父母百首

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四方歌垣眞顏選
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四方歌垣眞顏選
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チチハハヒャクシュ
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東北大学
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俳諧歌父母百首礼 を執見次 香窓叢書巻八乾貝次文化丙子仲夏九十五日 二月 三月 初春試筆霞梅若草 蓬春雨春野春田春海 春田春海 初午絹燕帰雁待花折花 惜花春月上巳杜若暮春 一葉 四月 首夏遅桜若竹待時鳥閉子親 一都公頻夏草端午早苗夏夜 五月 夏月蓮夕顏瓜納涼 初秋七夕後朝女郎花薄秋風 六月 秋夜蕎麦栗柿茸 九月月盛惜月鶉出し 『芳素 以テ購入セ 狩野亭吉 詩の蓼義をよみてなき毎の塩を偲ひ涙 を落す遅まき蕃梅かな国の事はさて札 き皇国から難時はあさける山の土候はゝもいつしか山 の井の安この他人に成行なつさしからぬ色はなへ 柳散ぬるをなまことのちゝはゝのやうに 思へる如何かせん此間労とり仁采女かいさは有 とにはあらねとはいかいるより大ふらふ子等 を教へたてんに込ゝよい成父母なりとて宇斯 の名にやおはしたまひけむ 一愉快病水枝序 四 俳諧歌父母百首上巻 撰者四方歌垣 春部 初春 めづらしき春にいつしか打とけて主づ物いふは雪の下水頼政卿 波那細 春立てけふぞ三日汐播磨湯高砂うたふ松ばやしかな真留九 貫之の屠蘇の袋か白波に初日のにほふ六僕の漸面雛丸 裏微加花三 徐に今朝春風のたちの尻きや〳〵となる門の注連薬奥成 陸奥乗祈 玉だすきかけのよろしく鍋屋もみがきて光るあら玉の春金文 裏微加花二 わらべらと浮ぶる屠蘇の盃は蓬莱めぐるあけのそほ舟素顔 桑折 鶯の類の質かや梅が枝に餅のかたちを雪の残すは 新らしき年のはじめは世の中の人の心もよごれざりけり 駿河府中 ひとにだに暮さぬ春をむつきたつといふより山の夢になるべし 若水を汲上る手にきし〳〵とこたへて春のくるま井の音雛雄 天の戸のあくれば神のまじはりにおはすとて菴をさかぬ今日かも佗住 裏微 一縄をもてゆふ輪かざりに豊なる年といふ字を見する初春 陸奥仙台 權保姫へ年玉にとや童部が唐凧をもあぐるはつ春橋 結びまし氷もとけて懸樋より人の手にくる水の糸筋蔭広 鶯も霞も天の八街にひくもの神のむかふはつ春万象 近かりし峯も霞みて隔つる冬を送りて山やゆきけん千賀江 春来ぬとのこんの雪の音づれて雨ふらぬにもいぎたなき哉寿 長門萩 年の夜はいくらか長き初春に久しぶりにて逢し挨拶山越 さく梅の花のはじめの春をこそ四季の兄とはいふべかりけれ平人 桜色に移る障子の初日影紙一重なる花のおもかげ空寐 あらたまの春立かへるあしたより雪も氷も水にもどれり山角 春の水来れども風の手間どるは梅のかをりをさそひてや居る真弓 常陸水戸 あらたまの年立かへり〳〵幾度も来る生酔の礼 不古則 明て今朝老も格別若やぎて違ふひとよと思ふ元日 仝 春来ぬと皆人のいふ口よりやあたゝかき風の出はじめけん 東から春はきのこのゐの水にうつる姿も若き日の影 下総佐原 常陸高浜 門松の枝を伝はる生酔の礼者を見れば猿にかも似る 五百丸 梓弓春といふより今朝ははやを樋の音のいてとけにけり。 甲斐郡内谷村 文鳥 鳥 相模三浦 新らしき初日の影のうつめてはさもあらぬきぬにつやを添けり ノ豆成 天の戸の外にや春の有て居てあくればすぐに来るかとぞ思ふ磯名 目妙加花ニ 初麦のみつのはじめといふことをいつのはじめに祝ひそめけん糸女 目妙加花一 目妙 花鳥の色音に空もやわらぎて東風の世となる春は木にけり英賀 朝な〳〵露の立てひけばにやよほどのびたる春のもの影仲芳 仲芳 ちはやぶる神の御国の春ぞとは門にもしるき松のにほん紀・ 出羽新庄 梓弓はるの来るを諸人はやたけにまつと門に立けり 尾張大山 仝 門松や内に立たる茶の色もやはりみどりの今朝の大ぶく 亀丸 信濃丁田 海山を今朝は露に埋ませてたひらかな世の春は来にけり 基丸 甲斐市川 松風のことにひかれて万歳のはやす鼓や門なみの音 下毛宇都宮 今朝はまづ露の衣引そろへ季替る春の姿うるはし 甲斐勝沼 初に影露立そふ天の戸にわがき出したるあら玉の春 桑竹 玉くしげ二見らずも今やうに春は霞の引出しもあり 若水をくみてもどれる手桶よりたがはでそなや春の客つらん唐文 一声をたて十露盤の初相場尊も千代の春をこめ市注連縄 梓弓春を的なる縣召ねられはづさぬ申文して真楫 陸奥一関 青柳の糸にもぬける白露を年にして春や来ぬらん 春はまたいと若けれど万代のさかゆく為に卯杖つくなり 輪かざりに縄も結びて初鶴の跡をしたふて筆はじめせり百名 きのふけふ立にし春のほや〳〵と網を見せて雪ぞ流るゝ桐住 遠ざかりゆきし波さへ春来れば汀にかへる志賀の浦風千万多 年の内に咲たつ梅のかゞなへしおよびもおこす春のはつつ万象 軒近く春はこしきも落さずにうみ出る日のうらゝけきかれ寿 朝いするをとめ子も又つくはねのむく起をしてあそぶ初春菊人 甲斐花烏里 よき駒を江戸紫の手綱して武蔵鐙や春の乗初真明 春もまだいとけなければ祝ひとて川も氷の帯解やする同 上毛高崎 春といへば池の氷のうちとけて人の心もうき立にけり松人 春たつやけふ三日月の弓はじめいるとも見えす露む山の端 花鳥を露の紙にすりものとくばる手ぶりや大江戸の春真門 佐原 玉くしげ明る初日に出むかひて我のみ春に逢ふこゝちせり雪邨 上総冨津 ふる年の星もみつよつ明がたの霞をもるゝ初鳥かな徳綱 安房舘山 なく声のにほひ鳥とはつれだゝで減が香さそふ谷の初風は 仙台 初鶴はどちからさきへおこすらん国栖の翁に長浜の蜑細道 下毛大田原 枝に来てとまりし羽子はさく梅のかにくはるべき咒ひならん 安房小町 春は来て幾日もあらぬ生駒山額白ほど残る白雪 八重にひぐ霞のみどり色そへて九重にひく青馬ぞこれ真楫 正月の二日酔して年の夜の寝ふけも出る屠蘇の盃真葛 春の色にまだあかすりの浮世風呂老を善湯ときくがられしさ真顔 試筆 近江の海今朝は硯の石山や水ぐきの岡にこゝろみの崎松永貞徳 裏微加花三 筆おきて眼鏡をとれば不思議にもたちまち哀む書初の富士柿人 今朝むかに硯の海のへたにして春のこと葉の玉をもとめつ 葉守政 水枝 裏微加花二 花鳥里 鳴渡るとりの跡からはね起て人よりさきに書初はせん 真明 手習は坂に車のをしへにて筆に力を入る書そめ 下総野田 裏微 春風に硯の氷とけかうととりの跡より書はじめけり 音高 駿府 畫初の筆の墨にも梅が香をふくみやすらんよく袖につく 真名井 童都も木に入る道と鳥ほどの手の跡つけて筆はじめせり跡人 老らくの若やぐ春はいかにぞと筆の力をまづこゝろみん寿 高崎 大鷹の紙に気性の書初はあつはれこれも筆の御こぶし 秀樹 武蔵小野宮 難波津を手習ふ児の親心五つの花と見する松初橘良 笠間 手の垢をみがける草の試に玉の春とはしるしそめてき 新らしき筆のかきとる書初に文字の姿もうつくしかみゆ真門 書初はまづめでたしと墨よりもゑみをふくみて筆やこるらん磯名 幼子の鶴といふ字もつかみ筆はしる手柄や大鷹の紙千賀江 目妙加花二 上総芳野 一春の朝こぶしかためて紙の名の小鷹に文字のすゑ心よし浅方 新庄 初夢をそのまゝうつすうれしさよ奈須大鷹に富士の大嶽繁樹 目妙加花一 とる間にも和らぐ春の火初はあら玉子をぞ握る手ごゝろ隅成 出羽高畑 若狭南はうちつけならん釘のを札の文字にしまうをつくる書物真名冨 目妙 乗折 万代の春のはじめに筆とりて一文字にひく棚霞かなり 吉原 神棚にのせるものとて書初に古詩をさゝぐる人もありけり 書初の筆の命毛長かれと軸は千年の松のみどりぞ於衆門 市川 摺小木のやうな筆もて試みば味噌気でかくとへやいふらん 仙台 花のさく春をむかへてする墨のちらぬやうにとかける筆さき 藻汐草けふは硯の海原にかくもめでたき筆はじめかな おのがじゝよきもわろきも年徳の棚に上つゝ備ふ書初鳴音 祝ひとて恵方に筆を鳥の跡まぞをさむるいにしへの道草丈 いはげにき子にもをしへて筆の毛のしかともしらぬ文字の書初竹広 うちつけて獅子の子獅子をこゝろむる筆のかへりのつよき書初瑞生 書初にてこそねがへ雲紙にたつの是れる筆のいきほひ真楫 ふる類のふるきをもつて新らしき年のあしたに書そめぞする満峯 一関 一関関音連 宮城野の萩野の筆さきよしと陸奥紙に書はじめけり 萩の花すりたる紙をとり出してまづ試る鹿の貴蔕 書初を備ふる神も酉の方文字の親から恵あれとて 仝 播磨姫路 書初は気も春駒の朝はやうはねても筆にあぶなげはなし けふ子等が筆のはじめをよそにして雪かくわれは若くぞおもほゆ 書そむる福禄寿には似合たり筆のかゝらも長き命毛虎丸 二字守改 南山の寿といふ文字の輩法もかけず崩れぬ春の書物福養 相模戸塚 玉といふ文字も光札と寺子等が磨き合つゝ筆はじめせり真雲 若水にあらたな筆をとりがなく東夷も顕やかくらん寿 父上五 上毛尻橋 青初の霞てふ字も若水の水烟ほど立し墨色 妙約 摺ながらこきと薄きを筆に染てまづこゝろむる墨の色お福 買初の筆にも春の立ながらまづよのひらへ書初ぞする 仙台 高崎 春秋に富りと子等が花押には手形の紅葉居る堂初道行 書初の筆の冬毛も寒からでさながらもゆる春の若な麁叟 手の内の宝を見する堂初は誠に一字千金の春琴葉 上総木更津 三吉野の山も霞と書そめし筆のさきより春やたつらん 春たつといふばかりにや龍の雲をおこすがごとく筆はじめせん 冨津 筆に心いるれば自然力入て文字もはたらく。今日の書初有安 武蔵青梅 子実をかきあつめよと嫁にまで筆とらせけり年のはじめに綾繁 汲入れし硯の水の若がへり筆さへたる老が堂ぞめ真葛 書初る硯の海にほの〴〵とにじむや春の霞ならまし直成 常陸潮来 師の恩を負ひ馴て今朝書初る筆に力のつきもこそすれ広州 黒き手を白薄様に恥ながら袖巻上の筆こゝろみん真顔 霞 霞 足なくて雲の走るもあやしきに何をふまへて霧たつらん発心上人 波那細桜迺愛 駿府 さま〴〵の興ある春も一色にかゝりてをるは霞なりけり 波那細 旅人に道をとはれて我ぞまづ霞む野中の松を尋る柿人 信濃松本新田 春来れば霞の中にこもれども世は広くなるこゝちこそすれ 長丸 裏微加花三 伊豆下田 何事を争ふ山のひたひにて青筋きてる霞なるらん 彳 陸奥白河 瀧津瀬も霞にこめて此頃は横に布ひくやうに見えけり 尾張熱田 仙人は露の糸をねり入て齢をつなぐ薬とやする都々 裏徹 葉まめきし都の春は男まで霞のきぬをうつがぬはなし 武蔵野は霞のとばりはりかけて山の大君聟にとやまつ 吉原 空の海霞の網の広ければ野山ももれぬ春のいろくづ 立田川かはよと告て明島わたらば霞中や絶なん 春といへば寒さもよほどゆるむ頃山も霧の帯やしむらん 下総古河 春もまだあさ肩衣や朝霞袖といふまでは引たらぬなり 霞けり月やあらぬとうたがひも春や昔の我目ふたつは 屋津 横雲の帯のとけしを見せじとや山は霞の衣にかくせり 有安 参具山にかゝる霞を花なりとみなして人の今も争ふ 常陸府中 春もけふ伊勢参すといさみ山いさみ立ぬる朝霞かな繁理 花と見る雲は霞につゝまれて山のたをりのしれずなしけり真締 目妙加花二 仙台 きゝす等も妻や定めん鹿嶋山ひたち帯ほど露ひく頃 目妙加花一 きやうだいの山とこなだの姨捨はひとつゆかりの色に霞あり 新庄 尾張名古屋 去年のうち雪にまろめし冨士のねを霞は袖にいれて立けり真澄 伊勢桑名 人の気の置所まできのふとばかはれる雲の棚霞かなし 由列 桑村 春霞そめし衣をさほ姫のきて見ぬさきに山はきにけり 香具山にほせし衣は埴安の記にぬれたる霞なりけり真風 長うひく霞のたけはしられ〴〵なのびてゆく口の尺時計にも沖風 春されば霞の衣重ねけりきよきも見えぬ裸山まで糸女 甲斐石和 野も山もいろは分にて引出す霧は春の節用ぞかし真佐知 目妙 笠間 長閑さに霞の衣うひかけて波の枕立寝つおきつ島 新庄 紹鴎の蟲に薄茶やたてそむる霞の棚も二重三重杉守 山鳥の尾上をわけて立初る露は春のへだてなりけり種成 仙台 山の腰めぐる霞も流れゆくさかたわりこむ春の雁かね いとけなき春のあしたに立そむる霞のきぬは産着なるらん 宇都宮 千金の春のながめの重きにや霞に沈む陸奥の山 仙台 家の棟をこして霞の墓目には門のあくまも立かくれけり 仝 乗折 まだ春も浅黄産着を一夜子の富士に着せたる初霞かな イ歌文 公 梓弓春は、霞のしつけ方立ても居ても見事なりけり、 松村三崎 冬ならば通ふ千鳥も迷ふべし霞にきゆる淡路島山 味名門 三河土呂 国栖人の笛もつゝみて八重霞都の空に立のぼりけり 岩守 駿府 富士のねの高きにたつは危しと霞は横に這ふにやあるらん綾 綾彦 我朝の霞のきぬは洗ひしか異国にまでもかけて目にたつ橋住 武蔵千住 一夜明て碇おろせし春の日に霞の綱をかける海原際名志 さえかへる山路へ氷うつきにけん今朝は霞の流れかねぬる秦麻呂 桑名 帆柱へ横に霞のかゝりては格子嶋とも見る袖の浦蘂 筑前福岡 初露山ふところにうちまきてまだいとけなき春をつゝめり 打きせし霞のきぬの袖ほそみ後り物かや楳が嶽吉躬 万歳と共にことぶく四方山も今朝は霞の冠いたゞく実鈴 笑顔よき山を友として長き日を長う思はずたつ霞かれ朝興 山〳〵は雪の白無垢ぬぎ捨て苔の衣の霞帯たり玉黒子 岩山を袖もて捨るあき霞あま門をとめの羽衣かそも垂気 富士の嶺の霞の衣長き日は裾をふまへんあし高の山真根人 甲斐藤田 山〳〵の親てふ冨士のふみころにうひ立したる春寒霞かな一飛 霞にてつゝみかくせばかくすほどひとしほ春の色ぞゆかしき春則 野田 名に高き須弥と富士との首引も平角に見ゆる初霞れ 青柳も藤の花かと紫の霞の棚にかけて見せけり琴葉 花の雪ふれば霞の立ながら袖うち払ふ峯の夕風目積 たつ春と共にたつとて四方山の裾を霞はふまへてぞひく 陸奥二本松 一くり出す霞の糸のさきに付て冨士は田子より上るやう也安遊民 信濃松代 永代の橋にもかゝる春霞たつ巳の里も見えわかぬまで真 水戸 文好む梅をまねるか春霞の島にかゝりてぞゐる 関 広袖に雪のつもりのうらおけて花に霞の衣やたつらん 千代増 佐原 肌寒し山も霰をきるものをまもなく立ておろす春風 初霞引のばしてもまだ寒くちゞみ上れる春のあけぼの河船 富津 春の空気も晴〳〵となりぬるに霞は山のむねふさぎけり 遠山の雪の白無垢紫の霞にはいつ染返しけん由安 山里は桃や柳をつくり花のせて霰の棚に見えけり 大田原 青梅 春風をなどいとふらん蔀山今朝は霰を深くおろして 綾繁 霞ては彼岸桜に開帳の紫幕をはるかとぞ見る 駿府 早蕨のこぶしに腰やたゝうれし野末の霞よろめきてうつ奥名井 甲斐府中 春霞たつとはいへど足引の山より山へ横に這ふ見ゆ 小町 霞立きて見る衣もゆつたりとそなは深山の裾をかく苧木 冨士筑波両の袂にゆつたりと入るの野べにたつ霞かな琴富貴 入相の鐘の音さけふ春風に霞ほんと穴やあくらん鷹竝 貝拾小二見が浦の目路遠く蛤ほどに霞む冨士のね真顔 梅 かざしては白髪にまがふ梅花今はいづれをぬかんとすらん伊衡朝臣 裏微加花三 垣の梅をらばとめよとけふ一日をうぬ隣にたのまれにけり歌種 鴬におこされて戸を明番のとのゐ袋につゝむ梅が香山陽 御車の猿にさはる梅花めでくつがへる人もあるべし千万多 鶯の宿をすればや梅が香は我等が夜忌をよりに来つらん和布刈 花咲て春べに通ふ鶯の宿とは人のうめもいひけり真諦 高崎 谷川を隔つあなたの岸の梅香来べき風の柿もがな 裏微加花二 下毛茂木 火ともすといへど油の半分も袖にはしみぬ夜はの梅がゝ粟阿弥 駿府 梅を折る科はゆるせど見ぬふりのどうもならぬはをとめ子が袖 石文 一関 見る人の近くよるなら手にむせてをられぬほどにかをれ梅が枝深沼都 難波沢の梅のにほひや餘るらんつゝ袖着たる蜑の多くて礒名 さく梅を胡麻売垣にゆひこむはきこんをつよくにほはせんとや福養 はなやうに咲出たりと謹もいふ梅はみなりをつくる物ゆゑ方住 気のつかぬすかし障子の紺屋形あつらへたやうににほふ梅が香 親といふ事に似ずして雪とさく梅は鬼子か枝に角あり宇万之 朝霞かをるにきそふ梅がゝはにほふ宮とがゝいふべかりける道時 裏微 笠間 花の香をぬすむ真袖の留伽羅をさきにも奪に梅の下風花成 吉原 仲上り折とる梅は散ながら袖は下枝にほころびにけり 名古屋 軒のはなに風の吹こむ梅が香をこそ提上てかぎ留にせん園丸 花守にしばられじとや我と手をうしはへまはす梅の折枝仁恵高 桑折 手折ら時花ふすむなと意見にはつくほどぞよき袖の梅がら 河身に棹さしゆけばむかひより東風に乗来る夢の梅がゝ歌文 大雲の星とおぼめく梅花にほふは去年の七夕の伽羅 鶯のたわむる枝をはさまには○かへすべくつよき梅が香 鶯のはこせし枝を春雨の洗へば梅の花やにほへる 西へむく風見の烏汝が羽にもつきて動かぬ軒の梅が山采也 駿府 鶯の声のこほしき春くれば梅も小鍋の形にひらけり けふのにも梅に暮してもどり道星をいたゞく春の雪響武光 梅が香のあこがれし時あこがれし心は出て世に入けん春好 かき売を置たる海人が垣の梅みなみをむきて花ぞ咲ける真樽 戸ざゝぎる御代の春風さそひ来てうちへはひれる庭の梅がゝ真国 鉢植の梅散たりと驚けば袖のさばりし喰揺の葩煎琴成 松本新田 しだれ梅立枝はよそへ見せねどもみにかく風に人まねくなり 汐たるゝ蜑が取の汐気だに梅がらしみてすくやなからん春則 鶯の宿と定めし梅が枝ぞ人はをるなと叱る花守 野田 安筆 兄なりともてあやさるゝ梅花かとく広めよ風をたのみて 春風のさそひし梅のにほひをばとめよと袖に綿や吸出す真風 上枝へ手をのばさんと片肌をぬけばこぼるゝ袖の梅がく有香 下蔭に蟻のあけたる穴ゆかしどこまで雨ふ梅のにほひぞ 大田原 鶯の羽風につれてゆきゝする梅のかをりのとまら我宿 下総多古 何国までも風がさそへば相談に乗て走れる馬場の梅が山浮邨 振袖は折〳〵枝にきつれども女子と見えぬ梅の花かな雛丸 日妙加花二 名古屋 文好む若木の材は名香の真那蛮と思ふ窓にかをれり雅流園 仙台 枝ぶりを舟に造れば短冊を片帆になして走る梅が香 恋すとも叱るな猫の通ひ路をかへ通ひ路に梅が香も来る友鶴 目妙布花一 仙台 菴守にまひして贈る酒樽のをりをばゆるせ庭の梅が枝直道 長く等さに上着ぬかんと佐保姫の紐をとく時梅のれぞする文車 餘るほど花にゝほひは蟻の道人もつゞきて安見にぞ来る満汐 むれ立しさゝに酔たる色に出て笑へばにほふ藪の梅が枝伊左子 仙台 この人はぜぬす人とうたがへどいぬについたる寒の梅が香 目妙 一佐保姫が霞のきぬの着初から裾野の梅のほころびにけり真白 鶯の麁相にてつい羽袖よりこぼれてにほふ雪の梅が香 折せざるあるじづらより梅が香をよそへ吹とる風は恨めし 鋤鍬も捨てこのごろ梅花さくに心をくばる村長の 市川 鶯を宿せし故か飛ぶやうに谷から谷へ渡る梅が香常道 陸奥岩城久保田 咲初る花によそへて物とへばかをうぞ深き難波津の梅耕穂 宇都宮 築墻の内なる枝を折んとてつきあがる夜の梅の下澄 浅木 まだ春に馴染の薄き梅が香を風がつれてぞはひる門〳〵繁躬 仙台 追かけてとり戻さばや我が香を顕にも風のあしはよまねば。 梅が香は君の袖にもとのゐしておのれと枝に星をいたゞく鳴音 桑折 春風に今宵は月の村空もあげしく小ほぶ軒の梅が香金 公 折ともて逃くる跡を追風の我よりさきへ走る梅が香 におもてに咲初しよりうらゝかな空にゝほへる梅のくれなゐ 枝を折る悪鬼よけんと梅が色に経よむ鳥をまねきよせ 下田 み朝人の兄とはいへどやさしさは女と見ゆるしだれ梅かれ〽田安土住 一関 香をとむる袖に餘らば隣へもすそわけてふけ梅の下風 深沼都 梅さけばそのまゝにほふ春風は花の中にやこもりをりけん 折香 梅がゝの鼻はじくほどにほへばや狂ふにて蝶のよりもつかざる 仝 千万喜 烏とはあちらこちふく夕暮に梅のにほひはうかれ出けり種成 誘ひ出す風のなき日は宿に居て膝えさらずにほふ梅が手い 駿府 軒とりし罪はかくしも奈良坂やこの手さきまでにほふ梅がゝ 乞ふとてもたゞにはやらじ庭の梅一首をよまば一枝を切ん直寐 新らしき正月物も梅が香のしみつくことはいとはざりけり古則 柴船の香は物かは山賤がたきものかこふ軒の梅が枝花元 梅守にけふは茶代を拂はまし拂はゞ失ん袖のうつりこ衣紋 梅軒し袖をとはればいかにせんにほひ袋も人にこそよれ桐住 山形 梅守にせめて鯰のけんほどく口をすくしてもらふ一枝山并千積 梅が枝を引折んとて尻餅をついてにほへる袖のうつり香 野路の梅ほころび見ゆる花笠を縫ありくさま也空の糸遊。 桑名 さはるなと掛見の客に庭守は口をすくしてわぶる木の本槌音 めづる人の心に花もなづみてか跡をしたへる梅の追風蔭広 若菜つむ頃になりぬと飛火野のつかさに立てけふる梅がゝ雪也 下毛野渡 舟人の風見学てふ梅花をりたる方へにほひてぞゆく楽也 朝日さす日のけふりより紅梅の花の薫りの高き春な千分 商人のよからぬきぬも梅が香に不相応とや人のそしらん柿人 筑紫まで飛で来りし飛梅の出木の枝の枝の広さよ 見に来まときたる使の口からもにほふやかざす袖の梅が香汐時 萩 杉の門うちたゝく時かをれるはよるの梅見の酒買ならん 山越 蓑虫の冬籠りたる片枝より蜘の花笠ひらく難波津 仙台 真根人 松本新田 花おそき信濃もなべて春風に異国よりの梅が香ぞする 春風の不孝まけふもさそはれつ遠あるきして遊ぶ梅がく かくしつゝをらば咎めんとかくしつゝをるもかひなし梅の下蔭。 さく世の兄ぞと人のいふめれど音に聞ゆる難波津の梅 野田 寿美香 仝 花に来る鶯またず我袖へ今朝からとまる庭の梅がゝ 槌音 さく花の兄とはいへどいにしへは和顕の親なる難波津の梅 公 衣成 鶯の高き梢にのぼりては梅の下枝を笑ふ初聲 桑折 梅がゝは人の袂にとめられてもとの枝へは帰らざりけり 木更津 上総小糸 顕もよみ詩も作るとは梅がにいにほこり杉田の海士がたひ。つる倉人 立よめてこはい物見たき女連ふしたる程の梅のかたちは道遠 一二輪まづ咲そめてさきいそぐ人の足をもとむる梅がく 来る春をむかふる門の縄すだれうちへよれこむ風の梅が香 雪の客に焚んといひしあやまりをひとへにわぶる庵の梅がゝ 仝 紫にたてる露もくれなゐのこぞめの梅の色は奪はずか 仝 津房 友どちのむれ来る梅の下水はなみゐて深く香をとめんとや 松代 水戸 鶯の枕にしたる枝ならんあぶらつきたる梅のはつ花 ぬば玉の闇はあやなき梅がゝに星も花かとあやまたれけり 柳とはさまはかはれど梅が香も風になびきてけるは薫れり 鳥が来てぬへばおのれが笠を着てしつびありきや夜の梅がく真門 大皇国文好む木は文をよむ窓のあかりに花も火ともす杉盛 兄といふ名を持ながら梅花さし出て春をなどしらすらん満足 花守の酒くまんとて引とむる袂にすがる軒の梅が香 高浜 駿河大宮 春風の手はひかねども春の夜の道に迷はず通ふ梅が香 朝風にゝほひをくばる梅が枝のこぼすつぼみや春の年玉 同久次 冨津 手を組むと見る梅が枝は春風に香を散さゞる工文をやする たき物のにほひを按にけ出されて爪くふて居る判者をかしめ 常府 さく梅のにほひうつにて物いふに東風といふのもくせになりて 鴬を追へるあるじをとゞむるか袖にすがれる風の梅が手の 館山 大田原 風にさへやるを惜みて我袖によく深くとめし宿の梅がく 青梅 幸弓を手握り持し殿よりも梅折かざす供しともしも 甲府 梅の花手折んとしてうとましやかひなに疵をもとむ春の夜 油さへにほひえならぬともし火の丁子頭か梅の莟は仝真繁 鴬のあふてふ笠や三勝が女顕葬妓の梅のはな笠真顔 ニ 若草 霜枯の野べのあしでの墨がきをいろどりそむる春の若草慈鎮大僧正 波那細 若草のもえて出たる勢ひに雪のすくめる松の下蔭跡人 裏微加花三 もえ出る草の炎やのぼるらん中空にして雪のきゆるは 裏微加花二 吉原 かけ渡す野べの霞のきぬよりもさをなる色のめだつ宮是 陸奥川俣 寝ころびてねぶれは耳をこそぐりて夢を破りし夜の翁もえ。 久田廬 一関 誰が見てもねんと思ふは若薄か蚊屋つり草の芽にはあらぬか 裏微 芳野 春寒み残れる雪の下ひえてまだ寝よげにも見えぬ若李 若草のつまにたはるゝかたはらにつのぐむ芦ぞ悋気顔なる 桑折 春雨の今少しふらばそれ〳〵になもあらはれん野べの若学 水戸 消残る雪の下よりけふれるは若葉のつまの火をや焚らん満葉 目妙加花一 狐火の見えし夕べの事よりぞ青くもえぬる野べの若草 春さればいてもとけつゝ賭弓のやかずにもゆる野べの若草真守 野にむれて出る若草こまのひざ牛のひたひもつの宴るまで 目妙 君が為〳〵とて摘る菜に恩にぞ着する綿帽子雪 笠間 松蔭 去年見たる萩の焼原春くれば又野火〳〵ともゆる若草 去年つみし雪の白たへ色消て帰りはもゆる野路の若草 犬山 文学ぶ窓のねふりをさませとや誰のさきほどのびし若草 全 久早吹 帰りゆく雁にさきだち鷺草のはやはをのせし春の庭もせ水垣 足よわき雪の名を得し淡嶋に六はり上る若学のつま 春雨のけふりのやうに降つゞきつゞきの岡にもゆる若芋指月 駒とめてもゆる若草はませばや一口物に頬はやくとも みな人のつめや艾の若草は保養にもなり灸治にもなる 武蔵野の若字をいざつまんとて妻もこゞめり身もこゞめり於佐丸 仙台 山笑ふ餘りに泪こぼしてやめをふきぬらん春の若草 全 狐火を焚散したる跡よりぞまやもえ出る野べの義草千近道 甲斐今井 若草に寝てもどりしも塞翁が馬から落し。我の高名 白魚も水上さしてのぼる頃阿田の辺にもゆる若艸甲良 木更津 若草の若い元気に任せては雪の中をもいとはずに出つ夏信 露と月宿す殿をや作るらん三つ東四つおににもゆる家草米守 ちひきくてつまむほどなき若艸は露の網にもれて見えけり水彦 水戸 若草のもえて出れば野の雪は消わたりけり野火とめの里 道布類 一関 若草の肥ふとりつゝ三寸にあまるをよしとくらふ若駒仲花 郡内谷村 ふむまじとよけて通れば若草のつまづかせたる野遊のあし 陽走にたけ競べしてまかじとやけふりながらにのびる若草 吉原 大田原 春の野に色も萌黄の風呂敷のほし縫ほどにおみる若草方蝉 下総印西 一消残る雪のまだらにはを出して笑ふやうなる野べの若子水魚 仝小林 春雨を親とたのめば芽ぐみよくこか子嫁菜の隔なくふる群住 をさな子の色をおにもたわつけて根よげにゆへる墨学の髪真顔 菫 箱根山うすねふのつぼ菫二しほ三しほ誰かそめけん匡房卿 波那細 紫のすみれもあせて赤人の一夜寝たりし跡かとぞ見る真風 裏微加花三 袂にも袖にも餘る上に猶何にするとて茎つは児ぞ空寐 此にも白きもあるをすみれとは山田のくろにさけばなるべし 裏微 笠間 若草の妻もこもれる武蔵野にひとりすみれの花ぞわびしき 川俣 萩をまたですれよ胡蝶の羽袖には色沢山な菫花さく 武蔵栗橋 紫の萩の焼原灰さしてあくまでそむる茎色こき日曽丸 たらぬほどうれし若菜も菫草も摘たる跡の手はまたきけり桐住 紫の春はゆかりの武蔵野のつゞきが原にさく。とられる 踏分し紫豆袋も今は昔すたれたる野にさく茎かな 茎つむ春の野守にゆかり有て一夜ねかさずもてなされけり真風 高畑 紫の茎つむとて裾ひかば赤裳の色や花にとられん 春日野の若紫のすみれ草袖も鹿の子にすりあふてつむ早人 あたらしと一夜ゐなべが墨縄の壺台つみに木場へ来にけり 青梅 菫つむ野をなつかしみ横に寝てかたみも染る紫の色 小町 茎草むれつゝつめる裾は皆桜重ねをきぬ人ぞなき 目妙加一花一 市川 こんなりの壺すみれ野は薬ぞと人も心をいれて見るなり 目妙 吉原 槿とかくてふ文字のつくりにてみるたけもなき菫草かなし 貞雄 酔過て茎に一夜寝し時はちよもつみぬるこゝちこそすれ 芳野 花守 種おろす山田のくろの菫草さくに心をつくる里人 犬山 一かまへこゝにすみれの草分は根がものゝふの落し種かも ゆかりある故に尋てくるものを茎よばなであしらひなせそ 三崎 栗橋 柄に来るゆかりのあれば山里にひとりすみれもさびしからじな をさな子の遊ぶ道芝温公のわれがちにとる壺すみれ草長閑 萩 さほ姫のかねつけそめて壺董うつむく花の顔のやさしさ 実生 仙台 城跡に春を忘れず花さくは紫おどしすみれ草摺住 人の寝し跡の見ゆれば董野に我もねたしとおもほゆるかな。 今井 人文字 愛る餘りつまぬさきからねの上に露這のぼる菫やさしや 一野遊の狂ふてまろぶ膝頭する紫はすみれなりけり 仙台 紫の色もたらなき一つ家にあはれ茎の世をしのびけり 高崎 朱のきぬ着たる童が菫草ばひ合てとる紫の野べ 一夜寝し顕を書たる反古にしもつゝむすみれや春の山土産 高畑 土筆とる子等が片手に董草つみては石に摺てたのしむ真名冨 壺茎さく凧は武蔵野の露のきぬをしぼる雫か 松代 真神 笠間 子供等も共にゆけとて親〳〵のゆるしの色の花茎つむ 下総行徳 嵯峨の山硯石とるゆかりにや花の色さへこきすみれ草 宇照 仙台 来て見れば悋気まづかし菫さく野をなつかしみ一夜寝し夫 董つみに腰たゝぬほどの生解を野守が宿に一夜寝かしつ真締 老人も腰を野風良の火吹竹取るや炭つぼ壺すみれ草真顔 春雨 春雨の種まくがごとわたつ海にふればや石に海松の生ふらん保憲女 波那細 花を思ふ心こゝにしあらざれば見れども見えずふれる春子水枝 青梅 春雨の心やさしや草木にも我は親なりといふふりもせで 裏微加花三 春雨の静に眠る高まくらそれもよみさす太平記にて寿 若草のなべて力とたのめどもさのみつよくはふらぬ春雨水彦 小山田の苗代時をよくしりて水の四沢にからる青雨山陽 裏微加花二 春雨のけしきえならぬ我庵は城にもかへじ軒の玉水真明 時〳〵に名は替れども雨は雨春の雨こそ事の親なれ於鬼門 二本松 春の日の長ければにや落付て雨も静にふれるなからん 裏微 春過に去年のとし木の餘り物つみおくまゝにめをふくもあり 笠間 駿府 ねふたしと夜るをかへさで春雨の昼も朧に見ゆる山の端 うと〳〵と人にねふけはつけながら横にはならずふれる春雨 春雨の軒うつ音はふる年の氷柱の棒のほそゝ京水 若駒のあれゆく足の跡追ふてくぼき所にたまる春子道 春雨は親のいさめの杖なるかうてども花のいたまざりけり 昼といへど夢を結ぶもことわりやけふ春ゆのいとまあるには つれ〴〵の遊び敵もともねらひ名のこても来ぬ春雨の宿豊 類よみのつはもの共があつまりて酒くみかはす春事の宿松人 御代の春月の弓さへ袋から出さぬやうなる雨ぞしづけき目積 眠気さす人に気がねやいたすらん足音だにもたてぬ春に 春雨の糸に露の手つだふてよこおりいねるさやの中山ヲ満葉 富津 星と見し梅をたよりの夜遊びもぬれてもどれる春過の空 春雨はそと降ぬれど聞つけて物いひかはす雪の下水端練 春雨は子の多けれど一番に足と呼るゝ梅にかゝれり礒名 目妙加花二 川俣 草や木の親てふ事は梅て見つさすりても見るおのが衣手田 降ぞとは目にも耳にもわかねども猟の花にしるゝ春雨 目妙加花一 静かさに蛙も池の扁突のかた〳〵出す庭の春事百名 かくばかりしづけき御代の春雨は木この枝をもならさうけりけりけり それと目に見わけがたきも我門の杉菜にかゝる春雨の糸。諸鶴 春雨のふるにも見えし源氏垣かいまみて花の品定せん真門 目妙 名古屋 枝折戸のひぢを枕にこだれたる様もねふる春雨の宿真澄 とり出して餅の饌さへ青柳のけふりて見ゆる宿の春雨 立田 市川 高瀬舟こもも莚もほしあへず春のながめにしく物ぞなき真河 宇都宮 さゝがにの網はやぶれて春雨のふるき軒端にかゝる糸水 川俣 かぞいろといひしも今は昔にて花に祖母ふる枝の春雨 茂木 つよからぬ夜はの春事見習ひて寒きは日々に弱くなはう 桑名 秋よりもわきて淋しな炉の釜の虫の音高き春雨の宿音澄 白河 玉水に門田うたせて賤の男が肩やすめする春雨の宿宿成 仝 庭の面の氷もけふはくだけとや漸塵のやうにふれる春春雨 赤羽 高野山花に薬の春事もおつれば梅の玉川の水 下毛烏山 春雨に猿子柳のおもしろく枝より枝へつたふ玉水光成 熱田 静けさは風児の烏うなづきてさゝやくやうな春ゆの声 駿府 風まじり春雨ふりて寒き日はしのぶにたらず軒の鼻水 一関 和らかにとけば結びし春子も柳流しにふれき糸水 姫路 よごれたる柳の髪をつや〳〵とふす間に洗ふ夜への春雨 爆竹せし野守が耳にひそ〳〵と笹焼しめす夜はの春雨 夏虫に消ぬる草やそだつらん声をたてずにふれる春雨 打くもりみな山〳〵もかくれ蓑しのびてふるや軒の春事福耳 仙台 淋しきに宿のあくびやうつしけん花も唇ひらく春雨 軒たるゝ水は毛引の暦かもふるとし見えぬ春雨の宿主直輔 春子は霞のきぬに淡雪を歳重つゝみてしぼるなからん琴成 春雨に朝寝せしをば鶯にかぶせておかん梅の花笠網女 つれ〴〵に数ふる宿の藪併粒のそろひし庭の春雨綴蓋 春雨にこの青柳の糸をもて縫初をする梅の花笠多丸 花といふ子は親まさりしつけぞときくもれしき春雨の音琴葉 春雨のふるの社は白かねの鈴かと思ふ軒の玉水糸人 読さしの清女が書をそのまゝに枕にしたる多手の宿英賀 薄くと引る霞のかさなりてみな粉のやうな雨となりけりけり音高 雪翁によごれて見えぬ若草をあらはすほどはふらぬ青ゆ ふる年にふしたる竹はみな起て人を寝かせる春の雨うな又家住 青柳の糸はふとしと蜘の囲へ玉にもぬける春のこさめか 父上廿二 全 青鷺の羽たゝく岸の柳蔭みごりをふ事ふ春雨の空 舘林 小田をすく業はせねども臂枕またうちへす春雨の宿直藻 雲のきぬ霞のきぬの二重ごしこしてこまかに春雨ぞふる早人 上総菱田 うねのごとくぼむ軒端にほた〳〵と種まくやうな春ゆの粒音芳 ほんやうて鐘の声うから月の笠かすみてゆになるにけるかな照住 小町 さゝがにの糸より長き雨の足春の日数をつながりてふる川田音 梓弓おして春雨降音も明るは日和になる筈の音真顔 春野 花の咲ところもしらず春の野にさら〳〵つめるまゝこもちひぞ和泉式部 波那細 春の野の新らしき草にあたらしく人の行ふ道をつけたは春則 野の老と呼べる野守は野に生るこころづらにも似たる髷つら真締 裏微加花三 指ためし袂の候には軽けれどやと立て野をもどる夕ぐれ古則 裏徴 青畳すみれのつぼの千畳もつゞきが原の春の野遊び瑞生 春の野に花に戯れて寝やらねばまだ初夢もみまい煤〳〵伊丸 目妙加花一 いとなみは髭だにそらで春の野の老とかくてふところ求むる百名 をとめ等が籠はもたでも茅花をば心にいれてつめる春の野千万多 目妙 桑名 武蔵野に春はのびるを堀かねの井よりも深き穴をあけらは 若菜つむ野べは霞と摺火打すひつける沓や春の雪気満汐 風しのぐむしろ屏風をつくる時蝶番ひ来て遊ぶ春の野 春の野に弁当提て見る人の心も花にやしなはれけり うなゐ等が遊ぶ焼野の黒塚に子をとろといふ鬼もこももれり 萩薄春は焼野の野火あがりのび上りてもまねく手ぞなき百名 めを出す尾花をつれの名に呼てまねき合ては遊ぶ春の野真広 野飼する駒ならなくに春の野は人を引出しつなぐやうなり 千住 妻恋に身をもす雉の跡ならん雪湯のなのぬるむ春の野 青柳の水に文字て春くればつくしの筆もとれるゆべかれ真樽 青みたる春のけしきに瓢箪のはしをくゝりて野見にこそ出れ 木更津 風もなく四方を露のたてこめてあたゝかき日の春の野遊び 春の野に露の網はかけながらやける餅草喰ふか水駒目積 水戸 春の野に遊べる人のみさかなに何よけんとぞ難の鳴なる木戸釣人 若葉をふまじといとふ足もとにおとす火縄のもゆる春の野冬住 くり糸の姉はの松の針とぢに穴だらけなる雪の村消菱象 霜枯のみぐるし野こがゝ冬はかんし春くるす野の草のみごとき真顔 春田 年を経てかへしもやらぬ小山田は種かすへもあらじとぞ思ふ季経卿 波那細 裏微加花三 神垣の伊勢の御田は苗代に五十鈴川をぞ曳かけにける真門 荒小田の氷を踏て正月は足よごさじと鶴やたしなむ吉原桑顔 裏微如花二 烏がねの名残をしむか今にまだかへさでおける春の小山田斧児 賤の男がかへすと出る春の田におのがことゝや雁のたつらん水枝 帯にする細谷川をせき入て田すきにかゝる吉備の山里日野月盛 追ふ馬に鈴はなけれど賤の男が土をならして廻る春のま福耳 賤の男が鍬にて春のむしろ田を一枚づゝにへぐかこぞ見る明方 裏微 ふし柳枝のひたりて此ごろは鉄漿のやうなる小田の水さび百名 市川 長き日につかれやせんと老人は帰して猶もかへす聟の田 磯の男が山田かへすとすきはぬる土に霞の袖やよごさん満汐 うかれたつ春は田螺も戸を明てよその田面へころげこみぬる鳴音 桑折 春の田をたがやしかへす雁がねのかきにうなひつ棹にうなひつ 関 真かゑなる春の雲田に山鳥みな口あけて田螺ひろへり うれし気に田にしも今ぞ世に出るころ〳〵と呼ぶ春のよの事武光 牛遣ふ賤もあくびや苗代を鋤のさる緒ものびしにの影 たつか弓はるの田かへす古葉嵩引捨て矢もはなちこそれ 田の水に籾俵をばつけもせで花に心を深くつけゝり平人 重ゐをや拾ふ蛙の類袋ころ〳〵と音を入る春の田万象 信濃川谷沢 春の田に霞のきぬのほころびてうらをおもてへかへす賤の男長路 今日よりもはじめる鍬のまがために鏡餅をや備ふ田の神和布刈 種おろす春の山田も打捨て花見にばかりまかる此ごろ凹 目妙加花一 千住 春深く水もふかみの葉にまでしらのかは毛の生る小山田餘慶 さく花をたよりに賤も春の田をかへず〴〵やふみおこすらん 市川 自妙 吉野山山添小田の種時にもみやわくらんつぶやまふらん百名 せき入る水の波うつ湊田に帆影と見えつ畔の五十串は 秋かりて春又かへす小山田に通用のよき畦道もあり 仙台 御代長 賤の男は牛にまかせてうしろからおしてかへせる春のむしろ田仁恵高 桑折 紙ほどのうすき氷を昔誰が田がやしそめてすき返しけん幸木唐文 賤の男がたすきかけたる片そばに蛙も臂をさるの日当り礒名 詠じける蛙の類は荒小田をうちかへしては聞れざりけり桐住 正月の餅はしまひて百姓のかび田をうなひかへす長閑さ あさりする春の田の面の雁がねはそけて早苗をとると社見れ清樹 春のまにゆきゝをせくは賤の男が唄るときけば蛙なくなり雛望 福岡 袖を皺にしてもやさしやをとめ等が玉田すきかけて休むけしきは吉躬 春なれや田の面の賤の長はなし馬把に去年の根を堀てさく 人並に田にしも出て春の田の水口あけて笑ふをかしさ玉香 高畑 ゆたかなる年のしたしの雪とけて水や山田の畔譲るらん 水戸 春寒み去年の白雪村消てくろのみはつか見ゆる慈小田井藤丸 行徳 苗代にかけたる水のさし引は春の棚田のたなおろしかも宇照 舘山 おもしろく声を懸樋の水啼て春の深田をかへす賤の男真菅 実入よく秋は寝よとて賤の男がおこしてまはる春の荒小田大酒 うちへす春の田ごとへくろ〴〵と井の字のやうにかける泥畔 賤の男も春の山田にすきあればかうさく花にまた憐なし方住 ひさかたの雲に追れてゆく雁の跡からかへす春の蓑小田同田直也 みなかみにまかす物とて賤の男がひをきりかくる小田の苗代田主 赤駒のはらばふ隅田も都鳥流れこむまでせける河水真顔 春海 春の海の浦によるてふ桜鯛波をやおのが花と見せつる光俊朝臣 裏微 信濃片倉 ある時は松の干潟に汐みちて一しほはねる春のいろくづ 今朝春のたつの都も日の方へ清めの塩やはこぶなるらん菴守 吉原 あたゝかうなりし日影のうらゝかに帆と帆と霞む春の海原素顔 たつ波の花に酔たる舟足のゆた〳〵とゆく春の海面近道 遠くより霧の網を春の海おはれて磯へよる桜鯛家橘 花の名あるあかめに磯菜つます凡波に露もたつの色姫蛍声音 青畳しくかと見れど廻るべき波さへたゝぬ春の海づら。 