姫美談語

creator
不明
created_at
2026-08-17T19:23:18.891Z
updated_at
2026-08-17T19:23:18.891Z
field_rights
CC0
field_creator
不明
field_language
日本語
field_has_image
true
field_identifier
10010000017137
field_ocr_status
completed
field_title_yomi
キビダンゴ
field_attribution
東北大学
field_oai_datestamp
2025-12-02T15:10:13Z
field_oai_identifier
10010000017137
field_ocr_updated_at
2026-08-28T18:53:25.651810+00:00
論 お はしがき 姦談のまくらといふものをある人よりかり得 てひるねしけるかしはしの夢のまにさま〳〵 のおかしきことゝもを見る目さめたるのちみ づから筆とりて其あらましをかいしるしかの 枕中記のふることを採りていまた熟さぬ姫美 謹語と名つくるになむ 庚戌の冬神託のも命ずきの翁 姫美謹語 食売 武蔵とことつふさとの境なる両国のはしのあ たりに幾世餅といふものうる家ありけりこの 家の妻はもとにひ吉原の里のあそひにてその 名をいく世とよはれけるかもちあきうとの妻 となりてのゝちにも尚昔のあてやかなりし俤 のうせねはそを見んんとて命をかふにかたつけ て日毎に来る人いとおほかりあるじのめをと はあしたよりゆふべに至るまで憩ふまもなく 立はたらきて夜に入るとやにて門の戸さしか ためかたみに衣ぬきすてゝはだかとなりひと つ倉にふたつの枕おしならへいねても餅をつ くにやあらんひた〳〵とものゝ音のしけるか 一しはらくして妻は息もつきあへす あれいくよそれ〳〵いくよ幾世餅 もちと奥をはつきてたまはれ といへは夫も われも亦やかていく〳〵いく世餅 餅はたのしりもちともたけよ といひてひてひたつきにつきけり津の人はそのす さましき響にふと目をさましてまふ夜ふられ に余売のめをとのよくもたらくことよとそほ めたらへける 雨頭の蛙 晋なふがしのみたちに仕ふる女房の日比むつ ましきがふたり春の雨夜のつれ〳〵にわざを ぎひとのうはきしあひてよのぬくるも知らて 有けるかやかてもと末にかしらのふたつある おはぜ形をしうでゝ何にかあるらん見のから にいれたる黒きくすりをかたみにほとにさし ぬり〳〵さてめをのまたばひするやうにふた りうちかさなりておのものものものをもゝと腹との間 にはさみちからをこめて抱きしむるはづみに 両頭のくちなはゝ草ふかき上したのあなにた ら〳〵といりてそのすかた見へすなりぬかく てかたらにもみあひこしをあげさけしけるか やゝありてひたふる女房はないきあらゝかに して上なる女房の耳に口をよせかう睦しきふ たりのうちもしひとりか男にて誠れあひたら んにはよるの楽みもまたひとしほふかくやあ るらんと云へは上なる女房も声をひそめてい なわらはゝさ思ひはへらす大かたのおとこは 勢よはくてふたつみつみつと数を重ぬれはやく もなへちゝまり干蕪のことくなりてこゝちゆ かぬものなれと此の物はかてはひとよもてあ そふともさらに病ることなけれはわさをき人 なにかしもりはいとかはゆくそおもふといふ はしめのほとこそよしやう〳〵の声もあたりを はゝかりたれとのちにはあな《?:こゝこゝち 死ぬへう覚ゆとてふたりは声をあけてぞ泣き けるこの雨のかべひとへをへたてゝうらわか き女房たゝひとりすみけるがこの女房おはせ かたといふものゝあるをいまた知らすともし 火の下にをそくつの住巻くりひろけつゝおの かおよひみてたまの門をかいさくり居りしが ふと蝶の雨にて女のなく夢ふるにいりにいな怪 しなふ事か起りにけんとてぬるめきわたるも のゝあたりをふところかとにて拭ひもあへす いそきて隣の句にゆきて障子ひきあけてみれ は息もたへ〳〵にふたり抱合ひたるかおしひ らきたるまたのあはひふかのおはぜ形のある を見いてゝいたく驚きまとひ出たりのほとに くちなはのくひ入りたりたそこよとよひ立ら に麦こゝちなるふたりはとぢたる月をみひら