なる夕侘しき川舩 暮てゆく秋の別れの賊乞さらバ〳〵や風のにすゝき種成 吹風のをともしつると聞はうし翌かたつ神につきて秋年長 とゞめてもけふを限りと行秋の名残をしさは尽か期々なき増成 帰り風たてば秋よりはら〳〵と落葉は先にさわき立けり家樽 引秋の連にはならぬ白菊に杖と笠とを誰かそえたる同 暮てゆく秋の哀れをしらす顔に夕にさゆる霜そ憎かる本枝 長月の二十日余りの九日茄子秋の名残に笑みを見廻り甲良 忘れにし扇も今宵とり上て翌日炉開きの支度へや満成 加幾加曽布花一 蜘の囲の千筋まとへるかひもなく一筋に秋の暮て行らん真問 ゆく秋をいかにとゞめん立へたつ霧さへ払ふこからしの池雅枝 行月日をしめど頓て暁につきぬる鐘に秋も尽ゐる見霍 心なや今宵限りとなる秋に早くいねよの鐘は何事冬好 遊ひ女の虚言も誠となが月の晦日に秋のつきそうる万象 をたる 初冬 毛々豆多布 うき秋も月のむし雲はやうちて片時雨する冬は休む勝鶏 毛々多良須花三 濱萩の声けさ遠く成にけり出か兵へたてる伊勢の神風目積 二本松 残りなく尾花はちりて冬きぬる木の葉衣の綿に入し安遊民 同花二 秋はてゝゐらりの灰にかく哥の火なぶりもよき冬は 午々多良須 鳥もふまぬ庭の面なるまだら霜わき来し冬の足の涙守人 冬来れは神は出雲へたつ風のふくもあやしと思はれにする春満 水鶴かと思ふはかりに冬の来て門をたくは時雨なりけりけり透也 けき冬よ炉に掛替しあられ金石に時而を誘出せり哥志丸 冬の来て此ぬくとさはほか〳〵と匂ふ小春の初日影哉琴葉 袖ぬれし秋の名残にしたはれて時雨を冬と定のね保登里 山ほどに頓て積れる雲もけふふもと成らん冬の入口殖舛 冬のふはひに通ふとて今朝よりは炉の元迄もひゆる也於兎門 初時雨けふふる年の山に又めぐり逢んと冬はきぬらん隅成 ける立て出雲へ神の旅送り時雨もいまた戻らざりける実次 ちりかゝる紅葉のひをもかき寄て手あてるはかり冬の蛇屑 相模藤沢 丸木捻たる川辺の枯芦のふるへて渡る冬のはつ風筆丸 初しくれ秋の隣の板庇冬来にけりと音仰そする里人 影住 心なしと雇ぬもむへ冬の来んけさ戸障子のひまも 杣山の木の葉をおろすはげしさはするとき斧の初冬の風粟葉坊 今朝はやく出雲へ神の旅立にぬさとちらせる風の一葉か夜船 うつかりとして居るうちにはや冬の足元よりそ立る鳥肌重喜 又々衣仕立おろしを着し肌になじまぬ袖の風そ空けき影住 格別になさは時たて正直の頭へやとる神の旅立真菊 加幾加曽布花一 吹かへて秋はきのふになり瓢春かしがまし冬の北風多く力伎 冬きぬといへは青葉の松垣も萌黄純子の帳にまされり声音 きのふ迄外へのみ出し野良猫もけるより爰にゐなり出て元解 お風もきのふにけふは引替てことに音する冬は来より楽成 鈴の緒も鰐口の緒もむすひ上て風の音野冬来り年長 足引のやまと廻りに秋はてけふは都へ冬の入口千生 本雲へと立ゆく神の跡よりそいうがしく風の音もしん松蔭 いつはりのなき世時雨のふる音を木の葉かときゝ心耻万象 庭草 毛々多良須花三 ぬき捨る人さへみえぬ冬の野のしもに葉かれし藤袴哉雑哥兎 同花二 望みけたに霞相の袴は着ておれとおはをからせし冬野村雨霍 木からしによろぼひ立る哀れさよ秋は花持し角力取草真広 雪霜のふるから小野の女郎花なまめきはせ伝かれ〳〵立雪也 秋の内に刈れよといへとからて事草もいつゝか冬松にけり望月 冬枯て哀れにみゆる撫子をねせんと霜の八度おきけん園行 愛らしく霜をしのきし猶子に長柄のやうにかさす石蕗 冬枯て草に残さぬ花の香をかくしてありとみする水仙千香子 露雲の下になりたる由の重かれて折れふす庭の青村保登里 神無月神の帰りや松の木のしたゝさ斗根にこもるらん里人 霜枯て猶さはかしき芦薪はまた秋風を忘れざりけん真似人 こからしに持てゆかれじとむら草の霜の柱につがり 御狩場の力草にもならんとや雪をしのける鷹の羽芒甲良 冬かれに虫の音よりもよはりてや声をも立ぬ霜の下荻種成 寒風にふるへてものもいはざりき口なし色にかれし萩の葉目積 加幾加曽布 二本松 白波とみえし尾花のされはこそ義なれにけりな衣手の小野安遊民 藤沢 山たちの風はさなくておく霜にいつか葉かれし冬の草はら丸喜 かまはなく打捨置し道のべもおのつとうれる冬の草むら 撫子も秋の千草も皆ねるに霜のみおきてみゆる寒けさし俊英 母子草尾花の袖に拂はせてふす撫子の霜やいとへる臼木 木からしの吹送る風に諸人の道くたはなく歩む冬む冬の聖高木 虫の音は絶て聞えぬ冬の野にかれ〳〵にたつ霜の草むら万象 落葉 ちる木の葉風に測るす飛鳥川流れてさらふ瀬寄けり隅成 いつとなく風か持て来てちりひぢの山となしたる庭の葉ゝ里人 雲雀山木の葉はこなく落とみれは又舞上る風そはけき光房 銀杏葉の風に乱れて飛ゆへは夢の小蝶の帰るかとし川船 枯つきて雪をたもたば枝の為にあしからめとや落葉引ん路成 こからしに落葉は庭に敷妙の枕に近き時雨とそきく千賀意 一露霜に踏こたへなく落葉してあらしも辷る谷の音橋万戸 きのふ迄錦とみえし梢をはきれ〳〵にしてちる木の葉喜撰亭 梢をは坊主にざれてもみち葉もびんなしや思ふ風のはげしき琴葉 錦かとかたかへは猶正直に見せて梢の落葉しつらん菱象 落葉かく子等かつふりのつむじ風真葛か原に騒く夕暮梅人 山川に木の葉衣や洗ふらん紅葉のあかも落て流るゝ槌丸 散紅葉をしむあるしに熊手もてかゝはかりとそ見する庭魁 落せし跡の梢の淋しさを又引いだす松風の琴重喜 窓の許に見て面白き書よりもかき集たる落葉めつら組子 老松の風の声する山口は落葉にすきてみゆる也けり吹雪 こからしの風に落葉を吹立て空にしられぬ雨の音きく家樽 あたゝめし酒またさめぬもみち葉の色に出さり乱そろん麟馬 紅葉ちる音は時雨と思ひしに梢も空も晴てえけり保登里 小夜霏ふると思へは杉庇はら〳〵あたる風のもみち葉里人 錦せし頃はきられぬ山磯もちれは足にもかけるもみち葉丸喜 淡路沼島 ものいはぬ桃や李の落葉をも風か踊らす壬生寺の庭方丸 尾張名古屋 山風は木の葉衣を運ひ来てかさね着せかと吹すさんや貞就 伊勢桑名 残りなく梢を風の奪ひけり葉寺の神の巣を待得て由刈 芳野山桜もみち葉こき夫て錦染るす漬のしら糸増成 時雨をは竪貫にしてちる紅葉立田の川のはたにうけれ楽住 美しく散し紅葉は池水にをしの床とる枕しるし歟目積 遠目には虹とやみなん朝風に紅葉ちりしく谷のけ橋末学 一同三十一月廿一 仙人の衣になれかものとてや風に乗つたぐか落葉は難哥免 散木の葉虚空に風の吹上てぼろ〳〵雨のやうにこぼく茂登也 二本松 時雨して梢も色に出雲なるひの川あたりちれるもみち葉安彌成 藤沢 踏馴し賤か草鞋にかくてたにはき捨かたきもとら葉の塵高木 夕月の影は玉子に黄み見せてふは〳〵風の落葉しつらん住方 寒しとは日々夕風にたつ木〳〵のふるふ葉音の身はその守吉 みさほある松は残して風のあたに落せしもみ地葉の色組子 かた〳〵へ掃寄する間に落葉して猶ちり埋む谷の下菴舛成 磯か家のかきの本迄落し葉をひとまろけるにそ籠に入ける笑人 こからしにはや葉おとしてたつ鳥の詠とうる迄ちかの薬哉万象 冬月 毛々多良須花三 高照らす峰の紅葉のひはきえて山の端白き霜の桜綾佳 冬の月手向越をやするどなる光に雲の幣ときれゆく声音 雲の袖はらふていつる冬夜の月答もいとはざりけん楽也 泊り船窓よりみれはさゆる夜の月も氷て動かざりけり里人 風穴とみ時雨のこその袖袂いくつ通せし冬のよの自真澄 雪晴てよると思はぬ月よみのひよみのとりの方にかゝやく安遊民 一霜柱けづり立る歟かんな月つきの桂の夜毎通りゆく樫 降雪に月もおぼろとみえぬるは隣の春の影やさすん路成 さゆる夜の嵐に雲は払へとも落葉にくみる冬の月影家樽 春くれは心やはしく三芳野の山にすごける冬のよの月松蔭 雲井にも今宵は風のいと寒く月も氷る夜影のかごかぬ都 楽波の氷れる上へひら〳〵とへげて落たる石山の月真葛 梢晴て雲の袖から出る月の影さへ実にき最手の輩保登里 夜神楽の注連ゆふたすき榊葉に懸し鏡とみゆる月影一旦 冬の夜の月の氷をうつ波に影は砕けてちらす荒磯月住 研上やするとにみゆる冬のよの月は外山に光出らん右成 風さゆる軒の垂氷の先よりも光するとき冬の夜の目近道 冬の月丸くみる夜も光にはするとに角の有かとそ思ふ杉成 小弁交て霜に寒けき冬の月影ふめば草に声は有り勝蘿 加幾加曽布花一 水海をとつる氷の風よりも渡れる月の影そ身にしむ米成 諏訪の海はりし氷の其上に夜渡る月の氷さむけげ雨霍 月閉て寒さはげしき冬の御くもかけなき山の頂千香子 刺刀のはよりするとき砥並山霜にきたえて出し月影長向 月弓の光を放つ尖さはいてさへ強き冬の夜の空広喜 百草の花も跡なき霜に晴てしろ〳〵さゆる冬のよの月保登里 諸人にあまりに袖をしぼしてて水けのとれし冬夜の月万象 浅雪 毛々豆多布 一二寸降しと見しは目の欲に深からでよきけるの白雪杉成 木にもたらす竹にもたし伝浅茅生の杜葉にみする雪の初花原子也 明りにはなしてもよしや翌日迄は消すにたもて庭の薄雪堅女 毛々多良須花三 朝顔の枯し垣根に花とみる雪も一時みたぬうたて御墨薫 同花二、 ちら〳〵と降し薄雪物語よひあかしほと積ぬ窓先一旦 降初てあゆむ空さに土おます土醋ずへはつかぬ白雪高木 まれ人へ深き馳走の心にや浅くふりぬる庭の初雪臼王月 〽あかぬ程はふらねと踏かねて足をとめたるけさの初雪羽綿 一寸の虫の音たえて庭の面に五分程つみし今朝の初音槌丸 いとひくき地すりの矮鶏の踏てたに蹴瓜迄にも雪の積声音 せはしなく文書たてゝ友よひにやるまでまたぬ雪儀綾住 室にして咲し梅かと見る人もだまされたりな木々の初音丸妻 枯尾花風に乱ると見る雪の跡さへとめぬ詠をかしき見霍 毎木には降かゝる雪の浅けれと詠はふかき庭の曙袖丸 皆人をゐろり巨燵へ追込めとつよいふりとはみえぬ白雪楽住 加幾加曽布花一 燈火は風にしらけてちら〳〵とつひ得さらま庭の初雪綾住 旅がれし人は案事す踏出してふからはあらぬけさの浅間高 折焚は消安き柴の生椎になましいふれる山の初雪雅流園 花笠を着たり顔にも梅にふる雪に雀も小躍やする 三春 紅井の裾引野辺も冬されは面影かはる袖のしだ雪 霜かれの籬にすこしふる雪は菊なき後の花とみゆ保登里 藤沢 吹風に花かあらぬ歟よしの山よし野をしくやうが薄雪持芳 浅漬にすなる大根の畑にもしほるて降けさの初雪影住 辷るかと小袋坂は浅けれとゆだんはならぬ雪の足元冬好 降るまゝに消やすき雲も浅茅原よすがによせてしくしはし菖象 見そらむ 積雪 毛々豆多布 弥高く降つむ雪の山なして野末は空にとゞく武蔵野綾住 しら雪の鞠ほと積るおもみにも枝の折れぬは抑けり喜撰亭 風とけふり窓に出入をみこしろの雪の中にも馴し人声増成 大原女のひさぐ黒木に積雪の花をそえたる詞やさしき月住 盃の数もさねて積雪の深さのしやくも妹にとらせん道連 毛々多良須花三 足跡をつけるとは消しつけるとはけして明るき雪の灯火重喜 軒の端の垂氷はさぞな堅からめ足駄の歯さへたゝぬ大雪冬好 枝を折る力はありて積雪に踏込下駄やはなさゞるらん綾住 降つとる雪の白をいく度かかきては捨る文字の関守年長 家一ッ雪の中から見出しけりとけからと鳴鶴の声跡人 降積る雪に晦日のやみもなくくらくみゆるは川はかり本枝 踏込し足に覚へもしら雪のふり帰られぬ程に積れり真和留 ふるけしき花のちるかとみよし野に桜の枝もたはむ大雪丸顔 我まゝにはびこる松のあたまから押へつけしと峯の大雪花子 積りては傘一てがた〳〵とふるふ計に空き雪の夜伊与志 踏出しもならてそ雪に不沙汰して春来る迄はとはぬ堂綾住 弥高く山を重ねて降雪のやまでは越ぬ志賀の山越同 壱部か仏つくれは積雪に輪後光となる庭の呉竹方丸 