冨津 青梅 父草の野べばかりかはわかめかる青海原ももゆるいさり火・ 春の海や君にたとへし船の前に波も高くはたゝせざりけり 目妙加花一 干潟まで霞たつ日は海松にわかめもついて見ゆる夕凪音人 帆柱を寝かして舟もすわりけり畳を敷る春の海原 笠間 目妙 汐時におろせる網の桜鯛ともにみちくる春の海原 仙台 宝永教寝の朝のかぢ枕露の海を起出て見ん 京 若がへる春は露の帽子にて額の波もつゝむ海づら 桑折 大海をふさぎはせねど沖の方へ棚心にぞ露引ける三世芳風 駿府 一蜑小舟魚は見えねどひく網に霞ぞかゝる春の海面 春日影松にさしくる海原は今みつ汐の色増りけり網彦 浦風に霞のきぬのやぶれしを小舟あひゆく春の海原杜路 ひく網のめざし鰯をめざしりど目ざしてむるゝ春の海原於穴門 桃太郎が鬼が嶋山霞むにはおともいたさぬ春の浦波若竹 ごほ〳〵と波を霞の屏風にて立しきりたる春の海づら あらはれずかくれず霞む海原はかたよる波もなくてのどけし鹿鈴舟 西東けしき整ふ浦ずまひなげてぞ見ゆる春の海面松友 櫓拍子と共に立たる舟唄の霞にし声も春の海原 柳葉に似たる鰯や桜鯛二しきをあびく春の海面於宛門 釣舟も空へ霞てもる声の雲雀に似たる海士がさへづり真葛 笹澪標も松の木みをも春風に波の花さく大江戸の海真顔 初午詣 二月のけふははじめのうま車稲荷の山の道ぞさかゆく 逍遥院殿 裏微加花三 一初午の宵祭から賑へば巳の日もやはりうけ持の神 裏微加花二 折すかす杉の下道中〳〵に人ごみとなる稲荷坂かな 仁恵高改 真枝 千住 隠名志 冨津 背に染るほどのねがひを稲荷坂けふ初牛につけてのぼ札り 徳綱 桑折 稲荷山杉のもとつ葉力にてあれがさかやとのぼる初午 金文 裏徴 諸人の折こそかぎせ杉楊枝いなり参りの片木の赤飯 白川 千住 もとつ東に手こそとゞかね神杉のみきをいたゞくけふの初午。 巳守 高崎 稲荷山まゐるしるしの杉原のかみの守や札もうけゝり 稲荷山語るけふの初午にのぼりは多し未下れど万象 高崎 初午の稲荷強にぬり立て京女こそ人化すなれ 初午は日の出稲荷も残さじと千社参りの飛ぶ鳥森冬住 飛やうな千社給の人足もはやしにとまる烏森かな三孝 稲荷山絶る人のおし合て牛車さへよくる初午山角 化さねど常は通らぬ畑中に稲荷薬の道をつけゝり琴葉 甲斐夏目 稲荷山のぼれば下る諸人のまつれる午もこの月ばかり七彦 油揚豆腐このしろ初午ににつけぬ物を上るをかしさ寿 目妙加花一 初午の千社京は末社へも刷毛序とて札ぞはりゆく満成 青梅 杉の葉は誰もかざゝで稲荷山いかにまかへしさかきげんども綾繁 信濃仁熊 目妙 慈牧の駒にはあらで初午のはやしに乗て損ぶ子供等真村 童部は朝は朝は朝は朝は朝は朝をこえつゝまゐる初平正雁 花のなき枝とはそげし杉ながらかざせばこれもにほふ初午鳴音 化されたやうにも見えて猟人のけふは狐を拝む初午伊丸 犬山 墨染の茶屋へはじめてきさらぎや稲荷祭に化されてより大久早 仙台 初午にさゝぐる陰馬の駒とめて見よ油揚も山吹の色 駿河清水 ともし火のみつになる子も親に手をひかれてのぼる稲荷山かな 駿府 二月のけふ初午の物給これをやのりの道といふらん田鶴兼 一鷺の森烏森とて童部も争ひまゐるきさらぎの午下蔭 下毛佐野 枝は皆折尽しても稲荷山うけてぞもどる杉原の札 稲荷山みつの燈あきらかにまよひ子もなく暮る初午跡人 高崎 太鼓をもうてばひゞきてどろ〳〵と人のよりくる初午の森亀水 陸奥岩城田場坂 どろ〳〵と太鼓の音に打つれて人もどろ〳〵参る初午高喜 高喜 初午の太鼓の音もゆく人の足もどろ〳〵打まじりけり可計也 稲荷山かざせし杉の絵馬にまでみつの玉垣参るもろ人和樽 初午に参るをとめはあげづまの額裏もよき袖摺稲荷人 梅は薫り柳はみどり武蔵鐙いづれもかけて初午許 諸人のおしかへすなり稲荷道三つの草にも人のすぎ森満潮 稲荷山かゝる群集もこの神のほどこし置てふえし人種 おとらじと稲荷詣の京小袖競馬よりきそふ初午注連縄 初午の日はやゝ長く紅のてりそふ梅も三つのとも〳〵火真明 高畑 初午は田からも参れ漣の手に曲ればみゆる玉垣の梅津房 初午や杉ならずしてもとつ葉のなき老楽のかみ参せり貞俊 稲荷山赤き鳥居もめだつまで青かりし杉はもとつかめもなし春信 つかれては我もちと寝ん稲荷山杉の木の根を枕草紙に松盛 水戸 あわぬより蔵の間から鍵なりにまたけへ道をつくる初に木戸長記 稲荷山かざしの杉の打むれて候ふは青める墨染の里満足 初午に詣んとゝく起たればもう出てござる明がたの星 桑折 足をとかしらを土に稲荷山のぼればくだる春のもろ人 初午の神に話る子供等はかけて参りつはねて参りつ 仝 おしあひてぬかづく人のかしらさへ穂波をうてる稲荷山かな田基丸 茸狩の秋おもほえて稲荷山とる手にゝほふ杉のもとつ葉真顔 燕 帰る碓に違小雲路のつばらめこまかにこれやかける玉章西行上人 波那細 仙台 つばくらめ行違ひてぞ来りける身はゞもあはぬかりの羽衣 こぼもなよちぎれしみ簾のもつこうに土をはこべる宮の燕侘住 裏微加花三 つばくらめかけるつばきは糸車くるに別るゝ鳥や片糸寿 笠間 巣をくづすいたづら雀燕の尾の鋏にて舌なきられそ 裏微加花ニ 名古屋 一梓弓やもめ恋の飛来てもことをとりにはつかはざりけり有文 裏微 汐干する蜑が磯家の蒸のすにこそ子安貝はあるらめ百名 栗橋 旅衣きつゝ別にし軒端にはかきつばたにぞ似たる薬筒留 名古屋 梅散し宿ともいはず通ひ来て口にすをひく軒の葵有文 宇都宮 梅散て実を結びたた裏口にすやもつならん軒の蒸真鶴 青柳の風に綾おるしだり枝ををさぬきをしてくゞる燕蔭広 花の親となるてふ雨は葵の巣つくる土もこねかへしけり満成 広がりて帰りし柚の跡を又ひとつ所につばめ来にけり真風 夏目 結びおきし去年の契はかた糸のかるの戸をもるやもめ燕七彦 釜上廿九 仙台 鶯のおかに飛せし花ほこり又うつざかにはこぶ葵御代長 笄は羅にやれどもつばくらの口紅粉さすが女なりけり千代丸 桑折 家刀自の柳の腰に見ほれてや塗籠迄も通ふ黄金元 戸塚 風切羽するどき太刀のつばくらめふたきやの家にすをつくりけり 墨衣きれど燕は似せ売僧尊ほどは経もしらじな和布刈 目妙加花二 信濃保高 賤のやが軒にたてたる糸柳くゞる燕を投ひとや見ん 目妙加花一 山形 門ばくらの蔵をたてたる軒端には火ぶせの札もはりてありけり やき物の下ごしらへに巣を似せて家の瀬戸にもつくる莢雛雄 子をうくす巣作るとてや河内ようつかねる土をはこぶ燕井英雄 桜咲春毎にくる燕は糸子を花とおふし立らん 鶯のやどれる梅は数しきてたるきのはなにとまる薬 目妙 渡り来し旅のはなしか今日も来て軒の燕の長物語 里〳〵の向長のなせる業やすくくはへて土をはこぶ燕は ひのもとの留守をかねてや土をもて巣を蔵にせし軒の葵 一涅槃会の頃は悪も墨染の羽袖並ぶる山寺の新愛雄 門雀のまはし肩にて恋はくるみほどなる土もまこぶか真枝 巣くはせてたべと祈るか長谷寺に日ごと燕の百度参りは武光 青柳の糸に足をやからみけん梢はなれぬ軒の燕直道 黒繻子の帯の色なる燕うちとけ顔に猫をざらせり 芋畑の土をまこびてあのやうに子やそだてけん軒の葵余慶 市川 燕の今渡りぬと羽風にて音づれけりな軒の風頭陶松 甲斐身延 大に軒をえらみて巣を作る土御門へせかよふ熊香成 一 父上三十 いにたは親に不孝な燕も子を持てしる人の家の恩福耳 家毎にめでたがらるゝ燕はまからはこびて時つくおり 姫路 子を思ふ道ひと筋に蒸土もて軒につみつくりけり波々伎 玉とのみ見る石の名の燕は土くれをもて巣も作るなり道時 年ごとに軒の古巣を尋来る燕はえんといふ声もあり歌種 一仮住居ながら燕の土をもて竃のごとく巣を作るなり米也 下総船堀 杉の葉を立し池屋の軒かりてすつくりかゝる春の蘂歌宿 厘毛の塵をあつめて燕の巣に工たるほそき觜沖風 あらかねの土を草にして久かたのあまた子をなすつばくらめ哉 春雨の軒の糸水縫ゆきてさりのとまりに並ぶ薬荅志 あらかねの土をはこびて巣作るはつばくらといふ名にしおひてか糸女 木更津 また立るやうな柳の糸の中にもやう織こむつばくらめかな比名文 秋まではしびれきらしてをらばやと声をさがしてはこぶ燕弦道 燕や浪の鼓のしらべほど千鳥をかけて飛べる羽がへし袖人 土をもてうちつくるよりいろ〳〵と身を子に砕く軒の葵柳馬 佐原 蕘の身軽になりて飛ゆくは新に巣をくふ故とこそしれ 花を捨帰る雁とは心まで入替りたる燕しほらし都楽記 早き事物にあたしで稲妻の鍵の手町へまがる葵膝元 一春風に羽がひの片帆あげかねて門なみくゞる市の蒸[ 秋までは軒に葵のかり世帯土釜に似たる巣を作りつゝ寿 おのが来て鳥なき嶋へ堀端をゆけといざなふかくれの恋は田主 あら打越来つら打越来つゝ我日の本にたてる藝長人 とひ竹の雨にもたまる花の香をすくひにきたる軒の燕真門 酒造る糀室ほど土をもてすをつくりたる軒の葵 下毛果雨 燕のきたる社には中段かのぞくと見ゆる軒の古巣も勝麻呂 青梅 万歳の帰る古巣につばくらめ家の柱をかぞへつゝ舞ふ 信濃鹿教湯 春雨やすに巻おろすゑ水をすかしてとまる軒の燕鹿住 野に遊ぶ糸をや足にからむらんひくゝ亀かふ春の煎凹 子実をいれる為とてつばくらめ蔵造る土や持るこぶらん 国になき花やまはゆきつばくらめくらき柳の蔭はひめする真顔 帰雁 春ごとにうはの空なる心もて物忘れせず帰るかりがね国信卿 裏微加花三 一まる〳〵の空ゆく碓をいたざるか雲の乗物風ぞよすなる 去年よりも居馴し小田を立かぬる鴈引立てゆく霞かな福養 裏微加花二 伊予の湯のけふり兼て右左八つ九つにわかる雁がね百歌 廻文の類か故郷へ帰る雁のふみは跡さき同じやうなり すれ〳〵にいつしか麦のふしだてばゐにくしとてや帰る雁がね金厚 春ごとに直路をいそぐ雁の竿まげて今年は帰らずもがな直道 仙台 頬はねば花のもとにも死なでゆく此きさらぎのもち手の雁 仝 青畳しきつの浦の春の空海のおもてをかへる雁がね真艶 冨津 遠目にはやんまと見えてとんぼうの姿の国を立てゆく雁千代丸 桑折 春雨におのれ〳〵がぬれまじと重りあふて帰る雁がね歌文 裏微 ゆく碓になごりは月のよもすがらみなみおくりの風や立けん真樽 紫の色や摺らん萩に来て茎にかへる雁の羽袖は真虎 父上三十二 雪にしんし白雲消て雁のゆく空は何国迄も麦畑の色満汐 帰る雁かへらぬ雁の枯枝は烟となりてあとや追らん広丸 市川 誰がよみしみぞも雲の封じ目のはなれて一羽かへる雁がね 笠間 玉章も雨にぬれてや封じめのはなれて一羽帰るかりがね 帰りてもひとつとこよへ寄あふをかた糸鳥と誰かいふらん 跡先に飛ぶ二つ文字すくな文字こしへゆくとはよめし雁がね跡人 梓弓さるは越路へ帰る雁北をさし矢に友をゐてゆく。 ゆく雁の反古のやうにも見ゆる哉ふみ破りたつ小田の薄氷 燕が来て父まつと鳴しより花をもよそに。かへる雁がね うまし物麦くふ畑を立花の常世にかへる春のかりがね真枝 笄を誰にもらふて楊さゝきの花にもあはず雁かへるらん琴葉 貴妃桜見もせて帰りゆく雁の笄は何のしるしなるらん江戸振 咲初に花を見かへりゆくさまをよんでも見たき雁の玉章花守 八重霞空にふたする妙くもりにむれつゝかへる春のかりがね真名井 仙台 ふるさとはまだ遠江灘こえてなんばともなくゆく雁の舟真艶 桑折 桜戸のあかぬにほひに見かへらぬ雁や故郷のぢやうにひかれて 野田 藪入の頃は熱へ洗濯にゆくにやあらん衣かりがね 下毛小曽戸 山の端を帰れる雁の大文字を書けす花は胡粉墨かも太良 目妙加花一 郡内 舟ならで花の波間を越てゆく雁がねとめよ青柳の髪元 佐原 秋津洲へ秋きて年を重ねつゝはるかの空を春帰る蒔諸国 笠間 別れにもさすがにつらは乱さねど鴈の泪のはなにかゝれり 目妙 野渡 草素をくひ尽しつゝ天のはらこえてぞ遠く帰る雁がね茂登也 父上三十三 山形 羽根もぬれみだるゝ声を春雨のふるさとさして帰る雁がね。井千積 仝 春霞どちらがさきに立となく一つ二つとかへる雁がねね径千古 水餅の水かへる頃中空に雁もそなへやくづ〳〵行らん水垣 とゞめても聞つけざうし雁がねは社日の酒を呑ずやゆくらん満成 名古屋 去年きたるつらのまゝにてさく花のみしまひもせず帰る雁 名残をしとかへす〳〵も烏がねのみはよまでも告て行らし赤 赤羽 仙台 ゆく雁の影を波間に折手本文字とも見ゆる白紙の磯の磯 総坂志岡 追るゝと心得やせん尊にほうといはれて帰るかりがね 武蔵川越 名残をしと手形よりまづゆく雁の数やよむらん文字の関守安都近家 甲斐勝沼 花鳥の別れもまたで帰る雁の空になく音を山も笑ふかしける 仝藤田 けふまではかかねの宿と片小田の代を蛙にかへる雁がね清海 山形 塊と捨るこがねかさく花のむしろ田立て帰るかりがね并瑞生 春ごとになごりをしまのなみ立て秋まつ嶋を帰る雁がね仝弓彦 桜花さかぬさきからさきこして星にいのるか北へゆく雁下蔭 とりそろへ帰すをなどかをらむべき又もかりくる秋を思へば高根 散しれず都をかりのわかれ霜八十八や九十ではなし奥成 千住 夕風に走りの舟のみちのくは遠くて千賀の浦かへる雁 仝 雁がねも春は越路のかたへさしてさたなしにゆく苧生の濁から 真白なる東の山の花の頃北をきにして帰るかめがね 雁もはやふれば蒸くるまゐの釣瓶のやうにすれ違ひ行水魚 姫路 人もかくあかたき物ぞ雁がねは立ゆく跡に花をさかせし。 仝 花は根にかへらず火をもともさぬにねぬるとこよといそぐ雁がね 父上三十四 高崎 去年の秋戸に鎖さして来りけん鍵になりつく帰るかりがね 信濃牧布施 源氏よみて雲井の雁の行雲を北の方とや仰ぎ見るらん 駒人 かりの世の眠りさめよと伝ふらん我をおこして帰る雁がねば 一岩城三箱 緑 一岩城三箱 まるべきときはしれぬつらをしてそうでよまする雁がほの文字 ゆく雁の跡追ふ雲は南よりみなみよりとて送るなるべし 高浜 花散らば道やたえんと雁がねはおのが雪国いそぐながらん 五百丸 花衣ほころびぬらし新墾のつくばをさして尋かへるひ 小町 六つ七つ組て帰れる鴈は皆父田母田のつながりにして うつとりと花に眠れる雁がねのたちは忘れて帰りおくれそ 寒へ来し枝をうらめてゆく雁の波の花をば見捨ざるらん波輔 汐干狩桜持よりまつ先にかり〳〵と鳴て帰るかりがね正義 高畑 ●夢見学夢に見んとやさほ順の夜な〳〵かへす衣かりがね 種まけばやがていねとやさとりけん小田も濁さずかへる雁がね 文字をなす鳥は霞に消るかと見れば曲りて残る雁だれ隅成 染尽す霞の衣ある雨のふるて通しに帰るかりがね 扇とも見る富士がねを行義よくこしへさしてぞ帰る雁がね 浅からぬ縁とて女夫かりがねは並てかへる枕の山を 佐原 もて来る去年の返事を大空に書つらねつゝ帰る雁がね” 同 相模上依智 尾張なるあはでの杜に咲にほふ桜も雁のみのこしてゆく 行徳 帰り風吹たつとはや矢のごとし跡のも先の雁を的にて宇照 田場坂 直な文字ゆがみ文字にもかへるなり中〳〵空によめぬむ章 印西 下総の手賀田の雁の帰りにはをみよの関に文字と見ゆらん 春を捨て花の手前も立かぬる霞がく札に帰る雁がね御代成 秋までは常世にやだれ花も見ずゆく烏がねを送る春風真顔 待花 桜花今いくかありてさかなんと枝ものいはゞとはまし物を実国卿 裏微加花三 桜花うまき色香のあればとていつまで枝にふくみ持らん水枝 待ほどは猶遠山の桜花をごろ庭にうつし植しが 裏微江花二 吉原 花をまつ心が餘りつめかけてかたき莟やひらきかぬらん 待酒を先開けよとつどへども花はすこしも催さぬかなし 一関 告ばやな耳我の草のきくらげに花まつほどの心づくしを 小野宮 朝な〳〵かたるゝ花のいひわけに幾度かゝる峯の白雲橘良 花さけばしらする筈と山賤の髭つらをまつ妹はをかしや磯名 仙台 志賀の浦の蟹よおそくははさみきれ昔ながらの山桜花 裏微 御代長 待慳に心を雨のおとづれてひらけとたゝく賤が桜戸 仝 隅田川花待顔に幾度かよりてはかへる岸の白波 山里の使は来ずも花まてば心の駒のゆかぬ日はなし 藤田 我宿は吉野の山し近ければまづには花の遠く覚ゆる とくさけと花にこがれてまつ人の世話やくやうにもえよ緋桜 山形 潮来 我のみと思へば雲も花や待よしのゝ山に立つ居つして。 吉野山をまつ頃はあちらでも立に立たる峯の白雲春 さく花を見あり〳〵よりもさかぬ間をまつは心の草臥る物 みかきて花をもらひにやる時も返事おそしとまづ侍れけり仝 待酒に日ごと酸つゝくらせども花はすこしも乱れざりけり春好 一 指打てまつゝ長しとこちらより日を延べてやる花の稀人道時 梓弓春は寝る間もいめたてゝとみにさけよと花をそまて琴葉 這ふ葛のいや遠長くまつ内が花じやといふか三吉野の雲 松本 花さくと見る夢の内さぬ着せて風をいとへる妻ぞやさしき 宜 舘林 待わびて花を夢見るうたゝ寝に風を気づかふ妻ぞやさしき 直藻 やよ桜花になるみの紅絞りくゝりし糸をはやくとけかし 桑折 売方 目妙 こゝの園かしこの山の花待てさかぬに散るは心なりけり 松本新四 山の端は春に笑へと。まだ花の口も開かでまつぞもどかし。 野渡 茂登也 さけば又雲か望かとからしがはれけれと思へばかつ内が花河船 吉野路にまてば甘露の日和よく花は風味を持て咲なり満汐 音信の音だにきかず足出かき花の使はまだこぬか事仝 昼寝して夢をいくつも結びけり花まつけふは日も長しとて御代住 をからぬ山の桜をうつし植て待遠になりし花盛かな奥成 待わびて一つれから見る花に後は長孝の春の庭守 千金の春のながめに一刻もはやくさかせて見たき初花端成 三箱 遠山に残れる雪もまつ身にははなの毛なる桜とぞ見し 緑 今にくるかあす来るかとて糸桜使をかせにとりてぞまつ汐時 今日も又あんに違ひて普賢像はなまんぢうの重も開かず虎丸 三崎 妹背山谷ふところのふくらみてはらめる花やいつ咲出ん 新庄 待わびてつくため息やおのづから花に仇する風となるらん真柴 待侘て顕の趣向を夢見学結ばれもせぬ花の短冊杉守 仝 其外の髪撫つけて侍乳山花の鏡にいつむかふ鶯注連繩 父上三十七 伊戸 花もかしすかしすかして一枝を折るには我も骨を折けり真国 上総天神山 立馴し霞のきぬは三吉野の身ごもる花の産春わがらる事 佐原 待ぬるに時を忘れて咲ざるは老木の花の性のぬけしか 富津 老て花の色香をまつも分別の外かと人に抱やさゝれん徳網 丁田 口紅はさせどもいまだは笑はぬはおもはせぶりのひざくらの花 苅谷沢 あすさくとしらせのみの封じ目を待かね開く世のたのしさ 中へに栽揃へたる庭さくら咲もともにと花や見合す真顔 折花 一枝も見せまぼしさに山桜山を残して手折つるかな長嘯 波那細櫻廼愛 手折よ〳〵枝のたわむはみな人の心や花の上にあるらむ水枝 裏微加花三 残りたる花はいかにと折とりしきのふの枝の痛み尋ん千万多 折かざす桜に夜はかくれずて類の波の花と見ゆらん桐住 花を折る人を叱れば折さして散すもをかし顔にもみぢ葉 姫路 岡樹 霰微加花二 松本新田 一山桜たゞ一枝に軽からぬ盗人の名は負てもどおり 長丸 よしや名は花盗人とけがすともけがすな高き枝を折とて 清水 言訳もならねば顔を赤くして花折る咎は酒におはせつ於て 高崎 花守の源左衛門は痩馬に一駄ばかりも折てくれけり高山松人 独して花を折とるせはしきに手伝ふものはよくにざりける春則 佐渡相川 一枝をゆるす桜に人ふえてをりあしくとや思ふ山守 裏微 仙台 引とめて折てはなせばはら〳〵と空にしられぬ花の雪ふる真根人 川越しと思へば岸の花の波肩車して枝を手折れり百名 名古屋 おとゝし桃ばかりか花寺の目玉も花にそへてもらひつ真澄 父上三十八 松代 てやしかの花守の家桜家を残して手折こそすれ 心なく手折るを花のにくしともおもふか風のつらあてに散る篩 箇守にまげてもらふて折る時に猶むり〳〵と枝ぞ音する下蔭 帰るべき心せられて見し花を折はいさゝか取かへすなり真楫 来る度に花を折とは心なしきの毒といふ事もしらずや土麻呂 関 家づとに莟の枝を折来れば花よりさきに親の畳顔 感なる花ぬすまれて花守も共に泪の枝折ぞする旧家 田場坂 をる花に手はとゞけどもうつろひて顔に思案のとだきかねけり 大枝をかつぎてゆたに帰らばやとても宿のたつ花の白波汐時 物いこ好花と心に由頭してをりゆく宛は重き一枝皆丸 梓弓おしてもらひし花の枝とものをとこに持せつるかな千賀江 見ぬ人は桜のあたよみぬ人の為とて人の花を手折れば真葛 折とりし長さもしらず逃る身を一寸もやらぬと叱る花守磯名 手折るとも一枝ゆるせ桜花足より親の目にまけたし かゝる時うづとやいはん乗鞍もをりて四方手にくゝる桜を雪村 大切に蕃する賤は心なくて盗人は皆花の風流士田主 心あるも折てや行ん山桜花見車のよし通らずは真門 桜蔭風も光りて手折にはくらくならざる夕暮の花松俊 上の威をかる山守やとがめんとあやぶみてをる乕の尾楼明 目妙加花一 大枝をおろして持る罪科も軽くはあらじ花の盗人 花守が礫うちしと思ふほど手折る枝より落る夕露 吹みちて枝のたわむは赤魂のはやさきへいて花や折らん 目妙 くおをしむし国のあるじも酒の友一升買ん一枝きれかし樽人 一枝を折争へば花びらの赤かたにしもつくぞうれしき真雄 花守にみやげの枝を乞置てをる所をぞ先へ定むる福長 山形 守人のゆるす詞にとり付て手折るもをしき花の枝ぶり 千賀澄 仝 恥かしや手折りし我を心なしと笑ふやうなる花の一枝肉面 花守の目をかすめたる一枝はふむこゝちせり乕の尾桜道足 手折りしは木こりの業かたゞし又さるにても憎き花の一枝 花守の見つけて我を咎むるときけば枝をる音の山彦 花守に所望の詞こゞかねどまげてたもれも手折る一枝為持 手折こりをられぬ水の流にもがざして花の影の一枝水月 山桜をるをとがめば何気なく雲をつかむといふてのがれん難雄 氏家 無心体に一枝折し桜花みなせにおふて帰る夕暮 川越 蜑の子をすかして折しぜの枝我もかつぎて帰る磯山 仝 折こればあまる力に我罪をえだにかたるゝ花の白波 庭守の内を見こみてさく花の枝もをりよくもらふをさや黒金 花寺の隙なく廻る盃の間におさへて一枝手折ん常道 伊戸 山桜手折れど誰もみやり路の花より外にしる人もなし 駿府 身を顔になして手折ればうしろから裾ふきまくる図の内に 守り居てをらせぬ花といふ人の心の角を折るよしもがな 市川 散さしと折とる花の一枝は手の内にこゝろ有明桜 仝 今一枝手折給へと抱上るをりを烏帽子の児桜花種丸 吉原 や仕つけて来ん逃るとて帰る道〳〵花をこぼさば 王ながら。枝えらみすれば白雲ののきてをらせる花の本豊 折る袖に散くむ花を払はずて家に帰れば錦とや見ん蘂 高崎 みな人のうらやむ声の山桜山ほど折て帰る山道 秀樹 三箱 散ばとて竹のはしごををろ〳〵とふまへてをりし乕の尾桜 〃暖丸 たのまれて梢の花を折からの雨は我身にかゝるをかしさ・ 仝 花に愛て一枚はをれどけふり草又つぎかへてながめこそすれば 田場坂 心なき我こそ花に恥にけれ折とる袖にすがる蝶〳〵 土呂 坂崎 なかりせばのどけからまし家桜きてはうるさく折る花見客 あの枝とをしへて肩にのせし子もやゝをゝかねて深山路の花卜齋 心なく折んとすれば春風に花ものいはでかぶりふるなり師朝 あかざりし袖の中とて入にけり手折る桜の花の一ひゝら歌数 八 花の枝折でかざせる法師等をびんなき事と人のみるらん桐住 いざ桜宴を楯に吉野山手ごとに折て花軍せん甲 花守が目もとゞかじと折花におのれもそや爪立つらん方男浅方 心ある人に見せたき心から心なきまで図を手折れり糸女 煩深く折る時ぬけし爪かとも見ればこぼれし桜図なり 水戸 をさなどち花を手折て争ひの中庭にたつ姥桜かな 佐原 松彦 立よりて折んとすれば糸桜風まき上て枝にとゞかず・ 笠間 盗人の立田の花の梢をば縄かけて打つ枝の高さに 一枝はとり得たれども又こゝにをらばとがめん花の山守膝元 世に情花を見に出て人の来ぬ内にけるにもをられざりけり 桑折 園守に腰膝折てさもらへどきもらひ得ねばたゞながめをる 野田 山守のをらぬ間に折る花は我留守まもる人へ家土産 かざしては白髪にまがふ一枝の花も二重となりし日の影打人 苅谷沢 物いはで垣の外よりをる花に内から声の高き枝かな かくれあらじ花盗人にもいふても老盗人のおなじ排頭は真顔 惜花 散を我をしみ持たる後までも折目はつけじ桜うすやう信実朝臣 波那細 青梅 思ふさまに我をまたせてさく花のまてといふにはなどいそぐらん 裏微加花三 ちる花を惜みて物に入たくも池の袋はたのみがひなし百 ちる花と 裏微加花二 仙台 と都へ告る文よりも封じたき物は風にぞ有ける 首さくと考へ 笠間 いをやすく寝くれざりけり花ゆゑに霞の帯もとかぬ此頃駒主 夕立とふりしく花の潦ぬれぬ物から飛〳〵にゆく音高 笠着せず蓑もかさずて雨に散る花を情むを呑と思はん開声音 桃桜とぢめもきれてはら〳〵と花のこぼるゝ山をしき哉雛望 高畑 一ひらも惜む心のちひさゝを打ひらきたるも花よ笑ふな 裏徴 花守がくれぬ物とはしりながら猶うらめしき有明桜 言原 ちる花につきて行んと思ふより心ひとつを砕く頃かなし千万多 山桜ちるを惜みてなけば又袖につぼみをもつ泪かな 三吉野の山の深さと花を惜む心の奥をいざ競べ見ん菴守 木更津 比名文 天も花を惜む心の酸泣にこぼせる事ぞいとゞ侘しき 佐原 散したる花をまとめてもとのやうに又吹かへす風ぞうれしき楫取 青梅 しれがたき花の心やかくをしむ人の心をしらでちれるは 自妙加花一 桑折 雪と散る花を惜めばあたゝかな風のふくにも胸を煎せり雛袖 上押上 古河 ロゾ 難歌免 雨風に心おかれし花ちればをしむ心のおき所なし 小林 ひゞきには手鞠桜の散やせん心してつけ山寺の鐘 栗橋 花曇空気遣ふか雨蛙桜が枝をかゝへてぞなく 名古屋 ふる事にいとゞ桜の陰に居て身にしみるほど花を思へり 白河 蔵主 手折るなと制の詞も出ぬめりをしめる花の雪の夕暮 山形 宿成 花散すにくさは胸にこりずまのうらまぬ人はよもあらしぞや 仝 闘鬼雄 風ふかばいかゞはせんと御舟山花の波間に心たゆたふ 一関 白雲も花を惜むか風ふけば吉野の山にさわぎ立けり 仝 春風の吹散すかと心までさわぎ流れる花の白雲 関守 塩竈の桜を乞へば花守は顔にけふりを立て見えけり玉丸 一輪も惜みて爪のさきほどもひともす花をくれぬ庭守大房 万人のをしめどきかぬ花の身はたゞ一面に急地わるくちる満潮 高浜 桜木に駒の手綱は剃すれど花のちるをばつなぎとめたし真道 手をかざすやうにをしめど一つづゝちるや千手の観音の笠井山越 昼のみか夜のけしきも夜八分ちるのはいとふ花の酒盛照峯 をしむのにをしげなしとやちる花を風は袂へ吹入てげり花妻 もしふらば色やあせんと花故に気のあせらるゝ事もよの空 桑折 この神酒は花ををしみの一徳利ちらさでたべよ風の神達 一ねにかへる花を惜めば錦をもしとねにしける三輪の山里建兼 うしろめた花の。山より帰り道むかふ風には目をふさげども 春月 空は又雨気になれや春の夜の月も露の袖笠を着て入道前大政太臣 同四十三 波那細 長き通る月のをとめは春山の露男のかくし妻かも奥成 裏微加花三 仙台 明り先立たる影はおぼろ夜の月のをとめか桂男か 笠間 裏微加花二 何事を深くつゝみて春の夜の霞は月も洩さゞるらん 桑名 霞たつ空は紫式部にて見しやそれともわかぬ月影 嵐に富士の笠雲吹とられ輪ばかり残る春の夜の月山陽 上毛厩橋 三吉野の花の波間にうす〳〵ときえぬ氷や朧夜の月 裏微 立出る霞と共に春の夜は月の都も遠ざかりゆく音高 みちのくのえぞはふかずも橘が香のこさにやわりにる春のよの月明彦 藤田 だましつゝ光りを花の葉ふらん薄くらく見ゆる春のよの月 一馬がりてぬけざる物のたぐひ哉はれても霞む春の夜の月真葛 小野宮 月の舟腕の空にかゝり居て露の網をおろす海原金厚 青梅 朧にぞ目も霞みぬる秋よりは春の月夜や老となすらん 目妙花一 仙台 目妙 〽春の夜の月の兎は草餅もつくかつかぬにうすくらき空 真艶 信濃木曽福島 一筆すゝぐ水は濁りてうすくもるくまとも見えつ春のよの月 穂垂 筆ならで硯箱根の山の端に笠をめしたる春のよの月 犬山 暮るまで花見し跡の山の端におとせしやうな月の昼 仙台 月丸 花に酔て舞やまふらん霞より月も一さしさす朧影 仝 春の夜の植をとこはうつ宝のほのあかりより生れもやせん 潮来 花の為父母ながら雨となるくもあり顔の月のをとめ子 一関 者 つむぢ風みちる花笠を巻上て雨気つく夜の月に着するか。 仝 市川 春の夜の月のくらげは空の瀬の霞の網の内にこそ見れ 月影のはきとみえぬはゆく雁の文字やにじみて霞むなるらん南松人 } ゆく雁の文字も朧に見えわかで霞ににらむ春のよの月鈴成 脇柏のさやかに見えぬ春のよの月は朧に研たらずして 入相の鐘の音そひて春露底にしづめる春のよの月 三箱 仝 同断同壱 春の夜をうつとりと寝て酔醒の水に心のうつる月影 真柴たく賤が軒端にさす影はぼやりと赤き春のよの月 田場坂 高畑 花故に曇るといはゞいひわけのすみなん月の霞む春の夜 霞みてはにほへる影の流油よし野紙をもさるの夜の月 三吉野の山に雨気をもちの夜は月も桜の花笠をきつ 三吉野の花の波間をおしわけて棹さしのぼる三日月の舟花園亭 弓張の月も鞍馬にまたがめて山の桜にいるかとぞ見る岸 花曇ほの〴〵くらき月の舟霞の浦にかゝりてぞ見ゆ出音好 うたがひのはれぬ習ひの春の夜は霞やのぼる月やしづめる寿 箒木のありとは見えていづれにもほき〳〵とせぬ春のよの月 村雲の袖払ひつゝ桜木の下から出たる春の月影多丸 折とりし花盗人はゆるしてもすまぬ顔なる春のよのも 朧夜の月の光も細面にさすが霞の隙はあまり真顔 上巳 桜木も枝さしかはす桃なれば空さへけふは酒やもひせり俊頼朝臣 波那細 栗橋 巴にはめぐりそこねてゆく水に巳の字をなせる桃の盃 裏微加花三 三千年の桃の盃は年より酒もちとづゝ善習はゞや真葛 富津 けし雛ものせまくほしき盃を舟に流して遊ぶけふ哉千代丸 こけ落て雛の盃こはしたる咎ははりこの犬公なりけり } 顔にくきよぼろが抱る鶴の羽根の辛なやいかにきくらん道時 裏微加花二 岩角も顕よみ顔にさし出てしばしさへぎる桃の盃種成 花鳥里 物いはぬ桃をいけたるかたへには物いひさうな雛をかざれり。真明 雛かざる女心はおしなべてみな一対の物にぞありける真門 裏微 桑名 水上へいかゞかへさん顕一是よんでさゝれし桃の盃 水の上に顕の趣向をめぐらする人の心の花の盃空寐 落椿水にもせくの今日はたゞ流れて桃のさぐきのごと鳴し音 夏目 草餅のも青によし奈良雛の袖の錦は九重にし 天の川に流れて下る盃と見るや弥生の三日の夜の月礒名 仙台 声立て流るゝ水に物いはぬ桃の盃浮めてしがなく 大田原 いにしへの雛の姿をそのまゝにかみのみの日と祭るなるらん 花瓶の花の雪解の白水は雛の下ゆく山川の酒早人 いにしへのかたしろなりと紙雛は錦の中に立て恥ざる楽住 目妙加花一 日野在下野 三ツ組を一度に流すやり水に巴にめぐる桃の盃 うなゐ子が花を散して棚の上にもゝ敷うつす内裏雛かれ楽成 桃の花の唐錦をもかざり太刀めでたき物と見ゆる雛棚 高崎 曲水もこれまでなりと水鉢にうかしてすます桃の盃 下総関宿 うつくしや十二一重のつまほどに立重ねたる雛の菱餅玉網 目妙 仁熊 雛の酒に酸はでも花の唇はうつくしう見ゆる園の姫桃 吉原 昼の底を捨れば御溝水けふや急道を魚も呑らん素顔 栗橋 顕よりもまづ詩を作れ唐人の跡を継穂の桃の盃筒留 桑名 下の句もまだつゞらぬに河上はうかみて流すもゝの盃音澄 } 萩 水の上に浮べど三十字一文字のうかまねばのむ桃の盃赤山越 水戸 盃をあく流せばおもしろき顕の趣向もうかむ節句の日 名古屋 物いはで笑ふさまなる雛棚に枕も笑ふてものいはぬ花 京 曲水の流にうかむ盃を星かと見つる雲の上人 身延 江の嶋の貝の屏風の汐干舟いくそう並ぶけふの雛棚 雛祭るけふは弥生のみかの原汲かはす酒は泉川かも鈴成 福岡 いろ〳〵と吾妻からげや紅裏の鹿子まだらの貝や拾はん木田能輔 花活の桜の辺に犬ありこ狂ふかと見る雛棚の上鞆絵 下戸までが物いはずしてすきものとうけるもをかし桃の盃臼木 今井 奉るむし蛤の湯気よりぞ露て高き雛の玉屋人文字 摘も得ぬ若輩は初雛の袴の緋に恥る上紐出止丸 手料理もやはり昔の延喜式胡葱をもる雛の配膳英賀 水戸 桃の酒菜花の夢のさめ際は盃流す水ぞこのはる水戸飯則 笠間 曲水にうかべざりける盃に蝋は流るゝ雛のともし火 心をば洗ふ巳の日の御祓していと底清き川の前雛望 富津 盃の流れとまりに三日月の酔たるごとく影のちらつく 苅谷沢 さく桃の空酸ながら夕やけの雲の足さへよろめきて行 盃も石にさはれよ手にをはのさはりて頭のとゞこほる間は真顔 杜若 紫にあふ水なれや杜若庖の色さへたがはざるらん躬恒 波那細 くやしさは何にたとへん杜若こぎいかし池の舟の白波空寐 裏微加花二 一紀の心ゑと水との中にさへ通ひへだつる杜若あり百名 } 花瓶にうしてながむる杜若すりよる人の袖なさはりそ春信 裏微 杜若見に来る客の鳥類どだますか水にうつる花ひら音人 油売袖や摺けんかきつばた水にそまらぬ浅沢の沼千万多 清水 鴛鴦のつがひならびの池水のめぐりに咲る杜水かな 上毛連取 心ありといはかきつばたをし鳥の中のよきをば隔ざりけり むつましき色をや見えん杜若若花を大事と添葉ありけり満潮 杜若咲さかる頃は衣ならですり違ふ人の多き八橋真名冨 はひかゝるぬなはに逃て岸にさく若家のかほよ花花 みやびをのまねをするとて杜若衣をさへもそこねたりけり水枝 紫の中にも白きかきつばた白鷺の餌をあさるかと見ゆ 業平も指を折句のかきつばた開く手がらの東の類 毛衣に摺つけられて杜若うつる野沢の鶴は紫凹 目妙加花 仙台 ひらく時守りつめれば目をぬきてみぬまに咲る杜若かな 下総佐倉 見る人もみだりによせず活花の竹をかこひの杜若かな 目妙 仙台 寺子等が莟の筆のかきつばた折てさがれる時も八橋 甲斐田島 妹がほす衣の色のかきつばたひるまながらも露の玉なす。龍樹 紫の位も高きかふり葉に風をり見ゆる杜若かな長閑 市川 僧正が根をほり池の杜若ころもきぬれば紫にさく 花も春の別れをしみてゆく道のへだてに咲る杜若かや蔭広 蛙等も影案するか杜と水花のかふり東水にかたふけて於古足 花鳥里 鞠垣の外の流れの杜若この紫も折はゆるさじ真明 をし鳥も羽袖にするや杜若池水染るむつましき色景河 一 池水に縮緬波を春風の服紗もやうと見る杜と水寿 籾ひてゝ論もやせんと水中をしきりにさける杜若かな 色〳〵の五色の色の外に又別の色なる杜若かなし 鹿散湯 しきに咲ながれに生る杜若影はさかさにうつりてぞ見ゆ鹿道 ふたつまでたしなむ花は燕子花にほへる妹が袖の懸香真顔 暮春 限ありて雨にさはらぬ春なればちる花笠を着てやゆくらん定頼卿 皮那細 入相の鐘音づれて花さそふ風もや春の帰る道づれ千賀江 事霞と花をやしなふかぞいろの色衰へて春ぞ老にき臭門 轟微加花三 桃の花ものをもいはず赤くなり力を入れて春やこむらん奥成 吉原 高酢山やすらひ花とうつ鼓春を長地になすよしもがな高原素顔 青梅 ゆく春を力一はいせむるとてつい肌ぬきぬ夏も来なくに 裏微加花二 松本新田、 色〳〵の花にめでつゝ目印もせぬ間に春の三月経にけり十一長丸 ほころぶる霞の袖とくれてゆく春の日数はつぎてほしけれ升成 裏徴 尊といふ名つけしは暮てゆく春をとゞむる開にやある人 ゆく春を呼べばうたへて山彦の声ばかりのみもどる侘しさ橋住 つがの木のいや生月も櫛の歯にかゝらぬほどに日は残りけりけり 山形 ゆく春の別れをしみてむせかへるせきばかりこそこまらざりけれ音人 関 春の道霞の海をねながれにねにかへる花もつれてゆくらし 田場坂 鶯はひとく〳〵と何いそぐひとにとなりて春の暮るを円 去年は又春のくれはと祝ひてし春のくれはとけふ歎くかな 春もはや帰りしたくにかまけてはいとゞ乱れる青柳の髪磯名 } 散る花に川はよどめどゆく春をさそふ水あにて下潜めん真締 目妙加花一 ゆく春の足手まとひにさゝ壁のいとかくけふは別れをしめり種成 目妙 とゞむるに心つよくも梓弓いづこを的に春のいぬらん河船 桑名 一花の香は今も袂に残れどもとめておかれぬ春の別路由刈 鶯の声もたえてや法花経の二十五日とくれてゆく春 仙台 三千則 甲斐西野 千金の花もをしまずさほ姫の衣まで脱てくれてゆく春 四鳥 佐保姫ば花の荷物をからがねにまづ送りしか目に見えずゆく 藤田 けふ春のくらればあすはくゆるとも只なつかしといふばかりなり ふり向て一目は見せよゆく春のかほ〳〵となくは馬なりけり見辻 三箱 ゆくものはかく有んとて早川に指さすひまも春は流れつ いとま吉ば猶や名残を惜まんといつもみそかに春のゆくん歌種 坂崎 とむる気ははなに見せても山吹はこにならぬとて春や行らん 梓弓いる野の花菜矢たけ延て春もひとひとなり滴かな於鬼門 越後村止 火をともす梅なからせば山里にはるくるゝとも思はざらまし 益筆 ア田津 手を出して春のくゝを待かねし夏は行義のわろきもの 大田原 そこやこゝ花母すみたる罪あれば追かくる春に逃てゆく春 甲府 皺がれし声ふり立て鶯のなくほどをしき春の暮かな真繁 さほ姫のゆくはとがめぬ關の戸の手形に残れ花の吹雪は家住 姫路 幾筋も立し霞の数へれば一筋にをしき春の暮がた たのしみし春さへをしき別れ酒庵の七種つまり肴に小河 春もはや末の十日にもみぢ葉のめざしもしらぬ響にくれ行真弓 最上川春は流れていな舟の此月もはや二三日ばかり真顔 夏部 首夏 春暮しきのふの酒のさめがしらけふは卯月になりにける哉暁月房 波那細 夏衣軽く仕立は花散て力のぬけし人の為には御代成 桑折 春過て夏さく藤の振袖を松にほしたる天のかぐ山金文 裏微加花三 夏衣綿ぬきし日の疲すがた茅しつまぬもくひてかへらず真締 松の魚うる声すれば海山も同し常磐の色に青めり真門 春夏を分雷の神山もいつか青葉になり渡りけり物湊 何となく水に心のさそはれて萍生る夏は来にけり百名 桑折 春と夏ふた名乗なる花角力卯花山に逢桜川下見 きのふ春の別れに袖をしぼりたる衣ほしけり天の香久山王雛袖 裏微加花二 一重衣きかばめてげり朝戸出にふくもあらたな夏の初風真名井 をしげなく花見に袖もきかへけりふくのみつある夏のきぬれは素顔 春夏の場なりとて曙に躍ひくやうに見ゆる横雲高持 ゆく春の名残も爰に入心地さば〳〵とせし今朝の湯打万万 裏微 仙台 花の香は何所へゆきしと綿ぬきし今朝は袂をすかしてぞか 身に馴し小袖もけふは夏のきて他人がましくいとひぬるかれ真枝 ぬぎかへて軽き袂へ蚊の一つはやとりつきの夏となふにき鈴成 拵より羽を落せるは毛衣をきかへたるらし夏のきつゝき瀑布 神祭る太鼓を卯月朔日や今朝より夏になる春のして多満決 上伏知 重かめし衣ぬぎかへてけふ卯月つい立居さへ軽くなにけり 染かねし松もみどりの夏は来ぬけふより蝉も初時雨せん真広 片蔭はまだうす寒し日向こそ衣泣すてふ夏は来ぬらめ磯名 花の香を惜て衣きかへねば今朝まづ汗の流れそめけり そなははや取がへとてたんほゝの綿もぬけ出る夏のともつき そ朝見れば霞のきぬも山の端にのこるや夏の汗ぬぐひほど。 