きうへなる女房おきあかりてさあさな騒きたまひ も人のきかばあしかりなんといへは下なる女 房もおきかへりなから 暖きはるの両夜にいまはとて ひそめるへみもあなよりそ出る といひて淫水ひたゝる番頭のおはせ形をおの かほとよりひきぬきて隣の女房か目のまへに さし出して見せけるはおこかましきふるまひ にこそ 章魚十 駿河国甲子の浦のあまをとめにあふ名をたこ 壺とよはれたるかありけはあるいろぬみの男 その名をゆかしかりてあまたのこかねを親ふ あたへてそのむこになりはしめてをとめの家 にゆきける夜まづゆかしきものをこゝをみらん とてたゝちにをとめを押ふせてはさまりける にかのところは鞍離のくちよりもひろく亦ほ しかに似たる香のはなをつくにえたへて 駿河なるあまの腰みのきてみれは たことは浦の名にこそ有けれは といひすてゝそのまゝにけかへりけり後にい たりてよらはなけはかのあまおとめは章魚つほ といふ器にてたこをとらふる書にたけたるよ かゝるあぶ名をおひたるあぶ名をおひたるなりとそ 蛤の羹 みやこのほとちらき世の国といふといふところに かりにすめる夫婦ありけり秋のよなかにふた つみつはつゝまてかの事おこなひすましける かまだとしわかきふたりはあきたらぬ貌にて をととは女のほとをかいさくりつゝ あつものにつくるもよしや夜蛤 み戯れけれは女もおとこの玉くきをてまさく り この松たけをてうし合書て といふいごさらはかたみに珍味を貴説まはや て男はさかしまに女かはらのうへにはひあか りとゝの間にとゝの間にくびさしいれ舌にてひなさきを ねふり亦そこよりもしたのたぼきところを見 ら〳〵となむ女もおもおくれしとておのが手に玉 一ぐきをにきりもち屋にさしあてゝすぼ〳〵と すひけりしばらくして女の息さしせはして暦 をゆりうごかしつゝおびたゝして酒したるな まあたゝかき醒のことき水を男は舌にうけて 皆なめつくしゝるやかて男もまゆねをひそめ われもはや酔かたやとてかりさきよりはき出 す濁水を女はひと雫ものこさす晋みつくしぬき さてふたりともにおきあかりてひとりの旅の あつものはいかにといへは又ひとなか松たけ の味はいかふとてたかひにほゝとうちわらひ 水閏 一紅毛の奇薬 あるところのくわり商人の家につかはるゝ男 ちかき比紅毛よりわたせし女のなくといふ房 薬をえてけるがいかてそのきしめをこゝめをこゝろみ んとてひとよ人のねしづまるをりかゝひ日比 懸想するはしためのねやにしのびもきてまづ 女をおしねせおのくすりをとうでゝ西川のう 一固にさし塗りさてこと行はんとしけるにあな にくや奥より主のこゑにてはしための名をよ ひたつるに女はつと起あかりておとのかたに 走りゆきぬあとにと生のこされし男は手のな かの玉をうしなひたるこゝちして半時はかり まてとも女の閨にもどりこぬにいともどかし かたて忍ひ足にておくの方にゆきて見れは主 かねやに男おみなのさしめてこゑのするより ひそかに障子のひまよりのもき見れは主はは した女をあふむけにふけてそのもろ足をおの 一かかたにうちかけもゝをさうにおしひらき七 一寸あまりの毒くろきものをねをとまてつきい れなからこよひはいかふにしけんそこのほと のにく日比よりもふくらみてわかとのをくひ しめ旦なかのあつきこと火をたくやうにてお りとこがるくはかりなりといへはすしためも 眼をとぢてまゆねに八木の剣をよせわらはも またつねにまさりてこゝちよくはへりこのま ゝにしにもやすらんあなな〳〵とてはては夢を あけてなきつゝくろ髪をふりみだし身をゆす る度にしぐひ合たるところのいさゝかのすき まよりいも汁のごときものなかれ出てよるの ふすまを決すめり障子のそとに居る男はおの かひとたび試みんとせしくすりのきゝめはい 一ちじるきをおよひくはへてよそにのみ見るは はらたゝしくも又うらめし候 一あやしくもくしき薬はつひにわか みる目の毒となるもうらめし とておのかものをおのかたにてちすりわつか に思ひをはらしけり 花盗人 世になたかきはかまだれ□鋪よし田の松着丸 にもおとるましき強盗のとうりやうりやう草しば 〳〵鎌倉の互家におしいりてひとの宝を奪ひ さりけりある夜例のことく小坪のさとのある 家にお々入りてけるに思ひのほとなるまつし きにてせるへきとのゝ史になきにあきれてしば したゝすみ居りしが驚きまとひてかたすとに