是も又冬のたゝみか飛騨山に積り上たるけふの大雪近道 雀には宿かしもせ伝つむ雪に先へ寝にける庭の中松秀 けふき日積りし雪に山守もたになしといふてとやしび鉋屑 杣人は何を枝折にみね麓皆白州の雪にうづめりきさ子 山松のえた折てしらぬふりしてもつみかゝされぬ庭の雪喜 跡引て酒のむ人の悦ひはつもりもはてぬ庭のしら万宝 武蔵野の堀かねの井のそことだにほつてもみえぬ程に積雪蝶也 消ぬが上に雪降つみて杉むしの印もみぬ三輪の山本銀子 加幾加曽布花一 降つもる名もしろ山の江戸見坂目の下町にふれる日雪雛望 馬よりも力増りし酒車富士のしら雪五駄積にけり高木 降つもる雪に氷の地獄にも仏を造る童部をかしや見霍 冬は猶大きく見ゆるふ二か根の高きか上に積る白雪山角 二三寸段〳〵積て上ル町一條過り雪の高倉捨瓢 ほこりたち降白雪はちりひちと見る間に積て山菅の安甘堂 冬なから木〳〵の梢に咲花とみる間にちりて積るしゝ雪菱象 かゝ迄に降積るとは白雪のゆき迷ふたる人の門口長文 おもしろき梢に香の花咲て手折はかりに枝もたはり景輔 欲ふかき賤は猶さら悦はんはかりしられぬ雪は豊年真菊 水無月の望に積てふ不二の雪のその時ことにあつく有ん万象 池氷 万代の池のさゝ浪さゝれ石いわほのやうに氷閉けり静音 池水のいひ出るとは何らん風かさゝやく岸の薄氷跡人 広沢の池の氷も年の内頃はるは待かゝ心なからん雨霍 池の面の氷の下に音するは春立波の花のしたく歟袖丸 地にすむ警参の女夫の音れどを真似て氷雲と合 ぬらん 山鳥のをさきの池の鏡かも影みし水も氷ゐにけり三登子 楽波をのこらす寄て一たばねくゝりの池に氷むすへり喜代志 雪風に桜か池の浪の花さくや寒さに氷はりたり種人 池の白の氷すがごとく光れるは水もつ月をともに閉ん愛雄 風寒み冬籠るとやこやの池の水も氷の戸さしたりけん穂並 池水の氷のひまに通ひ来るをしも寝くらに迷ふ哀さ千香子 不忍の池の蓮の糸をもてとちし汀の薄氷かな甲良 弓なりに池を廻れは氷ゐてつる〳〵辷る鳥もとえけり高木 朝毎に氷に結ひ合ぬらん三とかりぢの池のゐなわに静音 はりつめし水に底もみえかねて水なしと思ふ勝間田の比舛成 散かゝる紅葉の錦沈めじとくゝりの比にむすふ薄氷三千丈 雅児の塞の河原の石投て砕く箱根の池の薄刃梅人 菊枯て星の影なき大沢の池の氷は月と見るま伝万象 豊明節会 毛々多良須花三 すへしきは民を子として今年稲めて給ふとよ豊の通りに跡人 三升姫の雲井にのほる辰の日はたつなみの如袖のみゆらん琴葉 国参発せきを争ひ白黒の巻御酒給ふけふけふの楽しさ同 豊年の大会を巡らす灯火は賑ふ民の明りなからん・保登里 天乙女神ふる事も今の世にうつして祝ふ雲の上には殖舛 めてたさは神酒給ふ庭に舞姫の神もかさぬる雲の上人亘 神にしも捧て祝ふ新米のつきせぬ御代をうたふ豊年きる子 わたつ海の辰の日祝ふ節会には豊玉姫の舞ふりとな比左志 けふにあひてかさす袂もゆたかなる舞に明るき乙女也 天乙女神ふり初てめてたるは今も替しぬけふの舞姫高木 〽出来もよき秋津国民豊年の節言ことふく万代の声増成 往昔の巻の明の面影のさすは乙女の姿なりけるは山角 豊年の宮に明るき夜の更てうたけに鶏も諷ひ出せしか都 大君の御倉賑はす新米に豊の明りのうたを楽しき鉋屑 花一 加幾加曽布一 閉し台す其新米の印かも腹にもたれる舞姫の興杉成 雲井にはけふそ給か稲光りくらからぬ代豊の明は一旦 有かたき巻の明の節にあひて光りを清手の葉種成 通りかしはしといひし天乙女巻の明りの夜目かとそみる於鬼門 もたかなる。明りは悠紀に神添給ふ主基は楽器にて万万 酢んとすらむ 潟千鳥 浪の打てかゝ見はづすうけ身には瀉をや引て衝立らん重喜 風寒み潟に千鳥のかたまかはかたみに身をやぬくとめぬらん声音 毛々多良須花二 汐干れとうな上潟はやはりまた浪のうつ如十鳥立けり琴葉 交持て千鳥は夜の目後路潟あはて恨や鳴あかすらず茂登也 真砂地の潟は式紙と夕千鳥難波の仮名もあし手書せり爰に うちかくる浪や重たゝかつくらん瀉をかへつゝ騒く衝は折香 二見瀉砂子や玉を踏ゆふ千鳥をみるも目の薬かな里人 夜毎〳〵吹上の風にねもやらで友をまつしの潟千島怪女 小夜千鳥居中の潟にとまりぬる船のとも迄呼起り臼木 神風やいそへのう潟あら浪に一万度ほとに鳥立舞ふ静音 千鳥さへ須磨にもすめは都とてよその潟をはふり向もせぬ同 明石潟通ふ薬船おもけれとしばなく千鳥身けるにふ増成 呼つれてむつみあふたる輪潟にともかたまりて立千鳥哉琴葉 終夜目は明石の潟千鳥かたちとり〳〵影をうつせり多万役 夜寒さに潟に千鳥のかたまりてかたみにしはしあたゝめやる都 波をかつき濡らせし羽神打しぼりほすや干潟にむれる街は魁 清見潟関のこかたのむら千鳥むら〳〵謡ふ風の木の葉か甲良 松浦潟雅の名におふ小夜千鳥波間の船を見送りて鳴愛滝 淋しさは碁の打手さへ難波瀉うち書みれは衝むれ立糸犬 啼声の風の吹度返ふらし須磨に明石の潟の千鳥は山角 加幾加曽布花一 群てゆく跡に三ツ四フ二見瀉かたみに友を呼千鳥かな見霍 博多なる潟の千鳥はうつ波におひえて最も結ひかぬ鉋屑 淡路四千鳥は須磨の浦さして夜毎に通ふ海の中道夜船 難波瀉みしかきあしの水底にたては深みへたつ千鳥哉綾住 あかしかた通ふ千鳥の寐せぬとて夜をふかしぬる須磨の響寺蛻王月 夕千鳥逆まく浪の跡つけて妻を与ふとて身をつくし鳳露丸 冴わたる夜中の潟のむら千鳥ねすかたもよくみゆる月影万象 歳暮 色替ぬ松をはたてゝ着帰る年の支座に接られけり琴葉 花三 毛々多良須 殖舛 一とせの尾張や伊勢の巻暦日もふたみかとなりき殖舛 事繁く手の廻らゐはさま〳〵の用をかたえし年の暮哉聖主 夢の如過ゆく年は譬ひとへ春に隔てぬるまなき夜に難奇免 同花二 掛乞に責つけられて月も日も剃なに年や暮て行らん楽也 将棊さす師乞しらすも驚かん手つめになりし暮の金銀 文車のみほとたまる書出しをちり塚の莖と払ふ手の打比文 六つの花ちりかひくもれけふ年の行といふなる道まこふかに由苅 行年の市の何某くれかしの暮かしの掛を与へかせはしさ 竪横に人もせはしき筆の先帳にたすきをかけ歩行暮儀法師 早瀬川よとま伝流る月も日も立て帰らぬけふ北年浪種成 けふつくはあす来る春の年木船戻り舟にや暮て行らん都 行年の日数を指に折手本師匠も筆をはしらせそする常道 世話しさは日足も早く行年にまけじと人やかけ歩行ん枝琴 それまけた負たと安ふ売歩行松はねもなく切出しけん真名井 加幾加曽布花一 賃餅のきねも和布刈の神堂やかま持てそゆく年波の底愛瀧 呑間なき大晦日の福祭迄せんじつまりし手の暮哉伊与志 行年のつまり肴や組重のよどしらへしていそく暮かな臼木 暮て行年をかなしく思ふ哉春の来るのは嬉しかれとも里人 元日を糸と思へは毎日は大津泊りの心地こそすれ本枝 年浪は近く寄せきて蜑小舟こき帰されぬ月日より汐時 千金の春を迎ふる手の暮に一両るをほしと思へり槌丸 暮て行年の余段もうるふ有て一月たけのをしさ増れる声音 すれ違ふ人せはしさよ行と来と二ツの年を送り迎ひに折香 甲斐谷邑 光陰の天よりも早く破磨寺をいつしか売れる年の暮哉文鳥 都へはあすくる春の今宵をはおほ津こもりといふもむへ也峯雪 髷はこもみとりの春に延んとて鏡に向てぬける年の夜万象 誹諧歌参籠百首巻之中終 終 俳諧歌参籠百首巻之下 森羅亭撰 寄月意 毛々豆多布 下総古河 一恋の山つもか思ひの高うして忍ふ夜はとく月をかくさん難歌兎 毛々多良須花三 月を見てかこつ泪は感病の次第にほそる有明の空家樽 床は海枕は山とかこつ夜に隈なき月よちと曇れし有象 あふ夜半は影をもいとふ下心うはべは月を待顔にして多万伎 陸奥二本松 恋人の情はかゝる雲なら侍むねの月さへくらうなりけり実次 相模藤沢 逢夜半に笠めす月は閨の戸を明ていふれの雨としりけん種人 同花二 〽晴わたる月の詠は有なから胸は思ひのとみやみそうきききききさ子 下総小松川 きぬ〳〵にうしや別れて帰るのに御吹しくも残る自影光房 甲斐谷邑 月見ると人にはみせて空たのめ妹を惑つゝ寝参ぬ夜半宴久 陸奥一ノ関 妹か心いつしか秋の月に似て寝よといふ夜のなく成けり折香 上毛舘林、 思ひ侘ひ心のたけを夕月夜くもりし胸も晴て嬉しき喜彌壽 下総古河 雲の浪風に漂ふ月の船妹にこかるゝ夕くれの空雨霍 筆事のかたはれ月よ我思ふ半分うつせ憂人の袖難哥免 恩路を今宵の月にさへられて己か心の雲そ迷へる千賀意 下毛野渡 月と共に出ると夕夕の約束の違ふて曇る夜半そ佳しき茂登也 照月に見られて顔をさらしなや我をば捨の妹そ難面花盛 君ゆへにいむてふ月を見明して老と成なん身さへくるしき秋安 嬉しくも妹か返事のむすひ文ひゝきてみする雲間に朱気丸 尾張名古屋 山鳥の尾の長き夜も影見せて月の鏡に恐なけよしや真澄 閨の戸をそつと明れは先立て案内さすかと思ふ月影松蔭 秋の夜もあかぬ別れの衣〳〵に心は跡に有明の月安甘堂 いたつらに更て待夜の空たのめ涙に曇る月の影かな桑子 思侘ながむる空は嘘なもら泪そ月のくまはなしける麟馬 相模藤沢 啼てあふことのなかねは日を経つゝ胸のみ思ひみつる月の夜里人 陸奥二本松 顕れて身をかくすへき隈もなく月晴日程胸そふさがる徳丸 見る度に泣たくなるは憂人によくも二七の月の面類杉成 陸からぬ月を宿せし我神の泪そ直の重荷とはしる目積 仇人を待宵よりそさし覗く月影にさへ気つかはれより仲佳 待夜半の月の鏡に向へとも曇りかちにてみえぬうき人藤子 見てのみややみなん水の月に似て手にもとられぬ君か玉札鉋屑 添寐せし枕に目は曇れともいつよりさゆる我心か事繁喜 五月雨の空に思ひと晴やして顔見ぬ程も久堅の月槌丸 はなしあふ息さへみえて人目より忍ふ所に迷ふ月の夜真広 きぬ〳〵に我を泣せし烏をはなかせる月とさを晴さん真菊 伊勢桑名 人の目を忍ふ涙の袖をさへはやくも月にしられそめけり由刈 肥前伊万里 曇りなき月に思ひの増鏡君か姿も見せてくれかし 一加幾加曽布花一 出羽最上 今宵しも隈なき月に誘れて心空なる思ひ晴さん銀扇 影たにもみえぬつらさよ来ぬ人を待手山に月は出れと葭方 サン下二 陸奥一ノ関 待て寝ぬ顔のつやさへなく目にはあしたの月の照なき夕声音 人やみると忍ふ月夜に我と我影法師にも驚れけり臼木 相模藤沢 いからせん言訳くらき通路に月の明りやたてるに夜風高木 落るとも落ぬともまたみえわかぬ妹は曇りし夕月の影三棟 山の端に落かゝる月は我神の涙にぬれておもくみゆらん綾住 しらさじと思ひしものを月影のさして教ゆるやうな忍路山角 枕せぬ妹を恨て帰る夜の涙にやとる袖の月かけ万重 待催る目には涙をもちの夜のさやけき月のまへも恥かし多丸 相模藤沢 逢夜半は心もさえてさす月の影も隈なき閨そ恥し持芳 面なしよ忍ひ〳〵て閨の戸を明れは先へはひる月影袖丸 恋忍ふ月の夜頃もいたつらに顔みぬ程そ胸の曇れる万象 寄雲悲 毛々豆多布 むら雲の袖につゝめぬ稲妻は我狗の火やはしり出にけん綾住 直催て涙の雨の降るほとに雲とかさなるうき思外影井 毛々多良須花三 通へとの風のたよりの嬉しさや宙を飛ゆく雲のあしかな雪也 下りたる今宵の雲の振廻に君こさめとは待れける哉蜃葉 上毛小幡 仇し名の足えよりそたつ雲に人目まはゆき恋の山毛万戸 我胸をこがす烟と君よしれわき空言を夕やその亥影住 同花二 高き恋に晴やらぬ胸は夕ごりの雲よりも猶とぢてしき杉成 恋人はなびきもやしで浮雲を覆ひ懸けん胸のもや〳〵真弓 肥前佐賀 我思ふ心は日〳〵に両とよひかゝる浮雲に右ゆへそかし響 龍のまきし千花の海の玉章に空とうき名も空に広かる槌丸 毛々多良須 ふりさうなけしきもなくて雨かゝの根のきれかぬる妹かき葉望月 うき妹を書籠にせんと思ふより胸に弥雲そ立かさねける筆方 