熱田 水戸 花の頃吉野の旅に疵つるか取がへして帯ののびしは道布流 桑折 春と夏の境に錦もなかりけり中よく白き垣の卯花松彦 花折て追はれし夢のさめがしらけふは汗にもなるはじめかな 牡丹の花につゝみてこればかりのこすきのふの春の白露千賀江 目妙如花一 花もをしはた風もほしけふよりは桜要の扇もたばや豊歳 目妙 五十一日春老て夏のかしらね白髪一筋見ゆるしつけ苧百名 夏くればもはやあつしと蝉になる虫は衣を懸ず出にけり真葛 花染の袖のなごりも此ほどはちと薄くなる夏の衣手有文 雨風の花に頭痛のねもきれて夏のかしらは軽き衣手 きのふよりやう〳〵夏は太刀の尻さやに青葉のしげる山の端 佐原 ゆく春の忘れがたみか夏山の鶯色に若葉したるは 花鳥の噂のみしてかまはねは今朝はけしきをかふる夏山・ 三崎 花笠に雨をいとひし春くれてぬれぬ衣も今日ぞ深しける 全 卯花の雪に一足にみかけて春は跡なく行過にけり 駿府 けふ給ふ恩の高さの肩をばいたゞき白き富士にたとへん 最上 ゆく春と夏のくるまとなど色ふ月日は同じ輪をめぐれども闘鬼雄 けふよりぞ夏にともつき立にける薄着の幼軒の蚊柱衣紋 きのふまで八重さく花のころもがへけふは一重になるみ染着門麟馬 もろ人の格着る日はしなやかに夏のきにいる姿なるらし登忠久 名にしおふ伊達の薄着の男山若葉にかをる谷のふと露益筆 花衣けふきかへねば猶更に露て夏の汗やしむらん松金 きのふまで春の別れを惜みしもはやきのかまる夏の曙喜常 花染の袖とけ朝より来る夏を摺迷ひけん風薫るなめ親旧升人 あかりとる窓の障子も春過て青簾なす柳涼しや都々久 かたきとは花にいひしが給ふよりはみなみよりなる風ぞ待るゝ睦実 宇都宮 けふといへは夏のばじめと業平や遠き吾妻に春は下りて たれこめて春のゆくへもしらぬ間に足音もせず殿はきにけり おそ桜散飛ぶやうに我身さへ軽くなりけり衣がへして薄墨 つきてゆく春やたくねへおくの山たえず黄金の花の咲るは千端文 大田原 けふよりは夏といふ字のはじめとてまづかの声を聞初にけり 田場坂 夏へ越せどまだ三日月の舟心さめでふらつく風の藤波高喜 袷着て見てもしけれる葉桜にむしつくほどの夏はきにけり広丸 御仏の生れますべき月来ぬとはやめをほごす木の石葉 散し花をみるな情む母夏の気にうつれと青き簾けたり百名 世はやすしふけば飛ぶ身も涼しさの風詩顔の夏はきにけり同 磯山に夏きたるらし蜑人もあらめのやうな衣をほせるは同 春ならば卯月のけふを元日と蕨も幽桑になりやしなりし同 流れゆく春はかへらぬ藤波も水に馴たる夏はこえ来つ真顔 遅桜 あはれそふことをあまたにやらじとや春におくれて独さくらん利貞朝臣 同五十三 絨那細 桜花ごとしは狂ふ槻弓のはるにはづれてやと咲にけり空寐 れ桜春におくれていそぎけん汗のやうなる花の上の露磯名 青梅 ゆく春におくれてひとりさく花をさびしからうと訪ぬ日ぞき綾繁 裏微加花三 三箱 山こえて春は行しが逢桜足なし雲と見ゆる一村暖丸 裏微加花二 見つけたる目ははやけれど遠山の桜はおそき花盛りかな春則 逢桜春にはよほどおくれても追付花は夏にあらじな音高 木更津 青葉にて荒き風をもふせぎけり可愛がらるゝ花の乙子は春信 春雨におくれてひとりさく花は親のなき子ぞ風なぶりそ 失ひし物の出たるこゝちしてふたゝびめづる金桜かな真葛 裏微 牧布施 引渡す雲を花とも岩橋の中たえて見る金桜か南駒人 夏までも日裏のかたにこもめくのおくれ長谷なる谷間の花園丸 卯花の雪の中よりゆきかひの人呼かへず山桜かな真風 めづらしと初花よりも深められて逢いが株になる桜かな凹 物事にたゞ行なりの山里は夏のくれども桜はなさく柿人 川越 風々流士も二度の思ひをし長鳥あはれとや見ん逢桜花 風ふけばこれもをしといふみ車のかもの青葉の山桜花琴葉 夏のきて咲る桜の花衣などて一重は見えぬなるらん水枝 田場坂 このそをたしかに春や帰りけんしるしばかりに花の残るは 一関 只一木春を残せし遅桜かこふて見んと茂る青葉か 花の後青葉の隙にたのまれしやとひ雲かと見るれ桜典 山道をのぼり尽して見おろせば麓に足のおそ桜さく沖風 夏山の木の間をぬふてうつくしき花のとぢめのかば桜かな道足 青案じて薄くらがりの桜花猶化物と人や驚く目積 玉手箱開くなゆめと契りつることを守るかおそや此花石樹 ゆく春に立あれどやこれ桜のこんの雪を枝にあざむく 飛鳥のあするの花におくれてもまけずに咲るこれ桜かな 桑折 仝 山里は牛のあゆみの達桜はなを通して夏までも見つ 時を得て開くや谷のこれ桜太公望とよぶもむべなりひかる 目妙加花二 みな人のながめ〳〵て隙をいく駒のあゆみも一重桜かなし多満伎 目妙加花一 苅谷沢 ゆく春におくれはせじといとげども老木の桜遅くさくらん 茂木 これぬ内はとかく心にかゝりけり法にはさまりてさく生桜栗阿彌 甲府 夏山におそく桜の児末かな人も愛たき花の三つ四つ 目妙 栗橋 遅桜盛りは夏へ入王や都は加茂のけい馬飛ふ頃 仁熊 ゆる〳〵と咲て木曽路の遅桜花の盛りも夏へかけ橋 真村 高畑 ゆく春に捨られてさく児桜しげれる山にわけや尋ん 八壺丸 名古屋 夏ながらおそき桜の白雲はまだうたがひの深き山陰有 佐奈 達桜露の袖につゝみもの春の土産やおき忘れはん 一者好 桑名 山の気も青葉にかはるはせ桜春のうらみやとりかへすらん・ 平樹 春夏へまたぐ普賢の乗物か桜のはなの盛り長きは 山形 逢桜春におくれて咲つるは足よわげなるみどり子の山・ 松年 ゆく春のつれにはぐれし蓮桜卯月の花にさそはれてさく 赤羽 日野在下野 見て暮す春すくなしとよみし人に見よとて咲か遅桜花月或 うらゝかな恋の涙を一二艘のり出くれたる帆立桜か山陽 雪空とみねにふたらび起出ぬこや雲足のおそ桜図寿 吉原 おそしとて出おくれやする桜花青葉の中に姿かくすは貞雄 清水 卯花と咲争ひしれ桜くんで落たる雪の色かな元 ゆく春に見捨られたる遅桜夏きに入て愛せられけり 逢桜おくれ見せじと生駒山しんがり顔に咲るなるべし音人 陸奥郡山 春の日のひまゆく駒にくらま山のりおくれたる望桜花 夏山の山姥桜咲にけり金時さゝげ今や生ふらん下蔭 たしなきは青葉に匂ふ成花春と夏との終初物注連縄 一関 夏山にあかぬながめやまだ春の跡しめてさく花の桜戸 姫路 猟師のみ通ふ深谷のがけ道に犬桜とて夏来てぞさく大黒塀 仝 朝な夕な庭に箒はあてながらちり残りたるこれ桜かな行名 仝旭丸改 山々の笑ひしまひし跡に又笑ひ顔する金桜かなり 花鳥里 駿河なる冨士の裾野に出くれつゝ咲る桜も時しらぬかや真明 さく花のゐまねして夏山にまぎれて残る春もをかしや豆人 谷底に残りて咲る花の色は何ほど深きものにや有らん春則 谷川へのぞく桜はおくれかととへばこたへの濁る山彦英賀 青葉してそよぐなつもの河淀に花のかもつく夏の山陰 一年を春と夏とにまたがりて咲やくらまの山桜園八問 ゆく春におくれて夏に引つゞく牛のあゆみのこれ桜かな 足もとはよほどおくれし児桜春をしたふて咲しほいしさ雛子 雲雪のそのうたがひもまだすこし残りて遅ぐさく桜花真具 春風を猶おそれてやおそ桜色も青葉の木がく札にさく真顔 若竹 人の子のやしなはれたるこゝちして隣の庭に出る若竹松永貞徳 波那賀 朝かげに露をのせてもよろめきて竹馬にだにならぬ若竹助 たかんなのふときを細くこきたれてふる五月雨や竹になしけん 袴まで脱て捨つゝ若竹の風に狂ふは酔になるらん 田場坂 青雲をつきぬくばかりよくのびてふらぬ雨ふる若竹の露。 裏微加花三 親さくる中垣ならでやはらかにぬる夜あめけり露の荒竹 裏微如花ニ かしこくも世に此君とたゝうなの立あがりたる図の若竹 千住 水かさます五月の雨の晴間よりかはの落たる背戸の若竹 此君と呼ぶ生さきの顕れて着物は人にくれる若竹跡人 裏徴 仙台 東末なる露は星源どきらめきてかはたれながらのびる若竹 三箱 おしておく石の下より若竹のまげても世には出たき物かは 春見てし花の後にもめぐまるゝ雨を親としことし生の竹篩 生さきにけふもひとふし出来にけりこより葉結ぶ風の若竹松優 袴着てそだてられたるよろこびをすぐにのべたる図の若竹 駿府 抱籠になるべきものよおとなしう生さきこもる窓の若竹 木更津 この影も七尺去てふみめぶしなりとのびし窓の若竹 松盛 露霜にまける気でなし草でなしいたづらさうな竹の生立 生立は角と見えたることし升ことひは駄屋の窓よりもはむ。 目妙加花一 名古屋 一地震ふらばよなほしといひてたのまなんよ直く生し庭のた水竹 青梅の熱する垣にすい〳〵とつの出るやうな庭の若水竹真名井 唐顕に痩て寒しといはるれば衣をな脱そ垣のと水 尺八にまだせぬ内もならうかとふしにお指をあつる若竹長梅草 文学ぶ窓の若竹おのづから道にみむかず真直にぞ出る由安 約竿とよしやなるとも若竹にあみする蜘のなど心なき鴨立 横笛になる若竹のはやしには枝にねとりもさがり葉もあり 目妙 丁田 又好む梅にはあらでそろ〳〵と学の窓をのぞく若竹基丸 仙台 おく露は物着星とも見えながら一重なりけり若竹のきぬ侭也 若竹のよれ葉のみより涼風をおのが枝にや封じおくらん百名 常府 ことしまひの竹に雀のころまりてちよといふことをいひ初めり 生さきもこもれる窓の今年竹まだ外見ずにたわみてぞをる方住 たかんなの時は孝とも聞えしを笛にふかうと思ふ若竹百馬 月の舟漕てふ棹に新竹や葉末に露の雫落すは 卯花の雪間に若き孟宗の竹の霞さへ葉々を養ふ群住 吉原 そずぬれし露も拭はぬ若竹はまだふところに薄紙やなき素顔 釣竿になるとは見えす笹盤の糸につゝらるゝ軒の若竹 若竹のふしこまやかにたゝめるは千年の色をこむるなるべし 藤田 あつき日をいとふなるべし塀際により葉も見ゆる庭の落 数かゝる雪のやうなる卯花にかならずけれてくれるなよ竹 仝 三崎 年〳〵に若葉出してなまめくは業平といふ竹にや有らん 木にもあらず草にもあらぬ若竹は名ものきみで千代や経ぬらん琴葉 簾にもなる物故かわた殿の内から外をのぞく若竹吉原貞雄 梓弓引立るほど親竹のやたげにや思ふ庭のと水竹 末つひに釣竿となる若竹は露のおもりにさゝがにの糸 最上 まだ曲る雪をばしらぬ若竹やすぐな穂末にのぼる朝落百名 富津 村雀ねぐらの宿と定むらん素直にそだつ女竹をば元丸 陸奥気仙沼 経をよむふしは見えねど鳥の巣の跡にもそだつ藪の若竹歌胤 戸塚 筒井づゝ井づゝのもとにことし生の業平井は延にけらしれ百枝 鶯の生れし薮の若竹や皮は笠ぬふたよりともなれ 佐原 若竹のまだ玉簾にならぬうちはやあみかくる笹蟹の糸数計 笹蟹もちと引まし中なれや柳みあびく風の御水竹道時 きのふけふ産着を脱てよく風にまだひよ〳〵の霞井の声家樽 千住 人とはぬ葉桜時は若竹の露すふ藪蚊青くなりけり 花元 常ニ平潟 おそろしや喰ふと思ふおのが身に引かへて見る竹の力は満 巣立せし軒の雀のそれよりも風に羽まけのしたる若竹弦道 沼田 五月子に軒の糸水きれなくにいつかより葉をほぐす水竹 三浦 若竹のやゝ葉を広く深ぎ言にさゝ〳〵とてぞ風のすゝむる 豆成 おしろいをつけしとふしは見えながらまだはぐろにもならぬ若竹 長門萩 親竹にそふもやさしき若竹のめづらにまる盃宗が孝実生 笠間 若竹のこと葉にふしをかくせるはまだはにきぬのかゝりて有らん・ ん榮成 甲府 しげりあひてどれが親と名も竹の継子算にもおくはしられず。 二作 市川 赤友と呼しも若き竹の葉の露もむせぬ薬なるらん いでこ〳〵隣の若い女竹のぞける垣に月ものぼりて真顔 待時鳥 なかずとて打もふされず時鳥声まつ人も寝がたかりけり雅俊朝臣 波那細 都より得し薬玉をかけさせて雲ゐはるかにまづ時鳥百名 吉原 時鳥ねふきめをして待をればまなぶたつれし明鳥なく素顔 文化五十九 松本新田 瀧の音松の嵐も馴ぬれとあうせぬ時の鳥に寝られず 裏微加花三 春の夜してまつ夜ふけゆく時鳥なりぬになかぬ泪こぼれき打人 一関 老ぬればきゝつと語る友も来ずといよ〳〵愚痴にまつ時鳥二羽 聞たりと友が起せどなかぬとは笑ふにしるき時鳥かな石樹 裏微加花二 まちにまつ耳はあかせず時鳥こよひも鼻をあかせつるかな水枝 月弓と共に出さかて待うけん押てかけたとなけ時鳥雛子 裏徴 松本新田 時鳥まてど一声をさひさき生れなりける きけばされきかねばはれぬ時鳥人の心も空になりけり 仙堂 かけたかとなく一声の時鳥我も心を砕きてぞまつ 時鳥まつ夜は雲の濁酒あまけつくもたのしかりけれ菊友 時鳥かけたとなくをまてばこてわれやすく寝る夜ともなかり 鶯のほうより枋の枕してまつや栗駒山ほとゝぎす 甲斐赤尾 一声をきかずはこゝをいつまでも動かざること山時鳥 時鳥網をさりてはまたねどもかけたかとては来ざるなるらん真葛 井野 虹の橋かゝる折にも時鳥なりば心は空にのぼらん 門の戸を以てまたず八時からさや寝たかとて行れや芝空寐 駿府直方改 立別れ春は行平の跡ふみてまつとしたかば来よ時鳥 待にのみ人をうらせてこつて鳥なける思案になどあたは 関 山一つこしてかなたは時鳥なくを心に下まちの宿江声音 などてかく人苦しむる時鳥またせて寝せず鳴て寝させず 呑居れば月かたふきぬ時鳥まつにかゝりて明る一樽於兎門 今宵こん〳〵とて今宵まてこんをよくまつ山時鳥空寐 新庄 今こんとひゞきし鐘を夏の夜の空だのめにもまつ時鳥真楽 待得ても聲軽口にあまさかるひなはなめげになく時鳥英雄 安房大河面 かけたかとまだ鳴ぬのは時鳥一夜もかけずまてばなるべし 萩 時鳥まつ人ぞとは手枕の昼の寝言に顕れにけり 時鳥まつよりも寝て宙を飛ぶ夢に空をや尋ありかん千賀江 目妙加花一 高畑 時鳥まつ一声も中空にねのあるりぞ出て広ごる小瓶 淋鳥まつもかひなやひぢ枕などこの里にもうねだにせぬ 時鳥なかぬをまてば夜もすがら我も声をはたてずなしつ音澄 時間の声の玉ある伊勢の海になのりそと謹ひがことはせし真綿 しのび音を聞れじ物と時鳥人の寝るのを待にや有らん琴水 かほどまでま門になかぬは短夜にね忘れやせし山時鳥沓丸 時鳥鳴てくや〳〵くや〳〵と待のくや〳〵夜たゞ苦にせり 高崎 秀樹 目妙 高畑 いつしかとまつ時鳥声はせでまたれぬ蚊のみほそ声になく 千枝 時鳥ねもせずまつに聞しとは宗祖の蚊屋のなかぬ初声 名勢屋 一時鳥声の初瀬を祈る身に利生を見せて一口はなけ真 下総下小堀 時鳥まつにまとへる我心蔦のやうにも細くなりけり。 山満 時鳥我はきゝつといちはやき人の初音ぞまづれたれける千葉 時鳥待くたびれて昼寝れば夢に又まつ夢をこそ見れ何船 宵の間にはなしはつきし鏡の声しゞまにまけてなけ時鳥於兎門 烏山 時鳥歳夜かまてどきかざるはおのれが唖かおれが聾か光 山形 時鳥待くたびれてのむ酒もいまだにきかぬ暁の声千嘉地 駿府 野も山も霞の棚はよべぎりにとりかたつけてまつ時鳥 時鳥弓張月のいるかたをまとゝしてゐて聞ははづさじ音成 わる念にかたき初音の時鳥げに間連のなきもむべなり満成 厩橋 尋てもあなきかまほし穴師山一声浅せやよ時鳥妙約 欠びして我はまてども時鳥まだ初聲の口明もせず皆丸 時鳥待あこがれてながめやれば門田に鷺も首長うせり真雲 時鳥またぬになくはまえなしとなれ。も初音をこらへてやをる鞆絵 弓張の月の空へは時鳥おぢてや今にまてど来鳴ず明方 一関 時鳥今なかんともなかじとも返事一声に聞せよ 大江戸の町にはいまだ時鳥まつちの山の手柄にもなけ 待得たる我身に猶もまてとてや近くはなかぬ山時鳥真風 ゆく雁にたのみしたが届いたとはやくこたへよやよ時鳥焼 二本松 時鳥まつにたよりは庭にあり卯花の月葉楼の響 待わびてうつゝ寝かねし時鳥茶には恨のなき夜也けり 小野宮 卯花の雪の巣立の時鳥とけてなかぬは音や氷りけん。 橘良 宇都宮 今日あすと卯月もやがて十日過なかば聞んとまつ時鳥 友乗 田沼 待わぶる人の心は白雲のうはの空にてなくほとゝぎす 芳保 大隅のながきの杜の時鳥松に来ぬのは我もかなしき角文字 夕闇にまつ時鳥出てこぬは山のあなたの月に鳴らし真顔 一 聞時鳥 一声をうたがひあへる人ごとに物いひとまる時鳥かなし正徹書記 波那細 しのひ音はきり〴〵すよりかすかなり待寐しかべにきく時専石樹 裏微加花三 吉原 めでたしと人のほむればかれも又薔薇の蔭になく時鳥 十一日 松本新田 紅にふり出てなく時専聞ゆるすましき声の色かな長丸 時鳥とぼ出もならぬ五月雨に来ては心を空へつれゆく千賀江 月弓になく時鳥鰹にも我海山の幸がへはせし英雄 時鳥宵のほどより待女郎めでたき夜なり今の一声百名 桑折 きく度にめづらしと思ふ時鳥いくら初音を持しなるらん 裏微加花二 田場坂 時鳥きく耳までもこの頃はねぬにのぼせて遠くなりけり 圓 時鳥聞ばとこよを出ながらならは枕のうちにこそあれ方住 時鳥やらじとしたふ耳さへが遠くなるにや幽にぞきく壽 駿府 村雨にこぼす初音をかけ出てばひとり勝にきく時鳥 人さきにとく聞つるは我ながらよき耳多武の山時鳥道足 姑におこされつればねふき夜も身にしみてきく時鳥哉文車 なけかしと思ふものより物思ふ時は思はずきく時鳥 三日月の舟におくれて雲の波をおよぐがごとくなく時鳥 青梅 時鳥から紅にふり出て声こそ散せ山の手向に 桑折 餅人 綾繁 裏微 時鳥なくを数へてをる指の寝もせぬ内に明る短夜 川越 織安 時鳥たま〳〵雲をもる声も地には落さず風がもてゆく 駿府 天の川水の増りて時鳥月の舟呼ぶ声かとぞきく 最上 一声は花ちる里の時鳥聞あてにける源氏香かな亀尾 時鳥鳴つる下を尋ねけりこゝらあたりに月や落しと汐時 山住を猿と笑へど時鳥まつ初聲はさるにても聞蛤 岩代の松になきゆく時鳥結びもとめて人魂の鳥和布刈 高崎 一声は半分夢の枕もとよるのとぎすとなく時鳥此道 初聲は月の鏡も村雲のふたをしてきく時鳥かな呑吉 ことさへぐ唐紅にふり出て人のみかどのたまの初なう真樽 桑折 時鳥なく夕暮は鞍馬山手綱のやうに音を引てゆく 青梅 時の助音の後も眠られず聞しやととふ友を待とて 市川 月の宮つくるたくみのてをの音か雲間にひゞくほと〳〵とぎす 片岡の山の遠近夜もすがらなく時鳥あはれ親なし 目妙加花二 桑折 あれといひて指さす空の時鳥声は手にとるやうに聞えつ歌文 目妙加花一 月影のさそらすもだら忍び音を雲のまなかに時鳥香集奥成 鳴て来ぬ時もあるべし時鳥耳のそこはく聞ためおかん千万多 駿府 時鳥待つかれつゝ寝し人の耳をもかりて聞んとそ思ふ 栗橋 目妙 一声をきかねば須磨の時鳥あはとまるかに見たばかりて清丸 卯花の雪ふき〇里にまひと声跡つけてなけ山時鳥 五月雨に水ます頃の時鳥聞て夕餉のはしも落せり三千枝 三箱 卯花に耳をさらしてしら〴〵とながたにきく初ほとゝぎす 田場坂 ぬば玉の黒髪山のあなたには寝みだれてなく時鳥かな 一声を聞て山路の時鳥重荷おろせしこゝちこそすれ 土呂 坂崎 夕月の舟のあなたの時鳥沖をこえたる声とこそきけ 旅立を祝ふてきけば沓手鳥声もめでたき馬のはなむけ。 かり枕声もあやめの長き根をこゝのふしどにきく時鳥長閑 時鳥きく一声は身にしみて出さじと耳に餅をあてかぶ田刈 蘇生するこゝちぞすなる夢の中に我を呼ぶやうにきく皆真根人 吉原 月の中の薬ときゝぬ時鳥老もしれずていくつ夏なく素顔 武蔵深谷 山里は人の便りも時鳥かねで聞れぬ今の初なり古槌 芳野 尊の古巣をこんや出そめしか賃よりもこくなく時高耕餘斎 梅の鳥に我目やさめぬらんかり寝の枕亭うにほへり花守 仝 仝 時にも素姓もなのりそのかりそめならぬ物とこそ 手枕になしつる枕に数とりて麁心もよくきく時鳥鎮丸 時鳥月のゐなかの者とてやとりつくろはず鳴る大声音人 はや夏の便り聞けり村雲の袖よりつたふ水くさら鳥菊成 最上 初音をばまつに来もせず時鳥卯月もすぎに鳴て聞せつ 一かさも二かさも高くなけと思ふ三笠の山にきく時鳥 家ほどの雲の波にて見えぬ月の舟をよぶかの時鳥かな闘鬼雄 夕暮の塒に遣ふ時鳥耳に一声とめよとやなく綴蓋 鼓嵩しらべの糸をかけたかとうつきになりて時鳥なく軽木 時はまきけば本社の柱立さりあげてなく今の一声隙梨 時鳥おとゝ恋しと呼ぶ声はあねはの松をさして聞えつ 時鳥きかう〳〵と世の人の気候につれてあまた鳴けり杜路 一声をきくの名になく時鳥おとゝ恋しのいろねやきも 大坂 時鳥あまたの声を聞ためば耳に餘りてこづれもやせん 花鳥里 時鳥空の海にてなく声をきけば心の底にしづめり真 時鳥手形は御目にかけたかときの開守や人をとがめん花葉亭 一声に人のほれぬる時鳥親に似たるはこればかりうや磯名 卯花の波は音なく声高き山時鳥人を寝かさず和賀丸 時鳥たゞ一声のたしなさにきかぬ顔して人に又きく登遊 時鳥きけばそのまゝ羽をのしもそへて山から送る初声鰹望 ねもやらでまつ夜短にき藩なきへかけたかとなく山時鳥春風 仝 二度聞て二度めづらしきその声を三度よどほしなけ時鳴 時鳥初音の類は判者でも耳馴しとの批判あらじな これはさておきへはやゆく時鳥よき汐風ぞ跡を聞たき。 公 秀樹 一声をことにめでばや時鳥ほめらねんとて又もなくかに茂視 かたちをば弓のやうにもそゝらしつゝ矢のごとくゆく時鳥かな真弓 熱田 一声も洩しはせじと三か月のくぼみにうける初時鳥芳香 雪と見る卯花垣に沓手鳥跡なく消し今の一声 新庄 真柴 古河 いづちゆく旅時鳥籠耳も立場にしばしこゞまりてなく 水戸 心なく思ふも言理か時鳥無骨な里で聞初しより唐指 初声に七十五日生のびておのが噂もきく時鳥并宇知波 宇知波 安房小町 短夜を茶にうかされてうれしくも山時鳥聞にけるかな音近 あかときに鳴てこさめのふる衣うちすて人もきく時鳥 茶折 玉だすきかけたとなくか時鳥たゞ入腹に声のまされる・ ○八問 時鳥寐耳に水といひながら聞流しにはならぬ一声 田沼 谷中にて思はず聞し時鳥富の落たるこゝちこそすれ 仝 一仝七七 一声に指はさせども筏士の棹を忘れてきく時鳥 舘林 まつ花はの眠気をさます辛子味噌空なきほどはきく時 新庄 詩わびて数ふる鐘も有つややつと聞たる初時鳥 市川 山里に生れしかひは松魚より今朝しやうじんにきく時専陶松 二四八と我には聞ゆほとゝぎす寝ぬ夜の数の心おぼえに真額 時鳥頻 かしかましこの里過よ時鳥都のうつけいかにまつらん山崎宗鑑 波那細 時鳥あまりうかれてなく〳〵となくすな又も来ん年の声水枝 時としましと孫ぬ山里もすめば都にまつこゝちする 裏微加花三 竪横に飛かふ頃は時鳥寝ても起ても聞ゆなり 時鳥老舌出してよく〳〵と夜々まつ我を笑ふ古聲 裏微加花二 時鳥おのが五月の節来るとせつくるしくも鳴とよむかな 桑折 なく声は手籠にもれて数取の田螺をつとにする時鳥 笠間 此ごろはこだまも答へあへぬまでなく音かさなる山時鳥 中空に跡のこだえし諸声は突あためたるほとゝぎすかも石樹 裏微 吉原 時鳥なかぬ日もなきこのごろは口よりも目や赤くなるらん 千住 時鳥てつへんかけてゆく跡を又ほとゝぎす追うけてなく安人 時鳥あまりなくとて呼にやる使も足を空にして飛ぶ桐住 熱田 秋まだき天の河原を時鳥はたへるやうに行かへもなく 目妙加花二 一五月雨の雲の袂にすがりてはうるさきほどになく時鳥 野田 寿美香 目妙加花一 常府 なかぬとて待明したる時鳥なけばなくにも寝られざりけり 冨津 時鳥雲の真袖をふり切て虚空に声をこぼしかけたり 一関 をちかへり声を小嶋の蜑の耳にたこのゐるほどきく時鳥。〽千万喜 千住 時鳥声をしきりに立るにぞゆきゝの人の足をとゞむる安人 月の夜にうかれ烏は口まねも出来ぬほどなく山時鳥和賀丸 目妙 仙台 此ごろは鳴草臥やほとゝぎす月にうかれて月に休らふ百歌 天の戸の明かゝる時ほとゝぎす声引立て頻にぞなく今根 やむ間なく声ふり立てなく時の鳥には八つの耳もほしん真席 高浜 一五月雨にぬれし朝もかわくらんひたきてなける山時鳥五百九 梅のゆふるほど空に時鳥すけなしといふ人はあら〴〵な 時鳥なく音こたふる山彦の口ふさげかし息やすめして満汐 吉原 か月闇いとくらければそこ爰に声かけあひてなく時鳥 震頽 甲斐田島 時鳥貯へおきし声の種ふりこぼしゆく五月雨の空稲 稲臣 声高く卯の一天にひゞけとや辰巳あがりになく時鳥 平人 富津 時鳥空には鳥の大将とゆふはた雲をなびかせてなく 千代丸 一関 時鳥さが聲日々に立花の香を軸枢にあえてのみけん、 聲音 時鳥しきりに声を立る夜は横にもならできくが嬉しき呑吉 沓代鳥あし中をはく賤の女の田草むく頃沢山になく物築 一つ来れば二つ来三月すこ鳥のきならの里に声しきる也 時鳥聞てかぞふる心地せりまだねひとつの時まをしの声 時なる聞てかぞふる心地せりまだねひとつの時まをしの声磯名 時鳥鳴つゝまはる水車よどのゝ上に声をこぼして 潮来 広洲 磯名 雛望 新庄 弓張の月のいるまではり上て矢声を出す山時鳥 ○真坂樹 真坂樹 丞折 時鳥八声の鶴と二幡対とこゑばかめぞ懸合になく 見詰 日の出てあからむ麦のほとゝぎす声枯るほど鳴渡るなり。 野田 真寿人 往かへり武蔵下総ふた国の橋もとゞろになく時鳥 夏草 くだら野の茅屋が下の姫百合はね所人にしられぬぞよき仲実朝臣 裏微加花三 喰たらぬ春野の草も若駒の腹なづるまで丈のびにけり佐倉美種 美種 はなち飼ふ駒のむねにもつかへなん余りなづめる夏の草だち 武蔵野にすむといふなる盗人のたけ〴〵しくもしげる夏草物築 裏微加花二 一関 夏の野のしげれる草をわけゆけば石こそたて札碑とは見えざる 笠関 かしこくも世を撫子の草枕草の戸さゝで民やすくぬる 裏徹 仁熊一 床夏に夜ごとおきゐし玉水の露はひるねにかゝりこそれ 仁熊 笠間 夏草は蚊のかくれ家と思ひしに思ひもよらぬ蚊遣とぞなる。 公任の霜も別れて朗詠のさく意も唐と大和撰子百馬 しげりたる野川は爰としるしして岡なん竹もかくす夏草松俊 春の野にもえ出て夏の日盛にまたもゆるかと思ふ紅百合槌丸 下もえし庭にしげりて卯花の雪を今ではうづむ夏草 笠間 大田原 人のみか草も入こむ武蔵野にやまと撫子下毛の花帯成 目炒加花二 熱田 細道のとりあふまでにこえ過てゆきゝにすれる夏のもゝ草 目妙加花一 夏草のしがき中にもたけ高し開が原なる角力取草千分 吉原 しがりあひてわかちも夏の深草や鶉の床も臥猪の床も 橘に昔ゆかしき軒近くさくや布目のかはら撰子鈴成 玉くしげはこべも夏は葉広にて野守が窓のふたになりけり古則 五月雨の色のせめくる用意にもならぬ野寺が門の浅草真樽 田場坂 大荒木の杜の下草下くされ茲となれどかる人もなし四番枡掛 目妙 目をつくをいとふてゆけば来る人につきあたるほどしげる夏めに春則 名古屋 種まきく折をしれて撫子の花の韮をも払ふ扇か真澄 桧扇に顔をかくして日盛りは寝ふたさうなる姫百合の花 夏草に生ひふさがれて我庭の案内をよその人にこひけり楫取 位山裾野は秋の百学を目下に夏の草ぞ延ける春友 烏山 粽祝ふ頃は一し深しがりあふ草につゝみし賤が一つ家光也 野守さへかるに隙なくしげれてはくさ〳〵したるおのが通路黒金 桑名 一篠塚に庭の夏草波立て百合さへ花の碇かつぎつ馬伎 川越 旅人の腰をかくれば夏草も横になりたる松の下蔭 逃水のたまりなるらん武蔵野に人を腰だけはめる夏草蔭広 本末もわかぬ荒野に弓杖つき片膝折て結ぶ夏草下蔭 厩橋 うつくしう咲し姿を風の手のこそぐりやする姫百合の花峯砂 朝皃の花に姿は生うつしされども露をしらぬ昼顔保養 茲にはけしてならじな文をよむ岩さへくらくしげる夏草 夕露に月人男夏草のむさくろしくも宿をかさばや干 道の辺の石の地蔵も此ごろはみかげをかくす夏草のたけ糸人 童部のたけもかくれぬ夏草と見たれば牛に乗て来にけり空寐 木更津 花の頃一夜やどりし木のもとにかる人なしとしがる夏草夏信 夏草の山としげめて牛の寐し跡をも洞の穴かとぞ見る花妻 真清水を尋る人の枝折にとまづ手に結ぶ野べの夏草糸道 車百合庭は祭かさるとりの花につゞきて躍花さく真顔 端午 進上水邉菖蒲千年五月五日大江爲武匡房卿 波那細 薬とも何ともしらで菖蒲ひくいたづらな子は無病也けり物菓 裏微加花三 やう〳〵とかざり粽を巻上て又巻おろす薬玉の糸真枝 我軒のつまに今日見る菖蒲草惚れる薬も降かゝるらん水枝 沼水によごれてもどる人よりも菖蒲はさきへ風呂に入けり和布刈 裏微加花二 み空より薬をくだす道ならん端午にかゝる天の橋立千万多 冨津 鄙人は軒ふく菖蒲花あやめいづれあやめと聞ぞわづらふ 木更津 三符七符十符の浦わにすむ蜑がこもあみぬらんけふの菖蒲湯春信 薬玉の糸の瀧津瀬流れ出てしらぬ池なす庭の五月雨千賀江 裏微 軒にふく菖蒲に糸をかけ添て薬の露をうくる笹蟹真葛 吉原 薬てふ菖蒲の枕して見つる夢にはあはせ加減あるべし 菖蒲草よどぎふく日も麦わらの虎をつくれる大森の里百名 あやめ酒ふるまはんとて淀野から友引て来る人もありけり磯名 松本新田 神の代の今日や菖蒲を鉢巻に丹後の国をうみ給ひし 宜 自妙加花一 市川 初幟ほめ立られて風の手に鐘馗も髪をかき撫つらん常道 木更津 子供から兵かざるけふに見よをゝしき嶋のやまと心を春信 古河 子福者の軒の小ぼたの子持筋富貴くる風に鯉ものめめり雪也 目妙 仙台 雲井には長力形の月も出てよるまでかざる星兜かな仆近道 年ことに薬の玉をもちひけんつよさうに見る武者人形哉山角 萩原 蓬莱の山口しるき千代の坂のぼり兜を祝ふをさな子 保守 菖蒲太刀軒に鳥毛も立花の昔をかざる兜人形 田井 盃に浮む菖蒲の根と共に病の根まで酒に刻めり注連縄 三保谷が兜人形のしころよりひけど根づよし今日の菖蒲は虎丸 姫路 薬草を尋に来ては草よりもながある方や薬なるらん 多古 幟絵も名高き人に仙人の長息をまづまねてかゝせん 村上 菖蒲ふく軒にひらめく長刀にたちより政の弓もかざれり 菖蒲酒のめばのむほど跡引て果はいつかと思ふ盃於兎門 薬ふるためしなるかと菖蒲草さすれば軒もいたみかくれつ白木 けふといへば五月五日の初幟布もたんごと染てたつらん河友 鬼の手を切たる綱の人形を伯母が見にくる初孫の節句松人 新庄 袖にせし糸よりかけて稲を玉にもぬけるけふの薬日来真坂樹 けふひとり酒にひたらん明日はよし六日の菖蒲用だらずも真顔 早苗 老ぬ間に早苗はとれば田唄にもことわりにこそふしなかりけれ契冲阿闍梨 波那細 早少女の小笠の紐のくれなゐに夕日をつなぐ田植せはしも豊 跡へより〳〵して翁姫がとるやみこしの数の若苗田主 裏微加花三 〽同唄うたふ息の長さもにほ鳥のかつしか早稲のさなへとる田子琴葉 渋茶煮て濃田にはこぶ渋姫三しぶいとはず千苗手伝ふ 裏微加花二 賤のめのすそわの田井にとる苗の短かきがよきほどにや有 木曽福島 若いどち早苗とるとて化粧田の泥をべたりと顔にぬりおふ穂垂 花の時鏡となりし桜田もさなへとる頃水さびゐにけり蛇住 一関 さをとめにさがながられん若苗をとる手にさはる鷺のしり 仙台 おくれじと早苗とるには五月雨の雫も笠の先へまはれり 真艶 裏微 桑名 早少女がさみだれ髪のねをそろへおくれを見せず植る小町田千枝母 せき入る水に皺よせ腰かゞめ早苗老ぬととりいそぐなり 賤の女のつくねし髪のそれなりに跡さがりしてうゝる若苗浜尾 田面にも今は五月と葛蔵草のかたのごとくに植つくる苗武光 はこび来る田船つなぎて賤の女もさをになりつゝ早苗とる也大房 水渋つく田子のもすそを結び上てたけの短き早苗とる 乳守女が手際のほどは聞しより御田は見事に植し若苗満峯 神風や伊勢の山田は菅笠の月のさはりをゆるす早少女空寐 おもしろや山田の賤が早苗唄父子も揃ふてうたふ諸声武光 水戸 餅苗といはねど心ねれあふて腰をのしつゝ植る早少女 うらやまし井手の田面に種かしてかたはらにとる水の玉苗 目妙加花ニ 若苗はなどてわやくにそだちけん植るをとめの手に餘るほど 駿府 目妙加花一 高畑 人さきへ植て手柄に菅原やふしみの早苗ふし見えぬ間に 背なの子のなくのに心いそがれてすかしながらにうくる若苗家樽 湖の岸田の子苗さゞ波の跡しさりして植出しぞする 山形 琴などは習はぬ里の賤の女も子苗ひ〳〵手はいともしほらし 昔唄かはらぬふしを早州女のあら田にうたふ御代ぞめでき をこめ子の笠もそろひし一文字ふみかきわけて早苗とる也志礼包 かゞみたつ隙こそなけれ賤の女が影をも水にとる早苗かれ中 一つ星見つくるまでも早苗とる長者の田の面賑はひにけり音高 早苗とる田ごとの笠は五月雨の見つけ日和に出し月かも花妻 目妙 千町田をうゝるをとめの笠の端は早苗に跡へおされてぞゆく千賀江 桑折 子蕨をうなひこめたる小山田にこぶし揃へて植るをかしさ 栗橋 菅笠は蓮葉めきて早苗とる小田の渇にしまぬをとめ子 片倉 山田から伊勢は伊勢流しつけだも行義乱さで配る玉苗河常 越後 民のとる早苗は雲の上人も命のもとのたばねなりけり 松蔭の小田のみどりの筒苗に千代吹こぼす風の白露百名 鹿の角春は落せしに山向にみつまたかけて早苗とるらん近道 一束に髪をたばねて早苗をばねをわけながら植る少女子三千則 仝 住吉の御田の神酒さそひ来て光を敬つ玉藤の色真根人 公 春まきて秋にかる田のたのしみのなかの早苗は今ぞとりぬる真葛 村鹿子ゆひのやとひのとり苗にくゝらぬ袖もしぼる朝露百名 夫婦づれとる手に土もつくばねのふたなみになりて植る若苗菊友 田場坂 最上川つねにしもいふ稲舟のさなへ舟とはこの月ばかり 老ぬ間といそぎてとりし若苗は賤が二重の腰を笑はん真風 神風の伊勢の山田にとる苗のねもつくよみのをしへ草なり 植つけて早苗に米の守り水かけて思れるに田のますらを 藁で根はゆはへながらもおのが田へ水引かけて早苗とるなり 心あらむ短冊なりの小町田に二行にすゑる賤が若苗大房 春〳〵と春にかへるや湊田にわかめの早苗植わたす日は順風 賎の女は歳日鏡も水髪を薫ずたばねて早苗をぞとる 五月雨のいそぐ手もとに負ふた子もねつけ〳〵と早苗とるらし竹女 更科の山田に並ぶ菅笠も月にきそひて早敷とる也真樽 中のよき嫁と姑のうゝる田の早雷はふしも見えぬなり 甲府 つげの櫛さすがにすきし土なれば跡揃ひもよき小田の若苗 まだ植ぬ苗を夕日にうつすかと峯の松葉の陰の梺田 高崎 早少女の唄にもうた小手子娘の孫田に早苗うゝる姿さま津守 雁がねの帰りしきの小山田にへの字になりてうゝる若苗網女 早苗とる賤が心のせはしさに水もせいてはいるゝ小山田平人 唄うたふ声の山田のかり苗とり琴柱のなめに並ぶ賤の女辰丸 荻 住吉の松の落葉をかく翁けふは御田のしろや掻らん 田沼 我影を水にうつして早少女も二人前ほどいそぐ若苗 佐倉 雇人にまじりて嫁の玉だすき身に引かけて早苗とる也美種 嫁が田にかゝる早苗も老ぬれば更級川に捨られにけり真顔 夏夜 宵ながら孫もせで明ぬ久かたの天の戸ざしや夏はせざらん長嘯子 波那細櫻迺愛 宵の鐘ひゞき残りて暁を告るかすぐに明る夏の夜松丸 波那細 の夜の夜の夜のはやくぬれば白露の下りあへ伝天の河や出来めん磯名 裏微加花三 夏の夜のよつは浪花のみつほどに時も短かき芦のふしの間 夢はまだ隣へだにもゆかぬ間に隣は門を明るみじか夜 裏微加花二 半ばまでのぼると見たる富士の夢さむれば東しらむ夏の夜於兎門 蚊にさゝれ煮にくはるゝせつなさの刹那のうちに明る夏の夜下蔭 誰かたへ使うたへよといふ隙に鶴がうたへる夏の夜踊瀬 足柄の若葉に富士も半分は見えず明ゆく短夜の夢 夏の夜は短羽折に明てゆくかしろ姿の横雲の帯 桑折 裏微 三箱 夏の夜はまだ宵ながら明鳥にくいと思ふほどに短かき 月影も夏はいそげど池の面のそこに御座札と夜は明てゆく 富津 子等がとる草のみかは月までもおはれて明る短夜の空 名古屋 宵に焚し蚊遣の灰とならぬるにしら〴〵しらむ短夜の空中雄 目妙加花二 ちとの間に夜も深養父がなりゆきをまだ宵ながら明るといふ 夏の夜は亥子にもならじと思ふ間にこけとぞ鳴る暁の鶴和布刈 目妙加花一 花うるしぬる人もなき夏の夜や暑さは室に入しやうにて真葛 目妙 仁熊 蚊遣火を身近くおきて夏の夜も長く寝ころぶ賤がさむしろ たへかぬるあつさに汗の玉の緒もきれるをつなぐ短夜の月 花もやうきえしつゞれをさす磯に蚊もみをさせる夏の夜菊友 仕事 夏の夜の短きゆゑか見る夢も丸にむすびしことのならぬは 仙台 折輔 公 葛城の神にも似たり夏の夜に夢の浮橋渡しかぬるは。 吉原 夕顔のつるうちめぐり飛蛍火あやふしとはいはぬ夏の夜素顔 桑名 夏の夜は恋せぬ我も床の海なき名おひけり汗のぬれ衣 短夜にみれば枕の草紙にも丑はにくしと書残しかり 飛違ふ蛍と共に夏の夜はしばしながめになれよとぞ思ふ同 若井の延の見ゆるにくらべてはひとふしにたらぬ短夜の空蔭広 最上 夕立の雲も砕けて短夜の月の氷ぞ西へ流るゝ闘鬼雄 門深み人にせかれて揚縁をあぐる間もなくいそぐ夏の夜正義 短夜に朝まで残るものふたつ皿の油に王明の月冬住 手枕もまだしびれぬに夏の夜はめぐりもはやき月の入かた波々伎 短かしと恨む心を貫と蚊にさゝれて明す夏の夜ぞき清樹 蚊の針はあれども蚊屋の綻びにめをとづる間もなの短夜鴨立 涼風にまい帆引かけて遊ぶ夜は月の御舟もうかむ打水満足 萌黄とも見ぬ古蚊屋も夏の夜の蛍舞ふ時かゞやきぬべし高野 時鳥まづもまたぬもひとつにてねぬにあけぬる夏の短夜桐住 ともし火のこし子頭はもたげてもおのが頭のおもき夏の夜千生 朶折 夏の夜のついうたら寝に獏を見し夢にかまりて蚊よくはれ 月金兵 かみなりに七つ頃から蚊屋釣て麦の夜長き線れぞつぐ真顔 夏 夏の夜は月も清水に涼むとや雲の衣をぬぎて入らむ俊恵法師 波那細 二本松鹿寐改 明るまの短かさも又涼しさも秋の日ほどの夏の夜の月 裏微加花三 百嶺 三浦 夏の日のあたりつよきも夕月の顔見合ひては和らぎにけり 豆成 宵の間に夏はいつしも八束脛七束脛と足はやき月 三河岡崎 明る夜の餘り短きいひわけにすむ月影を跡に残すか 〃書丸 桑名 葛水の茶碗の中へさす影にふたゝび月の種をぞ見る 由刈 水戸 涼しやと見る間にふけて寒うなれば月も入らん山のふところ 涼しげに夏を白地のゆかたがけ見られに出たる月のをとめ子 裏微加花二 仙台 薄雲の吹散る夏の月影は蚊遣をあふく団扇とぞ見る。 