ふるへて居たる二八はもりの乙女を見いたしこ れをこよひのほとのにせんとて乙女をおしふ せて其上にのりかゝりもすそ引まくりてみれ はほかみ生ひいでし君草はわづかに数ふるば か生にてかの所は十字余をふたつあはせたら んやうにふくらみひなさきよりそらわれのあ たりかけてうすくれなひにうるほひたづれた る其さまかたちえもいはれすやかてしたらか なるものにそりをうたせてつとつき入れんと したるに念引かつきてひそみ居たるおうなの 四十はかりなるにあわてゝおきあかりがうと うの袖にとりすかりてあこをなきずつけたき ひも其かはりにわらはをはいかふともこゝろ のまゝになしたまへとて衣のすそをかゝげて あめうしのくちをあきたらんさましたる毛ふ かきふるほとをさしつけてなけくに強盗もあ はれとや思ひにけんをとめを捨てはゝをうち ふみすでにからよと見へたるにうしろもりお とめのとりつきてはらをな犯したまひそわら はこも母にかはらめとなく〳〵いふがうたう はいかり声をたてゝおなむやくの幸ひかなか くあらそひ居るひまに夜あけなはあしかりな んいさ〳〵とてふたゝひをためをといておし ふさかのしたゝかなるものをづふ〳〵と押し 入れてけり扨は此ありさまをうらめし気にう ちみやりつゝ 一色あせし姥さくらをはよそふして つほみの花を手をりしそうき といひしはあこをあはれと思へるにやはたう らやましとおもへるにや 文章博士 昔もやこのもんじやうはらせなにかしおほや けの口使にてあづまにくたりけるをり大磯と いふうまやにやとりし夜ものところの名たか き化粧坂のうられめるやとにゆきてとし二八 ばかりのあでやかなるうかれめに酌をとらせ つゝみきいたうまゐりけるか漸くゑひさしい れわか草のわづかにゆきまにもへいでたらん やうなるほかみのにこげをかいさくりて池堀 春草王とうちすんしまたもゝをさうにおしひ らきむらさきたりたらひなさきのふぢばかま よはもにほやかなるにしはしとほれて玉砌秋 菌発といひけれはうかれめはほゝとうちゑみ 一博士かうなじにとろでをまとひてとう〳〵と すゝむされともいたく酔すくしたるゆゑにや 〽こまのかしらをえあけぬるあなもとかし〳〵 とつぶやきて 藍園を擁する雪のはたへをは わか駒もみてえこそすゝまね と口すさみけりいと着涼なることのはなれは ろつまもたちのうかれめの耳にはよくきこゑ さりけん 尼寺の連木 むかし易仏のあたりの寺にとし老たるとわか きと唯ふたりしてすむ厄ありけはある日ひと りの黒きあま府のまへのにはにて飼犬のつる み居るをふと見て俄にはるのこゝのこゝき けんとはやにて味噌する料の連木といふもの をたなみてとりおろしおのかほとにさし入れ 〳〵うすくときたるひめ糊めくしろきみづを すみそめのこし毎におひたゝしてこぼしかけ てしりを君ひたりにゆりにゆりにひとりあへ ぎ居る所をとし呑たる屁の見いでゝ 腰ころもまた洗濯もえせさるに なとすめ糊をときてつくらん といひけるにわかきあまは遠木をさか手にに きり持ちて すみ染のころもまとひて御仏に つかふる身にはのりをこそとけ みてなもあらだ〳〵とそとなへける 米饅頭 かみつけの国多郡のさとびとさきもりとなり てつくしにおもむきけるか年わかき妻はひと り留守してけもまなつのたそかれの比ゆふか ほ棚のしたにたらひをかきすへ簀のこのはし に哀ぬれおきてゆあみ居るなまをうかゝひ十 五になれるとなりの春きたりてかの衣をおし かくしけりかくともふらぬつまはゆあみをは りてみるに脱おける衣のうせてなけれは漁父 にはごろもとられたる天津をとめのありさま にてたゝすみおるうしろよりそとしのひより て背うちたゝくものあるをたそとかへりみれ はとなりの童なりさてはこの童の衣をかくし たわけんとおしはかりてよきちこぞわか衣を かへしてたべそのはうびには早桃の実をあた へんもしさもゝのほしからすはすもゝの言を あたへんと云へは童はかしらをうちふりて我 はさもくも草もほしからす唯そなたのもゝの 毛のおひたるよねまんぢうこそふもしけれと いふわらべのことばにかげなきを妻はいと怪 しとおもひて童のまへをかいさぐりて見れは 筑紫におもむきけるおのか夫のもてる物より もふとてたくましきかかしらを上にもたけを るにひとたひも驚きたれともふたらせあまり 男にあはぬ身のしきりにこゝろときめきめきてさ らは米はんちうをあたへんとはだかのまゝに てすのこのうへにうつふうつふうつうもとげ てまては重いとくうしろよりはひよりまづほ ものさまをうかゞふにほかみの黒き毛は夏草 のことく茂生あひむらさきふ香つきたるひな さきのはしのみあらはれて玉のかどはよくも みえねどこゝそとおもふところにわか駒のか しらをむけしりに土手をかけてつとをせは湯あ みてまもなく潤ひみち〳〵たるをりなれは ふとくたくましき逸物もおくのかたまてぬら 〳〵と何のくもなくするみ入りたりかゝる業 にまだなれぬわらべはたゝ魚のかたをのみも ゝたひちたひひたづれにつきてやかておもひ をはらしけるかやらのつまははしめよりすの 子もうくはかりに涌出る淫水をのごひもやら てよしや〳〵とことよかり岡とうつゝのさか ひにありしか童のなへかゝりたる逸物をやせ らひきぬかんとするふぜいにありてまとひて またにさしはさもいまひとつ〳〵とつくさく されと童はこゝろすゝまぬにや 味うまき米まん頭もふたつみつ かさねて喰はゝはらのふくれん といひて漸くにひきはつしてにげゆきぬおと なひたる童なれともよみ歌はげにおきなく 見ゆ 紅蓮の露 昔かまたらのみうたち人なにかしのつまはやら 夫にしなれてやとめとなりてたゞひとりさび しくすみけり此やもめ夫の後世とむらふため みとりのかみはたちたれともとしは三中にも たらてそのみめかたちの異しきことくわん世 音ほさちの化説にことやとちかきあたりのひと 〳〵はみならはさしあへりしがさみたれのわ ひしくふりつゞくゆふべ小路をとほる按广と りをよひいれかたうたせこしたゝかせなとし けるかはつか睡りをもよほして一ひにゆめ膳 をたとりけりかためしいたるあんまとりはは しめこゝによびいれられしときさても其しき やもめかなかゝるをみなを唯ひとよかたりと もわかものと領したらむにはさこそうれしか らめとひそかにおもひ居たりしが今さくに此 寝安をみれはいよくうるはしさまさり生仏共 おもまるにわれを忘れてうすものゝ戸懐をそ とかゝけ田沖のかたをうかゝひみれはみづ 〳〵しきほとの紅蓮のはなにゝたるまへめづ つゝ筆とりあげて 濁りにはしまぬ蓮のはなふをく 一ゆよりもまつわか身けなはや とかきおもりてまたもよるとうちなくめり 寝侍月 常陸のくふのなにがし長しのまなむすめとし ははや十あまりやつをすれてこゝのつとなり すかたかたちいとうるはしかたけにがほかみ の毛といふものひとまたにおひいでさるより くちさがなき田舎人もかはらけ姫とあだ名つ けゝりむすめはもとよりふた親たちもふかく これをなけきてこゝのやしろかしこの御幸ふ 詣せゝ神仏をたのみ奉りたれとも更にそのし るしなかりきこゝに近き比都のかたより来て 此は去の家につかふる男ありいかてかのかは らけのさまを見はやとてそのをりをまちける かある日腹のひとり湯あむときゝてひそかに 湯碗のもとにたちてすき戸のふし元よりうち をのそきみれはげに人のうはさにたかはす娘 かはたへの玉よてもきはらめなるにほかみの 毛はさらになくてあざ〳〵と見ゆるほとのさ まはさなからはげ山の谷間よりゆとはり月を あふぐに似てあたかもかゝやくはかりなれは 一すき戸の外なる男は感嘆の余りに いざたきて寝まちの月は雲もなく あまけもなくそおかまれにける といひてすき戸をひきあけて娘か肌のゆにひ たるもいたとてひたと抱きつきけるとなんに 路傍榊 一桑名の僧なにからし行脚してみちのおらへゆ きけるかある田舎にて姿うるはしきをみなの みちの心に立なからしとする所を見て一生不 犯の身にもたちまちにほんのうをおこしその 女をあたりの柳の幹によせかけもすもかゝけ てふさ〳〵とおひかゝれるほかみの毛をかみ さまふかきあげ柳のみきよりもふときはすば かりのものにつさしぬはぬら〳〵と根まてお しいれたる女はこのありさまふはしめは驚き まとひたれとものちには僧のものゝ分にすき て大なるよりこれまてかつて覚へぬこゝちよ さにわれにもあらすはな息あらうして暦をゆ りうこかしつゝしみづのことく淫水をなかし 出すに増も心うかれてさしぬきせはしくしな から みちのへに清水の流れ出るまて 一抱きてはなさしこのやなき腰 といひけりこれや雲上人の高風をしたふ僧な るへし 姫美謹語終 □□□□□□□□ 伝 〇 むれ 画一一 行 同