同小幡 今更に思へは胸の浮雲と契りしことのうらめしきかな花干 風に靡く人の心のうき雲に我胸のみそ思ひふさがる多万伎 相模藤沢 一影日向ありし君とはしら雲の時雨と替るけしき 積る思ひ不二は物りは雲と成で絹着ぬ好か腰や廻らん有象 我胸のけふりや雲と棚引て妹かあたりに覆ふ成らん於鬼門 陸奥二本松 我胸をとぼふて雲となりぬるを忍ふと宵に思晴さん安弥成 たつといはゝ君と我名を覆ふてもくれよや雲の衣々の袖同 加幾加曽布花一 大空に雲は見ゆれと我胸のさらりと晴てあふ夜嬉浜守 けしきさへ時〳〵替る空頼め情も薄き雲の色〳〵松好 同 つゝみあまる心や雲の神にしもしめりかちなる夕真の雲木曽女 恋人の心は秋の浮雲のうごき安きそ恨なりける藤子 待相半にうしや障の出来つらん今迄みえぬひとむらの宅万象 寄雨窓 毛々豆麦布 つかはる心やぬれて戻るらん雨の夜をから運ふ思ひに袖丸 毛々多良須花三 相模藤沢 一雨やとりして垣間見し恋人は袖しほらせる始なりけり里人 尾張名古屋 思ふほと恋はものうきならひ風はては涙の雨となりとき豊女 彼宵の窓の戸たゝく初時雨妹か心のいつはりやなそ静音 あし春もふりのまきれに忍路の雨もぬからぬ恋はくせ物年長 陸奥一ノ関 立ぬれしま屋のあまりのたそゝぎ恩にも着せよ恋人の袖声音 あふ夜半は嬉し浅の雨情てしめりし袖も心すゝしき綾住 下総古河 待に猶君か心はむし時雨来るふりみせてよそへなり 下毛野渡 恋る程胸は思ひの焼れとも泪の雨はけすよしそなき真問 恋の闇胸のよくとりふたかりて涙の雨のひか間なき袖二九倉 相模小谷村 帰さしとすがりし神に露時雨ふり捨かぬる別形薄き松里 袖ぬるゝ心もすまの村なやまつにかゝりてほす隙そ 恩路の泪しほかに丁とよき射笠両に袖をかつけて琴葉 雨の夜も何いとふへき頼みある妹か詞を笠に着つも有象 我恋はふりみふらすみ定めなき君か心に村財多して家樽 伊万里 契り置しふりぬる事を雨の夜は思ひ侘寝に神も浮けり 足しけき哥にはぬれ侍待夜半は泪にしほか袖そ性 あし音も忍ひあふ夜は春雨のいとに二世まてむすふ嬉しき槌丸 加幾加曽布花一 徳中を三百十日の雨なしてあれよと人の指さすもうき同 同 陸奥二本松 我門に照らつ師つかさはや涙の雨のはれぬうき恋丸顔 降るの軒の雫にまきらして。ほと〳〵おとす妹か閨の芦守人 待夜更て鐘の数さへへりゆけと思ひは増る雨の足音味酒 待バ猶気も春雨のいどこく来る夜もなしてぬるゝ袖哉麟馬 うき涙雨とふる家のもりましてとめやうもなき恋そ軽きさ子 もし雨の車軸流さはいかにして持運ふへき直の重荷を杉成 尾張名古屋 洩さしと互に契る丞中を人目にとれる雨そ伴き芳輔 うき人の雪の処へも春雨にあふ夜嬉しく解る下紐大石成 侘てふる日照たかも我患はいとはれて袖のぬれ 寄風応 まさりけり 萬象 毛々豆多布 つゝめともいつしか浮名たつみ風いなさならすといふよし 毛々多良須花三 忍ひあふ閨の燈火吹けして音せぬ風も嬉しかりける琴葉 同花二 陸奥一ノ関 一人目つゝむ文の返事は目にみえぬ風の便にことをせて鯉 待よはか風の便も夏衣ふけるは袖の涙はかりそ鉋屑 二世かけて契る心のたけ簾まかせぬ中となりし紅燈真菊 直しさに夜毎涙をふきてのみ風の便を待れみすれ楽成 ひらき戸を明て待夜に意地わるくそと来て立か風の憎に雨霍 来ると目にみえぬ秋の夜忍ひしを風ならでたつ名に驚く難哥兎 下毛野渡 思ふ程いはれぬことは松風のつれても君か聞に入れかし真問 目にみえぬそなたの風の音信をためみに泪ふくもうれしき茂登也 恋死なん命も思ふ方よりそ吹来る風に迷ふはかなち増枝 君待夜そつと閨の戸あき風の身にしむ斗嬉しかりけり 直痩てつなんとはかり灯火の風にこたゆる力だになき高木 うき事を誰か吹込て言すらん風の替りし妹か言の葉幽昧 音信るゝ風さへ妹か合図かとしは〳〵物を思ふ柴の戸芳輔 きし〳〵と内へも入らて妻戸にそと甚信る風も君かと松秀 一加幾加曽布花一 嬉しくも涼なからに逢夜半は枕の茎も風にはどふて雪也 待わびし君は忍ひて北風の寒けき床もあたなりぬる望月 垣間見に袖から入し惣風はふつと目につく君か顔がて商人 思某よりそとを吹にし恋風のかれしくはいる妹か閨の戸丸喜 忍ひ給に逢ねはつらき恋風の立て入れさる閨の戸の安方 聞の戸をそと音信てふく風もきますしらせと立て善天守吉 かなふへきしるしか宵の音信に胸うちさはく恋の初風豊女 燈火を風の消のはよろこべと忍ふはこわき我悪の闇仲住 たらちねのゆかさぬ恋の忍ひねを琴によそへて君を松臣冬好 直佳る胸の烟もやう〳〵と風の便にきゆるやう也繁喜 玉章は日毎たゆまず送りつゝ風にたくへてかへし待はや万象 寄煙意 毛々豆多布 今はたゝ不二のけふりと消やらでゆく湯もしらす立浮名 多良須花二 一我胸のみゆる思ひにくらへては宴の烟もしたに立らん元倉 うき名立胸のけふりの十寸鏡顔向ならぬ恋もする哉儀法師 燃上る胸のけふりを押へつゝ君待夜半の蚊遣火強き透也 二道をもし魚香の薄煙とひ絶まは身は消給へし組子 もゆる胸のけふりは何と線杏の細くやせたる恋病の床直成 つゝめとも胸の烟はうき人の我を泪にむせばせんとや離望 いや増る胸のけふりに迷へるをいふとく思ふ妹そうたてき川船 陸奥二本松 いかにせんこがるゝ物の下もえの烟にむせふ心くるしき銀子 恋死なはつれなき人に一度なとけふりと成て目をせ先月住 しらせじと烟に泪まきじせはいとゝ真紫の胸の下も元曲刈 口幾加曽布花一 立騒く胸の煙を妹と我今宵くらべて知るよしもかな筆方 いふことを皆打けして夕烟る所へなびかんそぶりとそぶりとそ 泣あかす恋のけふりの立添て雨もつ雲の袖そ侘しき綾住 燃まさる恋の浮名よ立ならば烟のやうに消へてぐれし真久 うき人のかりにもとは伝芦の家の下たくけふり咽ふ涙は万象 寄関応 毛々豆多布 たゞこえの関てふ名をは忍路をせる人の耳に通しひたや隅成 逢坂の関も越ぬにいかなれは清水は夜毎袖に流るゝ礒名 あふ事は人目の関にとめられてうき名計そ先へ通れる葉丸 あふ坂の関の岩角あら駒のふみならす程ひゞく仇し名如遊 一嬉しさに行も帰るもわする夜は知る人もなく逢坂の関見霍 忍ふ身に逢坂いたゞ名のみにて人目の関そすえ置るゝ御空 言よらで思ひは関のかだり弓はりつめにせし胸そ苦しき真笹 うき人も二人か仇し名のたつを名こその算にとゝめてもの東児 相模藤 思ふ中霧立人に隔られふさがる胸のもや〳〵の笑傲 今宵あふ咄しは妹に通せとも人目の関は通さゞりけり種人 浮名のみきゝ尋たてつ留置て我を泣せる鶯の関増成 夜毎〳〵名のらは恋路さとられん忍ふは物うかるかやの関同 陸奥仙台 疑ひし心の関も先越んきつて貰ひし妹か黒髪愛焼 くやしさは逢坂の関も有とのをまた舞かぬる下弩関真根人 玉章は千束にあまり日数経て壱侭なきはいなむやの関千香子 月を経て床はあれにし不破の関もれてそ胸の板庇なる鳳子 今言しも恋か心の駒亀やりて君にやあふ坂の関舛成 伊万里 恋中にあふ瀬はかたき関の戸のはたとにさがる胸の若さ うき名をはさゝへもやら伝世中にたてる人日の関はすべなし万戸 仇人の心の異のあらずにたゝもるものは涙なりけり明行 来ぬ人にいく夜寝そんも煩はし須摩の関より待明しつく汐時 名にしおはゝ口ををきへの関寺よ別れの鶴の声とめてし琴葉 秋風のたつを寝て居てしら川の関に浮名やもそめけん有象 言の葉はしとろことろに関の戸のうち明されぬ胸近にき多万伎 我宿は不破の関程あれにけり恋しき人を待せしまに甲良 直初て心も須磨の関守よいく夜寝覚に思ひ出しつく礒名 加幾加曽布花一 関の名の文字を頼に真実の通れと送る袖の玉章夜船 初恋に人めの関を憚りてはつと思へり忍ふ憂身は高木 あふ坂の関をゆるして寝る夜半は衣〳〵の鶏もそうねとせん傲 甲斐もなく立る名名古草の関の戸は君か心の奥にて打れ真弓 忍ふ身はみる目の関もいとはれて恋語に迷ふ胸の陰法楽成 鶏の音にはかりもならすへたつ身も胸は互に逢坂の関望月 我直の妹に迫らはゆるされていつかとくへき下紐の関楽成 くる〳〵とまたせて置くは水くたき心の里やとゝめたりけん久ン好 書送る文の手形にいつはらぬ心の図を返か嬉しさ槌丸 思ふ事通らぬ開の釘貫や忠の奴にうしろみするは声音 関の戸はかくはあらしを淡水おきて守れる里の音つれ万象 寄瀧恋 毛々多良須花三 山〳〵の思ひの嶽のため涙君をうらみの鐘と成らし冬好 毛々多良須 もらさしな世に音無の滝津瀬と落る泪も袖につゝめり万戸 恋慕ふ心くま野の那智の滝の雪としめりて啼ぬ我胸哥志丸 待と来ぬ君を恨の瀧のいとも乱れて思ふ胸そくるしき浜守 ひゞきよとあはぬつらたを仲立にうらみか瀧の姿すかこたん里人 くり返す思ひを妹はしら原の滝と見おとす心つれなき丸喜 きぬ〳〵に別れかねたるうしろ髪乱れて落る清津涙は綾住 瀧水の落しひゝきに争ふて流るゝものは浮名也けり目積 武蔵小野宮 一筋に思ひつめてや落ぬらんくみて心はしらいとの瀧金厚 しら玉と涙はなりて瀧枕ならへぬうちに名そ流れの隅成 甲斐谷邑 待宵は早く逢たき滝の水の落つかれずよ心せかれて文鳥 加幾加曽布花一 いひよれといはねにさけて誰方に落るや袖の瀧津器花子 滝川瀬の落てくれよとうちつけにいは伝くだくる物のくる影住 清あふて嬉しき瀧の春信の綱ぬ契りや神に祈らん春滿 直つゝそ砕く心は岩角に分てうらみの滝と絶せじ亀子 妹か顔見れは見る程音なしの滝のやうなる泪こほるく透也 龍門の滝なす涙うき人にをよはぬこひも登つめなん雨霽 今宵逢ふ嬉しさ何としら滝のおとしつきても踊る我胸万象 寄原戀 毛々豆多布 遠きかる日数つもりの浦み侘ひいつあふ事のあられ松原琴葉 頭女りさへ替らぬ色を頼む哉千代もといのる恋の松原山角 毛々夕夕良須花三 我誠あたちか原とならぬるは妹か心に鬼やことりし折香 三登学改 一夜をも千世と思ひに近江のや砕し心ちゞの松はら 魚子 一恋人に言よる事は片原のかた野の原は露むすへとも年長 古河 いつあふといふ心根もほりかねのそことしれさる武蔵野朝雪也 恋死にしぬるも妹かなすの原これそ殺生せきし心に楽也 うき人を思ひ侘つゝ三保か崎松はら遠く毎不経ぬらん塵容 相模藤沢 いたつらに契りし事のうき嶋かはら〳〵落る泪すべなし強気 我思ふ人もと問へとはてもなく迷ふ心はむとし野の原安遊民 茎払ふ枕も邪魔と取のけてまがせし妹か小手さしの原杉成 荒はてゝ鶉の床の侘しさはかりにも逢ぬ深草のはら琴葉 加幾加曽布花 恋の道ふみ出してよりうき人に迷ひかちなる武蔵の里人 黒塚の刀にかけし契りさへあだちか原のおに〳〵しさよ聲音 そのはらや月の今宵そ下紐を君にとゝさのかり枕せん哥志丸 我心浅茅か原かうつし見よ深き鏡か池に向ひて増成 かりそめにあらでしば〳〵いひよれど妹はいなみついな野万象 寄橋恋 伏原 毛々多良須花三 足音を人かと気をも打はしやあやふみ越る恋の後裔真弓 辺にかふる命をわたす部はなくてながらへ渡す橋と朽なん琴葉 頼かけし夢の通路うき人の夢にもみえぬ夢のうき橋菱象 恋渡る橘となしてん中にたつ人を柱と頼みながらに難哥兎 同花二 陸奥二本松 折もよく妹か袂へ渡さんとふみ出す胸そとゝろきのはし路成 青柳の橋の下蔭ゆく水のいとむけれし我思ひかな千香子 あやふしと妹か手をとり渡りたる丸木橋こそゑんのはしけれ真久 毛々多良須 うつ〳〵と待夜は更て八ツ橋の蜘手にかけて思ひ渡れる真和留 侘しさは思ひかけにし岩橋のなかばにたゆる妹そ難面守人 いかにせん妹か言葉のはし柱うごくけしきはみえぬつれなき種成 君を恋侘つゝそつとふみ出して嬉しく渡す橋の袂に松好 人しれす恋にこかるゝ身をいかにつるぎ初けん佐野のなし菱象 相模藤 とくかけしなぞのしら橋悪人に逢夜はとけて語る嬉き清志 ふみ初し時よりかたく石橋にかけし誓ひは千代も替らぬ筆丸 恋忍ふ心は瀬田の長橋や渡りくるしき身こそつけれ枝子 言葉も通はさりけり逢事のなからの橋の絶てなき身は舛也 逢ふ月もはや衣〳〵の別れには夢のやうなるうたゝ妹の綾住 一媒の心ひとつを頼にて命の綱もつなく舟はし真もし 仲立もふみわたす時そば目ありと心おくなる思和久の橋琴葉 やかみの通ひもたえて涙川かけて頼ん夢のうき橋景輔 我心すこしはくめのいは橋と思ふかつらき恋の山ぶし静音 加幾加曽布花一 丞後身はいかにせん恥かしや人も何とか思わくの橋甲良 恋しさにみえけん夢の浮橋の袂をしほる夜半そ焼松里 なからへて逢にかへんと我玉のをたへの橋そ渡りかねける鶏子 いひ懸しなぞの白指とけかねて泪計を流すうき丞比文 如何にそん心を久米の岩橋の渡しもはてぬ袖の玉章種成 橋姫にかくる願ひのかひあらはうぢ〳〵せすと落よき人秋人 花輪 うき儀雨にまさりし思ひ川橋わたしてよ恋の仲立糸犬 一本松 夢にさへ別れはつゝくみたれ橋静より先に鳴渡からん堅女 言わたるよすがもあれと妹か許に頼かけたるまへの棚橋万象 寄湊恋 毛々多良須花二 玉札は袖から袖の湊口積にし恋の市荷送らん万宝 今来んと湊を明て魚船をしけに待如君をこそまて都 一恋すてふ加田の湊の建械のたてかひもなき誓のみて年長 応ふる君は舟のおき出て忍ふらん湊を立て人の寝る比望月 よるべある船の水主よひと宵もや並へん四ツの袖の湊に声音 忘られぬ胸の涙のみちくれは袖の湊の干るまさへなき里住 遠さかる神の湊にかゝり船泪の雨の晴るゝをそ待綾住 船につむ程書送る玉札を入れたや妹か袖の湊へ静音 筆の海にかく玉章を恨となして今宵は恋の湊入せん近住 雨しのく鳥羽の湊の樽枕碇おろしてぬる夜うれしき多万伎 かひなくて心は船と漂ふを恋の湊に入よしもかな汐時 加幾加曽布 玉つさを袖の湊へ入舟の碇おろせし心地こそすれ増成 いかにせん恋ふる泪をつゝめとも色に書羽の顔の湊は楽住 船なら伝ごがれてよする水帯の花の湊に入を頼ん万象 寄木恋 毛々豆多布 さし棚根なし事なる浮名さへみきと枝葉をつけ水に鉋屑 別路に袖をしほれはうつ向て柳の目にもしむしら露堅女 毛々多良須花三 とみち葉の赤き心を悲人のかへる手といふ木にななり抔隅成 浮えたつ椎の木蔭の杓子栗いひもらしたる事はなけば 恋の闇あしもとくらき通路に火ともす楳のさそふ嬉しき高木 枝かはす契りもあれな色かへぬこゝろの松は上にみえねと声立日 同花二 いはぬく思ひ繁れる胸のひの木山おの気てきをもたみやせり万戸 徒に月日はたてと桶の葉のならで広がる浮名くるしき袖丸 命にもかへて逢たるひとよ松これから千代の契あれよし静音 とり入れぬ心の鬼をなやしふと詠木にしもそふる柊楽也 木にならん鳥にならんと契る夜は連理の枝とかはす手枕真臣 一来ぬ人に我まつ閨の柱迄きはもみなりとしらせてし哉真名井 月日さへいたつらにたてる錦木のこの侭に身も直に朽なん元倉 ひたすらにつれなき人の心をはかへて楓の色そえてし亀子 目にはやくしらすと斗いひいでぬ池の辺にたてる樫の木安遊民 妹か軒忍ひてこよひ橘にふれて嬉しき袖の移杏松秀 水させる岸の柳の風にゆれこがれて一人ふす夜くらしき増成 ねきことの侭にもなら侍やとり木の浅き枯さしをゆるそ家樽 常盤なる松の時雨もなか〳〵に心の色をかへぬには似ね声音 靡けともより来ぬ藤の仇波やきにかゝりたる妹かふるまひ鉋屑 いだきても我にはすねて大きなる松の桜や誰に立らむ琴葉 恋の種我にまかせて仇人のいつ妻木にやなるを頼まん雲也 仲立の継しこと葉はは理理ほときときのあふてひとつも寝る俊英 弥木は積れとたのみ力なくとり入れられぬ重荷くるしき透也 錦木の数もつられる思ひさへつれなき人にたて通す意地三棟 しらさりし木にも口あるからもの本く契りて名にて名にらん折香 忍ふ身は思ひ朽てそ杉の木のふしきにもあふ首尾あれ有象 加幾加曽布茄子 しのふ夜は庭の木蔭にたゝすみて言訳くしき悲の図なり守吉 一箸の飯もすゝまぬ恋病になとあらゝ木の人のつなき睦良 大原女のいたゞき連し黒木よりやせほそりしそ君に於て人成 心にはとにかくそまで学事のやまできをこらす悲等しき歌志丸 かくせとも今は世にうき名取川あらはれまき瀬々の埋木鳳子 面影の身にそふ者とあふ夜半は色に忍ひし胸の桑の桑の子に しのへたゞ契りて後はつま木ともなりてひとつに芦屋完人 そばにさへ音あはしとやうつほ木の空してまたせ隠れあはぬ鉋屑 錦木も立そめぬ間にいかなれは先に立けん浮名くりしき里住 我心妹にひかれてまつ相手はいつも初ねのやうに嬉しき種好 相模大蔵村 やくそくの夜もいたつらに杉の木のすつくと門に立明頃うき真賀喜 加銭加曽布 千代迄と君か誓ひし言のはのまつに引れし閨の狩寐波家留 折はてぬ思ひも久し埋れ木の丞の渕瀬に沈むらきは墨兼 恋の渕に沈む心やうもれ木のきの浮たらぬ身さへくるしき杉成 我恵は秋の木の葉に染かへて色めつらしき新枕かな柏洲 顔に出し赤みもいつか杉板のしやくとなりたる胸のくるして槌丸 久しくも恋つゝ君を松といへはさより病のいでゝものうき影井 連理とも遊がひし中の氣になりて積る重荷や先ざんどんもくる真名細田 見初つゝいは侍月日を杉の木の三輪の山ほと悲み積れる儀法師 待侘てみる山の端に嬉しきはこめ〳〵といふ木木未也けり東子 みを持し梢かくせど銀杏葉のちぶさ黒みてみゆる苦しさ本枝 松か枝の替らぬ契り頼むかないつもめでたき妹か姿に波音 木々の葉を染るき葉に増りつゝ色にはえある妹か紅粉仁老 相模片瀬 雨の夜にふりはえて来しひとつ松名うあふみ社嬉しかりけれ望月 もみち葉の色にも恋の流れ出てうき名広く立田川かな津代喜 妹を思ふ心のうちは常磐木のなかき契りを結ふかれして山角 うち舞て寝よと神にも祈るなり榊の枝にえにし供ひて如遊 萬象 えにしさへ唐にもあろか桜木のさきくぞ恵のやまとなり たましゐ 寄艸感 嬉しさは涙の袖をほし見草かわきて千代もかはす枕に綾住 かく迄に我恋死るはうき人の軒にしのふの草と生ひ 君ゆへに泪の露のもろ紫草又あふひともたの無神山緑 うき名のみいつか立野の花薄袖は涙の露の下草種成 遣しきたつ妹は煉野の七草にかきかそへつゝ恨いはまし冬好 憂人よ我恋草のしけれるを踏所なしとや足もいれたる鮎子 毛々多良須 たまきはる命も野辺の糸薄ほだしとなれる君か言の葉組子 恋人を待夜の床も撃辺の艸ねよけにあれと思ふはなき寿々美 移り香をつゝめど匂ふ蘇袴ほころひにけり直すてふ名の競 人しれす結ひそめし歟若草の此頃かたつ恋の道芝山角 いれめへき床をみうけて悪人の足もはこへと呼ふ艸もよし杉成 若草の日〳〵もゆる如我胸に思ひの種のまさるくるしさ殖舛 いつか又過つる葛のうらみ迄根ほり葉ほりにためていはまじ多万伎 繁りゆく我恋草の種とりて人の心にまかせてしかな種成 常陸帯むすふえにしも葛の葉のうし帰りてや一人麟馬 つゝむにも思ひ乱れていまの名の忍ふの露や袖に餘りぬ同 忍ひ路に生ひ茂れかし君と我中の名はたつ駒繋草雪也 とりかはす方の有てや呉まひ艸われと寝ることきいふ者哉琴葉 衣〳〵の泪をぬくふ袖垣にしぼりて咲る朝顔や竹愛瀧 よ所へ猶ひかれぬやうに植てみん君か心の駒つなき草路成 嬉しくも恋の種蒔く媒の手ひきに這入る気寒寒煮唐 一幾加曽布花一 八重葎しけれる庵を情あらは分てとへかし我思ひ草末学 胸の火の燃るあつさに夏草の茂りて風のたよりたになし綾佳 むねの火とともにとえ出る若草の妻に従鹿の蝶もうら父鳥 別れ路の浅茅における口露は袖よりとるゝ我涙かな重喜 文字摺の乱れそめしを忍ふ草どうする物と思ふ計に香良 水具き心もしらす身は痩て川骨としもなれる恋病高木 露の身のきえなはけして蓮の葉にともにのらんと契る画 一青きめて直に心をとむ藍のたまにねる夜を待そなき古巣 まかなくに俤草の種々なりて生茂りゆくむねの思ひは蝶也 いはで思ふ心は浪の下草のゐれてかはかぬ袂くるしき桑子 衣〳〵の袖は草葉に庭もせの露にもまして泪と なくさめにみせばや草を植替て待夜謡つゝねつかさり実次 招かれし尾花の神も風替りふり払ふ袖と見るが あやなき 寄鳥恋 毛々豆多布 言よれど君はねかたき時鳥一夜もおちす我を啼する綾住 毛々多良須花三 暁の鳥なき里に妹とすまは長泣はせじ閨のとゝやみ愛瀧 恋中は鳥にならんと契る夜にはや飛立る計うれしき琴葉 名古屋 妹かみはやとりすへきはし鷹のあはすと見たる夢も頼めり博 同花二 恋すてふ鵜の目鷹の日おほくしてぬすたつ鳥の思ひ仰れ増成 うか〳〵と我に帰らぬ我魂はそれ鷹と思ふ妹を悲して半麦 仇人の方へ心は飛立て鳥をうしやむ恋もするかな琴葉 毛々多良須 逢事はかた山陰の火焚鳥なきてはこがす胸そくるしき明行 忍ふ夜は身をも水鶏のはしたなくたゝかれもせぬ妹か閨房守人 きぬ〳〵に思ひ乱れし朝寐髪耳にかゝれる子馬の声川船 衣々の別れの鐘の声につれて鳥もねくらを鳴て立らん綾住 思ひ寝に冬の松床のぬくめ鳥ぬくめて君を侍もことはし楽也 山がらのやまて夜毎に過ひくるみをくだきてもあはんと思ふ年長 恋人をまつは卯月の時鳥まれにあふ夜の忍ひねもかな繁枝 画にうつす屏風の尾上へたてつゝ山鳥のやうに寝る夜燈 餌飼する我に馴るれとくたかけのまた気もしら伝背なを目積 恋慕ふ妹にいつかはあふ月日ほしやとなはる三光の鳥種人 音信もなく〳〵袖のうら千鳥なみたにくれる夜子 むじ雀塒まよふて恋人の宿に障りの有そくるしき里人 花一 加幾加曽布花一 きぬ〳〵をつげる枕に明烏かあいの声も憎うにて 心なき身にも哀れをしるならは今宵の鴫も汲てしれ難望 うき人に浮寝の鳥や波然思ひにふてしつむ水底傲 我思ひ水にやなして水鳥のき寝の床海となり赤志 今宵あふ事をしられて気の昼なぶしるゝ恋そ恥かし里人 きぬ〳〵の別れかねたる手枕に髪も心もとり乱れなく真賀喜 人心秋風さそふ雁よりも来るをたのめる妹か玉章汐時 こぬ虫とは思ひなからも門の戸をたゝく水鶏の我を迷はすきささささきささ 逢ぬ間をはかなく月日かそへつゝ音のみ時なる我身うぐ戦安遊民 うき恋を祈りし神にかごの鳥はなして貰ふ仲立もな夜船 あふ事は遠くなるみの浦に鳥つかる枕のちり〳〵と鳴鮎子 思へともいかに心のあら鷹やまた手にのらぬ人のつれなさ舛成 うき人も寝にくる時と夕されは帰る烏のかあいくそある目積 衣〳〵を鶏のつくれは膝元にとりすかりつゝ妹も泣出す茂登也 来ぬ人は外へ心やそれ鷹のそれきりあはぬ恋そつぬき進 聞しれど影さへみえぬ初雁の枕に近き声の御やけさ千香子 鶏かなく吾妻の妹へやる文もせめて鵲都のかへり去せよ文鳥 契りてし逢期もいつか月半いするの此角の違ふらき人真広 いつ〳〵と君を待夜の郭公初ねにからす枕うれしき景輔 藤沢 夜半のみに見る事さへも猶柴にならぬは木かにいふ恋路は連道 いかにせん恋は思桑の外か浜人もとき名を春知鳥安方里住 こかれつゝ月にかこちて烏ほと夜さら時あかす身うへ物うき丸喜 妹と背の離れかたなき恵中は別れもをしと思ふ衣〳〵種好 相模大蔵村 我恋ははつねをいそけ時鳥人にそしられまたぬ様子なき且夕 待侘し身はくひすとなりにけん人来〳〵となかれける哉臼木 逢ふ夜半は仏法僧の奇特たへ南無三宝と暁の鶏万象 奇獣恋 毛々豆多布 一待夜来ぬつゝき心を汲とりて押も涙やぼすなからん杉成 毛々多良須芥三 一小夜交て我も歎けは鹿もなく宵から待てかひよと何真久 人も見ず人もさかねは恋人に思ひまさるといひ出しけり静音 秋藤の露は泪とかこちつゝひとり臥猪の床そ催しき安甘堂 いたつらにいく年月を古狐今はたこんと我を化しつ川船 煩悩の犬も雲ゐにのほるめりうはの空なる人にひかれて筆方 