御代長 河越 しがりあふ青葉に影もまくらがの木隠れはやき殿のよの月有明庵 夏の夜の雪めづらしみ跡を猶いとふか月のあゆみ給はず柿人 桑折 水をもつ月にひとしき心ぶともとは海より出る物にて 金文 裏微 駿府 月も猶富士にはいゆきはゞかるか中空に居て明る夏の夜 和海 短夜に寝ほれ給ふか宵に出し山にそのまゝ有明の月都由紐 夏の夜のいそぐを先にやらんとや雲にかくれてゐたる月影磯名 名古屋 夏の夜は水もつ月のかなまめに湯とわく胸の汗を忘れつ田鶴丸 昼のごとあつさはなくて昼のごと照わたる月の影ぞ涼しき万泉 下総上小堀 風よりもひとへに涼し衣川波にちゞまる夏の夜の月田鶴音 青葉して引かぶりたるかぶと山前立物と見ゆる月影耕 夏の夜の月の氷もとかさじと峯をつくれる雲にかこふか明方 友呼て酒のみかはす夏の月夜半でも騒ぐ杜の小島成升 くるとあくとせはしき夏の月影は天の外にゐて入る間なかん春好 むかふから丸く出られし月影にぬぎたる肌を入る深しさ数升 二本松 見る内に老しか昼のあつさをもわすれてしまふ夏のよの月百嶺 駿府 昼のかりのあつさしれて汐の山さし出る月の影の涼しさ丹波石文 夕暮の弓張月の出る間に度はいつしかそやになりけり御風 暁を告る烏の中空にあほうらしくも短夜の月物菜 わかちなくあつさに願ふ夕立のたまり水にもやどる月類雛子 月の空払ひに風をもてゆくか下はあつさの増る夏の夜亀水 村雲の端居したるは涼しさに入るを忘れし月にやあるらん由刈 賤の男が門夕飯に影白くこぼるゝやうな夏の夕月平樹 床夏を照せる月の涼しくて雲の塵だにすゑぬ夕風音澄 相川 夕月の舟路や通に秋はまだ遠くて近く風の来たるは ハ夏海 桑折 時ならぬ霜をふらすは夏の夜の月のをとめのねたみなるべし ○金文 下毛黒羽 せはしなく水鶏のたゝく門の戸をあけてもさして出る月影 糸繁樹 雲の袖につゝみし梅の雨されてにほひ出たる夏のよの月六 諏方 量 短夜をいそぎて秋にせい〳〵と流るゝ月の影の涼しさ 寒きまで夏の月影住よしやふるかと思ふ霰松原 青梅 綾繁 涼しさは蝉の山に影うつる月の桂をゆするさゞ波 仙台 藤麻呂 しをれたるをすの葵はてる月のかげにもむかふ物とこそ見れ 夕立のそゝぎし蓮のかゞみ葉に光をそふる夏の夜の月於衆門 夏の夜の河辺涼しきさゝ蟹の網よりもるゝ月のいろくづ 市川 尾張ホテノ 涼風に雲のもやうも吹散し空は浅黄に月の水色 } 芳野 熱田から見れば桑名の流面に蛤なりの月の涼しさ ちり雲もよどまで涼し夏の夜の月の流るゝ水色の空春則 常陸平潟 薄雲の月にかゝりし夏の夜はすゞしの蚊屋を釣ごとくなめ安尚 てる影の霜にすべりて山の端を走るははやき夏のよの月津吉 明いそぐ足のとまりも夏の夜は月の氷の上すべりせん琴葉 てる庭を霜かと見れば汗までも消て涼しき夏の夜の月麟馬 須弥山の山の帯にはたらじかし短夜めぐれる夕月の雲柳馬 雲かゝる癖やよけんと鹿毛いそぐ四寸の鞭の短夜の空音人 図津 一飛違ふ星と茲の中空に動かで明る夏の月影 雲の峯夜はくづれて月の入る山の端なくや明残るらん百名 暑気払ふ月の薬を風の手に丸めたやうなにほひ涼しも古槌 粟倉 夏の月手にとる智恵と冷酒に顔をうつしてのむけ恵もあり倉人 汲いれし庭井の水も手桶より流せば出る月の涼しさ汐時 越後柿崎 涼しさに打こけて居るふところへさしこむ月のいたづら男渋成 湯となめしあつさ流せば行処に水もつ月の影やさすらん大房 糸瓜より夕顔棚の間から月の水とる影の涼しさ笠人 長〳〵と寝て夢さへも結ばれぬほどに短かし夏のよの月 にえるあつさ福花の菊の思ひして底よりすくふ水の月影雛子 寝忘れてけさぬほかげか夏のよの空にしらけて残る月頼 佐原 はやり雄は角砥石持腕競べ風のちまたに狂ふ夏月 夏の夜の月のみ舟の涼しきは秋をのせてや来たるなるらん 夏のよの月よ静にあゆめかし岩たる水の影はせくとも 前橋 曲水に盃めきて河の面涼しく浮む夏の月影 新庄 まだ秋のきぬたならねど打見ればてりにおとかも夏のよの月文成 桑名 秋そむる山をさらすか夏の夜の真白き月の影の涼しき千枝丸 けふ暮し菖蒲の影もうつるかな軒にさし入る夏のよの月 仝 夕暮をまてばあつさと出違ふて追かくるやうに明る月影真名井 浮雲の閨へも入らずことの川におゐて明す夏の夜の月真顔 蓮 蓮葉の舟と浮べる池の面に抑の顕とは蛙をぞきく都冲阿闍梨 波那細 夕立の荒くもたとく蓮葉をたのむ水鶏や凌わぶらし千賀江 濁たる方へと水やさそふしんかぶりをふれる池の蓮葉磯名 裏微加花三 濁札るは瀧に落して溜池のすめるを蓮にあくる朝露注連縄 裏微加花二 紅の花は騎射に手流鏑馬のほそりの笠と見ゆる蓮葉武光 蓮茎のわきをあげて御花や葉のまがれるを置筒にせん弘器 蓬葉に水はかくれてあらがひのなきといふ方や勝間田の池満成 印西 芋の葉にあらじこよみし蓮葉の花をば妹があゆむとぞ見る 冨津 広沢の池を広葉にふきがせて水なし月にさく蓮の花千代丸 茎に糸葉に白露の玉を持てみ寺の蓮ずゞとのびたり下蔭 高崎 河岸にあふとはいへど蓮葉の月もくらげと見ゆる池水 佐倉 蓮に乗る池の蛙は我類にあめつち動き出すと思はん 裏微 伝ふたらむかふへいけの蓮の葉はさながら庭の臼の飛石都由紐 花皿をこぼれし蓮か法花経の三昧橋へはこぶ花の香音人 きりとりてまだ黄はせぬ蓮の葉のまる池にもいひは有けり鳴音 丁 勝間田とうらおもてお等や不忍の池なしとまで蓮のしがれる百名 杜若生れ替りて池の面に顕著の真葎の蓮やさくらん 水あびて鷺の立たる朝風に池をはなれてにほふ蓬の香花岩岩 種をだにまかぬ池べの糸蓮をみにくる人のわくかとぞとふ奥成 よねかねのふるていゆをうけとりて隣ほどこす高き蓮葉赤山越 日盛りは湯とわきつべき池の面に蓮の浮出等の水はれれせり物菓 おし合し浮葉をわけてゆく舟に水も糸ひく蓮池の中橘良 蓮の糸のあやつりならん池の面にをどる鯉あり舞ふ婦にもあめ 蓮の葉の露は仏の涙かやこぼるゝ毎に魚もうかめり。千町 蓮池によるてふ人はみきふらひ花は君子の名に愛てさく 染草に露はたゝみて紅をひたせし池の蓮色こき豊 日妙加花一 殺生をさへぎるとてや池の面にふたをせしごとしげる蓮葉琴葉 蓮見酒興をつくしの国言葉浮出等につがば魚やのむらん真楫 二本松 蓮の根の穴より露を吸上て結ぶにはよき糸も有けり 釣たるゝ池に蓮の糸はあれど網にするぬは花の君子か 目妙 蓮の花の上には露の玉くしげ池にもふたとなる浮葉哉 苅谷沢 片倉 図やかに色ある物はさめるとて池の心に蓮の白糸 川常 さく蓮の花にも恥み除麗漉の渇にしみて狂ふ生酔 仙台 三崎 沼水の蛙も玉と交はるは顕の徳なり蓮葉の上 一芳風 清らかな花はうげだもうつさじと濁をつゝむ蓮のひらき葉 御佛の乗る物とてや瑠珞をこき散したる蓬の上の露英雄 糸針はあれども花の源ころびを縫す妻なしぐさか鬼蓮柿人 玉といはゝ玉といはせておく蓮の黒子は露の徳を愛せり百馬 浦賀 蓮葉はわつかの露も手のくほにうけてもらさぬたまか者なり 赤羽 庭深く嗜むやうで水際をよくもはなれし池の浅草 冨津 立かへるをしへもあらば魂はかりのりても見たき池の蓮繁 水更津 風に動く蓮の花のよろ〳〵とよるゝ巻葉は露や重たき 菖蒲草けふひく池の蓮からも薬玉つくる糸や出らん 蓮みとち浮葉堂本所とながめ居てたちはしるゝ不忍の茶屋松盛 吹おろす東の比叡の山風に矢橋の舟と見ゆる堂蓮綱彦 池の辺の芦を柱にうつふきて鳰の産家も見ゆる蓬莱 草も臥真昼に池の涼しきは花の君子の風の徳なり皆丸 蓮葉を手折んとして泥水の溜にそまる人ぞをかしき千万多 はちの巻はちすの巻葉法花経の薬王品の凡ならぬ国槌丸 小車の輪にもまがへし蓮の葉の花ろはよほどの重荷にやあらん真枝 笠間 水銀もわきたつごとき暑き日に風清げなる蓮の鏡物に 高崎 白露を玉とあざむく偽も破れて水になりし蓮葉 上毛連取 煎餅のやうに巻たる蓮の葉に浮みて遊ぶ池の鯉鮒喜 宇都宮 蓮葉のかをるやにほふ池水にこる花びらもやがて浮舟 多古 ものゝふのつるぎの池の蓮葉の露の光はするどかりけり 福島 御佛のうてなとなれる功徳にやちる花びらも浮む池水 田沼 粟における露をも珠数の玉なりとあざむき通す蓮の白糸 したゝかに露を結ふはいかばかり糸を持たる蓮なるらん 蓬には仏のおはしますやらん葉におく露も筆とうかべり 一渦にもそまで生たつ蓮葉はひぢの中なる望なりけり 君子なら玉をば渕に投べきををしむか蓮の露もこぼさぬ同 折てさす池のはちすに玉だれのこがめもやはり葉がくれは真顔 夕顔 世の中をうしろになせる山里にまづさしむかふ夕顔の花頼政卿 波那細 沼田 隣から隣の屋根へ蔓さひてぬしさだまらぬ夕顔の花 柳樹園 秋は身になりあまる所ある物ををとめにたぐふ花の夕顔水枝 むつましき夕顔棚の下すゞみ夫はひとり妻はふたりにて納 桑名 神垣のゆふかと見しは空目にて伊勢干瓢の花の夕顔馬伎 裏微加花三 夕顔の花に埋まる賤が家の蚊火はさながら雪の炭竈千賀江 賤がたく蚊遣にはなも皺よせてけふがるやうな軒の夕顔関守 裏微加花二 みな月の望にもきえず卯国の雪よりすぐにつゞく夕顔千万多 桑折 夕魚の莟はゑみの眉に似て糸くり出す棚のさゝがに御 白露のおきたる棚をきがすにもかたあかりなる夕顔の宿花見 裏微 傀儡等が外に出る比の花なれや袖ひき見する垣の夕顔英雄 場蝠の夕顔棚を舞出すは花をのせたる扇なるらし福養 蝶々は吸残りたる夕顔の霞をひさごに入てほしからん磯名 土佐仁井田 実のなりは杵々やいはん夕貌の花の白さもつきしらげたり藻丸 冨津 塀場の出る頃露を葉にのせて月をそら目の夕顔の図千代丸 賤しげに葉はしげれども軒の端にうちあがりたる夕魚の花下蔭 ものゝあやめわかぬ小家のたそがれにしそくして見る軒の夕貌大房 一柴崎旧家改 うかれ女のけはひする頃花さけばさやなめつくる瓢箪も見ゆ東水 一 飼おきし蚕のさまや眉に似し莟も見ゆる夕貌の棚裳顔 青梅 めでられぬ隣へ夜這ふ夕貌は花じろめとも思はざるらん 目妙加花二 ばかられて秋と涼めたる糸風にうしろをむきて笑ふ夕がほ目積 目刻花一 夕顔も昔がたりとなりにけり宿の隣のからうすの音真締 桑折 綿打の弓めく竹につるかけて飛咲にさく軒の夕顔餅人 夕貌に棚をもたせて末広く扇に花のみせびらさせり・ 日妙 仙台 にほひなき花とはいへと蚊遣火を焚しめてゐる夕ゑの菴百歌 甲斐上於曽 辛人 競べ見ん五十四帖の源氏よりのばせば長き夕顔の蔓 ふくへともよぶみを持て夕顔は貧しき宿の妻に見えけり鹿鮒主 名古屋 小雀のくはへし種かしらげよね白げるばかりさくひさご棚園丸 西へ日のかたふへ垣の夕顔の花もうしろをむける山里真門 夕魚の真白き花に置そふる露や化粧の水となるらん春則 白粉をとくほど露を結びては月の鏡にむかふ夕顔花妻 落かゝるふぜやの壁に何事ぞ白土つけし夕貌の花満汐 杭垣にかけほす人の二布かとこのならぬ間は夕顔の花凹 萩 棚といふ住家ももたぬ夕魚は勝手に藁を敷寝のびする茶山越 垣根をばみな夕貌のつるぎ太刀みやびごのみの二さやの家凹 桑名 賤が家に名は人めきて垣根よりほの〴〵のぞく花の夕皃平樹 桑折 つる〳〵と日のかたふきて扇をもたゝめばひらく夕皃の花吉影 戸塚 下涼みみだせる形を棚の上に高笑ひする夕顔の図真雲 小町 賤が結ふ垣はおとろの乱髪白きむく毛の生し夕貌 白川 蚊遣たく畑にむせてよき女なやめるごとき夕顔の花折鶴 よろぼへる門のはしらも三日月も細くかたぶく軒の夕がほ真顔 瓜 瓜 音にきく狛のわたりの爪作りとなりかくなりなる心かな朝光卿 波那細 今はまだはしりながらも口しむるうまみはのらぬこまの初瓜問 桑折 独もる稲のわたりの瓜作りさひしなや小屋にころりねなまし 金文 裏微加花三 瓜主は来通ふ道に罠かけて畑にくつねは入じことぞする 山城のこまかと問へばあき人の大きな瓜と答ふをかしさ 青梅 つまづけど粕のわたりの瓜なれば沓も直さず引ぞ過ぬる 綾繁 裏微加花ニ 皮をむきて流しに出す瓜の舟塩にもまるゝ物にざりける 姫路 畑中に並ぶ枕をあてにして瓜盗人や昼寝しつらん千加 この殿は我庭のみか隣にもかなりになれる真桑瓜かな河船 日和よくけふ出払ふて押瓜の舟はみな戸におし並び見ゆ寿 山城のこまの里人名におひてつくりし瓜をまはす日あたり種成 子供等がやいとする間を冷し瓜皮は酒とぼりさめて深しな鳴音 山城のこまの爪生の盗人は紐でぐる〳〵愛になすらん空寐 くらまぎれさがす手さきの鳴子瓜まだぬすまぬに縄にかれり似顔 裏微 盗人をよく〳〵見れば我とまの瓜を二つに笑ふをかしさ方住 手をかけて力にひけばつるきれて瓜もおのれもまろぶをかしさ河か 仙台 帷子をぬぎてもたへぬ日盛りにかはをむきたる瓜の涼しさ 俵かと見まがふ瓜をたちわればよねにも似たる種ぞ出ける下蔭 冷しおくうちにあつさを忘れつゝ瓜も水くむひさく井のもと凹 駿府 六月の望にひくらん狛の瓜これも雲井へあぐる物とて眼雄 十一 吉原 姫瓜はひなにそだてど畑にしく菊の上からうつくしく見ゆ桑顔 桑名 柏とかく粕のわたもの瓜作りつくりにしたる文字の白瓜馬估 岩城 八丈に似たる真桑の絵瓜は桐生あたりのはたにやあるらん 目抄加花一 畑守に追かけらるゝ盗人の瓜まろびして逃るをかしさ 駿府 糸のごと垣にからまる蔓をこそまくは瓜とはいふべかめけれ 真哉 諏方 大原女が作れる畑の瓜の名をきうりと呼ぶはをかしかりけり 金家 目妙 山伏はよき畑持て此年もぼんでん瓜を作るかつらき 仙台 真根人 高浜 うつくしな花も黄色に絵瓜の何反となくつくる畑は 真道 枕とも見えぬる瓜はありながらまろび寝もせぬ夜の畑守家樽 孝の身にほぞちをとめて夜もすがらまろび寝もせぬ狛の里人真広 沓かふて尋る人や立よらんやはぎの市にほす瓜を見て水枝 板敷にごろ〳〵と音の白瓜をかみなりぼしにきるぞをかしき寿 ごろ〳〵とまろばす音の白瓜や雷ぼしにきらぬ内から注連縄 色に井出の山吹ならぬ黄金瓜たれかはむくといはざらめやも方住 日野在下毛 瓜二つどちらを見ても似たやうで同じつらなりなりもかた声 瓜造る狛野あたりの里人は甘き心を子に見られけり真渋 佐原 畑守る案山子は弓を持ながらつるばなれせし爪ぞをかしき音好 手すさみの花かんざしの種ばかりかみさしてたゞ捨る姫瓜 千住 夕風に月のみふねの嶋瓜に汐おしよする風の涼しさ 名にしおふ美濃の真桑の紺瓜うまくはうりてくれよ里人豊作 氏をとる子等を捕へて瓜のごと青筋出して叱る畑専満成 賤もよき種をえらみて甜瓜これもみのなる名物ぞかし鴨立 高崎 瓜ざねと美人の顔にたとふればそのつらにこそなれもなめけれ松人 初物と思へば年も又ひとつこまがへりたるうまの若瓜物菓 佐原 立ておく案山子の弓のをるゝ頃つるばなれする瓜のうまさよ 多古 これも又かねにゆかりのつるなれやこがね花さくみのなるこ瓜 水戸 乳呑子の這よりて手のとゞく時こゝまでこよと瓜はころげつ水戸外也 大田原 枕ともいふべき瓜は畑までもしめくらめよく守る番人 市川 真河 言魂の咒きゝて瓜畑さはになる子のひたと出来けり 甲府 ころび寝についみし夢の二つ三つおこしてくれし真桑瓜かな 小○町 立われば小判形にも似たるかな山吹色のこまのほぞちは琴富貴 青梅 山城のこまのわたりの瓜つくり売つけねども人ぞもとむる ひやしつゝめす物なれど水くめる瓜をばいかゞ籠に入べき真顔 納涼 涼むとて賤の伏家を出つればほどなく汗の入にける哉忠房卿 波那細 夕顔の棚の下ゆ秋や来しふくべのやうになりし我袖奥成 夕風の来る頃なりと扇さしてむかひに出る門すゞみかな春則 いざ給へすゞみとりにと先にある物かと思ふ友ぞをかしき ふところに風をしたゝか入るほど身はかる〴〵となりし涼しさ 一関 田沼 誰も待春のあしたの鶯の竹に生るゝ夏の夕風 三浦 涼しさよむかふの峯の夕立にぬれつゝ庵へまひる山風二浦古根 裏微加花三 ともし火を皆吹けしてうば玉の冠の紐もゆるむ弥風寿 結ばんと流にのぞむ我裾を水がむすびてしぼる涼しさ真風 風の神いたゝせりけんこの夕べまとゐ涼しきいつかしがもと於妃門 目に見えぬ風が吹来て目のくらむあつさは目にも見えずなかゆく 衰微加花二 勝沼 夏をむねとありしの亭に染み居て皆拘操を背中にぞする 山形 あつさをば風がさそふてゆく跡は月を友なる庵ぞ涼しき 涼風をもらひたさうに橋にだつ袖へ乞食の扇さし出す 坂崎 河内鍋に煮らるゝやうな度の日もいつみにきては暑さしれつ 一加茂川の水の軽さに河岸へ浪をうちあぐる風の涼しさ真弓 戸塚 つるぎ太刀さや〳〵となる夏の木の風は毛をふくほどの涼しさ百枝 黒羽 あつき日に追れて来る渡し場へ風がむかひに出たるうれしき 諏方 をめ〳〵は隣の秋や音づるゝ軒伝ひ来る風の涼しさ諸方車 裏微 仙台 生薬ある富士の嶺をおろし来て人をたすくる風の涼しさ 縮織きれば袂の涼しきは同じ越路の風やとめくる水枝 市川 涌がごと出にし汁はとく引てこぼるゝ松の葉風涼しや常道 藤田 物干にあふぎて寝れば腹の上を流れて涼し天の川波鹿田春魚 さらに又寝よとや椽の花蓙を巻上るやうに涼風ぞふく春友 夏の夜の遊び所と風の子のあつまりて来る門の深しさ百名 木更津 つどひ来る人にあつさの居所もみなとられたる夕涼しな もみぢ葉をこき入る秋をよづ見せて袂ふくらす風の涼しさ空寐 涼しさはそろ〳〵人を眠らせて秋をゆりおこす木々の下風和樽 花蘿をまくりて風のたて〳〵と夏もゐられぬ河添の宿凹 涼居て蔵の間の一寝入あゆみをかけし夢の浮橋貞人 駿府 松風もはひりの庭の夕すゞみ夏の内とは思はれぬなり男歌雄 鏑矢の音して風の吹来れば汗もひき目とはやなりにけり御風 一 涼しさよ石燈籠の月にまで印をもたす庭の打水 沼田 柳樹園 谷村 夕露に竹のよれ葉のもどる頃出かけて一夜いざすゞまなん谷村真久 佐原 柿の木の下ふく風に涼み居ればすわれとや思ふ落す 仙台 ともし火を吹けす風をほめ立てくらしよしとて涼む夕暮 市川 吉野川波の花ちる夕風は心いたまで涼しかりけり常常 白川 あつさをばいれさすまじとふく風が庭の枝折戸たてし深しさ田鶴 舟遊び友誘はんとかくふみを風がもてゆくゆふべ涼しも真締 目妙加花二 茂木 河舟のくだるさまこそ涼しけれ心ゆくまで風にふかれて 目妙加花一 仙台 山里の土用見舞の袋物かせもあるやと開きてぞ見る 昼のあつさよるは秋ほど涼しくて宵の湯あみは御祓川かや磯名 桑折 世のあつさのがるゝ山の涼しさはしのぶ草より落る夕云々 黒羽 みな人のあつい〳〵といふ口をふさいでしのぶ杜の涼しさ原丹片打 目妙 鵜河原 おそろしき暑さといへる舌よりも貴老なの蓮をほどく涼風 仙台 四海浪賤がふせやの戸もさゝ侍風もをさまる夕涼しな 昼と夜をとりかへて寝てあつさをば夢にもしらぬ月ぞ涼しき凹 秋の日に夏の残れば夏の夜にまた秋風のふくかとぞ思ふ寿 田嶋 山寺の鐘も涼しくもろともにおとすなりけり松の下風持或 藤田 杖笠を枕に寝たる草枕これぞすゞしの茎の下澄津清海 名古屋 夕月の舟は御空にたゞよひてひとなみたてる橋の涼風真澄 風の神目には見えねど今の間にあつさを遠く追散しけり満峯 浦賀 夕さればあつきもすこしうす衣螺の小川に夏の流れて六 鹿散湯 瀧のもと風の手枕かり寝して夢にも結ぶ水の涼しさ鹿国 山形 一宿もたぬ風のさそふにおかされてうちはしるゝほどの涼しさ 望けしき夏見にはなつ家鴨の風に四羽よる流涼しき万象 佐原 あつかりし夏は何所へか雪の下由井の浜ふく風の涼しさ 涼しさよまだこぬ秋の白露を葉末にむすぶ庭の打水網女 行うかとして又跡へもどう橋生かへるやうな風の涼しさ貞俊 河風のいたづら者の尻たぐり用心しつゝあるく涼しさ登遊 山形 涼しきもたつや衣の河風に皆えりかたを明る夏の夜 涼しさに夏を忘れてさがすらし袖や袂に入る風の手 古河 涼しさは水立騒く烏川ともにうかれて遊ぶ月影目積 河波に棹をうられてあちこちと風にこがする舟の深しき 行水の盥へうめる水よりもさしくる月の影ぞ涼しき糸人 風の手を今に出すかと我独橋のたもとに涼みをるかな茂視 夏ながらかく涼しきは秋風をわたしの舟や天の川長沖風 日をおほふ涼しき風に葉柳のはやなぎよとは思はざりけり奥成 清水 この木陰かへる心は夏衣かさねてきたく思ふ涼しさ ヲ元古 主だつ夏なしとてか白波のゆふべは盗む水の秋風 駿府 慎民 沼田 涼しさにいつか暑さのけもぬんて鳥肌になる鴨の川風 ふところや袂を風の尋らんよそへあつさの忘れ物して唐明 多古 日と共にあつさは沖へ引汐や月の出汐の風の涼しさ春春 水戸 居並びて夕顔棚の下すゞみあつさもすこし腰をかけたり 仙台 涼とる裸姿を見にくしと風が吹けす閨のともし火 桑折 打水を人にかけたるあやまちは風にあびせつ門隙みして 黒羽 腰かけの備後表の涼しさはあきに近しと思ふゆゑにや 甲府 吹まくる風はすゞしの蚊屋の内しのびて秋や通ふなるらん 脇指のさや〳〵と風の涼しさに団扇も腰にぬかでおきて真名井 佐倉 一懐へ風をまともに猪牙舟のせなかふくるゝ夕涼みかな 雨雲はからりとはれて月の弓風もひくべく思ふ涼しさ 仝 青梅二 あへぎ来てほといふ息をつくは山この涼しさにます蔭ぞな あへき来てほといふゑをつくば山この涼しさにます蔭なき綾繁 涼めとて馳走に水をうつゆふのこもる竹から風ぞこぼるゝ 俳諧歌父母百首上巻 5312 □□□□□□□□ } 〆 丑十月 一俳歌父母六首仲 香窓叢書巻八坤 七月 八月 九月 十月 相撲秋田重陽紅葉暮秋 残菊霜冬月寒草霰 都雪山雪海辺雪水鳥網代 神楽早梅待春追儺歳暮 見恋送書恋逢恋切恋笠恋 変恋被疑恋題恋変恋旧恋 山家田家閑居市旅宿 舟人樵友女童木 十一月 草烏鶏酒餅 述懐懐旧夢釈教神祇 百十三葉 俳諧歌父母百首中巻 秋部 撰者四方歌垣 初秋 庭たつみ柳の陰の一葉船こぎ出てくる秋の初風に正徹書記 波那細 ふみ月のうは書ならめ涼風の直さままゐる天津空より神人 身にしむる風にあはてゝ葛の葉の裏がへしにぞ着たる衣手斧児 桐一葉とりて投たる秋風のなど打つけにかなしかたらん空寐 袖にまだなじまぬ秋の初風こといつしたしみて萩は物いふ 裏微加花三 葛の葉の裏がへりたる笄が原おどろかす風や何がしの秋河舩 名古屋 一聖代の桐の葉分の風がまへとりの方より秋は来にけり田鶴丸 夏果て盆帷子と秋風はいづれかさきへ立んとすらん園丸 裏微加花二 桐一葉はや落にきと初風のさゝやくやうな女郎花月中細道 一通り秋をしらすかふく風のさとおとのしておとなしの里水枝 秋来ても身にしむ風の吹出ぬはこれも不思議と驚かれけり堕広 常府 一秋来ると目にはさやかに見えぬとてさやから出して目鏡かくらん 一御祓せし袂涼しきはらひ物もとめてや来し今朝の秋風 駿府 裏微 月はまだ見ねと老しか我顔にしは〳〵あたる秋の初風 姫路 散初る岸の柳の一葉舟にのめて渡るか秋のはつ風於兎門 芳野 静なる御代には人も驚かぬ酉の方より秋の初風浅方 どつといふ趣向はなくも身にしみて顕よめとふく秋の初風花妻 桐の葉は落つき萩は騒たちひとかたならぬ秋の初風百名 冨津 猫人の歯のふけるまで鳩ふくは社の哀れもしらずやあるらん 桑折 立田姫土産の露の玉手箱あけて驚く秋は来にけり 雛袖 秋来ぬと見えぬ目からもほろ〳〵と露吹こぼす萩の下風 仝 田沼 涼とる浴衣の裾を吹かへし裏をもほしき秋の初冷 不埒 日妙加花二 花鳥里 ぬき放つ剣のごとき稲妻のさやにも見ゆる初秋の空 目妙加花一 けふ来るはきのふにしれし秋ながらあはたゞしくも騒ぐ萩原 仙台 朝まださに洗ふ人や驚かん桐のひさくも飛ばす秋風 目妙 秋きぬとさやかに白く波立てみるめ打上る風の海べた 松本新田 長丸 立川 目に見えぬ物をも何に習ふてやしみて覚ゆる秋の初風 物事のすべて暑さにおこたるを身にしめとふく秋の初風水枝 筆とれば硯の海にまた秋をのせてちりこむ柳葉の舟寿 死ぬ〳〵と弥陀をたのめる暑き日に西よりすくふ秋は来になり 松風に秋しるす鹿の苫屋さへまだ村雨の夏のほとぼり袂 鬼神もあはれとや思ふ風の音の目に見えぬ空に秋はきほり千万多 いつとなく同し常繁の松風も音をかへたる秋の初空若枝 山形 やめよとの親の異見の冷酒も今朝は身にしむ秋の初風山井坂 時ならぬ桜がさねの袂にもめづらしくふく秋の初風 夏をむねと作りし家にあてゝふく初秋風も腹にこたへつ 花鳥里 真明 富津 さやうには見えねど秋のたちつくりつるぎのやうな今朝の初風 きのふけふ軒端の松に通へどもまだことなれぬ秋のはつ風 秋来ぬと雲のさわぐに驚てあつさをなくす袖の初風 ふせやたき涼しきそひて秋風は賤が門辺に立初にけり米也 年もはや半ばに過て初老の身にこたへたる秋風ぞふく真風 きのふまで這ふばかりなるみどり子の山立のぼる秋の初風数取 二本松 一秋来ぬと目には見えねど浪花江のあし音のみの今朝の初風 とまりたる竹をゆられて村雀驚てたつ秋のはつ風蔭広 いづれをか秋のしるしたゝ定むべき鴫と相とのは音し初て花見 越てくる初秋風よまだ声のひくきは何をはゞかりの関 数ならぬ伏屋に生るかも瓜も目にたつ色の秋の初風 岩城 桑折 露おきて今朝は秋かととひし時をゝと申せる萩の上風 雛袖 横にふす野辺に生たつ撫子や押へ立する風の初秋 仝 一葉ちる秋の柳の葉と見ればついたち頃の月の舟なり 桐一葉落るを鳥の羽音かと蝉も驚く秋の初風八重成 暑さいとに秋の心をめづらしくよろこばせたる袖のはつ風真顔 七夕後朝 むつ言もまだつきなくに明ぬめりいづらは秋の長してふ夜は躬恒 波那細 一朝風に手向の糸の此やうにみだれて星もわかれかぬらし 棚桟のおとき別を待かねて妻もたぬ是やさきへ明ゆく 青梅 棚棧の舟にのる頃明はなれかくせし揖の見ゆるわびしさ・ 綾繁 裏微加花二 一関 何となく今朝はしめりしかし小袖又もそのまゝほしにかけたる ○御常 る御常 良ひとつもたらぬ賤は棚桟のわかれの事に蓑やかさまし 行徳 宇照 裏微 暁の鐘つきよりも棚梯に明星や今朝は恨みられなん 今朝も又取かさなん別路をぬれてもどりし星の恙がへに和布刈 花鳥里 星も今朝人に願ふて今一夜かし小袖してくれよと思ふか真明 かり小袖ぬぎうかるらん千鳥なく明がた寒き天の河風空寐 上総牛込 今朝歎くふたつのたの中に立てとも〴〵むせぶ天の川房連行 ふたつかてわかるゝ今朝の思ひにて消かへりけん影の見えぬは由安 彦星を渡し果しか橋板のひとひらづゝにかれる鶴真風 高崎 彦墨の帰りいそぐは天の戸も敷居の高き事やあるらん・ 彦巻の帰りいそぐは天の戸も敷居の高き事やあらら 星も今朝舟に寝ながらもどるらん夢のやうなるよべの契に 二つれかたみに袖やしぼるらん天の川瀬を又こさんとて 佐倉 棚桟も涙ぬぐふやかし小袖袖もふたつにをれし朝風の 美種 青梅 あけぬみてこぼす涙の玉くしげ二夜あはまくほしやわぶし 白川 よべ備ふ七のともし火目さきにもちらつきやせん今朝の別路 星の名を朝顔姫とよぶなれば明はなれてはしをれ給はん 今朝はさぞ力のなくて星も牛も跡に心のひかれこそせめ御室 目妙加花一 天の川うつす盥の水だにもこぼすはをしきけなの俤の俤 目妙 彦星のゝへきとめんと山〳〵をきりかけふさぐけ朝の別路 帰りがけ駄賃に牛をひと墨も恋の重荷はやらせなき朝奥住 彦星の別てかへるむな車ふみにかきのせてつきぬかなしさ 鵲のうれしき橋に引かへてわたる烏ぞ星をなかする春 佐原 彦星のわかれとむるか朝まだき立ふさがりし天の川霧 富津 畑にけなさゝげちぎれて見えけるは星の契りし跡にやあるらん。 産星のわかれゆく頃又あをと告る烏のしたり顔なる 笠間 諺の月の八日もいとはずにかへるは星のいかに苦しき 上毛大胡 加奈女 鵲の橋の袂もしぼるらん星のわかれのつらき涙に 同駒形 寛 後朝のふみは誰にかたのむらん雁もまだこぬ天の川づら 仙台 細道 大田原 棚掛の別におそくなる鉛は牛に魚はせて帰るなるらん大田原 契うく朝貌姫のしをれなんさゝぐ盥の水の明方打人 諏方 鵲の橋の袂に思ふ中の心のこらんきぬ〴〵の跡 真津友 ひと夜寝し袖の錦の小車も星の涙の事あらふらん真顔 女郎花 秋の野になまめき立る女郎図あなかしかまし花も一時遍照僧正 裏微加花三 うづくしき萩も加べし女弁国鹿の妻にはならぬきなれば四 女郎花粟かと見てや喰による馬の口をもとめてやれかし 裏微加花二 萌出しと見しもさが野の女郎国いづれか秋に粟であるべき百名 誰もかも見とれこそすれ女郎花きめこまかなる国の姿に相児 七和 吹おろす裾野の風を蜘の糸のはり業もする女郎図かな 鶴成 裏微 名古屋 粟版によくにたる物を女郎花などなまめくと人のいふらん名古 陸奥郡山 霧にのみ烟を立て燗酒の色にあわたつ女郎花かも 宿盛 露にやどる月の男をもち顔に色めく野辺の女郎花かな満汐 木更津 七草を七福神の弁天に見立らるべき女郎花かなし 雨守 露孕む女郎花ぞといたはりてきをそふる蝶は女ならん琴葉 目妙加花一 野辺ごとに栗の飯をばむすやうにひたきに見ゆる女郎花哉 高浜 目妙 女郎必みするばかりぞをさな子のあはゝといひて口なたゝきそ 露にやどる月の影法師ころび落ぬさが野に咲る女郎図には 仙台 苦むせる塚の辺のをみなへし小野より風の吹さそふみゆ 山形 女郎花けふ落にきと里の子にかたるか栗のゑめる色して 松年 吹こぼすばかりに荒き風ふけばあはやと思ふ女郎花かな 花鳥里 真明 大原や八瀬のわたりの女郎図いたゞく露ぞ重げなりける 女郎圓あはれ盛の一時をくねに結こむ賤や何なる千万多 女郎図さはればなびくやうなれどをゝとはいはぬ口なしの宮蔭廣 駿府 をみなへし見ほれて月の桂男も空よりおくる露の玉章常雪 蓋の姫祭る社か八束穂のあわもり立と見る女郎花英雄 なまめきし女郎花をばこふれどもふみつけはせじ国のさく野は満足 粕川 女郎花同じ秋野になまめきて尾図が袖へ露をこぼしつ新 摘草 妹が髪あげ竹葉野のをみるへしつゆとねくせのたわやつくわん 薄 二条大皇 白露は結びおけども花薄まねく袂のほころびにけり 波那細 大后宮大貮 穂薄の赤き蘓枋の手ついでに楫の色を染てもらはん空寐 わたつ海の渚の志に露たるゝ薄の袖や亀郎のぬれ衣真名井 青梅 まねくともいかでゆくべき八百里薄生しげる武蔵野の原権校繁 裏微加花三 何におぢてふるふぞ野辺の糸薄へみもや裾をぬふてゆへん 裏微加花二 ほつれたる萩の錦をぬはんには色の出合はぬ糸薄かな 裏微 相川 一猟織の虫の足ひく度ごとにまねきの見ゆる糸薄かなし 夏海 おのが穂の麾に習ひてはし鷹のきかふの薄風に舞たつ 富士の着る雲の衣は短かくて薄は袖につゝむ武蔵野柿人 武蔵野に夕風なびく花薄月の出端の雲かとぞ見る琴葉 此やうにまねく物ぞと手をとりて風のおしふるさまの小薄和布刈 手を但つ首うなだれつる人のうた野の薄思案顔なる 秋風をまねく薄の二階穂は吉田ぼくちになりぬべらなり 水戸 秋のそに千草の花の笑へるは薄の穂にてこそぐればにや 仙台 霧の海草の波間に一村は鯨のしほと見ゆる穂薄 桑折 風になびきさはればさはさはるよればよる薄の穂にも忙は傍輩下見 田沼 白露を重荷と花の小車をまねきてたのむ風の穂薄田 露置 目妙加花一 仙台 穂薄のはものゝ露に宿かりてけづられつらん十六夜の影 里住 名古屋 風はやみすれあふ鷹の羽薄にかり切争ふ里の童部等真澄 目妙 たが縫し庭の尾花か袖垣にしつけをかけし笹鼻の糸鶴彦 一杉風は琴のしらべに通ふごとに尾花は袖をかくしてぞ舞に 棚桟へかくるねがひの糸薄露にそめられ風によらるゝ 仙台 涙をばこれでぬぐへと妻乞の鹿にもかさん穂薄の袖 仝 侭成 名古屋 武蔵野や千学の波のたえ間より見るは薄の小嶋大嶋大嶋 野に寝れば親もなつかし烏羽玉の衣黒髪を撫る穂薄の田廬翁 小薄も僧都の袖にまつはりて弟子心にやもまれこそすれ水垣 さま〴〵の秋の千くさのもやうさへぬひつけて出す穂薄の糸 袖しぼる尾図がもとの思ひ草おもはぬ草もぬらす夕露 ほころびてまねく薄の袖口にはみ出す綿と見ゆる穂も 喜連川 遠ざかる馬逃虫の声きけばむちにもうつか風の穂薄 よわ〳〵とに町が願の風情ありに野の薄にあたる秋風大房 逢坂の華の清水に影見せて駒もまねくかしのゝ小薄満足 露もよく走る尾蔵の袖口にさや〳〵こたふ風の音かな鴫立 風になぶくす磨の上野の花薄浦の煙に這ふかとずる馬伎 糸兵に糸てふ名にもいろはあらで酒とさばかりによるとこそ 若葉の心動かん穂薄の綿のやうなる手のさはりなば杜路 しなやかな風の事業や穂薄のわたの稽古を誰に習ひて豊 わたうすの初穂のすゝき夕露をしたておろしの袖の軽きよ真顔 秋風 秋風のふくさ衣をとりみだりさほすほどにぞ寒き目は見る好忠 波那細 よくもなきためしなりとや末の露もとの雫を払ふ秋風水枝 裏微 秋風のたてば雲文立出て空もすわらぬ日和とぞなる満成 夕暮の露に袂の重いかと動かして見るやうな秋風 いにしへをしのぶ戻摺すりきれし袖をも捨ずとふか秋風 声きけばまづ気をふさぎ目をふさぎ見ぬ物かなし耳の秋風 秋風の手にはさゝねど淋しさをわくる垣ほの鴨のにぐき陶松 目妙加花一 色〳〵の花の紐とく七草をすべて吹結ぶ社の野の風 綾部 目妙 秋風の音におのれと驚てつい萩の穂は出ずなりけん 松木新田 胡風の吹向ひては柱売中〳〵足をたてかねにけり 仙台 丈夫なる名は持ながら秋風の力にころぶ角力とりとに 仝 誰が夢を驚かしてや来るらん我枕にはよわる社風 女郎花多かる野べは秋風も通りかねてや吹戻すらん 秋風にしをるゝ萩の折手本染る色葉のはじめなりとて 仁井田 雲の峰立や吹ちる秋風に雷さゝげ鳴わたるなり 秋風の音に涙はいづみなる信田の楠の智恵のなきまで 水戸 鴫のたつ沢より風の又立て四方に気や吹散すらん むさし野の露吹尽す秋風も涙はてなき袖によわるか真顔 秋夜 天にます月よみ男まひはせん今宵の長さ五百夜継こそ湯原王 波那細 一仰向て寝癖つきしは秋の夜の夢にも月を見ればなるべし 松本新田 長丸 裏微加花三 一秋の夜の長きを何にたとへ歌漬の真砂もよみつくしつく 衰微加花二 秋はよく寝られぬ物を小夜風にいたづらぶしの萩のはぎしり 青梅 綾繁 裏微 〽おもしろき夢を見てさへ秋の夜はあき果るほど長くこそあれ 明やらぬ秋の寝覚の思ひには宵を昔の初雁の声千架 跡さきをしれてもまたよほど見し夢にてしるき秋の夜長さ磯名 あつからず寒からず蚊もなくなりて踏のばす足も長き秋か夜於兎門 嶋めぐりする夢見ても明やらぬ秋はとこよの国にぞ有ける貞俊 夕暮に秋の哀はつくしてき何もてなさん長きこの夜を石樹 新庄 秋の夜の一夜は千よの長枕菜をつめたるゆゑにやあるらん 真坂樹 人真坂植 駿府 有明を昼も忘れず秋の夜はよるひるよるのこゝち社すれ 和海 目妙 秋の夜の長門印籠しまりよくあくるにしばし手間どるゝ也 立川 秋の夜の雨は一しほから崎の松のけしきを洗ひてぞ見る 花鳥里 秋の夜の次第に長くなりつれば露も霜とはつい結びけん 真明 木下響月の影さへくらげにて庭に骨なき蚯蚓なくなり万象 あすは足袋あさて小衾用意せん秋の夜寒をつゝむあしの屋英賀 はじめ終さだかならねど宇治山へいて戻りたる秋の夜の夢 ふる雨の音づるゝほど淋しくてかくごの外の秋の夜長さ 賤の女が心のまゝに糸車引のばしけん秋のよる〳〵 堅則 虫斑いりて青くらべすれば白露のおきくらもする秋の夜長さ芳文 月に一馴て老となりしか若くてもねられざりけり秋の長き夜真園 酒のめばねからうまでもねられけり寅に起てもあきの夜長を真顔 蕎麦 ひたはえて鳥だにすゑぬそば麦にしゝつきぬべきこゝちこそれ道命阿闍梨 皮那細 風ふりでよく出来たりと一番に祝部のもとへ贈るそば麦磯名 丸麦の花はさもなくてかどのある蕎麦こそ月の影におぼゆれ 裏微加花三 蕎麦畠の隣にもゆるとうがらし雪を欺く花を妬むか 鳥の子をいれし新蕎麦のもり替は十づゝ十も重ねられけり 溟雲 裏微 黒木うる八瀬野の畑のそばの花炭やく頃の雪かとぞ見る 豊根うつかと見れば白たへによくさらしなの蕎麦の手作り道足 風に波うたせし花の蕎麦畑もはしりをはやく愛るに切和則 夜もすがら田ごとの月にさらしなの蕎麦こそ秋のはな粉也けれ 目妙加花一 蕎麦畑のうねのきれとに賤の男は小麦を作うつなぎにぞする満汐 花の波うつよと見しもたちまちにけふは舟にて贈る新芸音人 信濃なる花の白雪日をふりて口へいるればきゆる新蕎麦 関宿 いとほそくたてば柳の姿なりこは手弱女のしなの蕎麦かも 玉網 三浦 秋ふけて木々の花等も皆くろむぎの茎のみ赤く見ゆる山畑豆成 本来は青く花は白くて田のくろに茎の赤きをき蕎麦ともいふ打人 目妙 賤の女の布を晒すと見ゆるなり一反ばたのそば麦の花朝興 うつくしくそだてし蕎麦も生れて今は二八とはやなりにけり河船 そば麦を打物にして刀よりまづきれ味のよしとほむらん春則 そば麦の花の白波うつろひて二八ばかりの月は出けり方住 新二百麦のにほひは鼻にみちながら口にはあきのこぬこゝちせり千賀江 福岡 さく花を雪こと見る故そば麦をひえのものとや人のいふらん 振舞にもりもこなす信濃蕎麦どこを峠とくひのぼるらん楽成 諏方 そば麦の花は真白の雪に似ていづれ陰なる物とこそしれ 量 新そばのからを枕につめたればねるこも長くのびこそはすれ雛子 そばの花白かる物をかくばかり薄墨といふ名によごすらん物築 四国にて作りながらもそば麦は五穀のうちに入らぬなりけり いさゝもまゝこはあらじよくねりてちすぢにうてる秋の新そば貞俊 角立し親にもまさるこのよさに末まで長くつゞく新蕎麦音和 遠目には白波と見つ木曽川のそばより葛藤の花の盛りは真白 信濃蕎麦腹のはり道こわじひに稗胃そみなふなか減せて吉竹百枝 一花に見し白紅井のそば麦は糸に打てぞもてはやしける真顔 栗 手にとれば人をさすてふいか栗のゑみの内なる刀おそろし公朝僧正 波那細 三栗の中のまゝ子も秋風にゑみてはひとり落窪の君汐時 山守が秋はことさらしめさして指もさゝせぬ栗林かな 裏微加花三 青梅 毬栗の針をしるべに三輪の山杉の中まで尋てぞとる 相川 かゝりともしりなば沓をはきてまし鞠なす栗の毬を蹴るる 諏方 蜂のごと人をさすとふいが栗のいがの中にはみつもこそあれ 二本松 ほつたりとゑみては風に落栗の土にゑくぼの跡やつくらん ましらさへ花咲みのるせはしさにおはるゝ軒の三度粟かれ石植 蔭はひりするなら針につゝき出せ月まつ宵の庭の栗の木真門 裏微和花二 猪言いたく背中へおふせ栗ふた子を毬にかくへしもあり雛子 衰微 渋皮の衣をこきて砧より賤か夜並にうてる栗孔音人 仙台 腸をたつまで猿のさけぶ山に三度は栗のなにかゑむらん唐麻呂 これも又ひが事とこそいふべけれ伊勢のころにゑめるいが栗於鬼門 丹波山栗とる猿を追んとててゝ打はやす童をかしや 蔭広吹 真蔭 碎うつ子等をおどすか梢にて口を明たる枝のいが栗谷 おもしろし風の拍子に落栗の杓子でたゝく秋の七学琴成 水栗の枝を此ごろをり所に作りてすめる熊の棚掻真枝 一関 ゑめばうき涙のやうにほろ〳〵とこぼれて落る風の毬粟 千万喜 手をいため拾へどさらにみなし栗誰がむくつけき毬は置けん 目妙加花ニ 伊勢人のひが事ならで毬栗の伊賀ならなくに丹波名高し 目妙加花一 毬栗の落しあたまに怪我なくて毛生薬に拾ふをかしさ松金 枝たれてまだ実のいらぬ毬栗をいた〳〵しくも折る嵐うな千賀江 ちぎれたるかますに入て痩馬のおふて来りしさのゝ大栗福養 目妙 丹波なる爺打栗をいが栗といふを聞てや笑をふくめる元住 川越 松風の琴聞山の栗拾ひうつぼ住居の昔おぼゆる 吉原 毬栗をむしれば損をさらすせそかきくけことて猿や木伝ふ素顔 枝に手をかくれば毬のつきじろひゑみたる栗のおこになしける方住 うなゐらに礫うつなと叱り気に口を大きくあきの毬栗 秋越る箱根八里を歩路にてくり拾ふたる興もめづらし 賤の男が針目衣の袖を又落て幾度させる毬栗柿人 寄らせじと和子をおどして指させば梢に口をあきし毬栗常磐 武蔵舟堀 伊予の湯のわける山路に拾ふ栗我は九つ友は十六 浅洲菴 ふるひつゝ龍の腮の玉をとる心になりぬ枝の毬栗 青梅 古道 仝 秋風にこそぐられてや毬栗のしぶ〳〵ゑめる山の口もと 堅則 はね出せばぬくめし人も飛上る跡にころげてゑめる焼栗 桑折 山姫は秋のこのみをはらみてやこぼれかゝりて見ゆるゑみ栗 小長沙堂 かねつけてゑむ口もとはやさしくて命打栗の名ぞおそろしき 合 三度なく猿ものぼりて一年に三度ゑみぬる栗やとるらん ゑむと見てとらんとすれば口明ていかるやうなる枝のいが栗 牛込 大田原 丹波なる山から得しと人〳〵に見せものにするほどの大栗大原 秋風に簑うちきせて丹波なる鬼や捨けむこの双子栗真顔 柿 霜契るこねりの柿はおのつからふくめばきゆる物にぞ有ける泰覚法印 波那細 関宿 我このむ物と思ふかやさしくも年ぎらひせでなる庭の柳 裏微加花三 あたうぞとねらひし柿のはづれては烏おどしもいらぬ竹弓 裏微加花二 一紅とみどりの色の五位六位衛門とよべる庭の御所掃斧児 鳥を追ひ人をふせぎて枝におかば主も柿のせはにうむらん 枝籠に鶴の子柳のそだつ間は千年も経べきほどの楽しさ友鶴 裏微 筆といふ名にやよりけんはうまよりまゐらせ候とかき我こせるは常道 葉を染ていにし時子も立もどりとう〳〵色をつけし柳の実磯名 焼飯と蟹のかへけん程なれやこげるばかりの柿のもみぢ葉水枝 駿府 落さうな柿をとらんと木をよぢて枝になりたる里の童部真 手折ては酒にかへんとおのれさへ熟柿のやうになりし柿ぬし 父中十三 山賤がつとにくれたる心椎の赤きはうれし庭の枝柿柿人 高崎 烏には宿もかさじと追たてつよしや心の熟し柿の木 もみぢ葉の中に一際あらたまのことしあたりの色の照柿 桑折 猿蟹の仇を結びし柿なれど秋は中よく熟したりけり 