手綱にもとりつかれざるあら駒のはね付し妹かその葉ひき月住 内かとて窺ふ妹か門を守るいぬの声さへ憎き辻うら琴葉 加幾加曽布花一 陸奥秀岡 何ゆへにかく迄足の遅からん待夜更ても未ぬ人はらし松彦 中〳〵にたびし衾のから艸も今は虎ふすす野の錦ぞや声音 直衣きつねつしたる其跡はまたこんとてそ鳴別れける楽也 見ふ夜に戸口明れはとがめたる犬や浮名を立初めけん難哥免 雲路時雨染る紅葉のこがれつくふと見てなれも鳴や小男鹿千香子 荒まさる駒はつにけと手にのらぬ人の心そしづけたかる楽住 君を待秋のよだれのなが〳〵と牛みつ頃にとり成けり冬好 大原女のひゝうしなら侍るき丞はきをつけらるゝ身さへ 相模大庭村 恋ふ妹を待置山の夕まくれ淋して誘ふ鹿の声が一葦 恋人は深山の鹿のよりも来伝煩悩の犬は追へまつはる万象 寄虫恋 毛々豆多布 さはへなす蝿の如なる我恋は追やる方もなくて侘き琴葉 毛々多良須花三 衣〳〵にぬらす袂を力なくしぼり出すやうな虫の声 陸奥乗折 一蓑むしとおなし思ひに憂人のあき気そば一人ねになく御室 恋人の胸にはびこる忘草根きり虫ともなりて絶さん跡成 応ふる胸の闇をもしし伝火とり虫ひとりていぬる夜半の尾千町 待夜更て心細さは玉の緒も引いるやうに鳴むしの声比文 一恋ゆへに身をくらはるゝ薮蚊にも夜深もさしていとはたり琴葉 色にめで花の姿にうかれつゝてふ〳〵しける我思ひかな種人 御心侘て見上る空や時雨けんおのれとぬらす蝉の羽の袖傲 笹声の糸ほとに恋痩る身に捨言葉さへかけぬうき人松里 袖にあさる泪の雨をしのけとや梢にすがる蓑虫のし衣蝶也 虫の音も胸につかえししやく音の餘ぞに物を思はする哉鶏女 蝉の鳴やむ庭の枝折戸のひらける胸や君か顔見て重喜 永き夜を寝もせで我も松せの時明すとはしらぬ恋人守人 うき人につられていく打松せのねをのみそ時閨の侘しさ相正 妹か音の肌ふらぬ夜は蓑虫のみの仕様さへなくてくるしき筆方 逢にかへん命は無事で疳癪のせを殺して待打撃つき影住 うとましや鳴やむ虫にいく度か君来ませしと明てみる門袖丸 虫の音も耳へは入らて約束に忍ひし門の秋の空安利列 夜もすから聞も催しきとこの山妻まつ虫の声の哀れき銀子 直死にはきり〳〵すとも生れ来て壁に鳴つゝ君は寝か都 もし人のとめもやすると忍ふ夜は由聞やうにぬき足なく二羽 鳴虫もなりぬ蛍も秋に逢てかれ〳〵になる恋そ苦ききさ子 小谷村 うき人にとりすがりつゝ蝉の羽の薄き情となく斗也松里 大蔵村 人目をは忍ふ蓑むしかくれ笠かくれかくされあふ夜半分真賀喜 いたつらに朽て侘ふる歟筆津虫壁に張たるみ彦なく万象 寄玉意 毛々豆多布 妹恋ふる泪の玉を拾ひおかば名打にも猶入りぬるらむ静音 毛々多良須花三 夜に光玉ともこみれ忍ふ夜の闇にみがける君か俤琴葉 野渡 はなれじな琥珀のたまにあふ秋半は吸つく茎の思ひ也 同 上毛館林 うき恋に落と消へき我たまを結ひし君か情うれしき喜弥寿 七幡のたまにも逢ぬうき人のみつに通へる折もありし臼木 七わだの玉ならなくに曲玉の思ひ通らぬ我心かな望月 稀にあふ直半は琉璃のたま〳〵に枕は塵のつもる侘しさ里人 やみを妹か手にとるから玉や心の中もゆぐ嬉しき種成 恋人は根附の獅子の鞠の玉こゝろ砕けとおこぬさき増成 とり上てくれぬ印和か玉章は出し時わろきものにあれ香良 あふとわかる時の涙はわたつ海の汐干汐みつ玉のかなり琴葉 恐ろしき童の腮のたまさかに逢夜まれなる人の難向雛望 沖の石なら伝かわかぬ我神にしほひる玉もあれ床の海目積 加幾加曽布花一 膝に落る涙の玉の珠数とならはくるやうしてみたき憂人年長 玉章ととり上みれは壁計に玉忠も狩井家の菊のあやも睦良 恋に心千々にくだけははら〳〵と落る泪や玉とみすらん雛望 情ありありと思へはなゝわたのたまにもみつに通ひ来らせす万戸 我むねを割てみせたや算盤のたまにもあはぬ恨静なる皿成 くり言に思ふ心の通れよと数〳〵送る珠数の玉章花盛 直すてふ心ひとつにひかれるは玉をあざむく君白影三棟 待侘て胸そ燃せる火とり珠ひとりだまして我を 万象 寐かせり 寄鏡感 毛々多良須花三 竜田 朝夕に鏡は見れ梓たましひはいつも女の跡にのみ居る山角 尾張名古屋 折よくも合せ鏡に向ふ妹のうしろ姿を見する御好き蔵主 其鶴亀の千代と契りし言葉さへうつる鏡のからす也けり万戸 毛々多良須 影をたに見ねはうらみの増鏡人の心のうつり安きに菱象 見る度に鏡の影のつらき哉うつる姿の恋痩しまは琴通 下総新和田 あはざれはいとゝ思ひの増鏡姿見違ふ恋痩せしき是粗 思ひさへ日々十才鏡応痩て我にもあらぬ歎きを死す則義 浮名たち恋にはやつれ鏡にも今たら顔の向やうなき波音 日の鏡月の鏡のうつりゆくに影たにみせぬ妹そ難面年長 山鳥のおろの鏡のおろかにも移りゆく世を恋に迷へり同 恋病の日々に痩さへます鏡いて直さうといはぬ恋人実次 我胸のくとる鏡に恵病の伽さへもせぬ人そうらめし杉成 待〳〵し心を妹はくまなくて月の鏡そ面ふせなる夜船 磨きあふ豆の胸の相性もよしや鏡のかねと水かね多万伎 千生改 思ひ増月の鏡に忍ふ夜は晴て逢れぬうき悲路哉千嶺 ンカヒ いかにせん思ひ十すみの鏡よりよそへうつれる妹か心根雨霍 加幾加曽布花一 九 同 いつ迄も妹は返事をのべ鏡心みる間にくとりまやせん折香 陸奥森岡 あふてうき妹か心は両面の鏡にかげてみゆる空言名哥記 恋痩し姿をうつす水鏡あらはれみゆる人目苦しき殖舛 とことはに手馴て顔を向ひ見る妹かふところ鏡とも万象 寄枕恋 毛々多良須花三 燈火をそむけて我を待妹の閨のまくらそ楽しける望月 同花二 同 川除の土堤にも似たる枕して水も漏らさぬ中そ楽しき雪也 ともし火を消して互に敷妙のまくらにつもる閨のむつ言保登里 逢夜半に枕の塵を払ひつゝ積るはなしそ嬉しける舛成 思ひ餘り寐る夜は魂もぬけ出て枕も身にはそはぬ也より千嶺 一床の海ならふ舟底枕にてこかるゝ胸を語りあはじや古実安 陸奥郡山 待夜更なからへて二ツ枕さへひとつは胸にあまる岡御景住 吾妻 あふ夜半にかはす言葉の跡先をくゝり枕に契るこれて花ト 打床さへ燕の巣とや成ぬらんとはぬ枕に塵の積りて綾住 嬉しくも二人ぬる夜の塗枕かた地にあれと契るかね言喜代志 君にあふ夢を結ひし嬉しさを曳さんもうき篭枕分千香子 待侘て袖はなみたにひち枕曲て今宵は寝に来らし有象 菊詰し枕に夜毎契りしもいつしかかれて心しをるく愛雄 加幾加曽布 花一 こなされて心つきたる枕紙妹をうらみし文の下書松蔭 諸共に外へもらさす終る夜の枕か物をいは伝嬉しき菱象 しるといへは枕たにせ侍黒髪を身暁日よく乱さゞりけり博 打払ふ茎も積らぬ手枕のしひるゝ程そ待はくるしき綾住 床は海夜こと思ひにこがるゝは舟底枕なすにしらせん松秀 一人寐る湯本細工の篭枕うき恋ゝ病の薬ともなれ臼木 約束は床几枕のはづれつゝ本のやうにはならぬうき恋魁 二世迄と忍ひあふ夜は手枕のしひれもきれぬえはしき高木 我恋は逢事かたき木枕のいたつらにおく夜なりの茎元倉 泪にて釘もしめりてあふ夜半の枕も音のせぬは嬉しき真名井 思ひ寝の夢に下紐とき初て返す枕の獏もうらめし松好 移り香の心にのこる塗枕かけだにたのむひとり寝の床板子 言よれと難面人のきまてや四角にはかり挨拶をして松彦 枕紙あてゝ待夜はよそをふく風さへ耳につきて寝持す槌丸 山ほとに塵は枕につもりけり高き雲井の人を思ふて静音 噂する人そ憎らし木枕に耳をいたむる夜半のくるしき楽人 思ふ事ひとつ叶ふて二つ枕並へて語る夜半のむつ言楽也 来ぬ人にいとゝ歎きをさし枕寝れはきし〳〵と我を哢し万象 ずれ 寄衣恋 葉志喜弥志 うき思ひつゝむ斗に恋痩てきぬの身幅の広くなかん目積 小夜衣背子が着て寐る嬉しさを爰にはせじと返さがり難奇免 衣ほす天の香具山よそに見て袂をしぼる我恋の山蝶也 云よれ柳妹かこと葉のあやにしききかざる衣の袖払ふ尼堅女 毛々多良須花三 秋なれや長してふ夜の御心衣きては短し妹と残る夜は真問 花二、 きもせぬを対に仕立し応衣たゝみて斗おかすつれなき殖舛 毛々多良須 尾張名古屋 恋衣露けき袖はうき人にあはねはかわく折やなからん貞就 恋ころも干さは浮名や立ぬらん清る浅のあめの香山真澄 忍ひつゝいく夜かさねてきて見るもあはぬつらさようき惣衣槌丸 星にかす小袖はあれどうき月日かりにもあはぬ恋衣かな真菊 うき人の心は針目衣にてもとの性根や朽はてにけん琴葉 思ひあまり帰す衣の紅の色もさめてくやしき夢の通路花子 漸〳〵と仕立上たる丞衣いつ吉日に君かきそめん里住 別れ行名残りにとむる衣の香はきまさぬ夜半をなゝさまや筆方 何事もいは伝忍ふの摺衣さそや心のうち乱るらし保登里 一加幾加曽布花一 疑ひに震ふころものまはり無垢ことなるつまを重ねもや明行 約束も皆反玄染の士衆となりしか君のきまさぬやき千町 直院ら心はいとゞ狭衣のあはで過ぬる我晩そうき板子 御心衣重ねて来ぬはあだし名のうつの日にもや立初けん有象 待うけし君か姿をみなれ衣きませしと思ふ折の嬉しさ花卜 細布をもて仕立たる衣まで胸のふたがる恋痩なき住方 打るの衣かへしてふさは恋死なん此うへに猶みゆるおもかけ増枝 親の目をめすみてはうき泪よりもれて身にきる恋の浮衆俊英 こひ衣つもる思ひのたけをしも君か肌へにあはせてしかな競 蝉の羽のひとへに君を恋ふるとて涙のしくれぬらす衣手殖舛 我思ふたけを終てもなれ衣き長く妹に逢んとすらむ万象 寄弓恋 毛々豆多布 梓弓引はなさうと恋しらぬひとやいらざる助摩をこその香良 はなれしと契る真弓のにへなれや心のたけも合せものひ年長 毛々多良須 恋侘ていと力なき破磨弓のむくにひかれぬ身をいかせん汐時 梓弓やとうき人に逢初てはなし明せる夜半そ嬉しき川船 弓矢づかふ門田の案山子有なから別れの鳥にはなすなき綾住 ひき詰ていても心のとゞかぬは恋に力のゐきしよみ弓近道 手束弓やはかいは伝も一筋におもふ心の通らさらなん難奇免 あつさ弓やと頼たる仲立のつるをはなさず朝夕訪ふ多丸 忍ふ戸の外かららをはる風の手伝ふまゝにいるそ嬉しき真賀喜 我胸のはれよとてこそ弓矢神願ひもかくれ点の手弦に直成 袖引てよれども君かつ弓に押てもよわる我思ひかな行長 短夜の空はいつしかしらま弓おしかへすへき恋力かな楽成 いひよらん弦たあしぬ古弓の小へるき人のことの葉とき組子 梓弓はなす詞の矢先には誰もいんかと袖そ引るゝ仲住 妹か袖ひせば人目につき弓のおし帰すへき恋力かな楽也 言よれど妹か心の許弓にいとゞ引るゝ恋ぞくるしき里人 的にしてあてなる妹か伏屋には雀ふ弓のいてはなはや万象 暁鶏 毛々豆多布 暁に声張上て家川鳥出歩行夢や呼戻すらん目積 毛々多良須花三 六畜の中にも仁のある鶏を婦人のやうに恨む衣〳〵安遊民 毒は近しと遠く隔たる里より里へ告る庭鳥山角 同花二 きぬ〳〵の鶏を恨みし報にや暁おそく思ふ老の身好文 毛々多良須 暁は清士の焚火の絶〳〵になるときつくる鶏の声き御子 家の棟に声張上る鶏のしたから匂ふ東雲の空真名井 さし様のあかつきに声乱れ髪よくときつくる家つ鳥出影住 結ひたる夢も半にとけかうと暁つくる鶏のこゑ真菊 かたせんと薬飼せし暁の鶏はかをれる声合あり声音 鶏の音はさゆる霜夜のしろ〳〵と白木造りの宮の暁綾住 竈の鐘をつく間も休ますによくもつかれぬ鶏の声丸喜 寒稽古する三味線の音そへて軒並うたふ暁の艶花子 途中をさき別るゝはうし寅と時しかしたる家つ鳥かな鉋屑 暁に鳴てしらするくだかけを夕つけ鳥と誰か呼けん滋美 加幾加曽布花一 ありつきの夢も破れはばさい〳〵と羽たゝきをして艶きた 鐘突は寝忘るゝとも暁を時計かうとそ家鶏の吉ぬ望月 臼の上に汝か鳴頃はぬか星もしらけて米のあるつきの鶴標 七種はまだはやさぬにあら玉のとやに羽たゝく暁の鶏愛雄 鶏にかけろと声をかけられて明まとひたる庵の觜戸峯雪 稚子の添乳はなれて暁の鶏の八声と共に鳴書す於鬼門 明をよつ老のごほめき聞わりてそれを合図に鶏やうたへる琴葉 鐘のなき里は里とて暁にけつかり時をしらず鶴安遊民 おなし軒に羽たゝと鶏も咲梅のかはされ星をいたゝなそし万戸 長の夜の老の寝覚にかそへ出す鐘に声そふ暁の鶏菱泉 せゐぬる孟母か機のくだかけに半たちきるあかつきの夢由刈 同 鐘の音をかそふる指も横雲の空にそおこす鶏の声吹雪 暁に見かけし夢は破れけり耳に礫のあかつきの鶏笑人 鶏の声聞もとゝめす寝飽ては暁いそく老の篭耳多万伎 読伎丸亀 只ひとり寝る身をいかにくだ春のたれを帰せと暁になく寄磯 上毛吾妻 覚にまた売買もなく鶏は問屋仲間とねをや合せし花盛 庭鳥のさし毛の櫛のかたの如はやあかつきと成にけるな雛望 天の戸を開く間もなくまたに鳴せはしなく鳴暁の鶏真賀音 羽ばたきに夢覚聞は時つくる頃さへ七ツ半ちやぼの声杉成 宵の契り吹と疑ふ暁に神やうけろと鶴の鳴らん鈍屑 夜は寒き衣は薄き旅まくら嘘しらす鶏そ嬉しき仁老 一日のはかり事をと暁のとり〳〵いそき立る声かも万象 夜燈 毛々豆多布 燈火の花を帯してくる書に去半の枝折もみよし野の哥真澄 多良須花三 一湖月抄よめる二畳の底にも五十四帖をこらす事火万戸 闇を照らす尊ひの窓の明りには遠ゝ唐にままたる灯火杉成 火の陰もさすか旦那の光にて誠につゞきてとみす成けり重喜 からげてもくらしと老の餘目には火が目にやはりかすむ侘して琴葉 楽しさは蛍や雪の光よりふみ集めみる宝のもし火二九倉 汲酒に更るもしら伝燈火の残り多くも明頃夜すから真賀喜 庭を照らす石灯篭に人音の夜は月のみげとみゆる燈火持芳 燈火に夜半の小蝶のとしるゝは菜種の油とます候えん歟由利 打並する針の穴ほと藪籠まちら〳〵みるゝ打半の燈火松蔭 沢近く鴫の羽音に寝られねは数かき立る庵のことし火比文 響き夜にともしの影をほしとのみ目当にいそく足もなる峯雲 わたつみの龍の宮から上る灯に折の今はみえぬ橋立寄磯 旅人も留てほしよと見るならん木の間にひかる灯火の類麁米法師 夜半の戸のしめる計を今少しかゝげてあくる閨のともし火春道 用心におく有明もつかれてや寝ふけのつきし夜半の煩火近道 出羽新庄 燈火は夜光の珠か丁子かとたから明りをとる壁の穴繁根 相模大蔵村 一人居に咄し打楽もなき夜半の影御師と残る灯火東子 道たえす夜毎さゝけし此神のゆえんもありや春御燈篭里人 秋の夜の菜灯台も暁は露ほとひかる灯火の影真広 よめかぬる書にくらしとかきたてし燈はさそや我を笑ん比左志 透間とる風に目さます老の目とともにまたゝくおまの灯火栗葉坊 須磨の巻講する程に燈火のあかしの巻に夜は更めべし芦青 一加幾加曽布花一 鐘響も夜風烈しく吹越てゆり込むやうが窓の灯火万戸 降雨に風そふ夜半の窓の許にうしやちらつく燈火の花汐時 後世願ふ老の寝覚の燈火は五色にみえて照らす輪法光甲良 山道に迷ふ所にひとつ家をさしてざまゆる夜はの灯火俊英 雪ならでかきそ集る反古張のふみもみゆらん家の燈火明安 火をとりに来ては窓うつ夜々の土たそや行燈もならぬ山里雛望 かきたちゝ見れは枕に一人寐の更て心も細きともし火花留実 小幡 集めたる窓の雪より燈火の花に詠る書そ楽して明行 かきたてゝ見れと心は細筆のしんとなりゆく夜半の灯火 上毛吾妻 稲荷山三ツのともし火四ツ過ていつ消るともしれぬ夜のち夫高 二本松 月とはやいり土器や有明の灯の影もしらむあかつき路成 〇 忘れては。軒そる月と閨に見る瓦燈の影のさすも万象 をかしき 梅峯松 毛々豆多布 藤沢 山おろし下枝にむづと組留てなげるとは見し峯の松風之連道 毛赤羽 須磨明石ひと目に見るは其昔かねの懸りし峯の松か枝見霍 毛々多良須花三 一菩夜むらなくみえてむら立の松そ青根嶺の上なる常道 いく千年替らぬ御代と峰高みたとへにひくや松風の琴桑子 年を経し老木の松の杖をたに突か伝そ峰のがんじうみゆ好文 同花二 大空の星の林につゞくらん雲にそひえし峯の松枝家樽 おのつから生れなからの山風にことなれてよく蜂の姫松雪也 実生ひより木まゝに峰に育ては人さまはでおた山の松丸喜 毛々多良須 世をさけし谷の廬を不思議たうに覗くさまにも峯の辺松安甘堂 もみち葉は皆ちりはてし風ゆへに残る松のみ峰に賑ふ千万多 木枯しをことともせさる根強たはふぐりを持し峯のすねね松年長 峰遠く時分に染る松の枝を吹晴したる笠とりの山板干 目にとまる鳩の峯とておめつかられも三えたに下る山松亀子 腰はちとかゞみたれとも今に猶杖突し事はみねの松藪花橘 まかなくにかゝ香久山の峯に生ふ松も天より下す種にも琴葉 ひとつつゝ年とる峯の松か枝のいかにちいさく見ゆるなるらん真臣 加幾加曽布花一 吹風を荷ふてみねの松かえのおろせる声そ高く聞ゆる茂登也 琴の音に通ひなれてや足栖の峰にいく代を十帰りの松楽也 をと女子か袖ふる山の峯に猶高くも聞ゆ松風の琴春道 いつとなく千年ふる葉の落ぬれと緑さかゆく峰の老松喜彌寿 吹風に声はかれねと年寄ておなしこといふみねの老松松松秀 千とせへし姿も声も高砂や古こと諷ふ峯の松はえ直成 琴ひけは是も稽古に通ふらん麓へ下かる峰の松風の松風 魚の名のたら〳〵下りに落松葉こぶ〳〵立しみねの大木高木 横にひく霞に梢おし並へて峰もたいらに杢のむら立綾住 常繁なる若きことりの色かへぬ千代も青根峯の松原安弥成 舞鶴の声あはせけり雲井より高嶺に琴をひく松風に魁 峯の松をよひ越にも手を出して雲の袂や引んとすらん重喜 雨にぬれ日にさらしても峯の松の色はかはらぬむかしよりして真弓 峰高く舞子の浜を見おろすは太夫桟敷やかね惣の松睦良 琴ひけと同にすかして詠れはひくきはみえぬ峯のすね松明安 千代を経て其勢ひや増りけん風にもまけぬ峯の生松仲住 杣人の帰るさいそく夕暮に禁へ送るみねの松の風は姿鏡 千代の数いくつかさねて犬高う雲井にこゞく峰の老松住方 高野山峯の落葉の地にしくは智識やむかし植し老松雅流図 傘をひろけし峯の松枝の陰にそ雨を凌く山賊月住 いくにせも替らぬ色に折言ひけん妹脊の山の峯の松か枝保登里 爰よりや。落せと枝をきしをしゆさら〳〵越のうねのおそ万象 里竹 幾年も色は替らぬ呉竹のよなかく栄ふ秋篠の里殖舛 暑きをもしら侍くらすは此君のかぜとしらるゝ秋篠の里千町 里の霊笹舟造る川添の風にも狂ふ竹の相ずれ万戸 松ほゝの諸琴の里にことなりて弓なす竹や胡弓すかん難哥免 吹風の手をもそふれは起ふしてあふくうちはの里のなく竹同 名にしおふ鳥屋野の里の逆さ竹ほしも顕はる不思議をぞ望月 山里へとひ来る風の道筋をかたよる竹の心直なる楽成 恵さへ深草の里の竹の子はふしのあいよく育つめもたげ真仙人 風か来ておこせは起るふせはふす竹は素直におとなしの里船主 竹植て老か心も正しと起ふし安くおもふ山里里人 末広く斃れる竹の下蔭に七けん並ふ家もむつまし三棟 加幾加曽布花一 其路こしの里に名におふ布袋井からことにみをみる岩舞愛滝 留てみん関屋の里になよひたる若むらさきの竹の生みき同 いふなりになれは人ごとすなほよと皆みよし野の里の牛垣人成 旅雀にしとはしかとわからねとかすかの里にみゆる竹むら保登里 豊なる御代のしるしは鳥の名の風望竹も里にはをの頃影井 秋の日の早く入間の里はつれ廻る間もなき軒の呉竹羊麦 呉竹の伏見の里の藪にてしきに替らぬけれ 礒厳 毛々豆多布 陸奥の外の浜道ふみもみん岩を磯の栞にはして下露 一硯にはのそみ有磯の蛎売に水いれなから巌うがた婆音 満汐に浪はゆすれど磯の名のこゆるきも蒸麦かもたき員就 みつ汐の浪に打れて高かりし磯の巌も低うなり行明行 同花二 這上る亀の甲かとみえぬるはさし出か磯の巌なりけり琴葉 蓑磯を乗れるに舟をさし覗く巌の鼻の鼻のよそめ浮雲戸 くまとりもいふに巌の立波は絵島か磯にかけるをそ見る茂登也 さかゞひし宮へ風のこゝちよくあたりて砕く磯のしら浪里人 釣舟の影のみえぬはしほの山とし出の磯の岩根漕らん高木 事たらぬ磯屋の枕屏風よりたゝむ島をみやる破窓万戸 海士人の蛇とらんとこよろきのいそかは廻れ厳さし道柳雫堂 寒さにはかたれぬものかあら磯の巌も苔の衣きにけり三棟 あら磯の蛇は浪にとゝれじと岩にかたく取つきにけん家樽 松風の声もをり〳〵打消しついその白浪たてる岩根に鮎子 から人の奇来し磯に苦衣着たる富は三かに残れり愛龍 御朱印も爰にやありと厳か様に千石船も寄る磯ばた種成 浪なし伝千年もこゝにこゆるきの磯の藤は苦むしてけり哥志丸 打上る浪のあらめに辷らしと厳はちとも動かたりけり真名井 一九月加幾加幾加幾加幾加幾加百 江の嶋にたつの都の烏帽子岩かふるは磯の波かしらなる壇成 下総新和田 あふなけに磯うつ波の枕よりころけ落そな岩なりけり是粘 岩か根によるひるとなく荒磯のあらいそかしく立る白波実 いはか根の苔の衣に玉ちらす波は其まゝ裾てやうなり真名井 山石による荒磯なみのより合におのつと角も丸くなりゆく繁樹 しら浪のひ遣はよるなるあら磯の巌そさらにひるまたになき波家留 みつ汐に入ぬる磯の目当にとさてる巌によする白浪万象 嶋鶴 毛々豆多布 伊豆の海や沖の小嶋による波の打知すやうに田鶴のとふゆ杉成 毛々多良須花三 一つがひ鶴のすみ居てはなれぬはかこの島なる中に馴てや広喜 毛衣のふりてや田雀も此頃は嶋におろして不断きてゐる実 かにしこしな雄嶋を床にさためつる田鶴はやさしくつるなりけり賤丸 同花二 数の子を姫具の千嶋にあえよとてはしめてえりはあさる。田野吉 橘の小島に鶴の毛衣の袖やむかしのまゝに愛らん雲也 祝ふ嶋老たる松に羽をのして齢くらへやせんねんの鶴雨霍 近年ふる嶋の小松のしたてよくきなれて遊ふ鶴の毛衣峯雪 浪かけてよるへき人も荒磯にをり居る田鶴や沖津島守麟馬 薩摩潟うつぼ嶋なる磯の松にいく年陰を頼む友鶴流流 巣籠し松に嶋根の雛鶴の毛衣も皆ひとつみにしく羽締 嶋山に琴ひく松に声合せ鶏つるさんば舞くをり嘉光房 加幾加曽布花一 いくとせも来て遊ふらん橘の小嶋にをりし鶴の毛衣麁莱法師 芦田雀を飼付し如いくに年朽ぬいはほにくめらかゝ島実次 ゆり〳〵と千とせ経ぬらん岸をうつ浪に動かぬ松嶋の鶴三成 千とせ経てちともふかびぬ松嶋の松にかゝれる鶴の毛衣楽也 幾ちとせはをも延して常盤木の栄久敷松嵩の鶴春道 一嶋守か沼の清衣着る磯に馴ては鶴の子もひよと啼員就 磯ばたにいとよく日毎嶋にをりて千代や始めらん鶴の毛衣人成 万代の亀は汀にまつ島と聞て飛来し千代の友鶴真賀喜 洲浜にそ群れゐる鶴を其侭におくの松嶋台にさらん縫女 松嶋の松のみとりや求食るらん色も替らぬ鶴の毛衣家樽 きなれたる田蓑の嶋のむれ鶴のかさにかふせてよするよう 岡笹 多良須花二 一勤図に供を帰すは腰にさす笹か火ともす物や忘れし声音 笹のはに露を宿そは七夕の心地やすらん星合の岡殖舛 相模大庭 風誘ふ岡の笹原音信てたより有馬の友輩せる一葉 加幾加曽布花一 雲あしも早くゆきゝの岡の笹にさゝと音して過るむら雨元倉 沸る夜に照そふ月の輪をかけて影すさましき岡の熊笹壺麗亭 舞謡ふ神楽の岡を吹風の手にふる笹の紫音さやき筆方 猪猿のすむ深山より吹風に騒き出たる岡の熊笹半麦 名にめてしみとりや深く染ぬらんは塩の岡の露の玉笹章子 山なしの岡の山梨子散かゝる花かとみれは露の玉笹袖丸 騒かしく風か誘ふて岡の笹の葉うらの鈴とふれるあられは傲 白露の玉を並へてかいしきに敷しすかたの岡の笹の葉本枝 鶴か岡の松にむかへてあふみなる亀の岡辺の小笹がんし万象 江蘆 浪速江の追風の船にほを上てはしるさまなる芦の村立難奇免 水鳥の騒く入江に草臥て縄のやうにもみたれふす琴葉 つゝみたる玉江の芦の穂わたより疵なき月の光出けり万戸 ひく汐を入江の芦もつま立て見送るやうに丈は延けり同 角くみし次女ほくれて江の芦のほわたにさはる風もやはらか明行 しき波をたてた舟出須崎守の細江の芦の音も繁けん守吉 難波江にうね立浪をはきならす芦の箒やぬれぬ日夜き赤主 きたへふく風にとろ葉の乱れ焼太刀造仁の蓋のむら立真菊 江のもとに庵むすひて釣すれはいとうきも又芦にかゝれる里人 加幾加曽布花一 吹進む指の運ひと三嶋江におとしろく動く芦の葉の笛年長 けふ秋のさつかとみえて難波江の声よりそ先動き初けり麁美法師 難波江に風誘ふ浪の片寄て芦の葉分る夕月の船舛成 同 用ふく風に音すみの江にあらはれてふし面白き芦の葉の笛章子 名にしおふ難波仕立の羽織かも短く立し冬枯の芦義法師 おのつからつたの細江も色つきぬ秋より後の芦の枯葉は寄磯 難波江の芦かり小舟むらなの足に追れて騒く夕風々綾住 はつかなる庵りむすへと邪魔になる芦かりなんと思ふ江の許高木 難波かた入。