金文 色付し軒の山柿数ふれば果は我目もしぶくなりけり 高畑 目妙加花二 蹴鞠ほど大きくなれる御所掃を人のけなるく見る垣の内長閑 山里の客あくらひになるものゝ中にも柿は坐を持にけり常磐 目妙加花一 渋柿のあかぬ紅葉を吹散す風の袋の口はしめずや下蔭 この秋もさしめられんと青くなりちひさくなれる山の渋柿 四 目妙 風折の枝いたゞきて庭守もくらひつきたる烏帽子柿哉 一関 高浜 身も軽く枝つたはりて柿ぬせむ事をよく見れば猿にかも似る よそほひも見れば渋気もぬきゑもんあるが中にももだろ御所柿水垣 風に葉をふるふて頭ゑらむは鶴の子といふ梓にやあるらん道足 舟の名のにたりの柿を棹さしてひとつ残さずこぎとりにて春則 三浦 今日ははや渋のぬけたる八夜棹ふたつまへん十六夜待 いたづらにとるとも柳は渋いげと戸口しめつゝいれぬ庭守種成 身延 一香成 一口にいかでほむべき大和柿からくれなゐに色の熟すを 富津 稀人にこの出来余の三番叟いざまゐらせん鈴なりの材 吹落す熱柿に風をほめにかり並ふ桜のきもしらずして跡人 蜜ほどの甘き味もつ柿なれば蜂やと人の名づけそめけん田主 桑名 押合ておしあふ中の熟し柿目白も付て落るをかしさ梅守 桑折 初紅を白く翁や前栽に鈴のごとなる豆柿の枝薄墨 ○ 頭よみにきゝかぢりてや渋柿も人には口をあかせざりけり真顔 茸 たひらかに平の景にすむ人は平命をこそくふべかりけれ観知僧都 裏微加花二 舞茸をひとつみつけ〳〵うれしさにくはぬさきから踊立けり千萬多 都にはおそろしがるを山人はよくむしや〳〵と喰ふ平茸四 舞茸や美芹とは山路の酒の青によき名なりけり 衰微 吹すさむ嵐はやみて秋山のきのこの里は人にとられつ磯名 朝まだき露のおきても踏散し道ならぬ道に遊ぶ芋狩跡人 甲府 好木 みな人のとり残したる松帯はかくれ笠きしやうに生けり 目妙 戌し鷹のきかふの薄おしわけてかりすか野辺にこれる鶴芥 深山路のしげみに出るアヽ杓茸賤が熊手にさらはれぞする音有 もらひしをとり上見れはうば玉の黒髪山のつとの椎茸 かさといふものもてばにや時雨にもあまづゝみせで出る松茸 松本にもてやくのもをかしから顕の七歩の内に拾ふ松茸 とりためて尾国の茎へさす芋にあまねき合て帰る山踏 相川 夏海 野狐の茶袋ばかりかり出して松ににるべきくさびらもなし 四 高畑 松風の声にひかれて出つらん吉野の山の峰の舞茸 頭陀丸 平茸はおそろしながら里人のが武者ものこそとりくひにけれ 田場坂 柳穂 松茸も都上臈見習ひて木葉のかつぎ着てぞ出ける うらがへり人にはくづの松茸もめなれぬ身には嬉しかりけり真顔 夕月 暮にけり西の日隠し取のけは月を厭ふと人もこそ見れ仲正朝臣 波那細 夕月のうはいるさの山の端の酉にあたりて落るなりけりけりけりけり実鈴 三匁月のはりになぶの釣か減あぶなくもてる露もこぼさず千賀江 衰微加花三 夕月の出るをおせしと足引の山鳥こそはをむかひになけ興成 弓張の月のいる時山の端になりひゞきぬるそやの鐘かな春好 社の夜の一時は日の一日にむくげの蔭を照す夕月跡人 をさまれる御代に出ぬる弓張の月もいることしらずあれかし道足 裏微加花二 一人の目にやつとかゝるかゝらぬか釣する針ど三日月の影福耳 堀場を払ふうなゐが竹竿に落しさうなる夕月の影壽 裏徴 松風に通ふ琴の音いと細く爪かと見ゆる三日月の影巾足 くれぬ間はありし光もちひさゝにくらくなりては見えぬ夕月磯名 白波の立田の山にほかきもの出ても凄き夕月の影水枝 杣人のうしろに負し日の影の落ると見ればのぼる夕月 青梅 ながむるもたゞすの間の夕月をかくす雲こそ天魔也けれ 安房成川 名にしおふ月が桂の花ならばつぼみなるらし夕つゞの影音近 日妙 心ある夕こゞろきに月影をはやくゆり出す遠の山の端千万多 村雲のとなり給ふて長庚とむかひ合せに三日月の影 吉原 木曽福島 入桐の鐘のひゞきのつよくして月のあたりの雲や散るらん 穂垂 佐貫八幡 釣針の影とかたがに夕月にかゝりて見ゆる魚雲もあり 水紋舎 日の影の入て顕はるゝ夕月は西より出る物にぞ有ける 菱田 げぢ〳〵のごと白雲のゆく跡をはげて光れる夕月の影音芳 夕日影こがれし雲を扇にてほの〴〵のせて出る月は花和布刈 桑折 半分は水にひたるをとり上てあはせて見たや片われの月高安 小町 あく事のなき夕月を稲妻の鍵を出しているゝ山の端 秋のたつ姿見よとや夕まぐれ小簾まきくる三日月の釣真門 小糸 夕まぐれうつむく顔をあふがする月とそ秋のかなめなりけれ朝興 葎生のけがしき小屋は塩ばなに光りちらしてはひる夕月真顔 月盛 月は猶秋てふ中に秋といへば秋の盛ぞ盛なりける 波那細 相川 木ノ夏海 武蔵野は江戸になりても花薄袖を摺合ふ月の盛場 夜もすがら光を花と散せどもちりたる跡の見えぬ月かな水枝 裏微加花三 盛なる昔を思ひ出させて人若やかす月の色かな石樹 木更津 ことゑにそ宵は影のもるといひてくもとないひそ月の新酒春 士原 俊頼が物いひかはせとほれし後も今に盛の月のをとめ子 杣人のうしろに負し日の頼の落ると見ればのぼる夕月春則 青梅 ながむるもたゞすの間の夕月をかくす雲こそ天魔也けれ 安房成川 名にておふ月が桂の花ならばつぼみなからし夕つゞの影音近 目妙 心ある夕こゞろきに月影をはやくゆり出す遠の山の端千万多 吉原 村雲のとなり給ふて長庚とむかひ合せに三日月の影素顔 一木曽福島 入桐の鐘のひゞきのつよくして月のあたりの雲や敬るらん徳徳 佐貫八幡 釣針の影とかたがふ夕月にかゝりて見ゆる魚雲もあり 日の影の入て顕はるゝ夕月は西より出る物にぞ有ける げぢ〳〵のごと白雲のゆく跡をはげて光れる夕月の影音芳 夕日影こがれし雲を扇にてほの〴〵のせて出る月は花和布刈 半分は水にひたるをとり上てあはせて見たや片われの月高安 小町 あく事のなき夕月を稲妻の鍵を出しているゝ山の端 秋のたつ路見よとや夕まぐれ小簾まきくる三日月の釣真門 夕まぐれうつむく顔をあふがする月とそ秋のかなめなりけれ朝興 葎生のけがしき小屋は塩ばなに光りちらしてはひる夕月真顔 月盛 月は猶秋てふ中に秋といへば秋の盛ぞ盛なりける俊成卿 波那細 相川 武蔵野は江戸になりても花薄袖を摺合ふ月の盛場 夜もすがら光を花と散せどもちりたる跡の見えぬ月かな水枝 裏微加花三 盛なる昔を思ひ出させて人若やかす月の色かな石樹 木更津 ことゑに今宵は影のもるといひてくもとないひそ月の新酒春信 士原 俊頼が物いひかはせとほれし後も今に盛の月のをとめ子 素類 裏微 多古 海原に汐一はいとはかりたる月は大きな杓子なるべし艶良 かくばかりめでたき月を見る秋になどて涙のこぼれ出らん家樽 湖の上を這ゆく秋霧は月のあかさにたつかたやなき真名井 朝顔の莟も月の盛には照日にしぼむ花と思へり千賀江 花鳥里 あれをのみ好みて今を盛なる月のをとめの笠きぬもよし真明 満ぬればかけ出して見ん十三夜こゝらが月の盛なるべし麟馬 夜を置にまがへて遊ぶ連類師やけふの月とはいひはじめけん石樹 目妙加花一 魚もとり目とならん此夜頃でりこみつよき月の光に 目妙 撫子をまける今宵は影はえて月まで種のかはるとぞ思ふ日曹丸 成たさにおはれながらもうしろをば月に見せじと思ふ此頃下住 せばしなき夏に引かへ持空もかけずに出る秋のよの月平人 きく花のにほひようけに照まさる月の都は今盛なり真梶 名古屋 真盛の月の桂の一もとは風にも告てよき夜といはまし 仙台 盛なる月を背負て重きにや枝も地を這ふ庭の松影 風情 一はいに月の光のみちぬれば燈火をおく坐敷だになし 古河 見つけたる月の盛の夜の富士初夢よりもめでたかりけり 今宵しも秋の真中の空にすみて唐と日本をかけもちの月 高崎 もがさせし月も盛は日にましてほしけぬと見る久かたの空 浦賀 人の目にかゝらぬ内と雲や飛ぶ月の光のあまりあかさに 今宵見て老なば老よみぬ身にも盛は二度と中秋の月和布刈 一点のにじみも見えす澄わたる月は大文字山にみちけり音澄 青梅 一舞扇ひらけば鳥も舞ふやうに埒を出る月のさやけさ 裏微 多古 海原に汐一はいとはかりたる月は大きな杓子なるべし艶良 かくばかりめでたき月を見る秋になどて涙のこぼれ出らん家樽 湖の上を這ゆく秋霧は月のあかさにたつかたやなき真名井 朝顔の莟も月の盛には照日にしぼむ花と思へり千賀江 花鳥里 あれをのみ好みて今を盛なる月のをとめの笠きぬもよし真明 満ぬればかけ出して見ん十三夜こゝらが月の盛なるべし麟馬 夜を置にまがへて遊ぶ連類師やけふの月とはいひはじめけん石樹 目妙加花一 十一条もとり目とならん此夜頃てりこみつよき月の光に典 目妙 一撫子をまける今宵は顔はえて月まで種のかはるとぞ思ふ日曽丸 眠たさにおはれながらもうしろをば月に見せじと思ふ此頃下住 せばしなき夏に引かへ持雲もかけずに出る秋のよの月平人 さく花のにほひよりけに照まさる月の都は今盛なり 名古屋 真盛の月の桂の一もとは風にも告てよき夜といはまし 仙台 盛なる月を背負て重きにや枝も地を這ふ庭の松影 風情 古河 一はいに月の光のみちぬれば燈火をおく坐敷だになし 夜雨 見つけたる月の盛の夜の富士初夢よりもめでたかりけり 今宵しも秋の真中の空にすみて唐と日本をかけもちの月 高崎 もがさせし月も盛は日にましてほしけぬと見る久かたの空 浦賀 人の目にかゝらぬ内と雲や飛ぶ月の光のあまりあかさに 今宵見て老なば老よみぬ身にも盛は二度と中秋の月和布刈 一点のあじみも見えす澄わたる月は大文字山にみちけり音澄 青梅 舞扇ひらけば鳥も舞ふやうに埒を出る月のさやけさ 桑折 中冬は月の桂の花盛り大きな星を莟とや見ん 桜より月の桂の花盛り跡にかへるてふ人はあらじな 新庄 露は皆秋の千草におり物や月も幅あるむさしのゝ原真門 盛なる月の都の屋づくりにほしの林やきり尽しけむ真顔 惜月 梓弓はるかに見ゆる山の端をいかでか月のさしているらん能宣朝臣 波那細 月の入山の端なくはかくをしむ心のとひてたひらならなん 裏微加花三 一入月をしたふ余りに我影もついてゆきしか見えずなりしは倭文雄 閨に入る月を出さじとよもすがら閨へも入らで外を守れり糸女 にくしとてくぼむほどにもうたれずよ月のいるさの山の頂 裏微加花二 高崎 こちらから団子を立て願ふ也嶋めぐりする月のお供を 見て老ぬさきにありせば入月の山のあなたへはやくゆかしを 雲の波西こそ秋の風はたてこぎもどせかし月の舟人 青梅 一才綾繁 裏徴 月影を憎む頬目か暁は大きくなりて山の端に入る 駿府 歌雄 入る頃は人の心をかたふけて猶おとしたるこの端の月 福養 入方を餘りに人にしたはれてつらいか月の影も痩ゆく 青梅 仝 金積 仲麻呂がかもとうたがひし月影を三笠の山にをしとこそ見れ 芳文 目妙 てる月はをろの鏡か足引の山とりのけていらせともなき 桑折一 歌文 富津 車坂のぼらんとする月見ればおしかゝりくる雲ぞ侘しき をしめども空に流るゝ月の舟雁よ棹もてとめてくれかし をしみ〳〵余り埋めてもし空に穴を明なば月やはひらん成丈 諸人のをしといふ声を寒き月は聞つけず入んとぞする若枝 諸鳥のすくへる枝のありながら何とて月を山に落せる沖風 今井 有明のつれなく残るわかれよりをしとぞ壬生のたゝ峰の月 水更津 ほいなさを何にたとへん月の舟漕入し跡の雲の白波 春信 ほそ空の横にかゝるは月の入る山引のくるしたくなるらん 桑折 むさし野はいれておゝべき山もなし明行月をゝしと思へど真顔 鶉 立よりてきけば鶏のねも高しさてもよくにはふける物りな玄旨法印 波那細 秋草の錦を床に敷たへの枕のなりにふす鶏かな 青梅 世の秋を飛のきかねてなく鶉畑の粟や穂出しなるらん 綾繁 白河 深草の尾花の色絵かうがいの片刻月に鶴なくなり 包鶴 震微加花三 高崎 立よりてきけば鶏の籠ふたつ扨もよく二羽ふける物かな 深草の団扇に陰がくつま鳥をあふぎて野べになく鶉哉真門 裏微加花二 相川 かた鶉秋の藪蚊やいとふらんかやつり草の中に床とる 裏徴 関宿 玉のある声は尾花の波にふす地の貝のかた鶉かも 草の床あれて淋しくなく静海にふも見ゆる深草の里於鬼門 秋の野におのが衣やちゞむらん身にらむ風に鶏なくなり大房 なくなると顕によまれて昔より鶉なくならん深草の里成丈 住荒し菴はともなき片鶏くづるゝ壁の砂をあびつく斧児 駿府 鶉なくまのゝ入江の夕波も声にゆらるゝか騒ぐ音する。 真園 一関 我ばかり老るにはあらず月を見る秋は鶏もふけるとぞさく 栗橋 狩人の萩摺見えてかた鶏おのが衣を恥て立らん甲雀丸 露にぬれ身もひえ畑の穂をあさり腹あたゝめてなく鶏哉満汐 沼田 重石相に似たる蒔絵の籠の中に餅の名に呼ぶ鶉なくなり 陶物に我すがたをも作れとや鶏なくらん深草の里千万多 おく露の月のみかげにやどられてうづらや床のなき明すらん寿 相川 深草の尾園の乱波由断して寝し間に鶉床なとられそ 青梅 田鼠やかはりたりけん毛の色もくろを飛〳〵鳴る鶉は芳文 何事を奈す野の鶴汝がなけばから風わたる塩原の里宿成 乾き砂敷る庭籠の鞠すりふける鶏も暮一の声物菓 高うきゝ又低うきく穏薄の波をでりてなく鶏かも真広 ○ 秋風の身にしむ床にかる藻掻掻猪是になりて鶉なく 虫 きり〴〵す雲井の雁に何といひて壁の度よりあらあはすらん殷冨門院大輔 衰微加花三 小鍋立すれば水させ塩させと露を吸つゝなくきり〳〵す 二本松 駿府 夜もすがらおきゐし露の帰るとて驚かしけん虫の朝ねは 真園 笠間 虫聞にまかれば虫は音をこめてはやく野守が寝たる声する 休みては車坤音をひくは草葉にのせし露が重いか 木更津 藤袴さける中からきり〴〵す細すね長く踏出してなく 比名文 裏微加花二 雨の音にまぎれてよくもわからぬは暮からさきの松虫の声 仙台 真艶 夕月の落かゝる比の土の音の哀はあけてかぞへかたしや 裏微 山形 仙台 長文 足摺をしてなく虫の哀さは何かなじみの深草の里 もる雨の壁を伝はるきう〴〵す軒端に茎をさせとなくらし家樽 失ひし鈴てふ虫は夕風のふるふ薄の袂にぞなく真広 吉原 いにしへの跡十府楼のあはれさは軒の瓦の松虫の声 聞んとて立よる人の足跡をあちらでも聞か六のひそまる磯名 磯名 蜜聲するは壁の懸物の萩や薄の中になくかも 門さして夜風も来ぬに鈴土の声はどこからころげこみし実 諏方 量 基細きすねにも秋の野を持ありく声はよわらざりけり 春則 ねがへりの耳にかゝりしみだれ髪ちゞれ〳〵ときう〴〵すなく。 沼田 未知文 市川 染うつれる月のみ舟にてなるかと思ふ鈴虫の声 垣広 衣うつ秋は蚯蚓のなく音までつちに声あるやうに聞もつゐもつゐ也 越後柿崎 草の波あびせかけぬる秋風に月のみ舟を松虫の声 一秋風は薄の袖をまくり上てかたへ涼しき鈴虫の紅う真名井 壁になく菴にやさそはれし涙も袖をつたひつゝ出る歌多寐 本更津 いくら上露を吸ふて鳴らん土の音の通へばぬれぬ袖はなかりき 目妙加花一 新庄 馬退や車陣なきつれて秋のあはれをこゝにはこぶか 目妙 印西 硯石みがくやうにぞ聞ゆなるすみだあたりになく筆つ出 ふみひとつよむにもたらぬともし火のかすかになくや油陣 仙台 照月の雪にも駒や放ちけん野辺にきこゆる轡虫の音 蓑駒は見えねど野辺にからましく轡虫こそ鳴つれてとべ幅足 長き夜の枕にすがる土までもねあきぬるかや我をおこすは。 養すねも達者に飛めぐる野路は蓬が昇もすゑずて 芳野 出羽山形 夜遊ておそくもどれば枕にもわびるやうなる一直の書の音 草の庵軒端に生る等ならで壁にねをさりなく蒼 犬山 秋草の駒つなぎてふ名に愛て馬追出のとまりてぞなく 宮寺の立まじりたる野辺ならんあなた鈴虫こなた松土 高崎 こけ落る伏家の壁の下にても声はつぶれぬ蒼かな 信濃若神子 学むらによわる虫の音きく夜はゝわけゆかぬさきの袖も露けき 鶏世 一関 物思ふ秋の夕の草の戸をさすがに火も近〴〵となく 苞丸 舟堀 勝間田の池の堤のきり〴〵す月にすかせば髭なきがごと 浅洲菴 里荒て人ふり捨し宿なればならし顔にぞ鈴書のなく 青梅 朝までは残らぬ虫も露草の深き所にしづみてぞなく 四 人音に飛上りけん松土の声もふたゝび高くなりけり 高畑 こゝに棹させとなくなりに薄の波にゆらるゝ書籠の舟真名冨 蔦かつらしがるこ道わけ入ればそれより細き土の声〳〵満足 聞ほれてつい手うつぼの俊蔭が琴にすぐれて鳴巷折鶴 いそのかみふればひゞきも高茅の鉾につきたる鈴むしの声真顔 相撲 たゝ合せ弓とる方をかたひかんひだりすまひのつよく見ゆれば為業朝臣 波那田田 見物の雲なす上になかば出て山のやうなる相撲人かな益良 引わけて別の櫛のさしもげに跡見かへらぬ関角越かな方住 玉発の庭にめさるゝ南觚人土をつかむはことに恥らん素顔 裏微加花三 ねり出る雲井の庭に最手相手おもてに見ゆる角能人哉水枝 日野在赤羽 秋の野の色をむしろに夕露のむすぶまで見る草相撲かな 二わかと皆あふぎ見る藤荒男は角能の中の手の師なるべし下蔭 裏微加花二 顔早しきのふの折司中に立てとるに骨折る角能をかしや貞雄 雲の上にめされてのぼる角能人土をつけてはいかで帰らん長路 勝角力ゑめる白歯は負方の音楽に塩の色をこそ見れ明之 夜相撲にをしへて六が左させ右をかけろと鶏も啼つゝ細道 入方の影見ぐるしき負相撲人の山には月もかくれず成丈 国〳〵へことり使を立らるゝ公事も行事の内にぞ有ける折香 裏微 梓弓やと立合のほれ角力まこゝひけ手はさすがとらじな真締 関取の力は鬼とよばれてもたてる姿ぞ大仏なる真揖 角融人雲井にめさる駒よりもあし毛のふとくたくましきな真綿 駿府 武隈の松の荒腕みやぎ野の萩をからみてとる角砥かな歌 青梅 右左人もわかれて通しけり肩わきてめだつすまひ長には 一関 一藤手といへど布袋とも見ゆる腹腰はおほきれ国のかへなるべし 大たき屋に投懸られし負相撲くやしや胸を焼てふくるゝ 佐倉 たふさきに皮を染ぬく相撲取とり得てくゞる鴨の入首美種 相模にも似たる文字とて足柄を手柄にはなす相撲取かな下蔭 かつぎたるあまたのきぬにいたゞきの蛇の花も色をましけり真風 これにます力あらじとかたぬきぬおのが左のかたのぬき手を千万多 鳩鳥の二人並べるはれ角力浮足ありてかつがれにけり満足 なのらせてしみはふめどもしこならでにこ〳〵とせしよき角力哉奥成 取くめばもろ手に汗をもみ出して跡へもどらぬ関取の足山口 目妙加茂二 開取を土俵の外へ投出せば内へ投こむ見物の花 最上 芳彦 目妙加花一 栗橋 稲麦のごとき燈籠のかたすかし井筒と名の事秋の夜角力 稲露のごとき燈籠のかたすかし井筒と名のる秋の夜角力 見辻改 有たけの腕の力をおし入て前袋とる角力さかしや 一大江戸の花は土俵の内までも投こまれたる勝角力かな 夕顔のうつらもかけぬ季相撲あひてのぬしも定まらぬなり雛塗 おのが名の光れと砂を手につけて力をみがく角力取かな福耳 投られて青菜に塩の負角力ひとつまみにもたらぬ也けり白根 花鳥里 まはしには錦かざりて秋山と立争へる角力人かな真明 目妙 三浦 花薄ほてにほこりし角皺取たそこよと手に打まねきけり 三崎 負る気は夏秋涼む宵ごとにかたい地にとる辻角力かな 山城のこまの角力に投られて瓜まろびする人ぞをかしき河船 ちひきくて大角壓をもおもしろく投るは腕に臂やあるらん三峯 たてあゆめすわれとしらぶ角力強寝よとはいはじかたをひくとて寿 投出す手さへ岩石落しにて勝し角力はふとりじくなり水垣 にらみ合手をばつかねど開取はやはり蛙の姿なりけり樽人 佐貫八幡 裏表ひつくりかへす勝角力花にむそうの羽織貰ひて酒盛 駿府 勝たりとほてうつ最手に負方の脇手はわきて面なるべし直古 古河 顔見合ふ聞のかためのりゝしげにどこへ〳〵ととる角紙かれ万重 陸奥の松にも似たる腕すねのなみより越てかき角力かな 桑名 昼は稲よるは相撲のたてふれによる磯の男も村の腕とき 小粒にはあらぬ山椒の朝倉や一升と名乗て出る大男陀住 弦のなき弓もひいきの開取に手ぐすねをひく角力見物住安 草相撲野分の風に寐かゝるを又もかへす花の白露千賀江 西といひ東といふは傍示杭四つにわたりし辻相撲かな好成 強かりし風だに投て勝相撲ひさご花をもとりおほせけり山 これも又地からわき出る物なりと共に組合に相撲切の水 二番目もよくとりけりなひつぢ穂のほまれは秋の草角力離望 塵手水遣ひながらも立合にしびれをきらす角力をかしや音人 浮足もなく土俵までおしてかや浪花のすまひみつはもれども鳴音 鷹よりもつかむこぶしのつよ角麒勝ては弓のつるもとりけり 角力場は共にまけじともみ合てまづ見物のせきやとるらん春 駿府 最手脇手腋さし合てに手車葵の方やおし出すらん 真園 市川 通夜したる神の恵やうけつらんむそうの手にて勝し角力は 新庄 おされても動かぬ開の取組は地から湧かとあやしまれけり 引分にしかまのあゐとあひ角力互にまけでかちとこそいはめ琴葉 勝角力にとらす褒美は見物のやより投たるしるしなるらん柳馬 綿のやうに身やなりぬらん野角力の辻より外へばかく出されて 駿府 山をぬく相撲力はおびたゝしはやす声さへ谷にひゞきて 立合ぬ前に土俵の蒸手水ひねりて投る工風もぞする常磐 相撲等がなげかけたりし狩衣の紐もひだりはさすとこそ見れ真顔 秋田 今も猶寺田にたてる僧都かな秋はてぬべき世とは見ながら光俊朝臣 波那細 妻子つれで稲の花見に出来秋の民の心や春の桜田四 年ありて心ゆたけき法師稲秋のみのりは田徳こそあれ 松本新田 裏微加花三 袖は皆露にぬらして稲かれとなき事いはぬ秋のゆたけさ 駿府 芳野 焼米もかつしか早稲のかるからぬ神にとてこそまづいそぐなれ 象雄 三浦 苅稲ののげに争ふ鎌髭や髪もたばぬる菊の手ついで 裏徴加花二 姫路 うるさやと馬にたかれる蠅追て又も田川に出るせはしさ 苦労して作りし稲の毛を吹て疵をなつけそ小田の秋風仝行名 名古屋 豊年の亥の米の雪もよひ稲穂の雲の黄ばむ秋の田園丸 桑折 翁姫も手なで足撫手伝ひて酒かむ秋の稲田姫うな 仝 霜夜にはあかゞりふむなしりなる子鳴子ひく田にいねよかり庵 長が田はまづ一枚を百人一首露にぬれつゝ寄あひてかる 花鳥里 裏微 吉原 つるぎ太刀みいりよろしき秋の田は片なびきして穂波うつ也。 小名浜 時鳥啼しきる頃植し田の地をはくほどに出来秋の稲川名 はしご田もみのりおほせてうれしきは天へものぼるこゝちこそすれ跡人 沼津 幾度か鎌は研ても苅稲の井目はきれぬ秋の豊けさ 初雁にかりそいてげり時鳥声聞ながら植し早稲田を武光 三浦 鈴のごと穂は見ゆれども稲株の枝をならさぬ風ぞ静けき 八束穂のたりほの稲をかけ渡すまづらの木々は春の青柳水枝 赤羽 月のすく福戸のかり深棟鹿を嫌ひてよそに追ふ秋の小田 一関 脛白きをとめと小田のくろ男行あひに早稲を苅てせおへり 窪田 大かたに苅をさむれば夜さへもいねよしといひてしゝ田守すご 秋の田の畔を枕にぬる稲に人の心もまづやすみけり 諏方 鈴名 去年ふりし雪にふすほどみのりしと今しも思ひあたる巻こし 上依智 登志久 新庄 袴着てこゞめる稲は日頃守る礼を案こ子に述るなるべし 青梅 まかせつる田植男を秋は猶ほめてぞつかふみになりしとて 秋田守須児は夜すがらすご〳〵とすごもの上に寝て巡すらん御風 鳰鳥のかつしか早稲田かる賤も穂波の下をくゞるとぞ見る琴葉 天津風しばしとゞりよみのり時小田は稲葉の雲の通路目積 さゞ波の志賀の湊田かる稲も俄に冨士の山とつみけり楽住 秋風に稲の波よる小山田の薬山子は立ておよぐやうなり網女 秋の田をかる鎌倉の谷あたり八束穂は皆ひと穂七ごう嶋女 なりはひは田面に生る草の名の秋ほこりして民ば遊べる めでたさを何につゝまん袖田にも余る穂波のゆたかなる秋琴富貴 目妙加花一 仙台 秋の田の菊山子の弓のあたり年いつもはづさぬ八束穂の稲真艶 佐貫八幡 いねよくも穂首をたれて臥るかな月と案こるに田をばもらせ酒盛 秋の田の苅婆加れぬかりばかと利口らしくもふれる村長下蔭 に山田のしゝ迄にうつ鉄炮のあたりと見へて稲はふしけり金輔 目妙 風の手に穂浪そろひし湊田にみの入船や出来秋の稲真艶 山形 刈とりし稲の外には鳴子までからりと仕舞ふ秋の小山田春信 鳥おどす小田の案こ子の竹弓もあたりと見ゆる出来秋の稲千積 世はなべて豊なる子の一面に縄の辺たる秋の千町田茶釜 たることにあきまの露の雫してしづ苦をなせしかひはみえけり表 佐貫八幡 雁がねもたすきがけにて来りけりそゝろに餘る秋田かる日は琴吹 清水 正直に案山子は守りぬるこしのあたりはつれぬ秋田めでたし 宇都宮 秋の田の苅穂の庵のかり枕いねよしと長もよゝにふしけり ノ太記 桑名 秋の日も短かき羽織村長が毛見する稲は袴きてたつ平樹 破笠をあ弥陀に着たる暮富騰のみ菩薩は見えぬ小田のひつぢ穂 仙台気仙沼 長縄手伝ふて田子のかる業やみのりもよしとほむる声〳〵” 弘九 山里の寺田の稲をかりとれば落つきて寝る僧都をかしや 青梅 仙台 問を苅てほせとや空に雁がねは漣になり又棹になるらん 手損なく又水いらずむつましく実おもくしたる女夫婦の稲注連縄 秋の田の水茎に生るむつち穂を鳥羽謹正や筆に結けん葱 湊田の稲の出来秋見て賤も大舟にのれるこゝちなるべし冬住 一つらに雁高頭はひとつらにかり来る稲も棹に懸けり南真池 実入まで吟味に毛見の像客かつてとりこむ秋の小田守皆丸 今よりそ民の窟も賑はん鎌をかけたる秋の苅稲 神風の伊勢の御田も秋来れば稲の真蔭のみのか悦ぶ杉盛 弓矢とる小田の案山子のものゝふは七末の袴をきてぞをりむ 五月雨の頃に植たる稲なればみのかさなりし豊年の小田糸人 かくてこそたり貢にもたりぬへし穂波もなみに越る湊田葉常 唄に実をいれし早苗の小山田は稲もひとふしまぜる出来秋和則 秋の田を苅て御蔵につみ替る指図ひねくさき村長が顔 時鳥とて植し田もいつしかに稲葉穂に出てかり渡るなり茂親 春の頃かへしておきし賤の男が又かり入る秋の小山田 桑折 穂波うつ秋の田面の案山子こそ腰蓑着たる蜑人に似札 出来秋は刈田のほとり庵の内みな一面に籾地なりけり田主 たけ高き小田の茶こ子の立次めみのかさを見て鹿もおぢゆく杜路 苅ばかの早稲田に出るおろかおひそれもかくこくみのる秋かな真顔 重陽 長月の九日までにふくみたるとをかの菊の花ひらけなん兼昌朝臣 衰微加花三 やま人の臂の袋にとりいるゝ茱萸の間に千代は経ぬべし下蔭 駿府 菊の酒大盃にうけみれば星かあらぬか波のよするか 裏微加砲二 重陽にめづる物とて昔より菊をくゝとやよみなるひけん直古 裏微 仙台 菊酒を祝ふむかふへ蝶の来て一さし舞ふや羽袖ひらめく繁道 いつまでも老ず齢も長かれとつぎたしてのむ菊の盃言真池 星とのみ見る白菊の花落は石となりても千代は経ぬべし 南酒に酔てはくどく齢をも礼をも八れにのぶるをかしさ 菊の酒文字は違へど同音に艶も礼ものべてこそくめ琴冨貴 目妙 吉原 菜のくこは茱萸を袋にいれぬ内我よりさきに高くのぼれは 小名浜 今日ばかり下戸にも無理を菊の酒すゝめて共に長生をせん藪浦 もろこしの種とはきくの花ながらけふこゝの香ににほふうれしき真楫 五さゆなのうりに茱萸の袋菊ひたすら酒は興に入るもの川常 けふこそは薬と菊の酒びたし呑て千年を重ね盃浮邨 若がへる屠蘇や枕酒菖蒲其重ね〳〵て菊の盃艶良 鹿散湯 寒しともいはぬ色なる花にまで重ねて菊のきせ綿はせり鹿笛 ホ更津 苦からずして良薬ときくの酒あまたゝび酌て祝ふけふりな 菊酒に酔たる蝶かよろ〳〵と心よげにも風にふかるゝ 犬山 菊の酒いざやくまなん契ものぞくばかりに高くのぼりて大小 けふことに高き山より災をのぞきてめづる谷の白菊 月と日をけふ重ぬれば十八に若がへるぞときくの盃詠女 酌かはす内に千年を扁鵲が薬をもりしさだ菊の花真枝 重陽の酒にひたせるおとゝ草おとゝといひて子子のませけり 今日毎に箱をひらける菊に袖たもとの皺も花にぬぐはむ真顔 紅葉 踏わけて通らざらめやしに矢のたちにのまゆみ紅本ふ散しく戸田茂睡 波那細 もみぢ葉は簾越に見ゆる袖口とかさなるく山にかゝる薄霧水枝 名もしれぬ山も此頃世に出て紅葉にめだつ錦をぞ着る真門 裏微加花三 千住 酒のなき紅葉の蔭に詩つくりてからばなしする秋ぞさびしき 秋山の掟をかゝむく松の木をのこらずしばる鶯のもみぢ葉 ぬれてゆく馬に鞍馬の山紅葉時雨ぞ色をつけ出しける酒盛 山形 裏微加花二 兼好に見せたし秋の男山下戸ならぬ色のみねのみねのみねのみねのみねのみねのみねのみねのみねのみねの 日の色を発あひとりしはさいつすみどりの林なりしもみぢ葉跡人 茂木 まだ水にならぬさきから雲ぢ葉のひをこくしたる枝の物霜栗阿弥 外山からと来てかゝる時雨雲深く紅葉に染られにけり松俊 折くべて焚は徳利の際酒もゆはだになりぬ枝のもみぢ葉雛塗 裏微 村時雨同し外こをめぐれるは紅葉の色に酔しれつらん真国 通天の橋に立れば両岸にてら〳〵見えて紅葉まばゆし寿 子早振神の留守にも正直に影ひなたなく染るもみぢを葉真樽 蜂の夜もまだ宵ながら明にけり窓の紅葉の色の深養父真広 川越 柴の葉ふときけば此頃は曙にくし筆のもみぢ葉落栗落栗庵 落栗庵 箱根路も掟通りに時雨して私はなく染るもみぢおに於兎門 青梅 春好む人に見せばや秋の色を争ふ顔の紅葉ちるまで 山姫のうるゝぬるでの痢毛はあれど柿は渋にておのれ染けり 富津 もみぢ葉のもゆるやうなるかとには見る人肝をけしにけるかれ 全 昼もめぐる時雨もかさなれどつもらぬ山のもみぢ葉の色照道 岩城大島 秋もやゝさびの下地と見えにけりうるしぬるでも紅葉〳〵つればオサ ハ聚 秋山をめぐるは類のすき人のやくにこそあれもゆるもみぢ葉春好 岩城後田 一磯山の紅葉の影と見ゆる也波に浮べる黄銅赤魚も 綾部 山姫の思ひの色におかねてまだ口なしの薄きもみぢ土に綾鳥 白鷺の羽にも夕日のうつろひてときめく物は紅葉なりけり つくり絵もいかで及はん薄くこく山を十五重たらむもみぢ葉千万多 二本松 春よりも秋山ぞ我は〳〵とて皆ひとめづるもみぢ葉の色和歌音 秋山に争ふれもなき物を紅葉ふはひとり赤くなるらん春則 青梅 秋は又春の敵の事風をたのみて染る桜もみぢ葉喜代住 何事をあらそひの杉と物いはぬ色にそめたる蕈のもみぢ葉斧児 手向山ぬさのもみぢ葉もゆる火は神のまに〳〵たくせんやある琴葉 昼は日の暮るまでもえよるは夜の明るまで日の消ぬもみぢなふ もみぢ葉の火危しとて夕風に弦うつやうなう張の月松彦 もみ出しと国栖が折来し山裏はむべかへる手の枝にざりける石樹 目妙加花二 とこの山夕日にもゆるもみぢ葉はねざゝの事きやあたゝめぬらん 青梅 蔦紅葉とりすがれども秋の色に迷はず松は操立けり 沼田 露時雨よことに染るもみぢ葉はわけて見事を人ごとにいふ 目州加花一 米沢 赤人は何とよみけんまつかいな都の富士のもみぢ葉の色春木 中もよく板〳〵のもみぢおふの火と木はむつむ物にざりける真名井 目明 仙台 〽紅葉傘てるは日笠か雨傘かきのふの時過けふの夕日に 小林 朱漆に染るばかりのもみぢ葉は箱根の山のぬるでなりけり 高畑 朝霧の立かくしても枝軒戸はひすきてもれる紅葉まばゆし 駿府 もみぢ葉を土に落してよごさじと立田河へや流しこむらん真雛 奥山にもゆる紅葉を踏わけてひゆとは鹿のいかでならん 川越 一今後しうがひ茶碗に散込て錦手にする風のもみぢ葉 古河 古河 盛こそ短かりけれ子持山はゝその紅葉取乱しつゝ 位山雅といちひの間より五位のうは着と見ゆるもみぢ哉に倭文雄 桑名 草も木もつやなす秋の花うるしぬるでの紅葉露もかわかで平 もみぢ葉の唐紅の染色を又から風のこき散すかな侘住 姫路 日ははやく落つる山もあかるきはげにくれな田のこした薩哉 青梅 延上り手折る紅葉にとゞかぬはめづる心やたらぬなるらん 仝 よるもきて人の見んとは唐錦立田の紅葉おもはざるらん 紅よりも色は一しほもみぢ葉のやさしく見ゆる山の口もと 森岡 盃の一さしづゝに色まして松にくだまく蔦紅葉かな 仙台正雁改 わたつみの渚の杜のもみぢおには色もならほの深くこそ見れ もゆる火のやうれ紅葉の枝折て贈る心もあつくこそ思へ 仝 松の葉も時雨にそむとうたがひのかゝるは黄の紅葉也けり 火の消しやうに淋しき秋の野を見直すばかりもゆるもみぢ葉春家 仝 夕日さすうるし紅葉にかたはらの松もかせてや赤く見ゆらし 炭竃の烟にはまだなら桜のさきへもえたつ峯のもみぢ葉餘慶 木更津 青かりし稲荷の山の木々の葉も鳥居のあけにもみぢして 市側 夕栄のあけ色どりて海面にうつす絵嶋が浦のもみぢ葉常道 青梅 たのしみは瓢の酒のよいほとにまはる夕日やもみぢ葉の色 月花の跡の葉の毛氈と見ゆる桟敷の嶽のもみぢ葉多丸 駒が糸走る時雨は藪かゝる木の玉ふに色をつけてまはれり数奇成 桑折 村雨の晴し雫に影うけて小松も青く見えぬもみぢきな 川越 今後しうがひ茶碗に散込て鍋手にする風のもみぢ葉 古河 盛こそ短かりけれ子持山はゝその紅葉取乱しつゝ 従山推といちひの間より五位のうは着と見ゆるもみぢ葉倭文雄 桑名 草も木もつやなす秋の花うるしぬるでの紅葉露もかわかで平樹 もみぢ葉の唐紅の染色を又から風のこき散すかな侘住 日ははやく落つる山もあかるきはげにくれな田のこした薩哉 姫路 青梅 延上り手折る紅葉にそゞかぬはめづる心やたらぬなるらん よるもきて人の見んとは唐綿立田の紅葉おもはざるらん 紅よりも色は一しほもみぢ葉のやさしく見ゆる山の口もと 盃の一さしづゝに色まして松にくだまく蕎紅葉かな 仝 森岡 竹女 仙台正雁改 わたつみの渚の杜のもみぢ葉は色もなしほの深くこそ見れ真豊 諏方 もゆる火のやうれ紅葉の枝折て贈る心もあつくこそ思へ 松の葉も時雨にそむとうたがひのかゝるは芦の紅葉也けり 仝 火の消しやうに淋しき秋の野を見直すばかりもゆるもとぢ葉春家 夕日さすうるし紅葉にかたはらの松もかせてや赤く見ゆらし 炭竃の烟にはまだなら桜のさきへもえたつ峯のもみぢ葉餘慶 木更津 青かりし稲荷の山の木々の本にも鳥居のあけにもみぢして蜑守 市川 夕栄のあけ色どりて海面にうつす絵嶋が浦のもみぢ葉常道 青梅 たのゝみは瓢の酒のよいほどにまはる夕日やもみぢ葉の色木仲村 月花の跡の葉の毛螺と見ゆる桟敷の嶽のもみぢ葉多丸 駒が原走る時雨は藪かゝる木の玉ふに色をつけてまはれり数奇成 村ゆの晴し雫に影うけて小松も青く見えぬもみぢ哉に 紅葉狩むごろのうさも捨かまどいざゆへし酒あたゝめん琴葉 さながらに逢坂山は大津壁とある手紅葉の色にこそ見れ臼木 木枯にまけじとふせく物ならん火花を散す峯の紅葉は寿 山路のくたるあしをひくれては杖にもたのむ枝のもみぢ葉真顔 暮秋 露深き尾花が袖をひかへつゝなく〳〵秋をとゞめつるかれ基俊朝臣 波那佃 三崎 家物をこられしやうにせしむ也秋の湊をかへる白波芳風 裏微加花三 ゆく秋は是目の賽の呼かけて見てもまかせぬ加茂川の水 福岡 哀なる物よと神の捨かねて出雲て秋をつれ給ふかや吉躬 裏微加花二 青梅 哀をは鴫たつ沢にとゞめおきて秋はいづくへみゆるきの磯芳文 ゆく秋は種も残さず栗柿のみなしがらさへ淋しかりけり春好 別をしむ涙に隙もなかりけり暮ゆく秋のせはしなければ春則 桑折 冬来ても室だになきを秋山につきてはなられ漆もみぢおに唐文 裏微 仙台 深山より暮ゆく秋か谷川をいそがしさうに下る木々の葉真艶 栗橋 栗柿もはやこれぎりとくれてゆく秋の名残は子等さへぞなく 業好 伊戸 錦せし紅葉の秋もくれは鳥あやに立しくなる日数かれ真国 呼かけてしばしとゞめよゆく秋を夢野の萩は声出ぬかも道足 豊年の民のかまどの賑はひを秋はかへりてまづはなすらん磯名 桑名 さらぬだにかなしき秋の暮ゆくをこゞめかねたる我涙かな 仝 立田山あすたつ神のもみぢおにをけふゆく秋のぬきにをか 最上田井 暮てゆく秋をおはへてみけたるかくふみこむ池の枯芦茂枝 姫路 神風のさそふてゆけばもみぢ葉も秋をとゞめず手やまが 黒塀 とて 暮てゆく秋をとめ矢も射させたし裏がへかたる葛のつる弓琴成 もみぢ葉の色はこうなり名こがしとしぞきて秋のいづちゆくらん ゆく秋をこゞめんとてや天の川に柵かけて雁横たはる ゆく秋は心の内にこまるかもをしめる胸のせまくなりしは四 来る時の驚よりもゆく秋ををしむ心ぞさわがれにける同 千金の花を散せし春よりも暮をしむ秋の心ちひさし松人 桑折 こゞむれどとゞまるまじき秋なれば送りしたくを時雨催す 目抄加花一 茂木 菊人 桟を織る書の手さへもかれぬらんひとひにつまる秋の前れに。 