江の芦を目にかけて雁の舟そやさしよするらん万象 浦舟 毛々多良須花三 水や空通ひて遠く雁渡る雲の波間に見出すうら舟綾住 同花二 一浦霧はからりと晴てとく綱にとくふり出す須磨の鈴舟真澄 遠凪に波のたゆたに心ま伝長井の浦の蜑の釣ふね里人 田を作る事はせすして荒海のはた伝くらせる浦の釣舟如遊 毛々多良須 蛍かと見ゆる芦間の湧火はこかれ出たるうらの釣ふね山角 影うつる田子の浦波しつかにて冨士の高根に船やさすらん同 沖遠く嵐に浪も高砂の松を目当に戻るうらふね睦良 加幾加曽布花一 みるめさへ打寄る浪のひまらしくそこひの浦に汐待の舟多万伎 吹風にはらみ帆みえて千石も万石もあるいねの浦舟進 小野宮 帆の影の通ふ波間の淡路舟千鳥にみゆる須磨の浦舟金厚 早咲の梅のひらきに走る帆の綱もはりまの室のうら船船主 一葉つゝ柳の浦の追風にちるやうに出る蜑のつり舟俎舛 十符の浦蜑も手業に出る菅の子も乗まて親も出舟にて高木 釣舟を模様とやみん袖の浦ほのりと染し明ほのゝ空冬好 うりれ女に楫取られしを風ゆへと長井の浦に碇おろせり三棟 雪風を真ともに受て田子蒲帆影も白き千舟百船甲良 真帆かけて松を目当におも楫の手にとるやうに三穂の浦舟楽也 浦伝ふ室の小舟の綱手縄ひく汐もありよる波あり雨霍 六ツ七ツ八嶋の浦に浮みつゝ鴨とそみゆる雪の小舟は仲住 磯の松に雪のかゝるかちら〳〵と白帆計そ三保の浦舟露丸 舟の路遠くて近き浜萩のほと帆と並ふ浦の見渡し万象 杣山 《題:《振り《振り仮名:《振り仮名:《振り仮名:《振り《振り仮名:名仮名仮名: 杣人の斧ふり上て打割し音も二ツにひゞく山彦綾住 踏迷ふ枝道とへは木を切てなけ出すやうに答ふ山賤愛滝 毛々多良須花三 山馴て賤は杣木をかり枕ひくきなりにも夢やみるらん万戸 同花二 休ずに杣木伐出す丹生の山たんせいすると人登るらん高木 旅人の山路尋ねてきく〳〵と大鋸の目立てをし四杣人目積 杣人の木は伐なから我家には焚か伝けふりを立るいとなみ増成 枝を折る力増りて杣筏壱両にくたす越の山さと殖舛 障りある枝を払へは杣人のきまゝに過る山の魚ま伝丸喜 山産に繁くひゞきて斧の音の少しもきれるひまとては羊麦 研立て手もさゆれはか切れあちのしき音ひゞく遠の杣比徳九 斧の柄の折にし杣の跡とめて基盤の足の口なしの山愛瀧 休む間に杣か堀てふ山の芋是もむなぎと成やしつらん万戸 伐かけし杣は舟木のをれる時先己か身の揖をとりゆり増成 草臥て枕はおのか切出せし木まく寝をする杣山の賤山角 斧をみて木を切る杣のかけ声の手にたへしかとみたふ岩種成 松槻とち万本を替る〳〵きれは伐るほと伊生の杣山多万伎 四十四日加幾加曽布花一 山中にたてる大鋸の目ひく杣の出しつ入つに業もせはしき種成 万歳のまたみえぬ先山川に柱かぞへてくだら杣人雪也 釜底のひきゝに下りて住なから立木にのほる山の杣人茂登也 鋸か嶽に木をこる杣人は先何れより引おろすらん真名井 伊予三ツ浜 伐出せど尽る期あらし杣山の斧にも千代をへんとかる 谷川へ引出す松や牛丸太藤もてはなを通す杣人真菊 鯉ありあひてくらき山路を杣人のうしになる木や引出すらん園行 木〳〵は皆切いだせとも杣山に月の桂の影そのこれる花子 かたくなに見し杣人の山祭りきをやわらくるさまそ」万象 めてたき 岸苔 毛々豆多布 蔵人の六位のいろの莟衣きしのつかさに誰かゆるしけん琴葉 緑青をときつくるにも底鳥の十坂の岸の苔よ此苔真臣 岸の辺を廻りて苔にそまりけん這ふたる粉すねの青よ目積 同花二 三つ濱 苔衣きて見る人のなきゆゑにたゝみし侭におく山の峯幽昧 又サン下四十一 二本松 いはきなき岸のひたひにふり分て髪と緑の薫皮 毛々多良須 谷川に洗ふみとりの苔衣きし根にかけて干かとそみる行式 冬きぬる苔の衣を谷川の岸の氷のはりにうちけん雨霍 世もかたき巌の苔の青〳〵と千代の色そふ松か枝の岸綾佳 さゝれ石の巌となりて苦むすと思へは久し住吉の峰座楽 いと細き柳の腰を見習ふや岸にしも苔のみとりそふ色明安 住よしの岸の苔さへ青〳〵と松のみとりの色移りけり保登里 亀の子の苔むす岸に遊ひては万年草も生ひやしつらん真平 時しらす打よせて咲浪の花の青葉とやみん峯のむし苔三棟 姫松は折ても跡の菩薩しき替ぬ色や住よしの娘隅成 苔衣織出す糸としられけり柳藻うねる波かけの許増成 一重部の浦の岸辺に遊ひ居て苔をむしろといふも甲良 松風の音をもそへて苦衣波のうつなる玉川の岸愛滝 一源幾加曽布花一 雨天しく海のおもてもせましとや峰迄ふさぐ苔の莚は種成 渡りゆく人な辷りそあれを見る青にこけむす谷川の呼行武 住の江の岸の姫松いく千代を重ねきにけん苔の葉睦良 岩にむすみとりの苔のなめらに二日やうなる岸の白浪家樽 うつ浪にとりついてゐる岸かけの苔落さうにゆるあや俊英 影うつす鏡か池の岸ひたひ黛ほとの苔のはへぎは鄙生 水汲にくたる川岸あやふくも辷りて苔と名付たりて苦と名付たり あら浪の拳につよく打れてもやわとかに受か峯の菅重喜 住よしの峯の巌も年ふりて波の皺より苔の青髭甲良 菩衣洗ひ張してきし陰に青のりつけて干すと発る宗也 松陰に千代を重ねし苔衣きしも緑の色をそへけり 年経れは生ひたる苔の髭迄も岸うつ波に白く覚ぬる山角 打かする波は上れとつる〳〵と廻りてもとへ岸の青苔苔松秀 常盤なる松のみとりの其色のまゝに苔むす住吉の呼金厚 清衣となど岩代のきしはこれ苔そむすべる松の下落万象 山家水 遠くから呼てはつかひある時は米をもつかす山里の水諸実 木からしに落葉ちりしく山の井の水も隠れくすむを給ふ時 まじちひをたつとはすれ杵手をさげてとひ来る水をう所 山里は流るゝ水のせはしきに中に落つくから紅の音重喜 凡木こりて戻る軒端に夕日さへ漬にかゝれは水もけふれる名哥記 山の井の水浅けれと訪ふ人の影さへみえぬ庵そ淋しき諸実 山の庵たのみかけ樋に谷越る湯そえんのはし参りける実次 山奥の塵を遁れて行水は心をすます人やほらん直 世を捨て頼みかけ樋の水公は阿弥陀か峰ゆつたふなからし守吉 をく山も浮世の外にあらしふくもの騒かしき谷の水音種成 絶す猶かけ樋の水の声はあれど浮世のさたは聞ぬ山任舛成 里遠く人さへ稀な山家にも絶すとひ来る水は有けり 事たらぬましにすませは任かしと岩間の清水たれる山里難哥免 世のうきを避てちかなき山水の濁りなけれはすむ心地 うき世をは思ひ流して山里にすめは都に真清水のこと山角 亀山の水に車をしかけつく功もみえたる里長か門広喜 世を捨て心を高く出く山は里の人より水上にすむ高木 下までも潤へは賤も頼むらん神のゐませる山麓の水[リ]里人 しづかきを楽しむ甲斐の夢山にゆめ程結ふ庵のやり水袖丸 山水をうへるかけ樋は命にて只一筋にすみ染の庵琴葉 山家にもすめは都にまし水と岩陰や事をたらする目積 事たらぬ深山にすめど是一ツ自由たる樋や庭のふり水真菊 里人の心もさらに濁りなく底まてみゆる山の井の水きさ子 山蔭にすめど木の葉も浮世とてくまではならぬ谷川の水花富実 紅葉ちり浮める水を朝夕のあかにそ及る山のした庵寄磯 世の望み絶えて筧の水はかり通ひ来にける山の下庵明安 水まても覚にたれる山住はみなもと遠く世を建し人千町 覚からとり入る水もほと〳〵と程よく事のたれる山里真名井 加幾加曽布花一ト つゝら折廻る筧の水の如清くすむらん山のした庵柏門 山住はうらの清水の筧より落れは風呂もたきはれはり 水に影かくも馴にし山の井の深き底意を誰かしるらん茂登也 山彦のひとて軒端の覚より隣へおとす呼返樋の水土戸音 児桜の影くむ水は山家ても手あらふ事はいとふ賤の女春道 箱根山畑名聞とすくも沢何所へ忍ひの滝の行方保登里 借貸をてぬ山住か胸算にうけ樋の水は自由なりけり楽也 春つゝに雪解の水の覚よりたら〳〵桶にこしの山里綾住 滝ほとに落すともよしうき事も筧の水の音にまきれて琴葉 大蔵村 いと細く落る清水をむすひ上て命をつなく山の下庵真賀賀喜 賤か家は浅まなれとも山麓の水よりも先すめる岸代道深 をとめ子のむすへる水は帯にせし細谷川やさがる山道万象 山家嵐 一葉志喜弥志 都見にいにけん魂のかへり来て嵐をしりぬ山住の廬比左志 毛々愛多 閉籠る柴の戸たゝき山彦のあらしとなと答へや教安遊民 毛々多良須花三 世を捨て争ふ心あらしにはつかりしきも折るゝ山里目積 自由さは庭のしみつに米かしき嵐り薪ひろふ山住麟馬 燈火を吹消さうかと明さるにこりぬ嵐や春戸たと 折〳〵は都へ出よと誘ふらし峯の嵐のたゝく柴の戸家樽 生此等に山家の焚火けふれるを吹けて消す嵐いふとき広喜 毛々多良須 何事もきかしと入し山住になと木のもめる夜嵐の音皿成 あらふく山の梢はしもとにていたくあてゝや猿も叫へる増成 軒端にも枝をたわめて熊野山たなこゝろ迄寒き夜嵐里人 ふく度に杣か心は騒かねとき侍木をもめる嵐はけしき丸喜 枯つきて散る花もなき杣か家へ山たきおろす嵐つた持芳 山住の竹の編戸のはこくと訪ひ来る人はあらしと思へば高木 とのうさに紫の戸ほそを閉たれはこと〳〵しくそ松の風ふく真似人 山畑に張し鳴子の縄されてかゝりとみゆる月の打嵐近道 春の花秋の紅葉を誘ひゆく詠にあらしの残る紫芦於鬼門 聞馴し瀧音たえてとう〳〵と軒に音する峰の相嵐綾住 山里は常に嵐を聞なれてことゝもせすにすめ松の戸座楽 山風はさきへ過ぬと思ひしに流れてさわく軒の松か枝保登里 加幾加曽布花一 訪ふ人は毛の先程もあらしふく音は棒ほとあたる山里の三棟 子の為にむすふ枝折は吹ちりて跡もあらしに迷ふ山賤桐正 人しらぬ深山に住を仰山に世にもしらする風や吹らん松里 松杉の声斗してひと嵐人あらしとはおもふ山里月好 船木伐る山の仮家の松壁に嵐もいたく吹つくる也杉成 音信もなき山住の門明ていて入しけき夜嵐そふく哥志丸 山守の屋根は嵐の手伝ふてふき込ておく木の葉萱のは夫高 静にとすむ山里もこと繁く松ふくあらし保す来ぬれば路成 風さへも山家育のむくつけに荒しか今朝はきもをれてみゆ重喜 朝あらし吹込む庵の空けさは手も出しかぬる山のふと云門種人 夜嵐のむへもあてけれ世の中にあきの来てから入し山住真平 声上て捻あふ軒の山松になけぬ嵐のつよさをそしる万万 田家雨 毛々多良須花三 しゝ田守太鼓の皮もはなれたる薬屋の雨は音も聞えぬ種成 小田むかき軒にすゑ出くから臼に谷を覆ふとひらす書物種人 同花二 一蓑笠に長多しのく賤か家を回くるとや猶人のみるらん里人 賤か家に田母の稲をとり入れて猶もいねよき夜半の海 毛々多良須 仮庵にまた刈とらぬ田一反六畝歩計のたのをきしさ愛瀧 隙明し案山子の蓑を降雨のとりに又おく磯か家の軒家樽 村雨とともに寝かる磯か家はいつれふりぬるものそのこそあれ つれ〳〵と雨ふる軒の原水に縄もなひたす小山田の庵花子 