日妙 伊奈 立田川風にちりこむもみぢ葉は秋のくれゆくうき橋わたす 秋のゆく道をふさげとたのみたき霧もや帰るつれになるらし わかれをば告て帰らばとめんかと霧にかくれて秋やゆくらん河船 火中三十四 米沢 出雲路へ旅だつ神にさそはれて又いづちへかゆく立田姫東山子 信濃式部 きのに見し草の花駄荷紅葉して陣ゆく駒ののせてゆく秋伏見 赤羽 草や木も油けのなきむくらげにたよみよとぞ秋もふるひし 暮残る秋の一日を種として彼岸の頃にまき直さなん成丈 最上田井 表さを野枯て冬へゆく秋の夜逃道には及ばずもがな 萩の風驚きし頃はきのふにて胸はしり行秋の日数か猿真似 姫路 口なしの色にとりまく桃原どこから出て秋のゆくらん をしまれてとめられじとや思ふらん暮ゆく秋のはやき日の脚虎丸 山田守僧都ばかりが残されて余り物うき秋の暮うな 萩薄わけつゝ見ればいと細きこの道をこそ秋のゆくらめ登志久 鰍沢 暮てゆく秋の名残ををしみてやおのれかへりし葛の森風 新庄 神のゆくしたくか秋の湊へと木案の舟を風のよするは真坂樹 名古屋 もみぢ葉のあけのそほ舟漕よせて秋の湊や風さわぐらし有 なく虫も哀よわりしうき頃を野枯て秋のいづちゆくらん 同 秋のゆく跡は時雨になりひらのかたみや露の秋の庭もせ 桑折 山里はしかなくてだに淋しきに秋さへけふはかへろとやなく 径 越後新田 こく薄く絞る隣のもみぢ葉を風がほどきてくれて行秋 取ちらすもみぢも風にかたづけてかへり支度に見ゆる山姫真顔 父中三十五 冬部 残菊 秋の色の花の弟と聞しかど霜の翁と見ゆるしら菜後九条門大臣 裏微加花二 吉原 盛には色に名立し菊ながら杖つく老となれる花さ 朝ごとに白よ赤よと見に出しきもうすらぎぬ霜枯の菊 裏微 桑名 二十二日暮行し秋の最一度もどれかしおき忘れたるこがね菊には 布袋野 花にふる霜の剣もいとはじな星ときらめく兜菊には 青梅 青梅 岩間よりくゞりて残る菊の花秋を出しぬきて後に咲けり 田沼 つくろはぬ巨燵蒲団に染しほと冬かけて猶残る白菊 夜ごと星とひかれる葉も明方の霜にしらみて残りすくなき真門 冬くれば綿をもとりて色直し赤くなりたる庭の白菊磯名 目妙 立川 残りたる一本菊に霜蝶のふたも色たき庭の面かな 小林 庭守る役もしまふて今は只猶扶持ほどに残る白菊 音有 日野在下野 このごろの霜をたねて色やます猶白菊の花の残るは 月盛 最上田井 白菊のませにすがりて残りてはいとゞ翁の名や増るらん 秋のゆく中に残れる庭菊を人は残らずほめて通れり 最上 窪田 おく露の玉を二つにわり菊の二一天作五りん残れり 枡穂 姫路 消残る雪とも見するからくりにのぞきこんたる谷の白菊 冬来ては霜の袴のひたまりに腰打ねぢれ残菊のさく 千住 白たへにはじめて霜をおき頭巾杖つく菊も翁さびたり匕守 舟形に造りし菊も秋風におくれて庭に走り咲せり晴成 朝夕の露が力を添竹の杖にすがりて残る白菊松成 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 市袋野 売残る花と見れども名をとへば余り物なるこの袋菜高居 高崎 一二輪残りし菊の高作り舞の柱の釘かくしかも松人 桑折 山寺に残れる菊の暮賢像秋の末つむ花の赤さは金文 花のかた見よと残しておく霞る我もとゆひし垣の白菊 ○ 月にさき霜に残りていづかたによるとも見えぬ菊の白さよ真顔 霜 霜月に霜のふるこそ道理なれなど十月に十のふらぬぞ家隆卿 波那細 本の露末の雫や霜となる時雨におくれ雪にさき立石樹 裏微加花三 凍われて月は庭にや落つらんつちより白む霜の曙春好 裏微加花二 朝霜の三毛猫ならず檜橋より狐と見るさへ寒き足跡真枝 裏徴 栗橋 二十一日手水鉢とれる柄杓におた箱はまづ手に結ぶ水とこそなれ 仙台 くるゝより寒きはさきに立ながら足跡見えぬ庭の初霜 六の花五つの花と指をれば霜はさしづめ四つまでの花瑞生 寒しとて飛立ぬべくふるひしはこの朝霜に跡つけじとや綾繁 表ては日にやとけんと朝霜をうらにおきたる杜の葛の葉福養 春の頃わかれて行し霜は今朝ふる里なりと帰る冬草 桑折 一竪の物横にもなさぬものうさも日の出て動く霜柱かな 日艸ガ花一 吉原 腰いたとあたはら病のわぶるなり風さゆる夜の霜の袴に 干菓子かと見れば散にし木々の葉に衣を進ておける朝霜 目妙 つめたさはさも紺掻のもがり竹ひやと聲する霜の朝風は跡人 駿府 雪ほどに寒くはあらねど辷らじと足のふるへる霜の棟橋石文 槿の枯残る蔓に花の咲霜を見にけり早起をして磯名 一父中三十七 片倉 初雪にあすは桧くおく霜のはしら組とはむべもいひけり川常 枯る本等にかゝれとてしも霜ふれば黒髪山も白くなりけり松年 敷たへの衣手寒し夜もすがらうまいもなきの霜の朝起浮邨 ふせ庵のまげ庵よりもひた土に細き柱をたつる初霜糸女 木更津 神はまだ出雲へつくかつかぬのに結ぶもをかし椽の初霜和賀丸 黒羽 出雲へと出ます神の留守もれとおかるゝ物は朝〳〵の霜勝麻呂 朝霜を踏けすほどは塩売のゆりこぼしゆく甲斐の柴橋真顔 冬月 千鳥なく絵嶋が浦にすむ月を浪にうつして見る今度哉西行上人 波那細 汐越の松をから風吹ぬきてされに氷る冬のよの月松俊 裏微加花三 天の川に氷りつきしをはなせしかたわれて今朝月ぞ残れる 裏微加花二 青梅 一橋の上のかたゐにかすと村重の取ぬぎたる月の寒けさ古道 裏徴 田ごとみないてかへれども猶すむ姨捨山にすごき月頼跡人 米沢 あちは照りこちはしぐるゝ冬の夜の月の鏡も裏おもてあり 立田姫ゆきて佐保姫くるまでは空に淋しくすめる桂男 冬の夜の月の寒さをみかねてや雲の衣を風がもてゆく幅足 冬の夜は月のをとめも桂男もかたいやうにて惚る人なし 笠間 有明の影の次第に薄くなるは出る日にとける月の氷か 冬川の氷の上を渡る時月のあやみもおそくなるらん満足 身の毛だつ冬の夜道に顔と顔げつとさせたる月のをとめ真門 目妙加花一 市川 おく霜の白研めきてするときや長力坂の冬の夜の月 一関 秋は人にかなしがらせし桂男もこはい顔する冬の夜の月 父中三十八 一、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、〇〇 頼かくす木葉表は散果て寒て見ゆる冬の夜の月近道 三箱 研立て光すかどき砥並山焼鎌なりに出る冬の月拙斎 宇都宮 目のさやをはづして寒き空見れば創のやうな冬のもの月 銭のごと月さし出て冬の夜はすごくも人に見ゆるものかな雛躬 冬の夜は光するどく清盛のにらみし汐に影主えき月注連縄 藤田 水を出て水よりさゆる氷より上にさゆるは冬の夜の月 みなれ棹さす手つめたく筏士の砕く跡より氷る月影真頼 時雨ぞとあかる落葉にはかられてはからず冬の月を見る 大田原 草の葉にのせたるにろを風が来て霜におき直す冬の月影 水底にやどして池の氷る夜はどこより出て月のゆくらん喜代住 きら〳〵と雲舟をはるより冬の月凄く見えたる雲の花手方住 いかにして流るゝ星ぞ大空に月さへ氷りつける冬の夜隅成 〽しぐれんとすれば松風声立てやがて呼出す寒の夜の月桐住 寒かさは鑓のごとくのなら風に月のすごきを見する冬の夜鞆絵 影やどる池や氷のはつたりとにらむやうなる冬のよの月麟馬 夕雲の袖頭巾着てゆく月の色の耳やつめたかるらん凹 夕凝の霜のまたいをあし代に軒よりのぼる冬枯の月真顔 寒草 道すがら枯野にたてる貌が花ふりわけ髪に霜おぎにけり俊頼朝臣 裏微加花三 おきわたす霜にさふしとそな見れば尾国も袖に手を入にけり柿人 青梅 枯尾花冬の袂に飛つくはまねけどゆきし秋の恨か綾繁 母子草かたみに霜やいとふらん重りあふてふせる冬の野磯名 文中三十九 { 裏徴 左貫八幡 夕霜の上にも月の霜置て二重になりし翁草かな酒 浦風に芦の穂綿の吹ちるをよせて氷のとぢかさぬらん 高畑 見し秋の花は夢野の鹿鳴草葉枯にけりな霜を重ねて 糸薄短かくなりて此ごろは霜のどぢたる野辺の寒げさ 日妙成花一 芳野 一絵書のふりし野原も冬枯てたゞから〳〵となる草葉かなし 浅方 仙台 十二支のふす猪の床の萩までもかれてはもとのねにかへるらん。 一関 霜枯の草の中にも多胡の碑のあたりはさすが縁㙒郡 声音 目妙 三崎 冬枯て野べははむきの草もなく霜にふしたる駒つなぎかな 風よりも霜にはつよくおされけんもみくたにせし野の藤袴 賤が家の鎌より霜のすかどくておのれと枯る冬の百草家樽 月影をやどせし袖も霜がれぬ人より草は老となるもの真風 多古 かく広き世辺のかるか如枯果て風の宿かる片蔭もなし艶良 小野宮 から風の茨の中のまゝしきをいたいけにさく霜の撫子 橘良 高畑 此ごろは萩も薄もみながらに霜に臥猪の床ぞ荒たる 三味 水仙の花の底動く時はにしみ渡る風ぞ寒けき御代成 御代成 若草の春は夢野に冬枯て霜の翁となれる哀さ 青梅 喜代住 おく霜に腰のかゞみしそみなへしをうなへしとや今はいはまし 寿 小山田のくろに白きは二度咲かからすが中に交る鷺草 霜枯は露に飢てや片岡にふせるなでし子あはれ花なし真顔 霰 さら〳〵と教ふる夜は竹の葉の名におふさゝに酔はじめけり暁月法師 波那征 一関 山風が鬼の出さうな雲追へばなやらふやうに霞たばしる 声音 父中四十 裏微加花二 桃の口の水の上の玉教たゝきて明るごとくふるかな真枝 裏微 十五十五日霜枯の蓮荒破りておのみ玉まき散しふる霰かな 吉原 素顔 田場坂 ふりこみて消もやらぬか玉霰空くものぼる風の荒波 打つて板屋の霰おのれさへいたやといひて飛上りけん袖 高畑 あけたてのきしるやれ戸のすき浅て走るは早き玉霰朝 白玉か何ぞととへば露よりもしばしこたへてきえぬは霰 目妙加花一 音高くふるや新端の霰酒したみにあたる夜はの寒き 目妙 板庇屋根うつのやの十団子ふるかと見れば霰なりけり あぶなきは柳の枝にはじかれて椽の板まで霰たばしる家樽 雪ならば花と見ましを木枯にあたら莟の霰散せり百馬 山形 あつめてはふみよむ辺に見かけて窓打たゝく玉霰かな 勢ひは虎もかくやと竹蘇を尽る霰にひようも交れり倭文雄 桑名 木のもとにやどれば飯は椎の葉にもりこぼれたる霰也けり馬伎 見かけたる夢も砕けて玉霰音もいたやのむねにひゞけり住安 玉霰ふるほどもなく出て見れば夢のやぶれし音かとぞ思ふ柿人 坂志岡 霰にて打ぬく窓の穴よりぞ又ひよう〳〵と風の吹こむ 二本松 ものゝふの衣紋つくろふ袖の上に小紋と見えて霰たばしる百 犬山 散るを履冠に雨をいたゞきて玉といはるゝ霰ふるなり 柴負ふて山路をいそく足音と共にたし〳〵霰ふる也琴葉 はら〳〵とさながら豆をまくやうに霰たばしる柊のもと たれどもさらに疵なき玉霰みのゝ毛をふく風のざゝに あられふりかしまの山の要石ぬかんとすれどぬけぬ玉かな 父中四十一 都雪 路わけて准いそぐらむ九重やとのへにつもる雪のふる沓為家卿 波那細 降つもる荷前の箱に国〳〵の雪をあつめて見る都かな真風 裏微加花三 佐倉 京中を掻あつめても大仏を作るほどにはたらぬ初雪 裏微加花二 松本新田 かきくらしふれども雪をみそなはす天気のほどはよろしかり 吉原 やさかたれ都女の足跡もすさまじく見ゆる雪の朝戸出 裏微 仮名:日中に柳桜のおも朝も朝も都ぞ雪の錦の錦の小路 小平 片倉 白たへの梢は雪の衣かづき都ぶりして立柳かな 芳野 豊なる部に雪のみつぎ物風がはこびてつもる白たへ 越路なるものとはいへど色白き雪は都に恥ぬふりかな長路 すべ〳〵と上廻りする雪いてにとはで油の小路とぞ知る寿 姫路 霰にて玉敷の都そいくになどかいやしきふれる白雪 御築地の外の白雪しらぬ顔にそとはきておくか伴のみやづこ寿 気仙沼 をさまれる御代の都はことさらに静なりけり雪の曙歌胤 姫松も柳桜もかづき着て雪は都のものにぞ有ける綾廼門 青梅 木も竹もいためぬほどの薄雪に都は夜さら扇折る音井芳六 芳文 人にさへ物和らかにふりかゝる都の雪はやさしかりけり春則 友さそふ文はよべよりかきたれてふるを都の雪の花山打人 高崎 烏丸朱雀も町の名のみにてたゞ白鳥とみやころの雪 鞍馬よりいそぎふりくる物ならん柳の馬場のけさの初雪臍主 常はさは見ざりし物をふる雪にくらへて黒き都人かな甘法師 目妙加花二 たをやかれふりを見習ふ都には雪のふりまでやさしかり事御室 目妙加花一 足跡のつくをいとひて清水の舞台を飛ぶか雪の傘百馬 栗橋 朝寝せぬ奈良の都もふりつめばおきて見えざる雪のくれ竹 玉敷の都の人はことの葉もしたにたまらぬ雪をめづめり王成 雪の日のをけら祭の争ひも京はけら〳〵笑にぞなる侘住 桑折 み津空雪のをとめやけぬらんふりのよろしも豊の明りに金文 目妙 心なき物とはいへど草木まで都は雪の花をかざれり 仙台 近道 三浦 山つくる御所女房の興もまた北の方こそふかき白雪 豆成 三崎 一面に京おしろいの雪ふりて一しほめだつ唇の紅粉 仙台 はる〴〵とのぼる都は雲井にて此上なしの雪の花見ん ちら〳〵と花ちるさまのふりもよき梅の小路の今朝の初雪松金 独して見るも押ゆ路友よびにいなば薬師の雪の曙満成 ひら〳〵とかづき吹こて京女たびら雪さへ身にはつけざる真弓 一関 積上る米も西山東山穀倉院の雪の白たへ 二本松 道もなくつもりて都見物の談合器も出来ぬ深雪 ふる雪に上り下りもおしなべて都の町ぞ平らなりける琴葉 ふる雪は花にぞまがふ夜の内に植し桜の千本通目積 芳野 豊年の貢を望の上よりもまたうへさまにふれる白雪 一象雄 青梅 三條の柳の高妙にふる雪のたけをつもれば六寸七寸あり 浅走に大宮人やおぼすらんかえが歳よりつもる白雪下蔭 新庄 あつらへたやうにふるこそをかしけれ衣の棚に今朝の初雪 桑折 おもしろき物のふるとは見れがらもたまらず消る鴨川の辺高持 鴨川の水の軽きにふりかゝる雪は重くて沈むなるべし奥成 一 佐倉 美種 跡つくは宇治の都と出ざれば雪に別義はまづなかりけり 高崎 一面に降埋みては都図会あやの小路もわかぬ雪の日秀樹 碁盤目の都の町や白勝に黒地まれなる雪の曙員人 桑名 白無垢を着たる姿や綿帽子衣笠山の雪のあけぼの指月 目印もわりぬ木屋町竹屋町皆白たへの雪のあけぼの皆丸 尋てもしれぬ都の町つゞき竹や丸太もうづむ大雪米守 御所近く都そだちの女松かづきまぶかに着する大雪鈴茂 朶折 直垂の袖のもやうとふる辺も朝日の門に入れば消けり金輔 もみぢ葉のよじりてふれば鉾とも見るは都の西陣の雪金雄 桜木に絵かき柳に花結び雪も都の手ぶりにぞ降る真顔 山雪 金ふればみな山しろと見ゆる哉久勢の驚坂いづくなるらむ契冲阿闍梨 波那細 桑折 薄ぐらきからの鏡の山見れば心ときめく雪の夕暮金文 市川 唐土もまばゆかるべし日の本の鼻のさきなる富士の白辺 陶松 花鳥里 一庭につむ薪は尽て門につむ雪にたても凄き山犬真明 真明 裏微加花三 市川 高砂の尾上の鐘の落すかと暁ひゞく松の雪折 戸塚 真杖 つくばねの峯より風の吹おろす雪はつもりて山となりけり 裏微加花ニ 芳野 名にしおふ逢坂山もふりつみて五味は見えざるけさの白雪 一浅方 佐倉 年〳〵に囲ふ氷室の山気がかきいれにする雪はふりけり美種 踏出せど跡じさりする大そわやこゆきにならぬし賀の山道真弓 青梅 谷川もほと氷りてふる雪に帯をとらるゝ吉備の中山綾繁 裏微 高畑 木〳〵の葉をさそひ尽してふる雪に山の聲也 一文十四十四 市川 ならに山に逢ふりぬれば黒木もてつくれを宿もいとゞ面白常道 これも又山のあなたにかくれけり雪の峯ゆく熊の月の輪千賀江 八葉の御領も分れず雪につみて莟める冬の牡丹とぞみる真門 もろこしは冬を春にて寺野山桜国さく雪の白たへ跡人 赤人も真白くなりてふる雪に我ごと田子の富士や見つらん松俊 さびしさの夕べよ雪の山里にふりこめられて秋やまだゐる真綿 平潟 雪のけしきよしとよく見てよき人の吉野の花は植はじめけん安満 一関 三吉野の山の白雪薄かるははやく花さく所なるらん 駿府 山姫のはじめてつもる雪なれば裾にはすこしたらはざりけり 桃下亭 市川 時しらぬ山より雪のふりつゞき夕暮だにもわかぬけふかな 桑折 ふりかはる色は人目につくばより黒髪山の雪にぞ有ける御空 目妙加花一 大空と同じ高さい富士のねに何処から雪のふりていばし 味酒の三室の山はほか〳〵ともこのしたみのにほふ朝日子琴葉 高畑 目妙 高夜の山の山の山の山の山の雪の光によるもあかるし津房 市川 ふる雪は枝にとまりて白鳥のとば山松ぞけしきはびこる 丁田 あたゝめて消る物とは思はれず山ぶところにつもる白雪基丸 一群の奥女中とも見ゆるなり黒髪山の錦帽子雪 三浦 山道のけはしきをゆく雪の日はのらぬ身さへもそりて下れり 仙台 一夜焼が通ひしきか雪の道一筋黒き大原の山 時雨空氷りて雪となら柴や山は寒さもましばこる人 茂木 綾迺門 豊年のしるしや民のかまど山雪の烟を立る松が枝 一菊人 山形 踏込て一足ぬきに鳥の名の鷺坂山を下る大雪 枝折 三吉野の雪を花かと見る顔の頬の赤きは影やまばゆき妻 出羽米沢 陸奥のこがね花さく山も又銀山となる雪のこのころ東山子 犬飼の山の尾上にふりつみて伯母鹿顔の雪女郎かな琴成 舘林 つむ雪を誰かあつめて冨士の山これも一夜の内につくれる 舟木こる山に引おく板の上もつくらぬさきに雪をつむなり満汐 月影と見るほどにまだふらねどもはつかのこの雪の有明白嶺 富津 雪の日はをさなくなるか寒しとも思はですめる山のふところ徳網 香具山にふりつむ雪は夏の頃ほしたるきぬの錦かとそ見る 山の背もたわむほどふる大雪に腰をかゞむる峯の松が枝春家 新庄 多古 仙人のおのれと作る次郎をば重に吐出す鉄楊が峯翁人 山松の風にしらべる声の緒をたてるか雪の下折の音浪捕 月と見てなくも吉野の山鳥頭も向しおもしろき雪桐住 うつくらう降つむ雪の白いものぬり立たりと見ゆる妹山仝 花の雪月の雪より誠ふる雪に心をおきつ島山常道 旅人も一足ぬきや白鳥の鷺坂山の雪の夕ぐれ仝 春近き南の山につむ雪はかけて崩れるほどぞめでたき物築 この上に出るながめはなかりけり山をも埋む雪の曙仝 杣人はいづれのをより通ひけん雪に跡なき声引の山真澄 綿帽子の雪は常なるふじのねにそ朝は足袋はく足がらの山 此ごろは空より雪のなかねをふくかと思ふ吉まの中山真明 河内綿なにはの市へはこぶす雪をつけ出す生駒山哉真顔 海邉雪 一 雪ふれば波のぬくみに浦に出て男鹿の角も花ぞ咲ける俊成卿 波那細 澳にをれ波の白馬とも色の磯の初雪よらばそぬべし 裏微加花三 三浦 雪づみし汀の方は鋸の刃のごとくにて波ぞよせひく 駿府 男子の浦に打出ても見えぬ雪ふゞきちひさき富士の出来る宝倉 裏微加花二 わたづみのかざし一枝手折るかと見ゆるは雪に寝かす帆柱 磯にふる雪の色にも波の花たちおくれじとよせて見すらん水枝 まだ魚はひかぬに海士が釣竿のたわむは雪のかゝるなりけり 裏微 磯辺よりさゝ出の松の寝姿は雪の蒲団に波枕かな 岩城 苫舟につもるはなしは白雪のものいふかともうたがはれけり 緑 立田 住吉の岸の姫松むこの浦にむかひて雪の綿帽子きつ山角 ふる雪や千かきの底につもるらんたつ汐さゐの高く見ゆるは藻丸 月夜ならさもこそあらめ烏崎雪にうかるゝ蜑がさへづり 波の上にふりてしづめば水底の海松の枝も雪折やせむ馬伎 海人が子の頭は白きかみとなり仏ともなる雪遊びせり端文 風荒み遠灘こえてくる波も雪を蹴立て走る白馬真綿 青梅 伊勢の海に雪をみるめのおもしろさ酒をば蜜にかづきもた 塩竈に酒汲かはし雪見れば松の木の間に舟のちらつく 目妙加花二 目妙加花一 海へ入る雪もや汐になりぬらんふりつゞけぬはあぢきなけれど ふる雪はみな水底にこゞりゐていとよくにれば皆ことこそ見れ梅守 目妙 塩釜にふれはされはさ塩に似て風に烟をたてる白雪真似人 全 時雨には染にくしとや色かへて白地になせる雪の松島 日野 うちけふる松が枝さへもたるゝかな塩に似てふる磯の御雪 一 文巾四十七 山形 やく塩とうたがひはせぬ蜑まてもなめてみるめの浦の初雪 ヲ春信 栗橋 唐泊雪にうづもる筥舟は我の重さをはかるとぞ見る清丸 海士も手を組てやめでん田子の浦雪はたれにし塩に似てふる はこばする嵐は凪て枝は皆雪をたれたる汐こしの松 打かくるいはほの上も雪つめば波に色なき黒崎の浜 仝 一関 一升の塩ほど松の雪をつてやかぬ浦わにたつ烟かな 浦風のさそふ千鳥を見習ひて海辺の雪ぞ舞て落ぬ杜路 蜑の子が渚に作る白うさぎ波に騒ぎて走るみちしほ 新庄 鯨とる熊野の浦の夕風に吹上し雪を汐かとぞ見る杉守 大舟につみて出そ山の砂糖よりなめてあまぎる雪の白さよ千賀江 寒けさにかづきの蜑も出かねてたく火の影をしよふ雪の夜数頼 海原にいづれをそれとしらそのならびてとまるみを税の雪真門 浦づたふ舟の上まで雪つめば海にもしらぬ山ぞ出来ける真風 吉原 磯辺には山をなせどもつむ雪に渦までなみは同じ海原 蟇は何を汐たれ衣ぬれずして家にもかづく雪の白波 海士人もうかしと手をぞ組て見る塩にも似たる雪の高浜 諏方 ふり入る雪のたまらぬ越の海はいくらばかりの深さなるらん 波の間に消ゆく浦の白雪や海士のくむてふ汐となるらん ひら〳〵と風に舞子の漬なれやおもしろき雪のふりを見するは真雲 甲府 達筆に白紙のつを旅人のかき散しゆく雪の浜道 若の浦洲とも芦とも白雪に田鶴寝かねたるよはの寒 桑折 皺ばかり見ゆる女波の海面をぬりかくせとやふれる白雲見詰 青梅 磯馴松かくすを海やにくみけん波打よせて雪をもてゆく綾繁 雪はるゝ鏡が浦はおしろいに夕日の紅粉もさしてうつくし真顔 水鳥 おく霜は青本にのうへにかさねつゝ柳に見ゆる鴨の毛衣後九條内大臣 波那細 寝所の広沢の池にふしてだに足をながくはならぬ水鳥和布刈 霜枯は池の心もせはしなく月日のごとくめぐる丸鴨種成 裏微加花ニ 関宿 珊瑚珠も流れてこしの入海や波に見えすく水鳥の足 薄氷浮棟の床の寒けさにむぐりがちなる池の水鳥数頼 夕されば峯につきつゝ氷よりさきにかたまる池の水鳥四 玉草を妻におくるか河の瀬を流しがきなる水鳥の跡 橋杭にせかるゝ水のわかれても又さきであふ宇治の琴譽 裏徴 信濃御子紫 をし鳥をうらやましげによそ見して岸の氷にすべる沓鴨 友足、 高畑 白波の白髪かぶりて鈴鴨のひなは渚の宮参りする 真名冨 打見れば礫くゞりつ浮上り子供だまして遊ぶ水鳥 岩城 藪輔 猿沢や采女の宮に気のあはでうしろ合せの池のをし鳥 仙台 三崎 もち縄のあたりをよぎて妻鳥とひつつきまはる浦のあし鴨 博芳風 姫路 ぬれそぼつをしの毛衣ひた〳〵としたゝるき迄つきてはなれず。 都万留 駒とめて見やる波間に輪をかけてゐる水鳥ぞ汐に乗ける 深き池薄き氷を踏ありく子鴨は水にあやふかりけり もみぢ葉の中の絶たる所をばはなれぬをしの寝床にはせり磯名 はたれ霜ふる江に浮ぶ松紅葉見れば青首赤頭なり武光 合もよきつがひのをしはふすまさへ重ね箪笥の二つ並べり満成 父中四十九 、 駿府 魚と水中のよいのを見習ひて並ゐる鷲もはなれざりけり。 真哉 上依知 せし鳥の深き妹育やねふらん松藻をおふて浮む蓑亀 鴨川の水のかるめのその上にかるめにかるめ重りて見ゆ奥成 水くゞり波枕する浮寝鳥あしの短かき蚊屋が渕にも千賀江 中川の岸は氷にふたがりて潟たがへしに来たるをし鳥 木更津 むつまじくこちらも女夫おり立て二羽ならび見る池のをし鳥松盛 田嶋 箱の池に鶯のつがひのはなれぬは氷の轄させばなるべし いづこへか今宵氷らぬ方違へ寝にゆく水も中川の鴨 酔醒の咽のかわきて暁に恋しくぞきて水鳥の聲 敷寝する蒲団にいれし毛衣の妻を着てや鴨のなくん 打よする波の枕の高ければ寝にくさうなる沖の水鳥 かつみれば浅香の沼にふたつがひよひらにうきてめぐる水鳥真門 波枕玉藻の床にむつれあひて菱〳〵とよる池の水鳥空寐 真具山に来てやほすらん垣安の池のかもめの雪の毛衣綾繁 目妙加花ニ 物をこそいはねあなたよそなたよとつれだつ輩は女夫なからん道足 目妙加花一 水鳥は尾先の真揖しゞぬきて足早舟に嶋の海面真締 鴨の身の油になせそしら紙の磯わの波を枕にはして 釼羽にきるともきれじ池水のさびくさりあふ鷲の恋中 笠間 吉原 かくましく音をなくよりもをし鳥のしたやすからぬ浮寝苦も 目妙 一池水に錦洗ひて岩の上のひなたにほせりをしの毛衣 山形 妻こふる駕の夜床の離れ際きたなくみゆる浪のみ哉千千 磯草の生る波間を離れぬはめを恋はたるやもめ鴨かも古根 父中五十 ともし火のあかしの浦の汐さきに油の乗て走る味鴨松俊 重箱のふたみが池のをし鳥は水も洩さぬ中ぞわかなき坂都樹 米沢 末々の葉も落てさびしき池の面にかれぬはをしの契也けり蔵満 栗橋 筑摩卿にぬけくゞりする水鳥は鍋の数をや洩んとすらん をし鳥はよんべもつきぬむつ言につかれてけふは昼眠るかも水枝 むつまじき友寝のをしをおこさんと氷の枕うつさゞら波耀 屏風絵のうきて見えたる水の面に蝶つがひなき雪もむつ むつまじや浮鹿の鴛の一つがひ肩をうつ波背をさする風江戸振 相寝するをしや騒ぐと氷ゐて声たてぬ波も心ありけり房麻呂 冬ざればこゝを借家と証又の印幡の沼にこぞる水鳥於亀門 妹とせの契も深きをし鳥は世にもめでたき鶴亀の池琴葉 浦波の上を飛ぶにも羽を並べうねをうたしてかける水鳥 十府の浦に驚も独寝すがごものみぶるひをして妻やこふ 楽みに餌さもあてがふ放し飼はなしても庭の池のをし鳥十粒 浮寝する浪の枕を並べては鷲の契の深き池水 一月影のすみ馴し池の水鳥は立ても跡は濁さゞりけり 風に寝し芦の枯葉の中に又青羽を見する鴨の一群 妻どひのしつこきくせに薄氷の中をわりたる鷲のいたり うら若きをし鳥ならん見かはせし顔を羽袖の中にかくすは 池水の浪にまかせる素直さは柳に似たる緑毛の鴨 飢波に水の心やねたむらんぬしある池に放れをし鳥 千住 笠間 ヒ守 芳文 友由 仝桑成 →仝幸風 駒主 浮枕横にぬるまのすくなくてたつ事多き風の水鳥 父中五十一 新庄 こぞりたる池の沓鴨ぬぐ沓のかさなるやうに鴛は思はん 多古 一鐘が渕にゐるをしとりのたゝらふむ足もとよりや水をおこつし艶良 新庄 こと妻はもたぬてふ鶯のいかなれば沓のかさなるやうに見ゆらん 水鳥を見に来し人も池の辺を足のいとなくめぐるなりけり 粕川 いつ見てもつがひはなれぬをし鳥は魚と水との中に遊ぶか未 摘草 名古屋 冠毛はなにがしなるか冬川の河岸づき出る鷺の一群雅流園 鴛鴦は恋づかれにやつかれけん落汐しらず岩に眠るは 戸塚 高崎 波の上に浮寝をすればおきつ鳥と枕こと葉をおはせかんかも東水 印地せし河瀬の水にむれ居つゝ波打こゆる石つぶてかも松人 誰がひきし曲に聞馴て水鳥の足に畳かくまねはなすらん 背につもる雪の重荷に沈みては身性に浮む池の水鳥 小曽戸 池の面に影のうつれる岸の方のさかさまに立てあさる水鳥 福島 足をしも蓮の糸やつなぐらんめをとはなれぬ池の水鳥 桑折 水の面にはなれぬ鷲のかたらひはあけていはれぬ箱の池かな 水鳥の下の思ひやはりつめし水の上にのぞむ哀さ物築 鴛鴦の恋のやつこを出さじとや水繰さすはこの池水真顔 網代 流れ来る紅葉の色のあかければ網代に氷魚のよるもみえけり公忠朝臣 波那細 宇治川の霧は網代をもる人の手に吹かくる息にやあるらん磯名 吉原 夜もすがらたける篇もあかゞりも風をいたみて網代もからし素顔 網代屋の篝のもとへ流れよるあ葉にまじる氷魚ぞあぶ千賀江 さればこそまだ初冬の網代守あじろからもる水魚のちひさゝ空寐 父中五十二 篝火にぬくめし酒を呑ながらさかなもいらぬ網代もるらん四 裏微加花三 河風にあしろの布も守人のつゞれも板と氷る寒けさ 裏徴加花二 宇治川の水の中よりひをとりてあやしの筏の網代もる見ゆ真楫 一関 永魚使たてば残りの魚を又より取にする宇治の川長 声音 ふくる夜の眠気をさます烟草には石の火をさへとり網代寺跡人 大田原 朝ぼらけ網代につきし獺までもあらはれ渡る宇治の川方帝成 裏微 吉野川網代もる翁が白髪はひをへてちらぬ花かとぞ見る下蔭 網代もゝさつをが留守の夜なべには妻も授をとりて市やなる千万多 田上や網代は冬の物なれど氷魚は我物顔に守れり 青梅 綾繁 目妙加花二 大内に備ふるとてや篝焚濤士のたぐひか網代もる人 目妙 一土もすがら網代の床はさゆれどもひを力にてもり明すらん 関宿 真言の氷水にぬれて阿字呂守垢離とるやうに氷魚やとる 来る魚をまつほどねむき網代守漕出す舟の暁の鐘音澄 伊勢人のその癖言も業はひのひをゝ利とする宇治の網代木 水晶と見つる氷の床寒みこれも心をとる物よあしろ木杜路 帰り来てやもめ暮しの網代守隣から火をもらふをかしさ古則 魚と水よき中の瀬の氷より丸くはりたる渕の網代木松平 霜さゆる夜を守明すあじろ小屋ひを〳〵は風も音なうて吹鳴音 左貫八幡 水晶のやうに氷れる河の瀬にひをとらんとや立るあじろに水紋含 糸よりも細き手業のあじろ守とれぬ日をだによく暮しけり真津友 今井 宇治人は永奥やこらんと夜もすがらなれも網代にかゝりてぞ 此ごろは世の事やめて氷魚を取人も細代にかゝりてぞゐる和布刈 桑名 薄紙の吉野の川の網代守かゝる水魚やすいてとるらん音澄 企 はたにおる絹川のべの網代守衆もひをとる業にぞ有ける千枝麿 駿府 一佃代守烟草のむをも落すらん手先こゞゆる宇治の川風和海 桑折 さそひあふ宇治の河風霧ふけば月とひとつに出るあじろ木 橋姫の物見車かからにしき網代にかゝる瀬々の紅葉真顔 神楽 建礼門院 霜さゆるしら薄やうの声きけばありし雲ゐぞまづおぼえける 右京大夫 裏徽加花二 裏微加花三 勝ものゝ隙をばそこにおけ〳〵とさやぐ霜夜にさわぐ祝部等 がたくとするほど寒し天の戸の明がた近き杜の夜神楽 芳野 千万多 花守 仙台 神代よりたえぬためしもふる鈴や笛は心いふうみかぐらの音百歌 夏川の輪をくゞるより祝部等がすくむ霜夜の神遊かな磯名 さえ渡りうたふ榊の神代よりしもよも幾夜亭の枯せぬ奥或 夜寒をもしらぬ酒尾道つい殿御火に酔つゝうたふ祝部等四 裏徹 あれさやけさやけき月に八をとめの舞ふ袖遣し火桶おけ〳〵金文 芳野 〽ほう〳〵と利もて舞ふ手先まで水のごとくならん夜神楽 天の戸のあけの鳥居に鶏さへがみだれてうたふ朝くらめ戸寿 世の禍を神はのぞかせてのぞくらん雪におもしろき月の御院 天の戸のうずめに開く頃までもとりかぶと着てうたふ夜神楽柳馬 ちはやぶる神の心の霜なればときまつらんとうたふ榊葉真枝 吉原 白く焚御火によりつゝ寒けさに神酒の黒きもわかす神霧 夜もすから神の庭火をたくぶすましらけて見ゆる霜の榊葉百村 ふりまはすみこが剣は刃引にてきるゝばかりに寒き夜神楽松人 父中五十四 一日加花一 山形 聞ほれてゐてはとりわけ暁がおもしろうなる霜の夜神楽千賀雄 三浦 おもしろく舞へども不将の剣舞手には覚のなしといふね宜 粕川 常闇の昔はしらず底火たけばよるもひるめの宮の御神楽 冬の夜も次第に深うなりぬとやあさくらかへしかたふ宮司貞俊 目妙 ちはやぶる神代のまゝの神遊び今は霜夜を照すかゞり火 仙台 焚立て祭る焼に近よれば冬のあつたの宮の夜神楽 岡澄 出羽山形 神あそびあら面白やおもしろと岩戸の口も明て笑ふか 瑞生 富津 住吉の神楽の笛に合すらん琴の音通ふ峯の姫松 霜さゆる杜のしめ縄はり上て声も枯せずうたふ榊葉 三河 宮ねが庭火を焚し寒き夜は神もあたりにうかれ出らん真枝 夜もすがらきねは煤をたく豈に神の心もしる神楽かな鳴音 松風に声をゆづかで夜を寒み御火かきならしつどふ宮人空寐 一花もすがらうたへる星も天の戸を明方近き朝くらの聲 わぎもこが声を合せて七つとり八つどりまでもうたふ宮人四 夜神楽の霜に剣の光らぬは稲荷の宮の赤鰯かも津守 神に舞ふうずめの鼻の低きこそあゝをかしやといふはじめかな松人 一火を焚て御前の庭にたちからを神代のまねを霜の夜神楽明之 をとめ子が袖ふりはえし其駒にのりて遊べる神は何神 煤たき神をたばかる神遊びうしろぐらしと誰かいふべき真顔 早梅 鶯の来ゐん春までやつさじと梅には雪のおほひしてげり俊恵法師 波那細 姫路 花の親とよばるゝ雨に先だちて師是生るゝ梅は誰が子ぞ 父中五十五 裏微加花三 せはしなき老の心を探りしる梅こそ冬の春は見せけれ千賀江 とこやみの室の戸明て白〳〵と梅咲出る神楽月かな真門 裏徴加花二 出羽山形 ふる雪と色争はで冬ながら咲けり中のよし垣の梅雪 雪守 一関 一日にひとつづゝさく梅の花くれゆく年のさも惜気にて 名古屋 春またで花の兄とし弟とし子としにさける梅がかぞいろ園丸 裏徴 霜寒き庭にかじけてさく梅をにが笑ひする室の椿か春好 咲出て雪をあざむく梅の国冬をも春とあざむかんとや水枝 一関 自然とはほころびかねる室の梅むり咲にする袖薫るなり 隣まで来てゐる春に逢たしと東風からにほふ庭の梅がい 気仙沼 どう見ても若木はとしの雪の中にさき走りたる風の梅が ゆく年の内ぶところにさく梅は来る佐保姫のにほひ袋が酒賦 佐倉 火桶にはまたたき物をくれもせぬ年のうちかけにほふ梅が香美種 四五輪の梅は隣の音へさへ顔出さぬほどのうちばにぞ 文好む梅とて年のあまりには学の窓に火をこもすなり明之 早咲の梅をほむれば角出してねたくや思ふ門の柊歌種 鶯がこねば縫れぬ雪おほひ人の笠かる子咲の梅真 青梅 ほのかにも軒端の梅のにほへるは隣の春の手前しのぶか 山形 目妙加花一 ゆく年のつめに火ともす梅はまだたゝなき花の香や惜むらん 目妙 向ふからくるは近しき春の日と笑ひかけたる梅の早咲 冬の間をあはせ。木綿もいれぬ内はやほころびて咲る梅が枝 水仙の袴の腰に印籠の蒔絵の梅もにほふ早咲苗水 出羽山形 ゆく年の刻をしめば梅がえもみなみぞ午のはなむけに咲闘鬼雄 節季供がはやせる度に家の内へさつ〳〵とにほふ軒の梅がく侘住 田場坂 一厳かに寒き風にも咲にけり顕の父なる難波津の梅 福島 雪の桁はづして花も算盤の玉となしけん梅の白露 富津 御走人足もいそげばみんなみに走りし枝に早咲の梅 松友 笠間 御師もまだ来ぬなるさきに梅暦家ごとにくばる風の花の あなにくや梅にも雪のかづけ綿仏心もをりにこそよれ於古足 吉原 鶯の宿割ならむ梅が枝にさき走りして花の見ゆるは 年忘れせしあしたには梅が枝も春とおぼえて咲出にけん跡人 雪の中に寒さも老が重ね着の袖にしみぬる冬の梅が黒小田蒔 藪かゝる紅葉の色のひをかりてひやともしけん冬の梅が枝 水仙の霜よけくらきわら小屋をひともしうけてのぞく梅がえ池路 新庄 年の内にまつさく梅はくる春の道をたがへぬ葉なるべし 冬の日のくれぬ内から手まはしに火ともしかける窓の梅が枝真広 文好む梅なればにや物学ぶ窓のともし火に師走よりさく純縄 水母なす枝の雪から梅花海老の眼ほどに見出してげう真顔 待春 死ぬはかり待ぞわひぬるむさし證さすがにかけて春をたのめど長嘯子 波那細 花ゆゑにまつとないひそ隣なる春にきこえば来ずやなりなん水枝 うれしさはあすくる春を待宵やくれゆく年の鐘はものかは満成 立かへり又来る春を松辺やをしまぬ年の波にあらすな 裏微加花三 一関 佐保姫を友とや思ふ女の童もういくつ寝て来ると無まつ聲音 裏微加花二 事しがき年の内にも春をまつ心はむとつべちにこそあれ春則 一、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、〇〇 夢のやうな浮世袋やとそ袋ぬふて栄花の春をこそまて空寐 裏徴 待るゝにいそぎても来ず気の長き春をせはしき年の内より方住 芳野 鏡ぞとなつくる餅をつく日より春へ心のはやうつりけり浅方 南向しかばや梅の花むしろ東の君のあすそすとて真門 駿府 年を経るわら屋も雪の中ながら心に春をしめゆひてまつ 青梅 氷る池の魚をとるにも暖気にて親の出あるく春ぞ待るゝ 老らくの子供心にいくつ口膝てといくつになりても春は待るゝ春則 春をまつ心の内のせはしきを見て心なくいかでまつべき真枝 いくつ寝て春ぞととへるをさな子に習ふて年の浅瀬わたらん千賀江 春をまつ心となるは老の身によき補の薬なりけり美種 年一重心の花の壁訴詔春まちわびの種と思へば物梁 諏方 居ながらにまつは中〳〵苦しとや春をむかひに年のゆくらん吉金家 高浜 つめ桜をおる葉だにも手につかで心をさなく春ぞ侍るゝ真秋 高崎 寝る目をも寝ずして春を待ば猶ねぬだけ冬を長う覚ゆる亀水 田場坂 目抄加花一 日春待て一夜の梅の莟をももゝよと思ふ心してけり綾 京女待つゝをるらんあづまより来る春山の霞男を下陰 春をまつ心に余りさわがれて山に霞もたつかとぞ見る 三箱 目妙 近づきし春を松とて隣をも見まがへるほど門に立けり暖丸 三崎 餅花も咲せて家ごと待けるは何ほど果報もちし春かも 一つづゝ年はふえてもかぞへ日をへらして春や待かねぬらん宣俊 駿府 富津 事しげき中を旅立万歳の子供は親の帰りそやまつ 千金の春は隣の物なりとしりつゝ指を折てこそまて柿人 切餅の霰たばしる俎板に七草はやす春ぞ待るゝ千万か 鰍沢 暮てゆく年の尾坂の峠よりむかふへ見ゆる春ぞまたるゝ 今井 年のよることも忘れて若がへる春まつ心はや若がへる丘守 年忘春まつ宿ははりかへて障子もきりに皺のばしけり光丸 桑折 年の内にいまだたらねど春まてばまづ日の長くおもほゆるかな 髪に雪いたゞきながら春をまつ心の花は散さゞりけり 花鳥の土産にほげて老人も子供にかへる春ぞ待るく真顔 追儺 鬼すらも都のうちと蓑笠をぬぎてや今宵人に見ゆらむ凡河内躬恒 波那細 ○二月一日よき梅は人みな内へ入置て鬼やらふとや誰かもらはん水枝 なやらふにやらぬといひて鬼よりも近ゆく年をよばりかけてん 裏微加花二 木更津 かしましきなやらふ声も宵過て静なる年の夜といはふらん比名文 高崎 大減る鬼をやらふといふ人に掛をとらうといふ鬼もあり釜成 仝 逃る鬼をくはんとするか節分に煎たる豆の口を明しは 裏徴 一関 さうぞきて豆うつ人の真心のあか大口に鬼は懼けん 声音 三浦 世の中のせはしさをしれ豆打て鬼追ふ人も春に追ると 鬼をこそやらへ追儺にあやまつてついなくしたる年にもある哉方 雨のごと芦のかろ矢を射はなてば蓑笠きてや鬼のかくれん 宮人のつい灘をいはでとがむればものと答る鬼もをかしや 手に瘤の見ゆる力にうつ豆のあたりて鬼や赤うなりけん真枝 鬼をのみ年〳〵やらひやかし間に角髪共て老となりにき千賀江 なやらふの豆いる音をやいとかときくか逃出す宿の鬼の子 焦過し豆をつかみてうつ時やにがい顔して鬼も逃らん繁根 喧嘩するごとくこぶしをふりみてこのやらふなの声の大き 目妙加花一 一門〳〵に鰯の頭さすがにも鬼は信心ぎらひなればか 姫路 桃の弓はづして逃ん舎人等もこよひの鬼の役にあたらば 目妙 夜も既に鬼打豆の何ごくと刻をはかつてなやらふの声 片倉 川常 弓手なるつるかけ升の豆うてば年の矢種の足もとゞめず満成 恵方へは少しまかばや福神の足を豆にていたませぬ為成 鬼はさぞあはてやすらん豆よりもうちつけにに出へ出すいはれて磯 鬼髭をくひそらしたるむくつけもなやらふ役に撰出されけり音人 名におはぐなやらふ豆も恵方より鬼門をさきに打はじめざる鳴音 桃の弓いまいか豆にあたらんとはやけどりてや鬼も逃けん 目に見えぬ兎は追しが目に見ゆる老はおはれぬ物にこそあれ 高崎 くれてゆく年を跡へは一足もかへさじとてや鬼やらひする 春のごと黒うこがせる豆まきて赤き鬼をば打けしてまし真名井 追るればあしの矢よりもはやき鬼もすくみてもゝの弓とからむ真顔 歳暮 水の面にうつれる影のさかさまに立はかへらぬ老の波うな頓阿法師 波那細 夜のほどにいそぎて過る年はもしあすくる春につきあたるらん真門 裏徴加花三 佐倉 世の中の師老女の夜がたりもあなかしましと年のゆくらん美種 つまづきのなかれと心かけよかく用に追るゝ年の暮には壽 裏微加花二 姫路 山川のごとく流れてゆく年は心せかるゝ物にぞ有ける 佐原 注連縄をはるのしたくの何くれとかゝづらふ間に年は暮にき 年の夜とはやなら酒のとそまてもひたしてほしき暮のせはしさ 裏徴 高畑 年よれば逢てかたるもむつかしと青のこぬ先年やゆくらん真名冨 かざり松つみ送る暮の上総舟江戸へも喜は東より来る連戒 くる春の書初習ふ子供等は日月遅き師走と思はん侘注 気仙沼 節分の豆よりさきへ伊勢暦まいて仕舞へるそるになりけり わくせくと手のまはらねば今しばしより返したき年のをだ堂柳丁 壁一重隣の春を子供等が見てもせたげる年のせはしさ松俊 駿府 年の市みだれ髪なる賤の女もとりそろへたる春の買物 かしかりのなき楽人は春の来る日の勘定をする年の暮福耳 多古 心よくたゞくれてゆく年月の果は身にしむ物にぞ有ける艶良 市川 年の内今いくかぞと数へぬる指だにも寝ぬ夜とはなりにき 春へまた腰のいたくも持帰る年の市にもうれぬ老が身凹 姫路 年の坂のぼるやうにも見ゆるかな前こゞみしてあゆむ翁は明 一年に二度さく梅の火ともしてせはしき暮の玉葉かな物梁 春をまつ心の駒のいそがれてひづめせはしき年の暮かな 目妙加花二 いかばかりひまゆく駒のかけてかくひづめとなりし年の暮そも寿 目妙加花一 富津 春にあへとたつてとゞむる門松の中をくゞりて年のゆくらん 山形 目妙 年月の残りすくなくなりぬるになどか心の残り多きぞ 赤羽 若き春と老ゆく年は逢坂の関の清水に頼言べ見よ あすははや春も昆布の巻対の尾は見せぬなり年のいとなみ春好 ふるとしはたつかの弓のいぬる夜を矢つきはやにもはるや来ぬらん黒塀 一老たるも若きも年をこゆるぎのいま〳〵としつ春のこなたに剛樹 一、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、〇〇 同ト奈 せはしなき手えをのいておとなしう遊て年もくれの子供等 一関 ゆるやかな春に追れてゆく年は汗の出るほどいそがしきかな・ 仙台 年の暮煤はき竹に巣つくれどさゝるゝもちはつかぬ鶯真艶 寿をのぶるふみにも添てゆく年の尾紙や進物の鯛 懸乞に思はぬ義理を垣根ごし隣の春のきくも恥かし 新庄 文成 年の矢のはやき佐込の破魔弓を買て子供の春や待らん 左貫八幡 いくつ寝れば正月なりと今一度二度童都にも春ぞ待るゝ 鄙人 目のさめたやうにせはしくなりにけりつい一年を夢に暮して 木更津 ゆく年ををしめどけふはなかれじなことにをさめの廿八日真樽 三河坂崎 又もとへ月日はめぐる経堂の一さいつまるけふのせはしさ岩守 印西 盤に餘る鯉に大きな兎などもらふ間もなくくれてゆく年明也 桑名 たなつ物の種おろす日をしるたる暦もけふぞまきをさめける 明ぬれば玉の春とてくる年の隣の宝かぞへ日となる 桑折 白雪のふる年もはやくれ竹に雀も千代の春やまつらん 御代住 仝 いなせじと呼とむれども跡をさへふりかへらざる亥の年の暮 薄墨 年〳〵に年はくへども我腹にもたれぬ物は金にぞ有ける 仝 多くある用にのまれて烟草のむひもなくなりし年の暮かれ真名井 となりたる春の陽もひとへ壁馬のりかけてせむる年哉真顔 俳諧歌父母百首中巻 一、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、〇〇 