むし雨の情間ほと猶磯か家にはら〳〵聞ゆすり臼の音琴葉 賤の間の願ふしめりもよい程に門田にかゝる水も水や寄磯 鬼の角折れよとふるか瓦より茅家は雨の音もやさしき比左志 草臥て縄になりたる賤の雄に休めとゐのわらやたくか難哥免 加幾加曽布花一 名に登て乞はねと雨の我身世にふるもことはり小町口の廬真似記 貢物きのふ納めてほこり迄両に落つく小山田のいほ万戸 弓張の月は雨にてかゝるれと其あたりなる賤かひとつ故高木 よい程にしめし合せて田の実入ひと村雲のはこぶ雨あし近道 村長か門にかけたる制札もふりてひさしくつたふ雨水杉成 県居に田の水かくる雨の日は案山子のやうな人はかりとゆ保登里 心なき磯も晩稲を刈上て小春の雨に三日正月安甘堂 降雨の音はしきりに小夜更てもるさへすこき小毘庵皿成 賤の女の我子のやうに育てたる稲にも虫のなきを悦ふ章香子 賤の女かとれる早苗の手たすけやたすけとや降雨の足なみ亜蘭 田を刈し跡やし給ひをする聞ん水口かけてふれる糠雨仲住 植つけを賤は得たりと待受て是そ田からと思ふ雨哉音清 君か代は十日に一度ふる雨もいほしろ小田は穂浪ひたり雅枝 取いれし田の面の庵に餅搗て祝ふ小春の雨の正月持芳 雨乞をするより早く夕立のふれは日待をふれる一村槌丸 程をよく雨さへふるの山田守る賤か律義にみのる豊し桐正 降雨に田鶴かとみれは田づらなる庵に蓑着て戻る万象 賤の男 旅行 藤沢 酒に酔て駕篭にうつ〳〵と津の山夢で人にも逢ぬ也里人 可等もさの餘りてさする旅そとは労れし足にこはしられ 立し日は二十鼠のおのつから引て手にさへ馴る旅杖是粘 旅人の笠を忘れて又跡へ戻れはも登る村雨の雲松蔭 海山に詠めはあれと心にもとめぬ習ひそうき狸旅種成 鯰なれぬ人に半夏を薬とてやればつせずにまめで疾丸喜 ころ深き草ふみ分て行旅の哀は袖におくの細道綾住 旅衣道もせき屋の里を行は誠になりぬる木母寺の鐘杉成 旅の空峠はるかにこすげ笠つきそ登れる杖にすかり杉成 疲れてはけふを幾日ととふ計十日かとも経ぬ旅路なれし十戸立日 鯰の空何か忘れしやうなるは留守に心をやれはなるべし鉋屑 旅衣袖は涙にとしくちぬかくさの土産を何につゝまん麁菜 はつ旅にをしへもあつきさし艾富士も三里に題柄久々好 情ある人の心に我袖をつひぬらしたる旅のむらゑ笑人 初旅のかしま立する鹿嶋浦をやもさこそは嬉しくらめ香良 十四月廿四日布元一 思ひたつ旅も日長を松嶋や松のけしきもときはよしくて年長 箱根山日も入相と夕暮は心闇路のしまひ越すれ高木 降つゝく正月の雨におなし如星をみせたる旅の袖日記愛雄 古郷の方へと走る雲あしも我心よりいそくかとおもふ琴葉 旅つかき休めてものを喰んにも向ふの山そ胸につかなる目積 竹の下うち連くれは宿引の爰にとまれとすらめ色時真弓 親しさは竹馬のやうにから尻のむやかひ乗する旅の道連万戸 古里をはなれて旅の手ふりにも心をつなく竹馬の友汐時 ふる里を立始しより旅衣ふりし日数も袖にしらるゝ元倉 たゝみおく胸を案内に敷嶋のふみ見て廻る旅の名所章香子 都をはいつ立出したび衣はる〳〵爰に木曽のかけはし実 道遠く切れし草鞋はすげ替て菅へられぬ旅の破笠雅流図 降積るけしきや駕篭にうなたれて寝なかしゆきの竹の万象 〆 旅宿 古郷へ夢はいつ出て行やらん我をは宿に寐こからにて目積 道連になるとはいへと相宿の心遣ひそ先に立ける雪也 草枕足をかゝえて寝なからも心は逢ふ古里の夢人真登 うき旅に袖を客寐の草枕むすへと一夜とけりとも。 古さとに通ふ益路の遠けれは寝ても休まぬ足の草臥雅枝 旅の宿にみるも候てたく帰り咲又来る事はまれる梅に香冬妙 たびはうきものとはかねて世の人の噂をゆふべかり枕せり人成 古郷を忍ふ旅寝の草枕涙の露そむすひかちなる見霍 珍らしき所にしとて旅寝にも。常にむすはぬ古里の夢路成 大蔵村 一臆寝する日数かそへてをる指の起臥ものを思ふ古里真賀喜 とまりにそつけは袖日記とり出して宿の主をとめるをかた槌丸 うき涙雨となりてやぬらすらん雲に起ふす旅の宿りは多頼 一加幾加曽布衣一 古郷を思ふ心そ常盤なるかりの宿りの夢にみせぬる汐時 行暮て枕にむすふ筆なれや都のみの便うれしき鮎子 旅宿をつれなく出し別れより今宵の打具のあかつ請雨鶴 かり召草津の宿に旅寐しくむすふも嬉し古里の売麟馬 ついたちて行くや二日も三日月の心細くもやとる長旅雑望 宿りとりてまとふ蒲団の綿色もおちつかでうき旅枕哉花子 髪かたちやさしき宿の出女の嶋田の駅にとまりけるかな里人 古さとを忍へる旅の草枕打さらいく度寐かへりやせん月住 諸ともに夕暮いそく旅烏はや濱松にとまり定むる花富実 古綿のかたき夜具さへ身にそは伝きも和らかぬ旅のみき重喜 思ひきや古郷の爰も破れ塀かはかりつらき旅寝せんとは湿人 旅宿にひとり淋しく汲酒もさして嬉しき様の月影種人 古郷へ夢のたゞちに通へるは心をおかぬ旅の定宿万象 旅泊 毛々豆多布 夢をたにみぬめの浦の泊り船いらさる浪のゆりておこせり万戸 毛々多良須 津にかゝり嶋にかゝりて楫枕いつか津島に船のつくらん元倉 あしかろき船は泊りてうかれ女の悲の重荷を運ふ富津里人 船の上うきははてしも浪枕夢であかしの浦にたゞよふ仲住 浪枕うき寝する夜はすさましき鼾も楫の音かとそ 風待てかゝれる船の出かねるは碇ともなる宝のかれ女多頼 加幾加曽布花一 今雲こそ武庫の泊と定めつゝ峯の姫松目当に死て高木 爰にしもふしよき竹の泡とてとまりてそみる雀具かな座楽 友船を呼継の浜の名のみにて人の声さへあら磯の波雪也 うき寝には夢もむすは侍思はすよ苫もる月を三ツの泊に安遊民 浪まくら今宵ひと秋は寐心のよき唐琴の浦の泊は真菊 波枕うき寝の夢もきれ〳〵に釼のやうな明方の風下露 船出するとき心せよ口なしの泊は岩島にさぎたりけん万象 海眺望 毛々豆多布 船の帆をかそふる指も折つめて一にきり程にみる法路嶋真名井 貝拾ふ二見の浦の沖遠く蛤ほとにみゆる不尽の根御室 百船の帆はうつ波の花の中に戯れ遊ふ蝶かとて雪也 野石から雲をかすみに乗船も小多しきゆる淡路守山楽也 田子の浦に打出てみれは白浪にふ二の高根も浮かゝろ鄙生 真黒なる雲すり流す星ならで雨をふくめる筆の海面年長 日毎釣をたれて内には伊豆の海や女楽男楽にて遊弥二里人 気色よき浦辺に業の楽しきにうみ渡るとふ蜑やいかなる諸実 春またぬ花も有磯の海かれや行ては戻る沖津しら浪座楽 加幾加曽布花一 白妙の不尽の姿を爰にしも持て来るやうに三穂の浦波菱泉 おし送る海士の小舟は親船の跡追ふさまにみゆる海はら夜船 一面の硯といはん海はらに筆架とみゆる沖津島山波家田 薄ものゝかとりの浦にひ〳〵霞二重すりなる沖津嶋山幽昧 母の恩ふかき海とも詠れはちゝにも恩の深きうば嶋連道 笹声のくも手にかゝる渕の中を云ひ出すやうに三保のから目積 さゝ浪は薄に似たる磯よりも瓦花と澳に悩みゆる也増成 立浪の握挙はみえなから漕行舟のあし跡そなき久ン好 漁火の清ゆる跡に船の帆の附木のやうに残る海はら万万 十帰りの花とも三津の浜松の下枝にかゝる浪の雫は愛雄 遠目にもかすかにみえて万よし己午の方やあきの宮嶋農井 日に栄て並ふ帆影の五ツ六ツなゝめにみゆる浦の夕凪万象 寄社祝 片そぎのそがぬ按言ひやいらむ寒を建かふる年に行合の木陽成 たりしにもかるの社の斎ひ桜いはひ絶ぬる御代そ久しき琴葉 よき御代に生れ出雲の大社神よりたまふ恵みかしき香良 神垣に豊のかゐ藁注連にとてあふ民の栄へめて すぐな代に納る太刀のみやさひて焼も乱れもみえぬ愛 鎧着し姿納る君か代は動きなくみる御社の額行武 神垣に松竹ふりて熱田なる社めしたき蓮泰の山種人 願ひある三輪明神のしるゝにやいく代を杉の栄へめしさき高木 宮移りめてたくすみて酒樽の鏡もかけし多賀の御社松里 花鳥も四季を違へす敷嶋の道をし広く守る神垣声音 加幾加曽布花 千早堀ふる壮社のみしめ縄猶未長きためしにそひく俊英 あたゝしき弓も八幡の社にはいら伝めてたく治れる御代花盛 いく千代も五日十日と恵みつゝ分てそ守る雨風の宮万戸 まれに来てなつとも尽ぬ岩清水たえぬ流を汲そ嬉しき於鬼門 弥増に詣候人も絶有なく日もきた瀧の宮居尊き里人 神鏡の影曇りなき御社に代もあやからん光尊き保登里 和らくる光を添てかしこくも石の鳥居の動きなき御代三棟 野渡 宮廻りいら度か爰にかはらけを重ねたんと誰もいとぞ蔑登也 二本松 吉日をよくみやしろの雀等か祝ふ巣立の千代の酒盛終 幾千代も応らぬやうにしつかりと胸にくゝりの社成へし丸喜 藤沢 一二十あまり。ひとつ社のます比叡は不尽か根よりも高くとし 万象 寄日祝 二本松 すみのほる干のまひらく始より日たし来御代の草へかてき安遊民 安遊民 よき人の善を修するに日たゝねはひたらぬ然に嗜ぬたき 尽せじな代は久堅の日の影の分へたてなく照らすめてたき 十戸音 菱象 一日の本の何くらからぬ御代に住て陰こといはぬ民そかしこゝき山 愛度さは熱飛かくる日の中の鴈に似たるはくろめの国月好 山角 めてたさは此日の本に日の影のあつきゑみをきぬる国民里人 苗さす日にならふてやいく千年丸く治る咽そめてたき杉成 めてたさは朝夕毎に笑めるなる日の目も細くあき津洲の国同 柴の戸の内いつはいにさす日をもよけ伝戸ざらぬ御代多き千町 限りなき日の宮柱にとのつと清く清しと申す若か代増成 用心もいらさる御代に戸さらぬはさせる照か日のゑみなりけりけりけり 雲拂ふ科戸の風の頃よりも替らぬ御代や日は東から愛滝 久堅の天の磐戸をいつる日の夕も替らぬ御代そかして種成 一加幾加曽布花一 海はらに豊さか登る朝彦の影そ住よきうら安の国滋美 雲井より鄙のはて迄天照らす日影曇らぬ御代の御代の銀 〽天照らす日に雲渡れてくらからぬ御代の掟や守るかし代杉成 有りたき恵みあふげはもらさじと君か御影にそふる日の影仲住 天照す恵えたえせぬ日の光霞ふて嬉し宮も藁屋も音清 とかに 見るにさへ。あかねさす日の色移り心の心の山 すめる楽しさ 万象 5302 俳諧歌参篭百首巻之下終 めてたさは此日の本に日の影のあつきゑみをきぬる国民里人 苗さす日にならふてやいく千年丸く治る順そめてたき杉成 めてたさは朝夕毎に笑めるなる日の目も細くあき津洲の国同 紫の戸の内いつはいにさす日をもよけ伝戸ざらぬ御代るき 限りなき日の宮柱にとのつと清く清しと申す君か代増成 用心もいらさる御代に戸さらぬはさせる照り日のゑみなりけり香良 雲払ふ科戸の風の頃よりも替らぬ御代や日は東から愛滝 久堅の天の磐戸をいつる日の夕も替らぬ御代そかしき種成 一加幾加曽布花一 海はらに豊さか登る朝彦の影そ住よきうら安の国滋美 雲井より鄙のはて迄天照らす日影曇らぬ御代のかゝき銀子 〽天照らす日に雲渡れてくらからぬ御代の掟や守るかし代杉成 有りたき恵みあふげはもらさじと君か御影にそふる日の影仲住 天照す恵えたえせぬ日の光覆ふて嬉し宮も藁屋も音清 見るにさへあかねさす日の色移り心のと すめる楽しさ 万象 5302 俳諧歌参篭百首巻之下俗 S 欠S 弘器按ニ宝治二年正月後嵯峨院 ◯初度百首ノ題也 も 七月 初冬空草落葉冬月浅雪 積雪池氷豊節会潟千鳥歳暮 八月 寄月恋ヽ雲ヽヽ雨ヽヽ風へヽ烟ヽ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 閏月 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・玉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 睦鶏夜燈峯松里竹磯巌 九月 嶋鶴岡笹江蘆浦舟杣山 十月 岸苔山家水山家嵐田家雨旅行 旅宿旅泊海眺望寄社祝へ日〻