俳諧歌父母百首下巻 撰者四方歌垣 見恋 猫の緒にかゝりし簾のはざまよりほの見し人をねうどこそ思へ頼政卿 裏徴加花三 目にかゝる影を隔の玉簾こすとは嬉しさはりなくして 裏微加花ニ 一春の野の若菜つむ子をみがたまに身が魂も入る心地こそすれ 松本新田 長丸 裏微 見し人のそかげ草は胸に生ひてもゆれどかれず猶しげり行 吉野 見ては猶思ひませども又もみんみるは見ぬ日にますと思へば鎮丸 面影の目にかゝるより気にかゝり袖にもかゝる泪くるしも山陽 仙台 行違ふ物見車の透影に我むねも又とゞろかれけり 真豊 駿府 一見初くわく〳〵とする心より袖に泪ぞ落初にける 益人 常府 恋しさに心は爰にあらずしてみねども見ゆる人のおもかげ 千賀江 何程の恋の重荷となりなまし目にかゝりたるけふを初めに いひよらん道こそなけれあまたゝび我目づかひは通ひ馴ても 高崎 東水 青梅 見し時にしかと見かねし妹が顔見ぬ日もなどか影に見ゆらん ん綾繁 見ても〳〵見たさに胸はさわげども目はすわり居て動ざりけり 桑折 金文 見てしより轟むねの小車に日をつむ恋の重荷くるしも 小町 琴冨貴 雲雪と見まがへはせじ花の顔恋に我目の霞ても猶 新庄 真坂樹 唯ひと目見しより恋にやつれたる顔はふためと見られざりけり奥成 見るもうくなきつぶれなば目のうちに入し海の出ずや成なん 垣間からさし覗く目をはじかるゝ目はじき草の露は泪か松俊 父下一 目妙加花一 天の川互に顔を見あはせて思ひをかくる橋とこそなれ田川 甲府 目を糸になして見初し其日より胸のもつれはほぐれざりけり 目妙 名古屋 ほぐしほど胸の思ひはもえたちぬ恋しき人をしかと見しより 俤のつきたる目には疵なくてなど見る度に胸つぶるらむ 命より大事にせしを見るにあかぬ目の玉の緒も恋よわるかな 宵やみのはつかに君を見てしより心もくらく迷ふ也けり 風流に心を入る妹なれや月に花やも見ゆるおもかげ巾足 見し日より思ひかさなる恋衣きてだにあはゞ嬉しからまし綾廼門 名古屋 恋人にさしむかへども長刀いまだいひよる折紙もなし あだなりとともに見かはす流し目は浮名を流すはじ目也竹光 新庄 恋渡るはしと也けり横に寝し柳の姿目にかゝるより辛五文成 市川 見助ずは急ざらましをなま中の目ゆゑ心はやみとなりにき常道 見てしよりならに心をつくし綿丸わた着せて身にぞ添へき真河 印西 余所にのみりては山路の百合の花人もしりたる幾顔ざかりを 二本松 恋人をあからめもせず見ゐるなり顔に火の出る計なれども百嶺 まねけども顔見た斗出てもこず此家の娘ものがたくして空寐 千住 一目見て思ひの雲のかゝるより袖に時ゆのふらぬ日はなし 見るからに落す泪は目の性のわろしと人のこはゞこたへん桐住 甲府 つま立て覗ける恋の中垣はみし〳〵といふ音もつゝまし好水 芳野 見てしより猶も思ひのます鏡心を先へうつしたきかな 見る度に思ひの種はまきながら妹が心にあはぬつち姓万々成 人の目にかゝらむはうし我目にはかゝれと願ふ人の俤文鼎 福島 雨絶かと妹を見そめし其日より我魂しひはからとなりにき鹿住 君をよそに見てのみ月をふる銀あはぬ思ひに腰ぞ折ける嶋女 目のさやをはづして妹を見たれども思きられぬ胸のみだれは金文 妹が心つもり細工のからくりやはなれ業にて見ゆる俤 見てもなほ又もみまくの星兜しのびの緒をもといてくれかし 身にしみてごとさぶき迄置霜の白き顔見し夜はぞゑ 見し日より幽病む死出の田長鳥命かけたと人に告てよ真弓 身も濡て泪ふろ屋の湯気のうちにほの見し恋のさめがたき真顔 送書恋 明くれの泣ねを中に御兵へて送らまほしき鳥のあとかな松永貞徳 裏微加花三 桑折 飛てゆく翅なければ貴こめて鳴音を送る鳥のあとかな 手をかへて見ても心のもつれ糸むすぼる侭にかへる玉章侘住 身は慈の山里なれやけるみも返事なければかた艶書にて素顔 一人の目を忍び〳〵のはなち書いとゞつたなき筆と見ゆらむ田主 衰微加花二 書送る文に巻こむ我魂の帰らぬうちは落つかぬかれ元住 新庄 初には遠く思ひし恋の道ふみ出してこそ近く成けれ 嘯けと手がひの乕をかき撫つみやる風の便りほしさに 裏徴 市川 送りにし文はその侭かへり字の不の字はいみてかゝずありしを 武蔵鐙ものかゝぬ身はみをだに人をたのむのかり筆ぞする 片倉 人伝におくれる文の封じめに心づかひもついて行らん 米沢 今は早恋の奴となり下り我かく文を我ともてゆく はし書にかへす〳〵と書つれどみはかへすをことにしけり春好 我思ひ万に一ツもかなへてとやれば返事のせんじ書かな下蔭 玉章の封じめに引墨色も夕にゆくと判じてはよめ柳馬 駿府 思ふ事こま〴〵いふて送らなん心をならに砕く玉章真哉 なびけよといひやる文にいみ言の返し〳〵の端書はせじ 恋ゆゑにあし手書をも恥ずやみを戻すはあたまかけとや神人 もし軽くとりやなさんと使にもものかづかせて送る玉章石樹 たのみやるみやる使の者に迄心づかひはいくべかせし空寐 書送る筆は我手のものながらそばなる石の見るが恥かし石綱 一字づゝほつ〳〵書の玉章を泪ににじむ墨つぎと見よ宇万之 千住 玉草の末はめて度かし迄よめよ聟よといはれてしかれ 裏迄も書つくす文をよみ分て裏表なき心とはしれ真名井 情に文はあれども逢ことはかたらの封のわたす間ぞなき千賀江 書送ることばにかどの八重葎さはり有みてとはぬ恨を水枝 いそがしく書送るみの通り事妹が手一ツをまつ斗也満汐 舟路ほどこがれし文を手から手にのせて渡せし時の嬉しさ 芳野 佐倉 につこりと笑ひてとりし玉章に先我むねぞ先へひらける 美種 七車書やる文に応らくの我心からとなりにけるかな 青梅 言伝は心がろしとおとしめん文にてやらば落しもぞする 全 くだかけのなく〳〵今朝は別れしとこりずも送る鳥の跡かな満足 高畑 一しれかしな書やるみの封じにも二重三重なる心づかひを やりしみそ宵みるかと我目迄さめてかゝぐる閨の灯火真葛 手にとるかとらぬかしらずとのゐ猿かきやる文も水の月にて道時 目妙加花一 市川 くしのはをおくごとみは送れども毛筋ばかりの返事だにせず あやかれと連理の枝に結びそへてひよくの守の跡や送らん 打とけて肌を合さぬ恨をも帯より長きみに書やる 目妙 二本松 送りたる侭で戻すはそちの手に思ひきれとのみの封じめ めし景美 仙台 偽りて花見に来よといひやかしみさへあだにちらさるゝ哉 〃田川 田川 名古屋 書送るみの枝をりは吾妹子が心の花の奥も見んとぞ 成程 行末は聟にならずと此文をせめてはよめと思ふ計ぞ 仝 有文 鳥の子に鳥の跡をも書そへて鳥にならむといひて送りつ なびけとて風の便りに送りけり柳の枝となぐるかな文 富津 栗橋 千代丸 日曽九 桑名 やるみのかしくの鍵の通りことかきとるやうにまたれぬるは やるみのかしくの鍵の通りことかきとるやうにまたれぬる 玉章に恋のやつこを通かして心づかひの休む間もなし 真楫 関宿 書終り筆にも笠をかぶせけり今宵しのぶのみの便りに 玉章の千尋にあまる恨言うらまで書し心をばしれ 駿府 石文 玉章に書あまりたる涙をも袖から袖へそとうつしけり 仝 宣俊 人の目に心をのみぞつくしけることをつくさぬみを書とて 舘林 三成 君にいつあふむの鳥の跡ならんおなじことのみ書送るみ 三箱 こまやかに書送れども我心砕くほどにはいひもやられず 吉原 かくみはたけにあまれどかくしても心のたけは猶あまりけり 甲斐田島 しのぶにはあまる思ひを書文ヲもしどろもどろにみだれつるかな イ大丈 恋人の心のうらにかなへとてよき墨いろに書送る文 君山 美しきみの返事をくれは鳥あやかりたがる人ぞ多かる柿人 綾部 玉章に深き思ひを書てやる筆の禿もつかひなれけり 人伝にたのみし文のあとさきへ心づかひもそへてやりけり 甲府 君が袖墨やつくらし此日頃まはらぬ筆を廻すはづみに枝成 三河 やる文も筆の重くて思ふ事ちからづくにはかけぬくやしさ 嬉しきは其仲立をこを樋にてあなたへかよふ水ぐきの跡鈴成 心のみつかひて送る玉章の使だにせよ恋のやつごは鳴音 つゝみ置おのが思ひを書こめてひらきてみよと送る玉章呑吉 かき送る筆はつたなき物ながらみの通しを松にかゝれり沖風 思ふこととくとせきたるふるへ筆みだれ心と妹にみせなん歌数 白升 もたせたる悲の奴の玉章に心はさきへはしり書なり 逢夜さへたてやりぬる玉章の封じまほしき暁のかね御代成 やるみに心つぎたす豊紙もあはざるばんのくり言をのみ守主 かく文の先へ心はまはれどもまはりかねたる筆の達さよ弦道 上サ牛込 一蒸侘る心の使する筆の先走るものは泪なりけり和賀丸 芳野 恋病となる此しぎは中〳〵に数かき送る文に尽めや 高崎 なれ〳〵て袖から袖へ人しらず通はす文の鼠半切御亀水 一袂より皺ものばさでやる文の返事きく間は心もめけり 青梅 桑折 思ひやる返事ぞやがてくるみ也からに願ひをかけし玉章 高畑 こはげつきてなびきやすると狼の毛の貴筆に書送る文小 小町 状箱に思ひこめつゝ送る手をかへてもかへ札鳥の子の紙琴富貴 仙台 一向にたのみて送る我仏せめてかへしの御みだにあれ 花鳥里 やるみに我心さへ書とれず画にもうつされぬ人の許へは真明 涙にて墨はすりしが水ぐきの一つぶ書をやるも恥かし 寝で見ても心ぞさわぐ紙衾ふみやりしあとのちりもするやと真顔 逢意 うとまねど誰も汗とき爰なれば間遠にぬとや心へだてむ曽根好忠 波那細 海山の恨は捨てたまさかにあふ夜は人のけしきをぞとる千枝 裏微加花三 逢夜はの嬉しき袖に拂へばや枕のちりも飛立にけり壽 恋中は今宵ならぶる枕にも高い低いのなきぞ嬉しき空寐 ちりつもる枕払ひて逢夜はゝ嬉しさがまた山ほどぞかし音近 もろともになき明したる鶏の音を俄にうとむ夜はぞ嬉しき 依智 裏微加花二 登志久 る泪や天に通じけん降てわいたるけふの逢瀬は 裏微 三浦 あふ事の玉襷をもくり置ていざと手をとる今宵嬉しも豆成 細布のけふの今宵を以とたがひにむねのあふ夜嬉しな跡人 ともし火をけせばおのづと胸の火もしめりあひたる夜半のむつ言 夜着のうちにぬく〳〵とあふほとぼりに日頃ぬれたる袖も干にけり真蔭 嬉しやといへば嬉しと抱しめて同じこといふ床の山彦素顔 逢宵はとろりとだにもまどろまずあぶらのやうな妹がはだへ 恋の主荷おろしてかるい夜の物やと二人にてかづく嬉しさ春好 逢見れば恨もうせてつらかりし人とはべちの心地こそすれ 一ノ関 枕より払ひおとせし塵をまた恥つゝひねる閨ぞうれしき一得 しのびあふ嬉し泪は四ツの目を落てひとつの玉となりけり鎮丸 嬉しさの置所なくなりにけりつゝみし思ひあけて逢夜は橘良 高崎 君と我うまくあひたる一夜ずしおしともなりて鶏な鳥島楽水 此やうにいだきしむるは朝夕にいのかし神のちからとぞ思ふ教頼 桑折 名乗あふ互の胸のはれ角力我床のうみ君思ひ川 目妙加花一 桑名 にし人の笑はゞわらやとまやさへ君にあふ夜は玉の床なり 手を取て我身を園へいれ紐の同じ心にとくぞ嬉しき御風 諸ともに凝たる胸をうちくだきこま〳〵咄す夜はぞ嬉しき 桑竹 目妙 ため置しことの多さに出ぬ也あふ嬉しさの口につかへて道 あなかまとしづむれどあふ嬉しさの心はむねにをどるなりけり方 富津 今迄に袖をしぼかしかひ有て今宵しつほりあふぞ嬉しき 栗橋 厳ともなれるつかへを撫さげし君が袖もや天の羽ごろも 筒留 薬より忍び逢夜の閨の戸をたてつけてよといはるゝぞうき糸所 恋人のくる〳〵と舞ふさゝがにの糸は逢夜の縁のつなはし あふ夜半に可愛といふを烏かとびつくかしたるあとの嬉しさ柿人 恋死る命拾ふは中立のくどき落しておきしゆゑかも真樽 今井 もろともに逢にかふべき命ふたつつゝむにあまる夜着の袖かれ 丘守 笹盤のいとしき人にあふ夜半は積のむし迄さがる嬉しさ。 鰍沢 逢夜はゝつゝみし袖も片敷て嬉しさをさへひしぎけるかなゝ夏 袖の海干潟となしてあふ夜はゝ嬉しさのみぞ胸にみちぬる 夏日 恥かしと顔をおほへば行燈もうしろむきたる逢夜はの床冬住 今宵来て逢はたま〳〵玉櫛匣ふた夜もみよもあけなこぞ思は 新庄 恨さへ山とつもるに逢夜はのなどて高くは咄されもせぬ 戸塚 夕顔の下涼みやとかこつけて妹が手づるによりあひにけり 小野宮 逢ぬ夜にせばめし胸をひろげてもあふ嬉しさの置所なき数頼 うき名のみちりとや立んかく介におのが心の底をはたかば 桑折 鳥肌となりて通へる雪の夜に君がぬくめる床ぞ嬉しき 白河 また外に荷にする恋もあらざりきひとかたならず契り逢夜は ハ酒盛 小町 逢坂の関越時は暁もつぐるな鶏よ空寝入して 琴冨貴 芳野 もろともに語るゆふべの夢迄もあふがふしぎのえにし也けう・ ノ浅方 あふ夜はにのちの心をくらべ馬あしげにものぞ思ひやらるゝ 府倉 川常 取だに中になき夜はかさなれる恨も脇へ取てのけゝり 真顔 切恋 もろこしの旁野の山にこもるともおくれむと思ふわれならなくに枇杷左大臣 波那田 こがれ死ぬ我なき跡に残りゐて恋の奴やいとゞ迷はん 裏微加花三 駿府 真園 高畑 残しおく泪の玉を珠数にしてなき跡をだに人のとへかし 涌住 下にのみ燃つゝむせぶ薬の火のいけるかひなき身をいかにせんに 三浦 裏微 恋しらぬ人にとはれてせつなしといふは切なるむねのいたつき 此上は命を恋の仲立にやるより外のたのみだになし 目妙加花 青梅 君にのみ松の操を立琴のをゝとはいはじ人のひくとも 綾繁 目妙 三崎 うきたびに身を沈むべき穴なるか心の底にふかくほれしは 芳風 日野 心さへ砕くる恋のおこなひや泪の瀧に胸をうたせて 月盛 市川 恋ほれて我か人かと思ふ身を蝶の夢ともなりて見えばや 青梅 命をもをしいほしいと思はぬをにくい心のなどかかとき 楠のちゑも是はてゝ紅ゐにながるゝ袖の湊川かな真顔 名立恋 引よせばたゞにはよらで春駒のつなびさするぞなはたつときく貞文朝臣 波那細 名は立ぬあくがれ出したまさかの貴船話を人のとがめて枝成 恋すでふ名はいづくより通りけん我は人目の関も越ぬに真門 裏微加花三 戸塚 さわがしき声を伝へて犬上や床の山なるうき名取川 三箱 しるといへど枕がものをいひはせじ立名につけてふしんさへたつ 可成 裏微加花三 吉原 辻口をたのみて逢しそ宵よりちまたにうたふ浮名くるしも ○素顔 一関 閨の戸をあけて待ぞといひやれば側からたつる名をいかにせん 一羽音 恋すてふ我名は早くたつの駒世界をはしる口のこはさに しるといふ枕にかへしひぢよりぞちりならぬ名をとるしびおして 何にこのくるしさかへん包置てうらぬ浮名のたつの市人 裏微 世にもれて浮名はつよくたつみ風いなさならずといふやうもなし 犬山 忍ぶれどをりもあしかるの雁なれやいづくともなく空に立名は 松代 さきくべしみのもえさし埋火とかき出されし名をいかにせん 桑名 一寝姿をかくす屏風の折あしく立てひろがる名こそつらけれ 同同同 一錦木は取入もせで又ひとつ立そへられぬ恋すてふ名を 一玉人 八幡 つゝめども胸も心もすわらぬは我名が先へたてばなりけり 酒盛 やう〳〵と取入られし錦木に又浮名こそ立代りけれ 仝 水紋含 いつかはや浮名の遠く走れるは心の駒にのせて出けん 垣安のつゝみかくせど恋衣浮名は高し天のかぐ山下 駿府 あふことは名ばかり高き空窓のたちて心のやみははれせぬ 真園 窪田 袖の雨胸の烟の雲の中に浮名のたつぞすまひ詫ける 枡穂 鹿教湯 あやしさよ我が聞ぬけの耳にだによそに立名の高く聞ゆる鹿道 立川 くるしさに我身を投ばわたづみの都にさへも名をやたつべき元住 常陸帯のかごとばかりを事ふれの道の果まで立る名ぞかき つゝむとはすれどもうき名たつか弓引もきらずになる筈の音於兎門 逢見てしのちなれば今の世の人の口を結ぶの神やいのらん桐住 目の前に泪の河は有ながらよごれたる名を洗はれもせず宇万之 ほしあへぬ袖だにあるを相模川恋には朽ず立し名どころ松俊 新庄 名に立し二人が中は恋しさのひとり云よりもれやしつらん 繁樹 木更津 吾妹子が取入し門の錦木と立かはりたる浮名いとはし 高崎 よしや名は富士の烟と立とてもしのびて入らん恋のぬけ穴 三崎 人の目のとすれはかゝりかくすとはすれど浮名の立ぞ苦しき つまづきし駒の足なみ繁ければいつか浮名もたつがみの坂道時 目妙加花一 名にたつもうしと思はじ命さへたゝむと言しけりにくらべて 我胸にあまる思ひをつよく名の立行あとにそつと置ばや金元 目抄 似たことをよむ辻売の声きけば我名も市に立かとぞ思ふ古根 うらみてもかひなしや名をたゝす人身の立ぬことをしりてなすわさ 米沢 通ひ路にうしや浮名の立田山紅葉のひとめ霜のあし跡 信濃天神林 ふみ迷ふ恋の山路をたどる間に浮名はさきへ走るくるしさ 保鳥 富津 めをつけて人の名をさへ立ぬるはあまりさがなき人のものいひ 仝 事やどりしてさへ人のめをつけていひふらしぬる妹が門口 仝 恋すてふ我名の高く立ぬるは心のたけをかさねたればか 山形 人のめにたゝぬやうにと戸を立て声もたてねど名は立なり 芳彦 小松川 思ひ川顔に紅葉はちらさねどなき名のよそに流るゝぞ あふ夜はゝ晦日のやみにありながら名のみあかるくついたちは 泪にて所せさまでむねせまり我名はよそへ浮出にけん 川越 錦木をとり入られし其跡にたつ名ばかりはもてあましけり 仁熊 人の口に立かぬる戸を忍び入る門にたてゝもかためける哉真樹 古河 難可免 今更に取かへされぬ浮名哉目さへ泪にくれてしまへば 一関 一千万喜 これかれをかよはして名やたてつらん始終を人はしうじを。 媒のきのまはらぬを遅しとて浮名や先へ立はしりけん苗 姫路 こひつみし君と我名を七種にはやすもつらし口をたゝにて しら雪の下の思ひも磐余野にわかなくたちめにや立けん雛汐 恋すてふ我苗代はいひ出るみな口をこそとゞめかねつれ桐 思ひきやふたりが名をもたつの市心安くもうり出すとは百馬 苦しさは立名に道をふたがれて息のみ通ふ身こそかひなき豊 錦木にまつ夜あふ夜のかさなればよそにも立る名こそつらけれ 田沼 立し名を捨る所もなかりけりもと愚死る命拾へば酔人 人に目をうたるゝ恋の瀧壺やあはで立ける浮名うらめし 千里をもはしる計に名は立て心の駒ぞしづめかねつる満成 かはらじと契りし中はどこ迄も二人つれだちゆく浮名な 人なしと心ゆるせしくやしさよよそに浮名の立をしらずて 芳野 物いはぬ枕こ吹も植てまし浮名をたつる人の門口 仝 もるゝかと驚くむねを沈めてもうき名はやはり立さわぎ 坂志図 雲に乗空に浮名のたつよりも泪の雨をふらすくるしさ 青梅 一磐参野の萩分ゆきてつい人にいはれそめたる袖のいろかな綾楽 世の人にうらやまれんと思ふにはなき名の立も嬉しかりけり 我浮名富士より高く立にけりさてもかくれん人穴はなし雛袖 逢といふぬか歓がひろどりてはつと浮名の立ちらけゝん 恋の身におもりつけても早瀬川流るうき名はしづまざり 一久かたの枕こと葉をかはせどもうき名は空におふせかねけり空体 名のたつと聞し心の鬼よりぞ友にも恥て着るかくれ笠田主 よそに名ははや立花や添寝せし袖のかをりのつゝみあまり ○ 名のたゝばたてとそづよくなりにけり忍ぶ心のよわるよりして真顔 誓意 虫の血をつぶして身にはつけずとも思ひそめつる色なたがへそ大原少将 波那細 青梅 君と我誓が水となるならば末の松山指ひたさん山蔭 裏微加花二 君を置てあだし心の持にくきやうに小指を我といためし枝成 裏微 誓ひてむ一ツ蓮も敷妙の枕ふたつを仲立にして市見鶴 桑名 かはらじとちかひを立て切ゆびもしかとむすぶの神をかけつゝ 妹と我中山寺にちかひてし言葉は石の櫃にをさめん真広 甲府 心をばとく奪はれて置つればちかふ命も我物でなし 新庄 かはらじと二世の誓紙をかく中によせと別詞は聞もうるさし 庭中に小柴をさして誓ひけりあすはの神にあすしらぬを 仙台 桑名 真艶 身を 目妙加花一 右よりもかたき誓のむねにありて意見の釘はきかぬなるべし 新庄 千枝麿 後の世は木にもならんと誓ひたる心はかれぬ物にぞ有ける 富津 真坂樹 同妙 一雨となり雲とならんはくうな事外にたしかな誓ひやはなき 山形 ばく布 我恋は湯殿の山かむつ言も人に咄さぬちかひをぞする 下田 坂都樹 ●坂者杉 安土住 恋きなばともにならくの底までとそこ迄とくとちぎりおかなん 二世迄も誓ひし中はつぎうるし水をさしてもはなれざりけり広丸 青梅 命だにともに消ずは手に塗しゐもりの血もやあざとなら 左原 あまたゝびよそに誓ひし口癖のつきてかくやと猶もかたがふ音好 そむきなば物も咽へは通らじと鵜撫の森の神にちかへり田主 ふし此木のこりはさせじと杣川に我まづこりをとりて誓はむ真顔 被疑意 杉くれをひく杣人はあまたあれど君より外に横目やはする清輔朝臣 波那細 一関 我袖のわたくし雨はうたがひのはれぬそなたの雲よりぞふる 声音 裏微加花三 青梅 君故にしぐるゝ袖をうたがひて枯れん下地といふが悔しき綾皺 朝髪の見出し聞出しくし〳〵とまたとけかねて我をうたがふ 裏微加花ニ 吉原 やる文の返事はなくて折〳〵にうたがひをのみおこす人うな うき人はあまり疑ひ深くして心浅しと我を思ふか千万多 うたがひていまだしれぬといふもうし癡たるやうに恋る心を石樹 裏微 咽路 身を浮つ沈つ顔にこがるゝをなにかはうそと人のうたがふ 黒塀 片倉 うたがひは牛の角文字ゆがみ又字すぐにゆかれぬ恋の山道 着かへても又打かくるぬれ衣のうたがひはいつはれ小袖ぞや 田島 松茂 逢事にかふるものさへうたがひて命をさきへとらんとすらん はりさくる思ひに胸はやれさうなやれさうかとてはらせうしがひ 日妙 玉かづらよそへ這ふよと見し君は我をうたがふきのまはり也 三浦 豆成 仙台 軽からぬぬれ取おふてくるしきは痰も背中について重たし 愛雄 桑名 よそ人に心うつるか見たまへと見せばや我がふところ鏡直 一臼川枕は舟とながれけり狐疑にいたれる人のつらさに下蔭 小糸 君は我かたき心をひき臼や手をかへて又まはす仲立菊盛 ○ 恋ぐさを舟に車につむといふを二道かくる心とやきく真顔 顕意 いかにして人と横をりふせるとはさやに見えけん甲斐の皇領ぞ正徹書記 裏徴加花三 もれけりなさらやき合しむつ言をさらやき合て人のはなすは 青梅 覚束な枕の外にしられしは衾のをしやものをいひけん石網 裏微加花二 一蝶のこと葉多きにあらはれてあふべきことのしなぞすくなき 富津 裏微 色に出しと人にいはれて思はずも始て顔を赤くなしけり 桑名 公 思ひきやかくすあまりにやくみのかによりて人のかぎつけんとは音澄 吉原 世に広く浮名もれにしさかひよりおもてに塩もせまく思へり 八幡 君が目のしほにさとりて母親のいさめにからきめをぞ見にける つゝめども忍洞のついこぼれ人のめにさへかゝるわりなさ麟馬 あらはれて雪と消たし消もせで脇の下より出るひやあせ柿人 かゝれとはいのらぬ物をなど神の顕るゝまでよそに告けん水枝 坂志岡 逢しことも夢と思ふに人しるは寝立にもしや顕しぬらん此歴世 桑折 恋草は雪間にめだつ草に似てしげるほど猶あらはれにけり筆打 乗し如落つき過て大船の津守が口に顕はされしか 人しれず胸こがす火はけぶらねど結ぶ思ひやあらはれにけん里近 かくされぬ人の口にはふた並のふたごもるとて目をつくば山真門 日妙加花一 三浦 玉章の手のみか忍ぶ足ぶみもおとせし夜より顕にけり 田場坂 沖の石ほどにかくせど我恋は袖引しほにあらはれにけり高喜 米沢 名取川ふかき思ひの埋木もあらはれて社名は沈みけれ葵丈 青梅 あらたむる詞に結句しられけり改めらるゝ人はなけれど 父下十五 目妙 三崎 恋ぢからつよきかむねをうちつけてかたればものゝあら役ぞする芳風 名古屋 しのぶれど天知りて身にぬる虫の血しるよりかく色に出けん雅流園 胸のうちの霧も今更おほはれず顕はれしあとの宇治のあじろ 仝 川越 こうかきもしらぬ泪の手深にて袖より恋はあらはれにけり 膳椀やはしたなき名を流しもとあらはれて恥をいかにぬぐし宇万也 田島 取かはす二人が中の恋の文みたりと人のいふぞうたてき田 恋中にかく水べきのちりしよりうす〳〵人の目にもかゝれり杜路 忍び寝のあかり障子に我かげも顕れて気もきえよ灯火里好 上総菱田 言訳のくらい所に二人寝て火の出るやうな暁の顔花見 青梅 つゝめどもはやもれしてふせんなさに我と打明て洞こぼせり綾繁 高畑 恋衣あらはれてより表向あたらしく名をよどし初けり ○ 八耳にもりやしにけむ死ば我鳥にならむといひしむつ言真顔 変意 忍び来し夕ぐれなゐのましならで悔しや何のあくにあひけむ小侍従 波那細 一志が心よそへ寄洲の出来しより爰に泪の渕はなしけり 裏微加花三 我方をはづして誰につき弓のもとのつらさにかへる君そも 高崎 衰微加花二 一涼む折岩より顔を見初かしが今秋風のたつはわびしな 桑折 折〳〵に人の気色のかはる故枕の下はうみとなりけり 誓てしことの多きは多き侭に恨の数とかはるくるしさ寿 鳥の跡のみかは鳥にならうとの誓ひも反古になりしかなしさ 裏微 変りしと聞よりもゆる胸の火を水さす人にせめてけさぬか豆成 浦賀 きこと今宵くるに釘さしかためしを櫃に謀さしかためてしうさ 父下十六 あだ波はむべもこえけりなうをさへひきく契りし末のまつ山茂登也 木にならんと契り置ずは今更にかれる中とはならざうましを磯名 印西 玉章の通り事さへ音絶てなみだに絶間なきあかすかな 吉野 水にしてすまぬ誓ひを水にしてすむとはつらしおそのたはれ男浅方 しらざしき母が養蚕のまゆごもり羽根はえてよそへ飛心とは石樹 目妙加花一 炭の火の灰になる迄とたのみしを手のうらかへす人ぞ仇なる 軒の妻に心がはりやしたりけん向ふへばかりなびく青柳 桑折 目妙 信濃御園 浪を見て妹は契をかへつらん末のまづ山つらむしら雲 左足 三崎 一夜酒つくり事してぬく〳〵とみなみにかはる人の恋風 名古屋 約束もたがひせん碁の打てがへ十廿みそかよそへなびきて 仙台 恋〳〵て花にたとへばあぢさゐのかはりの早き人にぞ有ける 吉原 誓言はみなうそかへの祭りにて心つくしぞ名のみなりける素顔 梓弓此頃くるふ其筈のあてもやよそに出来てひかるゝ春好 握るをもふりはなす妹が手玉石なつてならざる下心かや種成 涙にて野中の清水水こえぬもとの心やいづち行けん 味酒のみをはやなからかはるとは心のくさる人にや有けん家樽 うき人の心かはりて恋艸も笑はれ草となるぞくやしき空寐 灰にせしみもくやしや約束のそのひになりてかはることの葉鈴成 誓ひつる七枚起請八重垣のやくもたかへし人はうらめし餘慶 きのふといひけふとかはりて飛鳥川心ふたせの妹はうらめし 常陸帯結ぶしるしも今と成ていかに詞のうらがへるらん英賀 木更津 飛鳥川かはらじと人にはめられしおのが心の浅瀬くやしや春信 沈の箱にこめし雲もいつときて結びかへぬる人の心葉全 佐倉 一人心かはるは早きならひ風風見の烏うしろ向けり美 かはらじといひし詞も反古染の文字のみ袖に残るかなしさ真風 吹風の身にさむき夜も憑まれず雪と炭との心詞は 左原 かはらじと誓ひしことの殿古となりさけるまでにぞ胸はくるしき満足 高畑 一紫の萩の花より仇慈はたゞさめあき物にやはゝらん 千弘 恨てもうらみかひなの入ぼくろ手をきらうとは思はざりしを 契りたる言葉が水になるや否湯とわきかへる我思ひ哉 うへしたに違ふ心のことよきをよきことゝ何たのみたりけむ真顔 旧意 難波なくながらの橋もつくるなり今はわが身を何にたとへむ伊勢 波那佃櫻迺愛 年ふりて神やつくらん恋すてふ名を我しらずは口ばしりけり御風 裏徴加花三 笠間 わすれじなをさな遊びのめをと事唯いたづらに年はへつれど 裏微加花二 いかにしてあまたの年を過しけんたねんもなくて人を恋しが千賀江 裏微 一妹こふる泪の滝の白原もとしをふるにぞ赤うなりける 依智 逢て後あはぬ年月かさなりて今年も迷ふ四十くらがり 登志久 桑折 別路に泪の種を残してもまくほどはなき袖の上の露 約束の夜をかぞへしもいつの世と思ふ事に年は経にける 目妙 程ふれば誓詞もしみのすみかにもすみつきし如血もくろみに 契りけんむかしをしたふ心にやゆく年毎に去ねぞ恋しき水良 契りてし芳を今に忍ぶ草文字摺のみさがし出して真門 ○ 照日すら袖に小雨のけるされて神さびにける恋の山かな真顔 山家 世をそむく柴のあみ戸のかけがねの思ひはづせば人ぞまたるゝ行家卿 波那細 べづらはぬ心は仁に近くして隣の青き山賤が宿貞俊 裏微加花ニ 仙台 一朝夕にゆき来の雲は谷の戸の隣どしとて見しりごし也 真豊 世にたつはくるしと避し山里の寝ころびかゝる家や住よき 新庄 仁熊 とふ人はなし地の上に焼金の紅葉まきちらす山守が宿・ 石真村 裏微 柿崎 さを鹿の錦木なれやもみぢ葉に立て妻こふ山住が門 ノ摸成 最上 類ひとつよむ友もなき山住は只しばかりを見てや過さむ 央 隠れすむ山の奥まで尋ね来て松をあらしのとはぬ日ぞなき千賀江 佐倉 うるさしと世を遁れたる人のなどかけ樋の水をまげてこるらん美種 二本松 松風の音をば常に耳なれてことかきがちの山住のやど 甲府 吹たびに落葉かさぬる山里のあらしは結句ゐへとかりけり ノ二水 上毛粕川 一老となる月はいれども見ればまた花に若やぐ山の下住橘草 同摘草 小糸 中〳〵に山の奥ほど住よしや堺論する隣なければ喜可寿 いなば山みねには松の嵐にて今かへりさうれ家も見えけり寿 世の中の風をもよけてしがねの屏風に道だつ山の下庵京成 石樹事 世の憂め見えぬ山家へ射られたる鹿の逃来て表がらせつ 峯の庵とひ来る道のかたしとて庭には揃ふ沓だにもなし 奥伏黒 もみぢ葉の火より煙や立ぬると見れば麓に夕餉たく也金主 桑折 孫庇かけたる柴の庵の戸をたゝけば善ふ峯の山びこ 白河 山賤もとかく果報は寝て松のゆゑんにほこうすみやたらん酒盛 瀬ノ上 山みちの曲りつくろふ世話もなく鑓の通らぬ里の気参さ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ 一 久保田 世の中をうしといとへる山家には来馴る鹿も角を落せり 目妙加花二 甲府 花にうかれ紅葉にわぶる家宿は苦楽もあれや山陰にして笛水 目妙加花一 あはれ世にあはでや過る粟喜で粟の飯たくあはの山がは 頼まねど事さへかけのならぬとて梟が明を告る山ざと春好 松風の琴になれてやすむ人の声の調子も高き山里侘住 味以物くはぬのが身の薬堀山家そだちは無病也けり空 一世を捨て義理もへちまもいらぬ也水の自由な北の下庵金元 目妙 刈谷沢 軒は苔門は葎にとづれども心はひらく峯の一つ家長路 柿崎 稀に来て此山住をうらやめど一度はとひ来ぬ人のうつり新 松風に琴の音するは垣ひとへ隣の山の神やひくらん真揖 花と見て客もや来むと山住のこゝろにかゝる軒のしる 世はうしと遁れて山にすめば又角つき合の序ぞ友なる若苗 尊とおなじそだちの山住は隣あるきも谷わたりせり仝 世のうさを捨て入にし山住はさらにこのみを拾ひてぞふる 都よりとひ来るみのかへしにて中〳〵せはし宇治の山住千万多 但路 棒をおる音のみ秋の山ざとは霧はつたりと見えぬをさが 朝夕に行かふ雲の使にて結句都の近くおぼゆる真風 甲府 琵琶なりの杓子や善器をいとなみに引てはくらす木曽の人笛水 戸塚 里寒み人も訪来ぬ山の度へたづねてよるは年ばかりなり 桑名 世の人に猿といはるゝ山賤はこのみのなきぞ発楽也ける由刈 瀧の音鼓になして山住のうつをはらせる松風の琴耕 花紅葉なき冬がれは桜炭買出しに人の来る山ざと笛瑠 仝 山住が心ばかりにさし出す軒端をつゝむ松のしげり本に 橋麿 仙台 見る月のつもにてなりし老の身の果かや山に入てすむ人 見る月のつもうてなりし老の身の果かや山に入てすむへ近道 越後三条 噂する人だに来ねば谷水もこほりて声をたてぬ山里 薫 福島 世の中の苦を遁れたる山家には里の十夜のかねも聞えず 鹿住 桑折 松風の琴はきけども組うたの心づくしはしらぬ山住 見詰 谷あひの狭きにすめる杣人の心大きくこと高く柴 金文 相馬 弓箭もてしば〳〵来れど柴の戸のはなし相手にならぬ薩雄 冨津 山彦に言の便をひゞかせて谷をへだての隣むつまし 下野野渡 一戸障子はゆがみながらも山住はすぐれ気性を立通しけり茂登成 苦ひとつ越て隣へこざとは夜ばなし長き峯の燈火雛望 山住は心の垢をながせども耳につきたる瀧の水音種成 我房を心ありげに討来れどなさけといふはしらぬ狩人春則 田場坂 木々の葉の皆散はてゝ淋しさも里へ見えすく嶺の柴の戸 桑折 里近き山家住居はなま中に隣淋しきこゝちこそすれ 小町 九軒道はまがれど山里の人はならしてたひら也けり 琴冨貴 三箱 落たるを拾はぬ世なら栗柿にわが山里の道や絶まし 打見にはおそろしかりし山蔭も馴て垂井の水のすみよさ真顔 田家 膝をだに延さぬ小田の便庵は藁屋もあしのまろやなふべし松永貞徳 裏微加花三 わせ晩稲俵につくりそたびれてからだも縄になる田舎哉真枝 吉原 田あるものは田を愁ふてふいましめを田もてるせが秋ぞゆた 諏訪 苅入る千町の稲のほとゝきす棹にかけたかと呼ぶ田長哉高真池 衰微加花二 折こゞみしらざる賤が草の戸をつかへる程にひきく建けん方住 一撫給ふ聖の御代の民くさは耕すわざに草臥もせず 裏微 秋の田の穂なみの中に賑ひてゆさん舟とも見ゆる賤が家本住 柿崎 背戸口は野らからすぐに馬牛の稲をつけこむ秋のせはしさ 世にたつもかひなきあしの丸家だにひとつのかどがありて転バ真楫 佐倉 してつかふ鏡の光は怠りの人に見するによきかゞみ哉 三箱 可愛さのみにあまるとて田舎では香に入つゝゆする子室 新庄 嶋どりのかつしか早稲の穂浪うつ田中の小屋は浮巣とぞ楽 むつかしき廬といふ文字のかた田金かんなゝき世にたてし軽し水枝 賤が家はやねもむしろもつかね藁ふきしく風も内へ通らず下見 経すだれとものあみ戸も手作りのあしの丸家ぞいねよかりける開根 冨津 小田まもり引板曳ならす足なへはたゝでも鳥をたてゝやりけり 賑はしやかりつむ稲にとなりなき隣へひとつわらやさへたつ真門 信濃式部 山田もる賤がかり庵の廿日月ともにゐなかに出てこそすめ 日妙 仁熊 〽雄の田のかり穂のいねの一株がわか衣手にあまる巻とし 三崎 稲虫を送りし菴に出来秋の人の田刈を見るぞゆたけき 山形 穂浪うつ田面はるかに見わたせば苫ならしき賤が家の棟 赤羽 村長の氏も原図もみれもとは我田より先ひける水帳 清水 雁鴨は昼夜案山子に退せても刈におはるゝ社の田の稲卵元古 外入て稲こき箕もてふけばとぶ軽き世帯を廻す摺臼千賀江 君が代の恵みあまして落穂だに拾ふ寡もなが念の里 町よりは遠く隔ちて近頃はみなりをつくる小山田の菴松金 名古屋 草刈る鎌も手馴て薄生のけがしき宿も賤はけがせず雅流園 小野官 鍬鎌の遊ぶ隙なき働にけふりもふとく立る家作り金原 笠間 天地のおもき恵みをいたゞきて田毎に稲のふしかゞむ秋 葉締 仝 入舟のやうに賑はふゆたかさは穂なみをつみし民の家々 田場坂 呉竹の夜なべ賑はふ賤が家は麦かつ音のふしも揃へり。 苅稲の藁の袴のけまはしも狭しとやかけて廻る村長 八幡 酒盛 賤の男が貢俵のちから持月にさゝれて仕舞ふをかしさ 小糸 ごろ〳〵とひく石臼の雷に雲はかまどの烟とぞたつ 一倉人 冨原 門田から風がふく也藁の上に生れたまゝの人の軒ばに 相手なき山田の賤は鳴子さへはなしもせずに終夜ひく糸女 駿府 都にておもてを餝る是より田舎住こそむしろやすけれ 新庄 仮庵はかゝり舟とも見ゆる哉穂浪うち出る秋のみなと田真坂樹 刈をさめ民の備への出来秋は作大将の畑いろもよし 桑折 湊田はなみよくみのる仮庵の穂にほかさねて走る稲舟松孝 木曽福島 かりあげの棚田には手のとゞかさる子も手つだはす里の出来秋穂垂 ゆたかなる千秋楽は民をなで民は肥たる腹や撲らむ真顔 市 市 波那細 商人はいかで立らむ旅軒の市に脚気をうるにぞ有ける道興准后 扇もてまねき返してひさく也日のいる西の市の商人常道 こみあふはすべなし市におしてかひ押て売なと疑はあれど水枝 裏微加花三 むかしよりかく飲くひの店ふえて利をうまじ物阿部の市人 裏微 紙衣かふ人と紙こを売る人とともにもみゑふて行め部の市真名井 日野 まけぬ気でまけるもをかし時魔なる我かち布をひきく市人 月盛 駿府 押あひてまけじと競ひ騒ぐなり利にわしりたる市のかち人 歌雄 擔ひ出す基手のうすき土器も市の立場をわれがちにとる 仝 甲府 こがね菊銭にかへつゝ銭菊を黄金にかふる市の花売 人喜代志 はし鷹のをぶさの市の商人は往かよひてぞとかへりもうる 市川 越後三条 春の色に花を咲せて売に出る植木もこだる東の市 難波がたふらぬ給ふる打水にゆふ立さわぐ市の商人真門 商ひはますばかりなる住よしの市には人をまつも名高し衣紋 目妙加花一 あげさがの相場は日々にたろの市やうる間の清水みづ物にして麟馬 橋の蔭なむ市の賑ひはむかしも今もかくのみにこそ下蔭 常府 物ひさく聲かしましき夜の市たゝるに我はいぞ寝かねつる一之 仁熊 植木うるたつ田の市の花紅葉跡をつけてこそ人のもてゆけ 播磨なる饅磨の市やかち布をしろになしては又染てうる川船 むかしよりいちといふ名は物の直をふたつにせざるゆゑとこそしれ若枝 勝沼 うれ残る三匁の糸をくだものゝみやげにかふる三輪の市人用しげる 高徳に直ぎらで売る蓑市も天口銭をむなしくはせず注連縄 高崎 住よしの升の市にも出つらん智恵をはかりに来たる楽天松人 商人は相場の外にかけねあり同じ品さへ高安の市杜鶴 高畑 梓弓はるの支度の松竹を市のかりやの門に立けり 饒磨なるかちに染すは何に此しろを出してはかへむ布市空寐 名におひて詞は耳にたつの市や何をうるまの人のさへづり真顔 旅宿 とくせなむ筑摩のさとのはたご飯つれ。なき人も鍋はたかずや海僧正 波那征 桐宿の友の夢もやさそひけんしらぬ家路にかへると見しは真門 裏微加花三 うなゐ子にかへれる旅の草枕今いくつ寝て故郷の春水枝 裏微 立しきる襖は時の国境諸国の人のつどふ旅籠や武光 日野 椎の葉に飯はもらねど柿の葉の蒲団を着する宿ぞ焼しき さ月盛 勝沼 けふ越し木曽の柿あやふさにこりて通はぬふる里の夢 穂足 名古屋 川明の朝餉の膳の鯰にもせごしをいそぐ宿の旅立 仝 かれいひも泪ににへの浪枕しるはの海や思ひ出らむ 小野宮 夕霧の袖をひかへてもみぢ葉のひともし頃ととむる旅宿 小町 一花の陰顕よむ人の旅寝せば三十一もじや木賃ならまし 糸也 桑折 草枕むすびし夢も苦になりぬくになる親の事をおもへば竹広 宿とりし一人旅にもつれめきてあとからつきし入相の鐘千賀江 木曽福島 ふかさとにかへる旅寝の夢のあとをすぐに結べる草鞋の釼穂垂 目妙加花二 左貫 ふるさとをおもふ様寝のつかれにて寝入つかれぬといふがをかしさ 目妙加花一 うき旅をしのぶ涙の玉味噌のかゞみ汁にて見るやつれ哉弥益 旅寝して宿の妻子にあふみ路やみのこしてをしき短夜の夢 よき夜具をおきせ申と宿引がうそのかはまで下敷にせり真澄 目妙 うき旅にあすの日和のよしあしもうらなひ兼る亀山の宿仝 むすぼれて夢も通はず草枕とけ〳〵として寝る夜なければ於兎門 旅人のこみあふ宿は山川をゑがくふすまぞ国さかひなる山住 八幡 鶏なきて明ればあらく足にさへ蓬が関をすゑる旅かな酒戯 木銭宿相やどにわくるから紙の画にもゆかりのかきつばた哉素顔 旅の夜はかりに植たる草枕ねつきのわろき物にこそあれ糸女 雨のうちに川やとまると濡つゝもやめてせられぬ藤枝の宿真顔 閑居 山深み岩にしたゝさ水とめむかつ〴〵落るとち拾ふほど西行上人 裏微加花三 八重葎とぢたる庵の戸たゝくはまつにはつれて来たるに夜風打人 さしこもる窓のともし火ちらつけどあぶなげもなき風のかくれが鳴音 いそがしき雲の立居を寝ながらに朝ゆふ見つゝくらす米かさ 破られし夢もきたび結ぶらむつゞりの袖にしのぐ山風 裏微加花二 小糸 ふみ見れば見ぬ世の人の顕れて人訪ぬ夜の友の多さよ翔丸 草の戸は臥猪の床の隣にて枕にかるも萩か得なり金文 裏徴 世の中をしりつくしてぞ世の中をしらぬあたりに庵結ぶなる真門 淋しさの同気もとめてかくれ家へ音つれ通ふ入相の鐘 ゆかしさよ核原の中の柴の戸は世にひいでたる人のかくれ家麟馬 淋しさにふれど音せぬ草の庵は雨だに我をとはず過るか千賀江 吉原 明くれに都の事を噂して山のかげさす庵ぞ寂しき裳顔 多胡 唯ひとり寐たりひたり見る願は月のあらしの軒のなよ竹艶良 目州加花一 さし出たる宋のかづらくる人もなき宿也と門やとづらむ真楫 目妙 譲りたる家の富貴は牡丹にてきくを放れし隠逸の宿清住 浮世から討れば世話と堅い気のこりて入たる岩の中哉盛 山陰の庵に見ゆる丸窓はかどのこれたる住居なりけり 世をそむくとにはあらねど山へむく日なたぼこうに背中見せつゝ声音 こがねにて世の受にを結ぶよりましらとなじむこのかくれ家綾鳥 世を捨し心をすぐに筆に染てすみうかるとはいはぬわび住全 うき世をばさるとおもひて山住のきをはなれたる松の下庵菊人 薄にて閉たる門をしりながらあけよと告る朝がらす哉於鬼門 草木より外に物いふ人もなし神代のまゝの奥山の庵 駿府 庭もせの石よ物いへ我菴は壁より外にきく耳はなし野水呂 かけがねははづれし侭に夜昼と犬の出入のしげき柴の戸枝成 桑折 五もとの柳のいとゞ淋しきに酒こし嚢かけて朝たり 金成 白川 柑子の木あるにかひなし人稀にとひくるす野の柴の庵は折 事しげきみつばよつばの甍よりひとばなれなる庵ぞ住よき 世の中をたがひにすねて隣だにとはれずとはず年をふる哉桐住 越後高田新田 一取食住みつかなはりて争ひもきかぬ隠居は耳なしの山仲文 世の事は聞飽し耳の穴なるを以てありとてはひる松風真枝 世のことをいはでしのぶの下庵は蒲や口を閉るなるらむ基丸 露たきつゞらのあみ戸庭草の雀かくれは訪ふ人もなし真顔 舟人 こよろぎの磯のこがめの酒よりは沖のなごろに酔る舟人下河辺長流 波那征 船人がともづな解て遥なる山をつなげる朝ひらき哉磯名 船玉も帆玉もゆらの湊風なげかはしくてなぐ口をぞ待 裏微加花ニ 諏方 矢の如き早瀬をわたる舟へのさし行操は弓とたわめり 裏微 仁熊 舟人の鎖ならねどもいかりをばみなと〳〵にかけておろせり真村 三浦 ろをやめて長き息する舟人や水鳥すだく淀のあたりに古根 三箱 肩に綱かけて引ども川下へ足は流るゝ土手の舟人 前橋 和多中に楫をたえなば舟人も命の瀬門をいかにわたらん 甲斐田島 青畳しきつの浦の舟人は海のおもても安く乗らし持成 命ともたのむ磁石のはりまがた南を尻に乗る舟人万家 片帆をも真帆に見なして親舟の心のやみをはしか揖取田主 一舟人は波のぬれ衣帆にかけてほしをみつゝもかへる追風真門 目妙加花一 いきしにのふたつどりには海よりも山をめあてに渡る舟人真樽 三浦 加減よく吹風の字のかたち程帆をもたせつゝ渡る舟人 見こまれて龍神よりもおそろしや水手がとらんとしたる舟玉 目妙 遠目から梢にかゝる舟人は浪の花をも折に棹さす平樹 世渡りにたゞよひありく舟人は身をうきものと思ひしらん百歌 寒き目を見し〳〵といひて夜嵐の氷れる孝によする舟人 右ひだりかたわきかねてのり弓のいづくを的ぞやみの船人 いく薬とるとはなしの舟の中に老ぬ幾たび死はぐれして真顔 樵夫 木こりをの重荷を見ても思ふかれ世にいとなまばやむことを得じ契冲阿闍梨 波那細 杣人も入相さそふ松風に狐兎のかよひし遠いそぐなり下蔭 裏微一 これは家大黒柱なりけりとふとき木の柄の斧もてぞ伐る豆成 赤羽 舟木にはまだなら山にこりとりて霧の海よりもどる杣人 世渡りに身を入相の頃迄もきをばちらさでもとる山人ともゑ どろ〳〵とふみなら柴を負つれし高荷は山のうごくやうなり於兎門 灸してながむる山をもつ人は根きり葉きりて薪こるらん高喜 小糸 春槙夏は榎とこる人の事にははなさぬ斧のたゝむら喜可寿 父下廿八 桑折 柴おひて夕日に山を下りあへぬうしろからおす月の桂男御空 杣人がきをこるをりの楽しみにくみてのむらし養老の滝真門 目町加花一 戸塚 戻らんとよべばあちらも欲してもどらんといふ木こり等どく も真杖 日妙 大田原 山人の斧を休めて帰る頃峯に入かはる夕月の鎌大 紅葉まへものぼる木こりのあぶなさよ火のつききうな髪をなか 疲こけて老かゞみたる四の股ひろふつま木もおなじ柴人 四 木こり男はおのがあたまの光りより山の元るをふかくいとへり・ 姫路 髪髭は針のやうにて竜の木伝ふごとき杣人の業 気仙沼 夕山のねりそにこれも繋ぐかとつれて一こりかへる柴人真顔 女 うまじものいづくあかぬを尺度等が角のふくれにしぐひあひにむ児部女王 波那細 足駒とよばるゝ女ともすれば雲の上にものぼる時あり田主 手弱女のこゝろを夜刃にたとへたる人をぞ兎といふべかりける万気 すなほなる柳は似るを柳には似ざる女の心はづかし宇万之 裏微加花三 針袋調度のふくさ何ひとつ見せぬ女の物つゝみかな千額 うつくしき心げはひの見えぬれば紅粉おしろいはつけずともよし綱彦 裏微加花二 鴨川の水で鹿きし都女はかろきものさへ寄麗也けり家樽 小糸 壁の上にめづる女もうつし絵にかゝれざりせばかゝらましやは 裏微 片倉 角文字のいせ物語のぞき見れば化粧の鬼のすだくなりけり 清水 みとれつゝ人の心のみたるゝは柳に似たるたをやめの髪清風 黒木をばおろして跡は大原女がたばね直せる嶋田髷弐歌数 鬼としも女をよぶは恋ゆゑに人のいのちをとればなるべし桐住 力なき女のわざは一筋の糸を引だに車なりけり 桧扇をひろげしやうなさがりばの髪は女のかなめ也けり こゝろある女也けり月やどる袖口おほく重ね着つるは 目州加花一 大原女は黒木にかへししろまでも又いたゞきてかへる也けり 目刻 片倉 面影のよしや茅野の梺より目もとに花をちらすたをやめ め倉積 甲府 川竹のながれの身にははりもあれ針は女の手業なるもの田 の好水 桑名 刈稲をくゝる手つきで賤の女が髪をゆふにも藁たばねつ つ真蔭 うたがひを洗ふ女の操にはかけておもてに見する濡取 姿こそ柳に習へこゝろねは樫よりも猶かたき木娘 市川 まばゆくて側なる人の七難もかくす程なる妹が粧ひ真締 世に恥ぬ無性女はたましひの鏡もさらにみがくざりけり ○ ならべてはいづれぞ花に鳥が鳴あづま女と都上臈真顔 童 童 うなゐ子がうちたれ髪をふりわけてむかひ礫の袖かざす也爲家卿 一波那細櫻迺愛 みどり子のかたゐざりしてすがるには中〳〵親も立得ざりけり春好 波那細 竹高の乗がへにて乗へてあしき友にはひかるゝな子等空寐 裏微加花三 めづ子には何もほかして放下師の手のうちの玉ともてはやし 童べは母の袂をまくらにて袖風あぐる夢や見るらむ真門 裏微加花二 妻となり夫となりしまゝ事もをされ喧嘩に泣別せり於鬼門 裏徴 烏ほど憎まれ口の手習子かあいと親は顔ぬぐふらむ松人 栗柿のもとに遊へるわらべ等は有心意の陽なげなり百馬 桑折 うしろゆびさゝるゝ程のいたづらも只前髪のさかりなりけり うなゐ等がむかひねにかざしたる袖こそ楯のいたづらけるれ四 うなゐ子が馬にして乗る赤貝も栗毛ばかりの毛は生にけり仝 恐ろしき名を呼ながら泣出す子ども遊びの鬼ぞをかしき真似人 芳野 もてあそぶ矢となる竹のためずとも子どもごゝろは真直也けり浅方 姫路 ちやくやと子等が籠目の破れけんないて別るゝ雀いろ時 風の子と童をよべる諺をつむじのたるつぶりにぞしる雛躬 竹馬やこまを廻すに身の入て中〳〵母の手にのらぬ児春友 抱あげて重くなりしとほむる子のそだつは親のちから也けり 御車のうしの頭につきそひてつの髪むすぶ童やきしも真門 袖風の糸をひかへる童をあぶなしと乳母は帯をひかへつ衣紋 目妙加花一 竹馬をのりおぼえたる童等はばゝのをしへをしれざりけりけり 童都の心の駒の手綱にもいとけなきこそ愛に引るれ川常 幼子の浅瀬をわたす智恵あらば親の恵みの深さをも 姫路 夏衣ちゞみ着すれば身は秋のよほどのびたる童部の又 蓬葉とおなじ事なる童部よ見ぬまにたけのついとせれば 笠間 手にすゑてあまやかしたるか愛子もにのらぬ程つのかいたづら 角髪にかしらを結る童べの打むれて皆鬼事ぞする満成 三箱 手ならひの隙だにあれば宝尽しかく子はやはり宝也けり山住 田場坂 老人の子供になればみどり子は老を真似るか杖をほしから高直 新庄 おひ立し後いかならむ老が身におちよ〳〵となつく童は真柴 牛よりも草草をふく子等等が涎はさきへぬぐひやかたし柿人 上総牛込 竹馬にまたがりながら又乳母の口にものにて遊ぶ童べ連行 ○ 総角が乗ゆく牛の尾から垂涎は笛のしづく也けり真顔 木 オ 日くるればおのがおやごとに歓びを合せてねふの木けらやまし正徹書記 波那細 炭がまにいれぬ夏からひをとめて真黒に見ゆるくぬぎ原哉千穎 裏徴加花三 新庄 夜々の事に月を見ねばやとし経ても老ぬ若葉の辛賤の松 裏微加花ニ 桑折 鉢の木は畳の上に育てられしつけよろしくみゆる枝ぶり 裏徹 ゆすれどもしかうに出ざる山守は猿なめりとやおもふなるらむ磯名 秋ふけてこがるゝ色のなき杉も舟となりなばしほに染らし 新庄 柏木は葉守の神のませばにや枝の中にも鳥居立けり 仙台 いつの世にねかへかゝしてか波枕ゆりおこされし瀬々の埋木近道 世の中の濁をいとふ山寺は樹木を伐て撞木にぞする武光 一流れ来てうるかしをとめにたはれたる枝こそつみの名をば魚 あたゝかき山ふところのやどり木をほや〳〵と人のいふにぞ有ける 小野宮 仇波はかけじとむかし神代より操をたつる峯の順松橘良 笠間 声高く枝葉しげりてよの木にはもぬけし蝉のから崎の松 千住 一植木屋も直をつけられてつい安く女にまけし七ふぐり松余 〃餘慶 新庄 厨姥の名も高砂の松ながら曽ね見し人は誉ぬをかしさ 吉原 上下とおなじやうでも櫟の木削る工のかんな違はむ 柞出ふの母にはあらでちゝのみのちゝにおほきな乳は下りけり 奥瀬ノノ 埋木はあふ隈河におほくあれどたまにも見えぬ板の玉松文 朝夕の露を含みて銀杏の乳にそだてつる枝の寄生尓也 杣山のきのふのふし木あすならふ今日のくれには用ひがたけん事顔 草 りんとうの花を手向るぎぼうしの経よむ声はたふとかりけり基俊朝臣 裏微加花三 姫路 あぶなしや研立し鎌と三日月に宿をからるゝ野べの露草 むらさきにはは染ながらむさし野のひともとらざる毒だみの図 裏微加花二 秋の夜はかやつり草に虫のねて露の子供ぞころけ出ける 裏微 大勢の子ともの育つ青雨に名のつけられぬ草も生けり福耳 手はつばれ歯はひさごの実秋の野のにしき織かく萱の姫哉下蔭 小ゆるぎの浜の真砂をかき分て手に入しほに得たる筆草草春満 はしたなき声の高堂かや〳〵と萱野姫ともいはるゝものか空寐 福岡 春年のふるから小野もおのづからさをにならぬるすゞなすゝしろ・ 里近 目妙加花一 依智 大君の内野も名のみゆるされつあるは鬼百合鬼のしこ草 八幡 ひでりにもつくることなき池水の心にまかす萍のたね酒盛 目妙 三浦 逢坂の関の清水のかたはらに童部がひく駒つなぎ草 そのさまも女めかざるおもと学おもとゝは誰が名づけ初にし 浅茅生の小野の小町と見し花もしはかれ残る霜の下草。 最上 村しぐれめぐり来る野にかさ〳〵とものいふやうな風の冬草 仝田中 駿府 其名をば野槌にとはん粟売にはじかれたりと見ゆる枯草 道雄 仙台 名もしれぬうちはとるにも足らずしてまだ庭若きすまひ草哉 根もなくて浮葉に光る水玉やうれぞ茲の前世の草 甲斐今川 一様の床かり寝の枕草紙にもおもひ草あり志草あり 富津 撫子も霜の翁と腰折て杖つくやうな添結の竹 千住 笛になる根さし也けり春くればめをふき出す沢の若声 いなぬともいはれず水の押かけて誘ひに来たる池の浮草杯貫 一霞むく春の焼野に打直し鋸草のめもふきにけり長房 吹風の手取と人にめでられて大きく出たる角力学出 新庄 ○真坂樹 一もとの月の桂を見ればにやみな哀なるむさし野の草 印西 くちばみのさしたる跡にもみつくるものとてや名もめなもみの草 桜ちる庭ふく風にはたゝきて花のふゞきに濡る鷺草目積 もの陰に事露のめぐみを請ざるをいつみ学の壁訴訟する鳴音 紫は浅くさ海苔か武蔵野の尾図が波の下草の花。 袖といふ薄や萩の花よりも秋は第一番の富草浅草竹 かけ廻る駒をとゞむる広き野にちからの程もしれぬ草〳〵端文 月にうつる露を結びの角力草かりとりかねてのこる一もと金元 野も山も皆めにたてかすなれば何をしのぶの草とわくべき 枯野には咄しの種のあるらむと根を掘てきく霜の下艸松彦 氏もなき女ら花すらきよろしとかやの姫にや宮つかへする 妻さればしかへの岡にもえ出る草は蛍と化すにやあるらむ千賀江 百草は皆それ〳〵に能あれどものぐさばかり世の廃れもの 姫路 冬枯のあはれれ時はさもなくて賑ふ春ぞ草はめをふく明岡行名 鶏 さうともと羽ねに塩ふくあか鶏のまくるかしきのからげなるかな烏盛朝臣 裏微加花三 夜明ぬと吾妻路くだる旅人のまくら詞に鶏が啼也真門 裏微加花二 路やすゝむる時をつくる折うなづくさまの見ゆる庭鳥板貫 } 鶏の舌の丁子も匂ふかな声も羽袖のかけ香と鳴和布刈 裏微 寝飽ては出る欠びと諸共に隣へうつる鶏のこゑ 甲府 羽に塗し辛子やとれぬ人にも目をこすらする暁の鶏 空音して開を越つる鶏の声耳に通れば夢も破りぬ 長崎 鶏はとさかの色の暁をおのが時とや声に立らむ真 一しきり声は立しが夜深さにまたね出したる宿の鶏満成 時守の鼓につれて明近き空躍りしてうたふ鶏凹 烏ほど種ぬもあやし神代より長なきしたる鶏のまなぶた千類 目加花一 天明の燈火うすくなる頃に隣の声をつぐあぶら鶏水彦 上毛大胡 君が代は猶長かれと鶏ののびあがりつゝ謡ふめでたさ 目妙 三河吉田 とりあげて聞ば髪さへ乱れ鶏耳にかゝれる暁のこゑ橋丸 片倉 夜をふかす酒酣に千鳥足鶏も一番かたふ声〳〵 柿崎 天の戸をあくる達しと待かねて羽たゝきをしてうたふ鶏細 桑名 雛あまたつれて五徳の庭つ鳥三のあしたに嘉慶幸と啼 富津 ひが耳に酒乞ふと声の聞えしは見ずとも鶏の猩々ならん 千住 今宵ぞと告し隣の祝言にうたふはこちの暁の鶏 新庄 暁を告ぬる徳は諸鳥に日出にけりとしるき鶏 真柴 黒髪もみだるゝすや乱れ鶏むすびし夢もとけかふと啼槌丸 月もやくいり立器の燈心の首をもたげてなく油鶏江戸振 明れき耳のしかへに声立て人まさりなる鶏の口下塗 米つきに起よとかたふ大声も三度はりたる臼の鶏千賀江 家つ鳥東のそらの光るすかれも時計をかけろとぞ啼真河 一、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、〇〇 左倉 鶏の子は母のはがひの懐に居てもひよ〳〵と寒さうに鳴花見 姫路 こぼれ米拾ひて雌雄の鶏は臼のほとりをついて廻れり女五行名 鳥 くわんそうとなくやよし野の山烏かしらも白くおもしろの夜や隆資卿 波那細 佐渡 明がらす目を摺ながら出つらむ色薄黒き横雲の袖夏海 降雪に琵衣をうち着つゝ親につかふる山からす哉水枝 裏微加花三 夜を昼と桂男にだまされてやもめ鳥やうかれ出けん袖人 先へ飛からすも雲の波間をばかはと一声告てわたれり 明鳥かをる〳〵と聞ゆるは誰がきぬ〳〵の袖の人香ぞ一之 裏微加花二 佐渡 朝日影にほふ傍から飛出る鳥も伽羅と見えまがひけり北海夏海 ひ〳〵の目さますのみか蒔入し麦の畑をもおこす鳥等 山からす頭も白くなりにけり若がへるべき時や待らむ壽 鳥等が面はくろき玉くしげはこはおしろいときしやうなり磯名 横雲のはしのくづれぬさきにとて烏の早く啼わたるかは金元 裏微 照月の鏡にむかひ我黒きかほと恨みてなく鳥かも 雪折の木にはねられて飛時は烏も白き羽をちらしけり 大空に文字かく雁の真似をして只墨をぬる阿房島よ真門 一ノ関 毎日の日の出を願にかけて啼鳥の声は聞ぬ日ぞなき声音 夏目 鵲のはしにもならでかは〳〵と夜明からすの鳴渡りける あしたには早〳〵起んと人さきへねぐらを急ぐ夕鳥かな相児 おのが羽の黒きはわびず山の端の白くなるとてなく鳥かな宇万之 父下三十六 一、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、〇〇 磨いたら白くなるかといと黒き身が木にとまる鳥やさしや 童部等が灸すうるとて山鳥おのが口にも墨やつけらん和布刈 目抄加花一 関宿 天に口なしとはいへど日の中にすめる鳥ぞよしあしを鳴 目妙 明がらすみつよつ二つ飛きえて真黒なる夜もしらみてぞ行 栗橋 名古屋 人にまでかへれとぞ鳴山からす山のかしらのなくなる頃 有文 山形 わろしとて気にかけるこそわろけれやくわほう〳〵と啼る鳥を 駿府 ぬば玉のやみはいづちへいなのめのほがらから〳〵と啼鳥哉 和海 柿崎 世の中に憎みきられて啼烏嬉しきは老が冬の曙 好成 小松川 寒鳥あかつきかけて鳴わたる声は寝ぼうの薬也けり 軍釈子 したゝかに箱する為退やれば厠〳〵と笑ひてぞ行 岩城高坂 千住 いちびからほがら〳〵と明鳥石のひの出に先啼わたる隙無 上毛世良田 憎まるゝ口に反当をなす烏人にをくへのはしといはなん ん良耳 粕川 母鳥にはぐれやしけむかあ〳〵と名のみか声もからす迄なく 啼やうの気になるものと夕くれの泊り烏は李なりにけり春則 とく起て竈の山のひもす鳥親に反哺のかう〳〵と啼道足 よしあしを告るからずは陰陽師身の上しらぬ鳥と社しれ袖人 小糸 かしましき口はにくめど長き夜の耳に嬉しき明からす哉 笠間 養ひをかへす心のまことより烏は紺にも退れざるらむ 照月に阿房からすは水あびておのが朝もひるかとや思ふ詠女 くは〳〵と烏来なくは婆羅門の田作る道具呼にか有らん下蔭 博士だに及ばざりけり吉凶を告る烏の黒きものには春満 月故に見えねど天のかは〳〵とはしならしては渡る夜烏打人 一、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、〇〇 赤羽 其地わろき烏といへど夜明れば直にぞ渡る横雲の空 山がらす啼音も憎き口ばたへこちから灸をすゑてやうたし多丸 朝餉たくせはしきはしのひもす鳥親にはんほの孝のもの哉 あたら木を烏のはこに塗たてのねくらと見えて白き山松 桑折 雪見にも遠く遊ばぬこがらすははゝその杜のあればなるべし 金文 夕鳥月のちにやおそれけん森を小楯にとり急ぐ也 明鳥飛出て雲の白紙におのれ墨絵をかゝうとぞ鳴 夜烏は星の林を出てまた月の桂の蔭になく也 金也 山雀の利口ものにも増りけり恩をかへせる阿房烏は 新庄 酒 中〳〵に人とあらずは酒毒に成にてしがも酒にそみなん旅人卿 波那細 くみてしれ春の心を引出す酒を流の霞なりとは武光 酒どのも狭しませましよろ〳〵とよろめく程の酔心地には一也 しひらるゝ酒たうべては目が帯てくるしや下戸のたふとこりんぞ一 裏微加花三 飲過そ酒は名におふ男山うさや中〳〵思ひ出まし枝ふ 駿府 酒呑てきびのよいとは古への禿で造りし時やいひけん歌雄 のむ酒は人の心を引たてゝ面白きかたへつれて行けり目 芳野 酒ははかりなきみ笑ひみのめやのめ聖の古語とよそに聞せて耕 裏微加花二 駿府 ひとつきのことほざ酒を昔より今にいひつぎ語りつぎのむ眼木歌 其色の油のごとき江川酒火をこふ頃となりにからしれ全道雄 立田 味酒の三輪は大和のものながらからくれなゐに酔にける哉 十一月十一日 長崎 薬にも毒にもなると聞酒のいかで加減の出来ぬなるらん福冨 裏微 高浜 世の中の事もはからず酒飲て心をやるにますはなき哉五百丸 三浦 はだ脱て殿上人も渕酔の酒にはあとを引給ふらし豆成 立川 汲かはす酒におもての赤くなるはしゆといふ声のあればなるべし 寒き夜は衾の外にあたゝめし酒をみつよつかさねてぞぬる 佐渡 世の中を動かす花を片腕にへしをるも酒の力也けり 真和 公 桑酒に酔ふすうちに繭の如蝶とも化さむ夢心地かな 桑名 酒の名によくもつけたり男山まゐらぬ人のあらじとおもへば かたき物歯にあはぬより酒をのみかみけれかもとうたふひらく こけ落て腰を打たるかはりとやいたみにまさる養老の酒数頼 一葉より汝がこのみの桑酒もやはり糸ひく盃の中弦道 永き夜に酔のみじかきことし酒まだ寝ぬうちに夢をさめ年経 世の人の重ぎかろきのわかちさへ酒ははかりのなきものぞかし 不知 只酒は量りなけれど乱れては奈良の法師にあふためしあり 印西 国に笑ひ月にも泪くむ酒はいづれこぼるゝ物にぞ有ける。 いにしへの七のかしこき人たちも此ひじりをぞ尊みにける 青梅 綾繁 芳野 はる〳〵の船路に酒はゆられ来て人をも酔すやうに成けん。 味酒をさゝをせ〳〵とおすまゝに舟に乗たるこゝち社すれ 杉の葉のしるし尋ねてくら人の竹の葉買てもどるをかしさ磯名 桑折 明日は雨ふるともよしや蓑売て身の濡るほど酒をあびばや雛袖 朝寒に菊酒のめば綿ひとつうちからも着しこゝちこそれ網彦 目妙加花一 佐渡 名に高き富士のな酒口にきえてむねの烟もいづち行けん長成 十一丁 } 汲かはす酒は油のやうなれど舌も廻らぬ車座の客 山くもおされん花の隅田川かゝる霞の衣こしの酒江戸振 目妙 ちと飲は薬過せば気の違ふ人参程のつよき酒かな 犬と猿あらそふ中を三水に日よみの酉が中直ししつ おほかりき思へば酒は薬ぞとわれのみしりて過る月日は 関宿 真告 二本松 安遊民 山形 三水に酉とは書ど酔ば又いぬ居にこけて立れざる酒 春信 仝 古酒新酒色くらぶればこきは八重薄きは一重桜なりけり 酒瓶の波の中より朝日影匂ひてうかび出る盞 駿府 酒は実に聖なりけり欲を忘れ懐の物も捨る生酔 蝶の吸ふ露ばかりなる酒にだにはなのあたりの色に出る下戸 仝清水 紅葉する頃つくりたらみぞの酒ひをいれて又へしほぞよき がもすると名に聞ゆれば水とりを酒といふ字に造り物けむ夏海 花鳥里 酔て肌ぬぎし無礼をわぶるとて醒てぞ酒に着する清良 盃の蒔絵の鯉もはねるかとおさへてくめる酒も滝水黒金 今井 孝行の徳利ひとつは日〳〵に親にすゝむる養老の酒井守 姫路 仇人と恋ならいはむことし酒色に出ても早くさむれば 黒塀 米沢 もる酒の其名をとへば隅田川いざことゝはむ鵜越盞 一東山子 千住 老松と名によぶ酒のき一本みきとなるべきしるしなるらむ 新庄 百薬の長寿ときくの酒くみて千代をへたりと酔る楽しさ さかしらに聖とよべる酒に酔てなど腹あしくぶつ〳〵といふ万 戸塚一 誰ひとり吾ものもなく烟草のみ吸へらしたる下戸の宴 太田原 ヒ盛 畳へはこぼれ安さもしみよさもおなじ左卿の備後酒かや 父下四十 のめうたへ鶏はまだばと酒の名の杜康する間にゑひは過けり朔丸 布引の瀧にさらせし米をもてあだんとなく造る諸白 姫路 段々に大盃が廻りてはやがて家まで廻るとぞおもふ 少しづゝ飲は薬と見ゆる也にがい顔する下戸も寝酒に 青梅 綾繁 三水に酉とかけばか時酒になき出すへの癖も有けり くめは実に人の心のまはされぬ独楽の名におふ博多煉酒満成 桑折 いかでかく酒の力のつよきにやかたき心の動かさるゝは 仝 酔しれし酒に本性あらはして夫を命の洗濯にせり 高安 福島 こすものはなしといへども頭巾あり漉たる酒を越ものや何に 左倉 下戸ならぬをのこはよけれ徒然をなぐさむはたゞ酒のみにして節長 高畑 顔に紅葉心は花に気は若く作れる酒もつくり物なり 昨日といひけふも飲つゝ飛鳥川せにかはる酒は渕をなしけり 餅 ことちひこそいたきやつなれ皆人の福たとのみも名つくとおもへは行宗卿 裏微加花三 冬枯て木葉に似たるかき余も灸れば色の出る事の日空寐 天神山 うつくしき心もちひのねれ合し親子中こそ世の鏡なれ 駿府 餅の音は子ともの耳にほとゝぎすつき残してぞ夜は明にける 桃下亭 裏微加花二 高崎 かこひたる壱年の水餅氷とけてうち出る黴や春の初花 心葉の松の下なる蕨餅さて折うつに入て送れり万良 子のこにはもちひの色も紫の上を大角豆に粧ひやせむ枝成 春ことに古くもちひのねひるかびは出来ても照る鏡山凹 父下四十一 裏微 いか程の歌の賃にはなりぬらん餅にはなれぬ鶯の名は真門 目妙加花一 花になる目黒の餅はきながらに雪のやうにてつきぞよろしき千賀江 目妙 三浦 瀧の音よりも公任餅と呼ぶ名こそ流れて久しかりけれ 小豆成 冨士の如切しかき餅の焙籠をもりて烟の立のぼりける 花に咲目黒の餅は山吹かくへども腹のみにならぬ也 銭を手に握りこぶしをさし出して蕨餅かふ童をかしや ム 一歯固と祝へる餅のめでたさはゆるがぬ御代の例也けり 足つよき餅の力にくらべては顔に色もつ酒は及ばじ真広 常府 一紫の上とねのこの餅いひは今もひめおくことにぞ有ける一之 陽気かすむ月の鏡のこしきぬの餅は餅屋にしく物ぞき侘住 駿府 こなたへも一つは巨勢の椿餅つら〳〵つやのこのもしき色男歌雄 佐渡 立かへるとしのあしたの鏡餅若き心になりてこそ見れ ム 麻の中の蓬摘入し菱餅のなど真直にはたゝぬなるらん 仙台 いざ我にくれよといふはうら面児の手にもちてくふ柏もち 夫婦してかはらず向ふ鏡餅すわるに皺を見るもめでたし真門 枕桜めにつく頃はなまめきてもちびの色も草になりけり 冬の内橘てしまへど春はまた月はじめとて祝ふ若余 吉原 高崎 貞雄 一餅買て親へ土産も孝行の孟宗竹の皮につゝめり松人 春雨の野辺や生敷の青畳大鉢にもゆる雛の草餅 ふる雨の淋しさに出すかき餅に網かけてまつ軒の笹魚歌数 重箱のふたみもす廉もあかしがたつきを自慢の餅とかは曲持 笠間 尻おもきすわかの餅のかたくなりたゝんとするにたちがたき哉 父下四十二 十八 小林 一形より名をばつけん蕨餅握り出したるやうに見ゆれば 松盛 仝 二神の中のあれたる夫婦もちいくよ筑波の山の名物 音有 来らかにねりよき餅は青柳の綿のやうにて糸を引けり宇万之 いかなれば猪のこの餅の中に又かのこはみえず黒ごまのいる 日を経ればゐのこの餅もつめたしと炉の火にあてゝあたゝめにけり 君が代は猶丸かれと皆人の餅に心をまろめられけり 桑折 直ならぬ蓬の若葉つき入て丸くなしたる雛のひし豚 餓死すとも周の粟餅くはぬ人によくにつ坂の蕨餅かな くれて行年の皺をものし餅の春へまたげる足の強さよ 高畑 蕨餅もらひおくれし子供等が手をひらきつゝ待そをかき網彦 つく時はつよい〳〵といはれてもよく投らるゝ棟上の餅田沼大酒 述懐 譬ひとへ隣にだにも訪れねば貧ほど深きかくれ家はなし桜井基佐 波那細桜迺愛 世が世にてあらまし構と歎くかな理を非に出し物のとぢめに千顕 波那佃 かたき哉身をつくしてもよしあしになにはえ物といふふしをだに 前橋 子を思ふ親の心は目に入てゑづくなけれどくらみ社すれ 身の果はいさしら雪の船ならでうきながらつむ年ぞ苦しき万象 裏微加花三 顔出して勤るかひは有馬筆かくて浮世と引こみはせじ真葛 春にあはぬ胸はひらかで此日頃盛になりし物思ひの花春好 笠間 親を親のやうに思はぬ馬鹿な子のこのやうになどか愛かからん 裏微加花二 いかなれば世界を廻る黄金にも我廻り逢ふ事のなかりし松俊 裏微 老ぬれば腰も出りて今の世にそりのあはざる身とはなりにき真秋 富津 世の中はつるぎのやうれいとなみにつかのまも気は休まざりけり 仙台 つれ立て来し年月もひたりと我を捨てや足ばやに行 新庄 心にはとしよらせねど我顔のひたひの皺ぞより処なき 世のうさを聞じとしばしふさぎても猶かまびすき耳の奥い板貫 みね々に拾ひし年の身にあまり世に捨らるゝ老となりにき春則 年ばかり高くつみても富貴ある天へ手とゞく足代はなし犬馬 いかにせん何にもつかぬ物ゆゑに我と我身をもちにつきつゝ なしといふ貧のみありて有こといふ富は得がたき世こそあや 一番の左はいはじ駒合せ故人の右に出るよしもがな千類 老舌に涎はたえず出れどもあゆみは牛におよばざりけり酔人 目妙加花一 耳も目も疎くのみなる老の身にかしづく物は杖ばかり也 木曽福島 一筋が百筋にふえて九十九髪我や丞らじぬけば生つゝ穂垂 よきことの思あへる世の中にゐて人におくるゝ身をいかにせん真樽 目妙 うきにつけ我身をうらみがちなれば人にはくずといはれ社すれ 今は子を思ふばかりになりにけり次第にとしのよるの鶴ほど 年ごとにたゞとる年をいたづらな心ばかりはとらず経にけり数奇成 富津 治れる御代の広きに生れ来て我身ひとつやをさめ兼ん 吉野 物ごとにすゝみけもなく老ぬれば心の駒も驚馬におとれり ノ浅方 綾部 驚きし鏡の影に見る雪は得るとなしに年をこそふれ 戸塚 六十こえて子に帰るとはたのもしや終に行べき道をゆかずに 花鳥里 人並の立居に渡る世の海もくるしき瀬には急に社なれ 交下四十四 下サ銚子 亀の甲よりはかあひしねの功むつかしきむつを隠してぞ経る夢也 智恵袋ふるひてかんせてない智恵をかりた物さへされぬ哉高彦 二つ三つとらずに置て我としにあやかりたがる人にとらせん柿人 心のみ児とことならでさまは世のおやじ親父となりにける哉 世の中はからき物ぞとのみ込て居ながらも猶味きなく思ふ和布刈 桑折 米の賀にも次第〳〵に近よりてぬかつく腰をいかゞしのばん 真元 我願とおもはず年をとりためてかへしたけれどやる方もなし 高畑 長生をあやかりたしといふ人に年ひとつ宛わけてやりたや 老の身は下り坂とて一とせのめぐりくるまも早くこそあれ方住 懐曰 なくそぢにおよびかゝれる杖なればすがりてのみぞ腰も立ける行家卿 裏微加花三 耳うとくなりて中〳〵聞なれつ昔はしらぬ鶏の八声を 新庄 したしみし若めがねさへいつとなく我をうとむかあはずなり 老が腰さすらるゝより粥杖につよくうたれし昔悲しな柿人 国に杖つかぬ所ぞなかりけるとしも六十余州まはれば 桑折 裏微加花二 佐渡 寒さしらぬ風の子也といはれしも今更老の身にぞしみぬる 夏海 桑名 我こしの仮名のくの字に曲る程昔のしの字忍ばるゝかな 応入道 腰膝と額の波のみつわくみて水なぶりせし昔恋しや 公 身にしみし親のいさゆも老ぬれば泪となりて今ぞ出ける百馬 かぞふれは今は我身におよびさへそこなふばかり友ぞへりける千頼 桑折 百とせにはや手のみゝくばかりにて昔の花ぞおもひ出さす 裏微 三崎 むかし忍ぶ泪に神はうるほふをなど老が身のしなび果けん芳風 佐渡 竹馬に乗てかけしも昨日けふ車を懸る齢とぞなる 手をへる様糸ならば老が身も過し昔によりもどしたや麟馬 老の波よりにし年を今一度わかの浦べに打かへしたや水垣 手を経しふりわけ髪を昨日けふと覚へ違へのむぞしなき福養 つよかりし昔の事を語りても今はあらそふ人もなきかな 処女郎に我もよりなんといはれしをうるさく花にほれにける哉水枝 腰いたや杖にすがれど百とせにおよびかゝれるねになりては 目妙 栗橋 子に臥て寅に起よといはれしをうかり聞つる昔恋しも清丸 若き頃などか男をみがきけん老てあたまの光るも思はで家樽 名古屋 鬼ひしぐ昔の盛しのびつゝ仏たゝきてくらす老が身園丸 この頃はちりめん皺ぞよりにける羽二重肌といはれてし身も とし月のゆくが速しとおもふ間に我は童に戻りける哉 なみ〳〵の年にもなれと幼子を思ふ我身の老もしらずに打出す 友とする燈火もかしらの白くなりておなじ若木の時やそふ 桑名 肩車乗し昔ぞしのばるゝ跡へもどらぬ老の坂には 仙台 昔へは礑もどされず慕ひよる老にのみこそほれ増りけれ 小糸 風あげて遊びし頃にくらぶればいろ〳〵風のかはりけるかな 采沢 若かりしむかしを忍ぶ文字摺や乱れし髪もとかむ人なし春木 はやり染世につれみてきたりしもはぐれしやうに昔こふ也松俊 木更津 年いくつ隠せしうそのいつとなくはげてくやしき老が月代松盛 芥子よとていはれし髪も胡麻塩となりて今賀を祝ふ暇千賀江 立居にもやといふばかりくづをれて用なき弓をひき杖にせり凹 我あしき事をもよしと見し親を嬉しきにつけてじのぶ悲しさ田主 桑折 雅同士いどみあひしを友達と物がたるにも袖をぬらせり 雛袖 印西 若かりし昔とりたる杵づかのつかの間に我髪しらけたり甲酉明 高浜 めの覚ぬうちにわかれしかぞいろの恋しや夢のよを渡る身は めの覚ぬうちにわかれしかぞいろの恋しや夢のよを渡る 夢 ぬる時に見る物とてやうば玉の夢をもかべと名づけ初けん須阿法師 波那細桜迺愛 若かりしもとの心に結べるは野中の清水ぬるうちの夢水枝 波那細 時しらぬ夢の冨士のねいつ見ても春のはじめのこゝちこそれ真葛 明ぬとて枕の山に入る横の跡にゆるりと又夢や見ん凹 夢のうちに身動きならぬくるしさは喰れて横の腹なる千賀江 ぬば玉の夜あるきするは危ふしと望は夢を見ずや有けん柿人 終夜驚かされしきものゝかべは破れて暁のかね空寐 錦よと夢に見しめは左縄うつゝに戻る藁敷の床凹 遠けども一夜のからに天竺にわたりて見たる夢の浮橋 むかしより夢をかべとは見る人のこてを枕にぬればなりけり 裏微加花三 唐迄の程は近くて高みから落る間の夢ぞはるけき青井綾繁 富士の山夢見し床に鳴沢と聞しはおのが鼾也けり真弓 見し夢のたまにはあたる事もあり横もさま〴〵喰あはせ 幾度も寝光るす廉の関守は夢語もやすく通さゞるん 裏微加花二 名古屋 腹の上に松の生ぬと見し夢はよくねつきたる時にや有けん此丸 寝るうちを極楽也とまどろめばなき父母に逢ふ夢も見し真枝 したゝかに金ひろひしとそこかしこつまんで語る夢もうれしな真名井 見し夢のうまき半に跡なきはさめぬうちとて横やくひけん 花紅葉狩るその夜は草臥も出て猶ありく夢の通路 大田原 うまいして見たる茄子の紫もさむるは早きなぼのゝ夢 新庄 裏微 三浦 朝起の奈良で妻にぞおこされし大和めぐりの夢をみる〳〵 豆成 御園 思ふ事あれば違はず見せけるは夢や心をよく知にけん 友足 日野 うたゝ寝に心の駒のかけ出て夢は埒なき物にぞ有ける 長き夜に人の眠のさむる間は夢のうき橋懸なほす時真門 隔つ世の人とはなしのなるやうに誰かたしけん夢の浮橘橘氏 上もなきよい夢見しと妙を出し夜着は其まゝ富士の人穴賃俊 一諺の逆夢かそ朝見し鷹をさらつて行し夜明島は琴富貴 何ひとつとりとめざるは手枕のしびれしうちの夢にや有先磯名 顔に目のまだ覚やらぬ玉手箱あけてはなさぬ春の初夢頭陀丸 日妙加地一 何やらむわかぬ寝言もいひつらん見ぬ唐土の夢を見し夜は真明 目妙 春の夜の夢路に花を手折もてかひなだるさぞさめてしらるゝ 犬山 鷹の夢さめても人にはなさじとすゑてよろこぶ神棚のみきナ 白川 邯邪の夢にねがひは満たりぬ濡手で粟の飯かしく間に杜鶴 童だにも見えぬ瞽のうば玉の夜の夢をばいかにみるはん 米沢 類よみは寝ぬるうちだに夢のいだよしや菜の孫ながらに見て玉成 新庄 夢のうちに蝶の見ゆるは我寝ぬる枕に菊をつめしゆゑも真坂樹 一情のあたゝまる時寝衾の夢の内にも逢ひろひけり 父下四十八 枕をも冨士のかたちに見る夢やあてたる紙は峯の白雲槌丸 下田 夜毎〳〵いくらも夢は結べどもとくと覚えぬ物にぞ有ける安土住 一銭かねをかせぎ溜たる夢覚て身に残りしは汗水ばかり犬馬 いねわろき人の蹶るにも驚きて覚はしりたる春駒の 水戸 初夢の富士や袂へ入ぬらんもれし霞の袖のほころび へつたりと腰のぬけしも道理也人におはれし暁の夢楽抔見詰 釈教 浄土にも剛の者とやさたすらん西にむかひてうしろ見せねば蓮生法師 波那細 吹つのる鷲の高根の山おろし世界は法の花だらけ也橘良 裏微加花三 法華経を謗らば罰は来ん世にて唖ことゞもり押ことなせそ千顕 裏微加花二 蓬の上にのぼらん人は身を軽くもちて妻子はもたぬ也けり宇万之 西方のぬしてふことはおのづから鳥士もにしと友をこそ呼べ きり〳〵す壁にすがりて法華経を古うちもせできゝぞ味はふ松俊 御佛のいましめなるを酒の名のさゝ菩薩とはなどて書らん琴戒 とらるゝもとるもはかなし鷲の山鶴の林のむかしおもへば こちらから御問申せど何事もしらぬ仏のさまぞ尊き下見 目州加花一 身もたゝでうつふし染の麻のけさ肩にかく迄世にははづれし四 日野 目妙 紅葉ゝに踏まよひしも春にあひて角の落たる鹿の死哉 おしなへて徳をたふとむ御仏をなど釈かんと人のいふらん麟馬 一心をも洗濯せよと世の人にときけまへたるのりの水哉 銅仏は拝みしあとでたゝけども腹をばたゝぬ座像也けり 父下四十九丁 新庄 のりの水心すませど山寺の法師くさきは離れさりけり ふみを書起請をかきて短師達も女をや先導にけん枝成 極楽の蓮の上にのぼればか命をふろといひをしへけん糸女 さく春もちる秋もなく仏にはしきみといへる花や手向ん 一敵にのみつながれし身のうき舟はいつ彼岸へはなれてか行仝 神祇 笛吹のやしろの神は音にきく遊図にやゆきかよふらん公任卿 裏微加花三 殊さらに笑ふえびすは愍みの眼尻をこそたれ給ひけれ鳴音 裏微加花二 神垣にけさは真白く一ふりの霜のつるぎの納太刀せり真弓 新らしく造り替てもふるといふ名はけづられぬ宮柱かな四 裏微加花二 蓬の上にのぼらん人は身を軽くもちて妻子はもたぬ也けり宇万之 西身のぬしてふことはおのづから鳥士もにしと友をこそ呼べ きり〳〵す壁にすがりて法華経を古うちもせできゝぞ味ふ松俊 御仏のいましめなるを酒の名のさゝ菩薩とはなどて書らん琴成 とらるゝもとるもはかなし鷲の山鶴の林のむかしおもへば こちらから御問申せど何事もしらぬ仏のさまぞ尊き 目州加花一 身もたゝでうつふし染の麻のけさ肩にかく迄世にはづれし凹 目妙 紅葉ゝに踏まよひしも春にあひて角の落たる鹿の花哉 おしなへて徳をたふとむ御仏をなど釈かんと人のいふらん麟馬 心をも洗濯せよと世の人にとき教へたるのりの水哉 銅仏は拝みしあとでたゝけども腹をばたゝぬ座像也けり 父下四十九 新庄 のりの水心すませど山寺の法師くさきは離れさりけり ふみを書記請をかきて祖師達も女をや先導にけん枝成 極参の蓮の上にのぼればか命をふろといひをしへけん糸女 さく春もちる秋もなく仏にはしきみといへる花や手向ん 一敵にのみつながれし身のうき舟はいつ彼岸へはなれてか行仝 神祇 笛吹のやしろの神は音にきく遊岡にやゆきかよふらん公任卿 裏微加花三 殊さらに笑ふえびすは愍みの眼尻をこそたれ給ひけれ鳴音 裏微加花二 神垣にけさは真白く一ふりの霜のつるぎの納太刀せり真弓 新らしく造り替てもふるといふ名はけづられぬ宮柱かな 桑折 正直のからべに神やいますらむ獅子舞さまを見るにつけても 裏収 くもりたる心もちては天てらす神の恵のあらんやうなし 三浦 片倉 武蔵現神にもかけてたのむには先絵馬をこそ奉りけれ 川常 大国をふみかためます御遷宮神のおたびはよごれざりけり 正直のかうべのうへに八百万おし合てかみのやどらせ給へ 八百万かみしめ給ふ日の本をうまし国とはうべもいひけり 新庄 明ぬとて雲のはしるは御前かも一夜めぐりの神の行かた磯名 古河 納りし太刀も幾年世をふりて神さびにけり宮の広前 目妙 三浦 広前に三わすゑまつる酒店は看板さへも杉をかけたり 八乙女が舞の袂をかへしては神の心も浮雲の宮 桑名 上下のかもの宮居へ行かひの氏人さへに足はいとなし 仙台 父下五十 天神山 沢山な燈籠の火をともしげになとて春日と人のいふらん一徳斎 森岡 広前をそのまゝ額に住吉の神のながめもつきぬ真砂路神田竹女 石清水流れに遊ぶ放し亀高みにと申宮も尊し万乗 唐衣したてる姫を祈りてはいとゞ心も清くきよけれ ふた心もたで祈らば終に身の幸あらはれん箱崎の神 今井 敬ふによつて威をます神は又人を大事と守り給はん今井丘守 ○ 市によすねをよめるおはじもじなき長顕 あさゆふのけむりにきはひいちつらねみせもそろへぬ真顔 うをこめおほしゑまれてやすくよわたる元とゐなか京